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砂鉄の塔-1未完
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砂鉄の悪漢者 種族:獣人族 登場作品:戦女神ZERO、戦女神VERITA、天結いキャッスルマイスター、天結いラビリンスマイスター 解説 砂漠で旅人を襲う、猫獣人の盗賊。 雑感・考察 名前
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砂鉄の国のアリス 原曲 人形裁判 ~ 人の形弄びし少女/the Grimoire of Alice Vocal めらみぽっぷ Lyric RD-sounds 概要 砂鉄の「嘘」で作られたアリスの国で過ごす「僕」と呼ぶアリスと魔理沙の曲。 この曲自体、(祭以外で)最初に作られたアルバムながら、アリス編最後の曲であろう。 考察 アリスはアリスではなく、アリスは魔理沙で魔理沙がアリスである? 魔理沙は「なんらかの理由」により死んだ(ささぐうた -ヒガン・ルトゥール・シンフォニー-)ので、その代わりに人形を作り、その上でアリスは魔理沙になったのであろう。(ヒカリ ~ Miscarried Princess参照。 偽りは偽りでしかなく、人形アリスはその事に気づき、「砂鉄の国」は崩壊したとみるのが 小ネタ 途中、「時計のカチコチ」「ケケケ」と聞こえるが紅魔館関連が魔理沙の死の理由か? コメント欄 ヒカリ~Miscarried Princessの最後の歌詞が『そのあまりにも、拙い人形遊びは、止め処なく続いていく』とあるので、「拙い人形遊び」を関係のない人間を犠牲にして、偽物の魔理沙を産み出す行為とすれば、壊れたのは砂鉄の国ではなく、 -- 名無しさん (2019-05-12 19 27 13) 自我が芽生えてしまった人形の方で、アリスは何度も偽物の魔理沙人形を作り続けていき、偽りの王国は存続する、という風にもとれるかもしれない。 -- 名無しさん (2019-05-12 19 39 09) 名前 コメント
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砂鉄の楼閣(中編)◆/VN9B5JKtM 3. 神速の雷は敵を撃ち貫き Number_Three_"Railgun". パニッシャーから吐き出された弾丸が黒い壁に阻まれる。 その光景を見て、ロベルタは二つの疑問を抱く。 (この壁……あの園崎詩音という女が使用していた銀色の膜に似ていますね) ラッドが現れた時もこの壁が炎を防いで、電撃使いも人形も火傷一つ負っていなかった。 以前ロベルタが殺害した少女も似たような能力を使用していた。ならばこれも同類の能力によるものなのだろうか、それが一つ目。 そしてもう一つの疑問。 (超電磁砲とやらは使わないのでしょうか? その威力次第では撤退も視野に入れていたのですが) ナインの情報にあった超電磁砲。民家を崩すほどの威力を誇るオレンジ色の閃光。 その話の通りなら一撃でも食らえばその時点で勝負が決まりかねないのだが、一向に撃つ気配がない。 (何か使用条件でもあるのか、それとも人を殺したくないとでも思っているのでしょうか……どちらにせよ、いくら強力な武器でも使えなければ唯のガラクタと同じです) 黒い壁に弾丸を撃ち込むロベルタの視界一杯に薔薇の花びらが舞い広がる。 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪。ガルシア坊ちゃまにもお見せしたい光景ですね、と場違いな思考を巡らせながらパニッシャーをかざす。 見た目こそただの花びらだが、その正体は触れたもの全てを切り裂く鋭利な刃物。それが逃げ場を封じるように、一斉にロベルタに襲いかかる。 迫り来る薔薇の大群を巨大な十字架を盾に防ぐ。 視界の端でリヴィオが黒い壁に銃弾を撃ち込み、その直後、撒き散らされた薔薇の花弁に襲われる。 敵の意識がリヴィオに向いている間にロベルタは壁の後ろに回り込む。円を描くように黒い壁を迂回し、少女と人形を捕捉する。 敵の姿を視界に収めたロベルタは足を止めてパニッシャーを構え、髑髏型の引き金を引く。狙うは電撃使いの少女。 十字の先端から無数の弾丸が発射され――少女を守るように割り込んできた黒い壁に飲み込まれるように消えていく。 立ち止まったロベルタに向かって壁の一部が鞭のように伸び、その足元を薙ぎ払う。 ロベルタはこれをバックステップで回避。目標を見失った黒い鞭はそのまま横のビルにぶつかり、ガリガリと耳障りな音を立てながらコンクリートの壁を削り取る。 ちらりと目をやると、黒い鞭がぶつかった辺りには巨大なナイフで切り付けたような傷痕が深々と刻まれていた。 思い通りにいかない現状にロベルタは歯噛みする。 薬を流し込みたい衝動を抑え込み、それが更に苛立ちを加速させる。 ブツリと肉を噛み千切る感触と共に口の中に鉄の味が広がり、食いしばった歯がギシリと音を立てる。 もちろんロベルタも何もかもが思う通りに進むはずが無い事は分かっている。 かつてフローレンシアの猟犬と恐れられ、何人もの人間を殺してきた彼女は予定外の出来事など幾らでも経験している。 だが、今回はあまりにも想定外の事態が重なり過ぎている。 最初の奇襲で確実に殺したはずの二人が無傷で生きていた事も、ラッド・ルッソの突然の乱入も、ナインの暴走も、敵の予想以上の戦闘力も。 いや、それ以前に自分がこの場に呼び出されたことも。 だがまだ状況は二対二、総合的な戦闘力では確実に自分達の方が上。ちょっとした切っ掛けで均衡は崩れ、天秤は自分達の方に傾く。そのはずだ。 なのに攻め切れない。 視線を横にやれば、自分の同盟者も同じように攻めあぐねているのが見えた。 理由は多々ある。 散弾のようにばら撒かれる花弁、機関銃の連射すら防ぎきる黒い壁、そこから鞭のように伸ばされる黒い剣。 だが一番の要因は味方のはずのこの男、リヴィオ・ザ・ダブルファング。 この男との同盟が成立している理由はただ一つ。自分の手にこの男の求める武器、パニッシャーがあるからだ。 逆に言えばこの男にとって、パニッシャーさえ手に入れれば無理に同盟を続けるメリットは無い。即座に単独行動に戻り、他の参加者を殺して回ったとしてもおかしくない。 そしてミュウツーにナインを追うように指示を出したのはリヴィオだ。つまりこの二対二の状況はリヴィオが作り出した事になる。 では何故ミュウツーにナインの後を追わせたのか? ナインが返り討ちにされないか心配したため――あり得ない。自分達は互いに利用し合う関係だ。ナインがやられたとしても切り捨てて三人で同盟を組み直す、それだけだ。 二対一で確実にラッドを仕留めるため――あり得なくはないが、それなら目の前の敵を三人で片付けてから追えばいい。ナインがやられていたとしても三対一だ。 残る可能性は――ロベルタと二人きりになればパニッシャーを奪うチャンスもあるだろうと考えたから。 だとすれば。たとえ目の前の敵に勝利したとしても、その過程で自分が行動不能なほどのダメージを受ければ、この男は間違いなく自分を殺しにかかる。最悪戦闘中に撃たれる可能性もあるため、一瞬たりとも警戒を解く訳にはいかない。 つまり実質的には二対二の戦いなどではなく、二対一対一の三つ巴だ。 ただ勝つだけでは足りない。できるだけ被害を抑えて、リヴィオより優位な状況で勝ちを収めなければならない。 リヴィオの異常な再生力を考えると、時間が経てば経つほど自分の優位性は失われていく。実際、数時間前には胸に大きな傷があったはずだが、今では傷跡すら残さず完治している。 本来ならば一刻も早く敵を殲滅するのが好ましい。多少のダメージは覚悟の上で、黒い壁の左右から同時に突撃したいところなのだが。 ここで敵が電撃使いだという事実がロベルタに二の足を踏ませる。 敵の武器が銃や刃物の類なら急所さえ外せば一撃で戦闘不能になる事はない。 だが雷撃が相手ではそうはいかない。一撃でもまともに受ければ体が麻痺して満足に動けなくなるだろう。 そしてリヴィオが拳銃を武器としているのに対して自分の武器は機関銃。敵がどちらを優先して迎撃するか……考えるまでもない。 雷撃を浴びて倒れ伏す自分に止めを刺すリヴィオ。その想像が頭をよぎり、どうしても思い切った行動に踏み切れない。 ギリギリのところで保っていた均衡が崩れ去る、その時が訪れるのは思ったよりもずっと早かった。 パニッシャーがカチンと音を鳴らし、その先端から吐き出されていた鉛弾の嵐が止む。 この半日、主武装として酷使し続けてきたパニッシャーがついに弾切れを起こした。 予備の弾薬はデイパックの中に入っているが、装填するまでは大きな隙が出来る。当然、相手が大人しく待っててくれるはずも無いだろう。 苛立ちを込めて十字架を地に突き立てる。 パニッシャーの重量とロベルタの膂力により、十字の先端が地に突き刺さる。 予備弾薬を取り出そうとデイパックに手を入れたロベルタの前で、ズズズ、と音を立てながら黒い壁が横にずれる。 その後ろから現れたのは、両手に人形を抱え、その手を前に突き出す電撃使いの少女。 ロベルタに向けて真っ直ぐに伸ばされたその手から。 「行くわよ、真紅っ!」 砲弾のように勢い良く人形が撃ち出され、一瞬にしてロベルタとの距離をゼロにした。 宙を飛ぶ人形の背からパラパラと黒い粉末が零れ落ち、虚空に軌跡を描く。 その隻腕が力強く握り締めているのは、彼女の小柄な体躯には釣り合わない大きな鋏。 目の前に迫った人形が右手を大きく振りかぶり、叩きつけるようにして鋏を振り下ろす。 デイパックから手を抜く暇もない。ロベルタは咄嗟に地に突き立てたパニッシャーを盾にして、人形の一撃を受け止める。 速度を乗せた一撃は小さな人形が繰り出したとは思えないほどに重く、受け止めた十字架が僅かに押し込まれて傾いた。 十字架で鋏と競り合いながらロベルタは考える。 想定外の出来事に対応が一瞬遅れたが、相手が接近戦を挑んでくるのなら好都合だ。 あの電撃使いの少女は自分やロアナプラの住人達とは違い、どう見ても平和な世界の住人だ。 味方を巻き込むこの状況では、あの少女は電撃を使わない、いや、使えない。ロベルタはそう判断した。 その考えは概ね正しい。 例えば今ロベルタの前に居るのが衛宮切嗣ならば、ストレイト・クーガーならば、あるいは橘あすかならば。美琴は電撃を放つ事など出来なかっただろう。 だからロベルタにとってただ一つ誤算だったのは―― ――真紅が電気を通さない人形だった事だ。 参加者についての情報を交換した際、ナインは真紅が人形だという事を話している。もちろん電撃使いの御坂美琴が真紅に説得され、自分達の敵となった事もだ。 ナインはその一部始終を目撃していたため、真紅には電撃が効かない事も知っていた。 だが彼女達四人の中に電撃を武器とする者はなく、美琴が味方である真紅を攻撃するはずも無いだろうと考えたため、その事は話さずに二人の能力について説明するだけにした。 つまり、ロベルタは『人形である真紅に電撃は通じない』という事実を知らなかった。 それが明暗を分けることになる。 左手でパニッシャーを支えながら、右手を黒鍵に伸ばそうとしたロベルタの耳に、パチリ、と火花の音が届く。 信じられない、という思いで顔を上げたロベルタが見たものは、肩まで伸びた茶色の髪からバチバチと火花を散らし不敵に笑う電撃使い。 まさか、という考えを振り払い少女の迎撃に移るが、人形ごと自分を攻撃してくるなどあり得ないと思っていたため、ロベルタの反応が僅かに遅れる。 素早くコルト・ローマンを抜き放ち、美琴の額に狙いをつける。真紅から美琴に、一瞬で狙いを切り替えたのは流石と言うしかないだろう。 だが銃弾の数百倍の速度で迸る雷撃の前にはその一瞬ですら致命的。 視線が、交差する。 ロベルタが引き金を引こうと指に力を込めたその刹那。 音を置き去りにして、雷が駆け抜ける。 角のように逆立つ前髪から放たれた雷撃の槍が、巨大な十字架に吸い込まれ――ロベルタの体中を数億ボルトの電流が駆け巡った。 全身の筋肉が一瞬で麻痺し、エプロンドレスの所々が焼け焦げ、三つ編みの先を縛っていたゴム紐が熱で焼き切れる。 視界はチカチカと明滅し、手からは拳銃が零れ落ちる。膝の力が抜けてガクリと地に崩れる。 墓標のように突き立つ十字の傍らで、ロベルタは己の意識を手放した。 ◇ ◇ ◇ 真紅は目の前に倒れ伏すメイド服の女を見下ろす。 口元に手をかざし、呼吸がある事を確認する。 「大丈夫、息はあるようだわ。そんな事より美琴、服が砂鉄まみれで気持ち悪いのだわ」 美琴達は最初から敵の機関銃が弾切れを起こした瞬間に勝負をかけるつもりでいた。 しかしここで、普通に電撃を放ってもロベルタがパニッシャーを避雷針代わりにして後ろに逃げるのではないか、という問題が発生した。 そこで二人の立てた作戦は、真紅が敵の足を止め美琴が電撃を放つ、というものだ。 だが真紅が普通に敵との距離を詰めても、その間に予備の武装で迎撃されてしまうだろう。 そこで美琴は真紅の背中を砂鉄でコーティングし、超電磁砲の要領で撃ち出した。 もちろん全力を出せば真紅の体が空気摩擦に耐え切れないので手加減はしたが、それでも相当なスピードだ。 ロベルタはパニッシャーで迎撃せざるを得ず、その表面を流れた電流により行動不能に陥った、という訳だ。 「美琴! その傷は……!」 「あー、うん。メッチャクチャ痛いわ」 当然、二人がロベルタに意識を向けている間リヴィオが何もしないはずがない。 黒い壁の操作がおざなりになった隙を突いて、美琴に目掛けてマガジン内の残弾を全て撃ち放った。 美琴も即座に砂鉄の壁で防御したが、その内の一発が左肩に命中し、肉を抉っていた。 傷口から血が溢れ、焼けるような痛みを訴えてくる。 「でも、この程度で学園都市の第三位、超電磁砲の御坂美琴を止められると思ったら大間違いよ」 2. 猟犬の牙は獲物を食らい The_Double_Fang. リヴィオはソードカトラスのマガジンを入れ替えながら状況を分析する。 自分はさしたるダメージを受けていないが、一応の同盟者であるロベルタは敵の電撃で行動不能。 対して自分たちが相手に与えたダメージは電撃使いの肩の傷のみ。 ラッドを追って病院内に消えたナインとミュウツーが戻って来る気配は無い。向こうは向こうで苦戦しているのだろうか。 最初は四対二だったはずが、いつの間にか一対二になっている。 単純に考えて敵との戦力差は二倍。 生存を優先するならば、何とか隙を作って逃げるべき。 (だが、これはチャンスでもある) 元々リヴィオの目的はパニッシャーを入手しラズロに渡す、それだけだ。 ナイン達と同盟を結んだのも、パニッシャーを手に入れるためにはその方が好都合だったからにすぎない。 そして現在、ナインとミュウツーは別行動、ロベルタは電撃で動けない。パニッシャーを手に入れる絶好のチャンスだ。 逃亡か、戦闘か。 リスクとリターンとを天秤にかけ、リヴィオの選んだ選択は―― (ここで逃げる訳にはいかない。電撃使いと人形を始末し、動けないロベルタに止めを刺してパニッシャーを入手する) ――戦闘の続行。 勝算はある。 敵の電撃使いは攻防共に優れた厄介な能力を持つが、それ以外はそこらの一般人と変わりない。 自分のように人並み外れた再生力を持つ訳でも、超人的な身体能力を誇る訳でもない。 現に先ほどの弾丸で大ダメージを受けている。隙を作って急所に弾丸を一発、それだけで殺せる。 もう一人の敵、人形は電撃使いのサポート役としては十分だが、単体ならば大した障害ではない。 薔薇の花弁は切れ味鋭いが、自分の再生力の前では力不足だ。 小柄な体躯の割に力はあるようだが、それもミカエルの眼で戦闘訓練と生体改造手術を受けた自分には遠く及ばないだろう。 一対一なら確実に自分が勝つ。 加えて敵は明らかに疲弊している。 先ほど電撃使いに銃弾を撃ち込んだ時も、最初に比べて黒い壁の動きが鈍っていた。 考えてみればそれも当然だ。最初の奇襲から今に至るまで、敵は自分達との戦闘中ずっと能力を行使しているのだ。あれほどの力を使い続けて疲れが溜まらないはずがない。 とは言うものの、やはり自分の不利は変わらない。 銃弾を阻む黒い壁、鞭のように伸ばされる黒い剣、散弾のようにばら撒かれる花弁、そして未だ満足に動かせない左手。 一丁の拳銃で勝てる相手ではない。 ロベルタの横に突き刺さっているパニッシャー、あれを使えれば話は変わるのかも知れないが、生憎パニッシャーは弾切れだ。 この戦況を引っくり返す一手が必要だ。 その糸口はあの真紅とかいう人形を見て閃いた。 マスター・Cの教え通り、仲間の死で動揺を誘う。 だが心のどこかで躊躇している自分が居た。 (ラズロならそんな事で迷ったりしない。お前の言う通り、やっぱり俺は甘いな……) この期に及んで甘さの残る自分を自嘲する。 その程度で揺らぐのか、と。お前が固めた覚悟はそんなものなのか、と。 そうだ、自分はラズロが戻って来るまで生き抜くと決めたはずだ。 「そう言えば、あの蒼星石とかいう人形、あれもお前の同類なのか?」 「…………おまえ、蒼星石を知っているの?」 「ああ」 感情を押し殺したような冷え切った声。 狙い通り。 「俺が殺したからな」 「真紅ッ!」 電撃使いの叫び声を無視して人形が飛び出して来た。慌てずに狙いを定め、引き金を引く。 手に僅かな反動を残して弾丸が発射され、人形の額を砕く――直前に黒い壁が割って入り、銃弾を防いだ。 それも予想の範囲内、あの女が人形をかばう事ぐらい最初から織り込み済みだ。 本当の狙いは、盾を失った電撃使い。 流れるような動作で銃口をずらし、頭、胸、腹、足を狙った四連射。 電撃使いは壁の後ろに転がり込んでこれを回避し、避け切れなかった銃弾がその右足を貫いた。 「美琴!」 「痛ぅっ……! 真紅、許せないのも当然だけど、少し頭を冷やしなさい」 「ええ、もう大丈夫。ごめんなさい……」 今ので仕留められなかったのは残念だが、確実にダメージは与えられた。 天秤は徐々に傾きつつある。 「ところで私もアンタに一つ聞きたい事があるんだけど」 黒い壁の向こう側で、電撃使いの女が口を開いた。 時間が経てば経つほど自分の傷は回復し、相手は血を流して体力を失う。 相手の意図は分からないが、時間稼ぎの意も込めて続きを待つ。 「アンタがクーガーさんを殺したの?」 ストレイト・クーガー。殺し合い開始直後に病院付近で、そして第二回放送前に地下で、二回に渡ってラズロと激闘を繰り広げ、死闘の果てにラズロと相打った男。 何故この女がラズロとクーガーが戦った事を知っているのか。 疑問に思い、あの時地下に居た連中の顔を思い浮かべようとしたところで、そう言えばあの中の一人がこの女だったな、と思い出す。 あの時とは雰囲気が全く違っているため、今まで別人だと思っていた。 「だったらどうする? 奴の死に様でも聞かせて欲しいのか?」 挑発するように答えを返す。 これで頭に血が昇ってくれれば儲け物だ。 「別に、どうもしないわよ。アンタを倒す理由がまた一つ増えただけ、私がやる事は変わらないもの」 その通りだ。 相手の目的が敵討ちだろうが何だろうが、自分のやるべき事は変わらない。 目の前の障害を排除し、ウルフウッドさんとの再戦に備えてラズロのためにパニッシャーを手に入れる。それだけだ。 「ああ、ついでにもう一つ。アンタの左腕、確か地下で見た時には肩から先が無かったはずだけど、その再生力はアンタの能力?」 「だったら何だ?」 「そう。――――良かった」 その不可解なセリフを訝しむ間もなく。 黒い壁に大穴を穿って飛び出して来た弾丸が、オレンジ色の尾を引いてリヴィオの足元に突き刺さった。 すぐ横の地面が爆ぜ、その衝撃で吹き飛ばされる。一瞬遅れて鳴り響く轟音を聞きながら地を転がる。 起き上がり視線を向けたその先で、まるで砂が流れ込むように、黒い壁に空いた穴が塞がってゆく。 穴が完全に埋め立てられる、その刹那。怒りの篭った女の視線が突き刺さる。 「アンタには相当ムカついてるから、ちょっとやり過ぎちゃうかも知れないけど……。死にはしないって事よね?」 御坂美琴の持つ最強の攻撃手段、超電磁砲。今までの攻撃とは桁違いの威力。 リヴィオの立つ位置があと一歩ずれていたら、間違いなく今の一撃で足を吹き飛ばされていた。 今まであれを使わなかったのは、自分達を殺したくなかったからだろうか。確かにあれは当たり所によっては人の一人や二人、簡単に殺しかねない。 だがロベルタが倒れ、欠けた腕すら復元するほどの再生力を持つリヴィオが残ったため、急所さえ外せば問題ないと判断したようだ。 リヴィオも、まさか自分の再生力が仇になるなどとは夢にも思わなかった。 (あれがナインの言っていた超電磁砲……再生力が制限されている今、あんなものを連発されれば一たまりも無い。やはり、使うしかないか) 残り4発の切り札、エンジェルアーム弾頭。 できれば温存しておきたかったが、ああも凄まじい破壊力を見せ付けられてはそうも言っていられない。 敵の位置は超電磁砲で開いた大穴から確認済みだ。 一発目で黒い壁に穴を空け、二発目で電撃使いを葬り去る。 通常弾頭入りの銃からエンジェルアーム弾頭入りの銃に持ち替える。 その直後、リヴィオに向かって薔薇の花びらが撒き散らされる。 リヴィオはそれを回避――しない。 リヴィオは戦闘中、一つの疑問を抱いていた。 敵は黒い壁に隠れ、こちらからは姿が見えない。だがそれと同時に、敵からこちらの姿を見ることも出来ないはずだ。 ならば敵はどうやって自分達の位置を割り出しているのか? (壁が弾丸を受け止める角度? いや……音、だろうな) 恐らくは銃声や足音などの音から自分達の位置に当たりを付けている、リヴィオはそう予想した。 だが聴覚だけでは正確な位置までは割り出せないため、花弁を撒き散らしたり、黒い剣で薙ぎ払うようにして広範囲を攻撃してきたのだろう。 先ほどの超電磁砲の一撃がリヴィオを捕らえられなかったのも、正確な位置が分からなかったからだと考えれば納得がいく。 身を切り裂く花弁の嵐の中、リヴィオは己の再生力を頼りに、足音を殺してゆっくりと移動する。 数歩、歩みを進めたところで、リヴィオを飲み込もうと黒い壁が迫ってきた。 津波のように、あるいは雪崩のように。もっとも砂の惑星で生まれ育ったリヴィオにはその例えは思いつかなかったが。 ともかくリヴィオはここで勝負を決めようと、電撃使いの居るであろう場所に向けて銃を構えた。 黒い壁が目前にまで迫り、引き金を引こうとして――二度目の超電磁砲が放たれ、数秒前まで自分が居た地面がごっそり抉り取られた。 先の一撃より距離が離れていたため、リヴィオは衝撃によろめくも無様に地に転がるようなことは無かった。 すぐさま体勢を整え、エンジェルアーム弾を撃ち込もうとしたところで。ヴゥゥン、と唸りを上げて、リヴィオの腕に黒い剣が振り下ろされた。 そこでリヴィオも気付く。超電磁砲はリヴィオを狙ったものではなく、あくまで隙を作るための一撃。本命はこの黒い剣。 拳銃を握り締めたままで、切り落とされた手首が地に落ちる。 激痛を無視し、動かない左手を無理矢理に動かして、拳銃を拾うため手を伸ばす。 グリップに手が触れた瞬間、黒い壁の後ろから真っ赤な人形が視界に飛び込んできて。 ズブリ、と。人形の振り下ろした鋏で手首が地に縫い止められる。 「ナイス、真紅!」 サラサラと崩れ落ちる壁の向こうで、バチバチと火花が散る。 鋏が引き抜かれるとほぼ同時。 電撃が、奔った。 リヴィオが意識を取り戻した時には既に敵の姿は消えていた。 自分はどれだけの間意識を失っていたのだろうか。辛うじて呼吸は行えるが、全身が痺れて指一本動かす事が出来ない。 何秒もの時間をかけてゆっくり目を閉じ、開く。まばたき一つするだけでも一苦労だ。 その瞳に映るのは目の前に転がるソードカトラス、自分と同じく地に倒れ伏すロベルタ、そしてその傍らに突き立つパニッシャー。 (負けた、か……。だが、まだだ。まだ、終わった訳じゃない) 自分はまだ死んでいない。武器もすぐそこに転がっている。 倒した相手に止めを刺さず、荷物も放置したまま立ち去るなど考えられない。よほど平和ボケしているのか、あるいはその僅かな時間さえ惜しかったのか。 どちらにせよ好都合だ。 自分の再生力ならもう十数分もあれば動けるようにはなるだろう。そうしたらパニッシャーを奪って、 「やはり群れるのは性に合いませんね」 その甘い考えを嘲笑うように。リヴィオの視線の先でメイド姿の死神が起き上がった。 ガクガクと震える手を支えに体を起こし、フラフラと覚束ない足取りながら、一歩一歩自分の足で地を踏み締めて近づいて来る。 「申し訳ございませんが、現刻を以て貴方方との同盟は破棄させていただきます」 機械のように一切の感情を排した冷徹な声で。 今から自分はお前の敵になると。 今から自分はお前を殺すと。 無慈悲に。無感情に。一切の情け容赦無く。死刑を宣告した。 こめかみにヒヤリと冷たい銃口が押し当てられる。 耳元でガチリと撃鉄を起こす音が響いた。 (ここまでか…………ラズロ……済まない………………最後まで、俺は…………) ――――まぁよ、お前にしちゃ良くやった方じゃねぇのか? 最期に聞こえたその声はただの幻聴か、それとも―― ◇ ◇ ◇ 引き金を引く。 指の動きに連動して撃鉄が起こされ、弾倉が回転する。 撃鉄が落とされ、銃声と共に撃ち出された弾丸が男の頭蓋を砕く。 乾いた音が響くたび男の頭部から血飛沫が舞い、銃身を赤黒く染め上げる。 やがて、全弾を撃ち尽くしたリボルバーが手の中でカチンと空しい音を響かせる。 「これでようやく二人目ですか」 そう呟きながら、ロベルタは数秒前までリヴィオ・ザ・ダブルファングだったものを見下ろす。 この男の再生力がどれほどのものかは知らないが、頭にこれだけの弾丸を撃ち込まれれば流石に生きてはいないだろう。 死体の横に転がる二丁拳銃とデイパックを回収し、パニッシャーと共に自分のデイパックに放り込む。 「欲を言えばあの二人もここで仕留めておきたかったのですが……。武装も増えた事ですし、今はそれで良しとしておきましょう」 そして取り出した黒鍵をリヴィオの首に添える。 痺れで思うように力が入らず多少もたついたが、無事に首を切り落とし回収した首輪を軽く拭ってデイパックに仕舞い込む。 「まずはどこかで休息を取る必要がありますね」 体に痺れが残る今、他の参加者との戦闘は避けたい。 もし今、目の前で死んでいる男と同程度の戦闘力を持つ相手と戦闘になれば。次に命を落とすのは自分の方だ。 逸る心を抑えるべく、錠剤を口に流し込み、ガリガリと噛み砕く。 たどたどしい足取りで、ロベルタは夜の闇の中へと歩き出した。 【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム 死亡】 【残り23人】 ところでこの結末について一つ疑問に思う事がないだろうか。 『何故ロベルタはリヴィオを殺す事が出来たのか?』 いや、この言い方だと誤解を招く恐れがあるので言い直そう。 『何故ロベルタはリヴィオより先に立ち上がることが出来たのか?』 ロベルタが浴びた電撃は、普通の人間ならば数時間は身動きが取れなくなるほどのものだった。にもかかわらず、彼女は僅か十分程度で歩けるほどにまで回復した。 もちろんロベルタには電撃に対する耐性も無ければ、リヴィオのような再生力も無い。 それならば何故、彼女はリヴィオより先に回復を果たす事が出来たのか? その理由は単純、地に突き立ったパニッシャーだ。 確かに美琴の放った雷撃の槍はパニッシャーに直撃し、その表面を伝ってロベルタの体に流れ込んだ。 だが実はその直前、美琴と目が合った瞬間に危険を感じたロベルタは反射的にパニッシャーから手を放していた。 僅かに行動が遅れたため完全に回避する事は出来なかったが、ロベルタが手放したパニッシャーが避雷針の役目を果たし、膨大な電流を大地に流した。 美琴達が危惧した通り、ロベルタはパニッシャーを避雷針にして電撃を防御したのだが、そのまま倒れたロベルタを見た美琴は攻撃が成功したと思い込み、トドメの電流を流す事まではしなかった。 結果、直に電撃を浴びせられたリヴィオよりも、電撃の大半を受け流したロベルタの方が先に立ち上がる事が出来た。 ただそれだけの話だ。 【E-5 北西/一日目 夜】 【ロベルタ@BLACK LAGOON】 【状態】:所々がコゲたメイド服を着用、薬物依存、疲労(中)、右腕に切り傷(応急処置済み) 、肋骨にヒビ、眼鏡なし、三つ編みにほつれ、全身に痺れ 【装備】:コルト・ローマン(0/6)@トライガン・マキシマム、投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero 【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、コルト・ローマンの予備弾35、グロック26(弾、0/10発)@現実世界 謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 45%)、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数0% ロケットランチャーの弾丸数2/2)、パ二ッシャーの予備弾丸 2回分 キュプリオトの剣@Fate/Zero、首輪×2(詩音、リヴィオ) M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×4@トライガン・マキシマム スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、 ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填) 天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム、三代目鬼徹@ワンピース 【思考・状況】 0:痺れが取れるまでどこかで休息を取る。 1:殺し合いに優勝する。 2:必ず生きて帰り、復讐を果たす。 【備考】 ※原作6巻終了後より参加 ※康一の名前はまだ知りません。(よって康一が死んだことも未把握) ※エンジェルアーム弾に気付いていません。(ただし残弾の確認時に他の.45口径弾とは違う事に気付く可能性はあります) 時系列順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) 投下順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) Back Next 砂鉄の楼閣(前編) 御坂美琴 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) 真紅 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ミュウツー 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ラッド・ルッソ 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ブレンヒルト・シルト 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ロベルタ 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) リヴィオ・ザ・ダブルファング 死亡 砂鉄の楼閣(前編) ゼロ 砂鉄の楼閣(後編)
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砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐◆/VN9B5JKtM 3. 神速の雷は敵を撃ち貫き Number_Three_"Railgun". パニッシャーから吐き出された弾丸が黒い壁に阻まれる。 その光景を見て、ロベルタは二つの疑問を抱く。 (この壁……あの園崎詩音という女が使用していた銀色の膜に似ていますね) ラッドが現れた時もこの壁が炎を防いで、電撃使いも人形も火傷一つ負っていなかった。 以前ロベルタが殺害した少女も似たような能力を使用していた。ならばこれも同類の能力によるものなのだろうか、それが一つ目。 そしてもう一つの疑問。 (超電磁砲とやらは使わないのでしょうか? その威力次第では撤退も視野に入れていたのですが) ナインの情報にあった超電磁砲。民家を崩すほどの威力を誇るオレンジ色の閃光。 その話の通りなら一撃でも食らえばその時点で勝負が決まりかねないのだが、一向に撃つ気配がない。 (何か使用条件でもあるのか、それとも人を殺したくないとでも思っているのでしょうか……どちらにせよ、いくら強力な武器でも使えなければ唯のガラクタと同じです) 黒い壁に弾丸を撃ち込むロベルタの視界一杯に薔薇の花びらが舞い広がる。 桜吹雪ならぬ薔薇吹雪。ガルシア坊ちゃまにもお見せしたい光景ですね、と場違いな思考を巡らせながらパニッシャーをかざす。 見た目こそただの花びらだが、その正体は触れたもの全てを切り裂く鋭利な刃物。それが逃げ場を封じるように、一斉にロベルタに襲いかかる。 迫り来る薔薇の大群を巨大な十字架を盾に防ぐ。 視界の端でリヴィオが黒い壁に銃弾を撃ち込み、その直後、撒き散らされた薔薇の花弁に襲われる。 敵の意識がリヴィオに向いている間にロベルタは壁の後ろに回り込む。円を描くように黒い壁を迂回し、少女と人形を捕捉する。 敵の姿を視界に収めたロベルタは足を止めてパニッシャーを構え、髑髏型の引き金を引く。狙うは電撃使いの少女。 十字の先端から無数の弾丸が発射され――少女を守るように割り込んできた黒い壁に飲み込まれるように消えていく。 立ち止まったロベルタに向かって壁の一部が鞭のように伸び、その足元を薙ぎ払う。 ロベルタはこれをバックステップで回避。目標を見失った黒い鞭はそのまま横のビルにぶつかり、ガリガリと耳障りな音を立てながらコンクリートの壁を削り取る。 ちらりと目をやると、黒い鞭がぶつかった辺りには巨大なナイフで切り付けたような傷痕が深々と刻まれていた。 思い通りにいかない現状にロベルタは歯噛みする。 薬を流し込みたい衝動を抑え込み、それが更に苛立ちを加速させる。 ブツリと肉を噛み千切る感触と共に口の中に鉄の味が広がり、食いしばった歯がギシリと音を立てる。 もちろんロベルタも何もかもが思う通りに進むはずが無い事は分かっている。 かつてフローレンシアの猟犬と恐れられ、何人もの人間を殺してきた彼女は予定外の出来事など幾らでも経験している。 だが、今回はあまりにも想定外の事態が重なり過ぎている。 最初の奇襲で確実に殺したはずの二人が無傷で生きていた事も、ラッド・ルッソの突然の乱入も、ナインの暴走も、敵の予想以上の戦闘力も。 いや、それ以前に自分がこの場に呼び出されたことも。 だがまだ状況は二対二、総合的な戦闘力では確実に自分達の方が上。ちょっとした切っ掛けで均衡は崩れ、天秤は自分達の方に傾く。そのはずだ。 なのに攻め切れない。 視線を横にやれば、自分の同盟者も同じように攻めあぐねているのが見えた。 理由は多々ある。 散弾のようにばら撒かれる花弁、機関銃の連射すら防ぎきる黒い壁、そこから鞭のように伸ばされる黒い剣。 だが一番の要因は味方のはずのこの男、リヴィオ・ザ・ダブルファング。 この男との同盟が成立している理由はただ一つ。自分の手にこの男の求める武器、パニッシャーがあるからだ。 逆に言えばこの男にとって、パニッシャーさえ手に入れれば無理に同盟を続けるメリットは無い。即座に単独行動に戻り、他の参加者を殺して回ったとしてもおかしくない。 そしてミュウツーにナインを追うように指示を出したのはリヴィオだ。つまりこの二対二の状況はリヴィオが作り出した事になる。 では何故ミュウツーにナインの後を追わせたのか? ナインが返り討ちにされないか心配したため――あり得ない。自分達は互いに利用し合う関係だ。ナインがやられたとしても切り捨てて三人で同盟を組み直す、それだけだ。 二対一で確実にラッドを仕留めるため――あり得なくはないが、それなら目の前の敵を三人で片付けてから追えばいい。ナインがやられていたとしても三対一だ。 残る可能性は――ロベルタと二人きりになればパニッシャーを奪うチャンスもあるだろうと考えたから。 だとすれば。たとえ目の前の敵に勝利したとしても、その過程で自分が行動不能なほどのダメージを受ければ、この男は間違いなく自分を殺しにかかる。最悪戦闘中に撃たれる可能性もあるため、一瞬たりとも警戒を解く訳にはいかない。 つまり実質的には二対二の戦いなどではなく、二対一対一の三つ巴だ。 ただ勝つだけでは足りない。できるだけ被害を抑えて、リヴィオより優位な状況で勝ちを収めなければならない。 リヴィオの異常な再生力を考えると、時間が経てば経つほど自分の優位性は失われていく。実際、数時間前には胸に大きな傷があったはずだが、今では傷跡すら残さず完治している。 本来ならば一刻も早く敵を殲滅するのが好ましい。多少のダメージは覚悟の上で、黒い壁の左右から同時に突撃したいところなのだが。 ここで敵が電撃使いだという事実がロベルタに二の足を踏ませる。 敵の武器が銃や刃物の類なら急所さえ外せば一撃で戦闘不能になる事はない。 だが雷撃が相手ではそうはいかない。一撃でもまともに受ければ体が麻痺して満足に動けなくなるだろう。 そしてリヴィオが拳銃を武器としているのに対して自分の武器は機関銃。敵がどちらを優先して迎撃するか……考えるまでもない。 雷撃を浴びて倒れ伏す自分に止めを刺すリヴィオ。その想像が頭をよぎり、どうしても思い切った行動に踏み切れない。 ギリギリのところで保っていた均衡が崩れ去る、その時が訪れるのは思ったよりもずっと早かった。 パニッシャーがカチンと音を鳴らし、その先端から吐き出されていた鉛弾の嵐が止む。 この半日、主武装として酷使し続けてきたパニッシャーがついに弾切れを起こした。 予備の弾薬はデイパックの中に入っているが、装填するまでは大きな隙が出来る。当然、相手が大人しく待っててくれるはずも無いだろう。 苛立ちを込めて十字架を地に突き立てる。 パニッシャーの重量とロベルタの膂力により、十字の先端が地に突き刺さる。 予備弾薬を取り出そうとデイパックに手を入れたロベルタの前で、ズズズ、と音を立てながら黒い壁が横にずれる。 その後ろから現れたのは、両手に人形を抱え、その手を前に突き出す電撃使いの少女。 ロベルタに向けて真っ直ぐに伸ばされたその手から。 「行くわよ、真紅っ!」 砲弾のように勢い良く人形が撃ち出され、一瞬にしてロベルタとの距離をゼロにした。 宙を飛ぶ人形の背からパラパラと黒い粉末が零れ落ち、虚空に軌跡を描く。 その隻腕が力強く握り締めているのは、彼女の小柄な体躯には釣り合わない大きな鋏。 目の前に迫った人形が右手を大きく振りかぶり、叩きつけるようにして鋏を振り下ろす。 デイパックから手を抜く暇もない。ロベルタは咄嗟に地に突き立てたパニッシャーを盾にして、人形の一撃を受け止める。 速度を乗せた一撃は小さな人形が繰り出したとは思えないほどに重く、受け止めた十字架が僅かに押し込まれて傾いた。 十字架で鋏と競り合いながらロベルタは考える。 想定外の出来事に対応が一瞬遅れたが、相手が接近戦を挑んでくるのなら好都合だ。 あの電撃使いの少女は自分やロアナプラの住人達とは違い、どう見ても平和な世界の住人だ。 味方を巻き込むこの状況では、あの少女は電撃を使わない、いや、使えない。ロベルタはそう判断した。 その考えは概ね正しい。 例えば今ロベルタの前に居るのが衛宮切嗣ならば、ストレイト・クーガーならば、あるいは橘あすかならば。美琴は電撃を放つ事など出来なかっただろう。 だからロベルタにとってただ一つ誤算だったのは―― ――真紅が電気を通さない人形だった事だ。 参加者についての情報を交換した際、ナインは真紅が人形だという事を話している。もちろん電撃使いの御坂美琴が真紅に説得され、自分達の敵となった事もだ。 ナインはその一部始終を目撃していたため、真紅には電撃が効かない事も知っていた。 だが彼女達四人の中に電撃を武器とする者はなく、美琴が味方である真紅を攻撃するはずも無いだろうと考えたため、その事は話さずに二人の能力について説明するだけにした。 つまり、ロベルタは『人形である真紅に電撃は通じない』という事実を知らなかった。 それが明暗を分けることになる。 左手でパニッシャーを支えながら、右手を黒鍵に伸ばそうとしたロベルタの耳に、パチリ、と火花の音が届く。 信じられない、という思いで顔を上げたロベルタが見たものは、肩まで伸びた茶色の髪からバチバチと火花を散らし不敵に笑う電撃使い。 まさか、という考えを振り払い少女の迎撃に移るが、人形ごと自分を攻撃してくるなどあり得ないと思っていたため、ロベルタの反応が僅かに遅れる。 素早くコルト・ローマンを抜き放ち、美琴の額に狙いをつける。真紅から美琴に、一瞬で狙いを切り替えたのは流石と言うしかないだろう。 だが銃弾の数百倍の速度で迸る雷撃の前にはその一瞬ですら致命的。 視線が、交差する。 ロベルタが引き金を引こうと指に力を込めたその刹那。 音を置き去りにして、雷が駆け抜ける。 角のように逆立つ前髪から放たれた雷撃の槍が、巨大な十字架に吸い込まれ――ロベルタの体中を数億ボルトの電流が駆け巡った。 全身の筋肉が一瞬で麻痺し、エプロンドレスの所々が焼け焦げ、三つ編みの先を縛っていたゴム紐が熱で焼き切れる。 視界はチカチカと明滅し、手からは拳銃が零れ落ちる。膝の力が抜けてガクリと地に崩れる。 墓標のように突き立つ十字の傍らで、ロベルタは己の意識を手放した。 ◇ ◇ ◇ 真紅は目の前に倒れ伏すメイド服の女を見下ろす。 口元に手をかざし、呼吸がある事を確認する。 「大丈夫、息はあるようだわ。そんな事より美琴、服が砂鉄まみれで気持ち悪いのだわ」 美琴達は最初から敵の機関銃が弾切れを起こした瞬間に勝負をかけるつもりでいた。 しかしここで、普通に電撃を放ってもロベルタがパニッシャーを避雷針代わりにして後ろに逃げるのではないか、という問題が発生した。 そこで二人の立てた作戦は、真紅が敵の足を止め美琴が電撃を放つ、というものだ。 だが真紅が普通に敵との距離を詰めても、その間に予備の武装で迎撃されてしまうだろう。 そこで美琴は真紅の背中を砂鉄でコーティングし、超電磁砲の要領で撃ち出した。 もちろん全力を出せば真紅の体が空気摩擦に耐え切れないので手加減はしたが、それでも相当なスピードだ。 ロベルタはパニッシャーで迎撃せざるを得ず、その表面を流れた電流により行動不能に陥った、という訳だ。 「美琴! その傷は……!」 「あー、うん。メッチャクチャ痛いわ」 当然、二人がロベルタに意識を向けている間リヴィオが何もしないはずがない。 黒い壁の操作がおざなりになった隙を突いて、美琴に目掛けてマガジン内の残弾を全て撃ち放った。 美琴も即座に砂鉄の壁で防御したが、その内の一発が左肩に命中し、肉を抉っていた。 傷口から血が溢れ、焼けるような痛みを訴えてくる。 「でも、この程度で学園都市の第三位、超電磁砲の御坂美琴を止められると思ったら大間違いよ」 2. 猟犬の牙は獲物を食らい The_Double_Fang. リヴィオはソードカトラスのマガジンを入れ替えながら状況を分析する。 自分はさしたるダメージを受けていないが、一応の同盟者であるロベルタは敵の電撃で行動不能。 対して自分たちが相手に与えたダメージは電撃使いの肩の傷のみ。 ラッドを追って病院内に消えたナインとミュウツーが戻って来る気配は無い。向こうは向こうで苦戦しているのだろうか。 最初は四対二だったはずが、いつの間にか一対二になっている。 単純に考えて敵との戦力差は二倍。 生存を優先するならば、何とか隙を作って逃げるべき。 (だが、これはチャンスでもある) 元々リヴィオの目的はパニッシャーを入手しラズロに渡す、それだけだ。 ナイン達と同盟を結んだのも、パニッシャーを手に入れるためにはその方が好都合だったからにすぎない。 そして現在、ナインとミュウツーは別行動、ロベルタは電撃で動けない。パニッシャーを手に入れる絶好のチャンスだ。 逃亡か、戦闘か。 リスクとリターンとを天秤にかけ、リヴィオの選んだ選択は―― (ここで逃げる訳にはいかない。電撃使いと人形を始末し、動けないロベルタに止めを刺してパニッシャーを入手する) ――戦闘の続行。 勝算はある。 敵の電撃使いは攻防共に優れた厄介な能力を持つが、それ以外はそこらの一般人と変わりない。 自分のように人並み外れた再生力を持つ訳でも、超人的な身体能力を誇る訳でもない。 現に先ほどの弾丸で大ダメージを受けている。隙を作って急所に弾丸を一発、それだけで殺せる。 もう一人の敵、人形は電撃使いのサポート役としては十分だが、単体ならば大した障害ではない。 薔薇の花弁は切れ味鋭いが、自分の再生力の前では力不足だ。 小柄な体躯の割に力はあるようだが、それもミカエルの眼で戦闘訓練と生体改造手術を受けた自分には遠く及ばないだろう。 一対一なら確実に自分が勝つ。 加えて敵は明らかに疲弊している。 先ほど電撃使いに銃弾を撃ち込んだ時も、最初に比べて黒い壁の動きが鈍っていた。 考えてみればそれも当然だ。最初の奇襲から今に至るまで、敵は自分達との戦闘中ずっと能力を行使しているのだ。あれほどの力を使い続けて疲れが溜まらないはずがない。 とは言うものの、やはり自分の不利は変わらない。 銃弾を阻む黒い壁、鞭のように伸ばされる黒い剣、散弾のようにばら撒かれる花弁、そして未だ満足に動かせない左手。 一丁の拳銃で勝てる相手ではない。 ロベルタの横に突き刺さっているパニッシャー、あれを使えれば話は変わるのかも知れないが、生憎パニッシャーは弾切れだ。 この戦況を引っくり返す一手が必要だ。 その糸口はあの真紅とかいう人形を見て閃いた。 マスター・Cの教え通り、仲間の死で動揺を誘う。 だが心のどこかで躊躇している自分が居た。 (ラズロならそんな事で迷ったりしない。お前の言う通り、やっぱり俺は甘いな……) この期に及んで甘さの残る自分を自嘲する。 その程度で揺らぐのか、と。お前が固めた覚悟はそんなものなのか、と。 そうだ、自分はラズロが戻って来るまで生き抜くと決めたはずだ。 「そう言えば、あの蒼星石とかいう人形、あれもお前の同類なのか?」 「…………おまえ、蒼星石を知っているの?」 「ああ」 感情を押し殺したような冷え切った声。 狙い通り。 「俺が殺したからな」 「真紅ッ!」 電撃使いの叫び声を無視して人形が飛び出して来た。慌てずに狙いを定め、引き金を引く。 手に僅かな反動を残して弾丸が発射され、人形の額を砕く――直前に黒い壁が割って入り、銃弾を防いだ。 それも予想の範囲内、あの女が人形をかばう事ぐらい最初から織り込み済みだ。 本当の狙いは、盾を失った電撃使い。 流れるような動作で銃口をずらし、頭、胸、腹、足を狙った四連射。 電撃使いは壁の後ろに転がり込んでこれを回避し、避け切れなかった銃弾がその右足を貫いた。 「美琴!」 「痛ぅっ……! 真紅、許せないのも当然だけど、少し頭を冷やしなさい」 「ええ、もう大丈夫。ごめんなさい……」 今ので仕留められなかったのは残念だが、確実にダメージは与えられた。 天秤は徐々に傾きつつある。 「ところで私もアンタに一つ聞きたい事があるんだけど」 黒い壁の向こう側で、電撃使いの女が口を開いた。 時間が経てば経つほど自分の傷は回復し、相手は血を流して体力を失う。 相手の意図は分からないが、時間稼ぎの意も込めて続きを待つ。 「アンタがクーガーさんを殺したの?」 ストレイト・クーガー。殺し合い開始直後に病院付近で、そして第二回放送前に地下で、二回に渡ってラズロと激闘を繰り広げ、死闘の果てにラズロと相打った男。 何故この女がラズロとクーガーが戦った事を知っているのか。 疑問に思い、あの時地下に居た連中の顔を思い浮かべようとしたところで、そう言えばあの中の一人がこの女だったな、と思い出す。 あの時とは雰囲気が全く違っているため、今まで別人だと思っていた。 「だったらどうする? 奴の死に様でも聞かせて欲しいのか?」 挑発するように答えを返す。 これで頭に血が昇ってくれれば儲け物だ。 「別に、どうもしないわよ。アンタを倒す理由がまた一つ増えただけ、私がやる事は変わらないもの」 その通りだ。 相手の目的が敵討ちだろうが何だろうが、自分のやるべき事は変わらない。 目の前の障害を排除し、ウルフウッドさんとの再戦に備えてラズロのためにパニッシャーを手に入れる。それだけだ。 「ああ、ついでにもう一つ。アンタの左腕、確か地下で見た時には肩から先が無かったはずだけど、その再生力はアンタの能力?」 「だったら何だ?」 「そう。――――良かった」 その不可解なセリフを訝しむ間もなく。 黒い壁に大穴を穿って飛び出して来た弾丸が、オレンジ色の尾を引いてリヴィオの足元に突き刺さった。 すぐ横の地面が爆ぜ、その衝撃で吹き飛ばされる。一瞬遅れて鳴り響く轟音を聞きながら地を転がる。 起き上がり視線を向けたその先で、まるで砂が流れ込むように、黒い壁に空いた穴が塞がってゆく。 穴が完全に埋め立てられる、その刹那。怒りの篭った女の視線が突き刺さる。 「アンタには相当ムカついてるから、ちょっとやり過ぎちゃうかも知れないけど……。死にはしないって事よね?」 御坂美琴の持つ最強の攻撃手段、超電磁砲。今までの攻撃とは桁違いの威力。 リヴィオの立つ位置があと一歩ずれていたら、間違いなく今の一撃で足を吹き飛ばされていた。 今まであれを使わなかったのは、自分達を殺したくなかったからだろうか。確かにあれは当たり所によっては人の一人や二人、簡単に殺しかねない。 だがロベルタが倒れ、欠けた腕すら復元するほどの再生力を持つリヴィオが残ったため、急所さえ外せば問題ないと判断したようだ。 リヴィオも、まさか自分の再生力が仇になるなどとは夢にも思わなかった。 (あれがナインの言っていた超電磁砲……再生力が制限されている今、あんなものを連発されれば一たまりも無い。やはり、使うしかないか) 残り4発の切り札、エンジェルアーム弾頭。 できれば温存しておきたかったが、ああも凄まじい破壊力を見せ付けられてはそうも言っていられない。 敵の位置は超電磁砲で開いた大穴から確認済みだ。 一発目で黒い壁に穴を空け、二発目で電撃使いを葬り去る。 通常弾頭入りの銃からエンジェルアーム弾頭入りの銃に持ち替える。 その直後、リヴィオに向かって薔薇の花びらが撒き散らされる。 リヴィオはそれを回避――しない。 リヴィオは戦闘中、一つの疑問を抱いていた。 敵は黒い壁に隠れ、こちらからは姿が見えない。だがそれと同時に、敵からこちらの姿を見ることも出来ないはずだ。 ならば敵はどうやって自分達の位置を割り出しているのか? (壁が弾丸を受け止める角度? いや……音、だろうな) 恐らくは銃声や足音などの音から自分達の位置に当たりを付けている、リヴィオはそう予想した。 だが聴覚だけでは正確な位置までは割り出せないため、花弁を撒き散らしたり、黒い剣で薙ぎ払うようにして広範囲を攻撃してきたのだろう。 先ほどの超電磁砲の一撃がリヴィオを捕らえられなかったのも、正確な位置が分からなかったからだと考えれば納得がいく。 身を切り裂く花弁の嵐の中、リヴィオは己の再生力を頼りに、足音を殺してゆっくりと移動する。 数歩、歩みを進めたところで、リヴィオを飲み込もうと黒い壁が迫ってきた。 津波のように、あるいは雪崩のように。もっとも砂の惑星で生まれ育ったリヴィオにはその例えは思いつかなかったが。 ともかくリヴィオはここで勝負を決めようと、電撃使いの居るであろう場所に向けて銃を構えた。 黒い壁が目前にまで迫り、引き金を引こうとして――二度目の超電磁砲が放たれ、数秒前まで自分が居た地面がごっそり抉り取られた。 先の一撃より距離が離れていたため、リヴィオは衝撃によろめくも無様に地に転がるようなことは無かった。 すぐさま体勢を整え、エンジェルアーム弾を撃ち込もうとしたところで。ヴゥゥン、と唸りを上げて、リヴィオの腕に黒い剣が振り下ろされた。 そこでリヴィオも気付く。超電磁砲はリヴィオを狙ったものではなく、あくまで隙を作るための一撃。本命はこの黒い剣。 拳銃を握り締めたままで、切り落とされた手首が地に落ちる。 激痛を無視し、動かない左手を無理矢理に動かして、拳銃を拾うため手を伸ばす。 グリップに手が触れた瞬間、黒い壁の後ろから真っ赤な人形が視界に飛び込んできて。 ズブリ、と。人形の振り下ろした鋏で手首が地に縫い止められる。 「ナイス、真紅!」 サラサラと崩れ落ちる壁の向こうで、バチバチと火花が散る。 鋏が引き抜かれるとほぼ同時。 電撃が、奔った。 ◇ ◇ ◇ ロベルタが目を覚ましたのは彼女が気絶してから二十分ほど経過した頃だった。 最初に視界に入ったものは自分の傍らに突き立つパニッシャー、地に倒れ伏すリヴィオとその横に転がる拳銃だった。どうやら自分に続いてリヴィオも敗北したらしい。 既に敵の姿はなく、どういうつもりか自分達の荷物も手付かずのまま放置されている。 殺し合いを否定する立場なら止めを刺さないというのはまだ分かるが、自分達が拘束も武装解除すらされずに放置されているというのは腑に落ちない。 よほど自分達の力に自信があるのか、あるいはその僅かな手間すら惜しんだのか。 いずれにせよ好都合だ。自分が倒れる直前まで持っていたはずの拳銃を手探りで探し出し、しっかりと握り締める。 (私はまだ死んでいない。奴らに突き立てるための牙も残っている。ならば、私のやるべき事は一つしかありません) まずは一刻も早くこの場から離脱しなければならない。 病院内の戦闘がどのような結果になるかは分からないが、その勝者が誰であろうが自分を発見すれば殺すだろう。 ラッド・ルッソならば嬉々として。ナインやミュウツーならば足手纏いを切り捨て武装を奪うために。 そう、今のロベルタがリヴィオを殺そうとしているように。 全身が痺れて満足に動かせない今、彼等のような強敵に襲われれば命は無い。 麻痺した筋肉を強引に動かし、プルプルと震える両腕を支えにして強引に上体を起こす。 ところで、美琴の放った電流には、常人ならば数時間は身動きが取れなくなるほどの威力が込められていた。 そしてロベルタには電撃に対する耐性も無ければ、リヴィオのような異常な再生力も無い。本来なら今も指一本動かせないはずだ。 では何故、彼女は動けるのか。 その理由は単純、地に突き立ったパニッシャーだ。 確かに美琴の放った雷撃の槍はパニッシャーに直撃し、その表面を伝ってロベルタの体に流れ込んだ。 だが美琴と目が合った瞬間、直感的に危険を感じたロベルタは反射的にパニッシャーから手を放していた。 僅かに行動が遅れたため完全に回避する事は出来なかったが、地に突き立ったパニッシャーが避雷針の役目を果たし、膨大な電流を大地に流した。 電撃の大半が地面に流れた結果、本来ならば数時間は身動きできないはずのロベルタは僅か二十分程度で起き上がる事ができた。 (御当主様、若様……。必ずや……奴らの喉元に喰らいついてみせます) 一言で言えば、ロベルタの鍛えられた直感と超人的な反射神経がダメージを最小限に抑えた、そういう事だ。 「サンタ・マリアの、名に誓い……すべての不義に――鉄槌を!」 ――だからこれは、リヴィオの再生力がそれを上回った、ただそれだけの話。 銃弾が空気の壁を突き破る音と共に、ロベルタの左胸が消失した。 ◇ ◇ ◇ リヴィオが意識を取り戻したのはロベルタが目覚める十分ほど前だ。 そして持ち前の再生力で全身を復元している最中、ロベルタが起き上がろうとしているのに気付いた。 自身はまだ起き上がることはできなかったが、辛うじて動かせる左手で目の前に転がるソードカトラスを掴み取る。 体中が痺れて腕を持ち上げても狙いが定まらないため、グリップを地面につけ、手首の動きだけで銃を傾け、銃口をロベルタに向ける。 幸いマガジンにはエンジェルアーム弾頭が装填されているため、多少狙いが外れても当たりさえすれば十分に致命傷を与えられる。 ブレる手を必死で押さえ込み、狙いを定めて引き金を引く。 銃口から放たれたエンジェルアーム弾頭が、両手をついて起き上がろうとしていたロベルタの左肩から左胸にかけて、ごっそりと削り取った。 左腕の肘から先だけがボトリと転がる。 支えを失った体がぐらりと傾き、ビチャリと水音を立てて地に落ちる。 傷口から溢れ出た鮮血が地面を赤黒く染めていき、辺りに鉄錆にも似た血の臭いが蔓延する。 「やった、か……」 ズルズルと地面を這いずってロベルタの横まで移動し、確かに死んでいる事を確認すると、地面に散らばった荷物を回収する。 死ぬ瞬間まで握り締めていた拳銃、柄のやたら短いナイフ、デイパックに入った大量の荷物。 そして最大の収獲、パニッシャー。 上からロベルタのデイパックを被せるようにして回収し、自分のデイパックに仕舞い込む。 「これで同盟は解散だな」 感情にロベルタの死体を見下ろす。 パニッシャーを手に入れた今、奴らと行動を共にする理由など無い。 奴らは奴らで勝手に動いて参加者を減らしてくれるだろう。ならば次に会うまでは放っておけば良い。 「それにしても、ようやく一人か……。ダメだな、この程度で喜んでるようじゃラズロに笑われちまう」 リヴィオが表に出てから何度も戦闘を繰り返してきたが、その度にラズロとの差を思い知らされた。 劇場では手痛い敗北を喫し、駅前では様子を見ている間にチャンスを逸し、そして今もまた敵に破れ惨めな姿で地に倒れ伏していた。 ようやくリヴィオ・ザ・ダブルファングとして初めての戦果を挙げる事ができたが、それもたまたま自分の方が先に相手の体に鉛弾を撃ち込むことができたからに過ぎない。 もしこれが自分ではなくラズロならば、間違いなくこんな無様は晒さない。 やはり自分ではラズロには遠く及ばない。 だが、そんな自分でもラズロのためにパニッシャーを手に入れる事ぐらいはできた。 (ラズロ、準備は整えた。あとはお前が戻って来れば……) 孤児院での、劇場での闘いの記憶が蘇る。 圧倒的な身体能力差を覆しての敗北。確かに自分では、ダブルファングではウルフウッドさんには勝てない。それは認めよう。 だがラズロならば、トリップオブデスならば。パニッシャーを手にした今、たとえ相手が何者だろうと負ける事など有り得ない、そう確信できる。 (だから、いつでも戻って来い……ラズロ!) 間もなく訪れる決着の気配を感じ、リヴィオは闇の中へと歩を進める。 唯一無二、一心同体のパートナーの帰還を待ち望みながら。 【ロベルタ@BLACK LAGOON 死亡】 【残り23人】 【E-5 北西/一日目 夜】 【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】 【状態】:全身治癒中、右手再生中、背中のロボットアーム故障、全身に痺れ 【装備】:M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×3@トライガン・マキシマム 【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、 ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填) 天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム、三代目鬼徹@ワンピース パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数0% ロケットランチャーの弾丸数2/2)、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム 投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35 グロック26(弾、0/10発)@現実世界、謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%) パ二ッシャーの予備弾丸 2回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero 、首輪(詩音) 【思考・状況】 0:ラズロが戻るまで必ず生き抜く。 1:痺れが取れるまでどこかで休息を取る。できれば右手も治るまで休みたい。 2:参加者の排除。ウルフウッドとヴァッシュに出会ったら決着を付ける? 3:ウルフウッドを強く意識。 【備考】 ※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。 ※ラズロとの会話が出来ません。いつ戻ってくるか、もしくはこのまま消えたままかは不明です。 時系列順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) 投下順で読む Back 砂鉄の楼閣(前編) Next 砂鉄の楼閣(後編) Back Next 砂鉄の楼閣(前編) 御坂美琴 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) 真紅 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ミュウツー 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ラッド・ルッソ 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ブレンヒルト・シルト 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ロベルタ 死亡 砂鉄の楼閣(前編) リヴィオ・ザ・ダブルファング 砂鉄の楼閣(後編) 砂鉄の楼閣(前編) ゼロ 砂鉄の楼閣(後編)
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砂鉄の楼閣(前編)◆/VN9B5JKtM 5. 薔薇の乙女は故人を偲び RozenMaiden_Fifth_Doll. 真紅達があすかと別れてから10分後。 「美琴、抱っこして頂戴」 「え? えっと……こう?」 「抱き方が違う!」 「痛っ! な、何もはたく事ないじゃない」 彼女達は気付かない。 30分後。 「そう言えば美琴、あなたの荷物はクーガーに渡された物なのよね?」 「ええ、そうだけど。それがどうかしたの?」 「じゃああなたの元々持っていた荷物はどうしたの?」 「あ……。橋の傍に置きっ放しで来ちゃったから……多分、ライダー達が回収してると思う……」 「そう……。支給品は何だったか覚えてる?」 「えっと、確か銃弾とおふだよ。衛宮さんは拳銃を持ってたわ。あ、あとレストランを覗いた時に、他に犬のぬいぐるみも衛宮さんの支給品だったみたいな事を言ってたけど。 確か……こんな風に垂れ目で、耳が垂れた感じの」 「!? まさか……くんくん、あなたもここに居ると言うの? 美琴、そのぬいぐるみは今どこに!?」 「え!? えーっと、その……。レストランの中にそれらしき物が真っ二つにされて転がってたような……」 「!?!?!?」 「し、真紅……?」 「ああ、なんてことなの……。くんくん……あなたまで…………」 「ちょ、ちょっと、しっかりして! 真紅!」 彼女達は気付かない。 一時間後。 「それにしても、あすかさん遅いわね……」 「本当、紅茶も淹れずに何をしているのかしら」 「うーん……。あ、薬とか探してるんじゃないかしら? デイパックも持って行ったみたいだし」 「だとしても一言ぐらい断ってから行くべきなのだわ。美琴、探しに行くわよ」 「え、じゃあちょっと待ってて、入れ違いにならないようにメモ残すから。『放送までに戻ります』これで良し、と。って、ちょっと真紅、待ってってば」 彼女達は気付かない。 橘あすかに訪れた不幸にも、病院に迫りつつある脅威にも、四人の殺人者達が手を結んだ事にも。 彼女達はまだ気付かない。 ◇ ◇ ◇ 橘あすかの殺害後、今まで使用していたバズーカを失ったラッド・ルッソは代わりの武器を求め、手に入れたばかりのデイパックを漁っていた。 「あん? 何だこりゃあ、本か? コイツは役に立ちそうにねぇな」 最初に出てきたのは螺湮城教本、第四次聖杯戦争のキャスターの宝具だ。 制限を受けているとは言え、魔術師以外でも使用できるその宝具は十分に有用なのだが、ラッドにはただの本にしか見えない。 取り出した螺湮城教本をハズレと判断し、無造作に自分のデイパックに放り込む。 「お次は、っと。お? コイツは……火炎放射器か? よーっし、次の得物はコイツにするか」 次に出てきたのは火炎放射器。説明書によれば「トーチ」という人物が使用していた物らしい。 たっぷりと燃料の入ったシリンダーがズシリと重い。 どうやらこの武器にはラッドも満足したらしく、新しい玩具を買ってもらった子供のようにはしゃいでいる。 「つーかこんな良いモン持ってたってのに、何でさっきの野郎は使おうともしなかったんだぁ? あれか? 僕にはこの玉があるからこんなものに頼らなくても死にません、とか思ってやがったのか? そうなんだろうなぁ。 まぁ、そんなヌルい考えだから俺みたいな奴にぶっ殺されるんだけどよ。ヒャハハッ」 火炎放射器、そしてあすかのデイパックを自分のデイパックに仕舞い立ち上がる。 流石に何十kgもある火炎放射器を背負って移動するのは骨が折れる。これの出番は獲物を見つけてからだ。 「さぁて……。まずは黒スーツからぶっ殺すか。すぐ黒コゲにしてやるから逃げんじゃねぇぞ?」 殺意をぶつけるべく、ウルフウッドの後を追って西へと走り出す。 ラッドがウルフウッド達を最初の標的に決めたのにはいくつかの理由がある。 まず一つ目の理由は地形の問題だ。 第二回放送後にF-6が禁止エリアとなり、病院から南東への唯一の移動ルートである橋が使えなくなった。 南と東を湖に囲まれているため、現在病院に居る人物が神社以外の施設へ向かうには西か北の方向へと移動するしかない。 つまり自分が西側から病院に行き、もしそこに電気女が居なければ北の方に向かった可能性が高いと言う事だ。 二つ目の理由は、電気女はしばらく病院に留まるだろうと思ったからだ。 自分がさっき殺した男は電気女と一緒に病院に居たが、何らかの理由で別行動を取った。 そしてその最中、黒スーツに電気女を攫われたと勘違いし、奴らを追ってここまで来た。それはほぼ間違いない。 そして自分が見たところ、奴は全身に無数の切り傷を負っていたが、病院に行くほどの大怪我はしていなかった。 つまり電気女、あるいは他の仲間が大怪我を負い、その治療のために病院へ向かった可能性が高い。 そうだとすれば、しばらくは病院で休み体力の回復を図るのではないか、ラッドはそう考えた。 三つ目の理由は、ここで黒スーツを逃がすと次に出会えるのはいつになるか分からないからだ。 上の二つの理由から、電気女は黒スーツを片付けてから病院に向かっても間に合うだろう。 だが黒スーツは「西の方に向かった」という事だけしか分からない。 奴のこれからの移動経路、立ち寄る施設、最終的な目的地、全てが謎だ。 最悪、自分以外の誰かに殺されてしまうかも知れない。 四つ目の理由、これは分かりやすい。単純に追いつけると思ったからだ。 相手は黒スーツの他には女子供が二人に鹿のような生物が一匹。どう考えても黒スーツ以外は足手纏いだ。 奴らは集団で行動している以上、必然的に一番のノロマに合わせたスピードで移動することになる。 黒スーツが他の三人を抱えて移動するという可能性も無くはないが、それだと突然の襲撃に対応できなくなるため可能性としては低いだろう。 ならば奴らの移動スピードは大した事ない。急いで追いかければ今からでも追い着ける、ラッドはそう判断した。 もちろん実際には獣形態のチョッパーが他の三人を背に乗せて移動しているため、ラッドの足では追い着けるはずもない。 もしラッドが獣形態のチョッパーを見ていたら、仲間を背に乗せ地を駆ける姿を見ていたら、ウルフウッド達を追うのは諦めて病院に向かっていた。 だがラッドは小柄な人獣形態で休憩しているところしか見ていないため、チョッパーのスピードも一緒に居た子供と同程度だろうと判断してしまった。 そして最大の理由。ウルフウッドと梨花に対する殺意が、美琴へのそれを上回っていたため。 他にも黒スーツの方が近くに居るだとか、早く火炎放射器をぶっ放したいだとか、様々な理由があったが、やはり決め手となったのはこれだろう。 結果、自分では追いつけないという事すら知らず、ラッドは既に逃げ去ってしまった獲物を追いかけた。 当然だが見つかるはずもない。 もしかしたら隠れてやり過ごすつもりかも知れない、と周囲の建物を虱潰しに探してみたが、やはり見つからない。 自然、ラッドの苛立ちは募る。 「こんだけ探しても見つからねぇってのはどういう事だよ? あの黒スーツの野郎には逃げられちまったって事かぁ!? クソッ! ムカつくぜ。 仕方ねぇ、病院に向かうとするか」 あすかのデイパックを取り出し、その中身を自分のデイパックに流し込む。 空になったデイパックを宙に放り投げ、ストレス発散と試し撃ちを兼ねて火炎放射器の引き金を引く。 噴射口から吐き出された火炎の奔流がデイパックを飲み込み、一瞬の内に焼き尽くした。 「おおおっ!? すげえ威力だなぁ、おい! あっと言う間に消し炭になっちまったぜ! いいねいいねぇ! あの大砲も良かったがコイツも派手で気に入ったぜ! これでまたぶっ殺して回れるからなぁ! あー、早くコイツでヌルい奴らを焼き殺してぇなぁ。自分は死なねぇって思ってる奴は自分が生きたまま焼かれる瞬間、どんな顔するんだろうなぁ。 あぁぁぁあ、早くぶっ殺してぇぜぇぇえ!」 そして、ギラーミンの放送が流れる。 「おいおいおいおい、何だよ何だよ、また13人も死んじまったのかよ!? もう24人しか残ってねぇじゃねぇか! ったくよぉ、どいつもこいつも殺し過ぎじゃねぇのかぁ!? 俺の殺す分がどんどん減ってくじゃねぇか! あああぁぁあ、俺はまだたったの6人しか殺してねぇってのによぉ! 他の奴らは好き勝手に殺しやがって、イラつくぜぇ……! よぉし、決めた! 俺以外に参加者を殺して回ってる野郎が居たらぶっ殺す! そういう奴らはこんなに強い俺が死ぬはずない、なんて思ってやがるだろうしなぁ! おっと、もちろんそれ以外の参加者も見つけたら遠慮なくぶっ殺すぜ! まだまだ殺し足りねぇからなぁ! ん? 待てよ? 要は片っ端からぶっ殺してくって事じゃねぇか! 何だ、結局は今までと変わらねぇなぁ、ヒャハハッ!」 狂った笑いを響かせながら、ラッドは病院へと歩を進める。 「待ってろよ、電気女ぁ。今ぶっ殺しに行ってやるからよぉ!」 ◇ ◇ ◇ 放送終了後、真紅と美琴は病院内にある病室の一つに居た。 「どうなってんのよ……?」 美琴の愕然とした声が病室内に響く。 その声に釣られるように、真紅は名簿に――正確にはその一点、たった今自分の手でチェックを入れた名前に――視線を落とす。 信じられないのも無理はない。真紅も最初は我が耳を疑った。 「何であすかさんの名前が呼ばれてるのよ!」 ついさっきまで行動を共にしていた仲間の死が告げられたのだから。 『橘あすか』 その名が呼ばれた瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。 目の前が真っ暗になり、聴覚は仕事を放棄し、頭はぴたりと思考を停止する。 五感を失い、ぼんやりとした意識だけがふわふわと漂う、そんな感覚。ペンを取り落とさなかった自分を褒めてやりたいぐらいだ。 一拍遅れて自分を取り戻し、その意味を理解すると、胸にぽっかりと穴が空いたような喪失感に包まれた。 次いで襲ってきたのは、ジュンの名が呼ばれた時にも、翠星石と蒼星石の名が呼ばれた時にも味わった、胸を押し潰すような悲しみ。 そして、確かにそこに存在していたはずの絆を無理矢理引き千切られた、そんな理不尽な暴力に対する抑えようも無い怒り。 既に何人もの参加者が死者として名を呼ばれている以上、いつ自分達が死亡者のリストに名を連ねてもおかしくはなかった。 だが、まさかこんな形であすかとの別れが訪れるなど考えもしなかった。 正直言って、まだ実感が湧かない。 実は自分の聞き間違いか何かで、あすかは何事も無かったかのようにひょっこりと姿を現すのではないか、そんな幻想に縋ってしまいたくなる。 (それでも……認めなければならないのね……) できる事ならば、悲しみが癒えるまでこのままじっとしていたい。 だが、この殺し合いでは仲間の死を悲しむ、そんな僅かな時間すら与えられない。 ここで自分が悲しみに飲まれて足を止める訳にはいかない。第一、あすか自身もそれを望まないだろう。 左腕の切断面をそっと撫でる。 (あすか……今一度、あなたの想いにかけて誓うわ。私は私のやり方で、この殺し合いを止めてみせる) 顔を上げた先には、まだ呆然としている美琴の姿がある。 契約の指輪で繋がっているためか、断片的な思考が流れ込んでくる。 また一人、自分を信じた人間が死んでしまった。 また一人、自分のせいで人を死なせてしまった。 恐怖、混乱、悲しみ、自己嫌悪、様々な負の感情がごちゃ混ぜになって濁り切った思考の渦。 まずは混乱の真っ只中にある彼女を落ち着かせなければならない。 彼女を捕らえて放さないドス黒い渦から、手を取って引き上げてやらねばならない。 彼女にとっては酷だろうが、それでもあすかの死を受け入れて先に進まねばならない。 あすかが居ない今、それは自分の役目だ。 「美琴、落ち着きなさい」 「だって、真紅! あすかさんが……」 「今私達がすべき事はあすかの死を嘆き悲しみ時間を費やす事ではないわ。あすかがなぜ殺されたのか、それを考える事が重要ではなくて?」 美琴もそれは分かっているのだろう。まだ納得はしていないという表情ながらも一応は落ち着いたようだ。 「まさか……病院内に誰か居たってこと?」 「その可能性が高いのだわ」 もし何者かが病院内に潜んでいるとすれば、このまま放っておく訳にはいかない。 後からやって来た参加者を襲うかも知れないし、何より仲間を殺されて黙っているなど、自分達の気が済まない。 あすかの遺体も見つけて埋葬したいと思い、真紅達は引き続き病院内を見て回る事にしたのだが。 「誰も居なかったわね……」 「それどころか、あすかの遺体もないのだわ」 「って事は、あすかさんは病院の外で殺されたって事?」 そして今、二人は病院の裏口に居た。 病院内を一通り見て回った二人だが、見つけたのは見知らぬ少年の死体だけで、殺人者もあすかの遺体も見当たらなかった。 まさか殺した相手を埋葬するような殺人者はいないだろう。あすかが病院内に潜んでいた何者かに殺されたのだとすれば、その遺体も病院内のどこかに残っているはずだ。 「でも私達に一言の断りも無く外に出て行くのは不自然なのだわ」 「うーん、それもそうなんだけど……。あ、あいつなら……いや、でもあいつはここに居ないからやっぱり他の誰かが……」 「美琴、何をぶつぶつ言っているの?」 「んー、実は私の学校に『心理掌握(メンタルアウト)』って呼ばれてる超能力者がいるんだけどさ。そいつの能力が読心、洗脳、念話、記憶操作……とまあ精神的な現象ならなんでもできる訳よ」 そこで真紅も美琴の言いたい事に気付く。 精神支配系の超能力者。もし参加者に似たような力を持つ者が居たら。 「つまり、あすかが自分の意思ではなく何者かに操られて外に連れ出されたのではないか、そう言う事ね?」 「うん。あすかさんもアルター能力で一時的に意識を奪う事ぐらいは出来るって言ってたから、有り得なくはないと思うのよね」 確かに、そう考えればあすかが何も言わずに消えた事も辻褄は合う。 だが、そうだとすると、どの程度まで操れるのかが問題になってくる。 もし殺す前にあすかの持つ情報を引き出していたとすれば。自分達の能力や負傷具合、これからの行動方針まで知られてしまったとすれば。 自分達は圧倒的に不利な立場に追い込まれてしまった事になる。 もちろんその最悪の予想通りだとしても、真紅はあすかを責めるつもりなどない。 怒りを向けるべきはあすかではなく、あすかを殺した何者かだ。 「行くわよ、真紅」 美琴が先頭に立って歩き出す。 ギラーミンの放送によれば、残る参加者は24人。殺し合いは予想以上に早く進んでいる。 もはや一分、一秒たりとも時間は無駄にできない。 真紅達は予定を修正して、劇場には向かわずにC-4駅に行く事にした。 (あすか……私も美琴も、あなたが居たおかげで大分救われたのだわ。 あなたの遺志は私達が受け継ぐ。だからゆっくりお休みなさい……) 心の中だけであすかに別れを告げ、前を歩く美琴を追いかけようとして。 爆炎が、辺りを包み込んだ。 4. 狂人は戦火を撒き散らし Four_Murderers_Alliance. ロベルタ、ミュウツー、ナイン、リヴィオ、同盟を結んだ四人はまず最初の目的地を病院へと定めた。 C-4駅から南下して図書館を通り過ぎ、劇場から西へ。 そして病院に到着した時、その裏口から二人の少女が出て来るのを発見した。 事前にナインから情報を得ていた四人には、それが真紅と美琴の二人だとすぐに分かった。 当然、迷うことなくその殺害を決意する。 作戦は驚くほどすんなりと決定した。 まずロベルタがパニッシャーに搭載されているロケットランチャーで砲撃。 さらに距離を詰め、パニッシャーの機関銃で着弾点付近を一掃する。 最後にミュウツーとナインが接近し死体を確認、もし息があれば止めを刺す。 ナインの情報によれば敵は二人とは言えその戦力は侮れない。 最大火力による先制攻撃で反撃の間を与えずに殲滅する、それが四人の選んだ戦法だ。 巨大な十字架から放たれたロケット弾が爆発し、爆音と煙塵を撒き散らす。 絶え間なく吐き出される銃弾が地を抉り、壁を穿つ。 超人的な再生力を持つリヴィオやミュウツーでも生きてはいられないほどの圧倒的な火力、美琴のような一般人なら数秒と経たず肉塊になるはずだ。人形の真紅など跡形も残らないだろう。 体中から血を流して倒れ伏す美琴と粉々に砕け散った真紅、四人はそんな光景を予想していた。 だから爆煙が晴れた時、そこに黒い壁がそびえ立っているのを見た四人は少なからず驚いた。 最初に反応したのはリヴィオ。引き金にかけた指に力を込め、構えていたソードカトラスが銃弾を撃ち出した。 吐き出された弾丸は黒い壁に着弾し、砂に埋もれるようにして壁の中に消えていった。 あの壁が能力なのか支給品なのかは分からないが、最初の爆発を生き延びた敵はあれで銃撃を防いだのだろう。 つまり、少なくともどちらか一人はまだ生きているという事だ。 ミュウツーとナインの二人はそう考え、美琴達に止めを刺すため左右から黒い壁の後ろに回り込み、 (居ない!?) 「居ない!?」 崩落する壁に飲み込まれた。 ◇ ◇ ◇ 美琴は超能力者だが、それ以外は基本的にただの少女だ。いや、頭脳も体力も中学二年生とは思えないほど優れているのだが、それでもやはり一般人の域を出ない。 当然ながら、敵の気配を探るだとか、自分に向けられた殺気を読むなどといった芸当は出来ない。それは真紅も同じだろう。 つまり、美琴達は自分達が狙われていることに気付いていた訳ではない。 では何故奇襲が失敗したのか、そう問われれば、御坂美琴は最強の電撃使い「超電磁砲」だから、と、そう答えるしかないだろう。 科学技術の最先端、学園都市。そこでは何万人もの研究者達が日夜研究に明け暮れている。その研究内容の一つにAIM拡散力場というものがある。 能力者は能力を発動している時以外でも常に周囲に微弱な力を発している。この能力者が無自覚に発している力の事を総称してAIM拡散力場と呼んでいる。 どんな力を発しているかは能力者の力の種類によって変わってくる。例えば発火能力者なら熱量、念動力者なら圧力、という具合だ。 そして電撃使いの美琴が発しているのは――電磁波。 彼女はその反射波を感知することでレーダーのように周囲の動きを察知し、死角からの攻撃にも対応することができる。 美琴達は病院の裏口から外に出た。そしてC-4駅に向かって歩き出したところで、電磁波のレーダーが自分達に向かって高速で飛来する何かの存在を捉えた。 それがロケットランチャーだということまでは分からなかったが、彼女はそれを何者かの攻撃だと判断し、即座に迎撃態勢に入った。 美琴が迎撃準備を完了した時点でロケット弾の着弾まで残りコンマ数秒、常人ならば回避も迎撃も諦めて地面に伏せるしか手がない距離まで迫っていた。 だが彼女は学園都市第三位の超能力者、七人しか居ないレベル5の一人、超電磁砲だ。それだけあれば彼女にとっては十分過ぎる。 飛来物が飛んでくる方向に向けて、電圧にして数億ボルトの雷撃の槍を放つ。 電気刺激を受けたことにより信管が作動し、砲弾は美琴達の10m以上手前で爆発。二人は爆風に煽られ地を転がることになったが、ほぼ無傷でこの初撃を回避することができた。 「真紅、無事!?」 「っ……大丈夫よ。一体何が……?」 「敵よ。真紅、こっち。とりあえず隠れるわよ」 美琴は急いで起き上がると、真紅を抱き上げて建物の陰に隠れる。直後、さっきまで美琴達が立っていた辺りに無数の銃弾が撃ち込まれる。 嵐のように降り注ぐ鉛弾が地面を穿つ。咄嗟に隠れていなければ今頃は……そう考えるとぞっとする。 「容赦ないわね。相手は問答無用で殺しに来てるわよ」 「それで美琴、どうするの? 逃げるなら今のうちだわ」 「逃げる? 冗談はやめてよ。真紅だってそんなつもりはないんでしょ?」 あまりに出来過ぎている。それが美琴の抱いた感想だ。 まずタイミングが良過ぎる。まるで自分達が病院に居るのが分かっていて待ち伏せしていたような、そんな絶妙なタイミングでの襲撃。 そしてもう一つ、容赦が無さ過ぎる。外見だけで言えば、自分達はまともな武器すら持っていない少女と人形だ。それに対してアレはいくらなんでもやり過ぎだ。 偶然病院にやって来た殺人者が自分達を発見し、襲撃したと考えるのは楽観的過ぎるだろう。 だが、例えばこの襲撃者が事前にあすかから情報を引き出していたとしたら? 自分達の動向を監視し、このタイミングで襲撃することも可能だろう。自分達の能力も聞き出しているだろうから、容赦の無さも納得できる。 この襲撃のタイミングとやり方から見て、この襲撃者があすかを殺した可能性が高い。美琴はそう考え、交戦を選択した。 真紅もそれが分かっているのだろう、無言で頷く。 美琴は不敵に笑う。それは彼女がこの場に呼び出されて初めて見せる自信に満ちた笑み。 「私達にケンカを売ったこと、たっぷりと後悔させてやろうじゃない」 周囲の地面から大量の砂鉄をかき集め、壁を作る。 自分達の前ではなく、さっきまで自分達が居た、今も銃撃に晒されている場所に。 この壁は囮だ。 煙が晴れた時にこの壁を見た襲撃者はどう思うか。 最初の砲撃で何とか生き延びた美琴達はこの壁の後ろに身を隠して銃撃をやり過ごしている、そう思うだろう。 となると次に襲撃者が取る行動は大きく分けて二つ。 美琴の超電磁砲のような高威力の攻撃で壁ごと貫くか、素直に壁の後ろに回り込むかだ。 そして美琴は前者の可能性は低いと踏んでいる。 襲撃者が最初からこちらを殺す気で攻撃してきた以上、最初のロケットランチャーによる砲撃、恐らくあれが襲撃者の持つ最大火力だろう。壁を破るつもりならあれを撃ち込んで来るはずだ。 だが実在の火器を使用しているならば当然その弾数は無限ではないし、真紅の薔薇の花弁や美琴の雷撃のような能力だとしてもあれだけの攻撃力、少なからず体力を消耗するはずだ。 さらに、襲撃者から見た美琴達は強固なシェルターに閉じこもった訳ではなく、ただ壁の後ろに隠れているだけだ。 回り込めばそれで済むところをわざわざ前者を選んで弾薬や体力を無駄に消耗する事は無い、よほどの捻くれ者で無い限り襲撃者はそう考えるはずだ。 ならば残るは後者。 壁の後ろに隠れているはずの美琴達の息の根を止めるため、 「居ない!?」 こんな風に近づいて来る。 後はそこを捕らえて雷撃を撃ち込むだけ。 美琴は襲撃者を飲み込むように砂鉄の壁を崩す。 二人の襲撃者は砂鉄に埋もれ、身動きが取れなくなる。 「さて、と。いきなり物騒な真似してくれるじゃない。当然、覚悟はできてるんでしょうね?」 バチバチと火花を散らし、物陰から姿を出す。 襲撃者に向けて雷撃の槍を放とうとして。 「美琴っ!」 真紅に腕を引かれて後ろに倒れこむ。それと同時、連続で銃声が鳴り響き、何かが目の前を高速で通り過ぎた。 その何かが飛んで来た方向に視線を向けると、地下で見たラズロという男が銃口をこちらに向けていて、その横ではバカみたいに巨大な十字架を構えたメイドが射殺すような鋭い目つきでこちらを睨んでいた。 「な、何で四人も居るのよ!?」 美琴の誤算はただ一つ、襲撃者は二人だと思ってしまった事だ。 自身も一時的とは言えナインと手を組んでいた経験があるため、殺人者同士が協力して襲って来る可能性も十分に有り得ると考えていた。 だが残り人数も24人まで減ったこの局面で、まさか四人もの殺人者が手を組んでいるとは夢にも思っていなかった。 そこに油断が生まれた。 二人を生き埋めにした時点で勝利したと思い込んでしまった。 「御坂美琴……やっぱり貴女は危険ね。ここで排除させてもらうわ」 「なっ、ナインさん!?」 砂鉄の山から抜け出したナインとミュウツーが武器を構える。 こうして最初で最後の勝機は潰え、一方的な殺戮劇が幕を開ける。 これより始まるのは戦闘ですらないただの虐殺、勝敗の決まりきったワンサイドゲーム。 そのはずだった。 「ヒャァアッハハハハァッ!!」 この男が居なければ。 爆音に引き寄せられたラッドが、病院の二階の窓を突き破って飛び降りて来る。 その手には火炎放射器。着地と同時に狙いを定め、引き金を引く。 灼熱の炎が、辺りを薙ぎ払う。 ◇ ◇ ◇ 「おい、おいおいおいおいおい! マジかよ! マジかよ!! どうなってんだ、こりゃあよぉ!? 新しい武器も手に入った事だし、あの舐めた電気女をぶっ殺してやろうと思って病院に来た! そしたらよぉ! どういう訳か電気女以外にもあの時のクソメイドに左手が刀になる女、宇宙人野郎にラズロのクソ野郎まで居やがる! おいおいおい、こりゃあマジでヤベェだろ! 俺がぶっ殺してぇ奴らが勢揃いじゃねぇか! つーかテメェら俺抜きで勝手に殺し合ってんじゃねぇよ。テメェらは全員俺がぶっ殺すんだからよぉ。 こいつはやっぱアレか? 遠慮しねぇでここで全員ぶっ殺せ! って、そういう事かぁ!? そうなんだな!? いいぜいいぜ!! 言われるまでもねぇ! テメェら全員まとめてぶっ殺してやるよ! ヒャァッハハッハァ!!」 ラッド・ルッソは狂人である。それは疑いようも無い事実だ。 だが彼は決して考えなしの馬鹿ではない。むしろ常人と比べれば頭の良い部類に入る。 ただその優れた頭脳で四六時中人を殺す事ばかり考えているため、そうは見えないだけだ。 言うなれば思考のベクトルが常人とは違う方に向いている、そういう事だろう。 だから彼は効率良く殺すために作戦を立てもするし、自分の不利を悟れば一旦退いて仕切り直しもする。 火炎放射器は確かに強力な武器だが、銃火器に比べればいくつかの欠点が目立つ。それは前線の兵士が火炎放射器ではなく銃を持っていることからも分かるだろう。 まずその重量。大量の燃料に保存用のタンク、それを発射する機構。比較的軽いものでも合わせて20kgを超える。 次に射程。火炎放射器は銃弾ではなく液体状の燃料に火を点けて放つため、空気抵抗の影響が大きい。 水鉄砲を想像して欲しい。噴射された水は見る見る速度が衰え、やがて最初の勢いを失って地に落ちる。それと同じだ。 それに使用時間。火炎放射器は前述の通り火を点けた液体燃料を噴き付け敵を焼く武器だが、勢い良く炎を噴出するため燃料の消費が激しい。 今のように燃料を出しっ放しにして周囲を薙ぎ払う、などという使い方をしていれば、僅か数十秒で燃料が枯渇してしまう。 そして、背中に大量の燃料を背負っているため、そこに被弾すれば逆に自分が火達磨になってしまう。 「ラッド・ルッソォッ!」 「おぉ? 随分とやる気満々じゃねぇか。ヒャハハッ、いいぜ。まずはテメェからぶっ殺してやるよ!」 ナインが左手のブレードで斬りかかるのを炎で牽制し、ラッドは冷静に思考する。 開けた場所で敵に囲まれている、今のこの状況は良くない。 もっと狭い通路で前方から来る敵だけを相手にする、そんな状況が望ましい。 結果、ラッドは一時撤退を選択した。 自分に対して剥き出しの殺意を叩きつける女、自分が退けばあの女は必ず追って来る、そう確信して。 「ッ! 逃がさない!」 そしてラッドの目論見通り、ナインはその後を追って駆け出す。 ラッドの選んだ狩場、病院内へと。 「チッ、お前はナインを援護しろ! こっちは俺達で片付ける」 リヴィオの指示に従い、ミュウツーもナインを追って病院に入って行く。 そしてもう一人。この場の誰にも気付かれる事なく、病院内に侵入する黒い影があった。 こうして、病院内を舞台とした戦闘が幕を開けた。 時系列順で読む ルートA-1 Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) ルートB-1 Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐 投下順で読む ルートA-1 Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) ルートB-1 Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐 Back Next 的外れジャストミート SideB 御坂美琴 砂鉄の楼閣(中編) 的外れジャストミート SideB 真紅 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ミュウツー 砂鉄の楼閣(中編) バッドエンドは突然に ラッド・ルッソ 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ブレンヒルト・シルト 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ロベルタ 砂鉄の楼閣(中編)砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ リヴィオ・ザ・ダブルファング 砂鉄の楼閣(中編)砂鉄の楼閣(中編) B-1ルート分岐 赤目と黒面(後編) ゼロ 砂鉄の楼閣(中編)
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《黒鉄の弾丸》(くろがねのだんがん) 通常魔法 自分フィールド上に「狙撃手」と名のついたモンスターが表側表示で存在する時、このカードが手札から墓地へ送られた場合、相手ライフに900ポイントダメージを与え、エンドフェイズ時まで相手モンスター1体の攻撃力は900ポイントダウンする。 ―関連項目 【狙撃手】
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砂鉄の王国 タイトル:砂鉄の王国 作者:てるみん 掲載号:2013年夏号、2013年ハロウィン号 ジャンプ用(1),(2) (1) 「……大丈夫。ここまでミスは一つもしてないし、理論も完璧……」 静寂に満ちた薄暗い小部屋の中心に、金髪の少女が一人。彼女の周りには幾何学的な模様の魔法陣が、うっすらと光を放っていた。 彼女は意識を集中させるため、しばらく目を瞑っていたが、時折、まぶたを開いて彼女の目の前に横たわった『人形』を見つめた。 「……ここで失敗するわけにはいかないわ。……この『人形』のパーツには、替えがきかないもの……」 彼女の額からは大量の汗が流れ落ち、それが整った顔の輪郭を辿りながら、ポタポタと床板を叩く。身に纏った蒼のローブはぐっしょりと濡れ、皮膚にべったりとくっついていた。 だが、そんなことは微塵も気にかけず、彼女はひたすらに意識を高め、力を注ぎ続ける。 「私のたった一人の大切な『友達』なんだから……お願い……!」 より一層意識を集中させつつ、短い呪文を唱え始める。魔法陣の光がさらに強まり、照明も何もない部屋を明るく照らす。 「命よ……」 途端に光が『人形』を包みこんだかと思うと、それは一気に『人形』の身体へ吸収されていく。気が付けば、それのちょうど心臓のあたりから、とても力強い光が放たれていた―― ◇ ◇ ◇ 彼女には、『モノに命を宿す』という不思議な能力があった。 それは、とても強力で、しかし同時に、とても危険なものでもあった。 幼少のころ、彼女が一番気に入っていた人形としばらく一緒に遊んでいたら、ある日から、いつの間にかその人形に意志が宿っていた――というのがきっかけだった。最初は無自覚だったのだろう。彼女は町の子供たちにその『人形』を見せた。 「私の大切なお友達を紹介するね。」 『私、マリィっていうの。これからよろしくね!』 あたかも小さな女の子と一緒にいるような感覚で、彼女たちは遊んだ。町の娘は当然のごとく、こぞってその『人形』に興味をもつ。そして彼女たちはそれを欲しがり、それぞれの親に「欲しい」とねだる。大人たちはいつものように、ただ子供たちがおもちゃを欲しがっているだけだろうと思い、適当にあしらっていた。だが、『喋った』『動いた』という、にわかにも信じがたい話を、子供たちの誰もがあまりにも真剣な目をして話すので、大人たちの間でもその『人形』を見に行く人が増え、そして信じられない真実をまのあたりにして、それは一気に噂となり、たちまち町中に広まっていった。 そして中には、彼女に直接、その原因を確かめようとした者も、少なからずいたのだった。 「失礼。君のお人形さんが自意識を持って話しかけてきたというのは、本当かい?」 「自意識……? よくわからないけど、話しかけてきたのは本当よ。」 「そうか……それなら、この人形に同じように喋らせることも……?」 そういって男は疑いの念が晴れないまま、おもむろに鞄の中から、手のひらサイズの、小さなクマの形をしたぬいぐるみを取り出した。 「あ、かわいいぬいぐるみ! それ、私にくれるの?」 「ん? ……ああ、まぁ。」 「やったー!」 彼女はぬいぐるみを受け取るとすぐに、その顔をじっと見つめた。じーっと。 本当にモノが意志を持つのか。彼女が、いや普通の人間がそんな特殊な能力を持つことがあるのか。もともとあの人形に、何か、霊的なものが憑りついていたのではないか―― この男だけではない。喋る奇妙な人形を実際に見た人、噂を耳にした人、町中の誰もが、そう思っていた。そう信じるしかできなかったのだ。 しかし、男の視界に入った『モノ』は、そんな考えを一瞬にして消し去ってしまうほど、非現実的で、理解不能で、何よりも衝撃的であった。 彼女がぬいぐるみと目を合わせて、ほんの数秒。それは一瞬と言ってもいいくらいの短い間に、ぬいぐるみは、どこかぼんやりとした感じの明るい光に包まれ、それがだんだんはっきりとなって、男がこの不可思議な現象を頭で理解するよりも前には、すでに―― 『あ、あれ……えっと、あ、あなたは、誰?』 「こんにちは、クマさん。私、アーシャっていうの。あなたはそこにいるおじさんに、ここまで連れてこられたのよ。」 『えと、アーシャ……オジサン……うん、覚えた。』 男はしばらくの間硬直していたが、ようやく我に返った。 「こ……これは驚いた。やはりこの娘には何か不思議な力があるのか……」 まさかとは思ったが、彼女自身に何か秘密があったなんて。男はまるで夢を見ているような感覚だった。 当然、このことも、大きな噂となって、人から人へと伝えられていったのだった。 こういった事実も相まって、いまだに疑いつつも、しかし徐々に、また着実に、信じる者は増えていった。その不思議な『人形』が、彼女の不思議な力によって作られたものだと噂が広まっていくと、次第に、いろいろな人から、いろいろな『モノ』に、その力を使って欲しいと依頼されるようになった。それは、ぬいぐるみや人形が主だったが、たまに文房具であったり、小道具だったりと、一風変わったものもあった。しかし、それでも彼女は、その『モノ』がなんであろうと、可能な限り応えるようにした。他人に必要とされることが、この上ない幸せだったから。当然、町の子供たちには男女問わずに慕われ、また羨ましがられ、最終的には皆の人気者という立場にまで成り果てた。 そんな日々が過ぎたある日、彼女にまた、一つの依頼が届く。 「この箱の中にあるものに、君の例の力を使ってみてくれないか。中身は……すまない、言えないんだ。それでも可能であれば、お願いしたいのだが。」 「もちろん、いいわよ。」 箱は、彼女の身長の二倍はあるだろう大きさで、とても頑丈そうに見えた。いったい何が入っているのだろうと、彼女は疑問に思いながらも、取りあえずいつものように引き受けることにした。 目に見えなくても、近くに存在する『モノ』であれば、そんなに難しいことではない。彼女にとっては手慣れたこと、もはや仕事のような能力の使用を、今回もきちんとこなそうとした。 瞬間、彼女の身体に、強烈な悪寒が走った。 箱の中の『何か』に、意志を持たせようとすればするほど、おぞましい恐怖が、どこか嘔吐感を伴うような、不快な感情が、一気に彼女を襲う。 「うぅ……くっ……!」 それでも、途中で止めることはできない。せっかく人から頼まれたことだ。自分にしかできない、特別なこと。自分が必要とされていると思うと、何が何でもやってやろうと、その時は思った。 「うぅっ、あぁぁぁ……!」 無理やり身体の内側から、絞り出すように力を放つ。いつもはふとした瞬間に『モノ』に意志が宿っているというのに、今回ばかりは、そうはならなかった。 大きな箱の中から強大な光が放たれる。今までに見たこともないくらい、それは大きくて眩しい光だった。 途端に、全身の力が抜けて、トサッと床に倒れた。ぼやけた彼女の視界に映ったものは、 『人間』――のような何か。 そこで彼女の意識は途絶えた。 (2) ◇ ◇ ◇ 目を覚ますと、そこには見慣れた光景があった。私の部屋だ。今はもう私しかいない、私だけの家。前までは、いろんな人が遊びに来てくれたのに…… あの日、私が意識を失った日、村は悲惨な事になった──らしい。箱の中から出てきた『怪物』が、周りにあるすべての物を無差別に壊していった。運よく私は無傷だったけど、『怪物』を取り押さえようとした大人の人たちの何人かは、圧倒的な力で身体が変な方向に曲げられたり、押しつぶされたりして、それはもう酷い死に方だったって……。 『怪物』は幸い数分で動かなくなったけど、その時には、村はもうめちゃくちゃになって。 それと、箱の中は、若くして亡くなった『人間』が入ってたみたい……。家族の人があまりにも悔しくて、それで私にお願いしてきたんじゃないかって。 ───でも、私が最後に見た『アレ』は、どう考えたって『人間』には見えなかった。ううん、『人間』なんだろうけど、身体の形とか歩き方とか声とか、何もかもが歪すぎて、とても『人間』のそれじゃ……。 これらの話は、全部村長さんから聞いたこと。一通り話した後に村長さんは、私に言った。 「これからはあまり村の者と関わらないでやってくれないか。すまん……」 あの日からだいたい一年。もうひとりぼっちの生活には慣れたけど……まだあの日のことは鮮明に頭に残ってて。 『アーシャ、やっと起きたのね。おはよう』 あ、ひとりぼっちっていうのは嘘かな。ちっちゃい頃からずっと一緒の『この子』がいたね。 「マリィ……おはよう」 私が幼い頃、大好きなお人形さんに無意識に力を使った、初めての『しゃべるお人形さん』。マリィって名前は、買ってもらった時にママと一緒に付けたんだっけ。 誰かにお願いされずに、私が自分の力を使ったのは『マリィ』だけ。だって、とびっきり大切なお人形さんだもの。ほかの子にもやったら特別じゃなくなっちゃうわ。 マリィは前は友だちみたいだったけど、あの日、寂しくて私がひっそりと泣いてた時に、やさしく慰めてくれた時から、いつの間にかママみたいになっちゃって。 私は、あれからずっと自分の力が何なのか、何度も調べようとした。でも、何も手がかりもないし、そんな力を使ってる人なんて聞いたこともないから、何も分からないままだった。 でもある時、パパの書斎を何気なくあさってたら、机の引き出しの中に、一冊の分厚い本と、私のちっちゃい頃の写真が何枚か入っていた。 私を抱いたママが微笑んでる写真や、泣きじゃくってる私が写ってる写真。───私は全然覚えてないけど、パパとママは私のことを、やっぱり大切に思ってくれてたんだな……。 本の中身を見てみると、難しい文字や模様がぎっしり。でも、なんとなく分かるような、自然と頭に入ってくるような……読んでるだけで、そんな不思議な感覚になった。 パパは私の変な力のことを知ってたのかな……? でも、これでこの力が何なのか分かるかもって思った。もう二度と、あんな失敗をしないためにも…… そうして、今。私はまだまだこの力について分からないことだらけだけど、でも、パパの本のおかげで、少しずつ身についてきてる、気がする。 マリィにも手伝ってもらって、いっぱい勉強した。でも何故かもうマリィの方が、ずっとずっと賢くなっちゃって。今は私が教わる側に。 まったくもう、マリィには頭が上がらないなぁ…… 突然、コンコン、と扉をたたく音が聞こえた。まだ起きてからほんの数分しかたってないのに、こんな朝っぱらから誰だろ……。 村の人とほとんど関わりがなくなっちゃった今となっては、私の家に訪ねてくる人なんて、たまに様子を見に来る村長さんか、今でもお野菜とか食べ物を分けてくれる、村の優しい人たちくらいしかいない。 でも、朝早くに来るなんて、もしかして村長さんからの急ぎの用事とかかな? 「マリィ、ちょっと出てくるね」 『いってらっしゃい』 急いで部屋を出て、玄関に向かう。そして、大きな扉を開けると、そこには─── 私と同じくらいの、小さな女の子が立っていた。
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砂鉄の楼閣(前編)◆/VN9B5JKtM 5. 薔薇の乙女は故人を偲び RozenMaiden_Fifth_Doll. 真紅達があすかと別れてから10分後。 「美琴、抱っこして頂戴」 「え? えっと……こう?」 「抱き方が違う!」 「痛っ! な、何もはたく事ないじゃない」 彼女達は気付かない。 30分後。 「そう言えば美琴、あなたの荷物はクーガーに渡された物なのよね?」 「ええ、そうだけど。それがどうかしたの?」 「じゃああなたの元々持っていた荷物はどうしたの?」 「あ……。橋の傍に置きっ放しで来ちゃったから……多分、ライダー達が回収してると思う……」 「そう……。支給品は何だったか覚えてる?」 「えっと、確か銃弾とおふだよ。衛宮さんは拳銃を持ってたわ。あ、あとレストランを覗いた時に、他に犬のぬいぐるみも衛宮さんの支給品だったみたいな事を言ってたけど。 確か……こんな風に垂れ目で、耳が垂れた感じの」 「!? まさか……くんくん、あなたもここに居ると言うの? 美琴、そのぬいぐるみは今どこに!?」 「え!? えーっと、その……。レストランの中にそれらしき物が真っ二つにされて転がってたような……」 「!?!?!?」 「し、真紅……?」 「ああ、なんてことなの……。くんくん……あなたまで…………」 「ちょ、ちょっと、しっかりして! 真紅!」 彼女達は気付かない。 一時間後。 「それにしても、あすかさん遅いわね……」 「本当、紅茶も淹れずに何をしているのかしら」 「うーん……。あ、薬とか探してるんじゃないかしら? デイパックも持って行ったみたいだし」 「だとしても一言ぐらい断ってから行くべきなのだわ。美琴、探しに行くわよ」 「え、じゃあちょっと待ってて、入れ違いにならないようにメモ残すから。『放送までに戻ります』これで良し、と。って、ちょっと真紅、待ってってば」 彼女達は気付かない。 橘あすかに訪れた不幸にも、病院に迫りつつある脅威にも、四人の殺人者達が手を結んだ事にも。 彼女達はまだ気付かない。 ◇ ◇ ◇ 橘あすかの殺害後、今まで使用していたバズーカを失ったラッド・ルッソは代わりの武器を求め、手に入れたばかりのデイパックを漁っていた。 「あん? 何だこりゃあ、本か? コイツは役に立ちそうにねぇな」 最初に出てきたのは螺湮城教本、第四次聖杯戦争のキャスターの宝具だ。 制限を受けているとは言え、魔術師以外でも使用できるその宝具は十分に有用なのだが、ラッドにはただの本にしか見えない。 取り出した螺湮城教本をハズレと判断し、無造作に自分のデイパックに放り込む。 「お次は、っと。お? コイツは……火炎放射器か? よーっし、次の得物はコイツにするか」 次に出てきたのは火炎放射器。説明書によれば「トーチ」という人物が使用していた物らしい。 たっぷりと燃料の入ったシリンダーがズシリと重い。 どうやらこの武器にはラッドも満足したらしく、新しい玩具を買ってもらった子供のようにはしゃいでいる。 「つーかこんな良いモン持ってたってのに、何でさっきの野郎は使おうともしなかったんだぁ? あれか? 僕にはこの玉があるからこんなものに頼らなくても死にません、とか思ってやがったのか? そうなんだろうなぁ。 まぁ、そんなヌルい考えだから俺みたいな奴にぶっ殺されるんだけどよ。ヒャハハッ」 火炎放射器、そしてあすかのデイパックを自分のデイパックに仕舞い立ち上がる。 流石に何十kgもある火炎放射器を背負って移動するのは骨が折れる。これの出番は獲物を見つけてからだ。 「さぁて……。まずは黒スーツからぶっ殺すか。すぐ黒コゲにしてやるから逃げんじゃねぇぞ?」 殺意をぶつけるべく、ウルフウッドの後を追って西へと走り出す。 ラッドがウルフウッド達を最初の標的に決めたのにはいくつかの理由がある。 まず一つ目の理由は地形の問題だ。 第二回放送後にF-6が禁止エリアとなり、病院から南東への唯一の移動ルートである橋が使えなくなった。 南と東を湖に囲まれているため、現在病院に居る人物が神社以外の施設へ向かうには西か北の方向へと移動するしかない。 つまり自分が西側から病院に行き、もしそこに電気女が居なければ北の方に向かった可能性が高いと言う事だ。 二つ目の理由は、電気女はしばらく病院に留まるだろうと思ったからだ。 自分がさっき殺した男は電気女と一緒に病院に居たが、何らかの理由で別行動を取った。 そしてその最中、黒スーツに電気女を攫われたと勘違いし、奴らを追ってここまで来た。それはほぼ間違いない。 そして自分が見たところ、奴は全身に無数の切り傷を負っていたが、病院に行くほどの大怪我はしていなかった。 つまり電気女、あるいは他の仲間が大怪我を負い、その治療のために病院へ向かった可能性が高い。 そうだとすれば、しばらくは病院で休み体力の回復を図るのではないか、ラッドはそう考えた。 三つ目の理由は、ここで黒スーツを逃がすと次に出会えるのはいつになるか分からないからだ。 上の二つの理由から、電気女は黒スーツを片付けてから病院に向かっても間に合うだろう。 だが黒スーツは「西の方に向かった」という事だけしか分からない。 奴のこれからの移動経路、立ち寄る施設、最終的な目的地、全てが謎だ。 最悪、自分以外の誰かに殺されてしまうかも知れない。 四つ目の理由、これは分かりやすい。単純に追いつけると思ったからだ。 相手は黒スーツの他には女子供が二人に鹿のような生物が一匹。どう考えても黒スーツ以外は足手纏いだ。 奴らは集団で行動している以上、必然的に一番のノロマに合わせたスピードで移動することになる。 黒スーツが他の三人を抱えて移動するという可能性も無くはないが、それだと突然の襲撃に対応できなくなるため可能性としては低いだろう。 ならば奴らの移動スピードは大した事ない。急いで追いかければ今からでも追い着ける、ラッドはそう判断した。 もちろん実際には獣形態のチョッパーが他の三人を背に乗せて移動しているため、ラッドの足では追い着けるはずもない。 もしラッドが獣形態のチョッパーを見ていたら、仲間を背に乗せ地を駆ける姿を見ていたら、ウルフウッド達を追うのは諦めて病院に向かっていた。 だがラッドは小柄な人獣形態で休憩しているところしか見ていないため、チョッパーのスピードも一緒に居た子供と同程度だろうと判断してしまった。 そして最大の理由。ウルフウッドと梨花に対する殺意が、美琴へのそれを上回っていたため。 他にも黒スーツの方が近くに居るだとか、早く火炎放射器をぶっ放したいだとか、様々な理由があったが、やはり決め手となったのはこれだろう。 結果、自分では追いつけないという事すら知らず、ラッドは既に逃げ去ってしまった獲物を追いかけた。 当然だが見つかるはずもない。 もしかしたら隠れてやり過ごすつもりかも知れない、と周囲の建物を虱潰しに探してみたが、やはり見つからない。 自然、ラッドの苛立ちは募る。 「こんだけ探しても見つからねぇってのはどういう事だよ? あの黒スーツの野郎には逃げられちまったって事かぁ!? クソッ! ムカつくぜ。 仕方ねぇ、病院に向かうとするか」 あすかのデイパックを取り出し、その中身を自分のデイパックに流し込む。 空になったデイパックを宙に放り投げ、ストレス発散と試し撃ちを兼ねて火炎放射器の引き金を引く。 噴射口から吐き出された火炎の奔流がデイパックを飲み込み、一瞬の内に焼き尽くした。 「おおおっ!? すげえ威力だなぁ、おい! あっと言う間に消し炭になっちまったぜ! いいねいいねぇ! あの大砲も良かったがコイツも派手で気に入ったぜ! これでまたぶっ殺して回れるからなぁ! あー、早くコイツでヌルい奴らを焼き殺してぇなぁ。自分は死なねぇって思ってる奴は自分が生きたまま焼かれる瞬間、どんな顔するんだろうなぁ。 あぁぁぁあ、早くぶっ殺してぇぜぇぇえ!」 そして、ギラーミンの放送が流れる。 「おいおいおいおい、何だよ何だよ、また13人も死んじまったのかよ!? もう24人しか残ってねぇじゃねぇか! ったくよぉ、どいつもこいつも殺し過ぎじゃねぇのかぁ!? 俺の殺す分がどんどん減ってくじゃねぇか! あああぁぁあ、俺はまだたったの6人しか殺してねぇってのによぉ! 他の奴らは好き勝手に殺しやがって、イラつくぜぇ……! よぉし、決めた! 俺以外に参加者を殺して回ってる野郎が居たらぶっ殺す! そういう奴らはこんなに強い俺が死ぬはずない、なんて思ってやがるだろうしなぁ! おっと、もちろんそれ以外の参加者も見つけたら遠慮なくぶっ殺すぜ! まだまだ殺し足りねぇからなぁ! ん? 待てよ? 要は片っ端からぶっ殺してくって事じゃねぇか! 何だ、結局は今までと変わらねぇなぁ、ヒャハハッ!」 狂った笑いを響かせながら、ラッドは病院へと歩を進める。 「待ってろよ、電気女ぁ。今ぶっ殺しに行ってやるからよぉ!」 ◇ ◇ ◇ 放送終了後、真紅と美琴は病院内にある病室の一つに居た。 「どうなってんのよ……?」 美琴の愕然とした声が病室内に響く。 その声に釣られるように、真紅は名簿に――正確にはその一点、たった今自分の手でチェックを入れた名前に――視線を落とす。 信じられないのも無理はない。真紅も最初は我が耳を疑った。 「何であすかさんの名前が呼ばれてるのよ!」 ついさっきまで行動を共にしていた仲間の死が告げられたのだから。 『橘あすか』 その名が呼ばれた瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。 目の前が真っ暗になり、聴覚は仕事を放棄し、頭はぴたりと思考を停止する。 五感を失い、ぼんやりとした意識だけがふわふわと漂う、そんな感覚。ペンを取り落とさなかった自分を褒めてやりたいぐらいだ。 一拍遅れて自分を取り戻し、その意味を理解すると、胸にぽっかりと穴が空いたような喪失感に包まれた。 次いで襲ってきたのは、ジュンの名が呼ばれた時にも、翠星石と蒼星石の名が呼ばれた時にも味わった、胸を押し潰すような悲しみ。 そして、確かにそこに存在していたはずの絆を無理矢理引き千切られた、そんな理不尽な暴力に対する抑えようも無い怒り。 既に何人もの参加者が死者として名を呼ばれている以上、いつ自分達が死亡者のリストに名を連ねてもおかしくはなかった。 だが、まさかこんな形であすかとの別れが訪れるなど考えもしなかった。 正直言って、まだ実感が湧かない。 実は自分の聞き間違いか何かで、あすかは何事も無かったかのようにひょっこりと姿を現すのではないか、そんな幻想に縋ってしまいたくなる。 (それでも……認めなければならないのね……) できる事ならば、悲しみが癒えるまでこのままじっとしていたい。 だが、この殺し合いでは仲間の死を悲しむ、そんな僅かな時間すら与えられない。 ここで自分が悲しみに飲まれて足を止める訳にはいかない。第一、あすか自身もそれを望まないだろう。 左腕の切断面をそっと撫でる。 (あすか……今一度、あなたの想いにかけて誓うわ。私は私のやり方で、この殺し合いを止めてみせる) 顔を上げた先には、まだ呆然としている美琴の姿がある。 契約の指輪で繋がっているためか、断片的な思考が流れ込んでくる。 また一人、自分を信じた人間が死んでしまった。 また一人、自分のせいで人を死なせてしまった。 恐怖、混乱、悲しみ、自己嫌悪、様々な負の感情がごちゃ混ぜになって濁り切った思考の渦。 まずは混乱の真っ只中にある彼女を落ち着かせなければならない。 彼女を捕らえて放さないドス黒い渦から、手を取って引き上げてやらねばならない。 彼女にとっては酷だろうが、それでもあすかの死を受け入れて先に進まねばならない。 あすかが居ない今、それは自分の役目だ。 「美琴、落ち着きなさい」 「だって、真紅! あすかさんが……」 「今私達がすべき事はあすかの死を嘆き悲しみ時間を費やす事ではないわ。あすかがなぜ殺されたのか、それを考える事が重要ではなくて?」 美琴もそれは分かっているのだろう。まだ納得はしていないという表情ながらも一応は落ち着いたようだ。 「まさか……病院内に誰か居たってこと?」 「その可能性が高いのだわ」 もし何者かが病院内に潜んでいるとすれば、このまま放っておく訳にはいかない。 後からやって来た参加者を襲うかも知れないし、何より仲間を殺されて黙っているなど、自分達の気が済まない。 あすかの遺体も見つけて埋葬したいと思い、真紅達は引き続き病院内を見て回る事にしたのだが。 「誰も居なかったわね……」 「それどころか、あすかの遺体もないのだわ」 「って事は、あすかさんは病院の外で殺されたって事?」 そして今、二人は病院の裏口に居た。 病院内を一通り見て回った二人だが、見つけたのは見知らぬ少年の死体だけで、殺人者もあすかの遺体も見当たらなかった。 まさか殺した相手を埋葬するような殺人者はいないだろう。あすかが病院内に潜んでいた何者かに殺されたのだとすれば、その遺体も病院内のどこかに残っているはずだ。 「でも私達に一言の断りも無く外に出て行くのは不自然なのだわ」 「うーん、それもそうなんだけど……。あ、あいつなら……いや、でもあいつはここに居ないからやっぱり他の誰かが……」 「美琴、何をぶつぶつ言っているの?」 「んー、実は私の学校に『心理掌握(メンタルアウト)』って呼ばれてる超能力者がいるんだけどさ。そいつの能力が読心、洗脳、念話、記憶操作……とまあ精神的な現象ならなんでもできる訳よ」 そこで真紅も美琴の言いたい事に気付く。 精神支配系の超能力者。もし参加者に似たような力を持つ者が居たら。 「つまり、あすかが自分の意思ではなく何者かに操られて外に連れ出されたのではないか、そう言う事ね?」 「うん。あすかさんもアルター能力で一時的に意識を奪う事ぐらいは出来るって言ってたから、有り得なくはないと思うのよね」 確かに、そう考えればあすかが何も言わずに消えた事も辻褄は合う。 だが、そうだとすると、どの程度まで操れるのかが問題になってくる。 もし殺す前にあすかの持つ情報を引き出していたとすれば。自分達の能力や負傷具合、これからの行動方針まで知られてしまったとすれば。 自分達は圧倒的に不利な立場に追い込まれてしまった事になる。 もちろんその最悪の予想通りだとしても、真紅はあすかを責めるつもりなどない。 怒りを向けるべきはあすかではなく、あすかを殺した何者かだ。 「行くわよ、真紅」 美琴が先頭に立って歩き出す。 ギラーミンの放送によれば、残る参加者は24人。殺し合いは予想以上に早く進んでいる。 もはや一分、一秒たりとも時間は無駄にできない。 真紅達は予定を修正して、劇場には向かわずにC-4駅に行く事にした。 (あすか……私も美琴も、あなたが居たおかげで大分救われたのだわ。 あなたの遺志は私達が受け継ぐ。だからゆっくりお休みなさい……) 心の中だけであすかに別れを告げ、前を歩く美琴を追いかけようとして。 爆炎が、辺りを包み込んだ。 4. 狂人は戦火を撒き散らし Four_Murderers_Alliance. ロベルタ、ミュウツー、ナイン、リヴィオ、同盟を結んだ四人はまず最初の目的地を病院へと定めた。 C-4駅から南下して図書館を通り過ぎ、劇場から西へ。 そして病院に到着した時、その裏口から二人の少女が出て来るのを発見した。 事前にナインから情報を得ていた四人には、それが真紅と美琴の二人だとすぐに分かった。 当然、迷うことなくその殺害を決意する。 作戦は驚くほどすんなりと決定した。 まずロベルタがパニッシャーに搭載されているロケットランチャーで砲撃。 さらに距離を詰め、パニッシャーの機関銃で着弾点付近を一掃する。 最後にミュウツーとナインが接近し死体を確認、もし息があれば止めを刺す。 ナインの情報によれば敵は二人とは言えその戦力は侮れない。 最大火力による先制攻撃で反撃の間を与えずに殲滅する、それが四人の選んだ戦法だ。 巨大な十字架から放たれたロケット弾が爆発し、爆音と煙塵を撒き散らす。 絶え間なく吐き出される銃弾が地を抉り、壁を穿つ。 超人的な再生力を持つリヴィオやミュウツーでも生きてはいられないほどの圧倒的な火力、美琴のような一般人なら数秒と経たず肉塊になるはずだ。人形の真紅など跡形も残らないだろう。 体中から血を流して倒れ伏す美琴と粉々に砕け散った真紅、四人はそんな光景を予想していた。 だから爆煙が晴れた時、そこに黒い壁がそびえ立っているのを見た四人は少なからず驚いた。 最初に反応したのはリヴィオ。引き金にかけた指に力を込め、構えていたソードカトラスが銃弾を撃ち出した。 吐き出された弾丸は黒い壁に着弾し、砂に埋もれるようにして壁の中に消えていった。 あの壁が能力なのか支給品なのかは分からないが、最初の爆発を生き延びた敵はあれで銃撃を防いだのだろう。 つまり、少なくともどちらか一人はまだ生きているという事だ。 ミュウツーとナインの二人はそう考え、美琴達に止めを刺すため左右から黒い壁の後ろに回り込み、 (居ない!?) 「居ない!?」 崩落する壁に飲み込まれた。 ◇ ◇ ◇ 美琴は超能力者だが、それ以外は基本的にただの少女だ。いや、頭脳も体力も中学二年生とは思えないほど優れているのだが、それでもやはり一般人の域を出ない。 当然ながら、敵の気配を探るだとか、自分に向けられた殺気を読むなどといった芸当は出来ない。それは真紅も同じだろう。 つまり、美琴達は自分達が狙われていることに気付いていた訳ではない。 では何故奇襲が失敗したのか、そう問われれば、御坂美琴は最強の電撃使い「超電磁砲」だから、と、そう答えるしかないだろう。 科学技術の最先端、学園都市。そこでは何万人もの研究者達が日夜研究に明け暮れている。その研究内容の一つにAIM拡散力場というものがある。 能力者は能力を発動している時以外でも常に周囲に微弱な力を発している。この能力者が無自覚に発している力の事を総称してAIM拡散力場と呼んでいる。 どんな力を発しているかは能力者の力の種類によって変わってくる。例えば発火能力者なら熱量、念動力者なら圧力、という具合だ。 そして電撃使いの美琴が発しているのは――電磁波。 彼女はその反射波を感知することでレーダーのように周囲の動きを察知し、死角からの攻撃にも対応することができる。 美琴達は病院の裏口から外に出た。そしてC-4駅に向かって歩き出したところで、電磁波のレーダーが自分達に向かって高速で飛来する何かの存在を捉えた。 それがロケットランチャーだということまでは分からなかったが、彼女はそれを何者かの攻撃だと判断し、即座に迎撃態勢に入った。 美琴が迎撃準備を完了した時点でロケット弾の着弾まで残りコンマ数秒、常人ならば回避も迎撃も諦めて地面に伏せるしか手がない距離まで迫っていた。 だが彼女は学園都市第三位の超能力者、七人しか居ないレベル5の一人、超電磁砲だ。それだけあれば彼女にとっては十分過ぎる。 飛来物が飛んでくる方向に向けて、電圧にして数億ボルトの雷撃の槍を放つ。 電気刺激を受けたことにより信管が作動し、砲弾は美琴達の10m以上手前で爆発。二人は爆風に煽られ地を転がることになったが、ほぼ無傷でこの初撃を回避することができた。 「真紅、無事!?」 「っ……大丈夫よ。一体何が……?」 「敵よ。真紅、こっち。とりあえず隠れるわよ」 美琴は急いで起き上がると、真紅を抱き上げて建物の陰に隠れる。直後、さっきまで美琴達が立っていた辺りに無数の銃弾が撃ち込まれる。 嵐のように降り注ぐ鉛弾が地面を穿つ。咄嗟に隠れていなければ今頃は……そう考えるとぞっとする。 「容赦ないわね。相手は問答無用で殺しに来てるわよ」 「それで美琴、どうするの? 逃げるなら今のうちだわ」 「逃げる? 冗談はやめてよ。真紅だってそんなつもりはないんでしょ?」 あまりに出来過ぎている。それが美琴の抱いた感想だ。 まずタイミングが良過ぎる。まるで自分達が病院に居るのが分かっていて待ち伏せしていたような、そんな絶妙なタイミングでの襲撃。 そしてもう一つ、容赦が無さ過ぎる。外見だけで言えば、自分達はまともな武器すら持っていない少女と人形だ。それに対してアレはいくらなんでもやり過ぎだ。 偶然病院にやって来た殺人者が自分達を発見し、襲撃したと考えるのは楽観的過ぎるだろう。 だが、例えばこの襲撃者が事前にあすかから情報を引き出していたとしたら? 自分達の動向を監視し、このタイミングで襲撃することも可能だろう。自分達の能力も聞き出しているだろうから、容赦の無さも納得できる。 この襲撃のタイミングとやり方から見て、この襲撃者があすかを殺した可能性が高い。美琴はそう考え、交戦を選択した。 真紅もそれが分かっているのだろう、無言で頷く。 美琴は不敵に笑う。それは彼女がこの場に呼び出されて初めて見せる自信に満ちた笑み。 「私達にケンカを売ったこと、たっぷりと後悔させてやろうじゃない」 周囲の地面から大量の砂鉄をかき集め、壁を作る。 自分達の前ではなく、さっきまで自分達が居た、今も銃撃に晒されている場所に。 この壁は囮だ。 煙が晴れた時にこの壁を見た襲撃者はどう思うか。 最初の砲撃で何とか生き延びた美琴達はこの壁の後ろに身を隠して銃撃をやり過ごしている、そう思うだろう。 となると次に襲撃者が取る行動は大きく分けて二つ。 美琴の超電磁砲のような高威力の攻撃で壁ごと貫くか、素直に壁の後ろに回り込むかだ。 そして美琴は前者の可能性は低いと踏んでいる。 襲撃者が最初からこちらを殺す気で攻撃してきた以上、最初のロケットランチャーによる砲撃、恐らくあれが襲撃者の持つ最大火力だろう。壁を破るつもりならあれを撃ち込んで来るはずだ。 だが実在の火器を使用しているならば当然その弾数は無限ではないし、真紅の薔薇の花弁や美琴の雷撃のような能力だとしてもあれだけの攻撃力、少なからず体力を消耗するはずだ。 さらに、襲撃者から見た美琴達は強固なシェルターに閉じこもった訳ではなく、ただ壁の後ろに隠れているだけだ。 回り込めばそれで済むところをわざわざ前者を選んで弾薬や体力を無駄に消耗する事は無い、よほどの捻くれ者で無い限り襲撃者はそう考えるはずだ。 ならば残るは後者。 壁の後ろに隠れているはずの美琴達の息の根を止めるため、 「居ない!?」 こんな風に近づいて来る。 後はそこを捕らえて雷撃を撃ち込むだけ。 美琴は襲撃者を飲み込むように砂鉄の壁を崩す。 二人の襲撃者は砂鉄に埋もれ、身動きが取れなくなる。 「さて、と。いきなり物騒な真似してくれるじゃない。当然、覚悟はできてるんでしょうね?」 バチバチと火花を散らし、物陰から姿を出す。 襲撃者に向けて雷撃の槍を放とうとして。 「美琴っ!」 真紅に腕を引かれて後ろに倒れこむ。それと同時、連続で銃声が鳴り響き、何かが目の前を高速で通り過ぎた。 その何かが飛んで来た方向に視線を向けると、地下で見たラズロという男が銃口をこちらに向けていて、その横ではバカみたいに巨大な十字架を構えたメイドが射殺すような鋭い目つきでこちらを睨んでいた。 「な、何で四人も居るのよ!?」 美琴の誤算はただ一つ、襲撃者は二人だと思ってしまった事だ。 自身も一時的とは言えナインと手を組んでいた経験があるため、殺人者同士が協力して襲って来る可能性も十分に有り得ると考えていた。 だが残り人数も24人まで減ったこの局面で、まさか四人もの殺人者が手を組んでいるとは夢にも思っていなかった。 そこに油断が生まれた。 二人を生き埋めにした時点で勝利したと思い込んでしまった。 「御坂美琴……やっぱり貴女は危険ね。ここで排除させてもらうわ」 「なっ、ナインさん!?」 砂鉄の山から抜け出したナインとミュウツーが武器を構える。 こうして最初で最後の勝機は潰え、一方的な殺戮劇が幕を開ける。 これより始まるのは戦闘ですらないただの虐殺、勝敗の決まりきったワンサイドゲーム。 そのはずだった。 「ヒャァアッハハハハァッ!!」 この男が居なければ。 爆音に引き寄せられたラッドが、病院の二階の窓を突き破って飛び降りて来る。 その手には火炎放射器。着地と同時に狙いを定め、引き金を引く。 灼熱の炎が、辺りを薙ぎ払う。 ◇ ◇ ◇ 「おい、おいおいおいおいおい! マジかよ! マジかよ!! どうなってんだ、こりゃあよぉ!? 新しい武器も手に入った事だし、あの舐めた電気女をぶっ殺してやろうと思って病院に来た! そしたらよぉ! どういう訳か電気女以外にもあの時のクソメイドに左手が刀になる女、宇宙人野郎にラズロのクソ野郎まで居やがる! おいおいおい、こりゃあマジでヤベェだろ! 俺がぶっ殺してぇ奴らが勢揃いじゃねぇか! つーかテメェら俺抜きで勝手に殺し合ってんじゃねぇよ。テメェらは全員俺がぶっ殺すんだからよぉ。 こいつはやっぱアレか? 遠慮しねぇでここで全員ぶっ殺せ! って、そういう事かぁ!? そうなんだな!? いいぜいいぜ!! 言われるまでもねぇ! テメェら全員まとめてぶっ殺してやるよ! ヒャァッハハッハァ!!」 ラッド・ルッソは狂人である。それは疑いようも無い事実だ。 だが彼は決して考えなしの馬鹿ではない。むしろ常人と比べれば頭の良い部類に入る。 ただその優れた頭脳で四六時中人を殺す事ばかり考えているため、そうは見えないだけだ。 言うなれば思考のベクトルが常人とは違う方に向いている、そういう事だろう。 だから彼は効率良く殺すために作戦を立てもするし、自分の不利を悟れば一旦退いて仕切り直しもする。 火炎放射器は確かに強力な武器だが、銃火器に比べればいくつかの欠点が目立つ。それは前線の兵士が火炎放射器ではなく銃を持っていることからも分かるだろう。 まずその重量。大量の燃料に保存用のタンク、それを発射する機構。比較的軽いものでも合わせて20kgを超える。 次に射程。火炎放射器は銃弾ではなく液体状の燃料に火を点けて放つため、空気抵抗の影響が大きい。 水鉄砲を想像して欲しい。噴射された水は見る見る速度が衰え、やがて最初の勢いを失って地に落ちる。それと同じだ。 それに使用時間。火炎放射器は前述の通り火を点けた液体燃料を噴き付け敵を焼く武器だが、勢い良く炎を噴出するため燃料の消費が激しい。 今のように燃料を出しっ放しにして周囲を薙ぎ払う、などという使い方をしていれば、僅か数十秒で燃料が枯渇してしまう。 そして、背中に大量の燃料を背負っているため、そこに被弾すれば逆に自分が火達磨になってしまう。 「ラッド・ルッソォッ!」 「おぉ? 随分とやる気満々じゃねぇか。ヒャハハッ、いいぜ。まずはテメェからぶっ殺してやるよ!」 ナインが左手のブレードで斬りかかるのを炎で牽制し、ラッドは冷静に思考する。 開けた場所で敵に囲まれている、今のこの状況は良くない。 もっと狭い通路で前方から来る敵だけを相手にする、そんな状況が望ましい。 結果、ラッドは一時撤退を選択した。 自分に対して剥き出しの殺意を叩きつける女、自分が退けばあの女は必ず追って来る、そう確信して。 「ッ! 逃がさない!」 そしてラッドの目論見通り、ナインはその後を追って駆け出す。 ラッドの選んだ狩場、病院内へと。 「チッ、お前はナインを援護しろ! こっちは俺達で片付ける」 リヴィオの指示に従い、ミュウツーもナインを追って病院に入って行く。 そしてもう一人。この場の誰にも気付かれる事なく、病院内に侵入する黒い影があった。 こうして、病院内を舞台とした戦闘が幕を開けた。 時系列順で読む Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) 投下順で読む Back 歩くような速さで Next 砂鉄の楼閣(中編) Back Next 的外れジャストミート SideB 御坂美琴 砂鉄の楼閣(中編) 的外れジャストミート SideB 真紅 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ミュウツー 砂鉄の楼閣(中編) バッドエンドは突然に ラッド・ルッソ 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ブレンヒルト・シルト 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ ロベルタ 砂鉄の楼閣(中編) 殺意と鉄血が呼ぶは死の熱風‐Santana‐ リヴィオ・ザ・ダブルファング 砂鉄の楼閣(中編) 赤目と黒面(後編) ゼロ 砂鉄の楼閣(中編)
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砂鉄の楼閣(後編)◆/VN9B5JKtM 1. 魔女は己が罪業を暴かれ Witch_the_1st-G. 暗い病院の廊下、曲がり角の向こう側で明かりが灯る。 曲がり角から転がるようにしてナインが飛び出して来る。その直後、轟音と共に炎が噴き出し壁を焦がす。 再び明かりの落ちた廊下で、ミュウツーはナインに念を送る。 『少しは落ち着け。無闇に突っ込んで行っても勝てる相手ではないだろう』 「うるさい。私は別にあんたから殺してやってもいいのよ?」 『だから落ち着けと言っている。オレ達は何のために手を組んだ?』 怒りと憎しみの篭った目で睨まれる。 今のナインはどう見ても冷静ではない。これ以上怒りを買えば本気で襲って来かねない。 『心配するな。オレもお前の邪魔をするつもりはない。要は自分の手でヤツを殺したいのだろう?』 「ええ……ついでに言うとあんたも殺したいところだけどね」 ラッドは病院の東廊下、そのほぼ中央に陣取っている。前後どちらから攻撃しても、辿り着く前に炎に飲み込まれる。 だが、内側には病室を挟んで中庭がある。前後が駄目なら横を突けば良い。 『オレがしばらくヤツを引き付ける。お前はその間に中庭を通ってヤツの近くの病室に移動しろ。接近すればあの武器も怖くないだろう』 「ふうん、自分から囮になってくれるなんて、随分と殊勝な心がけじゃない」 『オレはなるべく消耗せずにヤツを倒したいだけだ。距離があればヤツの火炎放射をかわすのは訳無いからな』 「……いいわ、乗ってあげる」 そして中庭に駆け出すナインを見送ると、ミュウツーは曲がり角から飛び出す。 直後、予想通りに炎が放射される。 「あぁん? 何だ、宇宙人野郎じゃねえか。テメェも焼かれに来たのかぁ? つーかテメェは俺を利用するんじゃなかったのかよ? あー、まぁそんな事は今更どうでもいいか。何たって、テメェはここで俺にぶっ殺されるんだからな! できれば一番最後にぶっ殺したかったけどよぉ。テメェから死にに来るんならしょうがねぇよなぁ!」 ラッドが叫びながら炎を撒き散らす。 床が、壁が、天井が焼け焦げるが、火災報知器が警報を鳴らす気配はない。 どうせ参加者以外の利用者は居ないのだから意味がないという事か。 そんな事を考えている内に、ラッドの隣の病室から、ドアを突き破ってナインが飛び出してきた。 首を狙った斬撃を横に飛んでかわすと、ラッドは素早く火炎放射器をデイパックに仕舞い、両手を胸の前で構える。 「ラッド・ルッソ! ナナリーの仇……お前は、私が――殺す!!」 「おいおいおい、確かにあのお嬢ちゃんを殺したのは俺だけどよぉ、それについてはあっちの宇宙人野郎も同罪じゃねぇのか? つーかその前にあっさり捕まって人質にされたテメェはどうなのよ? テメェが捕まらなきゃあのお嬢ちゃんもあんな簡単には死ななかったんじゃねぇのか? 何たってあんなバカでけぇロボットに乗ってやがったんだしよぉ! このロボットがあるから自分は死にません、とか思ってやがったんだろうなぁ」 「ッ……黙れっ!」 怒りで攻撃が単調になっているが、それでも武器がある分ナインの方が有利か。 あれなら自分が手を出さずとも大丈夫だろう、ミュウツーがそう考えた瞬間。 戦闘中の二人の横に砲弾が撃ち込まれ、病院の廊下に猛毒のガスが広がった。 ◇ ◇ ◇ 話は放送直後まで遡る。 ギラーミンの放送を聞き終えたゼロは、デイパックの口を開いて地図と名簿を乱暴に投げ込むと、身を沈めていたソファーから立ち上がった。 ナナリーが死んでしまった今、ゼロにとっては誰が死のうが関係ない。 強いて言えば戦闘力の高い参加者や徒党を組んだ参加者、自分を警戒している参加者に死んで欲しい、その程度だ。 (残り24人、殺し合いは順調に進んでいるようだな。 やはり水銀燈は生きていたか。できれば悪評を広められる前に始末しておきたいが、奴自身も殺し合いに乗っている。今は放置していてもさほど問題はあるまい。 それよりも優先すべきは先ほどの連中だ。奴らは殺し合いに反抗している上に実力もある。何よりC.C.の姿を見られているのが致命的だ。 危険人物としてC.C.の情報が広がるのも時間の問題か。今後はルルーシュの姿も使う必要が出てくるかも知れないな……) 頭の中で素早く考えを纏めると、ゼロは移動を開始した。 疲弊した体は更なる休息を欲していたが、いつまでも休んでばかりいられない。 いくつかの理由から、最初の目的地にはE-3エリアの中央にあるホテルを選んだ。 まず近い。ゼロの現在地はE-3の西側、ホテルまでは歩いて数分の距離だ。 そして駅と市街地の中間に位置するここは、殺し合いを良しとしない参加者が拠点としている可能性がある。 それに何より。 (ナナリーの遺体を保存するためには大量の氷が必要だ。ホテルならば業務用の大型製氷機があるかも知れないからな……) それから十分後、ゼロは――いや、ルルーシュはホテルの浴場に居た。 幸いこのホテルには大浴場があったため、まずはナナリーの遺体を清める事にしたのだ。 「ナナリー……」 ありったけの慈しみを込めて。丁寧に、丁寧にその身を清めていく。 白く滑らかな肌には火傷の跡が残り、見れば見るほど痛々しい。 その顔が苦悶に歪んでいる訳ではなく、眠っているように穏やかな表情を浮かべている事が唯一の救いだろうか。 ルルーシュはナナリーの体を洗い終えると、バスタオルで優しく包み込み、そっと抱き上げる。 「ナナリー……お前はきっと悲しむんだろうな……。それでもオレは……お前を殺した奴を、許せそうにない……!」 浴場を後にしたゼロは、氷を手に入れるためレストランに向かった。 厨房を覗くと、期待通り大型の製氷機を発見する事ができた。中にはギッシリと氷が詰まっている。 大き目のポリ袋に氷を入れてタオルでくるみ、ナナリーの遺体を取り囲むようにデイパック内に並べる。 これで遺体の保存はできるだろう。あとは速やかに他の参加者を探して殺し、ナナリーを生き返らせるだけだ。 ゼロは他の参加者を探すため、ホテルの全部屋を見て回ることにした。 そして一つの部屋の前に立ちドアに手を伸ばすが、鍵がかかっていて開かなかった。その隣も、向かい側も同様だ。 鍵、出来ればマスターキーが無いかとフロントに向かうと、ご丁寧に全部屋の鍵が揃って並べられていた。離れた位置に一つだけぽつんと置かれているのはマスターキーだろうか。 こんな目立つ位置に鍵が置いてあるのに、わざわざドアの鍵を壊して侵入するようなバカは居ないだろう。どうやら一部屋ずつ見て回る必要は無くなったらしい。 レストランなどの施設にも人影は無かったため、ゼロはホテルの利用者は居ないと判断して立ち去った。 次にゼロが向かったのは劇場だ。 傍の地面には大穴が開き、壁には戦いの爪痕が刻まれている。 ここで大規模な戦闘があったのは間違いない。ならば首輪の一つでも見つかるかも知れない。 そう考え探索を開始しようとした瞬間、魔王の聴覚が僅かな物音を捉えた。 物陰に身を潜め、耳を澄ます。 音の正体は北から高速で近づく足音、それも複数。 程なくして、北から病院方面へ向かう一団が現れた。 人数は四人、その誰もが身に纏う雰囲気からして只者ではない。 その内の一人は恐らくサカキの情報にあったメイド服の女。 それに何より四人の間に漂うピリピリとした雰囲気が彼らの関係を物語っている。 (なるほど、勝ち残るために手を組んだか) 放っておけば勝手に参加者を減らしてくれるだろう。ならば無理に接触する必要はない。 ゼロはそう考え、物陰に隠れて四人をやり過ごそうとした。 その中の一人、黒の騎士装束を纏う女に気付くまでは。 (なっ……! ネモだと!? あの女……間違いない。奴が……ナナリーの埋葬者――!) ナイン・ザ・コードギアス。ナナリーと行動を共にし、その死を看取り、必ず蘇生させると誓いを立てた――ナナリーの騎士。 その身に纏う衣装は、“ナイトメア・オブ・ナナリー”の称号と“コードギアス”の名と共にネモから託されたもの。 そしてC.C.にはそれが、ナナリーの墓の傍らにあった土くれと同じ、ネモの成れの果てだと一目で分かってしまった。 ゼロの中のルルーシュが暴れだすのを抑えつける。 自分は瞬間移動の連続行使による疲労が残っている。それに対して相手は相当な実力者が四人、明らかに分が悪い。 幸いルルーシュにもここで戦っては不利だと判断する程度の理性は残っていた。 奴らが他の参加者との戦闘に入ったら隙を見て殺す。そう決意を固め、ゼロは四人の後を追った。 当然ゼロは病院付近での戦闘中、白スーツの男を追って女が病院内に飛び込んだ時も迷わず女を追跡した。 そして病院内での女と白スーツの会話から、女の他に白スーツと異形がナナリーの死に関わっていると知る。 この情報からゼロは『女とナナリーを白スーツと異形が襲撃。マークネモで応戦するが、異形の手によって女が人質に取られたせいでナナリーが白スーツに殺された』と推測した。 本当はもう一人、園崎詩音も関わっているのだが、それはゼロが知るはずもない。 ここで明確な仇を見つけたルルーシュの怒りが爆発する。今度はC.C.も止めようとはしなかった。 ナナリーを殺した白スーツの男、それに加担した異形、そしてナナリーを守れなかった無力な騎士。 三人の罪人に等しく死を与えるため、ゼロは毒ガス弾、MH5を撃ち込んだ。 静寂に包まれた病院の廊下に、カツ、カツと硬質な靴音が響いては消えてゆく。 まるで滲み出るように、薄闇の中から現れたのは漆黒の魔王。 「異形は逃したか。瞬間移動の類か、それとも毒に耐性でも持っていたか……いずれにせよ毒で死なぬのならばこの手で首を刎ねるまでだ」 毒霧が晴れゼロが姿を見せた時、その場に残っていたのは白スーツの男だけだった。 異形の姿は忽然と消え失せ、女の居た場所からは廊下の奥に何かを引きずったような跡が続いている。 ゼロは一人残された男に声をかける。 「猛毒の味はいかがかな?」 「テ、メェ……ぶっ殺す……」 「ふむ。お気に召して頂けたようで何よりだ」 ラッドの左肩に足を乗せ、体重を掛ける。 ベキベキ、と枝を踏み折るような音が鳴り響き、靴裏から骨が砕ける感触が伝わってくる。 「一応名乗っておこうか。私は魔王ゼロ、貴様を断罪する者だ」 そう宣言すると同時、ゼロは無造作にラッドの左腕を掴み、引っ張った。 筋肉が、血管が、神経が。ブチブチと千切れ、肩から先が引き千切られる。 「ガッ、アアアァァアッッ!!」 「ナナリーを手にかけたその罪、万死ですら生温い。貴様は虫ケラのように殺してやろう」 右腕をもぎ取る。左膝を踏み潰す。右足をねじ切る。右肩を踏み砕く。肋骨を踏み折り、臓腑を握り潰し、顔面を蹴り潰す。 「理解できたか? 貴様は――魔王の逆鱗に触れた」 ゼロは止めを刺すため破魔の紅薔薇を手に取り、目線を下ろしたところで、自分を見上げるラッドの視線に気付いた。 ――気に食わない。 コイツはナナリーを手にかけた大罪人だ。 己の罪を悔いながら惨めに死んでいかなければならない、それなのに。 毒に体の自由を奪われ、魔王の膂力で四肢をもがれ、全身をズタボロにされて死を目の前にしたこの状況でも、コイツは自分を殺す事しか考えていない。 コイツには正義も理想も何も無い、ただの殺人狂だ。 生きるために殺すのではなく、殺すために生きる、そんなタイプの人間。 この殺し合いで人を殺すのも、己が生き残るためでもなければ優勝して『力』を手に入れるためでもない。殺したいから、ただそれだけの理由。 そんな人間にナナリーの命を奪われた事が、ゼロにはたまらなく許せなかった。 ゼロの怒りを助長するかのように、狂った笑みを顔に貼り付け、殺人狂が口を開く。 「おい、仮面野郎。魔王だか何だか知らねぇが、テメェは今こう思ってんじゃねぇのか? コイツの手足は俺がぶっ千切ってやった、これでもうコイツは文字通り手も足もでねぇ。 こんな死にかけのイモムシみてぇに這いずる事しかできねぇ野郎に俺が殺されるわけがねぇ、ってなぁ!」 「ふん、当然だ。我はゼロ、魔女C.C.との契約により不死を継承した魔王だ。 貴様のような只人に滅ぼされる道理などなかろう」 その一言が。 刀を鞘に収めるように。 鍵穴に鍵を差し込むように。 パズルの最後のピースをはめるように。 最初からそれに合わせて作られた物のように。ラッドの頭の中にスルリと入り込み、カチリとはまり込む。 ――殺意のスイッチが入る。 「ヒ、ハハハ、ヒャァッハハハハァ!! そうかいそうかい、テメェがそうだったのかよ! やっと会えたぜ。なぁ、『不死者』さんよぉ。 ヘヘッ、嬉しいぜぇ……! 思った通りだ、最ッッ高に緩み切ってやがる。 ――決定だ。テメェは殺す。絶対に殺す! 死んでも殺す! 何が何でも殺す! 誰が何と言おうと殺す! 完膚なきまでに殺す! 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し「遺言はそれだけか?」 ラッドの不快な叫び声を断ち切るように、破魔の紅薔薇が振り下ろされる。 槍の穂先がラッドの背を貫き、紅く染まった床に墓標のように突き立つ。 昆虫の標本のように磔にされたラッドがビクビクと痙攣を繰り返し、溢れ出た鮮血が血溜まりを広げる。 僅かに漏れる呻き声が聞こえなくなったのを確認したゼロは、ラッドのデイパックを拾い上げ中身を自分のデイパックに流し込む。 そしてラッドの首を切り落とし首輪を回収するため、和道一文字を取り出そうとデイパックに手を入れ。 (待てよ。死体の首を狩るのは後でも出来る、それよりも今は逃げた女だ。 何かを引きずったような跡……これは恐らくあの女が這って移動した跡だろう。 つまり奴は毒ガスで満足に動けない。まだ病院内に居ると見て間違いないだろうが……。 放っておけば仲間と合流する可能性もある。解毒剤が支給されている可能性も否定できない。先にあの女を追うべきか) そう思い直し踵を返すと、ナインを追って歩き出した。 背後でラッドが再生を始めた事に気付かずに。 ゼロの誤算。それは四肢を引き千切られ、内臓を潰され、その身を串刺しにされてもなお死なない者――不死者の存在だ。 「あー、痛ぇ。痛ぇなぁ、チクショウ。俺が覚醒してなかったら間違いなく死んでたぜ? にしてもあのヤロウ、自分で魔王とか名乗るだけあってマジでとんでもねぇな。蝶の羽でも毟り取るみてぇに、俺の手足を軽々と引き千切りやがった。 それだけでも十分に化物だってのに、おまけに不死者だぁ? そりゃぁあんな風に、俺が死ぬはずがない、なんて態度を取りたくもなるよなぁ。 でもな、仮面野郎。言ったはずだぜ? テメェは死んでも殺すってよぉ……!」 異形が消え去り、魔女が逃げ去り、そして魔王が立ち去った戦場跡で。 残された狂人が一人。静かに、静かに殺意を燃やしていた。 【E-5 病院内1階東廊下/一日目 夜】 【ラッド・ルッソ@BACCANO!】 【状態】:四肢断裂、両肩骨折、肋骨骨折、顔面骨折、脇腹に裂傷、内臓破裂、腹部貫通(破魔の紅薔薇で串刺し状態)、毒(大)、全て再生中、不死者化 【装備】:破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero 【道具】:なし 【思考・状況】 1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。 2:そのためにこの会場にいるやつを全員殺す。とにかく殺す。 3:ゼロは絶対に殺す。 4:ラズロ(リヴィオ)は特に念入りに殺す。 5:御坂と黒スーツの男(ウルフウッド)、子供(梨花)も殺す。あ? 人形? 人形は「殺す」モンじゃなくて「壊す」モンだろ? 6:ギラーミンが言っていた『決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者』(不死者)は絶対に殺す。 7:宇宙人(ミュウツー)は出来れば最後の最後で殺す。 8:左腕が刀になる女(ブレンヒルト)も見付けたら殺す。 詩音はまあどうでもいい。 9:ギラーミンが言っていた『人間台風の異名を持つ者』、『幻想殺しの能力を持つ者』、『概念という名の武装を施し戦闘力に変える者』、 『三刀流という独特な構えで世界一の剣豪を目指す者』に興味あり。 10:グラハムについて少し気になる。 【備考】 ※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。 ※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。 ※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。 ※ゼロのことを不死者だと思っています。 ◇ ◇ ◇ ナインは敵の襲撃から逃れるため、病院の廊下を移動していた。 ARMSの移植による身体機能の向上、そしてアヴァロンの守り、この二つが毒ガスからナインの命を救った。 とは言えそれは「辛うじて死は免れた」というレベルでしかない。猛毒に蝕まれた今のナインには立って歩く力すら残っていない。 それでもナインは止まる訳にはいかない。歩けないのなら這ってでも移動する。 彼女には全てを犠牲にしてでも為さねば成らない事があるのだから。 「待ってて、ナナリー。私が、必ず、生き返らせるから」 指先が何か硬い物に触れ、その何かが伸ばした右手を上から押さえつける。 見上げた彼女の目の前で。 「初めまして、と言っておこうか。私は魔王ゼロ。……いや、ルルーシュ・ランペルージと名乗った方が分かりやすいかな?」 漆黒の髪に紫の瞳を持つ少年が彼女を見下ろしていた。 「ランペルージ……? まさか、ナナリーの」 「その通り、オレはナナリーの兄だ。お前の衣装からネモの気配を感じ、後を付けさせてもらったが……さっきの会話から大凡の事情は把握できたよ」 それはつまり、自分が足手纏いになったせいでナナリーが殺されてしまった事も知られたという事か。 ルルーシュと名乗ったこの男がナナリーの兄だというのなら、ナナリーを殺したあの二人だけではなく、ナナリーを守れなかった自分に殺意を抱くのも納得できる。 そして恐らくこの男が殺し合いに乗る理由も自分と同じ、ナナリーを生き返らせるため。 ならばまだ手を組む余地はある。 「ナナリーを生き返らせる、お前はそう言っていたな」 「そうよ。私はナナリーを守れなかった……。だからせめて、優勝してナナリーを、いえ、この殺し合いに呼ばれた他の参加者も」 「何のために生き返らせる?」 予想外の質問だ。 何故、と考えて、ボロボロに崩れ去るネモの最期の姿が、ナインの行動方針を決定付けたネモの最期の言葉が思い浮かぶ。 「何のため……? それは、ネモと約束したから……。ナナリーを元の世界に返すために、ナナリーに、もう一度この世界を感じてもらうために……」 「違うな、それはただの口実だ。自分のせいでナナリーを死なせてしまった、お前はその事実から、自分の罪から逃げているだけだろう?」 「何、を言って……」 ナナリーに生きて欲しい、自分は確かにそう思っていると胸を張って言える。 だが、それと同時に心の中である疑念が渦を巻く。 自分は本当に、ルルーシュの言葉を完全に否定する事ができるのだろうか。 ルルーシュの言葉がナインの心の傷を抉る。 「ナナリーが生き返れば、他の全参加者が生き返れば。自分の犯した過ちが、ナナリーを死なせてしまった罪が、他の参加者を殺した罪が、全て無かった事になる。 お前はそう信じている、いや、そう信じたいんだろう?」 それを認めてしまえば何かが終わってしまう。 直感的にそう悟ったナインはルルーシュの言葉を必死に否定する。 「ちが、う……違う! 私は、私はナナリーのために……!」 「ナナリーのため、だと……?」 ミシリ、と。踏みつけられた右手から骨が軋む嫌な音がする。 目の前の少年から、空間ごと凍てつくような強烈な殺気が放たれる。 「ナナリーのために人を殺す、だと……? ふざけるな……。ふざけるな! 貴様はナナリーの何を見ていた!? ナナリーは貴様に何と言った!? ナナリーが、あの心優しいナナリーが殺し合いを望んでいると、貴様は本気でそう思っているのか? 自分のために人を殺して回ったと、そう聞かされてナナリーが喜ぶとでも思っているのか? 冗談も大概にしろ! 貴様の行動はナナリーのためなどではない。貴様はただ己の罪の免罪符にナナリーの名を利用しているだけだ! 自らの手で人を殺しておきながらその責任だけを一方的にナナリーに押し付ける、貴様がしている事はそういう事だ! 貴様はナナリーを! その死を! その遺志を! 汚し続けている!! そんな事にも気付かないのか!?」 ベキベキと右手が踏み砕かれるが、その程度の痛みに構っている暇はない。 「違うっ!! 私は! 私は……ナナリーの騎士だから……!」 「ならば、その言葉をナナリーの前でも言えるのか?」 ルルーシュがナインの前にデイパックを下ろし、ゆっくりと口を開いていく。 絶望が、口を開ける。 「ナ、ナリー………………?」 「分からないなら教えてやる。お前はナナリーの騎士でも何でもない、ただの魔女だ」 その火傷の跡が、ナナリーを守れなかった自分を責めているようで。 その閉じ切った瞳が、ナナリーの意志を踏みにじる自分を否定しているようで。 希望が、音を立てて崩れてゆく。 「あ……あ……あ、あああぁぁぁぁあぁぁあぁあっっっ!!!」 0. 魔王は咎人に裁きを下す Zero. ゼロが最初にナインを発見した時、隙を見てナインを殺すつもりでその後を追った。 そして病院での戦闘でナナリーの直接の仇であるラッドを惨殺したことで、完全にとはいかないまでも溜飲を下げたゼロは冷静な思考を取り戻した。 確かにナナリーを守り切れなかった罪は許し難いが、その目的次第では怒りを押し込め一時的に――もちろん最後には自分の手で殺す事が前提だが――手を結んでも良いとさえ考えていた。 だが、病院の廊下を這いずるナインの姿を見たゼロは、そこに奇妙な感覚を覚えた。 例えば目の中に睫毛が入ったような、例えば爪の間に砂粒が挟まったような。小さな、けれども決して無視できない違和感。 その女が妄執にとらわれているような、そんな雰囲気を感じたゼロは、その正体を確かめるため「何故ナナリーを生き返らせるのか?」と問いかけた。 ナインに投げかけた質問はゼロ自身にも言える事だ。ゼロは追い詰められたナインがどう反応するかを見極めたかった。 だがその女は最後の最後で自分の罪に向き合う事なく、「ナナリーのため」と言い逃れをしようとした。 当然それはゼロの望むものではなく、手を組むどころか逆に鎮静しかけたはずの怒りを再燃させることとなった。 ナナリーを蘇らせる、確かにその目的は一致していた。だが、たとえ目的が同じでもこの女と手を組むなど有り得ない、それがゼロの出した結論だった。 「あ……ああ……っ! ナナリー! 許して……! 私は、私は……」 「貴様がナナリーの名を呼ぶな」 ゼロは仮面を被ると、両の肩当てを合わせ、巨大な槍を組み上げる。 50の艦隊と5000の兵を率い、東の海で最大の戦力を持つと言われるクリーク海賊団の首領、ドン・クリーク。その最強の武装、大戦槍。 本来は1tもの重量を誇り、打ち込む力が強ければ強いほど強力な爆発を起こす槍。制限されているとはいえ、優に100kgを超えるその槍をゼロは軽々と持ち上げる。 「ナナリーは私が蘇らせる。もっとも」 ナインの頭上に大戦槍を掲げ、 「その隣に貴様の居場所はないがな」 振り下ろそうとした瞬間。 オレンジ色の閃光が目の前を走りぬけ――槍の穂先が跡形も無く消し飛ばされた。 ◇ ◇ ◇ ロベルタ、そしてリヴィオとの戦闘終了後。体力の限界が訪れたのか、緊張の糸が切れたのか、あるいはその両方か。 美琴はべちゃりと地面に倒れ込んだ。 「美琴! 大丈夫なの?」 「あー、正直ちょっと厳しいかも……電池切れそう……。真紅、悪いけど怪我の手当てお願い」 と言っても二人とも今まで銃で撃たれた経験など無く、治療法など知るはずもない。 とりあえず傷口を水で洗い流し、止血後に消毒するぐらいしかできない。 もしアイツがまだ生きていて、この場に居たら。アイツなら、上条当麻ならどうしただろうか。 美琴は考える。いや、考えるまでもなかった。 何があろうとも、誰が相手だろうとも、そんな事はお構いなしに苦しんでいるナインを救いに行く。そうに決まっている。 アイツは美琴の雷撃を受けても最後まで拳を握ることはなかった。自分が殺されかけたその瞬間でさえ美琴を救おうとしていた、そんな底無しの馬鹿で、底無しのお人好しだ。 結局自分は伸ばされたその手を取る事はできなかったけど。それは確かに自分の救いになった。 美琴は考える。 自分が逃げたせいで衛宮切嗣は死んでしまった。 自分が逃げたせいでストレイト・クーガーは死んでしまった。 そして今、自分が逃げればナインが死んでしまうかも知れない。 (私は、もう逃げない) 真面目な顔を作ると、美琴の傷口に包帯を巻いている真紅に向かって口を開く。 「真紅、ゴメン。やっぱり私はナインさんを見捨てられない。 私のワガママで真紅を危険に巻き込むのは筋違いだって分かってる。でも、きっと私一人じゃ止められないから……。 お願い、真紅! 私に、あなたの力を貸して!」 「美琴、あなたは何を言っているの?」 「う……、やっぱりダメか……」 「今更そんなこと確認するまでもないでしょう? 美琴の足りない部分は埋めてみせる、私はそう言ったはずなのだわ」 「真紅……! ありがとう。……私、あなたに会えて本当に良かった」 自然と口に出してしまったが、それは紛れもなく美琴の本心だった。 真紅は赤く染まった頬を隠すように、そっぽを向いて言葉を続ける。 「それに、あのラッドという男が言っていた事も気になるのだわ」 「アイツ? 何か言ってたっけ?」 「美琴を殺しに病院に来た、あの男は確かにそう言っていたのだわ。そして美琴が病院に居る事を知っていたのは私達以外には一人だけ……」 「まさか……アイツがあすかさんを?」 「その可能性が高いのだわ」 「そっか……ならこうしちゃいられないわね。真紅、行くわよ」 そしてロベルタ達の荷物を回収する暇も惜しんで病院内に足を踏み入れた美琴達が見たものは。 倒れ伏すナインに向かって巨大な槍を振り上げている、見るからに怪しい黒仮面の男だった。 二人が戦闘し、勝利を収めた男がナインに止めを刺そうとしている。そうとしか考えられない光景だ。 美琴は反射的にポケットからコインを取り出し、超電磁砲を放った。 男が腕を振り下ろす寸前、間一髪のところで。音速の三倍で飛来する弾丸が、槍の先端を吹き飛ばした。 「アンタ……何やってんのよ」 自分が止めなければ確実にナインは殺されていた。そう思うと、間に合ったという安堵よりも先に怒りが込み上げてきた。 抑え切れない怒気が溢れ出てバチバチと火花を散らす。 髪が静電気を帯びたようにブワッと広がり、前髪が一房、角のように逆立つ。 「見ての通り、これよりこの魔女の処刑を執り行う。邪魔をするな」 「処刑、ですって? ……ふざけんじゃないわよ。そんなこと、絶対にさせない……!」 「ほう……ならばどうすると言うのだ?」 全身に傷を負い、体力は尽きかけ、だがそれでも。 「決まってんでしょ……。力ずくでも止めてみせる」 「愚かな……。只人が魔王に刃向かうか」 譲れない思いを胸に、雷の超能力者(レベル5)が今、魔王に挑む。 【E-5 病院内1階西廊下/一日目 夜】 【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】 【状態】:疲労(極大)、悲しみ、怒り、焦り≪ルルーシュ≫ 【装備】:穂先がなくなった大戦槍@ワンピース 【道具】:基本支給品一式×6、MH5×3@ワンピース、治療器具一式、防刃ベスト@現実、電伝虫@ONE PIECE×2、 忍術免許皆伝の巻物仮免@ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの、 謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×2(サカキ、土御門)、ナナリーの遺体(首輪あり)、ビニール袋に入った大量の氷 螺湮城教本@Fate/Zero、トーチの火炎放射器@BLACK LAGOON(燃料70%)、不明支給品0~1個(未確認) 【思考・状況】 0:真紅と美琴を排除し、ナインを処刑する。 1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。 2:異形(ミュウツー)は見つけ次第、八つ裂きにする。 3:『○』に関しては…… 4:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。 5:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。 6:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。 7:C.C.の状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。 8:首輪を集めて古城跡へ戻る。 【備考】 ※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。 ※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。 ※会場がループしていると確認。半ば確信しています ※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。 ※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。 ※C.C.との交代は問題なく行えます。 ※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。 ※北条沙都子達と情報交換しました。 ※ナイン、ラッド、ミュウツーの三人がナナリーの死に関わっていると確信しました。 ※ラッドを殺したと思っています。 【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】 【状態】:疲労(中)、背中に火傷(小)、毒(中)、精神的ダメージ(大)、右手骨折、左腕欠損(ARMSで代替)、ARMS復旧 【装備】:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態)、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero アリス・ザ・コードギアスの衣装@ナイトメア・オブ・ナナリー 【道具】:支給品一式×2(食料一食、水1/5消費)、アンフェタミン@Fate/Zero 【思考・状況】 基本行動方針:優勝狙い? 0:ナナリー……私はどうすれば……? 【備考】 ※ARMSコアの位置は左胸です。 ※アリスの衣装はネモが変化した姿です。ネモの意識、特別な力はありません ※髪を切りました ※ARMSは電撃を学びました、以後電撃を浴びても操作不能にはなりません。 ※ARMSは毒ガス(MH5)を学びました、以後毒ガス(MH5)に対する耐性が向上します。 【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】 【状態】:左腕損失 【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン 蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン 【道具】:基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。 真紅の左腕(損傷大) 【思考・行動】 0:ゼロを撃退し、ナインを助ける。 1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。 2:北へ向かい地下鉄を調査する。 3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。地下鉄調査後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。 4:ループを生み出している何かを発見する。 5:翠星石のローザミスティカを手に入れる。 6:劇場にて起こっている戦闘が気になる。 7:あすかを殺した相手を見つけたら仇を取る。 【備考】 ※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降) ※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。 ※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。 ※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。 ※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー、美琴 ※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ) ※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド 無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める) カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない ※ライダー、ハクオロ、レッド、佐山、小鳥遊に関しては100%信用はしていません。 ※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。 ※nのフィールドへは入れない事。ローゼンメイデンへのボディへの干渉の可能性を考え始めました。 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ○の中心にワープ装置があるのではという仮説を立てています。 ※蒼星石の記憶を引き継ぎました(バトルロワイアル開始から死亡まで) ※あすかを殺したのはラッドではないかと思っています。 【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】 【状態】:疲労(極大)、全身打撲(中)、脇腹の切り傷(止血及び応急処置済み)、左肩と右ふくらはぎに銃創(止血及び応急処置済み) 自分への強い嫌悪感、多大な喪失感、強い決意、契約:ローゼンメイデン(真紅) 【装備】:ポケットに数枚のコイン 【道具】:基本支給品一式(水1/2消費)、コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り93枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、病院で調達した包帯や薬品類 【思考・状況】 0:ゼロを撃退し、ナインを助ける。 1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。 2:人は絶対に殺したくない。 3:真紅に着いて行く。 4:切嗣とクーガーの死への自責 5:上条当麻に対する感情への困惑 6:ナインは出来る事ならば説得したい 7:あすかを殺した相手を見つけたら仇を取る。 【備考】 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。 ※会場がループしていると知りました。 ※切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。 ※危険人物などについての情報は真紅と同様。 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ※あすかを殺したのはラッドではないかと思っています。 ◇ ◇ ◇ 美琴とゼロが対峙している頃、ミュウツーはD-6エリアの湖の畔に佇んでいた。 ミュウツーにとって幸いな事に、MH5が撃ち込まれたのはラッドとナインの争う地点だった。 着弾地点から距離があったためガスは空気中に拡散し、濃度の薄まった毒ガスには人よりも強靭な肉体を持つミュウツーを行動不能に陥らせるほどの威力がなかった。 ガスを吸い込んだ瞬間、ミュウツーはそれを毒ガスだと判断。素早くデイパックからどこでもドアを取り出してD-6エリアに移動した。 自分は運良くどこでもドアを持っていたためあの場から離脱できたが、間近で高濃度の毒ガスを浴びたナインは生きてはいないだろう。 ロベルタは初めから同盟に乗り気ではなかったし、リヴィオの目的はパニッシャーだ。あの二人は自分達が居なければいつ殺し合ってもおかしくない。 つまり同盟は実質的に崩壊した事になる。 (やはり急拵えの同盟、互いに信頼関係が無ければ長続きするはずもないか……) ミュウツーがナインを追ったのも、ナインをラッドと戦わせて自分の被害を抑えるためだ。 ナインの暴走、ミュウツーの保身、そしてロベルタとリヴィオの反目。同盟の抱えていた不安要素が一気に重なった結果の崩壊だ。 やはり勝者が一人しかいない以上、信用できない他人と組むのは難しい。優勝を狙うならば一人で戦うしかない。 (となると今の装備だけでは厳しいな。……『3つの湖に隠された力を解き放て』か) どこでもドアで移動可能な13エリアの内、既に禁止エリアに指定されていたF-6を除いた12エリア。その中からD-6を選んだのも脱出する瞬間に「褒美」とやらが頭をちらついたからだ。 恐らくは強力な武器、あるいは参加者の情報といったところか。 何にせよ自分の邪魔になるような物ではないだろう。ならば貰っておいて損はない。 ――それに可能性としては僅かだが、もしかしたらマスターの声が聞けるかも知れない。 僅かな希望を抱き、ミュウツーは湖の探索を始める。 【D-6 湖畔/1日目 夜】 【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】 【状態】:疲労(中)、背中に火傷(小)、毒(小) 【装備】:機殻剣『V-Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル 【道具】:基本支給品一式、どこでもドア@ドラえもん(残り1回) 【思考・行動】 1:生き残り、カツラを救う。 2:D-6の湖を調べる。 3:隙を見て参加者に攻撃を加える。 4:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。 5:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……? 【備考】 ※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。 念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。 ※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。 ※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり 『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。 48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』 ※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。 ※V-Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。 使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、 理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。 ※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら? ※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。 時系列順で読む Back 砂鉄の楼閣(中編) Next あなたに会いたくて 投下順で読む Back 砂鉄の楼閣(中編) Next あなたに会いたくて Back Next 砂鉄の楼閣(中編) 御坂美琴 あなたに会いたくて 砂鉄の楼閣(中編) 真紅 あなたに会いたくて 砂鉄の楼閣(中編) ミュウツー 三つの湖 Side-A 砂鉄の楼閣(中編) ラッド・ルッソ あなたに会いたくて 砂鉄の楼閣(中編) ブレンヒルト・シルト あなたに会いたくて 砂鉄の楼閣(中編) リヴィオ・ザ・ダブルファング かいぶつのなく頃に~讐たり散らし編~ 砂鉄の楼閣(中編) ゼロ あなたに会いたくて