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第1編 訴訟の主体と訴えの提起 第1章 総論 第1節 民事訴訟法の意義 第2節 民事訴訟制度の目的と理念 第2章 裁判所 第1節 裁判所の組織・裁判権 第2節 管轄 第3節 除斥、忌避、回避 第3章 当事者 第1節 当事者の意義・確定 第2節 各種の能力 第3節 訴訟上の代理人 第4章 訴えの提起と効果 第1節 訴えの意義と方式 第2節 訴え提起の効果 第5章 訴訟要件と訴訟物 第1節 訴訟要件 第2節 訴訟物 第3節 債権者代位訴訟 第2編 訴訟の審理(第1審) 第1章 裁判所と当事者の役割 第1節 当事者主義と職権主義 第2節 処分権主義 第3節 職権進行主義 第4節 弁論主義 第2章 口頭弁論 第1節 口頭弁論の原則 第2節 口頭弁論の準備 第3節 口頭弁論の実施 第4節 当事者の行為 第3章 証拠 第1節 証拠と証明の対象 第2節 自由心証主義 第3節 証明責任 第4節 証拠調べ手続 第3編 訴訟の終了 第1章 当事者による終了 第1節 訴訟の終了態様 第2節 当事者の意思による終了 第2章 判決による終了 第1節 判決の意義と効力 第2節 既判力 第3節 争点効・反射効 第4編 複雑訴訟形態 第1章 複数の請求 第1節 複数請求訴訟 第2章 多数の当事者 第1節 共同訴訟 第2節 訴訟参加 第3節 当事者の交替 第5編 不服申立て、その他 第1章 上訴 第1節 上訴一般 第2節 控訴 第3節 上告 第4節 抗告 第2章 再審 第1節 再審 第3章 特別の手続・その他 第1節 略式手続 第2節 簡易裁判所 第3節 平成8年改正以降の経緯
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年金恩給取戻訴訟は区裁判所か?地方裁判所か? 弁護士 山崎今朝彌 恩給年金証書の取戻訴訟は東京でも地方でも三円五十銭貼つて区裁判所へ提起し、裁判所も弁護士も之を怪まぬ様である。之は(一)恩給年金証書は紙代の価値でも額面の価値でもなく畢竟金銭に見積もる事を得ず(二)印紙法三条には、金銭に見積ル事ヲ得ザル物ニ関ル訴訟ニ付テハ其価額ヲ百円ト見テ三円五十銭ヲ貼用ス可シ、とあり(三)構成法十四条には、五百円以下ノ価額物ニ関ル訴訟ハ区裁判所ニ起ス可シ、とあるからとの理由だらうと思ふ。 併し此解釈は確かに誤つてる。構成法廿六条には区裁判所ニ起ス事ヲ許サレザル訴訟ハ総テ地方裁判所ニ起ス可シ、とあるから若し恩給年金証書が前述の如く、金銭に見積り得ざる物なら、此取戻の訴訟を地方裁判所に起すべきは当然で、問題となるべき問題ではない。併し印紙は只ではない、印紙法三条がある為め三円五十銭を要すと云ふ事になる。 然らば恩給年金証書取戻訴訟の管轄は果して地方裁判所か、決して然らず。恩給年金証書を金銭に見積り得ざる物として印紙法三条の百円とするのが抑々の誤りである。恩給年金は恩給年金証書無しには絶対に受取れぬ、恩給年金証書の価値は即ち現存する恩給年金の価値である。恩給年金は到底売買譲渡質入書入が出来ぬ、併し恩給者年金者には其れが財産である事を妨げぬ。恩給年金証書が金銭に見積る事を得る財産権なる事は毛頭一点の疑はない。 恩給年金証書の価値価額が恩給年金の価値価額なりとすれば、其見積は既に容易の業である。民訴法五条四号を適用して年額廿倍を訴訟物の価額とし之に応じて印紙を貼用すべき事論を俟たぬ。若し夫れ瀕死の老人等の場合に在ては同号に所謂収入権の期限定まりたるものとして、同法六条裁判所の鑑定に依り死期を定むる必要ありと解するを穏当と思ふ。 寄せ算には引き算の正算法がある、法律の反対解釈は正解法として又頗る有力である。仮りに問題の恩給年金証書取戻訴訟を所謂非財産権上の訴訟とする時は、如何なる小事件例へば全部で五十円の外受取る物のない証書の取戻訴訟でも、常に必ず地方裁判所へ起すを要すると云ふ馬鹿々々しい事になる。又其小事件を誤つて区裁判所へ起し、当事者間には管轄の争がなくても民訴法卅一条上、合意管轄もならぬと云ふ大馬鹿馬鹿さとなる。一体此証書取戻訴訟を身分上の訴訟等と同一に重大視して、必らず地方裁判所へ出訴しろ、合意管轄はならぬぞと云ふ必要が何処にあるか?恩給年金証書取戻訴訟が財産権上の訴訟だと云ふ事も問題となる問題ではない。 要するに非財産権上の訴訟は地方裁判所の管轄であるが、恩給年金証書取戻訴訟は非財産権上の訴訟でない、訴訟物の価額に依て其管轄を定むべき財産権上の訴訟である。而して其訴訟物の価額は民訴法五条四号等に依て算定すべきものである。 ~~~~~~ 非財産権訴訟の管轄 ■恩給証書又は年金証書の返還請求訴訟を非財産権上の請求訴訟と解し、価額を百円に見積り三円五十銭で区裁判所に起した事件の上告を四件扱つた。私の理由は、非財産権上の訴訟なら地方裁判所の管轄、財産権上の訴訟なら価額見積の法律適用を誤つてるといふのであつた。大審院民事の各部は之に対して明答を与へては呉れなかつたが、本件訴訟物の価額が百円なる事に付ては上告人に於ても第一審以来争はざりしものなれば之を以て原判決を非難する上告理由は理由なし、との判決理由より推察するに、大審院も亦我輩の説を採用したものと思ふ。 ■原告の代理人として東京区裁判所へ自分も二三回三円五十銭で起して見た、何れも相手方から抗弁が無かつたので問題にならなかつた。今に何処かへ問題が起ればよいがと思つて居る。 ■本誌大正六年十一月号に掲載した日本元祖皮切裁判重要物産同業組合選挙無効確認訴訟が非財産権上の訴なる事は異論がない、従つて地方裁判所の管轄なる事も自分独りは異論がない。併し相手方代理人弁護士は百円の価額は五百円以下故区裁判所に提起すべきものなりとして、管轄違の妨訴抗弁を提出し本案の弁論を拒んだ。大正六年十一月廿六日の判決言渡は妨訴抗弁の棄却となつた。被告は大審院の判決例を作る為め上告迄やると云ふてる。東京地方裁判所第一民事部は私の説に賛成の訳である。 弁護士山崎今朝彌記 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は、『平民法律』第6年11号5頁。大正6年(1917年)12月。>
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昨日 - 今日 - 目次 戻る 通2-004 次へ 通巻 読める控訴審判決「集団自決」 事案及ぴ理由 第2 事案の概要等 1 事案の概要 1 事案の概要ア (請求の概要)* イ (請求及ぴ訴訟物)* ア (請求の概要)* 本件は, 控訴人梅澤及ぴ控訴人赤松が, 控訴人梅澤については被控訴人らが出版し若しくは執筆した原判決別紙書籍目録記載1の書籍(「太平洋戦争」)及ぴ同記載2の書籍(「沖縄ノート」)によつて, 控訴人赤松の実兄である赤松嘉次(赤松大尉)については「沖縄ノート」によって, 太平洋戦争後期に座間味島及び渡嘉敷島の各住民にそれぞれ集団自決を命じ, 住民を多数強制的に死なせながら自らは生き延ぴたという虚偽の事実を摘示され, 控訴人梅澤及び赤松大尉の社会的評価を著しく低下させられて, その名誉を甚だしく毀損され, もって控訴人らの人格権や, 控訴人赤松の赤松大尉に対する人間らしい敬愛追慕の情を内容とする人格的利益が侵害されたとして, 次の各請求をした事案である。 [1] 被控訴人岩波書店に対し, 人格権に基づき, 「太平洋戦争」及ぴ「沖縄ノート」の出版, 販売, 頒布の差止め [2] 被控訴人らに対し, 不法行為に基づき, [ア] 謝罪広告の掲載 [イ] 慰謝料の支払 イ (請求及ぴ訴訟物)* 本件の請求及ぴ訴訟物は以上のとおりであり, その法律構成はマスメディアによる一般の名誉毀損事件と異ならないが, 本件訴訟の内容的な特色は次のような点にある。 [1] 太平洋戦争後期の沖縄における集団白決という63年前の歴史的事実についての日本軍の各隊長の命令に関する記述について, その名誉毀損等の有無を問うものであること [2] 名誉毀損等にあたるとして出版の差止めが求められている各書籍は, その第1版が, 昭和43年(40年前)及ぴ昭和45年(38年前)に出版され, その後も版を重ねるなどして継続して出版されてきた書籍であること [3] 各書籍中の各記述は, 出版当時にはいわば通説とされていたものであるが, 控訴人らは, その後昭和48年ころから平成12年ころに公刊された資料等に基づき, その時から真実相当性が失われたと主張して, その後の出版継続の不法行為責任を問うものであること [4] 提訴の動機は, 単に個人への名誉侵害にとどまらず, 本件各書籍や高等学校の歴史教科書(平域17年度検定)等の公の書物に, 集団自決が日本軍の命令により強制されたふのごとく記載されているのを放置できないという点などにあるとされ, 集団自決の歴史を正しく伝えていくことが本件訴訟の目的であるとされていること 目次 戻る 通2-004 次へ 通巻
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ユニセロスのことである。 経験値提供のためにオークワードが時間をかけて一人で10オーク以上削ったのだが、 さもりストーリアに早食いされてしまった。 訴訟物である。 「よし、待つぜ」 「OK」
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第1問 売買代金支払請求 第2問 売買代金支払請求(消滅時効の抗弁) 第3問 売買代金支払請求(履行期限の抗弁) 第4問 貸金返還請求 第5問 貸金返還請求(弁済の抗弁) 第6問 土地明渡請求(所有権喪失の抗弁) 第7問 土地明渡請求(対抗要件の抗弁) 第8問 土地明渡請求(対抗要件具備による所有権喪失の抗弁) 第9問 土地明渡請求(占有権原の抗弁) 第10問 所有権移転登記抹消登記手続訴訟(所有権喪失の抗弁) 第11問 所有権移転登記手続請求(取得時効) 第12問 抵当権設定登記抹消登記手続請求(登記保持権原の抗弁) 第13問 土地明渡請求(民法上の期間満了による賃貸借終了、建物所有目的の抗弁) 第14問 動産引渡し請求(即時取得、悪意の抗弁、過失の評価根拠事実の抗弁) 第15問 譲受債権請求(債務者対抗要件の抗弁) 第 問 第1問 売買代金支払請求 請求の趣旨 被告は、原告に対し、2000万円を支払え。 訴訟物 売買契約に基づく代金支払請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、被告に対し、甲土地を代金2000万円で売った。(×) →平成18年3月3日 が必要。 (2)よって、被告は、原告に対し、売買代金2000万円を支払え。(不要) →原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき、代金2000万円の支払を求める。 とする。 (理由) 代金額 必要 代金支払時期 不要 売主の目的物所有 不要 売買契約締結の動機 不要 土地の引渡し 不要 代金の不払い 不要 第2 抗弁 以下空白 第2問 売買代金支払請求(消滅時効の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、2000万円を支払え。 訴訟物 売買契約に基づく代金支払請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、被告に対し、平成8年3月3日、甲土地を代金2000万円で売った。(×) (2)よって、原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき代金2000万円の支払を求める。(不要) 第2 抗弁 消滅時効 (1)平成18年3月3日は経過した。(不要) (2)よって、上記売買契約に基づく代金支払債務は消滅した。(不要) →被告は、原告に対し、平成18年9月29日の本件口頭弁論期日において、上記時効を援用するとの意思表示をした。 とする。よって書きではない。ただし、問題文には口頭弁論期日は現れていない。 (理由) 1.代金債権の消滅時効の要件事実 ①権利を行使する事ができる状態になったこと(166条) ②①の時から10年間が経過したこと(167条1項) ③援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと(145条) ただし、①は既に請求原因に現れているので、Yは抗弁で改めて主張する必要なし。 2.時効期間の経過 初日不算入の原則(140条) そして、143条により、平成8年3月4日から10年間を経過した、平成18年3月3日経過時に時効期間が満了となる。 3.時効援用の意思表示 判例は、不確定効果説のうち停止条件説を採る。 なお、意思表示は到達主義であるが(97条1項)、顕著性(民訴179条)を示すために、そのことを表現するのが通例。 第3 再抗弁 以下空白 第3問 売買代金支払請求(履行期限の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、20万円を支払え。 訴訟物 売買契約に基づく代金支払請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、被告に対し、平成18年7月15日、パソコン1台を代金20万円で売った(以下「本件売買契約」という)。(○) (2)よって、原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき代金20万円の支払を求める。(不要) 理由 売買契約における代金支払時期の合意(履行期限の合意)は、契約の本質的要素ではなく、付款である。 従って、上記合意はその存在我認められることにより利益を受ける被告が主張立証責任を負う抗弁である。 第2 抗弁 履行期限 (1)上記売買契約につき、代金支払期日を平成18年10月末日とすると定めた。 (2)平成18年10月末日は未到来である。 →(1)(2)を一つとした上で、 原告と被告は、本件売買契約において、代金支払期日を平成18年10月31日とするとの合意をした。 とする。 →その上で、抗弁に対する認否は (×) である。 →「未到来である」などと主張する必要はない。 第3 再抗弁 以下空白 第4問 貸金返還請求 請求の趣旨 被告は、原告に対し、2000万円を支払え。 訴訟物 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、被告に対し、平成17年8月8日、返還期日を同年12月1日と定めて、2000万円を貸した。(一部○、一部×) →弁済期を…貸し付けた。 とする。 →その上で、平成17年12月1日は到来した。 という項目を付け加える。 →認否は、(2000万円の交付については○、その余は×) となる。 (2)よって、原告は、被告に対し、上記消費貸借契約に基づき、貸金2000万円の支払を求める。(不要) →(3) となる。 理由 1.消費貸借契約における要件事実 ①金銭の返還合意 ②金銭を交付したこと ③弁済期の合意 ④③の弁済期の到来 なお、①②をの両事実を表す用語として「貸し付けた」という表現を用いる。 ③については以下。 2.弁済期の合意 消費貸借契約の成立を基礎づけるものであるから、弁済期の合意は要件事実である。 3.弁済期の到来 原告は弁済期の合意を主張し、これが請求原因として現れるので、請求のためには弁済期の到来の主張も必要。 認否 被告は一部を認めて一部を否認しているが、ブロックダイアグラムに従えば以下の通りとなる。 あ X・Y H17.8.8 2000万円の返還合意 (×) い X→Y H17.8.8 2000万円交付 (○) う X・Y (あ)の際、弁済期をH.12.1とする合意 (×) え H17.12.1到来 (顕) 第2 抗弁 以下空白 第5問 貸金返還請求(弁済の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、100万円を支払え。 訴訟物 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、被告に対し、平成17年6月15日、弁済期を同年9月1日として100万円を貸し付けた。(○) →と定めて の方がよい。 →末尾に、(以下「本件消費貸借契約という。) を付け加える。 (2)平成17年6月15日は到来した。(不要) (3)よって、原告は、被告に対し、上記消費貸借契約に基づき、貸金2000万円の支払を求める。(不要) →(1)に従い、本件消費貸借契約 とする。 第2 抗弁 弁済 被告は、原告に対し、平成17年9月1日、上記消費貸借契約の履行として、100万円を弁済した。 →本件消費貸借契約に基づく債務の履行として100万円を支払った。 とする。 →認否は、(×) とする。 理由 弁済の抗弁の要件事実 ①債務の本旨に従った給付をしたこと ②給付がその債権についてされたこと 本件では、 ①Yが、Xに対し、平成19年9月1日、100万円を支払ったこと ②①の支払が本件消費貸借契約に基づくXの貸金債権についてされたこと となる。 認否 抗弁に対する認否は明らかではないが、債務の履行を求めているので、当然に主張を否認していると考えられる。 第3 再抗弁 以下空白 第6問 土地明渡請求(所有権喪失の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。 訴訟物 所有権に基づく土地明渡し請求権 1個 →所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 第1 請求原因 (1)原告は、甲土地を所有している。 →原告は、平成17年9月9日当時、甲土地を…していた。 とする。 →その上で、認否は (○) となる。 (2)被告は、甲土地を占有している。(○) (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要) 理由 1.所有権に基づく返還請求権の発生要件は、 ①請求権者がその物を所有していること ②請求の相手方がその物を占有していること であり、 ③相手方がその物に対する正当な占有権限を有していること、は発生障害要件である。 2.民法188条は、 「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と定める。 では、原告は、被告が占有権限を有しないことを証明しなければならないか。 この点、同条の占有の権利推定は、その占有を伝来的に取得した前主に対しては効力を有しないとか、この所有者に対しては同条の権利推定を主張できない、などと説明される。 したがって、占有権限を有していることの証明責任は被告にある。 3.「所有」の要件事実 所有とは、事実ではなく法的評価である。 したがって、所有していることの要件事実として主張すべき事実は、「過去のある時点におけるXの所有権取得原因となる具体的事実」である。 しかし、原理的には所有に関する証明は無限に遡り、また、所有概念は日常に溶け込んでいることから、権利自白を認めて良いとされる。 そこで、権利自白の成立時点を特定して明示することになる。 具体的には、①について、事案に応じて権利自白の成立を前提に、 ア 原告の現所有 イ 原告のもと所有 ウ 原告の前主のもと所有及び原告の前主からの所有権取得原因事実 のいずれかを摘示することになる。 (以上、問題研究P.129参照) 4.「占有」の要件事実 占有は、評価概念ではなく事実概念である。 しかし、占有の要素である所持自体が社会観念に従って決定されるものであり(180条)、また、民法は代理占有も認めており(181条)、占有概念は相当に観念化している。 したがって、争いがない場合は、概括的抽象的事実としての「占有」について自白が成立したものとする。 ただし、争いがある場合は、「攻撃防御の対象が何であるかが分かる程度の、所持の具体的事実」を主張することが必要。 第2 抗弁 抗弁なし → 所有権喪失―売買 原告は、被告に対し、平成17年9月9日、甲土地を代金2000万円で売った。(×) とする。 理由 原告が、ある一時点において所有していることと、原告が、それ以降の時点において所有を喪失したことは、両立する。 したがって、原告が所有権を喪失したこと、は抗弁となる。 第3 再抗弁 以下空白 第7問 土地明渡請求(対抗要件の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。 訴訟物 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、Aから、平成17年4月4日、売買代金1800万円で甲土地を買った。(○) →Aを主体として、以下のように書き換える。 (1)Aは、平成17年2月2日当時、甲土地を所有していた。(○) (2)Aは、原告に対し、平成17年4月4日、甲土地を代金1800万円で売った。(○) (2)被告は、甲土地を占有している。(○) →上記基づき、 (3) とする。 (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要) →上記基づき、 (4) とする。 理由 1.権利自白の時期 本件においては、過去―(ア)―平成17年2月2日―(イ)―平成17年4月4日―(ウ)―現在、という時間の流れ。 そのうち、アについてはA所有で一致しているが、イの時点では原告はA所有、被告は被告所有と主張している。 よって、アにもとづき、平成17年2月2日の時点でA所有につき自白が成立する。 第2 抗弁 対抗要件 被告は、原告が登記を具備するまで、原告を所有者と認めない。 →(1)Aは、被告に対し、平成17年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。(×) (2)原告が対抗要件を具備するまで、原告の所有権取得を認めない。(不要) 理由 対抗要件の抗弁の要件事実 ① Yが登記の欠缺を主張するには、正当な利益を有する第三者であることを基礎づける事実を主張する必要。 したがって、AY間の売買を主張する。 ② 上記に加えて、登記の有無に関して主張する必要があるか。 ア 第三者抗弁説=①のみ 例えば、地上権を主張する場合で、対抗要件の抗弁を主張するつもりがなくても、主張したことになってしまう。 イ 事実抗弁説=①に加えて、Xが対抗要件を具備していないこと Yに自らが関与しない消極的事実の主張立証責任を負わせるのは酷である。 ウ 権利抗弁説=①に加えて、Xが対抗要件を具備するまでは土地の所有権取得を認めないとの権利主張 対抗要件の有無を問題とする意思があることを要件事実として取り出し、要件を具備した者に主張させることでイの問題も生じない。 正当である。 認否 Xは「AがYに対して甲土地を売ったはずはなく」と言ってるので、×である。 第3 再抗弁 以下空白 第8問 土地明渡請求(対抗要件具備による所有権喪失の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。 訴訟物 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個 第1 請求原因 (1)Aは、平成17年2月2日、甲土地を所有していた。(○) →…2月2日当時… を加える。 (2)Aは、原告に対し、平成17年4月4日、甲土地を代金1800万円で売った。(○) →(3)被告は、甲土地を占有している。 が抜けている。 (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要) →上記に基づき、 (4) とする。 第2 抗弁 →見出しとして、 対抗要件具備による所有権喪失―売買 を加える。 (1)Aは、被告に対し、平成17年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。(×) (2)Aは、同年4月10日、対抗要件を具備した。 →(2)Aは、被告に対し、同年4月10日、上記売買契約に基づき、甲土地につき所有権移転登記手続をした。(×) 理由 1.対抗要件具備による所有権喪失の抗弁の要件事実 上記の抗弁を主張するには、 ①(過去の一定時点においてAが甲土地を所有していたことを前提として、) AとYとが甲土地の売買契約を締結したこと ②AがYに対し、甲土地について上記売買契約に基づく所有権移転登記手続をしたこと の主張立証が必要である。 2.「対抗要件の抗弁」と「対抗要件具備による所有権喪失の抗弁」との関係 一方だけ主張することも、両方とも主張することもできるが、Yの主張によれば後者のみの主張である。 認否 XはYの売買契約を否認している以上、所有権移転登記手続をしたという事実も否認していると解される。 第3 再抗弁 第9問 土地明渡請求(占有権原の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。 訴訟物 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、甲土地を所有している。(○) (2)被告は、甲土地を占有している。(○) (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要) 第2 抗弁 占有権原 →占有権原―賃貸借 とする。 (1)原告は、被告に対し、平成17年6月6日、甲土地を、賃料1か月20万円、期間を同日から平成20年6月5日までと定めて貸し付けた。 →…20万円、賃貸期間同日から平成20年6月5日までとの約定で賃貸した。(×) とする。 (2)平成20年6月5日は未到来である。 →原告は、被告に対し、平成17年6月6日、上記賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。(×) とする。 理由 1.賃貸借契約の成立要件(民法601条) 目的物の特定 必要 賃料額の合意 必要 返還時期の合意 必要 敷金・使用目的の合意 不要 賃貸人の目的物所有 不要 2.基づく引渡し 仮に、Yが抗弁として主張している賃貸借契約とは全く関係のない事情で甲土地を占有しているとすれば、占有権限の抗弁として上記賃貸借契約締結の主張をすることが意味をなさない。 第3 再抗弁 以下空白 第10問 所有権移転登記抹消登記手続訴訟(所有権喪失の抗弁) 請求の趣旨 被告は、別紙目録記載の所有権移転登記抹消登記手続をせよ。 →被告は、甲建物について別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。 訴訟物 所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求権 1個 → 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権 1個 理由 登記請求権は、 ①物権的登記請求権 =現在の実体的な物権関係と登記が一致しない場合に、この不一致を除去するため 物権的請求権の一つである。 なお、 ア 返還請求権 イ 妨害排除請求権 ウ 妨害予防請求権 のうち、本件は、占有以外の方法による物権侵害なので、イである。 ②債権的登記請求権 =物権の移転を目的とする契約の効果としての財産権移転義務の一内容として ③物権変動的登記請求権 =物権変動の過程・態様と登記とが一致しない場合に、その不一致を除去するため 第1 請求原因 (1)原告は、平成16年7月1日、甲建物を所有していた。(○) (2)被告は、別紙登記目録記載の所有権移転登記を有している。(○) →甲建物について、別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある。 とする。 (3)よって、原告は、被告に対し、別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続を求める。(不要) →…所有権に基づき、上記登記の抹消登記手続をすることを求める。 とする。 理由 登記の推定力 登記には事実上の推定力を有するに過ぎないので、Yの登記の存在を証明しても所有権が法律上推定されることはない。 第2 抗弁 所有権喪失 →所有権喪失―売買 とする。 被告は、Aから、甲建物を代金800万円で買った。 →原告は、Aに対し、平成16年7月1日、甲建物を代金800万円で売った。(×) 理由 1.AY間の売買 XA間の売買の主張が認められれば、それだけでXは甲建物の所有権を喪失する。 したがって、これに付加してAY間の売買の主張をする必要はない。 2.登記保持権原の抗弁は? 同抗弁は、原告の所有権が認められた場合に、被告が登記を保持することができる権限を有するとの主張である。 本問では、自分が所有者であるとYが主張しているので、不適当である。 第3 再抗弁 以下空白 第11問 所有権移転登記手続請求(取得時効) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地につき所有権移転登記手続をせよ。 →…甲土地について、平成8年6月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。 とする。 理由 時効の効果 起算日に遡るので(144条)、登記原因の日付は占有開始日になる。 訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権 → 所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、甲土地を、平成8年6月1日から10年間、善意、平穏、公然、無過失で占有した。(×) (2)原告は、口頭弁論期日において、上記取得時効を援用するとの意思表示をした。(不要) (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、所有権移転登記手続を求める。(不要) →下記のように書き直す。 (1)原告は、平成8年6月1日、甲土地を資材置場として占有していた。(△) (2)原告は、平成18年6月1日経過時、甲土地を資材置場として占有していた。(△) (3)無過失の評価根拠事実 ア Aは、平成8年6月1日当時、甲土地を資材置場として占有していた。(○) イ 原告は、平成8年6月1日、Aから甲土地を1000万円で買った。(△) (4)原告は、被告に対し、平成18年○月○日送達の本件訴状により、上記時効を援用するとの意思表示をした。(不要) (5)甲土地について別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある。(○) 理由 1.請求原因 まず、所有権移転登記請求権発生の要件事実は、 ①Xが甲土地を所有 ②甲土地についてY名義の所有権移転登記が存在 である。 本問では、Yが①を争っているので、具体的な主張立証が必要。 2.短期取得時効の要件事実 162条2項の条文上は、 ①所有の意思をもって ②平穏かつ公然に ③他人の物を ④10年間占有すること ⑤占有開始時に善意であり ⑥⑤について無過失であること が必要。 しかし、①②⑤については、186条1項が主張立証を緩和。 また、同条2項が、前後の両時点で占有をした証拠があるときは、その間占有が継続したことを推定する。 そして、③については、取得時効の対象物は自己の所有物であってもよいとするのが判例であるため、主張立証の必要なし。 以上より、Xが主張立証すべきは、 ア ある時点で占有していたこと イ アの時から10年間経過した時点で占有していたこと ウ アの時点で無過失であったこと である。 ウについては、事実ではなく評価根拠事実である。 上記に加えて、時効の援用について判例は不確定効果説―停止条件説にたつため、 エ XがYに対して時効援用の意思表示をしたこと が必要。 第2 抗弁 以下空白 第12問 抵当権設定登記抹消登記手続請求(登記保持権原の抗弁) 請求の趣旨 被告は、甲土地について、別紙目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。 訴訟物 所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権 1個 第1 請求原因 (1)甲土地は、Xが所有している。(○) →(1)原告は、甲建物を所有している。(○) とする。 (2)甲土地について、被告名義の抵当権設定登記がある。(○) →…、別紙登記目録記載の被告名義の抵当権設定登記がある。(○) とする。 (3)よって、原告は、被告に対し、甲土地について別紙目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続を求める。(不要) 第2 抗弁 登記保持権原 (1)被告は、原告に対し、平成17年7月1日、弁済期を平成20年7月1日と定めて1000万円を貸し付けた。 →(×) を加える。 (2)被告は、原告と、上記消費貸借契約に基づき甲土地について抵当権を設定するとの合意をした。 →(2)原告と被告は、平成17年7月1日、原告の1の債務を担保するため、甲建物に抵当権を設定するとの合意をした。(×) (3)原告は、2の抵当権設定契約当時、甲建物を所有していた。(○) (4)請求原因2の登記は、2の抵当権設定契約に基づく。(×) 理由 抵当権設定登記の保持権原の要件は、 ①被担保債権の発生原因事実 ②抵当権設定者が抵当権者との間で、①の債権を担保するため抵当権設定契約を締結したこと ③抵当権設定者が②当時その不動産を所有していたこと ④登記が②の契約に基づくこと である。 つまり、抵当権は特定の債権を担保するものなので①、抵当権設定契約の締結を主張するには被担保債権との結びつきを示す必要があるので②、抵当権設定契約は物権契約なので③、抵当権設定登記と②の関連性と手続の適法性をあらわすために④、がそれぞれ必要となる。 第3 再抗弁 以下空白 第13問 土地明渡請求(民法上の期間満了による賃貸借終了、建物所有目的の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。 訴訟物 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個 → 賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての土地明渡請求権 1個 理由 1.訴訟物の選択 本件では、物権的請求権である不動産明渡請求権と債権的請求権である不動産明渡請求権が考えられる。 Xは、後者を選択している。 2.終了原因による訴訟物の異動 終了原因が複数ある場合の、訴訟物に関する考え方として、 ア 多元説=終了原因ごとに訴訟物が異なる イ 一元説=終了原因は攻撃方法に過ぎない があるが、賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権は、賃貸借契約自体の効果として発生するのであり、解除・解約申し入れ等の「終了原因自体の効果」として発生するものではない。 したがって、イが妥当。 3.個数 一元説に立つと、訴訟物の個数は契約の個数によって定まる。 第1 請求原因 (1)原告は、甲土地を所有している。(○) (2)被告は、甲土地を占有している。(○) (3)よって、原告は、被告に対し、甲土地の明渡しを求める。(不要) →賃貸借契約終了に基づく返還請求であるので、以下の通り書き換える。 (1)原告は、被告との間で、平成12年12月25日、甲土地を、賃料月額10万円、賃貸期間同日から平成17年12月25日までとの約定で賃貸するとの合意をした(以下「本件賃貸借契約」という。)。(○) (2)原告は、被告に対し、平成12年12月25日、本件賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。(○) (3)平成17年12月25日は経過した。(不要) 理由 1.賃貸借契約の終了に基づく土地明渡請求の要件 ①土地について賃貸借契約を締結したこと ②賃貸借契約に基づいて土地を引き渡したこと ③賃貸借契約が終了したこと 2.賃貸借の目的が建物の場合と土地の場合の違い 賃貸借の目的物が建物である場合、当然に借地借家法の適用を受ける。 しかし、目的物が土地である場合、当然にはその適用を受けない。 3.基づく引渡しが必要な理由 賃貸借契約は諾成契約である。 しかし、目的物の返還を請求するには、基づいて引き渡していたことが前提となる。 4.Yの占有が要件とはならない理由 賃借人は、目的物の返還義務を負っているから、たとえ占有をしていなくても返還義務を負っていることに変わりはないから。 5.賃貸借契約の終了 民法604条は、賃貸借契約の存続期間を最長20年とする。 したがって、 ア 存続期間が20年以下の場合は、契約で定めた期間の経過 イ 存続期間が20年以上の場合は、20年の経過 を主張する。 第2 抗弁 占有権原―賃貸借 原告は、被告に対し、平成12年12月25日、甲土地を、賃料月額10万円、賃貸期間を同日から平成17年12月25日までと定めて貸し付けた。(○) →建物所有目的 原告と被告とは、本件賃貸借契約において、建物の所有を目的とすることを合意した。(×) 理由 建物所有を目的とする賃貸借契約が平成4年8月1日以降に締結されたものであれば借地借家法が適用され、30年以上の存続が認められる(借地借家法3条、9条)。 第3 再抗弁 平成17年12月25日は経過した。(不要) →(削除する。) 第4 再々抗弁 本件賃貸借契約は、建物所有目的である。(×) →(削除する。) 第14問 動産引渡し請求(即時取得、悪意の抗弁、過失の評価根拠事実の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲パソコンを引き渡せ。 訴訟物 所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権 1個 第1 請求原因 (1)原告は、Aから、平成17年12月25日、甲パソコンを代金20万円で買った(以下「本件売買契約」とする。)。 →(1)Aは、原告に対し、…で売った。(不知) とする。 (2)Aは、原告に対し、同日、1に基づき、甲パソコンを引き渡した。(不知) (2)被告は、甲パソコンを占有している。 →(3)…。(○) とする。 (3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲パソコンの引渡しを求める。 →(4)…。(不要) とする。 理由 1.請求原因 所有権に基づく動産引渡し請求権を基礎付けるために、 ①X所有 ②Y占有 が必要。 2.X所有 Yは、Xの所有権だけではなくYの所有権も認めていない。 したがって、Xの所有権そのものを摘示することができないだけでなく、Aからの承継取得も摘示できない。 3.即時取得 しかし、動産については即時取得制度があり、 要件は、 ①AがXとの間で甲パソコンの売買契約を締結したこと(取引行為) ②Aが①に基づいて甲パソコンをXに引き渡したこと(基づく引渡し) である。 なお、Aが占有してたことは②に含まれるので不要。 また、平穏・公然・善意は186条1項で推定される。 そして、無過失は188条によって推定される(判例)。 加えて、②は占有改定によることは認められていないが、本件では現実の引渡しなので問題なし。 第2 抗弁 1 悪意 原告は、本件売買契約の際、被告が所有者であることを知っていた。 →原告は、請求原因2の当時、Aが所有者であると信じていなかった。(×) 2 過失 (1)甲パソコンには被告の住所と名前を書いたシールが貼ってあった。 (2)原告は、本件売買契約の際、上記シールを確認しなかった。 →過失の評価根拠事実 (1) 請求原因(2)の当時、甲パソコンには被告の住所と名前が書かれたシールが貼ってあった。(×) (2) 原告は、被告に対し、請求原因(2)に際し、甲パソコンの所有者について何の確認もしなかった。(○) 理由 1.悪意の意義 「権利者であると信じていたこと」は善意であり、「無権利者であることを知っていたこと」は悪意であることには疑いない。 しかし、「権利者であることを疑っていたこと」は、一般の善意には含まれるが、即時取得の善意には含まれない。 なぜなら、一般の善意とは「無権利者であることをしらなかったこと」であるが、即時取得の善意とは「権利者であることを信じていたこと」だからである。 したがって、やはり即時取得における悪意には、半信半疑であった場合も含むこととなり、そこでの悪意とはすなわち「権利者であることを信じていなかったこと」となる。 2.規範的要件たる「過失」の要件事実 考え方は、 ①間接事実説=過失が主要事実であり、それを根拠づける事実は間接事実である。 ②主要事実説=過失の評価根拠事実が主要事実である。 の二つがある。 しかし、①は、 A 過失が主要事実であるならば、過失そのものを直接立証できなければならないが、それができないのは明らか。 B また、過失はそれを根拠づける具体的事実なしには成立しない。 C そして、弁論主義のもとでも、裁判所は当事者の主張しない間接事実を認定できるため、不意打ちが起きる。 等々の理由から、②が妥当。 3.即時取得における無過失の意義 無過失とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産の権利者であると信ずるにつき過失がなかったことをいう(判例)。 この場合の過失の基準時は、Xの占有取得時である。 過失の有無は、調査確認義務の存在と、調査確認義務の懈怠にかかる。 本問では、シールが貼ってあったことが前者、確認しなかったことが後者にあたる。 第3 再抗弁 以下空白 第15問 譲受債権請求(債務者対抗要件の抗弁) 請求の趣旨 被告は、原告に対し、20万円を支払え。 訴訟物 売買契約に基づく代金支払請求権 1個 →AY間の… を加える。 理由 債権が譲渡された場合、帰属主体が変更するだけで、債権の同一性が変わることはない。 第1 請求原因 (1)Aは、被告に対し、平成17年10月1日、パソコン1台を代金20万円で売った。(○) (2)Aは、原告に対し、同年11月1日、上記債権を代金15万円で売った。(不知) →…、上記売買代金債権を… とする。 (3)よって、原告は、被告に対し、(1)の売買契約に基づき、代金20万円の支払を求める。(不要) 理由 譲受債権請求の請求原因は、 ①譲受債権の発生原因事実 ②①の債権の取得原因事実 である。 第2 抗弁 債務者対抗要件 被告は、Aが、被告に対し、請求原因(1)にかかる代金債権を譲渡したことの通知をするまで、原告を債権者と認めない。(不要) →請求原因(2)の債権譲渡につき、Aが被告に通知し又は被告が承諾するまで、原告を債権者と認めない。(不要) とする。 理由 債務者対抗要件をめぐる主張立証責任は、物権変動の場合と同様に考える。 したがって、権利抗弁説が妥当。 その際、通知だけでなく承諾がないことも前提とした権利主張とすべき。 第3 再抗弁 以下空白 →再抗弁を主張しているので、 Aは、被告に対し、平成17年11月1日、請求原因(2)の債権譲渡を通知した。(×) とする。 ――――― 以下、コピペ用 現在進行中 第 問 請求の趣旨 訴訟物 第1 請求原因 第2 抗弁 第3 再抗弁 第1 請求原因 第2 抗弁 第3 再抗弁
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沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会 http //blog.zaq.ne.jp/osjes/ 2008年11月14日(金) 上告状兼上告受理申立書 上告状兼上告受理申立書 平成20年11月11日 最高裁判所 御 中 上告人兼上告受理申立人 訴訟代理人弁護士 松 本 藤 一 同 德 永 信 一 同 岩 原 義 則 同 大 村 昌 史 同 中 村 正 彦 同 木 地 晴 子 (当事者の表示) 別紙当事者目録記載のとおり 訴訟物の価格 金4793万0800円 貼用印紙 金32万8000円 予納郵券 金9520円 上記当事者間の大阪高等裁判所平成20年(ネ)第1226号 出版差止等請求控訴事件について,平成20年10月31日判決の言渡があり,同日判決正本の送達を受けたが,全部不服であるから上告提起と上告受理申立をする。 原 判 決 の 表 示 主 文 1 本件各控訴及び控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。 2 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 省略 上 告 の 趣 旨 原判決を破棄し,さらに相当の裁判を求める。 上告受理申立の趣旨 1 本件上告を受理する。 2 原判決を破棄し,さらに相当の裁判を求める。 上告の理由及び上告受理申立の理由 追って,それぞれの理由書を提出する。 添 付 書 類 1 上告状兼上告受理申立書副本 2 通 2 代表者事項証明書 1 通 3 訴訟委任状 2 通 以 上
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【民事訴訟法】 〔基本書(メジャー)〕 ☆高橋宏志『重点講義民事訴訟法上下』有斐閣(2011/12・第2版,2012/11・第2版)……2分冊。いわゆる重要論点の数々を 取り上げて深く論じている。体系書ではないため純制度的・手続的知識には触れていないが、学界で争いのある論点についての網羅性は極めて高く、分厚い体系 書でさえ一言も触れていないような細かな論点であっても脚注などで拾い上げて、それなりに論及していることが多い。まさに広さと深さとを両立した本。ロー スクールの授業では必須のアイテムだと思われるが、受験対策としてここまでやるべきなのかどうかという点については異論も見られる。※法教355号 (2010年4月号)から366号(2011年3月号)まで連載再開。 ☆新堂幸司『新民事訴訟法』弘文堂(2011/08・第5版)……学界の到達点を示す最高水準の体系書。論理的かつ明快で、まことに示唆に富む。 文章そのものは柔らかいが、その一文一文にとても深い意味が込められており、著者の問題意識や利益考量の手腕を味わいながら読み進めたい。具体例が豊富な ので分かりやすいが、新堂説は結論の妥当性を柔軟に追求するものであり、いわゆる概念法学を好まない。それゆえ、かえって初学者にとっては取組みづらい内 容となっている。第4版では訴訟承継等で改説。第5版では証明度について優越的蓋然性説を採用するなどの改説、一般条項における要件事実と証明責任につい て加筆等している。なお非訟事件手続法・家事事件手続法には非対応。 ☆伊藤眞『民事訴訟法』有斐閣(2011/12・第4版)……学者執筆の基本書としては珍しく旧訴訟物理論。はしがきには概説書とあるが、著者の 見解がはっきりと打ち出されている本格派の体系書である。論点を網羅する、どちらかといえば広く薄いタイプ。全体として堅牢な体系と穏当な解釈が特徴だ が、脚註で少数説がサラッと書いてあることもあり、「新司は実務家登用試験だから旧訴訟物理論の本書だけで十分!」といった安易な読み方はするべきではな い、というか、できない。文章も硬く、内容もかなり難解な上、さまざまな法律用語が説明もなしに出てくるため、初学者にはまったく向かない。 ☆和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』(2012/08)……LIVE本の著者による民事訴訟法全体を通覧する教科書。藤田・講義民訴の上位互 換である。条文(及びその趣旨)を重視し,図表を多用して、著者自身の言葉で噛み砕いた説明を行っているのが特徴。メリハリも効いており,重要論点につい てはまさに「司法試験に必要な程度」に学説(新堂,高橋など)も取り上げられているため,的確に問題認識をすることができる。 中野・松浦・鈴木編『新民事訴訟法講義』有斐閣大学双書(2008/05・第2版補訂2版)……各分野における第一線の教授陣による共著の概説 書。執筆者の面々を見るだけで一貫性に限界があるように思われるが、各人が得意分野を担当していることもあり、意外なほど使い勝手は良い。基本的には新訴 訟物理論の立場ではあるが、当然のことながら旧訴訟物理論もきちんと解説しているし、そもそも新説に立とうが結論に大きな差が生じないのが近年の傾向であ るから、それほど気にする必要はない。論点も豊富に取り上げられており、その解説も秀逸。ただし初学者向けではないので、先に入門書や簡単な概説書を読ん でおくとよい。また、執筆者によって文体と脚注の使い方が著しく異なるため、一冊の本としての統一性を求める読者には不向きである。いずれにせよ、ロース クール生にとって無難な選択であるのは確か。はしがきにある「最良の基準書」との称号は言い得て妙。なお、藤田広美『講義民事訴訟』との相性がよいとの声 がある。 山本弘・長谷部由起子・松下淳一『民事訴訟法』有斐閣アルマ(2009/03)……「手続の時系列に則し、手続の主体である原告、被告および裁判 所の手続の節目ごとの行動規範を明らかにする構成(はしがき)」を採用。多数当事者訴訟の項目を設けず、手続内で随時説明を加える構成が目を引く。近時の 多数説をベースにしながら、より先端的な有力学説にも適宜触れており、薄いように見えて重要な論点は意外なほど網羅的に拾っているが、個々の掘り下げは概 して不充分であり、本書のみで民訴の深い理解に到達することは難しい。とはいえ文章は比較的分かりやすく、言葉の定義はしっかりしている。クロスリファレ ンスを徹底しているのが学習者には嬉しいところ。 総研『民事訴訟法講義案』司法協会(2010/06・再訂補訂版)……実務説(旧訴訟物理論)。掲載されている論点が豊富。ただし試験に関係ない記述も多数。淡白。 藤田広美『講義民事訴訟』東京大学出版会(2011/04・第2版)……総研本著者による話題の新著。民事訴訟法の体系書ではなく、民事訴訟実務 の手続きをコンパクトにまとめたマニュアル本。『民事訴訟実務の基礎』などに近い。たまに論点を取り上げて独自の考察をしているが、おおむね学説の対立に は分け入らない傾向にあり、実務上定着している論点はほとんど所与のものとして扱っている(たとえば訴訟物論争についても完全にスルー。)。前半部分で要 件事実についても多くの頁を割いて解説しているため,内容が薄いとの声もある。もっとも「新試にはこの一冊で充分」などと言われることもあり、賛否両論あ るところだろう。はしがきやあとがきを見ると、本書が民訴の初学者に向けて書かれたものであるということは明らかだが、民法・民訴・要件事実について一通 り知識がないと読みこなせないとの評価もある。第2版では手形訴訟手続・簡易裁判所手続・上訴などの記述を補充し,頁数がかなり増えた。 上田徹一郎『民事訴訟法』法学書院(☆2011/06・第7版)……基本事項を網羅的かつ丁寧に解説する教科書。縦書き。教育的配慮から基本部分 と応用部分を本文と脚注に2分して解説する独特のスタイルをとっている。自説主張が弱く、判例・学説の発展の経緯が丁寧に書かれている一方、最新の議論に ついてはやや弱い面がある。かつては受験生トップシェアだったが、伊藤や講義案のシェアが増加する一方、本書を利用する学生は減少傾向にある。だが、教育 効果の高い良書であることに変わりはないので、民訴が苦手な人や初学者は試す価値がある。著者高齢のため第6版・第7版の改訂は上田教授の意向を受けた稲 葉教授が行った。本文に変更はほとんどなく、稲葉教授が論点を補充したほか、新判例や新立法のみを巻末にまとめて追加しただけの、やや残念な改訂となって いる。ただ、判例追補は短答対策に有益だという意見もある。 〔基本書(その他)〕 林屋礼二『新民事訴訟法概要』有斐閣(2004/09・第2版)……16年改正対応。現在では古くなった感があるが、500頁という分量 ながら用語の定義や基本概念については他に類を見ないほど非常に充実している。複雑訴訟が独立の項目になっていないなど、一般的な基本書とは大きく異なる 構成をとっているために初学者にはとっつきにくいと思われるが、そのような配慮を理解できる中上級者にとっては一読の価値がある。現在は絶版となってお り、有斐閣でオンデマンド版の購入が可能であるが、1冊10,000円と高価格なのがネック。 松本博之・上野泰男『民事訴訟法』弘文堂(2010/10・第6版)……新訴訟物理論(二分肢説)。共著とは言え、執筆者は2名であり、言葉の定 義にぶれはなく、クロスリファレンスも比較的充実している。もっとも、一冊の本として一貫しているかと言うと、単に松本執筆部分が多いから一貫性の欠如が あまり表面化していないだけであろう。松本教授の執筆する単純訴訟の第1審手続の部分と、上野教授の執筆する複雑訴訟および上訴の部分では、書きぶりが まったく異なるので、以下では分けて説明する。まず、松本執筆部分について言うと、少数説が非常に多い。そうした論点では判例・通説は丁寧に語られず、結 論のみか、理由があっても一、二行といった状態である。松本教授の興味関心に応じて記述にムラがあるほか、細かな論点においてある見解を採用する根拠を他 の著作や研究論文に丸投げしている箇所もちらほらある。学生に向けて条文や制度の趣旨を丁寧に解説する、いわゆる教科書としての性格は薄い。文章も分かり にくく、学生にとってはあまり使い勝手の良くない本である。次に上野執筆部分について説明する。上野教授(民訴の天才とも、破壊神とも)の執筆する複雑訴 訟および上訴の部分は、思考の整理が行き届いており、文章が分かりやすく、判例や多数説をきっちり踏まえた内容となっており、非常に読みやすい。結論とし て少数説を採る箇所もあるが、そうした箇所で少数説に深々と立ち入るのは避けている。難しい議論は文字のポイントを落とすなど、記述にメリハリがあり、制 度趣旨の説明も丁寧で、学生向け教科書としても出色の完成度である。 ☆上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『民事訴訟法』有斐閣S(2012/04・第6版補訂版)……新訴訟物理論。薄くて通読向き。学説の対立にはあま り分け入らず、判例の紹介は多いがほんの数行程度であり、単に問題提起をしただけで終わってしまっているような個所も散見される。文書もSシリーズにして は硬く、初学者は本書のみではどうにもならないだろう。上級者のまとめ用としてなら便利か。 ☆三谷忠之『民事訴訟法講義』成文堂(2011/07・第3版)……薄め。判例重視。15年改正対応(第2版)。第3版は評価待ち。 河野正憲『民事訴訟法』有斐閣(2009/05)……横書き900頁超。概して重たい傾向にある民訴の基本書の中でもひときわボリュームが大き い。判決文を頻繁に,かつ長めに引用している点に特色があるが,その分,論点に対する解説は頁数の割に薄くなってしまっており,意外と使いにくい。 ☆小林秀之・山本浩美『明解民事訴訟法』法学書院(2012/04・第2版)......全32章。問答方式により理解をすすめることを目的としている。巻末資料として書式の引用が豊富。第2版で国際裁判管轄規定に対応。 ☆小林秀之・原強『民事訴訟法(論点講義シリーズ8)』弘文堂(2011/07・第4版)......国際裁判管轄規定に対応。 納谷廣美『講義民事訴訟法』創成社(2004/06)……読み易くコンパクト。実務も重視。演習書『演習民事訴訟法』創成社(2005/02)と対をなす。 梅本吉彦『民事訴訟法』信山社(2009/04・第4版)……分厚い文字どおりの体系書。改訂頻繁だが、はしがきを読むとなんか許せてしまう。 岡伸浩『民事訴訟法の基礎』法学書院(2008/09・第2版)……弁護士の著作。読みやすく、判例の紹介も詳細。 伊藤眞・山本和彦『民事訴訟法の争点』有斐閣(2009/03)……シンプルな論点集。網羅性は高いが、やや舌足らずな解説も見られる。 【旧法】兼子一・竹下守夫『民事訴訟法』弘文堂(1993/07・新版)……旧通説。2008年10月にOD版として復活。新民訴法不対応だが、簡明に伝統的通説を示した本書(全体で300頁ほどしかない)が改訂されることなく消えていくのは、惜しまれてならない。 吉村徳重・竹下守夫・谷口安平編著『講義民事訴訟法』青林書院(2001/04)……竹下守夫・谷口安平らが関わった新法対応の教科書。井上、伊 藤、河野、春日など大学双書とかなり執筆者が被っている。大学双書が理論面での解説に力を入れているのに対し、こちらは概ね通説・実務の立場にたち、それ がどのように運用されているかを解説する。大学双書よりはあっさりしているが、書研や藤田ほど蛋白ではなく、また予備校的論点解説ではない。学説の錯綜に 混乱した時本書を読んでみるのもありかもしれない。 【旧法】谷口安平『口述民事訴訟法』成文堂(1987/12)……口述法律学シリーズの傑作。著者は元京大教授、「コップの中の嵐」で知られる大 御所。臨場感あふれる軽妙な語り口で、分かりやすく、かつユーモラスに民訴を解きほぐす。普通の基本書はあまり触れないようなことが丹念に述べられてお り、非常に示唆的である。旧法下の本だが、本書の大部分は、法改正にほとんど関係ない総論部分にあてられているため、既に一通り勉強した学生が参考書とし て通読ないし拾い読みをしていけば、立体的な民訴の理解に到達できるだろう。 〔入門書〕 ☆木山泰嗣『小説で読む民事訴訟法』法学書院(2008/04)……小説形式で民事訴訟法・民事裁判を学ぼうという意欲作。現在最も適切な入門書。寝転がって気楽に読める。基本書を読んでもイマイチわからなかった点が、スッキリと理解できる。学習効果抜群の良書。 中野貞一郎『民事裁判入門』有斐閣(2010/04・第3版)……入門書の定番。咀嚼された文章に定評があるが、それほど易しい本ではない。いく つかの論点については比較的高度な検討を加えており、意外と内容は深い。第3版では執行・保全の章が削除された代わりに管轄と家事事件の章が追加され、判 決手続きに特化されることになった。もっとも、本書のみでは択一ですらおぼつかないところがあり、できるだけ早く通常サイズの基本書に移行するべきだろ う。 山本和彦『よくわかる民事裁判』有斐閣(2008/08・第2版補訂)……平凡吉という主人公の人生が物語調に書かれている。賃貸借契約にかかる事例を用いて、民事裁判の始まりから終わりまで、小説を読む感覚で学ぶことができる。 司法研修所監修『民事訴訟第一審手続の解説-事件記録に基づいて』法曹会(2001/06・4訂版)……司法研修所の民事裁判テキスト(白表紙)。実際の事件記録を題材に第一審民事訴訟手続を解説。手続法において重要な手続の流れをつかむのに最適。 〔判例集〕 高橋宏志・高田裕成・畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選』有斐閣(2010/10・第4版)……7年ぶりの改定。判例数をさらに絞って国際民事訴訟法に関する判例を割愛。競合の判例集が少ないこともあり、ほぼ皆が利用している 小林秀之編『判例講義 民事訴訟法』悠々社(2010/09・第2版)…205の判例を収録。判例数は多く、テーマごとに同一著者が評釈している点が特徴。 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『基本判例民事訴訟法』有斐閣(2010/09・第2版補訂)……Sシリーズ著者による判例集。判例解説なし。 小川英明・長秀之・宗宮英俊編著『民事訴訟法主要判例集』商事法務(2009/08)……裁判官(及び元裁判官)が編集した判例集。条文順の並びで判例解説はなく、判例収録数は驚きの604件(そのほとんどが大審院および最高裁の判例)。 〔注釈書〕 秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法I・II・III・IV・V』日本評論社(I・2006/04・第2版,II・2006/03・ 第2版,III・2008/06,IV・2010/12,V・2012/08)……旧民事訴訟法下の定番コンメンタールであった菊井=村松『全訂民事訴訟 法(全3巻)』の改訂版であり、実務家必携の詳細な注釈書。全7巻(予定)。旧版の執筆者は裁判官が中心であったこともあり実務的に手堅い見解をとってい る。少数執筆者による合議を経て執筆されているため、執筆部分につき匿名方式をとっている。 兼子一原著・松浦馨ほか著『条解民事訴訟法』弘文堂(2011/04・第2版)……上記コンメン民訴が実務家必携であるのに対し、こちらは研究者 執筆(今回の改訂には裁判官も執筆者に参加しているが)にかかる理論的な解説も充実したアカデミックな(新訴訟物理論を支持していたりする)定評ある注釈 書。1冊本だが本文1924頁(!)。山本和彦教授が本書の書評において、本書の採用する見解を論点ごとに短評しており参考になる(判タ1350号80 頁)。ただし、数多くの間違いが指摘されている点に注意が必要である(出版社HPで訂正が公表されているが、それも全ての間違いがカバーされているわけで はない)。 賀集唱ほか『基本法コンメンタール民事訴訟法1・2・3』」日本評論社(1-3・2012/02・第3版追補版)……改訂が比較的頻繁。実務的な 細かい手続きの情報が充実しているのが特徴。本のサイズが大きく文字ポイントも小さいため学生には十分な情報量がある。第3版追補においては国際裁判管轄 についての民訴法改正を逐条解説。日本評論社のHPにて追補部分をダウンロード可能。 笠井正俊・越山和広『新・コンメンタール民事訴訟法』日本評論社(2010/12)……TKCで提供されているインターネットコンメンタールを紙 媒体に印刷したもの。頁数は1264頁と多いが、結構空白が多く文字ポイントも大きいので情報量はわりと少なめである。もっとも、短答対策には十分であ る。 〔演習書〕 三木浩一・山本和彦編『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2010/03・第3版補訂)……独習には向かないが良問が揃っている。【資 料】欄に掲載されている文献は高橋『重点講義』その他の書籍でも採り上げられているものが多く,基本かつ重要な文献が掲載されている(ただし,内容的には 高度なものも含まれている)。 長谷部由起子他『ケースブック民事訴訟法』弘文堂(2010/03・第3版)……判例を分析するタイプの問題が多い。ロースクール民事訴訟法とかぶっているところも多々あり。 長谷部由起子ほか『基礎演習民事訴訟法』弘文堂(2010/04)……執筆陣は東大卒の若手研究者を中心とする30名で,おのおのが得意分野を担 当しており,学習者向けの良質な論点解説集となっている。はしがきには学部生や未修者向けの演習書と書かれているが,決して易しい問題ばかりという訳では ない。解析民訴やライブ本に取り組む前の橋渡しとして,多くの学生にとって有益な一冊と言えるだろう。 藤田広美『解析民事訴訟』東京大学出版会(2009/02)……藤田『講義』の続編。こちらも口語体。通説以外の学説をスルーしすぎたきらいのあ る『講義』を補完。昭和24年度から平成20年度までの旧試論文問題に適宜寄り道して検討を加えながら、重点講義のように体系順に重要論点を解説してい る。全体としてかなり広い範囲をカバーしているが、掘り下げは受験レベルとしてもやや物足りない。旧試過去問のうち、事例問題の中には数頁を費やして解説 されているものもあるが、一行問題の多くはほとんど、あるいは全く解説が付いていない。そもそも過去問の解説は答案作成を想定したものになっておらず、演 習書と言うよりは教科書に近い。初刷は誤記・誤植多数のため、東大出版会HPで長大な訂正一覧が発表されている。必ず第2刷以降を買うべきである。 和田吉弘『司法試験論文本試験過去問 民事訴訟法』辰巳法律研究所(2005/04)……元判事の教授による旧司法試験過去問解説講義を書籍化。いわゆるライブ本。辰巳作成解答例・講師レジュ メ・問題解説・解答例の検討からなる。旧司法試験受験生向けの講義のため、基本的に引用文献を伊藤・双書・新堂・上田等の代表的体系書と重点講義・百選 (第3版)に抑えて解説している。分厚いが要するに講義録なので読みやすく、わかりやすい。理論水準も藤田・解析より安定しており、信頼できる。新版は平 成16年度の問題まで収録しており,全40問。絶版だったが2008年に万能書店からオンデマンド版で復刊された。16年改正対応。復刊後、万能書店の全 書籍売れ筋ランキングでほとんどの期間を通じて1位を維持している(2011年6月12日現在)。 井上治典『実践民事訴訟法』有斐閣(2002/3)……理論的に高度な論点も平易な記述で論文試験に活かせられるように解説。ロースクール民事訴訟法が手軽になったものと考えてもよい。著者が故人のため改訂は見込めない。 遠藤賢治『事例演習民事訴訟法』有斐閣(2008/10、2011/03改訂予定)……法学教室の「演習」連載の単行本化。著者は判事出身のロー スクール教員。初~中級向けの事例問題と丁寧な解説。何気に有斐閣ロースクール民訴との相性が抜群なので(同書で問われている事項の基礎を本書でさらって いくことができる。)、ロースクールの授業で同書を使用している学生は、余力があれば並行して本書を使用してみるとよいだろう。独習でガンガンいける。 小林秀之『プロブレム・メソッド新民事訴訟法』判例タイムズ社(1999/08・補訂版)……判例の事案を中心に学べる本。 結構面白い。後継本として『ケースで学ぶ民事訴訟法』日本評論社(2008/04・第2版)。 小林秀之『事例分析ゼミ 民事訴訟法』法学書院(2007/12)……受験新報連載を単行本化。優秀な大学生の男女、努力家の大学院生、若手渉外弁護士、4人のゼミ生による小林ゼミ(という設定)。レベルはかなり高い。 〔その他〕 伊藤眞・加藤新太郎・山本和彦『民事訴訟法の論争』有斐閣(2007/07)……民事訴訟法の重要論点を対談形式で進めていく。学説の整理、学会の最新の議論などに秀でる。 新堂幸治編『特別講義民事訴訟法』有斐閣(1988/2)……理論民事訴訟法学の最重要文献の一つ。もともと法学教室の連載であったが、内容は超 高度。気分転換やある論点について知識を深化させたい時ぐらいしか読むべきではない。内田貴、加藤雅信稿はそれぞれの民法学を理解するためには必見。OD 版により復刊。
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平成23年(2011年) ①[民事訴訟法]国際裁判管轄に関する規定(5月2日・法36)ほか ②[関連法]5月25日:(新)非訟事件手続法(法51)・家事事件手続法(法52)の成立 →平成23年12月30日現在、②に対応した基本書は伊藤眞の『民事訴訟法』第4版のみ。 【民事訴訟法】 〔基本書〕 ☆新堂幸司『新民事訴訟法』弘文堂(2011/08・第5版)……学界の到達点を示す最高水準の体系書。論理的かつ明快で、まことに示唆に富む。文章そのものは柔らかいが、その一文一文にとても深い意味が込められており、著者の問題意識や利益考量の手腕を味わいながら読み進めたい。具体例が豊富なので分かりやすいが、新堂説は結論の妥当性を柔軟に追求するものであり、いわゆる概念法学を好まない。それゆえ、かえって初学者にとっては取組みづらい内容となっている。第4版では訴訟承継等で改説。第5版では証明度について優越的蓋然性説を採用するなどの改説、一般条項における要件事実と証明責任について加筆等している。なお非訟事件手続法・家事事件手続法には非対応。 ☆伊藤眞『民事訴訟法』有斐閣(2011/12・第4版)……学者執筆の基本書としては珍しく旧訴訟物理論。はしがきには概説書とあるが、著者の見解がはっきりと打ち出されている本格派の体系書である。論点を網羅する、どちらかといえば広く薄いタイプ。全体として堅牢な体系と穏当な解釈が特徴だが、脚註で少数説がサラッと書いてあることもあり、「新司は実務家登用試験だから旧訴訟物理論の本書だけで十分!」といった安易な読み方はするべきではない、というか、できない。文章も硬く、内容もかなり難解な上、さまざまな法律用語が説明もなしに出てくるため、初学者にはまったく向かない。 中野・松浦・鈴木編『新民事訴訟法講義』有斐閣大学双書(2008/05・第2版補訂2版)……各分野における第一線の教授陣による共著の概説書。執筆者の面々を見るだけで一貫性に限界があるように思われるが、各人が得意分野を担当していることもあり、意外なほど使い勝手は良い。基本的には新訴訟物理論の立場ではあるが、当然のことながら旧訴訟物理論もきちんと解説しているし、そもそも新説に立とうが結論に大きな差が生じないのが近年の傾向であるから、それほど気にする必要はない。論点も豊富に取り上げられており、その解説も秀逸。ただし初学者向けではないので、先に入門書や簡単な概説書を読んでおくとよい。また、執筆者によって文体と脚注の使い方が著しく異なるため、一冊の本としての統一性を求める読者には不向きである。いずれにせよ、ロースクール生にとって無難な選択であるのは確か。はしがきにある「最良の基準書」との称号は言い得て妙。なお、藤田広美『講義民事訴訟』との相性がよいとの声がある。 松本博之・上野泰男『民事訴訟法』弘文堂(2010/10・第6版)……新訴訟物理論(二分肢説)。共著とは言え、執筆者は2名であり、言葉の定義にぶれはなく、クロスリファレンスも比較的充実している。もっとも、一冊の本として一貫しているかと言うと、たとえば予備的相殺の抗弁と不利益変更禁止の原則に関する論点では両名の見解が正面衝突している。また、上野執筆部分の注釈などを読んでいると、他にも微妙な見解の相違は少なくないようだ。単に松本執筆部分が多いから一貫性の欠如があまり表面化していないだけであろう。松本教授の執筆する単純訴訟の第1審手続の部分と、上野教授の執筆する複雑訴訟および上訴の部分では、書きぶりがまったく異なるので、以下では分けて説明する。まず、松本執筆部分について言うと、少数説が非常に多い。そうした論点では判例・通説は丁寧に語られず、結論のみか、理由があっても一、二行といった状態である。「学説整理に定評あり」とも言われるが、3つ以上の学説を詳細に比較検討している個所は稀であり、予備校本のような役割はまったく期待することができない。松本教授の興味関心に応じて記述にムラがあるほか、細かな論点においてある見解を採用する根拠を他の著作や研究論文に丸投げしている箇所もちらほらある。学生に向けて条文や制度の趣旨を丁寧に解説する、いわゆる教科書としての性格は薄い。文章も分かりにくく、学生にとってはあまり使い勝手の良くない本である。他方、定義がしっかりしている上に、テクニカルタームの用法には細心の注意が払われており、記述は精密である。少数説であっても、百選での引用頻度は新堂・高橋・伊藤などにも引けを取らない。章立てや概念整理も明確であり、松本説自体も利益考量を嫌う体系志向が強いものである。総じて、上級者にとっては満足のいく一冊となるだろう。次に上野執筆部分について説明する。上野教授(民訴の天才とも、破壊神とも)の執筆する複雑訴訟および上訴の部分は、思考の整理が行き届いており、文章が分かりやすく、判例や多数説をきっちり踏まえた内容となっており、非常に読みやすい。結論として少数説を採る箇所もあるが、そうした箇所で少数説に深々と立ち入るのは避けている(教科書としての分をわきまえている)。難しい議論は文字のポイントを落とすなど、記述にメリハリがあり、制度趣旨の説明も丁寧で、学生向け教科書としても出色の完成度である。これらの分野が苦手で、手持ちの教科書を読んでも今一つ理解できないという学生は、図書館等で上野執筆部分をじっくり読んでみると良いだろう。なお、上野教授は本書について「本当は20000円で売りたいくらいの価値があるが、弘文堂に断られた。」と述べている。改訂は頻繁で、今般の法改正に応じた改訂も速やかに行われると見込まれる。 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『民事訴訟法』有斐閣S(2009/04・第6版)……新訴訟物理論。薄くて通読向き。学説の対立にはあまり分け入らず、判例の紹介は多いがほんの数行程度であり、単に問題提起をしただけで終わってしまっているような個所も散見される。文書もSシリーズにしては硬く、初学者は本書のみではどうにもならないだろう。上級者のまとめ用としてなら便利か。 山本弘・長谷部由起子・松下淳一『民事訴訟法』有斐閣アルマ(2009/03)……「手続の時系列に則し、手続の主体である原告、被告および裁判所の手続の節目ごとの行動規範を明らかにする構成(はしがき)」を採用。多数当事者訴訟の項目を設けず、手続内で随時説明を加える構成が目を引く。見解は通説ベースながら、最新の学説にも適宜触れており、薄いように見えて重要な論点は意外なほどきちんと拾っている。近時の民訴のテキストにしてはかなり文章が分かりやすく、言葉の定義はしっかりしている。反面、掘り下げ方はやや足りない傾向にある。クロスリファレンスを徹底しているのが学習者には嬉しいところ。 ☆高橋宏志『重点講義民事訴訟法上下』有斐閣(2011/12・第2版,2010/03・補訂第2版)……2分冊。いわゆる重要論点の数々を取り上げて深く論じている。体系書ではないため純制度的・手続的知識には触れていないが、学界で争いのある論点についての網羅性は極めて高く、分厚い体系書でさえ一言も触れていないような細かな論点であっても脚注などで拾い上げて、それなりに論及していることが多い。まさに広さと深さとを両立した本。ロースクールの授業では必須のアイテムだと思われるが、受験対策としてここまでやるべきなのかどうかという点については異論も見られる。判例索引がないのが玉に瑕(上巻の第2版に付くようになった)。※法教355号(2010年4月号)から連載再開中。 〔基本書(その他)〕 上田徹一郎『民事訴訟法』法学書院(☆2011/06・第7版)……基本事項を網羅的かつ丁寧に解説する教科書。縦書き。教育的配慮から基本部分と応用部分を本文と脚注に2分して解説する独特のスタイルをとっている。自説主張が弱く、判例・学説の発展の経緯が丁寧に書かれている一方、最新の議論についてはやや弱い面がある。かつては受験生トップシェアだったが、伊藤や講義案のシェアが増加する一方、本書を利用する学生は減少傾向にある。だが、教育効果の高い良書であることに変わりはないので、民訴が苦手な人や初学者は試す価値がある。著者高齢のため第6版・第7版の改訂は上田教授の意向を受けた稲葉教授が行った。本文に変更はほとんどなく、稲葉教授が論点を補充したほか、新判例や新立法のみを巻末にまとめて追加しただけの、やや残念な改訂となっている。 総研『民事訴訟法講義案』司法協会(2010/06・再訂補訂版)……実務説(旧訴訟物理論)。掲載されている論点が豊富。ただし試験に関係ない記述も多数。淡白。 藤田広美『講義民事訴訟』東京大学出版会(2011/04・第2版)……総研本著者による話題の新著。民事訴訟法の体系書ではなく、民事訴訟実務の手続きをコンパクトにまとめたマニュアル本。『民事訴訟実務の基礎』などに近い。たまに論点を取り上げて独自の考察をしているが、おおむね学説の対立には分け入らない傾向にあり、実務上定着している論点はほとんど所与のものとして扱っている(たとえば訴訟物論争についても完全にスルー。)。前半部分で要件事実についても多くの頁を割いて解説しているため,内容が薄いとの声もある。もっとも「新試にはこの一冊で充分」などと言われることもあり、賛否両論あるところだろう。はしがきやあとがきを見ると、本書が民訴の初学者に向けて書かれたものであるということは明らかだが、民法・民訴・要件事実について一通り知識がないと読みこなせないとの評価もある。第2版では手形訴訟手続・簡易裁判所手続・上訴などの記述を補充し,頁数がかなり増えた。 林屋礼二『新民事訴訟法概要』有斐閣(2004/09・第2版)……読みやすく、かつ分かりやすい。中小サイズの体系書にありがちな論理の飛躍を徹底的に排除しており、読者に行間を読ませない。いわゆる論点落ちもあるが、厚い所は意外なほど厚い。全体を通じてベースはあくまで判例・通説で、それらを紹介した後に、必要に応じて新しい有力説も取り上げる。基礎理論についての判例・学説の変遷を時系列順に説明するため、読者はなぜそれが問題になっているのかを把握しながら、自然と現時点の学説状況に追いつくことができる。16年改正対応。2010年4月よりオンデマンド版を有斐閣HPから購入することができるようになった。 ☆三谷忠之『民事訴訟法講義』成文堂(2011/07・第3版)……薄め。判例重視。15年改正対応(第2版)。第3版は評価待ち。 河野正憲『民事訴訟法』有斐閣(2009/05)……横書き900頁超。概して重たい傾向にある民訴の基本書の中でもひときわボリュームが大きい。判決文を頻繁に,かつ長めに引用している点に特色があるが,その分,論点に対する解説は頁数の割に薄くなってしまっており,意外と使いにくい。 ☆小林秀之・原強『民事訴訟法(論点講義シリーズ8)』弘文堂(2011/07・第4版)......国際裁判管轄規定に対応。 納谷廣美『講義民事訴訟法』創成社(2004/06)……読み易くコンパクト。実務も重視。演習書『演習民事訴訟法』創成社(2005/02)と対をなす。 梅本吉彦『民事訴訟法』信山社(2009/04・第4版)……分厚い文字どおりの体系書。改訂頻繁だが、はしがきを読むとなんか許せてしまう。 岡伸浩『民事訴訟法の基礎』法学書院(2008/09・第2版)……弁護士の著作。読みやすく、判例の紹介も詳細。 伊藤眞・山本和彦『民事訴訟法の争点』有斐閣(2009/03)……シンプルな論点集。網羅性は高いが、やや舌足らずな解説も見られる。 【旧法】兼子一・竹下守夫『民事訴訟法』弘文堂(1993/07・新版)……旧通説。2008年10月にOD版として復活。新民訴法不対応だが、簡明に伝統的通説を示した本書(全体で300頁ほどしかない)が改訂されることなく消えていくのは、惜しまれてならない。 【旧法】谷口安平『口述民事訴訟法』成文堂(1987/12)……口述法律学シリーズの傑作。著者は元京大教授、「コップの中の嵐」で知られる大御所。臨場感あふれる軽妙な語り口で、分かりやすく、かつユーモラスに民訴を解きほぐす。普通の基本書はあまり触れないようなことが丹念に述べられており、非常に示唆的である。旧法下の本だが、本書の大部分は、法改正にほとんど関係ない総論部分にあてられているため、既に一通り勉強した学生が参考書として通読ないし拾い読みをしていけば、立体的な民訴の理解に到達できるだろう。 〔入門書〕 木山泰嗣『小説で読む民事訴訟法』法学書院(2008/04)……小説形式で民事訴訟法・民事裁判を学ぼうという意欲作。寝転がって気楽に読める。基本書を読んでもイマイチわからなかった点が、スッキリと理解できる。学習効果抜群の良書。 中野貞一郎『民事裁判入門』有斐閣(2010/04・第3版)……入門書の定番。咀嚼された文章に定評があるが、それほど易しい本ではない。いくつかの論点については比較的高度な検討を加えており、意外と内容は深い。第3版では執行・保全の章が削除された代わりに管轄と家事事件の章が追加され、判決手続きに特化されることになった。もっとも、本書のみでは択一ですらおぼつかないところがあり、できるだけ早く通常サイズの基本書に移行するべきだろう。 山本和彦『よくわかる民事裁判』有斐閣(2008/08・第2版補訂)……平凡吉という主人公の人生が物語調に書かれている。賃貸借契約にかかる事例を用いて、民事裁判の始まりから終わりまで、小説を読む感覚で学ぶことができる。 司法研修所監修『民事訴訟第一審手続の解説-事件記録に基づいて』法曹会(2001/06・4訂版)……司法研修所の民事裁判テキスト(白表紙)。実際の事件記録を題材に第一審民事訴訟手続を解説。手続法において重要な手続の流れをつかむのに最適。 〔判例集〕 高橋宏志・高田裕成・畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選』有斐閣(2010/10・第4版)……7年ぶりの改定。判例数をさらに絞って国際民事訴訟法に関する判例を割愛。競合の判例集が少ないこともあり、ほぼ皆が利用している 小林秀之編『判例講義 民事訴訟法』悠々社(2010/09・第2版)…205の判例を収録。判例数は多く、テーマごとに同一著者が評釈している点が特徴。 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『基本判例民事訴訟法』有斐閣(2010/09・第2版補訂)……Sシリーズ著者による判例集。判例解説なし。 小川英明・長秀之・宗宮英俊編著『民事訴訟法主要判例集』商事法務(2009/08)……裁判官(及び元裁判官)が編集した判例集。条文順の並びで判例解説はなく、判例収録数は驚きの604件(そのほとんどが大審院および最高裁の判例)。 三木浩一・山本和彦編『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2010/03・第3版補訂)……授業以外では使わない本。独習には向かない。 長谷部由起子他『ケースブック民事訴訟法』弘文堂(2010/03・第3版) 〔注釈書〕 秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法I・II・III・IV』日本評論社(I・2006/04・第2版,II・2006/03・第2版,III・2008/06,IV・2010/12)……旧民事訴訟法下の定番コンメンタールであった菊井=村松『全訂民事訴訟法(全3巻)』の改訂版であり、実務家必携の詳細な注釈書。現時点での刊行は242条まで。旧版の執筆者は裁判官が中心であったこともあり実務的に手堅い見解をとっている。少数執筆者による合議を経て執筆されているため、執筆部分につき匿名方式をとっている。 兼子一原著・松浦馨ほか著『条解民事訴訟法』弘文堂(2011/04・第2版)……上記コンメン民訴が実務家必携であるのに対し、こちらは研究者執筆(今回の改訂には裁判官も執筆者に参加しているが)にかかる理論的な解説も充実したアカデミックな(新訴訟物理論を支持していたりする)定評ある注釈書。1冊本だが本文1924頁(!)。山本和彦教授が本書の書評において、本書の採用する見解を論点ごとに短評しており参考になる(判タ1350号80頁)。 秋山幹夫ほか『基本法コンメンタール民事訴訟法1・2・3』」日本評論社(1・2006/03・第3版,2・2008/01・第3版,3・2007/09・第3版)……改訂が比較的頻繁。実務的な細かい手続きの情報が充実しているのが特徴。本のサイズが大きく文字ポイントも小さいため学生には十分な情報量がある。 笠井正俊・越山和広『新・コンメンタール民事訴訟法』日本評論社(2010/12)……TKCで提供されているインターネットコンメンタールを紙媒体に印刷したもの。頁数は1264頁と多いが、結構空白が多く文字ポイントも大きいので情報量はわりと少なめである。もっとも、短答対策には十分である。 〔演習書〕 長谷部由起子ほか『基礎演習民事訴訟法』弘文堂(2010/04)……執筆陣は東大卒の若手研究者を中心とする30名で,おのおのが得意分野を担当しており,学習者向けの良質な論点解説集となっている。はしがきには学部生や未修者向けの演習書と書かれているが,決して易しい問題ばかりという訳ではない。解析民訴やライブ本に取り組む前の橋渡しとして,多くの学生にとって有益な一冊と言えるだろう。 藤田広美『解析民事訴訟』東京大学出版会(2009/02)……藤田『講義』の続編。こちらも口語体。通説以外の学説をスルーしすぎたきらいのある『講義』を補完。昭和24年度から平成20年度までの旧試論文問題に適宜寄り道して検討を加えながら、重点講義のように体系順に重要論点を解説している。全体としてかなり広い範囲をカバーしているが、掘り下げは受験レベルとしてもやや物足りない。旧試過去問のうち、事例問題の中には数頁を費やして解説されているものもあるが、一行問題の多くはほとんど、あるいは全く解説が付いていない。そもそも過去問の解説は答案作成を想定したものになっておらず、演習書と言うよりは教科書に近い。初刷は誤記・誤植多数のため、東大出版会HPで長大な訂正一覧が発表されている。必ず第2刷以降を買うべきである。 和田吉弘『司法試験論文本試験過去問 民事訴訟法』辰巳法律研究所(2005/04)……元判事の教授による旧司法試験過去問解説講義を書籍化。いわゆるライブ本。辰巳作成解答例・講師レジュメ・問題解説・解答例の検討からなる。旧司法試験受験生向けの講義のため、基本的に引用文献を伊藤・双書・新堂・上田等の代表的体系書と重点講義・百選(第3版)に抑えて解説している。分厚いが要するに講義録なので読みやすく、わかりやすい。新版は平成16年度の問題まで収録しており,全40問。絶版だったが2008年に万能書店からオンデマンド版で復刊された。16年改正対応。復刊後、万能書店の全書籍売れ筋ランキングでほとんどの期間を通じて1位を維持している(2011年6月12日現在)。 遠藤賢治『事例演習民事訴訟法』有斐閣(2008/10、2011/03改訂予定)……法学教室の「演習」連載の単行本化。著者は判事出身のロースクール教員。初~中級向けの事例問題と丁寧な解説。何気に有斐閣ロースクール民訴との相性が抜群なので(同書で問われている事項の基礎を本書でさらっていくことができる。)、ロースクールの授業で同書を使用している学生は、余力があれば並行して本書を使用してみるとよいだろう。独習でガンガンいける。 小林秀之『プロブレム・メソッド新民事訴訟法』判例タイムズ社(1999/08・補訂版)……判例の事案を中心に学べる本。 結構面白い。後継本として『ケースで学ぶ民事訴訟法』日本評論社(2008/04・第2版)。 小林秀之『事例分析ゼミ 民事訴訟法』法学書院(2007/12)……受験新報連載を単行本化。優秀な大学生の男女、努力家の大学院生、若手渉外弁護士、4人のゼミ生による小林ゼミ(という設定)。レベルはかなり高い。 〔その他〕 伊藤眞・加藤新太郎・山本和彦『民事訴訟法の論争』有斐閣(2007/07)……民事訴訟法の重要論点を対談形式で進めていく。学説の整理、学会の最新の議論などに秀でる。 【民事執行・民事保全】 〔基本書・入門書〕 和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』弘文堂(2010/04)……図表を駆使し、簡潔明瞭な文章で徹底的に分かりやすさを追求した学生向け入門書の決定版。学習のはじめに間違いのない一冊である。その分中身は薄いが、学部やロースクールの定期試験なら本書を数回通読するだけでも乗り切れるだろう。 中野貞一郎『民事執行・保全入門』有斐閣(2010/04)……民事手続法の第一人者による入門書。好著『民事裁判入門』の姉妹版であり、同様のコンセプトに立つ。適度にくだけた文章により分かりやすく解説する。和田・基礎よりも内容は充実しているが、標準的な概説書と比べるとやはり多少の物足りなさもある。 中西正・中島弘雅・八田卓也『リーガルクエスト 民事執行法・民事保全法』有斐閣(2010/01)……スタンダードな民事執行法・民事保全法のテキスト。記述に安定感はあるが、リーガルクエストシリーズらしく発展的な知識も随所にちりばめられている。民法・民事訴訟法の知識があるのは当然の前提としているため初学者には向かない。和田・基礎や中野・入門などを経てから取り組むべき本である。 生熊長幸『わかりやすい民事執行法・民事保全法』成文堂(2006/10)……本文そのものは条文の引き写しに終始したいささか無味乾燥なものとなっているが、理解を助ける図表や実際の書面のサンプル、読者の興味を惹くコラムなどが随所に散りばめられており、学生向けの教科書を強く意識した作りとなっている。レジュメ調の構成はやや好みが分かれるところであろう。著者が専門とする担保物権とのつながりも強く意識されている。 ☆上原敏夫他『民事執行・保全法』有斐閣アルマ(2011/03・第3版)……入門書と概説書を兼ねた一品。コラムも面白い。 ☆福永有利『民事執行法・民事保全法』有斐閣(2011/03・第2版)……名著である山木戸克己『民事執行・保全法』(1999/05)の叙述を利用しつつ(はしがきで明記されている)、現行法に即して書き下ろされた、民事執行法の大家の手による教科書。自説は抑え気味。文章は平明で、注も少なく読みやすい。発展的な内容はコラムに回されている。一冊だけ読むならコレ。2版の改訂箇所は判例の追加、ゴシック体への変更などごくわずか。 中野貞一郎編『民事執行・保全法概説』有斐閣双書(2006/06・第3版)……おそろしく豪華な執筆陣による概説書。平均年齢の高さもあってか文章は硬くて平板。図表の類も少なく、意外とボリュームもあるため、初学者が手を出すと失敗するタイプの本。 藤田広美『民事執行・保全』羽鳥書店(2010/4)…… 〔体系書・実務書〕 中野貞一郎『民事執行法』青林書院(2010/10・増補新訂6版)……民事手続法の第一人者による決定版。まさに孤高の体系書。 瀬木比呂志『民事保全法』判例タイムズ社(2009/01・第3版)……民事保全の第一人者である現役裁判官による体系書。 須藤典明・深見敏正・金子直史『リーガル・プログレッシブ・シリーズ1民事保全』青林書院(2008/07・改訂版)……東京地裁保全部経験裁判官が同部の運用を解説した著書。 齊藤隆・飯塚宏編著『リーガル・プログレッシブ・シリーズ4民事執行』青林書院(2009/01)……東京地裁民事第21部(執行部)経験裁判官による民事執行の概説書。 〔注釈書〕 浦野雄幸編『基本法コンメンタール 民事執行法』日本評論社(2009/09・第6版)……実務必携の詳細な注釈書。平成20年改正まで対応。他に新しい注釈書がないためか、実務家向けの分厚い本になっている。学生は図書館で参照すれば十分である。
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【基本書】〔メジャー〕 〔その他〕 【その他参考書】 【入門書・概説書】 【注釈書・コンメンタール】 【判例集・ケースブック】〔判例集〕 〔ケースブック〕 〔その他〕 【演習書】 【基本書】 〔メジャー〕 三木浩一・笠井正俊・垣内秀介・菱田雄郷『民事訴訟法(LEGAL QUEST)』有斐閣(☆2023年3月・第4版)……旧訴訟物理論の立場から執筆された共著。重要事項については、判例・通説から丁寧に解説しつつ、各論点について採用する説を明示する。理論的な見地から、通常とは異なる用語を使用する場面がいくつか見られることには注意を要する(例えば「客観的併合」→「客体的併合」、「主観的併合」→「主体的併合」、「訴訟資料」→「主張資料」など)。また、異説を採用することが少なくない(主に三木執筆部分)。しかし、その場合にも通説は丁寧に説明されているため、受験的な弊害は少ない。掲載判例は400以上と類書よりも多く、安定感がある。多くのロースクールで採用されている三木・山本編『ロースクール民事訴訟法』と相性がよいとされる。第4版において、令和4年民事訴訟法改正および第3版(2018年7月)刊行以降の新判例が織り込まれた。なお、第4版はしがきによると、令和4年民事訴訟法改正については令和5年3月までに施行される部分は本文に組み込む一方、未施行部分は巻末の補遺で概説し、最後の施行が予想される約3年後に第5版を刊行する予定とのこと。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴1位。電子書籍版あり。全14章。A5判、748頁(本文710頁)。 和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(2022年4月・第2版)……辰已のLIVE本シリーズで受験生にはお馴染みの著者による民事訴訟法の教科書。一冊で民事訴訟法の体系・論点をある程度カバーすることができる。図表を多用し、著者自身の言葉で噛み砕いた説明を行っているのが特徴。記述はメリハリも効いており、条文及びその趣旨の解説に重点を置きつつ、重要論点については「司法試験に必要な程度」に学説(新堂、高橋、伊藤など)を取り上げている。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴3位。全17章。A5判、688頁(本文657頁)。 瀬木比呂志『民事訴訟法』日本評論社(☆2022年12月・第2版)……著者は『絶望の裁判所』(講談社、2014年)でお馴染みの元裁判官(1994年に最高裁調査官も経験)。依願退官後、民事訴訟法学者として法科大学院教授に転身した経歴を持つ。著者は当局批判の多い人物であるが、本書の内容はいたってオーソドックスであり、旧訴訟物理論など判例通説を踏まえた穏当な立場で解説されている(とはいえ、折に触れて私見も述べられている)。分厚いものの文章は読みやすく、民事訴訟実務について33年間に及ぶ著者の裁判官経験も交えてプラグマティックに言及しており(例えば、実務で権利自白がなされるのは所有権についてがほとんどであること、訴訟承継につき引受承継よりも別訴を提起して弁論の併合をする場合が多いことなど)、リークエや新堂、伊藤などを適示しながら新しい議論にもある程度触れていることから、近時人気を集めつつある一冊である。また、学生が理解しづらかったり誤解をしがちな箇所についても学生が想定できる具体例をあげ、平易な言葉を用いて説明をしている(例えば、既判力が後訴に及ぶかの判断における判決内容の同一・矛盾・先決関係)。ただその分、個々の論点の説明がリークエなどよりは薄い。民事訴訟手続きのIT化を中心とする2022年の法改正についても、補論で対応している。全24章+補論。A5判、862頁。 〔その他〕 伊藤眞『民事訴訟法』有斐閣(☆2023年12月・第8版)……三ケ月門下。学者執筆の体系書としては数少ない旧訴訟物理論。民事訴訟法の要である用語の定義がしっかりしており、文献では新堂に次いで引用されることが多い。全国の裁判官室に必ず支給されていることから、実務家からの信頼も厚い一冊であることがうかがえる(*1)。著者の見解がはっきりと打ち出されているタイプの基本書であるが、はしがきにも"概説書"とあるとおり、判例・通説・多数説などについてもしっかりと言及はあるので、それほど心配はいらない。論点の網羅性は高く、またその理由付けは簡潔かつ明瞭でわかりやすい。全体として堅牢な体系と妥当性を重視した解釈が特徴。「定評ある民事訴訟法のスタンダードテキスト」の評は伊達ではないが、図の類は用いない「堅い」基本書であり、到底初学者向きとは言えない。第8版にてR4民訴法改正に対応。電子書籍版あり。全10章。A5判、930頁。 長谷部由起子『民事訴訟法』岩波書店(2024年3月・第4版)……新堂門下。コンパクトでありながら、定義がしっかりと書いてあり、要点が押さえられていることから「民訴版サクハシ」とも形容される。判例の紹介が物足りないという声も。論点によっては深く掘り下げてある。薄いのでさっと要点を確認するのに向いている。第3版において、民法・商法など、旧版(2017年2月)刊行以降に相次いで行われた民事系の法令改正に対応。第4版では、民事裁判手続のIT化等に関する令和4年改正を織り込むとともに、第3版刊行以後に出現した新判例を多数収録。全12章。A5判、530頁。 小林秀之『民事訴訟法(新法学ライブラリ10)』新世社(☆2022年8月・第2版)……『ケースでわかる民事訴訟法』の著者による標準的な民事訴訟法のテキスト。訴訟の段階に従って民事訴訟法を解説をする形式をとる。訴訟物、既判力、複雑訴訟などの学説対立が激しく、論点の多い分野は独立した章を設けて解説しており、学習者への配慮がなされている。令和4年民事訴訟法改正に補論で対応している。全13章+補論。2色刷。A5判、480頁(本文458頁)。 山本弘・長谷部由起子・松下淳一・林昭一(補訂)『民事訴訟法(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(☆2023年12月・第4版)……著者の一人である山本が2018年に逝去したため、第4版の山本パートは門下生の林が補訂した。「手続の時系列に則し、手続の主体である原告、被告および裁判所の手続の節目ごとの行動規範を明らかにする構成」(はしがき)を採用。多数当事者訴訟(複雑訴訟)の項目を設けず、手続内で随時説明を加える構成が目を引く。クロスリファレンスが徹底されているのは学習者に嬉しい配慮である。近時の多数説をベースにしながら、より先端的な有力学説にも適宜触れており、薄いように見えて重要な論点は意外なほど網羅的に拾っている。しかしながら、判例紹介の程度がコンパクトに抑えられているため、判例集やその他演習書等による積極的な補充が要求される。電子書籍版あり。全8章。四六判、488頁。 (令和4年民事訴訟法改正未対応) 新堂幸司『新民事訴訟法』弘文堂(2019年11月・第6版)……兼子門下。学界の到達点を示す最高水準の体系書。1000頁を超える浩瀚な体系書ではあるが、論旨明快で読みやすい。文章も非常に柔らかいが、その一文一文にとても深い意味が込められた、示唆に富んだものとなっており、著者の問題意識や利益考量の手腕を味わいながら読み進めたい。具体例が豊富なので分かりやすいが、新堂説は新訴訟物理論に立脚し、結論の妥当性を柔軟に追求するもので、いわゆる概念法学を好まないため、初学者にとっては取り組みづらい内容となっている。第6版の改訂で、紙面を縦組みから横組みに刷新し、記述も全体的に見直された。全6編。A5判、1072頁(本文1033頁)。 中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編『新民事訴訟法講義(有斐閣大学双書)』有斐閣(2018年2月・第3版)……各分野を代表する教授陣による共著。実務でも役立つ一冊。編著者の一人である中野は2017年に逝去。基本的には新訴訟物理論の立場を採るが、旧訴訟物理論についても解説はなされている。そもそも、近年の試験傾向では訴訟物理論によって結論に大きな差は生じないため、取り立てて気にする必要はない。共著であるが、各記述は第一人者による安定感のあるもので、極めて使い勝手が良い。論点は豊富に取り上げられており、学習者を意識した解説は平明であり秀逸。しかし、執筆者によって文体と脚注の使い方が著しく異なるため、一冊の本としての統一感を気にする読者には不向きである。いずれにせよ、受験生にとって無難な選択肢であることは確かであり、基本書選びに迷ったら本書を選んでおいてまず間違いはないだろう。はしがきにある「最良の基準書」との称号は言い得て妙であるが、さすがに初学者向けではないので、先に入門書を読んでおくとよい。第3版において、平成23年民事訴訟法改正、平成29年民法(債権関係)改正等および旧版(2008年5月・第2版補訂2版)刊行以降の新判例をフォロー。全7編、全27章。A5判、804頁。 小林秀之『新 ケースでわかる民事訴訟法』日本評論社(2021年5月)……三ケ月門下。『ケースでわかる民事訴訟法』日本評論社(2014年9月)の実質的改訂版。重要判例をベースにしたケース・スタディによって民事訴訟法を解説する教科書。文章は読みやすく、かつ、論理的であり、「鉄腕アトム」とも評される著者の能力の高さをうかがい知れる。判例百選に掲載されている判例が、具体的な事例とともにほぼ網羅されていることから、近時の司法試験の傾向にも合致している。電子書籍版あり。全27章。A5判、484頁。 小林秀之編『法学講義 民事訴訟法』弘文堂(2018年4月)……『新法学講義 民事訴訟法』(悠々社、2012年5月)をベースに、民法改正を踏まえた最新版。 477判例が取り込まれている。全10章。A5判、480頁。 川嶋四郎『民事訴訟法概説』弘文堂(2019年12月・第3版)……竹下門下。コンセプトは「木も見て森も見て山も見る」学修。2色刷で図表を多用するなど、わかりやすさを重視しており、学生向けに執筆されている。試験対策に必要な134個の〈論争点〉が取り上げられており、学修の便宜が図られている。全10章。A5判、616頁。 三上威彦『〈概説〉民事訴訟法』信山社(2019年8月)……『〈概説〉倒産法』に続くテキスト。全7編。A5変型判、432頁。 (平成29年債権法改正未対応) 高橋宏志『民事訴訟法概論』有斐閣(2016年3月)……新堂門下。学生向けに執筆された、民事訴訟法の教科書。法学教室連載「民事訴訟法案内」に加筆修正を行い単行本化したもの。『重点講義』と異なり、一般的な基本書と同様に純制度的・手続的知識も含めた民事訴訟法全分野を解説している。旧司の一行問題のような小見出し(例:「当事者の確定とはどういう作業か。」)を立てて、これに対する解説を述べるという叙述スタイルのため、論点集の趣も併せ持っている。柔らかい文章で書かれており、かつ、初学者もメリハリをつけて読むことができるよう工夫されている。著者から見て、学生の理解が不十分であることが多い箇所を随所で指摘している点に類書にはない特徴がある(もっとも、その叱咤激励は人によってやや好みが分かれるかもしれない)。高橋説を前面に出しているが、判例や通説が異なる立場を採っている場合はその旨を明示しているので、初学者でも混乱することなく読める。ただし、その際は判例・通説の説明は結論のみで、理由付けがあまりないことが多い点に留意する必要がある。コンパクトだが、殆ど全ての論点をカバーしているので、上級者のまとめ用としても使える。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴2位。全11章。A5判、420頁。 裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法講義案』司法協会(2016年6月・3訂版)……実務説(旧訴訟物理論)。通称『講義案』。原著者は下掲『講義 民事訴訟』の藤田広美。掲載されている論点が豊富。ただし、書記官の研修用テキストであることから、司法試験には関係のない記述も多くある。全14章。B5判、434頁。 藤田広美『講義 民事訴訟』東京大学出版会(2013年4月・第3版)……著者は元裁判官。民事訴訟法の教科書というよりは、民事訴訟実務の手続きを図表を多用してコンパクトにまとめた本であり、『民事訴訟実務の基礎』などに近い。たまに論点を取り上げて独自の考察をしているが、概ね学説の対立には分け入らない傾向にあり、実務上確立している理論はほとんど所与のものとして扱っている(たとえば訴訟物論争についても、最小限度の記述に留めている)。前半部分で要件事実についても多くの頁を割いて解説しているため、民事訴訟法部分の内容が薄いという評価もある。もっとも、新司法試験にはこの一冊で充分と言われることもあり、賛否両論あるところだろう。本書は民事訴訟法の初学者に向けて書かれたものであるが、民法・民事訴訟法・要件事実について一通り知識がないと読みこなせないとの声もある。なお、本書を論点を中心に補完するものとして、後掲の『解析 民事訴訟』がある。全3PART、全15Chapter。A5判、656頁。 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『民事訴訟法(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(2017年3月・第7版)……新訴訟物理論の学者による共著。民事訴訟法を必要最小限まで圧縮して網羅的に解説している。そのため、学説の対立にはあまり分け入らず、判例の説明も数行程度であり、単に問題提起をしただけで終わってしまっているような箇所も散見される。文書もSシリーズにしては硬く、初学者が本書を利用するのは難しい。コンパクトに要点は押さえられているので、上級者のまとめ用や通読用としてなら便利。全7章。四六判、354頁。 稲葉一人『民事訴訟法講義 理論と演習』法学書院(2017年5月・第2版)……法科大学院での基本書及び演習書として使われることを意図したテキスト。著者の裁判官経験を生かした「実務の視点」からも解説。演習問題は三つのレベルを用意し、読者の学習段階に合わせた内容。第2版では新たに予備試験の法律基本科目(民事訴訟法)と法律実務基礎科目(民事)の答案構成、参考答案が収録された。序章(民事訴訟法の基本)+全9章+補章(実力確認問題とまとめ)+附章(予備試験問題を糧にするために)。A5版、688頁。 松本博之・上野泰男『民事訴訟法』弘文堂(2015年9月・第8版)……新訴訟物理論(二分肢説)。共著とはいえ、執筆者は2名であり、言葉の定義にぶれはなく、クロスリファレンスも充実している。本書の大きな特徴としては、松本の執筆する単純訴訟の第1審手続の部分と、上野の執筆する複雑訴訟および上訴の部分では、書きぶりがまったく異なるという点が挙げられる。まず、松本執筆部分については、基本的には自説(大抵は少数説)の紹介が中心となっているが、その根拠を他の著作や研究論文に丸投げしている箇所がちらほらあるほか、文章もややわかりにくく、かなり読み手の力量が問われる内容となっている。初学者には推奨しにくいが、示唆的な記述が多く、合格レベルの実力者や実務家にとっては有益である。次に、上野(民訴の天才とも、破壊神とも)の執筆する複雑訴訟および上訴の部分は、思考の整理が行き届いており、文章が分かりやすく、判例や多数説をきっちり踏まえた内容となっており、非常に読みやすい。結論として少数説を採る箇所もあるが、そうした箇所でも深々と立ち入るのは避けている。難しい議論は文字のポイントを落とすなど、記述にメリハリがあり、制度趣旨の説明も丁寧で、学生向け教科書としても出色の完成度である。高橋宏志も本書を最重要文献の一つとして挙げているなど、学界からの評価も非常に高い一冊である。序章+全7編。A5判、996頁。 上田徹一郎『民事訴訟法』法学書院(2011年6月・第7版)……著者は2013年に逝去。旧訴訟物理論。旧司法試験時代の定番書。基本事項を網羅的かつ丁寧に解説する体系書。教育的配慮から基本部分と応用部分を本文と脚注に二分して解説する独特のスタイルを採る。自説主張は控えめで、判例・学説の発展の経緯が丁寧に書かれている。他の基本書に比べて分量が少なく見えるが、割り注などを含めるとその情報量は予想以上に多い。新しい議論も比較的捕捉しているが、小さい字だったり注に押し込められていたりして見づらいのが難点である。かつては受験生トップシェアだったが、改訂がなされていないため内容がやや古く、また著者逝去により今後の改訂も見込めないことから、現在では本書を基本書とする学生はあまり見られない。しかし、教育効果の高い良書であることに変わりはないので、法改正と関係のない論点や基礎理論部分を拾い読みするというような使い方なら、民事訴訟法が苦手な者や初学者にとってはいまだ有用であろう。第6版・第7版の改訂は著者高齢により困難であったため、上田の意向を受けた稲葉一人が行った。本文に変更はほとんどなく、稲葉が論点を補充したほか、新判例や新立法のみを巻末にまとめて追加しただけのやや物足りない改訂となっている。百選の引用が第3版(2003年12月)のままであることがまま見受けられるのも残念。ただ、判例追補は短答対策に有益だという意見もある。全10編。A5判、760頁。 小島武司『民事訴訟法』有斐閣(2013年3月)……大家の手による本格派の体系書。横書き・本文のみで930頁となる大著であるばかりでなく、1頁あたりの文字数も非常に多い(小フォントや脚注の多用による)。したがって、受験用教科書として読みこなすのは難しいだろう。意外と内容にムラがあり、辞書としての使い勝手もそれほど良いとはいえない(例えば、二段の推定に関する記述が非常に少ない点など)。とはいえ、著者の見解は概ね穏当なものにまとまっており、高橋、伊藤、松本といった近時の有力説もしっかりフォローしつつ、最終的には判例・通説(多数説)を採ることが少なくない。良く言えば格調高い、悪く言えば勿体ぶった表現が目立ち、ようやく辿り着いた結論が無難きわまるものであるときには、ある種のガッカリ感は否めない。10年の執筆期間を経たこともあり、一部、法改正のフォローアップができていない(「破産宣告」なる用語が多数見受けられる、抗告訴訟における被告の変更にかかる行政事件訴訟法改正に対応していない、家事事件手続法非対応など)。全11章。A5判、1026頁。 川嶋四郎『民事訴訟法』日本評論社(2013年4月)……『民事訴訟法概説』弘文堂(2019年12月・第3版)の著者による本格的体系書。はしがきや索引を含め1000頁を超える大著。序章+全12章。A5判、1056頁。 三谷忠之『民事訴訟法講義』成文堂(2011年7月・第3版)……薄め。判例重視。全11章。A5判、468頁。 河野正憲『民事訴訟法』有斐閣(2009年5月)……横書き900頁超。判決文を頻繁に、かつ長めに引用している点に特色がある。概念的な説明が多い民事訴訟法の基本書の中でも、特にその概念を具体的に説明することに気を払っている。その分、論点に対する解説は頁数の割に薄くなってしまっている。序章+全15章。A5判、970頁。 梅本吉彦『民事訴訟法』信山社(2009年4月・第4版)……分厚い文字どおりの体系書。旧訴訟物理論を採ること、引用文献は論文を中心とし、判例評釈をもってこれを補完するものとし、それで対応できない場合に限って、体系書・注釈書によるものとすること(以上、はしがきより引用)などが特徴。育ての母への感謝の想いを綴ったはしがきは、涙なしでは読めない。A5判、1188頁。 岡伸浩『民事訴訟法の基礎』法学書院(2008年9月・第2版)……著者は法科大学院の実務家教員である弁護士(元伊藤塾講師)。読みやすく、判例の紹介も詳細。全10講。A5版、576頁。 石渡哲『民事訴訟法講義』成文堂(2016年9月)……全8編。A5判、532頁。 (古典) 兼子一『民事訴訟法(法律学講座双書)』弘文堂(1993年7月・新版)……伝統的通説。著者は1973年に死去。改訂は弟子の竹下守夫により行われた。A5判、336頁。 三ケ月章『民事訴訟法(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1959年1月)……兼子門下。第56代法務大臣(民間人閣僚)。日本において初めて新訴訟物理論を提唱。その主張は弟弟子の新堂幸司に受け継がれた。著者は2010年に死去。 三ケ月章『民事訴訟法(法律学講座双書)』弘文堂(1992年6月・第3版)……A5判、624頁。 谷口安平『口述民事訴訟法』成文堂(1987年12月)……口述法律学シリーズの傑作。著者は「コップの中の嵐」で知られる大御所。臨場感溢れる軽妙な語り口で、分かりやすく、かつユーモラスに民訴を解きほぐす。普通の基本書ではあまり触れないようなことが丹念に述べられており、非常に示唆的である。旧法下の本だが、本書の大部分は、法改正にほとんど関係ない総論部分にあてられているため、既に一通り勉強した学生が参考書として通読ないし拾い読みをしていけば、立体的な民訴の理解に到達できるだろう。A5判、518頁。 石川明・小島武司編『新民事訴訟法』青林書院(1997年12月・補訂版)……「青林教科書シリーズ」をリニューアルして単行本化したもの。A5判、468頁。 吉村徳重・竹下守夫・谷口安平編著『講義民事訴訟法』青林書院(2001年4月)……竹下守夫・谷口安平らが関わった新法対応の教科書。井上、伊藤、河野、春日など大学双書とかなり執筆者が被っている。大学双書が理論面での解説に力を入れているのに対し、こちらは概ね通説・実務の立場に立ち、それがどのように運用されているかを解説する。大学双書よりはあっさりしているが、総研や藤田ほど蛋白ではなく、また予備校的論点解説ではない。学説の錯綜に混乱した時に本書を読んでみるのもありかもしれない。全7編。A5判、608頁。 小山昇『民事訴訟法(現代法律学全集)』青林書院(2001年10月・新版)……兼子門下。著者は2015年に死去。A5判、468頁。他に、入門書として、『民事第一審訴訟手続法入門』青林書院(1998年5月、A5判、346頁)等がある。 林屋礼二『新民事訴訟法概要』有斐閣(2004年9月・第2版)……最高の「概説書」。著者は2018年に死去。約500頁という分量ながら、用語の定義や基本概念については他に類を見ないほど非常に充実しており、文章も分かりやすい。複雑訴訟が独立の項目になっていないなど、一般的な基本書とは大きく異なる構成を採っているために初学者にはとっつきにくいと思われるが、そのような配慮を理解できる中・上級者にとっては極めて高い価値がある。現在は絶版となっているが、有斐閣でオンデマンド版の購入が可能。A5判、516頁。 納谷廣美『講義民事訴訟法』創成社(2004年6月)……読み易くコンパクト。通説と判例の理解を中心に据える。実務も重視。A5判、374頁。他に、『民事訴訟法 (現代法律選書)』創成社(1997年5月、A5判、624頁)がある。また、演習書『演習民事訴訟法』創成社(2005年2月、A5判、288頁)は、さらに通説解説に徹底。 【その他参考書】 高橋宏志『重点講義民事訴訟法 上・下』有斐閣(2013年10月・第2版補訂版、2014年9月・第2版補訂版)……教科書や概説書の類ではなく、民事訴訟法の数々の論点を取り上げて深く掘り下げていく、2分冊の重厚な論点解説集である。したがって、純制度的・手続的知識には触れられていない。学界で争いのある論点についての網羅性は極めて高く、分厚い体系書でさえ一言も触れていないような細かな論点であっても、脚注などで拾い上げて、それなりに論及していることが多い。まさに広さと深さとを両立した本であり、近年の司法試験のタネ本となっているとも言われている。もっとも、非常にレベルが高い本であることから、司法試験の合格水準に到達するレベルでよければ、必読とまでは言えない。A5判、860頁・876頁。 勅使川原和彦『読解民事訴訟法』有斐閣(2015年2月)……著者の教育現場での経験を活かし、学生が間違えやすい箇所を中心にわかりやすく解説する論点集。全15Unit。A5判、350頁。 田中豊『論点精解 民事訴訟法——要件事実で学ぶ基本原理』民事法研究会(2018年9月・改訂増補版)……旧著『民事訴訟の基本原理と要件事実』(民事法研究会、2011年1月)が改題・改訂されたもの。「改訂増補版」において、新たに証拠法、訴訟承継、判決によらない訴訟の終了、既判力の主観的範囲が増補された。全12章。A5判、519頁。 小林秀之・山本浩美『明解民事訴訟法』法学書院(2017年7月・第3版)......問答方式により理解をすすめることを目的としている。巻末資料として書式の引用が豊富。比較的薄く、さらに、基本書とのクロスレファレンスが徹底されており、初心者に向く。重厚な基本書に撃退されがちな者は試してみるとよいだろう。ただ、ウリのはずの問答形式の部分は制度の説明や前提などに充てられており、試験などで重要な部分については通常の文章で書かれている。第3版において、最新の判例や学説を踏まえて全体が見直されると共に、新たに「裁判所」の講が追加され、大幅に加筆された(約88頁増)。また、平成29年に成立した民法債権法の改正について、 新設条文が補充され、債権者代位訴訟の変更点が解説されている。全34回。A5判、640頁。 小林秀之『民事訴訟法がわかる——初学者からプロまで』日本評論社(2007年4月・第2版)……全25講。A5判、424頁。 小林秀之『アドバンス民事訴訟法——民事訴訟法をマスターする』日本評論社(2007年7月)……全29講。A5判、384頁。 小林秀之『事例分析ゼミ 民事訴訟法』法学書院(2007年12月)……受験新報連載を単行本化。優秀な大学生の男女、努力家の大学院生、若手渉外弁護士、4人のゼミ生による小林ゼミ(という設定)。レベルはかなり高い。全10講。A5判、256頁。 小林秀之・原強『民事訴訟法(新・論点講義シリーズ9)』弘文堂(2011年7月)......国際裁判管轄規定に対応。全25章。2色刷。B5版、352頁。 伊藤眞・山本和彦『民事訴訟法の争点(新・法律学の争点シリーズ4)』有斐閣(2009年3月)……シンプルな論点集。網羅性は高いが、紙幅の関係かやや舌足らずな解説も見られる。計106項目。B5判、276頁。 伊藤眞・加藤新太郎・山本和彦『民事訴訟法の論争』有斐閣(2007年7月)……民事訴訟法の重要論点を対談形式で進めていく。学説の整理、学会の最新の議論などに秀でる。全8章。A5判、272頁。 池田粂男・小野寺忍・齋藤哲・田尻泰之・小林学『ケイスメソッド民事訴訟法』不磨書房(2013年6月・第3版)……A5変型判、336頁。 池田辰夫・長谷部由起子・安西明子・勅使川原和彦『民事訴訟法Visual Materials』有斐閣(2010年3月)……B5版、168頁。 新堂幸司編著『特別講義民事訴訟法(法学教室全書)』有斐閣(1988年2月)……理論民事訴訟法学の最重要文献の一つ。法学教室の連載であったが、内容は超高度であるから、気分転換やある論点について知識を深化させたい時ぐらいしか読むべきではない。内田貴、加藤雅信の論稿は、それぞれの民法学を理解するためには必見。OD版により復刊(2009年10月)。A5判、500頁。 木川統一郎・清水宏・吉田元子『民事訴訟法重要問題講義 上巻・下巻』成文堂(いずれも、2019年4月・第2版)……26年ぶりの改訂。木川は2020年に死去。初版(1992-1993年)は3分冊だったが、第2版から2分冊となり、また、執筆者として清水と吉田が新たに加わった。理論と実務の双方に通暁した著者が民事訴訟法の重要問題について解説。A5判、380頁・386頁。 【入門書・概説書】 木山泰嗣『小説で読む民事訴訟法——基礎からわかる民事訴訟法の手引き』『同2——より深く民事訴訟法を知るために』法学書院(2008年4月、2012年12月)……小説形式で民事訴訟法・民事裁判を学ぼうという意欲作。寝転がって気楽に読めるような内容ながら、学習効果の高い良書。基本書ではイマイチわからなかった点が理解でき、入門書として好適。A5判、304頁・296頁。 中野貞一郎『民事裁判入門』有斐閣(2012年4月・第3版補訂版)……著者は2017年に死去。入門書の定番。咀嚼された文章に定評がある。いくつかの論点については比較的高度な検討を加えており、意外と内容は深い。第3版から、姉妹書『民事執行・保全入門』の刊行に伴い、執行・保全の章が削除され、代わりに管轄と家事事件の章「家庭紛争と裁判」が追加されている。全12章。四六判、412頁。 安西明子・安達栄司・村上正子・畑宏樹『民事訴訟法(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(☆2023年3月・第3版)……令和4年IT化等改正等に対応。序章+全6章。A5判、294頁。 渡部美由紀・鶴田滋・岡庭幹司『民事訴訟法(日評ベーシックシリーズ)』日本評論社(2016年11月)……全7章。A5判、272頁。 和田吉弘『コンパクト版 基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(☆2023年3月・第2版)……上掲『基礎からわかる民事訴訟法』を初学者向けにコンパクトにしたもの。令和4年IT化等改正等に対応。全17章。A5判、224頁。 山本和彦『よくわかる民事裁判——平凡吉訴訟日記(有斐閣選書)』有斐閣(☆2023年3月・第4版)……新堂門下。平凡吉(たいらぼんきち)という主人公の人生が物語調に書かれている。賃貸借契約にかかる事例を用いて、民事裁判の始まりから終わりまで、小説を読む感覚で学ぶことができる。第4版において2022年の民事訴訟法改正に対応。電子書籍版あり。四六判、288頁。 司法研修所監修『民事訴訟第一審手続の解説-事件記録に基づいて』法曹会(2020年2月・第4版)……司法研修所の民事裁判テキスト(白表紙)。実際の事件記録を題材に第一審民事訴訟手続を解説。手続法において重要な手続の流れをつかむのに最適。予備試験の口述対策としても有用であるとの声がある。A5判、194頁。 裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法概説』司法協会(2014年5月・9訂版)……全10章。B5判、174頁。 林屋礼二・吉村徳重・中島弘雅・松尾卓憲『民事訴訟法入門(有斐閣双書)』有斐閣(2006年6月・第2版補訂版)……全7章。四六判、382頁。 小島武司『プレップ新民事訴訟法(プレップ・シリーズ)』弘文堂(1999年3月)……かつて入門書(導入書)として定評があったが、長期間改訂されておらず、内容はかなり古くなってしまっている。新書判、376頁。 小島武司・小林学『基本講義民事訴訟法』信山社(2009年5月・新装補訂版)……全20章。B5判、338頁。 小島武司編者『よくわかる民事訴訟法(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)』ミネルヴァ書房(2013年5月)……全14章。B5判、208頁。 河野正憲・勅使川原和彦・芳賀雅顯・鶴田滋『プリメール民事訴訟法(αブックス)』法律文化社(2010年11月)……序章+全5章。A5判、290頁。 井上治典編、安西明子・仁木恒夫・西川佳代・吉田純平・吉田直起著『ブリッジブック民事訴訟法(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2022年2月・第3版)……編者は2005年に死去。全8章。四六判、344頁。 山本和彦『ブリッジブック民事訴訟法入門(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2011年3月)……全15講。四六判、280頁。 池田辰夫編『アクチュアル民事訴訟法(アクチュアルシリーズ)』法律文化社(2012年9月)……序章+全15章+補章。A5判、298頁。 栂善夫『民事訴訟法講義』法学書院(2012年9月)……概説書。序章+全12章。B5判、296頁。 小田司編『民事訴訟法(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2016年1月・第2版)……全8章。A5判、308頁。 野村秀敏『法学民事訴訟法(信山社双書法学編)』信山社(2013年11月)……全7章。B6判、232頁。 原強『やさしい民事訴訟法』法学書院(2014年3月)……序章+全20章。A5判、288頁。 福永有利・井上治典著、中島弘雅・安西明子補訂『アクチュアル民事の訴訟』有斐閣(2016年4月・補訂版)……「ものがたりふう」に進行する医療過誤事件の事例とともに、個々の手続や制度がいかなる手続段階で問題になるかを把握し、裁判に関わる関係者の活動が裁判所の内外でどのように展開され訴訟が動いていくかを理解できる。全9章。A5判、218頁。 越山和広『ベーシックスタディ民事訴訟法』法律文化社(☆2023年2月・第2版)……平成29(2017)年民法改正対応。全30Lesson。A5判、328頁。 野村秀敏ほか『民事訴訟法』北樹出版(2018年5月)……執筆者(野村秀敏・佐野裕志・伊東俊明・齋藤善人・柳沢雄二・大内義三)。全12章。A5判、332頁。 デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント民事訴訟法』三省堂(2018年6月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの最新法学教養シリーズの民事訴訟法編。四六判、192頁。 川嶋四郎・笠井正俊編、上田竹志・濵﨑録・堀清史・浅野雄太『はじめての民事手続法』有斐閣(2020年4月)……6件の具体的な架空のケースをもとに解説。民事訴訟法を中心に、民事執行・保全法、家事事件手続法、破産法、民事再生法等の主要な民事手続法の全体をコンパクトにカバー。序(民事手続法の世界へ)+全3編、全20章。四六判、318頁。 ☆伊藤眞『民事訴訟法への招待』有斐閣(2022年11月)……同著『民事訴訟法』で民訴法を学ぶにあたっての「助走路」として書かれた入門書。民訴法の全体像を把握することを目的に、条文を中心として、民訴法の基本原理・基礎概念・骨格について満遍なく口語体で平易に解説している。とくに「法曹志望の次世代の方々」を対象者として書かれている。「法定代理人」と「法令上の代理人」のような、初学の段階では混同しやすい概念についても、その違いを明確に記述している。入門の段階から法律家に要求される読解力と表現力を鍛えてもらうために、あえて多色刷りにせず、図表等も用いていない。令和4年改正には触れていない。電子書籍版あり。四六判、344頁。 【注釈書・コンメンタール】 秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法〔全7巻〕』日本評論社(I 2021年5月・第3版、II 2022年2月・第3版、III 2018年1月・第2版、IV 2019年3月・第2版、V 2022年9月・第2版、 VI 2014年9月、VII 2016年4月)……旧民事訴訟法下の定番コンメンタールであった菊井維大・村松俊夫『全訂民事訴訟法(全3巻)』の改訂版であり、実務家必携の詳細な注釈書。旧版の執筆者は裁判官が中心であったこともあり、実務的に手堅い見解を採っている。法律上の直接的な根拠がはっきりしない慣行や取扱いについても詳しく載っており、この点において他の追随を許さない。ただ、そのトレード・オフとして論理性が薄まり、論文対策には不満が出る。少数執筆者による合議を経て執筆されているため、執筆部分につき匿名方式を採っている。Ⅰ:民事訴訟法概説 第1編〔総則〕第1章~第3章〔第1条~第60条〕、Ⅱ:第1編〔総則〕第4章~第7章〔第61条~第132条の10〕、Ⅲ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第1章~第3章〔第133条~第178条〕、Ⅳ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第4章〔第179条~第242条〕、Ⅴ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第5章~第8章〔第243条~第280条〕、Ⅵ:第3編〔上訴〕第1章~第3章〔第281条~第337条〕、Ⅶ:第4編〔再審〕~第8編〔執行停止〕〔第338条~第405条〕を扱う。Iの第3版において国際裁判管轄に関する追補部分を本文に織り込むとともに、令和2年改正まで対応。IIの第3版において、所有権不明土地に関する民法等の解説については前注において触れ、民事訴訟のIT化についても概要を記している。IIIの第2版において、平成23年の国際裁判管轄の改正、平成29年の民法改正整備法に対応。IVの第2版において、平成29年改正民法に対応。Vの第2版において、令和4年民訴法改正に対応(現行各条の注釈において改正内容に言及・解説)。A5判、848頁、812頁、672頁、704頁、488頁、556頁、516頁。 兼子一原著・松浦馨ほか著『条解民事訴訟法(条解シリーズ)』弘文堂(2011年4月・第2版)……上記コンメン民訴が実務メインであるのに対し、こちらは理論的な解説が充実している。なお、第2版の改訂には裁判官も執筆者に参加している。山本和彦教授が本書の書評において、本書の採用する見解を論点ごとに短評しており、参考になる(判タ1350号80頁)。ただし、数多くの間違いが指摘されている点に注意が必要である(出版社HPで訂正が公表されているが、それも全ての間違いがカバーされているわけではない)。A5判、2004頁。 加藤新太郎・松下淳一編『新基本法コンメンタール 民事訴訟法1・2(別冊法学セミナー)』日本評論社(2018年10月、2017年9月)……1は「第2編第3章まで(~第178条)」を扱い、2は「第2編第4章 証拠」以下(第179条~)を扱う。「事項索引」はおろか、「判例索引」がないため、非常に不便である。B5判、524頁・464頁。 賀集唱・松本博之・加藤新太郎編『基本法コンメンタール民事訴訟法1-3』日本評論社(1-3:2012年2月・第3版追補版)……実務的な細かい手続きの情報が充実しているのが特徴。本のサイズが大きく文字ポイントも小さいため、学生には十分な情報量がある。第3版追補版においては国際裁判管轄についての民訴法改正を逐条解説(平成24年4月1日施行の国際裁判管轄に関する法改正を巻末に【追補】として収録)。なお、日本評論社のHPにて追補部分をダウンロード可能。B5判、400頁・416頁・282頁。 笠井正俊・越山和広『新・コンメンタール民事訴訟法』日本評論社(2013年3月・第2版[☆改訂予定あり])……TKCで提供されているインターネットコンメンタールを紙媒体に印刷したもの。第2版において、初版(2010年12月)以降の法改正、2013年1月施行の家事事件手続法、非訟事件手続法等の法改正に対応。A5判、1320頁。 高田裕成・三木浩一・山本克己・山本和彦編『注釈民事訴訟法 第3巻-第5巻(有斐閣コンメンタール)〔全5巻(予定)〕』有斐閣(Ⅲ:2022年6月、Ⅳ:2017年7月、V: 2015年12月)……A5判、第1巻(総則(1)1条~60条):頁、第2巻(総則(2)61条~132条の10):頁、第3巻(第一審の訴訟手続(1)133条~178条):824頁、第4巻(第一審の訴訟手続(2) 179条~280条):1534頁、第5巻(上訴・再審・手形小切手訴訟・少額訴訟・督促手続・執行停止 281条~405条):914頁。 (古典) 塩崎勤編集、三宅省三・塩崎勤・小林秀之編集代表『注解 民事訴訟法 I・II〔全6巻(未完成)〕』青林書院(2002年10月、2000年6月)……平成8年に新法となった民事訴訟法に対応した本格的コンメンタール(実務家のための注釈書)。全6巻が予定されていたが、第3巻以降は刊行中止となってしまった。Iは、第1条~第60条を、IIは、「訴訟費用」及び「訴訟手続」に関する第61条~第132条を扱う。A5判、624頁・700頁。 【判例集・ケースブック】 〔判例集〕 高橋宏志・高田裕成・畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選』有斐閣(☆2023年9月・第6版)……競合の判例集が少ないこともあり、ほとんどの人が利用している。計118件ほかアペンディクス42件を収載。B5判、276頁。 中島弘雅・岡伸浩『民事訴訟法判例インデックス』商事法務(2015年1月)……見開き2頁で、判例のエッセンスをビジュアルな図表を用いてコンパクトに整理するシリーズの「民事訴訟法」編。重要かつ不可欠な裁判例271個を収録。A5判、540頁。 小林秀之編『判例講義 民事訴訟法』弘文堂(2019年3月)……かつて悠々社から刊行されていた同名判例集の実質的な第4版。判例数は多く、テーマごとに同一著者が評釈している点が特徴。原則、1判例1頁、重要判例のみ2頁となっている。223判例収録。債権法改正に対応。B5判、352頁。 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『基本判例民事訴訟法』有斐閣(2010年9月・第2版補訂)……Sシリーズ著者による判例集。判例解説はないが、その分事案の説明が詳細。四六判、548頁。 小川英明・長秀之・宗宮英俊編著『民事訴訟法主要判例集』商事法務(2009年8月)……裁判官(及び元裁判官)が編集した判例集。条文順の並びで判例解説はなく、判例収録数は驚きの604件(そのほとんどが大審院および最高裁の判例)。A5判、521頁。 小林秀之・山本浩美『最新 重要判例解説 民事訴訟法』日本評論社(2021年9月)……近年の24の重要判例を詳細に解説。A5判、368頁。 山本和彦『最新重要判例250 民事訴訟法』弘文堂(2022年1月)……B5判、288頁(本文269頁)。 論点・事案・判旨・解説を半頁で押さえられるよう工夫がされているが、解説のところどころに誤植がみられる。 〔ケースブック〕 三木浩一・山本和彦編『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2019年4月・第5版)……独習には向かないが良問が揃っている。【資料】欄に掲載されている文献は高橋『重点講義』その他の書籍でも取り上げられているものが多く、基本かつ重要な文献が掲載されている。ただし、内容的には高度なものも含まれている。第5版において、平成29年民法改正を含む法改正、裁判例に対応。全30UNIT。B5変型判、660頁。 長谷部由起子・山本弘・松下淳一・山本和彦・笠井正俊・菱田雄郷編著『ケースブック民事訴訟法』弘文堂(2013年3月・第4版)……編著者の一人である山本弘は2018年3月に逝去。判例を分析するタイプの問題が多い。評判はよくない。『ロースクール民事訴訟法』と被っているところも多々あり。全7章。A5判、552頁。 伊藤眞・高田裕成・高橋宏志・松下淳一『上級民事訴訟法』有斐閣(2005年4月)……全9章。A5判、326頁。 〔その他〕 田中豊『民事訴訟判例 読み方の基本』日本評論社(2017年9月)……50の主要判例と320の関連判例に即して判例の射程等を解説。第1章「民事紛争の解決と民事訴訟」から、第9章「判決によらない訴訟の終了」までの全9章。なお、出版社による難易度設定としては、上級者用となっている。A5判、596頁。 ☆長谷部由起子『基本判例から民事訴訟法を学ぶ』有斐閣(2022年9月)……A5判、330頁。(評価待ち。) 【演習書】 長谷部由起子・山本弘・笠井正俊編著『基礎演習 民事訴訟法』弘文堂(2018年2月・第3版)……編著者の一人である山本は2018年に逝去。民事訴訟法の主要論点は一通りカバーされており、東大系の若手研究者を中心とする30名が、それぞれの得意分野の解説を担当している。著者によってやや解説の質にばらつきがあり、中にはかなりアカデミックな議論を展開してしまっているものもあるが、概ね学習者向けの良質な演習書・論点解説集となっている。「基礎演習」と銘打たれ、はしがきにも学部生や未修者向けの演習書と書かれているが、骨の折れる問題も散見され、易しい問題ばかりではないため、中級者以上であっても本書から得るものはあるだろう。第3版は、債権法の新旧両法に対応して、全面改訂された。A5判、384頁。 山本和彦編著、安西明子・杉山悦子・畑宏樹・山田文著『Law Practice 民事訴訟法』商事法務(☆2021年9月・第4版)……判例を題材にした、初学者向きの演習書。第3版において、平成29年の民法改正など新たな立法に対応し、近時の重要判例もフォローされた。A5判、432頁。 名津井吉裕・鶴田滋・八田卓也・青木哲『事例で考える民事訴訟法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2021年9月)……A5判、502頁。 ☆小林学『実戦演習民事訴訟法——予備試験問題を素材にして』弘文堂(2023年6月)……H23~R2までの予備試験論文問題の解説と参考答案を掲載。A5判、408頁。 藤田広美『解析 民事訴訟』東京大学出版会(2013年5月・第2版)……藤田『講義 民事訴訟』の姉妹本。通説以外の学説をスルーしすぎたきらいのある『講義』を補完。昭和24年度から平成22年度までの旧司論文問題を題材としている。全体としてかなり広い範囲をカバーしているが、掘り下げは受験レベルとしてはやや物足りない。旧司過去問のうち、事例問題の中には数頁を費やして解説されているものもあるが、一行問題の多くはほとんど、あるいは全く解説が付いていない(本書内のリファレンスや講義民事訴訟に譲っている)。また、その解説も答案作成を想定したものにはなっていない。演習書というよりは、過去問を起点として重要論点を解説する教科書に近い。 A5判、616頁。 遠藤賢治『事例演習民事訴訟法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2013年2月・第3版)……法学教室の「演習」連載の単行本化。著者は最高裁調査官も経験した元裁判官。初~中級向けの事例問題に丁寧な解説が付されている。『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2014年3月・第4版)と相性が良いとされ、同書で問われている事項の基礎を本書でさらっていくことができる。A5判、354頁。 薮口康夫『ロースクール演習 民事訴訟法』法学書院(2018年5月・第2版)……「受験新報」連載を単行本化したもの。出題の意図・論点、解説、答案作成上のポイントで構成された演習書。長文事例問題32問。A5判、352頁。 杉山悦子『民事訴訟法 重要問題とその解法(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2014年3月)……民事訴訟法の学習上で躓きやすい問題を題材に、基礎的な知識から考え方の分岐点までを説いたもの。全5章、全24項目。A5判、280頁。 和田吉弘『旧司法試験 論文本試験過去問 民事訴訟法』辰巳法律研究所(2004年4月)……学者による旧司法試験過去問解説講義を書籍化。『LIVE本』として受験生に広く知られた存在となっている。辰巳作成解答例・講師レジュメ・問題解説・解答例の検討からなる。旧司法試験受験生向けの講義のため、基本的に引用文献を伊藤・双書・新堂・上田等の代表的体系書と重点講義・百選(第3版)に抑えて解説している。分厚いが、講義録なので口語体で読みやすく、わかりやすい。理論水準も藤田・解析より安定しており、信頼できる。新版は平成16年度の問題まで収録しており、全40問。絶版だったが2008年に万能書店からオンデマンド版で復刊された。16年改正対応。 和田吉弘『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 和田吉弘民訴法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(2014年8月)……司法試験民事訴訟法の論文過去問解説講義書。平成18年から25年までの過去問について解説。また、各年度の上位合格者の再現答案を取り上げ、内容を検討している。A5判、461頁。 川﨑直人『司法試験論文過去問演習民事訴訟法 実務家の事案分析と答案作成法』法学書院(2018年12月)……サンプル問題から平成29年までの問題を収録。改正民法には対応していない。A5判、384頁。 越山和広『ロジカル演習 民事訴訟法』弘文堂(2019年2月)……民事訴訟法の重要論点について、事例→参考判例→解説を読む前に→解説→答案例→参考文献、という流れで各問が構成されている演習書。事例は、長文読解型・短文型・会話型の3タイプ。全30個の事例を収録。A5判、248頁。 渡部美由紀・鶴田滋・岡庭幹司『ゼミナール民事訴訟法』 日本評論社(2020年12月)……『民事訴訟法(日評ベーシックシリーズ)』と同一の著者陣による演習書。A5判、216頁。 井上治典『実践民事訴訟法』有斐閣(2002年3月)……『ケース演習民事訴訟法』(1996年6月)を改訂し、改題したもの。理論的に高度な論点も平易な記述で論文試験に活かせられるように解説。『ロースクール民事訴訟法』が手軽になったものと考えてもよい。なお、著者が故人のため、改訂は見込めない。A5判、242頁。 納谷廣美『演習民事訴訟法』創成社(2005年2月)……A5判、288頁。 小島武司・小林学『基本演習 民事訴訟法』信山社(2007年6月)……B5判、256頁。 法曹会編『設題解説 民事訴訟法(二)』法曹会(2008年12月)……本書は、「法曹」第405号から第678号に連載された「法律研修講座(民事訴訟法)」に、若干の加筆補正をし、取りまとめられたもの。この設題解説は、民事訴訟法を体系的に叙述するものではなく、初学者がまず理解しておくべき民事訴訟法上の一般的、基本的と思われる問題を取り上げ、具体的事案に即して、おおむね判例、通説の立場から平易に解説。全24項目。新書判、300頁。 飯倉一郎・加藤哲夫編『演習ノート 民事訴訟法』法学書院(2010年3月・第5版)……答案作成のポイントと書き方が把握できる演習書。単なる模範解答や論点の提示に止まらず、「答案構成」まで提示。司法試験をはじめ、弁理士試験、裁判所事務官採用試験などの各種試験で出題された問題を中心に民事訴訟法の基本的かつ重要な問題を、訴訟の主体・訴訟の開始・訴訟の客体・訴訟の審理・訴訟の終了・上訴に分類して体系的に配列し、111講を収録。A5判、264頁。 松村和徳・小田敬美・伊東俊明『民事訴訟法演習教材』成文堂(2012年6月)……A5判、292頁。 → このページのトップ:民事訴訟法に戻る。 → リンク:民法(全般)、商法(全般) 、民事実務
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宗教団体に関する紛争の考え方 民事訴訟法の分野において、宗教に関する紛争というのは案外多いです。これは宗教というものが、意外に財産の争いを起こしやすいことの表れといえるでしょう。またその内部構造も複雑で私たちが外から見ても分かりにくいというのもあるかもしれません。 一方で、宗教に関する紛争は信教の自由という人権と直結するため、判断がしにくい部分があることも事実です。 信教の自由と紛争解決…このジレンマをめぐって、以前から民事訴訟の分野ではいろいろな判例が出され、またいろんな理論が構築されてきました。 ここでは、そういう宗教紛争に関する争いに民事訴訟はどうすべきか、それを総合的にまとめていこうかと思っています。 宗教をめぐる紛争 そもそも、宗教をめぐる紛争として、いろいろな形態があります。 住職の地位を確認する訴訟(最判昭44・7・10) 宗教団体の代表役員の地位を確認する訴訟(最判昭55・1・11) 宗教団体による懲戒請求の無効確認訴訟(最判平4・1・23) 檀徒の地位を確認する訴訟(最判平7・7・18) 板まんだら事件(最判昭56・4・7) (板まんだらが効果なかったからその分の金返せという訴訟) 宗教団体の法主・管長の地位の存否が争いになったケース(最判平1・9・8)ほか まあいろいろとあるのですが、大きく分けると、 (1)訴訟物そのものに宗教事項を掲げるもの (2)訴訟物そのものは別の争いだけど、その争いの判断として宗教の教義に関する判断が必要なもの の2つに分かれるようです。 法律上の争訟 ではなんでこういう宗教上の争いが問題になるのでしょう。争いがあるのなら判断してもいいのでは?って思われる方も多いかもしれません。 この点裁判所法3条1項にこんなことが書かれています。 裁判所法第3条第1項 裁判所は、日本国憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。 ポイントは太字にした「一切の法律上の争訟」です。なんとなくこの条文だけでも「法律を適用して解決できる問題じゃないとダメ」みたいなのは分かると思います。 実はこれについても判例がありまして、「法律上の争訟」とは、法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争だとしています(最判昭29・2・11)。 この判例からすると、法律を適用しないと解決できないとダメ、かつ具体的な争いじゃないとダメ、ってことになります。 上の判例を基準として考えると、宗教関係の争いのうち宗教教義に関わるものは、法律の解釈適用で解決できない以上、裁判所で扱えるものではなく「却下」という扱いになります。 請求レベルでの考え方 そこで先ほどの(1)(2)の分類に立ち戻って考えてみたいと思います。 まずは(1)の場合。 こっちの場合、請求として宗教の問題が入り込んでいます。例えば「住職の地位」とかは、住職そのものが宗教上の地位なんですから、この判断には宗教教義の問題が出てきますし(住職になるということは、その宗教の高度な教義を修めることが前提でしょう)、また宗教団体の自律権を考えたら、ここに入り込むことは出来ないという判断になりましょう。 となると、こういう訴えは間違いなく却下されるはずです。 攻撃防御方法レベルでの考え方 では訴えそのものは民事上の請求だけど、その判断として宗教上の教義が必要な場合になる(2)のときはどうでしょう。 例えばお札を買ったけどその効果がないから売買契約を解除する、とかいう場合。 確かに売買契約そのものは普通の契約だし、その効果がないということはお札を買った意味がないのだから、なんらかの手段を講じて契約を解除したくなるのが買った人の心情でしょう。 具体的にはお札が特定物とみなされるなら瑕疵担保責任で解除、不特定物と考えるならば不完全履行で解除、といったところでしょうか。 しかしこのお札に効果があるないなんてことは、宗教上のことですから、誰にも分からないことですよね。少なくとも法律で分かることでないです。 でもこのような訴訟でも「宗教と関わらないから…」なんて理由で訴訟を認めると、その理由中の判断で宗教教義に触れないといけなくなるわけで。 そこで最高裁は板まんだら事件判決で、請求の当否を決するうえでの前提問題が紛争の本質的争点をなし、その点に関する判断を教義、信仰のないように立ち入らずに行うことができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠である場合には、当該訴訟は、実質において法令の適用による終局的判断に適さないとしています。 ただ、こっちの判断も結構面倒な問題がありまして、仮に教義に立ち入るからという理由でこの裁判を却下にしてしまった場合、本来の争いの解決が出来ないという問題につながるんですね。 例えばお札の効果がないから契約解除ならまだいいもので、例えば宗教団体の役員の地位がなくなったから寺の敷地から出て行け、とかになると、不法に占有する権限を与えかねないんですね。 その辺は自立的決定にゆだねて、その点は判断せずに判断する…ということも学界では主張されているようですが。 やはり判例としては宗教に踏み込みたくないんだなあ…ってのはあるようです。 あと、この手の争いは宗教団体における争いがよく言われますが、それだけじゃなく他の市民団体とかにおいてもありうるかも知れません。少なくとも組織内の対立というのは存在するわけで、それをどうすべきか、という論はそういう団体でも出てきます。 (それを部分社会の法理なんて言い方をします。詳しくは同項で)