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Inizio +... 月さえ見えない夜のその下で アルジュゼ/若干BL/Twitterお題 Daybreak アルジュゼ/BL/Twitterお題 したたる夢の雫 アルジュゼ/BL/R18/長文
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手書きブログ創作企画「香山.」アカウントのまとめwikiです。 キャラクター概要、裏話、小説etc...ちまちま増えていく筈。 BL/R18コンテンツあり。苦手な方はご注意下さい。
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すっかり暗くなってしまった部屋で、一人の青年がベッドから身体を起こした。寝起きの目には些か眩しすぎる携帯の液晶で図で時間を確認して悪態を吐く。時刻は午後八時より少し前。完全に寝過ごしていた。 落胆と脱力感にのろのろと起き上がって部屋の明かりを付ける。 どうやら雑誌を見ていた途中で睡魔に襲われたらしい。ベッドサイドには開いたままの雑誌が放置されていた。 「……最悪」 もう一度悪態を吐いた。 折角の非番であったのに、何をするでもなく一日が終わろうとしている。職種を考えてみれば、夜型の生活に慣れてしまっているのは、ある意味仕方がないことではあるのだが。 改めて時間を確認してみると、妙に胃が寂しく感じた。なるほど、今日一日まともに食事を取らずに寝て過ごしていたためか。青年は部屋にある冷蔵庫の中を無言で漁る――が生憎何もない。いくつかの調味料類と、萎びた人参の切れ端。トマトは少々危険なほど熟れているようだった。 そういえば今日は買い出しに行こうと思っていた。それなのに、いざ昼寝から目覚めてみればこの時間。 苛立ちを通り越して溜息しか出なかった。 ふと思い立って携帯電話を手に取った。メールボックスを開き、新規メール作成へ進む。宛先は空欄のままに、本文だけを先に埋めていく。 『今日、部屋にいても良いですか?』 用件だけを入力したところで手が止まった。これ以上何を書くべきかと指先が迷う。結局相手は多少文面が素っ気なかろうと気にしないだろうという結論に至って、宛先を送信履歴から検索する。 仕事やプライベートのアドレスの中に埋もれるようにして存在したアドレスを選択して、送信キーを押した。 相手は仕事中だと思ってメールを選択したが、返信は意外に早かった。 『今から店に戻るが、まだ仕事が残っている。終わるまで待てるか?』 返信の早さに、多忙な彼も珍しく暇なのかと思ったが、偶然だったらしい。 相手が自分の都合に配慮してくれるのはいつも通り。いつだってこちらに選択を残してくれる。 けれど、今日は会いたい。そう思った。 「……何て返そう」 気持ちをストレートに文字に表す程の素直さは持ち合わせていない。むしろ癪に思うくらいにはひねくれていると自覚している。返信内容の文句に迷って、指先がキーの上を滑る。 いつもの面と向かった会話なら、聡い彼が察して先に誘ってくれるというのに、メールだと上手くいかない。 どうせならいつものように、男が外での仕事から戻ってきた後に訪ねれば良かった。数分前の自分を呪う。 とりあえず、今日寝過ごしたこと。空腹であること。冷静に考えれば、八つ当たりでしかない諸々の不満と苛立ちを込めて。 『 (』 たったこれだけを入力して、また文面に悩む。再びキーの上を指先が彷徨ったところで、間違って送信キーに触れた。気付いた時にはもう遅く、無情にも『送信完了』のテロップが表示される。 こんな意味不明なメールを送っては折り返して電話がかかってきそうだ。それが不満な顔を表していると知っていても、痺れを切らして電話がかかってくることだろう。それではわざわざメールを選んだ意味がない。メールの意味が分からなくてかかってきたメールを受けること程、惨めなことはない気がした。 悩んでいる暇はない。やはり先程と同じように素っ気ない文面で続けざまに送信した。 『待てる。』 『そんな顔をしなくとも、仕事はすぐに片付く。先に部屋にいて構わんが、部屋のものを弄るなよ。』 特にメールのやりとりはしたことはなかったが、意図はくみ取ってくれたらしい。電話をかけてくる前に返信できてよかったと胸をなでおろした。 『了解。』 と短く返信をして、青年は伸びを一つ。 まずは身支度と、食事か。 未だに寂しいと訴える胃袋を抱えて、青年は洗面所へと向かった。 世の中便利で平和になったものだとつくづく思う。ファーストフード店の硝子越しに眺めるのは大通り。寒さに帰りを急ぐ人が足早に通り過ぎていく。 そんな窓際の通りの良く見える席に座って、青年はハンバーガーに齧り付く。チェーン店ながらそこそこの美味しさで、空腹も手伝ってか黙々と咀嚼しては飲み下した。 八年前、まだ十四歳だった青年がこの都市を訪れた時、そこはまだ再生を始めて間もない頃だった。マフィアによる支配から脱して数年も経っておらず、ある家に引き取られて養育されている間にも、まだ一人で出歩くには危ないと養母に散々諌められた覚えがある。最初の頃こそ反発していたものの、慈愛の笑みを浮かべながら静かに怒りを燃やす養母の姿にいつしか彼女の前では『良い子』になっていた。 話は逸れたが、その時にはこういった大衆向けの店は少なく、都市は極端に閉鎖的だった。 今でこそ多数の飲食店チェーンが並ぶこの通りも、かつてはあまり整備されていない街路の一つだったようだ。それを整備して、今日に至るまでその再生と発展に尽力したのは紛れもなく、自分の養父。そして、そもそも都市の自主的な発展を妨げてきた元凶であるマフィア組織を潰したのも、また彼だった。 口にしないだけで、今も多数の仕事を抱えているらしい。打ち合わせや会議でなかなか連絡がつかないことも多い。しかし、彼のそういう面が表に現れないために、『過去の栄光を笠に遊んでいる』と陰口を叩かれていることを青年は知っていた。 ごく一部の近しい人間しか彼の働きの全容を知らないのである。それが青年にとって酷く不愉快なことだった。表面的なことしか知らない癖に、批判だけは立派な他人も。わざと見えないところで都市の為にと奔走する養父も。 最後の一口をコーラで胃に流し込むと、青年は備え付けのダストボックスへと向かった。今日一日の不機嫌まで丸めて捨てるつもりで、ゴミを奥まで突っ込んだ。 そうした寄り道もそこそこに、青年は『部屋』の前にたどり着いた。都市に隠れて存在するとあるカジノの奥の奥。その部屋の持ち主は、ディーラーとして働く彼のボスにあたるカジノオーナー、そして八年前に彼を拾った養父の仕事部屋だった。 青年はドアノブに触れる前、少し迷うように手を止めた。初めて養父の部屋を訪ねた夜のことが脳裏を掠める。それはまた別の場所、養育されていた屋敷の部屋であったが。 あれからもう八年も経っている。今更何を必要があるというのか。 迷いを断ち切るように首を振ると、ドアを開けてその中へと。 「まだ……帰ってきてねぇんだ」 部屋の中はがらんとしていて、まるで人気がない。あのメールでのやり取りから既に一時間以上は経っているのに、まだ部屋の持ち主は戻ってきていないらしい。てっきりもう仕事に勤しんでいるものだと思っていた。 一応、気配を探ってみても誰かがいる様子はない。完全に部屋にいるのは青年一人だけの様だ。 部屋をぐるりと見回してみる。改めてみても装飾性に欠いた部屋だと思う。 資産家でもある彼であればもっと豪奢な部屋を持っいてもおかしくはないのだが、本人はあまりそういった類のものは好まない。一点して機能性のみを求めたような内装で、本当に仕事部屋、といった感じである。置かれたデスク類も一見地味に見える。しかし、よくよく見れば細かな細工を施されているあたりに、部屋の持ち主のセンスの良さと品性がにじみ出ているような気がした。 そんな仕事部屋を抜けると、少し生活感のあるスペースに出る。多忙で自宅に戻る暇もない彼が最低限生活ができるようにと、寝室や簡易キッチン、浴室といった設備を揃えているのだ。 しん、と静まり返る部屋。ぽつりと呟いた。 「……仕事、長引いてんのかな」 メールでは『今から戻る』と寄越してきたのに。 もしかしたら、何か別の仕事が入ったのかもしれない。それでもメールをくれないのは、すぐに片付く仕事だからなのだろう。 今までもたまにそういうことがあったが、会えなくなった時には必ず連絡してくれたからだ。 そういえば『部屋の物は弄るな』とメール越しに念を押されていたのだった。もう自立もしているというのに、彼は青年を子供扱いすることが少なくない。 「……別に、大人しく待てるし」 するりと寝室に入り込むと、その広いベッドの一角に腰をおろして携帯を開く。 連絡は、まだない。 それから更に一時間ほど経過した。いつの間にか雨が降り出したらしく、防音機能を備えた部屋でも微かに雨音が聞こえる。 あれからやはり連絡はなく、青年の携帯は沈黙したままだった。 ついに身体をベッドに預けて携帯を放り出した。そのままごろりと寝がえりを打つと、几帳面すぎるほど整えられたシーツに大きく皺が寄った。 シーツに頬を寄せて深く呼吸をする。彼のいつも使う石鹸の香りを鼻孔の奥で感じてどきりとした。 養父へと向ける感情が変わってしまったのはいつからだっただろうか。最初はただの憧れに過ぎなかった想いが、父子の間柄を超えてしまったのは――。 今では『セックスフレンド』に似た関係をずるずると引きずっている。互いの都合の良い夜に肌を重ねて、翌日素知らぬ顔で他人に戻る昼夜のサイクル。 今日もそのつもりで部屋を訪れたというのに、部屋の持ち主は不在のまま。 シーツに顔を半分埋めたまま、青年はここで過ごす夜に想いを馳せた。 『ジュゼ……唇を噛むな』 『ん……っ』 腰のあたりを大きな掌が撫でると、ジュゼッヘは過剰な程身体を震わせた。しかし引き結ばれた唇からは微か息を詰めた音が漏れるだけ。 『……ほら、自分でやれ』 『っく……』 ジュゼッヘの手が自らの股間へと導かれる。そこはもう既に張り詰めて、手の中で脈打っていた。 『手、動かせ』 ジュゼッヘの手ごと包み込んだ男の手が扱くように上下させる。直接触れているのは自分の手だと言うのに、普段自慰をする時よりも数倍快感が増しているがした。 ジュゼッヘは睫毛を震わせて、男の望むように手を動かし始めた。 「んっ……ふ……」 いつしか回想と同じように自分を慰めていた。しどけなく足を投げ出して、記憶を肴に快楽を呑む。 ジュゼッヘは下着から取り出した屹立の先走りを指に絡めて、そのくびれに塗りたくった。それだけで強い酒を一気に煽ったように身体がカッと熱くなる。判断力も理性も一瞬で吹き飛んでしまった。 「ぁ……つぅ……っ」 部屋の持ち主――アーノルドが戻ってくるかもしれない、という至極当たり前の予想すら出来ないくらいジュゼッヘは行為に溺れ、手を動かし続けた。 「はぁ……っ」 けれど、あと一歩のところで高みに登ることが出来ない。もどかしく腰が揺れた。 「ぁ……お願い……すきって、言って……」 熱に浮かされたようにアーノルドを求めた。中途半端に高ぶった身体をどうにかしてほしかった。 「すきって……」 ――その言葉さえ聞けたら天国にイけるのに。 いつの間にか記憶の再生は、想像のものへと擦り変わっていた。愛の言葉を存分に注がれる妄想へと。 言い変えれば、『好き』だの『愛』だのという言葉は全てジュゼッヘの想像でしかない。身体を重ねる間柄であっても、アーノルドが『特別』を匂わせる言葉を口にすることはなかった。改めて自分の想いが独り善がりである事実を思い知らされて空しくなるのは目に見えているのに、止められなかった。 先走りで濡れた指先を更に奥の窄みへ伸ばす。そこは長年男を受け入れてきただけあって、前への刺激だけでふっくらと熟れていた。恐る恐る指先を侵入させても痛みはない。ただ思いの外きつく指を締め付ける内壁の熱さに驚いた。 まずは指を一本沈めて粘膜を探る。アーノルドとの行為を思い出しながら、次第に指を増やしていった。潤滑剤を一切使ってないので滑らかな注挿とはいかないが、その分リアルに自分の指の形を感じる。 指はついに三本に増え、バラバラに動かしては最奥を目指した。 「っ……あ、んんっ…」 粘膜のある一点を指が掠ると、瞑ったままの目の奥で火花が散った。もう触れてもいない屹立の先端から透明な蜜が滴る。 前立腺を見つけ出した指が快楽を求めて何度もそこを擦り上げる。声を出したくなくてシーツに顔を押し付けたが、鼻から抜けるような喘ぎは抑えられなかった。 あともう少し。もう少しで高みへ。 早くなる指の動きに合わせて腰が揺れた。 「……は、ぁ……イっ……」 もうそこを一回擦れば、張り詰めたものを解放できる。ジュゼッヘが反射的に唇を強く噛んだ時、ふいにベッドに影が差した。 「……何をしている」 ジュゼッヘは、顔を半分シーツに沈めたまま、降ってきた声を目線で追った。 「ぁ……なん、で」 あともう少しと言うところで行為を中断させたのは、部屋の持ち主、アーノルドその人だった。 「俺の部屋だ。いるのに何の理由もいらんだろう?」 そう言ってジュゼッヘの顔にかかる髪を払う手は普段より冷たい。反射的に身体が跳ねた。 「一人で随分楽しそうじゃあないか」 上着を脱ぎ襟元をくつろげたアーノルドがジュゼッヘの背後へゆっくりと回った。 「……で、続きは?」 荒い呼吸を繰り返すジュゼッヘの身体を起こして、自分にもたれ掛からせるようにしてベッドに腰を下ろす。 ベッドのスプリングが、更に重みを受けて軋んだ。肩越しに局部を見下ろすようにしてアーノルドが、ジュゼッヘの肩へ顔を寄せる。量の多い黒髪は水分を含んでいるらしく、毛先を遊ばせた前髪も今はいくらか重くなっているようだった。ジュゼッヘの背中に触れる、仕立ての良さそうなピンストライプのスーツもしっとりと濡れてひんやりとしている。 股間の屹立は未だに硬度を保ったまま、しかも窄みは自分の指を深くくわえ込んだままだった。 そんなはしたない格好の自分にアーノルドは呆れるだろうか。――嫌うだろうか。 咄嗟に口をついて出たのは自己防衛の言葉。 「な……しねぇし…っていうか見せ物じゃ……」 「……へぇ?」 アーノルドを振り払おうと身動きした時、アーノルドの手がジュゼッヘの腰を掠めた。 「っあ……」 そのまま太腿にかけてなぞられると、ぴくりと身体が跳ねた。アーノルドが突然戻ってきた驚きで遠のきかけた劣情が、吐息になってこぼれ落ちる。 「……辛いんだろう?」 酷く優しげな声色でアーノルドが囁いた。鼓膜を擽るテノールに思わず頷いてしまいそうになったところで我に返る。目を瞑ったまま首を横に振ったジュゼッヘを見たアーノルドは、切れ長の目を細めた。そして飼い猫にするように喉を撫でながら続ける。 「我慢しなくても良い……連絡もなしに悪かったな」 喉を撫でる手は再び下へ戻っていく。今度は屹立を手のひらに収めて、緩く上下に擦り始めた。 「っ……や……」 口とは反対に刺激に飢えた身体は素直に反応した。逃げようともがく腰は押さえつけられ、かえってアーノルドの手に擦り付ける結果に終わってしまう。際どいところを擦られる度に内壁がきつくジュゼッヘの指を締め付けた。 「……何だ、いいんじゃないか」 反応を楽しむような声色で肩越しにアーノルドが言った。『最低』と口を開きかけたところで、突然追い立てるような愛撫に自分でも信じられない程甘い喘ぎがこぼれた。 「んんっ……ふぅ……っ」 一気に絶頂までに押し上げられるような心地で、爪先が開いたり閉じたりを繰り返す。 「……後ろもいじれよ。じゃなきゃ……」 「ひっ………!」 アーノルドが絶頂すれすれの所で屹立の根元を双袋ごと強く握り込んだ。せき止められた快楽が行き場をなくして、ジュゼッヘの中で渦巻く。見開いた目の縁に新しい涙が浮かんだ。 何度も高みを逃しているせいで、身体はもう限界だった。それを知ってか知らずか、アーノルドは耳元で再度囁いた。 「いきたいか」 それが最後の勧告に思えて、ジュゼッヘは素直に首を縦に振った。このままではいつまでも悪戯に身体を弄ばれるだけだ。 頷いたのを肩越しに見たアーノルドは、後ろの窄みに沈められた手を取って前後に動かし始めた。自分の指で内壁を探られる感覚に、吐息が震える。 粘膜をまさぐる指先が快感のポイントに到達して皮膚が泡立った。何度もそこを擦り上げられるのに、屹立は握り込まれたままで解放は一向に訪れない。 「はっ……ぁ……」 ついにアーノルドの手を借りずに、ジュゼッヘは抜き差しを繰り返していた。擽るように内壁を刺激しては、水音を響かせる。 「ぁ……出、る…!」 ジュゼッヘが切なげに声を上げたのと同時に、アーノルドが屹立の先端の窪みに軽く爪を立てた。見開いた目の奧で光が明滅して、内壁が激しく収縮する。 「ひ、あ……――っ!」 一回分というには多すぎる熱はアーノルドの手に収まらず、その下のジュゼッヘの手にまで滴った。 ようやく訪れた解放はすぐに終わらなかった。アーノルドの腕の中で断続的に痙攣を繰り返しながら、余韻に浸る。 焦点を失った目の端で、アーノルドがかすかに身じろぎした。その身体に背中を預けていたジュゼッヘは、荒い息を整えてから口を開いた。 「……仕事は、良いのかよ」 「一番面倒なものは外で済ませてきた」 ジュゼッヘの髪の感触を楽しむようにアーノルドが頬を寄せる。その冷たさが上気した頬に心地良い。 「……何で、濡れてるんだよ」 「雨が降っていたから」 「……車で出てったんじゃねぇの?」 「車で出て車で帰ってきたさ」 他愛もない会話を繰り返しているうちに、飛び散った体液が冷えて居心地が悪くなってきた。とりあえず拭き取ろうと、だるい身体を動かした時。アーノルドがふいにジュゼッヘの身体を抱き寄せた。 「な、んだよ……」 「……寒い」 ぽつり、と呟いた。そして一層きつく抱き締める。 「な……!冷たっ……」 濡れた衣服は身体の体温を奪う。当然寒いならば真っ先に着替えるべきであるのに、アーノルドは何故かそうしなかったらしい。流石に熱を持った身体にも辛くて、ジュゼッヘはもがいた。 「寒いなら着替えるとか……兎に角俺を道連れにすんなっ」 今日は非番だが、明日はきっちりシフトが入っている。ここで身体を冷やして風邪を引いては非常に面倒だ。そもそもオーナーが従業員の体調を崩させるなど、本末転倒も甚だしい。 「……暖めてくれよ」 「っ……!」 アーノルドの舌が首筋を滑る。それは、本人の言葉に反して異様な熱を持っていた。首筋に幾つも紅い花を散らして、時折軽く歯を立てる。甘い快感に背筋がざわついた。 気恥かしさが先に立って憎まれ口を叩くものの、こうしてにアーノルドが自分を求めてくれることに至上の歓びを感じる。単に身体を重ねること以上の繋がりが錯覚だとしても、今はそれで良い気がした。ベッドの上に余計な感情など持ち込んでも邪魔なだけだ。 「……ジュゼ」 アーノルドはジュゼッヘの身体を反転させて唇を重ねた。微かに馴染みの銘柄の煙草の香りが鼻を掠める。外で一服してきたのか、と考える余裕は一瞬で消えた。舌の表面を擦り合わせているうちに、何も考えていられない程キスに夢中になっていた。 ようやく離れた唇同士を繋ぐ銀糸は、離れるのを惜しむように見えた。 荒い呼吸を整えることが出来ないまま、ジュゼッヘはベッドへと押し倒される。見上げたアーノルドの顔は、いつもより余裕なさげに上気して見えた。 確かめるようにアーノルドの手が下肢へと伸ばされる。激しいキスの応酬で再び芯の通った屹立の更に奧。そこに指先が到達する直前、ジュゼッヘがアーノルドを制した。 「……大丈、夫だから」 目を伏せて、『はやく』と言葉をなぞる。自分の指では足りない。心まで満たして欲しい。 「……珍しいな」 素直に強請る様子に、アーノルドは微かに口元を緩めて髪にキスを落とした。軽くジュゼッヘの膝を抱えると腰を引き寄せる。 そして、アーノルドのものが窄みへ押し当てられた。それによって与えられる快感への予感に、内壁が物欲しそうにひくつく。 「っふ………く」 ゆっくりと押し入ってくる質量に生理的な涙を零しながら、ジュゼッヘは反射的に身体を強ばらせた。一番張り出した部分が粘膜を押し広げて最奥へ到達すると、アーノルドは一旦動きを止めた。見下ろしたジュゼッヘは口を引き結んで震えていた。 「大丈夫か?」 涙を指で拭いてやりながら、アーノルドが尋ねる。ジュゼッヘは答えの代わりにその首に腕を回した。 「……お前、可愛いな」 とびきり甘いテノールが鼓膜を震わせて、それだけで粘膜がひくりと波打つ。その様子に喉の奥で笑うと、アーノルドは腰を引き寄せた。更に奥まで抉られて、喉から引きつった息が漏れる。そのまま質量に慣らすように揺さぶられた後、アーノルドが律動を始めた。 何度も身体を重ねたせいで、アーノルドはジュゼッヘの感じるポイントを知り尽くしていた。どこをどう擦れば声を抑えられなくなるほど乱れるのかも。 「っあ……!」 もっとも感じるところを執拗に擦られて、瞼の裏が白く光った。欲望を出し入れされる度に粘膜が捲れては、また引き戻される。漸く望みのものをおさめた内壁は、悦びに震えてアーノルドを強く締め付けた。 「……ジュゼ、俺はお前を……」 アーノルドが突然動きを緩めた。何かと思って顔を上げる。ジュゼッヘの首筋に顔をうずめるようにして、アーノルドが呟いた。向かい合って交わっているので顔はよく見えない。 「ぁ……な、に……っあぁ……!」 意味深なセリフに一抹の期待と恐れを帯びた問いを投げかけたが、再び律動が始まって疑問は喘ぎへと変わった。 何度も最奥を貫かれ、熱がせり上がってくる。 「……っく……も、もう……!」 限界すれすれの身体は、なりふり構わず快楽を求めていた。アーノルドの動きに合わせるようにして腰を揺らしては嬌声を上げる。 ジュゼッヘの欲望が最奥を突き上げられる度に蜜を零してアーノルドの腹を濡らした。 「……っいけよ」 普段よりも快感に上ずった声にさえ耳を犯されて。ひと際勢いよくアーノルドがジュゼッヘを貫いた。 「あ……ぁ……っ――!」 びくびくと身体を痙攣させてジュゼッヘが熱を吐き出した。二回目だというのに放出は長く、蕩けた思考のままに身体を震わせた。 「っ……」 遅れてアーノルドも欲望を体内に迸らせた。熱い体液が注がれる奇妙な感覚に、内壁がざわつく。 熱を放った後も暫くアーノルドは体内に留まっていた。 そうして、たっぷりと余韻を味わった後、ゆっくりとアーノルドが腰を引く。すると緩んだ窄みから情欲の証がとろりと零れて伝っていった。それに気付いて締めようと試みるが上手くいかない。 「あ、嫌だ……」 粗相をしてしまった時のような惨めさを感じる。羞恥に涙ぐんだジュゼッヘに、アーノルドはなだめるように触れるだけのキスを落とした。 「……いい。今日は待たせて済まなかったな」 「……それはもう分かってる、けど……さっき何か言いかけて……」 そうだ、快楽の波に飲まれながら確かに聞こえた言葉は。『俺はお前を』何だというのか。縋るようにして問い詰める姿に、一瞬はっとした顔をしたアーノルドは柔らかく微笑んだ。 「……何でもない」 「っでも……!」 また、はぐらかされる。食い下がるジュゼッヘの瞼を大きな掌が覆う。途端に眠気が襲ってきて、それに抵抗することが出来なかった。 かつて拾われた時に感じた体温とも、初めて身体を重ねた時に感じた体温とも同じ。妙な安心感が瞼に圧し掛かる。 『知らなくて良い』 『知らない方が幸せ』 脳内で囁く声は誰なのか。 どうして幸せでいられるというのか。 こんなにも胸が苦しいのに。 ずっと想いを募らせているというのに。 「…お休み」 遠のく意識の中で、ジュゼッヘは確かにアーノルドの腕の中にいた。 「寒い。喉が痛い。頭がぼーっとする……」 「当ったり前じゃん……馬鹿なの、お父様?」 「五月蠅い……」 翌日、同じ場所。広いベッドには男が一人。 その傍らでジュゼッヘは呆れを通り越して、卑下するような目でベッドに横たわるアーノルドを見下ろしていた。 珍しくアーノルドは体調を崩していた。口に出す症状から、風邪を引いていることは明らかである。 「それよりも俺は仕事がしたいんだ。それを寄越せ」 「駄目だっつってんじゃん」 ジュゼッヘはアーノルドから引き剥がしたノートPCを後ろ手に一歩下がる。 「フランツに聞いたけど?昨日雨の中ずっと外にいた上に、魔術まで使ったんだって?」 フランツとはアーノルドの側近をしている若い青年のことである。太めの眉毛が常時ハの字になっている、見た目も中身も弱気な青年でいじめがいがない。というのがジュゼッヘの見解だった。案の定昨夜のことを問い詰めたら、ぽろっと吐いた。『裏』の職業上、機密を簡単にばらすのはどうなのか、と本気で思う。 「……お前には関係ない」 咳混じりにアーノルドが応えたのに対して明らかに不満そうな顔をするジュゼッヘ。アーノルドは頭痛を感じたように溜息を吐いた。 「そんな顔をするな……ほら、もう仕事の時間だろう」 「仕事はしますけど……これは貰ってくんで」 「寄越せと言って……!」 「やだね、秘書さん怒らせたら怖そうだし」 「マグノリアか……」 ジュゼッヘをアーノルドを仕事から引き離すよう命じたのは、秘書のマグノリアであった。 『あの人、仕事中毒なんだもの。一度休んで頂かないと、かえって不利益だわ』 そう言われて、アーノルドの体調が万全に戻るまで仕事の一切を撤収しに部屋へやってきたのだ。 「そういうわけで、お大事に」 「ジュゼ、待て……」 「聞き分けが悪いですよ、お父様」 「っ……」 珍しく言いくるめられて悔しそうに顔を歪めたアーノルドを尻目に、書斎を抜けてマグノリアの控える部屋へと向かう。あとはこのPCを届けたら当面の仕事はあの部屋からなくなることとなる。 『……ジュゼ、俺はお前を……』 一人になると、ふと昨夜のアーノルドの言葉を思い出して立ち止まる。 俺を一体何だというのか。 『好き』?『嫌い』?それともまた別の何か? 期待してはいけない。その期待が裏切られた時に心が壊れてしまわないように。きっと唇を引き結んだ。 『知らなくて良い』 『知らない方が幸せ』 誰かの囁きが蘇る。 そうだ、今はそんなことどうでも良い。アーノルドがいて、ジュゼッヘの望み通り傍に置いてくれる今がある。余計な心配でつかの間の幸せをつまらないものに変えたくはなかった。 「さて、今日も稼ぎに行きますか」 再び足を踏み出す。 余計な心配はしたくない、と思った心に反してどこか心が軋むような痛みを発した。けれどそれはお得意の営業スマイルの下に隠して。 したたる夢の雫 『知らなくて良い』 『知らない方が幸せ』 「……そんなこと、分かってるよ」 小さな呟きは誰にも届かないまま、漂って消えた。 久々に書いた濡れ場は精神的に削られる…。 聖羅さん宅ジュゼ君お借りしました。 色々至らないことが多くて海よりも深く平伏致します。 [2012/11/17]
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