約 1,920,434 件
https://w.atwiki.jp/hetaria423/pages/13.html
イタリア 主な紹介 正式名称は「イタリア共和国」漢字表示だと「伊太利亜」、「伊太利」 南ヨーロッパに位置する、長靴の形に似た国。 首都はローマ 国花はデイジー 歴史 (近日更新) APH的紹介 人名はフェリシアーノ・ヴァルガス(ヴェネチアーノ・ヴァルガス) パスタと女の子が大好きな、陽気で泣き虫なラテン息子。 へタレで、狙われるとすぐ白旗振って降参しちゃう。 そのたびにルートヴィッヒに頼って助けてもらうが、ルートの話をあんまり聞かない。(そのせいか、トラブル起こす) 「ヴェ」と謎な言葉を発する。生理現象のようだ。 美的センスは結構凄い。 洋服デザインしたり、絵を描いたり、歌うたったりするのが凄く好き。 (「キタユメ。」様、参照) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dreamcity/pages/60.html
No.039 ウインド (ウインド Wind) 性別 女 歳 37(ヒューマノイド換算で14~15) 誕生日 4962.5.9 出身星 惑星フェアリー・ティア 種族 アルティス(妖精型) 属性 「風・空」(+エロ) Tall 104cm Weight 10.7kg Bust 56cm (C?) Waist 41cm Hip 55cm Image 水色 Hair 水色 Eyes 青 一人称 私 好き メイプル・エロい事・空中散歩・ミルキ(?)・他人の秘密を握ること 嫌い 悲しい話・悲しい出来事・泣き虫な自分・ホラー映画 誕生由来 妖精さ~ん。 名前由来 風(wind)。 性格 さっぱり・男勝り・にやにや・感情的・強がり・特攻 特徴 妖精・激エロ・実は泣き虫・羽は身体から1cmくらい離れており、飛ぶときは羽を動かしはするが、羽でとんでいるわけではない その他 メイプルの大親友で、メイプルのエロ仲間。女版人郎的な存在?小さくなく妖精らしくない妖精。本人曰く、好きでデカくなったわけじゃないよ、と。鋭い観察力、洞察力を持ち、他人の弱みを握ったり、隠し事や秘密を知ることがうまい。ミルキが男だということもすぐに見破っている。星では、主にエッチィことをする施設のオーナーをやっており、ウインドはその性格から、男役を演じていた。地球に来た理由は、男とエッチがしたいからというのが強く、本人の野望のひとつとして、人型の男全員とヤル!という目論見があるが、未だ一人も成功していない。今でこそ気が強く、男勝りな性格だが、昔はいじめられっこの泣き虫でろくに友達も出来なかった。メイプルとの出会いは、初めての友人との出会いでもあり、メイプルの前では絶対に弱さを見せないように強がっているうちに、今の性格になった。しかし根は泣き虫であり、ナズナとミルキの過去(両親が死んでからの二人のこと)をナズナから聞かされたとき、我慢していた溜まりに溜まった涙が一気にあふれ出て、ミルキの胸(ていうか背の関係でおなか)を借りて大泣きした。また、チヨが旅に出るときに、メイプルとの親友の証しである首飾りをチヨに貸し与え、絶対に戻ってくるよう念を押した(そのときも泣きながら渡している)。ただ、チヨの奥に眠るエロの欲望に気づいている彼女は、その別れ際にエロを促す発言もしている。まぁその結果、チヨが少し元気になったという事実もあるのだが…。 DREAM内 名前 ウインド・クラウド 性別 女 歳 (故)17 誕生由来 水(純)、火(フレイム)、雷(メギラス)と出てたので、風あたりを…と。 名前由来 風と雲(cloud) 特徴 風草星の一国の姫でメイプルの大親友。おとなしいが男勝りな性格の持ち主。操られていたメタナイトに殺されて、以後は霊体として夢の終わりまで活動していた。 人物一覧へ
https://w.atwiki.jp/nioka/pages/2197.html
1 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 55 21.25 ID 5e9U071G 二岡「もっとみんなまじめにやろうよおー!!・・・」 2 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 56 18.46 ID 9RVrmnX6 大松、帰る 4 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 57 15.60 ID t++aVMOV 男村田、混乱するクラスに目もくれず作業を進める 5 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 57 31.64 ID NIhnjsaY 男村田、ハチマキとハッピ姿(青色)で焼きソバを一日中焼く 7 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 58 39.78 ID c1X+0RPA 横浜石川内野手、リレーのバトンを走行中に落とす 9 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 02 59 54.98 ID YbkrlxpM キムタク、宣伝のポスター、飾りつけの仕事を見事に片付ける 10 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 03 00 27.58 ID t++aVMOV 渡辺俊、背景係の人員不足を訴えるも追加なし 11 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 03 00 58.94 ID 1fLWGhbg キムタク、一日中店番を一人でやる 12 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 03 01 02.89 ID vf0nsroI 大松「野球部練習あるんで」 14 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 03 02 51.23 ID t++aVMOV 下柳、ダンボール集めはお手の物 15 :風吹けば名無し:2009/09/23(水) 03 03 41.44 ID ySu4dXDx 鳥谷、二岡をそっと見守る
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1724.html
バス停にて 「おっす、こなた!」 朝から元気なかがみ 「おふぁよ~…かがみぃん…つかさ…」 こなたはかなり眠たそうだ 「おはよ~、こなちゃん…どうしたの?」 「どうせまたネトゲでしょ?、心配する必要ないわよ」 どうせいつものこと、そう思ってかがみは相手にしない しかしその日は、、、何かが違った 鼻血)ry会2☆いつもと違う1日 『お早う御座います、泉さん、かがみさん、つかささん』 「おはよ~…みゆきさんは今日も萌えるねぇ…」 『いえ、そんな…』 「こなた…またあんたは、、、みゆきこいつの言うことは気にしなくていいわよ~」 と笑うかがみ 『はぁ…』 「むぅ…それが夫に向かっていう言葉?」 「誰が夫だ!」 「……」 「つかさ?どしたの?」 「ん~…でも違ったらなぁ~」 「何悩んでるのよ、言ってみなって」 「もしかしたらもしかしてなんだけど…ゆきちゃんじゃなくて…うーちゃん?」 『だから私は<うぃきつー>だと……ちちちち違います!私は高良みゆきででででd出』 「ちょっ…マジっすか!?」 かがみは驚きを隠せなかった 『~~っ…あの…どうして分かったんでしょうか!?、眼鏡はもちろんかけてますし、 TR毛髪を使いみゆきお姉さまの髪を再現してますし…プロポーションもみゆきお姉さ まとほぼ同じなのですが…』 「え、、、と、なんとなく…かな?」 『な、、、なんとなくですか?!?』 うぃきつーには納得がいかない 「いやまぁ…しっかしどう見てもみゆきそのものね~、、うぃきつーさん?気にしな くていいわよ、この子勘だけで生きてる子だし」 「それほどでも~…えへへ」 (…褒めてないんだけど…) 『はぁ…ですが…』 「むぅ…なんというかもうエロゲの世界だねぇ」 まだ眠そうなこなた 『………』 「うぃきつーさん?」 〔なぜバレたんだろう…声に不備があったのでしょうか?、まぁ人工音声ですからしか たないかもです…しかしそれとは別に不備があるとしたら…いや私はつい最近開発され たばかり…不備なんてあるわけっ…私は現在の高良家の最高…いや、地球最高の技術を もって造られ…〕 「うーちゃん?その、、なんだかゴメンね」 『その間 わずか2秒!!』 カッと目を光らせ叫ぶうぃきつー 「ひぃ!?」 『は…すいません!私達には思考形態がありまして、その…なんというか…』 「うーちゃん? もう10秒近いんだけどな~」 とこなた 『はう?!それは…っというか私はうーちゃんではなく<うぃきつー>です!』 「ごめんねうぃきつーさん、、こらこなた!からかわないの!」 「あっ…みんな~バスが来たよ~」 ちょうどバスが混み始めているところだったらしい 「乗れたね~」 「いや~まだギリギリ空いててよかったネ…ふぁあ~」 まだこなたは寝むt)ry こなたとつかさはホッと一息ついた 『そうだ…しまった…』 右耳変形! マイク作動! アンテナよろし! 携 帯 電 話 モ ー ド ! ウィーン ガシャっ ガシャン! と一部変形するうぃきつー 「を~~~~~!!!!それ何?何~??」 こなたは今の出来事で完全に目が覚めた、 それにしてもこのこなた、ノリノリである 『はい、私には携帯電話が搭載されていますので…あとこれはTR電波を使って話すの でバスの中でも安全です』 「へ~ロボットみた~い」 『いわゆるロボットですので』 「何か忘れたの?」 とかがみ 『いえ、みゆきお姉さまに電話を』 …… 『コード:鼻血』 「アンサー:こなた」 「どうしました? <うぃきつー>?」 『すいません、早々に柊つかささんにバレてしまいました…』 こなた達に聞こえないよう小声で話すうぃきつー…しかしそれがかえって周りの注目を 集めている事に気が付いていない 「そうですか…まぁつかささんなら仕方ありませんね」 『どうしましょうか?』 「…では放課後皆さんを集めてください。私も行きますので」 『…了解しました』 プッー プッー みゆきは携帯電話を切った 「フフフ…こうも早く[あの方]を使えるとは…ね」 みゆきの眼鏡が怪しげに光った 放課後、とある教室にて 時刻はもう5時になろうとしている 「~というわけでこの方が我が高良家最新ヒューマノイド<うぃきつー>です」 『皆さん、初めまして、私は<うぃきつー>といいます、よろしくお願いします』 うぃきつーが自己紹介する 「よろしく!」 とフレンドリーに近づくかがみ 「他に何があるの!? 見せて!答えは絶対聞いてない!」 このこなた、ノリノリd)ry 「今朝はゴメンね、うーちゃん」 まだもうしわけなさそうなつかさ 『…だからうーちゃんじゃ…』 「何で私達も呼ばれたのかしら…?」 あやのは不思議でならなかった 「あやの~!ロボットだって!スゲーじゃん!もっと見たいんだってヴぁ!」 子供のようにはしゃぐみさお 「自分とほぼ同じヒューマノイド…か、」 「あやの?どーしたんだ?」 「…ううん。みさちゃん、何でもないの」 「?」 「ヒューマノイドだって!すごいねぇ~みなみちゃん!」 素直に驚いているゆたか 「うん…すごいと…思う」 「驚かないの?」 「…家が目の前に…あるから」 「ってことは…みなみちゃんうぃきつーさんの事知ってたの?」 「…うぃきつーさんは知らなかったけど…チェリーの友達の犬が…」 「え?」 「…何でもない」 「大丈夫っスかねぇ私達…それにしても無事帰ってきてよかったっス! 8日ぶりっスかね?パティ!」 「…えエ」 「…パティ?」 全員の反応を見終わったみゆきは話を始める 「それでは<うぃきつー>の性能の解説を―」 「―私かラしましょウ」 「知っているのか?パティ電!」 それにしt)ry 「マズ…正式名称 TRMS-S01 うぃきつー は高良財閥の新型OSが搭載されテいま ス、そしてフレームは新型のTRフレームヲ使い、そしてソレを覆うのはガンダ○○○ ばりノMSの防御力を誇るTRスキンを~…」 (*1)) 「「パティちゃん物知りなんだ~(なぁ~)」」 ゆたかとつかさが言葉をもらす 「すげーな!あのでかちち…負けられないんだってヴぁ!」 何故か対抗意識を燃やすみさお (パティ…あの8日間で何をされたんスか…?) ビビるひより、、、誰だってビビる まだパティのバトルフェイズはs)ry 「TRMS-S01ノSはセカンドを意味し~…」 「こなた、、、パトリシアさん何か…おかしくない?…しんぱてぃさんの方なのかな?」 「パティ電だもん、解説くらい出来るサ!」 「いや出来ねぇよ!」 ※その後もパティの講義は役20分近く続けられました※ 「トまぁうぃきつーにハ108を超える武装ヲ~…」 「みゆき…お前はどこに武力介入するつもりだ?」 「ええ、手始めにまず―・・」 「ちょ…おまっ」 「冗談ですよ」 (…冗談に聞こえねぇよ) 続 コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7071.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに てくてく でかける。 そのとちゅう しょくどうで せいどうの ギーシュが けっとうを いどんできて、 ルイズの かばんを つかんで はなさない。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 ひっぱりにひっぱるが、それでも ギーシュは はなさない。 てぶくろ ちみどろになるまで なぐりつけると ギーシュは きぜつし、 やっと かばんを はなしてくれる。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに みちを いそぐ、 けれど ギーシュの せいで おそくなった。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、ちこくだね。 おまけに てぶくろ ちみどろ どうしたんだ?」 「ミスタ・ギトー、わたしが ちこくしたのは、 とちゅうで しょくどうに ギーシュが あらわれ けっとうを いどんできて、 わたしの かばんを つかんで、てぶくろ ちみどろになるまで なぐりつけなければ、はなしてくれなかったからです、てぶくろは ギーシュのかえりちで ちみどろになってしまいました。」 「このがくいんでは しょくどうに けっとうをいどむミスタ・グラモンなど すんでおらん。いのこりして 〈もう ギーシュ・ド・グラモンの うそは つきません、てぶくろも ちみどろにしません。〉と 300かい かくこと。」 そこで、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、いのこりして、 〈もう ギーシュ・ド・グラモンの うそは つきません、てぶくろも ちみどろにしません。〉と 300かい かいた。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに いそいで でかける。 だが、とちゅうで せんこうのワルドが、アルビオンで おうさまをおそって、 ルイズの スカートも やぶいてしまう。 やっとのことで じゅもんを となえ、 ワルドが ばくはつで こっぱみじんになってしまうまで、 ルイズとジョンは アルビオンから おりられない。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに みちを いそぐ、 けれど ワルドの せいで おそくなった。 「また ちこくだな、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おまけに スカートも やぶけてる。」 「ミスタ・ギトー、わたしが ちこくしたのは、 とちゅうで ワルドししゃくが アルビオンで おうさまをおそって わたしの スカートを やぶいて、わたしは ワルドししゃくが こっぱみじんになるまで じゅもんを となえていなければ ならなかったからです。」 「アルビオンの おうさまをおそう ワルドししゃくなんてものは このくにには おらん。 すみに たって 〈もう ワルドししゃくの うそは つきません。 スカートも やぶりません。〉と 400かい おおきな こえで となえること。」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 すみに たって 〈もう ワルドししゃくの うそは つきません。 スカートも やぶりません。〉と 400かい おおきな こえで となえた。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに いそいで でかける。 だが、とちゅうで こうしゃに はいろうとすると、 ヨルムンガルドが ルイズとジョンを さらっていこうとする。 やっとのことで せんしゃに のりこみ、 てっこうだんを ぶっぱなし、ヨルムンガルドが あなだらけになるまで うごけない。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに みちを いそぐ、 けれど ヨルムンガルドの せいで おそくなった。 「また ちこくだな、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おまけに せいふくが すすまみれだ。」 「ミスタ・ギトー、わたしが ちこくしたのは、 とちゅうで こうしゃに はいろうとすると、ヨルムンガルドに さらわれそうになって せんしゃせんになり、 ヨルムンガルドが あなだらけになるまで てっこうだんを ぶっぱなしていなければ ならなかったからです。」 「ひとを がくいんから さらう ヨルムンガルドなんてものは このがくいんの ひろばには ありはせん。 〈もう ひろばの ヨルムンガルドの うそは つきません、 せいふくも すすまみれにしません。〉と 500かい かくまでは へやに とじこめておく。 もし、これからも そういううそを ついて ちこくを つづけるのなら、このわたしのたつまきで ふっとばしてやる。」 そこで、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、いのこりして、 〈もう ひろばの ヨルムンガルドの うそは つきません、 せいふくも すすまみれにしません。〉と 500かい かくまで へやに とじこめられた。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 おべんきょうしに みちを いそぐ。 とちゅう なにひとつ おこらなかったので、 ルイズとジョンは まにあった。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 わたしは つちくれの フーケの ゴーレムに つかまって ひろばに おる。すぐに わたしを おろすこと。」 「つちくれの フーケの ゴーレムなんてものは このがくいんの ひろばには いませんよ、ミスタ・ギトー。」 そして ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー、 もっと おべんきょうしに でかけていった。 絵本「いつもちこくのおとこのこ」から「ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」召喚
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1543.html
§第四章§ ――12・a―― 「目覚めはどう?」 直後に俺が感じたのは、それがいつも聞く妹の声じゃないってことだった。 違和感。でも眠くてまだはっきりとしない。 目をこすり身を起こす。……何か薄暗い気がする。まだ夜なのか? 「何言ってるの。朝よ。ちゃんとね。七時過ぎ。いつもあなたはまだ起きてない時間なのかしら?」 夢か。そうか、でなきゃこのトーンの声が聞こえてくるはずはないな。そうかそうか。では二度寝するとしよう。 「起きて。せっかく驚かそうと思って入ってきたのに、台無しじゃないの」 両肩をつかまれて半身を起こされる。柔らかい感触。温かい気配。 「朝倉……」 おぼろに影を捉えた瞬間、俺はまともに立ち上がりもせずめちゃくちゃな声を上げて壁まで後ずさった。 「朝倉! どうしてお前――」 「なぜって? だって、長門さんも涼宮さんも常にあなたにつきまとってるじゃない? あなたと二人きりで話したいなぁって思って」 ね? と首をかしげるおなじみの仕草。俺、この場で殺されるのか? 目覚めた直後に永眠するなんてシャレになってないぜ。遺言を残す時間くらい与えてくれるんだろうな。 「あなた、わたしの話聞いてなかったの? 残念だけどわたしはあなたを殺せないのよ? 指示さえなければ今すぐにでもやっちゃいたいところなんだけどね。だから安心して」 やはりこいつ相手に油断していてはいけないのだ。俺は気力を総動員して壁に背をつけたまま立ち上がる。最悪の目覚めだ。……ここ一年でダントツである。 周囲はいつぞやと同じように薄暗い。一面灰色で、無機質な表面。 情報制御空間――。 「あなたに会いに来るのに結構手間取ったんだから。準備に丸一日使っちゃったわ。長門さんがわたしの知らない間に負荷と防御コードを仕込んでいてね。ふふ。さすがよね、あの子も」 あっけらと言い放つが、つまりそれは長門の防御策を突破したってことだろう。今俺を守るものは何もないってことだ。長門のバックアップでも何でもないこいつは、確実に以前よりパワーアップしている。 「新しい手段をテストさせてもらうわ。あなたの近くにいる人を次々消していくのも悪くないかなって思ったんだけどね、それじゃ効果を得られるまでに時間がかかりそうだから」 俺が警戒する間もなく朝倉は俺の眼前に瞬間移動し、直後俺は朝倉に何事かささやかれた。 「……」 「さぁ、一日が始まるわよ。よろしくね」 ――12・b―― 「目覚めはどう?」 俺は学校への坂道を登りつつ、その言葉を聞いていた。朝倉の言葉だ。今、隣で俺と坂道を登っている。 「寝ぼけてるの? しっかりしてよね」 俺の右腕をつかむ朝倉は、そう、どうして俺と歩いてるんだっけ? 「あなたはわたしの彼氏でしょう? いつも一緒に登下校してるじゃないの」 ……そうだっけか。春。坂道。俺は何年生だっけ。 「二年五組。わたしと同じクラスじゃない。もう、本当に大丈夫かしら」 「あ、朝倉! おはよう!」 「涼宮さん、おはよう」 「あれ、キョンはまた寝ぼけてんの? まったくしょうがないわね」 後頭部を何かで殴られる。鞄か? いてぇじゃねぇか。 「アンタがそんな眠そうにしてるからよ。どうしてこんなのに朝倉みたいなのがくっついてるのか、さっぱり分からないわ」 お前に言われる筋合いはねぇな。誰がなんと言おうと俺と朝倉は普通の高校生カップルだ。 「あっそう。じゃぁね。急がないと遅刻するわよ」 ハルヒが坂道を駆け上がっていく。うん。いつもの風景だよな。 「……ねぇ、本当に大丈夫? どこか具合が悪いとかじゃないわよね?」 大丈夫だ。何ともない。ただ頭がぼんやりするだけだ。 「そう、ならよかった」 朝倉はにっこりと微笑んだ。 そう、俺にはこんなに素敵な彼女がいる。 授業が始まる頃には寝ぼけていた俺の頭もすっかり回復し、まぁ、板書や内容理解ははかどらないけどもだ。 変わらぬ日常風景が今日も幕を開けた。 「しかし、お前と朝倉が付き合っちまうとはなぁ」 休み時間に谷口が言った。 「やられたぜ。先を越されたとはこのことだ。やっぱりお前は隅に置けねーよな」 「僕も意外だったな。僕はてっきりキョンは涼宮さんのことが好きなんだと思ってた」 おいおいお前達。いくら俺でもあんな変てこかつ奇矯かつ傲慢な女に惚れたりしないっての。 まぁ、ハルヒは確かに面白い奴だ。だがな、俺はそれだけでいつ爆発するか分からない火薬無限の不発弾を持つような真似はしないのさ。彼女にするならもっと真っ当な性格を持つ人間にしようと前々から決めていた。 「へっ。あんな妙ちきりんな集団に入っておいて言う台詞かよ、それ」 谷口は吐き捨てるように窓から半身を乗り出して言った。SOS団か。……確かに。今にして思えば、どうしてあんな団に身を置いているんだろうな俺は。 「涼宮に引っ張られて無理矢理入れられたんだろ。お前のお人よしにも愛想がつきるぜ」 「キョンは巻き込まれると中々はっきり断れないからね」 谷口の言葉に国木田が相槌を打つ。そうだったな、うん。 「……」 「どうしたの? キョン」 何だろう。何か引っかかるな。無理矢理、お人よし。……ふむ。 「何? まだ頭がぼーっとするの?」 そう言って入ってきたのは朝倉だ。穏やかに笑う。それだけで俺は心の安寧を得られるというものだ。 「どうも暖かすぎるんだな。このボケた頭をどうにかせんとな」 俺は側頭部にノックを入れた。同時に予鈴がなる。 「しっかりしてよね。あなたはわたしの大事な人なんだから」 耳元で谷口や国木田に聴かれないように朝倉はささやく。あぁ、幸せだ。谷口は今どんな表情してるだろうな。 そう、これが俺の日常じゃないか。どこに不満があろう。真っ当な毎日バンザイである。 「キョン、あんた、今日部室に来る?」 ハルヒの言葉だ。四限終了間際。 「何でそんなこと訊くんだ?」 俺は伸びをしつつハルヒに答えた。どうも今日は眠くていかんな。 「何でって、あんた最近全然顔出さないからよ。朝倉と付き合いだしてからずっとね。……あんた、まさかSOS団を辞めたりしないでしょうね?」 確かに、ハルヒに言われなきゃ俺は今日も普通に朝倉と下校してただろうな。 「どうだろうな。場合によっちゃそうなるかもな」 俺は弁当を取り出そうと鞄を持ち上げる……前にハルヒにブレザーの襟首をつかまれる。何だよ。 「ねぇ、あんたそれ本気で言ってんの? 少なくともあたしは冗談のつもりで言ったのよ。分かってる?」 うるさいな。放っておけ。俺はお前の下僕でも召使いでも執事でも秘書でもないぞ。お前とくっついてなきゃならん理由なんぞ、大宇宙を端から端まで探しても見つからん。 そう言うと、ハルヒは下唇を噛んで俺を睨みつけ、盛大に平手で俺の頬をひっぱたいた。 「ハルヒ……?」 「もう……知らないわよ」 そう言うなりハルヒは自分の鞄をひっつかんで廊下に飛び出した。何か悪いこと言ったか、俺。 そういえばあいつポニーテールだったな……。今頃気付いた。 「どうしたの? 涼宮さんと何かあった?」 クラスの視線を集める中、朝倉が俺の傍にやって来た。 「別に何でもない。ハルヒがどうかしてるんだ」 そうさ。物事は移り変わってゆくのさ。いつまでもSOS団なる学内非公認団体を続ける理由など俺にはない。ハルヒがどうしてあの謎の集まりにこだわるのか、それこそが俺には理解できないね。あいつの言うように、やる気がないならさっさと辞めちまうのも手かもしれんな。 「そう? あまりケンカしちゃだめよ。これまで一緒にやって来た仲間なんでしょ」 朝倉は心から心配しているような表情をした。俺からすれば朝倉、お前の方がよっぽど大切な存在さ。 ハルヒはその日の授業がすべて終わっても姿を見せなかった。 「一緒に帰りましょ」 朝倉が言った。……俺は部室に行こうかわずかに迷っていた。 「どうしたの? やっぱり涼宮さんが心配?」 何だろうな。何か俺はおかしなことをしている感じがするんだ。ちぐはぐな。それでいてどこが狂ってるんだかよく分からないような。 「春だものね。たまには散歩でもしない? きっと気も紛れるわ」 朝倉に従って俺は校門を目指す。 教室を出た直後――、 「……」 「……長門か?」 それは確かに長門有希だった。眼鏡をかけて、無口な。いつもの……長門。 「お前、クラスはどこだっけ?」 「六組」 長門は言った。当たり前だ。別におかしなところはないだろう。学年が変わっても隣の教室だってだけだ。 ……そうだろうか。 俺は違和感をまた感じる。何か気持ち悪い感じだ。本当に俺の環境ってこんなだったか? 何か、あらゆるものが微妙にずれてしまっている感じがする。 「行きましょう」 朝倉に手を引かれる。長門は部室方面へと足を向ける。 「なぁ、朝倉」 「なぁに?」 「俺たちっていつから付き合ってるんだ?」 俺の問いに朝倉は無表情になった。 「……どうして?」 朝倉は俺に問う。どうしてってお前、はっきり覚えていないからさ。 「そんなに大事なことかしら、それって」 いや、そう言われると大したことじゃないような……。でもな、実際いつだったか気になるんだよ。 朝倉は一息つくと、穏やかな口調のまま話し出す。 「つい最近よ。わたしがこっちに帰ってきて、それからあなたが告白してきたの」 俺が? お前に? 「そうよ。忘れちゃったのかしら……かなり真剣な顔してたけど」 思い出せない。どうしてだ? 俺はそんな最近のことも忘れちまうくらい白痴になっちまったのか? 「とりあえず、外の風に当たりましょうよ。話はそれから。ね?」 朝倉に付き添われて昇降口までやって来る。 「あ、キョンくん」 見ると、朝比奈さんがこの世の光をすべて一点に集めたような神々しさでこっちに……。ん? 何だろう。 朝比奈さんは小動物チックにかくんと首を傾げて言う。 「また部室には来ないんですか?」 いえいえ、朝比奈さんのお茶を飲むためだけでも、あの部室には行く価値が……。 あれ。何だ。またか。 「ねぇ、さっきからどうしちゃったの? 早く行きましょう?」 朝倉……。 「それじゃぁさよなら、キョンくん」 はい、さようなら……。 「……」 このまま見送ってしまっていいのだろうか。何だかものすごく惜しいことをしている気分だ。 「行くわよ? ねぇったら」 制服の袖を引く朝倉に構わず、俺は考えていた。 違う。 何かが決定的に異なっている。 それこそ、この状況が、まるごとすべてずれている。 「ちょっと?」 「朝倉、すまんが今から俺は部室に行く。今日のところは一人で帰ってくれ」 そう言って振り向かずに俺は部室棟へダッシュする。待ってろ。ハルヒ、長門、朝比奈さん。 ……まだ何か足りない。 廊下を走るなという小学校からの警句を全力で無視し、俺は旧館三階まで全速力で駆け抜ける。 このモヤモヤも、そこまで行けば正体がつかめるはずだ。急げ。 俺は階段を駆け上がってドアノブに手をかける。開く。 ……! ――12・c―― 「キョン!」 ハルヒの声だ。 「しっかりしてよ! 目を覚まして!」 「あーあ、意外と早く効果が切れちゃったのね。所詮テストプログラムだったかぁ」 朝倉!? 部室に来て何をする気だ? くそ、目が開かない。……身体が重い。 「キョ……キョンくん! だ、大丈夫ですかぁ~、うぅぅぅ、しっかり、ふえっ、えっ」 間違いない、これは朝比奈さんの声だ。 「朝倉、あんた一体」 「下がっていて」 ハルヒの声に続くのは長門だ。……これで全部か? 「キョンくん……うぇぇぇぇえええん」 朝比奈さん、泣かないで下さい。俺なら平気ですから。どういうわけか身体とまぶたが動かないんですが、心の方はこの通りピンピンしてます。だから、そんな本気で泣くようだと、俺の方が参っちまいますよ。 「彼に何をした」 怜悧な声は長門のものだ。平坦ではない。険がこもっている。どうなってんだ、くそ。目が開かない。 「何て言ったらいいかしらね。端的に言えば幻覚を見ていてもらったんだけど。どう? 涼宮さん、彼が心配? 大丈夫よ。死にはしないから」 「朝倉……これ、あんたがやったの!? ねぇ、有希! これって一体……」 「あなたは黙っていて。彼の傍を離れないこと。朝比奈みくるも離さないこと」 長門の声がいつになく鋭く響く。何が起きてるんだ。どうして身体が動かない。それどころか、全身の感覚がまったくない。時間も温度も分からない、触覚すらまったくない。朝倉、てめぇ何しやがった。ハルヒに朝比奈さんに長門に、ちょっとでも手を出したら許さないからな……。 「キョン、しっかりして! 目を覚まして! ねぇ、キョン!」 「無駄よ。そいつは完全に意識も神経機能も失ってる。分かりやすく言えば植物状態かしらね」 バカな。じゃぁどうして俺はこうやって考えていられるんだ? それに、耳だけなら生きてるぜ。 「さ、決着をつけましょうか。今回は絶対に負けないからね」 朝倉はかつてないほどに冷たい声で突き刺すように言い放った。やめろ。何をする気だ! ハルヒの前で妙なことを起こすな! 「長門さん、よろしくお願いします」 突如、聞き覚えのある声がした。が、即座に誰と判断できない、状況が状況だからな。耳しか使えないってのもある。 ……! 次の瞬間、俺はひさびさにあの感覚を味わった。すべてをグルグルと巻き込んで、そして俺のあらゆる感覚を持っていってメチャクチャにかき乱してしまう、アレだ。ただし、今の俺は聴覚情報でしかそれが分からない。既にさっきまでいた場所にいないことは明白だった。そう、時間移動――。四ヵ月以上のご無沙汰だな。今度はどこへ向かっているのだろう。鼓膜が、空気が四方八方に飛び交う音を伝えてくる。他の感覚が麻痺しているためか、気持ち悪さはない。こんなのは初めてだな。いや、気持ち悪さがあっても脳が受けつけていないだけかもしれん。……目的地に着いた瞬間吐いちまうなんてのはごめんだぜ。 突然びょうびょう言ってた空気の波が止んだ。どこに着いたんだ? 「着きました。……ごめんなさい。私はもう行かなければなりません。この手紙を読んで、その通りに行動して。彼の無事も、あなた達二人に懸かっているわ。頑張って……」 ――13―― 喧騒とまではいかないガヤガヤをBGMに、その声は言った。ここに来てはっきりと分かった。今のは大人版朝比奈さん で間違いない。おそらく、窮地に陥っていた俺たちの元に現れて、どこか別の時間に跳躍したのだろう。 「あの、あなたは……?」 ハルヒが言った。 「私のことはいいの。今は彼を救うことだけ考えて。いい?」 「……あのっ! あの!」 急きこんでそう言うのは朝比奈さん(小)である。それも当然だと思う。彼女はずっと抱いてきた疑念の答えを、今、ほとんど完全な形も同然に提示されているのだ。……たぶん。視覚に頼らなくともそれくらいは推察できる。 しばしの間を空けて、 「この件が終わった時、あなたに話します。今は、彼を」 大人版朝比奈さんは鋭い口調で言った。こんなに緊張感のある朝比奈さん(大)の声は初めてだ。部下に指令を送る上司の緊迫感そのままである。 「あっ! えっ、えっ!」 と、声にならない声を朝比奈さん(小)が発する間に、おそらく、大人版朝比奈さんはいなくなった。まるで姉妹のやりとりを聞いているようであったが、それも何か違うな。何せ同一人物なのだ。本来顔を合わせてはいけないはずだ。 「あら、今の人は? どこに行ったの?」 ハルヒの声がする。……ハルヒ。 ハルヒ!? ちょっと待て。ってことはあの朝比奈さん(大)はハルヒともどもどこかの時代にワープしたってことか? 一体どういうつもりなのだろうか。ハルヒに超常現象を認めさせてしまってはマズいのではないだろうか? それこそ宇宙全体がめちゃめちゃになるという古泉の説明を思い出す俺である。 「それでみくるちゃん、その手紙にはなんて書いてあるの?」 ハルヒはどこか冷静さを感じさせるような声で言った。……一体今こいつは何を思っているのだろう。こんなSFど真ん中直球ストレートな状態に、ついにこいつが巻き込まれてしまったわけである。ハルヒが望んだから起きたなどと俺は思わない。だったらとっくにこの宇宙は崩壊寸前まで法則とやらを乱しているはずだ。ハルヒの認識範囲におかしな現象が及ばないよう、俺たちはギリギリまでごまかし続けていたのが、今回ばかりは隠しようがないんじゃないか。 しかしハルヒは朝比奈さんに対し余計な疑問を呈するようなことはしなかった。どうやら手紙を朝比奈さんから取って開いたらしい。……ハルヒが見てしまっていい内容なのだろうか。ハルヒは内容を読み上げ始めた。 「朝比奈みくる様。まず一番初めに書いておきますが、あなたの目の前にいる彼は無事です。まったく意識がないだけで、命に別状はありません。一時的に凍結状態に置かれていると考えてください。これから提示する手段に従って行動してください。優先度はコードの通り。急ぎすぎることはありませんが、油断も禁物です。涼宮さんにこの手紙を見せてしまっても構いません。どうしてあなた達がここに来たのか、それについて考えるのは後です。まずはどちらかが長門有希さんの自宅へ行って、彼女をここに連れてきてください。彼女ならば彼を目覚めさせることができます。以降の指示はそれから読むこと。まずは、長門さんの家へ――」 数秒間、二人は何も言わなかった。 ……やがて、 「あたしが行ってくる。みくるちゃんはここにいて」 ハルヒが立ち上がる音がする。そういえば、俺は一体どこでノビてるんだ? 聴こえてくる音からして、外にいることは間違いなさそうだが……。 「あ、えっ、でも! 涼宮さ――」 朝比奈さんが呼びかける間にハルヒはすごい速度で走り去った。あっという間に足音が遠ざかる。 俺としても不安なことこの上ないが、一度目標が定まったハルヒの行動スピードたるや、初速だけで宇宙空間まで飛び立てそうなほど凄まじい勢いであるのは、この一年で俺も散々味わってきた。それが時に助かるんだけどな。……例えばこういう時にさ。 「キョンくん……。どうして……」 朝比奈さんの声が近い。吐息が顔にかかっているくらいじゃないかと思うのだが、なにぶん生きているのが耳だけなので距離感しかつかめないのが残念というか。いやはや。 「ごめんね。あたし、また何にもできなくて……っ」 朝比奈さんは今にも曇りから小雨に変わってしまいそうな声色をしている。くそ、どうして動けないんだ。今すぐにでもこの金縛り状態を解いて彼女を抱きしめてあげたいくらいなのに。 「……涼宮さん……。ちゃんと長門さんとこに行けるかなぁ」 朝比奈さんの途切れ途切れな声が、彼女が悲しんでいる様子を物語っている。俺の精神状態だけ無事なのにも何とももどかしい気分だ。 長門……。 長門? そうだ。あいつは今どこにいるんだ? さっきまでいた場所には、朝倉と俺、長門、ハルヒ、朝比奈さんがいたはずだ。どうなってる。長門は今ここにいないのか? ……。 俺はハルヒが長門の家に向かったことに思い当たる。長門に助けを求めに行ったってことは、やはりあいつは今この場にいないってことになる。長門は無口だから、声が聞こえないだけということもあり得るかと思ったが、様子から察するにそうではない。ならば、さっきまでいたはずの長門は一体どこへ行ったのか。 ……簡単だ。元の時空に留まったのだ。朝倉と一緒に。 長門が今回も無事に朝倉に勝てるなんて楽観的な予測を俺はしない。もちろん無事でいてほしいが、前回だって俺から見れば結構接戦だったのだ。それなのに、今回の朝倉はあの時以上に予想を上回ることばかりしている。 そんな朝倉から長門はSOS団を守ったのだ。危険を顧みずに。 無力感を感じる。俺がどんなに長門に負担をかけまいと思っても、結局それは何らかの形であいつに返ってしまう。 ……ふいに、廊下で交わした言葉を思い出す。 わたしは古泉一樹を守ることができなかった。……わたしの責任。 俺は結局、あの時長門に何も言ってやれなかった。今まで忘れちまってた、なんて言い訳はしない。 長門、お前に責任なんかない。そうやって自分を責めるのも、そろそろやめにしようぜ。……そう言いたかった。だって、俺たちは仲間じゃないか。お互いを助けるのは当然なんだ。それは義務なんかじゃない。好意だ。互いが、互いをかけがえのないものだと思っているからこその、好意……。 あいつはまだ人間としての感情の整理に慣れることができないのだろう。ある時は感情が大きくなりすぎ、ある時は十分すぎるくらいの貢献にもかかわらず、まだ頑張ろうとする。あいつに今一番言ってやりたいことは、無理はするなの一言だ。だが、あの場所に残った長門は朝倉と戦っている。そして今度こそ、俺はその場にいる長門に何もできないのだ。戦いに傷つき、倒れたあいつを、助け起こしてやることすら……。 「うぇっ、っく、ふぇっ……」 急に聴覚が戻ってきたかのように気がついた。 朝比奈さんが泣いている。 またしても動けなくなっちまった俺を前にして、たぶん、わけも分からないままで悲しんでいる。 「あたしぃ、うっ、もっと……ちゃんとし……しないと、いけ、いけないのに……っ」 泣かないで下さいよ朝比奈さん。俺までもらい泣きしちまいそうですよ……。 くそ。どうしてだ。何で誰も彼も自分を責めるようなことばっかり言いやがる。 一番しっかりしないといけないのは俺……いや、これも言い訳にすぎないな。俺がどれだけ自分を責めようと、今ここにいる朝比奈さんの涙さえ、止めることができない。 じゃぁ、誰が悪いんだ? ……朝倉か? すべてを生まれ変った急進派と朝倉のせいにしちまえば、俺たちが持ち寄った憂鬱は全部晴れてくれるのか? ……そうじゃない。あの朝倉ですら、本当の意味で悪じゃあないんだ。あいつ自身も言っていた。朝倉は役割を忠実にこなしているだけだ。 まったく感情移入はできないが、哀しい存在であるのかもしれない。こんな事を言ったら、朝倉に命ひとつじゃ足りないくらいのナイフを突き立てられそうだが。俺はそう思う。あいつが、本当にただのクラスメートだったらどれだけよかったことか。普通に友達と笑って、勉強して、部活やってたりして、休日はちょっと遠くに出かけたりするような、ごく一般的な女子生徒だったら……。 俺は非日常たる生活を望んでいたし、これまで色々あったあれやこれを、ひっくるめて楽しかったと言えるくらいにまでなっていた。はずだった。 だが、今回はどうだ? お前は、この状況を楽しんでいるか? 何が楽しいんだ。誰か教えてくれよ。 古泉は消えちまって、長門は別の時間に置き去りで、朝比奈さんは泣き止まない。そして俺だけのうのうと自省してるこんな状況の、どこが楽しいって言うんだ。 誰も悪くないのに、みんなが自分を責めやがる。 言ったはずだ。俺は灰色もブルー色も好きじゃないって。 どうせ倒れるなら前がかり。続けていくなら楽しく笑っていられる時間を、だ。 俺はどんなことが起きようと立ち向かうと決めたはずだ。 ……だから、今は悲しんでいちゃいけないんだ。 俺がしっかりしないでどうするんだよ。 そうさ、まだ何にも終わっちゃいない。 感動のラストなんか……まだ受けつけてない。 「有希! こっちこっち! 早く!」 朝比奈さんの鳴き声に混じって、叫ぶ声がした。間違いない。ハルヒのものだ。帰ってきた、俺たちの団長様が。 長門も連れてきたらしいな。……そういえば、ここはいつなんだろうな。長門が無事な時間……、過去のどこかだろうか。 「みくるちゃん、泣いてる場合じゃないわ。あたしたちにはすべきことがあるの。しっかりして」 声にならない声を上げる朝比奈さんにハルヒが言った。 「有希、キョンが動かないのよ」 続けてハルヒの声。……こいつ、さっきまでいた場所にも、ここにも長門がいて、どうして冷静でいられるのだろうな。 長門の声はしない。が、誰かが近付く気配がする。 かすかに服がすれるような音が聴こえる。何かしているのだろうか。 「治せるの……?」 ささやくようなハルヒの声。朝比奈さんの嗚咽も今は止んでいる。 「コード解析。解除プログラム検索――該当なし。同期――不能。言語分析。再生成。推定所要時間、一ヶ月」 長門の声に間違いはなかったが、俺がこれまで聞いたどの長門の声より無機質で無感情だ。発達した機会音声が喋っているんじゃないのかというくらいに。 「一ヶ月……って、その間待たないといけないの? そんなに長く?」 ハルヒが驚きと呆れの色を帯びた声で言った。俺がこいつの立場でも同じような反応をしたことだろう。長門は何でもないように言うが、俺はひと月も考える葦状態のまま風に吹かれにゃならんのか? 「未知の言語により生体そのものが凍結されている。それより短時間での解凍は不可能」 それとも俺は冷凍貯蔵庫のマグロだろうか。だとすればさながらここは競り市か。 「あっ」 声を出したのは朝比奈さんである。長門が来たことに気を取られたのか、どうにか泣き止んでくださったようだ。 「えぇっと。あの……長門さん? 今っていつだか分かりますか? その、時空間座標のコードを……」 最後の部分だけ朝比奈さんは聞きとれるか否かの小声だった。ハルヒに聞こえないよう、長門にささやいたのかもしれない。 対する長門は何も答えない。また衣服のこすれる音のみがわずかにした後で、 「ありがとうございます。……とすると、うん。あの、長門さん」 決意したように言う朝比奈さんに対し長門は返事すらしない。無反応にも程があるな。一体今はいつなんだ? 「キョンくんをお願いできますか」 台詞だけさらえば長年手塩にかけて育てた娘を嫁にやる時のような言葉に聞こえなくもない。だが俺は朝比奈さんの娘でもなければ女でもないし、朝比奈さんは父親でも母親でもない。 朝比奈さんの声は真剣だった。かつて川沿いのベンチでハルヒに関するトンデモ話を聞かされた時のような、緊張の色。 「ちょっとみくるちゃん? それって一体――」 ハルヒの声に朝比奈さんは、 「涼宮さん、すぐに済みますから。ちょっとだけ待っててもらえますか」 ハルヒに指示をする朝比奈さんなんてものを俺は初めて見た。いや、聞いた。 また数秒沈黙があった。おそらく、長門が音にならない反応をしているのだと思う。 「ありがとうございます。それじゃ……お願いしますね」 「みくるちゃん? どういうこと?」 ハルヒの問いに、朝比奈さんは別の答え方をする。 「涼宮さん、少しの間目を閉じてもらえますか?」 やや躊躇するようではあるものの、朝比奈さんの声は相変わらず真剣そのものだった。ハルヒもよもや朝比奈さんからこうしろと指示されるとは、まったくもって想定外だったらしく、しばらく「え?」とか「えっと」とか挙動不審そうなことを言って、ようやく 「目をつむればいいのね。こうかしら」 「それじゃ長門さん、よろしくお願いします。えっと、涼宮さん……ごめんなさいっ」 「えっ?」 直後、空気を払うようなヒュッという音が聴こえ、それきりハルヒの声も朝比奈さんの声もしなく――。 「……」 猛烈な眠気と共に、俺は急速に意識を失った。 第五章
https://w.atwiki.jp/mihakula/pages/23.html
495 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 20 44 ちょっとスイッチが入って妄想が形になってしまったので数レス使わせていただきます。 ガリア4から帰ってきた後の看病シーンがまともにツボに入ってしまいましたので、 その後をでっち上げてしまいました。 496 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 22 28 静かすぎると、かえって眠りにくくなるものだろうか。 自分が目が覚めたという事実に気付くのに、ミシェルは少しの時間を必要とした。 ガリア4からバジュラの戦艦にへばりついてどうにか帰還した後、自分の知らないうちに運び込まれた軍病院の個室。 ベッドサイドに置いておいた携帯の画面には、シンデレラにかけられた魔法がもうすぐ解ける時刻が表示されている。 規則上の消灯時間には目が覚めていた,と言うより眠れなかったことは憶えている。 清潔で寝心地は悪くはないが,ただそれだけのベッドとシーツ。 その僅かな消毒臭が少しだけ鼻につくのを感じながら、ミシェルは何となしに上体を起こして病室をぼんやりと見渡した。 当然ではあるが、寝る前と部屋の様子は変わっているはずもない。 規格品のサイドボードと小型の冷蔵庫、その上に設置されているモニター兼用のテレビ。 夜の病院の夜の個室の中で、何もかもが薄闇の中に沈んで黙り込んでいる。 常夜灯の僅かな青白い明かりが生み出すほのかな影が、余計に暗さと静けさを強調しているようだった。 当然ながら物音もしない。真夜中の病院と病室は規則正しい静寂を維持している。 その静けさが逆に違和感をもたらすのは何故だろうか。 よく分からないままよく分からない何かを探すようにしてもう一度部屋を眺め……あるものに目が止まった。 「………………」 サイドボードの上に置かれた,果物籠。 籠一杯に盛られたリンゴが常夜灯の光に淡く青白く輝いている。 その輝きと影が、ミシェルの瞳に別の何かを浮かべさせた。 497 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 24 27 見舞いと言ってそのリンゴの小山を持ってきたのは、青い髪の不器用な少女だった。 検査が終わって面会が許可された日の面会時間の開始と同時に、クラン・クランという名の少女は、 その小さな両手に山ほどのリンゴを抱えて病室に駆け込んできた。 かみつきそうな勢いでミシェルに食いつくクラン。 そんなクランをなだめすかしつつからかうことを忘れないミシェル。 そんないつものじゃれ合いはいつもより少し長かった気がする。 いつもより少し長くしたかった気がする。 そんなじゃれ合いを一段落させたのはクランの方だった。 ミシェルの怪我の程度が深刻なものではないことを確認してその小さな胸をなで下ろすと、 部屋にあったパイプ椅子に座ってすぐには帰らない姿勢を明確にして…… リンゴを剥きだしたその手つきは,不器用ながら意外と似合っていた。 『さあ食えミシェル、リンゴは体にいいんだぞ。だからいっぱい食べて早く退院してくるのだ!』 ポリゴンが甘めの角張ったリンゴをフォークに突き刺して突きつけてくるクランの姿は、何処か楽しげにも見えた。 怪我で入院した弟分の面倒を見るというのが、年上のお姉さんを自称する少女としては悪くなかったのだろうか。 『む、それともすり下ろした方が食べやすいのか? まあどっちでも良いから食べるのだミシェル』 『…… いやそのリンゴが体に良いのは分かるが、それは病気の時の話で怪我の時はちょっと違うんじゃ』 『似たようなものなのだ! ほら、口を開けるのだ。特別にお姉さんが食べさせてやろう』 フォーク片手に迫って来るクランに,ミシェルは圧倒されるだけだった。 『あ、いや、その、さっき朝飯を食べたばかりだし、薬も飲まなきゃならないし医者の指示も……』 『医者なんて必要ないのだ。りんごは医者いらずとはお前達マイクローンも言っているではないか。 第一医者なんてあてにならないのだ。何かあれば薬だ検査だと、あいつらの言うことを聞いていたらそれこそ病気になってしまうのだ』 『……カナリアさんに聞かせてあげたいねえ今の台詞』 『何を言うかミシェル、例外無き例外はないという言葉が世の中にはあるのだぞ?』 子供は天使だと良く言われるが、堕天使であることも少なくないよなあとミシェルは思った。 実際にはクランは自分よりも年上ではあるのだけれど。 『だがカナリアはあくまで例外なのだ。だから医者の言うことなんて気にする必要はないのだぞミシェル さ、クランお姉さんのリンゴをいっぱい食べて早くよくなるのだ。薬なんかよりよっぽど効くのだ!』 扉の所で巡回に来た医者とナースが引きつった笑みを浮かべているのが怖いのですがクランさん。 せめてそういうことは他に誰も居ないところで言ってください。 『さ、ミシェル!』 ……結局、何個リンゴを食べさせられたのだろうか。 満腹になりすぎて昼食の病院食は殆ど食べられなかったことは確かなのだが。 その後も自称お姉さんの看病は色々と続き、こめかみを引きつらせたナースに静かにしてくださいと怒られたほどだった。 恥ずかしそうに尿瓶を持ち出されたときは本気で参ったけれど。 498 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 26 30 「………………」 病室らしからぬその賑やかさの記憶が、今の静寂を余計に強調する。 自分以外誰も居ない部屋。一人だけの空間。慣れているはずの、場所が違うだけの状況。 にもかかわらず、今までそんなことはなかったのに、どうして自分の目はそこここに残るクランの影を追ってしまうのだろう。 帰らなければいけない時間になってもなかなか帰ろうとせず、部屋のドアの所で何度もこちらを振り返った少女の姿を思い浮かべてしまうのだ ろう。 『じゃ、じゃあ、わたしは帰るからな。わたしが帰っても寂しくて泣いたりするんじゃないぞ』 『誰が泣くかよ。子供じゃあるまいし……』 『む……ま、まあ、寂しくなったらメールでもするのだ。時間があったら返事をしてやってもいいのだ』 まるで自分が入院していて一人置いて行かれるような顔をするクラン。 その表情に、わずかな心の痛みと……ほんの少しだけ、満足感のようなものが浮かんだ、かもしれない。 心配してもらえること。一緒にいたいと思ってもらえること。 それが嬉しかったということなのだろうか。 『……ま、流石に看護婦さんを口説いたりはせずにおとなしく寝てるさ』 『当たり前だバカモノ!!』 そして結局自分はクランを怒らせてしまう。 からかっておちょくって弄んでしまう。 斜に構えてその視線を流そうとしてしまう。 その大きな瞳で真っずぐ見つめられることを怖がるように。 「……ように、はいらないか」 泣き虫ミシェルは、今も泣き虫ミシェルのままだ。それは認めざるを得ないと、ミシェルは思った。 結局自分は怖いのだ。好きな人が居なくなってしまうのが。好きな人に置いて行かれて、独りにされてしまうのが。 あのとき、姉がいなくなってしまった時の恐怖と喪失感、絶望感……それにもう一度耐えられるとは自分でも思っていなかったから。 あの思いをもう一度強いられるのはどうしても嫌だったから。 だから、好きな人などいないことにした。 その日限りの相手とその場限りの関係を結んでは捨ててそれを繰り返す不実な男であれば、人を好きになることはないと考えたから。 そんな不実な男を好きになる相手などいないはずだったから。 それに、もしも相手に嫌われたところで、それは不実さ故のはずなのだから。 本当の自分を知った上で、嫌われたり拒絶されたりするわけではないのだから。 だから、ミシェル・ブランはクラン・クランに見つめられるのが怖いのだ。 499 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 28 28 自分が姉を失ったとき、自分の側にはクランがいてくれた。 姉の葬儀で泣くことすらできずにいた、姉の死を受け止められずに立ち尽くしていた自分の側に来て、 自分よりも先に泣き出して涙やら何やらで綺麗な顔をぐちゃぐちゃにして、それでもクランは側に来てくれた。 『い、いいか、ミシェル、今日からはわたしがお姉さんだからな。 クラン・クランがお前のお姉さんになってやるからな。 だから泣くんじゃないぞミシェル。お前は寂しくなんか無いんだからな。 泣いたりすることはないんだからな……っ』 クランが先に泣いてくれたから、自分も泣き出すことができた。 泣き出して、わめいて、大声を上げて、どうにか心にため込まれた何かを吐き出すことができた。 悲しみに心を潰されずに済んだ。 二人でわあわあ泣いて、涙で顔も服も汚して、そして自分が一人ではないことを知ることができた。 何があっても側にいてくれる人の温かさと優しさを感じることができた。 だから怖くなった。 クラン・クランが居なくなったとき、側にいてくれるクランはもういないのだから。 どうしようもなく好きで、自分が自分であり続ける限り側にいたいと思う人は他にいないのだから。 そして泣き虫ミシェルは泣き虫ミシェルであることを止めた。止めようとした。 世界で一番好きなお姉さんなどいない、だからその存在を失っても心は壊れない男になろうとした。 ちょっと綺麗な女性と見れば口説きまくる、年上好きの、 遺伝子レベルで不器用なゼントランディの少女などおちょくる相手としか見ないはずの そんな男になろうとした。 だが。 たとえそんなふりを続けることに成功したとしても、クランが居なくなったならば、何が違うというのだろうか。 「………………」 ミシェルはふと携帯を手に取った。メール画面を呼び出し、送受信記録を表示する。 顔と関係の広さに比例して数多いメールの中で、今日の夕方に来たクランからのメールがやけに大きく見えた。 500 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 30 41 『件名:泣き虫ミシェルへ 本文:明日の講義が急に休講になた。見舞いに来て欲しければそう言え。都合がつけば言ってやらないこともない』 眉間にしわを寄せて両手で不器用にメールを打つクランの様子が自然と脳裏に浮かぶ。 場所は大学の研究室か、それともSMSの事務所か休憩室だろうか。 ネネやララミアに興味深そうに見られながら、打っては消して消しては打ち直して文面を入力していったのだろう。 そしてそのメールの返信は。 『件名:Re 泣き虫クランへ 本文:リンゴはもう十分だからな』 ……いつもの自分らしくない返事だった。今となってはそう思う。 普段なら講義をさぼるなとか無理してこなくていいぞとか、そんな感じで返すだろう。 なのに実際に送ったのは「リンゴはもう十分だからな」。 見舞いに来て欲しいということを否定していない、むしろ来てもらうことを前提としたような文。 都合がついたら来て欲しいと思わせなくもない言葉の綴り。 「らしくねえ……」 思わず溜息をつく。入院ものの怪我をしたせいで自分で考えていた以上に弱気になっていたのだろうか。 自分自身を振り返るのと、それを表に出すのはミシェルにとって全く別の話だった。 今まで自分がしてきたことを振り返れば、どの面下げて、ということになるのも理解している。 何を今更と言われれば全く返す言葉もない。それに心の準備もできていない。 まだ何をどうすればいいのか、何をどうしたらいいのかも分からないのに……そう思って、もう一度溜息をついた そのとき。 「!」 ドアの向こう側に気配を感じた。狙撃手としての本能が瞬時に立ち上がり、感覚器に触れた何かの分析と解析を一気に開始する。 これは……足音? 医師やナースのような職員のものではない。その特有のリズムとは異なるものだ。 ゆっくりとこちらに近づいてくる。歩幅は小さめ。気配を消そうとは感じられないからプロではない。 殺気やその類のものは感じられないが,この時間のこの場所に誰が? 警備システムの作動灯は異常なしの緑のままだが。 「………………」 近づいてきた気配が,ドアの向こうで立ち止まったのを感じた。 立ち止まって……動かない。何かの準備をしようとしている雰囲気もない。 まるでそれはドアを開けることをためらっては手を伸ばし、伸ばしたその手をまた引っ込めるようで。 そうした沈黙が少しの間続いてから。 「!」 いつもよりも小さな作動音と共に、ドアが半分だけ開いた。 開いた空間から通路の常夜灯の光が差し込み……病室にその気配の主の影を落とす。 特徴的なそのツインテールが、小さく揺れた。 「ミシェル……起きてるか?」 ドアから半分だけ顔を覗かせたクランを、ミシェルは最初呆然と眺めることしかできなかった。 501 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 32 43 ドアから半分だけ顔を覗かせたクランを、ミシェルは最初呆然と眺めることしかできなかった。 何だ。 これは何だ。 いや見て分かるとおりクランはクラン以外の何物でもないが、でも何故今ここにクランが居るのだ。 今は深夜でここは軍病院の病室で面会時間はとっくに終わっているか数時間以上先のはずで、ああいや問題はそうではなくて。 何でどうしてクランなのだ。今ここに、こんなところに。 「おま、クラン、何、どうして、何を……っ!?」 「…………………」 小声で慌てふためくミシェルだが、クランは何も話そうとしない。 ドアの影に半分入ったまま、黙ってミシェルを見つめている。 その大きな瞳がとてつもなく深い輝きを秘めているように見えて、それが一層ミシェルをかき乱した。 「……とにかく早く入れ、見つかったらまずいだろ…っ!」 何故「帰れ」ではなく「入れ」と言ったのか。 どうして見つかったらまずいから、部屋に入るように求めたのか。 後から考えれば、結果はこの時点で見えていたのかもしれない。 「…………………」 クランが黙ったまま部屋に入った。その動きを感知したドアが自動的に閉じて、二人の居る場所を外の世界から切り離す。 「……とにかくこっちへ来いよ、昼間みたいに大声で話すわけにはいかないだろ!」 ミシェルが呼んだ。だからクランはミシェルの側に近づいた。 ベッドに半身を起こしたままのミシェルの枕元に、軽くうつむいてクランが立つ。 すぐ側にクランが居る。居るはずのない時間と場所なのに少女が側にいる。 それがミシェルから余裕を……少女をおちょくるだけの不実な色男を追い出していた。 「おまえ一体どうやって……何でこんな所にいるんだっ?」 「…………ルカに」 クランが消えてしまいそうな小声で答えた。 「ルカに相談したら、入れるようにしてくれた」 「ルカって……!」 そのタイミングで、携帯が「♪次のステージに行きましょう♪」とシェリルの声で軽快にメール着信を伝えてきた。 妙な予感がして着信を確認したミシェルの目に、童顔の後輩が悪魔の笑みを浮かべている幻が浮かんで消える。 『件名:送付確認メール 本文:5分間だけセキュリティを解除しました。 今から出ようとしたら間違いなく引っかかりますので気をつけてくださいと伝えてください。 病院のドアはボクが開いておいたので、クランさんの扉は先輩ご自身でどうぞ(はあと)』 「あの腹黒……」 何か見透かされたような気がしてそれが一層腹立たしい。 が、ルカに怒りを感じている時間はごく短いものだった。 「……すまんミシェル」 「!」 ツインテールがしょげているように伏せられているクランの姿が、他の全部をかき消した。 無意識的に携帯を完全ロック状態にしたミシェルの前で、クランは寂しげに立ち尽くしている。 「その、いきなりこんな時間に来てしまって……怒ってる、よな、やっぱり」 「……怒るというか、なんつーか驚いてそれどころじゃないって感じだ、正直」 まるで子犬のようだった。粗相をしてしまって、でも隠すことができなくて自分から申し出て、罰が怖くて震えているような。 本来なら怒るというか叱るべきだろう。常識的にも法律的にもしてしまって良いことではない。 だが、今この場所では,常識や法律を振り回す気にはなれなかった。そんなものを持ち込むつもりは最初から無かった。 「どうしたんだよ一体。何かあったのか,クラン?」 まだここまでは、いつもの関係でいられたと思う。 外見的には少女とそのお兄さんな、おちょくっておちょくられる、年の差のある幼なじみの少しむずがゆい関係。 だが。 502 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 34 41 「……メール、見た」 「メール?」 「夕方の、メールの返事。いつものミシェルらしくなかった。だから、気になって……」 いつもと逆になった。 思わず正面からクランを見つめるミシェル。そのミシェルの視線から逃れようとして視線しか逃していないクラン。 「気になって、心配になって、だから……」 「……それで、ルカに頼んでまで、来たのか?」 言葉はなかった。ただ、クランは黙って小さくうなずいた。 その小さな動作が、何かを確実に貫いた。 「…………………」 少しの間、無言が続いた。 クランは何も言わなかった。 ミシェルは何も言えなかった。 携帯の時刻表示が、仮初めの姿の魔法が解ける時間が来たことを告げる。 今までの今日が昨日になって、明日の今日が来たことを示す。 その淡い光が、二人の姿をほのかに照らし出す。 沈黙を破ったのは、クランだった。 「……え、えと、その」 「………………………」 「どうやらお前は大丈夫みたいだな、うん、安心した,安心したぞ、ミシェル」 「………………………」 「じゃ、じゃあわたしはこれで帰るか……」 「帰るって、帰れるのかよ、クラン」 「………え?」 どうやら作り笑いを浮かべているつもりらしいクランに、ミシェルが小さく溜息をついてみせる。 「ルカの話じゃセキュリティが止まってるのはさっきまでで、今出て行ったら確実に不法侵入で捕まるぞ、お前」 「え、あ、え、ええええ何じゃとーっ!?」 「まあ今でも不法侵入は不法侵入だけどな。第一、具体的に何をどうしてどうするつもりだったんだ,クラン?」 「そ、それは、ええと、そのだな、つまり……」 「朝の巡回時間前には帰れよ。じゃないと俺まで捕まっちまう」 「…………!」 伏せられていたツインテールが少し起き上がった。 ミシェルから「ここにいて良い」と言われるとは,クランは思っていなかった。 どういう形であれ、ミシェルを心配する理由がないのであればここにいる理由はなかったし、 ミシェルも自分をここにとどめておく必要はないはずなのだから。 何より、心配だからここに来たのだけれど、その後のことは何も考えていなかったから。 考える余裕はなかったから。 だが、今は帰ることが出来なくなっている。確かにそれは何よりセキュリティの問題……のはず、だけれども。 「あ、じゃあ……え、えと、その……」 では、「朝の巡回時間前」まで何をどうすればいいのだろうか。 ここはただの病室で、入院患者1名を収容するだけの空間であり,本来自分のような想定外の滞在を想定してはいない。 しかし自分はここにいる。朝までどうにかしないといけない。では何をどうしよう。どうすればいいのだ? 「………………………」 事態の展開について行けていない部分と,状況をある程度認識していることの両方の結果として再度混乱に陥るクラン。 何かをどうにかしようとして周囲をきょろきょろ見渡しながら何も見つけられず更に混沌に飲み込まれようとする少女の前に、 さらなる予想外の事態と状況が現れた。 「ほれ」 実質的にダブルに近い大きさのベッドの上で、ミシェルが体を半分だけずらしてスペースを空ける。 「結構夜は寒いぞ、ここ。まあ床に寝たいと言うなら止めはしないけどな」 「………………………」 クランが事態を理解するのには多少の時間を必要とした。 503 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 36 39 今は夜だ。 夜は寝る時間だ。 寝るのはベッドだ。 ベッドは一つで,今はミシェルが寝ている。 ミシェルが体を半分ずらしている。 ミシェルが呼んでいる。 この部屋は夜は寒いらしい。 寒いところで寝るのは嫌だ。 これらの要素を複合して考えると。 ミシェルと一緒に寝ると言うことだ。単純なことではないか。ヤックデカルチャ…………!!!!! ツインテールを一気にピンと跳ね上げて,少女の顔が一瞬で真紅に染まった。 「ミミミミミミミシェルルルルルルルルルルルルっっっっ!?!?!?!?」 「……あー安心しろ、今の俺は怪我人だし、第一今のお前に何かしたら不法侵入どころじゃなくなるからな」 「何じゃと!? それはわたしに魅力がないとでも言うのかっ!?」 「それ以前の話をしているっての。んじゃお前に魅力を感じたから誘ったと言う方が良いのか?」 「Sqあwせdrftgyふじk!!??」 「ゼントラ語にすらなっとらんぞ」 顔中から蒸気を吹き上げて謎の生命体になりつつあるクランに、ミシェルはミシェルらしい微笑みを浮かべてみせた。 ……なのに、クランにはその見慣れているはずの微笑みがいつもと違うように見えた。 だが、その違いは、決して違和感や不快さを感じさせるものではなかった。 「……冗談抜きで、お前の嫌がるようなことをするつもりはないさ。 それに、折角見舞いに来てくれたのに風邪引かせて帰すわけにもいかないしな」 その瞳に、確かに自分が映っているのを,クランは見た。 「………………………」 ミシェルと寝たこと自体がないわけではない。 しかしそれはあくまで昔の話で、泣き虫ミシェルが小さな泣き虫ミシェルだった頃、自分が無邪気にそのお姉さんをすることができていた そんな過去の話だった。 気がつけば、いつもお姉ちゃんに甘えていてくれた愛らしい弟分は自他共に認める眉目秀麗な公私にわたるスナイパーになっていて、 夜ごとに違う女とベッドを共にすることを当然とするような色男になってしまっていた。 そして自分はお姉ちゃんからからかい相手になってしまっていて、それが悔しくて哀しくて。 でも一緒にいるためのマイクローン化がどうしようもない壁を作っていてしまって。 でもミシェルはいつまでも自分の中ではミシェルのままで。 大好きなお姉さんを失った悲しみをどうにかしようと、どうにもならない現実に立ち向かおうと、 自分なりに精一杯努力して、足掻いているミシェルなのがどうしようもなく分かってしまっているから。 幾重もの装甲と表面処理で覆われていても、その奥底には隠しきれない何かがあるのは分かっているから。 「………………………」 今夜のミシェルは、いつもと少しだけ違って見えた。 その端正な容貌も、女慣れした姿勢も,それ自体は変わらない。腹立たしいぐらいいつものミシェルだ。 でも……こんな風に真っ直ぐ見つめてくれたのは、何時以来だろう。 素直に正面から向き合えたのはどうしてだろう。 「ほら。そろそろ俺が寒いって」 「………………………」 だから。 504 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 38 14 「……変なことをしたら怒るからな」 「無理矢理は趣味じゃないからな。何事も合意の上で、が基本さ」 「バカ」 少女らしいローファーを脱いでベッドに滑り込む。 ミシェルが掛け布団を掛けると、病院特有の消毒臭と……ミシェルの匂いがした。 鼻孔からのその直接の刺激が、一瞬だけ鼓動を跳ね上げさせ、頭の中をかっと熱くする。 「寒くないか?」 「……寒くない」 「そか」 寒くないと言ったのは嘘ではない。むしろ暑いぐらいだったから。 ベッドの中の暖かさがミシェルの体温そのものだと思った瞬間、全身の毛穴が開いてしまったような錯覚に襲われる。 変わらない部分があると言っても、それが何も変わっていないと言うことを意味するものではないということを、 文字通り体中でクランは感じていた。それがどうしようもなく恥ずかしく感じて、思わずミシェルに背を向けてしまう。 ただ、ベッドから出ようという気には全くならなかった。 「………………………」 予想外の来訪者を受け入れた病室は、受け入れる前の静寂を保っている。 吐息も、鼓動も聞こえそうな程に。 その静けさの中で、二人の時間はゆっくりと流れようとしていた。夜明けまではまだ相応の時間があった。 505 :名無しさん:2011/01 /30(日) 21 40 20 以上、スレ汚し失礼致しました。
https://w.atwiki.jp/itsumonohito/pages/2.html
メニュー トップページ ダイジェスト(2007年8月~10月) ダイジェスト(~2008年1月) ダイジェスト(2008年2月~) 矛盾点いろいろ プロフィールの変遷
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/147.html
君には花を、いつも忘れないように◆YbPobpq0XY (私のせいだ……) あの戦いの後、三千院ナギはその場にうずくまったまま動こうとしない。 空を見上げれば誰が見ても快晴。 雲ひとつ無いのがまたやけに空しかった。 (私がでしゃばったりしたせいでカズキは……カズキは! いや……それより───! そもそも……。そもそも私がここに残ったりしなければ……疲れただなんてワガママを言わなければ!) 枯れ尽くした悲しみの涙の代わりに、後悔の涙と懺悔の涙がボロボロと流れ続ける。 間接的に自分が足を引っ張って人を死なせてしまった……。 そう思うと、カズキを一人だけにしておく事がどうしてもできなかった。 「…………ま!」 遠くから聞こえる声。 聞き間違えるはずの無い、最愛の人の声……。 「お嬢様!!」 綾崎ハヤテが心配そうな顔をして、こちらに向かって走ってくるのが見えた。 そしてその後ろにはジョジョも居る。 無事だった事が嬉しいし、今すぐにこちらからも駆け出したい。 だがそれがどうしても出来なかった……。 ☆ ☆ ☆ 駅事務所内。 ハヤテは椅子に座っているナギの顔を濡れハンカチで拭いている。 そこに承太郎の姿は無い。 「そうでしたか。カズキさんが……」 ハヤテの暗い声にナギが黙ったまま頷く。 ナギの話を聞いても、ハヤテは未だに信じられなかった。 一緒に居た期間は短かったものの、彼は武藤カズキがどれほどお人好しかを理解していた。 ここで死んでいい人間ではなかったはず。 それなのにわずか数時間別行動をとっただけで、その別れが永遠のものになってしまったのだ。 入り口の扉が乱暴に開かれる。 振り向くと空条承太郎がそこに立っていた。 「ジョジョさん、カズキさんは……」 本当に死んでいたのか、という意味の問いかけ。 「すぐそこに埋めてやった」 だが承太郎は違う意味で受け取ったらしい。 やはり何もかもが遅かったのだ……、ハヤテの心はより重くなる。 「何時までも立ちぼうけにするわけにもいかねえからな。本当なら家族の所へ届けてやるか、 せめてちゃんとした墓にしてやりてえんだがな…………」 そういう彼の顔は心なしか何時もよりも暗く思えた。 だがそれも一瞬のこと、すぐに何時もの顔に戻るとナギの腕を見やる。 「その腕だが、どうやら右腕を全部外されちまったって事か?」 「はい……」 俯いたままのナギに変わってハヤテが答える。 見るとナギの腕は指先から肩までダラリと伸びており、素人目にもマズそうだ。 だがここにはギプス代わりになりそうなものすら無いのだ。 しばらく迷っていたが、ハヤテはとある決意をしてそれを承太郎に伝えようとする。 「あ、あの…………ジョジョさん、お願いがあるんですが……」 「まさかてめー『お嬢様の怪我を何とかしたいので、先に喫茶店に戻ってください』とか言うんじゃあねえだろうな?」 「…はっ! はい……」 言いたい事をピシャリと言い当てられ言葉をつまらせる。 「ふざけるなよ? さっきもコイツのワガママに付き合った結果がコレだ。 病院も学校も、医療具がありそうな所は遠く離れてるって事くれー分かるだろ?」 と先ほどよりキツい言い方の承太郎。 「ダメ……ですか?」 「当たり前だ。ここを襲ったみてえなのが何人いるのか分からねぇんだぜハヤテ? おれ達全員で遠くへ行くのも危険だし、 ましてや、そいつ一人のためにそこまでの危険を侵せるわけがねえだろ」 その言い分にさすがのハヤテもムッとするが、言ってる事の正しさは良く分かる。 先ほどあげられた花火の事もある、喫茶店の方もなんらかの危険に晒されている可能性すらあるのだ。 一刻も早く戻る方が得策、ナギの腕は後回しにする方が全体のためになるのはハヤテだって理解している。 「言いたい事は分かりますよ! だからって!」 それでもハヤテは食い下がる。 どれだけ自分勝手な事か分かっていても、ナギの容態を放置したくは無いのだ。 「だからコイツは、今ここでおれが治す」 「……ほえ?」 予想とは違う承太郎の言葉にハヤテは素っ頓狂な声をあげる。 何て言った?今ここで治療?誰が?ジョジョさんが? 「あの……」 「何だ?」 返事を返しながらも、ナギの腕をしっかりとつかむ承太郎。 ナギが痛々しい悲鳴を上げる。 「ちょっ!ちょっと待ってくださいって!」 「だから何だよ」 「脱臼と言っても何か道具とか必要なんじゃ? ていうかそもそもジョジョさん医師免許は!?」 当然の疑問である。 というか彼を見て医療技術があるだなんて、追い詰められた爆弾魔でも思わないだろう。 「あると思うんなら、おまえの脳ミソを見てやろうか? ……ねえよ」 「…………」 「別に、そんなもんいらねえのさ。コイツの骨を治すのはおれじゃあねえ」 「え……それはどういう………… え!?」 「そーいやお前にはまだ見せて無かったな。やっぱここの連中は全員見れるのか……」 何時の間にかナギの腕を掴んでいたのは承太郎では無くなっていた。 承太郎の体から現れた半透明な人影が、ナギの肩と手を掴んでいる。 「指の先から肩まで綺麗に外されてやがんな。……丁度いいぜ」 少し力を入れただけでナギはうめき声を漏らす。 当然だろう。 指先の骨が少し外れかけただけで意識を失いかける激痛を感じるのだ。 むしろナギが割りと平気そうな顔をしているのが不思議なほどである。 「ちょっと荒療治になっちまうが……まぁ『今日の苦しみは明日の希望』って言葉があるんだ。 我慢してもらうぜ。ナギ?」 「…………!」 質問の対象が自分ではなくナギになっている事にハヤテは慌てる。 脱臼、医療具無し……『今ここで』治療。 その言葉から導き出される結論は一つしか無い。 「ちょっとジョジョさん! いくら何でもソレは……」 「テメーには聞いてねえ、今はナギに質問してんだ。黙ってろハヤテ」 「も……もうちょっとマシな方法だってあるでしょう!? 大体それが何なのかも僕は分からないんですからねっ! もしお嬢様に万一のことがあったらどうするんです!」 「じゃあテメーはコイツ一人のために全員死ぬ危険をとるのかッ!? それとも下手すりゃ一生腕がキかなくなるのを放っておけってのか?」 「でも!」 承太郎の剣幕に全く怯まずにハヤテは叫ぶ。 普段怒るという事を滅多にしない男だが、ナギに危害を及ぼす存在に関してだけは例外なのだ。 言い争いをはじめかけた二人。 「やってくれ……ジョジョ!」 だがそれを、話題の中心である少女の意外な一言が止める事になった。 その言葉に驚いたのはハヤテだけでは無い。 承太郎も半開きのままの口で、ナギの方を振り向いた。 ☆ ☆ ☆ (コイツの眼……ちょっと前までピーピー泣いてた奴と本当に同じ奴なのか?) 承太郎の驚愕を知らずに、ナギは続ける。 「わ、私はここに来てからというもの……ジョジョの足を引っ張って……。その、わが…まま、ばっかりで……」 ナギは震えながらも顔を見上げて、真っ直ぐにジョジョを見る。 その目には涙。 「もしかしたら、そ、それに……ジョジョだって、場合によっては私のせいで……、だったかもしれないんだ…………。 もうこんな……、こんな事を繰り返したく無い! こんな怪我で足でまといになりたく無いんだ!」 少し間をあけて、 「全てお前に任せる、だから……頼む!」 全てを吐き捨てるように、ナギは言い切った。 「お嬢様……」 フゥ、とため息を漏らし、再びスタープラチナでナギの腕を強く掴む。 「行くぜ?」 返事は無い、ナギはただ黙って頷いてくれた。 (やれやれ参ったぜコイツ。ほんの少し会わなかっただけでこんなに……) 「オオラァァ!!」 「…………ッッ!!」 時間にすれば2秒、呼吸をしている間にそれは終わる。 だがその2秒が、どれだけ長く感じるか…………承太郎はそれを痛いほどよく分かっている。 ましてや、相手は小学生程度の女の子なのだ。 出来る事ならこんな民間療法をさせたく無かったし、ハヤテの言う事も良く分かるのが本音だった。 「………………」 一瞬だけナギの体がはねた後、糸の切れた人形のように椅子から崩れ落ちた。 どうやら意識を失ったようだ。 「終わったぜ」 それだけ言って立ち上がる。 「ま、気絶していてくれて助かるぜ……。コイツが起きていたらなんて言われた事やら」 背後でハヤテが睨み付けているのを感じたが、無視した。 (こんなに、『強く』なってやがるんだからよ) 「さっさと戻るぜ、準備しな」 ☆ ☆ ☆ ナギを背負っているハヤテを背中に、承太郎は喫茶店へと戻る道を真っ直ぐ歩く。 (カズキ……、あのホモヤローが…………) 表情は出さず、わずかな出会いだった仲間の事を思い浮かべる。 (こんな状況でおれに『愛の告白』って奴をかましたあげく、アッサリ死にやがって……) 承太郎にとっては最期まで変態ヤローでしかなかった武藤カズキ。 だがその彼は三千院ナギを命と引き換えに守ったのだ。 そっちの気は無いのだが、せめてもう少しだけ話を聞いてやっても良かったかもしれないと言う後悔も僅かだがあった。 だがそれ以上に、今にも全身を沸騰させそうな怒りが血となり全身を駆け巡る。 仲間の死と言うものは過去にも体験している。 しかしジョセフや花京院の時とは違い、湧き上がる怒りをぶつける相手はもうこの世にいないのだ。 正直やりきれない思いが承太郎を── (いや、違うな) 承太郎は思い直す。 (あのハゲ、光成と言ったな) この状況では死者のために流す涙は不要である。 ピーピー泣いているだけではその死を無駄にしてしまうだけだ。 必要なのは、その不条理な死を作り出した物に対する怒り……。 (てめーへの利息は今ッ! ブラックゾーンに達したぜ!!) 承太郎はポケットの中に入れている、その拳を強く握り締めた。 (必ず……必ず叩き潰してやる!) ☆ ☆ ☆ 揺り篭のような揺さぶりと右腕の痛みの中、ナギは目を覚ました。 どうやらさっきのジョジョの治療は利いたようだ。 ジョジョめ……もうちょっと痛くないようにやれよ、と考えているのはいかにも彼女らしい。 目の前には見慣れた銀髪。 そして体を覆う温もりと、これもまた決して不快では無い汗の匂い。 自分が最愛の執事に背負われているのだと理解する事にそう時間はかからなかった。 気恥ずかしさに一瞬で顔を赤くする。 (バカ……子供扱いしおって……! でも……) だがそれ以上に安心がナギの心を包んでくれた。 (もう少し……このままで) ハヤテに体を預けて、再びナギはその目を閉じた。 天気は先ほどから快晴のようだ。 瞼の裏からでも空から降り注ぐ光をナギは感じた。 【B-3 南東 一日目 昼】 【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】 [状態]全身に打撲 [装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]無し [思考・状況] 基本:殺し合いはしない 1 ハヤテめ……子供扱いしおって…… 2 マリア、ヒナギク、ジョセフと合流する。 3 カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。 参戦時期:原作6巻終了後 ※スパイスガールは疲労のため、しばらく出せません。 【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】 [状態]健康。 [装備]454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING、首輪探知機@BATTLE ROYALE [道具]支給品一式-水少量 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服 音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92F(弾丸数8/15)@BATTLE ROYALE 不明支給品0~3(フェイスレス・ナギ) [思考・状況] 基本:出来るだけ多くの人を助けたい 1 ジョジョさん……ちょっと乱暴すぎやしないかなぁ 2:喫茶店に戻る。 3:マリア、ヒナギクを探し出し合流する 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]健康 [装備]無し [道具]支給品一式×4、不明支給品0~2(本人は確認済。核鉄の可能性は低い) [思考・状況] 基本:他の連中の脱出 主催者を叩き潰す 1:喫茶店に戻る。 2:ジョセフ、ハヤテ、マリア、ヒナギクと合流する。 3:首輪の解除方法を探す。 4:DIOを倒す。 5:赤木には用心する。 6:主催者を倒す。 参戦時期:原作28巻終了後 [備考] ※パピヨンについては、ハヤテから聞いていたので、 喫茶店にいることを不思議と思っていません。 ※こなたがスタンド使いかと疑っています 120 拳王の夢 暴凶星の道 投下順 122 第二回放送 120 拳王の夢 暴凶星の道 時系列順 122 第二回放送 111 心に愛を 三千院ナギ 123 サンプル入手 113 大切なもの――SOLDIER DREAM―― 綾崎ハヤテ 123 サンプル入手 113 大切なもの――SOLDIER DREAM―― 空条承太郎 123 サンプル入手
https://w.atwiki.jp/asaahingaeaw/pages/509.html
帝丹小学校、帝丹中学校、帝丹高校卒業後は米花開成大学へ進学した。意外に帝丹高校時代は探偵倶楽部と剣道部かけもちで部活をやっていた。その他、コナンに告白しており、以降はふられてしまうものの、コナン、灰原、歩美の3人で函館に旅行した時はコナンが星稜刀を歩美が打刀で応戦した。帝丹小学校の頃の泣き虫な姿はなくコナンによればめっちゃくちゃかっこいいらしい。逆に帝丹高校では勝ち気な性格になっており、そんなに泣かなくなった。その後、警察学校を経て高木 渉巡査長と結婚した佐藤 美和子警部補が退職しており、入れ替わる形で警視庁捜査一課強行犯捜査三係に配属された。ちなみに歩美が自身で解決に導いた事件は200件以上あり、期待の新人である。 学歴 帝丹小学校 帝丹中学校 帝丹高校 米花開成大学 声優一覧表 岩居由希子 石原 舞