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EQ2用ルートカードの一覧。 http //legendsofnorrath.station.sony.com/rewards.vm?category=eq2 section=ethernauts (ブラウザの言語を英語にしていないと見れないかもしれません・・・注意っ!) EQ2用Loot CardExpポーション類 Draught of Second Chances… 対象を蘇生するポーション。使用アイテム Unstable Void Tunnel…いわゆるEvac。10回使い切り。 Void Portal… いわゆるCall of Tinkerer。回数無制限。 Bot Made Iced Cream Cart…皆大好きアイスクリーム屋台を召還だ。 変身アイテム Djinn Master s Consort…女性版ジンに変身。攻撃モーションも死亡もジン。 Tailor s Trainer…マネキンに変身。 クローク Asharae s Cloak… Bayle s Cloak… Illisia s Cloak… 乗り物 A Dark Farstride Unicorn Whistle…黒ゆにこ。メレー職向き。 A Pale Farstride Unicorn Whistle…白ゆにこ。呪文職向き。 家具 Tempest in a Teacup… Box of Utterly Classless Hats…サブクラス専用帽子(本職と色が違います)から1つだけ好きなものを選べる。 Painting Asharae… レントステータス軽減300 Painting Bayle… レントステータス軽減300 Painting Illisia… レントステータス軽減300 A Tinkered Sweeperbot… Legends Painting Volume 2… 部屋に置ける画集。Oathbreakerのものとは色違い。装備品 Pauldron of the Odyssey…ごっつい肩当。肩装備なのでローブとは競合してしまう。 Vision of the Void…目玉が黒く燃える。眉毛とか言う子はKY。 その他 Title Herald of the Ethernauts…称号がつけられます。 Legends 5 Bedroom Home… Qeynos/Freeportに、購入費/維持費0の屋敷が借りられる ※入口はどちらもメイジギルド内、間取り等は通常の屋敷と同じPromotionalなもの(通常のパックには含まれません) Void Beast (5EQIIP1) Painting Mayong Mistmore (5EQIIP2)→2008/10/22 Nights of the Dead でもらえまーす Painting Taking Flight (5EQIIP3)→EverQuest II 5番目の拡張「 The Shadow Odyssey 」Pre-Order 購入特典として配布されまーす。Sultan s Fancy (5EQIIP4)Marble Defender (5EQIIP5) Personal Theme Music Drafling Tower (5EQIIP6) Draught of Vitality(5EQIIP7) Wand of Forgiveness(5EQIIP8) Legendary Display Case(5EQIIP9) Painting The War Scout(5EQIIP10) Personal Theme Music Cazic Thule(5EQIIP11) Vision of Fury (5EQIIP12) Tapestry of the Di Zok (5EQIIP13)
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※人間がゆっくりに負ける描写を含んでいます。by管理人 どこまでも高い空は、眼にしみるような青に傾き始めた陽の橙を含ませて頭上にあった。男は両腕を天に上げ、大きく伸びをした。 午前のうちに畑仕事も含めた家事を済ませてしまったので、軽い昼寝を取ったのだが、目が覚めたら子供が家の中にいなかったので、外に出てみたのだった。 家から離れる時には必ず一声掛けるように言ってある。尻叩きの恐怖を乗り越えられるほどの反抗期には達してないから、恐らくは家周りの畑にいるに違いない。 多分虫の観察でもしているのだろう。死んでしまった妻に似て、好奇心が旺盛な息子だった。 「おーい、ぼぉずぅー」 天高く声を上げると、間をおいて「とぉちゃーん」と声が家の裏から聞こえてくる。案の定、だった。 くだんの場所に近づいていくと、子供とは別の声が混じってきた。小さくせわしない声が複数。何かを叫んでいるようだ。 裏の畑には茄子が生えている。去年はキャベツを植えた場所だ。なかなか良い生育を見せ、秋茄子も豊かに実っていた。 二ヶ月前に剪定したとはいえ、それなり背丈を林立させた茄子の間に、隠れるようにしゃがんでいる子供。可愛らしい背中が丸まっている。小さな声の群れは、その足下から飛び上がっていた。 「何やってる?」 のぞき込んでみると、小さなゆっくりが三匹。レイム種だ。 「いだいよぉおおおお!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおお!!」 「やべでぇえええぇえええ!!」 三者三様に定型文の悲鳴を上げている。 「えへへ~」 子供は得意げに父親を見上げてくる。男もにっこりと笑って応える。 「捕まえたのか」 「うん! えっとね、畑でね、荒らしてたからね、取ったの!」 横に眼を移すと、なるほど、朝の収穫を免れた小ぶりの茄子が食い散らかされている。ついでにもう一匹の子ゆっくりらしきものも散らかっている。 お手柄だなと、男は子供の頭を撫でた。子供は嬉しそうに歯を見せて、子ゆっくりを再びいたぶりに掛かる。 「「「びぎゃああああああ!!」」」 無邪気な笑顔を向けられて、子ゆっくりは絶望の三重奏を弾き始めた。当然だろう、今までされたこと、そしてこれからされることを思えば。 これからのことは簡単に推測できる。傍に未来の姿があるからだ。 先ほど「子ゆっくり『らしき』」と表現したのは、それが原型を判断しにくいほどにバラバラだったからである。 かなり念入りにちぎったようだ。泥に混じったあんこにくっついているものが赤いリボンの破片であると、かろうじて推定できる程度に。 恐らくは少しずつ少しずつ、端っこからむしっていったのだろう。叫び声が高くなりつつ、そしてある時点から弱くなりつつあるのを聞きながら。 目の前の惨劇に、他の子ゆっくりは逃げだそうとしただろう。しかし、できなかった。恐らく底面部をえぐられているからだ。 現に今も身体をおこりのように震わせるばかりで、寸分も移動していない。そして、お漏らしと思わしき液体と共に、接地面から餡が少量流れている。 ゆっくりのいたぶり方を心得ている我が子に、男は一種誇らしげになる。足に当たる部分を焼いたり、指でえぐったりして逃げないようにしておけば、安心して虐待を楽しめる。 「えいっ、えいっ」 「ゆ、ぎゃ、やべぶっ、ぷぎゅっ!!」 今、子供は子ゆっくりにデコピンをしている。何度も、執拗に。 たかが指の一撃一撃に過ぎないが、生まれたばかりの薄い皮にとっては、ハンマーに殴られることに等しい。 内部に対するダメージも相当だろうが、身体のところどころが欠けている。衝撃に耐えきれず、削りとられてしまったのだろう。 「もうやべでぇえええええ!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおおおお!!」 徐々に欠損し、死に近づいていく姉だか妹だかを見て、叫ぶ他の二匹。その姿もやはり虫食いだらけになっている。(漫画のチーズみたいだna)と男は思う。(あ、眼が飛んだ) 「れ、れいぶのおべべがああぁあああ!!」 「べいぶぅううううう!!!」 「やべでええええぇえ、ゆっぐりやべでぇええ!!」 ちっぽけな身体でよくもここまで、と思えるほどの声を上げて子ゆっくりは叫ぶ。空気の震えが男の脊髄にまで届き、快感を生んだ。 子供は片目を失ったゆっくりに対して、その手を止めない。得た快感をさらに得るためだ。たわめられた指は、もう片方の眼に標的を移す。 「っゆ、ゆっくりやめっ、ゆっくりやめてね!!」 目の前に指を接近させられて、ぶるぶる身体を震わせて懇願するが、かえって子供の嗜虐心を高めさせることに気づかない。 「ゆっくりやめっぎがぁああああぁああ!!!?!」 黒く輝いた豆粒のような眼は、黒々とした餡の穴に変わった。そのゆっくりに映る世界も、永遠に黒一色となることが決定した。 とはいえ、苦悶が長く続くことはないだろう。陽が落ちる前に、その命は落日する。ゆっくりと、徐々に削り殺されて。 子供が今度は言葉を奪おうと、口に向かって指を向けた時だった。 「ゆっぐがあああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」 ものすごい剣幕の声が少し離れたところから飛び出してきた。茄子の枝々が激しく揺れ、地面から土埃が起こる。その現象が子供の方へ怒濤の勢いで迫っていた。緑の葉の間から、紅白のリボンが覗く 成体サイズのゆっくりだった。 レイム種。ほぼ間違いなく子ゆっくり達の親だろう。 「ゆっぐりじねぇえぇええええっ!!」 眼を血走らせ、歯をむき出しにして子供に飛びかかった。子供はその鬼人の形相にすくんでしまい、動けない。親ゆっくりの歯が子供の顔をとらえる、 「ぐぶぎゃぁああああああぁあああああ!!!」 その前に男の足が間に合った。 間一髪、飛び込んだ男の蹴りが、親ゆっくりを吹っ飛ばし、その方向にある茄子の茎を複数なぎ倒した。 男はつかつかとそちらに歩いていく。 「ぐっ、がっ、ゆぎぎッ」 土にまみれた汚らしい饅頭は痛みで痙攣している。動くことはできないだろう。だが、殺意のこもる視線は男に向かっていた。怒りで真っ赤になった眼だった。 男も同じ眼をしていた。 後ろで親ゆっくりを呼び、案じる子ゆっくりの悲鳴が聞こえるが、委細構わず男はそれをつかみ、高く掲げる。 「ぅおらっ!」 そして地面に叩きつけた。 再び上がる絶叫。バックグラウンドで起こる子ゆっくりの三重奏も、一段大きくなる。 餡を口や鼻から漏らし、意識ももうろうとなって視線を向けることも叶わなくなったそれを男は拾い上げた。 「とうちゃん」 子供が涙ぐんで駆け寄ってきた。男は空いている方の手で頭を撫でてやる。 「ケガないか」 子供はコクコクと頷いた。段々と戻ってくる笑みを見て、男は安堵する。 亡き妻の忘れ形見である一人息子。万が一何かがあっては、あの世で顔向けできない。命に代えても守らなくてはいけないと考えていた。それを傷つけようとしたこのゆっくりは万死に値する。 次に男は、子ゆっくりの元へ歩む。腰を屈め、顔を近づける。 二匹の子ゆっくりが漏らすような悲鳴を出し、震え上がる。盲目となった子ゆっくりは、姉妹の様子から恐怖が近づいたことを知って、それに倣う。 「お前らのもう一匹の親はどこだ?」 言葉を掛けたものの、細かい振動を見せるばかりで何も答えない。口を開けたまま、あるいは閉じたまま、ガタガタしている。 男は苛立ちのこもるため息をつき、手に持ったモノを見せて言う。 「殺すぞ」 あまりにも簡素な台詞であり、だからこそ真意を明確に示していた。 子ゆっくりは、自分たちの親の命がこの返答に掛かっていることを理解した。いやが応でも。それで、無理矢理に言葉を外に押し出した。 「い、いがひ、いないっ」 「おとうざん、もう゛っ」 「ずっと、まえにっ」 しばらく要領を得なかったが、やがて得たい回答は得ることができた。父親にあたる親ゆっくりは、既に何かしらあって死んでしまっているらしい。 (ということは、こいつらも片親か) 幼くして親と死別する悲しさを、自分の子供は味わった。そして喪失感はずっと付いて回ったろう。男手一つで必死で育ててきたが、それでも子供には少なくない負担を掛けたに違いない。 男は顔を子供へ向けた。「坊主」 「なぁに、とうちゃん」 「こいつら、ちゃんと殺しとけ」 三匹の子ゆっくりが沈黙と共に青ざめる。瞬間、ワッと広がるような絶叫を上げた。 「どぼぢでぇえぇええええ!!」 「だずげでよぉおおおお!!」 「いやだぁぁああああああぁ!!」 涙とよだれと餡をまき散らしながら無様にわめき散らす糞饅頭を一べつし、男はきびすを返して家に向かう。子供は父親の言葉に素直に頷き、嬉しそうに虐待、あるいは虐殺に掛かった。 ――大事な息子を危険にさらしたクズどもに生きる資格はない。同じ境遇? ふざけるな、何も理解できねえくせに。お前らにできるのは、せいぜい息子の遊び道具になることだ。 ゆっくりがこの辺りの民家、畑を荒らしたという事例は今年に限ってほとんど聞いていない。親ゆっくりは手に持ったコレしかいないということだし、子供が襲われることはもうないだろう。 だから、こっちはこっちで安心して、たまった鬱憤を晴らさせてもらおう。 そうして、扉のノブに手を掛けたときだった。 「ひと思いに殺してやったらどうだ?」 唐突だった。反射的に振り返るも、誰の姿もない。 「誰だ」 返事はなかった。 「あァ、誰だよ? 俺がどうするか俺の勝手だろ」 やはり返事はなかった。 代わりに、たすげ、たずげで…と手の中の饅頭がうめき声を発し始めたので、口に拳を叩き込むと、ぐばひゃと声を出して、それ以降は意味ある言葉を発しなくなった。苦悶のうめきが相変わらずうざかったが。 「勝手か。確かにな」 再び声が掛けられる。若い男の声だった。いや、中年の女性の声にも聞こえる。相変わらず姿は見えない。 「しかし、どんな大義名分がある?」 「だから誰だよ! 饅頭相手にンなもんイラネーだろ!」 付近にそれといった障害物はない。家の周りにいるのかと裏に回ったが、やはり誰もいない。 「おい! どこだッ!」 返事は無かった。そして、それっきり、もう何もなかった。 父親の怒声に、しゃがんでいた子供が立ち上がって、丸くなった眼を向けている。それに対して引きつった笑顔で手を振ると、男は悶え苦しむ饅頭に拳を数発叩き込んでから、再び家の中に入った。 多分どこかの偽善者だろう。聞き覚えのない声だったから、よそ者がたまたま見かけて野次を飛ばしたとか、そんなのに違いない。所詮、隠れて陰からしか物も言えない小心者だ。放っておけばいい。 余計なストレスを投げつけられたが、さっさとまとめて発散してしまおう。 男は、テーブルに親ゆっくりを打ち遣ると、とりあえず釘と金槌を持ち出した。 数時間後。 部屋の中で満足の吐息が一つつかれた。 テーブルには、奇怪なオブジェ、あるいはただの生ゴミとも言えるものが存在していた。 放射状に伸ばされた皮が釘で打ち止められている。性器に当たる部分はえぐられ、代わりにくり抜かれた眼球が押し込められている。残された眼、その周りを囲むように、はずされたリボンが無理矢理皮に穴を開けて縫いつけられ、餡にまみれたぶざまな華を咲かせている。頭部には無造作に抜かれた髪の毛が、いびつに苗を植えた水田のように荒れ果てた様相を呈してる。そして、舌と口内には、色とりどりの待ち針が所狭しと生やされていた。 それでもしゃべることはできるし、片目自体も傷ついてはいない。自分の惨状を認識させ、様々な絶叫を上げさせるためには当然の処置だった。 砂糖水を掛けながら適度な再生を促し、死ぬか死なないかの間際を見極め、虐待の至福を長く味わう技術。どうやらなまってはいないようだった。……やや力を入れすぎてしまった感は否めないが。 ここしばらく人里に現れるゆっくりはいなかったので、知らず知らずのうちにフラストレーションがたまっていたのかもしれない。 飛び散った餡がテーブル一面に汚らしくこびりついている。これからこの上で夕食を取ることを考えると、もうそろそろケリをつけて綺麗にしておかないといけないだろう。 男は勿体をつけて金槌を振り上げた。瀕死の親ゆっくりにも見えるよう緩慢に。そして、とどめの一撃を振り下ろそうとした。 「失礼」 ぎょっとして、身体が硬直する。声の方向へ動く眼球が、さび付いた装置のようにきしみをあげる感触を生じさせた。 差し込む夕日で真っ赤になった窓辺。そこにぽっかりと黒い穴が空いていた。 丸いシルエット。……生き物? まさか。 「ゆっくり……?!」 「お察しの通り」 球体の身体。人語を発する人面。確かにゆっくりの特徴を備えている。 だがその姿は異様だった。 黒いと感じたのは夕日を背にしていたからではなかった。目が慣れてきてわかったが、身体そのものが墨汁をぶちまけたように真っ黒だった。 頭髪も同様に墨一色であり、ところどころからブラシ状の先端が突出していた。害虫であるイラムシの棘を連想させる。 そして片目だった。右目だけが開けられて、真っ直ぐこちらを見ている。左目側は長く伸ばされた髪が垂れており、恐らくは不自由なそれを隠しているのだろう。 見たことがないゆっくりだった。稀少種だろうか。いや、畸形? 「ずいぶん手間をかけたもんだ」 テーブルに眼をやり、何の感慨もなくその黒いゆっくりは言った。 「害獣を処分するならすぐ殺せばいい。人間への恐怖を刷り込ませるなら、生かして返すべきだ。そのどちらでもないのはなぜだ?」 「はっ、単なるストレス解消だよ。まさか饅頭風情が説教か?」 自称正義派のような物言いも神経を逆撫でたが、同族が死に瀕しているというのに平静な態度を取っていることが男の苛立ちをさらに増加させる。 「誰に言われようと事実は変わらないな。なるほど、自分の卑小さを紛らすために命を弄んでいるわけだ」 「お前は何なんだ? 不法侵入だろうが」 「一応大義名分はあるんだ、三つほど」 大義名分という言葉で、記憶がよみがえり、そして理解した。 「てめえだったのか」 家に入る際に掛けられた声。改めて思い返してみると確かに声色も同じものだ。 「人様にちょっかい掛けてただで済むと思ってんじゃねえよな」 金槌を握り直してすごむ。こいつは何か上から下にものを見ている気がする。ゆっくりのくせにだ。見ているだけで気分が悪い。 「一つ、無意味に虐待死された同族に対する復讐」 チラリと窓の外を見遣り、まるで動じないまま、黒ゆっくりは論弁を続ける。 「まあ、でもこれはどうでもいいんだ。こちらの群れのきまりでは、人間の領域に立ち入った者は何があっても関知しないことになってるのでね。要は付け合わせの理由さ。お前さんよりマシって程度の」 「お前、こいつらのリーダーか」 「とりあえずは」 「群れの仲間に冷たすぎるんじゃねえのか、ああ?」 黒ゆっくりが無い肩をすくめたような挙動を取る。男の腹のむかつきがさらに募る。 「二つ、捕食」 「あぁそうかい、それで畑荒らしか、人のもん横取りして盗人猛々しいなぁ!」 「違う違う。ゆっくりが農作物だけを食べるものだと、単純な頭で理解されても困るな。基本ゆっくりは雑食なんだ。人間ほどじゃないがな。で、肉も食う」 肉? 家畜は飼っていない。まさか食料庫の干し肉でも漁ったか!? 疑問を察したように、黒ゆっくりは答えた。 「人肉のことだ」 一瞬理解が遅れた。あまりのことに、それまで自分に占めていた怒の感情が一切吹きさらわれた。感情の空白の後、笑いが込み上げてきた。 「お前が? 俺を食う? はっ、饅頭が? 人間様を? ハハハッハハハハッ!!」 「なかなか美味かったな」 「……ハ?」 美味かった、だと? 「何を言ってる?」 黒ゆっくりは答えず、窓の外に再び眼を遣った。 そうだ、こいつは虐待死の復讐と言った……俺はまだ殺していない。殺したのは…… 「何を、食った」 夕日は落ち、外は暗くなり始めている。この時間になったら、家の中に戻るようにしつけてある。しかし、いない。 「まあ落ち着いてほしいな。お前さんも何か腹に入れたらいい」 「答えろッ!」 まさか、こいつは、まさか。 「牛乳などはどうだ? カルシウムも取れる」 「答えろぉおッ!!」 怒号が喉を張り裂かんばかりに発せられ、窓を響かせる。信じたくない、そんなはずがない、そんなはずがない! 黒ゆっくりは大仰に目を見開いて、何かに気づいた様子を演じる。 「ああ、そうか。怒るのも無理はないな。そう、まだお礼を言ってなかった」 黒いゆっくりは、ゆっくりと、黒く、言った。 「“ごちそうさま”」 視界が真っ赤に染まった。意味の為さない咆吼を吐き出し、男はゆっくりへ飛びかかった。 轟然と響き渡る破壊音。窓ガラスが割れ、窓枠は折れて、辺りに飛び散った。 そして、咀嚼音。飲み込んだその口から、言葉が発せられる。 「三つ、正当防衛。以上が、今回の殺人の大義名分だ」 男は見失った標的が後ろにいることを、ようやく悟った。首を押さえながら振り向く。手の下で、今黒ゆっくりが食べたものが欠損していた。頸動脈を含めた首の肉だった。 「ただのゆっくりでないことは理解できただろうに。どの程度の能力か確認もせずに向かってくるのは、何とも愚かだな。まあ、冷静さを失うように振る舞いはしたが」 湧き出す泉のように、男の手から赤い血潮が漏れていた。止めどなく抜けていく命の本流は、顔色を青ざめさせると共に意識を暗くさせていった。 「な、何なん、だよ、おまえ」 床に倒れ込む直前の、男の最期の言葉に、黒ゆっくりは、 「それは俺も知りたい」 素っ気なく答えた。 鉄さびの臭いが充満する暗闇の中、ただ片目だけが鬼火のように光り、浮かび上がっている。 「で、どうする?」 片目はテーブルに問いを投げる。 「…………」 返事はない。 ガラスが硬いものと軽く触れあう音。そして、水が飛び散る音が広がった。 「少しは回復したかな?」 「……ぉさ」 「もう少し砂糖水が必要か? うん、大丈夫そうだな。で、どうする?」 「……おさ……どうし…て」 「『長、どうして』? 何についての疑問だ? わからないな」 「……ど、うして、たすけ……」 「どうして助けてくれなかったの、か。今更その質問をするようでは、子供が死んでも仕方ないな」 軽く我が子の死を宣告されて、テーブルの上のものがビクリと震えたのが闇に伝わる。 「人間への警戒も群れのおきても十二分に通達したはずだが、お前はそれを子供に教えなかったんだろう。さて、先ほどの質問だが、『どうする?』。 生きたいか? 死にたいか?」 返事はまたもなかった。だが、沈黙こそが反応の気配を生じさせていた。黒ゆっくりは続ける。 「人間の領域に立ち入ったこと自体は罪に問われないし、子供が死んだのも子供の自己責任で片付けられるが……子供を無為に死なせたお前は、群れの中で冷たく見られても仕方ないわけだ。子供を失い、群れから阻害されて生きていく覚悟はあるか? しかもその傷だ、後遺症もありうるな。子供もできず、天涯孤独だ」 どうする? 沈黙が問いかける。 闇。 しばらくして、小さな声。かすれるような、引きつるような。その嗚咽は部屋の中から割れたガラスを通り、静かな夜風に消された。 黒ゆっくりは欠けた月の光を受けて、宙を飛び、屋根の上に乗った。そして、口をわずかに開ける。 遠くで犬の鳴き声が呼応した。しばらくして、呼びかけた本来のものが羽音を響かせて近づいてくる。 丸く、白い、淡い群青の毛髪を持った人面。 一羽、二羽、五羽、十羽と瞬く間に数を増やし、黒ゆっくりの前に集う。 二十数羽のレミリア種のゆっくりだった。人には聞こえない高音域の音波の合図を待って、近くに隠れていたのだ。 群れの長が指示を出す。 「畑と屋内にある『餌』を分割し、運搬しろ。分配は参謀パチュリーに従え。……それから、中にいるレイムには手を付けるな。そのまま死なせてやれ」 サッと夜の闇に散るレミリア種を片目に映し、黒ゆっくりは静かに言葉を置いた。 「なべて世は事も無し」 黒ゆっくり1 続く このSSに感想を付ける
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※人間がゆっくりに負ける描写を含んでいます。by管理人 どこまでも高い空は、眼にしみるような青に傾き始めた陽の橙を含ませて頭上にあった。男は両腕を天に上げ、大きく伸びをした。 午前のうちに畑仕事も含めた家事を済ませてしまったので、軽い昼寝を取ったのだが、目が覚めたら子供が家の中にいなかったので、外に出てみたのだった。 家から離れる時には必ず一声掛けるように言ってある。尻叩きの恐怖を乗り越えられるほどの反抗期には達してないから、恐らくは家周りの畑にいるに違いない。 多分虫の観察でもしているのだろう。死んでしまった妻に似て、好奇心が旺盛な息子だった。 「おーい、ぼぉずぅー」 天高く声を上げると、間をおいて「とぉちゃーん」と声が家の裏から聞こえてくる。案の定、だった。 くだんの場所に近づいていくと、子供とは別の声が混じってきた。小さくせわしない声が複数。何かを叫んでいるようだ。 裏の畑には茄子が生えている。去年はキャベツを植えた場所だ。なかなか良い生育を見せ、秋茄子も豊かに実っていた。 二ヶ月前に剪定したとはいえ、それなり背丈を林立させた茄子の間に、隠れるようにしゃがんでいる子供。可愛らしい背中が丸まっている。小さな声の群れは、その足下から飛び上がっていた。 「何やってる?」 のぞき込んでみると、小さなゆっくりが三匹。レイム種だ。 「いだいよぉおおおお!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおお!!」 「やべでぇえええぇえええ!!」 三者三様に定型文の悲鳴を上げている。 「えへへ~」 子供は得意げに父親を見上げてくる。男もにっこりと笑って応える。 「捕まえたのか」 「うん! えっとね、畑でね、荒らしてたからね、取ったの!」 横に眼を移すと、なるほど、朝の収穫を免れた小ぶりの茄子が食い散らかされている。ついでにもう一匹の子ゆっくりらしきものも散らかっている。 お手柄だなと、男は子供の頭を撫でた。子供は嬉しそうに歯を見せて、子ゆっくりを再びいたぶりに掛かる。 「「「びぎゃああああああ!!」」」 無邪気な笑顔を向けられて、子ゆっくりは絶望の三重奏を弾き始めた。当然だろう、今までされたこと、そしてこれからされることを思えば。 これからのことは簡単に推測できる。傍に未来の姿があるからだ。 先ほど「子ゆっくり『らしき』」と表現したのは、それが原型を判断しにくいほどにバラバラだったからである。 かなり念入りにちぎったようだ。泥に混じったあんこにくっついているものが赤いリボンの破片であると、かろうじて推定できる程度に。 恐らくは少しずつ少しずつ、端っこからむしっていったのだろう。叫び声が高くなりつつ、そしてある時点から弱くなりつつあるのを聞きながら。 目の前の惨劇に、他の子ゆっくりは逃げだそうとしただろう。しかし、できなかった。恐らく底面部をえぐられているからだ。 現に今も身体をおこりのように震わせるばかりで、寸分も移動していない。そして、お漏らしと思わしき液体と共に、接地面から餡が少量流れている。 ゆっくりのいたぶり方を心得ている我が子に、男は一種誇らしげになる。足に当たる部分を焼いたり、指でえぐったりして逃げないようにしておけば、安心して虐待を楽しめる。 「えいっ、えいっ」 「ゆ、ぎゃ、やべぶっ、ぷぎゅっ!!」 今、子供は子ゆっくりにデコピンをしている。何度も、執拗に。 たかが指の一撃一撃に過ぎないが、生まれたばかりの薄い皮にとっては、ハンマーに殴られることに等しい。 内部に対するダメージも相当だろうが、身体のところどころが欠けている。衝撃に耐えきれず、削りとられてしまったのだろう。 「もうやべでぇえええええ!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおおおお!!」 徐々に欠損し、死に近づいていく姉だか妹だかを見て、叫ぶ他の二匹。その姿もやはり虫食いだらけになっている。(漫画のチーズみたいだna)と男は思う。(あ、眼が飛んだ) 「れ、れいぶのおべべがああぁあああ!!」 「べいぶぅううううう!!!」 「やべでええええぇえ、ゆっぐりやべでぇええ!!」 ちっぽけな身体でよくもここまで、と思えるほどの声を上げて子ゆっくりは叫ぶ。空気の震えが男の脊髄にまで届き、快感を生んだ。 子供は片目を失ったゆっくりに対して、その手を止めない。得た快感をさらに得るためだ。たわめられた指は、もう片方の眼に標的を移す。 「っゆ、ゆっくりやめっ、ゆっくりやめてね!!」 目の前に指を接近させられて、ぶるぶる身体を震わせて懇願するが、かえって子供の嗜虐心を高めさせることに気づかない。 「ゆっくりやめっぎがぁああああぁああ!!!?!」 黒く輝いた豆粒のような眼は、黒々とした餡の穴に変わった。そのゆっくりに映る世界も、永遠に黒一色となることが決定した。 とはいえ、苦悶が長く続くことはないだろう。陽が落ちる前に、その命は落日する。ゆっくりと、徐々に削り殺されて。 子供が今度は言葉を奪おうと、口に向かって指を向けた時だった。 「ゆっぐがあああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」 ものすごい剣幕の声が少し離れたところから飛び出してきた。茄子の枝々が激しく揺れ、地面から土埃が起こる。その現象が子供の方へ怒濤の勢いで迫っていた。緑の葉の間から、紅白のリボンが覗く 成体サイズのゆっくりだった。 レイム種。ほぼ間違いなく子ゆっくり達の親だろう。 「ゆっぐりじねぇえぇええええっ!!」 眼を血走らせ、歯をむき出しにして子供に飛びかかった。子供はその鬼人の形相にすくんでしまい、動けない。親ゆっくりの歯が子供の顔をとらえる、 「ぐぶぎゃぁああああああぁあああああ!!!」 その前に男の足が間に合った。 間一髪、飛び込んだ男の蹴りが、親ゆっくりを吹っ飛ばし、その方向にある茄子の茎を複数なぎ倒した。 男はつかつかとそちらに歩いていく。 「ぐっ、がっ、ゆぎぎッ」 土にまみれた汚らしい饅頭は痛みで痙攣している。動くことはできないだろう。だが、殺意のこもる視線は男に向かっていた。怒りで真っ赤になった眼だった。 男も同じ眼をしていた。 後ろで親ゆっくりを呼び、案じる子ゆっくりの悲鳴が聞こえるが、委細構わず男はそれをつかみ、高く掲げる。 「ぅおらっ!」 そして地面に叩きつけた。 再び上がる絶叫。バックグラウンドで起こる子ゆっくりの三重奏も、一段大きくなる。 餡を口や鼻から漏らし、意識ももうろうとなって視線を向けることも叶わなくなったそれを男は拾い上げた。 「とうちゃん」 子供が涙ぐんで駆け寄ってきた。男は空いている方の手で頭を撫でてやる。 「ケガないか」 子供はコクコクと頷いた。段々と戻ってくる笑みを見て、男は安堵する。 亡き妻の忘れ形見である一人息子。万が一何かがあっては、あの世で顔向けできない。命に代えても守らなくてはいけないと考えていた。それを傷つけようとしたこのゆっくりは万死に値する。 次に男は、子ゆっくりの元へ歩む。腰を屈め、顔を近づける。 二匹の子ゆっくりが漏らすような悲鳴を出し、震え上がる。盲目となった子ゆっくりは、姉妹の様子から恐怖が近づいたことを知って、それに倣う。 「お前らのもう一匹の親はどこだ?」 言葉を掛けたものの、細かい振動を見せるばかりで何も答えない。口を開けたまま、あるいは閉じたまま、ガタガタしている。 男は苛立ちのこもるため息をつき、手に持ったモノを見せて言う。 「殺すぞ」 あまりにも簡素な台詞であり、だからこそ真意を明確に示していた。 子ゆっくりは、自分たちの親の命がこの返答に掛かっていることを理解した。いやが応でも。それで、無理矢理に言葉を外に押し出した。 「い、いがひ、いないっ」 「おとうざん、もう゛っ」 「ずっと、まえにっ」 しばらく要領を得なかったが、やがて得たい回答は得ることができた。父親にあたる親ゆっくりは、既に何かしらあって死んでしまっているらしい。 (ということは、こいつらも片親か) 幼くして親と死別する悲しさを、自分の子供は味わった。そして喪失感はずっと付いて回ったろう。男手一つで必死で育ててきたが、それでも子供には少なくない負担を掛けたに違いない。 男は顔を子供へ向けた。「坊主」 「なぁに、とうちゃん」 「こいつら、ちゃんと殺しとけ」 三匹の子ゆっくりが沈黙と共に青ざめる。瞬間、ワッと広がるような絶叫を上げた。 「どぼぢでぇえぇええええ!!」 「だずげでよぉおおおお!!」 「いやだぁぁああああああぁ!!」 涙とよだれと餡をまき散らしながら無様にわめき散らす糞饅頭を一べつし、男はきびすを返して家に向かう。子供は父親の言葉に素直に頷き、嬉しそうに虐待、あるいは虐殺に掛かった。 ――大事な息子を危険にさらしたクズどもに生きる資格はない。同じ境遇? ふざけるな、何も理解できねえくせに。お前らにできるのは、せいぜい息子の遊び道具になることだ。 ゆっくりがこの辺りの民家、畑を荒らしたという事例は今年に限ってほとんど聞いていない。親ゆっくりは手に持ったコレしかいないということだし、子供が襲われることはもうないだろう。 だから、こっちはこっちで安心して、たまった鬱憤を晴らさせてもらおう。 そうして、扉のノブに手を掛けたときだった。 「ひと思いに殺してやったらどうだ?」 唐突だった。反射的に振り返るも、誰の姿もない。 「誰だ」 返事はなかった。 「あァ、誰だよ? 俺がどうするか俺の勝手だろ」 やはり返事はなかった。 代わりに、たすげ、たずげで…と手の中の饅頭がうめき声を発し始めたので、口に拳を叩き込むと、ぐばひゃと声を出して、それ以降は意味ある言葉を発しなくなった。苦悶のうめきが相変わらずうざかったが。 「勝手か。確かにな」 再び声が掛けられる。若い男の声だった。いや、中年の女性の声にも聞こえる。相変わらず姿は見えない。 「しかし、どんな大義名分がある?」 「だから誰だよ! 饅頭相手にンなもんイラネーだろ!」 付近にそれといった障害物はない。家の周りにいるのかと裏に回ったが、やはり誰もいない。 「おい! どこだッ!」 返事は無かった。そして、それっきり、もう何もなかった。 父親の怒声に、しゃがんでいた子供が立ち上がって、丸くなった眼を向けている。それに対して引きつった笑顔で手を振ると、男は悶え苦しむ饅頭に拳を数発叩き込んでから、再び家の中に入った。 多分どこかの偽善者だろう。聞き覚えのない声だったから、よそ者がたまたま見かけて野次を飛ばしたとか、そんなのに違いない。所詮、隠れて陰からしか物も言えない小心者だ。放っておけばいい。 余計なストレスを投げつけられたが、さっさとまとめて発散してしまおう。 男は、テーブルに親ゆっくりを打ち遣ると、とりあえず釘と金槌を持ち出した。 数時間後。 部屋の中で満足の吐息が一つつかれた。 テーブルには、奇怪なオブジェ、あるいはただの生ゴミとも言えるものが存在していた。 放射状に伸ばされた皮が釘で打ち止められている。性器に当たる部分はえぐられ、代わりにくり抜かれた眼球が押し込められている。残された眼、その周りを囲むように、はずされたリボンが無理矢理皮に穴を開けて縫いつけられ、餡にまみれたぶざまな華を咲かせている。頭部には無造作に抜かれた髪の毛が、いびつに苗を植えた水田のように荒れ果てた様相を呈してる。そして、舌と口内には、色とりどりの待ち針が所狭しと生やされていた。 それでもしゃべることはできるし、片目自体も傷ついてはいない。自分の惨状を認識させ、様々な絶叫を上げさせるためには当然の処置だった。 砂糖水を掛けながら適度な再生を促し、死ぬか死なないかの間際を見極め、虐待の至福を長く味わう技術。どうやらなまってはいないようだった。……やや力を入れすぎてしまった感は否めないが。 ここしばらく人里に現れるゆっくりはいなかったので、知らず知らずのうちにフラストレーションがたまっていたのかもしれない。 飛び散った餡がテーブル一面に汚らしくこびりついている。これからこの上で夕食を取ることを考えると、もうそろそろケリをつけて綺麗にしておかないといけないだろう。 男は勿体をつけて金槌を振り上げた。瀕死の親ゆっくりにも見えるよう緩慢に。そして、とどめの一撃を振り下ろそうとした。 「失礼」 ぎょっとして、身体が硬直する。声の方向へ動く眼球が、さび付いた装置のようにきしみをあげる感触を生じさせた。 差し込む夕日で真っ赤になった窓辺。そこにぽっかりと黒い穴が空いていた。 丸いシルエット。……生き物? まさか。 「ゆっくり……?!」 「お察しの通り」 球体の身体。人語を発する人面。確かにゆっくりの特徴を備えている。 だがその姿は異様だった。 黒いと感じたのは夕日を背にしていたからではなかった。目が慣れてきてわかったが、身体そのものが墨汁をぶちまけたように真っ黒だった。 頭髪も同様に墨一色であり、ところどころからブラシ状の先端が突出していた。害虫であるイラムシの棘を連想させる。 そして片目だった。右目だけが開けられて、真っ直ぐこちらを見ている。左目側は長く伸ばされた髪が垂れており、恐らくは不自由なそれを隠しているのだろう。 見たことがないゆっくりだった。稀少種だろうか。いや、畸形? 「ずいぶん手間をかけたもんだ」 テーブルに眼をやり、何の感慨もなくその黒いゆっくりは言った。 「害獣を処分するならすぐ殺せばいい。人間への恐怖を刷り込ませるなら、生かして返すべきだ。そのどちらでもないのはなぜだ?」 「はっ、単なるストレス解消だよ。まさか饅頭風情が説教か?」 自称正義派のような物言いも神経を逆撫でたが、同族が死に瀕しているというのに平静な態度を取っていることが男の苛立ちをさらに増加させる。 「誰に言われようと事実は変わらないな。なるほど、自分の卑小さを紛らすために命を弄んでいるわけだ」 「お前は何なんだ? 不法侵入だろうが」 「一応大義名分はあるんだ、三つほど」 大義名分という言葉で、記憶がよみがえり、そして理解した。 「てめえだったのか」 家に入る際に掛けられた声。改めて思い返してみると確かに声色も同じものだ。 「人様にちょっかい掛けてただで済むと思ってんじゃねえよな」 金槌を握り直してすごむ。こいつは何か上から下にものを見ている気がする。ゆっくりのくせにだ。見ているだけで気分が悪い。 「一つ、無意味に虐待死された同族に対する復讐」 チラリと窓の外を見遣り、まるで動じないまま、黒ゆっくりは論弁を続ける。 「まあ、でもこれはどうでもいいんだ。こちらの群れのきまりでは、人間の領域に立ち入った者は何があっても関知しないことになってるのでね。要は付け合わせの理由さ。お前さんよりマシって程度の」 「お前、こいつらのリーダーか」 「とりあえずは」 「群れの仲間に冷たすぎるんじゃねえのか、ああ?」 黒ゆっくりが無い肩をすくめたような挙動を取る。男の腹のむかつきがさらに募る。 「二つ、捕食」 「あぁそうかい、それで畑荒らしか、人のもん横取りして盗人猛々しいなぁ!」 「違う違う。ゆっくりが農作物だけを食べるものだと、単純な頭で理解されても困るな。基本ゆっくりは雑食なんだ。人間ほどじゃないがな。で、肉も食う」 肉? 家畜は飼っていない。まさか食料庫の干し肉でも漁ったか!? 疑問を察したように、黒ゆっくりは答えた。 「人肉のことだ」 一瞬理解が遅れた。あまりのことに、それまで自分に占めていた怒の感情が一切吹きさらわれた。感情の空白の後、笑いが込み上げてきた。 「お前が? 俺を食う? はっ、饅頭が? 人間様を? ハハハッハハハハッ!!」 「なかなか美味かったな」 「……ハ?」 美味かった、だと? 「何を言ってる?」 黒ゆっくりは答えず、窓の外に再び眼を遣った。 そうだ、こいつは虐待死の復讐と言った……俺はまだ殺していない。殺したのは…… 「何を、食った」 夕日は落ち、外は暗くなり始めている。この時間になったら、家の中に戻るようにしつけてある。しかし、いない。 「まあ落ち着いてほしいな。お前さんも何か腹に入れたらいい」 「答えろッ!」 まさか、こいつは、まさか。 「牛乳などはどうだ? カルシウムも取れる」 「答えろぉおッ!!」 怒号が喉を張り裂かんばかりに発せられ、窓を響かせる。信じたくない、そんなはずがない、そんなはずがない! 黒ゆっくりは大仰に目を見開いて、何かに気づいた様子を演じる。 「ああ、そうか。怒るのも無理はないな。そう、まだお礼を言ってなかった」 黒いゆっくりは、ゆっくりと、黒く、言った。 「“ごちそうさま”」 視界が真っ赤に染まった。意味の為さない咆吼を吐き出し、男はゆっくりへ飛びかかった。 轟然と響き渡る破壊音。窓ガラスが割れ、窓枠は折れて、辺りに飛び散った。 そして、咀嚼音。飲み込んだその口から、言葉が発せられる。 「三つ、正当防衛。以上が、今回の殺人の大義名分だ」 男は見失った標的が後ろにいることを、ようやく悟った。首を押さえながら振り向く。手の下で、今黒ゆっくりが食べたものが欠損していた。頸動脈を含めた首の肉だった。 「ただのゆっくりでないことは理解できただろうに。どの程度の能力か確認もせずに向かってくるのは、何とも愚かだな。まあ、冷静さを失うように振る舞いはしたが」 湧き出す泉のように、男の手から赤い血潮が漏れていた。止めどなく抜けていく命の本流は、顔色を青ざめさせると共に意識を暗くさせていった。 「な、何なん、だよ、おまえ」 床に倒れ込む直前の、男の最期の言葉に、黒ゆっくりは、 「それは俺も知りたい」 素っ気なく答えた。 鉄さびの臭いが充満する暗闇の中、ただ片目だけが鬼火のように光り、浮かび上がっている。 「で、どうする?」 片目はテーブルに問いを投げる。 「…………」 返事はない。 ガラスが硬いものと軽く触れあう音。そして、水が飛び散る音が広がった。 「少しは回復したかな?」 「……ぉさ」 「もう少し砂糖水が必要か? うん、大丈夫そうだな。で、どうする?」 「……おさ……どうし…て」 「『長、どうして』? 何についての疑問だ? わからないな」 「……ど、うして、たすけ……」 「どうして助けてくれなかったの、か。今更その質問をするようでは、子供が死んでも仕方ないな」 軽く我が子の死を宣告されて、テーブルの上のものがビクリと震えたのが闇に伝わる。 「人間への警戒も群れのおきても十二分に通達したはずだが、お前はそれを子供に教えなかったんだろう。さて、先ほどの質問だが、『どうする?』。 生きたいか? 死にたいか?」 返事はまたもなかった。だが、沈黙こそが反応の気配を生じさせていた。黒ゆっくりは続ける。 「人間の領域に立ち入ったこと自体は罪に問われないし、子供が死んだのも子供の自己責任で片付けられるが……子供を無為に死なせたお前は、群れの中で冷たく見られても仕方ないわけだ。子供を失い、群れから阻害されて生きていく覚悟はあるか? しかもその傷だ、後遺症もありうるな。子供もできず、天涯孤独だ」 どうする? 沈黙が問いかける。 闇。 しばらくして、小さな声。かすれるような、引きつるような。その嗚咽は部屋の中から割れたガラスを通り、静かな夜風に消された。 黒ゆっくりは欠けた月の光を受けて、宙を飛び、屋根の上に乗った。そして、口をわずかに開ける。 遠くで犬の鳴き声が呼応した。しばらくして、呼びかけた本来のものが羽音を響かせて近づいてくる。 丸く、白い、淡い群青の毛髪を持った人面。 一羽、二羽、五羽、十羽と瞬く間に数を増やし、黒ゆっくりの前に集う。 二十数羽のレミリア種のゆっくりだった。人には聞こえない高音域の音波の合図を待って、近くに隠れていたのだ。 群れの長が指示を出す。 「畑と屋内にある『餌』を分割し、運搬しろ。分配は参謀パチュリーに従え。……それから、中にいるレイムには手を付けるな。そのまま死なせてやれ」 サッと夜の闇に散るレミリア種を片目に映し、黒ゆっくりは静かに言葉を置いた。 「なべて世は事も無し」 黒ゆっくり1 続く このSSに感想を付ける
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※人間がゆっくりに負ける描写を含んでいます。by管理人 どこまでも高い空は、眼にしみるような青に傾き始めた陽の橙を含ませて頭上にあった。男は両腕を天に上げ、大きく伸びをした。 午前のうちに畑仕事も含めた家事を済ませてしまったので、軽い昼寝を取ったのだが、目が覚めたら子供が家の中にいなかったので、外に出てみたのだった。 家から離れる時には必ず一声掛けるように言ってある。尻叩きの恐怖を乗り越えられるほどの反抗期には達してないから、恐らくは家周りの畑にいるに違いない。 多分虫の観察でもしているのだろう。死んでしまった妻に似て、好奇心が旺盛な息子だった。 「おーい、ぼぉずぅー」 天高く声を上げると、間をおいて「とぉちゃーん」と声が家の裏から聞こえてくる。案の定、だった。 くだんの場所に近づいていくと、子供とは別の声が混じってきた。小さくせわしない声が複数。何かを叫んでいるようだ。 裏の畑には茄子が生えている。去年はキャベツを植えた場所だ。なかなか良い生育を見せ、秋茄子も豊かに実っていた。 二ヶ月前に剪定したとはいえ、それなり背丈を林立させた茄子の間に、隠れるようにしゃがんでいる子供。可愛らしい背中が丸まっている。小さな声の群れは、その足下から飛び上がっていた。 「何やってる?」 のぞき込んでみると、小さなゆっくりが三匹。レイム種だ。 「いだいよぉおおおお!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおお!!」 「やべでぇえええぇえええ!!」 三者三様に定型文の悲鳴を上げている。 「えへへ~」 子供は得意げに父親を見上げてくる。男もにっこりと笑って応える。 「捕まえたのか」 「うん! えっとね、畑でね、荒らしてたからね、取ったの!」 横に眼を移すと、なるほど、朝の収穫を免れた小ぶりの茄子が食い散らかされている。ついでにもう一匹の子ゆっくりらしきものも散らかっている。 お手柄だなと、男は子供の頭を撫でた。子供は嬉しそうに歯を見せて、子ゆっくりを再びいたぶりに掛かる。 「「「びぎゃああああああ!!」」」 無邪気な笑顔を向けられて、子ゆっくりは絶望の三重奏を弾き始めた。当然だろう、今までされたこと、そしてこれからされることを思えば。 これからのことは簡単に推測できる。傍に未来の姿があるからだ。 先ほど「子ゆっくり『らしき』」と表現したのは、それが原型を判断しにくいほどにバラバラだったからである。 かなり念入りにちぎったようだ。泥に混じったあんこにくっついているものが赤いリボンの破片であると、かろうじて推定できる程度に。 恐らくは少しずつ少しずつ、端っこからむしっていったのだろう。叫び声が高くなりつつ、そしてある時点から弱くなりつつあるのを聞きながら。 目の前の惨劇に、他の子ゆっくりは逃げだそうとしただろう。しかし、できなかった。恐らく底面部をえぐられているからだ。 現に今も身体をおこりのように震わせるばかりで、寸分も移動していない。そして、お漏らしと思わしき液体と共に、接地面から餡が少量流れている。 ゆっくりのいたぶり方を心得ている我が子に、男は一種誇らしげになる。足に当たる部分を焼いたり、指でえぐったりして逃げないようにしておけば、安心して虐待を楽しめる。 「えいっ、えいっ」 「ゆ、ぎゃ、やべぶっ、ぷぎゅっ!!」 今、子供は子ゆっくりにデコピンをしている。何度も、執拗に。 たかが指の一撃一撃に過ぎないが、生まれたばかりの薄い皮にとっては、ハンマーに殴られることに等しい。 内部に対するダメージも相当だろうが、身体のところどころが欠けている。衝撃に耐えきれず、削りとられてしまったのだろう。 「もうやべでぇえええええ!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおおおお!!」 徐々に欠損し、死に近づいていく姉だか妹だかを見て、叫ぶ他の二匹。その姿もやはり虫食いだらけになっている。(漫画のチーズみたいだna)と男は思う。(あ、眼が飛んだ) 「れ、れいぶのおべべがああぁあああ!!」 「べいぶぅううううう!!!」 「やべでええええぇえ、ゆっぐりやべでぇええ!!」 ちっぽけな身体でよくもここまで、と思えるほどの声を上げて子ゆっくりは叫ぶ。空気の震えが男の脊髄にまで届き、快感を生んだ。 子供は片目を失ったゆっくりに対して、その手を止めない。得た快感をさらに得るためだ。たわめられた指は、もう片方の眼に標的を移す。 「っゆ、ゆっくりやめっ、ゆっくりやめてね!!」 目の前に指を接近させられて、ぶるぶる身体を震わせて懇願するが、かえって子供の嗜虐心を高めさせることに気づかない。 「ゆっくりやめっぎがぁああああぁああ!!!?!」 黒く輝いた豆粒のような眼は、黒々とした餡の穴に変わった。そのゆっくりに映る世界も、永遠に黒一色となることが決定した。 とはいえ、苦悶が長く続くことはないだろう。陽が落ちる前に、その命は落日する。ゆっくりと、徐々に削り殺されて。 子供が今度は言葉を奪おうと、口に向かって指を向けた時だった。 「ゆっぐがあああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」 ものすごい剣幕の声が少し離れたところから飛び出してきた。茄子の枝々が激しく揺れ、地面から土埃が起こる。その現象が子供の方へ怒濤の勢いで迫っていた。緑の葉の間から、紅白のリボンが覗く 成体サイズのゆっくりだった。 レイム種。ほぼ間違いなく子ゆっくり達の親だろう。 「ゆっぐりじねぇえぇええええっ!!」 眼を血走らせ、歯をむき出しにして子供に飛びかかった。子供はその鬼人の形相にすくんでしまい、動けない。親ゆっくりの歯が子供の顔をとらえる、 「ぐぶぎゃぁああああああぁあああああ!!!」 その前に男の足が間に合った。 間一髪、飛び込んだ男の蹴りが、親ゆっくりを吹っ飛ばし、その方向にある茄子の茎を複数なぎ倒した。 男はつかつかとそちらに歩いていく。 「ぐっ、がっ、ゆぎぎッ」 土にまみれた汚らしい饅頭は痛みで痙攣している。動くことはできないだろう。だが、殺意のこもる視線は男に向かっていた。怒りで真っ赤になった眼だった。 男も同じ眼をしていた。 後ろで親ゆっくりを呼び、案じる子ゆっくりの悲鳴が聞こえるが、委細構わず男はそれをつかみ、高く掲げる。 「ぅおらっ!」 そして地面に叩きつけた。 再び上がる絶叫。バックグラウンドで起こる子ゆっくりの三重奏も、一段大きくなる。 餡を口や鼻から漏らし、意識ももうろうとなって視線を向けることも叶わなくなったそれを男は拾い上げた。 「とうちゃん」 子供が涙ぐんで駆け寄ってきた。男は空いている方の手で頭を撫でてやる。 「ケガないか」 子供はコクコクと頷いた。段々と戻ってくる笑みを見て、男は安堵する。 亡き妻の忘れ形見である一人息子。万が一何かがあっては、あの世で顔向けできない。命に代えても守らなくてはいけないと考えていた。それを傷つけようとしたこのゆっくりは万死に値する。 次に男は、子ゆっくりの元へ歩む。腰を屈め、顔を近づける。 二匹の子ゆっくりが漏らすような悲鳴を出し、震え上がる。盲目となった子ゆっくりは、姉妹の様子から恐怖が近づいたことを知って、それに倣う。 「お前らのもう一匹の親はどこだ?」 言葉を掛けたものの、細かい振動を見せるばかりで何も答えない。口を開けたまま、あるいは閉じたまま、ガタガタしている。 男は苛立ちのこもるため息をつき、手に持ったモノを見せて言う。 「殺すぞ」 あまりにも簡素な台詞であり、だからこそ真意を明確に示していた。 子ゆっくりは、自分たちの親の命がこの返答に掛かっていることを理解した。いやが応でも。それで、無理矢理に言葉を外に押し出した。 「い、いがひ、いないっ」 「おとうざん、もう゛っ」 「ずっと、まえにっ」 しばらく要領を得なかったが、やがて得たい回答は得ることができた。父親にあたる親ゆっくりは、既に何かしらあって死んでしまっているらしい。 (ということは、こいつらも片親か) 幼くして親と死別する悲しさを、自分の子供は味わった。そして喪失感はずっと付いて回ったろう。男手一つで必死で育ててきたが、それでも子供には少なくない負担を掛けたに違いない。 男は顔を子供へ向けた。「坊主」 「なぁに、とうちゃん」 「こいつら、ちゃんと殺しとけ」 三匹の子ゆっくりが沈黙と共に青ざめる。瞬間、ワッと広がるような絶叫を上げた。 「どぼぢでぇえぇええええ!!」 「だずげでよぉおおおお!!」 「いやだぁぁああああああぁ!!」 涙とよだれと餡をまき散らしながら無様にわめき散らす糞饅頭を一べつし、男はきびすを返して家に向かう。子供は父親の言葉に素直に頷き、嬉しそうに虐待、あるいは虐殺に掛かった。 ――大事な息子を危険にさらしたクズどもに生きる資格はない。同じ境遇? ふざけるな、何も理解できねえくせに。お前らにできるのは、せいぜい息子の遊び道具になることだ。 ゆっくりがこの辺りの民家、畑を荒らしたという事例は今年に限ってほとんど聞いていない。親ゆっくりは手に持ったコレしかいないということだし、子供が襲われることはもうないだろう。 だから、こっちはこっちで安心して、たまった鬱憤を晴らさせてもらおう。 そうして、扉のノブに手を掛けたときだった。 「ひと思いに殺してやったらどうだ?」 唐突だった。反射的に振り返るも、誰の姿もない。 「誰だ」 返事はなかった。 「あァ、誰だよ? 俺がどうするか俺の勝手だろ」 やはり返事はなかった。 代わりに、たすげ、たずげで…と手の中の饅頭がうめき声を発し始めたので、口に拳を叩き込むと、ぐばひゃと声を出して、それ以降は意味ある言葉を発しなくなった。苦悶のうめきが相変わらずうざかったが。 「勝手か。確かにな」 再び声が掛けられる。若い男の声だった。いや、中年の女性の声にも聞こえる。相変わらず姿は見えない。 「しかし、どんな大義名分がある?」 「だから誰だよ! 饅頭相手にンなもんイラネーだろ!」 付近にそれといった障害物はない。家の周りにいるのかと裏に回ったが、やはり誰もいない。 「おい! どこだッ!」 返事は無かった。そして、それっきり、もう何もなかった。 父親の怒声に、しゃがんでいた子供が立ち上がって、丸くなった眼を向けている。それに対して引きつった笑顔で手を振ると、男は悶え苦しむ饅頭に拳を数発叩き込んでから、再び家の中に入った。 多分どこかの偽善者だろう。聞き覚えのない声だったから、よそ者がたまたま見かけて野次を飛ばしたとか、そんなのに違いない。所詮、隠れて陰からしか物も言えない小心者だ。放っておけばいい。 余計なストレスを投げつけられたが、さっさとまとめて発散してしまおう。 男は、テーブルに親ゆっくりを打ち遣ると、とりあえず釘と金槌を持ち出した。 数時間後。 部屋の中で満足の吐息が一つつかれた。 テーブルには、奇怪なオブジェ、あるいはただの生ゴミとも言えるものが存在していた。 放射状に伸ばされた皮が釘で打ち止められている。性器に当たる部分はえぐられ、代わりにくり抜かれた眼球が押し込められている。残された眼、その周りを囲むように、はずされたリボンが無理矢理皮に穴を開けて縫いつけられ、餡にまみれたぶざまな華を咲かせている。頭部には無造作に抜かれた髪の毛が、いびつに苗を植えた水田のように荒れ果てた様相を呈してる。そして、舌と口内には、色とりどりの待ち針が所狭しと生やされていた。 それでもしゃべることはできるし、片目自体も傷ついてはいない。自分の惨状を認識させ、様々な絶叫を上げさせるためには当然の処置だった。 砂糖水を掛けながら適度な再生を促し、死ぬか死なないかの間際を見極め、虐待の至福を長く味わう技術。どうやらなまってはいないようだった。……やや力を入れすぎてしまった感は否めないが。 ここしばらく人里に現れるゆっくりはいなかったので、知らず知らずのうちにフラストレーションがたまっていたのかもしれない。 飛び散った餡がテーブル一面に汚らしくこびりついている。これからこの上で夕食を取ることを考えると、もうそろそろケリをつけて綺麗にしておかないといけないだろう。 男は勿体をつけて金槌を振り上げた。瀕死の親ゆっくりにも見えるよう緩慢に。そして、とどめの一撃を振り下ろそうとした。 「失礼」 ぎょっとして、身体が硬直する。声の方向へ動く眼球が、さび付いた装置のようにきしみをあげる感触を生じさせた。 差し込む夕日で真っ赤になった窓辺。そこにぽっかりと黒い穴が空いていた。 丸いシルエット。……生き物? まさか。 「ゆっくり……?!」 「お察しの通り」 球体の身体。人語を発する人面。確かにゆっくりの特徴を備えている。 だがその姿は異様だった。 黒いと感じたのは夕日を背にしていたからではなかった。目が慣れてきてわかったが、身体そのものが墨汁をぶちまけたように真っ黒だった。 頭髪も同様に墨一色であり、ところどころからブラシ状の先端が突出していた。害虫であるイラムシの棘を連想させる。 そして片目だった。右目だけが開けられて、真っ直ぐこちらを見ている。左目側は長く伸ばされた髪が垂れており、恐らくは不自由なそれを隠しているのだろう。 見たことがないゆっくりだった。稀少種だろうか。いや、畸形? 「ずいぶん手間をかけたもんだ」 テーブルに眼をやり、何の感慨もなくその黒いゆっくりは言った。 「害獣を処分するならすぐ殺せばいい。人間への恐怖を刷り込ませるなら、生かして返すべきだ。そのどちらでもないのはなぜだ?」 「はっ、単なるストレス解消だよ。まさか饅頭風情が説教か?」 自称正義派のような物言いも神経を逆撫でたが、同族が死に瀕しているというのに平静な態度を取っていることが男の苛立ちをさらに増加させる。 「誰に言われようと事実は変わらないな。なるほど、自分の卑小さを紛らすために命を弄んでいるわけだ」 「お前は何なんだ? 不法侵入だろうが」 「一応大義名分はあるんだ、三つほど」 大義名分という言葉で、記憶がよみがえり、そして理解した。 「てめえだったのか」 家に入る際に掛けられた声。改めて思い返してみると確かに声色も同じものだ。 「人様にちょっかい掛けてただで済むと思ってんじゃねえよな」 金槌を握り直してすごむ。こいつは何か上から下にものを見ている気がする。ゆっくりのくせにだ。見ているだけで気分が悪い。 「一つ、無意味に虐待死された同族に対する復讐」 チラリと窓の外を見遣り、まるで動じないまま、黒ゆっくりは論弁を続ける。 「まあ、でもこれはどうでもいいんだ。こちらの群れのきまりでは、人間の領域に立ち入った者は何があっても関知しないことになってるのでね。要は付け合わせの理由さ。お前さんよりマシって程度の」 「お前、こいつらのリーダーか」 「とりあえずは」 「群れの仲間に冷たすぎるんじゃねえのか、ああ?」 黒ゆっくりが無い肩をすくめたような挙動を取る。男の腹のむかつきがさらに募る。 「二つ、捕食」 「あぁそうかい、それで畑荒らしか、人のもん横取りして盗人猛々しいなぁ!」 「違う違う。ゆっくりが農作物だけを食べるものだと、単純な頭で理解されても困るな。基本ゆっくりは雑食なんだ。人間ほどじゃないがな。で、肉も食う」 肉? 家畜は飼っていない。まさか食料庫の干し肉でも漁ったか!? 疑問を察したように、黒ゆっくりは答えた。 「人肉のことだ」 一瞬理解が遅れた。あまりのことに、それまで自分に占めていた怒の感情が一切吹きさらわれた。感情の空白の後、笑いが込み上げてきた。 「お前が? 俺を食う? はっ、饅頭が? 人間様を? ハハハッハハハハッ!!」 「なかなか美味かったな」 「……ハ?」 美味かった、だと? 「何を言ってる?」 黒ゆっくりは答えず、窓の外に再び眼を遣った。 そうだ、こいつは虐待死の復讐と言った……俺はまだ殺していない。殺したのは…… 「何を、食った」 夕日は落ち、外は暗くなり始めている。この時間になったら、家の中に戻るようにしつけてある。しかし、いない。 「まあ落ち着いてほしいな。お前さんも何か腹に入れたらいい」 「答えろッ!」 まさか、こいつは、まさか。 「牛乳などはどうだ? カルシウムも取れる」 「答えろぉおッ!!」 怒号が喉を張り裂かんばかりに発せられ、窓を響かせる。信じたくない、そんなはずがない、そんなはずがない! 黒ゆっくりは大仰に目を見開いて、何かに気づいた様子を演じる。 「ああ、そうか。怒るのも無理はないな。そう、まだお礼を言ってなかった」 黒いゆっくりは、ゆっくりと、黒く、言った。 「“ごちそうさま”」 視界が真っ赤に染まった。意味の為さない咆吼を吐き出し、男はゆっくりへ飛びかかった。 轟然と響き渡る破壊音。窓ガラスが割れ、窓枠は折れて、辺りに飛び散った。 そして、咀嚼音。飲み込んだその口から、言葉が発せられる。 「三つ、正当防衛。以上が、今回の殺人の大義名分だ」 男は見失った標的が後ろにいることを、ようやく悟った。首を押さえながら振り向く。手の下で、今黒ゆっくりが食べたものが欠損していた。頸動脈を含めた首の肉だった。 「ただのゆっくりでないことは理解できただろうに。どの程度の能力か確認もせずに向かってくるのは、何とも愚かだな。まあ、冷静さを失うように振る舞いはしたが」 湧き出す泉のように、男の手から赤い血潮が漏れていた。止めどなく抜けていく命の本流は、顔色を青ざめさせると共に意識を暗くさせていった。 「な、何なん、だよ、おまえ」 床に倒れ込む直前の、男の最期の言葉に、黒ゆっくりは、 「それは俺も知りたい」 素っ気なく答えた。 鉄さびの臭いが充満する暗闇の中、ただ片目だけが鬼火のように光り、浮かび上がっている。 「で、どうする?」 片目はテーブルに問いを投げる。 「…………」 返事はない。 ガラスが硬いものと軽く触れあう音。そして、水が飛び散る音が広がった。 「少しは回復したかな?」 「……ぉさ」 「もう少し砂糖水が必要か? うん、大丈夫そうだな。で、どうする?」 「……おさ……どうし…て」 「『長、どうして』? 何についての疑問だ? わからないな」 「……ど、うして、たすけ……」 「どうして助けてくれなかったの、か。今更その質問をするようでは、子供が死んでも仕方ないな」 軽く我が子の死を宣告されて、テーブルの上のものがビクリと震えたのが闇に伝わる。 「人間への警戒も群れのおきても十二分に通達したはずだが、お前はそれを子供に教えなかったんだろう。さて、先ほどの質問だが、『どうする?』。 生きたいか? 死にたいか?」 返事はまたもなかった。だが、沈黙こそが反応の気配を生じさせていた。黒ゆっくりは続ける。 「人間の領域に立ち入ったこと自体は罪に問われないし、子供が死んだのも子供の自己責任で片付けられるが……子供を無為に死なせたお前は、群れの中で冷たく見られても仕方ないわけだ。子供を失い、群れから阻害されて生きていく覚悟はあるか? しかもその傷だ、後遺症もありうるな。子供もできず、天涯孤独だ」 どうする? 沈黙が問いかける。 闇。 しばらくして、小さな声。かすれるような、引きつるような。その嗚咽は部屋の中から割れたガラスを通り、静かな夜風に消された。 黒ゆっくりは欠けた月の光を受けて、宙を飛び、屋根の上に乗った。そして、口をわずかに開ける。 遠くで犬の鳴き声が呼応した。しばらくして、呼びかけた本来のものが羽音を響かせて近づいてくる。 丸く、白い、淡い群青の毛髪を持った人面。 一羽、二羽、五羽、十羽と瞬く間に数を増やし、黒ゆっくりの前に集う。 二十数羽のレミリア種のゆっくりだった。人には聞こえない高音域の音波の合図を待って、近くに隠れていたのだ。 群れの長が指示を出す。 「畑と屋内にある『餌』を分割し、運搬しろ。分配は参謀パチュリーに従え。……それから、中にいるレイムには手を付けるな。そのまま死なせてやれ」 サッと夜の闇に散るレミリア種を片目に映し、黒ゆっくりは静かに言葉を置いた。 「なべて世は事も無し」 黒ゆっくり1 続く? このSSに感想を付ける
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おつっきり~! ところでありすに「今都会では田舎ブームなんだぜ」って教えたらどんな反応するんだろうか? -- 2008-10-26 15 59 30 しゅっきり……。 -- 2008-10-26 15 59 45 乙んこ -- 2008-10-26 16 00 10 いなかってなに? とかいはの ありす にもわかるようにせつめいしてよ! -- 2008-10-26 16 00 27 都会派の田舎くさいゆっくりになろうとして餡子が処理限界を超えて死ぬんじゃないか? -- 2008-10-26 16 00 36 2008-10-26 15 58 02 今読んでるんだが確かにそうだった。 しかし生きてる人間を信仰の対象にするのはカルト宗教の第一歩だぜゆっくりさんよ -- 2008-10-26 16 02 03 乙だねーわかるよー -- 2008-10-26 16 03 27 ドスやらクイーンやらってのも時折宗教チックなのあるよな -- 2008-10-26 16 06 08 -- 2008-10-26 16 02 03 生き神とは微妙に違う気がする。 ゆっくりにとっては始祖の師となった古代の人物みたいなもの。 -- 2008-10-26 16 07 08 2008-10-26 16 07 08 しかしこのドス、あまりドスっぽくないな -- 2008-10-26 16 15 29 切り替えおつおつ。 2008-10-26 16 02 03 慧音は半分ハクタクなわけだし、祭るのは問題ないんじゃないか? イワシの頭よりは御利益ありそうな気もする。 もっとも、言いくるめればイワシの頭でも本気で信仰しそうだけどな、 ゆっくりは。 -- 2008-10-26 16 27 11 そのうちイワシの頭食べて今日からはまりさが神なんだぜ!! てな奴が出てきそうだな -- 2008-10-26 16 29 58 -- 2008-10-26 16 27 11 祭るのが何か、というよりどう祭るかの問題だと思う。 カルト宗教では神の権威を利用して無茶をやる。 けーねならそんなことはしないだろうけど虐待おにいさんならやるか。 -- 2008-10-26 16 38 43 ゆっくりフォートレス、人通り読んだんだが、まず作者名にびっくりした あの最低のSS書いた人間と同一人物とは思えなかった。 なんでフォートレス崩壊させたんだろう、作者の一人としてはあのままネタ引っ張れば フォートレスネタでずっと続きもの書けそうなものを… -- 2008-10-26 16 41 44 2008-10-26 16 41 44 セインワールドの魅力にやっと気付いたかw 自分のツボにはまれば面白いんだよ はまらない場合も多いけどな -- 2008-10-26 16 49 29 フォートレスが潰れずに進んだ世界がYWみたいになったりしてな。 -- 2008-10-26 16 52 33 やっぱりこのおすすめは的確だな 押さえるべき人押さえてる 俺が思う押さえておきたい人 加工場の人→基本 151、Hey!胡乱、ミコスリ、ノンフライ、762、319、たいちょ→バリエーション豊富な古参 YT、Y・Y→ぬるいぢりやほのぼの 118→永琳実験シリーズ 抹茶アイス、アルコールランプ、避妊ありすの人、ゆっくりエンザ書いた人、味覚障害の人、土下座衛門→凝ったストーリーや激しい虐待 セイン→フリーダムな世界観 598→かわいいふらん A.H→ぺにまむとエロ 俺とゆっくりの人→印象強すぎるオリキャラ sdkfz251→軍事ネタ ゆっくりボールマン→駄作と良作の落差とネタの豊富さは一番 -- 2008-10-26 16 53 29 セインワールド好きだわw 一時アンチが叩きまくったけどね -- 2008-10-26 16 56 00 118→永琳実験シリーズ 他のも読んでやれよ -- 2008-10-26 16 57 25 セインは当たり外れの差がありまくる作者だからな -- 2008-10-26 16 57 34 セインワールドは つまらない時は本気でつまらないからなw 好みに合えば面白いけど好みに合わないと最悪 それがセインワールド -- 2008-10-26 16 58 32 セイン、ボールマン、118 振れ幅が大きい順に並べるとこんな感じ -- 2008-10-26 16 59 34 A.H氏はWiki関連用語にデカデカと「工口」だしなw -- 2008-10-26 17 00 01 2008-10-26 17 00 01 あれは笑える -- 2008-10-26 17 00 26 裏オススメってなかった? -- 2008-10-26 17 04 07 イカロもチェックしながら全裸待機でA.H氏の新作待ってます 寒くなってきたから風邪ひきそうです・・・ -- 2008-10-26 17 04 41 上の紹介、大雑把過ぎると言うか異論を唱えたくなるところも多いけど それやったら収拾つかなくなるな -- 2008-10-26 17 05 32 俺が思う押さえておきたい人 だから、2008-10-26 17 05 32が別に作ってもいいんだぜ -- 2008-10-26 17 06 52 避妊ありすの人のゆっくり整形手術は ゆっくりいじめ系444なんだな。 444だけあってハードな虐待。 -- 2008-10-26 17 07 42 さてなんか作るかなぁ トラップは昨日発動したけどまた来ないとも限らないw -- 2008-10-26 17 08 56 ゆっくりいじめ系555 こわいこわい逃走劇 GOGOGOってか -- 2008-10-26 17 11 58 セインはアイディア良くてもSSに「厨」だの「DQN」だの使いだして読後感が甚だ悪い -- 2008-10-26 17 16 01 俺が思う隠れた良作家(2008-10-26 16 53 29にいない方) ・キノコ馬 ・ツェ ・ロウ ・赤福 ・神社バイト ・町長 -- 2008-10-26 17 25 08 fuku3218.txt さっきありす優遇がゆるせねぇとか書いてる人を見たので即席で 出来るだけ子どもへの虐待は少なめにしたいけど、バイト中の気分次第 いってきます -- 2008-10-26 17 27 43 2008-10-26 17 16 01 セインが実際にその単語使ったのは確か一回だけだけどな その分印象が強いのかも -- 2008-10-26 17 33 19 荒らしAAまで保存してるのかよ -- 2008-10-26 17 54 21 2008-10-26 17 27 43 ガムバレ。 このクズありすがこれからどういう目にあうか楽しみにしてるぜ -- 2008-10-26 18 06 20 親がゲスでも子供に罪はないわな まりさとぱちゅりーの躾に期待 そしてありすは見事なほどぶち殺したいな。 続き期待してます -- 2008-10-26 18 08 15 話の中にゲスゆっくりと良いゆっくりの両方が出てくると、ゲスさが際立ってストーリーに深みが出るな -- 2008-10-26 18 30 59 ゆっくりが幸せに過ごしている場面を経てから地獄に落とせば際立つのと同じ原理だね。 -- 2008-10-26 18 44 16 最近うpファイルにパスつけない人多いね -- 2008-10-26 18 49 50 ゲスの子はゲスという単純な帰結にならないのを願うぜ -- 2008-10-26 19 04 30 ふと思った ゲスの子だが育成によってゲスの因子が抑えられてたけど何かの機会にゲス化は今まであったけど 隔世遺伝で孫がゲス化というのはどうだろう -- 2008-10-26 19 06 25 ゲスは先天的なものなんだろうか。 -- 2008-10-26 19 12 33 すれの465に怒りがマッハ 2008-10-26 19 12 33 俺は人間、ゆっくりを問わず後天的なものと思いたいけどね。 ゲスの子がゲスになるのは育てる親や、周りの環境がゲスになりやすい環境だったってだけだと思ってる。 -- 2008-10-26 19 15 01 レイパーアリスは加工場から逃げ出した繁殖用改良品種が 野生化したものと思っている -- 2008-10-26 19 17 20 人間もそうだけど先天的な要素もあれば後天的な要素もあると思ってる。 例えば同じ環境同じ状況でもゲス化するのもいればしないのもいる。 これは人間の才能や性格全般にも言えることで本人の持ってる資質+環境で決まると思ってる。 -- 2008-10-26 19 19 30 465の発想に脱帽 -- 2008-10-26 19 20 08 すごい子だね… -- 2008-10-26 19 24 21 これだから携帯は -- 2008-10-26 19 24 46 -- 2008-10-26 19 19 30 鳶が鷹を産むなんて言葉もあるからな。 親を反面教師にして清く育つこともあれば 親はあんなに立派なリーダーだったのに…なこともあるだろう。 -- 2008-10-26 19 25 56 2008-10-26 17 04 41 お気に召すか判りませんが……これからうpしますよ。 スレ向けじゃなく夜伽向けでもない、ここの某所向けのをw -- 2008-10-26 19 29 45 2008-10-26 19 29 45 その時点で俺の機体がマッハ -- 2008-10-26 19 32 26 208kbだと・・・? -- 2008-10-26 19 35 32 208KBとか初めて見たww -- 2008-10-26 19 37 14 ゆっくり虐待何でもランキング作ったら単品での容量1位は確定だな -- 2008-10-26 19 38 08 でかすぎて俺のPC止まりかけた -- 2008-10-26 19 39 43 このクラスの容量だともう紙で読みたくなる -- 2008-10-26 19 43 03 208KBとか頭がおかしくなって死ぬ -- 2008-10-26 19 45 02 どうやったら書けるんだよ? この容量SSってレベルじゃねーぞw -- 2008-10-26 19 47 22 ワラタ 今書いてる仕事の作品より長いw -- 2008-10-26 19 48 13 本とかにすればそこまですごい量でもない 短編くらいの長さだがブラウザで見るには長いなぁw -- 2008-10-26 19 48 46 誰か栞機能くれ -- 2008-10-26 19 49 50 窓の中の物語で読めば? -- 2008-10-26 19 50 38 セインのSSは消化不良なのが多いっつーか、落とし方が拙いんだよな。 「ゆっくりを飼おう」はなぜか真人間のブリーダーお兄さんにとばっちりが来るし、 「山の災難」ではクスゆっくりを潰したからすのを一行で済ましたから フラストレーションが解消されないし。 -- 2008-10-26 20 18 24 gy_uljp00030はなんかが違う これは虐待だが虐待ではない -- 2008-10-26 20 20 28 2008-10-26 20 18 24 虐待はできないけど、そこまでの道筋はみょうに面白かったりする。 ある意味最低だな。 最初から最後までゆっくりを虐め抜くSSとの同時服用をお勧めします -- 2008-10-26 20 24 08 fuku3221.txt 話の構想が面白くて最後どうなるか読んだけど なんか尻すぼみな感じで読み終わって すっきりした感じがしなかったなあ....... -- 2008-10-26 20 32 45 むしろあの作者の作品で最後すっきりしたものがあったか? -- 2008-10-26 20 36 03 「俺とゆっくりの話」や「ただ永遠にこれだけを」とかはよかったと思う。 ゆっくりの不幸が面白いという視点から見れば。 -- 2008-10-26 20 44 53 2008-10-26 20 20 28 ?、かなりわかりやすい虐待だと思ったが -- 2008-10-26 20 52 26 誰かタルパをSSのネタにしてすっきりさせてくれないか。 -- 2008-10-26 21 00 01 ドロワって今まで必要ないと思ってたんだが あの圧倒的攻撃力を誇るSSによって必要不可欠だと認識した -- 2008-10-26 21 04 08 通常虐待SS:ガトリング砲 ドロワSS:コロニーレーザー -- 2008-10-26 21 05 46 時代はドロワSSか!! ・・・・・ドロ入りしてない俺には無関係だがな -- 2008-10-26 21 10 10 ドロワには萌えがある -- 2008-10-26 21 10 55 というかここでドロワ話はやめてね -- 2008-10-26 21 15 39 虐待分が少なくてすっきりできないという流れっぽいのでとりあえず「続・三匹が死ぬ」を所望しておこう -- 2008-10-26 21 15 58 ゆっくりを人間の社会におくというのは所詮ゆっくりらしさを抜いた ただの愛玩動物にするということか 虐待もそうだけど -- 2008-10-26 21 17 40 人間社会は人間のためにあるものだもの -- 2008-10-26 21 21 54 なんという投稿ラッシュ、これほど嬉しいことはない 月曜日はゆっくりできないよ… -- 2008-10-26 21 24 01 2008-10-26 21 24 01 これは、月曜を寝不足で過ごさせようとするゆっくりの罠だ!! -- 2008-10-26 21 26 25 しかもテンプレじゃないみょんなのが多いこと多いこと -- 2008-10-26 21 27 52 SS史上最高の知能を持ったゆっくりって何だろ -- 2008-10-26 21 29 08 黒はやっぱクズだな -- 2008-10-26 21 29 19 2008-10-26 21 29 08 ゆっくりになったお兄さん? -- 2008-10-26 21 29 49 2008-10-26 21 17 40 甘い。「必要なゆっくりらしさだけ残す」処理をするだけ。 負の要素?全部消しますよ。苦痛と恐怖という名のトラウマでね。 -- 2008-10-26 21 31 01 A.Hさんあんたって人はw -- 2008-10-26 21 34 35 幻想郷を確実に潰す方法をすらすらしゃべったまりさがいたなぁ 紫に殺されてたが -- 2008-10-26 21 35 20 とらふぐと真実の天秤のゆっくりのゆっくりが1,2を争うかも あんなゆっくりが森にゴロゴロしてるって……怖いってレベルじゃねぇ -- 2008-10-26 21 38 46 2008-10-26 21 34 35 守備範囲の広さマジパネェw -- 2008-10-26 21 39 31 ドロワ設定だけで読む気なくすなあ... -- 2008-10-26 21 42 21 チル裏のお約束に少しだけお約束かきたした -- 2008-10-26 21 44 44 ゆっへっへ、ドロワの中じゃなくド口ワの中なんだぜ まぁこのまりささまが修正しておいたんだぜ -- 2008-10-26 21 47 32 2008-10-26 21 47 32 お疲れ様。 後はゆっくり加工されてね♪ 「どうしでごんなごとするのぉーー? までぃさえらかったでしょーー?」 -- 2008-10-26 21 48 48 最近、ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!を見ないな。 -- 2008-10-26 21 50 12 2008-10-26 21 50 12 むしろ、先にネタ被りのSSを上げられてそう思った事はある -- 2008-10-26 21 50 59 ゆっくりに余裕があると思われるからなぁ -- 2008-10-26 21 51 47 どぼじでごんなごどずるのー!! むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!! おうちかえる!! これは外せないよね!! -- 2008-10-26 21 55 43 注意文を守る気なし、持ち出し常套。 しかし作品は見て貰いたい、投下もするしwikiにも載せて欲しい。 なんという餡子脳。 -- 2008-10-26 21 58 40 何の話だよw -- 2008-10-26 22 00 13 最近の虐ゆっくりは褒めると有頂天まで付け上るから飼うものじゃねぇ -- 2008-10-26 22 03 19 そんなこといわずにかわいいまりさをかってね! -- 2008-10-26 22 11 20 まりさとぱちゅりーは一緒に飼いたい -- 2008-10-26 22 12 11 まりさはゲスでも飼いたい というか少し前にも言ったけどゲスまりさ飼いたい でもゲスれいむはなんかだめだ…… -- 2008-10-26 22 14 48 ありすを飼いたい ありすの知ったかが堪らん -- 2008-10-26 22 16 48 まりさは水の入った水槽で飼いたい -- 2008-10-26 22 16 52 そんなSSがあった気がする。 頬っぺたを突いたり引っ張りたいな。 -- 2008-10-26 22 19 07 2008-10-26 22 00 13 まりさあきのこと 某所で堂々と持ち出してるのはしょうがないがなのに投下もするし見ても貰いたいもようだから -- 2008-10-26 22 23 09 >fuku3229 胴つきはティガの人のお陰で可愛く思えるようになったが やっぱり胴なしはガチだな。こういう頭のいい奴は余計に。 -- 2008-10-26 22 33 38 今回の黒は本人っぽい感じがするけどwikiには載せるんだろうか 人間のグロ描写はアウトじゃね? -- 2008-10-26 22 38 35 2008-10-26 22 38 35 載せなくていいと思います に 一票 -- 2008-10-26 22 43 04 まりさあきって何こっちゃ -- 2008-10-26 22 44 23 人間が新でも何も問題はないが黒ゆはうざい 消えて欲しい -- 2008-10-26 22 45 02 2008-10-26 22 38 35 載せなくてもいいよ -- 2008-10-26 22 45 29 黒ゆ・・・嫌いじゃない、むしろ好きだが話が広がらないなあ。 構造的限界だろうか。まあしかたがない。 -- 2008-10-26 22 47 31 fuku3226 読んで思ったんだが、刑罰ってのは罪を自覚させた後に罰を与えるんだろうか、 罰を与えた後に罰を与えるんだろうか? どうもこのSSを読んでると強制労働や心理的な圧迫という罰と、罪の自覚を同時に行わせた後、 さらに過剰な罰を与えるてように見える。 これが虐待SSなんだろうけどはたして厚生施設として適当なのかどうか そんなゆっくりしてないことを考えちまったんだぜ -- 2008-10-26 22 49 00 ガ板荒らすなよ ここで言ってもムダだろうが溝は深まるばかりだ -- 2008-10-26 22 49 26 2008-10-26 22 44 23 ああ、ごめん まりさ大好きあきだったわ -- 2008-10-26 22 49 50 黒ゆがバックベアード様とのハーフって設定はPixivの某氏のパクリかと思った -- 2008-10-26 22 50 35 PCがご臨終だぜ。これで続き物放置作家の仲間入りが確定だorz -- 2008-10-26 22 52 36 黒ゆ転載野郎は作者なんだろうか -- 2008-10-26 22 53 56 最初の一作目とそれ以降の転載している人は別人だと聞いたことがある -- 2008-10-26 22 57 09 今日あげられた新作を転載していま現在ガ板を荒らしてる奴のことだと思う -- 2008-10-26 23 01 09 黒ゆっくりのやつ、他のところに投稿してくれ。 オレはゆっくりの虐待が見たいんだ! -- 2008-10-26 23 05 19 黒ゆは公式絵師と同じくらい存在が迷惑 今すぐ消えて欲しい -- 2008-10-26 23 05 43 スレに報告なしとの事なのでここに感想。 うおお久々にぐっときたぜ。 多分俺も同じようなリアクションして同じような思いつきで おんなじ事するだろうなあ。 ともかくGJでした。 -- 2008-10-26 23 11 52 黒かぁ… 今回のネタは発想自体はいいんだがあの無敵属性がなあ もう無敵と思ってるのは本人だけで 実は子供に小突かれただけで死ぬとかどうさね -- 2008-10-26 23 20 42 なんというラッシュ、あのAAみたいなニヤニヤが止まらないぜ! 全部見終わる頃にはげつようむ・・・欝だ -- 2008-10-26 23 23 09 2008-10-26 23 20 42 そんなソードマスターみたいなオチだったら許せてしまうが絶対ないだろうなあ -- 2008-10-26 23 25 22 ぶは、ついに小山田氏のSSまで出現した。 今日はジャックポットだな。 -- 2008-10-26 23 26 32 黒ゆ改行しろ -- 2008-10-26 23 26 50 前にガ板がSSで荒らされたときも使われたSSが 黒ゆだったし、転載は作者か黒ゆファン(いるのか?)だろうな -- 2008-10-26 23 29 13 妬ましいな もっと面白いもの書いてやる -- 2008-10-26 23 30 41 YT氏、A.H氏、加工所の人が一夜に出揃うとかありえん… 最近不安だったがこれで今週も戦える! -- 2008-10-26 23 32 32 >加工所の人 ちょ、まじでか!? -- 2008-10-26 23 33 25 fuku3230 ( ;∀;)イイハナシダナー -- 2008-10-26 23 33 45 バックベアードを調べたら、なるほど、狂気の瞳をもってたんだな。 ってか、水木しげるの創作キャラだったとは! -- 2008-10-26 23 36 52 今週の土日は大物や実力作家がよく動く週末やった -- 2008-10-26 23 37 48 なんか最近面白い虐待SSを読むと素直に楽しめずに なんだか妬ましく思えて対抗心でSS書かずにはいられなくなる病気なんですが どうすればいいでしょうか -- 2008-10-26 23 38 59 今週の土日は荒らしも大はしゃぎでした -- 2008-10-26 23 39 27 む、わかりますが、邪念を捨てねばSSを楽しんで読めませんぞ! -- 2008-10-26 23 40 12 書きたければ書けばいいさ!もうヘルニアになるくらい -- 2008-10-26 23 40 42 この大作ラッシュで何人のSS書きが泣いたのか -- 2008-10-26 23 41 45 良作かつ長編ラッシュだからな。 今夜はフィーバーだな。そろそろ月曜だけどかんけーね。 -- 2008-10-26 23 42 42 書くのやめるとかいって数週間しかたってないのにネタ浮かんだぞ氏ね俺 -- 2008-10-26 23 43 17 3222の38kbでなげぇと思ったらその直後に200オーバーに さらに加工所の人の60kb代だしね -- 2008-10-26 23 44 28 たかがメインPCがやられただけだ!!! ということでプロット全滅。 サブPCはゆっくりしていてやりづらいぜ。 メインが完全な遊び用だったのが幸いだ。 とりあえずプロットを再建することから始めるか。 -- 2008-10-26 23 46 46 208kbとか長すぎだろ常考… -- 2008-10-26 23 47 51 朝に投稿しといてよかったぜ・・・ -- 2008-10-26 23 48 18 3223泥設定使わないで欲しかった オリキャラ物で通用する内容なのに どうして間口をわざわざ狭める? -- 2008-10-26 23 48 41 PC死亡したり規制に巻き込まれる人多いなあ -- 2008-10-26 23 51 08 2008-10-26 23 48 41 狭めようというより広げようとしたんでは?あっち方面に -- 2008-10-26 23 52 24 ここでさらに人気作者のSSが来たら他の人涙目だな -- 2008-10-26 23 52 56 ラッシュに載せて登校したいけど、完成しそうな在庫がないorz -- 2008-10-26 23 53 03 人気作者同士で潰しあいをして寂れたところで 漁夫の利を狙った投稿をするしかない -- 2008-10-26 23 53 49 2008-10-26 23 48 41 特にキャラ名とか言ってるわけじゃないから前書部分さえ気にしなければ良いだけのこと -- 2008-10-26 23 54 03 PCが死亡する時はあっという間だからバックアップはしっかりとろうね! PCが異音をたててから24時間も経たぬうちにご臨終。 「まだ大丈夫」が死亡フラグなのはPCも一緒だよ!!! と、教訓めいたことを書き込んでみるが、次に買うPCが死ぬ前に忘れるだろうw -- 2008-10-26 23 57 25 割と自信作がラッシュにかち合うと泣けるよね -- 2008-10-26 23 58 11 絵に負けるのならまだいいが SSで話題独占されると悲しくなる -- 2008-10-26 23 59 47 あっち方面に広げられてもなw -- 2008-10-27 00 01 27 今日の夜に投稿すれば、話題は独占できるかもしれない -- 2008-10-27 00 02 44 なんかえらいラッシュだなw -- 2008-10-27 00 03 57 そして俺はそのラッシュの肥やしになりました クスン -- 2008-10-27 00 04 45 2008-10-27 00 01 27 ゆうかとめーりんが惨殺されてる きめぇ丸虐待してる オリキャラの印象が強い 風刺と思える部分がある ぺにまむ排泄設定使用 愛で描写が多い ありすが優遇されてる 人間とゆっくりの性交 人間がゆっくりにやられてる スレが荒れる原因になる要素が多いから泥設定で読者ふるいにかけたんじゃね? -- 2008-10-27 00 09 02 じーえふのバカさに俺が泣いた -- 2008-10-27 00 09 59 2008-10-26 23 43 17 昨日書くの休むって言ったのにもうネタ浮かんだぞ 死ね俺 -- 2008-10-27 00 10 36 多すぎて見きれねぇ -- 2008-10-27 00 15 29 よし! もう投稿はないな。 それじゃあぐっすり眠るとするか!! -- 2008-10-27 00 15 57 むしろ、ドロワ設定の問題点は作者キャラだけなんだから 向こうから学園ネタとかはこっちに持ち込んでもいい気がする 2008-10-27 00 10 36 はやく戻って来いよきのこw -- 2008-10-27 00 17 35 それと別件で、俺ルールを押し付けてくる奴って馬鹿なの?死ぬの? 勝手に解釈して文句言われてもこっちとしては、「そーなのかー、だが、断る」しか返せませんよ? 下手糞なのは認めますがってか、一度も俺うめぇとか言ったことねぇよ。 持ち出し禁止って俺ルールだったのか~ そう言えばなんでピクシブでそんな事言ってるのじーえふさんw -- 2008-10-27 00 19 22 なぁ、……最近ムクドリの人投稿したか…… -- 2008-10-27 00 20 52 2008-10-27 00 10 36 自分も休むって言って二週間で復帰。 もちろんネタ浮かんじゃったからさぁ。 -- 2008-10-27 00 21 03 なにこのラッシュ。死ぬの?(俺が) -- 2008-10-27 00 22 36 2008-10-27 00 20 52 落ち着くんだ! きっと無事に帰ってきてくれるさ……。 -- 2008-10-27 00 23 32 2008-10-27 00 22 36 死んだよ(俺が) -- 2008-10-27 00 23 44 2008-10-27 00 10 36 月日がたつのが早いだけだ 気にするな -- 2008-10-27 00 24 06 2008-10-27 00 20 52 Σ(;゜Д゜) ・・・ 。・゜・(ノД`)・゜・。 -- 2008-10-27 00 24 18 他の人なら「引退か……寂しくなるな」で済むけど ムクドリの人だと「なぁ……これもしかして死んでるんじゃ……」 になるから困る -- 2008-10-27 00 25 42 ( ゚д゚)・・・・・ ( ゚д゚ )死なんがな -- 2008-10-27 00 30 45 まだ生きてたの? -- 2008-10-27 00 32 00 デター!!(;´Д`) (; ̄- ̄)人 i~ -- 2008-10-27 00 32 32 ゆぎゃあああ!! ぼうれいさんゆっくりおうちにかえってね!! (ガクガクブルブル -- 2008-10-27 00 34 20 既に、抗がん剤の影響で動く事すら激痛が走るほどでしたが ムクドルは必死に、持ち込んだノートPCで作品を書き続けていたのです。 「自分の作品を楽しみに待ってくれている人がいる」 周囲の人が、体調を心配すると決まって彼はこう返して、そしてまた 視線を画面に戻すのでした -- 2008-10-27 00 34 33 い・・・1ガロンの涙 (つД`;) -- 2008-10-27 00 35 28 ネトゲするからしばらく休むわという作者がいる中 -- 2008-10-27 00 36 01 誰やねんw>ムクドル -- 2008-10-27 00 36 57 2008-10-27 00 34 33 2008-10-27 00 36 01 自分はもう長くない しかし心配させたくなかった そう考えたムクドリの人は最後に一言残した 「ネトゲするからしばらく休むわ」 -- 2008-10-27 00 38 49 ムクドルさん......・゜・(ノД`)・゜・。 -- 2008-10-27 00 39 53 SS内容が話題になるならまだしも、作者自身がネタってなんか複雑w そんなことより、ゆっくりの話しようぜ -- 2008-10-27 00 41 50 2008-10-27 00 36 57 「あはは。これじゃぁ、まるでお坊さんだね」 既に、抗がん剤の影響で髪は抜け落ち、普通に動く事すら激痛が走るほどでしたが そんな冗談を言いながら、 ムクドリは必死に持ち込んだノートPCで作品を書き続けていたのです。 「自分の作品を楽しみに待ってくれている人がいる」 周囲の人間が体調を心配すると、決まって彼はこう返して、 そしてまた 視線を画面に戻すのでした。 無菌室の中で、規則的な機械音のほかに聞こえる、パソコンのタイプの音 不規則なその音は、まるでムクドリの体調を表しているかのようで、 そして、作品を見てもらう為に、必死で生きている彼の心臓の鼓動の様でも ありました。 -- 2008-10-27 00 42 57 ゆっくりが仮病使う話ってあったっけ? -- 2008-10-27 00 44 23 2008-10-27 00 44 23 うーん、どうだっけ? 想像妊娠やらもある種の仮病臭かったが -- 2008-10-27 00 45 13 2008-10-27 00 44 23 仮病ネタならペットで飼い主に即見破られるか なまじ仲間を騙せてしまって仮病し続ける運命になるかのどっちかだな -- 2008-10-27 00 47 23 2008-10-27 00 44 23 仮病を使わなくちゃいけないシュチュがそんなに出ていなかったからなぁ -- 2008-10-27 00 48 01 俺の中でムクドリの人は 日課のスクワット1000回・プッシュアップ1000回・腹筋1000回3セットをこなした後 青い顔で胃薬を飲むイメージ -- 2008-10-27 00 49 30 2008-10-27 00 44 23 「まりさはえぼらしゅっけつねつだからごはんをもってくるんだぜ!」 「むきゅー!それはでんせんびょうよ!あのまりさにちかづいたらゆっくりできなくなるわ!」 「ゆっぐりでぎないのはいやぁぁぁぁぁ!!」 「ごっぢごないでね!ばりざはいっじょうぞごでゆっぐりじででね!」 「どぼじでぞんなごどいうんだぜぇぇぇぇぇ!!」 -- 2008-10-27 00 50 30 -- 2008-10-27 00 45 13 病気ものが少ないからな… 飼われてるゆっくりがゆっくり用のペットホテルで 「病気になると優しくしてもらえて…」なんて話を聞いて仮病を使う。 医者に連れて行かれたあと問診に検査にも適当に応じていたら なぜか重大な病気と診断されてしまい、かなり強い薬を投与される。 当然健康体だったために俳人ならぬ廃ゆっくりに…とか。 -- 2008-10-27 00 51 41 2008-10-27 00 51 41 病気ものっていうと…放射線くらったゆっくりの話とか… あとぱちゅりーが薬開発して半端に生きながらえてドスる話とかか -- 2008-10-27 00 55 09 ゆっくり同士の結束力が強い群れで 病気になったゆっくりのために他のゆっくり達が お見舞い代わりに食べ物をもってきてくれて その光景をみたゲスorそれに味をしめたゆっくりが 仮病使う話はできそうだな。 -- 2008-10-27 00 55 57 「れいむはびょうきだからやさしくしてね!」 「その病気に効く秘孔はこれだ」 ドスッ 「ゆ゛っが、がぁぁぁぁぁぁ?!」 「ん?まちがったかな?」 「な、なにをしている!」 ドスッ 「ゆ゛っげぇあぁぁぁぁぁああああ?!」 パーン 「ん?間違ったかな?」 -- 2008-10-27 00 56 26 2008-10-27 00 51 41 その医者、SSにあるヤブ医者だなw -- 2008-10-27 00 56 47 2008-10-27 00 56 26 すでに既出ずみだなそのパターン -- 2008-10-27 00 57 59 仮病じゃないが群れのゲスが村人やモコウに根性焼きされて、他の個体が看病してたけど あまりのアレっぷりに愛想つかして動ける奴だけで移住していくSSあったな -- 2008-10-27 00 58 50 やっぱり、薬の副作用でハゲ化は必須だよな 楽しようと仮病使った代償がこれだよ!! -- 2008-10-27 00 59 47 SS一覧更新した人乙です -- 2008-10-27 01 01 24 うーん、あとがきを深読みしてスレに感想書かなかったが みんな普通に書いてるなw いいのかな? -- 2008-10-27 01 01 41 じーえふアホだなpixivで吠えてらwww -- 2008-10-27 01 02 22 むきゅ!『すでにきしゅつずみ』なんてひょうげんおかしいわよ!! -- 2008-10-27 01 05 42 2008-10-27 01 01 41 感想もらって喜ばない人はいないと思うぞ。 -- 2008-10-27 01 14 38 昨日は静かだったのに…… 仕事から帰ってupロダ開いたら……なにこの、なに……!? -- 2008-10-27 01 27 15 ttp //kamisoku.blog47.fc2.com/blog-entry-549.html これはひどい コラまで含めてるし -- 2008-10-27 01 30 10 >2008-10-27 01 14 38 あーその、2008-10-26 23 11 52でfuku3230の感想をぼかして書いたんだけど 全然いらん事したなあ、と思って。 普通にスレで書けばよかったぜ。 -- 2008-10-27 01 34 46 2008-10-27 01 02 22 触んなきゃいいのに触るから吠えるんだろ -- 2008-10-27 01 38 22 3230と3231がやばい、面白すぎてやばい 読ませる文章を書ける程度の能力があれば うんうんもだどれみりゃも気にならんな… -- 2008-10-27 01 58 43 てのての氏れみりゃシリーズ下げるのか 絵師スレみてるなぁ -- 2008-10-27 02 04 34 絵師スレ? -- 2008-10-27 02 10 07 絵師がスレ見てるな だ -- 2008-10-27 02 10 44 2008-10-27 02 04 34 あのシリーズ好きだっただけに複雑な気分… -- 2008-10-27 02 14 26 2008-10-27 02 10 44 ああ、pixivスレでネタになってるのかと思った つかスレでやってくれりゃいいのに -- 2008-10-27 02 16 40 2008-10-27 02 04 34 応援タグが多いね。あのシリーズこっちでやってくれないかな・・・。 -- 2008-10-27 02 17 27 スレの内容持ち出し禁止 →スレ以外では虐ネタをやってはいけない ということから、 「虐待スレは虐ネタを他でやらせず、独占しようとしている」 なんていう誤解もあるようで。 持ち出して外を荒らす人が出ないようにするためのルールなんだけどね -- 2008-10-27 02 31 13
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前 真っ暗な闇の中。幾つかの美しい光が点滅している。私も隣の男も一言も言葉を交わすことは無い。 薄暗い研究室の中では新型のゆっくりの研究が行われていた。現在はその成果と成る試験体の稼動実験をモニターしている最中だ。 暫くして観察が終了し、室内に明かりが灯ると共に一息つく。伸びをする者や溜め息をつく者、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じて私も体をほぐす。 「うぐぐ・・・体が硬い。こっちがゆっくりに成っちまいそうだぜ」 世の中には協定を結んで人間と上手く共存しているゆっくりもいる。 必要なのは「優秀なリーダー」なのだ。 大抵の場合はドスが無能であるか、ドゲスの群である為に協定は瓦解してしまう。 そこで考え出されたのが、新しい強化種を開発する事であった。優秀なドスに変わる存在を人工的に作り出し、それを野生に撒くのである。 「思い通りには行かんもんだな」 既存の成体ゆっくりを教育していたのでは時間も手間も掛かる。しかも、群のリーダーにするには相応の戦闘力が無ければ不可能だ。 人間に従順・頭が良い・人間のルールを理解できて・群を統率可能……しかも低コストで量産可能である必要がある。 生まれた時点で本能として生体餡子脳に「群を統率し人間に迷惑を掛けない」事を刻まれた、既存の種よりも強力な戦闘力を有する新型ゆっくり。 自然繁殖出来ない様に生殖機能を持たず、生まれた時から成体並みの体と知能を与え、人間が一切関わる事の無い状態で自立稼動可能な固体。 「お~い、コッチ来い。反省会はじめっぞー」 反省会と言われたのは、今さっきの実験結果の分析と今後の対応策についての協議の事で、各部門の責任者が集まっている。残りは昼飯に出かけた。羨ましい。 <<CASE-2894:人間の畑を荒らしたゆっくりに対する対処>> 「放置した挙句にニンゲンを攻撃するとは驚きましたね」 「まさかココまで無能だとは………」 実験結果が思わしくない為か、皆の顔にも疲労の色が濃く滲んでいる。まるで朝飯以降なにも口にして居ないかの様な空腹感溢れる顔である。中には耐え切れずに腹を鳴らす者まで居て、事態の深刻さを物語っている。 「えー前回の報告どおり、生まれた直後の状態で森に放置しても、自身の生存に問題ないだけのサバイバリティーの獲得には成功しております」 「野生のレミリア種やフラン種との交戦記録でも勝率98%を記録しており、戦闘力・生存能力に関してはほぼ完成と言って差し支えないかと思われます」 報告をする男の視線は中を彷徨い焦点を結んでいない様に思われる。はやくなにかたべないとしんでしまうぞ。 「群の形成に関しても申し分有りません。移植したドス餡が十分に生かされているものかと」 ただ強いゆっくりと言うだけでは意味が無い。森に暮らすゆっくりを統率し、管理し、人間に危害を加えない様に教育する必要がある。 「一応群では人間に近づくな的なおきては有ったみたいですが……」 「残念ながら掟を破る質の低いゆっくりを教育する所までには至らなかった……か」 言う事を聞く優良な固体のみを群に残し、人間の畑を荒らす掟を守れないゲスゆっくりはふるいに掛けて放置する。 通常のドスの群ではソレでよい。しかし我々が開発している新種は、人間へ危害を加えない様に森のゆっくりを集めて管理する目的で作られている。 ゆっくりがゆっくりする為であれば、バカな固体が自滅するのは構わないだろうが、バカな固体が自滅する事自体が人間には迷惑なのだ。 ダメなゆっくりはしっかり教育するか、畑にお出掛けして自滅する前に群で駆除して貰う必要がある。 「今回のメインであった畑荒らし役のレイムに対する対応ですが、成功とは言いがたい内容です」 「だが畑荒らしの悪事は認識していた。失敗と言うほど悲観する内容でも無かったのではないか?」 「人間が先に見つけて虐待した為に、制裁を任せたと言う見方も出来る」 「だがその後の行動は、これは如何説明する?人間に襲い掛かっている様にも見えるが」 「しかし、擬体とは言えニンゲンが負けるとは予想外でしたね。もう少しニンゲンの知能、上げられませんか?幾らなんでも対応がお粗末だったと思うんですがね」 「無理言うな、幾ら記憶を上書きしているとは言ってもベースはレミリア種だぞ。そう簡単に知能が上がったら開発だって苦労しないっつーの」 戦闘力に関しては申し分ない。ゆっくりゃやゆふらんを上回り、尚且つ群を統率する所までは来ている。後は論理思考のパターンの調整なのだが…… 「破壊されたニンゲンは破棄ですよね!食っていいですか!?」 「落ち着け…ゆっくりの食い残しなんか食う気か。もうこれで終わるから昼食にしよう」 「とにかく、この行動の理由について早急に分析を行い、本能プログラムの改修案を検討する必要があるな。残りは午後だ、解散!」 回収した黒ゆっくりは専用の台座に固定されて何本ものメンテナンスケーブルが繋がれている。 餡子脳を記憶再生機に繋いで行動や思考を分析し、問題点を調査して次回への改良とするのだ。 何故そんな事をしたのか?どうして適切な行動を取らなかったのかを問いただして行く。目も口も動かさずに独白めいた音声が蓄音機へ記録され、再生用の箱から流れてくる。正直キモイ。 「それにしてもこいつ……自伝でも出版するつもりなんですかね?」 黒ゆっくりの独特の語り口調に失笑を堪えながら若い研究員が言ったが、私は少しも面白くは無かった。 これだけお膳立てしてやってるのに、目標の数値には程遠い統率力と稼働時間。今回も早々に問題を起こして実験終了だ。 アレが現実なら破壊されるか、よしんば人間を倒せてもその後に村人総出で山狩りになって壊滅するのは眼に見えている。 そもそも、畑に被害を出した時点で我々の要求仕様としては失格なのだ。少なくとも、発見した時点で即座にレイムを殺すべきだった。 「てっきりレイムに味方して人間と戦うのかと思ったんですがね」 今までのケースでは畑荒らしを目論んだゆっくりが人間に発見された場合、目の前の人間とゆっくりを比較して本能が勝ってしまい、ゆっくりを助けようと人間に襲い掛かった例もある。 今回の黒ゆっくりは虐待前に発見したにも関わらず行動を観察していた。畑荒らしを抑えるでもなく、レイムを助けるでもなく、虐待を止めるでもなく。 「うむ、おそらくだが、本能としてインプットした論理思考に影響を受けているのだろう」 本能でゆっくりを助けたり、人間に襲い掛かったりする事を防ぐ為に、今回のバージョンでは調整を加えていた。 種としての本能的な行動よりも、論理的に正しい事を優先して行動するように、行動原理と成る部分を強化したのだ。 「あぁ、それで正義の味方みたいな事をやりたがるんですかね?」 群を作って統率したりするのはドス種の本能部分を移植したので、ゆっくり的な思考が強く出てしまう傾向がある。 それを抑える為に、論理思考回路を組み込んで自身が正しいと判断した行為を優先する様にし、常に正しい存在であり続ける事を最優先とするのだ。 「自分からは先に手を出さなかったり、口上を述べたのも自分が悪の存在になる事を本能的に回避しての行動だと思われるな」 元々、人間のルールを破ったりしないようにする為に、自身の損得より優先的に守るように組み込まれた物なのだが。 手段と目的とが入れ替わって完全に偽善の言い訳に成ってしまっている。 「コイツの中では悪いのはレイムなのだろう。せかっく教えたルールを理解しない無能なヤツが悪いのだ」 無能なヤツを管理出来なかった時点で人間から見れば同罪なのだが、コイツにはそこら辺がまだ理解できてないらしい。自分さえ正しければ良いと言う自己中心的な思想が抜けきっていない。 「他者に対する正義の徹底、群のゆっくりの行動に関しての連帯責任の意識の欠如ですか」 「元々リーダーとしての責任感が薄い感はあるな」 移植したドスの本能で群を作っているが、本来ドスは沢山のゆっくりをゆっくりさせたい為に群を作るのだ。 しかし、群を管理して人間への危害を与えなくする為に、様々な本能を多数上書きして混ぜ加えた結果、ゆっくりさせるの部分を弱める事には成功したが、群のリーダーとしての責任感が薄まった可能性もある。 今の状態では群を作るのは殆ど自己満足のために近い。 だが、元々ドスに責任感があるかは疑問であるし、群を形成する習性だけ残れば良いのだ。教育や管理は論理的な思考を上書きする事で実現するしかない。 「まぁ今回のレイムは我々が実験の為に仕向けたのだからソレは良しとしよう」 「群の長として責任感全然感じてない所は良く無いっすけどね」 「むしろ重要なのは、レイム回収時に人間に危害を加えようとした所だ」 人間の里へ降りて来て、住居不法侵入しておいて正当防衛が主張できる理屈はない。仮に正当な理由があっても、人間を攻撃する様では困るのだが。 正当な理由を正常に判断出来ないのでは、幾ら道徳と倫理感の強化を施しても改善の見込みが無い。 「あくまで自分が悪者には成りたくないと言う心理は働いてるみたいですね」 「だがその為に理屈は殆ど詭弁のレベルだ。知能が低いのではなく自己正当化して満足してしまっている」 自分が正しい事、これから行う事が既に決まっており、その為に都合の良い正義設定を組み立てている。普通逆だ。 同属に対する復讐と言いながら、助ける事無く虐待を見ていた。 捕食についても、虐待を観察してた理由には成らないし、親のニンゲンに話しかけた事とも矛盾する。 「コイツ本当に自分はニンゲンよりマシだと思ってるんですかね?」 復讐・虐待の傍観・捕食の何れをとっても明らかに劣る。 「自分で説明してるだろ“自分の卑小さを紛らす為”だと」 「ソコまで自虐されると作った俺らに失礼ってもんですよ」 確かに、そうだ。コイツを素直に蔑む事が出来ないのは、本能レベルで組み込まれた思考プログラムの開発を我々が担当している事が関係している。 実験でコイツがアホな行動や、理解不能な臭い台詞を吐く度に、研究チームの痛い視線を感じる気がする。実際はそんな事も無いのだろうが、耐えられずに胃が痛くなる。 行動パターンは何も我々が担当したコア部分の論理回路のみだけではなく、予備知識として引き継ぐ餡子知能や、思考に使用される新型餡子の配合などの様々な要素の影響を受ける。 故に、我々のチームのみがココまで責任を感じる必要は無いのだろうが、正直もう耐えられそうにない。 「今回のポエム聞きました?もう爆笑でしたよ」 この男の能天気さが羨ましい。 「それより、好戦的な性格も問題だと思うが……どう見る?」 最終的にニンゲンに攻撃を行った直接的原因は、ニンゲンからの攻撃であったのだが。ソコに至る過程は明らかに誘導が見えた。 「レイムを取り戻すなら傍観していた理由は無いですよね?」 やはり、最初から攻撃が目的で接触したとしか思えない。 「ニンゲンにレイムの虐待を任せようとした線は?」 「いや、一思いに殺せとも言ってるし、その後の発言からもそれは考えられない」 助ける為でも殺すためでもない。レイムのことは如何でも良かったとしか思えない。 「やはり捕食?しかし人肉を求めるような設計では無い筈ですが」 「一応野犬対策とか、どんな環境でも生きられる様に雑食性にはしているがな」 群のゆっくりには人里へ降りるなと伝えてあるし、普段は餌を求めて組織的に里を襲う傾向も無い。 そもそも捕食目的であれば、もっと頻繁に人を襲う必要が有る。 普段は他の野生動物を狩っている可能性もあるが、その様な場面は報告されていない。見付からないだけなのか? それでも人間と敵対するリスクを犯して、あえて捕食対象とする理由も分から無い。 仮にニンゲンを餌として襲うとしても、もっと上手い手段は幾らでもあった。 自分から声を掛けたり、虐待を黙って見ていた行動の理由も、会話の目的も一切不明である。 そう考えると今回のケースが特殊で、正当防衛や捕食と言うのは単なる思い付きで口にしたに過ぎないと言う事なのか。 とりあえず人間が如何行動するか観察した後に、人間を排除し、レイムを回収する寸法だったのだろう。 群のゆっくりへの見せしめとして持ち帰るつもりだったと考えれば、虐待後に回収に動いた行動も考えられなくは無い。 「頭が痛いな……」 人間に歯向かうなど論外だ。が問題はソコではない。 「もういっその事戦闘力下げます?」 安全性を考えるならソレが一番だろう。 「いや、その必要は無いだろう」 今の時点でニンゲンには勝てても、本物の人間を殺傷できるスペックは無い。 子供や、大人でも油断して不意打ちを受ければ危険かも知れないが、それは通常のドスや巨大ゆっくりでも変わらない。 ソコまで安全性を優先して戦闘力を削っては、群を統率する力さえ無くなってしまう。それでは意味が無い。 「それに、問題の本質はソコじゃないだろ」 畑荒らしのゆっくりを止めなかった事。強さよりもコッチの方が深刻なのだ。 規則を破ったゆっくりへの裁きよりも、同種である群のゆっくりの救出よりも、詭弁を並べてニンゲンに攻撃する事を優先した思考回路が問題だ。 人間に迷惑を掛けずに群のゆっくりを管理すると言う目的の為に与えた、人間の価値観と道徳心。 規則を遵守し、善悪を正しく判断する為に与えた知識と知能が、何故正常に働かないのかを調査して修正しなければ成らない。 「これは根気の要る作業になりそうだな……」 今回の実験の分析で分かる範囲の調整は行うが、もうしばらくは実験と調整の繰り返しに成るだろう。 「しかしなんで子供から優先的に殺したんでしょうかね?」 親の方には色々理屈を並べて時間を掛けた割に不自然だった。レイムを助ける為にニンゲンの親と接触した事は一応理解できるが、子供を攻撃した理由は何だろうか。 行動に関して、特にニンゲンへの攻撃の際や自身の正当性・正義に拘っていたと言うのに、子供を殺す時点の行動は動機的にも不可解な点が多かった。 子ゆっくりは助けようともしなかったし、これは見せしめは親レイム一匹で十分と考えた為かもしれないが。子供への攻撃理由には謎が多かった。 今までの実験ケースでも、子供への予期しない攻撃が行われた事も少なくなく、今回もやはり懸念されていた習性が現れてしまった形となった。 「自分の生い立ちに対するコンプレックス的なモノを抱えているのかも知れないな……」 実験に使ったレイム家族は片親だった。実験をやり易くする為に我々が選んだのだが、片親が何らかのキーワードとして働いているのかも知れない。 いや……偶然の一致か? 親と子の繋がり。今回用意したニンゲンも片親だった。通常とは異なる環境下でも親が子を見捨てる事無く育てている様を見る事で、自身の親の不在を拠り強く意識する可能性もある。 自分が孤独で生まれた事が、愛される子供への憎しみ、親と言う存在の行動に対して格別の興味を抱かせるのかもしれない。 この点に関しては次回以降も入念に観察する必要が有りそうだ。自身の出生に対する疑問や、不自然に高い知能と生まれ持って与えられた知識が、己のルーツへのより強い執着を生んでいるのだろう。 その辺に関する予備知識を加えてやれば、少しは行動に落ち着きが出るかもしれないと考えて、コンソールを叩き潜在意識へのインプリントを行う。 「おーい、何時までも無駄話してるんじゃない。次のセッティング終わったぞ。非献体を入れろ」 「まってくれ!ここまでやってから実働データを取りたいんだ…………よしっ回してくれ」 「黒ゆっくり、餡子脳セットアップ。メモリー初期化完了。起動準備出来ました。各部モニター正常!オールグリーンです。何時でもいけます!」 <<CASE-3225:虐待する人間が森に来た場合の対応>> 「黒ゆっくり………起動!!」 黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける
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前 真っ暗な闇の中。幾つかの美しい光が点滅している。私も隣の男も一言も言葉を交わすことは無い。 薄暗い研究室の中では新型のゆっくりの研究が行われていた。現在はその成果と成る試験体の稼動実験をモニターしている最中だ。 暫くして観察が終了し、室内に明かりが灯ると共に一息つく。伸びをする者や溜め息をつく者、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じて私も体をほぐす。 「うぐぐ・・・体が硬い。こっちがゆっくりに成っちまいそうだぜ」 世の中には協定を結んで人間と上手く共存しているゆっくりもいる。 必要なのは「優秀なリーダー」なのだ。 大抵の場合はドスが無能であるか、ドゲスの群である為に協定は瓦解してしまう。 そこで考え出されたのが、新しい強化種を開発する事であった。優秀なドスに変わる存在を人工的に作り出し、それを野生に撒くのである。 「思い通りには行かんもんだな」 既存の成体ゆっくりを教育していたのでは時間も手間も掛かる。しかも、群のリーダーにするには相応の戦闘力が無ければ不可能だ。 人間に従順・頭が良い・人間のルールを理解できて・群を統率可能……しかも低コストで量産可能である必要がある。 生まれた時点で本能として生体餡子脳に「群を統率し人間に迷惑を掛けない」事を刻まれた、既存の種よりも強力な戦闘力を有する新型ゆっくり。 自然繁殖出来ない様に生殖機能を持たず、生まれた時から成体並みの体と知能を与え、人間が一切関わる事の無い状態で自立稼動可能な固体。 「お~い、コッチ来い。反省会はじめっぞー」 反省会と言われたのは、今さっきの実験結果の分析と今後の対応策についての協議の事で、各部門の責任者が集まっている。残りは昼飯に出かけた。羨ましい。 <<CASE-2894:人間の畑を荒らしたゆっくりに対する対処>> 「放置した挙句にニンゲンを攻撃するとは驚きましたね」 「まさかココまで無能だとは………」 実験結果が思わしくない為か、皆の顔にも疲労の色が濃く滲んでいる。まるで朝飯以降なにも口にして居ないかの様な空腹感溢れる顔である。中には耐え切れずに腹を鳴らす者まで居て、事態の深刻さを物語っている。 「えー前回の報告どおり、生まれた直後の状態で森に放置しても、自身の生存に問題ないだけのサバイバリティーの獲得には成功しております」 「野生のレミリア種やフラン種との交戦記録でも勝率98%を記録しており、戦闘力・生存能力に関してはほぼ完成と言って差し支えないかと思われます」 報告をする男の視線は中を彷徨い焦点を結んでいない様に思われる。はやくなにかたべないとしんでしまうぞ。 「群の形成に関しても申し分有りません。移植したドス餡が十分に生かされているものかと」 ただ強いゆっくりと言うだけでは意味が無い。森に暮らすゆっくりを統率し、管理し、人間に危害を加えない様に教育する必要がある。 「一応群では人間に近づくな的なおきては有ったみたいですが……」 「残念ながら掟を破る質の低いゆっくりを教育する所までには至らなかった……か」 言う事を聞く優良な固体のみを群に残し、人間の畑を荒らす掟を守れないゲスゆっくりはふるいに掛けて放置する。 通常のドスの群ではソレでよい。しかし我々が開発している新種は、人間へ危害を加えない様に森のゆっくりを集めて管理する目的で作られている。 ゆっくりがゆっくりする為であれば、バカな固体が自滅するのは構わないだろうが、バカな固体が自滅する事自体が人間には迷惑なのだ。 ダメなゆっくりはしっかり教育するか、畑にお出掛けして自滅する前に群で駆除して貰う必要がある。 「今回のメインであった畑荒らし役のレイムに対する対応ですが、成功とは言いがたい内容です」 「だが畑荒らしの悪事は認識していた。失敗と言うほど悲観する内容でも無かったのではないか?」 「人間が先に見つけて虐待した為に、制裁を任せたと言う見方も出来る」 「だがその後の行動は、これは如何説明する?人間に襲い掛かっている様にも見えるが」 「しかし、擬体とは言えニンゲンが負けるとは予想外でしたね。もう少しニンゲンの知能、上げられませんか?幾らなんでも対応がお粗末だったと思うんですがね」 「無理言うな、幾ら記憶を上書きしているとは言ってもベースはレミリア種だぞ。そう簡単に知能が上がったら開発だって苦労しないっつーの」 戦闘力に関しては申し分ない。ゆっくりゃやゆふらんを上回り、尚且つ群を統率する所までは来ている。後は論理思考のパターンの調整なのだが…… 「破壊されたニンゲンは破棄ですよね!食っていいですか!?」 「落ち着け…ゆっくりの食い残しなんか食う気か。もうこれで終わるから昼食にしよう」 「とにかく、この行動の理由について早急に分析を行い、本能プログラムの改修案を検討する必要があるな。残りは午後だ、解散!」 回収した黒ゆっくりは専用の台座に固定されて何本ものメンテナンスケーブルが繋がれている。 餡子脳を記憶再生機に繋いで行動や思考を分析し、問題点を調査して次回への改良とするのだ。 何故そんな事をしたのか?どうして適切な行動を取らなかったのかを問いただして行く。目も口も動かさずに独白めいた音声が蓄音機へ記録され、再生用の箱から流れてくる。正直キモイ。 「それにしてもこいつ……自伝でも出版するつもりなんですかね?」 黒ゆっくりの独特の語り口調に失笑を堪えながら若い研究員が言ったが、私は少しも面白くは無かった。 これだけお膳立てしてやってるのに、目標の数値には程遠い統率力と稼働時間。今回も早々に問題を起こして実験終了だ。 アレが現実なら破壊されるか、よしんば人間を倒せてもその後に村人総出で山狩りになって壊滅するのは眼に見えている。 そもそも、畑に被害を出した時点で我々の要求仕様としては失格なのだ。少なくとも、発見した時点で即座にレイムを殺すべきだった。 「てっきりレイムに味方して人間と戦うのかと思ったんですがね」 今までのケースでは畑荒らしを目論んだゆっくりが人間に発見された場合、目の前の人間とゆっくりを比較して本能が勝ってしまい、ゆっくりを助けようと人間に襲い掛かった例もある。 今回の黒ゆっくりは虐待前に発見したにも関わらず行動を観察していた。畑荒らしを抑えるでもなく、レイムを助けるでもなく、虐待を止めるでもなく。 「うむ、おそらくだが、本能としてインプットした論理思考に影響を受けているのだろう」 本能でゆっくりを助けたり、人間に襲い掛かったりする事を防ぐ為に、今回のバージョンでは調整を加えていた。 種としての本能的な行動よりも、論理的に正しい事を優先して行動するように、行動原理と成る部分を強化したのだ。 「あぁ、それで正義の味方みたいな事をやりたがるんですかね?」 群を作って統率したりするのはドス種の本能部分を移植したので、ゆっくり的な思考が強く出てしまう傾向がある。 それを抑える為に、論理思考回路を組み込んで自身が正しいと判断した行為を優先する様にし、常に正しい存在であり続ける事を最優先とするのだ。 「自分からは先に手を出さなかったり、口上を述べたのも自分が悪の存在になる事を本能的に回避しての行動だと思われるな」 元々、人間のルールを破ったりしないようにする為に、自身の損得より優先的に守るように組み込まれた物なのだが。 手段と目的とが入れ替わって完全に偽善の言い訳に成ってしまっている。 「コイツの中では悪いのはレイムなのだろう。せかっく教えたルールを理解しない無能なヤツが悪いのだ」 無能なヤツを管理出来なかった時点で人間から見れば同罪なのだが、コイツにはそこら辺がまだ理解できてないらしい。自分さえ正しければ良いと言う自己中心的な思想が抜けきっていない。 「他者に対する正義の徹底、群のゆっくりの行動に関しての連帯責任の意識の欠如ですか」 「元々リーダーとしての責任感が薄い感はあるな」 移植したドスの本能で群を作っているが、本来ドスは沢山のゆっくりをゆっくりさせたい為に群を作るのだ。 しかし、群を管理して人間への危害を与えなくする為に、様々な本能を多数上書きして混ぜ加えた結果、ゆっくりさせるの部分を弱める事には成功したが、群のリーダーとしての責任感が薄まった可能性もある。 今の状態では群を作るのは殆ど自己満足のために近い。 だが、元々ドスに責任感があるかは疑問であるし、群を形成する習性だけ残れば良いのだ。教育や管理は論理的な思考を上書きする事で実現するしかない。 「まぁ今回のレイムは我々が実験の為に仕向けたのだからソレは良しとしよう」 「群の長として責任感全然感じてない所は良く無いっすけどね」 「むしろ重要なのは、レイム回収時に人間に危害を加えようとした所だ」 人間の里へ降りて来て、住居不法侵入しておいて正当防衛が主張できる理屈はない。仮に正当な理由があっても、人間を攻撃する様では困るのだが。 正当な理由を正常に判断出来ないのでは、幾ら道徳と倫理感の強化を施しても改善の見込みが無い。 「あくまで自分が悪者には成りたくないと言う心理は働いてるみたいですね」 「だがその為に理屈は殆ど詭弁のレベルだ。知能が低いのではなく自己正当化して満足してしまっている」 自分が正しい事、これから行う事が既に決まっており、その為に都合の良い正義設定を組み立てている。普通逆だ。 同属に対する復讐と言いながら、助ける事無く虐待を見ていた。 捕食についても、虐待を観察してた理由には成らないし、親のニンゲンに話しかけた事とも矛盾する。 「コイツ本当に自分はニンゲンよりマシだと思ってるんですかね?」 復讐・虐待の傍観・捕食の何れをとっても明らかに劣る。 「自分で説明してるだろ“自分の卑小さを紛らす為”だと」 「ソコまで自虐されると作った俺らに失礼ってもんですよ」 確かに、そうだ。コイツを素直に蔑む事が出来ないのは、本能レベルで組み込まれた思考プログラムの開発を我々が担当している事が関係している。 実験でコイツがアホな行動や、理解不能な臭い台詞を吐く度に、研究チームの痛い視線を感じる気がする。実際はそんな事も無いのだろうが、耐えられずに胃が痛くなる。 行動パターンは何も我々が担当したコア部分の論理回路のみだけではなく、予備知識として引き継ぐ餡子知能や、思考に使用される新型餡子の配合などの様々な要素の影響を受ける。 故に、我々のチームのみがココまで責任を感じる必要は無いのだろうが、正直もう耐えられそうにない。 「今回のポエム聞きました?もう爆笑でしたよ」 この男の能天気さが羨ましい。 「それより、好戦的な性格も問題だと思うが……どう見る?」 最終的にニンゲンに攻撃を行った直接的原因は、ニンゲンからの攻撃であったのだが。ソコに至る過程は明らかに誘導が見えた。 「レイムを取り戻すなら傍観していた理由は無いですよね?」 やはり、最初から攻撃が目的で接触したとしか思えない。 「ニンゲンにレイムの虐待を任せようとした線は?」 「いや、一思いに殺せとも言ってるし、その後の発言からもそれは考えられない」 助ける為でも殺すためでもない。レイムのことは如何でも良かったとしか思えない。 「やはり捕食?しかし人肉を求めるような設計では無い筈ですが」 「一応野犬対策とか、どんな環境でも生きられる様に雑食性にはしているがな」 群のゆっくりには人里へ降りるなと伝えてあるし、普段は餌を求めて組織的に里を襲う傾向も無い。 そもそも捕食目的であれば、もっと頻繁に人を襲う必要が有る。 普段は他の野生動物を狩っている可能性もあるが、その様な場面は報告されていない。見付からないだけなのか? それでも人間と敵対するリスクを犯して、あえて捕食対象とする理由も分から無い。 仮にニンゲンを餌として襲うとしても、もっと上手い手段は幾らでもあった。 自分から声を掛けたり、虐待を黙って見ていた行動の理由も、会話の目的も一切不明である。 そう考えると今回のケースが特殊で、正当防衛や捕食と言うのは単なる思い付きで口にしたに過ぎないと言う事なのか。 とりあえず人間が如何行動するか観察した後に、人間を排除し、レイムを回収する寸法だったのだろう。 群のゆっくりへの見せしめとして持ち帰るつもりだったと考えれば、虐待後に回収に動いた行動も考えられなくは無い。 「頭が痛いな……」 人間に歯向かうなど論外だ。が問題はソコではない。 「もういっその事戦闘力下げます?」 安全性を考えるならソレが一番だろう。 「いや、その必要は無いだろう」 今の時点でニンゲンには勝てても、本物の人間を殺傷できるスペックは無い。 子供や、大人でも油断して不意打ちを受ければ危険かも知れないが、それは通常のドスや巨大ゆっくりでも変わらない。 ソコまで安全性を優先して戦闘力を削っては、群を統率する力さえ無くなってしまう。それでは意味が無い。 「それに、問題の本質はソコじゃないだろ」 畑荒らしのゆっくりを止めなかった事。強さよりもコッチの方が深刻なのだ。 規則を破ったゆっくりへの裁きよりも、同種である群のゆっくりの救出よりも、詭弁を並べてニンゲンに攻撃する事を優先した思考回路が問題だ。 人間に迷惑を掛けずに群のゆっくりを管理すると言う目的の為に与えた、人間の価値観と道徳心。 規則を遵守し、善悪を正しく判断する為に与えた知識と知能が、何故正常に働かないのかを調査して修正しなければ成らない。 「これは根気の要る作業になりそうだな……」 今回の実験の分析で分かる範囲の調整は行うが、もうしばらくは実験と調整の繰り返しに成るだろう。 「しかしなんで子供から優先的に殺したんでしょうかね?」 親の方には色々理屈を並べて時間を掛けた割に不自然だった。レイムを助ける為にニンゲンの親と接触した事は一応理解できるが、子供を攻撃した理由は何だろうか。 行動に関して、特にニンゲンへの攻撃の際や自身の正当性・正義に拘っていたと言うのに、子供を殺す時点の行動は動機的にも不可解な点が多かった。 子ゆっくりは助けようともしなかったし、これは見せしめは親レイム一匹で十分と考えた為かもしれないが。子供への攻撃理由には謎が多かった。 今までの実験ケースでも、子供への予期しない攻撃が行われた事も少なくなく、今回もやはり懸念されていた習性が現れてしまった形となった。 「自分の生い立ちに対するコンプレックス的なモノを抱えているのかも知れないな……」 実験に使ったレイム家族は片親だった。実験をやり易くする為に我々が選んだのだが、片親が何らかのキーワードとして働いているのかも知れない。 いや……偶然の一致か? 親と子の繋がり。今回用意したニンゲンも片親だった。通常とは異なる環境下でも親が子を見捨てる事無く育てている様を見る事で、自身の親の不在を拠り強く意識する可能性もある。 自分が孤独で生まれた事が、愛される子供への憎しみ、親と言う存在の行動に対して格別の興味を抱かせるのかもしれない。 この点に関しては次回以降も入念に観察する必要が有りそうだ。自身の出生に対する疑問や、不自然に高い知能と生まれ持って与えられた知識が、己のルーツへのより強い執着を生んでいるのだろう。 その辺に関する予備知識を加えてやれば、少しは行動に落ち着きが出るかもしれないと考えて、コンソールを叩き潜在意識へのインプリントを行う。 「おーい、何時までも無駄話してるんじゃない。次のセッティング終わったぞ。非献体を入れろ」 「まってくれ!ここまでやってから実働データを取りたいんだ…………よしっ回してくれ」 「黒ゆっくり、餡子脳セットアップ。メモリー初期化完了。起動準備出来ました。各部モニター正常!オールグリーンです。何時でもいけます!」 <<CASE-3225:虐待する人間が森に来た場合の対応>> 「黒ゆっくり………起動!!」 黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1951.html
前 真っ暗な闇の中。幾つかの美しい光が点滅している。私も隣の男も一言も言葉を交わすことは無い。 薄暗い研究室の中では新型のゆっくりの研究が行われていた。現在はその成果と成る試験体の稼動実験をモニターしている最中だ。 暫くして観察が終了し、室内に明かりが灯ると共に一息つく。伸びをする者や溜め息をつく者、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じて私も体をほぐす。 「うぐぐ・・・体が硬い。こっちがゆっくりに成っちまいそうだぜ」 世の中には協定を結んで人間と上手く共存しているゆっくりもいる。 必要なのは「優秀なリーダー」なのだ。 大抵の場合はドスが無能であるか、ドゲスの群である為に協定は瓦解してしまう。 そこで考え出されたのが、新しい強化種を開発する事であった。優秀なドスに変わる存在を人工的に作り出し、それを野生に撒くのである。 「思い通りには行かんもんだな」 既存の成体ゆっくりを教育していたのでは時間も手間も掛かる。しかも、群のリーダーにするには相応の戦闘力が無ければ不可能だ。 人間に従順・頭が良い・人間のルールを理解できて・群を統率可能……しかも低コストで量産可能である必要がある。 生まれた時点で本能として生体餡子脳に「群を統率し人間に迷惑を掛けない」事を刻まれた、既存の種よりも強力な戦闘力を有する新型ゆっくり。 自然繁殖出来ない様に生殖機能を持たず、生まれた時から成体並みの体と知能を与え、人間が一切関わる事の無い状態で自立稼動可能な固体。 「お~い、コッチ来い。反省会はじめっぞー」 反省会と言われたのは、今さっきの実験結果の分析と今後の対応策についての協議の事で、各部門の責任者が集まっている。残りは昼飯に出かけた。羨ましい。 <<CASE-2894:人間の畑を荒らしたゆっくりに対する対処>> 「放置した挙句にニンゲンを攻撃するとは驚きましたね」 「まさかココまで無能だとは………」 実験結果が思わしくない為か、皆の顔にも疲労の色が濃く滲んでいる。まるで朝飯以降なにも口にして居ないかの様な空腹感溢れる顔である。中には耐え切れずに腹を鳴らす者まで居て、事態の深刻さを物語っている。 「えー前回の報告どおり、生まれた直後の状態で森に放置しても、自身の生存に問題ないだけのサバイバリティーの獲得には成功しております」 「野生のレミリア種やフラン種との交戦記録でも勝率98%を記録しており、戦闘力・生存能力に関してはほぼ完成と言って差し支えないかと思われます」 報告をする男の視線は中を彷徨い焦点を結んでいない様に思われる。はやくなにかたべないとしんでしまうぞ。 「群の形成に関しても申し分有りません。移植したドス餡が十分に生かされているものかと」 ただ強いゆっくりと言うだけでは意味が無い。森に暮らすゆっくりを統率し、管理し、人間に危害を加えない様に教育する必要がある。 「一応群では人間に近づくな的なおきては有ったみたいですが……」 「残念ながら掟を破る質の低いゆっくりを教育する所までには至らなかった……か」 言う事を聞く優良な固体のみを群に残し、人間の畑を荒らす掟を守れないゲスゆっくりはふるいに掛けて放置する。 通常のドスの群ではソレでよい。しかし我々が開発している新種は、人間へ危害を加えない様に森のゆっくりを集めて管理する目的で作られている。 ゆっくりがゆっくりする為であれば、バカな固体が自滅するのは構わないだろうが、バカな固体が自滅する事自体が人間には迷惑なのだ。 ダメなゆっくりはしっかり教育するか、畑にお出掛けして自滅する前に群で駆除して貰う必要がある。 「今回のメインであった畑荒らし役のレイムに対する対応ですが、成功とは言いがたい内容です」 「だが畑荒らしの悪事は認識していた。失敗と言うほど悲観する内容でも無かったのではないか?」 「人間が先に見つけて虐待した為に、制裁を任せたと言う見方も出来る」 「だがその後の行動は、これは如何説明する?人間に襲い掛かっている様にも見えるが」 「しかし、擬体とは言えニンゲンが負けるとは予想外でしたね。もう少しニンゲンの知能、上げられませんか?幾らなんでも対応がお粗末だったと思うんですがね」 「無理言うな、幾ら記憶を上書きしているとは言ってもベースはレミリア種だぞ。そう簡単に知能が上がったら開発だって苦労しないっつーの」 戦闘力に関しては申し分ない。ゆっくりゃやゆふらんを上回り、尚且つ群を統率する所までは来ている。後は論理思考のパターンの調整なのだが…… 「破壊されたニンゲンは破棄ですよね!食っていいですか!?」 「落ち着け…ゆっくりの食い残しなんか食う気か。もうこれで終わるから昼食にしよう」 「とにかく、この行動の理由について早急に分析を行い、本能プログラムの改修案を検討する必要があるな。残りは午後だ、解散!」 回収した黒ゆっくりは専用の台座に固定されて何本ものメンテナンスケーブルが繋がれている。 餡子脳を記憶再生機に繋いで行動や思考を分析し、問題点を調査して次回への改良とするのだ。 何故そんな事をしたのか?どうして適切な行動を取らなかったのかを問いただして行く。目も口も動かさずに独白めいた音声が蓄音機へ記録され、再生用の箱から流れてくる。正直キモイ。 「それにしてもこいつ……自伝でも出版するつもりなんですかね?」 黒ゆっくりの独特の語り口調に失笑を堪えながら若い研究員が言ったが、私は少しも面白くは無かった。 これだけお膳立てしてやってるのに、目標の数値には程遠い統率力と稼働時間。今回も早々に問題を起こして実験終了だ。 アレが現実なら破壊されるか、よしんば人間を倒せてもその後に村人総出で山狩りになって壊滅するのは眼に見えている。 そもそも、畑に被害を出した時点で我々の要求仕様としては失格なのだ。少なくとも、発見した時点で即座にレイムを殺すべきだった。 「てっきりレイムに味方して人間と戦うのかと思ったんですがね」 今までのケースでは畑荒らしを目論んだゆっくりが人間に発見された場合、目の前の人間とゆっくりを比較して本能が勝ってしまい、ゆっくりを助けようと人間に襲い掛かった例もある。 今回の黒ゆっくりは虐待前に発見したにも関わらず行動を観察していた。畑荒らしを抑えるでもなく、レイムを助けるでもなく、虐待を止めるでもなく。 「うむ、おそらくだが、本能としてインプットした論理思考に影響を受けているのだろう」 本能でゆっくりを助けたり、人間に襲い掛かったりする事を防ぐ為に、今回のバージョンでは調整を加えていた。 種としての本能的な行動よりも、論理的に正しい事を優先して行動するように、行動原理と成る部分を強化したのだ。 「あぁ、それで正義の味方みたいな事をやりたがるんですかね?」 群を作って統率したりするのはドス種の本能部分を移植したので、ゆっくり的な思考が強く出てしまう傾向がある。 それを抑える為に、論理思考回路を組み込んで自身が正しいと判断した行為を優先する様にし、常に正しい存在であり続ける事を最優先とするのだ。 「自分からは先に手を出さなかったり、口上を述べたのも自分が悪の存在になる事を本能的に回避しての行動だと思われるな」 元々、人間のルールを破ったりしないようにする為に、自身の損得より優先的に守るように組み込まれた物なのだが。 手段と目的とが入れ替わって完全に偽善の言い訳に成ってしまっている。 「コイツの中では悪いのはレイムなのだろう。せかっく教えたルールを理解しない無能なヤツが悪いのだ」 無能なヤツを管理出来なかった時点で人間から見れば同罪なのだが、コイツにはそこら辺がまだ理解できてないらしい。自分さえ正しければ良いと言う自己中心的な思想が抜けきっていない。 「他者に対する正義の徹底、群のゆっくりの行動に関しての連帯責任の意識の欠如ですか」 「元々リーダーとしての責任感が薄い感はあるな」 移植したドスの本能で群を作っているが、本来ドスは沢山のゆっくりをゆっくりさせたい為に群を作るのだ。 しかし、群を管理して人間への危害を与えなくする為に、様々な本能を多数上書きして混ぜ加えた結果、ゆっくりさせるの部分を弱める事には成功したが、群のリーダーとしての責任感が薄まった可能性もある。 今の状態では群を作るのは殆ど自己満足のために近い。 だが、元々ドスに責任感があるかは疑問であるし、群を形成する習性だけ残れば良いのだ。教育や管理は論理的な思考を上書きする事で実現するしかない。 「まぁ今回のレイムは我々が実験の為に仕向けたのだからソレは良しとしよう」 「群の長として責任感全然感じてない所は良く無いっすけどね」 「むしろ重要なのは、レイム回収時に人間に危害を加えようとした所だ」 人間の里へ降りて来て、住居不法侵入しておいて正当防衛が主張できる理屈はない。仮に正当な理由があっても、人間を攻撃する様では困るのだが。 正当な理由を正常に判断出来ないのでは、幾ら道徳と倫理感の強化を施しても改善の見込みが無い。 「あくまで自分が悪者には成りたくないと言う心理は働いてるみたいですね」 「だがその為に理屈は殆ど詭弁のレベルだ。知能が低いのではなく自己正当化して満足してしまっている」 自分が正しい事、これから行う事が既に決まっており、その為に都合の良い正義設定を組み立てている。普通逆だ。 同属に対する復讐と言いながら、助ける事無く虐待を見ていた。 捕食についても、虐待を観察してた理由には成らないし、親のニンゲンに話しかけた事とも矛盾する。 「コイツ本当に自分はニンゲンよりマシだと思ってるんですかね?」 復讐・虐待の傍観・捕食の何れをとっても明らかに劣る。 「自分で説明してるだろ“自分の卑小さを紛らす為”だと」 「ソコまで自虐されると作った俺らに失礼ってもんですよ」 確かに、そうだ。コイツを素直に蔑む事が出来ないのは、本能レベルで組み込まれた思考プログラムの開発を我々が担当している事が関係している。 実験でコイツがアホな行動や、理解不能な臭い台詞を吐く度に、研究チームの痛い視線を感じる気がする。実際はそんな事も無いのだろうが、耐えられずに胃が痛くなる。 行動パターンは何も我々が担当したコア部分の論理回路のみだけではなく、予備知識として引き継ぐ餡子知能や、思考に使用される新型餡子の配合などの様々な要素の影響を受ける。 故に、我々のチームのみがココまで責任を感じる必要は無いのだろうが、正直もう耐えられそうにない。 「今回のポエム聞きました?もう爆笑でしたよ」 この男の能天気さが羨ましい。 「それより、好戦的な性格も問題だと思うが……どう見る?」 最終的にニンゲンに攻撃を行った直接的原因は、ニンゲンからの攻撃であったのだが。ソコに至る過程は明らかに誘導が見えた。 「レイムを取り戻すなら傍観していた理由は無いですよね?」 やはり、最初から攻撃が目的で接触したとしか思えない。 「ニンゲンにレイムの虐待を任せようとした線は?」 「いや、一思いに殺せとも言ってるし、その後の発言からもそれは考えられない」 助ける為でも殺すためでもない。レイムのことは如何でも良かったとしか思えない。 「やはり捕食?しかし人肉を求めるような設計では無い筈ですが」 「一応野犬対策とか、どんな環境でも生きられる様に雑食性にはしているがな」 群のゆっくりには人里へ降りるなと伝えてあるし、普段は餌を求めて組織的に里を襲う傾向も無い。 そもそも捕食目的であれば、もっと頻繁に人を襲う必要が有る。 普段は他の野生動物を狩っている可能性もあるが、その様な場面は報告されていない。見付からないだけなのか? それでも人間と敵対するリスクを犯して、あえて捕食対象とする理由も分から無い。 仮にニンゲンを餌として襲うとしても、もっと上手い手段は幾らでもあった。 自分から声を掛けたり、虐待を黙って見ていた行動の理由も、会話の目的も一切不明である。 そう考えると今回のケースが特殊で、正当防衛や捕食と言うのは単なる思い付きで口にしたに過ぎないと言う事なのか。 とりあえず人間が如何行動するか観察した後に、人間を排除し、レイムを回収する寸法だったのだろう。 群のゆっくりへの見せしめとして持ち帰るつもりだったと考えれば、虐待後に回収に動いた行動も考えられなくは無い。 「頭が痛いな……」 人間に歯向かうなど論外だ。が問題はソコではない。 「もういっその事戦闘力下げます?」 安全性を考えるならソレが一番だろう。 「いや、その必要は無いだろう」 今の時点でニンゲンには勝てても、本物の人間を殺傷できるスペックは無い。 子供や、大人でも油断して不意打ちを受ければ危険かも知れないが、それは通常のドスや巨大ゆっくりでも変わらない。 ソコまで安全性を優先して戦闘力を削っては、群を統率する力さえ無くなってしまう。それでは意味が無い。 「それに、問題の本質はソコじゃないだろ」 畑荒らしのゆっくりを止めなかった事。強さよりもコッチの方が深刻なのだ。 規則を破ったゆっくりへの裁きよりも、同種である群のゆっくりの救出よりも、詭弁を並べてニンゲンに攻撃する事を優先した思考回路が問題だ。 人間に迷惑を掛けずに群のゆっくりを管理すると言う目的の為に与えた、人間の価値観と道徳心。 規則を遵守し、善悪を正しく判断する為に与えた知識と知能が、何故正常に働かないのかを調査して修正しなければ成らない。 「これは根気の要る作業になりそうだな……」 今回の実験の分析で分かる範囲の調整は行うが、もうしばらくは実験と調整の繰り返しに成るだろう。 「しかしなんで子供から優先的に殺したんでしょうかね?」 親の方には色々理屈を並べて時間を掛けた割に不自然だった。レイムを助ける為にニンゲンの親と接触した事は一応理解できるが、子供を攻撃した理由は何だろうか。 行動に関して、特にニンゲンへの攻撃の際や自身の正当性・正義に拘っていたと言うのに、子供を殺す時点の行動は動機的にも不可解な点が多かった。 子ゆっくりは助けようともしなかったし、これは見せしめは親レイム一匹で十分と考えた為かもしれないが。子供への攻撃理由には謎が多かった。 今までの実験ケースでも、子供への予期しない攻撃が行われた事も少なくなく、今回もやはり懸念されていた習性が現れてしまった形となった。 「自分の生い立ちに対するコンプレックス的なモノを抱えているのかも知れないな……」 実験に使ったレイム家族は片親だった。実験をやり易くする為に我々が選んだのだが、片親が何らかのキーワードとして働いているのかも知れない。 いや……偶然の一致か? 親と子の繋がり。今回用意したニンゲンも片親だった。通常とは異なる環境下でも親が子を見捨てる事無く育てている様を見る事で、自身の親の不在を拠り強く意識する可能性もある。 自分が孤独で生まれた事が、愛される子供への憎しみ、親と言う存在の行動に対して格別の興味を抱かせるのかもしれない。 この点に関しては次回以降も入念に観察する必要が有りそうだ。自身の出生に対する疑問や、不自然に高い知能と生まれ持って与えられた知識が、己のルーツへのより強い執着を生んでいるのだろう。 その辺に関する予備知識を加えてやれば、少しは行動に落ち着きが出るかもしれないと考えて、コンソールを叩き潜在意識へのインプリントを行う。 「おーい、何時までも無駄話してるんじゃない。次のセッティング終わったぞ。非献体を入れろ」 「まってくれ!ここまでやってから実働データを取りたいんだ…………よしっ回してくれ」 「黒ゆっくり、餡子脳セットアップ。メモリー初期化完了。起動準備出来ました。各部モニター正常!オールグリーンです。何時でもいけます!」 <<CASE-3225:虐待する人間が森に来た場合の対応>> 「黒ゆっくり………起動!!」 黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける
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[登場人物] 長:片目のゆっくり。千匹を超えるゆっくりの群れの長。黒い。 参謀:パチュリー種。ゆっくりの群れの参謀。太い。 参謀補佐:キメェマル種。ゆっくりの群れの参謀補佐。キモい。 レイム マリサ 群れのゆっくりたち 村長 村人A 村人B 村人たち 語り──罪のあるなしに関わらず、理由にあるなしに関わらず、 人間かゆっくりかその他諸々が、死んだり死なれたり、 殺したり殺されたりするかもしれない。そんな、そういう、 そういったお話。どこにでもあるありふれたお話。 幕が上がる。舞台中央に粗末な箱がおいてある。遠くで鳥の鳴き 交わす声がする。森の近くである。 舞台上手からマリサ種が通りかかる。逆さにした帽子を器用に頭に載 せている。中には木の実や茸などの収穫物。採集の帰りのようだ。鼻歌 をしている様子から、たいそうな成果であったことがうかがえる。 上機嫌のために箱を大して気に留めず、チラリと視線を走らせて、 そのまま舞台袖へと行きかけ……視線を再び箱へと戻す。 首をかしげてしばし見つめるが、また前方へ向き直り帰路につく。 と思いきや、湧き出した好奇心に負け、帽子を置いて箱に走り寄る。 箱を開け、中をのぞき込む。 マリサ──一体これは何なのぜ? ゆぅ? ゆ、ゆゆっ?! マリサ、驚きの声を上げようとして、慌てて口をお下げで押さえる。 キョロキョロと辺りを見回し、舞台袖へと駆けていく。自分の帽子を 置き忘れるほど、気が動転している。 そこへ偶然現れたレイム。二匹は衝突する。 マリサ・レイム──ゆわっ! レイム──な、何、そんなに急いで? 全然ゆっくりしてないよ。 ゆっくりにあるまじき行為だね。 マリサ──(語気を荒らげて、しかし、声を潜めて)そんなことより 大変なのぜ、レイム! レイム──「そんなこと」なんて簡単に片付けないでね! マリサが ゆっくりしてなかったせいで、レイムの玉のようなお肌が 傷物にされるとこだったんだよ。 マリサ──いいから、ちょっと見るのぜ。見るのぜ。 レイム──そんな暇ないよ。れいむはこれからアリスとお忍びデート なんだよ。みんなに秘密のラブラブちゅっちゅ。ゆぷぷっ。 マリサ──既に秘密じゃなくなってるのぜ。とにかく! 見てみるのぜ。 重大事件なのぜっ。(とレイムを箱の方へ引っ張っていく) レイム──重大なはずないよ。レイムとアリスの愛の叙事詩よりもね。 レイム、マリサに促されて渋々と箱の中をのぞき込む。 中のものを認識し、コロンと後ろに倒れる。起き上がって声を上げ ようとする口を、マリサに押さえられる。マリサ、「しーしー」と静粛 を求めるジェスチャー。 レイム──(マリサに口を開放されて)なっ(大きな声だったので、 再び口を押さえられる) マリサ──起こしたら、まずいのぜ。 レイム──な、なんなの、あれ。ゆっくりできるけど、ゆっくりできないよ。 マリサ──マリサたちじゃ判断つかないのぜ。偉い人を呼んでくるのぜ。 レイム──偉い人? マリサ──取締役のゆっくり。誰かいないのぜ? レイム──(遠くを見て、気づく)ゆっ? マリサ──ゆっ? レイム──あっち、見て、マリサ。 マリサ──(指し示す方を向く)ゆっ、あれは。 レイム──間違いないよ。さんっ(呼びかけようとしてマリサに口を 押さえられる。静粛を求めるジェスチャーに、同じ動作を して同意を示す) 二匹──(小さな声で)さんっぼー。 レイムとマリサ、遠くにいる者の反応を見るが、気づくはずもない。 レイム──だめっ。 マリサ──あんな遠くで、こんな小さな声じゃ当たり前のぜ。 レイム──呼びに行こうっ。 二匹、小さな声で「参謀、参謀」と連呼しながら下手へ退場。 後には箱が残される。種々の鳥の声が鳴き交わされている。 上手よりこっそりと顔を出すゆっくりがいる。キメェマル種。群れの 参謀補佐である。 誰もいなくなったのを確認すると、サササッと箱に近寄り、のぞき込む。 参謀補佐──おお。これは、これは。美味しそうですね。 参謀補佐、左右に揺れたり、箱の周りを一回転したりとせわしない。 やがて向こうからの気配を察し、上手へ消える。 入れ替わるように下手からレイム・マリサ・参謀が現れる。 レイム──こっち、こっち。 マリサ──とにかく見てほしいのぜ。 参謀──目上の相手にはちゃんと敬語を使わないといけないわ、マリサ。 せめて「です・ます」を付けないと。 マリサ──とにかく見てほしいんですぜ。 参謀──……まあ、いいけれど。それにしてもさっきから何があったか 説明しないのはよくないわね。 レイム──箱があったんだよ。です。 マリサ──中にすごいものがあったのぜ。ます。 参謀──後で教育が必要ね。言葉の使い方も説明の仕方も。 マリサ──たくさん説明するより一回見た方がいいのぜ。 レイム──びっくりしていってね! 参謀──まったくもったいぶって。そんなに驚くようなことなのかしら。 参謀、箱の中をのぞき込む。そこにあるものを認識し、コロンと後ろ に倒れる。ぶつかりそうになった二匹は慌てて飛び退く。 参謀──な、なにあれ。 マリサ──やっぱり驚いたのぜ。 レイム──びっくりするよねー。 参謀──生きてる、のよね? マリサとレイム、コクコクとうなずく。参謀、箱の中を再びのぞき込む。 じっと見つめて分析。 参謀──血色は悪くない。呼吸も規則的。少し衰弱しているみたいだけど、 概ね健康ね。 レイム──元気? 参謀──どうかしら。(髪の毛で中のそれを突っつく) 火の付いたように赤ん坊の泣き声が響きわたる。三匹、慌てる。 レイム──あ、赤ちゃん泣いちゃったよ! マリサ──ゆっくりと同じなのぜ! うるさいのぜ! 参謀──ど、どうしよう。二人はあやしたりできないの? レイム──ゆっくりの赤ちゃんはしたことあるけど! マリサ──人間の赤ちゃんは無理なのぜ! 赤ん坊の泣き声はますます盛大になる。三匹はあたふたと箱の周りで 右往左往する。 参謀、意を決して箱の中へ顔を向ける。 参謀──(髪の房で顔を隠して)いないいない、バァーっ! 赤ん坊の泣き声、止まる。三匹、固唾を呑んで見守る。 赤ん坊が「ヒッ」と一瞬声を上げるのに、三匹はビクつくが、 その後「キャハハハ」と朗らかに笑う赤ん坊に、安堵の息をつく。 レイム──上手くいったね。 マリサ──上手くいったのぜ。 参謀──良かったわ。 レイム──ゆふふ、笑ってるよ。かわいいね。 レイムが赤ん坊に触れようとすると、「だぅだぅ」とやや怒った様子 の声が。レイム、慌てて離れる。 マリサ──威かくされてるのぜ。 参謀がのぞき込むと「キャハハ」と笑い声が上がる。 レイム──参謀のことが好きみたいだね。 マリサ──懐かれてるのぜ。お母さんだと思われてるのかも。 参謀──あら、そんなこと。 レイム──きっとおっきくて丸っこいママだったんだね! 参謀──(剣呑な雰囲気で)……どういうことかしら。 レイム──(参謀の怒気に気づかず)そのままだよ。ふくよかで、 ぽっちゃりした、存在感のある、ぶっちゃけおデブな お母さんだったんだよ。きっと参謀みたいな……(ようやく 殺気を察知する)ゆ、ゆゆっ?! 参謀──レ~イ~ム~。 レイム──レ、レイム、用事思い出したよ。さ、さ、さよならっ! 参謀──待ちなさいっ。 下手へ逃げるレイムを追いかける参謀。残されたマリサは下手と 箱を交互に見るも、二匹を追って退場していく。 誰もいなくなったのを見計らい、上手から参謀補佐が顔を出す。 入念にキョロキョロと視線を巡らせる。「行ったか?」の声に「はい」 と返事をする。 上手から、参謀補佐と長が登場。箱へと近づく。 長──これがそうか。 参謀補佐──ええ。見てください。 二匹、箱の中をのぞき込む。 「だーだー」と赤ん坊が楽しそうに声を上げる。 長──ふむ、参謀補佐の言った通りだな。 参謀補佐──でしょう。 長──とても美味しそうだ。 参謀補佐──はい。これだけ状態のいいものはありませんよ。 長──人間の赤ん坊を食べる機会などほとんどないからなあ。 まさに僥倖。天に感謝せねばなるまい。 参謀補佐──人間を食べること自体は珍しくはありませんけど、 ほとんどが成人ですからね。 長──肉の臭みや柔らかさを考えた場合、幼年と壮年では雲泥の差がある。 羊肉と同じだな。 参謀補佐──ええ。おお旨い旨い、となること間違い無しです。 長の舌を満足させることができそうで、お呼びしたかいが ありました。 長──口実だろう? 参謀補佐──え? 長──俺の舌を満足させるというのはさ。 参謀補佐──いやあ、まさかそんな…………やっぱりバレましたか。 長──そんな殊勝なキャラだったら、参謀補佐には据えてないさ。 常に薄汚い策謀を巡らしてくれないとな。そう、例えば、参謀に ごちそうを横取りされないように、より上の立場の黒ん坊を巻き 込むとかな。 参謀補佐──いやははは、参謀は見てのとおり、色気より食い気です からね。二人で山分けすると指先一本ほどしかもらえない かもしれませんし。それなら平等に三等分するのがいいか と考えまして。 長──(笑う) 参謀補佐──(笑う) 長──ネタとしては面白い。が、実際は笑えない事態になるかもな。 参謀補佐、首をかしげて言葉の真意を聞こうとするが、赤ん坊の むずがる声に長が顔を向けたので、そちらにつられる。 長──おやおや、放っておくわけにはいかないか。参謀補佐、頼む。 参謀補佐──私があやすんですか? 長──俺の魅力は幼女にはわからないだろうしな。 参謀補佐──その件に関してのコメントは控えさせてもらいますが…… まあ、子供をあやすことについてはお任せください。 参謀補佐、箱に向かって身構える。自信をうかがわせる笑み。 参謀補佐──(顔を伏せて)いないいない……おお、怖い怖い(きめぇ 丸シェイク)。 火の付いたように泣き出す赤ん坊。大音響が辺りに満ちる。 参謀補佐──あ、あれ。おかしいですね。子供たちには人気だったの ですよ、肝試し大会で。 長──その特長がいかんなく発揮されたな。 参謀補佐、慌てふためいて何とかしようとするが、どうにもできない。 やがて騒ぎを聞きつけたのか、参謀・レイム・マリサが戻ってくる。 レイム──あっ、長だ。 マリサ──参謀補佐もいるのぜ。 参謀──二人とも、何をやってるんですか! 長──いや、大したことじゃない。参謀補佐のキモくてウザい魅力を たーんと味わってもらおうと思ってな。 参謀補佐──幼女にはわからなかったようですがねぇ。おお、無理解 無理解。 参謀──ふざけたこと言わないでください! まったく、トラウマに なったらどうするんですか。(赤ん坊をあやしにいく) 参謀補佐──そんな先のこと気にしてどうするんですかね。 参謀、赤ん坊を髪の房で撫でながら、「よしよし」と笑顔を向ける。 ほどなくして、赤ん坊の泣き声は止み、笑い声が上がる。 長──見事な扱いだ。 レイム──やっぱりお母さんみたいだね。 参謀──それじゃあお湯を用意して身体を洗いましょうか。 参謀補佐──下ごしらえですか。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──ああ、それから傷があったりしたら、薬草も必要ね。 参謀補佐──香味野菜で風味を付けるのですね。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──とにかく慎重に、丁重にね。 参謀補佐──ん? ええと? あれ? まさか、飼う気なんですか? 参謀──飼うって、そんな言い方はないでしょう。保護するだけよ。 参謀補佐、うろたえて長のの方を見る。長、「言ったとおりだろう」 とでもいうように皮肉な笑みを浮かべる。 マリサ──長も参謀補佐もどうかしたのかぜ。 長──出荷するはずの豚がペットになってしまって動揺しているのさ。 参謀、ジロリと長を見る。長、身をすくめる。 参謀──それから、この子、多分お腹もすいているだろうから、ミマ種 にお願いして練乳をもらってきた方がいいわね。 長──そうだな、腹も減ったし、クリームの他に塩と酢も用意しようか。 参謀──おしゃぶりとか必要かしら。それともおもちゃとか、子守唄? 長──よく加熱した油とか入り用かな。あるいは刺身とか、ユッケ? 参謀、キッと長をにらむ。長、即座に飛び退く。 参謀──あら、どうして距離を取るんです? 私から。 長──いや、一定以上離れてないと極めて危険だと、本能が告げるんだ。 参謀──そうですか。 長──そうなんだ。 参謀──うふふ。 長──ははは。 参謀はにじり寄り、長は後ろに下がる。どちらからともなく駆け出し、 そのまま舞台上手へと退場。 参謀補佐──あー……。 レイム──行っちゃったねー。 マリサ──どうするのぜ、これ(赤ん坊を見る)。 参謀補佐──とりあえずは参謀の言われた通りにしましょう。 マリサ──参謀補佐はそれでいいのぜ? 参謀補佐──構いませんよ。長には考えがあるようですし。ああ、それと。 レイム──ゆ? 参謀補佐──先ほどから二人は敬語を使わなすぎです。罰が付きますよ。 レイム・マリサ──ゆがーん! 参謀補佐──さあさ、赤ん坊を運んでください。それからバシバシ働い てもらいますからね。それら労役が罰となります。 レイム──た、ただ働きっ?! 参謀補佐──当然です。 マリサ──トホホのぜ。 レイム──ゆぅん、とんだものを見つけちゃったよ。 レイムとマリサ、箱を運んで参謀補佐の後をついていく。三匹、舞台 下手へと退場。 やや間をおいて、長と参謀が舞台上手から戻ってくる。軽快に動く長 に対して、参謀は息を切らしている。 参謀──ゼェ……ハァ……。 長──頭脳労働タイプとはいえ、もう少しは体力の欲しいところだな。 参謀──ハァ、これでも、ハァ、パチュリー種の、ハァ、中では… 長──「これでもパチュリー種の中では体力はあるほうです」か。 それで良しとするわけにはいかんよ。お前さんは群れを治める 立場なのだからな。 参謀──ハァ、ハァ、そ、そうですか。 長──そうさ。いざというときには不眠不休で群れ全体の動きを把握し、 指示を出さなくてはならない。自ら戦う事態だってあるだろう。 参謀──それは、まあそうですけれど。 長──自分の立場、わかっているかい? 参謀──ええ。 長──嘘をつけ。 参謀、息を呑む。長、隻眼を細めて参謀を見つめる。 長──飼育、保護、育児。呼び方は何でも構わないが、お前さんはどう いう意図で、あの幼児を扱おうとしているのかな。 参謀──私は、その、 長──たくさんのゆっくりが死んだなあ。特に幼齢の。特にパチュリー 種の。救えなくて後悔している。反省している。悲しんでいる。 参謀、言葉を返そうとして返せない。口を意味なく開閉するだけ。 長──人間の幼児を救うことで、自分の気持ちを救おうというのかな? それでは、その結果は如何なるものになるのか見えているかい? 死んだゆっくりの死因は食料が足りないことからくる栄養失調。 あの幼児が捨てられた理由も食糧難からだろう。事情はどこも 同じだからな。 参謀──余裕は、ない…… 長──ああ、手間も食料もちょっとでも割けば、それだけゆっくりも 死ぬという理屈さ。お前さんは自分を救うために、より自分を 追い詰める行動をすることになるな。火あぶりになっている自分 を助けるために必死で息を吹きかけて、より火勢を強めるような ものだ。 長、軽く笑う。参謀、顔を伏せる。 長──自分一人だけが不利益を被るならまだいいが、群れ全体が不利益 になることをやらかされたのではたまらないな。いやはや、全く。 私情を公務に絡めるのを一概に悪いとは言わないがね、群れの 方針に反するのは勘弁願いたい。統制が取れなくなる。それも 参謀がやらかしてしまうのはね。 長、顔を伏せたままの参謀を見つめる。沈黙。 長、その場から離れてゆく。背中越しに参謀に話しかける。 長──わかっているかい? いや、どうあれわかってもらうよ。赤ん坊 の処遇、お前さんが決定してくれ。それがお前さんの課題になる。 いや、罰かな。 長、舞台下手へと去る。舞台が暗くなり、残された参謀に光が当てら れ、やがて参謀が静かに顔を上げるところで暗転。 暗転の中、ゆっくりたちの足音が聞こえてくる。 溶明。 舞台中央、赤ん坊の収められた箱を、マリサとレイムが頭に載せて運 んでいる。 レイム──(息を切らしながら)ゆふぅ、ゆふぅ。 マリサ──(息を切らしながら)ぜぇ、なのぜぇ。 レイム──あ、あとどれくらいなのぉ? マリサ──さ、さっきの山を越えたから、多分もう少し掛かるのぜ。 レイム──たっ大変だよぉ。マリサ、ちゃんと持ってるぅ? マリサ──持ってるのぜ。レイムこそちゃんと合せるのぜ。 箱が揺れ、二匹は慌てる。何とか落ち着き、再び歩を進める。 レイム──ゆぅ、中身がキノコとか果物だったら良かったのに。この倍 くらいの重さでもいいよ。さっきのイノシシでもね。 マリサ──ホントのぜ。気を遣うから疲れるのぜ。 レイム──揺らしちゃダメだよ、マリサ。 マリサ──モチのロンのぜ。万一泣かせでもしたら、太っちょママさん から折檻のぜ。 上手から現れる参謀。レイムとマリサは気づかず、談笑を続ける。 レイム──怒りの「ぼでぇーぷれす」が炸裂するかもね。 マリサ──母の愛は重いのぜ。 レイム──ペタンコになっちゃうよ。 マリサ──甘いのぜ。あの大きさと重さだったら、ペタンコどころか、 跡形も残らないのぜ。 レイム──おお、こわいこわい。 マリサ──こわいこわいのぜ。 二匹、笑う。 参謀──(二匹の近くで)何が怖いのかしら。 レイムとマリサ、突然の参謀の声に驚く。箱を落としそうになるのを 見て、参謀も驚く。三匹して箱を支え、事なきを得る。 レイム──ゆふぅ~。 マリサ──間一髪のぜ。 参謀──(胸をなでおろす) レイム──まったく参謀は、脅かしっこ無しだよ! 参謀──あなたたちが原因でしょう。気持ちが浮ついてるわよ。 マリサ──はい、のぜ。 レイム──ごめんなさい。 参謀──自分たちの任務、理解しているのかしら。 レイム──それはもちろんだよ! みんなで遠足! 参謀──集団で遠征よ。訓練なの。探索も兼ねてるわね。大した理由な く群れが動くはずないでしょ。 マリサ──物資の円滑な運搬も理由の一つのぜ。 参謀──そうよ。あなたはわかっているみたいね。 マリサ──でも、さすがに疲れたのぜ。運ぶの、さっき仕留めたイノシ シじゃダメかなのぜ? 参謀──ダメよ。あなたたちは「それ」の専属。今回の遠征がなければ 運ばなくって良かったものだけど。 マリサ──トホホ。 レイム──それにしてもイノシシさんが襲ってくるなんてね。 参謀──よほどお腹が空いていたみたいね。横から最後尾のゆっくりを 狙ってきたのは驚いたわ。 レイム──返り討ちにしたけどね。逆にこっちの食料が増えることにな ったよ。 参謀──ヨダレ、出ているわよ。 レイム──ゆぅっ!(ヨダレをふく)仕方ないよ! だってお腹すいた んだもの。(箱を見て)これがお弁当だったらなあ。 参謀──指の先さえかじらないようにね。長の意向は「生きる価値の無 い人間以外はできるだけ食べない」だから。 マリサ──うーっ、マリサも腹減ってきたのぜぇ。イノシシ食いたいのぜぇ。 レイム──イノシシさーん、早くレイムのお腹に飛び込んで来てね! 早くていいよ! 舞台上手から巨大なイノシシの頭がヌゥと現れる。 レイム──ゆぎゃぁああああ! マリサ──な、何なのぜ?! 参謀──(口をあんぐり開けている) イノシシの首を棒にくくって掲げた参謀補佐が登場。 参謀補佐──失礼ですねえ。そんなにキモいですか、私の顔。 参謀──あなただったの。何やってるの? 参謀補佐──さっきイノシシの血抜きが終わったんですよ。で、首の の方は先頭に持っていけと、長が。 マリサ──長が? レイム──何で? 参謀補佐──さあ。参謀は見当つきますか? 参謀──いいえ、あんまり。 参謀補佐──そうですか。まあ命令ですから、ともかくも先頭に行って きます。では失礼。おお、重い重い。 参謀補佐、舞台下手へと去る。 レイム──ゆぅう、びっくりしたよ。突然生首が出てくるんだもん。 マリサ──いや、レイムも生首なのぜ。 レイム──イノシシさんは別腹なんだよ! 参謀──別腹……? 参謀補佐──あ、言い忘れてました。 参謀補佐、唐突に舞台下手から再登場。やはりイノシシの首と一緒に 現れたので、三匹は驚きの声を上げる。 参謀補佐──赤ん坊、列の最後尾より更に後ろに控えさせといてください。 参謀──え? 参謀補佐──長からの命令、その二です。いえ、これからちょっと騒が しくなるのでね、赤ん坊が泣いてはいけませんから。では、 改めまして、失礼。 参謀補佐、舞台下手へと退場。三匹、顔を見合わせる。暗転。 暗闇の中、ザワザワと交わされる声。 スポットを当てられた参謀補佐、舞台上手から登場。あちこちに視線 を巡らせながら中央へ向かって移動していく。 参謀補佐──ふむふむ。なるほど、面白い。四方を険しい山々で隔絶さ れた集落は特有の風習なり何なりがあると言いますが、そ ういった雰囲気にあふれてますね。見れば見るほど面白い。 これは来たかいがありました。 参謀補佐、あちこちに向けていた視線を前に固定。 参謀補佐──あ、どうもどうも。所要ありまして、遅れてすみません。 参謀補佐のキメェマルです。 溶明。村の中。参謀と参謀補佐、箱に寄り添うレイムとマリサがいる。 向かい合って、村長他、村人たち。 村人A──いやあ、ようこそおいでくださいました、このようなヘンピ な村に。何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていっ てください。 参謀補佐──ええ、ありがとうございます、村長さん。 参謀──(村人Aの隣を示し)村長はこちらの方。 参謀補佐─あ、すみません。ずいぶんとお若いので。 村長──みんな若いですけどね。 一同笑い。 村長──(キメェマルを見て)それで、この方が群れを治めて? 参謀──いえ、群れの長は別にいて……参謀補佐、長は? 参謀補佐──ちょっと花摘みに。 レイム──この辺りにお花畑があるの? レイムも行きたいよ! マリサ──タンポポとかチューリップとか美味しいのぜ! 参謀──どちらもこの季節、咲いてないわよ。それにそういうこと じゃなくてね…… 参謀補佐──便所です。うんうんです。 参謀──もうちょっとデリカシー! あからさま過ぎるでしょ! マリサ──ブリブリ、モリモリのぜ。 レイム──おお、臭い臭い。 参謀──あなたたちも乗らない! 村長──あははは、にぎやかでよろしいことですね。 参謀──すみません。すぐ出ていきますから。 村人A──遠慮は要りませんよ。休まれていかれては? 参謀──訓練の途中に立ち寄っただけですから。それにあれだけの数 がぞろぞろ入ってきたらやはり迷惑でしょう。 村人B──いえいえ、そんなことは。 参謀──それに先ほど狩りをして気が立ってますし。 村長──ああ、あのイノシシですか。立派なものですねえ。あんな巨大 な獣とやりあって無事だったんですか? 参謀補佐──負傷者はゼロですね。 村長──ほほぉ。 参謀補佐──楽々とはいきませんでしたけど。 村長──ああ、それで気が立っている。さっきの歌も? 参謀補佐──凱歌のことでしょうか。やかましくてすみません。テンシ ョン上がりまくってるのですよ。 村人A──いやあ、久しぶりに威勢のいいのを聞けて、活気が出ます。 参謀──そう言っていただけるとありがたいです。ところで例の件なの ですが。(箱を見る) 村長──ええ、それはもちろんお任せください。皆様の温かい気持ちを 十二分に理解した上で、丁重に扱わせていただきます。 参謀──よろしくおねがいします。では、私たちはこれで帰ります。 村長──はい、道中お気をつけください。 参謀──ありがとうございます。 参謀補佐──もう来ることはないとは思いますが、いつでも気にかけて ますよ。 村人B──はい。ではごきげんよう。 レイム──じゃーねー。赤ちゃんにも、じゃーねー。(と箱に向かって 投げキッス) マリサ──(背を向けて)さよならは言わないのぜ。(振り向いて)グ ッバイなのぜ。 村人A──さようならー。 箱を残し、参謀たちが舞台上手へと退場。 村人たち、相手が立ち去るのを見届けてから箱に駆け寄る。中をのぞ く目の光は、異様な輝き。 暗転。 暗闇の中、鳥の泣き交わす声が次第に聞こえてくる。 舞台中央にサス、その下で長と参謀補佐が話をしている。 参謀補佐──ところで、何故に立会いの場に来られなかったので? 長──適当な場所が見つからなくてね。 参謀補佐──花摘みの? 長──花摘みの。いやあ、催しながら探すのは苦労したよ。 参謀補佐──そこらでしてくれば良かったのでは。 長──乙女に対し、それはないだろう。群れの代表としての品位も問われる。 参謀補佐──はあ、品位、ですか。 長──何か言いたそうだな。まさか俺には品位の欠片もないとか? 参謀補佐──いえ、あえて何も言いませんが。ところで『悪魔の証明』 って知ってます? 長──酷い言われようだ。 参謀補佐──で。 長──ん。 参謀補佐──実際のところは何をしておられたので? 長──村の中を探索させてもらってた。 参謀補佐──あのまま一人で行ってしまわれたのですか。ずるいです ねえ。次は私も誘っていただけますか。 長──単独の方が都合良くてな。今回は土産話で勘弁してくれ。 参謀補佐──面白いものが見つかりましたか。 長──うん。牛舎を覗いてきたんだが、ゆっくりの皮があった。きれい にはぎ取られていたよ。 参謀補佐──おお、怖い怖い。私たちも食べられていたかもしれませんねえ。 長──それを防ぐための示威行為さ。あれだけ物々しくやれば、うかつ に手は出せないだろう。こちとら曲がりなりにも妖怪だしな。 参謀補佐──わざとらしいくらいに有効的な態度を見せていましたね。 他には何を見つけましたか。 長──めぼしい物はそれくらいだな。 参謀補佐──それだけですか。 長──事物は一つでも、見方によってはいくらでも深く、面白くなるさ。 お前さんはあの村に何を見た? 参謀補佐──村長を見間違えてしまいました。 長──見間違えたか。……よく見ているな。 参謀補佐──ええ、皆さんお若く、そして似たようなお顔でした。 長──つまりは。 参謀補佐──近親婚がかなり深刻ですね。そりゃ早死にもしますよ。 血が濃すぎるんです。 長──クローン並みに同じ造形にもなるしな。 参謀補佐──けれど、赤ん坊は重宝されるでしょうね。新しい血です。 村の延命には欠かせない存在となるのですから。ただ、複 数相手の性交を強制される可能性はあるのですけど。 長──その可能性はあるな。別の可能性も考えられるが。 参謀補佐──平穏無事、幸福満点な人生ですか? 長──心にも無いことをスラスラ言うのは感心しないな。 参謀補佐──おお、非礼、非礼。それは長の特権でしたね。 長──そういうことだ。で、話を戻すがな、先ほど述べたゆっくりの皮、 参謀補佐──何です? 長──内側にべっとりと人間の血がついていた。既に黒く固まっていたが。 参謀補佐、意味を推し量るように怪訝な顔をするが、やがてあることに思い当たり、目を見開く。 参謀補佐──まさか。 長──何だと思う。 参謀補佐──『牛の首』の飢饉バージョン。 長──ああ、恐らくそうだ。 参謀補佐──参りましたね。しかし、そうだとしたら、赤ん坊がやがて 祭りの中心となったとしたら、 長──村人たちの腹の足しになるだろうな。十分ありうることだろう、 なにせ誰しもがお腹と背中をくっつけてる状態だ。 参謀補佐──我々が饅頭の群れとして襲われることは警戒していました が、これはなんともはや…… 長──ま、いずれにせよ俺たちの手を離れたんだ。どうにもならんし、 どうでもいいさ。 参謀補佐──参謀は、 長──うん? 参謀補佐──参謀は知っているのでしょうか。もしくは感づいて? それとも何も、 長──理解しているさ。 長の言葉と同時に、舞台上手側に新たなサス。その下に参謀。遠くを 見ている。 長──していないはずがない。俺の下で働き、お前さんの上に立ってい る彼女だぞ。ナマナカな目なぞ持っとらんよ。今話したこと程度 は、他の材料からでも察知しきってるさ。 参謀補佐──それでいながらあの態度を……そんな、本当に? 長──お前さんと同じでとぼけてるのさ。知った上で知らない態度を取 っている。大したポーカーフェイスだよ。無論、そうでもなけれ ば、参謀は務まらないとも言えるが。 参謀補佐──因果な立場ですねぇ。 長──他者の人生に気を遣えるほど、こちらに余裕はない。割り切るし かないさ。 参謀補佐──参謀は割り切りましたか。 長──表面だけでなく、心の奥においてまで、か? さあな。しかし、 最後には必ず割り切るさ。そうしなければいけないことは理解 しているんだ、参謀という立場にふさわしくな。 参謀補佐──(間)因果な立場ですねぇ。 長──ま、ともかく、今は仕留めたイノシシに舌鼓を打とう。久しぶり のごちそうだ。参謀補佐も楽しみだろう。 参謀補佐──中身、イノシシのままでしょうね。 長──保証はしかねるな。 長と参謀補佐が笑い合う中、ゆっくりと二匹に当たるサスが消えてゆく。 参謀、遠くを見つめている。やがて、静かに正面に向き直る。 ──幕── 黒ゆっくり9(了) 過去作 黒ゆっくり1 fuku2894.txt 黒ゆっくり2 fuku3225.txt 黒ゆっくり3 fuku4178.txt 黒ゆっくり4 fuku4344.txt 黒ゆっくり5 fuku5348.txt(改訂版 fuku5661.txt)(改々訂版 74.txt・yy0248.txt・8.txt) うやむや有象無象 fuku5493.txt 黒ゆっくり6 fuku5662.txt 樽の中のれいむ fuku6569.txt 都市の一角で fuku6886.txt 黒ゆっくり7 75.txt・yy0249.txt・10.txt 黒ゆっくり7注解? 76.txt・yy0250.txt・11.txt われときて anko792 空気嫁(がすわいふ) slowslow539.txt 空気嫁(がすわいふつう゛ぁい) slowslow562.txt 逝久璃 anko928 かつて一つの群れだったゆっくり達が2つに分かれ、反目しあう話 27.txt 爆発 28.txt 昔、お話、昔の話 anko1144 超餡子脳 ~序章にして終章~ anko1163 ファイアボール第X話「隔離」 33.txt 空気嫁3(がすわいふどらい) slowslow589.txt 空気嫁4(がすわいふふぃーあ) slowslow623.txt 透明な箱 48.txt 厨二病の俺がゆうかにゃんの群れをプロレス技で虐殺する anko2117 とりあえず なにはともあれ ゆうかにゃんぺろぺろ anko2178 酒と何かと男と女(ゆうかにゃん) anko2273 けっきょくやっきょく大冒険 anko2307 裏島太郎 60.txt アイソーポス物語 anko2675 空気嫁5(がすわいふふゅんふ) slowslow736.txt 黒ゆっくり867.txt ゆっくりアメジョ anko3390 ゆっくりアメジョ2 anko3399 ゆっくりアメジョ3 anko3437 ゆっくりアメジョ4 anko3494 ゆメジョ 69.txt ふたば系ゆっくりいじめ 260 油を使ってゆっくりを燃やすテーマで一本(*お題を与えられて一時間で書いたもの)
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[登場人物] 長:片目のゆっくり。千匹を超えるゆっくりの群れの長。黒い。 参謀:パチュリー種。ゆっくりの群れの参謀。太い。 参謀補佐:キメェマル種。ゆっくりの群れの参謀補佐。キモい。 レイム マリサ 群れのゆっくりたち 村長 村人A 村人B 村人たち 語り──罪のあるなしに関わらず、理由にあるなしに関わらず、 人間かゆっくりかその他諸々が、死んだり死なれたり、 殺したり殺されたりするかもしれない。そんな、そういう、 そういったお話。どこにでもあるありふれたお話。 幕が上がる。舞台中央に粗末な箱がおいてある。遠くで鳥の鳴き 交わす声がする。森の近くである。 舞台上手からマリサ種が通りかかる。逆さにした帽子を器用に頭に載 せている。中には木の実や茸などの収穫物。採集の帰りのようだ。鼻歌 をしている様子から、たいそうな成果であったことがうかがえる。 上機嫌のために箱を大して気に留めず、チラリと視線を走らせて、 そのまま舞台袖へと行きかけ……視線を再び箱へと戻す。 首をかしげてしばし見つめるが、また前方へ向き直り帰路につく。 と思いきや、湧き出した好奇心に負け、帽子を置いて箱に走り寄る。 箱を開け、中をのぞき込む。 マリサ──一体これは何なのぜ? ゆぅ? ゆ、ゆゆっ?! マリサ、驚きの声を上げようとして、慌てて口をお下げで押さえる。 キョロキョロと辺りを見回し、舞台袖へと駆けていく。自分の帽子を 置き忘れるほど、気が動転している。 そこへ偶然現れたレイム。二匹は衝突する。 マリサ・レイム──ゆわっ! レイム──な、何、そんなに急いで? 全然ゆっくりしてないよ。 ゆっくりにあるまじき行為だね。 マリサ──(語気を荒らげて、しかし、声を潜めて)そんなことより 大変なのぜ、レイム! レイム──「そんなこと」なんて簡単に片付けないでね! マリサが ゆっくりしてなかったせいで、レイムの玉のようなお肌が 傷物にされるとこだったんだよ。 マリサ──いいから、ちょっと見るのぜ。見るのぜ。 レイム──そんな暇ないよ。れいむはこれからアリスとお忍びデート なんだよ。みんなに秘密のラブラブちゅっちゅ。ゆぷぷっ。 マリサ──既に秘密じゃなくなってるのぜ。とにかく! 見てみるのぜ。 重大事件なのぜっ。(とレイムを箱の方へ引っ張っていく) レイム──重大なはずないよ。レイムとアリスの愛の叙事詩よりもね。 レイム、マリサに促されて渋々と箱の中をのぞき込む。 中のものを認識し、コロンと後ろに倒れる。起き上がって声を上げ ようとする口を、マリサに押さえられる。マリサ、「しーしー」と静粛 を求めるジェスチャー。 レイム──(マリサに口を開放されて)なっ(大きな声だったので、 再び口を押さえられる) マリサ──起こしたら、まずいのぜ。 レイム──な、なんなの、あれ。ゆっくりできるけど、ゆっくりできないよ。 マリサ──マリサたちじゃ判断つかないのぜ。偉い人を呼んでくるのぜ。 レイム──偉い人? マリサ──取締役のゆっくり。誰かいないのぜ? レイム──(遠くを見て、気づく)ゆっ? マリサ──ゆっ? レイム──あっち、見て、マリサ。 マリサ──(指し示す方を向く)ゆっ、あれは。 レイム──間違いないよ。さんっ(呼びかけようとしてマリサに口を 押さえられる。静粛を求めるジェスチャーに、同じ動作を して同意を示す) 二匹──(小さな声で)さんっぼー。 レイムとマリサ、遠くにいる者の反応を見るが、気づくはずもない。 レイム──だめっ。 マリサ──あんな遠くで、こんな小さな声じゃ当たり前のぜ。 レイム──呼びに行こうっ。 二匹、小さな声で「参謀、参謀」と連呼しながら下手へ退場。 後には箱が残される。種々の鳥の声が鳴き交わされている。 上手よりこっそりと顔を出すゆっくりがいる。キメェマル種。群れの 参謀補佐である。 誰もいなくなったのを確認すると、サササッと箱に近寄り、のぞき込む。 参謀補佐──おお。これは、これは。美味しそうですね。 参謀補佐、左右に揺れたり、箱の周りを一回転したりとせわしない。 やがて向こうからの気配を察し、上手へ消える。 入れ替わるように下手からレイム・マリサ・参謀が現れる。 レイム──こっち、こっち。 マリサ──とにかく見てほしいのぜ。 参謀──目上の相手にはちゃんと敬語を使わないといけないわ、マリサ。 せめて「です・ます」を付けないと。 マリサ──とにかく見てほしいんですぜ。 参謀──……まあ、いいけれど。それにしてもさっきから何があったか 説明しないのはよくないわね。 レイム──箱があったんだよ。です。 マリサ──中にすごいものがあったのぜ。ます。 参謀──後で教育が必要ね。言葉の使い方も説明の仕方も。 マリサ──たくさん説明するより一回見た方がいいのぜ。 レイム──びっくりしていってね! 参謀──まったくもったいぶって。そんなに驚くようなことなのかしら。 参謀、箱の中をのぞき込む。そこにあるものを認識し、コロンと後ろ に倒れる。ぶつかりそうになった二匹は慌てて飛び退く。 参謀──な、なにあれ。 マリサ──やっぱり驚いたのぜ。 レイム──びっくりするよねー。 参謀──生きてる、のよね? マリサとレイム、コクコクとうなずく。参謀、箱の中を再びのぞき込む。 じっと見つめて分析。 参謀──血色は悪くない。呼吸も規則的。少し衰弱しているみたいだけど、 概ね健康ね。 レイム──元気? 参謀──どうかしら。(髪の毛で中のそれを突っつく) 火の付いたように赤ん坊の泣き声が響きわたる。三匹、慌てる。 レイム──あ、赤ちゃん泣いちゃったよ! マリサ──ゆっくりと同じなのぜ! うるさいのぜ! 参謀──ど、どうしよう。二人はあやしたりできないの? レイム──ゆっくりの赤ちゃんはしたことあるけど! マリサ──人間の赤ちゃんは無理なのぜ! 赤ん坊の泣き声はますます盛大になる。三匹はあたふたと箱の周りで 右往左往する。 参謀、意を決して箱の中へ顔を向ける。 参謀──(髪の房で顔を隠して)いないいない、バァーっ! 赤ん坊の泣き声、止まる。三匹、固唾を呑んで見守る。 赤ん坊が「ヒッ」と一瞬声を上げるのに、三匹はビクつくが、 その後「キャハハハ」と朗らかに笑う赤ん坊に、安堵の息をつく。 レイム──上手くいったね。 マリサ──上手くいったのぜ。 参謀──良かったわ。 レイム──ゆふふ、笑ってるよ。かわいいね。 レイムが赤ん坊に触れようとすると、「だぅだぅ」とやや怒った様子 の声が。レイム、慌てて離れる。 マリサ──威かくされてるのぜ。 参謀がのぞき込むと「キャハハ」と笑い声が上がる。 レイム──参謀のことが好きみたいだね。 マリサ──懐かれてるのぜ。お母さんだと思われてるのかも。 参謀──あら、そんなこと。 レイム──きっとおっきくて丸っこいママだったんだね! 参謀──(剣呑な雰囲気で)……どういうことかしら。 レイム──(参謀の怒気に気づかず)そのままだよ。ふくよかで、 ぽっちゃりした、存在感のある、ぶっちゃけおデブな お母さんだったんだよ。きっと参謀みたいな……(ようやく 殺気を察知する)ゆ、ゆゆっ?! 参謀──レ~イ~ム~。 レイム──レ、レイム、用事思い出したよ。さ、さ、さよならっ! 参謀──待ちなさいっ。 下手へ逃げるレイムを追いかける参謀。残されたマリサは下手と 箱を交互に見るも、二匹を追って退場していく。 誰もいなくなったのを見計らい、上手から参謀補佐が顔を出す。 入念にキョロキョロと視線を巡らせる。「行ったか?」の声に「はい」 と返事をする。 上手から、参謀補佐と長が登場。箱へと近づく。 長──これがそうか。 参謀補佐──ええ。見てください。 二匹、箱の中をのぞき込む。 「だーだー」と赤ん坊が楽しそうに声を上げる。 長──ふむ、参謀補佐の言った通りだな。 参謀補佐──でしょう。 長──とても美味しそうだ。 参謀補佐──はい。これだけ状態のいいものはありませんよ。 長──人間の赤ん坊を食べる機会などほとんどないからなあ。 まさに僥倖。天に感謝せねばなるまい。 参謀補佐──人間を食べること自体は珍しくはありませんけど、 ほとんどが成人ですからね。 長──肉の臭みや柔らかさを考えた場合、幼年と壮年では雲泥の差がある。 羊肉と同じだな。 参謀補佐──ええ。おお旨い旨い、となること間違い無しです。 長の舌を満足させることができそうで、お呼びしたかいが ありました。 長──口実だろう? 参謀補佐──え? 長──俺の舌を満足させるというのはさ。 参謀補佐──いやあ、まさかそんな…………やっぱりバレましたか。 長──そんな殊勝なキャラだったら、参謀補佐には据えてないさ。 常に薄汚い策謀を巡らしてくれないとな。そう、例えば、参謀に ごちそうを横取りされないように、より上の立場の黒ん坊を巻き 込むとかな。 参謀補佐──いやははは、参謀は見てのとおり、色気より食い気です からね。二人で山分けすると指先一本ほどしかもらえない かもしれませんし。それなら平等に三等分するのがいいか と考えまして。 長──(笑う) 参謀補佐──(笑う) 長──ネタとしては面白い。が、実際は笑えない事態になるかもな。 参謀補佐、首をかしげて言葉の真意を聞こうとするが、赤ん坊の むずがる声に長が顔を向けたので、そちらにつられる。 長──おやおや、放っておくわけにはいかないか。参謀補佐、頼む。 参謀補佐──私があやすんですか? 長──俺の魅力は幼女にはわからないだろうしな。 参謀補佐──その件に関してのコメントは控えさせてもらいますが…… まあ、子供をあやすことについてはお任せください。 参謀補佐、箱に向かって身構える。自信をうかがわせる笑み。 参謀補佐──(顔を伏せて)いないいない……おお、怖い怖い(きめぇ 丸シェイク)。 火の付いたように泣き出す赤ん坊。大音響が辺りに満ちる。 参謀補佐──あ、あれ。おかしいですね。子供たちには人気だったの ですよ、肝試し大会で。 長──その特長がいかんなく発揮されたな。 参謀補佐、慌てふためいて何とかしようとするが、どうにもできない。 やがて騒ぎを聞きつけたのか、参謀・レイム・マリサが戻ってくる。 レイム──あっ、長だ。 マリサ──参謀補佐もいるのぜ。 参謀──二人とも、何をやってるんですか! 長──いや、大したことじゃない。参謀補佐のキモくてウザい魅力を たーんと味わってもらおうと思ってな。 参謀補佐──幼女にはわからなかったようですがねぇ。おお、無理解 無理解。 参謀──ふざけたこと言わないでください! まったく、トラウマに なったらどうするんですか。(赤ん坊をあやしにいく) 参謀補佐──そんな先のこと気にしてどうするんですかね。 参謀、赤ん坊を髪の房で撫でながら、「よしよし」と笑顔を向ける。 ほどなくして、赤ん坊の泣き声は止み、笑い声が上がる。 長──見事な扱いだ。 レイム──やっぱりお母さんみたいだね。 参謀──それじゃあお湯を用意して身体を洗いましょうか。 参謀補佐──下ごしらえですか。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──ああ、それから傷があったりしたら、薬草も必要ね。 参謀補佐──香味野菜で風味を付けるのですね。 参謀──え? 参謀補佐──え? 参謀──とにかく慎重に、丁重にね。 参謀補佐──ん? ええと? あれ? まさか、飼う気なんですか? 参謀──飼うって、そんな言い方はないでしょう。保護するだけよ。 参謀補佐、うろたえて長のの方を見る。長、「言ったとおりだろう」 とでもいうように皮肉な笑みを浮かべる。 マリサ──長も参謀補佐もどうかしたのかぜ。 長──出荷するはずの豚がペットになってしまって動揺しているのさ。 参謀、ジロリと長を見る。長、身をすくめる。 参謀──それから、この子、多分お腹もすいているだろうから、ミマ種 にお願いして練乳をもらってきた方がいいわね。 長──そうだな、腹も減ったし、クリームの他に塩と酢も用意しようか。 参謀──おしゃぶりとか必要かしら。それともおもちゃとか、子守唄? 長──よく加熱した油とか入り用かな。あるいは刺身とか、ユッケ? 参謀、キッと長をにらむ。長、即座に飛び退く。 参謀──あら、どうして距離を取るんです? 私から。 長──いや、一定以上離れてないと極めて危険だと、本能が告げるんだ。 参謀──そうですか。 長──そうなんだ。 参謀──うふふ。 長──ははは。 参謀はにじり寄り、長は後ろに下がる。どちらからともなく駆け出し、 そのまま舞台上手へと退場。 参謀補佐──あー……。 レイム──行っちゃったねー。 マリサ──どうするのぜ、これ(赤ん坊を見る)。 参謀補佐──とりあえずは参謀の言われた通りにしましょう。 マリサ──参謀補佐はそれでいいのぜ? 参謀補佐──構いませんよ。長には考えがあるようですし。ああ、それと。 レイム──ゆ? 参謀補佐──先ほどから二人は敬語を使わなすぎです。罰が付きますよ。 レイム・マリサ──ゆがーん! 参謀補佐──さあさ、赤ん坊を運んでください。それからバシバシ働い てもらいますからね。それら労役が罰となります。 レイム──た、ただ働きっ?! 参謀補佐──当然です。 マリサ──トホホのぜ。 レイム──ゆぅん、とんだものを見つけちゃったよ。 レイムとマリサ、箱を運んで参謀補佐の後をついていく。三匹、舞台 下手へと退場。 やや間をおいて、長と参謀が舞台上手から戻ってくる。軽快に動く長 に対して、参謀は息を切らしている。 参謀──ゼェ……ハァ……。 長──頭脳労働タイプとはいえ、もう少しは体力の欲しいところだな。 参謀──ハァ、これでも、ハァ、パチュリー種の、ハァ、中では… 長──「これでもパチュリー種の中では体力はあるほうです」か。 それで良しとするわけにはいかんよ。お前さんは群れを治める 立場なのだからな。 参謀──ハァ、ハァ、そ、そうですか。 長──そうさ。いざというときには不眠不休で群れ全体の動きを把握し、 指示を出さなくてはならない。自ら戦う事態だってあるだろう。 参謀──それは、まあそうですけれど。 長──自分の立場、わかっているかい? 参謀──ええ。 長──嘘をつけ。 参謀、息を呑む。長、隻眼を細めて参謀を見つめる。 長──飼育、保護、育児。呼び方は何でも構わないが、お前さんはどう いう意図で、あの幼児を扱おうとしているのかな。 参謀──私は、その、 長──たくさんのゆっくりが死んだなあ。特に幼齢の。特にパチュリー 種の。救えなくて後悔している。反省している。悲しんでいる。 参謀、言葉を返そうとして返せない。口を意味なく開閉するだけ。 長──人間の幼児を救うことで、自分の気持ちを救おうというのかな? それでは、その結果は如何なるものになるのか見えているかい? 死んだゆっくりの死因は食料が足りないことからくる栄養失調。 あの幼児が捨てられた理由も食糧難からだろう。事情はどこも 同じだからな。 参謀──余裕は、ない…… 長──ああ、手間も食料もちょっとでも割けば、それだけゆっくりも 死ぬという理屈さ。お前さんは自分を救うために、より自分を 追い詰める行動をすることになるな。火あぶりになっている自分 を助けるために必死で息を吹きかけて、より火勢を強めるような ものだ。 長、軽く笑う。参謀、顔を伏せる。 長──自分一人だけが不利益を被るならまだいいが、群れ全体が不利益 になることをやらかされたのではたまらないな。いやはや、全く。 私情を公務に絡めるのを一概に悪いとは言わないがね、群れの 方針に反するのは勘弁願いたい。統制が取れなくなる。それも 参謀がやらかしてしまうのはね。 長、顔を伏せたままの参謀を見つめる。沈黙。 長、その場から離れてゆく。背中越しに参謀に話しかける。 長──わかっているかい? いや、どうあれわかってもらうよ。赤ん坊 の処遇、お前さんが決定してくれ。それがお前さんの課題になる。 いや、罰かな。 長、舞台下手へと去る。舞台が暗くなり、残された参謀に光が当てら れ、やがて参謀が静かに顔を上げるところで暗転。 暗転の中、ゆっくりたちの足音が聞こえてくる。 溶明。 舞台中央、赤ん坊の収められた箱を、マリサとレイムが頭に載せて運 んでいる。 レイム──(息を切らしながら)ゆふぅ、ゆふぅ。 マリサ──(息を切らしながら)ぜぇ、なのぜぇ。 レイム──あ、あとどれくらいなのぉ? マリサ──さ、さっきの山を越えたから、多分もう少し掛かるのぜ。 レイム──たっ大変だよぉ。マリサ、ちゃんと持ってるぅ? マリサ──持ってるのぜ。レイムこそちゃんと合せるのぜ。 箱が揺れ、二匹は慌てる。何とか落ち着き、再び歩を進める。 レイム──ゆぅ、中身がキノコとか果物だったら良かったのに。この倍 くらいの重さでもいいよ。さっきのイノシシでもね。 マリサ──ホントのぜ。気を遣うから疲れるのぜ。 レイム──揺らしちゃダメだよ、マリサ。 マリサ──モチのロンのぜ。万一泣かせでもしたら、太っちょママさん から折檻のぜ。 上手から現れる参謀。レイムとマリサは気づかず、談笑を続ける。 レイム──怒りの「ぼでぇーぷれす」が炸裂するかもね。 マリサ──母の愛は重いのぜ。 レイム──ペタンコになっちゃうよ。 マリサ──甘いのぜ。あの大きさと重さだったら、ペタンコどころか、 跡形も残らないのぜ。 レイム──おお、こわいこわい。 マリサ──こわいこわいのぜ。 二匹、笑う。 参謀──(二匹の近くで)何が怖いのかしら。 レイムとマリサ、突然の参謀の声に驚く。箱を落としそうになるのを 見て、参謀も驚く。三匹して箱を支え、事なきを得る。 レイム──ゆふぅ~。 マリサ──間一髪のぜ。 参謀──(胸をなでおろす) レイム──まったく参謀は、脅かしっこ無しだよ! 参謀──あなたたちが原因でしょう。気持ちが浮ついてるわよ。 マリサ──はい、のぜ。 レイム──ごめんなさい。 参謀──自分たちの任務、理解しているのかしら。 レイム──それはもちろんだよ! みんなで遠足! 参謀──集団で遠征よ。訓練なの。探索も兼ねてるわね。大した理由な く群れが動くはずないでしょ。 マリサ──物資の円滑な運搬も理由の一つのぜ。 参謀──そうよ。あなたはわかっているみたいね。 マリサ──でも、さすがに疲れたのぜ。運ぶの、さっき仕留めたイノシ シじゃダメかなのぜ? 参謀──ダメよ。あなたたちは「それ」の専属。今回の遠征がなければ 運ばなくって良かったものだけど。 マリサ──トホホ。 レイム──それにしてもイノシシさんが襲ってくるなんてね。 参謀──よほどお腹が空いていたみたいね。横から最後尾のゆっくりを 狙ってきたのは驚いたわ。 レイム──返り討ちにしたけどね。逆にこっちの食料が増えることにな ったよ。 参謀──ヨダレ、出ているわよ。 レイム──ゆぅっ!(ヨダレをふく)仕方ないよ! だってお腹すいた んだもの。(箱を見て)これがお弁当だったらなあ。 参謀──指の先さえかじらないようにね。長の意向は「生きる価値の無 い人間以外はできるだけ食べない」だから。 マリサ──うーっ、マリサも腹減ってきたのぜぇ。イノシシ食いたいのぜぇ。 レイム──イノシシさーん、早くレイムのお腹に飛び込んで来てね! 早くていいよ! 舞台上手から巨大なイノシシの頭がヌゥと現れる。 レイム──ゆぎゃぁああああ! マリサ──な、何なのぜ?! 参謀──(口をあんぐり開けている) イノシシの首を棒にくくって掲げた参謀補佐が登場。 参謀補佐──失礼ですねえ。そんなにキモいですか、私の顔。 参謀──あなただったの。何やってるの? 参謀補佐──さっきイノシシの血抜きが終わったんですよ。で、首の の方は先頭に持っていけと、長が。 マリサ──長が? レイム──何で? 参謀補佐──さあ。参謀は見当つきますか? 参謀──いいえ、あんまり。 参謀補佐──そうですか。まあ命令ですから、ともかくも先頭に行って きます。では失礼。おお、重い重い。 参謀補佐、舞台下手へと去る。 レイム──ゆぅう、びっくりしたよ。突然生首が出てくるんだもん。 マリサ──いや、レイムも生首なのぜ。 レイム──イノシシさんは別腹なんだよ! 参謀──別腹……? 参謀補佐──あ、言い忘れてました。 参謀補佐、唐突に舞台下手から再登場。やはりイノシシの首と一緒に 現れたので、三匹は驚きの声を上げる。 参謀補佐──赤ん坊、列の最後尾より更に後ろに控えさせといてください。 参謀──え? 参謀補佐──長からの命令、その二です。いえ、これからちょっと騒が しくなるのでね、赤ん坊が泣いてはいけませんから。では、 改めまして、失礼。 参謀補佐、舞台下手へと退場。三匹、顔を見合わせる。暗転。 暗闇の中、ザワザワと交わされる声。 スポットを当てられた参謀補佐、舞台上手から登場。あちこちに視線 を巡らせながら中央へ向かって移動していく。 参謀補佐──ふむふむ。なるほど、面白い。四方を険しい山々で隔絶さ れた集落は特有の風習なり何なりがあると言いますが、そ ういった雰囲気にあふれてますね。見れば見るほど面白い。 これは来たかいがありました。 参謀補佐、あちこちに向けていた視線を前に固定。 参謀補佐──あ、どうもどうも。所要ありまして、遅れてすみません。 参謀補佐のキメェマルです。 溶明。村の中。参謀と参謀補佐、箱に寄り添うレイムとマリサがいる。 向かい合って、村長他、村人たち。 村人A──いやあ、ようこそおいでくださいました、このようなヘンピ な村に。何のおもてなしもできませんが、ゆっくりしていっ てください。 参謀補佐──ええ、ありがとうございます、村長さん。 参謀──(村人Aの隣を示し)村長はこちらの方。 参謀補佐─あ、すみません。ずいぶんとお若いので。 村長──みんな若いですけどね。 一同笑い。 村長──(キメェマルを見て)それで、この方が群れを治めて? 参謀──いえ、群れの長は別にいて……参謀補佐、長は? 参謀補佐──ちょっと花摘みに。 レイム──この辺りにお花畑があるの? レイムも行きたいよ! マリサ──タンポポとかチューリップとか美味しいのぜ! 参謀──どちらもこの季節、咲いてないわよ。それにそういうこと じゃなくてね…… 参謀補佐──便所です。うんうんです。 参謀──もうちょっとデリカシー! あからさま過ぎるでしょ! マリサ──ブリブリ、モリモリのぜ。 レイム──おお、臭い臭い。 参謀──あなたたちも乗らない! 村長──あははは、にぎやかでよろしいことですね。 参謀──すみません。すぐ出ていきますから。 村人A──遠慮は要りませんよ。休まれていかれては? 参謀──訓練の途中に立ち寄っただけですから。それにあれだけの数 がぞろぞろ入ってきたらやはり迷惑でしょう。 村人B──いえいえ、そんなことは。 参謀──それに先ほど狩りをして気が立ってますし。 村長──ああ、あのイノシシですか。立派なものですねえ。あんな巨大 な獣とやりあって無事だったんですか? 参謀補佐──負傷者はゼロですね。 村長──ほほぉ。 参謀補佐──楽々とはいきませんでしたけど。 村長──ああ、それで気が立っている。さっきの歌も? 参謀補佐──凱歌のことでしょうか。やかましくてすみません。テンシ ョン上がりまくってるのですよ。 村人A──いやあ、久しぶりに威勢のいいのを聞けて、活気が出ます。 参謀──そう言っていただけるとありがたいです。ところで例の件なの ですが。(箱を見る) 村長──ええ、それはもちろんお任せください。皆様の温かい気持ちを 十二分に理解した上で、丁重に扱わせていただきます。 参謀──よろしくおねがいします。では、私たちはこれで帰ります。 村長──はい、道中お気をつけください。 参謀──ありがとうございます。 参謀補佐──もう来ることはないとは思いますが、いつでも気にかけて ますよ。 村人B──はい。ではごきげんよう。 レイム──じゃーねー。赤ちゃんにも、じゃーねー。(と箱に向かって 投げキッス) マリサ──(背を向けて)さよならは言わないのぜ。(振り向いて)グ ッバイなのぜ。 村人A──さようならー。 箱を残し、参謀たちが舞台上手へと退場。 村人たち、相手が立ち去るのを見届けてから箱に駆け寄る。中をのぞ く目の光は、異様な輝き。 暗転。 暗闇の中、鳥の泣き交わす声が次第に聞こえてくる。 舞台中央にサス、その下で長と参謀補佐が話をしている。 参謀補佐──ところで、何故に立会いの場に来られなかったので? 長──適当な場所が見つからなくてね。 参謀補佐──花摘みの? 長──花摘みの。いやあ、催しながら探すのは苦労したよ。 参謀補佐──そこらでしてくれば良かったのでは。 長──乙女に対し、それはないだろう。群れの代表としての品位も問われる。 参謀補佐──はあ、品位、ですか。 長──何か言いたそうだな。まさか俺には品位の欠片もないとか? 参謀補佐──いえ、あえて何も言いませんが。ところで『悪魔の証明』 って知ってます? 長──酷い言われようだ。 参謀補佐──で。 長──ん。 参謀補佐──実際のところは何をしておられたので? 長──村の中を探索させてもらってた。 参謀補佐──あのまま一人で行ってしまわれたのですか。ずるいです ねえ。次は私も誘っていただけますか。 長──単独の方が都合良くてな。今回は土産話で勘弁してくれ。 参謀補佐──面白いものが見つかりましたか。 長──うん。牛舎を覗いてきたんだが、ゆっくりの皮があった。きれい にはぎ取られていたよ。 参謀補佐──おお、怖い怖い。私たちも食べられていたかもしれませんねえ。 長──それを防ぐための示威行為さ。あれだけ物々しくやれば、うかつ に手は出せないだろう。こちとら曲がりなりにも妖怪だしな。 参謀補佐──わざとらしいくらいに有効的な態度を見せていましたね。 他には何を見つけましたか。 長──めぼしい物はそれくらいだな。 参謀補佐──それだけですか。 長──事物は一つでも、見方によってはいくらでも深く、面白くなるさ。 お前さんはあの村に何を見た? 参謀補佐──村長を見間違えてしまいました。 長──見間違えたか。……よく見ているな。 参謀補佐──ええ、皆さんお若く、そして似たようなお顔でした。 長──つまりは。 参謀補佐──近親婚がかなり深刻ですね。そりゃ早死にもしますよ。 血が濃すぎるんです。 長──クローン並みに同じ造形にもなるしな。 参謀補佐──けれど、赤ん坊は重宝されるでしょうね。新しい血です。 村の延命には欠かせない存在となるのですから。ただ、複 数相手の性交を強制される可能性はあるのですけど。 長──その可能性はあるな。別の可能性も考えられるが。 参謀補佐──平穏無事、幸福満点な人生ですか? 長──心にも無いことをスラスラ言うのは感心しないな。 参謀補佐──おお、非礼、非礼。それは長の特権でしたね。 長──そういうことだ。で、話を戻すがな、先ほど述べたゆっくりの皮、 参謀補佐──何です? 長──内側にべっとりと人間の血がついていた。既に黒く固まっていたが。 参謀補佐、意味を推し量るように怪訝な顔をするが、やがてあることに思い当たり、目を見開く。 参謀補佐──まさか。 長──何だと思う。 参謀補佐──『牛の首』の飢饉バージョン。 長──ああ、恐らくそうだ。 参謀補佐──参りましたね。しかし、そうだとしたら、赤ん坊がやがて 祭りの中心となったとしたら、 長──村人たちの腹の足しになるだろうな。十分ありうることだろう、 なにせ誰しもがお腹と背中をくっつけてる状態だ。 参謀補佐──我々が饅頭の群れとして襲われることは警戒していました が、これはなんともはや…… 長──ま、いずれにせよ俺たちの手を離れたんだ。どうにもならんし、 どうでもいいさ。 参謀補佐──参謀は、 長──うん? 参謀補佐──参謀は知っているのでしょうか。もしくは感づいて? それとも何も、 長──理解しているさ。 長の言葉と同時に、舞台上手側に新たなサス。その下に参謀。遠くを 見ている。 長──していないはずがない。俺の下で働き、お前さんの上に立ってい る彼女だぞ。ナマナカな目なぞ持っとらんよ。今話したこと程度 は、他の材料からでも察知しきってるさ。 参謀補佐──それでいながらあの態度を……そんな、本当に? 長──お前さんと同じでとぼけてるのさ。知った上で知らない態度を取 っている。大したポーカーフェイスだよ。無論、そうでもなけれ ば、参謀は務まらないとも言えるが。 参謀補佐──因果な立場ですねぇ。 長──他者の人生に気を遣えるほど、こちらに余裕はない。割り切るし かないさ。 参謀補佐──参謀は割り切りましたか。 長──表面だけでなく、心の奥においてまで、か? さあな。しかし、 最後には必ず割り切るさ。そうしなければいけないことは理解 しているんだ、参謀という立場にふさわしくな。 参謀補佐──(間)因果な立場ですねぇ。 長──ま、ともかく、今は仕留めたイノシシに舌鼓を打とう。久しぶり のごちそうだ。参謀補佐も楽しみだろう。 参謀補佐──中身、イノシシのままでしょうね。 長──保証はしかねるな。 長と参謀補佐が笑い合う中、ゆっくりと二匹に当たるサスが消えてゆく。 参謀、遠くを見つめている。やがて、静かに正面に向き直る。 ──幕── 黒ゆっくり9(了) 過去作 黒ゆっくり1 fuku2894.txt 黒ゆっくり2 fuku3225.txt 黒ゆっくり3 fuku4178.txt 黒ゆっくり4 fuku4344.txt 黒ゆっくり5 fuku5348.txt(改訂版 fuku5661.txt)(改々訂版 74.txt・yy0248.txt・8.txt) うやむや有象無象 fuku5493.txt 黒ゆっくり6 fuku5662.txt 樽の中のれいむ fuku6569.txt 都市の一角で fuku6886.txt 黒ゆっくり7 75.txt・yy0249.txt・10.txt 黒ゆっくり7注解? 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