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変身リスト 本ロワにおける変身要素の纏め。 各変身後のスペックについては、支給品一覧、または変身後データを参照。 変身ロワイアルのゲーム内において変身した参加者・主催者のみ対象。 【魔法少女リリカルなのはシリーズ】 変身後 形態 変身者 使用アイテム バリアジャケットなのは ☆高町なのは レイジングハート・エクセリオン バリアジャケットフェイト ☆フェイト・テスタロッサ バルディッシュ バリアジャケットユーノ ☆ユーノ・スクライア バリアジャケットスバル ☆スバル・ナカジマ マッハキャリバー バリアジャケットティアナ ☆ティアナ・ランスター クロスミラージュ 聖王形態ヴィヴィオ ☆高町ヴィヴィオ セイクリッド・ハート 覇王形態アインハルト ☆アインハルト・ストラトス アスティオン 【仮面ライダーW】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 仮面ライダーダブル サイクロンジョーカー ☆左翔太郎 フィリップ ダブルドライバー ガイアメモリ サイクロンメタル サイクロントリガー ヒートジョーカー ヒートメタル ヒートトリガー ルナジョーカー ルナメタル ルナトリガー ファングジョーカー サイクロンジョーカーエクストリーム サイクロンジョーカーゴールドエクストリーム 仮面ライダーアクセル ☆照井竜西条凪石堀光彦 アクセルドライバー ガイアメモリ トライアル ☆照井竜石堀光彦 ブースター 石堀光彦 仮面ライダーエターナル ブルーフレア ☆大道克己ダークプリキュア響良牙 ロストドライバー ガイアメモリ レッドフレア 月影ゆりダークプリキュア響良牙 仮面ライダースカル 通常 暁美ほむら涼村暁ン・ダグバ・ゼバ クリスタル 西条凪 形態不明 石堀光彦 仮面ライダージョーカー 左翔太郎 仮面ライダーサイクロン 石堀光彦 ウェザー・ドーパント ☆井坂深紅郎 ガイアメモリ タブー・ドーパント ☆園咲冴子 ナスカ・ドーパント レベル1 ☆園咲霧彦ン・ダグバ・ゼバ早乙女乱馬天道あかね左翔太郎 レベル2 ☆園咲霧彦天道あかね レベル3 園咲霧彦天道あかね ルナ・ドーパント ☆泉京水 ユートピア・ドーパント ☆加頭順 サイクロン・ドーパント 鹿目まどか池波流ノ介スバル・ナカジマ溝呂木眞也 ヒート・ドーパント 高町ヴィヴィオアインハルト・ストラトス トリガー・ドーパント ティアナ・ランスター メタル・ドーパント 志葉丈瑠 バード・ドーパント 大道克己月影ゆり バイオレンス・ドーパント 溝呂木眞也スバル・ナカジマ ゾーン・ドーパント 響良牙花咲つぼみ パペティアー・ドーパント 孤門一輝ダークプリキュア 【仮面ライダーSPIRITS】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 仮面ライダー新1号 ☆本郷猛 仮面ライダー新2号 ☆一文字隼人 ライダーマン ☆結城丈二 ライダーマンヘルメット 仮面ライダースーパー1 ☆沖一也 仮面ライダーZX ☆村雨良 タイガーロイド 白虎 ☆三影英介 滝ライダー 一条薫 ライダースーツ 【侍戦隊シンケンジャー】 変身後 形態 変身者 使用アイテム シンケンブルー ☆池波流ノ介 ショドウフォン シンケンゴールド ☆梅盛源太 スシチェンジャー 腑破十臓(怪人体) ☆腑破十臓 【ハートキャッチプリキュア!】 変身後 形態 変身者 使用アイテム キュアブロッサム 通常 ☆花咲つぼみ ココロパフューム プリキュアの種 スーパー キュアマリン ☆来海えりか キュアサンシャイン 通常 ☆明堂院いつき シャイニーパフューム プリキュアの種 スーパー キュアムーンライト ☆月影ゆりダークプリキュア ココロポット プリキュアの種 【魔法少女まどか☆マギカ】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 魔法少女さやか ☆美樹さやか ソウルジェム 魔法少女杏子 ☆佐倉杏子 魔法少女マミ ☆巴マミ 魔法少女ほむら ☆暁美ほむら 【らんま1/2】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 若い娘(娘溺泉) ☆早乙女乱馬響良牙一条薫レイジングハート・エクセリオン 水 黒い子豚(黒豚溺泉) ☆響良牙 牛、雪男、鶴、鰻の混合生物(牛鶴鰻毛人溺泉溺泉) タコ(章魚溺泉) ☆パンスト太郎 響良牙 アヒル(鴨子溺泉) 志葉丈瑠 タコ(章魚溺泉) 響良牙 阿修羅(阿修羅溺泉) パンダ(熊猫溺泉) 猫(猫溺泉) 一条薫 子供(童子溺泉) 狼 7歳への若返り 月影ゆり 歳の数茸 伝説の胴着着用 ☆天道あかね 伝説の胴着 【フレッシュプリキュア!】 変身後 形態 変身者 使用アイテム キュアピーチ ☆桃園ラブ リンクルン キュアベリー ☆蒼乃美希 キュアパイン ☆山吹祈里巴マミ キュアパッション ☆東せつな佐倉杏子 ノーザ ☆北那由他 ナケワメーケ 冴島家の椅子 シンボル ソレワターセ スバル・ナカジマ 実 【ウルトラマンネクサス】 変身後 形態 変身者 使用アイテム ウルトラマンネクサス アンファンス ☆姫矢准佐倉杏子蒼乃美希孤門一輝 ネクサスの光 エボルトラスター ジュネッス ☆姫矢准孤門一輝 ジュネッスパッション 佐倉杏子 ジュネッスブルー 孤門一輝 ウルトラマンノア 孤門一輝 ダークメフィスト ☆溝呂木眞也天道あかね ダークエボルバー ダークメフィスト・ツヴァイ 黒岩省吾 ダークファウスト 美樹さやか天道あかね ダークザギ 石堀光彦 ネクサスの光 【仮面ライダークウガ】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 仮面ライダークウガ マイティフォーム ☆五代雄介一条薫 アークル ドラゴンフォーム ペガサスフォーム タイタンフォーム グローイングフォーム 一条薫 アメイジングマイティフォーム アルティメットフォーム 仮面ライダークウガ(プロトタイプ) 白 天道あかね プロトタイプアークル ズ・ゴオマ・グ(怪人体) 基本形態 ☆ズ・ゴオマ・グ 強化体 ダグバのベルトの欠片 ゴ・ガドル・バ(怪人体) 格闘体 ☆ゴ・ガドル・バ 俊敏体 射撃体 剛力体 電撃体 電撃俊敏体 ゴ・ガドル・バ 電撃射撃体 電撃剛力体 驚天体 究極体 ン・ダグバ・ゼバ(怪人体) 完全体 ☆ン・ダグバ・ゼバゴ・ガドル・バ 中間体 電撃体(中間) ン・ダグバ・ゼバ 【宇宙の騎士テッカマンブレード】 変身後 形態 変身者 使用アイテム テッカマンブレード 通常 ☆相羽タカヤ クリスタル ブラスター テッカマンエビル 通常 ☆相羽シンヤ ブラスター テッカマンランス ☆モロトフ ソルテッカマン1号機改 涼邑零 【牙狼-GARO-】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 黄金騎士ガロ ☆冴島鋼牙 魔戒剣 銀牙騎士ゼロ ☆涼邑零 暗黒騎士キバ ☆バラゴ 暗黒騎士キバの鎧 暗黒騎士キバの鎧 【超光戦士シャンゼリオン】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 超光戦士シャンゼリオン ☆涼村暁 シャンバイザー 暗黒騎士ガウザー ☆黒岩省吾 筋肉強化 ダークプリキュア 筋肉強化剤 【オリジナル】 変身後 形態 変身者 使用アイテム 超光戦士シャンゼリオン ハイパー 涼村暁 シャンバイザー+恐竜ディスク ガイアポロン 涼村暁 シャンバイザー+パワーストーン 偽高町なのは(9歳) レイジングハート・エクセリオン T2ダミーメモリ 偽高町なのは(20歳) 偽フェイト・T・ハラオウン 偽ユーノ・スクライア 偽アインハルト・ストラトス(覇王) 偽龍咲駆音(暗黒騎士キバ?) 偽シンケンブルー 偽キュアサンシャイン 偽仮面ライダー1号 偽ザ・ブレイダー ダークアクセル 石堀光彦 アクセルドライバー+アクセルメモリ
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変身後データ ※ドーパント等の一部変身キャラは「支給品一覧」で確認してください。 ※変身後に現れる武装もコチラを参照で。 【魔法少女リリカルなのはシリーズ】の変身後データ 【仮面ライダーW】の変身後データ 【仮面ライダーSPIRITS】の変身後データ 【侍戦隊シンケンジャー】の変身後データ 【ハートキャッチプリキュア!】の変身後データ 【魔法少女まどか☆マギカ】の変身後データ 【らんま1/2】の変身後データ 【フレッシュプリキュア!】の変身後データ 【ウルトラマンネクサス】の変身後データ 【仮面ライダークウガ】の変身後データ 【宇宙の騎士テッカマンブレード】の変身後データ 【牙狼-GARO-】の変身後データ 【超光戦士シャンゼリオン】の変身後データ
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ヴァージンな関係というH漫画 なかなか変化変身のある漫画です。 ヴァージンな関係はモテナイ冴えないお金がない男が 美女と出会う。 そこから大変身してしまう漫画です。 その大変身の内容は とにかく美女にモテる。 外も中も変わっていないのに モテ度だけはあがります。 最初に出会った美女 (のち妻になる) かなりの上げマンだったんでしょうね。 そのおかげでモテまくる。 女がどんどん寄ってくる。 男してうらやましすぎる漫画 それがヴァージンな関係です。 ただ、キレイな彼女、のち奥様がいるのに いろんな女と浮気をしてまう男 ゆるせない ことはなく すごく気持ちはわかる。 妻は好きだけど、せまってくる女とはヤッてしまう。 男の本能だから仕方ないですね。 男の本能がうずまくヴァージンな関係 いろいろと紹介されて人気なので、電子コミックで読んでみようと思います。
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らんま1/2の変身後データ 【娘溺泉の娘】 【黒豚溺泉のブタ】 【猫溺泉のネコ】 【牛鶴鰻毛人溺泉の混合生物】 呪泉郷でおぼれた者が変身する姿であり、その姿は多種多様。 パンスト太郎が変身する混合生物や、アシュラなどの例もあるものの、ほとんどは現実に存在する生物である。 漫画的なデフォルメはあるが、実写ドラマ化した際は、結構リアルなパンダになっていた(むろん、着ぐるみだが)。 変身方法は 水をかぶる→変身! お湯をかぶる→元に戻る! であり、呪泉郷につかった瞬間は変身後の姿になってしまう。 作中では、娘溺泉に溺れて、水をかぶると女になる体質になった乱馬と、熊猫溺泉に溺れて、水をかぶるとパンダになる体質になった玄馬が、男溺泉につかったことで、水をかぶっても女やパンダにならなくなったことがある。 しかし、一方では、牛と鶴と鰻と雪男の混合生物に変身する体質になったパンスト太郎は、その後、章魚溺泉につかってタコの能力を追加付与しており、結局のところ、上書きされるのか元に戻るのかは不明。 おそらく、特性の追加付与は牛鶴鰻毛人溺泉に限定された能力と思われる(この泉に限っては、元から複数の特性を持ち合わせているため)。 娘溺泉の娘 本編での主な変身者は早乙女乱馬、ハーブ。 娘溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 ……つまり、ただの若い娘である。 変身後の容姿は変身前の容姿及び年齢に影響されるため、作中では乱馬が年の数茸で子供になったときは、小さい女の子の姿になった。 主に、胸と尻が大きくなり、体格が丸くなり、手足のヒットが短くなる…などの変化があるが、はっきり言って弱体化としか言いようがない。 黒豚溺泉のブタ 本編での主な変身者は響良牙。 黒豚溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 足の大きさ程度のかなり小さいデフォルメされた黒い子豚になってしまう。 主に、しゃべれなくなり、体が異常に小さくなる(服もその場において行動するしかなくなる)。 ただし、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 また、噛みつく力が強く、よく乱馬の指などを齧る。良牙の元の身体能力もあってか、高くジャンプして体当たりをすることも可能。 結局のところ、一般人以下である。 もしかしたら、キルンなどを介せば会話ができるかもしれない。 猫溺泉のブタ 本編での主な変身者はシャンプー、南条ありさ。 猫溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 主に、しゃべれなくなり、体が異常に小さくなる(服もその場において行動するしかなくなる)。 ただし、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 また、猫であるため、すばしっこく、軟体でひっかく力も強い。 結局のところ、一般人以下である。 もしかしたら、キルンなどを介せば会話ができるかもしれない。 牛鶴鰻毛人溺泉の混合生物 本編での主な変身者はパンスト太郎。 牛鶴鰻毛人溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 鰻と鶴を持って牛に乗った雪男が溺れたという、呪泉郷史上最悪の歴史を持つ牛鶴鰻毛人溺泉で変身したため、「ウシの頭に雪男の体、鶴の翼にウナギの尻尾という怪物」になる。 また、その際に体長は人間を片手で持てるほど巨大化し、飛行もでき、人間離れしたパワーを持つようになるが、代わりに一切しゃべれなくなる。尻尾も意のままに操り、敵を倒すのに使えるほか、牛の能力で突進も可能。 喋ることはできないが、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 更に、パンスト太郎はタコが溺れた章魚溺泉につかることでパワーアップしており、背中からタコの足が生えるようになり、指先からタコスミを噴き出すことが可能となった。 参戦時期的には、パンスト太郎はこのタコの能力も有している。
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らんま1/2の変身後データ 【娘溺泉の娘】 【黒豚溺泉のブタ】 【猫溺泉のネコ】 【牛鶴鰻毛人溺泉の混合生物】 呪泉郷でおぼれた者が変身する姿であり、その姿は多種多様。 パンスト太郎が変身する混合生物や、アシュラなどの例もあるものの、ほとんどは現実に存在する生物である。 漫画的なデフォルメはあるが、実写ドラマ化した際は、結構リアルなパンダになっていた(むろん、着ぐるみだが)。 変身方法は 水をかぶる→変身! お湯をかぶる→元に戻る! であり、呪泉郷につかった瞬間は変身後の姿になってしまう。 作中では、娘溺泉に溺れて、水をかぶると女になる体質になった乱馬と、熊猫溺泉に溺れて、水をかぶるとパンダになる体質になった玄馬が、男溺泉につかったことで、水をかぶっても女やパンダにならなくなったことがある。 しかし、一方では、牛と鶴と鰻と雪男の混合生物に変身する体質になったパンスト太郎は、その後、章魚溺泉につかってタコの能力を追加付与しており、結局のところ、上書きされるのか元に戻るのかは不明。 おそらく、特性の追加付与は牛鶴鰻毛人溺泉に限定された能力と思われる(この泉に限っては、元から複数の特性を持ち合わせているため)。 娘溺泉の娘 本編での主な変身者は早乙女乱馬、ハーブ。 娘溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 ……つまり、ただの若い娘である。 変身後の容姿は変身前の容姿及び年齢に影響されるため、作中では乱馬が年の数茸で子供になったときは、小さい女の子の姿になった。 主に、胸と尻が大きくなり、体格が丸くなり、手足のヒットが短くなる…などの変化があるが、はっきり言って弱体化としか言いようがない。 黒豚溺泉のブタ 本編での主な変身者は響良牙。 黒豚溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 足の大きさ程度のかなり小さいデフォルメされた黒い子豚になってしまう。 主に、しゃべれなくなり、体が異常に小さくなる(服もその場において行動するしかなくなる)。 ただし、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 また、噛みつく力が強く、よく乱馬の指などを齧る。良牙の元の身体能力もあってか、高くジャンプして体当たりをすることも可能。 結局のところ、一般人以下である。 もしかしたら、キルンなどを介せば会話ができるかもしれない。 猫溺泉のブタ 本編での主な変身者はシャンプー、南条ありさ。 猫溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 主に、しゃべれなくなり、体が異常に小さくなる(服もその場において行動するしかなくなる)。 ただし、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 また、猫であるため、すばしっこく、軟体でひっかく力も強い。 結局のところ、一般人以下である。 もしかしたら、キルンなどを介せば会話ができるかもしれない。 牛鶴鰻毛人溺泉の混合生物 本編での主な変身者はパンスト太郎。 牛鶴鰻毛人溺泉に落ちたり、その水を浴びたりしたものが変身する姿。 鰻と鶴を持って牛に乗った雪男が溺れたという、呪泉郷史上最悪の歴史を持つ牛鶴鰻毛人溺泉で変身したため、「ウシの頭に雪男の体、鶴の翼にウナギの尻尾という怪物」になる。 また、その際に体長は人間を片手で持てるほど巨大化し、飛行もでき、人間離れしたパワーを持つようになるが、代わりに一切しゃべれなくなる。尻尾も意のままに操り、敵を倒すのに使えるほか、牛の能力で突進も可能。 喋ることはできないが、変身後も心や精神、思考などは変身前と同一である。 更に、パンスト太郎はタコが溺れた章魚溺泉につかることでパワーアップしており、背中からタコの足が生えるようになり、指先からタコスミを噴き出すことが可能となった。 参戦時期的には、パンスト太郎はこのタコの能力も有している。
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変身ロワイアルの真実 ◆gry038wOvE 全パラレルワールドの完全管理。──それが、彼の不動の目的だ。 本来、『インフィニティ』による管理は完全無欠であるはずだった。全てのパラレルワールドを管理するツールであるはずのそのメモリーは、FUKOを蓄積すれば世界の管理を行える力を持っているはずである。かつてメビウスもそれを信じてインフィニティを使った。 しかしながら、実際に使ってみれば、管理されない世界もいくつもあった。 たとえば、この殺し合いで桃園ラブが疑問に思ったように、一度メビウスによる全パラレルワールドの『管理』が行われたはずだが、その事実も、他の世界の参加者には通用しない常識になっている。あの時に管理された世界は、あらゆるパラレルワールドのごく一部でしかなく、支配された世界の一つではなかったのだ。 宇宙の果てにあるマルチバースと呼ばれる、一つ一つが小さな玉になっている多次元宇宙──それがパラレルワールドだが、管理国家はその玉の全てを握っているわけではない。ほんの欠片だけだったのである。 マルチバースには自分の世界を基準としたレベルがあり、そのレベルが上がるにつれ、科学や進化体系、年代の違いまで生じ、その遡行も難易度が高くなる。 答えをばらしてしまうと、インフィニティの力が支配できるのは、そのうちレベル2の一部──管理国家ラビリンスが認識できた世界までであった。いや、厳密には全パラレルワールドを支配する事もできるのだが、レベル2の多くや、それ以上を得るには、それなりの力が必要なのだ。それこそ、エントロピーを凌駕するエネルギーなど些末にしか感じないほどの壮絶な力が──。 この主催者は、それを得て全て支配しなければ、満足しない性格だった。それではまだ、全てのパラレルワールドを管理──とは名ばかりの支配をできない。 全てを管理下に置いていく。 ◆ インフィニティの存在を知った彼は、早速その強奪に取り掛かった。とある鉱石のエネルギーを用いて、辛うじてインフィニティのあるレベル2世界に遡行する事に成功し、その後、管理の為の準備を進め始める。 行き着いたレベル2マルチバースには、FUKOを更に効率よく上げる為の方法を持つ世界が複数存在した。 たとえば、ソウルジェムや三途の川が存在する世界である。それらの時空を一つの場所に統合し、三つの現象を併用する事により、たった一つの絶望で三倍以上のエネルギーが蓄えられる。それがインフィニティの管理速度を早めさせる事を考えたのであった。 それから、更に、驚くべきは、人間が『変身』するエネルギーというのがその進化を助長するという事実だった。 人がその身を別の姿に変じるという事は、それこそ科学や世の中の法則を無視した現象であるのは、周知の事実だ。 高度に発達した科学や、実際的な魔法が存在する世界においては、そんな常識はとうに過去の話であもあったが、それが通常ならば世界法則を歪めるだけの科学や魔法であるのも事実だった。そうして世界法則を歪めるだけのエネルギーを集めれば、管理世界の幅を広めるのに役立つと、彼は知ったのだった。 変身は、本来交わらないはずの異なるマルチバース間での変身の方が膨大なエネルギーを放出するというのも、興味深い事実であった。 収集方法は、変身する人物の魂を内包している器(人体、ソウルジェム)に特殊装置を付けたうえで、『変身』をさせる事で装置内に収集させる方法を選んだ。手間はかかるが、確実で、成功すればかなりの量のエネルギーを回収できるはずだ。 そして、いざ装置が完成してみれば、そこに溜めこまれたエネルギーは、装置が破壊されるまで外には放出されない難点があったが、それは些末な問題であった。すぐに、装置に一定条件下で爆発する爆弾を取りつける事を決定した。 そして、彼は、様々なマルチバースで、人体の『変身』を可能とする世界を恣意的に選び、その装置をつけて殺し合いをさせるゲームを開催する事にした。装置を70名の人間に取りつけ、エネルギーを収集する事にしたのだった。 装置は後に、『首輪』と呼ばれる。この首輪の爆破、または解除により、効率的にエネルギーが外へ出て行き、彼のもとに収集されるのだ。せいぜい、この特殊な首輪の寿命は80年程度だが、それだけ悠長に待つ気はなかった。 インフィニティや参加者66名ほか、あらゆる世界から彼とその部下は人を呼び、集めていった。 説明役に、『仮面ライダーW』の世界の財団X幹部・加頭順を呼んだ。彼自身興味を持っていた、財団Xという地球人組織を武力で支配下に置き、インフィニティを発動させた後、殺し合いがスタートするのだ。 そして、オープニングの映像を外世界に流し絶望させるために一週間のインターバルを置いた。あらゆる世界から、FUKOが溜まっていく。その間、参加者や一部の主催陣には全員眠っていて貰い、財団Xの人間には管理された自世界の様子を眺めさせた。彼らもだんだんとインフィニティによる支配力が効き始めていった。 結果的に、彼らの帰るべき世界はその力で、六日間で管理された。 ◆ 異なる時間軸から人間が消え去った事実はなくなっていき、世界は自ずと矛盾を消していこうとし始めた。元々、一つの流れを自然とする世界は、その本能に従い、最も正解に近い世界へと形を変えていく。そして、結果的に連れて来られた人間の最終時間軸を基準にした融合が始まった。 ただし、その世界の人間全てが死亡した段階で、世界は矛盾を治す力を使い果たし、更に矛盾だらけの世界を作り出してしまう。テッカマンブレードの世界は、まさしくそうだった。相羽タカヤが活躍するよりも過去の時間軸で死亡したという事実に対して、あらゆる混乱を起こした結果、彼が殺した敵が蘇るような現象が起きたのである。 こうして世界が一つにまとまり始めた事は驚きだったが、その方が、管理がしやすいのも事実であった。 ◆ 管理されていない世界でも、勘の良い者は、遠いマルチバースの異変を何らかの書き記すようになった。やがて管理される時が迫っている事を動物的本能が察知し、それを夢に見る者がいた。 ある世界では、その絶望の様相が美大生の課題の絵として提出された。その美大生は、課題の期限に追われて適当なイメージを描いただけだったが、それが深層心理からの警鐘であり、未来起こりうる事だとは到底知らないだろう。 ある世界では、その管理の本質が哲学者の思想として知れ渡り、少しの注目を浴び始めた。その本質を見極めたところで、着々と迫りくる管理の夜に抵抗する術はない。 ある世界では、その物語の殆どが数名の人間によって合作され、インターネット上で「リレー小説」として公開された。散り散りに感じていた無意識のイメージの断片が自然と吐き出され、一つの作品を作り上げていき、世界の隅で少しずつ記録されていった。 そうして、外世界も少しずつ全パラレルワールド管理への注意を喚起し始めていた。 ◆ 殺し合いの会場となる世界は、唯一、主催者である彼にも謎の世界である。こればかりは、主催者にもわからなかった。 どのマルチバースにも属さず、どうしてここに行きついたのかは彼自身もわからない。ふと気づけばここにいたと言ってもいい。……ただ、ここは知れば容易に踏み込む事ができ、知らなければ一生触れようともしない場所にあった。 誰も人が住んでおらず、点々と置いてある島々には、ただ戦いの痕跡だけがある。まるで、誰かが既にこの島で殺し合いをしたようだった。倒壊したビルや、大破した巨大ロボットの残骸、首輪をつけた人間たちの死体……そんな生々しい爪痕が残っている。もし、何も知らない人間が見れば、嫌悪さえ催すような場所だろう。しかし、彼は妙にそこに惹かれていた。 そこに、一つ真新しい島が存在していた。彼はそこで殺し合いを行う事に決定した。どういうわけか、誰も用意もしていないのに、『風都タワー』や『志葉屋敷』といった、レベル3世界の産物が建てられている。 島の地下には、主催人物が休むための施設があり、F-5の山頂の真下に、その入り口が存在している。 それを疑問に思ったが、誰かが「ここで殺し合いを行え」と自分を急き立てているような気がした。彼は、それに運命を感じて、ここで殺し合いをする事にしたのだった。 ◆ ……ここにいる加頭順の頭上では、今も殺し合いは行われているのだろう。 爆破・あるいは解体された首輪の変身エネルギーは今も着々と、「あのお方」のもとに届いている。首輪の構造上、こうして爆破され、解体される事がやむを得ない。いくつか、解体されないまま死体とくっついて放置される首輪が存在するものの、残っている参加者たちはそれを拾い、再び解体していく事もあった。 結城丈二が首輪解析功労者とされたのも、それが全て、主催陣にとって有益な話だったからだ。首輪に溜めこまれた力は、「破壊」されてこそ意味を成す物で、基本的には「生存時間」、「変身回数」、「破壊のタイミング」を良いバランスで揃えなければならない。それには、下手に手を加えるよりも、参加者が首輪を爆破させるか、解体するかを自然のタイミングに任せて放置した方が良いだろうと考えたのであった。 事実、それまでの間に繰り返し多彩な変身を行う者がおり、それは彼らの予想外の事実にもなった。下手なタイミングで爆発させるよりもずっと効率良く手に入った。 結城丈二にとって誤算だったのは、彼がダミーと判断したコードや器具が全て、『破壊された後は意味を持たない』というだけの、変身エネルギーの蓄積場所であった事だろう。彼は今も、参加者の多くが首輪を解除するために役立ってしまっている。無論、こんな事を予想できるなど、科学者でも不可能だ。 それこそ、超能力者でもない限りは、首輪を解除する事の真の危険性などに気づかない。彼をはじめとする首輪解除派には一切、落ち度などなかった。 現状でも彼らが解体し続けたいくつもの首輪のエネルギーがFUKOのゲージを目くるめくスピードで盛り上げている。このまま行けば、殺し合いの終了までには、『オリジナル』を含めた全世界を完全支配できるであろう事も間違いなくなってきた。 (ユートピア……) 理想郷のメモリを持つ彼は、現状作られていく管理国家の姿が、その言葉に見合う物なのか、少しばかり思案した。だが、答えは出ない。 テッカマンの世界では、既に人間・素体テッカマン・ラダムに一定の役割が設けられ、その間での戦争・闘争があっという間に収束している。 財団Xも紛争地域への支援が抑えられ、資金の大半がこの殺し合いへの協力に回された。それは財団にとってマイナスでしかなかったが、世界にとってはプラスであるといえないだろうか。 普段の財団の支援で死んでいった兵士よりも、この殺し合いに巻き込まれて死んだ人間の方が遥かに少ないほどである。同じ資金と資材ならば、この数百倍の人間が屍になるだろう。 管理により世界は、かえって争いをなくしていき、『全宇宙の意思』であるワルダスター帝国のドブライまでが彼に力を貸すようになった。それは即ち、この蛮行は宇宙にさえ認められた正当な物である……という事であるようだった。 勿論、加頭も納得はしていない。 園咲冴子がまたも死んだ事実に──震える心もある。 だが、加頭は二度も死んだ後だというのに、またこうしてこの殺し合いの主催に招かれた。大道克己との戦い、仮面ライダーダブルとの戦い……いずれも、忘れられるものではない。 冴子の死という事実も、だんだんと彼の中では軽んじられる些末な話に感じられるほど、死生観の歪みは強まっていく。 ……彼の目的は、冴子を加頭のように蘇らせ、この地で共に暮らす事であった。その欲望はまだ胸にある。 管理世界の外に二人だけの理想郷を作るのだ。 ──勿論、サラマンダー男爵とオリヴィエとは、その時に殺し合いになるだろうが。 ◆ そして──。 彼は、マップの裏側──側近の五名とインフィニティ以外、誰もいない小さな島で、玉座に座って殺し合いの映像を見ていた。 世界の王が玉座というのも古風な話だが、彼は所謂、そういうタイプの悪であった。これがダークザギさえも支配する力を得た戦士である。 まさしく、全ての宇宙を抱き込むほどの欲望を持ち、それを発揮しようとしている怪物だった。 「我ガ名ハインフィニティ……無限ノメモリーナリ……」 インフィニティとともに蓄積されるFUKOや水かさ──それが彼の頭上百光年分を遥かに超える水かさである事が、その方法の効率性の高さを示している。 変身エネルギーがここで大きく回収され続けた事で、あっという間に百光年も水かさが増したのだ。それでも、まだ『オリジナル』には行きつかないと知り、世界の広さを痛感する。 だが、どちらにせよ、関係のない話だった。 「……管理は随分進んでいるらしいな。俺様が全宇宙を支配する時も近いみたいだ……」 ……そう、彼の名は、カイザーベリアル。 力に対する強い渇望を感じ、悪の道を行く事になったウルトラ戦士である。 それは、ウルトラ戦士が束になっても勝てず、ウルトラマンノアの力を借りたウルトラマンゼロさえも苦戦を許すほどの最強の怪物であった。 あるいは、彼は、既にウルトラマンノアやダークザギ以上の力を持っているかもしれない。 ベリアルこそ、新たな管理国家──ベリアル帝国を築き、全マルチバースの支配者となる事を夢見る、この殺し合いの真の主催者だった。 【真の主催者】:カイザーベリアル@ウルトラシリーズ 時系列順で読む Back 第四回放送Y(後編)Next さようなら、ロンリー仮面ライダー(前編) 投下順で読む Back 第四回放送Y(後編)Next さようなら、ロンリー仮面ライダー(前編) Back 第四回放送Y(後編) 美国織莉子 Next あたしの、世界中の友達 Back 第四回放送Y(後編) 呉キリカ GAME OVER Back 第四回放送Y(後編) プレシア・テスタロッサ GAME OVER Back 第四回放送Y(後編) アリシア・テスタロッサ Next BRIGHT STREAM(1) Back 第四回放送Y(後編) 吉良沢優 Next 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変身超人大戦・襲来 ◆LuuKRM2PEg 「バスタアアアアァァァァァァァ!」 「バスタアアアアァァァァァァァ!」 そして、二つの光は寸分の狂いもない同じタイミングで放たれた。二人の呼吸が完全に一致していたのは、二人が師弟だったのが関係あるかもしれない。 鋼色の拳と黄金の杖から轟音と共に解放されたエネルギーは一瞬の内に衝突し、勢いよく爆発した。暴力的とも呼べる魔力の塊の余波は凄まじく、それだけで周囲の物を容赦なく吹き飛ばしていく。 サイクロン・ドーパントもまた弾き飛ばされそうになったが、その直前にキュアサンシャインによって支えられた。 「あ、ありがとうございます!」 「吹き飛ばされないように踏ん張って!」 「はい!」 激流のような光線の余波と二つの光線が放つ眩さによって、サイクロン・ドーパントは思わず目を細める。その勢いはサイクロン・ドーパントが放っていた疾風など、まるで子供騙しのように思えるくらいだった。 拮抗する光線はやがて、雷鳴が轟くような音を鳴らしながら爆発して、辺りを極光で満たす。その衝撃によって地面は大きく揺れるが、サイクロン・ドーパントはそれに意識を向けていられなかった。 光が収まりつつある中、吹き飛ばされた大地は粉塵となって周囲に舞い上がる。しかしそれは冷たい風に流されて、視界を遮ることはなかった。 「でぃばいん、ばすたー……」 「スバルさん……もうやめてください」 そして、二つのディバインバスターによる輝きが消えた頃、なのはとスバルは見つめ合っている。 スバルは拳を突き出したままぽかんと力なく口を開けているのとは対照的に、なのはは悲しげな表情で呼びかけていた。 「まぶしい、なのはさんのでぃばいんばすたー……まぶしい、とってもまぶしい」 「スバルさんお願い! 元の優しいスバルさんに戻って!」 「……やさしい?」 「私はスバルさんのことはよく知りません! でも、アインハルトさんや未来の私はあなたのことがとっても優しい人だって知っています! そして、スバルさんがたくさんの人を助けてくれたことも!」 「たくさんの人を、助けた……?」 金色に輝く瞳から突き刺さってくる殺意が、なのはの言葉によって弱まってくるように感じる。ゆっくりと構えを解いていくスバルの顔がまたしても迷いで満ちて、息を荒げながら頭を抱えた。 「ど、どうして、どうして、どうして、あたしは、つぶす、つぶす、なのはさん、まぶしい、なのはさん、つぶす、つぶしていい、つぶしちゃだめ、つぶしていい、つぶして、つぶして、つぶして……」 「スバルさん!」 「どうして、なのはさん、どうして、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……」 なのはが必死に呼びかけていく度にスバルはどんどん狼狽していって、血管のように脈打つソレワターセが縮んでいくのが見える。そのおかげで、あれだけ飛び交っていた触手も止まっていた。 これは千載一遇のチャンスだと思ったサイクロン・ドーパントは、キュアサンシャインから少し離れていく。 「あたしは、あたしは、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、たすける? たすける? なのはさん? なのはさん? なのはさん?」 「いつきさん!」 「うん、わかってる!」 そしてキュアサンシャインも察しているのか、サイクロン・ドーパントに頷きながら前に出た。太陽のように強く光る瞳を見て、ここにいるみんなの願いがようやく叶えられるとサイクロン・ドーパントは思う。 これでようやくスバルさんを助けて、本郷さん達と一緒に加頭やキュウべぇの陰謀を阻止することができる。さやかちゃんの時みたいに、もう救えなくなるなんてことはない。 キュアサンシャインに希望を感じていたサイクロン・ドーパントは、スバルに意識を向け続けていた。そして彼女は気付かなかったが、一号とアインハルトも困惑するスバルに釘付けとなっている。 その結果、襲撃者に気付くのに遅れてしまった。もっとも、それが早かったところで不幸にも数メートルほどの距離があったので、素早く反撃できた可能性は低い。 スバルを元に戻せるという大きな希望が、皮肉にも最悪の罠となってしまったのだ。 「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」 気付くことができたのは、シンケンブルーの悲痛な叫びが発せられてからだった。 何が起こったのかを考える暇もなく、サイクロン・ドーパントはすぐさま後ろを振り向く。見ると、ここから少し離れた場所ではシンケンブルーが倒れていて、その側に別の参加者が二人も立っていた。 おとぎ話に出てくるような魔女みたいに薄気味悪い格好をした大柄の女と、怪談の中で語られそうな妖怪みたいな怪物。それぞれの瞳からは、この殺し合いに乗っていると言わんばかりの明確な殺意が感じられた。 サイクロン・ドーパントはすぐに突風を出そうとしたが、怪物は両手に握った刀をシンケンブルーに突き付けていて、下手な動きをすれば殺される可能性がある。それは戦いの素人である彼女でも、容易に想像できた。 「無様な姿ですな、シンケンブルー」 「お前はやはりアクマロ……本当に生きていたのか!?」 「ほう、我がこの殺し合い程度で滅ぶような輩だと? これはまた随分と、見くびられたものですなぁ!」 アクマロと呼ばれた怪物の口調は軽剽と苛立ちが同時に感じられる。そのせいで、能面のように動かない顔の下からは怒りが放たれていると本能で察した。 そのままアクマロは憂さ晴らしのためなのか、シンケンブルーをまるでボールか何かのように蹴飛ばす。マスクの下から発せられたと共に地面を転がる彼の元に一号が駆け付けて、その身体を支えながらアクマロ達を睨んだ。 「あなた方シンケンジャーはただでは殺しませぬ。これまで我々の邪魔をした報い……じっくりと、受けて頂きましょう」 「お喋りはそこまでよ、アクマロ君」 アクマロが一歩前に踏み出そうとするが、隣で邪悪な笑みを浮かべている女がそれを制止する。蛇のように輝く瞳は、キュアサンシャインに向けられていた。 「キュアサンシャイン……まさか私の知らないプリキュアがいたなんてね。これは驚きだわ」 「もしかしてあなたが……ノーザ!?」 「ふうん、私のことを知ってるのね。これは光栄だわ」 「じゃあ、スバルさんをソレワターセで操ってるのも、やっぱりあなたの仕業だったのね!」 「あら、わかってたんじゃなかったのかしら? 最初から私が、そのマシーンを有効活用してあげたってことを」 「なんですって!?」 ノーザと呼ばれた女がさも当然と言うような笑みを浮かべる前で、キュアサンシャインは表情を怒りに染めながら拳を強く握り締める。 そんな彼女と同じようにサイクロン・ドーパントも、人を人とも思わないようなノーザの言葉に憤りを感じていた。本当なら魔法少女のみんなや猛みたいに人々を守っている勇気に溢れたスバルを、よりにもよってマシーンなどと呼ぶ。 それはあのキュウべぇみたいに感情がなければできることではない。しかもノーザやアクマロは人の不幸を嘲笑っているから、キュウべぇ以上に悪質かもしれなかった。 「あなたがスバルさんを……許さない!」 そしてアインハルトも怒りに満ちた表情でノーザを睨んでいて、そのまま勢いよく走り出す。まるで韋駄天のように素早く、ノーザとの距離がどんどん縮んでいった。 「待つんだ、アインハルト!」 「一人で飛び出すな!」 一号とシンケンブルーは呼びかけるがアインハルトは止まらない。二人は立ち上がって駆けつけようとするが、その前にアクマロが立ちはだかる。 右手の刀を一号に、そして左手に握る刀をシンケンブルーに突き付けて、一瞬だがその動きを止めた。 「そこをどけ、アクマロ!」 「邪魔をするのは無粋ですぞ。シンケンブルー……そして、本郷猛!」 シンケンブルーの怒りを前にしても、アクマロは嘲笑を貫いている。 「ならば、力尽くで通るだけだ!」 そう、一号は拳を握り締めながら宣言する。 「やれるものなら、やってごらんなさい!」 そう言い放ったアクマロは両手の刀を構えて二人に襲いかかり、異様な輝きを放つ刃で容赦なく斬り付けていく。一号とシンケンブルーは何とか避けようとするが、スバルと戦っていた直後だったせいで動きが鈍っていて、そのせいでアクマロの攻撃全てを対処することができずに斬られていた。 「ぐうっ!」 「ほ、本郷さん!」 そして一号の胸板が傷つけられるのを見て、サイクロン・ドーパントは駆け付けようとするが今度はスバルによって阻まれる。キュアサンシャインやなのはも二手に分かれて進もうとしたが、ソレワターセの触手が彼女たちの行く道を塞いでいた。 「全てはノーザ様のために」 「スバルさん、そこをどいてください!」 「全てはノーザ様のために」 なのはは必死に呼びかけるが、スバルは初めて出会った時のように表情が冷たい殺意で満ちている。輝く瞳からは、血も涙もない殺戮兵器のような冷酷さが感じられた。 その視線に戦慄する暇もなく、彼女の背中に取り憑いたソレワターセから触手が何十本も飛び出してきて、緑色の肌を容赦なく叩いてくる。サイクロン・ドーパントが悲鳴を発して弾き飛ばされた頃には、キュアサンシャインとなのはも地面に叩き付けられていた。 「覇王――!」 そしてここから少し離れた場所で、アインハルトが拳を握り締めながら走り、力強く宣言しているのをサイクロン・ドーパントは見る。 その一撃が凄まじい威力を持っているのは、先程コウモリ男を叩きのめしている時に知った。だから、どんな敵が相手でも決して負けることはない。 そう信じているのに、サイクロン・ドーパントの中で不安は消えなかった。アインハルトの前にいるノーザが余裕の笑みを浮かべながら、何も仕掛けてこない。 このままじっとしていたら、アインハルトに叩き潰されるだけ。アクマロは一号やシンケンブルーと戦っているし、スバルはノーザに背を向けたままこちらを睨み付けている。 今、ノーザを守る者は誰一人としていない。それにも関わらずして、何故あそこまで余裕で立っていられるのか? 疑問が何一つ解決されないまま、アインハルトは遂にノーザの目の前まで迫っていた。 「アインハルトちゃん、駄目!」 「断空拳!」 サイクロン・ドーパントは嫌な予感のあまりに呼びかけたが、もう遅い。 アインハルトの掛け声が発せられた次の瞬間、それを打ち消すかのような激しい音がエリアに響いた。その音はアインハルトの奥義がいかに凄まじい威力であるかを物語っている。 だからこそ、サイクロン・ドーパントは目の前の光景を信じることができずに声も出せなかった。 「えっ……!?」 「フフッ、せっかく当てることができたのに残念でした」 そして、アインハルトも同じように驚愕している。 アインハルトが全力で放った覇王断空拳は確かにノーザに届いていたが、雪のように白い片手一つだけで受け止められていた。 アインハルトは一瞬だけ愕然とした後、何とか振り解こうと動いているがノーザは微動だにしない。それどころか、笑ってすらいた。 「くっ……このっ!」 「実は言うと私、とっても強いのよね」 明らかにアインハルトを愚弄しているノーザを見て、サイクロン・ドーパントはようやく確信する。 何故、ノーザは覇王断空拳が迫るまでに何の動きも見せなかったのか? それは避ける必要がなかっただけに過ぎない。彼女の奥義を簡単に受け止められるくらい、ノーザは強かったという単純な理由だった。 しかしだからといって、サイクロン・ドーパントは納得などできない。アインハルトは一号と一緒にみんなの為に戦えるくらい、勇気に溢れた強い少女だった。そんな彼女が悪意に満ちた魔女に負けるなんて、サイクロン・ドーパントは受け入れることなどできない。 目の前の光景がただの悪夢だと思いたかったが、現実は何一つとして変わることなどなかった。 「これくらいに、ね!」 「きゃあっ!」 そしてノーザは片腕一本だけで、アインハルトの身体を勢いよく頭上まで持ち上げる。その細い腕のどこにそれだけの力があるのかを考える暇もなく、そのまま彼女は宙に投げ飛ばされた。 アインハルトが重力に吸い寄せられて地面へ叩き付けられると思った瞬間、その脇腹をノーザは勢いよく蹴りつけて更に高く持ち上げる。口から漏れた悲鳴は声になっていなかったので、それだけで重い一撃であることが見て取れた。 数秒ほど宙を舞った後、今度こそアインハルトは地面に勢いよく落下する。どさり、と鈍い音を鳴らしながら一気に転がっていった。 「アインハルトちゃん、今そっちに行くよ!」 回転はすぐに止まったが、その身体には大量の傷が見える。 一号とシンケンブルーはまだアクマロと戦っているし、キュアサンシャインとなのはは少しだけ遠い。だからサイクロン・ドーパントはすぐに立ちあがって、アインハルトの元に走り出していく。キュアサンシャインとなのはが後ろから呼びかけてくるが、それを聞いている暇はない。 アインハルトは身体をゆっくりと起こしながら振り向き、そして一気に目を見開いた。 「駄目! まどかさん、後ろ!」 「えっ?」 予想だにしなかったアインハルトの答えが、サイクロン・ドーパントに一瞬の制止を余儀なくしてしまう。そして反射的に後ろを振り向こうとした直後、地面が勢いよく削れる音が耳に響いた。 完全に振り向いた後に見えたのは、流星の如く駆け抜けてくるスバルの姿。彼女はソレワターセの触手でキュアサンシャインとなのはの接近を阻みながら、拳を振り上げてくる。 サイクロン・ドーパントは突風を出すために両腕を突き出そうとするが、それよりもスバルの動きが圧倒的に速い。不意に、一号達の声が聞こえてくるが、それがあまりにも遠い物に感じられた。 全てを射抜くような金色の瞳と目が合った頃、スバルの拳はサイクロン・ドーパントの腹部に到達している。ドーパントになったことで発達した感覚によって、これから吹き飛んでしまうと本能が予知した。 「IS・振動破砕」 そんな呟きが耳に届いた瞬間、サイクロン・ドーパントはまるで全身が砕け散るような衝撃を感じる。予想を遥かに上回るくらいに凄まじい威力で、サイクロン・ドーパントが耐えられるダメージではなかった。 気がつくと、視界に映っていたのはようやく登り始めたとても美しい朝日だったが、朦朧とした意識の中ではそれを意識することはできない。 そこからすぐに身体が揺れるのを感じて、その度に痛みが全身を蹂躙していく。ようやく振動が収まって起き上がろうとするが、急に全身は鉛のように重くなっていた。 一体何がどうなっていて、自分の身に何が起こったのか? その疑問が解決されることもなく、彼女は自分の右手が腹部に触れていて、そこに生温かい液体が付着してるのを感じる。 この違和感の正体を突き止めるため、何とかして腕に力を込めて手を見つめた。スバルから受けたダメージによって体内に宿るガイアメモリは体内から排出され、元の華奢な女子中学生の姿に戻っているが、それを意識していない。 ただまどかが認識しているのは、自分の右手が真っ赤に染まっていることだけだった。 「えっ……何、これ……?」 新鮮なトマト以上に鮮やかな赤さを持つ液体からは、鉄の匂いがする。 刹那、喉の奥から何かが逆流してきて、それがまどかの口から勢いよく吐き出された。そして次の瞬間には、口内に血の味が広がっていく。 この時まどかはようやく察した。たった今、スバルから受けた攻撃によって腹に大きな穴が空いて、そこから大量の血が流れ出ていることを。 まどかは知らないが、その一撃は戦闘機人タイプゼロ・セカンドであるスバル・ナカジマが持つIS(インヒュレートスキル)と称される特殊技能の一種で、振動破砕の名を持つ接触兵器による物だった。それは四肢の末端部から強烈な振動を標的に与えて、対象物の内部を容赦なく破壊する防御不能の機能。主な目的は機械兵器を破壊することだが、生物に対しても莫大な殺傷能力を持っている。 本来ならその振動にはスバル自身にも伝わり、危険な諸刃の剣とも呼べる機能だった。現に彼女の左腕部分の内部ケーブルが一部破損してしまい、リボルバーナックルやマッハキャリバーにも亀裂が走っている。 だがその見返りは大きい。制限によって威力が減退しているにも関わらず、サイクロン・ドーパントの変身を強制的に解除させて、まどかの臓器や骨を破壊するには充分すぎた。 「あ、あ、あ……あ……ッ!?」 手に付着した鮮血を見てようやく腹部に激痛を感じて、まどかの口から悲鳴が漏れそうになった瞬間、その身体が急激に持ち上げられる。倒れたまどかの手足にソレワターセの触手が絡みついて、そのままスバルが立つ地面の遥か上にまで登っていった。 まるで十字架に張り付けられたかのように四肢を縛られたまどかの耳に声が響くが、痛みと失血によって意識が揺れているのでまともに聞き取れない。ただ、ぼんやりと下界を見下ろすしかできなかった。 そんな中、この事態を引き起こした元凶たるノーザが笑いながらこちらを見上げていて、目線が合う。嘲笑うような眼からは殺意が向けられているだけではなく、まるで呪われているようにも思えた。 自分の未来はノーザによって握られていて、この命はもう自分の物ではない。生きるも死ぬもノーザ次第。不意にまどかはそう思うようになって、背筋が凍るような悪寒を感じる。 ノーザの冷たい瞳に宿る邪念はキュウべぇからも、これまで魔法少女のみんなが倒してきた魔女達よりも、そして先程戦ったスバルよりも強い。それほど怖いノーザによって、これから全てを壊されてしまう。 まどかは恐怖のあまりに、そんな不安に捕らわれてしまった。 これは誰もあずかり知らぬことだが、まどかが追い込まれたのにはもう一つだけ原因がある。それは参加者の大半に配られているはずの、T―2ガイアメモリ。 莫大な力を得られる代償として、余程強い精神力を持たぬ人間がそれを差し込んでしまえばたちまちメモリの毒素によって精神を壊されてしまう。ただの女子中学生でしかないまどかはそれを二度も使用したことで、自分自身を抑える力が極端に弱くなっていた。 加えて本郷猛から仮面ライダーと呼ばれたことで、彼女は慢心してしまっている。賞賛の言葉が皮肉にも、まどかを危機に陥らせるきっかけとなってしまったのだ。 ◆ スバルに植え付けられたソレワターセによって天に掲げられたまどかを助けるために、シンケンブルーは必死に刃を振るい続ける。しかしアクマロが持つナナシ連中の刀でそれを受け止められてしまい、そこから削身断頭笏で胸部を横一文字に斬られた。 焼け付くような痛みが駆け巡り、呻き声と共にシンケンブルーは後退ってしまう。それをカバーするかのように一号はアクマロに殴りかかるがあっさりと避けられて、そこから反撃の一閃を受けてしまった。 蹌踉めきながらもシンケンブルーは何とか立ち上がって走ろうとするが、痛みが動きを阻害している。十蔵によって負わされた傷はスバルとの戦いで開いてしまい、左脇腹から少しずつ血が流れていた。 その上、外道衆の中でも相当の実力者であるアクマロとの戦いを強いられることとなり、動きは確実にキレを無くしている。 もしもまどかを助けるためにどちらか一人がアクマロを引き受けたとしても、消耗した状態で一騎打ちを持ち込んでは一瞬で負けてしまい、もう一人もすぐに殺されるだけ。結果、二人で戦うことを余儀なくされていた。 「おやおや、いつもの動きが感じられませぬ。シンケンブルー……もしや、深手を負っておりますな」 「黙れ!」 そして今も、身体の不調さえも敵に見抜かれていた。侍の誇りがそれを許すはずもなく、何とか力を込めてシンケンマルで一閃するが、すぐに受け止められてしまいそこから胸部を蹴られる。 再度吹き飛ばされるが、地面に叩き付けられる直前に一号が支えてくれた。シンケンブルーは軽く感謝を告げながら、ゆっくりと立ち上がる。 「あんたさん達、これから始まる喜劇の邪魔をするのは無粋ではありませぬか。お客はお客らしく、ゆっくりと待てばいいのです」 「喜劇だと……!?」 「ふざけるなっ!」 シンケンブルーのマスクの下で流ノ介が汗を流しながら怒りで表情を歪ませる中、一号は激昂した。 「キサマら……何故、まどかちゃんにあんな酷い仕打ちをする!?」 「何故と申されても……この催しは元々こういう仕来りですから、私はそれに従うまでです。それに一体、何の間違いがありますかな?」 「何だと……!?」 一号が握り締めた拳からはメリメリと鈍い音が聞こえて、それだけでも並の怪人を震えさせるような闘志を放っているが、アクマロは微塵にも揺れる気配を見せない。 「もういい、黙れアクマロ」 しかし一号が放つオーラは、シンケンブルーを奮い立たせる力となった。 あの会場で加頭順に対して啖呵を切った男が隣にいるのだから、足枷にならないよう戦わなければならない。その意思はやがて、全ての人々を救うきっかけになるはずだから。 「邪魔をするなら、突破するだけだ!」 「フン、望むところです! 相手になって差し上げましょう!」 シンケンブルーの呼吸は徐々に荒くなっていくが、それでもシンケンマルを握る力だけは緩めない。 目の前にいる外道達をこの手で斬るために、彼は一号と共に走り出した。 時系列順で読む Back 変身超人大戦・危機Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ 投下順で読む Back 変身超人大戦・危機Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 本郷猛 Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 沖一也 Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 明堂院いつき Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 ノーザ Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 高町なのは Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 スバル・ナカジマ Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 アインハルト・ストラトス Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 鹿目まどか Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 ズ・ゴオマ・グ Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ Back 変身超人大戦・危機 筋殻アクマロ Next 変身超人大戦・イナクナリナサイ
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変身超人大戦・危機 ◆LuuKRM2PEg 「なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……!?」 「私の名前を、知ってるんですか……?」 「なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……なのはさん……!?」 なのはは問いかけるが少女は答えず、まるで壊れたテープレコーダーのように名前を呟きながら、よろよろと後退した。 「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……」 「君、しっかりする……ッ!」 「あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、知ってる、知らない、知ってる、知らない、思い出せない、誰、なのはさんって、誰、わからない、なのはさん、あこがれてる、なのはさん、目標、どうして、どうして、どうして、どうして、わからない、わからない、わからない、教えて、教えて、教えて、教えて……」 ふらつく少女を再び支えようとした猛の言葉は続かない。 少女は両手で頭を抱えながら俯いて、壊れたように言葉を発した。常軌を逸したその行為に意味や理性など感じられず、狂っているようにも、何かに迷っているようにも見える。 少なくとも、ただごとではないのはなのはも理解できた。何故彼女が自分の名前を知っているのかは気になるが、今はどうでもいい。 そう思った頃には、いつの間にか少女の口は止まっていた。どうなっているのかはわからないが、これはまたとないチャンス。 なのははもう一度声をかけようとした。 「……そっか、そういうことですか」 その呟きと共に、彼女は勢いよく顔を上げる。 少女が今作っている表情は、これまでとは一線を画しているように笑っていた。それも穏やかさや優しさは全く含まれておらず、薄気味悪さしかなのはは感じなかった。 「みぃんな、食べちゃえばいいんですね……楽しい、ご飯の時間だ」 そう言ってゆっくりと立ち上がった少女の背中から大量の蔦が、音の速度で飛び出してくる。それは少女の全身にほんの一瞬で絡みついて、自分の意志を持っているかのように蠢いた。 一体何が起こっているのか? そう思った頃には、がしりと腕を強く掴まれる。びくりと身体を大きく振るわせながら振り向くと、流ノ介が鬼気迫る表情を浮かべているのが見えた。 「ホテルの外に走るぞ、急げ!」 答える暇もなく、腕を引っ張られながら走るのを余儀なくされた。 なのはが足を無理矢理動かしている中、他の四人もホテルに向かって走る音が聞こえる。だからなのはも、反射的に走る勢いを上げた。 置き去りにされた少女がいる場所から、何やら耳障りな音が聞こえてくる。肉や骨が磨り潰されてるような、鼓膜に捉えただけで吐き気を促すような音が。 だからなのはは走る。振り向くことも止まることもしないで、流ノ介の腕を必死に掴みながら走る。 ここで止まったりしたら、どうなるか。それはまだ短い人生しか送っていない彼女でも、容易に想像できる。 手を引っ張ってくれた流ノ介に感謝する暇もなく、なのははホテルの外に出た。 ◆ 栗毛でツインテールが作られた少女を見て、スバル・ナカジマの感情は大いに高ぶっていた。 あの小さな少女と目を合わせた瞬間、忘れていたはずの何かが胸の奥より湧き上がってきている。けれど、その正体がまだ掴めない。 高町なのは。 あの少女の名前は、高町なのはであると本能が告げていた。何故、そう言い切れるのかはスバル自身わからない。 そして、胸の高鳴りや後ろめたさの正体も理解できなかった。 ――正体が知られたからには、誰も逃がすな。 「うん、わかってるよ……全てはノーザ様のためだから。ねえ、マッハキャリバー?」 『その通りですとも、相棒。我が存在意義は、ノーザ様の理想郷を作ることですから』 しかしその疑問は、ソレワターセの声によって塗り潰される。 ソレワターセの力で二回目の変身を行っている中、スバルは狂気に満ちた笑みを浮かべていた。蠢く蔦が人工骨格の形を変え、細胞と臓器が熱くなっていくのを感じるが彼女は気にしていない。 全身が変わっていき、凄まじい熱が蛇のように走る。それは生きながらにして火炙りにされているに等しく、いつものスバルなら絶叫していた。だが今のスバルにとって、むしろ快楽にすらなっている。 ――お前の底に潜む悪魔の心を爆発させろ。そうすればお前はもっと強くなれるぞ、タイプゼロ・セカンド。 「我が名はタイプゼロ・セカンド……ノーザ様のためだけに動く殺戮マシーン」 地獄の底から響く程に低いソレワターセの声に頷いた頃には、既にシャンプーからスバルへと戻っていた。 その瞳に輝く金色は、より強い禍々しさを放っている。 「全てはノーザ様のために……ノーザ様の邪魔者は、みんないなくなってしまえばいいんだ」 それはソレワターセによって己を奪われてから、スバルに初めて芽生えた意思だった。 気付くことはないが、言葉に込められた殺意はスバルだけのものではない。その身に取り込んだシャンプーやゴオマが抱いていた殺意も、ソレワターセによって与えられていた。 「全ては……ノーザ様のためにっ!」 身体に絡まっていた蔦が背中に戻り、そのおぞましい姿を周囲に晒しながら彼女は獲物達の方へ振り向く。その中の数人は姿が変わっていて、ホテルから逃げ出してからすぐに変身をしたのだろうが関係ない。 どうせ、誰一人として残らず餌になるのだから。 ◆ (あれってまさか……!?) ホテルに現れた少女から飛び出した蔦には、明堂院いつきにとって見覚えがあった。 前にブラックホールが復活させたトイマジンとサラマンダー男爵によって、イエロープリキュア達がおもちゃの国に飛ばされたことがあった。その時に、ゲームと称してデザトリアンを始めとしたたくさんの怪物と戦わされたが、みんなで力を合わせて脱出に成功している。 あの少女の全身を包んだ蔦は、おもちゃの国のすごろくにいたソレワターセという怪物ととてもよく似ていた。 ただならぬ気配を察したのか本郷猛と池波流ノ介は、既に変身を果たしている。 猛の全身はバッタを模した黄緑色の仮面と装甲に覆われ、二つの瞳が赤い光を放つ。仮面ライダー一号の首に巻かれた赤いマフラーが、夜風に棚引いた。 胴衣のような模様が刻まれている青い鎧に包まれた流ノ介はその腰から、一本の刀を取り出す。漢字の「水」が模様となったマスクから放たれるシンケンブルーの視線は、その手に握るシンケンマルに負けないくらいに鋭かった。 いつきも懐からシャイニーパフュームを取り出し、窪みにプリキュアの種を入れる。いつも着慣れている私立明堂学園は一瞬で金色に光り輝くワンピースに変わり、ショートヘアーが腰にまで届くほどに長くなった。 「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」 その魔法の言葉に答えるように、シャイニーパフュームが眩い輝きを放つ。 いつきはパフュームの中身を全身に吹きつけると、ワンピースが形を変えた。両腕と腹部を露出させた白い上着の胸元に金色のリボンが飾られていて、ヒマワリのようなミニスカートが風に揺れる。 長くなった髪は金色に輝きながら花形の髪飾りによってツインテールとなって、両耳にイヤリングが付けられる。最後に彼女はシャイニーパフュームを腰に添えたことで、ココロパフュームキャリーに包まれた。 身体の奥底から力が溢れ出てくるのを感じて、変身を終えた明堂院いつきは高らかに名乗る。 「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!」 キュアサンシャインは名前の通りに周囲を照らす輝きを放ちながら、太陽のように堂々と立った。 彼女はホテルから聞こえてくる足音を耳にして、半身の構えを取る。目前から発せられる威圧感が、とても禍々しく感じられたため。 ホテルの扉を潜って現れたのは、チャイナ服を着た少女ではなかった。青いロングヘアーはショートカットになっていて、顔立ちはさっきより少しだけ若い。しかし両目から放たれる金色の輝きが、不気味な雰囲気を感じさせた。 服装もいつの間にかチャイナ服から露出の多い服へと替わっている。胸元を覆う黒いへそ出しシャツにデニム生地の短パン。頭部に巻かれたハチマキと、長袖ジャケットにマントのように棚引く腰布は、どれも白い。 両手には鋼の手甲が装備されていて、両足のローラーブーツに組み込まれたエンジンが唸りをあげていた。 その肌は人間とは思えないほど青白くなっていて、全身の至る所から植物の蔦が生えている。変色した瞳がそれらと相まったことにより、怪物というイメージをその身で体現しているようだった。 「やっぱり……ソレワターセ!」 「ソレワターセ?」 キュアサンシャインの言葉に振り向いたシンケンブルーが疑問の声を漏らす。 「君は、何か知っているのか!?」 「はい! ピーチ達が戦ってたラビリンスって奴らが生み出した敵の一種で、あれを当てられたらどんな物でも一瞬で怪物にされてしまうんです!」 「何だと! だとしたら、彼女を操っているのはノーザという奴の仕業か!?」 「きっとそうです! 多分、今も近くにいるかも……!」 「そうか……!」 シンケンブルーが刀を強く握り締める音がキュアサンシャインの耳に届いた。水のマスクによって見えないが、その表情は激流のように穏やかでないことはわかる。 「スバルさん……!」 そして、背後に立つアインハルト・ストラトスの震える声を聞いて、キュアサンシャインは振り向いた。 鹿目まどかと高町なのはの間に立つアインハルトの顔は、まるでおぞましい物を見るかのように青ざめている。 「アインハルトさん、スバルさんってまさか……!」 「そうですなのはさん……あの人がスバルさんです!」 なのはに答えるアインハルトは徐々に悲痛な面持ちとなってきて、今にも泣き出しそうだった。 キュアサンシャインはもう一度前を向く。アインハルトの話が本当ならば、スバル・ナカジマはソレワターセによって操られていることになる。 「あの人、姿がさっきと違う……!?」 「恐らくスバルを操っているノーザという奴が、何かを彼女に施したのかもしれない……結果、あんな姿になったのだろう」 「そんな! そんなの、あんまりだよ……!」 一号とまどかの憤慨はキュアサンシャインにも理解できた。本当は優しいはずのスバルを無理矢理戦わせる上に、怪物のような姿にさせるのは許せるわけがない。 そのまま一号は、まどかやアインハルトより少し前に立っているなのはに振り向いた。 「なのはちゃん、ここは危険だからまどかちゃんやアインハルトちゃんと一緒に離れるんだ!」 「いいえ、私も戦います! ここでスバルさんを元に戻さないといけませんから……レイジングハート!」 『Yes!』 「セット・アップ!」 『Stand By Ready!』 なのはの手に握られているレイジングハートから桃色の光が放たれ、薄闇を照らす。輝きは一瞬で収まるが、そこに立つなのはの衣服は既に変わっていた。 胸に大きな赤いリボンが付けられた白いドレスのような服を纏っていて、その手にはなのはの身長に届くような長い杖が握られている。 「へ、変身……!」 「武装形態!」 『Cyclone』 高町なのはがバリアジャケットを着て魔導師になった頃には、まどかとアインハルトも変身していた。 支給されていたサイクロンメモリを額に刺したことで、鹿目まどかの身体はサイクロン・ドーパントへと変わっている。右目だけがオレンジ色に輝き、左上半身は風のような装甲が備わっていた。 アインハルト・ストラトスも力強い言葉を告げたことで、十歳以上成長したように背が伸びている。大人のようになったその身体には、黄緑色のコスチュームが包んでいた。 「な、な、な……なのは、なのは、なのは、なのは……なのは、さん?」 三人が変身した後、スバルは変装していた時のように表情を歪ませる。敵意しか感じられなかった金色の瞳に、迷いが生まれているように見えた。 「な、なのは……なの、はさん……あたしは……あたしは、あたしは……!」 「スバルさん、どうしたんですか!?」 「あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、あたしは、あたしは……なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……!」 「落ち着いてください、スバルさん!」 「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」 なのはは呼びかけるが、スバルはそれに答えず未だに混乱している。 よく見ると、二人のバリアジャケットは形と色がとても似ていた。スバルは未来に生きるなのはの弟子になったから、あえて似せているかもしれない。 今のなのははまだ小さいが、それでもスバルを呼び続けたら元に戻れるかもしれなかった。僅かでも新しい可能性によってキュアサンシャインの中に希望が芽生えるが、安心することはできない。 金色の双眸は迷いで揺れ動いてるように見えるが、それでも凄まじい殺気が収まっていなかった。その視線を直接受けていないキュアサンシャインも、冷や汗を流すくらいに戦慄している。 真っ向から見られているなのははもっと辛いはずなのに、それでもスバルを呼びかけていた。 「あ、あ、あ、あ、あ……あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 しかしなのはの純粋な思いに対する答えは、激情に満ちたスバルの叫びだけだった。彼女の声色は植物を震撼させる程に凄まじく、キュアサンシャインの肌に容赦なく突き刺さる。 突風のような咆吼で葉っぱが舞い狂う中、続くようにスバルの全身からどす黒いオーラが放たれた。続けざまに迫る衝撃を前に、キュアサンシャインは何とか吹き飛ばされないように踏ん張った瞬間に見た。 スバルが猛獣のような雄叫びを発しながら地面を蹴って、勢いよくなのはに迫るのを。 「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 「まずいっ!」 反射的に飛んだキュアサンシャインはなのはの前に立ち、両腕を真っ直ぐに向ける。 怒濤の勢いでスバルが接近する影響によって地面が抉れる音を耳にしながら、腕に力を込めた。 「があああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 「サンフラワー・イージスッ!」 金色に輝くヒマワリ型の巨大なバリアが現れ、スバルの拳を阻むように現れる。激突の衝撃によって轟音が響き渡り、両手に痺れが走ってキュアサンシャインは顔を顰めた。 続けざまに連続で拳が叩き込まれるが怯まない。パンチ一発だけでも、普通のデザトリアンを軽く上回っているかもしれないが、ここで諦めたらなのはが危なかった。 「いつきさん!?」 「私のことはいいから、後ろから離れて!」 「……はい!」 荒れ狂ったようなスバルの叫びを余所に、キュアサンシャインは後ろにいるなのは達に呼びかける。そのおかげか、彼女達は離れてくれた。 高く跳び上がったなのはを追うように、スバルはパンチを止めて上空を見上げる。それが彼女にとって致命的な隙となり、一号とシンケンブルーが飛びかかった。 「ライダーパアアアアアアァァァァァンチッ!」 「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 一号は左から拳を叩き込もうと、シンケンブルーはシンケンマルを構えて右から迫る。しかしスバルはどちらかに振り向くことはせず、両手で彼らの攻撃を受け止めた。 このままでは二人は投げ飛ばされるかもしれないが、その前にキュアサンシャインはバリアを消して、両手に力を込める。すると掌より眩い輝きが発せられ、目の前の三人を照らした。 「サンシャイン・フラアアアアアァァァァァッシュ!」 キュアサンシャインが裂帛の叫びと共に放った光線はスバルだけを飲み込んで吹き飛ばし、一号とシンケンブルーを開放する。そのまま一直線に進んだ光の影響で闇は照らされていき、辺りに日光の暖かさを残した。 世界に生きる多くの人々にとって希望をもたらし、全てのプリキュアの力となる眩い光は広がるが、キュアサンシャインは全く安心できない。 数メートル先の距離まで吹き飛ぶ際に、スバルの身体を支配していたソレワターセにもダメージがあると思っていた。一号とシンケンブルーのおかげで、防御や回避の暇もなかったのだから。 しかし、スバルは何事もなかったかのように上体を起こして、そのまま立ちあがっていく。彼女の全身から生えたソレワターセの根っこだって、一本も減っていない。 ソレワターセはとても強いし、他のプリキュアと力を合わせなければ倒せないのは知っていたが、それでもまともにダメージを与えられないのは辛かった。 「まぶしい……なのはさんも、まぶしい、まぶしい、まぶしい、なのはさん、なのはさん、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい!」 そして光線を浴びたスバルは苦しそうに両手で顔を覆っているのを見て、キュアサンシャインは目を背けたくなるような衝動に駆られる。しかし彼女はスバルの姿を真っ直ぐに見つめていた。 ここで少しでも躊躇ったりしたらスバルを二度と助けられなくなるかもしれないし、何よりもなのはやアインハルトが悲しんでしまう。今は心を鬼にしてでも、ソレワターセに捕まった彼女を助けないといけない。 「スバルさん、お願いだから私の話を聞いてください!」 「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさんが、なのはさんが、なのはさんが……」 「スバルさんっ!」 「待つんだ、なのはちゃん!」 いつの間にか地面に下りていたなのははスバルを必死に呼び続けている。彼女はそのまま前に出ようとしたが、一号によって制止された。 「さっきの戦いでもそうだが、今のスバルは呼びかけて止まるような相手じゃない! 下手にそんなことをしても、君が殺されるだけだ!」 「でも、スバルさんは私の名前を呼んでました! だから、このまま呼び続ければスバルさんもきっと……!」 「君一人で、無理をしようとするな!」 仮面から放たれる無機質な雰囲気とは対照的で、力強い励ましの言葉が辺りに響く。 そのまま一号はキュアサンシャインの方に振り向いた。 「サンシャイン、君が出したあの光があればスバルを元に戻せるのか?」 「一発じゃ無理ですけど、何発か打ち込めばあの人の中にいるソレワターセが消える可能性はあります!」 「そうか、わかった! なら君は彼女を元に戻すためにそれを続けてくれ! ただし、無理はするんじゃないぞ!」 「はい!」 耳にするだけで心の底から力が溢れ出てくるのを感じて、キュアサンシャインは一号に頷く。 「みんな、ここでスバルを何としてでも助けるぞ! まどかちゃん、それになのはちゃんやアインハルトちゃんはできるだけ後ろに下がりながらスバルを呼び続けるんだ! ただし、危険になったら逃げてくれ!」 「「「わかりました!」」」 「シンケンブルー! 俺と一緒にできるだけスバルの動きを止めて欲しいが、頼めるか?」 「お安い御用だ!」 「そうか! だが傷口が開いたら、すぐにでも退くんだ……いいな!」 「かたじけない!」 「よし……行くぞ!」 まるで頼れるリーダーのような印象が一号の声から放たれていて、この島のどこかにいるはずのキュアムーンライトを思い出させた。 始まりの会場で加頭順に対して宣戦布告をした時からそうだったが、やはり本郷猛は信頼できるとキュアサンシャインは思う。 「なのはさんはまぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい」 しかしそんな希望を一瞬で台無しにするかのようなスバルの呟きが、ここから少し離れた場所より発せられていた。ようやくスバルが両手を顔から離した頃には、一号とシンケンブルーが飛びかかり、続くようにキュアサンシャインも地面を蹴って走り出す。 呪いのような言葉と共に、スバルは一号を叩き潰そうと勢いよく振るった拳は避けられた。続くように回し蹴りも繰り出すが、一号は背後に飛んだので掠りもしない。 「ハァッ!」 そこからシンケンブルーは斬りかかるが、スバルの背中から飛び出したソレワターセの触手が盾のようになって刃を防ぐ。シンケンブルーはそれに構わず刀を振るうも、その度に耳障りな金属音が響くだけ。 植物にしか見えないそれは、シンケンマルの硬度を大きく超えていた。 一方でスバルはシンケンブルーに目もくれず、一号の攻撃を捌き続けている。前方から放たれる一号の拳を避けながら、視界の外から迫るシンケンブルーの斬撃を防いでいて防御に死角がなかった。 「くそっ!」 シンケンブルーは業を煮やしたのか、舌打ちをしながら一旦背後に飛ぶ。 彼と交代するようにキュアサンシャインは前に出ると、スバルが振り向きながらパンチを放ってきた。容赦のない拳に対してキュアサンシャインは少しだけ体勢を低くして避けて、反撃の掌底をスバルの腹部に打ち込む。 激突によって鈍い音が響くも、スバルはほんの少し後退するだけ。まともなダメージになってないだろうが、それなら攻撃を続けるしかなかった。 獣のような唸り声と共にスバルは右足で蹴りを繰り出すが、キュアサンシャインは左腕を掲げてそれを防ぐ。その衝撃はデザトリアンに直接殴られたかのように重かったが、両足に力を込めて吹き飛ばされないように踏ん張った。 腕に鈍い痛みが走って思わず表情を歪めるが何とか堪え、受け止めた足を弾いてスバルを蹌踉めかせる。キュアサンシャインはその隙を逃さずに拳を叩き込もうとするが、スバルはすぐに体勢を立て直して後方に飛んだ。 二人の間に数歩分の距離が開いて、その両端に立つキュアサンシャインとスバルの視線が激突する。 「まぶしい、ひかり、まぶしい、たいよう、まぶしい、なのはさん、まぶしい、さんしゃいん、まぶしい、まぶしい、まぶしい……」 両目に宿る金色の輝きからは、ダークプリキュアとはまた違う意味の強いおぞましさが感じられた。ソレワターセのせいで理性をほとんど無くしてしまったせいか、世界を砂漠にさせたデザートデビルのように見える。 そしてもう一つ。深い悲しみがスバルの瞳から感じられて、いつ泣き出してもおかしくなかった。本当はスバルだって戦いなんかやりたくないだろうし、人を傷つけるのは辛いかもしれない。 そんな姿を大切な人に見られるのはどれだけ苦しいのか……考えただけでも、キュアサンシャインの胸は痛む。 だから、これ以上スバルを悲しませたくなかった。 「まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしい、まぶしいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 まるで助けを求めているようにも聞こえる声とは反対に、スバルは疾走してくる。 花火が鳴り響くような轟音と共に地面が砕け散って、ジェット機に匹敵する程の速度で迫りながら拳を掲げていた。 突進してくるスバルを前にキュアサンシャインは素早く構える。その時だった。 「危ないっ!」 ややくぐもったサイクロン・ドーパントの叫びが聞こえた瞬間、凄まじい突風が視界の外より吹いてくる。その流れにスバルは巻き込まれた事で動きを阻害されたのか、足を止めた。 サイクロン・ドーパントの方に振り向いたスバルは凄まじい風を受けても進もうとするが、重りを付けたかのように鈍くなっている。 台風が吹き荒れるような轟音が鼓膜を刺激する中、サイクロン・ドーパントがキュアサンシャインの元に駆け寄ってきた。 「いつきさん、大丈夫ですか!?」 「ありがとう! サイクロン……で、いいのかな?」 「はい! 今の私は、本郷さんと同じ仮面ライダーですから!」 ガイアメモリの力で異形に変わったまどかは嬉しそうな声で答える。 しかしキュアサンシャインは素直に喜べない。ガイアメモリはあの順が怪物になるために使っていた物だから、どう考えても怪しかった。 でも今はそれに触れている時ではない。まどかがガイアメモリを使ったおかげで助かったのは事実だから、その優しさと勇気に感謝しなければならなかった。 「そっか……でも、無理はしないで!」 「わかってます!」 そう言葉を交わして、キュアサンシャインとサイクロン・ドーパントは前を向く。 振り向いた先では、突風の圧力から解放されたスバルの攻撃を一号とシンケンブルーが捌きながら反撃して、時折なのはとアインハルトがソレワターセの触手を弾いている光景が見えた。 しかし数では勝っているものの、有利な戦いとは呼べずにようやく互角にまで届く程度だった。ソレワターセが強すぎるのもあるが、それ以上に四人とも本気で戦えていない。 ここで下手に本気を出してしまっては操られているスバルに怪我を負わせてしまうため、四人とも力を出せなくて不利な戦いになっている。 そんな中でもスバルは一瞬だけキュアサンシャインの方に振り向いて、背中からソレワターセの触手を勢いよく出してきた。 「危ないっ!」 サイクロン・ドーパントの前に素早く回って、両手を前に突き足して金色のバリアを張る。空気を裂きながら迫る数本の触手は、キュアサンシャインのサンフラワー・イージスと一瞬で衝突した。 しかし触手を使った攻撃はそれで止まらず、鞭のようにしなりながらバリアを叩いてくる。その威力は今までの攻撃よりも強いように思えた。 しかもこちらに攻撃している一方で、スバルは残りの四人を相手に応戦している。攻撃はほとんど通さず、そこから力強い反撃をしていた。 「このままじゃ……みんなが!」 そんな彼らが心配なのか、サイクロン・ドーパントはバリアの外に出て行ってしまい、飛び交う触手を突風で吹き飛ばしながらスバルの元に走る。 「待って、いきなり前に出ちゃ駄目!」 キュアサンシャインは呼び止めるがサイクロン・ドーパントは止まらず、ソレワターセの攻撃を風で防いでいるが、時折先端が皮膚を掠っていた。それでも、お構いなしに彼女は進んでいる。 しかしそんなことをさせても危なくなるだけだから、サイクロン・ドーパントを守るためにもキュアサンシャインはバリアを消して走り出した。 ◆ 「ほう、六人が相手でも互角以上に渡り合いますか……何とも、有能ですなぁ」 「恐らく、さっき取り込んだコウモリ男の影響もあるわね。あれも栄養になっているでしょうから」 「だとすると、奴はいい獲物だったということになりますな」 冷たい風の流れる木々の間から、ソレワターセの力によってノーザの操り人形となったスバル・ナカジマの戦いを眺める筋殻アクマロは、素直にそう口を零す。 シャンプーに化けたスバルがホテルに突入して六人を騙そうとしたが、中にいた二人の小娘が原因で失敗に終わった。その原因である高町なのはという少女を前にして、スバルは異様なまでに混乱しているが、それでも戦いは有利に見える。 「それにしても、あのシンケンブルーがここにいるとは実に都合がいい。このまま、潰してほしいものですな」 「ええ……あなたの悲願を達成するためにもね」 ふと、アクマロはノーザの方に振り向いた。 スバルが本郷猛達を騙す計画が狂っただけでなく、キュアサンシャインという未知のプリキュアが現れた。それにも関らずしてノーザは涼しい笑みを浮かべている。 無論、慌てふためかれるよりは信用できるがそれにしても落ち着きすぎていた。むしろ、都合のいいように計画が進んでいるようにも見える。 「ノーザさん、あなたは悔しくないのですかな? せっかくの計画を、あのような小娘どもに潰されたのですから」 「騙せなかったのは確かに残念だけど、それ以上に面白い物があるわ……あの高町なのはとかいう小娘よ」 「ほう?」 笑みを浮かべているノーザが見ている戦いの場に、アクマロは再び視線を移した。 そこでは白いバリアジャケットを着ているなのはがスバルの攻撃を防ぎながら、必死に止まるように呼びかけているのが見える。しかしソレワターセの力によって、スバルが止まることはない。 マッハキャリバーが言うにはなのはとスバルは何らかの繋がりがあるらしいが別にどうでもいい。 アクマロは一刻も早くスバルがなのはを殺して、そこから極上の絶望が生まれるのを期待していた。 「もしや、スバルがあのなのはとやらを殺すのをノーザさんも願っておりますかな?」 「そうだけど……ただ倒すだけじゃ面白くないでしょ? ただ倒すだけじゃ」 「ただ倒すだけでは……?」 そう語るノーザの顔と言葉にアクマロは疑問を抱く。 彼女の笑顔からは、人々の嘆きを糧とする外道衆のように確かな邪念が感じられた。まるで、それを見るだけで弱き人間を震え上がらせることができる程に。 十中八九、何かを企んでいるのは確実だった。 「ノーザさん、あなたは何をなさるおつもりですか?」 「今はまだ内緒よ。アクマロ君だって、楽しみは後にとっておきたいでしょう?」 「なるほど」 そう言うからには大層素晴らしい計画なのだろうと思い、アクマロは追求をやめる。ここで無理に聞き出したところで、知った時の喜びが減るだけ。今はノーザの計画とやらが成就するのを、待てばいい。 微かな期待を胸に抱いた頃、ノーザは前方に足を進めていた。 「おや、どうなされたのですかなノーザさん?」 アクマロは疑問をぶつけるが、ノーザから返ってきたのは「スイッチオーバー」という単語のみ。 その言葉が一体何を意味するのか。アクマロが考える間もなく、ノーザの姿が一瞬で変わっていく。腰にまで届く髪は黒から紫に染まって、ドレスも派手で不気味な色に変貌した。 ノーザは戦うために変身したのだと、アクマロは知る。一見するとただの人間にしか見えないが、その身体から放たれる威圧感がただ者ではないと語っていた。 「これから、極上の絶望と悲鳴を集めるわ」 「極上の絶望と悲鳴……ですか?」 「ええ、それにこのまま戦いを長引かせたら誰か一人でも逃げられてしまう可能性があるわ。そうなる前に私も行かないとね……」 背中を向けられているので表情は見えないが、妙に上機嫌な声だったので笑っていることが容易に想像できた。 知略に長けると思われるノーザがわざわざ戦場に出向くとは、余程の策があるのだろう。それもあの場を更に掻き乱すだけではなく、外道衆の糧ともなる負の感情を一瞬で溜められる程の。 それにいくらスバルとはいえ、人の域を超越した戦闘能力を持つ戦士達を六人も相手にしては誰かしら取り逃す可能性も否定できない。それで他の参加者と結託されて情報を伝えられては、裏目がんどう返しの術への道も遠くなる可能性がある。 今後の不穏分子を潰すという意味でも、確かにノーザも戦う必要があるかもしれなかった。 「宜しい。ならばこの筋殻アクマロめも、ノーザさんにお供いたしましょう」 そしてまたアクマロも両手に武器を携えながら、歩を進める。右手には普段愛用している削身断頭笏を、左手には三途の川に潜むナナシ連中が持つ刀が、存在意義を証明するかのようにそれぞれの刃を輝かせていた。 ノーザが言うには、両方ともシャンプーの支給品として渡されていたらしい。あのような己の力量も弁えない小娘が持っていたのは腹立たしいが、こうして戻った以上は考えても仕方がない。 「あら、本当にいいのかしら?」 「むしろ、我が望むことですから……こうして、悲劇の中に飛び込んでいくのは」 「そう……なら、私はあなたのことを応援してるわ」 ノーザの激励から感じられるのは、極寒の地を超える程の冷たさと隠す気のない悪意だけ。 明らかな嘘と感じられるくらいに冷酷で、本当はアクマロのことなど何一つ心配していないのは一瞬で察することができる。 しかしアクマロにとってはむしろそれが何よりも心地よかった。外道衆にとって絆や温かさなど、虫けらの価値すら持たない。 裏切りと悲劇こそが、外道にとって極上の酒にも勝るくらいに美味たる代物だった。 「はは、ご心配いただき心の底から嬉しゅうございます……!」 そんなノーザに対する恩返しとして、アクマロもまた邪念に満ちた言葉を贈る。彼もまた、ノーザを心から信頼しているわけではなかった。 いくら数多の世界を把握する組織の幹部だからと言って、それが外道衆に勝る要因になるわけではない。所詮は地獄への扉を開くために必要な、使い捨てのコマに過ぎなかった。 そしてそれはノーザも同じ。これはこの殺し合いの場で、どちらが先に己の欲望を叶えられるかの競い合いだった。 (さて、ノーザさん。お手並み拝見とさせて頂きましょう……あんたさんが一体、どんな悲劇を生んでくれるのかを) 宿敵シンケンジャーの一味であるシンケンブルーへの殺意と、ノーザに対する期待。それら二つを胸にしながらアクマロは戦場へと駆け抜けていった。 ◆ もうこれ以上、誰も死なせたくない。 この殺し合いを開いたキュウべぇや加頭順の言いなりになんて、なりたくない。 操られてしまった人を、この手で助けたい。 今日を生きているはずのみんなを、一人も犠牲にしたくない。 人を助けたいという、そんな純粋な願いだけを胸にした鹿目まどかは頼れる本郷達の力になろうと思って、サイクロン・ドーパントの力を得た。しかし現実はそんな彼女の願いを嘲笑うかのように、何も変わらない。 「ううううううう……あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」 そして今も、ノーザという女の人に操られてしまったスバル・ナカジマの喉から、獰猛な肉食獣すらも震え上がらせてしまう程、凄まじい咆吼が発せられた。 それによって空気も音を鳴らしながら振動して、サイクロン・ドーパントの肌に突き刺さる。もしもまどかのままだったら、確実に汗を流しながら怯えていたかもしれない。 しかし今の彼女は、ドーパントに変身した影響で恐怖心がそんなになかった。誰かを守りたいという強い決意が、皮肉にも精神に影響を及ぼすガイアメモリの毒素によって増幅されている。 同時にまどか自身の平常心も失っているが、幸か不幸かそれに気付いていない。そのおかげで、結果的には彼女の願いが叶っているのだから。 「お願いです、止まってください!」 そして今も、スバルを止めるためにサイクロン・ドーパントは呼びかけながら両手を前に出して突風を使う。風の勢いにスバルは飲み込まれるが、両足に付いたエンジンを唸らせながら突進してくる。サイクロン・ドーパントは風力を強めるが、止まらない。 「なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、なのはさん、まぶしい、まぶしい!」 「ひっ……!」 両目をギラギラと輝かせるスバルと目線があって、森の中でも抱いた恐怖がサイクロン・ドーパントの中に蘇った。心臓を鷲掴みにされているような気分になって無意識の内に力を緩めてしまい、それが致命的な隙となる。 L字型を作るように曲がるスバルの左腕が輝いたが、サイクロン・ドーパントがそれを前に何かをすることはできない。 「リボルバー……シュートッ!」 光はスバルの手中でボールのように圧縮されていき、弾丸のように勢いよく発射された。 先程は狙いに入ってなかったので当たらなかったが今は違う。ターゲットとなったサイクロン・ドーパントの右肩に容赦なく激突し、周囲に爆音を響かせた。 「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」 悲痛な叫び声と共に宙を舞った後、その身体は地面に叩き付けられる。まるで腕が千切れ飛ぶと思うほどの激痛が走り、サイクロン・ドーパントは恐る恐る目を移す。風のような体表は黒く焦げているが、何とか繋がっていた。 しかしそれに喜ぶ暇もなく、突風の圧力から開放されたスバルが突進してくるのをサイクロン・ドーパントは見る。だが、その道をキュアサンシャインとシンケンブルーが防いでくれた。 二人がスバルを止めている隙に、倒れたサイクロン・ドーパントの元へ一号が駆けつける。 「大丈夫か、まどかちゃん!?」 そして一号に支えられながら、サイクロン・ドーパントはゆっくりと立ち上がった。 「酷い怪我だ……まどかちゃん、やっぱり君はなのはちゃんやアインハルトちゃんと一緒に早くここから――」 「いいえ、私なら大丈夫です! こんな怪我、どうってことありません!」 「しかし!」 「心配してくれて、ありがとうございます! でも私も、スバルさんを元に戻す手伝いをしたいんです!」 一号の言葉を無理矢理遮りながら、サイクロン・ドーパントは痛む身体に鞭を打って再び走る。後ろから呼び止める声が聞こえるが、今の彼女には目の前で起こっている戦いの方が何よりも重要だった。 戦っている四人の仲間達はスバルの攻撃によって傷付いて倒れるが、すぐに立ち上がる。心配してくれる一号には少しだけ悪いけど、誰かが戦っているのに自分は見ているだけなんてもう嫌だった。 それに魔法少女になったみんなだって、どんなに傷付いても決して諦めないで魔女と戦っていたから、ちょっとの痛みなど耐えなければならない。 (ここにはほむらちゃん……それに死んだはずのみんなだって、きっといる! だから、みんなに会うまでは挫けてなんかいられないよ!) そうやって自分に言い聞かせて、湧き上がってきた恐怖を無理して勇気という感情で埋め尽くそうとする。それは鹿目まどかが元々持っていた物ではなく、ガイアメモリの毒素が精神を大いに高ぶらせた結果、生み出された感情だった。 しかしいくら強くなったからといって、元々鹿目まどかに特別な力など何一つ持たない普通の女子中学生に過ぎない。それでガイアメモリを使ってドーパントとなっても、この世界では特筆した戦闘力を得たことにならなかった。 キュゥべえはまどかには莫大なる潜在能力が宿っていると言ったが、だからといってドーパントとなっただけの彼女に何かをもたらすことはない。 サイクロン・ドーパントの取った選択は勇気と呼べる代物ではなく、無謀以外の何物でもなかった。しかし、当の本人はそんなことなど微塵も考えていない。 この力さえあればみんなを助けられると、心の底から思っていた。 「ディバイン――」 「ディバイン――」 サイクロン・ドーパントの目前で、なのはとスバルは同じ言葉を紡ぎ始めている。 なのはが構えたレイジングハートの先端からを桃色の光が発せられるように、腰を落としたスバルの右手から漆黒の輝きが空気を揺らしながら広がった。 彼女たちの足元には色違いの魔法陣がゆっくりと回転していく。 時系列順で読む Back 変身超人大戦・開幕Next 変身超人大戦・襲来 投下順で読む Back 変身超人大戦・開幕Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 本郷猛 Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 沖一也 Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 明堂院いつき Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 ノーザ Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 高町なのは Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 スバル・ナカジマ Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 アインハルト・ストラトス Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 鹿目まどか Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 ズ・ゴオマ・グ Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・襲来 Back 変身超人大戦・開幕 筋殻アクマロ Next 変身超人大戦・襲来
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変身超人大戦・開幕 ◆LuuKRM2PEg 「グゴザ、ゴンバボド……!」 闇に包まれた森林の中で、いきなり人間の姿に変わった怪人コウモリ男は奇妙な言葉を発しながら、力無く地面に膝をつけていた。その姿に先程までの殺意や凶暴性は感じられず、ただの怯える人間と何ら変わりない。 普通なら、そのような男は迷わず保護するだろう。しかし相手はアインハルト・ストラトスという心優しい少女を殺そうとした凶悪な怪人だ。そんな奴を生かすという選択は仮面ライダー1号に変身した本郷猛には存在しない。 ここで確実に仕留めなければ、犠牲者は確実に出てしまう。数え切れないほどの怪人を屠ってきた1号の選択は早かった。 「ア、ア、ア……アアアアアアアアアアアアアアアア!」 しかし一歩踏み出した直後、コウモリ男は絶叫と共に後ろに駆け出す。こちらへ振り向くことはせずに、生い茂る木々の間に消えていった。 「待て!」 「待ちなさ……!」 一号はすぐさま追跡して撃退しようとしたが、その瞬間に息も絶え絶えとなったアインハルトの声が聞こえる。振り向くと、前に出ようとした彼女は苦痛で表情を歪ませていた。その小さな身体が倒れそうになるも、鹿目まどかがすぐに支える。 一方で、コウモリ男はこの僅かな時間で闇の中に姿を消している。改造人間となって強化された視力でも、捉えることができなくなった。 「本郷さん、私に構わずあいつを倒しに行ってください……!」 「そうです! アインハルトちゃんは私が見てますから」 「いや、そうする訳にはいかない」 アインハルトとまどかの心遣いは非常に有り難かったが、それに甘える気はない。こんな状況で若い少女二人をほったらかしにするなど有り得なかった。そんなことをしては、彼女達に危険が襲いかかるだけ。 「今の状況でコウモリ男を深追いするのは危険だ! この森の中には、危険人物がまだ他にいる可能性がある。それに今は戦いの疲れを癒すことが最優先だ……わかってくれ」 何者かに洗脳されたアインハルトの仲間であるスバル・ナカジマがすぐ近くにいるかもしれなかった。それにもし、彼女を洗脳した者が手練れだったら三人とも全滅する危険がある。 悔しいが、今はこの森から抜け出して少しでも安全な場所で休憩しなければならなかった。このまま暗闇の中にいて、三影英介のような危険人物と遭遇したら元も子もない。 スバルを元に戻す手がかりも掴めない以上、これ以上長居しても仕方がなかった。 「……申し訳ありません。勝手なことを言って」 「いや、大丈夫だ。それよりも、今は急いで森から出よう。少しでも、体制を整えないとな」 少し表情が暗くなってしまったアインハルトを一号は励ます。そのまま彼女の傍らに立っていたまどかの方に振り向いた。 「まどかちゃん、ここは俺が先導する。だからアインハルトちゃんのことを、頼んでもいいか?」 「わかりました! それくらいなら、お安いご用です!」 「ありがとう」 本来ならば二人を抱えて森を抜けだしたかったが、両手の使えない状態では不測の事態に素早く対応できない。不本意ながら、アインハルトのことはまどかに任せるしかなかった。 今は一刻も早く、二人に無理をさせないペースでここから抜け出さなければならない。 (スバル……すまない、君を助けられるのはまだ先になりそうだ。どうか無事でいてくれ) もしも巡り会う形が違っていたら、頼れる仲間になっていたであろう少女の無事を祈りながら。 一号は己の無力さを呪いたかったが、それでは今ここにいる少女達を守ることなどできない。仮面ライダーである以上、一切の弱音を吐くのは許されなかった。 ◆ 目障りなリント達を殺せるかと思った。 二人のクウガをこの手で潰せるかと思った。 このゲゲルに勝ち残って、自分を見くびったゴ・ガドル・バとン・ダグバ・ゼバの二人を捻り潰せるはずだった。 「ア……ア……ア……!」 しかしようやく手に入った『ン』の名を持つ究極の力は、急に使えなくなってしまう。何度も変身を繰り返したが、何も変わらない。最早リントと同じ、ただの駆られる対象でしかなかった。 ズ・ゴオマ・グの脳裏に究極の闇をもたらす者の姿が浮かび上がる。奴は同族たるグロンギ達など、蛆虫程度の弱者にしか思っていない。ダグバこそが全ての頂点に君臨する、絶対なる王者なのだ。 「グゴザ……グゴザ……グゴザ……グゴザ……!」 こんなの嘘だ。こんなの嫌だ、死にたくない。そう思ってゴオマは木々の間をひたすら走るも、周りには闇しか見えなかった。それがまるでダグバのように思えて、ゴオマの中で『恐怖』という感情が徐々に湧き上がっていく。 もしもここで誰かに見つかったら一瞬で殺される。ダグバ以外にもクウガやリントの戦士に見つかってしまえば、自分は終わる。 そんなのは嫌だ! 「グゴザ、グゴビビラデデス――ッ!」 そうやってゴオマは逃げ続けたがその足は唐突に止まり、次の瞬間には脇腹に違和感が走る。不意に目を移すと、そこには一本の剣が刺さっているのが見えた。 ゴオマから鮮血が勢いよく吹き出し、周囲に飛び散っていく。そして彼の体温が急激に下がり、激痛のあまりに膝を落とした。 「ア、ア、ア、ア……アアアアアアァァァァァァァァァァ!」 ゴオマの喉から静寂を引き裂くような悲鳴が発せられ、そのまま水溜まりのようになった血の中へと倒れていく。水が跳ねるような音が聞こえ、血生臭い鉄の匂いが嗅覚を刺激した。次の瞬間には突き刺さっていた剣が引き抜かれ、出血は更に激しくなる。 「ア、ア、ア……ア……ッ!」 いつもリントを殺すときに嗅いでいた血の臭いが、今はやけに不愉快に思える。そしてゴオマは、噴水のように溢れ出る血液を見て恐怖を抱いた。 とても寒い。 とても痛い。 とても苦しい。 とても辛い。 とても気持ち悪い。 とても怖い。 様々な感情がゴオマの脳裏から鮮血と共に溢れ、やがて瞳から涙を流す。しかしそれは血によって呆気なく飲み込まれてしまった。 もう、何が何だかわからなくなっている。今ここで何が起こっているのか、自分がどうなっているのかも。 世界が暗くなっていく。僅かながらに見えていた木々も、見えなくなっていった。 指を動かそうとしても身体が言うことを聞かない。 「ア……ア、ア、ア……ア……?」 血溜まりに沈んだゴオマの瞳は、遠くより人影が近づいてくるのを捉える。赤く染まった視界はぼやけてまともに見えないが、誰かがいるのは確かだった。 ゴオマは何とかして顔を上げようとするが、それすらもまともにできない。鼓膜に響いた足音は、すぐに止まる。 ――さあ、あなたのご飯よ。たっぷり食べなさい 次に聞こえてきたのはそんな声だった。それは吹雪のように冷たくて、全てのゲゲルを取り仕切るラ・バルバ・デのような威圧感が感じられる。 闇の中から、太い植物の蔦のような何かが何十本も飛び出してきて、次の瞬間にはゴオマは全身に凄まじい圧迫感を感じた。絡みついたそれはうねうねと蠢き、皮膚や身に纏った衣類を次々と引き裂いていく。露わになった肉は噛み付かれ、そこから音を鳴らして血を啜られた。 自分は喰われているのだとゴオマは思い、藻掻こうとするが縛り付けられた全身は動いてくれない。不意に、蔦の向こう側からこちらに向けられた視線を感じる。 自分はただの獲物でしかない。そして、飢えた捕食者はその牙で自分の全てを喰らいつくす気でいるのだ。 到底耐えられない恐怖を前に、ゴオマはただ怯えるしかできない。もう泣き叫ぶこともできなかった。 しかし、そんなゴオマの視界はすぐに赤く染まって、次の瞬間には全てが漆黒に塗り潰された。もう痛みも苦しみも一切感じられず、恐怖や不安も抱くことはできない。 だが、これ以上怯えることもなくなったので、ズ・ゴオマ・グはある意味では救われたのかもしれなかった。 ◆ 「あらあら、そんなに勢いよく飲み込んじゃって……しょうがないわねぇ」 スバル・ナカジマの意識を浸食しているソレワターセが男の肉体を飲み尽くしたのを見て、ノーザは唇で三日月を作りながら嘲笑う。 先程、スバルや仮面ライダー一号に変身した本郷猛という男やドーパントや魔導士に変身した少女を相手に戦っていた、コウモリのような怪人。どういう理由かは知らないが変身せずに怯えながらこちらに逃げてきたので、禍々しい形状の剣を投げてそのまま命を奪った。 男の血に濡れた刀は元々、スバルが殺したシャンプーという少女に渡された支給品の一つ。どうやら、別の世界に存在するナナシ連中という怪人が持つ武器らしい。ただの刀がそこまで役に立つかどうかはわからないが、装備は多いに越したことはなかった。 コウモリ男のデイバッグを手に取りながら、ノーザはスバルの方に振り向く。 「まあ、あなた達はよく働くからこれくらいは仕方ないかしら……ねえ、マッハキャリバー?」 『その通りです、ノーザ様』 スバルの足に装着されたローラーブレードの中央に埋め込まれたクリスタル、マッハキャリバーは無機質な電子音声で答える。 ソレワターセの支配はスバルだけに留まらず、人工知能が搭載されたインテリジェントデバイスという機械にまで及んだ。その際にノーザはスバルとマッハキャリバーに関する全ての情報を引き出し、魔導士と時空管理局のある世界の存在を知った。 スバルと戦っていたあのアインハルト・ストラトスという少女も魔導士の一人らしい。 「確かアインハルトとか言ったわね……本当にあなたは知らないの?」 「申し訳ありませんが、存じておりません」 「そう……」 どうやらあのアインハルトはスバルのことを知っているようだが、スバル自身やマッハキャリバーも知らないようだ。似ている他人と見間違えてるか、それとも遠くで見ていただけなのかも知らないが、今はそこまで気にすることではない。 ノーザは、闇に包まれた木々の間に振り向く。 「ところでいつまでそうしているつもり? 言いたいことがあるなら、出てきた方が良いわよ」 「ほっほっほっほっほ……やはり、知られてましたか」 漆黒から返ってきたのは明らかな猫なで声だった。その僅かな言葉だけでも、明らかに慇懃無礼な態度が感じられる。 そして、鋭い視線を向けているノーザの前に現れたのは紛うこと無き怪物だった。古来日本で朝廷に仕えていた公家の衣装を身に纏っていて、まるでガイアメモリによって生まれるドーパントを彷彿とさせる。能面のように無機質な表情はぴくりとも動かないが、笑っていることだけは理解できた。 「我が名は筋殻アクマロ……この度は、貴方のご活躍をとくと見させて頂きました。ノーザさん」 そして、筋殻アクマロと名乗った怪物は何の躊躇いもなく言い放つ。恐らくその口ぶりからしてスバルがシャンプーを殺したことや、ソレワターセの力を見抜かれている。 こちらと同じく戦いの一部始終を目撃していて、下手人であるスバルの戦闘力を前に堂々と姿を現した。恐らく、アクマロ自身もそれなりの修羅場を潜り抜けた猛者かもしれない。 「いやはや、あなたのようなか弱そうな女性が、まさかとてつもなく腹黒いとは……まさに外道と呼ぶに相応しいですな」 如何にも神経を逆撫でするような口調に、ノーザは思わず苛立ちを覚える。 しかしここで激情に任せて襲いかかったとしても、無駄に消耗するだけ。今のスバルに任せたとしても、消耗した状態では得体の知れない相手と戦わせるのはいい方法とは思えない。ソレワターセを投げつけたとしても避けられるし、その後に逃げられてこちらの情報を他の参加者に伝えられる可能性があった。 「……下らない自己紹介はそこまでにしなさい。アクマロと言ったわね、望みは何なの?」 だから今は感情を抑えて、アクマロとの交渉に持ち出さなければならない。わざわざ馬鹿正直に姿を現したのだから、何の考えもなく接触したとも思えなかった。 「望みですか……? そうですね、地獄をこの身で味わうことですな」 しかし返ってきた言葉は、あまりにも抽象的で理解し難い単語だった。 「何を言っているの、あなたは……?」 「言葉の通りですとも。人々の嘆きと悲鳴や苦痛……それらを鍵として、地獄へと通ずる扉を開く……そして地獄に染まったこの世を味わうことこそが、長年に渡る我が悲願なのです」 「嘆きと悲鳴?」 「左様ですとも。条件さえ整うのなら、この地で地獄への扉を開くことも可能かもしれませぬよ……?」 普通に考えればただの狂言としか思えないアクマロの言葉を、ノーザは一語一句として聞き逃さなかった。 まるで道化を演じているかのような飄々とした態度だが、一切の嘘偽りは感じられない。しかもこちらは殺気を飛ばしているにも関わらず、アクマロは平然と両腕を広げていた。 それにその動作も、一見すると隙だらけだが実際は間逆。むしろ考えなしに飛び込んだ馬鹿者を、一瞬で肉塊に変えてしまう程の実力を持っているかもしれなかった。 「私はこの戯れを進めるにおいて、ノーザさんの力になると誓いましょう……その見返りとして地獄を味わうための手伝いをして欲しいのです」 「だいたいわかったわ……でも、地獄を見せるといってもどうするの? まさか、大勢の参加者をただ倒していくって訳じゃないでしょうね?」 「いえいえ、そんな野蛮で愚かな手段などではありませぬ。我の秘儀、裏見がんどう返しの術を使うだけですとも」 「ふぅん……それはどんな技なの?」 「人の嘆き、悲痛……それらを一直線になるように複数の土地へ植え付け、この世とあの世の間となる楔を作るのです。そこを、我が同胞たる人と外道の狭間に立つ者……腑破十臓さんが裏正という刀で楔を切れば、たちまちこの世は地獄に飲み込まれます……!」 饒舌に語り続けるアクマロの顔は微塵にも変わらないが、その声は次第に高揚していくのを感じる。もしも人の顔面だったら、余程うっとりしていることが見て取れた。 正直、胡散臭いことこの上ない相手だが、この世界を地獄とやらに飲み込ませる術とやらは実に興味深い。それは深海の闇ボトムから生まれた怪人達にとって、喉から手が出るほど欲しい物だ。 このままスバルにアクマロを飲み込ませて、その方法を全て奪い取ることもできる。しかし共闘を持ちかけている以上、戦力をわざわざ潰すのも馬鹿馬鹿しい。それはアクマロが裏切った時でも遅くなかった。 「面白そうじゃない、あなたの望む地獄とやらは……いいわ、乗ってあげる」 「左様でございますか! 御心を満足していただいたようで、恐悦至極に存じます……!」 「それで、まずはこの会場の各地に参加者の不幸を植え付けながら、その十蔵という男を探せばいいのね? 地獄とやらを味わうには」 「そうですとも……ただ、できるなら十蔵さんと裏正……そしてもう一つ、薄皮太夫さんの作った三味線の確保を優先させとうございます。この三つが揃わなければ、我が悲願は達せられぬのですから」 「なるほどね。でも、十蔵という奴はともかく他の二つはどうするつもり?」 「恐らく、他の参加者の手に渡っているでしょう。厳しいですが、それを奪うしかありませぬな」 「そう、わかったわ」 殺し合いの会場に不幸を植え付けるのは、それほど問題ではないかもしれない。一直線どころか、もうこの島全体に悲劇が広がっているといっても過言ではなかった。 だが、最大の問題は腑破十臓という男。もしもこの男が途中で勝手に倒れたりしたら、アクマロの計画全てが水の泡となってしまう。別にそれ自体は構わないが、地獄を味わえないのは惜しい。 「なら、今はその男を探しながら会場にもっと多くの不幸を植え付けることを優先させるべきかしら? 悲しみは、多いに越したことはないから」 「でしょうな。もっとも十蔵さんとて、そう簡単にやられるお方ではありませぬ……悲しみを適度に広げながら、捜せば宜しいでしょう」 「じゃあ、まずは悲しみを植え付けることが先ね……」 そしてノーザは、アクマロが現れてもまだ無表情を貫き続けるスバルに振り向く。 「スバル、あなたが最初に仕留めたあのシャンプーとか言う小娘に変装しなさい。そしてあの本郷猛達に取り入るのよ……プリキュア達に襲われたと言ってね」 「わかりました」 淡々と答えるスバルの背中に植え付けたソレワターセから何十本もの触手が、空気を朔勢いで飛び出した。そのままスバルの全身を覆い尽くして、蠢きながら形を変えていく。するとスバルに纏わり付いたソレワターセは、ほんの一瞬でシャンプーの姿に変わった。 それによって金色の瞳は青く染まり、僅かながら生気を取り戻したように見える。しかし、人形の如く無機質なことに変わりはなかった。 「ほう! これはこれは……あの愚かな小娘に瓜二つではありませぬか。いやはや、ソレワターセは実に万能ですな」 「まあ、あの加頭という男が何かをやらかしたみたいだから、本調子じゃないけどね」 後ろに立つアクマロの驚いたような声が聞こえる。 かつてインフィニティを奪う際に桃園あゆみの姿をコピーしたときと同じように、ソレワターセの力でスバルを変装させた。本郷達に接触させるならば、こちらの方がソレワターセの触手が見えないだけ便利だった。最初は猛にも変装させようと考えていたが、加頭順が何かを施したのかそれは叶わない。 今はスバルをただのか弱い弱者だと思わせて、不意打ちを仕掛けて集団が潰れるきっかけを作る。そこから、鹿目まどかやアインハルトがどんどん壊れていく姿が見られれば最高だった。 もしも戦闘が起こったとしても、スバルの体力も回復しているだろうからそれほど問題ではない。 「ああ、ノーザさん。スバルを向かわせる前に一つだけ言い忘れていたことがあります」 「まだ何かあるの?」 「ええ、我に配られていた道具の中に一つだけ気になる物がありまして」 何事かと思ってノーザが振り向くと、アクマロはその手に籠手を抱えているのを見る。それはスバルがシャンプーの頭を潰すのに使ったリボルバーナックルというデバイスと、非常に酷似していた。 「恐らくこれはスバルが使っていた物の左手用でしょう……万が一、戦闘になったときに役に立つかと」 「確かに、二つ揃えた方がいいでしょうね……で、まだ何かあるの?」 「いえ、大したことではありませぬ……ただ、悪評を広めるのはあなたの敵対するプリキュアとやらだけではなく、我が望みの邪魔となるであろう志葉丈瑠、池波流ノ介、梅盛源太、血祭ドウコクの四人も加えて頂きたいのです。こやつ等を生かしておいては、後々厄介になりますので」 相当な策士と思われるアクマロがわざわざ戦力増強となる装備を見せびらかして、どんな交換条件を持ち出されるかと思ったら、単なる邪魔者の排除。それだけのために自分の首を絞めるような真似をする馬鹿とも思えなかった。 しかし、ここでアクマロの真意を暴こうとしても何も進まない。スバルの戦力を増強できるのなら、邪魔者を潰す程度はお安い御用だ。 「……そう、わかったわ。いいわねスバル?」 「仰せのままに」 「じゃあ、左手を出しなさい」 スバルは言われるがままに左腕を前に突き出し、アクマロはそこにリボルバーナックルを添える。すると掌からソレワターセの触手が飛び出て、リボルバーナックルを飲み込んだ。しかし彼女の右手はそんな痕跡を残さず、すぐに元の白さを取り戻す。 「それじゃあ、奴らを追うのよ。あなたのお芝居がどれだけ優れているのか、私達は楽しみにしているわ」 「全ては……ノーザ様のために」 シャンプーの声で答えたスバルは勢いよく地面を蹴って、猛達が向かった方向を目指すように疾走した。本来の姿ではないので速度は些か衰えているようだが、それでも追い付くには問題ない。 「あなたも中々に酷い方だ……まあ、あれがスバルの幸せなのですから止めはしないですが……!」 「あら、見たところアクマロ君も負けず劣らずに思えるけど?」 「これはこれは……お褒め頂き光栄に存じます……!」 余程愉快と思っているのかアクマロの声は歓喜に震えている。 やはりこの怪物も人の嘆きと悲しみを愉悦とする、悪意に満ちた存在だ。それもナイトメアのアラクネアやハデーニャ、エターナルのネバタコスやムカーディアのように知略にも長けている。 もしも裏見がんどう返しの術とやらを使えば、この殺し合いは一体どうなるのか? 遠ざかっていくスバルの後を追いながら、ノーザは不意にそんなことを考えていた。 ◆ この殺し合いに巻き込まれてから最初に殺したシャンプーの皮を被り、木々の間を駆け抜けるスバル・ナカジマは、ふと両手に目を移す。 シャンプーの姿を真似たソレワターセの中には、二つのリボルバーナックルが潜んでいる。それを二つ揃えてから、スバルの中で正体のわからない蟠りが広がっていた。 まるで大切な誰かを裏切っているようで、心が全く晴れない。偉大なる主のノーザ様とその協力者となった筋殻アクマロが望んでいるのに、どういう訳か気が進まなかった。 (高町なのは……さん) マッハキャリバーがノーザに情報を伝える際に呼んだその名前が、スバルは心の中で何度も反芻している。 しかしそれが一体何を意味するのかが、彼女はまるでわからなかった。 (フェイト・テスラロッサ……ユーノ・スクライア……ティアナ・ランスター……ヴィヴィオ……) 次々と名前が浮かび上がるごとに、疑問も湧き上がっていく。いつどこで、その名を知ったのかが思い出せない。 けれども、彼らと共に過ごしたことがある気がした。どうしてそう言いきれるのかはわからなかったが、みんなから大切なことをたくさん学んだこともある。 これからやろうとしていることは、そんな彼らへの裏切りだった。そう思った途端、急に胸が痛くなり、そして熱くなってくる。 『あなたのお芝居がどれだけ優れているのか、私達は楽しみにしているわ』 しかしノーザの言葉を思い出した瞬間、湧き上がってきた疑問は一気に消えた。 『あなたの力をもっと私にみせてちょうだい……それがあなたにとっての幸せなのだから』 そして背中にいるソレワターセによって、ノーザが教えてくれた至福の行いを思い出される。 シャンプーの頭を潰したときの感触に、手に付着した血の臭いと味。それらを味わった瞬間、全身に酒を浴びて酔ったような快楽が脳髄を走った。 『あなたのおかげであなたも私も幸せになれるのよ……それだけは間違いないわ』 恐怖に震える弱い相手を嬲り殺しにして、絶望のどん底に叩き落とすという行為。殺す直前、シャンプーが最後に見せた苦痛に歪む表情はこの上なく愉快だった。先程、殺し損なったあの鹿目まどかという少女も、死が間近に迫ったことで恐怖に震える。もしもあのまま殺すことに成功したらまどかは、そして周りの人間はどんな絶望を見せてくれるのか? そう考えたスバルは無意識の内に笑みを浮かべる。ソレワターセによって無理矢理作らされたその顔は普段の彼女が作る笑顔とはあまりにも遠くて、凄惨だった。 しかしノーザの願いを叶えるために走り続けるスバルはそれに気付かない。ただ、ソレワターセの意志に任せて一つでも多くの殺戮を目指すだけだった。 ◆ 「すると、あなたがあの広間で加頭を前に名乗り出た仮面ライダー一号……本郷猛なのか!?」 「その通りだ……しかし、異世界を渡る仮面ライダーがいるとは」 「私も最初は驚いた。だが、あなたの他にも仮面ライダーが九人もいるのか……なら、我々の知らない仮面ライダーも他に多くいることになるのか?」 「流ノ介の話を聞く限りでは、その可能性は高そうだな」 朝日が水平線より姿を現して空に光を取り戻していく中、B―7エリアに建つホテルのロビーで本郷猛と池波流ノ介は互いに情報交換した後、驚愕の表情を浮かべている。 数多の異世界を渡る通りすがりの仮面ライダーに、数多の秘密結社が結集した悪の組織BADAN。それは限られた仮面ライダーの知識しか持たない二人を驚かせるのに、十分な威力を持っていた。 「まさか別の世界には、外道衆という組織とそれに立ち向かうシンケンジャーという集団がいるとは……争いはどの世界にもあるのか」 「……実に悲しいことだ。しかも私達が出会った若い少女達までもが、戦う世界があるなんて」 「全くだ」 猛と流ノ介の表情は沈鬱に染まり、そのまま溜息を吐く。 元々、彼らは争いを好むような性格ではない。できることならば、戦いを回避して平和的に解決することを願っていたが、悪はそれを許すような相手ではなかった。だからこそ、多くの人々を守るために戦うしかない。 今までもそうだったし、この戦場でもその方針を変えるつもりはなかった。 「まさか、この殺し合いにはそのBADANという組織が関わっている可能性があるのではないか……!? 本郷、あなたの話を聞いていると、それだけの技術力と冷酷さを併せ持つ奴らなら、こんな狂った戦いを開くのもありえるかもしれない」 「その可能性も否定できないが、まだ断定は不可能だ。今は、この戦いを止めて仲間を集めることが最優先だ」 「……そうか」 そう頷く流ノ介の身体を、猛はまじまじと見つめる。その視線に気付いた流ノ介は、思わず怪訝な表情を浮かべた。 「……どうかしたのか?」 「確か、十蔵という怪人を君は追っているんだったな。だが、見たところまだ怪我は完治していない……それで満足に戦えるのか?」 「……例えそうだとしても、こうして休んでいる間に十蔵やアクマロ……それにドウコクによって犠牲者が出るかもしれない。それを防ぐためにも、あまりのんびりしていられないんだ!」 「そうか……だが、無理をするな。君にもしものことがあっては、悲しむ人間がいるのは君だってわかっているはずだ」 「お心遣い、かたじけない。だが、例えこの身体がどうなろうとも止まるわけにはいかない……それはあなたもそうじゃないのか」 「そう言われると痛いな……」 申し訳なさそうに頭を下げる流ノ介の言葉に、猛は思わず苦笑する。それは常日頃、緊張に張りつめていた彼がたまにしか見せない笑顔だった。 本郷猛と池池波流ノ介から少し離れた場所で、四人の少女達が集まっている。普通ならば、同年代の少女が集まれば話に花が咲くかもしれないが、殺し合いという状況がそれを奪っていた。 しかしそれでも、少女達は決して絶望していない。これまで何度も困難が訪れても折れなかった強い精神と、誰かを守りたいという揺るぎない思いが彼女達の支えになっている。 四人は皆、殺し合いに巻き込まれた親しい友人達と再会するまで倒れることはできないと考えていた。 「未来の私が……管理局でたくさんの人を鍛えてるって本当なの、アインハルトさん!?」 そして今、高町なのははアインハルト・ストラトスより告げられた事実に驚きを隠せないでいる。 「はい。なのはさんは私達の時代じゃ、数々の難事件を解決したエース・オブ・エースと呼ばれるほどの魔導師です。私も、未来のなのはさんから色々なことを教わりました」 「……そうなんだ」 一三年後もの月日が流れた未来のミッドチルダよりやってきたという、アインハルト・ストラトスという年上の少女。彼女が生きている時代の自分は、フェイト・テスタロッサやユーノ・スクライアと力を合わせて多くの困難を乗り越え、更にはスバル・ナカジマやティアナ・ランスターという少女達を一人前の魔導師として鍛えたらしい。 「じゃあ、名簿に書いてあった高町ヴィヴィオって人は……私の娘で、アインハルトさんはヴィヴィオのお友達……なんですよね?」 「はい」 「……そうなんだ」 あっさりとアインハルトは肯定するが、なのははそれを素直に受け取ることはできなかった。 数分前、いつきからうさぎのぬいぐるみを受け取った際、この世界に連れてこられた友達の中には、別の時代から連れてこられた可能性があると聞いた。その時はまだ推測レベルの話でしかなかったが、アインハルトの存在が真実だと証明している。 アインハルト曰く、未来の自分は天涯孤独だったヴィヴィオを引き取って、養子にした際に『高町ヴィヴィオ』となったらしい。あまりにも荒唐無稽で信じがたい話だが、なのはにはアインハルトが嘘を言っているようにも見えなかった。 「未来のなのはちゃんは、そんな人になってるんだ……凄いね!」 「あ、ありがとうございます……」 そしてアインハルトの話を聞いた鹿目まどかは、羨望の眼差しを向けている。しかし今のなのはにとって全く覚えのないことなので、賞賛の言葉が妙に気恥ずかしかった。 ほんの少しだけ顔が赤くなってるなのはは、明堂院いつきが微笑んでるのを見る。その笑顔は、何やら意味有りげに思えた。 「……なんですか、いつきさん」 「なのは、もしかして照れてる?」 「照れてません!」 「はいはい、わかってるわかってる!」 「何ですか、それ!?」 「いいんだよなのはちゃん、無理しなくても」 「まどかさんまで、やめてくださいよ! もう!」 なのははムキになって反論するが、いつきとまどかはからかい続ける。明るい声がロビーに響いて穏やかな空気が生まれつつある中、アインハルトだけが沈鬱な表情を浮かべていた。 それを見たなのはの顔は、ほんの一瞬で羞恥から疑問に染まる。 「……アインハルトさん、どうかしました?」 「いえ……何でもありません。すみません、ご心配をかけて」 アインハルトはそう答えるが、どう見ても大丈夫とは思えない。明らかに落ち込んだ様子の彼女の前に、いつきが出る。彼女の顔は今さっきまで見せていた笑顔が嘘のように、ほんの少しだけ暗くなっていた。 「もしかして、スバルさんのことを考えてたの?」 「……はい」 暗い表情で俯いていたアインハルトは、蚊の鳴くような声で頷く。 彼女は数時間前、何者かに操られたスバルに襲われたらしい。その様子は普段のスバルからはとても想像できないくらいにおぞましく、まるで殺戮兵器を思わせるほどに残酷だったとアインハルトは言う。 それを聞いた時、なのはの中でやり切れない気持ちが溢れていった。本当は優しい人間であった未来の愛弟子が、誰かの悪意によってやりたくもない戦いを強いられている。それが一体どれだけ辛いことなのか……なのはには、想像することすらできなかった。 もしもスバルが自我を取り戻して自分自身の罪を知ってしまったら、きっと深い悲しみに沈んでしまうかもしれない。だから、これ以上望まない戦いをさせられてしまう前に何としてでも助けたかった。 「わかった、僕もスバルさんを助けるのに協力するよ……優しい人を無理やり戦わせるなんてこと、許せないからね」 いつきの眼差しはとても真摯で、それでいて静かな怒りが燃え上がっている。彼女の気迫は、本当に男だと思わせてしまうほどに凄味があった。 そんないつきの怒りはなのはにも大いに理解できた。 「私も、アインハルトさんやいつきさんと一緒にスバルさんを助けたいです! だって、操り人形みたいにされるなんて……酷すぎるから!」 もしももっと早く出会えたら、きっとわかりあえてたかもしれない。始めのうちは戸惑うかもしれないが、それでもこの殺し合いを止めるためにスバルと力を合わせていたはず。だからこそ、一刻も早く彼女を助けたかった。 「そうだな、それは私も同じだ」 そして池波流ノ介と本郷猛もまた、アインハルトの前に立つ。 「誰かの意思を奪って、この殺し合いの片棒を担がせる輩など私は断じて許せん……見つけ次第、この手でたたっ斬る!」 「そうだ。平和を願って得た力を悪に利用する……その意思や日々の積み重ねを踏み躙る奴を、仮面ライダーは決して許したりはしない」 彼らが握り締める拳からは、計り知れないほどの憤りと悪に対する憎しみが感じられた。恐らく、この二人はスバルを利用した者を見つけたら何の躊躇いもなく殺すだろう。 しかしそれをなのはは止めなかった。もしかしたら相手にも理由があるのかもしれないし、可能な限りなら救いたい。だけど今回の相手はあまりにもタチが悪すぎた。もしも身勝手な理由でスバルを操ったのだとするなら、悪魔になってでも止めるかもしれない。 「アインハルトちゃん、私もできる限り協力するよ……どこまでやれるのかわからないけど」 そしてまどかは優しく微笑みながら、アインハルトの両手を握り締めた。その姿はまるで、妹を思いやる姉のように暖かさに満ちている。 例えるなら、泣いている自分を励ましてくれた美由希や恭也のように。 「皆さん……ありがとうございます!」 そして、アインハルトの顔に少しだけ光が戻って、感謝の言葉を告げた。それでも、まだアインハルトは笑顔を取り戻さない。 一刻も早くスバルを助けて、アインハルトと一緒に笑い合っているところを見たいとなのはは思った。 「本郷、私達もそのスバルという子を捜そう……志葉屋敷に向かう途中で見つけたら、何としてでも救ってみせる」 「そうか。なら、俺達はここでもう少し身体を休めたら君達の後を追う。どうか、気を付けるんだ」 「ああ、言われるまでもない」 猛に頷いた流ノ介はこちらに振り向いてくる。その視線を受けて、なのはといつきは荷物を持って、備え付けられた椅子から立ち上がった。その時だった。 「誰か、助けて!」 ホテルの扉が乱暴に開かれて、六人の意識がそちらに集中する。 甲高い悲鳴を響かせながらホテルのロビーに飛び込んできたのは、いつきやまどかよりも年上に見える少女だった。 腰にまで届く青い長髪はぼさぼさになっており、スタイルのいい身体に纏われている中華風の服は乱れ、ほんの少し大人っぽい表情は恐怖に染まっている。 「君、一体どうしたんだ!?」 膝が崩れ落ちて転びそうになる少女に反応したのは、猛だった。彼は少女の肩にそっと両手を置いて、ゆっくりと支える。 猛に続くように、なのは達五人も急いで駆け寄った。 「そんなに慌てて……何があったんだ!」 「た、助けて……!」 震えている少女は瞳から涙を滲ませながら、その白い手で猛が着ている上着の袖を握り締める。 「恐ろしい奴らに追われて、殺されそうになったの……!」 「殺されそうになっただと!? 一体どんな奴だ!」 「それは、それは……とても恐ろしくて卑怯な奴らだったの……! 平和のために戦うって言ってあたしの仲間みんなを騙して、殺したの……!」 「何だと……!?」 猛の表情からは少女に対する思いやりが感じられるが、それと同時に烈火のような怒りが燃え上がっていた。 それを見て、なのはは思わず固唾を呑む。 「まさか、君を襲った奴らというのはすぐ近くにいるのか?」 「うん……! みんなのおかげで何とか逃げ出せたんだけど、すぐに来るかもしれないの! みんなを殺した、プリキュアの奴らが!」 「プリキュアだって!?」 少女がそう言った瞬間、猛の横を割り込むようにいつきが目を見開きながら前に出た。 「君、それは一体どういうことなの!?」 「どういうこと……って、プリキュアの奴らがあたし達を……!」 「プリキュアがそんなことをするはずないよ! みんなを守るために戦うプリキュアが、誰かを襲うなんてありえない!」 「で、でも……あたしは確かに……!」 「お願い、教えて! 君に一体何があったのかを!」 猛から引ったくるように少女の肩を掴んで揺さぶり、必死の形相で叫ぶ。それはさっき見た冷静ないつきの表情とは大きくかけ離れていた。 そんな彼女の肩を猛はそっと叩く。動揺していたいつきは猛と目を合わせると、すぐに落ち着きを取り戻した。 「待て、落ち着くんだいつき」 「あっ……! その、ごめんなさい……本郷さん」 「いや、君の気持ちもわかる。俺だって、同じ仮面ライダーが殺し合いに乗ってると言われたら平静ではいられないかもしれない。それよりもだ……」 いつきを冷静に諭しながら少し距離を離れさせた猛は、少女の方に振り向く。その瞳には未だに優しさが感じられるも、猜疑心が混じっていた。 「話を聞かせて貰おうか。プリキュアが君達を襲ったとは、本当なのか?」 「それは……本当です! プリキュアのせいで、みんなが……!」 「だが、いつきはプリキュアがそんなことをするような存在ではないと言っている……これはどういうことだ?」 「それは、その……あたしは……嘘なんて……!」 猛の鋭い視線を前に、少女の答えはどんどんしどろもどろとなっていく。蹌踉めきながら後退る彼女は目が泳いで、次第に息も荒くなっていた。 震える吐息の音がロビーに響く中、白い肌からどんどん汗が噴き出ていく。この状況なら動揺してもおかしくないかもしれないが、それにしてはあまりにも後ろめたいように見えた。 でも、まともに話ができないほど追い詰められたのかもしれない。そう思ったなのはは話をするために一歩進んだ瞬間、少女と目があった。 「……なのは……さん?」 「えっ?」 そして唐突に名前を呼ばれたことで、なのはは思わず呆けてしまう。 時系列順で読む Back 野望のさらにその先へNext 変身超人大戦・危機 投下順で読む Back 野望のさらにその先へNext 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) 本郷猛 Next 変身超人大戦・危機 Back 魔獣 沖一也 Next 変身超人大戦・危機 Back nothing(後編) 明堂院いつき Next 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) ノーザ Next 変身超人大戦・危機 Back nothing(後編) 高町なのは Next 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) スバル・ナカジマ Next 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) アインハルト・ストラトス Next 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) 鹿目まどか Next 変身超人大戦・危機 Back 捲られたカード、占うように笑う(後編) ズ・ゴオマ・グ Next 変身超人大戦・危機 Back nothing(後編) 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・危機 Back 二百年野望 筋殻アクマロ Next 変身超人大戦・危機
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変身超人大戦・イナクナリナサイ ◆LuuKRM2PEg ◆ 目の前にいるのは、尊敬する人から全ての尊厳を奪い取った憎むべき相手。だから、この手で何としてでも叩き潰さなければならない。 アインハルトはスバルを何とかして元に戻すため、ノーザに拳を振るい続けるが全く当たらない。それどころか魔女は涼しげに笑いながら攻撃をかわして、アインハルトにダメージを与えていた。 数時間前、ズ・ゴオマ・グやスバルに負わされたダメージが完全に癒えてないまま次の戦いを強いられ、消耗した状態とはいえ覇王断空拳を受け止めるような相手と戦わされる。ゴオマの時とは違って仲間がいるが、今度は更に状況が悪くなっているように思えた。 一号とシンケンブルーはアクマロという怪物を相手にしていて、なのはとキュアサンシャインはまどかを助けようとしているがスバルの猛攻がそれを許さない。 誰の助けも期待できない状況だが、それでもアインハルトは諦めずに痛む身体に鞭を打って戦っていた。 「あらあら、弱いわね……そんなんじゃ、覇王の名が泣くわよ?」 「黙りなさい!」 しかし現実はあまりにも残酷で、アインハルトの願いを悉く裏切っている。 疾風の速度で拳を振るうがノーザは涼しい表情でそれを受け止めて、逆に脇腹に蹴りを叩き込んだ。その衝撃によって身体の軋む音が響いて、アインハルトは数メートルほど吹き飛んでしまう。度重なる痛みによって意識が飛びそうになるが、その精神力で何とか立ち上がった。 徐々に呼吸が荒くなりながらも地面を踏みしめ、嘲笑うノーザを睨み付ける。 「あなた、スバルを元に戻したいんだっけ」 「なっ……!?」 「あんな戦う以外に能がない機械を取り戻したいなんて、物好きね」 ノーザが一体何を言っているのか、アインハルトには理解できなかった。 「何を言ってるんですか……?」 「あなたは物好きって言ったのが聞こえなかったの? それに、あれは単なる冷酷な戦闘マシーンでしかないって事も」 「冷酷な戦闘マシーン……!?」 しかし次の瞬間、アインハルトの怒りが一気に燃え上がっていく。 もしかしたら、ノーザがスバルを操っていたのには何か理由があるのかもしれない。アインハルトはほんの少しだけ、そんな望みを持っていた。許せるわけはないが、もしかしたらノーザの凶行を話し合うことで、止めることができるかもしれないと思っていた。 だがノーザにそんな思いなど微塵もない。この魔女にあるのは底知れぬ悪意と、平気で人々を見下せるような冷酷さだけしかなかった。 確かにスバルの肉体は機械で出来ているが、誰よりも温かい心を持っている。だがノーザはそんな彼女を操り人形にし、挙句の果てには腕が大怪我をしたりマッハキャリバーが傷ついても尚、奴隷のように扱っていた。 「ふざけるのも、いい加減にしてください!」 それがアインハルトには我慢できず、感情のままに両足で地面を蹴って疾走する。 身を低くしながら瞬時に距離を詰めて胴体を目掛けてストレートを繰り出すが、ノーザは軽々と身を翻したことで掠りもしなかった。その瞬間、致命的な死角となった右側から衝撃が走って、またしても吹き飛ばされる。 アインハルトは短い悲鳴が喉から漏らしながら地面に衝突して倒れるが、駆けつけたなのはに支えられた。 「なのはさん、ありがとうございます!」 「アインハルトさん、無理をしないでください!」 「大丈夫です、この位……ッ!」 口から微かに流れ出る血を拭いながら、震える足に力を込めてゆっくりと立ち上がってノーザを睨む。しかし肝心のノーザはアインハルトなどまるで歯牙にもかけていないように天を見上げていた。 アインハルトもまたそちらに目を向けると、そこにはソレワターセの触手によって捕らえられたまどかが、腹からの大量出血によって顔面が青白くなっているのが見える。 やがてソレワターセの触手はまどかの首にも絡み、そのまま勢いよく締め付けた。 「うう゛っ……!」 「やめなさい!」 そしてまどかの口から苦しそうな呻き声が低音楽器のように発せられるのを見て、キュアサンシャインは跳躍する。しかしそんな彼女の足にソレワターセの触手は絡みついて、そのまま一気に遠くの地面へと叩き付けた。 キュアサンシャインの悲鳴が聞こえた瞬間、アインハルトはこれから起こる最悪の未来を予感して全身に悪寒が走る。そして同時に思考する暇もなくまどかを助けようと動くが、その前にノーザが立ちはだかった。 その冷たい瞳は愉悦に染まっていて、思わず吐き気を催してしまう。しかしその感情は、一瞬で塗り替えられることを知らなかった。 「これから始まるビッグイベントを、思いっきり楽しみなさい」 ぱちん、とノーザは指を奇術師のように軽く鳴らす。その音自体はまるで大したことはなかったが、死刑宣告という意味を持っていたことに気付いた者はどれだけいたかはわからない。 まどかの首を絞めているソレワターセの触手は急激に肥大化し、そのまま鈍い音を響かせながら頭部と胴体を強制的に分離させて、真っ赤な液体を宙にばらまかせていった。 「あ、あ……?」 一体何が起こったのか理解できず、アインハルトは呆然と口を開けている。彼女の瞳は、まどかの頭部が回転しながら落下していくのを捉えていた。すると、アインハルトの脳裏は加頭順によって見せしめにされた男達の姿が、一気に蘇っていく。 しかしそれに対するリアクションを取る暇もなく、首から上を失ったまどかの肉体は破壊された。 ソレワターセの触手はまどかの両腕を勢いよく引っ張ったことで、溢れ出る血によって汚れた胸部はメキメキと木が折れるような音を鳴らして、制服もろとも真っ二つに裂かれていく。すると、切断面から大量の鮮血が降り注いだ。 今のまどかに……否、鹿目まどかだった肉塊と頭部に、ソレワターセの触手が飲み込むように絡みついた。そして大量の骨が砕かれるような甲高い響きと、肉が磨り潰されるような湿り気のある音が聞こえる。ソレワターセの触手が蠢く度に、生理的な嫌悪感を与えるような音は強くなって、知らず知らずの内にアインハルトは震えていた。 赤く濡れたソレワターセの触手はスバルの背中に戻るも、空から落ちていったはずの頭部や高く掲げられた肉体は一片も残っていない。 「まどか、さん――?」 三秒に届くかどうかわからない全ての出来事を目の当たりにしてしまったアインハルトの脳は、思考をする暇もなく結論を導き出した。 鹿目まどかは跡形もなく、スバル・ナカジマに喰われてしまったと。 あまりの出来事を前にまともな言葉も出せず、ただ呆然と立ちつくすしかアインハルトはできない。全身に伝わる激痛も、この時ばかりは意識の中になかった。 されど、戦いはまだ終わったわけではなく、今のアインハルトは致命的な隙を晒していた。それを全く考えていなかった彼女の全身に、突如として凄まじい悪寒が走る。 まどかを一欠片も残さず飲み込んだスバルが、金色の瞳をアインハルトに向けてきたのだ。その異様な輝きと目があって、次に喰われるのは自分だと反射的に予知する。 まどかのように、五体がバラバラにされる光景が脳裏に映った。 「ひっ……!」 悲鳴を漏らしたアインハルトの表情は恐怖に歪み、ほんの少しだけ後退る。その際に足元を滑らせて尻餅をついてしまった。 迫り来るスバルに凝視され、アインハルトは全身から冷や汗を流してしまう。今のスバルがまるでスバルの皮を被った全く別の怪物のように見えて、震えることしかできない。 そこから後退する暇すら与えないとでも言うかのように、凄まじい速度でスバルは突貫し始める。その最中に握られていく鋼の拳が、今のアインハルトにはまるで罪人を裁く断頭台のように見えた。 スバルの右手が振り下ろされていくのを前にして、アインハルトは反射的に目を閉じる。せめて苦しまないように死ねることを強く願いながら。 「アインハルトさん、危ないっ!」 「にゃー! にゃー!」 目の前が黒く染まったのと同時になのはやアスティオンの叫び声が聞こえるが、恐怖に捕らわれたアインハルトは何もしなかった。 その刹那、肉が潰れるような耳障りな音が鼓膜に響いて、頬に熱を帯びた液体が跳ねるのを感じる。そして生臭い鉄の臭いが嗅覚を刺激したので、血が流れたのだと気づいた。 スバルに殴られて、もう死んだのかと思ったがその割には痛みがまるでない。苦痛を感じる暇もなく死んだのかもしれないが、それも妙だった。 「えっ……?」 恐る恐る目を開けたアインハルトは見つけてしまった。彼女とスバルの間を割って入るように、両手を広げたなのはが立っているのを。その小さな背中から拳が突き出していて、白いバリアジャケットが赤く染まっていた。 「な、なのは……さん?」 周りから数え切れないほどの怒声や悲鳴、それに混じった笑い声が嵐のように響く。だがどれもアインハルトの耳には届いておらず、蚊の鳴くような声でなのはを呼ぶしかできなかった。 アインハルトは震える腕をゆっくりと伸ばすが、届く直前にスバルの拳から毒々しい触手が飛び出て、そのまま一瞬でなのはの身体を飲み込むように絡みつく。 ソレワターセの触手はまどかの時のように蠢くと、なのはの悲鳴と思われる声がくぐもって聞こえてきた。だがそれもほんの数秒で途切れ、空気を切るような音と共にソレワターセは宿主の中に戻っていく。 そこにいたはずの高町なのはとレイジングハートはアインハルトの目の前から、いなくなっていた。何処に消えたかなんて考えるまでもない。 不屈のエース・オブ・エースと呼ばれるはずだった心優しき少女とその相棒である杖は、魔女の悪意によって闇の底に飲み込まれてしまった。 この時、アインハルト・ストラトスは悲鳴をあげることも思考することもできなかった。憧れの人が憧れの人を殺すという現実を突きつけられて、放心状態となってしまったことによって。それ故に、気づけなかった。 スバルの瞳が、ほんの一瞬だけ元に戻っていたことを。 ◆ 闇の中に沈んでいたスバル・ナカジマの意識は唐突に覚醒していた。 チャイナ服を着た女の子と戦っていたはずだったのに、気がついたらこの拳はずっと尊敬してきたあの人を貫いていた。 子供の頃からずっと目標にしてきた最強の魔導師、高町なのはの身体を。 「なのは……さん?」 そしてスバルの声に対する答えはない。いつの間にかこの全身に生えた奇妙な触手がなのはを容赦なく潰して、彼女の血肉をスバルの中に取り込んでいた。 彼女の全身を駆け巡る血液が沸騰するように熱くなっていって、身体の奥底から皮膚を突き破るかの如く力が溢れ出てくるのを感じる。しかしそれに苦しむ間もなく、彼女の見る世界は闇に飲み込まれた。 それからすぐに、スバルが犯した罪の証が聞こえてくる。 お前は……お前は一体……!? ア……ア、ア、ア……ア……? とても痛い。とても苦しい。とても辛い。何、これ……? スバルさん、もうやめて! 苦しい……! 痛い。嫌だ。スバルさん、どうして……!? 死にたくない! 助けて! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ! やめて…… 脳裏に次々と駆け巡る呪詛と絶望の言葉にスバルは耳を防ぎたくなるが、身体が言うことを聞かないし、スバルを責め立てる言葉が止まることもない。 あなたは素敵な戦闘マシーンよ。スバルのような素晴らしい殺戮兵器がいてくれるならば、この世に地獄をもたらしてくれるでしょうな。この人殺しの機械人形め、外道と共に地獄へ堕ちろ! キサマはもはや平和の敵だ、俺達仮面ライダーが打ち砕く! 私達プリキュアは、あなたを絶対に許したりしない! やめて……お願いだからもうやめて! スバルは血を吐く思いで懇願するが、それを聞き入れてくれる者は誰もいなかった。 こんなのってないよ……私達、スバルさんを元に戻そうとしたのにあんまりだよ! スバルさんには幻滅しました、あなたはただの血に飢えた殺人鬼だったんですね。近寄るんじゃないわよ……あんたなんかとコンビを組まされたなんて、本当最悪だったわ! お前はもう俺の娘なんかじゃねえ、とっとと廃棄所にでも失せろ。父さんと母さんはあなたを受け入れたみたいだけど、私はあなたみたいな獣を許したりしないわ。私を止める言いながら、本当はとんでもない極悪人だったネ! ボゾグ、ボゾグ、ボゾク! 違う、違う、違う! あたしは、あたしはこんなこと望んでなんか…… そうだね、スバルが望んでるのはまだこんなものじゃないよね ……えっ? 渦を巻くように世界で暴れる呪いの中から、たった一つだけ優しい声が聞こえてくる。思わずそちらを振り向くと、尊敬している魔導師がいつの間にか立っていた。 なのは……さん? よく来たねスバル。私はね、ずっとあなたを待っていたんだよ 初めて出会ったあの日から、ずっと忘れられない慈愛に満ちた笑顔を向けてくれる。しかしスバルはそれを見ても違和感しか覚えなかった。 つい先程、彼女の胸をこの手で貫いたはずなのにどうして生きているのか? さっき見た彼女は子どものように小さかったのに、どうして今はいつもの見慣れた姿なのか? 自分の見ている全ては、ただの幻でしかないのか? でも、まだもうちょっとだけ足りないなぁ 疑問が何一つ払拭されないまま、高町なのははゆっくりと歩み寄ってくる。一歩、また一歩と近づく度に辺りの闇はより濃くなりながら、赤い血が湧き上がっていった。 凍てつく風が肌に触れて、スバルは思わず身震いする。その震えは寒さだけではなく、地獄のような世界を見せられて生まれた恐怖も含まれていた。そして、周りがこんな世界になっているのにも関わらず、未だに光に満ちた笑顔を浮かべているなのはにも違和感を感じてしまう。 あの優しくて強いなのはが、まるで絶望と怨恨しか込められていない地獄のような闇を喜んでいると思わざるを得なかった。 それじゃあ、スバルにいい物をプレゼントしてあげるよ なのはの白い両手がゆっくりと伸びて、そのままスバルの頬を撫でる。その指先はひんやりとしていて、まるで暗闇のように一切の暖かさが感じられなかった。十本の指から闇が溢れだしてくる。 な、なのはさん……!? 恐がらなくてもいいんだよ。大丈夫……スバルには私のとっておきを教えてあげるから 幼子をあやす母親のように穏やかな声だったが、スバルは全く安堵することができない。この暗闇が全てを奪っていくようにも思えて、むしろ怖くなってきた。後ろに下がろうとしても、鎖で縛られたかのように足が動かない。 泥のように粘り気のある闇はスバルの皮膚に溶け込んでいき、そこから血管や人工骨格を通じて全身を駆け巡っていく。スバルの中を徐々に蹂躙していく漆黒はなのはの身体も飲み込んだ。 何が起こっているのか微塵も理解できずに瞠目するスバルの前で、なのはだった闇はボコボコと溶岩が流れるような濁った音を鳴らしながら、形を変えていく。気が付いた時には、スバルの頬を触れていた闇はスバルそのものとなっていた。まるで、鏡に映ったかのようにその姿には一片の違いもない。 唯一違うと言うならば、目の前に立つもう一人のスバルが笑っていたことだけ。それもなのはとは違って、酷く冷酷な雰囲気を放つ笑みだった。 じゃあね、本物のあたし。言っておくけど、なのはさん達を殺したからって終わらないよ! えっ!? 全てはノーザ様のために……さっき、あなた自身が言ったじゃない! その言葉と共に、もう一人のスバルの背後から闇が勢い良く盛り上がっていって、飛沫を上げながら波のように押し寄せてくる。スバルはそれを前に抗うことも悲鳴をあげることもできず、その意識と身体はソレワターセの生み出す暗闇の中へと飲み込まれていった。 これから、あなたの身体でいっぱい……楽しんでくるから! そして気付く。目の前にいるスバルの姿をしたソレワターセは、この身体で大勢の人を殺そうとしていると。この身体を乗っ取ってもう四人も殺したように。 スバルは抗おうとするが、流れる闇の勢いを前にしてはまるで意味を成さなかった。 やめてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ! そんな彼女の叫びも溢れ出る闇に呆気なく飲み込まれてしまい、誰にも届かない。同じように、スバルを救ってくれる者は誰もいない。 ソレワターセは高町なのはの存在によってスバル・ナカジマが元に戻る可能性を減らす為、絶望と罪を突き付けた。その結果、誰かを傷つけることを好まない性格であるスバルは呆気なく闇に飲み込まれてしまう。自分の身体が自分の物でなくなり、そして人を殺めることから生まれる絶望は計り知れない。 しかしソレワターセにとってそれはどうでもよかった。スバルが抱く絶望など、ノーザの願いを叶えるために、破壊と絶望の祭りを開くエネルギーに過ぎないのだから。 ◆ ソレワターセによって遠くに弾き飛ばされ、その際に味わった痛みによってキュアサンシャインは動くことができず、その僅かな時間の間に悲劇は起こった。 鹿目まどかはクモジャキー達のように首を飛ばされただけじゃなく、身体を真っ二つにされた挙げ句にソレワターセに吸収された。その次の瞬間には、ショックで動けなくなったアインハルト・ストラトスを庇った高町なのはが胸を貫かれて、まどかと同じように飲み込まれてしまう。 一分にも満たない惨劇を目撃したキュアサンシャインは絶望し、無力感が胸中に広がっていった。プリキュアでありながら、共に戦う仲間達を救うことができずに犠牲にされたショックは大きい。 しかし涙を流して悲しみに沈もうとした直前、ソレワターセに支配されたスバルの手がアインハルトに伸びていくのを見て、キュアサンシャインの意識は一気に覚醒した。 「アインハルトッ!」 彼女は両足を蹴って勢いよく疾走しながら両手に力を込めて、闇を照らす輝きを放つ。一瞬の内に二人との距離は迫ってから、スバルが反応する前にキュアサンシャインは叫んだ。 「サンシャイン・フラアアアアァァァァッシュ!」 掌から解き放った光線はアインハルトに意識を集中させていたスバルを飲み込み、容赦なく吹き飛ばす。確かな手ごたえを感じるが、今はスバルに振り向いている場合ではない。 すぐさま、地面にへたり込んでいるアインハルトの元へ駆け寄り、その身体とアスティオンを抱えて数メートル離れた先に跳ぶ。 両足が地面に付いた頃に覗き込んだアインハルトの瞳はとても空虚になっていて、涙が滂沱と流れていた。 「アインハルト、しっかりして!」 「な、なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……私のせいで、なのはさんとまどかさんが……!」 「アインハルトッ!」 キュアサンシャインはアインハルトの肩を掴んで揺さぶりながら呼びかけるが、返ってくるのは蚊の鳴くような呟きだけ。先程のスバルのように、明らかに混乱していた。 理由なんて考えるまでもない。まどかとなのはが目の前で立て続けに殺されては、誰だってショックを受けてしまう。いくら歴史に名を残す覇王の血を受け継いでいるからといって、実際はまだ十一歳の少女でしかないアインハルトも例外ではなかった。 彼女のような心優しい人間が、自分のせいで誰かが犠牲になったらどうなるか……辛いに決まっている。でも、アインハルトを守るために動いたなのはを責めることはできなかった。 「私のせいで、私のせいで、私のせいで……嫌あああああああああぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、なのはさん、まどかさん、ヴィヴィオさん、リオさん、コロナさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ユーノさん、ノーヴェさん、私が悪いんです、私が悪いんです、私が、私が、私が、私が……!」 「にゃー! にゃー!」 「アインハルト、私は……!」 アスティオンと共にアインハルトを何とかして慰めたかったが、その為の言葉がキュアサンシャインには見つからない。目の前で大切な人を失った悲しみを癒すなんて、簡単にできるわけがないからだ。 彼女の為に一体何ができるのか? キュアサンシャインにはまるで思いつかなかった。 「アハハハハハッ! 凄い、凄いじゃないスバル! 流石は私のしもべよ! ここまで働いてくれるなんて最高だわ!」 しかしそんな彼女を嘲笑い、この惨劇をまるで祭りのように笑うとてつもなく不愉快な声が響く。 振り向いた先では、人々の不幸を喜ぶあの邪悪な魔女が腹の底から笑っている姿が見えた。しかもこれまで見たどんな笑みよりも、愉悦の色が濃さを増している。 「ねえスバル、あなたの力はこの程度じゃないはずよ! まだもっと凄いことをしてくれるでしょ!? 早くそれを私に見せてちょうだい!」 「……ッ!」 その笑い声を耳にした途端、キュアサンシャインの全身が怒りで震えた。 まどかやなのはを犠牲にしただけじゃなく、アインハルトをここまで追い詰めた。それをノーザは『この程度』と吐き捨てている。 ノーザはただ、自分自身がが満足したいという理由だけでみんなを絶望のどん底に叩き落して、破壊の限りを尽くした。 「許さない……あなただけは絶対に許さない……!」 あまりにも身勝手で邪悪なノーザを前にして、この時ばかりは心の底から憎しみが湧き上がっていく。かつてデューンとの最終決戦において、キュアブロッサムとなった花咲つぼみは憎しみで戦ってはいけないと教えられた。しかし今のノーザは、そんな気持ちを忘れさせてしまいそうなほどに、憎い相手に見える。 ここでノーザを倒さなければもっと多くの不幸が生まれるし、何よりも自分自身を許すことができなかった。キュアサンシャインは拳を思いっきり握りながら走り出そうとするが、その足は止められてしまう。 思わず振り向くと、右足にアスティオンがしがみついていた。 「ティオ……?」 「にゃー! にゃー! にゃー!」 「お願い、その手を離して! 私は……!」 「にゃー! にゃー! にゃー! にゃー! にゃー!」 アスティオンは必死に首を横に振りながら悲しそうな声で鳴いているのを見て、怒りと憎しみに染まっていたキュアサンシャインの思考は一気に晴れる。そして、言葉を言えないアスティオンの意図を察した。 このまま行っては負けてしまうだけで、犠牲者がもう一人増えてしまう。そしてアインハルトを余計に悲しませることになると、悲しみに潤んだ瞳が告げていた。 アスティオンと目を合わせたキュアサンシャインは何も言うことができない。 一号とシンケンブルーがアクマロを相手に苦戦している状況で、もしもここでノーザの元に飛び込んだら一人で戦うことになり、そこからノーザやスバルに負けてしまったら今度こそアインハルトは一人になってしまう。そうなっては、誰もアインハルトを助けることはできない。 アスティオンの懇願を前に、キュアサンシャインは何もできずに止まってしまう。そんな迷いの後、ガシャリと何かが駆動するような音が数回だけ響いた。 『Divine Buster』 そして次に聞こえてきたのが、消えてしまったレイジングハートと似ている無機質な機械音声。それを聞いたキュアサンシャインは思わず振り向いたが、そこにいるのはスバルとノーザだけ。 しかもスバルは、数分前のように腰を深く落としながら構えを取っていた。 「えっ……?」 だがそれらが綺麗な光だと思う暇もなく、一瞬の内に黒く染まった。そして光は何もない場所から次々と生まれながらスバルの頭上に集まっていき、稲妻を発しながら大きな球体へと変わっていく。 それに伴うかのように戦いで砕けた大地が揺れて、粉塵がゆっくりと舞い上がりながら黒い塊は更に大きくなる。ようやく昇り始めた朝日の光を遮り、世界を再び夜にしてしまいそうな闇で満ちていた。 それを生み出しているスバル本人がゆっくりと腰を落とすのを見て、キュアサンシャインの全身が警鐘を鳴らす。そして、これからスバルはとてつもなく恐ろしい一撃を放とうとしていると、本能で確信した。 「アインハルトにティオ、私に掴まって!」 それからキュアサンシャインが取る行動は早かった。彼女は急いでアインハルトとアスティオン、そして二つのデイバッグを手にとって少しでも遠くに離れようと動く。 その際に、一号とシンケンブルーの方に一瞬だけ振り向いて叫んだ。 「一号にシンケンブルー! アインハルト達は私が守りますから、ここから離れてください!」 言い残せたのはそんなぞんざいな言葉だけで、返事を聞く暇もない。二人との間に開いた距離は、残された時間で行くには遠かった。無責任だと知っているが、そうしなければアインハルト達を助けられない。 ノーザとスバルの狙いはここにいる特定の誰かではなく、ここにいる全員。例え防御をしたとしても、これから来る技はそれを軽く吹き飛ばす位にまで凄まじいと、キュアサンシャインは無意識の内に確信していた。 せめて今は、アインハルトを助ける可能性を少しでも上げなければならない。それだけがキュアサンシャインの思考を満たしていた。 ◆ シンケンマルを何度も振りかぶるが、その度にアクマロの持つ削身断頭笏で呆気なく弾かれてしまい、そこから胸を一閃される。蹌踉めいた間に、アクマロはナナシ連中の刀をあろうことか投げつけて、刃先が傷口の開いている脇腹を掠った。 シンケンブルーはそれに苦しむ暇もなく、アクマロが空いた方の手から電撃を放つ。凄まじい音と共に、シンケンブルーに襲いかかった。 「がああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」 耳にするのも辛い断末魔の叫びが、マスクの下から発せられる。アクマロの雷はスーツの傷口から進入し、中にいる池波流ノ介を苦しめるように暴れ回った。 電撃はすぐに止むが、それを合図とするかのようにシンケンブルーは膝を落として倒れていく。その身体が地面を横たわった頃には、度重なるダメージによって変身が解除されていた。 夥しい量の血が十蔵から傷つけられた脇腹より流れ、地面を赤く染める。何とかして顔を上げると、目の前にT-2サイクロンメモリが落ちているのを見た。思わず流ノ介はそれを右手に取る。 痛みでまともに身体が動かないが、それでもゆっくりと立ち上がっていく流ノ介を一号は支えた。 「流ノ介、大丈夫か!?」 「ああ……すまない、本郷。私なら大丈夫だ……!」 失血によって朦朧とする意識を保ちながら、流ノ介は右手で握ったサイクロンメモリを痛恨するように見つめる。 鹿目まどかと高町なのはを見殺しにしてしまっただけでなく、こうしてアクマロに遊ばれてしまった。情けなさのあまりに泣きたいくらいだったが、そんなことなど許されるわけがない。 せめて今はアクマロだけでも倒したかったが、現実はどこまでも残酷でまともに攻撃を当てられもしなかった。 「……どうやら、ここが潮時のようですな」 そして肝心のアクマロはこちらを見向きもせずにそう呟く。 流ノ介も振り向いてみると、その先ではあのスバル・ナカジマという少女の手中で黒い球がどんどん肥大化しているのが見えた。それはヤバいと、一目見ただけで本能が察している。 「巻き添えを食らうのはごめんですので、ほんの少しだけ失礼させて頂きます」 そうやって捨て台詞だけを残して、アクマロはここから遠ざかっていった。流ノ介はアクマロを追おうとするも、痛みが身体の動きを阻害する。 「ディバイン――!」 「流ノ介、俺にしっかり掴まっていろ!」 スバルの叫びを掻き消すかのように力強い声を発しながら、一号は流ノ介を背負って走り出した。その背中を見て、流ノ介は今の自分がただの足手纏いでしかないことを察する。 恐らく一号はこんな死にかけになった自分を助けるに違いない。その気持ちは実に嬉しいが、その為に彼が犠牲になるのは耐えられなかった。背負ったままでは、スバルの攻撃を避けられるかわからない。それで二人とも死ぬことになっては何の意味もなかった。 そして侍になったからには誰かに守られるのではなく、自らの命を犠牲にしてでも誰かを守らなければならない。だからこそ、流ノ介はサイクロンメモリのスイッチに指を触れた。 「すまない……本郷!」 『Cyclone』 野太い電子音声を耳にしながら、まどかのようにガイアメモリを額に差し込む。あの加頭順が持っていたから信用できない代物だが、今は躊躇っている場合ではない。 首輪から風の記憶が流れるのを感じながら、池波流ノ介はサイクロン・ドーパントに変身していく。彼は全身から突風を発して、振り向いてきた一号を吹き飛ばした。 「流ノ介、何を――!」 「――バスタアアアアァァァァァァァァァァ!」 風に流されて遠ざかっていく一号の疑問はスバルの叫びに遮られ、間髪入れずに地面が砕けるような轟音が背後より響く。そのままサイクロン・ドーパントの肉体に灼熱が走り、視界は漆黒に包まれた。 サイクロン・ドーパントは……否、池波流ノ介は自分の命が燃え尽きていくのを感じるが、不思議と痛みや苦しみはなかった。彼の胸中にあるのは忠義を誓った志葉家の当主と自分と同じ家臣達に、ここで出会った仲間達の顔。 (本郷、すまない……あなたを苦しめることになってしまって。だが、どうかいつきとアインハルトを助けてやってくれ。この不甲斐ない私の変わりに……) 誰かを守るためなら自己犠牲を決して厭わない高潔たる精神を持つ男なら、自分が死ぬことを苦しむかもしれない。だが、それでも全ての人々を守れる本郷猛に託したかった。 家臣でありながら主君の苦悩を見抜けなかった愚かな自分よりも、ずっと強いのだから。 (源太、お前はここで死ぬな! 私が亡き後、殿を支えられるのはお前だ! どうか殿を守り、こんな下らない戦いに巻き込まれた皆を救ってくれ!) 流ノ介は次に、お調子者だが侍としてのこれまで多くの人々を助けてきた寿司屋、梅盛源太の顔を思い浮かべる。何処か間の抜けている彼だが、それでも人を助けたいという思いは本物だ。 だから源太には生きて、自分の分までシンケンジャーを支えて欲しかった。 (殿……私はあなたを信じております。どうか外道になど落ちず、皆を救うために戦ってください! 私も源太もそれを望んでおります! 我々シンケンジャーは、あなたを信じて今まで戦ってきたのですから!) そして最後に、長きに渡って忠誠を誓ってきた志葉家の当主たる男、志葉丈瑠に遺言を残す。いくら彼が殺し合いに乗る可能性があったとしても、それでも流ノ介は信じていたかった。 これは理屈などではなく、これまで今まで共に戦ってきたことで培われた信頼から生まれる思い。何故なら、丈瑠はこれまでシンケンジャーのみんなを何度だって支えてきたのだから、きっと正しき道を歩いてくれるはずだと、流ノ介は信じている。 (殿……!) だから、最後の最後まで志葉丈瑠の無事を祈ることを池波流ノ介は一秒たりとも止めなかった。 例えその肉体が闇に飲み尽くされ、命が消え果てたとしても。 ◆ 「流ノ介……ッ!」 自分を救うために突風を起こしたサイクロン・ドーパントの元に振り向くが、そこに倒れているのは黒く焦げた焼死体のみ。そして、その傍らには緑色のガイアメモリが放置されていて、ショドウフォンはもう残っていない。 それが池波流ノ介だった肉塊だと察して仮面ライダー一号が愕然とした直後、スバルの身体から飛び出した触手がその肉体を飲み込む。一号はすぐに食い止めようとしたが、ガイアメモリだけを残して跡形もなく消えてしまった。 鹿目まどかや高町なのはだけでなく、池波流ノ介までも見殺しにしてしまう。助けるどころか逆に助けられてしまうなんて、あってはならなかった。 「くそっ……!」 それを目の当たりにした一号の胸中に、押し潰されそうな程の後悔が満ちてくる。 こうなることがわかっていれば、最初から無理矢理にでもまどか達を逃がすべきだった。スバルを元に戻せるという希望に釣られて、三人に無理を強いたのがそもそもの間違いだと気付かなければならなかったが、もう遅い。 全ては絶望を生み出すために張り巡らされたノーザの罠。無様にその餌食となって始めから負けが決まっていた賭けに乗ってしまい、こんな悲劇を生み出してしまった。 それでも一号に絶望することは許されない。せめて、まだ生きているキュアサンシャインとアインハルト・ストラトスの二人を守り抜くまでは、死ぬわけにはいかなかった。 「ハハハハハハハハハハハハハッ! やっぱりあなたは凄いわ! それでこそ、私のしもべにした甲斐があったものね!」 しかしこの世の終わりとも呼ぶに相応しい景色を前にして、あまりにも耳障りな哄笑が確かに聞こえてくる。ノーザの愉悦はいよいよ抑えられなくなったらしい。 「全ては……ノーザ様のために」 「そうよ! あなたの全ては私のためだけにあるのよ! 私が望む暗黒の世界を作る……それがスバルの存在理由だわ!」 あれだけの技を放った反動で息を切らしながらも淡々に伝えるスバルと、全身を仰け反らせて両腕を広げながら笑い続けるノーザの姿はあまりにも対照的だった。 そして一号はそんなノーザを前に、あまりにも狂っていると思うしかなかった。 「キサマ……これだけの犠牲を出しておきながら、まだ足りないと言うのか!?」 「当たり前じゃない! 全然足りるわけないでしょう!?」 問い質してきた一号に振り向いたノーザの笑顔は、悪魔のようにおぞましい。それだけでも誰かに絶望を齎すには充分だったが、一号は決して怖じ気づくことはせずに視線を向けた。 「ノーザ……一体何が望みだ、答えろ!」 「絶望、悲しみ、悲鳴、嘆き、不幸……それが私の望みよ!」 常軌を逸した哄笑と共にノーザは断言し続ける。 「一切の希望も光も差し込まない暗黒の世界……この戦いはその為の準備よ! だから私は加頭順に感謝すらしているわ! だって私達をこんなにも素敵なお祭りに招待してくれたのだから!」 そしてノーザは一息ついて、遙か彼方の大空を見上げながら叫んだ。 「全ては私達を蘇らせた深海の闇、ボトム様のため! さあ、もっとこのお祭りで踊りましょう! そしてもっともっと多くの悲しみを生み出しましょう! この世界をもっと、絶望に染めてちょうだい!」 ◆ 「素晴らしい……何と、素晴らしいのでしょう!」 そして惨劇を前にした筋殻アクマロもまた、逸る感情を抑えることができずに狂喜乱舞している。もしもその醜悪な表情が動いたならば、その笑い声に伴って大きく歪んでいたはずだった。 ノーザに操られたスバルが人を殺してから腹の底に押さえ込んでいた邪念を解き放ったことで、例えようのない開放感をアクマロは感じる。 そのまま彼は一号を嘲笑っているノーザに目を向けた。 (流石ですノーザさん、やはりあんたさんに付いて正解でしたな! まさかここまでの地獄を生み出してくれるとは!) この催しの主催者たる加頭順や、数時間前に戦っていたコウモリ男に対して啖呵を切った男の信念や矜持をこうも簡単に踏みにじっただけでなく、辺り一帯を地獄絵図に変えた。猛の精神が潰れなかったのは少しだけ予想外だが、考えてみればむしろそうでなくては面白くない。簡単に折れない輩だからこそ、追い詰める楽しみもある。 ざまあみろという罵りの言葉を使うのは、こういう時こそ相応しいとアクマロは思う。 誰かを守るなどと嘯くような外道衆に背く愚か者には丁度いい罰だ。シンケンブルーが跡形もなく消えていく光景もそうだが、奴らの盲信していた平和などと言う絵空事が呆気なく崩れ落ちる様というのは、実に心地良い。 三日三晩、三途の池に浸っていてもこれほどの愉悦は味わえるかどうか。 「一号……っ!」 しかしその快楽に浸っている暇はもう無い。 視界の端から掠れるような声と共に、あのキュアサンシャインが立ち上がっているのを見つけたため。その傍らで倒れているアインハルトは気を失っているせいか、既に子供の姿となっていた。 あの砲撃の後で生きていたのは予想外だったが、それならば自らの手で叩き潰すまで。このまま逃げられてしまうのもそれはそれで面白くない。 本当ならばここから猛の精神を潰す作業に加わりたかったが、それはノーザとスバルに任せるしかなかった。それにあの小娘はここまでの悲劇を前にしても、その瞳に希望を宿している。それをこの手で絶望に変えてしまうのもまた一興。 削身断頭笏の刃先で左手を軽く叩きながら、更なる絶望を生み出すためにアクマロは足を進めた。 時系列順で読む Back 変身超人大戦・襲来Next 変身超人大戦・最後の乱入者 投下順で読む Back 変身超人大戦・襲来Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 本郷猛 Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 沖一也 Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 明堂院いつき Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 ノーザ Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 高町なのは Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 スバル・ナカジマ Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 アインハルト・ストラトス Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 鹿目まどか Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 ズ・ゴオマ・グ Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・最後の乱入者 Back 変身超人大戦・襲来 筋殻アクマロ Next 変身超人大戦・最後の乱入者