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初出 『Sweetプチ』2007年7月号 再録 『絶対恋愛Sweet』2010年8月号 あらすじ 女子高生の美々子は入院して、自分の担当になったリョウ先生に恋をする。 普段は行かない喫煙所に行った晩、美々子は偶然そこでリョウ先生に出会う。眠れないという美々子に、リョウ先生は「疲れれば眠れる」とペッティングをする。 それから喫煙所で逢瀬を重ねるようになった美々子とリョウ先生。リョウ先生に触れられた夜はよく眠れるようになった。 だが美々子はふと、リョウ先生に好きだと言われていないことに気付く。リョウ先生は自分にいたずらをしているだけなのではないかと不安になり、再び眠れない夜が始まる。 美々子の不安定な様子を察したリョウ先生。美々子は思い切ってリョウ先生に、より深い関係を迫る。 美々子の気持ちに応えるリョウ先生。愛がまだよくわからないという美々子に、リョウ先生は全部教えてあげると言ってくれる。 みどころ ありそうでなかった「先生」モノ。女の子から関係を迫ってしまう展開もどきどきです。 Amazonで購入 電子書籍で購入 電子貸本Renta! - LOVEカルテ~恋の病は進行中!~ Amazon Kindle
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編集長、オススメの漫画を教えてください2013 謎のあの店 スピ☆散歩 一番のブス 結婚しない彼女 シークは危険な恋人 傲慢シークにご用心 ナイショのラブまりあ~じゅ 逆転吉原 叱りじょうずな彼 大正ロマンチカ 華麗なる陰謀 LOVEカルテ~恋の病は進行中!~ おいしい彼を落とすには? 嫁と姑デラックス 屍活師 女王の法医学 コミンカビヨリ 歌うたいの黒うさぎ KISS 町でうわさの天狗の子 10DANCE 蜜色・DEVIL 嘘だらけの結婚 秘書のかなわぬ夢 さまよえる王冠 ミニシリーズ:パーソナル・タッチ! 身代わりのフィアンセ 虎蛇とブー子 まんがグリム童話 吉原 華の乱 まんがグリム童話 金瓶梅 天使に恋慕 禁断Loversマニア 被告人を調教3年に処する 不妊治療、やめました。~ふたり暮らしを決めた日~ 乙蜜マンゴスチン ,rules [ { "name" "AnyOther", "message" "気に入ったらシェアしてね!", "action" { "type" "button", "text" "Share this page", "verb" "share", "service" "preferred" } }, { "name" "Twitter", "match" { "referringService" "twitter" }, "message" "If you find this page helpful ", "action" { "type" "button", "text" "Tweet it!", "verb" "share", "service" "twitter" } }, { "name" "Facebook", "match" { "referringService" "facebook" }, "message" "Tell your friends about us ", "action" { "type" "button", "text" "Share on Facebook", "verb" "share", "service" "facebook" } }, { "name" "Google", "match" { "referrer" "google.com" }, "message" "If you like this page, let Google know ", "action" { "type" "button", "text" "+1", "verb" "share", "service" "google_plusone_share" } } ]}); /script !-- AddThis Welcome END -- }
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作品一覧 「残業手当あったかい!」(『恋愛美人if』2007年3月号掲載) 「ゆりかご」(『恋愛美人if』2007年4月号掲載) 「恋愛診断ユメみたい!!」(『恋愛美人if』2007年5月号掲載) 「class 4 dorothy」(『恋愛美人if』2007年6月号掲載) 「本能の眠る場所」(『恋愛美人if』2007年7月号掲載) 「LOVEカルテ 恋の病は進行中!」(『Sweetプチ』2007年7月号掲載) 「子供ゴコロ大人のアソビ」(『恋愛美人if』2007年8月号掲載) 「空色をうめてピンク」(『恋愛美人if』2007年9月号掲載) 「内緒ね色も恋も」(『ヒミツの恋SPECIAL(絶対恋愛SWEET2007年10月号増刊)』掲載) 「SEX」(『恋愛美人if』2007年11月号掲載) 「キラキラキラ!!」(『Sweetプチ』2007年11月号掲載) 「見えない恋の痕」(『恋愛美人if』2008年1月号掲載) 「おそろいの子❤(ハート)の子」(『絶対恋愛Sweet』2008年1月号掲載) 「出張報酬やわらかい!!!」(『恋愛美人if』2008年2月号掲載) 「君に占う星に裏あり!」(『恋愛美人if』2008年3月号掲載) 「class 4 dorothy 召しませアメのムチ☆」(『絶対恋愛Sweet』2008年4月号掲載) 「嘘つきはコイビトのはじまり!」(『絶対恋愛Sweet』2008年6月号掲載) この他にご存知の作品がございましたら、お手数ですが、管理者へのお問い合わせフォームから、管理人までご一報ください。直接このページを編集していただいても結構です。
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恋の病はカチカチ山をも焦がす第一話 恋の病はカチカチ山をも焦がす第二話 恋の病はカチカチ山をも焦がす第三話 恋の病はカチカチ山をも焦がす第四話 恋の病はカチカチ山をも焦がす第五話
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GLOVE LOVEの新しいWebサイトに引っ越しました!今すぐ glovelove.jp にアクセス! GLOVE LOVE(グローブ・ラブ) 1987年、リクルート社員で結成されたビートルズのコピーバンド。以来メンバー変遷を重ねながらも30年に渡り活動を続ける。バンド名は映画「Yellow Submarine」に出てくる「GLOVE」に由来する。 もともとは当時、全員が勤務していた会社(リクルート)の社内バンドとして結成。社内イベント等で演奏キャリアを積み(最も大きな会場としては大阪城ホール)、1989年にはビートルズクラブ(BCC)主催のビートルズバンドコンテストで、東京東地区代表バンドとして全国大会に出場。グループ入賞は逃すものの個人賞ではRingo Starr賞を受賞。その後、国立Liverpoolで社外バンドデビューを果たす。続いてテレビ朝日の特別番組に「おじさんたちのビートルズ」の3BANDの一つとして紹介される。その後、RINGOが海外留学のため一時脱退(3年後に復帰)。PAULがメンバー交代。そしてオリジナルメンバーとして18年間活躍したJOHN役が脱退してメンバー交代。 2005年より現在のメンバーに。ビートルズの曲をレコード通りに再現することを基本にした完全コピーバンドを目指し、平均年齢50歳を超える現在も年数回、ライブハウスで活動中。 2017年7月、大塚Welcomebackにてゲストバンドを迎えての結成30周年記念ライブを実施。 2017年7月現在、ビートルズの全213曲中、175曲のカバー完了、あと38曲! バンドの歴史へ → 合計: - 今日: - 昨日: - トップページの合計: -
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作成された各マネージャー様、乙です。 らぶドル~Lovely Idol~ 12期目 http //anime.2ch.net/test/read.cgi/anime/1165132684/423 423 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/12/05(火) 22 03 59 ID rymQaEQ0 5枚揃ったので「LoveLoveLoveのせいなのよ!」 パート超・決定版(全体部分は略) (茅原) きーーーめーーーーた! (野川) 運命なんですこれから! 始まる夢には!抵抗でっきなーーい~~~! (酒井&桃井&茅原) う~~~~~~~いぇい♪\(≧∇≦) (中原) キラキラ未来を探して~ 誰もが彷徨う、迷路を抜けたの! 走れ! とぅ~おぶはーと♪ (酒井) そっとそっと肩へと (茅原) (゚∀゚)人(゚∀゚)ぴた♪ (後藤) ほっぺった、くっつけたい♪ (茅原) ちゅ? (酒井&後藤) なぁぁぁああああああああああああっぜぇぇぇええええええええ♪♪ ふーるーえーるぅ~~~~~のぉ~~~? へぇーーーん~~~~~だわ~~~~~~~~~~!!!!!! (茅原)大好きなんです瞳に~ あふ~れるしずくは~純粋なめっせ~じ~~~ (野川&後藤&中原)(う~~~いえ~!) (桃井)ふわふわ気分に抱かれて わた~しは目を閉じ黙ってる待つわ~ つぎ~の~らぶふぉぉ~~ぴ~~~す (後藤)きっときっと空で~は (茅原) (゚∀゚)ふわ♪ (酒井)ほ~ほえむ太陽~ (茅原) (゚∀゚)キラッ♪ (酒井&後藤) ねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ♪♪ ふーたーりーなぁ~~~~~らぁ~~~? ふらぁーーーい~~とぅ~~~ざ~さ~~~~~~~~~ん!!!!!! サビ部分のヴォーカル配置はおそらくEDアニメの通り左から 後藤、酒井、野川、中原、茅原、桃井と思われるが確証無し 新作追加、2番です。 作成された方、ありがとうございます。 (茅原)大好きなんです瞳に~ あふ~れるしずくは~純粋なめっせ~じ~~~ (野川&後藤&中原)(う~~~いえ~!) (桃井)ふわふわ気分に抱かれて わた~しは目を閉じ黙ってる待つわ~ つぎ~の~らぶふぉぉ~~ぴ~~~す (後藤)きっときっと空で~は (茅原) (゚∀゚)ふわ♪ (酒井)ほ~ほえむ太陽~ (茅原) (゚∀゚)キラッ♪ (酒井&後藤) ねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ♪♪ ふーたーりーなぁ~~~~~らぁ~~~? ふらぁーーーい~~とぅ~~~ざ~さ~~~~~~~~~ん!!!!! (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「おぃ、聞いてみろよ」「あん?なんだよ」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「・・・・・・・・・」 ヾ(゚∀゚) (゚∀゚)ノシ「なかなかイイジャン!!」 (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「おぃ、聞いてみろよ」「あん?なんだよ」 ( ゚Д゚) (゚Д゚ )「・・・・・・・・・」 (゚Д゚ ) (゚Д゚ ) 「カエレカエレー!」「ひっこめよー!」
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465 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 30 00 ID E7a9J8wT *** 兎は最初、狸を馬鹿にしていた。 馬鹿にして悪戯を仕掛けていたのは間違いない。 兎が最初に狸を見たのは、川岸であった。 狸は、そこでのんびりと釣りをしていた。 兎は、少しからかってやろうと思い、川へと石を投げた。 石に反応した魚は散るようにして逃げていった。 狸は何やら肩を落として、その様子を眺めていたように思う。 狸は後ろを振り返らず、またゆっくりと釣り針にうねうねと身をもじるみみずをちぎり、 丁寧に針へつけ、ひゅんと川へ投げ込んだ。 先ほどの喧騒を忘れたかのように魚が帰ってくると、兎は面白そうに、また石をぽちゃんとやった。 逃げていく魚。 また狸は肩を落とす。 兎はその愚鈍な狸をけらけらと笑っていた。 466 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 30 41 ID E7a9J8wT その笑い声に気がついたのが、狸は振り返る。 きっと狸は怒鳴り散らして追いかけてくるだろう、 そのときは自慢の足で逃げ切ってやろうと思っていた。 だが、予想に反して狸は兎へと手招きして、川につけてある魚籠を見せた。 その中には魚が数匹、この後の運命を知らずにのんびりと泳いでいた。 狸はその何匹かを上手に串に刺して、兎に渡した。 兎は呆気に取られていると、狸はまたどっしりと腰を落として、魚釣りをやった。 兎は馬鹿にされていると思い、狸に石を投げた。 頭にぽかりとぶつかる。 さすがにここまですれば愚鈍な狸も怒るだろうと思っていた。 だが、狸は目をぱちくりしたあと、このように言った。 「なんだ、魚が欲しかったんじゃなくて釣りをしたかったんだなぁ」と。 兎はここまで愚鈍な動物がいたとは、と心底飽きれた。 その時から、狸に対してさまざまないやがらせをしていた。 例えば穴倉の前に落とし穴を作ったり、 あるいは彼が大事にしていた収集物を壊したり、 あるいは濡れ衣を着せては動物達に責めさせたり。 467 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 31 03 ID E7a9J8wT その行為は悪意に満ちたものだったけれども、それでも狸は怒らなかった。 ため息を吐き、なにやら諦めたような顔をしてまた歩いていく。 兎はいつしか彼に惹かれていたのかもしれない。 狸は愚鈍だっただけではなく、何処か達観したような何かを持っていたのだと思う。 狸に、そのように仕向けたきっかけは解らない。 狸は粘り強く兎の悪戯を我慢した。 兎にとって、狸は何処か信頼の置ける人物となっていったのだろう。 ならば、諸君はなぜ兎は告白しなかったのかとたずねるだろう。 しかし、兎にとってはもはや自分から告白するなどは考えもしなかった。 狸が泣いて謝って許しを請うだけではなく、奴隷として名乗り出て、 一生を共にすることを期待していた。 狸が奴隷として一生を遣えるとするならば、 兎は少し苦虫を潰した顔をして、渋々と了解しようと思っていた。 それに、狸のことを好意もつ動物などいないだろう、と思っていた。 だから兎は余裕を持つことができたのだった。 しかし、兎が余裕を持っていたのも"あのとき"までだった。 468 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 32 11 ID E7a9J8wT 若干、兎は焦っていた。 狸が、他でもなく私ではない誰かを好きになるとは考えても見なかったからだ。 兎には自分に言い聞かせていた。 狸のことなど好きになる奴などいない、 どうせ傷心して帰ってくるに違いない。 その時は、立ち直れないほどに詰ってやろうと考えていた。 私以外の女性を好きになった罰として。 もう他の女性などを好きにならないようにだ。 *** 狸が焚き木の束を背中に背負うと、えっちらほっちらと、 均衡の取れない不恰好な歩き方を始めた。 これほど、体を使ったことがないのだろう。 兎は笑いながら、背中を蹴飛ばした。 狸は前ののめりで倒れると、振り向いて、溜息をついた。 469 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 33 03 ID E7a9J8wT 「また、お前さんか」 狸はよっこらせと立ち上がり、またえっちらほっちらと山を降りていく。 兎は後ろから付いていって、顔を覗き込み、尋ねる。 「ねえ、あの時、何処へ行っていたの?」 狸は、頭を少しかき、照れくさそうにする。 兎は何を柄にないことを、と訝しかった。 470 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 33 40 ID E7a9J8wT 「いやあ、そのな、一目惚れした娘さんがいてよお、 つい前まで贈り物するくらいしかできなくてよお、 ほら、俺が好きになったとしても、娘さんに迷惑がかかると思ってしまってよお、 遠巻きに見るしかねえと思ってたんだよ。 だけど、こないだそれだと埒が明かない、 もう壊れてもいいから当たって砕けろの精神でよお、 向かっていったわけさ、すると 『そう、やっぱり貴方が柿や栗や茸を置いていってたのですね』 と喜んでいてよお、そのあとは、まあ、なんというか、うん、そそその……、 両思いって奴でさ」 狸は喋りながら顔を真っ赤にしていく。 兎は何かが崩れたような気がした。 もしかしたら狸の妄想かもしれない。 いや、振られた衝撃の為、現実と妄想の区別がついていないのかもしれない。 471 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 34 08 ID E7a9J8wT 兎は声を震わせて言う。 「そんなこと…… そんなことあるわけがないじゃない…… 騙されているんですよ、狸さん」 狸は相変わらずあっけらかんとしている。 「ああ、俺なんかを好きになってくれる人なんていないだろうさ、 俺はそれでもかまないよ、あの娘が喜ぶ顔があれば、 俺にはいいんだよ、だから別に騙されていたってかまわないよ、 そのときはそのときだ、俺は頭を下げて穴倉で寝込むだけだよ」 兎はそのことを聞いて、目の前が暗くなったように感じた。 狸がそれほどまでに娘を愛しているという事実がそこにはあったからだ。 そして何か別の感情がめらめらと心の奥からわきあがってくることに気が付いた。 それは兎が今までに感じたことのないような感情であった。 472 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 34 56 ID E7a9J8wT 嫉妬。 兎は嫉妬したいたのだ。 狸は陽気な鼻歌を鳴らしていた。 兎は懐から火打ち石を取り出した。 そして、背負った焚き木に火花を散らしていた。 「おや、兎さん、何か、かちかち、という音がしないかね」 兎はとぼけた顔をして狸に言う。 「ええ、ここはかちかち山というんですよ」 狸はなにやら浮かない顔をしてたずね返した。 「いやあ、俺はここに十数年住んでるけど、そんな話聞かなかったぞ」 兎は済ました顔で言う。 473 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 35 39 ID E7a9J8wT 「あら、狸さん、そんなに他の動物と話をしたことないくせに。 じゃあ教えてあげますわ。 この山で、ある男性に恋をした女性が、 その男性と焼身して無理心中しようとしたのですよ。 なにしろ、その男性は隣村に奉公に行く最中でしたが、 離れ離れになるならば死んだほうが良いと寝ている時を襲い、 燃やしてしまったのですよ。 いつしかこの山はかちかちと音がして誰かまわず燃やしてしまうと 評判になっているのですよ」 兎は恰も、あった話かのように淀みなく話をした。 狸は何やら納得したような、しないような曖昧な表情を浮かる。 「いやあ、俺になんか嫉妬するような女性なんていないよお、 むしろ女性のほうから逃げていくよお」 と少し自嘲ぎみの笑みを浮かべ俯いた。 兎は、あらあら、その女性は目の前にいますのにね、と思っていたが、 口には出さなかった。目の前の焚き木にはだんだんと火の手が上がる。 474 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/13(水) 00 36 34 ID E7a9J8wT 「なあ、兎さん、なにやら暑くはないかなあ、それに、ぼうぼうという音もする」 狸は汗を腕で拭いながら言う。 兎は相変わらずすました顔で答える。 「ええ、一度ついた嫉妬の炎は消えることなく燃え盛るものですから」 流石に愚鈍な狸でも、背中に付いた火に気が付いた。 しかも、狸は焚き木が落ちないようにと腰にしっかりと 結び付けていたものだから、焚き木を降ろすことができなかった。 「うわあ、あつい、あつい、兎さん、兎さん、何で教えてくれないんだよお」 狸は泣きながら結び目を解こうとしたが、 焦っている手前、なかなかほどけてはくれない。 とにかく川へと走り出す。 「だから言ったでしょう、一度付いた嫉妬の炎は消えないのです」 兎はその姿を見ながら冷ややかな笑みを浮かべた。 「そうですよ、私以外の女性が好きになったらこういうことになるのです」 もはや狸は小さくなっていっていた。 狸の向かうところには川が見えた。 兎は、後の焼けどが大変だろうな、とくすくす笑っていた。
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511 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 31 08 ID Eysd06wo *** 狸は布団で横になり、唸っていた。 まだ背中のやけどが痛むのだろうか、狸は寝返りをうつたびに少し叫んで飛び起き、 いつものように自分の不運を嘆いていた。 すると、扉が軽く鳴る。狸は重い腰を上げ、のそのそと扉に近づく。 開けると、にこにこと笑っている兎の姿がいる。 狸は肩を落とし、物憂げな表情をしてゆっくりと口を開く。 「兎さん、今日は一体なんの用事だよお……」 兎は懐に抱えている壷を見せる。 中には粘り気のある液体が入っている。 「いえいえ、狸さん、こないだはとても不幸な目に会いましたね。 まだ傷も癒えていないかと思ったので、知り合いの薬師に、 やけどに効く薬を分けて頂いたのですよ」 狸は少し溜息をつき、弱弱しく言葉を返す。 512 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 33 13 ID Eysd06wo 「その薬というのも、唐辛子が入っていたりして、肌がひりひりとなったりするのだろう…… あるいは、法外な値段を吹っかけたりするのだろう……」 兎は表情を崩さずに笑いながら返す。 「あらあら、狸さん、私はそこまで性悪ではありませんよ。 ちゃんとした塗り薬ですし、お金もいりませんよ。 それに狸さんは身包みを剥がせるほど豊かでもないでしょう?」 狸は疑うような目をしていたが、兎が急かして中へと強引に入る。 狸も半分は諦めた様子で、穴倉の中へと案内し、一枚の座布団を差し出した。 兎はその上に行儀良く正座をする。狸は背中を見せる。 背中は毛が無くただれており、怪我の痛々しさを伝えている。 兎は塗り薬を指で救うと、手のひらを使って背中全体へと伸ばしていく。 狸は塗られると何やら肩の力が抜けるような気持ちよさを覚えたが、 段々と体が火照り始め、気持ちが高ぶりはじめた。 特に女性と肌を合わせたこともない狸のことであるからして、 この状況に対して耐性の無い狸が、 扇情的な気分になるのも仕方がないことだった。 513 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 33 59 ID Eysd06wo また、かわいらしい兎がこのように肌へと薬を塗っていくと考えることが、 何処か狸の妄想をかきたててしまうのだろうか。 狸の下半身が段々と反応をし始め、自分自身をますます困惑させてしまう。 流石にこのような情けない姿を見せないためにも狸は目をつぶり、 落ち着かせようとした。 暫くすると、手の動きが止まったのか、液体の粘るようなぬるぬるした感触が消えた。 もう、塗り終わったから、安心できるかなと思う。 しかし、今度は何か背中に圧し掛かかられているように感じる。 目を開けると、首の前で、兎が手を交差している。 狸が後ろを振り返ると、直ぐ傍に兎の顔が見える。 白い肌の頬をほんのりと赤らめ、うっとりしたような目付きで狸を見ている。 しかし狸には正直それが気持ち悪いとしか思わなかったし、 狸をより一層困惑させる原因となっていた。 それは考えれば当然のことで、兎にあれほどまで虐められてきたのだから、 このようにされたとしても、素直に従うほどの度胸も甲斐性も狸にはないだろう。 だが、狸の気持ちとは裏腹に、狸は兎の身体を求めてしまいそうになっている。 514 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 34 22 ID Eysd06wo いったい、俺はどうしてしまったのだろうか、と狸は思う。 兎は身を乗り出し、狸の肩に顔を出し、耳元で誘うような甘い声でささやく。 「ねえ……狸さん……本当にあの娘のことが好きなのですね?」 弱弱しく息があたり、呼吸の音が聞こえる。 狸は顔を真っ赤にしてうつむく。 「いいいいやそそそそのおれはああああのこのことがすきで」 緊張しているのか、このような状況に慣れていないのか、 狸はしどろもどろになっている。 上手く舌も回らず、身体も震わせていた。 兎は狸の頬に手の平をあてて、ゆっくりと兎のほうへ向かせる。 兎の顔がゆっくりと近づき、唇同士が触れ合う。そして、舌と舌が絡み合う。 何も音のしない静寂の部屋で二匹の唾液が絡む音だけが響く。 狸は、蒸気が吹き出んとばかりになっていた。 唇を離すと糸を引き、呼吸に合わせて、二人の肩が上下する。 「おおおおい、うさぎさんおれおれをからかうのはやめてくれよお」 515 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 35 27 ID Eysd06wo 狸は兎を突き放し、壁に寄る。 兎は少し首を傾け、潤んだ瞳をぱちくりとさせている。 「何一つからかっていませんよ。 寧ろ狸さん、貴方こそ、女性がこのようにしているのですから、 もう少し構っていただけないと恥をかかせることになりますよ」 そのように喋りながら、兎は距離を詰めて行く。既に兎は上着を脱いでいた。 何時の間に、と狸は思う。 ゆらゆらと揺らめく蝋燭の光に照らされて、兎の膨らんだ乳房に影が出来ている。 その姿は淫靡に感じられ、ますます狸には直視が出来なかった 「はははははじとはいっても、おれはおれはむすめにはじめてをささげるつもりで」 兎は狸の下着へするりと手を滑らせる。 十分に硬くなった男根の頭部分から少し粘り気のある液体の感触が、 兎の手のひらから伝わる。 その液体を伸ばすように手で撫で回す。 516 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 36 21 ID Eysd06wo 「ふふふ……狸さん…… 私ならばともかく、他の雌に貴方の"始めて"を捧げるだなんて、 本当に純情なんですね……本当は誰にも捧げられたないのに…… 私はそんな狸さんが好きで好きで仕方がないんです…… でも、それが私ではないのが許せないんですけどね……」 そっと狸の首筋に手を添え撫でる。 狸の背筋が凍る。 それは別種の怖さであった。 狸はそれほど女性経験もないので、ちゃんとした言葉に出来ないが、 それでも伝わってくる冷ややかな怖さ。 虐めるときに見せるような怖さではなく、もっと違う、何かどろどろとした怖さを、狸は感じた。 「ああ……うさぎさん……うさぎさん……こんなことはだめだ、だめだよう」 狸は身が硬くなってしまい抵抗すること出来なかった。 兎の撫で回す感触にただただ震えるだけであった。 「何が駄目なのですか?本当はこのようなことを望んでいたのではないですか?」 狸の耳元で囁き、そして耳を甘噛みし、そのまま耳の周りを舐めまわす。 耳を這う舌の音がいっそう狸の欲望を駆り立てる。 兎は狸の物を握り、優しく動かす。兎はまた続ける。 517 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 36 51 ID Eysd06wo 「狸さんは私の気持ちに気が付いてくれることを信じていましたよ…… でも、そんなことは無かったわけです…… むしろ貴方は自分に優しくしてくれた人にだまされてほいほいとついていったわけです……」 狸は身を震わせ、唇を噛んでいる。兎は手の動きを早くする。 「最初のうちは貴方に虐め倒し、私を見るたびに震え上がり、 従わざるを得ないところまで追い込もうと思いましたが、やめました。 むしろ貴方に、あの小娘なんかには到底思い浮かばないような快楽を身体に教え、 私だけしか抱けなくしようと思ったのです…… あんな小娘なんかに、あんな小娘なんかに、貴方を寄越してやるものですか……」 狸は兎の腕に力なく手を置く。 最後の抵抗。 狸は目をきゅっと閉じ、身体を震わせた。 兎は手の中に暖かく粘り気のある液体が強く当たる感触を覚えた。 きっと射精したのだろう。 518 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 37 16 ID Eysd06wo 兎は手のひらを見つめ、舌で救いあげるようにして舐める。 射精したせいか、狸はぼんやりとその姿を見つめている。 一体、目の前の兎は、いつも見る兎なのだろうか? あの意地悪で虐めてくるあの兎なのだろうか?狸は動かない頭で考えていた。 しかしその考えも次なる快楽の刺激が、それを阻害した。 兎がひくひくと動く肉棒に兎は腰を降ろしていた。 「確かに私の料理は下手だと思いますが、 あれは本当に貴方だけに食べさせるために作ったものですよ。 あの料理には私の"愛"が入っていたのですから…… ねえ、狸さん、何が望みですか?娘の体ですか? 自慢じゃないですが、私はあの娘よりもよほど良い体をしていると思いますよ…… 自惚れなしに、ですよ…… それに娘よりも一緒にいられますしね…… 私と一緒にいたほうがいいんです……絶対に……」 519 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 37 52 ID Eysd06wo 兎は腰をなまめかしく動かす。 狸はされるがままだった。 何も考えることも出来ず、ただ力無く兎を見るだけだった。 そのように腰をこすり付けられることで、狸は射精感を再び覚え始めた。 「駄目ですよ、狸さん…… 先ほど背中に塗った薬は、"愛液"によって、その効果が増えるんです…… しかも若くて美しい娘の愛液ほど効果があるのです…… さらにいうならば、その"愛液"が"精液"と混ざることで、 効果が活性化され、治りがよくなるのです」 狸にはもうそれが本当かどうかを考えるほどの気力はなかった。 兎はそのまま、自らの穴へと棒を招きよせ、そのまま繋がった。 520 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 41 18 ID Eysd06wo *** 狸が目を覚ますと、既に兎の姿はいなくなっていた。背中の痛みは既に引いていた。 狸はぼんやりと顔をこすりながら、自分でも変な夢を見たものだなあ、と思った。 ふと、狸が机の上を見ると、そこには達筆な字で 『他の用事があります、ごめんなさい』 と書かれた手紙と、毒々しい色の芋の煮っ転がしが皿に添えられていた。 狸はふと台所を見ると、乱闘か何かの跡のように悲惨な状態になっていた。 狸は台所を掃除することと、目の前の小皿に添えられた料理のことを考えると、 段々と頭が痛くなってきた。 521 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 43 25 ID Eysd06wo *** 兎は少し離れた草むらで佇んでいた。 暫くすると、狐の行商が鈴を鳴らしながら歩いてきた。 兎は手を振って呼び止める。 狐は媚びるような笑いをして近づいてくる。 「おじょうちゃん、こないだはありがとね、どうだい、効いたかい? あの媚薬っつーやつは?肌にひとぬりすればたちどころに体が火照り、 快楽だけにしか身動きできなくなるという奴は」 手を揉みながらまくし立てる狐。兎は呆れた顔をして言う。 「全く、あいかわらず口が減らないのね」 狐はへへへ、と舌を出した。 522 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10 44 39 ID Eysd06wo 「これも商売のうちですからね、で今日は何にしましょう? この穴開き包丁は切れ味抜群でどれだけ切っても野菜が包丁にへばりつかないわけで お手入れも簡単とこれぞ主婦の見方というわけで」 「いえ、そんなものはいりません。 "私は別に物理的に殺したいわけではない"のですから」 狐は殺す、という言葉を聞いて、その兎の表情を改めて見つめた。 確かに口元は笑っている。 しかし目は笑ってはいなかった。 狐も数年行商をやっているから、それほど勘が無いわけでもない。 この目をした女性はたいてい似たような商品を要求する。 狐の手のひらから汗が滲み出る。それは…… 「一口舐めただけで段々と体が衰弱し、 何時しか死においやってしまうような毒薬が欲しいのです」 沈黙が流れる。 荒涼とした草むらに風がざわつき始める。 狐は天を仰いだ。きっと嵐が来る。どろどろとした嵐が。
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418 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 16 58 ID hsHjATE+ その山に住んでいる狸は決して不細工ではなかった。 ただ、欠点があるとするならば何処と無く人に不安感と不快感を覚えさせることは確かだった。 例えば、何時もおびえたようにビクビクしてた。 また、上擦った声で、追われているのか脅されていているのか解らない様子で捲し立て、相手が欠伸一つして呆れた目で見つめられたならばそのまま押し黙ってしまう。 あるいは、歩いている姿など不安定で苛々させては蹴り飛ばされる。 それは散々であった。 そんなわけだから、狸は穴倉から出ずに本を読み、レコードを眺めながら音楽にうっとりしては自分の孤独に嘆くことを喜びとしていた。 相変わらず穴倉で狸が音楽を聴きながら、数少ない喜びの時間に浸っていると、一匹の兎が穴倉にやってくる。 この兎は大層美人であった。肌は雪のように白くてみずみずしく、身体の均衡も取れており、顔立ちも目がぱっちりしており切れ長で、漆黒の髪がますますその美しさを演出する。動物の誰もがあの娘を抱けたらいいのになあ、と思いながら羨望の目で眺めていたのは確かだった。 しかし問題はその性格の悪さであった。 この娘は人の前ではにこにこしながら愛想良く過ごしてはいたものの、狸の前ではその残虐性を顕わにしていた。 419 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 18 23 ID hsHjATE+ 狸が終始びくびくしていたのはこの娘のせいもあったかもしれない。 しかし、何時もの狸のことだ、きっと狸がまた悪さをしたに違いない、 と動物達は同情を寄せてくれないどころか、むしろあのような美人の娘に構って貰えるのだから、 世の中というのは不条理であり詰まらぬものである、と溜息を尽き、 ある動物なんかは狸に受ける様々な虐めに被虐的な快楽を見出しては身を震わせている奴までいる始末。 こんな調子であるわけだから、狸の風当たりが強くなるのは目に見えた話である。 「狸さん、おはようございます」 そのように溌剌とした声で狸に挨拶をする。 狸は飛びあがらんほどに驚き、その姿を確認する。 兎はくりくりとした瞳で見なれた穴倉を見渡す。 狸はまたこれから何が起きるのか、びくびくしながら横目で見ていた。 こう何度もあってはもう諦めが付いており、ただただ肩を下げるだけだった。 「で、今日はなんのようなんだ」 溜息交じりに語る狸。 「いえいえ、狸さんは独身でしょうから、栄養が整った食事などされてないでしょうから、私が手料理を持ってきたのです」 狸は一瞬、おや、この子にしては珍しい気遣いだな、と感謝したのだが、それを期待した自分が馬鹿だったと後悔する。 兎が取り出した豪華な重箱からは異臭が立ち込めていて、非常に不安にさせた。 420 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 20 04 ID hsHjATE+ 「あの、兎さん、あの……」 狸は重箱と兎の顔を交互に見ながら、口をぱくぱくさせていた。 兎は笑みを崩さず、重箱を開ける。 一体、この料理は何だろうか? 鵺みたいにあらゆる物が分離合体し、 元の材料が何だったのか、 そもそも何の料理だったのかわからなくなっていた。 狸は念の為に、震える箸で料理に手をつける。 持ち上げた芋状の何かは無残にもぼろぼろと力なく崩れていく。 「いや、その、兎さん、なぜ私にわざわざ食べさせようとするのですか? 兎さんのような美貌を持ってすれば、 男なんてよりどりみどりで御座いませんか。 そして最も愛するような男性に手料理を食べさせればいいではありませんか、 違いますか?」 そのように哀願するような顔で兎に語る。 兎は耳をピンと伸ばし、すました顔で述べる。 「確かにその通りですよ、狸さん。まず第一に、私にふさわしい人がおりませんし、愛する男性もおりませんしね。 それに狸さんがこの役目には一番よろしいかと思われるのですよ。何故なら、下手な男性に試食を頼んで 殺人罪にも問われたりしたら、私の身柄が危険ですからね」 そう笑いながら兎をくすくすと笑う。 421 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 21 19 ID hsHjATE+ 狸はぎょろりとした目を向けながら ――なるほど、この少女に料理が下手だという自覚は一応あるのか―― と思う。 「万が一、残したとするならば、狸さんが私の料理をまずいといって食べてくれないのです、 と周囲の動物に泣きついたりしますので、その覚悟で挑んでくださいね」 狸は自らの不運を嘆いた。 全く、碌な動物に掴まれたもんじゃないな、と天を仰ぐ。 狸は目を瞑り、一心不乱に料理を書きこむ。 「それでは味も解らないでしょう?もうちょっと味わって食べたほうがいいと思いますよ」 狸は、ああ、味など解らなければいいのに、と思う。 狸の表情がみるみるうちに青ざめていく。 味を跳ね除けたあとは触感である。 ねちゃねちゃとまとわり付き、歯茎の間から満遍なく染み渡りそうな、不愉快な感触が口に広がる。 狸は箸を握り締めぐっと耐えていた。脂汗があとからあとから滲み出てくる。 兎はそれを見て満足そうに、まだ残ってますよといわんばかりに料理を勧めるのであった。 狸は完食し終わるとそのまま床に倒れ、泡を吹いてしまった。 422 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 23 25 ID hsHjATE+ 狸はニ三日後によろよろと置きあがり、目の前にある重箱を見て、涙した。 何故、自分がこのような目に会わなければならないのか。 確かに兎は美人だ。だがこの仕打ちはあるまい。 俺はただただ、誰からも放っておかえるような 、気の楽な人生を送りたかったに過ぎない。 それが、あいつのわがままで全て台無しにされていく。 自分が気に入ったレコードのどれだけが割られ、書籍は破られたことか。 そのようにぽろりぽろりと愚痴っていると、狸はふと空腹感を覚えた。 仕方が無い。 何か食料でも探しに行くか。 胸が相変わらずむかむかするけれども、背に腹は代えられぬというわけで、いそいそと外へ出た。 腹が減っては戦が出来ぬ。 空腹は感性というものを著しく低下させてしまう。 423 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 26 41 ID hsHjATE+ 事実、この狸の場合もそうだった。 普段であるならば、 ふん、こんな罠には引っかかる動物が何処にいるのだ、 と鼻で笑って通りすぎていくような稚拙な罠だったのだが、 兎の料理の為か、それともその空腹の為か、あっけなく引っかかってしまう。 狸はこのような不運を呪った。ああ、なんたる惨めな人生なのか。 小娘には言いように扱われ、 動物達からは阿呆だの馬鹿だの罵られ、 挙句の果てに罠に掴まり鍋へと放りこまれ、 人間の腹で栄養となって死ぬ。 ああ、何故自分は生まれてきたのか。狸は自らを罵った。 暫くするとお爺さんが現れた。恐らく罠を仕掛けた張本人なのだろう、今日の獲物に満足げの様子であった。 狸は力も無くうなだれていた。 狸は縄でぐるぐる巻きにされ、柱に括りつけられていた。 狸はぽつりぽつりと涙をした。 424 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 27 55 ID hsHjATE+ その様子を見ていた独りの娘がいた。 この狸を捕らえたお爺さんの娘であり、 着物のよく似合うおしとやかで清楚な美人であった。 「狸さん、狸さん、そんなに何を泣いているの?」 狸はその娘が何者かを知らずに自分の一身の不幸を訴え続けた。 「俺はよう、俺はよう、今の今まで一生懸命生きてきたんだよお、 せめて誰にも迷惑をかけないように、皆のためをおもって頑張って生きてきたのによう、 いまじゃあこんなありさまだ。俺は不細工だし身なりは汚いしよお、 神様か仏様かしらねえけどよお、俺みたいな奴は早く死んでしまえという思し召しなんだよお、 それが憎くて憎くてよお」 狸は留まることを知らなかった。娘はただにっこりと聞いていた。 娘の胸のうちには同情もあったかもしれない。 「狸さん、そんなに悲しまずに。貴方は全然不細工でも小汚くもありませんよ」 「嘘だ、嘘だ、娘さんはそうやって俺を騙そうとするのだ」 娘はクスクスと笑うと、柱へと向かい、するするとその結び目を解いてしまった。 縄は緩やかになり、狸の足元にはあれほど苦しめてきた縄が力もなく横たわっていた。 425 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 29 40 ID hsHjATE+ 狸は周囲を見渡して呆気に取られてしまった。 「な、なあ、俺が性の悪い狸だと知っていて、こんなことをするのか?」 娘はまた笑って答える。 「悪い狸ならば、縄が解けた途端に逃げ出していると思いますよ」 狸は娘のひざで泣き出し始めた。 娘は、狸の頭を少し撫でてあげると、もう行かなければお爺さんが帰ってきますよ、と優しく諭してあげた。 狸は顔を上げ、少し頭を下げると一目散に家へとかけていく。 家はぐんぐんと離れ、何時の間にか小さくなっていた。 もう、ここまでくれば安心だろうと木陰に因りかかり、あの美しい娘のことを思い出していた。 娘のことを思い浮かべると何やら鼓動が早くなり顔のあたりに火照りを感じるようになっていた。 最初は、余りにも走りすぎていたが故のことだ、思い違いだと頭を振ったのだったが、何時しかそれは確信に変わっていった。 それはつまり――ああ、俺はあの子に恋をしているのだな――と狸は確信した。 狸はそれからというものの、人目を盗んでは家へと向かった。 そしてその娘を陰で見送り、こっそりと玄関に柿や栗の実を落とすことしか出来なかった。 426 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 31 17 ID hsHjATE+ 兎は何時ものように狸を虐めてやろう、今日はどのように虐めてやろうかなどと思案をしながら穴倉へと向かっていた。 すると、穴倉の外で何やら肩を落とし、溜息ばかりついている狸の姿が見えた。 兎はなにやら変に思えた。 というのは、何時もならばもう少し肩をびくびくさせて、 今日はどうしよう、明日はどうしようと きょろきょろと見まわしている筈だったからだ。 今の狸の様子は肩の力が抜け、なんだかぼんやりとしている様子だった。 それが気に食わない兎は後ろから固い枝でぽかりとやった。 狸は頭を抱えて振り向き、力なさそうに溜息をついた。 「ああ、なんだ、君か――はぁ」 反応が余り無い狸を見て、面白くなさそうに枝を投げ捨て、改めて聞く。 「狸さん、何か落ちこむようなことでもあったのですか?」 狸はあの調子で、はぁ、と溜息をつくと頭を振って答えた。 「いやいや、ある娘に惚れてしまったようなのだよ、兎さん。恥ずかしいことだ」 兎は笑い転げた。 狸は何がそんなにおかしいんだ、と少し苛立ちげの表情を浮かべた。 427 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 32 41 ID hsHjATE+ 兎は笑いを抑えながら、狸にこのように述べる。 「あははは、まさか、まさか貴方が恋をするなんて、 これほど滑稽な話はございませんよ、 貴方の何処にその恋が実るような要素があるというのですか、 それこそ馬鹿げた話ですよ、あははは、死んでしまう、死んでしまう」 腹を抱えて笑う兎を、狸は恨めしそうに眺めていた。 確かに、俺みたいな男が、あのような器量の良い娘に好かれるということは殆ど無いだろうことは間違いが無い。 むしろ逆に恐怖を覚えられ、お爺さんに告げ口でもされようものならば、 彼の人生は瞬く間に終わってしまうであろうことは事実であった。 しかし、狸にとって、もはや娘にそのような虐げられ方をされようとも、 娘無しにこの人生はありえず、拒絶されたとするならば、 惨めに死んでいくのも構わないとまでに思いつめていた。 狸はすくと立ちあがると泣くのを止めて走っていった。 428 :恋の病はカチカチ山をも焦がす [sage] :2008/02/08(金) 07 35 40 ID hsHjATE+ その姿を見て兎は呆気に取られていたが、狸の姿が彼方に消え去ると、 先ほどの嘲笑うような表情とはうってかわり、唇をかみ締め、わなわなと震えて、呟いた。 「あんな女の何がいいというのだろう…… 私が、私が、誰からも相手にされない貴方のことを構ってあげていたのに、 少しかわいい女が現れたらすぐころりといってしまう…… あんな女の傍へ行った所で、惨めに振られるか捨てられるかだけなのに・…… 今なら頭を下げて私のところに戻ってくれば、百倍も虐めてあげるのに…… 一生一生、五体が動かなくなっても一生虐めてあげるのに」 兎は何やらくすくすと笑う。兎の笑みは何処となく歪んでいた。 「そんなことも理解できない狸には少々きついお灸を添える必要があるみたいですね」 狸の居なくなったこの場所に用はない。 兎はその場を離れた。
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599 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 09 18 ID 10oW+0H1 *** その時からか、兎は態度を一変させた。 あれほど執拗に悪戯や邪魔を仕掛けていた兎は段々と大人しくなっていき、 いつしか狸の傍らで腕を抱くようになっていた。 驚いたのは動物達だった。 動物達はあの愚鈍な狸が如何なる妖術を使ったのだろう、と噂した。 当然、その事で狸の待遇が特段変わるわけではなかった。 変わったことといえば、今まで以上に狸に対して距離感を置くようになっていることだけだった。 狸としては、まあ、こんなものだろうという調子だった。 狸が気に病んでいたのは、周囲の目では無かった。 どちらかといえば兎の、その態度が変わり過ぎたことのほうが気に病んだ。 一人の女性に愛されるくらいでは気質というのは変わらないもので、 狸は相変わらず何か企んでいるのではないかと脅えていた。 狸は釣りへと出かけた。 狸が水面を眺めていると、兎が後ろから声をかける。 狸は未だその声に馴れることが出来ず、相変わらず肩をびくっ、びくっと震わせた。 兎は後ろから背中へと飛びつき、そして頬ずりをする。 600 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 10 31 ID 10oW+0H1 「うわあ、兎さん、やめてくれ、その、恥ずかしいから」 狸は身が固まってしまう。 兎は狸の顔を覗き込む。 「狸さん、狸さん、お腹が空きませんか?もうそろそろ一緒に昼ご飯でも食べましょう」 特に狸には断る理由は無かったし、恐らく断ることもできなかっただろう。 気がつけば兎は狸の返事を聞くまでもなく、風呂敷を広げはじめていた。 風呂敷の中からは笹の葉で包んだおにぎりが出てきた。 おにぎりはまるまるごろごろとした形であり、正直不恰好ではあった。 にぎりが強すぎるのか炊き方が間違っているのか、少々ご飯が潰れて もち状になっていた。 だが、前のように張り切って料理を作っては毒殺されかねても困るので、 それはそれでまあ、いいかと狸は思う。 狸は一つおにぎりを掴み、口へと入れる。 すると意外や意外にそのおにぎりはそれなりにおいしかった。 ほんのりとした塩味と梅干の爽やかな風味がちゃんと行き渡っており、 なるほどちゃんと味見を覚えたのか、と思いほっとする。 601 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 11 43 ID 10oW+0H1 「狸さんに恥ずかしいところは見せられないですからね」 と、少し頬を赤らめて言う。 狸は変わったな、と思う。 おにぎりを頬張っていると、竿の先がひくりひくりとなる。 狸は竿に手を取り直し、えいと引っ張り上げる。 飛沫を上げ、魚が鱗をきらきらと光らせる。 兎は目を見開き、口に手を開ける。 狸は糸を丁寧にたぐりよせ、最後のあがきをする魚を釣針から取り、魚籠へと入れる。 「狸さん、狸さん、この魚をどうするつもりですか?」 狸は少し考える。 「うー……娘さんのところへ持っていこうと思う」 その言葉を聞いた兎は少し口を歪ませ、軽蔑したような目付きで狸を見る。 「まだ……そんなことを言うのですか? ……私を抱いておいて、まだそんなことを言うのですね……」 602 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 12 57 ID 10oW+0H1 狸は焦る。 あれは不可抗力に過ぎないことだし、狸は自分に責任は無いと思い込もうとしたが、 そう思い込むには狸は繊細すぎた。魚籠の中で魚はぴちぴちと跳ねている。 兎は歪んだ口のままくすくすと笑った。 「もう、貴方は以前のようには上手くいかないのです。 形はどうであれ、一人の女性を抱いてしまった汚れた体なのです。 その体を持って、あのような清浄な娘を汚すのですか?」 狸の足元から力が抜ける。 狸は娘に操を立てていた。愛する以上は操を立てる当然の行為だと思った。 しかしその当然のことはあっけなく崩れるものなのだ、ということを認めざるを得なかった。 狸は、ただ口をぱくぱくと開け閉めするだけだった。 「狸さん、あんな"女"のことなど考えなくて良いのです。 ただただ、私だけを見て愛してくれればいいのです。 全く悪いことは無いですよ。私は以前の私ではありません。 ちゃんと反省し、誠意を尽くしているつもりです」 兎はかぶさるようにして狸を抱きしめた。 狸は悲しみに暮れていた。 603 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 14 28 ID 10oW+0H1 兎は当然、その姿を良しとしなかった。 兎にとって、狸が自らと付き合うことは幸せな顔をするべきだし、 悲壮な顔をするのは、他ならぬ自分が苛めた時であるべきだった。 そして、兎にとって一番の問題は その悲しみの顔が他ならぬあの娘の思いによるものであったことだった。 しかし、兎は大丈夫だろうと思う。 直ぐに私に降参して、足元に平伏すだろうと。 あとは時間が解決してくれるだろう。しかし、そのようなことは無かった。 現実はもう少し残酷であった。 *** その夜は満月だった。 兎と狸は布団を並べ、身を寄り添うようにして寝ていた。 狸は眠れなかった。狸は、娘のことを考えていた。 兎は寝言で狸を呼んでいた。 狸は一人、布団の中で考える。 ああ、今頃どうしているだろうか。 俺が、俺が不甲斐ないばかりに操を守り通すことが出来なかったと、 狸は自分を責めていた。 自分を責めれば責めるほど眼が冴える。 少し夜風にあたり落ち着かせようと狸は外へ出る。 604 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 16 45 ID 10oW+0H1 さわさわと草木が揺れ、狸を撫でる。 狸は少しの散歩のつもりだったが、何時しか娘の家が視界に入ってくる。 娘の家は灯りがゆらゆらとゆれており、恰も狸を待っていたかのようだった。 狸は頭を振るった。 今、娘の前に姿を現したら自らの誓いが崩れてしまいそうな気がした。 この汚れた体を近づけないつもりであった。 しかし、狸がそのように頭で考えようとも、足は一歩一歩、距離を近づけていた。 狸は、ふすまを開けなければ大丈夫だろう、と思った。 ただその姿が見えればいいと思った。 何の因果か解らないが、狸が直ぐ傍まで来ると、襖がすうと開き、娘が出てきた。 狸は驚いてしまった。まさか狸は娘が出てくるとは思わなかった。 確かに望んではいたものの、いざ対面すると、狸は無様に混乱してしまって 体を動かすことが出来なかった。娘は裸足で狸に近寄り、そっと抱きしめる。 「寂しかった、寂しかったよ、狸さん」 娘は改めて狸の顔を見る。 哀しそうな顔をして、娘を見つめている。 605 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 18 21 ID 10oW+0H1 「ねえ、狸さん、なんでそんな哀しそうな顔をしているのですか? こんな時間に、偶然でも会えたのですよ?もう少し楽しそうにしてくれなきゃ、 私も悲しくなります」 狸は力無くぼそり、ぼそりと呟いた。 「俺は、俺は、汚れちまったんだよ…… 兎に、兎に迫られて、いやいや……その……事に運んでしまったんだよお……」 狸は我慢していたかのようにわっと泣き出した。 狸の瞳からは土砂降りのような涙があとからあとから出てきた。 娘は背中に手を添えた。 「狸さん……落ち着いてください…… 家のものがおきてしまいます…… どうしたんですか、無理矢理事を結ばされたというのはどういうことですか……」 狸はひっくひっくと背中を震わせて、呟く。 「関係ねえよお……俺は不甲斐ないからこういうことになったんだよお……」 606 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 19 43 ID 10oW+0H1 娘は厳しく問い詰める。 「関係ないことありません、ねね、正直に言ってください、 そうしないと、私のほうが胸が張り裂けそうです」 狸はその夜のことをつっかえつっかえながらに話した。 娘は黙っていて聞いていた。黙って頷く。 何時しか狸は無言になる。沈黙の後、娘は優しく語り掛ける。 「狸さん……狸さん、あまり自分を責めないで下さい、 狸さんは何も悪くないですよ……」 狸は顔をゆっくりと上げる。眼が真っ赤に充血していた。 「狸さん……何も悪いことは無いですよ…… もし、狸さん、貴方の体が汚れているとするならば、 私が一緒になって洗い落として差し上げます。 もし、貴方の体で私が汚れてしまうとするならば、私もまた一緒に汚れてあげます、 ですから……もうあんなことは言わないでください…… 私は貴方が離れることが一番辛いことなのですよ」 狸は再び泣いた。それは嬉し泣きだったのかどうかは解らない。 *** 兎はふと、目を覚ました。 隣の布団に目を向ける。そこには狸の姿は無かった。 女性の勘というものがあるのか解らないが、多分あの"女"のところへ向かったのだろう、 と兎は思う。 607 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/18(月) 07 21 29 ID 10oW+0H1 兎は棚へと向かい、隠しておいた壷を取り出して、その壷の表面をなぞる。 「狸さん、狸さん、貴方はここまでしても、 あの人の元へと行ってしまうのですね」 兎はくすくすと笑った。 「狸さん、あの"女"がいなくなれば、私だけのものになってくれるかしら? 私だけに頭を下げてくれるかしら?私だけに身を投げ出してくれるかしら? 私がいなければ生きられないようになるかしら? 私を求めて求めて止まないほどになってくれるかしら?」 兎は壷を撫でる。そして笑った。穴倉に響き渡るように笑った。 「あははは……もうすぐ、もうすぐ…… まだ時期を待たなきゃ……あの"女"を始末する為に、貴方には役に立って貰うよ、 高い金銀を出して買ったものだもの……いずれ来るわ……近いうちに、近いうちに、 貴方には役に立ってもらうからね」 その夜は満月であった。 夜空を飲み込むほどの満月だった。 これほどの満月であるならば、恐らくは理性も藻屑となってその中へと消えていくに違いない。 そんな満月の夜だった。