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4月20日 影時間 承太郎と月光館学園の生徒らは、影時間にのみ聳える異形の塔、 タルタロスへ足を踏み入れた。 「おお…、中もスゲェな」 「でも、ヤッパ気味悪い…」 順平とゆかりがそれぞれ呟いた。 入った先にあったのは、広い円形のホールとその中央から伸びる階段、 そしてその周りを囲む、ギリシャ調の柱。 「外も外だが、中も中だぜ…」 承太郎は辺りを見回してからポツリと呟いた。 階段の前まで来たところで、美鶴が前に進み出て、こちらに振り返る。 「ここはまだ『エントランス』だ。 今後、タルタロスに挑む時は、ここが攻略の基本となる。 この階段を上がった先の入り口を越えてからが、本格的な迷宮という訳さ。 …宜しいですか?空条先生」 美鶴が確認するように承太郎に視線を投げかけてくる。 承太郎は、黙って頷き、了解の意を示した。 美鶴は納得したように頷き、改めて口を開いた。 「今日はそう深く探索する予定はありません。 時間もありますし、このあたりでお互い自己紹介をしておきましょう。 まず私から。先ほども名乗りましたが、私は桐条美鶴(きりじょう みつる)。 月光館学園、高等部の3年生です。次は…、お前だ、明彦」 そういって美鶴は赤いベストの青年に話を振る。 「俺は真田明彦(さなだ あきひこ)。美鶴と同じく3年です」 真田明彦と名乗った青年はそう言ってから頭を下げた。 それに続いて、帽子を被った髭の青年…、順平が一歩出てくる 「じゃー、次、オレオレ!オレは伊織順平(いおり じゅんぺい)ッス! 先輩たちと同じで、ツキコーに通ってます。 あ、学年はイッコ下の2年っす。ヨロシクお願いしまっす!!」 被っていた帽子を取り、勢いよく頭を下げた。ちなみに帽子の下は坊主だった。 ID373名前:ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 [sage]投稿日:2007/05/02(水) 23 38 40 ID xOf1OFza0 順平の隣に立つ、チョーカーを身に着けた少女が、溜め息を吐いてから口を開いた。 「はぁ~。なにテンション上げてんのよ、順平。 ええっと、あたしは岳羽ゆかり(たけば ゆかり)です。 順平とそこの彼と一緒で月光館学園2年です。 ホラ、最後、君の番だよ」 ゆかりは顔の半分を前髪で隠した青年に挨拶を促す。 「月光館学園高等部2年、天道阿虎(てんどう あとら)です」 付けていたイヤホンを外して、小さく頭を下げた。 その後、またすぐにイヤホンをしていた。 こういうやつをイヤホンマンと言うらしい、と承太郎は頭のどこかで思った。 承太郎は、全員の顔をゆっくり見た後で、自己紹介を始める。 「俺は空条承太郎。 明日、話があるだろうが、月光館学園で教師をする事になっている。 担当は生物だ。2年と3年の両方で教える事になる。 さて、幾つか質問させてもらうが、構わんな?」 承太郎は、そう言って美鶴を見る。 先のやり取りから彼女が纏め役であろうと見当をつけたからだ。 美鶴は腕を組んだままの姿勢で軽く頷き、質問を促した。 「まず一つ。お前たちは、何の目的を持ってここに来た?」 承太郎の問いに、美鶴は視線を下げ、少しの間考えてから、口を開いた。 「影時間を消す手がかりを掴む為にここに来ました。 我々はこの塔に巣食う『シャドウ』から人々を守る活動をしています。 『シャドウ』というのはこの塔の中にいる化け物の総称です。 シャドウが活動するのは影時間だけです。 シャドウは多種多様な種類がいますが、全てこの塔の中から現れます。 シャドウを生み出し、影時間のみに現れるタルタロス。 影時間の存在と何か関係がある、と考えたわけです」 確かに、両方とも影時間という共通点を持っている。 承太郎は、確かに繋がりがありそうだと思い、頷いて見せた。 次の質問に移ろうとした所で、真田が美鶴を捕まえ、こそこそと後ろに下がっていった。 「おい、明彦、何をする?」 美鶴は急に腕を掴んで、引っ張っていく真田に抗議の声を上げた。 真田は腕を放すと、美鶴の問いには答えず、逆に美鶴に対して詰め寄る。 「何を、じゃないだろう。むしろ、お前が何をやっているんだ。 部外者にペラペラとシャドウの事なんて喋りやがって」 美鶴は小さく溜め息をついてから返答する。 「ふぅ…。お前の言う事も尤もだがな、明彦。 空条先生は影時間に適応している。その証拠に混乱が見られない。 それに考えてもみろ。 普通、赴任してくる教師が、深夜、それも0時前に学校に来ると思うか? 彼も我々と同じく、目的を持ってここに着たんだ。 そんな彼に対して、知らぬ存ぜぬで通しても、また同じような事態になる。 と言うより、我々をマークするだろう」 仕方無さそうに、しかしスラスラと言ってのける美鶴に対して 真田は眉間に皺を寄せ、唸る様に話す。 「『素質』がありそうだから、仲間に引き込んだほうが得策だ。そう言いたいのか? 分からんでもないが、理事長にどう言い訳するつもりだ?」 それに対し美鶴は笑って答えて見せた。 「会議室で、紙面を相手にしているわけじゃない。 現場で、イレギュラーな事態が発生するのは、仕方がない事だ。 現場の指揮を任されているんだから、これ位はいいだろう。 それに。お前だって相談無しに伊織を連れてきた。違うか?」 伊織順平は真田が適性があるのを見つけ、勝手にスカウトしてきたのだ。 うまく切り返されて、何も言えなくなった真田を尻目に、美鶴は承太郎達の方へ戻る。 美鶴が真田に捕まっている間、順平、ゆかり、阿虎の三人が承太郎に近づいてくる。 もっとも、阿虎は付いて来ただけのようだが。 「センセー。今日、理事長と一緒に、高校来てたっしょ?」 「ああ」 そう言って話しかけてきたのは、順平だ。 承太郎は言葉とともに、首をわずかに上下させた。 ゆかりは順平を嗜めるように、口を開く。 「もー、順平!何だってアンタは、誰彼構わず馴れ馴れしいのよ、まったく。 先生なのよ、せ・ん・せ・い。?ソコ、分かってんの?」 それに対し、順平は唇を尖らせて反論した。 「えぇー、いいじゃんよー。多分、これから仲間になるんだし」 「まだ決まってないでしょ?…まぁ、あの人の事だから、仲間に誘っちゃうんだとは思うけど。 結構、強引だからね」 ゆかりは溜め息を吐くように誰に向かってでもなく話した。 承太郎は言葉の後半から、ゆかりの表情が曇るのを見逃さなかった。 「影時間に適応できてるって事は、『素質』アリってことっスよ! 新戦力、期待してますよー!くぅー、これでオレにも後輩が! …つっても年上だけど。 戦う事になったらバッチリフォローしますから安心してくださいよ!!」 バシッとサムズアップで決める順平に、ゆかりのツッコミが入る。 「…アンタもまだ、実戦未体験でしょーが」 その後2、3、他愛の無い事を話しているうちに、美鶴が戻ってくる。 3人は美鶴と入れ替わるように少し後ろに下がる。 「すみません、お待たせしました」 そう言って承太郎に頭を下げる。 「いや、いい。質問の続きだ。 影時間に立っている棺…、あれはこの時間を認識できない奴らがなる、そう思っていいのか? それともう一つ、お前たちは、シャドウとやらと戦う術があるのか?」 「はい、棺が現れるあの現象は『象徴化』と呼んでいます。 認識はそれで結構です。 それと、戦う術ですか…」 美鶴はそこで言葉を切ると、腰の辺りに手をやる。 そこには学生服に似つかわしくない拳銃が収められたホルスターが取り付けられていた。 そこからゆっくりと、拳銃を抜き取る。 承太郎が、それについて訊ねようとする前に、 美鶴は自分のこめかみに押し当て、躊躇いなく引き金を引いた。 ガァンッ!! 『ジャラッ…パリンッ!』 エントランスに銃声が響き渡る。 だが、彼女の仲間たちは少しも動じる様子を見せない。 承太郎は響く銃声に混じり、小さく鎖を引くような音と、ガラスの割れるような音を聞いた気がした。 「これが『戦う術』です」 傷一つない美鶴の側に寄り添うように、甲冑を纏った女性型のヴィジョンが現れる。 「これは…」 『スタンド?』と承太郎が続ける前に、美鶴が説明を始める。 「我々はこのチカラを『ペルソナ能力』と呼んでいます。 自分の心が鎧を纏って形を成した物、と思ってください。 ここにいる全員が、ペルソナ能力者です。 ちなみに私のペルソナの名前は『ペンテシレア』。 氷結とサポート能力に特化しています」 言い終わると同時に、ペンテシレアが姿を消す。 しばし考えると、承太郎は疑問をぶつける。 「氷結とサポート?一人が一つの能力を持っている、という訳ではないのか?」 その問いに、美鶴は首を振って答える。 「いいえ。特化した部分を持つことはありますが、一つだけ、という訳ではありません。 また、ある程度経験を積みますと、力が強化されたり、新たに覚えたりもします。 例えばそこの岳羽ですが、彼女はガル系、風の属性の力と回復の力を使う事ができます。 伊織は力…格闘のスキルとアギ系、炎の力を得意としています。 明彦はジオ系、電撃を得意としていますが、今は怪我の為戦いには参加しておりません。 ちなみに、私の得意とする氷結の力は、ブフ系といいます。 そして天道ですが…彼は少々特異な力を持っていますので、詳しい説明はまたの機会にさせてください」 承太郎はそれを聞き、溜め息をつくように言った。 「やれやれ。まるで、RPGの様だな」 承太郎がプレイした事があるのではない。 杜王町にいる時に、仗助たちがそんな話をしているのを聞いた事があった。 「ふふっ、確かにそうかも知れませんね」 それから美鶴は、自分達が『特別課外活動部』と名乗り、理事長の幾月の元で活動している事、 表向きは普通の部活動だという事、最近急増している無気力症(※)の原因がシャドウにある事、 特別課外活動部(SPECIAL EXTRACURRICULAR EXECUTE SECTER)の頭文字を取って、 『S.E.E.S.』と書いた腕章を全員がしている、と言う事などを承太郎に話した。 ついでに、幾月は影時間に適応しているが、ペルソナは使えない、という事も聞いた。 「…その拳銃のようなものは?」 一通り話を聞いたあとで、承太郎が尋ねる。 「これは『召喚器』です。召喚の詳しい原理は、未だに解明出来ていませんので 説明する事は出来ませんが、これにより安定してペルソナを召喚する事ができます」 承太郎は、小さく頷くと、口元に手を当て、ゆっくりと問いかけた。 「召喚器を使わずに、呼び出した場合は?何か不都合でもあるのか?」 その問いを受けて、美鶴は、神妙な顔で頷く。 「…最悪、『暴走』する危険性があります」 承太郎は、その答えを聞き、口元に手を当てたまま、ペルソナについて考えを纏める。 (スタンドほど出し入れが自由ではなく、暴走の危険も孕むか。 だが、成長性と一個体の持つ多様性には目を見張るものがあるな… そして、この塔を殆んど攻略していない、という言葉から見るに、 まだまだ成長の可能性があるんだろうな) 深く溜め息をついた。 (それにしても…やれやれ。 どうやら俺は、『高校生』と言うものと、よくよく縁があるようだぜ。 それも10年おきに。どうやら、今回もヘヴィな事になりそうだぜ…) 思えば、自分が高校生の時、その10年後、仗助が高校生の時、 さらにそれから10年後の今、また厄介事が起きている。 それに関わりがあるのは、また高校生だ。 考え込んでいる承太郎に、美鶴が声をかける。 「空条先生。影時間に適応できる者はペルソナを召喚する『素質』があります。 お貸ししますので、試してみてください。 …今、我々は戦力に乏しく、一人でも多く、戦えるものを探しているんです」 そう言って、召喚器を差し出してきた。 承太郎は、差し出した手を、召喚器を掴むほんの手前で、少し止めた。 (二十年前…拘置所で似たような事をやったな。 あの時は実弾を吐き出す代物だったが…。 思えばあれが全ての始まりだったのかも知れんな。 そしてまた、同じ行為で新たな幕開けを告げるか…) こんな考えが浮かんできて、承太郎はほんの小さく笑った 「ふん…」 どこか懐かしい様子で笑う承太郎を見て、美鶴が怪訝な顔をする。 「どうかされましたか?」 「いや…。なんでもねーぜ」 承太郎は、口元を少し上げるような、小さな笑顔のままで軽く首を振ると、 美鶴に習って、召喚器の銃口をこめかみに押し当てた。 そして、一瞬の間の後、躊躇う事無く、引き金を引く。 エントランスに、銃声が響き渡る。 引き金を引いた瞬間、承太郎は、自身の精神、スタンドに変調を感じた。 鎖つきの楔が打たれ、そのまま引きずり出されそうになる、そんな感覚を覚えた。 (ヤロウ…) そう言った、『~される』というような感覚は、承太郎が最も嫌うところである。 身体の内で、引き摺り出そうとするモノを引き千切ろうと、スタンドに力を込める。 その刹那、スタンドを襲っていた感覚は消えた、引き金を引いてから、殆ど一瞬での事だった。 承太郎の側に、何の像も現れない様子を見て、美鶴は、 「…どうやら、駄目なようですね」 と、非常に残念そうな声で言った。 「どうやら、そのようだな」 そう言いながらも、承太郎は考えていた。 (『スタンド』に『ペルソナ』。両方とも精神を拠り所にする能力だ。 大方、勘違いして、引っ張り出そうとしてきたってところだろう。 スタンドが闘争心や、自己防衛の本能が形を持ったものだとするならば…。 ペルソナとやらは、心の奥深い部分が形を持ったものなのかも知れんな。 でなけりゃ、楔を打ち込んで引き摺り出すなんて真似はしなくても済むだろう) と、予想を立てていた所で、美鶴の声がかかり、思考を中断する。 「…非常に残念ですが仕方ありません。 我々の都合を知っていて、同じ時間を過ごせる大人が見つかった。 それだけでも十分に喜ばしい事ですから」 先程よりか、幾分気を取り直した美鶴に続くように、 次々と承太郎に言葉が投げかけられる。 「教師という立場の仲間がいる、という事はありがたい。 正直、理事長じゃ、なかなか話しにくかったりしますから。 これから、よろしくお願いします。空条先生」 「ペルソナ使いじゃなかったのは残念っスけど、しゃーないっスね。 こんな事してる訳っスから、授業中寝てても見逃してくださいよ?」 「もう…何でそういう事言うかなぁ。あ、これからお願いしますね」 「…よろしく御願いします」 真田、順平、ゆかり、阿虎の順番に声を掛けていった。 一通り終わったあとで、美鶴が指示を出す。 「探索の話に移るぞ。それではメンバーだが…」 なんとなくだが、蚊帳の外の承太郎。 聞いていると、どうやらあの3人組が探索に行き、 怪我をしている真田と、サポート役の美鶴はエントランスに残る事になったようだ。 どうやら、あのイヤホンマン、阿虎がリーダーに選ばれたようだ。 実戦経験者、と言うのが選ばれた理由らしい。 それから、阿虎が片手で扱えそうな剣、順平が日本刀のような長剣、 ゆかりが弓道で使うような弓を持って、迷宮に入っていった。 今日は、ほんの触りだけだったらしく、5分としないうちに、3人が戻ってくる。 エントランスの右手にある、よく判らない装置の力で戻ってこれるのだそうだ。 (まったく…。よく判らんものに頼りすぎだ) 承太郎は少し憮然とした表情で思った。 確かに、ペルソナも、それを呼び出す力も、この迷宮から帰還する力も すべてが『よく判っていないもの』だ。 そんな承太郎を他所に、順平が興奮したっ表情で喋っている。 「スゲェ、自分の『力』ってのを実感したぜ。マジぶっ飛び?」 そこで、緊張感が途切れたのか、急に疲れた表情になる。 「でも…なんでだ? なんか、ミョーにカラダがシンドいんスけど…」 そこにゆかりが厭きれたような顔で突っ込みを入れる。 「単なるハシャギ過ぎじゃないの?」 順平は、ゆかりを見て言葉を返す。 「んな事言って…ゆかりッチだって、もろバテ気味じゃんか」 「バテるってか、なんか、息苦しいような…。なにコレ…」 自分を襲っている感覚がはっきりしないのか、困惑した顔で順平に答える。 その二人に、美鶴が、影時間は普通よりも何倍も体力を消耗する、と伝えた。 だが、直に慣れるそうだ。 「しかし・・・、想像以上に行けそうじゃないか。 明彦も、うかうかしてられないな」 心持ち明るい表情で美鶴は言った。 (一階だけでバテてんのにか?このクソ高い塔を上りきるのに何年かかるのやら…) 顔には出さなかったが、心の中でそんな事を思っている、承太郎だった。 「フン、ぬかせ」 真田が不敵な表情で、美鶴に言葉を返したところで、美鶴がこちらに歩いてくる。 「今日はもう引き上げる事にします。詳しい事は、明日にしましょう。 済みませんが、明日、仕事が終わってからで構いませんので、我々の寮までご足労願えませんか? 住所は―――」 と寮の場所を教えてきた、なにやら、作戦本部も兼ねているらしい。 承太郎は、メモを取ると、無言で頷いた。 頷いたのを確認すると、美鶴は仲間のほうへ戻っていく。 「それでは、今日は解散にする。 …疲れたからといって、明日学校を休むなよ?」 その言葉を聞いた面々は、思い思いに話しながら、エントランスを後にしようとする。 だが、その時。まだ、階段に背を向けていない承太郎は、見た。 タルタロスへの入り口から、黒い塊が飛び出してくるのを。 「ガルルルルルッ!」 獰猛な声を上げる黒い塊…シャドウは、S.E.E.S.の五人の背後から飛び掛らんとする。 「何ッ、シャドウ!?」 「しまった!」 「ヤベッ?!」 「キャア!」 「…ッ!!」 銃を引き抜き、押し当て、引き金を引き、攻撃、という流れをこの一瞬で行うのは無理がある。 それに5人のうち3人は疲労してバテている。全員が、”最悪”を想像して、目を閉じそうになる。 だがそこに、いつの間にか現れた、承太郎が5人を守るように立ちはだかる。 『一瞬の間にどうやって』、『ペルソナ使いでもないのに無茶だ』、など考える前に、雄々しい声が響き渡る。 スター・プラチナ 「おぉぉぉおおおおおッ!『星の白金』ッ!!」 その刹那、シャドウは無数の拳打を受け、宙に溶けるように消滅した。 「…安心しな。もう大丈夫だ」 承太郎が振り返ると、他の一同は、一様に驚いた顔をし、酸欠の金魚のように口をパクパクさせている。 そんな中、一番早く冷静さを取り戻した美鶴が、承太郎の側で佇む像を指差し、質問をする。 「や…やはり空条先生もペルソナ使い?しかし、先ほどは何故…?」 承太郎の横に立つ、そのヴィジョンは、古代ローマの拳闘士の様な風体で、 宙にたゆたう髪、力強そうな五体、そして精悍な顔立ちをしていた。 何より、朽ちる事のない白金の様な、揺ぎ無い誇りと気高さを感じさせた。 「いいや…」 承太郎は、『ペルソナ使いに間違いない』という周囲の期待を裏切る言葉を吐く。 「俺は…スタンド使いだ」 『スタンド使い』という、耳にした事の無い言葉に、一同は呆気に取られる。 そんな様子を見て承太郎は、 「…やれやれだぜ」 と、帽子のツバを、クイッ、と下げて呟くのだった。 /l_______ _ _ To Be continued | |_| |_| \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ※無気力症 無気力症とは、シャドウに精神を食われた人間が陥る症状である。 すべてに対しての活力を失い、日常会話はおろか、誰かの手を借りなければ、生存すら不可能である
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【TOP】【←prev】【WonderSwan】【next→】 シャーマンキング 未来への意志 タイトル SHAMAN KING シャーマンキング 未来への意志 機種 ワンダースワンカラー専用 型番 SWJ-BANC2D ジャンル RPG 発売元 バンダイ 発売日 2002-8-29 価格 4500円(税別) シャーマンキング 関連 Console Game PS シャーマンキング スピリット オブ シャーマンズ GC シャーマンキング ソウルファイト Handheld Game GB シャーマンキング 超・占事略決 ふんばり編 シャーマンキング 超・占事略決 メラメラ編 GBA シャーマンキング 超・占事略決 2 シャーマンキング 超・占事略決 3 WS シャーマンキング 未来への意志 駿河屋で購入 ワンダースワンカラー専用
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4月22日 ??? 円形のテーブルを挟んだ向かいに座るのは、ぎょろりとした目と、尖った耳、 そしてそれらのインパクトを無視させるほど、特徴的な長い鼻を持った老人。 その横に、プラチナブロンドの髪を持つ女…エレベーターガールのようなポーズを取っている。 承太郎は、その女の、猫のような金色の瞳が、満月の様な妖しい輝きを持っているように感じた。 『ようこそ、我がベルベットルームへ』 目の前の奇妙な老人が言った事から察するに、ここは『ベルベットルーム』と言うのだろう。 だが、『ルーム』と言う印象は受けない。レトロなエレベーターのような造りだ。 承太郎は考える。 (俺は辰巳グランドホテル、21階の2105号室のベッドで寝ていた。 寝ている間に連れ去られるようなヘマはしねぇ…。 こいつは、夢か、でなければ…) 承太郎が考えを巡らせていると、老人が吊り上げた口の端をさらに吊り上げて話し始めた。 「いいえ、これはスタンド能力では、ございません。貴方様の夢の中でございます。 申し遅れました、私の名はイゴール。このベルベットルームの主人でございます。 こちらは助手のエリザベス」 承太郎の思考を読んだように話し出した、イゴールと名乗る老人は、枯れ枝のような手を エリザベスと呼んだ女に向けた。 「エリザベスでございます」 エリザベスの口調は、全く丸で、エレベーターガールそのものだった。 『で、ございます』の『で』と『ざ』にアクセントを置くやつだ。 「人の夢に勝手に入り込んでくるとは、マナーがなってねぇな。目的は何だ」 現状の確認が出来ず、完璧に相手のペースで状況が進んでいるにも拘らず、 承太郎の態度は崩れない、呼吸も脈拍にも乱れが出ない。 相手のペースに飲まれても、自分を乱さない限り、チャンスがある事を知っているのだ。 「それは申し訳ございません。貴方様にお会いするにはこれしか方法がございませんので。 この様な無礼を、働かせていただきました。私共の目的、それは貴方様にお会いする事でございます」 その言葉に、承太郎は、『ふん』、と不敵に笑う。 「俺に会う事?なら、もう果たされたな。そして残念ながら、俺はこれ以上ここに用はねぇ。 早いとこ、帰してくれると有難いんだが・・・?」 承太郎の言葉に、イゴールが少し慌てた調子で引き止める。 「いやいや、もう少々お待ちください。貴方様に危害を加えるような事はございません。 ですので、もうしばらく、話を聞いていただきたい」 正直に言って、この言葉のどこを信用すればいいのかさっぱりだが、承太郎は、一応従う事にした。 「手早く済ませろ。明日から教壇に立たなくちゃならねぇんでな。 それともう一つ、椅子が小せぇ」 普通の、そう、高校生くらいの平均的な体格なら、今、承太郎の座る椅子でピッタリだっただろう。 しかし、人並み以上に恵まれた体格を持つ承太郎には少々どころか、かなり小さかった。 「そ、それは申し訳ございません。ですが、代わりがありませんもので…」 イゴールはしどろもどろになりながら、弁解する。 隣のエリザベスが、少し吹き出していたのは…たぶん気のせいだろう。 それっきり、承太郎はだんまりを決め込んだ。 だが、口ほどに物を言う目が、『さっさと話せ、でなければ帰らせろ』というプレッシャーを放っている。 イゴールは胸元のポケットからハンカチを取り出し、汗をぬぐってから話し出す。 「今から二十年前、貴方様はタロットに導かれ、旅をなされましたな。 そこで暗黒に包まれ、終わりを迎えるはずの『世界』に、貴方様の『星』は一筋の光を射されました。 そして、貴方様は流星の如く『暗黒の世界』を切り裂き、再び『光ある世界』をもたらされました。 貴方様のご活躍がなければ、この世界はとうに終わりを迎えていたでしょう」 「…あれは俺だけの結果ではねぇ。命がけで仲間が残した遺産、そのお陰で得た結果だ…」 承太郎は軽く目を閉じる。 もう、あの時の旅の仲間は、祖父であるジョセフしか残っていない。 アブドゥル、イギー、花京院、そしてポルナレフ・・・。皆逝ってしまった。 ベルベットルームを、しばし静寂が支配する。 「・・・少々前置きが長くなりすぎましたな。 今回お招きした、本当の理由、それは世界を救って頂いた事に対するささやかなお礼をしたかったので、御座います。 貴方様には、これをお渡ししたい」 イゴールが両手を掲げると、何もない空間から、一枚のカードが落ちてくる。 それは宙を舞い、承太郎の手に落ちた。 「これは…?」 承太郎はカードを持ち上げ、裏と表を見てみた。 裏に当たる部分には模様が入っているが、表には何も描かれていない。 347 名前:ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 21 32 46 ID THonmnxi0 「貴方様は旅の中で決して切れる事のない、絆をお結びになられました。 そのカードは、あるべき時にあるべき場所で貴方様に『絆の力』を貸してくれるで御座いましょう。 それでは、また、お会いいたしましょう…」 イゴールが、言い終わると、ベルベットルームが眩い光に包まれる。 「待てッ!」 承太郎は椅子から立ち上がり―――、手を伸ばした先は天井。 周りを見てみれば、何の変わりもない、辰巳グランドホテルの2105室である。 いや、窓から朝日が差していることが、唯一、就寝前と違うところだ。 承太郎は上半身を起こし、呟く。 「妙な夢を見たな…。奇妙なのは日常だけで充分――ん?」 視線の先に、何かある。 それは一枚のカード、何も描かれていないブランクカードだった。 「夢じゃねぇって事か。やれやれだぜ、全く…」 /l_______ _ _ To Be continued | |_| |_| \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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4月23日 影時間 タルタロス エントランス 承太郎の前に、S.E.E.S.メンバーが整列している。 「さて、聞いているとは思うが、お前達に話がある」 承太郎の言葉に、そろそろと下の方から手を上げ、恐る恐る順平が質問をする。 「あ、あの~。やっぱりお説教なのでございますでしょうか?」 滅茶苦茶だが、順平なりに最大に気を使った発言だった。 そんな順平の様子と、程度の差はあれど、表情を硬くしている一同を見て、 承太郎は、尊敬する年下の友人に『承太郎さんは無言のプレッシャーがあってコワイんですよ』 と言われた事を思い出し、ほんの少し、口の端を持ち上げた。 「いや、違う」 その言葉に、今まで固まっていた空気がすっと緩み、メンバーの表情も心持ち明るくなる。 「それじゃ、話って何なんですか?」 小首を傾げながら、ゆかりは承太郎に尋ねる。 その言葉に承太郎は一度ゆっくりと頷いてから話を始めた。 「昨日の戦いで皆も分かったと思うが、現時点ではお前達とは力に差が有りすぎる。 これではお前達の為にならんと思ってな。・・・そこでだ。 俺は外れる事にする」 承太郎の言葉に、2年生達は驚きの、三年生二人は納得の表情を浮かべた。 一番ショックが大きかったのか、順平が、慌てた様子で承太郎に詰め寄る。 「ちょっと待ったァ!外れるも何も、まだこの前一緒になったばっかじゃないっスか! なんスかそれ!特別課外活動部辞めちゃうってことっスか!?」 「落ち着かないか、伊織!空条先生の話はまだ途中だ。 君は早合点と早とちりが多くて困るな…。先生、続きをどうぞ」 承太郎と順平の間に割って入った美鶴が、順平を制し、承太郎に話の続きを求める。 「やれやれ、では続きだ。外れると言っても直接的な戦闘から一時的に外れるだけだ。 探索については、今までと同様に行う。 しかし、俺が行動を共にしちまうと、シャドウどもが尻尾を巻いて逃げちしまうだろう。 だから、お前たち3人の後方から付いていく形をとらせてもらうぜ」 話を聞き終えたゆかりは、眉を寄せて承太郎に質問をする。 「え…本当に着いて来るだけ…なんですか?」 ゆかりの不安と落胆の混じりあった表情を見て、承太郎は心の中で苦笑いを浮かべる。 「いや、流石にそれでは無責任が過ぎるだろうと思ってな。 それに今は教鞭をとる立場だ。生徒を危険に晒しっぱなしと言うのも情けないだろう。 いくつか、手助けをしようと思っている」 承太郎は、それから少し考えて、いくつかの案件を挙げた。 まず、戦闘についてのアドバイスを送ること。 幸いにしてと言うべきか、不幸にもと言うべきか、 承太郎は戦闘に対する経験が豊富だ、出来ない事は無いだろう。 次に戦闘からの逃走の補助。 これもスタープラチナなら、そう難しい事ではない。 「最後に。そうだな、一回の戦闘に一度だけ、戦闘での手助けをする。 以上の事は、リーダーの天道が、桐条を通じて俺に指示してくれ。 ただし、あくまで『手助け』だと言う事を忘れるんじゃねーぜ。 あまりに頼りすぎるようだと、突っぱねるからな」 承太郎は手助け、と言う事を強調した。 今の彼らはあまりに弱い。 ペルソナが成長するもの、だが彼らのペルソナは、まだ歩みを始めたばかりだ。 タルタロスは上に向かうほど強力なシャドウが出る、ならば、自分達の力で強くなって行って貰わねば困る。 とは言え、実際は呼ばれなくとも、真に危険が迫った時は助けに行くつもりなのだが。 「と言う事にしたいんだがな、桐条、天道。 特に桐条には負担をかける事になってすまねーと思う」 承太郎はすまなそうな顔をして、美鶴に向かっていった。 40歳手前の男が、半分にも満たない少女を頼りにしなければならない事を、なんとも情けなく感じていた。 「いえ…。気になさらなくとも結構です。仲介して伝えるだけですから、さほど負担にはなりません。 それに空条先生の提案は、私達には十分すぎると思います」 美鶴の言葉に同意するように、天道もこっくりと首を上下させた。 「美鶴が敵の分析を、空条先生が戦術的な助言を、天道がそれを踏まえて指示を出すと言う事になるのか。 なかなかどうして、バランスが取れたじゃないか。これは面白くなりそうだ」 「うーん、一緒に戦ってもらえないのはやっぱり残念だけど…。 でも見守っててもらえるなら、何とか平気かな」 復帰後の楽しみが増えたと言わんばかりの顔で笑みを浮かべる真田。 残念そうな響きを含んだ声だが、納得した様子のゆかり。 そして、必然的に先ほどテンパッた姿を見せてから、一度も発言していない伊織順平に視線が集まる。 「わーった!分りましたよ!俺も賛成ッスよ! っつーか、ここで駄々こねたら空気詠み人知らずにも程があるっしょ!?」 「なによ、空気詠み人知らずって。馬鹿じゃないの?…てか馬鹿じゃないの?」 「バカって言うなーっ!っつか2回も言うな!」 ゆかりと順平の即席ながら見事な掛け合い漫才。 先程までの空気とのあまりの落差に、誰とも無しに笑いがこぼれ、波紋の様に広がっていった。 ひとしきり笑った後で、美鶴が、空気を切り替えるようにパチンと手を打った。 「さて!そろそろ探索に移るぞ!今日のアタックも任せたぞ、リーダー?」 そう言って天道に問いかけるような視線を向ける。 「…任せてください」 天道は言葉は少ないながらも、力強く返した。 「さっすが、リーダー。頼りになるぅ!」 「茶化すなっての!」 いつも通りの順平とそれを諌めるゆかり。 承太郎は横目で見てから、エントランスの中央から伸びる階段に向き直る。 「さて、それじゃ行くぜ」 こうして今宵も、S.E.E.S.のメンバーはタルタロスという名のシャドウの巣窟に足を踏み入れた。
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4月22日 午前10時45分 授業の合間の短い休み時間。 少しの間の自由を満喫しているのか、教室から廊下まで、ざわざわと騒がしい。 しかし、その中で唯一、張り詰めた緊張感を漂わせているクラスがあった。 高等部2年F組である。 その緊張感の理由。それは少しばかり教室内の声に耳を傾けてみれば理解できるだろう。 「次の授業は・・・あれだよな」 「ああ・・・生物だ」 「休み・・・・・・とか、ないかな?」 「・・・俺、部活の朝錬で早めに出てきたんだけどさぁ。 その時、学校に来てるの見ちまった・・・」 「お前・・・空気読めよ・・・。俺らのかすかな望みを吹き消すなよ」 「・・・ワリィ。でも早めに覚悟しといたほうが良くねぇ?」 「まさか、自分のクラスに『リアル女王の教室』みたいな教師が来るとは思ってなかったわ」 「男だから『帝王の教室』か・・・?」 「響きがより怖いのは何でだろうね・・・」 「何でよりによって、私達クラスが最初の授業なわけ? 事前情報がなくて対応取れないよ・・・」 そう、空条承太郎の最初の授業に当たる、哀れな子羊たちのクラスだ。 昨日の一喝を受け、生徒たちは承太郎を、最恐の新任教師と評価していた。 そんな周りを見て小声で順平がゆかりに漏らす。 「・・・なんか、皆すげぇビビッてんな」 ゆかりは軽く溜め息を吐いて、同じく小声で返す。 「でも、仕方ないんじゃない?第一印象がアレじゃあさ」 思い浮かべる昨日の光景。 「まぁ・・・確かに」 天道の言葉に、2人はそろって頷いた。 新任の挨拶の一発目に一喝である。どれだけ肝が据わっていればできる事であろうか。 キーンコーンカーンコーン。 そんな生徒達を余所に、無情にも授業再開の鐘が鳴る。 教師を待つ室内の生徒は、まるで処刑を待つ囚人のようだ。 時計の秒針の動く音が響く教室の静寂を破るように、ガラリと扉を滑らせ、巨体が教室に入ってくる。 そのままツカツカと教壇に進み、ピタリと止まって、生徒に向き合う。 「自己紹介は昨日もしたが・・・空条承太郎だ。 これから一年、お前達に生物を教える。では出席を取るぜ・・・」 張り詰めた空気の中、授業が進行していく。 生徒は、その殆どが、カチンコチンの堅苦しい授業になると思っていた。 だが・・・実際はその逆であった。 授業の本筋を進めつつ、承太郎自身が海洋調査の時に見た美しい光景や、 面白い生態をもつ海の生物の話などを挟む、飽きの来ない授業だった。 そうして、授業が終わる頃には、一番受けたくない授業筆頭から 次の授業が一番楽しみな授業に格上げされる事になった。 が、やはり甘くはないと認識させる事もあった。それは授業が中盤に差し掛かった頃の事。 (ふぁ。やっべぇ。タルタロス行かなくて暇だったからって、夜更かししすぎたかぁ? 漫画って読み出すと止まらなくなんだよなぁ) 窓の外を見つつ考えているのは、今回の出来事の主役、スチャラカ高校生代表の伊織順平である。 そして何かを思いついた顔で、間を挟んだ隣に座る天道を見る。 (そうだ、後でコイツにノート見せてもらえばいいじゃん。 ゆかりッチは見せてくんねーけど、こいつならいけんじゃねぇ?) と、勝手にノートを見せてもらえる事を前提にした考えを完結させると、机に伏せて眠りに落ちた。 だが、その行動はすでに、承太郎の監視下に置かれていた。 承太郎は、すっとチョークを顔の前に構え、狙いをつける。 「オラァッ!」 気合と共に打ち出されたチョークは、棒手裏剣のような軌道を描き、 順平の頭部に直撃すると同時に粉々に砕け散った。 「ギニャーーー!!?」 順平は当たった場所を押さえて飛び起きた。 かなりのパワーが乗ったチョークを食らったせいか、少し涙目になっている。 「多少の私語は黙認するが、居眠りだけは見逃さねーぜ。 聞いてりゃ多少なりとも頭に入るが、寝ちまったらそうはいかねーからな」 そしてその後も居眠りする生徒は一人の例外もなくチョークの洗礼を受ける事になった。 後日、承太郎の知らないところで『ツキコーのゴルゴ』と呼ばれるようになるのはまた別の話である。 同日 午後5時47分 昼間のうちにSPW財団のスタッフが、荷物や足りない家具などを運び終えている手はずなので、 学園での仕事が終わった後、承太郎はまっすぐ巌戸台分寮に向かった。 寮に着くと、S.E.E.S.のメンバー全員がロビーで承太郎を待っていた。 「ようこそ、巌戸台分寮へ。・・・これから宜しくお願いします、空条先生」 代表して美鶴が承太郎に挨拶をする。 そのほかのメンバーも口々に歓迎の言葉を述べる。 「こちらこそ宜しく頼むぜ。タトゥーとドラッグ以外は口出ししねぇから安心しな。 酒やタバコなんかは、学校以外じゃとやかく言わねーぜ」 堅物そうに見える承太郎から飛び出した言葉に、目を丸くするメンバーたち。 自分の高校時代に、かなり好き勝手やっていたので、その辺は寛大な承太郎であった。 その後、歓迎会も兼ね、皆で少しばかり豪華な夕食をとることになった。 その席で、2年F組の3人が承太郎の授業がとても面白かった事を承太郎に言うと、 『イバルだけで能なしな教師にはなりたくねえだけだぜ』と、小さく笑ってそう返したそうだ。 夕食後は、影時間までそれぞれ自由な時間を過ごし、0時前に学園の正門前に集合する事になった。 同日 影時間 承太郎を含むS.E.E.S.のメンバーがタルタロスのエントランスに集まっている。 戦いの前の緊張を解す為の準備運動(ちなみに真田が提案した)をしている時に、順平が声を上げた。 「あっ、そうだ!そう言えば空条先生の、その・・・スタンドでしたっけ? それの――『能力』、教えてもらえる約束でしたよね?」 その言葉に、全員が運動をやめ、承太郎を見る。 「そうだったな。皆、集まってくれ」 承太郎が声を掛けると、5人は承太郎の前に集まる。 集まったところで、美鶴が質問する。 「先に一つお聞きしておきたいのですが、『近距離格闘タイプ』と仰られましたが、 実際にはどれくらいの力があるのですか? ナビゲートをする立場としては戦力の把握はしておきたいので」 それを聞き、承太郎は軽く腕を組み、少しの間考える。 「そうだな・・・、測ったことが無いから数値で言う事はできんが・・・。 パワーは鉄格子をブチ折って、真っ二つに引き裂ける。 後は猛スピードで迫ってくるコンボイトラックを殴り飛ばした事もある。 スピードは・・・至近距離で発射された銃弾を弾く事くらいは容易い。 精密機械以上の正確な動きも可能だ。 ああ、一度聞いているだろうが、俺のスタンドは『スタープラチナ』と言う」 スタンドの身体能力、とでも言うのか、ともかくスペックを聞き、一同は唖然とする。 「な、何だその反則的な強さは・・・」 驚きの中に悔しさの混じった声で、真田が呟いた。 「じゃ、じゃあ改めて能力のほうをお願いします」 呆然としてしまいそうな空気を変えるため、ゆかりが話を戻した。 「解った。能力は・・・理解しにくいだろうが『最大で5秒間時間を止める事ができる事』だ。 時の止まった空間でなぜ5秒と感じるかは解らんが、ともかく最大5秒だ」 その説明に、順平が不満そうな声を上げる。 「えぇ?たった5秒なんスか?だって、いち、にぃ、さん、しい、ご! って、これだけっすよ?何もできないじゃないっスか」 その言葉に、承太郎は少し苦笑を浮かべる。 そんな順平に真田が呆れた声で言う。 「順平、お前それを本気で言っているのか?」 「え?俺なんかおかしいこと言いました?」 「その前の話を聞いてなかったのか、お前は。 銃弾を弾けるスピードと、猛スピードのトラックを殴り飛ばす力の前に、5秒間『も』無防備でいるんだぞ? 5秒間に何発拳を喰らうかなんて考えたくも無い」 真田の言葉で順平は初めてスタープラチナの能力の恐ろしさを理解し、血の気が引く感覚を味わった。 「む・・・無敵じゃないっスか」 その言葉に承太郎は首を振る。 「強くはあっても、無敵と言う事は有り得ない。相性というものがある。 これはどんなスタンドでも、そしておそらく、お前達のペルソナにも当てはまるだろう。 『調和する二つは完全なる一つに優る』―――お前達の学校にあるオブジェに書いてある言葉だ。良く覚えておくといい。 重要なのは、欠けた部分を補える仲間を持つ事、そして自分の長所を発揮できる闘いのスタイルを持つ事だ」 承太郎が話し終えてから、おずおずとゆかりが口を開く。 「あ、あのー。私からも一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」 「なんだ?答えられることなら答えるぜ」 「何で、学校に赴任するのが遅れたんですか?」 ゆかりとしては普通の、戦いには関係ないごく普通の質問をしたつもりだった。 「昔の仲間の・・・墓参りのために、フランスにな・・・」 懐かしさと悲しさ、そして寂しさのこもった声が、エントランスに響いた。 「あ・・・ごめんなさい」 「いや、いい。知らなかった事だし、聞きたくなるのも理解できるからな」 重苦しい空気がエントランスを支配する。その空気を破るように、バカ明るい声で順平が美鶴に尋ねる。 「きっ、桐条先輩!この前までは、俺とゆかりッチと阿虎でタルタロス攻めてましたけど、 今日からはそこに空条先生を加えるって事でいいっスか?」 順平の頑張りを無駄にしないように、美鶴も明るめの声を心がけて話す。 「あ、ああ。そうだな。その通りだ、伊織。後は現場のリーダーだが・・・」 ゆかりもそれに続く。 「やっぱり、最年長って事で、空条先生?」 そう言われた承太郎に皆の視線が集まる。 「いや・・・。リーダーはころころ変えないほうがいいだろう。 今までやった奴がそのままリーダーでいいと思うぜ」 承太郎は普段通りの声で提案する。 その言葉を受けて、真田が、阿虎の肩をぽんと叩く。 「それじゃあ、これまで通り、お前に任せたぞ。やれるな?」 阿虎は、少し考えるような仕草をした後、力強く頷いた。 その場を締めるように美鶴が一歩前にでて、力強く言う。 「それでは、ここに改めてタルタロスの攻略を宣言する!!」 ―――この瞬間から、真のタルタロス攻略がスタートした――― To Be Countinue ...
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4月21日 今日の影時間は終わった。 タルタロスはビデオを巻き戻すように、その姿を月光館学園へと戻していく。 「ほぇー。ホントに元に戻っちまった。 タルタロスになる時もスゴかったけど、戻るときも同じくらいスゲーなぁ」 「よく考えるとさ、私たちって、寮とか以外は、殆どタルタロスのある場所で生活してんだよね…。 なんか複雑だな…」 「そう言われればそうなるな」 元に戻った月光館学園を見て、順平とゆかりがそれぞれ呟き、 ゆかりの呟きを聞いた真田が、今気付いたのか、同じように呟いた。 校門の前まで来た所で、美鶴は改めて、承太郎に頭を下げる。 「先ほどは危ない所をありがとうございました。 お聞きしたいのですが、先生の仰る『スタンド』とは…?」 『スタンド』という単語に、全員の視線が承太郎に集まる。 当然だろう。 彼らの認識では『シャドウはペルソナでしか倒せない』のだ。 「…今は、もう時間が遅い。明日、お前達の寮へ行く。 少々長くなるんでな、そこで説明する」 承太郎がそう返すと、美鶴は無言で頷いた。 『S.E.E.S.』のメンバーが帰りの道を歩き出したところで、承太郎からの声がかかる。 「ああ、あとだな。幾月理事長には『ペルソナ使いの教師が見つかった』と、言っておいてくれ」 その言葉に順平は首を傾げる。 「えぇ?なんでっスか?先生、ペルソナ使いじゃないんっしょ?」 承太郎は諭す様に順平に言う。 「順平…だったな?確かに、俺はペルソナ使いではない。 だが、先程の通り、影時間に対応して、敵も倒せる。 ペルソナ使いと名乗ってもそう困る事はない。 それに、スタンドってのは説明も含め、いろいろと面倒だ。 正直言って、あまり大勢に知られたくはないんでな」 それだけ言って、承太郎は、さっさと校門から離れて行ってしまった。 美鶴は、しばし考え、ゆっくり口を開く。 「仕方ない。助けてもらった恩もある。 ここは空条先生の頼みを聞いておこう。みんな、いいな?」 美鶴の言葉に、4人が同意するように頷いた。 それから時は過ぎ、今の時間は4月21日、午前10時。 高等部の全生徒が、体育館に集まっている。 理由は新たな生徒会役員の決定の報告と、新生徒会長の挨拶、 そして、遅れてきた生物教師こと、空条承太郎の紹介のためだ。 「はー。勉強しなくていいのはいいんだけどさぁ。 こう、椅子に座りッパってのも、それなりにシンドイよな?」 順平は、隣に座る阿虎に、話しかけた。 「そうだな」 阿虎は頷きとともに、一言だけ返した。 方や多弁、方や無口の二人を見て、ゆかりが呟く。 「ホント、対称的だよね、アンタと天道君って」 その呟きに、順平が突っかかる。 「なぁんだよ、ゆかりッチ。どーいう意味よ、ソレ」 「どーもこーも、そのまんまよ。あ、桐条先輩、出てくるみたい」 ゆかりは、さらっと順平の言葉を受け流すと、壇上に上がってきた美鶴を見ていった。 「おおっと、ヤッベヤベ」 順平が慌てて、前を向くと、体育館内にアナウンスが響く。 「続きまして、生徒会から、新しい役員の紹介があります。 生徒会代表、生徒会長、3年D組、桐条美鶴さん」 「はい」 返事をして、壇の中央に向かう美鶴を見て、ゆかりが溜め息と共に呟く。 「やっぱ先輩に決まったんだ。ま…あの人の人気すごいもんね」 その呟きに答えるように順平も小声で言う。 「なんつっても『桐条』だもんな。オーラ出てるっつーか、近寄り難いっつーか。 しかも『桐条グループ』って、このガッコの母体なんだろ?」 「まぁね。あんま日頃は考えないけどね」 そんな二人の呟きを余所に、壇上の美鶴は、就任の挨拶を始める。 「生徒会長という大役を拝命するにあたり、私の所信をお話ししておきます。 学園がより良くあるために、一人一人の積極性は確かに大事です。 しかし、全員が一つの思いを一年間ずっと切らさずおくのは、簡単ではないでしょう。 大事なのは、それが途絶えても確実に回る仕組みをいかに造っておくかです。 そのために、各自の中の明日への思いを確認し、今、この青春の時をどう過ごすのか。 現実から逃げる事無く、如何にして未来を直視するのか。全てはそれに掛かっています。 私一人の視野では見えないものもたくさんあるでしょう。 充実した学園生活を共にするため、皆さんの知恵と力を貸してください。 よろしくお願いします」 挨拶の終了とともに、体育館内に拍手が響き渡る。 そんな中、ポカンとした顔の順平が、天道に訊ねる。 「すげー…なんだあれ。天道、お前、意味分かった?」 「全然さっぱり」 天道はポーカーフェイスを保ったまま、首を横に振った。 天道の答えを聞き、納得と不安がこもった声で順平が呟く。 「だよな…。住んでる場所が同じったって、距離を感じるな…。 ヤッベー…。オレ、感想とか訊かれたら言えねぇ…」 順平が顔を壇上に戻しかけたところで、天道が言葉を付け足す。 「というか」 「アン?というか、ってなんだよ」 「聞いてなかった。何て言ってた?」 天道の大胆不敵な『聞いてなかった』発言に順平は目を丸くする。 「そ、そうか…。フリーダムだな、お前…。 つーか、訊くなよ…。言えねぇってあんなん…」 そうこうしている間に、美鶴は壇上を去り、体育館に再びアナウンスが響く。 「続きまして、事情により、赴任が遅れられた先生をご紹介いたします」 その言葉に、順平はパッと顔色を変える。 「おッ!コレって空条先生じゃね?」 「ってか、ソレしかないでしょ。事情って何だったんだろうね?」 『事情』という言葉に首を傾げるゆかり。 そんなゆかりに対し、順平は、 「寮に来るって言ってたし、そん時聞いてみたらいいじゃん?」 と、提案した。 「うん、そうだね。そうする」 ゆかりは納得して、壇上に目を戻す。 アナウンスが、承太郎の簡単な説明を行う。 「空条先生は、著名な海洋冒険家であり、博士号も取られています。 この度の赴任は、ポートアイランドの周りの海洋調査も兼ねていらっしゃるそうです。 では、空条先生、一言ご挨拶をお願いします」 その言葉の後から、壇上に上ってくる承太郎。 承太郎の姿を見た生徒達がザワザワと声を上げる。 「スゲー背ぇ高くねぇ?2mくらいあんじゃねーの?」 「ちょっとぉ、カッコ良くない?」 「何でコートなんだ?帽子も被ってるし…」 承太郎は壇の中央で、騒ぎが収まる様子がないのを感じると、スッと息を吸った。 「やかましいッ!短く済ませるから静かにしやがれッ!!」 雷の如き一喝である。体育館内は水を打ったような静寂に包まれる。 「やればできるじゃねーか。名前は空条承太郎。 歳は…必要ねーな。一年間、2年と3年の生物を教える。 以上だ」 そう言ってさっさと壇上から降りてしまった。 「お、おっかねぇー」 マジにびびった顔で呟く順平。 「怒らすと拙いタイプだな、あの人は」 冷静に分析しつつも、ちょっと驚いた顔を見せる天道。 「生物の時間は、なるべく静かに受けましょ。順平、アンタ、気をつけなさいよ」 騒ぎがちな順平に釘をさすゆかり。 そんな騒動がありながらも、21日の昼間は平和に過ぎていった。 4月21日放課後、午後5時 『S.E.E.S.』のメンバーと、幾月、つまりはシャドウについて知るメンバーが、 月光館学園、巌戸台分寮に集まって、一人の人物を待っている。 「ところで、誰なんだい?そのペルソナ使いの教師というのは」 美鶴に幾月が問いかける。 「もう少しでいらっしゃる筈ですから、もうしばらくお待ちください」 その問答の数秒後に、玄関の扉が開く。 「よう」 入ってきた人物を認めて、幾月に驚きが走る。 「く、空条先生!?まさか、桐条君、空条先生がペルソナ使い?!」 「はい、その通りです、理事長」 美鶴の肯定の言葉に続き、真田も口を開く。 「それも、かなり強力な、ですよ。幾月さん。 昨日、危ない所を助けてもらいました」 「真田君、それは本当かい!?」 もう、幾月は驚きっぱなしだ。 「と、いう事だ。いろいろと世話になるな」 全然申し訳なさそうに言う承太郎。 そんな事は気にせずに、幾月は喜びの声を上げる。 「いえいえ!戦力が整うのは喜ばしい事です!そうだ!早く召喚器を用意しなくては! いやー、最近、いろいろ動きがあって、財布が空っぽ。それにすっかり痩せちゃいましたよ。 ほら、よく言うでしょ?『貧乏肥満なし』って」 寒い駄洒落を残し、急いだ様子で幾月は寮を出て行った。 「…なんか、すいません。あれ、理事長の趣味、というかビョーキみたいなもので…」 自分の事ではないが、なんだか申し訳ない気分になったゆかりが謝罪を述べる。 承太郎は、ロビーのソファに座り、静かに首を振った。 「…いや、いい。気にしてねーぜ。さて、約束通り、『スタンド』について話そう」 スタンドという言葉に、いち早く反応したのは順平だった。 「ハイ!ハイハイッ!スタンドとペルソナって何が違うんですか?」 その言葉に、承太郎は口元を手で押さえながら、静かに言う。 「ペルソナってのは、色々覚えたり、力が伸びたりするんだろう? だが、スタンドってのは発動した瞬間に、能力や力なんかが決定される。 例外はあるが、目立つような成長は殆ど見られない」 その言葉に、真田が質問する。 「なら、スタンドというのは成長するペルソナに比べて劣ると?」 その質問に承太郎は首を振る。 「いや、一概にそうとは言い切れん。確かに、一人で様々な事がこなせる、という点では劣る。 しかし、スタンドは最初から物凄く強力な力を持っていたりするからな。 スタンドは、言うなれば…一芸特化。 磨き上げた才能がスタンドとして発現する事もあれば、その才能を補助するスタンドが生まれたりもする。 その人物の心根が反映されたものもある。ただまぁ、全く関係無さそうな力が現れる事もある。 ああ、あとだな、何種類かに分類できる」 「分類?って事は、スタンド使いって一杯いるんですか?」 承太郎はゆかりの疑問に答える。 「ああ。何人も知り合いにスタンド使いが居る。 話を戻すが、分類を簡単に言うとだ。 まず、近距離、中距離、遠距離の三つ。これはスタンドの得意とする距離だ。 次に格闘タイプ、補助タイプ、特殊タイプ、後は群体タイプ。 こっちは得意な戦闘スタイルってところか。大体はこんな感じだ。 本当はもっと面倒なんだが、戦う機会も無いだろうしな、これ位でいいだろう」 承太郎の言葉に何度か頷いた後で、美鶴が質問をする。 「では、空条先生はどういったタイプなのですか?」 「ん。俺か?俺のスタンドは『近距離格闘タイプ』と言った所だ」 ふと見れば、普段無口な天道が、何か言いたげな様子をしている。 「なんだ?」 承太郎が質問を促すと、少し悩む様子を見せた後で口を開く。 「先生の能力って、どんなのですか?」 その言葉に、承太郎の周りの空気が変わる。 「スタンド使いにとって、能力を知られる事は、イコールで弱みを握られる事だ。 知れば対策が取れるからな。だから、殆どが秘密にしている。 話すなら、お前達にだけ、教えようと思う。お前達は、聞いて絶対に話さないと誓えるか?」 承太郎はとても真剣な表情で、5人を見る。 5人も真剣な顔で、承太郎に応える。 「秘密は守ります、必ず」「約束します、誰にも言いません」 「オレも誰にも言わないっス」「私も言いません」「誓います」 美鶴、真田、順平、ゆかり、天道が次々に言った。 それを見た承太郎は、ゆっくりと口を開く。 「わかった。だが、今ここではやめておこう。 次にタルタロスに行く時、エントランスで教える」 それを聞いた順平が不満の声を上げる。 「えぇー!?なんスか、それぇ?」 それに苦笑いしながら承太郎は、 「まぁ、そう言うな」 となだめた。 その後、暫く、これからの事を簡単に話していると、美鶴が思い出したように言う。 「ところで、空条先生。学校にお勤めになられる1年間は、どちらにお住みになられるのですか?」 「ん?辰巳グランドホテルに滞在するつもりだが?」 それを聞いた真田が、何かを思い出すような顔になる。 「確か、辰巳グランドホテルと言えば…」 順平が、真田の言葉に続く。 「めちゃくちゃ高級ホテルじゃないっスか!?」 さらにそれに続くゆかり。 「そこに一年間も?もしかして空条先生ってスゴイお金持ち?」 「さあな」 口元に小さな笑みを浮かべたまま、承太郎はゆかりの質問をはぐらかした。 美鶴は、申し訳無さそうに承太郎に言う。 「あそこと比べては、かなり見劣りしますが、空条先生もこの分寮に住んでいただけませんか? 影時間は機械が動きません。有事の際に、連絡が取れないと困りますので」 それを聞いた承太郎は頷き『解った』と短く返した。 「有難う御座います。部屋は、この寮の裏にある別館の寮長室を用意しておきます」 「ホテルの方は引き払わねばならんな。済まんが、今日、タルタロスへ行くなら、お前達だけで頼む」 「あの、こちらの都合でホテルを引き払っていただくのですから、 桐条グループで、多少金額の面を保障させて頂きたいのですが…」 おずおずと言う美鶴に承太郎は、小さく笑みを浮かべて言う。 「SPW(スピードワゴン)財団はそんなにケチじゃあねぇぜ。それじゃあな」 そう言って、承太郎は寮を去った。 承太郎の言い残したSPW財団と言う言葉に、ゆかりが口をパクパクさせて言う。 「き、桐条先輩、スピードワゴンって」 それに続くように、真田も言う。 「美鶴、あのスピードワゴンか?」 「ああ。空条先生はSPW財団と深い関わりがある。 何でも、御爺様が現在の代表に就いていらっしゃるらしい」 美鶴が告げると、ゆかりと真田はそろって溜め息をつく。 そして、一人だけ置いていかれた感のある順平。 「え?え?何?SPW財団ってそんなスゴイの?」 「伊織。もう少し新聞を読んだほうがいいな。SPW財団はSPW石油を母体とする財団だ。 主に、医療の発展や自然保護に尽力している団体で、その資産は桐条グループが霞んで見えるくらいだ。 と、言えばその凄さが解るか?」 美鶴の言葉に、順平は少し唸ってから口を開く。 「とりあえず、空条先生のバックにスゲー組織がついてるってのは解ったッス」 やっぱりよく解ってない順平であった。 「あっ!」 っと、忘れていたものを思い出したような声を上げるゆかり。 「どうした、岳羽?」 真田はその声に、怪訝な顔をして訊ねる。 「いやその…。大した事じゃないんですけど。 空条先生の遅れてきた理由、聞きそびれちゃったな、って」 ゆかりの言葉で、順平も思い出したのか、膝の辺りをポンと叩いた。 「すっかり忘れてたぜ。桐条先輩は、なんか聞いてないんッスか?」 「いや…。海外に用事があって、としか聞いてないな。 また会うんだ、そのときに聞いてみればいいだろう」 それから暫くして、今日のタルタロスは昨日の疲れも残っている事から取りやめと言う事になり、 皆が、それぞれの部屋に戻っていった。 夜10時過ぎ、辰巳グランドホテル 承太郎は荷解きを殆どしていなかったお陰か、思っていたよりも早く、荷物を纏める事ができた。 明日からの生活と、戦いを考え、少しばかり苦笑いを浮かべて、就寝する。 その晩、承太郎は夢を見た。 黒と白のタイルの敷かれた廊下。そこを滑るような速さで動いている。 その廊下の先で、眩い光に包まれると、いつの間にか自分が椅子に座っている事に気付く。 軽く、頭を振って顔を持ち上げてみると、前に奇妙な雰囲気を纏った人影が二つ。 「ようこそ、我がベルベットルームへ」 /l_______ _ _ To Be continued | |_| |_| \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 月光館学園巌戸台分寮、別館。 そこは本館にはない、キッチンや風呂なんかがある、本館の裏にある建物である。 別館についてはキッチリ設定が存在するので、捏造ではない。念の為。 _
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4月23日 午後7時20分 巌戸台分寮 玄関ロビーに承太郎を除く、S.E.E.S.のメンバー全員が集まっていた。 誰がつけたのか、テレビが取るに足らない情報をノイズと共に垂れ流している。 それを順平がノロノロとソファから立ち、電源を落すと、再びソファにドスンと腰を下ろす。 順平はメンバーの顔を順番に見てから、ポツリと声を漏らした。 「圧倒的だったっスね。 いや、事前に聞いてたから分かってたはず…なんスけど」 順平の言葉に続くように、ゆかりも昨晩目の前で起こった事を思い出しながら口を開く。 「よく、『聞くと見るとじゃ大違い』って言うけど…。昨日ほど実感した事はないよ」 阿虎も、その言葉に同意するようにこっくりと頷く。 そんなS.E.E.S.一年メンバーを横目に、真田は美鶴にそっと問いかける。 「おい、美鶴。お前は様子を見てたんだろ? 俺だけ見ていなくて、状況がつかめん。俺にも教えてくれないか?」 真田は、自分だけ見ていないと言う疎外感からか、若干不満げだ。 美鶴は軽く息を吐くと、1年メンバーに向かって、話しかけた。 「お前達、昨日の空条先生の活躍を、明彦が知りたいそうだ。 私から伝えてもいいのだが、実際に目の前で見た者の方がより鮮明に伝えられるだろう? では、天道、岳羽、順平の順番で説明してやってくれ」 言い終わってから、美鶴は視線で阿虎に話を促した。 話を振られた阿虎は、昨日の出来事を少しの間思い返して、真田に伝える。 「空条先生のスタンド、『スター・プラチナ』の上から打ち下ろしたパンチがシャドウを貫通、 そのまま床に炸裂して、周囲数メートルがクレーターになってました」 「そーそー。あの時は下の階と繋がるかと思ったッスよ。本気で」 阿虎の言葉に、順平が一言付け足す。 続いてゆかり。 「順平、アンタ何の話でも首突っ込んでくるのやめなさいよ。 えーと、私が印象に残っているのは…、シャドウが完璧に怯え切ってたことですね。 もう逃げ場が無くなって、追い詰められて、飛び掛って来て…、その結果は彼の言ったとおりです。 私、シャドウとはいえ、ちょっと同情…しました」 締めに順平。 「生身でも半端ないっス。向かってくるシャドウはスタンド使わずにほとんど自分で相手してたし。 天道が言ってたのだって、ゆかりッチが矢を番えようとした隙を狙ったシャドウに対してなんスから。 あと、状況判断がバツグンッつーんスか?戦ってても周りが良く見えてんスよね、冷静だし」 そこまで聞いて、真田は呆れたような顔で口を開く。 「タルタロスの一部が破壊されても、通常の学校には特に影響は無いんだな・・・。 それはともかく、正に『聞きしに勝る』と言うわけか。 戦力的には大幅にアップだが、しかしな…」 真田は、少しばかり難しい表情を浮かべている。見れば美鶴も似たような様子だ。 「何でッスか?新戦力は超強力。戦力増強、これで安心タルタロス。 いい事尽くめじゃないっスか」 3年生の表情に、順平は疑問の声を上げる。 「戦力的なバランス、と言うものがある。 確かにこのまま、空条先生に引っ張っていってもらえば、攻略は楽だろう。 しかし、それでは我々が成長できない。 未熟なまま上を目指しても、それでは意味が無いんだ。分かるな?」 諭すような口調で美鶴は一年全員に向かって言った。 「そっか…。考えたくないけど、空条先生が戦えない場合だってあるかもしれない。 その時に、私達だけじゃ何もできない。そんな事じゃ確かに困りますもんね」 呟くように言ったゆかりの言葉に一同は同意するように頷いた。 「しかし、実際どうする?」 真田が、当然の言葉を口にする。 いる以上、どこか頼りにしてしまうのは仕方が無い事だ。 そこからなし崩しに、頼る部分が多くなってしまう可能性もある。 「そうだな…」 PiPiPiPiPiPiPiPi! 考えようとした矢先に、携帯電話の着信音がロビーに響く。 「すまない、私だ」 断りを入れて、美鶴は携帯を取り出す。 「はい、桐条ですが…。これは、空条先生。 はい。はい、…分かりました。皆に伝えておきます」 短い会話の後、パチリと携帯電話を閉じる。 「先生から?何の用事でした?」 伺うような声で、阿虎が尋ねる。 「話があるから、今夜タルタロスに集合して欲しいそうだ。 帰りが遅くなりそうなので、空条先生は現地集合と言う事らしい」 美鶴は先ほどの通話の内容を纏めて、皆に教える。 「話・・・ッスか。うわ、昨日の駄目出しとかだったらどうしよ!?」 順平が自分で言った言葉に身震いする。 今の順平の頭には、タルタロスのエントランスで自分を含む1年のメンバーが、 全員正座で説教されている光景が浮かんでいる。 「うっわ。それマジ洒落にならないんですけど。 自分達は頑張っているつもりでも、空条先生から見たらまだまだなトコ沢山あるだろうし。 …ホントにお説教覚悟したほうがいいかな…?」 少しばかり不安そうな顔でゆかりは阿虎を見る。 流石の阿虎といえども『どうでもいい』と返す事はできなかった。
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長編 ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝未来への意思 <連載中>
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60kb以上の長編たちです。といっても管理人が「これは長げぇ」という印象を持っていたら短い作品でも紛れ込んだりしますがご容赦ください。 【職人さん別 Index】 完結した長編達 虹のかなた(ミドリさま) AnotherAttraction BC (NBさま) バーディーと導きの神~暴虐のガロウズ~(17さま) 戦闘神話(銀杏丸さま) 永遠の扉(スターダストさま) 聖少女風流記 ハイデッカさま シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい (一真さま) オーガが鳴く頃に(しぇきさま) フルメタル・ウルヴズ!(名無しさま) ヴィクティム・レッド(ハロイさま) シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイさま) その名はキャプテン・・・(邪神?さま) 脳噛ネウロは間違えない(ハロイさま) ロンギヌスの槍(ハシさま) THE DUSK(さいさま) ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝未来への意思(エニアさま) 遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~(サマサさま) 女か虎か(電車魚さま) フルメタル・ウルフズ(フルフズさま) ダイの大冒険AFTER(ガモンさま) 天体戦士サンレッド(サマサさま) 『L'alba della Coesistenza』(顕正さま) ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない―(邪神?さま) スーパーロボット大戦DOGEZA ~終焉の土下座へ (サマサさま)<連載中> 大長編イカ娘 栄子と山の侵略者 (急襲さま)