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https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/606.html
(駄目だ……死ねない……! 僕は、俺はこんなところでは―――) 生き残れ、と。ギアスの光が瞳に宿る。だが、それで何が出来るというのだろう。 手足は石化し、敵は最速のサーヴァント。こんなときに生きるために取れる行動なんて、ない。 (糞、俺は、俺は、俺は――――生きなきければ――――っ!?) それでも、無情に死は迫る。 生きなければという脅迫も、生きたいと言う望みも全てを打ち砕く黒い死が。 死ぬ。全ての思いを。全ての未来を。全ての夢を喰らう。 ……ああ。 ――-そうか、俺は死ぬのか。 死んで、いいのか―――。 だが。 奇跡は、起こる。 「枢木殿おぉぉぉおぉおおぉぉぉぉおぉおおおおおおおおっっ!!!」 神速一閃。誰もが予想しなかった方向からの、誰もが予想もしなかった人間による一撃。 すさまじい速度での突進。そして、思い切り振り上げた右腕を力任せに振りぬいただけの技量もない単純な攻撃。 だが、驚くことにその一撃で、スザクが全力の蹴りを持っても揺らがなかったライダーが、地をこすりながら弾かれ後退する。 「――――真田、さん?」 その情熱、純粋さ。彼に被って見えて、思わずスザクは呟いてしまう。 真逆。彼は死んだはずだ。レイ・ラングレンがそう告げた。 目の前のこの女たちに殺されて、死んだ。 短い付き合いだったが、彼の真っ直ぐな瞳は嫌いじゃなかった。 自分には、すこし重かったが。それでも、きっといいものだった。 でも、死んだ。ならばもう彼は登場することは出来ない。 それこそが、この世界の真理。 では―――? 「残念ながら違うぞ、枢木殿。忘れたのならもう一度名乗ろう。 ―――神原駿河。主な武器は加速装置だ」 そう言って彼女は首だけ振り向くと、無駄に格好よく笑った。 以上、前回破棄したSSより一部抜粋です。 タイトルは「消せない罪」だったのですが、この部分だけでは意味がわかりません。 このパートは、折角呼び方が同じだから乱戦中とかに幸村と被って見えたりしたら面白いかな、と思って書いていました。 また、全てを投下しないのは、これ以後どこかで使うつもりがあるネタや、すでに徒物語で使用したネタが混じっているためです。 なお、その使ったネタと言うのは、 ルルーシュ気絶&計算違い(但し、気絶はほぼ完全な自爆だった……) モモ、初めての殺人 憂、亀甲縛り(これは神原に直接やられていた) などでした。 以上、完全に余談です。 お目汚し失礼いたしました
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消せない罪 ◆CMkRVF7vjM 私には記憶がありません。 気がついたら裸で縛られていて、目の前には男の子と女の人がいました。 私は裸で縛られていて、女の人にツーカー錠という薬を飲まされ、 自分の知っていることを色々聞かれました。 自分で話そうと思っているわけではないのに、すらすらと自分の口から出てくる言葉。 だけど私は空っぽで。 私が持っていたらしい道具の使い方とかは知っていたのに、 私自身に関することは全く口から出てきませんでした。 そんな私に溜息を吐いた女の人、ベルカナさん。 この人は私に今の状況を教えてくれました。 ここは殺し合いの場。私を含んだたくさんの人たちが、ジェダという魔王に強制的に連れてこられ、 最後の一人になるまで争わされる。 そしてここにいるベルカナさんを含む人達は、その殺し合いを望まず、 ジェダ打倒を目指しているらしいです。 私も人を殺すという選択を取りたくなく、ベルカナさん達がいなくなったら、 どうしていいかもわからなかったため、ベルカナさん達に協力することにしました。 ですが、記憶を失う前の私もこの殺し合いに乗っていたらしいです。 そしてベルカナさん達も襲い、仲間を一人死なせる原因になったそうです。 ベルカナさんが言うには、一緒にいた人に命令されてやっていたということですが、 それでも私が人に襲いかかっていたという事実は変わりません。 だけどこの人は私のことを許してくれました。 正確には完全に許されたというわけではないようですが、 私が記憶を失ってしまったこと、ベルカナさん達に協力するといったことを信じてもらえたので、 こうして一緒にいることができるみたいです。 ベルカナさんの他の仲間たち。 私が目を覚ました時目の前にいた人、レックスさん。 私にヤミヤミという名前をくれたアルルゥさん。 それから今もベッドで寝たままの桜さん。 聞こえてくる会話を聞くと、レックスさん達は今までこの桜さんを探していたようです。 ベルカナさん達の仲間である、梨々さんが望んでいたからです。 その梨々さんは、元の私と元の私の仲間がこのお城に襲いかかったせいで死んでしまいました。 私も梨々さんが死んでしまった一端を担っていたようなものなのでしょう。 それを認識すると、お腹の中に重い何かが詰まった感じになります。 ……持っているタオルを無意識に強く握ってしまっていました。 こういうのを、心が痛いというのでしょうか。 そんなことを考えている時でした。 私の知らない、元の私の罪を知っている人が現れたのは。 ☆ 僕がベルカナと夜の見張りの話をしていたとき、またお城に人が来た。 ベルカナが貼り直した梨々の罠に引っ掛かって、グラスの音が響いたんだ。 だけどさっきのヤミヤミともう一人が来た時と違って、 今は安静にさせてないといけない桜がいる。 だから今度は僕が様子を見に行くことにした。 僕の情報を持った人がいた場合とか、リスクはあったけど、 もしもの時には桜を逃がすためにもいる必要があるし。 ベルカナにはその間にアルルゥを起こしてもらって、戦闘準備を整えてもらう。 入口にいたのは、綺麗な銀髪の髪をした、女の子。 僕より少し年上って感じ。 相手も僕のことを認識して、持っている剣をこちらに向けてくる。 「……お前は?」 「僕はレックス。殺し合いには乗っていない。 ……君の名前は?」 「……シャナ」 最初の会話は成功。 少なくとも、いきなり襲いかかってくる様子はない。 それにどうやら僕のことは知らないようだ。よかった。 それから聞いてみたところシャナって名乗った子は、北東の町を目指していたって言った。 なんでもシャナが倒さないといけない、自動人形とかいうのがいるらしい。 南西の街から空を飛んで来たみたいで、その通過点にあったこのお城もついでに調べようと思ったみたいだ。 人形と聞いて、雛苺のことを口に出したら、食い入るように情報を求めてきた。 情報交換は僕も望むところだ。特に僕たちの誰も行ってない西の情報を持つ人とは。 まだ油断はならないけど、一応安全と判断した僕は、 相手が敵だった場合の合図として持っていた爆弾石をランドセルにしまい、 シャナをベルカナたちに会わせることにした。 もしかしたらアルルゥやヤミヤミのことを知ってるかもしれないけど、 それでも話を聞いてもらう余裕はあるって思ったからだ。 ……考えてみれば今の僕達って他の人達から見たら危険人物ばっかりだな。 僕もアルルゥも殺し合いに乗っていたことは色々な人に知られているし、 ヤミヤミは記憶を失う前まで殺し合いに乗っていたようだし、 桜だって、雛苺につれられてたんだから、悪の人形の従者と思われてるかもしれない。 危険視されない存在ってベルカナしかいないじゃないか。 これはちょっとひどすぎる。 僕たちのことを知らない人はいないんじゃないかってくらい悪評が広まってる気がする。 朝になって散策をする時も本当に気をつけないと。 宿屋に戻ると、入口には桜を除く仲間達がいた。 皆、それぞれに武器を構えて僕達を待っていた。 「大丈夫、この子は敵じゃない。情報交換がしたいって言うから……シャナ?」 仲間の姿を確認して、シャナが剣を構える。 その切先はヤミヤミへ向いていた。 「お前……イヴね?」 ああ、やっぱり嫌な噂は広まってたか。そっか。この子はイヴっていうんだ。 僕はそう思いながらも、シャナがいきなり斬りかかったりしないよう注意を払った。 ☆ ……夜だというのに来客が多いですわね。 もしかして、休息を取っているのは私達だけなんじゃないでしょうか。 この雨ですし、それはないと思いますけれど…… 新たにこのお城にやってきた少女、シャナ。 奇麗な銀色の髪と、意志の強そうな瞳。 鋭そうな刀を持った彼女の先には、ヤミヤミ。 イヴ、と言ってましたわね。その名前は名簿にあったはずです。 どうやら、彼女の過去を知っている様子。 「この子が、なにかしたの?」 「どいて。そいつを討滅しないと」 私たちのほうに周り、レックスがそう言いました。 ですがシャナのほうは、何も話す気はないみたいです。 「多少のいざこざはありましたが、今の彼女は私達の仲間です。 彼女を襲うのなら、せめて彼女が何をやったか教えてくれませんか?」 そう言い様子をみます。 それでも攻撃してくる場合は戦闘もやむなし、です。 『シャナ、事情を説明したほうがいい。無駄に争うことになるぞ』 「……わかってる」 シャナの胸元から低い男性の声が聞こえました。 腹話術……ではないでしょうし、梨々がリインちゃんとやらから聞いた、デバイスというものでしょうか。 とと、そういえば上の階で見つけた荷物の中にそれらしき十字架がありましたわね。 桜と雛苺の荷物ですから、あれがリインちゃんとやらの本体なのかもしれません。 後で確認しておきませんと…… そのデバイスらしき声に同意したからか、シャナがヤミヤミ……イヴについて話し始めました。 その話によると、彼女は廃病院でビュティという少女を殺害し、 ブルーという姿を変える薬を持った少女と共に逃げ出したそうです。 やはりというかなんというか、彼女は人を殺していましたか。 時期的に考えて、もう数人くらい殺しているかもしれません。 「や……」 その話の途中、そんな震えた声が聞こえました。 ヤミヤミが、自分の耳を押さえつけるように手で抑えています。 「いや……そんなの……しらない……!」 「ヤミヤミ!」 「っ……!」 その後、ヤミヤミはレックスの制止も聞かずに此処から逃げだしました。 それを追うように飛び出したアルルゥ。 シャナも彼女を追いかけようとしますが、それはレックスが阻みます。 「話をしてやったのにまだ邪魔する気? そっちがその気なら……」 「ヤミヤミは……僕たちの仲間だ。 確かに記憶を失う前は敵だったけど今はそうじゃない。 僕たちがちゃんとヤミヤミを連れてくるから……待ってて」 そういってレックスもヤミヤミを追いに行きました。 残されたのは私と釈然としない顔のシャナ。 「記憶喪失……そんな嘘に騙されてるわけ?」 やれやれ、説明役は私に押し付けられたわけですか。 まあ彼女からはもう少しきちんと話を聞く必要はありますわね。 ブルーの特徴と、ヤミヤミと共にいた少女の特徴が合いませんし、 ヤミヤミについてもう少し詳しく聞きたいところです。 私はツーカー錠を取り出し、彼女に説明を始めます。 それにしても仲間、ですか。 レックス達も私同様、彼女に思うところがあると思っていたのですが…… どうやら彼らは私よりよっぽど純真なようですわね。 ☆ 皆の元から離れて、その場から逃げだす。 後ろから誰かの声が聞こえるけど、そんなの知らない。 ぐしゃぐしゃになった頭の中、どこを走っているのかも自分ではわからない。 不意に足元がぐらついて転び、構える暇もなく顔から地面にぶつかる。 「痛い……」 痛む鼻先を抑えながら起き上がってみると、そこは私の始まりの場所。 私が目を覚まして、一番最初に見た景色。 地面も壁もあちこち傷ついてて、焦げてて、 かなりたくさんの血溜まりもできてる戦闘跡。 私がベルカナさん達に襲い掛かった後。 私が犯した、罪。 そうベルカナさんに聞かされた。 「知らない……」 だけどそんな記憶、私にはない。 どんなに思いだそうとしてみても、そんな記憶思い出せない。 だけどそれは本当で。 私が人を殺したことは皆が知ってて。 今だって、シャナって人が私の過去とともにやってきた。 これからもきっと、私の知らない私を知っている人たちが、たくさん現れるんだろう。 そのたびに私は、私の知らない私の罪にふるえなくちゃいけないんだろうか。 そのたびに私は、この胸の痛さに耐えなければいけないんだろうか。 「ヤムィヤムィ!」 そんな思考の袋小路に入っていた私に、今の私の名前を呼ぶ声が届いた。 イヴって名前じゃなくて、ここで私がつけてもらった名前。 振り向くと、そこにいたのは荒い息を立てるアルルゥさん。私を追いかけてきたのだろうか。 「ヤムィヤムィ、もどる!」 そういって左手で私をつかむアルルゥさん。 シャナのいる場所に戻れっていってるんだろうか。 「ヤミヤミ、アルルゥ!」 レックスさんも私を追いかけてきました。 こんな私を、血で濡れた私を。 「……どうして」 「……え?」 どうして彼らはこんな私と一緒にいるんだろう。 私が一緒にいたら、迷惑しかかけないのに。 「……どうして、私なんかを追いかけてくるの!? 私は人を殺した! きっと何人も傷つけた! たくさんの人の血で染まった私がレックスさん達と一緒にいる意味なんてない!」 廊下がしんと静まりかえる。 それから少し経ったのか、だいぶ経ったのか。 いくつかの時間がたった後、レックスさんはぽつぽつと話し始めた。 優勝した人はなんでも願いをかなえられるというこの殺し合いのご褒美のこと。 レックスさんはその願いで妹を元の世界に返すために殺し合いに乗って、 たくさんの人を傷つけて、少なくとも一人を殺したこと。 アルルゥさんも、自分が帰る為にって乗っちゃったことがあったらしい。 「……君の手が血で濡れてるって言うなら、僕だってそうだよ。 僕だって人殺しだ。君と同じように、それをたくさんの人に知られている。 だけどそんな僕でも、守りたいって思う人たちが、仲間ができたんだ」 そういってほほ笑む、レックスさん。 「アルルゥ、てきならたたかう。だけど、ヤムィヤムィはてきじゃない」 「正直、君やその仲間に梨々が殺されたことは、今でも腹が立ってる。それは否定しない。 だけど僕は梨々たちを襲ったのに、梨々は許してくれた。 アルルゥの右手が動かないのも僕のせいなんだ。それでもアルルゥは許してくれた。 だから僕は、君のことを許す」 そういってレックスさんは、私に手をかざす。 それに恐怖を覚え、目をつむる私に、やさしい何かが包み込まれる。 恐る恐る目をあける私に、レックスさんがほほ笑んだ。 「君が罪を償いたいって言うなら、僕はそれを手伝う。 そうするのが仲間だって思うからね」 「ん、ヤムィヤムィはなかま!」 「その代りって言うのも変だけど、僕達も迷惑かけちゃうかもしれない。その時はごめんね」 ……そっか。 彼らも、私と同じように罪を背負ってここにいたんだ。 今の私と同じように、たくさん悩んで、今の彼らがいるんだ。 なら、私も彼らと一緒にいていいのかな。 胸の中が少し、軽くなる。 「それは気にしない。あの、ところで私の名前、本当はイヴっていうみたいだけど……」 「あ、そっか。それじゃ、イヴって読んだほうがいいのかな?」 「ヤムィヤムィ、ヤムィヤムィじゃないの?」 レックスさんに聞かれて、アルルゥさんに不思議な顔をされる。 少し、悩む。 本当の名前がそれでも、今の私にとっては馴染みがない。 アルルゥさんにつけてもらったヤミヤミって名前のほうが、自分の名前って気がする。 それに、新しい私になるためにも…… 「……ヤミヤミがいいです」 「そっか。それじゃ、ヤミヤミ、よろしく」 「よろしく!」 「よろしくお願いします、レックスさん、アルルゥさん」 「……そのさんっていうのやめてくれないかな。なんかよそよそしいし、呼び捨てでいいよ。」 「ん、アルルゥも、いい」 そう返されて、少し戸惑った。 さっきまで私は敵だったのに、こんな風にしちゃってもいいんだろうか。 当然のようにそう聞いてくるレックスさん。 アルルゥさんも不思議そうにしています。 「え、ええと、それじゃあ……レックス、アルルゥ」 「なに?」 「ん?」 「その……よろしく」 私がそういうと、レックスとアルルゥは笑ってくれた。 彼らは私を仲間だって言って、罪を許してくれた。 一緒に罪を背負ってくれるっていった。 ……私も、自分の罪と向き合いたい。 ブルー、それから名前の知らないもう一人、私がご主人様と呼んだらしい女の子。 彼女らなら、私の罪を知っているんだろうか。 もし知ってるなら、私の罪を教えてほしい。 彼らと同じように、自分の罪ときちんと向き合っていきたいから。 そうすれば私は本当に、ヤミヤミとして彼らといられる気がするから。 【F-3/グランバニア城一階・廊下/2日目/黎明】 【レックス@ドラゴンクエスト5】 [状態]:魔力中消費 [装備]:ドラゴンの杖@DQ5 (ドラゴラム使用回数残り2回)、勇気ある者の盾@ソードワールド [道具]:基本支給品×2、GIのスペルカード『磁力』@HUNTER×HUNTER、飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心 ドラゴンころし@ベルセルク、バトルピック@テイルズオブシンフォニア、 爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、魔力の尽きた凛のペンダント、小さなメダル@DQ5 [服装]:普段着 [思考]: そういえばシャナのこと、ベルカナに任せきりだったな…… 第一行動方針:ベルカナのところに戻り、シャナと情報交換。 第二行動方針:仲間を守りつつ、レミリアとタバサを捜す。 第三行動方針:魔力が回復して余裕が出来たら、不明アイテムや水中の調査 基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。 [備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。 ベッキーは死亡したと考えています。 お城の地下に迷宮があるのを確認しましたが、重要なことだと思っていません 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]:魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。眠たい。 [装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3 [道具]:基本支給品×2、クロウカード『泡』『駆』@カードキャプターさくら、 海底探検セット(深海クリーム、エア・チューブ、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り、快速シューズ)@ドラえもん スタンガン@ひぐらしのなく頃に、アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT [服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている) [思考]:ヤムィヤムィ、だいじょうぶ? 第一行動方針:眠たい。けどもうちょっと我慢。 第二行動方針:レックスについていく。 第三行動方針:レミリアやイエローを捜したい。 基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。 参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後 [備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。 ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。 サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。 アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。 ベッキーは死亡したと考えています。 【ヤミヤミ(イヴ)@BLACK CAT】 [状態]:疲労(大) 、10歳前後の容姿、ツーカー(→ベルカナ) [装備]:レミリアの服、エッチな下着@DQ5、返響器@ヴァンパイアセイヴァー [道具]:基本支給品×2、光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、 フック付きロープ@DQ5、神楽の傘(弾0)@銀魂、エーテライト×1@MELTY BLOOD、 胡蝶夢丸セット@東方Project、ラグーン号操船マニュアル、病院服、ただの布切れ [服装]:レミリアの服、その下はエッチな下着 [思考]:私は、ヤミヤミだ…… 第一行動方針:ベルカナ達に付いて行く。 第二行動方針:桜の世話をする。 第三行動方針:自分の過去を知りたい。そのために、ブルーや千秋から話を聞きたい。 基本行動方針:自分の過去を知りたい。そして罪と向き合いたい。 [備考]:記憶をすべて消し去りました。 元世界の記憶、この島での記憶、共にありません。 ヤムィヤムィと名づけられました。ヤミヤミという呼称が使われます。 ☆ 「ん……あれ……?」 目を覚ますと、知らない天井。 だけどおかしい。私は桜の下で倒れたはず。 雛ちゃんが一緒にいてくれて、私は雛ちゃんと…… 「あ、そっか。雛ちゃんが……雛ちゃん!?」 意識は朦朧としていたけれど、確か雛ちゃんがベッドに運んでくれたはず! だけど雛ちゃんは…… そうだ、雛ちゃんを捜さないと! 私はあわてて起き上がる。あれ、気づいたけど裸だ! 何で!? それから頭がぐらっとなった。ほぇ~……まだ熱は出てるみたい。 「はあ……イヴに関することはもういいわ。 それより、お前たち、自動人形について知ってるんでしょ?」 外から聞こえる誰かの声。雛ちゃんじゃない。 「人形、というと雛苺のことですわね。ええ、存じ上げていますわ」 外にもう一人いる、それに…… 雛ちゃんを知ってるって聞いて、裸なのも気にせずに私は外に出た。 「雛ちゃんを知ってるの!?」 【F-3/グランバニア城一階・宿屋/2日目/黎明】 【木之本桜@カードキャプターさくら】 [状態]:魔力消費(中) 、疲労(中)、発熱、核鉄二つで回復中、ツーカー(→雛苺) [装備]:核鉄『シルバースキン・アナザータイプ』@武装錬金、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)@武装練金、 [道具]:基本支給品×2、梨々の普段着(近くに干されている) [服装]:全裸 [思考]:雛ちゃんを知ってるの!? 第一行動方針:雛苺を止めたい 第二行動方針:雛苺との約束を守りながら、彼女にこれ以上殺人を起こさせないようにしたい。 基本行動方針:雛苺のそばにいてあげる 【シャナ@灼眼のシャナ】 [状態] しろがね化、消耗(小) [装備] 楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ、あるるかん@からくりサーカス [道具] 支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯 [思考] なに、もう一人いたの? 第一行動方針:ベルカナ達と情報交換。自動人形の情報を得る。 第二行動方針:北東の市街地に向かい居るはずの自動人形(トリエラ・リルル)を破壊する 第三行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。 基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。 [備考]:義体のトリエラ、及びロボットのリルルを自動人形の一種だと認識しました。 [備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。 神社を拠点にする計画も知っています。 弥彦、キルア、アラストールと情報交換しました(どの程度かは次の書き手任せ) 【ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT】 [状態]:精神力消耗大、ツーカー(→イヴ) [装備]:ネギの杖、果物ナイフ@DQ5、ゴロンの服@ゼルダの伝説、レースのビスチェ@DQ5、 [道具]:支給品一式×4、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、黙陣の戦弓@サモンナイト3 テーザー銃@ひぐらしのなく頃に、爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、魔晶石(15点分)、 消毒薬や包帯等、ツーカー錠x3@ドラえもん、マジカントバット@MOTHER2、 パワフルグラブ@ゼルダの伝説、 リインフォース?@魔法少女リリカルなのはA s クロウカード『水』『風』(桜が起きたら融通予定) [服装]:ゴロンの服。その下にレースのビスチェ [思考]:眼をさましたのですか、桜!? 第一行動方針:シャナと情報交換。可能なようなら桜とも。 第二行動方針:四時間以上眠り、精神力を全開させたい。 第三行動方針:朝の放送でイエローが無事だった場合、『交信』でイエローと連絡したい。 第四行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない) 第五行動方針:まともな服が欲しい。仲間も集めたい(イエローの友人の捜索。簡単には信用はしない) 基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア [備考]:葵が死んだことを知りません。 レベッカ宮本を『フォーセリアのレッサー・バンパイア』だと考えている? [リインフォースIIの思考・状態] ※永沢、レックスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている ※魔力不足により、現在使用不能 ≪259 冷たい私、冷たい私達 時系列順に読む 263 遺。(前編)≫ ≪259 冷たい私、冷たい私達 投下順に読む 261 壁に耳あり障子に目あり≫ ≪259 冷たい私、冷たい私達 レックスの登場SSを読む 269 優しい微笑みを浮かべて≫ ベルカナの登場SSを読む アルルゥの登場SSを読む イヴの登場SSを読む 木之本桜の登場SSを読む ≪240 新たな武器と共に≪245 臨時放送、あるいはイレギュラー シャナの登場SSを読む
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069 消せない罪 ◆BEQBTq4Ltk ☆ 時は既に動いている。 ☆ 走り過ぎていった電車を見つめていても状況は何一つ変わらない。 発想の転換に繋がることもなく、次の行動への第一歩に繋がることもない。 よって雪子は何時迄も呆気にとられて立ち止まることを止め、行動を開始する。 突然なモモカの行動に思い当たる節はない。 出会って数分。それだけで彼女の本質を見抜くなど特別な異能が無ければ不可能である。 多重人格的な衝動だったり、最初から他の参加者を殺すことを決めていた。なんてケースも想定出来る。 つまり考えるだけ無駄、黙っているよりも行動を選択する場面であり千枝を追わなければならない。 電車の後を追えばいいのだから簡単に言えば線路を歩けばいい。 しかし背後から電車が迫り轢かれては笑えない冗談になってしまう。 遠巻きから線路の方向へ歩くのが一番だろう。 「じゃあ私は行ってきますね。銀さん」 「うん」 モモカ襲撃の後、雪子と銀は状況を把握しようとしていたが結果は乏しい。 雪子が語りかけても「うん」や「そう」、「わからない」と言った単純な回答しか得られなかった。 元々雪子も自分から多くを語らない人種ではないので詰まる。 ペルソナを所有している自分は危険に晒されてもある程度対応出来る。 判断を下し自分は単独行動を行い、銀はこのまま駅に待機してもらう形になった。 「もしお昼を過ぎても私が戻ってこれなくなったら銀さんも逃げてくださいね」 「何処に?」 「えーっと……このボートパークで」 地図を取り出しながら比較的近い建物を指定する。 首を縦に振る銀を確認しそのままバッグに仕舞い込むと雪子は歩き出した。 少し陽の光を取り戻してきた今ならば視界は先ほどよりも良好だろう。 千枝を探すべく彼女は駅を後にする。 「気を付けて」 「はい。銀さんも」 手を振る銀の姿に微笑みながら再び前を向く。 この会場に知り合いは少なく、味方と呼べる存在全員が参加している訳ではない。 歩けば歩くほど危険に出会す可能性が上昇していくが仕方が無いと割り切る。 エンカウントが発生しないダンジョンなど存在する方が稀である。それと一緒。 去る雪子の姿を見て銀は考える。 観測霊を使えば状況は好転するだろうが彼女は一体何なのか。 ペルソナと呼ばれた能力は見たことがなく、雪子と千枝は姿こそ違えど同じ能力を使っていた。 タロットを壊せば発動するらしいがそれが対価なのか。 これも答えが見つかる話ではなく、彼女は黙ってベンチに座り込んだ。 【C-8/駅/1日目/早朝】 【銀@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品1~2 [思考] 基本:…………。 0:雪子を待つ。 1:黒を探す。 2:千枝たちと朝まで待つ。 [備考] ※千枝、雪子、モモカと情報を交換しました。 ◆ ソファーに座るマスタングは考える。 エンヴィーが何故生きているのか。復活しているからだろうが何故復活しているのか。 お父様なる存在が消えた今、ホムンクルスの脅威は世界から消えた筈である。 例外なくホムンクルスが消滅したとは言い切れないがエンヴィーが死ぬ瞬間を彼は見ている。 人類を苦しめた、ヒューズを殺した外道は完全に死んだ。 己の手で止めを刺していない。それでも彼が生命を潰す瞬間をこの眼で見ていた。 (人体錬成……いや人造生命体ならば再び造られたと言うべきか?) フラスコの中の小人。 人為らざる存在を錬成或いは創り上げられたとしたら。 彼らの国は再び戦火に包まれることになるだろう。 (国……私と鋼のが参加していることを考えると攻められているのか? 戦力を削いだつもりだろうが中尉やアームストロング少佐と少将も居るのだ。そう簡単に落ちることはないと思うが) 自分たちに対する反逆と考えれば少しは納得が行くかもしれない。 ホムンクルスにとってロイ・マスタングとエドワード・エルリックの二名は殺すべき存在だろう。 その二名を殺し合いの会場に放り込むことに違和感を覚えないと確信出来る。 (他の知り合いはキング・ブラッドレイ、セリム、エンヴィー、そしてキンブリー……どれも既に死人と化している。 人体錬成かどうかは知らんが完全に私達を殺しに掛かって来ている……だがエンヴィーの言葉が気になってしまう) 彼らの創造主であり親でもあるお父様。 その計画をエンヴィーはどうでもいいとマスタングの前で吐き捨てたのだ。 親に歯向かうことをしないホムンクルスがそんなことを言うのだろうか。 グリードのような例外もいるため言い切ることは不可能だが謎は確かに存在する。 (お父様の計画がどうでもいいのならこれはエンヴィー達にとってもイレギュラーなのか? ならば奴らが生きていることにも納得出来るが……おっと) 「あの、お茶……です」 「あぁすまないね。花陽」 「わたくしにも一つ下さいまして?」 「もちろんです!」 長考に老けるのも悪くないがこの空間に居るのは自分だけではない。 何時迄も調達した軍手に錬成陣を記入している訳にもいかないのだ。 346プロの一室内にはまだ幼い少女達が自分にお茶の差し入れをしてくれる。 これを無碍にする程ロイ・マスタングと言う男はつまらなくない。 「こんなシュチュエーションでも無ければもっと良い場所に君たちを誘うんだがね」 「へ? あっ、えっと……」 「マスタングさん。困らせる言い方は違うんじゃないですの」 寧ろ女性とは関係を密にしたい人種である。 仏頂面で対応するわけではなく、出来る限り明るく振る舞うのが大人の努めである。 花陽はお茶を飲んでくれるマスタングを見ていた。 足に傷を負っていた彼の身体が心配であるが、軽口を叩けるだけ大丈夫。 といった判断を出来る筈もなくただただ心配しているだけ。 戦闘や戦場とは無関係だった世界だったため仕方がないことである。 「うむ、美味しい。ありがとう」 「えへへ……」 寧ろ彼は女性とコミュニケーションを密にする人間だ。 軍の回線で会話を行うほどにそれはそれは……。 (中尉が居たら小言の一つや二つ言われそうだがな) 「全く……貴方という人間は調子が良いようですわね」 「……どうも私の周りから小言は消えないらしいな」 「な・に・か・い・い・ま・し・て?」 「いーやなんでもない。それはそうと空気の入れ換えでもしないか? 花陽、窓を開けてくれないか」 女性とは怖い生物である。 弱々しく思いがちだが芯は固く、強く。 同じ人間であり性別だけで差別するなど愚の骨頂と言っても差し支えない。 小さな小言でも積もればメンタルに支障をきたすような大言になってしまう。 マスタングに言われた花陽はソファーから離れ窓に手を掛ける。 少しだけ明るくなっている外を見ると心が落ち着いてきたのを感じる。 夜。 深い闇や暗さは存在だけで人々の心を不安で支配する無意識のスパイスである。 少しでも明かりが灯ればそれだけで心の負担は軽減される。 凛ちゃんや真姫ちゃん、それに穂乃果ちゃん達は無事なのだろうか。 自分と同じように頼れる人間と一緒に行動していれば安心なのだが状況を掴める手段は存在しない。 願うだけ。 今の自分には何も出来ない。 出来るとすれば無事なことを小さく祈るだけ。 神様が居てくれれば叶えてくれるだろうが殺し合いに巻き込まれている時点で見放されているかもしれない。 「――え?」 『誰か助けてクマー!!!!!』 気分転換を兼ねた空気の入れ替えは違った意味合いで場を変様させる。 大切な仲間を思い浮かべていたのもつかの間、聞こえてきたのは助けを求める声。 高さ的に幼さを感じる声だが知り合いの声では無いようで少し安心する。しかし。 (安心しちゃダメだよね……) それが知らない声だろうと誰かが危険に瀕していることに変わりはない。 安心しては『知らない人なら死んでもいい』極解ではあるが行く着く先はそれになる。 殺し合いに巻き込まれて感覚が一部麻痺してきている。 仕方が無いことであり、生きている間に殺し合いに巻き込まれる可能性は塵の世界である。 自分の気持ちに喝を入れた花陽は後ろへ振り返る。 自分に戦う力は無く、何処にでも居そうな高校生である。 指揮を取るのはマスタングと黒子、戦闘能力を保有している人物に委ねるのが正しい。 「声の聞こえ方からすると……このDIOの館とやらがある方角みたいですわね」 地図を広げながら黒子は指をその地点へ移動させる。 右上、つまり北東の方から救援が聞こえてきた。 建物を目印にするならばDIOの館が一番近い建物になるだろう。 「あの声は君たちの知り合いか?」 「私は違います」 「私も違いますわね……その質問に何か意味があるのでしょうか?」 マスタングの問に黒子は一歩踏み込んだ返しをする。 彼が放った言葉は普通だ。知り合いの安否を確認するのは当然のこと。 けれどマスタングと合流した時、彼の口から語られた人物がどうしても引っかかる。 そして彼の発言から察するに――黒子は返しを待たずに言葉を発する。 「知り合いだったとしてもエンヴィーとやらの可能性が在る……と言おうとしてましたわね」 「……君は幼いながらも頭が切れる人物のようだな、黒子」 「まさかとは思いますけどエンヴィーの可能性が在るから助けには向かわない、何てことは言わないでしょうね?」 「当然だ。救える生命を最初から見捨てるなど私は絶対にせんよ……っと」 足の傷は大分治ったようだ。元から動ける程度には回復していたがある程度走ることも可能だろう。 無論全力疾走を何度も繰り返せば傷口が再度開く可能性が在ることを忘れてはならない。 「では行ってくる」 「誰が待機すると言ったのか……わたくしは解りません」 「な――本気か?」 女性二名を置いて動こうとしたマスタングを止める黒子。 彼女もまた声の方角へ移動しようとしていた。 この行動にマスタングは驚きながら彼女に確認を求めていた。 「ええ、このような状況だろうと自分の役目を全うしなくてはなりませんので」 それだけ短く言い切ると黒子は花陽の方へ視線を向ける。 戦力を持たない彼女まで連れて行けば、言い方は悪いが荷物が増えるだけだ。 しかし一人で残すと言うことは彼女を守る存在が誰一人して消える意味合いを持つ。 花陽の瞳は不安がりながらも黒子に訴えていた、一人にしないで、と。 その意思に気付くと黒子は少し微笑み言い慣れた台詞を放った。 「風紀委員『ジャッジメント』ですの――さぁ行きますわよお二方」 ☆ キンブリーはDIOの館から出て来た。 あの館には戦闘痕こそ在るが『其れ以外は何も無い』状況だった。 長居は不要、骸であるクロメと共にその場を後にした。 簡単に言えば時間を無駄にしただけ。 特段急いでいる訳でも無いが大きいイベントに乗りそびれては興が冷めてしまう。 この会場にはホムンクルスも居る、退屈することは余りないようだが。 風を扱う少女、死体を操る刀を持った少女、人形のような存在を使役する犬。 未知に溢れているこの会場はキンブリーの本能を刺激していた。 「ん――」 風の流れが変わる。 その方角には燃え上がる紅蓮の焔が暗い世界を照らしていた。 「クク……もしかすると貴方が其処に居るかもしれませんねぇ」 ☆ 爆発を操る男と刀を持った無口な女。 二つの危険を目の前にした穂乃果が抱いた感想はまるで映画みたい。 ハリウッド並の身体能力を持った彼らの戦闘は芸術に見える程。 それに剣一つで対向するウェイブやCGのような人形を出すワンちゃんも規格外だ。 ウェイブに至っては至近距離で刀を回避したり爆発を体験してもそれ程辛そうには見えない。 殺し合い何て嘘でこれは映画か何かの撮影なんだろうか、そんな疑問も生まれてくる。 スタントマンと言えば外国人のような風貌をしているし理解出来そうである。 ワンちゃんも英才的な教育を受けた犬と思えばまぁ、理解出来なくもない。 けれど。 (なんで私が此処に居るんだろう) 自分が巻き込まれている理由には繋がらない。 映画の撮影だとして何故自分がこの場所に居るのか。 アイドルだとかドッキリだとか。流石に其れは夢を見過ぎている。 スクールアイドルがこんなビックリドッキリに巻き込まれるなど有り得ない。 ならば広川が告げたとおり殺し合いが起きているのか。 それこそ夢物語のお伽話だ。 何がバトルロワイアルだ馬鹿馬鹿しい。という話になってしまう。 (あぁ! もう! わかるわけないよっ!!) 頭を抱えながら穂乃果は心の中で叫ぶ。 本当は声を大きく叫びたいが状況が状況であり其処は自重する。 大声を出すと他の参加者に居場所が知られてしまう。 そのとおりであるがお世辞にも穂乃果はそんな考えを出来る程の思考を持ち併せていない。 ならば、何故。 「クロメ……ッ!!」 逃げて来てからウェイブは悲しみと怒りに包まれていた。 ある程度走り、安全な場所に辿り着いた今でも彼は近寄り難い雰囲気を出している。 クロメと呟くごとに何回も木を殴りつけ己の無力を噛み締めるように。 穂乃果は思う。 戦闘を遠くで見ていた時から感じていたが知り合いなのだろう。 クロメ。彼から聞いたイェーガーズの仲間の名前である。 話を聞く限りでは白い男に殺されて今はゾンビのように生きていると言う。 それこそハリウッドな話だが茶化せる空気ではない。 「許さねえ、俺はテメェを許さねえ……!」 憎悪の対象は白い男なのだろう。 手を合わせると白い光のようなモノを発し爆発を起こす力を持った男。 アメリカンヒーローのような能力を持ったあの男のことだろう。 大切な存在を殺されたなら、人は変わってしまうかもしれない。 「――で、怪我はないか穂乃果」 「……わ、私?」 振り返るとウェイブは笑顔を浮かべながら穂乃果の心配をしていた。 対する彼女は先程まで殺気を身に纏っていた彼の豹変振りに驚き間の抜けた声を出す。 「私はウェイブさんと違って戦ってもいないし」 「いや穂乃果と犬ころは俺を逃してくれただろ。その時は爆発に巻き込まれていないか?」 「それはそうだけど……って私は怪我なんてしてないしそれを言うなら」 「俺か? 全然動けるし心配すんな!」 腕を大きく回し健在振りを示す彼は笑って言いのけた。 その光景をイギーは鼻で笑いながら見ていた。 まるで「少しでも心配した俺が馬鹿だ」と謂わんばかりの表情で。 「まぁ、あれだ。クロメが死んだって事実は変わらねえ。悲しんだってあいつは戻ってこない。 切り替えろ、って言われてもそう簡単に切り替えられねえさ。 けどよ。俺がモタモタしてる間にもっと死人が出たら本末転倒なんだよ。何のために俺は帝都に来たんだよってな」 その瞳は決意を悲しさを併せ持った美しい潤いで。 けれど言葉には絶対なる意思が込められている。 強い。 この人はとても強い。 そう思う穂乃果であった。 ☆ そして時は絡み合う。 ☆ 「そう言えばお前、強かったなよな犬ころ」 木の麓に座り込んだウェイブが近くで頭を掻いているイギーに声を掛けた。 イギーは特に反応することもなく欠伸をしている。 「あの砂の人形みたいなのってお前の力だよな。まるでコロみてぇな奴だな。 気に喰わない犬ころだけどお前が居なかったら俺も無事じゃなかったし、ありがとうな」 スタンド。 それはウェイブが知らない異能な力。 ヴィジョンなど彼が存在する世界線では現れない未知なる未来。 愚者と呼ばれているソレを今のウェイブが知る可能性は低い。 イギーの仲間達と合流すれば説明してもらえるだろうが。 ウェイブから礼を言われたイギーは驚きの表情を浮かべた。 まさかこの男から礼を言われるなどと思っていただろうか。 純粋に気持ち悪い。 態度で表すように唾を吐き捨てた。 「な!? 可愛くねえ犬だなァおい!」 よりにもよって唾を吐き捨てやがった。 ウェイブは身を乗り出しながらイギーに声を飛ばす。 その光景を見たイギーは鼻で笑い彼を見下していた。 その態度に怒りを積み重ねたウェイブは何度も大地に靴を叩き付ける。 思えばこの靴には犬の糞が……彼の怒りは更に積もって行く。 「フフ……アハハハハ!」 我慢が出来なくなった穂乃果は笑い出す。 ウェイブとイギーの絡みは外から見ているだけで面白い物である。 本人たちからすれば言われたくもない褒め言葉の類であろうことに間違いない。 「仲が良いね、二人共!」 『「ねえ!!」』 叫ぶウェイブと吠えるイギー。 まるで同じ言葉を発しているように息がピッタリである。 二人は目を合わせると直ぐに視線を逸らす。 こんな奴と一緒にするな。そう物語っていた。 しかし比較的和やかな空気は長く続かない。 何もこの会場の時を感じているのは彼らだけではない。 近寄る存在が在る。 ウェイブは剣を取り、イギーはやれやれと謂わんばかりの表情で立ち上がった。 これまで出会った人間はロイ・マスタングとクロメ、そして白い男。 どれも危険人物だ。 近付いて来る人間が温和な人物であることを願いながら――。 「下がれ穂乃果ァ!」 『休ませてくれもいいと思うけどなぁ……ッチィ! 『愚者』!!』 吠えろ、叫べ、己を奮い立てろ。 連戦になるが仕方が無いだろう。 目の前に現れた人物を彼らは知っているのだから。 「随分と手荒い歓迎ですこと……マスタングさん、貴方の知り合いでして?」 「私の顔は広いからな……少なくとも相互関係はないが」 ロイ・マスタング。 彼らを襲撃した悪魔が再びその姿を現した。 違う点を挙げるならば二人の女性を連れて歩いていることか。 女性だからと言って油断することは絶対にしない。 ウェイブは強い女性を何人も体験してきているのだ、油断は許されない。 剣を握り締めその瞳は敵三人誰一人として一挙動作何一つ見逃すつもりなど無い。 「――穂乃果ちゃ、ん?」 「殺気立たせているところ申し訳ないが私達に戦闘の意思はない。武器を収めてくれないか?」 両腕を挙げ戦闘の意思を放棄した軍服の男。 ロイ・マスタングは温和な声でウェイブ達に交渉を持ち掛ける。 佐天涙子を失った時とは大違いであり普段の冷静さを取り戻している。 だがそんなことは彼らに関係ない。 「何巫山戯たこと抜かしてんだよ……ッ!」 武器を収めるどころかウェイブはマスタングに向かって走っているではないか。 これは一体何の冗談だ、マスタングは次から次へと来る問題に溜息を憑く。 「本当に貴方の知り合いではないのですか?」 「違うと言っているだろ。だが――思い当たる節があるのは我ながら嫌になるがなッ!」 呆れた顔で再度促してくる黒子の問に返すとマスタングは掌を合わせる。 そして指を弾くと乾いた音が響くと迫り来るウェイブの目の前に炎が広がり始めた。 「――ッ!?」 「その表情から察するに私を知らないようだが……エンヴィーめ、余計なことをしてくれたものだ」 ウェイブとマスタング。 二つの視線が交差するこの状況には決定的な要因がある。 ウェイブが恨んでいるマスタングはエンヴィーだ。 そして彼の前に存在するマスタングはエンヴィーではなく本物のマスタングである。 別の存在に变化することが出来るホムンクルス、エンヴィー。 彼の存在がこの状況を生み出し、そして混沌に貶ししめている。 「……上!」 黒子の声が突然発せられる。 言葉どおり上を見上げると仮面を付けた異形なる存在がマスタング目掛け急降下している。 その存在に対処すべく行動を取ろうとするが既に遅い。 黒子が彼を掴み座標移動――テレポートを使用していた。 「信じられない力だな、黒子くん」 「貴方の発火能力も中々の物ですけれど……さて」 手を払いながら黒子は頭を悩ませる。 これがマスタングの言っていたエンヴィーとやらの被害だと。 彼の言葉を信じるならばエンヴィーはマスタングに変身し悪事を行ったに違いない、と。 だがどう説明すればいいのか。 花陽は学園都市を知らない。つまり他の参加者も学園都市を知らない可能性がある。 本来可能性は低いはずだがどうも能力者の存在を知らない人間も多くいる気がしてならない。 チラッと花陽の方へ視線を向ける。 テレポートで避難させていたためある程度離れているが怪我は無いようだ。 マスタングの能力は端的に言って強いが味方を巻き込む可能性が在る。 戦う力を持たない彼女は戦線を下がるべきだ。 それは敵側も弁えているのか、一人の少女が後方で此方を伺っているようだ。 少女を保護している彼らが悪い人間だとは思えないが……状況が状況だ。 「信じられないかも知れませんが貴方たちの知っているマスタングさんとこのマスタングさんは別人……かもしれませんわ」 (我ながら何を言っているか自信がありませんわね) 信じてもらえる可能性は低いだろう。自分だって言われたら信じはしないだろう。 答えを表しているのかどうかは不明だが犬が大きな声で吠えている。 喧嘩を売るように、怒りを表すように。 「お黙り!」 「……黙るのはお前らの方だ……ロイ・マスタングゥッァ!」 「聞く耳を持て青年よ!」 ウェイブは剣を大地に引き摺りながら駆けるとソレを振るい上げる。 大地の砂と塵は目眩ましと化しマスタングの視界を奪う。 黒子は彼の手助けに入ろうとするが手を払われてしまう。それは離れろの合図。 「お前の言葉が信じられると思うか?」 「さぁな――ッ!」 接近したウェイブはその剣を縦に振り下ろす。 マスタングの炎は先程の動作から察するに掌を合し指を弾く二つの動作が必要である。 一瞬で見抜いた彼は確信したのだ、この男は接近戦に弱い、と。 問答無用で振り下ろされた剣は―― 「目を潰し距離を詰めれば炎は届かない……悪くないが生憎私は目が潰されてもある程度感覚は掴める。それに攻撃も出来る」 パチン。 乾いた音が響くと剣を防ぐように小さい紅蓮の焔が浮かび上がった。 「掌を合わせていねえ!?」 「あの一瞬だけで見抜くとは中々やるではないか。だが錬成陣があれば短縮出来るんだ。最も無駄な消費はしたくないがな」 熱さに耐えれず距離を取るウェイブ。 グランシャリオがあれば話は別だが今の状況でマスタングに勝てる未来が見えない。 流れる動作で繰り出される焔は脅威であり接近戦しか出来ない現状、彼は天敵である。 仮に距離を詰めれたとしても近くにはテレポートを扱う少女も居る。 幸い彼女は見ているだけであるが、戦線に加われば此方が確実に負ける。 イギーのスタンドも強いが圧倒的に速さが足りない。 これでは此方が焼き殺されてしまう。 「少しは話を聞いてくれる状況になったな……黒子くんが言ったとおり君達が出会った私は別人だ」 「……俺達を襲ってきたアンタは炎を使わなかった。こんな力を隠す理由何て無いとは思う」 「話が解るではないか。その男の名前はエンヴィー。人間ではなくホムンクルスと呼ばれる人造生命体だ」 「本気で言って……いるんだよな」 ガイアファンデーション。 嘗てナイトレイドに所有していた一人の悪が使っていた帝具の名である。 能力はマスタングが言うような変身能力。 つまり彼の言い分を信じれる情報をウェイブは持っている。 ホムンクルス。 人造生命体ならば心当たりがある。 つまり、つまり、つまり、だ。 マスタングの言葉を信じる材料は揃っている。 だからウェイブは彼の言葉を――。 「じゃあそのエンヴィーってのは」 「花陽ちゃん!?」 「ほ、穂乃果ちゃん……穂乃果ちゃん!!」 ウェイブが言葉を発する前に穂乃果と花陽と呼ばれた少女が声を挙げていた。 彼女の言葉を借りるなら同じスクールアイドルの仲間であり親友であろう。 こんな状況であろうと知り合いに出会える安心感は偉大だ。 特に戦闘からかけ離れた生活を送っている彼女達なら尚更である。 ウェイブ、黒子、イギー。 彼らはその光景を優しく見守っていた。 「止まれ」 冷たい言葉が駆け寄ろうとする二人を止めた。 その瞳は冷たく、悪を裁くような、暖かさを感じられない悪魔の瞳。 その瞳に黒子は呆れ、ウェイブは難を示し、イギーは警戒する。 「穂乃果と言ったな。お前がエンヴィーじゃない証拠を見せろ」 「え……えぇ!?」 穂乃果は驚く。 エンヴィーとはマスタングが言っていたホムンクルスであろう。 まさか自分が疑われてるとは思ってもいなかった。 もし信じてもらえなければ自分も炎で焼かれるのだろうか。 そう思うと急に青ざめ身の危険を感じ始める。 それは花陽も同様であり折角の再開に水を差されては喜び切れないだろう。 そして頭に過ってしまう。 目の前に居る穂乃果が偽物であり、自分を殺そうとしているならば。 自然に後退してしまう。もう少しで触れる距離だと言うのに。 「マスタングさん。警戒する気持ちは解りますがそれは有り得ない言動ですわ」 「それは俺が保証する。穂乃果はエンヴィーって奴じゃねえ。 襲われてるところを俺は知っている。それに、今のあんたの方が怪しいってことに変わりはねえ」 エンヴィーの脅威を知っている。ならば警戒するのは自然である。 しかし幼い少女達、その感動なる再開に水を差す程であろうか。 黒子もウェイブもイギーも。 彼らの思考はマスタング寄りである。 自分が同じ立場なら同じように確認するだろう。 だが、それは決して言葉に出してはならない。この場合に置いては。 花陽はマスタングと黒子が。 穂乃果はウェイブとイギー……が証明出来るかは不明だが身の潔白を説明出来る。 この状況で勘ぐるのは寧ろマイナスな判断でありウェイブの彼に対する評価は曇ってしまう。 それは黒子も同様である。 彼女もまた心の奥底では彼を信じ切れていない。 彼自身がエンヴィーの可能性も在る。だとすれば。 目の前に居る男は佐天涙子の仇ではないだろうか。 渦巻く思考は誰にも止められない。 少なくとも来訪者に頼るべきだろう。 「すいませーん! 少し話を聞かせて……ってもしかして私、空気が読めていない?」 イギーと似たような人形を携えた女性が空から現れた。 それは天使なのか悪魔なのか。 その光景を見た穂乃果と花陽は何が現実で、何が夢なのか解らなくなっていた。 ☆ 時は加速する。 ☆ 「悪いが私は鳴上くんを見ていないし、その千枝と言う子もモモカも知らない」 「わたくしも同じですわ」 「俺も知らねえ、すまない」 「花陽ちゃんも知らないよね?」 「う、うん」 「ワンちゃんも……知らないよねえ」 空から現れた女性の名前は雪子で翼を持った人形はペルソナだと言う。 その説明を受けた彼らの思考は偶然にも重なっていた。 『もう何でも来い』と。 疑っても仕方が無い。 此処には未知しか無い、正解を捕まえるなど不可能に近い。 ある程度の諦めと全てを受け入れる度胸が必要らしい。殺し合いに置いては危険であるが。 「千枝達は電車に乗っていたので……でも電車は此方に来ていないですよね」 「そうですわね。空から見れば解るのではなくて?」 「暗くて何も見えませんでした。光ってもいないので止まってるかもしれません。 私は炎が見えたので誰か居ると思って降りてきたのですが……」 電車の光が見えないと言うことは止まっている、というよりも不祥事が起きている可能性が高い。 黒子がそう言うと穂乃果と花陽は首を縦に振り肯定する。 マスタングとウェイブは電車なる物が解らないため黙っていた。 「わかるか?」 「私は知らん」 アイコンタクトで会話する二人を眺めているイギーは鼻で彼らを笑う。 これだから田舎モンは困るぜ、あぁ恥ずかしい、と。 「結局の手掛かりは何もなしか……今更だが私達はとある声を聞いて行動している」 「助けてー! って声が聞こえたんです」 マスタングが紡ぎ花陽が更に説明する。 プロダクションで休んでいた彼らが行動していた理由は救援を聞いたから。 方角的にはDIOの館がある場所だが、こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。 「それってもしかして……」 穂乃果が不安そうな声を上げる。 その声を知っている、その方角を知っている、その場所を知っている。 その声を聞いて行動していたのは彼女たちも同じである。 そして悲劇が起きたのも知っている。 「その声の持ち主は多分……死んだ」 真剣に呟くウェイブにマスタングは反応する。 「つまりウェイブ。君たちはその声を聞いて確かめたのだな」 「あぁ。そこに居たのは死んだ俺の仲間と白い男だけだった」 白い男。 触れた物を爆発物に変える危険な男。 その思考と言葉から彼は殺し合いに乗った悪なる人物と断言出来よう。 死んだ仲間。 彼が心を許した同じ仲間。 志は違うかも知れないが帝都に蔓延る悪を駆逐する頼れる仲間。 その姿は今でも忘れられない。 まるで目の前に居るように。 「もしかして……ウェイブ?」 「クロメ……? お前、クロメなのか……なぁ!」 走る。 其処には見慣れた仲間の姿が在った。 殺された事実を彼は受け入れられないでいた。 心の何処かでは生きているんじゃないか。あれは偽物なんだ。 目の前に居る彼女は懐かしくて、その声も聞き慣れている。 走るウェイブを見て穂乃果は思った。 何で彼女が生きているんだ、と。 穂乃果はクロメが死ぬ瞬間を見ていないため断言出来ないが不安は残る。 それでも生きていて再開出来るなら。 自分と花陽のように喜びを分かち合えるだろう。 イギーは思った。 お前は何を学んだんだ。 今までのことを思い出せ、この田舎野郎、と。 表情を険しくし彼はスタンドである愚者を具現化させた。 黒子は思った。 感動の再開だろうか。 それは喜ばしいことである。 しかし犬は人形を具現化させた。つまりあの女は危険人物なのだろうか。 雪子は思った。 状況が飲み込めないが知り合いと出会えたのは良いことだろう。 千枝も何処かで無事なら……未だ出会えぬ仲間を想った。 花陽は思った。 自分と穂乃果のように出会えたのは喜ばしいことだ。 知り合いと出会えるのは精神的にも楽になる。 気になることと言えばマスタングが再三言っていたことだ。 マスタングは思った。 彼はエンヴィーの能力を知っているはずだが何一つ警戒していない。 顔写真が含まれている名簿の話をしておくべきだったか、と後悔する。 念には念を置いて発火手袋を履くが出番は思ったよりも早く来そうである。 「ウェイブが無事で何よりだよ」 その聞き慣れた声は精神を安定させてくれる。 出会えた。 それだけで充分だ。 死んだと思っていたお前が現れて俺は嬉しい。 この手でお前を殺せるんだからな。 「クロメは死んだ――巫山戯た真似してっと斬り殺すぞテメェッ!!」 駆ける足を緩めることなくウェイブは勢いを殺さぬまま剣を横に払う。 狙いは首、一撃で殺すべく必殺の一撃を払う。 その攻撃は届かず相手の剣で防がれてしまうが咄嗟の防御では甘すぎる。 腕を飛ばされ無防備となった胴体に蹴りをかまし彼は吠えた。 「もう一度言う……テメェは俺が殺してやるよ、来いや……楽に殺してやる」 彼の怒りは止まらない。 死んだ仲間の姿を騙った悪を殺すまで晴れることはない。 その先の保証はなく、今この場で彼を止める方法など存在しないだろう。 それ程までに大切な存在を穢された今の彼は、強い。 「くっそ……まさか既に死人だとは思ってもいなかったよ。 このクロメって女はさぞかし無能だったんだろうねぇ? ウェイブくん、大佐ぁ?」 立ち上がったクロメと呼ばれた少女は声色を変えながら豹変する。 電流のような禍々しい光が走ると彼女は骨格ごと変化していき、やがては髪や服装までもが変わっていた。 少年のような姿、これがマスタングの言っていたエンヴィーと全員が理解するのに時間は必要ないだろう。 「お前がエンヴィーってのは解ったけどよ、それだけだ。死ね」 「その必要はない、下がれウェイブッ!!」 立ち上がったエンヴィーを見つめながら剣を構えるウェイブ。 蹴りの一つでは収まらないこの怒りは確実に次なる一撃を加えんと。 その終着は死であり、悪を断罪するべくイェーガーズは動き出す。 しかしそれを止めたのはマスタングである。 彼はウェイブを止めると指を弾きエンヴィーを――焼却し始めた。 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「学習のしない奴だなエンヴィー! そのまま黙って焼き殺されろ!!」 「ぃぃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 苦痛なる叫び声。 ホムンクルスであろうとその見た目は少年と変わらない。 エンヴィーの存在を説明でしか聞かない彼らは現状に困惑していた。 ウェイブは思った。 エンヴィーはクロメを騙った愚かな奴だ。 変装して襲ったつもりだがその作戦は今の彼にとって逆鱗に触れる行為だ。 だがこの光景を見ても心の霧が晴れないのはまだ自分が甘い証拠だろうか。 穂乃果は思った。 このエンヴィーは自分を襲ったマスタングと同一人物なのだと。 ウェイブとイギーが居なければ自分は剣で斬り裂かれ、銃で撃たれていたのだ。 なのに。この光景を見て涙を流しているのは何故なのか。 花陽は思った。 マスタングの話を聞く限りエンヴィーとは極悪人でありホムンクルスである。 悪いことをした人は然るべき罰を受ける、当然である。 なのに。この光景を見て哀しさを抱いてしまう。何故涙は頬を伝うのか。 黒子は思った。 この光景を民間人に見せてはダメだ。 今のマスタングは悪魔のように我を忘れている。 彼女は黙って穂乃果と花陽を避難させるべくその腕を取り後方へ消えた。 イギーは思った。 この無能め。田舎モンよりもお前は判断出来ていねえ、と。 その行いは何一つ間違いではないが限度を知れ。 周囲に炎の影響が出ないように愚者を発動し鎮火作業を始めた。 雪子は思った。 この炎は自分のペルソナを超えているかもしれない。 モモカの力もそうだがこの会場には未知が溢れているようだ。 マスタングを止めるべくペルソナを発動し彼の近くへ移動し始めた。 マスタングは思った。 ヒューズの仇、涙子の仇が目の前に居る。 以前は自分の手で殺せなかったが今は違う。 今度こそ焼き殺してやる、手袋を履き替え何度も何度も指を弾く。 スカー、鋼の、中尉――君たちがこの場に居たら今度は私に何と言うのかね。 そしてエンヴィーの周囲は大きな爆発を起こす。 それに一番驚いたのは他でもない――マスタングであった。 ☆ それでも時は止まらない。 ☆ 「やり過ぎだマスタング……お前、それは殺人鬼と変わらない」 何度も焼き尽くされるエンヴィーを見てウェイブはマスタングに毒を吐く。 焼かれその度に悲鳴を上げるホムンクルスは人間と何が違うと言うのか。 その光景は無垢なる少年が焼き殺されているのと何が違うのか。 「反省はするが後悔するつもりはないぞ……それよりも今の爆発は私ではない!」 「なら誰がやったんだって言うんだ――ッ!?」 マスタングの言い訳に反論する彼の言葉は途中で途切れる。 己に迫る光は見たことが在る危険な光、其れが到達する前に横に飛び回避する。 光はそのまま木々に当たると大きな爆発を引き起こしウェイブは先の戦闘を思い出す。 受け身を取り立ち上がると爆風の奥には見慣れた男が笑っていた。 「これはエンヴィー……もう少しで死ぬ所でしたねぇ」 「キンブリーか……礼を言うよ。これで人間どもを殺せる」 「お前はキンブリー!? エンヴィーと言い貴様と言い一体何がどうなっているんだ」 「これはこれは……焔の錬金術師ことロイ・マスタング大佐ではありませんか。 イシュヴァールの英雄がこんなところで魔女狩りの如く少年を焼いているとは何事ですかねェェ!!」 普通に話すように。そして煽るように言葉を吐くキンブリー。 彼はそのまま掌を合わせ大地に落としこむとマスタング目掛けて光が走る。 爆発の錬金術、それこそが紅蓮の錬金術師である彼の技であり業。 目の前に迫る爆発を炎で防ごうとするがその必要はない。 「済まないな雪子くん」 「私は大丈夫です。あの人達は誰ですか?」 「敵であり悪だ。それでいいか?」 「それだけ聞ければ充分です……でもやり過ぎには気を付けてください」 翼の生えたペルソナでマスタングを回収し空へ避難した雪子。 彼に敵を聞くと、エンヴィーの件を注意し彼らの後方へマスタングを運んだ。 「余所見してんじゃねえええええええええええ」 その光景を見ていたキンブリーにウェイブは雄叫びと共に斬り掛かる。 この男はクロメを殺した男だ、敵だ、悪だ、殺すべき存在だ。 怒りと悲しみ、言葉では表しきれない感情を乘せた剣を振るう。 「っガァ!?」 そこで一つ疑問が生まれる。 彼が殺したクロメは何処に居るのか。 殺したならば死体、つまり元の場所へ還っているのか。 違う。 八房の能力は斬り殺した死人を骸のように操ること。 つまりこの場に居ないクロメは何処かに潜んでいることになる。 「蹴りのお返しだよウェイブくーんッ!」 伏兵であるクロメに左肩を斬り裂かれたウェイブ。 追撃するように交差して現れたエンヴィーが彼の身体を蹴り飛ばした。 受け身を取れず何度も転がるウェイブと笑うエンヴィー。 彼が立ち上がった時、エンヴィーは更なる追撃をしようと右腕を異形に変化させていた。 それは緑色で、大きく、悍ましく、怪物のような。 ウェイブを潰さんと叩き落とされるが彼は既に其処から移動していた。 「た、助けられちまったな」 『何度目になると思ってんだ! もう少し周りを見やがれ!』 愚者が彼を移動させていたのだ。 スタンド、その光景を以前にも目撃していたエンヴィーは笑いながら標的をイギーへ移す。 「大佐の相手はキンブリーならさぁ! もう一回遊んでくれないかなぁ?」 ☆ 「お前と戦う日が来るとは思わなかったよキンブリー」 「私もあの英雄と戦うとは感激物ですねぇ」 「どうやら牢獄にまた入れられたいらしいな、私の牢獄は熱いぞ?」 パチン。 指が弾かれるとキンブリーの身体が炎に包まれた。 比較的少ない動作で発動される炎は戦闘において絶大的な力を発揮する。 しかしキンブリーは既に移動を開始しているのだ。 (あいつ……石を爆発物に錬成し私の炎を事前に防いだのか) 己に炎が到達する前に。 目の前で爆発を起こし相殺させたキンブリーは孤を描くように移動している。 石を適当に蹴り上げると錬成を行いそれらを蹴り飛ばす。 即席で錬成された爆弾はマスタングに飛んで行くが手合わせ錬成で防がれてしまう。 炎によって防がれたということは目の前が炎に包まれたということ。 視界を塞がれたマスタングに追撃を掛けるべくキンブリーは更なる錬成を行おうとするが闘っているのは彼らだけではない。 「この炎は……チィ!」 「やるではないか、雪子くん」 ペルソナから放たれた炎はキンブリーの左腕を焼いた。 しかし咄嗟の判断で回避されてしまったため、服を焼いた程度に終わってしまった。 「私を忘れないでください!」 「ならばマスタング大佐。貴方も一人、役者を忘れている」 何だと。 声を上げるよりも早く彼の左肩は貫かれてしまった。 苦痛に顔を歪める時間も惜しい、既に履き替えていた手袋を使い捨てるように指を弾く。 火力の調整などしてる暇もなく。 クロメと自分の間に炎を巻き起こし幾分巻き込まれながらも状況を脱した。 「ウェイブの言葉どおりなら死んでいるらしいが……キンブリー、お前は人体錬成をしたのか?」 「まさか。彼女が持っている刀は殺した相手を人形にするらしいですよ。信じるかは――自由ですけどねェ!!」 クロメに追撃を掛けようと手袋を履き替えるも彼女は既にキンブリーの近くへ退避していた。 履き替える動作では随分と戦闘に支障が出てしまう。 手合わせ錬成も時間を一動作消費するためか、やはり近接戦闘に自然と持ち込まれてしまう。 「ぐ……」 最も左肩を貫かれた今、彼の動作は全て遅れてはいるが。 マスタングが錬成を行うよりも先にキンブリーの魔の手が彼に迫る。 気付けても逃げることは出来ない、錬成することも間に合わない。 「マスタングさん、捕まって!」 ペルソナごと空を翔ける雪子が手を伸ばす。 彼の手を握り締め空へ逃げるが爆発は止らず彼らに迫る。 蛇行するように様々な軌道を描くが無駄な足掻きである。 ペルソナを包むように爆発は発生しマスタングは宙へ投げ出された。 「しま――ウェイブッ!!」 間一髪と思われたがマスタングは叫ぶ。 其処にはイギーと協力しエンヴィーと交戦するウェイブの姿。 その声に気付いた彼はイギーに任せた、と告げると急いでマスタングの落下地点へ走る。 「テメェ何やってんだよ!!」 滑り込みながら両腕でマスタングを抱えるウェイブ。 彼の走りでマスタングは無事に着地を成功させた。 「礼を言うぞ」 「るせぇ」 安心していられなく、目の前にはエンヴィーとキンブリー、そしてクロメが揃っている。 この三人を相手するには負傷しているマスタングとウェイブ。 イギーの三人では少々分が悪すぎる戦いである。 だが。 「まとまっていれば都合がいい――手加減なしの火力で焼き尽くされろ!!」 全力で弾かれた指は一帯に音を響かせると紅蓮の業火を発動させた。 その業火は全てを包み、焼き、生を司る前の塵へ誘うように全てを焼き尽くしている。 しかし。 その瞬間を彼らは見逃さなかった。 「きゃああああああああああ!?」 エンヴィーが右腕を変形させ雪子を業火へ引き摺り込んだ瞬間を。 ☆ 時はそれでも止まらない。 ☆ 「マスタングさん……なんで……」 黒子のテレポートによって戦場から離れた穂乃果達は木々に身を寄せていた。 口から漏れる言葉はエンヴィーを何度も焼き尽くすマスタングの行いに対してである。 「あれじゃ酷すぎるよ……」 何度も何度も何度も。 指を弾き炎が舞い少年が焼かれる姿を見続けるのは年頃の少女達にとっては辛い。 辛いなんて話ではなく、特別な世界ではなく日常から巻き込まれた彼女達にとってそれは毒だ。 こんな光景、人生の中で一度見るか見ないかの話ではなく、絶対に体験しない光景であった。 其程までに彼女達は日常から巻き込まれたのだ、錬金術もスタンドも帝具もペルソナも存在しない。 学園の仲間と共にアイドルの理想像を目指す彼女達には全く以って無縁の世界である。 「花陽ちゃん、大丈夫……じゃないよね。私も辛い……心が泣いている」 胸が、魂が、心が泣いている。 助けてあげたい、少年を。でも、その少年は、人間を殺すホムンクルス。 それは救う対象ではなくて、裁く対象であり炎で焼かれるのは理に適っている。 「……大丈夫じゃない、で……す。でも、マスタングさんは親友や会場で出会った人を殺されたって言ってました……」 涙を流しながら花陽は話す。 マーズ・ヒューズと呼ばれるマスタングの親友はエンヴィーに殺された、と。 佐天涙子と呼ばれる白井黒子の親友はエンヴィーに殺された、と。 ならば彼の行いも肯定出来るものなのか。 痛みを感じ、叫び声を無視しながら、何度も何度も何度も焼き尽くすことが許されると言うのか。 「じゃあ、マスタングさんは正しいの!? あんなに何度も焼く必要ないじゃない!」 立ち上がり腕を払いながら穂乃果は叫ぶ。 感情のままに。見た光景を脳裏に焼き付けながら叫んだ。 確かにエンヴィーは殺される存在かもしれない。 だが、彼処まで徹底的に行う必要は感じられない。 「そもそもエンヴィーって人がホムンクルスって何よ! クロメって人から変身したのは人間じゃないと私も思うし、それに私も襲われた。 でも……でも! あんまりだと思わないの!? あんなに何度も何度も焼かれて、平気なの!?」 そもそもマスタングの話を鵜呑みにする必要があるのか。 彼女からしてみれば彼は襲ってきた張本人である。 その正体はエンヴィーであると判明したが『マスタングの姿から襲われた事実』に変わりはない。 つまり、穂乃果に残った結果は『マスタングの姿から襲われた』であり、彼には自然と疑念を向けてしまう。 彼が正論を述べようが、頭では理解しているが、心の何処かで襲われた光景が邪魔をしてしまう。 もしかしたらマスタングはエンヴィーかもしれない。 また自分に襲い掛かり殺されてしまうかもしれない。 その炎でエンヴィーのように何度も何度も何度も焼き尽くされるかもしれない。 一度考えてしまえばそれは迷宮の中と同義であり、疑った者は最後まで疑ってしまうだろう。 「何か言ってよ花陽ちゃん!」 これでは自分一人でマスタングの悪口を言っているみたいだ。 泣いて俯いている花陽に彼女は激のような言葉を飛ばす。 それでも花陽は黙り、少ししてから頭を上げた。 その視線は何とも言い難いもので穂乃果を見つめていた。 「――ッ、マスタングさんがやっていることは人殺しとかわらな――」 「そこまでですの。高坂さん」 感情が高ぶった穂乃果を止めたのは今まで黙っていた白井黒子。 このまま彼女を喋らせていると感情と勢いに任せ思ってもいないことまで叫んでしまう。 見た光景と因果はどうであれマスタングのことを人殺し呼ばわりすることは誰一人として本望ではないだろう。 「す……すいません」 「謝るならわたくしではなくて小泉さんに――危ないッ!!」 酷い言葉を浴びさせてしまった花陽に謝るべきだ。 黒子は穂乃果にそう告げ、彼女も花陽に謝ろうと自分を見つめ直していた。 彼女達の絆はそう簡単に崩れぬ物ではないが小さな綻びを放置しておけば後に取り返しのつかないことになる。 だが言葉を発する前に白井黒子は彼女達の腕を掴みテレポートを試みた。 突然の行動に驚く二人だが、頭が勝手に理解してしまう。 異常なる現象は会場に来てから何度も体験しているがレパートリーが豊富過ぎる。 「こ、氷……?」 テレポートが完了し自分が居た地点を見つめる穂乃果。 座標移動に慣れている自分に違和感を覚えつつも、その感覚は目の前の光景に塗り潰される。 自分達が数秒前まで留まっていた場所は何らかの力によって凍らされていたのだ。 「瞬間移動か……理解出来ない力を持っているな」 そして声の方を見る。方角は更に奥。 其処には一人の男が此方を見ながら黒子の能力に興味を示していた。 初老に見える男は一歩、更に一歩と踏み込み確実に距離を詰めていた。 「止まりなさい、貴方はわたくし達に何か用でもおありで?」 「用? 俺が人間を殺すのに理由が必要だと思うか……その力、見せてみろ」 「警告はしました……ですのッ!!」 その場にしゃがみ込んだ黒子は石を数個握りテレポートを発動させる。 石は男の目の前に現れ、空間を無視した投石を自在に描く。 その弾丸は男の顔や身体に命中し、普通の男性ならば気を失うか、戦意を喪失するか。 少なくても病院の世話になる程度の攻撃をお見舞いしたのだ。 「そうか……手に取った物を移動させる力か」 「効いてないみたいですわね……身体の下は頑丈なのか我慢強いのか解りませんわね」 男は冷静に黒子の能力を分析していた。 石の攻撃を無視するように、平然と、声を発している。 その光景に若干の驚きを見せるも黒子は次の一手を考える。 何も学園都市には有り得ない人間なんて無数に溢れている、今更一人や二人。 次の一手だが、考えるならば穂乃果と花陽を避難させることが先決だ。 彼女達を守れるかどうかは男の力を見ないと判断出来ないが、安全を保証することは出来ない。 先程から何度も焔の光と音が聞こえている今、マスタング達の加勢を期待するのは無駄だろう。 (鳥――?) 此処で考えが一度途切れる。 男の近くに飛んでいる鳥が視界に入ったのだ。 何も外に鳥が居ることは特段珍しいことではない。 ウェイブ達と一緒に行動していた犬も居るのだ。 鳥が居ても何も可怪しいことはない。 (この違和感は一体――?) だが気になることがある。 犬と鳥以外に他の動物を見ただろうか。 鳥は口を開いている。 思えば犬は首輪を付けていた。 その首輪は自分達と同じ物であり、参加者の証でもある。 つまり、犬は自分達と同じ立場であり、殺し合いに参加している犬だ。 そして鳥も首輪を付けている。 ならばこの鳥も参加者であり、殺し合いに参加していることになる。 襲って来た男は殺し合いに乗っている悪である。確実だ。 その男と一緒に行動している鳥は――気付いてしまった。 「もう一度移動しますわよッ」 光り輝くクチバシから放たれた氷を避けるために黒子は再び能力を発動した。 ☆ 時の流れは止められない。 ☆ 豪炎包まれる目の前の光景を彼らは凝視していた。 どんな小さい動作も見逃せない、いや、最悪の結果にならないことを祈っているだけだ。 敵である標的の三人が固まった時、マスタングは渾身の火力で炎を錬成した。 全てを焼き尽くすように、二度と悲劇を繰り返さないようにありったけ。 だが最後の最後にエンヴィーは足掻いたのだ、空を飛んでいた雪子を引き摺り込んだ。 つまり豪炎の中にはエンヴィー達の他にも雪子が存在しており彼女は焼き殺される対象ではない。 その事実を否定したいマスタング達は黙って豪炎を見つめていた。 「……誰か来る」 ウェイブが小さく、それでも全員に聞こえるように呟いた。 豪炎の中から一つ人影が飛び出して来たのだ。 接近戦に優れているのはクロメだろう。 見の軽やかさと類まれなる体術は多くの参加者の中でも上位に分類される。 本来の得物である八房を所有している今、彼女は最大限のポテンシャルを発揮出来る。 「――雪子くん?」 此方に向かって走って来たのは雪子だった。 その見た目は若干焦げているが、生命に別状はないようだ。 どうやって豪炎から逃れたかは不明だが、ペルソナでも使用したのだろう。 何はともあれ生きていた彼女に安心したマスタングは再び指を弾き彼女を炎で包み込んだ。 「バッグから私が錬成した剣が見えているぞ――エンヴィーッ!」 その雪子は本物ではなく偽りの存在。 言うなればエンヴィーが変装した裁くべき悪其の物である。 バッグから飛び出している剣はマスタングが錬成した物。 佐天涙子の目の前で錬成したあの剣だ、見間違える筈もない。 その剣はウェイブとイギーも目撃している。 彼らと穂乃果が襲われた時、マスタングに変装していたエンヴィーが使用していた物だ。 「ああああああああああああああああああ助け――」 「もう遅い――貴様は此処で焼き殺すッ!」 戸惑いも後悔も容赦も情けも必要ない。 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「いやああああああああああああああああああああああ」 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「死んだ人間はその痛みを感じることは出来ない。ならばお前が代りに味わえ」 マーズ・ヒューズが、佐天涙子が。 彼に関わらなければ少なくとも生命の鼓動が潰えなかった二人。 お前が殺した二人は痛みも感じることが出来ないのだ、ならば償え。 この焔でお前を何度も焼き尽くしてやる、苦しんで死ぬがいい。 この場所には中尉もスカーも鋼のも存在しない、止める人間は存在しないのだから。 「あ、ああああああああああああああああああああああああああ」 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「や、めて……マスタングさ……ああああああああああああああああああああああああ」 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「変装が解けないとは随分と賢者の石を貯めこんでいるような――ッ!」 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「私はあああああ……あぁ……ああああああ……」 パチン。 掌を合わせ指を弾く。 「そこまでにしてあげなよ大佐。彼女はホムンクルスじゃないんだ、死んじゃうよ?」 パチン。 「え……エンヴィーだ、と……なら――ッ!?」 認めたくない。 何故お前が別の場所から現れるのだ。 お前は私に焼き殺されている筈だ、そうだ、そうなんだ。 雪子に変身し意表を突いたつもりだが私を欺くには爪が甘過ぎるのだ。 だから、何度も何度も叫びを無視して、何度も何度も炎で焼き尽くしていたのだ。 それなのに。 「バッグからはみ出してた剣はこのエンヴィーがぶっ刺しただけだよ? その後、ちょいと背中を蹴り飛ばしてあげたんだ。だから走って向かってるように見えたんだよ」 「しゃ、喋るな」 「声が震えているよ大佐? 認めればいいじゃないか! お前は! 雪子って子を間違えて焼いたんだって!」 「喋るなああああああああああああああああああああああああああああああああ」 目の前に存在する悪魔をこの場から焼き尽くし消滅させる。 己の中に生まれてしまった罪から逃げるようにマスタングは錬成を試みる。 しかし。 彼が雪子を焼き尽くしている間にクロメは距離を詰めていた。 マスタングが錬成するよりも早く八房で斬り掛かるが失敗に終わる。 彼女がノーマークで動けるならば、ウェイブも同様に動けているから。 「しっかりしろ、戦いはまだ終わってねぇぞぉ!!」 割り込むようにクロメの一撃を剣で受け止めると力任せに押し飛ばす。 そのままマスタングから離れるように追撃を行い、クロメを彼から引き離すことに成功する。 しかし休む間もなくエンヴィーは右腕を大きな質量を持った異形に変形させ彼を潰そうとする。 それを防ぐのがイギーの役目であり、愚者はその身でエンヴィーの一撃から彼を守り抜いた。 力比べだ。ホムンクルスとスタンドの力比べが始まった。 それはどちらも互いに退かず、エンヴィーは犬の力に驚くが軍配はキンブリーに上がる。 そう、イギーでもエンヴィーでもなくキンブリーに上がった。 豪炎の中マスタング以外の参加者が自由に動けるならば。 キンブリーが動けない理由が存在する訳もなく。 彼はイギーが立っている大地に爆発の属性を付加させ――。 「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 イギーは大地諸共轟音と共に弾け飛んだ。 ☆ やがて時は止まる。 ☆ マスタングはウェイブ達が戦闘をしている間、雪子の傍へ移動していた。 エンヴィーの攻撃をイギーが防いでいる時間を利用して彼は自らの罪へ近寄ったのだ。 「ぁ……ぁぁ……」 呼吸も禄に出来ず、発声もままならない。 肺を始めとするあらゆる器官が焼き尽くされている証拠である。 焦げた匂い、嗅ぎたくない物だが何度も嗅いだことのある匂い。 それは死する前の人間が発する物であり雪子もそれの例に漏れないだろう。 「たすぇ……ち、ぇ……なるか……ぁ……ぁぁ……」 「私は…………」 「余所見してんじゃねえ! お前は雪子の分まで生きる義務があんだよォ!!」 雪子が最後に力を振り絞って発した言葉はマスタングに届かない。 既にありとあらゆる器官が潰されている今、声は声とならず呻きとして音になる。 その音を聞かないように。 マスタングは己の中に生まれた罪から逃げようとはしていた。 だが。 今更逃げるのは虫が良すぎる話だ。 雪子が死んだのは判断を誤ったからであり、手を下したのは己である。 悲劇のヒロインを気取るなど誰が赦すのか、軍人には必要ない。 「当たり前だ、私は死ぬ訳にはいかん……だから今は」 戦う。 償うのはその後で。 全てを清算するのは悪を排除し未来を感じれる日が来るまで。 マスタングは近寄って来たウェイブに視線を移し変化を感じる。 一つに彼の左肩が斬り裂かれているのだ。 自分も左肩を貫かれているが犯人は一緒だろう。 彼がクロメと呼んでいた死体の少女、間違いはない。 更に一つ。 彼が抱えているのは黒い犬のイギー。 自分を助けてくれた犬はキンブリーの攻撃が直撃し瀕死状態に陥っていた。 異様なる匂いが霞始め、身体は鮮血で彩られ、呼吸も荒くなっている。 治療を今すぐでも施してやりたいが状況が状況であり不可能だ。 「気を付けてくださいまし、更に敵が――ッ!」 瞬間移動によって移動して来た黒子達を待ち受けていたのは焼き殺された雪子の死体。 理由はどうであれ犯人は独りしか居ないだろう。 花陽は手で口を覆い込み上げてくる何かを必死で食い止めた。 穂乃果は気を失いそうになるも、踏み止まりマスタングへ視線を移した。 そして答えるのはエンヴィー。 「君達ぃ気を付けないと危ないよー? 大佐は仲間を見間違えて殺しちゃう悪魔だからねー!!」 全身全霊全力を込めて煽るように。 憎たらしい笑顔を浮かべながらエンヴィーは現実を彼女達へ突き付ける。 「これは怖いですね……あぁ怖い」 追い打ちを掛けるようにキンブリーが呟く。 その単純なる言葉は恐怖心を煽る最大のスパイスとなる。 現に穂乃果と花陽の顔色は会場に来て一番悪い状態になっている。 仲間だと思っていた人物が仲間を殺していた。 そもそも錬金術だのホムンクルスだの専門知識を並べ信用に欠けていた男が。 穂乃果に至っては一度、偽物であるとはいえ襲って来た人物だ。 信用する方が難しいだろう。 「今は納得してくれとは言わん。だがこの場を切り抜けるまでは大人しく――新手か!」 まずはこの場を切り抜けなくては泣くことも話す機会も設けられない。 覚悟を決め戦況から抜け出すため構えるマスタングとウェイブ、黒子だったが邪魔が入る。 それはエンヴィー達にも予想外であり、黒子は歯を食いしばる。 「あの男は何らかの能力者ですわ……そして鳥は氷を自由に扱いますの」 「鳥が氷……本当かね」 「は、はい……こんな風に……」 「こ、小泉さん……貴方、いつの間に!?」 異様な空気を放っている男の能力は不明だが鳥は氷を扱う。 黒子の説明に難を示すマスタングであるが花陽の説明で信じざるを得なくなる。 其処には凍った右腕を差し出す花陽の姿が在ったから。 「最初に襲われた時に……突然過ぎて右腕の感覚が……ぁ……ないんです」 弱々しい声を聞き、黒子は己の無力さを実感した。 何と無力か。彼女を助けるどころか負傷に気付かず無理をさせていたとは。 襲撃から逃れる術を考えているだけで精一杯であった。そんなものは言い訳だ。 「……マスタングさんとウェイブさん。早く此処から脱出して逃げますわよ」 「――当然だ」 黒子の提案に男二人は声を重ねて答える。 花陽の治療、イギーの治療。 大切な仲間を救うためには五人の襲撃者から逃れなければならない。 此処が正念場――しかし事態は急速に終焉を迎える。 ☆ どうして、だ。 どうしてお前が其処に居る。 いや、そんなことはどうでもいい。 よく見れば死にかけているじゃないか、いい気味だ。 死んだ、俺は死んだ。 だがこうして生を再び受け、DIO様ではなくこの男に従っている。 命令は絶対だ、敵は殺さず、戦闘の場を作り出す。 だが。 お前は別だ。 お前には借りが在る。 何倍にもして返してやる。例えお前が死にかけていても。 いや。 お前を殺さないと俺が俺を許さない。 ☆ 後藤の言い付けを守らずペットショップは急激な速度で彼らへ突っ込んだ。 自分の静止を効かずに行動するペットショップに後藤は何を思うのか。 結果としては何も思わない。 自分の支配から抜け出せた、何てことは思いもしないだろう。 ただ、本能に従って鳥は動いているそれだけだ。 迫るペットショップに対向するべく身構える三人だが氷の対処が出来るのは独りしか居ない。 手合せ錬成からの発火で氷を蒸発させるがペットショップ自体は止まる素振りを見せない。 彼が何を仕掛けるかは不明だが挟まれてはどうしようもない。 「ウェイブ! 私がキンブリーの錬成を防ぐ、お前はあの鳥を頼む!」 「解ったなんて言えねえけどやるしか……ねえ、な」 殺したい程に嫌な笑みを浮かべているキンブリーは爆発の錬成を施していた。 その邪悪なる導火線のような光は対主催陣営目掛けて走り始めている。 マスタングは炎で対抗し、到達する前に燃やし尽くすしかないと考えた。 ならば対処出来るのは自分だけだ。しかし鳥に対応する手段が失くなってしまう。 黒子の瞬間移動基いテレポートは強力だがこの場では役者を活かし切れていない。 ならば頼む相手はウェイブだが自分でも思う。これは無理難題を押し付けている、と。 彼の戦闘技術は完成に近いが異能なる力は持ち併せていない。 本来ならばイギーに頼みたい所だが瀕死で倒れこんでいる彼に頼める訳もなく、今はウェイブを信じるしか無い。 (どうすれば――考えろ) 鳥はクチバシの中に氷柱を構え急速に突撃しようとしている。 つまり接近戦だ、あの鳥は遠距離ではなく近距離で仕掛けようとしている。 ならば剣しかない自分でも対処する術はある。 一撃を一撃で相殺し、追撃を掛け斬り殺すしか手段は無いようだが。 しかし遠距離攻撃のように途中で氷を飛ばされては敵わない。 この場は黒子に頼み穂乃果と花陽、そしてイギーを逃して貰うべきか。 考えても良い案は浮かばず、原始的に斬り裂こうと一歩下がるウェイブ。 「ん……!」 すると雪子のバッグを踏み付け体勢を崩してしまう。 立て直すために剣を大地に突き刺し重心を保つがペットショップに反撃を行う時間は潰された。 黒子は瞬間移動の準備を始めるが、ウェイブはこんな状況でも笑っていた。 雪子のバッグから出て来た其れを彼は知っている。 クロメと同じように彼と志を同じく持った仲間の帝具。 救世主のような登場を果たした仲間にウェイブは声を振り絞り叫んだ。 「あの鳥を喰え!! コロォ!!」 バッグから飛び出したのは小さい犬。 丸い身体をした犬は当たり前のように二足出歩き、四足で歩き。 黒子達の前に飛び出すとその可愛らしい外見とは別の異形へ変化した。 魔獣变化ヘカトンケイル、別名コロ。 巨大化した生物帝具は問答無用でペットショップを口に捉えた。 するとそのまま口を閉じ何回も歯を動かし、鳥を喰わんと動き始める。 ペットショップは突然過ぎて全てを理解していなかった。 イギーに止めを刺そうとしたら自分が別の犬に喰われていた。 全く以て理解不能だが、それでも一つだけ理解出来る事が在る。 それは自分が助からないと言うこと。 翼。 足。 クチバシ。 身体のありとあらゆる部分を噛み殺された自分に残った未来など――ない。 「走るぞ、黒子くんは彼女達を頼んだぞッ」 ペットショップが絶命すると同時に。 マスタングは迫るキンブリーの魔の手を炎で相殺し逃走を促した。 その合図に従い黒子は瞬間移動を行い負傷した花陽と穂乃果を逸早く避難させる。 その後を追うべく走る大佐とウェイブだがクロメはそれを許さない。 「俺の前に現れないでくれ――」 振られた剣に対向するべく斬り返すウェイブ。 その一撃はクロメの重心を崩すことに成功し彼は蹴りの追撃を行い距離を離す。 だが。 その方向はイギーが倒れている場所であり、クロメは何も言わず八房でイギーを貫いた。 「――」 声にならない叫びを上げるウェイブ。 その腕を引張り戦線から離脱するマスタング。 大敗だ。 鳥を独り殺せたが失った物は此方側が圧倒的である。 己の無力を感じた男達はコロを回収し無言で業火の中を走り抜けていた。 ◆ 後藤が感じたことは一つ。 人間が勝手に盛り上がり、勝手に戦い、勝手に終わっただけである。 自分は何一つ関わっていない。 己の中に眠る謎の欲求を満たす現象は何一つ発生せず。 ペットショップが死んでも何一つ感情を抱かず。 無言で誰も居なくなったその場を去った。 【B-7/北/1日目/早朝】 【後藤@寄生獣 セイの格率】 [状態]:両腕にパンプキンの光線を受けた跡、手榴弾で焼かれた跡、疲労(小) [装備]:なし [道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、不明支給品1~0 [思考] 基本:優勝する。 1:泉新一、田村玲子に勝利。 2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃) 3:セリムを警戒しておく。 [備考] ※広川死亡以降からの参戦です。 ※首輪や制限などについては後の方にお任せします。 ※異能の能力差に対して興味を持っています。 ※会場が浮かんでいることを知りました。 ※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。 ※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。 ※凜と蘇芳の首輪がC-5に放置されています。 ※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。 ◆ エンヴィーは嗤う。 楽しくなってきた。あの大佐に仕返しを行える機会を早々に得たのだから。 まさか自分と仲間を見間違え殺すとは嗤い者である。 何が人間だ。 何がホムンクルスだ。 これではどちらが怪物かわかりゃしないじゃないか、と。 キンブリーは嗤う。 遠巻きで炎を見かけた時はまさかマスタング本人が居るとは思いもしなかった。 それもエンヴィーと交戦中など偶然だの奇跡だの安い言葉では例えられない程に面白い。 イシュヴァール人を焼き尽くしたように仲間を殺した彼は実に愉快だ。 堕ちる所まで堕ちて貰いたいが芯の強い彼ならば立ち直るだろう。 敵としての立場ではあるが焔の錬金術師は強い、認めざるをえない。 「そして貴方はまだ息があるのですか……ホムンクルスでもないのにしぶとい犬だ」 数歩進んだ先にはクロメに胴を貫かれたイギーが風前の灯の様に震えていた。 口から息が漏れるように流れており、それは最早呼吸と呼べる程整えられていない。 だがその瞳は死んでおらず、瀕死の今でもキンブリーを睨み付けていた。 この犬は実に興味深い。 謎の人形を使役しホムンクルスの力に対抗出来るのだ。伊達に首輪を嵌めていないと言うことだろう。 「そんなに生きたいのなら私が新しい生命を授けてあげましょう。礼は入りませんからね」 イギーに刺されている八房を抜くと ――その生命を奪うように胴を貫いた。 【B-7/南/1日目/早朝】 【エンヴィー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(中)、火傷(小)、腹に痛み [装備]:ニューナンブ@PERSONA4 the Animation、ダークリパルサー@ソードアート・オンライン [道具]:ディパック、基本支給品×2、詳細名簿 [思考] 基本:好き勝手に楽しむ。 1:マスタングの姿になって、彼の悪評を広める。 2:エドワードには……? 3:ラース、プライドと戦うつもりはない、ラースに会ったらダークリパルサーを渡してやってもいい。 4:キンブリーと一緒に行動し他の参加者を殺す。 [備考] ※参戦時期は死亡後。 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(中)、精神的疲労(小)、高揚感 [装備]:承太郎が旅の道中に捨てたシケモク@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ [道具]:ディパック×2 基本支給品×2 ランダム支給品0~2(確認済み) 躯人形・クロメ@アカメが斬る! 帝具・死者行軍八房@アカメが斬る!、躯人形・イギー@現地調達 [思考] 基本:美学に従い皆殺し。 1:エンヴィーと共に行動する。 2:ウェイブと大佐と黒子は次に出会ったら殺す。 3:少女(婚合光子)を探し出し殺す [備考] ※参戦時期は死後。 ※死者行軍八房の使い手になりました。 ※躯人形・クロメが八房を装備しています。彼女が斬り殺した存在は、躯人形にはできません。 ※躯人形・クロメの損壊程度は弱。セーラー服はボロボロで、キンブリーのコートを羽織っています。 ※躯人形・クロメの死の直前に残った強い念は「姉(アカメ)と一緒にいたい」です。 ※死者行軍八房の制限は以下。 『操れる死者は2人まで』 『呪いを解いて地下に戻し、損壊を全修復させることができない』 『死者は帝具の主から200m離れると一時活動不能になる』 『即席の躯人形が生み出せない』 ※躯人形・イギーは自由にスタンドを使えます。 ◆ マスタングの背中は小さく見えた。 仲間を誤って殺してしまった罪は未来永劫消える事はないだろう。 だがウェイブと黒子は言葉に出して彼を責めない。 危険なあの状況での彼の判断は間違ってはいないのだ。 もしエンヴィーが雪子に变化していたとしたら。彼は全滅していたかもしれない。 絶対に口には出さず、思いもしたくはないがイギーの犠牲だけで助かったのは奇跡と言えよう。 彼が居なければウェイブと穂乃果は最初のクロメとキンブリーの交戦で死んでいたかもしれない。 彼が居なければマスタングはエンヴィーに潰され死んでいたかもしれない。 彼が居なければ黒子達はキンブリーに四肢を爆破されていたかもしれない。 愚者を司る小さい勇者に救われたこの生命を無駄にする訳にはいかない。 そしてウェイブはいつか穂乃果にイギーが死んだ事実を伝えないといけない。 今の彼女はマスタングに疑惑の視線を向けている。 信じられない、信じられないのだ。 人殺しの彼と一緒に行動していいのか、そう思ってしまうのだ。 花陽は悩む。 本当にマスタングは悪い人間なのか。 初めて出会った時、彼のエンヴィーに対する復讐心と佐天涙子に対する気持ちは本物だった。 それを信じたい。雪子を殺したことは事実だが彼女はマスタングを信じたい。 マスタングは黙って指を弾き花陽の右腕を侵食していた氷を溶かした。 そして振り向くことなく大地に腰を落とし拳を叩き付ける。 何度も、何度も、何度も。 血が浮かび上がる程何度も叩き付ける。 自分の無力を、無能を、力の無さを恥じるように何度も何度も何度も。 その光景を見て誰一人として言葉を発しない。 マスタングの背中は小さく見えた。 【天城雪子@PERSONA4 the Animation 死亡】 【ペット・ショップ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 死亡】 【イギー@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 死亡】 【B-7/東/1日目/早朝】 【高坂穂乃果@ラブライブ!】 [状態]:焦り、疲労(中)、精神的疲労(大)、不安、マスタングに対する恐怖 [装備]:練習着 [道具]:基本支給品、鏡@現実、幻想御手入りの音楽プレーヤー@とある科学の超電磁砲、コーヒー味のチューインガム(1枚)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、イギーのデイパック(不明支給品1~3) [思考・行動] 基本方針:μ sのメンバーを探す。 0:どうすれば……。 1:音ノ木坂学院へ向かう。 2:ウェイブと一緒に行動する。 3:そう言えばワンちゃんは……? 4:ロイ・マスタングを警戒。 [備考] ※参戦時期は少なくともμ sが9人揃ってからです。 ※イギーを「ただの犬」だと思っていましたが認識が変わってきています。 ※イギーの名前を知らず、「ワンちゃん」と呼んでいます。 ※『愚者』を見ました。 ※幻想御手はまだ使っていません。 ※ウェイブの知り合いを把握しました。 【ウェイブ@アカメが斬る!】 [状態]:出血(小)、ダメージ(中)、疲労(中)、左肩に裂傷、怒り、悲しみ、無力感 [装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン [道具]:基本支給品、タツミの写真詰め合わせ@アカメが斬る!、魔獣变化ヘカトンケイル@アカメが斬る! [思考・状況] 基本行動方針:ヒロカワの思惑通りには動かない。 0:キンブリーは必ず殺す。 1:他参加者(工学に詳しい人物が望ましい)と接触。後ろから刺されぬよう、油断はしない。 2:地図に書かれた施設を回って情報収集。脱出の手がかりになるものもチェックしておきたい。 3:首輪のサンプル、工具、グランシャリオは移動の過程で手に入れておく。 4:盗聴には注意。大事なことは筆談で情報を共有。 5:仲間たちとの合流。 6:今後の方針を固める。 [備考] ※参戦時期はセリュー死亡前のどこかです。 ※クロメの状態に気付きました。 ※ホムンクルスの存在を知りました。 【小泉花陽@ラブライブ!】 [状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)不安、恐怖心、吐き気、右腕に凍傷(処置済み、後遺症はありません) [装備]: [道具]:デイパック、基本支給品、スタミナドリンク×5@アイドルマスター シンデレラガールズ 、スペシャル肉丼の丼@PERSONA4 the Animation [思考・行動] 基本方針:μ sのメンバーを探す。 1:どうすればいいか解らない。 [備考] ※参戦時期はアニメ第一期終了後 【白井黒子@とある科学の超電磁砲】 [状態]:疲労(中)、精神的疲労(中)、無力感 [装備]: [道具]:デイパック、基本支給品、スピリタス@ PSYCHO PASS-サイコパス- [思考・行動] 基本方針:お姉様や初春などの友人を探す。 1:出来るならばみんなのフォローに回りたい。 2:エンヴィーは倒すべき存在。 3:御坂を始めとする仲間との合流。 4:マスタングに対して―― [備考] ※参戦時期は不明。 【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、左肩に穴(止血済み)、両足に銃槍(止血済み)、無力感、けれど覚悟は揺らいでいない [装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、即席発火手袋×10 [道具]:ディパック、基本支給品 [思考] 基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。 0:悲しむ場面は今ではない。みんなにどう説明するべきか――。 1:エンヴィーを殺す。 2:エドワードと佐天の知り合いを探す。 3:ホムンクルスを警戒。 4:ゲームに乗っていない人間を探す。 [備考] ※参戦時期はアニメ終了後。 ※学園都市や超能力についての知識を得ました。 ※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。 ※即席発火手袋は本来のものに比べて材質や作りが劣るため使い捨てとなっています。 【魔獣变化ヘカトンケイル@アカメが斬る!】 可愛らしいぬいぐるみの犬のような生物型帝具であり、元の所有者は参加者でもあるセリュー。 戦闘時には巨大化し人間だろうと喰い尽くす兵器となる。 身体の何処かにある核を破壊しない限り死なないが、逆に言えば核を破壊すれば一撃で死ぬ。 奥の手は更に戦闘能力を増大させる『狂化』 使用すれば一日間は動けなくなり、制限として二時間後、強制的に破壊される。 時系列順で読む Back 弱肉強食の主従 Next 北方司令部にて 投下順で読む Back 弱肉強食の主従 Next 北方司令部にて 058 人形は真実を語らない イギー GAME OVER ウェイブ 076 Wave Live! 高坂穂乃果 041 悲しみの息の根を止めて 小泉花陽 ロイ・マスタング 白井黒子 058 人形は真実を語らない ゾルフ・J・キンブリー 080 亀裂 032 彼女たちがはじめる四色定理 銀 天城雪子 GAME OVER 027 偽りの悪評 エンヴィー 080 亀裂 068 弱肉強食の主従 後藤 076 Wave Live! ペット・ショップ GAME OVER
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消せない罪 ◆.WX8NmkbZ6 どれほど強さを手にしたら、何も傷付けず済むの? ▽ ジェレミア・ゴットバルトは改造人間であり、その左半身は機械化されている。 またナイトギガフォートレスを操縦するパイロットとして調整を受け、機体の爆発にも耐え得る頑強さを持ち合わせていた。 この二点によりエンドオブワールドの直撃を受けても火傷の範囲は狭く、命を繋ぐ結果となった。 だが、それに何の意味があるだろう。 如何なる時でも死ぬ覚悟ぐらいは出来ている。 元より軍人なのだから今更惜しくはない。 それなのに命を落とすのは護りたいと思っていた皇族であり、勇敢な戦士であり、聡明な仲間であり。 マリアンヌも、クロヴィスも、ユーフェミアも、ルルーシュも、次元大介も、山田奈緒子も、死んでしまった。 いつもジェレミアは残される側にいる。 ただ己の不甲斐無さを思い知らされるばかりで、誰も守れない。 ――代われるものなら、代わりたかった。 ジェレミアには後悔がある。 同行者達に対して単独行動を禁じておきながら、彼女らを置き去りにした。 仇を討つ事ではなく味方を守る事を優先していれば、きっと今までと同じ喪失を繰り返さずに済んだ。 また激情に駆られずに次元と連携を取り続けていれば、戦況はいずれ有利になっていただろう。 どこかで異なる選択をしていれば、何かが変えられたかも知れない。 それでも何も変えられず、何も守れず、手の中にあったものは指の隙間から零れ落ちて行く。 ――あの炎に焼かれて死ぬのは、あの瓦礫の下敷きになって死ぬのは、私であるべきだったのに。 意識が覚醒した時、ジェレミアは診療室のベッドに寝かされていた。 朧げながらアイゼル・ワイマールに連れて来られた事は覚えている。 恐らくそのまま眠ってしまっていたのだろう。 反射的に体を起こして半身の痛みに呻く。 だが本来ならば、そもそも体を起こせる状態ではなかったはず――それに気付いた時、声が掛かった。 「良かった、ちゃんと目が覚めて。 傷はまだ痛みますか?」 アイゼルはジェレミアが起きるのを待っていたようで、ベッドの隣の椅子に腰掛けていた。 「ごめんなさい、色々あって薬が足りないんです」 彼女はジェレミアの問いを待たず、病院での戦闘の顛末を起点として現状の説明を行った。 ▽ (最初に謝った方がいいのかな。 それともいきなり話を始めるより、世間話とか……?) ジェレミアと石川五ェ門の衝突の後、つかさはジェレミアに謝ると決めた。 例え謝って済む問題でないとしても――悪い事をしたら謝る、それは当たり前の事だから。 一度目の放送の前に死亡した姉の柊かがみに早く会いに行きたい、という思いは当然ある。 けれどそれは彼への謝罪が済んでからだと自身を戒めた。 そうしてつかさなりに色々と考えてみるものの、どう会話して良いものか分からない。 アイゼルから錬金術を学んでいる間も悩み続けたのだが、どうにも纏まらなかった。 見知った人々の安否が放送で確認されて無事に安堵するも、自分の問題は解決出来ていない。 (具合はどうですか? とか……怒られるかな) 悩んで、悩んで、それでも分からず、結局つかさは調合を終えてからアイゼルに相談した。 「そう……謝りに、ね」 事情を話すと、アイゼルは軽く腕を組んで考える様子を見せる。 危ないから駄目よ、早く北岡さん達の所に帰りなさい、等と言われたらどうしようかと心配していたがそれは杞憂だったようだ。 「言いたい事はあるんです……けど、どう言ったらいいのか分からなくて」 調合に使った食器を片付けながら迷いを口にする。 それに対するアイゼルの答えは厳しかった。 「それはあなたが自分で考えて、自分の言葉で伝えなければ意味がないわ。 私には大した助言は出来ないわね」 当然と言えば当然。 これはつかさの問題であり、アイゼルが口出しして解決するものではないのだ。 だが彼女は厳しいだけでなく、同じぐらい優しい事をつかさは知っている。 「その代わりあなたが必死に考えた言葉なら、きっとジェレミア卿にも伝わるわ」 アイゼルに後押しされ、つかさは頷く。 「ルルーシュを殺した」とジェレミアに告げた時は衝突を招いてしまった。 けれど彼も、アイゼルや北岡達と同様に『いい人』だと思う。 きっと聞いて貰える。 話す事で、何かが変えられるかも知れない。 この選択は決して間違っていないはずだと強く言い聞かせる。 ルルーシュを撃ち、ただ泣いていた頃の自分とはもう違う。 ほんの少しだけれど、強くなったはずだから――そう信じ、つかさは考え続けた。 それが中断されたのは救護室へリフュールポットを運ぶ途中、外壁の崩れた通路から正門付近で動く影を見かけた時だ。 つかさは初め浅倉が戻って来たのではと身構えたが、ふらつくそのシルエットが別人であるとすぐに分かった。 その影が地面に倒れ込んだのを見て、慌ててアイゼルと共に駆け寄る。 全てが終わった総合病院に来訪したのは、クーガー。 速さを信条として己の成すべき事の為に駆け抜けて行った彼は、ここでその足を止めた。 ▽ 速く。速く。 クーガーのその思いは常に変わらない。 けれど対照的に前へと踏み出される足は重く、よたよたと不格好に歩くのがやっとだった。 向かっているのは大規模な爆発が起きた総合病院、最悪の事態は既に起きている。 だから一刻も早く速くと思うけれど、戦い続けてきた体が悲鳴を上げる。 黒煙を上げる病院は遠く、病院へ辿り着くより先に放送の時刻となった。 クーガーはそこで己の遅さを改めて思い知らされる。 ――次元大介 ――山田奈緒子 かがみの友人達の名前が呼ばれなかった事に一瞬安堵した。 だが病院で出会った者のうちの二人の名が呼ばれた事で、クーガーの離脱後に起きた事態の一部が窺い知れる。 ゾルダのデッキを持った男が爆発を起こし、二人が命を落とした。 細部の状況は分からないが、この認識で大きな間違いはないだろう。 他の面々が無事だったのは上手く病院から逃げ切ったのか、あの男を撃退出来たのか。 爆発が起きてから時間が経過して、事は既に収束している可能性もある。 それでもクーガーは足を止めなかった。 まだ病院にあの男が残っているようなら倒さなければならない。 爆発の後に身動きが取れなくなり、助けを待っている者がいるかも知れない。 クーガーには責任がある。 かがみへの誓いの為に、戦闘を放棄してこなたを追った。 あの場にいた次元や五ェ門といった者達の実力を信じていたと言えば聞こえはいい。 けれど信頼すると言っても会って間もない者達。 またゾルダの実力についても、一度撃退したナイトのそれと大きくは変わらないと聞いて甘く見ていた。 かがみの妹であるつかさがいる病院を、離れるべきではなかったのだ。 クーガーが残っていれば、異なる選択をしていれば、何かが変えられたかも知れない。 (すみません、かがみさん……) 病院を放置して向かった先ではこなたの説得に失敗し、南光太郎にも大きな勘違いをさせてしまったようだ。 クーガーの選択がもたらした結果は散々だった。 何もかもがもう遅い。 かがみを救えなかった時と同じ、余りにスロウリィ。 それでもクーガーは己の責任を果たす為に、心身共に打ちのめされながらも病院を目指した。 やっとの思いで辿り着いた病院の正面玄関で目にしたのはエンドオブワールドによる惨状と、次元の遺体。 そして前に進もうと足を踏み出した時、偶然通路につかさとアイゼルの姿を捉えた。 大きな怪我をしている様子もない彼女らの姿を目にし、安堵したところでクーガーの視界は暗転した。 【一日目日中/G-8 総合病院】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に [所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0~1 [状態]:身体中に鈍い痛み、両脚に激痛、疲労(大) [思考・行動] 0:気絶中。 1:こなたを正気に戻す。 2:かがみと詩音の知り合い(みなみ、レナ)を探す。 3:詩音が暴走した場合、最速で阻止する。 ※病院にて情報交換をしました。 ▽ アイゼルはつかさと二人掛かりでクーガーを診療室へ運び込んだ。 そこで問題になったのはリフュールポットの数だ。 放送前に六個調合し、ジェレミア一人を回復させるにはそれで十分だと踏んでいた。 しかしクーガーが訪れた事で再考する必要が出てきた。 二人の怪我は一様に重く、どちらにも複数のリフュールポットが要る。 表面的にはジェレミアの方が重傷だったが、クーガーの方は内面に何か問題があるらしい。 それにこの場にはいないが五ェ門も傷を負っている。 彼と合流した時、或いは不測の事態の時に備えて余らせておくべきだろう。 よって、使えるリフュールポットは一人につき二つだけ。 更に計算違いだったのは、リフュールポットの回復力がアイゼルの想定したよりも少々低かった事だ。 原因として考えられたのは材料として用いた薬品そのものの質の低さ。 病院にあった有用な薬品はクーガーと詩音が回収し、参加者同士で分配した。 その為アイゼルは病院内に残っていた薬で錬成を行ったのだが、どうやらそれが品質を下げてしまったらしい。 ポットを二つずつ使用してもジェレミアは完治に至らず、クーガーの状態も相変わらず芳しくない。 アイゼルはクーガーから分配された薬品や包帯でジェレミアの手当を行い、同時に再度の調合を画策する。 この場にいる全員の薬品を集めれば、今度こそ高品質のリフュールポットを作れるかも知れない。 しかし調合を後回しにし、アイゼルはジェレミアの隣に腰掛ける。 琥珀湯を使ったので彼が混乱や錯乱を起こす事はないだろう。 それでもルルーシュや奈緒子を失ったという事実は当然消えずに残っている。 誰かが傍にいて支えなければならない。 それは「協力を惜しまない」と約束した自分の義務だと思えた。 「アイゼルさん、これ……本当にいいんですか?」 つかさの声に振り向くと、彼女の手には二個のリフュールポットがあった。 恐らく五ェ門に使う事になるだろうと渡しておいたものだ。 「いいのよ、五ェ門さんには私も助けて貰ったし。 あなただって調合を手伝ったんだから、それを持つ資格はあるわ」 つかさはアイゼルの言葉に従ってポットをデイパックにしまったが、それでも何か言いたげな表情だった。 「……負い目はあるでしょうけど仕方ないわ。 それより、誰か来ないか見ていてくれるかしら?」 「は、はい!」 パタパタとつかさが給湯室を出て行くのを見送る。 やる事があれば悩みも少しは紛れるだろう。 そんな思惑もあって頼んだのだが、どちらにせよ危険人物でも味方でも接近が分かった方がいい。 しかしそれらとは別に、アイゼルにはつかさを遠ざけたい理由がある。 大きく溜息を吐いて肩の力を抜き、両手で顔を覆った。 殺し合いに放り込まれて半日、大きな怪我はなくとも精神的な疲労は大きい。 そして、奈緒子の死。 人間の遺体を見たのは初めてで、暫くは実感が湧かなかった。 ジェレミアの事もあって満足に悲しむ時間もなかった。 けれど時間が経ち、放送を聞き、次第に彼女の死が現実味を帯びて心を蝕む。 三人で過ごした車内は楽しかった。 時間は短くても、学院でエルフィール達と一緒にいた頃を思い出した。 けれど奈緒子はもういない。 ジェレミアとも、もう談笑するような事はないだろう。 幸せな時間が失われるのは一瞬だった。 最初の放送で、大勢の参加者が命を落としている事は知っていた。 ルルーシュを失ったジェレミアの悲嘆も知っていた。 それでも親しい人との突然の離別の意味を、こうして直面するまで理解出来ていなかった。 アイゼルには失敗がある。 日本刀を持って駆け付けた戦場で、出来る事はあった。 浅倉を倒す事は不可能でも、ロートブリッツやシュラオプストックは目くらまし程度にはなっただろう。 危険を冒してでもジェレミアに刀を渡すべきだったし、逆上して冷静さを失った彼を諫めるべきだった。 或いは初めから戦いを諦めて奈緒子や詩音と共に上の階で待機していれば、奈緒子が命を落とす事はなかったはずだ。 何か違う選択をしていれば、何かを変えられたかも知れない。 白髪の男との接触を初めとして、時間の経過と共に後悔が降り積もる。 最初の放送の時も後悔をしたはずなのに、何も学べていなかった自分の甘さを思い知った。 それでも年下の少女であり錬金術を学ぶ弟子でもあるつかさの前では、アイゼルは大人でなければならない。 弱さなど見せられない。 その強がりが限界だったから彼女を遠ざけたのだ。 顔を隠す手の中で、アイゼルは声を殺して嗚咽を漏らす。 ジェレミアが目を覚ますその時までだけでも、弱さを許されたかった。 アイゼルは知る限りの事、そして放送の内容を全て話し、ジェレミアはそれを静かに聞いていた。 話し終えると彼は「石川と次元に感謝せねばならないな」と独り言のように言う。 「貴女が無事で良かった」 その一言の裏側には奈緒子の存在が見えて、アイゼルは苦しくなった。 対する彼は落ち着いた様子で、けれどルルーシュを失った時よりも一層暗い影を落としている。 悲しみや、怒りや、後悔や、あらゆる感情の混ざった表情は、逆に何も残っていないように空っぽに見えた。 互いに暫し沈黙した後、ジェレミアはベッドから離れようとする。 アイゼルはまだ休養が必要だと制すが、彼は首を横に振った。 「次元と奈緒子を、あのままにしておく訳にはいくまい」 淡々とした、何の感情も籠もらない声。 浅倉と戦う彼を目にした時のような胸騒ぎがした。 だがアイゼルにはその正体が何なのか分からず、制止しようとした手が止まってしまう。 にも関わらずジェレミアは足を止め、不思議に思ったアイゼルは彼の視線を追った。 「あ、あの、……」 様子を見に来たのであろうつかさが、ドアをほんの少しだけ開けて覗いていた。 ▽ 「私が殺しました」とつかさが告げた時。 忠義と情で悩み抜いた挙げ句、ジェレミアはそのどちらも選べなかった。 もし忠義を選び本気でつかさを殺そうとしていれば、クーガーが初めから介入して問題は早期に解決していただろう。 情を選んでいたならば、そもそも五ェ門と衝突する事はなかった。 そのどちらかであったなら、総合病院を訪れた二人のライダー達の各個撃破も可能だったかも知れない。 後悔は幾つもある。 けれどそもそもの間違いは、ここにあったのかも知れない。 ドアを開けて恐る恐る近付いて来るつかさを見ながらジェレミアは己に嫌悪感を抱いた。 自分がこれから優先すべき事は何なのか。 選べなかった結果多くを失ったというのに、未だ迷っている。 だがつかさが何を話そうとしているのか、何を言う為にここにいるのか、察しは付いている。 だからこそつかさが言いあぐねているうちに、ジェレミアから先に切り出した。 「身勝手は承知している。しかし――」 最初の対話の機会を自ら断ち切ってしまった。 それをやり直せるというのなら。 「事の経緯を、教えて欲しい」 ――知っている事なら何でも良いのだ! ――あの方に何があったのか、その手掛かりだけでも……!! 未だに答えが出せない中で、ジェレミアは原点の問いに立ち返る。 ▽ つかさは目を覚ましたジェレミアの様子を扉の合間から見、ホッと胸を撫で下ろした。 しかし安心している場合ではないと慌てて気持ちを入れ替える。 扉を後ろ手に閉めて進み、彼と向き直った。 いざ本人を目の前にすると決意したはずなのにたじろいでしまう。 何か言わなきゃと焦るが「えーとえーと」としどろもどろな言葉が出るばかりで会話にならない。 そうしているうちに、彼の方から尋ねられた。 (経緯……そうだ、まずはそこから話さなきゃ) 一度に色々な事が起きて有耶無耶になってしまったので忘れていた。 ジェレミアに伝える事が出来たのはルルーシュを殺害したという結果と、その際の最期の言葉のみ。 何があったのか、何故そうなったのか、それを話さずに謝っても意味が無い。 段取りの悪さで怒らせてしまっただろうかと彼の顔色を窺ってみるが苛立ちは見られなかった。 アイゼルの方にもチラリと視線を遣ると、力強く頷かれる。 伝わる、大丈夫。 つかさは深呼吸して落ち着きを取り戻す。 なるべく詳細に、ルルーシュと出会ったところから。 一時的にパニックになっていたせいか記憶がはっきりしない部分も多々あったが、話せる限りの事を話し始めた。 ▽ 「やはり」と言えばやはり。 蓋を開けてみればルルーシュの死の原因はギアスの過信と使い方のミス、近くに浅倉がいた不運。 死因を作ったのが浅倉とつかさとは言え、ほとんど事故のようなものだった。 聞く前から分かっていた事ではある。 「……ごめんなさい」 消え入るような声でつかさが言う。 ジェレミアはかつて枢木スザクに謝罪に行くか否かで、特派の二人とヴィレッタに散々手を焼かせた自分の姿を思い起こした。 恥や外聞ばかりを気に掛けた臆病な自分――思えば下らない。 そこで躊躇したばかりに、スザクに伝えるべき言葉を伝え損なった。 この殺し合いに互いに参加させられている現状を考えれば、もう彼に伝える機会は訪れないかも知れない。 それに比べてつかさは。 一回りも年齢が違う、しかも既に一度対話に失敗した相手とこうして向き合う為に、どれだけの勇気を振り絞ったのだろう。 名誉だの誇りだのと理由を付けて逃げていたかつての自分よりも、ずっと勇敢だと思えた。 「あの時、凄く……自分でも良く分からないぐらい冷静で……。 人が死んだら、もう取り返しが付かないんだって……そんな当たり前の事も分からなくなって……」 ――どうして彼女を憎めるだろう。 つかさはただそこにいて、ギアスの悲劇に巻き込まれただけだ。 ルルーシュがギアスを憎むきっかけとなった、シャーリー・フェネットと同じ不幸。 それまでつかさはただ友人や姉と日常を楽しんでいて、銃など見た事もない一般人だった。 それがどうして、こんな罪を背負わねばなかったのか。 「許して貰える事じゃないのは、分かるんです……でも、それでも謝らなきゃって……」 つかさやその友人達は、奈緒子は、アイゼルは、ジェレミアやルルーシュや次元達とは違う。 撃つ覚悟も撃たれる覚悟もない人々だったのに。 ――V.V.……何故、彼女達を連れて来た? 「だから……ごめんなさい」 深々と頭を下げるつかさを見ながら、暫く言葉が出なかった。 主君を殺害した張本人を憎む事が出来ない己の不忠に呆れながら、それでも彼女の謝罪に応える。 「君の言う通り、私は君を許さない」 頭を下げたままのつかさの肩がビクリと揺れた。 「許す」と言ってしまえば不忠を認める事になる。 しかし彼女がここに立つ勇気を無碍に出来るはずがなく、ジェレミアは躊躇いながら続く言葉を口にした。 「だがルルーシュ様は、君を恨んではおられないだろう」 つかさはゆっくりと顔を上げた。 聴こえた言葉が聞き間違いでないか確かめるように幾度か瞬きする。 やがて彼女の大きな眼からポロポロと涙が落ちた。 袖で拭って留めようとしていたが、緊張の糸が切れたのか涙は止まらずに零れ続ける。 憎んでなどいない。 だが許す訳にはいかない。 ジェレミアは相反する思いを伝える術を持たず、この場にふさわしい言葉も見付けられず。 最後まで忠義と情のどちらも選べないまま、会話は途切れた。 ジェレミアは奈緒子の遺体を両腕で持ち上げた。 自身の服がべたりと赤黒く染まったが、構わずに歩き出す。 最初の放送の前にも彼女をこうして抱き上げた事があった。 その時よりも重く感じる理由は、ジェレミアの身体が万全な状態でないからというだけではないだろう。 感情に任せて暴走するという一年前と同じ失態を犯し、その結果次元と奈緒子は死んだ。 守れなかった――違う、殺してしまったのだ。 命令とあらば民間人の命とて奪ってきたが、それとはまるで違う。 自分のミスが仲間を殺した。 それは軍の指揮官としては往々にして負わねばならない責任だが、余りに重い。 傷付いた腕にその重みがズシリと掛かる。 奈緒子と出会ったばかりの頃は、互いにいざという時は見捨てるという事で同意した。 事実、ルルーシュと無事に合流を果たせればすぐにでも別れるつもりでいた。 その後数時間、行動を共にしただけの関係だ。 それなのに胸に去来する虚無感は拭えない。 瓦礫の下敷きになりながら助けを求めたかも知れない。 しかしその声は誰にも届かず、奈緒子は一人で死んでいった。 多くの皇族が手の届かない所で命を落とした事を嘆いていたのに――手の届く場所にいた彼女の所へ、駆け付けてやれなかった。 悔いが棘のように胸に残る。 つかさとアイゼルが探し出した地下への階段を通り、霊安室へ入る。 つかさは姉と再会し、一度は収まった涙をまた落としていた。 ジェレミアはその様子を横目に奈緒子をストレッチャーに寝かせ、霊安室を出る。 そこから向かった正門の近くに次元は横たわっていた。 その焼かれた肌を見ながら彼の帽子を拾い、奈緒子の時と同様に運ぶ。 この手で殺したも同然だった。 死を看取ってやる事すら出来なかった。 だが次元が最期にアイゼル達を守ってくれたからこそ、ジェレミアは未だこうして立っていられる。 正気を失わずに、まだ前を見ていられる。 辿り着いた霊安室で彼を横たわらせる。 そしてその胸の上に彼のトレードマークだった帽子を乗せ、後悔と感謝の念を抱きながら黙祷を捧げた。 ▽ (お姉ちゃん、私、ちょっとだけ強くなったよ。 たくさん間違えて、失敗して、色んな人に迷惑を掛けちゃったけど……。 優しい人達が一緒だから、大丈夫) かがみの死に様はクーガーから聞かされて、既に知っていた事ではある。 最初の放送の後も彼女の為に泣いた。 それでも生まれた時からずっと一緒に育ってきた双子の姉――妹の死は悲しい。 奈緒子と次元の遺体が運び込まれると、つかさはジェレミア達と共に黙祷を捧げた。 誰よりも近しかったかがみ、助けてくれた次元、いい人だった奈緒子、そしてここにはいないがルルーシュ。 皆、死んでしまった。 つかさは大粒の涙を落としながら、北岡と五ェ門の姿を思い出す。 もう失いたくない、役に立ちたい。 誰も傷付けずに済むだけの強さが欲しい。 その為に錬金術だって習ったのだ。 喪失の悲しみと共に、つかさは前を見据える。 (お家に帰ったら、きっと伝えるね。 お父さんやお母さんやお姉ちゃん達に……お姉ちゃんも、一生懸命戦ったんだって) 別れの言葉と共に霊安室を去る。 その際にジェレミアからデイパックを差し出された。 かがみの遺体の横に安置されていたものだ。 「君が持っていた方がいいだろう」 突然の事だったのでつかさは目をパチクリさせていたのだが、そのうちに彼の意図が分かる。 「ありがとうございます」と、受け取ったかがみのデイパックを抱き締めた。 ▽ つかさとジェレミアに作法を聞きながら、アイゼルは次元と奈緒子、それにかがみに黙祷を捧げた。 暫し蝋燭の炎と線香から上がる煙を眺め、目元を袖で拭う。 奈緒子達の死が悲しい。 しかしそれ以上に人の死が怖い――死ぬのが怖い。 そう感じてしまう自分を情けなく思う。 アイゼルは自分が震えている事に気付き、腕に爪を立ててそれを押さえ付けた。 奈緒子を失った今、ジェレミアは自分が支えなければならないのだから。 その為霊安室にいる間、ジェレミアの様子が気懸かりだった。 涙脆い人物だと思っていたのだが、彼が奈緒子達の遺体の前で涙を見せる事はなかった。 既に奈緒子の為に泣き、つかさと話し合った事で気持ちの整理が付いたのか。 軍人という職業柄、人の死に慣れて悲しくなくなったのか。 アイゼルは彼の様子にどこか違和感を覚えるも、追求出来るような事ではない。 ただ言いようのない不安を募らせた。 黙祷を終え、三人で順に霊安室を出る。 その際アイゼルはデイパックからソレを取り出し、奈緒子の遺体の横に安置した。 そして階段を上がりながら前を歩く二人に声を掛け、今後について話し合う。 大きな爆発が発生した以上、この場所には危険人物が集まってくる可能性がある。 しかし気を失ったままのクーガーを置いて行く事は出来ず、アイゼルとジェレミアはこの施設に留まらざるを得ない。 大柄なクーガーを移動させるにはジェレミアが背負わねばならないが、そうなると戦える者がいなくなってしまうからだ。 北岡達を呼んで手伝わせるという線もあったが、彼らにはデッキを取り返すという目的がある。 「つかささん、貴女は北岡さん達の所に帰りなさい。 今頃きっと心配しているだろうし……貴女まで危ない所に留まる必要はないわ」 アイゼルが言うと、つかさは暫し唸りながら悩む。 そして彼女はアイゼルの申し出をきっぱりと断った。 「またリフュールポットを作るんですよね? それを、手伝わせて欲しいんです」 アイゼルは困ったような表情を浮かべ、やがて「駄目よ」と首を横に振った。 つかさが言わんとしている事は分かる。 調合の間に話をしていて北岡達の役に立とうとしている事は伝わってきたし、力不足を何とかしたがっている事も知っている。 それでもつかさの身を危険に晒す事は、大人として認められない。 「お願いします!」 「駄目よ、危ないって言ったでしょ?」 「お願いします!」 「駄目」 「お願いします!」 「…………仕方ないわね」 かと言って真摯に頼み込む彼女の願いをそれ以上撥ね付ける事は出来ず、アイゼルは了承してしまったのだった。 給湯室へ向かって駆けていったつかさの背は瞬く間に小さくなっていった。 ▽ 錬金術を教わったと言っても基礎の基礎で、これだけではまだ北岡達の役には立てない。 それにつかさが戻らなければ彼らの方から迎えに来る約束をしたので、ここに留まっても合流出来なくなる心配はない。 だからつかさはアイゼルに食い下がった。 アイゼルの言い分が安全を思っての事だと分かっているだけに申し訳なくなるが、北岡達の為にも引き下がれないのだ。 そしてアイゼルから了承を得ると安堵し、つかさは時間を僅かでも無駄にすまいと走る。 (……これで、良かったのかな) ジェレミアに謝るという目的は達成出来た。 しかしそれで責められた訳でも和解出来た訳でもなく、何も変わっていないように見える。 ただ、無駄ではなかっただろうと思えた。 ――ルルーシュ様は、君を恨んではおられないだろう。 ルルーシュ本人が本当にそう思っているかは分からないし、ジェレミア自身ははっきりと「許さない」と言った。 だが嬉しかった。 アイゼルが言った通りつかさの気持ちは伝わったのだ。 だから無駄ではない。 それにジェレミアと話が出来たというだけでも、つかさにとっては大きな前進だった。 (もっと、しっかりしなきゃ) これで満足していてはいけない。 まだこの会場の中だけでも、C.C.やロロ・ランペルージといったルルーシュと親しかった者達がいる。 つかさは彼らに謝罪し続けなければならない――それこそ、一生。 それが分かっているから、つかさは必死に走る。 運動が苦手な上に足を怪我しているので大した速度ではないが、それでも前へ前へと進み続けている。 優しい人達に出会った。 いつだって支えられていて、気遣われている。 だから次はつかさが誰かを支えて気遣う番で、今のつかさに出来るのはそれだけなのだ。 かがみとの別れは辛い。 走って進めばそれだけ彼女から遠ざかってしまう。 それでも待っていてくれる人達がいるから、つかさは立ち止まらない。 【一日目日中/G-8 総合病院】 【柊つかさ@らき☆すた】 [装備]なし [支給品]支給品一式×2(水のみ三つ)、眠りの鐘@ゼロの使い魔、確認済み支給品(0~2) 、フラム(1個)、レシピ『錬金術メモ』、 陵桜学園の制服、かがみの下着、リフュールポット×2 [状態]軽症、左足首にねんざ(固定済み) 、疲労(中) [思考・行動] 1:アイゼルを手伝う。 2:錬金術でみんなに協力したい。 3:もっと錬金術で色々できるようになりたい。 4:みなみに会いたい、こなたは…… [備考] ※病院にて情報交換をしました。 ※錬金術の基本を習得しました。 他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。 ▽ ジェレミアは黙祷を捧げるアイゼルとつかさを横目に溜め息を吐いた。 奈緒子達の死体を前にしても涙は不思議と出ず、己の薄情さに驚く。 そして彼女達が死者に思いを馳せる間、己の内を見詰める。 つかさとの再度の接触で分かった事がある。 彼女とルルーシュのスタート地点は山小屋で、話を総合すれば死亡したのはC-6。 二度目の放送で禁止エリアに指定された区画だ。 これでジェレミアがルルーシュの亡骸を回収する事は出来なくなった。 つかさから情報を得る直前に宣告された禁止エリア。 このタイミングの良さはV.V.が参加者の会話や動向を全て把握している証拠だろう。 だが今は、主催側の技術や思惑を考察していられる程の余裕はない。 分かったのはV.V.の事ではなく――自分が知らずに抱いていた感情。 ナナリー・ヴィ・ブリタニア――主の妹のもとへ、彼とその最期の言葉を届けるつもりでいた。 だが認めるべきだ。 元より社会的に死亡した人間が、皇女かつエリア11の総督たる彼女に会える訳がない。 それでも彼女に会う事を目的としていたのは、ただ生きる理由を求めていた故に過ぎない。 主や仲間を守る事も出来ず、主の最後の心残りを解消する事も出来ず。 微々たる事しか出来ないなら、これから取るべき指針は単純たるべきだ。 V.V.を殺す。 浅倉を殺す。 ルルーシュが命を落としたこの地に骨を埋める。 感情に振り回されて多くを失ったのならば、感情など捨ててしまえばいい。 多情は捨て、ただそれだけの為に生きる機械になればいい。 ――そう割り切れたなら、きっと楽だっただろう。 主への忠義を優先するならば、それは即ち浅倉やV.V.を殺すまでジェレミアは死ねないという事だ。 周りの人間の安全よりも自身の命を守らねばならない。 忠義以外の多情を捨てる事は、彼らを見捨てるのと同義である。 それでも、それが出来ない事をジェレミアは自覚していた。 奈緒子に「いざとなれば見捨てる」と言いながら結局出来なかったように。 周りにいる者達――例え数時間の付き合いの間柄であっても、仲間に変わりはない。 何もかもと手を伸ばしたところで弱い自分には守れないと思い知った今も、どうか彼らに日常に帰って欲しいと願ってしまう。 彼らを切り捨てる事は出来ない、自分の性分を理解している。 しかし、切り捨てられないのはそんな綺麗事の為だけではない。 ジェレミアはルルーシュの『代わり』を、他の誰かに求めている。 ルルーシュとてマリアンヌの『代わり』と見た事はないとどうして言い切れるだろう。 忠義と呼べば聞こえはいい、しかしそれは言い換えれば他者への依存に他ならない。 祖国の為に、家名の為に、ブリタニア皇族の為に、ルルーシュの為に。 自分の為に生きる事も自分の為に剣を振るう事も出来ず、いつも国や家や皇族や個人に縋って来た。 己の内に秘めるべき『忠義』をわざわざ口癖のように言うのも、それによって自分の立つ場所を定義する為だ。 縋る対象への確固たる思いが揺らげば、自分自身さえ見失うからだ。 国や皇族に依存してきたように、常に守る対象がなければ自己を確立出来ない。 その弱さ故に、今もアイゼル達を守ろうとしている。 他者を見捨てる見捨てない以前に、ジェレミアの方こそが他者に縋っているのだ。 暴力の為に暴力を振るう浅倉とは違う――何かに頼る、弱い男。 そして何より。 今はただ、失う事が怖い。 これまでに地位と名誉と半身を失い、主を失い、仲間を失った。 これ以上守れずにこの手から取り零してしまう事が怖い。 失う事で己の無力を突き付けられる事が怖い。 一人残される事が怖い、喪失感を味わう事が怖い。 騎士としても、貴族としても、軍人としても、恐怖を抱く事は恥ずべき事だと知りながら払拭出来なかった。 その事を、つかさとの会話で思い知った。 復讐と自分の弱さを見据えながら。 それでもこれ以上何も失うまいと、胸の内の怯えを隠すようにジェレミアは拳を握り締めた。 何も守れはしなかった。 だからこの先も何も守れないだろうと悲観し、悲嘆に暮れたくなる。 だが己の進むべき道を見失った事は一度や二度ではない――そして一度も諦めなかったからこそルルーシュとの再会は叶った。 例えほんの僅かな期間に過ぎなくとも、確かにジェレミアは彼の臣下だった。 その結果は紛れもなく自身の諦めの悪さによって得られたものであり、その事を誇りに思っている。 どんなに多くのものを失っても、この誇りを手放しはしない。 この先も何かを守る事を、諦めない。 つかさから一歩遅れて給湯室へ向かう中、ジェレミアの前を進んでいたアイゼルがふと振り返った。 「ここから帰る事が出来たら、ジェレミア卿はどうされますか?」 核心を突くようなアイゼルの問いにジェレミアは肝を冷やした。 しかしアイゼルにそのつもりはなかったようで、彼女は返事を待たずに続ける。 「私は、昔の友達に会いに行きます。 ……今は難しいかも知れませんけど……先の事を考えるのも、大事だと思いますよ」 彼女は戦争とも殺し合いとも縁なく生きてきた。 死者の後を追うなどと想像した事もないのかも知れない。 「……そうだな。検討しておこう」 彼女の心遣いに対して真っ直ぐに応えられない事が、ただ申し訳なかった。 ▽ 今のままでは浅倉に勝てないだろう。 そして会場には他にも、クーガーが接触した後藤のような強力な敵がいる。 何らかの対策が必要だ。 普段のアイゼルならば勝てない敵には経験値を貯めてレベルを上げる事を考える。 しかし今は装備を揃え、万全な態勢で望むぐらいしか対策はない。 その為には錬金術の存在は必要不可欠で、むしろ錬金術士の腕の見せ所。 だからアイゼルは弱気になりそうな自分を奮い立たせ、普段よりも早足に、ジェレミアに先行する形で進んでいた。 しかし会話が途切れて暫し経ってから、彼が付いて来ていない事に気付いて後方の様子を窺う。 「ジェレミア卿?」 「……ああ、今行く」 ジェレミアは振り返って霊安室の方を見詰めていた。 アイゼルはその表情を見て、これまでに感じていた不安の根幹に気付く。 何か大切な感情が抜け落ちてしまったかのような。 何か大切な感情が壊れてしまったかのような。 恐らく、本人も無自覚のうちに。 それだけ悲しい出来事だったから。 それだけ悔しい出来事だったから。 ――霊安室で泣かなかったのは気持ちに区切りが付いたからでも、まして悲しくないからでもない。 ジェレミアが霊安室から目を離して歩き出す。 追い抜かれてしまいそうになり、アイゼルも歩みを再開した。 「どうかしたのか?」 「い……いいえ、大丈夫です」 何度も彼の方を振り返っていたので訝られ、アイゼルは慌てて視線を前へ戻す。 「向こうに着き次第、話しておきたい事がある」 「分かりました」 彼に顔を見られないようにしながら答えるが、堪えていた涙が一筋落ちた。 ――きっと、この人はもう。 ――涙を枯らしてしまったのだろう。 【一日目日中/G-8 総合病院】 【アイゼル・ワイマール@ヴィオラートのアトリエ】 [装備]:なし [所持品]:支給品一式、無限刃@るろうに剣心、不明支給品(0~2)、琥珀湯×1、フラム(2個)、薬材料(買い物袋一つ分程度) エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、メタルゲラスの角と爪 [状態]:軽傷、疲労(中) [思考・行動] 1:ジェレミア達と一緒に脱出。 2:ジェレミアに協力を惜しまない。 3:より高度な作業が行える機材が設置されている施設を探す。 4:次に白髪の男(雪代縁)に会うことがあったら見逃さない。 5:つかさに錬金術を教える。 [備考] ※自分たちが連れてこられた技術にヘルミーナから聞かされた竜の砂時計と同種のものが使われていると考えています。 ※電気や電化製品について一定の理解を得たことで、より迅速に錬金術を行えることに気づきました。 ※病院にて情報交換をしました。 ※クーガーと分配した医薬品の一部(包帯など)を使用しました。 ※ウニは海の生き物なので、アイゼルのデイパック内で死亡しました。奈緒子の隣に安置されています。 【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [装備]なし [所持品]支給品一式(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×3@コードギアス 反逆のルルーシュ、こなたのスク水@らき☆すた、 ミニクーパー@ルパン三世 [状態]右半身に中ダメージ、疲労(大)、精神磨耗、左腕の剣が折られたため使用不能、失う事への恐怖 [思考・行動] 1:浅倉とV.V.を殺す。 2:アイゼル達を元の世界に帰還させる。 3:全て終えてからルルーシュの後を追う。 4:給湯室でアイゼル達にギアスとコードについて説明する。 [備考] ※病院にて情報交換をしました。 時系列順で読む Back 追うもの、追われるもの Next How many miles to the police station? 投下順で読む Back 追うもの、追われるもの Next How many miles to the police station? 107 力(ちから) アイゼル・ワイマール 127 死せる者達の物語――Everything is crying 柊つかさ ジェレミア・ゴットバルト 108 Waiting for the End of the Ground ストレイト・クーガー 127 死せる者達の物語――Don t be afraid of shade
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原曲・北出菜奈 作詞・北出菜奈、作曲・西川進 TVアニメ「鋼の錬金術師」初代ED曲。 【登録タグ 2003年の楽曲 J-POP アニソン 北出菜奈 鋼の錬金術師】 カバーした声優 大川透
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消せない罪(後編) ◆Z9iNYeY9a2 再度通信を繋げたルビー。今度は桜も会話に交えている。 先程までと違うのは、その場に一匹の白い生き物が加わっている。 そのせいか、映像の中に映っているアリスの表情は非常に硬い。 『そんなに睨まないでほしいな、アリス。僕は君たちにとって有益な情報を持ってきたんだから』 『信用すると思うの?そもそもあんたはさっき私が消したはずよ』 『あれは僕たちの一個体にすぎなかったからね。 ただ、この場に敢えてこうやって入ってきた僕には色々制約がかかってしまったみたいで、今殺されると再度侵入は困難になるんだ。だから手を出さないでほしいんだ』 ヒョイ、と窓縁に乗りかかるキュゥべえ。 こちらの動きを警戒しているようで、最悪いつでも逃げられるような位置を陣取っている。 『ねえ、キュゥべえ、何でこんなことに協力したの…? あなたのせいで、みんな死んじゃったんだよ?杏子ちゃんも、マミさんも、ほむらちゃんも、織莉子さんも、さやかちゃんも…』 『暁美ほむらのことは…、それは今はいいか。 確かに基点は僕たちだろうけど、その結果に至るように動いたのは君たちだ。全ての責任を僕たちに押し付けないでほしいな』 「お前…っ」 責めるまどかの言葉を受け流すキュゥべえに怒りの声をあげる巧。 ルビーが宥めつつも、キュゥべえへと問いかける。 『落ち着いてください。その辺は後で。 キュゥべえ氏、我々の元に現れたのはどういう理由ですか?』 『実は、君たちの中に殺し合いを行うものがいなくなったことで儀式が停滞する可能性が生まれたんだ。 もしかすると残り24時間、タイムリミットまで至ってしまうんじゃないかと心配になってね』 『なるほど、それで誰かを扇動して殺し合いを再開させようって?』 『そうじゃないよ。そもそも今の現状、扇動して大きな戦果を上げられるような者は殺し合いを決して行ってはくれないだろう? もし可能性があるとしたら、君、夜神月かそこの間桐桜かだろうけど、それじゃあたかがしれているからね』 名指しされた月は思わずむっとした表情を浮かべる。 一方で間桐桜は無反応だ。 『だから君たちにはこの会場の外に来てほしいんだ。 このままここで燻っていられると失敗の可能性が高くなるからね』 「意味が分からないな。何故君がそこで僕たちを導くことに繋がるんだ?」 『会場の外に出れば君たちはアカギやシャルルの私兵達と戦うことになる。 殺し合ってくれることと比べれば非効率的だけど、完全に殺し合いを失敗されるよりはマシだからね』 『我々を敢えて呼び寄せて残り人数の口減らしを行うということですか。 分かりました。皆さん、時間いっぱいまで粘って調査を進めましょう』 『いいのかい?今この殺し合いには時間が経つと君たちに課せられた制限がより厳しくなるよう調整してある。 正確には放送を死人0で過ぎた場合に、ということだけど。そうなればより君たちの勝利は遠のくよ?』 「………」 キュゥべえの表情はNや月にも読むことは出来なかった。あまりにもその性質が人間、は元より生き物離れしすぎた無機質さだった。 「その戦力というのは?」 『僕が把握している、言える限りだと。 ナイトオブラウンズ、それもアリスの世界のものでゼロに匹敵する不死性を持った不死身の騎士達だ。 他にも体長10メートルを超える巨体のオルフェノクも支配下に置いてる。 あとイリヤスフィール、君の手元にないクラスカードがあるよね、あれもこっちにある。ここまで言えば分かるよね?』 「もしかして、あの黒い英霊が…?」 『あと最終ゴールはアカギのいる場所になるんだけど、そこからディアルガパルキアの力で援護してくるかもね。 こうなるときっとファイズのブラスターフォームやランスロットアルビオンもどうなるか分からないよ?』 「ナイトオブラウンズ、あれが不死になっているとなると確かにぞっとするな…」 スザクの小さなぼやきがキュウべぇの警告に説得力をもたせる空気になってきた。 『最終的な生存者ゼロ、というのは困るんだ。 僕の流す情報は君たちにとっては利しかないものだと思うけど』 「…確かに、言う通りではある」 『……』 スザクがキュウべぇの言葉に同意しつつある中で、月はまだ探るような表情を浮かべていた。 「具体的に何やれって言うんだよ。間桐桜の力がいるって言ってたけど」 『この会場には幾つかの干渉遮断フィールドの維持装置が備え付けられている。 君たちが行こうとしているポケモン城もその一つだ。 そしてもう一つ、柳洞寺ってあるよね。元々ここの地下には聖杯戦争のための大聖杯が備え付けられていた。 会場にその柳洞寺を再現した時、その機能も一緒にできちゃってね。せっかくだから維持装置の一つとして利用させてもらったんだ』 『もし僕たちがそこにたどり着くことがあったらどうしたんだ?』 『人避けくらいは設置してるし、もしもの時のために門番も置いているさ。 ともあれ、そこで必要になってくるのが間桐桜、彼女だよ』 呼ばれた桜の顔が小さく動いた。 『彼女は聖杯の機能を持たされていた存在だ。大聖杯と同調すれば本来の聖杯の形を図ることができるだろう。 あとから付与されたその維持装置を取り除くことができれば、君たちにも時間短縮ができる』 『随分とピンポイントですね、もしここに桜さんがおられなかったらどうされたんですか?』 『この手段は数あるうちの一つだよ。もしこのやり方が無理なら別の方法を挙げたさ。 今は条件が揃っているからこれが一番早いんだ』 「そのやり方ってのは、危険じゃねえのか?こいつの命が危なくなるってことは?」 『危険かと言われれば多少のリスクはあるさ。だけどどの方法だって同じさ。 今回は彼女に白羽の矢が立ったというだけで』 「…私に、やらせてください」 それまで俯いていた桜が、声をあげた。 「それで許されようとは思ってません、でも、私が少しでも役に立てるっていうのなら…!」 「分かった、それが最善でなおかつ君自身の選択なら尊重しよう」 ポケモン城に向かう一行と桜を合流させるのはチーム内の空気のために避けておいたほうがいいのではないかと思っていたスザクは桜の選択を受け入れた。 「なら俺も一緒にいく。こいつ一人じゃまともに行けねえだろ」 「私も」 その桜と共に行くことを選んだのは巧とイリヤだった。 『分かった。じゃあスザクとニャース達はこっちに来てくれ。あのロボットがあれば合流も可能だろう』 「そうだな。ただ、戦いでかなり機体にダメージがある。調子を確かめたら合流しよう」 「そういえばキュウべぇ、おみゃーに確認しておきたいことがあるにゃ。 アクロマはあの後どうなったにゃ?」 『彼は少し独断での行動が過ぎたから粛清が必要と思ったんだけど、逃げられてしまったよ。 アクロマが君に譲渡したものについては、アクロマの一任だから僕にどうこうすることはできない。彼は探究心と技術力は本物だったからね 僕個人としてはいい顔はできないけど君の好きにしてくれてもいい』 『そういえばキュウべぇ、君はどうするんだい?こっちに合流するのか?』 「いや、この組分けなら桜に同行させてもらうよ。そっちに行ったら殺されかねないからね」 アリスが露骨に顔を顰めた。 『それじゃあ方針は決まったね。善は急げだ、早く動こう。 ここも禁止エリアになるまでそう時間が残っていないからね』 「何でお前が仕切んだよ」 一通りの話が終わり、各々動き始める。 桜のおぼつかない足取りを巧が支えながら、イリヤを伴って目的地に歩み始めた。 そんな彼らを先導するようにその先頭にはキュウべぇが歩いている。 ニャースはランスロットの調子とアクロマの残したものを確認するために部屋から出ていく。 そうしてランスロットを動かすためにコックピットに戻ったスザク。 そこにアヴァロンにいる月から、通信が入った。 『そうだ、スザク。キュウべぇが出ていったらでいい。少しいいか?』 桜達が既に遊園地敷地内を出ていることを確認したスザクは、その言葉に頷いた。 【C-5/遊園地/二日目 深夜】 【乾巧@仮面ライダー555】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、皆の死に対する強い悔恨 [装備]:ファイズギア一式(ドライバー、フォン、ポインター、ショット、アクセル)@仮面ライダー555 、ファイズブラスター@仮面ライダー555 [道具]:共通支給品、、クラスカード(黒騎士のバーサーカー(使用制限中))、サファイアの破片 [思考・状況] 基本:ファイズとして、生きて戦い続ける 1:情報交換の結果に合わせて動く 2:見知った人や仲間がいなくなっていくことに対する喪失感 3:間桐桜を守りたいというこの思いは――― [備考] 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:疲労(特大)、全身にダメージ(大)、ツヴァイフォーム使用による全身の負荷(回復中)、クロ帰還による魔力総量増大 [装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [道具]:クラスカード(キャスター(使用制限中))(ランサー(使用制限中))(アサシン(使用制限中))(アーチャー(使用制限中)(ライダー(使用制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、 [思考・状況] 基本:皆と共に絶対に帰る 1:巧、桜と共に柳洞寺に向かう 2:桜のことは守りたいが… [備考] 【間桐桜@Fate/stay night】 [状態]:右腕欠損、魔力消耗(大)、顔面の右目から頬にかけて切り傷、右目失明、視力障害、脳への負荷による何らかの後遺症(詳細は現状不明)、強い罪悪感 [服装]:マグマ団幹部・カガリの服(ボロボロ)@ポケットモンスター(ゲーム)、キュウべぇ@魔法少女まどか☆マギカ [装備]:なし [道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕 [思考・状況] 基本:死にたい 1:柳洞寺に向かう。あわよくばそこを自分の死に場所としたい [備考] ※黒化はルールブレイカーにより解除されました。以降は泥の使役はできません。 ※切断された右腕はナナリーのギアスの影響で修復不可となっていました。 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:「生きろ」ギアス継続中、疲労(大)、両足に軽い凍傷、腕や足に火傷 [服装]:ゼロの衣装(マントと仮面無し)@コードギアス 反逆のルルーシュ [装備]:ランスロット・アルビオン(右足・ランドスピナー破損、右腕破損、胸部貫通)@コードギアス 反逆のルルーシュ [道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、スタングレネード(残り2)@現実 [思考・状況] 基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる 1:この場でだけ枢木スザクとして生き、皆の力となって帰還を目指す 2:月との相談後アヴァロンに向かう 3:アカギの協力者にシャルル・ジ・ブリタニアがいる前提で考える 4:ランスロット・アルビオンを修理したい 【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】 [状態]:ダメージ(中)、全身に火傷(処置済み) [装備]:サトシのピカチュウ(ダメージ(中))@ポケットモンスター(アニメ)、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) [道具]:基本支給品一式、 [思考・状況] 基本:この場所から抜け出し、ロケット団に帰る 1:ボールの解析情報などを他の皆と共有するため遊園地に向かう。 2:できればポケモンがいなくなったモンスターボールも見ておきたい。 3:ポケモンとは――― [備考] ※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです 【E-6/アヴァロン/二日目 深夜】 【N@ポケットモンスター(ゲーム)】 [状態]:疲労(小)、ゲーチスの言葉によるショック [装備]:サトシのリザードン@ポケットモンスター(アニメ)、タケシのグレッグル&モンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555 [道具]:基本支給品×2、割れたピンプクの石、ゾロアーク(スナッチボール)@ポケットモンスター(ゲーム) [思考・状況] 基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる 1:ポケモン城に向かい、クローンポケモン達を救う 2:世界の秘密を解くための仲間を集める 3:ゲーチスの言葉に対するショック [備考] ※モンスターボールに対し、参加者に対する魔女の口づけのような何かの制約が課せられており、それが参加者と同じようにポケモン達を縛っていると考察しています。 【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】 [状態]:疲労(特大)、右頬に大きな裂傷(応急処置済) 、視力にダメージ(平時には影響無し) [服装]:ビジネススーツ [装備]:なし [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本:キラではない、夜神月として生きてみたい 1:情報交換を行い、これからのことを相談する 2:Lの代わりとして恥じないように生きる 3:メロから送られてきた(と思われる)文章の考察をする [備考] ※死亡後からの参戦 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(大)、手足に小さな切り傷、背中に大きな傷(処置済み)、強い悲しみ [服装]:見滝原中学校指定制服 [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~2(確認済み)、ハデスの隠れ兜@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、咲夜子のクナイ@コードギアス反逆のルルーシュ、グリーフシード(人魚の魔女)@魔法少女まどか☆マギカ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、トランシーバー(電池切れ)@現実 、医薬品 [思考・状況] 1:……… [備考] 【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】 [状態]:ダメージ(小)、ネモと一体化、全身に切り傷、左肩に打撲と骨にヒビ [服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット [装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター(アニメ)、双眼鏡、 あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム) [道具]:共通支給品一式、 [思考・状況] 基本:脱出手段と仲間を捜す。 1:ナナリーの騎士としてあり続ける 2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先) 3:間桐桜に対して――― 最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる [備考] ※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前 ※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。 魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。 164 暁美ほむらの退屈 投下順に読む 166 憐れみをください 時系列順に読む 162 星が降るユメ 乾巧 166 憐れみをください イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 間桐桜 枢木スザク 167 白き牙の飛翔 161 ニャースとアクロマ・世界のカタチ ニャース 163 Why その理由 夜神月 162 星が降るユメ 鹿目まどか N アリス キュウべぇ 166 憐れみをください
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消せない罪(前編) ◆Z9iNYeY9a2 目が覚めた。 目の前に広がる光景は見慣れた部屋。 先輩の家の2階、木造の天井。 時計を見る。少し眠りすぎたようだ。 「そろそろ、先輩帰ってくるかな…」 体を起こしてベッドから立ち上がり部屋から出る。 部屋から出る時、視界の端に人影が映った。 体のあちこちをあらぬ方向に曲げられ、骨や内臓もはみ出して血塗れになった男がいる。 そのまま歩幅も変えず、真っ直ぐ階段を降りていく。 階段の角には、全身から血を流し銃痕や裂傷でボロボロになった少女がいる。 「今日の晩ごはんの担当って、どっちだったかな」 キッチンへと向かう。リビングの襖を開けた。 胸に穴を開けた女の人がじっとこっちを見ていた。 キッチンに人影はない。まだ先輩は帰っていないようだ。 食材はまだ残っていただろうか。足りなくなっていたら帰ってくる前に買い出しに行かなければならない。 冷蔵庫を開く。 上半身だけになった金髪の女の子がいた。こちらをじっと見つめている。 ガタリ、と扉が揺れる音がした。 「あ、先輩、帰ってきたのかな」 玄関へと急ぐ。 襖を開けたところに全身に火傷痕のようなものをつくった車椅子の少女がいる。閉じられている目なのにじっとこっちを見ているような気がした。 木の床の音を鳴らしながら小走りに玄関へと急ぐ。 向こうには二人分の人影が見える。きっと先輩と藤村先生だろう。 鍵を開けようとしているのだろう。こちらから開けよう。 玄関の脇に人の手と黄色い人形が置かれているのが見えた。視線は感じないが妙に存在感があった。 「今開けます、先輩、藤村先生、おかえりなさ―――」 鍵を開けて入口を開く。 そこに先輩はいなかった。 藤村先生はいた。腕を無くした上半身だけの姿で、地面にうつ伏せで転がっていた。 「―――」 それで全部思い出した。 気付いた瞬間、それまで背後にあった家がドロリと溶けて闇の中に消えていく。 それまで見てきた人影が、背後に集まってじっとこちらを見ている。 正面には少女が立っている。感情のない瞳で静かに見つめてくる。 これらが一体何なのかを理解したところで悲しくなってきた。 先輩がいないこと、藤村先生を自分の手で殺したこと。それらもある。 だけどそれ以上に。 先輩がいないことを思い出すまで、これまで行ったことを思い出さなかったこと。 これだけの人を殺しておきながら、そこに大きな罪の意識を感じなかったことに気付いたから。 「プク」 視線を下に下げる。小さなピンク色の生き物がいた。 それは野球ボールほどの石を抱きかかえている。 その石を、こちらに向けて投擲した。 避けることもできぬままいたところ、それは右目付近に命中。 痛みを感じて顔を拭うと、ドロリとした液体が手を濡らし、右のまぶたが開かなくなった。 そこで、私の意識は覚醒した。 ◇ 病院を出発したニャースが遊園地へとたどり着いたのは、ルビーが夜神月と情報交換を行っている頃、屋外にそれ以外の3人が出ていた時だった。 「あ、ニャースだ」 「君たちはこっちに戻ったのか」 「Nのやつとは別行動ってことにしたからにゃ。 ところでおみゃーは誰にゃ」 イリヤとは顔合わせをしたことがあった故に面識があったが、スザクの顔を認識していなかったニャースは呼びかけられて思わず問いかけていた。 「この顔で合うのは初めてだったかな。仮面をしてたから無理もないか」 「あ、おみゃーはあっちのゼロだったにゃ?」 「ピカ?」 「そういやさっきのタイミングじゃおみゃーはいなかったにゃ。 こいつはNから預かったジャリボーイ―サトシってやつのポケモンでピカチュウっていうにゃ」 「……何か猫が二足歩行で歩いて喋ってるんだが」 「君はあまり見たことがないんだっけ? 彼らはポケモンという生き物らしい。その中でも彼は特異的な存在で、人間との会話が可能なんだとか」 「へぇ」 ニャースの姿に一瞬驚くような表情を浮かべた巧は、そう聞いてとりあえず納得したように頷く。 一方でイリヤはじっとピカチュウの姿を見つめている。 「ピカ?」 「ね、ねえ。その子」 「ニャ?そういえばおみゃーもこいつを見るのは初めてだったかにゃ?」 さっき遊園地に来た時にはそういえばポッチャマの元に向かっておりニアミスしていたかもしれない。 ピカチュウも合わせて初対面の巧達に自己紹介をするニャース。 「…おみゃー何やってるにゃ?」 ふと見るとイリヤがピカチュウの前で棒をぶらぶらとさせている。 こちらからはその表情は見えなかったが、それが真っ直ぐと見えるピカチュウは露骨に警戒している。 「ねえ、ちょっとこの子抱き上げていいかな?」 「ちょっと目がおかしいにゃ。 ……仕方にゃーな。ピカチュウに少し話すから待ってるにゃ」 放置してもいいのかもしれないが、ニャースから見ても現状のイリヤの目の色は驚異に見えた。 かといってここで無理をさせればピカチュウは暴れて電撃を振りまくことになる。 ピカチュウを説得するニャース。 ものすごく不服そうに顔をしかめるピカチュウだが、しぶしぶニャースの説得を受け入れた。現在ニャースの言うことに逆らうことが難しいことも察した上での判断のようだ。 抱き上げて頬ずりをするイリヤ。そのまま少し離れた場所まで歩いていった。 「まあピカチュウのことは一旦置いといて、Nにモンスターボールの解析を頼まれたのにゃ。 もしかしたらこれがニャー達の首輪に関係あるかもしれないってことでにゃ」 「なるほど。今Nとの通信は可能だ。向こうの皆も交えて話すべきだろうな」 と、ランスロットを待機させた辺りに目をやった時だった。 建物の中からガタリと何かが落ちるような音が響いた。 その衝撃から周囲のものを揺らしたのか、地面に落ちた何かが鋭い音を響き渡らせる。 「おい、あの音の部屋、間桐桜が寝てた部屋だろ!」 巧とイリヤがすぐさま立ち上がり音のした方向へと向かっていった。 ニャースとスザク、そしてランスロットのコックピットで通信を行っていたルビーも遅れて飛び出した。 ◇ 起きた場所は見知らぬ天井だった。 今は夜で室内に明かりがないせいだろう、周囲が真っ暗でよく見えなかった。 腰を起こして腕で体を支えようとしたところで、寝かされていたベッドの上から転げ落ちた。 すぐそばに置いてあった机と、その上に置かれていたものを倒しながら地面へと倒れ込む。 地面に落ちたものは耳障りな音を奏でる。 受け身も取れずに転がり込んだ体は地面に打ち付けられて節々に痛みを走らせる。 「…っ」 小さくうめき声をあげながら、何故転がってしまったのかを思い返す。 周囲を探ろうと右手を動かそうとする。何も触ることができない。 「あれ…?」 右の二の腕付近に左手をやる。 まるで何かにすっぱり斬られているかのように、二の腕の先がなくなっていた。 少しずつ記憶が蘇ってくる。 これは確かナナリーの呼び出した巨人と戦った時に斬られたものだ。 体の他の傷は時間経過で治っていったからいつか治るだろうと思っていたのだが、なぜかこの腕だけは治ることがなかった。 吹き飛ばされて全身を地面に打ち付けられた時の体の傷や折れた骨も治ったのに、これだけはこのままだ。 「―――――――あ」 それをきっかけに、全ての記憶が脳裏に浮かび上がってくる。 逃げる少女へと銃を向ける自分。 こちらに立ち向かう少女を刃で切り裂く自分。 頼りになった大人の体を溶かしていく自分。 人を殺していく自分。 食って、殺して、殺して、襲って、溶かして、殺して、暴れて、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して。 「あああああああああっ、違う、それは、私じゃ…!!」 思わず顔を掻き毟りながら絶叫する桜。 その時、部屋に明かりが灯った。 「おい、大丈夫か!!」 眩しい光の中で上から呼びかける人の顔を見る。 だけどその顔がよく見えない。というか視界もなんだか狭い。 「誰、ですか…?」 『はーい桜さん、ちょっと失礼しますね』 ふわふわと、おもちゃのような何かが視界に入って質問を呼びかけてくる。 その問いかけに、答えられる範囲で答えていく。 その中で、今の自分の体の状態がある程度把握できていた。 右腕と右眼の欠損。そして残った左眼も視力を大きく失っている。 『ふむ、意識は少し混濁しているみたいですが、記憶に抜け落ちてるところはとりあえず見受けられませんね。 視力の低下はおそらくクラスカードを使用して神代の存在へと転身した副作用でしょう。もしかしたら他の身体機能にも影響が出ているかもですね』 「…大丈夫です、目は覚めました……」 話していく間に、全部思い出した。 ふわふわと飛んでいるような、夢の中での感覚にも思われたが自分でも驚くほど全ての出来事をはっきりと記憶していた。 「皆さんを呼んでください。これまでのこと、全部話します」 だからこそ、話さなければいけないと思った。 ◇ 介護を受けながらもベッドの上に戻った桜は視線を下げて座り込んでいる。 室内にはイリヤ、巧、ニャース、スザク、そしてイリヤの手の中にいるピカチュウ。 そしてベッドの傍の窓にはルビーが陣取り、建物のすぐ横まで移動したランスロットに繋がっている。 ランスロットの通信機とルビーを通じてその光景が映し出されている先のアヴァロンにおいてはNや夜神月達がその光景を見ている。 可能な限り皆に聞いてほしいというのが桜自身の言ったことだった。 (…まずいな) その中で、月とNはこの後彼女が起こすだろう行動、そしてその影響に強く警戒をしていた。 彼女が何をしようとしているのかは、桜自身の思い詰めたような表情が全てを語っている。 「私は、ここに来てたくさんの人を殺しました」 そして告げられた言葉はその予想に違わぬ、自身の罪の告白だった。 デルタの力を纏って。 警官を惨殺したこと。 半狂乱の少女をおもちゃのように扱って殺したこと。 殺人者の女を撃ち殺したこと。 慕う恩師を食い殺したこと。 巨人を操って姉に似た人を殺したこと。 自分を叩いた男を怒りに任せて消したこと。 少女の杖を奪い、意のままに操って斬り殺したこと。 その一つ一つを、ゆっくりと口にしていく。 『一つ忘れてるわ。 ナナリーって子を覚えてる?』 桜が全てを口にし終わったと思ったところで、通信の先からアリスが口を挟んだ。 「…覚えてます」 『あなたが操ったっていう巨人に乗っていた子よ。 あの時N達に襲いかからなかったら、あの子も死ぬことはなかった』 「そう、ですよね…」 「……」 責めるアリスの姿を見る巧とN。 巧は巴マミが魔女化した直接の原因が彼女ではないかと思い、Nもデルタのキックで消し飛んだピンプクのことを思い出す。 しかし言ったところで話が進まない。縁から桜を気にかけている二人は敢えてそれを言うことはなかった。 場を沈黙が支配する。 桜の反応を待っている様子のアリスに対し、桜自身も相手の続く言葉を待っているようだった。 あまり空気がよろしくないことを感じた月は話を進めるために口を挟んだ。 『それで、君はどうしたいのか? 元々ここの皆は君が行ってきた殺人はだいたいは把握している。細かいところや知らなかったこともないではないが。 だから真新しいというほどのものはない。その上で問いたいんだが。 君はその罪の告白をもって、どうしたいんだ?』 「………」 月から見てモニター越しのその表情は前髪に隠れて窺うことはできない。 数秒の沈黙の後、絞り出すように口を開いた。 「私は、たくさんの人を、殺しました…。 今いるみなさんの大事な人も、アリスさんみたいに殺してる人がたぶんいると思います…」 「………」 「それに、私はこんな体です、もし生きてたらきっと皆さんに迷惑をかけます」 「おい」 その先に続く言葉に予想がついた巧は、桜の言葉を止めようと呼びかける。 しかし桜の言葉は止まらない。 「もし私のことが許せない、生きていちゃダメだって思うなら、殺してください…」 「お前、何言ってんだよ!!」 「辛いんです…、たくさんの人を殺して、藤村先生も殺して、先輩もいなくて…。 私には何も残っていない、血で染まった手しか、残ってないんです!!」 桜の荒げた声が響き渡る。 「いいだろう、もし君が本当にそれを望むというのなら」 静かに桜の話を聞いていたスザクが答える。 壁に預けていた背を前に動かすより先に、巧がその前に立ちふさがった。 「待てよ、今のこいつは別に危なくはねえだろ、なあ!」 『確かにあの黒い魔力の気配はほぼ消えています。もし今の桜さんが人を殺そうとしても身体機能的に返り討ちにあうのがオチでしょう』 桜の心の奥にまだ残っているかは分からないが、とは言わなかった。 『すみません、少し桜さんを外して話し合いましょう』 提案したのはルビーだった。 当事者を外すことが正しい議論とは思わなかったが、今は本人がいてはやりづらい。 ついでに言うなら、正直まだ年端も行かぬ自身の主もこの議論からは外すべきではないかと思った一面もある。 桜は俯いたまま、何も言わなかった。 それを肯定と受け取った一同は部屋から出ていく。 『イリヤさん、結果次第では気持ちのいい話し合いにはならないでしょうし、席を外しておくべきだと思います』 「…ううん、私も、命を張って桜さんを助けた一人だから」 出るところでこっそり耳打ちするルビーだが、イリヤはその言葉を拒否して話に混ざることを選んだ。 ◇ ルビーの通信で映像と音声が繋がっているアヴァロン内部。 「あの、アリスちゃん、大丈夫…?」 「大丈夫よ、うん、大丈夫。 ごめん、やっぱり抑えきれてないみたい」 桜の姿を見ていたアリスを気遣うまどか。 その座る場所の近くにはえぐり取られたような穴が空いていた。 「どうも、無意識のうちに力を使っちゃってたみたい」 「席を外しておくことをオススメするが」 「いいわ、夜神月。私だってそこまで感情に任せて動いたりはしない。 しないから」 ナナリーのことを許せたわけではない。 だが引きずっていては前に進むことができない。だからこの感情は心中の奥底に仕舞っておこうと思ったのだ。 それが、彼女自身が言った償いのための死を望む言葉で表出しかけた。 彼女がいる場所がモニタの向こうで良かったとアリスは思った。 通信の始まったタイミングで目を覚ましたポッチャマは一言も声を発していない。 Nにも心中を確信させないが、それでも察することはできた。 「お前はどう思う、N」 「…タイガのことには思うところはある。が、これは彼女自身の問題だろう。 手を差し伸べることはできるかもしれないが、最終的な結論は彼女にしか出せないと思う」 「あの人は言わなかったけど、マミさんが絶望して魔女になったのも桜さんのせいかもしれないんですよね…?」 「あまり追求しすぎても仕方ないことだ。済んだことなのだから」 この殺し合いで他者を殺す者がいなくなり脱出に向けて動き出そうと思ったこの段階において。 彼女の処遇が最後の試練となるのかもしれない。 「ただ、どうしても考えてしまうことはある。 僕がもしまだキラだったら、彼女を裁いたのかどうか」 個人が直接手にかけただけでも8人。 過失や精神的な問題があったとしても多すぎるし、もし法であっても死刑以外の解決は難しいだろう。 そんな彼女を、おそらくキラは許容しなかっただろうと想定する。 「なら今の君は彼女を裁くのかい?」 「そんな資格はないさ。 松田や美砂はこちらから報復が必要な仲じゃない。美砂に至っては僕が言うのも何だが自業自得だ。 父さんのことは、それを理由に報復するようならきっとあの世で父さんにぶん殴られるだろうな」 そう言いながら、通信機の先のルビーに連絡を取り、桜の処遇はそちらに任せると言って通信を一時的に止めた。 現状介入する手段がないこちらがどうこう言う場面ではない。 ポッチャマを肩に乗せて窓の外を見るアリスと、彼女が座っていた場所にできた小さな床の窪みに目をやりながらそう考えて。 ◇ 『分かりました。では桜さんについてはこちらで話し合わせていただきます』 室外に出たところでルビーはそう言って通信を切った。 『向こうの人には桜さんをどうするか決める権限がないのでこちらに一任したいとのことです』 「そうか、でも正直、彼女がいる場所がこっち側で助かったと思う」 そう言って周囲にいる皆を見回す。 桜を助けるために戦った巧とイリヤ。イリヤは美遊とルヴィアのことにはまだわだかまりが残っているようだが、助けた相手にここで行動に移すほど直情的でもないだろう。 ニャースとピカチュウは複雑だろう。特にピカチュウは仲間を殺されている。 一方で自分のトレーナーを殺害した相手を手にかけたのが桜だということには言葉にしづらいほどの複雑な感情がある。 だが向こうには桜のせいで友が死ぬ原因になった少女がいる。トレーナーを殺されたというポケモンがいる。 特に少女、アリスは向こうのチーム内では最大戦力といえるほどの力を持っている。 決してそこで行動に出るほど感情的だとは思わないが、その仇がさっきのような反応をした場合、果たして彼女は冷静でいられるだろうか。 「俺個人には彼女に恨みはない。裁く権利もないと思ってる。 だけど間桐桜自身が生きる意思がないというのなら、この先は戦う力がない者以上に足手まといになるだろう。手を下す必要もあると思っている」 「…待てよ。言っただろ、あいつがおかしくなったのは最初にデルタギアを使ったからだって ならあいつが自分を取り戻したんだったらやり直せる、そうじゃねえのか?」 スザクのある種冷徹な意見に反論する巧。 「…一つ聞いておきたいことがある。 君がこれまでどう戦ってきたかは一通り聞いている。それを知った上で聞きたい。 彼女を生かしたいと思うその感情は、君自身の意思かい?」 「どういう意味だよ」 「本来彼女は君とは関わりを持っている人じゃない。 君が間桐桜をかばうのはきっと衛宮士郎という男のことだろう。 だがその男はもう死んだ。そして君は乾巧、衛宮士郎じゃない」 「だから、見捨てろってのか」 「余計なお節介かもしれないが、彼女を守るという意思がその男ありきのものだというのならその選択も必要だ」 「お前…っ!!」 思わず胸ぐらを掴んでしまった巧。 傍にいたイリヤの体がその怒気にビクリと震える。 『落ち着いてください二人とも!話が本題からズレてます!!』 ルビーが二人の顔の間に割り込む。 イリヤが一息飲み込むほどの間が空いて、巧はその手を離した。 「彼女が背負っているものはきっと、生半可な覚悟じゃ共に背負うことはできないものだ。 たぶん、それを背負うことに全てをかける必要さえあるかもしれない」 「…士郎はたぶん、それくらいの覚悟を持ってたんだよ。 だけど、俺だって軽い気持ちで言ってるわけじゃねえよ。うまくは言えねえけど」 場の空気に険悪なものが混じりつつあった。 巧が手を出してしまったことが原因だが、スザクの言葉に対して巧だけでなくイリヤも若干の苦手意識を持ちつつあった。 『はぁ…、議題は桜さんをどう対応するかです』 『じゃあ、こういうのはどうだい? 間桐桜自身に、役割を与えるんだよ。この場の皆の利益になるような役目をね』 「…おい、今の声は誰のだ」 不意に、一同の会話に未知の声が響き渡った。 周囲を見回す中で、ニャースとピカチュウの隣に白い影が見えた。 「ピカ?!」 「何ニャ、おみゃーは?!」 横にいきなり現れた未知の生き物に大きく後退する二匹。 『君たちの前に姿を表すのは初めてだね。 はじめまして。僕はキュゥべえ。アカギに協力してこの殺し合いを管理しているものさ』 白い生き物は、無機質に笑顔を向けながらそう答えた。 ◇ →
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「もうすぐ都庁につくよ。それにしても、そこらじゅう焼野原で馬鹿でかい穴まで開いてるって、何があったんだい……」 「カ~カッカッカ! だが見たところ、もう戦闘は終わってるみたいだな」 新たな仲間、超人達と震えるベジータを連れ、拠点としていた都庁へと戻る影薄組。 セルベリア達との激戦を繰り広げた彼女達であるが、途中現れた天子の言葉によればそれは陽動。 そして戻ってきた都庁周辺の大惨事を見れば、地上でとてつもない戦闘があったのは間違いないだろう。 「た、大変だよ! 世界樹が削れちゃってるよ!?」 あかりが思わず叫び指す方向を見れば、再生こそしているようだが何かに抉り取られたかのような世界樹の姿。 ぶらさがり続けていた謎の紫色の珍生物もいなくなっている。 いや、大規模な戦闘があったにしてはあまりにも世界樹そのものが静か過ぎた。 「何か妙だぞ。こまっちゃん、急いだ方がよさそうだ」 「フ、ハハ……な、なんだ、おも、思ったよりも都庁、怖くないじゃないか。金髪もいないしな……」 「そう思うんなら早く歩くっすよM字さん!」 「正直な所、僕たち以上に足が遅いのはどうかと思いますよベジータさん。というかまず自分の足で歩いてくださいよ」 震え笑いするベジータの背中を押して強引に進ませるのは高校生二人。 王子のプライドは崩壊寸前だが、今はそれよりも安心感の方が大きかった。 あれだけ恐ろしい場所と思っていた都庁が、実はそれほどでもなかったのだから、嬉しいに決まっている。 それはすなわち、今までへたれ続けていたベジータに活力が戻るというわけで―― 「……あら、いらっしゃい冒険者さん」 「ひぃぃぃ!?」 無くなりかけた恐怖心は、都庁の入り口に咲いていた巨大な花……否、巨大な花と一体化した少女の声で一気にふき上がってきた。 「あ、あんたは確か……そうだ、みんなで集まった時にちょっと見ただけだけど、アルルーナ……だっけ」 「ええ、そうよ。長いことこの世界樹の上の方で待機してたから、他の魔物と比べたら馴染みは少ないでしょうけど。 あなた達には、おかえりなさいね。……欠けた人もいないようだし、あなた達だけでも無事でよかったわ」 小町の問いに対して、花の少女アルルーナは小さく笑みを返す。 しかし続く言葉に、誰もが疑問を抱く。 「あなた達……だけ?」 「ええ。落ち着いて聞いて頂戴ね? 雷竜様、それに裁断者と骨竜……誰よりも先にこの都庁、世界樹を奪還してくれた勇敢な彼らが亡くなったわ。 それだけじゃない。地下で呉島貴虎と魔王マーラが暴虐の限りを尽くして第六階層の魔物はほぼ全滅。 討伐隊のみんなもどんどんやられて、最終的に巫女様が倒してくれたそうだけど…… 現時点での被害報告では、生存者の9割も重傷以上。壊滅的な損害もいいところよ……」 「――ッ?!」 悲痛な面持ちで告げられたアルルーナの言葉に、影薄達は誰もが絶句してしまう。 自分たちが地下に閉じ込められている間に、何があったのか。 事情はわからないが、とにかく突き付けられたのは、大量の仲間達の死であった。 「お、おい。都庁には、お、恐ろしい金髪共がいただろう。そいつらはどうしたんだ?」 「……サクヤちゃんは巫女様を庇って戦死。巫女様の救援に向かったレストさんも瀕死の重傷。 戦力的にも、無傷のダオスさんが残った最後の砦よ」 ベジータは心の中で小さくガッツポーズをとった。 あのブロリーっぽい奴の情報がここで出てこないということは奴は既に死んでおり、今しがた残りの金髪も死ぬか瀕死に陥ったのだ。 自分に恐怖の感情を植え付けた、気に食わない金髪連中が軒並み死んだ。所詮連中は超サイヤ人もどきにすぎなかったということだ。 だが、そうは思えども口にすることはなかった。影薄たちの反応、そして目の前にアルルーナがいるのにそんな真似はできなかった。 「どう……して……」 絞り出すようなあかりの声が、嫌に響く。 ベジータだけでなく、普段はうるさい超人達もまた無言であった。 ピーンポーンパーンポーン♪ そんな空気を、場違いな音が掻き乱す。 定時放送だ。 同時にそれは、絶望の追い討ちでもあった。 ◆ ◆ ◆ 「嘘っすよね……先輩……?」 「ひっ……くぅ……ぅぅぅっ……!」 「……」 放送終了後、そこには更に多くの涙が流されていた。 敬愛していた先輩の死を知らされたステルスモモはただただ愕然とし、未だに現実を受け止めきれていない様子だ。 都庁の仲間に次いで親友の死まで聞かされたあかりは、必死に涙を堪えようともするが、悲しみの感情を抑えきれていない。 そんな少女達の傍で、黒子は静かに、無言のまま緑間の死を受け入れていた。 自分達のような、ただのバスケ選手がこんな魔の殺し合いで長生きができるはずがなかったのだと、自分は運がよかっただけなのだと。 冷静にそう判断し、悲しみの感情を極力排除する。今は自分よりも、きっと仲間の少女達のほうが傷ついているのだから。 まさか緑間が大量殺戮マシーンと化していたとは夢にも思わず、彼は相変わらず冷静であり続けた。 「そんな、ニンジャだけでなく、あいつらまで逝っちまったってのか……?」 「カ~カッカッカッカッカッ! だが、主催連中も死んでいるということは、あいつらは立派にやり遂げたのだ!」 それに反するように、超人は大いに泣き、笑い、散って行った同胞の健闘を称えた。 彼らはしっかりと主催者連中を道連れにし、地獄へ叩き落としたのだ。ならば、残された自分たちも続かなくてどうする。 消えた山に乗っていたであろう残りの主催者を自分達の手で始末する決心を改めて固め、闘志を滾らせた。 そんな中。 この中では冷静であったソルジャー、日之影、小町の三名はそれぞれ悲しみの感情以上に放送への疑問が大きかった。 (安倍晋三だと……どうなっているんだ!? そして死国に何があったというのだ!?) (くそ、仲間や後輩をこうも助けられないなんて先代生徒会長として恥ずべきだが…… 都庁の中で見せてもらった主催者側の名簿にあった連中の多くも死んで、普通に考えりゃもうすぐ殺し合いは終わると言いたいとこだが……) (いくらなんでもさっきの新総理の様子は妙だ。あの風見幽香が死んだってだけでも驚きなのに、バーダックまで死んでるとはね。 それでいて、他の参加者と同じように淡々と名前を読み上げるなんて、まるであいつらが死んだことを問題にも思っていないような……) これが以前と同じくダース・ベイダーによる放送であればここまで彼らは混乱しなかっただろう。 しかしながら放送を行ったのは、“新”内閣総理大臣を名乗る安倍晋三という男。 彼に関する情報は、九州ロボに直接奇襲をしかけた超人達も、はやて達狸組から情報提供された都庁の者達も、誰も知らないのだ。 一体何者なのか。少なくとも放送の様子から察するに、主催幹部の多くが死んでも微塵も動揺していないことは確からしい。 (新たな強敵ってことかい? でも、戦うにしてもこの状況じゃ……) 小町は落ち込む影薄の仲間達を見やる。しばらくはそっとしておいたほうがいいだろう。 それに同盟を組んだ都庁の魔物達も心配である。 あれだけの大戦力、この眼で確かに見た強大な力を持つ龍の一体がやられ、残りも重傷だという。 呉島貴虎と先程言われていたマーラ様の名が呼ばれていたことから、一応は勝利したことになるのだろう。 しかし多くの仲間の名を呼ばれ、加えて自分の名が呼ばれていないためにセルベリアが再度リベンジでこちらを襲撃してくる危険性もある。 半壊……いや壊滅状態まで追い込まれた都庁の戦力で、あの無限沸きに近い狂信者を止められるだろうか。 超人達の戦闘力がどれほどかはわからないが、しばらくは彼らにも手伝ってもらう必要性もありそうだ。 「改めて死を告げられると、やっぱり悲しいわね。ほら、あなた達も辛いでしょうけど、そろそろ世界樹の中に入って。 そしてよければ……亡くなった同胞たちを弔ってあげて。カヲル君が、歌ってくれるみたいだしね……」 「は、はいっす……」 「そうだな……」 沈んだ表情のまま、影薄達はアルルーナに促されるまま、世界樹の中へと戻っていく。 仲間や友の死、新たな主催者の出現、思うところは色々とある。 だがこれから先も戦うのであれば、冷静に戦況を判断しなくてはならない。 まずは、何故こうも世界樹が致命的な損害を受けてしまったのかなどを、生き残った仲間から聞くべきだろう。 「それでは、我々もお邪魔させてもらうとしよう」 「あら――いつ、誰があなた達も通すなんて、言ったかしら?」 ソルジャー達が足を世界樹内部に踏み入れようとした、まさにその瞬間であった。 あれほど沈み込んだ表情であった少女の顔が、一気に冷徹な笑みに変わっていた。 「死になさい」 「カッ!?」 凍えるような笑み、フロストスマイルを浮かべたアルルーナから放たれたのは、本当に身を刺し貫く冷気の塊であった。 冷気はアシュラマンを貫き絶命させるだけに留まらず、後ろにいたバッファローマンにさえ突き刺さった。 「き、貴様ッ!」 「きゃあっ!?」 だが、バッファローマン突き刺さったそれを握り潰し、猛然とアルルーナへとぶつかっていった。 対話だとか、そういった思考は彼から一切切り捨てられていた。目の前の少女のフリをした化物は、こちらを油断させ、そして今まさにアシュラマンを殺害したのだ。 ハリケーンミキサーでバラバラにしてやらねば、気が済まない。 「ぐぅぅ……! パ、パワーはあるみたいだけど、私の蔓も負けてないでしょう? これでも私は龍種を除けば樹海最強の生物を自負してるの……舐めないで頂戴っ!」 「う、うおおおおおぉぉぉぉぉ!?」 絡み付いたアルルーナの触手のような蔓が、あのバッファローマンの巨体を強引に持ち上げる。 アルルーナの言葉通り、彼女は樹海において樹海守護獣や飛龍以上の戦闘力を有している、三竜に次ぐ実力者。 先程の冷気だけでなく炎に稲妻さえ操り、触手のような蔓を振り回し、太古の呪粉すら撒き散らすその姿はさながら小型のフォレストセルだ。 「逞しい身体……あなたの精気で、この傷も治させてもらうわ」 「な、なにを――んむぅ?!」 言うや否や、アルルーナはバッファローマンの唇を奪う。 突然の行為に抵抗するバッファローマンだが、どんどんと力が抜けていく。 やがて彼は気がつく。己のあれだけ逞しかった腕が、足が、身体が、枯木のように干からびていく様子に。 ――ヴァンパイアキス。アルルーナは無慈悲な吸精鬼でもあるのだ。 「ふぅ、ごちそうさま」 やがて完全に吸いつくされたそれは無造作に投げ捨てられ、アシュラマンの遺体の上に重なった。 「――ッ!」 あまりに突然の惨劇。 外見に反した恐ろしい魔物に仲間を殺されたソルジャーは、一瞬だけ我を忘れかけた。 だが彼はこれまで、冷静で的確な判断力で生き延びてきた。 【都庁を訪ねる】という判断ミスさえ除けば、その判断力は未だ健在であった。 アルルーナにとびかかろうとする寸前で、彼は咄嗟にバックステップをとった。 「神樹――ライオットランス」 直後、ソルジャーの頭上から赤い鉄槌。 あのまま激情に身を任せ飛び込んでいれば、この一撃で粉々にされていたことだろう。 「お姉さま、助かりましたわ!」 「アルルーナ、お下がりなさい。貴女でもこの殿方は手強い相手でしょう。ここは私と神樹が引き継ぎますわ」 ソルジャーは敵に目をやる。 今まさに鋭く尖った蕾を叩きつけてきた、黒い怪物。その太い蔓の一つに乗って降りてきたのは、一人の人間の少女であった。 都庁軍に属している様子ではあるが、影薄達は彼女の存在を知らない。 見知らぬ少女が仲間となった筈の超人の命をいきなり奪ったのだから、彼女たちも黙っているわけにはいかない。 「な、なんなんだいアンタ!? いきなりこんな真似をして、一体どういうつもりさ!」 「初めまして、ですわね。タマムシジムのジムリーダーを務めていましたエリカと申します。そしてこちらは神樹。 恐ろしい敵に敗れ、瀕死であったところをこちらの美樹さやかさん達に助けて頂いたのです。 受けた恩は返すのが道理。地下での戦闘では手助けができず、多大な犠牲を許してしまいましたが、せめて地上ぐらいは死守いたします」 優雅におじぎをするエリカに対して小町は勢いを削がれてしまうが、このエリカが只者ではないことは理解できた。 横にそびえ立つ神樹とよばれた怪物も、そしてアルルーナも、どうやら彼女の配下となっているらしい。 そしてその配下に、躊躇いもなく超人達を殺させたのだ。その辺のお嬢様というわけではないだろう。 「あんたが都庁、こっち側の協力者ってのはわかった。だが、なんで超人達を攻撃する? 俺たちは狂信者の攻撃で地下に閉じ込められていたんだが、それを助けてくれたのはこのソルジャー達だ!」 「神樹と共に警戒にあたる際、小鳥さんより危険人物の情報は既に聞かされていますわ。 超人血盟軍、表向きは対主催組織のようですが、最悪の破壊集団である拳王連合への協力者でもあり…… 野球の試合で何故かクロスボンバーで対戦相手の首を吹っ飛ばすという、彼ら自身も危険な存在。排して然るべきではないでしょうか?」 「いやあれは――」 「野球とクロスボンバーの関係性を述べられるなら、どうぞ」 僅かに汗をかいたソルジャーだが、彼は弁明の言葉が捻りだせなかった。 見れば、本当なのかとステルスモモ達もスマホで動画確認中だ。 動画に映るは、桜色クロスボンバーで首をもがれた(故)コルド大王。 カオスロワ式野球だから! これカオスロワ式野球だから死者も出るの! こう弁明したいところなのだが、かつてのイチローチームと大正義巨人軍の試合と大きく違うのは、野球のボールとかが一切関係ない点だ。 逃げるコルド大王への仕置きにしては、桜色クロスボンバーはあまりにもえげつない。 しかもガチレズ二人が、ちょっと冷静にみれば結構怖い外見のコルド大王の首を嬉々としてもいでいるのだ。 これでは誤解を招いても仕方がないだろう。もっと言えば、結構フェイスフラッシュに頼りすぎて怪我人も多い。主に仲間のベジータだが。 「で、でもあかり達を助けてくれたよ?」 「……油断しないで。そうやって恩を売って世界樹内部に侵入して、内部から破壊する作戦かもしれないわ。 ラージャンとデスマンティスの件もあるし、よほど信用がおける存在じゃない限り、これ以上世界樹に誰かを招くのは危険よ」 アルルーナの言葉を受けて、あかりも黙ってしまう。 「拳王連合に脅されてるって可能性はないんっすか? って……っ!?」 なおも超人達の肩を持とうとスマホをいじっていたステルスモモの表情が一気に崩れていく。 言葉に詰まり、何も言えなくなってしまった彼女の様子が気になった小町が思わず後ろから覗きこんだ。 「――っ!」 そして、小町もまた言葉を失ってしまった。 情報を確認する中、彼女が見つけてしまったのは大阪の拳王連合の略奪から逃れた避難民の助けを求める書き込みや動画。 その中の一つに、それはあった。 『む、もう映っているのか? 私は加治木ゆみ。 少し前に大阪をジプシー・デンジャーの脅威から救ってくれた小野塚小町さんに、救援を求める書き込みをした者だ。 恥ずかしながら、私は凡人でね。雀力を戦闘力に変えてもたかが知れている……故に助けを求めた。 だが勝手ながら――もう救援の必要はない。もしこちらに戻ってきてくれていても、引き返してくれて構わない。 身勝手な女だと思われても仕方がないだろう。だが、これを見てくれ……』 動画に映っていたのは、ステルスモモが敬愛する先輩であった。 だが彼女がカメラの向きを変えた瞬間に、それは映った。 ――破壊の化身、バスターガンダム―― 『誰かは知らないが、ロードビヤーキーを駆り我々を守ろうとする者が現れてはくれたものの、見ての通りだ。 まるでその想いを踏み躙るように、奴らは我々の避難先を次々に砲撃してきている。ここも……時間の問題だろう。 もし、この動画を見てくれた者がいれば、小町さんに限らず皆大阪から離れて欲しい。 拳王連合軍は、恐ろしく強く……そして赦されざる存在だ。今無策で我々を助けようとして、このような渦中に巻き込まれてはならない。 今はまだ……だがいつか、機が訪れたその時でいい。どうか、拳王連合軍を止めて――』 最後まで言い切る前に、轟音と共に無数の瓦礫が降り注ぐ。 バスターガンダムの砲撃が、とうとうこの避難場所にも命中したのだ。 崩壊の音にほとんど掻き消されたが、敬愛していた先輩が最期に自分の名を呼んでくれたことを、ステルスモモは確かに聞いた。 「うぇ…っく…せん、ぱい……っ!」 スマホの画面に、大粒の涙が零れ落ちて滲ませる。 日之影も、小町も、友を失い辛いはずの黒子もあかりも、かける言葉が出てこなかった。 「……」 エリカは静かに首を横に振った後、アルルーナへ目配せをした。 「……弁明の余地無しです。野球と称した虐殺だけに飽き足らず、無差別砲撃で罪もない人々の命を奪うなど、許すことはできません」 「私たち魔物も、確かに命を奪うわ。でもそれは自然の摂理であるし、生きるためには必要なこと。ここまで無差別な殺戮はしない。 そしてね、貴方たちにたとえどんな事情があっても――多くの大地を破壊した罪――は、消えないの。 ――拳王連合及びそれに協力する者は皆殺し――これは雷竜様の遺志にして、私たち魔物の総意……」 ソルジャーが、僅かに後ずさる。 もはや説得をする時間も残されていなければ、聞く耳すらもってくれていない。 そもそもバスターガンダムの無差別攻撃そのものも、彼には疑問が尽きなかった。 「ベジータ……ベジータ?」 そして何故か、ずっと黙り続け地面に両手をつきつづけていたベジータに対しても。 まさかここにきて、またへタレ病が再発したというのか。 一度はこちらの話を聞いてくれた影薄も、バスターガンダムの動画があっては少なからず警戒されてしまうだろう。 交戦不可避。だがそれは本意ではないし、この状況はいかにソルジャーと言えども危険すぎた。 「エリカを甘くみねーことだな。こいつはやる時はやる女だぞ? やるは勿論殺す方のやるだからな」 「私を見るなりいきなり捕獲しにかかってきたお姉さま……そんな強引なところにも惹かれちゃう!」 「こほん! 以前倒したマーダーのお二人も、あなた方も、明らかに平穏を乱すような方々であれば、私は攻撃に一切の手心はしないつもりです。 未来に控えている破滅を皆で協力して回避するためにも、虐殺をよしとする危険な芽は摘ませて頂きます」 ゆっくりとエリカの手が動くと同時に、漆黒の大樹と妖艶な花がそれぞれ攻撃体勢に入る。 「神樹、アルルーナ――」 「っ!」 その刹那ソルジャーが下した判断は、ベジータを抱えての逃走であった。 二体の植物が苛烈な攻撃を仕掛けてくる前に、既にベジータは脇に抱えている。 敵は圧倒的な力を持っているが、根という存在がある以上移動速度はそれほどでもないだろう。 初撃をかわしさえすれば、後は逃げおおせることができる。 それは実に冷静かつ、的確な判断力であった。 ◆ ◆ ◆ 「ち、これ以上は蕾が届かねェ。メギドフレイムとかならまだ届くが、どうする?」 「お止めなさい神樹。深追いして返り討ちにされては意味がありません。今はとにかく、ここを守ることを優先しましょう」 「……まあ、あの糞オカマとの再戦に備えて、無駄な力は使わないに越したことはないか」 しゅるしゅると、神樹の蕾と鈎爪がソルジャーの追跡を諦めて定位置へと戻る。 アルルーナの蔓も同じくだ。 「……ふぅ。とりあえずはなんとかなって何よりね。少なくともさやかちゃんがみんなの治療を終えるまでは、持ち堪えないと」 「本当に超人さん達、悪い人だったのかな……」 「忘れないで頂戴? 私たちがあなた達と同盟を組んでいるのは、あなた達が私たちに理解を示し、環境に対しての考えも改めてくれそうだからよ? あの超人達はそこをはき違えた。ただ主催者と敵対しているだけでここに入れるなら、拳王連合軍まで入ってきちゃうじゃない……」 「だ、ダメっすよそんなの! だって拳王連合軍は、先輩を……ただ怖くて隠れてた人たちを、あんな、あんなに……!」 ステルスモモの両肩が震える。 悲しみの感情以上に、バスターガンダムへの、拳王連合軍への怒りの感情が勝っていた。 「……モモ、一回中に入るよ。超人や拳王連合軍のことはとりあえず保留だ。今はまず、状況を把握しないといけない。 さっきの放送が、あたいにゃどうも引っかかるんだよ」 「引っかかるといえばエリカさん、先程は未来に控えている破滅と言っていましたが、それはどういう意味です?」 改めて影薄達が世界樹に入っていくなか、ふと黒子が疑問を口にする。 そしてそれを聞いたエリカと神樹は、そうだったと言わんばかりに表情を変えた。 「す、すみません。こちらに来てから忙しくてまだ皆さんにもお話していなかったのですが――この世界はこのままでは滅んでしまうのです」 「俺達は、それを食い止めるために色々調べている最中だったんだ。さっきこのそばでなのはっぽい奴らの姿も見かけたし…… ああなのはってのは俺達のチームのリーダーだった奴だ。そいつが、大災害による世界の滅亡を教えてくれたんだよ」 「「え゛?!」」 「驚きです」 そして投下されるエリカ達の爆弾発言。 悲しみに暮れる間もなく世界樹に集った者には、まだまだ安息が訪れそうにない。 【二日目・11時15分/東京都・世界樹】 【影薄組】 【小野塚小町@東方Project】 【状態】健康、首輪解除、混乱 【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH 【道具】舟 【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる 0:え゛?! 1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する 2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない 3:幽香及びバーダックの名が放送で呼ばれたことに疑問 4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね 5:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える ※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。 ※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました) 【日之影空洞@めだかボックス】 【状態】健康、首輪解除、混乱 【装備】己の拳 【道具】支給品一式 【思考】基本:主催者を倒す 0:え゛?! 1:仲間を守る 2:混沌の騎士が遺した謎を解く 3:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。 【東横桃子@咲-Saki-】 【状態】健康、首輪解除、深い悲しみと怒り、混乱 【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム 【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具 【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる 0:え゛?! 1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない 2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る 3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き 【黒子テツヤ@黒子のバスケ】 【状態】健康、首輪解除、冷静 【装備】ウィンチェスターM1912 【道具】死出の羽衣@幽々白書 【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる 0:世界の滅亡ですか……流石に驚きました 1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する 2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?) 3:狂信者には絶対に負けません 【赤座あかり@ゆるゆり】 【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ、混乱 【装備】エンシェントソード@Minecraft 【道具】マムルの肉@風来のシレン 【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍! 0:え゛?! 1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る 2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成 3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい 【エリカ@ポケットモンスター】 【状態】健康、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー 【装備】モジャンボ、キノガッサ、他不明 【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ) 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 世界樹に集まっている人にも世界滅亡の未来を伝える 1:ポケモンと一緒に生き残る 2:珍しい植物タイプはゲットしておく 3:世界樹の軍勢を手助けする 【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】 【状態】健康、蕾増加、エリカのポケモン 【装備】なし 【道具】支給品一式 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 フォレストセル達が戻り世界樹が立て直すまで入り口を死守 1 なのは達、尻がどうのこうの何言ってんだ……? ※都庁近辺にいるなのは組達を既に視認しています 【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】 【状態】ダメージ(小)、深い悲しみ、エリカのポケモン 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明品 【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る 0 神樹と共に入り口を死守する 1 お姉さま、世界の滅亡って私も聞いてないです…… 2 拳王連合及びその協力者は皆殺し ※世界樹の魔物の一人です ※三竜や協力者を除き、彼女より強い魔物はもう世界樹内部には残っていません 「はぁ……はぁ……」 ソルジャーは神樹とアルルーナの攻撃をかわし、どこかに身を潜めていた。 たった一度の判断ミスで、かけがえのない仲間を殺されてしまい、逃げ出した主催者を探すこともより困難となってしまった。 だが彼には、それを悔いる余裕もなかった。 「ブルマ……ブルマ……」 脇に抱えていたベジータは、まるで幽霊か何かのように力ない声で、ひたすらにその名を呼んでいた。 そう、バスターガンダムの攻撃はベジータの妻の命も奪っており、その名はつい先ほどの放送でよばれた。 友情を築き上げつつあったアシュラマン達の死にすら反応がなかったのは、これが原因である。 「ベジータ~~~~っ!」 「ブルマ……どうして……」 前ならしゃんと背筋を伸ばしたソルジャーの一喝もまるで効果がない。 そしてソルジャーは、同時に理解していた。ここでまた判断を誤ると、さらに取り返しがつかなくなるということに。 ソルジャー――キン肉アタルは、再び冷静で的確な判断力を取り戻せるのか? 【二日目・11時20分/東京都・どこか】 【超人血盟軍】 【ベジータ@ドラゴンボール】 【状態】健康、金髪恐怖症(小)、首輪解除、深い絶望 【装備】野球のユニフォーム 【道具】支給品一式、ノートパソコン 【思考】基本:死にたくないので野球をする 0 ??? ※何度も瀕死状態から回復したので戦闘力が上がりました。 ※心に穴が空いている状態です。クラウザーさんの歌を聞いた場合、洗脳される危険性がでてきました 【キン肉アタル@キン肉マン】 【状態】健康、首輪解除、傷心、僅かな焦り 【装備】キン肉マンソルジャーのマスク、飛竜が書いた九州ロボの地図 【道具】不明 【思考】 基本:殺し合いを止める 0:まずはベジータに的確に対処 【アシュラマン@キン肉マン】 死亡確認 【バッファローマン@キン肉マン】 死亡確認
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ゆとりさんが入室しました 京輝さんが入室しました ゆとり- ええ、そうよ。(にこっと笑って ゆとり- 京輝さんには、こいをしているひとはいる? 京輝- ・・・。 京輝- 俺は・・・ 京輝- 俺はまだ、 京輝- まだ、わからない、な。 京輝- (悩みながら、答える ゆとり- そうなのね。 京輝- ・・・(黙ってゆとりを見て ゆとり- わからないって、少しふしぎな言いかたね。 ゆとり- 恋がどんなものかわからないということ? ゆとり- それとも、じぶんのきもちが恋かどうかわからないのかしら?(両手を合わせて楽しそうに 京輝- それは。。。(楽しそうにするゆとりから目をそらして言いよどんで ゆとり- ? 京輝- あ、いや、 京輝- わ、わからない…かな。 ゆとり- うふふ、(そんな様子に笑って ゆとり- 京輝さんに好きなひとができたら、わたし、応援するわね(ふわふわと笑みを浮かべて ゆとり- わたしのまわりのひとにはみんな、しあわせな恋をしてほしいなって思うのよ。 京輝- 、っ(胸をズンと刺すような痛みに、一瞬表情が曇る 京輝- あ、あぁ… 京輝- みんな幸せになるのが……一番良い、な。 ゆとり- うん。・・・ほんとうにそう思うわ。(すこし俯き笑って 京輝- 好きな人ができたらきっと・・・幸せにしたいと思う。(机の上に目を落としたまま、ふと呟く ゆとり- うん。そうよね。 ゆとり- 好きなひとがしあわせだと、きっと自分もしあわせだものね。 ゆとり- ・・・、うん(少し俯き ゆとり- きっと、そう思うの。 京輝- あ。・・・。 ゆとり- ・・・?京輝さん?(首傾げて 京輝- いや、 京輝- 誰だって、幸せに 京輝- なれるんだと、思う。 京輝- (困惑した様子で言葉をつなぐ ゆとり- ・・・ ゆとり- ・・・かなわない恋でも?(ぽつりと、呟くように 京輝- っ、、 京輝- それでも、 京輝- ・・・、・・・・・・ 京輝- (何も言えず ゆとり- ・・・(繕えないその様子に ゆとり- やさしい人ね。京輝さんは。(眉を下げて笑いながら ゆとり- ごめんなさい。いじわるな事をきいたわ。(困ったように笑って ゆとり- ほんとうはね、わかってるの。(椅子に横向きに座り、膝を抱えるようにして ゆとり- ・・・だけど、 ゆとり- すきでいることは、やめられないものなのね。 京輝- っ、、、・・・・・・・・・・・・・・・ 京輝- 、そう、か。 京輝- (話を、聞いてあげることしか出来ない。 ゆとり- うん。(抱えた膝を見つめる 悲壮な顔はしていない 京輝- ……… 京輝- (あの時の 京輝- (あの時のゆとりの表情ばかりが、頭のなかにフラッシュバックし続ける 京輝- っ……… 京輝- (かけてあげれる言葉なんて… 京輝- (ない… ゆとり- ・・・ぁ。 ゆとり- ごめんなさい。(はっと ゆとり- ほんとうはあんまり、かなしいお話をするつもりじゃなかったんだけど・・・。 京輝- い、いや! 京輝- 俺が・・・ ゆとり- ・・・ううん、 ゆとり- やっぱりわたし、まだかなしいきもちのままみたい。(困ったように、少しだけ瞳を潤ませて笑む 京輝- 消えるものじゃ、無いんだ(ポツリと ゆとり- え? 京輝- 強がってもいい、克服したと思っても、良い・・・ 京輝- でも、消えるものじゃ、無い、んじゃないかな・・・ ゆとり- ・・・ ゆとり- ・・・そう ゆとり- そうなのかもね・・・。 ゆとり- うん・・・。 京輝- っ、 京輝- そのっ、、、、 京輝- (悲しませるつもりじゃ、ないのに ゆとり- ? 京輝さん? ゆとり- ・・・えっと、 ゆとり- 何かしら、その、うまく言えないんだけど・・・ ゆとり- わたし、大丈夫よ。 ・・・心はいたいけど、だから、 ゆとり- 京輝さんもかなしい顔しないで。(笑って 京輝- っ、、あぁ、すまない。(ゆとりの笑みに応えて 京輝- あぁ・・・(自信のない笑顔を浮かべてゆとりを見る ゆとり- ・・・(心配そうに京輝を見て ゆとり- あっ。 ゆとり- そうだわ、ここ、喫茶店なのよね。 ゆとり- 何かおいしいものを食べれば元気が出るかもしれないわ。 京輝- そうだなっ! 京輝- セントラル1美味しいと噂の、、喫茶だっ、きっとっ! ゆとり- ええ、(メニューを取り出し、縦に広げる ゆとり- 前にかすむがここに来たんですって。おいしいわたあめがあるって言ってたわ。 京輝- じゃあ、ゆとりさんも、わたあめを、食べる?(ぎこちなく ゆとり- うーん、どうしようかな・・・ あっ、これかしら(ふんわり綿菓子シェキシェキシェイクを差し ゆとり- 京輝さんはどうするの? 京輝- じゃあ俺は、 京輝- 白玉ぜんざいを、頼む、!(何故か気合入れて ゆとり- やっぱり和食が好きなの?(そんな京輝に笑って 京輝- あぁ、和食が好きだよ。ゆとりさんは? ゆとり- うーん、マカロンとか、わたあめとか、キャンディとか・・・(頬に人差し指当てて ゆとり- あっ、でもぜんざいも好きよ。 京輝- それは、、お菓子が多いね。 ゆとり- そうね。あまいってしあわせでしょう?(ふわふわ笑って 京輝さんが入室しました 京輝- あぁ。 京輝- 俺も、甘いほうが好きだよ。 ゆとり- うふふ、ぜんざいだものね。 ゆとり- それじゃあ、注文をしましょうか 京輝- あ、あぁ。すいませーん。(店員を呼ぶ サカイさんが入室しました サカイ- (奥から現れる髭の兄ちゃん サカイ- ご注文かい?(伝票片手にスッと席へ 京輝- 白玉ぜんざいと、、、ふんわり綿菓子シェキシェキシェイクを、 京輝- お願いします。 サカイ- りょうかい。 サカイ- (すっと奥へ消える サカイさんが退室しました ゆとり- ありがとう。(注文に礼を言う 京輝- いや、別に、、 サカイさんが入室しました サカイ- おまたせいたしました サカイ- (白玉ぜんざいと、ふんわり綿菓子シェキシェキシェイクを置いていく サカイさんが退室しました ゆとり- わぁ、おいしそう!(スイーツを無邪気に見て 京輝- …頂きます。 ゆとり- いただきます。(両手を合わせて 大鎌さんが入室しました 大鎌- (突如店内に鳴り響くガラスの砕ける音 ゆとり- きゃあっ!?(音に驚き 大鎌- (窓ガラスを割り砕いて京輝達の隣の通路にぶっ刺さる2mを越す大鎌 京輝- っ、な!? 大鎌さんが退室しました 創止さんが入室しました 創止- あーあ。シケた所じゃねぇの。 ゆとり- ・・・え?(震えた声で大鎌を見つめる 創止- (入り口から気だるそうに入ってくる 創止- (赤髪短髪金眼の若造 創止- 伝説の戦闘喫茶っていうからドレだけ血気盛んな所かと思えばよお 創止- (赤のYシャツに黒のジャケット前開き 大鎌の元まで歩いてくる 創止- 店内ガラッガラ。誰も挑発に乗りやしねえ。死んで詫びろや。 創止- (首鳴らしながら大鎌の元までたどり着き 創止- ―で?(京輝とゆとりを見て 創止- おめーらが巻き込まれた可哀想な一般人か?(悪そうな笑みを浮かべて二人を見下す金の眼 ゆとり- ・・・っ(怯えた様子で男を見上げる 京輝- なんだっ、、君はっ(立ち上がり創止の前に立つ 創止- ニッ(床に刺さった大鎌を手に取り京輝を横薙ぎ 京輝- ―ぐ!?(不意打ち喰らって吹っ飛ぶ 創止- (吹っ飛んだ京輝には目もくれず ゆとり- っ!? 創止- 俺ぁ蔵島創止 クラジマソウシ 地獄の門番やってら、 ゆとり- 京輝さんっ!(立ち上がり吹っ飛んだ京輝に飛んでいく 創止- テメェらが死ぬ時にゃあ必ず俺達の元へやってくる事になってる…つーわけで、 創止- 死んでくれや(大鎌を構えゆとりに笑む 京輝- っ、く、 京輝- 下がって…(立ち上がり、ゆとりを背に庇うように 創止- あん? なんだよ。(立ち上がった京輝を見て ゆとり- ・・・、 ゆとり- (京輝を心配そうに見上げ 創止- まだ死んでなかったのかよ…(気だるそうな声で ゆとり- ・・・わたしたちは、 ゆとり- 命を終えたら、空のめがみさまのもとへゆくのよ。(京輝の背から顔を出し 創止- あん? 創止- テメェら…モブじゃねぇな? ゆとり- ・・・?(怯えたように創止を見て 創止- ……(何かを視るように 創止- テメェら、天空人と地底人か?(笑み浮かべ 京輝- っ?! ゆとり- ・・・どうして、わかるの? 創止- おーおー? ただのモブかと思えば、 創止- 魂の色が違ぇ(ニタリと笑みを浮かべ何かを視ている ゆとり- っ、、 創止- 特にそっちの天空人の女は上物じゃねぇか。地獄じゃ見たことねえ。 ゆとり- え・・・? 創止- そうかいそうかい。天空人はみーんな女神様に盗られちゃってたってワケかよ。はっはっはっは(わざとらしく額に手を置いて笑い 創止- それなら今ここで死ねや(ゆとりを見て笑み 創止- 死んで俺と一緒に閻魔様のトコにいこーぜ女。もう二度と女神様なんざに会えない地獄へよお? ゆとり- っ・・・!?(身をふるわせ ゆとり- どうして!?いやよ・・・!(己の身を抱くように 創止- はっ、良いねえ? 創止- そういう態度。死ぬほど好きだわ。(ゆとりへ笑み歩む 京輝- (創止の司会を塞ぐように間に立ち 創止- あぁ? なんだぁ地底人、死ねよ。 京輝- やってみろっ!(創止に向けて駆ける 創止- オルァッ!!(大鎌を京輝に向けて振るう 京輝- 黒拳ッ!(走りながら大鎌向けて繰り出す右ストレート 創止- ニッ(拳と鎌がふれあう直前、鎌の刃が豪炎に包まれる 京輝- ―(拳と鎌が触れ合う時 京輝- 黒世の君臨者 ブラック・ホール 京輝- (炎が全て空間に飲み込まれ鎌の先端が砕ける 創止- ぁ!?(鎌を引きバックジャンプで距離を取る ゆとり- っっ、、(後ろで縮こまりながら二人の戦いを見ている 創止- は?! 不思議な術使いやがって! 京輝- 黒空 虚空 京輝- (鎌を砕いたその拳が、ナニカにぶつかるように勢いを止め。 京輝- 黒空 虚空 京輝- ―(ビキ)―― 京輝- (空間に穴をブチ開ける 京輝- (ブチ開けられた空間が閉じようとする時、世界の全てをその場所へ引き寄せる 創止- んだとッ!? 創止- (京輝の目の前に引っ張られていく 京輝- 覇黒ッッ!!(創止の腹に拳をブチ当てる。 創止- ―っが!?(殴られた箇所に大きな穴が空く 京輝- (殴ったものに大穴をブチ開ける鬼人京輝の能力 創止- この野郎ッ! 創止- (自らの体空いた穴を感じ、 創止- 地底人風情がッ!(両腕に豪炎をまとわせた大鎌を振るう 京輝- 黒拳ッ! 京輝- ―(鎌の根本を殴り鎌を粉砕して 京輝- ―(ビキ)―― 京輝- 黒空 虚空 京輝- (ブチ開けられた空間に全ての炎が吸われていく 創止- (炎が掻き消え 創止- ッ! 京輝- 黒拳ッ!(創止の肩を粉砕 京輝- 黒拳ッ!黒拳ッッ!!(胸を、首元を、殴り 京輝- ―(ビキ)―― 京輝- (次々大穴を開けていく ゆとり- 、、、、っ(息を呑んで、ぎゅっと目を瞑る 創止- ッ、、ぐ!! 京輝- 戦闘喫茶だか地獄の門番だか知らないけどっ 京輝- 唯の女の子を殺そうなんって、間違ってるッ!!(防御不能の連打を叩き込む 創止- ―、―、っがああ!!死ねクソが!!! 創止- (穴だらけの全身が業火に包まれる 京輝- っ!(業火に怯まず拳を繰り出す 創止- 地底人風情が地獄の死者に意見すんじゃねえよ!!(全身を包む業火が勢いを増し 創止- だったらテメェはさぞかし"正しい"んだろうな!?(業火が二人の体を包むように燃え盛り 京輝- 覇黒ッ!!(拳が創止の頬を打ちぬく 創止- 「己の罪を悔いて死ね!」 記憶の点火 イグナイト・メモリーズ !! 京輝- ―(拳が触れ創止に触れる寸前に動きを止め 京輝- ―…―……―――(京輝の過去に犯した"罪"の記憶が脳裏に炙り出される ゆとり- 、・・・? ゆとり- 京輝さん――? 京輝- ッ、、ぐ…ぁ…っ、、、 京輝- (業火に包まれたまま動きを止め、 京輝- ぁああああッッ!!(焼けるような脳の痛みに両手で頭を押さえる 創止- 死ね罪人がッ!!(燃え盛る京輝を蹴っ飛ばす 京輝- っ、、(蹴っ飛ばされ背中から床に落ちる 京輝- がああああっ!!(業火に身を―脳を焼かれ悶える ゆとり- 京輝さんっ・・・!! ゆとり- 、、(吹っ飛んだ京輝に駆け寄り 創止- はっハァ!!なんてザマだ死に損ないッ!!(全身穴だらけで京輝を見下す ゆとり- っ、、(悶える京輝の前に庇うようにして立つ 創止- おっと女、献身的なのはそそるが、その距離は危ねーぜ?(ニタリと笑って ゆとり- (創止の前で両手広げて ゆとり- ど、どうして・・・ ゆとり- どうしてこんなひどいことをするの・・・! 創止- (ゆとりの背後から、京輝を包んでいた業火が燃え移る 創止- どうしてってェ!? テメェらを死なす為だよォオ!! ゆとり- っ・・・!?(背中を焼かれ 創止- はーはハァ!! テメェもコイツの"罪火灯"に招待してやるよ!(楽しそうに高笑いし ゆとり- っああ……っ!!(涙の混じった悲痛な叫び声を挙げる 創止- (京輝・ゆとり・創止の三人の脳裏に、 創止- (京輝の罪の記憶、 京輝- ("凶鬼"として多くの人を傷つけた記憶、"京輝"すら忘れていた"凶鬼"の犯した罪の記憶が、 ゆとり- ――― 京輝- (脳を直接炙り焼き、昔のフィルムを焼き起こすように、次々にフラッシュバックしていく 創止- ハァーハッハッハッハハァ! コイツぁ傑作だ! とんだ大罪人じゃあねぇか!(愉しそうに声を上げ ゆとり- ―――っっっ(悲痛に顔を歪め、両手で頭を抱え崩れ落ちる 創止- 死ねよ偽善者! "警察"なんていう職について罪滅ぼしのつもりか!?(自らも業火に焼かれながら叫ぶ ゆとり- いやああぁぁ、、やめて・・・!!(余りにも残虐な光景に涙を流し 創止- 見ず知らずの人を殺めたか!? 大事な友人を傷つけたか!? 創止- はっハア! 一瞬すぎてわかりゃしねえ! これがテメェの真の姿か!? 創止- 死ね! 死ねよ大罪人! "罪なき一般人"に迷惑をかけてぇ、のうのうと生きるなよぉ!(声高らかに 京輝- ぐっ、、ああああっっあ!!(業火にもがきくるしみ 創止- …ぁ? なんだこの記憶のピースはよ? 最新の―― 創止- (3人の脳裏に 創止- (大泣きするゆとりの前に立ち尽くす京輝の姿が炙り出される 京輝- (涙し、悲しむ、彼女に、何もしてやれなかった。最新の"京輝"としての罪の記憶 創止- っは? (あざ笑ってゆとりを見て ゆとり- ・・・っ、、(両手で顔を覆っている 創止- アンタも罪な女だねぇ? 一緒に死ぬか?(ゆとりに笑み ゆとり- ・・・い、いや・・・、(か細い声で 創止- (穴だらけの腕を力ずくで動かし 創止- そういうのが、ソソルんだよっ…(砕けた部分を炎で補い大鎌を形作る ゆとり- たすけて、、、 創止- 死ねや罪人共ッ!!(燃え盛る大鎌をゆとりに向かって投げる ゆとり- たすけて・・・ ゆとり- ・・・トリエスタさん・・・! 鳥賀陽さんが入室しました 鳥賀陽- ―――(瞬間、 鳥賀陽- (ガシャァン ッ(ゆとりの背後の窓がブチ割れ、 鳥賀陽- (豪速で飛来し大鎌に激突 創止へと弾き飛ばす 鳥賀陽- ゆとり様! 京輝様!(バッと二人の前に降り立つ、スーツ姿―否、航空管制官の制服に身を包んだ鳥 創止- あんっ?(跳ね返ってきた大鎌をキャッチし、侵入者を見る 京輝- ぐっ、・・・っ!(燃え盛る業火に身を包まれている 鳥賀陽- っ、(バッと後方に翼をふるうと、2人の周囲に風が発生 鳥賀陽- (業火の炎を吹き飛ばす 京輝- (炎が掻き消える 創止- っは? オイオイ。つまんねー真似すんなよ。死ねや鳥野郎 鳥賀陽- スカイロード航空管制室、鳥賀陽と申します!(創止を前に高らかに 鳥賀陽- パトロールの最中、ワタクシの瞳にて過度の『襲撃行為』を確認致しました。 鳥賀陽- これ以上お2人に干渉を続けるようでしたら、制止に入らせて頂きます。(まっすぐに見て、きっぱりと告げる ゆとり- ―――・・・、(うるんだ目で鳥賀陽の背を見上げ ゆとり- トリエスタ、さん・・・ 創止- 『戦闘喫茶』は乱入歓迎ってか? 良いぜ?(鳥見て笑って 創止- だがよ、つまんねー真似はすんなよ?(そう言うと 京輝- (京輝の頭部が火種となり、全身が再び地獄の業火に包まれる 京輝- ―っが!? 創止- 俺の『記憶の点火 イグナイト・メモリーズ 』はテメェらの"罪"を火種に燃え盛る厄介な技でな。 鳥賀陽- っ、京輝様 創止- そこの女みてぇに移り火を貰った奴ならいざしらず、鳥野郎風情の風圧なんかじゃあ消せねえんだよ(鳥賀陽に笑み ゆとり- ・・・っ(心配そうに京輝を見る 鳥賀陽- …… 鳥賀陽- そう、でございますか。 鳥賀陽- それが貴方様の選択ならば、致し方ありません。 鳥賀陽- (バッと翼を広げ ゆとり- 、気を付けて、トリエスタさん・・・! ゆとり- そのひとは、とてもおそろしい事をするの・・・ 鳥賀陽- ご心配は無用ですよ、ゆとり様。 創止- へぇ?そうかい!(指を鳴らし 創止- (京輝の体から業火が二人の元へ跳びはねる 鳥賀陽- (一足、地に足を付き 鳥賀陽- TGY-TTアロー!(風を纏い、お構いなしに創止に高速突進 ゆとり- えっ?(驚いてる間に跳ねた業火を無抵抗に浴びる 創止- 女見殺したァ罪な男じゃねえの!(鎌の持ち手部分を縦に構えて鳥の突進を受ける 鳥賀陽- っ―――(拮抗、――否! 鳥賀陽- っはぁッ!!(風の力で全力ブーストし、自身ごと鎌ごと創止ごと外に吹っ飛ぶ 創止- ッ、、ンだとぉ!?(外に共に吹っ飛んでいく 鳥賀陽- ――ッ(共に喫茶の外に 鳥賀陽- (1.脅威対象と住民の距離を可能な限り離し、安全な場所に退避させる 鳥賀陽- (2.早めの救護措置が困難、または不可能な場合は、術者を叩く。 創止- ッチ、距離が…(ゆとりを包む炎が消え、京輝を燃やす業火が威力を弱める ゆとり- っっっ・・・(ぎゅっと目を瞑って痛みに耐えている 鳥賀陽- 少々、(ぽつりと 鳥賀陽- お待ちくださいませ、ゆとり様、京輝様――… 鳥賀陽- (思いきり距離を離した後、バッ、と宙に引き上空へ 創止- ぁあ!? 鳥野郎っぽい動きだなあ! 創止- (公園の噴水近くに着地し、空を見上げる 鳥賀陽- アスピーデ!(両翼を交差し、創止に向け飛ばすX字の風刃 ゆとり- ……、(自分の炎が消えたのを確認し ゆとり- 京輝さん……、(心配そうに京輝を見て ゆとり- (ほのおが弱くなってる・・・? 創止- ぐっ!(両腕を交差し防御の姿勢を取る ゆとり- 、 っ、(ふらりと立ち上がって ゆとり- (よろよろと歩き、傘を取りに行く 創止- クソがッ、(体の大半に穴が空いたその身では回避も出来ず 鳥賀陽- はッ!!(大きなX刃の後、次々と小さな風刃を発車 ゆとり- ・・・、(傘を手に取り、京輝のもとへ 創止- ぐ、クソがッ、、、(風刃を身に受けながら 創止- 調子に乗ってんじゃねえぞ!死ね!!(噴水付近のベンチを燃やしてぶん投げる ゆとり- ・・・、 ゆとり- おねがい―― ゆとり- 【いやしのきり】(ぱ、と傘を開き ゆとり- (燃え盛る京輝の身体に癒しの雨を降らす 鳥賀陽- っ、(ぎゅんっと大きく上昇しベンチを避け 京輝- っ・・・!? 鳥賀陽- TGY-TT――(眼下の創止を見、 京輝- (炎が消え、業火に焼かれた外傷を、癒しの雨が優しく治癒する 創止- ニッ(笑み 鳥賀陽- ハープーンッ!!(風の力を纏い、錐揉み回転しながら豪速飛来 創止- 待ってたぜェ!!(ちょうど間を合わせるように 創止- (創止の纏う炎が肥大化 創止- (鳥賀陽の突進が創止のボディに直撃し― 鳥賀陽- ――― 創止- っがは!!(血を吐きながら 創止- ―(大きく穴の空いた創止の胸部分に鳥の頭を固定するように残った両腕で抱き込む 鳥賀陽- ――、っな!(抱き込まれ 創止- (創止と共に一定時間以上燃え続ける事。対象の頭を燃やすこと。 創止- (それが『記憶の点火 イグナイト・メモリーズ 』の発動条件! 鳥賀陽- ―、、っ(抵抗のように、両腕の付け根を翼で押し 創止- ―っがは・・・(大量の血を吐き 創止- (致命傷を受けながらも鳥賀陽を掴む 鳥賀陽- っっっ!!(頭を燃やされながら、創止の密着距離で風刃を発生させ 鳥賀陽- (後方に無理矢理吹き飛ぼうと 創止- 「己の罪を悔いて死ね!」 記憶の点火 イグナイト・メモリーズ !! 創止- (穴の空いた体を利用して死ぬ物狂いで稼いだ時間 鳥賀陽- ――― っっぐ 創止- (大罪人を地獄へ送り込む為、鳥賀陽の脳裏に記憶の炎が点火される 鳥賀陽- ―――、あぁっ!!(後ろに弾き飛び、倒れながら転がる 創止- 来たぜっ、来たぜ―!! 創止- (死に掛けの体で、噴水の縁に横たわり 鳥賀陽- ―――(彼の『罪』は嘘。 創止- さあ!曝け出せよ! 貴様の罪の炎を! 鳥賀陽- (小さな小さな嘘。平穏の為の、安定の為の、清く、善くある為の。 鳥賀陽- (幾つも幾つも積み重なり、重い枷と成ったもの。 鳥賀陽- (―自分の気持ちに嘘を付き、感情を隠し、裏腹な行動を取り、「善人」で在り続ける。 鳥賀陽- (―それがもっとも「誰も傷付けない」道だと信じている。――そんな愚かさこそが。 創止- くだらねぇ! くだらねえな偽善者! 創止- (噴水の縁に横たわりもう全身を満足に動かせない状態になっても 鳥賀陽- ―――っ、、、、(地に倒れ、炎に頭を燃やされ静かに呻く 創止- 気持ちに嘘をつき善人であり続ける事だと!? はっ、くく、はっハハァ!笑わせるぜ! 創止- テメェの脳内情景図が俺達の脳裏には焼きつくされんばかりに溢れてやがるっ! 鳥賀陽- っっ、、く、、 創止- これがっ全部っ! 嘘の世界だっ!(声高らかに 創止- テメェ自身に嘘をつくテメェは、周りに偽りの「善人像」しか見せれねぇ! 創止- くくはは、ハハハッ!! なんにも考えてねえようなトリアタマヅラして、 創止- 大層な罪人だよっ!全くっ!! 創止- (噴水横で愉しそうに声を張り上げ 鳥賀陽- っ、、(地に翼を付き 鳥賀陽- ……、構い、ません、(ゆっくりと身体を起こす 鳥賀陽- ……それで、良いのです。(ぽつぽつと呟くように言いながら、立ち上がり 鳥賀陽- っっ、、(頭を押さえ 創止- あン?だと? 鳥賀陽- それが、 鳥賀陽- 私の望む事ですから。 創止- ッチィ!(舌打ちし 創止- 阿呆は死んで詫びろ!(胸糞悪そうに鳥賀陽を睨む 創止- (指を弾き、イグナイト・メモリーズの炎を更に強める 鳥賀陽- (すっと創止に翼を向け 鳥賀陽- 、、、っ!! そう、 鳥賀陽- そうですよ、、 鳥賀陽- そうです!(風の刃を生成し、満身創痍の創止に次々と発射 鳥賀陽- 、、、ッ、 鳥賀陽- 昔から、頭の出来が、良くありませんので、(次々に風刃をぶつけながら 鳥賀陽- ……こんなやり方しか、、、 創止- だあアアっ!!死に損ないがあああッ!!(風刃を身に受けながら 鳥賀陽- 出来ないんですッ!!(次々と 鳥賀陽- ッッ!!(ギュッと目を瞑ったまま両翼を交差させ 鳥賀陽- (一際鋭利なX字の刃を生成 鳥賀陽- アスピーデッ!! 創止- 死、死ねよっ…!!(噴水の縁に手をかけ 鳥賀陽- 発射ッ!(創止に刃が迫り来る 創止- 罪人は死ぬべきなんだッ!!(噴水を傾け 創止- (溢れる水流に地獄の炎を纏わせる 風の刃に対する簡易バリア 創止- (創止の炎は単体では展開や発射が出来ない。必ず何かに纏わせる形を取る炎 創止- (その代わり、本来反発する水流であっても― 創止- ッッ!(被った水流の業火がアスピーデの威力を軽減させる 鳥賀陽- …………、、、(頭を押さえながら創止を見据えて 鳥賀陽- ………居りませんよ、 鳥賀陽- 一つの、罪も、無い人間など… 創止- あぁ。だから死ね。(全身に穴を開け、崩れた噴水の水と瓦礫にまみれて 創止- (なおもまだ笑う 京輝- っ!(喫茶の方から創止へ向かって駆ける影 鳥賀陽- ……いいえ。(きっぱりと 鳥賀陽- 諦めて、くださいまし。 京輝- ッ―(創止に近づくたび痛くなる脳の痛みを堪えながら、焼けつく脳裏のあぶり焼きを鮮明に思い出しながら、"凶鬼"の記憶を探る― 京輝- 黒世のっ…!(創止の前に現れ 鳥賀陽- 、京輝様! 京輝- ―― ――(記憶の中と同じ情景。全ての光が拳へと吸い込まれ、全景が漆黒に染まる ゆとり- っ、(京輝を追って喫茶の外に出てくる 鳥賀陽- ―――っ、(あれは、 京輝- 君臨っ者!!(光無き世界で、創止へ拳を叩き込む 創止- ―― ―――― 京輝- (京輝の拳から光が弾けて、世界に光が戻る 鳥賀陽- (大会で見た、あの―――…… 京輝- (噴水、瓦礫、創止、業火、そして周囲の空間全てが消え失せている 創止さんが退室しました 京輝- っ、、 京輝- (頭を抑え、 鳥賀陽- 、……京輝様…… ゆとり- ――・・・っ(とてとてっと二人に駆け寄る 京輝- (内で燃える炎の消失を感じる 鳥賀陽- …、ご無事でしょうか?(京輝に心配そうに声を掛ける 京輝- っ、、 京輝- あぁ・・・ ゆとり- トリエスタさん、京輝さん・・・っ(駆け寄り 京輝- "俺"、は、大丈夫だ。(二人へ振り向く京輝の顔 鳥賀陽- ゆとり様もご無事ですか?(振り返り ゆとり- うん。わたしはだいじょうぶ・・・ ゆとり- ・・・トリエスタさんは? 鳥賀陽- ワタクシも問題ございません!(朗らかに答える 鳥賀陽- ……、、(頭を押さえ)ここらは余り治安が良くありませんので、 京輝- … 鳥賀陽- 災難でございましたね。(2人に声を掛ける ゆとり- うん、そうね・・・ 京輝- あ、あぁ……… ゆとり- また・・・(鳥賀陽を見上げて ゆとり- 助けてくれたのね。 鳥賀陽- ………、(ゆとりを見て 京輝- ―――(鳥賀陽を見て 鳥賀陽- 空の、しいては町の平和を守るのが、 鳥賀陽- 航空管制官のつとめでございますから。(ゆとりに笑い 鳥賀陽- それに、 鳥賀陽- 京輝様のお力あってこそです。 京輝- いや、助かったよ。 京輝- 鳥賀陽さんも、ゆとりさんも、 京輝- 独りなら、絶対負けていた。 京輝- だから、助けてくれて、ありがとう。(二人に素直に感謝の言葉を述べる 鳥賀陽- ……(抉られた記憶を思い起こすように 鳥賀陽- ハイ、それでは、三者共に、 鳥賀陽- お互い様、でございますね。 ゆとり- ・・・うふふ、それでいいの?(おかしげに笑って 京輝- ・・・あぁ。 鳥賀陽- では、ワタクシはこれにて失礼させて頂きます!(2人にびしっと礼をし ゆとり- あっ。 ゆとり- そうね、お仕事中だものね・・・。 鳥賀陽- ええ、巡回に戻らねばなりませんので(2人から離れ 京輝- 、 京輝- あぁ・・・ ゆとり- っ、(鳥賀陽に一歩駆け寄り ゆとり- トリエスタさん、 鳥賀陽- …、ハイ、何でございましょう、ゆとり様。 ゆとり- ・・・、 ゆとり- 白いカーネーションの、 ゆとり- 花言葉を、おぼえていて。 ゆとり- ・・・ ゆとり- ゆるしてね。 鳥賀陽- ………、 鳥賀陽- …… 畏まりました。 鳥賀陽- それではお2人とも、帰りしなにもお気を付けて。 鳥賀陽- では!(とんっと地を踏み飛躍 鳥賀陽- (ばさりと翼を広げ、大空に姿が消える 鳥賀陽さんが退室しました 京輝- ・・・ ゆとり- ……(鳥賀陽の姿が消えるまで見送る 京輝- (無意識に、鳥賀陽の姿を見送るゆとりを見つめていた ゆとり- ・・・・・・(じっと空を見つめている 京輝- ・・・ 京輝- ・・・・・・・・・ 京輝- 悪いけど、俺も、帰るよ。 京輝- …傷の治療をしなくちゃいけないし。(静かに伝える ゆとり- あっ、 ゆとり- うん、そうね。時間もたくさん過ぎちゃったし。 ゆとり- ポウフェナから飛んできたけれど・・・ ゆとり- 京輝さん、帰りも飛んでいく?(微笑んで 京輝- いやっ、、大丈夫。 京輝- 先に…セントラルの治療所に、、寄るから。 京輝- ゆとりさんも・・・、喫茶の治療施設を使うと、いいよ。 ゆとり- あっ、そうなのね。 京輝- (喫茶へ視線をやり 京輝- 火傷は 京輝- 早い内に観た方がいいよ。(喫茶へ目をやり ゆとり- ……うん、(火傷、の言葉に、 ゆとり- っ(京輝の炎を通して流れ込んできた絵を思い出す ゆとり- ・・・ 京輝- ・・・ 京輝- それじゃあ、 京輝- 気をつけて・・・ ゆとり- うん。 ゆとり- 京輝さんも・・・気をつけてね。 京輝- 、・・・ 京輝- あぁ・・・ 京輝- (ゆとりに背を向けて 京輝- (町へ向けて歩き出す ゆとり- (喫茶に向けて歩き出す 京輝さんが退室しました ゆとりさんが退室しました
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けせないきず【登録タグ け 小屋 曲 鏡音レン】 作詞:小屋 作曲:小屋 編曲:小屋 唄:鏡音レン 歌詞 (ピアプロより転載) 通り過ぎて行く街の人込みの中 君の面影を探し続けている 店の窓に映る僕の隣にはもう 君の面影を見つけられなくなった 僕の中の時計が止まって動かない 失くしたものばかりを求めてる 懐かしい思い出が音を立てて壊れて行くよ 去年のクリスマスも思い出せず消えていく 君が好きだった映画を流してみても あの頃のように思うはずなかった 悲しみも痛みも君を想えば全て耐えられた 今は想う君がいない 僕の中の時計は未だ動くことなく 歩くことに怯えて進めない 懐かしい思い出が音を立てて壊れて行くよ 君が笑った顔も今は少し霞んでる 君といた思い出が僕の中で崩れて行くよ そこに幽かに残る君がつけた消せない疵 君がいた面影が何処を見ても残っていない だけど確かに残る君がつけた消せない疵 僕の中に置き忘れた君と言う名の消せない疵 コメント これ、スペアラで書いたら良さそう… 最初はむくひばかな?なんて思ったけど『僕の中の時計が止まって動けない』でプリーモファミリーだなって。今となっては映画の部分ででぃのひばかなとも。ただこの曲聞いたことないし、たった今初めて聞いて途切れ途切れにしか読んでないわけ。どうしようかな。注意するひと、居るんだろうな。ゴメンねゴメンね。悪気は無いの。 -- 凪(自重出来ないよいちごみるくいもけんぴ (2010-08-04 04 47 09) あ、『僕の中の時計が止まって動かない』だね。ごめん。 -- 凪 (2010-08-04 04 48 17) 名前 コメント