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8月20日、天草式十字凄教のとある拠点 フルチューニングが天草式十字凄教に拾われて4日後。 その日もフルチューニングは、五和に魔術や十字教の知識を教わっていた。 「なるほど。つまり『聖人』と呼ばれる人は、肉体強化レベル4以上の強さを生まれながらに持っているということですか」 「えっと…『肉体強化レベル4』がどれぐらいか私には分かりませんが…」 「聖人であるうちの女教皇は、音速以上で走ったり、100分の1秒の領域に対応する反射神経を持っていますよ」 「どんな化け物ですかソレは…」 フルチューニングはベッタリと机に伏した。 『学習装置(テスタメント)』で入力された常識と、あまりにもかけ離れた魔術という世界。 いい加減カルチャーショックで頭がおかしくなりそうだった。 自分の知る理屈が通用しない『魔術』を初めて見せてもらった時は、衝撃でしばらく動けなかったぐらいだ。 もっとも、それは五和たち天草式十字凄教のメンバーも同じ事であった。 一切の術式や霊装を用いることなく、2億ボルトもの電気を放射された時は腰を抜かした人もいるほどだ。 そんな事を平気な顔して行えるフルチューニングは、五和たち魔術師にとってある意味『化け物』と言える。 ((常識が通用しない…)) 五和とフルチューニングは同時に溜息をつき、顔を見合わせて苦笑した。 「じゃあ、休憩にしてお茶でも淹れましょうか」 その言葉に、フルチューニングが目を輝かせた。 「ミサ…レイのお茶へのこだわりは、ハンパではありません!」 「分かってますよー。ちゃんと美味しいのを用意しますから。…緑茶で良いですよね?」 「もちろんです。昨日は紅茶でしたし」 一昨日、生まれて(?)初めてお茶を飲んだフルチューニングはその味にいたく感激した。 そのため、天草式十字凄教の中でも最もお茶の淹れ方がうまい五和にとても良く懐いている。 「はい。高いお茶っ葉だからそこまで温度は高くしてませんけど、ゆっくり飲むんですよ?」 「当然です。ミサ…レイはドジっ子キャラではありません」 ズズー… 言葉通りゆっくりと口に含んで味を楽しむフルチューニング。 「ムッ!…この温度は茶葉の渋みを抑え、甘くまろやかな味を楽しむのに最適です。グッジョブです!」 フルチューニングは思わずグッと親指を立てて賞賛する。 その喜びように、思わず五和も笑顔になってフルチューニングの頭をなでた。 「喜んでもらえると嬉しいですねー。あ、お茶菓子もどう?」 「ミサ…レイは甘いものが好きです!このお饅頭を戴きます」 「あーあ。慌てて食べるから、口の周りに餡子が…」 2人が和気あいあいとしていると、建宮がその場に笑顔で現れた。 「おー。美味しそうなもの食べているのよな」 「このお饅頭を狙うとは…ですがもし食べたければ、このミサ…レイを倒してからにしてもらいます!」 「その気はないのよ。ま、何にしろすっかり打ち解けたようで、なによりよな」 そう言って建宮は、お土産のみたらし団子をフルチューニングに渡した。 「おお…これがあのお団子ですか…」 「プ。ホント、レイちゃん見てると飽きませんね」 お団子に目を奪われるフルチューニングを見て、五和がクスクスと楽しそうに笑った。 その態度に若干不満げなフルチューニングだったが、結局お団子の魅力に勝てず笑顔で食べ始めた。 「モグモグ。ところで、建宮さんはどうしてここに?」 「そう言えば、あと2日は帰ってこれないってみんなから聞いてましたけど」 「いや、まだ仕事は途中なんだけどな」 「?」 「レイが遠出するって言うから、ちいと見送りに顔を出したのよ」 思わず団子を食べる口が止まるフルチューニング。 理由は良く分からないが、なんとなく胸が暖かくなって嬉しい気分になった。 「それほど距離はありませんが…」 「それでも、心配はするのよ」 「確かにそうですよね。…やっぱり私も付いて行きましょうか?」 「問題ありません。ちゃんとすぐに戻ってきますから」 フルチューニングが断言しても、2人はどこか心配そうな顔をしている。 それでも、彼女は自分の意思を変えようとしなかった。 「ミサ…レイはどうしても、確認してみたいのです」 「…分かった。気を付けて行くのよな」 「お守りも用意しましたよ」 五和手作りのお守りをギュッと握りしめ、フルチューニングはその方向へ目を向けた。 ――彼女が悩んだ末、明日1人で出かけることにしている場所。 ――自らを作りだした場所。世界で唯一『超能力』を開発している、学園都市へと。 8月21日(午後7時30分)、学園都市第11学区 「流石はミサ…レイですね。難なく侵入に成功しました」 自画自賛しているフルチューニングは、現在輸送用トラックの荷台の中にいた。 荷台の警報機は全て能力で無力化してあるので、のんびりどら焼きを食べている。 ガタガタと揺られながら、フルチューニングはここに来ようと思ったきっかけを思い出していた。 (あれは夢だったのでしょうか…) 天草式に拾われてから、いや、正確には培養器から出て覚醒してからずっと、妙な感覚がしていた。 どこか“チリチリ”とした感覚が、肌や頭を覆うように自分を包んでいる。 徐々にその違和感を無視できなくなり…ついにフルチューニングはある夢を見た。 (ミサ…レイ以外の“クローンが何者かと戦っている夢”…あれは妙にリアルでした) (『量産型能力者計画』はすでに凍結されたというのに、この感覚は一体何なのでしょう) その感覚の正体を確かめるため、フルチューニングは学園都市へ戻ってきたのだった。 やがて第7学区でトラックが止まった隙を見計らって、フルチューニングは荷台から飛び降りた。 そして10分ほど走り、『量産型能力者計画』の研究所跡地に到着。 正面ゲートは太い鎖と錠で完全に封鎖されていたため、裏口の電子ロックを解除して中に侵入する。 (施設は完全に封鎖されたまま…やはり研究は行われていない…) (……) フルチューニングは、そっと近くのコンピュータに触れた。 そして能力を使って起動させると、メモリの中から『量産型能力者計画』について調べ始める。 だが、そのデータは完全消去されていた。 (ここまで完璧に消えているのは妙ですね…) (失敗した役立たずの実験計画を、ここまで入念に消す理由があるんでしょうか?) 嫌な予感を感じたフルチューニングは、研究所同士のネットワークに侵入してさらに痕跡を探す。 そして、ついに1つのデータを発見した。 「『量産異能者「妹達」の運用における超能力者「一方通行」の絶対能力への進化法』…?」 「…通称『絶対能力進化計画』」 「…学園都市第1位をレベル6へ進化させる方法」 「…超電磁砲を128回殺害することで、レベル6になれる」 「…だが当然128人も用意できないので、代わりに量産計画「妹達」を流用することにした」 「…2万通りの戦場を用意し、2万人の妹達を殺害することで目的は達成される…」 モニターには、妹達の“殺し方”が2万通り表示されていた。 そして一番最後には…次回の開始時刻:8月21日午後8時30分(日本標準時間) 次回の絶対座標:X228561・Y568714 次回の使用検体:検体番号10032号 次回の状況設定:反射を適用できない戦闘における対処法 現在の進行状況:10031/20000 フルチューニングは、瞬きすら出来ずに画面を凝視していた。 8月21日(午後8時00分)、第7学区『量産型能力者計画』研究所跡地 想像もしていなかった事実を知ったフルチューニングは、しばらく呆然としていた。 (クローンが、このミサ…レイ以外に2万体も作られた…) (『絶対能力進化計画』で殺されるためだけに) フルチューニングは極めて混乱していたが、やがて研究所を飛び出した。 何故かは自分でも分からない。けれども、その足は次の実験場所へと向かっていた。 (行って何をしたいのかも分かりません) (こんな感覚は初めてです) (とにかく、その『一方通行』という人と話し合いを…) (何故) (何故) (何故) (何故、ミサ…レイはこんなに落ち着かないのか、自己分析が出来ません!) そしてフルチューニングは、実験場所の第17学区操車場へ到着する。 8月21日(午後8時30分)、第17学区操車場 フルチューニングが実験場所へ到着したその時、楽しげな声が聞こえてきた。 「そろそろ死ンじまえよ。出来損ない乱造品」 「――これより第10032次実験を開始します」 (そんな…!) フルチューニングの前に映るのは、楽しそうに両手を広げる白い『最強』。 そして、自分よりわずかに幼いが同じ顔をした『人形(クローン)』。 どちらもフルチューニングの存在に気づいてはいないようだ。 (実験が、始まった…) 思わず五和から貰ったお守りを握りしめる。 (精神状態に異常発生…状況判断が出来ません…) (あああああああ!!!) 無計画のまま、2人の前に飛び出そうとして―― 「学園都市のIDを持たない侵入者を発見しました、とミサカは報告します」 「『実験』の妨害を看過することはできません、とミサカも攻撃態勢に入ります」 タタタタタ、と足元に銃撃を受けて足止めされた。 (実験前の妹達がここを守っていたのですか…迂闊でした!) フルチューニングは後悔するが、その間にも妹達が四方を包囲してしまう。 そして月明かりがフルチューニングの姿を照らすと、銃を向けていた4人のミサカが混乱しだした。 「あなたは…『妹達』?とミサカは驚きます」 「いいえ、ミサカネットワークへの接続を確認できません、とミサカは事実を突きつけます」 「可能性があるとすれば、第1次製造計画では?とミサカは推理します」 「ミサカ達が作られることになった最初の理由、『量産型能力者計画』ですね、とミサカは納得します」 4人は無表情ながらも、フルチューニングの正体を予測して頷きあった。 「…あなたたちも、その、御坂美琴のクローンなんですね?」 「その通りです。そして現在このエリアは実験の為使用中です、とミサカは驚きを隠しながら警告します」 「そもそも、どうして廃棄されたはずの試作型がここに居るのですか、とミサカは問いかけます」 容赦なく突き刺さる妹達の言葉が、フルチューニングの思考を促した。 (どうして?) (ミサ…レイは、自分の行動に合理的な理由を見つけられません…) (この子たちも、今『一方通行』と戦っている子も、全て指示通りの事をしています) (クローンとして、製造目的通りの事を行っています) (だと言うのに…) わずか数日前のフルチューニングなら、この光景を見ても何も感じなかったはずだ。 でも、彼女はたった数日を天草式十字凄教の仲間と過ごしたことで変わってしまっていた。 ――そんなの、間違ってますよ! ――どうしてあなたは怒らないんですか!? ――これはお前さんがクローンだなんだ、っていう話とは無関係なのよ! ――助けたいのは、クローンじゃなくてここにいるお前さんという1人の人間なのよな ――レイ、で良いと思うのよな (どうして、どうしてこんなにもこの実験が“ムカつく”のでしょう) 「レイがここに居る理由は、自分でもまだ分かりません」 「?」 疑問の表情を浮かべる妹達に、フルチューニングは今までとは明らかに違う表情を見せた。 それはまるで、人間のような―― 「ですが、それでもハッキリ分かった事があります」 「今レイがやるべき事は――“救われぬ者に救いの手を差し伸べる”ことです!」 そしてフルチューニングの体から、白く光る電流が迸った。 「そこを通してもらいます!あそこで殺されてしまうミサカを、助けなくてはいけません!」 「…仕方ありません。強制排除を実行します、とミサカは号令をかけます」 その言葉に従って、4人の妹達が一斉に武器を構える。 銃口が向けられても、フルチューニングは目を逸らさずに不敵に告げた。 「…試作型が量産型より強いのは、昔から物語のセオリーです!」 「能力レベルが少し高い程度では、このミサカ達の相手になりません、とミサカは嘲笑します」 フルチューニングが、雷光を纏って突撃するが…それはあまりにも無謀な戦いだった。 四方八方から飛んでくる銃弾を避け、避けきれないものは電撃で撃ち落とす。 だが、一瞬目を逸らした隙にミサカの1人がフルチューニングの腹部を蹴り上げる。 「グ…ゴホッ」 思わず咳き込むフルチューニングを、今度は別のミサカが強襲。 避けようとするが、そこにさらに別のミサカが待ち構えていて逃がさない。 ミサカネットワークで完璧な連携を可能にした妹達に、あっという間に体中をボロボロにされる。 なんとか抵抗しようと放電するも、あっさりとかわされて反撃をくらう。 同じ顔をしている4人が、やはり同じ顔をしている1人を叩きのめす光景は、酷く凄惨なものだった。 「う…」 5分後には、ボロ雑巾のようになったフルチューニングが倒れていた。 もっとも、この結果は当然のことではある。 フルチューニングは、レベル5を目指して作られたので「能力」は他の妹達よりも高い。 だが、そもそも能力者と言うのは戦闘目的で開発されるものではない。 あくまでその発生原理とメカニズムを探るためのものだ。 言ってしまえば、フルチューニングは戦闘などしたこともない素人の女の子でしかない。 それに引き換え、妹達は初めから『対一方通行用戦闘モデル』として製造されている。 すでに学習装置によって、銃器の扱い方を含む戦闘情報をインストールされている兵士なのだ。 フルチューニングは致命傷こそ無いものの、すでに戦闘続行は不可能なレベルにまで追い込まれている。 「あ…あ…」 「これまでですね、とミサカは状況を確認します」 「う…レイ、は…」 戦闘の余波で吹き飛んだお守りに、フルチューニングが手を伸ばした。 (何故、レイはあの人達のように誰かを救えないのですか…?) (何が違うと言うのですか…?) 圧倒的な無気力感が、フルチューニングの全身を襲う。 「未熟さというのは辛いのよな」 だが、ぼんやりとした頭に聞きなれた声がかすかに届いた。 「けど、だからこそ助けあえる仲間っつーのがいるのよ」 その言葉に何人かが笑顔で頷く気配。 包みこまれるような感覚を最後に、フルチューニングは意識を失った。
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(20.木曜日19:45) 上条と姫神秋沙は少し遅めの夕食をとることになった。 朝作っておいた夕食は、幸いにも暴食シスターの魔の手を逃れ、未だ冷蔵庫の中にその偉容を残していた。 「さあ姫神食ってくれ。とはいっても朝の残りをレンジで温めたものだけどな」 「上条君の夕食は?」 「俺はカップラーメンで良いから」 「君の方が疲れているはず」 「いいから、いいから」 「じゃあ。半分こ」 「いいのか?(これが正しい居候の気遣いなんだぞ。インデックス)」 件の暴食シスターとは異なる反応に心の中で涙していた上条に姫神が話しかけてきた。 「さっきは有り難う。 それと。変なこと言ってゴメン。 いつか。私の『吸血殺し(ちから)』だって他人の役に立つ日が来る。 そうだね。きっと」 例え吸血鬼であってももう誰も殺したくないと姫神秋沙は願っている。 そのことを知っているからこそ、上条はどう応えたらいいのか迷ってしまった。 上条が口を開こうとした時、上条の携帯が振動した。 「悪い、姫神。土御門から電話だ。ちょっと外に出てくる。」 「どうして外に?」 「そっ、それはだな。姫神。 もし電話の土御門に姫神が今俺の部屋にいるって気付かれたらどうなる? 明日学校でヤツがどれほど話に尾ひれをつけるか分かったもんじゃないだろ。 じゃあ、すぐ帰ってくるから。 姫神は先に飯(めし)食っていてくれ。」 携帯を握って部屋を出た上条は、台所の窓の下にしゃがんで土御門のコールに応えた。 「上条だ」 「カミやんに2つ報告がある。良い知らせと悪い知らせだ。どっちからにする?」 「どうせどっちも同じなんだろ。じゃあ、悪い方からだ。」 「魔術師の侵入を許しちまった。 集まってきたのは弱小組織や中堅組織の他に、はぐれの魔術師までいたな。 良くもまあ短時間であれだけ色んな連中が集まってきたもんだ。 吸血鬼を使って一気に組織のステータスをあげたいんだろう。 そういやローマ正教の下部組織の連中もいたぜ。 あそこも、カミやんの活躍(せい)で、今は背に腹は代えられないみたいだな。 奴らは何か協定を結んだみたいで、複数のルートから同時に侵入してきやがった。 大半のルートは俺達が潰したが、1ダースほどの連中が網をすり抜けやがった」 「やっぱり学園都市の中で戦いが始まっちまうのかよ。くそっ!」 「俺達はこれから追撃を始める」 「じゃあ、良いヤツって何だ?」 「吸血鬼を完全に消滅させる方法が分かった」 「あのな。先にいっとくけど、姫神に殺させるっていうのはナシだぞ」 「ああ、それ以外の方法だ」 「えっ?そうなのか。で一体どんな方法だ?」 「簡単なことだ。カミやん、姫神を殺せ!」 「姫神を殺せ? ちょっと待て。一体どういうことだ」 「だから言ってるだろ。吸血鬼を完全に消滅させたきゃ姫神を殺すしかない」 「姫神が死ぬことと吸血鬼の消滅に何の関係があるんだよ!」 「今日学園都市に吸血鬼が現れたおかげで吸血鬼なんて生き物がこの世に存在しないことが証明された」 「おい、一体何言ってんだ。意味分かんねえぞ」 「カミやん。おかしいと思ったことはないか? もし吸血鬼なんて化け物がいたなら、なぜ人間の世界は終わっていない? 例えヤツらが獲物の数を管理していたとしても、小さくない被害があったはずだ。 なのに吸血鬼の被害に関する記録が姫神の時以外何一つ残っていないのは何故だ? 吸血鬼を始末する秘密組織があったのか? 『吸血殺し』が世界中にいたのか? そんな記録も一切無いんだぜ。 そもそも吸血鬼を見たという記録も残ってないのに、なぜ皆その存在を信じている? 『吸血殺し』がいるからか? 吸血鬼の存在に関しては何もかもが矛盾だらけなんだよ。」 「結局何が言いたいんだ?」 「つまりだ。吸血鬼がいて、それを滅ぼす『吸血殺し』がいるんじゃない。 『吸血殺し』が吸血鬼を生み出しているんだよ。」 (21.木曜日19:55) 「なっ、お前は姫神が吸血鬼だっていいたいのか?」 「いいや。『吸血殺し(ディープブラッド)』だ」 「同じじゃねえか!」 「同じじゃない。 カミやんが右手で吸血鬼を殴った後、ヤツはどうなった? 消えちまったよな。 それは傍にいた『吸血殺し』から逃げた訳じゃない。 『幻想殺し』に殺されたからだよ」 「殺された?ヤツは公園にも現れたんだぞ」 「ヤツはAIMバーストの奇形種なんだ」 「AIMバースト?」 「簡単に言えば発狂した風斬氷華だ」 「ヒューズ=カザキリか?」 「風斬氷華は学園都市の230万人のAIM拡散力場が生みだした存在だ。 姫神はたった一人でそれ以上のものを生み出しているんだ。 ヤツは吸血鬼の姿をしたテレズマの塊だ。 生命力という砂を詰め込んだ皮袋だと思えばいい。 ただ、その外殻は硬質化したテレズマで覆われ恐ろしく頑丈だ。 しかも貯め込んだ生命力を失うまでは外殻が傷付いても瞬時に再生する。 だから『超電磁砲(レールガン)』の電撃位じゃ堪えなかった。 『幻想殺し』は一撃でヤツの外殻を破壊して貯め込んだ生命力を霧散させた。 だからもう一度生命力を補充するまでヤツは復活できなかったんだ。 それでもヤツの核を潰さない限り何度でも復活しちまう」 「じゃあ、その核というヤツが」 「そう、姫神の中にある」 「だから姫神を殺せと...って。 イヤ、ちょっと待て。おかしいだろ。 お前は吸血鬼を生み出したのが姫神だって言ったよな。 でも吸血鬼を滅ぼしたのだって姫神だろ? 自分で生み出して自分で滅ぼすなんて、矛盾してないか?」 「姫神は吸血鬼を消しはしたが、滅ぼした訳じゃない」 「どういうことだ?」 「吸血鬼の行動原理は人間の生命を宿主に集めることだ。 辺りの人間の生命を食らい尽くしたから宿主に戻った。ただそれだけなんだ。」 「じゃあ吸血鬼に噛まれた人間が吸血鬼になるっていうのは?」 「回帰衝動(リユニオン)だ。 噛まれた人間にはヤツの因子が注ぎ込まれる。 その因子は被害者の肉体や精神全てを食いつぶしそれを純粋な生命力に錬成するんだ。 それを動力源に被害者を吸血鬼と同じ行動原理に従わせちまう。 本人の意思とは関係なくな。 そして全てを食らい尽くしたら、錬成した生命力を姫神に注ぎ込んでお終いだ。 あとには燃えカス(灰)しか残らない。 それに、その莫大なエネルギーで自己防衛を図るから並の人間じゃ手に負えない。 一撃で身体を破壊しない限りな」 「どうしても姫神を元凶にしたいみたいだな。 じゃあ姫神が吸血鬼を使って生命を集める目的ってなんだ? 説明できんのかよ! 目的もないのに人を殺しているとでも言うのか?」 「元凶は姫神じゃない。別の奴がいる」 「えっ?」 「『吸血殺し』はそもそも姫神の本来の能力じゃないんだ。 姫神はその能力をある魔術師によってねじ曲げられているのさ」 「魔術師だって? 魔術を使えば能力者に別の能力を上書きできるのか?」 「そいつは無理だ。 だが、能力者から発現した能力の方向をねじ曲げることはできる。 姫神の本質は「集めて」、「錬成し」、「与える」ことだ。 そしてあの吸血鬼も本来は「竜脈からテレズマを集める」式神のような存在だった。 魔術師は式神へ与える命令の中の「竜脈」を「人間」に「テレズマ」を「生命」にねじ曲げやがった。 だから吸血鬼は人間を襲うのさ」 「魔術師が姫神の能力に細工をしたって言うのか? だったら。魔術師(おまえ)達で解呪はできないのか?」 「無茶言うな。カミやん。 実際に実行した魔術師はわからん。 だが書き込まれた術式は史上最高の魔術師エドワード=アレクサンダーのものだ。 こいつは自動制御の魔法陣だ。 解呪の難しさは『法の書』クラスだ。 それに『聖ジョージの聖域』や『竜王の殺息』以上の防御魔術が組込まれているハズだ。 現在の魔術師がいくら束になってもかなやしない。」 「お前達でもどうしようもないのかよ。 しかし、その魔術師はなんで姫神に生命を集めさせてるんだ?」 「魔術師の計画では姫神に1万人の生命を集めるつもりだったらしい。 1人の男に与えるために」 「たった一人のために1万人もの人間を殺すっていうのか? 1万人もの生命を踏みにじろうってヤツは誰だ!ぶん殴ってやる!」 「残念だが、カミやんにはその男は殴れない」 「お前、知ってるのか?一体誰だ?」 「そいつの名は……上条当麻!」 (22.木曜日20:07) 「かっ?今、カミジョウトウマっていったのか?」 「そうだ、姫神は『神上計画』の補助計画(セカンドプラン)の鍵だったんだ」 「カミジョウケイカク?なんだそれ?」 「絶対能力進化(レベル6シフト)計画の一つだ。 神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くものを造り出すためのな。 姫神はカミやんを覚醒させるための起爆装置なんだよ。 そして集められる1万人もの生命は起爆装置に充填される起爆剤なんだ」 「待て、待て。お前の話はぶっとんじまっているぞ。 何で絶対能力者(レベル6)なんだ。 これは魔術師じゃなく学園都市の話なのか? そもそも無能力者(レベル0)の俺がなんで出てくるんだよ。 姫神の話だって10年も前の話だろうが」 「じゃあ聞くが、カミやんの『幻想殺し(イマジンブレーカー)』はいつからあった?」 「それは……」 「もう10年以上前から『神上計画』は始まっていたんだよ。学園都市の闇の奥でな」 「(俺を覚醒させるために1万人の人間が殺されるって?何だよそれ。悪い冗談だろ) やっぱり、おかしい。 学園都市の人間が1万人も死んじまうような計画なんて実行できるわけ……」 「いや、ちょうど学園都市には死んでも困らない連中がいるんだ」 「ひょっとしてスキルアウトことを言っているのか?」 「スキルアウトだって一応学生だ。 さすがに1万人も死ねば、統括理事会だろうが隠蔽できやしない。 他にいるだろう?今は学園都市にいないだけで」 「まさか妹達(シスターズ)か?」 「そうだ、元々が非合法の体細胞クローン達だ。 シスターズに利用価値が無くなった時、闇に葬るには都合の良い計画だと思わないか。」 上条は御坂妹ことミサカ10032号をよく知っている。 出会った時は実験動物としてただ殺されるだけの運命を甘受していた。 でも今は人として生きようとしていることを知っている。 「あいつらを廃棄物扱いするっていうのか? ふざけやがって。 そんな計画、ぶっ潰してやる」 「今のところ、この計画は凍結中だ。 10年前の第2次起動実験に先槍騎士団が介入した事は奴らにも予想外だったようだ。 奴らは計画を一旦凍結して時機をうかがうことにしたんだ。 だから姫神が学園都市に来た時、奴らは秘密裏に『吸血殺し』に足枷までつけやがった。 おかげで、数日『吸血殺し』が発動した程度じゃ吸血鬼は実体化しなくなった。 だがな、オリアナの一撃がその足枷に傷を付けやがった。 緩み始めた足枷は今では完全に外れちまっている。 今、姫神は非常に危うい状態にある。 奴らの意図は判らないが、『吸血殺し』はなんとかしなくちゃならない」 「でも『吸血殺し』はお前達でも解呪できないんだろ?」 「だから解呪じゃなくて、一撃でそいつを破壊するんだよ。完全にな」 「俺の『幻想殺し』なら破壊できるってことか?」 「そうだ。ただ姫神の場合やっかいな場所に術式が刻まれている」 「やっかいな場所?」 「カミやんの『幻想殺し』は神の奇跡だろうが何だろうが触れただけで破壊できる。 逆に言えば、触れられなきゃ何もできないってことだ。 実はこの術式は姫神の体内に刻まれている。 普通に生活していれば、決してカミやんが触れることがない場所だ」 上条はそんな場所はどこだろうと考えていたら急に赤面してしまった。 「カミやん、今エッチい事を考えただろ。」 「そっ、そんなことはない」 上条は携帯に向かって首をブンブン振った。 しかしインデックスの首輪の時も同じ妄想をしかけたことを今の上条が知る由もなかった。 「そんなことより、それはどこなんだ?」 「この術式は吸血鬼を生み出しているんだぜ。だとしたら?」 「吸血鬼だとすると、まさか!」 「そうだ、頸動脈の内側に刻まれているんだ。 吸血鬼も実際は血を吸ってたんじゃない。 被害者の頸動脈に自分の術式を書き込み(コピー)していやがったのさ。」 「だったら俺には手出しできないじゃないか」 「そうか?俺はカミやんなら何とかするじゃないかと期待しているんだがな」 「どういうことだ?」 「カミやんが『幻想殺し』をほんの2mm外側に拡げれば良いんだ。 そうすりゃ、姫神の首筋に触れるだけで全てが解決する。」 「そんなのどうすりゃできるんだよ? 自分でも『幻想殺し』の正体が分かんねえのに。 くそ!俺の右手はこんな時に役にも立たねえのかよ!」 (23.木曜日20:16) 「ぶわっははははっ!」 突然の土御門の笑い声に上条は困惑してしまった。 「スマン、カミやん。 カミやんがマジに悩むからつい調子に乗っちまった。 冷静になってみろ。 もっと簡単な方法があるだろう。 カミやんもよく世話になっているあのカエル顔の医者(せんせい)だよ。 あの医者なら姫神の頸動脈を切ったところで鼻歌交じりですぐに直しちまう」 「そっ、そうか!」 「俺達は今夜中に魔術師どもを捕捉し学園都市から叩き出す。 カミやん、今夜は姫神の傍に付き添ってやれ。 そして朝になったら姫神を病院に連れて行け。 それでハッピーエンドだ!」 「そうか、良かっ」 「ガシャン」「きゃあーっ!」 上条の安堵の声をガラスが割れる音と姫神秋沙の悲鳴がかき消した。 姫神秋沙の悲鳴に、上条は携帯を手に持ったまま部屋に駆け込んだ。 丁度ベランダの割れた窓から『歩く教会』を着たまま連れ去られる姫神秋沙の姿が見えた。 「土御門。姫神がさらわれた」 「何だと!奴らこんなに早く。 いや、学園都市に内通者が居やがったんだ。くそっ!」 「俺は姫神を追うぞ」 「待て、カミやん。その前に大切な話がある」 「姫神のこと以上に大切な話があるのか!」 「だから姫神のことだ」 「なに?」 「まず確認だ。姫神は『歩く教会』を着たままさらわれたんだな?」 「ああ」 「それなら『歩く教会』の魔力を追跡すれば、奴らの行き先は分かる。 多分17学区の工場か11学区の倉庫か19学区の廃ビルあたりだろう。 奴らは学園都市を脱出する前に吸血鬼の存在を確認するはずだ。 そこで捕獲できればそれで良し、手に負えなければ『吸血殺し』に殺させるなり、 学園都市に吸血鬼を残して逃げ出しゃいいとでも思っているハズだ」 「無責任な連中だな」 「それより、さっきの話は魔術師どもには感づかれるなよ」 「どうしてだ?吸血鬼なんていないって判れば魔術師だって」 「その方が厄介なんだよ。 相手が無限の魔力を持つ吸血鬼だと思っているから奴らは警戒している。 果たして自分たちの手に負えるだろうかとな。 しかし、相手が只の女子高生なら? これほど御しやすい相手はいないだろ。 暗示をかけて敵陣で封印を解かせりゃ敵を皆殺しにしてくれる。 しかも封印させてから回収すれば莫大なテレズマまで手に入る。 理想的な殺戮兵器だ」 「なんだよ、それ」 「しかも、厄介なことは姫神には器がないんだ」 「どういうことだ」 「普通、個人差はあっても人間には蓄えられるテレズマに限界がある。 軽自動車にはどうやったって100tのガソリンは積めないだろ。 でも姫神にはその限界が無いんだ。 普通の人間なら一瞬で燃え尽きちまうような量のテレズマだって蓄えられる。 だからこそ、こんな計画の実験台にされちまったんだ」 「……」 「カミやん、姫神が蓄えているエネルギーはどれほどだと思う?」 「えっ?」 「『吸血殺し』はいわばエネルギー転換炉だ。 全く嫌になるぜ。科学サイドでさえまだ夢物語の技術だって言うのにな。 質量とエネルギーの等価性はアインシュタインの特殊相対性理論から導き出されたものだ。 物質が内包するエネルギーはその質量に光速の二乗をかけたものに等しい。 例えば1gの物質を全てエネルギーに変換するとおよそ90兆J(ジュール)になる。 1gの水素が燃焼するときの化学反応熱がおよそ15万Jだから、その6億倍だ。 1gで一般家庭が消費するエネルギーのおよそ3000年分をまかなえる」 「……(土御門って本当は頭が良いのか?)」 「すでに、姫神は数十人分の肉体と精神を食いつぶして錬成したテレズマを蓄えている。 だから、決して気付かれるな。 もし奴らが気付けば、奴らは直ぐに姫神を連れて逃げ出すぞ。 自分たちのアジトまで連れ帰れば、後は暗示でも洗脳でも思いのままだからな」 「そんな」 「今から『歩く教会』の魔力を追跡する。カミやんはそこで待っていてくれ。 じゃあ、一旦切るぞ」 (24.木曜日21:00) 上条はすぐに飛び出したかったが、行き先が判らない以上は連絡を待しかなかった。 土御門から連絡があったのは30分以上たってからだった。 「カミやん。まずいことになった。 『歩く教会』の反応が2つに分かれちまった。 それぞれ17学区の工場と11学区の倉庫に向かっている」 「どういうことだ?」 「どうやら、途中で俺達の追跡に気付いて偽装工作をしたようだ。 カミやんと合流して奴らを叩きたかったが、こうなったら2手に分かれよう」 「どちらでもないってことは?」 「それはない。 姫神が『歩く教会』を脱げば『吸血殺し』が発動しちまう。 奴らだって準備が整うまでは姫神から『歩く教会』を奪うことはないだろう。 俺達は11学区へ向かう。 カミやんは17学区へ向かってくれ」 「わかった」 「それとカミやんの勝利条件だ」 「勝利条件?」 「まず、姫神の安全を確保しろ。」 「当たり前だ」 「次に、吸血鬼が現れたら『幻想殺し』で破壊しろ」 「了解!」 「『幻想殺し』でやられた吸血鬼が復活するのは12分後だ。 その間に魔術師達を倒せ。」 「ちょっと待て! たったそれだけ? それって『幻想殺し』も効果なしってこと?」 「そんなことは無い。『超電磁砲』の電撃の時はたった0.03秒だったんだぜ」 「そんなに厄介なら、お前の方が本命だったらどうすんだ?」 「俺達なら簡単さ。 一撃で魔術師どもを叩きのめし姫神から108m以上引き離す。 それでお終いさ。 あとはカミやんが来るまで待つだけだ。」 「なんだそりゃ?」 「吸血鬼の活動範囲は姫神を中心に半径108m以内だ。 ただし、吸血鬼の被害者がでればそいつが中継アンテナになっちまう。 丁度ハンディアンテナサービスみたいにな。 だから、カミやんは魔術師どもが吸血鬼に噛まれる事態だけは絶対に避けろ」 「もし、12分で片がつかなきゃどうするんだ?」 「吸血鬼が復活するから、吸血鬼退治(ふりだし)に戻るだ」 「姫神に右手を当てたら吸血鬼が消えるって都合の良い話は……」 「ない。 姫神から吸血鬼に流れる生命力を止めることはできても吸血鬼を消すことはできない。 吸血鬼が消えるのは辺りの生命を食い尽くすか、蓄えた生命力を使い切るか、 『吸血殺し』が壊されるか、姫神が死ぬときだけだ」 「つまり、本気で攻撃を仕掛けてくる相手を吸血鬼から庇いながら倒せと?」 「カミやんもやる気が出たみたいだな」 「ああ、うんざりだ」 「健闘を祈る」 「そっちもな」
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(20.木曜日19:45) 上条と姫神秋沙は少し遅めの夕食をとることになった。 朝作っておいた夕食は幸いにも暴食シスターの魔の手を逃れ未だ冷蔵庫の中にその偉容を 残していた。 「さあ姫神食ってくれ。とはいっても朝の残りをレンジで温めたものだけどな」 「上条君の夕食は?」 「俺はカップラーメンで良いから」 「君の方が疲れているはず」 「いいから、いいから」 「じゃあ。半分こ」 「いいのか?(これが正しい居候の気遣いなんだぞ。インデックス)」 件の暴食シスターとは異なる反応に心の中で涙していた上条に姫神が話しかけてきた。 「さっきは有り難う。 それと。変なこと言ってゴメン。 いつか。私の『吸血殺し(ちから)』だって他人の役に立つ日が来る。 そうだね。きっと」 例え吸血鬼であってももう誰も殺したくないと姫神秋沙は願っている。 そのことを知っているからこそ上条はどう応えたらいいのか迷ってしまった。 上条が口を開こうとした時上条の携帯が振動した。 「悪い、姫神。土御門から電話だ。ちょっと外に出てくる」 「どうして外に?」 「そっ、それはだな。姫神。 もし電話の土御門に姫神が今俺の部屋にいるって気付かれたらどうなる? 明日学校でヤツがどれほど話に尾ひれをつけるか分かったもんじゃないだろ。 じゃあ、すぐ帰ってくるから。 姫神は先に飯(めし)食っていてくれ。」 携帯を握って部屋を出た上条は台所の窓の下にしゃがんで土御門のコールに応えた。 「上条だ」 「カミやんに2つ報告がある。良い知らせと悪い知らせだ。どっちからにする?」 「どうせどっちも同じなんだろ。じゃあ悪い方からだ。」 「魔術師の侵入を許しちまった。 集まってきたのは弱小組織や中堅組織の他にはぐれの魔術師までいたな。 良くもまあ短時間であれだけ色んな連中が集まってきたもんだ。 吸血鬼を使って一気に組織のステータスをあげたいんだろう。 そういやローマ正教の下部組織の連中もいたぜ。 あそこもカミやんの活躍(せい)で今は背に腹は代えられないみたいだな。 奴らは何か協定を結んだみたいで複数のルートから同時に侵入してきやがった。 大半のルートは俺達が潰したが1ダースほどの連中が網をすり抜けやがった」 「やっぱり学園都市の中で戦いが始まっちまうのかよ。くそっ!」 「俺達はこれから追撃を始める」 「じゃあ良いヤツって何だ?」 「吸血鬼を完全に消滅させる方法が分かった」 「あのな。先にいっとくけど姫神に殺させるっていうのはナシだぞ」 「ああ、それ以外の方法だ」 「えっ?そうなのか。で一体どんな方法だ?」 「簡単なことだ。カミやん、姫神を殺せ!」 「姫神を殺せ?ちょっと待て。一体どういうことだ」 「だから言ってるだろ。吸血鬼を完全に消滅させたきゃ姫神を殺すしかない」 「姫神が死ぬことと吸血鬼の消滅に何の関係があるんだよ!」 「今日学園都市に吸血鬼が現れたおかげで吸血鬼なんて生き物がこの世に存在しないこと が証明された」 「おい、何言ってんだ。意味分かんねえぞ」 「カミやん。おかしいと思ったことはないか? もし吸血鬼なんて化け物がいたならなぜ人間の世界は終わっていない? 例えヤツらが獲物の数を管理していたとしても小さくない被害があったはずだ。 なのに吸血鬼の被害に関する記録が姫神の時以外何一つ残っていないのは何故だ? 吸血鬼を始末する秘密組織があったのか?『吸血殺し』が世界中にいたのか? そんな記録は一切無いんだぜ。 そもそも吸血鬼を見たという記録も残ってないのになぜ皆その存在を信じている? 『吸血殺し』がいるからか? 吸血鬼の存在に関しては何もかもが矛盾だらけなんだよ。」 「結局何が言いたいんだ?」 「つまりだ。吸血鬼がいてそれを滅ぼす『吸血殺し』がいるんじゃない。 『吸血殺し』が吸血鬼を生み出しているんだよ。」 (21.木曜日19:55) 「なっ、お前は姫神が吸血鬼だっていいたいのか?」 「いいや。『吸血殺し』だ」 「同じじゃねえか!」 「同じじゃない。 カミやんが右手で吸血鬼を殴った後ヤツはどうなった? 消えちまったよな。 それは傍にいた『吸血殺し』から逃げた訳じゃない。 『幻想殺し』に殺されたからだよ」 「殺された?ヤツは公園にも現れたんだぞ」 「ヤツはAIMバーストの奇形種なんだ」 「AIMバースト?」 「簡単に言えば発狂した風斬氷華だ」 「ヒューズ=カザキリか?」 「風斬氷華は学園都市の230万人のAIM拡散力場が生みだした存在だ。 姫神はたった一人でそれ以上のものを生み出しているんだ。 ヤツは吸血鬼の姿をしたテレズマの塊だ。 生命力という砂を詰め込んだ皮袋だと思えばいい。 ただ、その外殻は硬質化したテレズマで覆われ恐ろしく頑丈だ。 しかも貯め込んだ生命力を失うまでは外殻が傷付いても瞬時に再生する。 だから『超電磁砲(レールガン)』の電撃位じゃ堪えなかった。 『幻想殺し』は一撃でヤツの外殻を破壊して貯め込んだ生命力を霧散させた。 だからもう一度生命力を補充するまでヤツは復活できなかったんだ。 それでもヤツの核を潰さない限り何度でも復活しちまう」 「じゃあ、その核というヤツが」 「そう、姫神の中にある」 「だから姫神を殺せと……って。 イヤ、ちょっと待て。おかしいだろ。 お前は吸血鬼を生み出したのが姫神だって言ったよな。 でも吸血鬼を滅ぼしたのだって姫神だろ? 自分で生み出して自分で滅ぼすなんて矛盾してないか?」 「姫神は吸血鬼を消しはしたが滅ぼした訳じゃない」 「どういうことだ?」 「吸血鬼の行動原理は人間の生命を宿主に集めることだ。 辺りの人間の生命を食らい尽くしたから宿主に戻った。ただそれだけなんだ。」 「じゃあ吸血鬼に噛まれた人間が吸血鬼になるっていうのは?」 「回帰衝動(リユニオン)だ。 噛まれた人間にはヤツの因子が注ぎ込まれる。 その因子は被害者の肉体や精神全てを食いつぶしそれを純粋な生命力に錬成するんだ。 それを動力源に被害者を吸血鬼と同じ行動原理に従わせちまう。 本人の意思とは関係なくな。 そして全てを食らい尽くしたら錬成した生命力を姫神に注ぎ込んでお終いだ。 あとには燃えカス(灰)しか残らない。 それにその莫大なエネルギーで自己防衛を図るから並の人間じゃ手に負えない。 一撃で身体を破壊しない限りな」 「どうしても姫神を元凶にしたいみたいだな。 じゃあ姫神が吸血鬼を使って生命を集める目的ってなんだ?説明できんのかよ! 目的もないのに人を殺しているとでも言うのか?」 「元凶は姫神じゃない。別の奴がいる」 「えっ?」 「『吸血殺し』はそもそも姫神の本来の能力じゃないんだ。 姫神はその能力をある魔術師によってねじ曲げられているのさ」 「魔術師だって? 魔術を使えば能力者に別の能力を上書きできるのか?」 「そいつは無理だ。 だが能力者から発現した能力の方向をねじ曲げることはできる。 姫神の本質は『集めて』、『錬成し』、『与える』ことだ。 そしてあの吸血鬼も本来は『竜脈からテレズマを集める』式神のような存在だった。 魔術師は式神へ与える命令の中の『竜脈』を『人間』に『テレズマ』を『生命』にねじ 曲げやがった。だから吸血鬼は人間を襲うのさ」 「魔術師が姫神の能力に細工をしたって言うのか? だったら。魔術師(おまえ)達で解呪はできないのか?」 「無茶言うな、カミやん。 実際に実行した魔術師はわからん。 だが書き込まれた術式は史上最高の魔術師エドワード=アレクサンダーのものだ。 こいつは自動制御の魔法陣だ。 解呪の難しさは『法の書』クラスなんだよ。 それに『聖ジョージの聖域』や『竜王の殺息』以上の防御魔術が組込まれているハズだ。 現在の魔術師がいくら束になってもかなやしない」 「お前達でもどうしようもないのかよ。 しかしその魔術師はなんで姫神に生命を集めさせてるんだ?」 「魔術師の計画では姫神に1万人の生命を集めるつもりだったらしい。 1人の男に与えるために」 「たった一人のために1万人もの人間を殺すっていうのか? 1万人もの生命を踏みにじろうってヤツは誰だ!ぶん殴ってやる!」 「残念だがカミやんにその男は殴れない」 「お前、知ってるのか?一体誰だ?」 「そいつの名は……上条当麻!」 (22.木曜日20:07) 「かっ?今、カミジョウトウマっていったのか?」 「そうだ、姫神は『神上計画』の補助計画(セカンドプラン)の鍵だったんだ」 「カミジョウケイカク?なんだそれ?」 「絶対能力進化(レベル6シフト)計画の一つだ。 神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くものを造り出すためのな。 姫神はカミやんを覚醒させるための起爆装置なんだよ。 そして集められる1万人もの生命は起爆装置に充填される起爆剤なんだ」 「待て、待て。お前の話はぶっとんじまっているぞ。何で絶対能力者(レベル6)なんだ。 これは魔術師じゃなく学園都市の話なのか? そもそも無能力者(レベル0)の俺がなんで出てくるんだよ。 姫神の話だって10年も前の話だろうが」 「じゃあ聞くがカミやんの『幻想殺し』はいつからあった?」 「それは……」 「もう10年以上前から『神上計画』は始まっていたんだよ。学園都市の闇の奥でな」 「(俺を覚醒させるために1万人の人間が殺されるって?何だよそれ。悪い冗談だろ) やっぱりおかしい。 学園都市の人間が1万人も死んじまうような計画なんて実行できるわけ……」 「いや、ちょうど学園都市には死んでも困らない連中がいるんだ」 「ひょっとしてスキルアウトことを言っているのか?」 「スキルアウトだって一応学生だ。 さすがに1万人も死ねば統括理事会だろうが隠蔽できやしない。 他にいるだろう?今は学園都市にいないだけで」 「まさか妹達(シスターズ)か?」 「そうだ、元々が非合法の体細胞クローン達だ。 シスターズに利用価値が無くなった時、闇に葬るには都合の良い計画だと思わないか」 上条は御坂妹ことミサカ10032号をよく知っている。 出会った時は実験動物としてただ殺されるだけの運命を甘受していた。 でも今は人として生きようとしていることを知っている。 「あいつらを廃棄物扱いするっていうのか? ふざけやがって。そんな計画はぶっ潰してやる」 「今のところこの計画は凍結中だ。 10年前の第2次起動実験に先槍騎士団が介入した事は奴らにも予想外だったようだ。 奴らは計画を一旦凍結して時機をうかがうことにしたんだ。 だから姫神が学園都市に来た時、奴らは秘密裏に『吸血殺し』に足枷までつけやがった。 おかげで数日『吸血殺し』が発動した程度じゃ吸血鬼は実体化しなくなった。 だがな。オリアナの一撃がその足枷に傷を付けやがった。 緩み始めた足枷は今では完全に外れちまっている。 姫神は今非常に危うい状態にある。 奴らの意図は判らないが『吸血殺し』はなんとかしなくちゃならない」 「でも『吸血殺し』はお前達でも解呪できないんだろ?」 「だから解呪じゃなくて一撃でそいつを破壊するんだよ。完全にな」 「俺の『幻想殺し』なら破壊できるってことか?」 「そうだ。ただ姫神の場合やっかいな場所に術式が刻まれている」 「やっかいな場所?」 「カミやんの『幻想殺し』は神の奇跡だろうが何だろうが触れただけで破壊できる。 逆に言えば触れられなきゃ何もできないってことだ。 実はこの術式は姫神の体内に刻まれている。 普通に生活していれば決してカミやんが触れることがない場所だ」 上条はそんな場所はどこだろうと考えていたら急に赤面してしまった。 「カミやん、今エッチい事を考えただろ。」 「そっ、そんなことはない」 上条は携帯に向かって首をブンブン振った。 しかしインデックスの首輪の時も同じ妄想をしかけたことを今の上条が知る由もなかった。 「そんなことよりそれはどこなんだ?」 「この術式は吸血鬼を生み出しているんだぜ。だとしたら?」 「吸血鬼だとすると、まさか!」 「そうだ、頸動脈の内側に刻まれているんだ。 吸血鬼も実際は血を吸ってたんじゃない。 被害者の頸動脈に自分の術式を書き込み(コピー)していやがったのさ。」 「だったら俺には手出しできないじゃないか」 「そうか?俺はカミやんなら何とかするじゃないかと期待しているんだがな」 「どういうことだ?」 「カミやんが『幻想殺し』をほんの2mm外側に拡げれば良いんだ。 そうすりゃ、姫神の首筋に触れるだけで全てが解決する。」 「そんなのどうすりゃできるんだよ? 自分でも『幻想殺し』の正体が分かんねえのに。 くそ!俺の右手はこんな時に役にも立たねえのかよ!」 (23.木曜日20:16) 「ぶわっははははっ!」 突然の土御門の笑い声に上条は困惑してしまった。 「スマン、カミやん。カミやんがマジに悩むからつい調子に乗っちまった。 冷静になってみろ。もっと簡単な方法があるだろう。 カミやんもよく世話になっているあのカエル顔の医者(せんせい)だよ。 あの医者なら姫神の頸動脈を切ったところで鼻歌交じりですぐに直しちまう」 「そっ、そうか!」 「俺達は今夜中に魔術師どもを捕捉し学園都市から叩き出す。 カミやん、今夜は姫神の傍に付き添ってやれ。 そして朝になったら姫神を病院に連れて行け。それでハッピーエンドだ!」 「そうか、良かっ」 「ガシャン」「きゃあぁぁぁーっ!」 上条の安堵の声をガラスが割れる音と姫神秋沙の悲鳴がかき消した。 姫神秋沙の悲鳴に上条は携帯を手に持ったまま部屋に駆け込んだ。 丁度ベランダの割れた窓から『歩く教会』を着たまま連れ去られる姫神秋沙の姿が見えた。 「土御門。姫神がさらわれた」 「何だと!奴らこんなに早く。 いや、学園都市に内通者が居やがったんだ。くそっ!」 「俺は姫神を追うぞ」 「待て、カミやん。その前に大切な話がある」 「姫神のこと以上に大切な話があるのか!」 「だから姫神のことだ」 「なに?」 「まず確認だ。姫神は『歩く教会』を着たままさらわれたんだな?」 「ああ」 「それなら『歩く教会』の魔力を追跡すれば奴らの行き先は分かる。 多分17学区の工場か11学区の倉庫か19学区の廃ビルあたりだろう。 奴らは学園都市を脱出する前に吸血鬼の存在を確認するはずだ。 そこで捕獲できればそれで良し、手に負えなければ『吸血殺し』に殺させるなり、 学園都市に吸血鬼を残して逃げ出しゃいいとでも思っているハズだ」 「無責任な連中だな」 「それより、さっきの話は魔術師どもには感づかれるなよ」 「どうしてだ?吸血鬼なんていないって判れば魔術師だって」 「その方が厄介なんだよ。 相手が無限の魔力を持つ吸血鬼だと思っているからこそ奴らは警戒している。 果たして自分たちの手に負えるだろうかとな。しかし、相手が只の女子高生なら? これほど御しやすい相手はいないだろ。 暗示をかけて敵陣で封印を解かせりゃ敵を皆殺しにしてくれる。 しかも封印させてから回収すれば莫大なテレズマまで手に入る。理想的な殺戮兵器だ」 「なんだよ、それ」 「しかも、厄介なことは姫神には器がないんだ」 「どういうことだ」 「普通、個人差はあっても人間には蓄えられるテレズマに限界がある。 軽自動車にはどうやったって100tのガソリンは積めないだろ。 でも姫神にはその限界が無いんだ。 普通の人間なら一瞬で燃え尽きちまうような量のテレズマだって蓄えられる。 だからこそこんな計画の実験台にされちまったんだ」 「……」 「カミやん、姫神が蓄えているエネルギーはどれほどだと思う?」 「えっ?」 「『吸血殺し』はいわばエネルギー転換炉だ。 全く嫌になるぜ。科学サイドでさえまだ夢物語の技術だって言うのにな。 質量とエネルギーの等価性はアインシュタインの特殊相対性理論から導き出されたものだ。 物質が内包するエネルギーはその質量に光速の二乗をかけたものに等しい。 例えば1gの物質を全てエネルギーに変換するとおよそ90兆J(ジュール)になる。 1gの水素が燃焼するときの化学反応熱がおよそ15万Jだからその6億倍だ。 1gで一般家庭が消費するエネルギーのおよそ3000年分をまかなえる」 「……(土御門って本当は頭が良いのか?)」 「すでに姫神は数十人分の肉体と精神を食いつぶして錬成したテレズマを蓄えている。 だから決して気付かれるな。 もし奴らが気付けば奴らは直ぐに姫神を連れて逃げ出すぞ。 自分たちのアジトまで連れ帰れば後は暗示でも洗脳でも思いのままだからな」 「そんな」 「今から『歩く教会』の魔力を追跡する。カミやんはそこで待っていてくれ。 じゃあ一旦切るぞ」 (24.木曜日21:00) 上条はすぐに飛び出したかったが行き先が判らない以上は連絡を待つしかなかった。 土御門から連絡があったのは30分以上経ってからだった。 「カミやん。まずいことになった。『歩く教会』の反応が2つに分かれちまった。 それぞれ17学区の工場と11学区の倉庫に向かっている」 「どういうことだ?」 「どうやら途中で俺達の追跡に気付いて偽装工作をしたようだ。 カミやんと合流して奴らを叩きたかったがこうなったら2手に分かれよう」 「どちらでもないってことは?」 「それはない。 姫神が『歩く教会』を脱げば『吸血殺し』が発動しちまう。 奴らだって準備が整うまでは姫神から『歩く教会』を奪うことはないだろう。 俺達は11学区へ向かう。カミやんは17学区へ向かってくれ」 「わかった」 「それとカミやんの勝利条件だ」 「勝利条件?」 「まず姫神の安全を確保しろ。」 「当たり前だ」 「次に吸血鬼が現れたら『幻想殺し』で破壊しろ」 「了解!」 「『幻想殺し』でやられた吸血鬼が復活するのは12分後だ。その間に魔術師達を倒せ。」 「ちょっと待て!たったそれだけ?それって『幻想殺し』も効果なしってこと?」 「そんなことは無い。『超電磁砲』の電撃の時はたった0.03秒だったんだぜ」 「そんなに厄介なら、お前の方が本命だったらどうすんだ?」 「俺達なら簡単さ。一撃で魔術師どもを叩きのめし姫神から108m以上引き離す。 それでお終いさ。あとはカミやんが来るまで待つだけだ。」 「なんだそりゃ?」 「吸血鬼の活動範囲は姫神を中心に半径108m以内だ。 ただし吸血鬼の被害者がでればそいつが中継アンテナになっちまう。 丁度ハンディアンテナサービスみたいにな。 だからカミやんは魔術師どもが吸血鬼に噛まれる事態だけは絶対に避けろ」 「もし、12分で片がつかなきゃどうするんだ?」 「吸血鬼が復活するから、吸血鬼退治(ふりだし)に戻るだ」 「姫神に右手を当てたら吸血鬼が消えるって都合の良い話は……」 「ない。 姫神から吸血鬼に流れる生命力を止めることはできても吸血鬼を消すことはできない。 吸血鬼が消えるのは辺りの生命を食い尽くすか、蓄えた生命力を使い切るか、 『吸血殺し』が壊されるか、姫神が死ぬときだけだ」 「つまり本気で攻撃を仕掛けてくる相手を吸血鬼から庇いながら倒せと?」 「カミやんもやる気が出たみたいだな」 「ああ、うんざりだ」 「健闘を祈る」 「そっちもな」
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梓「第7学区…?………って誰ですか!?」 初春「私は初春飾利です、一応ジャッジメントですから困ってるのなら力になりますよ」 梓「ジャッジメント…?まぁいいや、桜ヶ丘はどこか分かりますか?」 初春「桜ヶ丘?ちょっと分からないですね…」 梓「そう…ですか」 初春「まぁでも支部に行けばすぐに分かると思いますよ、ここからそう遠くはないのでついてきてください」 梓「はぁ」 梓「………」 梓(何だろ、この人…) 梓(何で花を頭に乗せてるんだろ) 初春「名前は何て言うんですか?」 梓「うぇ!?あ、中野梓…と言います」 初春「中野さん、ですか」 初春「あ、もう見えてきましたよ」 梓(ま、悪い人じゃなそうだ) 【第177支部】 黒子「初春、遅いですのよ」 初春「す、すいません」 黒子「あら、そちらの方は?」 初春「どうやら迷子みたいです」 梓「あ、中野梓です」 黒子「まぁ我々の手にかかればすぐに目的地に行けるでしょうから安心してくださいな」 梓「わざわざすみません…」 初春「中野さん、確か桜ヶ丘で良かったんですよね」 梓「はい」 初春「ん~、何学区にある学校ですか?」 梓「学区?」 初春「………もしかして外部の生徒さんですか?」 梓「外部…って、どこのですか?」 初春「………」 固法「牛乳うめ」 初春「あ~学園都市って知ってます?」 梓「知らない、です」 初春「白井さ~ん、どうやら仕事が増えたようですよ」 黒子「どうしたんですの?」 初春「実は………」 ……………… 黒子「本当に学園都市が分からないんですの?」 梓「はい、すみません」ジワッ 黒子「あ、いや、謝ることじゃないんですの」 黒子「ちょっとあちらでコーヒーでも飲んで落ち着いてくださいな」 梓「は…い」 黒子「………」 初春「で、どうします?」 黒子「ふむ、まさか侵入者ではないでしょうし…どうやって学園都市内に入ってきたのか気になりますわね」 黒子「もしかしたら記憶の方に問題があるかも知れませんわよ」 初春「記憶喪失…ですか?名前は覚えてましたよね?」 黒子「そういう能力者もいますわよ、この学園都市には…」 固法「牛乳混ぜる?」 梓「いえ、大丈夫です」 黒子「それに考えたくはないですが密偵…スパイの可能性も捨てきれませんわ」チラッ 初春「そんな…」 黒子「ま、あくまでも可能性があるというだけですの」 固法「私の牛乳が飲めないって言うの!?」 黒子「中野さん、ちょっと来てくださいな」 梓「あ、はい」 梓(助かった…) 黒子「初春と会う前、何をしていましたの?」 梓「え?………、あれ?思い出せない…」 黒子「あなたの名前は中野梓さんで良かったんですの?」 梓「はい」 黒子「初春?」 初春「はいはい、あ、やはりバンクには一致しないですね」 黒子「あなたは桜ヶ丘から来たんですの?」 梓「はい…」 黒子「桜ヶ丘という住所も学園都市には存在しない…やはり」 固法「ちょっと、そんな尋問みたいに問いたださなくてもいいんじゃない?」 黒子「あ、先輩…」 固法「ねぇ、学園都市は本当に知らないのよね?」 梓「…はい」 固法「で初春さんに会うまでの細かい記憶が無い…」 固法「能力者による記憶の改竄かもしれないわね…」 梓(能力者…?何の話をしてるんだろ…) 固法「初春さん、それぐらいの事ができる能力者は何人くらいいる?」 初春「ちょっと調べてみます」カタカタ 初春「洗脳能力に心理掌握、そう多くはないようですね」 初春「この方達の今日の動向を調べてみます…」カタカタ 固法「白井さん、桜ヶ丘調べてみて」 黒子「もう調べてますの、ふむ、桜ヶ丘というと東京にありますわね」 黒子「聖蹟桜ヶ丘駅に桜ヶ丘記念病院…」 固法「心当たりはある?」 梓「いえ…」 梓「あれ?そもそも桜ヶ丘ってどこだっけ…?」 固法「え?」 梓「ん?桜ヶ丘って何…?」 梓「私は………誰?」 固法「記憶が弱まってる…?」 黒子「…これは一度医者に見てもらった方が…」 初春「え?でもそれじゃあ外部の人間だって…」 黒子「幸か不幸か記憶が弱まってるからそこら辺は大丈夫ですの」 黒子「信頼できる医者を知ってますの、一度そこへ行きましょう」 【病院】 蛙「ふむ…」 初春「先生、中野さんは…」 蛙「実に不可解だね」 黒子「どういう意味ですの?」 蛙「何も異常が無いんだ、記憶以外のことにはね」 黒子「やはり能力ですか?」 蛙「考えにくいね、能力者の記憶の洗脳にここまで時間がかかるとは思えない…」 蛙「ま、実際は記憶がじわじわ消えていったみたいだけど、それも含めて能力による干渉はないと思うよ」 黒子「そう、ですの…」 蛙「ま、しばらくは様子を見た方がいいね」 蛙「それと彼女、能力開発は受けてないみたいだったよ」 黒子「やはりそうでしたの…」 蛙「ま、記憶以外は問題がないから退院はすぐにできるよ」 蛙「早ければ今日にはね」 蛙「その後、どうするつもりだい?」 初春「あの!私が何とかします!」 蛙「何とかって、どうするつもりだい?」 初春「私がルームメートになります」 黒子「初春、本気で言ってますの!?」 黒子「考えたくはないですが、外部からのスパイの可能性だってあるんですのよ?」 初春「だったらどうするんですか!!!」 蛙「…」 初春「あの子、中野さんは…何となくですけど、ほっとけないんです」 黒子「何となくって…」 初春「分かってます、もしもの時は学園都市を出ていく覚悟もあります…」 黒子「なっ…」 蛙「子供が舐めた口を聞くんじゃないよ」 初春「え?」 蛙「君は誰のお陰で学園都市に来れたと思ってるんだい?親御さんの事を君は考えたことはあるかい?」 初春「………」 蛙「君は誰のお陰で学園都市にいられると思ってるんだい?友達の気持ちも分からないのかい?」 初春「それは…」 初春「すみませんでした…」 蛙「と、今のが君の発言に対する説教」 蛙「私は別に彼女を養うなとは行ってない」 初春「え?」 蛙「私はこう見えて学園都市でも結構顔が広いんだよ」 蛙「小さい我が侭から大きな命令まで大抵のことなら聞いてくれる」 蛙「君が良いのなら、彼女と暮らしてやってくれないかな?」 初春「………」パァ 蛙「もちろん生活費は僕が出すし、もしもの時は僕が責任を取ろう」 初春「いいん…ですか?」 蛙「これは僕のお願いだよ?」 初春「ありがとうございます!」 黒子「………」ヤレヤレ ピロリピロリーンリン 佐天「ん?メールか…初春から…何々?」 FROM 初春 SUB 重大発表! 本文 実は… またルームメートができちゃいました(*^o^*)ノ 佐天「え!?まじ?」 佐天「………ふむ」メルメル ギンギラギンニサリゲナクッー 初春「あ、返事きた!」 FROM 佐天涙子 SUB RE:重大発表! 本文 は?何?どういう意味?詳しく教えなさいよ! 初春「え?怒ってる?」 初春「ちょっと丁寧に返事しとこ」メルメル ピロリピロリーンリン 佐天「来た!何々?」 佐天「え?どういう事?記憶喪失の子を助けたってこと?」 佐天「ふ~ん、初春らしいな」 佐天「今日いっぱいは入院するのか…」 佐天「うぇ?じゃあもう明日っから一緒に暮らすの?」 佐天「とりあえず返信しとこ…」 佐天「明日遊びに行っていい?っと」メルメル 佐天「送信!」ピッ ギンギラギンニサリゲナクッー 初春「あ、返事…」 初春「良かった、怒ってなかったみたいですね」 初春「じゃあ適当に返しとこ」 初春「詳しい事は明日学校で話します、それではまた明日…っと」メルメル 初春「送信!」ピッ 初春「さぁ、明日には中野さんが来るから掃除しとかなかくちゃ!」 翌朝 初春「………」テクテク バサッ 初春「!?!?」 佐天「おっはよー初春!」 初春「さ、佐天さん!せめて何か言ってからにしてくださいっ!」 佐天「分かった、じゃあめくるよ~」バサッ 初春「めくらないでください!…///」 佐天「どっちなのよ…」 佐天「で、噂のルームメートは?」 初春「今日の放課後に病院に行ってそのまま連れて帰ります」 佐天「ふ~ん、私も行っていい?」 初春「もちろんですよ」 佐天「でもさ~」 初春「はい?」 佐天「春上さんはどうするの?」 初春「………………」 佐天「え?まさか忘れてたの?」 初春「はは、そんな訳…ないですよ?ほら、春上さんが退院したら…三人暮らし?」 佐天「忘れてたんだな…」 佐天「白井さんは知ってんの?」 初春「あ、はい。一緒にいましたから」 佐天「じゃあ白井さんと御坂さん呼んで歓迎会しない?その、誰だっけ?」 初春「中野梓さんです」 佐天「その中野さんの歓迎会!」 初春「まぁ白井さんも今日は非番のはずですし、一応連絡しておきましょうか」 佐天「やたっ!」 初春「放課後、御坂さんと病院に来るらしいです」 佐天「どこの病院?」 初春「………春上さん達が入院してる…」 佐天「あぁ…一応春上さんに言っとこか」 初春「はい…」 大圄「こらそこっ」 初春・佐天「すみませ~ん」 【放課後】 佐天「ようやく放課後かぁ」 初春「白井さん達は少し遅れるようです」 佐天「じゃあ先に私たちだけで行こっか」 初春「そうですね」 佐天「そういえば中野さん、学校はどうするの?」 初春「柵川ですよ」 佐天「中一なの?」 初春「分からないんですけど能力に関する知識が無いから中一からでいいだろうということらしいですね」 佐天「じゃあレベル0なの?」 初春「これは機密情報なんですけど、どうやら学園都市外部の人間らしいんです」 佐天「え!?それってヤバいんじゃ…」 初春「それが…統括理事が黙認してるらしいです」 佐天「ふ~ん、何か事情でもあるのかな?」 初春「分かりません…、あ、病院が見えてきましたよ」 初春「はい、ありがとうございました」 梓「ありがとうございました~」 蛙「うん、それじゃあお大事にね」 佐天「あ、こんにちは!私、初春の友達の佐天涙子って言うんだ!よろしく!」 梓「あ、うんよろしく、私は中野梓です」 佐天「はは、敬語じゃなくてもいいよ~、それより初春!」 初春「あ、はい、そうでした」 初春「実はもう一人ルームメートがいるんですけど」 梓「え!?どこに」 初春・佐天「ここに」 梓「入院してるんだね」 初春「はい、でもまだこの事言ってないから今から言いに行こうと思って」 梓「あ、私も行くよ」 佐天「私も!久しぶりだなぁ春上さん」 梓「え?でもその子が退院したらどうするの?」 佐天「………」 初春「………………」 初春「さ、三人暮らし…」 梓「え?大丈夫なの?」 初春「たぶん…」 梓(まぁその時には私も家に帰れてるかな?) 2
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館浜市 館浜市(たてはまし)は関東地方南部、神奈川県の太平洋沿いに位置する都市で通称学園都市と呼ばれている。 250万人前後の人口の約7割が学生で構成されており、日本で最も学生と学校の多い街だ。 知を集め、研究を行うことで外部に比べて大きく発展しているが、危険な技術も多く、保護のために都市全体を壁と結界が覆っている。 目次 1. 概要【学園都市について】 2. 地理2.1 地形【丘陵地が多いが、高低差は少ない】 2.2 気候【四季が明瞭、積雪は極少ない】 3 歴史3.1 学園都市成立【魔族の流入及びエイセル魔法学園と梧桐総合教育学園】 3.2 技術発展と悪用、都市結界計画【技術漏洩を防ぐ結界が張られる】 3.3 魔法電子ネットワーク成立【五大学園全ての共同制作】 3.4 平行世界戦争【富士山戦争への物資及び技術支援】 4 人口【現在は約250万人前後】 5 市政5.1 創設者【霧ヶ峰甚介について】 5.2 基本三理念【教育・共有・競争】 6 地域6.1 自然区【幻想境界と昔ながらの生活】 6.2 魔族街【異世界の様式を取り入れた古い街】 6.3 異界【異界地域と突発的な異界発生】 7 観光7.1 【魔族街の歴史】 7.2 【図書館島の叡智】 7.3 【第14学区のアミューズメント施設】 7.4 【第3学区の国際展示場】 8 経済【学園都市製品と外部】 9 教育9.1 学園序列【学園毎の競争と学園への支援について】 9.2 五大学園【学園序列上位五高】 9.3 マイナー学園【専門性や劣等】 9.4 奨学金【都市内の全生徒を対象とした奨学金制度】 10 種族交流10.1 魔族【観光地としての魔族街と貴族街としての魔族街】 10.2 幻想種【自然区で暮らす幻想種と街で暮らす幻想種】 10.3 平行世界人【技術交流と戦争の残り火】 11 宗教【魔法の存在と宗教的寛容】 12 文化12.1 食文化【地元料理と名物料理】 12.2 流行語【マイナー学園を表すスラング等】 12.3 住居【建築技術と土地事情】 13 交通【公共交通機関と個人の交通手段】 1. 概要【学園都市について】 館浜市(たてはまし)はあらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、 学生が人口の7割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端技術が研究・運用されている街。 また、その性質上住民のほとんどが魔法使いとなっており、世界一魔法使いの多い街とも言われている。 2. 地理 関東地方南部に位置する土地で海岸部のほとんどは埋立地となっている。 都市全体の面積は約400キロ平方メートルであり、神奈川県の中では最も広い都市となっている。 2.1 地形【丘陵地が多いが、高低差は少ない】 都市の西側は丘陵地帯が多くなっており、自然も多く残されている。 都市の東側、海沿いの地域はその半分ほどが埋立地であり、開発によって広げられた土地だ。 そのため第14学区の人工砂浜と離島を除けば、海水浴に使える場所も存在していない。 都市内の標高は最大でも約100mほどであり、高低差の少ない土地柄となっている。 ただし第17学区、異界地域に存在している幻境山は例外であり、この山の正確な標高は現在に至るまで測ることは出来ていない。 2.2 気候【四季が明瞭、積雪は極少ない】 本州のほぼ中央、太平洋岸に位置し、ケッペンの気候区分では温帯の温暖湿潤気候に属する。 気温の年較差は大きく、四季は明瞭。1日の寒暖の差は小さく、1年を通じて穏やかな気候である。 館浜では、梅雨時と秋雨・台風の時期に降水量が多い。 夏は名古屋以西の都市と比べると暑さが穏やかで、冬は晴れる日が多く、 積雪は南岸低気圧によるもので年1回程度だが、積もるときには比較的まとまる(10cm以上)ことが多い。 3 歴史 館浜市は元々1900年頃から始まっていた異世界の流入がしやすい土地であった。 1923年の関東大震災によって倒壊した梧桐総合教育学園は建て直しの際に魔術の研究及び対策本部として館浜市へと移転され、これが後の学園都市の前身となる。 1946年の魔族と幻想種が異世界より帰還、その一部は異界多発地域及び研究機関の存在する館浜市へと受け入れられた。 それから数年後、魔族と政府、学園の協力のもと、魔法の研究及び理解が進められた。同時に多くの魔族がその土地に根付き、魔法使いの多い土地へと変化。 この頃から智の収集及び次世代の教育のため、創設者である霧ヶ峰甚介と当時のエイセル魔法学園の魔王により教育機関への援助等が行われ始める。 その後日本政府も館浜市が魔法の研究に適した土地であると認め、この都市は学園都市となった。 3.1 学園都市成立【魔族の流入及びエイセル魔法学園と梧桐総合教育学園】 1946年の魔族と幻想種の帰還、この時に館浜市へと受け入れられた魔族の中心はエイセル魔法学園の一族だった。 その時当時の魔王と梧桐総合教育学園の理事長であった霧ヶ峰甚介が協力し、学園都市が成立。 その後、エイセル魔法学園は学園都市外部に学園を構えると同時に学園都市全体の運営へと関わるようになり、 梧桐総合教育学園は学園都市へと根ざし、学園都市内最大規模の学校となった。 3.2 技術発展と悪用、都市結界計画【技術漏洩を防ぐ結界が張られる】 叡智を集め研究を行うことで医療技術や建築技術等、人々の役に立つ技術を開発していった学園都市だが、 1960年にとある学園の教頭が国外勢力へと技術及び実験兵器を提供していたことが発覚、 技術の強奪を目論んだ国外勢力の学園都市への侵攻、後に図書館戦争と呼ばれる争いが起きた。 この戦いに勝利した後、技術の運用及び技術を守ることについて重く考え、都市全てを覆う結界と防壁を張ることとなった。 これにより技術に関連した人間の出入りを管理し、技術が漏洩した際に素早く対処、及び防衛が行えるようになる。 3.3 魔法電子ネットワーク成立【五大学園全ての共同制作】 2008年にWIMAの教授であったxxxxが魔法陣と結界を利用した魔法ネットワーク技術を確立させる。 この技術を元に五大学園全ての協力によって魔法電子ネットワーク、通称MagENet(メイジネット)が作り出される。 それと同時に魔法電子生徒手帳が学園の全ての生徒へと渡り、学園内での金銭のやり取りは現金から電子マネー『Magica』へと緩やかに変わっていった。 3.4 平行世界戦争【富士山戦争への物資及び技術支援】 2016年に起きた平行世界との戦争、学園都市は直接的な戦闘には大きく関わることはなかったが、 平行世界の技術の保護、及び人命救助のため平行世界人を積極的に受け入れる。 それと同時に都市から近い地域で行われたガイアとエデンの戦争である富士山戦争には、物資の支援と、 ココ・パンドラ=ピュラーを代表とした医療部隊を派遣し、戦争による犠牲者を減らすことに尽力した。 4 人口【現在は約250万人前後】 館浜市の人口は250万人前後と言われているが正確な数はわかっていない。 というのも調査の難しい自然区と異界地域や、海底に住んでいる魔族も都市内に存在しているためだ。 また、学園の入口の前に捨て子が置き去りにされていることが多々あり、社会問題にもなっている。 5 市政 政府側の代表者として現在は館浜市長の星野ハム蔵がいるが、都市全体の方針決定等は円卓という組織にて決定される。 市長は円卓の代表者の一人となり、日本政府側の立場で会議に参加することとなる。 5.1 創設者【霧ヶ峰甚介について】 梧桐総合教育学園の理事長であった霧ヶ峰甚介、 教育共有競争の理念を説き、私財を使って学園都市の成立へと貢献した。 学園都市の大枠を作り上げ、1984年に病によってこの世を去った。 5.2 基本三理念【教育・共有・競争】 通称三協とも呼ばれる基本の三理念、教育、共有、競争。 教育は学校と学生を集め、より多くの優秀な人材を育成すること、 共有は集められた学校同士の知識や技術の交流により、より良い世界を作ること、 競争は学園序列等の制度により学校毎の奮闘を促し、個性や専門的技術の発展を促すこと、 この3つを全員で協力し作り上げていく、それをもって基本三理念である三協となった。 これらは代表的な例であり、その他にもその三理念を元とした制度がいくつも存在している。 6 地域 館浜市は現在21区の地域に分かれている。 それぞれの区の詳細については世界観の【都市MAP】を参照すること、 また、特殊な立場にある3つの地域については本項にて説明を行う。 6.1 自然区【幻想境界と昔ながらの生活】 第16学区である自然区は幻想の保護を目的とした自然保護区で、 いくつかの神と神主の協力により幻想境界と呼ばれる結界に守られている。 その内部では力を失った怪異であっても安全に生活することが出来、自然区内の人里に住む人間と知恵比べや勝負等をして穏やかに生活している。 その人里では寺小屋と呼ばれる小さな学校があり、都会の喧騒から離れて昔ながらの生活を送る人間や学生が生活をしている。 6.2 魔族街【異世界の様式を取り入れた古い街】 第5学区である魔族街には異世界から帰還した魔族が多く暮らしている。 その建物の様式は異世界の一部地域のものを使用しており、中世ヨーロッパの様式にも近似している。 また、魔族街の中にも貴族街と呼ばれる地域が存在しており、そこは一般人は立ち入ることが出来ず、どの時間帯であっても警備ゴーレムが巡回している。 6.3 異界【異界地域と突発的な異界発生】 館浜市は異世界が流入しやすい土地柄であり、異界が発生しやすくなっている。 廃棄された地域での突発的な異界発生が社会問題となっており、そのほとんどは定着せずに霧散するのだが、 異界地域と呼ばれる第17学区では幻想境界成立後に完全に定着し、幻境山を中心として魔獣や不可思議な現象が起きる危険地帯となった。 定期的に攻略隊が組まれるのだが、異界の中心点にはたどり着いたいまだに人間はおらず、非常に危険な地域として許可のない人間の立ち入りが禁止されている。 7 観光 館浜市は結界と壁に覆われた街であり、街の中には外部には未公開の技術が多い、 そのため館浜市の繁華街に訪れて歩くだけでも丸一日楽しむことが出来るとも言われている。 しかしながら、観光のために訪れる人間は歴史的に重要な物や、 第21学区の図書館島と呼ばれる叡智の殿堂、第14学区のアミューズメント施設を目的とすることが多いだろう。 7.1 【魔族街の歴史】 第5学区の中世ヨーロッパを思わせる魔族逹の街、 これらの建物の一部は異世界にあったものがそのまま落ちてきたという物も混ざっており、 歴史研究家や古い街、神秘的なものが好きな人間はこれを見に来る。 また、地元の魔族も一部を除きそれを歓迎し、魔族グッズや魔族まんじゅうと言った、 魔族街限定のものを売る等して利益を得ている。 7.2 【図書館島の叡智】 第21学区の図書館島は学園都市で発行されたあらゆる文書を集めている。 これの管理にはフェクス大蔵院が深く関わっており、 変質した結界によって異界化した地下禁書庫には目で見ることすら死の危険を持つ本が収められている。 一般公開エリアでは世界中の本があるのはもちろんのこと、学園都市内で発行された本のほとんどを見ることが出来る。 ただし、危険性な技術関係の本は一般公開されていないので、そういった技術を求めた人間のニーズには答えていない。 7.3 【第14学区のアミューズメント施設】 第14学区は安全性の確認が取れた技術を経費度外視で使用したアミューズメント施設だ。 その運営にはブラント財閥が大きく関わっており、あらゆる種族が楽しめる施設を実験的に投入している。 学園都市の建築技術を使うことで人気の無いアトラクション等は簡単に取り壊し、新しいアトラクションが導入されることになる。 アミューズメント施設は水族館、遊園地、ゲームセンター、ボーリング、冬でも寒くない海水浴等多岐に渡り、 休日は学園都市の学生から学園街の家族まで大勢が遊びに来て賑わいを見せている。 7.4 【第3学区の国際展示場】 第3学区には国際ホールや国際展示場があり、 そこでは学園都市の技術の紹介や人気アーティストのライブ等、様々なイベントを開催している。 全22学区中最も観光客が多いのはこのエリアであり、駅前区からのモノレールも通っている。 8 経済【学園都市製品と外部】 安全基準をクリアした学園都市製品の販売を主な産業としている。 館浜市では都市内で効率的な野菜や家畜などの生産ももちろん研究されているが、 人口の全てを養うには全く足りておらず、食料は学園都市外からの購入に頼っている。 9 教育 都市内での学校の設立や運営に対して支援金が払われる。 また、高い建築技術により学校の設立を非常に安価に行うことが出来るため、様々な分野の学校が設立されている。 この都市にいる生徒逹の大半は外部からの入学生であり、高校進学に合わせてこの街に来るという人間が多い。 学園序列上位の学校に入れなかったとしても、外よりも進んだ技術を有しているこの学園都市の生活は夢ある若者にとって魅力的なのだ。 9.1 学園序列【学園毎の競争と学園への支援について】 学園都市の三協の一つである競争の代表と言えるのが学園序列の制度。 年に2回の発表会や発表された論文、体育祭等多くの要素を元に学園に順位付けが行われ、 その序列が上位の学園ほど多くの支援を受けられるようになっている。 それは資金援助やカルム財団等からの派遣教師、学園都市政府開発施設の優先使用権等多岐に渡る。 都市内の学園はそれぞれの特色を高めることでより上位の序列に食い込むため日々努力をしている。 9.2 五大学園【学園序列上位五高】 学園序列において群を抜いているのは、 梧桐総合教育学園、WIMA、松門戦技高校、聖桜ヶ丘学院、星芒異能学園の5つだ。 これらが現在の学園都市を代表する学園と言っていいだろう。 1位から5位までの順位はまず間違いなくこの5つの学園から選ばれる。 ただし、どの学園がどの順位になるかは年毎に変わる。大体はその年に大きな成果を上げた学園が1位になるが その次の年にはまた別の学園が1位になる……といったように常に変動しているのだ。 これらの学園序列の1位になることに特に精力的なのは梧桐総合教育学園で、 他4つの学園から頭一つ抜ける機会を虎視眈々と狙っている。 9.3 マイナー学園【専門性や劣等】 学園都市内にあふれんばかりにある学園逹、それらはマイナー学園とも呼ばれている。 学園の規模や設備、教師の質や学べる内容の広さにおいて五大学園にはどうしても劣ってしまう。 それは学園序列の制度の弊害とも言えるもので、上位の得ているリードを覆すことが出来ないのだ。 しかしながら、マイナー学園の中には五大学園よりもより専門的な研究を行うことで、 その分野においては五大学園に勝るという学園も存在している。 専門的ではない、劣等とも言えるマイナー学園も存在しており、様々な生徒の受け皿ともなっている。 9.4 奨学金【都市内の全生徒を対象とした奨学金制度】 学園都市は外部から入学者を募っており、保護者が学費を払い、入学した学生は親元を離れて暮らす事になる。 そう言った生徒は寮やアパートで暮らすこととなり、親からの仕送りや奨学金、アルバイト等によってやりくりをしながら暮らすこととなる。 この都市では生徒は全員奨学金を受け取ることが出来る、その金額は成績や成果を元に決められるのだが、 多くの生徒は生活が出来る程度の金額しか受け取ることが出来ないため、遊ぶための資金としてアルバイトをする学生も少なくない。 10 種族交流 魔法使いや研究者を中心とした都市であるためか、 外部に比べても他種族を受け入れやすい環境にある。 その最たる例は魔族であり、彼らは異世界から帰還してからこの都市へと深く馴染んでいる。 種族間での摩擦は、多くの場合、魔族街に住んでいるカルム財団の高官が仲裁を行うようだ。 10.1 魔族【観光地としての魔族街と貴族街としての魔族街】 館浜市は魔族の帰還以来魔族との交流を続けてきた。 魔族街には異世界の魔族の家がそのまま使われているものもあり、歴史的に見ても貴重だ。 それらを見るために観光に来る人間に向けて魔族街の一部は外部の人間向けにカフェ等を開いて歓待している。 人間と魔族、それ以外の種族との交流はこれらの地域では上手くいっており、かなり仲良くやれていると言えるだろう。 しかしながら、そういった態度を快く思っていない魔族もいる。 貴族街と呼ばれる区画では一般人の立ち入りは基本的に禁じられており、一日中ゴーレム逹が警備を行っている。 証を持たずに立ち入った人間は殺される、まではいかなくても警備ゴーレムによって追い出されてしまうだろう。 10.2 幻想種【自然区で暮らす幻想種と街で暮らす幻想種】 人間の姿を上手く取れない者や、力の弱った幻想種は自然区で暮らしている事が多い。 ここは幻想境界によって、力を失いにくい地域になっている上、動物や本性の姿で過ごしていても咎める者はほとんどいない。 それは彼らにとって一つの楽園であるとも言えるだろう。 しかし、人間と交流することを求める者は自然区ではなく街で暮らすことを選ぶこともある。 彼らは大体においては人間の姿を取ることが出来、人間社会に溶け込みながら暮らしている。 学園都市の学者逹も幻想種の起こす現象や魔法に大きな関心を抱いており、少々問題のある存在であっても歓迎されることが多い。 10.3 平行世界人【技術交流と戦争の残り火】 2017年に平行世界のアストラル、マキナ、エデン、レプタイル、プレイライトが滅び、 平行世界人はこの世界であるガイアへと移住してきた。 その内レプタイルとエデンはほとんど滅んでいたため、学者たちは残念がったが、彼らを受け入れることは出来なかった。 学園都市は比較的平和に終わった常磐緑戦争や北の大地紛争、新世界戦争等から、 平行世界人逹を大勢受け入れ、新たな技術や知識を獲得することとなる。 この都市自体は戦争に巻き込まれていなかったこともあり、住民と平行世界人の関係性はそれほど悪くはないが、 異なる文化を持つ彼らとの文化摩擦は懸念されており、それに関する事故や事件も起きている。 11 宗教【魔法の存在と宗教的寛容】 学園都市において宗教は学問の一つとして受け入れられている。 この都市内には多くの宗教が存在しているが、住民たちは宗教的多様性の中で他の宗教を侵害しない。 それどころか、聖桜ヶ丘学院においては唯一神教である四文字の主神の教えを中心とした学校でありながら、 他宗教を積極的に受け入れ、それらの宗教を研究してすらいるのだ。 こういった寛容さ、貪欲さも学園都市ならではのものと言えるだろう。 神の奇跡の全てを魔法と理論によって解き明かそうとする動きもあるようだが、上手くいっていないようだ。 12 文化 学園都市にはあらゆる人種が集るため、文化は常に流動的である。 特に顕著なのが食文化や流行語で、常に流行り廃りが繰り返されている。 12.1 食文化【地元料理と名物料理】 全国から人を集めていることもあり、あらゆる料理を食べる事ができる。 そのため、この地域ならではの料理と言われても住民たちは首を傾げることになる。 そんな中だが地元らしい料理店としてはラーメンやサンマー麺等の麺類があげられることもある。 名物料理は魔族街にある魔族料理だろう、特に食べ歩きも出来る『肉魔ン』や『学園都市魔んじゅう』は 常に観光客から人気の料理だ。何の肉を使ってるかはわからないが非常に美味しい。 なお、最近の若者の間では学園都市内に9つの店舗を持つ『21Crepe』 通称トゥエンティーワンのクレープが人気となっている。 12.2 流行語【マイナー学園を表すスラング等】 学園序列において下位の学校は下位をもじって「貝」と呼ばれ、 「イモ貝(田舎者ばかりの学校)」や「ホラ貝(口先だけの奴ら)」等の派生語が生まれた。 そのためマイナー高校が多い地域である第9学区は「干潟」とも呼ばれている。 12.3 住居【建築技術と土地事情】 都市の建物は西洋から伝統的日本家屋にいたるまであらゆるものが建っている。 これは学園都市の高い建築技術により、建物を安価に建てることが出来るため お金さえあれば住民は好きな様式の家をすぐに手に入れられることが影響している。 しかし高い技術力があるとはいえ、土地は有限であるため、金を持っていない人間は、 安いアパートを借りる等で生活していることが多い。 どちらにしても、都市外に比べれば安く済むだろう。 13 交通【公共交通機関と個人の交通手段】 近未来的な交通機関が多く開発されていて、学園都市ではそれらがよく利用されている。 物理的なレールの無いモノレールや、フライトヴィークル、 利用料金は高価だが短距離転移装置なんてものもある。 しかしながらそれらは利用できる場所が限られていたり、利用料金が高かったり等で 多くの人間は16、17、22を除く19学区全てに通っている電車や、そこからのバスを利用している。 また、個人の交通手段としては魔法使いには魔法の箒が普及し始めているが、 魔法の箒自体が高価なこともあり、学生逹の多くは自電車や原チャリを利用している。
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館浜市 館浜市(たてはまし)は関東地方南部、神奈川県の太平洋沿いに位置する都市で通称学園都市と呼ばれている。 250万人前後の人口の約7割が学生で構成されており、日本で最も学生と学校の多い街だ。 知を集め、研究を行うことで外部に比べて大きく発展しているが、危険な技術も多く、保護のために都市全体を壁と結界が覆っている。 目次 1. 概要【学園都市について】 2. 地理2.1 地形【丘陵地が多いが、高低差は少ない】 2.2 気候【四季が明瞭、積雪は極少ない】 3 歴史3.1 学園都市成立【魔族の流入及びエイセル魔法学園と梧桐総合教育学園】 3.2 技術発展と悪用、都市結界計画【技術漏洩を防ぐ結界が張られる】 3.3 魔法電子ネットワーク成立【五大学園全ての共同制作】 3.4 平行世界戦争【富士山戦争への物資及び技術支援】 4 人口【現在は約250万人前後】 5 市政5.1 創設者【霧ヶ峰甚介について】 5.2 基本三理念【教育・共有・競争】 6 地域6.1 自然区【幻想境界と昔ながらの生活】 6.2 魔族街【異世界の様式を取り入れた古い街】 6.3 異界【異界地域と突発的な異界発生】 7 観光7.1 【魔族街の歴史】 7.2 【図書館島の叡智】 7.3 【第14学区のアミューズメント施設】 7.4 【第3学区の国際展示場】 8 経済【学園都市製品と外部】 9 教育9.1 学園序列【学園毎の競争と学園への支援について】 9.2 五大学園【学園序列上位五高】 9.3 マイナー学園【専門性や劣等】 9.4 奨学金【都市内の全生徒を対象とした奨学金制度】 10 種族交流10.1 魔族【観光地としての魔族街と貴族街としての魔族街】 10.2 幻想種【自然区で暮らす幻想種と街で暮らす幻想種】 10.3 平行世界人【技術交流と戦争の残り火】 11 宗教【魔法の存在と宗教的寛容】 12 文化12.1 食文化【地元料理と名物料理】 12.2 流行語【マイナー学園を表すスラング等】 12.3 住居【建築技術と土地事情】 13 交通【公共交通機関と個人の交通手段】 1. 概要【学園都市について】 館浜市(たてはまし)はあらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、 学生が人口の7割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端技術が研究・運用されている街。 また、その性質上住民のほとんどが魔法使いとなっており、世界一魔法使いの多い街とも言われている。 2. 地理 関東地方南部に位置する土地で海岸部のほとんどは埋立地となっている。 都市全体の面積は約400キロ平方メートルであり、神奈川県の中では最も広い都市となっている。 2.1 地形【丘陵地が多いが、高低差は少ない】 都市の西側は丘陵地帯が多くなっており、自然も多く残されている。 都市の東側、海沿いの地域はその半分ほどが埋立地であり、開発によって広げられた土地だ。 そのため第14学区の人工砂浜と離島を除けば、海水浴に使える場所も存在していない。 都市内の標高は最大でも約100mほどであり、高低差の少ない土地柄となっている。 ただし第17学区、異界地域に存在している幻境山は例外であり、この山の正確な標高は現在に至るまで測ることは出来ていない。 2.2 気候【四季が明瞭、積雪は極少ない】 本州のほぼ中央、太平洋岸に位置し、ケッペンの気候区分では温帯の温暖湿潤気候に属する。 気温の年較差は大きく、四季は明瞭。1日の寒暖の差は小さく、1年を通じて穏やかな気候である。 館浜では、梅雨時と秋雨・台風の時期に降水量が多い。 夏は名古屋以西の都市と比べると暑さが穏やかで、冬は晴れる日が多く、 積雪は南岸低気圧によるもので年1回程度だが、積もるときには比較的まとまる(10cm以上)ことが多い。 3 歴史 館浜市は元々1900年頃から始まっていた異世界の流入がしやすい土地であった。 1923年の関東大震災によって倒壊した梧桐総合教育学園は建て直しの際に魔術の研究及び対策本部として館浜市へと移転され、これが後の学園都市の前身となる。 1946年の魔族と幻想種が異世界より帰還、その一部は異界多発地域及び研究機関の存在する館浜市へと受け入れられた。 それから数年後、魔族と政府、学園の協力のもと、魔法の研究及び理解が進められた。同時に多くの魔族がその土地に根付き、魔法使いの多い土地へと変化。 この頃から智の収集及び次世代の教育のため、創設者である霧ヶ峰甚介と当時のエイセル魔法学園の魔王により教育機関への援助等が行われ始める。 その後日本政府も館浜市が魔法の研究に適した土地であると認め、この都市は学園都市となった。 3.1 学園都市成立【魔族の流入及びエイセル魔法学園と梧桐総合教育学園】 1946年の魔族と幻想種の帰還、この時に館浜市へと受け入れられた魔族の中心はエイセル魔法学園の一族だった。 その時当時の魔王と梧桐総合教育学園の理事長であった霧ヶ峰甚介が協力し、学園都市が成立。 その後、エイセル魔法学園は学園都市外部に学園を構えると同時に学園都市全体の運営へと関わるようになり、 梧桐総合教育学園は学園都市へと根ざし、学園都市内最大規模の学校となった。 3.2 技術発展と悪用、都市結界計画【技術漏洩を防ぐ結界が張られる】 叡智を集め研究を行うことで医療技術や建築技術等、人々の役に立つ技術を開発していった学園都市だが、 1960年にとある学園の教頭が国外勢力へと技術及び実験兵器を提供していたことが発覚、 技術の強奪を目論んだ国外勢力の学園都市への侵攻、後に図書館戦争と呼ばれる争いが起きた。 この戦いに勝利した後、技術の運用及び技術を守ることについて重く考え、都市全てを覆う結界と防壁を張ることとなった。 これにより技術に関連した人間の出入りを管理し、技術が漏洩した際に素早く対処、及び防衛が行えるようになる。 3.3 魔法電子ネットワーク成立【五大学園全ての共同制作】 2008年にWIMAの教授であったxxxxが魔法陣と結界を利用した魔法ネットワーク技術を確立させる。 この技術を元に五大学園全ての協力によって魔法電子ネットワーク、通称MagENet(メイジネット)が作り出される。 それと同時に魔法電子生徒手帳が学園の全ての生徒へと渡り、学園内での金銭のやり取りは現金から電子マネー『Magica』へと緩やかに変わっていった。 3.4 平行世界戦争【富士山戦争への物資及び技術支援】 2016年に起きた平行世界との戦争、学園都市は直接的な戦闘には大きく関わることはなかったが、 平行世界の技術の保護、及び人命救助のため平行世界人を積極的に受け入れる。 それと同時に都市から近い地域で行われたガイアとエデンの戦争である富士山戦争には、物資の支援と、 ココ・パンドラ=ピュラーを代表とした医療部隊を派遣し、戦争による犠牲者を減らすことに尽力した。 4 人口【現在は約250万人前後】 館浜市の人口は250万人前後と言われているが正確な数はわかっていない。 というのも調査の難しい自然区と異界地域や、海底に住んでいる魔族も都市内に存在しているためだ。 また、学園の入口の前に捨て子が置き去りにされていることが多々あり、社会問題にもなっている。 5 市政 政府側の代表者として現在は館浜市長の星野ハム蔵がいるが、都市全体の方針決定等は円卓という組織にて決定される。 市長は円卓の代表者の一人となり、日本政府側の立場で会議に参加することとなる。 5.1 創設者【霧ヶ峰甚介について】 梧桐総合教育学園の理事長であった霧ヶ峰甚介、 教育共有競争の理念を説き、私財を使って学園都市の成立へと貢献した。 学園都市の大枠を作り上げ、1984年に病によってこの世を去った。 5.2 基本三理念【教育・共有・競争】 通称三協とも呼ばれる基本の三理念、教育、共有、競争。 教育は学校と学生を集め、より多くの優秀な人材を育成すること、 共有は集められた学校同士の知識や技術の交流により、より良い世界を作ること、 競争は学園序列等の制度により学校毎の奮闘を促し、個性や専門的技術の発展を促すこと、 この3つを全員で協力し作り上げていく、それをもって基本三理念である三協となった。 これらは代表的な例であり、その他にもその三理念を元とした制度がいくつも存在している。 6 地域 館浜市は現在21区の地域に分かれている。 それぞれの区の詳細については世界観の【都市MAP】を参照すること、 また、特殊な立場にある3つの地域については本項にて説明を行う。 6.1 自然区【幻想境界と昔ながらの生活】 第16学区である自然区は幻想の保護を目的とした自然保護区で、 いくつかの神と神主の協力により幻想境界と呼ばれる結界に守られている。 その内部では力を失った怪異であっても安全に生活することが出来、自然区内の人里に住む人間と知恵比べや勝負等をして穏やかに生活している。 その人里では寺小屋と呼ばれる小さな学校があり、都会の喧騒から離れて昔ながらの生活を送る人間や学生が生活をしている。 6.2 魔族街【異世界の様式を取り入れた古い街】 第5学区である魔族街には異世界から帰還した魔族が多く暮らしている。 その建物の様式は異世界の一部地域のものを使用しており、中世ヨーロッパの様式にも近似している。 また、魔族街の中にも貴族街と呼ばれる地域が存在しており、そこは一般人は立ち入ることが出来ず、どの時間帯であっても警備ゴーレムが巡回している。 6.3 異界【異界地域と突発的な異界発生】 館浜市は異世界が流入しやすい土地柄であり、異界が発生しやすくなっている。 廃棄された地域での突発的な異界発生が社会問題となっており、そのほとんどは定着せずに霧散するのだが、 異界地域と呼ばれる第17学区では幻想境界成立後に完全に定着し、幻境山を中心として魔獣や不可思議な現象が起きる危険地帯となった。 定期的に攻略隊が組まれるのだが、異界の中心点にはたどり着いたいまだに人間はおらず、非常に危険な地域として許可のない人間の立ち入りが禁止されている。 7 観光 館浜市は結界と壁に覆われた街であり、街の中には外部には未公開の技術が多い、 そのため館浜市の繁華街に訪れて歩くだけでも丸一日楽しむことが出来るとも言われている。 しかしながら、観光のために訪れる人間は歴史的に重要な物や、 第21学区の図書館島と呼ばれる叡智の殿堂、第14学区のアミューズメント施設を目的とすることが多いだろう。 7.1 【魔族街の歴史】 第5学区の中世ヨーロッパを思わせる魔族逹の街、 これらの建物の一部は異世界にあったものがそのまま落ちてきたという物も混ざっており、 歴史研究家や古い街、神秘的なものが好きな人間はこれを見に来る。 また、地元の魔族も一部を除きそれを歓迎し、魔族グッズや魔族まんじゅうと言った、 魔族街限定のものを売る等して利益を得ている。 7.2 【図書館島の叡智】 第21学区の図書館島は学園都市で発行されたあらゆる文書を集めている。 これの管理にはフェクス大蔵院が深く関わっており、 変質した結界によって異界化した地下禁書庫には目で見ることすら死の危険を持つ本が収められている。 一般公開エリアでは世界中の本があるのはもちろんのこと、学園都市内で発行された本のほとんどを見ることが出来る。 ただし、危険性な技術関係の本は一般公開されていないので、そういった技術を求めた人間のニーズには答えていない。 7.3 【第14学区のアミューズメント施設】 第14学区は安全性の確認が取れた技術を経費度外視で使用したアミューズメント施設だ。 その運営にはブラント財閥が大きく関わっており、あらゆる種族が楽しめる施設を実験的に投入している。 学園都市の建築技術を使うことで人気の無いアトラクション等は簡単に取り壊し、新しいアトラクションが導入されることになる。 アミューズメント施設は水族館、遊園地、ゲームセンター、ボーリング、冬でも寒くない海水浴等多岐に渡り、 休日は学園都市の学生から学園街の家族まで大勢が遊びに来て賑わいを見せている。 7.4 【第3学区の国際展示場】 第3学区には国際ホールや国際展示場があり、 そこでは学園都市の技術の紹介や人気アーティストのライブ等、様々なイベントを開催している。 全22学区中最も観光客が多いのはこのエリアであり、駅前区からのモノレールも通っている。 8 経済【学園都市製品と外部】 安全基準をクリアした学園都市製品の販売を主な産業としている。 館浜市では都市内で効率的な野菜や家畜などの生産ももちろん研究されているが、 人口の全てを養うには全く足りておらず、食料は学園都市外からの購入に頼っている。 9 教育 都市内での学校の設立や運営に対して支援金が払われる。 また、高い建築技術により学校の設立を非常に安価に行うことが出来るため、様々な分野の学校が設立されている。 この都市にいる生徒逹の大半は外部からの入学生であり、高校進学に合わせてこの街に来るという人間が多い。 学園序列上位の学校に入れなかったとしても、外よりも進んだ技術を有しているこの学園都市の生活は夢ある若者にとって魅力的なのだ。 9.1 学園序列【学園毎の競争と学園への支援について】 学園都市の三協の一つである競争の代表と言えるのが学園序列の制度。 年に2回の発表会や発表された論文、体育祭等多くの要素を元に学園に順位付けが行われ、 その序列が上位の学園ほど多くの支援を受けられるようになっている。 それは資金援助やカルム財団等からの派遣教師、学園都市政府開発施設の優先使用権等多岐に渡る。 都市内の学園はそれぞれの特色を高めることでより上位の序列に食い込むため日々努力をしている。 9.2 五大学園【学園序列上位五高】 学園序列において群を抜いているのは、 梧桐総合教育学園、WIMA、松門戦技高校、聖桜ヶ丘学院、星芒異能学園の5つだ。 これらが現在の学園都市を代表する学園と言っていいだろう。 1位から5位までの順位はまず間違いなくこの5つの学園から選ばれる。 ただし、どの学園がどの順位になるかは年毎に変わる。大体はその年に大きな成果を上げた学園が1位になるが その次の年にはまた別の学園が1位になる……といったように常に変動しているのだ。 これらの学園序列の1位になることに特に精力的なのは梧桐総合教育学園で、 他4つの学園から頭一つ抜ける機会を虎視眈々と狙っている。 9.3 マイナー学園【専門性や劣等】 学園都市内にあふれんばかりにある学園逹、それらはマイナー学園とも呼ばれている。 学園の規模や設備、教師の質や学べる内容の広さにおいて五大学園にはどうしても劣ってしまう。 それは学園序列の制度の弊害とも言えるもので、上位の得ているリードを覆すことが出来ないのだ。 しかしながら、マイナー学園の中には五大学園よりもより専門的な研究を行うことで、 その分野においては五大学園に勝るという学園も存在している。 専門的ではない、劣等とも言えるマイナー学園も存在しており、様々な生徒の受け皿ともなっている。 9.4 奨学金【都市内の全生徒を対象とした奨学金制度】 学園都市は外部から入学者を募っており、保護者が学費を払い、入学した学生は親元を離れて暮らす事になる。 そう言った生徒は寮やアパートで暮らすこととなり、親からの仕送りや奨学金、アルバイト等によってやりくりをしながら暮らすこととなる。 この都市では生徒は全員奨学金を受け取ることが出来る、その金額は成績や成果を元に決められるのだが、 多くの生徒は生活が出来る程度の金額しか受け取ることが出来ないため、遊ぶための資金としてアルバイトをする学生も少なくない。 10 種族交流 魔法使いや研究者を中心とした都市であるためか、 外部に比べても他種族を受け入れやすい環境にある。 その最たる例は魔族であり、彼らは異世界から帰還してからこの都市へと深く馴染んでいる。 種族間での摩擦は、多くの場合、魔族街に住んでいるカルム財団の高官が仲裁を行うようだ。 10.1 魔族【観光地としての魔族街と貴族街としての魔族街】 館浜市は魔族の帰還以来魔族との交流を続けてきた。 魔族街には異世界の魔族の家がそのまま使われているものもあり、歴史的に見ても貴重だ。 それらを見るために観光に来る人間に向けて魔族街の一部は外部の人間向けにカフェ等を開いて歓待している。 人間と魔族、それ以外の種族との交流はこれらの地域では上手くいっており、かなり仲良くやれていると言えるだろう。 しかしながら、そういった態度を快く思っていない魔族もいる。 貴族街と呼ばれる区画では一般人の立ち入りは基本的に禁じられており、一日中ゴーレム逹が警備を行っている。 証を持たずに立ち入った人間は殺される、まではいかなくても警備ゴーレムによって追い出されてしまうだろう。 10.2 幻想種【自然区で暮らす幻想種と街で暮らす幻想種】 人間の姿を上手く取れない者や、力の弱った幻想種は自然区で暮らしている事が多い。 ここは幻想境界によって、力を失いにくい地域になっている上、動物や本性の姿で過ごしていても咎める者はほとんどいない。 それは彼らにとって一つの楽園であるとも言えるだろう。 しかし、人間と交流することを求める者は自然区ではなく街で暮らすことを選ぶこともある。 彼らは大体においては人間の姿を取ることが出来、人間社会に溶け込みながら暮らしている。 学園都市の学者逹も幻想種の起こす現象や魔法に大きな関心を抱いており、少々問題のある存在であっても歓迎されることが多い。 10.3 平行世界人【技術交流と戦争の残り火】 2017年に平行世界のアストラル、マキナ、エデン、レプタイル、プレイライトが滅び、 平行世界人はこの世界であるガイアへと移住してきた。 その内レプタイルとエデンはほとんど滅んでいたため、学者たちは残念がったが、彼らを受け入れることは出来なかった。 学園都市は比較的平和に終わった常磐緑戦争や北の大地紛争、新世界戦争等から、 平行世界人逹を大勢受け入れ、新たな技術や知識を獲得することとなる。 この都市自体は戦争に巻き込まれていなかったこともあり、住民と平行世界人の関係性はそれほど悪くはないが、 異なる文化を持つ彼らとの文化摩擦は懸念されており、それに関する事故や事件も起きている。 11 宗教【魔法の存在と宗教的寛容】 学園都市において宗教は学問の一つとして受け入れられている。 この都市内には多くの宗教が存在しているが、住民たちは宗教的多様性の中で他の宗教を侵害しない。 それどころか、聖桜ヶ丘学院においては唯一神教である四文字の主神の教えを中心とした学校でありながら、 他宗教を積極的に受け入れ、それらの宗教を研究してすらいるのだ。 こういった寛容さ、貪欲さも学園都市ならではのものと言えるだろう。 神の奇跡の全てを魔法と理論によって解き明かそうとする動きもあるようだが、上手くいっていないようだ。 12 文化 学園都市にはあらゆる人種が集るため、文化は常に流動的である。 特に顕著なのが食文化や流行語で、常に流行り廃りが繰り返されている。 12.1 食文化【地元料理と名物料理】 全国から人を集めていることもあり、あらゆる料理を食べる事ができる。 そのため、この地域ならではの料理と言われても住民たちは首を傾げることになる。 そんな中だが地元らしい料理店としてはラーメンやサンマー麺等の麺類があげられることもある。 名物料理は魔族街にある魔族料理だろう、特に食べ歩きも出来る『肉魔ン』や『学園都市魔んじゅう』は 常に観光客から人気の料理だ。何の肉を使ってるかはわからないが非常に美味しい。 なお、最近の若者の間では学園都市内に9つの店舗を持つ『21Crepe』 通称トゥエンティーワンのクレープが人気となっている。 12.2 流行語【マイナー学園を表すスラング等】 学園序列において下位の学校は下位をもじって「貝」と呼ばれ、 「イモ貝(田舎者ばかりの学校)」や「ホラ貝(口先だけの奴ら)」等の派生語が生まれた。 そのためマイナー高校が多い地域である第9学区は「干潟」とも呼ばれている。 12.3 住居【建築技術と土地事情】 都市の建物は西洋から伝統的日本家屋にいたるまであらゆるものが建っている。 これは学園都市の高い建築技術により、建物を安価に建てることが出来るため お金さえあれば住民は好きな様式の家をすぐに手に入れられることが影響している。 しかし高い技術力があるとはいえ、土地は有限であるため、金を持っていない人間は、 安いアパートを借りる等で生活していることが多い。 どちらにしても、都市外に比べれば安く済むだろう。 13 交通【公共交通機関と個人の交通手段】 近未来的な交通機関が多く開発されていて、学園都市ではそれらがよく利用されている。 物理的なレールの無いモノレールや、フライトヴィークル、 利用料金は高価だが短距離転移装置なんてものもある。 しかしながらそれらは利用できる場所が限られていたり、利用料金が高かったり等で 多くの人間は16、17、22を除く19学区全てに通っている電車や、そこからのバスを利用している。 また、個人の交通手段としては魔法使いには魔法の箒が普及し始めているが、 魔法の箒自体が高価なこともあり、学生逹の多くは自電車や原チャリを利用している。
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7学期、つまり4年生前学期推奨の文系科目です。 国語(井口 時男) 名前 コメント 神経心理学(柴崎 光世) 名前 コメント マクロ経済学(千明 誠) 名前 コメント 科学の社会史(梶 雅範) 名前 コメント
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最初に簡単な注意を ・主人公は木原数多と木山春生になります ・作者が台本形式を苦手としているため、セリフの前に名前はつきません ・恋愛要素が入ってきますが多分甘くなりません ・少し残酷な描写が含まれます これらの点を踏まえて、お付き合いしてくださる方はよろしくお願いします 人口の8割を学生が占める街、学園都市。 彼ら子供達は、特別な脳開発(きょういく)によって「超能力」と呼ばれる異能の力を手に入れている。 その多くは実生活で大して役に立たない程度の能力しか持たないが、中には軍隊と戦えるレベルの圧倒的なチカラを行使する者も存在するのだ。 当然ながら。 それほどのチカラを持つ学生を抱える学園都市には、小説20冊を割り当てても尚終わらないほどのストーリーが用意されている。 ――だがここでは、そんな学生達の話は語られない。 このちっぽけな、誰の目にも留まらないような片隅で語られるのは。 残る2割――科学者(おとな)達が繰り広げた、とある歪んだ物語。 第17学区の特別拘置所 『幻想御手(レベルアッパー)』事件と呼ばれる、1万人もの学生に生じた昏睡事件をとある少女が解決してから3日後。 まだ日が出たばかりの早朝、その事件の首謀者である木山春生を訪ねる者がいた。 「久しぶりだな木山ちゃん。じーさんの実験に参加してた気弱ちゃんが、まさかこんな派手な事をするとは思わなかったなぁ」 その面会に来た男の姿を見て、木山は驚愕し――次いで激怒した。 「貴様……木原数多か!」 「嬉しいねぇ。実験の手伝いをしてただけの俺を、フルネームで覚えてくれたなんて」 彼女の怒りをニヤニヤと受け流すのは、白衣を着た長身の男。 顔に特徴的な刺青を彫っていながら、木山春生と同じ学園都市の天才研究者。 そう。 面会人は、この特別拘置所にいる誰よりも悪党な存在――木原数多だった。 「忘れるはずが無い……貴様が木原幻生の一族で、あの実験の真の目的を知っていたのは分かっているんだ!」 「おいおい、落ち着けって。幻生のじーさんと俺は遠縁だし、あのチャイルドエラーも全員生きてるんだろ?」 「ふざけるな! 今もあの子達は目を覚まさないままなんだぞ……それが分かっているのか!」 「OK、じゃあその哀れなクソガキ共の健やかな回復をお祈りします。これでいいですかー?」 「な……」 あまりにもひどい木原の態度に、木山は言葉を失う。 だが木原は、彼女のそんな様子を一顧だにしないでこう告げた。 「大体、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) 』の代わりに1万人のガキ共を利用しようと考えた木山ちゃんが、俺を責めるってどーなのよ」 「……それは!」 「可愛い教え子のためならぁ? 無関係な人間を巻き込んでもぉ? 全然構いませんってかぁ?」 そこまで言うと、木原はその顔に浮かべた笑みの種類を変えた。 楽しげなニヤニヤ笑いから、どこか深く淀んだ得体のしれないソレに。 「――その通りだぜ! 大正解だ木山ちゃんよぉ!」 「……何を、言っている……?」 子供のようにはしゃいだまま、木原は弾んだ声で喝采を送る。 「目的の為なら何だって利用するべきだ。そんな覚悟も出来ねえようじゃ科学者とは言えねえよなぁ!」 「いやー、俺は本気で嬉しいんだぜ、木山ちゃん」 そう言いながら彼が取りだしたのは、特殊な麻酔ガス入りのスプレーだ。 「俺らクズへの仲間入り、心からオ・メ・デ・ト・ウ」 「!」 ブシュー、と木山の顔に直撃したガスは、一瞬で彼女の意識を奪い取った。 何一つ抵抗できないままぐったりと倒れた彼女を見て、木原はスッと無表情になる。 「よし、さっさと連れてくぞ」 その声に応えたのは、彼の部下である『猟犬部隊』の1人だ。 「了解。……木原さんも一緒に待機所へ?」 「ん? いや、俺は後で合流するわ」 「そうですか。では我々は先に帰還します」 部下はそう言うと、あっさりと拘置所の牢を開けて木山を運び出した。 その光景を見ていた木原が退屈そうに漏らした、独り言に気付くことなく。 「――ようこそ黒く染まったシンデレラ。カボチャの馬車へご招待、てか?」 ましてや、木山が気絶した時に落としたロケットになど目もくれず。 唯一気付いた木原は、それを一瞥すると遠慮なく踏み砕いた。 「まあ、行先は素敵なお城じゃなくて地獄なんだけどな」 『猟犬部隊』のとあるアジト 木山春生が目を覚ましたのは、誰かに頭を小突かれたからだ。 「ちょっと、いい加減起きなさいよ」 「……ここは……?」 床に寝かされていたらしく、体の節々が痛む。 それを我慢してゆっくり起き上ると、目の前にいた2人の女性の片方が溜息をついた。 「珍しく木原さん直々にスカウトしたっていうから、どんな人間かと思えば……てんで使えそうにないんだけど?」 「状況の把握も出来ていない相手に、それは酷よナンシー」 「それ止めて。何がナンシーよ、馬鹿みたい」 「そう? 互いを呼びあえる名前は、こんな私達にとって貴重だと思うけど」 「はいはい。本当ヴェーラは変わってるわ」 (……) どうやら性格のきつそうな黒い短髪の女性がナンシーで、明るく人懐っこいセミロングの茶髪がヴェーラらしい。 たが、どうみても2人は日本人に見える。 「ここはどこだ? それに、君達は日本人ではないのか?」 「はぁ?」 木山の疑問に、ナンシーがとても嫌そうな顔をして首を振った。 「どう見ても日本人に決まってるでしょ。だから嫌なのよコレ」 「?」 頭が疑問符だらけの木山に、ヴェーラが端的に回答する。 「気にしないで。ナンシーとかヴェーラっていうのは、コードネームなの。私達はとっくに名前を失ったから」 「コードネーム、だと……?」 「あんた、木原さんから何にも説明受けてない訳?」 ナンシーのその言葉を聞いて、ようやく木山は自分が意識を失う前の事を思い出した。 (そうだ。私は木原数多によって、あの特別拘置所から連れ出された) (……だが何のために?) (確か彼女……ナンシーは、スカウトがどうとか) (スカウト……?) (確か、特別な境遇にある犯罪者は学園都市の暗部へ送られると聞いた事がある) (まさかこの私が、暗部落ちとは……) 「人の話を聞いてる?」 「!」 自分の状況を分析していた木山に、ナンシーが怒りを露わにして詰め寄った。 「質問ぐらい答えろっての。説明は受けたの?受けてないの?」 「あ、ああ、聞いてない」 ますます不機嫌になったナンシーは、チッと舌打ちしてそっぽを向いた。 代わりにヴェーラが、おどおどする木山に優しく説明する。 「詳しくは後で木原さんから聞けるでしょうから、簡単に言うけど」 「ここは『猟犬部隊』のアジト。私もナンシーもその一員。リーダーは木原さん」 「『猟犬部隊』……か。本物を見るのは初めてだ」 「おめでとー。ついでにここにいるのは、男女問わず軽蔑に値するクズばかりだから気負わなくていいわよ」 ヴェーラの冗談(ではないのだが)に、木山は力なく口元を歪めた。 その雰囲気が気に食わなかったのか、ナンシーが再び話しかけてくる。 「あんた人事みたいだけど、自分も今日からその仲間入りって言うのは分かってんの?」 「まあ、それぐらいは。拒否権は無いのだろう?」 「またしても大正解だぜ、木山ちゃん」 いつから話を聞いていたのか、タイミング良く会話を遮って木原がアジトに入ってきた。 特別拘置所で見たときと違って、両手にマイクロマニピュレータと呼ばれる金属製の精密作業用グローブを付けている。 「……念のため聞くが、私が黙って貴様の言う通りにするとでも?」 「分かってるくせに、そういう無駄なハナシは止めようぜ」 木原が取りだしたのは、木山のかつての教え子の写真。 「人質ぐらいは用意してるって、想像付いてたんだろ?」 「……クッ」 悔しそうに歯を食いしばる彼女の姿を見て、木原は交渉は終わったと判断したらしい。 写真を無造作に放り捨てると、すぐに本題を話し始めた。 「汚れ仕事を引き受ける『猟犬部隊』にようこそ。今日からしっかり働いてもらうぜ」 「……私はただの科学者だ。銃に触れたことも無い私に、戦いなんて無理だと思わなかったかね?」 「言ってくれるなあ木山ちゃん。『幻想御手』を使って大暴れしてたのはどこの誰よ?」 「だが、すでに『幻想御手』のネットワークは存在しない……」 「じゃあ、“また”作るか。ぎゃはははは! 今度は1万人と言わず100万人ぐらいに聞かせんのはどーよ!」 「何を馬鹿な!」 出来るはずが無い。 データは全て消去したし、一度事件を経験した学生が怪しい音楽ファイルに2度も引っかかるとは思えない。 (そもそもそれだけ大勢の人間に、短時間で特定の音楽を聞かせるなど不可能だ) 頭ではそう分かっているのだが。 目の前の男は、どれだけ突拍子もない事でも、実現させてしまいそうな雰囲気を持っている。 だが、木山の警戒を彼はあっさり否定した。 「冗談だって。そもそも木山ちゃんを戦闘要員で補充した訳じゃねーし」 「では、何のために彼女をスカウトしたのです?」 予想外の言葉に、ナンシーが首を傾げた。 ヴェーラも意外そうな顔で木原を見つめる。 「これは、他の連中が集合してから説明するつもりだったんだけどなぁ」 いつになく機嫌の好さそうなリーダーに、部下の2人はむしろ恐怖を感じるが。 木原はその怯えを感じ取った上で、逃がさないように1歩近づいた。 「これから『猟犬部隊』の戦う相手は大きく変わる。――『魔術』って知ってるかオイ?」 木原数多率いる『猟犬部隊』が魔術と交差するとき、物語は始まる――!
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【種別】 区分 【初出】 十五巻 【解説】 学園都市の中で一番治安が悪い学区。 配送業者がわざわざこの学区を迂回して目的地に向かうという逸話すらある。 その影響で土地が最も安く、『他の学区では敬遠される』様々な施設が凝縮されている。 学園都市で唯一の墓地が存在し、他にも少年院や実験動物の処分場、 大きな土地を必要とする研究施設や、原子力関連の施設も多数存在する。 過去に一方通行が在籍していた、 特例能力者多重調整技術研究所もこの学区に存在していた(現在は廃墟)。 また、エリアGは『ストレンジ』と呼ばれるスラムのような地域になっており、スキルアウトの根城になっている。 他、隠れた名所として、屋台尖塔という立体駐車場を利用した屋台の密集地帯が存在する。 集まる人間も髪を染めたりスキンヘッドにするなど当たり前、 傷痕やタトゥーが眼鏡やコンタクトレンズ感覚で普及するような場所ではあるが、 不良の鉄則(笑)に従う人物も多いようで、 「ちびっこと雨の日の捨て猫には優しくしなければならないのだ!!」 を実践し、迷子や子供に対しては自発的にボディーガードを買って出たりと意外に優しい。 【備考】 ・重福省帆が使用した特殊なインクは、この学区の大学で作成されたらしい。 ・エツァリとショチトル、結標淡希と手塩恵未の対決が行われた少年院が存在。 ・十メートル超の大蛇がいる験獣施設がある。
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【種別】 区分 【初出】 とある魔術の禁書目録ノ全テ 【解説】 スポーツ工学系の学校が集まる学区。 学園都市内のみのスポーツ協会などもここに本部を置く。 教育においても、授業での成績よりも、部活での地位が優先されている。