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概要 “ホモNo.3” 本拠地 北海道 登録店舗 キャッツアイ苫小牧店 Twitter @_momo_ha_ ブログ等 [[]] 逸話など 「それでも僕はホモじゃない!」 フリーターの「ももは」は、朝の通勤通学ラッシュに大混雑する電車で就職面接に向かう際、男子高校生にホモの痴漢と間違えられてしまう。 無実の罪を被って示談で済ませるという妥協案を拒み、あくまで濡れ衣を晴らそうとした「ももは」は、逮捕され、更には起訴されることとなる。 そして、「ももは」と彼の支援者達の長い戦いが始まる。 「ももは」って10回言ってみて? 「ほもはほもはほもはほもはほもはほもはほもはほもはほもはほもは」 「俺は?」 「ホモ」 無料小学生勢と、こんな遊びをしている感動的シーンもたまに見ることができる。 こんなことを書かれてしまうような、いじられキャラ。 実際は、純粋で、心の綺麗な好青年。 ただ、女の子を前にすると、緊張してしまう。 見つめられると素直にお喋りできない可愛いやつ。 特技は土下座と、強制戦闘。 BP1000しか無いのに、強制戦闘(可能なら攻撃しなくてはならない)を行ってしまう。 使うときはダークアーマー、加護等でのサポートが必要になるだろう。 名前 コメント
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毎週金曜日の夜はいつもよりも夜更かしをしている。 今までなら夜の11時まで起きていられずにベッドの中でぐっすりと眠っていた。 それが今でははっきりと目が冴え、ベッドに潜ってもしっかりと”一時間は”起きていられるようになった。 何で一時間限定なのかというと、舞美ちゃんのラジオが放送される時間が一時間だからである。 枕元にお父さんから借りた小さなラジオを置き、アンテナを伸ばして、無事に電波がキャッチ出来るように調節する。 たまにノイズが混じることもあるけど、ほとんど綺麗な状態で番組が聴ける。 番組が始まると、枕をクッション代わりに抱き締めてベッドの上でごろごろと転がって聴いていることが多い。 舞美ちゃんの声をまたラジオで聴けるかと思うと、自分が一緒に出ていなくても嬉しいのだ。 前の番組では僕と愛理がいたから舞美ちゃんにツッコミを入れる人がいたけど、この番組には一人もいない。 舞美ちゃんは一人で番組が出来るかな、と心配になりながら、一言も聞き洩らすまいと耳を傾ける。 『こんばんは~矢島舞美です』 おっとりした舞美ちゃんの声で番組が始まり、僕の心臓の鼓動はどんどん早くなる。 鏡をみたら、きっと気持ち悪い顔をしているのが自分でもわかる。 ℃-uteで一緒に活動しているといっても、四六時中いるわけではないから、自分がいない時の舞美ちゃんの声が聴けるのはすごく嬉しい。 今日もまたおかしなことを言い出すんだろうな、と次に会ったらネタにしてやろうと思っていたら、つい聴き入ってしまう話をしだした。 『私が℃-uteで仲がいいのは・・・』 たぶん、この一瞬が僕にはどれだけ長く感じられたかを表現するのは難しい。 鼓動が早くなるのとは逆に、時間の流れだけがやけに感じた。 舞美ちゃんが仲がいいと言うのは誰だろう、と予想はついていたけど、僕と言ってほしい気持ちが強い。 言ってもらえないのはわかっていても、僕は『岡井千聖』と言ってほしかった。 舞美ちゃんが仲がいいというのはあの娘だ、鈴木愛理。 だけど、ラジオから聴こえてきた名前は僕の予想外の名前だった。 私の大好きなお姉ちゃん・舞美ちゃんの単独番組が秋から始まる。 中学生に上がったばかりの私が起きているには少しきつい時間でも、頑張って起きていることを決めた。 仕事で帰りが遅くなることがあるから、少しくらい無理して起きているのは平気だ。 今日も舞美ちゃんは『噛み噛みクィーン』のニックネーム通りに、何度もセリフを噛んで大変なんだろう。 危なっかしい舞美ちゃんだけに、側にいる時だけは私が守ってあげなくっちゃって強く思う。 小さい時から妹みたいって可愛がってくれていたけど、大きくなってきた今は逆に守ってあげたくなる。 お家では舞美ちゃんもお姉ちゃんではなくて、二人のお兄ちゃんがいる末っ子だもんね。 ℃-uteではリーダーの役目を果たそうと、本人なりに仕事をこなしていても、どこか抜けているのがいい証拠だ。 そんなリーダーは、どこを探してもうちの舞美ちゃんだけだろう。 でも、舞美ちゃんは℃-uteにはいなくてはならない大事なリーダーなんだ。 パジャマに着替え、いつでも寝られる状態にして、ステレオのスイッチをつけてみる。 舞美ちゃんの声をラジオでまた聴けるのは素直に嬉しいけど、少し複雑な気持ちがなくはない。 あいつも舞美ちゃんのラジオを心待ちにしているはずだからだ。 千聖は舞美ちゃんが大好きだから、始まったばかりのこの番組を毎週聴いていているはずだ。 本人に訊かなくても、土曜日に仕事があって会ったときは嬉しそうな顔でいるから、そうなのだろう。 あのにんまりした笑顔をみると、好きなのにムカつく。 何さ、舞美ちゃんにデレデレしちゃって、と嫉妬丸出しの鋭い目でしか見られない。 舞美ちゃんに奪われるのは悔しいけど、舞美ちゃんなら仕方ない気持ちも心の中にはある。 スポーツ万能で優しくて、天然ボケはみているだけで癒される。 あいつが好きになるのも仕方ないとは思いつつ、どこかライバル視してみている自分がいるのも知っている。 そんな目で大好きなお姉ちゃんをみている自分はとても嫌だ。 私はお姉ちゃんが大好きなはずなのに・・・ お姉ちゃんの番組は進み、ある質問が来たところで自分が℃-uteでは誰と仲がいいか話し始めた。 お泊りにも行った仲だから愛理と言う気がしていた私は、呼ばれた名前にすっかり驚いてしまった。 『萩原舞ちゃんです』 わ、私!? 意外な名前を言われて、少しの間放心状態でラジオをみつめてしまう。 本当に私って言ったの?、って思わずステレオに近づいて、また言ってくれないかなってお願いする。 お願い、もう一度だけ名前を教えて。 でも番組は進んで、舞美ちゃんはBerryz工房では千奈美ちゃんと仲がいい、と話をしていた。 その後は番組のことがちっとも頭に入ってきてくれなかった。 千聖のことを思えば、あそこは千聖と言ってほしかったけど、私と言ってくれたことが嬉しい。 どちらも大事だから、どちらにも幸せになってほしいのに、私を含めて全員が幸せになるラストなんてないんだ。 皆が幸せになれればいいのに、と夢をみながら私はステレオの電源を切った。 次のページ→
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「さっ、今日も張り切ってレッスン頑張るよ!!」 2月某日、ダンスレッスン場の更衣室で、いつも着替えが一番早く終わる舞美ちゃんが これまたいつものように元気欲みんなに檄を飛ばしました。 コンサートの早着替えというわけでもないのに、いつもすごく早いです。 そして先陣を切って更衣室を飛び出していくのですが、困ったことに、誰も着いていきません。 別に舞美ちゃんが嫌われてるからではありません。 むしろメンバーから愛されすぎていて、私としてはやきもきするくらいです。 原因は……着替えが早すぎてついていけないし、舞美ちゃんも後ろを振り返らないからです。 「ちょっとみぃたん待ってよぉ!!」 なっきぃが焦ってジャージの上を着ようとしますが、ファスナーが首元まで絞まっていてうまく着れません。 一足早く着替え終わった私は、あとはシューズの紐を結ぶだけですが焦って紐が手につきません。 その隙に無理やり襟を通して髪がボサボサになったなっきぃが、 シューズを右手に持って靴下のままで更衣室を出ようとしています。 それに負けじと靴紐を結ばないで私も飛び出しました。 さて、こうなると更衣室にはふたりが残るわけですが。 「ちょっと舞ちゃん止めてよ~!!」 「いいじゃんちさとぉ~」 ……まぁ、あのふたりはまた別の世界を築いているようなので感知しません。 さて、ここから問題なのが――。 「ちょっと愛理ぃ、靴紐結ばないで歩くと危ないんじゃない?」 「なっきぃこそ、靴下汚れちゃうよ」 「ふふふふふふ……」 「フフフフフフ……」 お互いステージの上よりもとびっきりの……ちょっとだけオーバーしちゃった作り笑いを浮かべて牽制しています。 舞美ちゃんの後に続くのはどっちだ!……というくだらない争いです。 そう、くだらないことなんですけれど、ライバル(靴下で廊下を歩く困った人のことです)には負けたくない!とい意地のぶつかりあいです。 どんなことでも舞美ちゃんの後につづくのは私!という感じでくだらないこともついつい争ってしまいます。 ふたりとも根っからの負けず嫌いで、特に舞美ちゃんに関しては異常なくらいヒートアップしてしまいます。 「ほら、靴紐がブラブラしていると踏んだらつまづいてこけちゃうよ」 と、言いながらも無駄に長い脚に包まれた靴下でこちらの靴紐を踏みつけようとしてきます。 「靴下だけだと思わぬ障害物で足の指を怪我しちゃうかもしれないよ」 「ちょっと! そう言いながら足を踏もうとしないでよ愛理、危ないでしょ!!」 大丈夫、なっきぃでも怪我したら舞美ちゃんが悲しむから軽く踏む程度です。 結局、お互いの足を引っ張ることに夢中になりすぎて廊下をグルグル回って、結局ふたり遅刻して舞美ちゃんから注意されました。 「もう、ふたりともしっかりしてよ。時間を守るのは最低限のルールだよ」 舞美ちゃんもたまに遅れるくせに……というのは喉から出すのをやめておきました。 話がループしかねないので。 今日のところはなっきぃとのバトルは引き分けです。 ですけど。 なっきぃに、本当に申し訳なく思ってることがひとつあるんです。 実は――。 「今度遅れた人には、筋トレ付き合ってもらっちゃうからね」 あ、だったら遅れちゃおうかな。 隣をチラッと横目で見たら、なっきぃも何か思いついたようです。 私と同じことが頭に浮かんだものだと思われます。 あ、でもすぐに首を横に振りました。 ……舞美ちゃんの筋トレ、ハードなんだよなぁ……。 『はーい、気をつけます』 あ、つい違うことを考えてしまいました。 実は――。 私と舞美ちゃん、つい2週間前から付き合い始めたんです。 ごめんねなっきぃ、リードしちゃって。 ◆ 舞美ちゃんと付き合い始めたきっかけは、とてもありきたりな方法です。 ずっと、ずっとずっと舞美ちゃんのことを好きでしたが、メンバーが少なくなって 寂しそうな舞美ちゃんを少しでも支えてあげたい、と強く思って告白に踏み切りました。 場所は……名古屋で行われたコンサートの帰りの新幹線車内です。 たまたまその日は舞美ちゃんと隣同士でした。 わたしは連日の公演の疲れからすぐに眠りに落ちていたのですが…… 新幹線が神奈川県に差し掛かったあたりでしょうか、ふと目を覚ますと舞美ちゃんが携帯を眺めながら声を殺して泣いていました。 私が目を覚ましたこと気づいてないようだったので、悪いと思いつつも画面を覗き見してしまいました。 すると――画面には、今よりもメンバーが2人多いとき、 前だけを見てみんなで突っ走るだけでよかったころの写メをゆっくりと、何枚も見返していました。 いつもはメンバーに「過去は過去、振り返ってもしょうがないから今できることを頑張ろうよ!」と気丈に鼓舞する舞美ちゃんも、 やっぱり寂しくてどこかで無理してるんだなと感じました。 そのとき、体の奥から言いようのない愛しさというのでしょうか、この人を守ってあげたいという強い想いがこみ上げてきました。 そして――。 「……舞美ちゃん」 「あ、愛理起こしちゃったかな、ごめんね」 「ううん。いいよ……それより舞美ちゃん、泣かないで」 「あれ、わたし泣いてる?」 「泣いてる」 「そっか、カッコ悪いところ見せちゃったなぁ、はは……」 「舞美ちゃん」 「ん?」 「私、舞美ちゃんのこと全力で守ってあげたい。だからね、舞美ちゃんの一番そばで舞美ちゃんのことを守らせて」 「……うん、わかった。頼りにしてるよ」 よかった。 拒絶されないで。 私、頑張るからね。 舞美ちゃんを辛いことや悲しいことから守ってあげるから。 守りたいから。 舞美ちゃんは私よりちょっと指が長くて大きいその手で私の頭を2度ポンポン、と軽く叩いてくれました。 そこまでは夢中になっていて周りのことなんて気にしてなかったのですが…… ちょっと冷静になってみると、車内で告白ってまずくない、 だって周りに℃-uteのメンバーだけじゃなくてBerryzもいるわけだし、と大事なことに気がつきました。 すぐ後ろのなっきぃは般若のような表情でペットボトルのオレンジジュースを私の頭にぶちまけようと待ち構えていて――。 背筋に悪寒が走ったので慌てて立ち上がり、後ろのなっきぃを確認してみたのですが……。 「……みぃたぁん、かきのたねからぃよぉ……むにゃむにゃ」 苦しそうなことを言っている割には幸せそうな表情をしていました。 幸せな夢を見ているようなのでホッとしました。 ◆ こういうきっかけで舞美ちゃんと付き合うことになりました。 ですが……恋人らしいこと、なにひとつ出来てません。 ℃-uteのときは、誰とはいいませんがメンバーの目が気になりますし、別々の仕事も多くてすれ違いばかりです。 舞美ちゃんも甘えてくることはありませんし、私もできていません。 キスはおろか……手だってまともに繋いだことありません。 1回、℃-uteの集合写真撮影で舞美ちゃんと隣り合ったので、どさくさにまぎれて手を繋ごうとしたんです。 「おっと、つまづいた♪」 誰がやったとは言いませんが、私と舞美ちゃんわずかな隙間を強烈なチョップが空を切っていきました。 それだけではありません。 たまたまオフの日が重なったのでデートしようと思っても、舞美ちゃんのスケジュール帳はびっしり埋まっていました。 お母さんとお出かけ、なっきぃとショッピング、学校の友達と映画、 なっきぃと遊園地、なっきぃの家に今度こそ遊びに行く……ていう具合に。 あれ、もしかして私のほうがリードされている……のかもしれません。 ◆ 「なるほどねぇ、それは大変」 そう言いながららBerryzの嗣永桃子ちゃん――ももが小さく口を目一杯広げてチョコレートを頬張りました。 「ちょっと、もも。他人事だと思ってぇ」 「まぁ実際他人事だし。あー、愛理のチョコレートってなんでこんなにおいしいんだろうね。また来年も頂戴よ」 本当にこの人はもうすぐ18歳になるのかと疑ってしまいます。 今日、バレンタインデーはBuono!のイベントでももとみやが一緒にいます。 偶然にもガーディアン4のイベントも重なったのであの人もいます。 舞美ちゃんがいたらまた無駄な争いが繰り広げられていたので良かったような、 でもバレンタインデーに舞美ちゃんに会えなくて寂しい気持ちもありますけれど。 「ねぇ、ももはみやにチョコあげるんだよね」 「うん」 「本命……だよね」 「本命も何も、付き合ってるんだから当然かな」 そう、驚くことにももとみやは一昨年の冬から付き合っているんです! さらに驚くことにみやからももに告白したっていうのだから驚き倍増です!! まぁ、そのときは私が出汁に使われましたけど。 やけにももが私にべったりしてくるな、と思ったらみやを焦らせる作戦だったようです。 ももの策略にはまったみやはまんまとももに告白して、ふたりは付き合いだしました。 こうやってももの手の平で踊らされているみやはちょっと可哀想な気もしますが、 ふたりともなんだかんだで幸せそうなので羨ましかったりします。 みやは元々もものことがすごく好きだっていうのが私からでもわかりましたし。 あ、でも「仲良くて羨ましいなぁ」と私がみやに言うとすごく怒ります。 ももが言うにはそれが「ツンデレ」という現象らしいのです。 「裏ではみやのデレっぷりはすごいんだから。キスとかエッチとか迫ってくるのはいつもみやの方なんだよ」 とももは言います。 ちょっと疑わしい点があるのですが、みやに確かめようとしても「ツンデレ」さんには無駄なので真実がわからないのがなんとも残念ではあります。 そういう類の話をしているうちに、ももとは恋愛の話をするようになりました。 もっとも、ももからの話はほとんどのろけばなしで、たまにイラッとしますけれど。 「だったらさ、チョコをあげてもう一度気持ちを確かめればいいじゃない」 「無理。舞美ちゃんチョコ嫌いだから」 「あ、そうだったっけ」 「うん。クッキーは用意したんだけど、今日は仕事で会えないし……。 なんか、本当に付き合ってるのか自信が持てなくなっちゃったな」 「それだけど、愛理。舞美に何て言って告白したんだっけ」 「えっと、『舞美ちゃんのこと全力で守ってあげたい。舞美ちゃんの一番そばで舞美ちゃんのことを守らせて』だけど……」 大事な言葉なので忘れることはありません。 たたあ、もう一度言うとすごく恥ずかしくなって語尾は声が小さくなってしまいましたが。 「それだけど、愛理。もしかしたら、舞美は付き合ってるって思ってないんじゃない」 「え、まさか。普通は告白だって気づくよね」 「うん、普通だったら。でも――舞美だよ」 「うっ――」 『舞美ちゃんだから』。 この言葉の前には自然界の法則や人間界の常識はしばしば覆されてしまいます。 「そういえば――」 「なに愛理? 何か心当たりある?」 「告白してから、舞美ちゃんからやたら筋トレグッズもらうようになったんだけど」 「……もしかして、愛理をボディーガードとして育成しようとしてるんじゃないの? 守ってもらうために」 「まさか、そんな舞美ちゃんでも……舞美ちゃんでも……」 『舞美ちゃんだから』、ありえる。 そんな、どう頑張っても私じゃ筋力的に舞美ちゃんより強くなれないのに。 「ももぉぉぉぉ、どうしよおぉぉぉぉぉぉ」 「あー、もう泣きつかないの!! えーと、いま解決策考えるから」 ももは小指を口に当てて策略をめぐらせ始めました。 しがみつきながら待つこと2分でした。 「あー、もうよくわからないから最後の手段!!」 「え、なに」 「愛理、耳かして」 「ん? いいけど」 ももから耳打ちされました。 ……!!!!!!!!! 「ちょ、も、も、もも! そ、そんな、いきなりすぎる、よ」 「いいの、愛理は積極性にかけるからオーバーなくらいが丁度いいの!!」 オーバーもオーバーなんです。 だって、ももは「今日イベントが終わってから、 バレンタインだからって舞美の家に突撃して『抱いて』って迫りなさいよ」って言うのですから!! あまりにも急なことを提案されて心臓がうるさくてたまりません。 「無理、無理!!」 「いいの、やってらっしゃい!!」 「あのー」 「ありえない!!」 「当たって砕けろ!!」 「あのー!!」 ももとも私とも違う声が楽屋口から聞こえてきたのでふたりの視線がそちらに移りました。 「ふたりとも、楽しそうだね♪ もも、愛理に抱きつかれて嬉しかったでしょ♪」 みやです。 「いや、いまのは、なんていうか、その、あの、あれですよ、あれ」 ももがよく分からないことを口走り始めました。 みやは、ああ見えてすごく嫉妬深いらしいです、本当に以外ですけれど。 「いや、みや、だからね、そんなに怒らないで、ね?」 「うん、全然怒ってないよ♪」 みやのとびっきりの笑顔が怖すぎます。 きっと私がこの場からいなくなったらみやの怒号が飛び交うことでしょう。 でも、こういうのってちょっとだけ憧れます。 舞美ちゃんは私が誰とどうしていてもいつもニコニコしていますから。 ちょっとだけは……嫉妬、して欲しいときもあります。 「だから怒ってないってぇ♪」 ただ、みやみたいにはなって欲しくはありませんが……。 ◆ 「じゃあね、バイバイ」 「おつかれー」 「……おつかれさま」 イベントも終わり、ももとみやと別れました。 ももはみやにたっぷり絞られたのか、さきほどまでの元気は微塵もありません。 ももとみやは帰る方向が一緒だからBuono!のあとはいつも一緒に帰っていて羨ましいです。 「……さて、どうしようかな」 ひとり言を大都会の闇空に向かって吐いた私は、ももがさっき言ったことを思い出しました。 抱いて。 ……やっぱり、威力が強すぎます。 キスはおろか、手だってまともにつないでないし初デートだってまだなんですよ? ですが……。 やっぱり、こういう日だから会いたいのは正直あります。 いえ、すごく会いたいです。 怖いけれど、もう一度気持ち確かめたいです。 気がつくと携帯を開いて耳に当てていました。 出て欲しいような出て欲しくないような、でも声は聞きたいような……もうよくわかりません。 そして3コールのあと。 『愛理?』 舞美ちゃん、出ちゃいました――。 「あ、舞美ちゃん。こんばんは」 『こんばんは。あれ、どうしたの?』 携帯越しの舞美ちゃん笑ってます。 それも当然、私が『こんばんは』なんてわざわざ電話でいうこともないことを口走ったのですから。 「えっと、今日イベントあったんだ」 『みたいだね。どうだった?』 「うん、あのね――」 本当は会いたいって言いたいんです。 でも、怖くて言い出せません。 つい今日のイベントの話に逃げてしまいます。 だって、「ごめん、今日は会えない」って言われるの、すごく怖いんです。 ですけど……ももの言うことは大げさにしても、私はもっと積極的にならねばというのは当たってると思います。 怖いですけれど……大丈夫、私は舞美ちゃんの恋人なんですから。 「ねぇ、舞美ちゃん。話があるんだけど」 『どうしたの、急に改まって』 「今から……会いに行っちゃダメ」 『え!? けっこういい時間だよ』 「それでも……会いたい」 『…………』 空白の時間が訪れました。 私、きっと舞美ちゃんを困らせてしまってる。 守るって言ったのに、困らせては仕方ないよね。 ううん、やっぱりいいや。ごめんね。 そう言って誤魔化そうと思ったのですけれど――。 『……ちゃんとご両親には連絡するんだよ。あと、危ないから駅まで迎えに行くね』 よかった――。 嬉しくて、へたり込んで泣き出しそうです。 でも、ここからが勝負です。 抱いて……とは、言わなくても舞美ちゃんの本当の気持ち、すごく知りたいです。 胸をはって、舞美ちゃんの恋人になりたいです。 「ありがとう。急なお願いごめんね」 『ううん、また後で』 「うん」 大丈夫、きっと大丈夫。 そう私自身に言い聞かせながら舞美ちゃんの家に急ぎました。 まず問題はお母さんの説得でした。 駅のホームで電話したら思いのほか長引いてしまいました。 舞美ちゃんにも家族にも迷惑をかけるだろうからとたくさん説教されました。 ですが私も引けません。 今夜はただの夜ではなく、特別な夜です。 何度も何度も頼み込みました。 15分言葉の格闘が続きました。そして。 『……明日の朝迎えに行くから。お説教は車の中でたっぷりするから覚悟しておいてね。 あーあ、これから舞美ちゃんママのところに電話かけるから。くれぐれも気をつけなさいよ』 なんとか折れてくれました。 わがまま娘で本当にごめんなさい。 そのあと、いくつか電車を乗り継ぎました。 舞美ちゃんの住んでいる街の駅に来るのは初めてです。 舞美ちゃんの街にも舞美ちゃんの家にも何回も行ったことはあるんです。 ただそのときはうちのお母さんの車か、舞美ちゃんのお母さんに車で連れてきてもらいました。 電車で、それもひとりで、っていうのは初めてで心細かったです。 金曜日みたいに酔っ払いのサラリーマンさんが絡んでくることはなかったのですが、 知らないところに行くのはやはり厳しいです。 下を向いて、なるべく人と目を合わさないで歩いていたのですが。 「あいりぃぃぃ――――」 この聞きなれた声――。 改札の向こうで舞美ちゃんがブンブン手を振ってます。 ちょっ、アイドルが安全上それはまずいのでは――。 あと、かなり恥ずかしいので私はちょっとしか手を振り返せなかったのが悔しいです。 「舞美ちゃん……声が大きすぎ」 「あ、ごめん。つい、ね。あー、今日はグラビア撮影さえなければ会場に遊びに行ったのになぁ。 そうだ、なっきぃもいたんでしょ?元気だった」 ズキン。 ちょっと胸が痛みました。 「うん、相変わらず楽しそうだったよ」 「そっかー。愛理もBuono!楽しい?」 「うん。ももとみやがいると楽屋が賑やかなんだよ」 「ならよかった」 言葉とは裏腹に舞美ちゃんはちょっと寂しそうでした。 エスパーじゃないから真意はわかりませんが…… もしかしたら、このごろ℃-uteメンバー別々のお仕事が増えたからかもしれません。 舞美ママさんに家まで送ってもらい、ちょっと遅めの夕食をご馳走になり、お風呂までお借りしました。 うちのお母さんからすでに泊まっていくことで話は通してあるみたいです。 パジャマや下着、靴下も用意してもらいました。 ふたりの背丈がいくらか差があれど同じくらいだとこういうときに助かります。 あ、もちろん下着は卸したてですよ。 下が若干きつくて、上がちょっと緩いのが悔しくもありますけれど。 スリッパまで貸してもらって舞美ちゃんの部屋に行くと、舞美ちゃんは部屋で歌っていました。 防音は完璧なのでその点は問題ないのですが……。 「歌のレッスンしてたんだ」 「あ、愛理あがったんだ。湯加減どうだった」 「大丈夫だよ、何から何までありがとうね」 ほんとうはちょっと熱かったのですが、疲れた体には心地よかったです。 それよりも気になることは――。 「舞美ちゃん、頑張りすぎじゃない?」 時計の針はもう11時近くになっています。 「そんなことないよ。歌、頑張らなくちゃいけないから。みんなの脚をこれ以上ひっぱれないし」 はは、と舞美ちゃんは力なく笑いました。 個人レッスンをするのはいいと思うんです。 ですが、モノには限度があります。 喉を痛めるまで歌いつづけるのがいいはずがありません、喉だって使いすぎると潰れてしまいます。 このごろ、舞美ちゃんの空回りが酷い気がします。 焦りすぎてるというのでしょうか。 昔だったら笑えるレベルだったのですが、このごろは見ていて辛くなります。 だから私が守ってあげる、と偉そうに言ったのですが……。 私自身の不甲斐なさが情けないです。 「ちょっ、なんで愛理泣くの、こ、困るんだけど」 「……舞美ちゃんのばかぁ」 「え、あ、その、ごめんなさい!」 なぜか舞美ちゃんは90度おじぎをしてきましたが、バカは私です。 恋人気取りで何もして上げられてないのですから。 「そ、そう言えば! 愛理、今日は突然どうしたの!」 ……あ、そうでした。 舞美ちゃんの気持ちを確かめに来たんだけど、表向きはバレンタインのクッキーをプレゼントしに来たんでした。 「突然泣いちゃってごめんね。はい、今年のバレンタイン」 「え、ありがとう。でも明日でもいいのに。わたしは明日渡すつもりだったんだけど」 「どうしても今日渡したくなって」 「開けていい?」 「どうぞ」 舞美ちゃんは包装を丁寧に剥がし、開けた先にはクッキーが――。 「あ……チョコ……」 舞美ちゃんはハート型の大きなチョコの前で固まりました。 え、なんで!? 剥がした包装を見てみますと――。 『Dear RISAKO』 ……梨沙子のと間違えました。 ももの『抱いて』発言のせいで一日中テンパってましたから。 舞美ちゃんのためにつくったクッキーはきっと梨沙子の胃袋の中でしょう。 これじゃあ、全てが台無し……。 目の前が真っ暗になる思いでした。 「……食べてみる」 え――? 「大丈夫、愛理がせっかく作ってくれたチョコだから食べられる」 「そんな、無理しなくても――」 私が静止しきる前に目をつぶり口を大きく開けて半分を一気に頬張りました。 そんな、青汁を飲むように辛そうに食べなくても――。 次の瞬間、舞美ちゃんは目を大きく見開きました。 「あれ、おいし……い?」 え? 「おいしいよ、愛理! わたし、チョコ苦手じゃなくなってる!」 ……なにそれ。 あ、そういえば舞美ちゃんはもともとチョコが好きで食べ過ぎて嫌いになったのでした。 なら、長い間くちにしなければ元のチョコ好きの舞美ちゃんにリセットされる――。 そんな、バカな。 でも、『舞美ちゃんだから』有り得る。 何はともあれ、舞美ちゃんがおいしくチョコを食べてくれたのが何より嬉しいです。 他の誰のチョコも食べない舞美ちゃんが、私のを食べてくれた――。 そう思うと胸が一杯になりました。 そういえば、密室で舞美ちゃんとふたりきり……。 邪魔なあの子もここにはいない……。 甘えるしか、ないよね。 いままで我慢して我慢して、我慢し尽くしたものが溢れました。 チョコを食べ終わった舞美ちゃんの胸に飛び込みました。 ……大丈夫、私の鼻は負傷していません。 「ちょっ、愛理、そんな、いきなり」 「舞美ちゃん」 わたしは舞美ちゃんの胸に抱きつき、そして舞美ちゃんを見上げました。 ちょっと困ったような表情だった舞美ちゃんは私の意図に気がついてか真剣な表情になりました。 舞美ちゃんの真剣な表情は本当に美しすぎて息が止まりそうです。 肩に届くか届かないかの黒髪もとても素敵です。 このまま――。 舞美ちゃん、キスしよ。 そう言うつもりでした。 「舞美ちゃん……抱いて」 え? ええええ??? 小指のピンとたった悪魔に吹き込まれた呪詛を誤って唱えてしまいました。 ゲキハロでの台詞間違いどころじゃありません。 「……わかった」 わかった……わかったって!? こ、こころの準備が、あわわ……。 舞美ちゃんのしなやかな腕が私の背中に回されて、ギュッと痛いくらい抱きしめられて――。 このままベッドに優しく横たえられるものだと思ってました。 ですが――。 「ほら、ギュッと抱いたよ。これでいい?」 …………。 舞美ちゃん、小学生? 思わぬ展開に脱力し、舞美ちゃんの腕の中でぐったりしてしまいました。 ふたりは恋人ではなくてただのボケとツッコミ――。 そう自嘲気味になったわたしの耳に言葉が届きました。 「愛理、大好き」 え。 「えっと……わたしと愛理って付き合っていることでいいんだよね」 「そう……だけど」 「よかったぁ。わたし、勝手に付き合っていると勘違いしちゃったのかと思った。 新幹線で『一番傍で守ってあげる』って言われたから告白されたものだと思っていたけど、 そのあと愛理は『付き合おう』とも『好き』ともひと言もないし、 手を繋いだり……あと、デートのお誘いとかしてくれなかったから」 あ――。 気恥ずかしくて、周りに遠慮して、舞美ちゃんのスケジュールを考慮して、わたし何もしていませんでした。 恋人らしいことも、「好き」のひと言も囁きませんでした。 悪いのは舞美ちゃんではなく、私です。 でもここで反省していてもまた泣いてもしょうがないので……することはひとつです。 「舞美ちゃん」 「なに?」 「大好き、凄く好き。だから、その……私と、付き合ってください」 「ありがとう、わたしも愛理と同じ気持ちだよ。こちらこそ、よろしくお願いします」 私は舞美ちゃんの腕の中で照れ笑いし、そんなわたしをとびっきりの笑顔で苦しいほど抱きしめてくれました。 ◆ なんだか、すごく遠回りした気がします。 わたしの一番大切なものはすぐわたしの目の前にあったのに、わたしが努力を怠ったせいで、 勇気が足りなかったせいでいっぱい困らせてしまいました。 だから、これからはもっともっと素直になれるように頑張りたいと思います! そして、非力ながら少しでも守ってあげられる存在になりたいです。 あの子の妨害にもめげずに!! その第一歩、ふたりだけで過ごす初めての夜……です。 「さて、愛理! 明日も学校あるしレッスンもあるから早く寝ちゃおうか!!」 「……はい」 ちょっと大き目のシングルベッドに、枕をふたつ並べて……普通に寝るみたいです。 本当にただ、寝るだけです。 頑張るのって、難しいものです。 告白しあってムードが高まっているのにこの健全さです。 先が思いやられます。 ふたりして掛け布団に潜ると暖かい……ですが、ちょっと物足りないです。 どうせ舞美ちゃんはすぐに寝付いてしまうでしょうし。 「ねぇ、愛理」 「なに」 「えっとね……その」 「どうしたの、舞美ちゃん」 「その……手を繋いでいい?」 「え……あ、はい」 お互いにちょっとだけまごつきましたが、ふたりの手はしっかり繋がりました。 「なんか……恋人って気分だね」 「気分じゃないよ、恋人だよ舞美ちゃん」 恋人として、また一歩進みました。 たぶん舞美ちゃんとの一歩一歩はすごくゆっくりな気がします。 でも、それでいいのかもしれません。 舞美ちゃん私がそれで満足できるのでしたら。 ふたりの、ふたりだけの問題なのですから。 あ、そういえば。 寝入ってしまう前にどうしても不可解なことを尋ねておこうと思いました。 「そういえば舞美ちゃん、なんで私に筋トレグッズたくさん貸してくれたの」 「あ、あれね。愛理と筋トレしようと思って」 「そこまではなんとなくわかるけれど……」 「えっと、なっきぃも千聖も舞ちゃんも筋トレ嫌いでしょ」 ごめん、私も嫌いです。 「だから愛理が筋トレに付き合ってくれれば……合法的にふたりっきりの時間が増えるかなって思ったんだ」 合法的って使い方がまず違うのですけれど……。 いや、それはどうでもいいんです。 筋トレに誘ってくれる、筋トレグッズを貸してくれるのは不器用な、 不器用すぎる舞美ちゃんなりの求愛行動だったみたいです。 方法が違えば、もっと嬉しかったんですけれど……。 「ってことで、愛理! 明日から筋トレ頑張ろう!!」 「……努力してみる」 やっぱり、舞美ちゃんの恋人になるってことは大変なことです。 あ、だからといって絶対誰にも譲りませんよ?
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ちょ、ちょっと舞美ちゃん!! 服、ビショビショだよっ!! 近くでなっきぃに大声を出されたはずなのに、遠くから聞こえてくるような感覚。 まるで映画館のスクリーンから話し掛けられているような錯覚に陥る。 目の前の出来事が全部自分のことじゃないみたい。 確かに、わたしはジュースをこぼしてお気に入りのセーターとスカートがびしょびしょだった。 あわてて席を立ったなっきぃはハンカチやハンドタオル、ポケットティッシュ、 それにテーブルに備え付けのナプキンで周りや濡れた個所を拭いてくれた。 異常に気がついた店員さんは足早に濡れタオル、乾いたタオルの両方を用意してくれた。 なっきぃのおかげでどうにかふき取れはしたけれど、やっぱり濡れた個所は冷たい。 だけど、そんなことどうでもいい。 それよりもなっきぃの話した内容が問題。 だって。 愛理がデートしているところを目撃したってなっきぃが言うんだもの。 話を聞きながら飲んでいたジュースを派手にこぼしたみたいだけれど、これくらいで済んだ自分に感心している。 心臓は早鐘を打ちつづけ、いたい。 心が、いたい。 「……舞美ちゃんもうすぐ18なんだからしっかりしてよ」 なっきぃはジュースをふき終わるとまた向かいの席に戻った。 心底呆れている顔をしている。 いや、なっきぃの様子はこの際どうでもいい。 「そ、それ、で、あい、りの件についてくわし、く」 「んー、昨日もあたしはオフだったじゃん。ひさしぶりにお母さんと新宿のデパートに買い物行ってて。 その時ね、たまたま愛理見つけたんでこっそり跡をつけてみたんだよ」 ……そんな当然のように跡をつけたとかいうなっきぃって一体。 いや、そんななっきぃの困った癖なんかどうでもいい。 「でね、よく見ると愛理の隣にちょこちょこ歩く、どこかでよく見たよーな後ろ姿があったわけ! そのあとね、ふたりしてジュエリー売り場でペアリングを試着して、買ってたよ。 これは、もう間違いないね!! 誰だと思う? 舞美ちゃんもよ―――く知ってる人だったよ」 また、心が痛い。 まさか、まさか――。 「……もも?」 最悪の選択肢をあげた。 「せいかーい!! すごいね、舞美ちゃん。もしかして薄々気がついてたの?」 「いや、別に……」 だって、ももはわたしが愛理のことを好きだって知ってる。 つい先週、ももに「舞美はあいりんのことを本当は好きなんでしょ」 とあまりにもしつこく尋ねられて打ち明けたのに。 そして、お揃いのペアリングをして手を繋いで遊園地で遊ぶのが夢だとも打ち明けたのに。 ももは親友だし、信頼できる仲間。 ℃-uteのメンバーにも話せないことを、メンバーじゃないから話せることなどいろいろと相談できる仲だから。 それなのに、ひどい。 愛理に付き合ってる人がいること。 もものことを信じられなくなったこと。 ふたつのショックで気が遠くなりそう。 このまま、ファミレスでもかまわない。 無様に大泣きしてやりたかった。 だけど――。 「あー、なんか羨ましいねー、舞美ちゃん。……で、あのね。もしよかった……なんだけど。 ほら、このごろあたしと舞美ちゃんって一緒によく遊んでさ、なんかいい感じじゃん。 それで大事な話があるから今日は来て貰ったんだけど……」 「ごめん、話はあとでゆっくり聞くから」 「え、ちょっ、ま――」 こうしてなんかいられない。 財布から諭吉さんをとりだしテーブルの上に叩きつけ出口へと走った。 「ま、まいみちゃああ――」 後ろからなっきぃの叫び声が聞こえた気がするけれど、ごめんと心の中で謝って振り返らず駆け抜けた。 もしも愛理に恋人ができたら。 笑顔で思いっきり「おめでとう」って言ってやるんだ。 それでわたしの片想いはおしまいにするって決めていた。 そんな日は来ないで欲しかったけれど、どうやら今日みたい。 ◆◆◆ そしてやってきたのは都内にある某スタジオ。 ここでBuono!のPV撮影があると愛理が金曜日のレッスンのときに言っていた。 ℃-uteでも使わせてもらったことあるから場所はわかっている。 だけど、入り口まで来てもメンバーでもスタッフでもないから 堂々と入っていくことはできずに外で待ち伏せ……するしかできないのが情けない。 ここに来てまだ半乾きのセーターとスカートが北風に吹かれて容赦なく体温を奪ってく。 いつ終わるかわからない撮影を待ちつづけるのはしんどい……だけど、待たないと。 すると、思わぬ助け舟があらわれた。 「あれ、矢島さんじゃない?」 「あ、ごぶさたしてます」 入り口にたまたま現れたのはBuono!のPVのプロデューサーさん。 以前Buono!のPV撮影に参加させてもらい、 その後も物販のDVDでもゲスト出演させてもらったので顔なじみであった。 「もしかしてメンバーの誰かに会いに来たとか? だったら中に入りなよ。 外で待ってると寒いし、いろいろとよくないからね」 「本当ですか!? ありがとうございます!!」 思わぬラッキーで中に入れてもらえた私だったけれど、中で待っていたのは瞼に入れたくない光景だった。 心底楽しそうに撮影に望んでいる――愛理。 それはBuono!だから? ももと一緒にいるから? 胸のうちに黒い雲が立ち込める。 そして、いつもは考えないにしていることが溢れ出してしまう。 愛理にとって℃-uteよりBuono!の方が楽しいんじゃないかって。 そんなことは絶対にない。 普段だったら胸を張ってそう言えるのに、今日は言い切れる自信がない。 中に入って1時間ほどで撮影が終わり、愛理が楽屋から出てくるのを扉の前で待つ。 そして待つこと15分、ついに扉が開き――。 「あれ、舞美どうしたの?」 最初に出てきたのは……みや。 「うん、ちょっとね」 「ふーん、まぁいっか。おつかれー」 みやは興味なさそうに先に帰っていった。 ……びっくりしたぁ。 そういえばみやもいるんだったよね。 さらに待つこと10分。 楽屋の扉が音をたてて開いた。 愛理か、ももか。 そのどちらかが出てきただけで辛いのに。 出てきたのは二人そろって、しかもおしゃべりをしながら楽しそう。 心にヒビが入るのを自覚できた。 「あれ舞美ちゃんどうしたの?」 「あ、舞美来てたんだ。やっほー」 愛理とももが能天気に挨拶してくる。 こっちの気持ちも知らないで。 「あ、うん……愛理に話があったんだけれど、その……」 実際にふたりに並ばれているとさっきまでの勢いが削がれてしまう。 「じゃあももは先に帰るからね」 と、ももは先にひとりで帰る旨を伝えてきた。 え!? ふたり一緒に帰るんじゃなかったの? ももはバイバーイといつもの可愛らしい声を出して満面の笑みで帰っていった。 取り残されたのはわたしと愛理、ふたりっきり。 「……話、そこの楽屋で聞くから」 愛理は無表情で、感情が読み取れなかった。 楽屋に入って二人して立ったまま入り口のドアによりかかった。 わたしは緊張で口の中がカラカラで言葉がなかなか出てこなかった。 「……それで話って何?」 愛理のほうが先に痺れを切らしたのか口火を切った。 ここまで来たら、言うしかない、よね。 「愛理」 「ん?」 「その……付き合ってるんでしょ?」 「へ?」 「そんな、とぼけなくていいよ。ももと、付き合ってるんだよね? ……おめでとう」 わたしは笑顔で言えただろうか? いや、多分出来ていない。 だって、視界がにじんで楽屋の光景がよく見えないのだから。 「……なんのこと?」 愛理は首をかしげた。あくまでもとぼけるみたい。 往生際が悪い。 ここまできたら素直に認めてくれたほうがまだ楽なのに。 「もものこと、好きなんでしょ?」 「うーん、それなりに。よく面倒見てくれるし、ああ見えて頼りにもなるしね」 「そうじゃなくて、恋愛って意味で」 「なんで? ももを? 別に」 「うそ」 「うそじゃないし」 「いいよ、うそつかなくても」 「だから嘘じゃないってば!!」 愛理の叫び声にビクっとしてしまった。 気がつくと愛理が正面に立っていて、その大きくて綺麗な瞳には大粒の涙をたたえていた。 「私が好きな人……舞美ちゃんだって知ってるくせに」 「え? だれ?」 「そんなの……決まってるじゃん」 胸元に飛び込まれた。 うそ。 これって。 でも、まさか……。 「舞美ちゃんのこと、ずっとずっと好きなのに」 なんて言葉にすればいいのだろう。 いや、言葉になんかなるはずない。 爆発しそう。 あ、でもわたしも気持ちを伝えなきゃ。 伝えていいんだよね? 好きです、って。 もう無理して「おめでとう」って涙を堪えて言う必要ないんだよね? 「わたしも……愛理のこと好きだよ、すごく」 言っちゃった。 どうしよう。 愛理が顔を上げた。 でもその顔は残念そう。 なんで? 「……それも、知ってる。舞美ちゃんがえりかちゃんを、めぐを、なっきぃを、栞菜を、 千聖を、舞ちゃんを、ももやみんなを好きなのと同様に私のことも好きなこと」 え? どういう意味? 「私の『好き』、舞美ちゃんのとは違うのに」 なぜか睨まれた。 一緒に口を尖らせる当たりがとてもかわいいような気もするけれど。 「ねぇ、舞美ちゃん」 愛理が腕を伸ばし、わたしの肩に置き、強く押されて扉に押し付けられる格好となった。 「私の『好き』、どういう好きか知りたい?」 言ってる意味がよくわからない。 とりあえず頷いてみた。 すると愛理の瞳がこれ以上ないくらいわたしの瞳に近づいてぶつかる、と思ったら。 ぶつかったのは瞳ではなくて、唇同士。 キス、された。 意識が飛びそうになるのを、興奮して走り出したくなるのを抑えるのが大変だった。 「でも、舞美ちゃんの『好き』っていうのはこういうキスをしたくなるような好きとは違うんでしょ?」 違わないんだけどなー。 言葉にしようと思ったけれど、もっといい方法があるのに気がついたので実行! それは、今度はわたしの方から愛理の唇に触れること。 どんな言葉よりも有効だろうから。 「……どう愛理、違った?」 「うーん、よくわからなかったからもう一回」 そう言って人差し指を軽く愛理自信の唇に当てていた。 ……もうわかってるくせに。 再びかわいらしい唇に触れた。 「今度こそ、どう?」 「……同じだったみたいだね。ありがとう、舞美ちゃん」 ギュッと思いっきり抱きつかれ、わたしはそれを全力で受け止めた。 なんか思わぬ遠回りしちゃったけれど、結果的にはこれでよかったのかな? だってわたしの腕の中にはこうやって愛する人がスッポリ収まっているんだから。 これ以上の幸せなんて世界中のどこを探しても見つからないだろうし。 ◆◆◆ 「ねぇ愛理、そういえば疑問がひとつ」 「なに?」 スタジオからの帰り道、手をしっかり繋いで歩いた。 「なんでももとデパートのアクセサリー売り場にいたの?」 「あー、それは『まだ』秘密。っていうかなんで舞美ちゃん知ってるの?」 「え? なんでだったっけ」 あれ、なんでだったんだろう。 今日は色々ありすぎて覚えていない。 「ふーん。まぁいいけれど。ともかく秘密」 「ヒントくらいお願い!」 「うーん……じゃあ、大ヒント! 2月7日になったらわかります。それ以上は言わないからね!」 2月7日って、わたしの誕生日じゃない。 ……あ、そういうことか! 指輪のサイズ、そういえばももと一緒だったんだ。 だからももが試着してくれていたんだ。 まったくももは回りくどいことを。 でもね。ありがとう、もも。ごめんね、疑って。 「でも、まずは……そのシミの付いた服をどうにかしなきゃね」 「あー、確かに」 愛理のことばっかり頭にあったけれど、よく考えたらこのシミの付いた服で電車に乗って街を歩いたわけで。 なにやってたんだろう……さすがに恥ずかしすぎ。 「ってことで! 舞美ちゃん、洋服買いに行こう? そのままじゃみっともないでしょ。ほら、いいからいいからー」 愛理に半ば強引に手を引っ張られる形で夕方の街へ。 ずっとふたりが離れないように、強く強く手を繋ぎながら。 こうして始まる愛理とふたりでの初デート。 それはオレンジジュースとちょっとお節介な親友のおかげ。 ……あれ、でもわたし誰かのことを忘れてるような? まぁ、いっか。
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「舞美ちゃんにお願いがあるの」 ツアー中のホテルは、たいてい舞美ちゃんが一人部屋だ。 だから、舞美ちゃんと二人きりになるのはとても簡単なことだった。 「お願い?愛理があたしに?」 舞美ちゃんがベッドに座ったのを見計らって、私は舞美ちゃんの目の前に立った。 「愛理?」 「キス、してもいい?」 舞美ちゃんが何かを言うより早く、私は目を閉じて舞美ちゃんにキスをした。 とりあえず、触れるだけ。 「あ、愛理!?」 「へへ、しちゃった」 「まだ、あたし返事してないのに」 そう言って、舞美ちゃんは困ったように下を向いてしまった。 もっと怒られるかと思ったけど、案外大丈夫なのかな。 「急にどうしたの?」 「急じゃないよ」 「急じゃないの?」 「だって、ずっと舞美ちゃんとこういうことしたいって思ってたもん」 「いつから?」 「ずっと前からだよ」 いつからかなんて、私にもわからない。 気付いたら、舞美ちゃんに欲情してる自分がいた。 「ねぇ、舞美ちゃん」 「何?」 「もっといいことしようよ」 「な、にを…?」 「わかるでしょ?」 私が舞美ちゃんの顔に手を添えると、一瞬だけ舞美ちゃんが怯えるような顔をした。 瞬間、私の中に何とも言えない快楽が生まれた。 「わかんない…わかんないよ、愛理…」 「本当にわからないの?」 私が聞いても、舞美ちゃんは何も答えなかった。 俯く舞美ちゃんの顔が見たくて、私はその場にしゃがみ込んだ。 「わからないなら、教えてあげるよ?」 「…愛理、変だよ」 「変じゃないよ?」 上目使いで舞美ちゃんを見上げると、舞美ちゃんはすぐに目を逸らした。 「ね、いいでしょ?」 ゆっくりと立ち上がって、舞美ちゃんの肩に手を置いた。 「こんなのダメだよ、愛理」 「なんで?」 「嫌だ…あたし、愛理とそんなことしたくない」 舞美ちゃんは私の両腕を掴んで、肩から手を離そうとした。 でも、さっきから私の中では何かがぐるぐる湧き出てきてる。 舞美ちゃんを抱きたい。 ただそれだけの欲が、私の中を渦巻いていた。 「ごめんね」 一度だけ謝って、私は両腕に力を込めた。 舞美ちゃんが勢いよくベッドに倒れる。 私が押し倒したんだ。 「愛理っ…やだ…!」 「大丈夫だよ、舞美ちゃん」 キスをすることで、舞美ちゃんの口を塞いだ。 今度は角度を変えて、深く。 「ん…っ、ふ…ぁ…」 舌を入れたら、舞美ちゃんも舌を絡めてきてくれた。 ヤバイ。 今、舞美ちゃんにキスしてる。 舞美ちゃんを押し倒して、上に乗ってる。 ゾクゾクと沸き上がる快感が、さらに私を奮い立たせる。 「舞美ちゃん、本当に嫌なの?」 顔を離して、苦しそうな舞美ちゃんに問い掛けた。 私の中の黒い感情が、次々と沸き上がる。 「嫌なら、もっと本気で抵抗しなきゃダメじゃん」 舞美ちゃんは何も言わない。 もう抵抗する気はないのかな。 「私、ずっと舞美ちゃんに触りたかった」 そう言いながら、舞美ちゃんの胸の辺りに手を置いた。 舞美ちゃんの身体がビクッと動いた。 そのまま、ゆっくりと撫でたり揉んだりしてみた。 「ん…っ、や…だ…」 空いた手でふとももを撫でると、舞美ちゃんはもじもじし始めた。 「でも、舞美ちゃんは嫌なんだよね…」 舞美ちゃんが感じているのを見ながら、私は静かに呟いた。 「それなら、私やめるね」 胸と足から手を離して、身体を起こすと、舞美ちゃんは寂しそうに私を見上げた。 それだけで、私の中でまた快感が沸き上がっていく。 「あ、いりぃ…」 舞美ちゃんが物欲しそうな顔で名前を呼んだ。 その瞬間、私は自分の口元が緩むのを抑え切れなかった。 かかった…! 作戦通りだ。 私は心の中でガッツポーズしながら、優しく舞美ちゃんに声を掛けた。 「なに?舞美ちゃん」 「……て…」 「なに?」 「…もっと……触って…」 恥ずかしそうにそう言う舞美ちゃんがすごく可愛くて、私は思わず手に力が入った。 「あっ…ん…」 「舞美ちゃん、嫌なんじゃなかったっけ?」 「いじわる…」 もう完全に私は舞美ちゃんに欲情していた。 きっと沸き上がる欲を隠し切れていないと思う。 私は舞美ちゃんのパジャマのボタンを外して、勢いよく胸を掴んだ。 「痛っ…あい、りっ…」 「ごめんね、舞美ちゃん、ごめんね」 下着もずらして、揉んだり舐めたり、余裕なんて全くなかった。 「あっ…やだっ…愛理…!愛理…!」 舞美ちゃんに名前を呼ばれるだけで、私は快楽を感じていた。 攻めているのは私なのに、私がおかしくなりそうだった。 「も…っ、愛理…!お願い…っ」 舞美ちゃんの腰が揺れているのを見て、やっぱり私は快楽を感じた。 今更だけど、私はおかしいのかもしれない。 こんなに舞美ちゃんに欲情するなんて、きっとおかしいんだ。 でも、自分の欲は止められない。 私は、舞美ちゃんのふとももに手を置いた。 舞美ちゃんが触ってほしそうに動いている。 「触るよ、舞美ちゃん」 私は一度大きく唾を飲み込むと、そこに手を伸ばした。 「あんっ…愛理…!」 「舞美ちゃん、気持ちいい?」 「き、もちい…っ」 私の手の動きに合わせて、舞美ちゃんの腰が揺れる。 私は空いている方の手で、舞美ちゃんの胸に触れた。 「あっ…だめ…!」 「舞美ちゃん、すごい腰動いてるよ」 「やだ…言わない、で…っ」 「止められないの?」 「止まんない…よぉ…っ」 舞美ちゃんがエッチな声を出しながら、私の名前を呼ぶ。 そのたびに私のあそこも反応していた。 舞美ちゃんの感じている顔を見るだけで、舞美ちゃんの気持ち良さそうな声を聞くだけで、私はたくさん感じていた。 「愛理…もっと…っ」 「もっとどうしてほしいの?」 「…っ、触って…?」 「どうやって触ってほしいの?」 「もう…愛理ぃ…」 涙目の舞美ちゃんが私を見つめる。 そんなの反則だよ。 私は舞美ちゃんに弱い。 それを改めて思い知った。 「しょうがないなぁ」 私は舞美ちゃんのズボンに手を入れて、まずは下着の上から触ってみた。 「あぁ…!」 舞美ちゃんが一際大きく声を上げた。 やっぱりパジャマの上からじゃじれったかったんだろう。 下着ももうビショビショに濡れていた。 「舞美ちゃん」 「な、に…っ」 「これでいい?」 「っ…!」 下着越しにそこを弄ると、舞美ちゃんの腰はさらに激しく動き出した。 「や、だぁ…」 「嫌なの?」 「うん…」 舞美ちゃんは縋るような目で私を見る。 たまらない。 私のあそこも、舞美ちゃんと同じぐらい濡れているに違いなかった。 「あんっ」 隙を突いて胸の突起を摘むと、舞美ちゃんはまたエッチな声を上げた。 胸とあそこを交互にリズミカルに弄ると、舞美ちゃんも面白いぐらいくねくね動き出した。 「舞美ちゃん可愛い」 「やだ…っ、もう…愛理お願い…!」 舞美ちゃんは、舞美ちゃんのあそこを弄る私の右手を掴んで、じっと私を見つめた。 「なに、舞美ちゃん」 「お願い…」 「右手をどうしてほしいの?」 「ちゃんと…触ってほしい…」 「ちゃんとってどういうこと?」 私がとぼけていると、舞美ちゃんは泣きそうな顔をした。 そんな顔にも、欲情してる自分がいることに気付く。 「いいよ。私の右手を動かして、どこを触ってほしいのか教えて?」 私がそう言うと、舞美ちゃんは掴んだ私の右手を、自分の下着の中に入れた。 「ん…」 「ここがいいの?」 「うん…」 そこはもう大洪水だった。 少し手を動かすだけで、指にねとっとしたものが絡み付く。 「ビショビショだよ?」 「…愛理のせいじゃん」 「私は舞美ちゃんが嫌ならやめるって言ったもん」 そんなの、ただの言い訳だけど。 舞美ちゃんが嫌だって言っても、きっと私は私の欲望を止められなかっただろう。 しばらく入口を弄った後、一本だけ指を挿れてみた。 大洪水だったそこは、抵抗なく指を飲み込んだ。 まだまだいけそうだ。 「あ、いり…」 舞美ちゃんが辛そうに腰を揺らしている。 そんなに早く挿れてほしいのかな。 私は舞美ちゃんを完全に支配していることに喜びを感じながら、さらに2本挿れてみた。 「あぁ…」 舞美ちゃんが気持ち良さそうに腰を動かしている。 私もそれに合わせて指を出し入れしてみた。 「あ…っ、あ…ん…っ、愛理っ、気持ちい…っ」 「気持ちいい?」 「いいっ…、いいよ、愛理…!」 舞美ちゃんの声が大きくなるにつれて、腰の動きも激しくなる。 私は負けないように必死に手首を動かした。 「あんっ…!愛理!愛理っ、気持ちいよ…!」 私は壊れそうだった。 無我夢中になって手首を動かしながら、頭は舞美ちゃんのことでいっぱいだった。 「舞美ちゃん…!」 「あっ…もう、ダメ…!愛理!愛理!」 「舞美ちゃん!」 私は激しく指を出し入れした。 時々中で弄ったり、胸の先端を弄ったりした。 徐々に舞美ちゃんの声が大きくなってきて、もう限界が近いことがわかる。 「愛理…!もっ…無理…!」 「いいよ、舞美ちゃん」 「あん…っ、愛理…!愛理…!」 舞美ちゃんが両手を伸ばしてきたから、私も胸を攻めていた手を舞美ちゃんの背中に回した。 「舞美ちゃん…!」 「ぁ、んっ…―――!」 舞美ちゃんは力一杯私を抱きしめて果てた。 正直痛いぐらいだったけど、それ以上に気持ち良かった。 「舞美ちゃん、大丈夫…?」 「…愛理のばか…」 舞美ちゃんは腕で顔を隠しながら、ぼそっと呟いた。 まだ肩で息をしていて、だいぶ辛そうに見える。 私もいつの間にかたくさん汗をかいていた。 「ごめんね…?」 私が謝ると、舞美ちゃんは私の顔を見て笑った。 よっぽど情けない顔をしていたらしい。 「大丈夫だよ…」 疲れたけど…なんて言って、舞美ちゃんは笑った。 「まさか、愛理にこんな力があととはね」 私だってびっくりだ。 私がこんなに舞美ちゃんに欲情するだなんて。 「次はあたしがしたい」 「へ?」 「いいでしょ?」 気付いたら舞美ちゃんは上体を起こしていて、気付いたら私の上に舞美ちゃんがいた。 「舞美ちゃん、最初嫌だって言ってなかった?」 「そうだっけ?」 「そうだよ」 「まぁ、そういう時もあるよ」 舞美ちゃんのわけのわからない理由に流されて、私は舞美ちゃんとキスをした。 「愛理可愛い」 私たちの夜はまだまだこれから―
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どうしよう、トレーナーの私が よりにもよって選手に恋しちゃった・・・。 スポーツが好きだからって、どうして格闘技なの? それも顔を打たれるボクシングだよ? もうセコンド兼トレーナーを務めてけっこう経ったけど 舞美ちゃんの考えることは全然わかんない・・・。 でも自分が、舞美ちゃんをどんどん好きになっていることはわかる・・・。 「愛理!お水ちょうだい!」 サンドバッグを叩き滝のような汗を流した舞美ちゃんが 笑顔で寄ってくる。 汗をタオルで拭き、ミネラルウォーターを口に差し入れる。 試合で殴られる舞美ちゃんは見たくないけど 練習している汗だくの舞美ちゃんと、こうして私を頼りに してくれる舞美ちゃんを見れるのは嬉しい。 ラウンドを終えてコーナーに帰ってくる舞美ちゃんを 抱きしめたくなる衝動にかられたこともある・・・。 「舞美ちゃんお水それだけで良いの?」 口元に持っていったミネラルウォーターを少しだけしか 飲まない舞美ちゃん。 「うん、減量があるから」 次の対戦に向けて減量している舞美ちゃん。 いつもなら朝に一斤は食べるパンを2枚におさめ 昼には87杯食べていた蕎麦を半分に抑え 夜は20皿は食べるお寿司を10皿にしている・・・。 どうして、そんなに苦しい思いをしてまで リングに立つの? しかも、今度の対戦相手は、あの【タイソン・アツコ】・・・。 舞美ちゃんより大食いで 左利きの強烈なパンチと、だれも止められないラッシュで 48人もの強豪を倒してきた猛者。 いくら舞美ちゃんでも敵わないよ・・・。 舞美ちゃんに試合までに何かしてあげたいけど 私じゃスパーリングパートナーは無理。 できることなら舞美ちゃんを止めたいぐらい・・・。 「ん?どうしたの具合とか悪いの愛理?」 私の不安げな顔に気がついてか 鈍感な舞美ちゃんが心配してくれる・・・。 「ううん、全然だよ!」 笑顔を作って返すと、笑顔を返して グローブで頭をなでてくれる舞美ちゃん。 パートナーが選手に心配されるなんて こんな気持ちじゃパートナーは務まらないよ。 どうしよう・・・試合まで後2ヶ月・・・。 気持ちの整理と舞美ちゃんのために試合の対策をしなきゃ!! でも、どうしよう・・・。 そもそも私は舞美ちゃんがリングに上がった 理由をよく知らない・・・。 舞美ちゃんに聞いても 「最初はダイエットのつもりでジムをのぞきいたら、 楽しそうだから飛びこんだの!」としか教えてくれない・・・。 それでリングに上がるかな? まあ、そこら辺はあいかわらず解らないのですが 私は、試合の日までにやれることを舞美ちゃんに せいいっぱいしてあげなきゃ・・・。 たっぷりと練習した後にシャワーを浴びて 減量用のご飯を食べた舞美ちゃんは 今、私のとなりの布団で寝ている。 試合まで舞美ちゃんの体調管理も私の務め! しかし・・・舞美ちゃんの寝顔は奇麗だ・・・。 舞美ちゃんは自分が寝た後に私にこうも マジマジと私に顔をのぞかれていること知らない。 一瞬変な気になる・・・。 「ダメッ!今は変なことで気を使わせることなんてできない!」 私は、そう自分に言い聞かせて布団にもぐった・・・。 次の日の朝。 舞美ちゃんは小雨のふるなか早朝からランニング。 舞美チャンはひたむきな努力家だ。 雨の日も、雨の日も、そして雨の日も走っている。 元プロだった私のお父さんのジムに入ってから 舞美ちゃんは、その天性の運動神経と、ひたむきな努力で またたくまにボクサーとして成長しデビューをKO勝利で飾った。 元プロゴルファーだったお父さんがボクシングジムを 始めた理由は知らないけど、私はこのジムで舞美ちゃんと出会え 私がセコンドで見守る中、むかえた新人王戦・・・ 舞美ちゃんはダントツで他を圧倒し全戦全KOで新人王となった。 その時の舞美ちゃんの笑顔を今でも覚えている・・・。 舞美ちゃんは、くっつき虫だった。 「あいり~、疲れた~。」新人王戦が終わると、 いつもは出さない甘え声で私に抱きつき 私の肩で休んだ・・・。 そうして舞美ちゃんが勝利する度に何度も笑顔を見て 何度も抱きつかれ、いつのまにか私は舞美ちゃんを 好きになっていた・・・。 今、パートナーでいられることは本当に幸せに思う。 でも最近は舞美ちゃんにリングに上がってほしくない・・・。 舞美ちゃんに傷ついてほしくない・・・。 舞美ちゃんが相手のパンチを受けるたびに私はリングから 目をそらすようになってしまっていた・・・。 舞美ちゃんを選手として見れなくなっている自分が居る・・・。 「はぁ~~~~」私の思いを他所にランニングから帰ってきた 舞美ちゃんが息を切らせタオルで濡れた頭を拭いている。 「あいり~、つかれたー!」そして、またくっつき虫。 私を後ろから被う舞美ちゃんの汗の匂いが好きだ・・・。 いけない・・・ その気を振り払うように首を振り、舞美ちゃんの両腕をほどく。 「舞美ちゃん!今日からトレーニングメニューを変えるよッ!」 ビシッと!言い放った私にキョトンとしている舞美ちゃん。 「試合まで2ヶ月!これからは愛理の特別メニューですっ!!」 こう言い放つと舞美ちゃんはなぜか嬉しそうに 「ウフフフフ~」と笑った。 相変わらずリアクションが解らないよ・・・。 それはさておき・・・ 「強敵との試合がせまったなか 今までと同じでは舞美ちゃんの成長はありません!」 「そのために今日からはスパーリングパートナーは こちらのチッサー選手!にお願いします!!」 チッサー選手は舞美ちゃんより階級は下だけど 今、うちのジムで舞美ちゃんとスパーリングを勤められるのは この娘だけだ。 面倒見も異常に良くスタミナだけなら 舞美ちゃんより上かもしれない。 舞美ちゃんのスタミナを鍛えてもらおう! 「そして・・・コーチはこちらのマイマイコーチにお願いします!」 マイマイコーチはその若さに似合わず、いつもDVDカメラ片手に 選手を見つめ、冷静に、時に辛らつな指摘をし選手を育て上げる スパルタ型のコーチだ。少し抜けたところのある舞美ちゃんには ちょうど良いはず!! 舞美ちゃんの長所は、そのズバ抜けた運動能力と 凄まじいハードパンチ! そのパンチは、サンドバッグを破き パンチングボールを吹き飛ばし、 お父さんが大事にしていた壷を割り 動いてもいないのに手に当った蚊を気絶させ 伊達メガネを壊し、もちろん多くの選手をほうむってきた! そんな舞美ちゃんについた渾名は その容姿と合わせ「破壊の女神」! だけどハードパンチャーだけあって今まで全ての試合を 短期で終わらせてしまっている・・・。 「今回の相手は強敵でしかも10ラウンドの長丁場! 徹底的に舞美ちゃんのスタミナをUPしてもらいますっ!!」 矢継ぎ早にまくしたてた私の話しを理解できなかったのか まだキョトンとしている舞美ちゃん・・・。 たぶん、そうだろうとは思いました・・・。 でも、ここは心を鬼にして・・・。 「返事ッ!!」 「はいっ!」 こうして舞美ちゃんの特訓が始まったのです。 こうして舞美ちゃんへの特訓がはじまった。 舞美ちゃんは、いつも通り滝のような汗を流し サンドバックを叩く。 スタミナが汗と共に体から流れ出している。 苦しい減量もあるけれど平行して スタミナもつけなきゃ・・・。 チッサーは話しを理解できない舞美ちゃんに 時々、イラッとしながらも面倒み良く 舞美ちゃんに付き合ってくれている。 マイマイはイラつきをそのまま前面に出しつつ 舞美ちゃんをビシバシと指導し コンビネーションを教えてくれている。 「フックだよ!フック! 舞美ちゃん、違う!フックだってば!」 チッサーが吠えている。 「舞美ちゃん人の話聞いてる?前頭葉よわくない?」 マイマイの辛らつな指摘に舞美ちゃんは頬を膨らませる。 「今のしぐさはストレートだと思ったの!だって思うでしょ!?」 3人とも互いの否を認めずに ギャーギャー騒ぎながら練習しているけど 楽しそうで何よりです。 そして私は・・・。 そして私は・・・。 舞美ちゃんは見ないで、ナッキーを見ることにした。 ナッキーは舞美ちゃんにも劣らない才能をもった うちのジムのエースで良い娘なんだけど、 自信がないのか時々、ポカしたり 練習もさぼりがちになってしまう心配な子・・・。 舞美ちゃんをチッサー、マイマイに預けて 私は、この娘の指導にあたることにした・・・。 「ナッキー!そこで手を止めないで!」 「手ェ、止めてないしぃ~」 ナッキーはツンデレのデレが欠落した娘・・・。 言葉はツンツンで、まったく手を焼かせる娘だけど、 その気の強さがボクサーにあっているから良しっ! 「ナッキー!そこ! ストレートをベシッとっ打つべしッ!」 ナッキーは私の指示と正反対に手を止めた・・・。 「てか、なんで私の面倒みてるわけ? 舞美ちゃんのパートナーでしょ?」 私の渾身の指示がいけなかったのか サンドバックを打つ手を止めて 眉間にシワをよせてしまっている・・・。 「・・・それは・・・今は、あの2人に 任せてるからだよ・・・」 ウソ・・・。 本当は舞美ちゃんを選手として見れない自分に 気づいてから私は舞美ちゃんを避けている・・・。 心の中で、 舞美ちゃんをリングに上げ戦わせるパートナーの私と、 舞美ちゃんにリングに上がって戦ってほしくない私とが 喧嘩している・・・。 そんな状態で舞美ちゃんを見ていると 胸が苦しくなって、涙が出そうになる・・・。 どうして舞美ちゃんはボクシングなんか始めたの・・・。 でも、そのボクシングがなければ出会えなかったわけで 色々、考えると頭が混乱してくる・・・。 「パートナーがそんなんじゃ、舞美ちゃんの 足ひっぱるよ・・・」ナッキーの眉間からシワは無くなり 私を諭してくれる。ナッキーはこういう立派な言葉を サラッと言える娘で、羨ましい・・・。 だけど・・・。 今の私は舞美ちゃんと向き合うことができない。 向き合いたくない・・・。 試合まで私はパートナーとしての自分と 舞美ちゃんを好きになってしまった私のどちらかを 選ばなきゃいけないんだ・・・。 後者を捨てたくないよ・・・。 私は、目からあふれ出しそうになる涙を みんなに見られたくなくて、おもわず外に出た・・・。 ナッキーを置いて出てきてしまった。 もうトレーナーとしても最低だよ・・・。 朝降っていた雨は止み青空が広がっている。 涙を乾かすために近所の公園で時間をつぶす。 本当にどうかしている自分が嫌になる。 ふと空を見ると青空の少し向こうに「曇り雲」が見えた。 振り返ると舞美ちゃんが立っている。 「愛理・・・どうしたの?ナッキーが飛び出して言ったって・・・。」 舞美ちゃんは顔は笑顔で、心配そうに優しく声をかけてくる。 強い上に優しいなんて・・・どこまで男前なんだろう・・・。 「ううん、何でもない・・・。1人で考え事をしたかったの。」 そう言って首を大きく振って見せるけど、 ウソをついているせいか言葉には力が入らない。 「そう・・・。だけど・・・どうして今回は 愛理がトレーナーについてくれないの??」 舞美ちゃんから聞かれたくなかった問いがされる。 「知るは楽しみなりもうしまして・・・ 愛理が教えてくれるボクシングの知識やテクニックは 凄くためになる!!いつもどおりにコーチしてよ!」 舞美ちゃんは、この「知るはウンヌン」の言葉をお気に入りなのか うわごとのように言い続ける。 何度も、何度も・・・さすがに聞き飽きてるんだけど・・・。 それは置いておいて舞美ちゃんは、そのうわごとを言った後に 満面の笑みで私に近づきグローブをつけた手で 私の手を握ってくる・・・。アァ、もう!どこまで人たらし。 「今回は、私には考えがあるの!」私は、そう言い 舞美ちゃんのグローブを逆に握り返す。イニシアチブは取らせたくない。 言った言葉はウソ・・・。ウソをつく回数が日に日に増えている・・・。 私は後何回、舞美ちゃんにウソをつくのだろう・・・。 でも、前から思っていたこととからめてウソを突き通すんだ。 「タイソンアツコ選手のジムに視察に行って来るタイ!」 「うふふふふ~愛理おもしろい!」 私の言った内容は解っているのかは不安だけど 以外にもジム内で唯一、舞美ちゃんは 私のギャグセンスについてこれ喜んでくれる。 それはそうと、今までは、まさかあのタイソンアツコ選手と 舞美ちゃんが戦うことになるとは思ってもみなかったからノーマークだった。 でも、試合をひかえトレーナー、セコンド、パートナーとして 見に行かなければならない。それは本当に前から思っていたこと・・・。 だけど舞美ちゃんのトレーナーをしないこととは関係無い・・・。 「でも私も見たい!それなら一緒に行こう!」 舞美ちゃんは内容も理解していたらしく目を輝かせ両手をブンブンと縦に振る。 「舞美ちゃん!試合前の相手のジムに対戦選手が行くなんて ありえないでしょ!!だから私が変わりに行くのっ!!」 そう、もっともらしい言葉で舞美ちゃんを煙に巻く。 「・・・・・そっか。ウン!わかった!まかせるよッ!」 舞美ちゃんは、しばらく考えた後に 納得してくれたのか目玉が三日月になるほどの笑顔で 大きく頷いてくれる。こういうリアクションの大きさも私を 惹きつけているのかもしれない・・・。 「じゃあ、考えごとはもう良い?もどろっか!」 そう言いジムの方をグローブで指す舞美ちゃん。 「舞美ちゃん・・・外に出るのにグローブ、ボクサーシューズで 出てくるのは駄目だよ・・・」最後に気になっていたことを 話すと、舞美ちゃんは今さら気がついたのか慌てふためいて 私の手を引っ張ってジムに戻った。
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暑くて目が覚めた。 見るとちゃんと律儀に肩まで布団をかぶっていた。 それなら暑くなるのも当然で、隣に寝ている舞美ちゃんも苦しそうに少し顔を赤らめて眠っている。 私はとりあえず掛け布団を剥ぎ、タオルを出来るだけ音を立てないように上下に揺らして布団に風を入れた。 暑さが和らいだらしく舞美ちゃんの顔から苦しみが抜ける。 額にびっしょりと汗をかいて前髪がひじきになっている。 私も汗をかいていてTシャツが湿っている。 舞美ちゃんの前髪をかき分けると舞美ちゃんの、においがした。 そういうことは舞美ちゃんが忙しくて疲れているからしなかったのに、汗をかいているのは結局同じで、 舞美ちゃんらしいと思ったり、子供みたいに汗をかいてる舞美ちゃんが愛しくなったりで 自然と頬が緩んだ。 ねがおどくせーん、と声に出さずに呟いてみる。 窓のカーテンから街灯の光が微かに漏れて入ってくるおかげでかろうじて舞美ちゃんの顔が見える。 その造形ももちろん、できる影まで美しくて見とれる。 私が惚れているからよくみえているのはあるかもしれないけれど、それを差し引いても、綺麗だ。 目、鼻、口、頬のラインをまじまじと息を殺して見つめていると美しいものに惹かれる以上の感情が湧く。 こういったことは何度も経験して、そのたびに、好きなんだと自覚する。 舞美ちゃんも私に対してそう思うこと、あるんだろうか、と思って、あるだろうなと思い返した。 舞美ちゃんの目は正直だからすぐわかる。 今は閉じられた目が、開かれて私を見つめている姿が、今見ているものを乗っ取って浮かんで一人で恥ずかしくなる。 そんな風に一人でぼんやりしていると舞美ちゃんの首筋に一筋何かが光って下に消えていった。 何だろうと思い触れてみると、なんと、寝汗が伝っていったようだった。 さすが舞美ちゃんである。 あれだけの汗が額にあるくらいなのだから、と私は鞄から使ってないタオルを出して拭こうとすると、また一筋流れていった。 その時舞美ちゃんの顔が微かにゆがんだ。 まだ暑いのかとも思ってけれど、そうではない気がして私はそっと観察することにした。 3回目はなかなか遅かったけれど私が眠ってしまう前にやってきた。 つう、とつたった瞬間、舞美ちゃんは小さな声で、しかし確かに、ん、と唸った。 とりあえず額と首の汗は拭いてあげた。 それから、水が伝う感じと同じように私は舞美ちゃんの首筋を撫でた。 するとさっきと同じように舞美ちゃんは顔を歪める。 苦しいわけではないらしい。私の手をはねのける気配はない。 それどころか微かに息が乱れている、気がする。 やらしい顔になってきている、気もする。 せっかく布団に入ってから我慢したのになんだか水の泡になりそうで、 自分で苦笑いしながら静かに舞美ちゃんの上に馬乗りになった。 ちょっとべたつく首元に指先で触れてくすぐると舞美ちゃんは目を閉じたまま逃れようとする。 ここまでされても起きないものだろうか。 私は触れているのと反対側の首元に顔を寄せて、その間も指で遊んだ。 逃げ切れずに舞美ちゃんは息を漏らす。そして、愛理、と囁いた。 思わず顔を離して顔を見たけれど起きたわけではないようだった。 たかが寝言、が嬉しくて私はもう一度顔を寄せる。 舞美ちゃんのにおいがする。私が好きなにおいだ。 口づけるとさすがにしょっぱい。 それでも構わずに唇をずらして、舌でちろりと舐める。 そのたびに体が揺れる。可愛くて可愛くてたまらない。 指先も首筋で遊んだままで、さすがの鈍感な舞美ちゃんでもおかしいと思ったのか、起きた。 「んん、あ、愛理?」 体を離して舞美ちゃんを見ると、寝起きで頭が回っていないのか、ひどく困惑していた。 でもそれだけではない、と思う。 ばつが悪そうな顔をしているようにも見えた。 寝ている間にそんなことされたら、普通そういう夢見てもおかしくないとは思うけれど、 舞美ちゃんは正直ものだから、そんな夢を見たことを恥ずかしそうにしている。 とは口に出さないところも全部可愛くて愛しい。 多分これはどこまでもとまれなくなるだろうなあ、と冷静な自分が自分を分析している。 だって舞美ちゃんが悪いよ、と冷静じゃない自分が言い訳する。 こんな顔されたら、止まれるはずがない。 せっかく我慢したのに、せっかく汗を拭いたのに、全部無駄になってしまったけど、それはそれで。
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また遅くなってしまった。 今日は舞美ちゃんと一緒に帰る約束をしていたのに、いつも帰り支度をするのが遅い私はどんなに急いでもやっぱり遅かった。 マネージャーさんに用事があるからと言って先に出て行った舞美ちゃんだけど、結局私が待たせることになってしまった。 「愛理!愛理!」 「舞美ちゃん、ごめんね!」 事務所の外に出ようとした時、待ちくたびれてしまったのか舞美ちゃんが再び事務所に入ってきた。 慌てて謝ったのに、舞美ちゃんは「いいよ!」とだけ言うと、目をキラキラさせながら私の手を掴んだ。 「ど、どうしたのっ」 いつもとは違う少し強引な舞美ちゃんにちょっとだけドキドキした。 だけど、すぐに繋いだ手が冷たいことに気付いて申し訳なく思った。 「愛理っ、雪だよ!」 「え?」 「雪降ってる!」 事務所を出ると冷たい風が髪を揺らした。 さっきまではしゃいでいた舞美ちゃんも、いつもは頼もしく見える背中を丸めて小さくなっている。 「おぉー・・・!」 あまりの寒さに気付くのが遅くなったけど、顔を上げるとチラチラと雪が降っていた。 「愛理、雪だよー!」 「うん、雪だねー、舞美ちゃん」 舞美ちゃんの横顔を見ると、舞美ちゃんは空を見上げたまま白い息を吐き出した。 なぜか私も同じことがしたくなって、下を向いてそっと息を吐いた。 「愛理寒い?」 「寒いよぉ」 「そうだよね。ごめんね、急に外連れ出しちゃって」 舞美ちゃんは少しだけ申し訳なさそうに笑うと、繋いでいた手をぎゅっと握った。 違うよ。 そういう意味じゃなくて。 そんな顔してほしくないよ。 「舞美ちゃん」 私も繋いだ手に力を込めた。 舞美ちゃんが不思議そうに私の顔を見るのを確認して、かわいいなぁと思う。 「雪、うれしいね」 「うん!私、雪好きだか・・・」 「舞美ちゃんと一緒だから、もっとうれしい」 「あ、いり・・・っ」 照れる舞美ちゃんが愛しくて、私は口元が緩むのを抑えきれなかった。 舞美ちゃんが私と雪を見たいって思ってくれたこと、ちゃんとわかってるよ。 だって、きっと私も同じことを思うだろうから。 「はぁーっ、あついあつい・・・」 さっきまで寒がっていたのに、舞美ちゃんは空いた手で顔をパタパタと扇いでいる。 よく見ると頬もちょっとだけ赤くて、そんな舞美ちゃんを見ていたら、寒さなんてどうでも良くなった。 「舞美ちゃん赤くなってるよ」 「だ、だって愛理がいきなりあんなこと言うから!」 私が歩き始めると、舞美ちゃんも自然に歩き始めた。 まだ帰りたくないな。 もっと舞美ちゃんとこうしていたい。 「途中でなんかあったかいもの飲みたいなぁ」 「お!いいねー。どっか寄って帰ろうか」 「うん!」 まだ帰りたくない。 舞美ちゃんも、同じように思ってくれてる? どこ行こうかなぁ、何飲もうかなぁって考える舞美ちゃんを横目に見ながら、私はもう一度空を見上げた。 雪はまだ降り続いている。 やまなければいいのにと思う。 このまま雪が降り続いて電車が止まったら、もっと舞美ちゃんと一緒にいられるのに。 なんて、さすがに舞美ちゃんはこんなことは考えないだろうなぁ。 実際こうなったら私も結構困るし。 「愛理?」 舞美ちゃんが不安そうに私の顔を覗き込んできた。 こんなこと思ってるなんて言えないから、なんでもない風に笑ってみせた。 「帰りたくないなぁ」 私がボソッと呟いたら、舞美ちゃんは「うーん」と考えるように唸った。 嫌だな。 また、わがまま言っちゃった。 謝ろうと思って顔を上げたら、舞美ちゃんは「よし!」と言って私の顔を見た。 「じゃあ、今日はギリギリまで一緒にいよう?」 「え?」 「夕飯も一緒に食べて帰ろう?」 「い、いいの?」 「うん。だって、私も愛理と一緒にいたいよ」 舞美ちゃんはニコニコと笑っている。 やっぱり舞美ちゃんは優しすぎるよ。 そんなところが大好きで、いっぱい舞美ちゃんに甘えちゃう。 「舞美ちゃん大好き」 「えへへ。ありがと!私も愛理のこと好きだぞー」 「うん!」 嬉しくて、嬉しくて幸せで、私は繋いだ手を大きく揺らした。 舞美ちゃんも、それに合わせて揺らしてくれる。 いつの間にか雪はやんでいた。 少し残念だけど、すぐ隣を見れば舞美ちゃんがいる。 何を飲もうかな。 何を食べようかな。 舞美ちゃんと一緒っていうだけで何でも特別になる。 私が無意識に白い息を吐くと、舞美ちゃんも大きく白い息を吐き出した。 そんなちょっとしたことでも、舞美ちゃんと同じだと嬉しい。 そうだ。 ブログ用の写メを撮るのも忘れないようにしないと。 もちろん、私の為にもね。 少し歩いて、ちょっと大人な雰囲気のおしゃれなパスタ屋さんに入った。 メニュー見てる間も、料理を待っている間も、料理を食べてる間も自然とにやけちゃう(笑) 何気ないことなんだけど、舞美ちゃんと一緒だと、なんでも楽しい。 そういえば・・・2人きりになったら渡そうと思ってた、舞美ちゃんへの特別なプレゼントいつ渡そう・・・ 「愛理どうしたの?」 「えっ・・・あっ、あのね・・・これっ!」 バックから取り出した箱を舞美に差し出す愛理。 「はい、舞美ちゃんへの誕生日プレゼント」 「えっ・・・さっき、事務所でもらったよね?」 「ううん、これは愛理から舞美ちゃんへの特別なプレゼント。開けてみて」 受け取った箱を少し見つめた後、きれいな包装をとって、ゆっくり箱を開ける舞美。 「わぁ~、ありがとう」 舞美の手にはきれいなアクセサリーが。 「気にいってくれた?」 「うん、愛理ありがとう~。」 「良かったぁ。でね・・・これ私とお揃いなんだ。一緒に付けてくれる?」 「もちろん。さっそく」 さっそく、アクセサリーをつける舞美。 アクセサリーを見せながら、 「愛理、どうかな~?」 「似合ってるよ、舞美ちゃん」 満面の笑みで、身に付けたアクセサリーを眺める舞美。それをうれしそうに見つめる愛理。 お店を出たあと、手をつなぎながら、夜の街を歩く二人。 手を繋いだ2人には、お揃いのアクセサリーがキラキラ光っている。
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もう迷いはありませんっ!舞美ちゃんと目指す目標は1つ! 私はトレーナーとして舞美ちゃんをチャンピオンにしてみせますから!!キッ シャー!! ごはんもしっかり食べさせ栄養を取らせ太らせます!キッシャー!! 舞美ちゃんの異常な発汗量なら、そもそも太らないんです!キッシャー!! そしてジムからみんなが居なくなると、ここからが本番です! 練習で疲れている舞美ちゃんを心を鬼にしてさらに鍛えるのです!! 舞美をチャンピオンとすべく心を鬼とし鬼コーチとなるのです!!キッシャー とか勇ましいことを言いましたが…。 「痛いっ」叫び声をあげる私…。 「あっ、ごめん!」 リングの上、激しいミッド打ちで私の右手を吹き飛ばした 舞美ちゃんが私に駆け寄ってきます。 舞美ちゃんは、すぐにこういった相手のフェイクにひっかかるので心配です……。 「ごめん、ごめん、手、大丈夫…?」 「ううん…平気ですよ…でも…そこからの~クリンチッ!」 ミッドを外して舞美ちゃんにクリンチします。舞美ちゃんはクリンチから逃れるのが 下手なので徹底的に鍛えます!! ギッシィ…私に押された舞美ちゃんの背中がロープにくっつきます。 ロープ際での動きも覚えてもらわなければいけません!! 汗ばんだ舞美ちゃんの体。その首筋に攻撃し続けます! 舞美ちゃんは体をうねらせ逃れたいんだか、逃れられないのか どんどん体から力が抜けてっているのが解ります…。 もう完全にグロッキーです。 こんなことではいけない!!私はさらに心を鬼にして舞美ちゃんを攻め続けます!! 「あいりぃ…」か細いかすれた声で私の名を呼ぶ舞美ちゃん…。 試合中に哀願するように相手の名を呼ぶなどなんたること!! 私の鬼の愛撫攻撃に舞美ちゃんはロープに揺られ続け、ついに膝から崩れ落ちてしま いました。 ダウンです…。 「舞美ちゃん……わっーん、、、つっぅー、、、、すりー、、、。」 今、私は冷徹な眼差しで舞美ちゃんを見ながらでカウントを取り続けています。 抱きしめてあげたいところですが、ここで舞美ちゃんに手を差し伸べるわけにはいき ません!! 舞美ちゃんは虚ろな顔で口を鯉のようにぽっかりと開け、カウントを数える私の顔を 見上げています。 舞美ちゃんはロープに手をかけ、立ち上がりました…。さすがです! 「舞美ちゃん…まだやる?やれる?」私は立ち上がりはしたもののロープを背に 俯いている舞美ちゃんに耳元で囁きます。 舞美ちゃんは両手をかまえファイティングポーズをとり続行をうながしてきます。 「えらいよ…舞美ちゃん…。」 褒めてあげようと、ふたたび攻撃です。 何度か舞美ちゃんもやり返してきましたが、老練な私のディフェンスの前に ことごとくカウンターで返され体を激しくよじらせます…。 舞美ちゃんはまたダウンしてしまいました…こんなことでは先が思いやられます。 私はダウンした舞美ちゃんにマウントをとり優しく抱きしめます。 舞美ちゃんはグローブをはめた手で私の腰に手を回します。 激しい練習と、激しい減量をかねそなえたこの鬼のトレーニングを行ない続けていた ら あっという間に試合の日が来ました…。 あれ?心なしか舞美ちゃんがゲッソリしています…。 私は元気ですけど…。大丈夫かな? 「あいりぃ…燃えた~燃え尽きたよ~~~~~~。」 パイプ椅子に座り、枯れた花のように ぐったりとうな垂れている舞美ちゃんが、いつもよりかすれた声でつぶやく…。 ま、舞美ちゃん…試合前なのに、すでに真っ白になってしまってるよ…。 どうして…!? ううん…白々しく、ごまかしたってしょうがない…理由はわかってる…。 いけないのは私なんだ…。 試合前日の興奮から、今日の朝の朝まで舞美ちゃんを激しくコーチしてしまった…。 おかげで私は元気だけど舞美ちゃんはすでにグロッキー状態…。 私、コーチ失格だよっ!! そうこうしているうちに会場に呼ばれリングに上がる舞美ちゃん…。 リングの上で熱をおびたスポットライトに照らされた舞美ちゃんからは 既に汗が滲み出している…。あぁ…愛理のバカッ!バカッ! カ~ン! 「行ってきます~~」ゴングが鳴り、ゆっくりと立ち上がった舞美ちゃんが フラフラと前に出て行く…。 グロッキーな舞美ちゃんにゴリラのような…ううん…堂々とゴリラの相手選手が 猛然と襲い掛かる…。 1Rから防戦一方の舞美ちゃん…。 相手選手のパンチを自慢の足を生かしたフットワークで 紙一重でかわし続けているけど危なっかしくてしょうがないよ…。 相手選手が豪腕を振るい続ける度に私は目を塞いでしまう!! カ~ン。なんとか1Rが終了してコーナーに戻ってくる舞美ちゃん…。 「ま、舞美ちゃん…。」コーナーに戻りうな垂れた舞美ちゃんは すでに10Rはこなしたような汗をかいている…。まだ1R目なのにッ!! 前々から滝のような汗をかく体質だったけど リングの上はスポットライトが降り注ぎ、 まるで、どこぞのアイドルが立つステージのように熱いんだ! 舞美ちゃんの汗を拭き、おでこにくっついてヒジキのような前髪をとかし ドライヤーで冷風をあてる…。 「あいひぃ~マウフピーフ、はずひて~。」いけない!忘れてた…!! 急いで舞美ちゃんの口の中に手を突っ込み、しばらく舌で遊ぶ…。 うつろな表情で私の舌をなめてくる舞美ちゃん…。 「あいひぃ~、指入れふぎぃ~。」 いけない…私、舞美ちゃんの足をひっぱってばっかりだ…。 急いでマウスピースを取り出し洗って入れなおす。 カ~ン。短いインターバルが終わり、2R開始…。 もちろん相手は、猛然と襲い掛かってくる…なにせ48戦48勝の相手…。 「まいみちゃ~んっ!!!!!!」 私は、そう叫ぶと思わず駆け出してしまった…。 もう試合なんか見ていられないよっ!! 会場を飛び出すと、外は土砂降りの雨だった… 私は、止まっていたタクシーに飛び乗る…。 「千葉の鈴木ボクシングジムまでお願いしますッ!!」 こうして私は舞美ちゃんを置き去りにして逃げ出したんだ…。 それなのに…運転手さんがラジオをつけ、そこから試合の様子が流れてくる…。 『矢島選手…矢島ピンチですッ!あ~っと、またロープを背負った!』 『ゴリラッ!ゴリラが矢島選手を猛連打!!矢島選手が連打でロープを背負い続けま す!!』 『おっ…!?矢島選手のコーナーにセコンドがっセコンドが居ません!! なんと言うことでしょう!!矢島選手、コーナーでキョロキョロしています!!』 『矢島危うしっ!矢島危うしっ!矢島、クリンチでしのぎます!!」 『あ~~~~矢島ダウ~ンッ…3度目のダウンです…しかし矢島選手、立ち上がりま す! まだ勝負を諦めていない矢島ッ!!…あっ、しかしぃ~~~…』 「け、消してください!!ラジオ消してください!!」 ラジオから聞こえてくる試合の様子に思わず叫ぶ、私…。 舞美ちゃんは、がんばっているんだ…。 なのに私は、また逃げて…。いつも都合が悪くなると逃げてばっかり…。 舞美ちゃん…。 「う、運転手さん…すいません!急いで戻ってくださいィ!!」 私は、タクシーから転げるように飛び出て、雨の中、全力で走った…。 待ってて舞美ちゃん!立っていて舞美ちゃん!! 「舞美ちゃん…。」会場に戻ると舞美ちゃんは立っていた…。 相手選手に攻められロープを背負い、相手のパンチとロープに揺られ続けているけど まだ立っている…。舞美ちゃん!! カ~ン。電光掲示板を見ると9R終わったところだった…。残り1R…。 私はコーナーまで駆け寄りロープをくぐると、舞美ちゃんが、私を見つける…。 「…あいりぃ~~~どこ行ってたの…休めなくて、疲れたよ…… あっ、愛理…てか、濡れてる…雨???どうしたのぉ???」 えぇっ~~~えぇっ~~~えぇっ~~~~~~~~ 選手を置いて逃げ出した前代未聞のセコンドにそれだけですかぁぁぁ!! 私は殴られるくらいのつもりいたんですけどぉぉぉ!!! や、優しすぎるよ舞美ちゃん…。 いや天使ですか?優しさの桁が底が抜けてますよっ!! そう私が驚愕していると、さらに舞美ちゃんがくっついてきた…。 あっくっつき虫…うれしっ…キャハッ!! いやいや!そんなことで喜んでる場合じゃあありませんっ!! 舞美ちゃんを急いで座らせて、9R戦い続けた顔を見る…。 美しい顔が、きっと相手の猛打でお岩さんのような顔に…。 アレ?…なってない?てか、いつもの汗だくの舞美ちゃんですか? 今度は遊ばずにマウスピースを外して声をかけましょう…。 「舞美ちゃんダメージは?」私の問いかけに首をふる舞美ちゃん。 「なんでか大丈夫ぽっい…押されてるけど、なんだか相手のパンチが 私の顔で滑ってるみたい…わたし…汗かきすぎなのかな……。」 思わず、私が相手コーナーを見ると 相手選手がセコンドに首を振りながら何か訴えてる…。 「すべる!すべるよ!!あの女ッ!!」 うわぁぁぁ!!舞美ちゃんの滝のような汗には、そんな副作用がありますか!? いやぁ愛理、驚き!!まいったなコリャ…。 「愛理が来たら910%がんばれる!!」 「はい?」私が色々たまげていたら 舞美ちゃんが、またまた、意味のわから無い発言を…? でも…舞美ちゃんの言葉はわりといつも解らないから、まぁいっか…。 カ~ン。最終ラウンドのゴングが鳴る。 私は舞美ちゃんの口にマウスピースをくわえさせ 舞美ちゃんを抱きしめる…。 「最後まで、がんばってきて…」私の胸で嬉しそうに笑顔で頷く舞美ちゃん…。 試合は劣勢で完全にポイントは取られてる… でも、どうあれ舞美ちゃんは最後までがんばった…。 チッサー、マイマイ、ナッキーによる練習の成果だ…。 始まる最終ラウンド…。さすがに相手選手にも疲労が見えるというか 汗だくで滅茶苦茶に疲れている…。 そうかぁ、強打者だから、こんなに試合が長引いたことないんだ…。 それでも、パンチを繰り出す相手選手…。 舞美ちゃんの顔にパンチが入るが、その度に確かに滑っている…。 そして舞美ちゃんの汗を大いに浴びている…。 相手選手の汗は、舞美ちゃんの返り汗のようだ…。 苦しそうな相手の表情…打っても打っても効かない相手に それでも必死で、パンチを繰り出している…。 やがてロープを背負う舞美ちゃん…。だけど…あっ舞美ちゃん!! ロープを背負った舞美ちゃんの体が左右によじれる… 私との練習の効果が!!さらにクリンチで逃れる舞美ちゃん!!凄いっ!! 相手はクリンチした舞美ちゃんを離そうとするけど 舞美ちゃんが巧みに体制をとり続け、そうはさせない! 練習の!練習の成果が出てるよ!!舞美ちゃん!! 今までの血のにじむような練習が頭の中で 走馬灯のようによぎり、涙がにじみ出る…。今までの練習は無駄じゃなかったんだ! さらにレフリーがクリンチを離すと、疲労が取れたのか 舞美ちゃんのパンチが打ち出され始める。 「す、、、凄い…。」思わず独り言をつぶやく私…。 リングの上の舞美ちゃんは、本当にいつもの+810%だ…。 相手選手が舞美ちゃんの猛烈なラッシュにサンドバックになっている…。 て…いつも、どれだけ手を抜いているん?? +810%とか出せるなら、いつももう少し、がんばれるんじゃない? てか今までのラウンドなんだったん? あっ私が居ないからか…。そんなこと、もう良いや…。 「舞美ちゃんがんばれ~!!」私は必死に声を出し応援したんだ!! 目から涙があふれ泣き虫な私!でも、もう嘘はつかない!! この涙だって本物なんだ!! 舞美ちゃんの右ストレートが飛ぶとリングに汗が舞い散る!! あぁっ!!相手選手が、目を閉じちゃった!! パンチを浴びた時に、舞美ちゃんの汗が目に入ったんだ!! 相手選手が、あさっての方向にパンチを必死に放っている! 完全に目が見えていないんだ! 「舞美ちゃん!!」チャンスだ!! 私は舞美ちゃんを呼んで、拳を突き上げアッパーのポーズをうながす!! 舞美ちゃんっ!相手の顎を突き上げてっ!! 私の声に反応した舞美ちゃんがアイコンタクトで大きく頷き ニコリと笑い、右ストレートを放つッ!!! ハハッ!アッパーだって言ってんだろ!! 相変わらず相手の思いを頑なに理解しませんね!!ハハッ!! 相手の頬に舞美ちゃんの必殺の右ストレートが打ち込まれ 吹き飛び、もんどりうってダウンする!! …こうして舞美ちゃんと私の世紀のボクシングは終わった…。 後で聞いた話だけど、相手選手は舞美ちゃんのボディーを打ったときに あまりの堅さに手を傷めてしまってパンチ力が無かったらしい。 そう舞美ちゃんは触れたものや周囲の物を天然で壊す「破壊の女神」…。 私は自分がセコンドにまったく向いていないと解って ジムを去ることにした…すると舞美ちゃんもあっさりボクシングを辞めちゃった…。 2人のボクシングは終わったけど、 でも、私たちはこれからもいつも一緒だから別に良い…。 てか、今夜も私は舞美ちゃんを、たっぷり真っ白にしてあげるんだ朝まで… 舞美ちゃんを倒せるのは私だけなんだから…。 ~完~
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言いそびれた言葉は言う機会を得られないまま時間ばかりが経った。 そうするうちにまた私は不安になる。 自分が、本当に好きなのか、わからないくせに舞美ちゃんが誰かと接していると嫉妬する。 意識すればするほど気にかかる。 心のバランスが全く取れないからずっと苦しい。 初めて見る自分の一面に驚かされて、同時に失望する。 ふわふわふらふらした私の心はいっこうに定まらないまま泊りがけの仕事の日となった。 千聖と舞ちゃんが適当に5本線を書き、その間に自由に線を書いた。 普通の線やらハート形やら、点線はどう処理するのか、可愛いよりは汚いあみだくじが書かれた紙が目の前に出される。 下にはAが二つ、Bも二つ、Cが一つ書かれ、それが部屋割になる。 紙を折り込んで文字を隠し、端にいたなっきぃから順に線を選んでいく。 純粋に、適当に、皆が選んでいく中、私は舞美ちゃんと一緒の部屋になりたいような、なりたくないような気持で揺れていた。 願ったからといって引けるわけではないのに、 どのような気持ちで向かうのも不適切に思いながら目を引く線を選んだ。 全員が選び終わり、舞ちゃんがぱんぱかぱーん、と紙を開いた。 千聖がいぇーい、と自分のからたどり始めたものの、汚すぎて辿れず、呆れたようになっきぃが代わりになぞる。 「千聖Aね。」 「了解。」 敬礼をする千聖は小学生みたいだった。 ね、舞は、舞は、とねだる舞ちゃんのを辿ると、ほとんど予想通りの結果になる。 「げ。」 「舞ちゃんもAだね。」 「やったね舞ちゃん。」 「えー。」 迷惑そうな顔で舞ちゃんが千聖を見る。 千聖は、なんでだよー、と文句を言うと、舞ちゃんは冗談だよ冗談、といい加減にいなした。 「次、舞美ちゃんね。」 「うん、お願い。」 名前が出るだけで私はどきりとする。 なっきぃが辿る線が一つだけ特別に見えてくる。 角を曲がる度にじれったくなって答えが知りたくなるけど、舞美ちゃんのがわかったところでどうなるかはわからないのだ。 胸の内が誰にもばれないように私は黙っていた。 そのうちに結果が出た。 「舞美ちゃん、Bだ。」 B、ということは、相部屋だ。 残っているのは私となっきぃ。 「じゃ、愛理ね。」 なっきぃが心なしか何か期待したようにあみだくじをなぞり始める。 どきどきしすぎて私はその場で黙って見ていられなくて、私は席を立った。 「ごめん。トイレ。」 「やっておくね。」 嫌なことからはすぐ逃げてしまう。 他のことには向き合ってこられたのに、どうしても舞美ちゃんが関わると私は弱くなるようだ。 手を洗って気持ちを整えて戻ると、結果は出ていた。 「愛理はCだよ。」 結果を聞くだけなら意外とすんなりと受け入れられるものだ。 舞美ちゃんと相部屋という淡い期待が裏切られたにも関わらず、私はほっとしていた。 これで落ち着いていられる。そう思った。 そんな考えは後で脆くも崩れ去ることになる。 みんなで夕ご飯を食べ、ホテルに戻り、各々部屋に散っていった。 私は一人部屋だ。みんなと別れてドアを開くと無音の空間が私を迎える。 張っていた気が抜けて、へろへろと私はその場にしゃがみこんだ。 舞美ちゃんから解放されて安心する、反対に、寂しくなる。 どちらかの気持ちに収まらないと私は壊れてしまいそうなのに、どうにも感情は勝手に暴走して私を食い荒らす。 やっぱり同じ部屋になりたかった。 よりによってなっきぃなのだ。なっきぃは舞美ちゃんを好きなのだ。 私に結果を伝えるときの純粋に嬉しそうな顔が私の胸をつつく。 壁に耳をつけたら会話が聞こえるかもしれない。 でももし、聞こえた会話が楽しそうだったらどんなに私は傷つくだろう。 舞美ちゃんが私のものになってほしい。 気持ちは私に向いている。付き合ってもいる。 なのに、どうしてこんな気持ちになっているのだろう。 ずいぶんと私は自分の膝と仲良くなった。 膝に埋まっていることが増えた。 一人でいれば思考の迷路にぐるぐる迷い込んで出られなくなる。 閉じた世界に私はこもる。 目を閉じた闇の中にはいつだって舞美ちゃんがいる。 えりかちゃんはずっとずっと小さくなって、遠くで私を見守っている。 それが今の状態なのだ。 舞美ちゃんが私の世界を簡単に動かしてしまう。 きゅうう、と胸が痛くなって、自然と涙が出た。 ずっとうずくまっているわけにもいかないから立ち上がり、さっとシャワーを浴びて、 髪を乾かして、何も考えないうちにベッドに入ってしまうことにした。 目覚ましをセットして電気を消す。 完全な暗闇の中で白い布団だけが窓からの光でぼうっと浮かんで見える。 目を閉じてそれすらも消した。 静寂に慣れると、隣の部屋の話し声と物音が相対的に目立って聞こえた。 なっきぃの高い声がよく聞こえる。 うるさいとは言えない範囲なのだけど私の心がその声を拒否する。 なっきぃは何も悪くないのに、醜い私の心がそうさせるのだ。 逃げるように布団にもぐり込むと声はいくらか聞こえなくなった。 ああ、と安心してもう一度目を閉じると、部屋に舞美ちゃんと一緒にいる自分が浮かんだ。 あんなふうに無邪気に笑って話せるのだろうか。 きっとできない。 二人きりの部屋で一晩を過ごす。 なにも意識しないでいることはできない。 顔を見ると、印象的な目はもちろん、唇に目が行ってしまう。 健康的な細長い指に、整った爪、無駄のない長い手足、真っ白な首筋。 無意識に目が行く。触ってみたいと思う。 骨のラインを辿りたくなる。 その先にある知らないところを知りたくなる。 唇の感触をもっと確かめたいし、肌の質感に溺れてしまいたい。 そんな欲望がかすかに、少しずつ堆積して、意識に上るようになった。 気がついたときに自分が恐ろしく思えた。 今まではそんなことを考えたことがない。 欲望のまま動くのもいいのだろう。 えりかちゃんの代わりだと割り切ればできたことだ。 できないのは、そうではないから、舞美ちゃんが大切だから。 自分の気持ちがわからないまま簡単にはしたくない。 欲望と葛藤する。 だから、一緒の部屋ではなくてよかったのだ。 そう言い聞かせる。 本心なのに、私の心は寂しいと暴れる。 ぎゅっと瞼に力を入れて、舞美ちゃんが私を抱き締めるように抑えようとした。 我慢しなければならない。我慢できない。 そばにいて。私のことを抱きしめていてほしい。 叶わない望みが私自身を蝕む。 私は布団の中で息を荒げて、痛みに耐えながら泣いていた。 気がつけば隣の部屋からの声は聞こえなくなっていた。 音のない世界になり、とうとう見放された気分になった。 だからといって眠れそうになかった。 明日も朝から早いのに、きっとできない。 涙がつう、と目の横を伝いシーツに落ちる。 何度目かに私の部屋のドアが遠慮がちに叩かれた。 私は布団から起き、今のが空耳でないか、息を殺してドアの前に立つ。 すると、もう一度、こんこん、とドアがノックされた。 「はい。」 目が赤くなっているだろう。見られたくなくて開けずに返事する。 「愛理?あたし。」 その声に驚いてドアを開けると廊下の光に目が眩んだ。 シルエットは確かに舞美ちゃんだ。 夢かと、思った。 「泣いているの?」 情けないところばかり見られている。 会いたくて仕方がなかった。 叶ってしまって抑え込もうとした感情が雪崩のように酷い勢いであふれ出す。 緩んだ涙腺はまだ涙を流す力はあるみたいで、涙が新しい道を作って流れていった。 舞美ちゃんが苦しそうに私を抱きしめた。 包み込む感触がに安心する。 何のためらいもなく私は舞美ちゃんの胸に顔をうずめた。 どうして泣いているのか、理由は一つも聞かずに舞美ちゃんは部屋に入りドアを閉める。 「一緒に寝ようか。」 優しい声色で私の肩を抱いたまま私をベッドにつれていった。 ベッド横の小さな明かりをつけて、布団をめくって私を入れた。 シーツの濡れた部分の大きさに一瞬悲しげに顔を歪めて、その上で何も言わずに布団に入り私を抱きよせる。 舞美ちゃんのTシャツから舞美ちゃんの匂いがする。 この匂いがいつからこんなに心を鎮めるようになったのかわからないけれど、荒んだ私を慰めた。 少しずつ涙が収まって落ち着く。 顔を離して見上げると、私のつむじを見ていたらしい舞美ちゃんと目があった。 「落ち着いた?」 「うん。」 鼻声のみっともない声で答えると、舞美ちゃんはふんわり微笑んだ。 「よかった。」 そういって私の髪をなでる。 布団の中で何度も寝返りをうった分髪がぐしゃぐしゃだった。 恥ずかしいとすら思うのに舞美ちゃんは愛しそうに触れる。 その仕草にどきどきしてくらくらする。 「一緒の部屋になりたかったな。」 ひとり言のような言葉に私は黙って頷いた。 すると舞美ちゃんは嬉しそうに笑う。 「なっきぃが起きる前に戻ればいいから。愛理が眠れるまでいるよ。」 こうしていれば少しは落ち着くのかな。 舞美ちゃんの額が私の額につく。 照れくさくて肯定の代わりに舞美ちゃんの服を掴んだ。 眠れるまで、なんて言わないで。起きた後もずっとそばにいてほしい。 もっと近くにいたい。 言葉にすれば伝わるのにどうして口から出ていってくれないのだろう。 私にできるのはつけた額を離さずに顔を近づけることだけだ。 舞美ちゃんは少し驚いた様子で、しかし私の要求に気がついたらしく、顔を近づけた。 こうやってするキスは初めてだった。 加えて、いつもより長かった。 舞美ちゃんの匂いが鼻をくすぐる。 味のないはずの唇が甘く感じた。 離すのがもったいなくて自然と動くが遅くなる。 いつもより長いのに、もっとほしくなるのはどうしてだろう。 目を合わせた舞美ちゃんは切なげな表情で、私は思わず離したばかりの唇を近づけた。 柔らかな感触が再び戻ってくる。 触れ合っている時間も、離してからまた触れる時間も、どちらも気持ち良くてたまらない。 何度も何度も角度を変えて舞美ちゃんの唇を味わった。 甘ったるい空気は酸素が足りないみたいで頭がくらくらして理性が飛びそうになる。 私はどこまでほしくなるのだろう。 ぎりぎりのところで私は唇を離した。 舞美ちゃんは濃度の高い溜息をつく。 頬が真っ赤だ。おそらく私も赤いだろう。 顔と頭が熱い。 長いキスの後の舞美ちゃんの唇はつやつやと光っている。 白い肌に赤みがさし、黒い瞳が潤んでいる。 私の頭は真っ白になり心臓の音すらこの刹那に消えた。 花の蜜に誘われる蜂のように、私は舞美ちゃんに吸い込まれる。 重ねた唇を味わい、それで満足できなくて、口を開いた。 舌で舞美ちゃんをつつくとおずおずと唇が開かれ、私は舌を侵入させた。 中には舞美ちゃんの舌があり、舐めてみると意外とざらざらしていて驚く。 私の動きに合わせて舞美ちゃんが舌をからめてくるから、私はそれをとらえて舌の先を吸った。 ん、とくぐもった声がかすかに聞こえる。 浅く繋がっていることがもどかしくてもっと深いところまで舌をねじ込んだ。 つるつるの上顎をなぞると骨の感触があり、歯の列も確認できた。 もっと知りたくて撫でていると、舞美ちゃんの体が少し私から逃げようとする。 腕を掴んで、追いかけて、もう一度そこをなでるとまた声にならない声が聞こえた。 口はふさがり、鼻から抜けるしかない。 その声が聞いたこともないくらい甘くて、私の理性を溶かしていく。 舞美ちゃんの全てを食べてしまいたくなった。 荒くなる呼吸も、漏れる声も、私が全部奪いたい。 お上品に口を汚さずになんてできなくて、舞美ちゃんの舌も、歯も、支える顎も、そして唇も、 何度も貪ったら口の周りがべたべたになっていた。 息が辛くなって唇を離すとつう、と唾液の糸が私たちをつないでいる。 その糸は自重で垂れ下がりやがて切れた。 残骸を、私も舞美ちゃんも唇を舐めてとる。 さっきまで絡めていた舌がちらりと見えてどきりとする。 舞美ちゃんの顔はキスの前より赤くなっている。 そう、耳まで真っ赤だ。 可愛くてたまらない。触れて体温を確かめたい。 その欲求はかろうじて残っていた理性のかけらが抑えた。 このまま、続けていいはずがない。 乱れた息を整える舞美ちゃんを目の前に必死に体を止める。 頭がぐるぐる混乱する。 懇願していたものが手を伸ばせば、いや、手を伸ばさなくても届いてしまう。 できることをせずにいることがこんなに難しいことだとは知らなかった。 私の息はうまく整わない。 流されてはいけない、流れてしまいたい。 舞美ちゃんといるといつも相反する思考と感情の間に突き落とされる。 私はじっと唇を見つめていた。 目を見たら、吸い込まれてしまうから。 揺れて揺れて、なんとか理性を取り戻そうとしたとき、舞美ちゃんが私をのぞきこんできた。 いつもは目線が上の舞美ちゃんが、今は見上げる形になる。 「ね。」 さっきの行為が原因で掠れた声で私の意識を舞美ちゃんに戻させる。 赤い頬に、赤く潤んだ目、本当にやめてほしい。 そんな願いも叶わずに舞美ちゃんは私に言う。 「してもいいんだよ。」 愛理なら構わない、と、黒い睫毛が伏せられて、理性ごと唇に奪われた。 舞美ちゃんの言葉の真意もろくにわからないまま 山の頂上から握っていたボールを手から離すように、 バランスをかろうじて保っているジェンガからひとつのブロックを抜き取るように、 私の理性ははあっさりと砕けて崩れ落ちた。 既に激しかったキスを、更に激しくして、舞美ちゃんに余裕を与えなかった。 魚が水面を探すように舞美ちゃんが酸素を求めてもがくのを邪魔して追いつめる。 辛くなって余裕がなくなって、私のことだけ考えていてほしい。 完全に閉じた二人きりの世界に堕ちていく。 舞美ちゃんに跨り、乱れた呼吸のままキスを頬に降ろし、だんだんと首筋に落としていった。 私が移動するのに伴って舞美ちゃんが首を傾け、白い肌が露わになる。 舞美ちゃんが細い分、筋がはっきり浮き出る。 その道に沿ってキスを降らせる。想像よりもさらさらの肌に惹かれて心拍数が上がる。 私が唇を押しあてると舞美ちゃんの体がぴく、と震えた。 もう一度、そうするとまた同じように反応する。 今度はそこから舌でちょろっと舐めるとさっきより大きく体が跳ねる。 キスの時より確実に荒くなっている呼吸が、酸素を奪っているのだろうか、 私には考える力はなくて本能のままに動くしかなかった。 つつ、と筋を舌先でなぞるとこらえきれなくなったのか 舞美ちゃんは音がたつほど顕著に息を吸った。 なぞって口づけて、繰り返し耳のほうに上がっていく。 小さな耳たぶを口に含むと私が一瞬浮くほど体が跳ねた。 顔は見えない。どんな顔してるだろうか。 息の音だけで舞美ちゃんの様子を判断する。 ときおり、んっ、と甘ったるいかすれた声が漏れるから、私はそこを重点的に攻めた。 吐息交じりの声にならない声にたまに音が混じる。 じわじわと私の腰のあたりが熱くなる。 耳たぶを舌で弄ぶと、やっ、と苦しそうに悶えられた。 初めて聞く声色と、初めて味わう肌は、今までの人生の中で格別に甘い。 私は徐々に下に降りて鎖骨のあたりまできた。 短い髪の毛の先からシャンプーの匂いがする。 骨の線を辿っていくには服が邪魔になる。 「舞美ちゃん、脱がせていい?」 切なげに眉を寄せているのを見ると、今舞美ちゃんと、そういうことをしているのだという意識が強くなる。 舞美ちゃんは黙って頷いた。 私はTシャツの裾をめくり上げて、舞美ちゃんがもぞもぞとそれを取り払った。 ピンクの花柄のブラジャーが可愛くて舞美ちゃんらしかった。 でもそれも外す。 気になるもののまじまじとは見たことがない部分だ。 舞美ちゃんは恥ずかしそうに隠そうとする。 その手をどかせて私は美しいお腹に唇を落とした。 寝転がっているからさすがに腹筋は浮き出ていない。 しかし無駄な脂肪のない体は、指で触れるとすぐに骨や筋肉に当たる。 脇腹のあたりをさすると少し汗ばんでいてしっとり湿っていた。 森の中の湖で水を飲む動物のように私は舞美ちゃんの肌を啄ばむ。 元来くすぐったがりな分たったそれだけでも体が揺れる。 特別上質の肌の感触に畏敬の念すら抱く。 繊細な曲線を丁寧に、はみ出さないようになぞった。 まるで模写をするときのようだ。 触れるか触れないか、確かに存在する表面の境目を指先で探る。 そうすると不思議なことに指先の感受性が高まった。 舞美ちゃんも同じようで、私がきわどくすればするほど体が反応する。 唇は徐々に上昇し、胸のふくらみをわずかながら登っていく。 切れ切れの息がずっと静かな部屋に響いている。 その音がずっと私に全力疾走した時のような高揚感をもたらしている。 思考は多分この部屋のどこかに転がっている。私の頭には残っていない。 ちゅ、と音を立てて心臓のあたりに口づけながら、周辺の肌色とは違う色の先端を横目で見ていた。 そこは、特別な場所だと思う。 他の誰も触れられない場所だ。 息を飲んで指を当ててみると今までとは全く違う感触だった。 一際寒い日に降った、さらさらの雪を押し崩す、あの新鮮な感動を思い出す。 そして、舞美ちゃんの反応も異なっていた。 息は確かに声に変わる。 私は何のためらいもなくそれを口に含んだ。 舌を押しあて、潰してから吸いつく。 「ふあっ。」 こういうのを嬌声と言うんだろうか、よく知りもしない言葉が現実になり、 なぜかわからないけれどもっとほしくなった。 吸いついたまま舌先で弄び、反対の乳房は手のひらに収めて感触を楽しむ。 私が上から下に押し上げても、押しつぶしても、歯を立てても、そのたびに腰が跳ね声が漏れる。 声というものは人に何かを伝えるためにあると思っていた。 今はそうではない。 舞美ちゃんの声が記号としての機能を持たずに私の本能をかきたてる。 野生の動物に近づいていく感覚は淫らで、その故に強い快感を伴う。 夢中になって触れていると耐えきれなくなったのか舞美ちゃんが口に手を当てて声を抑えた。 そんなの、だめだ。 私は口を離して舞美ちゃんの顔を覗き込む。 苦しそうに眉を寄せている。 そんな顔までも愛しい。 覆っている手を引きよせて私の頬に当てさせて、唇をふさぐ。 私の指の動く通りに呼吸が乱れ、声は私の中に響く。 舞美ちゃんはじっと目を閉じていた。 その表情を眺めていると耐えられなくなる。 もっと乱して、理性なんて飛ばして、私のことだけ感じてほしい。 私は舞美ちゃんの耳元に移動し、耳のすぐ下をちゅ、と吸った。 「んん。」 ぎゅう、と私の手を握り、さらに苦しそうな顔になる。 私の与える刺激に、精いっぱい耐えて、身を震わせるのが愛しくてたまらなかった。 「舞美ちゃん、好き。」 考えることをやめていた私の口からぽろり、とこぼれおちた。 あ、と思う間もなく、押し込めていた感情が波のように押し寄せてくる。 心には感情があった。私は名前を付けるのを拒んでいた。 名前をあてられない感情は膨れるだけ膨らんで行き場所を無くして、だから溢れるしかなかったのだ。 名付けた瞬間に好きが満ちていった。 切ない痛みが心臓を掴む。 舞美ちゃんの口からはあられもない高い声が飛びでてきた。 共鳴するように私の体は自然と舞美ちゃんの首筋を音を立てて食み、また薄桃色の先端に戻る。 舌先でいじるうちに固くなっていたから刺激にはより敏感だった。 丹念に舐めあげると、舞美ちゃんは手を使わずに声を押し殺した。 私は声が聞きたくていじわるをする。 弱めに触れて急に強く吸ったり、じわじわゆっくりと触れたり。 効果がないわけではなくて、呼吸は速くなっているし、体の反応も大きくなっている。 さっきよりずっと苦しそうに、唇をかみしめては、酸素を求めて口を開く。 ほとんど泣きそうな顔でこらえられるともっともっといじわるしたくなる。 「舞美ちゃん、声、聞きたい。」 指を止めて見上げると、異変に気がついて舞美ちゃんはうっすらと目を開けた。 黒い睫毛が一層濃く濡れている。 その涙はぎゅっと目を閉じていたせいだと思った。 大きく胸が上下するのでどれだけ乱れていたのかわかる。 こんな舞美ちゃんは初めてだった。 上からじっと舞美ちゃんを見据えるけれど、舞美ちゃんは口を一文字に結んで、視線をそらして首を横に振る。 私は舞美ちゃんの声が聞きたいのに舞美ちゃんは声をあげたがらない。 恥ずかしいのかと思ったけれど少し様子が違うようで、その理由はわからない。 聞けばよかった。しかし聞いても答えなかっただろう。 そんな気がして、悲しい気持ちを引きずったまま、行為の続きに及んだ。 胸から腹、そこから下へキスを移していく。 そうすると当然下の衣類が邪魔になる。 こっから先は引き返せない。なんとなくそう感じた。 「舞美ちゃん、脱がせてもいい?」 伺い立てると舞美ちゃんはこくりと頷いた。 私がジャージを引っ張ると舞美ちゃんがお尻をあげる。 するすると細長い脚が姿を現す。 下着も脱がせると、さすがに恥ずかしそうに足を閉じた。 私は下腹部からまた口づけて太ももに頬を寄せた。 このままでは何もしにくいから、太ももを肩に担ごうとして少しだけ抵抗があった。 ちら、と舞美ちゃんを見ると顔が真っ赤っかになっていて、すごくかわいかった。 思わず可愛い、と呟くと、ぶんぶんと首を振って否定する。 その隙に私は足を持ち上げてキスを落とした。 そうすればこっちのもので内腿を撫で上げてぺろりと舌でなぞると途端に力が抜けていく。 ぴくん、ぴくん、と小さな反応だったのに、足の付け根に近づくと呼吸のリズムが変わって、 含みのある溜息のような長さになる。 そこに触れるのは、緊張と、舞美ちゃんの一番敏感なところに触れるという期待のような感情とですごくどきどきした。 「触るね。」 ゆっくりと手探りでかき分けて、そこの真ん中に指をあてると、ぬるりとした感触があった。 つまりは、そういうこと。 自分の行為で舞美ちゃんがこうなっていることが嬉しくて頭に血が上る。 粘液を指にまとったまま指を少し上にずらすとぷっくりとした突起に出会う。 そのまま滑らせると舞美ちゃんの腰が大きく跳ねて、あ、とか、や、とか、そんな声が飛び出た。 できるだけ優しく、ゆっくりと触る。 何度か往復していると舞美ちゃんの腰がそれに合わせて揺れ始める。 刺激から逃げたいのか求めているのか、どちらともとれそうな動きは淫靡で、それなのに美しくも見える。 本当に小さく、微かに、ん、ん、と閉じた口から出られず鼻から抜ける声が聞こえる。 我慢なんかできないように追いつめてしまいたくなった。 速度を速め、そこを徹底的にこすると舞美ちゃんの腰ががくがくと震えた。 その姿を眺めながら一気にスピードを落とす。 与えられていた刺激が急になくなって、無意識のうちに舞美ちゃんの腰が私の手に押し付けられた。 自分でそれに気がついたらしく舞美ちゃんは顔を手で覆って私から逃げる。 可愛い。可愛くてしょうがない。 片手はそこに添えたまま私は舞美ちゃんの顔を隠す手を外しにかかる。 首を伸ばして手の甲にキスをする。 すると手と手の間から大きな瞳をくりっとのぞかせる。 開いた隙間を利用して手首を掴んで引くと、なんてことはなく手が外れた。 赤く染まった頬に顔を近づけて体温を唇で感じる。 舞美ちゃんはすぐに警戒を解いてしまう。 私の指がどこにあるかもすっかり失念しているらしい。 思い出させるように指を動かした。 急な刺激に対応しきれず、何の妨げもない声があがる。 「あっ。」 やってしまったとばかりにまた口を覆おうとするから、そうされる前に口でふさいだ。 「やっ、だ、あいりっ!」 「なんで?私舞美ちゃんの声が聞きたい。」 舞美ちゃんが顔をそむけて逃げるから必然的に耳元でささやく形になる。 舞美ちゃんの耳が目の前にある。だから耳たぶを甘噛みする。 どちらからの刺激も強烈過ぎて舞美ちゃんが大きく跳ねる。 白い肌に灯りで影ができる、その境目を口に含み舌で遊ぶ。 指は自然と速くなって、舞美ちゃんの腰が限界まで速く揺れている。 とうとうこらえ切れなくなったようで、甲高いかすれた声が断続的に部屋に響く。 はっ、はっ、と息は鋭く速くなり、目がぎゅうときつく閉まった。 「好きだよ。」 呟いてから耳の裏にキスすると、今までにないくらい体が大きく跳ねて、舞美ちゃんが私にしがみつく。 「あいりっ。」 ぴったりとくっついた場所から、むっとするような濃厚な汗の匂いと、同じくらいの熱が伝わってきた。 二、三度舞美ちゃんは体を震わせて、ベッドに沈み込む。 私は慣性に従って舞美ちゃんの上に堕ちた。 切れた息に合わせて重ねた体が上下する。 くっついているところ全て私の熱か舞美ちゃんの熱か、わからないけど酷く熱かった。 しがみついた舞美ちゃんの腕は私の背中にまわされている。 少しずつ落ち着いてきたようで、私は体を少し離して舞美ちゃんの頬にキスしようとした。 その時、気がついた。 舞美ちゃんの目から透明な液体がつう、とつたっている。 私は無理してしまったのか不安になる。 「どこか痛かった?」 舞美ちゃんは目を開けたまま泣いていた。 私が顔を覗き込むと、私には焦点を合わせずにただただ首を横に振った。 「違う。なんでもない。」 ようやっと私に目線を合わせたと思ったらそれはそれは痛々しく微笑んだ。 ぎし、と音がたってしまいそうなほど無理やり口角をあげて目を細める。 そうやって無理をするからまた涙が落ちていった。 どうして、と、頭を回転させる。 いつもならすらすらと数式だって唱えられるのに動揺して答えが浮かばない。 ふらふらと視線をさまよわせていると、舞美ちゃんが涙を拭いて、仕切りなおして笑う。 透明な扉を閉めて拒否される感覚。 見えているのに入れないのだ。 「大丈夫だから。」 よいしょ、と舞美ちゃんが体を起こす。 つられて私も体を起して舞美ちゃんが服を着るのを黙って見ていた。 ジャージを履き終えるとベッドから出て立ち上がる。 このまま、そこのドアを開けて出ていってしまう気がした。 その予想は当たっていた。 「舞美ちゃん。」 自分でも情けないほど不安な声が部屋に響く。 真夜中だから音がなく、私の声だけが浮いていた。 舞美ちゃんは困ったような顔をしていた。正しくは、傷ついていたのだあとで知ることになる。 「舞美ちゃん、戻っちゃやだ。」 部屋の真ん中にたたずんだ舞美ちゃんに近づこうとするのだけど、ただ微笑むばかりで私は制されてしまう。 動けないくせに私は駄々をこねた。 「やだ。」 「ごめん。」 小さな子をあやすように私に近づいて頭をなでた。 こんなときでも相変わらず優しい手が、今は怖い。 怖いのに私には舞美ちゃんしかいなくて服にしがみついて額を押しつけた。 好きなのに、何がいけないのだろう。 私は動揺してまともに考えることができなかった。 少し考えればわかることだったのに。 だから、自分の思ったことがそのまま口に出て、結果舞美ちゃんを、傷つけることになった。 「好き。」 声にした瞬間、舞美ちゃんの手が止まる。 宙ぶらりんの言葉は空気すら止めてしまったかのよう。 違和感に気付き、顔を上げようとした瞬間、服を掴んでいた手に水がはじけた。 心臓が止まる思いで上を向くと、舞美ちゃんが宙を見つめていた。 大粒の涙はもう一度同じ軌道を辿り降ってくる。 痛みに顔を歪めながらも私と目が合うと笑おうとする。 今度は涙を拭くこともない。 「愛理。」 私は凍りついて返事できない。 「私に気を遣わなくていいんだよ。」 どうして、そんなことを言いながら涙をこらえられるのだろう。 表面張力ぎりぎりのところで涙が止まっている。 背中から突き刺されるような痛みを感じた。 「違う。そんなんじゃない。私は、私は舞美ちゃんのことっ。」 いいんだよ、というのは、そういう意味だったとなんでいまさら知ってしまうのだろう。 気が付いていれば、こんなことにならなかった。 誤解を解きたくて私は必死になって首を振る。 しがみついている手を握りすぎて白くなる。 違うのだ。違う。 代わりだなんて思ってない。 本心は舞美ちゃんに届かなかった。 舞美ちゃんは涙を拭きながら私の頭をぽんぽんと叩いた。 「うん。」 何も伝わっていない。誤解は全くとけていない。 私を諭すための頬笑みが落とされる。 気にしなくていい、そう言っていた。 頭が真っ暗になる。絶望とはこのことだ。 心が活動しなくなると体も動かなくなる。 強く握っていた拳は剥がれおち、舞美ちゃんのTシャツにしわの跡だけが残った。 舞美ちゃんが離れて背を向け、ゆったりと遠のいていく。 諦めきれずに私は舞美ちゃんと叫ぼうとして、大きな声を出しかけた瞬間に振りかえって、口元に人差し指を当てて見せられた。 大きな声を出すと隣の部屋のなっきぃが起きてしまう。 舞美ちゃんは冷静だった。 舞美ちゃんが冷静であればある程、距離が開く。 ドアが開かれ、背中が吸い込まれて、スローモーションのようにドアが閉じられ、私はまた一人の世界においていかれた。 いいんだよ、というのは、傷つけて構わない、という意味だった。 声を出したがらなかったのは、自分の声で私を現実に戻したくなかったから。 気付いた時にはもう遅く、事が全て済んでしまっていた。