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肯定 否定 名 動 頷く、肯く、認める、 形容
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みらい【登録タグ み 初音ミク 単色P 曲 麺類子】 作詞:単色P 作曲:単色P 編曲:単色P 唄:初音ミク 曲紹介 単色Pの15作目。 イラストは麺類子氏。 歌詞 また日が昇る 銀色を合図に かけらが落ちる 息も止まった はなればなれだ どうやって帰ろう 君のせいだよ 僕のせいかな 君のせいだよ 未来が見えない 知らない言葉 肯くばかりで 繋がるような 影が横切る 遥か彼方で 命が弾けた 君のせいだよ 僕のせいかな 君のせいだよ 未来が見えない コメント さみしくて落ち着く。単色さんの中でもかなり好きな曲。 -- 名無しさん (2012-08-25 02 00 53) 名前 コメント
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ジョブチェンジで薬士になったバッツは早速調合を始めた。 他の者は、火を熾して雪を溶かしてお湯を作りはじめたが、それ以外にやることはない。 空いた時間で、とんぬらたちは自分の知っている情報を交換し合うことにした。 ここに来て出会い、行動を共にした面々のこと、 ヘンリーがゲームに乗ってしまっていること、 そして神殿で行われようとしている儀式…… 「ゲームを覆す儀式か……あからさまに怪しいね」 「お父さんも、そう思う?」 クーパーの問いにとんぬらは肯く。 「これだけ大掛かりな舞台を整えているのに、そう簡単に行くものか甚だ疑問だな」 「じゃあ、神殿には行かないの?」 尋ねてくるアニーに、とんぬらは少し考えた後で、 「いや、行くつもりだ。今のところ僕たちはまったく脱出方法の検討が付いていない。 しかし、儀式を行う者たちは付いていると言うのなら、話だけでも聞いてみたい」 父の言葉に、クーパーは肯く。アニーは最初からとんぬらについていくつもりだ。 とんぬらはエーコとリディアを見ると、 「彼の治療が落ち着いたら、僕たちは神殿に向かうけれど、君たちはどうする?」 二人の少女はお互い顔を見合わせた。 神殿はお世辞にも安全とは言いがたいだろう。だが、何かが起こるのも間違いない。 その上で、神殿に行くか、行かないか…… まだ年端も行かぬ少女には厳しい選択だが、自分自身で決めなくてはいけないことだ。 そんなときだった。旅の扉の出現を告げる放送が聞こえてきたのは。 【とんぬら 所持品:さざなみの剣 第一行動方針:アーロンの治療を見守る 第二行動方針:神殿へ 第三行動方針:パパスとの合流 第四行動方針:アイラの呪いを解ける人を探す】 【アニー 所持品:マインゴーシュ 基本行動方針:とんぬらについていく、神殿へ】 【エーコ&モーグリ 所持品:なし 第一行動方針:神殿へ?】 【アーロン 所持品:折れた鋼の剣 第一行動方針:体を癒す 第二行動方針:仲間を探す】 【バッツ@薬師(アビリティ:白魔法) 所持品:ブレイブブレイド グレネード五個 レナのペンダント 第一行動方針:アーロンの薬を調合する 第二行動方針:パパスを捜す 基本行動方針:クーパー達と共に行動する 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】 【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし 第一行動方針:アーロンの治療を見守る、神殿へ? 第二行動方針:仲間を捜す?】 【クーパー 所持品:珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜 第一行動方針:とんぬらについていく、神殿へ 第二行動方針:パパスを捜す 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】 【現在位置:祠の湖】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV リディア NEXT→ ←PREV バッツ NEXT→ ←PREV エーコ NEXT→ ←PREV アーロン NEXT→ ←PREV とんぬら NEXT→ ←PREV クーパー NEXT→ ←PREV アニー NEXT→
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結局あの後、お前のせいでぐちょぐちょだ、汗かいた、汚れたとわめきだした政宗を丁寧に風呂に入れ清めさせ、ついでに腰が痛い、だるいとむくれた政宗を背負い小十郎は陣に戻っていた。 さすがの宴ももう終わったのだろうか。だいぶ近づいているが、実に静かな物だ。 「なぁ、こじゅうろぉ、俺のこと背負えるのってお前だけだよなぁ」 半分眠ったかのような声で不意に政宗が口を開く。 「そうですね。俺だけ、この小十郎だけが政宗様の事を背負えます。」 「そうだよな…」 安心したように肯くと、そのまま寝る気なのか肩先でもぞもぞと頭を動かし収まりのいい場所を探しているらしい。 「今度の戦でもちゃんと手柄たてろよ。お前」 「もちろんです」 「ちゃんと御褒美やるから」 「いりません」 きっぱりと、大声で心の底から断りを入れるが、眠ってしまったのか政宗から返事が返ることはなかった。
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夜中、ふと目がさめると、有希姉さんが布団の上に正座して何かぶつぶつ言っていた。 良くある光景とはいえ、ちょっと心臓に悪い。 ルリ「何してるの?」 有希「……平気、情報操作は得意」 これもいつもの事ながら、会話が微妙に噛み合わない。 まあ、また何やらかしてるんだろうとは想像がつくけど。 有希「彼の行動は、この世界にとって、とても正しい事」 わたしの不安を感じ取ったのか、珍しく言葉をつなげた。 有希「しかし、この状況を現実と認識することによって、観測対象が図にの・・・ また暴走する可能性が高い」 さり気にヒドイこと言ってるような気がします。 有希「よって、涼宮ハルヒには、一連の出来事は夢であると認識させる」 ルリ「夢落ちってヤツですか」 有希「……コンプリート」 満足そうに肯く有希姉さん。 情報操作は無事完了してしまったようだ。 有希「おやすみなさい」 布団に横たわり、一仕事終えた表情で眠りにつく姉を見て、思わずため息をついた。 ルリ「ばかばっか」
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137 名前: NPCさん 2006/03/01(水) 16 49 34 ID ??? 認識のズレで思い出した。 どこかの敵拠点への侵入作戦を行った時 地図はGMが作った手書きの地図 綿密に作戦を練るPL達 盗賊「じゃあ、まずは地図のここに立って、慎重に歩いていくよ」 GM「…え? …それでいいの?」 PL一同肯く GM「…えーと、それじゃ見張りの兵士が君達を見つけて叫ぶよ。『侵入者だー!』」 盗賊「え、なんで!? ここに分厚い壁があって、見えないはずでしょ?」 GM「…ええと、それ…城壁じゃなくて水路なんだけど」 戦士「城壁だと思ってた!」 魔術師「うわ、見つかるに決まってんじゃん!」 GMもPLも笑い転げてしばらくゲームにならなかったな 地図で線が引いてあると視界を遮るものだと無意識に思い込んでしまったのだろう 魔術師「ええい、バレてしまっては仕方が無いわ、斬れ、斬れ、斬り捨てい!」 とばかりに全員爆笑しながら強行突入と相成りましたとさ この場合の困ったちゃんは地図を描くのが下手なGMか、認識をすり合わせ損なった全員か スレ91
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『台風一過のハレの日に』 ○ エピローグ 「なによ、また台風? バカにするんじゃないわよ!」 団長席でハルヒが怒っている。この分だと、閉鎖空間が発生するかもしれないな。そう言うわけでなんとかフォローしようとする古泉は必死のようだった。 「まぁまぁ、涼宮さん、そうおっしゃらずに……」 「だって、ついこの間もきたところじゃない、台風!」 あの時は、お前喜んでたじゃないかよ、と言いたくなるのを俺はぐっとこらえた。 今度の台風は、明日の土曜日の午前中に最接近するらしい。その明日は久々の不思議探索を予定いていただけに、ハルヒも納得できないようだ。 「あーあ、つまんないなぁ。やっぱ、こういう時は宇宙人よね」 ハルヒの言葉を聞いた長門は、いつもの丸テーブルのところから顔を上げることなく、少しだけ上目遣いで俺の方を見ていた。 「一度でいいから、雨と一緒に降ってこないかなぁ、宇宙人……」 そう言ってハルヒは少し雨脚が強くなった窓の外を眺めていた。 あのな、ハルヒ、お前が知らないだけで雨と共に宇宙人はやってきたし、その液体宇宙人のこゆきと、たっぷり遊んだんだぜ、俺たち。 こゆきが地球を後にしてから一週間が経った。 部室の壁には、以前のメイド姿の写真に加えて、こゆきを中心としたSOS団+鶴屋さんのウェディングドレス姿の写真がピンでとめられている。 長門が情報統合思念体に確認してくれたところによると、こゆきは無事に新たなる故郷である惑星に帰還したそうである。そして、統合思念体から派遣されている対液状化分散集合生命体用アクアノイド・インターフェースの婚約者と晴れて夫婦となったということだ。結婚式とか披露宴とかあったのか、と長門に聞いてみたが、詳細はよくわからないらしい。 とにかく幸せに暮らしている、ということなので、俺もほっと一安心だ。 「ねぇ、有希、その後、こゆきちゃんから何か連絡はない?」 「無事に到着したという連絡以降は特にない」 「ううーん、せっかくのバミューダトライアングルなんだから、飛行機とか船とか消えないのかしらねー、つまんないわ」 そこでハルヒは長門の方に振り向いて、 「こゆきちゃんに連絡しといて、今度絶対遊びに行くから、って、ね」 「了解した」 おい、長門、軽々しく引き受けるんじゃない。こゆきが住んでいることになっているカリブ海の島国『アンティグア バーブーダ』に行くことになるような事態はなんとしてでも避けなくてはならないんだからな。 パタン。 しばらくして長門が本を閉じる音が雨音に混じって聞こえた。 「そうね、雨がひどくなる前に帰りましょうか」 長門の合図にはハルヒも素直に従うようだ。 朝比奈さんの着替えとハルヒの片付けを待つ間、俺と古泉は先に部室を出て廊下の窓から空を見上げていた。着替える必要のない長門も俺の隣で空を見上げている。 「そういえばこゆきがいた間はずっといい天気だったな」 俺は隣にたたずむ小柄なアンドロイドに話しかけた。 窓の外を見つめたまま、こくんと肯く。 遠くの木が揺れている。少し風も出てきたようだ。 「直接は会えないのかもしれないが、連絡は取れるんだろ、こゆきに」 再び肯く。 「よろしく伝えといてくれよな」 「大丈夫」 振り向いた長門は、いつものようにミリ単位で首をかしげると少しばかり微笑んだ様に見えた。 その長門の表情越しにこゆきの笑顔が浮かんで、俺はふと思った。 ひょっとすると、今度こゆきと会う時には、子供を連れてくるかもしれない。きっとまた長門にそっくりのかわいい子に違いないはずだ。 いや、待て、ということは、なんと俺はおじいさんになってしまうのか?! ……うん、まぁそれはそれで悪くないかもしれない。待ってるぜ、こゆき。 Fin. 戻る
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『台風一過のハレの日に』 ○ エピローグ 「なによ、また台風? バカにするんじゃないわよ!」 団長席でハルヒが怒っている。この分だと、閉鎖空間が発生するかもしれないな。そう言うわけでなんとかフォローしようとする古泉は必死のようだった。 「まぁまぁ、涼宮さん、そうおっしゃらずに……」 「だって、ついこの間もきたところじゃない、台風!」 あの時は、お前喜んでたじゃないかよ、と言いたくなるのを俺はぐっとこらえた。 今度の台風は、明日の土曜日の午前中に最接近するらしい。その明日は久々の不思議探索を予定いていただけに、ハルヒも納得できないようだ。 「あーあ、つまんないなぁ。やっぱ、こういう時は宇宙人よね」 ハルヒの言葉を聞いた長門は、いつもの丸テーブルのところから顔を上げることなく、少しだけ上目遣いで俺の方を見ていた。 「一度でいいから、雨と一緒に降ってこないかなぁ、宇宙人……」 そう言ってハルヒは少し雨脚が強くなった窓の外を眺めていた。 あのな、ハルヒ、お前が知らないだけで雨と共に宇宙人はやってきたし、その液体宇宙人のこゆきと、たっぷり遊んだんだぜ、俺たち。 こゆきが地球を後にしてから一週間が経った。 部室の壁には、以前のメイド姿の写真に加えて、こゆきを中心としたSOS団+鶴屋さんのウェディングドレス姿の写真がピンでとめられている。 長門が情報統合思念体に確認してくれたところによると、こゆきは無事に新たなる故郷である惑星に帰還したそうである。そして、統合思念体から派遣されている対液状化分散集合生命体用アクアノイド・インターフェースの婚約者と晴れて夫婦となったということだ。結婚式とか披露宴とかあったのか、と長門に聞いてみたが、詳細はよくわからないらしい。 とにかく幸せに暮らしている、ということなので、俺もほっと一安心だ。 「ねぇ、有希、その後、こゆきちゃんから何か連絡はない?」 「無事に到着したという連絡以降は特にない」 「ううーん、せっかくのバミューダトライアングルなんだから、飛行機とか船とか消えないのかしらねー、つまんないわ」 そこでハルヒは長門の方に振り向いて、 「こゆきちゃんに連絡しといて、今度絶対遊びに行くから、って、ね」 「了解した」 おい、長門、軽々しく引き受けるんじゃない。こゆきが住んでいることになっているカリブ海の島国『アンティグア バーブーダ』に行くことになるような事態はなんとしてでも避けなくてはならないんだからな。 パタン。 しばらくして長門が本を閉じる音が雨音に混じって聞こえた。 「そうね、雨がひどくなる前に帰りましょうか」 長門の合図にはハルヒも素直に従うようだ。 朝比奈さんの着替えとハルヒの片付けを待つ間、俺と古泉は先に部室を出て廊下の窓から空を見上げていた。着替える必要のない長門も俺の隣で空を見上げている。 「そういえばこゆきがいた間はずっといい天気だったな」 俺は隣にたたずむ小柄なアンドロイドに話しかけた。 窓の外を見つめたまま、こくんと肯く。 遠くの木が揺れている。少し風も出てきたようだ。 「直接は会えないのかもしれないが、連絡は取れるんだろ、こゆきに」 再び肯く。 「よろしく伝えといてくれよな」 「大丈夫」 振り向いた長門は、いつものようにミリ単位で首をかしげると少しばかり微笑んだ様に見えた。 その長門の表情越しにこゆきの笑顔が浮かんで、俺はふと思った。 ひょっとすると、今度こゆきと会う時には、子供を連れてくるかもしれない。きっとまた長門にそっくりのかわいい子に違いないはずだ。 いや、待て、ということは、なんと俺はおじいさんになってしまうのか?! ……うん、まぁそれはそれで悪くないかもしれない。待ってるぜ、こゆき。 Fin. 戻る
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ラブレターに想いを託し、相手を呼び出してから告白するというのは、「青作戦」および「ハイイロアオサギ作戦」が発動され、スターリングラードを目指して進撃を開始したドイツ軍B軍集団が、その手前のカラーチのソ連軍陣地に対し、いわゆる「古典的な両翼包囲」で以て挑んだのと同じくらいまた古典的である。 その後スターリングラードでドイツ軍が大失敗をやらかしたからといって、その古典的方法の有用性が損なわれることにはならないだろうが、しかし彼の地を目指していたはずB軍集団が、気付いたらアマゾンに着いていましたなんてことになればどうだろう。 一大事である。大失敗である。そこに何か重大な誤謬があったということを認めざるをえないだろう。 場所はスターリングラードでもアマゾンでもなく埼玉だったが、みなみに渡された手紙は、要するにそういう性質のものだった。 「私に……??」 いつものようにゆたかと一緒の朝。昇降口で靴を脱ぐか否かという隙だらけの二人の前に、一人の女子生徒が立ちはだかった。その手には封筒。差し出す先はみなみの腰の高さ。 「はい……」 女子生徒の顔は俯き気味で視線は手紙に固定されたままだったが、しかし体はかすかに震えている。 「……」 みなみはそれを無言で受け取ると、女子生徒はごまかし笑いみたいなものを浮かべる。 「あ、あのすみません。渡す前に聞いとくべきでしたけど……あの……彼氏は?」 ギョッとして上げたみなみの顔が強張る。 「……いない」 「そ、そうですか。よかった……。いえ……あの、まあ、えーと……ははは」 そのようなことをわざわざ聞くということは。 「ラブ……レター?」 みなみが問うともなしに呟く。 「はい……」 女子生徒は顔を上げずに肯く。覚えはないが、多分違う組の一年生だ。取り立てて大きな特徴もなく、強いて言えばひどく平均的で、ひどく庶民的な印象を受けるといった具合だろうか。ゆたか同様小動物的な印象だが、よりせわしなく動き回った挙句迷子になるか、天敵の巣の中に転げ落ちてしまいそうな感じだった。 「じゃあ、渡しましたからね」 彼女は踵を返し、脱兎のようにその場を離れようとする。ゆたかは、彼女のこの言い方に違和感を覚えたが、その理由はすぐ戻ってきた彼女自身によって説明された。 「あ……あの、それ、私からじゃないですからね」 みなみとゆたかは、驚いたように顔を上げて彼女を見た。 「そんな……そんなわけないじゃないですか」 彼女は顔を上げみなみの顔を見るが、すぐに俯いて「はわわわわ」と言いながらモジモジと体を揺らす。ゆたかは心の中の「こなた語録」を開いた。そのページには、「ドジッ娘」という言葉が載っており、その時は目の前の存在を説明する辞書としての役割を果たした。 「二年の吉田先輩、知ってますか?」 みなみは首を横に振る。 「その、よよよよよ、吉田先輩からです……」 「はあ……」 みなみの声と表情に戸惑いの微成分が添加され、知らない人だということの表明となる。 「じゃあ」 彼女は再び踵を返し、今度こそ去った。視界から消えるまでの間に、激突しそうになったロビーの支柱と観葉植物を辛くも回避し、助けるために駆け寄ろうとしたみなみの動作を二度とも空振りさせながら。 彼女―手紙を届けたのだから、便宜上「ヘイ・ミス・ポストガール」とでも呼ぶとしよう―が見えなくなると、みなみは再び手にある封筒に目を落として見ていたが、すぐに間が持たなくなる。 「ゆたか……」 心霊スポット探索中に、不意に誰もいないはずの背後から肩を叩かれた人間のように、恐る恐るみなみはゆたかの方を見遣った。 「え……あの……よ、よかったね、みなみちゃん」 「ゆたか、顔色が……」 それこそ心霊スポットの住人のように、血の気が引いた顔のゆたかが立っていた。威風堂々と屹立するのではなく、どうにかこうにか立っていた。 「おめでとう。お幸せに……」 「そんな……まだ付き合うと決めたわけじゃないし、知らない人だから取り合えず会ってみて……ああっ、ゆたか!!」 取り合えず会うと聞いた途端、ゆたかは崩れ落ちてしまった。 みなみに背負われ保健室へと運ばれる間、ゆたかの心は震えながら叫んでいた。 みなみちゃん、行かないで……。 「ゆたかちゃん、お漬物食べる?」 「いただきます」 つかさの申し出にゆたかは即答した。 「ゆたかちゃん、ミートボール食べる? さっき日下部に押し付けられたのなんだけど」 「いただきます」 かがみの申し出にもゆたかは即答した。 「小早川さん、卵焼きを召し上がりますか? ウナギが包ん―」 「いただきます」 例によってみゆきの申し出にも、ゆたかは即答した。 「ゆーちゃん、コロネ二つあるんだけど、一つ……」 「うん、もらう」 こなたの申し出にもいうまでもなく、である。 ゆたかは3-Bの教室に来て、こなた、かがみ、つかさ、みゆきと昼食を共にしていた。 ゆたかが保健室で目を覚ましたのは、昼休みが始まる寸前だったという。 「腹時計」という言葉が四人の脳裏に等しく浮かんだが、「はらど―」と言いかけたつかさの口を、かがみが慌てて塞いだだけで事なきを得た。 ゆたかは事の次第を話しながら、持参した弁当をあっという間に平らげてしまい、見かねた(?)四人の食糧援助の申し出を全て受け入れていた。 「ヤケ食い」という言葉が四人の脳裏に等しく浮かんだが、「ヤケg―」と言いかけたつかさの口を、みゆきが慌てて塞いだだけで事なきを得た。 「その手紙は、昼休みにみなみさんを呼び出していたというのですね」 「そうみたいです……」 ウナギ入りの卵焼きを力いっぱい飲み込みながら、ゆたかは力なく肯く。教室に戻ったらみなみの姿はなく、ひよりたちはゆたかを迎えに行ったものだと思っていたらしい。ゆたかは弁当を手にみなみを追いかけようとしたが、どこに呼ばれたのかが分からず、途方に暮れてフラフラになっていたところを、飲み物を買って戻ろうとしていた四人の保護されて、3-Bの教室にやってきたというわけである。 疑問なのはゆたかは何故、みなみを追いかけるのに弁当が必要だったかである。四人の内つかさとみゆきは、事が済んだ後、一緒に弁当を食べるみなみとゆたかを想像し、こなたとかがみは弁当を武器として戦い、その結果弁当まみれになった「吉田先輩」を想像したが、確証を得ることなく弁当はゆたかの腹に収まってしまった。 昼休みはもう道半ば。どんなに遅くとも、みなみはすでに吉田先輩とのご対面を果たしているだろう。 「……ッ」 ゆたかが小さく唸る。四人のそんな心中を読心したわけではなく、コロネが詰まりかけただけである。緑茶のペットボトルを手にスタンバイしていたみゆきがすかさずそれを渡すと、ゆたかは一気に飲み干してしまい、次に詰まらせたらどうしようかとみゆきをおろおろさせることになった。 「だ、大丈夫よ、ゆたかちゃん」 かがみが言う。 「みなみちゃん、きっと断るって」 「うんうん、かがみほど餓えてる感じじゃないもんね」 「ミートボールを食べ損ねたくらいで餓えたりしないわよ!」 「いや、そういう意味じゃ……」 下手な慰めが通用する状況ではない。現に今、ゆたかは三年生の教室という異郷に一人なのだ。その事実を忘れるためとでもいうように、食べる、食べる……。 「その『吉田先輩』は、みなみさんとは面識がないのですよね?」 みゆきが尋ねる。 「そうみたいです……あ、ウナギもう一ついいですか」 「卵焼きですか? どうぞどうぞ。……となりますと、いきなりお付き合いというのはいかがなものでしょう。あまりに相手の事を知らな過ぎるとなると、二の足を踏むのが人情です」 「まず友達からですか?」 怯えるような目でゆたかが尋ねる。 「そ、お互いの友達も巻き込んでね」 自分の分のコロネの袋を開けながらこなたが言う。そこで何かに気付いたようだ。 「おお、そうか。ゆーちゃん」 「な、何?」 無駄に目を輝かせているこなたに、ゆたかは体を少し引く。 「『吉田先輩』の友達とのフラグが立ったね」 「え……ええっ??」 「その内ゆーちゃんも『吉田先輩』の友達に見初められて、大人の階段を上っていくんだよ、うん」 「あんたより先にか?」 かがみが意地悪顔で聞く。 「いやー、私にはもう嫁がいるんで」 こなたはかがみを抱き寄せた。 「いや、嫁というより保護者だし」 「ゆーちゃんにとってのみなみちゃんは、保護者というより飼い主かな。小動物チックだし」 「お、お姉ちゃん!」 「いやー、ごめんごめん。でも、ゆーちゃんはどうしたい?」 「どうって……それはみなみちゃんが決めることだし……。急に『吉田先輩』の友達とか出てきても……」 「うーむ、そうかあ……。私は内心、可愛いゆーちゃんの為に告白イベントのジャックを決心していたんだけどなあ」 「ジャックって、何するつもりだったのよ?」 「んー、別の告白イベントをでっち上げてみようかな、とか。私と嫁で」 またもやかがみにまとわりつこうとするこなた。 「やめんかー」 「さて……」 がた いつもの調子こなただったが、いつもよりずっと早くコロネを食べ終えて立ち上がる。 「みなみちゃんを探しに行ってみようか」 がた がた 「そうですね。結果が気になります」 野次馬根性をも敢えて隠そうとしないみゆき。いや、一人っ子なりに姉の顔になっている。 「仕方ないわね」 本当に仕方なさげなかがみ。 「じゃあつかさ。片付けよろ」 「あ、みなみちゃんだ。おーい」 三人の出鼻はもとより何もかもを挫くつかさ。 「「「え゛」」」 つかさの視線を辿り出口に目を向けると、息を切らしたみなみが古代文明の秘宝を見つけた冒険者のような顔で立っていた。 「ゆたか……ここだったんだ……」 少なくとも保健室と教室には足を運んことだろう。学食にも行ったかもしれない。 「みなみちゃん……」 みなみは教室を見渡し、「失礼します」と小声で頭を下げてから入ってきた。かがみが近くの椅子を引き寄せて、みなみ用の席を作ってやる。その椅子はちょうど白石が座ろうとしていたもので、彼は尻餅はおろか「後頭部餅」までついてしまったのだが、誰も気にしなかった。むしろ気になったのは、みなみの顔がひどく赤いということだ。それはゆたか探しに行脚したせいだろうし、でももし「吉田先輩」に言われたことが原因だとすると……? 「みなみちゃん……『吉田先輩』とは……?」 「会ってきた……」 「それで……?」 五人が固唾を呑んでみなみの答えを待つ。 それは白石に続いて五人分の「後頭部餅」がつかれてしまうほど驚くべきものであり、同じくらいの勢いで拍子抜けするものだった。 「「「「「人違い!?」」」」」 「……ですか?」 こんな時でも丁寧なみゆきに、みなみは肯く。手紙には丁寧な字でご丁寧にも、やれ、 「天真爛漫な君の事が」 だとか 「元気すぎて危なっかしくって、見守っている内に守ってやりたくもなって」 だとか、 「身に覚えのないことが書かれていて……」 体育の時間でもこれほど発汗しないだろうというくらい大汗をかき、みなみは言った。みなみが天真爛漫で元気すぎて危なっかしいというなら、判断基準がよほど変わっているか、目か頭かあるいはその両方がおかしいのだろう。そう見える人間の方がよほど危なっかしい。もっとも、手紙の文面を見る限り、そういう人間かもしれないという匂いがしないでもないが……? 「確信はなかったのですが、多分人違いだと思って……」 ……呼び出された屋上に行ってみたら、案の定「吉田先輩」らしい人が待っていて、君は誰だ、何で俺の出した手紙を持ってんだ、1-Eの南に渡すよう頼んだのにという話になったという。みなみが、苗字ではなく名前の方を強調しながら自己紹介すると、「吉田先輩」は全てを悟ったようで、手紙を返したらすぐに屋上を去ったという。 「そこから芽生える愛もあると思うけど」 とはこなたで、 「ギャルゲ脳自重」 とはかがみである。 みなみによると、保健室にも教室にも姿の見えないゆたか探す方がよほど大変で、弁当もまだ食べてないという。 「みなみさん」 「はい」 「卵焼きはお好きですか?」 「え……はい」 みなみの答えを聞くと、みゆきはゆたかの方を見た。余分な箸などあるはずもないのでゆたかに食べさせてもらうようにする、というのがみゆき一流の気の利かせ方だった。だがみなみは、残念ながらウナギ入りの卵焼きを味わうことは出来なかった。 ゆたかの体が揺らぐ、傾ぐ……。 みなみが慌てて支える。ゆたかは腹を押さえ、青白い顔をしていた。 「苦しいよ……」 もはや心の苦しさが生じるはずもないので、「食べすぎ」という言葉が四人の脳裏に等しく浮かんだが誰も口にせず、かがみとみゆきに手伝ってもらってみなみはゆたかを背負う。本日二度目の保健室送り。午前のみならず午後の授業も全休確定。一体学校に何をしに来たのか?? 「みなみちゃん」 3-Bの教室を出ようとしたみなみを、つかさが呼び止める。 「よかったね」 青白い顔のゆたかを背負っての保健室行き。良い事など何もないはずであるが……。 「……はい」 みなみは肯いた。 かくして四人が残されて、食べ物が粗方なくなってしまった机に顎を乗せ、た●ぱんだみたいになったこなたが呟く。 「なんかさー」 「んー」 まだ少し時間があるなと、本を取り出したかがみが気のない様子で応じる。対異性人宇宙戦争モノのスペースオペラ『人類は撤退しました』。 「虚しくない?」 みなみにしろゆたかにしろ、さらに「吉田先輩」にしろ「ヘイ・ミス・ポストガール」にしろ、彼女たちより年下なのである。 はあ…… 溜息が出る。 「昨日の放課後、生徒会の名簿を当たってみたのですが……」 翌朝。 登校のバスの中でみゆきが切り出したのは、「吉田先輩」の本命のことだった。 「1年E組に『南』という姓の女子生徒が在籍していました。一年生の女子で、この姓の生徒は他にいません」 「確かに、苗字にも名前にもなるわよね。『みなみ』って」 二年の「吉田先輩」のことは敢えて調べなかったという。かがみはそれで良いと思ったし、自分でもそうしただろうと思う。 「加えてDとEを聞き間違えたのかもしれないですね。業務上の必要性から聞き間違えを防ぐために、Dを『デー』と発音する職業・業界があるくらいですから」 「いや、まず始めにドジッ娘ありきだよ」 異論を挟んだのはこなたである。 「なんといっても、南さんとみなみちゃんを間違えた彼女によって、ドラマは作られたのだから」 バスは学校に着いたが、聞き役に徹したつかさを含め四人はなおも話す。 「さらに加えると、生徒やクラスがやたら多いのも原因じゃないかしら。13クラスもあると、三年になってもいまだに誰がどのクラスにいるのかとか、ほとんど把握できないし」 「うんうん、分かんないよねー」 かがみの意見に、こなたがしたり顔で肯く。 「交友範囲大絶賛限定中のあんたが訳知り顔で肯くな。覚える気もないくせに」 「いやー、嫁の全てを知ってれば十分」 「……確かに」 みゆきが肯くと、さすがにこなたも派手に驚いた。 「おお、みゆきさんも同意見!?」 「いえ……はい……あ、その、確かに二年の吉田さんや一年の南さんと聞いて、ピンとは来ませんでしたね。お恥ずかしながら」 かがみに同意見ということであるが、それはそれで引っかかるものがある。 「みゆきさん」 「はい」 「それってつまり、三年なら分かるって事?」 「はい」 「みゆき」 「はい」 「それだけでも十分立派よ」 聞き役だったつかさも肯くと、妙な説得力が生まれる。 そしてみゆきが立派だということは、すぐに証明されることになった。 3-Bの三人が上履きに履き替えていると、3-Cの靴箱の方から、コーラと間違えてバルサミコ酢を飲んでしまったような奇声が聞こえてきた。 「もらっちゃった……」 行ってみるとかがみが封筒を手にしていて、今度は三人が奇声を上げる番だった。こなたにいたっては、長い髪が逆立つほどの衝撃を受けていた。 薄ピンクの封筒には「かがみ先輩へ」という宛名書きの下に、猫の頭に尻尾が生えたかわいいイラストまで添えてあった。いや、可愛いのはイラストだけでなくて……。 「どう見ても女の子の字よね。みゆき、心当たりは?」 「G組の男子生徒に加賀美という方がいらっしゃいます」 「今度はCとGか……」 「聞き間違えたのはBかもよ」 かがみが息を飲む。こなたは何気なく言ったのだが、「かがみ」と呼ばれているのは主にというかほとんどB組においてである。 「とにかく、G組の彼宛ね。HR前に届けちゃいましょ」 G組の教室の出口で加賀美某を呼んでもらい、封筒を渡す。 「私の靴箱に入ってたの。多分あんた宛よ」 あらかじめ宛名の「先輩」という部分を指差した上で、態度と口調で同級生であることを示したため、面倒なやりとりもなくすんなりと渡すことに成功した。むしろ面倒なのは……。 「誤解されることなく渡せた?」 「見ての通りよ」 そう言われてこなたはG組の教室を覗きこむと、加賀美某の周りには男女混成の人垣が出来ていた。特にご執心なのは男子の方である。 「誰? 今の誰?」 「後輩?」 「いや、タメだよ。確かB組の……」 「タメに先輩って呼ばれてんのか。マニアックだなオイ」 「どうやってオトした? いや、オトされたのか」 「いいなー」 ……あまりうまくいってないようである。B組の一員とみなされてるあたりは案の定だし……。 「いっそ、加賀美君の嫁になっちゃったら?」 B組、あるいはC組の方に歩くかがみに追いついたこなたが言う。 「なんでよ」 かがみは不機嫌そうに言った。予想外の剣幕に、こなた勢いを失う。 「いや……加賀美かがみになるから……」 言い訳がましくそう言うこなたを呆れたように見て、 「マイヤー・マイヤーじゃあるまいし……」 と、87分署のユダヤ人刑事を引き合いに出してこなたを煙に巻いてから、かがみはなぜかC組ではなくB組の教室に入っていった。HRまでの残り少ない時間をそこで過ごすつもりらしい。 こなたの口が次第にネコ口になり、ネコ口がほくそ笑む。 「やっぱり、かがみは可愛いね~」 噛み締めるように呟くと、こなたはかがみに続いてB組へと入って行った。 おわり コメントフォーム 名前 コメント かがみの件は実は人違いではなかった、というオチかと予想してたら違ったか。 -- 名無しさん (2009-06-07 20 58 52) 司つかさの他、幸みゆき(みゆきみゆき)、さらにみなみのケースとは逆に、「泉」を名前の方だと思った誰かさんたちの間違いのラブレターを、四人が同時に受け取る、なんてオチも考えてました。 -- 42-115 (2008-09-25 20 31 56) つかさもありえるのかな。司つかさ とか。 -- 名無しさん (2008-09-25 02 17 52) 細かい部分がすごく面白い。加賀美かがみとかw -- 名無しさん (2008-09-24 00 36 54)
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それは、ふと思いついての行動だった。 学校へ向かう途中、俺は交差点を歩いている猫を見た。 それ程交通量がある道ではないが、通勤時間だけあってそれなりに車は走っている。 ちょうどその日の朝、俺は猫が車に跳ねられるというなんとも後味の悪い夢を見た事もあり 俺はなんとなくその猫の様子を目で追っていた。 そういえばちょうどあんな柄の猫だったような? 夢の中の猫と現実の猫が重なって見えてくる。そうだ、ちょうどこんな感じの場所で この数秒後に、黄色信号を無理に突っ切ってきたトラックが左折してきて……。 俺のナレーションに合わせたかのようにトラックの姿が現れたとき、自然に体は動いていた。 距離にしてたった数歩の違いで夢の中では助けることの出来なかった猫は、あっさりと 俺の手に襟首を捕まれもがいている。直後に通り過ぎていくトラック。 ……運がよかったな。 俺は引っかき傷を作られる前に猫を車の少ない歩道へ下ろしてやった。 せっかく助かったんだから長生きしろよ? 俺の言葉に威嚇したうなり声で返して、猫は路地裏へと走り去っていく。 なんとなくいい事をした様な気分で、俺は再び学校へと足を向けた。 とまあ、そんな事があったんだ。 昼休み、なんとなく訪れた部室で当たり前のように窓際に居た長門に俺は今朝の出来事を話していた。 他に世間話のネタが無かっただけなんだが、長門はいやに真面目な顔で俺を見ている。 なんだ、まさかこれもハルヒがどうとか言い出すんじゃないんだろうな? 「涼宮ハルヒは関わってはいない、ただ」 ただ? 「貴方の見たという夢に興味がある」 そう言われても猫の部分を覚えていたのも偶然なだけで、普段の夢とかわらず殆どの部分は覚えていないんだが。 長門はしばらく何か考えていたようだが、やがて本棚から一冊のノートを持ってきた。 これは? 「ノート」 受け取って開いてみる、白紙、白紙、白紙……白紙っと。 そうだな。実にA4なノートだ。で、これが何なんだ? 「気が向いたらでいい。朝起きた時に夢の内容を書いて欲しい」 寝起きなら確かにある程度は覚えている自信はあるが……。 長門。自分で言うのもなんだが俺は朝が弱いから、お前の期待に答えてやれるかどうかわからないぞ。毎日 夢を見るって方でも無いしな。それでもいいか? 肯く長門、まあそれでもいいって言うんだから書いてみるか。これがハルヒだったら適当に誤魔化して終わるところだが いつも世話になってる長門の頼みだ。 俺は長門から受け取ったノートを持って、クラスへと戻って行った。 ――その日の夜、寝る前になってようやく俺は長門の頼みを思い出し、さっそく枕元にノートとシャープペンシルを置いた。 さて、どんな夢を見ることになるんだろうな? そんな期待を持っていたせいか中々眠気はやってこず……と考える内に寝てしまったようだ。 夢ってのは普通、どことなくリアリティーが無かったりするものであるはずだろう。 だから俺はその時見たものを最初、夢だとは思わなかった。 そこはどう見てもSOS団の部室であり、俺は制服を着ていた。窓の外はまだ明るく窓際に長門の姿もある。 いつの間にか寝ちまってたみたいだな。 軽く伸びをしながら体を起こす、いったい今は何時なんだ? 昼休みのような放課後の様な。 ポケットに手を入れてみるが、何故か携帯が見つからない。 あれ、どこかで落としたかな……。長門、俺の携帯を知らないか? 「……」 無言で視線を向けてくる長門の手には、何故か俺の携帯があった。 なんだ、お前が持っててくれたのか。 受け取って時間を確認してみると、電池が切れているのか画面には何も写っておらず電源ボタンを長押ししても なんの反応もなかった。昨日の夜、確か充電してなかったっけ? まあいいか。 外の様子を見てみるとグラウンドには人影はなく、見回しても歩いている生徒の姿は見つけられなかった。 どうやら今は放課後らしいな。さて、今日はもう帰っちまっていいんだろうか? 出口へと体を向けた俺を引き止めるように、制服の端を引っ張る華奢な白い手が伸びている。 「……」 無言のまま何かを訴えるかの様な目で、長門が俺を見上げている。 何だ。どうかしたのか? 長門は何も答えず、ただ俺の制服の端を掴んだまま時折否定するように首を振っていた。 帰るな、って事か? 肯く長門。 ……まあ、何か理由でもあるんだろうな。 俺はパイプ椅子を一つ窓際まで持ってきて、長門の隣にそれを置いて座った。 後になって考えて見ればおかしい事なのだが、その時の長門は本を読んでおらず俺をじっと見ているだけだった。 俺はそんな長門と見つめあいながら、のんびりとした時間を過ごしキョン君! 朝だよ! 起ーきーて!」 妹のヒップドロップによってに起こされるた俺は、不思議な程にはっきりと目が覚めていた。 おかげで長門のノートの事も思い出すことができ、何してるのーと覗きに来る妹を押し返しながらその夢の内容をノートに書きとめた。 さて、いったいどんな深層心理がここから導き出されるんだろうね? 少し楽しみでもある。 その日の昼休み、弁当と例のノートを持ってさっそく部室へと向かった。 「……」 俺のノートを受け取ったいつものように長門は沈黙している。俺の字が読みにくいなんて事は……無いともいえないな。 長門はノートを広げたまま全く動かないでいる。ともかく待つしかないらしいな、先に弁当を広げる事にしよう。 しかし弁当が食べ終わっても長門に変化は無く、俺はそんな長門を見ている内にいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。 静かな部室の中、俺はまた夢を見たらしい。それも何故か昨日の夜と同じ夢を。 長門の隣に座って、ただのんびりとした時間を過ごす……こんな夢なら何度でもいいかもしれないな。 しかし、夢って奴は終わりがあるから夢だったらしい。 ――なんだ、誰かの声がする。長門のような静かな声でも、朝比奈さんのような心安らぐお声でもなキョン! あんたさっさと起きなさいよ?」 言葉と同時に頭部に当たる硬い何か。俺ぐらい殴られなれてくると分かるぜ、これは英和辞典で殴ったのはハルヒだな。 「ずいぶんぐっすりと眠ってたみたいね」 たった今まではな、もう休み時間は終わりなのか? 携帯でアラームをセットしておいたと思ったんだが、あれ。電源切れてたのか。 「とっくに終わってるわよ! しかも何なのこれは?」 そう言ってハルヒが俺の前に突きつけたのは、俺が長門に渡した例のノート……。って! 「あんたこんな妄想を有希に読ませて何するつもりだったのよ? 返答しだいじゃただじゃおかないからね」 前払いで英和辞典で殴っただろ? それで勘弁してくれ。 ここで実は長門の夢判断だったなんて話をすればしたで「あんたそんな夢を見てるの?」とハルヒが言い出すのは目に見えてる。 俺は下手な言い訳はせずに、これ以上遅れれば岡部に叱られると説得してハルヒを先に部室から追い出した。 去り際に見た窓辺にはまだ長門の姿があった。 長門、お前も早く教室に行けよ? 肯く長門の姿を見てから、俺も部室を後にした。 俺達が出て行った後、長門が自分の隣に置かれたもう一つのパイプ椅子を片付けていた事を俺とハルヒは知らない。