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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1388042098/ ガチャ 京太郎「すいませんっ掃除当番で少し遅れました!………ってあれ……?」 尭深「………」ズズズ 京太郎「えっと…渋谷先輩だけですか…?」 尭深「…うん」ズズズ 京太郎「………今日部活休み…とかじゃないですよね……?」 尭深「…うん」 京太郎「で、ですよね!…みんな遅いですね……」 尭深「…うん」 京太郎「皆何か用事でもあるんですかね……」 尭深「………」 京太郎「…………」 京太郎(き、気まずい!………やっぱり渋谷先輩と話すのは少し苦手だなぁ…) 京太郎(顔はムチャクチャかわいいんだけどなぁ……それにおもちも……)チラッ 尭深「……須賀くん…」 京太郎「は、はい!!」ビクッ 京太郎(や、やべ……胸見てたのばれたか……?) 尭深「須賀くんもお茶………飲む……?」 京太郎「あ……お、お茶ですね!はい……っていいですよ!自分で入れますから!」 尭深「……須賀くんは私のお茶じゃ…いや……?」 京太郎「い、嫌なわけないじゃないですか!そうじゃなくて先輩に煎れてもらうなんて……って意味で…」 尭深「私が煎れたいだけ……だから……」 京太郎「で、でも………」 尭深「だめ……?」 京太郎「うっ…………」 京太郎「……………わかりました……じゃあお願いします…」 尭深「……うん」 尭深「はい………」コト 京太郎「あ、ありがとうございます!……凄いいい香りですね……もしかして茶葉変えました?」 尭深「うん……あたらしいの買ってみたの……」 京太郎「そうなんですか!じゃあ戴きますね」 尭深「どうぞ……」 京太郎「…………」ズズズ 尭深「……………どう…かな……?」 京太郎「………うん!凄く美味しいですよ!」 尭深「…!」パァァ 尭深「よかった………」ニコ 京太郎「っ!」 京太郎(か、かわいい……) 尭深「………?須賀くん?どうかしたの……?」 京太郎「…はっ!な、何でもないですよ!ハハハ…」 尭深「でもよかった……須賀くんに美味しいって言ってもらえて……」 京太郎「そ、そんな!俺こそこんな美味しいお茶が飲めて嬉しいですよ!!」 尭深「どうしても最初に須賀くんに飲んでもらいたかったんだ……」 京太郎「え………?」 尭深「……………あ…///」 京太郎「えっと………それh ガチャッ 淡「すいません!遅くなりました!決して追試験をうけてたわけじゃ………って、あれ?タカミとキョータローだけ?」 尭深「………」 京太郎「………」 淡「???……どうかしたの?二人とも黙りこんじゃって…?」 京太郎「な、なんでもねぇよ……あと先輩たちならまだ来てないぞ…」 淡「なんだぁ……慌ててきて損したよ……スミレったらホントに時間に厳しいんだもーん」 京太郎「…それより淡、お前また追試受けてたのか?」 淡「…ち、違うよ!私がそんなバカなはず無いじゃん!」 京太郎「はいはい、そうですねー あわいちゃんはお利口さんでちゅもんねー」 淡「むー!そうやってバカにしてー!大体キョータローだって馬鹿じゃん!」プンスコ 京太郎「おれはだれかさんと違って赤点とったりしないからな~」 淡「ムキーー!なんなのさっきから!麻雀弱いくせに!」 京太郎「ぐっ………お、俺はまだ始めたばっかりだから……」 淡「始めたばっかりっていってももう5ヶ月はたつじゃーん!私が始めてそのくらいの頃にはもっと打ててたもんねー!」 京太郎「う、うるせーペタンコ!お前の場合取った栄養が全部雀力に吸収されてるだけだろ!」 淡「…っ!そ、そやって胸ばっか見て!変態!!スケベ!!近寄らないで!!」 京太郎「心配せずともお前みたいなちっぱいには浴場しねーよ」 淡「なっ……!……う、うるさいうるさい!キョータローなんかこうしてやるー!」バッ ゴクゴク ブーーッ 京太郎「っうわぁぁあ!!きったね…!」 淡「あははは!ばーかばーか!」 京太郎「てめー!なにすんだこの……!」ダッ 淡「あははは!捕まえてみろー!」ダダダダ 京太郎「待てこのやろー!」ダダダダ 淡「またないよーだ!あはははh…あっ!」ガッ 京太郎「おわっ!」 ドスーン 淡「いたた………………っ!///」 京太郎「………………」ムニュ 淡「……………」 京太郎「わわわ!ご、ごめん!」バッ 淡「…………///」 京太郎「その……わ、わざとじゃないんだ……すまん …」 淡「べ、べつに…!私だって悪かったし……」 淡「それに……そんな悪いきはしなかったし……」ボソッ 京太郎「……え?」 淡「……!な、なんでもない!!私トイレいってくる!!」ダッ ガチャ 京太郎「お、おい!淡!」 京太郎「どうしたんだあいつ………って絶対俺のせいだよな……ハァ……」 尭深「………」ズズズ ガチャ 菫「すまない……クラスの用事で遅くなった……」 京太郎「あ、 弘世先輩……こんにちわ」ペコッ 菫「うむ……それよりさっき淡の奴が走ってでていったのは…」 京太郎「あ……じ、じつは………」 説明中--- 菫「ハァ………まったくお前らは何を考えてるんだ……」 京太郎「す、すみません……」 菫「別にイチャイチャするのは構わんが、そういうのは外でやってくれ…」 京太郎「え!?そんなイチャイチャだなんて!あいつとはそんなんじゃ無いですよ!」 京太郎「だいたいあいつが俺のことそんな風に見てるとは思えないし……」 菫「…………」 尭深「…………」 京太郎「……え?えっと……」 菫「ハァ……これは淡にも少し同情するな…」 尭深「………」コク 京太郎「え……?え?」 菫「あぁ、それと今日は照は休みだ……どうやら熱が出たらしい……」 京太郎「え!?大丈夫なんですか!」 菫「まぁそこまで大したことはないみたいなんだが……しかしどうやらあいつの家に今ちょうど親がいないらしくて1人らしいんだ」 京太郎「それは大変ですね…」 菫「そこでだ……須賀には照の家にいって様子を見てきてもらいたいんだ…」 京太郎「え!?おれがですか!?」 菫「あぁ…本当は私が行くべきなんだがもう大会も近いし我々レギュラーは抜けられなくてな……」 京太郎「で、でも!勝手にオンナノヒトの家に上がり込むのは……」 菫「大丈夫だ……照の了承はとってある……」 京太郎「で、ですが……」 菫「頼む須賀……お前にしかたのめないんだ……」 京太郎「う…………わ、分かりました……行きます…」 菫「ありがとう!じゃあこのプリントとノートのコピーも渡しといてくれ……あとこれがあいつの家の住所だ…」 須賀「わかりました、じゃあ行ってきますね!」 菫「頼んだ」 廊下---- 京太郎「えーっと…照さんの家は………うお、割りと遠いんだな……毎朝まよったりしてないのかな……」 淡「あ……キョータロー……」 京太郎「おお、淡か」 淡「どこいくの……?」 京太郎「ああ、照先輩のお見舞いに行くんだよ……」 淡「え……?なんで京太郎が…?」 京太郎「なんか大会前だからレギュラー陣は忙しいみたいでな……」 淡「…………」 京太郎「じゃ、俺はいくから……お前もはやく部室もどれよ」 淡「…………」ギュ 京太郎「え………?」 淡「わたしも……いく………」 京太郎「は?…でもお前…練習は……」 淡「私はスッゴク強いから大丈夫!なんたって高校百年生だし!」 京太郎「………でもなぁ………」 淡「お願い……キョータロー……」ギュ 京太郎「うっ………」 京太郎(ど、どうすればいいんだ……) 京太郎「よし淡!お前の家を教えてくれ!!てか連れてって!」 淡「えぇぇ!?な、なんで私の家……?」 京太郎「いいから!!」 淡「う、うん………」 淡「ここが私の家だよ」 京太郎「おぉ………これは………!」 京太郎(普通のマンションだ…) 淡「で……どうするの……?」 京太郎「そうだった!淡!今家に誰かいるか!?」 淡「え………今はだれもいないと思うけど……」 京太郎「よし入るぞ!」グイッ 淡「わわ…!引っ張らないでよ!」 ガチャ 京太郎「おぉ…ここが淡の家か……」 淡「うん………」 京太郎「淡の部屋はどこだ!?」 淡「え!?……………あそこの扉だけど……」 京太郎「お邪魔しまーす」ガチャ 淡「ちょっと!!ま、まって!!」 京太郎「おぉぉここが淡の部屋かぁ……割と片付いてるんだなぁ……」 淡「…………あんまり………見ないでよ…」 京太郎「じゃあ淡!ここ座って!!」ポンポン 淡「え………?ってそこ私のベッドじゃん!!」 京太郎「まぁまぁ」 淡「……………はいっ!これでいい?」スッ 京太郎「…………あわい……」グイッ 淡「きゃぁ!」ボスンッ 京太郎「……………」 淡「きょ、キョータロー……?」 京太郎「……………」スッ ペロッ 淡「ひゃぁ///きょ、キョータロー!なにやって……!」 京太郎「…………」ペロペロ 淡「ひにゃぁ///そ、首っ舐めちゃらめ………んっ!」 京太郎「はぁ…はぁ……あわいぃ……」モゾモゾ 淡「や、やめて……お願い……グスッ…」 京太郎「うぉおおおおぉぉ!!」ガバッ 淡「うっ……グスン……うぅ………恐いよぉキョータロー……やだよぉ……」ポロポロ 京太郎「……っ!」ピタッ 淡「ぐすっ……キョータローは…優しくないけど…優しくて…」 淡「頼りにならないけど…頼りになって……」 淡「かっこよくないけど………かっこよくて………ぐすん…」 淡「こんなキョータロー………やだよぉ……」ポロポロ 京太郎「…………あ、あわい………」 京太郎(しまった!泣かせてしまった……!お、俺はどうすれば……) 京太郎(そうだ!こんなときはお菓子を……!)ゴソゴソ 京太郎「淡……ごめんな………俺どうにかしてたよ……お菓子食うか?」スッ 淡「……グスン………うん……」ガサガサ 京太郎「これ一昨日出たばっかりの新作のチョコみたいだぞ!」 淡「……………」モグモグ 京太郎「どうだ……?」 淡「………美味しい……」モグモグ 京太郎「そ、そうか…!よかった!」 淡「……………」モグモグ 京太郎「……………」 淡「………ねぇキョータロー……」 京太郎「お、おう、なんだ……?」 淡「………どうして……こんなことしたの……?」 京太郎「そ、それは……だな………」 京太郎「愛し照」 淡「………え?」 京太郎「お前が好きなんだ……それでこんなことを……」 淡「……え?………なにいって…」 京太郎「愛してるぞ……淡……」 淡「……っ!///」 京太郎「でもホントごめんな怖い思いさせて………もうしないk 淡「わたしも!」 京太郎「……………?」 淡「わたしも……キョータローのこと好き……だもん……」 淡「さっきはちょっと怖かったから……でも京太郎に………その………されるの別に嫌じゃないよ……?」 京太郎「あ、あわい……」 淡「だから…………その………」モジモジ 淡「続き………してもいいよ……?///」 菫「たく……須賀のやつ遅すぎるだろ……淡もかえって来ないし………亦野は行方不明らしいし………」プルルル 菫「…あ、照か?須賀はまだそこにいるn……え?まだ来てない?」 菫「何を考えてるんだあいつら………!」ワナワナ 尭深「…………」ズズズ 淡「きょうたろー………」ギュ 須賀「淡………」ギュ 完
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高校受験で白糸台高校に入学した京ちゃん。 入学式当日に偶然宮永照と出会い、麻雀を通してチーム虎姫のメンバー達と交流を深めていく正統派物。 一周目はあわあわ√で終了、2周目に突入するも 1の都合もあり未完となった。 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART2【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART3【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART4【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART5【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART6【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART7【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART8【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART9【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART10【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART11【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART12【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART13【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART14【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART15【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART16【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART17【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART18【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART19【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART20【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART21【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART22【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART23【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART24【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART25【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART26【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART27【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART28【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART29【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART30【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART31【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART32【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART33【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART34【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART35【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART36【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART37【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART38【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART39【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART40【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART41【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART42【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PATEもといPART43【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART44【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART45【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART46【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART47【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART48【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART49【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART50【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART51【安価】 【咲】京太郎「いざ、白糸台高校へ」PART52【安価】 +参考URL 参考URL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345038355/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345471172/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345735548/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1345974728/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346077038/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346231053/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346312030/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346432141/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346591604/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346751675/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346846417/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347032260/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347190878/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347365242/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347464819/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347541518/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347637658/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347780380/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347887366/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348018657/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348060087/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348326160/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348621345/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348935129/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349249081/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349715045/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349882684/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350235606/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350669983/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351434494/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351650418/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351780835/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351878387/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351963496/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352093611/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352215551/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352352027/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352909006/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353608292/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353867294/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354186128/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354435266/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354647472/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354726002/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354982538/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1355241739/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1355584636/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1355763765/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1356027145/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360434927/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361277872/ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361545726/
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それは、今よりもずっと、昔のお話。 「先生」 「ん? 何か分からないところがあったか?」 とある伝手で受ける事になった家庭教師の仕事の途中。 教え子の少女が、握っていたシャープペンをパタリと倒した。 今まで淀みなく進んでいた問題を解く手が止まったということは、何かの壁に突き当たったのだろうか。 「英語を学ぶ意味が、わかりません」 「あ゛ー……」 少し捻くれた子どもなら誰もが考えること、京太郎にも覚えがある。 その疑問を家庭教師の自分にぶつけられても困るのだが、仮にも先生という立場なのだから、答えてあげる必要がある。 「まぁ、確かに今の段階じゃそうかもしれないけどさ。ある程度喋れるってだけで大分便利だぜ?」 「……例えば?」 「旅行に行った時もそうだし、仕事の幅も広がる。俺も将来、使うことになるから勉強中だし」 「先生が海外に……仕事ですか?」 「おう。プロになったら必要な場面は増えるしな」 「……」 京太郎の言葉を受けた少女は、シャープペンの先に付いた消しゴムを顎に当てて考え込む。 納得してくれただろうか。 まぁ、納得できなかったとしても、問題は進めてもらわなければならないのだが。 「……先生、例文のここなんだけど」 「お、ハイハイ。そこは関係代名詞が――」 それから室内に、シャープペンの進む音が響く。 外では蝉が鳴き始める季節だが、今の二人には無縁なことだった。 京太郎も忘れていた昔のお話。 覚えている人がいるとすれば、それは―― ――次は白糸台、白糸台―― 「……はっ」 電車内のアナウンスで目が覚める。 危うく通勤中に寝過ごすところだった。 もう大人なのだから、流石にこんな理由での遅刻は許されない。 「……にしても」 本当に、懐かしい夢を見た。今まで忘れていた昔の記憶。 教師という立場のせいだろうか。 あの子は、元気にやっているのかな。 ◆ 「グッモーニン、きちくティーチャー!」 開口一番、登校するなりそんな言葉を浴びせてきた教え子に、京太郎は額を押さえた。 「……なーにが鬼畜だ、なにが」 「私を散々にイジめたクセに」 「……」 まぁ、確かに。 天狗気味で、相手を侮るフシのあった彼女の鼻を折る意味で色々やったけど。 こんな誤解を招くような言われ方をする覚えは無い。 「……大星、一つ訂正させてく」 「まー、それはそうとして、今日という今日は――」 京太郎の言葉を遮って、淡が放った言葉は―― 淡直下判定 1~30 ギャフンと言わせてやるっ 31~60 100倍にして返すっ 61~98 デートに付き合ってもらうんだからっ ゾロ目 ??? ギャフンと言わせてやるっ 「ギャフンと言わせてやるっ」 目力を込めて京太郎を見詰める淡。 リベンジに燃える瞳からは強い意思が伝わってくる。 「ほー、それは楽しみなことで」 「ふっふっふ、もう作戦だって考えてるんだからね」 「なんと」 以前の彼女なら考えられなかった言葉に驚く。 ミーティング等で相手の情報を研究しても、それらを無視して真っ正面から支配して勝つのが彼女の麻雀だったのだが。 「……ま、それじゃ後でたっぷりと拝ませて貰うわ」 「別に今でもいいよ?」 「お前は授業があるし、俺は仕事があるだろ? それじゃな」 と、淡に背を向けて職員室へと歩き出す――が。 「……」 「? 入んないの?」 何故か、職員室の入口までピッタリと、淡が後を付けて来た。 「……お前、何でいんの?」 「まずは敵をよく見て知ることって、菫先輩が言ってたから」 「……」 「じーっ」 左に一歩ズレてみる。 淡の視線が追いかけて来る。 「じーっ」 右に一歩ズレてみる。 淡の視線が追いかけて来る。 「じーっ」 グルりと、淡の周りを回ってみる。 淡の視線が追いかけて来て―― 「ふぁ……」 目を回す。 「うしっ」 ガッツポーズを取り、この隙に職員室へと入る。 これが作戦というものだよ淡――と、京太郎は意味もなくしたり顔を晒した。 だが、そうは問屋が卸さない。 直ぐに再起動した淡が職員室に飛び込んで来る。 「甘いよ先生! この前とは違うんだからね!」 面倒くさい。 京太郎は、思わず溜息を吐きたくなった。 「あのなぁ……ん?」 追い返す為の方便を言う前に、淡の背後から白い腕が伸びて。 「どったのせんせー?……っ!?」 そのまま万力の如き力で、淡の両頬を引き千切らんばかりの勢いで引っ張り出した。 「いっひゃあぁあっ!?」 「淡――」 淡の背後から現れた、彼女の第一声は―― テルー判定直下 1~30 頭は冷えた? 31~60 先生が困ってるから 61~98 京ちゃ――コホン、先生が困ってるでしょ? ゾロ目 ??? 頭は冷えた? 「頭は冷えた?」 「うう……いっひぁ……」 涙目で頬を摩る淡にも、照は容赦がない。 微かな怒気を瞳に宿して睨み付けている。 その様子が、『彼女』を想起させて―― (……いや、ねえよ) 即座に浮かんで来たイメージを掻き消す。 彼女と照では性格も容姿も、何もかもが違い過ぎる。 「ふう、先生……これ、さっきすれ違った先生が渡して下さいと」 溜息を吐いた照が鞄からプリントを取り出し、京太郎に差し出す。 「ああ、ありがとな、宮永」 照からプリントを受け取り、内容を確認するとファイルに仕舞う。 その様子を見届けると、照は涙目の首根っこを掴んで職員室を後にした。 「それでは、また部活で」 「お、覚えてろー!!」 「……もう少し、頭冷やそうか」 「ひっ!?」 京太郎は、苦笑しながら手を振って二人を見送った。 ◆ 白糸台は麻雀の強豪校であると同時に進学校だ。 例え部活で活躍していたとしても、それなりに高い学力も必要となる。 そして京太郎も、その事で生徒からの相談を受けることがよくあるのだが。 「なぁ、ちゃんとした先生に聞いた方がいいんじゃないか?」 英語のテキストを抱えて、職員室の自分を訪れて来た照。 家庭教師の経験もあり、教えられない事はないが、所詮自分は非常勤。 分かりやすさで言えば本職には遠く及ばないだろう。 「……」 それに対する、照の返事は―― 照判定直下 1~30 先生がお休みだったので 31~60 私には、須賀先生の方が分かりやすいので 61~98 先生の方が、好きなので ゾロ目 ??? 先生の方が、好きなので 「先生の方が、好きなので」 臆面もなく真っ向から瞳を見詰められ、言葉を失う。 つい、いつもより速いペースで瞬きを繰り返すが、目の前の照が目線を逸らす事はない。 京太郎は一つ咳払いをして冷静になると、引き出しからペンとルーズリーフを取り出す。 「よし、わかった……それで、どこがわからないんだ?」 その言葉の通りに受け取っては恥をかく。 英語の教師の教え方よりは、自分の教え方の方が照には合っているということなのだろう。 一人で納得すると、京太郎は照にテキストを開くように促した。 「ここなんですけど……」 「ふむふむ……」 京太郎の言葉を聞き漏らさないようにしながらも、照の目線が京太郎から外れることはなかった。 ◆ 京太郎に礼を言って職員室から出た照の足の歩みは速い。 らしくもなく、胸の鼓動が高鳴る。 教えてもらう最中に触れ合った手の温かさが忘れられない。 「京ちゃん」 小さく、呟く。 「京ちゃん」 ただ、それだけで。 「京ちゃん」 ほんのちょっぴり、幸せな気持ちになれた。 ◆ 「じーっ……」 「ふむ……」 放課後。 部活も終わり、廊下を歩いていたら視線を感じたので、立ち止まって振り向く。 「ささっ」 角にチラリと金色の影が見えたが、それ以外は何もない。 「気のせいか……」 一人頷いて、再び歩き出す。 「じーっ……」 「ふむ……」 すると、またもや似たような視線を感じたので、立ち止まって振り向く。 「ささっ」 近くの教室に飛び込む金色の影が見えたが、それ以外は何もない。 「気のせいか」 「ささっ」 一人頷いて、再び歩き出す――ように見せかけて思いっ切り振り向く。 「大星ィっ!」 「あ!」 淡判定直下 1~30 ずっこい! 31~60 く、流石だね! 61~98 すごい、先生には全部お見通しなんだ……! ゾロ目 ??? ずっこい! 「ずっこい!」 「そりゃお前、バレバレだし」 本人は完璧な尾行のつもりだったのかもしれないが、アレで気が付かないのは相当だ。 「早く帰れよー? もうすぐ日も暮れるし」 「うー……先生の強さの秘密を解き明かすまでは……」 少なくとも、あんなバレバレの尾行で渡せる情報は何もない。 が、それを口で説明してこの場は帰らせても、淡は同じことを繰り返すだろう。 となると、京太郎の取る手は一つ。 「えーっと……宮永の携帯の番号は」 「さよなら先生また明日!」 荒療治である。 ◆ 「悪いな、宮永」 「いえ、好きでやってますから」 各校の情報を集めた資料の束を抱えて廊下を歩く京太郎と照。 かなりの量ではあるが、成人男性からすれば持ち切れない量ではない。 だと言うのに、照は『一緒に分けて運ぶ』と言って聞かなかった。 『先輩に、そんなことをやらせるわけには行きませんし……。それに、私が好きでやることですから』 その行動が、やっぱり『彼女』を思い出させて。 似ても似つかないのに、隣の照と記憶の中の彼女を比べてしまう。 「……」 照判定直下 1~30 ……。 31~60 先生、大丈夫ですか? 61~98 これからも、よろしくお願いします ゾロ目 ??? 「……」 隣を歩く京太郎が何を考えているのか、そこまでは分からないが。 遠くを見るその瞳に、自分が写っていないことは確かだ。 「……」 ――気に入らない。 自分と京太郎は、生徒と先生だから。 ――気に入らない。 いつまでも一緒にいることはできないのに。 ――気に入らない。 その人は、側にいないにも関わらず。 ――気に入らない。 ずっと、京太郎の心の中にいる。 ――気に入らない。 「先生」 「あ、ん?」 自分に出来ることは、精々。 「これからも、よろしくお願いしますね。ずっと」 「あ、あぁ……」 こうして、京太郎の気持ちを引き寄せることだけなのに。 いくら麻雀が強くても、京太郎は振り向いてくれない。 それが何よりも、歯痒かった。 ――本当、に? ◆ 「ずっこい!」 ベッドの上で淡は部活での風景を思い出し、ジタバタと手足を暴れさせる。 どう見ても京太郎はヘーボンな男だ。それなのに、あんなに麻雀が強いなんて。 ずるい。それしか言えない。 「ホントずっこい!」 尊敬する先輩も、最近は京太郎にベッタリだ。 ずるい。尊敬する先輩まで独占している。 ずるい。一緒にいるのが羨ましい。 ずるい。私は頑張っても先生の側にいれないのに―― 「……あれ?」 ……私は、誰の文句を言ってたんだっけ? ◆ 自分が憧れたプロとの、二人っきりでの牌譜整理。 いや、正確には元プロだが――そんな些細なことは、菫にはどうでも良かった。 幼い頃にビデオで見て憧れた雀士が隣にいる。 その事実が重要であり、嬉しいのだ。 「弘世、何か良いことでもあったのか?」 「え?」 「珍しいと思って。鼻歌とかさ」 SSS判定直下 1~30 あ、いえ!? すいません! 31~60 ええ、とても。良いことが 61~98 今が正に、そうなんです ゾロ目 ??? ええ、とても。良いことが 「ええ、とても。良いことが」 「ほお」 恐らくは無意識で口遊んでいたのだろう。 京太郎に指摘されるまで気が付かなかったが、悪い気はしない。 他の部員に見られていたら恥ずかしいけれど、ここにいるのは菫と京太郎の二人だけなのだから。 「~♪」 「相変わらず良い声してるなぁ……」 強豪校、王者白糸台。 その部長と指導者がいる部屋は、とても和やかで。 世間一般で持たれているイメージとは真逆のものだった。 ◆ 「……おい」 「えへっ」 朝、京太郎が職員室の自分の机に座ろうとしたら。 机の下のスペースで体育座りをしている淡と、目が合った。 「私、考えたんだ!」 「……なにを?」 「先生ってば、私のストーキング術を尽く見破ってくるから――こうして待ち構えてればいいんだって!」 「……」 無言で額を抑える。 「ふっふっふ、どーだ参ったか!」 「……ああそうだな、参ったよ」 「ふふん!」 「だから、ちょっと違うところで仕事してくるわ」 「へ?」 机の上から必要な物を整理して鞄に入れる。 そのまま部室の鍵を取ると、職員室を後にした。 「へ? え?」 ポツンと一人、机の下に残された淡は―― 淡判定直下 1~30 あ! 待てー! 31~60 ……ほーちプレイってやつ? 61~98 あ、そうなんだ ゾロ目 ??? あ、そうなんだ 「あ、そうなんだ」 「私が、こんなに先生のこと見てるのに」 「先生は、私のこと、見ないんだ」 「……ま、いいか」 「それなら、先生が私のこと見てくれるまで」 「ずーっと、追い続けてやるんだから」 「見てくれるまで」 「ずーっと、ずっと」 「テルーにもジャマさせない」 「せんせーの側は、私のテリトリーだもん」 「……あはっ♪」 「なんだか、楽しくなってきたかも」 「待っててね、せんせー」 「今、行くから」 ◆ 「待てー!」 京太郎の後を追って部室に飛び込んで来た淡が目にしたものは、PCを立ち上げてネット麻雀の準備をする京太郎の姿だった。 「おう、来たか。思ったよりちょっと遅かったな」 「へ?」 思わぬ言葉に淡の目が点になる。 「強さの秘密、知りたいんだろ? 座れよ」 「う、うん……」 促されるままにPCの前の椅子に座る。背後の京太郎が手を伸ばし、マウスの操作をする。 何となく、胸がドキドキする。 「……つってもまぁ、今はそんな大それたことはしないんだけどな。流石にこの時間帯だと人いないし」 「えっと……」 「指導だよ。部活でも満足できないってなら、放課後の空いた時間にでも、家に帰った後にでも、このサイトで相手してやるから」 「……」 「まぁ、やる気がないのなら別に――」 「やる! 絶対やる!」 「ん。じゃあ朝のHRまで時間あるし、ちょっとだけやるぞー」 ◆ 心地良い時間だ。ネット麻雀なんてつまらないって思ってたのに。 先生と二人だとマウスのクリック音ですら気持ち良い。 画面の中の状況は理想とは程遠いけれど、心の中はとても晴れやかで。 このままずっと、ここにいてもいいかも。 「…… 鍵、空いてる?」 「あ、おはようございます、先生……と、淡」 部室の戸を開けて入って来たのは、チーム虎姫の副将、亦野誠子だった。 京太郎はともかく、淡までいるとは思っていなかったようで、少しだけ驚いた顔をしている。 「おう、おはよう。早いな」 「いやー、ちょっと早く起きすぎちゃって」 「成る程、こっちは朝練中みたいなもんだけど……亦野もやるか?」 「いいんですか? それなら是非とも」 「……」 淡判定直下 1~60 先輩、空気読んでよー 61~98 ざわざわする。 ゾロ目 ??? 亦野誠子判定直下 1~30 ありがとうございました! 31~60 いやー、忘れ物して良かったかも 61~98 そういや、淡はなんで? ゾロ目 ??? そういや、淡はなんで? 「ありがとうございました!」 「お疲れ様」 朝練を終えて、部室を出た頃にはHR開始5分前を告げる予鈴がなる時間になっていた。 急なことにも関わらず、指導をつけてくれた京太郎に誠子は頭を下げる。 「……今に見ててよね、先生。直ぐに100回泣かせたげるから!」 「そりゃー、楽しみだな。まずその前に、お前はテストの点数に泣きそうだけど」 「うぐっ」 対局の結果は芳しくなかったが、確かに掴めるものはあった。 自信満々に宣言した淡だが、痛いところを疲れて後退る。 誠子は苦笑して、淡と一緒に部室を後にした。 ◆ 「……そういえば」 どうして淡は、こんな朝早くから? 疑問を感じた誠子は隣を歩く淡に目を向ける。 コイツがこんな朝早くからいるとは思わなかったのだが―― 「先輩」 「ん?」 「私、先生のこと、好きだから」 「……は?」 全く脈絡がなく、予想していなかった言葉に固まる。 そんな誠子に構うことなく、淡はさっさと自分のクラスへと歩いて行った。 「……え? マジ?」 何となく、胸のあたりに何かが引っ掛かったような感覚がした。 ◆ 「私は、先生のことが好き」 「……な」 授業の内容で分かりにくい箇所があったため、後ろの席に座る照に確認をしようと振り向いたら、開口一番に言われた言葉。 ポカンと間抜けに口が開き、テキストが滑り落ちる。 「……私は、先生のことが――」 「ああいや、分かった。二度と言わなくていい」 慌てて照の口を塞ぎ、周りを確認する菫。 幸いにも、周りには聞こえていないようだった。 「協力して欲しい。私に」 「そうは言ってもだな……」 照の目は本気だ。 LIKEではなくLOVEの方。 相手は教師で、自分たちは学生。 上手く行く筈がないが、放って置いて失敗しても不味い。 「……ああ、分かった。どうにかしようじゃないか」 「ありがとう、菫」 万が一にも、これがきっかけで照が調子を崩すようなことがあれば。 期待をかけてくれる親にも、OBの先輩方にも、監督にも、そして憧れの人にも、顔が合わせられない。 白糸台の部長という立場の重さを思わぬところで感じて、菫は溜息を吐いた。 「……負けないから」 照の呟きも、自分の中に眠る気持ちにも。 まだ、菫は気付かなかった。 ◆ 「はぁ……」 廊下を歩く菫の足取りは遅い。 気が重いのは、最後の全国に向けて緊張しているから――という訳ではない。 照と淡、チーム虎姫の先鋒と大将。 インターハイでの勝利の為の重要な要。 この二人が、こぞって一人の男性に向けて恋慕の情を向けていること。 そして、その男性が教師――正しくは麻雀の為の特別コーチという立場にあり、恋が叶いそうにないこと。 「どうすればいい……?」 悩んでも答えは出ない。 眉根を寄せたまま、菫は職員室の前を通り掛かり―― 「……もう、大丈夫か? 俺がいなくても」 菫判定直下 1~30 ……え? 31~60 ……そんな 61~98 ……どういうことですか、先生 ゾロ目 ??? どういうことですか、先生 「……どういうことですか、先生」 京太郎が職員室の戸を開けた瞬間に菫に投げかけられた言葉に、京太郎はバツの悪そうな顔をした。 「あー、聞こえたか?」 「はい……盗み聞きをするつもりはなかったのですが」 「ああ……ちょっと、場所を移そう」 「……転勤、ですか」 「すまない……最後まで面倒をみてやれなくて」 「いえ……それは……どこに、なるんですか。次は」 「それは――」 姫松 「姫松高校だ」 「姫松――大阪、ですか」 もしかしたら、転勤先が近くの高校で。 いつでも会いに行けるかもしれない――そんな淡い期待は、直ぐに否定された。 「本当に、すまない」 「いえ……先生のお陰で、私たちは更に強くなりましたから」 姫松高校――全国でもトップクラスの実力校。相手にとって不足はない。 必ず打ち破る。 どちらがこの人の教え子として相応しいのか、見せ付けやる。 「全国で、期待して待っていて下さい。先生に教わったことは無駄にしませんから」 「ああ……楽しみに、してるよ」
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――4月1日、入学式。 桜の花びらが新しい始まりを告げるように舞い散り、白糸台高校も多くの新入生を迎えていた。 そして、京太郎もその内の一人として、片手のプリントの指示通りに自分のクラスに向かっていた。 「ふぁ……」 込み上げてきた欠伸を噛み殺す。 昔からの知り合いは一人もいない環境だが、不安はない。 なんだかんだ言って上手くやっていける自信はある。 ただ一つ、心配があるとすれば。 長野においてきたアイツは、上手くやっているだろうか―― 「京、ちゃん?」 「え?」 直下判定 1~30 やっぱり、京ちゃんだよね? 31~60 久しぶり、だね 61~98 …… ゾロ目 ??? 久しぶり、だね 『京ちゃん』 自分をその名前で呼ぶ女の子は、そう多くはない。 それに、聞き覚えのあるこの声は。 「うん。やっぱり、京ちゃんだ」 振り向けば、クスリと笑う彼女の姿。 見覚えのある特徴的な髪型。 懐かしい記憶が掘り起こされる。 これが間違いでなければ、彼女の名前は―― 「……照さん?」 「久しぶり、だね」 宮永照。 長野に置いてきた幼馴染の、姉だ。 「久しぶりですね」 「京ちゃんも白糸台に来てたんだ」 「はい、色々あって……でも、咲のやつが――」 直後、校内に鳴り響く予鈴。 新学期一番最初のホームルームが間も無く始まることを知らせる音に、京太郎の言葉は遮られた。 「……ほら、京ちゃんも行かないと。新入生がいきなり遅刻だなんて、大変だから」 予鈴に掻き消された為か、今の京太郎の台詞がまるで耳に入らなかったかのように。 照は、一年生の教室の方向を指差して、京太郎に先に行くように促した。 「……それじゃあ、また後で」 その態度は腑に落ちないが、急がなくては遅刻してしまうのもまた事実だ。 納得はいかないものの、京太郎は照に頭を下げて、急ぎ足で自分の教室に向った。 「……」 その後姿を見つめながら、照は自分の胸の内に芽吹きつつあるモノを感じた。 頬が緩み、口角が吊り上がる。 チームメイトにも、マスコミにも見せたことのない、花開くような微笑み。 「京、ちゃん」 ホームルームが始まっても尚、教室に来ない来ない照を怪訝に感じた同級生が迎えに来るまで。 照は、その場に立ち尽くしていた。 ◆ ……あれから、何度問い詰めても。 咲の名前が出る度に、照はまともに答えてくれなくなる。 家族の事情に赤の他人が入るのは野暮だ。 だが、それが分かっていても――京太郎は、照を放っておけなかった。 「……あ、もうこんな時間か」 下校時刻を知らせるチャイムと、暗い空。 白糸台麻雀部の入部テストを辛うじて潜り抜けた京太郎は、新入生の役目である雑用に勤しんでいた。 照を追い掛けて入部したはいいが、麻雀に関してはまるで才能の無い京太郎。 当然ながら、一軍のエースである照と触れ合える機会は無い。 だから、こうして最もヒエラルキーの低いものに与えられる役目をこなしている。 「ハンドボールの経験が麻雀に活かせれば……なーんて、なぁ」 「……ん? 誰か、残っているのか?」 菫判定直下 1~30 1年生か。早く帰りなさい 31~60 君は……照が、話していた? 61~98 何……だと……? ゾロ目 ??? 何……だと……? 今日は顧問の不在やメンバーの欠席等、様々な要因が重なって部活動自体は早めに終わった筈。 菫自身、図書室で自習を済ませた後で忘れ物に気が付かなければこうして部室に来ることもなかった。 だと言うのに、部室に灯りが点いている。誰かが居残りをしているようだ。 「感心なことだが……ふむ」 部室からは殆ど音が聞こえてこない。 麻雀をしているわけではないのだろう。 部内のPCでネット麻雀をしているのかもしれないが、その話は聞いていない。 既に下校時刻を知らせるチャイムは鳴っている。 伝統ある白糸台の部長として、この状況を見過ごすわけにはいかない。 意を決して、菫は部室の戸を開き―― 「何……だと……?」 ――心を、弓矢で撃ち抜かれた。 蛍光灯の灯りを受けて煌めく金髪。目を離せない。 高い身長と引き締まった体躯。あの腕に抱き締められたい。 「あ、部長?」 そして聞き心地の良い声。もしこの口から、愛の囁きを聞くことが出来たのなら―― 「あの、どうしました?」 「はっ!?」 気が付けば目の前に彼の顔。 脳内で彼と結ばれる瞬間まで想像していた菫は、一気に現実まで引き戻されて後退った。 「ん、ゴホン! 今日の部活動はもう終わった筈だが?」 「え? でも、一番下手なヤツが最後まで残って雑用をするものだって、先輩が」 「……ほう?」 自分の鬱憤を新入生で晴らすような屑。 しかもそれを、よりによって彼に押し付ける輩がいるらしい。 「……私は3年間この部にいるが、そんな話は始めて聞いたな」 「え」 「ふむ、わかった。次からはそのような話が出たら必ず私の元にまで来るように。分かったな?」 「は、はぁ……はい」 素直に頷く彼に、菫は満足して腕を組む。 そうだ、それでいい。 お前は、私のことだけを見ていればいい―― 「だが、気に入った」 「はい?」 「投げ出さずに最後までやり抜くのは立派じゃないか、うん」 「まぁ……そんな、大したもんじゃないっつーか」 「謙遜しなくてもいい。それはきっと、いつか君の為になることだからな」 菫はいったん京太郎から視線を外すと、部室の机に置き忘れていた携帯を手に取った。 「アドレスを交換しないか?」 「え!?」 「同じことがあったらすぐに私に連絡してくれ。顧問の先生にも伝えよう」 「あ、ああ。そういうことでしたら……」 彼もポケットから携帯を取り出し、菫とアドレスを交換する。 須賀京太郎――赤外線通信で送られて来たプロフィールを見て漸く、菫は彼の名前を聞いていないことに気が付いた。 ――そうか、彼が『京ちゃん』か。 チームメイトがしきりに口にしていた名前。 あの照が気にかけるのだから相当な人物なのだろうと予想していたが、確かに彼ならば頷ける。 ――だが、悪いな照。彼は、私のものだ。 ――お前には、勿体無い相手だ。 菫はそっと、カバンのポケットに携帯をしまった。 ◆ ――ありがとう、君のおかげで不当な扱いを受ける下級生がいなくなった ――コレが私のネット麻雀のIDだ。暇があったら打とう。指導してやる ――なに、遠慮することはない ――で、君は大体どの時間帯が空いている? ――ふむ、なるほど。ところで、君の好きな食べ物を教えてくれないか? ――ふむ、好きな映画は? 本は読むか? ――もし良かったら、私の―― 「……これ、途中から部活関係ないような」 この後も何十通と続くメールのやり取り。 お陰で少し寝不足だ。 携帯を閉じて、京太郎は溜息を吐いた。 「……ん?」 爪先が軽く、何かを蹴飛ばした。 陽の光を受けてキラリと光るソレを拾い上げてみると―― 「これは……ルアー、だっけ?」 釣りに疑似餌として使う道具。 何故かそれが、廊下に落ちていた。 摘み上げて見てみる。 プラスチック製の魚。銀色に光る針が付いている。 うん、どう見てもルアーだ。 「何故に……?」 まさかこんなところでフィッシング、なんて洒落込む人はいないだろう。 そして白糸台には釣り部なんてものは存在しないし、余計に疑問は深まる。 「あ、それは!」 京太郎がルアーを摘み上げて突っ立っていると、廊下に元気の良い女子の声が響いた。 振り返ると―― 亦野先輩判定 1~30 ごめん、多分ソレ私の! 31~60 ありがとう、君が拾ってくれたのか 61~98 ……大物が釣れた、か ゾロ目 ??? ありがとう、君が拾ってくれたのか 「ありがとう、君が拾ってくれたのか」 女子にしては短い髪。 運動系の部活に所属していそうな印象を受ける容姿だが――確か、彼女も。 「亦野先輩」 「お? どこかで会ったっけ?」 白糸台麻雀部の、一軍だった筈だ。 「いえ、俺も麻雀部なんで」 「あー、成る程! じゃあ私の可愛い後輩ってところか」 ハキハキと元気の良い声。 白糸台の女子では始めて話すタイプの人だ。 「まぁ、何にせよ助かったよ。この前、友達と一緒に釣りに行ったんだけどさ、学校で待ち合わせたのはいいけど、ソレをどっかで失くしちゃってたんだ」 「あー、道理で」 こんな場所にこんな物が落ちているわけだと、京太郎は納得した。 「やっとスッキリした。ありがとな」 「どういたしまして」 ルアーを受け取って去って行く誠子の後姿を見送り、京太郎も自分のクラスに戻った。 ◆ 「須賀くーん、お茶淹れてよー」 「ハイハイ」 同級生にせがまれて給湯室へ。 初めは雑用の一環としてやっていたことだが、何度も繰り返しているうちに楽しくなってきた。 今では自腹で用意したものをこっそり棚に置いていたりする。 さて、今日はどのお茶を―― 「……」 尭深判定直下 1~30 ……。 31~60 それ、違う 61~98 ……ちょっと、見てて ゾロ目 ??? ……。 「……」 「あの、先輩?」 「……」 京太郎の問いかけに、尭深は答えない。 ただ無言で、京太郎から奪い取ったポットと茶葉を使い、本来なら京太郎が淹れる予定だったお茶を淹れている。 「……お茶にも、ちゃんとした淹れ方があるから」 「へ?」 手際良く作業を進めながら、尭深が口を開く。 「自分で買ってくるくらいなら、もっとしっかりやったほうが良いと思う」 「バレてましたか……」 中々に上達してきたと思っていたが、尭深からすればまだまだなようだ。 尭深の淹れたお茶は、京太郎が自画自賛するものよりも、ずっと美味しかった。 同じ茶葉なのにここまで味が違うのか――と、京太郎は自分の未熟を思い知らされた。 「……」 そんな京太郎を眼鏡を通して見つめながら、尭深はマイペースにお茶を啜った。 ◆ 「じーっ……」 春の陽気に耐え切れず、転寝していた京太郎が目覚めて一番最初に目にしたものは、自分を見詰める緑の瞳だった。 「……」 「じーっ……」 距離が近い。 少し動けば鼻先が触れ合うだろう。 「……」 「じーっ……」 それでも京太郎が何も言わなかったのは、未だ頭が覚醒しきっていなかったからだ。 そんな京太郎に対して、この緑の瞳の持ち主は―― 淡判定直下 1~30 フツーだ! 31~60 金髪だ! 61~98 イケメンだ! ゾロ目 ??? 金髪だ! 「金髪だ!」 「……まあ、うん」 何言ってんだコイツ。 それが、京太郎のこの女子に対する第一印象だった。 「うーん、テルが気にするヤツっていうから見てたけど……」 「……」 「うん! 金髪だ!」 それはあんなに詰め寄って見なくても気が付くだろうと突っ込みたくなったが、今の京太郎の中ではそれよりも寝起きの気怠さが優先された。 「まー、しょーがないかー。私と同じ金髪とあらばテルーもほっとけないよね!」 「……」 腕を組みウンウン頷く金髪女子。 「あ、コイツアホだ」と、寝起きで頭が上手く回らない京太郎でも、それだけは強く感じた。 「よし!」 「へ?」 手首を強く握られる。 「打つぞー! どっちが真の金髪かを賭けて勝負だ!」 「はぁ!?」 拒む暇もなく、京太郎は金髪の女子に連れられて教室を出て行った。 「弱い!」 「うぐぐぐ……」 真っ白に燃え尽きて卓に突っ伏す京太郎と、腕を組んで勝ち誇る淡。 同じ金髪同士でも、二人の様子は対照的だった。 「うーん、あっさり勝っちゃったけど……テルーはこんなヤツのどこがいいんだろ?」 「知りたい?」 「あ、テルー! 私勝ったよ!」 「知ってる。見てたから」 「テル……?」 照の様子が少し変だ。 マスコミに向けたものとも、身内に向けたものとも違う、完全なる無表情。 少なくとも淡は、照のこのような顔を見たことは一度も無い。 「淡、打とうか」 「へ? 良いけど」 「……」 「え? 何か言った?」 「別に」 ――数時間後、真っ白に燃え尽きた金髪頭が仲良く二つ並んだそうな。 ◆ 「京ちゃん」 「なんです?」 「読んでみただけ」 「……」 「な、なぁ須賀くん。君の好みはどれだ?」 「……あの、麻雀の指導では?」 「ああ、君の趣味嗜好を知ることでスムーズに教える事ができるんだ」 「マジかよ……」 「今度、釣りに行かないか? 道具一式は貸すからさ」 「マジすか! 行きます行きます!」 「はは、頼むから釣りの時はもうちょっと抑え目にな」 「紅茶も緑茶もちゃんとした淹れ方があって、ちゃんとした考えがあるの……」 「へぇー」 「須賀くんも、やってみて」 「はい!」 「きょーたろー!! 勝負しろー!」 「おわっ!? 引っ付くな鬱陶しい!」 「なんだとー!!」 「……」 こうして京太郎は、チーム虎姫の5人と出会った。 勢いに任せて始めた麻雀だが、この5人のお陰で何だかんだと上手くやっている。 ――だが。 「……」 京太郎は、気が付かない。 自分の周りの変化に。 自分の周りの女子が、自分のことを、どう考えているのか。 自分のことで手一杯な今の京太郎に、気付く余裕は、ない。 【白糸台出会い編 了】
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白糸台高校麻雀部一軍。 通称、チーム虎姫。 彼女たちが普段、どのような活動を行っているのか。 それを知りたがる者は、麻雀関係以外にも大勢いる―― 「照、これはどういうことだ?」 「ん?」 菫が乱暴にテーブルに放り投げた雑誌。 開かれたページには、営業スマイルを浮かべる照の姿。 それだけならばいつもと大差がない。 今回、菫が問題視しているのはそのトーク内容にあった。 「金髪の彼氏のために頑張ります――だなんて、ついに頭がおかしくなったらしいな。私のために頑張るマネージャー、か。泣かせるじゃないか、笑い死ぬかと思ったぞ」 「なにがおかしいの? 事実だけど」 「はは、お前もそんな冗談を言えたんだな。驚きだ」 「……」 話が通じない。 そう感じた照は、菫を無視してポッキーに噛り付く。 「わかっているんだろう? 本当は、自分が彼に相応しくないと」 咥えたポッキーが、真ん中で砕けた。 「菫」 「ん? なんだ?」 「撤回して」 「意味がわからないな」 相変わらずの無表情だが、照の口調には確かな怒気が含まれていた。 雑誌に写る彼女しか知らない者には、到底想像出来ないだろう。 「なにがおかしい? 事実じゃないか」 さっきの意趣返し。 肩を竦め、照を挑発する菫。 「こんな風にメディアを使って、外堀を埋めるだなんてやり方をするなんて」 「……それは、私の京ちゃんに勘違いして近付く奴が多いから」 「私の、か。彼の好みとは随分と遠い位置にいる、お前が?」 「っ!!」 照のスタイルは、決して悪いものではない。 彼女のスレンダーな肉体は均整が取れていて、可愛らしいと言うよりも美しいと言った方が近い。 だが、話題の渦中の少年。 須賀京太郎の好みは。 「部活でも廊下ですれ違った時も。彼の視線は私に向いていることの方が多いようだが?」 「……」 「結局、自分に自信が無いんだろう? だから、こんな姑息な手を使う」 「……それは、菫が部長だからでしょ」 「ほう?」 「京ちゃんは優しいし、菫は部長の立場があるから。だから、菫を拒めない」 「……」 「可哀想な京ちゃん。こんな人が、部長だなんて」 「……照」 「……菫」 遠くで、何かが落ちた音がした。 亦野誠子。 チーム虎姫副将。 ボーイッシュな髪型で、活動的な性格の彼女は男女問わず人気が高い。 趣味が釣りというのは女子にしては珍しいが、そこもまた人気の一つとなっている。 後輩の面倒見も良く、相談を受けることも多い。 京太郎もまた、彼女とよく話をするが―― 「それってつまり、女として見られてないってことだよね」 「あ?」 自前の緑茶を啜りながら、渋谷尭深はそう言った。 ショートボブヘアーで眼鏡をかけた小柄な少女。 チーム虎姫の中では、胸が一番大きいことも密かな自慢。 料理も得意で、以前京太郎が話していた「家庭的な女性がタイプ」という条件に、一番合致している自信がある。 「ほら、そういうところ。ガサツだもん」 「あのなぁ……変に先輩ぶったりメーワクかけたりするよりはずっとマシでしょ、その方が」 「須賀くんのタイプではないけど」 「変に媚びを売るよりはいいさ。その方が須賀も話しやすいだろ……それに」 「須賀がお前を迷惑に思ってるって、気が付いてるか?」 「……え?」 「やっぱりか。媚びばっか売って相手をみないからそーなるんじゃないかな」 「どういう、こと」 「気が付かないか? お茶を淹れてもらう度に固まってるよ、あいつ。何か盛られてるんじゃないかって不安らしい」 「……何それ、結局ただの妄想じゃない」 「はは、お前よりはマシかな」 「須賀くんのタイプからかけ離れてるからって」 「その割には、あいつと一緒に遊んだこともないじゃないか」 「……それは」 「結局、自分の中で満足してるだけで相手のことは何も考えてないんだな。そんなヤツが須賀のタイプ? その眼鏡、新調した方が良いよ」 「……許さない」 「私はずっと前からそう思ってたよ」 遠くで、何かが落ちた音がした。 須賀京太郎には悩みがあった。 自分が所属する麻雀部でのことだ。 数年前に共学化した白糸台高校だが、当然のことながら麻雀部は女子の方が圧倒的に強い。 そんな中で自分がチーム虎姫のエースたちと関わりを持てているのは、以前から照と知り合いだったことが大きい。 勿論その立場に甘えるつもりはない。 マネージャーとして雑用係を積極的に引き受け、空いた時間で実力を上げるための努力もしている。 先輩たちも積極的に協力してくれる。 だが、やはり。 そんな彼を、妬む者もいる。 照は弱味を握られているのだ、とか。 顧問に媚を売っている、だとか。 根も葉もない噂を流すヤツがいた。 菫は男女部員全員の前でそのことを否定したし、照も噂の出処を潰した。 尭深は悩む京太郎にお茶を淹れてくれたし、誠子は相談に乗ってくれた。 先輩たちの心遣いを嬉しく思うと同時に――そんな尊敬する先輩たちの顔に泥を塗った自分が情けない。 「俺のせいで、先輩たちの練習量が減っている」 王者白糸台。 その威光に、自分は傷を付けたのではないか。 そんな悩みを、抱えていた。 「辞めよう、かな……」 せめて、今年のインターハイで彼女たちが優勝するのをこの目で見てから。 来年に入部してくる新入生にもこの噂は引き継がれるだろう。 その時には菫も照も、もういない。 二人の先輩に、負担が集まる。 そうなる前に、自分から―― 「きょーたろー!!」 「おわっ!?」 沈みかけた思考を吹き飛ばすような。 相手に対する配慮など全く無い衝撃を背中に感じて、京太郎は躓いた。 首に回される腕。 ガッチリと腰回りをホールドする足。 背中にへばり付いた彼女は簡単には剥がれないだろう。 ゲームにこんな感じの雑魚敵がいたなぁ――と、実に失礼な思考を浮かべ京太郎は溜息を吐いた。 「むー! 反応薄いぞー!」 「慣れたんだよ、もう」 「私とのことは遊びだったのか!」 「変なこと言うな!?」 大星淡。 チーム虎姫大将。 自分と同じ、白糸台の1年生だ。 「ま、いいや。ねーねーカラオケいこーよこの後!」 「お前、今日はミーティングあるだろうが」 「えー? だってつまんないんだもん」 「オイオイ……」 天才。 同じ1年生でありながら、白糸台の層の厚さを超えて大将の座を勝ち取った彼女には、まさにその言葉が似合う。 「それにさー、きょーたろーめっちゃ暗い顔してんだもん。同じ金髪として情けないぞ!」 「なんだそりゃ」 「だからさー、思いっきり歌お! ぱぱぱーっと!」 「まったく……」 まぁ、コイツはコイツなりに、俺のことを励ましてくれているんだろう。 「よし!」 「お!」 「部活行くか!」 「ええ!?」 悩んでいた自分が、実にバカらしくなった。 「いいだろ別に。練習見てくれよ、同じ金髪として」 「えー? 高校100年生の壁は厚いよ?」 「なんだそりゃ」 「高校100年生くらいの実力ってこと!」 ――やっぱりコイツ、バカかもしれない。 「ま、いーや。どうしてもって言うなら――」 「どうしても、だ」 「へ?」 「どうしても、頼むぜ。淡」 「……そっか。じゃーしょーがないなー! きょーたろー弱っちいからなー!」 「うっせ」 「えへへ」 近くで何かが、落ちた音がした。 「ん?」 振り向いても、何も無い。 気のせいか。 「どったの?」 「いや、何でもない。部活行こうぜ」 「……ん」 バッカみたい。 淡の呟きは、誰にも聞かれることなく。 風に飲まれて、消えていった。 【プロローグ 了】
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京太郎「それはどういう意味で・・・」 菫「ここからは私が説明しよう。照では言葉が不足し過ぎている」 照「済まない。何せ、男性と話すのに慣れていないもので」 菫「言ってろ。さて、須賀君。続きを話すが・・・。いいね?」 京太郎「アッハイ」 菫「知っての通り、白糸台の麻雀部はインハイで2連覇している。日本最強といってもいい」 京太郎「はい、知ってます」 菫「それだけの麻雀部ともなると、当然部員数も増えてくる」 京太郎「そうですね」 菫「それだけ部員が増えて来ると、当然フラストレーションもたまってくる」 菫「何せ全員がレギュラーになれるわけでもない。腐ってくる部員や、欲求不満になる部員も出てくるだろう」 京太郎「それは困りますね」 菫「だろう?困るんだよ。そういう部員が出て私たちのインハイ3連覇の夢が断たれるのは。ここまではわかるね?」 京太郎「はい」 菫「だから君にはそういった部員の相手をしてもらいたいんだ」 京太郎「何で俺なんかが・・・」 菫「照の妹の咲さんの紹介だ。何でも、君は清澄ではハーレムエースと言われているそうじゃないか」 京太郎「それは、周りが勝手に言ってるだけで、俺にはそんな経験は・・・」 照「だが、女しかいない清澄の麻雀部で唯一の男子部員だったのだろう?」 菫「あそこにはインターミドルで活躍した上埜久・・・。いや、今は竹井久か。彼女をはじめ美少女揃いだ」 淡「何もなかったのかな~?」ニヤニヤ 渋谷「そういう環境で何もなかったっていうのはおかしいと思います」 京太郎「じ、実は・・・」 亦野「な、何かあったんですね!」ゴクリ 京太郎「一年に優希って子がいるんですが・・・」 淡「うんうん!」 京太郎「そ、その子に・・・」 渋谷「やっぱりね。何もない方がおかしいんです」 京太郎「パ、パンツを見せられちゃいました・・・///」 菫「な、何だと!清澄の風紀はどうなっている!?」 照「破廉恥にも程がある!」 京太郎「む、向こうが勝手に見せてきただけで」 淡「それにしても、一年なのにパンツ穿いてるだなんてませてるね~」 渋谷「エロス・・・///」 亦野「宮永先輩!清澄に確認をとったらどうでしょうか!?」 照「あ、ああ、そうだな。咲・・・まさか咲がパンツなんて穿いてるとは思えないが・・・」 菫「安心しろ、照。咲ちゃんは素直ないい子だ。パンツを穿くだなんてふしだらな娘ではないよ」 淡「うじゅじゅ~」 渋谷「それで・・・」 京太郎「はい、何でしょう?」 渋谷「パンツ・・・見せられてどうなったの・・・///」 亦野「まさかそのまま襲ったんじゃ・・・。うわっ、清澄高校乱れすぎですよ」 京太郎「いやいやいや。何もありませんでしたよ」 淡「えっ?じゃあ、パンツ見ただけなの?」 京太郎「ええ、そうなりますね」 淡「はぁ!?何それ!じゃあ、タダで女の子のパンツを見せてもらっただけだっていうの!?」 京太郎「ええ」 亦野「興奮・・・したんですか・・・?い、いや、別に興味があるわけじゃないんだけど・・・///」 京太郎「そうですね・・・。普段はまったく意識していない相手でしたが、パンツですよ?」 菫「ああ」 京太郎「まさかパンツを穿いていて、パンチラどころかモロに見せてきたわけです」 渋谷「大胆・・・///」 京太郎「俺は興味ないそぶりで必死にごまかしてましたけど、実際のとこ・・・」 淡「ワクワク」 京太郎「下半身は素直でした。そりゃもうギンギンです。ええ、もちろん勃起してましたとも」 淡「きゃー!きゃー!」 菫「う、うむ・・・まあそれが健全な男子の反応だろうな・・・///」 渋谷「・・・・・・・・・///」ポッ 亦野「あわわ・・・///」 照「はぁ・・・」 菫「電話終わったか。で、どうだったんだ?」 照「その優希って子、いつもパンツを穿いているというわけではないらしい」 淡「えーっ!?どゆことどゆことー?」 照「どうも、須賀君に見せたその時だけ穿いていたみたいだ」 亦野「えっ・・・」 渋谷「それってもしかして・・・」 菫「いや、だが・・・ありえない話ではないな・・・」 京太郎「何ですか?」 照「おそらくだがそれは・・・」 淡「勝負パンツだね。んん~、刺激的~♪」 京太郎「勝負・・・パンツだと・・・?」 照「女性が男性を欲情させるためにはくパンツ・・・だな・・・///」 京太郎「で、でも、その場には俺だけじゃなく他の人もいたんですよ?何故そんなのを見せたんですか?」 亦野「彼女には意図があったんですよ」 京太郎「意図・・・?」 亦野「そう、いわゆるセックスアピールってやつだね」 京太郎「セックスアピール・・・ゴクリ」 渋谷「つまり彼女は待っているということだね。自分のパンツを見たことによって発情した須賀君が自分を襲ってくれるのを」 京太郎「・・・・・・アイツ」 淡「・・・」 照「・・・」 菫「須賀君」ポン 京太郎「菫さん・・・」 菫「行ってこい」 京太郎「でも・・・!」 菫「君にはまっている人がいる・・・違うか?」 京太郎「・・・・・・・はい」 菫「ならば臆するな!行って!彼女を押し倒し!もう許してくれと彼女が懇願するまで突いて突いて突きまくって!」 菫「彼女の膣内を自分のモノで犯しつくしてこい!!」 京太郎「・・・・・・・・・・・・・・・はい!」 京太郎「菫さんありがとうございました。俺ちょっといってアイツのこと俺の肉棒なしじゃいられない身体にしてきます!」 菫「うむ!」 菫「だがその前に私たち5人の相手が先だぞ?」 京太郎「」 京太郎は精根尽きはてるまで虎姫と交わった カン
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淡「京太郎!部活終わったらちょっと付き合って!」 京太郎「なんだいきなり」 淡「実は東京でKちゃんが限定販売されるって噂があるの。一緒に来てくれない?」 京太郎「ぬいぐるみ買いに男連れてく気かよ……暇だからいいけどさ」 淡「ありがとー!じゃ、後でね!」 淡「遅れてごめん!レギュラーだからミーティングだーって菫先輩がうるさくて」 京太郎「いいって。早く行こうぜ。途中の本屋でちょっと見たいものあるけどいいか?」 淡「じゃ、その前にどっか入らない?ちょうどお菓子切れててさー」 尭深「……淡ちゃんに、京太郎くん?」 京太郎「あ、渋谷先輩」 淡「タカミー、さっきぶり」 尭深「うん。2人は……デート?」 淡「!?」 京太郎「ちょっと買い物行くだけですよ。そんなデートって程じゃ…」 淡「こ、これって京太郎とデートなの!?じゃ、じゃあ今までのも含めたら何回…」顔真っ赤 尭深「……じゃ、デート楽しんで来てね」 京太郎「先輩……行っちまった。デートねぇ。淡」 淡「ひゃ、ひゃいっ!!」 京太郎「何驚いてるんだ?」 淡「な、なんでもないから!で、何?」 京太郎「いや、これってさっき先輩が言ったようにデートなのか?」 淡「あー、そ、そうだねー。京太郎がどうしてもって、言うなら、デートってこと、にしてあげてもいいよ?」 京太郎「いや、そこまでじゃないけど」 淡「……そっか」シュン 京太郎「しかし、今日いつも以上に人が多いな……よし、淡」 淡「何?ひゃっ!」手、握られる 淡「い、いいきなりなんなの!?」 京太郎「こうしないとはぐれそうだからな」 淡「私はテルーじゃないよ!」 京太郎「どの道人多いんだからしばらくこのままでいいだろ。さっさと行こうぜ」 淡「もー……特別に許す!」 京太郎「そりゃ良かった」 淡「うん……じゃ、張り切っていこー!」 京太郎「おい、引っ張るな走ろうとするな!」 その日の淡はいつも以上に機嫌良かったとか
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前話 次話 みさき「こんにちわ、副将戦の実況を務める村吉みさきです。そして解説の」 理沙「……野依理沙!」 みさき「解説の野依プロです」 みさき「さて、今の状況ですが」 1位白糸台1912 2位清澄1282 3位臨海1016 4位阿知賀805 みさき「このように各校が白糸台を追う形となっています」 理沙「……白糸台!!」 みさき「はい、正直先程までとあまり変わらないので割愛させていただきます」 理沙「!?」 和「……少しでも、差を縮められるよう頑張ってきます」 優希「のどちゃん頑張るんだじぇ!!おっぱいだけなら1位だじぇ!!」 まこ「しょーもないこと言いおって……同じこと言うようで悪いが、頑張るんじゃぞ」 久「いつも通り、頼むわよ」 和「……はい」 久「ところで咲と須賀くんは?」 まこ「……いつも通り迷子と迷子探しじゃ」 誠子「汚名返上してきます!」 尭深「うん……頑張って」 淡「亦野せんぱーい!もうハンデいらないからやっちゃってー!!」 誠子「まかせとけ!そんなこと言えなくなるくらいやってくる!!」 菫「全く、お前までアホなことを……」 照「……誠子」 誠子「……はい」 照「準決勝のこと、まだ気にしてる?」 誠子「……はい。私があんなに失点しなければって、何度も思いました」 照「そっか……失点がどうとか、言う人はいるかもしれないけど、私は何も言わない」 照「……副将戦はまかせるよ。誠子らしく、頑張ってね」 誠子「……はい!!」 ダヴァン「では、いってキマス」 智葉「おう、まかせたぞメグ」 明華「ファイトです」 ネリー「一気に逆転ぐらいやっちゃおー!」 灼「……いってくる」 晴絵「灼……」 灼「……私は、優勝してからハルちゃんがプロ目指すって思ってるから」 晴絵「!」 憧「そうね。まだ最後まで分からないし」 穏乃「目指せ優勝!」 晴絵「……頼んだよ、部長!」 灼「……うん!!」 試合会場前廊下 和「この試合次第で……」 咲「の、和ちゃん!」 和「さ、咲さん!?」 京太郎「間に合ったかー!」 和「須賀くんまで!?」 京太郎「いやー、危なかった。また咲が迷子になるもんだから」 咲「それはいいよ!」 和「いや、よくないですよ」 咲「和ちゃんまで言う……」 京太郎「ま、それは後でいい。和、見せてやれよ。インターミドルチャンピオンの、ネット麻雀最強ののどっちの実力を」 咲「和ちゃんなら大丈夫って、私達信じてるから!」 和「咲さん……須賀くん……」 咲「負けないでね!!」 和「はい……はい!勝ってきます!!」 みさき「さて副将戦が始まりましたが、見どころはどこでしょうか?」 理沙「……せ」 みさき「あ、全部と制服以外で」 理沙「……白糸台」 誠子(そうだ……もう準決勝みたいになる訳にはいかない) 誠子(例え誰だろうと、私は勝つ!) 和「……ツモ」 誠子(清澄……) ダヴァン(準決勝より調子よくなってル?) 灼(この人が玄達が会いたがってた……強い) 和(……何故でしょうね。こんなにも偶然が続くなんて) 和(そんなオカルトありえません、と言いたいですけど) 和(今は、勝つ方優先です!) 和「ツモ」 みさき「前半戦終了です!原村選手、前半戦だけで大きく稼ぎました」 みさき「さて、この先どうなると思いますか?」 理沙「……逆転、ありそう!」 みさき「はい、白糸台も、かなり差を詰められてきました」 和「ふぅ……」 京太郎「よう、飲み物持ってきたぜ」 和「須賀くん。わざわざありがとうございます」 京太郎「すごかったな。このまま和が逆転するかと思ったぜ」 和「まだ分かりませんよ。どうなってもおかしくないんですから」 京太郎「そうだよな……」 和「……須賀くん」 京太郎「なんだ?」 和「私が転校したら…」 京太郎「え?」 和「……やっぱりなんでもないです」 和(転校、しなければいいんですから) 京太郎「なんか転校とか聞こえたけど……」 和「そうですね……これは大会が終わってから話ます」 京太郎「お、おう……転校とかしないよな?俺、和がいなくなったら寂しいぞ?」 和「……そういうこと、こういうところで言わない方がいいですよ?」 京太郎「いや、事実だし?それに咲や優希、まこ先輩や部長だってそう言うって」 和「……ありがとうございます」 和(……負けられなくなりましたね。ええ、絶対に) 誠子「はぁ……あんだけ言って……」 淡「亦野せんぱーい!」 誠子「ん、淡…」 淡「えい」ほっぺ掴む 誠子「……ひぇんぱいにむかっへひゃにひゅるんだ」ほっぺむにー 淡「んー、準決勝の時やってたしー」 尭深「……淡ちゃん、片方は私がやるから」 誠子「ひゃはみ」 尭深「……あんまり色々言えないけど、ファイトだよ」 誠子「……ひょろひょろはなひてふれひゃい?」 淡「……もちょっと」 尭深「……なかなか癖になる」 菫「……何やってんだか」 照「アレはアレでリラックスできればいい」 菫「お前にやってやろうか?」 照「私は別に……ちょっと待って。いや、だから私は……いひゃい、いひゃいいひゃい」 ダヴァン「……ジャパニーズ土下座デスカ?」 智葉「はえーよ」 ネリー「そーだよ!やるなら終わってからだよ!」 智葉「そっちでもねーよ!」 明華「日本の諺にあるじゃないですか『終わりよければ全てよし』」 ハオ「つまりネリー次第……」 ダヴァン「ネリー、頼みましたヨ」 ネリー「ネリー!?」 智葉「なんか違うし……緊張感ねーのかお前ら」 晴絵「灼」 灼「ハルちゃん……」 晴絵「諦めてないよな?」 灼「当たり前!」 晴絵「よし!じゃあ後半戦に向けた対策だ!」 灼「うん!」 宥「て、手伝います!」 憧「そうね。まだ試合は終わってないんだし、最後まで優勝目指そ!」 晴絵「よし、じゃあ3人は穏乃のウォーミングアップだ!で、まずは和対策で…」 誠子「ポン」 誠子(そうだ、私はもう負けられない) 誠子「ポン」 誠子(例え相手がどんなに強くても) 誠子「ポン」 誠子(一度負けた相手でも) 誠子「ツモ!」 誠子(勝つ!!) 誠子「ポン」 和(またポン……オカルトとか、そういうことより和了ること優先ですね) 誠子「ポン」 灼(ほとんど何もしてない……最後くらい……) 誠子「ポン」 誠子(よし!このまま…) ダヴァン「ロン」 誠子「……え?」 ダヴァン(最後まで大人しくしてるなんて、ないデスヨ) みさき「副将戦終了!トップは白糸台のまま、このまま優勝してしまんでしょうか?」 理沙「……分かんない!」 みさき「ですよね!」 理沙「……でも、大将戦は何か起きそう」 みさき「……野依プロがこんなに喋るなんて」 理沙「そこ!?」 副将戦結果 1位白糸台1912+352=2264 2位清澄1282+610=1892 3位臨海1016+289=1305 4位阿知賀805+95=900 前話 次話 名前 コメント
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前話 次話 えり「さぁ、ついにインターハイも決勝戦です」 えり「決勝戦に限り、先鋒、次鋒、中堅…ごと実況と解説が代わるということらしいです」 えり「……色々と大丈夫なんでしょうか」 咏「さぁー?わっかんねーわー」 えり「……という訳で先鋒戦の実況は私、針生えり」 咏「解説は三尋木咏だぜぃ。知らんけどこうなった」 えり「それでは各選手がそろってきましたね。この試合、どうでしょうか?」 咏「さあねー。普通なら白糸台と臨海の対決って感じだけど、ちょーっと違ってくると思うぜー?」 えり「えー、白糸台と臨海は皆さんも知ってるような強豪ですね。阿知賀女子は、10年前にベスト8です」 えり「そして清澄は初出場ですね」 咏「初出場で決勝だぜー?なんか面白そうじゃね?でもまずは、あの宮永照をどうするかって話だけどねぃ」 咏「ぶっちゃけ私だって勝てるか分かんねーわ」 えり「その発言はプロとしてどうなんですか……」 優希「……ん?」 智葉「よう」 優希「……負けないじぇ」 智葉「それはこっちもだ。だが、とんでもないのがいるから、まずはそいつをどうするかだがな」 照「…………」 智葉「来たか」 京太郎「はい、着きましたよ?帰りは大丈夫ですか?」 照「……多分」 京太郎「目逸らさず言ってくださいよ」 優希「京太郎お前……」 京太郎「おぉ、来てたか」 優希「試合前に何やってるんだじぇ」 京太郎「いや、迷いそうだったから送ってきたんだよ」 智葉「宮永お前……」 照「……道が」 京太郎「ただの方向音痴でしょう」 照「京ちゃん酷い」 優希「んー、デジャブな感じだじぇ」 智葉「締まらないなオイ」 玄「ま、また空気?」 えり「さて、始まりました先鋒戦。一体どうなるでしょう」 咏「そりゃーみんな予想してるっしょ?」 えり「あぁ……やっぱりですか?」 照「ツモ」 咏「宮永照だよねぃ」 智葉(おいおい……阿知賀を利用して削ろうと思ったが、それごと潰してきたか) 優希(うわ……ドラ無しって本当にきついじぇ) 玄(うぅ……また宮永さん……というかこの眼鏡の人怖いよぉ……) 智葉(ああ畜生、こいつさらに強くなってるな) 優希(南場が普段の倍きついじぇ……) 玄(ちょっとは上がれたけど、やっぱり宮永さんが強すぎる……) 照「ロン」 えり「ぜ、前半戦終了!やはり宮永照選手が圧倒的です!」 咏「あんな風に点上げていくのはなー。やっべーわ」 照(控室……戻らなくていいや) 照(……迷子になるからじゃない。これは戻らなくてもいいから戻らないだけ) 智葉「……水くれ。ああ、茶でもいい」 ダヴァン「やっぱり強いデスネー」 明華「ああいうの、たまに世界でもいますよ」 ネリー「どうするのー?」 明華「……逃げるが勝ちという日本の諺が」 ハオ「駄目じゃない」 智葉「ま、それも戦略のひとつだが」 ダヴァン「だが?」 智葉「逃げてどうにかなる相手じゃない」 玄「ど、どうしよう……またいっぱい削られた……」 憧「ま、まだ3位よ!それに準決勝程じゃないわよ!」 晴絵「そうだけど……今のままじゃやばいね」 晴絵「……また、アレやろうか」 玄「……覚悟はしてます」 優希「ごめんだじぇ……」 和「優希が悪いわけではないですよ」 まこ「あの相手じゃからの」 優希「でも……」 京太郎「おい、こっち向け」 優希「きょうたろ…もがっ!?」 京太郎「よし、食え」 優希「も、もごご……」 久「もいっこいっとく?」 優希「もご!?」首横振り 久「そう。優希、終わる前から落ち込むのはやめなさい」 京太郎「全くだ。こっから逆転ぐらい言うのがお前だろうが。しゃきっとしろ」 優希「むむむ……よし飲み込んだ!」 京太郎「よし、元気出たか」 優希「……正直怖いじぇ。だけど、行ってくる」 京太郎「おう!」 優希「……ところで、あんなん相手にどうやって咲ちゃんは+-0やってたんだじぇ?」 咲「え?いつも通りだけど?」 5人「…………」 咲「え?」 えり「後半戦です。前半戦はやはり白糸台の宮永選手がトップでしたね」 咏「やっぱり宮永照が1位ってのは確実だねぃ」 咏「……でもさー、なーんか最後に起きそうじゃね?準決勝ん時みたいに」 えり「そうそうに宮永選手が振り込むとは思えませんが……」 照「ツモ」 えり「また和了りましたし」 咏「うーん、もうちょい面白くなると思うぜぃ。知らんけど」 智葉(やれやれ。1位は遠いな) 優希(最後の東場が……) 玄(や、やっぱりあの時みたいにドラ切るしか……でも切ってまだどうしようもないよー) 玄(……またお別れだけど、ここでやらなきゃ、ずっと待ってた意味がない!) 玄「リーチ!」 優希(ドラを切った!?確かに準決勝で切ったって聞いたけど……今になってやるのか!?) 照(阿知賀……悪いけど、同じ手に2回もはまったりしない) 智葉(こいつにとっちゃあ覚悟したことだろうけど……) 智葉「……ツモ」 智葉(予想の範囲内だ) 玄「そんな……」 えり「先鋒戦終了!圧倒的な差でに白糸台が1位です!」 咏「あちゃー。ドラゴンロードちゃん、またドラ切ったかー」 えり「準決勝ではここから宮永選手が振り込みましたが」 咏「全国1位だぜ?同じ手は効かないって。残念だけど、ここまでだったねぃ」 先鋒戦結果 1位白糸台1292 2位臨海605 3位阿知賀255 4位清澄104 照「ありがとうございました」 智葉「ありがとうございました」 玄「あ、ありがとうございました……」 優希「……ありがとうございました」 智葉「やっぱり、お前強いわ」 照「あなたも強かった」 智葉「お前に勝ちたかったんだけどな。そう簡単にいかないか。後はあいつらにまかせるとするか」 照「私も、みんなを信じてるから」 玄「うぅ……またマイナス」 優希「くぅ……決勝でこんなことを……申し訳ないじぇ……」 照「それじゃ」 智葉「……お前、そっちから来たか?」 照「…………」 優希「……京太郎、呼ぶか?」 照「お願い」 菫「で、帰りも送ってもらったと」 照「うん」 菫「その紙袋はなんだ」 照「タコス」 菫「……もう何も言わないから、私も分も取っておけよ」 照「分かった」 菫「じゃ、行ってくる」 淡「頑張ってねー」 菫「あぁ……準決勝のようにはならない」 智葉「おう、帰ったぞ」 明華「お帰りなさい」 ダヴァン「やっぱり強いデスネ」 智葉「あぁ。悪いな、結構差ついた」 ハオ「大丈夫。今度こそ、トップになる」 ネリー「ファイトー」 玄「うぅ……ドラ切っても駄目だったぁ~」 晴絵「まさか失敗するとはね……同じ手は通用しないか」 穏乃「大丈夫です!後は私達にまかせてください!」 憧「うん、玄は安心してて」 灼「負けない……」 宥「うん、玄ちゃんの分、お姉ちゃん頑張るよ~」 玄「お姉ちゃん……いってらっしゃい」 優希「申し訳ないじぇ……止められなかった……」 久「ううん、優希は良くやってくれたわ」 まこ「あんな全国トップレベルがいる卓で、1年がたった一人で頑張ったんじゃ。文句言わんわ」 和「ええ。優希、お疲れ様です」 優希「先輩、のどちゃん……」 咲「アレ?京ちゃん、出る時に持っていったタコスどうしたの?」 京太郎「あー、それはな」 優希「あぁ、意外とチャンピオンって話が分かる人だったじぇ」 咲「お姉ちゃんが?」 優希「京太郎手作りのタコスをおいしいって言ってたんだじぇ。だからあげた」 咲(タコスじゃなくて京ちゃんの手作りの部分が良かったんじゃないかな) まこ「そんじゃ、後輩の仇とっちゃるかの」 久「まこ、お願いね」 優希「頼みますじぇ」 まこ「おう!」 はやり「皆さんこんにちわ☆瑞原はやりです」 良子「ハロー、戒能良子です」 はやり「次鋒戦の解説と実況は私達です☆」 良子「実況のアナウンサーは?」 はやり「なんか体調不良で急遽私達だけになったよ☆」 良子「大丈夫ですか?」 はやり「両方はやりがやるから大丈夫☆牌のお姉さんだからね☆」 良子「あぁ、ベテランの経験…」 はやり「うん?」ゴッ 良子「……ノーウェイノーウェイ」 はやり「それじゃまずはおさらいだね☆」 先鋒戦結果 1位白糸台1292 2位臨海605 3位阿知賀255 4位清澄104 はやり「今の順位はこうなってるね☆」 良子「おぉ……白糸台が圧倒的ですね」 はやり「そうだね。でも、準決勝みたいに徹底的に対策されたり、3校から集中的に狙われると1位は厳しくなる」 はやり「この点差でも確実とはいえないし、麻雀に絶対は無い。最後まで油断しないようにね☆」 良子「途中まですっげーかっこよかったのに最後にいつものペースですね」 良子「さすがです。そんな訳で次鋒戦スタート」 前話 次話 名前 コメント
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前回 熊倉トシが京太郎を見て回る。 なにか確認したと思ったら、考え得る中で最も聞きたくない言葉を吐き出した。 トシ「ふむ、やはりというかなんというか……」 照「何かわかったんですか!?」 トシ「端的に言うと、このままだと京太郎は全員死ぬ。」 全員「!?」 トシ「今倒れている京太郎について、簡単に言うと……」 トシ「京太郎は普通の人間が生きられる寿命が4分の1程度しかないのさ。」 咲「そんな!?京ちゃんはまだ15歳なのに寿命だなんて!」 トシ「肉体に寿命があるように魂にも寿命がある。」 トシ「魂が寿命を迎えると、肉体も寿命を迎え、生命活動を停止する。」 トシ「それを割いたんだ、肉体にも魂にも負担は掛かる。」 トシ「ドッペルゲンガーって言うのはそういうことさ。」 トシ「このままじゃいずれ京太郎は……だからその前に京太郎達を元の形に戻すしかないねぇ。」 トシ「つまり――」 「つまり俺ら四人の内、三人は消えるってことですね。」 トシ「おや、起きたのかい。」 京太郎(宮守)「大分、体の調子が良くなったんで。」 豊音「京太郎君無理しちゃダメだよー。」 京太郎(宮守)「もう大丈夫です、豊音さん、心配おかけしました。」 京太郎(宮守)「それとそろそろ他の俺も起きると思います。」 京太郎(白糸台)「う、う~ん……」 照「あ、京ちゃん!」 京太郎(白糸台)「照さん……」 京太郎(白糸台)「話って寝てても結構わかるもんなんですね。」 京太郎(宮守)「便利だな。」 京太郎(小鍛治)「……よっと、俺も話は聞いてた。」 健夜「やっぱり今朝からの不調って……」 京太郎(小鍛治)「そうみたいですね……」 京太郎(清澄)「うう、気持ちわりー……」 咲「京ちゃん、大丈夫?」 京太郎(清澄)「なんとかな……」 トシ「どうやら全員起きたようだね。」 京太郎(小鍛治)「それで元に戻す方法っていうのはどんなのですか?」 トシ「お互いが納得できる方法で勝負を付ければいい、ただそれだけさ。」 京太郎(宮守)「んじゃ、俺はあれかな、奇しくも俺達は同じ部に入っているわけだしな。」 京太郎(白糸台)「俺もそれでいいぜ。」 京太郎(小鍛治)「ああ、俺もだ。」 京太郎(清澄)「マジかよ……」 京太郎(清澄以外)「「「勝負方法は麻雀で。」」」 京太郎(清澄)「…………」 トシ「どうやら決まったようだね、予想通りと言えば予想通りだけども。」 トシ「小鍛治プロ、場所って何とかなるかねぇ?」 健夜「多分……会場が一つ空いてるので、そこを借りられると思います。」 健夜「ただ、公式戦じゃありませんから中継は出来ませんし、実況席も広くないので観戦できる人は限られます。」 トシ「そうかい、なら各京太郎に一人ずつってところかねぇ。」 トシ「京太郎達を見守る者は各々の高校で決めておくれ。」 トシ「一応、各校の関係者には話を通しておくからさ。」 健夜「……卓が使えるようになるのは、今からおよそ一時間後みたいです。」 トシ「わかった、それまでお前さん達は自由に話しておきな……」 トシ「これが京太郎との最後の会話になるんだからさ……」 熊倉トシはそういうと医務室から出て行った。 その場を酷く痛い静寂が支配していた。 そして各々が控え室に向かう。 菫が部員たちに説明する為、そして私たちを二人きりにするため、控え室を空けてくれた。 菫「照、須賀にはお前が付いててやれ。」 照「……うん。」 菫「私は部員たちに説明しておく。」 そういって菫はその場を立ち去っていった。 自分だって京ちゃんを見守りたいはずなのに…… だが今は菫の言葉に甘えて、京ちゃんと話をしよう。 下手をすればもう会えなくなるのだから。 照「京ちゃん……」 京太郎「照ちゃん、膝を借りていいかな?」 照「……うん。」 京ちゃんは椅子に腰掛けた私の膝を枕にして話し出した。 京太郎「照ちゃんにこうやってもらうの、いつ振りかな……」 照「小学生以来かな……」 京太郎「こうして膝枕してもらえるのもこれで最後になるかもな。」 照「またしてあげるよ。」 京太郎「その時はお願いします、照ちゃん。」 わかっている、最後になるかもしれない事を。 それでも、今は彼と一緒に居る未来を信じていたい。 信じたい、信じたいのに。 どうしてか不安が私の心を侵していく。 私の顔にでていたのだろう、そんな私を見て、京ちゃんは口を開いた。 京太郎「雨が……降っているな……」 彼が変な事を言い出した、ここは室内で窓も近くにないのに。 照「……京ちゃん、雨が降ってるってわかるの?」 京太郎「ああ、雨が降っている……照ちゃんの心に。」 こんな状況で、こんなにクサい台詞を吐くとは思わなかった。 京太郎「照ちゃんはさ、俺にとって太陽なんだ。」 京太郎「だから俺が居る所を、居るべき所を明るく照らしてくれないと、俺は凍えてしまう。」 京太郎「そんな照ちゃんには笑顔でいてほしい。」 違うよ、京ちゃん……私は『太陽』なんかじゃない…… むしろ私にとっては、京ちゃんが私の『太陽』なんだよ…… いつも温かい笑顔で迎えてくれる京ちゃん…… そんな京ちゃんだから……京ちゃんにも笑っていてほしい…… ―――――― ―――― ―― 京太郎「それじゃあ行ってくるよ、照ちゃん、応援よろしくな。」 照「うん、京ちゃんの笑顔の為に笑顔で応援するからね!」 私の顔をみた彼は、明るい顔をして対局室に向かっていった。 【心の雲を晴らす太陽】 ――宮守視点―― 京太郎「すごい緊張するんですけど……大丈夫ですかね、俺?」 トシ「宮守の信頼を一手に背負っているんだ、男らしくドーンと構えてなさい。」 京太郎「でも、俺はみんなを背負えるぐらいに強くないですよ。」 トシ「いいや、ここにいる連中はみんな京太郎が背負ってきたものだ。」 トシ「だから誇っていい、ここにある絆は京太郎が作った力なんだ。」 京太郎「そう、ですか。」 胡桃「須賀君、戻ったら充電してあげるね。」 京太郎「え?俺がするんじゃなくて?」 胡桃「そう、私の膝の上に――」 京太郎「サイズ的に無理でしょう。」 胡桃「ひ、膝枕なら出来るもん!」 京太郎「ああ、それは楽しみだな。」 豊音「私ね、ずっとずっと一人だったんだよ……」 豊音「誰も来ないあの場所で、誰もいないあの部屋で……」 豊音「でもね、京太郎君と会って一人ぼっちじゃなくなったんだよー。」 豊音「京太郎君、京太郎君は私の初めての友達なんだよ……」 豊音「だから、だから絶対いなくなったらいやなんだよー!」 豊音「京太郎君がいなくなったら……ちょーかなしいよー……」 京太郎「あはは、万が一俺が消えたら友引で戻してくださいね?」 塞(友引じゃあそんな事出来ないってわかってて京太郎君は言ってるんだ……) エイスリン「キョータロー。」カキカキ バッ 京太郎「みんなと一緒に手を繋いで、道を歩いてる絵……?」 エイスリン「キョータロー、オワッタラ、ミンナ、イッショニカエル。」 京太郎「……そうですね。」 シロ「京太郎、迷ったら、思いっきり迷ってしまえばいい。」 シロ「迷いきって出した答えなら、きっと、後悔しなくていい……」 京太郎「シロさん……肝に銘じておきます。」 塞「京太郎君はもう、決めたんだね……」 京太郎「はい。」 塞(そうか、もう、君を苦しめる物はないんだね……) 塞(もう、君の事を守る為に塞がなくてもいいんだよね……) 塞(そして、もう、君を止める事は出来ないんだね……) 塞「京太郎君、私の塞ぐ力の源って知ってる?」 京太郎「……いえ。」 塞「私の力のルーツは『塞の神』。」 塞「これは悪い物が『道』から入って来るのを塞ぐからそう言われてるの。」 塞「そして塞の神の別の名は『道祖神』……」 塞「道祖神は男女一対の神様で、『道』の安全を祈る神様。」 塞「だから私は京太郎君の行く道の安全を祈ってるよ。」 京太郎「塞さん……」 塞「京太郎君の行く手を塞ぐものはないんだよ、自分の信じた道を、まっすぐ行ってらっしゃいね。」 京太郎「はい!それでは行って来ます!」 塞「豊音もちゃんと京太郎君のことを見ていてあげてね……」 豊音「うん……みんなの分も応援するよー……」 大好きな彼の為に、二人は身を引いたんだと、私は気付いていた。 だからこそみんなの分も見ておかないといけないんだ。 彼が行く『道』を、その先にある結末を…… 【遠野から続いた道】 ――実況席控え室―― 一旦控え室に戻ったが、ここまで会話は一つもなかった。 沈黙が辛かったのか京太郎君が口を開いた。 京太郎「ははは、まさか自分の命運を麻雀に託すとは思いもよらなかったですよ。」 運命は残酷だ。 京太郎「でも、ある意味よかったです、麻雀でなら誰にも負ける気しませんし。」 虚勢を張ってるのがわかる。 京太郎「麻雀なら怖いものなしですよ!」 なら、ならどうして君はそんなに怯えているの…… どう見たって無理してるのが私には見て取れる。 だから切り出さなくちゃ……最後になるかもしれないんだから。 健夜「……嘘。」 京太郎「へ?嘘なんかじゃ――」 健夜「だって、京太郎君、震えてるもの……」 京太郎「……健夜さん相手じゃ隠し事も出来ないか。」 健夜「……うん、一年や二年の付き合いじゃないもんね。」 彼は怯えていた、そして私も恐れた。 彼がいなくなる事、彼がいなくなった後のこと…… でも、私だけでも、いや、私だからこそ、彼の心の拠り所にならないと。 彼の不安を拭ってあげないと、彼は恐怖に負けてしまう。 健夜「だからさ、今は思いっきり甘えていいんだよ。」 健夜さんが両手を広げて俺を抱きしめてくれてる。 今まで俺が張っていた、虚勢の衣を優しく脱がせるような抱擁は、俺の本音まで晒してしまう。 京太郎「健夜さん、俺、俺、怖いよ……」 京太郎「もし、もし負けたら、今までの健夜さんと一緒に過ごしてきた時間や思い出が、全部無かったことになりそうで……」 健夜「大丈夫、大丈夫だよ、京太郎君……」 抱きしめてくれている力が強くなり、暖かいこの人の温もりがより強く感じられる。 ああ、なんて心地良い温もりなんだろう…… この人の温もりが、不安や恐怖に凝り固まった心を解してくれる。 ―――――――― ―――――― ―――― ―― 京太郎「健夜さん、もう俺、大丈夫です。」 健夜「……うん。」 京太郎「そろそろ時間なので、俺、行って来ますね。」 健夜「うん、頑張ってね。」 健夜「あ、そうだ、これが終わったら家で祝勝会にやろうよ。」 健夜「地区優勝と全国優勝のお祝いも兼ねてさ。」 京太郎「そうですね、その方がより勝たなきゃって思えますし。」 健夜「でしょ?」 京太郎「それじゃ、"小鍛治京太郎"、行って来ます!」 健夜「はい、いってらっしゃい。」 健夜「ちゃんと……ちゃんと『ただいま』って言いに帰って来るんだよ……」 【姉弟の絆】 ――清澄控え室―― 久「というわけよ。」 まこ「……久、それは本当のことなんか?」 久「ええ、残念な事にね。」 和「そんなオカルト、ありえません……」 和「そんなオカルトが、あっていい訳がありません……」 優希「…………」 久「それで、付き添いなんだけど……」 優希「…………」 優希「咲ちゃんがいいと思うじぇ……」 和「!……優希……」 久「咲も……それでいい?」 咲「…………」コクン 久「それじゃ、私は席を外すわ。」 まこ「……そうじゃのう。」 優希「……咲ちゃん、犬……京太郎の事頼んだじぇ。」 咲「……うん。」 和「……よかったんですか、優希?」 優希「……うん、私じゃダメだから……咲ちゃんじゃないと……ダメなんだじぇ。」 まこ「のう、久。」 久「なに。」 まこ「お前、後悔してるじゃろ……京太郎に碌に麻雀させんかったこと。」 久「…………」 まこ「いいんじゃ、別に責める気はないしのう。」 久「……今は須賀君を信じて待ちましょう。」 二人きりになったあと、先ほどから咲は俯いたままだ。 沈黙が辛い、今まで二人きりで沈黙が続いても、辛くなかったのに…… 重い口を無理やり開いて、なるべく軽い口調で話そうと思った。 声が震えないように我慢して。 京太郎「参ったな。」 咲「…………」 京太郎「よりにもよって麻雀で勝負とは……」 咲「…………」 京太郎「しかも相手は大会優勝者やオカルト持ちだ……」 京太郎「それに引き換え、俺は役を覚えた程度初心者だ。」 咲「…………」 京太郎「こりゃ、どうやっても無理だろ……」 咲「…………」グスッ 京太郎「咲、俺は居なくなるだろうけど頑張れよ。」 京太郎「中学の時と違って、俺が居なくても和や優希が助けてくれるだろうから、心配ないかも知れないけどさ。」 咲「……なんで」 京太郎「…………」 咲「なんで、京ちゃんは負けること前提で考えてるの……」 咲「なんで、京ちゃんは勝とうと思わないの!?」 京太郎「だって勝てるわけないだろ……」 バシンッ 俺の頬がはられていた、はった本人をみると大粒の涙をぽろぽろと零しながらこっちを見ている。 咲「京ちゃんのバカ!」 咲「諦めないでよ!諦めないでよっ!!」 咲「最後まで足掻こうよ!」 咲「諦めて消えちゃう最後なんて……いやだよ……」 京太郎「…………」 咲「ウッ……ヒッグ……」 なに泣いてんだよ、咲…… なに目の前の女の子泣かしてんだよ……! 女の子泣かすとか、俺、最低じゃねぇか! もう時間だ、そろそろ行かないと。 京太郎「咲、俺、行ってくるよ、どんなに無様でも、どんなに格好悪くても、最後まで足掻いてみる。」 咲「……ヒッグ……」 京太郎「だから咲、見ていてくれ、俺のことを。」 咲「…………うん。」 そして俺は対局室に足を進めた。 【絶望の先に咲く花】 ―実況・解説席― 健夜「これで京太郎君と見る人全員かな……?」 トシ「清澄・白糸台・宮守・小鍛治……全員だねぇ。」 トシ「それじゃ役者も揃った事だし、始めるとしようか。」 豊音「緊張するよー……」 照「…………」 咲「京ちゃん……」 恒子「それじゃ中に居る人たちにアナウンスしますね。」 マイクのスイッチを入れて内部に居る京太郎君たちにアナウンスを流す。 今回ばかりはいつもと違う空気に緊張した。 『持ち点50000点オカ・ウマなし、大会と同様のルールの東南戦です、それでは場決めをしてください。』 たったそれだけのアナウンスをしたあと、マイクのスイッチを切った。 これから文字通り自分の存在を懸けた京太郎君たちの戦いが始まる。 東:清澄 南:白糸台 西:宮守 北:小鍛治 「「「「よろしくおねがいします」」」」 東一局0本場 京太郎(清澄)(悪くはない配牌だと思うけど……こっからどう進めればいいのかがわからない……)タンッ 京太郎(白糸台)(とりあえず様子見かな、地力じゃ小鍛治が一番強そうだな。)タンッ 京太郎(宮守)(オカルトや能力も警戒しないとな……)タンッ 京太郎(小鍛治)(多分、地力でいうなら俺に次いで、白糸台、宮守、清澄の順だな……)タンッ 京太郎(小鍛治)(ただ、白糸台と宮守は何か隠し持ってそうだ。) 京太郎(小鍛治)(うだうだ考えるのは良くないな、速攻で行く!) 10順目 京太郎(小鍛治)「リーチ」タンッ 京太郎(清澄)(安牌とかわかんないぞ……一体どれを切れば……) 京太郎(清澄)(わっかんねー!ええいこれだ!)タンッ 京太郎(小鍛治)「ロン、裏は……無しで12000。」 京太郎(清澄)(親が流れて12000……やっべー……) 清澄:38000(-12000) 白糸台:50000 宮守:50000 小鍛治:62000(+13000(供託棒込み)) ―――――― ―――― ―― 南一局0本場 京太郎(清澄)(これで二回目の親……なんとか取り返さないと……) 京太郎(宮守)(このまま引き離されるのはまずい……) 京太郎(宮守)(それにそろそろ他の俺が能力使い始めてくるころか……) 京太郎(宮守)(牽制をかけさせてもらうぜ。) 京太郎(小鍛治)「リーチ」タンッ 京太郎(清澄)(やばいやばいやばい!ここでふったらどうしようもないぞ!?) 京太郎(清澄)(と、とりあえず、現物を……)タンッ 京太郎(宮守)「追っかけリーチだ。」タンッ 京太郎(小鍛治)(来ない……もしかして俺のリーチを待っていたのか?)タンッ 京太郎(清澄)(こっちもリーチかよ!?とりあえず安牌を……)タンッ 京太郎(宮守)「ツモ、1300・2600。」 京太郎(白糸台)(やっぱり能力を使ってきたか……) 清澄:32400(-2600) 白糸台:59900(-1300) 宮守:46300(+7200) 小鍛治:61400(-1300) 南二局0本場 京太郎(白糸台)(俺の親……能力使うならここしかないな……) 京太郎(白糸台)(俺も負けるわけに行かないから、遠慮無しに使わせてもらう。) 10順目 ヒーロー 京太郎(白糸台)「俺さ……正義の味方に憧れてたんだ……」タンッ 京太郎(白糸台)「みんなを守れる存在に憧れてたんだ……」 京太郎(白糸台)「でも、最近気付いた、俺が本当に守りたいもの。」 京太郎(白糸台)「それは、たった一人の女の子の笑顔なんだよ……」 京太郎(白糸台)「だから、俺はあの人の笑顔を曇らせたくねぇ……」 京太郎(白糸台)「俺は俺の『太陽』に笑っててほしいからだ!!」 京太郎(白糸台)「ツモ!500オール!」 照「京ちゃん……京ちゃんも私にとって『太陽』だよ……だから京ちゃんも笑っていて……」 清澄:31900(-500) 白糸台:61400(+1500) 宮守:45800(-500) 小鍛治:60900(-500) 南二局1本場 8順目 京太郎(白糸台)(俺はずっと照ちゃんと打ってきたんだ……) 京太郎(白糸台)(照ちゃんの打ち方を思い出せば……) 京太郎(白糸台)(よし!張った!) 京太郎(白糸台)「リーチ!」タンッ 京太郎(宮守)(さっきより早い!) 京太郎(白糸台)「まだだ、もっと晴らしてやる!」 京太郎(白糸台)「ツモ!1000オールは1100オール!」 照「大丈夫、京ちゃんならもっと輝ける、周りを照らせる。」 清澄:30800(-1100) 白糸台:64700(+4300) 宮守:44700(-1100) 小鍛治:59800(-1100) 南二局2本場 7順目 京太郎(白糸台)「リーチ!」タンッ 京太郎(白糸台)「ツモ!2000オールは2200オール!」 京太郎(宮守)(これはまるで宮永照の……) 京太郎(小鍛治)(ここいらで止めないとまずいな……) 照「ここからが正念場……」 清澄:28600(-2200) 白糸台:71300(+7600) 宮守:42500(-2200) 小鍛治:57600(-2200) 南二局3本場 6順目 照(お願い、このまま突っ切って……) 京太郎(白糸台)「リーチ!」タンッ 京太郎(宮守)(やばい、止まらない!)タンッ 京太郎(小鍛治)「ポン!」カッ 京太郎(小鍛治)「俺にはオカルトも、麻雀における非凡な才能なんかもない……」タンッ 京太郎(小鍛治)「ただ、ひたすら、34種136枚で作られる役のパターンを、対局者のタイプを見極めて打ってるだけだ。」 京太郎(小鍛治)「それを十年間繰り返して、覚え続けて来たんだよ……」 京太郎(小鍛治)「それも最高の"先生"の元で……だから!」 京太郎(白糸台)(ツモ順が……!)タンッ 京太郎(小鍛治)「だから修羅場をくぐった数だけは誰にも負けねぇぇッ!!」 京太郎(小鍛治)「そいつだ!8000は8900!」 京太郎(白糸台)「ぐっ!?掴まされたッ!」 京太郎(小鍛治)「俺は絶対に負けられねぇ……」 京太郎(小鍛治)「なにせ、俺の『ただいま』を待ってくれてる人がいるから……」 健夜「私も……『おかえり』って言えるよう、応援してるからね。」 清澄:28600 白糸台:61400(-8900) 宮守:42500 小鍛治:67500(+9900) 南三局0本場 京太郎(清澄)(上がれねぇ……このまま行ったら焼き鳥だ。) 京太郎(清澄)(これは覚悟した方が良いかな……) 京太郎(清澄)(俺、消えるのかな……) 京太郎(宮守)「…………」 京太郎(宮守)(なんて面してんだ……あいつ……) 京太郎(宮守)(まるで世界が終わっちまったみたいな顔しやがって。) 京太郎(宮守)(…………) 京太郎(宮守)(何、敵に塩を送ろうとしてるんだ……) 京太郎(宮守)(今は自分の身すら危ないってのに……) 京太郎(宮守)(…………) 京太郎(宮守)(迷った結果なら仕方ないよな?) 京太郎(宮守)(思いっきり迷った結果なら……) 京太郎(宮守)(行くぜ……ちゃんと見てろよ、清澄の俺。) 京太郎(宮守)「チー」カッ 京太郎(宮守)「ポン」カッ 京太郎(宮守)「ポン」カッ 京太郎(宮守)「チー」カッ 京太郎(白糸台)(あっという間に4副露……) 京太郎(宮守)「俺はずっと一人ぼっちだと思っていた。」 京太郎(小鍛治)(…………?)タンッ 京太郎(宮守)「ずっと一人で生きていくもんだと思っていた……」 京太郎(白糸台)(いきなりなんだ……?)タンッ 京太郎(宮守)「でもな、そう思っていた俺でも……」 京太郎(宮守)「拾われて、迷って、色々あって大切な絆が出来た。」 京太郎(清澄)(…………)タンッ 京太郎(宮守)「だから……もう――」スッ 京太郎(宮守)「俺も!」 京太郎(宮守)「お前も!」 京太郎(宮守)「もう一人ぼっちじゃねぇ!!」ダンッ! 京太郎(宮守)「ツモ!2000オール!」 豊音「京太郎君……君のおかげで、もう私、ぼっちじゃないよー……」 京太郎(白糸台)「裸単騎から一巡で……!」 京太郎(宮守)「その塞がった目を開いて、もっと周りを見てみろよ……」 京太郎(宮守)「そしたら見えてくるはずだぜ、大事なものが。」 京太郎(清澄)「……!」 実況席に目をやると今にも泣きそうな『あいつ』が居た。 いつも隣にいると思っていた『あいつ』は今は遠くにいるけど…… それでも俺はいつだって『あいつ』の笑顔を守りたいと思っている。 京太郎(清澄)(やっぱり女の子を泣かすなんて最高にかっこ悪いよな……) 京太郎(清澄)(足掻いてやる!どんなに絶望的な状態だって!!) 清澄:26600(-2000) 白糸台:59400(-2000) 宮守:48500(+6000) 小鍛治:65500(-2000) 南三局1本場 京太郎(清澄)(たった少しでもいい……少しでも点数を稼ぐんだ……) 京太郎(宮守)(これは……酷い配牌だな……) 京太郎(宮守)(他の奴らにこれ以上差をつけられるのはまずいな……) 京太郎(白糸台)(小鍛治だけは上がらせないようにしないと……) 京太郎(小鍛治)(多分流局かな……このまま逃げ切ってやる。) 18順目 流局 京太郎(清澄)「聴牌」 京太郎(白糸台)「ノーテン」 京太郎(宮守)「ノーテン」 京太郎(小鍛治)「聴牌」 京太郎(宮守)(ここに来て親流れ……痛いな……) 京太郎(小鍛治)(まだ油断は出来ないが次でオーラス、多分逃げ切れるな……) 京太郎(小鍛治)(だが、なにか嵐の前の静けさみたいな感じがするのも確かだ……) 京太郎(清澄)(これで圏内……) 清澄:28100(+1500) 白糸台:57900(-1500) 宮守:47000(-1500) 小鍛治:67000(+1500) オーラス 京太郎(白糸台)(泣いても笑ってもこれが最後だ……) 京太郎(清澄)(この配牌……發三枚、中二枚、そして白一枚……) 京太郎(清澄)(無理やり鳴いてでも掴んでみせる……) 京太郎(宮守)(さっきは清澄以外ノーテンだったが、今度はいい配牌みたいだな……だが俺らは誰一人引く気はないみたいだぜ?) 京太郎(白糸台)(俺は俺自身のために……俺の『太陽』のために生きる。) 京太郎(小鍛治)(…………) 7順目 京太郎(白糸台)(勝つには親に5200直撃か6400のツモ……チートイにドラ二つ乗せるだけなら簡単に行けそうだな。) 京太郎(小鍛治)(点数的に白糸台、宮守の順で警戒しないといけないんだが……) 京太郎(小鍛治)(宮守・白糸台のパターンは見切っている……) 京太郎(小鍛治)(後は清澄の打ち方のパターンだが、この点数差だ、狙う手は限られてくる。) 京太郎(小鍛治)(恐らく清澄の俺は役満を狙ってくるはずだ……) 京太郎(小鍛治)(そして多分、この浮いた生牌がそのはず。) 京太郎(小鍛治)(今の内に潰しておけば何とでもなる。) 京太郎(小鍛治)(鳴け……こいつを鳴け!清澄の俺!)タンッ 中 京太郎(清澄)「ポン!」カッ 中中中 京太郎(小鍛治)(よし、食いついた、やつの役満手は封じた!) 10順目 京太郎(宮守)(俺も倍満をツモるか跳満をトップに直撃させないといけない。) 京太郎(宮守)(これでダマでも跳ね満聴牌……)タンッ 白 京太郎(小鍛治)「ポン!」カッ 白白白 咲「そんな!?」 京太郎(白糸台)(さっきの中は潰しに行きやがったのか……) 京太郎(小鍛治)(これで役満にはできねぇだろ!) 京太郎(小鍛治)(あとは宮守と白糸台に注意して逃げきるだけだ!) 京太郎(清澄)(くそっ!大三元が潰されちまった!) 京太郎(清澄)(中を鳴いちまってるから『国士無双』『四暗刻』『緑一色』『清老頭』『九蓮宝燈』は無理だ。 ) 京太郎(清澄)(風牌は場に出ちまってて『小四喜』も無理。) 京太郎(清澄)(今から手を変えて『字一色』なんてとてもじゃないけど間にあわねぇ……) 京太郎(清澄)(もう残ってる役満なんて……) 京太郎(清澄)(……!!) 京太郎(清澄)(あったじゃねえか!一つだけ!) 17順目 咲(あの手……京ちゃん、もしかして!?) 京太郎(小鍛治)(潰したはずの清澄の俺が一向に諦める気配がない……) 京太郎(小鍛治)(むしろ……いや、そんなことはありえない……) 京太郎(清澄)(手は揃った……あとはあいつからあの牌を出させるだけ!) 京太郎(清澄)(来い……来い…来い!来いッ!!) 咲(お願い!来て!) 京太郎(小鍛治)(何だ?清澄の俺は一体何を企んで……) 京太郎(小鍛治)(いや、どっちにしろ奴には手がもう無ぇんだ……ッ!) タン 九 咲「……!!」 京太郎(清澄)(ありがとう、咲……) 咲「来た!」 京太郎(清澄)「ははは……」 京太郎(宮守・白糸台)「「?」」 京太郎(小鍛治)「何だ?今になって勝利の女神でも微笑んだのか?」 京太郎(清澄)「微笑む……?それは違うぜ……ッ!」 京太郎(清澄)「生憎なぁ……」 京太郎(清澄)・咲「「カン!」」カッ 九九九九 京太郎(宮守)「ここで大明槓!?」 京太郎(清澄)「俺の女神はなぁぁッ!」ガシッ 京太郎(清澄)・咲「「もういっこカン!」」カッ 發發發發 京太郎(白糸台)「立て続けに……!!」 京太郎(清澄)「微笑むんじゃねぇぇッ!!」ガシッ 京太郎(清澄)・咲「「もういっこ!!カン!!」」カッ ④④④④ 京太郎(小鍛治)「!!まさか!?」 京太郎(清澄)「横っ面をひっぱたくんだよおッ!!」ガシッ 京太郎(清澄)・咲「「最後のいっこ!!カン!!」」カッ 中中中中 スゥ 京太郎(小鍛治)「引くなああぁぁッ!」 ダンッ! ⅡⅡ 京太郎(清澄)「リンシャンツモ!責任払いで32000!!」 京太郎(小鍛治)「この土壇場で捲くられた……ッ!」 京太郎(小鍛治)「それも……最も難しいと言われる役満を……ッ」 京太郎(清澄)「……俺一人じゃ、とてもここまで来れなかったよ。」 京太郎(小鍛治)「……そうか。」 京太郎(白糸台)「そろそろお姫様たちが来る頃だと思うし、とりあえずちゃんと終わっておこうぜ。」 京太郎(小鍛治)「そうだな。」 京太郎(宮守)「んじゃ、せーの――」 京太郎s「「「「ありがとうございました!」」」」 清澄:60100(+32000) 白糸台:57900 宮守:47000 小鍛治:35000(-32000) 【たった一人の対局者・たった一人の勝者】 対局室の扉が開き、ぞろぞろと人が入ってくる。 各俺の関係者達だ。 照「京ちゃん!」 京太郎(白糸台)「照さん……」 照「京ちゃん消えちゃうの……?」 京太郎(白糸台)「そういうことになるかな……」 京太郎(白糸台)「ごめんな……照さん。」 照「謝らないで……」 京太郎(白糸台)「折角、応援して貰ったけど勝てなかったよ。」 京太郎(白糸台)「ヒーローにはなれなかったな……」 照「…………」 京太郎(白糸台)「照さん、あんまりみんなに迷惑掛けちゃダメだよ?」 照「うん……」 京太郎(白糸台)「でも無理はしないように。」 照「うん……」 京太郎(白糸台)「困った時は菫さんを頼ってもいいと思うし。」 照「うん……」 京太郎(白糸台)「あまり仏頂面にならないようにね、他の人に誤解されやすいんだから。」 照「うん……」 京太郎(白糸台)「友達は大切にな。」 照「うん……」 京太郎(白糸台)「それから……」 京太郎(白糸台)「最後に、俺が居なくても妹さんとちゃんと仲直りしてくれよな……」 照「…………うん。」 京太郎(白糸台)「そろそろかな……」 照「!……」 行っちゃ、やだ。 行かないで、京ちゃん。 私まだ、あなたに伝えてない事があるんだよ…… 今まで思っていたあなたへの気持ち…… だから、もうちょっとだけ待って。 今、勇気を出すから。 あとちょっとだけまってよ……京ちゃん…… 照「京ちゃん……」 京太郎(白糸台)「照さん……」 照「京ちゃん、大好き……」 京太郎(白糸台)「ああ、俺もだよ、『照ちゃん』。」 照「!……行か……ないで……」 私は京ちゃんに抱きつこうとしたが…… 少し遅かった。 抱きつく瞬間、京ちゃんは煙のように霧散してしまった。 消えていった京ちゃんを見て、自分でもわからないくらい涙が流れる。 頑張って我慢しても嗚咽は出てしまう。 照「……ウッ……ウッ……」 さよなら愛しい人、さよなら初恋の人。 両思いだとしても実らない恋もあるんだ…… 初恋は実らないって聞くけど、こんなに辛い物だとはしらなかった…… 後で咲と仲直りしよう、そして仲直りしたら、思いっきり泣こう。 だからあとちょっとだけこのまま泣いててもいいよね? 健夜「京太郎君……」 京太郎(小鍛治)「すみません、負けちゃいました。」 健夜「京太郎君は良く頑張ったよ……」 京太郎(小鍛治)「これから俺はいなくなっちゃいますけど……」 京太郎(小鍛治)「早くいい結婚相手を見つけておじさん達を安心させてくださいよ?」 京太郎(小鍛治)「あと、あんまりお酒とか飲みすぎて、体を壊したりしないでくださいね。」 京太郎(小鍛治)「それと恒子さん、こんなダメな人ですが、よろしくお願いします。」 恒子「任せなさい、京太郎君!」 健夜「京太郎君、これからいなくなっちゃうっていうのに、私の事の方が心配なんだ……」 ダメだ、せめて笑って送り出そうと思ったのに声が震えてしまう…… 我慢しているのに、涙が零れてしまいそうになる…… 京太郎(小鍛治)「健夜さんは意外とそそっかしいところとかあるんで放っておけないんですよ……」 京太郎(小鍛治)「まあ、おじさん達がいるから大丈夫だとは思いますけど。」 健夜「うん、京太郎君……はい。」 私は堪える涙を見られぬように手を広げて、彼を抱きしめた。 京太郎(小鍛治)「……健夜さん、いや――」 京太郎(小鍛治)「いままで……ありがとうございました、『姉さん』。」 彼は、私の腕の中で煙のように消えていった。 健夜「京太郎君、私こそありがとうね……自慢の『弟』だったよ……」 恒子「すこやん……今夜は一緒に飲みに行かない?」 健夜「うん、ありがとうね……こーこちゃん……」 今夜は、今夜くらいはヤケ酒を呑んで愚痴を溢してもいいよね? ちょっと思い出話と『弟』の自慢も入るけど。 祝勝会が出来なかったのは残念だったよ…… 大丈夫、いつかは立ち直るから……だから、今夜だけは飲もう、飲んで泣いちゃおう。 京太郎(清澄)「なあ、なんであの時俺にはっぱかけたんだ?」 京太郎(宮守)「俺はお前でもあるからな……」 京太郎(宮守)「お前が湿気た顔してたから昔の自分を思い出したのかもな……」 京太郎(宮守)「ま、それで負けてるんだから世話無いな。」 豊音「京太郎君……」 京太郎(宮守)「豊音さん、友達、大事にしてくださいね。」 京太郎(宮守)「それと、シロさんにはちゃんと自分で動くように言って置いてください。」 京太郎(宮守)「あとみんなには『今まで迷惑かけてごめん』と伝えておいてください。」 豊音「……うん、わかったよー……でも。」 豊音「誰も迷惑かけられたなんて思ってないよー。」 京太郎(宮守)「そうですか、それはよかったかな……」 京太郎(宮守)「トシさん他の二人が消えていったのは……」 トシ「多分、"納得"したからだろうね……」 京太郎(宮守)「やっぱりそうでしたか……」 京太郎(宮守)「みんなのことをよろしくお願いします。」 トシ「言われるまでもないさ……」 京太郎(宮守)「そうでしたね。」 京太郎(宮守)「それじゃあ、みなさんお元気で、また会った時はよろしく。」 豊音「……!」 そう言い残した彼は消えていった…… 私が望んで引いた友の手は、今度は運命が友を引いてしまって行った。 言い知れぬ感情が私の心を支配する…… 豊音「京太郎君……ちょー……さみしいよー……」 ぽろぽろと私の頬を伝うもの理由は、かけがえのない友との別れの為か、それとも…… ただ、今となっては確かめるべき相手はいない。 例えこの感情がなんなのかとわかっても、帰ってこない相手には伝えられない。 彼は帰ってこないのだ…… トシ「豊音……今は思いっきり泣いておきなさい。」 豊音「……熊倉先生は、泣かないんですか?」 トシ「……みんなに伝えた後、私は外で泣くよ。」 トシ「しかし、あの子も随分あっさりいったねぇ……」 トシ「『また会った』時か……年功序列で私が最初に会うんだろうか……」 そう言って熊倉先生は対局室から出て行った。 涙で霞む視界ではあったが熊倉先生の目には薄っすらと涙がたまっていた気がした。 咲「京ちゃん。」 京太郎(清澄)「咲、勝ったぞ。」 咲「うん……おめでとう……」 京太郎(清澄)「ありがとう、と言っても、この場じゃ素直に喜べないけどな……」 咲「……みんな、泣いてるもんね……」 京太郎(清澄)「しかし、勝ったと思ったら急に疲れが出てきたよ。」 咲「大丈夫、京ちゃん?」 京太郎(清澄)「ああ、問題な――」 おかしい、俺の足に力が入らない…… 気が抜けたからか、それとも他の俺が消えたからか。 体が傾く刹那、咲の瞳が見えた。 なにそんなにびっくりした顔してるんだ? 徐々に地面が迫ってくる。 地面と衝突する瞬間、地面が水面へと変わった。 海のような広大な水の中に俺一人沈んでいく。 中から見る水面はきらきらと輝いていた。 ああ、なんて気持ちが良いのだろう。 このまま水の中に沈んでいたい。 そんな感情に浸っていると、俺の顔をした何かがやってくる。 一つが俺に重なって入ったと思ったら、頭の中に映像が浮かんできた。 ここは東京だろうか俺の家がある。 あ、照ちゃんがいる。 小学生の時の記憶だな。 今度は中学生の時の記憶か。 照ちゃんと麻雀やってる……ははは、この頃の俺って麻雀下手だな。 次は高校生になってからだ。 先輩と話している。 淡もぶー垂れながら俺に絡んできた。 菫さんとはなんか同じ苦労話をしてたな。 でも、何でこんなこと知っているんだろう…… また俺が入ってきた。 頭の中に映像が浮かんでくる。 茨城の家だ。 おじさんとおばさんがにっこりと笑っている。 健夜姉さんが俺の後ろから麻雀を教えてくれてる。 夜には姉さんと一緒に寝てる。 次は俺が中学生の時の記憶…… インターミドルに出て初めて勝ったときのだ。 姉さんはうれしそうな顔をしている。 同時にちょっと困った顔をしていた。 今度は高校に入った時の記憶…… 地区予選突破したから姉さんに報告した。 姉さんもおじさんもおばさんもうれしそうだった。 でもやっぱり姉さんはちょっと困った顔をしていた。 今度のは恒子さんに出会ったときの記憶…… 姉さんがいじられてる。 なにか新鮮な気がした。 滅多に見られない姉さんだった。 なんでそんな事がわかるのだろう…… 映像をみると言うよりは、思い出すと言う感覚に近い。 三つ目の俺が入ってきた。 何かの施設だろうか。 あまり記憶に残ってない。 トシさんと出会った。 トシさんの家に引き取られた。 トシさんに連れられて暗い洞窟に入った。 暗くて何も見えない。 誰も居ない怖さをここで知った。 その内声が聞こえた。 女の人の声だ。 女の人と洞窟を抜けて顔をみる。 シロさんと俺の顔は泥で汚れていた。 思わず笑ってしまった。 次の記憶。 塞さんと出会った。 塞さんは俺の傷を塞ぐと言ってくれた。 何故か心が温かかった。 今度は豊音さんと会った時の記憶。 何も無い村にひっそりと建っていた家屋。 中に入ると何も無いような部屋に豊音さんがぽつんと座っていた。 何か驚いていたようだ。 友達がいないと言っていたので、俺が友達になると言った。 豊音さんはうれしそうな顔をしていた。 高校に入ってからの記憶。 麻雀部に入ってみた。 そこには見知った顔が二人居た。 塞さんとシロさんだ。 ちょくちょく会っていたので感動の再会とは行かなかった。 胡桃先輩もいる。 マナーにうるさく、小さい事を気にしていた。 それから部室にトシさんが入ってくる。 どうやら顧問だったようだ。 ちょっとだけ時間が飛んで部室に入ると豊音さんがいた。 制服姿を見るのは新鮮だったかも。 エイスリン先輩もやってきた。 初めは言葉が通じなくて苦労したけどジェスチャーで意思疎通した。 その内に小さいボードをプレゼントしてみた。 これでみんなと話せると思って喜んでいたようだ。 結局、絵だけでは要領を得ないのでシロさんと俺が翻訳するはめになっていたのだが…… どうしてこの出来事を知っているのだろう…… いや元々知っているんだ、思い出しているんだ…… ああ、そうかどれもこれも全部含めて"俺"なんだ。 全部ひっくるめて俺だったんだ。 全てを思い出した俺のところに何かがやってきた。 そのなにかは誰かは見覚えのある顔をしていたがはっきりとはわからない。 そのなにかは俺の手を掴み、水面まで引っ張り上げていく。 水面近くまで来ると、何かが聞こえてきた。 ……ちゃ……う……ちゃん……きょ…ちゃ… 聞き覚えがある声だ。 「……咲?」 「京ちゃん!」 咲「もう京ちゃん、いつまで寝てるの?」 京太郎「わりー、……昨日から徹夜でゲームやっててさ。」 咲「何のゲームやってたの?」 京太郎「……麻雀。」 咲「京ちゃん、少しは上手くなったの?」 京太郎「まぁ、少しはな。」 ああ、そうだ思い出した。 これから俺はやり直すんだ。 咲にもう一度麻雀をやらせる為に。 咲と照ちゃんを仲直りさせる為に。 今まで力になれなかったみんなの為に。 そしてみんなの力になれなかった無力な俺の為に。 俺は何回もやり直したんだ。 白糸台の俺が育んできた十年。 小鍛治の俺が打ってきた十年。 宮守の俺が迷い続けて、救われた数年。 全部ひっくるめた俺の人生。 そして俺を引っ張り上げたあいつ。 ここから始まる、これから始まる。 本当の俺が打つ麻雀が…… 優希「おい!犬!咲ちゃん!早く打とうじぇ!」 京太郎「おう、今から鍛えてやるぜ。」 優希「犬の分際で私を鍛えるとか何事だじぇ!?」 咲「……自信あるんだね。」 京太郎「死ぬ思いをしてまで頑張ったんだ、そのくらいはあるさ。」 京太郎「俺の集大成が通用しなかったら姉さんやトシさんに笑われちまう。」 咲「???」 咲「誰?トシさんって?それに京ちゃん一人っ子じゃなかったっけ?」 和「それより早く打ちましょう。」 京太郎「んじゃ、まずは咲に六曜対策を、タコスには九面対策を、和には塞さんの……いや、普通(小鍛治)に打つかな。」 和「何のお話ですか?」 京太郎(真)「気にすんな、それより始めようぜ。」ゴッ 優希「私の親だじぇ!」 京太郎(真)「まずは照魔鏡かな、ついでに照ちゃん対策も仕込むか。」 咲「え?」 京太郎(真)「どうした、咲?」 優希「とりあえず先制リーチ!」 和「3順目でリーチ……」 優希「ツモ!6000オールだじぇ!」 和「一発ですか……」 咲「流石優希ちゃん……」 優希「どうした犬!さっきの威勢は何所に行ったんだじぇ!?」 京太郎(真)「安心しろ、まだ始まったばかりだ。」 京太郎(真)「それに大体わかったし。」 優希「ふふん、またリーチだじぇ!」 京太郎(真)「そうか俺も追っかけリーチだ。」 和・優希・咲「!?」 優希「犬が追っかけリーチとかまぐれに決まってるじぇ!」 優希「それにこれを引けば……!?」 京太郎(真)「わりぃが少しだけ『塞』がせてもらった。」 京太郎(真)「咲、これからやるのが先負だ。」 優希「まさか……」タンッ 京太郎(真)「ツモ、……裏無し、2000・4000。」 咲「これが先負?」 京太郎(真)「そういうこと。」 和「すごい偶然ですね。」 京太郎(真)「……和には対策いるのか?不安になってきたぞ……」ショボン 優希「次だじぇ!次!」 和「はいはい、優希は落ち着いてくださいね。」 京太郎(真)「チー」カッ 京太郎(真)「ポン」カッ 京太郎(真)「ポン」カッ 京太郎(真)「チー」カッ 優希「鳴いてばっかでどうするんだじぇ、手がバレバレだじょ。」 京太郎(真)「俺も、お前も、ぼっちじゃねえよ……」ボソッ 京太郎(真)「ツモ、1300・2600」 京太郎(真)「これが友引だ。」 和・咲「!」 咲「裸単騎からの一巡目で和了……これが友引……」 和「須賀君!点数計算が出来るようになったんですね!」 京太郎「あれ!?そこ!?」 和「だって4飜30符・3飜60符以下の計算出来てなかったじゃないですか!」 京太郎「実は満貫すらも怪しかったんだけどなー」 優希「!!そういえばそうだじぇ!」 咲「きっと隠れて特訓したんだよ。」 優希「誰に教えてもらった!」 京太郎「ふふん、某国内無敗のプロと某今年のインターハイ王者と言っておこうか!」 優希「おう……犬の妄想が迸ってるじぇ……」 和「で、本当のところはどうなんですか?」 京太郎「姉さんと幼馴染。」 優希「咲ちゃんか!」 咲「え?私教えてないよ!?」 京太郎「咲とは中学からだもんな。」 京太郎「さっきの二人は小学の頃からの付き合いだ。」 和「お姉さんなのに小学生からなんですか?」 京太郎「……複雑な家庭環境でして。」 咲「京ちゃん、ちゃんと目を見て話そうよ……」 優希「京太郎……モテないからってそういうゲームに手を出して妄想するのはよくないじぇ……」 和「そういうゲーム?」 優希「18禁のエッチなゲームだじぇ」 和「須賀君……」ジトー 京太郎「違うって!誤解だって!」 優希「大丈夫だじぇ!エッチなゲームをしてるからといって見捨てないじぇ!ダーリン!」 京太郎(真)「もう怒った!てめぇにはもう親番回さねぇ!」 久「元気ねぇ、部室の外まで聞こえてきたわよ?」 まこ「高校生はそんぐらいでちょうど良いんじゃ。」 優希「ひどいじぇ……」 優希「特に連荘中に『ちょいタンマ』をしたときは……」 咲「京ちゃんの下家だったから私にも回ってこなかった……」 咲「ダブロンしても京ちゃんの方が優先されちゃうし……」 京太郎(真)「頭ハネって便利だよな……」 咲「そもそもなんで私が鳴いたら3回もカンするの!?」 京太郎(真)「照魔鏡って便利だよな……」 和「SOA、SOA、SOA……」 京太郎「……なんかごめんなさい。」 和「ハッ!?今小さい須賀君と遊んでました!」 京太郎「和……ついにネット麻雀のやりすぎで頭が……」 和「そんなオカルトありえません。」 久「一体ここ数日でなにがあったのかしら?」 まこ「きっと血の滲む様な努力をしたんじゃろう。」 京太郎「ええ、そりゃもう数十年分の努力ですよ。」 久「まだ15歳なのに数十年とはおかしな話ね?」 京太郎「……それだけ密度の濃い特訓だったんですよ。」 『俺たち』が、自分の存在を懸けたあの対局は…… 『俺たち』にはスタートだったんだ、みんなにとってはゴールでも。 多分、照ちゃんも、健夜姉さんも、トシさんや豊音さんと会っても『俺たち』の事は分からないかもしれない。 それでも確かに会ったし、在ったんだ。 『俺たち』の出会いも、『俺たち』の人生も、確かに在ったんだ。 今度どこかに遊びに行こう。 ありったけの小遣いを使ってみんなの所に行ってみよう。 例えみんなが、『俺たち』のことを思い出さなくてもいい。 ただ、みんなに会いたいんだ。 この世界でも。 いや、どの世界でも…… みんなに会いに行きたい。 【重なった世界・やり直した世界】 京太郎(清澄)・咲「「カン!」」