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飛び込んで幻想入り 動画リンク コメント 飛び込んで幻想入り 1245人目の幻想入りか 作者 ひとこと 主人公 動画リンク 新作 一話 コメント・レビュー 名前 コメント すべてのコメントを見る ※この作品のレビューを募集しています。レビューについては、こちらをご覧下さい。
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798 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/12/09(金) 15 54 28.33 ID ??? 無知なのも罪だけど、注意すべき所を何も伝えず かといって先に警戒もさせずに居る奴もどうかと思うが GMの話もね (おっさんは卓ゲの話に戻ってきたなと安心した) 800 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/12/09(金) 15 56 33.17 ID ??? 798 注意を喚起させるべきところでGMから伝える方がスムーズなのは理解できるが 不意打ちもしたいんだよな。うまい落とし所ないもんかな 805 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/12/09(金) 16 02 10.87 ID ??? 800 昔何が起こってるんだろうと思わせようと 真っ暗な部屋の中で白銀の光を放つ物が飛び交っていると伝えると シーフがそのまま無警戒に松明もって「飛び込んで」(本当にこう宣言した)きてな 呪われた魔剣が目覚めはじめて暴走してるって設定だったし設定曲げるのもアレだったからそのまま不意打ちで襲い掛かるしかなかったんだよな… 尋常じゃない状況を説明したつもりだったのにどうしてこうなった スレ298
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番号 AMWS02030 名前 あたしに飛び込んで来て 読み あたしにとびこんできて Lv 4 スター 種別 トラップ トリガー Attack 【ちぃちゃん 愛してる!!】○《攻撃された時》 攻撃した敵を1枚選び、捨札に置く。○希望(スマッシュから反撃!)敵を1枚まで選び、7000ダメージ! ブロック メディアワークス 作品 苺ましまろ レアリティ C 希望付きのユニークな単発戦闘補助トラップ。戦闘勝利を狙いたいときにぴったり。4Lvで使い易いのも良い。 1:1交換しか可能じゃないことから不人気。キーカードを守るための採用は大いにアリ。 デ・ジ・キャラット(R)や伸恵等の戦闘勝利時誘発型能力を持つユニットを一緒に採用し、アドを稼ぎたい。
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飛び込んで行け、夜へ ◆.9Q8uilou6 それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた 大きくぶ厚く重く そして大雑把すぎた それはまさに鉄塊だった 「いったい誰がこんな剣使えるって言うのよ!」 デイバックを空けて出てきたのはどうやって中に入っていたのかも分からない巨大な剣だった。 私だって並の男に負けない力を持っている自信がある。 でもこの剣は無理だ。 持ち上げるだけで精一杯でとてもじゃないが戦闘には使えそうもない。 いったいどんな人間がこんな剣を振れるのか想像しようとして、一人の男の姿が思い浮かんだのであわててその姿を打ち消した。 あの男───ガッツが去ってから全てがおかしくなった。 グリフィスはガッツを追うように行方不明になり、鷹の団はミッドランドのお尋ね者になり逃亡生活。 だが───やっとグリフィスの居場所を掴んだ。 後は計画を練ってグリフィスを救い出せば全てが元通りになるはずだった。 こんな殺し合いに巻き込まれなければ。 「この剣は戦闘には使えそうもないわね…何か他に武器は…これは?」 次に私は参加者の名前が書かれた紙を見つけた。 「ガッツ!?それにグリフィスも!?」 私は今までこの殺し合いに優勝して元の世界に戻りグリフィスを救出するつもりだった。 でもグリフィスはここにいる。 それに───ガッツも。 そして生き残れるのは一人。 私はどうしたらいい? 自分が生き残るためにグリフィスを殺す? 無理だ、そんなこと、力の面でも心の面でも出来るわけがない。 私はグリフィスの剣。私の命はグリフィスの命の為にある。 じゃああのギガゾンビとやらを殺す? それも無理だ。 私もグリフィスもガッツもただの剣士だ。 離れたところから魔法で相手の首を爆破する相手にかなうはずがないし、そもそもここにいない相手を殺すことなど出来るはずもない。 なら私のすべき事は一つ。グリフィスのために他の参加者を殺して、最後に自害する。 でも私が全員を殺してる間にグリフィスが死んだら─── 大丈夫。グリフィスは私よりも遥かに強い。 グリフィスを殺せる人間なんて─── 『ガッツ』 私は名簿に書かれていたもう一人の知り合いの名前を思い出した。 ガッツ、ガッツならグリフィスにも勝ってしまうかもしれない。 そして何より───グリフィスにガッツは殺せない。 グリフィスにとってはガッツは何にも変えがたい心の支えだ。 ───多分、ガッツが鷹の団を捨てて去っていった今でさえ。 グリフィスにガッツは殺せない。 でもこの殺し合いで生き残れるのはただ一人。 なら、私が殺すしかない。 殺せないまでも、傷を負わせる事が出来れば他の参加者が殺してくれるかもしれない。 その為にも何か私にも使える武器は─── そう思いカバンに手を入れると、私の手が何かを掴んだ。 「これは───黄金の剣?」 今度の剣は先ほどの剣のように無茶苦茶なサイズではなく、私が今まで使っていた剣と同じくらいの大きさだった。 これなら、これならやれる。 決意は固めた。武器も手に入れた。後は───実行するだけだ。 【A-5・1日目 深夜】 【キャスカ@ベルセルク】 [状態]:健康 [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night [道具]:支給品一式、カルラの剣@うたわれるもの(持ち運べないので鞄に収納しました) [思考・状況] 1:ガッツを殺す。 2:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。 ※1 キャスカはガッツが一度去って再開する直前、グリフィスが捕まってから一年後の状態で来ています。 時系列順で読む Back 決意の言葉 Next 淵底に堕ちた鷹 投下順で読む Back 決意の言葉 Next 淵底に堕ちた鷹 キャスカ 83 ある接触
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(何で・・・何で俺と陽菜さんの関わりが盗撮されている上殺し合いに利用されてるんだよ!?) この殺し合いにおける最重要人物、森嶋帆高は唖然としていた。おかしい、自分はほんの数分前まであの鳥居を通って陽菜さんに会いに行けるはずだった。気が付いたら映画館に入らされて自分の軌跡を見せられ目が覚めると見知らぬ森にいた (もう少しで出会えるところだったのに!!何で!!何でここで足止めされるんだよ!!それに・・・!!) 説明書を見れば見るほど顔が青ざめていく事が自分の事ながら分かる。 ①『森嶋帆高』が天野陽菜と出会えず制限時間が過ぎた場合、太陽光が会場中にくまなく差し込みゲーム終了。1時間後に森嶋帆高の首輪の爆破を合図に全員退去。 ②『森嶋帆高』が陽菜と出会ったら数時間後にエリア全体が浸水し、『森嶋帆高』と陽菜を除く魚人のような溺死しない種族も含めて全員死亡する。 ③帆高が死滅した場合、その時点でゲームは終了。残った者は帰還できる。 この文に書かれている事が原因である。この文から帆高が読み取れたことは一つ。『どうあがいても自分が陽菜さんと会う事は許されない事である』という意思だった。 (何で・・・何で他の人が死ななくちゃいけないんだ?全く関係ない人達が) 帆高は陽菜を救う為なら自分の命を投げ出すつもりでいた。死んでも構わなかった。そして東京の天気がずっと雨でも構わなかった。『ただ雨になるだけ』なのだから、勿論それでもすでに許されないだろうことなのは分かる。それでも取り戻したかった。その為なら銃まで撃って脅す事ぐらい造作もなかった。 だが今回は明確に死ぬと書かれている、この事からつまり自分に求められているのは一人の命を救う代わりに他の人を・・・いや、一人所じゃない。多くの人の命を本当に踏み台にしなければならない そんな事を彼女は許すだろうか?ただでさえ銃で脅し撃ちをした事さえ酷く批判した彼女だ。絶縁どころか二度と顔を合わそうとはしないだろう。それで会おうとすることに意味があるのか?そもそもそんなに多くの人を殺した場合の自分を自分が許せるのか?許せないだろう、きっと自殺してしまうかもしれない 帆高(どうすれば・・・どうすればいいんだよ!?このままおとなしく他の参加者に殺されるのを待つことしかできないのか?多くの人達が生きる為に、そして陽菜さんもこのまま犠牲になれと?) どうすればいいのか分からず、右往左往していた時だった。 誰かに声をかけられたのは 「森嶋帆高・・・お前だな?」 その声に反応して振り返って見たのは射殺すような視線で見つめてくる茶髪の青年だった。 容姿はあの映像で参加者全員にバレているだろう。絶対に誤魔化せないという事実が帆高を苦しめる 「あ、貴方は、誰ですか・・・?」 「・・・名乗るかどうかは俺が今からする質問にどう答えたかによって決める」 「どうしてですか?名乗るくらいなら別に」 「殺す奴に名前を教えても意味がない事ぐらいわかるだろう?・・・変身」 『バナナ』 『カモン!ナイトオブスピアー!』 その青年は謎の赤い騎士に身を変えて・・・槍を首元に突き付けてきた ゾクっ!! 殺気が体に伝わる。本気だ、本気で俺の返答次第でこの人は俺を殺す気だ!! 「質問だ・・・これからお前はどっちの選択肢を取るつもりだ?」 「・・・選択肢を教えてください」 「一つ、このまま陽菜に会って俺達が死ぬ代わりに望みを果たす。もう一つは俺達の為に自分がこのまま俺に殺されて死ぬ、という選択肢だ」 先程まで自分が考えていた事そのものだった。それに今すぐ結論を出せと言われてしまった 「す、少し考えさせてください!!俺も今目が覚めたばかりで考えている途中d」 「ほう?考えている場合なのか?少しの時間が惜しい事ぐらいわかっているのか?お前の大切な人はたった今死にかけているんだぞ!!」 「俺だってわかってますよ!!だからって他の人まで俺に殺せというんですか!?」 「早く決断しろ!!俺にはやる事があった!!それを邪魔されて苛立っている!!1分で決めろ!!」 (1分!?無茶苦茶だ!!そんな短い時間で決めれるわけがない!!) 帆高は30秒必死に頭を回転して考えた・・・だが (決めれる訳・・・ないじゃないか!!決めれないよこんなの!!) 流石に今回の選択肢は・・・帆高には・・・重すぎた (殺されるんだな、俺・・・このまま・・・ごめんなさい・・・!!陽菜さん・・・!!) 帆高は諦めの境地で詫びていた・・・ (苛立っているという理由で殺されるなんてな・・・まぁ当然だよな、何かやっている途中に急に殺し合えって言わ・・・れ・・・?) 謎の男の気持ちになって自分が殺される理由を自分に納得できるように考えていた時の事だった 何故か違和感を感じたのである。 (・・・何で殺しあえって言われたんだ?この人が何かしたのか?俺は兎も角この人が何をしたのかなんて知らない、だがそれほどの悪い事をした極悪人ではないはずだ、もしそうだったら俺はいま生きていないし猶予もないはずだ、そしてこの殺し合いの参加者にも本当にそれ程の悪い事をした人はいたのか?いるとしてもそれが大半なのか?あの御子柴に挑みかかったあの人がとても悪い人とは全く思えないぞ?じゃあ何で招かれたんだ?そもそも悪い事をしたら警察のお世話になるはずなのに何で殺人までしなくちゃいけないんだ?何で罪に罪を重ねなくちゃいけないんだ?何で強いられているんだ俺達は?) その瞬間頭に幾つも疑問符が湧いてくる。その自問自答を繰り返した果てに辿り着いた結論、それは・・・!! 「時間だ!!答えろ!!」 「・・・俺は」 一呼吸おいて・・・言い始めた。 「陽菜さんを助けに行きます」 「それは俺達に死ねって事か?」 槍先が首に少し刺さる。血が少しだけ流れていた。 「違います、貴方も、参加者の皆さんも生きてください」 「ほう、何を言っている?ルールでは何て書かれていたのか知っているはずだが?」 「・・・おかしいじゃないですか」 「は?」 「おかしいじゃないですか、何でこうも皆が命が握られなくちゃいけないんですか?何で俺が大切な人に会ったら皆死ななくちゃいけないんですか?何で関係ない皆さんの為に俺は死ななくちゃいけないんですか?おかしいじゃないですか!!このロワのルール、いや、この殺し合いそのものが!!俺はこんな殺し合い認めません!!」 最後になるほど声量が大きくなってしまっていた。だが仕方がないだろう。考えれば考えるほど怒りしか湧いてこなかったからだ。 「だから俺はこの殺し合いそのものに反逆します!!俺は何方の選択肢もとりません!!」 「・・・それがお前の答えか」 するとその男は・・・変身を解除した。 「合格だ、認めよう、お前も立派な強者だとな」 「駆紋戒斗さん・・・ですか、戒斗さんでいいですか?」 「・・・好きに言え、帆高」 今、帆高と戒斗は木影で雨を避けて食事しながら話している。 駆紋戒斗は帆高を運命に立ち向かうものとして認め、何故その答えを認めたのかを話し始めた 「あの、何故貴方は俺の答えを認めてくれたんですか?」 「単純だ、このロワイヤルにはまだ隠している事があると分かったからだ」 「隠している事?」 「この文を見ろ、おかしいと思わなかったのか?」 帆高が見た文、それは③の『帆高が死滅した場合、その時点でゲームは終了。残った者は帰還できる。』 何がおかしいのか・・・別におかしい所なんて、ん?死滅?死亡じゃなくて死滅? 「どういうことですかこれは?」 「死滅とは一匹残らず全てを滅ぼすことだ。普通複数いる害虫に対して使うのが当たり前だよな?じゃあ何でお前を殺した条件に使ったんだろうな?」 「・・・確かにおかしい、俺と何もかも同じ人なんて複数いる訳がない!!」 「一応平行世界のお前も連れてこられて殺す必要がある為に死滅と言ったのかもしれんがな、俺も連れていかれたことがあるからな、だがだったら説明すればいい話だ、平行世界を知る参加者ばかりいる訳がないからな・・・それを言わないという事は何かを隠している!!何かを隠して強気な態度で殺し合いをさせるような弱い奴に俺は屈するつもりはない!!」 帆高はこの人を本当に誇り高い人だと感じずにはいられなかった 「お前は良い選択をしていた。あの時お前は何方かを選んでいたらどちらだろうとこの殺し合いに屈した弱者として殺すつもりだったからな」 「は、はい・・・」 「そして、お前は先ほどの選択の為にどうするつもりだ?」 「・・・俺、陽菜さんの元に向かいます、そしてその途中に多くの参加者と会って話していきます!!そしてその話し合いの中で情報を得てどうすれば大量の雨が降ろうと皆が生きられるかの方法を考えてみせます!!」 「・・・いいだろう!!俺も同行してお前を守ってやろう、ただし時間制限がある以上全速力で走る必要があるようだな、覚悟はあるか?」 「はい!!絶対に御子柴には負けません!!」 「その戦い、僕達にも協力させてください!!戒斗さん!!帆高君!!」 「誰だ!?」 振り返って後ろを見るとそこには白衣を着た青年と戒斗と同じ茶髪の青年と大人の魅力を持つキセルを吸う女性とかなり身長が低い少年と背が高く一見チャラそうなギャルの風貌である女の子がいた。 「お前は誰だ?何故俺の名前を知っている?」 「僕、異世界の貴方に会ったことがあったんです。なので・・・ごめんなさい!!自己紹介を忘れてましたね、僕は宝条永夢です。小児科医をやってます」 「俺の事もこの人知ってて疑問に思ったんだんだけど、良い奴だから別に良いかなって、俺は剣崎一真、仮面ライダーブレイドだ」 「僕は広瀬康一です。あの、霊波紋というのを使えます、後で詳しく説明しますね」 「康一君気張りすぎじゃない~!?そんなにガチガチだと仲良くなれないよ?アタシ、宮下愛!!愛してくれると嬉しいな!!愛だけに!!」 「お主は緩すぎじゃ、あの男の性格を見るにお主のような女は嫌いかもしれんぞ?わっちは吉原の番人、死神大夫、月詠じゃ」 事の始まりはA-7に配置されていた剣崎が歩いていた時の事だった (こんな殺し合い絶対に止めてやる!!・・・でもどうすればいいんだろうな、主催者がいる所なんて分からないし、探すしかないんだろうか) すると後ろから話しかけられた 「剣崎さん!!剣崎さんですよね!?」 「え?・・・あんた誰だ?俺あんたのこと知らないんだけど・・・」 「何でですか!?かつて一緒に戦った仮面ライダーじゃないですか!?」 「一緒に?え?」 こうして話し合う中で幾つか矛盾が出てきた。かつて剣崎がゲームの中に入ってきてくれて助けてくれたという永夢に対してそんなことは全く知らないという剣崎、更に10年以上前にアンデットがアルビノジョーカーによって一斉再解放されてそれの対処をしたばっかりで本当にゲームに入った経験なんて無いと言うと、そもそも永夢が知る限りアンデッドが再解放されたということ自体起きたことがなかったという事実だった 「僕、貴方に会った後アンデッドについて興味をもって少しだけ調べてみたんです。ですがそんな事起きたという事実すら書かれていなかったです」 「そんな馬鹿な・・・?どういう事なんだ?」 「恐らくパラレルワールドというやつだろうな」 「誰だ!?」 「おっと、いきなり声をかけてすまんかったな、わっちは月詠、吉原の死神大夫・・・といっても分からんじゃろうな、わっちの江戸時代はお主たちとは違うからな」 「あなた江戸時代の人なんですか?となると過去の時代から人も呼ばれる事があるなんて・・・」 「そうわっちも考えていた・・・この二人の子供を保護するまではな」 「子供扱いは少し愛さんやだなぁ、こう見えて愛さん高校二年生だよ!!」 「・・・まぁ愛さんは納得出来ないかもしれませんが僕は認めています・・・この身長なので・・・」 「わっちから見れば主もどんなに背が高かろうと子供じゃ・・・この男の子、広瀬康一が宮下愛というこの女にいびられたのを保護して話を聞いてみたら驚くべき真相が分かったんじゃ」 「だから別にいびろうとしたわけじゃないってば!!誤解だよ!!確かに風貌はギャルっぽいけどアタシ皆と仲良くなりたいだけだからね!?」 「つ、月詠さん、本当に僕が勘違いしただけでこの人はいびっていたわけではありません。少し容姿がギャルっぽかったからビビってただけです・・・」 「愛ちゃんだっけ?皆と仲良くなりたいんだったら俺はその容姿は変えるべきじゃないかなって俺は思うよ、人は内面を見てもらう為にはまず外面が良い方が良いからな、誤解されると下手したら喧嘩になってしまうかもしれない、もっとも、外面ばかりじゃなく内面も見るべきだけどな」 このアドバイスは始との関わりを元にしている。始も本当は優しい心を持っているのに不器用&天音一筋だったために誤解され戦い合ったことがあった。やがてその果てに親友と言えるようになったが・・・その結末は結局始を封印するしか終われなかった・・・そして最後のアドバイスはアルピノジョーカーの時の嫌な思い出を反映して話している 「それで月詠さん、驚くべき真実とは何でしょうか?」 「わっちは自分の時代の事を話した、宇宙旅行が出来たり、アイドルが存在していたり、バイクや車が存在しているという事実を語ったらそんなことありえないと二人は否定してきたんじゃ、それから更に康一は霊波紋という良く分からないものを出してきた。もちろんうちも愛も知らんかったし聞いたことがなかった。まぁもっとも、霊波紋は珍しいからわっち達が知らなかっただけかもしれんがな、だがわっちの江戸時代の比較を基に考えてみた結論が先ほど言ったパラレルワールドじゃ、まぁわっちの中にパラレルワールドを知る者がいない以上確定とは言えんがな」 「成程・・・分かりました。確かに平行世界の方が納得できます。僕も平行世界の仮面ライダーと一緒に戦ったことがあるので、そして3人は何をしにここへ?」 「仮面ライダーという存在がいるのか・・・?後で詳しく話してもらうぞ?それはともかく、わっち達は帆高という少年がこの殺し合いのカギを狙っているのは分かっていて、その少年が何処にいるのか考えてみたんじゃ、そうしたら愛が目的地に一番遠い場所にいるんじゃないかと言ってきてな、簡単に辿り着かれたらつまらんだろうからなという考えのもとA-8に向かっている途中だったんじゃ」 「・・・あんた等は帆高という青年に会ってどうするつもりだ?」 「仲良くなりたいって思ったの!!あんなに純情で優しい男の子、仲良くなったら面白そうじゃん!!」 「僕も同意見でした。かなり過激な所もありましたけど悪い人ではないと思いました、だからこそ守らなければ、抑えなければいけないと思いまして」 「わっちも同じじゃ、あの男の子を見てある年寄りも思い出したしな、それで、逆に主らはどうするつもりだ?」 「僕はあの男の子を導いてあげたいと思いました。彼女・・陽菜ちゃんも含めて二人とも助けてあげたい。そして皆さんも救う道も考えたいと思っています、それが今僕がやりたい事です」 「俺も同じだ、俺もこの殺し合いに巻き込まれた人達全員を助けたい、人を守る事が俺の戦う理由だから」 「・・・わっち達と主等の考えは同じようじゃな、なら一緒に行動しよう」 そして歩きながら会話していくうちに様々な情報を交換し合った、スクールアイドル、侍、仮面ライダー、霊波紋・・・どれも未知の情報ばかりだった。 「成程、霊波紋は本来他の人には見えないはずの物なんですよね?」 「そうなんです、ですが何故か愛さんや月詠さんには見えていて・・・」 「俺にも見えてるから恐らく参加者全員に見えるようになっているんじゃないかな?どういう技術なのか知らないけど、恐らくこの首輪が関係しているんだろうけど」 「本当に計り知れん敵じゃな・・・わっち達はそれに対する対処も考える必要があるな」 「そうですね、まずは帆高君と合流・・・いました!!・・・って戒斗さん!?」 「エムっち知ってるの?」 「・・・静かに、いったん様子を見ましょう」 そして会話を一部始終聞いて・・・二人が出発しようとした瞬間に話しかけたという訳だ 「成程な・・・何か妙な気配がするかと思ったらお前達だったのか」 「本当に・・・俺に協力してくれるんですか?」 「うん!!君が持つ陽菜ちゃんへの愛の思い、愛さんすごくよく感じたよ!!愛だけに!!」 「だからって銃とか撃ったりすることはやりすぎではないかと僕は思うよ、でも、それでも相思相愛を断ち切るつもりは僕はない、僕にもそれくらい大切な人がいるしね、だから守ってあげたい、君も陽菜ちゃんも」 「何より、主の大切な人が何故天候の為に犠牲にならなきゃいけないともわっちは思ったしな、確かに雨になる事は良い事ではないし、わっち達もその為に犠牲になるつもりはない、そのどちらにも抗うというならわっちも協力しよう」 「僕も君が本気で運命を変えるつもりなら助けてあげたい。そうしなければきっと多くの人が死んでしまうだろうから」 「俺も同意見だ」 剣崎は詳しく言わなかった。何故かは後で説明しよう 「・・・ありがとうございます!!」 「・・・一つ言っておこう」 その時、黙っていた戒斗は協力を申し立ててきた五人の顔を見て・・・結論を出した 「宝条永夢、剣崎一真、広瀬康一、月詠、お前たちは闘ってきた、そういう目が告げている、何かを守る為にな、お前たちは良いだろう、協力してもらおう だが宮下愛、貴様はダメだ」 「・・・え?」 唖然としたのは宮下愛本人だった、当然である。助けようとした善意が拒められたのは今まで初めてだったからだ。 「貴様の言葉は薄っぺらい、何も重みは感じられない!!」 「何で!?アタシ本気で助けたいって思ってるんだよ!?」 「何も戦いを経験したことがない貴様がこの場でそのような事を言っても意味がない!!」 「確かに戦いなんて知らないよ!!だからって助けようとする事っていけないの!?一応アタシもアンタと同じドライバー支給されてるし」 「たとえドライバーを持っていたとしてもだ!!貴様今こいつの立場分かっているのか!?こいつを殺せばこの殺し合いは終わると参加者に言われてる、更にこいつが目的を達成したら俺たち参加者全員が死ぬと伝えられているんだぞ!!それでこいつを殺そうとしない奴と殺そうとするやつどっちが参加者の中で多いと思うのか考えたのか?更にコイツはあえて参加者の元に行って話に行こうとしているんだぞ!?そんなこいつを守るという事が簡単にできると思っているのか!?その為にお前は死ぬかもしれないという覚悟があるのか!?だから中途半端な善意は足手まといだと言っている!!文句があるか!?言ってみろ!!」 愛は絶句した。当然である。成程、自分の善意は日常であれば歓迎される物であったのだろう、だが今この場は殺し合い、寧ろ邪魔になってしまう、そして何より・・・死ぬの言葉が頭に叩き込まれる 急に体が震えてきた。寒気がする、何でだろう、こんな気持ち味わったことがないや、そんなのに縁があるとは普段思わなかったから、確かに縁が無いわけじゃない、人はいずれ死ぬものだ、でも自分ならきっと長生きできるだろうとして考えたことはなかった。でも今、下手したら自分はこの瞬間死ぬかもしれないという恐怖が頭を支配しようとしている。 その様子を見た戒斗は吐き捨てるように言った 「失せろ、貴様のような弱者が立ちいっていい世界じゃない、誰かに保護でもしてもらえ」 「愛ちゃん・・・大丈夫?」 「・・・分かりました、僕が愛ちゃんは守ります、皆さんは帆高君を」 「おやおや、探す手間が省けて良かった、やはりこういう所でも私は運がいいかもしれないなぁ、マイティアクションX」 突然何処からか声が聞こえた、その声は永夢にとって聞いたことがある声だった、とても冷酷で感情を感じさせない冷たい声、そして何よりこの自分に対する呼び方は・・・!! 「どうして・・・どうしてあなたが蘇っているんですか!!檀正宗さん!!」 「ほう、その言い方はまるで私が死んだかのような言い方だなマイティアクションX、寧ろ死にかけていたのは君の方で私が見逃してあげた立場のはずだが」 「顔見知りですかい?社長さんよぉ、おや?俺の知り合いもいたようだなぁ」 そのそばにもう一人いかにも小物そうな帽子をかぶった男が現れる。その名前は・・・ 「貴様もここに来ていたという訳か・・・シド!!」 「知り合いでしょうか?」 「恐らくな、だがとても仲がいいようには思えん」 「・・・何しに来たんですか」 「何しに来たか?こんな殺し合いに商品価値はない、だからさっさとこの殺し合いを終わらせる為にそこの少年を絶版しに来たんだが、文句があるのか?」 「俺も同じだ、俺には早く手に入れたい物があってねぇ、その為にもこんな殺し合い、ちゃっちゃと終わらせるためにそいつを殺しに来たんだ、それになぁ」 一呼吸おいて話し始めた 「・・・ムカつくんだよ、お前のようなガキは」 「え・・・?」 「あの映画見る限り、お前警察という大人に逆らい続けたよな!?ただの貧しいガキのくせに!!お前のようなガキを見るとあの男を思い出して本気でイライラしてくるんだよ!!ガキはおとなしく大人の言う事を聞いていればいいんだよ!!だからテメェのような大人に逆らうガキは一番消えるべき存在なんだよ!!テメェの方が陽菜より消えるべき存在だァ!!」 この言葉は・・・帆高の心に強く刺さった。 言うまでもない、自分の行動を全て否定されたからだ、その行動に罪悪感がなかった訳ではない為余計に響いてしまった、そして・・・ (・・・そうだよな、やっぱり俺は何もかも間違いだらけ、か・・・だったら俺はこのまま・・・) 心が壊れていく・・・その時だった 「ふん!!貴様達はこの殺し合いに従ったという訳か!!・・・とんだ弱者だな」 「何だと・・・!?駆紋戒斗、君はこの私を侮辱したのか?やがて全てを支配する会社の社長たる私を」 「すべてを支配する?笑えるな、そう言っている貴様はたった今この殺し合いのルールに支配され、従っている。こんな滑稽な事があるとはなぁ!!」 「貴様・・・!!」 「ガキガキガキ、うるさいです、確かに彼は逆らったかもしれません、大人に、それは許される事ではないかもしれない、ですが!!大切な命を救いたいという思いは抑えつけていいものではありません!!」 「何だお前、何でソイツを庇うんだ?ソイツは命一つの為に東京をずっと雨にしてもいいような奴なんだぜ?」 「確かにその事は簡単に許していい事ではない、でも、人を救いたいという想いは誰かの命を踏み台にしない限り誰にも侮辱する権利はない!!俺は信じる!!帆高の事を!!」 「皆さん・・・!!」 剣崎には皆に伏せていたい事である負い目があった、世界を救うために始を封印して、それが解放された後に自ら望んでバニティカードに封印されてそれを破壊し、完全に始を倒してしまったことだ。あの時のように救えないまま終わらせるという真似を・・・二度はしないと今ここに誓う。誰かが犠牲にならなくちゃいけない運命を今度こそ破壊してみせると そして、その言葉もまた・・・仮面ライダー達の言葉は帆高を救っていた、今まで分かってくれない大人は説教だけしかしてくれなかった、だが、ここにいる分かってくれた人達は・・・肯定もしてくれた。自分の間違っている所はしっかり言うがそれでも肯定してくれる大人がいてくれた。その事は帆高にとって大きな救いになった。 『仮面ライダー』、人類の平和と自由を守る者である三人が帆高を庇うように立つ 「君は・・・いや君達は私に逆らうか・・・マイティアクションX、ならこちらも容赦はなく絶版にするまで、シド、探索までの縁だと思ったが付き合ってもらおうか・・・変身」 「はいはい、分かってますよ社長・・・やっぱお前とは仲良くやれないようだな駆紋戒斗、たった今ここで始末してやるよ、変身」 『仮面ライダークロニクル・・・!!』 『チェリーエナジー』 『バグルアップ! 天を掴めライダー!!刻めクロニクル!!今こそ時は、極まれりィィィィ!!』 『ロックオン、チェリーエナジーアームズ!!』 自分の意志で自分の為だけに戦う二人のダークライダー、シグルド、クロノスが立ちふさがる。 「戒斗さん・・・剣崎さん!!いきますよ!!」 三人はドライバーを腰に当てて、変身の為に構える。 今回永夢に支給されたのはエグゼイドに変身する為の基本装備だけだった。だが愛や康一に支給されていたガシャットを渡され、ある程度戦力は確保できた。そのガシャットのうち一つはゲキトツロボッツ、もう一つは・・・!! 『バナナ!』 『マイティブラザーズXX!!』 ブレイドへの変身の待機音がこの場にいる九人に響いてくる 「帆高と陽菜の運命は・・・!!この世界に招かれてしまった参加者の運命は!!俺達が変える!!」 「「「変身!!」」」 『マイティ!!ブラザーズ!!2人で1人!!マイティ!!ブラザーズ!!2人でビクトリー!!エーックス!!』 『バナナアームズ!!ナイトオブスピアー!!』 『Turn up』 ブレイド、バロンバナナアームズ、エグゼイドダブルアクションゲーマーレベルX、三人の仮面ライダーが姿を現す。更に 「だーーーーーい変身!!」 『ダブルアップ!!俺がお前で!お前が俺で!(ウィーアー!)マイティ!マイティ!ブラザーズ!(ヘイ!)ダブルエーックス!!』 エグゼイドはオレンジ色のレベルXX Rと青色のレベルXX Lに分かれ、三人は四人へと変わる。 「いけ、森嶋帆高!!覆してみせろ!!自分の運命を!!」 「・・・はいっ!!」 六人の仮面ライダーはそれぞれの武器を構え、戦いが開かれようとしていた。 その時― 「・・・せっかくの絶版対象が見つかったんだ、それを逃がすほど私が愚かだと思うのか?」 月詠、康一、帆高の三人が駆けだそうとした瞬間、 クロノスはバグスターウイルスをドライバーから出現させて― 「なっ!?」 「これは・・・!?」 「いけ、森嶋帆高を絶版にしろ」 バグスターウイルスの戦闘員で三人を囲んでしまった 「やめろ!!」 「オイオイ、お前達が助けようとするのを見逃すと思っているのかよ?」 シグルドはソニックアロー、クロノスはガシャコンバグヴァイザーⅡのチェンソーモードでエグゼイド、ブレイドに斬りかかる、対抗するためにオレンジのエグゼイドはガシャコンキースラッシャー、ブレイドラウザーでガードするが、何よりスペックが違う、抑えきれずに強烈な一撃を食らう 「「ぐあっ!!」」 すかさずエグゼイドはキースラッシャーをビームモードに変えて銃撃を放つがクロノスのこぶしの前に全て弾き飛ばされる。その隙にもう一人の青いエグゼイドがガシャコンブレイカー、ハンマーモードで殴り掛かるが、シグルドの弓の攻撃の前にハンマーを撃たれ弾き飛ばされる (やっぱりクロノス相手にレベル20じゃ無理か!!) このままでは救援なんてとても出来ない 一方で月詠や康一もどう対策すればいいのか考えていた・・・!! (くっ!!今わっちが持っているクナイを使えば何とか道は切り開けるかもしれんがそうなると今後の戦いが危うくなる!!出来る限りクナイの使用量は増やさないでおきたいがどうすれば・・・!!) (僕の霊波紋じゃ攻撃スピードが遅い!!これだけの人数を相手に仲間を庇いながら突破できるのか!?) その時現れたのは― 少し時を遡り・・・ 「ほう、やっかいな邪魔者を出してきたな・・・」 戒斗がどうやってあのバグスターの軍団を突破できるようにするべきか考えていた、その時 「・・・アタシにも戦わせて」 話しかけたのは宮下愛だった 「まだいたのか貴様、いったはずだ、本気で戦う覚悟はないような女に」 「覚悟は・・・できたよ、アタシ」 「・・・何?」 「確かにアタシは逃げた方が良いのかもしれない、戦いでも碌に活躍する事も出来ないかもしれない、そして、守る為に死んじゃうかもしれない、でも!!だからってそれでこのまま動かないでいるなんて、助けたい人を助けないまま無視するのはもっと嫌だよ!!愛さんが、愛さんである為にも、生きる為にもアタシは逃げない!!それがアタシの・・・未知だけど行きたい道だから!!」 宮下愛が所属するスクールアイドル同好会は「仲間でライバル、ライバルで仲間」の関係の集まりで、それぞれがなりたいスクールアイドルを目指して努力するグループである。故にそれぞれの道を往くのを互いに応援し続けるのが・・・仲間の証だ (ねぇ皆、今のアタシが決めた道が愛さんらしいよね?・・・そうだよね?だってあたしが本当にやりたい事だもん!!) 宮下愛は恐怖を感じながらも考えたのだ、自分が生きたい道を、そして覚悟も決めた、たとえ死んでしまう事になろうと後悔はしないと 「・・・ふん、その目、本当に覚悟を決めたようだな?良いだろう!!」 バロンは自分に配られた支給品を投げ渡した、その支給品が手元に配られていた時、運命を感じずにはいられなかった。 (葛葉紘汰・・・この女に力を貸してやれ、この戦いの間だけでもな!!) その渡された物を見て・・・宮下愛は進み始めた、本来、宮下愛に配られていたのはマツボックリロックシードであり、それで変身しようと考えていた、だが、今回渡されたロックシードをみて、使うロックシードを変えることにした。 「その覚悟をずっと胸に秘め続けて戦え!!そうあり続ける限りお前は強者でいられる!!」 その名前は・・・!! 二人のダークライダーは慢心していた、ただの少女だと侮っていたのだ、故に彼女が二人がいる道とは別の道を通って帆高達の救援に行った際に無視していたのだ。彼女が既に「変身」していたことを知らずに・・・!! 「皆大丈夫!?今すぐ助けるから!!」 「愛さん!?本当に大丈夫なんですか!?戦う覚悟は・・・!?」 「・・・愛さんにはまだ分からない、戦う事でどれくらい痛い思いをするのか、辛い思いをするのかなんて!!でも!!それでもアタシも同好会の皆が信じてくれているアタシである為に戦う!!帆高君という信じられる希望の為に!!」 今という風は何を愛に伝える為に吹いているのか、戦いによる英雄への変化か、戦いによる死の警告か、どちらを伝えているのか、 希望が溢れる未来が待っているのか、それとも何も守れない絶望の未来なのか、何処に向かうかはまだ分からない、だが、今言える事はただ一つ、宮下愛は闘う事に決して後悔していないという事だ。 (皆、アタシに力を貸して!!ここにいる人達を守る為の力を!!) そう思いドライバーを腰に当ててロックシードを施錠する。そして鳴らした音は彼女を象徴する色たる『オレンジ』 『ロック・オン』 法螺笛が鳴り響く、そのほら貝の音声によって感情が高ぶっているのが分かる。そして数多の仮面ライダーが言ってきた言葉を言い放つ 「変身!!」 『ソイヤ!!オレンジアームズ、花道、オンステージ!!』 今、ここに『部室棟のヒーロー』は正真正銘の『ヒーロー』へと姿を変えた、そう、仮面ライダー鎧武へと 「これが、アタシの今の姿・・・!!」 そして宮下愛は決め台詞を考えた、どんな台詞にしよう?そんな時、同好会の大切な仲間がスクールアイドルフェスティバルでヒーローを演じた際の台詞を思い出した、今はその言葉を借りよう、本当のヒーローになる為に 「ここからは・・・ここからは愛さんのステージだ!!」 それが偶然本来の鎧武の変身者と同じセリフである事には気づいていない 「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 無双セイバー、大橙刀で次々とバグスターを斬り、時には銃撃もまじえてバグスターを倒していく鎧武!! 「愛・・・!!あっという間に強くなったな・・・!!これなら・・・!!」 月詠はバグスターの一掃を鎧武に任してクナイを握り近接攻撃でバグスターを倒していく 「その姿・・・!!まさかお前のようなガキがなるとはなぁ・・・!!イラつくんだよぉぉぉ!!」 シグルドは何度も打倒された忌まわしき記憶が脳裏に蘇りながら、帆高達の真上に弓を放つ、現れたのは巨大なサクランボ、内部には複数の矢が入っているのが分かる。 はっきり言おう、このままでは対処はとても無理だ。月詠がいくらクナイを放とうと全て折れるだろう、鎧武の刃でも守り切れる訳がない、次世代のライダーシステムが旧世代のライダーシステムより勝っているのが基本であり、仮面ライダーになったばかりの愛じゃ対処は難しすぎる。例え鎧武は鎧で耐えきっても他の三人は生身の人間、バグスターに生身で突っ込まなければ避けれないがその後帆高の安全を保護できるかは分からない 周りはバグスター、上空には無数の矢、帆高達が完全に無事なまま生き延びる道は・・・ない たった一つの道を除いては・・・!! 「Act2!!」 康一はエコーズでピタっの文字を具現化、破裂する直前にさくらんぼにつける事で破裂することを阻止、そしてそのまま落ちていき何も影響を及ばさなかった 「何だと!?」 「どこを見ている!!」 よそ見をしていたシグルドをバロンがバナスピアーの突きが襲う、慌ててガードするが不意を突かれていた為抑えきれず攻撃を食らう 「ぐああっ!!」 「・・・使えんやつめ」 『ポーズ』 その瞬間、全ての時が静止する。 「森嶋帆高、君は私の仮面ライダークロニクルの繁栄の障害になってしまったことを悔いりながら絶版になるがいい」 『ガシャット!!キメワザ!!クリティカルサクリファイス』 キメワザを決めるべく、余裕磔磔に攻撃を構える。当たり前である。自分のポーズに時間制限はない、相手が無敵でもない限り確実に仕留める事が出来るのだ、ましてや相手は生身、余裕を持つことは当然だったと言えよう 「・・・何ぃ!?」 その余裕は致命的だったという事に気づかずに・・・!! クロノスの行っていたポーズが急に解除され、周りの人達全員が普通に動き出してしまっていた。 その為、目前に近づいていたオレンジのエグゼイドがキメワザをこちらに叩き込もうと接近していたのに気が付いた時には遅すぎた 『キメワザ!!アクションロボッツクリティカルフィニッシュ!!』 「ぐぬぬぅ!!」 強烈な赤ピンクの拳骨を纏った斬撃がクロノスを襲う、勿論クロノスに対してこの攻撃は弱いのは勿論である。だが攻撃は中断せざる終えなかった 「ならもう一度ポーズして・・・!!」 再びポーズボタンを押すが・・・反応しない 「どういう事だ!?」 驚いていたクロノスに・・・何と先ほどシグルドが放っていたサクランボの実像が驚くべきスピードで迫ってきていた!! 鎧武はピタっで止められていたサクランボの実像を見て、何と相手に蹴飛ばすことで攻撃するというとんでもない方法で攻撃したのだ!!運動神経の高さを生かした強烈なけりで急速に接近し、クロノスに接触した瞬間に康一は文字を削除する。それによって複数の弓の攻撃が逆にシグルドとクロノスを襲う!! 「ぐあああ!!」 「がはぁ!!」 その瞬間にバロン、ブレイドは必殺の斬撃を放つ!! 『スラッシュ、サンダー、ライトニングスラッシュ』 『カモン!!バナナスカッシュ!!』 「ウェェイ!!」「ハァァ!!」 二つの斬撃がクロノスにダメージを負わせる。 「がぁぁぁ!!」 更にエコーズはバグスターの足元に『ビュオオオ』を投げつけてバグスターを吹っ飛ばす、そして・・・!! 『ロック・オン!!イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン!!』 鎧武はオレンジロックシードを無双セイバーに装着、ナギナタモードに変えて、バグスターをオレンジの巨像の中に閉じ込める 『オレンジチャージ!!』 「え、えーと、こういう時は・・・どうしよ・・・う、ウオリャー!!」 閉じ込められたバグスター、全てを切り裂いた先に・・・一つの道が出来た!! 「行くぞ帆高!!康一!!愛!!あの道がわっち達が進むべき道じゃ!!」 「「はい!!」」 「うん!!」 四人はその道めがけて一目散に逃げだした 「・・・行ったようだな、これから先大丈夫か?」 「大丈夫だと信じるしかない、きっと彼らの行く先は敵ばかりってことはないはずだから」 「・・・そういう話はこいつらをどうにかしてからにしろ」 クロノス、シグルドが立ち上がってくる・・・怒りを抱えながら 「貴様等・・・ここまでやって絶版になる運命から逃れる事が出来ると思うなぁ!!」 「お前らに大人を本気で怒らせた奴がどういう思いするか教えてやるよォォ!!」 相手はクロニクル最強のライダー、クロノス、そして変身者が弱かろうと次世代のライダーシステムを使ったライダー、シグルド それに対する三人は能力的に分が悪い、このままでは勝てないだろう、その時 何処からかピンクの弓が・・・シグルドに命中した 「だ、誰だ!?」 「まさかここで会えると思わなかったわ・・・戒斗!!」 「あ、貴方は・・・湊さん!?」 青いエグゼイドが三度の知り合いとの邂逅に驚愕した (・・・ここはどこかしら?周辺は森のようだけど) 湊耀子は戒斗の代わりに死んだ後にこの世界に呼ばれ、映像を見て、殺し合いの場で目が覚めた。 (・・・自分は死んだはず、それなのに何故今生きているのかは、まぁいいわ、それよりこの殺し合いどうしようかしら) 湊は考えた。あの映画を見て、帆高をどうするべきなのか・・・いや、考えて10秒で決まった (助けるべきね、あの男の子を) 湊は帆高を戒斗と重ねていた。似ている気がしたからだ、何が何でも大切な者を追い求めようとする姿勢が、かつて、呉島貴虎という男の部下だったが、彼女にとって人々を助ける為に無欲だった貴虎はつまらない男だと感じたのだ、一方で面白いと思ったのは凌馬だったが彼には求める王の資格はなかった。そして最終的に見届けたいと思った男はただ一人、駆紋戒斗だけだったのだ。 そして、それに似ている帆高もまた面白い男の子だと感じていた。見届けたいと思ったのだ。彼の行く先を、そして愛もかなって欲しいと感じた、自分が叶えられなかった愛を その為に彼女も一番遠いところにいるのではと考えたA-8に向かっており、辿り着いた先では既に激闘が始まっていた。その先に愛した男である戒斗がいた事にも驚いた。そしてその対戦相手は元同僚のシドもいた。 愛する男と元同僚、どちらに味方しようとするのかは・・・ 『ピーチエナジー!!』 語る必要もないだろう 「・・・何で貴方は私を知っているのかしら?貴方みたいなライダー会ったことがないわよ?」 「後でそれは話す!!」 「あんたも知ってるの?二人とも似た容姿のライダーね・・・その事も話してもらうわ」 「貴様は協力してくれるようだな?だったらシドを任せた!!」 「・・・分かったわ!!」 耀子と呼ばない戒斗に少し違和感を感じたが手伝うのに文句はない、戒斗の横に並び立つ。 「湊、お前も俺の敵になるんだったら仕方がねぇな!!一緒に引導を渡してやるよ!!」 「相変わらず口だけはうるさいわね、ゲネシスドライバーの本当の戦い方を教えてあげるわよ!!シド!!」 【宝条永夢@仮面ライダーエグゼイド】 [状態] 軽度のダメージ、仮面ライダーエグゼイドに変身中 [装備] ゲーマードライバー+マイティブラザーズXXガシャット、マイティアクションXガシャット、ゲキトツロボッツガシャット [道具] 基本支給品、ランダム支給品1 [青いエグゼイド、ダブルアクションゲーマーレベルXX Lの思考・状況] 基本方針:殺し合いに乗らずに参加者の運命を変える為に戦う 1:帆高君、愛ちゃん、月詠さん、康一君、どうか無事でいてください!! 2:この戦いが終わったら早く合流しなければ 3:湊さんにも戦いが終わったら説明する必要がありますね 4:これからクロノスを三人で倒せるんでしょうか?万が一の為に退却の手段があればいいんですけど・・・!! 5:飛彩さんや大我さんや貴利矢さんやパラドはここに来ているんでしょうか? [オレンジのエグゼイド、ダブルアクションゲーマーレベルXX R、つまり天才ゲーマーMとしての思考・状況] 基本方針:殺し合いに乗らずに参加者の運命を変える為に戦う 1:帆高、愛、月詠、康一、無事でいてくれ!!(今は天才ゲーマーM状態なので呼び捨てです) 2:この戦いが終わったら合流しなくちゃな 3:湊にも戦いが終わったら説明する必要があるな 4:これからクロノスを三人でどう倒すべきか・・・!!燃えてきた!! 5:ブレイブやスナイプやレーザーやパラドはここに来ているんだろうか? 時系列としては平成ジェネレーションズFINALの後、仮面戦隊ゴライダーも経験してます。現在永夢は二人に分離しており、天才ゲーマーMと永夢に分かれてます 【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】 [状態] 健康、仮面ライダーバロンに変身中 [装備] 戦極ドライバー+バナナロックシード [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2 [思考・状況] 基本方針:主催者を倒しこの殺し合いの秘密を暴く 1:殺し合いに乗るような弱い奴を倒す 2:この戦いをいかに切り抜けるか考える 3:終わったら帆高達を追う 4:耀子の返事が遅れたのが少し気になった 時系列としては鎧武外伝バロン編の後 【剣崎一真@仮面ライダー剣】 [状態] 軽度のダメージ、仮面ライダーブレイドに変身中 [装備] ブレイバックル+ラウズカード、スペードの1~7 [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2 [思考・状況] 基本方針:この殺し合いに巻き込まれた運命に仲間と共に戦う 1:とりあえずこの三人でクロノスを倒す 2:終わったら帆高達と合流したいがどう合流するか 3:他にも巻き込まれた参加者がいたら保護したい 4:他にもカードがあれば時間停止にも対抗できるが・・・!! 時系列は「劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE」の後 【湊耀子@仮面ライダー鎧武】 [状態] 健康、仮面ライダーマリカに変身中 [装備] ゲネシスドライバー+ピーチエナジー [道具] 基本支給品、ランダム支給品1、ラウズアブソーバー、ラウズカード、スペードの10~12 [思考・状況] 基本方針:帆高の行く末を見届けたい 1:とりあえず真っ先にシドを倒し戒斗達の援助に向かう 2:そして戒斗達から話を聞く 3:耀子呼びしなかった事が少し気になった。 4:謎の仮面ライダーからなぜ自分の事を知っているのかも教えてもらう 時系列としては死亡後です 【檀正宗@仮面ライダーエグゼイド】 [状態] 軽度のダメージ、仮面ライダークロノスに変身中 [装備] ガシャコンバグヴァイザーⅡ、仮面ライダークロニクルガシャット [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2 [思考・状況] 基本方針:殺し合いを早く終わらせる為に森嶋帆高を絶版する(つまり殺す) 1:それを阻むこの仮面ライダー達を絶版にする 2:シグルドがこれ以上役に立たないのならば切り捨てる 3:時間経過による願いをかなえる権利もいいかもしれない 4:他にも商品価値がある部下が欲しい 時系列は初めてクロノスに変身してCRライダーとバグスターライダーをまとめて倒した後です。 そしてポーズにも制限があります、時間停止は10秒のみで一度ポーズするとしばらくポーズは出来ません、この制限を把握しました。 【シド@仮面ライダー鎧武】 [状態] 少々のダメージ、仮面ライダーシグルドに変身中 [装備] ゲネシスドライバー+チェリーエナジー [道具] 基本支給品、ランダム支給品2~3 [思考・状況] 基本方針:帆高を早く殺して黄金の果実を手に入れる 1:その邪魔をする奴には容赦しない 2:湊は俺が裏切ったから怒ってるんだろうが知ったこっちゃない 3:正宗の事もどう出し抜けばいいかこの戦いが終わったら考えなくちゃいけないな、このままずっと付き合ってられっか 4:鎧武に変身した女は俺が潰す 時系列は黄金の果実を目にした直後です。 「はぁっ・・・!!はぁっ・・・!!やっと抜け出せた!!」 愛は変身を解除し、生身の姿に戻った。 「さて、問題はこれからどうするかじゃな」 「・・皆さん、一応話は聞いていたんですよね?」 「うん、聞いてたよ、全力で走りながら参加者に会って話を聞いていくって」 「その為にはわっち達は多く参加者がいるだろう場所をめぐる必要がある、更にこれから走り続ける以上栄養も多く補給できる場所があると良いかもしれんな、また、走っている途中に休憩する場所も欲しい、それに、主の為の自衛手段も確保しなければいけないだろうな、何の偶然か分からんがわっち達それぞれの武器以外何も武装を持っていないのじゃ」 「・・・月詠さん!!俺達には休憩する時間なんて」 「たわけ!!主の焦る気持ちも分かる!!だから協力しているんじゃ、だが休憩なしに何も成し遂げる事はないぞ!!わっち達がもしへとへとの状態で主の命、いやわっち達の命を奪うような者と遭遇したらどう戦えるというんじゃ!!考えて動かなければ簡単に死ぬぞ!!」 本気の怒りの形相で怒ってきた月詠に帆高はたじろいでしまった 「ご、ごめんなさい・・・」 「反省すればいい、だがこれから人が多く集まる場所を考えてみるが何があるか?」 「愛さんが思いつくのは病院かな?他にもコンビニやスーパーや駅ターミナルかな?でもコンビニやスーパーに食品はあるのかな?」 「一切人いませんもんね、僕もエコーズAct1にして上から見ましたけど小人数しか見つける事が出来なかったです」 「一番集まりやすいのは病院かもしれんな、この殺し合い、負傷者が多い事は想像できる、だがそのような人物を待ち伏せする人もいるかもしれん、どうすればいいものか・・・」 「・・・深く考える必要はないんじゃない?」 「え?」 「愛さん、思ったんだけど取り合えず動かなくちゃ始まらないと思う、じっとしていても何も進まない、だから!!走りながら見つけた場所を皆で考えて入ろうよ!!」 「・・・主は楽観的じゃな、だがそれが良いかもしれん」 「ではその方針で行きましょう!!帆高君もそれで・・・帆高君?」 帆高の様子がおかしい、それでよく様子を見てみると・・・帆高は・・・ 「う、うぅぅ、グスッ・・・!!」 …泣いていた 「どうしたんじゃ帆高?」 「・・・ありがとうございます!!」 「「「え?」」」 「こんな立場の俺の為に、こんなに危なっかしい俺の為に・・・皆・・・考えてくれて・・・!!助けてくれて・・・!!嬉しいんでず!!俺は・・・!うぅ・・・!!」 嬉しかったのだ、本来自分は真っ先に殺される立場であるはずの自分がここまで手を差し伸べてくれている事が、戒斗、剣崎、永夢、愛、康一、月詠、皆が助けてくれている、自分と陽菜の為に 思えば自分の記憶でもそうだった、凪や夏美さんや圭介さんも、皆助けてくれた、それが天気を雨に変えてしまうと分かっていたうえで 自分は多くの人達の優しさに救われている、それが実感できて本当に嬉しくて涙が止まらない 「もう、そんなに泣いてたら余計助けなくちゃいけないよね!!アタシ達!!」 「そうですね!!絶対に会わせてあげなくちゃってやる気が出ます!!」 「ずっと怖かったんじゃな・・・自分の行いが本当に正しいのかどうかが・・・安心してくれ、わっち達は・・・最後まで主の味方じゃ」 康一君が涙をぬぐうハンカチをくれた、その優しさは陽菜さんを思い出した。俺にとってとても大切な人を (・・・今なら本当に出来るかもしれない、陽菜さんだけじゃない、天候も、晴れのまま助けれるかもしれない、だって俺は独りじゃないんだから!!多くの障害が立ち塞がってくる事は分かってる・・・それでも!!) 飛び込んでく 嵐の中 何も迷わずに ためらう瞬間 その闇に飲まれる 疑うより信じてみる 自分の可能性 目醒めて行く 未来の世界を (諦めない!!) 【森嶋帆高@天気の子(映画)】 [状態] 健康(首からの極微量の出血は元々顔に会った絆創膏で止めた) [道具] 基本支給品、ランダム支給品2~3 [思考・状況] 基本方針:天気も陽菜さんも何方とも絶対に救う 1:皆と一緒に走りながら行動する、単独行動はしないようにする 2:自分にも仮面ライダーのような力が欲しい 3:体力管理・・・そういえばあの時何で俺はしなくても走れたんだろうな、無我夢中だったからかな? 4:戒斗さん、永夢さん、剣崎さん、無事でいてください・・・!! 5:銃で脅すようなことはもうしないようにした方が良いんだな、やっぱり 時系列は鳥居をくぐろうとした瞬間です。 【宮下愛@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】 [状態] 健康 [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2、オレンジロックシード、マツボックリロックシード、戦極ドライバー [思考・状況] 基本方針:帆高君はアタシ達で守る!! 1:とりあえず走りながら休憩&参加者と出会う。 2:人と仲良くなるのアタシ上手いからアタシが交渉しようかな? 3:ロックシードって他の使い方があるみたいだからそれで守るのもいいかもね!! 4:他のアタシの仲間は来てるのかな?来ないでいてくれたら嬉しい・・・ 時系列は13話が終わった後です。 因みにロックシードの別の使い方とはインベスを開放して操る方法です。今作ではロックシードの持ち主は何も特別な手段を使わずに実体化したインベスを呼べます。現在愛の持っているロックシードでは、オレンジで等身大の姿で上級インベスを、マツボックリで小さな姿で初級インベスが召喚出来ます 【月詠@銀魂】 [状態] 健康 [道具] 基本支給品、ランダム支給品2つ、クナイ48本(2本バグスターとの戦いで折れました) [思考・状況] 基本方針:唯一の大人として彼らをサポートする 1:皆と一緒に走りながら行動する、多くの人達と交渉していく必要があるだろう 2:自分の仲間も会えたら協力してもらうと嬉しいが・・・そう簡単に上手くいくかな? 3:体力管理の為にも美味しい料理が必要かもしれんがこの4人の中で料理が上手い人はいるのか? 4:あの3人・・・本当に大丈夫じゃろうか?少し不安じゃ 5:今後帆高が暴走してしまう可能性があった時は抑えなければいけないな 時系列は銀魂完結後です。 【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態] 健康 [道具] 基本支給品、ランダム支給品2~3、霊波紋、エコーズ [思考・状況] 基本方針:僕の霊波紋で皆を助けたい 1:皆と一緒に行動する 2:承太郎さんや仗助君がいたらいいんだけどなぁ、特に仗助君の能力は有効だと思う 3:僕のエコーズで参加者を探せば用心も交渉も出来るな、でも走りながら霊波紋は持つかな? 4:戒斗さん、永夢さん、剣崎さん!!無事でいてくださいね!! 5:僕の文字の「ポカポカ」で雨で濡れて冷えた体は暖めることできるな、後でやろう 時系列は第4部完結後です。故に霊波紋エコーズはAct1、2、3、全て自由に切り替え出来ます。 因みに私のssの参加者の服装は愛と康一除いていつも着ている服で、愛と康一は学生服です。
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飛び込んでく嵐の中(2) ◆JOKER/0r3g クスクスと笑いながら、しかし油断なく構えたコーカサスを前に三人の仮面ライダーもそれぞれ構え――。 「――ヌゥゥン!」 ――戦いの火蓋を切ったのは、ファイズだった。 その右手にはファイズショットを嵌め、肉弾戦特化であろうコーカサスに少しでも対等に立ち合おうとする気概が感じられる。 掛け声と共に思い切り跳び、急降下の勢いも含めてたったの一撃でコーカサスを戦闘不能にしかねないほどの威力の拳を放った。 さしものコーカサスも気合を込めたその一撃をタダで食らうわけにはいかなかったのか、大きく後方へと回避することでそれをやりすごす。 先ほどまで自分がいた場所が大きく抉れるのを見て、多少の愉悦とファイズへの興味を覚えたコーカサスはしかし、次の瞬間意識外から迫る銀の矢に気付いた。 何とか体制を立て直し、攻撃を受けた方向に視線を向ければ、そこにあったのはゼクターのついた左腕を真っ直ぐに伸ばしながらこちらに向け駆けるザビーの姿。 ザビーが射出し続けるニードルに視界を阻害されつつも、間近にまで迫った彼のハイキックは左腕で受け止める。 「クッ」 ザビーが漏らした短い声は、戦闘が始まってすぐの奇策を無駄にされたことに対してか、それともカウンターとして決まったコーカサスの拳の威力に対してか。 ともかく表立って怯んだ様子も見せず軽やかなステップで後方へと下がったザビーの代わりに、再度ファイズがその拳で殴り掛かってくる。 この会場にきてすぐに見た仮面ライダーではあるが、なるほど変身者も違えばここまで技巧派に様変わりするものかと感心しつつ、コーカサスは意趣返しの意も込めて拳には拳で返した。 ファイズショットを装着したファイズの拳と比べてもなお劣らぬ威力を持つその金色が接触した瞬間、周囲に爆音と衝撃が到来する。 「グッ……!?」 その衝撃に吹き飛ばされる愚は犯さないながらも、思わず呻くファイズ。 噂にこそ聞いていたとはいえ、自分と互角にやりあう初めての存在に動揺を隠し切れない様子であった。 そしてそれは、コーカサスも同じ。どうやら彼は楽しませてくれそうだと狙いを定めたその瞬間、しかしそのひと時を阻害するように彼方より到来した銀の針が、再び二人の戦士を引き離していた。 それを見て、コーカサスはようやくザビーの役割を理解する。 なるほど本来の変身能力であるギャレンと同じく、ザビーの力もまた狙撃手兼前衛として使うということか。 しかしファイズに気を取られていたからこそ面食らったものの、今の程度の攻撃では別段効果的などとは思えない。 であればやはりまずはザビーから片付けて残るファイズと存分に戦うか、とコーカサスが考えた、その時だった。 ――CYCLONE! MAXIMUM DRIVE! いつしか聞いたような電子音声が響いたかと思えば、コーカサスの身体は突如発生した暴風に大きく引きずられザビーから引き離されていく。 「――ッ!」 声にはならない気合でそれを吹き飛ばしつつ風の発生地点を睨みつければ、そこにあったのは白いボディに赤いラインの入ったライダーの姿。 その腕に纏う風の流れを彼が生じさせたのだとすれば、なるほど後方支援としては十分に期待できるだろう。 緊張を絶やすことなくこちらを囲む三人の仮面ライダーを前に、コーカサスは一つ息を吐き背負っていたデイパックを地に落とした。 「よかった、君たちなら楽しめそうだし。 ――これ、使うね?」 言いながら封を開けそこから彼がおもむろに取り出したのは、赤い大剣。 コーカサスの屈強な鎧になお見劣りしないような圧迫感を思わせるそれを前に、一人戦慄以上の反応を返したのはエターナルだった。 「それは……照井竜の……!」 そう、それは先の戦いにおける戦利品、エンジンブレード。 切れ味はもちろんその重量も相当のもので、入手してから極めて短い時間ながらダグバのお気に入りの一つになっていたのである。 ――ENGINE エンジンブレードのスロットルを開放しつつギジメモリを起動するコーカサス。 それをただ見ているわけにはいかないと直感で察したか、ザビーはゼクターからニードルを射出する。 だがその程度は最初から予想済み。素早くスロットルを閉じ通常のブレード形態で一振りすれば、それらはコーカサスに触れることさえ叶わずその質量を消失させた。 「まずい……ッ!」 ミッションメモリーをファイズエッジに差し替えながら、ファイズは駆ける。 素手のコーカサスにさえ三人がかりでかかってもなおギリギリの状況なのだ。 これにリーチまで加われば、自分たちの勝機が薄くなるのは明白、何としてでもあのメモリの挿入だけは避けなければ。 その願いと共に振り下ろされた剣は、しかしコーカサスには届かない。 ファイズが飛び出るまでに生じた一瞬の隙の間に、コーカサスは既にメモリの挿入を終えエンジンブレードの刀身で以てその一撃を受け止めていたのだから。 ――ELECTRICK 互いの得物同士による競り合いの形になるかと思われたその瞬間、コーカサスはトリガーを引きメモリに秘められた能力の一つを発揮させる。 それにより生じた電撃は、エッジを伝いファイズへと感電し……その身から火花を飛ばした。 「なッ……!」 「じゃあね」 思いがけないダメージに咄嗟にエッジから手を離したことをファイズは悔いるが、しかしもう遅い。 彼が意識を取り戻した次の瞬間には、コーカサスの横薙ぎに振るった一撃がそのまま彼の鎧を深く切りつけ彼方へと吹き飛ばしていたのだから。 「村上!」 呻き声を発することさえ許されず弾き飛ばされていったファイズに驚愕を隠し切れぬまま、しかし立ち尽くしているわけにはいかないとザビーは再度ニードルを飛ばす。 ――JET だが、それは最早エンジンブレードの刀身にさえ届くことはなかった。 電子音声と共にブレードの剣先から放たれた赤いエネルギーが、全てのニードルを真正面から貫通していたのだから。 そして、彼の攻撃が防御のみで終わるはずもない。ニードルが放たれたのはザビーの腕先、なればコーカサスの放ったジェットの一撃がザビーを捕らえるのはごく自然なことだった。 「ぐはッ!」 その身から火花を散らし吹き飛んでいくザビーを気にもせず、コーカサスはエンジンブレードを構え歩みだす。 残る一人、エターナルのもとへと。 「その力、よくわからないけど面白そうだね?僕に頂戴」 「……なんだって?」 どこか弾んだ声で、コーカサスは言う。 その声に含まれている関心の理由はわからないが、ともかくエターナルにとって、この状況は当初想像していたもののいずれよりも遥かに悪いものだった。 村上と橘、二人の仮面ライダーがダグバに敵わないのはまだ想定の範囲内として、なぜか自分が変じているエターナルの力が自分の知るものと大きく異なるのである。 大道克己のエターナルに存在していた、ありとあらゆる攻撃を弾き飛ばすエターナルローブや、通算26にもなる膨大な数のマキシマムスロットなど、その強みであった要素が一切今の自分には見られない。 自身が把握するエターナルに大道克己が変身してなお五分か分が悪いというところなのに、言ってしまえば不完全体に過ぎない今のエターナルを纏った自分では、ダグバなどという常識外れの化け物を相手どれるはずもない。 「させるかぁ!」 いよいよもって覚悟を強いられたエターナルの前にしかし、再びコーカサスに立ち向かわんとザビーが飛び掛かった。 その手は既に腰に回っていて、クロックアップによってコーカサスの動きを強制的に自分に向けさせようとする狙いが感じられる。 だが一方で突如背後から襲われ不意をつかれたはずのコーカサスは、特段驚きを示す様子もなく再びエンジンブレードのトリガーは引き絞っていた。 「クロックアップ!」 ――STEAM ――CLOCK UP 大きく叫び腰のスイッチをスライドしたその瞬間に高速空間へと移行したザビーは、しかし突然に発生した蒸気による目くらましに思わず二の足を踏んだ。 一体何事かと状況を判断してみれば、どうやら自身がクロックアップを発動するのと同時にコーカサスがエンジンブレードの剣先から地面に向けて高密度の蒸気を放ったらしい。 本来であればほんの数秒姿を眩ますだけであっただろうそれは、しかし今ザビーが自ら発生させた高速空間によって今や無限に続く暗雲のようにも感じられた。 「――ッ!」 しかし、それでもなおザビーは怯まない。 雄叫び一つ響かせて、高密度の蒸気へとダメージさえも厭わずに飛び込んだ。 ザビーの鎧を纏ってもなお素肌に焼き付くその熱量に一瞬で体力を奪われながら、それでもなおその白の先にいるはずのコーカサスへ向け鋭く左腕を貫いて。 「何!?」 その腕が、何の手ごたえも得ることなく遂にその全身が蒸気を通過したことに、思わず驚愕した。 だが、そこで気付く。背後から迫る、青い双眸に。 「しまッ――!」 振り返ろうとしたときには、既に遅かった。 ザビーがスチームへの対処に奮闘しているその間に、コーカサスもまたクロックアップを使用し自身の背後に回り込んでいたのだ。 発生した蒸気を乱すこともなく、足音一つたてぬその立ち回りにザビーはまんまとコーカサスの掌の上で転がされていたのである。 都合二度。コーカサスが振るったエンジンブレードの前に、ザビーがクロックアップを維持できたのは、そこまでだった。 ――CLOCK OVER しかしそれで攻撃が収まるはずなどなく三度(みたび)コーカサスは剣を振るう。 今までと違い緩やかに空中を浮遊するザビーの身体に直撃したその一撃は、その鎧を引き剥がし橘朔也の生身を彼の眼前に晒した。 であれば、次は四度目。コーカサスの腕は、しかし今までのザビーに向けるそれと変わらない勢いで橘に肉薄する。 クロックアップによって齎された、この高速空間。 ザビーさえ排除した今、ダグバが振るうその蹂躙すべき暴力を観測できる存在などおらず、その剣は何の問題もなく橘を両断するはずだった。 だが、それは成されない。コーカサスが振るったその剣を受け止める、新たな黒と銀の戦士がそこに現れたからだ。 「どうやら、間に合ったようですね……」 焦燥感を含んだその言葉とは裏腹にどこか余裕をにじませる態度を崩すことなく言うその戦士の姿に、コーカサスの心は躍った。 コーカサスの切っ先を輝き放つ赤色の剣で受け止めるのは仮面ライダーファイズ、その加速形態であるアクセルフォーム。 つまりは、ダグバにとって現状この場で最も実力を見込める存在であったのだから。 「君も、早く動けるんだね」 「えぇ、短い時間ですが……あなたを倒すのには十分だ」 声を低め、威圧を込めて放たれたファイズのその言葉にざわつく自分を感じつつ、コーカサスはその剣先をファイズに向けた。 そこから先交わされた剣の舞は、もはや筆舌に尽くしがたい。 一振り一振りが必殺の威力を込めるお互いの剣を、それぞれがあるときは受け止め、あるときは受け流し、あるときは躱しながら縦横無尽に飛び交い続ける。 ――3 コーカサスにとっても決して退屈のない至高であったはずのそれは、しかし永遠には続かない。 ファイズの腕のアタッチメントから放たれた電子音声が来る終焉への秒読みを開始したのである。 どことなく萎えるのを自覚しつつ、しかしコーカサスは最後の瞬間まで楽しむためにもう一度ブレードのトリガーを絞った。 ――ENGINE! MAXIMUM DRIVE! 高らかに宣言された電子音声に呼応するように、エンジンブレードは最高潮までそのエネルギーを高めていく。 ――2 腕に嵌めた腕時計型アタッチメントがまた一つ数を数えるのに合わせて、ファイズもまたエッジを構えコーカサスに向けて突撃する。 真っ赤に怒張しその存在感を示すエンジンブレードと、輝きを放つファイズエッジ。 相応の実力者にそれぞれ応えうるだけの強度を誇る二つの剣が、その実力を証明せんと一際強く輝きを放って。 ――1 また一つカウントを数える声にしかしもう気を向けることもなく、両者は一斉に駆けだした。 高速を誇るその足が互いを間合いに捕らえるまで、瞬き一つの時間も要することはない。 そうなればもう、両者の間に迷うことなど何もなかった。 「はあああぁぁぁ!!!」 「ハハッ、ハハハハハッ!!」 ファイズは雄叫びを、コーカサスはただ笑い声を上げて、その剣を相手に向けて振り下ろす。 瞬間生じたあまりのエネルギーに互いの得物は悲鳴をあげるが、しかし気にしない。 これで終わりにするという思いで以て、躊躇なく全力を振りぬいた。 果たして、その結果は――。 ――TIME OUT ――CLOCK OVER 勝負が決したその直後に、それぞれの高速化を可能にしていたツールがその終了を告げる。 それにより急速にその鎧を収束させていくファイズと背中合わせに立ちながら、コーカサスは此度の打ち合いにおける勝者がどちらなのかを察していた。 高速の世界で行われた、頂上の対決。 果たしてその勝負の行方は、自身の胸でその存在を誇張するφの赤文字が示していた。 (けど、まだ終わりじゃないんだよね) だがここで止まるほど、コーカサスは……否ダグバは甘くない。 こちらの一撃に勢いを削がれたか、敵の剣もまたこの鎧を自分から剥ぐには足りなかった。 であれば、止まる必要もない。この仮初の勝利に自惚れるような輩なら、ここで自分が下せばいいのである。 ――RIDER BEAT カブティックゼクターが、タキオン粒子の高まりを告げる。 一瞬で全身を伝いそして再び右腕に収束したエネルギーの塊を、後方で勝利に酔いしれている男に見舞うため思い切り振り返った、彼が見たのは。 ――EXCEED CHARGE その拳につけたパンチングアタッチメントにエネルギーを充填させ自分と寸分違わぬ勢いで思い切り振り返るファイズの姿だった。 そしてその姿にダグバが抱くのは、承認と、そして何よりの愉悦。 そうだ、それでいい。いや、そうでなくては面白くない――! 思いがけず現れた好敵手に、高らかに笑いを上げながら拳を振るう。 気合、緊張、愉悦、嫌悪、興奮――。 相容れない思いを持つそれぞれの拳が交わりあったその瞬間。 あたりは、爆発に包まれた。 ◆ 「凄まじい戦いだ……」 眼前で繰り広げられるダグバと村上の戦いに対して、ようやくエターナルと橘との間に言葉が介在したのはそれが初めてだった。 というより、あまりにも鬼気迫る両者の姿に、歴戦の仮面ライダーであるはずの彼らが揃って気圧されていた、というのが正直なところであろうか。 ダグバの実力も、村上の実力もそのどちらをも認識していたはずだというのに、そのどちらをも見誤っていたのだと突き付けられてしまえば、なるほど中々堪えるというものである。 「ぐあぁ!」 そんな戦慄に飲まれる二人の前に、勢いよく爆発によるインパクトから弾き出されてくる影が一つ。 それは、らしくなく歯を噛み締め痛みに顔を曇らせる村上の姿。 橘を救い逞しく戦った彼の無事に安堵することが出来ないのは、彼への信用性によるものではなく、まさしくその村上の双眸が、未だ敵意を伴って爆発の中心を睨みつけていたからだ。 「フフフ……アハハハハ……!」 そして、彼らの悪い予感は、的中する。周囲に響く、本能的な忌避感を伴う笑い声が敵対者の存在を知らしめしたのだ。 だがその姿に眉を顰める橘は、同時に気付く。 揺らぐ陽炎の中でしかし時折覗く白が、彼が既にコーカサスの鎧を纏っていないことの証明でもあるということを。 「――フィリップッ!今の奴は無力だ、今なら奴を倒せる!」 「ッ!」 叫んだ橘の声に従って、エターナルは未だ変わらず調子で笑い続ける青年に向け疾走する。 グロンギとしての姿になれるのかどうかなど関係ない。この一瞬を逃さず手にすれば、勝利は自分たちのものになるのだ。 ――或いは。 今までの殺し合いの中で無力感に苛まされていたとはいえ本来理詰めで動くはずのフィリップが、その程度の理由でダグバに向けて駆けだした時点で、“運命”は決していたのかもしれない。 しかしその時は、誰も――そう恐らくはダグバ自身も――それに気づくことさえなく、ダグバの緩く伸びた腕が、まるでそこにあるべきだとばかりにエターナルのドライバーに向かうのを、ただ眺めていた。 故に瞬間、閃光が全てを支配して。 それが晴れたときには、状況は一変していた。 ◆ 「ぐ、僕は……」 気怠い体をゆっくりと起こしながら、フィリップは呻く。 ダグバに肉薄した次の瞬間、超常の力を用いて彼のこれ以上の凶行を止めようとその力を振るったその瞬間に、彼の意識はブラックアウトした。 「……目が覚めたか」 事態の把握のため、どうにか身を起そうとしたフィリップのもとに、降る声が一つ。 確認せずともわかる橘の声に感じられる感情は、果たして安堵ではないらしい。 「橘朔也、何がどうなったんだ、ダグバは――」 「あれを見ろ」 何故だか、その姿を見るまでもなく橘の視線の先にある最悪の答えを知っているような気がした。 だが、見なければならない。それは自分の、不注意が引き起こした悪夢なのだから。 そして、見た。その視線の先にいた、見覚えのある悪魔の姿を。 全身の白に走る炎の青、風になびくローブ、これでもかと誇張するように上半身に巻き付いた夥しい数のスロット、そして何より無限を意匠に刻んだその黄色い双眼。 そう、そこにあったのは、仮面ライダーエターナルブルーフレア。 かつて風都タワーを襲撃し市民の平和を脅かした悪魔、その真なる姿。 それを纏い我が物顔で笑い続けるダグバの姿だった。 ◆ 時間は少し遡り、あたりを光が包んだその瞬間。 それが微かな希望と分かりつつも、橘はフィリップの、仮面ライダーの勝利を信じていた。 だがその望みは、一瞬で覆される。光の中から、気を失ったか脱力したフィリップが、勢いよく吐き出されてきたため。 「フィリップッ!」 叫び駆け寄りながら、橘は戦慄する。 変身していたはずのフィリップがこうして生身になっているということは、ダグバが何らかのアクションを起こしたのは明白である。 であればそれは或いは、あの凄まじき戦士としか呼びようのない彼の真なる姿、グロンギとしての姿に変じたということかもしれなかった。 「ハハ、アハハハハ」 嫌悪感さえ伴う張り付いた笑いが、周囲を支配する。 ようやく晴れた視界の中で、しかしもう恐れずにその声の出どころである彼を睨みつければ、そこにあったのはしかし生身。 どういうことかと眉を顰めれば、ダグバはその疑問の答えを示すようにその手に持ったドライバーを緩く持ち上げた。 「あれは――ッ!?」 驚愕と同時、気付く。その赤いドライバーは、フィリップが先ほどまで腰につけていたものと同型のもの。 否それどころか今フィリップの腰にそれが存在しないことを思えば、恐らくは彼から奪ったものなのだろう。 先ほどの一瞬で奪ったのか、と早合点しかけて、しかし仮面ライダーの命ともいえるドライバーにその程度の安全措置がなされていないはずがないと否定する。 迷宮入りしかけたその思考に、降り注いだのはしかし忌まわしい悪魔の声だった。 「……ようやくわかったよ。僕は君に惹かれてたんだね」 ダグバが放ったその言葉は、しかしこの場の誰にも注がれてはいない。 果たして彼の視線の先にあったのはその手の中のロストドライバー、更にその中の白亜のメモリ。 永遠を意味するそれを恍惚とした表情でしばしの間眺めてから、ダグバはそれを己の腰に迎えた。 「変身」 ――ETERNAL ダグバの声に応じるようにひとりでに展開したドライバーが、メモリに内包された永遠の記憶を開放する。 それに伴い彼の身体が白の粒子に包まれたかと思えば、次の瞬間には変身の完了を告げる双眸が輝き、先のエターナルには存在しなかった漆黒のローブが風にたなびいた。 ――ダグバが手にした新しい力にしかしただ困惑を示すほかない橘たちが知る由はないが、今ここで起きた事例には先例がある。 それは、かつて仮面ライダーエターナルとして残虐の限りを尽くし街に深い傷を残した大道克己とエターナルメモリのファーストコンタクトの瞬間だ。 NEVERとして自分の価値を証明するため世界各国で傭兵として戦っていた克己やその仲間たちはあるとき、ビレッジと呼ばれる超能力者集団の箱庭に訪れた。 その際、多大な資金を投入したビレッジを破壊させないために財団から遣わされたのがエターナルに変身したエージェントだったのである。 克己もかつてガイアメモリに研究対象として敗れた身、憎しみを持ってエターナルと対峙したが、しかしその身は思考さえ必要としないままに彼のドライバーに伸びていた。 そうして生じた現象は、エージェントの変身したエターナルの変身解除、そして機能の停止。 しかしそれはドライバーやメモリの不良から来るものではなく、克己が後に使ったその時、エターナルは王として真なる姿を克己に纏わせたのである。 つまりは、此度起きたのも同じこと。 克己を以てして兄弟と言わせしめたフィリップよりも、ダグバの方がよりエターナルの定める運命の相手として相応しかったというその事実であった。 「そんな……」 敵を打倒するどころかますます戦力を増強したダグバに対し、橘はただ漫然と絶望を受け入れそうになる。 少なくとももう自分にはこれ以上の抵抗を可能にするだけの力がない。 ダグバという最悪を前に、これだけの人数で挑んだそれこそが無謀にすぎなかったのかと、全てを諦めかけた、その時だった。 「……」 何も言わず、ただ真っ直ぐにエターナルと自分の間に立ち上がる男が一人。 ボロボロなその身体で、しかし一切衰えない戦意を伴って、村上峡児が、今そこに立っていた。 「村上……」 「橘さん、私が時間を稼ぎます。あなたはその間にGトレーラーを」 そこまで言って、村上の身体は一瞬で灰色の異形へと変じる。 薔薇を連想させるその姿は、まさしくオルフェノクの総統たるローズオルフェノクのもの。 そしてエターナルもいつまでもその変身に狂乱しているわけではない。 こちらに現れたそれなりの実力を誇る好敵手を前に、ひときわ高く笑ってローズへと切りかかった。 先とは違い徒手空拳のみを武器にしたローズはしかし、そのハンディを感じさせない動きでその切っ先を巧みに躱しながら彼方へと走り去っていく。 それをただ見送りながら、橘は項垂れるように再度溜息をついた。 (結局俺は、いつまで経ってもお荷物、だな) ゆらりと空を仰ぎながら、橘は思い返す。 東條との戦いを早期に決着させられなかったために、ダグバとの戦いで小野寺が凄まじき戦士になるのをみすみす許してしまった。 ライジングアルティメットとの戦いでは、一瞬の気の緩みによって脱落し多数の死亡者を招いた。 志村純一に関してだって、自分がもっと注意深く彼を観察していたなら、先の病院大戦での犠牲者を未然に防げたのかもしれない。 その挙句に、こうしてダグバとの戦力差を見誤り大局的な敗北を迎えようとしているではないか。 そんな状況ではないのは分かっているつもりでも、物思いに耽るのをやめられなかった。 「ぐ、僕は……」 「……目が覚めたか」 そんな中、抱きかかえていたフィリップが目を覚ましたらしく呻く声が聞こえる。 ダグバが新しい力を手に入れたのは決して彼の責任でないのは分かったうえで、しかしそれでも僅かばかりやりきれない思いを否定することは出来なかった。 「橘朔也、何がどうなったんだ、ダグバは――」 「あれを見ろ」 フィリップの切羽詰まった問いに対し、橘はただ指差しで敵の所在と現在の姿を示す。 真剣勝負の最中だというのにローブをはためかせながら剣を振るうその姿は、視線を奪われるほどに力強い。 一瞬で自分と同じ感想を抱いたらしいフィリップを前に、しかし橘はこれ以上もう絶望に浸っていられるだけの時間が残されていないのを、理解していた。 「フィリップ、村上が時間を稼いでくれている間に、俺たちはGトレーラーを動かす。その後村上を連れて撤退するぞ」 橘が述べたのは、要するに小野寺とダグバとの戦いでも行った行為である。 車の機動力で以て、ダグバを振り切ろうというのだ。 一度は成功したのだから、安直だと言われようとそれ以上の作戦は今思いつけなかった。 (いや、結局のところ先の戦いから何一つ逃げ以外の有効打を思いついていない、の間違いだな) 自嘲気味に笑いながら、橘は自分の思考を否定する。 ダグバと黒いクウガ、二人の凄まじい力を前に自分の知る何であれば並び立ちうるかを考察したあの時から、一つも変わってはいない。 巧による文字通り命がけの一撃でジョーカーを封印できたことに、知らず増長していた自分がいたのだろうか。 (志村、お前がいれば或いは――) その手に白と赤で彩られたジョーカーのカードを握りつつ抱いてしまった刹那の気の迷いを、橘は無理矢理に思考から追い払う。 奴は確かに強かったかもしれないが、利己的極まりないその性格を思えば、彼がまだその命を繋いでいたところで犠牲者が増えていただけだっただろう。 もうこれ以上今の状況で出来ることはない、これ以上の思考は無意味かと、カードを懐に収めかけた、その瞬間だった。 ――『君は、キングフォームにはなれないの?』 脳裏に響く、ダグバの問い。 なれるわけがない、先ほど下したのと同じ結論でその思考を振り払おうとして、しかしそうする前にもう一つ声が響いた。 ――『ジョーカーがどんなカードの代わりにでもなるように、どんなアンデッドの姿にでもなれるアンデッドがいます』 それは、睦月がカテゴリーAの邪悪な意思に支配されたとき、述べた言葉。 彼がそれを述べたのは、ジョーカーアンデッド、つまり相川始の特異な習性を分かりやすく説明するためだけに過ぎない。 だがもしも自分が考えている通りであるのなら、或いは――。 「橘朔也、どうしたんだい?」 急速に加速しだした橘のニューロンが、その声で覚醒する。 フィリップ。自分と同じか、それ以上に首輪の内部構造に詳しい魔少年。 そうだ、彼という人材、そして手元に揃いつつある情報。 弾き出された突拍子もない仮説が、全ての事象に裏打ちされた説得力を伴っていく。 数秒間の沈黙の後、顔を思い切り上げた橘の瞳には、もう漫然とした絶望感は漂っていなかった。 「倒せる……かもしれない」 「え?」 「ダグバを、倒せるかもしれない」 放たれたその可能性は、やがて二人を瞬く間に希望に染め上げていった。 ◆ 「えいっ」 短い気合と共に、エターナルはその赤と銀の大剣、エンジンブレードを振るう。 グロンギでもズのもの程度であれば回避の余地さえなくその身を両断されうるだろうその一撃を、しかし対峙する灰色の怪人はいとも容易く回避し捌き回避する。 これは面白いと距離を離しエンジンブレードからジェットの能力で牽制するが、それも敵の放つ青い弾丸に打ち消され効果は生み出さない。 仮面ライダーエターナルとローズオルフェノクの戦いが始まってから数分。 両者の戦いは、コーカサスとファイズにそれぞれ変身していた時に比べればなるほど激しい動きにかけるもの。 だがその実それはローズが本来得意とするカウンターを主体とするファイトスタイルに由来するもので、エターナルがローズのペースに飲まれかけている、というのが実情であった。 「ふふっ……!」 グロンギ最強である自分がそんな状況に追い込まれつつある、という現状の把握にただ喜びのみを残して、エターナルは再びエンジンブレードを振りかぶってローズに切りかかる。 それをまたも最低限の動作でいなそうとして、しかしローズは気付く。 その剣が、先に自分と競り合った時と同じように雷を帯びていることに。 「ちっ」 短く舌打ちを残して、ローズは大きくその剣筋からの回避を試みた。 だが、それも叶わない。そう動くと踏んでいたエターナルが、いきなりにその剣を真っ直ぐに貫いたのである。 さしものローズも、これには完全な回避は不可能、ゆえにダメージは免れない。 そう考え剣を振りぬいたエターナルを次の瞬間迎えたのは、人の身を貫く確かな手ごたえでも、滴る血の生温さでもなく、冷たい薔薇の花弁の群れだった。 何が起きたのか、さしものエターナルも困惑を示したしかしその次の瞬間、彼の後頭部に鋭い拳が刺さっていた。 響く痛みにそれでも何とか意識を取り止め振り返りつつエンジンブレードを振りぬいてみれば、またしも彼を迎えたのはただ風に漂う薔薇の花弁のみ。 この不条理にらしくなく息を荒げたエターナルに対し、またしても死角から現れたローズが放ったのは、しかし攻撃ではなかった。 「……下手な芝居はこれくらいで十分ではないですか?」 隙だらけ構えのようで一切の油断を見せぬローズとの戦いに昂るエターナルに対して、ローズは短く、しかし苛立ちを含んだ声を漏らした。 その口調には辛うじて敬語が見られ彼の丁寧な姿勢は崩れていなかったが、しかしその実エターナルへの見下した姿勢が見受けられる。 まるで、なぜそんなことをするのか理解できないとばかりに溜息をつく彼に対して、エターナルもまたローズが言外に忍ばせた言葉を察していた。 「……確かに、うん、そうだね」 何度か頷き、ローズをチラと見やったエターナルが次に行ったのは、エンジンブレードの放棄。 投げるでも突き刺すでもなくただエターナルの手から地球の引力に従い地にその身を横たえたその剣は、しかしその重量故に地面を深く沈ませた。 「君みたいな楽しめそうな相手がいるのに、遊んでたら失礼だもんね」 それは、この場でローズ以外の第三者が聞いていたら戦慄をしていたのは間違いないだろう一言だった。 つまりは、先ほどまでのエンジンブレードを用いた戦闘の一切が今のダグバにとっては小手調べ程度のお遊びに過ぎなかったということ。 とはいえ、それも致し方あるまい。 元の世界にいたころであればともかく、今のダグバはこの殺し合いでガドルが仮面ライダーとの戦いでより一層その強さを高みに押し上げたのを見て、自分にも或いは、とまだ見ぬ好敵手を貪欲に求めている状態。 累計4人がかりであったとはいえ自分の強化された真の力を破った仮面ライダーたちとの邂逅は、ダグバにそれ以上を期待させるに足るものだったのだ。 であれば今のダグバに初手から全力を用いて可能性を摘むなどという行為は自身の将来の楽しみを打ち消す無粋にすぎぬ。 それが、グロンギ態への変身解除を理解してもなおコーカサスでこの集団に挑んだ理由であり、またローズほどの実力者を前にしてその手に馴染まぬ得物を用い続けた理由であった。 だが、そんな数々の小細工が、自身の好敵手になり得る存在から自分への興味を奪ってしまうというのであれば、それは論外。 少なくともこの仮面ライダーの姿での全力程度は出すだけの価値はあると、エターナルはことここに至ってようやく思い至ったのであった。 地に横たえたエンジンブレードには目もくれず、エターナルが此度構えたのは一振りのコンバットナイフ。 先ほどまでの剛直という言葉を想起させるエンジンブレードと見比べればどうにも見劣りするそれを、しかしエターナルは油断なく低く構えた。 「……じゃあ、行くよ?」 何度目かになる短い声の後、エターナルは先ほどまでの戦闘スタイルとはまるで別人のようなスピードでローズの懐に入り込んだ。 先ほどまでの戦闘では一切余裕を崩さなかったローズでさえ目を見開くほどの速度で間合いに飛び込んだエターナルは、そのまま思い切りナイフを切り上げる。 喉元を狙ったそれはまさしく死神の鎌のようにも思えたが、しかしローズもまた上の上たるオルフェノク。 大きく姿勢は崩さぬままに繰り出された膝蹴りがエターナルの胸を打ち据え、大きくその距離を引き剥がす。 吹き飛んだ先で瓦礫に埋もれその粉塵が舞う中でしかし一切のダメージを見せず再度飛び出したエターナルに、今度はローズがその手を翳した。 それによって彼の手から生じたのは先ほど回避の際にも発生した赤い薔薇の花弁だ。 回避の際のそれとは違い、触れるだけでダメージを与え場合によってはそれだけで王を守る3本のベルトによる仮面ライダーを変身解除させられるだけの威力を秘めたそれは、しかしエターナルが自身の前に構えたローブに触れた途端、力なく地に落ちた。 「何ッ!?」 それはローズにとって、今までの人生の中でも紛れもなく最上級の動揺であった。 ただの布切れにしか見えないエターナルのそれに阻まれた薔薇の花弁は、今度は逆に自分の視界を阻害するだけの意味しか持ちえないただの障害物へと成り果てたのである。 それ故に、だろうか。夜の闇と、月明りを阻む程度には機能したこの病院の屋根の下、生まれた暗闇にローブを用いて溶け込んだエターナルを、ローズが見失うまでにさほどの時間は必要とされなかった。 珍しくあたふたと忙しなく周囲に視線を巡らせるローズは、しかし次の瞬間その視界の端、こちらに向けて真っ直ぐに突き進んでくるエターナルの黒いローブを見た。 このローブにどういった効果があるのかはともかくとして、それを直接に剥いでしまうことになんら耐性はないだろう。 そう見越して真正面からそれを受け止めれば、あまりに容易くローブはその両手で捉えられ宙をふわりと舞って。 そのローブの下に存在するはずのエターナルが存在しないことに気付いた次の瞬間には、その腹にエターナルエッジの切っ先が肉薄していた。 「――うおおおおおぉぉぉぉ!!?」 気合を込めた雄叫びと共に、しかし驚愕を極力に隠しそのナイフを間一髪受け止めたローズにはしかし、安堵の時間など与えられることはなかった。 ――ETERNAL MAXIMUM DRIVE 今まさしく自分が押したスイッチに連動して、死神が必殺の一撃を放つための死刑宣告を意味する電子音声が、高らかに鳴り響く。 何から何まで、全くの理解が追い付かぬままにただ自分を覆う影が黒くなったことに釣られて振り返り上空を見上げたローズがその目に収めたものは。 ローブを脱ぎ去り、右足をこちらに向け錐揉み回転するエターナルの放つ青い炎だった。 131 飛び込んでく嵐の中(1) 時系列順 131 飛び込んでく嵐の中(3) 投下順 ン・ダグバ・ゼバ 村上峡児 橘朔也 フィリップ 葦原涼 相川始
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飛び込んでく嵐の中(4) ◆JOKER/0r3g ◆ 時刻を同じくして。 安全のためE-5エリアからGトレーラーを駆りF-5エリアにまで移動したフィリップは、ただひたすらに時計を睨み付けながら橘の無事を祈っていた。 橘の作戦が上手くいけば、長く見積もってもあと6分ほどでダグバの変身制限が訪れ、奴は死ぬ。 確かにそれはダグバという規格外を相手にする上でこれ以上なく堅実な作戦のようにも思えたが、ダグバという存在がどれだけ常識外れの存在かは短い時間とは言え直接戦って存分に思い知った。 翔太郎や士といった信頼の置ける実力者が何人いても万全の状況は有り得ないという彼の論調に賛同してしまった自分が強く非難できるはずもないが、それでもなお不安を拭い去ることは出来ず。 そんな不安に駆られながら、次の瞬間、カチリと分針がまた一つ時を刻み、それに伴いまた病院の方向へと視線を戻したフィリップは、見た。 ――天を貫かんと伸びる巨大な火柱が今までそこに存在していた病院を包み込みいよいよ以てその全てを飲み込んでいく地獄のような光景を。 「……え?」 思わず、間抜けな声が漏れた。 まさかあれがダグバを倒したという証なのか、と呑気に思う一方で、それ以上に最悪の可能性が頭を擡げて彼を支配しようとしていた。 どうにか否定材料をと視線を凝らして火柱を注視していた彼は、それが徐々に横に広がりつつあるのを見る。 つまりはその火柱が天に伸びたのはただの爆発の中心点に過ぎず、今からその暴力的な破壊力を病院だけではなく周囲に振りまこうとしているということだ。 ただの爆風であればともかく、周囲の瓦礫や倒木さえも吹き飛ばし明らかな殺傷能力を含んだそれに対して、フィリップは懐からT2サイクロンメモリを取り出し、起動する。 ――CYCLONE フィリップが真っ直ぐにそれを投げ放てば、今度はその端子を彼の掌に向ける形でその緑のメモリは彼の掌に突き刺さった。 一瞬のうちにその身を疾風の記憶を含有する異形、サイクロンドーパントへと変貌したフィリップは、そのまま大きく両手を広げ能力を全開にする。 次の瞬間、発生した風のバリア、それがGトレーラーを包み込んだその瞬間に、暴力的なまでの爆風が、彼らを襲った。 「ぐっ……!」 サイクロンが思わず呻く。 彼が風による防壁を発生させたGトレーラー以外の場所が、熱と風に蹂躙され焼け野原へと変わっていく。 彼らのすぐ後ろに佇み暴風の影響を存分に受けた高級マンションは、その風の威力故に高層階の窓ガラスの何割かを消失させ先ほどまでの優雅な佇まいを無残なものに変貌させていた。 そうして周囲がまさしく緑の一つさえ見えない焦土と化して数秒の後、爆発とそれに付随する暴風は終わりを迎えた。 あまりにも恐ろしいそれを見届けて、フィリップは変身を解き思い切り地面に膝をついた。 T2故に依存性を始めとする副作用がないことを確認していた為に躊躇なく使用することは出来たが、この一瞬で使用した力があまりにも大きかったためかとてつもない疲労感が彼を襲ったのだ。 「フィリップさん、何事で――ッ!?」 そしてそんなフィリップの前に、トレーラーの扉を開けて飛び出してきた村上は、変わり果てた周囲の光景に言葉を失った。 彼からすれば爆音が聞こえたのにいつまでも車体が一切揺れないような心地だっただろうから、さぞかし不思議だったに違いない。 「フィリップさん、どういうことです、ご説明を」 「あぁ、だが――」 「――村上ィ!」 村上の焦燥感を含ませた問いに、疲労にうなされつつ何とかフィリップが答えようとしたその瞬間、ふと意識外から飛び込んでくる男の声が一つ。 聞き覚えのあるそれにフィリップが振り返るより早く、声の主は彼を超えて村上に殴りかかっていた。 「村上、お前が、お前があきらを!」 「葦原涼!?」 それは、先の病院での戦いからその行方が知れていなかった葦原涼その人。 だが、あまりに突然に飛び込んできた偶然の再会に喜ぶより早く、フィリップは彼が一体何を言っているのか、一瞬疑問に思って、しかしすぐにその疑問は氷解する。 彼はまだ、知らないのだ、野上良太郎と村上峡児が天美あきらと園咲冴子を殺した犯人だという情報が、志村のついた嘘だということを。 そしてそれにフィリップが思い至った瞬間には、既に葦原は再度大きく拳を振り上げていて。 「待ってくれ葦原涼、それは誤解だ!」 このままではまずい、とフィリップが咄嗟に静止を呼びかけたのを受けて、葦原の振り上げた拳が止まる。 そのままギョロリと視線だけをフィリップの元にくれる彼の顔は、彼がただ不器用なだけで紛れもなく正義を信じる仮面ライダーの一人であることを知らなければ誤解さえ生みそうなほどに人相が悪いものだった。 そして、その片腕を未だ振り上げたまま、もう片方の腕で村上のスーツの襟を握りしめたままで、葦原はぶっきらぼうに問うた。 「誤解だと?どういうことだ、まさか、志村が言っていたのは……」 「そのまさかさ。天美あきらと冴子姉さんの殺人に村上峡児は関与していない。 僕たちは彼の嘘にまんまと乗せられてしまったんだよ」 「なんだと……」 また騙されていたという不甲斐なさに思わずその腕を垂らした葦原の腕に伴うように、村上の身体は力なく座り込んだ。 何よりも早く葦原が義憤のままに振るった拳は、村上の顔の中心を打ち据え彼から意識を奪っていたのである。 平素の村上であれば躱せただろう一撃にその意識さえ飛ばしてしまうほどに彼が満身創痍だったのだと葦原が理解する頃には、彼の村上への敵意はすっかり消え失せてしまっていた。 「だが、どういうことだ。志村は、未来で橘の部下だったんじゃないのか?まさかそれも嘘だったのか?」 「いや、それは嘘じゃないようだ、最初に僕がバットショットに保存していた画像は見せただろう? あの白と赤の怪人、もう一人のジョーカーアンデッドこそが彼の真の姿だったということさ。つまり――」 「――もう一人のジョーカー、だと?」 志村純一と橘朔也の関係についての自分の推論を述べようとしたフィリップの耳に、葦原のものとは違う、男の低い声が響く。 碌な気配さえ感じさせずに現れたそれに振り返ったフィリップは反射的に構えを取るが、しかしそれは必要ないとばかりに葦原が彼を制していた。 「すまないフィリップ、紹介が遅れたな。こいつは相川始だ」 「相川始……?待ってくれ葦原涼、彼はさっきの病院での戦いでダイヤスートのカテゴリーキングと一緒に五代雄介を操り僕たちを襲った奴だぞ、分かってるのか!?」 「あぁ、分かっている。だがこいつも今は大ショッカーを倒そうとしている。俺はそれを信じたいんだ」 フィリップの当然とでも言うべき怒りに、葦原はしかし真摯に返す。 まるで心の底から彼を信用しているとでも言いたげなその言葉に、フィリップはやりきれない思いを抱えつつも取りあえずは葦原を信じてみることにした。 そして同時、始の言葉が真であるか偽であるかについてのこれ以上の立ち話は水平線上を辿るだけかと思考を切り替えた。 「……お互いに積もる話はありそうだが、今はそれより、橘朔也の安全を確認したい。 彼は今病院で一人ダグバと戦っているんだ。さっきの爆発も、それに関係したものとみてまず間違いない」 「やはりダグバが病院に……ということはやはりさっきの相川の衝動はブレイドのキングフォームとやらにあいつが変身したからのものか」 「……どうやら本当に色々話すことがありそうだね。だが取りあえずこのトレーラーに乗ってくれ、話はそこで――」 「――いや、どうやらその必要はないらしい」 様々な情報の交換は移動中にすればいいだろうと結論づけてGトレーラーに乗り込もうとしたフィリップを止めたのは、始の静かな制止の言葉だった。 どういうことだと怒りさえ滲ませながら彼の見ている先、空へと視線を追随させたフィリップは見た。 橘が片身離さず持ち歩いていたはずのギャレンバックルを抱え飛行する、ザビーゼクターの姿を。 何故、ザビーゼクターだけが主の最も大切なものを抱えて自分たちの前に姿を現したのか、その答えは実に容易に予想出来るもので、同時に絶対に認めたくないものだった。 「まさか……橘朔也……そんな……」 思わず膝から崩れ落ちたフィリップの元に、ザビーゼクターは抱えていたギャレンバックルを投げ渡すように投下する。 あまりに機械的なその動作は、否応なしに彼に現実を突き付けるもの。 つまりは橘朔也が、ダグバの首輪を爆発させるという一世一代の大博打を挑み、その結果として命を落としたという、非情な現実だった。 (橘……) ギャレンバックルを抱え一人打ちひしがれるフィリップの後方で、始もまた橘の死という現実に思いがけずショックを受けている自分を自覚していた。 剣崎の仲間であり、別段倒しても心痛まないとさえ思っていた彼が死んだというだけの事実が、しかし妙に心苦しい。 友などと言えるほど親密な関係ではなかったし、世界の存亡を賭けた戦いにも大ショッカーの打倒にも強い存在感を放っていたわけではないというのに、彼がもういないと思うと、どこか寂しいような、心に穴が空いたような心地がして居心地が悪かった。 だがそれが、人の情。 決して好きなわけでも嫌いなわけでもない空気のような存在であっても、日常を構成するそれが突然なくなってしまったら誰だって悲しい。 そんな、当たり前の、しかし人間誰しもに備わった弱い感情が自然に沸き起こるほどには彼は人間に近づいていて、しかしそれを自分の感情として言語化することは出来ないほどには、彼は未だ人外であった。 そして、残されたあと一人、葦原涼もまた、仲間の死にその拳を握りしめていた。 最悪の敵であるダグバを倒したと言えど、その道連れに仲間が死んだと言われれば、喜びよりも悲しみや怒り、やるせなさが勝る。 それが葦原涼という人間だった。 行き場を失った怒りをGトレーラーのトレーラー部分に八つ当たり気味にぶつけながら悔しさに歯を食いしばった葦原の元に、ザビーゼクターが飛来する。 ホッパーゼクターに続き自分を資格者に認めたのかと一瞬困惑するも、しかし彼は数度デイパックの周囲を飛び回った挙げ句天へと昇っていった。 その一連の動作そのものが自分の持っているパーフェクトゼクターにザビーゼクターが引き寄せられた結果なのだと彼が気付くことはなかったが、ともかく。 様々な情報が入り乱れ、それぞれの状況について話し合わなくてはいけない状況を深く理解しながらも、ただ今はそれぞれに抱いた仲間の死に対する複雑な感情に向き合おうと。 そうする内、無言で焦土に立つ彼らを、太陽が照らした。 それはまるで、未だ進む道に迷える彼らの行く末を示すようでもあり、また同時に、究極の闇とさえ呼ばれた男の死を、彼らに明示するかのようでもあった。 【二日目 早朝】 【F-5 焦土】 【フィリップ@仮面ライダーW】 【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降 【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、仮面ライダーグレイブに10分変身不能、仮面ライダーエターナルに1時間40分変身不能、サイクロンドーパントに1時間55分変身不能、照井、亜樹子、病院組の仲間達の死による悲しみ 【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、ギャレンバックル+ラウズアブゾーバー+ラウズカード(ダイヤA~6、9、J、K クラブJ~K)@仮面ライダー剣 【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル 、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、イービルテイル@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、栗原家族の写真@仮面ライダー剣 【思考・状況】 0:西へ向かい、仲間達と合流する。 1:大ショッカーは信用しない。 2:巧に託された夢を果たす。 3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。 4:首輪の解除には成功できた、けど……。 【備考】 ※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。 ※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。 ※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。 ※病院にあった首輪解析機をGトレーラーのトレーラー部分に載せています。 ※T2エターナルメモリのマキシマムドライブの影響により、第一世代のメモリが使用不可能になり、ファングメモリとエクストリームメモリが一時的に自立移動できなくなりました。制限によりT2エターナルマキシマムの使用からあと1時間45分経過すれば再度使用可能になります。 【村上峡児@仮面ライダー555】 【時間軸】不明 少なくとも死亡前 【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、仮面ライダーオーガに10分変身不能、仮面ライダーカイザに15分変身不能、仮面ライダーファイズに1時間40分分変身不能、ローズオルフェノクに1時間45分変身不能 【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、ファイズギア(ドライバー+ポインター+ショット+エッジ+アクセル)@仮面ライダー555、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+ポインター)@仮面ライダー555 【道具】支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。 0:(気絶中) 1:ダグバ、次に会えば必ず……。 2:乾さん、あなたの思いは無駄にはしませんよ……。 3:首輪の解除に関してフィリップたちが明らかな遅延行為を見せた場合は容赦しない。 4:デルタギアを手に入れ王を守る三本のベルトを揃えてみるのも悪くない。 5:次にキング@仮面ライダー剣と出会った時は倒す。 【備考】 ※変身制限について把握しました。 ※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。 ※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されていましたが、フィリップからの情報で誤解に気付きました。 ※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。 ※今後この場で使えない、と判断した人材であっても殺害をするかどうかは不明です。 【相川始@仮面ライダー剣】 【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦) 【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、罪悪感、若干の迷いと悲しみ、橘への複雑な感情 【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE 【道具】支給品一式、不明支給品×1、 【思考・状況】 基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため行動する。必要であれば他者を殺すのに戸惑いはない。 0:大ショッカーを打倒する。が必要なら殺し合いに再度乗るのは躊躇しない。 1:取りあえずはこの面子と行動を共にしてみる。 2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。 3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……? 4:キング@仮面ライダー剣は次会えば必ず封印する。 5:ディケイドもまた正義の仮面ライダーの一人だというのか……? 6:乃木は警戒するべき。 7:剣崎を殺した男(天道総司に擬態したワーム)は倒す。 8:ジョーカーの男(左翔太郎)とも、戦わねばならない……か。 9:橘……。 【備考】 ※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。 ※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。 ※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。 ※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。 ※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。しかし同時に、剣崎の死の瞬間に居合わせたという話を聞いて、破壊の対象以上の興味を抱いています。 ※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。 ※ジョーカーの男、左翔太郎が自分の正体、そして自分が木場勇治を殺したことを知った、という情報を得ました。それについての動揺はさほどありません。 ※取りあえずは仮面ライダーが大ショッカーを打倒できる可能性に賭けてみるつもりです。が自分の世界の保守が最優先事項なのは変わりません。 ※乃木が自分を迷いなくジョーカーであると見抜いたことに対し疑問を持っています。 【葦原涼@仮面ライダーアギト】 【時間軸】本編36話終了後 【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感 【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト 【道具】支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す! 0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。 1:今はこの面子と行動を共にする。 2:人を護る。 3:門矢、相川を信じる。 4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。 5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。 6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……? 7:乃木……。 【備考】 ※変身制限について、大まかに知りました。 ※聞き逃していた放送の内容について知りました。 ※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。 ※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。 ※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。 ※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。 ※奪われたブレイバックルがダグバの手にあったこと、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。 ※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。 ※始がヒビキを殺したのでは、と疑ってもいますが、ジョーカーアンデッドによる殺害だと信じています。 ※ザビーゼクターは、パーフェクトゼクターの所有者に関係なく力を貸すつもりのようです。 ◆ ――読者諸君は、不思議に思わなかっただろうか。 なぜ大道克己その人に兄弟とさえ称されたフィリップはエターナルの力を出し切れなかったというのに、ダグバはその力を存分に振るえたのだろう、と。 勿論ただの紛れ、克己の意見など関係なくエターナルにより適合したのがダグバであった、という見方も出来なくはない。 だが、こうは考えられないだろうか? 大道克己との間に『科学によって生まれた怪物』という共通点を持つフィリップよりも、ダグバと克己との間の方がより深い共通点が存在していた、と。 それがなんなのか、という結論の前に、一つヒントを提示しておこう。 それは、ダグバが何故あれほどまでにギャレンのキングフォームに固執したのかという問いだ。 勿論、その答えは既に明示されている。 ダグバが以前仮面ライダーブレイドキングフォームに変身した際、凄まじき戦士にまで至ったクウガを前に一歩も退かず、どころか変身制限さえなければ或いは勝利も有り得たかもしれないというその実力に大いに満足したからである。 そしてここで重要なのは、何故ダグバが変身したブレイドがクウガアルティメットフォームを前に互角に戦えたのか、という点である。 無論、その理由も既に明確にされている。ブレイドキングフォームが持つアンデッドの能力をノーラウズで使用出来るという反則染みた能力が両者の間に存在する格差を無に帰したのだ。 そして、続く二度目のブレイドキングフォームへの変身でもダグバは幾度となくノーラウズの力を使用、その能力でガドルを打ち破ったというカブトハイパーフォームを難なく下し、その力を最上級に楽しめるものとして理解していった。 これが、ブレイドとギャレンのキングフォームの差異を理解することなく彼がギャレンのキングフォームに多大な期待を寄せていた理由である。 ……何?話が見えない?では話の核心に迫る問いを投げることにしよう。 ――13体のアンデッドと融合を果たしたキングフォームに何度も変身を果たした剣崎一真は、最終的にどうなった? ここまで言えば、諸君には何がダグバの身に起こったのか、もう分かるだろう。 つまり、『ダグバもまた、グロンギの身でありながら永遠を生きる不死者、アンデッドへとその身を変貌させていた』のだ。 そう、大道克己とン・ダグバ・ゼバとは、どちらも永遠にその生を終わらせることのない“生ける死者”同士であったのである。 最も、ダグバのそれはエターナルをその身に纏ったときには決定的ではなかったのだが。 どういうことだ、と疑問に思う者もいるだろう。 先に述べた二度のキングフォームへの変身によるアンデッドとの融合は確かに急速なものではあったが、その時はまだ彼はアンデッドではなかったではないか、と。 確かに、その指摘は正しい。 ン・ダグバ・ゼバが幾ら剣崎一真のそれを大きく上回るスピードでジョーカーへの変貌を受け入れていたとは言え、先の戦いの最中、どころか病院での一戦が終わるその瞬間まで、彼の身体はただのグロンギに過ぎなかった。 もしもその身体が真にアンデッドに変貌した理由をより述べるとするなら、ギャレンがカテゴリークイーンの代替として用いたアルビノジョーカーのカードによる影響が一つ、そして生まれながらのジョーカーである相川始の接近が一つ。 しかしそれらも、ダグバの身を変貌させるだけの王手にはなり得なかった。 そう、彼がジョーカーへと変貌した理由、その最後の一手とは、ザビーゼクターがフィリップの元へ運んだラウズカードの中で唯一、この場を離れなかったまさにその一枚。 志村純一の封印されたジョーカーによる働きかけによるものだった。 元々、上条睦月がスパイダーアンデッドに魅入られたときのように、アンデッドの中には封印されてもなお強い意志を持ちカードの外に影響を及ぼすタイプのものが存在する。 特に上級アンデッドである嶋登や城光などはカードに封印されてもなお睦月に声を届かせることが可能だったのだから、それ以上に強力なアンデッドであるジョーカーが封印されてもなお強い悪意を持ち続けたならば、それが及ぼす影響は計り知れないとしても、何の疑問もないだろう。 橘に一旦は力を貸したジョーカーは、しかしダグバの首輪が爆発するその直前彼の元へと飛来しその身に燻るアンデッド化に王手をかけたのである。 無論首輪の爆発はフィリップや橘が予想したとおりセッティングアルティメットといえどダグバを確実に葬るほどの威力を誇るものだった。 だがしかし、思い出してほしい。彼の首輪はあくまでグロンギ用のもの。アンデッドを強制的に封印する機能は含まれていなかった。 であれば、不死者となったダグバが未だその身を消滅させていなかったとして、何の問題もない、ということになるわけだ。 さて、こうしてアルビノジョーカーのカードがダグバのアンデッド化を後押ししたのだという結論のみを語られても、こう疑問に思うのではないだろうか。 『志村純一が殺し合いに乗っていたとのはあくまで世界保持の為であり敵対者であり自身の世界を破壊しかねないダグバに力を貸す道理はないではないか』と。 確かにその疑問は最もである。事実この殺し合いの中において志村純一は『剣の世界』の存続を目標に他世界の参加者を間引いていた。 変身能力を失った橘朔也を前にしてなおその命を奪わなかったことからを踏まえても(無論、その気になればいつでも容易く殺せるという確信もあったが)、彼がただ殺戮の快楽に溺れたわけではないことは明白であり、傍から見ればそんな志村が他世界に生きるダグバに力を貸すのは理解できないことである。 だが、ここで改めて考えてほしい。 志村純一という男は、自分が封印された後も自分の世界のために戦おうと考えるような殊勝な性格だろうか? 否、断じて答えは否である。 そんな『仮面ライダー』染みた殊勝な考えなど、彼が持ち合わせているはずがあるまい。 金居やスパイダーアンデッドのような自身の種の繁栄を望むアンデッドであれば露知らず、彼はその性質からバトルファイトの勝者にさえ成りえない完全なイレギュラーだ。 もとより破壊神フォーティーンの復活とそれによる世界の支配を目論んでいた彼が、その果てに何を望んでいたのかはその実明らかではない。 だが、こうは考えられないだろうか。 『創造主さえ超える最強の力を得た実感と共に世界を支配したい』と。 もしもそれが彼の最終的な目的であったなら、彼が封印される前に世界の保持を望んだのも理解できる。 そして同時に、自分が封印された後に最早自分が支配することの叶わない世界の滅亡を彼が望んだとして、一体何が不思議だろうか。 ダグバという規格外の化け物を前に、破壊神フォーティーンにさえ匹敵しうる才覚を見出し、彼をその代替として利用することで全ての世界を滅ぼそうとしたとして、何もおかしくないではないか。 結局はそう、志村純一という死神が封印されてなお齎した最悪の結果こそが、このダグバのアンデッド化という悪夢のような事象なのである。 長々と話してきたが、言いたいことはつまり二つ。 エターナルメモリとダグバが惹かれ合ったのは死者になりつつある彼に永遠を感じたこと、そして……未だ、ン・ダグバ・ゼバが翳す究極の闇は終わったわけではないと言うことだ。 とはいえ、流石の不死者と言えど、アンデッドもまた無敵ではない。 ダグバの治癒能力を以てして、その身体が封印可能状態を脱し自律的に行動を始められるようになるまで、多大な時間がかかることだろう。 故に今は、享受しよう。この凄惨極まりない地獄に降り注いだ、闇を照らす太陽の光を。 【二日目 早朝】 【E-4 焦土】 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】 【時間軸】第46話終了後以降 【状態】ダメージ(極大)、疲労(極大)ジョーカーアンデッド化、封印可能状態、首輪解除、昏睡中 【装備】なし 【道具】なし 【思考・状況】 0:(昏睡中) 【備考】 ※アンデッド(ジョーカー)化しました。 ※また、首輪の爆発により通常のダグバであれば死亡しているほどのダメージを負っていますがアンデッド化によって死を免れている状況です。なお現在は封印可能なようですが長時間放置すれば回復します。 ※首輪は爆発しましたが彼本人のゲブロンは爆発していないので、未だにグロンギ態には変身可能です。また、アンデッド化による見た目の変化などがあるかは不明です。 ダグバが生きている。 そう書けば、或いは諸君は此度の戦いを無意味なものと捕らえてしまうかもしれない。 だが、この激闘の果てのこの結末を、敢えて、敢えてここにこう記そう。 最も明白な判断基準である首輪の消失によるダグバという最強の生命体、その生存確認の終了の意と、”グロンギの王”であった彼に対する、『仮面ライダー』の一旦の勝利を称える意を表明する為に。 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ 死亡】 【橘朔也@仮面ライダー剣 死亡】 【残り人数 16人】 【全体備考】 ザビーブレス@仮面ライダーカブト、支給品一式×4、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼は破壊されました。 ライダーブレス(コーカサス)+コーカサスゼクター@仮面ライダーカブトとロストドライバー+T2エターナルメモリ@仮面ライダーWがどうなったかは後続の書き手さんにお任せします。 ダグバの首輪が爆発した影響により、E-4エリアを中心に焦土が広がりました。具体的にはE-4,E-5エリアの全体、F-4,F-5エリアおおよそ北方面半分が焦土になりました。 131 飛び込んでく嵐の中(3) 時系列順 132 Diabolus 投下順 ン・ダグバ・ゼバ 141 愚直(前編) 村上峡児 橘朔也 GAME OVER フィリップ 141 愚直(前編) 葦原涼 相川始
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飛び込んでく嵐の中(3) ◆JOKER/0r3g ◆ エターナルがローズにこうして特大の一撃を食らわせるだけのことが出来たのは、何よりもその能力の特異性によるものだ。 最初にローズの放った薔薇の花弁を防いだのは、全ての攻撃を無力化するという規格外の能力を持つエターナルローブの効果によるものだった。 どことなくそれを感覚で理解していたダグバは、ローブの能力を信じ、ただローズの攻撃を凌ぎ闇に身を隠した。 ローズがこちらを見失ったのを確認した彼は、いましがたその強大無比な能力を実感したばかりのローブを脱ぎ去り、エッジにエターナルのメモリを装填した。 つまりはそれからのことの一切はこうだ。 エターナルは、エターナルエッジをローブに忍ばせ飛ばすことでローズの注意を引く。 そこでローブごとエッジを受け止めたローズによって半ば強制的にマキシマムドライブが発動、彼の死角から迫りつつ最大威力の一撃を放ったということである。 エターナルという仮面ライダーの特性を熟知していなければ出来ないはずの芸当を、この短い戦闘で彼が可能にしたのは、ダグバの類い稀なる戦闘センスによるものか、或いはメモリが彼に暗に示したのか。 ともかく此度の白と灰との戦いは、エターナルの奇策による勝利となったのであった。 ◆ 「ぐ……あ……」 エターナルの必殺技、エターナルブレイクの直撃を受けて、ローズオルフェノクはその姿を維持することさえ出来なくなり村上峡児としての無力な人間の姿を晒した。 乾巧や橘朔也を手玉にとったという話から警戒は怠っていなかったはずだが、どうやらこの相手は自分の想定をさらに上回る相手だったと認めざるを得ないらしい。 これでなおもグロンギという真の姿をまだ持っているというのだから、なるほどそうなればオーガに変身した自分でも絶対の勝利はないと判断できる。 よもやここまでの実力者と巡り合うことになるとは思っていなかった村上は、ここにきて初めて自分のこの殺し合いに対する認識の甘さを知ったのであった。 とはいえその反省も、未だ健在のこの死神が気紛れにこの首を掻ききるまでの数秒の間しか活かされることはないかもしれないが。 らしくなく諦観を抱きかけた村上はしかし、なおも敵に媚びることなく真っ直ぐにエターナルを睨み付けた。 「……君も、そういう目をするんだね」 対するエターナルは、この場に来て数度目にしたそれに対して、同じく何度目ともしれない興味を示した。 全てが全てそうという訳ではないが、不思議と自分を楽しませたリントは全てこういう諦めの悪い目をしている気がする。 だがその理由を問う度に、ダグバにとっては納得のいかない理由で煙に巻かれ、イマイチ仮面ライダーという存在への理解が深まることがないのである。 「――なんで、諦めないの?」 だから、また聞いてみようと思った。 もしかしたら今度こそは彼らの言い分を理解して仮面ライダーの強さの理由やそれに心酔したガドルの心境を知ることが出来るかもしれないと、そう思ったから。 だがしかし、やはりというべきか、その問いを受けた村上は、言われて始めて自分の意思を悟ったような不思議な顔をして、それからすぐにニヤリと口角を上げた。 「この状況を諦めていない、わけではないでしょうね。ただ一つ私が言えるのは――」 「――言えるのは?」 「私の人生は、笑みで締めくくられなければならない。 であればこの瞬間は私に与えられた最期の時ではない、ということでしょうか」 どことなく確信を持って、村上は言い放つ。 しかし対するダグバにとっては、彼の言い分は全く理解出来ないものであった。 人の死、というものは何時の時代も願ったものとは異なるものだ。 少なくとも今までダグバが殺してきた有象無象のリントたちの中に、死に際に笑みを残したものなどいなかった。 笑いは強者にこそ存在するもので、弱者は恐怖に顔を引きつらせるだけ。 ダグバの中にどこか当然に存在していた価値観を否定するような彼の言葉は、どこか尾を引くもので。 「なら、僕には今君を殺せないって事?」 「気になるのならば試してみれば良い。貴方と私、どちらが正しいのか証明するためにも、ね」 「そこまで言うなら……いいよ」 エターナルは、数度手の中でエッジを回し弄んだ後に、彼の誘いに乗ってみることにした。 もしかすれば彼にも何か策があって自分の接近を望んでいるのかもしれないが、それならそれで面白いかもしれない。 一瞬で終わらせてはつまらない、とその足を一歩一歩と詰めて村上が何らかの行動を示すのを待ったエターナルを前に、しかし村上はただ余裕の表情を浮かべるだけでその身体を動かすことさえしなかった。 そんな彼を怪訝に思いながらも歩を進めたエターナルは、数秒の後、あっという間に彼の姿を眼下にまで捕らえていた。 「――どうやら、勝負は決まったみたいだね?」 どこかがっかりとした声で、ダグバが問う。 だが対する村上は一仕事終えたかのような安堵さえ滲ませながら、一つの溜息で答えた。 「えぇ、勝負は決まりのようです。 ――ここまで下らない時間稼ぎに付き合っていただいた貴方のお陰でね」 「なにを――」 そこから先の言葉は、紡がれなかった。 というより、そんな小さな声を簡単に遮り押しつぶすほどの轟音が、周囲に響いたという方がより正確か。 だがエターナルがその音の出所に顔を向ける前に、その身体は彼の数倍の質量を有する鉄の塊に吹き飛ばされていた。 残り少ないとはいえある程度残っていた瓦礫を気にしないほどの馬力で病院に乗り上げ村上の前に停車したそれの名は、Gトレーラー。 まさしく村上が望んでいた時間稼ぎによる仲間の到着という勝利の形であった。 「村上峡児、無事か!?」 「えぇ、危機一髪、というところでしたが」 忙しなく助手席の方向より降りてきたフィリップの姿を視認し、その肩を借りて立ち上がりながら村上はあまりにも情けない自分の姿を自嘲する。 とはいえどうやらこれで一安心だ、と肩の荷を下ろしかけて、しかしまだ戦いは終わっていないことを言外に告げるように、エターナルが瓦礫を弾き飛ばしながらその身を再び現した。 「……また逃げる気?」 エターナルが吐いたその苛立ちを秘めた言葉の先は、しかしフィリップや村上に向けたものではない。 まさしく今Gトレーラーの運転席から地面に降り立ちその精悍な瞳をエターナルに向ける橘に対するもの。 恐らくは第一回放送前の小野寺ユウスケや日高仁志を含めた戦いの時を差しているのだろう。 彼のような戦闘狂への勝利宣言として皮肉の一つでも吐いてやろうかと口を開きかけて、しかしそれを遮るように橘が声を上げていた。 「いや、ダグバ……、俺が、今ここでお前を倒す」 揺るぎなく、しかしそれでいて落ち着き払った様子で、懐より最も使い慣れた自分の力を……ギャレンバックルを取り出す橘を見て、村上は驚愕を隠せない。 何故なら先のキングとの戦いで用いられた力であるはずのそれにかけられた変身制限が解けるまで、まだ最低でも数十分ほどの時間を要するはずだからだ。 一体どういうことだと彼が疑問を発する前に、橘が慣れた手つきでカードをスライドしバックルを腰に押し当てれば、カード状のベルトが彼の腰に巻き付き、高らかに変身への待機音を響かせた。 「変身!」 ――TURN UP 橘が拳を握り、叫ぶ。 それと同時彼がバックルのトリガーを引けば、瞬間生じるのはアンデッドの力を具現した壁、オリハルコンエレメント。 制限に掛かっているときはそもそも発生さえしなかったそれの無事な出現にしかし戸惑うことなく、橘は駆け抜ける。 次に彼の身体がその壁を越えた瞬間、そこにいたのは既に生身の人間ではなかった。 仮面ライダーギャレンへの変身を完了した彼は表情こそわからないながらもフィリップを振り返り、フィリップもまた彼に対し笑みを携えた頷きで答えた。 「馬鹿な……」 しかしそんな二人を置いて、一切の理解が出来ないといった様子で村上は狼狽する。 首輪にかけられている変身への制限が真実であることは自分も把握している。 だが現に橘はそんなものが存在しないとでもいう様にギャレンへの変身を果たして見せた。 自分の中にあった確固たる情報アドバンテージが音を立てて崩れていく錯覚さえ覚えて、村上は頭を押さえた。 「村上峡児、説明は後だ、僕らは行こう。橘朔也、分かってるとは思うが……」 「あぁ、大丈夫だ、約束は守る」 最早フィリップたちを振り返ることさえなく、ギャレンはその腰のホルスターからギャレンラウザーを抜く。 その背中に、やはりどこか危うさを覚えながら、フィリップは――同時に地面に落ちていたエンジンブレードを回収することも忘れず――村上を支えGトレーラーへと乗り込みエンジンをかける。 その車体を検索によって手に入れた運転テクニックで華麗に操り病院から離しながら、フィリップは常にその背に刺さるような村上の視線を感じていた。 「……まさか、この状況について私に説明もなく済む、とは思っていないでしょうね」 ダグバとの戦いでその高いプライドを傷つけられただろうにそれを気にさせないほど高圧的な態度を変えずに、村上は問う。 それにフィリップは背筋が凍える思いを覚えつつも、しかし臆することなくブレーキをかけてから振り返った。 「勿論さ村上峡児。橘朔也が仮面ライダーギャレンに変身できた理由、それは――彼の首輪を、僕がもう解除したからさ」 告げながら提示された半分に別たれた首輪を見て、今度こそ村上の余裕は崩れ去った。 ◆ 「君の言っている作戦は、確かに有益なものだ」 数分前。 橘が述べたダグバをここで倒す方法についての一切を聞き熟考を重ねた後、フィリップはそう結論付けた。 橘の作戦は、多くの危険要素を踏まえたうえでもなお魅力的かつ確実な死を彼に迎えさせられる、非常に有益なものだということは否定しようがない。 信頼のおける知性を持つフィリップのその言葉に頬を綻ばせた橘に対し、「だが」と釘を刺すようにフィリップは続ける。 「だが、あまりにも検証の足りていない事象が必要条件として多すぎる。 そんな危険を君にみすみすさせるわけにはいかない、やはり今は逃げに徹するべきじゃないか?」 首を振りながら、フィリップは言う。 無論橘とて、自身の立案した作戦に問題点が多いのは理解している。 だがそれで「はいそうですか」と引き下がっていられるような時間はもう、残されていないと思った。 「フィリップ、ならば逆に問おう。 ダグバを……あの規格外の化け物を相手に、何があれば万全の勝利を確信できる?」 「えっ?」 橘が投げたその問いに、フィリップは答えることが出来なかった。 というより、ただ困惑を返すしかできなかったというべきか。 思いがけないその問いに黙りこくった彼に対し、橘は続ける。 「左翔太郎との合流か?それとも門矢か?或いは小野寺か?俺は、それは違うと思う。 少なくとももう一度小野寺とダグバが戦えば、奴の実力を引き出すためにダグバは周囲にいる人間を殺しつくそうとするだろう。そんな犠牲を、俺はもう見たくない」 逃げることなく、橘は言い放つ。とはいえそれは、決して詭弁ではなかった。 ダグバと戦うには先のライジングアルティメットとの戦いのように徒党を組む必要があるが、そうして集まった人数が多ければ多いだけ犠牲もまた必然的に増えてしまうだろう。 それは――その中には志村純一の犯行や彼自身の死も含まれているとはいえ――敵味方合わせて総勢13名もの徒党を組んで敵に挑んだというのに既にその中で4名しか生き残っていない現状からも推測できる事態ではあった。 死んでいった多くの仲間たちを思い、そして橘が見たというダグバによって“小野寺ユウスケを強くするためだけ”に死んだという二人の男のことを思い、それからフィリップは、意を決したように息を吐いた。 「――君の言い分はわかった。だが僕も、これ以上の犠牲を見たくないのは同じだ。だから条件が一つある」 「……なんだ」 「君も、無事に帰ってくるんだ。ダグバに勝って帰ってくる、それが僕の協力への条件だ」 どこか彼らしくもある少し臭い提案。或いはここに村上や乃木のような人外がいれば、鼻で笑っていたかもしれない。 だが、ここにそれを茶化すような人物はいない。 「当然だ、俺にもまだ……やらなきゃいけないことはあるからな」 橘はその提案に、気恥ずかしささえ感じさせることなく強く頷く。 そしてそれを受け頷き返しながら、フィリップは久しぶりの探求心の高ぶりにニヤリと笑って。 「それじゃ、始めようか。――君の首輪の解除を」 まさしく一世一代の賭けに乗ることを、宣言したのだった。 それから先、Gトレーラーに向かい橘を手頃な椅子に座らせた後、実際に彼が行動に移ってからは、早かった。 今までに行ったのは一度、しかも人間の首についていない首輪の解体作業でしかなかったとは思えないほどに軽やかな手つきで、フィリップは橘の首輪を分解していく。 一体、どれだけの時間が経っただろう。 もうこれ以上の悪あがきは無意味かと、精神を集中した橘が次に感じたのは、この17時間ほど彼の首を圧迫し続けられ蒸れた首元が一気に解放されるその瞬間だった。 「解除……出来た」 大粒の汗を額に浮かべながら、フィリップが言う。 周囲には彼が使ったのだろう数多くの工具と首輪の解析結果の表、そしてその手の中には分解され二つに別たれた銀の輪があった。 だがそれに対し喜びを表現する前に、緊張からの緩和故かフィリップは大きく体制を崩してしまう。 「フィリップ!大丈夫か!」 「あぁ、大丈夫、少し集中しすぎたようだ」 言いながらふらふらと立ち上がった彼に対し、橘は様々な感情の入り乱れるのを自覚しながらとにかく彼の肩を叩いた。 「ともかくまずは……記念すべき大ショッカー打倒への第一歩、生存者の首輪解除おめでとう、というべきだな」 「それを言うなら、こちらこそさ。君がいなければ、僕は首輪の解除に踏み切れなかっただろう」 互いを称えながら、両者は笑いあう。 その状況に紛れもない友情を両者は感じながら、しかし次の瞬間、そんな談合の時間は無理矢理に中断させられる。 彼らを守るように見回りをしていたファングメモリとエクストリームメモリ、フィリップの持つ二つの自立型メモリがまるでショートしたように電撃を放ちそれからすぐに動かなくなったため。 「なッ……」 「これは、エターナルのマキシマム……?ということは……」 動かなくなったそれらをデイパックに収めながら、フィリップは瓦礫と化した病院の残骸の山へと目を向ける。 どうやらこれ以上の予断は許されないらしい。 正直他にも不安要素は多いがしかし、いやおうなしに橘の作戦に賭けるしかなくなってしまったようだ。 (これで、首輪の解除という第一条件は果たされた、けど……) 不安に飲まれかけた思考を、頭を振って否定する。きっと、うまくいく。 運転席へと素早く移動しエンジンをかけた橘の横、助手席へと乗り込みながら、フィリップはそう何度も自分に言い聞かせた ◆ フィリップと村上が撤退を果たしたのち、首輪が解除され変身制限がなくなった仮面ライダーギャレンはエターナルを前にたたずんでいた。 新しく現れ仲間を逃がし自分を一手に引き受けた挑戦者、これ以上なく心躍るだろうその肩書を持つ彼を前に、しかしエターナルの心は萎えるばかりだった。 だが、それも当然だろう。彼という仮面ライダーの実力は、夕方の戦いで把握している。 グロンギとしての姿に変身できる時間が短くなったというのを踏まえたとしても恐らくは一瞬で屠ることが可能だろう程度の実力しか持ちえない相手を前にしても、エターナルがその興味をそそられなくても当然であった。 だがこうして自分の目の前に再び戦士として立ったのだから、逃がす道理もない。 せめて後々“あのクウガ”のような戦士と戦う時にその怒りを煽り強さを引き出すための材料の一つにでもなれば十分か。 そう考えエッジを手の中で弄んだエターナルに対し、ギャレンはそれを戦闘の開始と捉えたかその引き金を引き絞る。 だがその程度の攻撃で怯むエターナルではない。 響く銃声と共に放たれた弾丸のいずれをもエッジで切り落としながら一瞬のうちにギャレンに肉薄し、彼が苦し紛れに放った左ストレートをお見通しとばかりに右肘で迎え撃った。 グッ、と呻き数歩退いたギャレンに対し、今度は彼の腹にエターナルの真っ直ぐに伸びた右足が深く刺さっていた。 マキシマムを用いずともその足に纏われた青い炎がその威力を倍増させ、ギャレンは容易く吹き飛びその全身を地に滑らせる。 まったく以て呆気ない。どうしようもなく予想通りの結果を迎えたこの戦いに、思わずエターナルは天を仰ぎ溜息をついた。 (――やはりこのままの姿では無理、か) そんなエターナルを前にして、その身体を地に伏せダメージに肩を上下させながらも、ギャレンはどこか冷静に自分とダグバとの間の実力差を客観視していた。 夕方での戦いで抱いてしまったダグバへの恐怖を彼への怒りが上回った今であれば或いは上昇した融合係数によるもしもがあるのではという考えはただ甘いだけであった。 変身制限がなくなり耐えることが目的とはいえこのままではそれも無理、となればやはり”切り札”を切るしかないかと、ギャレンはゆっくりと立ち上がった。 「……まだ立つんだ」 エターナルが、呆れた様子で呟く。 先ほどまでの戦力差を思えば、それも仕方ないかもしれない。 だが此度立ち上がったギャレンは、先ほどまでとは違っていた。 「言っただろう。ここで、俺がお前を倒すと」 「そんなの、無理に決まって――!?」 エターナルの言葉は、そこで止まった。 ギャレンの手が、その左腕に備えられたラウズアブゾーバーに――そう、ダグバにとっての最高の玩具であるそれに――向かっていくのを見たのだから。 キングフォームになれないという言葉を否定するようなその動作に思わずその目を奪われたエターナルに観察されながら、ギャレンはラウザーから一枚のカードを取り出す。 自分が握ったそのカードを、しかしギャレンは憎々しげに睨みつける。 それは、この会場で殺戮の限りを尽くし、キングに曰くその殺害数はダグバとも並んだというまさしく死の権化。 その最期に至るまで誰かを騙し続け利用し続けた悪魔が封印された、まさしく呪いのカード。 ――JOKER 二度と見たくもないほどに嫌悪した邪悪のカードをこうしてギャレンが掴んだのには、もちろん理由がある。 それはかつて、彼が上条睦月との対話の中で聞いた話に由来する。 ――『ジョーカーがどんなカードの代わりにでもなるように、どんなアンデッドの姿にでもなれるアンデッドがいます』 相川始がジョーカーアンデッドであること、そして彼が多くのアンデッドを封印すればそれだけ強大な敵となることを伝えた彼の言葉。 七並べを利用して伝えられたその言葉は、しかし橘の中に確かなしこりを残していた。 つまりは、アンデッドであるジョーカーにも、七並べでのそれと同じように他のカードの代替と成れる力はあるのだろうか、と。 無論その推測は元の世界で確認されていた唯一のジョーカーアンデッドである相川始の封印が先延ばしにされたために検証さえ許されることはなかったが、こうしてこの会場で二枚目のジョーカーがこの手に渡った今となっては、無視できない可能性であった。 何故ならそれが可能なのであれば……今のこの手持ちのカードだけでも、つまりはジョーカーをカテゴリークイーンの代替として使用することにより自分はラウズアブゾーバーを使ってキングフォームへの変身が可能になるからである。 ――ABSORB QUEEN 意を決してジョーカーをアブゾーバーに挿入すれば、響き渡るのは正常に動作したのを示す電子音。 橘でさえ初めて見るプロテクターにカードが包まれる中、取りあえずの安堵さえ許されることなく次に手に取ったのは、ダイヤのカテゴリーK。 これもまた、この会場で様々な参加者をその手にかけただけでなく地の石を操り五代雄介の笑顔を闇に葬った策士、金居の封印されたもの。 彼の翳したその悪夢は、本当に多くの戦士に深い傷を負わせた。 秋山蓮を、海東大樹を、そして自身の友であった日高仁志を死なせたあの戦闘を生み出した諸悪の根源の力を借りなければいけないというその現実が、彼の指を止まらせる。 ――『どうしました橘チーフ?俺たちと力を合わせて戦いましょう!』 ――『さぁ早くしたらどうだ?最もその後で、俺に乗っ取られても知らんがな』 幻聴か、それとも封印されてもなお強力な念を持つアンデッドのカードを二枚も持っているが故に実際に聞こえたのか、橘の耳に二人の邪悪な声が飛来する。 そしてその声に釣られるように、橘の脳裏に一つ、先ほどから燻り続けている懸念が過った。 (……本当に、果たして大丈夫なのか。 一時的とはいえジョーカーと融合するということ、それが意味することは――) ラウズアブゾーバーによる上位アンデッドとの融合。 ジャックフォームや本来のキングフォームであればライダーシステム適合者の健康を著しく阻害する可能性は低いそれらではあるが、しかし剣崎はその高すぎる融合係数により13体のアンデッドとの融合が可能となり、その身をアンデッドのものとしてしまう可能性を背負っていた。 彼のキングフォームでなければ打倒できないトライアルとの戦いや、彼の強い希望により橘も剣崎のキングフォームへの変身に対し、何か異変が起きるまでは容認という形をとってこそいたが、しかし本音であればそんな危険な変身はやめてほしい、というのが正直なところだった。 人間のまま死んだ剣崎を思い、或いはアンデッドへと完全に変貌していればと不謹慎な思いを抱いたことをも思い出しながら橘は自問する。 『お前に、剣崎のようにその身を犠牲にしてでも戦い続ける覚悟はあるのか』と。 「……どうしたの?キングフォームに変身しないの?」 物思いに沈んでいたギャレンの意識を急激に浮上させたのは、エターナルが退屈を持て余したかこちらを不思議そうに観察しながら投げた問いであった。 ダグバ。数多くの参加者を虐殺し、仮面ライダーブレイド、どころかあまつさえキングフォームにさえなって小野寺を苦しめたというまさしく最悪。 どうやらブレイドはもう仮面ライダーに取り返されたらしいが、それでも彼がただ自分の愉悦の為だけにその力を纏ったというのは、橘にとっては非常に不快なものだった。 (剣崎、もしも今の俺がお前だったら、どうするんだろうな……) 誰よりも正義感が強く、そのため誰よりも強い仮面ライダーだった友を思いながら、橘は自虐気味に笑った。 答えなど、すぐにわかる。剣崎がダグバを前にしたならば、例えどんな状況でも決して諦めたりしないはずだ。 例えその戦いの果てに二度と人間には戻れなくなったとしても、きっと誰かの笑顔を守るためにその身体を投げ出すはずだと、そう考えて。 (あぁ、そうだな。お前なら、きっと辛くても戦う道を選ぶ。それなら――) ――EVOLUTION KING ギャレンが、遂にカードをアブゾーバーに滑らせた。 カテゴリークイーンではなくジョーカーが用いられたために生じたバグ故か、彼の身体を数度電流のような痛みが走るが、しかし今更それで怯むはずもない。 「ああああぁぁぁぁ!!!」 強く吠えたギャレンに呼応するように、ギラファノコギリクワガタのエンブレムが彼の身体に刻まれる。 それと同時生じた数多のパーツが彼の身体を包み込み、次の瞬間そこにいたのは最早ただのギャレンではなかった。 仮面ライダーギャレンキングフォーム。元の世界ではついぞ橘が変じることのなかったギャレン最強の形態が、様々なイレギュラーを率いて顕現した姿だった。 「――俺は、お前の代わりに戦う道を選ぶ。お前の……仲間として!」 死した最高の仲間への高らかな宣言と共に、金色の大筒へと変貌したその醒銃をしかと握った彼はエターナルを鋭く睨みつけた。 ◆ F-6エリア。 暴走したジョーカー、そしてカッシスワームとの戦いを終えてから既に二時間ほどが経過し、葦原涼と相川始の二人は病院を目指し歩みを進めていた。 二人の間に、会話はない。元々両者寡黙であるのも理由の一つではあるが、それ以上にどちらも連戦に次ぐ連戦での疲労感を隠しきれていないのである。 だがそれでも、足を止めることはしない。 二人ともがただの人間ではなくまたこうした荒事になれているのも当然だが、大ショッカーを打倒する意思を表明した今、これ以上少数で行動するのも無駄と始は考えていたのである。 (大ショッカーがきな臭いのは元より分かっていたつもりだが、大幹部を会場に送り込み参加者の復活能力を見逃すとは、一体どういうことだ?) そして口には出さないながらも、始は再度大ショッカーの真の目的について思考する。 世界の存続などという崇高な目的の為ではないのは明白だが、この会場の中の仮面ライダーを全て殺すというだけなら、首輪の爆発で事足りるはず。 あくまでゲームとして仮面ライダーが苦しむ姿を楽しみたいというのなら、大幹部であるアポロガイストや同じく幹部らしいキングを会場に送り込む姿勢にはやはり疑問が残る。 その上、自分から立候補したらしいキングは首輪もつけていないのに、アポロガイストは結局首輪による制限のせいで自分たちに容易く刈り取られたことを思えば、やはり不自然な点は多いと言わざるを得ない。 (とするとやはり、大ショッカーもまた何らかの存在の傀儡に過ぎない、と見るべきか……) そこで始は、思考を切り替える。 大ショッカーが諸悪の根源とばかり信じてきたが、事実その背後にはより大きな存在が潜んでいるのではないか、と。 そう考えると、先のアポロガイストに対する疑問も解消できる。 この殺し合いを主催した大ショッカーの幹部、という響きに惑わされ続けていたが、実のところアポロガイストはキングとも違い参加者個人の情報にも疎かった。 そうした面から考えれば、恐らくは彼はこの殺し合いの進行においてさした期待をされていたわけではあるまい。 となれば全てに納得がいく。アポロガイストにも首輪がされていたことも、キングなどのイレギュラーの存在も。 つまりはディケイドが世界の破壊者などの情報は全て大ショッカーが組織を通じてアポロガイストに広めさせ参加者対ディケイドの構図を作らせようとした陰謀の片鱗などではなく、彼の個人的主張だったのだ。 例えば、アンデッドである金居が自分に恨みを持っていてあわよくば周囲を利用し自分を倒そうとするというのと同じレベルの、彼とディケイドの極めて個人的な因縁。 或いは彼が世界を滅ぼすというのも嘘ではないのかもしれないが、それは自分がバトルファイトの勝者となった時のような、限定的な条件のもとに生じる事象なのではないのだろうか。 (……流石にそれは希望的観測がすぎる、か) しかしそこで、緩くかぶりを振る。 自分と幾つか重なる点があるとはいえ、それに飲まれ大義を見失うわけにはいかない。 今は仮面ライダーに協力し大ショッカーを看板として掲げている敵対組織の実態を探りこそするが、その結果としてアポロガイストや死神博士が述べていた話が事実だと証明されたなら、自分は他の全ての世界とディケイドを切り捨てなければならないのだ。 こんな甘い考えに支配されて、いずれ戦わなければならない存在に気を許すような愚を犯すわけにはいかなかった。 「……………ッ!?」 と、その時、始の脳内に一筋の電流が走るような、そんな感覚が生じた。 先の暴走の時も見た始の異変に涼は戦慄するが、しかし始はそれを制するように手を伸ばした。 「相川、お前、まさかまた……?」 「いや、どうやら少し違うらしい。あの姿になるような衝動は、もう感じない」 「どういうことだ……?」 「さぁな、俺にも分からん。だが一つ分かるのは……先ほどより近いらしい」 「何?それじゃ――!」 困惑を露わにしながら、しかし真っ直ぐに視線を病院へと向ける始。 それを受けて葦原は、焦燥を含んだ瞳で夜になおその存在を示す白に向けて視線を飛ばした。 「あそこに……ダグバが?」 ――葦原の予想は、当たってはいるが根拠は外れている。 彼は、『ダグバがブレイドを用いて多くの参加者を殺害した』という情報をキングから、始のジョーカー化に関する情報としてのキングフォームについての説明を橘から受けていた。 ゆえに、始の暴走はダグバの変身したキングフォームによるものだと考えたのである。 無論、その論説自体は先の二回の暴走においては正しい。だが此度は事情が異なっている。 とはいえ『ギャレンがカテゴリークイーンの代替としてジョーカーのカードを用いてキングフォームに変身したために、ジョーカー化への衝動を覚えたがその融合係数の差故に暴走までは至らなかった』という理由になど思い至れるはずもなく、葦原たちはその鋭い瞳で視線の先にいるはずの宿敵を強く睨みつけた。 「――あそこにダグバがいるかどうかはまだ分からないが……急ぐ必要がありそうだな」 密かな怒りを秘めた始の言葉に、葦原が頷く。 その瞬間、両者は体の傷や疲労感をものともせずに走り出した。 ◆ キングフォームへと変身を果たしたギャレンを前に、ダグバはエターナルの鎧の下で極めて嬉しそうにその頬を綻ばせた。 随分と長いこと踏ん切りがつかなかったようだが、どうやらようやく楽しめるらしい。 先ほどとは比べ物にならないような威圧を誇るそれに対し、またも数度エッジを手の中で弄び、エターナルは駆けだした。 対するギャレンもまた先ほどと同じようにラウザーを構え引き金を絞り、そこから放たれる弾丸もまた同じようにエッジで切り落と――せない。 真正面からかち合ったただ一発の弾丸と抜群の切れ味を誇るはずのエッジの勝負の行方は、互角であった。 先ほどまではただの一振りで自身が駆ける勢いさえ落とさずに数発の弾丸を同時に撃ち落とせたはずのそれが、しかし今のギャレンとでは弾丸の一発で互角ということである。 思いがけないギャレンの強化に昂ったエターナルは、突撃を止め、あるものの元へと駆け出す。 とはいえギャレンもそれをただ見ているわけにはいかない。 強化されたキングラウザーによる銃撃で以て追撃を放ちながら、ラウザーに一枚のカードを読み込ませる。 ――DIA TWO 通常のギャレンラウザーとは異なる電子音声と共に読み込まれたアンデッドの力をキングラウザーが詠唱する。 それによって連射性を多く増したキングラウザーから、その高い攻撃力を変えることなく瞬きの間に雨のように弾丸が吐き出された。 それは先ほどまでのエターナルであれば甘んじて受け入れるしかないほどの威力と質量を誇っていたが、しかしその弾丸の雨が到達するより早く、彼は目当てのものに辿り着いていた。 黒いローブを地面から拾い上げ自分の前に掲げたエターナルに対し、ギャレンが放った弾丸の全てはしかしその先のエターナルに到達することなく力なく地に落ちる。 ラウズカードさえ使用した一撃を思いがけない手段で凌がれたことに驚きつつも、油断なくギャレンは一枚のカードをラウザーに挿入した。 ――DIA NINE 電子音声を耳で聞きながら、エターナルは再びローズにやったのと同じくローブにエッジを忍ばせて飛ばす戦法を考える。 その身に迫るナイフを敵が受け止めた瞬間にその両手を塞ぐことと自身の必殺技の準備を同時に行えるこの戦法を、果たして今対峙する仮面ライダーは破ることが出来るのか。 多大なる期待を込めて放たれたナイフの切っ先が真っ直ぐにギャレンに向かっていくのを見やりながら彼から死角になる位置に移動しようとしていたエターナルは、見た。 ――DIA THREE SIX 目の前で新たに二枚カードを読み込ませその拳に力を籠める目の前のギャレンと、自身が放ったエッジを受け止めることさえせず消滅するもう一人のギャレン、つまりは二人になったギャレンの姿を。 どういうことだ、と一瞬考えようとして、しかしラウズカードの効果のそれぞれなど考えるだけ時間の無駄だと切り捨ててエターナルは拳に力を込めた。 それに伴い青色の炎が腕を包むのと同時、ギャレンが待ち受けるのさえ構わずにエターナルは高く笑い声をあげて拳を振りぬいて。 「ハハハハハハハ!!!」 「――ハァッ!!!」 ギャレンの放ったアッパーカットに、一瞬の拮抗さえ許されることなく胸を強く打ち据えられ吹き飛ばされた。 高く打ち上げられたその身体が数秒の空中散歩の後地面に叩きつけられるころには、もう彼の変身は解除されていた。 ◆ エターナルを破ったことに深い喜びを表すこともなく、ギャレンはその拳に纏わりつく赤色の炎を払う。 あの村上の怪人態たるローズオルフェノクをも下したエターナルを倒したとはいえ、油断は一切できない。 どころか今の数発と夕方での戦いで自分の持つ手札を全てダグバに晒したも同然なのだから、ここからが正念場といって間違いなかった。 そして、ギャレンのその考えを肯定するように、ダグバは先ほどのダメージなど一切ないかのようにゆらりと立ち上がる。 白衣を纏った青年がニヤリと笑ったかと思えば、一瞬の後その身体は彼の真の姿とでもいうべきグロンギのものへと変化していく。 夕方にも見たその禍々しい姿に再度身構えたギャレンを次の瞬間迎えたのは、ダグバが開いた掌から吐き出された夥しい量の“闇”であった。 「うわあああぁぁぁぁ!!?」 一瞬でこの身を包んだそれが生み出した威力は、その凄まじい速度と勢い故に歴戦の橘でもギャレンの鎧ごとこの身が闇に溶けて消えてしまったのではないかと錯覚するほどの威力だった。 それが過ぎ去りその錯覚が杞憂であり、この身が未だ健在であることが分かったその瞬間、しかし安堵に息を吐くよりも早くダグバの拳がギャレンの顔面を打ち据える。 ただの一撃で一気に肺から酸素の全てを吐き出し、痛みに思い切り仰け反った彼の元に到来するのは、息さえつかせぬ拳の連打であった。 一撃一撃が意識を刈り取りかねない威力を誇るそれらを何とか凌ぎ、キングラウザーを振るうことで無理矢理にダグバから距離を離したギャレンは、やっとの思いで5枚のカードをラウザーに走らせる。 ――DIA TWO THREE FOUR FIVE SIX ――STRAIGHT FLASH それは、トランプの中でも単一スートの縛りの中であればロイヤルストレートフラッシュに次ぐ強さを誇る役、ストレートフラッシュであった。 今のギャレンが出しうる中で最強コンボの成立を前に、しかしダグバはただ甘んじて佇むのみで。 「ハァッ!」 それならそれで、この一撃で終わりにするだけだと気合いを込めてギャレンはキングラウザーからその巨大な弾丸を放った。 しかし対するダグバはギャレンの切り札にも何ら動じることなく、どころかまるでもう手加減は飽きたとばかりに腕を一凪ぎ振るっただけでその弾丸を弾き飛ばした。 「何ッ!?」 ギャレンの驚愕を無視して、彼が持ちうる現状最大のコンボ、ストレートフラッシュがダグバの後方で爆発し意図せずしてダグバの影を濃くする。 そうして増した彼の威圧に一瞬出遅れたと実感する頃には、再びギャレンの身体をダグバが神速の速さで繰り出す拳が捕らえていた。 (やはり……無理だったのか……。俺に、剣崎の代わりにこんな奴と戦うなんて) 今度は心さえ折れたのか、まともな防御態勢さえ取ることさえ出来ぬまま拳の雨に身を晒したギャレンは、ふと思いを馳せる。 それは、この戦いが始まる前、キングフォームに変身する覚悟を決めたときのこと。 今は既に死んでしまった剣崎の分まで戦うという覚悟を決めたということは、彼が戦っただろう敵からも、そしてアンデッドになるかもしれないという運命からさえも逃げないことだろうと橘は思った。 少なくともそう考えれば、剣崎の代わりに自分が戦っているのだと思えば、この身を最悪のアンデッドにしてしまうかもしれない選択も、難しい理屈をこねるより先に取れる気がしたから。 そう言った意味で言えば正解ではあったが……同時に思う。 やはり自分なんかでは剣崎一真という男の代わりを務められるだけの力などなかったのではないか、と。 ジョーカーとの融合さえ視野に入れたギャレンキングフォームへの変身。 首輪の解除により変身制限のなくなった自分がその最強形体でダグバが変身制限を迎えるまで耐え、その後に無力になった彼を撃破する。 そんな博打の連続のような作戦の、その最後の部分、最も堅実に終われるはずの時間稼ぎを果たせなかったという無念は、何より自分の無力さを痛感するもので。 ――無論、今のダグバはそれまでを大きく凌ぐセッティングアルティメットと呼ばれる形態となっており、或いは彼の知るダグバであったなら10分の時間稼ぎは十分可能だったかもしれないということも、ここに付記しておく。 だがそんな都合のいいもしもに意味はなく、ギャレンがダグバに敗れたというその事実だけが今の橘を、ただ打ちのめしていた。 (だが、例え俺にその力がなかったとしても……俺は、俺は――!) 「ッ……」 声にならない声を上げてふらついたギャレンに振り注いでいた拳の雨が、止んだ。 一体何事かと視線を前に向けてみれば、揺らいだ視界の中に写るダグバの右半身が、やけにクリアに見えた。 どういうことだと自問するが、しかしすぐに答えに辿り着く。 そう、ギャレンの仮面の丁度左半分が、既にダメージの許容量を超えて砕け散ったのだ。 つまりはもうこの仮面さえも、自分を守る使命を果たすことはないのである。 しかしもうそれに深い感慨を抱くこともない。仮面が割れるにせよ割れないにせよ、そのどちらにせよ後数発で意識と共にこの命も尽きていたのは変わりないのだ。 だが予想していたダグバの攻撃は、いつまで経ってもこの身に届きはしない。 疑問にその目を開いた橘を、しかし同様に不思議そうにダグバは首を傾げて観察するように覗き込む。 「……やっぱり」 「何がだ」 こんな問答など無意味だと分かっていながら、橘は問う。 人々を笑いながら殺してきた殺戮の権化が、今更死に目に向かう男を前に何を疑問に思うと言うのだろうか。 「……やっぱり君も、その目をしてるんだね」 「目?」 「うん、その目だよ。自分が負ける、自分が死ぬって分かってるのに、そんなのを知らないっていう風にこっちを睨み付ける目 ……ねぇもしかして、やっぱりそれが仮面ライダーの証なの?」 言われて、橘はどこかおかしく感じて笑ってしまった。 あれだけの残虐を果たした彼が、しかし初めて仮面ライダーという異世界の戦士に興味を持ち定義付けようとしている。 それが少しおかしくて、そしてそれ以上に不快に感じた。 例え仮面ライダーでなくても、人がそれぞれ死に際に浮かべる表情はそれぞれ異なっているはずだから。 結局はダグバがそれを知ろうと思ったのも自分の楽しみのために過ぎないのだとそう感じながら、橘は込み上げた血を飲み込んで言葉を紡いだ。 「……違うな」 故に、橘から放たれたのは、ダグバへの否定だった。 意外にさえ思えるその言葉に、ダグバも思わず眉を潜める。 「さっきは答えられなかったが、ようやく俺にも分かった。 ……仮面ライダーは、戦えない誰かの為に戦う戦士なんだ。だから俺たちは、自分が負ける時にも諦めないんじゃない。 例え自分が死んだとしても、自分の意思を継いで誰かが必ず悪を倒してくれる、そう信じているから諦めたりしないんだ……!」 「戦えない誰かの為に戦う?リントのこと?でももうここにそんな弱いリントはいないでしょ?」 「いいや、大勢いるさ。お前のような悪に敗れ、正義を信じたまま死んでいった仮面ライダー達が。 そいつらの分まで俺は、いや俺たちは……戦って見せる」 橘は、胸に手を当てて思い出す。 剣崎を、北條を、秋山を、矢車を、この殺し合いを打倒せんと立ち向かい志し半ばに散っていった仲間達を。 仮面ライダーが戦えない誰かの為に戦うというのなら、自分は散っていった彼らの分まで戦う義務があるのだ。 その思いが、橘の足を強く踏み止まらせる。 しかしそんな橘を前にして、ダグバは極めて理解不能だと言わんばかりに首を横に振った。 「……本当に信じてるの?自分が死んだ後も、誰かが自分の分まで戦ってくれるなんて」 「あぁ、当然だ。現に俺は、こうしてお前の前に立っている」 言って、橘はダグバを睨み付ける。 そうだ、もう迷うことはない、自分は決してダグバを前に一人で立ち向かったわけではないのだ。 ただその事実だけで、橘はずっと戦い続けられるような気がした。 だが相対するダグバは、ますます理解が出来ないとでも言いたげに溜息を吐いて。 ただ黙って再び拳を握った。 つまりは、これ以上の対話を無意味なものとして切り捨てたのだ。 それを見て橘もラウザーを構えようとして、しかし出来なかった。 ダグバがグロンギの姿に変じてからの僅か数十秒ほどで刻まれたダメージが、もう彼から戦えるだけの体力を奪いきってしまったのだ。 万事休すか、そうして生まれた何とも言いがたい苦悶に視線を泳がせて、そこで気付く。 この場所に見覚えがあると言うことに。 (まさか……ここは……) 勿論、橘がこの病院を拠点にしてから既に8時間ほどが経っている。 幾らその姿を大きく変貌させていようと大体の場所は把握していたが、しかしこの場所に関してだけは事情が違っていた。 何故なら彼が今立っている場所に残された、酸化した血。そして視線の先にある瓦礫を積み上げて作られた即席の椅子に、橘は忘れてはならない思い出があったのだから。 ――『はぁ。マジでさぁ、そういうのウザいって言ったよね僕。放送でちゃんと『口先だけの正義の味方とか無駄なだけ』って』 良太郎を後ろから刺し殺したのを一切悪びれずに、あの男が言った言葉を思い出す。 思い出すだけでも虫酸が走るようなその言葉は、先ほどこの病院に来訪した大ショッカー幹部、スペードのカテゴリーキングのもの。 そう、この場所に見覚えがあったのは、ここがこの広い病院の中で唯一自分とキングとが戦い、そして言い訳のしようさえないほどの完全敗北を喫した場所だったからだ。 地面に落ちる血は、なるほどまさしくキングが良太郎の腕を切り裂いたときに流れたものだろう。 とはいえそれだけでは所詮橘の苦々しい思い出が刺激されたというだけの話、ここで論じるまでもない。 だがこの場所は、それ以上の可能性を彼に思い起こさせた。 ――『落ち着け橘。あいつが今いる場所、多分禁止エリアだ』 士の言葉を思い出しながら、橘はあの時キングが立っていた場所を睨み付ける。 禁止エリア、どんな存在でも消し去れる首輪の爆発、野放しには出来ないダグバ、そしてどちらにせよすぐに動かなくなるだろうこの身体。 橘の脳内で散らばっていたピースが、一つに纏まっていく。最早それしか答えはないと、そう言うように。 「……じゃあね」 立ち尽くしたままの橘に向けて、ダグバがその掌を翳した。 だがそこから再び闇が照射されるより早く、橘は残された全ての力を振り絞ってキングラウザーを持ち上げ弾丸を発射していた。 丁度掌の真ん中に着弾したそれは、僅かにダグバの攻撃にその傷の治癒までの時間というラグを与える。 そうして生まれた僅かな隙に、橘はそのまま全力でダグバの右側に回り込み、かつてキングが現れたあの忌々しき場所とダグバとを一直線上に置いた。 不思議そうにダグバはその動きを見守っていたが、しかし幸運にもこちらの狙いには気付かなかったようで、移動しようとはしなかった。 だから橘は、駆けた。キングラウザーさえ投げ捨てて、ただただダグバに向かってタックルをかましたのだ。 「……は?」 これにはダグバも面食らう。 それもそうだ、そんな捨て身の攻撃が通用するほど自分とギャレンとの戦力は小さくないことは承知のはずだと、そう思っていたから。 故に出遅れる。ギャレンが文字通り命を賭けた、渾身の低いタックルへの対処が。 ドン、と鈍い音を立ててギャレンに残された一本の角が、ダグバの腹へ直撃した。 流石のセッティングアルティメットと言えど、油断していた形態の攻撃であることに加え相手もまた腐ってもキングフォーム、とあるライダーの最強形態であることに違いはなく、その体勢を崩し後方へと大きく吹き飛んだ。 結果としてダグバは数秒、天を仰ぐ形で無防備な姿勢を晒すことになったが……しかし、それだけだった。 素早く起き上がったダグバは、迷わずにギャレンに視線を送る。 気でも狂ったか、自分に突然タックルを放った仮面ライダーは、しかしもうその変身さえ保っている事が出来ず生身で地面に伏し血を吐いていた。 まさか最後の最後に自分にダウンを取らせたかったとでもいうのか、とそこまで考えて。 ――ビイイイィィィィィ!!!! 突如、周囲に大音量で流れた電子音に、思考を強制的に中断させられた。 警告音染みたそれに馴染みがないのかただ困惑を浮かべ周囲を見回すダグバを前にしながら、橘朔也はただ一人自分の、否、仮面ライダーの勝利を確信していた。 (とはいえ、約束は破ることになってしまったがな……) 橘が思い返すのは、自分の首輪を解除する際その帰還を条件として提示していたフィリップのこと。 ダグバの実力を見誤った自分の責任も多分にあるとはいえ、彼には酷いことをしてしまった。 出来ることなら、彼にもう一度会いキチンと互いの首輪解除への貢献を称え合いたかったが、しかしそれももう叶わない。 なればもう、橘に出来るのはこれから数十年後、フィリップが大ショッカーを打倒し天寿を全うするまでの彼の無事を願うことだけだった。 (剣崎、ヒビキ、皆、今から行く。小夜子、お前にも、もうすぐ会えるな……) そして次に思考を巡らせるのは、自分がこれから向かうだろう冥界のことだ。 理系肌である橘にとってその存在を証明できない天国などというのは眉唾ものの幻想だったが、しかしどうせ最後なのだ。少し位楽しいことを、信じてみたかった。 仲間や、友や、そして愛した人。戦いの中で失ってきた多くの人を思い出し、そして最後に、どうしても橘は一つだけ、思い残した問いを思い出した。 「桐生さん、俺も、少しは馬鹿になれたかな……?」 誰に届くでもない小さなその声は、ダグバの首輪から放たれる大音量の警告音に無慈悲にも掻き消される。 だが、それでよかった。戦いに生きた人生の締めくくりなど、きっとこんなものだから。 あぁ、だからそう、願うならば、今度は愛すべき人と、普通の日常を。 或いは有り得たのかもしれない平和な日々と、そしてその人生を賭した戦いの日々の中で得た掛け替えのない友のことを夢想しながら。 瞬間、警告音を流し終えたダグバの首輪が放った規格外の炎に巻き込まれるその寸前まで。 橘朔也は、笑みをたたえてその人生を終えた。 ――ボン 131 飛び込んでく嵐の中(2) 時系列順 131 飛び込んでく嵐の中(4) 投下順 ン・ダグバ・ゼバ 村上峡児 橘朔也 フィリップ 葦原涼 相川始
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飛び込んでく嵐の中(1) ◆JOKER/0r3g 大ショッカー幹部であるスペードスートのアンデッド、キングが来訪してから、30分ほど経った頃。 既に存在していた質量の半分以上を失った白亜の建物のすぐ側で、残された三人の男達は先の戦いで犠牲となった男、野上良太郎の墓の前でそれぞれ異なる表情を浮かべていた。 悪意の塊とも言える怪物、キング。 彼の口車にまんまと乗せられ、良太郎を変身すらさせぬままに戦場へと送り出してしまった為に、彼は死んだ。 それを思えば思うほどに、彼らの表情には深く感情が表立っていく。 簡易的極まりない、ただ埋めただけのその墓に、険しい表情を浮かべながら手を合わせる男の名は、橘朔也。 良太郎の犠牲は、自分がもっとしっかりとしていればなくせたかもしれない。 そんなやるせなさと、何より許しがたい悪への憤りを滲ませていた その後ろで同じように手を合わせながら下を向く男の名は、フィリップ。 彼が良太郎の墓に向けるその視線には、何より後悔と懺悔の念が浮かんでいる。 それも当然だ。フィリップにとって野上良太郎とは、交流を通して得た信頼よりも姉の敵として誤解していた際に抱いた怒りや憎しみが勝ったままの存在であった。 姉を殺し自分を騙し、そして無実の良太郎にその罪を着せた志村純一が死んだ後も、首輪の解析などが立て込み彼に対し面と向かって親交を深める時間もなかったのである。 ちゃんとした謝罪を後回しにしてしまった結果、彼は死んでしまった。 もう、彼にそれを謝ることも、彼という青年を深く理解することも出来ない。 それが死。生物であれば誰しもが避けることの出来ない恐ろしい概念なのだと、フィリップは検索を必要とすることもなくこれ以上ないほどに理解していた。 そしてそれと同時に、良太郎だけではない、死亡者の多くは大ショッカーの手によってこの場に連れてこられなければもっと長く生きられただろうことを思いだし、彼は苦悶と後悔の表情を浮かべた。 (全く、いつまでこうしているつもりなのですかね……) そうしてただ物思いにふける二人の後方で一人、仁王立ちのまま彼らを見つめる男がいた。村上峡児である。 彼は、今この場でただ一人だけ良太郎の墓に向けて手を合わせることもせず、ただ時が経つのを待っていた。 良太郎とこの場で最も長く行動を共にしていたはずの村上がしかしその瞳に浮かべていたのは、ただ普遍的に存在する死という現象への慣れ。 優秀な同胞であるのならともかく、人類とオルフェノクに共存の道があるのでは、などと見当違いの意見を述べた野上良太郎の死に、村上が惜しさを感じることはない。 どころか下手に(この場で発生する可能性は皆無なのだろうが)使徒再生を果たし同胞になってしまわなかった分だけ無駄なライダーズギアの争奪戦が起こらなくてよかったとすら、村上は思っていた。 つまりは纏めてしまえば……村上が今の状況に感じていることはただ一つ。 目の前で死人に心奪われ続ける二人に早く首輪の解析と解除について行動し大ショッカー打倒のために働いて欲しいという、ただそれだけの血の通わない要求だった。 (全く、首輪さえなければこの二人をここまで頼りにする必要もないのですがね……) 二人に悟られないように今また一つ大きく溜息をつきながら、村上は現状を嘆く。 本来であればこんな墓参りなどはただの時間の無駄である。 元の世界と違い社長としての職務もないが、それでも村上は時間の浪費が嫌いだった。 だというのにこうして甘んじて立ち尽くすしかない理由は、この目の前の不快な男達が自分を縛り付ける首輪を解除するのに恐らくはこの会場内で最も有益な働きを期待できる存在だからだ。 この首輪を解除し、憎き大ショッカーを倒す。その目的のために、彼は貴重な変身手段さえ浪費して彼らに媚を売ったのだから、ここで下手に扱って自分の立場を悪くするつもりもなかった。 とは言え、物事には限度というものがある。 後々の首輪解除を思えばあまり二人からの心象を悪くはしたくないがやむを得ないか、と村上が口を開こうとしたその瞬間。 フィリップは、何かを振り切るかのように思い切り立ち上がった。 「――野上良太郎、君の死は、決して無駄にはしない。 大ショッカーを倒すのは勿論だが、それ以上に君の世界だって絶対に滅ぼさせたりしない。今ここに、それを誓おう」 拳を握りしめ、どこかポエムチックに今は亡き仲間へと宣誓するフィリップ。 それに触発されたか、橘もまた伏せていた目を真っ直ぐに向けて、フィリップと同様に立ち上がった。 「……あぁ、そうだなフィリップ。野上の死を無駄にしないためにも、今俺たちは俺たちに出来ることをやるしかない。 首輪を解除し、大ショッカーを倒すのに必要な情報を少しでも多く集めなければ、俺たちに勝ち目はない」 どこか切なげにそう呟く橘の瞳には、しかし諦めは浮かんでいない。 決して易しい道ではないがそれでもなお歩まなければならない道であることを覚悟しているような、そんな瞳だった。 (やれやれ、ようやくですか) どうやら決意を固めたらしい男達の言葉を聞きながら、村上は改めて溜息を吐いた。 何にせよ、これで彼らも自分の使命を思い出したはずである。 ようやく一安心、後は彼らと共に破壊された病院内に戻り首輪解除に付き添えばいい。 そうして良太郎の墓に背を向けて、しかし村上の足は一瞬止まった。 ――『何で貴方は人間とオルフェノクの共存を考えたりしないんですか、そんなにオルフェノクに優しいなら、人間と戦わない道を探すことだって――』 ――『貴方が……人を襲わなくなるまでです。 それまでずっと、僕は何度だって貴方を止める』 何故か頭の中に響いた言葉。 それは良太郎が、生前に自分に向けて真っ直ぐに訴えかけた言葉であるということを、村上は理解していた。 どこまでも甘く、自分のこのオルフェノクという種への愛が人類にも向けられるとそう信じた愚かな男。 すぐに脳内から消してもいいはずのそれを未だにこうして引きずってしまうのは、彼という男の持つ言葉への説得力故なのだろうか。 (……馬鹿馬鹿しい。私の意思は最早そんな言葉などで揺らぎはしない) 頭を振り、先ほどの思考を疲労の為だと自分自身に言い訳をして、村上は再度歩む。 オルフェノクの繁栄の為、まずは大ショッカーを倒し人類を滅ぼすために。 それこそがこの村上峡児の野望の全て。故に――。 「――我々に、戦争以外の道はない」 良太郎に告げたその言葉を、再度一人確かめるように復唱して。 村上は、もう振り返らなかった。 ◆ 「――これから首輪の解除をするにあたって、首輪の内部構造について幾つか確認しておきたい」 先の戦いで崩壊した病院の中、未だに僅かながら残る無傷で残っていた病室の一つの中で、フィリップは橘と村上に向けてそう言った。 その言葉は僅かに震えていて、額に浮かぶ汗と合わせて彼がらしくないほどに緊張しているのが見て取れた。 だが、それも当然だろう。 今から自分は生きている人間の首輪を解除しようとしている。 つまり、誰かの命を文字通り自分の手で預かることになるのだから。 「まず、分かりきっていることからだ。首輪には複数の種類があり、その種類はその参加者の種族によって異なるということ。それから――」 言いながら、フィリップは素早く用紙にペンを走らせていく。 彼の口調は恐ろしく早く、他者に説明している意図は余り感じられなかったが、聞いている橘も村上も聡明な人物である。 それに彼の背負っている緊張感を思えば、その程度は指摘することもないだろうと二人はそのまま黙って彼の書き上げた資料を覗き込んだ。 ――以下は、その資料の内容である。 ・首輪について分かっていること 1.首輪には複数の種類が存在する。(現在確認出来ているものは人間、オルフェノク、アンデッド、イマジンの5つ) 首輪の種類が分かれていることでそれぞれ特殊な怪人が持っている能力(アンデッドの不死性など)を抑制する狙いと、首輪解除を円滑に進めさせない狙いがあると考察できる。 しかし、一見する限りそれぞれの首輪の構造の大本は人間につけられている首輪が元のようで、まずは人間の首輪を解除することで今後の大きな参考になるのは間違いない。 また、大ショッカー幹部であるキングの言葉を信じるのであればクウガ(五代雄介、小野寺ユウスケ)、ディケイドとディエンド(門矢士と海東大樹)のものも人間の首輪とは異なる。 クウガのものがグロンギと同種の首輪なのか、またアギト、ワーム、ファンガイア、そして地球の本棚を持つ僕(フィリップ)の首輪がそれぞれ異なるのかは未だ不明。 2.首輪を爆破させる為の爆薬として魔石ゲブロンが用いられている 門矢士によれば、ゲブロンはガドルやダグバを始めとするグロンギ族がベルトに使用するアイテムらしく、ゲゲルに失敗したグロンギを確実に殺す為のものらしい。 強力なグロンギにはそれだけ強力な威力を秘めたゲブロンが使用されるため、それを応用した今回のバトルロワイアルでも強力な参加者の首輪の爆発には広範囲の被害が想定される。(事実、未確認生命体41号の爆発では半径3kmが吹き飛んだようであり、警戒は必要だろう) 3.首輪の動力にはライフエナジーが用いられている ライフエナジーとは『キバの世界』において生物が生きていくのに不可欠な栄養である。 また首輪の中に存在するのはファンガイア族がライフエナジーを吸収する際に用いる吸血牙であり、これは上記ゲブロンによる爆発で参加者が死亡しない(仮面ライダーに変身している状態の人間など)という状況に関する予防策とみられる。 これによって首輪が制御されている為に首輪の爆発は致死性を保つと同時に、参加者が死亡したエリアが禁止エリアに指定されたことで首輪が爆発し禁止エリア外にまで被害を及ぼすという事態を防いでいる模様である。 4.参加者につけられている変身制限は首輪で管理されている この会場においては仮面ライダーや怪人等に変身出来るのは一度に10分まで、更に変身が解除された後は2時間の間同じ姿には変身できないという制限が設けられている。 しかし、大ショッカー幹部であるキングを見る限り、その制限は首輪を解除すれば無視できるらしく、これによって首輪を解除すれば大きなアドバンテージを得られることは明白である。 「――こんなものか」 汗を手で拭いながら、フィリップは息をつく。 纏めてしまえば中々に複雑なようでシンプルである。 少なくともそう自分を納得させなければ、緊張と責任感でフィリップはどうにかなってしまいそうだった。 「では、情報も纏まったところで実際に首輪の解除を始めていただきましょうか。橘さん、よろしいですね?」 「何?」 チラと目配せをしながら述べられた事実上のモルモットになれという言葉に、僅かながら橘は動揺を隠せない。 内部の情報は集まり理論上は首輪の解除も可能かもしれないが、今の状況ではその成功確率は保証されていない。 無論未知の分野に100パーセントの成功など存在しないことを橘はライダーシステムの立ち上げと桐生の尊い犠牲により痛いほど知っている。 だが……、いやだからこそ、この状況での首輪の早急な解除は、自分はもちろんフィリップにとっても危険すぎると判断したのであった。 しかし橘の怪訝な目を受けて、しかし村上はいつもの余裕を崩さぬままにコツリ、と革靴の小気味いい音を響かせた。 「……では、いつになったら参加者についている首輪の解除を行うおつもりです? この場では100パーセントの保証など存在しないことは、貴方も重々ご承知のはず。 それに貴方は先ほど誓ったのではありませんでしたか?野上さんの犠牲を無駄にしないためにも、この殺し合いを打倒してみせると」 「……あぁ」 「であれば首輪についての情報も揃い技術者もいるこの状況、逃すわけにはいかないと、私は思いますがね」 「それは……確かにそうだが」 村上の人を舐めたような表情から吐き出されたその言葉に、思わず橘は勢いを失う。 もしかしたら村上は自分を良いように言いくるめようとしているのではとも思うが、しかしそれでも構わなかった。 どうせ騙され利用され続けてきた人生なのだ。 最後の最後、本当に信用出来る仲間に命を預けられるだけ、幸せなのではないだろうか。 それに、病院に来てからのこの6時間ほどを共に行動し、フィリップの能力にも自分は信頼を置いている。 恐らくはこの男は安全に対処出来る算段もないままに他者の命を預かることをするような狂った倫理観を持ち得てはいないだろう。 であれば彼の中では首輪の解除はまだ実際に行えていないというだけで、脳内では既に何回と繰り返されたことに違いない。 そう思う程度には、既に橘はフィリップを信用していた。 「フィリップ、頼めるか」 「……橘朔也、本当に大丈夫なのか。僕が失敗したら、君は――」 「構わない。お前は、いや俺たちの理論は失敗しないはずだ。心配する必要はない」 「……わかった」 未だ緊張が拭いきれない様子のフィリップに対し、橘はあくまで確固たる口調で返す。 その強さに思わず気圧されたか、フィリップもまた諦めたように一つ息を吐いて覚悟を固めたようだった。 そうして頷きあった二人が適当な個室へと移動しようとした、その瞬間。 「――待ってください」 村上が、らしくなく少し焦った様子で二人を呼び止める。 何事かと振り返った両者が見たのは、あの村上が余裕ぶった表情の一切を捨て去った姿であった。 「村上、何が――」 「静かに。何者かがここに来たようです。それも、とてつもなく強大な何かが、ね」 村上の言葉は、決して嘘や出まかせではなかったらしい。 彼が聞いたのであろうそれが自分たちの耳に届いたとき、橘たちはそれを深く理解した。 ――小さい、しかし何故か嫌に耳に響くような足跡が遠くから近づいてくる。 一歩、また一歩と“それ”が近づいてくるたびに、嫌な汗が全身から噴き出していく。 (だがこの感覚、覚えがある……。まさか……) 一方で、橘はこの感覚に対してどこか既知感があった。 だがそれはあってはならない。なぜなら今の自分たちでは“奴”には……。 思考を重ねる橘に対し、姿さえ見えないというのに強烈なインパクトを浴びせたそれが、彼ら三人の前に姿を現したのは、それからすぐのことだった。 「――やぁ、リントの戦士たち。それともこう呼ぶべきかな?仮面ライダーって」 「ダグバ……!」 「ダグバだって!?」 遂に現れた、闇夜になおも輝くような白い上下の服を纏った青年に対し、橘は嫌な予感が的中したことに苛立ちを隠しもせずに呟いた。 そしてその名前に対し驚愕を示したのは、フィリップである。 乾巧、橘朔也、日高仁志、そして葦原涼……彼を知る全ての参加者がいずれもこの会場の最大の脅威として認識していた男が、今目の前に現れたのだ。 よりにもよって、ライジングアルティメットとの戦いのために集まった仲間たちがもうほとんど残っておらず、かつここまで戦力が削られた、今。 (やれるのか……今の僕たちに) ゆえに、どうしても不安は大きい。 橘はともかくとして、ダブルに変身できない自分は決して戦闘要員ではない。 奇襲も含めた数字とはいえ小野寺ユウスケや橘朔也ら5人を一斉に相手どって勝利をつかみ取ったというダグバを相手にするには、今の自分たちの戦力はあまりにも心もとなかった。 (全く、このタイミングで最も警戒していた危険人物が現れるとは……!) そしてフィリップと同様に、ダグバという名前に対し言葉には出さないながらも村上もまた一層の警戒を強める。 あの乾巧を以てして捨て身の攻撃でようやくダメージらしいダメージを与えられたという化け物、未確認生命体第0号、ン・ダグバ・ゼバ。 ラッキークローバー最強の北崎、或いは前社長である花形にも匹敵する可能性のある彼を前に、村上に戦力を惜しむ考えなど既に消え失せていた。 一瞬で敵意を全開にした三人に対し、しかしダグバはどこかマイペースに抜けた天井から天を仰ぎ、少ししてから「あっ」と声を上げた。 「君、誰かと思ったらあのクウガと一緒にいた仮面ライダーかぁ、生きてたんだね。 もう一度クウガと戦った時にはいなかったから死んじゃったのかと思ったよ」 「何?まさかお前、あの戦いの後にもう一度小野寺と戦ったのか!?」 「うん、戦ったよ。楽しかったなぁ」 怒りを込めて問い詰める橘に対し、思い出話でもするかのようにダグバはゆっくりと噛み締めるように語る。 恍惚とさえ表現できるその表情に橘が怯んだその隙に、ダグバは何かに気付いたかのように「そういえば」と続けた。 「ねぇ、もしかしてだけど、君って仮面ライダーギャレン?」 「何故それを知っている?」 「やっぱり!じゃあさ、君はキングフォームになれないの?」 「何……?」 橘の問いさえ無視して、興奮した様子でダグバは問い詰める。 しかしそうして吐かれた問いは、極めて理解不能なものだった。 なぜ自分がギャレンであることを知っているのか、そしてなぜキングフォームを知っているのか、そしてなぜそれになれるかどうかを気にするのか……。 疑問が次々と沸き起こる中で、思わず黙りこくった橘にしかし、沈黙を伴う思考の時間は与えられない。 「ねぇ、どうなの?キングフォームにはなれるの?なれないの?」 「……!」 再び問うたダグバの声は、先ほどよりも僅かに苛立っている。 このまま黙っていても彼が会話をやめ情報を得ることも出来ないままに戦闘が始まるだけだと理解した橘は、自分の中の戸惑いを全て飲み込んで、答えた。 「……俺は、キングフォームには、なれない」 それは、真実だった。 ラウズアブゾーバーとカテゴリーキングのカードこそあるが、そもそも自分の手元にカテゴリークイーン、つまりラウズアブゾーバーの起動スイッチとなるカードがない。 それに、そもそもギャレンへの変身が制限されている現状、例え素材が揃っていても同じ返答をする以外に彼に道は残されていなかっただろうが。 そしてその言葉を聞いて、やはりというべきかダグバは著しく気分を害したように大きく溜息をついた。 「なんだ、つまんないの。まぁいいや、それじゃ――」 「――待ってくれ、一つ教えてほしい。なぜお前がキングフォームにそこまで固執する? お前がキングフォームの……いやブレイドの一体何を知っているんだ」 失望のままに会話を切り上げ恐らくは戦闘の準備を始めようとしたダグバに対し、しかし橘は素早く新たな問いを投げた。 キングフォーム、ひいては既に死亡し自分も死体を確認した友、剣崎一真、仮面ライダーブレイド。 13体のアンデッドと融合したブレイドであれば或いはダグバにも匹敵しうるかもと考察を述べたこともある橘にとっては、張本人がその名前を述べたことを無視するわけにはいかなかったのだ。 その質問が無視されるかどうかは正直五分だと踏んでいたが、しかし気が向いたのかダグバは動かしかけた左手を再びダランと下ろして視線を再度彼に向けた。 「僕が変身できなくて戦えなかった時に、ガドルが僕にブレイドをくれたんだ。 それでその後、クウガと会ったから僕の本当の力が戻るまでそれで遊ぼうと思ったんだけど、運よくスペードのカードが全部揃ったから、なってみたんだよ。――キングフォームに」 「なるほどな……」 ブレイドをダグバが纏った、という事実に沸いた怒りを隠しつつ、合点がいった、という様子で橘は頷く。 門矢と葦原がブレイドをガドルというグロンギに奪われたのは知っていたが、奴はそれをダグバに渡していたらしい。 なるほど辻褄はあっているが、とはいえそこで再び新たな疑問が浮かぶ。 なぜこいつは“クイーンとキングの2体と融合しただけのキングフォーム”にそこまで固執しているのか、という疑問が。 13体のアンデッドと融合したブレイドの存在をどこかで知ったのかと思ったが、ダグバが変身したというならそれは不完全な形態(というよりそれが本来のキングフォームなのだが)で然るべきである。 ではそんなただの形態のどこに、あれほどの力を持つ彼が心惹かれたというのだろうか。 そんな疑問を抱いた橘を無視して、再びダグバは恍惚の表情を浮かべて天を仰いだ。 「キングフォームは凄いね……、それまではいちいちラウズしないと使えなかった力が、念じるだけで使えちゃうんだもん」 「なんだと?念じるだけで……?」 どういうことだ、と橘は困惑する。 念じるだけでアンデッドの能力を使える力、それは剣崎の変身する“あの”キングフォームにしか携わっていない能力のはずである。 だがその能力をダグバが変身したキングフォームで用いることなど出来るはずがない。 そうして思考の渦にハマりかけた橘に対し、後方より助け船のように響く声が一つ。 「――なるほど、これも首輪の制限、ということですか」 村上の、よく通る声で囁かれたその言葉に、思わず橘は振り返る。 一体どういう意味だと眉を潜めた橘に対し、一方でずっと目を伏せ思考を重ねていたらしいフィリップがハッとした様子で顔をあげた。 「そうか……、この首輪の“変身を制限する”力には決してマイナスな面だけではなく、殺し合いを円滑にするための平等性を保つ機能があったのか……!」 「どういうことだ?」 何かに思い至ったらしいフィリップに思わず困惑を浮かべた橘に対し、彼は矢継ぎ早に口を開いた。 「橘朔也、そもそも君の世界の仮面ライダーに変身するのには、本来相当な適合率が必要なんだろう?」 「あぁ」 「だがこの場では、誰も変身を失敗したものなどいない。 葦原涼や日高仁志、そしてダグバに至るまで、誰も君の先輩であった桐生豪のように腕が飛んだりはしていない」 フィリップのその言葉に、橘は思わず目を伏せる。 この会場に呼ばれた参加者を説明するときにその名前と関係を説明した、桐生。 まさかその存在がこうして彼の推論に名前を覗かせるなどとは思ってもみなかったのである。 だが、推理に夢中なのか、それとも橘はこうした動揺の中にあっても重要な情報を聞き逃すような無能ではないと信じているのか、フィリップは気にせず続ける。 「僕たちはこれをただ単に幸運だとばかり思っていたが、実際は違ったんだ。 さっき村上峡児が言ったように、これは君たちライダーシステムの適合者と他の参加者の間にある多大な不平等を取り除くための制限だったんだよ」 「なんだと……それじゃまさかダグバが言うキングフォームは……!」 「あぁ、そのまさかだろうね。 剣崎一真と他の参加者との間にある最も大きな不平等、13体のアンデッドとの融合をも、この首輪は制限している。そう考えるべきだろう」 フィリップの推理に、橘は絶句した。 全ての参加者が問題なく自分たちのライダーシステムを使えることはともかくとして、まさかその制限がキングフォームにまで適用されるとは。 であれば首輪を解除するということは、決していいことばかりではないのか、と冷静な自分が囁く声は、しかしすぐに掻き消えた。 それ以上に橘にとって今大事なのは……目の前のあの悪魔が、あのキングフォームで以て再び小野寺の前に立ちはだかったという事実だけだった。 「話は終わった?もうそろそろ戦おうよ。話には飽きてきちゃった」 「ダグバ、最後に一つだけ聞いておきたい。ブレイドはまだお前が持っているのか?」 駄々をこねる子供のように騒ぐダグバに対し、橘は臆せずに問う。 それに対しまた質問攻めかと肩を落としつつ、しかしダグバは嘘を吐く様子もなく答えた。 「ううん、まだ遊びたかったんだけどさ。もう僕は持ってないよ。帽子を被ったリントに取られちゃった」 「帽子……?」 ダグバの言葉に反応したのは、今度はフィリップだった。 帽子を被った男、という特徴を聞いただけで、彼の脳内にはどうしてもいの一番にあのハーフボイルドが思い当たってしまったからだ。 「そう、帽子のリントだよ。『ブレイドは俺たち仮面ライダーに繋がれてきたバトン』とかなんとか言ってたけど」 「その口調……翔太郎だ……!」 ダグバが述べたそのクサイ台詞に、しかしフィリップはどこか確信めいて相棒の姿を連想する。 きっと翔太郎は、この悪魔に一杯食わせてブレイドを仮面ライダーの手に引き戻したのだ。 未だ情報を聞けていなかった相棒をこうして間接的とはいえ感じて、フィリップはどことなく嬉しくなった。 だがそんな彼に対し、此度質問を投げたのは、ダグバのほうであった。 「――ねぇ、『仮面ライダー』ってなんなの?繋がれてきたバトンとか、リントを守る誇りとか、そんなもので強くなれるの? ……リントの希望になれば、強くなれるの?」 ダグバにしては珍しく、どうにも本気でその概念が理解できていないようだった。 誰かを失った怒りではなく、守るために強くなる戦士。 そんな存在を、この場に来るまでダグバは考えたことさえなかった。 あのガドルでさえ心奪われ自分もまた敗北を喫した今となっては、その存在を深く理解してみるというのも、或いは面白いと気まぐれに思ったのかもしれなかった。 そんなダグバの率直な疑問に答えたのは、覚悟が決まった様子で真っ直ぐダグバを睨み据える橘だった。 「仮面ライダーの定義が何なのか……正直、俺にもよくわからない」 だが述べられた答えは、ダグバが求めていた定義とはかけ離れたもの。 しかしそれも、仕方のないことだ。 橘に最も親近感のある概念としては“アンデッドの力を用いてアンデッドを封印する戦士”というところだが、この場にはその概念に当てはまらない『仮面ライダー』がごまんと存在するのだから。 魔化魍を清める鬼、鏡の世界の中で互いに殺し合い続ける存在、時の運行を適切に守るため過去と未来を自由自在に走る抜ける戦士……。 そんな多くの存在を前に、未だ橘も仮面ライダーの広義が何なのかなど考えても分かろうはずもなかった。 その橘の答えにダグバは失望しかけるが、しかし彼はそのまま続ける。 「だが一つだけ、確かなことがある。 ――俺の信じる“仮面ライダー”は、決してお前を許しはしないということだ!」 高らかに叫んだ橘の声に呼応するように、既に崩壊した天井から黄色の一閃が降ってくる。 一直線に橘に向かっていったそれは、彼の右手の周りを数度周回した後、その中に収まった。 今天より舞い降りた彼の力の名は、ザビーゼクター。 橘は今、連綿と受け継がれてきた戦うための力を、その手に握りしめていた。 そしてそんな彼を見て、溜息を一つつきながら歩を進める男が一人。 「やれやれ、あまり無益な戦いは好まないのですが。 ……とはいえ貴方のような危険人物をこれ以上野放しにしておくのも不愉快だ。 今ここで、私が消してあげましょう」 ――5・5・5・ENTER ――STANDING BY 戦闘態勢を整えた二人に合わせる様に、村上もまたデイパックから新たなライダーズギアを身に着けていた。 鳴り響いたけたたましいサイレンのような音は、しかしその実彼らの闘争本能を掻き立てるかのようで。 それにつられるように、フィリップもまたその腰にドライバーをつけながら懐より小さな白い箱を取り出していた。 (エターナル……) それは、自分が使い慣れたサイクロンではなく、かつて風都を支配し死者で満たそうとしたテロリスト、大道克己の用いた永遠の記憶が込められたガイアメモリ。 極めて強力な能力を持つことを身を以て知っているはずのそれを、フィリップが今の今まで使わなかったのは、ひとえにこのメモリに対する並々ならぬトラウマじみた思い出によるものだ。 風都の人々を恐怖に陥れたことも勿論そうだが、それ以上に自分の母親への強い思いを計画に利用するような悪魔の力を、この身に纏うのは彼の言う「兄弟」という言葉を肯定するようで嫌悪感があったのだった。 (けど……さっき分かった。やっぱり僕は君とは違うよ、大道克己。 僕には相棒がいて、仲間がいて、そして君やダグバを許せないと思える心がある。 だから僕は、仮面ライダーだ。それならきっと、エターナルを正しく扱える。 人々を恐怖に陥れる悪魔なんかじゃない、本当の意味で街の希望としての、エターナルを!) しかしそんなマイナスイメージを払拭したのは、やはり先ほどの橘と翔太郎の言葉であった。 今自分が使うのは、大道克己からではない、秋山蓮から継がれたバトン。 そしてそれを用いるのは大道克己のような悪魔ではない、人の心を持った風都の探偵、フィリップなのだ。 であればそれはもう、かつてのエターナルとは違う。 ならばこの力を振るうことに、もうフィリップが恐れを感じることはなかった。 ――ETERNAL ガイアウィスパーが、野太い声で内包された記憶を告げる。 それぞれに力を得るためのアイテムをしかと構えて、フィリップは、村上は、橘は、叫んだ。 「「「変身!!!」」」 ――HEN-SHIN ――COMPLETE ――ETERNAL そこに並び立ったのは、それぞれ異なる世界の仮面ライダー。 ファイズ、ザビー、エターナル。赤と黄色と白、それぞれ鮮やかなオーラを生じさせ戦闘の準備を完了させた彼らは、そのまま並び立ちダグバを睨みつけた。 否、ただ一人以外は。 「……あれ?」 エターナルが、一人自分の腕を見て困惑の声を漏らしていた。 まるで“本来想定していた姿と違う”ようなその声に、ダグバから視線を外さないままザビーは尋ねる。 「どうしたフィリップ、大丈夫か」 「あ、あぁ、問題ない」 どうにも歯切れの悪い返答だが、しかし今は強敵を前にしているのだ。 これ以上仲間に気を割いていられる時間もなかった。 一方、そんな彼らを前にして、ダグバは未だ意味深な笑みを浮かべるのみ。 「キャストオフ!」 ――CAST OFF ――CHANGE WASP ならばとばかりにザビーは、そんなダグバを気にせずザビーゼクターを回転させその身に纏っていた銀の鎧を弾き飛ばす。 ライダーフォームへの変身を完了し戦闘態勢を彼が整えると同時、未だ生身のダグバにアーマーの残骸が肉薄し――。 「――変身」 小さく囁いたダグバの声に従うようにして、カブティックゼクターが一瞬で虚空から現れ自ら右手に嵌めたブレスの台座に収まった。 ――HEN-SHIN ――CHANGE BEETLE それを受け彼の肉体を一瞬で金色のヒヒイロノカネが覆っていく。 先ほどまでの人間としての姿であったならその骨や肉を跡形もなく吹き飛ばしていたであろうザビーのアーマーは、しかしコーカサスと化した彼の身には一切届かない。 コーカサスが軽く振るったその腕に、アーマー群は全て発泡スチロールも同然のように弾き飛ばされてしまったのだから。 「……じゃあ、始めようか。仮面ライダー。僕をいっぱい怖がらせて、僕を笑顔にしてよ?」 130 居場所~place~ 時系列順 131 飛び込んでく嵐の中(2) 投下順 120 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ン・ダグバ・ゼバ 126 ステージ・オブ・キング(3) 村上峡児 橘朔也 フィリップ 125 魔・王・再・臨 葦原涼 相川始
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キムチは気が狂ってルートレイクに飛び込んで溺死した