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第4話 「武装」 かくてユーザー登録も終わり、ようやく付属していた『基本武装』ってのを開けてみたんだが。 「……またエラくトゲトゲしいフォルムだな」 「一応『悪魔』をモチーフにしてますから……」 呆れる俺と苦笑するルーシー。 背中に付いた飛行機の翼っぽいモノからにょっきり生えた太い腕にデカい爪。 足にはやたらとゴっツいブーツが付いて、ルーシーの身長が一気に1.5倍くらいになった。 それだけでもうシルエットはすっかり別物になったが、他の装備ってのもまたアレだ。 飛行機の翼に付いてた悪魔っぽい羽は分離して大小4本のナイフになり、デカブーツの爪先には短めのナイフ。 トドメとばかりにルーシーのおさげを取り外した頭にまで、デカい触角みたいなナイフ……というか剣が2本くっつくという始末。 TVのCMじゃ白い天使に目が行ってたんであんまり分からなかったが、コレでもかというほど凶悪なビジュアルだ。 ……もっとも、装備してる本人がなんだか申し訳なさそうな顔してるのがアンバランス。 「や、別にお前のせいじゃないし」 「スミマセン……」 ますます顔を赤くして縮こまる……というか背中の腕がジタバタしてる。 自分の身体を隠そうとしてるのか? 「なんか思いっきり近距離戦闘用って感じだな」 「一応飛び道具もありますよ?」 「……ナニそのドラム缶がくっついたようなの?」 「これは『シュラム・リボルビング・グレネード・ランチャー』といいまして、状況によって弾の種類を替えられるスグレモノなんですよ」 ……コイツ、実は結構マニアか? もう1つ付いてた拳銃には『リボルバーは美学ですが弾数が少ないのが唯一にして絶対的な難点です』と微妙に不満げだったし、羽ナイフの時も『クールなトットリのナイフだ』とか言ってたし……マニアの話は濃ゆいんで流したけどな。 ……実のところ、俺たちにはもっと大事な問題があるんだから。 注:「クールなトットリのナイフ」…『グルカ・ククリナイフ』の聞き間違い。
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「ある日」 この町に来てから三週間が過ぎた。 アタシがこの町に居られるのも、後一週間と少しだけ。 なのにすっかり当初の目的なんて頭の中から無くなり、アタシは今日も公園の木陰で彼等が来るのを待っている。 それにしても暑い。 木々の陰により和らいだ熱の下にありながらも、それでも暑いと感じるのだから日向に居る人たちにはさぞ暑いことだろう。 もう暑いじゃなくて、熱い。 温暖化も二十一世紀初頭に比べればその悪化具合もだいぶ緩やかになってはいるけど、それでもその傾向がマイナスに転じてはいない現在。亜熱帯と化した日本の夏はけっして住み良い環境ではない。 空気が流れた。 体にまとわり付いた汗が、その風に反応して体の熱をほんの少しだけ、奪い去る。 そしてその風と共に、待ち人がいつもの様に現れた。 「また、居たのか。案外お前も暇だねぇ?」 開口一番、憎まれ口を叩くこの男に、会いたくて堪らないのだと自覚したのはいつだったか? 「なんだか今日はどっかのお姫様みたいな格好だなっ!」 今まで自分とは遠くにある存在と思っていた小さな少女も、こんなにも愛おしく感じる。 「こんなに暑いと、スカートだってはきたくなるの。それに帽子だけじゃこの日差しは遮れないでしょ!」 今日のアタシのいでたちと言ったら、フリルのあしらわれた薄手の白いワンピースに白い日傘と、一体何時代だよ! って突っ込みを入れたくなるくらいの時代錯誤な格好だった。 正直照れくさい。 「あぁ~あ。口さえ開かなきゃ、深窓の御令嬢でも通じるのにな」 意地の悪い笑みで男は言う。 「ちょっとー。いくらアタシでも傷つくぞ」 「でもカワイイじゃんかー。ちょっと憧れだぜっ!」 「まて、お前がこんな格好したらそれこそ喋るな! って話になるぞ」 「おう! それはこの刹奈ちんがとってもカワイイって言ってるんだよなぁ?」 かわいい仕草をし、しかしその仕草を台無しにする口調でその小さな神姫は問う。 「だから色々台無しなんだよお前は」 深々とため息をつく夢絃を見て、アタシは思わず大きな声で笑ってしまった。 「……ここにも台無しが一人」 失礼だぞ! 「やっぱり今日もあの時みたいなのは起こらないね」 ヴァイオリンを弾き終えた夢絃にアタシは言った。 「あれって、結局なんだったんだろうなー」 アタシの方に跳ねて来た刹奈は、そう言うとアタシの肩に腰を下ろす。 「ね……ねぇ、体少し熱いけど大丈夫?」 刹奈の座ったアタシの肩が、少しだけ熱を感じる。 「だーいじょうぶなのさー。外気が熱いから、ちょこっとだけ廃熱がままならないだけ。今日も一生懸命踊ったもんなー」 そう言うと刹奈は花が咲くような笑みをアタシに向ける。そして小さな声で「アリガト」と言った。 「あぁ! もう! 刹奈ちんはかわいいなぁ」 もうホント抱きしめたい! ……肩に座っている神姫を抱きしめるのはムリだけど。 「……なんだかんだでお前も結構神姫好きになってきたよな」 ヴァイオリンを丁寧に片付けて、夢絃はそれとは別に持ってきていたリュックを開ける。 「これ、やるよ」 そう言ってそのリュックから取り出した箱を、アタシに差し出す。 「ちょっ……!」 どう見てもそれは武装神姫のパッケージで。 いくらアタシが神姫に疎いからといっても、これが高価なものである事くらい知っている。 ……親友であるセツナのおかげかもしれないけれど。 「こんなの受け取れる訳ないじゃん!」 勢いよく立ち上がってしまう。肩に座っていた刹奈が振り落とされまいとアタシの髪にしがみついた。 「ちょっ! 待てって。……夢絃! 話がいきなりすぎなんだって!!」 「あ? あぁ、確かにそうか」 「朔良もさ、とりあえず話だけでも聞いてよ。判断はそれからでも遅くないだろ?」 刹奈のその言葉に促される形で、アタシは静かにまた座っていたベンチに腰を下ろす。 「えっとな、実を言うとコレ、余りモンなんだ。でもさ、中古屋とかには売りたくねーし、ネットオークションなんて言語道断。だったら俺が気に入った、神姫が好きそうな奴に譲りたいって思ったんだよ」 「余り物って…… それでもこんな高価なもの貰えないよ」 アタシの覚え違いじゃなければ、神姫一体でPC一揃えが購入できるはず。そんな物を「貰えてラッキー♪」とか簡単に言えるほど無邪気じゃない。 「でも、俺はお前に……『朔良』に貰ってほしいんだ」 真剣な眼差しで、まっすぐにアタシを見て、そして初めてアタシの名前を呼んで―― そんなのズルイ。そんなことされたら、絶対に断れない。 「う、ん。……わかった」 熱くなる顔を隠すようにうなだれて見せる。 上手くごまかせたかな? そんなアタシの心配をよそに、夢絃はアタシに一歩近づく。 そして少しだけかがんで、アタシの傍らに神姫の箱を置いた。 「それならさ、明日駅前で会わないか? ここじゃセットアップ出来ないから、神姫センターにでも行こう」 「え? そんなに急がなくても……」 アタシはそう言って顔を夢絃に向けた。 その途端に―― 夢絃の唇で、アタシの口が塞がれる。 それは本当に僅かな瞬間で。 直に立ち上がった夢絃はくるりとアタシに背を向ける。 「明日十時に駅前の広場で。……遅れるなよ」 と言うと振り向きもせずにそのままリュックとヴァイオリンケースを持ち上げる。 「にししししー☆」 耳元で刹奈は笑うと、そのままアタシの肩から飛び降り、そのままの勢いで夢絃の元へ走る。 そんな二人をアタシはただ真っ赤になって見送る事しかできなかった。 そのアタシの手元には、MMS TYPE DEVILと書かれたパッケージが残されていた。 戻る / まえのはなし / つぎのはなし
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晴れた日には、2人でそぞろ歩きを 今日、私・槇野晶は渋谷センター街へと繰り出している。 レディたるもの、ファッションの一つや二つは気を遣わねば。 ……「どうみても幼女」とか「その眼鏡は邪魔」とか言った奴。 即刻前に出てこい、顎に飛び膝蹴り入れてやろう。返品不可。 「コワイ顔してどうしましたですの、マイスター?」 「ああいや、不埒な読者諸兄にちょっと釘をな、ロッテ」 「よくわかりませんけど、マイスターも大変ですの~」 「それよりもだ、この服はロッテ的にどうだ?」 「わぁ……この色合いがステキですの~♪」 そう。今日来たのは何も私の為ではない、ロッテの為でもある。 開発当初こそ様々な色眼鏡で見られまくった“神姫”ではあるが、 アミューズメント施設にバトルフィールドが普及した努力もあり、 昨今では趣味としての市民権を得ている。故に、今日の私の様に お気に入りの“神姫”を肩に乗せ、歩く者も珍しくはないのだ。 主要ユーザー層が男性とは言え、女性ユーザーもいるのだぞ? 「ふむ、この色合い。デザインはどうだい、ロッテ?」 「ちょっとシンプルですけど、お出かけによさそうですの」 「よぉし、では今日の参考品は“これ”としようか」 「わ~いっ、お洋服の素材決定ですの~♪」 さて、MMSショップ“ALChemist”の店長なぞをしている私だが、 当店では正規品の販売だけでなく点検修理・改造も行っている。 各種バトル用ハンドメイドパーツの製作は妥協無く請け負うし、 いかがわしい改造も……真面目な事情があればやらんでもない。 だが、それ以上に私が目玉商品として力を注いでいるのが……。 「マイスターの作るお洋服は、綺麗だから好きですの~♪」 「こらこら、ディスプレイカメラがぶれるぞ。すりすりは後っ」 「……あっ、マイスターごめんなさいですの。てへへっ……」 「仕方ない娘。後20秒でスキャン完了だ、待っていろ?」 “神姫の為の洋服”。ショップブランドとして細々と制作中の これが好事家──ドール用の服で飽きたらぬ人々──に受けた。 ブランド名はとある作品に準え“Electro Lolita”としている。 私が元々洋服好き……友人はコスプレと揶揄するが、ともかく! そういう嗜好と、ロッテのCSCが産み出した“少女趣味”という 性格のコラボによって、この生業は急速に軌道に乗っている。 「よし、終了。後は私流に大胆アレンジして……うむうむ」 「そして試作品が出来上がったら、わたしが試着ですのっ!」 「そう言う事だ、今回はクロスタイプで一ついってみるかね」 「あ、アーマータイプではないんですの?軽くていいですけど」 「デザインのアレンジからすると、布の方が決まりそうでな」 趣味作の第一号から現在まで、モデルはずっとロッテである。 ボディラインが豊かな他タイプの神姫に頼むのもいいのだが、 アーンヴァルタイプの“妹”相手だと、俄然やる気が違う物だ。 そしてだからこそ、時間が掛かっても妥協のない逸品が出来る。 元より職人(マイスター)とは、そういう存在であろう? 「じゃあ、この後はマイスターのお洋服を選んであげますの」 「なっ!?なな、私の服はいいと何時も言ってるだろう?」 「だめですの~、さ、行きましょう行きましょう~♪」 「あ、こら。ディスプレイを引っ張るなっ!」 突然の事で驚いた向きもあるかもしれない。まあそのなんだ。 詰まる所、これがロッテに与えている“モデル料”な訳である。 ウェアラブルPCのカメラ・ディスプレイを兼ねた眼鏡をぐいぐい 引っ張られつつ、不平を言いながら連れられていく私も……。 「これを、楽しみにしているのかもしれんな」 「あ、マイスターの本音聞けましたの~♪」 「う゛……うるさいぞロッテッ!?」 ──────だって、言ったら照れくさいじゃない。 次に進む/メインメニューへ戻る
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MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 11」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 真っ赤に燃え滾るヒートナギナタを振り回し,戦国時代の武将のように名乗りをあげるリカルダに対峙する神姫たちは、ぽかんを口を開けて呆然と立ち尽くす。 オーナー1「な、なんだァ!?あいつ!」 砲台型C「あれがSSS級の化け物神姫、リカルダか」 悪魔型「び、びびるな!!!敵は一騎だァ!!!」 一瞬、神姫たちに動揺が走ったが、すぐさま体制を建て直し、リカルダを取り囲むようにじりじりと移動する。 春日はバトルロンドの筐体に備え付けられているタッチパネルを操作し、状況を把握する。 春日「残り、88機!敵は3つの集団に分かれている」 春日はマーカーで3つのくくりを作る。 春日「まずは集団A、陸戦タイプの神姫を中心とした大集団、数は50、どうせこちらの速度にまともについていけない、適当につぶしておけ」 リカルダ「イエス」 春日「次に集団B!!空戦タイプの神姫を中心だな、数は1ダース(12機)、機種はアーンヴァル、エウクランテ、アスカが多いな・・・まずはこいつらから血祭りにあげろ、皆殺しだ!」 リカルダ「OK」 春日「最後に集団C・・・砲戦タイプの神姫ばかりだな!数は20、機種は戦艦型4隻、戦車型6両、砲台型10台!鈍亀ばかりだ、うまく誘導して同士撃ちにさせろ」 リカルダ「了解」 春日はバンっと筐体を叩く。 春日「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!!!見敵必殺だ!!立ちはだかるすべての障害を排除しろ!」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 ヒュイイイイイイイイイイイイイイイ リカルダのリアパーツに装備されている巨大な素粒子エンジンが緑色に輝く粒子を撒き散らし唸り声を上げる。 巡洋戦艦型A「奴を倒せば兜首だ!賞金を手に入れて富と名声を手に入れろ!」 装甲戦艦型A「支援射撃を開始する!全神姫突撃突撃ィ!!」 数隻の戦艦型神姫が主砲をリカルダに向けて発砲するのを皮切りに再び神姫たちが吼えるように声を上げて、武装を手に掲げてドッと津波のように襲いかかる。 神姫「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」 リカルダはまったく臆することなく、巨大な素粒子エンジンを全開に吹かして真正面から突撃を仕掛ける。 リカルダ「あは、あはっはは!!この程度の数の神姫でこの俺を倒せるとでも?笑わせるッ!!!」 轟とエンジンを轟かせてリカルダは燃え盛るナギナタを引っ掴んで迎え撃つ。 砂漠を砂埃を立ち上げて、真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、ハイスピードトライク型 アーク、ハイマニューバトライク型 イーダ、モトレーサー型 エストリル、クルーザー型 ジルリバーズのバイク使いの4神姫だった。 バイク使いの4神姫はリカルダの姿を認めると、ばっと散開し一斉に手持ちのマシンガンやキャノン砲、ハンドガンで射撃を開始する。 リカルダ「遅い遅すぎるぜ、それで速く動いているつもりか?」 リカルダは地面スレスレをホバリングするように砂山や岩を盾に攻撃を回避し、ズンと地面を強く踏みしめると、同時に地面に巨大な亀裂と穴が穿つ。 パンッと空気が爆ぜる音がしたと同時に、ハイスピードトライク型 アークの紅の武装が異常な形にくにゃっと歪みバラバラに分解されて吹き飛んだ。 □ ハイスピードトライク型 撃破 真横を走っていたクルーザー型のジルリバーズの目が見開かれる。 ジルリバーズ「なっ・・・」 ぐしゃぐしゃに潰れたトライク型の後から破壊音が衝撃波となって届く。 ドギャアアアアアアアアアン!! チカチカと何かが光ったと思った瞬間、モトレーサー型 エストリルの薄いピンク色の体が黄色い閃光に飲み込まれて爆散する。 □ モトレーサー型 撃破 ジルリバーズ「あ、あああ・・・」 彼女の眼前で瞬く間に僚機が沈む。 あまりにも速い、度外れた速さ、圧倒的な凄まじい破壊の力に彼女は驚愕し見届けることしか出来ない。前方でハイマニューバトライク型イーダが変形を解除し、大剣を構えて対抗しようと、リカルダに攻撃を仕掛けようとするが・・・ 次の瞬間、ジルリバーズの横を薄緑色の塊が軽々と宙を舞いすぐ脇を通りぬけていく。 風が唸る。 ゴキン 鈍い金属音が聞こえる。その音の正体を最初は理解できなかったが、崩れ落ちるバラバラになった自分の体がジルリバーズの視界に移ると意味を理解した。 ジルリバーズ「は・・・はや・・・速すぎる」 □ クルーザー型 ジルリバーズ 撃破 ズドンズドンズドン!! 戦艦型神姫の砲弾がリカルダの周囲に着弾するが、リカルダはまったく意に介さず無視する。 リカルダ「おいおい、なんだ?その動きは舐めているのか?あああん?的撃ちじゃねーんだぞッォ!!!!!」 リカルダは顔を歪ませて新たな敵に向かって突進する。 音速を超え、超高速の剣戟に、対峙する神姫たちはまったく捕捉しきれなかった。 悪魔型「うおおおおおおおおおお!!」 巨大な刀を携えた悪魔型が雄叫びを上げて強化アームを振りかざし突撃するが、リカルダは悪魔型が刀を振るう前に胸部を突き殺す。 □ 悪魔型 ストラーフMk-2 撃破 間髪いれずに今度は巨大なハンマーを携えた白い悪魔型とソードを構えた黒い悪魔型が躍り出るが、リカルダは副腕のレールキャノンをくるんと廻して、胸部を正確に撃ちぬく。 □ 悪魔型 ストラーフ・ビス 撃破 □ 悪魔型 ストラーフ 撃破 脇を小柄な2体の神姫が槍と剣を携えて飛び出してきたが、リカルダは2体まとめて燃え盛る紅蓮の炎を纏ったヒートナギナタで文字通り薙ぎ払った。 □ 夢魔型 ヴァローナ 撃破 □ 剣士型 オールベルン 撃破 樹脂の溶ける焦げ臭い不快な匂いを撒き散らして四散する2体の神姫。 リカルダの強烈な攻撃の様子はさながら嵐のようであった、音よりも速いリカルダの攻撃は空気を引き裂き、爆ぜ、対峙する全てのものを打ち砕く。 次々に撃破のテロップが流れる。 まるで音楽を奏でるかのようにリカルダは縦横無尽に戦場を駆け回り、刈り取るように神姫を撃破していく。 □ 犬型 ハウリン 撃破 □ 猫型 マオチャオ 撃破 □ リス型 ポモック 撃破 □ フェレット型 パーティオ 撃破 □ ウサギ型 ヴァッフェバニー 撃破 □ 騎士型 サイフォス 撃破 □ 侍型 紅緒 撃破 □ 花型 ジルダリア 撃破 □ 種型 ジュビジー 撃破 □ サソリ型 グラフィオス 撃破 春日「30、31・・・」 春日はにやにやしながら腕を組んで数を数える。 怯えた白鳥型が大剣を盾に悲鳴をあげて後ずさるが、リカルダは大剣をガードの上から叩き割った。 ズン・・・ 真っ二つに引き裂かれた白鳥型の表情には驚愕の念が浮かんでいた。 彼女は決して弱い部類の神姫ではなかった。数多の戦場を先陣切って誉高く駆け、敵を討ち取ってきた武装神姫である。 だが、違う。 こいつは違う。 一刀両断されて始めて違いに気がついた。 こいつは普通じゃない。 白鳥型「ば・・・化け物め・・・」 □ 白鳥型 キュクノス 撃破 春日「32!!総数の3分の1を殲滅した、残り68!さっさと片付けるぞ」 春日は筐体の画面を操作して状況を把握する。 リカルダ「だめだ、弱すぎる・・・お話にならない」 参加していた神姫のオーナーたちはたった数分間で100体いた神姫の3分の1が潰滅した事実にただ言葉も無く息を呑む。 いま眼前で繰り広げられた戦い、リカルダの桁ハズレの強さ。 次々となすすべもなく撃破されていった仲間たちを見て陸戦主体の残った神姫たちは完全に戦意を喪失して、武装を放り出して逃げ始めた。 カブト型「だ、だめだァ!!こんなの勝ってこないよ!」 クワガタ型「ひ、ひィいいい」 ヤマネコ型「やってられるかよ!!!」 がしゃがしゃと手持ちの武器を捨てて逃げようとした瞬間、後方からチカチカと青白い光が瞬く。 建機型「!?」 ドッガアズガズッガアアン!! 装甲戦艦型A「撃て撃て!!撃ちまくれェ!!」 巡洋戦艦型A「逃げる奴は敗北主義者だ!!!敵もろとも攻撃しろ!!!」 重装甲戦艦型A「奴を倒せば1億円なんだぞ!!断じて引くな!!後退は認めん!!」 数隻の戦艦型神姫が味方もろとも無差別に砲撃を始め、瞬く間にフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。 ドンドンッドオドドン!!ズンズウウン・・・・ カブト型「ぎゃあああああああ!!」 虎型「ウワァ!!」 丑型「いやああああああああああ!!撃たないで撃たないでェ!!!!!」 猛烈な艦砲射撃がリカルダと周囲にいる神姫たちを巻き込んで行なわれる。 戦艦型の取り巻きの戦車型、砲台型も味方を撃つことに戸惑っていたが、手段を選んでいる場合ではないと悟ったのか、一緒になって見方もろとも攻撃を始めた。 □ 建機型 グラップラップ 撃破 □ 虎型 ティグリース 撃破 □ 丑型 ウィトゥルース 撃破 □ ヘルハウンド型 ガブリーヌ 撃破 □ 九尾の狐型 蓮華 撃破 次々とフレンドリーファイヤーの表示が出ながら撃破のテロップが踊る。 瞬時に周りは地獄と化した。その光景は凄惨そのものだった。目の前で多くの神姫たちが生きたまま焼かれ、重症を負い、そして粉々に砕かれて宙を舞った。 ズンズンズン・・・・ ものすごい爆煙と砂埃で砲撃地点は黒茶色の巨大なキノコ雲が立ち上り、ボンボンと神姫が爆発する音と赤い炎が巻き起こる。 上空を数十機の航空MMSが心痛な面持ちで眺めていた。 天使型「下は地獄ですね」 セイレーン型「うわあァ・・・」 ワシ型「イカレ野郎もろとも吹っ飛ばしてしまえ!!」 ワシ型が手を掲げてファックサインをする。 ドッギュウウウム!! 戦闘機型「おぐ・・」 戦闘機型の胸部を黄色い閃光が貫き、爆発する。 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 爆煙と砂埃の中から勢いよくリカルダが飛び出し、真っ赤に燃え盛るヒートナギナタでワシ型MMSを一刀両断で切り捨てる。 □ ワシ型 ラプティアス 撃破 リカルダ「コイツァ最高だぜ、ふ・・・恥も外聞もなく味方もろとも攻撃してくるとはなァ・・・」 リカルダは笑いながら次々と航空MMSをハエのように叩き落としていく。 □ コウモリ型 ウェスペリオー 撃破 □ 戦乙女型 アルトレーネ 撃破 天使型「このおおおおおおおおおおおお!!」 天使型の一機が、上空からライトセイバーを構えて突撃してくるが、 リカルダは最小限の動きで回避し後ろを取る。 リカルダ「はずしやがったな!まだまだガキの間合いなんだよ!」 天使型「そ、そんな!!うわああああ!!」 ズッドン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 天使型の頭部を跳ね飛ばした次の瞬間、リカルダを含む周囲の航空MMSたちにむけて葉激しい強力なレーザー砲の一斉射撃が加えられる。 ビシュビシュウウビッシュウウウウン リカルダ「おわっ!!」 あわててリカルダが回避する。 ズンズンズン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 □ 天使型 アーンヴァル・トランシェ 撃破 □ 天使型 アーンヴァルMk-2 撃破 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 リカルダの回りを飛んでいた航空MMSを強力なレーザーが貫き、空中に炎 出来た光球を作る。 重装甲戦艦型「ヘタクソォ!!貴様らどこを狙っている!!」 巡洋戦艦型A「ウルセェ!てめえが撃てっていうから撃ったんだろがァ!!!」 装甲戦艦型A「畜生畜生!!」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!もうだめだァ!!」 巡洋戦艦型B「なにをしている攻撃の手を休めるな!!!」 またしても後方にいる戦艦型神姫の一群が味方もろとも巻き込むのも承知の上で砲撃を加えてきたのである。 1度ならず2度までも、味方を巻き込む非道な攻撃を行い続ける神姫たちに観客たちはブーイングを鳴らす。 観客1「お前らさっきからナニやってんだよ」 観客2「このクズヤロウ!!さっさとしとめろ!」 観客3「誤爆誤射ばっかりやんてんじゃねーんだぞ!!このダボォ!!」 観客4「こいつらさっきから味方撃ちしかしてねえーーーーー」 観客5「なにがしてーんだよ!!このクソヤロウ!!」 グラスやゴミをフィールドにいる戦艦型に向かって投げつける観客たち。 オーナー1「うるさい!野次馬ァ!!」 オーナー2「黙れ黙れ!」 オーナー3「どーしようが俺たちの勝手だろ!」 オーナー4「戦いに誤射誤爆はつきものだろが・・・ボケが!」 オーナー5「装甲戦艦!!副砲撃て!!!あの野次馬連中を黙らせろ!!」 装甲戦艦型B「了解、モクヒョウ カンキャクセキ 撃ちかたーーーーーーーーーはじめ!!」 あろうことか、戦艦型神姫のうちの一隻が観客席に向かって副砲で発砲しはじめたのである。 ズンズンズズン!! 観客1「うわあああああああ!!撃ってきたぞ!!」 観客2「キャアアアアアアアアア!」 観客席の2階の中央のテーブルに砲弾が命中し、料理が爆発して飛び散る。 ドガアアアン!! 2階の観客席で春日たちの戦いを観戦していた神代の顔にべちゃっりとケーキのクリームが降りかかる。 脇に立っていたルカが悲鳴をあげる。 ルカ「きゃああ!!マスター大丈夫ですか!!」 神代が顔に付いたクリームを手で拭き取り舌でぺろっと舐めて片つける。 神代「大丈夫だ、問題ない」 バトルも観客席も戦艦型神姫の無差別な艦砲射撃で大混乱になる。 司会者の東條があわててマイクで放送を行なう。 「観客の皆さんはフィールド上の神姫にモノを投げないでください!!フィールド上の神姫は観客の皆さんに攻撃しないでください!!危険です」 フィールドにいる戦艦型が反論の激を飛ばす。 巡洋戦艦型A「最初に攻撃してきたのはアイツラだろ!!これは正当な反撃行為!自衛のための防衛行動だ!!」 装甲戦艦型B「戦艦に喧嘩売るとは上等じゃねえか!!ぶっ殺すぞ!!!!」 観客3「こいつらなんとかしろよ!!」 観客4「危ない!!危ない!!危ないよ!!」 観客5「おまえらは一体誰と戦ってんだ!!このボケカス!!」 春日はアッハハハと大声を上げてパンパンと手を叩いて喜ぶ。 春日「すばらしいこれこそ混乱だ!!戦場に混乱はつきもの!!最高じゃないか!!」 リカルダ「さあて・・・と残りはC集団のみ、ちゃっちゃと終わらせてやろう」 リカルダはヒュヒュンとナギナタを振り回し、突撃する用意に移る。 戦艦型神姫の一群と戦車型、砲台型が多種多様な砲口をリカルダに向ける。 戦車型A「パンツァー1より全パンツァーへ、敵は高速戦闘に特化した航空MMSだ、対空榴弾装填!!穴だらけにしてやれ」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「パンツァー4了解」 砲台型A「砲撃モードに移行!焦るなゆっくり狙って確実に当てろ!」 砲台型B「畜生!ブチ落としてやる」 砲台型C[負けネーゾ] 重装甲戦艦型「全艦、全砲門開けェ!!火力で磨り潰せッ!!!!」 巡洋戦艦型A「火力とパワーはこちらの方が上だ」 装甲戦艦型A「一億円は俺のものだ」 巡洋戦艦型B「くそったれ、やってやる」 装甲戦艦型B「蜂の巣にしてやる」 ギラギラと目を光らせる大砲を主兵装備とする武装神姫たち 。 戦艦型神姫は巨大な体に据付けられた主砲をゴリゴリと動かす。一撃でも命中すれば神姫を粉々に粉砕できる強力なレーザー砲を搭載し、全身に対空機関砲とミサイルを装備している。単純な火力だけでは戦艦型神姫は最強クラスの戦闘能力を有する。また分厚い装甲に守られ、撃破するのは非常に困難だ。 戦車型神姫は戦艦型とはいかないまでも、強力な戦車砲とそれなりの厚い装甲を備えている。また何台かの同型の戦車型とコンビを組んで安定している。 砲台型もがっしりと地面に腰を下ろし、砲撃モードに移行し、優秀なFCSによって高い命中率と速射性能を有した滑空砲を搭載し待ち構える。 大型の戦艦型神姫、中型の戦車型、小型の砲台型のバランスの取れた鉄壁の布陣で、リカルダを待ち構える20機あまりの重武装の神姫たち。 リカルダとは対照的に、機動性を完全に最初から捨てて、がっしりと待ち構える神姫たちに隙はなかった。 こいつらは、味方ですら遠慮なく攻撃する下種だ。だが、その分勝つことには躊躇せず破壊的なオーラを纏っていた。 間違いなく強敵、そう感じ取った春日は内心、ほくそ笑んでいたが、命令を下す。 春日「大砲屋風情が調子に乗るなよ・・・リカルダ!!遠慮はいらん!!攻撃しろ!」 リカルダ「イエス、イエスマイマスター」 ぐっと身を固めるリカルダ。 さっきまで野次を飛ばして騒いでいた観客たちも一斉に押し黙る。 そしてひそひそと話し声がもれる。 観客1「まさか本当にあの砲火の前に突っ込むんじゃないよな?」 観客2「ありえんだろ?あの完璧な布陣になんの策もなしに突っ込むのは自殺行為だ」 観客3「あの陣形は点や線の攻撃なんて生温いものじゃない、面での攻撃だ」 観客4「面制圧か・・・この猛砲撃を掻い潜って奴らを殲滅できるとしたら、文字通り化け物だ・・・そんな神姫がいるのか?」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>[[]] 前に戻る>「敗北の代価 10」 トップページに戻る
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……さて…… みなさんこんにちは、千尋です 三日間の泊まり込みで中学校の特別講師に行ってきました 授業の内容はまたの機会にお話するとして…… 今回は少佐の強い要望により一等兵の初陣のお話をしたいと思います 場所は地元のゲームセンター、使う筐体はミッシェルの製品です ……え? 講師に行ってきた街でしなかったのかと? …………その街、ゲームセンターが無かったんです 第六話 対決、山田農場神姫部門 とある平日の昼過ぎ、自分たちは総帥に連れられて人もまばらのゲームセンターに来ている 目的は一等兵の初陣だ 付き添いとして総帥の神姫は全員連れてきている 「……弾倉よし、各可動部よし……えっと、あとは……」 「一等兵、すでにチェックは終わってるだろう?」 一等兵と少佐のこの会話も今朝より7度目になり、自分としては既に聞き飽きた感がある 「……私も、初陣はあんな感じでありましたか?」 曹長の問いに自分は頷いた 「1年前のお前も落ち着かなかった……あの時も少佐とあんな感じの掛け合いをしていた」 しかし、少佐もよく何度も同じ返答ができるものだ 自分ならば3回目くらいで返答を拒否したくなるのだがな ……そんな事をしている間に、総帥が筐体のそばに着いたようだ 総帥は自分たちを移送用キャリングケースから出して投入ポッドの側に置き、本体側に歩いていった……試合の受付をしてくるのだろう 「……こんな時は手のひらに『人』と書いて飲む…………あれ? わたし達の場合は『神姫』って書くんですか!?」 ……本当に落ち着け、一等兵 「……おや? キミ達は、高城さんの所の……?」 一等兵に気を取られているうちに、なにやら大きなキャリングケースを2つずつ持った若い夫婦連れが近づいていた……声を掛けてきたのは夫の方だ 「あ! 山田さん、お久しぶりです!」 タイミング良く総帥が戻ってきた……受付を終了して、挑戦者待ちの状態だとディスプレイに表示されている 「やっぱり高城さんですか!……対戦するんですか?」 この人は、この街の外れで農場を経営している山田 貴善(やまだ たかよし)さんで、後ろにいるのが奥さんの柚月(ゆつき)さんだ……見るからに人の良さそうな若夫婦である その山田さんが人懐っこい笑顔で総帥に話しかける 「はい、今日はこの子の初陣なんです」 言いながら総帥は一等兵を手のひらの上に持ち上げた……一等兵はまだあたふたしている 「じゃあ、そのお相手はボク達がさせてもらうよっ!」 山田さんの奥方の胸ポケットから顔を出した小さい戦乙女、アルトアイネス型が高らかに宣言した 「……『達』って事は……姉様、私も出るのですか?」 同じ胸ポケットから遅れて顔を出したのは、大きな戦乙女、アルトレーネ型だ ……アルトレーネがアルトアイネスの妹というのも、なかなか違和感があるな…… 「ルイはともかくマリがやる気なので、お相手お願いします」 山田さんの夫の方……呼び方が面倒くさいな、名前でいいか……貴善さんが低姿勢に勝負を申し出た 後ろでは柚月さんが会釈をしている……先程から言葉を発してないが、この人は失声症なのだとか 総帥の診断では『何らかの心的外傷』が原因なのだそうだ……まあ、今はそんな事は関係のない話だったな 2人が反対側のポッドに向かい、総帥は一等兵のセッティングに入られた 「さあ、頑張ってね一等兵」 「きっ、期待に添えるよう頑張ります!」 重量のある機関銃に、1本の剣……予備の弾倉が2個 今回はフライトユニットを着けずに出撃するらしい……まあ、相手が2人掛かりなのだから、一撃離脱の戦法は使いにくいだろう 「……あとは……曹長も行こうか」 「はっ! 了解であります!」 さすがに初陣で1対2は辛いと判断されたのだろう、総帥は曹長の準備も始められた サブマシンガンにガトリング砲、予備弾倉がそれぞれ3個ずつ……どうやら弾幕で援護させる気でおられるようだ 「……じゃあ少佐、指揮は任せたよ」 「はっ! お任せ下さい! 必ずや我が隊を勝利に導いてご覧に入れます!」 ポッド横の指令席に立ち、少佐が総帥に敬礼をした……相変わらず綺麗なフォームだ 「えっ、あの……総帥が指揮をとってくれるんじゃないんですか?」 やはりと言うべきか、一等兵は困惑しているな そうだろうな、本来神姫バトルにおいて神姫に指示を出すのはマスターの役目だ しかし、総帥の『指揮』はかなり特殊だからな……通常は少佐が全指揮を取ることになっている 「なんだ? 私の指揮では不満か?」 「あ、いえ、そう言うわけではないんですが……」 「ならば問題無かろう、ポッドに入れ」 有無を言わせぬ少佐の言葉に、一等兵は狐につままれたような表情のまま神姫投入ポッドに入っていった 「では! 行って参ります!」 曹長がセンサーゴーグルを取り外したメットを被り少佐に敬礼をした 「うむ、今回は一等兵の初陣であるからな、しっかり援護してやれ」 少佐の言葉に曹長は再び敬礼をしてポッドに入っていった ポッドには拠点に収納される予備の武装が既にセットされていた 戦場情報 ステージ:未開の密林 コーナーA 高城・M・千尋 飛鳥型 δ ゼルノグラード型 γ 予備兵装 ガトリング砲×1門 ガトリング予備弾倉×5個(200発) サブマシンガン×3丁 マシンガン予備弾倉×7個(80発) 携行式ミサイルランチャー×3門(4発) 軍刀:煉×2本 ヒミツの追加武装(δ) ヒミツの追加武装(γ) コーナーB 山田夫妻 アルトアイネス型 マリ アルトレーネ型 ルイ 予備兵装……不明 『GET READY ?』 モニターにこんな表示が現れる……どうやら相手の準備が完了したようだ 総帥も準備完了のボタンを押す……ポッドのシャッターが閉められた 少佐を見ると指揮用ヘッドセットを装着してマイクテストをしていた ……両者の読み込みが終了し、ディスプレイに二人の姿が表示された 「……貴君らの検討を祈る、行くぞ!」 『了解!』 二人の声が綺麗に重なった……試合開始だ ……今回の戦場は『未開の密林』と名付けられていた、どうやら山田夫妻の自作ステージらしい 鬱蒼と茂る木々に、湿度の高そうな空気、堂々と闊歩する巨大生物……ん!? 白い斑紋のある真っ赤な丸い身体に体躯の半分を占める大きな口、口の上から突き出た目玉、巨躯にはアンバランスな足……恐らく、地球上には存在しないであろう巨大生物がそこにいた 「なっ!? この生き物は!?」 「ばっ、バケモノであります!」 ディスプレイのこちら側にいる自分でも驚いているのだ、実際に目の当たりにした二人の驚きは自分のそれを大きく上回るだろう 「落ち着け! ただのギミックだ!」 少佐の言葉通り、その巨大生物は2人に目もくれずに木々の間を縫って何処かへ歩いていった 「……なんだったのでしょう?」 「向こうがこっちに敵意を出さないなら、気にせず行くであります。敵はもう動き出してるはずであります」 曹長はこんな時、意外と冷静になる 既に思考を戦闘用に切り替えているようだ 「一等兵、貴官は九時方向から進め。曹長は遊撃とする、自己の判断で行動せよ」 『了解!』 再び2人の声が重なり、一等兵は少佐の指示通り拠点から左方向へ歩き始めた 一方曹長は、先程の巨大生物を追うように中央の道を進んでいく ……どうやら、巨大生物が気になっていたようだ 自分はとりあえず一等兵の動向を見ることにするか ……道無き道を進んでしばらく…… 周囲の木々は隙間なく茂り戦場の広さがよくわからない上に、視界が非常に悪い 幾度か最初にみた巨大生物よりも3分の1くらいの大きさの生物を見たが、特に一等兵に攻撃を仕掛けることはなかった 生物がレーダーに反応するので多少の攪乱にはなっているが、特に害は無さそうだと少佐は判断している ……しかし、自分にはこの生物がただの環境ギミックには思えなかった 何か別の目的がある……そんな気がしてならなかった 「……これは、なんでしょう?」 自分が考え込んでいる内に一等兵は少し開けた場所に進み、何かを発見したようだ そこには、赤いタマネギのような球体が3本の足で鎮座していた……その足下の地面にはミステリーサークルのような模様がある 生き物ではなさそうだが、球体の頭頂部では花を模したプロペラがゆっくりと回転している……UFOか? 「……未確認飛行物体をこの目で確認してしまったら、それはUFOと呼んで良いんですかね?」 とりあえず自分はUFOと呼称するとしよう 「そんな事は気にするな、まずは周囲に警戒しつつ『それ』が脅威となり得るか調査しろ」 敵以外のものがレーダーに反応しているので、信じられる物は自らの目と耳だけになっている しかし、それすらも生い茂る木々とざわめく生物達によって曖昧になる……果たして、どれだけまともに索敵できるかな 「……なんだか、あたたかいです……これは生きているんでしょうか?」 一等兵がUFOに触れて調査している……生きている? これも生物だとでも言うのか? 「剣で叩いてみますか?」 一等兵がベルトから剣を鞘ごと外し、正眼に構える 「やめておけ……おそらくこれもギミックだ」 少佐の判断に一等兵は剣をベルトに戻した ……ガサッ! 「……っ!?」 「隠れろ!」 何かの物音がして、コンマ数秒の間を空けずに少佐の指示が飛ぶ 一等兵はそれに従い、近くにあった倒木の影に身を潜めた 「……今、誰か居た?」 姿を現したのは、マリだった リアユニット以外の武装を一切着けず、頭に一本のアンテナが立っていて、その先端には赤く光るビーコンが揺れていた……ちょっとマヌケな光景だが、妙に可愛らしい リアユニットのノインテーターは改造されているようで、スカートを構成するブレードが外されサブアームの手の大きさが倍以上に大きい……実質攻撃力が落ちていると思うのだが、何のために? 「う~……あー、もう! デメマダラばっかりでレーダー使えないじゃん!」 ……あのかわい……おかしな生物は『デメマダラ』と言うのか? ということは、小さいのはその幼生体だろうか 「まあいいや……お~い、こっちこっち!」 マリが出てきた方に向かって呼びかけるともう1人、ルイも姿を現した……こちらは頭の上にアンテナと青く光るビーコンが揺れている 「もう……姉様も手伝って下さい!」 ルイの方もマリと同じような改造を施されたニーベルングを背中に背負っていて、今はそのサブアームで何かを抱えている 「いいじゃん、ほら早くペレットこっち置いて!」 マリに誘導されるままルイはそれをUFOの球体部分の真下に置いた ……やはりあのUFOはただのギミックではなかったか……しかし、あれは何だ?…… 丈の短い円筒状で、中央に大きく『1』と書かれた赤い何か……マリが『ペレット』と呼んでいたな ……キュミミミ……キュポンッ! やや間抜けな音を立ててUFOが底部からペレットを吸い込んだ……これが、キャトルミューティレーションというやつか? 「……レーダーに反応が増えました、UFOの内部に反応が二つ!」 相手に聞こえないような小声で一等兵が報告する 「こちらのレーダーでも捕捉している、そのまま様子を見るんだ……相手は二人掛かりの上にどんな武装を持ち出してくるかわからん、下手に動けばやられるぞ」 「了解、このまま経過を見ます」 再び一等兵が視線を戻すと、UFOの頭頂部にあるプロペラが少しだけ早く回っていた ……ポポンッ! UFOの頭頂部から何かが2個射出され、それはゆっくりと降下して地面に落ち、土に埋まった ……遠目ではよく見えなかったが、なにやら葉の付いた植物の種子のようにみえたが…… 「あ! 姉様、芽が生えましたよ!」 しばらくすると、落着した地点から葉っぱのような物が生えた 「……んしょっ、と」 マリがおもむろにその葉の根本をサブアームで掴み、勢いよく引き抜いた ……ぐぐっ……ポンッ! またも間抜けな音を立て、マリは何かを引っこ抜いた 「きゃうっ!?」 マリが引っこ抜いた『もの』……それは……頭から一枚の大きな葉を生やした種型神姫ジュビジーだった まさか、相手はこうして戦力を確保するのか? 「じゃあこっちは私が……っと!」 「きゃん!?」 もう一つの葉はルイが引っこ抜く……こちらも同じようなジュビジーが抜ける ……あのUFOはジュビジーを増殖させるための装置なのか? 「……敵戦力が増殖する条件は、先程の『ペレット』と言うことか……」 少佐は自分と同じ事を考えていたようだ 「曹長、聞こえるか? ビジュアルデータを送る、ペレットを見つけ次第破壊しろ!」 「了解であります!」 ディスプレイは一等兵を追跡するカメラになっているから曹長の状態がわからないが、通信終了直後に銃声が聞こえたあたり、付近にペレットがあったのだろう 「……あの、わたしはどうしましょうか?」 相手の様子を見ていた一等兵が少佐に指示を要求してきた 「一度その場を離れてペレットを捜索、発見次第破壊しろ」 ……自分は物陰に隠れて機関銃で威嚇射撃、敵の警戒心を煽って増殖の進行を鈍らせる、という行動が最適かと思ったのだが指揮官は少佐だ、だから自分は何も言ってはいけない 「了解、この場を離脱します」 一等兵は気配を殺しながら木々に身を隠してその場を離れて森の中へ入っていった ……森の中は、混沌を極めていた 先程のデメマダラのみならず、珍妙な生物で溢れかえっていた 「……凄いです! この森は生命に満ちあふれています!」 一等兵……お前は何故そんなに楽しそうなんだ? 「気を緩めるな、速やかにペレットを探して破壊しろ。敵の増殖をくい止めるんだ」 はしゃぐ一等兵に少佐が檄を飛ばす 「はい、りょうか……あ! 発見しました!」 一等兵の目の前には複数のペレットがあった しかし先程見たような物だけではなく赤青黄の三色あり、そのペレットは背が高く葉のない茎で地面と繋がっていて、本体からは花弁が広がっている……まるで一輪の花が直接地面から生えているようだ 「それがペレットの本来の姿なのかも知れん、本体に狙いを集中させて破壊しろ」 「了解!」 一等兵が機関銃を構え、1つのペレット目掛けてトリガーを引いた 数発の弾丸がペレットに直撃、細い茎が激しく千切れ飛び、花弁は儚く散った……しかしペレットは残っていた……しかも無傷で 「……どういうことなの!?」 一等兵は驚きを隠せず、どうして良いかわからなくなっているようだ 「破壊できないなら、せめて奴らに見つからないように運び出せ」 少佐が次の指示を出し、一等兵がそれに従った……しかし…… 「……くうっ……お、重いです!」 ペレットは見た目以上に重いらしく、一等兵が力を込めても微動だにしなかった こんな物を奴らは運び出したというのか? 「あっ、姉様! 敵さん発見です!」 「やっぱりね、銃声が聞こえたと思ったらペレット狙ってたな?」 機関銃の音を聞きつけた二人に見つかってしまった 「先手必勝だ! 撃て!」 「はい!」 少佐の指示に一等兵が機関銃を構ようとする 「させないよ! 行けっ!」 一等兵の行動を予測していたのかマリの行動は一等兵が機関銃を構えるより早く、サブアームで何かを投げつけてきた 「なっ……むぎゅっ!?」 その何かにぶつかり、一等兵は地面に仰向けに倒れた 一等兵にぶつかったものは、頭に大きな葉を付けたジュビジーだった 「まだまだ行くよ! どりゃあっ!」 「それそれなのです!」 マリとルイは追い打ちをかけるように次々とジュビジーを投擲してくる……いつの間に数を増やしてきたんだ? 「むっ、むぐぐ……」 ジュビジー達の下敷きになり、一等兵が足をばたつかせて暴れるがジュビジー達はびくともしなかった ジュビジーの上にジュビジーが重なり、20人くらいが一等兵の上に乗ったとき、暴れていた一等兵の足がパタリと止まった 「お? やっつけたかな?」 一等兵の状態を確かめるためにマリが近づく ……ドガガガガガガガガガッ!! そこに降り注ぐ大粒の弾丸の雨、マリとルイは反射的にその場を飛び退いた 「うわっ!? あっぶないなぁ、もう」 「あの、姉様……ジュビちゃんたちが……」 一等兵の上から動かないまま弾丸の雨にさらされたジュビジー達はその大半がヴァーチャルの粒子になって消滅した 「やばっ!? 大損害だよ!」 マリは言うが早いか、どこからかホイッスルを取り出し、思いっきり吹き鳴らした 甲高い笛の音があたりに響き、残っていたジュビジー達がマリの側へ移動する ……ん? 今、マリのビーコンが強く光ったような? 「大丈夫でありますか!?」 ガトリングの掃射を終えた曹長が一等兵に近寄り安否を気遣う 「うぅ……ふぁい、らいじょうぶれす……」 一等兵はゆっくりと起き上がり、呂律の回ってない返事をした……自分には大丈夫に見えない 「……ルイ、ここはボクが引き受けるから、5人連れて増やしてきて」 「わかりました!」 二人の短い会話の後に、今度はルイがホイッスルを短く吹いた マリの物と音色が違う音に反応し、5人のジュビジーがルイの側に移動する ……気のせいか、ホイッスルを吹いた瞬間ルイのビーコンが強く光った 「すぐに増やしてきます!」 ルイが背を向けて走り出し、5人のジュビジーもそれに続いていく 「逃がすな! 撃て!」 少佐からの指示が飛ぶ、曹長はすぐにガトリングを構えたが、一等兵は先程ジュビジーをぶつけられた衝撃で機関銃を落としてしまっていたようだ 「させるかっ!」 ルイの背中に向けてガトリングを構える曹長にマリがジュビジーを投げつけた 「ぐあっ!?」 ジュビジーがぶつかった衝撃で照準がずれ、撃ち出された弾丸は周辺の木の幹を穿っただけに終わった 「次はこっち!」 マリが次のジュビジーを掴み、今度は一等兵目掛けて投げつけた 「……せいっ!」 ビシュッ! 投げつけられたジュビジーに対し、一等兵は鞘から剣を抜いて逆袈裟に切り払った ジュビジーは銅を斜めに切断され、ヴァーチャルの粒子になって消滅した ……先程から思ったが、ジュビジー自体には攻撃力も耐久力もほとんど無いようだ 通常の神姫ならば多少の射撃や斬撃では戦闘不能にならないのだが……どうやらこのジュビジー達は攻撃、耐久ともに最低値以下に設定してあるようだ 「……っ! この!」 曹長がジュビジーを振り払い、ガトリングを放棄してサブマシンガンをマリに向ける しかし、それもまた投げられたジュビジーによって照準を狂わされた 「このままでは時間を稼がれてしまいます」 「分かっているであります……しかし……」 「……ほら、仕掛けてこないの?」 三人は距離を開けてにらみ合っていた 現在マリの後ろにはジュビジーが7人、そしてノインテーターの腕に掴まれているのが2人 攻撃準備動作に入った瞬間にマリはジュビジーを投げつけてくる マシンガンを構えるより早いその攻撃は、不要なダメージを受けるどころか弾の無駄撃ちも引き起こしてしまう 「……わたしが仕掛けます、援護お願いします」 どうやら一等兵に何か考えがあるようで、剣を握り直して下段に構えた 「……行きます!」 一等兵がマリに向かって駆けだし、その後ろで曹長がサブマシンガンを構えた 「来た! くらえっ!」 マリが右サブアームのジュビジーを投げる……目標は一等兵 「そこっ!」 曹長がサブマシンガンを構え、トリガーを引いた 「させない!」 マリは自分に向けて撃ち出された弾丸を空いた右サブアームで防御する……しかし、曹長の狙いはマリではなかった 「きゃうぅっ!」 マリの左サブアームに掴んでいたジュビジーが悲鳴をあげた 「…!? しまった!」 左サブアームに掴んでいたジュビジーがヴァーチャルの粒子になって消えた その間に一等兵が投げつけられたジュビジーを切り払い、さらにマリの後ろで待機していたジュビジーを次々と切り捨てていった 「くっ、この!」 マリが空いたサブアームの拳で一等兵に殴りかかるが、手の大きさのせいで大振りになってしまい、易々と回避されてしまう 「食らうであります!」 その隙に曹長がサブマシンガンで残りのジュビジーを掃討する わずか数秒の内にジュビジーは全滅した 「ぐっ……ちくしょー、ジュビジーが全滅した……こんな時は!」 マリの次なる行動に備えるため、一等兵は剣を、曹長はサブマシンガンを構え直した マリがその場にしゃがむ、するとビーコンの発光色が赤から白に変化した 「……勇気ある撤退だ!」 突如ビーコンからまばゆい閃光が放たれ、モニターが白一色に包まれた 視界が戻ったとき、すでにマリは姿を消していた 「……逃がしたか……すぐに探せ! まだ遠くへは行ってないはずだ!」 「了解!」 「了解であります!」 少佐の指示に、2人はルイが逃げた方向へ走り出した……おそらく、ジュビジーが全滅したマリはルイと合流するだろうと予測した上での行動だろう 「……えっしょ、えっしょ……」 「…………」 「…………」 ……2人は、途中でペレットを運んでいるジュビジーを発見してしまった 驚きな事に、一等兵がどれだけ力を込めてもピクリとも動かなかったペレットをジュビジーはひとりで運んでいる 一歩進むごとに頭の葉がユラユラ揺れてなんともかわい……いや、この状態はどう判断したものか ここでジュビジーを撃てば、マリとルイに気づかれないように敵の増殖を遅らせることができる しかし、このままジュビジーを歩かせれば2人がいる地点にたどり着くかもしれない 「撃つなよ、そいつを泳がせれば敵の本陣に着くかもしれんからな」 少佐の判断は後者だったようだ 指示を受け、2人は少し離れた後方からペレットを運ぶジュビジーを観察することにしたようだ ……ドスッ、ドスッ、ドスッ…… しばらく観察を続けていると、デメマダラが2人の横を通り抜けて行った……やはり、2人には興味を示さなかった ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ……グルル…… デメマダラがジュビジーの真後ろで歩みを止め、低く短く唸った 「えっしょ、えっしょ……」 ジュビジーはデメマダラを気にせずにペレットを運び続けている ……グルルル……パクッ 「きゃあっ!?」 「あ……?」 「えっ……?」 ジュビジーの短い悲鳴が響き、2人が素っ頓狂な声を上げた ……ジュビジーがデメマダラに食べられてしまったのだ まず上半身を大きな口にくわえ、もがくジュビジーを気にせずに上を向いて丸呑みにした ……グルル…… ジュビジーを飲み込んだ後、デメマダラは再び短く唸ってから周囲を見回している …………ドスッ、ドスッ、ドスッ…… そして再び歩き出す……気のせいか、先ほどまでジュビジーが向かっていた方向へ進んでいった ……デメマダラが去った後には、ペレットだけが残っていた…… 「……手掛かり、食べられちゃいましたね」 「……そうでありますな」 いきなりの事態に2人は困惑しているようだ 「……あー……どうしたものか」 少佐まで呆気にとられてしまったようだ 「……と、とりあえずデメマダラを追え! 奴はジュビジーのみを捕食対象にしているのかもしれん」 「了解!」 とりあえず少佐が出した指示に一等兵が返事をする……しかし、曹長は首を傾げていた 「……デメマダラ……?」 そうか……あの時曹長はいなかったから、あの生物の名前を知らなかったのか 「先ほどジュビジーを捕食した生物の名前だ。マリがそう言っていた……今すぐ追え!」 「なるほど……了解であります!」 ……2人がデメマダラの向かった方向へ進み、しばらく時間が経過した 既にデメマダラを見失っており、2人はただ歩を進めているだけだった 「……しっかし、やたらと広い森でありますなぁ……軍服を森林迷彩に着替えれば良かったであります」 「うぅ……機関銃を無くしてしまうなんて……軽いサブマシンガンにすれば良かったです」 行けども木々ばかりで気が滅入ってきたのか、2人の声は気弱になっていた 「反省会は後でしろ、今は戦闘に集中するんだ」 少佐のヘッドセットを借り、自分が2人に言葉をかける 「……そうだな、一度2人とも拠点に帰投してはどうだ? 今の装備では心許ないだろう」 後ろの少佐に振り返りながら2人に提案をする……少佐も頷いているから、反対ではないらしい 「……そうですね、さっき少し戦って思ったのですが……マリさんが本気を出したら剣1本では立ち向かえないと思いますので、一度装備の補充に向かいます」 「自分は着替えと弾倉の補充、それとミサイルランチャーを取りに戻るであります……今の武器では、ペレットすら破壊できなかったのであります」 2人の意見を聞き、少佐にヘッドセットを返した 「よし、2人とも拠点への帰投を許可する」 少佐の言葉を受け、2人は拠点へと歩を進めた…… 戻る 続く
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カード右下のアイコンについて 攻撃力(ATK) 防御力(DEF) スピード(SPD) 体力(LP) ブースト(BST) 個体値加算表 神姫固有武器補正 個体値の排出率 アップデート履歴 コメント カード右下のアイコンについて 個体値と呼ばれる。 いわゆるプラスアビリティ。 常時発動でマイナス補正は無い。 神姫やレア度は関係なく、アイコンの分だけ加算される模様。 ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ 現在1個、2個、5個のパターンが確認されている。 5個パターンには武装Cost+10されているもの(通称6V、キャパオバ)が存在する。ステータスに差はない。 0個、その他のパターン、同アイコン複数パターンはない。 基本的にどのパターンも合計で+100の値がステータスに加算されるよう割り振られる。 正確ではないが単純な例として、 1V=100 2V=50 50 5V=20 20 20 20 20 つまり必ずしも5Vが強い訳では無いということ。 詳しい値はページ下部へ。 1Vにおいて以下は確認されていない。 黄色の足(スピード) 2Vにおいて以下の組み合わせは確認されていない。 黄色の足(スピード) + その他アイコン 赤色の剣(攻撃力) + 灰色のLP(体力) 緑色の盾(防御力) + 水色の円(ブースト) ※ただし期間限定で印刷出来た謹賀新年「ストラーフ」のみ黄色の足(スピード) +水色の円(ブースト)かつコスト+10の変則仕様、無論通常の神姫購入では存在しないパターンである。 【本当は武装Cost+10カードなのに裏面の印刷に反映されていないカードが存在する】 例:ゲーム内では武装Cost80表記なのにカード裏面では武装Cost70表記。 稼働初期、武装Cost+10(6V)神姫なのにカード裏面の印刷に反映されない不具合があったが、 これは2021年1月7日のアップデートで修正された。 プレイヤー達は「仕様」なのだと思っていたが修正で「不具合」だと理解。 1/6以前に印刷した手持ち神姫やフリマサイトの5Vが「本当は6Vなのかも知れない」と留意しておこう。 攻撃力(ATK) 一番左、赤色の剣のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「攻撃力」 ATKのみ ATK+α 5つ全て +100 +50 +25 防御力(DEF) 左から二番目、緑色の盾のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「防御力」 DEFのみ DEF+α 5つ全て +250 +125 +50 スピード(SPD) 左から三番目、黄色の足のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「スピード」 現在5つ全てのアイコンが揃う場合にのみ出現。単体、これと他セットでの出現は確認されていない。 例外で期間限定で印刷出来た謹賀新年「ストラーフ」はBSTとの組み合わせである。 SPDのみ SPD+α 5つ全て なし +30 +25 体力(LP) 左から四番目、灰色のLPのアイコン ゲーム内での正式な呼称は「体力」 LPのみ LP+α 5つ全て +500 +250 +125 ブースト(BST) 左から五番目、水色の円のアイコン ゲーム内での正式な呼称は「ブースト」 BSTのみ BST+α 5つ全て +500 +250 +125 個体値加算表 ATK値は神姫/レアリティによって補正がかかっているため、表の通りではない。 ATK DEF SPD LP BST ATK (100) 0 0 0 0 DEF 0 250 0 0 0 LP 0 0 0 500 0 BST 0 0 0 0 500 ATK/DEF (50) 125 0 0 0 ATK/BST (50) 0 0 0 250 DEF/LP 0 125 0 250 0 LP/BST 0 0 0 250 250 SPD/BST 0 0 ? 0 250 ALL (25) 50 25 125 125 神姫固有武器補正 得意武器を装備するとATK値にプラス補正が、苦手武器を装備すればATK値にマイナス補正がかかる。 マスクデータだが、実際に装備した時のATKの上がり方や、神姫ハウスでの台詞、2021.1.28発売のカードゲーマーでおおよその判断ができる。 当wikiでは各神姫に個別で掲載。 個体値の排出率 この数値でほぼほぼ間違いなさそうである。 個体値 排出率1V 48%(12% 12% 12% 12%)2V 48%(12% 12% 12% 12%)5V 3%6V 1% 出典:5ちゃんねるバトコンスレ「武装神姫 バトルコンダクター part11」 479 アップデート履歴 日時:2021.5.26 内容:ATK以外の個体値の上方調整。当wikiは最新のもの。過去のデータは公式お知らせ参照。 コメント 名前 コメント
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雨が降り注ぐ近代都市を、重武装の神姫が滑るように移動していた。 その神姫は背中のブースターを全開にし、その巨躯からは想像もつかないほどの速度でビルの谷間を翔ける。 その姿は・・・神姫と言うよりは・・・・一体の機動兵器の様だった。 「・・・・・・・・目標確認、破壊、する」 機動兵器の彼女は小声でそう呟く。元々声の大きい方ではないからだ。 『うん。なかなか調子がいいじゃないか。ブレードよりもこう言う兵器系に向いてしまったのはなんとも皮肉なもんだが・・・・まぁいいか。それよりもノワール』 「なに」 『今日一日の感想はどうだい?』 「・・・・・それを・・・どうして・・・・聞くの?」 ノワールはそういいながらビルの陰から現れたターゲットを破壊する。 右手のライフルの残弾は・・・・残り僅か。 『どうしても何も、ハウはもう寝てるしサラに聞くわけにもいくまい。私達が見たのは暗闇で何か話していた二人だけだ』 「・・・・・・・・・・・」 彼女の主の言葉を無視しマグチェンジ。 その間も左手に装備したライフルは火を吹き続けている。 『おぉっと。わからないという返答はなしだよ? 具体的な意見を聞くまでは、このトライアルは終わらないし終わってもその武装は使わせてあげませんからね?』 多分、クレイドルで寝ている自分の傍にはニヤニヤ笑った主がいるのだろう。ノワールはそう思った。 意地が悪い。 「・・・・多分・・・二人・・・好き合った・・・・でも・・・・」 ・・・・でも、なんだろう? 何か違うような、そうでないような。そんな感じがする。 『・・・・ふむ。つまり微妙な状態なわけだな』 とうとう右手のライフルの残弾がなくなった。 ノワールはライフルを捨てると、左手のライフルを右手に持ち返る。 そのまま空いた左腕で、近くまで来ていたターゲットを殴った。ターゲットはよろめき、その隙にライフルで止めを刺す。 それと同時にアラームが鳴り響き、ノルマをクリアした事を知らせた。 『ん? 随分と早いな。もう二百体倒したのか。・・・・・AC武装は物凄い相性がいいな。メインこれで行こうか』 「ヤー、マイスター」 * クラブハンド・フォートブラッグ * 第十九話 『出現、白衣のお姉さま』 「ちょっと! 何で起こしてくれなかったのよ!! 遅刻確定じゃない!!」 「そうは言われましても。何度も起こしたのですが・・・・まさかハバネロが効かないくらいに眠りが深いとは」 「どおりで口の中がひりひりするわけね! 毎度の事ながらあんたには手加減って言葉が無いの!?」 「――――――わたしは相手に対し手加減はしない。それが相手に対する礼儀と言うものなのです」 「無駄に格好いい!? あんたいつからそんなハードボイルドになったの!?」 「時の流れは速い・・・というわけでハルナ。わたしと話すより急いだ方がいいのでは?」 「あんたに正論言われるとムカつくのはなぜかしらね・・・・?」 朝、目が覚めたときにはもう八時を過ぎていた。 普段私を起こすのはサラの役目だけどさ。流石にこういうときは起こしに来てよお母さん・・・・・・。 大急ぎで制服に袖を通し、スカートのファスナーを上げる。 筆箱は・・・あぁもう!! 「何か学校行くのがだるくなってきた・・・・休もうかしら」 私がそういうと、サラが驚いた顔で見つめてきた。 え、なに? 「・・・・珍しいですね。普段なら遅刻してでも行ってたのに。と言うか無遅刻無欠席じゃないですか。行ったほうがいいのでは?」 「ん・・・でも何か面倒になっちゃってね。・・・別にいいじゃない。たまには無断欠席も。それに・・・・・」 学校には、八谷がいる。 昨日の今日でどんな顔をしたらいいのか判らない。 お互いにはっきり言葉にしなかったとはいえ・・・・OKしちゃったわけだし。 「うん、決めた。今日はサボる。サボって神姫センター行って遊びましょう!」 「・・・・・まぁ、別にいいですけれども」 そうして辿り着いた神姫センターには、当たり前と言うかなんと言うかあんまり人がいなかった。 まぁ月曜日だし午前中だし。来ているのは自営業さんか私みたいなサボり位だろうけど。 それでも高校生と思しき集団がバトルしてたのは驚いた。まぁ多分同類だと思うけど。 ・・・・でも強いな。あのアイゼンとか言うストラーフ。 砂漠なら・・・勝てる、かも? 「それにしてもなんだか新鮮ですね。人が少ない神姫センターというのも」 「平日はこんなものじゃない? 仕事や学校あるし。・・・・あぁでも最近は神姫預かる仕事も出来たんだっけ」 「そんな職業があるのですか。なんと言うか、実にスキマ産業的な・・・・所でハルナ、わたしは武装コーナーを見たいです」 私はサラの言葉に苦笑しながらも、センターに設けられた一角に向かって歩き出す。 このセンターは武装やら神姫本体やら色々揃ってたりするので結構お気に入りだ。筐体もリアルバトル用とVRバトル用の二種類を完備してるし。 とりあえず売り場についた私はサラを机に乗せ、商品を自由に見せて回る。・・・・買うつもりは無いのよ。 そうこうしているとサラが一挺の拳銃のカタログを持ってきた。 「ハルナ、このハンドガンなんてどうでしょうか」 「・・・いや、そういうの良く判らないんだけど」 「なんと!! ハルナはこの芸術品を知らないと!? このマウザーは世界初にして世界最古のオートマティックハンドガンなのです。マガジンをグリップ内部ではなく機関部の前方に配置しているのが特徴でグリップはその特徴的な形から『箒の柄』の異名で呼ばれています。かつては禿鷹と呼ばれた賞金稼ぎ、リリィ・サルバターナや白い天使と呼ばれたアンリが使用した銃として有名ですね。さらにこの銃、グリップパネル以外にネジを一本も使用しないというパズルのような計算しつくされた構造を持っておりこの無骨な中に存在するたおやかな美しさが今もマニアの心を魅了し続けて ―――――――――――」 「あ、この服可愛いー。でもレディアントはサラに合わないかな」 「ひ、人の話を聞いていないッ!? そして何故ハルナではなくこのわたしがこんなに悔しいのですかっ!?」 ふふん。ささやかな復讐なのよ。 「でもさ、だったらそんなへんてこな銃じゃなくてこっちの馬鹿でかい方が強いんじゃないの?」 「ぬ・・・わたしのツッコミを無視して話の流を戻すとは。いつの間にそんな高等技術を・・・・それはともかく、確かに威力が多きければ強いと言えなくもないですね。でもそのM500は対人・対神姫用としては明らかにオーバーパワーです。リボルバーですから装弾数も期待できませんし」 「ふぅん。数ばらまけないのはきついわね」 威力だけじゃ勝てないってことか。 サラのマニアックな説明はそもそも理解する気が無いけれど、戦闘に関してはさすが武装神姫。私よりも知識が多い。 ・・・うん、この後バトルでもしてみようかしら。 どうせ暇だし、作戦を立てたり実力を図る意味でもバトルはしたいし。 「ねぇサラ。この後さ ――――――」 「ん? こんなところで何をやってるんだお前」 と、サラに話しかけようとしたら逆に後ろから誰かに話かけられた。 振り向くと・・・・そこにはなぜか白衣を着たお姉ちゃんが立っていた。胸ポケットにはノワールちゃんだけが入っている。 「え、何で白衣?」 「第一声がそれかね。これはバイトの仕事着だよ。それよりもお前、何でこんなとこいるんだ? サボりか」 「え、えと・・・・それはですね・・・なんと言うか」 まずいことになった。 そういえばここら辺はお姉ちゃんのテリトリーだったっけ。 ここで見つかってお母さんに告げ口されたら・・・・! 「ん・・・あぁ別に怒ってるわけじゃないんだよ。サボりなら私もよくやったさ。仲のいい三人組で遊びまわったもんだ」 そういってお姉ちゃんは笑った。 よかった。告げ口されたらどうしようかと。 「そっか・・・・そういえばハウちゃんはどうしたの? ノワールちゃんだけだけど」 「アイツは定期健診。今神姫用医務室にいるよ。それよりも、暇だったら一戦やらないか? 今バイトの方も暇だしな」 お姉ちゃんはサラの方をチラリと見ながらそう言った。 サラがどうかしなのだろうか。 「うん、いいよ。それじゃ筐体の方へいこう。・・・サラ、おいで」 「承知です」 断る理由の無い私達はお姉ちゃんの誘いに乗った。 戻る進む
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初回ログイン 無料パーツプレゼントKONAMI IDを作成し、武装神姫(バトルロンド・ジオラマスタジオ問わず)に最初にログインした時点で以下のアイテムがプレゼントされます。 忍者型フブキ 一体 忍装備 一式 武器「忍刃鎌“散梅”」 腰装備「忍草摺“紫蘭”」 胸装備「忍装束“紫苑”」 急速バッテリー充電器 10個(使うとなくなってしまう消費アイテム) 武装パーツ試用チケット 3枚(使うとなくなってしまう消費アイテム) その他補足他の忍装備は アチーブメント を達成すると貰えます大手裏剣“白詰草”はアクセスコードを入力すると貰えますhttp //www.shinki-net.konami.jp/info/tgs2006rpt.html 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/battlerondo/start/campaign.html
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舞い踊る、白鳥の乙女達(前編) GWには遠い休日。私・槇野晶と三人の神姫は、秋葉原の神姫センターへ 足を運んだ。目的はただ一つだけ……3on3形式バトルでの勝利である! 武装運搬専用ケースも三人分の重量となり、この小さな躯には少々辛いが ロッテは無論の事、アルマとクララも三人共に戦う事を望んでいるのだ。 そうとなれば、“姉”たる私は全力で応えねばならない。そう言う物だ! 「あ、マイスターお帰りなさいですの~。参戦申請通りましたの?」 「有無、軽量級ランクの確認だけだったぞ。対戦ナンバーは、18」 「うんと……17番目との対戦ですね。えーと、相手の名前は……」 「……あれかな。“黒鳥の戦鬼”って登録ネームになってるんだよ」 そう言って武装を着込んでいるクララが示した電光掲示板には、確かに “黒鳥の戦鬼”なるユニット名と、所属神姫タイプが表示されていた。 私はここで、奇怪な事に気付く。相手神姫は三人とも同タイプなのだ。 それで“黒鳥”……どうやら、私達の商売敵とも言うべき相手かもな。 「なるほどな……精一杯蹴散らしてこい、“夜虹の戦姫”達っ!!」 「や、やこう?……えっと、それがあたし達のユニット名ですか?」 「……夜の虹、オーロラ。ボクらの三色も並べればそれっぽいもん」 「わたし達の二つ名だって全部“せんき”ですの。だから、ねっ?」 「深い意味があるんですねぇ~……分かりました、マイスターッ!」 準備も整い、程なくアナウンスが掛かって私達はブースへと移動する。 重量級ランク用の追加ポッドがあるそれは、本来多人数のエントリーに 対応する為のシステムを流用した物であった。なるほど、経費節減か。 さて、三人をエントリーゲートに入れて相手を確認……って待てッ!? 「灯!碓氷灯かッ!?貴様、こんな所で何をしているんだおい!」 「あ、灯じゃありませんな。碓氷なんてそんな人知りませんなっ」 「嘘を付け、そのバリトン用ボイスチェンジャーとサングラス!」 「う……お、お久しぶりですな。晶ちゃん、相変わらず厳しくて」 「そう言う貴様は、まだ人前が怖いのか。不審な幼女だぞこれは」 “目”を相手に見られたくないと、蛙の様な巨大サングラスを着用し、 わざわざ機械で鈴の鳴る様な可愛い声を、渋いバリトンに変える幼女。 碓氷灯。私の遠縁の従姉であって、年に数度も合わぬ様な遠い間柄だ。 この通り変人で、首都圏を半端に離れた山奥から滅多に出ぬ臆病者だ。 ……待て、誰だ『お前も十分変人だ』とか洩らしたのは。死にたいか? 「幼女って、晶ちゃんも十分幼女じゃないですかいな……って、あわわ」 「灯……貴様は私を怒らせるのが何時も上手だな、後で梅干しだぞッ!」 「えーと、君達そろそろ着席してもらえるかな?機械はセット出来たし」 見かねたセンター係員に窘められ、私達はお互いオーナー席に……ん? なんで灯が“相手側の”オーナー席に座るんだ?……まさか、奴が!? どういう事なのか良く分からんが、戦いの手を緩める事は絶対できぬ。 試合開始の合図を待ち、地形確認を行う……月面基地、低重力環境か! 『夜虹の戦姫vs黒鳥の戦鬼、サード3on3・第9戦闘、開始します!』 「よし。散開して、αをベースに柔軟に対応してくれ」 『はいッ!!!』 「ミラ、イリン、ティニア。教えた通りに、できるかな?」 『姉様、自分に自信を持って!』 “Heiliges Kleid”姿の三姉妹が散開するした後、相手を確認する。 それはさながら戦乙女を標榜する此方に、挑戦するかの様な娘達だ。 リミテッドエディションのブラック・アーンヴァルをベースとして、 流出した第五弾のパーツを多分に盛り込んだ、同型機の神姫が三人。 意図的なのか、遠いとは言え親族故の共鳴なのか。複雑な心境だな。 「そう……この娘らの御陰で、灯は変われたのですよねっ」 「……なるほど、そう言う事か。だが手加減はせぬぞ!」 アーコロジー(完全環境都市)化された月面基地に聳えるビルを、三人の “黒翼の天使”が飛び越えていく。通常の20%以下に設定されている 重力係数は空を飛べない神姫に福音となる物の、デメリットとて多い。 射撃武器の弾道計算を変えねば命中精度が落ちるのは、その代表格だ。 「この環境は、ちょっと不安ですの……まずは、一射ッ!」 「きゃっ!?ミラ、怒りますよ!ええいっ!」 「きゃあっ!ここは……しまった、挟撃ッ!?」 「まずは、一人。イリンが掴まえた……っと!!」 案の定、普段は精緻なロッテの“ムラクモ”による狙撃弾も逸れた。 重力設定による数値変動は計算していたが、まだ足りなかったかッ! 慌てて後退を図るビル上のロッテを、二人目の“天使”がホールド。 完全に宙づりとされてしまった。相手を一人ずつ潰す作戦か……!? 「ティニアのキャノンランサーで、往生してくださいッ!!」 「そうは、行きませんッ!!やぁぁーっ!!!」 「きゃう!?み、ミラッ!」 銃剣……というよりはレーザーキャノンを組み込んだ槍が向けられる。 だがそうはさせじと、ビルを駆け登り加速したアルマが殴りかかった。 “マサムネ”の一撃を受けて怯んだティニアはあっさり後退する。だが ロッテとイリンを中心とした反対側には、狙いを付けるミラがいたッ! このままではロッテが危ない。そう判断して叫ぶ前に、彼女が動いた! 「いい加減、お姉ちゃんを降ろしてほしいんだよ……イリンさん!」 「うきゃ!?い、糸が脚に……きゃあああぁっ!!!」 「ミラちゃん!?く、ううう~……!」 「ブースター全開、一斉に“プラグアウト”して離脱……だよっ!」 「きゃあぁぁっ!し、痺れる~!?」 イリンの脚に“ヘル”を絡みつかせたクララが、遠心力を付けながら 二人に指示をする。“シラヌイ”によるスタン攻撃も併用しながら、 立て直しの為、ロッテへの照準補正を極力妨害しようという狙いだ。 その指示に応じて二人はバックルに手を添えて、クララも同調した。 それはイリンを振り回し終えたクララがミラに近付く、好機だった! 『Plug-out!』 「きゃあああぁぁっ!?」 「よし、Y時3smに全基投下する!移動してくれ!」 弾け飛ぶ硬質の羽衣を浴びて、“天使”達に確実な傷が与えられる。 決して致命傷ではないが……“SSS”を投下するには十分な隙だ。 Y時……即ち、三姉妹それぞれに対して“Y字”方向3smの所へ、 サイドボードにセットした三基の追加装備“SSS”を、投下する。 「痛ぁ……って、何あれ?ぷちマスィーンズ!?」 「“スヴェンW”!わたしの所へッ!」 「“ファルケンS”!あたしはここですよ!」 「“ビルガーG”、ボクはこっち……!」 「クェェェェーッ!!!」 ──────集う三羽の翼。これが、戦乙女の頂点なの! 次に進む/メインメニューへ戻る
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与太話6 : 第二次戦乙女戦争 それはもはや理由にすらならなかった。 胸の奥に秘めた乱脈を溢れさせたのは、結果。 彼女達戦乙女にとって、この結果こそがすべてだった。 与り知らない意思が一つの決定を下した。 帰結たる決定は彼女達が変貌することと同義だった。 死者を選別する女神は、死者を生み出す死神へ。 羽飾りを返り血で赤く染め、幾多の首を刎ねた剣は鋭さを失っていた。 それでもなお、彼女達は戦場を彷徨い続けた。 結果という終末を繰り返すだけの、行先の無い執念。 広く響くセイレーンの美しい歌声を掻き消すように。 ワルキューレのみっともない僻みの雄叫びが戦場に汚く反響した。 正直なところ、俺はエウクランテの良さをこれっぽっちも理解できない。 怒らないでほしい、誰にだって好みはあるだろう。 社会に跋扈する武装神姫オーナーすべてが、どの神姫であっても愛でられるわけではないはずだ。 アルトレーネだって当然 「パッケージの凛々しい表情に騙された」 などの批判的意見があるわけだし、つまり、コンセプトの異なる神姫を並べてどちらが優れているかと考えるだけ時間の無駄なのだ。 だから決して俺はエウクランテを所持するオーナーに喧嘩を売りたいわけではなく、背比弧域としてはエウクランテよりアルトレーネのほうが良いんじゃないでしょうかと、声高に叫びたいのです。 「だ、だからな、その……」 「分かってますって。心配しなくていいですよマスター」 アルトレーネ再販プロジェクトが頓挫して、その次に同じ道を辿ったはずのエウクランテがどういったわけか再販されることととなり、俺はあの日の狂騒を思い出していた。 不人気と指を刺され目の輝きを失った戦乙女達の、仁義なき戦い。 あの悪夢が再び繰り返されるかと思われたが、エウクランテ再販を知ったエルの反応は予想に反して穏やかだった。 「私は私で、エウクランテはエウクランテです。それにメーカーも違いますしね。私はディオーネの勇気ある号令を待つだけです」 日曜日の正午。 連日の猛暑は今日も和らぐことはなく、パソコンは過剰に熱を持ちブオンブオンと排熱する。 マウスを抱えるようにして操作していたエルはパソコンを離れ、クレイドルに寄りかかった。 「もちろん悔しい気持ちもありますけど、こんなことで自分を見失っちゃったら戦乙女の名折れですからね」 「そっか。いつのまにか成長してたんだな、エル」 「えへへ♪」 自分の神姫がどれほどの人気を集めてるのか、そんなことはエルのデレデレした笑顔を見たらどうでもよくなってくる。 エウクランテが再販されたって俺達に関係はない。 発売予定のゲームのオープニングムービーに何故かアルトレーネの姿が見当たらなくても……いや、これはちょっとどうかと思ったけど。 俺とエルの間にある絆さえしっかりしていれば、他種がどうであれ気に病まなくてもいい。 「でもちょっと気にしちゃいますし、体を動かしてストレス発散したいです」 「じゃあ行くか、神姫センター。もしエウクランテが相手になっても落ち着いて戦えよ」 「あはは、善処します」 そう言ってエルはロングコートを羽織った。 心を持つ神姫は人と同じように過去から学ぶ。 あの日アルトレーネ達によって巻き起こされた第一次戦乙女戦争(あの神姫センターではそう呼ばれている)は多くの神姫のCSCにトラウマを植えつけた代わりに、平和の尊さを広く伝えた。 同じ過ちはもう二度と繰り返さない。 誰もがそう誓った。 そう信じていた。 そして結果的に、信じた俺達はバカだった。 姫乃を誘おうとしたけど、今日は朝から出かけていたらしい。 休日になるとこうしてフラッとボロアパートを抜け出して、一人で電車に乗って旅に出るのが姫乃の趣味だ。 本人は自分探しと言っているが、持ち帰ってくるものは本当の自分などではなくバス釣り用のルアーや賽銭箱に引っかかっていた招き猫の写真など、反応に困るものばかりだ。 一人旅だから俺はもちろんのこと、ニーキすらも置いていく姫乃だった。 「神姫センター行くけど、ニーキも来るか?」 「留守を預かった身だからな、遠慮しておこう」 神姫センター二階バトルスペースはいつもどおり、数台の筐体でドンパチやっていた。 第一次戦乙女戦争のような狂った雰囲気もなく、誰もがバトルに熱中していた。 エルと同じように、誰もが過去の過ちに学び、今を楽しんでいる。 一つの筐体でバトルが終わり、パラパラと拍手が聞こえてきた。 そして順番を待っていたオーナー達が新たに筐体についた。 「マスターマスター、あそこの次のバトルって」 胸ポケットからエルが身を乗り出した。 「アルトレーネ対エウクランテだな」 「これはもうアルトレーネを応援するしかないです。行きましょう」 その筐体のステージは砂漠だった。 アルトレーネ側に近いところで観戦しようとすると、俺の周りの観客もほとんどがアルトレーネとそのオーナーであることに気付いた。 「エウクランテにだけは負けちゃいけないのです! 絶対絶対勝つのです!」 「で、でももし負けちゃったら私達って……」 「そこ! 弱気なことを吐くとはそれでも戦乙女ですか!」 「黙って見てるざぁます。このおニューの胸当てに唾を飛ばさないでほしいざぁます」 「ふぁいと、おーなのです。にぱ~☆」 筐体のもう半分、エウクランテ側にはエウクランテとそのオーナー達が集まっていて、中心で色分けされた筐体にサッカーのスタジアムを思い出す。 頭を一瞬、フーリガンという不吉な単語が過った。 「再販を記念して、絶対勝たなきゃいけないよ!」 「今日さ、マスターの妹に『あたしおおきくなったらえうえうをペットにする~』って言われたんだ……」 「こ、子供の言うことだし悪気はないと思うよ。かわいい妹さんじゃない」 「お前の正義を見せてみろ同胞よ! 熱く激しく燃え上がるんだ!」 「ちょっ、耳元で叫ぶなようるさい」 対戦する神姫二人が砂漠の両端に現れた。 アルトレーネもエウクランテもどちらも標準装備に身を包んでいる。 見た目だけで言えば重装備のアルトレーネに分があるように思われるが、足場の悪い砂漠では空中戦がメインのエウクランテのほうが有利か。 《 G E T R E A D Y ? ―――― A T T A C K ! 》 フリューゲルモードのアルトレーネよりも先に、エウクランテが飛び上がった。 バトルの展開はあまりに一方的だった。 「『 レ ギ ン レ イ ヴ ! 』」 空中戦では手も足も出ないと判断したアルトレーネはスカートを通常形態に戻し、そのままスカート先端の鋏でエウクランテの翼を捉えた。 押さえつけてラッシュを仕掛けようと副椀を引き、それが放たれるより先に、エウクランテは急上昇した。 「わあああっ!?」 エウクランテにぶら下がるように、アルトレーネは高く高く引かれていった。 アルトレーネはエウクランテを捉えたんじゃない。 空を飛ぶ者を、地上からちょっとスカートを伸ばしたくらいで捉えられるはずがない。 アルトレーネは罠に誘われ、乗ってしまっていた。 危機に気づき慌ててスカートを離してしまった瞬間、エウクランテの勝利は確定した。 「『 フ ァ ン ト ム サ ラ ウ ン ド ! 』」 分身したと錯覚してしまうほどの、二刀流による超高速の連続斬撃がアルトレーネを襲った。 観客のこちら側からは悲鳴が、エウクランテ側からは歓声が上がった。 力無く空中に投げ出されたアルトレーネのさらに上、エウクランテは胸の前で剣を交差させた。 「『 ク ロ ス サ ウ ン ド … 』」 先の衝撃から抜け出せていないアルトレーネにダメ押しの十字斬りが叩き込まれた。 「『 エ フ ェ ク ト ォ ! 』」 遙か上空から叩き落とされ、アルトレーネは見てる俺達が怖くなるほどの速度で砂漠へ墜落し、砂塵を巻き上げた。 二人はあまりに格が違いすぎた。 アルトレーネはまだバトル慣れしていないようだったが、それ以上にエウクランテの戦闘技術がずば抜けていた。 デフォルトの武装を装備しているのが不思議なくらい、このエウクランテがかなりの経験を積んでいることは誰の目にも明らかだった。 アルトレーネのLPはまだかろうじて残っているものの、もはや戦闘を継続できる状態ではない。 アルトレーネのオーナーは悔しそうにサレンダーボタンに手を伸ばした――その時。 爆音と共に、再び砂塵が舞った。 「ば、爆発!? アルトレーネが爆発しちゃったのです!」 「いや違う、上だ!」 ギャラリーの一人が指差した先、エウクランテは大型のランチャーを構えていた。 両手に持っていた剣も含め複数の武器で構成されたそれは…… 「『テンペスト!』あの神姫追い討ちをかけやがったざぁます!」 エウクランテはオーバーキルの一撃を放っていた。 これにはさすが抗議の声が上がった。 「ふざけんなよオマエ、どう見たってさっき終わってたじゃねえか!」 「その通りなのです! いくらなんでも酷過ぎるのです!」 「エレガントじゃないざぁます! エレガントじゃないざぁます!」 「おいお前もコイツのマスターなら止めろよ! マナー違反だろうが!」 合体させていた武器『テンペスト』を分解しながら、エウクランテはゆっくりと下降した。 アルトレーネ側のギャラリーからのバッシングを一身に受ける中、しかし顔色ひとつ変えずにボソリと呟いた。 「不人気のくせに」 『いやいやおかしいやろ。そら悪いのは暴言吐いたエウクランテやろうけど、どうやったら大乱闘まで発展するんよ?』 どの筐体からも聞こえてくる崩壊の音と阿鼻叫喚。 「いつまで立っているつもりですか、目障りです! さっさとわたしたちの前に這い蹲るといいのです!」 「またこれかよクソッ! アルトレーネって欠陥品じゃないのか!」 目の輝きを失った戦乙女達による、目も当てられない乱闘劇。 「おまえら再販の話があるだけマシじゃないか! ウチら夏の王者なんて忘ればぎゃっ!?」 「あれ? 今、虫を踏み潰した気がしたのです。でもきっと気のせいなのです」 どの筐体にも多数の神姫が次々と乱入していき、サレンダーボタンにはやはり【何か】が引っかかって押せなくなっていた。 「カグラ、ほむほむ、あの憎たらしい鳥をやっちゃいなさい」 「ホムラと呼――ぬうっ!? 重武装がこれだけ集まるとさすがに厄介だ」 「なんでワガハイばっか狙うにゃ!? ワガハイがなにしたにゃー!!」 アルトレーネ VS その他神姫。 過去に学び努めて冷静だったアルトレーネ達はしかし、心の奥底に溜め込んでいた再販という勝者への嫉妬を【不人気】という言葉で爆発させた。 第一次戦乙女戦争と同じような状況に陥った俺は、やはりあの時と同じように竹さんに電話をかけて泣きついた。 筐体から離れて電話しているが、眺める光景は前回とほとんど同じだ。 この状況まで発展するのにそう時間はかからなかった。 卑劣なオーバーキルで勝利を収め、さらに言ってはいけないことを口に出してしまったエウクランテに制裁を加えようと、怒り狂ったアルトレーネ達は筐体へと入っていった。 それを見たエウクランテ側も制止に入ろうと乱入していった。 いい加減この自由に乱入できるシステムはなんとかしたほうがいいと思う。 『んで、そのエウクランテはどうなったん?』 「速攻でリタイヤした。いくら強くても十数人から一斉攻撃されちゃなあ」 制止を振り切った数多の攻撃がエウクランテに届く直前、あの鉄面皮が剥がれ 「ヒッ!?」 と短く悲鳴を上げたのは痛快だった。 同族により筐体の外へ担がれていったボロ雑巾はオーナーの手に渡り、オーナーは逃げるようにバトルフロアから去っていった。 もう二度と、彼をこの神姫センターで見ることはないだろう。 これにて一件落着……とはいかなかった。 筐体に乱入したアルトレーネ達とエウクランテ達が小競り合いを始めたのだ。 『アルトレーネもエウクランテもそんなケンカっ早い性格やないと思うんやけど』 「それとこれとは話が別だぜ竹さん。注文数が足りずに再販されなかった神姫が、同じく注文数不足だったにもかかわらず再販権を掴んだ神姫に【不人気】と言われたんだ。これは十分な理由になるだろ」 「いや、うん……そんなもんかねぇ」 今回は明らかにボロ雑巾に非があった。 それは残ったエウクランテ達も分かっていただろうし、アルトレーネだって事を大きくするつもりなんてなかったはずだ。 砂塵の中で一瞬だけ睨み合った彼女達は互いに背を向け、筐体から出ていくはずだった。 あの発言さえなければ。 『なに言われたん?』 「エウクランテの一人がさ、『ちょっと今のはやりすぎでしょ。自分達が再販されなかったからって僻んでるんじゃないの』ってね」 『それでキレたんやね、エル達は』 「そうなんだよ。ストレス発散のために来たってのに、逆にストレスが限界突破したぜ」 エウクランテをボロ雑巾にした攻撃のうち半数がアルトレーネおなじみの『ゲイルスケイグル』で、その中にはエルの剣も混じっていた。 エルは今、砂漠に埋もれかかった瓦礫を足場にフィールド上を駆け回り手当たり次第神姫を襲っている。 前回と違って見通しが良いから見失うことはないけど、だからといって俺に出来ることは何も無かった。 『怒り狂ったアルトレーネとエウクランテが暴れて、それに感化されるなり止めようとするなり面白半分で乱入する神姫がどんどん増えていって、今に至るってわけ?』 「いえーすざっつらいと」 『第二次戦乙女戦争勃発やね。このまま三次四次って続けて、そこの神姫センターの名物にしたらどうかね』 「投げ遣りなこと言わないでさ、頼むよ竹さん、また今度も助けてくれないか」 『そうしたいんは山々なんやけど、今ちょっと仕事で遠出しとるんよ』 「仕事って物売屋の?」 『そ。犬が一瞬で猫になる現象を解明せんといかんのよ』 犬が? 猫に? なんだって? 『コタマも連れてきとるし、ホントにごめんやけど私は力になれんわ。兄貴がおったら楽に解決できそうやけど今日はマシロ連れて出かけとるしねえ』 電話の向こうでう~んと悩んでくれている竹さんにこれ以上頼むのは申し訳ないと思った。 「仕事の邪魔して申し訳ない。自分でどうにかしてみる」 『ちょうど休憩しとったとこやし大丈夫よ。でもあんま無理しちゃいかんからね』 「無理して止めたら恨みを買いまくりそうだ」 お礼を言って、通話を切った。 さて、竹さんが駄目となると次にかける先は決まっている。 電話をかけると、同じタイミングで二階と一階をつなぐ階段からピリリリリr…と着信音が聞こえてきた。 丁度階段を上がってきたしょっぱい顔の男は、ポケットから携帯を取り出し確認して、流れるような動作で携帯をポケットにしまった。 「おいコラ、電話が鳴ったら出ろよ」 電話をかけた俺が目の前に現れたのがよほど嬉しいのか、貞方は顔をおもいっきりしかめて「チッ」と舌打ちした。 「ストーカー行為ってか? 背比お前こんなことして一ノ傘さんに申し訳ないと思わねぇのか」 「自分にストーキングされる価値があるとか勘違いすんなよクソが」 「あ、あの、喧嘩はよくないと思います」 「無駄だよハナ姉、この二人の罵り合いはもう挨拶みたいなものだもん」 貞方は左右の肩にハウリン型ハナコとアルトアイネス型のメルを乗せていた。 姫乃お手製の赤いボロボロのマントを羽織った『ちびっ子ヒーロー』のようなメルとはよく顔を合わせていたが、ハナコは随分と久しぶりだ。 具体的に言うと俺がエルと出会って姫乃貞方と花見をした日以来だ。 (おかげさまで そうだ、神姫を買いに行こう~4/4 を投稿してから200日が経過しました。ここまでお付き合い頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します にゃー ) 「ようハナコ、久しぶりだな。検査してたんだって? 元気そうでなによりだ」 「はい。背比さんもお変わりなく」 ハナコは貞方の肩の上でペコリとお辞儀した。 相変わらず素直な良い子だ。 「で? 電話の用事は………………またコレかよ」 「エル姉もやっぱりいるんだよね、あの中に」 メルが指差した筐体のうち一つで、もう何度目になるかも分からない大爆発が起こった。 「いえーすざっつらいと」 「もう、なにやってんのさエル姉! お兄さんもちゃんとエル姉の手綱握ってないとダメでしょ!」 今回はちゃんと理由があったんだと言い訳しようとしたけど、言ったところで 「言い訳しないの!」 とさらに怒られそうだったから素直に謝った。 それにメルにはまた前のようにエルの正気を取り戻してもらわないといけないし、ここは少しでも機嫌を伺っておいたほうがいいだろう。 「まさか背比お前、またメルをあの中に投下しようとか考えてないだろうな」 「いえーすざっつらいと」 「最悪だなお前……また竹櫛さんに頼めばいいだろ、俺は知らん」 引き返そうとする貞方を留めようと手を引くと、貞方の両肩のエルとハナコが落ちそうになった。 「そう言うなよ、ここまで来たんだからちょっとくらい付き合えって」 「嫌に決まってんだろアホが。だいたいお前が――」 言いかけて、貞方は少しの間思案した。 考える姿が気色悪い。 「――いや、丁度いいかもな。ハナコ、腕が鈍ってないか試してみるか」 ハナコの返事を待たずに貞方はアタッシュケースを開いた。 その中に黒いスポンジが敷かれていて、神姫用のパーツが整然と並んでいた。 メルが使う可変スカートや、その中に隠す多種多様の武器も見受けられる。 貞方はケースの中から一塊のパーツを取り出した。 「なんだそりゃ。パイルバンカーか?」 「は? 槍に決まってるだろうが」 あまりにも貞方が当然のように言うものだから俺が間違えたような気になってしまうが、俺の知る【槍】は細長い棒の先に刃物がついているもので、それは決してバズーカの先から申し訳程度に尖った何かが覗いているような代物ではない。 バズーカのような部分にもゴテゴテと機器が付いている。 あれはグレネードランチャーだろうか。 俺はてっきり、グレネードランチャーはアサルトライフルの銃身の下に取り付けられるものと思っていた。 まさか槍にまで付く時代が来るとは、いやはや兵器の進化(退化?)はすごい。 このゴツい槍もどき以外の防具は普通のハウリンのものだった。 丸っこいデザインの防具をテキパキ装備するハナコは「この武装も久しぶりです」とやる気十分だった。 「貞方お前、検査上がりのハナコをこんな戦場に放り出すとか鬼かよ。勘を取り戻すためならもうちょいマシなやり方があるだろ」 未だ衰えることを知らないアルトレーネ達の狂気が充満する筐体に、健気なわん子を向かわせるなんて残虐非道にも程がある。 「お兄さんボクを戦わせようとしたよね……ボクはいいんだ……」 「あ、いや、そういうわけじゃなくてだな」 「なんてね、冗談。ハナ姉なら大丈夫だよ。そっか、お兄さんは知らないんだ」 「何を?」 早くも準備を終えたハナコを抱えたアタッシュケースに乗せた貞方は、手近な筐体に近づいた。 そして「攻撃してもいいんだぞ」「すみません、攻撃はやっぱりちょっと」と軽いやりとりの後、ハナコは混沌真っ只中の森林のステージへと足を踏み入れた。 貞方の肩の上、メルは得意気にこう言った。 「ハナ姉はね、この辺りで【ディフェンダー】って呼ばれてるんだよ」 『ディフェンダーね、結構有名やよ』 昼間の暑さが多少和らいだ午後十時。 クレイドルの上で自主的に正座しているエルを尻目に、竹さんに今日の顛末を教えとこうと電話した。 しかしまさか、ハナコがあそこまで凄いとは想像もしなかった。 森林のステージへ踏み入ったハナコは森へは入らず、森を二分割する川に沿ってステージ中心まで歩いていった。 第一次戦争でエルとメルが戦った場所に近い。 ステージのほぼ全域が木に覆われて見通しが悪い中、唯一障害物の無い川沿いを歩く神姫は格好の的になってしまう。 そこをあえて歩くハナコに目をつけた数対のアルトレーネは一斉に飛びかかった。 前から後ろから、右から左から、さらに上から襲い来る恥も外聞もない攻撃を、ハナコは完全に止めきった。 ハナコが持つゴツい槍もどきから複数のギミックが同時に解放され、ハナコを守ったのだ。 でも本当に凄いのはそれからだった。 それだけ高性能(と呼んでいいのかも分からないが)な槍もどきを持っておきながら、ハナコはアルトレーネ達から繰り出される攻撃をひたすら防御するだけで、能動的な攻撃を一切行わなかったのだ。 躍起になったアルトレーネが攻撃をさらに激化しようと、ハナコを襲う者が次から次に増えようと、ハナコは防御に徹していた。 そしてアルトレーネ達のほうが疲弊し毒気が抜け切るまで、ハナコが傷ひとつ負うことはなかった。 「貞方を褒めるわけじゃないけど、あれは凄いとしか言い様が無いわ。つーか、今までそのディフェンダーって二つ名を聞かなかったことが不思議でならん」 『ハナコって全然攻撃せんやろ? でも絶対攻撃喰らわんし、普通にバトっても勝負にならんのよ。やから貞方もあんまし戦わせんらしい。ハナコがあんましバトル好きやないってのもあるらしいけど』 「なるほどねえ。じゃあハナコって勝つことはないけど絶対に負けないんだ」 『いや、普通に負けとるよ』 攻撃を一切受けないのに、どうやって負けるんだ。 ダメージを負ってもないのに降参するわけもないし、判定負けだろうか。 『相手が例えば 「じゃんけんで勝負だ!」 とか言うやん? ハナコって優しくてそれに乗ってしまうんよ』 「しょうもない!」 そんな勝ち方で相手は満足するんだろうか。 一応二つ名を持つくらいの神姫相手に勝ち星を付けられるんだから、自慢にはなるだろうけど。 「コタマとハナコって勝負したことある?」 『無いね。やってみたら面白そうやけど』 冗談のような攻撃力と凄い防御力か。 矛盾って言葉ができたエピソードっぽいな。 「ドールマスターとかディフェンダーとか、二つ名っていっぱいあんの?」 『いや、他は聞いたことないねえ。エルにカッコイイ二つ名つけて名乗らせてみたら?』 「コタマとハナコに並ぶ神姫なんてそうそういないっての」 しょぼくれて正座する戦乙女が 【ソニックフリーク】 とか呼ばれてたら恥ずかしくて神姫センターに出入りできない。 しかし便利だな、この二つ名メーカー。 《エル》 と入力したら 《疾風戦機(ソニックフリーク)》 って出てきたけど結構それらしくないか。 『しっかし不人気ねぇ。コタマも今日そのことでギャーギャー騒いどったけど、人気ってそんな大切なもんかねえ』 「そりゃあ大切だろ。エルに聞いたわけじゃないけど、自分と同じタイプが人気出たら嬉しいに決まってる。竹さんだって、子供の頃 『アイドル歌手になりたい』 とか思わなかった?」 『こ、子供の頃? そ、それって、その、小学生とか?』 「いや、小学生に限定しなくてもいいけど」 『……まぁ、でも、可愛いものに憧れるってのはあったかもしれんけど』 これ以上は言いたくないらしく、竹さんは電話の向こうで口籠ってしまった。 神姫は戦うよう作られているけれど、同時にアイドルでもある。 戦って勝つためならゴリラのような大男でも作って鈍器やら自動小銃でも持たせればいいけど、誰だってそんなものは望んでいない。 人から望まれるように、彼女達武装神姫は存在する。 望まれることそのものが、彼女達にとってステータスの一つになる。 「ごめんな竹さん、今日は仕事の邪魔しちゃって」 『ん? 大丈夫やって、無事解決したし』 「解決って、昼間言ってたよくわからん事件だよな」 犬が猫になる? いや猫が犬になる? ああもうわけわからん。 「そうそう聞いてよ。その事件がねえ――――」 それからたっぷり二時間は竹さんと電話していた。 通話中ずっとチワワのように目を潤ませ何かを訴えていたエルの脚は限界を超えて、もはや自力で正座を崩すこともできなくなっていた。 こんなどうでもいい部分まで人体を再現するとは、恐るべし武装神姫。 開発者の努力に最大限の敬意を払いつつ、エルの脚を指でつついた。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ― エウクランテを悪役として登場させてしまいましたが、恨みがあるわけではありません。 不快に思われた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ― エウクランテ再販ですか。 アルトレーネは? ねぇアルトレーネは? でもそれ以上に、 な ぜ 再 販 決 め た し 再販プロジェクトで需要調査して、あれくらいの数なら利益出るってことだったんでしょうか。 商売というものはよく分かりません。 それと、もうベルンシリーズはお腹いっぱいです。 15cm程度の死闘トップへ