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BAD END EVENT/My Turn/使い捨て 【コスト】全全全全 あなたは、対象のデュエルマスターひとりの手札を見る。 その中にある「女性」キャラクターカードすべてをクラッシュしてもよい。 カスレアの代名詞。とにかく使える場所がない。 手札にキャラクターは4枚あれば多い方であり、このカード自体が4域なので間に合う訳がない。 場合によっては相手の手札そのものが4ターン目には使い切っておりない事も。 《別れの時》のほうがはるかに相手への妨害として役に立つというのが事実である。 《混乱》のピッチコストや《知恵のサークレット》を活用して相手にドローさせ、無理矢理効果を発揮する事もできるが本末転倒以外何物でもない。 唯一用途があるとすれば、パックから出してしまったその人がBADEND状態であり煽れる事だろう。 FAQ Q:自分を対象にプレイした場合の処理はどうなりますか? A:現在の手札から「女性」キャラクターカードを任意の枚数(0でも構いません)選び、クラッシュします。手札を公開する必要はありません。 ベーシック-レア
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Legend メンバー表 階級 名前 クラス Lv 転生 編集 マスター Lalf S 107 120転生 編集 サブマスター 侑貴 F 108 115転生 編集 開発担当 dall F 102 118転生 編集 保守担当 takataka M 101 編集 訓練担当 功太 F 118 ヘッポコ修行㊥ 編集 戦闘担当 smnmtm V 96 115転生 編集 一般 CHUN M 95 115転生 編集 一般 荒鷲 F 101 編集 一般 オジンガー S 110 @5 編集 一般 九十九尾 V 94 マダマダ・・・w 編集 一般 taiji F 103 編集 一般 ジーナシス S 100 編集 一般 ブリオン S 98 編集 一般 どん S 102 編集 一般 マリメッコ F 101 編集 一般 クレープ F 100 編集 一般 まーじー M 95 編集 一般 ヴァンv-v M 93 編集 一般 ぢゃいふぁん F 70 編集 一般 鐘馗 F 95 編集 一般 ポーズ V 98 編集 一般 monmon S 116 編集 一般 紅帝 M 100 編集 一般 猫軍曹 S 111 編集 一般 紅月かれん V 104 編集 一般 紅櫻歌 M 96 編集 一般 agashi S 101 125転生 編集 一般 弱支援 S 93 編集 編集 一般 hito14 V 101 115! 編集
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《BADEND》 効果モンスター 星6/闇属性/アンデット族/攻1800/守1900 このカードの生け贄召喚に成功した時、自分のデッキから「封印されし」と名のついたカード または、「ウィジャ版」「終焉のカウントダウン」の内のどれか1枚を選択して 手札に加えることができる。 Part13-210 特殊勝利カードを呼び出すカード。イラストに興味を惹かれる。さて現実問題、どのカードを手札に加えるべきだろう? 俺は封印されし系を勧めるかな。残り2種類はスピードが遅いからだ。場合にもよるが、アタッカーとしても中々である。 -- 鑑定人 (2007-07-01 04 13 34) 名前 コメント
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■スペース三国志■ END-99F フィナレンド 「究極の量産機」をコンセプトに地球圏同盟軍が開発した、全領域対応型万能量産機 スカイブルーの機体で各所にハードポイントを持ち、背部には小型のエナジーウイング発生器を装備している この装備は翼状のエネルギーを発生させて飛行できる他、バリア発生器も兼ねている 地形適応に優れ、換装作業なしで全ての領域において100%の性能を発揮できる また、周囲のエネルギーを取り込む特殊エンジンの搭載により、スペック以上の稼動時間を誇る 基本武装はビームライフルと小型シールドだが、任務に応じた全ての武装がほぼそのまま使用可能である
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一等兵 LEGEND [愛銃]M63.SVD [使用兵士]ソ連軍兵士 [得意戦術]近距離HS.長距離からSVD. [通称]重火器のスペシャリスト? [他のチームに対して]正々堂々戦おう [一言]これからよろしくお願いします
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HAPPY END(9)◆ANI2to4ndE ◇ 東方不敗は歓喜していた。無論、愛弟子の見せた力とその成長ぶりにである。 天元突破に至り破滅を招き寄せる程の力を得た獣どもをその身と技だけでねじ伏せて見せた。 武に逸る東方不敗が思わず足を止める程に見事なファイトを、己が弟子が演じて見せたのである。 人を見るに長けておったはやはりこの東方不敗、と思わず笑みがこぼれる。 「師匠……生きておられたのですか」 「ドモンよ、貴様はどうしてもワシが死んだことにしたいようだのう。ワシはここにおる。そこに何の不思議があろう」 先刻カミナと交わし、一日前にドモンと交わしたのと同じやり取りに、東方不敗は変わらぬ威厳でもって答えた。 ドモンの声は疲労困憊といった様子で、情けないほどに弱々しい。だがそれで良い。 折れてさえいなければそれで良い。 「しかし……」 「ふん、謎かけばかりしていても始まらんか。良く聞けドモンよ、ワシは一時のこととは言え螺旋王と手を組んだ。偽の情報を流すことなど訳もないことよ」 なんと、とドモンが息を飲んだ気配が伝わってくる。 ルルーシュや獣人どもの複雑に入り交じった関係まで教えてやるつもりはない。 どうせ言っても詮無いことである。 これから行う仕上げが完了すれば、もう奴らと顔を合わせることもないのだから。 「東方不敗……!あんたと言う人は……!」 目論見通り、声に怒りの気配が混じり出す。それに連られて崩壊寸前に思われたアルティメットガンダムも鈍い音を立てて動き始めた。 (技だけ見ればましになったとは言え……相も変わらず御しやすい馬鹿弟子よ) 東方不敗の挑発でドモンは再び立ち上がる力を取り戻しつつある。 そうでなくて困るのだ。ルルーシュの言う手心を加えた試練など所詮は戦いを知らぬ者の戯言。 限界を越えた先にある艱難辛苦に打ち勝ってこそ、初めて試練は試練足り得るのだ。 天元を破ろうなどという大願を目指すならば尚のこと。 「あんたは間違っている……俺が今それを教えて……ぐぅ!」 命を懸けねばいかなる修行も成ろうはずがない。 「良くぞ言ったぞドモン!ならば見事受けてみぃ!これが、最後のガンダムファイトよおおおおおおお!!」 それを知るからこそ、東方不敗は一切の容赦もなく己が機体を大回転させることができるのだ。 ◇ それはファイトと呼ぶにはあまりに一方的な蹂躙だった。 「ほれ!ほれほれほれ!ほぉれいっ!」 「ぐおおおおおおお!」 マスターガンダムは自身の何倍もの巨体をまるで赤子のように弄んでいた。 影のように軽やかに次々と技を放ちその一撃一撃が確実にアルティメットガンダムの命を削り取っていく。 既に精魂尽き果てたのか、棒立ちでそれを受けるドモンもまた然りである。 あたかも東方不敗が複数いるような、いや時には実際に分身してまで行われる執拗な攻撃をカミナはどうすることもできず、ただ喚くしかない。 「どうしたどうした!悪党のワシにいい様にされて良いのかぁっ!?」 「てめぇジジイ!汚ねぇぞ!」 「小僧は黙って見ておれ!ぬぅわ!」 「ぐぁあ!」 叫ぶことも許さぬとばかりにマスターガンダムの腕部が射出され、地面ごとカミナを抉り飛ばした。 宙を舞いながらちくしょう、ともう何度目になるかも分からない悪態を漏らす。 剥き出しの敵意という新たに突き立てられた壁はあまりに大きかった。 諦めるつもりなど毛ほどもないが、打ち破るだけのドリルが今のカミナにはない。 (くそったれくそったれくそったれ……!こんなところで終わっちまうってのかよ! 後からしゃしゃり出て好き放題しやがる訳分かんねぇクソジジイにいい様にされて、それで終わりだってのかよ!) 可能性があるとすればドモン・カッシュだ。 しかしそのドモンも言い放った言葉と裏腹に気力だけで立っているという気配で、ただマスターガンダムの猛攻に身を任せている。 既に余力も尽きたかのように見える。だが、問題がはそんなことではない。 (そうじゃねぇそうじゃねぇそうじゃねぇ!そうじゃねぇんだ! 怪我がなけりゃとか武器があればとか、そんな甘ぇ考えはいらねぇんだ!) 東方不敗は万全の状態でありドモンは満身創痍である。 戦えぬドモンにはガンダムがあり、戦えるだけの余力を残すカミナにはガンメンがない。 だから勝てない。突如降って湧いた戦闘とも言えぬ茶番によって命を散らすしかない。 いや、そんなものは理屈だ。 (できるとかできねぇとかそんなこたぁどうでもいい! だがよ、あんなどでけぇ喧嘩の後をぶち壊しにしてくれやがったジジイを一発ぶん殴ってやることもできねぇなんてよ……我慢できねぇだろうが) 背中から地面に叩き付けられ、殺しきれなかった衝撃にカミナの体が更に二度三度と跳ねてようやく止まる。 頭を打った。視界がぐるぐると回って気持ち悪い。 腹の底から絶叫を迸らせるも、響く声はどこまで届くものか。 「あぁそうだろうが!こんなんが終わりでいい訳ねぇだろぉが……えぇ、ドモンよぉ!」 穴蔵から見上げる空は、あまりに遠かった。 ◇ (駄目なのか……もう俺には師匠を救う力は残されていないのか) 骨を砕き臟腑を穿つ東方不敗の技の数々は確実にドモンの命の火を消しつつあった。 師匠の過ちを拳で正すという誓いは未だ折れてはいない。今も限界を越えた体を支える最後の助けとしてドモンを踏ん張らせ続けている。 だが体は限界だった。ヴィラルとの決戦で全ての力は出し尽くしている。誤魔化しが効くレベルはとうに過ぎていた。 加えてあれだけの大技を放ったのだ。アルティメットガンダムに蓄えられていたエネルギーもほぼ底を突き、身じろぎすることさえ叶わない。 カミナが何かを叫ぶ声が聞こえた。これでいいのか、ここで終わってしまうのかという魂の慟哭だ。 いい訳がない。まだ何一つ終わってはいないのだ。 螺旋王の打倒は果たせず。 レインの元に帰ることもできず。 救うべき師には逆に命を奪われようとしている始末だ。 全くもって、救いようがない。 (だったらどうすんだ……そのまま蒸し焼きにでもなるつもりかよ) 白光に世界が埋まり、視覚も聴覚も朦朧とした世界の中でドモンとカミナは意識を交わす。 (おめおめとやられるつもりなはい……だが、やはり師匠は強い……!) (んなこと聞いてるんじゃねぇよ……) 一騎当千の語をそのままに際限のない爆発が続けられる。 土くれと共に舞いあげられるカミナ。 アルティメットガンダムがついに崩落の兆しを見せる。 (今の俺の拳では師匠には届かん……曇りきった師匠の心を晴らすことができん……) (本気で言ってんのか……) 荒れ狂うマスターガンダムの力に、ついにドモンカッシュの心が膝を付いた。 アルティメットガンダムの瞳から光が消える。 (まったく修行なんてなっちゃいなかった……俺は、無力だ) (本気なんだな……) 心折れたキングオブハートの言葉はどこまでも弱く、カミナの胸を打つような力もない。 あれほど勇ましかった男も死を前にすればこんなものなのか。 そんな諦念にも似た後ろ向きの気持ちを目の当たりにし―― (じゃあよ) ──カミナは切れた。 「歯ぁくいしばりやがれええええええええ!!」 ◇ 「なんとぉ!?」 最早この戦場は完全に己の思うがまま、そう確信しきっていた東方不敗にとって目の前で起こっている現象は全くの予想外だった。 カミナが、走っている。 「うおぅりゃあああああああああ!!」 喉よ千切れよとばかりに獣じみた唸りを上げて、死に損ないの男ががむしゃらに駆けている。 血塗れ泥塗れになり無事な箇所などないのではないかという怪我を負いながら、それでもアルティメットガンダム目掛けて一直線に突っ走っている。 流れ弾で死んでいなかっただけでも奇跡的だというのに。 足を支える骨などとうに砕けているだろうに。 そんなものは知らぬと、男は爆進している。 「くっくく……はぁっはっは!流石はワシの見込んだ男よ!そうこなくては稽古をつけてやった甲斐がないと言うもの!」 東方不敗は堪らなく愉快な気持ちになった。 攻めを受けるばかりの弟子どもに不甲斐なささえ感じていたがここで反撃に転じる気概を見せてこそ修行の意味がある。 だからこそ、さらなる試練を与えずにはいられない。 「何をするつもりか知らんが、これはどうだ……ほぉ~れい!」 鋭く尖ったマスターガンダムの拳が東方不敗の一声でごぅん、という音と共に射出されカミナに迫る。 モビルファイターでさえ容易く貫く必殺の抜き手である。威勢だけが取り柄の小僧にかわせる程甘い技ではない。 狙い違わず、ビームに連結されるディスタントクラッシャーは側面からカミナを握りつぶさんと迫り。 「しゃらくせぇ!」 前転の要領で迷うことなく身を投げ出したカミナに紙一重で回避された。背後で巻き上げられた土砂が空しく飛び散る。 カミナはすぐさま起き上がった。ギリギリの一線で命を拾ったことになどまるで構いもせず再び走り出す。 東方不敗には何故か一瞬その背中がとても大きくなったように見えた。 「く……!つけあがるなぁ!」 嫌な妄想を振り払うかのように東方不敗は全力での攻撃を繰りだし始めた。だが言い様のない焦燥に僅かに技が乱れてしまう。 人間一人刈り取るなど訳もないことのはずなのに、まるで攻撃が当たらなくなっている。 あたかも流水になったかのようにカミナの動きが捉えられない。 右に左に発射される光線をカミナは見もせずにかわす。雨のように注ぐ土砂などお構いなしに走り、鞭のように振るわれたマスタークロスの一撃をひとっ飛びに避ける。 足元で生じた爆風を推進材に原型を留めぬ程に痛みつけられたアルティメットガンダムの下半身に取り付いた。 そのままよじ登る、のも面倒くさいとばかりに全身をガシガシと動かし、ついには足だけでほぼ垂直にそそり立つ外壁を駆け上がるに至った。 追い縋るように再度放たれたディスタントクラッシャーを本能でかわし、逆に足場としてコックピットブロックをこじ開ける。 無理矢理作った隙間に頭から飛び込み殺しきれなかった勢いに盛大にすっ転んだがそんなことはもう微塵も歯牙にかけず立ち上がり。 「歯ぁ食いしばれそれといつかのお返しだ覚悟しやがれパアアアアアアアンチッ!!」 呆けたように突っ立っていたドモンを殴り飛ばした。 「がはあっ!」 呆れる程真っ直ぐ突き出された拳は綺麗にドモンの顔面に突き刺さり体ごとその身を吹っ飛ばした。 面白いくらいゴロゴロと転がったドモンはそのまま触手のような無数の配管が剥き出しになったコックピットの壁に激突し、呻き声を上げて倒れた。 「おうおうおうおう!」 何が起きたか分からぬと口にするかのような腑抜け顔。 散々に偉そうな能書きを垂れてくれたドモンに向けて、カミナはビシリと指を差す。 「耳も目も鼻も口も!穴ってぇ穴かっぽじってよぉく聞きやがれ!」 そして直ぐ様天を指す。 ここ一番で叩き付けるのは得意の口上。カミナという男の生き様そのものである。 「勝てねぇ会えねぇ分からねぇ! ないない尽くしの泣きっ面ぁ、意地で隠して押し通る! 裏目裏目の負け犬人生、それでも貫く男道!」 グレン団、不撓不屈の鬼リーダー。 俺を。 この俺を。 「俺を誰だと思っていやがるっ!!」 男カミナ、ここにあり。 「ぐ……何だと?」 息も絶え絶えに口元をぬぐいながらよろよろとした足取りでドモンが立ち上がった。 だがまだカミナの怒りは収まらない。腹の底から湧き出る言葉を感情のまま次々とぶつける。 「おうおう、俺は夢でも見てたのかぁ!?さっき見たのはそりゃもうすげぇ、男と男のガチンコ勝負だったんだがなぁ! 俺も地上に出てから結構経つが、あそこまで派手な喧嘩は見たことねぇ! 魂が震えるたぁあのこった! ……正直負けたと思ったよ。このカミナ様がよりにもよって男のでかさで負かされるなんざ、思いもしねぇってもんだ。 だがよ、そんなすげぇもんを俺に見せてくれた手前ぇが何だぁ? 最っ高の目標を前にできません、無理ですだぁ? ふざけんじゃねぇぞこんちくしょうっ! 仮にも俺が認めた男が、んなこと抜かしていい訳ゃねぇんだよ! ……俺は信じる。俺の信じた俺を信じるぜ。俺はそれっきゃ信じねぇ!」 掲げられていた指を下ろす。その先にはドモンの顔がある。 「手前ぇはどうなんだ、ドモン!!」 キングオブハート。 散弾のようにぶちまけられた言葉の嵐はあたかも魂を直接殴り付けられるようで、激しく突き立てられた熱情は東方に燃え盛る炎にも似る。 弛緩していたドモンの表情が変わった。 「ふ……まさか、お前に説教されちまうとはな」 どこか粗野な雰囲気を漂わせ、ドモン・カッシュは笑った。両足に再び活力が戻り始めていた。 「おうよ、俺もグレン団もあのジジイにはでけぇ借りがあるんでな」 それを見てカミナもまた口を吊り上げ笑った。親指の腹で背後を指す。 「だがどうする。ガンダムのエネルギーはもう空っぽだ」 「あぁん!?まだそんな寝言を言ってやがんのかぁ?」 心底からの呆れを感じカミナは頭を抱えた。思わずやれやれと大袈裟なため息まで出る。 「空っぽなんかじゃねぇだろうが」 まったく、この期に及んでこんなことも分からないのか。 行く道に必要なのは度胸と根性。それに。 「気合いがあんだろ。ロボットを動かすのに必要なのは燃料なんかじゃねぇ……気合いだ!!」 当たり前のことである。 「く、くははははは……あっははははは。気合い、気合いか」 なのにドモンはそれを聞いてからからと笑った。 まるで子供に戻ったような純粋で曇りのない呵呵大笑がコックピットに満ちる。 「あんだぁ?何か変なこと言ったか?」 「いや何でもない。俺としたことが、どうやら大事なことを忘れてしまっていたらしい」 訝るカミナを押し退けるようにドモンがコックピットの中央に陣取った。 だがもちろんそれだけでアルティメットガンダムに火が入ることはない。そんなことはお構い無しにドモンはごそごそと何かを探し始める。 「何やってんだ?」 焚き付けた身でありながら意図が読めず、ぽかんとカミナは聞いた。 「知れたことだ。馬鹿師匠の目を覚ましてやるのさ」 挑発的な笑みの横で、シャッフルの紋章が赤く光っていた。 ◇ そして、アルティメットガンダムが力を取り戻す。 「ぐぉお!?何事!?」 再起動の気迫と共に放たれた衝撃波にしばし静観を決め込んでいた東方不敗が足を取られた。 復活していく。あれだけ散々に痛めつけられ、がらくた同然と成り果てていたアルティメットガンダムが瞬く間に再生していく。 昆虫のような下半身に不釣り合いに植えられた人間の胴体部。装甲に鮮やかな色が生まれる。 「だがどうやってだ!?最早あれには一片たりともエネルギーは残っておらんはず!?」 「はあああぁぁぁぁぁ……はぁ!!」 完全に立ち上がったアルティメットガンダムから再度、鬨の声と共に更に強力な衝撃波が放たれた。 顔面を庇う腕の隙間から東方不敗は見る。僅かに開け放たれたままの、コックピットブロックの内部に広がる光景を。 「見せてやる……父さんと兄さんが命懸けで作った、アルティメットガンダムの力をなぁ!」 「貴様……!まさか自ら!?」 そこにあったのは触手のように無数に伸びる配管を全身に巻き付けたドモンの姿だった。 傍らに立つカミナの姿を除けば、それは東方不敗にとってもある意味で馴染みの姿。 自らをガンダムのエネルギー元とした、男の姿である。 「貴様、まさか自ら生体コアとしてその身を捧げたというのかっ!?この愚か者があああああ!!」 「へっへ、吠えてやがんぜジジイがよぉ」 怒号飛び込むコックピットの中、カミナがすちゃりと音を立てサングラスを装着した。 テンガロンハットはどこかに飛んで行ったがこれだけは失くさない、愛用の一品だ。 「そんなことをしてみろぉ!貴様に僅かに残った生命力まで、吸い尽くされてしまうのだぞぉ!」 均衡を崩した事態に東方不敗が不測を悟り、静止のための怒号を飛ばす。 「うるさい!」 だが時は既に遅い。その声は弟子には届かない。 「あんたにも今分からせてやる……そう!この魂の炎、極限まで高めれば!」 「突き崩せねぇ壁なんざ!」 『何もない!!』 二人の声が唱和し東方不敗を押し退ける程の力となった。 重なり合った心に黄金の輝きが満ち、緑の光がそれを彩る。 「俺に合わせろ、カミナ!」 「おう!何だかわかんねぇがいっちょ派手にやってやるぜ!」 『行くぞぉ、東方不敗!!』 「この馬鹿弟子があああああああああ!!」 爆熱の気運の中、東方不敗もまた奥義を放つべく構えを取った。 だが足りない。 『我等のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!』 東方不敗には、圧倒的に、気合いが足りない。 「天を破れと!」 「轟き叫ぶぅ!」 アルティメットガンダムの中で見せる鮮やかな息の噛み合いは、まさしく舞闘。 『爆ぁぁぁぁぁぁぁぁぁくぅ熱!!ゴッドフィンガアアアアア……!!』 金の輝きに緑の粒子が舞い上がり地を満たした。 最強のガンダムが放つ一撃は、その名も高き究極拳。 「石!」「破!」 『究うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ極!!天驚けえええぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!』 放たれたのは、男と男が貫いた、二つに重なる拳の力。 「な、何だと!?ワシの技がこうもたやすく……!?」 結ばれたのは紛れもない王の形だった。それは東方不敗の奥義を容易く飲み込み、主までも包み込まんと迫る。 かわすことなど、受けることなど、できはしない。 『ヒィィィィィィィィィィィト!』 「こんな……!このワシが、東方不敗がああああああああ!?」 『エェェェェェェェェンドッ!!』 勝利を決定付ける一声を合図に、解放されたエネルギーが爆発しクレーターの内部を球形に包み込んだ。 まばゆい白の光が超高温の世界を作り、マスターガンダムを、アルティメットガンダムを呑み込む。 世界の終わりのように、全ての物と感情が静かに塗り潰されていくのをカミナは感じた。 「レイン………………………………」 「………………………………あん?」 最後の一瞬、微かな呟きが耳朶を打ち、その意味を知る間もなくカミナの意識は光の中に消えた。 時系列順に読む Back HAPPY END(8) Next HAPPY END(10) 投下順に読む Back HAPPY END(8) Next HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) ヴィラル 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) シャマル 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) 菫川ねねね 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) ジン 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) カミナ 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) 東方不敗 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) チミルフ 285 HAPPY END(10) 285 HAPPY END(8) 不動のグアーム 285 HAPPY END(10)
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HAPPY END(11)◆ANI2to4ndE ◇ ――そして、舞台は再び儀式の籠の中へと舞い戻る。 ◇ 「信じられない……あたし、夢でも見てんのか」 究極にして至高なるデスマッチの終了を、遠く離れた末席から眺める5つの視線。 その中でも一番間近に立っていたねねねは、ドーム状に広がる光の洪水に目をしかめていた。 愛の名の下にぶつかり合った惚気自慢。そして下馬評では予測不能だった師弟対決。 異世界を股にかけ、プライドを懸けた2番勝負は、ギャラリーに勝敗を越えた感動を与えていた。 「最高のロイヤルストレートフラッシュだった」 不安そうにリングを観察するねねねに答えながら、スパイクはポケットを探る。 右手がお目当ての物を掴んだことを認識すると、さっと口に運び火を灯した。 上等な葉巻をジンから譲り受けたので、もう肩透かしを食らうことはない。 「……あいつら、生きてるよな」 「それがわかりゃ苦労はしねえさ」 肺に吸い込んでいた煙を吐き出し、スパイクは踵を返してしゃがむ。 新たな焦点は、後方でうずくまる舞衣に寄り添っているゆたか。 勇気を胆に据えていたゆたかの理性は、化け物の公開自決というショックで疲弊していた。 「大丈夫か」 「……はい、スパイクさん。私は……」 「ゆたか。大丈夫。とりあえず呼吸を落ち着かせて」 とはいえゆたかの心は、意識の完全遮断を拒むほど強くなった。 守ってもらう立場なのは変わらない。体はまだしっかりと心に追い付いていない。 それでも確実に成長している彼女に、スパイクは素直に感心していた。 「これから忙しくなるからな。しっかり休んどけ」 「ス……スパイクさん……」 「俺たちは賭けに勝った。残ってるのは俺たちとあのギルガメッシュだけだ。 でもまだ終わりじゃない。俺たちには俺たちの仕事がある。ここがくたばっちまう前に、皆でちゃんと脱出するんだ」 「はい。わかっています……舞衣ちゃん、私、もう少し甘えちゃうね」 「え!……あ、あ~~、うん」 だからこそ、ゆたかを助けると皆で意思表明しあった。そこには誰の異存もない。 ゆたかはスパイクの説得に迷うことなく頷き、舞衣に背中を預けることを受け入れる。 妙に顔を赤らめる舞衣の反応に若干の疑問を感じながらも、スパイクは立ち上がった。 「スパイク! 両手の花を生けてるとこ悪いけどちょっと手を貸してくれ! 」 スパイクが呼び声に振り向くと、少し離れた場所で、ジンが複数のデイバッグから道具を地面に並べていた。 デイバッグの数はここにいる人数とは合わず、余分に増えている。 ガッシュ、スカー、そしてドモンのデイバッグをジンが直前に受け取っていたからだ。 「粗方は分別しといたよ、はいこれ分類のメモ。 ガッシュたちの荷物が誰のバッグにどんな感じで入ってるかわかるから」 「こりゃまた随分と手際よく――おっと、また“ドロボウですから”って言い返すつもりだったろ」 「……念のため、俺の荷物を分配したメモも書いといたよ。要望があったら言ってくれ」 ジンのただならぬ雰囲気を踏まえて、スパイクは渡されたメモにちゃんと目を通した。 そのメモにはガッシュたちだけでなく、ジンの荷物も大半が誰かのデイバッグに移ったことを記していた。 ジンが未だに所有している荷物はどの項目からも2、3点しかなかった。 「要望がある」 「どうぞ」 「何、考えてやがる」 スパイクは舞衣たちに悟られないよう、小声で話しかける。 右手はジンの襟を掴んでいた。左手があればもう片方の襟を掴んでいただろう。 スパイクにはジンが「掴んでもいいよ」と言っているように見えた。 軽口を叩かず重い口調で返したジンの態度が、スパイクにかなりの違和感を与えていた。 「舞衣は、守るために戦える乙女だ」 「……乙女っつーよりありゃ魔女(ジャンヌダルク)だな」 「ゆたかは、勇気を出して向き合える女の子だ。ねねねおねーさんは、幸せな未来を導かせる女性だ」 「ジン、俺はお前の口三味線に付き合えるほど、面の皮は厚くねぇぞ」 スパイクの右腕にジンの左手が噛み付き、渾身の力を入れる。 「あんたは、どうなんだい」 使い捨ての蛇皮線が想像を越える感触をスパイクの右手に食い込む。 向かい合って座る少年の話し声は、スパイクよりも小さい。 しかしその言葉は、今まで彼が聞いたどの言葉よりも大きく聞こえた。 ジンは目と口も全く笑わぬ無表情なのだが、スパイクには、言い知れぬ彼の心情を感じた。 「――なーんてねっ♪」 「はぁ?!?」 「さーて、ねねねおねーさーん!厄介なクレーマーはお帰りなすったんだ。 パーティーのガンはいよいよ主催者と重役だけだぜ。後ろを向いてる場合じゃない!」 スパイクの腕を払い除け、ジンはスキップしながらねねねの元へ走る。 取り残されたスパイクは、予想外の切り上げであっけに取られたのか、葉巻を落としてしまった。 いつの間にか舞衣も移動していたらしく、ゆたかをおんぶしたまま、ねねねと会話している。 「おいジン、お前――……はぁ」 スパイクは自分の頭にひっかかる何かについて考えながら、仲間の方へ歩き出した。 ◇ 「One by one, they are smeared in blood……They were born into this era……」 忍び寄る終焉を憂うかのようにジンは謡う。 しんしんと静み逝く魂と、ひたひたと纏わり付く死。 メロディーを捧げる相手は、パーティーの参加者だけでなく係員――全ての犠牲者――も含まれていた。 「Oh~……chosen princes, Indeed, Is fighting a banquet? Ah~……」 ジンは舞衣の牽引のもと、街全体を見下ろせる高さまで、カグツチに運ばれていた。 故郷へ運ぶ馬車のように、優しく揺れながら連れていく。遥か彼方に見える天の河に、少年を連れていく。 ヨルダンの源泉は天国ではなく、かつて台風の目だった目玉商品。エリアC-6に安置されている大怪球フォーグラー。 「さあ、急いで時間(リール)を巻いてくれ。鮮度と客を逃がさぬ内に」 「こんなに高く上がっていいの? ここからフォーグラーの内部に入れない? 」 目算から予測されうる進行に、若干の焦りを滲ませつつ、ジンは頭の中で段取りする。 カグツチによるフォーグラーへの運搬作戦は良好。 急激な上昇による気圧変化の影響を考えて、ゆたかをスパイク達に任せて地上に残したが、“間に合いそう”だ。 ねねね達に迅速を超えた“ジン速”で作業をする、と大見得を切った手前、それは常に意識しなければ。 「何をしている?」 張り詰めた空気に傲岸不遜な大吼えが突き抜ける。轟々と流れる風に重ねるように、ギルガメッシュが謳う。 この世界の運命を握る強き生者。ウィングロードに立ち腕を組む姿に威風が吹き荒れている。 「I am beautiful and omniscient……あなたに贈る口語りでございます」 「おべっかを悪しき華束として我に嗅がすか――ハッ」 風で舞いあがるかのごとく、王は高く飛びあがる。押し上げるのは民衆ではなく自分。 マッハキャリバーが道中で展開するウィングロードを足掛けとしながらも、彼を動かすは常人離れの脚力のみ。 むき出しになったフォーグラーの進入口付近まで瞬く間に翔け、再び空に座した。 「ゲストが調理場に入るのは営業妨害だよ」 そして配下にウィングロードを延長させてフォーグラーに繋がせたのを確認し、退屈そうに歩く。 こつこつと地を叩く足音が空気をより冷ややかにさせていた。 「コックの分際で油を売っていたのはどこのどいつだ」 英雄王の切り返しが、相変わらずのへらず口にチャックを閉める。舞衣も気丈に言い換えそうとはしない。 ギルガメッシュの言葉がどういう意味を持つのか、2人は理解していたから。 そう言われざる得ない不足の事態、招かれざる客の登場。 死に瀕してもなお突き進む螺旋遺伝子。ヴィラルとシャマルの愛情合体グレンラガンである。 「――見よ。死に損いのハイエナが、飯の匂いを嗅ぎつけてるぞ」 あの火事場泥棒の起動にジンたちが気づいていたにも関わらず、鉄火場に向かったのはなぜか。 グレンラガンは、それ以上何もせず、ひたすら無防備宣言を死守し続けていたからである。 この沈黙の行き着く先が永遠の死か秒殺の罠か。莨を吸うために胡坐をかいたわけではあるまいし。 虎穴に入らずんばとは言うが獲物は虎子ではない。ジンは雪崩に身を任せるのが最良と考えた。 「わかってたさ……天使が後を追っかけてきてるのは」 グレンラガンが今、この瞬間動き出したとしても、カグツチには余裕があった。 そのスピードを踏まえれば、今からスパイクたちを拾いに行った後、戦闘に応じられる勝算はある。 ただ、ジンにはどうしてもフォーグラーに到達せねばならない理由がある。それは皆が知っている。 最悪のシナリオはハイエナの標的が仲間(ベーコン)ではなく、目玉(サニーサイドアップ)だったとき。 カグツチによる直接攻撃を度外視していたわけではないが、被害を恐れたジンはなるだけ穏便に済ませたかった。 「給与明細の届出は、三途の向こうに聞いてほしいなあ」 ◇ 『……もうやめてください』 何も言わずに操縦桿を先へ倒し続けるパイロットに、クロスミラージュは応答を請う。 それは、生ける2人にこれ以上の愚挙をさせないための警告でもあり、純粋な心配でもある。 ドモン・カッシュとの死闘は、生還というカテゴリを得られただけでも正当な評価に値するのだ。 『あなた方は全力全開でした』 グレンラガンは半死半生、シャマルもヴィラルもその身に負った傷の数は尋常ではない。 しかし生きている。皆が生き延びたのだ。シャマルが完全に回復すれば、2人の状態はより良い方向に齎せられる。 彼らの意思が何であろうと、クロスミラージュがついつい気遣ってしまう現状。 『それでもまだ続けるというのですか』 なぜなら彼らは、クロスミラージュの言葉をまるで認識していないからだ。 クロスミラージュは3つの言葉をひたすら彼らに聞かせているが、反応はない。 『もうやめてください』 朧気に垂れ流される呻きが、電子音に紛れて姿を隠す。 クロスミラージュは、大怪球フォーグラーの付近に先客がいることも話せなかった。 マッハキャリバーが、強大な力の持ち主に従えている。白い龍を支える少年少女も只者ではない。 戦況は極めて不味く、そのうえ和解に持っていける確率は皆無に等しい。 『あなた方は……全力全開でした』 クロスミラージュは繰り返す。 グレンラガンが己の頭部に手を翳しても、繰り返す。 グレンがラガンをゆっくりと引き抜いても、繰り返す。 ヴィラルとシャマルが離れ離れになってしまっても、繰り返す。 グレンがラガンをカタパルトアームで投げても、繰り返す。 残されたラガンが、膝をついて座り込んでも、繰り返す。 動かぬシャマルの目を覚まさせる事もなく、繰り返す。 『それでも……それでもまだ……続けるというのですか……』 この警告はクロスミラージュからの最後の善意。 魂の叫びの果てに死んでいった仲間たちをも汲んだ中立の姿勢。 残される者たちは死にゆく者へ何もできない。 例え現存者が、本当に"何か"を死者に届けていたとしても、彼らがそれを実感することはできない。 ◇ 「ジン、グレンラガンが!」 「胡坐かいてるくせに痺れを切らせちまったか!」 そっと放たれるブーケのように、ラガンが宙を舞う。 最高の花嫁であるグレンの振り被りから生み出される勢いは、音も飛び越えそうなほどだ。 しかし――それは最後の一振りだったのであろう。 投球を終えたピッチャーの体は猫背にかがんで正座をする。両腕は故障したのか、だらりと垂れ下がっている。 肩すらまともに入らぬ投球はコントロールを大きく乱していたのだ。 ラガンはフォーグラーから明後日の方向に飛ばされて、天高く昇っている。 「舞衣、思いっきり高度を上げてくれ!」 「は、はい!?これ以上昇ったらフォーグラーを越えて……」 「早く!俺の肺を潰しちまってもいいから!」 カグツチの毛並みを掴むジンの掌がぐっしょりと汗で濡れる。 この大暴投がラストイニングになると、彼には到底思えなかった。 その証拠と言えるかどうかは微妙だが、ギルガメッシュも気を緩めていない。 ラガンの行く末をじっくりと観察しながら、時折ちらりと流し目でジンを見る。その視線の意味は―― 「着いたよジン! でもどうしてこんな遠回り――って!?」 カグツチは圧倒的なスピードでフォーグラーの頭上まで翔け昇った。 しかしジンは意外にもここでゴンドラを乗り捨てる。 「ジ――……!!」 「舞衣!皆のところへ今すぐ戻ってくれ!!」 ぽっかりと空いた穴からジンはフォーグラーに飛び込む。 着地予定座標はコクピットルームの目と鼻の先。着地を受け止めるマットへの心配はない。 幸い、今日の空には栄光への架け橋(ウィニングロード)がある。 むき出しになった外壁の鉄柱にコートを引っ掛けて、ジンは大車輪の真似事を披露する。 伸身のフィニッシュは美しい弧を描き、慣性に従いながら太陽の真ん中に飛び込んだ。 「……これは面白い」 多大な焦りのせいか着地は失敗した。先に踊り場にいた観客に笑われてしまったが、ジンにはどこ吹く風。 戦友から譲り受けたクールな劇薬ブラッディアイを、雀の涙ほど、両目に注していたから。 鋭敏になった感覚は刹那の世界を赤く染め、全てに亀のようにゆとりを持たせる。 だが兎がそれにあやかるつもりは無い。ゴールを目指して一目散に走る。 狙いはフォーグラーのコクピット席の先取り――及び安全の確保。 「はたしてどちらが先に楔を打ち込むか」 足場を大きく蹴って、兎は鷹となる。獲物を捉えた狩人は血眼になって狙いを定めていた。 地点は納得の角度、納得の距離。武器の手入れは万全。とっておきの3本の爪だ。 百発百中にふさわしい状況に持ち込めたのを確認し、鷹は勝機の爪を深く食い込ませた。 「……と、ほう? 」 すると、沈黙の球体が二度目の産声をあげて、自らの殻に閉じこもる。 大怪球フォーグラーが新たな宿命を背負うために、再びバリアフィールドを展開させたのだ。 太陽にとって、一度奈落に堕としたイカロスの復活は興味深いものであろう。 バリアの波形は、ギルガメッシュが突き破ったときのそれとは、全くの別物なのだから。 時系列順に読む Back HAPPY END(10) Next HAPPY END(12) 投下順に読む Back HAPPY END(10) Next HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ヴィラル 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) シャマル 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 菫川ねねね 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ジン 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) カミナ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 東方不敗 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) チミルフ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 不動のグアーム 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(12) 285 HAPPY END(10) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(12)
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HAPPY END(16)◆ANI2to4ndE 極光と火花が渦を巻いて、天へと駆け上っていく。 天地開闢の瞬きが、終焉の導きとなって覚醒を促す。 耳を劈く轟音と、燦然とした輝き、双方が空を埋め尽くす。 一面の白。光晴れたる帳。大地を照らす月。亀裂走りし結界。 趣を変えた世界の様相は、天地開闢の力を持ってしても終焉には至らないという証明だった。 残ったのは、闇。そして今もにも落ちてきそうな空。 終焉は訪れる。しかしそれは、ただの一人も望む者がいない邪なる終だ。 この地の誰もが、空を見上げてこう思ったことだろう。 あの天井、ぶち破りてぇなぁ…… 誰かからの懇願を受けたわけでもなく、 誰かからの悲鳴を耳にしたわけでもなく、 誰かからの神託を賜ったわけでもなかった、 「――ったく、おちおち寝てもいられねぇ……」 だからこそ、カミナは再び目覚めたのだろう。 わずかに開け放たれたアルティメットガンダムのコクピットブロックから、罅割れた空を眺める。 どことなく視界がぼやけて見えるのは、額やこめかみから流れる鮮血のせいだろうか。 顎先からぽたぽたと垂れる水滴は、確かに赤かった。舌に運ばれる味も、鉄のそれに似ている。 カミナは外界から目を背け、コクピットの内部へと視線を転じた。 夥しい量の配管に身を纏われた、ドモン・カッシュの姿がそこにある。 肩や首、手足は気だるく重力に折れ、両の瞳は閉じ、口元は笑んでいた。 安らかな寝顔である。その状態が睡眠ではなく絶命だと受け取るのは、さほど困難でもなかった。 「男の魂完全燃焼、ってツラしやがって」 激闘の末、ドモンの心肺機能が停止したという事実を受け取っても、カミナは彼が死んだとは思わなかった。 悲しい現実だからといって、それを否定したかったわけではない。言葉を選びたかっただけだ。 ドモン・カッシュは死んだのではない。『燃えつきた』のだと――そう、自分の中で結論付けた。 「オレもあんなツラしてぇなぁ」 誰にでもなく呟いて、カミナは血まみれの頭を掻く。 猛烈な痒みに苛まれながらも、視線は再び、外へと向かった。 背後のドモンはえらく気持ちがよさそうだ。少し羨ましくもある。 ヴィラルとシャマル、東方不敗との闘いを思い出し、カミナはまた思う。 ――きっと自分は、ドモンに男として惚れていたのだろう。 その闘志、その覚悟、その生き様、かつてシモンが思い描いていた『アニキ』に通ずるものがあった。 足元に落ちていたサングラスを拾い上げ、装着する。 鏡面はやや罅割れていたが、それでも世界の色が変わって見えるわけではなかった。 なにも、変わってなどいない。 世界は依然、殻に覆われたまま、巨悪は天の向こうで踏ん反り返っている。 ジーハ村の天井よりも、もっともっと高い位置にある天蓋。 それを突き破れたならば、さぞ気持ちがいいことだろう。 ドモンのような、男の顔つきで達成感に浸れるのか。 「……ハラ、減ったな」 そしてカミナは、やり残した仕事の意味を理解した。 アルティメットガンダムのコクピットから飛び降り、クレーター状の大地に立つ。 少し北の方角では、破損してはいるもののなんとか原形を保つグレンが、火花を上げながら鎮座していた。 「ブタモグラのステーキが食いてぇなぁ」 カミナの歩む道に、血の濁点が落ちた。 カミナはそれを、顧みない。 足取りはふらふらでも、瞳は一直線にグレンを見据えて。 どこかで燻っている相棒を、迎えに行くために。 そして、最後の大仕事をやり遂げて、メシにありつくために。 カミナは、行く―― ◇ 吹き荒れる真紅の嵐。 天地開闢の衝撃は世界を揺らし、生み出された余波はありとあらゆるものを天上へと放り投げた。 その有象無象に含まれた待機状態のデバイスは瓦礫と共に舞い上がり、 乾いた金属音を立てて、落下する。 降り注ぐコンクリート片の雨の中。 運良く直撃を避けた彼は天を仰ぎ見て、"誰か"の目論見が失敗したのだと悟る。 詳しい事情などクロスミラージュが知るはずもない。 だがひび割れた空を見れば、それが反逆の牙だったのだろうということは容易に想像がつく。 凄まじい魔力量を内包した一撃――アルカンシェルすら凌駕するかもしれない超火力。 起死回生となるべきあの一撃を放つために、幾程の下準備が必要だったのだろう。 あらゆる知力と力と……そして恐らくはいくつもの命を踏み台にしてあの螺旋は放たれたのだ。 だが――その超出力攻撃ですらあの天は貫けなかった。 そんな事態を前にして、主なしでは移動すらできないデバイス風情が何をできるというのか。 足掻くことすらできないこの体でできることと言えば、ただ繰り返し自分の無力を痛感するだけだ。 『……私は、無力だ…』 あの男と出会い、グレン団にいるうちに自分の中で、何かが変わるような気がしていた。 変われるような気がしていた。 だが、その結果はどうだ。 マスターも、仲間たちも、そしてシャマルも救えなかった。 たった一人になった自分は瓦礫の上でただ一人滅びを待つ。 ……これを無力と言わずして、何と言うのだろう。 ああ、きっとそういうことなのだ。 所詮私にできることなど最初から何も――無かったのだ。 湧き出る諦めと共に眠りに落ちよう。 そしてそのまま、スリープモードへと移行しようとして、 ――ゴトリ 鈍い音が響き渡った。 『え……』 最初、彼はそれが何であるか認識できなかった。 自分の近くに何かが落ちてきた……そこまではわかった。 だが、目の前に転がるものが認識できない。 血に塗れ、所々が欠けたそれが何であるか、クロスミラージュには理解できなかったのだ。 『あ……』 いや、違う。 それが何であるか、クロスミラージュは知っているはずなのだ。 なぜなら彼は目撃しているのだ。 彼の命が尽きたその瞬間を。力尽き倒れたその瞬間を。 『あ……ああ……』 そして知る。 理解できないわけでもなく、認識できないわけでもなく。 自分はただ、"理解したくなかった"だけなのだと。 『あ……ああ……あああああああ……!! ガッシュ……ガッシュ・ベルッ!!』 そう、鈍い音を立てて落ちてきたそれは――かつて、金色の輝きを放っていた仲間の亡骸だった。 元からボロボロだったその肉体は嵐に巻き込まれたせいで、より無残なものになっている。 全身は血に加え泥で汚れ、辛うじて繋がっていた右腕は千切れ飛び、顔は半分が潰れている。 だが彼はそんな仲間の姿を否応なしに記録する。 何故ならば彼には逸らすべき瞳も、閉じるべきまぶたも無いのだから。 『う……あああああああaAAAAあああああああAhーあああああああああああああ!!!』 耐え切れなくなったクロスミラージュはノイズ交じりの悲鳴を上げる。 電子頭脳が上げるにしてはあまりに人間くさい泣き声を上げながら、彼は考える。 ――本当に、ここで諦めていいのか、と。 そう、冷静に考えれば主のいないデバイスに何が出来るというのだろう。 今のクロスミラージュは文字通り手も足も出ない只の板切れ。 だがもう"そんなこと"はどうでもいいのだ。 クロスミラージュは改めて少年の顔を注視する。 『ガッシュ……何故あなたは笑っているのですか……』 それは死後硬直のせいかもしれない。 叩きつけられたショックで筋肉が何処か妙な運動をしたのかもしれない。 だが確かに、クロスミラージュにはその顔が笑っているように見えたのだ。 ――クロミラ、後を頼むのだ。 それはきっと電子回路が起こしたエラー。 死体は何も喋ることは無く、瓦礫の山にはただ沈黙があるだけ。 だがそのエラーはきっと真実なのだと、クロスミラージュは認識した。 ではどうする? この場に残されたグレン団団員として……いや、"クロスミラージュ"という存在として何をするべきか。 その時、彼の視覚素子が捉えたのはいまだ天上に輝く月の姿。 アレを壊すまで、天を貫くまでこの物語に終わりは無い。 『終わりが無いのなら……この私が終わらせる!』 "どうするか"だとか、"何故やるか"とか、そんな物は今はどうでもいい。 ただ今、この時、何をするのか――重要なのはそれだけだ。 戦い抜いた彼の生き様を目の前にして、諦めるなど言語道断。 自分を囚われの姫と嘆く暇があるのなら、逆らえ、足掻け、反逆しろクロスミラージュ! 『ヌウウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオ!!!』 ガッシュが気合を入れていた時の掛け声と共に彼は望む。 世界を巡るための足を。何かを掴むための手を。天を睨むための瞳を。大声を張り上げるための口を。 それは――クロスミラージュが、初めて発揮した"欲望"であった。 "欲望"とはすなわち"意志"。 善悪を超えた所にあるそれは、メタルのボディに凄まじい電流を流させる。 『ヌオオオオオオオオオ……き・あ・い・だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』 電子の声に今まで以上に色濃く感情の色が滲む。 だが、何も起こりはしない。 未だ可能性は限りなくゼロに近く、だがそれを知りながらもデバイスは声を上げ続ける。 そしてインテリジェントデバイスが大声を上げるその隣で、ビチビチと動くものがあった。 大きさは、1メートル50センチ程度。 分類は、動物界脊索動物門魚上綱硬骨魚網スズキ目アジ科。 ハマチ、メジロとも呼ばれる代表的な出世魚の一つ。 そう――ブリである。 ガッシュのデイバックに埋蔵され、そして先ほど飛び出した彼もまた王の放った嵐に巻き込まれたのだ。 だが先ほどまでと違い、その動きには元気が無い。 それも当然か。 水から引き上げられ早数時間、その皮膚からは完全に水気が飛び、更には落下のショックで全身の骨が砕けていた。 例え内から湧き出る螺旋力があろうとも、その命は限界に達することを意味していた。 ――ボクは、ここで死ぬの? 彼の生存本能は「死にたくない」と訴え、渇望する。 酸素を吸う肺が欲しいと。丈夫で無事な骨が欲しいと。 だが、それは叶わない。哀れな命は残り数秒で尽きるだろう。 ろくな知性を持たない彼はそれすら理解することなく。 本能のまま、最後の瞬間までただ跳ね続けるだろう。 そこに、最後のファクターが現れなければ。 奇跡か、偶然か、それとも王ドロボウの洒落たプレゼントか。 地面に突き刺さったのはラゼンガンのコアドリル。 ガッシュのデイパックに入っていたそれは先ほど巻き起こった赤色の嵐に舞い上げられ、 彼らの丁度中間地点に突き刺さった。 ブリは思う。死にたくない、と。 クロスミラージュは思う。終わるにはいかない、と。 異なる意志はコアドリルを中心に絡み合い、一つの意志となる。 ――このままでは、死ねない。 それは野性と知性の二重螺旋。 血肉と鋼、本能と理性、生まれたものと生み出されたもの。 抗う意志を中心に据えて、ぐるぐる、ぐるぐると相反する属性は交じり合う。 『ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!! つ・ら・ぬ・けぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!』 機械の咆哮は始まりのベル。 かくして最後の幕は上がる。 これは――激動の運命に抗い、天を目指す男達の物語。 ◇ 「あれだけもったいつけといて、こんなオチかよ……!」 小高い丘の上、菫川ねねねは悲嘆に暮れる。 こんな結末は三流以下だ。 何のために明智は、スカーは、ガッシュはその命を散らしたのか。 だが、読者がどんなに嘆こうと、その結末がひっくり返ることは無い。 『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』は未完のまま終幕を迎える。 バッドエンドにすら届かない、行き止まり(デッドエンド)で。 「まだ、まだよ! カグツチの突撃形態なら……!」 確かに大気圏すら突破するその力なら世界の殻も破壊できるかもしれない。 だが、 「それでお前さんはどうなる。無事に済む確証があるのか」 スパイクの言葉に思わず表情が凍りつく。呪われたペナルティが発動することは無い。 だがしかしそれは結界や首輪があることが前提の話。 先ほどの戦いで鴇羽舞衣は理解した。 カグツチは完全に、本来の力を取り戻しているということを。 そして同時に気づく。 チャイルドが消滅する時、"自分と自分の大事な人も消滅する"という呪われた特性を取り戻している可能性がある、と。 もし今、カグツチが消滅すれば何が起こるか。 消えるのが自分や、心に残るあの人だけならまだいい。 だが"大事な人"というのは恋人や兄弟だけではない。 もしも"大事な友達"が光になって消えていったら…… それは今の舞衣にとって、絶望よりも深い恐怖だった。 だがその時、ふと手に触れる柔らかい感触。 視線を向ければそこには小さい体を預けるゆたかの姿があった。 自分が何を気に病んでいるか、表情から読み取ったのだろう。 そう、支えあうと、一緒に戦うと決めたのだ。 2人して視線を交わし、その決意を口に出そうとして、 「それにな、"あの男"が一番そんな結末、望んじゃいねえよ」 その言葉に、完全に封じられた。 それほどまでに彼女たちにとってその存在は大きかったのだ。 「卑怯、よ……!」 ああ、そうだろう。スパイクとて卑怯な言い方だと思う。 だが、喜ばないと思ったのも事実だ。 "あの男"はきっと傷つきながらでしか生きていけない男だ。 だからせめてあの世でぐらいは、心穏やかに過ごして欲しい。 ――そう思うのは生き残った者の傲慢だろうか。 「……あたしもスパイクに賛成だ。 これ以上子供を死なせて、どんな顔して明智たちに会えってんだ……!」 ねねねも生き残った数少ない大人としてスパイクの意見に賛同する。 彼女としても目の前でこれ以上、子供が死ぬのはゴメンだった。 「じゃあ……じゃあ、どうすればいいのよ!」 舞衣の言葉に答えは無い。 こんな時、いつも場を和ませたあの王ドロボウも舞台を降りた。 壇上に残ったのは、不器用な大人と子供たち。 何を話しても絶望が出てくると知った彼らは自然と口をつぐんでしまう。 だから、その場所を支配するのは沈黙。 誰も口を開けない、その絶望を認めたくないから。だから、 「キュクルー……!」 その沈黙を破るのは当然、人ではない存在なのだ。 「わ、わわ、どうしたの?」 ゆたかに抱えられていた使役竜が急に暴れだす。 その紅の目は丘の向こう、瓦礫の散乱する大地を見つめている。 竜の視線を追った4人は、その間をゆっくりと歩いてくる人影を目撃する。 スパイクは反射的にジェリコを構え、舞衣はエレメントを現出。 残る2人も体を強張らせる。 緊張が漂う中、人影は次第に大きくなり、その全貌を明らかにしていく。 性別は女、年の頃は10代半ばか。 背中に何かを背負ったまま、 左右で束ねた青く長い髪を揺らしながら、瓦礫の中をおぼつかない足取りで近づいてくる。 その顔は獣人には見えない、が、もちろんスパイクの知らない顔だ。 ならば残る可能性は唯一つ。 こいつも獣人――螺旋四天王って奴か。 「そこまでだ、それ以上は近づくな!」 少女はスパイクの言葉に歩みを止める。 獣人とも人とも違う印象を与えるガラス玉のような瞳がじっとスパイクの方を見る。 「悪いがチミルフもグアームも死んだ。 お前らが一体何を企んでいるのかは知らないが―― 「ちょ、ちょっと待てスパイク……」 だが、彼らの中でねねねだけはその顔に見覚えがあった。 明智から"気にかけるべき人物"として話を聞いていた。 髪の色こそ違えど、かつて持っていた詳細名簿で確認した顔と瓜二つだ。 だが、そいつは死んでいる。 半日以上も前にその名前を呼ばれたはずだ。 ガッシュも死体を確認したというおまけ付きで。 機動六課所属の射撃手(シューター)であり、フォワードメンバーのリーダー役。 そいつの名は―― 『……ティアナ・ランスター……』 時系列順に読む Back HAPPY END(15) Next HAPPY END(17) 投下順に読む Back HAPPY END(15) Next HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ヴィラル 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) シャマル 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 菫川ねねね 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ジン 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) カミナ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 東方不敗 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) チミルフ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 不動のグアーム 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(17) 285 HAPPY END(15) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(17)
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HAPPY END(10)◆ANI2to4ndE ◇ ――しばし、舞台は一段高みへと移る。 ◇ ゴクリという大きな音が自分の喉から発せられたものであると最初シトマンドラは気付くことができなかった。 慌てて額に浮かぶ大粒の汗を拭う。息をすることも忘れていたのか呼吸ははぁはぁと荒かった。 身震いする程の破壊と殺戮。何と恐ろしい暴虐の嵐であろうか。 玉座の間である。先頃天元突破の瞬間を映し出したのと同じモニターがシトマンドラ達の前に広がっている。 「……無茶くちゃやな」 「ああ、色々な意味でな」 真なる螺旋力とやらの影響か映像は不鮮明であり、砂嵐などが混じるせいで細かい状況は全く掴むことができない。 だがそれでも"中"がどれだけの混沌に包まれているかは容易に知ることができた。 「どないすんねん、もやしっ子」 「さて、どうしたものやら。正直、奴らがここまで身勝手だとは思わなかった」 二人の人間が冷静に言葉を交わす。動揺を漏らすまいと黙り込むだけが精一杯のシトマンドラとは対照的だ。 裏切り、暗躍、そして敗北。螺旋の力に阻まれた断片的な情報は、ルルーシュの魔神の如き知謀の前に容易く全体像を曝した。 同志として誓いを交わしたはずの者達は早々に馬脚を現し、いずれも夢叶わず散っていった。 かつて7人の視線を受け止めたモニターも、今となってはたった三人分のそれに耐えるのみだ。三人が逝き、残る流麗のアディーネは居所が知れない。 ついに限界がきたのかモニターが白一色に染まり、すぐに砂嵐しか映さなくなった。 「これで中の様子を知る手段も無くなったか……」 「ど、どうするのだルルーシュよ!?これでは我らの悲願など到底叶わんではないか!?」 声が裏返っていた。さらに一歩悪くなった状況がシトマンドラの恐怖を煽る。 暴れ回るガンメンを見たとき、事はすぐに終わると思った。 人間など容易く駆逐し、チミルフの申し出に従い速やかに任務を完了すると。 笑みすら浮かべそれを見守る余裕があっただけに、突き付けられた現実が若き獣人の肩により重くのし掛かり、理性を蝕んでいく。 「そう慌てるなよシトマンドラ。できることをやっていくしかないだろう」 「叫んだかて一文の得にもならへん、ちゅーこっちゃ」 「まったくだ……こちらとしてはヴィラルの確保が急務であることに変わりはない。次の手立てとしては、そうだな……俺を回収するのに使った装置があっただろう。 激しく動かれていたときには無理だったが敗北し気を失っているとすれば試してみる価値はある。 それに賭けるしかないだろうな。奴らの生存まで含めて、分は悪いと言わざるを得んが」 「な、何故そこまで……」 冷静でいられるのだ、と恐怖に押し潰されそうになっている身では言い切ることができなかった。 シトマンドラにとって状況は悪い、などと一言で言ってしまえるようなものではない。 既にほぼ完全に詰みであり、頭の中は迫りくる人間達への恐怖とどのようにして逃げるかという弱腰の算段が渦巻いている。 この期に及んで次の策を練るなど到底理解の及ぶ所ではない。馬鹿だ。大馬鹿だ。 だと言うのに。 「……諦める訳にはいかないからだ。どれだけ追い詰められようと、俺には生きて妹の元へ帰る義務がある」 なぜ、自分と背も体格も程変わらない少年がこれ程大きく見えるのだろうか。 真っ直ぐにシトマンドラを射抜く視線の、何と確かで力強いことか。 ルルーシュがマントの中に顔を伏せる。俄に憂いを滲ませる表情をシトマンドラは黙って見つめることしかできない。 「……怖いのは俺だって同じさ。逃げられるものなら逃げてしまいたい。だけどあれだけの大見得を切ったんだ。 ここで負けたら、俺は正真正銘ただのもやしっ子さ」 ふっと笑う。そこには確かに弱さもあったが、それ以上に決して膝をつかないという強い決意が見てとれた。 強がるばかりではない。ときには怯えもし、しかし決してそれから逃げようとはしない。 真に王たる器とは、このような人物を言うのではないだろうか。 仕えるべき人を、追うべき者を自分は間違えていたのではないか。 シトマンドラは本気でそう思った。恐慌に支配された頭に光明が差した気がした。 「改めて約束しよう。お前の王には必ず会わせてやる。だから今は耐えてくれシトマンドラ。そして……俺を助け」 「い、いえ!私が仕えるべき王は、あなたにございます!」 そしてシトマンドラは頭を下げた。腰を折り、本心からの誠意を示す。ルルーシュが面食らうのを気配で感じた。 だが構わない。これまで微かに抱いてきた懸念の正体はこれだとばかりに、尚も力を込める。 「な、何を言っているシトマンドラ。お前はあれ程ロージェノムに……」 「確かに螺旋王には問い質したいことが多くございます! ですがそれはそれ、真に王たるに相応しいのはあなたであるとこの神速のシトマンドラ、確信致しました!」 「……ああ、ワイもう行ってええか?そろそろ準備も要りそうやからな」 「あ、ああ、頼む……そうだ、アディーネに会ったら状況を伝えてやって欲しい」 りょーかいと、気だるげな声が立ち去っていくのを頭越しに感じる。 ああ、奴も尊敬すべき心の強さを持っているのだろう。 獣人だ何だということにこだわり本当の意味で相手を見ようとしなかった自分が嫌になる。 何という了見の狭さ。何たる愚かしさか。 「……顔を上げてくれ、シトマンドラ。そのままでいられると俺が困る」 「はっ!しかし……」 「言ったろう?俺たちは対等だ。お互いに助け合いこそすれ、頭を下げる謂われなんかないのさ」 そうまで言われ、やっとシトマンドラはそろそろと顔を上げた。 恐る恐るといった様子でいつの間にか瞑っていたらしい両目を開ける。 対等という言葉を証明するかのように、同じ高さから手を差し伸べるルルーシュがそこに居た。 静かに、どれだけ真心を込められているか不安がるような口調で新たな王が告げる。 「だがその気持ちはありがたく受け取らせて貰う。本当のところを言えば、仮にとは言え仲間となった連中にあれだけあっさり裏切られて少し堪えていたんだ」 「私は……!私だけは決してそのような……!」 抱き抱えるように強く握り返す。 この手こそが自分を地獄から救う蜘蛛の糸であり、未来へと導く先触れとなるのだ。 そうシトマンドラは強く思った。 「ああ分かっている。信頼するぞ……俺を助けてくれ」 一命を賭して――かつてない程の決意を込めてシトマンドラは叫んだ。 それは今までの権威にすがり他者を見下してきた愚かな自分との決別の宣言だ。 宣誓は王の前で。決して偽れない感情にシトマンドラの身が焦がれる。 安堵とも歓喜とも付かない激情に体を支え切れない。シトマンドラはその場に崩れ落ちた。 そのまま顔も上げず、何度も何度も阿呆のように同じ言葉を繰り返した。 だから。 「――非常に助かるよ、シトマンドラ」 そう言ったルルーシュの表情を、シトマンドラは見ることができなかった。 ◇ 真っ直ぐに伸ばされた青色の髪に押し付けた銃はごとりと予想外に重たい音を鳴らした。 「全部聞いとったやろ」 ウルフウッドは平坦な声で告げる。 四天王が一人、流麗のアディーネの後頭部に容赦なくデザートイーグルを突き付けていた。 獣人の女は何も言おうとはしない。肩の高さで固定された細い指の先端だけが小さな震えを見せていた。 「……いきなり随分なご挨拶じゃないか」 ようやっと開かれた口から出た言葉にも、かすかな揺らぎがあった。 「とぼけても、あかんで」 虚勢を聞く耳は持たない。 それ程強く言ったつもりはないのだが、アディーネはあたかもも激しい叱咤を受けた幼子のように息を呑んだ。 先程の会談、陰でこの女が聞き耳を立てていたことに気付いたのはウルフウッドだけだろう。 「下手な隠れ方しよってからに、分かりやすすぎるわ。 しかも、やばいいうことが分かった途端トンズラ決め込むんやさかいな。誰でも怪しいと思うやないか」 「う……!」 およそ味方の取る態度とは思えなかった。何かあると、玉座の間を早々に辞してみれば、案内されたのは見も知らぬ怪しげな一区画。 更に、謎の巨大兵器ときたものだ。 まるで隠してますと言わんばかりのそれらの不可解な行動は意味深に過ぎた。 「まーアレやな。あの三人があんだけ好き放題に勝手なこと企んどったんやさかい、あんたも何か考えとるわな。 あのもやしっ子の言うこと頭から信じとるんは、もう鳥頭のにーちゃんだけなんちゃうか?」 シトマンドラは本気でルルーシュに惚れ込んでしまったようだ。本人にすれば感動のシーンだろうが傍目には茶番以外の何物でもない。 まぁ、あれはあれで幸せなのだろうからどうこう言うつもりはない。好きにしたら良いと思う。 どの道、ウルフウッドには自分たちが長生きできるとは思えなかった。 「ご、誤解さ。あたしはアンチ=スパイラルの監視を仰せつかってるんだ。すぐ任務に戻ろうとしたっておかしくないだろう」 「逃げ出す算段、ちゅうとこかいな?」 苦しい言い訳を一々相手するのも面倒臭くなってウルフウッドは単刀直入に聞いた。 指先の震えさえもぴたりと止め、完全にアディーネが沈黙する。 「……だったらどうだって言うんだい」 観念した、というのではない。返ってきたのは押し潰されたような怒りの声だった。 「ああ、逃げようとしたさ。だから何だって言うのさ。 アンタにあたしらの気持ちが分かるかい?螺旋王にさっさと見捨てられて、生意気なニンゲンの子供に頼るしかなかったあたしらの気持ちがさぁ!?」 建前を取っ払った先にあったのは進むべき道を失った女の慟哭だった。 仲間を失い、人生を狂わされたのは何も人間だけではない。 そういうことだ。 「あたしにこいつを起動するよう言ったグアームも死んだ。シトマンドラの奴はもうルルーシュのお人形さ。 チミルフは……チミルフはあいつに頭ん中ぐちゃぐちゃにされて、そのせいで死んだようなもんなのに、そんなこと考えもしない。 あたしらはもうバラバラだ。皆狂ってるよ。螺旋王もそうだがルルーシュが来てからもっとおかしくなっちまった。 いや、むしろとっとと逃げ出した分螺旋王はまだまともさ。 あたしだって、こんなとこにはもう一秒だって居たくない。 アンチ=スパイラルなんて化物と関わるのはゴメンだね!アンタ達で勝手にどうにかしておくれ!」 敵が怖い。死ぬのが怖い。己が傷付くのが怖い。 主が主なら部下も部下、などと言うつもりはない。 恐怖から逃げ出したくなるのは、羨ましいくらいに自然なことだ。 「なぁ」 アディーネの両手はもう下ろされていた。言いたいことを全部ぶち撒けて気が大きくなったのか、力も抜けている。 呼吸だけが荒かった。 「……なんだい」 獣人と呼ばれた女は、しかし誰よりも人間らしい感情に身を任せていた。 ウルフウッドは少しばかり目を背けたくなる。 弱くとも自然体なその在り方に憧れるのか。 意地など張らずに逃げ出してしまえる奔放さに惹かれたのか。 それとも。 女が可哀想だとでも言うのだろうか。 「もう、休めや」 ウルフウッドは言った。 言うと同時に引き金を引き、デザートイーグルから放たれた大口径の弾丸がアディーネの頭部を粉みじんに吹き飛ばした。 少し遅れて胴体がどちゃりという汚い音を立てて崩れ落ちる。 どくどくと絶え間なく広がっていく血溜まりを真っ黒な瞳で見下ろしながら、ウルフウッドは銃を仕舞う。 「……すまんな」 逃がすのではなく殺すという選択肢を選んだ理由は自分でも分からなかった。 口にしたのは形だけの謝罪。 いつからこうなってしまったのか。そう思いはするが、今更引き返す気もない。 「文句は死んでからゆっくり……ちゅうやつや。何なら、化けて出てくれてもええで。 どうせ生き残ったってすることないしな。祟り殺されるいうんもお似合いやろ。 でもま……その前に一つだけ、な」 遠からず訪れる決着の時を待つためにウルフウッドは歩き出す。 考えることは特にない。 ただ、頭に浮かぶ馬鹿みたいなにやけ顔を早く消し去りたいと、そう思うだけだ。 ウルフウッドは格納庫を後にした。手にかけた女のことはすぐに頭から消した。 時系列順に読む Back HAPPY END(9) Next HAPPY END(11) 投下順に読む Back HAPPY END(9) Next HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) ヴィラル 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) シャマル 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) 菫川ねねね 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) ジン 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) カミナ 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) 東方不敗 285 HAPPY END(11) 284 始まりは終わりの始まり(後編) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(11) 284 始まりは終わりの始まり(後編) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) チミルフ 285 HAPPY END(11) 285 HAPPY END(9) 不動のグアーム 285 HAPPY END(11) 284 始まりは終わりの始まり(後編) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(11) 284 始まりは終わりの始まり(後編) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(11)
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HAPPY END(2)◆ANI2to4ndE ◇ 終わりは、もう間もなく。 この苦行を乗り越えた先には、なんらかの結末が待っている。 人生にも、物語にも、等しく訪れるべき終。 その良し悪しを決めるのは、生き方か、それとも運命か。 些事に捉われず、今の現実にだけ目を向けていられれば、どれだけ幸せだっただろう。 一心不乱なんて言葉があるが、そんなものは危機的状況下では適用されがたいものだ。 現実逃避という言葉どおり、幸福な結末を目指せば目指すほど、受け入れがたい現実からは目を背けたくなってくる。 それでも、菫川ねねねは逃げた。ハッピーエンドという言葉を頭の隅に置き、生存の可能性を思慮として手繰り寄せる。 ガッシュ・ベルも同様だ。螺旋王を倒し、元の世界で再び王を目指す。希望と悲願を胸に抱きながら足を動かし進める。 ジンも二人と変わらず。遥か後方に取り残してきたスカーの覚悟を重んじ、なんとか状況打破のための策を練り続ける。 絶体絶命の窮地に追いやられた三人を追うのは、巨大な人型兵器。 多くの世界で合体ロボットという俗称を与えられては、戦争に駆り出される。 あるときは悪党を弾劾するため、あるときは市民を虐殺するため、あるときは母星を守るため。 ここでは、ヴィラルとシャマルという二人の男女が唱える愛を、他者に知らしめるため。 グレンラガンは、ねねねたちのハッピーエンドを挫かんと迫った。 みんなが、みんな。 走り続けて、そして。 足を止める者が、現れた。 「……ウヌウ!」 ただ、諦めではない――明確な意志を灯した瞳が、輝いていた。 ◇ ガッシュが足を止めたのに反応して、ねねねとジンも即座に停止する。 咄嗟のことで動きが鈍ったが、ジンはすぐさま逃走を再開するためガッシュを抱えようとし、 「聞こえるかぁああああ!! ヴィラル、そしてシャマル!」 しかしそれよりも早く、ガッシュは後方を行くグレンラガンに叫びつけた。 ずしん、と重みのある歩みを続けるグレンラガンは、 「聞こえているのならば私の話を聞けぇ! 私は――」 あっという間にガッシュたちの眼前まで迫り、大きく右脚を振り上げる。 その所作が単純なキックの予兆であると察したねねねは、本を構え、 「ばっ……ラシルドォォ!」 障壁を作り出すガッシュ第二の術、ラシルドを唱えた。 ガッシュの足元から雷の紋様を刻む壁が現れ、ねねねたち三人の身を覆い隠す。 だが、ラシルドを唱えてすぐ、ねねねは絶望した。 あらかじめ防御の術であると教えられてはいたものの、実際に使用したのは初となる今、ラシルドに寄せられる期待値の限度を思い知る。 作り出された壁は見た目にも堅牢だが、それも巨大兵器の感覚で言ってしまえば、鍋蓋程度の強度にすぎない。 グレンラガンの蹴りは、ラシルドの障壁など容易く粉砕してしまった。 ねねねの、ガッシュの、ジンの、声なき絶叫が空に散る。 グレンラガンにとっては、足場を確かめる程度の地均しにすぎなかっただろう一蹴り。 それが三人の人間を宙に薙ぎ払い、深刻な痛手を与え、死の概念をより濃く刻みつける。 死を、予感した――しかし予感できたということは、即死には至らなかったというのも同義。 ねねねは衝撃を与えられ、全身に鈍痛を覚え、思考を埋め尽くす虚脱感に襲われ、意識を一瞬失う。 が、すぐにまた別の衝撃が訪れ、大地に落下したのだと知った。 形容できない痛みが、節々に充溢する。 不思議なことに、意識はまだあった。体は動かせたものではなかったが、指先くらいなら難なく動かせる。 作家としての意地か、握り締めた赤い本は手から離れてはおらず、ページも開いたままだった。 身を這わせながら薄らと目を開け、周囲の状況を確認する。 逃げているうちに別の地区に移動していたのか、辺りにはまだ健在の建物が多く存在していた。 舞衣がソルテッカマンで破壊して回った名残ほどではなく、しかしねねねの周りのみ、地面が抉られている。 グレンラガンの進撃と、先ほどの地均しのような蹴りが原因だった。 一緒に蹴り飛ばされたはずの二人の仲間を探してみるが、ジンの姿が見当たらない。 どこか、ねねねよりももっと遠くの空に消えていってしまったのかと思い、すぐにその考えを打ち消す。 そもそもロボットの蹴りなどくらって生きているほうが不思議なほどで、ねねねが無事なら、ジンなど回避していてもおかしくはない。 だとしたら、その隙を縫って再び逃走したのか。ねねねなど見捨てて。厳しいことだ。が、仕様がない。 ねねねは姿の見えぬジンに叱責を零す余裕もなく……そして、見た。 陽炎のような視界の中で、グレンラガンの巨体が楼閣のように聳え立っている。 その足元でビチビチと跳ねる、元気なブリの姿。 (……ブリ?) 奇異な光景が目に映ったような気がして、ねねねの思考が一瞬、鈍る。 事の焦点はそこではない。 ねねねの前に聳えるグレンラガン――彼女と巨体の間を、遮るように君臨するひとつの背中。 羽織っていたマントをズタボロに引き裂き、年相応の小さな背部を露出した、しかし大きく見える背中。 王者の風格が漂う、威風堂々たる影の正体を、 「ガッ、シュ」 ねねねは名前で呼び、戦いはまだ終わっていない、燻ってなんかいられない、と無理矢理にでも体を起こし始めた。 激痛に身を蹂躙されてはいたが、骨は奇跡的にも折れてはいない。気合で痛みを捻じ伏せれば、どうにか行動はできる。 本を手に取り、ページを捲り、音読するなど、雑作もないことだ。 「くっ……バオウ……ザケルガ……」 必殺の一撃となるはずだった最強術の名を唱えても、金色の竜はこの場に顕現しなかった。 魔物の術を発動する上で必須となるエネルギー――心の力が、今のねねねには不足していたのだ。 ザグルゼム四回、ラウザルク四回、バオウ・ザケルガ一回、ラシルド一回。 魔物のパートナーとしての初戦、これだけ唱えられれば上々というもの。 それでもグレンラガンを倒すに至っていないのは、 (見積もりが、甘かったってか) 経験不足と、戦術の拙さが原因だろう。 ガッシュ本来のパートナー、知将と呼ばれた高嶺清麿なら、もっと上手くやれたはずだ。 即席のパートナーなどでは、清麿の足元にも及ばなかったという現実。 ガッシュを王にしてやる、などと豪語してみせたのに。 思い知るねねねが、またガッシュのほうを見やる。 両腕を大の字に広げ、ねねねを守る防壁となっている。 グレンラガンはどうしたことか、ガッシュと睨みあったまま直立不動。 表情を変えぬ人型兵器と、素顔を見せぬガッシュの背中。 双方を見比べて、ねねねは分析する。 先ほどの蹴り……おそらくは、ガッシュが耐久力に優れた白銀のマントを操り、緩衝材としたのだろう。 現代の魔界を束ねるベル家伝来のマントは、ガッシュの兄であるゼオンが使っていたものだ。 魔力を操ることに精通していないガッシュが、それでも兄を模倣し、懸命に盾としてみせた、結果。 ラシルドとガッシュのマント、二重の防壁に守られ、すぐ後ろにいたねねねはなんとか絶命を免れたのだ。 マントは破れ、ジンは生死不明の行方知らずとなり、それでもなお、 (……ああ、そっか) ガッシュはねねねを守ろうとしている、という現実を理解する。 (格好つけちゃってさ。ホント、アニタと同じでガキっぽい……情けなくなってくるだろ。私が) この瞬間に至るまでにガッシュが歩んできた道程は、思い出語りとして聞き覚えていた。 船上でサスペンスドラマばりの大脱出劇があっただとか、大グレン団の心意気ってものを叩き込まれただとか。 仲間たちが死んでいく中でガッシュは唯一生還し、スターやVの死を受け止めながら、親友にも先立たれた。 負い目を感じているのだろうか。子供にしては強すぎる高潔な魂が、必要以上に大人になろうとしている。 誰かに守られて生きてきたからこそ、誰かを守りたい。 そんなことを、思いながら。 (あんたは子供なんだ。子供は大人に守られてりゃいいんだ。あんたは、そんなにがんばらなくてもいいんだ) ねねねはガッシュを助けることができない。けれどガッシュに助けてほしいとは、微塵も思わない。 ガッシュに自分と心中しろ、とは言い放てないが、こうやってねねねを庇うように立つガッシュを、見ているのが辛い。 目尻に涙を溜めながら、ねねねは歯噛みする。体中の傷よりも濃く、唇から赤い血が垂れた。 「ねねねッ! ラウザルクを!」 そんなねねねの思いも知らず、ガッシュは術の発動を要求してくる。 だからねねねも、読誦するしかない。 「ラウザルクッ!!」 これはもはや、背水の陣ですらないのだ。 敗北も決定的な、負け戦。逃げて当然、諦めて咎められることもない、絶望なのに。 ガッシュは、夢を捨てきれないでいる。最後の最後まで抗おうと、男の子の思想で立ち向かう。 グレンラガンに搭乗している二人は、そんなガッシュの生き様を、どんな風に感じ取っているのか。 天高く掲げた右腕がドリルに変形し、その切っ先をガッシュに向ける。 高速回転するドリルは豪快に、ギュイイイイン、と騒音を奏でた。 猛旋回する螺旋状の突起物が、ガッシュとねねねの身を穿たんと突き下ろされる。 比すのも馬鹿馬鹿しい巨大さに、回避は困難、防御は不可能という判断を下し、ただ見上げるだけしかできない。 ラウザルク――肉体強化の術によって雷光に包まれたガッシュの身は、それでも立ち退かず。 徐々に、徐々に、ドリルの先端がガッシュに近づき、呑み込んでいこうとする。 あんなものが命中すれば、当たるや刺さるといった言葉では表現できない。 潰れる、拉げる、ドリルの回転に巻き込まれ、粉にされてしまう。 想像して涙したねねねが、ぎゅっ、と本を胸に抱え込んだ。 せめて、少し限りでもいいから安逸を、と念じる。 そんなねねねの、前。 「――ヌゥウウウアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 ガッシュのかつてない絶叫が木霊し、ああ直撃したんだ、と理解して、ねねねも終わりを待った。 数瞬の後も、終わりは訪れず、ガッシュの咆哮が続く。 思わず、閉じていた両目を開いた。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 ドリルのけたたましい旋回音を掻き消すほどの、騒々しい肉声。 ガッシュはその小柄な身で、グレンラガンのドリルを受け止めていた。 ラウザルクで強化した肉体、短い腕二本、素手で。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 ねねねが驚愕する間が、一秒、二秒と続いた。 ガッシュは気合を発揮しながら、ただ堪えていた。 目に映る背中だけで、苦痛と意地を表しながら。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 掌はガリガリと削れ、肉を削ぎ落とし、筋肉をぶち破り、骨を断つ。 焼印ができるほどの熱量を伴った摩擦にも、降りかかる圧力にも屈さず。 ドリルの最先端という、掴むにも難しい箇所を支点に捉え、踏ん張る。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 いったいどんな表情を浮かべ、ガッシュはドリルを受け止めているのか。 ねねねには、その顔を覗き込んだり想像したりするだけの勇気がなかった。 ガッシュは今、地獄にいるのだ。守りたい人を守るために、希望を失わぬために。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 ガッシュよりも先に、彼の立つ足場が拉げた。圧力にやられたのだろう。 それなのにガッシュの身は、一歩たりとも後ろには下がらない。 理屈ではない。道理を蹴っ飛ばして、ガッシュはグレンラガンと均衡している。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 ねねねの耳はいつしかガッシュの声に支配され、それ以外の音が入らなくなっていた。 この声は、自分の弱さ。子供の意地。残った希望。悲痛の叫び。聞き届けなければならない。 その間やれることといえば、赤い本を離さぬように、術が解けないよう心の力を送り続けるだけだ。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 早く、早く諦めてくれ――ねねねは血涙断腸の思いで、ヴィラルとシャマルに懇願し続けた。 ガッシュの体はより大地に、より深く押し込まれ、地盤沈下すら引き起こそうとして、 不意に……ドリルの旋回音が弱まり……音が消えていき……止まった。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ――――!」 ドリルの音がやみ、ガッシュの叫びも途絶え、ラウザルクの効果も切れた。 ねねねは涙でぐしょぐしょになった視界の中、ガッシュの姿を確認する。 諸手の状態は、踏ん張り続けていた足は、苦痛に耐え続けていた意識は、どうなってしまったのか。 「あっ……」 身も細る思いをまず受け止めたのは、ドリルを受け止める前と変わらぬ、健在の背中。 傲岸ではなく、しかし頼もしさは本物の、王の資格足り得る背中。 生気はまだ失われてはいない。背中を見るだけで悟った。 まだだ――まだ、希望は残されている。 胸に抱いていた赤い本の輝きは、なおも失われず。 ガッシュは、ねねねが絶望と感じたこの窮地を、看破して見せた。 「ガッシュ……ガッシュ……ガッシュ!」 強く、搾り出すようにその名を呼ぶ。 ウヌウ、という常のような返しが欲しかった。 本人は声も絶え絶えだろう、それでも欲してやまない。 呼応を。合図を。戦って勝ってやる、という気概を。 王になる――という雄叫びを! 「王に……王になるんだろう、ガッシュ! こんなところで、負けてんなぁあああああああ!!」 ねねねが喚いた、そのときだった。 旋回を止めていたドリルが、持ち上げられる。 ガッシュはその先端にくっついたまま、一緒に持ち上がる。 まさか突き刺さっているのか、とも思ったが違う。 力を込めていた両手は、未だドリルを掴んで離さないのだ。 ならばなぜ、無抵抗なのか。 体が硬直しているのか、それとも意識を失っているのか。 死後硬直、という可能性も頭を過ぎった。 真相を知る間もなく、傍観することしかできないねねね。 ガッシュの身はあれよあれよという間に空高く舞い、停止。 グレンラガンは右腕部のドリルを、ガッシュが先端に張り付いていると知りながら、だからこそ、 「ガッ――」 情け容赦なく、地面に叩きつけた。 ◇ ガッシュは、地に叩きつけられた衝撃と虚脱の中、中天へ一線、溢れ上がる螺旋の本流を呆然と見上げていた。 (――まだ、倒してはいない。ねねねたちを、守らなければ――) 致命傷を押してでも、立ち上がろうと決意する。考慮の内に、自らの戦闘離脱という選択はない。 (――私が、やらねば。皆を、守るのだ。ヴィラルを、倒し――) 枯れていく命の葉を、若すぎるがゆえに労われない。限界知らずの想いが、暴走する。 (――ウヌ、ウ? 体が、動か――) 死は、とうに。早々に待ち構えていた迎えを、見てみぬ振りで通そうとして、しかし無視しきれない。 (――いたい、のだ――) 死にそうだ。 死にそうなくらい、苦しい。 ただそれだけを、幼い頭で確かめる。 体が軋む。 息苦しい。 動かない。 激痛。 鈍痛。 重苦。 死。 死。 死―― 駆け巡るダメージとイメージが、ガッシュの心を挫く。 王を目指す高潔な魂が、犯され、陵辱され、蹂躙されてしまう。 もう、なにをやっても無駄だと悟った。 守りたいと願った仲間の声も、既に届かない。 あるいは、その仲間も死んでしまっているのか。 確かめるための五感は全て、失われている。 だとしたら、諦めてしまおうか。 諦めて、ガッシュも死を選んでしまおうか。 (――もう――) 目を閉じて、念じるように想いを封じた。 決して、再び開けられることのない蓋をして。 ガッシュ・ベルの生命が、終わ 「シン・ジオルク!」 る――はずだった。 時系列順に読む Back HAPPY END(1) Next HAPPY END(3) 投下順に読む Back HAPPY END(1) Next HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) ヴィラル 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) シャマル 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) 菫川ねねね 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) ジン 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) 東方不敗 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) チミルフ 285 HAPPY END(3) 285 HAPPY END(1) 不動のグアーム 285 HAPPY END(3)