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1話 2話 3話 4話 5話 説明 コメント 5話のティア戦のために体力を増やす選択肢を選びたいが、確率で失敗するためそのあたりにも注意が必要 1話 No. 選択肢 結果 1 草原を通っていく(成功率100%) 山道を通っていく(成功率80%) 成功で体力+5 2 食べる(成功率75%) 成功で体力+15、失敗で体力-5 食べない(成功率100%) 2話 No. 選択肢 結果 1 神書を預ける ティアの弱点が判明していると選択肢が出現しない 神書を預けない 2 10kmに挑戦(成功率100%) 体力+15 20kmに挑戦(成功率90%) 成功で体力+25 40kmに挑戦(成功率70%) 成功で体力+70 3 500回(成功率100%) 体力+25 1000回(成功率80%) 成功で体力+60 4000回(成功率40%) 成功で体力+65 4 100回(成功率80%) 成功で体力+25 250回(成功率50%) 成功で体力+35 500回(成功率30%) 成功で体力+140 3話 No. 選択肢 結果 1 神書を預ける 2話で神書を預けていると出現。最初はここで神書を預けておく。未解読文字が魔導文字と判明したら、2話かこの選択肢で預けないでおく。 神書を預けない 2 ミリオーナと捜索(成功率100%) 体力+60 イオリと鍛錬(成功率65%) 成功で体力+35 サクヤの講義を受ける(成功率40%) 3 メアリと掃除(成功率100%) 体力+20 ギーゼラと訓練(成功率75%) 成功で体力+70 リプリスの新薬実験(成功率15%) 成功で体力+150 4 フォンテと競争(成功率100%) 体力+15 ジーンと調査(成功率90%) 成功で体力+20 ツクモと訓練(成功率80%) 成功で体力+80 5 捜索班の意見を聞きたい 4話の選択肢のヒント。「とくにない」を選ぶまで進行しない サポート班の意見を聞きたい とくにない 6 とくにない 最後の決戦を昼にしてほしい ティアの弱点が判明していると出現 最後の決戦を夜にしてほしい ティアの弱点が判明していると出現。クリアするにはこちらを選択 4話 赤字の選択肢がもっとも体力の減少が少ないルート No. 選択肢 結果 1 強引に突破する 体力-30 敵の戦力を分散させる 体力-10 2 まっすぐ進む 体力-60 左に迂回する 体力-30 右に迂回する 体力-20 3 偵察隊を先に送る 体力-40 一気に駆け抜ける 体力-100 慎重に固まって進む 体力-20 4 今いる部隊を治療し、そのまま挑む 体力-40 後方部隊を待ち、万全の状態で挑む 体力-20 時間が無い、今は突撃しよう この後体力+50 5話 No. 選択肢 結果 1 仲間になる 未解読文字が魔導文字と判明後、かつ神書を預けていない状態で選ぶと、ティアの弱点が判明し3話の6の2、3番目の選択肢が出現するようになる 仲間にならない 魔導文字を読む場合以外はこちらを選択する 2 攻撃 攻撃でダメージを与え、回復で体力を回復する(数値はランダム)。9ターン経過すると10ターン目に強制敗北する。魔導文字が読める前、かつ神書を預けていれば、ここで未解読文字が魔導文字と判明する 回復 説明 まず、2話、3話で神書を預けておき、体力をできるだけ上げておく。 4話は体力減少がもっとも少ないルートを選び、5話は「仲間にならない」を選択して、ひたすら「回復」 9ターン耐えて強制敗北。これで未解読文字が魔導文字だと判明する。 時間逆行して、2話で神書を預けない。今回のルートでは体力は最低限あればいいので、もっとも成功率の高い選択肢を選ぶ。 4話は前回同様のルートを選び、5話は「仲間になる」を選択。これでティアの弱点が判明する。 再度時間逆行して、2話、3話で体力をできるだけ上げておく。 4話はやはり同様のルートを選び、5話は「仲間にならない」を選択。あとはひたすら「攻撃」。 4話終了時点で体力が250前後あれば勝てると思われる。 コメント 名前 運ゲーなのクソうぜーな - 運ゲー死ね (2022-05-07 16 59 05) 運ゲーじゃんこれ - 名無しさん (2020-01-28 10 56 38)
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魔導火 魔界の炎であり、魔戒騎士の携行するライターに蓄えられている。太古の昔、人々に敬遠されていた「炎人(ほのおびと)」と呼ばれる男が魔界の炎を研究し、ホラーに苦戦する魔戒騎士に浴びせ、勝利へと導いた。これが後の「烈火炎装」となった。 第20話において、ザルバも発することができることが判明している。 指令書の解読 ホラー探知(憑依された人の瞳にかざすと魔導文字が浮かび上がる) 「烈火炎装」のための触媒 傷の治療 といった用途があるが、魔導力の修業を受けた者しか扱うことはできず、常人は一瞬で焼き尽くされる。尚、補充は番犬所にある種火を用いる。
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番犬から魔戒騎士に送られてくる手紙。 魔導火で燃やすことにより、魔導文字が浮かび上がり、指令を伝える。 通常の指令書は赤いが、「黒の指令書」の場合は拒否が許されない。 パチンコでは青、緑、赤、黒が存在する
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邪美(じゃび) 阿門に育てられた孤児であり弟子であり、鋼牙とは幼馴染。魔導文字の腕前は師匠を超える。体術も卓抜しており、強さは魔戒騎士並み。その力を駆使してコダマとも優位に渡り合い、レギュレイス戦でも鋼牙をサポートした。師匠の死と番犬所に不審を抱き、東の番犬所を襲撃、そこでなぜか魔界に送還されているはずの、ホラーを封じた短剣を発見、奪取する。コダマの追撃を振り切った後、彼女の暗殺を拒み番犬所と袂を分かった鋼牙と協力して「月光陣」で短剣を魔界へ送還しようとするが、成就寸前でコダマに闇討ちを受け殺害された。 しかし肉体は滅んでおらず、魔戒樹に封じ込められていた(牙狼〈GARO〉スペシャル 白夜の魔獣)。その後、阿門法師の霊から頼まれた鋼牙により魔戒樹から救出された。なお、阿門法師が邪美を復活させた真の目的はホラー・レギュレイスとその眷属の完全復活を阻止するために、長きにわたる「天魔降伏の儀」により力の衰えた鷹麟の矢に新たなる力を吹き込むためであった。レギュレイスとの戦いの後、彼女は閑岱の地に残り、第2の人生を歩むこととなった。
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武器類 ※未実装のものもあります。 仕様変更アイテム > 武器類 > 片手剣・両手剣 片手剣 アイテム名称 種類 効 果 備 考 ソード 片手剣 ファルシオン 片手剣 Str+(装備中のパイレーツスケルcの数)×5Cri+5 , Criダメ+(右手武器精錬値×3)% セット ブレイド 片手剣 レイピア 片手剣 シミター 片手剣 環頭太刀 片手剣 ツルギ 片手剣 海東剣 片手剣 Int+15ホムンクルスのInt+15 オーキッシュソード 片手剣 サーベル 片手剣 フランベルジェ 片手剣 ネイガン 片手剣 人間形特化+25%低確率でダブルアタックが発動ディスペル無効 アイスファルシオン 片手剣 コールドボルトLv.3使用可能ASコールドボルトLv.10以上ホムンクルスのMHP・MSP+1000 エッジ 片手剣 ファイアーブランド 片手剣 ファイアーボルトLv.3使用可能ASファイアーボルトLv.10以上ホムンクルスのMHP・MSP+1000 シザーズソード 片手剣 カトラス 片手剣 Str+10 , Def+3バッシュLv.5使用可能バッシュLv.6以上習得時,ASバッシュホムンクルスのAtk+100 太陽剣 片手剣 エクスキャリバー 片手剣 Int+25 , Luk+50 ミステルテイン 片手剣 Dex+15 , 念属性特化+75%5%の確率で対象を石化状態(ASストーンカース?) テイルフィング 片手剣 別雲剣 片手剣 Allステータス+10Boss特化+50% 無形剣 片手剣 武器破壊スキル無効攻撃時,低確率で対象のSP-30%火・水・風・地のLv.5属性付与スキル使用可能 ジュエルソード 片手剣 ガイアソード 片手剣 刺身包丁 片手剣 ホーリーアヴェンジャー 片手剣 タウンソード 片手剣 スターダストブレイド 片手剣 白金のショーテル 片手剣 シンブレイド 片手剣 エドラム 片手剣 かつて、悲劇に飽きた魔王が使ったとされる紅い剣 乱舞剣 片手剣 速さこそが力だと信じている貴方に捧げる剣 エクスカリパー 片手剣 約束された笑利の剣 オニオンソード 片手剣 ご存知あの剣とても弱いが……? ルーンブレイド 片手剣 魔導文字が刻まれた剣剣に篭った魔力が敵の急所へと攻撃を導く 両手剣 アイテム名称 種類 効 果 備 考 カタナ 両手剣 スレイヤー 両手剣 バスターソード 両手剣 ツーハンドソード 両手剣 ブロードソード 両手剣 Def+15 クレイモア 両手剣 Matk+15%パリイングで魔法攻撃をはじく 村正 両手剣 Cri+150Aspd+8%BaseLv≧Luk時,低確率で自身へ呪い組み合わせ隠し効果有 セット 正宗 両手剣 ドラゴンスレイヤー 両手剣 S1追加竜族MobのDef無視竜族特化+100% シュバイチェルサーベル 両手剣 Def+3攻撃時,低確率でASライトニングボルトLv.5 ツヴァイハンダー 両手剣 武器破壊スキル無効物理ダメージ2倍(Atk+2倍ではない) エクスキューショナー 両手剣 人間形特化+50%人間形MobのDef無視 カッツバルゲル 両手剣 Vit+50 , Def+30無属性MobのDef・Mdef無視パリイングLv.10使用可能パリイングで魔法攻撃をはじく アトロスの凶器 両手剣 クルーエルソード 両手剣 テグリョン 両手剣 ブラッディイート 両手剣 アウトルーラー 両手剣 掟破りの大剣 斬鉄剣 両手剣 あの名刀コンニャク以外のものは何でも切れる
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通常時:「あ、あれっ? おかしいな…。こんなはずじゃ…。」 覚醒時:「僕を怒らせたこと、後悔するがいい!」 名前:スタンリー・ナサク・スタント 覚醒時には「+」がつく。「スタンリー(+)」。 年齢:24(最近誕生日を迎えた) 性別:男 身長:175㎝(シークレットブーツで底上げしているので、実際は165㎝) 容姿:髪は水色で、肩に届くほど長いので、項(うなじ)の辺りで縛っている。瞳の色は黒。 いわゆる「オン」(覚醒)状態になると、瞳の色が紫になる。 服装:赤い鎧は没収(上司曰く、『ダサい』)され、水色のスーツに水色のネクタイという服装に落ち着いている。 ちなみにこの服装のせいで「サラリーマンに対するアンケート」につかまりやすくなっている。(よく声をかけられる) 血液型:B 性格: 通常時…自分勝手で臆病、色気に弱いが、人情にも弱い。(敵であろうと目に入った窮地は見過ごせないようである) 覚醒時…弱いのは色気だけで、臆病さは一欠けらもなく、破壊を好むようになってしまう。 種族:魔改造人間(魔界の者により、魔の力を身体に宿された元・人間) 趣味:読書、貯金 「お金がなくなったら困る」と、最低限の生活費に使う以外は極力貯金している。 特技:早逃げ、土下座。足の速さはイータといい勝負らしい。 好きなもの:街にある食堂の和定食で、「忘れられない味」らしい。 苦手なもの(人):メギラス(怖いから)、レオン(上司と似ている(本人なのだが)、ナージャ(色気で惑わすから)。 ナージャのみならず、リタやマインにも苦手意識を持っているらしい。 @覚醒時:メギラスやレオンには怯まなくなるが、色気には勝てないらしい。 大切なもの:預金口座、貯金通帳、キャッシュカード。貯金ができなくなるのが怖いらしい。 武器:ばくだん(耐水性なし)、魔導銃(弾が自動的に充填される銃。魔力さえあればいつでも誰でも撃てる)。 @覚醒時:魔導文字の書かれたカード。呪文(スペル)を唱えることで、さまざまな現象が起きる。 攻撃スキル用、回復スキル用、補助スキル用の3枚。 爆弾が相手に届かなかったり、逆に飛びすぎてしまうが、銃だけは確か(らしい)。 魔力:火、水、風、地、霊、雷。一応扱えるようだが、使う機会は皆無に近い。 得意技: ばくだん装着:目にも止まらぬ速さで相手に爆弾を取り付ける。取り付けるヒモはきついぐるぐる巻きで、簡単に取れない。 これでも喰らえっ!:爆弾を投げつける。届かない・飛びすぎる・何も起こらないのどれかがほとんどだが、稀に成功する。 @覚醒時 (代表的なのをいくつか) 雷よ:雷を落とし、落ちた地点周辺に電撃を及ぼす。 鏡よ:自分に向けられた魔法を相手に向けてはね返す。 必殺技: (覚醒時のみ) 巨神兵よ:巨神兵を召喚し、広範囲にわたる攻撃をしてもらう。 備考:マーシャとは別の意味での「苦労人」。ニックネームが何気に多い。 メギラス…「スタント野郎」「スタント専門家」 グーリュ…「スタントマン?」「ギルバート君」 ナージャ…「セールスの方?」「コンビニ勤務の方?」 リタ…「どっかのダメ社員」「ティッシュとか配ってる人?」 マイン…「(社員ではなく)アルバイト?」「ホテルのフロント?」 ティーン…「スタンロッドさん!」「映画撮影の関係者さん?」 ラスカ…「秘書」 ちなみにちゃんと名前で呼ぶのはマーシャと稀にラスカぐらいである。 一応マーシャと同級生らしいが、覚えられていないらしい。 「そんな奴いたっけ?」と言われ、わざわざ卒業証書やアルバムを持ってくる掛け合いがお決まりとなっている。 レオンには覚えてもらってるらしく、恐縮して(ビビって)しまう。 銃器、格闘技には強く、銃弾、拳圧によるダメージは殆ど受けない程のタフであるが、 着弾による爆発、強すぎる拳や蹴りなどにより吹っ飛ぶことがある。 イメージキャラ:ゲーム「英雄伝説~空の軌跡~TC」より、ギルバート・スタイン
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3・エミリア・リスティ編 魔法とは突き詰めてしまえば『式』である。 術者のメンタルを元に、『能力』や『詠唱』という要素を付加していく事で、魔法という形を組み上げていく、一種のパズルのようなものでもある。 そして、その式は魔法を行使する、という意味から一般的に『術式』と呼ばれ、教会における聖術は、詠唱や術式が厳密に定義されているために、他の介入する余地は無いとされているのだが…… マージナルやネクロマンサの場合、同じような魔法でも詠唱などの過程は人によって違う場合が多い。 数学においても、違う数式を使っても結果的に同じ答えに辿りつく事がある。 それは、魔法の術式おいても同じ事なのだろう。 パピードラゴンと呼ばれている支援士、ティールが率いるギルド、リトルレジェンドの一室。 そこは一応のサブマスターとして位置づけられているエミリアの部屋で、ぱっと見こざっぱりして片付いているように見えるものの、その一角にある本棚には様々な魔導書や珍しい物語の本など、個人の所有物にしてはやたらとすごい書物ばかりが集まっている。 彼女の他のコレクションは、また別室を個人的な倉庫にして置いているようだが…… 彼女以外の人間は、その中身を把握していない――というか色々と扱いが難しい物品も多く、完全に把握することなど、このギルドでは珍品名品に詳しい彼女にしかできないだろう。 「エミィさん、お茶入りましたよ」 「エミィおねえちゃん、おやつだよー」 机に向かっていたエミリアに向かって、ドアの向こう側から話しかける声。 それは彼女にとっても聞きなれた、親友の呼びかけだった。 「リスティ……と、イリスか。 すまぬな」 ひとまず手元の作業を中断し、がちゃりという音と共に開くドアに目を向ける。 そこにいたのは、いつも使っているティーセットが乗せられたトレイを手にしたリスティと、お茶請けのお菓子を持つイリス。 二人が揃っている時の三時を回るこの時間帯は、リスティとエミリアにとってはお茶の時間で定例化していた。 今日のようにイリスが混じるのも、時折ではあるが慣れた事である。 「いえ、こういうの好きですから」 手馴れた調子で部屋の隅にたてかけてあった折りたたみテーブルを組み立てるエミリアに、そう返事をするリスティ。 そして、組みあがって軽く叩き、崩れないことを確認した後に、手に乗せていたトレイをその上に置いた。 横では、イリスが適当な椅子を持ってきて既に座っていた。 「それにしても、ディンさんもヴァイさんも、もう少し待てばエミィさんが帰ってきてたのに……なんで、あんなに急いでたんでしょう」 「……ふむ?」 「いえ、実はグノルに依頼で二人で行っちゃったんですよ。 昨日エミィさんが帰ってきた、3時間くらい前に……」 「あぁ、それならティールに聞いたが。 別に気にする事でもないじゃろ」 そして、イリスに続けるようにして、二人も適当な椅子を置いて、そこに腰かける。 その一連の動作は妙にこなれていて、こういった突然のお茶会は今回が初めてでは無い事が伺いしれる。 「……なんだか、あっさりしてますね。 依頼の時は、いつも一緒なのに……」 「確かにチームは組んでおるが、お互いに色々事情があることも少なくない。 私を待たずに行ったと言う事は、あいつなりの理由があるということじゃよ」 「リスティおねえちゃん、クッキー食べていい?」 「あ、うんいいよ。 ……えっと、やっぱり、信頼してるんですね」 返事をすると同時にぱぁっと笑ってテーブルの上のクッキーに手を伸ばすイリスを横目に、話を元に戻すリスティ。 その瞬間の表情には、感心や喜びのようなものが浮かんでいた。 仲間の関係が良好なことは、自分にとっても喜ばしい事なのだろう。 「まぁそういうのは大抵私を驚かそうと何か企んでる時くらいじゃし……何かの材料でも採りに行ったってところじゃな」 「…………」 一転、苦笑。 お互いを知りすぎているというのも、日常のサプライズというものが薄くなってしまうのかもしれない。 リスティは、男女の距離感は難しいものだな、と妙な実感を覚えていた。 「それより、むしろお主がヴァイについていかなかったのが驚きじゃが……」 「あ、いえ。 私も教会の方で用事がありましたし……確かに早めに終わらせてついて行こうと思ったんですが、ヴァイさんが『グノルだから二人でも大丈夫だ』って言って、それで……」 「……ふむ」 確かに、グノルの浅いところはヴァイとディンの二人が揃っていれば全く問題は無いだろう。 ……だが、それはあくまで『浅いところならば』の話であり……恐らく、リスティはグノル深層の事は知らされてはいない。 だからこそ、『グノル』という単語で思いつくレベルも、比較的低い場所でしかないのかもしれない。 とはいえ、深いところでも少々の事でやられる二人でもない…… 直感的に二人は深い所にいると感じつつも、ぱりぱりとクッキーをかじりながらそんなことを思うエミリア。 心配が無いと言えば嘘になるが、今更気にしても何もできることはない。 ―ヴァイが連れて行かなかったのは、リスティにとってあの場所はいい思い出はなさそう、という理由もありそうじゃがな― 考えられる事象は、いくらでもある。 が、実際に自分達がいくら考えてもそれは推測でしかなく、事実を知るのは本人だけだろう。 もっとも、エミリアはそれを突き詰めるつもりもなければ、他人の知られたくない一面を勝手に暴露する趣味も無い。 とりあえず、この場は何も言わないようにした。 「……ところで、何か読んでいたんですか?」 それから少し経過して、リスティがそう口にしながら向けた視線の先には、デスクの上に広げられた数冊の本が映っていた。 加えて、その周囲に数枚の紙とペンが一本置かれているのが気にはなるが…… 「ああ、お兄ちゃ……兄さんから貰ってきた魔導書じゃよ」 「……あ、えっと……お、お兄さんって、エミィさんの家の跡継ぎでしたっけ……?」 何かを言い直したのには気付いていたが、あえて何も言わずに聞き流すリスティ。 ……もとい、思わず何かを言いそうになって、慌てて口から出る言葉を修正していた。 「う、うむ……たまに珍しいモノが入るとくれたりするからのぉ」 あははは、とごまかすように笑いながらエミリアはそう返事をする。 ―そういえば、ディンさんがエミィさんは甘えん坊なところがあると言っていた気がする― いつ、と明確に思い出す事はできないが、エミリアがいない時に何気なく会話の中にでてきた一言だった。 普段どちらかといえば『お姉さん』的な立ち位置にいる彼女だが、ディン等の身近な年上の人間に対しては、時折そういうしぐさが見え隠れすることがあるらしい。 「これ、なんだかエミィおねえちゃんの腕の模様に似てるね」 ……そうこうしていると、いつのまにやらデスクに近寄っていたイリスが、なにやら複雑な模様が描きこまれた紙を一枚手に取っていた。 寒い季節ということもあって今は目にする事が出来ないが、エミリアの二の腕には、ぐるりと一周するように紋章の羅列が両腕に刻まれている。 「まぁそれはまだ研究段階じゃが、確かに同じものじゃよ」 「……たしか、『式紋』でしたっけ。 口による詠唱の代わりになる、紋章による術式……」 「?? ……よくわかんない……」 「イリスにはまだ難しいかもしれぬな」 エミリアはふふ、と穏やかな笑みを浮かべながら、紋様をみつめて首をかしげるイリスにそう語りかける。 ……が、あと一~二年もしたら、彼女もこの式を理解できるようになるのでは、という推測もたてているのも事実。 『アイリスの記憶』はエミリアが予測していたよりも早くイリスの中で解放されていて、使用できる属性こそ増えていないが、普通の人間では考えられない勢いで次々と新しい呪文を覚えていく――いや、『思い出していく』と言った方がいいかもしれない。 その内容はまだウィッチのレベルを超えてはいないのだが、アイリスの記憶は本人の『肉体と精神の成長』に応じて順次解放されていく、と、アルティアの英知を元にリスティが言っていたのは記憶に新しい。 この先の成長具合によっては、1年もしない内にマージナルに限りなく近いレベルになる可能性もありえなくはない。 「…………神代の時代からの記憶、か。 少しうらやましくはあるのぉ」 ある意味、彼女はこの世の理にもっとも近い存在なのかもしれない。 その記憶がすべて蘇るのが一体何年後になるのかは、全くわからないのがまたもどかしい。 「なぁに?」 もちろん本人にそんな自覚は無い。 明らかな自覚をするのは、もっと未来……それこそ、先代以前の思い出などといった、パーソナルな部分が解放されてくる段階になってからだろう。 自分では無い誰かの記憶が、自分の中にある―――きっと、彼女はいつかはそんな経験をすることになる。 それがどんな苦悩になるのかが想像できないだけに、記憶の継承も素直に喜べるものでもないのかもしれない。 「いや、何でもないよ」 まぁ、今は大人しく見守るのが吉。 『親』の立場にあるティールも、イリスからそれに近い信頼を持っているリスティもそう判断している。 だから、今は何も言わないことにしていた。 「……あの、エミリアさん。 以前話は聞いていたんですけど、やっぱりよく分からないです……」 「ん? 式紋のことかの?」 ひとまずイリスとの対話が終わった、と判断したのか、話を元に戻すリスティ。 紋章の羅列が詠唱の代わりになる――というのは目の前で照明されているので納得はできるが、その理屈についてはまだよくわかっていない。 少なくとも教会の教科書には、詠唱そのものを肩代わりできる術式など書かれてはいなかったのだから。 「…………ふむ……そうじゃな。 それを説明すると……」 「……エミィさん?」 そう言いながら、エミリアは真新しい紙を一枚取り出し、カリカリと文字を書きこんでいく。 その文字はイリスが持ってきたもののような紋章の羅列ではなく、世間一般的に使われている普通の文字の羅列。 ……というより、数式のような文章だった。 「魔法というのは術者のメンタルに、詠唱という媒介を通して『属性』や『指向性』を定義し、具現されるものじゃ」 「あ、はい。 聖術も、そのあたりの理屈は同じだと思います」 「極端な話、数学における数式と同じようなものじゃよ。 メンタルという数値に、属性、指向性という数字を足したりかけたりするものじゃからな」 「……うー、難しいよ……」 「……いや、イリス。 無理して聞かなくてもいいんじゃが……」 イリスの精神年齢は八歳前後。 まだまだ理屈よりも『記憶』からくる本能的なものに頼って魔法を使っているだけに、こういった問いかけになってくると思考が追いつかないらしい。 すでにオーバーヒートしかけているのか、あたまをひねって難しい顔をしていた。 「……こほん。 まぁ、要するにメンタルに属性と指向性を与えられる媒体を声以外のモノで用意できれば、それで魔法を具現することは可能、というわけじゃな。 わかるかの?」 「は、はいなんとか……」 とりあえずイリスはクッキーに思考を逸らさせて知恵熱を防止。 少し苦笑しながらも、エミリアはリスティに式紋の理論の講釈を再会した。 「そこで用意されたのが、『紋章』じゃ。 魔導文字とも呼ばれているが、この図式にはそれぞれ意味があり、これは『氷』、これとこれを組み合わせれば『槍』になり、この二つの紋章の繋ぎとして、こっちの文字が間に入る」 「……あ、だったら、この式は氷の槍……『アイスニードル』ですね?」 「正解じゃ。 ……まぁ、これは極力単純にした式じゃから、これだけでは大きな力は得られん。 ここに色々とメンタルから魔法へと変換させる補助的な紋章を加えて行く事で、『言葉』による術式に匹敵する威力に近づけていくわけじゃな」 「はぁー……なるほど」 「ま、このあたりは紋章術の魔導書の受け売りじゃがな」 魔導文字――紋章自体は、教会でもある程度知られている。 が、やはりマージナルが使うような数多くの属性ではなく、聖術にのみ特化して伝えられているために、その道の者達とは随分差をつけられているのだろう。 ……聖エルナンが定義した術式の完成度が、他の術式の追随を許さない程の高みにあるという影響があるのも、確かではあるのだが。 ユキの例もあるように、それを『式紋』やら『笛の音』で構築できるようにしてしまう彼女の研究のレベルも大したものなのかもしれない。 「……あれ? 式紋ってエミィさんのオリジナルの術式じゃなかったんですか? 受け売りって……」 以前、自分が独自に研究を進めている――などというセリフを耳にしたことがある。 その一言から、エミリア自身がゼロから組み上げたものだ、と思い込んでいたが…… 「ん? ああ……違う違う。 式紋について残っている文献が少なくて、そもそも魔導文字を詠唱の代わりにできると知っている者が少ないからのぉ。 あの時『独自に』と言ったのは、独学で、という意味じゃよ」 「そ、そうだったんですか……」 「私も、式紋に関する文献は兄さんやお父さんの力が無いと集められなかったから……いくら家には迷惑はかけたくないと言っても、やっぱり頼ってしまう部分はあるのぉ」 「……エミィさん……」 基本的に、エミリアは実家の事を自分から話そうとしない。 だからといって別に否定しているわけでもなく、家出をしてきたわけでもない。 ただ、家がそれなりに有力な商家だから、と自慢したり頼ったりするのが嫌だというだけだ、と本人は言っていた。 「ふぅ、まぁ簡単に説明したらそんなところじゃな。 何か質問はあるかの?」 などとリスティが考え込んでいると、特になんでもないというような表情で、エミリアがそう呼びかけてくる。 「……あ、いえ。 なんとなくですが、理解できたと思います」 とりあえず自分も何事も無かったように返事をして、少し今回の説明を思い返しながらそう答えることにした。 よくよく考えてみれば面白い理論であるし、聖術にも適用できる事はディンやユキの例で証明されている。 ……身体に直接刻み込むのはジョブのイメージ的にあまり好意的には見られないので、もし適用しようとするなら、本か簡単なアクセサリーを介する事になるかもしれないが…… 今は自分の修行に手一杯であり、それに『術式』という重要な部分を外部から導入させるなど、自分一人の力で勧められるようなものでもない。 「でもやっぱり、教会では使いづらいですね……」 そう考え、リスティはとりあえずそれだけ言っておくことにした。 エミリアが勧めてきたわけではないが、なんとなく、そう言いたくなったのだ。 「じゃろうな。 まぁ、使いたい者が使えばいいだけの技術じゃから、私が推すこともないが」 それを受けて、軽く微笑むエミリア。 その時、リスティは、なんとなくこの場にいづらいような気分にかられていた。 1:ティール編 2:ディン・ヴァイ編
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【牙狼-GARO-】の支給品一覧 魔戒剣 冴島鋼牙、涼邑零、バラゴのデフォルトアイテム。 魔戒騎士の持つソウルメタル製の剣で、鋼牙と零はこれで宙に円を描くことで99.9秒だけそれぞれの鎧を召喚する。作中ではソウルメタルは持てない 鋼牙とバラゴのものはほぼ同じだが、零は双剣であるなど、形状は様々。 また、鎧を装着した後は牙狼剣、銀狼剣、黒炎剣にそれぞれ名前と形状を変化させる。 +支給品の消費と経過 消費と経過 牙狼剣:冴島鋼牙 銀狼剣:涼邑零 黒炎剣:バラゴ→D-8エリアに放置 バラゴのペンダント バラゴのデフォルトアイテム。 バラゴはこれを使って鎧を召喚する。 +支給品の消費と経過 消費と経過 バラゴ→D-8エリアに放置 魔導火のライター 冴島鋼牙、涼邑零のデフォルトアイテム。 魔界の炎が蓄えられた炎で、緑の炎を発する。これを翳すと、ホラーに取り憑かれた人間の目に魔導文字が浮かび上がるほか、烈火炎装の触媒として使用できる。傷を癒す事も可能(魔導筆、またはリヴァートラの刻という薬を併用する)。普段は指令書を読むためにも使われている。補充は番犬所で行う。 没収漏れした理由は、おそらく烈火炎装(実質的パワーアップ)に使用するため。 +支給品の消費と経過 消費と経過 鋼牙用:冴島鋼牙 零用:涼邑零 顔を変容させる秘薬 バラゴのデフォルトアイテム?(変身アイテム扱いか、没収扱いか現在不明) 零の義父である道寺が生成した薬で、顔を意のままに変容させることができる。 作中ではバラゴは龍崎駆音という男に変身しているほか、小説版では鋼牙も使用している。 +支給品の消費と経過 消費と経過 バラゴ→D-8エリアに放置 魔導輪ザルバ 姫矢准に支給。CV.影山ヒロノブ。 冴島鋼牙の指に嵌っている魔導輪で、人間に味方するホラーの意思が込められている。 ホラーについて鋼牙にアドバイスするほか、指に嵌ったままでも特殊能力を発することができる。 なんだかんだで気の良い性格であり、鋼牙以外の人間も見守ってくれる良き相棒。 魔導火を口から吐く事もできる。最終回で一度破壊されるが、記憶を失って修復される。SP以降の彼はテレビ版以前の記憶を失っているが、それでも性格は変わらず、大河と再会した際も「魂が覚えている」という事を言っていた。 「ザルバ」は旧魔戒語で「友」という意味。 +支給品の消費と経過 消費と経過 姫矢准→G-8エリアに放置→佐倉杏子 魔導具シルヴァ 村雨良に支給。CV.折笠愛。 涼邑零から没収されている支給品で、彼の相棒の魔導具のペンダント(普段は零が首、SP以降は手の甲にかけている)。 妖艶な女性の声で話していて、零にとっては本当の家族に等しい。 シルヴァとは旧魔戒語で『家族』という意味を持つ。 参戦時期は涼邑零とほぼ同じです。 +支給品の消費と経過 消費と経過 村雨良→冴島鋼牙→涼邑零→破壊・残骸は零が所持 破邪の剣 月影ゆりに支給。 第6話「美貌」に登場する、零が使用する短刀。魔戒騎士にしか使えない設定だが、おそらくその辺りは制限されている。 実際、これはどの部位に当たっても死ぬというトンデモないチート武器であるが、その辺りも制限されている可能性が高い。 +支給品の消費と経過 消費と経過 月影ゆり→大道克己→花咲つぼみ 魔弾+ボチャードピストル バラゴに支給。 第21話「魔弾」に登場する、ホラーの魂が篭った弾丸。ちなみに作中で名前は登場していないが、タイトル通りだとすると魔弾。 これで撃たれた者はボナファルツ、又は低級ホラーに憑依され、撃った者のいう事を聞くようになる。 劇中でホラーとしての姿を見せたのはボナファルツのみで、他は全員ゾンビのような状態になっている。 また、これは魔戒騎士には効かない。 +支給品の消費と経過 消費と経過 ボチャードピストル バラゴ→D-8エリアに放置 魔弾 1発目:バラゴ→消費 2発目:バラゴ→消費 黒い炎と黄金の風 巴マミに支給。 御月カオルの父が描いた絵本であり、黄金騎士(鋼牙の父・大河)とホラーの戦いについて描かれている。 最後の1ページは意図的に空白になっており、見た人それぞれが黄金騎士の未来を描くようになっている。 最終回にて、カオルが描いた最後の1ページを読んだ鋼牙は号泣する。 +支給品の消費と経過 消費と経過 巴マミ→桃園ラブ ルビスの魔剣 高町なのはに支給。 劇場版に登場。ホラーの牙で作られた短剣で、カルマの住む魔鏡の世界の結界を開くことができる。 剣とはいっても、形状はむしろ鐘。 +支給品の消費と経過 消費と経過 高町なのは→B-7エリアに放置→筋殻アクマロ→溝呂木眞也→ゴ・ガドル・バ 鷹麟の矢 筋殻アクマロに支給。 SPに登場する、白夜に現れる結界を破壊するための矢。天に放てば結界は消滅するが、地に突き刺すとレギュレイス一族を復活させてしまう(無論、今ロワでは地面に突き刺しても復活はしない)。 ガロはこれを自らの体に刺すことで、鷹麟ガロへと進化した。ただし、刺せばいいというものではなく、鋼牙の母・りんの愛がまた一つのパワーアップのポイントとなっている。普通の手段じゃ無理。 +支給品の消費と経過 消費と経過 筋殻アクマロ→溝呂木眞也→ゴ・ガドル・バ リヴァートラの刻 高町ヴィヴィオに支給。 魔戒騎士が所有している薬。これを飲んだ後に傷口を魔導火で炙る事で傷が治る。 作中では、破邪の剣の傷を治療している。 +支給品の消費と経過 消費と経過 高町ヴィヴィオ→ダークプリキュア→冴島鋼牙→消費
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『魔』という文字がある。 魔導師、魔法、魔力。彼女にとっては、いずれも身近な言葉である。 しかし、そこに神秘性を感じたことはあまりない。一般人ならいざ知らず、彼女にとってその言葉は体系化された学問であり、 いずれも論理で説明できる代物に過ぎなかった。 それ故に、忘れていた。『魔』という言葉には『鬼』が隠れていることに。 鬼――それは不吉なもの、よく分からないもの、恐ろしいもの。 到底論理で説明できるものではなく、よしんば説明できたとしても、その脅威が払拭されるものではない。 そんなものに遭遇したことが、かつて一度だけあった。自身に深く関わる『闇』の最深部に触れた時である。 仕事柄触れる機会は多かれど、それほど深い闇に触れることなど、そうそうあるものではないと思っていた。 まして己が身に降りかかり、運命を左右するようなことは二度とないであろうと。その考えが誤りであったことを、ある日彼女は知ることになる。 ――光あるところ漆黒の闇ありき。古の時代より人類は闇を恐れた。 『魔』はその陰で常に牙を研いでいるのだと知っていたからだ。 時代が進むにつれ、人類は人工の光で闇を克服し、やがて魔の存在は人々の記憶から忘れ去られていく。 だがその存在が消えた訳ではない。 闇から這い寄る者達は、決して消えることはないのだ。人がこの世にある限り。 彼らは夜と共に蠢き、侵食を始める。それに抗うことは只人は勿論、魔導師にすら困難であろう。 しかし同時に、彼女は守りし者とも出会う。 闇に生まれ、闇に忍び、闇を切り裂く。 昼と夜、人と魔の境界を歩きながらも、『魔』を『戒』める剣士。 獰猛な獣の面をしていながら、太陽の如き威光を背負う金色の狼。 どこまでも高潔で、その輝きには一点の曇りも卑しさもなく、ただただ勇壮にして美麗。 まさしく黄金と呼ぶに相応しき甲冑の主は、黒く塗り潰された世界でこそ一際光を放つ破邪の騎士。 ある日を境に、邪悪な影が彼女の未来を覆い隠す。魔と陰我が世界に蔓延る。 ――しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、彼女と二つの世界に住む人類は、希望の光を得たのだ。 (嘘)予告 ~LYRICAL GARO~ 魔、戒める騎士 初めに闇があった。静謐で、何者にも侵されざる漆黒の闇。 やがて、そこに光が差す。闇の全てを照らすにはあまりに心許なく、か細い灯り。その中心に男は立っていた。 男の名は冴島鋼牙。身体に張り付くような黒い衣服を纏い、一人佇んでいる。右手に握られているのは、鍔の無い細身の長剣。 目を閉じたまま微動だにしない姿は、最初から闇に同化していたかのようだった。 現在、鋼牙の全ての神経は耳に集中されている。呼吸すら止めて、その瞬間を待つ。 背後から風を切る音。閉じていた目がカッと見開かれる。 振り向きつつ、剣で迫る刃を薙ぎ払うと、甲高い金属音が鳴り響く。それを皮切りに、前後左右斜めから次々に風切り音が続く。 光は鋼牙の体一つを照らす程度しかなく、とても視認では間に合わない。音と気配のみを頼りに、瞬時に行動を組み立てる。 他に比べて僅かに速い、正面第二の刃に向き直りながら、それを首を振って回避。耳の横数ミリを掠めるのは、鎖に繋がれた振り子の刃。 ペンデュラムとでも言うのだろうか、冷や汗を催すような音だけが耳に残る。 続いて同様の振り子が三つずつ。左右に加え、御丁寧にも前後斜め二方向からも勢いをつけて飛んでくる。 今度は剣で弾かない。上半身を引き、光の中心に寄る。この間も瞬き一つすることなく、第三波の軌道を横目で追い掛ける。 回避した正面の刃が戻り、中心を通過。同時にその位置に入る。左右から六つ、正面から第二の刃が再び、数えて七つの刃が襲う。 鋼牙は避けなかった。剣を胸の前に立て、じっと振り子の動きを窺う。 迫る刃は全て本物、当たれば全身を切り刻まれる。しかし、鋼牙には微塵の緊張も見られない。 視線は正面の刃にのみ注がれていた。身を細めるように直立の姿勢を崩さず、手に持った剣で正面の刃を弾く。 迫るすべてを弾く余裕はなく、またその必要もなかった。 残った振り子の刃は、届く直前で鎖の限界を迎える。鋼牙はこのフェイクを、鎖の長さと速度で見抜いていた。 だが、これで終わりではない。鋼牙はそれを直感で察していた。 キリキリと鎖が伸び振り子は振動を再開。あらゆる方向から繰り出される攻撃を剣で、時に足で、時に拳で刃の側面を叩く。 前後左右に上下を加え、かつランダムに襲いかかる刃。その悉くを鋼牙は捌いてみせた。 動くものがなくなった頃、正面の扉が開かれ、禿頭に眼鏡の老紳士が恭しく頭を下げる。 「お疲れ様でした。鋼牙様」 冴島家に仕える執事、倉橋ゴンザ。鋼牙にとっては家族同然であり、また唯一の同居人であった。 「鋼牙様、こちらを」 「指令か……ご無沙汰だな」 ゴンザから渡された赤い手紙は、鋼牙を戦いへと誘う。今までの訓練も、全てはこの為にあった。 人外の情報を記した暗号文書。当然、解読法も普通ではない。 鋼牙は手紙をかざし、ライターに火を点ける。鮮やかな緑の炎が燃え上がり、手紙は一瞬で燃え尽きたかに見えた。 が、次の瞬間、文字を形作った煤が宙に浮かぶ。 魔導文字と呼ばれる、この世界のどの文字にも当てはまらない特殊な文字である。解読できるのは、夜に蠢く獣を知る者のみ。 冴島鋼牙もまた、その一人であった。 宙に浮かんだ指令書は、『魔戒騎士』に魔獣の出現を知らせ、討伐を促すもの。指令書には、こう書かれていた。 災いの兆しあり。人間の傲慢が生みしホラーの陰我、直ちに断ち切るべし 夜天の主 今日も変わらず、日が沈んでゆく。鴉が鳴き、影がその濃さを増していく。 逢魔ヶ時と呼ばれる時間である。 だが、人々はまだ活気を失うことなく、街は絶えず動いていた。彼女、八神はやての足は家路に向かうことなく、 当ても無く街を彷徨っていた。 その心中は、喜びが半分、寂しさが半分といった具合である。 多忙な日々の合間を縫って、久々に休暇を取って地球に帰ったのだが、残念ながらなのはもフェイトも、守護騎士達もいない。 それぞれ、捜査や新人の訓練で忙しいのだから仕方がなかった。はやてとて、この休みが終われば、 またミッドチルダに戻らなければならない。 折角の休みなのだから満喫しようと決めれば、一人というのも悪くない。誰に気兼ねすることなく、好きなことをしよう。 幸い、明日にはシグナムが休みを一部重ねて来ることになっている。そうなれば、一緒にどこかへ遊びに行くのも楽しみだ。 やや困り顔のシグナムを引っ張り回すのを想像して、はやては一人微笑みを漏らした。 そんなことを考えているうちにやがて日は沈み、完全に闇が空を覆った。と、同時に街には明かりが灯る。 そして誰も気が付かない。この明かりに紛れて、魔の存在が動き出すことに。 邂逅 肩が触れ合う程に混雑した街。それでも群衆は誰一人として足を止めようとはしない。 こんなに近くにいながらも、誰も行き交う他人の顔など見ていない。きっと障害物と同じなのだ。 はやても同様に、顔のない障害物とぶつからないよう避けて歩く。 だが、その男は違った。はやての視線は、向かいから歩いてくる一人の青年に吸い寄せられた。 日が落ちたとはいえ、初夏も近づく街中の風は蒸し暑い。だというのに、男は膝近くまではある長い真っ白なロングコートを着込んでいる。 それだけでも目を引くが、それ以上に男の纏う雰囲気は異質だった。その鋭さが否応にもはやての目を引きつけた。 その視線は正面ではなく、もっと先にある何かを見据えている。そんな風にも感じられた。 誰も男に気付いていないのだろうか。それは溶け込むと言うよりも、むしろ一人だけ存在する世界がずれているようでもある。 人の波に流され、徐々に二人は近づく。 はやては男の顔をはっきりと視認した。凛々しい顔立ちは二十代そこら、十代でも通用するだろう。 失礼だろうかと思いつつも、つい意識が向かう。はやての視線を引きつけたのは、主に男の眼だった。 その瞳は何を見つめているのか、何を見ればそのような眼ができるのか、そんなことを思わせる眼。意志の強さを感じさせる、 異様に研ぎ澄まされた眼光。 すれ違う瞬間、男と目が合ったような気がした。男の視線に射竦められ、さながら狩人に狙われた獲物のように、はやては動けなくなった。 一瞬立ち止まるが、すぐに後ろから流れてくる人ごみに背中を押されて動き出す。次に振り向いた時、男の姿は既に群衆に紛れていた。 『友』 「ザルバ。今の女……」 「ああ、鋼牙。ありゃ一体何だ? 変わった気配がする。ホラーのような、そうでないような匂い……そう、匂いだ」 男――冴島鋼牙は人ごみから離れた路地を一人歩く。周囲に気配すらないというのに、鋼牙は淡々と何者かと言葉を交わしていた。 「お前ですら感じる気配だ。なのに、その正体は皆目見当もつかない。まったく、どうなってんだ?」 声は鋼牙の指先から発されていた。鈍色の指輪、そこに付いた小さな髑髏がカタカタと顎を鳴らしている。 彼の名は、魔導輪ザルバ。魔獣の気配を察知し、鋼牙に知らせる、言うなれば相棒である。 「わからん。だがそれだけ強烈ならば……」 「ああ、狙われてもおかしくはないかもな」 やはり念の為、追いかけるべきだったか。すぐに人混みに紛れてしまったため、見逃してしまった。戻るべきか思案していると、 「鋼牙、もう一つ、今度は確実にホラーの気配だぜ。しかも、ちょうどあのお嬢さんが歩いてった方向だな」 ザルバが言い終わるより早く、鋼牙は身を翻す。白のコートがはためき、夜の闇に吸い込まれるように溶ける。 鋼牙の手は腰に差した朱塗りの鞘をしっかりと握っていた。 闇に潜む魔獣、『ホラー』。 人に憑依し、人を喰らう怪物。魔界より来る魔獣に対し、人はあまりにも無力で、か弱い。 ホラーの前に人の命はいとも容易く刈り取られ、餌になり下がる。 しかし、闇あるところ光あり。 『魔戒騎士』 ホラーを狩る為に存在する戦士。唯一ホラーの肉を断ち、浄化する術を持つ守りし者。はるか古の昔より、 闇と共に来るホラーと死闘を繰り広げてきた。 それが鋼牙の為すべき使命。その為だけに自分は在るとすら思っていた。 そして、鋼牙は闇夜を駆ける。 伝説の語り部 とっぷりと日が暮れてもまだ、はやては街を彷徨っていた。目的も行く当てもなく、ただ歩き続ける。徐々に郊外に向かっているのか、 人影はまばら。だが、人混みにも辟易していた頃だったのでちょうどいい。 あの男、彼の眼が焼き付いて離れない。不安と高揚を同時に掻きたてられるような眼光だった。 考えながら歩くうちに、やがて彼女の足は一つの建物の前で止まった。周囲の建物は明かりが消えているというのに、 そこだけは明かりがついたまま、扉も開け放たれている。 「へぇ……こんなところに画廊なんかあったんやなぁ」 あまりこういった文化的なことに縁のないはやてである。たまにはこういったものに触れてみるのも悪くないと思った。 中をこっそり覗くが、人の姿はない。それどころか、気配すら感じられない。まるで飾られた絵画達だけがここの住人であるかのよう。 入って見せてもらってもいいだろうか。何故かその時、普段ならば絶対しないであろう図々しさを発揮して、 誘われるようにはやては足を踏み入れた。 中に入ると目に飛び込むのは、真っ白な壁に掛けられた幾つもの絵画。絵の事などさっぱりだが、いい絵であることは分かる。 一所懸命で真っ直ぐな力強さを感じさせる絵だ。 「何か気に入った絵はありますかな?」 突然背後から声が掛けられた。はやては危険を感じ、すぐさま警戒しながら振り向く。 何の音も気配もなく後ろに立たれた。いくら休暇中で気が抜けているからといってあり得ない失態。 それとも、この男が只者ではないのだろうか。 「声を掛けたのは中年の男性だった。手を後ろに組み、顔面には張り付けたような薄ら笑い。表面上はにこやかだが、 どこか不穏なものが混じっている。 「あ、すいません……勝手に入ってしもうて……」 僅かな警戒は解かず、それに応じる。 「今日はもう閉めたんですが……まぁいいでしょう。どうぞご覧になってください。私、ここのオーナーをしております。谷山と申します」 「いい絵ですね……。絵のことなんてさっぱりなんですけど、なんやお日様みたいな温かい気持ちになります」 「まだ駆け出しの画家の卵なんですが、聞けば彼女も喜ぶでしょう。おや、ちょうど来られたようですな」 はやての背後を覗き込む谷山。つられてはやても振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。 「打ち合わせ、遅くなって申し訳ありません、オーナー」 「ああ、御月くん。こちらの女性が、あなたの絵を大変気に入ったと……」 「本当ですか!?」 二十代と少し、といったところか。わりと活発な印象を感じさせる女性である。谷山の言葉に顔を輝かせた女性は、 はやての手を取って、にこやかに微笑んだ。 「私、御月カオル。明日からこちらで初めての個展を開かせて頂くんです。良かったら来てくださいね」 「あ、どうも……八神はやてといいます」 それが、はやてと御月カオルの最初の出会い。まさかこれから長い付き合いになるとは、両者とも夢にも思っていなかった。 魔獣 アングレイ 「この絵を買わせてもらおう」 いきなりやってきたその男は、カオルの絵を指差した。それは街ですれ違った、白いコートの男。不思議な眼をしたあの男。 鋼牙は、はやてにとっては不信感がぬぐい切れない相手であったが、薫にとっては自分の絵を認めてくれた最初の客。 はやてに対して以上に、嬉々として対応した。 「ありがとうございます! あ、でも……展示販売は明日からなんですけど……」 「今日中に家に飾りたい。今すぐ届けてくれるか?」 有無を言わさぬ鋼牙の態度に、カオルも若干疑問を抱いたものの、 「まあいいんじゃないですか? 今日は特別ということで……」 オーナーの鶴の一声で承諾した。 いそいそと壁から絵を外そうとするカオル。所在なげに立っているだけのはやてを余所に、鋼牙は谷山に向き直る。 「もっと素敵な絵がありそうだ」 「ええ、こちらへ……」 谷山が鋼牙を地下へ促す。 一見すれば、無愛想な変わり者の客にも、温和に対応する主人。はやては、それを横で見ていただけだった。 しかし、鋼牙の谷山を見る鋭い目と、それを難なく受け流す谷山の笑顔に、どこか不穏な色を感じずにはいられなかった。 様々な絵画が眠る、薄暗い地下の倉庫。そこを谷山は絵の説明をしながら歩き、鋼牙はその後ろをついて回る。 「この絵は……?」 「ああ……それは空です。箱だけですよ。中身は入っていません」 「……あんたが食っちまったか?」 谷山に緊張が走り、地下の空気が変わる。怪しいと感じた絵で鎌を掛けてみたが、どうやら当たりらしい。 「それとも、あんたが食われたか」 動きを止めて、鋼牙を睨みつける谷山。鋼牙はライターを取り出し、谷山の瞳にかざした。 緑色のライターの火、魔導火と呼ばれる炎は、邪悪な存在を照らしだす。瞳を炎で照らせば、常人なら変化はない。 しかし、それが魔獣に憑依された者であれば、その瞳に魔導文字を浮かばせるのだ。 そして鋼牙が照らした谷山の瞳には、確かに魔導文字が、ホラーの証が浮かび上がっていた。 途端、谷山が人間離れした動きで跳躍。鋼牙の一瞬の隙を狙って、消えた。 上階に戻る為、倉庫の扉を開け放つと、そこはコンクリート壁の部屋。床には何もなく、壁に赤く魔導文字が描かれた絵が飾られている。 「奴はホラー・アングレイ。邪悪な絵画をゲートに出現したか」 ザルバに言われるまでもなく、鋼牙も奴を知っていた。女食いのホラー・アングレイはトラップを使う。 魔導文字から浮かび上がり、実体化したのは、頭から爪先まで真紅の服を纏った人型。 顔のあるべき場所は塗りつぶしたように黒く、その中は窺えない。 槍を構えた二体が、鋼牙に襲いかかる。使い魔をけしかけ、倒すとはいかなくても、足止めに使うつもりだろう。 「急げよ、鋼牙! 奴は今の内に二人を食う気だ!」 「応!!」 ザルバに答え、鋼牙は腰の剣を抜き放った。 牙狼 谷山は地下から上がってくるなり、カオルを背後から絞めるように抱いた。 指定の絵を届ける準備をしていたカオルは、抵抗する間もなく捕らえられた。 どれだけもがき暴れても、絞める力は衰えない。体格からは想像もつかない、凄まじい腕力でカオルを逃がさない。 帰ろうかと玄関の扉に手を掛けていたはやては、建物全体を覆った魔力に、結界が張られたのだと確信する。 カオルの悲鳴に振り向いたのは、直後のことだった。 白く濁った瞳は人のものではない。尋常でないと判断したはやては、デバイスを起動。 BJを纏い、魔力弾で谷山を引き剥がした。 「貴様……魔導師か」 谷山は、吹き飛ばされながらも体勢を立て直す。低く枯れた声も、やはり人のそれではない。 気絶したカオルを抱いて、はやては息を呑んだ。何故、魔導師を知っているのか。 何故、魔力弾を受けて平然としていられるのか。諸々の疑問を吹き飛ばす出来事が起きた。 画廊のオーナー谷山は、はやてとカオルの目の前で醜悪な怪物に変じる。脱皮するように背中を突き破り、 人の肉体を塵に変えて吹き飛ばしたのは、黒く悪魔じみた魔獣だった。 「隠れて、カオルさん!」 シュベルトクロイツを構える。 魔獣に、もう人の名残はどこにも見られない。倒すことに何の躊躇もなかった。 戦闘は、終始はやての有利に運んだ。はやて自身、中近距離戦闘には向かないタイプであったが、 経験の賜物か、攻撃をかわすのは難しくなかった。 問題は、むしろ攻撃にあった。繰り返し攻撃を叩き込み、確かな手応えはある。しかし、まるで堪えていない。 無論、殺す気で撃っていたにも関わらず。 勢いはあれど、戦意は徐々に削がれていく。大出力の魔法を撃つには狭すぎ、建物を崩壊させる危険がある。 何より、そのチャンスを与えてくれるとは思えない。 埒が明かないと判断したのか、魔獣の動きが変わった。壁に掛かった絵画の一枚に入り込んだのだ。 魔力弾を二射、連続で撃ち込むも効果はない。出てくる気配もない。 ただ、このまま放置していては危険だということだけは、直感で悟っていた。 焦りに駆られ、攻撃を続行しようと構えたはやてに、 「どけ、邪魔だ」 背後から声が掛けられる。振り向いた先には、白いコートの男。手にはライターを持ち、 吹きかけた緑色の小さな火が、はやての脇を通り過ぎる。 魔導火が吸い込まれると、絵はぐにゃぐにゃと奇妙にうねり、やがて一つの形を作り始めた。 どす黒い触手で自身を囲み、生まれた形は、やはりと言うか人型だった。頭部は髑髏、ヘドロのような濃緑の身体の周囲に、 粘性の高そうな液体が漂っている。 「女を誘い、女を喰らう。色欲に取り憑くホラー・アングレイ。俺は貴様を狩りに来た」 「やはり魔戒騎士……使い魔如きでは足止めにしかならない」 「魔界……騎士?」 変換するとしたらこうだろうか。 はやては、魔界などという言葉は創作でしか知らなかった。しかし、魔法があれば、魔界もあるのかもしれない。 事実、眼前の魔獣を見てしまっては信じざるを得なかった。 より禍々しく変貌を遂げ、強力な魔力を放つホラー。だが、鋼牙は欠片も臆した様子を見せなかった。 「我が名は牙狼(ガロ)! 黄金騎士だ!!」 一声吼えた鋼牙は、剣を天へ突き立てる。宙に走らせ、頭上に真円を描いた。 剣の軌跡が光を放つ。空間自体が剣によって切り裂かれたのだとわかった。 軌跡から眩い光が溢れ、鋼牙を照らし出す。何処からともなく降り注ぐ光は鋼牙を包み込み、そして、空間が"割れた"。 眩い光に染め上げられた身体が一際輝いた瞬間、 「あれは……オオ……カミ?」 はやては目を見張った。 鋼牙の身体が一瞬光に包まれ、今そこに立っているのは金色の鎧をその身に纏った狼。 狼の顔をした兜のみならず、身体を包む鎧も煌びやかに輝き、曇りのない装甲に景色を映している。 全身からは神々しいまでの光を発し、背後を大輪の花の如く、炎の紋章が飾る。 細身の飾り気のない剣が幅広になり、鍔も付いた長剣へと変化。その刀身には美しい装飾や紋様が施されていた。 それは、まさしく黄金の騎士だった。 鎧の召喚。 これにより、魔戒騎士・冴島鋼牙は、黄金騎士・牙狼(ガロ)となりて剣を振るう。 牙狼――それは魔戒騎士中、最高位の称号。代々称号を受け継ぐのは一人だけ。 そして現在、冴島鋼牙が当代の牙狼を務めている。 羽根のように軽い黄金の鎧。しかし、そこには常に別種の重みが圧し掛かっている。 それは守りし者として、人々を守るという誓い。 牙狼という輝かしい称号は、時に心を締め付ける呪縛。決して敗北が許されない使命の証。 しかし、それでいいと鋼牙は思っていた。己の痛み、重圧にも堪えられずして、人々を魔獣から守る任が果たせるはずがないのだから。 故に今、鋼牙が為すべきことは一つ。 目の前の魔獣を斬る。それだけであった。 何処からともなく、狼の唸りが轟く。一歩進むごとに、ガシャリと重々しく鎧が鳴る。 アングレイは口から溶解液を乱射。それでも、牙狼は足を止めなかった。右手を突き出し、それを受ける。 カオルを庇い、柱の陰に隠れていたはやて。飛散した溶解液が柱に当たり、蜂の巣のように無数の穴が開く。当たれば、BJ越しでも危なかっただろう。 あちこちで石やコンクリートの蒸発した煙が立ち込める。それでも、はやては聞き洩らさなかった。ガシャリと重い狼の足音を。 煙が晴れると、そこには溶解液を受けてなお、傷どころか汚れ一つもない黄金騎士の姿があった。 牙狼はゆっくりとした動作で剣を構え、跳躍。狼の牙は咆哮もなく静かに、そして冷徹に獲物目がけて跳びかかる。 石造りの床が、牙狼の踏み込みで砕けて飛散するも、黄金の鎧に傷を付けるには至らない。 吐き出された反撃の溶解液を飛び越え、身体を捻りながら両手で振るわれる牙狼剣。 何人たりとも受け止められぬであろう剛剣が、アングレイの肉体を紙のように斬り裂いた。 はやてはそれを呆然と見つめ、呟く。 「これが魔界騎士……」 いや、違う。 言ってから、はやては首を振って自らの考えを否定した。 あれはさしずめ魔戒騎士。魔を戒める騎士なのだと。 守護騎士 牙狼がアングレイを斬り捨てた直後、アングレイの身体が爆ぜ、体液が飛散した。魅入られるようにしていたはやては気付くのが遅れ、 バリアも間に合わない。咄嗟にカオルを庇うのが限界だった。 目を瞑り、顔を守ったはやての頬に、アングレイの体液が付着。はやてはビクンと身体を震わせたが、意外なことに痛みもなければ臭いもなく、 体液はすぐにBJと皮膚に吸収された。 そして、消滅したアングレイには目もくれず、牙狼ははやてに歩み寄る。はやてが礼を言うべきか迷っていると、喉元に剣が突きつけられた。 「何故、逃げなかった!」 「な……!?」 「ホラーの返り血を浴びた人間は斬らねばならない。それが掟だ」 動けなかった。 喉元から数ミリの距離に切っ先は迫っている。少し剣を押し進めるだけで、容易く殺せる距離だ。 戦慄し、全身が強張る。この状況を切り抜けるにはどうすべきか、焦りで思考もままならない。 「主はやて! 離れてください!!」 聞き覚えのある声が響いた。開かなかった玄関の扉が開け放たれ、桃色の髪の女性が、飛び込んできた。 「シグナム!?」 走ってくるのは、ここにいるはずのない烈火の将。シグナムは勢いを殺さず、近づくなり、だんと床を蹴った。 大上段に振りかぶった長剣レヴァンティンを、牙狼目掛けて振り下ろす。 対する牙狼は、はやてに向けた剣を防御に回し、レヴァンティンを受け止める。剣と剣のぶつかりあう、甲高い金属音が響いた。 両者の力は互角。少なくとも、はやてにはそう見えた。どちらも剣を引かず、必然鍔迫り合いに持ち込まれる。 「何者だ!」 「それはこちらの台詞! 我が主に剣を向ける者は、誰であろうと私の敵だ!」 一度跳び退ったシグナムは、怒りのままに剣を振るう。牙狼は難なく受け止め、反撃。シグナムは反射でそれを読み、垣間見えた隙を突く。 はやては、二人の剣戟を離れた場所で見るだけだった。本来なら強力な魔法を詠唱し、シグナムを援護すべきなのだが、できなかった。 今の二人は息の合った演武のように美しく、また危うい。些細な切欠が命取りとなり、シグナムは一刀のもとに斬り捨てられるだろう。 膠着は長くは続かなかった。激しい怒りを感じながらも、戦士としてのシグナムは冷静だった。が、先の戦いを見ていなかったこと、加えて、 ほんの僅かながら先入観を抱いていたのだろう。シグナムは、牙狼の軽さを見誤っていた。 二人は足を止めて打ち合っている。牙狼の上半身は、こちらの素早い剣閃に付いてくるものの、 鈍重な鎧を着けていては小回りは利かないに違いない。 そう睨んだシグナムは、大振りの一撃で左側面に回り込み、返す刀で首を狙った。 腕は届かず、剣は届く距離。予想通り、奴の反応は追い付いていない。 獲った――確信が現実になる刹那、 「かはっ……!」 背中に激痛が走り、シグナムは唾液と息を吐き出した。見ると、牙狼の踵が背中にめり込んでいた。顔が驚愕と苦痛に歪む。 「シグナム!!」 はやてだけは一部始終を見ていた。レヴァンティンが返された瞬間、牙狼は右足を軸に回転、左足でシグナムに回し蹴りを食らわせたのだ。 とても、全身鎧を纏っているとは思えない軽やかさだった。 事実、牙狼にとっては、鎧も剣も重量はないに等しい。材質は、ソウルメタルと呼ばれる特殊金属。 心の有り様で重量を変える、魔戒騎士のみが扱える金属だった。 倒れたシグナムに、牙狼が向き直る。はやてはシグナムを守ろうと、シュベルトクロイツを構える。 だが、牙狼の右手から放たれた声で両者は動きを止めた。 「待て、鋼牙! 時間だ!!」 「ああ……」 声の主は、魔導輪ザルバ。この世界で鎧を召喚していられるのは九十九秒という制約がある。鎧から光が瞬き、牙狼は一瞬で鋼牙に戻った。 しかし、まだ終わりではない。膝立ちで剣を構えるシグナム。いつでも全力の砲撃を放てる姿勢のはやて。二人は未だ、ぎらついた目で鋼牙を睨んでいる。 「もういい……もう戦う気はない」 鋼牙は溜息を吐いて、剣を鞘に収める。誰からも分かる意志表示。そこまでして、ようやく二人も構えを解いた。 「シグナム、大丈夫なん?」 「ええ、大丈夫です。それよりも……」 はやてはカオルを柱に預け、シグナムに駆け寄った。シグナムはレヴァンティンを杖に、よろよろと立ち上がる。鋼牙の一撃がまだ残っていた。 シグナムの視線を追うと、鋼牙が気絶したカオルを担がんとしているところだった。はやてが再度身構えると、鋼牙はぶっきらぼうに答える。 「この女を送っていくだけだ。信じろ」 何故かこの時、はやては疑わなかった。彼の言葉に嘘はないと。カオルに無茶な注文を出したのも、彼女を巻き込まない為だろう。 どの道止めるだけの力が残っていなかった。 カオルを抱いた鋼牙は、去り際に一度はやてを振り返った。 「お前……暫くはこの街を出るなよ。命が惜しければな」 不気味な捨て台詞を残して。 はやてもシグナムも首を傾げた。何故彼がそんなことを言ったのか、この時点では理解できるはずもなく、それ故忠告が守られることもなかった。 「申し訳ありません、主はやて。私としたことが、後れを取るとは……」 「ええんや。こっちこそごめんな、シグナム。それと……ありがとう」 シグナムと歩く夜道は、さっきまでの戦いが嘘みたいに静かで綺麗だった。こんな綺麗な夜の闇に魔獣が潜んでいるとは、とても想像もできないくらいに。 シグナムが沈黙したので、自然とはやても無口になる。近づく雑踏を感じながら、人工の灯りを目指して寄り添い歩く。 本当なら、こうして歩くのは明日になるはずだったのに、不思議なものだ。 「そういえば、シグナム。来るんは明日の予定やったんやないの?」 「数日前から、テスタロッサとヴィータが気を回して手伝ってくれたので。お陰で今日からこちらに来れたのですが……どうやら正解だったようです。 主はやて、あの騎士は何者なのですか?」 「分からへん……私にも、何が何やら」 分かるわけがないというのは、素直な気持ちだった。はやて自身、偶然巻き込まれ、翻弄されて今に至っているのだから。 「あの騎士、剣もさることながら、凄まじい使い手でした。あのまま戦っていたら私は危険だったでしょう……」 「うん……残念やけど、休暇はお終いやね。すぐにでも報告せんと。あ、でも帰るんは私一人でも……」 折角の休暇だったのに、何もしないまま終わるのは不憫。しかし、シグナムはそうは思っていないらしい。 「何を仰いますか。あなたが戻るのであれば、私も共に戻ります。それに……」 シグナムは、首から下げたレヴァンティンを見る。待機フォルムでは判別できないが、共に戦う相棒は、たった一度の戦闘、 数度の打ち合いで激しく損傷していた。 「まさか、レヴァンティンが刃毀れするとは……。急ぎ修理をしなければなりません……」 愛機を握り締め、己が不甲斐なさを悔いるシグナムの目は、はやてを見ない。この時ばかりは、彼女の関心は黄金騎士へ向けられていた。 守護騎士の務めとは別に、一人の戦士として。 騎士伝説 序章 「はやて……突然ですまないが、長期休暇を取って地球に戻ってほしい。なるべく早く、今すぐにでもだ」 「は……?」 ミッドチルダに戻ったはやては、その日のうちに報告書を作成した。その翌々日、こうして聖王教会に呼び出され、第一声がこれである。 クロノが何を言っているのか分からなかった。クロノの横では、目丸くして固まるはやてを気の毒そうにカリムが見つめている。 クロノは、そんなはやての表情を気にも留めず、話を続けた。 「期間は四ヶ月。無論、その間も給料は支払われるから心配しなくていい。向こうでも通信は許可する。グリフィスもいるし、なんとかなるだろう。 そうだな……引き継ぎも必要だろう、明日には発ってくれるか?」 それだけ捲し立てるとクロノは涼しい顔で紅茶を啜った。 ぽっかりと口を開けていたはやてが、ここでようやく抗議する。あまりに突然過ぎて、口も上手く回らなかった。 「ちょ……ちょお待って。な……何を言うてるんや、クロノ君。私、昨日戻ったばっかりやで? 身体もなんともあらへんし」 念の為、戻ってから精密検査を受けたが、身体に何の異常も見られなかった。自覚症状もなく、至って健康そのものである。 「だからといって、得体の知れないものの血を浴びて、そのままと言うわけにもいかないだろう」 「私が今、この状況で六課を離れるわけにもいかへんよ!」 戦闘機人の存在も確認され、JS事件の捜査は着々と進んでいる。じきに佳境という状況で、隊を離れるなど考えられない。先の休暇だって、 なのは達にせっつかれて取ったものなのだ。 何より、機動六課は一年間という期限付き。何故、四ヶ月も時間を無駄にしなければならないのか。 「クロノ提督。はっきり言わなければ、はやても納得しませんよ」 カリムに諌められ、クロノは溜息を一つ。気乗りしない様子で話し出す。 「君の報告書にあった魔獣ホラー、そして魔戒騎士について、無限書庫に資料がないか、ユーノに調査を頼んでおいた」 モニターが浮かび上がり、無限書庫司書長であるユーノ・スクライアが映し出される。 「魔戒詩篇というタイトルの本……というより紙束みたいなものだけど。データ化もされずに、無限書庫で厳重に保管されていたよ。 書かれている文字は、無限書庫のデータにある言語、及び地球のどの言語にも該当しないから、すぐに解読は難しい。 けど、ここにあるということは管理局とも無関係ではなさそうだね」 ユーノの説明から間を置かず、クロノが続けた。 「それを聞いて、僕はすぐに局のお偉方を当たった。三提督に話を伺った限りでは、相当な古株しか知らない事実らしいが、 ホラーについてもいくつか情報は得られた」 「私の方でも調べてみました。ホラーを知る者は教会にもごく少数、それも口伝でのみ。詳しいことは定かではありません。 ただ、先人が記録に残すことさえ忌避するほどの存在なのは確かなようです」 はやては迷っていた。それほどの脅威なら、生まれ故郷の世界である、調査に否やはない。管理局は管理外世界の問題に対して動けないのだから。 「だからって何も今やなくても……。そもそも、なんで私が戻らなあかんの?」 「人に憑依し、人を喰らう魔獣。君はホラーの返り血を浴びた。ホラーの返り血を浴びた人間は、ホラーを誘き寄せる性質があるという。 それは世界の垣根を越えて作用し、魔界からホラーが君を狙って現れるかもしれない。そして、一度陰我が繋がれば、 この世界にもゲートが開く可能性がある。そのように仰っていた」 「さっきからクロノ君の話は、かもしれないとか、可能性があるとか、全部憶測の域を出てへん! そんな曖昧な情報で私に出ていけって言うんか!?」 激昂したはやては、机を叩いて立ち上がる。クロノは、そんなはやてを正面から見据えて言った。 「君を追い落としたがっている人間は多い。自主的に去ってくれないなら、どんな無茶な理由をでっちあげてでも、君を追放しなければならない。 それほどまでに老人達は、次元世界と魔界が繋がることを危惧している」 「そんな……」 途端に大人しくなるはやて。思考は冷や水を浴びたように冷静になり、それきり言葉を紡げなくなった。 はやてに対する風当たりは、今もって強い。それを和らげてくれているのが、クロノ、カリム、リンディを始めとした上の人脈である。 そういった後ろ盾までもが揃って敵に回れば、不可能ではなかった。 「落ち着くんだ、はやて。もう一つ、これは僕も詳しくは聞かされていない、おそらく御三方も詳しくはご存知ないのだろう。 だが……ホラーの返り血を浴びた者は百日後に死ぬ……と言われている」 「分かるでしょう、はやて。これはあなたの為でもある。それが真実かどうか、答えはあの世界にしかない。 あなた自身で確かめるしかないの。手遅れになる前に」 「それで四ヶ月……か。死ぬか、解決するまでは帰ってくるなって言うわけやね……」 あと百日で死ぬと聞かされても、それほど動揺はしなかった。胸に募るのは、言い様のない失望感。局に見放され、放逐され、 それでも受け入れるしかない悔しさ。誰も悪くないと理屈では分かっていても、納得はできなかった。 俯くはやてに、声を掛けられる者はいなかった。きっと何を言っても空々しいだけだろう。はやての気持ちは、誰にも理解できない。 クロノとカリムは顔を見合わせ、頷く。 「ミゼット提督の言葉をそのまま伝える」 ミゼット・クローベル――伝説の三提督の一人であり、はやてとも親交の深い女性。しかし、今は放逐しようとする一人でもある。 ゴホン、と咳払いをしたクロノは、滔々と語り始めた。 「《たとえ、高町なのはやフェイト・T・ハラオウンを含めた千人の精鋭に護衛されようとも、あなたに真の安息は訪れない》」 「そしてこうも仰っていたそうよ。《彼の世界に帰りなさい、そして探しなさい。黄金騎士があなたを守ってくれる》と」 はやては内心、ミゼットの言葉に光明を求めていた。せめて、何らかの励ましになってくれることを。 だが、ミゼットの言葉ははやてを惑わし、心に波紋を広げるばかりだった。彼女の言う黄金騎士。それこそが、 返り血を浴びた自分を殺そうとした張本人なのだから。 そうして、はやてはたった一人、再び地球に戻ることになった。胸には戸惑いと失意しかなく、とてもこれからの出来事を想像する余裕などなかった。 冴島鋼牙と、御月カオルとの再会。これにより、はやては闇の中に舞い戻り、深い夜の世界に足を踏み入れることになる。 この時は知る由もなかった。あの夜目撃した、魔戒騎士と魔獣ホラーの人知れぬ死闘。そして出会い。 それは、これからはやてと守護騎士達、そして黄金騎士"牙狼"の織り成す、新たなる騎士伝説の、ほんの幕開けに過ぎないことに……。 次回予告 「人は孤独を恐れ、他人を求める。だが、相手はよく選んだほうがいいな。 よく見ろ、そいつは本当に人間なのか? 次回『郷愁』 忘れるな。奴らはいつだって甘い声で囁く」 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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■ロッサ=アンネース 絢爛なる退屈。 魔導学と使霊術、そして医術の進歩の結果、肉体と魂を分離させ、有限の肉体を乗り換えることで不老不死を実現した文明。 グロテスクな巨大肉食昆虫が犇く大地を離れ、際限なく成長する巨大な黒茨の蔦に寄生して生活している。 数百年もの月日を生きてきた彼らは貴族の様に優雅な生活を送りながらも、あまりの退屈に各々が好き勝手過ごしているため、非常に統制のとれていない混沌とした社会になってしまった。 基本的に彼らは自分の趣味趣向に合わない物事に無関心であり、退屈しのぎに互いの思想について討論したり対立してみたりすることはあれど、それが無意味であることは最も良く理解している。 限りない探求や求道、装飾品や芸術品の収集を繰り返してもなお無限の時間を持て余す彼らが行き着いた最後の娯楽こそが、「死」と隣り合わせるスリルだった。 彼らには他文明を取り込み支配する欲など無く、ただ命をかけた「狩猟」を楽しみ、無限を越えたその先にあるものへの盲目の期待しかないのだ。 ■ペルフェナーダ 偉大なる発明によりほぼ無限の命を得た種族。 彼らは早々に限りある肉体を捨て、霊体としての自身を魔法化学で生成した肉体へ「受肉」することで若々しく思い通りの姿を得た。 また彼らは非常に強い魔力を様々なエネルギーに変換する術を持ち、あらゆる奇跡を起こすことが可能。 さらには装飾具(主に昆虫の形を模したもの)に偽りの生命を吹き込み、自在に使役することができる。 絢爛な容姿を好むが、基本的に自分勝手な種族であるため個体差は最も激しい。 百余年もの月日を生きてきた彼らはとかく自虐や死に対して感じるスリルに激しい興味を抱いているようだ。 □ラス=バイレ=エスパーダ 誰が言い始めたのかは不明だが、ペルフェナーダのうち、死のスリルを味わうために自ら方舟戦争に赴く者をこう呼ぶ。 よほど退屈なのかその数は相当多いようであたかも軍隊のように見えるが、全員自分の欲望を満たすための私闘に高じているに過ぎない。 しかし自分勝手な彼らにも他人との交流やライバル意識があるようで、まれに共闘や競い合いが見られる。 彼らは戦闘に赴くことを「狩りに出る」と表現し、次の領域干渉の時を待ち焦がれている。 □ベルカント ペルフェナーダに使役される人造奴隷。 その性質によりふたつの呼び名があるが、ベルカント全般においては寵奴と訳される。 雑霊をあつめて精製した偽りの魂を受肉させて産み出される。 基本的にペルフェナーダは大体の雑務を雑霊を使役してこなしてしまうため奴隷など必要としないのだが、永い人生の慰みとしてベルカントを産み出し、使役し、寵愛している。 ベルカントはペルフェナーダに対し絶対服従するように造られ、胸中に如何なる怒りや憎しみがあろうと反発することは出来ない。 ベルカントには全て胸元に烙印が刻まれているため、一般人と区別することができる。 □ベルカント=セレブラム 知奴と訳す。ベルカントの内、核へのアクセス件を持ち強い魔力と際限ない知識を備え持った種族である。 華奢な体躯で見目美しい風貌に造られることが殆どである。 言わば人間コンピュータであり、正確な演算のため感情を極力抑制されている。 強力な魔力を与えられているため、自身より程度の低い雑霊を使役することも可能である。 □ベルカント=フェルノ 戦奴と訳す。ベルカントの内、戦闘のために造られ筋骨隆々の肉体とある程度の再生能力を持つ。 知能に於いては人並みかそれ以下であるが、セレブラムよりも比較的簡単に産み出すことができるため絶対数は多い。 基本的な用途はペルフェナーダの身辺警護だが、殆どのペルフェナーダは自身の狩りに彼らを同行させている。 簡単には壊れない丈夫な肉体を持つため、彼らを痛め付け傷つけることを楽しむ好事家も少なくはない。 □受肉 ペルフェナーダが老いた肉体を捨て、新たな肉体を得て再生するための儀式。 祭壇と呼ばれる装置を用いて魂を肉体から分離させ、捕らえた蟲の蛹に降霊させて再誕する。 その際の姿形は霊体の思うがままに変更が可能である。 ただし、短期の間に幾度となく受肉を繰り返すと魂が疲弊し、消滅する危険がある。 □死 ペルフェナーダにとって最も忌むべき存在。 受肉技術の完成により不死身の肉体を得たかに見えたペルフェナーダであるが、その魂の寿命までは延長することは叶わなかった。 主な死因は以下の通り。 ・他殺、自殺 最も多い死因である。 狩りの最中に殺害される、暗殺されるなど、方舟戦争勃発から他殺は急激に増加した。 人生に退屈したペルフェナーダが自殺することもまた少なくない。 ・魂の寿命 本来持っている魔力の強さにもよるが、霊体を維持できる限界は最長250年程度と言われている。 病死や老衰の危険は回避されたとはいえ、魂そのものの疲弊は回避できなかった。 霊体、肉体が共に維持できなくなった瞬間、ペルフェナーダは醜く崩れ去るという壮絶な死を迎えることになる。 ・過剰転生 そして彼らが最も恐れている魂の疲弊を増長しているのが、不老不死の法であるはずの受肉技術だった。 一回の受肉でペルフェナーダはかなりの魔力を消耗する。 それを短期に繰り返すことが魂自体に過度の負荷をかけ、最終的に死に至るのである。