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これは、育児放棄? そんなもんじゃないんだぜ!! 後編その2でカットした部分です お兄さんに赤まりさたちの教育を任された、ゆっくりゆうかの視点です。 彼の虐待部屋にたどり着くまでの間に、ゲスと判断された妹まりさがどんな目にあっていたのか気になる方はどうぞ。 赤ゆ言葉が多いです。一応翻訳もつけていますが、ご注意ください。 所変わって、こちらはゆっくりゆうか率いる赤まりさたち。 赤ゆたちは解放感溢れる外の空気と土の感触が嬉しいのか、早速駆け回って遊び回っている。 しかしいつまでも自由にさせるわけにもいかない。それらを見渡すと、ゆうかは早速畑や野菜について説明を始めた。 通常、野菜は勝手に生えると信じているゆっくりたちの固定観念を覆すのは容易なものではない。 本来ならばこの赤まりさたちも、早々とゆうかの説明に異論を唱えただろう。 だが、今回はそのようなことは起きない。 赤ゆたちは元母親のゲスまりさによって、姉を半死半生にされたうえ捨てられたからだ。 母とはいえ、自分たちを売ったゲスまりさへの信頼などとうに放棄している。 しかも、先ほどまで散々とお兄さんからゲスまりさの教えについて指摘されていた。 それにより赤ゆたちは、今まで母まりさの教えてくれたこと全てにも疑いを持ち始めていたのだった。 お兄さんから知恵を授けられた同族、ゆっくりゆうかの指導。頼るものを失った赤ゆたちの縋るべきものは、最早彼女しかいない。 そうなればどんな話でも鵜呑みにするだろう。そこを利用すれば、赤まりさたちの価値観を塗り替えるのは容易いことだ。 お兄さんたちの計画など露ほども知らない姉まりさたちは、彼の考え通り素直に彼女の説明に耳を傾けていた。 対するゆうかは、真面目に聞いているとはいえ、本音を言えばしっかりと赤ゆたちに畑の仕組みを説明をしたかった。 しかしまだ幼い赤まりさ達ではそれを理解することは難しいと判断し、畑はあくまでも人間の所有物であることと、野菜は育てるものだということのみを教えるにとどめたのだった。 「ゆぅ……、まりしゃたちがまちぎゃっちぇたよ……」 「おやしゃいしゃんはかっちぇにはえにゃいんだにぇ……」(お野菜さんは勝手に生えないんだね) 「どりょぼーしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!!」(泥棒さんはゆっくりできないよ) 「そういうこと。……いい? わかった?」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」」 おおまかではあるが必要最低限の説明を終えたゆうかに対し、赤まりさたちは声を揃えて返事をした。 中には理解出来たことで反省する様な個体もいる。それらはすべて、お兄さんが印をつけた赤まりさたちであった。 やはり、このゆっくりたちはただの餡子脳というわけではないらしい。 だが、どの世界にも落ちこぼれと言うものは存在した。 印をもらえなかった赤まりさたちはすぐにゆうかの話に飽きて、走り回って遊んだり昼寝を始めていた。 酷いモノは説明されたばかりだというのに、早速庭に生えていた花にかじりついている。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇえええええ!!」 「まりざなにじでるのおおおおおおおお!?」 驚いたのはそれを見つけた印まりさたち。 慌てて花を食べていたまりさに駆け寄っていく。名前の方で呼んだことから、問題を起こしたのは妹だろう。 ちなみにその花はたんぽぽだ。いずれ間引かなければならないモノだったので、あえてゆうかは何も言わない。 むしろ、これはちょうどいいきっかけになると判断する。 「ゆーかのおにぇーしゃんからおしえられたでしょおおおお!?」(ゆうかのお姉さんから教えられたでしょ!?」 「しっちぇりゅよ!! じぇんぶまりしゃのためにありゅんだよにぇ!!」(全部まりさのためにあるんだよね?) 「ぞんなわげないでじょ!? おはなじぎいででよおおおおお!!」 決心した直後に出鼻をくじかれた印のある姉まりさ達。そりゃ泣きたくもなるだろう。 姉のまりさと違い、問題のまりさには全く話が通じていない。やはりゲスの餡子を色濃く継いでしまっていたようだ。 先ほどのお兄さんの判断とこの状況を見て、ゆうかは冷静に考える。 「きょきょをまりしゃのゆっきゅりぷれいしゅにすりゅよ!! みんにゃでていっちぇね!!」(まりさのゆっくりプレイスにするよ。みんな出ていってね) 「「「どおじでぞんなごどいうのおおおおお!?」」」 「おいしいおはにゃしゃんも、おやしゃいしゃんも、みんにゃまりしゃのちゃめにあるんだよ!?」(お花さんもお野菜さんも、みんなまりさのためにあるんだよ) 「「「ぢがうでじょおおおおおおおお!?」」」 「うるちゃいよ!! おねーしゃんたちがまりしゃのちゃめにがんばっちぇね!! できにゃいにゃらちね!!」(まりさのために頑張ってね、できないなら死ね) ゆうかの説明を丸っきり無視する形で、好き勝手に喋る妹まりさ。 どうにかして説得しようと試みる印付きまりさたちだが、問題の赤まりさはもう会話もしたくないのか、別の花を探し始める。 「やっぱり、げすのこね……」 ぼそりと呟いたゆうかの声が、その場の赤まりさ全員の耳に届いた。 「ぜんぜんはなしきいてないわね。ゲスだからかしら。そうね、ゲスじゃむりよね。だってゲスだもの」 問題のまりさへ向けていた視線が全てゆうかに注がれる。それを彼女は見下すような表情で受け止めていた。 ゲス発言していたまりさも、驚いた表情で振り返っていた。そして、頬を膨らませて怒りをあらわにする。 そんなまりさを、ゆうかは何も言わずただにやにやと見下ろすだけだ。 「ぷくー!! まりしゃはげすじゃにゃいよ! みんにゃがやきゅたたじゅにゃんだよ!!」(みんなが役立たずなんだよ) 「「「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!!!」」」 「ゆぅ……、まりしゃ、そんなこといったらだめだよ……」 そう言って近づいてきたのは、一体の印付きまりさ。足を引きずっていることから長女だろう。 ほぼ這う様にして移動するため、蝸牛と同じような速度である。 姉にしてみれば、妹のことを思っての注意であるが、それを問題のまりさは面白くなかったようだ。 姉まりさを正面から睨みつけた次の瞬間、失われた目に向けて全力の体当たりをお見舞いする。 姉とはいえ、互いにほぼ同時に生まれた関係。二匹のサイズに違いはほとんど見られない。 小さいながらも妹の体当たりを受けた姉まりさは、歩く速度の倍以上でころころとゆうかの方へ戻ってきた。 「ゆぎゅっ……!?」 「「「おねえじゃああああああああん!?」」」 「げらげらげら! しょんにゃゆっきゅりできにゃいきゃらだのおにぇーしゃんにゃんてまりしゃはいりゃないよ!!」(そんなゆっくりできない身体のお姉さんなんてまりさはいらないよ) 「「「「どぼじでええええ!?」」」」 あまりにも身勝手な妹の言葉に、ただ涙目で声をあげる姉まりさたち。 しかもその自由(身勝手)な姿に羨望を抱いた別の妹たちが、問題のまりさの方に感化されてしまった。 残りの3体も、揃って自分たちを守ろうとした姉に向けて罵詈雑言を放つ。 「ゆっきゅりしにぇ! ゆっきゅりしにぇ!!」 「ゆ! しょうだにぇ! ゆっきゅりできにゃいおねーしゃんにゃんていらないにぇ!」 「まりしゃもおはなしゃんむしゃむしゃしゅりゅよ! むーちゃ、むーちゃ!!」 「「「「ゆああああああああああん!!!!」」」」 妹たちの傍若無人にショックを隠せない姉たちは、ただ泣くだけ。 その様子を、ゆうかは冷たい眼差しで見つめていた。そして落ち着いた頭で、冷徹な判断を下す。 お兄さんは印のない赤まりさ達のゲスさを抑えられればと考えていたようだが、これらから推測するに矯正は無理だろう。 残念ながら、この妹たちにはゲス度しか無い。 教育したくとも、そもそも知性と理性が欠けたゆっくりなのだ。ゲス-ゲス=ただの餌用饅頭にしかすぎない。 ならばせめて、出来のいい姉たちへの反面教師として役立てることにしよう。 矯正が無理だと判断した場合の対処法として、ゆうかはお兄さんから伝えられた内容をそのまま口に出した。 「『ははおやそっくりね。ゲスばかりでゆっくりできないわ』」 「「「「「ゆっ!?」」」」」 「『ははおやとおなじゲスまりさとは、とてもゆっくりできないのよ』」 「ま、まりしゃたちはあんにゃにょとちぎゃうよ!?」 「『あなたたちはやっぱりいらないわ』」 「ま…まっちぇ、おにぇーしゃん、すちぇないで……!」 「げすまりさはきらいなの、よらないで」 お兄さんから伝えられた言葉を復唱するゆうか。 台所での出来事を思い出して、赤まりさ達は全身を硬直させる。 そんな中で真っ先に反応したのは、妹に体当たりされた姉まりさだった。 それをゆうかは素の感情で拒絶する。元々彼女もゲスは嫌いなのだ。 姉まりさに非はなくとも、まりさ種自体を嫌っているので躊躇しない。 「お、おねーしゃん、まっちぇね。まりしゃとしゅりしゅりしちぇね?」(まりさとすりすりしてね) 「げすまりさはきたないの、さわらないで」 次に理解したのも、別の印付きまりさだった。 妹まりさのせいで、ゆうかが怒ったと思ったらしい。 どうにか機嫌を直してもらうため、すりすりして親愛の情を伝えようと近づくが、それすら拒絶されてしまう。 もう少しで肌が触れ合うというところで、ゆうかはそれを後ろに跳ねて避ける。 体当たりをしないのは、お前たちに触りたくないからだというのをアピールするかのように。 そもそもゆうか種はドSではあるが、無闇に他のゆっくりを潰すような真似はしない。 捕食種なりの強さ故に、うっかり攻撃しようものなられいむ種やまりさ種ではすぐに潰してしまうことがあるからだ。 それではすぐ終わってしまうため楽しめない。 だからこそ彼女たちは、暴力を振うよりも苦しむゆっくりを見ることに楽しみを見出す傾向が強い。 このゆうかも同じように、そしてお兄さんのように言葉でゆっくりを惑わすタイプだった。 また捕食種特有の身体能力は、狩りの得意なまりさ種よりも高い。体力知力、どちらにおいても普通のゆっくりでは敵わないのだ。 幼い赤まりさがかなうなど、到底無理な話である。 それでも諦めきれないのか、印付きのまりさたちはゆうかを追いかけ続けた。 最初はただ見ているだけだったゲス赤まりさたちも、ただ事ではないと感じ、輪の中に乱入してきた。 前後左右。あらゆる方向から赤まりさ達はゆうかへ飛びつこうと奮闘する。だがゆうかはそれを避けることで全て拒絶した。 「ゆええええん!! どおぢでしゅりしゅりしちぇくりぇないの!?」 最初に疲れて泣き出したのは、問題を起こしたまりさだった。 つられて全ての赤まりさたちも泣き始める。 まともに動けない長女まりさは、姉として耐えているようだが、その目にはたっぷりの涙。 そろそろ潮時だろう。ゆうかはお兄さんからトドメとして用意された言葉を発する。 「『ゲスなゆっくりがいるからよ。いなければよかったのにね』」 その言葉に、全ての赤まりさの視線が一体の妹に集中する。 言わずもがな、対象は最初に花を食べた妹まりさだ。 「ゆぁ……ま、まりしゃはちがうよ!? そにょまりしゃだよ!?」 「ち、ちぎゃうよ!? まりしゃはちゃべちぇないよ!?」 「うりゅしゃいよ!! まりしゃはいもうちょにゃんだよ!? いちびゃんきゃわいいんだよ!!」 早速他の姉妹に罪をなすりつける妹まりさ。慌てたのは、無実の赤まりさである。 すぐさま否定するが、それを妹まりさは怒鳴りつけて黙らせた。 それらをゆうかは無視して話を続ける。 「いっぴきゲスがいると、みんなおなじゲスにみえるのよ」 「ち、ちぎゃうよ……まりしゃは……」 「だって、おなじははおやでしょ?」 「あ、あんにゃのおやじゃ……」 「じゃあ、あなたたちのおかあさんはだれ?」 「ゆ……ゆぁ…」 「わたしはゲスがきらいなの」 「……ま、まりしゃたちも……?」 「だいきらいよ、ゲスまりさ」 「「「「「「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」」」」」」 お兄さんが付けた心の傷に、今度はゆうかが言葉の爪を立てる。 せっかく助けてもらったのに……。姉まりさをはじめ、赤まりさたちはショックを隠せない。 それと同時に、赤まりさたちの心に燻り始めるとある感情。 最初に泣き止んだのは、長女まりさだった。ゆうかの一言に、思うことがあったのだろう。 いや、そもそも反応しやすい言葉を選んだのはお兄さんだ。正確には釣れたといったほうが正しい。 「おねー……しゃん?」 「……なに?」 「まりしゃたちがげしゅじゃなきゃったりゃ、きりゃいになにゃない?」(まりさたちがゲスじゃなかったら嫌いにならない?) 「………………そうね、考えてあげる」 「わかっちゃよ! まっちぇちぇね!!」 ゆうかは決して安易な肯定をしない。あくまでも可能性の一つとして示唆しておく。 それでも長女まりさはゆうかの言葉に一筋の光明を見出したようだ。 動かない片足を引きずって、最も泣き喚いている問題の妹へと再び近づいていく。 欠伸の出るほどに遅い移動だが、確実に距離を詰めていく。 今度は心配や思いやりの感情からではない。その残された片目に宿る物は、濁った憎悪。 他の赤まりさたちも、やがて一匹二匹と泣き声が収まるに連れて妹まりさへ近づいていく。 「ゆえええええええん!! ゆあああああああん!! みんにゃまりしゃのいうきょちょきいちぇよおおおお!!」 「うるしゃいよ!!」 「ゆびぇっ!?」 妹まりさの泣き声を遮ったのは、別の印付きの赤まりさだった。 長女まりさがされた時のように顔に体当たりをして、妹を弾き飛ばす。 「きょのげしゅ!!」(このゲス) 「おみゃえにょしぇいで!!」(おまえのせいで!!) 「ゆべっ!! ゆびぇ!?」 転がった先にも他の姉妹が待ち構えており、各々罵りながら問題の妹へ暴力を振るう。 「しにぇ!! しにぇ!!」 「おみゃえにゃんかいもうちょじゃにゃいよ!!」(お前なんか妹じゃないよ!!) 「ゆげぇ…、ゆ……げぇれ…」 四方八方あらゆる角度からの体当たりを受け、あっという間に弱っていく妹まりさ。 その表情は、どうして自分がこんな目にあうのか理解できないようだった。 やがて、その輪に追いついた長女まりさが妹まりさの傍へ寄る。 「お、おねーちゃ……たしゅけ……」 「げしゅはちんでね」(ゲスは死んでね) 「みゃりちゃのおびょうじぎゃああああ!?」(まりさのお帽子があああ!?) 完全な拒絶。動かない身体を引きずりながらも、長女まりさは憎き妹の帽子を噛みちぎった。 自分が見捨てた姉に、今度は自分が見捨てられる形となった妹まりさ。 姉以上に動けなくなった体を痙攣させて、帽子の破片へと近づいていくが、それを他の姉たちが妨害する。 「いいきみだにぇ!! ばきゃはちね!!」(いい気味だね) 「おみゃえにゃんきゃしんじゃえ!!」 「ぼうしぎゃにゃいきゃら、ゆっきゅりじゃにゃいにぇ!!」(帽子がないからゆっくりじゃないね) 「おお、みじめみじめ」 「ばーきゃばーきゃ!!」 「ゆっきゅりできにゃいげしゅはちね!!」(ゆっくりできないゲスは死ね) 「まりしゃのおぼうじがえじぇえええええ!!」 ひたすら続く姉たちの体当たりの中、破れた帽子をどうにかかき集めようとする妹まりさ。 だがすでに帽子を成していた素材はコマ切れとなり、土の色と混ざり合って探すことは不可能になっていた。 そして目に見えて弱っていく妹まりさへの暴力は、さらに加速する。 「おみゃえのぼうちにゃんきゃ、もうにゃいよ!!」(お前の帽子なんかもう無いよ) 「ゆ……ゆげぇ…、まりしゃのぼーちしゃ……」 「ゆっ!! あんきょしゃんはいちゃよ、きちゃないにぇ、しにぇ!!」(餡子さん吐いたよ、汚いね) 「ゆひゅ……ひゅ…ま、まりしゃきちゃなく……」 「きちゃにゃいよ!! おみゃにゃんきゃだいきりゃいだ!!」(汚いよ、お前なんか大嫌いだ!!) 賢い個体ではあるが、やはりゲスの餡子だけある。 長女まりさをはじめ、弱っていく妹に対し、最早姉妹であった時の感情は無くなっているようだ。 むしろ元凶への制裁という正当性が集団心理で生まれているのか、弱っていく饅頭を見て笑みを浮かべている個体さえいる。 お兄さんの言った通りになった。その様子を傍観しているゆうかは、内心驚きを隠せないでいた。 彼がゆうかに伝えたのは、ゲスと不必要を強調して印付きの赤まりさを貶せというものだった。 お兄さんは台所で赤まりさ達の親に見捨てられたというトラウマを植え付け、また軽蔑すべき親と同列に扱うことで過度なジレンマを与えることに成功した。 すると、「あんなのと自分は同じ」というそれは、赤まりさたちに強く根付くこととなり、ゲスと呼ばれることに強い抵抗感を見せるようになった。 これにより、ゲスを繰り返し否定することで赤まりさ達にはゲスという存在を憎むように仕向けることができるのである。 自分たちはあの母とは違う。赤まりさ達は母を否定するように行動するだろう。 だが、お兄さんやゆうかは赤まりさ達をゲスとしてしか扱わない。 「自分は違う。けれど、ゲスとして見られる」 何度否定しても、お兄さんたちは全く相手にしてくれない。 ならばどうすればいいか。餡子脳は幼いながらも考えるだろう。 そんな中、特に長女まりさの視界に映ったのは、問題の妹まりさであった。 印を付けられなかった妹まりさは、見事ゲスの素質に恵まれていた。 「まりさ種はゲスでしかない」 繰り返し教えられたことで、ただでさえジレンマを抱えた赤まりさ達は餡子脳を存分に刺激されたことだろう。 同時に印のある赤まりさ達にとって、妹まりさは目の上のたんこぶになったに違いない。 注意しても言うことを聞かないならば、あとは力づくである。 本来ならば暴力に訴えることは無かったのかもしれないが、そもそも親がゲスなのだから仕方ない。 まりさ種特有の賢さと、粗暴さを含む深層のゲスさが相まってしまったが故に、考えが極論に至ってしまったのだろう。 最初は注意していた長女まりさも姉妹の情よりゲスへの憎悪が優ったようで、帽子を破り捨てるなど徹底した拒絶を示した。 「こいつみたいなゲスがいなければ、お兄さんもお姉さんも、自分たちをゲス呼ばわりしなくなる」 全員が迷いなく妹まりさへ襲いかかったところを見る限り、その考えは一緒だったのだろう。 全ては、お兄さんの計画通りに誘導された結果であった。 「ゆげぇ……、やべじぇね……、がわいいまりじゃが……ゆごえっ!?」 「いいきゃげんしゃべりゅにゃ!!」 「うるしゃい!!」 「きちゃにゃい!!」 「ぶしゃいきゅ!!」 「げしゅが!!」 小さな身に憎しみを込めて、姉まりさ達はお仕置きを続けている。 だがそれも、すでに制裁の域を超えて遊びと変化しているようだった。 「ゆぴゅっ! ……ゆひゅ……ぴゅっ!? ぴゅ……ぇぷっ!?」 「げらげらげら!! きょのげしゅ、あんきょはいちぇるよ!!」(このゲス、餡子吐いてるよ) 「きちゃないにぇ!! きちゃないにぇ!!」 妹のまりさももう限界だろう。身体は殆ど黒ずみ、時折餡子を噴き出しては痙攣するだけである。 もちもちだった饅頭の肌は、ぶよぶよに潰れている。餡子が汚らしく口元にこびり付き、円らな瞳(爆笑)は半分ほど押し出されていた。 それでもまだ「遊び」足りないのか、姉まりさたちは妹から噴き出した餡子を踏みつぶし、土を口に含んでは潰れかけた体へとぶつける。 「ゆびゅ…だじゅぎぇ、じに……だ、ぎゅ…にゃ……」 「にゃにいっちぇるきゃわきゃんにゃいにぇ!!」 「しょうだにぇ! だきゃらもっちょしぇいしゃいしゅりょ!!」(だからもっと制裁するよ) 「やべじぇ……おにぇ…じゃ…まりじゃ………ゆげぇっ」 「うるしゃいよ!!」 「おみゃえはしゃべりゅな!!」 さすがのゆうかも顔をしかめるしかない。制裁の意味がわかって言っているのか。 これではどちらがゲスかわかりやしない……。 とにもかくにもお兄さんに言われた通り、ゲスと判断されたまりさには別の用事があるらしいのでそろそろ止めるべきだろう。 ゆうかは近くにあった植物の茎を咥えると、それを振っていまだ妹まりさを囲んでいた姉たちを全て吹っ飛ばす。 ゆぎゃ!? と姉まりさ達は悲鳴を上げるが、手加減はしっかりしているのでダメージはないはずだ。 ゆうかは茎を離すと、何事かと自分を見上げる赤まりさ達を睨みつけた。 その捕食種特有の眼差しに、小さな饅頭達は言葉を失う。 「これじゃおべんきょうなんてむりね、おにいさんのとこにもどるよ」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」 そう答えたのは、印の付いていない赤まりさ。 「そうね、ちゃんとりかいできるゆっくりはゲスじゃないわ」 ゆうかは頷きながら近くに生えていた葉っぱを咥えてくると、それを地面に敷いて妹まりさを乗せるように指示する。 姉まりさ達が言われた通りに行動したのを確認すると、ゆうかは自分についてくるよう言って、お兄さんの家へと戻り始める。 「おねーじゃ……だじゅげ…」 その間、餡子を吐きながら助けを求める赤まりさを彼女は一度も振り返ることはなかった。 たまにゆうかの目を盗んで、姉たちが唾を吐きかけてくるのを、妹まりさは涙を流して受け続けていた。
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これは、育児放棄? そんなもんじゃないんだぜ!! 後編その2でカットした部分です お兄さんに赤まりさたちの教育を任された、ゆっくりゆうかの視点です。 彼の虐待部屋にたどり着くまでの間に、ゲスと判断された妹まりさがどんな目にあっていたのか気になる方はどうぞ。 赤ゆ言葉が多いです。一応翻訳もつけていますが、ご注意ください。 所変わって、こちらはゆっくりゆうか率いる赤まりさたち。 赤ゆたちは解放感溢れる外の空気と土の感触が嬉しいのか、早速駆け回って遊び回っている。 しかしいつまでも自由にさせるわけにもいかない。それらを見渡すと、ゆうかは早速畑や野菜について説明を始めた。 通常、野菜は勝手に生えると信じているゆっくりたちの固定観念を覆すのは容易なものではない。 本来ならばこの赤まりさたちも、早々とゆうかの説明に異論を唱えただろう。 だが、今回はそのようなことは起きない。 赤ゆたちは元母親のゲスまりさによって、姉を半死半生にされたうえ捨てられたからだ。 母とはいえ、自分たちを売ったゲスまりさへの信頼などとうに放棄している。 しかも、先ほどまで散々とお兄さんからゲスまりさの教えについて指摘されていた。 それにより赤ゆたちは、今まで母まりさの教えてくれたこと全てにも疑いを持ち始めていたのだった。 お兄さんから知恵を授けられた同族、ゆっくりゆうかの指導。頼るものを失った赤ゆたちの縋るべきものは、最早彼女しかいない。 そうなればどんな話でも鵜呑みにするだろう。そこを利用すれば、赤まりさたちの価値観を塗り替えるのは容易いことだ。 お兄さんたちの計画など露ほども知らない姉まりさたちは、彼の考え通り素直に彼女の説明に耳を傾けていた。 対するゆうかは、真面目に聞いているとはいえ、本音を言えばしっかりと赤ゆたちに畑の仕組みを説明をしたかった。 しかしまだ幼い赤まりさ達ではそれを理解することは難しいと判断し、畑はあくまでも人間の所有物であることと、野菜は育てるものだということのみを教えるにとどめたのだった。 「ゆぅ……、まりしゃたちがまちぎゃっちぇたよ……」 「おやしゃいしゃんはかっちぇにはえにゃいんだにぇ……」(お野菜さんは勝手に生えないんだね) 「どりょぼーしゃんはゆっきゅりできにゃいよ!!」(泥棒さんはゆっくりできないよ) 「そういうこと。……いい? わかった?」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」」 おおまかではあるが必要最低限の説明を終えたゆうかに対し、赤まりさたちは声を揃えて返事をした。 中には理解出来たことで反省する様な個体もいる。それらはすべて、お兄さんが印をつけた赤まりさたちであった。 やはり、このゆっくりたちはただの餡子脳というわけではないらしい。 だが、どの世界にも落ちこぼれと言うものは存在した。 印をもらえなかった赤まりさたちはすぐにゆうかの話に飽きて、走り回って遊んだり昼寝を始めていた。 酷いモノは説明されたばかりだというのに、早速庭に生えていた花にかじりついている。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇえええええ!!」 「まりざなにじでるのおおおおおおおお!?」 驚いたのはそれを見つけた印まりさたち。 慌てて花を食べていたまりさに駆け寄っていく。名前の方で呼んだことから、問題を起こしたのは妹だろう。 ちなみにその花はたんぽぽだ。いずれ間引かなければならないモノだったので、あえてゆうかは何も言わない。 むしろ、これはちょうどいいきっかけになると判断する。 「ゆーかのおにぇーしゃんからおしえられたでしょおおおお!?」(ゆうかのお姉さんから教えられたでしょ!?」 「しっちぇりゅよ!! じぇんぶまりしゃのためにありゅんだよにぇ!!」(全部まりさのためにあるんだよね?) 「ぞんなわげないでじょ!? おはなじぎいででよおおおおお!!」 決心した直後に出鼻をくじかれた印のある姉まりさ達。そりゃ泣きたくもなるだろう。 姉のまりさと違い、問題のまりさには全く話が通じていない。やはりゲスの餡子を色濃く継いでしまっていたようだ。 先ほどのお兄さんの判断とこの状況を見て、ゆうかは冷静に考える。 「きょきょをまりしゃのゆっきゅりぷれいしゅにすりゅよ!! みんにゃでていっちぇね!!」(まりさのゆっくりプレイスにするよ。みんな出ていってね) 「「「どおじでぞんなごどいうのおおおおお!?」」」 「おいしいおはにゃしゃんも、おやしゃいしゃんも、みんにゃまりしゃのちゃめにあるんだよ!?」(お花さんもお野菜さんも、みんなまりさのためにあるんだよ) 「「「ぢがうでじょおおおおおおおお!?」」」 「うるちゃいよ!! おねーしゃんたちがまりしゃのちゃめにがんばっちぇね!! できにゃいにゃらちね!!」(まりさのために頑張ってね、できないなら死ね) ゆうかの説明を丸っきり無視する形で、好き勝手に喋る妹まりさ。 どうにかして説得しようと試みる印付きまりさたちだが、問題の赤まりさはもう会話もしたくないのか、別の花を探し始める。 「やっぱり、げすのこね……」 ぼそりと呟いたゆうかの声が、その場の赤まりさ全員の耳に届いた。 「ぜんぜんはなしきいてないわね。ゲスだからかしら。そうね、ゲスじゃむりよね。だってゲスだもの」 問題のまりさへ向けていた視線が全てゆうかに注がれる。それを彼女は見下すような表情で受け止めていた。 ゲス発言していたまりさも、驚いた表情で振り返っていた。そして、頬を膨らませて怒りをあらわにする。 そんなまりさを、ゆうかは何も言わずただにやにやと見下ろすだけだ。 「ぷくー!! まりしゃはげすじゃにゃいよ! みんにゃがやきゅたたじゅにゃんだよ!!」(みんなが役立たずなんだよ) 「「「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!!!」」」 「ゆぅ……、まりしゃ、そんなこといったらだめだよ……」 そう言って近づいてきたのは、一体の印付きまりさ。足を引きずっていることから長女だろう。 ほぼ這う様にして移動するため、蝸牛と同じような速度である。 姉にしてみれば、妹のことを思っての注意であるが、それを問題のまりさは面白くなかったようだ。 姉まりさを正面から睨みつけた次の瞬間、失われた目に向けて全力の体当たりをお見舞いする。 姉とはいえ、互いにほぼ同時に生まれた関係。二匹のサイズに違いはほとんど見られない。 小さいながらも妹の体当たりを受けた姉まりさは、歩く速度の倍以上でころころとゆうかの方へ戻ってきた。 「ゆぎゅっ……!?」 「「「おねえじゃああああああああん!?」」」 「げらげらげら! しょんにゃゆっきゅりできにゃいきゃらだのおにぇーしゃんにゃんてまりしゃはいりゃないよ!!」(そんなゆっくりできない身体のお姉さんなんてまりさはいらないよ) 「「「「どぼじでええええ!?」」」」 あまりにも身勝手な妹の言葉に、ただ涙目で声をあげる姉まりさたち。 しかもその自由(身勝手)な姿に羨望を抱いた別の妹たちが、問題のまりさの方に感化されてしまった。 残りの3体も、揃って自分たちを守ろうとした姉に向けて罵詈雑言を放つ。 「ゆっきゅりしにぇ! ゆっきゅりしにぇ!!」 「ゆ! しょうだにぇ! ゆっきゅりできにゃいおねーしゃんにゃんていらないにぇ!」 「まりしゃもおはなしゃんむしゃむしゃしゅりゅよ! むーちゃ、むーちゃ!!」 「「「「ゆああああああああああん!!!!」」」」 妹たちの傍若無人にショックを隠せない姉たちは、ただ泣くだけ。 その様子を、ゆうかは冷たい眼差しで見つめていた。そして落ち着いた頭で、冷徹な判断を下す。 お兄さんは印のない赤まりさ達のゲスさを抑えられればと考えていたようだが、これらから推測するに矯正は無理だろう。 残念ながら、この妹たちにはゲス度しか無い。 教育したくとも、そもそも知性と理性が欠けたゆっくりなのだ。ゲス-ゲス=ただの餌用饅頭にしかすぎない。 ならばせめて、出来のいい姉たちへの反面教師として役立てることにしよう。 矯正が無理だと判断した場合の対処法として、ゆうかはお兄さんから伝えられた内容をそのまま口に出した。 「『ははおやそっくりね。ゲスばかりでゆっくりできないわ』」 「「「「「ゆっ!?」」」」」 「『ははおやとおなじゲスまりさとは、とてもゆっくりできないのよ』」 「ま、まりしゃたちはあんにゃにょとちぎゃうよ!?」 「『あなたたちはやっぱりいらないわ』」 「ま…まっちぇ、おにぇーしゃん、すちぇないで……!」 「げすまりさはきらいなの、よらないで」 お兄さんから伝えられた言葉を復唱するゆうか。 台所での出来事を思い出して、赤まりさ達は全身を硬直させる。 そんな中で真っ先に反応したのは、妹に体当たりされた姉まりさだった。 それをゆうかは素の感情で拒絶する。元々彼女もゲスは嫌いなのだ。 姉まりさに非はなくとも、まりさ種自体を嫌っているので躊躇しない。 「お、おねーしゃん、まっちぇね。まりしゃとしゅりしゅりしちぇね?」(まりさとすりすりしてね) 「げすまりさはきたないの、さわらないで」 次に理解したのも、別の印付きまりさだった。 妹まりさのせいで、ゆうかが怒ったと思ったらしい。 どうにか機嫌を直してもらうため、すりすりして親愛の情を伝えようと近づくが、それすら拒絶されてしまう。 もう少しで肌が触れ合うというところで、ゆうかはそれを後ろに跳ねて避ける。 体当たりをしないのは、お前たちに触りたくないからだというのをアピールするかのように。 そもそもゆうか種はドSではあるが、無闇に他のゆっくりを潰すような真似はしない。 捕食種なりの強さ故に、うっかり攻撃しようものなられいむ種やまりさ種ではすぐに潰してしまうことがあるからだ。 それではすぐ終わってしまうため楽しめない。 だからこそ彼女たちは、暴力を振うよりも苦しむゆっくりを見ることに楽しみを見出す傾向が強い。 このゆうかも同じように、そしてお兄さんのように言葉でゆっくりを惑わすタイプだった。 また捕食種特有の身体能力は、狩りの得意なまりさ種よりも高い。体力知力、どちらにおいても普通のゆっくりでは敵わないのだ。 幼い赤まりさがかなうなど、到底無理な話である。 それでも諦めきれないのか、印付きのまりさたちはゆうかを追いかけ続けた。 最初はただ見ているだけだったゲス赤まりさたちも、ただ事ではないと感じ、輪の中に乱入してきた。 前後左右。あらゆる方向から赤まりさ達はゆうかへ飛びつこうと奮闘する。だがゆうかはそれを避けることで全て拒絶した。 「ゆええええん!! どおぢでしゅりしゅりしちぇくりぇないの!?」 最初に疲れて泣き出したのは、問題を起こしたまりさだった。 つられて全ての赤まりさたちも泣き始める。 まともに動けない長女まりさは、姉として耐えているようだが、その目にはたっぷりの涙。 そろそろ潮時だろう。ゆうかはお兄さんからトドメとして用意された言葉を発する。 「『ゲスなゆっくりがいるからよ。いなければよかったのにね』」 その言葉に、全ての赤まりさの視線が一体の妹に集中する。 言わずもがな、対象は最初に花を食べた妹まりさだ。 「ゆぁ……ま、まりしゃはちがうよ!? そにょまりしゃだよ!?」 「ち、ちぎゃうよ!? まりしゃはちゃべちぇないよ!?」 「うりゅしゃいよ!! まりしゃはいもうちょにゃんだよ!? いちびゃんきゃわいいんだよ!!」 早速他の姉妹に罪をなすりつける妹まりさ。慌てたのは、無実の赤まりさである。 すぐさま否定するが、それを妹まりさは怒鳴りつけて黙らせた。 それらをゆうかは無視して話を続ける。 「いっぴきゲスがいると、みんなおなじゲスにみえるのよ」 「ち、ちぎゃうよ……まりしゃは……」 「だって、おなじははおやでしょ?」 「あ、あんにゃのおやじゃ……」 「じゃあ、あなたたちのおかあさんはだれ?」 「ゆ……ゆぁ…」 「わたしはゲスがきらいなの」 「……ま、まりしゃたちも……?」 「だいきらいよ、ゲスまりさ」 「「「「「「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」」」」」」 お兄さんが付けた心の傷に、今度はゆうかが言葉の爪を立てる。 せっかく助けてもらったのに……。姉まりさをはじめ、赤まりさたちはショックを隠せない。 それと同時に、赤まりさたちの心に燻り始めるとある感情。 最初に泣き止んだのは、長女まりさだった。ゆうかの一言に、思うことがあったのだろう。 いや、そもそも反応しやすい言葉を選んだのはお兄さんだ。正確には釣れたといったほうが正しい。 「おねー……しゃん?」 「……なに?」 「まりしゃたちがげしゅじゃなきゃったりゃ、きりゃいになにゃない?」(まりさたちがゲスじゃなかったら嫌いにならない?) 「………………そうね、考えてあげる」 「わかっちゃよ! まっちぇちぇね!!」 ゆうかは決して安易な肯定をしない。あくまでも可能性の一つとして示唆しておく。 それでも長女まりさはゆうかの言葉に一筋の光明を見出したようだ。 動かない片足を引きずって、最も泣き喚いている問題の妹へと再び近づいていく。 欠伸の出るほどに遅い移動だが、確実に距離を詰めていく。 今度は心配や思いやりの感情からではない。その残された片目に宿る物は、濁った憎悪。 他の赤まりさたちも、やがて一匹二匹と泣き声が収まるに連れて妹まりさへ近づいていく。 「ゆえええええええん!! ゆあああああああん!! みんにゃまりしゃのいうきょちょきいちぇよおおおお!!」 「うるしゃいよ!!」 「ゆびぇっ!?」 妹まりさの泣き声を遮ったのは、別の印付きの赤まりさだった。 長女まりさがされた時のように顔に体当たりをして、妹を弾き飛ばす。 「きょのげしゅ!!」(このゲス) 「おみゃえにょしぇいで!!」(おまえのせいで!!) 「ゆべっ!! ゆびぇ!?」 転がった先にも他の姉妹が待ち構えており、各々罵りながら問題の妹へ暴力を振るう。 「しにぇ!! しにぇ!!」 「おみゃえにゃんかいもうちょじゃにゃいよ!!」(お前なんか妹じゃないよ!!) 「ゆげぇ…、ゆ……げぇれ…」 四方八方あらゆる角度からの体当たりを受け、あっという間に弱っていく妹まりさ。 その表情は、どうして自分がこんな目にあうのか理解できないようだった。 やがて、その輪に追いついた長女まりさが妹まりさの傍へ寄る。 「お、おねーちゃ……たしゅけ……」 「げしゅはちんでね」(ゲスは死んでね) 「みゃりちゃのおびょうじぎゃああああ!?」(まりさのお帽子があああ!?) 完全な拒絶。動かない身体を引きずりながらも、長女まりさは憎き妹の帽子を噛みちぎった。 自分が見捨てた姉に、今度は自分が見捨てられる形となった妹まりさ。 姉以上に動けなくなった体を痙攣させて、帽子の破片へと近づいていくが、それを他の姉たちが妨害する。 「いいきみだにぇ!! ばきゃはちね!!」(いい気味だね) 「おみゃえにゃんきゃしんじゃえ!!」 「ぼうしぎゃにゃいきゃら、ゆっきゅりじゃにゃいにぇ!!」(帽子がないからゆっくりじゃないね) 「おお、みじめみじめ」 「ばーきゃばーきゃ!!」 「ゆっきゅりできにゃいげしゅはちね!!」(ゆっくりできないゲスは死ね) 「まりしゃのおぼうじがえじぇえええええ!!」 ひたすら続く姉たちの体当たりの中、破れた帽子をどうにかかき集めようとする妹まりさ。 だがすでに帽子を成していた素材はコマ切れとなり、土の色と混ざり合って探すことは不可能になっていた。 そして目に見えて弱っていく妹まりさへの暴力は、さらに加速する。 「おみゃえのぼうちにゃんきゃ、もうにゃいよ!!」(お前の帽子なんかもう無いよ) 「ゆ……ゆげぇ…、まりしゃのぼーちしゃ……」 「ゆっ!! あんきょしゃんはいちゃよ、きちゃないにぇ、しにぇ!!」(餡子さん吐いたよ、汚いね) 「ゆひゅ……ひゅ…ま、まりしゃきちゃなく……」 「きちゃにゃいよ!! おみゃにゃんきゃだいきりゃいだ!!」(汚いよ、お前なんか大嫌いだ!!) 賢い個体ではあるが、やはりゲスの餡子だけある。 長女まりさをはじめ、弱っていく妹に対し、最早姉妹であった時の感情は無くなっているようだ。 むしろ元凶への制裁という正当性が集団心理で生まれているのか、弱っていく饅頭を見て笑みを浮かべている個体さえいる。 お兄さんの言った通りになった。その様子を傍観しているゆうかは、内心驚きを隠せないでいた。 彼がゆうかに伝えたのは、ゲスと不必要を強調して印付きの赤まりさを貶せというものだった。 お兄さんは台所で赤まりさ達の親に見捨てられたというトラウマを植え付け、また軽蔑すべき親と同列に扱うことで過度なジレンマを与えることに成功した。 すると、「あんなのと自分は同じ」というそれは、赤まりさたちに強く根付くこととなり、ゲスと呼ばれることに強い抵抗感を見せるようになった。 これにより、ゲスを繰り返し否定することで赤まりさ達にはゲスという存在を憎むように仕向けることができるのである。 自分たちはあの母とは違う。赤まりさ達は母を否定するように行動するだろう。 だが、お兄さんやゆうかは赤まりさ達をゲスとしてしか扱わない。 「自分は違う。けれど、ゲスとして見られる」 何度否定しても、お兄さんたちは全く相手にしてくれない。 ならばどうすればいいか。餡子脳は幼いながらも考えるだろう。 そんな中、特に長女まりさの視界に映ったのは、問題の妹まりさであった。 印を付けられなかった妹まりさは、見事ゲスの素質に恵まれていた。 「まりさ種はゲスでしかない」 繰り返し教えられたことで、ただでさえジレンマを抱えた赤まりさ達は餡子脳を存分に刺激されたことだろう。 同時に印のある赤まりさ達にとって、妹まりさは目の上のたんこぶになったに違いない。 注意しても言うことを聞かないならば、あとは力づくである。 本来ならば暴力に訴えることは無かったのかもしれないが、そもそも親がゲスなのだから仕方ない。 まりさ種特有の賢さと、粗暴さを含む深層のゲスさが相まってしまったが故に、考えが極論に至ってしまったのだろう。 最初は注意していた長女まりさも姉妹の情よりゲスへの憎悪が優ったようで、帽子を破り捨てるなど徹底した拒絶を示した。 「こいつみたいなゲスがいなければ、お兄さんもお姉さんも、自分たちをゲス呼ばわりしなくなる」 全員が迷いなく妹まりさへ襲いかかったところを見る限り、その考えは一緒だったのだろう。 全ては、お兄さんの計画通りに誘導された結果であった。 「ゆげぇ……、やべじぇね……、がわいいまりじゃが……ゆごえっ!?」 「いいきゃげんしゃべりゅにゃ!!」 「うるしゃい!!」 「きちゃにゃい!!」 「ぶしゃいきゅ!!」 「げしゅが!!」 小さな身に憎しみを込めて、姉まりさ達はお仕置きを続けている。 だがそれも、すでに制裁の域を超えて遊びと変化しているようだった。 「ゆぴゅっ! ……ゆひゅ……ぴゅっ!? ぴゅ……ぇぷっ!?」 「げらげらげら!! きょのげしゅ、あんきょはいちぇるよ!!」(このゲス、餡子吐いてるよ) 「きちゃないにぇ!! きちゃないにぇ!!」 妹のまりさももう限界だろう。身体は殆ど黒ずみ、時折餡子を噴き出しては痙攣するだけである。 もちもちだった饅頭の肌は、ぶよぶよに潰れている。餡子が汚らしく口元にこびり付き、円らな瞳(爆笑)は半分ほど押し出されていた。 それでもまだ「遊び」足りないのか、姉まりさたちは妹から噴き出した餡子を踏みつぶし、土を口に含んでは潰れかけた体へとぶつける。 「ゆびゅ…だじゅぎぇ、じに……だ、ぎゅ…にゃ……」 「にゃにいっちぇるきゃわきゃんにゃいにぇ!!」 「しょうだにぇ! だきゃらもっちょしぇいしゃいしゅりょ!!」(だからもっと制裁するよ) 「やべじぇ……おにぇ…じゃ…まりじゃ………ゆげぇっ」 「うるしゃいよ!!」 「おみゃえはしゃべりゅな!!」 さすがのゆうかも顔をしかめるしかない。制裁の意味がわかって言っているのか。 これではどちらがゲスかわかりやしない……。 とにもかくにもお兄さんに言われた通り、ゲスと判断されたまりさには別の用事があるらしいのでそろそろ止めるべきだろう。 ゆうかは近くにあった植物の茎を咥えると、それを振っていまだ妹まりさを囲んでいた姉たちを全て吹っ飛ばす。 ゆぎゃ!? と姉まりさ達は悲鳴を上げるが、手加減はしっかりしているのでダメージはないはずだ。 ゆうかは茎を離すと、何事かと自分を見上げる赤まりさ達を睨みつけた。 その捕食種特有の眼差しに、小さな饅頭達は言葉を失う。 「これじゃおべんきょうなんてむりね、おにいさんのとこにもどるよ」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」 そう答えたのは、印の付いていない赤まりさ。 「そうね、ちゃんとりかいできるゆっくりはゲスじゃないわ」 ゆうかは頷きながら近くに生えていた葉っぱを咥えてくると、それを地面に敷いて妹まりさを乗せるように指示する。 姉まりさ達が言われた通りに行動したのを確認すると、ゆうかは自分についてくるよう言って、お兄さんの家へと戻り始める。 「おねーじゃ……だじゅげ…」 その間、餡子を吐きながら助けを求める赤まりさを彼女は一度も振り返ることはなかった。 たまにゆうかの目を盗んで、姉たちが唾を吐きかけてくるのを、妹まりさは涙を流して受け続けていた。
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「ゆっ!おちびちゃんたち、ただいま!」 「みゃみゃだ~!」 「ゆぅ!おかあしゃん、おかえりなしゃい!」 「おかーさん、おかえりなさいだぜ!」 「ゆっくりおかえりなさい!」 「ゆぅ~ん♪おにゃかしゅいたよ~♪」 巣に戻ってきた母れいむに、巣の中で遊んでいた子ゆっくり達が 口々に返事をしながら、ぴょんぴょんと跳ね寄って来る。 崖の岩肌にできた洞穴。 ゆっくりの巣としては広い洞穴で、 屈みさえすれば、人間でも三人ぐらいは入れそうな広さがあった。 ほぼ円形の広々とした空間。 目立つ物と言えば、天井から突き出した、頑丈そうな太い木の根ぐらい。 崖の上に立つ大木の根がここまで伸びてきているのだった。 そこが、れいむ一家の巣だった。 その巣に住むのは、 ソフトボール大の子ゆっくり、子まりさが2匹に子れいむが1匹。 ピンポン玉より一回り大きめの赤ゆっくり、全て赤れいむで3匹。 母れいむを入れて、今は計7匹のゆっくり家族だった。 「みゃみゃ~、しゅ~りしゅ~りちて~♪」 「ゆっ!れーみゅも!」 大好きなお母さんとすーりすーり♪しようとしているのは、 末っ子と五女の赤れいむコンビ。 そして、母れいむの陰に転がっている丸い物体に気づく。 「ゆ・・・?しょれ、なーに?」 「ゆ!このこはね・・・」 五女赤れいむが上げた疑問の声に 母れいむが事情を説明をしようとしたときだった。 「ゆっ、ゆぅ・・・ん・・・・」 注射されていた睡眠薬の効果が切れ、目を覚ましたソレが声を上げた。 「ゆわっ!?しゃべっちゃ!」 末っ子の赤れいむが驚いてぽよ~んと、飛び上がる。 「ゆゆっ?おちびちゃん、めがさめた?」 母れいむが少し体をよじって鎖を引っ張ると、コロコロとソレが転がり、 母れいむの目の前までやってくる。 「ゆぅ!あかちゃんだよ!」 次女である子れいむが最初にその正体に気づいた。 「そうだよ!きょうから、このあかちゃんもかぞくになるよ! みんなゆっくりなかよくしてね!」 「「「「「ゆゆぅ~!?」」」」」 突然家族が増えたことに、 一様に驚きの声をあげる子供ゆっくり達。 「おちびちゃんも、これからはれいむがゆっくりさせてあげるからね。」 優しく笑顔を向けるれいむ。 キョトンとしている赤まりさ。 「ゆ・・・きょきょ・・・どきょ・・・?」 生気のない声で誰にともなく尋ねる。 怖い人間の家にいた筈なのに、 気がついたら、どこか見知らぬゆっくりのお家にいた。 怖い人間の家にいた筈なのに? その怖い人間の家で自分は何をされた? 怖い人間に見せられた鏡という物に写っていたのは何だった? 「ゆっ・・・!?み、みないじぇぇ!まりしゃをみないじぇぇ!」 突然、恐慌状態に陥り、泣き叫び出した目の前の赤まりさに、 唖然とするゆっくり一家。 その状態からいち早く復帰したのは、母れいむだった。 「ゆっ!おちびちゃん!もうだいじょうだよ! おちびちゃんをいじめる、わるいにんげんさんは、もういないよ!」 赤まりさを落ち着かせようと力強く声をかける。 だが、赤まりさの恐慌は治まらない。 今、赤まりさが怯えているのは、目の前にいない人間にではない。 怖い人間によって、怖い化け物にされてしまった自分の姿、 そして、その自分を見たときに、周りのゆっくりが見せるであろう 反応に怯えていたのだ。 しかし、その反応は赤まりさが想像していたものとは違った。 「ゆゅ・・・どうちたのぉ・・・?ぽんぽんいちゃいの・・・?」 五女赤れいむが心配そうに、赤まりさの顔を覗き込む。 「みちゃやぁぁ!みないじぇぇ・・・ゅ・・・・?」 自力で動くことができないため、顔を逸らすことすらできず、 ただ泣き叫ぶ赤まりさだったが、 赤れいむが叫び声をあげないことに気づいて戸惑う。 自分の妹のまりさは、自分の顔を見て怯えて、火がついたように泣き出した。 この赤れいむもそうだろうと思っていた。 「ゆぅぅ・・・りゃいじょうぶ・・・?」 だが、赤れいむは、いまだに心配そうに、 赤まりさの顔をじぃっと覗き込んだままである。 「ゆ・・・・・・・・」 赤まりさは、少し離れた所から、固まってこちらを見ている、 他の子ゆっくりと赤ゆっくり達に視線を移す。 他のゆっくり達は、どこか訝しげな視線をこちらに向けている。 やっぱり自分のお化けみたいな顔を怖がっているのか? でも、怖がって怯えているという様子とは少し違う。 「・・・ゆ。なんだか、へんなおめめのあかちゃんなのぜ!」 小馬鹿にしたような口調で子まりさが言った。 (ゆ・・・やっぱり・・・) 再び、赤まりさの心が暗く沈む。 その様子を見て、母れいむが子まりさを叱りつけようとした、その時。 ドン!! 「ゆびゃっ!?」 音を立てて、子まりさに体当たりをしたのは、もう一匹の子まりさ。 長女まりさであった。 ちなみに体当たりをされた方の子まりさは三女である。 「あかちゃんに、そんなひどいこと、いっちゃだめなんだよ! そんなこというゆっくりは、ゆっくりできないよ!」 「だじぇ・・・」 姉に叱られ、涙目になる三女まりさ。 「そうだよ。れいむのおちびちゃん。 このあかちゃんはね、わるいにんげんさんに、けがをさせられたんだよ。 とってもかわいそうなめにあったんだからね。 いじわるいったら、おかあさんゆるさないよ。」 姉まりさが厳しく叱ってくれた分、 幾分優しく、諭すように語りかける母れいむ。 「ゆぅ・・・ごめんなさいなんだじぇ・・・」 涙目で謝る三女まりさ。 「まりさ、あかちゃんにもあやまろう?」 体当たりされた時に地面に打ち付けた頬を ぺーろぺーろしてくれながら、次女れいむが促す。 「ゆぅ・・・あかちゃん、ごめんなさいなんだじぇ・・・!」 母れいむは安心していた。 三女の子まりさは思ゆん期にありがちな反抗精神から、 粗雑な態度を取ることも多いが、根は優しい子ゆっくりである。 きちんと接してあげれば、こちらの想いは必ず通じる。 勿論、他の子達もこの子に負けず劣らずに 優しい、ゆっくりとしたゆっくりだ。 一方の赤まりさは、戸惑っていた。 変な顔と言われこそしたが、このゆっくり達には怯えた様子は見られない。 自分が自分の顔を見たときには、恐怖のあまり叫び声を上げた。 怯えるなと言われても、怯えずに済む顔ではなかった。 お父さん達だって、叫び声こそ上げなかったが、 怖がってブルブルと震えていたではないか。 それなのに、この家族達は、何故か誰も怯えた表情を見せてはいない。 自分の顔が怖くはないのだろうか? 自分の顔は怖くはないのだろうか? 「それじゃ、みんな、あたらしいかぞくのあかちゃんに、 ゆっくりあいさつしようね!」 「「「「「「ゆっ!」」」」」」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!!」」」 母れいむの号令一下、綺麗にハモった挨拶をするゆっくり一家。 「・・・・ゆぅ・・・ゆっくり・・・していってね・・・・」 一方の赤まりさは、ゆっくりの本能から返事は返すが、 その声にはまったく力がこもっていない。 ゆっくり一家も表情を曇らせる。 「ゆ~・・・あかちゃん、げんきないよ・・・」 長女まりさが心配そうに母れいむを見やりながら言う。 「ゆぅ・・・ おちびちゃん、ひどいことされたから、げんきないんだね・・・ でもだいじょうぶだよ! ゆっくりしていれば、きっとげんきになれるからね! ここはゆっくりできるおうちだから、 おちびちゃんはえんりょしないで、ゆっくりしていってね!」 母れいむが赤まりさを元気づけるように言う。 「ゆ・・・」 赤まりさの反応は相も変わらず。 母れいむは嘆息を漏らすが、まだこんな小さな赤ちゃんが、 ひどい目に遭わされた上、家族まで失ったのだから仕方がない、 後は時間に任せるしかないと結論を出した。 「みゃみゃぁ♪れいみゅ、おにゃかしゅいたよ!」 暗い雰囲気を破るように、六女れいむが脳天気な声をあげた。 時間は既に夕方近い。 朝ごはん以来、何も食べていない子供達は既に空腹であった。 「ゆっ!そうだね!ごはんさんにしようね!」 母れいむも、自分達が沈んだ気持ちでいては、 この赤ちゃんをゆっくりさせてあげることなんてできない、 みんなで楽しいごはんにしようと、気持ちを切り替える。 そこで、人間から貰った、とてもゆっくりできるごはんの事を思い出した。 「ゆゆっ!ゆっくりおもいだしたよ! おちびちゃんたち!きょうはとってもおいしいごはんさんがあるよ! おねえちゃんたちは、おかあさんをてつだってね!」 「ゆゆぅ~!?おいちいごはんしゃん!?」 「ゆわーい!ゆわーい!」 嬉しそうにピョコピョコ飛び跳ねる赤ゆっくり達の歓声を受けながら、 母れいむと子ゆっくり達は、人間が巣の前に置いていった 大量の食料の山を巣の中に運び入れる、 「ゆぅ~!!!すごいごちそうなんだじぇ~!?」 「とってもあまそうな、あまあまさんもあるよ!?」 「ゆっ!すっごくゆっくりできるごはんさんだね!!」 お姉ちゃんゆっくり達も、今まで見たことのない大ご馳走に、 興奮してポヨンポヨンと飛び跳ねる。 「こっちのごはんさんは、ふゆごもりのときのおたのしみだよ! きょうはくだものさんとおやさいさんをたべようね! とってもおいしくて、ゆっくりできるよ! でざーとにあまあまさんもあるよ!」 「「「「「「ゆゆ~ん♪」」」」」」 そうして、楽しそうな一家の食事が始まった。 「うっめ!?これめっちゃうっめ!?」 「ゆゆぅん♪このくだものさん、すっごくおいしいよぉ!」 「おにぇちゃん!おやさいしゃん、おいちぃにぇ!!」 「「「むーしゃむーしゃ、しあわせぇ~♪」」」 ガツガツ、もっもっ、と餌を食い散らかしてゆく、ゆっくり達。 そんなとき、ふと五女赤れいむが、一匹佇んでいる赤まりさに気づく。 「ゆぅ・・・おかあしゃん、あにょこはちゃべないの・・・?」 「ゆっ・・・おちびちゃんはおくちをけがしちゃって、 ごはんがたべられなくなっちゃたんだよ・・・」 「ゆぇぇぇん! ごはんしゃんたべりゃれなかっちゃら、ゆっきゅりできにゃいよ~!」 それを聞いた末っ子の赤れいむが泣き出してしまう。 「・・・・・・・・」 そのやり取りを黙って見ていた三女まりさが、 今から食べようとしていた餡子を口に頬張ると、 赤まりさの目の前までビョンビョンと跳ねて来た。 そして、ベッと餡子を吐き出す。 「ゆっ!ごはんさんをたべないと、 まりさみたく おおきくなれないのぜ! むりしてでも たべたほうがいいんだぜ!」 そして、母ゆっくりが子ゆっくりにしてやるように、 少量の餡子を自分の舌に乗せると、 キョトンとしている赤まりさの口の前に差し出した。 先程の汚名返上のつもりなのだろうか。 だが、子まりさは、そこで初めて、 赤まりさは餌を食べるべきお口を閉じているのではなく、 そもそも、お口がついてない、ということに気づく。 その部分には、呼吸のための空気穴が幾つか開けられているのだが、 針で開けた細い穴なので、ゆっくり達はそれに気づかなかったし、 どのみち食物摂取の役に立つものではない。 「ゆ?ゆぅっ・・・?!おぐぢがぁ・・・!? ゆぎぃぃ!?どうじでごんなひどいごとするんだじぇぇぇ!?」 三女まりさはガクガクと震えながら驚愕の声を上げた後、 赤まりさの境遇に我が事のように涙を流し、 じだじだと体をぐねらせる。 「ゆ・・・まりしゃは・・・だいじょうぶぢゃよ・・・ おにゃきゃ・・・しゅいてないよ・・・」 実際、赤まりさは、濃縮オレンジジュースによって 十分過ぎる程の栄養を与えられているので空腹感は無かった。 それでも普通のゆっくりであれば、 他のゆっくり達が美味しそうにごはんを食べている光景を見れば、 おのずと食欲が沸いてくるものである。 しかし、虐待を受け、家族から化け物呼ばわりされて 生きる気力を失っている今の赤まりさは、 ゆっくりできる美味しいごはんすらも、 何ら魅力的には感じなかったのである。 「ゆぅぅ!だっだらまりざも、おながずいでないんだじぇ! あまあまはいらないんだじぇぇ!!」」 三女まりさは、そう言いながら、体を使って地面の餡子を脇に押しやる。 だが、時折視線が餡子の方を彷徨い口の端から涎が垂れているのが未練である。 「ゆぅ・・・ゆっきゅり、あみゃあみゃさんをたべちぇにぇ。 しょのほうが、まりしゃはうれちいよ?・・・まりしゃおにぇしゃん。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆ・・・ゆ゛え゛ぇ゛ぇぇん! ゆっぐりいだだぐんだじぇぇ!! むーじゃ、むーじゃ・・・じ、じあわぜぇぇ!!」 しあわせぇと叫びながらも、 ボロボロと涙を零し、むせび泣きながら餡子を貪り喰らう三女子まりさ。 この子まりさは、同世代の子ゆっくり達の中では一番の年下。 妹の赤ゆっくり達は全てれいむ種。 そんな中で、初めてできた、同じまりさ種の"妹"。 初対面では、あんな意地悪な事を言ってしまったが、 内心ではそのことが嬉しくて嬉しくて仕方なかったのだ。 だから、お姉さんらしい所を見せようとして頑張ったのだが、 逆に"妹"に気を使われてしまった事への悔しさと、 『おにぇしゃん』と呼ばれた事への嬉しさ。 それらが綯い交ぜになっての涙だった。 「おにぇちゃん、なきゃないでにぇ!」 「ゆぅぅぅ!みんにゃでいっしょに、たべよーにぇ!」 赤れいむ達が、まりさ姉妹の元に跳ね寄ってくる。 それを見て、姉の子まりさと子れいむも、 美味しい餡子さんを口に咥えて、集まってくる。 母れいむは、そんな子供達の姿を微笑ましそうに眺めている。 その中心にいながら、赤まりさの心は、 いまだ辛い記憶に暗く沈んだままだったが、 虐待を受けた疲れからか、残っていた睡眠薬の影響からか、 ウトウトと船を漕ぎ始め、いつしか、安らかな眠りに落ちていった・・・ -------------------------------- それから三日後。 赤まりさが新しい家族の元に来てから四日目の日。 「ゆぅぅ~!?まりしゃ、しゅご~い!!」 ゴムボールの弾力でボヨンボヨンと高く跳ねる赤まりさを見上げながら、 四女赤れいむが感嘆の声を上げる。 「おちびのくせに、なかなかやるんだぜ!」 三女子まりさが、負けじとポヨンポヨンと跳ね上がる。 「ゆゅん♪」 他のゆっくり達に較べると、まだ少し元気が無いが、 それでも楽しげな声を上げる赤まりさ。 あの日以来、小雨が降り続き、一家は一歩も外に出ることなく、 巣である洞穴の中で過ごしていた。 外には出られなくても、美味しいごはんは食べきれないくらいある。 また、一家が巣にしている洞穴は広いので、 子ゆっくり達が一緒に遊べるだけの空間もある。 もっと広いお外で、のびのびと遊べないのは残念ではあるが、 それでも一家はゆっくりとしていた。 母れいむ一家の赤ゆっくりよりも、僅かに年下の赤まりさは、 皆の妹分として、姉妹達からも可愛がられた。 そんな、ゆっくりとした優しい"家族"に囲まれていた事と、 都合の悪い記憶、辛い記憶はすぐに忘れ去ろうとする ゆっくりの自己防衛本能故に、暗く沈んだ赤まりさの心も、 少しずつではあるが、元の明るさを取り戻していった。 凍てついていた氷が溶け出すように、ゆっくりと。 そして今日、三日ぶりに雨が上がり、 一家は森の中の空き地まで遊びにやってきて、 厳しい冬が始まる前の、柔らかな陽の光を存分に楽しんでいた。 「ゆっ!もういっかい、いくよ!」 次女子れいむが、赤まりさを留めている鎖を口で咥えると、 ピョーン!と空に向かって放り投げる。 「ゆぅ♪まりしゃ、とりしゃんみちゃい♪」 ボヨ~ン、ボヨ~ンと高く飛び跳ねる赤まりさ。 何回目かの着地点に、尖った小石が落ちていた。 「ゆぴゃっ!?」 尖った石に当たったことで、赤まりさがあらぬ方向に飛んで行く。 「ゆぇぇん!まりしゃぁ!?だいじょうびゅ~!?」 赤まりさを追いかけ、涙目で跳ねてゆくのは、五女赤れいむ。 「ゆ・・・だいじょうびゅ!びっきゅりしちゃっただけぢゃよ!」 赤まりさは、何事もなかったように返事をする。 全身をゴムで包まれているので、 小石に当たったくらいでは、何のダメージも無いのだ。 「ゆぅ~・・・ぺーりょぺーりょ、すりゅよ!」 それでも心配して、赤れいむが赤まりさの底部を舐める。 赤まりさは、赤ゆっくり達の中では、 この五女赤れいむと一番仲が良くなっていた。 本当の姉妹の中で一番仲の良かった赤れいむと どこか雰囲気が似ている事もその一因だった。 そして、赤れいむの方も赤まりさが大好きだった。 「ゆ~ん・・・?」 ぺーろぺーろをしていた赤れいむが不意に疑問の声をあげる。 赤まりさの底部のぺーろぺーろをした箇所が 饅頭皮の肌色から、黒色へと変化したからである。 しばらく、その黒い物を見つめていたが、 赤れいむにはそれが何かはわからない。 そうこうする内に、 「ゆ!つぎはおしくらゆっくりをやろうね! おしくらゆっくりす~るも~の♪こ~の■■■■と~まれ♪」 長女まりさの呼びかけに、五女赤れいむもすっかりそちらに気を取られる。 「やりょうね~♪」 「おちびもやるんだぜ!とってもたのしいのぜ!」 「ゆぅ♪まりしゃもやりゅよ♪」 三女子まりさに引っ張られ、赤まりさが嬉しそうに声を上げる。 「ゆぅぅぅ!みんなとってもゆっくりしてるね! おかあさんもゆっくりできるよ!」 母れいむは、鎖に繋がれて遠くまで離れられない赤まりさを中心に 仲良く遊ぶ子供達の姿に、顔を綻ばせていた。 -------------------------------- 「ゆぅ・・・ゆぴぃ・・・・」 「だじぇ・・・・」 「すーやすーや・・・すーやすーや・・・ちあわせぇ・・・」 遊び疲れた子供達は、母れいむに寄り添って、しばしのお昼寝タイム。 穏やかな子供の寝顔をみつめる母れいむ。 ふと、視線に気づく。 「ゆ?どうしたの、おちびちゃん?おねむじゃないの?」 自分を見上げていた赤まりさに声をかける。 「ゆ・・・・・・」 赤まりさは、何かを言いたそうに、もじもじとしている。 「ゆぅ・・・?どうしたのかな?」 「あ、あにょね・・・・おばちゃん・・・」 いい淀む、赤まりさ。 どうしよう。断られたらどうしよう。 そんな思いに餡子胸をドキドキと高鳴らせて。 母れいむは、優しい笑顔を浮かべて、ただ黙っている。 「まりしゃね・・・まりしゃ・・・おばちゃんのこと・・・・・・ おかあしゃん・・・って・・・よんでみょいい・・・・・・?」 ウルウルと瞳を潤ませながら、 赤まりさがやっとの思いで言葉を絞り出す。 「ゆゆっ!?もちろんだよ!おちびちゃん! おちびちゃんも、れいむのかわいいあかちゃんだよ!!」 母れいむが満面の笑みを浮かべて答える。 「ゆぅぅぅ・・・おかあ・・・しゃん・・・おかあしゃん!おかあしゃぁん!」 泣きながら、母れいむの事を何度もお母さんと呼ぶ、赤まりさ。 「ゆぅ・・・さびしかったんだね、おちびちゃん。だいじょうぶだよ。 これからは、おかあさんがずっとおちびちゃんのそばにいるからね!」 母れいむも目に涙を浮かべながら、赤まりさの固い体にすーりすーりをする。 ガサリ 不意に離れた木陰で物音がした。 子供を守ろうとする本能から、まず、母れいむが咄嗟にそちらに視線を移す。 遅れて赤まりさが。 木の陰から一人の人間が笑顔でこちらを覗いていた。 だが、ゆっくり達の視線がこちらを向いたことに気づき、すぐに身を隠す。 (ゆ・・・?あのときのおにいさん・・・?) 母れいむは、その顔に見覚えがあった。 他ならぬ、この赤まりさを母れいむに預けた、あの人間だ。 (おちびちゃんがしんぱいでみにきたんだね・・・) 「ゆっ!おにいさん!こっちに・・・」 赤ちゃんはとってもゆっくりできてるから心配ないよと伝えよう、 それから子供達にも美味しいごはんのお礼をさせよう、 そう思い、お兄さんに声をかけようとする母れいむ。 だが、その声が遮られる。 「ゆぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」 赤まりさが、耳をつんざくような絶叫を放った。 「ゆっ!?どうしたの!?おちびちゃん!?しっかりしてね!! どこかいたいの?!」 「ゆびぇぇぇぇぇぇぇ!!にんげん!!!にんげんしゃんがいりゅよぅ!!! ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!!やめちぇぇぇ!!!ゆぴゃぁぁぁっ!!! まりじゃに、ひぢょいこちょちないじぇぇ!!!!!!!!」 半狂乱になって泣き叫ぶ赤まりさ。 赤まりさの叫び声に、姉妹達も次々に眠りから醒め、 尋常ならざる赤まりさの声に、何事かと心配そうに様子を伺っている。 「ゆゆっ!?ちがうよ!おちびちゃん! あのにんげんさんは、いいにんげんさんだよ! おちびちゃんのことたすけてくれた、やさしいおにいさんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 この赤ちゃんは、人間の顔が区別できないのだろう。 自分を虐めた悪い人間も、あの優しい人間も、 みんな同じに見えるに違いない。 そう理解した母れいむは、必死に赤まりさを宥めようとする。 それに、赤ちゃんの命の恩人であり、美味しいごはんの恩人でもある お兄さんに聞かれたら気を悪くさせてしまう。 まりしゃのおかあしゃんは何を言っているのだろう。 あの人間さんが、良い人間さん?優しいお兄さん? 違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。 そんな筈はない。だって、まりしゃは忘れていない。 絶対に忘れられない。あの人間さんの笑顔。 まりしゃの本当の姉妹達と、本当のお父さんとお母さん達を、 とってもとってもゆっくりできないひどい目に遭わせたあの笑顔。 あの怖い怖い怖い怖い怖い怖い笑顔。 「ゆ゛え゛ぇぇぇぇん!!!ぢぎゃうにょぉぉぉぉ!!!! ぎょわいにんげんざんにゃにょょぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「ゆぅぅ・・・・おちびちゃん・・・・」 赤まりさは、必死になって母れいむに訴えかけるが、 必死になればなるほど、恐怖だけが先に立ち、言葉は伝わらない。 どうしよう、どうしよう、どうしよう。 このままでは、まりしゃだけではなく、 優しいお母さんと、お姉ちゃん達まで、あの怖い人間に・・・! 「ゆっぐ・・・!!にげぇぇ!!にげちぇぇぇぇ!!! にんげんざんがぎゅるよぉぉぉ!!!!!」 「ゆっ!!おちびをいじめた、わるいにんげんがくるのかだぜ!! そんなやつ、まりさがひとひねりにしてやるんだぜ!!!」 漠然と状況を把握した三女まりさがいきりたつ。 「「ゆっくりできないにんげんは、おねえちゃんたちがゆるさないよ!!」」 長女まりさと、次女れいむも、赤まりさを囲むようにして、 どこにいるかもわからない敵に向かって、 ぷっくぅぅぅ!と全力で威嚇をする。 「ゆすん・・・おにぇちゃん・・・!」 やっと自分の話を理解してくれる相手が現れたと、希望に目を輝かす赤まりさ。 「ち、ちがうよ!れいむのおちびちゃんたち! ちゃんとれいむのおはなしきいてね!?きいてね!? どぼじでぎいでぐれないのぉぉぉぉ!?!?」 子供達が更に事態をややこしくしようとしていると感じ、 ほとほと困り果てる母れいむ。 無論、この場合、判断を誤っているのは、母れいむただ一匹なのだが、 そんな事には気づく筈もない。 その時だった。 ポツ・・・・・・ポツ・・・ポツ、ポツ、ポツ、ザー・・・ この季節の天気は移ろいやすい。 ゆっくり達が賑やかにゆんゆん騒いでいる間に、 いつの間にやら空が掻き曇り、あっと言う間に大粒の雨が降り出した。 「「「「あめさんだぁぁ!?」」」」 赤まりさ以外、今までのドタバタの事も忘れ、 空を仰いで恐怖の叫びを上げるゆっくり一家。 「ゆっ!?やめてね!?あめさんはゆっくりできないよ!!」 「あめさんは、ゆっくりふらないでね!ふらないでね! かわいいれいむがゆっくりできないよ! どぉぉじで、あめざんふるのぉぉぉぉ!?」 「やめちぇね!れーみゅとけちゃくないよ!?」 「おちびちゃんたち!! ゆっくりしないで、おかあさんのおくちにかくれてね! いそいでおうちかえるよ!!」 母れいむが自力で動けない赤まりさを真っ先に口に咥えると、 他の子ゆっくり達を急かす。 「ゆぇ~ん!!みゃみゃ~!!」 「ゆっぐ!ゆっぐ!ゆっぐりできないんだじぇぇ!!」 わらわらと母れいむの口の中に逃げ込む子ゆっくり達。 全員が入ったのを確認すると、母れいむはボヨン!ボヨン!と 全速力で降りしきる雨の中を駆け出した。 隠れていた木の陰から出てきて、 母れいむの背中に向かってヒラヒラと手を振る、虐待お兄さん。 「あぶねぇ、あぶねぇ。気づかれるとは迂闊だった・・・ ま、間一髪セーフだな。これで"メッキ"が剥がれるだろう。 ああ・・・赤ゆ潰してぇなぁ・・・」 -------------------------------- どうしよう、どうしよう、どうしよう。 なんとかして、怖い人間のことをお母さん達に伝えなきゃ。 何と言ったら、わかってもらえるんだろうか。 とにかく、お家についたら、ゆっくり話を聞いてもらうしかない。 母れいむの口の中で、赤まりさはそれだけを考えていた。 本当は、今すぐにでも、傍にいるお姉ちゃん達に聞いてもらいたかったが、 当の姉ゆっくり達は、いまだ雨への恐怖にパニック状態。 赤ゆっくりの目から見ても、 まともに話を聞いてもらえる状態ではないことは一目瞭然だった。 「ゆひぃぃ・・・・ゆひぃぃ・・・・・・ お、おうちについたよ!おちびちゃんたち!ゆっくりでてきてね!」 頭の饅頭皮がふやけ、溶けかかりながらも、 辛うじて、巣に逃げ込むことができた母れいむ。 あんぐりと口を開けて、子ゆっくり達を外に出す。 幸いにして、母れいむの唾液で溶けることもなく、皆無事だったようだ。 「おちびちゃんもでてね!」 ベッ!と赤まりさを吐き出す。 「ゆっ!おかあしゃん!おにぇちゃん! まりしゃのおはなし、ゆっきゅりきいちぇね!!」 姉妹達と安堵の言葉を交わすのも惜しく、話し始めようとする赤まりさ。 だが、何か様子がおかしい。 自分を見るお姉ちゃん達の表情、そして、お母さんの表情。 何だろう。 どこかで見たことがある表情だ。 乏しい餡子脳をフル回転させて記憶を辿る。 そして、一つの記憶に辿り着く。 それと同時 「「「「「「「ゆぎゃあぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!? おばげだぁぁぁぁ!?!?!?!?」」」」」」」 それは恐怖の表情。 赤まりさの本当の親と本当の妹が、赤まりさに向けた最後の表情、 そのものだったのだ。 つづく
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「ゆぎゃあぁぁ!!ど、ど、ど、どおぉぉぉじで、 でいぶのおうぢにおばげざんがいるの゛ぉぉぉ!?!?」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆびぇぇぇん!!!おばけきょわいよぉぉぉぉ!!!!!」 「だじぇぇ・・・おばげぇ・・・ぎょわいぃぃぃぃぃ・・・・・・」 「おばけやぢゃやぢゃぁ!!みゃみゃぁぁぁぁ!!!!」 「ゆぴぃっ・・・ゆぴぷぺ・・・ゆぺぇ・・・!」 泣き叫ぶもの、腰?を抜かすもの、 チョロチョロとちーちーを漏らすもの、 半狂乱になりわけのわからぬ声を発するもの、 反応は様々だったが、彼らが抱いている感情はただ一つ、 純然たる恐怖であった。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!?!? ぢょうぢじぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? ぢょうぢじぇぇ、じょんなごちょゆうのぉぉぉぉぉ!? ぢょうぢじぇなにょぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」 自分を受け入れてくれた筈の、優しい家族の突然の豹変に、 赤まりさが餡子の底から絞り出すような絶叫を上げる。 だが、家族の反応は無理からぬものであった。 今の赤まりさは、 お口がなくて、 三つ編みがなくて、 おめめがへこんでるだけの ただの変テコなゆっくりではなかった。 黒い餡子の塊。 その中に浮かぶ、剥きだしの二つの眼球と、 剥きだしのピンク色の歯茎と白い歯。 まるで、理科室の人体模型の顔。 そこに黒いお帽子がちょこんと乗ってるだけの、 まさに『お化け』としかいいようのない、お顔をしていたのだから。 赤まりさの饅頭皮を剥いで作成したスケルトン赤まりさ。 虐待お兄さんは、そのスケルトン赤まりさを眠らせた後で、 更に幾つか追加の細工を施していた。 まずは、鎖を止める用のネジ穴の埋め込み、 呼吸用の空気穴の追加等、細々としたギミックの加工を少々。 次に、この細工の肝、 スケルトン赤まりさの餡子剥きだしの全身を包んでいる透明なゴムの層に、 饅頭皮と同じ肌色の塗料を塗りたくった。 目の部分だけにマスキングをして。 これにより、スケルトン赤まりさを"お化け"たらしめる不気味さが隠される。 最後の仕上げに、饅頭皮と一緒に剥いでしまった髪の毛の再生。 元の赤まりさの金髪は、赤まりさの眼前で饅頭皮と一緒に バラバラにしてしまっていたので、再利用は困難だった。 「ばりざの ぎれいな がみのげぇぇ・・・・・・」 だから、赤まりさの親である父まりさの金髪を根本から全て切り取り、 必要な分だけを赤ゆっくりの髪の長さに切り揃えた上で、 それを糊で無造作に頭部、お帽子の周りに貼り付けてあった。 お兄さんには、赤ゆっくりサイズの三つ編みを結わえる程の 器用さは無かったので、三つ編みは無し。 なお、赤まりさのために、大切な金髪を快く提供してくれた父まりさは、 後に、とても甘くて美味しいおはぎとして生まれ変わり、 お兄さんと、赤まりさの新しい家族の胃袋を満たしてくれた。 スケルトン赤まりさの体表に塗られた肌色の塗料は、 耐久性はそこそこだったが、耐水性は無いに等しかった。 それが、母ゆっくりの口の中に入れられ、たっぷりと唾液に濡れたことで、 塗装が全部剥がれてしまったのだ。 そして、髪の毛を貼り付けていた糊も同じように耐水性の無い素材。 かくして、ゆっくり達を恐怖のドン底に叩き落とす、 スケルトン赤まりさが彼らの目の前で誕生したのだった。 お兄さんにとって計算外、かつ、幸運だったことは、 三日間に渡り雨が降り続いたこと。 元々、お兄さんの心算では、 赤まりさを迎え入れた優しいゆっくり一家が、 翌日にでも森へ遊びに出て、 森の中の泉や水たまりで水遊びをしたり、 土で汚れて母れいむがぺーろぺーろしてくれるだろうと踏んでいた。 そこでスケルトン赤まりさの正体が暴露される。 それが、お兄さんの期待した阿鼻叫喚の筋書きだった。 だが、雨のため一家がお家から出られなかったことで、 水遊びもしなかったし、体が著しく汚れる事もなかったので、 ぺーろぺーろも無かった。 そのお陰で、三日間という猶予が与えられたことにより、 赤まりさと新しい家族との絆は強まり、赤まりさの心の傷も癒え始めていた。 お兄さんの希望を遙かに越えて。 嬉しい誤算という奴だろう。 -------------------------------- 「おかあ・・・しゃん・・・まりしゃは・・・まりしゃぢゃよ・・・ おびゃけじゃ・・・にゃい・・・よ・・・・・・・」 虐待お兄さんの予想と期待すらも越える絶望に苛まれ、 瞼が存在しないが故に開っきぱなしの瞳から、 あの日以来枯れ果てていた悲しみの涙が再び溢れ出す。 だが、それでも懸命に言葉を続ける。 今度は、今度こそは、とても優しい新しい家族達なら、 まりしゃの言葉を聞いてくれる。まりしゃを見てくれる。 その希望を捨て切れずに。 「ゆひぃぃぃぃぃぃ!!!?ごないでぇぇぇぇぇ!?!? おばげざんはででいっでね!!ででいっでねぇぇぇ!! ででいげぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」 だが、恐怖に半狂乱になっている母れいむに、 赤まりさの声は届いていない。 怖いお化けを追い払おうとしてか、それとも、逃れようとしてか、 ブルンブルンと体を震わせ始める。 その動きで、母れいむに繋がれていた鎖が引っ張られ、 スケルトン赤まりさがコロコロと転がる。 転がった先で、赤まりさのすぐ眼前、 1センチと離れていない場所にいた、五女赤れいむと目が合った。 一番仲良く遊んだ、一番一緒の時間を過ごした、赤れいむ。 「ゆ・・・れーみゅ・・・まりしゃぢゃよ・・・おびゃけじゃ・・・ 「ゆっびゃぁぁぁぁぁんっ!!!!!!ぎもいぃぃぃ!!!!! おもにおぎゃおがぎもいぃぃぃぃぃぃ!!!!」 返されたのは、赤まりさの、本当の妹のまりさと同じ反応。 そして、赤れいむは恐怖にガタガタ震えながらも、 夢中でお化けに体当たりをする。 ぽ~ん、ころころ・・・・ポフ 再び転がった先は、 洞穴の壁をよじ登って逃げようとでもするかのように、 ズリズリと壁を這っていた三女子まりさの元。 そのお尻に当たる。 「だじぇぇぇ・・・までぃざ、いいごにずるがらだじゅげでぇぇ・・・ゆ?」 お尻に触れられた感触に、涙を流したまま、 反射的に後ろを振り向く三女子まりさ。 「まりしゃおにぇちゃぁん・・・・・・」 時々ちょっと意地悪だけど、でも本当はとても優しいお姉ちゃん。 まりしゃのお口がないことを、まりしゃの替わりに泣いてくれた 優しい、大好きなお姉ちゃん。 泣くのはやめてね、と言うように、赤まりさは口を開けてニッコリと笑う。 剥きだしの歯茎を開いて。 「だじぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?!?」 飛び出さんばかりに目を見開き、絶叫を上げる子まりさ。 「だじぇぇぇ!!だじぇぇぇ!ぎょわいよぉぉぉ!みゃみゃあぁぁぁ!! ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 滝のように更に大量の涙を流しながら、 お化けから逃れようと、洞穴の壁をグイグイと押している。 まるで岩の壁に穴を掘って逃げようとでもしているかのように。 ジタジタと暴れ回る三女子まりさのお尻が スケルトン赤まりさを弾き飛ばす。 ぴゅ~ん・・・ぽす。 高く打ち上げられたスケルトン赤まりさは、今度は母れいむの頭上、 髪の上に着地した。 「ゆぎゃあぁぁぁ!ゆばばばばば・・・・・・・・」 視線を頭上の死角にいる筈のお化けに向けようとしながら、 餡子の泡を噴いてガクガクと震える母れいむ。 「ごっちごないでねぇぇぇぇぇ!!?」 ブルン!と頭を思いっきり、お家の外、洞穴の入り口に向けて振った。 ゆゆ~ん♪まりしゃ、とりしゃんみた~い♪ の言葉もないまま、ビュゥンと飛んで行く、スケルトン赤まりさ。 そして、当然のごとく、ピンと鎖が張り、 その体は元の場所に向かって引き戻される。 「ゆぴゃあぁぁぁぁぁっ!!!! どぉぉぉぉじで、おばげざん、もどっでぐるのぉぉぉぉ!?!?」 自分のすぐ目の前の地面に転がってきたお化けに向かって母れいむが叫ぶ。 そこで、お化けに繋がっている鎖が目に入った。 だが、恐怖に染まり、普段以上に回転の悪くなった餡子は、 それが何を意味しているのか、すぐに結論に達することができない。 その時。 「おがあざぁぁん!!!おぢびぢゃんがいないよぉぉぉ!!!」 長女子まりさの声が聞こえた。 子供達の中で一番賢い長女子まりさは、自身恐怖に怯えながらも、 可愛い妹達の安否を気遣っていたのである。 この子まりさは、将来きっと良いお母さんゆっくりになれることであろう。 その声に、親ゆっくりとしての理性を僅かながら取り戻した母れいむは、 いつお化けが襲いかかってくるかとビクビクしながらも、巣の中を見渡す。 いない。小さいおちびちゃんがいない。 おちびちゃん。鎖に繋がれたおちびちゃん。 鎖のついた・・・お化けさん・・・ 「ゆ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!?おぢびぢゃんがおばげざんなのおぉぉ!?」 ようやく結論に達する。 その言葉に、赤まりさは、何度目か知れぬ希望を抱く。 おかあしゃんは、まりしゃが、まりしゃだってわかってくれた。 やっぱり、おかあしゃんは違う。他のみんなとは違う。 「ゆ♪しょうぢゃよ・・・まりしゃぢゃよ・・・おかあしゃん・・・」 自力で動く事が決して叶わない体を、必死に動かして這い寄ろうと 無駄な努力をしながら、母れいむに呼びかける赤まりさ。 「ゆ゛・・・ゆ゛・・・・・・・・ゆ゛・・・・・・・・・・・」 そんな赤まりさを見ながら、真っ青になり、涙と汗をダクダクと流して、 ブルブルと震えている母れいむ。 スケルトン赤まりさに対する恐怖と、赤まりさに対する愛情が その内で鬩ぎ合っている。 「おかあしゃん・・・ずっと、まりしゃのしょばにいちぇね・・・」 少し前、母れいむ自身が赤まりさに向けて語った言葉。 その言葉が決め手となった。 「ゆ゛や゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!おばげどずっどいっじょじゃ、 ゆっぐじでぎないぃぃぃぃぃ!!」 ゆっくりと言う、極めて身の程知らずでありながら、 それでいて、極めて臆病な種。 その種としての本能が、遂に子への愛情に打ち勝った。 「ゆ・・・・・・どおち・・・ちぇぇ・・・・・・・・・?」 赤まりさは、もはや涙を流すことすら忘れ、 ずっといっしょにいてくれると言ってくれた筈の 母れいむを見上げるだけだった。 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!みないでねっ!れいむをみないでねっ! ごっぢみんなぁぁぁ!!!!!!!」 鎖で自分に繋がったスケルトン赤まりさを振り千切ろうとするかのように、 激しく体を跳ねさせ、鎖を振り回す母れいむ。 ボンッ!ボンッ!ボンッ! スケルトン赤まりさが、激しく岩肌に叩きつけられ、 ゴムの弾力によってバウンドする。 それなりのスピードで硬い面に叩きつけられているため、 ゴムに包まれている状態でも幾らかの衝撃は伝わり、 痛みを覚えている筈だが、赤まりさは何も声を発しない。 赤まりさの心の内を貫く痛みに較べれば、 そんなものは痛みの内に入らないからだ。 ボンッ!ベシャッ! 四度目のバウンドの後、 柔らかい音と共にスケルトン赤まりさの動きが止まった。 「ゆぅぅぅ・・・・?おかあしゃんが、はんぶんしか、いにゃいよ・・・ どうちて・・・・?」 それが五女の赤れいむの第一声だった。 赤れいむの視界の左半分は黒く染まり、何も写していない。 お母さんれいむも、いつものお家も、半分しか見えない。 もう半分は何か黒い物に隠れている。 半分しかいないお母さんは、れいむの事を見て、 大きなお口を真四角に開いている。 そんな事を考えていた赤れいむの体を、突如激痛が襲った。 「ゆ゛っ?ゆ゛っぎぇぇぇぇ!!!!!!い゛ぢゃいぃぃぃぃ!!!! い゛ぢゃいっ!!い゛ぢゃいっ!!ゆっぐ!い゛ぢゃいよぉぉ!!!!」 スケルトン赤まりさの衝突により、 その脆い体の左半分をグシャグシャに潰された赤れいむが、 痛みに悶絶し、潰れた切断面から、餡子をボトボトと落としてゆく。 そのすぐ横に転がる赤まりさ。 目の前の地面に広がっている物は、仲が良かった赤れいむの黒い餡子。 そして、その中にポツンと埋もれた、白く半透明な左目の眼球。 左半身を失った赤れいむは、バランスを崩してパタンと右側に倒れる。 「いぢゃい・・・・いぢゃいよぉぉ・・・・おきゃぁ・・・しゃん・・・・ れーみゅを・・・たしゅけちぇ・・・ゆっぎっ!・・・いぢゃいぃ・・・!」 横倒しになり、残った右目から涙を流し、 母れいむを見つめながら、しきりに助けを求める。 だが、母れいむは動かない。あまりのショックに動けない。 「いぢゃい・・・よぉ・・・れーみゅ・・・・いぢゃいの・・・やぢゃぁ・・・ れーみゅ・・・・・・もっちょ・・・・・・・ゆっ・・・・きゅり・・・・」 苦悶の表情を右半身に貼り付けたまま、舌をダラリと垂らして、 赤れいむは事切れた。 -------------------------------- 「・・・ゆ゛ぁっ・・・・ゆ゛ぁっ・・・・・・・ゆ゛ぁああぁぁぁっ!? でいぶのあがぢゃんがぁぁぁぁぁっっ!?」 ようやく思考を再開し、母れいむが絶叫を漏らす。 だが、時既に遅し。 もっとも、赤れいむの傷はどう考えても致命傷で、 始めから手の施しようなどなかったのだから、結果は変わらないのだが。 「ゆ゛・・・・・ゆ゛ぎぃぃぃぃぃっ!!!!!」 子を失った怒りが、怖いお化けに対する恐怖を上回った。 怒りの声を上げ、鎖を引く。 赤まりさが、母れいむの足下まで転がる。 仰向けの形で転がった赤まりさが、母れいむの憎しみに満ちた顔を見上げる。 「おかあ・・・・・しゃん・・・・・・・」 諦めずに、諦め切れずに呼びかける。 その視界を饅頭皮が覆った。 「じねぇ!!でいぶのあがぢゃんをごろじだばげものは、 ゆっぐりじないで、ざっざどじねぇぇぇ!!!!」 母れいむが、渾身の力を込めてスケルトン赤まりさを踏み潰す。 ボスン!ボスン!ボスン!ボスン!!ボスン!!! 何度も何度も、恐怖をも憎しみに変えて。 だが、強靱なゴムでできた赤まりさの体には、 ほとんど肉体的ダメージを与えられないでいた。 重量こそ、それなりにある成体ゆっくり。 それで潰されれば、負荷もそれなりにかかる。 だが、ゆっくりの饅頭皮は、ゴムの固さに較べ、あまりに柔らかい。 赤まりさを潰そうとする圧力は、そのまま反作用として、 母れいむの饅頭皮にも作用する。 結果、潰れるのは、ゴムで包まれた赤まりさではなく、 母れいむの柔らかい饅頭皮だけである。 言うなれば、凍らせていないバナナで釘を打つようなものだ。 そんな事にすら気づかず、踏み潰しを続ける母れいむ。 その底部の皮はあちこち潰れて、餡子が滲み出しそうになっている。 そして、何度目かのストンピング。 「ゆぎゃぁっ!!い゛だいぃぃぃ~っ!!!」 叫びと共に、突然、母れいむが赤まりさの上から飛び退き、 涙を流しながら、地面をゴロゴロとのたうち回る。 その底部の一カ所が裂けて、餡子が漏れだしている。 固い物を踏み潰し続けて摩耗したからではない。 何か鋭利な物で刺されたかのような傷だった。 母まりさが飛び退いた時の反動で、 コロコロと洞穴の壁際まで転がる赤まりさ。 その黒い帽子は、押しつぶされひしゃげていたが、 その帽子を突き破るようにして、銀色に輝く木ネジがそそり立っていた。 そのネジの溝に、黒い餡子が詰まっている。 お兄さんの手により、スケルトン赤まりさの再加工時に加えられた 四十八のギミックの十二番「対踏み潰し用対空ネジ」。 赤まりさが、何度かの踏み潰しを受ける内に少しずつ転がり、 たまたま、直立した姿勢になったタイミングで母れいむがのしかかった時に、 そのギミックが効果を発揮したのだ。 虐待お兄さんは、こういった地味な嫌がらせも決しておろそかにはしない。 「ゆひぃぃぃぃぃ・・・・?!やめでぇぇぇ・・・!! でいぶにいだいごどじないでぇぇぇ?!」 傷をつけられた事で、今度は恐怖が怒りを上回り、 自力で動くことはできない赤まりさに対して怯え出す母れいむ。 -------------------------------- 「れいむのいもうどと、おがあざんにひどいこどずるおばけは、 ゆっぐりじねぇぇぇぇ!!!!!!」 そんな赤まりさ達からは離れた、洞穴の入り口付近から聞こえて来た声。 そこには、長女子まりさがいた。 子まりさは、恐怖にブルブルと震えながら、 帽子からまりさ種がいつも持ち歩いている"枝"を取り出し、 口に咥えると、中段の構えを取った。 「ゆぅぅ・・・ゆぅぅ・・・・・・・」 ブルブルと体を震わせ、ジトリと汗を垂らしながら、赤まりさを睨む。 不意にその震えが、ピタリと止まった。 「ゆぅぅぅぅぅぅっ!!」 気合いの声と共に、赤まりさに向かって一直線、 渾身の力でビョンビョン跳ねて向かってゆく長女子まりさ。 それは、子まりさがまだ赤ゆっくりだった頃、まりさお父さんが、 一家に襲いかかってきたれみりゃを撃退した時に見せてくれた、 ゆっ殺の刺突技『ゆとつ』。 怒りに目を血走らせ、自分に向かって突っ込んでくる 大きいお姉ちゃんを赤まりさは黙って見ていた。 最初にここに来た日、 まりしゃに意地悪を言った小さいまりさお姉ちゃんを叱ってくれた、 しっかりもので、優しい、大きいまりさお姉ちゃん。 既に赤まりさの眼前にまで迫った、お姉ちゃんの目に浮かぶ色は、 恐怖と怒りと憎しみだけ。 その光景に赤まりさは一つの終末を予見した。 しゃようなら。 赤まりさは、言葉に出さずに、そう呟き、 クス と小さく笑った。 「ゆ゛ね゛ぇぇぇぇ!!!(じねぇぇぇぇぇ!!!)」 天賦の才か、はたまた、偶然の産物か、 長女子まりさが見よう見まね放った突進突きは、 最良の角度、タイミングで、赤まりさの真芯を捕らえた。 そして、十分な助走により、 足りないパワーを補うだけのスピードも得られていた。 それは、成体ゆっくりにですら、致命傷を与えられる程の、 渾身の一撃であった。 無論、普通のゆっくりに、なら。 ズブリ 柔らかいモノを貫く、鈍い音が辺りに響いた。 「ゆ゛ふーっ!ゆ゛ふーっ!」 極度の興奮状態で、荒く息をしている長女子まりさ。 完璧な手応えだった。 子まりさのすぐ目の前は壁。 その壁と子まりさの間には、子まりさの枝に"突き刺され"、 壁に押しつけられた、あのお化けがいた。 やった。やったよ。おとうさん。まりさやったよ。 スッと後ろに下がる。コロコロとお化けの亡骸が転がる。 その事に違和感を感じた。 どうして、えださんが、ささってないの? 「・・・・・・・がぁぁぁ!?」 「・・・・・・・ぁぁぁん!!!」 「・・・・・・・じぇぇぇぇ!?」 騒がしい声に後ろを振り返る。 苦悶の表情で涙を流しているお母さんと妹達。 もうだいじょうぶだよ。まりさ、おばけをやっつけたよ。 そう応えようとする。 「ゆ゛・・・・?」 今度は自分の体に違和感を感じる。 興奮が醒めるのと共に急速にゆどれなりんが消失し、 失っていた感覚が戻ってくる。 「ゆ゛ぼっ!?」 餡子を吐き出す。 あれ・・・?なんだか・・・まりさの・・・ 「ど、どどがびだびぼ・・・?」 (の、のどがいたいよ・・・?) ズキン、ズキンと痛みが強くなってくる。 喉の痛みが。餡子の痛みが。 母れいむに向かって、ズリ・・・と一歩這おうとする。 途端に、痛みが倍増した。 「ゆ゛ばっ!!ゆ゛ぼぉっ!!」 叫びと共に、更に餡子を吐く。 痛みの原因がどこにあるのかを探ろうと、 キョロキョロと四方八方に視線を彷徨わせる。 「ゆ゛!?」 そして見つけたのものは、自分の口の中から、 にょっきりと生えた、まりさの"枝"。 「ぼ、ぼぼびべ・・・ばびばぼぼぶびび・・・べばばんばばばっでぶぼぉ・・・」 (ど、どおじで・・・まりざのおくちに・・・えださんがささってるのぉ・・・) 壁際にいた赤まりさ。 その真正面から、突き入れられた子まりさの枝。 背後を壁で塞がれ、力を逃がす先を失った赤まりさの体は、 体を刺し貫こうとする力の全てを受け止め、 赤まりさのゴムの体はグググ・・とひしゃげた。 そして、次の瞬間、ゴムの反発力がその力の全てを、 180度反転させて、元来た方向に向かって弾き返す。 子まりさが咥えていた枝は、食い縛る子まりさの歯を滑り、 子まりさの喉から背中にかけてを貫き通した。 「び、びばびぃ・・・びばびぼ・・・・ぼべぼっべぇ・・・ぼばばば・・・」 (い、いたいぃ・・・いたいよ・・・・これとってぇ・・・おかあさん・・・) 喉を塞がれ、まともに発音することもままならず、 それでも、ずーりずーりと這いながら涙ながらに母れいむに助けを求める。 一歩這う度に、口の端と、枝が突き出た背中から餡子がボトボトと落ちる。 「ぶべべ・・・・ぶっぶび・・・べびばい゛・・・ びばびぼぉぉ・・・ゆ゛ぼぉっ!!」 (ぬけてね! ゆっくりできない、えださんは、まりさのおくちからぬけてね! あと、まりさにおいしいごはんさんをちょうだいね!! どおぉぉぉじで、ぬ゛げでぐれないのぉぉぉぉ!?) 「ばでぃざおねぃぢゃぁぁぁん!!!!」 更に餡子を吐いた姉に向かって、次女子れいむが泣きながら駆け寄った。 「まっででぇ!れいぶがだずげるよ!れいぶがだずげるよぉ!!」 そうして、子まりさの口から突き出してる側の枝を咥えると、 力まかせに引き抜いた。 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁっ!?!?だめぇぇぇ!!!」 「ゆぼぼぉっ!?」 バシャッ 母れいむの制止はあまりにも遅かった。 体内を貫通する枝を無理矢理引き抜かれ、 硬い節が子まりさの体内の餡子を引っかき回した。 激痛に一気に吐き出された餡子が、正面にいた子れいむに浴びせられた。 「ゆ・・・・・・・・?おねい・・・・・ちゃん・・・・・・・・?」 餡子に黒く染まった視界で、姉である子まりさを見つめる子れいむ。 「ゆげっ!!ゆがぁぁぁ!!いだい・・・ゆぼっっ!!ゆぎぃ! ゆぐ、ゆっぎぎぎ・・・ゆぼっ!!ゆげぇっ!!いだ・・・ゆぼっ!!」 子まりさは、ヒン曲がったバナナのように、 グネリグネリと体を曲げてのたうち回る。、 傷口を塞ぐ形になっていた枝がなくなった今、 その口から餡子の嘔吐と、悲鳴の流出を止めるものは何も無い。 その動きに合わせ、大きく開いてしまった背中の傷口からも餡子が飛び散る。 「ゆ゛・・・・?ゆ゛・・・・?ゆ゛・・・・・・・?」 次々に姉の餡子を全身に浴びせかけられながら、 子れいむが呆然と立ち尽くす。 「ゆ゛ぅぅぅぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!!」 延々と続く子れいむの絶叫が響く洞穴の中で、 子まりさの体は、やがて、ビクビクと痙攣するだけになり、 それもやがて完全に停止した。 -------------------------------- 「ばりざのおねえぢゃんがぁぁぁぁぁ!?」 「「おにぇぢゃんがぁぁぁぁぁ!?」」 ゆっゆっと呟きながら、姉だったモノを見下ろして 呆然と立ち尽くしたままの子れいむ。 彼女以外の子供達が泣き声を上げている。 「ゆ゛ぅぅぅぅぅ!! ごどもがぁぁ!!でいぶのがばいいごどもがぁぁぁ!!!」 母れいむも、ゆっくりできない凄惨な死を迎えた子供に向かって泣き叫ぶ。 その耳に 「くしゅ」 という小さな笑い声が届いた。 呆然とした表情で声のした方向に目を向ける。 そこでは、あの怖いお化けが、母れいむを見つめていた。 「ちんじゃったにぇ」 「・・・・・・・・・ゆ・・・・・・・・・・・・・ ゆ゛びゃぁぁぁ!!ゆ゛ぎぃや゛ぁぁぁっ!!おばげはじねぇぇ!! ごごがらででいげぇぇ!!! でいぶのおぢびぢゃんだぢをがえぜぇぇぇ!!!」 目を血走らせ、体をグネグネと曲げ、ボヨンボヨンと飛び跳ね、 半狂乱になって自分のリボンに繋がっている赤まりさを 無我夢中でブンブンと振り回す。 赤まりさの体は洞穴の壁に何度もブチ当たり、あちこちを高速で飛び跳ねる。 チッ! 「!?だじぇぇぇぇぇぇ!?!?」 頬を掠めた赤まりさの体に、三女子まりさが腰を抜かして、悲鳴を上げる。 「ゆぴゃぁぁぁぁ!?」 すぐ目の前に着地し、前髪を掠めて飛んでいった赤まりさに、 四女赤れいむがチョロチョロとちーちーを漏らす。 「やめちぇね!みゃみゃやめちぇにぇぇ!! ゆやぁぁ!!ゆっきゅりできにゃいぃぃぃ!?」 六女赤れいむの呼びかけもまったく耳に入らず、暴れ続ける母れいむ。 そんな事をしばらく繰り返し、 母れいむが一際高くジャンプした時にそれは起きた。 ジャララ・・・ お家の天井から突き出している太い木の根、 そこに、赤まりさを繋ぐ鎖がグルグルと絡みついたのだった。 「ゆぐっ!?」 ガクン!と、やって来た衝撃に、母れいむが呻き声を上げる。 母れいむの体は、しっかりと木の根に絡みついた鎖によって 宙吊りにされた状態になっていた。 「ゆあっ!?お、おろしてね!れいむをおろしてね!!」 地面を見下ろしながら、そんな事を言うが、 れいむの願いを叶えられる者はここにはいない。 やがて、 ビリ・・・ という音がれいむの頭上から聞こえる。 「ゆ!?・・・ゆぁぁぁぁ!?やめでねぇ! れいむのおりぼんがやぶれぢゃうぅぅぅぅ!!!」 鎖はれいむの赤いリボンにクリップで留められている。 成体のゆっくりの重量を支えるには、 あまりに脆すぎるその布から負荷に耐えきれなくなってゆく。 「やぶれないでぇぇ!おりぼんやぶれだら、ゆっぐじでぎなぃぃぃ!!!」 飾りを失ったり、欠損させたゆっくりは、 仲間のゆっくりから差別され、爪弾きにされる。 そんな様子を何度も見てきたれいむは、ジダバタと暴れるが、 当然ながら、その行為は全くの逆効果だ。 ビリ・・・ビリリリ・・・ビリィッ!! 「ゆ゛ぁぁぁ!!でいぶの おりぼんがぁぁぁ!?」 無情にも赤いリボンの羽根の部分が引き裂かれる。 支えを失ったことで、ガクン!と更にれいむの体が落下する。 だが、まだ地面には着かない。 わずか1センチ程であるが、宙に浮いたままだ。 お兄さんが、リボンが切れた場合の予備として、 母れいむの左右のもみあげに結んでおいた釣り糸によって、 もみあげごと釣り下げられた状態になっていた。 「ゆびぃぃ!?いだいいだいいだいぃ!! れいむの ぎゅうとな もみあげさんがぬげぢゃうぅぅぅぅ!?」 まだ母れいむのピンチは終わってはいない。 リボンが破れた上に、きゅーとな(笑)もみあげまで抜けた日には、 仲間のゆっくり達からどんな仕打ちを受けることか。 流石に、リボンの時の教訓から、無闇に暴れるような事はしないが、 どのみち、自力脱出は不可能、 助けが来ることも期待できないこの状況下では、 結果が出るまでの時間が長いか短いかの違いしかない。 1.重量に耐えかねて鎖が切れる。 2.もみあげに結ばれていた釣り糸が切れる、または、すっぽ抜ける。 3.れいむのもみあげが、根本からブチブチィッ♪と 気持ちの良い音を立てて抜ける。 通常であれば、 そのいずれかの結果で終わったであろう。 だが、今のれいむの頭皮は、雨に濡れたことでフニャフニャにふやけており、 他の何よりも強度的に弱っていた。 ベリィッ! ボスッ 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!」 ほぼ同時に、左右のもみあげが、その根本の頭皮ごと抜け、 母れいむは地面に着地した。 「ゆ゛ぎぎぎ・・・・・ゆぅぅ・・・?」 頭部の皮が剥がれた痛みに呻き声を上げ、頭上を見上げる母れいむ。 そこにぶら下がるのは、赤いおリボンの破片と、 れいむのきゅーとなもみあげと、その根本に生えた饅頭皮。 「れ、れいむの・・・もみあげざんがぁ・・・・ ゆぎっ!あ、あ、あんござんがぁぁっ! あんござんでていがないでっ!れいむゆっぐりでぎなぐなるよ!」 頭上を見上げる動きによって、 穴の開いた頭部から、ボロボロと餡子がこぼれ落ちる。 もみあげの根本の皮は、直径10センチほどの大きさで破けている。 これでは、少し這っただけでも、大事な餡子をこぼしてしまう。 「ゆぅぅぅ・・・・・・!」 「「ゆぇぇぇぇん!!おきゃーしゃんがぁぁぁ!!!」」 「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・おきゃあしゃん・・・・」 「ゆ・・・・・・ゆ・・・・・・・・」 母れいむが一度に多くの物を失ったショックにさめざめと泣く。 二匹の赤れいむが、母親の無惨な姿にゆんゆんと泣き声を上げる。 三女の子まりさも、赤ん坊と同じように泣いている。 次女の子れいむは、先程からあらぬ方向を見つめたまま。 その姿を、宙に吊り下げられたままの赤まりさがじっと見つめていた。 -------------------------------- 夕方 「きょわいよぉぉ・・・きょわいよぉぉ・・・・・・」 「ゆぇぇん!ゆぇぇん!みゃみゃぁ!きょわいのどっかやっちぇ~!」 「だじぇぇぇぇ・・・・こっちみないでなんだじぇぇぇ・・・」 子供達は、巣の中心から宙に吊り下げられたスケルトン赤まりさから 少しでも逃れようと、洞穴の隅でブルブルと震えていた。 「だずけでぇぇ・・・おねいぢゃぁん・・・・」 次女子れいむも、呆然自失状態から、少し落ち着きを取り戻し、 今は姉妹達と一緒に怯えている。 母れいむ一匹だけは、まともに動くことができないため、 目の前にぶら下がる赤まりさを見ないようにしながら、 ブルブルと震えている。 本当なら、皆、このゆっくりできない巣から逃げ出したい所だが、 外はいまだ雨。水に弱いゆっくりにとって、それは自殺行為である。 「だ、だいじょうぶだよ!れいむのおちびちゃんたち! もうすぐよるさんになるからね! まっくらになれば、こわいおばけさんもみえなくなるからね!」 母れいむにできることは、 そんな励ましの言葉を子供達にかけることくらい。 勿論、そんな物は今夜一晩の一時凌ぎに過ぎないのだが。 結局、この一家は、食事を取ることすら忘れて、 日が落ちる事だけをひたすら待ち望みながら、 遅々として進まない時間を過ごした。 だが、夜こそがお化けの時間である。 「ゆぅぅぅ・・・やっちょくらくなっちゃよ・・・・・・・ よるしゃんきゅるのがおちょいよ!ぷゅんぷゅん! りぇいむまちくちゃびれ・・・?」 やっと怖いお化けが見えなくなる。 そう思って安堵した四女赤れいむの視界に何かが写る。 何も見えない筈の夜の闇の中で。 ボウッ・・・ 暗い闇の中、宙に浮かぶ、緑色にほのかに光るモノ その緑色の光の中に、顔が浮かんでいた。 黒い餡子の塊。 その中に浮かぶのは・・・・ 「ゆっぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 赤れいむの恐怖の絶叫に、他の家族が目を開く。 そして、同じモノを目にする。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?おばげがまだいるぅぅぅぅ!?!?」 「だっ・・・だっ・・・だじぇっ・・・だじぇっ・・・・」 「ゆびゃぁぁぁん!!おきゃーじゃんのうちょちゅぎぃぃぃぃ!?」 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁぁ?! ごべんなざいぃ!!おねいぢゃんごべんなざいぃぃ!!」 夜の暗闇の中にゆっくり達の悲鳴が木霊する。 赤まりさの既に剥がれた塗装の下には、 ところどころ、夜行塗料が塗られており、 暗闇の中に置かれると緑色に光るのだ。 ちなみに、この夜行塗料はそれなりに耐水性もあるので、 母ゆっくりの口の中にいても剥がれることはなかった。 四十八のギミックの三十八番「ゆっくり常夜灯」。 暗闇の中、自らが放つ淡い光に照らされて蠢く五つの影。 赤まりさは、宙からその影が震える様を見、悲鳴を聞きながら考えていた。 このゆっくり達は、あの家族達と一緒だ。 まりしゃを見捨てたゆっくりできない家族達。 ゆっくりできない、おとうしゃん。 ゆっくりできない、おかあしゃん。 ゆっくりできない、いもうちょ。 あの家族達はどうなった? とってもゆっくりできない目に遭った。 とっても痛くて、とっても苦しい目に遭った。 あの怖いにんげんしゃんの手で。 だったら、この家族は? そう、あの家族と一緒なのだから、 この家族も一緒の目に遭う。遭うべきだ。 にんげんしゃん? どこかでまりしゃ達を見てるんだよね? まりしゃと一緒に、新しいおかあしゃん達にもひどい事、するんだよね? 新しいおかあしゃんにも、新しいおにぇちゃん達にも、 一杯一杯、痛いことしてあげてね。 たくさんたくさん、苦しい事してあげてね。 まりしゃ、ゆっくり待ってるね。 赤まりさは楽しくなった。 自然と、口の形が笑顔の形に歪む。 「くしゅ・・・くしゅくしゅ・・・」 「うふふ・・・うふふ・・・くしゅくしゅ・・・」 笑い声を漏らす、その笑顔の形は、 赤まりさが怖れた、お兄さんの笑顔の形と同じ形をしていた。 「「「「「ゆひぃぃぃぃぃ?!?!?!ぎょわいぃぃぃ!!!」」」」」 突如聞こえ始めた不気味な笑い声に ガタガタと震えるゆっくり達の頭上で笑い声が絶えることなく続いた。 つづく
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「ゆぎゃあぁぁ!!ど、ど、ど、どおぉぉぉじで、 でいぶのおうぢにおばげざんがいるの゛ぉぉぉ!?!?」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆびぇぇぇん!!!おばけきょわいよぉぉぉぉ!!!!!」 「だじぇぇ・・・おばげぇ・・・ぎょわいぃぃぃぃぃ・・・・・・」 「おばけやぢゃやぢゃぁ!!みゃみゃぁぁぁぁ!!!!」 「ゆぴぃっ・・・ゆぴぷぺ・・・ゆぺぇ・・・!」 泣き叫ぶもの、腰?を抜かすもの、 チョロチョロとちーちーを漏らすもの、 半狂乱になりわけのわからぬ声を発するもの、 反応は様々だったが、彼らが抱いている感情はただ一つ、 純然たる恐怖であった。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!?!? ぢょうぢじぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? ぢょうぢじぇぇ、じょんなごちょゆうのぉぉぉぉぉ!? ぢょうぢじぇなにょぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」 自分を受け入れてくれた筈の、優しい家族の突然の豹変に、 赤まりさが餡子の底から絞り出すような絶叫を上げる。 だが、家族の反応は無理からぬものであった。 今の赤まりさは、 お口がなくて、 三つ編みがなくて、 おめめがへこんでるだけの ただの変テコなゆっくりではなかった。 黒い餡子の塊。 その中に浮かぶ、剥きだしの二つの眼球と、 剥きだしのピンク色の歯茎と白い歯。 まるで、理科室の人体模型の顔。 そこに黒いお帽子がちょこんと乗ってるだけの、 まさに『お化け』としかいいようのない、お顔をしていたのだから。 赤まりさの饅頭皮を剥いで作成したスケルトン赤まりさ。 虐待お兄さんは、そのスケルトン赤まりさを眠らせた後で、 更に幾つか追加の細工を施していた。 まずは、鎖を止める用のネジ穴の埋め込み、 呼吸用の空気穴の追加等、細々としたギミックの加工を少々。 次に、この細工の肝、 スケルトン赤まりさの餡子剥きだしの全身を包んでいる透明なゴムの層に、 饅頭皮と同じ肌色の塗料を塗りたくった。 目の部分だけにマスキングをして。 これにより、スケルトン赤まりさを"お化け"たらしめる不気味さが隠される。 最後の仕上げに、饅頭皮と一緒に剥いでしまった髪の毛の再生。 元の赤まりさの金髪は、赤まりさの眼前で饅頭皮と一緒に バラバラにしてしまっていたので、再利用は困難だった。 「ばりざの ぎれいな がみのげぇぇ・・・・・・」 だから、赤まりさの親である父まりさの金髪を根本から全て切り取り、 必要な分だけを赤ゆっくりの髪の長さに切り揃えた上で、 それを糊で無造作に頭部、お帽子の周りに貼り付けてあった。 お兄さんには、赤ゆっくりサイズの三つ編みを結わえる程の 器用さは無かったので、三つ編みは無し。 なお、赤まりさのために、大切な金髪を快く提供してくれた父まりさは、 後に、とても甘くて美味しいおはぎとして生まれ変わり、 お兄さんと、赤まりさの新しい家族の胃袋を満たしてくれた。 スケルトン赤まりさの体表に塗られた肌色の塗料は、 耐久性はそこそこだったが、耐水性は無いに等しかった。 それが、母ゆっくりの口の中に入れられ、たっぷりと唾液に濡れたことで、 塗装が全部剥がれてしまったのだ。 そして、髪の毛を貼り付けていた糊も同じように耐水性の無い素材。 かくして、ゆっくり達を恐怖のドン底に叩き落とす、 スケルトン赤まりさが彼らの目の前で誕生したのだった。 お兄さんにとって計算外、かつ、幸運だったことは、 三日間に渡り雨が降り続いたこと。 元々、お兄さんの心算では、 赤まりさを迎え入れた優しいゆっくり一家が、 翌日にでも森へ遊びに出て、 森の中の泉や水たまりで水遊びをしたり、 土で汚れて母れいむがぺーろぺーろしてくれるだろうと踏んでいた。 そこでスケルトン赤まりさの正体が暴露される。 それが、お兄さんの期待した阿鼻叫喚の筋書きだった。 だが、雨のため一家がお家から出られなかったことで、 水遊びもしなかったし、体が著しく汚れる事もなかったので、 ぺーろぺーろも無かった。 そのお陰で、三日間という猶予が与えられたことにより、 赤まりさと新しい家族との絆は強まり、赤まりさの心の傷も癒え始めていた。 お兄さんの希望を遙かに越えて。 嬉しい誤算という奴だろう。 -------------------------------- 「おかあ・・・しゃん・・・まりしゃは・・・まりしゃぢゃよ・・・ おびゃけじゃ・・・にゃい・・・よ・・・・・・・」 虐待お兄さんの予想と期待すらも越える絶望に苛まれ、 瞼が存在しないが故に開っきぱなしの瞳から、 あの日以来枯れ果てていた悲しみの涙が再び溢れ出す。 だが、それでも懸命に言葉を続ける。 今度は、今度こそは、とても優しい新しい家族達なら、 まりしゃの言葉を聞いてくれる。まりしゃを見てくれる。 その希望を捨て切れずに。 「ゆひぃぃぃぃぃぃ!!!?ごないでぇぇぇぇぇ!?!? おばげざんはででいっでね!!ででいっでねぇぇぇ!! ででいげぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」 だが、恐怖に半狂乱になっている母れいむに、 赤まりさの声は届いていない。 怖いお化けを追い払おうとしてか、それとも、逃れようとしてか、 ブルンブルンと体を震わせ始める。 その動きで、母れいむに繋がれていた鎖が引っ張られ、 スケルトン赤まりさがコロコロと転がる。 転がった先で、赤まりさのすぐ眼前、 1センチと離れていない場所にいた、五女赤れいむと目が合った。 一番仲良く遊んだ、一番一緒の時間を過ごした、赤れいむ。 「ゆ・・・れーみゅ・・・まりしゃぢゃよ・・・おびゃけじゃ・・・ 「ゆっびゃぁぁぁぁぁんっ!!!!!!ぎもいぃぃぃ!!!!! おもにおぎゃおがぎもいぃぃぃぃぃぃ!!!!」 返されたのは、赤まりさの、本当の妹のまりさと同じ反応。 そして、赤れいむは恐怖にガタガタ震えながらも、 夢中でお化けに体当たりをする。 ぽ~ん、ころころ・・・・ポフ 再び転がった先は、 洞穴の壁をよじ登って逃げようとでもするかのように、 ズリズリと壁を這っていた三女子まりさの元。 そのお尻に当たる。 「だじぇぇぇ・・・までぃざ、いいごにずるがらだじゅげでぇぇ・・・ゆ?」 お尻に触れられた感触に、涙を流したまま、 反射的に後ろを振り向く三女子まりさ。 「まりしゃおにぇちゃぁん・・・・・・」 時々ちょっと意地悪だけど、でも本当はとても優しいお姉ちゃん。 まりしゃのお口がないことを、まりしゃの替わりに泣いてくれた 優しい、大好きなお姉ちゃん。 泣くのはやめてね、と言うように、赤まりさは口を開けてニッコリと笑う。 剥きだしの歯茎を開いて。 「だじぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?!?」 飛び出さんばかりに目を見開き、絶叫を上げる子まりさ。 「だじぇぇぇ!!だじぇぇぇ!ぎょわいよぉぉぉ!みゃみゃあぁぁぁ!! ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 滝のように更に大量の涙を流しながら、 お化けから逃れようと、洞穴の壁をグイグイと押している。 まるで岩の壁に穴を掘って逃げようとでもしているかのように。 ジタジタと暴れ回る三女子まりさのお尻が スケルトン赤まりさを弾き飛ばす。 ぴゅ~ん・・・ぽす。 高く打ち上げられたスケルトン赤まりさは、今度は母れいむの頭上、 髪の上に着地した。 「ゆぎゃあぁぁぁ!ゆばばばばば・・・・・・・・」 視線を頭上の死角にいる筈のお化けに向けようとしながら、 餡子の泡を噴いてガクガクと震える母れいむ。 「ごっちごないでねぇぇぇぇぇ!!?」 ブルン!と頭を思いっきり、お家の外、洞穴の入り口に向けて振った。 ゆゆ~ん♪まりしゃ、とりしゃんみた~い♪ の言葉もないまま、ビュゥンと飛んで行く、スケルトン赤まりさ。 そして、当然のごとく、ピンと鎖が張り、 その体は元の場所に向かって引き戻される。 「ゆぴゃあぁぁぁぁぁっ!!!! どぉぉぉぉじで、おばげざん、もどっでぐるのぉぉぉぉ!?!?」 自分のすぐ目の前の地面に転がってきたお化けに向かって母れいむが叫ぶ。 そこで、お化けに繋がっている鎖が目に入った。 だが、恐怖に染まり、普段以上に回転の悪くなった餡子は、 それが何を意味しているのか、すぐに結論に達することができない。 その時。 「おがあざぁぁん!!!おぢびぢゃんがいないよぉぉぉ!!!」 長女子まりさの声が聞こえた。 子供達の中で一番賢い長女子まりさは、自身恐怖に怯えながらも、 可愛い妹達の安否を気遣っていたのである。 この子まりさは、将来きっと良いお母さんゆっくりになれることであろう。 その声に、親ゆっくりとしての理性を僅かながら取り戻した母れいむは、 いつお化けが襲いかかってくるかとビクビクしながらも、巣の中を見渡す。 いない。小さいおちびちゃんがいない。 おちびちゃん。鎖に繋がれたおちびちゃん。 鎖のついた・・・お化けさん・・・ 「ゆ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!?おぢびぢゃんがおばげざんなのおぉぉ!?」 ようやく結論に達する。 その言葉に、赤まりさは、何度目か知れぬ希望を抱く。 おかあしゃんは、まりしゃが、まりしゃだってわかってくれた。 やっぱり、おかあしゃんは違う。他のみんなとは違う。 「ゆ♪しょうぢゃよ・・・まりしゃぢゃよ・・・おかあしゃん・・・」 自力で動く事が決して叶わない体を、必死に動かして這い寄ろうと 無駄な努力をしながら、母れいむに呼びかける赤まりさ。 「ゆ゛・・・ゆ゛・・・・・・・・ゆ゛・・・・・・・・・・・」 そんな赤まりさを見ながら、真っ青になり、涙と汗をダクダクと流して、 ブルブルと震えている母れいむ。 スケルトン赤まりさに対する恐怖と、赤まりさに対する愛情が その内で鬩ぎ合っている。 「おかあしゃん・・・ずっと、まりしゃのしょばにいちぇね・・・」 少し前、母れいむ自身が赤まりさに向けて語った言葉。 その言葉が決め手となった。 「ゆ゛や゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!おばげどずっどいっじょじゃ、 ゆっぐじでぎないぃぃぃぃぃ!!」 ゆっくりと言う、極めて身の程知らずでありながら、 それでいて、極めて臆病な種。 その種としての本能が、遂に子への愛情に打ち勝った。 「ゆ・・・・・・どおち・・・ちぇぇ・・・・・・・・・?」 赤まりさは、もはや涙を流すことすら忘れ、 ずっといっしょにいてくれると言ってくれた筈の 母れいむを見上げるだけだった。 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!みないでねっ!れいむをみないでねっ! ごっぢみんなぁぁぁ!!!!!!!」 鎖で自分に繋がったスケルトン赤まりさを振り千切ろうとするかのように、 激しく体を跳ねさせ、鎖を振り回す母れいむ。 ボンッ!ボンッ!ボンッ! スケルトン赤まりさが、激しく岩肌に叩きつけられ、 ゴムの弾力によってバウンドする。 それなりのスピードで硬い面に叩きつけられているため、 ゴムに包まれている状態でも幾らかの衝撃は伝わり、 痛みを覚えている筈だが、赤まりさは何も声を発しない。 赤まりさの心の内を貫く痛みに較べれば、 そんなものは痛みの内に入らないからだ。 ボンッ!ベシャッ! 四度目のバウンドの後、 柔らかい音と共にスケルトン赤まりさの動きが止まった。 「ゆぅぅぅ・・・・?おかあしゃんが、はんぶんしか、いにゃいよ・・・ どうちて・・・・?」 それが五女の赤れいむの第一声だった。 赤れいむの視界の左半分は黒く染まり、何も写していない。 お母さんれいむも、いつものお家も、半分しか見えない。 もう半分は何か黒い物に隠れている。 半分しかいないお母さんは、れいむの事を見て、 大きなお口を真四角に開いている。 そんな事を考えていた赤れいむの体を、突如激痛が襲った。 「ゆ゛っ?ゆ゛っぎぇぇぇぇ!!!!!!い゛ぢゃいぃぃぃぃ!!!! い゛ぢゃいっ!!い゛ぢゃいっ!!ゆっぐ!い゛ぢゃいよぉぉ!!!!」 スケルトン赤まりさの衝突により、 その脆い体の左半分をグシャグシャに潰された赤れいむが、 痛みに悶絶し、潰れた切断面から、餡子をボトボトと落としてゆく。 そのすぐ横に転がる赤まりさ。 目の前の地面に広がっている物は、仲が良かった赤れいむの黒い餡子。 そして、その中にポツンと埋もれた、白く半透明な左目の眼球。 左半身を失った赤れいむは、バランスを崩してパタンと右側に倒れる。 「いぢゃい・・・・いぢゃいよぉぉ・・・・おきゃぁ・・・しゃん・・・・ れーみゅを・・・たしゅけちぇ・・・ゆっぎっ!・・・いぢゃいぃ・・・!」 横倒しになり、残った右目から涙を流し、 母れいむを見つめながら、しきりに助けを求める。 だが、母れいむは動かない。あまりのショックに動けない。 「いぢゃい・・・よぉ・・・れーみゅ・・・・いぢゃいの・・・やぢゃぁ・・・ れーみゅ・・・・・・もっちょ・・・・・・・ゆっ・・・・きゅり・・・・」 苦悶の表情を右半身に貼り付けたまま、舌をダラリと垂らして、 赤れいむは事切れた。 -------------------------------- 「・・・ゆ゛ぁっ・・・・ゆ゛ぁっ・・・・・・・ゆ゛ぁああぁぁぁっ!? でいぶのあがぢゃんがぁぁぁぁぁっっ!?」 ようやく思考を再開し、母れいむが絶叫を漏らす。 だが、時既に遅し。 もっとも、赤れいむの傷はどう考えても致命傷で、 始めから手の施しようなどなかったのだから、結果は変わらないのだが。 「ゆ゛・・・・・ゆ゛ぎぃぃぃぃぃっ!!!!!」 子を失った怒りが、怖いお化けに対する恐怖を上回った。 怒りの声を上げ、鎖を引く。 赤まりさが、母れいむの足下まで転がる。 仰向けの形で転がった赤まりさが、母れいむの憎しみに満ちた顔を見上げる。 「おかあ・・・・・しゃん・・・・・・・」 諦めずに、諦め切れずに呼びかける。 その視界を饅頭皮が覆った。 「じねぇ!!でいぶのあがぢゃんをごろじだばげものは、 ゆっぐりじないで、ざっざどじねぇぇぇ!!!!」 母れいむが、渾身の力を込めてスケルトン赤まりさを踏み潰す。 ボスン!ボスン!ボスン!ボスン!!ボスン!!! 何度も何度も、恐怖をも憎しみに変えて。 だが、強靱なゴムでできた赤まりさの体には、 ほとんど肉体的ダメージを与えられないでいた。 重量こそ、それなりにある成体ゆっくり。 それで潰されれば、負荷もそれなりにかかる。 だが、ゆっくりの饅頭皮は、ゴムの固さに較べ、あまりに柔らかい。 赤まりさを潰そうとする圧力は、そのまま反作用として、 母れいむの饅頭皮にも作用する。 結果、潰れるのは、ゴムで包まれた赤まりさではなく、 母れいむの柔らかい饅頭皮だけである。 言うなれば、凍らせていないバナナで釘を打つようなものだ。 そんな事にすら気づかず、踏み潰しを続ける母れいむ。 その底部の皮はあちこち潰れて、餡子が滲み出しそうになっている。 そして、何度目かのストンピング。 「ゆぎゃぁっ!!い゛だいぃぃぃ~っ!!!」 叫びと共に、突然、母れいむが赤まりさの上から飛び退き、 涙を流しながら、地面をゴロゴロとのたうち回る。 その底部の一カ所が裂けて、餡子が漏れだしている。 固い物を踏み潰し続けて摩耗したからではない。 何か鋭利な物で刺されたかのような傷だった。 母まりさが飛び退いた時の反動で、 コロコロと洞穴の壁際まで転がる赤まりさ。 その黒い帽子は、押しつぶされひしゃげていたが、 その帽子を突き破るようにして、銀色に輝く木ネジがそそり立っていた。 そのネジの溝に、黒い餡子が詰まっている。 お兄さんの手により、スケルトン赤まりさの再加工時に加えられた 四十八のギミックの十二番「対踏み潰し用対空ネジ」。 赤まりさが、何度かの踏み潰しを受ける内に少しずつ転がり、 たまたま、直立した姿勢になったタイミングで母れいむがのしかかった時に、 そのギミックが効果を発揮したのだ。 虐待お兄さんは、こういった地味な嫌がらせも決しておろそかにはしない。 「ゆひぃぃぃぃぃ・・・・?!やめでぇぇぇ・・・!! でいぶにいだいごどじないでぇぇぇ?!」 傷をつけられた事で、今度は恐怖が怒りを上回り、 自力で動くことはできない赤まりさに対して怯え出す母れいむ。 -------------------------------- 「れいむのいもうどと、おがあざんにひどいこどずるおばけは、 ゆっぐりじねぇぇぇぇ!!!!!!」 そんな赤まりさ達からは離れた、洞穴の入り口付近から聞こえて来た声。 そこには、長女子まりさがいた。 子まりさは、恐怖にブルブルと震えながら、 帽子からまりさ種がいつも持ち歩いている"枝"を取り出し、 口に咥えると、中段の構えを取った。 「ゆぅぅ・・・ゆぅぅ・・・・・・・」 ブルブルと体を震わせ、ジトリと汗を垂らしながら、赤まりさを睨む。 不意にその震えが、ピタリと止まった。 「ゆぅぅぅぅぅぅっ!!」 気合いの声と共に、赤まりさに向かって一直線、 渾身の力でビョンビョン跳ねて向かってゆく長女子まりさ。 それは、子まりさがまだ赤ゆっくりだった頃、まりさお父さんが、 一家に襲いかかってきたれみりゃを撃退した時に見せてくれた、 ゆっ殺の刺突技『ゆとつ』。 怒りに目を血走らせ、自分に向かって突っ込んでくる 大きいお姉ちゃんを赤まりさは黙って見ていた。 最初にここに来た日、 まりしゃに意地悪を言った小さいまりさお姉ちゃんを叱ってくれた、 しっかりもので、優しい、大きいまりさお姉ちゃん。 既に赤まりさの眼前にまで迫った、お姉ちゃんの目に浮かぶ色は、 恐怖と怒りと憎しみだけ。 その光景に赤まりさは一つの終末を予見した。 しゃようなら。 赤まりさは、言葉に出さずに、そう呟き、 クス と小さく笑った。 「ゆ゛ね゛ぇぇぇぇ!!!(じねぇぇぇぇぇ!!!)」 天賦の才か、はたまた、偶然の産物か、 長女子まりさが見よう見まね放った突進突きは、 最良の角度、タイミングで、赤まりさの真芯を捕らえた。 そして、十分な助走により、 足りないパワーを補うだけのスピードも得られていた。 それは、成体ゆっくりにですら、致命傷を与えられる程の、 渾身の一撃であった。 無論、普通のゆっくりに、なら。 ズブリ 柔らかいモノを貫く、鈍い音が辺りに響いた。 「ゆ゛ふーっ!ゆ゛ふーっ!」 極度の興奮状態で、荒く息をしている長女子まりさ。 完璧な手応えだった。 子まりさのすぐ目の前は壁。 その壁と子まりさの間には、子まりさの枝に"突き刺され"、 壁に押しつけられた、あのお化けがいた。 やった。やったよ。おとうさん。まりさやったよ。 スッと後ろに下がる。コロコロとお化けの亡骸が転がる。 その事に違和感を感じた。 どうして、えださんが、ささってないの? 「・・・・・・・がぁぁぁ!?」 「・・・・・・・ぁぁぁん!!!」 「・・・・・・・じぇぇぇぇ!?」 騒がしい声に後ろを振り返る。 苦悶の表情で涙を流しているお母さんと妹達。 もうだいじょうぶだよ。まりさ、おばけをやっつけたよ。 そう応えようとする。 「ゆ゛・・・・?」 今度は自分の体に違和感を感じる。 興奮が醒めるのと共に急速にゆどれなりんが消失し、 失っていた感覚が戻ってくる。 「ゆ゛ぼっ!?」 餡子を吐き出す。 あれ・・・?なんだか・・・まりさの・・・ 「ど、どどがびだびぼ・・・?」 (の、のどがいたいよ・・・?) ズキン、ズキンと痛みが強くなってくる。 喉の痛みが。餡子の痛みが。 母れいむに向かって、ズリ・・・と一歩這おうとする。 途端に、痛みが倍増した。 「ゆ゛ばっ!!ゆ゛ぼぉっ!!」 叫びと共に、更に餡子を吐く。 痛みの原因がどこにあるのかを探ろうと、 キョロキョロと四方八方に視線を彷徨わせる。 「ゆ゛!?」 そして見つけたのものは、自分の口の中から、 にょっきりと生えた、まりさの"枝"。 「ぼ、ぼぼびべ・・・ばびばぼぼぶびび・・・べばばんばばばっでぶぼぉ・・・」 (ど、どおじで・・・まりざのおくちに・・・えださんがささってるのぉ・・・) 壁際にいた赤まりさ。 その真正面から、突き入れられた子まりさの枝。 背後を壁で塞がれ、力を逃がす先を失った赤まりさの体は、 体を刺し貫こうとする力の全てを受け止め、 赤まりさのゴムの体はグググ・・とひしゃげた。 そして、次の瞬間、ゴムの反発力がその力の全てを、 180度反転させて、元来た方向に向かって弾き返す。 子まりさが咥えていた枝は、食い縛る子まりさの歯を滑り、 子まりさの喉から背中にかけてを貫き通した。 「び、びばびぃ・・・びばびぼ・・・・ぼべぼっべぇ・・・ぼばばば・・・」 (い、いたいぃ・・・いたいよ・・・・これとってぇ・・・おかあさん・・・) 喉を塞がれ、まともに発音することもままならず、 それでも、ずーりずーりと這いながら涙ながらに母れいむに助けを求める。 一歩這う度に、口の端と、枝が突き出た背中から餡子がボトボトと落ちる。 「ぶべべ・・・・ぶっぶび・・・べびばい゛・・・ びばびぼぉぉ・・・ゆ゛ぼぉっ!!」 (ぬけてね! ゆっくりできない、えださんは、まりさのおくちからぬけてね! あと、まりさにおいしいごはんさんをちょうだいね!! どおぉぉぉじで、ぬ゛げでぐれないのぉぉぉぉ!?) 「ばでぃざおねぃぢゃぁぁぁん!!!!」 更に餡子を吐いた姉に向かって、次女子れいむが泣きながら駆け寄った。 「まっででぇ!れいぶがだずげるよ!れいぶがだずげるよぉ!!」 そうして、子まりさの口から突き出してる側の枝を咥えると、 力まかせに引き抜いた。 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁっ!?!?だめぇぇぇ!!!」 「ゆぼぼぉっ!?」 バシャッ 母れいむの制止はあまりにも遅かった。 体内を貫通する枝を無理矢理引き抜かれ、 硬い節が子まりさの体内の餡子を引っかき回した。 激痛に一気に吐き出された餡子が、正面にいた子れいむに浴びせられた。 「ゆ・・・・・・・・?おねい・・・・・ちゃん・・・・・・・・?」 餡子に黒く染まった視界で、姉である子まりさを見つめる子れいむ。 「ゆげっ!!ゆがぁぁぁ!!いだい・・・ゆぼっっ!!ゆぎぃ! ゆぐ、ゆっぎぎぎ・・・ゆぼっ!!ゆげぇっ!!いだ・・・ゆぼっ!!」 子まりさは、ヒン曲がったバナナのように、 グネリグネリと体を曲げてのたうち回る。、 傷口を塞ぐ形になっていた枝がなくなった今、 その口から餡子の嘔吐と、悲鳴の流出を止めるものは何も無い。 その動きに合わせ、大きく開いてしまった背中の傷口からも餡子が飛び散る。 「ゆ゛・・・・?ゆ゛・・・・?ゆ゛・・・・・・・?」 次々に姉の餡子を全身に浴びせかけられながら、 子れいむが呆然と立ち尽くす。 「ゆ゛ぅぅぅぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!!」 延々と続く子れいむの絶叫が響く洞穴の中で、 子まりさの体は、やがて、ビクビクと痙攣するだけになり、 それもやがて完全に停止した。 -------------------------------- 「ばりざのおねえぢゃんがぁぁぁぁぁ!?」 「「おにぇぢゃんがぁぁぁぁぁ!?」」 ゆっゆっと呟きながら、姉だったモノを見下ろして 呆然と立ち尽くしたままの子れいむ。 彼女以外の子供達が泣き声を上げている。 「ゆ゛ぅぅぅぅぅ!! ごどもがぁぁ!!でいぶのがばいいごどもがぁぁぁ!!!」 母れいむも、ゆっくりできない凄惨な死を迎えた子供に向かって泣き叫ぶ。 その耳に 「くしゅ」 という小さな笑い声が届いた。 呆然とした表情で声のした方向に目を向ける。 そこでは、あの怖いお化けが、母れいむを見つめていた。 「ちんじゃったにぇ」 「・・・・・・・・・ゆ・・・・・・・・・・・・・ ゆ゛びゃぁぁぁ!!ゆ゛ぎぃや゛ぁぁぁっ!!おばげはじねぇぇ!! ごごがらででいげぇぇ!!! でいぶのおぢびぢゃんだぢをがえぜぇぇぇ!!!」 目を血走らせ、体をグネグネと曲げ、ボヨンボヨンと飛び跳ね、 半狂乱になって自分のリボンに繋がっている赤まりさを 無我夢中でブンブンと振り回す。 赤まりさの体は洞穴の壁に何度もブチ当たり、あちこちを高速で飛び跳ねる。 チッ! 「!?だじぇぇぇぇぇぇ!?!?」 頬を掠めた赤まりさの体に、三女子まりさが腰を抜かして、悲鳴を上げる。 「ゆぴゃぁぁぁぁ!?」 すぐ目の前に着地し、前髪を掠めて飛んでいった赤まりさに、 四女赤れいむがチョロチョロとちーちーを漏らす。 「やめちぇね!みゃみゃやめちぇにぇぇ!! ゆやぁぁ!!ゆっきゅりできにゃいぃぃぃ!?」 六女赤れいむの呼びかけもまったく耳に入らず、暴れ続ける母れいむ。 そんな事をしばらく繰り返し、 母れいむが一際高くジャンプした時にそれは起きた。 ジャララ・・・ お家の天井から突き出している太い木の根、 そこに、赤まりさを繋ぐ鎖がグルグルと絡みついたのだった。 「ゆぐっ!?」 ガクン!と、やって来た衝撃に、母れいむが呻き声を上げる。 母れいむの体は、しっかりと木の根に絡みついた鎖によって 宙吊りにされた状態になっていた。 「ゆあっ!?お、おろしてね!れいむをおろしてね!!」 地面を見下ろしながら、そんな事を言うが、 れいむの願いを叶えられる者はここにはいない。 やがて、 ビリ・・・ という音がれいむの頭上から聞こえる。 「ゆ!?・・・ゆぁぁぁぁ!?やめでねぇ! れいむのおりぼんがやぶれぢゃうぅぅぅぅ!!!」 鎖はれいむの赤いリボンにクリップで留められている。 成体のゆっくりの重量を支えるには、 あまりに脆すぎるその布から負荷に耐えきれなくなってゆく。 「やぶれないでぇぇ!おりぼんやぶれだら、ゆっぐじでぎなぃぃぃ!!!」 飾りを失ったり、欠損させたゆっくりは、 仲間のゆっくりから差別され、爪弾きにされる。 そんな様子を何度も見てきたれいむは、ジダバタと暴れるが、 当然ながら、その行為は全くの逆効果だ。 ビリ・・・ビリリリ・・・ビリィッ!! 「ゆ゛ぁぁぁ!!でいぶの おりぼんがぁぁぁ!?」 無情にも赤いリボンの羽根の部分が引き裂かれる。 支えを失ったことで、ガクン!と更にれいむの体が落下する。 だが、まだ地面には着かない。 わずか1センチ程であるが、宙に浮いたままだ。 お兄さんが、リボンが切れた場合の予備として、 母れいむの左右のもみあげに結んでおいた釣り糸によって、 もみあげごと釣り下げられた状態になっていた。 「ゆびぃぃ!?いだいいだいいだいぃ!! れいむの ぎゅうとな もみあげさんがぬげぢゃうぅぅぅぅ!?」 まだ母れいむのピンチは終わってはいない。 リボンが破れた上に、きゅーとな(笑)もみあげまで抜けた日には、 仲間のゆっくり達からどんな仕打ちを受けることか。 流石に、リボンの時の教訓から、無闇に暴れるような事はしないが、 どのみち、自力脱出は不可能、 助けが来ることも期待できないこの状況下では、 結果が出るまでの時間が長いか短いかの違いしかない。 1.重量に耐えかねて鎖が切れる。 2.もみあげに結ばれていた釣り糸が切れる、または、すっぽ抜ける。 3.れいむのもみあげが、根本からブチブチィッ♪と 気持ちの良い音を立てて抜ける。 通常であれば、 そのいずれかの結果で終わったであろう。 だが、今のれいむの頭皮は、雨に濡れたことでフニャフニャにふやけており、 他の何よりも強度的に弱っていた。 ベリィッ! ボスッ 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!」 ほぼ同時に、左右のもみあげが、その根本の頭皮ごと抜け、 母れいむは地面に着地した。 「ゆ゛ぎぎぎ・・・・・ゆぅぅ・・・?」 頭部の皮が剥がれた痛みに呻き声を上げ、頭上を見上げる母れいむ。 そこにぶら下がるのは、赤いおリボンの破片と、 れいむのきゅーとなもみあげと、その根本に生えた饅頭皮。 「れ、れいむの・・・もみあげざんがぁ・・・・ ゆぎっ!あ、あ、あんござんがぁぁっ! あんござんでていがないでっ!れいむゆっぐりでぎなぐなるよ!」 頭上を見上げる動きによって、 穴の開いた頭部から、ボロボロと餡子がこぼれ落ちる。 もみあげの根本の皮は、直径10センチほどの大きさで破けている。 これでは、少し這っただけでも、大事な餡子をこぼしてしまう。 「ゆぅぅぅ・・・・・・!」 「「ゆぇぇぇぇん!!おきゃーしゃんがぁぁぁ!!!」」 「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・おきゃあしゃん・・・・」 「ゆ・・・・・・ゆ・・・・・・・・」 母れいむが一度に多くの物を失ったショックにさめざめと泣く。 二匹の赤れいむが、母親の無惨な姿にゆんゆんと泣き声を上げる。 三女の子まりさも、赤ん坊と同じように泣いている。 次女の子れいむは、先程からあらぬ方向を見つめたまま。 その姿を、宙に吊り下げられたままの赤まりさがじっと見つめていた。 -------------------------------- 夕方 「きょわいよぉぉ・・・きょわいよぉぉ・・・・・・」 「ゆぇぇん!ゆぇぇん!みゃみゃぁ!きょわいのどっかやっちぇ~!」 「だじぇぇぇぇ・・・・こっちみないでなんだじぇぇぇ・・・」 子供達は、巣の中心から宙に吊り下げられたスケルトン赤まりさから 少しでも逃れようと、洞穴の隅でブルブルと震えていた。 「だずけでぇぇ・・・おねいぢゃぁん・・・・」 次女子れいむも、呆然自失状態から、少し落ち着きを取り戻し、 今は姉妹達と一緒に怯えている。 母れいむ一匹だけは、まともに動くことができないため、 目の前にぶら下がる赤まりさを見ないようにしながら、 ブルブルと震えている。 本当なら、皆、このゆっくりできない巣から逃げ出したい所だが、 外はいまだ雨。水に弱いゆっくりにとって、それは自殺行為である。 「だ、だいじょうぶだよ!れいむのおちびちゃんたち! もうすぐよるさんになるからね! まっくらになれば、こわいおばけさんもみえなくなるからね!」 母れいむにできることは、 そんな励ましの言葉を子供達にかけることくらい。 勿論、そんな物は今夜一晩の一時凌ぎに過ぎないのだが。 結局、この一家は、食事を取ることすら忘れて、 日が落ちる事だけをひたすら待ち望みながら、 遅々として進まない時間を過ごした。 だが、夜こそがお化けの時間である。 「ゆぅぅぅ・・・やっちょくらくなっちゃよ・・・・・・・ よるしゃんきゅるのがおちょいよ!ぷゅんぷゅん! りぇいむまちくちゃびれ・・・?」 やっと怖いお化けが見えなくなる。 そう思って安堵した四女赤れいむの視界に何かが写る。 何も見えない筈の夜の闇の中で。 ボウッ・・・ 暗い闇の中、宙に浮かぶ、緑色にほのかに光るモノ その緑色の光の中に、顔が浮かんでいた。 黒い餡子の塊。 その中に浮かぶのは・・・・ 「ゆっぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 赤れいむの恐怖の絶叫に、他の家族が目を開く。 そして、同じモノを目にする。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?おばげがまだいるぅぅぅぅ!?!?」 「だっ・・・だっ・・・だじぇっ・・・だじぇっ・・・・」 「ゆびゃぁぁぁん!!おきゃーじゃんのうちょちゅぎぃぃぃぃ!?」 「ゆ゛あ゛あ゛ぁぁぁ?! ごべんなざいぃ!!おねいぢゃんごべんなざいぃぃ!!」 夜の暗闇の中にゆっくり達の悲鳴が木霊する。 赤まりさの既に剥がれた塗装の下には、 ところどころ、夜行塗料が塗られており、 暗闇の中に置かれると緑色に光るのだ。 ちなみに、この夜行塗料はそれなりに耐水性もあるので、 母ゆっくりの口の中にいても剥がれることはなかった。 四十八のギミックの三十八番「ゆっくり常夜灯」。 暗闇の中、自らが放つ淡い光に照らされて蠢く五つの影。 赤まりさは、宙からその影が震える様を見、悲鳴を聞きながら考えていた。 このゆっくり達は、あの家族達と一緒だ。 まりしゃを見捨てたゆっくりできない家族達。 ゆっくりできない、おとうしゃん。 ゆっくりできない、おかあしゃん。 ゆっくりできない、いもうちょ。 あの家族達はどうなった? とってもゆっくりできない目に遭った。 とっても痛くて、とっても苦しい目に遭った。 あの怖いにんげんしゃんの手で。 だったら、この家族は? そう、あの家族と一緒なのだから、 この家族も一緒の目に遭う。遭うべきだ。 にんげんしゃん? どこかでまりしゃ達を見てるんだよね? まりしゃと一緒に、新しいおかあしゃん達にもひどい事、するんだよね? 新しいおかあしゃんにも、新しいおにぇちゃん達にも、 一杯一杯、痛いことしてあげてね。 たくさんたくさん、苦しい事してあげてね。 まりしゃ、ゆっくり待ってるね。 赤まりさは楽しくなった。 自然と、口の形が笑顔の形に歪む。 「くしゅ・・・くしゅくしゅ・・・」 「うふふ・・・うふふ・・・くしゅくしゅ・・・」 笑い声を漏らす、その笑顔の形は、 赤まりさが怖れた、お兄さんの笑顔の形と同じ形をしていた。 「「「「「ゆひぃぃぃぃぃ?!?!?!ぎょわいぃぃぃ!!!」」」」」 突如聞こえ始めた不気味な笑い声に ガタガタと震えるゆっくり達の頭上で笑い声が絶えることなく続いた。 つづく 選択肢 投票 しあわせー! 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「ゆっ!おちびちゃんたち、ただいま!」 「みゃみゃだ~!」 「ゆぅ!おかあしゃん、おかえりなしゃい!」 「おかーさん、おかえりなさいだぜ!」 「ゆっくりおかえりなさい!」 「ゆぅ~ん♪おにゃかしゅいたよ~♪」 巣に戻ってきた母れいむに、巣の中で遊んでいた子ゆっくり達が 口々に返事をしながら、ぴょんぴょんと跳ね寄って来る。 崖の岩肌にできた洞穴。 ゆっくりの巣としては広い洞穴で、 屈みさえすれば、人間でも三人ぐらいは入れそうな広さがあった。 ほぼ円形の広々とした空間。 目立つ物と言えば、天井から突き出した、頑丈そうな太い木の根ぐらい。 崖の上に立つ大木の根がここまで伸びてきているのだった。 そこが、れいむ一家の巣だった。 その巣に住むのは、 ソフトボール大の子ゆっくり、子まりさが2匹に子れいむが1匹。 ピンポン玉より一回り大きめの赤ゆっくり、全て赤れいむで3匹。 母れいむを入れて、今は計7匹のゆっくり家族だった。 「みゃみゃ~、しゅ~りしゅ~りちて~♪」 「ゆっ!れーみゅも!」 大好きなお母さんとすーりすーり♪しようとしているのは、 末っ子と五女の赤れいむコンビ。 そして、母れいむの陰に転がっている丸い物体に気づく。 「ゆ・・・?しょれ、なーに?」 「ゆ!このこはね・・・」 五女赤れいむが上げた疑問の声に 母れいむが事情を説明をしようとしたときだった。 「ゆっ、ゆぅ・・・ん・・・・」 注射されていた睡眠薬の効果が切れ、目を覚ましたソレが声を上げた。 「ゆわっ!?しゃべっちゃ!」 末っ子の赤れいむが驚いてぽよ~んと、飛び上がる。 「ゆゆっ?おちびちゃん、めがさめた?」 母れいむが少し体をよじって鎖を引っ張ると、コロコロとソレが転がり、 母れいむの目の前までやってくる。 「ゆぅ!あかちゃんだよ!」 次女である子れいむが最初にその正体に気づいた。 「そうだよ!きょうから、このあかちゃんもかぞくになるよ! みんなゆっくりなかよくしてね!」 「「「「「ゆゆぅ~!?」」」」」 突然家族が増えたことに、 一様に驚きの声をあげる子供ゆっくり達。 「おちびちゃんも、これからはれいむがゆっくりさせてあげるからね。」 優しく笑顔を向けるれいむ。 キョトンとしている赤まりさ。 「ゆ・・・きょきょ・・・どきょ・・・?」 生気のない声で誰にともなく尋ねる。 怖い人間の家にいた筈なのに、 気がついたら、どこか見知らぬゆっくりのお家にいた。 怖い人間の家にいた筈なのに? その怖い人間の家で自分は何をされた? 怖い人間に見せられた鏡という物に写っていたのは何だった? 「ゆっ・・・!?み、みないじぇぇ!まりしゃをみないじぇぇ!」 突然、恐慌状態に陥り、泣き叫び出した目の前の赤まりさに、 唖然とするゆっくり一家。 その状態からいち早く復帰したのは、母れいむだった。 「ゆっ!おちびちゃん!もうだいじょうだよ! おちびちゃんをいじめる、わるいにんげんさんは、もういないよ!」 赤まりさを落ち着かせようと力強く声をかける。 だが、赤まりさの恐慌は治まらない。 今、赤まりさが怯えているのは、目の前にいない人間にではない。 怖い人間によって、怖い化け物にされてしまった自分の姿、 そして、その自分を見たときに、周りのゆっくりが見せるであろう 反応に怯えていたのだ。 しかし、その反応は赤まりさが想像していたものとは違った。 「ゆゅ・・・どうちたのぉ・・・?ぽんぽんいちゃいの・・・?」 五女赤れいむが心配そうに、赤まりさの顔を覗き込む。 「みちゃやぁぁ!みないじぇぇ・・・ゅ・・・・?」 自力で動くことができないため、顔を逸らすことすらできず、 ただ泣き叫ぶ赤まりさだったが、 赤れいむが叫び声をあげないことに気づいて戸惑う。 自分の妹のまりさは、自分の顔を見て怯えて、火がついたように泣き出した。 この赤れいむもそうだろうと思っていた。 「ゆぅぅ・・・りゃいじょうぶ・・・?」 だが、赤れいむは、いまだに心配そうに、 赤まりさの顔をじぃっと覗き込んだままである。 「ゆ・・・・・・・・」 赤まりさは、少し離れた所から、固まってこちらを見ている、 他の子ゆっくりと赤ゆっくり達に視線を移す。 他のゆっくり達は、どこか訝しげな視線をこちらに向けている。 やっぱり自分のお化けみたいな顔を怖がっているのか? でも、怖がって怯えているという様子とは少し違う。 「・・・ゆ。なんだか、へんなおめめのあかちゃんなのぜ!」 小馬鹿にしたような口調で子まりさが言った。 (ゆ・・・やっぱり・・・) 再び、赤まりさの心が暗く沈む。 その様子を見て、母れいむが子まりさを叱りつけようとした、その時。 ドン!! 「ゆびゃっ!?」 音を立てて、子まりさに体当たりをしたのは、もう一匹の子まりさ。 長女まりさであった。 ちなみに体当たりをされた方の子まりさは三女である。 「あかちゃんに、そんなひどいこと、いっちゃだめなんだよ! そんなこというゆっくりは、ゆっくりできないよ!」 「だじぇ・・・」 姉に叱られ、涙目になる三女まりさ。 「そうだよ。れいむのおちびちゃん。 このあかちゃんはね、わるいにんげんさんに、けがをさせられたんだよ。 とってもかわいそうなめにあったんだからね。 いじわるいったら、おかあさんゆるさないよ。」 姉まりさが厳しく叱ってくれた分、 幾分優しく、諭すように語りかける母れいむ。 「ゆぅ・・・ごめんなさいなんだじぇ・・・」 涙目で謝る三女まりさ。 「まりさ、あかちゃんにもあやまろう?」 体当たりされた時に地面に打ち付けた頬を ぺーろぺーろしてくれながら、次女れいむが促す。 「ゆぅ・・・あかちゃん、ごめんなさいなんだじぇ・・・!」 母れいむは安心していた。 三女の子まりさは思ゆん期にありがちな反抗精神から、 粗雑な態度を取ることも多いが、根は優しい子ゆっくりである。 きちんと接してあげれば、こちらの想いは必ず通じる。 勿論、他の子達もこの子に負けず劣らずに 優しい、ゆっくりとしたゆっくりだ。 一方の赤まりさは、戸惑っていた。 変な顔と言われこそしたが、このゆっくり達には怯えた様子は見られない。 自分が自分の顔を見たときには、恐怖のあまり叫び声を上げた。 怯えるなと言われても、怯えずに済む顔ではなかった。 お父さん達だって、叫び声こそ上げなかったが、 怖がってブルブルと震えていたではないか。 それなのに、この家族達は、何故か誰も怯えた表情を見せてはいない。 自分の顔が怖くはないのだろうか? 自分の顔は怖くはないのだろうか? 「それじゃ、みんな、あたらしいかぞくのあかちゃんに、 ゆっくりあいさつしようね!」 「「「「「「ゆっ!」」」」」」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!!」」」 母れいむの号令一下、綺麗にハモった挨拶をするゆっくり一家。 「・・・・ゆぅ・・・ゆっくり・・・していってね・・・・」 一方の赤まりさは、ゆっくりの本能から返事は返すが、 その声にはまったく力がこもっていない。 ゆっくり一家も表情を曇らせる。 「ゆ~・・・あかちゃん、げんきないよ・・・」 長女まりさが心配そうに母れいむを見やりながら言う。 「ゆぅ・・・ おちびちゃん、ひどいことされたから、げんきないんだね・・・ でもだいじょうぶだよ! ゆっくりしていれば、きっとげんきになれるからね! ここはゆっくりできるおうちだから、 おちびちゃんはえんりょしないで、ゆっくりしていってね!」 母れいむが赤まりさを元気づけるように言う。 「ゆ・・・」 赤まりさの反応は相も変わらず。 母れいむは嘆息を漏らすが、まだこんな小さな赤ちゃんが、 ひどい目に遭わされた上、家族まで失ったのだから仕方がない、 後は時間に任せるしかないと結論を出した。 「みゃみゃぁ♪れいみゅ、おにゃかしゅいたよ!」 暗い雰囲気を破るように、六女れいむが脳天気な声をあげた。 時間は既に夕方近い。 朝ごはん以来、何も食べていない子供達は既に空腹であった。 「ゆっ!そうだね!ごはんさんにしようね!」 母れいむも、自分達が沈んだ気持ちでいては、 この赤ちゃんをゆっくりさせてあげることなんてできない、 みんなで楽しいごはんにしようと、気持ちを切り替える。 そこで、人間から貰った、とてもゆっくりできるごはんの事を思い出した。 「ゆゆっ!ゆっくりおもいだしたよ! おちびちゃんたち!きょうはとってもおいしいごはんさんがあるよ! おねえちゃんたちは、おかあさんをてつだってね!」 「ゆゆぅ~!?おいちいごはんしゃん!?」 「ゆわーい!ゆわーい!」 嬉しそうにピョコピョコ飛び跳ねる赤ゆっくり達の歓声を受けながら、 母れいむと子ゆっくり達は、人間が巣の前に置いていった 大量の食料の山を巣の中に運び入れる、 「ゆぅ~!!!すごいごちそうなんだじぇ~!?」 「とってもあまそうな、あまあまさんもあるよ!?」 「ゆっ!すっごくゆっくりできるごはんさんだね!!」 お姉ちゃんゆっくり達も、今まで見たことのない大ご馳走に、 興奮してポヨンポヨンと飛び跳ねる。 「こっちのごはんさんは、ふゆごもりのときのおたのしみだよ! きょうはくだものさんとおやさいさんをたべようね! とってもおいしくて、ゆっくりできるよ! でざーとにあまあまさんもあるよ!」 「「「「「「ゆゆ~ん♪」」」」」」 そうして、楽しそうな一家の食事が始まった。 「うっめ!?これめっちゃうっめ!?」 「ゆゆぅん♪このくだものさん、すっごくおいしいよぉ!」 「おにぇちゃん!おやさいしゃん、おいちぃにぇ!!」 「「「むーしゃむーしゃ、しあわせぇ~♪」」」 ガツガツ、もっもっ、と餌を食い散らかしてゆく、ゆっくり達。 そんなとき、ふと五女赤れいむが、一匹佇んでいる赤まりさに気づく。 「ゆぅ・・・おかあしゃん、あにょこはちゃべないの・・・?」 「ゆっ・・・おちびちゃんはおくちをけがしちゃって、 ごはんがたべられなくなっちゃたんだよ・・・」 「ゆぇぇぇん! ごはんしゃんたべりゃれなかっちゃら、ゆっきゅりできにゃいよ~!」 それを聞いた末っ子の赤れいむが泣き出してしまう。 「・・・・・・・・」 そのやり取りを黙って見ていた三女まりさが、 今から食べようとしていた餡子を口に頬張ると、 赤まりさの目の前までビョンビョンと跳ねて来た。 そして、ベッと餡子を吐き出す。 「ゆっ!ごはんさんをたべないと、 まりさみたく おおきくなれないのぜ! むりしてでも たべたほうがいいんだぜ!」 そして、母ゆっくりが子ゆっくりにしてやるように、 少量の餡子を自分の舌に乗せると、 キョトンとしている赤まりさの口の前に差し出した。 先程の汚名返上のつもりなのだろうか。 だが、子まりさは、そこで初めて、 赤まりさは餌を食べるべきお口を閉じているのではなく、 そもそも、お口がついてない、ということに気づく。 その部分には、呼吸のための空気穴が幾つか開けられているのだが、 針で開けた細い穴なので、ゆっくり達はそれに気づかなかったし、 どのみち食物摂取の役に立つものではない。 「ゆ?ゆぅっ・・・?!おぐぢがぁ・・・!? ゆぎぃぃ!?どうじでごんなひどいごとするんだじぇぇぇ!?」 三女まりさはガクガクと震えながら驚愕の声を上げた後、 赤まりさの境遇に我が事のように涙を流し、 じだじだと体をぐねらせる。 「ゆ・・・まりしゃは・・・だいじょうぶぢゃよ・・・ おにゃきゃ・・・しゅいてないよ・・・」 実際、赤まりさは、濃縮オレンジジュースによって 十分過ぎる程の栄養を与えられているので空腹感は無かった。 それでも普通のゆっくりであれば、 他のゆっくり達が美味しそうにごはんを食べている光景を見れば、 おのずと食欲が沸いてくるものである。 しかし、虐待を受け、家族から化け物呼ばわりされて 生きる気力を失っている今の赤まりさは、 ゆっくりできる美味しいごはんすらも、 何ら魅力的には感じなかったのである。 「ゆぅぅ!だっだらまりざも、おながずいでないんだじぇ! あまあまはいらないんだじぇぇ!!」」 三女まりさは、そう言いながら、体を使って地面の餡子を脇に押しやる。 だが、時折視線が餡子の方を彷徨い口の端から涎が垂れているのが未練である。 「ゆぅ・・・ゆっきゅり、あみゃあみゃさんをたべちぇにぇ。 しょのほうが、まりしゃはうれちいよ?・・・まりしゃおにぇしゃん。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆ・・・ゆ゛え゛ぇ゛ぇぇん! ゆっぐりいだだぐんだじぇぇ!! むーじゃ、むーじゃ・・・じ、じあわぜぇぇ!!」 しあわせぇと叫びながらも、 ボロボロと涙を零し、むせび泣きながら餡子を貪り喰らう三女子まりさ。 この子まりさは、同世代の子ゆっくり達の中では一番の年下。 妹の赤ゆっくり達は全てれいむ種。 そんな中で、初めてできた、同じまりさ種の"妹"。 初対面では、あんな意地悪な事を言ってしまったが、 内心ではそのことが嬉しくて嬉しくて仕方なかったのだ。 だから、お姉さんらしい所を見せようとして頑張ったのだが、 逆に"妹"に気を使われてしまった事への悔しさと、 『おにぇしゃん』と呼ばれた事への嬉しさ。 それらが綯い交ぜになっての涙だった。 「おにぇちゃん、なきゃないでにぇ!」 「ゆぅぅぅ!みんにゃでいっしょに、たべよーにぇ!」 赤れいむ達が、まりさ姉妹の元に跳ね寄ってくる。 それを見て、姉の子まりさと子れいむも、 美味しい餡子さんを口に咥えて、集まってくる。 母れいむは、そんな子供達の姿を微笑ましそうに眺めている。 その中心にいながら、赤まりさの心は、 いまだ辛い記憶に暗く沈んだままだったが、 虐待を受けた疲れからか、残っていた睡眠薬の影響からか、 ウトウトと船を漕ぎ始め、いつしか、安らかな眠りに落ちていった・・・ -------------------------------- それから三日後。 赤まりさが新しい家族の元に来てから四日目の日。 「ゆぅぅ~!?まりしゃ、しゅご~い!!」 ゴムボールの弾力でボヨンボヨンと高く跳ねる赤まりさを見上げながら、 四女赤れいむが感嘆の声を上げる。 「おちびのくせに、なかなかやるんだぜ!」 三女子まりさが、負けじとポヨンポヨンと跳ね上がる。 「ゆゅん♪」 他のゆっくり達に較べると、まだ少し元気が無いが、 それでも楽しげな声を上げる赤まりさ。 あの日以来、小雨が降り続き、一家は一歩も外に出ることなく、 巣である洞穴の中で過ごしていた。 外には出られなくても、美味しいごはんは食べきれないくらいある。 また、一家が巣にしている洞穴は広いので、 子ゆっくり達が一緒に遊べるだけの空間もある。 もっと広いお外で、のびのびと遊べないのは残念ではあるが、 それでも一家はゆっくりとしていた。 母れいむ一家の赤ゆっくりよりも、僅かに年下の赤まりさは、 皆の妹分として、姉妹達からも可愛がられた。 そんな、ゆっくりとした優しい"家族"に囲まれていた事と、 都合の悪い記憶、辛い記憶はすぐに忘れ去ろうとする ゆっくりの自己防衛本能故に、暗く沈んだ赤まりさの心も、 少しずつではあるが、元の明るさを取り戻していった。 凍てついていた氷が溶け出すように、ゆっくりと。 そして今日、三日ぶりに雨が上がり、 一家は森の中の空き地まで遊びにやってきて、 厳しい冬が始まる前の、柔らかな陽の光を存分に楽しんでいた。 「ゆっ!もういっかい、いくよ!」 次女子れいむが、赤まりさを留めている鎖を口で咥えると、 ピョーン!と空に向かって放り投げる。 「ゆぅ♪まりしゃ、とりしゃんみちゃい♪」 ボヨ~ン、ボヨ~ンと高く飛び跳ねる赤まりさ。 何回目かの着地点に、尖った小石が落ちていた。 「ゆぴゃっ!?」 尖った石に当たったことで、赤まりさがあらぬ方向に飛んで行く。 「ゆぇぇん!まりしゃぁ!?だいじょうびゅ~!?」 赤まりさを追いかけ、涙目で跳ねてゆくのは、五女赤れいむ。 「ゆ・・・だいじょうびゅ!びっきゅりしちゃっただけぢゃよ!」 赤まりさは、何事もなかったように返事をする。 全身をゴムで包まれているので、 小石に当たったくらいでは、何のダメージも無いのだ。 「ゆぅ~・・・ぺーりょぺーりょ、すりゅよ!」 それでも心配して、赤れいむが赤まりさの底部を舐める。 赤まりさは、赤ゆっくり達の中では、 この五女赤れいむと一番仲が良くなっていた。 本当の姉妹の中で一番仲の良かった赤れいむと どこか雰囲気が似ている事もその一因だった。 そして、赤れいむの方も赤まりさが大好きだった。 「ゆ~ん・・・?」 ぺーろぺーろをしていた赤れいむが不意に疑問の声をあげる。 赤まりさの底部のぺーろぺーろをした箇所が 饅頭皮の肌色から、黒色へと変化したからである。 しばらく、その黒い物を見つめていたが、 赤れいむにはそれが何かはわからない。 そうこうする内に、 「ゆ!つぎはおしくらゆっくりをやろうね! おしくらゆっくりす~るも~の♪こ~の■■■■と~まれ♪」 長女まりさの呼びかけに、五女赤れいむもすっかりそちらに気を取られる。 「やりょうね~♪」 「おちびもやるんだぜ!とってもたのしいのぜ!」 「ゆぅ♪まりしゃもやりゅよ♪」 三女子まりさに引っ張られ、赤まりさが嬉しそうに声を上げる。 「ゆぅぅぅ!みんなとってもゆっくりしてるね! おかあさんもゆっくりできるよ!」 母れいむは、鎖に繋がれて遠くまで離れられない赤まりさを中心に 仲良く遊ぶ子供達の姿に、顔を綻ばせていた。 -------------------------------- 「ゆぅ・・・ゆぴぃ・・・・」 「だじぇ・・・・」 「すーやすーや・・・すーやすーや・・・ちあわせぇ・・・」 遊び疲れた子供達は、母れいむに寄り添って、しばしのお昼寝タイム。 穏やかな子供の寝顔をみつめる母れいむ。 ふと、視線に気づく。 「ゆ?どうしたの、おちびちゃん?おねむじゃないの?」 自分を見上げていた赤まりさに声をかける。 「ゆ・・・・・・」 赤まりさは、何かを言いたそうに、もじもじとしている。 「ゆぅ・・・?どうしたのかな?」 「あ、あにょね・・・・おばちゃん・・・」 いい淀む、赤まりさ。 どうしよう。断られたらどうしよう。 そんな思いに餡子胸をドキドキと高鳴らせて。 母れいむは、優しい笑顔を浮かべて、ただ黙っている。 「まりしゃね・・・まりしゃ・・・おばちゃんのこと・・・・・・ おかあしゃん・・・って・・・よんでみょいい・・・・・・?」 ウルウルと瞳を潤ませながら、 赤まりさがやっとの思いで言葉を絞り出す。 「ゆゆっ!?もちろんだよ!おちびちゃん! おちびちゃんも、れいむのかわいいあかちゃんだよ!!」 母れいむが満面の笑みを浮かべて答える。 「ゆぅぅぅ・・・おかあ・・・しゃん・・・おかあしゃん!おかあしゃぁん!」 泣きながら、母れいむの事を何度もお母さんと呼ぶ、赤まりさ。 「ゆぅ・・・さびしかったんだね、おちびちゃん。だいじょうぶだよ。 これからは、おかあさんがずっとおちびちゃんのそばにいるからね!」 母れいむも目に涙を浮かべながら、赤まりさの固い体にすーりすーりをする。 ガサリ 不意に離れた木陰で物音がした。 子供を守ろうとする本能から、まず、母れいむが咄嗟にそちらに視線を移す。 遅れて赤まりさが。 木の陰から一人の人間が笑顔でこちらを覗いていた。 だが、ゆっくり達の視線がこちらを向いたことに気づき、すぐに身を隠す。 (ゆ・・・?あのときのおにいさん・・・?) 母れいむは、その顔に見覚えがあった。 他ならぬ、この赤まりさを母れいむに預けた、あの人間だ。 (おちびちゃんがしんぱいでみにきたんだね・・・) 「ゆっ!おにいさん!こっちに・・・」 赤ちゃんはとってもゆっくりできてるから心配ないよと伝えよう、 それから子供達にも美味しいごはんのお礼をさせよう、 そう思い、お兄さんに声をかけようとする母れいむ。 だが、その声が遮られる。 「ゆぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」 赤まりさが、耳をつんざくような絶叫を放った。 「ゆっ!?どうしたの!?おちびちゃん!?しっかりしてね!! どこかいたいの?!」 「ゆびぇぇぇぇぇぇぇ!!にんげん!!!にんげんしゃんがいりゅよぅ!!! ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!!やめちぇぇぇ!!!ゆぴゃぁぁぁっ!!! まりじゃに、ひぢょいこちょちないじぇぇ!!!!!!!!」 半狂乱になって泣き叫ぶ赤まりさ。 赤まりさの叫び声に、姉妹達も次々に眠りから醒め、 尋常ならざる赤まりさの声に、何事かと心配そうに様子を伺っている。 「ゆゆっ!?ちがうよ!おちびちゃん! あのにんげんさんは、いいにんげんさんだよ! おちびちゃんのことたすけてくれた、やさしいおにいさんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 この赤ちゃんは、人間の顔が区別できないのだろう。 自分を虐めた悪い人間も、あの優しい人間も、 みんな同じに見えるに違いない。 そう理解した母れいむは、必死に赤まりさを宥めようとする。 それに、赤ちゃんの命の恩人であり、美味しいごはんの恩人でもある お兄さんに聞かれたら気を悪くさせてしまう。 まりしゃのおかあしゃんは何を言っているのだろう。 あの人間さんが、良い人間さん?優しいお兄さん? 違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。 そんな筈はない。だって、まりしゃは忘れていない。 絶対に忘れられない。あの人間さんの笑顔。 まりしゃの本当の姉妹達と、本当のお父さんとお母さん達を、 とってもとってもゆっくりできないひどい目に遭わせたあの笑顔。 あの怖い怖い怖い怖い怖い怖い笑顔。 「ゆ゛え゛ぇぇぇぇん!!!ぢぎゃうにょぉぉぉぉ!!!! ぎょわいにんげんざんにゃにょょぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「ゆぅぅ・・・・おちびちゃん・・・・」 赤まりさは、必死になって母れいむに訴えかけるが、 必死になればなるほど、恐怖だけが先に立ち、言葉は伝わらない。 どうしよう、どうしよう、どうしよう。 このままでは、まりしゃだけではなく、 優しいお母さんと、お姉ちゃん達まで、あの怖い人間に・・・! 「ゆっぐ・・・!!にげぇぇ!!にげちぇぇぇぇ!!! にんげんざんがぎゅるよぉぉぉ!!!!!」 「ゆっ!!おちびをいじめた、わるいにんげんがくるのかだぜ!! そんなやつ、まりさがひとひねりにしてやるんだぜ!!!」 漠然と状況を把握した三女まりさがいきりたつ。 「「ゆっくりできないにんげんは、おねえちゃんたちがゆるさないよ!!」」 長女まりさと、次女れいむも、赤まりさを囲むようにして、 どこにいるかもわからない敵に向かって、 ぷっくぅぅぅ!と全力で威嚇をする。 「ゆすん・・・おにぇちゃん・・・!」 やっと自分の話を理解してくれる相手が現れたと、希望に目を輝かす赤まりさ。 「ち、ちがうよ!れいむのおちびちゃんたち! ちゃんとれいむのおはなしきいてね!?きいてね!? どぼじでぎいでぐれないのぉぉぉぉ!?!?」 子供達が更に事態をややこしくしようとしていると感じ、 ほとほと困り果てる母れいむ。 無論、この場合、判断を誤っているのは、母れいむただ一匹なのだが、 そんな事には気づく筈もない。 その時だった。 ポツ・・・・・・ポツ・・・ポツ、ポツ、ポツ、ザー・・・ この季節の天気は移ろいやすい。 ゆっくり達が賑やかにゆんゆん騒いでいる間に、 いつの間にやら空が掻き曇り、あっと言う間に大粒の雨が降り出した。 「「「「あめさんだぁぁ!?」」」」 赤まりさ以外、今までのドタバタの事も忘れ、 空を仰いで恐怖の叫びを上げるゆっくり一家。 「ゆっ!?やめてね!?あめさんはゆっくりできないよ!!」 「あめさんは、ゆっくりふらないでね!ふらないでね! かわいいれいむがゆっくりできないよ! どぉぉじで、あめざんふるのぉぉぉぉ!?」 「やめちぇね!れーみゅとけちゃくないよ!?」 「おちびちゃんたち!! ゆっくりしないで、おかあさんのおくちにかくれてね! いそいでおうちかえるよ!!」 母れいむが自力で動けない赤まりさを真っ先に口に咥えると、 他の子ゆっくり達を急かす。 「ゆぇ~ん!!みゃみゃ~!!」 「ゆっぐ!ゆっぐ!ゆっぐりできないんだじぇぇ!!」 わらわらと母れいむの口の中に逃げ込む子ゆっくり達。 全員が入ったのを確認すると、母れいむはボヨン!ボヨン!と 全速力で降りしきる雨の中を駆け出した。 隠れていた木の陰から出てきて、 母れいむの背中に向かってヒラヒラと手を振る、虐待お兄さん。 「あぶねぇ、あぶねぇ。気づかれるとは迂闊だった・・・ ま、間一髪セーフだな。これで"メッキ"が剥がれるだろう。 ああ・・・赤ゆ潰してぇなぁ・・・」 -------------------------------- どうしよう、どうしよう、どうしよう。 なんとかして、怖い人間のことをお母さん達に伝えなきゃ。 何と言ったら、わかってもらえるんだろうか。 とにかく、お家についたら、ゆっくり話を聞いてもらうしかない。 母れいむの口の中で、赤まりさはそれだけを考えていた。 本当は、今すぐにでも、傍にいるお姉ちゃん達に聞いてもらいたかったが、 当の姉ゆっくり達は、いまだ雨への恐怖にパニック状態。 赤ゆっくりの目から見ても、 まともに話を聞いてもらえる状態ではないことは一目瞭然だった。 「ゆひぃぃ・・・・ゆひぃぃ・・・・・・ お、おうちについたよ!おちびちゃんたち!ゆっくりでてきてね!」 頭の饅頭皮がふやけ、溶けかかりながらも、 辛うじて、巣に逃げ込むことができた母れいむ。 あんぐりと口を開けて、子ゆっくり達を外に出す。 幸いにして、母れいむの唾液で溶けることもなく、皆無事だったようだ。 「おちびちゃんもでてね!」 ベッ!と赤まりさを吐き出す。 「ゆっ!おかあしゃん!おにぇちゃん! まりしゃのおはなし、ゆっきゅりきいちぇね!!」 姉妹達と安堵の言葉を交わすのも惜しく、話し始めようとする赤まりさ。 だが、何か様子がおかしい。 自分を見るお姉ちゃん達の表情、そして、お母さんの表情。 何だろう。 どこかで見たことがある表情だ。 乏しい餡子脳をフル回転させて記憶を辿る。 そして、一つの記憶に辿り着く。 それと同時 「「「「「「「ゆぎゃあぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!? おばげだぁぁぁぁ!?!?!?!?」」」」」」」 それは恐怖の表情。 赤まりさの本当の親と本当の妹が、赤まりさに向けた最後の表情、 そのものだったのだ。 つづく 選択肢 投票 しあわせー! 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「ゆっくちー」 実ゆっくりにも生まれる直前には意識がある。 この実ゆっくりはまりさ種で親もまりさ種だ。 まだ茎に繋がってるために体を自由に動かせないが、隣には自分の姉妹であろう 実ゆっくりが連なっているのを感じる。 「ゆー♪」「ゆーゆー♪」「ゆっくちおおきくなりゅよ」「もうすぐうまれりゅりょ」 お母さんまりさがいて、自分と同じようにこれから生まれる姉妹がたくさんいる。 きっとこれからゆっくりした人生が待っているんだと信じて疑わない実まりさであった。 『肥料用まりさの一生』 ゆらゆらゆら・・・プチ 「ゆっくちおちりゅよ!」 赤まりさの誕生の瞬間である。 ぼとっ 柔らかい球体の上に赤まりさは落ちた。 「ゆっくちちていっちぇね!」 「おかあちゃんどこ~」「ゆっくちできにゃい~」「おみょいよ~」 「ゆ?」 お母さんまりさが赤まりさのためにひいたのだと思われる柔らかい床は しゃべる球体の大群であった事に違和感を感じた。 それに「ゆっくりしていってね!」と返してくれるはずの親の声が聞こえない。 かわりに何か別の声が聞こえる。 「ゆ~ん?」 と、薄暗い地面を見てみるとそこにはたくさんの赤まりさや赤ありすがいた。 「おみょいよ!」「ゆっくちどいてね!」「ちゅぶれりゅよ」 赤まりさは慌てて、そこをどこうと動くが丸みのある壁にあたって外に出ることが出来ない。 人間が見ればバケツの中にいる事がすぐにわかるが 赤まりさにとっては未知の世界であった。 右へ行っても左へ行っても足元には赤まりさに赤ありす。 踏みつけると、口々に文句を行って来る。 「どうしゅればいいにょ!」 そこへ上から他の実ゆっくりが降ってきた。 「ゆっ!」 赤まりさはゆっくりしないで素早く身をひるがえす。 プチプチプチ ぼとっぼとっぼとっ 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」」」 たいがいの赤ゆっくりはこの時に上から降ってきた複数の実ゆっくりに潰されて すぐに動くことが出来ない程度のダメージを負う そして、立ち直るころには更に次の実ゆっくりが落ちてきて重量が増し バケツの下側から脱出できないまま潰れて一生を終えるのだ。 しかし、幸運なことに今、この赤まりさは実ゆっくりの落下に巻き込まれず そしてバケツ内に赤ゆっくりがすでに8割5分くらいまで溜まっていたことで 頭上にある幾つもの茎に口が届き、つかまりよじ登ることが出来た。 「ゆっ!ゆっ!」 自分の置かれている状況をまったく理解できていない赤まりさだが ともかく、ここから脱出しないと上から落ちてくる実に潰されてゆっくり出来なくなる それだけは理解できた。 「そこにいるのは、まりさのあかちゃんなの?」 「ゆ、おかーしゃん?」 幾重にもなる茎は赤まりさ程度の重さにちぎれず 根元までたどり着くと、そこは地面よりもやや高い机の上であった。 暗がりで声のする方がよく見えないが、この声の元がおかーさんなんだろうか 赤まりさはおっかなびっくりしながら近づいた。 「しっ・・・こえをあげないでよくきいてね」 「ゆ?」 「おかーさんはここからうごけないから、あかちゃんだけでもゆっくりしてね」 「ゆゆ?」 「にんげんにみつからないようにおかーさんのあたまのしたにはいってね くきがたくさんだからみつからないはずだよ」 赤まりさは言うとおりに生い茂る茎の根元に身を隠した。 「ゆ・・・これじゃゆっくち「もっといっぱいあかちゃんつくりましょーね!」 暗がりでよく見えなかったが親まりさの他に成体のありすがいた。 そして、親まりさは仰向けに寝かされており、そこからピクリとも動く気配がない。 体には管が繋がっていた。 「「んほぉぉおおおおお、すっきりー!」」 ビクッ ・・・と突然の親とアリスの感極まった声に驚く そして、自分の隠れている茎の根元から更に新しい茎がにょきにょきと生えてきた。 その茎は10個ほどの実をつけており、その下にはバケツが設置されている。 さっき自分はそのバケツから脱出してここまで登ってきたのだ。 赤まりさには読むことはかなわないが、バケツには”肥料用”とレッテルが貼られていた。 ジッっと隠れて息を殺す赤まりさ 「・・・ゆっくちできにゃいよ」 成体アリスが親から離れてどこかへ行ってから小声で呟いた。 「あかちゃんごめんね、これからだいじなことをはなすからゆっくりきいてね」 親まりさは語りだす。 「ここにいたらおかーさんもあかちゃんもみんなころされるよ でも、でることもできないの だからあかちゃんはせめてずっとそこにかくれててね」 「ゆ”ゆ”」 親まりさの話は衝撃的な内容だった。 ここにいても死ぬし、出ようとしても死ぬ 唯一の選択肢はずっと親の頭の根元の茎に隠れていること。 天窓から日が差し込み、親まりさの皮が伸ばされ そこを杭のようなもので打ち付けてあるのが見えた。 これでは動くことが出来ない。 「おかーしゃん、いまとってあげるりゅね!」 赤まりさは親が杭で動けないから出れないんだと思い 杭を口で咥えて抜こうとする。 「だめだよあかちゃん、にんげんにみつかったらもとどおりになるし あかちゃんがいることがばれちゃうよ」 「ゆぅ・・・」 「それより、くきをいっぽんおかーさんのおくちまでもってきてね」 赤まりさは言われたとおり、実のついてない軽く小さな茎を摘んで 親まりさの口へと茎を渡す。 「むっちゃ、むっちゃ・・・あかちゃん、おかーしゃんのくちにくちをつけてね」 言われるがまま口をつけると柔らかく噛み砕いた茎を赤まりさの口へ押し込んだ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「こうやって、おかあさんがたべられるようにするからだいじょうぶだよ」 この大きなまりさはやっぱり自分のお母さんなんだ 赤まりさは、そのお母さんがヒドイ目に合っているのと自分の境遇とで涙がでてきた。 「ぺーろぺーろ」 「あかちゃん、なみだをふいてね、おくちにたべかすがついてるよ」 赤まりさの涙と口の周りの食べかすを舌を伸ばして器用に拭いてくれる。 「おかーしゃん、ゆゆ~ん」 ガタンッ 物音がして、咄嗟に元通り茎の根元に隠れる赤まりさ。 コツコツコツッ・・・と革靴の足音が徐々にこちらへ近づいてくる。 きっとこれが人間だろう。赤まりさは直感した。 「チッ、これだから新人に任せてられねえんだ 肥料用のバケツがいっぱいじゃねーか 半分まで溜まったら取り替えるよう言ったのにしょうがねぇ」 満杯に近いバケツを重そうに持ち上げて、新しくからっぽのバケツに取り替える。 その時、人間はなにかを見つけた。 「おっ、おちびちゃんが1匹にげてるじゃねーか」 赤まりさは見つかったのだと思って震え上がる。 しかし、人間は身をかがめると茎の根元ではなく バケツの真下へと手を伸ばした。 そこにはバケツからあふれて落下し虫の息になっている赤まりさがいた。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「ははは、おしかったなぁ せっかく逃げられたのに、またクソ溜めの中だぜ!」 落ちている赤まりさを拾い上げバケツの中に戻す。 きっと、自分と同じように脱出しようとして茎ではなく壁伝いを乗り越えたため 落下して体を打ちつけたのだろう。 まさしく自分の分身が今、地獄へと戻された。 人間は笑いながら満杯のバケツをもって部屋を後にした。 「ごめんね、ごめんね・・・」 親まりさはしきりに呟いていた。 赤まりさは「すーりすーり」と親まりさの顔にすりよると 親まりさは子供のように 「ゆっぐ、ゆっぐ、ゆえーんゆえーん」と泣き出した。 赤まりさも一緒になって 「ゆ~んゆ~ん」と泣き その日はいつの間にか、疲れて眠っていた。 ー朝ー 「ゆっくち・・・」 ゆっくちちていっちぇね!と言おうとして ぐっとこらえる赤まりさ 親まりさが 「ゆっくりしていってね!」 と言うと、今は大丈夫なんだと思い赤まりさも 「ゆっくちちていっちぇね!」と返す 「ゆーしょ、ゆーしょ」と茎を一本摘んで 親まりさに噛んでもらい 「むーしゃむーしゃ」と朝ごはんにする。 親まりさと赤まりさ、二匹はそれから2時間くらい ゆっくりとした時間を過ごした。 天窓から射す日光は茎と実にあたるように調整されており 根元にいる赤まりさもゆっくりできた。 まるで二匹で草原へピクニックへ来たような気分になり れいむ種の様に「ゆ~♪」とお歌を唄った。 そんな幸せな時間も間もなく終わる。 スピーカーからラジオ体操の音楽が鳴り出し、それが終了すると その部屋に人間が現れ、そして成体ありすが親まりさを犯す。 赤ちゃんが茎から生まれると、バケツに次々と落ち 悲痛な叫び声が心を打つ。 「ゆっくちちて・・・いちゃい!」「ゆっくち・・・ゆぐぅ!」 その間、親まりさは「ごめんね、ごめんね」と 念仏の様に機械的に謝り続けた。 赤まりさも震えながら祈るように目を閉じ、茎の根元に親の体温を感じつつ、すがった。 ー正午ー バケツには半分ほど赤ちゃんが溜まり、それを持って人間は出て行く 空っぽのバケツを実を受けやすい様な位置に置くと あとには成体ありすだけが残り、親まりさを犯し続けた。 体に繋がった管はオレンジジュースを点滴のように親まりさに補充し 延々と、その作業は続く。 赤まりさはおなかが空いていたが、成体ありすに見つかってもまずいので 我慢してこらえた。 ー夕方ー またバケツ半分ほどに赤ちゃんが溜まり 人間が来て、今度はバケツと共にありすも回収していく。 ここからは、親まりさと赤ありす2匹だけのゆっくりできる時間だ。 しかし、朝のようにのんびりとゆっくりしたりはしない まず最初にやることは、地面を確認して生き残っている姉妹はいないか確かめる事。 ひょっとしたら自分以外にも生き残ったゆっくりがいるかもしれない。 それから、茎を親まりさに噛んでもらい しあわせな時間を過ごす。 皮肉にも、この悪環境が赤まりさに他人を思いやる心や 野良にはありえない知恵をフル回転させること、時間を無駄にしない事を学ばせた。 親まりさが、ここでなぜ産む機械に等しい拷問を受けているいるのか その理由はかつて畑を荒らした事にあった。 冬篭りのための食料不足とはいえ、その畑にいたおじいさんをつきとばし 農作物を食い荒らし、そこを自分の家にした。 親れいむと子まりさ、子れいむ、そしてこの親まりさの家族構成で ゆっくりとしたのち、人間達に捕獲され今に至るのだ。 その経緯も赤まりさに何度も説明したことで いまや、ゆっくりブリーダーに教育されたゆっくりに匹敵するモラルを この赤まりさは有していた。 ー7日後ー 赤まりさの体はプチトマトサイズではなく野球のボールくらいの大きさになっていた。 後もう少し、例えるならソフトボールサイズまで成長したら いくら茎が生い茂っていても、不自然なふくらみから赤まりさは見つかってしまうだろう。 もはや赤まりさとは呼べない立派な子まりさなのである。 昼間の過酷な時間を過ごした2匹。 おもむろに親まりさは口を開いた。 「あかちゃん、ううん・・・まりさ これから、ゆっくりだいじなことをいうからきいてね」 まるで初日の時のように神妙な面持ちだ。 「ゆゆ?」 子まりさも普段とは違う空気を察する。 「よこのぱいぷにあながあいてるから、そこからかわにでて およいでとおくへにげてね」 別れの時である。 子まりさもゆっくり理解した。 「ゆゆ~ん」 すりよる子まりさを、杭の痛みに耐えてわずかに体を動かし突き飛ばす。 もし、ここに残ると子まりさが言い出せば確実に助からないからだ。 しかし、パイプを伝っても外の川につながっているとは限らない 運よく、川に出られたとしても一度も帽子泳ぎを教えていないこの子まりさが 上手に逃げ切れるかもわからない。 ここにいれば後3日は平和に過ごせるかもしれない。 断腸の思いの中 親まりさは、子まりさを真にゆっくりさせる可能性を選んだのだ。 子まりさはパイプを伝って川にでる決心が出来た。 ガタンッ ガラガラ! 人間が部屋に入ってきた。 「「ゆゆ!」」 間が悪かった ここまでは幸運の連続であったが、ついにそれが尽きてしまったのか あの人間が部屋に道具を忘れたため、取りに戻って来たのだ。 ”子まりさは見つかった” 「な!ガキがいるじゃねーか!」 人間はゆっくりとは比べものにならない速さで子ゆっくりに近づく。 その時、親まりさが男を突き飛ばした。 ガスンッ! 体長60センチ、体重40キロの塊である。 殺傷能力はなくとも男は体制を崩し尻餅をついた。 杭を無理やり引きちぎった親まりさの体からは 餡子が致命的なほど漏れ出し、それでもなお あの日、畑で老人を突き飛ばしたよりも力強く そして後悔にさいなまれることになったあのセリフを言った! 「ごごは、まりざのおうぢだよ! ゆっぐりでぎないにんげんは、ごごがらででいっでね!ばがなのぢぬの!」 「こ・・・この糞饅頭 ころしてやる!ころしてやるぞ!」 完全に意識は子まりさから反れた。 子まりさは涙ぐみ 親まりさの最期の頑張りを無駄にしないため 振り返らずにパイプの中へと飛び込んだ 実は、このパイプは川へつながっていない。 追い討ちをかける様な不幸 ただ、ぐるっと施設内を巡る空調につながるパイプであった。 それを希望的観測から川に繋がっていると解釈していたのだ。 それでも子まりさはパイプ内を走る やがて、パイプの別の裂け目を見つけそこへ飛び込む そこで更なる地獄を見た。 大型のミキサーに生きたままかけられる姉妹達 いや、この施設には親のように囚われているゆっくりがいっぱいいて それがここに集められ畑にまく肥料にされていたのだ。 ゆっくりの餡子は良質の肥料になる。 やがて警報がけたたましく鳴り響く。 ゆっくりを逃がせば近隣の住民に被害を与え、その賠償はこの施設へと回ってくるのだ だから、ゆっくりの管理は最重要事項であり もし塀の外へ脱出するようなことがあれば懲戒の対象となりうる。 子まりさは祈る気持ちで近くの袋に飛び込んだ。 そこへ、たくさんの人間の足音が聞こえる。 もうダメだ・・・。 END どれくらいの時間が流れただろう・・・ 子まりさは袋を内側のほつれたところから破り、古びた農屋で目を覚ました。 飛び込んだ袋は出荷する肥料の袋だったのだ。 時刻は明けの前の4時~5時といったところか、農屋の外はヒンヤリとした空気 そしてまだ薄暗い。 畑には野菜が見えるが、子まりさはブルッっと震えると 目もくれず森のほうへと走り出した。 「ゆっくりしていってね!」 大声で叫ぶ子まりさ しばらく返事は返ってこなかったが 時間差で「ゆっくりしていってね!」 とあちこちから返ってきた。 1匹の親まりさくらいのサイズの成体まりさが眠そうな目で迷惑そうな顔をして 「いま、なんじだとおもってるの! はやすぎるよ、ばかなの!しぬの!」と怒っている 子まりさは大泣きしながら謝った。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 と、泣き笑いしながら何度も何度も謝った。 後にこの子まりさはドスまりさへと成長する。 それは、また別の物語である。 過去の作品:ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 まりさの皮を被ったアリス 作者:まりさ大好きあき このSSに感想を付ける
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「ゆっくちー」 実ゆっくりにも生まれる直前には意識がある。 この実ゆっくりはまりさ種で親もまりさ種だ。 まだ茎に繋がってるために体を自由に動かせないが、隣には自分の姉妹であろう 実ゆっくりが連なっているのを感じる。 「ゆー♪」「ゆーゆー♪」「ゆっくちおおきくなりゅよ」「もうすぐうまれりゅりょ」 お母さんまりさがいて、自分と同じようにこれから生まれる姉妹がたくさんいる。 きっとこれからゆっくりした人生が待っているんだと信じて疑わない実まりさであった。 『肥料用まりさの一生』 ゆらゆらゆら・・・プチ 「ゆっくちおちりゅよ!」 赤まりさの誕生の瞬間である。 ぼとっ 柔らかい球体の上に赤まりさは落ちた。 「ゆっくちちていっちぇね!」 「おかあちゃんどこ~」「ゆっくちできにゃい~」「おみょいよ~」 「ゆ?」 お母さんまりさが赤まりさのためにひいたのだと思われる柔らかい床は しゃべる球体の大群であった事に違和感を感じた。 それに「ゆっくりしていってね!」と返してくれるはずの親の声が聞こえない。 かわりに何か別の声が聞こえる。 「ゆ~ん?」 と、薄暗い地面を見てみるとそこにはたくさんの赤まりさや赤ありすがいた。 「おみょいよ!」「ゆっくちどいてね!」「ちゅぶれりゅよ」 赤まりさは慌てて、そこをどこうと動くが丸みのある壁にあたって外に出ることが出来ない。 人間が見ればバケツの中にいる事がすぐにわかるが 赤まりさにとっては未知の世界であった。 右へ行っても左へ行っても足元には赤まりさに赤ありす。 踏みつけると、口々に文句を行って来る。 「どうしゅればいいにょ!」 そこへ上から他の実ゆっくりが降ってきた。 「ゆっ!」 赤まりさはゆっくりしないで素早く身をひるがえす。 プチプチプチ ぼとっぼとっぼとっ 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」」」 たいがいの赤ゆっくりはこの時に上から降ってきた複数の実ゆっくりに潰されて すぐに動くことが出来ない程度のダメージを負う そして、立ち直るころには更に次の実ゆっくりが落ちてきて重量が増し バケツの下側から脱出できないまま潰れて一生を終えるのだ。 しかし、幸運なことに今、この赤まりさは実ゆっくりの落下に巻き込まれず そしてバケツ内に赤ゆっくりがすでに8割5分くらいまで溜まっていたことで 頭上にある幾つもの茎に口が届き、つかまりよじ登ることが出来た。 「ゆっ!ゆっ!」 自分の置かれている状況をまったく理解できていない赤まりさだが ともかく、ここから脱出しないと上から落ちてくる実に潰されてゆっくり出来なくなる それだけは理解できた。 「そこにいるのは、まりさのあかちゃんなの?」 「ゆ、おかーしゃん?」 幾重にもなる茎は赤まりさ程度の重さにちぎれず 根元までたどり着くと、そこは地面よりもやや高い机の上であった。 暗がりで声のする方がよく見えないが、この声の元がおかーさんなんだろうか 赤まりさはおっかなびっくりしながら近づいた。 「しっ・・・こえをあげないでよくきいてね」 「ゆ?」 「おかーさんはここからうごけないから、あかちゃんだけでもゆっくりしてね」 「ゆゆ?」 「にんげんにみつからないようにおかーさんのあたまのしたにはいってね くきがたくさんだからみつからないはずだよ」 赤まりさは言うとおりに生い茂る茎の根元に身を隠した。 「ゆ・・・これじゃゆっくち「もっといっぱいあかちゃんつくりましょーね!」 暗がりでよく見えなかったが親まりさの他に成体のありすがいた。 そして、親まりさは仰向けに寝かされており、そこからピクリとも動く気配がない。 体には管が繋がっていた。 「「んほぉぉおおおおお、すっきりー!」」 ビクッ ・・・と突然の親とアリスの感極まった声に驚く そして、自分の隠れている茎の根元から更に新しい茎がにょきにょきと生えてきた。 その茎は10個ほどの実をつけており、その下にはバケツが設置されている。 さっき自分はそのバケツから脱出してここまで登ってきたのだ。 赤まりさには読むことはかなわないが、バケツには”肥料用”とレッテルが貼られていた。 ジッっと隠れて息を殺す赤まりさ 「・・・ゆっくちできにゃいよ」 成体アリスが親から離れてどこかへ行ってから小声で呟いた。 「あかちゃんごめんね、これからだいじなことをはなすからゆっくりきいてね」 親まりさは語りだす。 「ここにいたらおかーさんもあかちゃんもみんなころされるよ でも、でることもできないの だからあかちゃんはせめてずっとそこにかくれててね」 「ゆ”ゆ”」 親まりさの話は衝撃的な内容だった。 ここにいても死ぬし、出ようとしても死ぬ 唯一の選択肢はずっと親の頭の根元の茎に隠れていること。 天窓から日が差し込み、親まりさの皮が伸ばされ そこを杭のようなもので打ち付けてあるのが見えた。 これでは動くことが出来ない。 「おかーしゃん、いまとってあげるりゅね!」 赤まりさは親が杭で動けないから出れないんだと思い 杭を口で咥えて抜こうとする。 「だめだよあかちゃん、にんげんにみつかったらもとどおりになるし あかちゃんがいることがばれちゃうよ」 「ゆぅ・・・」 「それより、くきをいっぽんおかーさんのおくちまでもってきてね」 赤まりさは言われたとおり、実のついてない軽く小さな茎を摘んで 親まりさの口へと茎を渡す。 「むっちゃ、むっちゃ・・・あかちゃん、おかーしゃんのくちにくちをつけてね」 言われるがまま口をつけると柔らかく噛み砕いた茎を赤まりさの口へ押し込んだ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「こうやって、おかあさんがたべられるようにするからだいじょうぶだよ」 この大きなまりさはやっぱり自分のお母さんなんだ 赤まりさは、そのお母さんがヒドイ目に合っているのと自分の境遇とで涙がでてきた。 「ぺーろぺーろ」 「あかちゃん、なみだをふいてね、おくちにたべかすがついてるよ」 赤まりさの涙と口の周りの食べかすを舌を伸ばして器用に拭いてくれる。 「おかーしゃん、ゆゆ~ん」 ガタンッ 物音がして、咄嗟に元通り茎の根元に隠れる赤まりさ。 コツコツコツッ・・・と革靴の足音が徐々にこちらへ近づいてくる。 きっとこれが人間だろう。赤まりさは直感した。 「チッ、これだから新人に任せてられねえんだ 肥料用のバケツがいっぱいじゃねーか 半分まで溜まったら取り替えるよう言ったのにしょうがねぇ」 満杯に近いバケツを重そうに持ち上げて、新しくからっぽのバケツに取り替える。 その時、人間はなにかを見つけた。 「おっ、おちびちゃんが1匹にげてるじゃねーか」 赤まりさは見つかったのだと思って震え上がる。 しかし、人間は身をかがめると茎の根元ではなく バケツの真下へと手を伸ばした。 そこにはバケツからあふれて落下し虫の息になっている赤まりさがいた。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「ははは、おしかったなぁ せっかく逃げられたのに、またクソ溜めの中だぜ!」 落ちている赤まりさを拾い上げバケツの中に戻す。 きっと、自分と同じように脱出しようとして茎ではなく壁伝いを乗り越えたため 落下して体を打ちつけたのだろう。 まさしく自分の分身が今、地獄へと戻された。 人間は笑いながら満杯のバケツをもって部屋を後にした。 「ごめんね、ごめんね・・・」 親まりさはしきりに呟いていた。 赤まりさは「すーりすーり」と親まりさの顔にすりよると 親まりさは子供のように 「ゆっぐ、ゆっぐ、ゆえーんゆえーん」と泣き出した。 赤まりさも一緒になって 「ゆ~んゆ~ん」と泣き その日はいつの間にか、疲れて眠っていた。 ー朝ー 「ゆっくち・・・」 ゆっくちちていっちぇね!と言おうとして ぐっとこらえる赤まりさ 親まりさが 「ゆっくりしていってね!」 と言うと、今は大丈夫なんだと思い赤まりさも 「ゆっくちちていっちぇね!」と返す 「ゆーしょ、ゆーしょ」と茎を一本摘んで 親まりさに噛んでもらい 「むーしゃむーしゃ」と朝ごはんにする。 親まりさと赤まりさ、二匹はそれから2時間くらい ゆっくりとした時間を過ごした。 天窓から射す日光は茎と実にあたるように調整されており 根元にいる赤まりさもゆっくりできた。 まるで二匹で草原へピクニックへ来たような気分になり れいむ種の様に「ゆ~♪」とお歌を唄った。 そんな幸せな時間も間もなく終わる。 スピーカーからラジオ体操の音楽が鳴り出し、それが終了すると その部屋に人間が現れ、そして成体ありすが親まりさを犯す。 赤ちゃんが茎から生まれると、バケツに次々と落ち 悲痛な叫び声が心を打つ。 「ゆっくちちて・・・いちゃい!」「ゆっくち・・・ゆぐぅ!」 その間、親まりさは「ごめんね、ごめんね」と 念仏の様に機械的に謝り続けた。 赤まりさも震えながら祈るように目を閉じ、茎の根元に親の体温を感じつつ、すがった。 ー正午ー バケツには半分ほど赤ちゃんが溜まり、それを持って人間は出て行く 空っぽのバケツを実を受けやすい様な位置に置くと あとには成体ありすだけが残り、親まりさを犯し続けた。 体に繋がった管はオレンジジュースを点滴のように親まりさに補充し 延々と、その作業は続く。 赤まりさはおなかが空いていたが、成体ありすに見つかってもまずいので 我慢してこらえた。 ー夕方ー またバケツ半分ほどに赤ちゃんが溜まり 人間が来て、今度はバケツと共にありすも回収していく。 ここからは、親まりさと赤ありす2匹だけのゆっくりできる時間だ。 しかし、朝のようにのんびりとゆっくりしたりはしない まず最初にやることは、地面を確認して生き残っている姉妹はいないか確かめる事。 ひょっとしたら自分以外にも生き残ったゆっくりがいるかもしれない。 それから、茎を親まりさに噛んでもらい しあわせな時間を過ごす。 皮肉にも、この悪環境が赤まりさに他人を思いやる心や 野良にはありえない知恵をフル回転させること、時間を無駄にしない事を学ばせた。 親まりさが、ここでなぜ産む機械に等しい拷問を受けているいるのか その理由はかつて畑を荒らした事にあった。 冬篭りのための食料不足とはいえ、その畑にいたおじいさんをつきとばし 農作物を食い荒らし、そこを自分の家にした。 親れいむと子まりさ、子れいむ、そしてこの親まりさの家族構成で ゆっくりとしたのち、人間達に捕獲され今に至るのだ。 その経緯も赤まりさに何度も説明したことで いまや、ゆっくりブリーダーに教育されたゆっくりに匹敵するモラルを この赤まりさは有していた。 ー7日後ー 赤まりさの体はプチトマトサイズではなく野球のボールくらいの大きさになっていた。 後もう少し、例えるならソフトボールサイズまで成長したら いくら茎が生い茂っていても、不自然なふくらみから赤まりさは見つかってしまうだろう。 もはや赤まりさとは呼べない立派な子まりさなのである。 昼間の過酷な時間を過ごした2匹。 おもむろに親まりさは口を開いた。 「あかちゃん、ううん・・・まりさ これから、ゆっくりだいじなことをいうからきいてね」 まるで初日の時のように神妙な面持ちだ。 「ゆゆ?」 子まりさも普段とは違う空気を察する。 「よこのぱいぷにあながあいてるから、そこからかわにでて およいでとおくへにげてね」 別れの時である。 子まりさもゆっくり理解した。 「ゆゆ~ん」 すりよる子まりさを、杭の痛みに耐えてわずかに体を動かし突き飛ばす。 もし、ここに残ると子まりさが言い出せば確実に助からないからだ。 しかし、パイプを伝っても外の川につながっているとは限らない 運よく、川に出られたとしても一度も帽子泳ぎを教えていないこの子まりさが 上手に逃げ切れるかもわからない。 ここにいれば後3日は平和に過ごせるかもしれない。 断腸の思いの中 親まりさは、子まりさを真にゆっくりさせる可能性を選んだのだ。 子まりさはパイプを伝って川にでる決心が出来た。 ガタンッ ガラガラ! 人間が部屋に入ってきた。 「「ゆゆ!」」 間が悪かった ここまでは幸運の連続であったが、ついにそれが尽きてしまったのか あの人間が部屋に道具を忘れたため、取りに戻って来たのだ。 ”子まりさは見つかった” 「な!ガキがいるじゃねーか!」 人間はゆっくりとは比べものにならない速さで子ゆっくりに近づく。 その時、親まりさが男を突き飛ばした。 ガスンッ! 体長60センチ、体重40キロの塊である。 殺傷能力はなくとも男は体制を崩し尻餅をついた。 杭を無理やり引きちぎった親まりさの体からは 餡子が致命的なほど漏れ出し、それでもなお あの日、畑で老人を突き飛ばしたよりも力強く そして後悔にさいなまれることになったあのセリフを言った! 「ごごは、まりざのおうぢだよ! ゆっぐりでぎないにんげんは、ごごがらででいっでね!ばがなのぢぬの!」 「こ・・・この糞饅頭 ころしてやる!ころしてやるぞ!」 完全に意識は子まりさから反れた。 子まりさは涙ぐみ 親まりさの最期の頑張りを無駄にしないため 振り返らずにパイプの中へと飛び込んだ 実は、このパイプは川へつながっていない。 追い討ちをかける様な不幸 ただ、ぐるっと施設内を巡る空調につながるパイプであった。 それを希望的観測から川に繋がっていると解釈していたのだ。 それでも子まりさはパイプ内を走る やがて、パイプの別の裂け目を見つけそこへ飛び込む そこで更なる地獄を見た。 大型のミキサーに生きたままかけられる姉妹達 いや、この施設には親のように囚われているゆっくりがいっぱいいて それがここに集められ畑にまく肥料にされていたのだ。 ゆっくりの餡子は良質の肥料になる。 やがて警報がけたたましく鳴り響く。 ゆっくりを逃がせば近隣の住民に被害を与え、その賠償はこの施設へと回ってくるのだ だから、ゆっくりの管理は最重要事項であり もし塀の外へ脱出するようなことがあれば懲戒の対象となりうる。 子まりさは祈る気持ちで近くの袋に飛び込んだ。 そこへ、たくさんの人間の足音が聞こえる。 もうダメだ・・・。 END どれくらいの時間が流れただろう・・・ 子まりさは袋を内側のほつれたところから破り、古びた農屋で目を覚ました。 飛び込んだ袋は出荷する肥料の袋だったのだ。 時刻は明けの前の4時~5時といったところか、農屋の外はヒンヤリとした空気 そしてまだ薄暗い。 畑には野菜が見えるが、子まりさはブルッっと震えると 目もくれず森のほうへと走り出した。 「ゆっくりしていってね!」 大声で叫ぶ子まりさ しばらく返事は返ってこなかったが 時間差で「ゆっくりしていってね!」 とあちこちから返ってきた。 1匹の親まりさくらいのサイズの成体まりさが眠そうな目で迷惑そうな顔をして 「いま、なんじだとおもってるの! はやすぎるよ、ばかなの!しぬの!」と怒っている 子まりさは大泣きしながら謝った。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 と、泣き笑いしながら何度も何度も謝った。 後にこの子まりさはドスまりさへと成長する。 それは、また別の物語である。 過去の作品:ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 まりさの皮を被ったアリス 作者:まりさ大好きあき このSSに感想を付ける
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「ゆっくちー」 実ゆっくりにも生まれる直前には意識がある。 この実ゆっくりはまりさ種で親もまりさ種だ。 まだ茎に繋がってるために体を自由に動かせないが、隣には自分の姉妹であろう 実ゆっくりが連なっているのを感じる。 「ゆー♪」「ゆーゆー♪」「ゆっくちおおきくなりゅよ」「もうすぐうまれりゅりょ」 お母さんまりさがいて、自分と同じようにこれから生まれる姉妹がたくさんいる。 きっとこれからゆっくりした人生が待っているんだと信じて疑わない実まりさであった。 『肥料用まりさの一生』 ゆらゆらゆら・・・プチ 「ゆっくちおちりゅよ!」 赤まりさの誕生の瞬間である。 ぼとっ 柔らかい球体の上に赤まりさは落ちた。 「ゆっくちちていっちぇね!」 「おかあちゃんどこ~」「ゆっくちできにゃい~」「おみょいよ~」 「ゆ?」 お母さんまりさが赤まりさのためにひいたのだと思われる柔らかい床は しゃべる球体の大群であった事に違和感を感じた。 それに「ゆっくりしていってね!」と返してくれるはずの親の声が聞こえない。 かわりに何か別の声が聞こえる。 「ゆ~ん?」 と、薄暗い地面を見てみるとそこにはたくさんの赤まりさや赤ありすがいた。 「おみょいよ!」「ゆっくちどいてね!」「ちゅぶれりゅよ」 赤まりさは慌てて、そこをどこうと動くが丸みのある壁にあたって外に出ることが出来ない。 人間が見ればバケツの中にいる事がすぐにわかるが 赤まりさにとっては未知の世界であった。 右へ行っても左へ行っても足元には赤まりさに赤ありす。 踏みつけると、口々に文句を行って来る。 「どうしゅればいいにょ!」 そこへ上から他の実ゆっくりが降ってきた。 「ゆっ!」 赤まりさはゆっくりしないで素早く身をひるがえす。 プチプチプチ ぼとっぼとっぼとっ 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」」」 たいがいの赤ゆっくりはこの時に上から降ってきた複数の実ゆっくりに潰されて すぐに動くことが出来ない程度のダメージを負う そして、立ち直るころには更に次の実ゆっくりが落ちてきて重量が増し バケツの下側から脱出できないまま潰れて一生を終えるのだ。 しかし、幸運なことに今、この赤まりさは実ゆっくりの落下に巻き込まれず そしてバケツ内に赤ゆっくりがすでに8割5分くらいまで溜まっていたことで 頭上にある幾つもの茎に口が届き、つかまりよじ登ることが出来た。 「ゆっ!ゆっ!」 自分の置かれている状況をまったく理解できていない赤まりさだが ともかく、ここから脱出しないと上から落ちてくる実に潰されてゆっくり出来なくなる それだけは理解できた。 「そこにいるのは、まりさのあかちゃんなの?」 「ゆ、おかーしゃん?」 幾重にもなる茎は赤まりさ程度の重さにちぎれず 根元までたどり着くと、そこは地面よりもやや高い机の上であった。 暗がりで声のする方がよく見えないが、この声の元がおかーさんなんだろうか 赤まりさはおっかなびっくりしながら近づいた。 「しっ・・・こえをあげないでよくきいてね」 「ゆ?」 「おかーさんはここからうごけないから、あかちゃんだけでもゆっくりしてね」 「ゆゆ?」 「にんげんにみつからないようにおかーさんのあたまのしたにはいってね くきがたくさんだからみつからないはずだよ」 赤まりさは言うとおりに生い茂る茎の根元に身を隠した。 「ゆ・・・これじゃゆっくち「もっといっぱいあかちゃんつくりましょーね!」 暗がりでよく見えなかったが親まりさの他に成体のありすがいた。 そして、親まりさは仰向けに寝かされており、そこからピクリとも動く気配がない。 体には管が繋がっていた。 「「んほぉぉおおおおお、すっきりー!」」 ビクッ ・・・と突然の親とアリスの感極まった声に驚く そして、自分の隠れている茎の根元から更に新しい茎がにょきにょきと生えてきた。 その茎は10個ほどの実をつけており、その下にはバケツが設置されている。 さっき自分はそのバケツから脱出してここまで登ってきたのだ。 赤まりさには読むことはかなわないが、バケツには”肥料用”とレッテルが貼られていた。 ジッっと隠れて息を殺す赤まりさ 「・・・ゆっくちできにゃいよ」 成体アリスが親から離れてどこかへ行ってから小声で呟いた。 「あかちゃんごめんね、これからだいじなことをはなすからゆっくりきいてね」 親まりさは語りだす。 「ここにいたらおかーさんもあかちゃんもみんなころされるよ でも、でることもできないの だからあかちゃんはせめてずっとそこにかくれててね」 「ゆ”ゆ”」 親まりさの話は衝撃的な内容だった。 ここにいても死ぬし、出ようとしても死ぬ 唯一の選択肢はずっと親の頭の根元の茎に隠れていること。 天窓から日が差し込み、親まりさの皮が伸ばされ そこを杭のようなもので打ち付けてあるのが見えた。 これでは動くことが出来ない。 「おかーしゃん、いまとってあげるりゅね!」 赤まりさは親が杭で動けないから出れないんだと思い 杭を口で咥えて抜こうとする。 「だめだよあかちゃん、にんげんにみつかったらもとどおりになるし あかちゃんがいることがばれちゃうよ」 「ゆぅ・・・」 「それより、くきをいっぽんおかーさんのおくちまでもってきてね」 赤まりさは言われたとおり、実のついてない軽く小さな茎を摘んで 親まりさの口へと茎を渡す。 「むっちゃ、むっちゃ・・・あかちゃん、おかーしゃんのくちにくちをつけてね」 言われるがまま口をつけると柔らかく噛み砕いた茎を赤まりさの口へ押し込んだ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「こうやって、おかあさんがたべられるようにするからだいじょうぶだよ」 この大きなまりさはやっぱり自分のお母さんなんだ 赤まりさは、そのお母さんがヒドイ目に合っているのと自分の境遇とで涙がでてきた。 「ぺーろぺーろ」 「あかちゃん、なみだをふいてね、おくちにたべかすがついてるよ」 赤まりさの涙と口の周りの食べかすを舌を伸ばして器用に拭いてくれる。 「おかーしゃん、ゆゆ~ん」 ガタンッ 物音がして、咄嗟に元通り茎の根元に隠れる赤まりさ。 コツコツコツッ・・・と革靴の足音が徐々にこちらへ近づいてくる。 きっとこれが人間だろう。赤まりさは直感した。 「チッ、これだから新人に任せてられねえんだ 肥料用のバケツがいっぱいじゃねーか 半分まで溜まったら取り替えるよう言ったのにしょうがねぇ」 満杯に近いバケツを重そうに持ち上げて、新しくからっぽのバケツに取り替える。 その時、人間はなにかを見つけた。 「おっ、おちびちゃんが1匹にげてるじゃねーか」 赤まりさは見つかったのだと思って震え上がる。 しかし、人間は身をかがめると茎の根元ではなく バケツの真下へと手を伸ばした。 そこにはバケツからあふれて落下し虫の息になっている赤まりさがいた。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「ははは、おしかったなぁ せっかく逃げられたのに、またクソ溜めの中だぜ!」 落ちている赤まりさを拾い上げバケツの中に戻す。 きっと、自分と同じように脱出しようとして茎ではなく壁伝いを乗り越えたため 落下して体を打ちつけたのだろう。 まさしく自分の分身が今、地獄へと戻された。 人間は笑いながら満杯のバケツをもって部屋を後にした。 「ごめんね、ごめんね・・・」 親まりさはしきりに呟いていた。 赤まりさは「すーりすーり」と親まりさの顔にすりよると 親まりさは子供のように 「ゆっぐ、ゆっぐ、ゆえーんゆえーん」と泣き出した。 赤まりさも一緒になって 「ゆ~んゆ~ん」と泣き その日はいつの間にか、疲れて眠っていた。 ー朝ー 「ゆっくち・・・」 ゆっくちちていっちぇね!と言おうとして ぐっとこらえる赤まりさ 親まりさが 「ゆっくりしていってね!」 と言うと、今は大丈夫なんだと思い赤まりさも 「ゆっくちちていっちぇね!」と返す 「ゆーしょ、ゆーしょ」と茎を一本摘んで 親まりさに噛んでもらい 「むーしゃむーしゃ」と朝ごはんにする。 親まりさと赤まりさ、二匹はそれから2時間くらい ゆっくりとした時間を過ごした。 天窓から射す日光は茎と実にあたるように調整されており 根元にいる赤まりさもゆっくりできた。 まるで二匹で草原へピクニックへ来たような気分になり れいむ種の様に「ゆ~♪」とお歌を唄った。 そんな幸せな時間も間もなく終わる。 スピーカーからラジオ体操の音楽が鳴り出し、それが終了すると その部屋に人間が現れ、そして成体ありすが親まりさを犯す。 赤ちゃんが茎から生まれると、バケツに次々と落ち 悲痛な叫び声が心を打つ。 「ゆっくちちて・・・いちゃい!」「ゆっくち・・・ゆぐぅ!」 その間、親まりさは「ごめんね、ごめんね」と 念仏の様に機械的に謝り続けた。 赤まりさも震えながら祈るように目を閉じ、茎の根元に親の体温を感じつつ、すがった。 ー正午ー バケツには半分ほど赤ちゃんが溜まり、それを持って人間は出て行く 空っぽのバケツを実を受けやすい様な位置に置くと あとには成体ありすだけが残り、親まりさを犯し続けた。 体に繋がった管はオレンジジュースを点滴のように親まりさに補充し 延々と、その作業は続く。 赤まりさはおなかが空いていたが、成体ありすに見つかってもまずいので 我慢してこらえた。 ー夕方ー またバケツ半分ほどに赤ちゃんが溜まり 人間が来て、今度はバケツと共にありすも回収していく。 ここからは、親まりさと赤ありす2匹だけのゆっくりできる時間だ。 しかし、朝のようにのんびりとゆっくりしたりはしない まず最初にやることは、地面を確認して生き残っている姉妹はいないか確かめる事。 ひょっとしたら自分以外にも生き残ったゆっくりがいるかもしれない。 それから、茎を親まりさに噛んでもらい しあわせな時間を過ごす。 皮肉にも、この悪環境が赤まりさに他人を思いやる心や 野良にはありえない知恵をフル回転させること、時間を無駄にしない事を学ばせた。 親まりさが、ここでなぜ産む機械に等しい拷問を受けているいるのか その理由はかつて畑を荒らした事にあった。 冬篭りのための食料不足とはいえ、その畑にいたおじいさんをつきとばし 農作物を食い荒らし、そこを自分の家にした。 親れいむと子まりさ、子れいむ、そしてこの親まりさの家族構成で ゆっくりとしたのち、人間達に捕獲され今に至るのだ。 その経緯も赤まりさに何度も説明したことで いまや、ゆっくりブリーダーに教育されたゆっくりに匹敵するモラルを この赤まりさは有していた。 ー7日後ー 赤まりさの体はプチトマトサイズではなく野球のボールくらいの大きさになっていた。 後もう少し、例えるならソフトボールサイズまで成長したら いくら茎が生い茂っていても、不自然なふくらみから赤まりさは見つかってしまうだろう。 もはや赤まりさとは呼べない立派な子まりさなのである。 昼間の過酷な時間を過ごした2匹。 おもむろに親まりさは口を開いた。 「あかちゃん、ううん・・・まりさ これから、ゆっくりだいじなことをいうからきいてね」 まるで初日の時のように神妙な面持ちだ。 「ゆゆ?」 子まりさも普段とは違う空気を察する。 「よこのぱいぷにあながあいてるから、そこからかわにでて およいでとおくへにげてね」 別れの時である。 子まりさもゆっくり理解した。 「ゆゆ~ん」 すりよる子まりさを、杭の痛みに耐えてわずかに体を動かし突き飛ばす。 もし、ここに残ると子まりさが言い出せば確実に助からないからだ。 しかし、パイプを伝っても外の川につながっているとは限らない 運よく、川に出られたとしても一度も帽子泳ぎを教えていないこの子まりさが 上手に逃げ切れるかもわからない。 ここにいれば後3日は平和に過ごせるかもしれない。 断腸の思いの中 親まりさは、子まりさを真にゆっくりさせる可能性を選んだのだ。 子まりさはパイプを伝って川にでる決心が出来た。 ガタンッ ガラガラ! 人間が部屋に入ってきた。 「「ゆゆ!」」 間が悪かった ここまでは幸運の連続であったが、ついにそれが尽きてしまったのか あの人間が部屋に道具を忘れたため、取りに戻って来たのだ。 ”子まりさは見つかった” 「な!ガキがいるじゃねーか!」 人間はゆっくりとは比べものにならない速さで子ゆっくりに近づく。 その時、親まりさが男を突き飛ばした。 ガスンッ! 体長60センチ、体重40キロの塊である。 殺傷能力はなくとも男は体制を崩し尻餅をついた。 杭を無理やり引きちぎった親まりさの体からは 餡子が致命的なほど漏れ出し、それでもなお あの日、畑で老人を突き飛ばしたよりも力強く そして後悔にさいなまれることになったあのセリフを言った! 「ごごは、まりざのおうぢだよ! ゆっぐりでぎないにんげんは、ごごがらででいっでね!ばがなのぢぬの!」 「こ・・・この糞饅頭 ころしてやる!ころしてやるぞ!」 完全に意識は子まりさから反れた。 子まりさは涙ぐみ 親まりさの最期の頑張りを無駄にしないため 振り返らずにパイプの中へと飛び込んだ 実は、このパイプは川へつながっていない。 追い討ちをかける様な不幸 ただ、ぐるっと施設内を巡る空調につながるパイプであった。 それを希望的観測から川に繋がっていると解釈していたのだ。 それでも子まりさはパイプ内を走る やがて、パイプの別の裂け目を見つけそこへ飛び込む そこで更なる地獄を見た。 大型のミキサーに生きたままかけられる姉妹達 いや、この施設には親のように囚われているゆっくりがいっぱいいて それがここに集められ畑にまく肥料にされていたのだ。 ゆっくりの餡子は良質の肥料になる。 やがて警報がけたたましく鳴り響く。 ゆっくりを逃がせば近隣の住民に被害を与え、その賠償はこの施設へと回ってくるのだ だから、ゆっくりの管理は最重要事項であり もし塀の外へ脱出するようなことがあれば懲戒の対象となりうる。 子まりさは祈る気持ちで近くの袋に飛び込んだ。 そこへ、たくさんの人間の足音が聞こえる。 もうダメだ・・・。 END どれくらいの時間が流れただろう・・・ 子まりさは袋を内側のほつれたところから破り、古びた農屋で目を覚ました。 飛び込んだ袋は出荷する肥料の袋だったのだ。 時刻は明けの前の4時~5時といったところか、農屋の外はヒンヤリとした空気 そしてまだ薄暗い。 畑には野菜が見えるが、子まりさはブルッっと震えると 目もくれず森のほうへと走り出した。 「ゆっくりしていってね!」 大声で叫ぶ子まりさ しばらく返事は返ってこなかったが 時間差で「ゆっくりしていってね!」 とあちこちから返ってきた。 1匹の親まりさくらいのサイズの成体まりさが眠そうな目で迷惑そうな顔をして 「いま、なんじだとおもってるの! はやすぎるよ、ばかなの!しぬの!」と怒っている 子まりさは大泣きしながら謝った。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 と、泣き笑いしながら何度も何度も謝った。 後にこの子まりさはドスまりさへと成長する。 それは、また別の物語である。 過去の作品:ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 まりさの皮を被ったアリス 作者:まりさ大好きあき このSSに感想を付ける
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赤まりさは困惑していた。 目を覚ますと優しい家族のいる見慣れた森のおうちではなく見知らぬ場所にいたのだから当然だろう。 「ゆぅ、ここどこぉ?」 やっぱり、何処をどう見ても辺り一面見たことの無い場所だった。 それに家族の姿もなかった。 「おきゃーしゃん!おねーしゃん!れいみゅー!どこー!?」 仕方がないので家族を探しならが見たことも無い場所を歩くまりさは美味しそうな、それも適度に弱った虫と適度に千切られた野菜くずと見たことの無い黒っぽいものを見つけた。 「ゆゆっ!むしさんとはっぱしゃんがあるよ!」 家族探しで体力を消耗しお腹が空いていた赤まりさは美味しそうな虫に飛びつこうとする。 しかし、その瞬間、体の内側から今までに感じたことの無い猛烈な痛みを感じた。 「ゆぎぃぃぃいいいいいい!?いだい!いだいよおおおおおおお!!」 「ゆあああああああああああああああん!!ゆっぐ!・・・ゆっぐ!」 しばらくそこで泣きじゃくっていたが、誰も助けに来てくれないので諦めてまた虫に飛びついた。 すると、またしても先ほどの痛みが赤まりさに襲い掛かる。 「ゆぎょおおおおおおおおおおおおお!?」 先ほどと同じように苦しみ、のた打ち回るが誰も助けに来ない。 また助けを求めるのを諦めたまりさは、今度は野菜くずのほうに飛びついた。 が、その瞬間、さっきと同じように激痛が赤まりさを襲う。 「ゆげえええええええ!!?」 そして、3度目になるのた打ち回ってから、泣きじゃくり、諦めるという一連の行動を繰り返すと、しぶしぶ君の悪い黒い塊に口をつけた。 「ぺ~ろぺ~ろ・・・ゆゆっ!?にゃにこれ、しゅごくあまいよ!!」 思いのほかその黒いものが美味しく、ほかの2つを食べたときのように痛みに邪魔されなかった赤まりさはその黒いものをたらふく食べ、お腹がいっぱいになったところで眠りについた。 翌朝、赤まりさが目を覚ますと、そこには野菜くずと昨日の黒い物体が置かれていた。 「ゆゆっ!あまあまがいっぱいあるよ!」 当然、赤まりさは甘くて痛みを伴わない黒いものを真っ先に食べた。 その後で野菜くずに舌を伸ばすと、やはり苦痛が襲ってきたので、今後虫と野菜くずには近づかないことにした。 「きょうもおきゃーしゃんたちをゆっくちさがすよ!」 そう言って元気良く見たことも無い場所の探索を再開する赤まりさ。周囲を壁に囲まれている上に障害物がないのだから見渡していないものはいるはずもないのだが。 「ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪」 赤まりさは歌いながら見たことも無い場所をのんびりと歩いている。 どうやら、家族探しというのは建前で、ここには自分以外誰もいないことを理解しているようだ。 逆に言えば、外敵もいないため、大声で歌いながら散歩しても大丈夫だと判断したらしい。 そんな調子で家族探しと言う名の散歩をしているとお腹の空いてきた赤まりさの目の前に例の甘い黒い塊と白い皮のお饅頭が降って来た。 「ゆゆっ!またあまあまだよ!」 大喜びで黒い甘い物に飛びつく赤まりさ。その時、野菜くずを食べようとした時のあの痛みが襲いかかって来た。 「ゆっぐえええええええええええ!?!」 またしてものた打ち回りながら涙を零す赤まりさ。しかし、助けを求めることは諦めているので痛みが引いたら、すぐに泣き止んだ。 「ゆぅ・・・あまあまさんもいぢわるするんだね!」 「ならいいよ!まりしゃはこっちのしろいのをちゃべりゅもんっ!」 黒い塊に文句を言ってから、白いお饅頭に噛り付く赤まりさ。 「ゆゆっ!?・・・うっめ、これめっちゃうめぇ!」 あの若干しょっぱい皮の中から溢れ出す黒い塊。 その味こそ今までの黒い塊と変わりがなかったものの、皮のしょっぱさが黒いものの甘さを引き立てていて、黒い塊単体とは比較にならないほどに美味。 まりさは、夢中になってお饅頭を食べ、食べ終わったところでお昼寝をした。 夜中に赤まりさが目を覚ますと、そこには先ほどの白いお饅頭と自分より小さなリボンを失った赤れいむの死体が転がっていた。 「ゆぎゃ!?なにごでええええええ!!ごんなにょゆっくちできにゃいよおおおお!!」 同族の亡骸を見たことで酷く取り乱した赤まりさはその赤れいむだったものを体当たりで視界の外に追いやると、ホッと一息ついて白いお饅頭に飛びついた。 しかしその瞬間、先ほどの黒い塊のときと同じように体内を強烈な痛みが駆け巡り、赤まりさは激痛のあまりに動くことが出来なくなる。 「ゆぎぃぃいいい・・・またなのおおおおお・・・!?」 苦しみながらも、もう白い饅頭も食べられないことを悟った赤まりさは、酷く落ち込んだまま辺りにほかの食べ物がないことを確認し、再び眠りにつきました。 そして翌朝。目を覚ました時、目の前にはいつものように食べ物が置かれておらず、ただ昨日の赤れいむの死体が転がっているだけだった。 どれだけ散歩を続けても、どれだけ歌を歌っても全く食べられるものが見つからなかった。 「ゆぅ・・・おにゃかしゅいたよお・・・」 「しろいのさんどきょお?」 「かきゅれてないででてきちぇね!」 しかし、何を言ったところで出てこないものは出てこない。 そうして、気がつけば赤まりさは2日近く何も食べなかった。 「ゆぅ・・・」 空腹で目を覚ました赤まりさの目の前に転がっているのは昨日の赤れいむの亡骸。目を凝らしてみると、その少し潰れた体からあの黒い塊が漏れ出していることに気がついた。 「ゆゆっ!くろいのしゃんだよ!」 寝ぼけていたのかも知れないが、空腹に負けた赤まりさは赤れいむから漏れ出していたその黒い塊を舐めた。 「うっめ、これめっちゃうめぇ!」 そう口走りながら、赤れいむから漏れる黒い塊を一心不乱に舐め続ける赤まりさ。 「黒いのもっとたべちゃいよ!」 その欲求に従う赤まりさは今度は赤れいむの死体の傷口に口をつけて、そこから中身を吸い始めた。 「ゆっへ、えっはゆえぇ!」 それでも飽き足りなかった赤まりさはついに赤れいむの死体に噛り付いた。 「うっめ、これめっちゃうめぇ!!」 久しぶりに空腹を満たした赤まりさは心地よい眠りについた。 翌朝、目を覚ますと今度は自分より若干小さい、ちゃんと帽子を被った赤まりさの死体が転がっていた。 お腹が膨れたことで正常な思考を取り戻していた赤まりさはさっさとそれを視界の外へ追いやる。 それから、いつものように歌を歌いながら見慣れた場所になってしまった見知らぬ場所の散歩を開始した。 「ゆぅ・・・今日も何もなかったよ・・・」 そう言って赤まりさはお昼寝を始めた。が・・・ 「ゆぅぅううう・・・おにゃかがしゅいてねみゅれないよおおおお・・・」 空腹のせいで眠れないらしく、落ち着き無く、先ほど押しのけた赤まりさの死体のうろうろしている。 「ゆぅぅうう・・・でも・・・ゆっくちできにゃいよおおお・・・」 やはり意識がはっきりしているときに同族を食べる意思は無いらしい。 しかし、この前と違って「同族は美味しい」と理解してしまっているため、いざとなったら食べることを選択肢に入れている。 そうやってしばらく右往左往していると、空から突然野菜くずや餡子、虫などが降って来た。 「ゆゆっ!?おいしそうなものがいっぱいだよ!」 同族食いへの嫌悪感や、空腹による思考能力の低下、長期間の経験の欠如による忘却。 それらの要因が重なっていた赤まりさは満面の笑みを浮かべてそのご馳走の山にかぶりつこうとした。 が、瞬間・・・ 「ゆぎゃあああああああああああああ!?」 しばらく味わっていなかった痛みが久しぶりに体中を駆け巡った。 「ゆぎぃぃいいいい!ゆぐぅう・・・!ゆっぐ・・・」 そして、自分がそれらを食べることが出来ないのを思い出した赤まりさは、死人のような表情で小さな赤まりさの死体を食べ始めた。 「うっめ、めっちゃうめぇ!」 そうは言うものの、正気を失っていた昨日と違って双眸からは涙が溢れ出している。 微笑んでいるように見えるその表情はどこか引きつっているようにも見える。歓喜の声はどこか不自然に裏返っている。 やがて、小さな赤まりさを食べ終えた赤まりさは目を閉じた。 眠りにつくまで赤まりさの口からはずっと「ごめんにぇ・・・」という言葉が漏れていた。 そして翌朝。 今度はまりさの目の前に赤れいむの死体と、瀕死の赤れいむが転がっていた。 「ゆぅ・・・ゆぎゅぅ・・・いぢゃい、いぢゃいよおおお・・・」 「ゆっ!?だいじょうぶ?ゆっくちしっかりしてね!」 急いで駆け寄った赤まりさ。しかし、その赤れいむの有様には驚愕するしかなかった。 「ゆぎぇ!?な、なにごれえええええ!?」 酷く小柄で、同じ赤ちゃんの自分と比べても半分近い大きさしかなく、その上両目を失っている。 そして、底面をこんがり焼かれてしまっていて、二度と歩くことのかなわない体にされてしまっていた。 赤まりさは必死に手当てをしようとするが、傷を舐めるぐらいしか出来ない。 「ゆっ!?しょうだ!おいちいものをあげるから、ゆっくりまっててね!」 そう言って赤れいむをあやすと、まりさはおもむろに赤れいむの死体に近づいていった。 小さな赤ちゃんでも食べられるようにそれを噛み千切ろうとした時、またしてもあの痛みが赤まりさを襲った。 「ゆぎぃいいいいいいいいいい!?」 そして、その瞬間に赤まりさは理解した。 自分は、あの子を、食べるしかないのだ、と。 「ごべんね!おいしいのみつからにゃかったよ!」 瀕死の赤れいむに泣きながら詫びる赤まりさ。 けれど、赤れいむはその声に応じる余裕などなく、ただひたすら「いちゃいよおおお!くりゃいよおお!」と泣き喚くだけ。 赤まりさはそんな赤れいむが息を引き取るまで、ずっと寄り添っていた。 「おねーぢゃん・・・ありがちょー・・・もっちょいっちょにゆっきゅちちたかったよ・・・」 そんな言葉を残して旅立ってしまった赤れいむ。 「ごべんねぇ、れいむぅ・・・」 自分が何もしてあげられなかったことを悔やみながら、赤まりさは苦しそうな、しかし少しだけ幸せそうな表情の赤れいむの亡骸に口をつける。 が、無常にもあの痛みがそれを阻む。しかも、その痛みは長く続き、赤まりさは痛みに負けて意識を手放した。 赤まりさが目を覚ますと、そこに赤れいむの死体はなく、代わりに別の赤れいむがさっきの赤れいむと同じ有様で横たわっていた。 「ゆぅううう・・・いだいよぉ・・・」 小さな体をよじって苦しんでいる。しかし、自分は死んだゆっくりを食べられないことを学習した赤まりさにとって、それはもはや餌でしかなかった。 「ゆ、ゆっくりしんでね!」 そう言うと赤れいむが何か返事をする前に噛み付いて柔らかい皮を食いちぎる。 「―――っゆぎゃああああああ!」 その蛮行に赤れいむは悲鳴を上げるが、逃げることも抵抗することも出来ない。 その叫びを聞きながら、苦悶の表情を眺めながらも赤まりさは「これがれいむのためなんだよ!」と赤れいむに、そして何より自分自身に言い聞かせながら美味しい餌を食い漁った。 「うっめ、これめっちゃうめぇ!」 赤れいむを美味しくいただいた後、眠りについた赤まりさが目を覚ますと、元気な愛らしい赤れいむが自分の頬ずりをしていた。 「おねーしゃん、れいみゅといっちょにゆっくちちようね!」 舌足らずな言葉、純真無垢な笑顔。そして自分よりずっと小さい体躯。 どうやら赤まりさは何時の間にか子まりさと呼ぶにふさわしい大きさにまで成長していたらしい。 自分が大きくなっていた喜びと、自分を慕ってくれる家族が出来た喜びに子まりさは満面の笑みを浮かべる。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」 赤れいむの返事を聞き終えると、2匹はぴったりとくっついて頬をすり寄せ合った。 それから、2匹は時間を忘れて遊び続けた。 「ゆぅ~、おねーしゃん!おなきゃしゅいたよ!」 「ゆっ!ゆっくりがまんしてね!まりしゃもおなかしゅいたよ!」 しばらく遊んでいると突然空腹を訴え始めた赤れいむにそう言い聞かせる子まりさ。 しかし、赤ちゃんにとって我慢は非常につらいものであり、また、なぜ我慢しなければいけないのかわからない赤れいむはすぐに泣き出してしまった。 「ゆえええええええええん!おにゃがしゅいだよおおおおおおおお!ゆっきゅぢできにゃいよおおおおお!」 「ゆぅ・・・わかったよ!まりしゃがなにかさがしてくるよ!」 そう言って少しの間だけ赤れいむを泣き止ませることに成功した子まりさは何も無いだろうとうすうす感じながらもいつもの場所を行ったり来たりした。 が、予想通りいくら探しても食べれそうなものは何も見当たらない。 「おめんにぇ、おちびちゃん!なにもみつからなかったよ!」 「ゆわあああああん!おねーしゃんのばきゃあああああ!」 「どほぢでそんなごどいうのおおおおおおお!」 「れいみゅゆっきゅちちちゃいよおおおおおおおお!」 「まりしゃだってゆっくちちちゃいよおおおおおお!」 そうやってしばらく喧嘩しながら泣きじゃくっていると、赤れいむは泣き疲れて舟をこぎ始めた。 「ゆうううう・・・おにゃか・・・しゅいた・・・よぉ・・・」 そのことに気づいたまりさは泣くのを止め、赤れいむが寝冷えしないように頬を摺り寄せ、自分も眠りについた。 翌朝になると、昨日のことをすっかり忘れていた赤れいむは無邪気に自分に甘えてきた。しかし、食糧難だけは一向に解決する気配がなく、2匹とも徐々に痩せ衰えて行った。 「おねーしゃん、れいみゅおなきゃしゅいたよ・・・」 赤れいむは弱々しく呟くが、子まりさのその欲求を満たす術は無い。 「ゆっくりがまんしてね!」 だから、そう返すのが精一杯だった。 それから1日経ち、2日経っても何処にも食料は見当たらなかった。 そして、そうやって食事抜きの生活が5日目に突入した日、赤れいむが子まりさに猛然と飛び掛ってきた。 「ゆゆっ!おちびちゃんなにするの!?」 「でいびゅおなきゃしゅいだよおおおおお!」 「やめでね!まりさをたべないでね!」 「れいみゅをゆっきゅちしゃせてきれにゃいおねーしゃんなんかゆっくちちね!」 昨日まで一緒にゆっくりしていた妹分から浴びせられる罵声。そしてじわじわと皮を食い破っていく幼い歯。 その痛みを感じたとき、子まりさは思った。 死にたくない、と。 「いぢゃいよおおおおお!どほぢぢぇこんにゃことぢゅるにょおおおお!?」 気がついたら赤れいむを壁に叩きつけていた。 自分から仕掛けたことも忘れて泣きじゃくる赤れいむ。 しかし、子まりさはその姿を見ても昨日までのように可哀そうとは思わず、ただ憎たらしいだけだった。 「まりさをたべようとするわるいこはゆっくりしんでね!」 はき捨てた子まりさは泣きじゃくる妹分の頭上へと飛翔し、全力で赤れいむを踏み潰した。 久しぶりに空腹を満たした子まりさが目を覚ますと、美味しそうに野菜くずを食べる赤まりさの姿があった。 「ゆゆっ!おねーしゃん、まりしゃといっちょにゆっくちちてね!」 どこかで見たような舌足らずな言葉と無邪気な笑み。その既視感の正体も忘れて、子まりさは可愛らしい妹分の愛嬌のとりこになった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅちちちぇっちぇね!」 元気良く言葉を交わした2匹は頬ずりをして友愛を確認すると、2匹だけの世界を駆け回って遊び始めた。 「おねーしゃん!まりしゃおなきゃがしゅいたからやさいしゃんたべりゅよ!」 「だめだよ!やさいさんはあぶないよ!」 「しょんにゃことにゃいよ!しゃっきもちゃべれたもん!」 「・・・それもそうだね!じゃあ、まりさといっしょにたべようね!」 2匹そろって美味しそうな野菜くずに向かって行くが、いざ食べようとした瞬間、子まりさの体内から激痛が襲ってくる。 「ゆぎいいいいいいい!?」 「ゆぅっ!?おねーしゃん、どーちたにょ!?」 「な、なんでぼないよ・・・ゆがああああ、ゆげぇ・・・」 痛みを必死に堪えながら赤まりさに微笑みかけようとするが痛みのせいでそれすらも上手くできない。 「ま、まりさだけでもおやさいをたべてね・・・」 「ゆぅ・・・わきゃったよ!ゆっきゅりたべりゅよ!」 そう言って赤まりさは野菜くず食べはじめた。 「うっみぇ、きょれれめっちゃうめぇ!」 子まりさはその赤まりさの幸せそうな姿をただただ眺めるばかりだった。 翌日も、その翌日も子まりさと赤まりさは一緒に遊んだ。 赤まりさは良く遊び、良く食べ、良く眠り、非常にゆっくりとした生活を送っている。 一方の子まりさは空きっ腹を抱えならがも赤まりさに付き合い、野菜くずを食べようにも痛みが怖くて食べられず、酷い空腹で眠ることもままならない。 それでも仲良くしていた2匹の関係に終わりをもたらしたのは、4日目の夜中の出来事だった。 突然の激痛で目を覚ますと同時に絶叫する羽目になった子まりさ。 赤まりさはその傍に寄り添い心配そうに子まりさに声をかけ続けていた。 「おねーしゃん、だいじょーびゅ?」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・らいじょうぶだよ・・・ゆ?」 そんな赤まりさに心配をかけまいと必死に笑顔を取り繕う子まりさだったが、不意に口の中の異物感に気づき、それを吐き出す。 「ゆゆっ!?どほぢでおやざいがぐぢのながにいいいいいいい!?」 無意識の内に食べてしまったのだろうか? とにかく、子まりさはこれを口にしたせいで痛い目にあってしまったのだと判断した。 「おねーしゃん、おいちかっちゃでちょ!」 「ゆ?どういうこと?」 「おねーしゃんがしゅききりゃいしゅるからまりしゃがたべさちてあげちゃんだよ!」 「・・・まりさがこれをたべさせたの?!」 その事実を知った途端、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。 悪気は無いのかもしれない。けれど、自分が食べたくても食べられないものを貪り、眠れない自分の隣で安眠し、疲労困憊の自分を好き勝手に連れまわす赤まりさの振る舞いの全てが、自分を苦しめるためのもののように思えてきた。 被害妄想以外の何者でもないだろう。しかし、本人にとってはその妄想こそ真実。 「しょーだよ!おいちかったでちょ!まりしゃのことほめちぇね!」 そんなことを口にすると同時にえへんとふんぞり返って胸を張る赤まりさ。 しかし、それが命取りになった。 「ゆっくり・・・しねええええ!」 響き渡る絶叫とともに跳躍した子まりさは思いっきり赤まりさの上に圧し掛かり、何度も何度も踏みつけた。 「どほぢ・・・ゆげっ!?」 「まりさをっ!!」 「やべでっ!?」 「いぢめるっ!!」 「おねーぢゃん!?」 「ごみくずはっ!!」 「ゅぅ・・・ゅ・・・」 「ゆっくり!!」 「・・・・・・ゅぅ・・・」 「しねっ!!」 鬼のような形相で赤まりさを踏み潰した子まりさは、漏れ出したものを丹念に舐めとる。 「うっめ、これめっちゃうめぇ!」 そうして、自分の周りがきれいになったところで4日ぶりの安眠へといざなわれていった。 「うっみぇ、きょれめっちゃうみぇ!」 目を覚ますとまたしても赤まりさが美味しそうに野菜くずを食べていた。 今までに食べた2匹にも負けない純朴な笑みと無垢な瞳。 それを見た子まりさは思った。 なんて美味しそうな餌なんだろう、と。 「ゆゆっ!おねーしゃん、めをしゃまちたの?」 「まりしゃといっちょにゆっくちちよーね!」 その一片の邪心も感じさせないお願いを聞いた瞬間、子まりさは赤まりさの頭上へと飛び上がった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅちちちぇっちぇ、ぐぇ!!?」 それは一緒にゆっくりしようという意味ではなく、ただおとなしく食べられてくれということに他ならない。 それは相手に自分の好意や厚意を示すものではなく、ただその言葉を聞くと動きを止めて返事する習性を利用するための戦術に他ならない。 ゆっくりにとってもっとも基本的なその言葉を最後まで言い切ることさえかなわなかった赤まりさはその一撃で一切身動きが取れないほどの痛手を負ってしまった。 「・・・ゅっぅぃ・・・ぃぁぁっぁょ」 赤まりさにはまだ息があった。しかし、動かないならば生きていようが死んでいようが同じこと。 子まりさは口の中に広がるであろう甘みに胸を躍らせながら、何かわけのわからないことを呟く餌にかじりつく。 その死にかけの餌の甘みは今までに食べたどの餌よりも甘かった。 その味をしめた子まりさは今度もきっと死ぬ前にゆっくり食べよう、と思った。 それからの子まりさの生活は非常にゆっくりしたものだった。 朝起きれば美味しいご飯が転がっている。 お腹が空いていなければちょっと行儀が悪いがそのご飯と遊んだってかまわない。 とにかく、自分の好きなように遊ぶだけ遊んで、食べたいときに食べて、目を覚ませばすぐに美味しい食べ物が補充されている。 きっと自分ほどゆっくりしたゆっくりはいないだろう。 そう思えるほどに子まりさの生活は充実していた。 そんなある日、まりさが目を覚ますと目の前には自分と同じくらいの大きさのゆっくりれいむがいた。 子まりさは自分と同じ大きさであったからなのか、その個体を餌と判断することなく、元気良く声をかけた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「まりさはまりさだよ!」 「れいむはれいむだよ!」 わけのわからない自己紹介の後、子まりさはれいむの傍へ寄って行き、頬ずりで親愛の意を示した。 それから、「いっしょにおさんぽしよう!」と誘う子まりさ。しかし、れいむは断った。 「どほぢでええええええ!?」 まりさのことがきらいなの!?と問い詰めるまりさに首を振ってそうゆゆってではないことを伝えたれいむは「あしがうごかないの」と呟く。 「ゆゆっ!それならまりさがずっとそぱにいてあげるよ!」 そうして子まりさがれいむに頬を摺り寄せると、れいむも動かない体で頑張って頬ずりを返してくれた。 淡い淡い初恋。 この子とずっと一緒にゆっくりしていたい。 ゆっくり特有の、そして発情期間近特有の惚れっぽさでそう思った子まりさ。 すると、突然地面が揺れ始める。 今までの自分達の行動との因果関係も、何の前触れも無い振動に戸惑う2匹。 「ま、まりさ、こわいよおおおお!」 「ゆゆっ!だいじょうぶだよ!まりさがまもってあげるよ!」 そう言って、いっそう力強くれいむに頬を摺り寄せる子まりさ。 しかし、その振る舞いがまずかった。 「ゆぅ~?なんか変な気分だよ!」 「ゆぅう・・・れいむもなにかへんだよ!」 揺れの最中に突然自分達を包み込んだ不思議な快感。 それに酔いしれ、その正体を究明しようと試みる2匹は揺れの最中の自分達の行動を真似る。 そして、自分達の頬をすり合わせる行為をもっと激しくすればその快感を得られることに気づいた2匹はひたすらそれを繰り返した。 足の不自由なれいむには大変な行為なので、ずっと子まりさが主導権を握って、時が経つのも忘れ、揺れが止まったことにも気づかずにその行為に溺れた。 続く このSSに感想を付ける