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―――――― 「ん……ぅ~ん……」 窓から射し込む日の光を受け、結城リトは目を覚ました。 「むぅ……朝か…」 そしてリトは、ベッドから起き上が――。 (あれ?) ――ろうとしたが出来なかった。 それどころか、まるで身体が何かに押さえつけられているかの様に、動くことさえできなかった。 (………って) ふとリトは気付いた。 自分の身体に何か柔らかいものが当たってる事に。 (まさか…(汗)) 恐る恐る、横目でチラリと隣を見てみると…。 「すぅ…すぅ………んみゅ~……リトぉ~…♪」 最早お約束といってもいいかの如く、ララが裸で抱き付いて寝ていた。 (……) ……………。 …………。 ………。 「ぬあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!///」 これもお約束といっても過言ではない、リト朝一の絶叫。 「ララまたかよ!!オレのベッドで寝るなっていつも言ってるだろ!!しかも裸でよぉ!!///」 「ムニャムニャ…………えへへ……もう食べられないよ~……」 「コラァ!!古典的な寝言言ってないでさっさと起きろぉ!!(怒)」 リトの怒鳴り声で、ようやくララは目を覚ました。 「ん…う~ん…、あ、リトおはよぉ~…♪」 「『おはよぉ~』じゃねーっつーの!!お前何回言ったら分かんだよ、毎度毎度よぉ!!///」 「え~、だってリトと一緒に寝たかったんだもん~」 いつも通りのやり取りを交わすいつも通りの結城家の朝の光景――。 だが、一つだけいつも通りじゃない点があった。 それは――。 「それに、リトの女の子の身体って柔らかいし、いつもよりスッゴくあったかいんだもん♪」 そう――。 このララのセリフから解る通り、リトは今、身体が『女の子』になってしまっているのだ。 (何故こんな事になっているのか、詳細は3スレ548にて) 「おかげで今日はいつもの三倍はぐっすり眠れたよ♪」 「人を安眠抱き枕みたいに言うな!つーか、早いトコ服着ろっての!!///」 「でもペケまだ寝て「叩き起こせぇ!!!(怒)」」 まあ…、何はともあれ…。 リトの女の子生活二日目の始まりである――。 ―――――― 彩南高校――。 まだ朝も早いので、あまり人影を見かけない。 部活の朝練をしている生徒は何人か見かけたが、練習に集中している為こちらの『男子の制服を着た女子』を気にする者は誰もいない。 そんな中を、リトは真っ直ぐ御門先生が待つ保健室へと向かった。 『ガラッ』 「おはようございま~す」 軽く挨拶しながら保健室のドアを開ける。 「ふわぁ~…ぁふ…、あら結城君、おはよう。待ってたわよ」 大きな欠伸をしながら『全然寝たりません』的な感じで、御門先生が挨拶を返す。 「眠そうっスね、先生」 「本来ならこの時間帯はまだ寝てんのよ?それなのに、はふ…、こんな朝一番から学校に来る事になるなんて思いもよらなかったわ。」 「いやいや、あなたが原因作ったんだからちゃんと責任持って下さいよ」 「や~ね~、悪いと思ってるからこうして頑張って早起きしてきたんでしょうが♪」 手をヒラヒラさせて笑顔でそう言う御門先生。 「とりあえず結城君、まずはコレに着替えて頂戴」 そう言って、リトにその服が入った手提げ袋を手渡す。 「……」 そして、その袋の中を見て固まるリト。 てゆーか、このシーン昨日もあったような…。 「………………先生」 「ん?」 「何スか、コレ?」 「見て分からない?」 「………女子の制服にしか見えませんが…」 「分かってるじゃないの」 「………オレにコレを着ろと?」 「ええ」 「何故!?」 「女の子が男子の制服着て授業受ける訳にはいかないでしょ?」 「……」 「……」 「……ちなみに拒否権は――。」 「あると思う?」 「……」 「なんなら先生が着替えさせてあげましょうか~?」 手をワキワキさせて、怪しげな笑顔でそんな事を言う御門先生。 「……(汗)」 ……………。 …………。 ………。 「はぁ~……、分かりましたよ、着ますよ…。着ればいいんでしょ、着れば…」 これ以上の抵抗は無駄だと悟ったのか、リトはあっさりと承諾した――。 ――――――。 「ほっほ~う、似合うとは思ってはいたけどまさかこれほどとは」 「……///」 女子の制服を着たリトを見て、素直に感心する御門先生。 「ホント、なんかずっと前からいるみたいな雰囲気がする位完璧な着こなしね。とても今日初めて着たとは思えないわ」 「そりゃあ…、まぁ…(汗)///」 「昨日、コレ含めて色々と着せられましたから」とは口が裂けても言えない。 言ったらこの人の事だ。また何か良からぬ事を企んでくるだろう。いや、企んでくるに決まってる。(断言) 「でも結城君…」 「はい?」 「どうして下着は付けてないの?」 「い、いいじゃないですか。下着位付けてなくても///」 「まぁ確かに、ブラはしてない娘は結構いるけど、流石にショーツの方は…」 「そっ、そこは体操着の短パンでも穿いて誤魔化しますからっ!そ、そんな事よりも早く本題に入りましょうよ!HR始まっちゃいますよ!?」 HRまでまだ一時間近くあるのだが、これ以上このネタで引っ張られたくないので先を促すリト。 「あ、待って待って。せっかくだから記念に一枚――♪」 「本・題・に・入・り・ま・し・ょ・う!!(怒)」 「む~、結城君のいけず~」 デジカメ片手にちょっと拗ねる御門先生。 「……まぁいいわ。ちょっと残念だけど、これ以上時間を掛けるのもアレだし…」 という訳で、いざ本題へ――。 「とりあえず学校側には、『結城君は事情があって二週間程学校に来れなくなった』、『その間、短期編入生として別の子を代理で通わせてほしい』とだけ言っておいたから」 「はぁ…、その事情って?」 「そこは自分で考えなさいな。私も流石にそこまでは面倒見切れないわよ」 「そう言われても…、何かこう、アドバイス的なものを――。」 「そうね~…、例えば『日本全国のメイド喫茶、完全制覇の旅に出た』とか♪」 「自分で考えます(キッパリ)」 返事するまで0.01秒。 「あらそう?残念♪」 とても残念そうには見えない。 「でもよくそんな説明で学校側があっさり納得しましたね…」 「ああ、それ?いえね、さっきの説明と昨日こっそり隠し撮りした結城君の写真を校長先生に見せたら――。」 (親指立ててとてもスバラシイ笑顔で) 『なんだかよく分からんけどカワイイからOK♪』 「――だってさ♪」 「……………………まぁそんなトコだろうと思ってはいましたけどね、あのエロ校長なら…(汗)」 故に、これ以上何も言う気が起きないリト。 「さぁ、早いトコ編入手続き済ませちゃいましょう♪それで担任の先生にも挨拶に行かなきゃ」 「あ~い」 という事で、二人は職員室へと向かった――。 「ところで先生、何時オレの写真を隠し撮りしたんスか?」 「禁則事項です♪」 ―――――― 一方、教室――。 『ガラッ』 「おはよ~」 今日も元気一杯で教室に入るララ。 「あ、ララさんおはよう」 「おぃーすララちぃ」 「ララちぃおっはー」 春菜と、その友達の籾岡里沙と沢田未央が返事を返す。 「……ってアレ?ララちぃ、結城は?」 ここで籾岡が、いつも一緒にいる筈のリトがいない事に気付いた。 「え、えーっと…(汗)」 実は、リトが家を出る前…。 『いいかララ、オレが女になったなんて誰にもバラすんじゃねーぞ!特に籾岡と沢田と猿山には!!』 ――と、ララに釘を刺していたのだ。 リト曰わく、 『普通こんな話信じてもらえないだろうが、宇宙人や幽霊が存在している位だからそれくらいあっても不思議では無い。 バレたらこの三人の事だから、きっとろくでもない事を仕掛けてくるに違いない。絶対に。 特に猿山辺りは『親友』というポジションを傘に立てて、アレコレセクハラ行為を仕掛けてくるに決まっている。200%間違いなく!』らしい…。 ………随分信用の無い親友である。 「ゆ、結城くん昨日から用事でどこかに出かけてるんだよ。だよね、ララさん?(汗)」 なんとなく事情を察したのか、見かねた春菜が助け船を出す。 「へ?あぁうんうん、そーそー。どんな用事かは知らないけど、それで二週間位学校に来れないってさ(汗)」 「「ふーん…」」 冷や汗一杯で返答し、なんとか誤魔化す事に成功。 「でも春菜。何で結城が昨日からいないって知ってるの?」 「え゛っ!(汗)///」 沢田のツッコミに対して、不意に顔を赤らめる春菜。 「あぁ。だって春菜、昨日ウチに来たもん♪」 「ちょっ、ラ、ララさんっ!!///」 「え~なになに~?もしかして春菜、休みの日に結城に会いたいが為に――。」 籾岡がニヤニヤ含み笑いをしながら尋ねる。 「ちちちち違うよぉ!!きき、昨日はララさんからCDを借りようと思って行っただけで、決して結城くんに会いたいとかそんな事は全然まったくこれっぽっちも――!!///」 本心を知られたくないからか、必要以上に必死なって誤魔化そうとする春菜。 リトが見たら、間違いなくヘコむであろう光景である。 『ガラッ!』 「うぉーい、大変だー!!」 突然、猿山が慌てふためきながら教室に入ってきた。 「え、何々?どーしたの猿山?」 「またしょーもない企画でも思い付いた?」 「ちげーよ!!(怒)」 籾岡と沢田の茶化しを一蹴して、猿山が興奮気味に喋り出す。 「今日、このクラスに転入生が入るんだってさ!!しかもそいつ女だ!!」 『なにぃーーーー!!!!』 クラスの男共が一斉に声を上げる。 「猿山っ!!その話マジか!?」 「マジもマジ、大マジだ!!さっき御門先生と一緒に骨川先生に挨拶してたからな!!」 「なっなあ!!その女って可愛かったか!?」 「それが後ろを向いてたから顔の方は見えなかったけど…、ただ!!」 『ただ!?』 「オレの見立てではその娘………、ララちゃんにも引けを取らない身体をしているっ!!!」 『うおぉぉぉーーーーーー!!!!』 男共は一斉に雄叫びを上げた。 「はぁ~…、ウチの男共ってどーしてこう…」 籾岡が呆れた声で呟く。 「でも転入生ってどんな娘なんだろうね~」 「うん、なんか楽しみだね~♪」 沢田と、何故かララまでその『転入生』の話題に花を咲かす。 「ラ、ララさん、ララさん(小声)」 「ん?」 「あの…、その転入生って、結城くんの事じゃ無いの?(小声)」 「ぇええっ!!そうなのぉ!?(驚)」 「ラ、ララさん……(汗)」 ララの天然ボケに、春菜苦笑い。 『キーンコーンカーンコーン――』 そして、始業のチャイムが鳴った――。 ―――――― 「え~それでわぁ、ワシが呼んだら入ってきてくだふぁい」 「は、はい…」 そう言って、骨川先生は教室の中へ…。 (うぅ~…、なんか緊張する~…) リトはソワソワ落ち着かない感じで、呼ばれるのを待つ。 『え~まず最初に~、結城君が一身上の都合で二週間程学校に来れなくなりまひたぁ~』 そう言った途端、教室内がざわつく。 『せ、先生。結城くん何か怪我でもしたんですか!?』 少し慌てた感じで、古手川唯が質問する。 『いやぁ、ワシもそこんトコは詳しく知らなんで…』 『し、知らないって、知らないって何ですか!?普通そういう事情諸々は把握しておくものじゃ無いんですか!?』 『ワ、ワシはただそれだけ聞かされただけで――(慌)』 (まぁ、確かに普通はそうだよな…(汗)) 唯と先生の言い争いを聞きながら苦笑いを浮かべるリト。 (にしても…、古手川、もしかして心配してくれてるのかな…) その事が少し嬉しくて、リトは思わず顔がほころんだ。 『先生っ!!そんな事よりも転入生の娘を紹介して下さい!!』 『そーですよ!!結城の事なんかどーでもいいから早く転入生をぉ!!』 (そっ、そんな事!!?) だが、猿山及びクラスの男共の心無い発言にカチンときて、表情を一変させる。 (今言った奴…、元に戻ったらブッ飛ばす!(怒)) 拳をワナワナ震わせながら、心の中でそう誓うリト。 『おぉ、そうじゃった。ではその転入生を――』 『ちょっ、先生!まだ話は――!』 『まーまー唯っち。いくら結城の事が気になるからってそんな必死になんなくても』 籾岡がニヤニヤしながら茶化す。 『んなっ!!何言ってんの籾岡さん!!わっ、私は別に結城くんの事なんか――///』 顔を真っ赤にして全力否定する唯。 『ほ、ホラ先生っ!!一時限目始まっちゃいますから早いトコその転入生を紹介して下さいっ!!』 そして、誤魔化しから先を促す。 (何もそこまで力一杯否定しなくても…(泣)) その一方で、さっきの唯の発言に軽くヘコむリト。 『え~それででふね~、結城君のいない間、代理という形でこのクラスに短期の編入生が入りまふ』 『短期ぃ!?ずっとじゃないんスか!?』 『別にいいよ、結城なんかずっといなくても!!その娘代わりに入れようぜ、代わりによぉ!!』 (……) 『ブッ飛ばす』んじゃなくて『ブッ殺す』にしとこうか…。 ――と、再度心に誓う今日は表情百面相なリトだった。 『………先生、気にせず先を進めて下さい』 こめかみをピクつかせながら唯が先を促す。 『それでわぁ、どうぞ入ってきてくだふぁい』 (――っと、呼ばれた) さっきまで考えていた事を振り払い、教室のドアに手を掛ける。 (よし…、行くか) そして、ゆっくりとドアを開けた――。 『ガラッ』 「ど、どうも~…」 精一杯の愛想笑いを浮かべながら教室に入る。 『……』 途端に、教室内が静まり返った…。 (って、アレ?リアクション無し?(汗)) 予想外の雰囲気に戸惑っていると…。 「あの~、自己紹介を…」 「え?あぁ、はい!(慌)」 先生に先を促され、慌てて自己紹介を始める。 「えっと……、初めまして…。今日から二週間程、リトの代わりにこの学校に通う事になりました――」 一呼吸置いて、そして…。 「結城零紋(レモン)といいます。短い間ですが、よろしくお願いします。」 そう言って、深々と頭を下げた。 『……』 ……………。 …………。 ………。 (………………………………………アレ?(汗)) 教室内、ノーリアクション。 (な、何だ?もしかして…もうバレたとか!?(焦)) 心の中で焦るレモンことリト。 「あ…、あの~……(汗)」 恐る恐る訪ねようとしてみると…。 『うおぉぉぉーーーーーー!!!!』 「ひぃっ!!?(驚)」 突然男共が雄叫びを上げ、思わずビクッと仰け反るリト。 「むっ、ムチャクチャ可愛いーーー!!!」 「ララちゃん以来の超極上級の美少女だーーー!!!」 「うぅ…、このクラスで良かった…(泣)」 「ぁ………、ぁははは……(汗)」 男共の様々なリアクションに軽くドン引きなリト。 「ハイハイ、質問ー!!」 勢いよく猿山が手を挙げる。 「レモンちゃんは名字がリトの奴と同じなんだけど、アイツとどんな関係なの!?」 いきなり名前の方で呼ばれて『ちょっと馴れ馴れし過ぎやしないか?』とも思ったが、とりあえず質問に答えておく。 「え、えっと……、一応……イトコになるのかな…?(汗)」 『イトコ!!!』 打ち合わせでもしていたかのように声を揃えて復唱する男共。 「何だよリトの奴!!こんな可愛いイトコがいたなんて聞いてねーぞ!!(怒)」 「なんでアイツばっかり女が寄ってくるんだよ、しかも美少女限定で!!(怒)」 「チキショー、少しはこっちにも回せってんだよ!!(怒)」 普段思っているリトへの不満を爆発させる男共。 「レモンちゃん!!もしかしてレモンちゃんも結城の奴が――!!」 「え゛っ!?い、いや、あの、オレ…じゃなくて、ボクは別にそんな――(汗)」 『しかもボクっ娘くわぁぁぁ――――!!!!(狂)』 男共、更にテンションUP。 (……(大汗)) リトは思った…。 今まで気付かなかったが、いや、薄々は気付いていたのだが…。 いやいや、気付いてはいたんだけど認めたくなかったというか、改めて再確認したというか…。 (このクラス…、変な奴ばっか!!(大汗)) もっとも、その『変な奴』に自分は含まれているのかどうかは定かではない…。 ま、とにもかくにも…。 『結城梨斗』改め『結城零紋』の受難の学校生活が始まった――。 ―――――― 「つっ、疲れたぁ~……」 「だ、大丈夫?結城く…じゃなくて、零紋さん…(汗)」 机の上でグッタリうなだれるリトを、春菜が心配そうに気遣う。 休み時間の度に男女問わず質問攻め&好奇心の目に晒され、 しかもこの『極上の短期編入生』の噂は瞬く間に全校生徒に広がり、そのおかげで教室の前には、一目見ようと上から下まで沢山の野次馬が押し寄せ、 ようやく落ち着いた時には既に昼休みになっていた…。 ちなみにどんな質問をされたかというと…。 『レモンちゃんって彼氏いるの?』 『レモンちゃんってどんな人がタイプなの?』 『レモンちゃんってデートするなら何処行きたい?』 『犬とお呼び下さい』 ……って、最後のは質問じゃ無いのでは…。 「ねーねーリト~」 「ララ、学校にいる間はその名前で呼ぶなって」 「あ、そっか。えーっと…、何だったっけ?」 「レモンだよ。レ・モ・ン」 「んー、何か別の名前呼ぶのって違和感あるなぁ~」 「仕方ないだろ、本名なんか名乗れる訳ないし」 「む~、そうは言っても…。もっとこう…、違和感の感じない名前に出来なかったの?」 「例えば?」 「『リト子』とか『リト美』とか♪」 「安易過ぎるしゴロ悪りーし一発バレだろーが!」 「ぁ…ぁはは……(汗)」 そんな風に、ララと簡素な漫才を繰り広げていると…。 「ララちぃ~、春菜~、レモり~ん♪」 籾岡と沢田が笑顔で近づいて来た。 「里沙、未央」 「あ、リサミオ~♪」 「れ、れもり…(汗)」 (早くもあだ名すか…) 苦笑いするリト――とゆーかレモンに籾岡が尋ねる。 「ねーねーレモりん。すっかり聞くタイミング逃してたけど、レモりんは結城の奴がなんでしばらく学校に来れなくなったか知ってる?」 「え゛!?ぁー…ぅん…(汗)」 冷や汗を掻きながら、さっき速攻で考えた言い訳――もとい、来れない事情を話す。 「ホラ、リトのお父さんで売れっ子の漫画家でしょ?実は今、物凄く気合の入った読切漫画を書いてるらしいんだけど、どうも作業の方が滞ってるらしくて…。 それでリトが呼び出されたんだけど、なんせ連載も三本も抱えてるもんだからあまりにも進行が遅れててかなりギリギリの状態になっちゃってるらしくてさ…。 それで二週間位帰るに帰れなくなったって言って、それで何を血迷ったのか、たまたまリトん家に来てたボクに…」 『すまねぇがレモンちゃん、二週間ばっかしリトの通ってる学校に代わりに行ってやってくれねーかな?』 「――って叔父さんに頼まれてこーゆー事になったってワケ(汗)」 ここ最近、たまたま父・才培が書いていた読切漫画のネームの手伝いに追われていたから、すべて嘘という訳ではない。 実際、何週間か後になったらその読切が雑誌に載るから辻褄は合うはずだとリトは思い、この様な理由になった。 (ちなみに、その読切漫画の原稿は予想以上に早く仕上がっていたりする) 「へ~。て事はレモりん、春菜とは昨日会ってたの?」 「ま、まあね。ね?西連寺……さん(汗)」 「う、うん…。零紋さん、昨日は…どうも…(汗)」 「ふ~ん、そーなんだ。あたし結城の事だからてっきり、『日本全国メイド喫茶、完全制覇の旅』に出たんだと思った」 「あー、結城だったらそんな理由も有り得るかも~」 (オレってそんな印象!!?(ガビーン!!)) 心の中でショックを受けるリト。 「でも…、何で結城はその事レモりんに話してララちぃには知らせなかったの?」 「う゛ぇっ!?(大汗)」 今度は沢田から疑問をふっかけられる。 「あーっと、その時夜中だったからララちゃん寝ちゃってたんだよ!後でちゃんと話そうかと思ってたんだけど、朝早かったから時間が無くて…。ゴメンねララちゃん(大汗)」 「そっ、そーだったんだ~!ヒドいよレモン~、私リトがしばらくガッコ来れないって聞いて心配してたんだよ~!?(大汗)」 若干目を泳がせながらぎこちなく会話を交わすララ。端から見ても結構怪しい…。 「でもさ~、いくら頼まれたからって、そんな簡単に部外者の人間が代理で通うなんて真似――」 続いて、籾岡が至極当然なツッコミをするが…。 「いや、ボクもそう思ったんだけど……………………ここの校長が…(汗)」 「「「………………………………………ぁー…(汗)」」」 「あの校長ならそれ位有り得る」と思ったのか、妙にあっさり納得した籾岡と沢田。……そして春菜。 「じゃあさ、レモりんも地元の学校に通ってるんでしょ?そっちの方はどーすんの?」 更に沢田からの質問(追い討ち?)。 「い、いや、その………、じ、実はボク、色々あって学校の方には通ってないんだ(汗)」 「えっ、そうなの!?」 「えっと、聞いちゃまずかった?(汗)」 「い、いやいやいやいや気にしないでよ!?別にボクなら全然大丈夫だからっ!(慌)」 (しまった…、もっと気の利いた事言えば良かった…(汗)) 自分の迂闊な発言を少し後悔したリトだが…。 「分かった、じゃ気にしない♪」 「そんなのいちいち気にしてたらキリがないもんね~♪」 「……」 リトの心に『前言撤回』という言葉が浮かんだ。 「にしても…」 そう呟いて、まじまじリト(レモン)の顔を覗き込む籾岡。 「な…ナニ?///(汗)」 女の子に顔を凝視され、少し頬を染めて距離を取るリト。 「レモりんって、何となく結城に似てるよね…」 「え゛っ!!?(大汗)」 ギクッとなるリト。 「あー、そー言われれば…」 「でしょ?なんか全体の雰囲気がというか、なんというか…」 「ぁ、ぁははは…、ボクもよく言われるよ…(大汗)」 冷や汗をダラダラ流しながら、何とか誤魔化そうと考えるリトだが…。 「簡単に言っちゃうと……、結城をそのまま女の子にしたみたいな感じ?」 「ギックぅっ!!?(滝汗)」 「「ぎっくぅ?」」 「あ、いや……、ぎ、ギックリ腰になったおばーちゃん今頃どーしてるかな~って(滝汗)」 物凄いベタベタな誤魔化し方である…。 「あ、ちょっとボクトイレ~…(汗)」 そう言って、リトは逃げる様に教室を出た――。 てゆーか実際逃げてるんだし…。 「どーしたんだろね?レモりん。なんか焦ってたみたいだけど…」 「さぁ~?ずっと我慢してたからじゃないの?」 「春菜~、ヒミツにするのって大変なんだね~(小声)」 「ぁ…ぁははは…(汗)」 ――――――。 「あぶねーあぶねー、あいつらこんな時に妙に鋭い勘を発揮すんだもんなぁ~…(焦)」 少し籾岡と沢田に脅威を感じつつ、リトはトイレの中に入って行った。 『うわっ!?(驚)』 「へ?…………あ!」 中にいた男子生徒達から驚きの声を上げられて、リトは気付いた。 今現在『女の子』である自分が『男子トイレ』に入ってしまってるという事に。 「すすすすすすすすいませーーーん!!///(慌)」 慌てて男子トイレから飛び出す『女の子』リト――いやレモン。 (やっべー…、ついいつものノリで普通に男子トイレに入ってっちゃったよ…。そうだよ、オレ今女なんだから入るなら女子トイレの方――(汗)) という事で、リトは女子トイレの方へ足を向け、その中へ入って――。 『ピタッ』 ――行こうとしたが、不意に足を止めた。 (……) ……………。 …………。 ………。 (入るのか!!?(大汗)) 風呂場に続き、第二の試練到来。 (い、いやいや待て待て落ち着け。オレ今は女なんだから別に何も可笑しくはないんだよ。うん、問題は無い…(汗)) とりあえずそうやって自分を納得させようとするが…。 (いや、でもなぁ…、確かにナリは今女だけど中身は男だからなぁ…。オレとしてはそこんトコやっぱり抵抗が…(汗)) 男としての人格とプライドがブレーキを掛ける。 そんな昨日と同じような心の葛藤を抱きながら、女子トイレの前をウロウロしていると…。 「結城さん、何してるの?」 「うひゃあぁっ!!?(驚)」 不意に唯から声をかけられ、思わず飛び退くリト。 「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃない…(汗)」 冷静に宥めようとするが、実は心の中ではリト(レモン)のリアクションに少し傷ついた唯。 気の強い人ほど、中身は繊細なものなのだ。 「あ……、こ…古手川……さん…(汗)」 「あれ?私名前名乗ったかしら?」 「あっ!さ…西連寺さんに教えてもらったの!あの人がクラスの風紀委員をやってる人なんだって!(汗)」 「あ、そうなんだ」 なんとか誤魔化し成功。 「それよりも結城さん、何でトイレの前でウロウロしてたの?入りたいなら入ればいいのに」 「え゛!?ぁー…ぅん…、そーなんだけど…(汗)」 「え、何?もしかして個室全部埋まっちゃってるとか?」 「い、いや、そーゆー訳じゃ…(汗)」 「じゃ、早いトコ入っちゃえば?でないと何か変な誤解受けちゃうかもしれないわよ?」 「え?何で?」 「だってさっきの結城さん…」 「へ?」 「なんか『女子トイレを覗こうとしている変質者』みたいに見えたから」 唯は苦笑いしながら冗談混じりに言ったつもりだったが…。 「ぐはっ!!?」 既に変な誤解を受けて物凄く傷ついたリトは、全身に暗~いオーラを纏ってその場に突っ伏してしまった。 「ゆ、結城さんっ!?どうしたの、大丈夫!?(汗)」 何が起こったのか解らず、とりあえずリト(レモン)を慰めようとする唯。 「ふ…、ふふふふ………」 『ビクッ!』 「ゆ…、結城さん…?」 突然、リト(レモン)が怪しげな笑い声を発し、唯は思わずズザザザッと後退りをした。 「そうだよ、何を恐れる必要があるオレ。オレは今女なんだから女子トイレに入ったって何の問題も無いだろ…?(小声)」 「ぇ……えーっと…(汗)」 ブツブツ何かを呟くリト(レモン)を見て軽く恐怖する唯。 「そうだ!!オレは女なんだ!!女が女子トイレに入って何が悪い!!」 「あ、あの…、結城さん…?(大汗)」 (『オレ』?) 何か大きな決意を固め――とゆーか、ヤケクソになったリト。 一方、さっきの『オレ』発言に若干引っ掛かった唯だが、リト(レモン)の勢いに押されてそんな疑問も吹っ飛ぶ程ドン引きしていた。 「…………………ふー」 深く大きく深呼吸をして、そして…。 「うおぉぉぉーーーー!!行くぞコラァァァーーーー!!!」 気合の入った叫び声と共に、リトは女子トイレへと突撃していった――。 「な、何もそんなに気合入れて入って行かなくても……(汗)」 (ひょっとしてアレかしら?ここ最近、お通じが来てないとか…) そんなリト(レモン)の様子を、ただひたすら頭に?マークを浮かべながら呆然と見送る唯なのだった――。 ―――――― 「ぁーー……」 どうにかトイレの難関をクリアしたリトは、妙にぐったりした感じで廊下を歩いていた。 「なんでトイレ行くだけでこんなに疲れなきゃなんねーんだよ~……」 そんな事をぶつぶつ呟きながら教室に戻ろうとすると…。 「ヘイ、そこの彼女!!」 「………ほえ?」 不意に後ろから声を掛けられ、振り返るとそこには…。 「どうしたんだい?浮かない顔して。悩み事があるならいつでも相談に乗るぜ!!」 『さすが弄光センパイ!ここが学校だという事もお構い無しに今日もナンパしまくりだ!!』 (げっ、弄光!!?) 元祖女たらし軽犯罪者、弄光(と、その後輩 s)が爽やかな(ウザい?)笑顔で立っていた。 「むむっ!」 突如、弄光が目をくわっと見開いて、懐から『MOTE NOTE』と書かれた怪しげなノートを取り出し、パラパラ捲り始めた。 (オレのマル秘ノートにデータが無い美少女……。この学校にまだこれほどの娘がいたとは…!) 「キミっ!!」 「はっ、はいっ!?」 「キミこの学校じゃ見かけた事が無いけど、もしかして転入生かい!?」 「ぁ……は…はい…、一応……今日から短期間の編入…ですけど……」 「何っ!?という事は、今学校中で噂になっている『あのララ以来の美貌と身体を持ったボクっ娘編入生』というのはキミの事かい!!?」 「い、いえ、編入生なのは確かですけど、そんな大袈裟な者じゃあ――!」 (てゆーか、何故『ボクっ娘』の部分を強調する?) 余談だが、何故リトは自分の一人称を『私』では無く『ボク』にしたのか…。 一応、外見は女の子だが中身は男のままであるリトにとって、自分の事を『私』と呼ぶのは、なんか精神的にも『女の子』になってしまいそうな気がして少なからず抵抗があった。 だからこそ、自分はこれでも男だという事を忘れない様に、女が使っても別に可笑しくない呼び方(てゆーか、先日読んだマンガの女の子キャラが使ってた)という事で『ボク』という一人称を使う事にしたのだ。 ………まぁ、それがここまで男子生徒内で大反響を呼ぶとは、リトにとっては予想外だった様だが…。 (どっちにしても、コイツにはあんまり関わりたくないから、どーにかしてここから離脱しなければ…) この場から逃げ出す方法を模索するリトの様子など全く気付きもせず、弄光は嬉々として話し(口説き)かける。 「キミ、名前は何ていうのかい?」 「へ?あぁ、レモンです。結城レモン」 「へぇ、レモンちゃんというのかい。甘酸っぱい雰囲気がするキミにとてもお似合いの名前だね♪」 「ぁ、あぁ…、どーも…」 (意味解んねっつーの) 「そうだ!レモンちゃんこの学校の事よく知らないだろ!?オレが案内してあげるよ!」 「い、いえ結構です!大体の場所は御門先生に教えてもらいましたから!」 (つーか元々この学校の生徒だし…) 「遠慮するなよ!オレが誰も知らない様な、『二人きりで』まったり出来る穴場スポットを教えてあげるから♪」 「だ、大丈夫ですから!間に合ってますから!知りたくもありませんからっ!」 (あーもー、しつけー!そしてウゼー!つーか馴れ馴れしいな、コイツ!!) しつこく食い下がる弄光に嫌悪感を感じ、一刻も早くこの場から離れたいリト。どうやって誤魔化そうかと思考回路をフル稼働させて、導き出した答えは…。 「あの、ボクちょっと急いでますんでこれで――」 踵を返して強行突破。 「あっ、ちょっと待って――うわっ!?」 「え?わぁっ!?」 引き止めようとした弄光だが、不意に足を滑らせ、そのままリト(レモン)に後ろから抱き付いてしまった。 しかも…。 『むにゅ』 「え?」 「……………へ?///」 両手で思いっ切りその豊満な胸を掴んでしまった。 「あ…………あれ?」 「な………な………な…………///」 暫くその状態で時間が止まった様に固まる両者。 そして…。 「~~~~~~っ!!!///」 リトの顔が一気に紅潮して――。 「何すんだてめぇぇぇーーーーー!!!///」 『ドゴォッ!!!』 乙女の怒りのJETアッパー(廬○昇龍覇)、炸裂。 「ごばぁっ!!?」 まともに受けた弄光の身体はそのまま宙を舞い、頭から真っ逆さまに墜落した。 『せっ、先輩~~~!!』 慌てて弄光に駆け寄る後輩 s その隙に、リトは全速力でその場から離れた。 『先輩!!しっかりして下さい、先輩~~!!』 「の………の………の……」 『の?』 「ノーブラでした…♪」(ガクッ…) 『さすが先輩っ!!こんな時でも探求心を忘れないなんて、男の中の男だーー!!』(感動) ―――――― 一階、渡り廊下――。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ…///」 顔を真っ赤にしながらも、何とか気分と呼吸を整えようとするリト。 よっぽどさっきの出来事がショックだったのか、教室に戻る筈が何故かこんな所まで来てしまった。 「あんの野郎ぉ…、人の胸思いっ切り掴みやがってぇ~…///」 胸を押さえて、弄光に対してふつふつ怒りが湧き上がる。 (おかげで一瞬変な気分になっちま………って何考えてんだよオレはぁ!!///) 『ガンガンガンガンッ!!!』 さっきの感触が一瞬頭をよぎって、一刻も早く忘れようと校舎の壁に頭を打ち付けまくるリト。 端から見れば、ヘッドバッドの練習をしている様にも見える。 「あ、あなた…。何をやってるんですの…?」 「へ?」 再び後ろから声を掛けられ、振り返ると…。 「壁に向かって頭突きなんかされて…、何か格闘技の練習でもされてるのかしら?」 自称、彩南校のクイーン(通称、変人クイーン)天条院沙姫が、何か不思議な物を見る様な目をして立っていた。 勿論、今日もお供の九条凜と藤崎綾も一緒である。 (ぅわー…、今度は天条院センパイだよ…) またしてもあまり関わりたくない人に出会ってしまい、軽くうなだれてしまった。 「な、なに人の顔を見るなりそんな嫌そうな表情されるんですの!?失礼ですわね」 少し不愉快な気分になる沙姫。まぁ、いきなりこんな行動をとられれば当然といえば当然だが…。 「ってアラ?あなた見かけない顔ですわね。転入生かしら?」 「え゛っ、ええ、まぁ…」 「んー、それにしては何か何処かで…、それもごく身近で会った事がある様な顔なんだけれども…」 リト(レモン)の顔をまじまじ見ながら考え込む沙姫。 と、ここで凜が――。 「沙姫様、もしかしてこの娘ではないでしょうか?本日ララのクラスに編入してきた、『あの』結城リトのイトコというのは――」 「ああ、あなたが今学校中の話題になっている噂の編入生なのですか」 「ぁ…、ぁはは……」 「ふ~ん、そう…。あなたが…」 苦笑いするリトをよそに、何か考え込む沙姫。 (やば…、何か嫌な予感がビンビンする…) 頭の中で、日頃の非日常的日常の中から生まれた危機察知能力が警報を鳴らす。 そうでなくとも、只でさえこの人と関わるとロクでも無いことばっかり起きるので、リト自身これ以上この場に留まりたくなかった。 (これ以上ここにいるのはマズい…。何か分かんないけどそんな気がする!早いトコ逃げなければ!) という訳で、ややこしい事に巻き込まれる前にさっさとこの場から立ち去ろうとしたリトだったが…。 「あなた、名前は?」 「う゛ぇっ!?」 一瞬早く、沙姫の方から会話を切り出され、逃げる機会を潰されてしまった。 「『う゛ぇっ!?』ではなくて、名前は何と言うのか聞いてるんですの」 「ぇ、ぇーと…、れ、レモン…です…」 「そう、レモンさん。私は三年の天条院沙姫。この彩南高校のクイーンですわ」 「は…はぁ……」 「いい機会だからあなたに一言だけ言っておきますわ。いい?彩南高の真のクイーンはララなんかではなくこの私です!!あなたもそこの所勘違いしないで、私をクイーンと称え敬う様に!! いいですわね?彩南高のクイーンはこの私!!ホーーホッホッホッホッ――!!!」 「はい分かりました。それじゃボクはこれで――」(投げやり気味) 「ちょっ、ちょっとお待ちなさい!!何故そんなそそくさ逃げようとするのですの!!?」 「いやだって…、なんか『センパイとは関わっちゃいけない』って本能が言ってまして…」 「どういう意味ですの、それは!!?」 至極当然、ごもっともなお怒り。 しかし、今までが今までなのでリトの言い分も解らなくはない。 「あなた、見掛けだけじゃなく中身まで結城リトと同じで私をバカにしてるんですの!?」 「い、いえ、決してそーゆー訳じゃあ――!?」 「じゃあどういう訳なんですの!?」 激昂してリト(レモン)を責め立てる沙姫。 「ぇ…ぇーと~……、その~………」 返答に困るリト。説明しようと思えば出来るかもしれないが、何分この人にはその自覚症状が無いので多分理解してもらえないだろう…。いや、きっと理解してもらえない。(断言) その上、後ろにいる凜と綾にも睨まれ、図式3対1状態でかなり厄介な状況である。 (ほーら、やっぱり段々とややこしくなってきた…。なんとか適当に誤魔化して早いトコここから離れなきゃあ――) どうやってか沙姫の機嫌を宥め――とゆーか、いい加減これ以上関わりたくないので、この場からの離脱方法を考えるリト。 そして、考え抜いた結果…。 「あっ、ザスティン!!」 「えっ!?どこっ、どこっ、どこっ、何処ですのザスティン様ぁ~!!///♪」 リト(レモン)の指さした方向へ向かって、自分の想い人の名前を連呼しながらその姿を探す沙姫。 「あぁザスティン様ぁ~!!何処にいらっしゃるのですか~、私のザスティン様ぁ~!!///♪」 「沙姫様、沙姫様」 「ちょっ、五月蝿いですわよ綾。ザスティン様ぁ~!!あなたは一体何処に――!!///♪」 「沙姫様っ!!」 「って何ですの綾!!さっきからゴチャゴチャと!!」 「あの…、彼女逃げちゃいましたけど…」 「へ?」 振り返った時にはもう遅く、既にリト(レモン)の姿はそこには無かった…。 「……」 ……………。 …………。 ………。 「はっ…、謀りましたわねぇ~~~~!!!」 古典的な手口ほど、案外簡単に引っかかるものである…。 「しかし、あの短い時間で足音一つ起てずに…。逃げ足も結城リト並みですね…」 「凜、感心してないでさっさと追いかけなさい!!」 「む、無理ですよ沙姫様ぁ~。もう完全に見失っちゃってますから~」 「綾、世の中諦めなければ何でも出来る様になっているのよ!!」 「沙姫様、それでもやはり無理があると思いますが…」 「ムッキーーー!!!おのれ~ララといいあの娘といい、私をコケにしくさってぇ~!!この屈辱必ず返して差し上げますからねぇ~~!!!」 沙姫の怒りの叫び声が、澄み切った青空へ消えていった――。 ―――――― 『ガラッ』 「た…、ただいま~…」 「おぉ、おかえりレモり――ってどーしたの?何か随分疲れてるみたいだけど…」 「トイレ行ってきただけでそんなにバテバテになるもんなの?」 「いや、ちょっと痴漢と変人に会っちゃって…」 「「は?」」 頭に?マークを浮かべる籾岡と沢田をよそに――。 (ぁー…、また何かあったんだろーな~…) ――と、春菜だけはなんとなく事情を察して、憐れみチックな苦笑いを浮かべた…。 「……まぁいいや。ところでレモりん」 「ぅん?何、籾岡…さん?」 「今さっきみんなにも話したんだけど、今日の放課後、レモりんの歓迎会をしようと思ってるんだ」 「へ、歓迎会?」 「うん。駅前に美味しいケーキバイキングのお店があってさ、そこで開こうと思ってるんだけど。あたし丁度そこの割引券持ってるし♪」 「そ、そんな、別にいいよ、そこまで気を使わなくても。なんか悪い気がするし…」 「なーに言ってんのさ。ここはお互いの親交を深めるのに丁度いい機会だし、遠慮なんかしないの♪」 「いや、でも…」 籾岡からの誘いを渋るリト。自分の為に歓迎会を開いてくれるその気持ちは嬉しいのだが、何か騙してる様な立場上、申し訳ない気がして踏み込めない。 「行こーよリ…レモン~。せっかくリサ達が誘ってくれたんだしさ~」 ララがリトの背中を押す。 「ララ……ちゃん…」 自分の事を気遣ってくれてると思ったのか、少しだけ気持ちが揺らぐ。 「私もこの間連れてってもらったけど、あそこのモンブラン凄く美味しいんだよ?あ、チーズケーキも人気あるし、ティラミスもハズせないし…。 今月のお小遣いも残り少ないから、こんな機会じゃなきゃ食べに行けないもん♪」 「――って、目的はそっちかい!!」 おもわず吉○的ズッコケ&ツッコミをやってしまった。 「ま、まぁまぁ…、やっぱりこういうのは大勢で行った方が楽しいし……、行こ?結……零紋さん」 「む……うーん…」 春菜からも背中を押されて、しばし考え込むリト。 「………それじゃ、お言葉に甘えようかな」 「よっし、決まり!」 「そうこなくっちゃ♪」 籾岡と沢田がテンション高く喜びの声を上げた。 「わ~い、レモンありがと~♪」 よっぽどケーキバイキングに行けるのが嬉しかったのか、おもわずリトの胸に飛び込むララ。 「わぁっ!?いいいきなり抱き付……かないでよ!///」 「えへへ~♪」 「いや『えへへ~♪』じゃなくって……ってこら頭っ!頭そこですりすりすんな…じゃない、しないでよ!///」 「う~ん、柔らか~♪ふっかふか~♪♪」 とても気持ち良さそうにリトの胸に顔を埋めるララ。 「ぁ……ぁぅ~……」 その隣で、その様子をちょっと羨ましそうに眺める春菜。 「ぇ……ぇぇの~…///」 「天使が~…、天使が戯れておりますぞ~…///」 「こんなスンバラシイ光景を目の当たりに出来るなんて……、生きててよかった~……///」 そして、少し離れた所で恍惚の表情を浮かべる取り巻きの男共。 数名程前屈みになった奴もいたが、それは見なかったことにしておこう…と、リトは心に誓った。 「「むー…」」 そんな中、二人揃ってその様子を、ある一点を凝視しながら考え込む籾岡と沢田。 「ねーレモりん」 「離れてって!///――って何?どしたの?」 ララを引き剥がそうとしてるリト(レモン)に籾岡が尋ねる。 「朝からずっと思ってたんだけど……、レモりんって何気に胸大っきいよね…」 「うん…、ララちゃんにも負けてないかも…」 「え゛!?///」 そのセリフに、何か嫌な予感がした。 「ぁ…、ぁの~……、それってどーゆー……」 「「……」」 「……」 ……………。 …………。 ………。 「「ニヤ~リ♪」」 『ゾクッ!!』 籾岡と沢田の怪しい笑みと共に、全身を寒気が襲い掛かる。 リトの危機察知能力が最大級の警戒を告げ、頭の中ではあの名艦長が『総員、第一級戦闘配置!!』と叫んでいたりもする。 「な…な……何なの…カナ…?そのステキな笑顔は…」 「いえいえ別にぃ~♪」 「ただちょっっっとオモシロい事思い付いただけぇ~♪」 手をワキワキさせて、ゆらりと一歩踏み出す籾岡と沢田。 「おお…オモシロい事って……ナニ…?」 顔を青くして、ずさりと一歩下がるリト。 「ん~?とーーってもオモシロい事ぉ~♪あ、気持ちイイ事なのかなぁ~?」 「説明になってないってば。ぼぼ…ボクに何する気さ?」 「大丈夫だって、何もしないからさぁ~♪」 「いやいや、する気満々の人が言うセリフじゃ無いのかなそれは…」 二人が一歩踏み出す度に一歩下がるリト。 と、ここで沢田が――。 「あれ~?」 ――と、何か後ろの方を覗き込んで…。 「へ?」 ――と、つられて振り返ってしまい…。 「隙ありー!」 「え?」 ――と思った時には既に遅し…。 「うりゃあ♪」 『むにゅうっ』 「ひゃうぅっ!!?///」 『おぉぉぉーーーー!!!』 籾岡がリト(レモン)の胸を思いっ切り鷲掴みにした。 同時に、周りの男共が歓喜っぽい雄叫びを上げ、前屈みになる奴続出。 「ひゃ~、やっぱり思った通り、ララちぃにも負けず劣らずのボリューム♪いやちょっと待って、もしかしたらレモりんの方が大っきいかも!」 「なななななな何すんだよ籾岡……サン!!?///」 突然の事に、一瞬素に戻りかけたリトだったが、何とかギリギリの所で踏ん張った。 「だってこんな立派なモノが目の前にあったらそりゃ触ってみたくもなるでしょ?しかも何?レモりんノーブラじゃん!」 『ナニーーーー!!!!』 再び男共が叫び声を上げ、前屈みになる奴が更に増えた。 しかも…。 「ぼばぁっ!!」 「ぶはぁっ!!」 あまりの衝撃に鼻血噴出で倒れる奴出現。 「リサズル~い。あたしも~♪」 「いいよ~♪さぁ、飛び込んでおいで~♪」 リト(レモン)の胸を揉み揉みしながら、ニヤニヤ顔で答える籾岡。 「こっ、こらぁ!勝手に決め―――ひゃあん!///」 籾岡に文句を言いかけたが、間髪入れず沢田がリト(レモン)の胸に飛び込んできた。 その上…。 「そ~れ、ぱふぱふぱふぱふ~♪」 「うひゃ~、スッゴ~い、気持ちいい~。この感触クセになりそ~♪」 「やっ…!ちょっ…いい加減に………はぁん!///」 「じょばぁっ!!」 「ぶばぁあっ!!」 目の前の現状とリト(レモン)の嬌声によって、鼻血噴出被害拡大中。 「あーズルいよ~。私も混ぜて~♪」 (ってうぉい!!『混ぜて~♪』じゃなくて助けんかいララぁ!!///) 更にララまで楽しそうに混ざってきて、最早収拾がつきそうに無くなった頃…。 「み、みんなぁ…、もうやめなよ~…。零紋さんが嫌がってるし、ここ教室だし~…///」 流石に学級委員長として……とゆーか人として、これ以上の公共羞恥プレイはマズいと思い、春菜が仲裁に入る。 (春菜ちゃん~…、やっぱ頼りになるのはキミだけだ~…) 心の中が感謝感激雨嵐なリト。 ――が。 「え、何?春菜も混ざりたいって~?しょーがないなぁも~♪」 「はあぁぁっ!!?///」 「えぇぇぇっ!!?///」 事態は予想だにしない展開に発展。 いや、ある意味予想通りなのか? 「言ってないっ!そんな事言ってないよぉ~!!///」 「テレるなテレるな。さっきまで混ざりたそうな顔してたくせにさ~♪」 「わっ、私そんな顔してな――!///」 「その割にはさっき未央がぱふぱふしてた時、スッゴく羨ましそうにしてたじゃん♪」 「ぁ……はぅ~…///」 顔を赤らめて俯いてしまった春菜。 (は…春菜ちゃん…、そんな事考えてたの…?///) そして、嬉しいやら悲しいやら、複雑な気分になるリト。 「ホラ春菜、一回やってみなって。もうホント病み付きになっちゃいそうになるから♪」 リト(レモン)から離れて、春菜を前に押し出す沢田。 「春菜~、レモンの胸凄く気持ち良いんだよ~♪ぷにぷにでふかふかなんだよ~♪」 お気楽そうに語るララだが、二人の耳には全く入っていなかった。 何故なら…。 (ま…マジで?マジで春菜ちゃんまで?それちょっとキツくない?いや個人的には嬉しいんだけど……ぅ゛ーん…///) (ど…どうしよう…。何とか誤魔化せられないかな…?いや、でもこんなチャンス今後一切無いだろうし…………って何考えてるの私はぁ!!///) 互いにドキドキしながら、これから起こりそうな事について色々といっぱい考えていたから。 「春菜、早くしなってっ!」 『ドンッ!』 「きゃっ!?」 「え?のわぁっ!?」 しびれを切らした沢田に背中を押されて、リトの胸に飛び込まされる春菜。 しかし、勢いがつきすぎた為に、そのままリトを巻き込んでその場に倒れ込んでしまった。 「ぃ…つぅ~……、大丈夫…?西連寺さん」 「ぅ…うん……、何とか……」 そう言って、起き上がろうとした二人だったが…。 「「ぁ……///」」 不意に目が合ってしまい、今の状況(春菜がリトを押し倒しているような状態)を理解して、お互いに顔を真っ赤にしてしまった。 (端から見れば女同士なのだが…) 「ごごごごごめんなさい~!!あのっ決してワザとじゃあ――!!///」 「いいやいやいや解ってるからっ!!そんなに気にしないで――!!///」 (つーかパンツ見えてますからっ!!///) 座り込んだまま後退り、必死に誤る春菜。その拍子に足の隙間から純白のモノが見えてしまったが、男の悲しい性なのか、あえて黙ってるリト。 「な~にやってんのさアンタ達は~……………………って、レモりん…?」 呆れ顔でリト(レモン)を起き上がらせようと手を伸ばした籾岡が突然硬直した。 「ねぇ………レモりん…」 「ん…?どうかした?」 今度は何を考えているのかと思ったリトだが、籾岡の目があまりにもマジなのでつい身構える。 一方、籾岡はリト(レモン)の身体のある一点――それも足下の方を見続けている。 そして…、籾岡が意を決して放った一言は――。 「レモりん…、何でパンツ穿いてないのぉーー!!?」 「んなぁっ!!!///」 『ぶう゛ぁあぁぁぁーーー!!!!!』 おっと、今の衝撃発言で残りの男子生徒全員赤い噴水と化して倒れてしまった。 「ごごごごご誤解を招くような事言うなぁーー!!ちゃんと穿いてるだろーがぁーーー!!!///」 「うん。でもソレ『パンツ』じゃなくて『トランクス』だよね?」 「穿いてる事に変わりねーだろぉーー!!!///」 (ゆ…結城くん…、口調が…) 激昂するリト。よっぽどさっきの籾岡の発言がカンに障ったのか、口調が素に戻ってる事に全く気付いていない。 「でもレモりん、何で男物の下着なんか穿いてるワケ?」 「うぇっ!?」 沢田からの質問で、リトはようやく落ち着きを取り戻した。 「ぁ…え~っとさ~……、こ、こっちの方が何か着心地が良くってさ…、普段から愛用してるんだ~……。は……ははは…」 乾いた笑いを浮かべるリト。しかし心の中は…。 (しまったぁ…、朝からバタバタしてたから下に短パン穿いとくのすっかり忘れてた…) 自分の迂闊さを激しく後悔していた。 「ん?って事はレモりん…」 「ほぇ?」 「もしかして…、こーゆー下着一枚も持っていないとか?」 そう言って、籾岡がおもむろに自分のスカートをめくり上げた。 「わぁあバカァ!!何やってんだよこんな所でぇ!!?///」 「りっ里沙ぁっ!!?///」 春菜が慌ててスカートを下げさせ、その間必死に目を背けるリト。 しかし、バッチリ見てしまった…。黄色いレースの紐パン。 「何テレてんのさレモりん?女同士でしょーが♪」 「んな事ぁどーだっていーんだよ!!ここ教室だぞ!?誰かに見られたらどーすんだよ!!?///」 「な~に言ってんの。パンツ見られるのが怖くて女子高生なんかやってられないっての♪」 (丁度男子共は全員気絶してるし) 「どーゆー理屈だそれは!!///」 籾岡のムチャクチャな言動にマジギレするリト。 最早口調とかはどうだって良さそうな感じになっているように見える。 「しかし…、これはいけませんなぁ未央サン…」 「はい…、いけませんねぇリササン…」 まるで某時代劇の悪代官と越○屋の如く、かなり怪しい笑い声を発する二人。 「よしっ、特別サービスだ!レモりんの編入祝いに、あたし達がレモりんに似合う下着を選んであげるよ♪」 「はあぁぁっ!!?」 籾岡達の申し出に驚愕するリト。 「いやいや、いい!いい!!別にそんなの要らないし――!!」 「何言ってんの!レモりんみたいなとびっきり可愛い娘が男物の下着なんか穿いてたらそれこそイメージが合わないでしょーが!」 「そーだよ!レモりんにはもっとこう、『いかにも』って感じな下着を着けてもらわなきゃ!せっかくの美少女遺伝子が台無しだよ!?」 内容的にはとても嬉しい事を言ってくれてるのかもしれない…。 ただし、それは『女』だったらの話であって、『男』のリトにとっては迷惑極まりない話である。 「わ~なんか面白そ~♪ねーねー、それ私も選んでいいかな~?」 (ってうぉーい!?何お前までノッてんだよララぁー!!?) 何故かララまでノリノリで便乗してきて、唖然とするリト。 「それじゃみんなで選んであげようか、レモりんの為に♪」 「さんせー♪」 「よーし、私張り切っちゃうからね~♪」 「……」 無言で春菜の方を見て助けを求めるリトだが…。 「……」(ふるふる) 『ごめんね…、あーなったらもう止められません…』みたいな感じで、申し訳なさそうに無言で首を横に振る春菜。 「頑張って、レモりんにぴったりの下着を選ぶぞー!」 「「おーー♪」」 「……………………………………………マジ?」
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【種別】 人名 【初出】 新約十五巻 【解説】 『上里勢力』に所属する少女。 『絶滅犯』去鳴の学園都市襲来に際し、上里翔流が呼び寄せた。 上条当麻との戦闘における助っ人及び見届け人としての招集だったが、 去鳴の乱入により上条には逃走されてしまった。 陸上競技の選手のような姿で、営巣部隊(ユースフルスパイダー)相手にハンマー投げ攻撃を掛ける描写がある。
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――――――保健室――。「それで、結局下着買いに行く羽目になっちゃった訳?」「ぇぇ……まぁ…」「だから言ったじゃないの、せめてショーツ位は穿いて行きなさいって。結城君が変に拘ったりなんかするから――」試験管を軽く振りながら、御門先生が呆れた様な声で言う。「いや、だって…、オレにだって男としてのプライドってモンがありますから、そんな女の下着を付けるなんてマネ…」「あなたに今更そんなプライドなんて物が有ったんですか?結城リト」「………それどーゆー意味だよ?ヤミ」窓際で小難しそうな分厚い本を読みながら失礼なツッコミを入れる金色の闇を軽く睨むリト。「大体お前何でこんな所に居るんだよ?いやそもそも何でオレが『結城リト』だって事知ってるんだよ?」「居たり知ってたりしちゃ悪いんですか?」本から目を離さずに憎まれ口を返すヤミ。「なんかね、何時も居る図書室が今日は大掃除をやってて入れないらしくて。それで「ここが一番静かそうだから」って言うから。結城君の事は、私がその時うっかり口を滑らせちゃって…」御門先生が笑いながら代わりに答える。「あ、そういえばHRでも言ってたっけ?今日一日図書室が使えないって」その事を思い出し、リトはヤミがここで本を読んでいる理由を納得した。………だが――。「………………先生」「ん?」「オレの事はワザとでしょ?」「や~ね~♪何の事~?」手をひらひらさせて、内側に邪気がたっぷり含まれてそうな無邪気な笑顔で答える御門先生。(あ、こりゃ絶対ワザとだな…)リトは確信した。そりゃあもう、その笑顔を見ただけで疲労感が津波の如く押し寄せる程に…。「大丈夫よ、ヤミちゃんもこの事は内緒にしといてくれるって約束してくれたから♪」「そもそもこんな非常識な話、話した所で誰も信じたりなんかしませんよ」「……」「そう言うお前もララと同じく十分非常識なんだけどな」とは思ってても口には出さない。出したらその場で即、人生THE ENDなのは目に見えていたからだ。「しかし…」一言呟き、ヤミは視線をリトの方へ――。「?」「……」不思議そうな顔をするリトをよそに、ボーっと今のリトの姿をまじまじ見つめるヤミ。「どーした?オレの顔に何か付いてるか?」「いえ、別に…」視線を本に戻すヤミ。だが、頬がほんのり染まってる様に見えるのは気のせいだろうか?(ドクターから話は聞いてましたけど…、本当に違和感が全く感じられませんね…。外見だけならプリンセスにも引けを取っていないのでは…?いろんな意味で)なんか色々と――、聞く人によってはちょっと妖しい事を考えてるヤミ。「結城リト……、生まれてくる性別を間違えたのでは…?」(ボソッ…)「ん?何か言ったか?」「……いえ、何でも…。ただ、あなたがその身体を使って……その…………えっちぃ事をやってないか気になっただけで…///」「はっ!?なな、何言ってるんだよお前は!?///」「だってあなたの事だから、今の身体なのをイイ事にあんな事やこんな事――///」「すっする訳ねーだろ、そんな事!!///」いやいや、やってたじゃん。昨日風呂場で身体洗ってる時に――。「るせーよ、黙ってろ!!」はいはい…。「?、誰と話してるんですかあなたは…?」「いやなんでもねー、こっちの話…」そう言って、ここに来る前に買ってきたカフェオレのパックにストローを刺す。「……にしても先生…」「んー…?」カフェオレをちびちび飲みながら、顕微鏡を覗き込む御門先生に話し掛ける。「結構細かい事もやるんスね、それ」「だから言ったでしょ?思いの外時間が掛かっちゃうって。」リトの言う『それ』とは、勿論元に戻る薬(とゆーより飲んだ物と同じ薬)の事である。「コレ、ホントに凄く細かい分量で調合しなきゃいけないから神経すり減っちゃいそうになっちゃうのよね~。しかも使う物もどれも普通じゃ手に入らない物ばかりだし、ほんの僅かでも調合が狂っても十分な効力は得られないし、やり直すにも材料を集めるのにどれくらいの時間が掛かっちゃうか…。オマケに保健の職務もこなさなきゃいけないし、ぐすっ…先生もしかしたら過労死しちゃうかも――」「いやいやいやいや、元々先生がオレにこんな薬飲ませたからこんな事になっているのであって、言ってみればこれは自業自得でしょーが」よよよ…と時代劇風な悲しみ方をする御門先生に、顔色一つ変えずに淡々とツッコミを入れるリト。「だってぇ…、元々コレを作ってくれって言ったのは別の娘であって、私はただ命じられるままにやっただけで…ひっく…」「うん、それは知ってます。でも飲ませたのは先生のミスですよね?」「しくしく……、結城君…、先生いぢめて楽しい…?」「………はぁ~…、てゆーか、疲れるからもうやめませんか?」「ちぇっ、つれないなぁ~」軽く拗ねながら、御門先生は泣くマネを止めた。「大体そうじゃなくても、こんな事先生しか頼れないんですから真面目にお願いしますよ。」「アレ?先生もしかして期待されてる?」「あーはいはい、だからホントに頼みます」m(_ _)m「おっけ~、それじゃ先生頑張っちゃうからね~♪必ず結城君の編入期間内には完成させてあげるから♪」そう言って、様々な薬剤をコンマレベルで量って混合させていくる御門先生。「ふ~、とりあえずやる気出してくれて良かった…」ホッと一安心して、リトはカフェオレを一気に飲み干した――。「あ、分量間違えた」『ブーーーーーッ!!!』そして盛大に吹いた。「冗談よ♪」「笑えんわぁ!!!」「あの、少し静かにしてもらえませんか?集中出来ないんで…」――――――「じゃ、オレもう行きますから、薬の方宜しくお願いしますね」「は~い、まっかせなさ~い♪」それだけ告げて、リトは保健室を後にした。「ちょっと時間食っちまったな。もうみんな待ってるかな?」少し急ぎ目で校門へと向かうリト。と、そこに――。「ねぇそこの人、ちょっといいかな?」「へ?」突然誰かに呼ばれて、振り返ると…。(…………ルン?)おそらく今回の騒動の諸悪の根元…じゃなかった、根本的原因だと思われる人物、ルンが立っていた。しかも…。(アレ?ルンさん何か怒ってる?)笑顔なんだけど何故か殺気立っているように見えるのは、多分気のせいではない。「もしかしてあなた?今日編入してきたリトくんのイトコっていう娘は?」「え!?ぇぇ…まぁ……そーですけど…」「そっ。私はルンよ。ルン・エルシ・ジュエリア。あなたは確か……結城レモンさん…だったっけ?」「あ、ああ、リトから話は聞いてます。なんでもくしゃみをすると性別が変わるとか何とか。特に女の子の方は今まで見たことも無いような『絶世の』美少女だとか♪」何か雲行きが怪しくなりそうだったので、とりあえずおだててご機嫌を取ってやり過ごそうとするリト。わざわざ『絶世』の部分を強調して。「えっ!?リトくん私の事そんな風に思ってくれてたんだ~、きゃはぁ♪///…………って、そんな事は『今は』どーだっていいの!! 」(ぅ…おだて作戦失敗…)人生、そんなに甘くはない…。「ちょっとあなたに聞きたい事があってね…」「き……聞きたい事?」「ええ」そう言って、ずいっとリト(レモン)に顔を近付けるルン。いや、『睨み付ける』と行った方が正しいか?(ち……近いっす、顔近いっすよ、ルンさん///)嫌な予感はバリバリしてたのだが、女の子――それもかなりの美少女の顔が至近距離にあるため、それ以上にドキドキして顔が赤くなってしまう。「あなた、リトくんの事どう思ってるの!?」「…………………は?」凄みのある顔をして何を言い出すかと思えば、『ちょっと言ってる意味が分からない』といった感じの質問をされて、キョトンとした顔で疑問符を浮かべるリト。「『は?』じゃなくて、リトくんの事どう思ってるのかって聞ーてるの!」「いや、あの……、それってどーゆー…」「決まってるでしょ!?好きなのか嫌いなのか、どっち!?」「えと…、ナゼそんな事を…?」「これ以上ライバルに増えられると益々リトくんに近付けなくなるじゃない!」「や、やだなぁ…、そんなライバルだなんて…。ボクとリトはイトコ同士ですよ?そんなルンさんが思ってる様な関係なワケ――」「確かイトコ同士でも結婚は出来るって聞いた事あるけど…」「……」「……」「ぁの~……、一応参考までに聞きますけど…、もし…、ボクがリトを好きって言ったら――」「そんなの決まってるでしょ?♪」ルンがニコッと笑って――。「ライバルは早めに潰ぅす!!」グッと拳を握り締めてそう言った。「ぁ……ぁははは…」リト、おもわず苦笑い。「こっちはあなたやララと違って活動に制限があるんだからうかうかしてらんないのよね。御門先生にも性別を強制的に私に固定させる薬を作ってくれる様頼んだんだけど、どうも完成が遅れてるみたいだし…」(あ、やっぱりお前だったんだ、あんなバカげた薬頼んだの…)大体予想はしていたが、いざ確証を得ると疲労感も倍になる。(てゆーか、ルンってこんな奴だったっけ?オレの知ってるルンより随分黒い様な…)リトが知らないのも無理は無い。なぜなら、ルンは普段――とゆーかリトの前ではいつも猫を被っているからだ。しかし、その裏ではララを闇討ちしようとしたり暗殺依頼を出したりと、結構悪どい事もやっている。ま、やる事なす事成功した試しは一度も無いのだが…。「さ、ちゃっちゃと答えてよ。リトくんの事どう思ってるの!?」「いや、だから…、そんな事言われても答えようが…」(オレの事だし…)「好きか嫌いか言うだけが何でそんなに答え辛いのよ~……………はっ、まさか…!?」「えっ!?な、何!?」「あなた…………リトくん――!!」「ギクッ!!」(ヤベェ、バレた!!?)「――と既に親密な関係にあるんじゃあ――!!!」「ずるーーー!!!」ルンの倒置法発言におもわずズッコケてしまった。「そーなんでしょ!?何かリトくんと密接な関係にあるんでしょ!!?」「ち、違うってば!そーゆー事じゃ無くって――」(ある意味当たってるけど…)「じゃあ、どーゆー事なのさ!?」「ぇ…え~っと……それは…」返答に困り、しどろもどろになるリト。と、その時――。『ヒューーー……』「おわっ」「きゃっ」廊下の窓から強めの隙間風が吹き――。『ムズムズ…』「はっ!」その反動で、ルンの髪が自らの鼻をくすぐる。「ゃ……やば……は……は……は……はくちっ!!」『ボゥン!!』「うわっ!?」ルンがくしゃみをすると、辺りをケムリが覆い…。「……ん?」「レ…レン…」その中からもう一つの男の人格、レン登場。「え…?え…?え…?」突然表に出てきて、茫然としたまま辺りを見回すレン。「って……」ふと、レンは自分の身体を見下ろし、今の格好(勿論、女子の制服)を理解すると…。「うわぁあーー!!またこんな格好を~~!!!///」顔を真っ赤にして、一目散にその場から逃げ出した。「……」その様子をポカーンと眺めていたリトだったが…。「と……とりあえず助かった~…」状況を理解し、安堵感一杯の溜め息をついた。「しかしさっきレンを見てふと思ったんだが…」ここでリトから素朴な疑問。「ルンの奴、『薬で性別を自分に固定させる』って言ってたけど…、そしたらレンの方はどーなるんだ?」ふと、そんな考えが浮かんでしまった。(一定時間したら元に戻んのかな?いやそれだとあんまり意味をなさないし第一オレも元に戻ってもいいはずだし…『固定』って言ってたから、一回飲んだらずっと『ルン』のままって事なのか?あれ?だとしたら『レン』の方は…)……………。…………。………。「…………深く考えない様にしよう…」何か怖くなったので、リトは考えるのを止めた。「って、こんな所で道草食ってる場合じゃなかった!みんな待ってるだろうから急がねーと!」という事で、リトは駆け足でララ達が待つ校門へ向かった――。途中、体育教師らしき人に「廊下を走るな!!」と説教を食らい、更に時間をロスした事は一応追記しておこう…。――――――一方、保健室――。「ところでヤミちゃん、さっきから何を見てるの?」「何って、『ハ○ーポッター』という本です。結構人気があるらしく、『面白いから』と進められまして…」「いや、そうじゃなくって、その本の裏にある中学生みたいな隠し方をして読んでる本の事」「えっ!?な、何を言ってるんですか!?私は何も隠してなんか――あっ!///」『バサッ』「あら、落としちゃったわね。……ってコレ、ファッション誌じゃない」「あ、あのドクター、ちょっと待っ――!///」「えーと何々…、『必見!!オトコを骨抜きに出来る最新・流行のランジェリー特集』……」……………。…………。………。「………………へぇ~♪」(にや~)「ぅ……ぅぅ………///」「そっかそっかぁ♪ヤミちゃんも女の子だもんねぇ~。そういう事を気にするお年頃かぁ♪」「ちっ違いますっ!!これは…その…い、今の流行というものを把握するのに丁度良い資料だったから見てたのであって…、それに……地球の衣類は中々多彩な物が多いし、おもわず目が惹かれる物も一杯あるし………だから…///」金色の闇、只今『見えない所でのオシャレ』がマイブーム。「くすっ、別にそんなに必死に隠さなくたって良いじゃない。女の子なら当然の事なんだから♪心配しなくても誰にも言ったりなんかしないわよ」「ドクター…」「で、ヤミちゃんは一体誰を骨抜きにしたいのかなぁ?やっぱり結城君?」『ジャキッ!』「ドクターミカド…、それ以上変な事を言うのならいくらあなたといえど――」「じょじょ、冗談よジョーダン!もーヤミちゃんったら怒りっぽいんだから~」「…………まぁいいです。それでは、私はこれで…」「あら、どっか行くの?」「いえ別に…」『ピシャッ』「…………ぅ~ん、結城君てばホントに苦労が絶えないわねぇ~。いろんな意味で」――――――校門前――。「あっ、レモン来たぁ~。お~いレモン~♪」ララが元気一杯に手を振ってリトを呼ぶ。校門前には、既に全員揃っていて待ちぼうけていたようだ。「はぁ…はぁ…、お待たせみんな」「遅いよレモり~ん。今まで何やってたのさ~?」籾岡がちょっと膨れっ面気味で尋ねる。「ごめんごめん、ちょっと先生に捕まっちゃって…」ルンの事はあえて伏せておく。「……って、あれ?」ここでリトが何かに気付いた。「………古手川さん?」知らない間に面子に唯が加わっている事に驚くリト。その唯はというと、『何故自分がこんな所にいるのか分からない』という感じで、ちょっと不機嫌そうな顔をしている。「えへへ、私が誘ったんだよ~。リサがケーキバイキングの割引券が余ってるって言ってたし、やっぱりこーゆーのはみんなで行った方が楽しいもん♪」「……私、風紀委員の仕事があるって言ったハズだけど…」楽しそうに語るララに対して、ツンツンモード全開で抗議する唯。「まーまー良いじゃん唯っち。ここはレモりんとの親交を深めるいい機会じゃないの♪」「そーそー、それに何時もそうやって肩肘張ってばかりだと疲れちゃうでしょ?たまには息抜きも必要だよ♪」無邪気な笑顔でそう言う籾岡と沢田だが…。「いや『親交を深める』云々は納得出来るけども、実際はあなた達がバカ騒ぎしたいだけでしょ?」「トーゼン♪」「当たり前でしょーが♪」「…………よくもそんなハッキリとまぁ…」核心を突いたツッコミを軽く受け流し、あっさりと認める二人。それに対し、ガックリ肩を落とす唯。その表情からは何ともいえない疲労感が見て取れる。「………ぁー、ゴメンね古手川さん…。ボクのせいで…」「本当にごめんなさい古手川さん。私がちゃんとみんなを抑えてれば…」ちょっと罪悪感を感じたリトと春菜は、とりあえず唯に謝った。「…………ホントそうね」「ぐ…」「う…」「――なんて別に思ってないわよ。あなた達が謝る事は無いわ」少し諦めた様な感じ唯が二人を気遣う。「古手川……さん…」「ありがと、古手川さん…」「べ、別にお礼なんか言わなくてもいいわよ。一応、結城さんの歓迎会ってのは私も良い事だと思ってるし…、たまには羽を伸ばすのも良いかなと思ったのも事実だし…///」照れくささからか、明後日の方向にそっぽを向く唯。「つまり最初っから乗り気だったって事でしょ?唯っち♪」「始めからそれ位素直になればいいのに、唯っちってばホントツンデレさんなんだから~♪」「良かった~、ホントは喜んでくれてたんだね~♪今日はいっぱい楽しもうね唯♪」「………まぁもっとも、この三人にもいい加減『人に迷惑を掛けている』という事を自覚してもらいたいのも事実だけど…」「「ホンット~~にすみませんっ!!」」こめかみをピクつかせる唯に、とにかく平謝りするリトと春菜だった。「さてっ、それじゃ早速行きましょーか。まずはレモりんのパンツ買いに♪」(ぅ゛……やっぱり本気なんだ…)心の中でうなだれるリト。「は?歓迎会に行くんじゃないの?何その『パンツ買いに』って?」「何って……あーそっか、唯っち知らなかったんだね。実は――未央すわぁ~ん♪」「はいなぁ~♪」おもむろにリト(レモン)に近付く沢田。そして…。「ペロンッと♪」「わぁぁぁっ!!///」思いっ切りリト(レモン)のスカートをめくり上げ、穿いている下着(トランクス)を露わにした。「何すんだよいきなりぃっ!!///」慌ててスカートを押さえるリト。「……」そして、その異様な組み合わせを目の当たりにして目を点にする唯。「分かった?唯っち」「…………ぃゃ…、別に良いんじゃないの?女の子が男の子の下着を穿いてたって…。好みなんか人それぞれなんだし…」「全然良くないわよ!レモりんみたいな娘がトランクスよ!?こんなんじゃ全く萌えないでしょーが!」「いや萌える萌えないとかそんなの知らないけど、それ以前にあなた達に他人の好みをとやかく言う筋合いは無いでしょ?」「解ってないなぁ~唯っち。これはあたし達がレモりんの事を思ってしてあげてる事なの!レモりん元々可愛いけど、もっと可愛い下着を付けてもらってもっと可愛くいてもらいたいという純真な想いから言ってる訳なんだよ!」「あなた達…」二人の言い分と熱い想いを受け、しばし黙り込む唯。――が。「そんな事言って、ホントは今回の事を口実にしてただあなた達が結城さんをオモチャにして楽しみたいだけなんでしょ?」「「その通ーりっ!♪」」とてもスバラシイ笑顔で、親指を立ててサムズアップする籾岡と沢田。「『その通ーりっ!♪』じゃなぁーい!!全く、あなた達の頭にはいつもそういう事しか無い訳!?」「自慢じゃないけどそーゆー事で頭がいっぱいです♪」「威張って言うな!!」まるでテンポの良い漫才を見ているかの如く、籾岡の大ボケ発言に間髪入れずツッコミを入れる唯。その光景を見たリトは…。(ツッコミが増えると楽できて良いよなぁ…)――と、同じツッコミ属性として心の中で唯に感謝の涙を流したという…。「じゃあ行こ行こ、さくさく行きましょ~♪」「お~♪」「ってちょっとあなた達!人の話をちゃんと――!」「落ち着きなよ唯~。何時も思うんだけどそんなに怒ってばっかだと余計に疲れちゃうよ~?」「そう思うなら少しは自重しなさい!!主に誰の所為だと思ってんの!?」という事で、唯の怒りのツッコミと共に一行は街へと繰り出した――。「なぁ西連寺…」「何?」「オレ……………キレイなままで帰れるかなぁ…」「………………………………ぅ゛ーん…」「あの、そこで黙られると困るんだけど…」早々に、とてつもなく不安を感じるリトだった…。――――――下着屋――。「はいっ、とーちゃ~く♪」「なんかあっという間に着いたね~。移動した気がしないんだけど…」「ララちぃ、気にしちゃ負けだよ♪」前ページから一瞬で舞台が変わるのは良くある事なので…。「結城くん大丈夫?何か顔色悪いけど…」(小声)「ダイジョブダイジョブ…。ただちょっとこの場違いっぽい雰囲気とこれから起りそうな事を想像しちまって億劫になってるだけだから…」(小声)「……ぁー………何ていうか………………頑張ってね?」(小声)これから死地(?)に赴く想い人に対して、春菜はただ苦笑いで声援を贈ることしか思い付かなかった…。「じゃ、まずは胸のサイズを測りましょーかぁ~♪」「ちゃんと自分に合ったブラをしなきゃ血行悪くなっちゃうからねぇ~♪」そう言って、手をワキワキさせてかなり怪しい笑顔でリト(レモン)に近付く籾岡と沢田。「な、ナニ!?その危なそうな目と卑猥な手つきは!?」「決まってんじゃ~ん。レモりんのバストを測るんだよ~♪」「だいじょーぶ。あたし触診には自信があるから♪」「すいません、胸のサイズを測りたいのでメジャーを貸してもらえませんか?」「――ってちょっと唯っちぃ!?」(サンキュ、古手川っ!)唯が機転を利かせてくれたお陰で、本日何度目かのセクハラを免れる事が出来た。「それじゃ測るね、結城さん」「う、うん…。あ、服は…」「そのままで良いわよ、大体分かるから。それに…」「えー、こーゆーのはやっぱ直接測るモンでしょ~!?ナマ乳に直に触れてさ~!」「そーだよ~、それじゃサイズがズレちゃうし、何よりレモりんのナマ乳が見れないじゃん~!」「――とまあ、こんなオジサン臭いハレンチな人達の前であなたも脱ぎたくはないでしょ?」「お心遣い、ホントありがとうございます」「古手川がいてくれてホントに良かった~!」という思いを込めて、深々と唯にお辞儀するリト。「はい、じゃ腕上げて」「は、はい…///」バンザーイとリトが腕を上げて、その後ろから腕を回してメジャーを通す唯。(うぅ…、何か恥ずかし……///)顔を赤らめその状態のまま硬直するリト(レモン)をよそに、唯はメジャーをぐるりとリト(レモン)の胸を一周させる。「えっと大きさは……………………90ね」「「きゅうじゅう!!?」」見事にハモったセクハラーズのお二方。「ララちぃ!ちなみにララちぃの大きさは!?」「えーっと…、89(リトママ談)だよ~」「ララちぃより1cmデカーい!しかも90台ー!!」「出たよー、大台出ちゃったよー!!」「ふ…二人共何でそんなに騒いでんの…?1cmなんかそんなに差は無いじゃない」「分かってないなぁ~レモりん、『1cmの差』というものの重さが!!」「レモりんみたいな娘には分からないだろうけど、女の子がその『1cm』をモノにするのにどれだけの時間と気力を要する事かっ!それはまさに農家の人達が手間暇かけてお米を育てるのと同じ様なものなのだよ!!分かるっ!!?」「胸の1cm差、それすなわちオリンピックのコンマ何秒の僅差に匹敵すると言っても過言じゃないの!!OK!!?」「え…えーと……、お米とかオリンピック云々はともかく、とりあえず二人が胸の1cmにも深ーく拘ってる事はよく分かったよ…」籾岡と沢田の鬼気迫る程の勢いに押されておもわずタジタジになるリト。「よしっ、じゃレモりんも分かってくれた所で――♪」「早速レモりんに似合うランジェリーを選びましょー♪」「お~、頑張るぞ~♪」という事で、きゃいきゃいはしゃぎながら商品を選びに行く籾岡・沢田・ララの三人。(テンション高ぇ~…)(何か……いつも以上に活き活きしてる…?)(不安……、果てしなく不安…)そして、リト(レモン)・春菜・唯の三人はその様子を見ながら何とも言えない不安を感じずにはいられなかった…。――――――「ねぇねぇ、コレなんか良いんじゃない?レモりん♪」「いや……それは…………どーかと思うんだけど…///」「えー、可愛いじゃんコレ~。両側紐だよヒモ。リサとお揃い~♪」「――と言われましても……ボクはちょっと…そーゆーのには……抵抗が…///」「大丈夫だって、レモりんのエロさなら♪」「『エロさ』ってどーゆー意味だよ、『エロさ』って」淡いブルーの紐パンを片手に失敬な事を言う沢田にツッコミを入れるリト。「甘いよ未央。やっぱレモりんにはコッチの方が良いって♪」「あの…籾岡さん?結城さんキャバ嬢じゃないんだからそんなド派手なのもどうかと…」「あ、やっぱり黒の方が良かった?」「そういう意味じゃ無くてっ!大体ソレ校則違反じゃない!」「大丈夫だって、あの校長なら100%OK出すって♪」「私がOK出さないわよ!!出してたまるもんですか!!」負けじと、ゴージャスそうなルージュのTバック(ガーターベルト付)を薦めてくる籾岡にツッコミを入れる唯。「ねーねー、そしたらコレは~?」「おぉぉ!ララちぃライトグリーンとはあざとい所を突いてくるねぇ~♪しかもフリル付き!」「わー、いいねいいね~♪でもやはりガーターも付けた方が萌えると思うし…」「ぁの…里沙?一応学校に付けていく物なんだから、そーゆーのはどーかと…」ツッコミ若葉マークの春菜も頑張ってツッコミを入れる。――とまぁこんな風に、さっきからこの様なやりとりが続き、『レモン』の下着選びは難航を極めていた。とゆーかこの三人、ワザとやってるのかはたまた本気でそう思ってるのか、あまりマトモとは思えない下着ばかり選んできている。それに対して、リトは唯と連携して片っ端から却下していく。リト一人だったら間違いなく押し切られてしまうのだろうが、今日はもう一人のツッコミ属性である唯がいるので、非常に心強い。加えて、春菜も慣れないながらも支援してくれているので、何とか持ちこたえる事が出来ている。とはいえ、間髪入れずに次から次へとカワリモノの下着を持ってくるので、流石にツッコミのキレも鈍くなり疲労感も否めない。それでも、ここで屈する訳にもいかないので、自分を奮い立たせツッコミを入れ続ける。「それならレモりん、コレはどーかな~?」「………あのさ籾岡さん」「ん?」「何で迷彩柄なの?」「カッコいいでしょ♪」「いやいやカッコいい云々じゃなくて、ボクはどこぞの女兵士ですか!?第一、コレも校則違反でしょ!?」「えー、ダメ~?」「ダメ!!」「じゃあさ、コッチなんかどうかな?」「――ってちょっと待ちなさい沢田さん!その下着スッケスケじゃないの!!それじゃちゃんと隠れないじゃない!!///」「それはレモりんの全身から漲るオトナの色気でカバー出来るから問題ナシ♪」「出来るかぁ!!///」「問題大アリよ!!///」「あーはいはい、じゃあコッチならいいでしょ?コレは透けてないし」「――ってちょっとぉ!!何でコレ穴が開いてんのぉ!?///」「コレ穿いたままでもヤレる様にじゃないの?」「そーゆー事聞いてるんじゃなくてっ!つーかこれならさっきの方がまだマシでしょ!?///」「あ、じゃさっきのヤツにする?」「しねーよ!!!」「両方却下に決まってるでしょ!!?」「ぶ~、ワガママだなぁ、レモりんも唯っちも」「ワガママじゃない!選ぶんならちゃんとした物を選んでほしいと言ってんの!!」「ちゃんとした物ねぇ…」「ねーねー、それだったらコッチの方がいいのかな?」「おぉぉ!ララちぃそれはっ!?」「一部で大人気のストライプー!!(しかも青と白)」「「一部ってナニ!!?」」リトと唯のツッコミは見事にハモった。「ストライプをバカにしちゃいけないよ!!実は白よりもコッチの柄の方が世の中の需要度は高いんだからね!!コレを完璧に穿きこなす事こそこの世の中を征する事と言っても過言じゃないと思うのよあたしは!!!」「り、里沙…、とりあえず落ち着こ?」自らのストライプ理論について力説する籾岡を、春菜が苦笑いを浮かべながら宥める。「加えて、レモりんの美貌があれば正に完璧!鬼に金棒!(一部の)男共狂喜乱舞間違いナシ!!とゆー訳でどう?世の中の需要に応える為にもぜひ――♪」「いやいや、一々そんな需要に応えてたらこの世の中犯罪者だらけになるんじゃないの?」「大体そんな説明聞かされて「ハイ、分かりました」なんて言える訳ないでしょうが」「ちぇっ、ホント贅沢だなぁ~」ことごとく却下されて、流石に軽く拗ね始める籾岡。「ええぃ、それなら取っておきだ!コレは間違いなくレモりんに似合うから♪」――と言って、(怪しい含み笑いと共に)籾岡が自信満々に提供してきたのは…。「――ってうをぉい、ちょっと待てぇい!!コレ下着の意味がまるでねーじゃねーかよぉ!!つーか下着かコレぇ!!?///」説明不可能につき、ご想像にお任せします。つーかもしもし、口調元に戻ってますよ?気持ちは分からなくもないけど…「でもコレがこの店で一番人気があるんだよ?」「コレがぁ!!?コレ一番人気ぃ!?世の中間違ってんじゃないの!!?///」「つーかこんなモンまで置いて、ここどんな下着屋だよ!!?///」現在の流行(+店のラインナップ)という物に愕然とするリトと唯。「ならば仕方ない…、こうなったら究極の切り札を…」「究極?」「それって…?」「ニップレスと前張り。しかも肌色♪」「絶っ対断わぁぁぁる!!!///」「てゆうかあなた達、真面目に選ぶ気あるのぉ!!!」ついに怒り爆発のツッコミコンビ。そして…。(結城くんと古手川さん、息ピッタリだなぁ~…)見事なまでのコンビネーションツッコミをやってのける二人に、素直に感心してしまう春菜だった…。――――――「じゃ、早いトコ着て見せてね♪」「あの…、やっぱり今付けなきゃダメ?///」「トーゼン!さ、早く早く♪」「ぅ………ぅん…///」ようやく選んだ下着(結局唯がチョイスした)を抱えて、リトは試着室へと入っていった。(はぁ~……、仕方ない、こーなったら腹くくるか…///)覚悟を決めて、制服のリボンに手を掛けるリト。昨日に比べれば、少しは自分の身体にも慣れたが、それでもやはり健全な男子としてはどうしても目のやり場に困ってしまう。なので、顔を赤くしつつ、後ろの鏡を極力見ないようにしながら一枚ずつゆっくりと着ている服を脱いでいく。(ぅ゛ーん……、こんな狭い個室の中で素っ裸になるのって、ちょっと変な気分になるよなぁ~…///)少々イケナイ事を考えながらも、まずはパンツを穿いて、続いてブラジャーを手に取る――が。(コレ…、どーやって着けるんだ?)ブラジャーの着け方が分からず、軽く困り果てるリト。「……あの~、誰かそこにいます?」『ん?どーしたのリト……レモン~?』返事を返したのはララ。「なぁ…、ブラジャーってどーやって着けりゃいいんだ?」『え?あぁ、それはね――』『シャーッ』いきなりララがカーテンを開けた。「わぁぁバカ開けんなぁ!!///」慌ててカーテンを閉めるリト。『え~?教えてって言ったのレモンじゃ~ん』「口で教えてくれりゃ良いだろ!何でわざわざカーテン開ける必要があるんだよ!?///」『直接やって見せた方が分かりやすいかな~って思って』「いいよ、余計な気遣いしなくてっ!言葉で説明してくれりゃ大体分かるから!///」『む~、そお?』どうにも腑に落ちない表情だが、ララは要望通り、口でブラジャーの着け方をリトに教えてあげた。『分かった~?』「あぁバッチリ、サンキュ」――という事で、ララに教えてもらった通りにブラジャーを身に着ける。 (む、なるほど…。これが『寄せて上げて』ってヤツなのか…///)その過程で、男じゃまず知り得ない様な事を発見したりもした。そして…。「で…出来たよ~…///」「あ、終わった?じゃもう開けてい~い?」「ぉ……ぉぅ……///」「でわ、それー♪」『シャーッ』ララが勢い良く御開帳~。「「おおぉーーーー!!!」」瞬間、籾岡と沢田から驚きの声が挙がった。「ぅ……ぅぅ……///」清純そうな白の下着を身に着けて、とても恥ずかしそうにもじもじするリト。その姿は、昨日のコスプレとは比べ物にならない程の凶悪なオーラを放っていた。「かわいい~~~!!♪」おもわずリトに抱き付くララ。「いい!!レモりん凄くいいよ!!」「ホント恐ろしい位似合ってるよね!!」続いて、ベタ褒めしまくる籾岡と沢田。(た…、確かに…///)(結城くん…、それは反則だって…///)そして、あまりの衝撃にリト(レモン)を直視出来ず、顔を真っ赤にして目を逸らす唯と春菜。「ね、ねぇ…、もういいでしょ?服着ても///」両腕で下着を隠しながら懇願するリト。――が、これがマズかった…。「え?何?服着たいの?」「き、着たいよそりゃ!///」「じゃあ…、お願いしてみてよ」「はあ!?///」見下し目でリト(レモン)に提案――というか命令する籾岡。どうやら、さっきのリト(レモン)のリアクションを見て、スイッチがSモードに入ってしまった様だ。「ホラ早く。服着たいんでしょ?」「ぐ……うぅぅ……///」軽~く籾岡に対して殺意が芽生えたリト。――が、これ以上この格好のまま時間を取りたくないので、ここはあえて従っておく事にした。「ぉ………お願い…します……。そろそろボクに………服を…着させて下さい……///」(ボソッ)「え?何?聞こえないよ~。ね?未央♪」「うん♪全然聞こえないよね~、リサ♪」「え?私はちゃんと聞こえ――むぐっ!?」「ホラレモりん、もっと大きな声であたし達に聞こえる様に言ってよね♪」ララの口を塞ぎながらリト(レモン)を煽る籾岡。「あ…、あなた達ねぇ…」見かねた唯が二人を怒鳴りつけようとしたが…。「お願い……しますっ…!どうか……どうかボクに………服を着させて下さいっ…!///」一瞬早く、リト(レモン)の方が先に口を開いた。もういい加減に服を着たい一心で、涙目上目遣いで二人を見つめ、さっきよりも大きく、今にも泣き出しそうな声でお願いする。(実際泣きそうな気分になってたけど…)『……』全員フリーズ。(…………………アレ?)……………。…………。………。『ギュムッ♪』×2「――ってえぇぇーーーちょっとぉぉぉーーー!!!///」いきなり、籾岡と沢田の二人に抱き付かれた。「あぁぁもうホント可愛いなレモりんはっ!!」「もう襲っていい?襲っていいかな?襲っちゃってもいいかなぁ~!!///」「だ、ダメに決まってるでしょーが!!てか…、苦し…!///」「あーズルいよ~!私もギュッてしたいのに~!」更に、ララまで触発されてリトに抱き付いてきた。「……///」一方、未だに顔を赤らめたままフリーズしっぱなしの唯。「……………はっ!!?///」お、ようやく我に返った様だ。「ちょっ、ちょっとあなた達何やってるのよ!!?///」「いやだって、レモりんがあんまりにも可愛すぎるんだもん♪」「あんなリアクション見せられたらそりゃ抱き締めたくもなっちゃうでしょ?」「えへへ、レモン~。すりすり♪」「とっ、とにかく!結城さんが嫌がってるから今すぐ離れなさい!!」「「「やだ♪」」」声を揃えて、笑顔で拒否る三人。「ぐぬぬぬ……、西連寺さんっ、あなたからも何か言ってあげて――!!って、アレ?西連寺さん?」唯が振り向くと、さっきまで隣にいた筈の春菜が姿を消していた。――が。「ああああああのあのあのあのあのさささささ西連寺さぁぁぁぁん!!?///」「へ?んなぁ!!?///」リト(レモン)の叫び声で振り返り、目に入った光景に驚愕する唯。何時の間にか春菜が、リト(レモン)の事を力一杯ギュッと抱き締めていたからだ。「西連寺さんっ!!あなたまで何をやってるのよぉ!!?///」「………はっ!!?///」唯の叫び声で不意に我に返り、春菜は慌ててリトから離れた。「ごごごごごごごめんなさいっ!!何か身体が勝手にぃ!!!///」「だだだだだだ大丈夫大丈夫っ!!これもまた役得……じゃなくてっ!!///」「全く何やってるのよあなたまで!!私だって我慢してるっていうのに…」「「………え?」」「い、いや、何でも無いわよ何でも、ホントに!!///」顔を真っ赤にして誤魔化す唯。「ねぇねぇレモりん、やっぱりコレ着けてみてくんない?白でこのレベルならコッチはまだスゴい事になると思うから♪」そう言って、リト(レモン)にストライプの下着を渡す籾岡。「――ってまだ諦めてなかったのぉ!?///」「だってレモりんにどうしても着けてもらいたいんだも~ん!!」「あ、じゃあコッチも着けてみてよレモりん♪」フリル付きのライトグリーンの下着を薦めてくる沢田。「あ、それじゃ私は――」「――って待て待て待てぇ!!///」「あなた達、いい加減に――!!」怒鳴り散らそうとしたリト(レモン)と唯だが、三人共全く聞いちゃいない。しかも――。「ぇ……ぇーと………私は…コッチの方が…///」(は……春菜ちゃん……)(西連寺さん…、あなたまで…)味方だった筈の春菜まで向こう側に加わり、形勢は圧倒的に不利になってしまった。「ホラホラレモりん、早くこのストライプを着けてみてよ♪」「いやいや、まずはこのフリルのライトグリーンから♪」「え~?レモンならオレンジの方が似合うよ~」「ぁ…あの…、チェックも中々良いと思うんだけど…///」「あーーもう!!何でもいいから一分一秒でも早くオレをここから解放して下さーーい!!!」リトの切実な願いが店中に響き渡った――。――――――駅前広場――。「うぅぅ~…、もうおヨメ……じゃなかった、おムコに行けない……」「ご…、ごめんなさい、結城くん…」「西連寺……、オレ……汚されちゃった…」「そ…そんなオーバーな…」広場のベンチでズーンと暗い影を落として落ち込むリトを、反省の意も込めて必死に慰めようとする春菜。あの後、ピンからキリまで様々なランジェリーを無理矢理着せられ、リトの精神は昨日のコスプレパーティーをも遥かに凌駕する程のダメージを負っていた。ちなみに、リトがどんな辱めを受けたかと言うと…。「止めてくれぇ!!これ以上あんな悪夢を思い出させないでくれぇ!!!」(ガクガク、ブルブル)――とまあ、本人もこう言っておりますので、あまり深く追求しないでいただきたい…。「……あ、そういやララ達は?」「なんかね、『向こうに展示してあるテレビでマジカルキョーコを流してる』って言って飛んで行っちゃった。里沙と未央もそれに追いて行っちゃって…」「そっか…」「……」「……」「……」「……」「あの……、古手川さんは?」「あ、あぁ、古手川なら『ついでに買っておきたい物があるから』っつってそこの本屋に行ったよ」「そ、そうなんだ…」「ぅん…」「……」「……」「……」「……」……………。…………。………。((き………気まず~……///))図らずも二人っきりになってしまって、妙にぎこちなくなってしまうリトと春菜。(何か…、何か話題振らねーと。でないと何か間が持たねーって!///)(ど、どうしよう…、こういう時一体何話したらいいんだろ…///)お互い頭の中で必死に会話の話題を模索する。そして…。「「あの――へっ!?///」」意を決して話し掛けようとしたが、ものの見事にタイミングが被ってしまった。「なっ、何?結城くん///」「えっ!?い、いや~あの~…その~…、きょ、今日はいい天気だな~って///」「ぁ、そ、そうだね、今日は良く晴れてるよね。うん///」「さ、西連寺はどーしたんだ?///」「えっ!?え~と……その……、あ、明日もいい天気になるらしいよ///」「そっ、そっか、明日も晴れか。そりゃあ良かった!は…はははは…///」「ぁ…ぁははは…///」お互い、精一杯愛想笑いを浮かべるが…。「ぁー…///」「ぅぅ…///」益々気まずい雰囲気になってしまった。「わ………私ちょっと飲み物買ってくるねっ!///」「おっおう!///」居たたまれなくなって、春菜は逃げる様にその場から離れた。「…………………………………はぁ~~~…///」――と同時に、リトが深い溜め息をついた。「な~んでこんな時に限って『女』なんだろーなー…、オレ…///」せっかく良い雰囲気になれたのに、肝心の自分は『男』じゃないという事に心底ウンザリした瞬間だった…。「どうしたの?溜め息なんかついて…。まだ立ち直れそうにない?」「あ、古手川……さん」そこへ、唯が本屋から帰ってきた。「ごめんなさいね、編入早々あんなハレンチな目に遭わせちゃって…」そう言ってリト(レモン)の隣に座る唯。「ぁ、あぁ、大丈夫だよ、こーゆー騒動にはもう慣れてるから…」「え、慣れてるって…?」「い、いやこっちの話だよ!!こっちの話!!」「そ、そう?」必死に誤魔化すリト(レモン)に少々引っ掛かったが、唯はさほど気に留めなかった。「それに…、結構嬉しかったりもするんだ…」「嬉しい?」「行動そのものはアレだけど、ボクの為に色々と気を利かせてくれてる気持ちは良く分かったから…」「え?本当にそう思ってるの?」「…………二割程は」「じゃあ、残り八割は?」「ただ悪ふざけしてる様にしか見えない」「何それ」おもわずツッコんだ唯。「でもまぁ、(たとえ二割だけでも)楽しんでくれてるなら幸いだけど…」「ははは…」リト苦笑い。「……」そんなリト(レモン)の顔をジッと見つめる唯。「?、ど、どうしたの?」「ん?いや、ちょっと…、不思議な人だなぁって思って…」「へ?何で?」「だってあなたと話してると、何か結城くんと話をしてるみたいで…」「え゛っ!?」突然核心を突く様な事を言われてドキッとするリト。「何て言うのかな~…、雰囲気もそうなんだろうけど、話し方とか仕草とか、あとツッコミのキレ具合とかも、どれをとっても結城くんにそっくりなんだもん」「そ、そんなに似てる?」「ええ、とっても♪」そう言って、唯は柔らかく微笑んだ。(今日からしばらく結城くんが来ないって聞いた時は変な違和感を感じちゃったけど、彼女がいれば大丈夫かしらね…)いつの間にかクラス……いや、唯の中で大きくなっていた『結城リト』という存在…。普段からララと共に色々とハレンチな騒動(ほとんど不可抗力)を引き起こしてる彼だが、その反面、いざという時には危険を顧みず助けに来てくれる正義感と行動力、何より、お日様みたいな暖かい優しさを持っているという事を唯は知っている。そんな彼がしばらく学校に来ないと聞いた時は、「これでしばらくは楽が出来る」と思う以上に、何とも言えない不安と淋しさが押し寄せて来た。その気持ちがどこから来ているのかは理解出来なかったが、少なくとも『淋しい』と感じた事は確かだった。だからこそ、今日『レモン』と話をしてみてそんな発見が出来た事は、凄く安心出来て救われた事なのだと唯は思う。「……」ただ、その当の本人はというと、何やらキョトンとして唯の顔を見続けている。「?、どしたの?結城さん」「いや…、その~…」不思議そうな顔をする唯をよそに、何か言いにくそうに言葉を濁すリト。で、意を決して出した一言は――。「古手川さん…、ちゃんと微笑えるんだな~……って…」「んなぁ!!?///」リト(レモン)の一言に顔を紅潮させて目を丸くする唯。「そそそれどーゆー意味よっ!!?それじゃまるで私が愛想が無い女みたいじゃないの!!!///」「い、いやだってさ!!古手川さんが微笑ってる所なんていつも……じゃない、今日初めて見たし…!!」「あ、あのねぇ!あなたまで結城くんみたいな事言わないでよ!!///」「ご、ごめんなさい…」「全く…、失礼しちゃうわ…!///」さっきまでと一転、不機嫌モードでそっぽを向く唯。「でも…、何か勿体無いな…」「は?何が」「だって……、いつもそーゆー笑顔を見せてくれたら、もっと可愛いと思うのに」「へっ!!?///」一切の淀みも無い無邪気な笑顔で答えるリト(レモン)に更に一転、またしても、それも先程よりも唯の顔が真っ赤になった。「なな、何言ってんのよあなたは!変な事言ってからかわないでよ!///」「へ?からかってなんか無いよ。ボクは本気でそう思ってるんだけど…」ラブコメ主人公特有の超鈍感スキルから来る、馬鹿が付くほどの素直さをここぞとばかりに(無意識に)発揮するリト。こういう物程効果は絶大で、現に唯は顔を茹で蛸みたいにして俯いてしまった。「ば……バカじゃないの…?そんな台詞、恥ずかしげも無くハッキリと…///」「……………照れてる?」「照れてないっ!!!///」核心を突かれ、唯はおもわず声を張り上げて反論してしまった。(何なのよもう…、何かまるで結城くんに言われてるみたいで変な感じがしちゃったじゃない…。てゆーかそもそも何でこんなにドキドキしてんのよ私は…///)自分自身の、何とも言えない不思議な気持ちに戸惑う唯。と、その時――。『きゃあっ!!』「「へっ!?」」突然、悲鳴の様なものが聞こえて来た。「い、今の声って…」「西連寺!!?」「あっ、ちょっと結城さんっ――!?」気が付いたら、リトは声がした方へ駆け出していた――。――――――「あの…、私急いでますから…」「そんなカタい事言わなくてもいーじゃ~ん。俺らと遊ぼーぜ~♪」「そーそー、絶対退屈させないからさ~♪」飲み物を買いに行った春菜だったが、その帰り道、三人組の街のチンピラ共にナンパされていた。しかもこのチンピラ、今時天然記念物並みに珍しい昭和のヤーサンみたいな格好だったりする。「あの、連れも待ってるんです。通して下さい!」「ヒュー、怒ったもまたナウいねぇ~。」「いーじゃん、そんなのほっといて。俺らと一緒にパンチDEデートの方が楽しいって」「そーそー、そいでもってヨコスカでダンシングオールナイトでもしよーぜ~」古っ!!ナンパの仕方古っ!!今日び今時の若者が『ナウい』なんて言葉使うか普通!!?しかもなんだ『パンチDEデート』って!!?時代錯誤もいいとこでしょ!!?「んだぁコラ!!何か文句でもあんのか!!つか誰だテメェ、ぁあっ!!?」「これが今時の『流行り』ってヤツなんだよ!!ぉお、コラァ!!」「俺らは常に時代の最先端を突っ走ってんだよ!!分かったかぁ!!?」…………………ちなみに好きなロックバンドは?「「「横○銀蠅、夜露死苦ぅ!!!」」」やっぱり古いじゃん。「「「ぁああーん!!?」」」(何だか良く分かんないけど…、今の内に!)という訳で、この隙にコソコソとこの場から離脱しようとする春菜だったが…。「おっと、どこ行くんだよねーちゃん」『ガシッ』「きゃあっ!!」チンピラの一人に気付かれ、腕を捕まれてしまった。「い、いやっ、離してっ!!」「へへへ…、逃がさねーよ。こーなりゃ無理矢理にでも――」と、その時――。「その娘に触んなぁぁぁーーー!!!」「あ?」(結城くんっ!!)春菜のピンチに颯爽と――ではなく、鬼気迫る程の怒涛の勢いでリトが突撃してきて…。「チェストぉ!!!」『ガキーーン!!!』「はぅわっ!!?」――という効果音が聞こえてきそうな位に、サッカーで鍛えた足腰を活かして思いっ切り金的蹴りをブチかました。「西連寺、大丈夫か!?」「ぅ、ぅん…」「西連寺さん、結城さんっ!!」唯もようやく追い付き、春菜の傍に駆け寄る。「マローン(あだ名)!!大丈夫かぁーー!!?」悶絶するチンピラその3に慌てて駆け寄るチンピラその1。「うぅ…、ショコラ(あだ名)の兄貴ぃ…、き…キ○タマがぁ…」「この野郎っ!!よくも大事な弟分の大事な弟分をぉ!!」「まぁ待てワッフル(あだ名)よ、良く見りゃコイツ達、マブい奴らばっかじゃねーかよ」そう言って激高するチンピラその2を抑え、チンピラその1が冷たい笑みを浮かべる。「よぉ、ねーちゃん達、よくもウチの弟分のジュニアを潰してくれたなぁ…、お陰でコイツ一生イ○ポになっちまったじゃねーか」(下品…)「何言ってるのよ!!先に手を出したのはそっちじゃない!!大体何!?その半世紀前からタイムスリップしてきた様な格好は!?恥ずかしくないの!!?」「こっ、このガキ…」「おーおーいいのかねぇ~、そんな事言って。俺らは理不尽な暴力を受けた被害者なのに」「このっ…!」「待って、古手川さん」反論しようとした唯を、リトが制止する。「で?ボク達に一体どうしろと?」「なぁに、ちょいとお宅達に責任を取ってもらいたいのさ。その身体で」「…っ!!」「なっ…!!」「くっ…!」不条理な要求をされ怯える春菜。そんな春菜を庇う様に肩を抱き身構える唯。そして、恐怖心に耐えながら二人を守る様に前に立ちはだかるリト。「断る……と言ったら?」「へっ、その時は…」『ジャキッ!』「強引にでもヤらせてもらうよぉ!!」チンピラ共が懐からナイフを取り出し、本格的に脅しにかかって来た。(やべぇ…!)「古手川さん、西連寺さんを連れて逃げて!コイツ達はボクが引き付けておくから!」「なっ…!」「結城く……零紋さん何を!?」リト(レモン)の危険すぎる申し出に驚愕する二人。「何言ってるのよ!!あなたを置いて逃げるなんて、そんな事――!!」「大丈夫、ボクこう見えても結構頑丈だから!」「そんな問題じゃなくて――!!」「ハッ、逃がすと思うかよぉ!!」そう叫んで、チンピラその1がナイフを突き出してリト(レモン)に突っ込んできた。「……っ!!」「結城さん、危ないっ!!!」「きゃあぁぁぁーーーーー!!!」春菜が恐怖心のあまり、目を両手で覆ったその時――。『ガシッ』「へっ…!?」「なっ…!?」突如、誰かの手が横からチンピラその1の腕を掴み、ふとリトが横を見ると…。(ヤミ!?)紙袋を小脇に抱えたヤミが、全身に殺気を纏って立っていた。「私の標的に――」(ボソッ)「あ?――へ?」何かを言おうとしたチンピラその1だが、気が付いた時には天地が逆転していた。ヤミが腕を掴んだまま上空へ投げ飛ばし、そして――。「手を出さないで下さいっ!」『ドガァッ!!』「がはぁっ!!?」彼女の特徴である金色の髪を巨大な拳に変身させ、そのままチンピラその1にバックブローを叩き込んだ。「んだぁ、このガ――!!」――と言ってる時には既に遅く、ヤミは一瞬でチンピラその2の懐に飛び込み――。「ふっ!」髪の毛が無数の拳に変身して――。――――――『ドガッ!!バキッ!!バカッ!!ドゴッ!!――』『必殺、超熱々息(チョーアツアツブレス)ーー!!』『ドォーーーン!!!』『今日も事件を燃やして解決っ☆マジカルキョーコ~~~♪』「やったぁー、キョーコちゃん勝った~~!!♪」「ぁー…、ララちぃホントにマジカルキョーコ好きなんだねぇ…」「うんっ、だってキョーコちゃんカッコいいんだもん♪私もこんな風になりたいなぁ~」「いや大丈夫だって、ララちぃもある意味キョーコちゃんに負けてないから」「えー、そんな事無いよ~。私火吹けないもん」「いやいや別に吹く必要も無いでしょ!?それじゃもう完全に怪獣か何かだから、冗談抜きで!」「む~、でも私もあんな感じでゴーッってやりたいなぁ~。こう……ちょーあつあつぶれすーーー!!」『ボォォォウッ!!!』「「わぁぁぁっ!!?」」「……………あれ?」インフォメーション 終わり。――――――「ぅ……ぅわ―……」「悲惨…」「……(放心状態)」死屍累々、見るも無惨な光景を目の当たりにして茫然とするリト達三人。「あの………大丈夫か?」「見ての通り、かすり傷一つ付けられていませんよ」「いやそうじゃなくて、ソイツ達はちゃんと生きてんのかって聞いてんの」転がってる物体からウーウーと呻き声が聞こえて来たので、とりあえず生きてはいるようだ。「まぁ…ありがとな、助かったよ」「ありがとヤミちゃん」「ありがと…」「…別に。私はただ依頼遂行の邪魔をされたくなかっただけですよ、結城リ……いや、レモンでしたね」表情を変えずにそっぽを向いて、淡々とそんな事を言うヤミ。しかし、若干頬を染めて照れてる様に見えるのは気のせいだろうか?「にしても、結城さん無茶しすぎよ。怪我でもしたらどうするつもりだったの?」「いや…、何て言うか身体が勝手に反応してね…。それに、怪我するだけで二人が助かるなら安いモンだとも思ったし…」 「そんな所まで結城くんに似なくてもいいの!結城さん女の子なんだから!」「ははは…」「ホントは男なんだけどね」とは思ったが、口には出せないので笑って流す。「『女の子』……………………………ぷっ」(――って、オレ今ヤミに笑われた!!?)(ガーン!!)リトはかなりショックを受けた。「ぇ…えーっと……、と、ところでヤミちゃんもお買い物か何か?」これ以上リトを傷つけさせない様にと、ヤミが抱えている紙袋に視線を向け強引に話題を変える春菜。「え……ぇぇ…まぁ…」「へぇ~、何買ったの?」(どうせたい焼きだろうけど…)「えっ!?そ…それは……その…///」「?、どしたの?何でそんなに挙動不審になるの?」「ぁ…あなたには関係無いじゃないですか…///」リトからの質問に何故か言葉を濁し、目を泳がせながらも何とか誤魔化そうとするヤミ。――と。『ビリッ!――バサッ!』「へ?あっ…!!///」さっき大暴れしたせいか、紙袋の底が破れ中身が地面に落ちてしまった。「…って」「あら?」「これって…」紙袋から出て来たのは、赤・白・黄色等々の色とりどりの――。「……………パンツ?」「っ!!!///」『ドカッ!!』「だっ!!?」いきなりヤミに髪の毛チョッピングライトをかまされ、リトは地面に突っ伏されてしまった。「………ぉぃ、なぜ殴る?」「………辱めを受けました。えっちぃのは嫌いです…///」「オレ何にもやってないバズだろ…」(小声)「でも元はあなたのせいです………多分…///」恥ずかしさを隠す為なのか、落ちた下着を拾い集めながらリトに理不尽な怒りをぶつけるヤミ。「や、ヤミちゃん…、一体何があったのかは知らないけど、この娘女の子なんだからそんな結城くんを殴り飛ばすかの様な暴力的な事は…」「大丈夫です…、この人は結城リト並に頑丈ですから…」(とゆーか本人ですから)「そ…そうなの?」(そこまで結城くん似なの?この娘)あまりにも『リト』との共通点が多すぎる『レモン』に、感心を通り越して逆に不気味さを感じ、冷や汗を流す唯。「あっ、いたいた。おーいレモり~ん、春菜~、唯っち~!」――と、ここでようやくララ・籾岡・沢田が合流した。「ったく、捜したよ~。こんな所で何やってたのさ~!」「いえ、ちょっと色々あって……………ってあなた達、何でそんなに黒コゲになってるの?」「いや、ちょっとね…」「万国びっくりショーを間近で見ちゃってね…」「は?」「何言ってんの?この人達」的な感じで、頭に?マークを浮かべる唯。「む~、おかしいなぁ~。さっきどーやったんだっけ~?」そして、その後ろでさっきの怪獣技を練習しているララ。「こんにちは、プリンセス」「ん?あー!ヤミちゃ~ん♪」ここでララ達がようやくヤミの存在に気付いた。「おぉ、きぐーだねヤミヤミ♪何してんの?こんな所で」「いえ、別に…」「およ?ヤミヤミ、その紙袋何?」「え゛っ!?ぃや……これは…その…///」「へ~、ヤミちゃんもお買い物してたんだ~♪何買ったの~?」「な、何でもいいじゃないですか別に!そっ、それよりもプリンセス達は一体何を?」「私達?私達はこの後レモンの歓迎会に行くんだ~♪」楽しそうに語るララ。誤魔化されてる事にも気付かずに…。「そーだ!ねーねー、ヤミちゃんも一緒に行こ?」「えっ?わ…私も…?」「うんっ、一人でも大勢いた方が楽しいじゃん♪良いでしょ?レモン~」「いや、ボクは別に構わないけど…、ケーキバイキングの割引券は…?」「大丈夫っ!都合よく割引券は七枚あったから♪」「ホントに都合が良いな、オイ」これがいわゆるご都合設定。「良しっ!それじゃヤミヤミも加わった所で♪」「早速行きましょーか、ケーキバイキング♪」「あの、私はまだ行くとは…」「「いざ、ケーキバイキングへGOー♪」」「聞いてませんね…」「………まぁ、いいだろ?別に。さっきのお礼もしたいしさ」「行こ~?ヤミちゃ~ん」「………なら…、せっかくですからご同行しましょう…」「わ~い、やったぁー♪」――という事で、面子にヤミを加えた一行は、ようやくケーキバイキングの店へと向かった――。「ところでリト~、ヤミちゃんが何買ったのか知ってる?やっぱりたい焼き?」「いや、それが結構派手めの下ぎぃぃぃーーー!!!」足をハンマーに変身させたヤミに、思いっ切り足を踏んづけられてしまった。 ―――――― ケーキバイキング――。 「ここはお菓子の家かいっ!?」 ――と、おもわずリトがツッコんでしまうのも無理はない。 何故ならこの店、思ってた以上に店中ケーキ尽くしだったからだ。 ショーケースの中は勿論の事、周りの陳列棚も見渡す限り様々なケーキで埋め尽くされている。だがそれはまだ良い。 店中の椅子・テーブルから壁紙の至る所まで、パイ生地・クッキー・チョコレート等をモチーフにしたかの様な徹底した仕様に、 リトは軽く引いてしまった。 「ぅぅ…、見てるだけで口ん中が甘ったるくなっちまう…」 げんなりとするリト。だか…。 「わは~♪おいしそ~♪」 「ホラ早く行こうよレモりん♪人気あるヤツとかすぐ無くなっちゃうよ。」 「アレまだあるかな~?スペシャルモンブラン」 「……(うずうず)」 「ま…まぁせっかく来たんだから、楽しまなきゃ籾岡さんに悪いわよね。うん…」 女性陣(リト・ヤミ除く)はもう完全に糖分補給モードに入った様で、陳列された沢山のケーキに目移りしていた。 「現金な人達ですね…」 そんな様子を見て、一言ぽつりと呟くヤミ。 「まぁ、女の子にとって甘い物は必要不可欠であるという事は聞いた事あるが…」 「心なしか皆さん、ちょっと殺気立ってませんか?」 「うーむ…、これが俗に言う『スイーツマジック』というヤツなのか?」 「ホラレモりん、ヤミヤミ!モタモタしてないでさっさと来る!!」 「レモン、ヤミちゃん、早くー!」 籾岡とララが早く来る様促す。 既に目が戦闘態勢に入っており、いつでもすぐケーキに飛びつける感じである。 「あーはいはい、行くぞヤミ」 「やれやれですね…」 「ちょっとはしたないんじゃないか?」と思いつつ、リトとヤミは皆の所へ向かった――。 ―――――― 「お前、そんなに食いきれるのか?取りすぎだろ明らかに」 「えー?これ位普通だよ」 「マジでか」 「だって『甘いものは別腹』なんだよ~♪」 「……さいですか」 トレイにケーキを山積みしているララを見て、少し呆気に取られるリト。 「あれ?春菜そんだけでいいの?」 「えっ?」 対照的に、控え目にケーキが置かれた春菜のトレイを見て、籾岡が尋ねる。 「もしかしてダイエットでも始めた?」 「そ、そういう訳じゃ無いけど…。私そんなに食べられないから…」 「な~に言ってんの♪あんたいつも十個位は軽く平らげ「わー!!わー!!わー!!///」」 笑いながら語る沢田の口を慌てて塞ぐ春菜。 「ちっ、違うからね!私ホントにあんまり食べられなくて、決して無理して我慢してる訳じゃなくて――!///」 「……何故そこまで必死になってレモりんに言い訳する?」 「別にそんなに慌てる必要性はないでしょ?男に聞かれてる訳じゃあるまいし♪」 (いや、いるんですけどね男…) 心の中で軽く籾岡にツッコむリト。 (にしても…、春菜ちゃんそんな一面もあったんだ…。可愛いよなぁ~♪) 想い人の新しい一面を発見出来て、おもわず顔がにやついてしまうリト。 (うぅぅ…、なんか結城くんが笑ってる…。意地汚い娘だと思われちゃったのかな…?///) そんなリトの反応を見て、どうしても事態をマイナス方面に考えてしまう春菜。 こうして、また一つ二人は余計なすれ違いをしてしまった…。 正直見ててじれったい。 (あ、意外な一面といえば…、コイツも…) ふと隣に目線を向けると…。 「な……何よ…///」 ララにも負けない位にトレイにケーキを山積みした唯が怪訝そうに尋ねる。 「いや…、古手川さんって…意外と甘党だったんだなぁ~って…」 「いっ、『意外と』って何よ『意外と』って!?私がこんなにケーキ食べちゃ悪いの!!?///」 顔を真っ赤にして、失敬な事を言うリト(レモン)に抗議する唯。ま、怒るのも無理は無いが…。 「あぁっ、ごめんごめん!別に悪いとか言ってる訳じゃなくて!!」 慌てて唯に謝るリト。そして…。 「ただ…、古手川さんにもそんな女の子らしい一面があったんだなぁ~って」 「な…!///」 無邪気な笑顔で無意識の天然ジゴロ発言、発動。 「な…何よそれ…、それってちょっと失礼じゃないの…?///」 そう言って、ぷいっとリト(レモン)から視線を逸らす唯。 だが、気恥ずかしさからか発する言葉はトーンダウンしている。 (…って、何で私はこんなにドキドキしてんのよ…。それも女の子相手に…///) 「?、どうかした?なんか顔赤いけど…」 「なっ、何でもないわよ!!///」 「???」 唯のリアクションに?マークを三つばっかり浮かべるリト。 流石驚異の天然ジゴロと言うべきか…。鈍さも天下一品である。 「(まいっか…)あ、これいただき――」 リトは考えるのを止めて、たまたま視界に入ったケーキをトレイに置いた。 ――と。 「あぁぁぁーーーー!!!」 「うぇっ!!?」 突然、籾岡が声を荒げて叫んだ。 「ソレっ!!この店の超限定品のスペシャルレアチーズケーキじゃないの!!?」 「へ?」 さっきケーキが乗ってた皿を見てみると、確かに『一日限定十個、売り切れ必至、早い者勝ち!』と書かれた札が付いていた。 「いーな~レモりん、あたしもソレ食べてみたいなぁ~って思ってたんだけど…」 「あ、ごめん。コレがラスト一個だったみたい…」 「うぁー残念。ここに来る度に狙ってるんだけど、いっつも売り切れてるんだよね、あたしの場合」 「ぁ…ぁははは…、たまたま運が良かっただけだよ」 「はぁ~…、一度でいいからどんな味なのか知りたいな~…。でも売り切れじゃあ仕方ないよね~…」 「ぁ…ぁの……」 「あ~、レモりんが羨ましいなぁ~。あたしも欲しかったなぁ~…」 「……」 「でもしょーがないか、何せ早い者勝ちだし…。いやしかし――」 「……分かったよ譲るよ、このケーキ君にあげるから…」 「えっマジ!?ありがとー♪」 嬉々としてリト(レモン)のトレイから限定ケーキを取る籾岡。 (これ………オレの歓迎会だよな…?) リトは、そう思わずにはいられなかった。それ位籾岡には遠慮の欠片も感じられなかった。 「さーて、一通り取り終えた所でみんな席に戻りましょー♪」 目的の物を手に入れて(横取りして)ご満悦の籾岡。意気揚々と席へと戻る。 「あいつは…」 「ま、まぁまぁ…、落ち着いて零紋さん」 「あの娘のアレはいつもの事だから、気にするだけ無駄だって…」 拳をワナワナと震わせるリトを出来る限り冷静に宥める春菜と唯。 「三人共、早く早くー!」 「でないと、あたし達だけで勝手に食べ始めちゃうわよー♪」 そんな事など知ってか知らずか――いや、知ったこっちゃ無いという感じで笑顔で手招きする籾岡と沢田。 「レモン~、春菜~、唯~、早く戻ろーよ~。私お腹ペコペコ~」 そしてララはララで、こんな時でもゴーイングマイウェイを貫いていたりする。 「………ねぇ、一発だけ殴ってきても良いかなマジで…」 「気持ちは分かるけど止めなさい…」 ぽんっとリト(レモン)の肩に手を置いて制止する唯。哀れみの涙を流しながら…。 「ほ、ほら、早く行こ?こういう時は甘いの食べるのが一番だって」 そう言って、リトの手を引いて席へと促す春菜。 「ぁ………ぅん…///」 突然春菜に手を握られ、リトはおもわず顔を赤らめてしまい、さっきまでの怒りは一遍に吹っ飛んでしまった。 (ま………いっか、得したし…///) そう自分に言い聞かせ、ララ達の待つ席へと戻っていった――。 「ところでさ~、一つ聞きたいんだけど…」 「何?」 ふと隣を見ると、ヤミが(なんとなく)満足そうな表情でトレイを眺めていた。 別にそれ自体はおかしくないのだが…。 「たい焼きって…、思ったよりも色んな種類があるんですね…」 「何でケーキバイキングにたい焼きがあんの!?」 それもいわゆるご都合設定。 ――――――「えーそれでは、レモりんの彩南高編入(短期間だけど)を歓迎して、カンパーイ!♪」 『カンパーイ!♪』 「……かんぱい」 籾岡の号令で、全員一斉にグラスを合わせる。 「あ…ありがとねみんな…、ボクの為にこんな…」 なんだかんだあったが、自分の為にここまでお祝いしてくれてる事が嬉しかったので、リトはお礼と共に頭を下げた。 「水臭い事言わないの。あたし達もう友達じゃん♪」 「そーそー、友達を歓迎するのは当たり前の事だよ♪」 「籾岡さん…、沢田さん…」 籾岡と沢田の言葉に、不覚にも涙腺が少し潤んでしまい、おもわず俯いてしまった。 「ありがとう…、二人には今日散々セクハラされて正直かなりムカついてたけど、そんな風に思ってくれててボク――!」 感謝の言葉を言おうと頭を上げると――。 「うまっ!このチーズケーキうまっ!流石限定十個の超人気商品だけあるわぁ~♪」 「う~んデリシャァス♪やっぱここに来たらコレは外せないでしょ~♪」 (――って聞いてねぇ…) 心の中で前言撤回すると共に、この二人に対して不覚にも感謝の念を抱いてしまった自分が恥ずかしくなった。 「結…零紋さん…、里沙も未央も今日の行動はアレだったけど、ホントは二人共零紋さんと仲良くなれた事を喜んでるんだよ。 だからあんまり気を悪くしないで多目に見てあげて」 やはり友達を悪く思われるのは辛いのか、春菜が二人を弁護する。 「…………ホントに?」 「うん、私が保証する♪」 「…………なら良いんだけどさ…」 春菜の言葉は素直に受け止めるリト。本当に単純というか…。 「春菜ちゃんはウソつかねーの!」 あ、そ…。 「おいふぃ~♪」 一方、ケーキを口いっぱいに頬張り、とても幸せそうな顔をしているララ。 「あ、ほらララさん、鼻にクリームが付いてる」 そう言って、唯が指でクリームを拭い取ってあげる。 「ありがと、唯♪」 「全く…、子供じゃないんだからもう少し落ち着いて食べなさい。あむ…」 ララにやんわり注意して、さっき取ったクリームを口に含んだ。 「……」 「?、何?籾岡さん」 「いやさぁ…、そーゆーのって女同士じゃなくてカップルでやるモンじゃないの?」 「はぁ!?///」 いきなりな籾岡の発言とさっきの自分の行動を思い出して、唯の顔がみるみるうちに赤らんでいく。 「やっぱさぁ~、そーゆーのは男と女で 『ほら、もうあわてんぼだな~唯は♪』 『きゃっ♪唯恥ずかしぃ~♪』 みたいなシチュエーションでやる方が何かと萌えるでしょ~?」 「なななな何言ってんのよあなたは!!私は別にそんなつもりで――!!///」 「へー、そっかぁ~…、じゃあ今度はリトと一緒にやってみよ♪」 「やんねーよ」(ボソッ) リト、小声で拒否る。 「……(もぐもぐ)」 そんな中、黙々と目の前のたい焼きを堪能しているヤミ。 「美味いか?それ」 「やはりたい焼きはカスタードよりも餡ですね。この組み合わせこそ王道であり究極です。 そもそもたい焼きにカスタードを入れる事自体が間違ってるんです。たこ焼きの中にイカを入れて 『たこ焼き』だと言い張るのと同じ位の暴挙ですよ。大体――」 リトからの問い掛けに対して、自らのたい焼き理論を話し始める。 心なしかいつものヤミに比べて少々熱くなってる様に見えるが、多分それは気のせいではない。 「…………お前ホントにたい焼き好きだよな~」 「?、何ですか?突然…」 「いや……、まさかお前がそこまでたい焼きに執着してるとは思わなくて…」 「…………結城リト、それって遠回しに馬鹿にしてますか?」 若干ヤミから殺気が放出される。 「ち、違げーよ!ただお前が食べ物に対してそんなこだわりを持ってたのが意外だって思っただけ!」 「…………まぁ良いでしょう、深く追求しないでおきます」 慌てて弁明するリトに、ヤミは溜め息を一つ吐いて咎めるのを止めた。 「てゆうか誰の所為ですか誰の…」(ボソッ) 「ん?、何か言った?」 「………何でもありません…」 「?、変な奴…」 そんな呟きと共に、ドリンクを一口飲むリト。 「レモン、レモン~」 「何?ララちゃん」 「はいっ、あ~ん♪」 『ブーーーーーッ!!!』 「汚いですね、いきなり」 ララの唐突な行動に思いっ切り噴いてしまい、ヤミから非難を受けた。 「いいいいいきなり何やってんの!!?///」 「何って、コレ美味しいからレモンにも食べさせてあげようと思って」 「だったら皿ごと渡せば良いでしょ!?なんでわざわざ……その……『あ~ん♪』とかする訳!?///」 「レモン可愛いからしてあげたくなったの♪」 「しなくていい!!///」 「………なるほど、一理ある…」 「確かに解らなくもない…」 「……………あの~、お二人共何を…」 「レモりん、あ~ん♪」 「こっちもあ~ん♪」 「ちょっ………ちょっと…?///」 「ホラホラ、レモりんこのケーキ食べたかったんでしょ?あ~ん♪」 「こっちのケーキも美味しいよレモりん。あ~ん♪」 「あーリサミオズルいよ~!私が先だったのに~」 「いやいや、誰が先だろーとやんないからっ!!――ってちょっと聞いてる!?///」 ひたすら三人の『あ~ん♪』攻撃を拒否しまくるリトだが、まるで聞く耳を持ってもらえず次第に押されていく。 「ぅぅ……///」 (だめよ…、だめよ唯…。そんな『私もあの場に混ざりたい』なんて事考えちゃ…。ハレンチでしょ唯…!///) 一方で、二人の常識人は心の中で葛藤していた。持てる理性を総動員させて内なる欲と激しい殴り合いを繰り広げる。 「「「あ~ん♪」」」 「勘弁してくれーーーーー!!///」 「むぐむぐ…、ふぁへふぁへへふへ…」 そしてヤミはそんな光景を眺めながら、たい焼きを頬張りつつ呆れ全開の溜め息を吐いていた…。 ―――――― 「えへへ…♪楽しかったね~、リト♪」 「ァァ…ソウネ……」 「ぁははは……」 帰り道、『満喫しました』と書いてある様な笑顔で話し掛けるララに対して、 体力も気力も底をついたかの様な力の無い声で返事を返すリト。 そらあんだけやられれば返事もカタカナになるだろうし後ろの春菜も苦笑いしか出来ないだろーね~…。 「もう帰ったらソッコー寝てやる…。とにかく一秒でも長く休みたい…」 「ぁー………お疲れ様、結城くん…」 なんとなく労いの言葉が出てしまった春菜。 「えー寝ちゃうの~!?帰ったらリトに着てもらいたい服があるのに~!」 「――ってコラ待て、またあんなコスプレさせる気かよ!?」 「だって昨日と違って今日はソレもあるからもっと可愛くなるはずなんだもん~!」 ソレ=今日籾岡達に買ってもらった(無理矢理買わされた)ランジェリー一式。 「断固拒否する!今日はもう疲れたの!テコでもやんねー!!」 「むー仕方ない…、じゃあ明日に回し――」 「明日だろーと明後日だろーと永久にやらねーよ!!」 「ケチ~」 「ケチで結構!!それで男の尊厳が守れるなら安いもんだ!!」 「………残念」(ボソッ) 「「……え?」」 「なっ何でもないよ何でも!!ホントに!!///」 そんな事を話してる内に、別れ道に差し掛かった。 「それじゃ、私達コッチだから。またね春菜♪」 「また明日な、西連寺」 春菜に別れを告げて、リトとララは家路に――。 「あっ、結城く――!」 『ギュッ…』 (え…?///) ――つこうとしたが、不意に春菜が制服の袖を引いてリトを引き留めた。 「さ………西連…寺…?///」 「ぁ…ぁの……その………ま、まだちゃんとお礼言ってなかったから…///」 袖を掴んだまま、春菜はリトの顔を真っ直ぐ見据える。 「……ありがと、結城くん…。あの時助けてくれて…///」 「ぃ…ぃゃ……オレは別に大して役に立てなかったし……。それに結局、あの場を治めたのはヤミだったし…///」 「でも、結城くんが真っ先に来てくれたよね…?私……凄く嬉しかったよ…///」 「そ…そうかな…///」 「うんっ…♪///」 「リート~、何やってんの~!?早く帰ろーよ~!!」 先を歩いていたララが、しびれを切らしてリトを呼ぶ。と同時に、春菜が袖から手を離した。 「それじゃ、また明日ね。結城くん///」 「あ、ああ。また明日///」 夕焼けと同じ様な色に頬を染めて別れの挨拶を告げ、二人はそれぞれの家路についた。 「ねーねー、春菜と何話してたの~?」 「え゛っ!?い、いや~、別に大した事じゃねーよ。うん…」 「そお?」 「そおそお♪あ…ぁははは…」 さっきのやり取りを知られたくない故に、必死になって誤魔化すリト。 「まいっか♪それよりも早く帰ろ。私もうお腹ペコペコ~」 「――ってお前、あんだけケーキ食っといてまだ食う気か?」 「『甘いものは別腹、美柑のご飯は本腹』なの~♪」 「随分都合の良い腹してんだな…」 「もしかしたらコイツには本当に『別腹』という拡張機能があるのかもしれない」と思わずにはいられないリトだった…。 そんなこんなで、女の子生活二日目は無事(?)幕を閉じた――。 「しかしララ…」 「ん?」 「…………『女』って大変なんだなぁ…」 ふと上を見上げながら、今日一日の感想を凝縮させたかの様な呟きが黄昏時の空に消えていった――。
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結城家――。 「ん~……」 柔らかな日差し、小鳥達のさえずりが心地良い目覚ましとなって、一人の少年……いや『元』少年結城リトは目を覚ました。 「ふぁ~……ぁふ…………ん…うーーん…」 むくりと起き上がり、欠伸を噛み潰して身体を伸ばし、眠たげな目をくしくし擦りながらベッドから降りる。 この身体になって大分日数も経ったから流石に慣れてきたのか、或いは眠気で頭が回ってないせいなのか、 着崩れたTシャツと下着(パンツのみ)だけという女の子としては何とも霰もない格好を気にする気配が微塵も感じられない。 まぁそれでも、平然と裸で家の中をウロつく居候の宇宙人の女の子よりはマシなのだが…。 (ねむ……) まだ半分夢の中にいる様な感じで、寝ぼけ眼でしばらくそのまま目の前のドアを無意味にボーーっと見つめてしまう。 (ん~………とりあえずシャワー浴びよ…) 頭をぽりぽり掻きながら朧気にそう思い、眠気覚ましの為にシャワーを浴びようと 制服とブラジャーを抱えてよたよたおぼつかない足取りで浴室へ――。 ―――――― 一呼吸置いて、シャワーのバルブを回す。 丁度良い温度のお湯が全身に降り注ぎ、肌がお湯を弾くにつれて少しずつ意識が覚醒していく。 「ふぅ……」 髪を掻き上げて小さく一息つくリト。 窓から差し込む朝日に濡れた肢体が照らされて、その整った女の子独特のプロポーションが更に際立たされる。 その光景はまさに、ぜひ一枚の絵にして眺めていたいと請け合う事間違い無いだろう。 勿論、その『女の子』の中身が『男の子』だという事は知らないという事前提で。 『リトーー!』 シャワーの音に紛れて、扉の向こうからララが呼び掛ける声が聞こえてきた。 「んー?何だー?」 『朝ゴハン出来たから早く食べよー?遅刻しちゃう~』 「んー、分かったー」 それだけ告げてララが出て行ったと同時に、シャワーのバルブを閉じた。 「………うし」 小さく気合を入れてから浴室を出て、丹念に全身を拭いてから下着を身に着けていくリト。……が。 「ん……んんっ?」 ブラジャーのホックを止めようとした時、ある違和感に気付いた。 (何か………ブラがちょっとキツい…。昨日まで何とも無かったのに…) 自身の胸をゆさゆさ触りながらちょっと困った様な顔になる。 (もしかして成長してんのかな…?それとも…) 同時に、頭の中に事ある毎に自分にセクハラを仕掛けてくる二人組の顔が浮かんできた。 (あいつ達が所構わず揉んでくるからか…?どっちにしてもまた新しいの買ってこなきゃダメかなぁ…) そんな事を考えながらリトは制服に袖を通して、きっちり身嗜みを整えてから浴室を出た――。 ―――――― 「遅いよリト~、私お腹ペコペコ~」 「ごめんごめん、どーも眠気が払えなくて…」 「ほら、話は後にして早く食べちゃってよ。ホントに遅刻しちゃうよ?」 「あーはいはい。んじゃ、いただきます」 「いただきま~す♪」 美柑に促されて、朝食に箸を延ばす。 「あ、そーいや今日は体育の授業があったんだっけ?はぁ……憂鬱だなぁ…」 「あれ?リトって体育得意じゃ無かったっけ?」 「いや、体育自体は別に嫌いじゃない、むしろ好きな方なんだけどさ…。ただ……佐清がな…」 「佐清センセ?」 「あの人…、何かオレと話すときにさ、オレの目じゃなくて胸ばっかり見てる気がするんだよな…」 「?、それが何か問題なの?私もそんな気はするけどちっとも気にならないよ?」 「それはお前に羞恥心という物が無いからだ!普通の人は気にするの!」 「そんなモンなの?」 「そんなモンなの!」 「でもそれってセンセに限った事じゃ無いでしょ?ガッコの大半の男の子は大体そんな感じだよ?(リトは違うけど)」 「そーなんだよなぁ~…。いっつも事ある毎に四方八方からヤラしい視線が刺さって…………うぅぅ、思い出すだけで悪寒が…」 「どーして男の子って女の子とお話する時に胸ばっかり見るんだろーね~?」 「オレに聞かれたって解るかよ、そんな奴らの考えなんか…。全く…、コレだから男ってヤツは――」 ふと、ここで急にリトの動きが止まった。 「?、リト?」 「……」 ……………。 …………。 ………。 「『慣れ』って恐ろしい…」 突然深ーい溜め息を吐いて、リトはその場にガックリ突っ伏してしまった。 (いかんなぁ…、気が付かない内に普通に『女の子』としての自分に順応してしまっている…。 つーか何だよさっきの台詞は…、オレだって元々『男』だろーが…) 今の今まで無意識の内に、しかも全く違和感無く『女の子』としての行動を取っていた自分に物凄く苦悩するリト。 「いや~、あれからもうすぐ一週間位経つけど、リトも大分『女の子』が板についてきたよねぇ~♪」 そんな兄・リトの様子を見て、ニヤニヤしながら茶化す妹・美柑。 「……今更言うのもなんだけど、お前間違い無く楽しんでるだろ?」 「うん♪」 「言い切りやがったよオイ…」 最早返す言葉も見つからない…。 「リト、もういっそのことこのまま女の子として生活していっても良いんじゃないの? あたしも実は前々からお姉ちゃん欲しいなぁ~って思ってたし♪これって何か一粒で二度美味しい的な感じ?」 「何でお前の都合に合わせてオレの今までの『男』としての人生全てを捨てなきゃなんねーんだよ!?」 「でもここ最近のリト、行動がすっかり女の子っぽくなったよね?今日だって、普段のリトなら朝からシャワー浴びたりしないし…」 「ぅぐ…」 ララからの素朴なツッコミに言葉を詰まらす。 「こりゃ近い内に心身共に完全な女の子になる日も近いかなぁ~?」(ニヤニヤ) 「なってたまるかぁーーい!!」 美柑の悪戯っぽい笑みと台詞に、リトは近所迷惑も考えずに声を張り上げ叫んだ。 「そーだよ。リトが男の子に戻ってくれなきゃ、私リトと結婚出来ないじゃん」 「………ォィォィ…///」 直後、ララから面と向かってハッキリそう告げられ、おもわずドキッとなった。 何となくララの顔が見れなくて、顔を赤らめ背けてしまう。 「……ホント、色んな意味で宇宙一の果報者だねぇ、我が兄は。あ、今は『姉』か」 わざわざ『色んな意味で』を強調してリトをからかう美柑。 「な、なに言ってんだよお前はっ!つーかそもそもの原因は――!///」 「あ、もうこんな時間だ。早いトコ片付けて学校行きましょう。ね?『レモンお姉ちゃん』♪」 「今日も一日頑張ろーねリト――じゃなくて、『レモン』♪」 「……」 まぁ、そんなこんなで…。 結城リトの『結城レモン』としての生活は、早くも一週間近く経とうとしていた――。 ―――――― 彩南高校、二年A組教室――。 「とゆー訳で――!」 「何が『とゆー訳』なのさ?何?いきなり…」 昼休み、お馴染みの面子(リト(レモン)・ララ・春菜・唯・籾岡・沢田)+α(ついでに猿山)で弁当を食べていた時、突然籾岡の声が教室内に響く。 反射的に自分の役割(ツッコミ)を果たしたリトだが、籾岡は気に止めずに話を進める。 「いよいよ明日に迫ってまいりました!一泊二日の温泉旅行~♪」 「は?温泉?」 「あぁ、そっか。そっから説明しなきゃなんないか。実はさ――」 籾岡の説明を要約すると――。 先日、沢田と春菜と一緒に商店街で買い物をしていた所に丁度福引きをやっていたらしく、 軽いノリで三人一回ずつやってみたら、見事春菜が『一泊二日温泉旅行、団体様無料招待券』を獲得したらしい…。 「それで、使わないのも勿体無いから今度の連休を利用してみんなで行こうって話になったって訳♪期限も丁度明日で切れちゃうし。 でもって、今からその参加者を募ろうと思ってるの」 「へぇ~、そーなんだ。……でも一ついい?」 「何かなレモりん?」 「……何故前日ギリギリになってそれを言う?」 「忘れてました。そりゃあもうスッカリと♪」 「にこやかに言うな」 あっけらかんと答える籾岡に対して、とりあえず呆れ+冷ややかな視線でツッコミを入れておく。 「とゆー事でどう?ララちぃとレモりんも一緒に温泉に行かない?」 「行きたーーい♪」 間髪入れずにララが手を挙げる。 「はいっ、ララちぃ参加っと♪」 「レモりんはどーすんの?」 「えーと、ボクは…」 沢田に聞かれてちょっと考え込むリト。 「行って損は無いよレモりん♪空気は美味しいし景色も最高、編入の思い出作りにはもってこいだし、 何と言ってもここの温泉、美容・健康にも抜群の効果があるらしいから」 「効果って?」 春菜の方を向いて温泉の効能を問う。 「えっと…、主に美肌効果に疲労回復・成長の促進…、後は……肩こり・腰痛等にも効果があるらしいよ」 「肩こりかぁ…、そーいえばボク、何か知らないけど良く肩が凝って仕方ないんだよね~…」 「あ、レモンも?実は私もなんだ~」 「ララ…ちゃんも?」 「うん。何か分かんないけど気が付いたら肩が凝っちゃってるってゆーか」 「でしょ?別に特別な事やった覚えは無いんだけど無意味に肩が凝っちゃって――」 そんな風に、ララと肩こり談義を繰り広げていると…。 「おーおー、それはまさしく『勝者』独特のお悩みですなぁ~!羨ましいこって!」 「あーあー、あたしも一度で良いからそんな肩こりについて悩まされてみたいわぁ~!」 (……あれ?何か急に不機嫌になった?) 籾岡と沢田の唐突な変わり様に戸惑うリト。 「で?レモりんは行くの?行かないの?」 「へ?あぁ、行きます行きます」 (春菜ちゃんと旅行なんてそうそう出来るモンじゃないし…///) 「はい、『巨乳その2』のレモりん参加っと」 「…………あの~、ボク何か気に障る様な事言ったのかな?」 「「いーえ何にも!♪」」 (笑顔なんだけど目が全然笑ってねー…) 「ぁ……ぁははは…」 最早、苦笑いしか出来ない春菜。 「ぁの……、こっ古手川さんはどうかな?」 そして、空気の流れを変えようと唯に話を振る。 「え?私も?」 「う、うん。せっかくだから一緒に行こ?やっぱりこういうのは大勢いた方が楽しいと思うし」 「私も別に構わないんだけど…、でも学生だけで旅行というのはちょっと問題なんじゃ…」 「あ、それは大丈夫。うちのお姉ちゃんに引率を頼んだから。後、御門先生にもお願いしようと思ってるの」 「そう?……それじゃあ私も行きましょうか」 「唯っち参加っと。春菜のお姉さんと御門先生も合わせてこれで八人だね」 「最高十二人まで使えるからあと四人は誘えるね」 「さて、後は誰を誘うか…」 籾岡と沢田が腕を組んでうーんと考え込む。 「あ、そーいえばララちぃ、結城の奴はどうなの?時間が取れるなら誘っても良いんだけど…」 「ララちぃだって一応結城がいた方が良いでしょ?あたし達はどっちでもいいけど…」 「え゛っ!?えーと~……」 目線をその当人の方へ向けて助けを求めるララ。 「あーそれがね~…、昨日リトから電話があったんだけど、未だにアトリエに缶詰状態らしくてかなり修羅場ってるみたいなんだ~…。 だから多分行くのは無理なんじゃないのかなぁ~…」 「缶詰状態って…、漫画を書くのってそんなに大変な事なの? てゆーか結城くん、そんな極限状態でちゃんと休めてるの?倒れたりしてないのかしら…」 唯がちょっと心配そうに話に入ってくる。 「ま、まぁリトにとってはそれが日常茶飯事だったから流石に慣れちゃったんじゃないのかな?」 「……」 ふと、何かを考え込む唯。そして――。 「……ねぇ結城さん、前から考えてたんだけど、もし良かったら一度結城くんの様子を見に行 「ダメー!!それはダメェーーー!!!」ぇ……え?」 唯からの嬉しくも冗談ではない申し出におもわず声を荒げて力一杯拒否するリト。 対して、予想外の拒否反応にキョトンとなる唯。 「いい、古手川さんっ!?漫画家の修羅場と化したアトリエっていうのは君が想像してる以上に恐ろしい所なの!! この間なんか差し入れ持っていてあげた時にアシスタントさんの一人が丸ペン落としただけで オヤジ――才培の叔父さんに「ウルセェんだよこの×××がぁぁぁ!!!」ってタコ殴りにされてたのを間近で見ちゃったんだからっ!! そんな危険すぎる所に古手川さんみたいな女の子を放り込むなんて出来る訳無いよ!!リトだってきっとそう言う!!」 「そ、そんな大袈裟――」 「――に言ってると思う!!?」 「……」 唯の両肩をガシッと掴んで、有無を言わさぬ鬼気迫る程の勢いで説得に当たるリト。 実際にその現場を見た事でもあるのか、その言葉は妙に説得力を含み、 唯はその勢いに押されて何も言うことが出来ずにタジタジになる。 「だから気持ちは嬉しいけど自分の命をドブに捨てる様な真似はしないで、お願い!! リトにはボクが伝えておくから、『古手川さんが心配してた』って!!OK!!?」 「ぁ………ぅん…分かった…」 (ふ~、やっべぇやっべぇ…) 心の中で汗を拭う動作をしながら、リトは盛大な安堵の溜め息を吐いた。 「………ぇーと……とりあえず今回は結城は来れないって事で良いの……よね?」 「残念だったね、ララちぃ」 「う、うん…。いや~残念だなぁ~、リトと一緒に行きたかったなぁ~…」 物凄くワザとらしく悔しがるララ。これでバレないのだから不思議な物である。 「うーん、そしたらどーするか…」 「何だったら身内の人を誘っても良いんだけど…」 「あ、それだったら代わりと言っちゃ何だけど、美柑も連れて来ていいかな?」 「ミカン?」 「誰それ?」 「あぁ、オレ――じゃない、リトの妹さんなんだけど…、 あの子いつも家事とかで忙しくしてるからたまには羽を伸ばさせてあげたくてさ。 それに二日も家に一人っきりにさせる訳にもいかないし…」 「あっ、それさんせ~♪」 「まぁ、そんな事情ならあたしは全然構わないけどさ」 「レモりん優しいんだね。あたしも全然OKだよ♪」 「ありがとう、二人とも♪」 感謝の言葉と共に、二人にニッコリ微笑みかけるリト。 「「ぅ゛…///」」 その笑顔を見て、おもわず顔を赤らめて目を逸らす籾岡と沢田。 (な……なんて凶悪な笑顔を放つんだ、この娘はっ!?おもわず襲い掛かっちゃいそうになっちゃったじゃない…///) (あっぶな~…、一瞬意識がアンドロメダまで吹っ飛ぶトコだったよ…///) 「?、どしたの二人とも?顔赤いけど」 「「なっ、何でもないよっ!!///」」 「?」 「そっそれよりも後は誰を誘おっか?///」 「そっそうだね!後は誰がいたっけ?///」 誤魔化す様に籾岡と沢田が腕を組んで再びうーんと(若干ワザとらしく)考え込む。 と――。 「あっ!ヤミちゃんがいるーっ♪おーいヤミちゃ~~ん!♪」 ララが窓から中庭のベンチで本を読んでいるヤミを発見した。 手を思いっ切りぶんぶん振って大声でヤミを呼び、それに気付いたヤミが背中に翼を変身させてこちらに飛んでくる。 「何ですか?プリンセス」 「ねーねーヤミちゃん、ヤミちゃんも一緒に温泉行こーよ~♪」 「温泉……ですか?」 「うんっ♪」 「いえ、私は…」 「遠慮しておきます」と言おうとしたが、何故かその言葉が口から出ずに押し黙ってしまう。 何故かというと…。 「わくわく♪(キラキラ)」 目をランランに輝かせて『行く』と言ってくれるのを明らかに期待しているララを目の当たりにしてしまって、 この笑顔を崩してしまう罪悪感から、断りの台詞を言うに言えなくなってしまったからだ。 「ヤミちゃん行こーよ~。美柑も一緒なんだよ~。きっと楽しいよ~♪」 「ぇ…」 美柑の名前を出した途端、ヤミの表情が少しだけ柔らかくなった。 「美柑……も来るんですか?」 「うん、来るよ♪」 (おいおい、まだ話通してないだろ?) ――と思ったリトだが、ここでそれを言うのも野暮という物なので心の中に押し留めておく。 「じゃあ……行きます…」 「やったぁー♪」 「ヤミヤミ参加っと。これで十人だね♪」 「あと二人か~…、他には誰が…」 『ガラッ』 「ララちゃーーん♪」 「あ、レンちゃん」 見計らったかの様なタイミングで突然レンが乱入してきた。 「おぉレンレン、丁度良いところに」 「レンレン、明日ヒマ?」 「へ?明日は特に何の用事も無いけど、どーかしたの?」 「あぁ、それはね………………ララちぃ、ご説明を」 「え?私が?なんで?」 「「いいからいいから♪」」 二人に促されて、ララは少し腑に落ちないながらもレンに説明を始める。 「あのねレンちゃん、明日みんなで温泉に行こうって話をしてたの」 「温泉?『みんな』って事はララちゃんも行くのかい?」 「うん、行くよ♪」 「しかも今回は結城は欠席だよ」(ボソッ) 籾岡が小声でレンに耳打ちする。 「でね、もし良いのならレンちゃんも「行きます!!是非ララちゃんと一緒に行かせていただきます!!」」 某宇宙刑事の蒸○並のスピードで返事を返してきた。 (チャンス到来っ!!まさかこんな形でララちゃんと親睦を深められる機会が巡ってくるとはっ!! しかも今回は邪魔な結城がいないなんて…、このチャンス、絶対逃がす訳にはいかないっ!!) 顔をニヤつかせながら、今にも飛び上がりそうな感じで喜ぶレン。 『ララが一緒でリトがいない』という事実が余程嬉しかったのか、心の中でガッツポーズを取っているのが手に取るように解る。 「……」 その一方、そんなレンの態度が何となく気に入らないのか、横目で軽くレンを睨み付ける『来ないと思われているリト』 「……レンくん、随分嬉しそうだね?」 「そりゃ嬉しいさ♪ララちゃんと一緒に旅行なんて初めての経験なんだから。いや~、楽しみだなぁ~♪」 「………あっそ」 (何か分かんないけどムカつく…) そう呟いてプイッとそっぽをむくリト。 「?、レモンちゃん、何でそんなに不機嫌なんだい?」 「別に」 (とりあえずコイツは元に戻ったら力一杯殴り飛ばす…と) 自分でも良く分からない苛立ちに流されながら、リトは何となくそんな決意を固めておいた。 「ほっほ~う…♪」 「これはこれは…♪」 そんなリト(レモン)の様子を、籾岡と沢田がニヤニヤしながら眺めていた。 「?、何?」 「いえいえ別にぃ~♪」 「そっかそっかぁ♪レモりんはそーだったんだぁ。いや~、青春だねぇ~♪」 「?」 二人の言ってる意味が解らず頭に?マークを浮かべるリト。完全に何かしらの誤解をされてるみたいだが全く気付く気配が無い。 ま、世の中知らない方が良い事もあるという事で 「さて、これで全員分誘ったかな?」 「そだね。んじゃ、このメンバーで行き「ぅおぉーい、ちょっと待てぇぇぇっ!!!」――ん?」 話をまとめようとした時、いきなり怒号が聞こえてきて、その声が聞こえてきた方を見ると…。 「あれ?猿山いたの?」 「いただろーが最初っからぁ!!場面切り替え時の冒頭の文章にも載ってただろぉ!!」 気になった方はぜひご確認を。 「つーかお前ら、何普通に話まとめようとしてんだよ!!まだ全員分誘ってないだろ!?」 「え?ちゃんと十二人全員誘ったでしょ?ね、未央?」 「えっと、まずあたしとリサでしょ?春菜とそのお姉さん、ララちぃにレモりんに唯っちに御門先生、 それからヤミヤミと結城の妹さん、後は………レンレンとルンルンだね」 「ほら、ちゃんと十二人いるじゃん」 「レンとルンちゃんは二人で一人分だろぉ!!?実質後一人分余るだろ!!」 「あーもう、うっさいなぁ~。で、何よ?何が言いたい訳?」 「オレも混ぜて♪」 「「え~…?」」 明らかにイヤそうな顔をする籾岡と沢田。 「何だよ!リトやレンだったら別にいいのにオレはダメなのかよ!?」 「だってあんた、何かまたロクでもない事考えてるでしょ?あんた連れて行くとなると何か身の危険を感じるんだよね~」 「結城の場合はララちぃと必ずセットになってるみたいなモンだし、 連れて行かないとララちぃ泣いちゃうもん(今回は不参加みたいだけど) それにレンレンは半分女の子だしね」 「………確かに猿山くんよりは結城くんの方がマシだと思うけど…」 「そもそもこんな人いましたっけ?」 「ガーーーン!!!」 籾岡・沢田に加え、唯やヤミにまでボロクソに言われて、あまりの再起不能並のショックを受けてその場に突っ伏してしまった。 「猿山くん、ちょっと可哀想…(小声)」 「自業自得っちゃあ自業自得だけど(小声)」 「ぁ……ぁはは……、結城くんも結構冷たいんだね…。解らなくも無いんだけど…(小声)」 「解るんだ西連寺…(小声)」 (春菜ちゃんも結構ヒドい…) 傍観者に徹しているリトと春菜だが、こちらも小声で猿山に対して結構冷たい会話を繰り広げていたりする。 最早この場に味方不在、絶望的状況に追いやられた猿山。 だが、ここで猿山に救いの手が――。 「別にいいじゃん。行きたいなら連れて行ってあげても♪」 『へ?』 「ラッ、ララちゃぁ~~~ん!!(泣)」 ララからのありがた~いお言葉に伏せた顔を勢い良く上げて、幸せオーラ全開で感謝の涙を流す猿山。 「良いのララちぃ?」 「うんっ♪人数はいっぱいいた方が楽しいじゃん♪せっかくの旅行なんだし」 「いや、でもねぇ~…」 「ありがとう!!ララちゃんありがとう!!」 馴れ馴れしくララの手を取って、ブンブンと上下に振りながら握手をする猿山。 「仕方ないわねぇ…、特別だかんね猿山」 「もし変な事したらヤミヤミにお仕置きしてもらうから」 「三割引でお引き受けしても良いですけど…」 「分かってる分かってる♪」 手をヒラヒラさせて笑顔で答える猿山。 ……………だが…。 (ぐふふふ…、ララちゃんやレモンちゃんと温泉…。露天風呂で身体を暖めてオレも二人から身体を暖められて……… なんて事になったらどーしよっかなぁ~~!!♪) 心の中では物凄く邪な妄想を繰り広げてニヤついていた。予想通りに。 つーかそんな場面、リトだったらまだしもお前みたいな奴じゃあり得るはず無いから。あってもやらないから。 「何だよぉ!!オレだって夢見たっていいだろぉ!!オレにも夢を見る権利を!!」 見ても良いけどシナリオ書くのボクだから。 ですので絶対そんなシチュはやりません。趣味じゃ無いんで。 「キッビシィーーー!!!」 「………何ブツブツ言ってんの?あのサル顔は」 「やっぱ連れて行くの止めた方が良いんじゃない?」 そんな事を話し合ってる籾岡と沢田をよそに――。 (……………何かまた一悶着ありそうな予感…) 今までの経験から、とてつもなくイヤな予感を感じずにはいられないリトだった――。 ―――――― 「はっ?温泉?しかも明日ぁ?」 「うんっ、そだよ♪」 「ちょっ、ちょっと待ってよ!?そんな事急に言われても! てゆーか何でそんな大事な事をこんな前日ギリギリになって言ってくるのよ!!?」 「仕方ねーだろ、オレ達だって今日初めて聞かされたんだから!」 その日の夜、『明日みんなで泊まりがけで温泉に行く』という事情を美柑に説明。 あまりに急なイベントに案の定慌てふためいたが…。 「美柑~、もしかして行きたくないの~?ヤミちゃんも来るんだよ~?」 「いや………行きたいけどさ…」 「じゃあ決まりだねっ♪早速準備しよー♪」 「あ、ちょっと、ララさん!?」 ズルズルララに押されて、気が付けば決定事項に。 美柑の呼び止める声など耳に入らず、ララは明日の準備の為にスキップをしながら自分の部屋へと戻っていった。 「…………リトでしょ?あたしを連れて来るって言ったの」 「まぁな」 「……あのねぇ、何のつもりか知らないけど流石に二日も家を空ける訳にはいかないじゃん。万が一の事があったらどーする訳? 後その間誰かセリーヌにお水あげるのさ!?そこんトコの心配もちゃんと気掛けて――」 「オレから言わせりゃお前一人を家に置いていく方がよっぽど心配だ!」 「………ぇ///」 美柑の言い分を一蹴して自分の偽り無い気持ちを伝えるリト。 その台詞におもわずドキッとなり、美柑の顔が徐々に赤らんでいく。 「家とセリーヌの事はザスティンに任せてあるから、たまには家事の事は忘れて思いっ切り羽を伸ばせ。 いつも世話になりっぱなしじゃ兄貴として情けないからな、これはほんのお礼だよ♪」 そう言って、リトは美柑の頭を優しく撫でた。 その光景は、妹の事を大事に想う兄の気持ちが良く理解出来る。 「……………バカ///」 真っ赤にした顔を俯かせて力無く、聞き取りづらい程の小声で文句を吐き捨てる美柑。 だがそれでも、頭を撫でるリトの手を払いのけたりはしない。むしろ、リトに撫でてもらってるのがとても気持ちよさそうに見える。 「……もういいわ、あたしも早いトコ準備しちゃお」 「おぅ、行ってきな」 その言葉と共に美柑の頭から手を離す。 ちょっと名残惜しそうにしていた美柑だが、その事を悟られない様にそそくさと部屋へと――。 「あ、そーいえばリト。リトはどーするのさ?」 「は?」 ――向かおうとしたが、不意に立ち止まってそんな事を聞いてきた。 「どーするって何を?」 「だから温泉」 「そりゃ行くさ。オレだって結構楽しみにしてんだぞ?」 「いや、そーじゃなくて」 「へ?」 「お風呂は男湯と女湯、どっちに入るつもりなのよ?」 「……」 「……」 ……………。 …………。 ………。 「…………………………誰もいない時を見計らって入ります…///」 そんなこんなで、旅行前日の夜は更けてゆく…。 ―――――― 翌日、彩南高校校門前――。 「「ねむ~~~い…」」 「だらしないなぁ、二人共…」 「うっせー、お前と違って……ふぁ~…んぅ……こんな朝早くから起きる事に慣れてねーの…」 「うみゅ~……zzz」 現在空も白みかけてきた早朝午前六時、リト・ララ・美柑の三人は、集合場所である彩南高校の校門前で待ちぼうけていた。 いつも早起きなので割と平気そうな美柑に対して、リトは欠伸を噛み潰し、焦点が合ってなさそうな目をくしくし擦って文句を言う。 ララに到っては、直立したまま首をカックンカックンとフネこぎまくりで半分夢の中。端から見れば立ったまま寝てる様にも見える。 これが漫画の中だったら鼻ちょーちんの一つ位は出してるのでわなかろーか…? 「てゆーか何で集合時間をこんな朝早くにした訳?」 「あー何でもな、その温泉かなりの山奥にある秘湯中の秘湯らしいんだよ。 だからこれ位早く集まって出発しなきゃ丁度良い時間に着かないんだってさ。ふわぁ~…」 美柑の質問に答えた後、リトはまた大きな欠伸。 「むにゅ~……zzz」 ララはララでフネをこぐ範囲が更に広がり爆睡モード一歩手前。これでも寝ちゃわない様に必死で頑張ってるんです。 「ララさん、昨日はちゃんと寝れた?」 「ん~…?あんまりぃ~……zzz」 「よっぽど楽しみだったのかな?今日の旅行」 「違うよ~…。昨日は御門センセに色々頼まれて…、その準備してたら寝る時間が無くなっちゃった~……むにゃむにゃ…zzz」 (寝言…) (…じゃ無いよね?) どー見ても寝てる様にしか見えないが、一応起きているという方向で質問を続ける。 「御門先生が?色々頼まれてって何を?」 「ん~……私も良く分かんな~い……。ただ今回の旅行に絶対必要だからって………く~…zzz」 「ふ~ん…」 (また何か良からぬ事を企んでるんじゃないだろーな、あの人は…) 基本的には何かと頼りになる、身の回りの人間の中で極めて貴重な存在なのだが、 その反面、何かと悪戯好きな所もあるので油断は出来ない。 何故なら大抵その厄介事に巻き込まれるのは自分自身なのだから。 「みゅ~……ねむいよ~…zzz」 「ガムならあるけど食べる?ブラックだけど」 「ん~……私ソレキライ~……zzz」 「じゃあもうその辺で寝てたらどうだ?みんなが来たら起こしてやるから」 「ん~……そーすりゅ~…zzz」 そう言って、ララはぽすっと寄りかかって寝に入ろうとした。 ………リトの胸に。 「……オイ、ララちゃん」 「ん~…♪ん~…?」 「……何故いちいちオレの胸に顔を埋める?」 「ココが一番落ち着く~…。リトのおっぱいマクラ~…♪」 「いや、オレは落ち着かねーって!つーかどー考えたって寝にくいだろ、お前膝立ちだし――ってひゃんっ!? こ、こら頭ぁ!!頭動かすんじゃなぁい!!てゆーかお前ホントは起きてんじゃないのか!?絶対ワザとやってるだろお前!?」 「ん~、すりすり…♪」 事ある毎にリトの胸に顔を埋めてくるララを顔を真っ赤にして引き剥がす。 このやり取りもこの一週間の間で最早恒例になっていた。 端から見たら仲の良い女子二人がじゃれ合ってる様に見えるが、リトは本当に引き剥がそうと必死なのだ。 決してララをワザと受け入れてこの状況を楽しんでる訳ではない。 「だからいい加減コイツを止めてくんないか!?そこでニヤニヤしている我が妹!」 「え~?でも妹としてわお二人のお邪魔をしちゃ悪いすぃ~♪ てゆーかリトもなんだかんだで結構楽しんでそうだすぃ~♪」(ニヤニヤ) 「違うわぁーー!!!」 『ガバッ!!』 「あぁん」 怒りのツッコミと共にララを胸から引き剥がした。 「オメーも寝るならあっちで寝なさい!枕ならカバンを使えば良いだろ!?人の胸を枕代わりにするんじゃない!!」 「ぶ~」 「『ぶ~』じゃない!」 『プップー♪』 そーこー言ってる間に一台の車がクラクションを鳴らしてリト達の前に止まった。 「ふわぁ~……やっほ~、早かったのね結城君達。一番乗りだと思ったのに」 「おはようございます、プリンセス、美柑…。あと結城リト」 「あ、御門センセ~…」 「ヤミさんっ♪」 「ヲイッ、オレはついでかい」 大きな欠伸と共に、御門先生とヤミが車から出て来た。 三者三様、それぞれ返事を返す。 「つーか先生、まさかそんな寝ぼけ眼で車運転してきたんスか?」 「だってぇ~…私朝弱いんだもん~…ぁふ……。ココに来る前にも三回位意識がトんだ覚えがあるんだけど…」 「あからさまな居眠り運転じゃないスか!!良くそれで事故りませんでしたね!?」 「あぁ、それ位大丈夫よ。私勘は良いから♪」 「勘で運転すんなよ、勘で!!アンタ一応教師で引率者でしょ!?命預かる側の人間でしょ!? もし万が一の事があったらどう責任取るつもりなんスか!!?」 「フッ、心配要らないわ…。人間いざとなったら眠れる力が発揮されるものなのだから…。 大事なのは………心の目を信じる事よ!」(キラーン☆) 「そんな都合の良い話があるかい、漫画じゃあるまいし!!」 「何言ってんの♪そんなモンこの話の作者の都合で何とでも「危ない発言禁止ーー!!!」」 慌てて御門先生の口を塞ぐリト。 「いや~結城君、朝からトバすわね~♪」 「アンタがさせてんでしょーが!!」 そんな風にリトを軽くイジった後、御門先生はカバンに頭を置いて寝っ転がってるララの方を向いた。 「あらあら、ララさんも随分眠そうね。大変だったでしょ?」 「みゅ~……センセ~…私ガンバった~……zzz」 力無く片腕を上げてガンバった感をアピールするララ。 「ごめんなさいね、私のお願いで睡眠時間削っちゃって。でもどうしても必要な事だったから」 「ん~………これで旅行楽しくなる~…?」 「ええ、もうバッチリ♪」 とてもスバラシイ笑顔で親指を立てる御門先生。 その笑顔を見てララもニパーっと笑顔になる。 その一方で、端から見てたリトは嫌な予感満面の怪訝顔になる。 「あの…御門先生、ララに一体何を頼んだんスか?」 「ん?とっても大事な事♪薬の事もあるからとても私一人じゃ準備しきれなくて」 「いや、だから何を…」 「ナ~イ~ショ♪」 すごーく楽しそうに言う御門先生に、リトはますます不安感が増した。 「そんなに心配しなくても大丈夫よ。結城君に迷惑掛ける様な事じゃ無いから♪今回はコッチ側だしね」 「コッチ側?」 「そ、コッチ側♪」 「……」 結局言ってる事はイマイチ理解出来なかったが、とりあえず警戒だけはしっかりしておこうと心に誓うリトだった…。 「ヤミさんっ、おはよ♪」 「……おはようございます、美柑…」 一方、満面の笑顔でヤミに駆け寄って腕に抱き付く美柑。 それに対していつも通りのポーカーフェイスで挨拶を返すヤミだが、いつもと違い警戒心が全く無い。 表情と纏っている雰囲気が明らかに柔らかな物であり、その姿は殺し屋らしからぬ、 何処にでも居そうな普通の女の子そのものだった。 「えへへ…♪」 「……嬉しそうですね、美柑…」 「だってヤミさんと一緒に旅行に行けるんだよ?嬉しいに決まってんじゃん♪」 「そう……ですか…」 「ヤミさんは嬉しくない?あたしと旅行…」 「……いえ、決してそんな…」 (じっ…) 「……」 少し不安そうに上目遣いで見つめる美柑に、胸の辺りがチクッと痛む。 おもわず数秒程目を逸らしてしまったが、ヤミはすぐに自分を諫めて、そんな美柑の目を(少し照れ気味に)真っ直ぐ見据え…。 「私も……嬉しい…ですよ…。美柑と旅行に行ける事が…」 微笑んだりはしなかったが、とても穏やかな目で…、美柑を安心させる様に優しい口調で自分の気持ちを伝えた。 「ホント!?良かった~♪」 本当に心から嬉しそうに無邪気に喜ぶ美柑。抱き付いた腕に更にぎゅーっと力が篭もる。 その姿は、普段の大人ぶってる姿とは違い、まさしく年相応のお年頃の女の子の姿である。 「……」 そんな美柑が何となく直視出来ず、顔をほんのり赤らめて再び目を逸らすヤミ。 さっきの『罪悪感から』とは違って、明らかに『照れ隠し』である事がバレバレだ。 「くくくく……♪」 端からその一部始終を見ていたリトは、おもわず含み笑いを漏らしてしまった。 「……何が可笑しいんですか?結城リト」 「いやいや、おかしくはねーよおかしくは♪」 「顔をニヤつかせて言われても全く説得力ありませんよ…」 若干ヤミから殺気が放出される。が、すぐ傍に美柑が居るからあまり強くは出られない。 見かねた美柑がヤミに代わってリトに抗議する。 「リト!あんまりヤミさんをおちょくらないで!」 「だから違げーって。ちょっと驚いて嬉しくなっただけ♪」 「は?何で?」 「さぁ何ででしょーねぇ~?にひひひ…♪」 ワザとらしくトボケてまた含み笑い。そんなリトの様子を二人は『訳分かんない』といった感じで眺める。 でもって、ヤミがおもわず発した一言は――。 「何が可笑しいのか知りませんが、あなたのその格好の方がよっぽど可笑しいと思うのですが…」 『ビキッ!!』 言った瞬間、リト石化。 「え~?私は可愛いと思うけど?何か今日は一段と『女の子』って感じで♪」 「それは………私もそう思いますが…。けどドクター、この人は元々男性なのですよ? そんな人が堂々と異性の服を着て往来を歩いているのは大問題だと思いますが…」 「好きでこんな格好したんじゃねーよ!!」 何とか復活したリト。顔を真っ赤にして御門先生とヤミに抗議する。 「オレだって最初は普通の――自分の普段着で来ようとしてたんだよ!!それをララと美柑の奴が――!!」 「いや~、リトがどーしても女の子の格好がしたいって言ってくるモンだから♪」 「ウソ吐くんじゃねーよ!!オメー随分楽しそうに――」 『ゴメ~ン、間違ってリトの服全部洗濯しちゃった♪だから代わりにララさんの服かお母さんの秘蔵品でも着といて♪』 「――ってワザとらしく言ってたじゃねーか!!それでララと二人してこんな格好に無理矢理――!!」 「しょーがないじゃん。着る服が無いんなら♪」 「幾ら何でもオレの服全部洗濯に出すなんざ無理がありすぎるだろ!?明らかな確信犯じゃねーか!!」 「まぁまぁ、別に良いじゃないの♪とても良く似合ってるわよ『レモンちゃん』♪」 「そーそー、凄く可愛いよ、『レモンお姉ちゃん』♪あたし何か惚れ惚れしちゃうなぁ~♪ね、ヤミさんもそう思うでしょ?」 「そう……ですね…。似合ってるのは……本当ですよ…、結城『レモン』…」 「だからそんな『似合ってる』なんか言われたって全然嬉しくなんか――!!………ん?」 「ここは一つビシッと言ってやろう」と思って文句を言おうとした時、リトはある三つの違和感に気が付いた。 一つは、皆の自分の呼び方が『リト(結城君)』から『レモン』に変わった事…。 そしてもう二つは――。 何かお尻の辺りがスースーしてる事と胸を鷲掴みにされてる感覚…。 「ふむ、今日はピンクですかレモりん…」 「レモり~ん、いい加減あたしが選んだストライプも穿いてみてよ~」 「……ってのわぁぁぁ!!!お前達どっから湧いて出たぁ!!?てゆーかいきなり何やってんだぁ!!!」 「朝の挨拶も兼ねての下着チェック♪」 「朝の挨拶も兼ねてのバストチェック♪」 「爽やかに言うなぁ!!!」 何時の間にか沢田が背後でスカートを捲って、籾岡がリト(レモン)の胸を後ろから揉みしだいていた。 慌ててそこから飛び退いて、両腕でスカートと胸を押さえながらツッコミを入れるリト。 「いやいや、何かレモりんの服が似合ってるだの何だのどーこー言ってたみたいだったから ちゃんとその服に合うパンツ穿いてんのかなぁ~って思って確認を♪」 「後レモりんのおっぱいがどれ位育ってるのかの確認も♪ちょっと大っきくなったでしょ?」 「しなくていいっての!!つーか何でアンタ達は毎度毎度オレ……ボクに対してセクハラばっかり――!!」 「ただのスキンシップじゃ~ん、そんな人聞きの悪い…。別に減るモンじゃ無いんだから♪」 「それにレモりんってば油断してるとすぐ男物に走るでしょ?ダメだよ、女の子がそんなんじゃ――。 そーならない為にあたし達がしっかりと管理を――♪」 「余計なお世話だっての!!!」 全く悪びれた様子も無く手をヒラヒラさせて言う籾岡と沢田を怒鳴りつけるリト。 「多分……いやきっと無駄なんだろーなー…」と心のどこかで思ったりもしてるが、それでも言わずにはいられない。 悲しいかな、ツッコミ属性の本能…。 「先生も!!気付いてたんなら止めて下さいよ!!」 「うふふ~、ゴメンね~レモンちゃん♪でも私もレモンちゃんがどんな下着を穿いてるのか気になっちゃって♪」 「アンタねぇ、少しは教師としての自覚を――!!」 「ほら、そーやって油断してると…♪」 「え?――ひゃうっ!!?」 「またセクハラ受けちゃうわよ?――って、ちょっと遅かったわねぇ~♪」 再びリト(レモン)の胸を鷲掴みにするエロオヤジ籾岡と、スカートの中に顔を突っ込んで、頬でお尻をすりすりするその2沢田。 でも御門先生は全く止める気配が無い。この様子をニヤニヤしながら眺めて、明らかに楽しんでいる。 過去に被害履歴があるヤミも、被害を喰らわない様に美柑を連れて既に遠くへ避難済み。 そしてララは既に爆睡モードに入っており、つまりこの二人を止める者は誰もいない…。 「にっひっひっひっ――♪ええか~?ええのんか~?ココがええんやろおじょーちゃん~♪」 「う~ん、レモりんお尻もスベスベ~♪」 「ひゃっ!!?ちょっ……二人共止め……あんっ!せ…せんせ……助け…!!」 「いや~、仲が良いって微笑ましくてイイ事よねぇ~♪先生レモンちゃんがちゃんと学校に馴染んでくれてて嬉しいわん♪」 「ちょっとぉ!!御門せんせ……あっ…!」 「う~ん、イイ声♪」 「顔ヨシ、スタイルヨシ、その上感度もバッチリ。完璧だねレモりん♪」 「ただ性格が結城っぽいってのがちょっと戴けないけどね」 「ちょっ……お前達いい加減に……!!」 二人を無理矢理にでも振り解こうと身体をよじらすリト。 だが、何せ二人掛かりで身体を抑えられているから上手く動く事が出来ない。 最早このままなすがままに蹂躙されるしかないのかと思ったその時――。 「朝っぱらから何ハレンチな事やってんの!!」 『スパンッ!スパンッ!!』 「だっ!?」 「あたっ!?」 突然張りの良い音が二つ響いて、籾岡と沢田が頭を抱えてその場に座り込んだ。 その拍子にようやく解放されたリトもその場に座り込み、呼吸を整えながら何が起こったのか確認しようと振り返ると…。 「大丈夫?結城さん」 「こ……古手川さぁ~ん…」 そこには、リト(レモン)を心配そうに見下ろす唯が立っていた。 どっから出したのか、何故か片手にハリセンを抱えて。 「っ~~~。いきなり何すんのさ唯っち~」 「頭ヘコんだかと思ったじゃ~ん」 「五月蝿いっ!!あなた達が朝から結城さんにハレンチな事してるからでしょ!?」 涙目で抗議する二人を軽く一蹴して説教モードに入る唯。 「ただのスキンシップだってば~。別に男にセクハラされてる訳じゃ無いんだから♪」 「だからって、同性にセクハラなんかして何が楽しいの!?」 「あれ?じゃ異性にならセクハラしてもいいの?それはそれで大問題でしょ?風紀委員さん」 「セクハラ自体が駄目な事でしょうが!!屁理屈言うんじゃないの!!」 ハリセンの先端をビッと二人に向けて怒鳴りつける唯。 そしてその後、御門先生の方へと視線を向ける。 「御門先生!!先生も見てたんなら止めて下さい!!それが教師の役目でしょう!?」 「あ、ゴメンね~。何か楽しそうだったから放っといても良いかな~ってつい♪」 笑顔で謝る御門先生。間違い無く『悪い』とは思っていない。確実に。 「………はぁ…、どうして朝からこんなに疲れなきゃなんないのかしら…」 「………同感…」 「「はぁ~~…」」 おもわず漏らした溜め息は見事にシンクロした。 やはりこの二人、中々ウマが合う。 「分かったわよ、もうレモりんの身体には触らない」 「スカートの中も覗かない」 「分かればいいの」 若干ヤケ気味に言う籾岡と沢田。だが…。 「それじゃあ…」 「代わりに…」 不意に、隅の方で寝ているララに視線を向けて…。 「ララちぃのバストチェックを♪」 「今日のパンツチェックを♪」 「「やめんかい(なさい)」」 全然懲りてないセクハラーズに二人のシンクロツッコミが発動した。 『プップー♪』 そこへ、また車がクラクションを鳴らしてリト達の前に止まった。 「おはよう、結……零紋さん、古手川さん」 (春菜ちゃん…♪) 「お、おはよ西連寺…さん」 「おはよう」 車から出てきた春菜に、たまたま前にいたリトと唯が最初に返事を返す。 「お、春菜やっと来た」 「遅いぞ~春菜」 「春菜さん、おはよー」 「……どうも」 「ハ~イ♪」 続けて、残りのメンバー(ララ以外)が声を掛け、春菜は律儀に一人ずつと挨拶を交わしていく。 その間に、例の二人から(恒例の(?))セクハラを受けた事はあえて省略させて頂こう。 「ララさん、寝てるの?」 「何か昨日は遅くまで起きてたみたいでさ…。御門先生から何かを頼まれたらしくて…」 「え?それって…」 「一体何を?」と訪ねようとした所――。 「ちょっと春菜、自分の荷物位自分で出してよね!」 「あ、うんっ!ごめん、お姉ちゃん!」 遅れて車から出てきた姉・西連寺秋穂の声に会話を遮られ、春菜は慌てて荷物を降ろしに戻った。 (あの人が春菜ちゃんのお姉さんか…。やっぱ美人だ…) 初めて会う春菜の姉・秋穂の姿に少し見惚れるリト。 「ん?」 (あ゛…) 不意に秋穂と目が合ってしまい、少し焦るリト。 そんなリトをよそに、秋穂が笑顔で近付いて来た。 「キミは……初めましてよね?」 「えっ!?あっ、はい!どうも…」 「いつも妹がお世話になってます。姉の西連寺秋穂です♪」 「い、いえっ!こちらこそお世話になりっぱなしで――!あ、レモンといいます!結城レモン…」 自己紹介と軽いお辞儀をした秋穂に対して、かなりテンパりながらこちらも挨拶を返して軽くお辞儀をするリト。 すると…。 「………ユウキ?」 名乗った瞬間、秋穂が何かに引っかかった様な小難しそうな顔になった。 「キミ……女の子よね?」 「えっ!?えぇ……まぁ…」 「そっかぁ……。じゃ違うのかな……。私てっきり…」(小声) 「ぁ……あの、何か?」 「え?あぁううん、大した事じゃないの。ただ春菜から良くユウキく「お、お姉ちゃんっ!!」」 今度は春菜の声に会話を遮られた。 「お姉ちゃんっ!自分の荷物は自分で降ろしてよ!」 「あーはいはい。さっきと逆になっちゃったわね」 踵を返して車へ戻る秋穂。 その入れ違いで、春菜が荷物を抱えて苦笑い気味に戻って来た。 「ご、ごめんね結城く……零紋さん。お話の途中で居なくなっちゃって」 「い、いや、別に良いって。でもお姉さん、さっきは何を言お「そっ、そーいえばさっ!」は、はいっ!?」 「言おうとしたんだろ…」という言葉は、春菜のかなり慌てた声に掻き消された。 春菜のテンパり気味に半分唖然とするリトをよそに、当の本人は何とか誤魔化そうと強引に話を切り替える。 「れ、零紋さんのその服装、とっても可愛いね」 「………西連寺もそれを言いますか…」 「あ、あれ?結城くん――じゃなかった、零紋さん!?どうしてそんなに落ち込んじゃうの!?」 そしてリトをヘコませて更に慌てる。 「レモンお姉ちゃ~ん♪良かったね~、春菜さんが『似合う』って言ってくれてるんだから♪」(ニヤニヤ) 「ぐ…ぐぅぅ……」 原因を作った一人に呑気な事を言われて、軽~く美柑に「どついたろか」とも思ったが、 春菜から『似合う』と言ってもらって少し嬉しかったのも事実なのであまり強く出られない。 やり場の無い怒りに、リトは手をワナワナさせて悶絶するジェスチャー。 「ぇ……ぇっと………きょ、今日の旅行楽しみだね零紋さん」 「へ?あ、あぁうん」 これ以上リトの精神に負担を掛けない様、再び強引に話を切り替える春菜。しかし、そんな同じ手は何度も通じる筈が無い。 ――のだが、リトは春菜に話し掛けてもらえるのが嬉しいあまり、その事に全く気付いておらず、あっさり誘導に引っ掛かる。 これも『恋は盲目』の定義の一つなのだろうか? 「私、温泉に行くのって初めてなんだ。だから昨日はちょっとドキドキしちゃってあんまり寝れなかったんだ」 「あ、そうなんだ。ボクも結構楽しみにしてたんだ」 (何せ春菜ちゃんと一緒に旅行に行けるんだし…♪) 「それに……ね…」 「ん?」 ふと、声がトーンダウンして、顔を赤らめて俯く春菜。そして…。 「それに……………………結城くんも…一緒だから「うおぉぉぉーーーーー!!!」…え?」 モジモジしながらボソッっと漏らした本音は、突然聞こえてきた誰かの雄叫びに掻き消されてしまった。 「な、何だ?」 「………って、何!?あの土煙」 唯が指差した方向、遙か遠くから何者かが土煙を巻き上げてこちらに突撃してくる。 その中心にいたのは――。 「ラーーラーーちゅわぁぁぁーーーーん!!!」 『レッ、レンッ(くんっ)!!?』 「うおぉぉはよおぉぉーーーー!!!」 『ズザザザザザ――!!!』 ララへ挨拶をしながら、そのまま校門を通り過ぎて30m付近で急停止した。 「ララちゃんっ!!今日は誘ってくれてありがとう!!ボクは今日という日が待ち遠しくて夜も眠れなかったよ!! まさかキミと二人で旅行に行けるとは夢にも思わなかったから!!しかも結城などでは無くこのボクを選んでくれるなんて!! キミはいつも結城結城と言っていつもボクを困らせていたけど、やはり本当はボクの事に気を掛けてくれて――!!」 「すぴ~……zzz」 「……」 踵を返し、こちらへ歩いてきながら自身の熱き想いを一呼吸の息継ぎの間も無く言い放つレンだが、 肝心のララはぐっすり爆睡中の為返事を返される事は無く、 レンの魂の発言は空しく朝焼けに消えて、当の本人は暗いオーラと共に膝と両手を地面につけてガックリ突っ伏してしまった。 分かりやすく説明するとorzである。 「バーカ」(ボソッ) 「ぁ……ぁははは……」 その様子を見ていたリトがおもわず漏らしてしまった感想に春菜苦笑い。 だが…。 「レモりん、妬かない妬かない♪」 「まだまだこれからだって♪レモりんならきっと大丈夫♪」 「は?何が?」 「またまた~♪隠したい気持ちは分かるけどさぁ~」 「あたし達はいつでも力になってあげるから、遠慮無く相談してね♪」 「?」 籾岡と沢田からぽんっと肩を叩かれ謎のエールを贈られてキョトンとなる。 (あ、結城くんまた何か厄介な事になってるっぽい…) 察しが良い春菜はなんとなく状況が飲み込めた様で、盛大な勘違いをされているリトを心の中で哀れむ。 「なぁ西連寺、籾岡達は一体何故オレにあんな言い方を?」(小声) 「ぁー…と……き、気にしない方が良いよ。むしろ気にしちゃだめだって。それがきっと結城くんの為だから」(小声) 「???」 春菜の回りくどい言い方に、頭の中が?マークで一杯になるリトだった…。 そして、この後猿山も合流して、ようやくメンバーが全員そろ――。 「ちょっと待てやぁ!!何でオレだけ登場シーンがねーんだよぉ!!」 だってもう面倒くさくなったんだもん。良いでしょ?別に。どうせ脇の脇なんだから。 「失礼な事言うなぁ!!!大体お前――!!」 「猿山、一体誰に対してそんな大声で怒鳴り散らしてんのさ?」 「普段からしょーもない事ばっかり考えているからとうとう頭の方が……くっ…」 「そこぉ!!可哀想な人を見る様な目でオレを見るなぁ!!」 「じゃ、みんな揃った所で早速出発しましょーか♪」 「それぞれ五人ずつに別れて御門先生か春菜のお姉さんの車に搭乗してくださーい♪あ、レンレンと猿山はワンセットだから」 「その上ナチュラルに流すなぁーー!!お前達一体オレを何だと――!!」 「ララちゃん、起きて。そろそろ出発するよ?」 「えへへへ……リト~…♪zzz」 「ほら、さっさと起きる!置いてっちゃうよ?」 「ん……ぅ~ん………ぁ、リトおはよぉ~…♪」 「……レモンね」 「え?あ、そっかぁ。えへへへ♪」 「ヤミさんっ♪一緒に乗ろ?」 「……すみません、美柑。私はドクターを抑えなければなりませんので…」 「『抑える』って……何で?」 「………知らない方が良いです」 「そ、そぉ?」 「ララさん、寝ぼけ過ぎ」 「おはよ、ララさん」 「春菜~♪唯~♪おはよぉ~♪」 「はいはい、挨拶はいいから早く車に乗りましょ。遅れちゃうわよ?」 「うんっ♪」 「ほらレンくんも!何時までも固まってないで――!」 「……」 「……」 『スパーン!!』 「あ痛たぁ!!はっ、ボクは今まで一体――!」 「気が付いた?もうすぐ出発するって」 「あ、あぁ。ありがとう」 「猿山くんっ!!猿山くんもそんな所でボケーッとしてないで――!!」 「……………うおぉぉぉぉーーーー!!!みんな薄情だぁぁぁーーーー!!!」 そんな猿山の魂の雄叫びが空高く響き渡り、一同 は一路、温泉旅館を目指して出発した――。 「ところで唯、そのハリセンどっから出したの?」 「………企業秘密よ」 ―――――― 車乗員割り振り。 御門車――。 御門先生(運転手)・リト(レモン)(助手席)・レン・籾岡・沢田・猿山。 秋穂車――。 秋穂(運転手)・春菜(助手席)・ララ・美柑・ヤミ・唯。 ―――――― 「すいません先生。こんな突拍子な企画に付き合ってもらっちゃって」 「良いのよ、可愛い生徒の頼みとあらば。そのおかげで私も温泉に行けるんだし♪」 御門車の車内――。 引率を引き受けてくれた御門先生にリトが代表してお礼を言う。 みんな浮かれっぱなしで和気藹々とした雰囲気から、これから始まる楽しい旅行に期待を膨らませているのが一目瞭然である。 「でもちょっと意外だったわね~」 「何がですか?」 「レモンちゃんの事だから間違い無く向こうの車に乗ると思ってたのに。ララさんや西連寺さんもいるし♪」 「いや、ちょっと訳ありで…」 後部座席にいるメンバーにバレない様に、偽名の方で呼んで質問する御門先生。 苦笑いを浮かべながら、リトも『レモン』として答える。 「美柑がどーしてもヤミ……ちゃんと一緒がいいって言いまして、 それでヤミちゃんは渋ってたんですけど無理矢理入れ代わったんですよ」 「美柑ちゃん…って確か、結城君の妹さんよね?見た所、随分ヤミちゃんに懐いてたみたいだったけど…」 「ええ。それにヤミちゃんも、顔には出してないけどまんざらでもなさそうだし…」 「そう…、今まで殺し屋として生きてきたあの子が…」 「ええ…、美柑と一緒に居る時は本当に楽しそうに見えて…」 「………良い傾向ね♪」 「はい、良い傾向です♪」 お互い顔を見合わせて、おもわず顔がほころぶ。 「それで、更に仲を深めてあげようと無理矢理一緒に乗せたと。優しいのね、わざわざ気を利かせてあげるなんて♪」 「いや、そんな大した事は――」 「でも良いの?レモンちゃんだって他人に気を掛けている場合じゃないはずでしょ? せっかく仲を深めるチャンスなのに」(ニヤニヤ) 「う゛…、そ、それは……、ボクだって分かってますけど…」 からかい半分でそんな事を言う御門先生に対して、顔を赤らめて俯くリト。 ――と。 「その点に関してもバッチリ問題無いよね?レモり~ん♪」 「わっ!?」 いきなり籾岡が後ろからひょっこり顔を出しておもわずビクッとなる。 「あら?それってどーゆー事?」 「そ、そーだよ。それってどーゆー…」 御門先生が興味津々に、リトは全く意味が分からないと怪訝そうに籾岡に尋ねる。 「にっひっひっひっ…♪」 しかし籾岡は何も答えず、怪しい含み笑いを発しながら視線を後ろに向ける。 その視線の先にあったのは――。 「はぁ~~……」 「およ?レンレンどーしたの?そんな深ーい溜め息吐いて…」 出発したばかりだというのに、溜め息なんか吐いて妙にテンションが低いレンと、 そんなレンに対して怪訝そうに尋ねる沢田。 「せっかくの旅行なのに、ララちゃんと一緒の車じゃないなんて…」 「おやおや?何さ、あたし達と一緒じゃ不満?」 ボソッと聞こえてきた一言に、からかいとムカつきを7 3でブレンドさせた感じででレンに問い詰める沢田。 「い、いや、そーゆー訳じゃあないんだ!ただ今日は結城の奴がいないから せっかくララちゃんといっぱい話をするチャンスなのに一緒に乗れないのはちょっと残念だなぁ~と!」 「それってとどのつまり、あたし達じゃ不満って事でしょ? ヒドいレンレン、未央…傷ついちゃう……ぐす…」 明らかに理解していながら、顔のニヤケを隠して軽蔑風の眼差しを向け、 その後あからさまなウソ泣きでレンの良心を煽る沢田。 「いや、だから、ララちゃんが居ないのが残念なだけで決してみんなに不満があるわけじゃあ――!」 「あの……、レン…くんがどーかしたの?」 「おろろ~、レモりんてばホントに自分でも気付いてなかったんだ~。 あたしてっきりとぼけてるモンだと思ってたんだけど…」 「いや、とぼけるも何も、ボクはホントに意味が分からな――」 「あっ、なーるほど♪」 籾岡の言いたい事が全く理解出来ないリトとは裏腹に、何かがピーンと来たらしい御門先生。 「そっかそっかぁ~♪そーいえばそんなフシもあった様な…♪」 「……あの、御門先生?一人だけ随分納得してるみたいですけど、一体何がなるほどなんですか?」 「あー良いの良いの、気にしないで。レモンちゃんは気にしなくても良い事だから♪」 「いや、そんな言い方されると余計気になるんですけど…」 「んー…、でもねぇ…、これは私の口から言う事じゃないわ。あくまで自分で気付かなきゃ。 ね?『レ・モ・ン・ちゃん』♪」 物凄くニヤニヤしながらリトにそんな事を言う御門先生。 200%誤解だと分かってるハズなのに全く止める気が無い。明らかにこの状況を面白がって楽しんでいる。 (何なんだぁ……?一体…) 訳が分からないといった感じで首を傾げるリト。 なんとなく横目で沈んでるレンの顔を見つめる。 「………ん?」 ふと、レンと目が合った。 (あ、やば。あんま見てると怪しまれちまう) 慌てて目を逸らすリト。 「どうかしたのかい?レモンちゃん」 「べ、別に」 若干冷や汗を掻きながら、苦笑いとよそよそしい態度で返事を返す。 リト本人としてはただの誤魔化しでしかないこの行動…。 ………だが。 「ほほう…、未央さん今の見ました~?」 「見た見た。レモりん無意識にそんな胸キュン行動とはなかなかのツワモノだねぇ~…♪」 (さすが結城君…、やる事なす事全部面白い方向に転がっていくわぁ~…) 周りの人達には更に要らぬ誤解を招いてしまった事は最早お約束。 (一人だけ理解していながらあえて黙ってるが…) 「レン!!てめぇ、一発殴らせろぉ!!」 「うわぁ!?な、なんだい猿山くん!?ボク何かやったぁ!!?」 「うるせぇ!!お前だけは…、お前だけはリトと違うと思っていたのにぃーーー!!!(泣)」 「ちょっと猿山、狭いんだから暴れないでよ!!」 「そーだよ!つーかあんた身の程をわきまえなさいよ!どーせあんたはオマケなんだからぁ!!」 そして約一名、血の涙を流しながらレンに殴りかかって、籾岡と沢田からブースカ文句を言われる。 男のジェラシーってみっともないよね…。 「………あ、そういえば先生」 唯一止められる可能性を持つツッコミ役は、この現状を軽く無視して御門先生に話し掛ける。 「実はこっちに乗る際、ヤミちゃんが気になる事を言ってましてね…」 「気になる事?なぁに?」 「それが――」 『………そ、そこまで言うなら…別に構いませんが……、その代わり、ドクターが何か問題を起こさない様に ちゃんとドクターを抑えて下さいね…』 (………無理だと思いますけど) 「――って言ってたんですよ」 (それも結構浮かれ気味で) 「あらあら、なぁにヤミちゃんたら。それじゃ私がまるでいつも危ない運転をしてるみたいじゃないの」 「いや、実際今朝方もやってたでしょ?居眠り運転」 「大丈夫よぉ~♪もう眠気はバッチリ覚めたし、それに可愛い生徒の命預かってるんだからそんな心配しなくても――」 と、その時――。 『ブロロロロ――!!』 「のわっ!?」 「きゃっ!?」 後ろから来た一台の車が、御門車を掠める様に猛スピードで横切って行った。 「あっぶねーな――ぁ、いかんいかん、危ないなぁ…、何?今の」 「そーいえばココ、走り屋を良く見かけるって言ってたっけ?」 籾岡がちょっとムカつき気味に答える。 危うく当てられそうになった事に怒りを覚えながらも、助手席に座ってる以上、運転に悪影響が出ちゃいけないと思い冷静に心を落ち着ける。 …………しかし。 「良くこんな山道であんなにスピード出せますよね~。ね?先せ――」 リトがなるべく御門先生を動揺させない様フレンドリーに話し掛けようとした時――。 「……………この野郎…」(ボソッ) 「…………へ?」 多分幻聴だと思うが、何か御門先生から聞いちゃいけない様な言葉がボソッと聞こえてきた。 「………ぁの、先生?」 「ん?なぁに?レモンちゃん♪」 「ひぃっ!?」 爽やかな笑顔でリトに返事を返す御門先生………なのだが――。 (な…何故だろう……、その笑顔が逆に怖い…) 御門先生の全身からドス黒いオーラが放出されているのが見えているのは多分気のせいじゃない。 否が応にも何か得体の知れない恐怖心を感じ取り、頬を冷や汗がツツーッと流れ落ちる。 とりあえずこちらも笑顔を取り繕って御門先生に合わせるリトだが、顔が思いっ切り引きつってしまっている。 後部座席のメンバーも同様で、みんな揃って一番後ろの隅っこに固まってガタガタ震えている。 「あら?どーしたのみんな?何をそんなに怖がってるの?」 『いっ、いーえ何にも!!』 全員声を揃えて必死に首を横に振る。 ハッキリ言って説得力の欠片も無い。 「クスッ、そんなに心配しなくても大丈夫よ。みんなの命は先生が守ってあげるから♪」 《いや、何かここに居る方がよっぽど危険な気がするんですが、これは気のせいでしょーか!!?》 そして全員同じ様な事を思ったが口には出さない。というより出せない。 今の御門先生があまりに怖すぎるから。 『ブオォォン――!!』 「あ」 そんなやり取りをしてる間に、また一台車がスレスレを横切って行った。 「……」(ピクピク) 御門先生、ハンドルを握る手が震えています。力が込もりすぎて。 こめかみも異常にピクついてる様に見えます。 更に…。 『ブゥゥゥゥン――!!』 「……」(ビキッ!) また一台抜かれたと同時に、御門先生に青筋発生。 「せ……先せ「大丈夫よ、私はいたって冷静だから」はっはい!すいませんっ!!」 『別にあなたの精神状態を聞いた訳じゃ無いんですが』 とは当然言えず、意味もなく謝ってしまったリト。 それもかなり低い声で告げられて更に恐怖感upするオプション付きで。 『ブオォォン――!!ブッブー!!』 『わっ!?』 御門先生のダークネスオーラに気を取られすぎたせいか、いきなりクラクションの音が聞こえてきてビクッとなる一同。 気付かない内に更に一台、御門車の横にピッタリ併走されており、そして――。 『オラァ!!ノロノロ走ってんじゃねーぞクソアマがぁ!!邪魔なんだよぉ!!!』 相手に好き放題暴言を吐かれた挙げ句、排気ガスを浴びせられながら抜かれていった。 「……」 『ブチッ!!』 (あれ?今何か『ブチッ』って…) リトがそんな事を思ってた頃には時既に遅し――。 「なめてんじゃないわよぉぉーーー!!!」 『わあぁぁ!!?』 とうとうブチギレた御門先生。思いっ切りアクセルを踏み込んでさっき抜いていった車を追撃し始めた。 いきなり急加速したので、後部座席のメンバーは成す術無く後ろに飛ばされてしまい、 助手席でシートベルトをしていたリトは飛ばされはしなかったが、 山道を猛スピードで走り抜ける恐怖感と押し寄せる圧力で身動きが取れない。 「ちょっ、先生ぇ!!?スピード出し過ぎぃ!!」 「しっかり捕まってなさいよぉ、吹っ飛ばされても知らないからぁ!!」 「いや…、実際もう吹っ飛ばされてますからぁぁぁぁーーー!!?」 引きつった苦笑いと共に入れようとしたリトのツッコミは、突然の急カーブによって遮られてしまった。 ハンドル握ると性格変わる人ってよくいると思うけど、ここまで豹変する人も珍しい。 「ホラホラ、追い付いたわよクサレフニャチン野郎!こちとら伊達に当たり屋で食ってる訳じゃ無いんだからねぇ!!」 「いや、アンタ教師でしょーが!つーかなんちゅー下品な台詞をぉぉぉーーー!!」 更に急カーブで、またしてもリトのツッコミは掻き消された。 「イヤァーー!!助けてぇーー!!」 「お母さーーーん!!」 「ボクまだ死にたくなぁーい!!」 「%◎□@″♂$☆!!」 後部座席もパニック状態に陥って、正に阿鼻叫喚の嵐。 みんな例外無く命の危機を感じ取って、本能的に助けを求める。 猿山に至っては、テンパり過ぎて何を喋ってるのか全然分からない程である。 「先生、スピード落として!!別にあんなのと張り合わなくたって――!!」 「むむっ、ドリフトでブロックとはなかなか小癪な事を…!でもね、こんな事で私を止められるとは――!!」 (――って全然聞いてくれてねぇ~~~!!) 御門先生には最早前方の車しか見えておらず、必死に止めようとするリトの声は全く届いちゃいない。 気分は正に頭○字Dって感じである。 ………読んだ事無いけど。 (あそこだ…、あそこのヘアピンカーブ…!そこしか逆転のチャンスは無い!!) 逆転って…、これはいつの間に勝負事になったんでしょーか?――などというツッコミはもうこの人には意味が無いでしょう。 こーゆーシチュエーションって無条件で燃えるモンだし気分が――(略)。 「仕掛けるっ!!」 『わぁぁっ!!?』 その言葉を合図に、御門先生はアクセルを目一杯踏み込んで、前の車を抜いてカーブに突っ込んで行った。 全員吹っ飛ばされながら、御門先生のこの行動(とゆーか自殺行為)に驚愕、全力で止めにかかる。 「御門先生ぇ!ブレーキブレーキぃ!!」 「ぶつかるーー!!ガードレールぶつかっちゃうからぁーーー!!」 「いやぁぁーーっ!!死にたくなぁーーーい!!」 「ララちゃん助けてーーー!!」 誰しもが、ここで自分の人生が終わりを告げると悟りかけたその瞬間――。 「死なないわよぉ!!秘技・溝落とし!!」 どっかの漫画みたいに御門先生の叫びに車が応えるが如く、 カーブに差し掛かると同時に、片輪を排水溝に落として車体を安定、そのままのスピードで強引にカーブを曲がり切って 奇跡的に突破する事に成功した。 「よっしゃあぁぁーー!!」 片腕を高く上げてガッツポーズを取る御門先生。 『……』 そして、魂が抜けてしまったかの様にグッタリするその他の面々。 「生きてる…?ねぇ…生きてる…?」 「あたし…、まだ現世に存在してるよね…?ね…?」 「一瞬お花畑みたいな物が見えたんだけど…」 「ボクはちょっと川を渡りかけたけど…」 「……」(失神) 「フッ、大袈裟よみんな。私に掛かればこれ位軽い軽い――」 「ぁ……あのですねぇ……って先生!?前、前ぇ!!!」 「へ?」 一難去ってまた一難。気付いた時には前方に別の車がいた。それもかなりの至近距離に。 あまりに近付き過ぎた為に、ブレーキも間に合いそうに無い。 『ぅわぁぁぁ~~!!今度こそぶつかる~~~!!!」 「なんのぉ!!!」 またまたどっかの漫画みたく、御門先生の叫びに応える様に車の片側が突然持ち上がって、 片輪走行でセンターラインを越えて前方の車を避わす。 『のぉぉぉ~~!!?』 「みっ、みんなぁ!?」 その反動で、シートベルトをしていない後部座席の面々が端の方に吹っ飛ばされる。 そのどさくさに紛れて、レンの手が沢田の身体に触れた。 「ちょっ、レンレン変なトコ触んないでよ!」 「すすすすすまない沢田さん!決してワザとじゃあ――ってぇ!?今度は対向車来たーーー!!!」 「問題無ぁーーし!!!」 更に勢い任せに、素早く車体を下ろして元の車線に戻り対向車を避わす。 その反動で、今度は猿山が籾岡の方へ飛んでいって――。 「だぁーー!こっち来んな猿山ぁ!!」 『ドガッ!!』 「ぶほっ!?」 籾岡、掌底による迎撃。 「ちょっ、先生ぇ!!いい加減落ち着いて――ってわぁっ!?先生もっと車間距離取って!近付き過ぎ――って対向車対向車ぁ!! 先生、もっと安全運転をぉ!!コレ絶対いつか事故りますってぇ!!」 リト、生と死の狭間を彷徨いながらも御門先生の暴走を止めようと必死に呼び掛けるが…。 「関係無い!!敵対する者は全て破壊――じゃない、追越するっ!!! どんな車だろうと、ただ打ち貫――じゃなくて、横切り追い抜くのみっ!!!」 御門先生、やはりリトの言ってる事などまるで聞いちゃくれない。 それどころか、さっきまでのスリル満点以上のドライブで余計にヒートアップしてしまっている。 その証拠にこのお姉さん、ノリが頭○字Dからス○ロボに移行していらっしゃいます。 「ふはははは――!!!この首都高に我を阻む者無ぁぁぁーーし!!!」 『いや、ココ首都高じゃありませんからぁぁぁ~~~!!!たーーすけてぇぇぇ~~~――!!!』 御門先生の高笑いと五人のツッコミ(一人オチてるから本当は四人)と絶叫が果てしなく響きながら、 この後旅館に到着するまでこの恐怖は続いたという…。 ―――――― そんな感じで御門車内が地獄絵図と化している一方、遙か後方を走っている秋穂車の面々は――。 「凄いわね~、もうあんなトコにいる…。春菜の学校の先生ってあんな個性的な人が多いの?」 「ぃ、ぃゃ~…、あんな一面があった事なんて初めて知ったんだけど…」 妙に関心してる秋穂さんと、苦笑いを浮かべながら軽く引く春菜。 「わ~、レモン達楽しそ~。私もあっちに乗れば良かったかな~」 本気なのか冗談なのか、いや多分本気なんだろーな~と思える位あっけらかんと言ってのけるララ。 ((よ、良かった~…、向こうに乗らなくて…)) そして、命拾いをして心の底から安堵の溜め息を吐く美柑と唯。 (……だから無理だって言ったんです。ドクターの暴走は半端じゃありませんから…) そんでもって、御門先生の犠牲になった同乗者のみんなを心の底から哀れむヤミだった。 「………まぁ、それはそれとして」 ここで秋穂さん、軽く流す様に話を切り替える。 「ねぇ、ララちゃん」 「ん?な~に?春菜のおねーさん」 「……ユウキくんてどんなコ?」 「へ?リトの事?」 「ええ♪ララちゃんって確かそのコと一緒に住んでるんでしょ?ちょっと教えてくんない?」 「おっ、お姉ちゃんっ!?」 秋穂さんの発言に可愛く首を傾げるララと慌てふためく春菜。 「お姉ちゃん、いきなり何言い出すの!?」 「だって気になるじゃない。春菜いっつもユウキくんユウキくんって言ってるから、一体どんなコなのかな~って♪」 「ちょっ!?」 「春菜が?」 「ええ♪そりゃあもうそのユウキくんの話題が出ない日は無い位連日のごと「わぁぁ~~!!!」」 ニヤニヤ含み笑いをしながら話す秋穂さんの言葉を、顔を真っ赤にしながら大声を出して遮る春菜。 「何でそんなに慌ててんの春菜?」 「え゛!?ゎ…私は別に…」 「なら別に聞いたって良いわよねぇ~?(ニヤニヤ)」 「ぅ゛…」 返す言葉も見つからず、春菜は顔を隠す様に俯いてしまった。 「んとね~、リトは~、優しくて~、カッコよくって~、かわいいトコもあって~、 ちょっと怒りんぼなトコもあるけど~、宇宙でいっちばん頼りになる人なんだよ~♪」 「へぇ~、凄く信頼されてるのねそのコ♪」 (ララさん、ちょっと美化入ってるけどね…) ふとそう思った美柑だが、別に訂正する必要も無いのであえて口に出さない。 (八割方は自分でもそう思ってるから) 「それじゃララちゃん、ララちゃんはそんなユウキくんの事をどう思ってるの?」 「大好きーっ♪♪」 ニパー♪って効果音が聞こえてきそうな位の眩しい笑顔で答える。 「あらあら、清々しい位はっきり言っちゃうのね~♪」 「だってホントの事だもん」 「まぁ。んふふふ――♪」 恥ずかしげも無くララにキッパリ言われて、おもわず秋穂さんは笑みを零した。 「……」 対照的に、改めてララのリトに対する気持ちを聞かされて、複雑な気持ちになる春菜。 好きな人に想いを伝えたい気持ちと、大切な友達に想いを叶えて欲しい気持ち…。 矛盾した二つの思いが板挟みになって、余計に自分の想いを苦しめ、胸が締め付けられる。 「春菜」 「え?」 沈みかけた所で秋穂さんに話し掛けられて顔を上げる。 そして…。 「負けちゃ駄目だよ♪」(口パク) 「ぁ…」 春菜に気を使って、口パクでエールを送ってウインクする秋穂さん。 こーゆー所は、やはり『お姉ちゃん』なのだと思わされる。 「……」(こく…) そんな秋穂さんの想いに心打たれて、春菜はただ顔を赤らめて小さく頷いた…。 「……」 一方、リトの話題で悶々としてる少女がここにも一人…。 (何なの…?何で私、さっきから結城くんの事ばっかり考えちゃってるの…?) みんなに悟られない様に赤らめた顔を背け、窓を流れる景色を眺めながら、 唯は自分の中の不思議な気持ちに戸惑っていた。 さっきララが『大好き』と言った瞬間、胸がドキンと跳ね上がり、 何故か分からないが、そこからしばらく動悸が止まらなくなっていた。 (だ…大体結城くんなんかいっつもハレンチな事ばっかしでかしてすっごい迷惑してるんだからねっ…! そ…そりゃあ、そーゆー優しい所や責任感も持ってる所もあるし…、ちょっと……格好良いなって思う事もある…けど……… って、私は何を考えるのよっ!) 頭をブンブン振って、さっき思った事を掻き消す唯。 でも、どんなに誤魔化そうとしても、リトの顔が頭から離れない。 (………結城くん…、今頃何してるんだろ…) そして、唯はリトに想いを馳せる。自分の気持ちは理解出来てないけど…。 今も父親の仕事の手伝いで四苦八苦してるリトに想いを馳せる…。 まさかその当人は女になってこの旅行に参加してるとは思いも寄らずに。 「はぁ~…、ホントリトってば罪な男…」 「?、どうしました?美柑…」 「んーん、別に」 ヤミの問い掛けに笑顔で受け答えながら、色々と罪作りな我が兄に呆れつつも、この状況を楽しそうに傍観する美柑。 (さて…、一体誰があたしの未来のお姉ちゃんになるのかな?) 今から楽しみだなぁ~っと、美柑はおもわず含み笑いを零した。 「個人的にはヤミさんがなってくれたら嬉しいんだけどな~…♪」 「なんの話ですか?」 「あー、気にしない気にしな~い♪」 「あっ、見えてきた~♪ねーねー春菜、旅館ってあそこでしょ?」 「あ、うん。あそこが私達が泊まる旅館だよ」 「もう先生方も着いてるみたいね。私達も急ぎましょ」 「楽しみだなぁ~♪」 とゆー事で、こちらはいたって平和的に旅館へ辿り着いた――。 ―――――― 温泉旅館――。 「ハ~イ、遅かったわねみんな。待ちくたびれちゃったわよん♪」 秋穂車が旅館に着くと、えらくスッキリした感じの御門先生が極上スマイルで待っていた。 『……』 そして、真っ白に燃え尽きた同乗者の皆様方。 何か口から白いモノが出ている様ですが、とりあえず皆さん生きておられてますのであしからず。 「あら?どうしたのみんな?旅行は始まったばかりなのにそんなに沈んじゃってさ。車酔いでもした?」 「………マァ、概ネソンナ所デスヨ…。先生ノオ陰デ…」 何でこんな事になってるのか全く自覚していない御門先生に対して、 リトは出来る限り皮肉をたっぷり含めて返事を返す。 ――が。 「あらあら、困った子達ねぇ~。みんな若いんだからもっと元気出さなきゃ駄目よ?」 《アンタの所為だよ!!頼むから少しは自覚しろ!!》 ――と叫びたかった。みんな揃って声を大にして叫んでやりたかった。 だが、それすら出来ない位にリト達の精神力は極限まで搾り取られていた。 「だいじょぶ?レモン、みんな~」 ちょっと心配そうにララがリト達の顔を覗き込む。 「ぁの……、口から魂みたいなモノが…」 (何か…、触ったら崩れちゃいそうね…) リト(レモン)達犠牲者の現状を目の当たりにしてドン引き、哀れむ春菜と唯。 「……」(ぽんっ) 無言でリトの肩に手を置き(爪先立ちで)、目頭を押さえる美柑。 「………まぁ、とりあえずご苦労様でした。結城リ――レモン…」 そしてヤミから労いの言葉を貰った。 「………とりあえずなぁ…、オレは一つだけ理解出来た事があるわ…」(ボソッ) 「何?」 『ガバッ』 「ふぇっ!?」 小声で何か呟いたかと思ったら、小首を傾げるララをいきなりギュッて抱き締めて、そして…。 「………生きてるって素晴らしい事だよなぁ~……(泣)」 ララの胸に顔を埋めて泣きついた。 普段のリトからは考えられない大胆な行動――。 よっぽどさっきのデス・ドライブが恐かったと見える。 「よしよし♪」 流石のララも突然のこの行動に一瞬キョトンとしたが、 すぐに元の笑顔に戻って、そんなリトの頭を優しく撫で撫でしてあげる。 やはりリトに甘えられてる事がよっぽど嬉しいのか、 端から見ても分かる位に幸せの浮かれオーラを醸し出しているのが見て取れる。 「………はっ!?ごごゴメンっ!オレ一体何をうわっぷ!!?」 「や~ん、もーちょっとぉ♪」 ここでようやくリトは我に返って、慌ててララから離れようとした。 が、すっかり上機嫌のララにがっちりホールドされて身動きがとれず、再び胸の中へ顔を埋まされる。 「ラッ、ララ!?」 「んふ~♪レモン~、いいコいいコ♪♪」 赤面するリトをよそに、楽しそうに頭を撫で撫でしながら頬を寄せてすりすりするララ。 抱き寄せる力も更に込もって、しばらく離してくれそうにない気がする。 「……」 「春菜さん…、そんな羨ましそうに見なくたって…」 「えぇっ!?わっ私は別にそんな…」 その横で、美柑のツッコミに春菜は顔を赤くさせて慌てふためく。 「ララさん、そろそろ離してあげなさい。結城さん窒息しちゃうわよ?」 見かねた唯がリト(レモン)に救いの手を伸ばす。 「え~、だめ~?」 「ダ・メ」 「む~…」 ハッキリ唯に告げられて、ララは渋々リトを解放した。 「ぷはぁっ!はぁ……ひぃ……ふぅ……、あ゛ー死ぬかと思った~…」 「大丈夫?結城さん」 「あ、うん。ありがと、古手川さん♪」 「………い、良いわよ、これくらい…」 ペッカーって感じの眩しい笑顔でお礼を言うリト。 その笑顔を見て、何故か唯は頬を赤らめてぷいっと顔を逸らした。 「………えーっと…、ボク何か粗相を…?」 「ぃ…いや…、そうじゃなくって…」 『また何かやらかしてしまったのか!?』と内心焦るリト。しかし… (な……何で!?何で結城くんの顔が浮かんでくる訳!?そりゃ確かに結城さんと結城くんって似てる所が一杯あるけど…。 いやその前に何で私こんなに結城くんの事意識してるのよっ!?) どうやら唯は『レモン』の笑顔がリトの笑顔と重ね見えていたらしく、 その気恥ずかしさからおもわず顔を背けてしまったらしい。 ………同一人物だから仕方無いと言えば仕方無いのかもしれないが…。 「さてと、ここでずっと立ち話してるのもナンだからそろそろ旅館に入りましょうか♪ねぇ、幹事さん?」 手をぽんっと合わせて話を区切り、旅館の中に入ろうと幹事こと籾岡達の方を振り向き促す御門先生。 ――が。 『……』 一同(リト以外)、まだ真っ白になって固まってます…。 「む、世話が焼けるわね~…」 そう呟いて御門先生、おもむろに籾岡に近付き…。 「ごにょごにょ――」 何かを耳打ち。 すると――。 「ナニィィィーーー!!?」 アラ不思議、籾岡さんの石化が解けました。 更に――。 「そんでもって、ごにょごにょ――」 「はいぃぃーーー!!?」 「うそぉぉーーん!!?」 立て続けに沢田とレンに何かを耳打ちして石化を解除させる御門先生。 そして――。 「さて、この子にはとっておきのヤツを…♪」 最後に残った猿山に対して怪しい笑顔を浮かべ、他の三人と同じ様に何かを耳打ちする。 すると――。 「ぶはぁっ!!?」 猿山、何故か大量の鼻血を噴射してぶっ倒れてしまった。 「あら?やっぱりこの子には刺激が強すぎたみたいね」 (い……一体何を言ったんだ…?) (気になる…。気になるけど何か知りたくない…みたいな…) その様子を見て、リトと唯は御門先生が何をしたのか物凄く気になったが、あえて追求はしない。 何故なら―― 「ま……まさかアレがアレであんなになって…」 「アレがそーなってそんな事になるなんて…」 「恐ろしい…、恐ろし過ぎる…!絵――いや、字にも書けない恐ろしさとは正にこの事!!」 ――とまぁこんな感じで、やたらと怯える籾岡・沢田・レンの姿を見て、本能的に『聞いちゃダメだ』と感じ取ってしまったから。 追求『しない』と言うより『出来ない』と言った方が正しい。 「ねーねー御門センセ~、リサミオ達に何言ったの~?何かみんなガタガタしてるけど」 もっとも、この娘にはそんな空気など『そんなの関係ねぇ』って感じらしく、 純粋な興味本位で御門先生に尋ねるララ。 好奇心旺盛……とゆーか怖いもの知らずにも程がある。 「知りたい?」 「うん♪」 「実はね「ダーメーだぁぁぁーーー!!!」むぐっ!?」 レンが御門先生の口を慌てて塞ぐ。 「あれ?レンちゃん?」 「知らなくて良い!!ララちゃんは知らなくても良いからっ!!」 「えぇぇー、何で~!?教えてよレンちゃ~ん!」 両腕をぶんぶん振って、可愛く教えてと請うララ。 この行動にちょっと……いや、かなりグラッと来たレンだが、 『ここはララちゃんの為に』と心を鬼にして、流されそうな精神をグッと踏ん張る。 「ララちぃ、世の中ね、知らない方が幸せな事もあるんだよ…」 「これはララちぃが知るべき事じゃあない。むしろ知っちゃいけない事なんだよ…。分かって…」 籾岡と沢田もララの肩をガシッと掴んで、無理のある悟らせ論を説く。 普段だったら面白半分でこの状況を引っ掻き回して楽しむ二人がここまでマジになって止めにかかるとは…。 よっぽどさっき御門先生から聞かされた事が衝撃的だったらしい…。 「む~、そんな風に言われたら余計に気になっちゃうよ~。ね~、ちょっとだけ――」 「「「とっとにかくっ!ダメなものはダメーっ!!」」」 「む~…、でもやっぱり気にな「はいはい、そこまで」むぐっ!?」 しつこく疑問を投げかけるララの口をリトが無理矢理塞ぐ。 「さっ、この話はおしまいっ!皆さん旅館に入りましょー!」 無理矢理話を打ち切って、そそくさ旅館へ入っていくヒミツな三人。 後の面子も、話の内容が気になりつつもこれ以上追求せずそれに続く。 「何で止めるの?リト~」 「ララ、あんまり気にしちゃ身体に毒だぞ?せっかく旅行に来てるのに そんなしょーもない事で台無しにしたくはないだろ?」 「ぅ…ぅん…」 「な?三人も決してララにいじわるしてる訳じゃなくて、むしろララの事を想って言ってる訳だから、 その気持ちは分かってあげような?」 「む~…、リトがそー言うなら分かった~…」 本心は未だに気になりまくってるのだが、リトをこれ以上困らせたくないので渋々引き下がるララ。 (ふー、やっと引き下がってくれたよ…) 気になりまくってるのは自分も同じだったが、これは絶対知ってはいけない事だ――と、 こーゆー事に関してはニュー○イプ並みの直感を発揮し、危険を察知するリト。 ララがなんとか諦めてくれて心の中で冷や汗を拭う。 「ぁ……ぁははは…」 そしてひたすら苦笑いの春菜。 この娘はこーゆーカラミでは苦笑いしかしていない様な気がする。 「リト――じゃない、レモンお姉ちゃん達、何してんのー!早く行こー!」 「分かってるー!行こうぜ、二人とも」 「は~い」 「うん」 美柑の呼び声で話を止め、三人は旅館へ入って行った。 ………未だ出血多量で悶絶している猿山をほったらかしにして…。
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ギシッ――…。 ギィ――…。 (ん……ぅ………何の音?) 真夜中、突如聞こえてきた何かが軋む音に睡眠妨害され、虚ろな意識の中でリトがゆっくりと目を開けると――。 「あ、リト起きちゃった」 「ラッ、ララぁ!!?///」 そこには、リトの身体を押さえつける様に馬乗りになって楽しそうな笑顔を浮かべているララがいた。 しかも当然の如く裸で。 「おおおお前一体何やってるんだよ!?また人のベッドに潜り込むつもりだったのか!!?ダメだぞ、ちゃんと自分の部屋で寝ろよな!! つーか寝る時は服着ろって何時も言ってんだろぉ!!いやその前にそこからどけって!!///」 突然の、真夜中の裸の女の子の来訪(今に始まった事じゃ無いが…)に慌てふためき、何とか部屋に返そうと怒鳴り散らすリト。 しかし…。 「えへへ…、今日は違うよぉ~♪」 「へ?」 そんなリトの台詞をララは軽~く受け流し、今日の目的が添い寝じゃない事を告げる。 「あのね、前にリサから貰った恋愛についての本を読んでたんだけどね」 (―ってまだ持ってたのかよ、あの訳の分からんHow to 本…) 「その中に、好きな人をメロメロにするには『ヨバイ』ってのをするのが効果的だって書いてあったの♪」 「はあっ!!?///」 無邪気な笑顔でとんでもない事を言い出すララに驚愕するリト。 「待て待て待てぇい!!!お前いきなり何バカな事言い出すんだよ!!てかお前『夜這い』の意味分かって言ってんのかぁ!!?///」 「寝てる人にこっそりえっちなコトする事でしょ?よいしょっと…」 さり気にリトのシャツを捲くし上げながらサラリと答えるララ。 「――ってコラァ!!何どさくさに紛れて人の服を脱がせにかかってんだよぉ!!?」 「脱がさなきゃヨバイ出来ないじゃん。ブラ取るよ?」 「取るなぁ!!そもそも夜這い自体するなぁ!!てゆーか――!!///」 「ん?」 「そ…そーゆーのは異性に対してやる事であって…。オレ今同性だし…///」 ここで自分の身体変化を盾にして、この場を何とか切り抜けようと誤魔化し始めるリト。 「あ、そっかぁ…」 「そそ、だから今こんな事やったって意味無いってば///」 「少なくとも今乗り切れば、今後の夜這いに対して対策はいくらでも立てられる」という考えを胸に、 何とかララを諦めさせようと説得を試みる。 「………んー…」 「リトの言ってる事も一理ある」と思ったのか、しばし考え込むララ。 ――が、それも一瞬の事で…。 「でも大丈夫だよ。今は女の子でもリトはリトだし♪」 「なぁっ!!?///」 どこまでも前向きなララらしく、結局そんな結論に達した。 「ブラ取るね?」 「ちょっ…///」 抵抗しようとしたが、マウントポジションを取られてる事に加え、ララの常人離れした怪力に押さえつけられて身動き一つ取れない。 器用に片手でホックを外して、ララはリトのブラジャーを剥ぎ取った。 「わぁ…、やっぱり大っきぃなぁ、リトのおっぱい。それに…、触り心地もさいこぉ…♪///」 「お、おい…やめ……あっ……は…///」 ポツリと呟きながら、両手で優しく、壊れ物を扱うかの様にリトの胸を揉みし抱くララ。 少しずつ、マシュマロみたいなふわふわした様な感触に酔いしれ始め、やがて無意識の内に乳首を口に含んで、 赤ちゃんみたいに吸ってみたり舌先で転がしてみたりし始める。 「ぁ…はぁ………ぅ…んぅ……ら…ララぁ…///」 感じながらも、残った理性をもって何とか引き剥がそうと抵抗するリト。 だが、ララの愛撫と身体に当たる二つの膨らみの感触の所為で思う様に力が入らず、 少しずつ理性をトバされていき次第になすがままの状態に陥っていく。 「んむ……ちゅ………ん……ふふっ、リトかわいい…♪」 僅かに見え隠れするリトの恍惚の表情にちょっぴり満足気はララ。 「コッチも……ね?」 リトの身体を撫でる様に片方の手を滑らせ、下着の中へ――。 「やっ…!そ…そこは……ああっ…!///」 「わぁ…、もうぐちょぐちょだよ?リトのココ…♪」 触れてみるとクチュリと厭らしい水音が聴こえてきて、その音を聞いたリトの顔が羞恥心に溢れ、ララから目を背けた。 「ぉ……お前が調子に乗って…あんなにするからっ…///」 「ちゃんと私で感じてくれたんだ。うれしい…♪」 心から嬉しそうな微笑を浮かべるララ。 「私も………ほら…///」 リトの手を取って自らの秘裂に触れさせる。 「ぁ……濡れ……///」 「えへへ…、リトの反応見てる内にこんなになっちゃった…///」 指から伝わるララの『女の子』の温もりと、溢れ出る愛液の生暖かさ…。 ふざけて抱きつかれる時とは明らかに違う、リトにとって初めて体験する直接的な感触である。 そして、これをきっかけにリトの理性は完全に崩落した。 「ぁの………もっと……触ってみていい…?///」 「ぅん…、いじりっこしよ♪///」 お互いにゆっくりと指を動かし始める。 クチュクチュと秘裂を弄る音が二重奏となり、より一層部屋に響き渡る。 「あっ…ふぁっ!……リ…リトぉ…!気持ち良い……ああっ…!///」 「んふぁ……はっ……ララぁ……その表情エロぃ…ぅわぁっ…!///」 「リ…リトだってぇ…!凄くえっちな顔…ああっ…!して…んんっ…!してるよぉ…!んむっ…///」 どちらともなく唇を重ね、互いの舌を求め貪り合い、流れてくる唾液を呑み込んではまた舌を絡ませる。 その行動に比例して、秘裂を弄り合う指も速度を上げ、聴こえてくる卑猥なハーモニーも徐々に大きくなっていく。 「むはぁっ…!あっ…!リ…リト激し……ふわぁあっ…!だ、だめぇ!いっ、いっちゃあ…!いっちゃうぅぅーーっ!!///」 「お…オレもぉ…!ああっ…!も……限かぁ…!ぅわぁああーーっ!!///」 一気に頂点まで上り詰め、瞬間、二人の身体がビクンと強張り、お互いに噴出させた大量の愛液がシーツをグッショリと汚していく。 身体は痙攣して思う様に動かず、ララは糸の切れた人形の様にリトの上に倒れ込んだ。 「はぁ……ぁ……ぁはぁ…///」 「ぁ…はぁ……はぁ……は……///」 お互いの胸の膨らみの感触を感じながら、そのままの状態でしばらく呼吸を整え合う。 「は……ぁ……はぁ………えへへ…リトのえっち…♪///」 「誘ったのはお前だろ…。お前の方がえっちだって…///」 再び唇を重ね合う。 先程と同じ様に舌先で口内を弄び合いながら唾液交換し、それが媚薬となって二人の欲望は萎える事無くより深くなっていく。 加えて、部屋に充満する妖艶な雰囲気とお互いの放出した淫臭が更に拍車を掛ける。 「んちゅ……ん…ぅ……はぅ…ん………むはぁ…っ…リトぉ……ココ、キレイにしてあげるね…///」 そう言ってするりとリトのパンツを脱がせると、ララは自分の頭をリトの秘裂に近付け、秘裂をリトの頭に近付けさせる。 「ふふっ…凄くキラキラしてる…。それに……えっちな臭い…♪///」 「ララだってぐちょぐちょだぞ…?マジでエロ過ぎ…///」 ぽーっとした表情で大事なトコを眺め合う二人。 そのえっちな光景に思考回路が麻痺して、頭の中が真っ白になってゆく。 あるのはただ一つ…。もっといっぱい気持ち良くなりたい…、もっと相手を気持ち良くさせたい…。ただそれだけである…。 「リトも……私のをキレイにして…。今度は舐め合いっこしよ…?///」 「ぅ……ぅん………分かった…///」 ソロソロと舌先を秘裂へと伸ばして、ほぼ同時に割れ目の部分をなぞった。 「うふぅっ…!///」 「んんぅっ…!///」 ゾクリと身震いして一瞬動きが止まったが、直ぐに再び舌先を秘裂に這わせる。 絶頂したばかりだから敏感になっており、舌が蠢く度に膣から愛液が止め処なく溢れ出して、秘裂や周りの茂みまで汚していく。 それをお互い腰を掴んで口元に引き寄せ、顔下半分愛液まみれになりながら夢中で舐めとり合い、 一滴も残すまいと喉の奥へと流し込む。 「んまぁっ…!あっ…んぐっ…ちゅ…ぅ……はぁ…凄ぉい…どんどん出てくる…。甘いのいっぱい……ふぁあっ…!」 「んっ…ぷわぁっ…!はんっ…ぐ……ちゅる…ぅあ…ララも……んぐぅ……すっげー溢れて……追いつかな……ああっ…!///」 「ふわぁ……リトぉ……もっと……もっとちょうだぁい…。リトももっとしていいからぁ…///」 「ああ……オレも……もっとララのジュース欲しい…///」 更なる快楽感を求め合うかの様に、割れ目の入り口部分だけを這わせていた舌を今度は膣内へとねじ込んだ。 「ぅわぁぁっ…!はぁぁ…あぁぁん…!はっ…れろ…んちゅ……リ、リトぉ、気持ち…んああっ…!き…気持ち良いよぉ…!///」 「ぁああっ…!ラ、ララぁ、ララも…ふわぁあっ…!ラ、ララも上手…あぁぁっ…!///」 月明かりだけが照らす部屋に響き渡る、お互いの秘裂をピチャピチャ舐め合う音と、コクリと喉を鳴らして愛液を飲み込み合う音、 そして部屋中に満ち溢れる淫臭――。 それらの要素全てがリトとララの性欲を更に燃え上がらせ、更に淫らな行動へと誘う。 「ぷはぁっ…!リトぉ……もっと気持ち良い事しようよ…///」 「ふぁ…は……ぇ?///」 リトの秘裂から口を離して、最初の馬乗り体勢になるララ。 そこから、自分の尻尾をお互いの秘裂の間へゆっくりと近付けていく。 そして…。 「いくよ、リト…///」 「い、いくよって…、おま……何を――///」 「する気なんだ?」と聞こうとしたと同時に、ララの尻尾が二人の秘裂の間に潜り込んだ。 「ふわぁあっ!!///」 「きゃうぅぅっ!!///」 二人一斉に嬌声を上げる。立て続けにララは尻尾を動かし、自分とリトの秘裂を擦り付け始めた。 「ふわぁああっ!はぁ…あぁああっ!し…シッポぉ…!シッポとアソコがぁ!あぁぁんっ!かっ、かんじちゃうぅっ!!///」 「ぅわぁあぁっ!あっはぁぁっ!す、すごいこすれて……きゃああっ!だ、だめぇ!なんか…やぁああっ!!///」 二つの性感態を駆使して、リトと自分を攻め立てるララ――。 ララの尻尾と秘裂による攻めでただただ快楽の波に流されるリト――。 口元から涎を垂らしながら押し寄せる快感に溺れ、それでももっとこれ以上の快楽感を求め合うかの様に、 自らの腰を動かしぶつけ合う。 「あぁぁん!ぐ…ぐちゃぐちゃいってぇ……わ…わたしとリトのお汁が混ざり合ってぇ……すごいえっちだよぉ…!!///」 「ラ、ララぁ…!あんま…あんっ!あんま激しく……するなってぇ…!!」 「だ、だってぇ!腰とシッポが勝手にぃ!そ、それにリトだってぇ!ひゃあぁああっ!!///」 尻尾で秘裂の割れ目から上部の突起物まで満遍なく擦り合わせ、 腰をお互いに押しつけ合う様にぶつけ合い、 貪る様にディープキスを交わす。 まるで盛りのついた獣の様に、リトとララは本能のおももくままにお互いの身体を蹂躙し合う。 そして――。 「あぁぁああっ!!ラ、ララぁ!!お、オレもうっ!!///」 「わっ、わたしもぉ!!ね、ねぇ、いっしょ…一緒にぃっ!!///」 「ふわぁあっ!!い、いく!いくいく!!もうだめっ――!!///」 「きちゃあ!きちゃうよぉ!!わたしぃ、いっちゃうぅぅっ!!///」 「「ひゃあぁああーーーーー――!!!///」」 ―――――― 「――なんて事無かったの?」 「あるわけ無いでしょうがぁ!!!///」 保健室にリトの怒号が響き渡った。 「えー無いのぉ~!?なんだつまんない。私てっきり結城君の事だから既にヤる事ヤったんだと思ってたけど…。 さっきみたいな感じで♪」 御門先生がニヤニヤしながら勝手な妄想を繰り広げる。 「あのですねぇ!!そんな事ある訳無いしやる訳無いでしょうが!!オレは鬼畜か何かですか!!?」 「え?何を今更」 「どーゆー意味だそれはぁ!!?」 かなり失礼な事を言う御門先生にリトの怒り爆発。 『ピキッ』 「「…………へ?」」 不意に、空間全体にひびが入った様な音が聞こえ、氷河期に逆戻りしたかの様な極寒の冷気が辺りを包んだ。 「こ……これ…は……」 滝のような冷や汗を流しながら、冷気が漂って来る方を見ると…。 「結城……リト……」 「やっ、ヤミぃ!!?」 全身『殺気』という名の武装を施したヤミが立っていた。 「あ…あなたは……プリンセスと毎晩……そんなえっちぃ事を…///」 顔を真っ赤にしながら全身を震わせ、軽蔑の眼差しをリトに向けるヤミ。 「まままま待て待て!!今のは御門先生の妄想であってオレは決してそんな事は――!!」 必死で弁明するリトだが、ヤミの耳には全く入っていない様で――。 『ジャキッ!!』 有無を言わさぬ迫力で髪の毛を無数の刃へ変身させ――。 「死んで下さい…!///」 「ちょっ、待て――キャーーー!!!」 「きゃあっ!あなた達暴れるなら外で――!!」 そして、保健室は戦場と化した――。
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「ホラホラ見てよレモりん♪コレなんか妙にリアルっぽくない?」 「ぅわ…、こんなのもあるんだぁ…。すっご~…」 「……///」 放課後、(何故か)誰もいない教室で、籾岡里沙と沢田未央が結城リト――もとい、結城レモンに対してある物を見せびらかしていた。 それは――。 「…………………ねぇ籾岡さん、沢田さん…///」 「ん?なぁにレモりん?」 「これは…………一体…?///」 「ピンクローター♪」 「バイブレーター♪」 分かり易く言うとオトナのおもちゃ♪ 「んなこたぁ聞いてないの!!何でボクがこんな所でこんなモン見せられなきゃなんないのよ!! いやその前に学校になんちゅーモン持って来てんのさ!!?あと女の子が恥ずかしげも無くそんなモン見せびらかすなぁ!!///」 ぜーはーぜーはーと息を切らしながら、現在の状況について行けないのと重なって 恥じらいの欠片も無い籾岡と沢田に対しておもわず三段ツッコミをかますレモン。 「いやさぁ~、この間ネット検索してる時に偶々見つけちゃってさ~、 それでちょっと興味が湧いちゃって未央とお金出し合って買ってみたんだけどね」 「これがまた素晴らしい出来だったモンだから、せっかくだから他の人にも見てもらいたいなと、こう思いまして――♪」 悪びれも無く、笑顔でレモンのツッコミを流す籾岡と沢田。 「あのさ…、ソレ学生じゃ買えないんじゃなかったっけ?どーやって買ったのさ?」 「そこはまぁ………チョイチョイっと♪」 「世の中ドコにでも『抜け道』という物があるのだよ、レモりん♪」 えっへんと胸を張る二人を見て、レモンは軽く呆れた。 「………つーかさ~、こんなのを見せる人なら別にボクじゃなくても良かったんじゃ…」 「だって春菜には逃げられちゃったし、唯っちじゃ没収されかねないし――」 「ララちぃにはきっと理解してもらえないだろうしね~」 「だからって…」 「ボクは君達の考えがイマイチ理解出来ない」ってな感じで、頭を抱えて苦悩するレモン。 「まーまー。そんな事より…」 「ところでレモりん」 「ぅん?何二人共?」 「「ジャーンケーン――」」 「え?え?」 『ポンッ!』 不意に籾岡達からジャンケンを挑まれ、レモンは反射的にチョキを出した。 「あーあ~、負けちゃった。レモりん強いなぁ~♪」 「ま、仕方ないよね~、レモりんが勝ったんだから。あー羨ましいなぁ~♪」 パーを出して(若干後出し気味)負けたにも関わらず、何故か楽しそうに語り、怪しげな含み笑いを発する籾岡と沢田。 「ぁ…あの~、イマイチ状況が飲み込めないんだけど…。これってどーゆー……」 不穏な空気を察知して、冷や汗が頬をツツーっと流れ落ちる。 本能的にはあんまり聞きたくはないんだけど、レモンは勇気を振り絞って思い切って尋ねてみた。 すると――。 「「それは――それー♪」」 「きゃあっ!?///」 いきなり二人に机の上に押し倒された。 「なっ何!?何すんのいきなりっ!?///」 「だってレモりん、ジャンケンに勝ったじゃん♪」 「だから一番最初にコレを使わせてあげるね♪」 「なあっ!!?///」 楽しそうにとんでもない事を言い放つ二人に愕然とするレモン。 「いや~、レモりん運がいいねぇ~♪あたし達だってまだ使った事無いのに」 「本当ならあたしが最初に使いたかったのに。いーなぁ~レモりん♪」 「ちょっ、何考えてんのさアンタ達はぁ!!?そんなに言うなら自分達で使えばいいじゃないのさ!! ボクそんなのやりたくないってぇ!!!///」 「遠慮しない遠慮しない♪一番最初に気持ち良い事が体験出来るんだよ?」 「しかもこんな学校の教室でなんて、なかなか出来ない経験だよ?」 「経験したくもないからぁ!!離してぇーー!!誰かぁーー!!犯されるーーーー!!!///」 机がガタガタ揺れる程にジタバタ抵抗するレモン。 しかし、なにせ二人掛かりで身体を押さえつけられているので上手く身動きが取れない。 大声で助けを呼んでみても、校舎内にはまるで自分達しかいないかの様に人の気配が無く、ただ空しく響いただけに終わった。 「つーかこんな都合上、誰か入ってくる訳無いじゃん。てゆーか入ってこない様になってるから♪」 「そーそー。それじゃこの話成立しないしね♪」 「何の話だよ!!?///」 「「こっちの話♪♪」」 つーかそれはナレーターの言う事ですから。 「んじゃ、まずはコレから♪ほい未央」 「はいな♪」 ピンクローターを二個手に取って、一個を沢田に渡す。 「スイッチ、オーン」 カチッという音と共に、ローターが小刻みに振動を始める。 「いくよ~、レモりん♪」 「ちょっ……待っ………ひゃんっ…!///」 言いかけたレモンだったが、それよりも早くローターを首筋に当てられ、一瞬身体がビクッと強張った。 「ん……ふぅ………う……ぅん…///」 「ぉお?何か急にしおらしくなっちゃったけど、レモりんもしかしてココが弱いのかなぁ?」 「し……知らないよそんなのっ…。ただ…急に力が抜けて……やんっ…!///」 「ホラホラココ?ココがいいの?ココが♪」 「こ…こらぁ…、あんま調子に……あんっ…!///」 さっきまでのレモンとの変わり様に気を良くしたのか、面白がってレモンが 弱いと思われる部分を集中して撫で回す様にローターを当てる沢田。 「レモり~ん、コッチもやってあげるね♪」 籾岡が制服の上からレモンの胸をローターで撫で回す。 「あっ…!ぁ……は…ぅん……///」 「へぇ~、巨乳って感じにくいって良く聞くけど、レモりんはそーでも無いんだね」 「むしろ敏感な方なんじゃない?ホラ、服の上からでもおっぱい固くなってるの分かるもん♪」 「エロいなぁ~、レモりんは♪」 「だ……だってぇ…///」 (ぅ……可愛い…///) (そんな目で見られた日にゃあ、あたしは…///) 焦点が合ってなさそうな潤んだ目で二人を交互に見つめるレモン。 その行動が二人の欲を更に掻き立てている事にも気付かず…。 「それじゃレモりん、コレはどうかな?」 若干鼻息が荒くなってる籾岡。今度は乳首があると思われる部分にローターを押し当てた。 「あっ…あっ…ああっ…!な…何か……ビリビリ……ふぁあっ…!///」 身体をよじらせて嬌声を上げるレモン。 もうすっかりさっきまでの勢いは消え失せて、快感の波に飲み込まれてしまってる様だ。 「反対側はあたしがやってあげるね♪」 こちらも若干鼻息が荒い沢田。もう片方の乳首の部分にローターを押し当てる。 「ああっ…!ふ…二つは…ちょっと………やぁあっ…!りょ…両方ビリビリ……ふぅん…!///」 「レモりんって結構感じやすいんだね?服の上からなのにこんなになっちゃうなんて」 「それとも、この『いつ誰が来るかも分からない状況』に興奮しちゃってるとか?」 「えっ、そうなの!?きゃー、レモりんってばスケベ~~♪」 「ちっ、違うもんっ!そんなの…///」 顔を赤くして精一杯否定しつつ二人から目を逸らすレモン。 その反応を見て一瞬抱き締めそうになった籾岡と沢田だが、「それはまだ早い」とグッと耐える。 「さてと、そろそろ…」 出来る限り平静を装って下半身の方に目をやる籾岡。 レモンが太ももをぴっちり合わせて、擦り合わせる様にもじもじしているのが目に入った。 不意にニヤ~リと口元が怪しく緩む。 「にひひひ…♪未央、おっぱいは任せるよん♪」 「オッケ~♪」 嬉々としながらレモンの足を広げて、その間に潜り込む籾岡。 「レモりん、ちょっとスカート邪魔だから脱がすね♪」 「えっ!?ちょっ――きゃあっ!!?///」 返事を返す前に強引にスカートを剥ぎ取られる。 「おっ、レモりん。パンツにちょっとシミが出来てるじゃん。や~らし♪」 「やぁっ!ぁ…あんまり……あっ…!あんまり見ちゃ……だめだってぇ…///」 レモンのパンツは、自らの愛液で少し透け気味になって秘部に張り付いてしまっている。 それを指で少し押してやる度に、レモンの秘部からネチャっと厭らしい水音が聞こえてくる。 間近でそれを体験した籾岡は、軽くリミッターが外れてしまった。 「レモりん、もっと気持ち良くしてあげるよ。そしてもっとエッチな液をおもらししなさい♪」 そう言って籾岡は、透けて僅かに見えるレモンの秘部の上部にあるちょこんと飛び出た部分にローターを押し当てた。 「ひゃあぁあっ!あっ…!ぁぁああっ…!はぁあんっ…!そ…それ……だめぇ…!///」 「コレってさぁ、本来は膣内に挿れたりしないでこーやってココに当てるのが正しい使い方なんだって」 「へー、そーなんだ~。初めて知ったよ、そんな豆知識」 「『マメ』知識!?未央さんウマい事言うねぇ~♪」 「へ?あ、ゴメン。別に狙って言った訳じゃ無いんだわ」 「ちょっ…ちょっとぉ……、人にこんなコトしながらそんな漫才しないで…ぇええんっ!///」 一応ツッコミを入れようとしたレモンだったが、胸と股間から来る振動に遮られてしまった。 「ホラホラどう?気持ち良いレモりん?」 「し……知らないっ///」 「『知らない』って事はないでしょ?ホラ、何かパンツのシミもさっきより大きくなってるし。うりうり♪」 「ふわぁああっ!や…やらぁ…!お…押しちゃらめぇ…!///」 「レモりん、コッチも忘れちゃダメだよ?」 沢田がレモンの制服のリボンとシャツの上のボタンを外し、胸元に直接ローターを潜り込ませる。 「ああっ!ああっ!だ…だめぇ!そんなコトされたらボク……やぁああっ!///」 「レモりん、イク時はイクって言ってね。見逃したくないから」 どこぞのAVのワンシーンみたいな事を言う籾岡。しかし、最早レモンにはそんな事をツッコむ余裕は残されていなかった。 二人のイイ様に攻め立てられながらも押し寄せる快楽の波に逆らえず、ただただ流される様に―― むしろ自分から求めているみたいに性的欲求に身を委ねてしまっている。 そして、とうとうレモンに限界が訪れ…。 「ぅああっ!だ…だめ!だめだめっ!ボク…ボクもういっちゃあ…! ふわぁあっ!い…いっちゃう…いっちゃうよぉ!ふぁああぁあーーーーーー!!!///」 レモンの身体が大きく断続的に痙攣する。 それが治まると同時に、頭を沢田の胸に預けてグッタリとなる。息も絶え絶えである。 パンツは最早その意味を成さない位にぐちょぐちょに濡れて秘部に張り付き、大事なトコロが殆ど丸見え状態になっている。 更に、吸い取りきれずに染み出た愛液がレモンの綺麗な内股をなぞりながら床へ滴り落ちていく。 そして二人は、しばらくその卑猥な光景に目を奪われていた。面には出してはいないが、ハッキリ言って理性決壊寸前である。 「イっちゃったね…。気持ち良かった?レモりん」 「ぁ………ぁ…は……ぁ…///」 「レモり~ん、聞こえてる~?」 沢田がレモンの顔の前で掌をヒラヒラさせる。 「は………ぁ……………ぇ……?なに…?///」 絶頂したばかりである為なのか、目が虚ろになって意識もハッキリしていない様であるレモン。 しかしそれでも、なんとか二人が言った事を理解しようとぼやけた意識の中で聞き返す。 「だからね?さっきのは気持ち良かったかな?」 今度は、今の状態のレモンでも理解しやすい様にやや大きめの声で出来る限りゆっくり、一言一句ハッキリと伝える。 「はぁ………はぁ………はぁ…………ん…………った…///」 「へ?何?何て言ったの今?」 ボソボソ呟くレモンの言葉を聞き取ろうと、籾岡と沢田が耳をレモンの口元へと近付ける。 「………ぅ……ぅん……気持ち良かった……///」 目尻に涙を溜めながら上目遣い気味に二人の顔を見つめて、顔を真っ赤にしてかなり気恥ずかしそうに…、 それでいて誤魔化し一つ無い素直な感想を述べてコクリと頷くレモン。 「「……」」 『スッポーーン!!』 ――という効果音が聞こえてきそうな感じで、籾岡と沢田のネジが豪快にぶっ飛んでしまった。(イメージ的に) 「「か……か……」」 「ぇ…?」 「「カワイイーー!!!///」」 『ギューッ♪』×2 「わっ!?///」 『もう辛抱たまらん』というような具合で、今まで我慢していた分を思いっ切り解放させるかの様な勢いでレモンに抱き付く籾岡と沢田。 「あーもう!!あたしが男だったら絶対ほっとかないのにぃ~~~!!///」 「どーしてそんな事平気でやってのけられる訳!?あたしを悶死させるつもり!?///」 「ぇ……ぇと…///」 まだ意識がぼんやりしている中で、突然二人から抱き付かれて訳が分からず戸惑うレモン。 そんな中で籾岡が――。 「もーダメ…、もーー我慢できない…。レモりん、そろそろコレ行っとこう!」 「へ…?」 その言葉の意味を理解しようと、未だに焦点が合わない目を凝らして、今さっき籾岡が手に取った物に目を向ける。………と。 「な……///」 籾岡が手に取った物――。 それはいわゆる、男性器を模したバイブレーター。 その事が余程衝撃だったのか、虚ろだったレモンの意識は一気に覚醒した。 「ちょっ、ちょっと待って!!?ボクそんなの――!!///」 「大丈夫大丈夫♪コレ細身だから初めてでもそんなにキツく無いはずだよ。レモりんにはピッタリだって♪」 「そっ、そーゆー問題じゃ無くってぇ!!///」 「キャー!レモりんのヴァージンあたしが貰っちゃう~♪」 「むー、ズルいよリサ~。あたしだってレモりんのヴァージン欲しかったのに~」 「へっへー、ざーんねんでした。こーゆーのは早い者勝ちだよ~ん♪」 必死で抗議するレモンだが全く聞いてもらえない。完全に一つの目的の事で頭がいっぱいになっている様だ。 「じょ…冗談だよね…?幾ら何でも…そんな…///」 「レモりん、ちょっとパンツ邪魔♪」 「きゃあっ!!?///」 あっという間にレモンのパンツを剥ぎ取る籾岡。 「わぁ…、見てよ未央。レモりんのアソコ、キレイなピンク色♪」 「ホントだ。その上ヒクヒクしてエッチな液を垂れ流して…。やーらし~♪」 「唯っち風に言うと『ハレンチ』だね、レモりん♪」 「や、やだぁ…。二人してそんなにじっと見ちゃ…やだよぉ…///」 籾岡にM字開脚状態に足を広げられ、自らの秘部を露わにされて恥ずかしがるレモン。 反射的に足を閉じようとしたが籾岡にガッチリと押さえられ、手で隠そうとしてもこちらは沢田がしっかりと押さえている。 おまけにさっきのやり取りで身体に全く力が入らず、完全な無防備状態となったレモンは ただ顔を完熟トマトみたいに赤くして二人から目を逸らす事しか出来なかった。 「レモりん…、絶対狙ってやってるよね…?///」 「そんな事素でやっちゃうモンだからもっとイジメたくなっちゃうんでしょーが…///」 そしてその反応を見て欲情ボルテージのゲージが MAXとなる籾岡と沢田。 目がかなり危ない。 「じゃあレモりん、挿れるよ?挿れちゃうよ?挿れちゃうかんね?」 バイブのスイッチを入れると、無機質な機械音を発しながら先端が回り始め、 籾岡はソレをゆっくりとレモンの秘裂へあてがう。クチュリと厭らしい水音が響き、そして…。 「やぁっ!ちょっ、待っ――!///」 「待たない!てゆーか待てませんっ!!」 籾岡、欲求爆発。 その言葉と共に、レモンの膣内へバイブを射し込んだ。 「う……ぁああっ――!!///」 レモンが嬌声と悲鳴が混じり合った様な声を上げる。 挿入したバイブがズブズブとレモンの膣内をかき混ぜる様に突き進み、処女膜があるらしき部分で止まった。 「レモりん、もうちょっと力抜いて。こーゆーのグズグズするより一気にやっちゃった方が良いって聞いた事あるから」 「そ……そんな事言われても~…///」 「レモりん、ちょっと深呼吸しよ?こーゆー時はまず落ち着かなきゃ」 「ぅ……ぅん……。すー………はー……///」 沢田に言われた通りに、何回か深呼吸を繰り返すレモン。 徐々に強張っていた身体から力が抜けていく。 「それじゃ、一・二の三で一気に行くから。いいね?」 その言葉に、レモンは無言で頷いた。 「じゃ行くよ?いち!にの!さんっ!!」 カウントスリーと同時に籾岡は勢いをつけてバイブを押し込み、一気にレモンの処女膜を貫いた。 「ぅ゛っ――んっんーーーっ!!///」 瞬間、レモンの顔が歪み、処女膜を失った痛みに耐える様に下唇を噛んだ。 バイブを根元まで深く飲み込んで、結合部から僅かに破瓜の証が滴る。 だが籾岡の勢いは止まる事無く、そのままバイブをピストン運動へと移行させる。 「やっ!はぁあっ!ちょ…ちょっと待って!ぁあ…あんまりっ!は…激しくしないでぇ!!///」 「ゴメンレモりん、あたしもう止まれそうにない!」 「そ…そんなぁ!ああっ!い…痛っ!うぅんっ!ぁ…あれ!?気持ち良い?ぅあぁんっ!わっ分かんないよぉ!!///」 痛みと快感が一遍に来る様な不思議な感覚に戸惑いながら、若干涙声でレモンが喘ぐ。 たっぷり濡れていた事とバイブが細身だった事が幸いしたのか、レモンの顔からはあまり痛々しさは感じられない。 が、それでもやはり痛みの方が勝ってる様で、時たまレモンの顔が見るからに苦痛に染まったり、 嬌声の中に悲鳴に近い様な物も混じっていたりする。 「あ、ちょっと待っててねレモりん。あたしが何とかするから」 沢田が片方の手でレモンの頭を撫でながら、もう片方の手にローターを持つ。 そして、ゆっくりとレモンの身体を撫でる様にローターを降ろしていき、ソレをそっと秘部の突起物にあてがった。 「ひぁあああっ!!な…何コレぇ…!あ…アソコがじんじんしてぇ…!」 「どう?コレなら少しは痛みも和らぐんじゃないのかな?」 沢田が気遣う様に、『大丈夫だよ』と言う様にレモンに笑いかける。 その言葉を証明するかの様に、さっきと比べて僅かに甘い声の度合いが増した様な気がする。 「ふぁあっ!あっ!はぅうぅっ!や、やだ…、ボク…ボク何か……気持ち良いのかなぁ!?///」 「レモりん可愛い♪もっと可愛いトコあたしに見せて///」 じゅぷじゅぷバイブを出し入れしながら、籾岡は無意識の内にレモンの唇に吸い付いた。 「んむっ…!ん…むぅ…ぅ…ふっ…!んんっ…ちゅ……んはぁっ!は……はんぅ……ぅ…!///」 どちらともなくお互いに舌を絡ませ合い唾液を口内へと流し込み合う。 ソレを飲み込んではまた舌を絡ませ合って唾液交換。 そんな深いディープキスを飽きる事無く続けながらもバイブを動かす手は休めない。 むしろレモンとのキスで速度が更に上がっている。 「レモり~ん…。あたしもぉ…、あたしもレモりんとチュー…♪///」 籾岡と唇を離して、粘っこく引き合う糸が切れない内に今度は沢田がレモンの唇に吸い付いた。 「んんーっ!?ん……むふぅ…!ちゅる……ふわぁ……はぅっ…!んんっ!///」 息継ぎする間も無く沢田に舌をねじ込まれ、少し苦しそうなレモン。 なんとか僅かに開いた隙間から呼吸を続けながら、先程籾岡としていた事と同じ事を今度は沢田とし合う。 「ぢゅる……ん……ふぅっ…!ぅ………ちゅ……んんっ………んはぁ!はぁ……はぁ……はぁ……はうんんっ!///」 沢田と唇を離し、糸を引き合いながら呼吸を整えようとしたが、間髪入れずにまた籾岡がレモンの唇に吸い付く。 そして再びディープキスをし合った後、唇を離したと同時にまた沢田が唇に吸い付き、同じ事をして唇を離すとまた籾岡が――。 そんな事を延々と続けている中でレモンは軽い酸欠になりそうになっているが、それでも舌は休めない。 理性など殆ど残っておらず、ただ自らの性的欲求――本能に導かれるままに二人と舌を絡ませ合う。 「ぷはぁっ!はぁ…レモりん凄ぉい…。どんどんエッチな液が溢れてくる…///」 「おマメの方も……凄く大っきくなってるよぉ…。はむぅ……///」 比例して、レモンの秘裂から大量の愛液が溢れ出して、動かすバイブも速度を上げていき、 突起物を攻め立てていたローターの押し込む力も強くなる。 ほんの数時間前まで他の生徒と一緒に勉強していた学び舎で、今――女三人で淫猥な禁断行為をしている…。 その事に背徳感を感じながらも、それすらもこの行為を更に燃え上がらせる媚薬となって三人の性欲に拍車を掛ける。 そして――。 「ぷはぁっ!ああっだめ止めてぇ!!ま…またぁ!あんっ!ボク……またいっちゃ!ひゃあっ!またいっちゃうよぉ!!///」 「イってぇ!レモりんのイク所、もう一回あたし達に見せてぇ!///」 「遠慮しなくていいよぉ!気にせず思いっ切りイっちゃいなってぇ!///」 「ふぁあああっ!だ、だめだめだめぇ!!もうだめ!もうだめ!もうだめだってぇ!!アァァァーーー――!!!///」 ――――― 「………サ…、リサ、いい加減起きなってば」 「………ふぇ?」 ま、当然ながら夢オチな訳で…。 沢田に身体を揺すられて籾岡はようやく目を覚ました。 「ん……ぅ゛ーん…………ぁれ?レモりんは?」 「とっくに帰っちゃったよ、ララちぃと一緒に。今日は部活も無いから春菜もさっさと帰っちゃったし、てゆーか今校内に残ってんの多分あたしとリサ位だよ?時間が時間だしあとヨダレ出てる」 「へ?」 沢田に言われて、制服の袖で涎を拭いながら辺りを見回すと、時計は下校時間ギリギリを指して、 空も既に夕焼けへと変わってカラスがカーカー鳴いていた。 「ぁー……、あたし寝ちゃってたのかぁ…。……て事はやっぱりさっきのは夢…」 冷静になって考えれば可笑しな場面はいっぱいあったのだが、それでもやはりショックだったのかガックリヘコむ籾岡。 「?、どーかしたの?『夢』って何の話?」 「…………聞きたい?」 「うん」 「いや~………実はね…」 「うん」 「……」 「……」 「……」 「……………リサ?」 「…………………………その前にちょっとトイレ行ってくるわ…///」 「はい?」 疑問符を浮かべる沢田をよそに、籾岡はそそくさと(若干内股気味で)トイレへ向かった――。 ―――――― 「はぁ~…、そんなスゴい夢見たんだ…」 「まぁ、今考えれば変な所がいっぱいあったもんね~。ちょっと残念だけどさ…」 「あれ?って事はさっきトイレに行ったのは――」 「おぉーっと未央サンッ!!それ以上はいけませんよ!?あたしとて清純な乙女なんですからね!!OK!?」 「ぁ………ぅん分かった…。これ以上は何も言わない…」 籾岡の勢いに押されて、マンガみたいな汗を掻きながら口ごもる沢田。 「ところで未央さん、物は相談なんだけど…」 「何かな?」 「実はさぁ~…、近い内に『ある物』があたしん家に届くんだけどさぁ~…」 「ある物?それって…?」 「『夢で使ったのと同じ物』……と言えば分かるかな?」 「……っ!!」 籾岡がそう言った瞬間、沢田の身体が硬直する。 「リ……リササン……、それって……どーゆー…」 「フッ…、もうあたしの言う事は分かってるんでしょ相棒?」 口の端が吊り上がり、沢田の肩を両手でガシッと掴む。そして――。 「現実に………してみたくありませんか?」 怪しさ120%の笑顔でハッキリそう告げた。 「そ……そんな……」 沢田はおもわず顔を俯かせ…。 「そんなのって………!」 身体をブルブルと震わせ、そして――。 「面白いに決まってるじゃないですかぁ♪」 こちらも怪しさ120%の笑顔でハッキリそう答えた。 「よっしゃ!流石親友、話が早い♪」 「当然でしょ?こんな楽しそうな事そうそう無いでしょうが♪」 「問題はどーやってその場面まで持って行くかよね~…」 「まぁ、それは追々考えましょう。時間はまだたっぷりあるんだから♪」 「そうだね、あたしと未央が組めば出来ない事なんか何もないもんね♪」 「そうそう♪あたし達に不可能な事なんか無ぁい!だから今回のこの作戦も――♪」 「「イッヒッヒッヒッヒ――♪」」 二人の怪しげな笑い声が、夕焼け空に響き渡った…。 『ゾクッ!!』 「どしたのリト?」 「いや、何か寒気が…」
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「あ………あの~………御門先生…?」 「ん?なぁに?結城君。いや…『レモンちゃん』♪」 「……何故オレはこんな事に…?」 「さぁ~?何故でしょうね~?」 手首を制服のリボンでベッドの縁に固定。両足は大股開きにされて、こちらも足枷で縁に固定。 知らない内にベッドに四肢を縛り付けられて困惑するリトを、御門先生が怪しさ120%のにこやかな笑顔で見下ろす。 「いやいや、『何故でしょうね~?』って、コレ先生の仕業でしょ?早くほどいて下さいよ」 「くすっ、悪いけどそーゆー訳にはいかないの♪」 そう言って、ベッドに腰掛ける御門先生。 「実はねぇ~、先生最近欲求不満気味でさぁ~。毎晩身体が疼いちゃってしょうがないの」 「は、はぁ…?」 「それでね、この間あなたがそんな身体になっちゃって、そのエロ――もとい素敵なプロポーションを見てる内にこう…… 内側からムラムラっと来ちゃって♪」 「え゛…!?」 『ゾクッ!!』 艶っぽい目で見つめる御門先生に、リトの全身に悪寒が走った。 「と、いう訳で――♪」 「な、何が『と、いう訳で』なんスか!?先生一体………ってちょっとぉぉ!!?何してんスか先生!!?///」 「こ~ら、そんなに暴れないの♪綺麗に脱がせられないじゃない」 手足が動かないままジタバタするリトをよそに、御門先生は軽そうなノリでシャツのボタンを一つずつ丁寧に外してゆく。 そして、全てのボタンを外し終えてはらりとシャツを捲ると、ララにも匹敵(厳密には1cm上回ってる)するその豊満な胸が露わになった。 「あら?結城君ちゃんとブラしてるじゃない。ショーツの方もしっかり装備しちゃって、どーゆー心境の変化?」 ついでにスカートをピラッと捲りながら御門先生が尋ねる。 「ち、違うんですよ!!別に好きで着けてる訳じゃなくて、着けないと籾岡達がうるさくてセクハラばっか仕掛けてきたりして、 しかも何故かオレがノーパンだって説が男子内で広まってて、その上――!!///」 「くすくす、そこまで必死になって言い訳しなくても良いじゃない。よく似合ってるわよ、そのチェックも♪」 早口でまくし立てるリトの言葉を笑顔で受け流す御門先生。 間違いなく理解してる上でからかっている。 「でも、今はコレ邪魔だから」 そう言って、手をワキワキさせてブラジャーを外そうとする御門先生。 「でぇっ!?ちょっ…ちょっとぉ!?止め…だめっ…やぁっ!!///」 それを阻止しようとさっきよりも身体をバタつかせるリト。その勢いで縛り付けたベッドもドタンバタンと揺れまくっている。 「あーもう、うるさいわねぇ~。だったら――」 懐から何か飴玉みたいな物を取り出し、それを口に含む。そして――。 「ん……」 「んぐっ!?///」 リトの頭を両手でがっしりと固定させて強引に唇を重ねた。 「むっ……ん…ぅ……むはぁ…///」 間髪入れずに舌先をリトの口内に侵入させる御門先生。 リトも最初は抵抗していたが、御門先生の香りと舌先の熱さに何とも言えない快楽感を覚え、 次第にされるがままになり、やがて自らの舌も絡ませていく。 しばらくの間それを続けてリトがすっかりディープキスに酔いしれた頃、 御門先生は先ほど口に含んだ飴玉の様な物をリトの口内へと滑り込ませた。 「むふぅ……ふぁっ……はぅ……んっ…///」 お互いの舌を夢中で絡ませ合いながら、飴玉を互いの口内へ転がし合う。 そして飴玉が丁度リトの口内で無くなった頃に唇を離すと、お互いの唾液が舌先から糸を引き合うのと同時に リトの喉元を何かしらの甘い感覚が通った。 「はぁ……はぁ………先生ぇ……今オレに何か……///」 「ふぅ…ふぅ……あぁ、私特性の媚薬よ♪結城君が大人しくしてくれないから」 「はあ!?ちょっ、人に何ちゅー物を――うっ!!?///」 文句の一つでも言おうとしたリトだったが、突然心臓がドキンと跳ね上がり、頭がぼーっとし始めた。 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…ぁっつぅ…///」 リトの呼吸が荒くなり、身体中は熱を帯びて、内股からは何かじゅんとした液体が染み出ているかの様な感覚を覚える。 「あら?思ったよりも効くのが早かったわね」 自分で作っておいて、その即効性に少し驚く。 「あはぁ…、私もちょっと飲んじゃったから、何か私の方にも効いてきたみたい…」 そう言う御門先生も、リト程ではないが若干顔が上気し息も少し荒くなり始めていた。 「ブラ…外すわね」 「ちょっ…先生ぇ…///」 抵抗しようにも身体に力が入らない。なすがままにブラジャーを剥ぎ取られ自身の胸を剥き出しにされる。 「ふふっ、もう乳首ピンピンじゃない♪」 軽くリトの乳首を弾いて両手で優しく乳房を揉みしだく御門先生。 掌の動きに合わせて形を変え、強く押すとその反動で押し戻そうとする力が働く。 古くさい言い方をすれば、まるでマシュマロみたいな感触に段々夢中になっていく。 「んっ……ふぅ……ん…ぅんっ…///」 御門先生の愛撫に感じながらも、声を出すまいと口を堅く紡ぐリト。 媚薬の効力に取り込まれ、快楽の波に飲み込まれそうになるも、僅かに残った理性が必死に抵抗する。 「結城君、声を出したいなら出してもいいのよ?私、結城君の声聞きたいなぁ~…」 そう言いながら、片方の乳首を指でクリクリといじったり摘んだりしながら、 もう片方の乳首におもむろに口に含んだ。 「ふぅんっ…!ぅっ……ん……んふっ…!///」 赤ちゃんみたくリトの乳首に吸い付き、甘噛みしてみたり舌先で先端を転がしたりしてみたりして、 もう片方の乳房も休みなく掌や指で弄ぶ御門先生。 しかし、それでもリトは声を上げない。反射的に喘ごうとする所を僅かな理性をフル稼働させて無理矢理押し込める。 「むー、中々頑張るわねぇ~…。そんなに頑張られると意地でも出させたくなっちゃうじゃない♪」 にや~りと微笑う御門先生。胸を弄っていた手をゆっくりとお腹を滑らせ、リトの『女の子』の部分に下着越しに触れる。 「ふぁあっ…!あっ……んっ…!んんっ…!///」 薬の効果もあって、ソコはすでに洪水の様にぐちょぐちょに濡れて、下着がリトの秘部に張り付いて正直かなり厭らしい。 それ故なのか感度も敏感になってしまって、リトは一瞬不覚にも喘ぎ声を上げてしまった。 だが、直ぐに口を再び堅く紡ぎ、必死に御門先生の攻めに耐える。 「うふふっ、やっと鳴いてくれたわね『レモンちゃん』♪」 一瞬とはいえ、ようやくリトの喘ぎ声を聞くことが出来て更にテンションが上がる御門先生。 「もっと…、もっと可愛い鳴き声を聞かせて。『レモンちゃん』♪」 下着越しに触れていた指を、今度は下着の中へと滑り込ませ秘裂の入口部分に直接触れる。 クチュクチュと卑猥な効果音を響かせ、同時に先端のちょこんと飛び出た部分も親指で押す様に攻め立てる。 「ひゃあっ!あっ…!はぁあっ!!ぁん!せ……先生ぇ…止め……やぁあんっ!!///」 とうとう耐えきれなくなり、今まで我慢してた分を解放させるかの様に喘ぎ声を上げるリト。 押し寄せる快楽感に逆らえず背中がのけぞってしまい、残りの理性も吹き飛んでしまいそうになる。 だがそれでも、このまま御門先生の想うがままに流されてたまるものかという思いがギリギリで切れかけの理性を繋ぎ止める。 「あはぁ……熱っつぅい…。結城君のアソコ…、ヒクヒクしてて凄く熱いわ…。まるで熱でもあるみたい…」 そう言って、何処からともなく体温計を取り出し、下着の布地をズラして秘裂を露わにする。 「はっ……はぁっ……ぁ………先生……何を……?///」 「ん?し・ん・さ・つ♪」 妖艶な笑みを浮かべて、手にした体温計をゆっくりとリトの膣内に挿入した。 「ぁっ…ぁああっ…!痛ったぁ…!///」 体温計の冷たい感触と、自分の中に異物が入り込んでくる感覚に、リトはゾクリと身体を強ばらせる。 ズブズブと体温計がリトの膣内を突き進み、半分位の所で何かにぶつかる感触がした。 「へぇ~、結城君ちゃんと処女膜もあるんだ。完璧に女の子の身体なのね。うん、我ながら天才だわ私♪」 「せ…先生ぇ……ちょっ……ソレ…抜いてぇ……痛ぃ…///」 自分の才能に惚れ惚れしてる御門先生に、体温計を抜いてほしいと涙目で懇願するリト。 「えーダメよぉ、結城君のココ凄く熱いから熱があるかも知れないじゃない。だからちゃあんと診察しとかなきゃ。 大丈夫、膜は破らない様にするから♪」 「ゃ…そーゆー問題じゃ――はぁあんっ!!あっ……ひゃあっ!や、やだ…動かさな……あんっ!!///」 リトのお願いを軽く却下して、構わず体温計を上下左右に動かし始める御門先生。 体温計の動きに合わせてリトの秘裂からグチョグチョと卑猥な水音を響かせ、 それに呼応するかの様に膣内から愛液が止め処なく溢れ出てくる。 「ふふっ…♪どう…、気持ち良い?気持ち良いんでしょ『レモンちゃん』?」 「やっ…!そ…そんなの…!///」 「ウソ吐いたってダメよ。コッチの方は気持ち良いって言ってるじゃない。ほら、何時の間にか腰まで浮かせちゃってさ♪」 言われてようやくリトは気付いてしまった。何時の間にか無意識的に自らの腰を体温計の動きに合わせて浮かせてしまってた事に。 「やっ!そ…それは…違――///」 「何がどう違うのかなぁ?先生詳しく知りたいわぁ~♪」 「ぅ……うぅぅ~…///」 認めたくもないが、言い訳の一つも出来ないこの事実に羞恥心が沸き立ち、リトは顔を今までで一番赤く染めて御門先生から逸らした。 「か~わいい、『レモンちゃん』♪何かもっとイジメてみたくなっちゃいそう」 そう言ってリトの秘裂から体温計を抜く御門先生。 そしておもむろに顔を近付け、今度は自分の舌を直接膣内へねじ込んだ。 「はぁああっ!!ぁああっ!やぁっ!あっ……はんっ!!///」 嬌声を上げ、縁が足枷ごと外れてしまうのではないかと思う位に脚を痙攣させてよがるリト。 その声が御門先生をより興奮させ、奥へ、もっと奥へと舌を潜り込ませる。 その度に愛液が膣内から溢れ出して、ソレを御門先生は一滴も残すまいと飲み込んでいく。 「んぐ……んっ………ぷぁっ…!甘ぁい…、『レモンちゃん』のお汁ハチミツみたぁい。ねぇ、もっとお汁ちょうだい♪」 舌をねじ込みながら、片方の手で秘裂の突起物を弄び、更にもう片方の手の指を一本、二本と挿入。 愛撫する度に愛液が漏れ、ソレを舌と指で掻き出し、口に含み飲み込む。 そんな事を、御門先生はまるで何かに取り憑かれたかの様に繰り返し続け、徐々にそのスピードが上がっていく。 「あんっ!は………はぁあんっ!!ゃ…やらぁ……ゃんっ…ら……らめぇ…!!ひゃああっ!!///」 最早呂律も上手く回らないリト。媚薬の効果と御門先生の激しい攻めに完全に飲み込まれ、更なる快感を求めているかの様に、自分の意志とは無関係に腰を押し付けるように動かし続ける。 そして――。 「ふぁああっ!!ふぁ…ふぁって……ひゃ…にゃんかぁ!にゃんかきちゃあ……!!しぇんしぇ…ひょめ……ひょめてぇ…はあぁぁあっ!!///」 「イクの?イっちゃうの?いいわよ、思いっ切りイっちゃいなさい!」 「やぁああっ!!ああっ!はっはぁあっ!!あっあっあっ!はぁああぁーーーーーー――!!!///」 ―――――― 「ぅわぁあああーーーーー!!!///」 ――という断末魔の如き絶叫と共に、リトは目を覚まし飛び上がった。 「はぁ…!はぁ…!はぁ…!――」 額に浮かんだ脂汗を拭いながら何とか呼吸を整えようとし、状況を理解しようと辺りを見回す。 ……………。 …………。 ………。 「…………………………はぁ~~~~…、夢か…」 ようやく先程のやり取りが全て夢だった事を理解し、リトは盛大な安堵の溜め息を吐いた。 「あ、あの…」 「へ?――あ゛!」 そしてリトは気付いた。 今現在、バリバリ授業の真っ最中だという事に。 「ワ……ワシ何か間違ったかの!?」 「結城さん、どうかしたの?」 「リ…レモン?」 クラスの面々が一体何事かとリト(レモン)の方を注目する。 「ぁ………ぁー…っと…」 変に注目を浴びて、返答に困ったリトは…。 「ア………アハハハハ――」 とりあえず笑って誤魔化す事にした。 余談だが、この後授業終了と同時に、リトが物凄い勢いで(女子)トイレに駆け込んで行ったとかいないとか――。 ―――――― 「う゛ーん…」 所変わって保健室前、リトは何故か扉の前で立ち尽くしていた。 実は、次は体育の授業があるのだが、何度も言っている通り身体は女の子でも精神は男のままである純情なリトにとって、 女子更衣室で一緒に着替えるなどいう勇者も真っ青な行動などとれるハズもなく、 かといって、男子更衣室で着替えるという手段も当然出来る訳が無いので、 しょうがないから保健室で着替えさせてもらおうと思って来てはみたのだが…。 (いかんせん、あんな夢見た後だから顔合わせんの怖いな~…///) 『御門先生』がいる『保健室』、只今『制服』を着ている、しかもご丁寧に今日は『チェックの下着』を着用。 否が応でも先程の夢のやり取りが頭をよぎってしまう。 (いやいや考え過ぎだって結城リト。あんなの現実に起こり得るはずねーじゃねーか。 いや、でも『あの』御門先生だしな~…///) リトは一体御門先生に対してどんなイメージを持ってるのだろうか? (いや、大丈夫っ。オレは先生を信じるっ。先生はきっとそんな事考えたりしないっ!…………多分) 半ば強引に割り切って、リトは保健室の扉を開けた。 『ガラッ』 「失礼しま~す。御門先生~」 多少ぎこちなさが残った口調でこの部屋の主を呼ぶ。――が、何故か返事が返ってこない。 (あれ?居ないのかな?) そこに御門先生の姿は無く、室内をキョロキョロ見回してみると…。 「すぅ……すぅ……」 (――って寝てるよ…) 机の上でうつ伏せになって、可愛らしい寝息を立てていた。 しかし…。 「んふふふ……、甘ぁい………ハチミツみたぁい……。もっと……ちょうだぁい…♪」 (…………寝言?) 何か美味い物を食べてる夢でも見てるのか、だらしなく顔をニヤつかせて、口元からは軽く涎が垂れていた。 「あの、先生?ちょっと起きて下さい。ヨダレ出てますよ」 「ふへへへ……、いくの?いっちゃうの?いいわよ、思いっ切りいっちゃいなさぁい…♪」 「いやいや、どこに行くのか知りませんけどいい加減起きて下さいってば」 寝言にツッコミを入れながらリトは軽く肩を揺さぶり、ようやく御門先生は目を覚ました。 「ん……ぅ~ん…………ぁれ…結城君?」 「目、覚めました?先生」 「あれれ…?じゃあさっきのは…」 白衣の袖で涎を拭いながら辺りを見回す御門先生。そして――。 「ちぇっ、夢か」 本気で心の底から残念そうな声でボソッと呟いた。 「あの、随分恍惚な表情を浮かべてたみたいですけど何の夢を見てたんスか?」 「ちょっとねぇ~…。それよりも結城君どうしたの?何か用があって来たんでしょ?」 「あ、そうだった。あの、次体育の授業なんでちょっとココで着替えさせてもらってもいいですか?」 「いいけど…、わざわざココで着替えなくても更衣室で着替えればいいじゃない。今の身体なら問題無いでしょ?」(ニヤニヤ) 「いや、だからっ!オレはこんなナリでもれっきとした男ですからそんな事出来る訳が――!! てゆーかワザと言ってるでしょ先生!?///」 「くすっ、ホント期待を裏切らないリアクションをしてくれるわね結城君♪」 「………はぁ…、もーいーです…。それよりも早く着替えたいんでちょっとカーテン借りますよ」 「はいどーぞ♪」 体育の前だというのに既にグッタリと疲れた様な表情を浮かべてリトは仕切のカーテンを閉めた。 「夢でやったのと同じ事をもう一回やるのも面倒くさいわねぇ~…」(ボソッ…) 「………あの、何か言いました?」 「い~え何にも♪」 何を言ったのかは聞こえなかったのだが、かつてない程の悪寒が背中を走り身震いするリトだった…。
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【名前】 【スペック】 【構成員】 【備考】 【名前】 上里勢力(かみさとせいりょく) 【スペック】 上里翔流を中心とする勢力 【構成員】 上里翔流(かみさとかける) 有村絵恋(ありむらえれん) 烏丸府蘭(からすまふらん) 御霊冥亞(ごりょうめいあ) 沢井織雛(さわいおりびあ) 田妻暮亞(たづまくれあ) 豊山琉華(とやまるか) 獲冴(エルザ) 去鳴(サロメ) 愛燐(アイリーン) 宛那(アテナ) 杏奈(アンナ) 威舞(イヴ) 入洲(イリス) 瑛魅(エイミ) 江梨(エリ) 傘厘(キャサリン) 鞍蘭(クララ) 来蘭(クララ) 鎖仁(サニー) 燦泥(サンデイ) 数斬(スーザン) 好楽(スカラー) 好応(スノウ) 精錬(セイレーン) 聳愛(ソフィア) 出洞(デボラ) 蕩輝(ドロテア) 賑多(ニキータ) 丹南(ニナ) 覇尼(ハニー) 比阿(フィーア) 米璃(ベリー) 牧納(マキナ) 魔鈴(マリン) 夢厨(ミューズ) 診華(ミルカ) 妹伊(メイ) 銘撫(メイヴ) 芽李(メリー) 姪龍(メロン) 夢肖(ユニ) 来夏(ライカ) 雷矛(ライム) 理沙(リサ) 麟堕(リンダ) 恋因(レイン) 麗美(レミ) 零紋(レモン) 露去(ロザリー) その他多数 【備考】
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ア行 愛燐(アイリーン) 宛那(アテナ) あわあわスケ○イスちゃん 杏奈(アンナ) 威舞(イヴ) 入州(イリス) 瑛魅(エイミ) 江梨(エリ) 織雛(オリビア) カ行 外的御供(がいてきごくう) 傘厘(キャサリン) 来蘭(クララ) 鞍蘭(クララ) グリフォンドライバー 化粧院明日香(けしょういんあすか) 月面開発フォーラム 月面ニキビ君 サ行 鎖仁(サニー) 去鳴(サロメ) 燦泥(サンデイ)(未編集) 弱毒性サンジェルマンウィルス 数斬(スーザン) 好楽(スカラー) 好応(スノウ) 精錬(セイレーン) 絶滅犯(ぜつめつはん) 選挙ゲーム 聳愛(ソフィア) タ行 出洞(デボラ) 蕩輝(ドロテア) ナ行 内的御供(ないてきごくう) 贄の術式 賑多(ニキータ) 丹南(ニナ) 日本が誇る世界の大風俗展 ねとねとヒゴ○イキちゃん ハ行 覇尼(ハニー) 比阿(フィーア) 府蘭(フラン) 米璃(ベリー) マ行 牧納(マキナ) 魔鈴(マリン) 夢厨(ミューズ) 診華(ミルカ) 妹伊(メイ) 冥亞(メイア) 銘撫(メイヴ) メガネの生徒会書記 芽李(メリー) 姪龍(メロン) ヤ行 夢肖(ユニ) ラ行 来夏(ライカ) 雷矛(ライム) 理沙(リサ) 麟堕(リンダ) 琉華(ルカ) 恋囚(レイン) 麗美(レミ) 零紋(レモン) 露去(ロザリー) A~Z 横紙破り(ULエクスプローダー)
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