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殿軍 効果 他の味方の反撃ダメージが0 発動条件 攻撃側戦闘 「防御側の反撃」時 使用可能武将 武将名 切札 知行 兵科 戦力 特技 備考 馬場信春 築城の匠 3 騎馬 3 殿軍 武田軍固有 松田憲秀 - 3 足軽 3 殿軍 北条軍固有 板垣信方 - 4 騎馬 5 殿軍 武田軍固有 北条綱成 - 5 騎馬 6 殿軍 北条軍固有 朝倉景健 - 4 騎馬 4 殿軍 名声5獲得 尼子晴久 - 4 騎馬 5 殿軍 名声15獲得 浅井長政 猛き魂 5 騎馬 5 殿軍 名声50獲得 解説 敵からの反撃を受けた際、自分以外のコマが受けるダメージを打ち消す。 自身のダメージを防げない分、「一夜城」の弱体化版とも言えます。 他のコマと一緒に行動するのは、大抵[戦力判定]での勝利を目指しているため、反撃に備える【特技】は無意味である。 《城》攻撃時に(想定外の敵コマ出陣により)増援が発生して予定が狂った場合ぐらいでしょう。 史実で、負け戦の殿(しんがり)を務めて命を落した武将が多い。
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書物系 殿軍の書 (シンガリノショ) 【書物】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (殿軍の書.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 4.6 6 9 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 − -10 -10 装備可能 全職 装備区分 特殊装備 必要Lv 16以上 付与効果 器用+7 備考 武田家の曽根昌世のドロップ
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書物系 殿軍の書 (シンガリノショ) 【書物】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (殿軍の書.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 4.6 6 9 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 − -10 -10 装備可能 全職 装備区分 特殊装備 必要Lv 16以上 付与効果 器用+7 備考 武田家の曽根昌世のドロップ
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書物系 殿軍の書 (シンガリノショ) 【書物】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (殿軍の書.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 4.6 6 9 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 − -10 -10 装備可能 全職 装備区分 特殊装備 必要Lv 16以上 付与効果 器用+7 備考 武田家の曽根昌世のドロップ
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書物系 殿軍の書 (シンガリノショ) 【書物】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (殿軍の書.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 8 4.6 6 9 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 − -10 -10 装備可能 全職 装備区分 特殊装備 必要Lv 16以上 付与効果 器用+7 備考 武田家の曽根昌世のドロップ
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■殿軍の誉れ ショーグンの強化スキル。味方1人を3ターンの間殿軍に任命。 対象となったキャラは、3ターンの間最遅行動となり、更に防御力が上昇、攻撃力が低下する。 防御陣形と同じく物理、三色属性、無属性全ての被ダメージが減少。 先読みの行動をする時は有用だが、ガード系スキルとの相性が最悪なことに注意。 エミットウェポンを多用する場合、「先陣の~」と合わせて行動順の調整に有用。特に、エミット着火役を殿軍にしておけば、行動順に多大なマイナス補正が入るはずのチャージ・エーテル圧縮にもちゃんと後発できる。 先陣と違い使用したターンから効果有り。 行動順は最後だが属性リミットや幸運のハンマーより先になる。氷竜戦ならリセットウェポン役を殿軍指名しておけばアイスシールドに幸運のハンマーを阻害されないで済む。 バグさえ許容すれば実質先制攻撃スキルになる。攻撃力低下への依存が少ない飯綱とかがあればなおさら。 4では「リアガード」と名を変えて登場した。隠し職(インペリアル)の技というところも同じ。 リアガには攻撃力低下効果が無い分アタッカーにもかけれる長所がある。 6層裏ボス戦で補助役などにかけておくと、防御形態から攻撃形態になった直後に弱体がかけられる。 一騎当千+我流パーティで我流役にかけておいて、攻撃形態になった直後に瞬殺という使い方も。 殿(しんがり)は後退、撤退時などの相手に背後を見せざるを得ないとき、追撃を阻止したり後退の援助をしたりする役らしい。味方の支援が受けられない為危険が伴い、相応の実力がある武人しか任命されないとか。殿軍の「誉れ」というスキル名もなかなかあっているかも リアガードとこれ、どちらが出てくるんだろうか… 殿(しんがり)はちょっと893な言葉でいうと「ケツ持ち」となる。これはゾッキーがパトカーに追われた時、誰か一人が後衛に回り、蛇行運転などでパトカーを振り切る行為や、チンピラが裏の商売をする時、彼らの後ろ盾になってくれる組織の事を指す。 Xではリアガード登場につきオミット Xではこっちのほうが欲しかった。インペリアルは基本アタッカーだからね 使用ターンから効果が出るので、旧レンジャーのスローステップのような感覚でも使える。裏ボスの態勢変化と同時に弱体を刺せるのは超有能。 リマスターではバグが消えた模様。割かし有用だったと思うのだが…? クイックオーダーバグが基本邪魔にしかならないから巻き添えで削除された形だろう そう言えば似た挙動で起きるんだっけか…そりゃ仕方無いか コメント ■関連項目 スローステップ(スキル) リアガード(スキル) 先陣の名誉(スキル)
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オスミナ 殿軍 (4) 行軍の続く日は、長いと感じる。 今日もそうだった。強行軍ではないけれど、騎兵の脚での行軍だから、かなり距離は稼げていた。それに途中から、陣地経路線に沿って進まなくなった。 川があったからだ。川は、例によっていくさの区切りとなる。川向いに陣地を作れば、そう簡単に超えられなくなる。しかもオスミナの川は、せき止められて溢れるようにされている。緩んだ広い湿地の向こうに、敵の陣地の跡がある。 そして、そこでたくさんの賊徒を見た。たぶん百を超えていた。汚れた軍装や、野良着に近いものを着ているものも少なくなかった。武器を持っているものはほとんどいなかった。もう気力も萎え果てたようだった。 それでもルキアニスたちの白の三を見ると、顔を上げ、首を上げ、腰を浮かせたり立ち上がったりした。逃げようとしたのか、それともあきらめがついたのか、ルキアニスにはよくわからない。それでも騎兵たちへ寄り集まっていって、鞭で手ひどく打たれたものもいた。多くは立ち上がろうともしなかった。、助けを得られるとは思っていないようだった。ルキアニスたちが、賊軍を救援に来たわけじゃないことは、もう知れ渡っているらしかった。 ここにとどまっているのは、もう気力を無くして、座り込んだまま、どこにも行こうとしない者らであるらしい。 連隊長は、もう救援など指示しなかった。先に言った通りに。 だから連隊の者は、賊徒に近づかなかったし、賊徒の方も、また座り込んだりして互いに目も向けぬようになった。目をそらして俯いた彼らを、痛ましいとは思っていたけれど。 連隊長は要があれば発砲して構わないとすでに命じてさえあった。足を止めたのは、騎兵と騎乗の機付きを、対岸に送るのがむつかしいからだ。 賊軍は、苦心してこれを超えたらしい。浮橋が掛かったままになっていた。もともとここに在るものではないらしい。河原に広がる湿地から伸びて、向かいの河原の湿地を超えたところまで続いている。その先はまた白い砂利の道だ。浮橋の下流側には、点々と杭が打たれており、機装甲を渡らせたのもわかった。 それに、川のこちら側には、道を逸れて川沿いに、新しい道が作られていた。西側つまり上流側へ向かうものだ。これまでの砂利道とは違う。草原の踏み跡で、踏み崩されて、轍も深くえぐられて、通ること自体が苦難に思えるものだった。なぜこんなものが、と思い、そしてルキアニスも気づいた。賊軍が、帝國へのまっすぐな後退をあきらめて、新たに作った道だ。 連隊長は、そんなものにはまったく目を向けなかった。 対岸へ向かわねばならない。しかし賊軍の作った浮橋が、いつまで使えるかわからない。それに橋を保持するために騎兵を残置することもできなかった。機装甲は、騎乗の者らよりまだ楽に河原湿地と河とを超えることができる。白の六、それに黒の二の踏破力ならば、そしてすでにある杭の列を使えば向こう岸に渡ることは難しくない。ルキアニスとマルクスの軽装白の三は、こういったところで動くための装備だ。ただ機装甲が機付きから離れて動ける距離は、たかが知れている。白の三と白の六は、あと三日は大きな手入れをしなくても動けるように作られていたけれど。 賊徒を追い散らしながら、騎兵が周囲偵察をすると、平底の渡河船がいくつも打ち捨てられているのが見つかった。湿地でも底を滑らせながら進む船だ。大きなものは機装甲でも載せられる。対岸から綱で引けばよい。賊軍もまた、こうした川に備えてはいたのだろう。連隊長はそれらを集めさせ、修繕させながら、ルキアニスとマルクスに渡河偵察を命じた。 ぬかるんだ河原湿地も、川も、軽装の白の三ならどうということもない。賊軍が川に打った杭の列を頼らなくても良いくらいだった。杭の列の近くの川底は踏み荒らされていて、杭を頼りにしてもかえって危うく思えた。川の深さはそれほどでもなく、機装甲の膝の上にかかるくらいだ。これならば白の六でも、黒の二でもそのまま通行できるだろう。渡河船に頼るのは馬と人だけでいい。 川渡るなか見るオスミナ軍の陣地は、堅固に見えた。 岸辺には筏がそのままあった。ここには初めから橋を作っていなかったのだろう。ただ砂利の道はそのまま続いている。岸辺の道の端には、逆茂木と鹿砦が作られていた。物見台も作られていた。ただ、ここで長くは戦わなかったようだった。逆茂木も鹿砦も、それほど壊されていない。賊軍も、ただ邪魔な鹿砦を取り除いただけらしい。 ここで戦わなかったということは、つまり上流か下流の別のところで、賊軍は渡河したのだ。それらしいところが上流に見えた。進みづらい河原湿地に何機かの機装甲がそのまま放置されていた。敵にとってここは祖国だ。渡りやすいところなど、賊軍よりずっとよく知っている。それでも賊軍は渡河を成功させ、斬り込んでオスミナ軍を退却させたのだろう。だから橋を渡しやすいここに、浮橋を作れた。 ひたすらに、北へ、北へ。賊軍は何を求めたのだろう。ルキアニスの見る限り、これまでは畑もなく、森と草原ばかりだった。 しかし、川を区切りに、それは変わった。 砦か、と思ったが、違っていた。丸木の柵の向こうは牧草地だ。石積みの壁に囲われた、畑だ。打ち砕かれた石積みの向こうに葉が見える。豆畑のようだ。村だった。たぶん、もとは屯田兵たちの。 木柵と石組で区切られた畑の中を道は行く。その先に、村があった。もちろん、今は、賊軍がいた。それも今までのような、疲れ切って、気力も失ったような士卒らではなかった。配置があって、指揮があった。機装甲すらあった。 ルキアニスたちの白の三に気づいてすぐに、飛び込む壕も作っていた。 掲げる黒の旗は、帝國友軍を示すもの。しかし、ただ恭順する気もないことはわかる。両手斧もつ機装甲に、騎士が乗り込んだのも見えた。 『連隊長が向かう』 報告を受けて、すぐにシルディール連隊長らの本隊がやってくる。軍旗小隊と、黒騎士小隊、それに随伴騎兵を備える、臨時編成連隊本部中隊だ。これだけの戦力があって、できないことを探す方が、難しい。 マルクスの白の三は、道端に、迎えの直立で立っている。仕方ない、彼がそうするならルキアニスもぼうっと立っているわけには行かない。機を道より退かせ、手槍を右脇に備え、踵を合わせて立つ。 シルディール連隊長の機は、かまわずルキアニスたちの間の道を歩いてゆく。機の兜につけた連隊長を示す房徽章が風に揺れる。 連隊長機は賊軍の陣地へ向かい、立つ。 『シルフィス・シリヤスクス・シルディール子爵である。勅命によりここに在る。そなた等が、帝國の臣民であるならば、我が命に従うがよい。帝國は、時と運命の天秤のごとく、そなた等の功罪を扱おう。帝國を離れたものだとしても、その働きに、帝國は報いよう。そなた等、如何』 賊軍の陣地がざわめいているのがわかる。しかし今はまだ、村への道を柵で封じるつもりはないようだ。 『レオニダス、アモニス、こちらは黒騎士小隊』 魔術で声が届いてくる。風水晶が声とともにきらめく。黒騎士小隊長のエイクルからだ。まだ前進せずに待機している。 『急変が起きた場合、黒騎士小隊が前進する。動かず邪魔になるな。その後に援護を考えろ。後詰は軍旗小隊機が行う』 『先導了解』 マルクスが応じる。急変、と言っても、賊軍が抵抗し始めるしかありえない。黒の二相手に、抵抗してもあまり意味はない。ただ打ち壊されて踏みにじられるだけだ。どうなるのだろう、と思ったまま十拍が過ぎ、それがさらに十倍にもなり、さらにさらに時が流れる。 陣地に動きがあった。小さな動きだ。村の柵の入り口から、人が歩いてくる。後ろには二人、丸腰だが警衛をらしいものを引き連れている。指揮官だろうか。彼らはゆっくりと歩み来る。連隊長の機を前に、見上げて、何か言った。機の胎内では聞き取れない。 『上意はすでにここに届いている』 連隊長機は不意に言う。答えなのだとわかった。人の声は、ルキアニスにまで届かないけれど、連隊長が機を通じて発する声だけが聞こえてくる。その声は続く。 『わたくしに委ねられた以上の代弁を行うことはできない』と。 さらに言った。帝國は、過ちを正すこと、これを何ものが行おうと、躊躇は持たぬ、と。心得違いは正されよ。わたくしは上意によって、ここにある、そなた等とは関わりない、と。そなた等にあるは一つ。上意に沿うか、否か、と。 『如何』 機の前の者は、うつむき、足元を見つめている。そして、やがて、片膝をつく。連隊長機を見上げて、彼は何かを言う。連隊長は応じ、言った。 『貴公らを、我が指揮下とする』 そこから先は、連隊長の思うままだった。 まず彼らの村陣地へと押し進み、その中央広場にすべての兵員を集めさせた。機を降りた連隊長は、それらへ言った。 「帝國は、過ちを改めることについて、一切の躊躇を持たぬ。その功罪は、時と運命の天秤に乗せられたがごとく、功罪ともに扱われるだろう』 曇天の風の中を、シルディール連隊長の声が響く。賊軍の誰もが連隊長を見つめ、咳払い一つ、足踏み一つしない。声は続く。 「わたくしは、上意によってここへ遣わされた。副帝陛下がわたくしに求めるは、諸君の去就についてではない。わたくしをもってして成しうるあることについて、特別の沙汰を下されている。もし諸君が、帝國への至上の忠誠が如何にあるべきかを思い出し、心得違いを改め、わたくしの任に貢献することをもって示すならば、それは必ず副帝陛下の耳に入る」 そしてシルディール連隊長は言った。 「このままここで賊徒の汚名とともに死にたいか。それとも、苦しみ抜いた末の一時の心得違いを雪ぎ、忠義の何たるかを見せたいか。如何にする、諸君」 「我が忠義、皇帝陛下に!」 「よかろう。一人か」 「自分も!」 「俺もです!」 初めに誰が言ったかなど、もうわからなくなっていた。賊徒と呼ばれていた人たちは、次々と自ら、皇帝陛下への忠義を唱える。 湧き上がるその声の渦の中で、連隊長は右手を肩の高さへ挙げた。声が吸い込まれるように消えてゆく。 「ならば諸君、秩序と編成を為せ」 「第一中隊集合!」 「集成第二、第三中隊集合!」 即座に号令が次々飛んで、広場の中で人の群れは急に入り乱れ始める。けれど列が作られ始めれば、あとは早かった。連隊長の前に、様々な長さの、隊列が作られてゆく。列の前から番号呼称が行われ、すぐに隊名と員数申告がなされる。 「ライコラ村守備隊、集合いたしました。閣下の指揮を確認願います」 「よろしい。シルフィス・シリヤスクス・シルディール帝國騎士隊長が指揮する。部隊名簿を作成せよ。その後、各隊は装備整備を実施せよ。状況を知りたい。本部はどこか」 「こちらです」 「騎士は同行せよ」 あっけにとられるばかりだったルキアニスは、マルクスに背中を押されて、ようやく歩き始めることができた。名簿のための記名帖が回される隊列の前を、通り抜ける。 「大したものではないか」 不意の声は、いつの間にかすぐ後ろを歩く黒騎士のエイクルだった。顔の傷ゆがめて、ルキアニスに笑みを見せる。 「あれだけされたら、死に場所も見えようというものだ。どうだ。アモニス上騎」 「わ、わかりません」 慌ててそう応じてそそくさと逃げるばかりだ。 村の本部は、例によって村の建物の大きなものに作られていた。中は常のように大机があり、地図が広げられている。道を示す線、川を示す横線、陣地を示す丸、そういったものから成り立つ略図だ。地図となすゆとりが無かったのだろう。実際、先導が本隊に供給できる情報は、これくらいだ。歩測し、距離と方向を書き留めてゆく。マルクスの方がもちろん得意だ。国境から、幾度も折れ曲がりながら伸びてゆく線が、賊軍のたどった道であり、この村―先にライコラ村と言っていたけれど―はその線の四分の一も進まないところにある。 しかし、賊軍の最前衛は、線の先ではないらしい。戻ってくる矢印と、それを遮るように上から書き込まれた横線。指揮官の名と思しき書き込みと、戦力を示す書き込みがある。それらは数を減らしながら、幾度もの横線を作っては退いてゆく。交差の線は、全滅を示すものらしい。線の途上でいくつもの交差線が描き重ねられている。 連隊長の指が、何かを探すように線の上を、地図に触れずに行く。 「・・・・・・」 そこには、交差の線が描かれている。連隊長は言う。 「聞きたい。このメルツァ部隊の残存は」 問われた男、その者が先に連隊長機の前に来た男は、刹那口ごもり、しかし言った。 「前衛におったはずです。しかしオスミナ勢の側撃が行われている最中でございまして・・・・・・」 連隊長は静かに言葉を待っている。 「・・・・・・敵魔動機との戦闘で、メルツァ近衛騎士卿は討ち死にされたとの由にございます」 「確認は」 「メルツァ勢の生き残りより、直に」 「その者は」 「直ちに呼びまする」 伝令の者が直ちに駆けだしてゆく。男は、シルディール連隊長をそっと伺い見る。それからつぶやくように言う。 「近衛騎士卿が、このような北方のいくさに馳せ参じられるとは、奇妙なことと思うておりました。メルツァ卿の不遜さ、人を人とも思わぬありようは、鼻につきましたが、それ以上に・・・・・・」 「何か」 連隊長の言葉に、はい、と男はうなずく。 「近衛騎士卿のお持ちの機は、ことによっては、機神をも上回る、と」 「そう吹聴していたのか」 「はい」 「やつが持ち出したのは、皇姉陛下をお守りするみしきの騎士団のもの。機神レギナ・アトレータにより直に模られた逸品の一つ」 おお、と男は唸り、それからこの本部にいた者らにもさざ波のようなざわめきが起きて消える。 そうだったのか、とルキアニスも思った。けれどここでこんなに簡単に教えてしまえるなら、帝都でなぜ教えてくれなかったのだろうと思った。だからマルクスを横目で伺い見る。マルクスは、片方の眉を上げていた。何か妙なことを思っているときの癖だ。ルキアニスは肘でつつく。マルクスはそのままルキアニスを見た。ものすごくつまらないと彼が思う冗句を聞いた時のような顔だ。半眼で、息の抜けた砂狐のような。砂狐というのをルキアニスは見たことがないけれど。 「ただいま参りました」 足音も高く、男たちが入ってくる。汚れた軍装は、それが元は近衛騎士従兵のものかどうかすら、わからない。その三名は連隊長の前で、だん、と床を踏み鳴らすように踵を合わせる。彼らは言った。自分たちでお役に立てれば、幸いであります、と。連隊長はうなずき返す。 「心して答えよ。メルツァの機、これはどうなった」 「・・・・・・」 何拍かが過ぎ、それが十を超えた。彼らは唇を引き結び、しかし肩を大きく揺らして息を息をしていた。それから、一人が言った。 「メルツァ卿は、敵魔道機との一騎打ちの末、討ち死にされました。その機は・・・・・・」 彼らが言葉を振り絞るには、さらに二十拍ほど待たねばならなかった。彼らは言った。 「オスミナ勢に奪われました」と。 アトレータ・トリニタスというのはもちろんディスインフォ。 それにしても無理のある設定で、こんなもんどうしろとは思うんだが、10年かけてできないことは無い、というやつではあった。 これでもまだ道半ばでしかない。 黒の零は、解体した状態で運ばれた。 開発機である黒の零は、接合された部品部材に自ら適合する性質を持たされている、と勝手に決めた。 よって、発見された機神のパーツ、というのは、本来は黒の零のものである。他の機体にくっつけて動いたのはそれが理由。 したがってメルツァ・アークリンデ戦での黒の零に装備されていたのは、別の手足。黒の零のコアにとってはどの手足がついていようと、物理的にバランスが取れていれば、動かせると勝手に決めた。 その前提での話にした。ここまでテキトーな設定なら、僕だってやりたい放題である。 あ、毎度のことか。申し訳ない。 今回のオスミナ越境については、地方貴族間の金銭問題とここでは扱っている。単なる金銭問題ではなく、娘を嫁に出した関係性が、帝國側の勢力低下によって、よりこじれた、と。だから貴族のメンツと金の両面がかかわって、冬を超えるには、何もかも取り戻さなければならない、という状況だとしている。これに国境警備部隊の下位部隊が同調して、越境している。当初の計画では、これほど大規模ではなかったはずだが、噂を聞きつけた連中で膨れ上がったのだと考えている。 シル子は爵位を持っていたはず、とセッションがあったのは覚えているんだが、具体的には思い出せない。家庭のことは完全放置しちゃう両親の人たちに対して、自分たちで自分たちの権利主張を行うには、自分たちの爵位が必要な二人だとは思うんだが、どうしても具体的にどの爵位か思い出せず、今回は子爵と書くだけは書かせてもらった。
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オスミナ 殿軍 内戦前、歴代の北方辺境候は、ゴーラ湾南岸諸国の併合政策を推し進めていた。 ある時はゴーラ諸侯を懐柔し切り取り、ある時は北方辺境候軍の武威で踏みつぶし、国境を北へおしやった。 しかし内戦にあって、北方辺境はゴーラ湾南岸諸国と皇帝軍と同時に戦う力を持たなかった。やむなくその、くに境で守りを固めざるをえなかった。一方、相対するゴーラ湾南岸諸国も、守りを固めるしかなかった。ゴーラ本国も、北方辺境の滅亡を望んでいなかったのだ。そして国境は双方の陣地の点在する、要塞地帯となった。 森を切り開き清野として、砲の射界を保っているのが、帝國側。林の中に土盛りの陣地を作り、陣地前で待ち受け戦うつもりなのが相対する南岸王国、オスミナ。 そのオスミナは、ヴィルミヘ川へ流れる支流をせき止めて、周囲を水浸しにしていた。その湿って腐りかけた地を、機装甲の脚が踏みしめる。 じわりと水が染み出し、脚が沈む感触がある。軽いこの白の三ならば、それほどでもない。続く白の六も何とかなるだろう。黒の二なら力にものを言わせて進んでしまうかもしれない。しかしここでは段列が進めない。部隊の経路にはできない。部隊が通過することはほとんどないのだけれど、 それがルキアニスの考えだった。振り向き、やや後ろのマルクスの機を見る。マルクスの役目は、機内で帳面に書きつけること。ルキアニスの役目は、そのマルクスを守りながら、前に進んで物見をすること。 機体はこれに備えての白の三。甲を軽くし、両肩には水の魔術の魔法陣装置が組み込まれている。ルキアニスの機は、もとは連隊長の使っていたものだ。ルキアニスの機は、トイトブルグに二度目に行ったときに壊してしまった。 「・・・・・・」 こんども、誰も死なせたくない。少なくとも、ルキアニスの目の前では。 「前に出る」 『気をつけろ。オスミナは砲より弩器を多用する』 マルクスは続ける。まあ、この湿地じゃあ火薬を保てないんだろうな、と。 それに二人とも、今のこの陣地にオスミナ勢が残っているとは思っていない。あくまで確かめるためだ。オスミナ国境は「賊軍」によって突破されていた。ゆえに、陣地からは自ら引き退いているはずだ。とどまっても包囲されてしまうだけだから。 オスミナの陣地近くは、柳のような育ちの早い木があちこち植えてある。そうして、砲撃を避け、機装甲が詰め寄るのを避けている。 「投擲してみる」 『了解。気をつけろ』 すでに砲丸を備えた投擲紐に、勢いをつけて振り上げる。それを頭上で勢いよく振り回す。本来だと、あまり振り回さず、できれば一息で投じてしまうのが良い。ただ今は、敵に見てもらう間合い込みだ。そして投じる。砲丸が曇天の下を飛び行く。弧を描いて敵の陣地の草と茂みの中に飛び込む。ルキアニスは投擲紐をを手首の勢いで引き寄せて掴む。捨ててしまうのはもったいない。次に投じるべき砲丸には、すでに投擲紐を巻いてまとめて腰につるしてある。引き抜けば、紐だけがほどけながら伸び落ちて行って、あとは振るえば投げられる。一息に振り上げ、頭上を一巡りだけさせて投じる。びゅん、と鳴る紐を残して、砲丸が飛び去り、陣地へと打ち付ける。そのまま、何拍かの時が流れる。 「やっぱり、誰もいないみたいだ」 『ちょうどいい。前進して裏に回り込め』 「了解」 ルキアニスは踏み出す。オスミナへ踏み込むために。 オスミナと、帝國が、本来いくさをすることは無いはずだった。 それが今のように、オスミナから望んで水浸しとしたのは、帝國からオスミナへ踏み込もうとしたものらがいて、それらに対して守りを固めようとしたからだ。 ルキアニスとマルクスは、白の三を受領してから、連隊を追及したから、そこで何が起きているのか、知らなかった。 到着してみて、初めてわかったのだ。帝國から、オスミナへ越境した、諸侯勢があったということに。 そう、出動の時には、詳しいことを聞かされていなかった。連隊は人員を教育派遣する編成未了状態だったけれど、そのまま出動したのだった。 あの帝都の夜と何かつながりがあるのではないか、あの時と同じではないかと、ひそかに皆は話し合った。とはいえ、連隊自体はルキアニスとマルクスを残して、船舶積載され、ヴィルミヘ河を北上していってしまった。ルキアニスとマルクスは、白の三の再整備作業を待ち、軽装の水域装備として同じように二隻の船に積み、追及した。トゥール・レギスに立ち寄ることもなく、そのまま北上を続けた。 少しずつ寒くなるのが、ルキアニスには嫌だった。大きな河が長い月日をかけて作った、浅く広い谷の、まばらな林。それが北の風景だった。林の中を貫いて、石畳の広い道が見え隠れしていた。それはたぶん、オスミナとのいくさのために作られたものなのだろう。マルクスと一緒にいれば、もっと詳しいことを聞けたかもしれない。けれど彼はもう一隻の船、先を行く方の船に乗っている。船尾に椅子を覆いて、悠々といった様子だった。 途中で、引き返してくる船とすれ違った。大声を上げて、こちらの身分を示して問うと、やはり13連隊を輸送した船だと分かった。それ以上のことはあちらも知らなかった。やがて船舶工兵の警戒線にあたった。小舟を出しているだけでなく、ヴィルミヘ河に船を封じるための太綱を張っていたのだ。緩めてそれを沈めてもらい、二隻の輸送船はさらに河を下った。 さらにしばらくして川岸に旗が見えた。13連隊の表示旗だ。その河岸には、段列の者が残っていた。周囲は切り開かれ、丸太を使って舗装されていたし、川には丸木が打ち込まれて、船がつけられるようになっていた。そこは段列指揮官が指揮しており、船舶貨物をそこで受領しているのだと言った。連隊はさらに北上しているという。その上陸点からは、丸太を敷き詰めた道が伸びており、その先は、石畳の道につながっていた。ルキアニスとマルクスは機付きとともに稼働前手入れを行い、馬匹と輜重車で進み始めた。 石畳の道は思っていたよりすり減っていた。時折枝分かれしていて、標識もあった。もとは北方辺境で打ち立てたらしい木の柱に、13連隊が打ち付けたものだ。 そう。もともとはオスミナとの国境を守り、あるいは攻め入った道だ。 だとしたら、本来はここを守っていたはずの部隊があるはずだ。枝分かれしているのは、それら部隊の配置へと向かう道なのだろう。それは今、どうしているのだろう。なぜ中央から13連隊を呼び寄せることになったのだろう。手入れのための小休止で、マルクスに聞いてみたけれど、知るわけないだろう、前と同じだ、という。 「帝都のときの?」 「ああ」 「でも、帝都で起きたことが、なぜこんな北方辺境の果てなの?」 「わからないって言ってるだろ」 「なんで怒るの」 「怒ってないだろ」 結局、マキス従兵が淹れてくれたお茶を飲んで再出立した。野歩きみたいにのんびりしている、と思ったのは、丘の切通しを抜ける時までだ。 帝國の街道はよく丘の裾を切ったり削ったりして進む。馬車が上り下りしなくてよいからだ。多少の凹凸なら石積みで道そのものを持ち上げたりもする。そして切通しを抜けた先で、ようやく先が見えた。 『なんだ、あれ』 マルクスがつぶやくように言う。 眺めは、それまでの、穏やかさとは、全く違っていた。 木々の数が、ずっと減っていた。これまで道の近くまで林が張り出していたのに、切通しの先には、右を見ても、左を見ても、そういうものは全く見られなくなっていた。丘の稜線の向こうは、丹念に森を切り開いてあった。草原に変わった野を、道は緩やかに下ってゆき、そして湿地に入っていた。もともとは湿地ではないらしい。河原であったようだ。それが今は、あちこちに水たまりがあり、いずれも濡れて黒ずんで見える。河原であったとしても、どこが本当の川筋なのかはわからない。 道の途中に、陣地が作られていた。すぐに分かった。13連隊の陣地だ。 馬がいて、機装甲がいる。けれど、その陣地は奇妙だった。河原に至る前の、道の左右に、道を挟むように陣地を構築しており、機装甲の手槍を組み合わせて作る阻砦があり、騎兵らが掘った壕がある。 奇妙なのは、道を挟んだ二つの陣地の間だ。 道とその周囲に、たくさんの人影があることだった。百や二百どころでなく、もう一つ桁の大きな、千、二千といった数だ。どうやら男の姿ばかりであるらしい。座り込んだり、横になっていたり、あるいはうろうろと歩き回っていたりしている。指揮官らしいものは見えない。 むしろ陣地の騎兵らは、小銃を手放さず、それら人の群れを監視しているように思える。人の群れの前後には、臨機構築された可動柵があり、群れが散らばるのを防いでいるらしい。立ったままの機装甲、白の六は、見張りなのだろう。 それによく見ると、道の先の河岸の手前には、何機もの機装甲を機卒が乗降姿勢のまま取り残されている。そこで降りろと命じられたみたいに。さらにその背後の河岸の湿地には、何機もの機装甲と機卒が打ち捨てられ、倒れている。 「俘虜みたい」 『そうとしか見えないな』 言ってマルクスの機は振り返り、随伴する輜重車へ向かって言う。火器を準備。積載物の固定を確認。混乱に備えろ、と。 しかしそこまですることもなかった。陣地から、騎馬がこちらへかけてくる。掲げる旗印は、13連隊の伝令旗だ。警衛を左右に従えたあのあごひげの姿は覚えている。クロワティス参謀だ。 「お前ら。遅かったな」 手綱を引きながら、彼は大声で言った。 「連隊長がお待ちだ」 『これは、どうなっているんですか』 マルクスの問いに、クロワティス参謀あごひげをぼりぼりと掻いて、見たままだ、詳しくは後ほど説明する、と言った。 「追従しろ」 そう言われれば、ついてゆくしかない。ルキアニスとマルクスは、機の歩を進める。 近づいてゆくうちに、その俘虜たちの様子もよくわかるようになった。半分は、野良着に見える。残り半分は軍装のように見える。見える、というのは、誰もが毛布だか携帯天幕だかわからない物を頭や肩からかけているからだ。ただいずれもひどく汚れていて判然としない。昨日まで泥をかぶるような野良仕事をしていて、そのまま青天井で休んだ、というように見える。あちこちに小さな焚火の跡が見える。それらとは別に、まだくすぶった薪の積み上げられているところもある。歩み近づくうちにわかった。薪じゃない。集められた銃や鑓、斧や剣だ。それらを取り上げ、あつめて火にくべたらしい。焼いてしまえばもう使えなくなる。ほんとうに俘虜を集めたみたいだ。 クロワティス参謀は、右手の陣地へと向かってゆく。そちらには天幕が立てられている。黒の二もそちらにいる。誘導役も駆けだしてくる。陣地入り口で、ここから入るように、と。 騎兵にしても、騎士や機付きにしても、随分困惑しているように見えた。騎兵は誰もが銃を携えている。機付きの士卒も同じようだった。ただそちらは銃の数に限りがある。だからなのだろう。工具の長棒などを持っている。 機装甲は、いつものように並べられ、片膝をついて乗り手をまっている。ルキアニスたちの導かれたのは、その並びではなく、陣地中央に建てられた幕舎の近くだった。そこには軍旗小隊の機体がいる。ルキアニスたちの機付きの馬車も同じだ。 「早く来い」 馬を降りたクロワティス参謀が手を振る。ルキアニスは慌てて機を降りる。マルクスも同じだ。歩き、追いつきながらマルクスは問う。 「どういう状況なんですか」 「えらくやばい」 言って参謀は幕舎の入り口をめくりあげ、どんどん中へと入ってゆく。すぐのところにある折り畳み机と地図を広げたところから、その奥へ。 「連隊長、軍旗第二小隊要員到着ですぜ」 シルディール連隊長は、折り畳み机での書き物から顔を上げる。到着申告をしたのはマルクスだ。敬礼と答礼。連隊長は機嫌悪げに見える。 「連隊は第三臨時編成態勢にある」 連隊長は言い、それからクロワティス参謀を見た。 「情報参謀、説明を」 「国境が犯された。オスミナからではなく、帝國の側からだ」 ルキアニスは驚いていた。部隊での越境は、辺境候の要請か、各辺境の軍指揮官格の直接の許可が要る。その許可は、登ってゆくと皇帝陛下への直の報告や、最高司令官陛下への直の報告があるようなことだ。ルキアニスはちらりと連隊長を見た。連隊長は黙っているだけだ。参謀は続ける。 「これまでの情報によれば、国境警備部隊のみの行動ではない。地元の諸侯がかかわっている。建前の上では、国境警備にあたる一部部隊が、オスミナ側勢力と小競り合いを起こした。我が方が劣勢に陥り、これに増勢する形で地元諸侯が戦闘に加入。そのままオスミナへ越境した。この構図全体が、諸侯による準備と計画の下で行われたと考えられている。自作自演ってやつだ」 「・・・・・・」 言葉もない。それ以上に何が起きているのかよくわからない。マルクスを伺うと、考え事をしているときの顔だ。参謀は続ける。 「なぜ今なのか、あまりはっきりした情報はない。尋問の一つによれば、諸侯とオスミナ諸侯との支払い問題に由来したものという話もあるが、連隊にとって重要な問題でもない。これは、当然のことながら、何らかの許しを得た越境ではまったくない。したがって賊軍である」 クロワティス参謀は、面倒くさそうに息をつく。 「しかし、この賊軍は、オスミナ軍の反撃を受けて撤退しつつある。下手をすれば、オスミナ軍が越境してくるってことだ。オスミナ軍の動員兵力は不明。現在情報収集中。警備本部の情勢不明。どこまでが賊軍となり、どこまでが秩序を保っているか、わからん。危険すぎて伝令を送れないありさまだ」 ルキアニスはまたたく。何が起きているのか全く分からない。仮にも帝國軍が、諸侯と一緒に、国境を侵して隣国に踏み込むなんてことがあるのだろうか。クロワティス参謀は、何やら楽し気に見える。 「オスミナへの越境戦力は、一個旅団には満たない人員と考えられている。歩兵二個から三個連隊程度で、機卒機装甲は複数中隊程度と考えられている。昨日の夕刻までは、続々と後退してきていたんだが、連隊が陣地構築して、武装解除をさせ始めたら、途端に姿を消しやがった。八哩ほど西に橋があるらしい。そっちへ逃走していると見られているが、現状では13連隊のみでは対応できない」 やっとわかった。あの俘虜のような人たちは、本当に俘虜なのだ。帝國からオスミナへ攻め込んで、オスミナから逃げ帰ってきた。そしてここで捕えられた。クロワティス参謀はつづける。 「現在、この領域にある信頼できる部隊は、我々13連隊のみとなる。21旅団部隊が追及中であるが、先鋒中隊の到着すら、早くて明後日だ。以上です、連隊長殿」 「これより話すことは、機密事項である」 シルディール連隊長が言う。 「帝都における「目標」が持ち込まれた先が、ここである可能性が非常に高いという情報が得られた」 「・・・・・・」 さすがのマルクスも息をのんだのが分かった。ルキアニスは突拍子もなさ過ぎて、どうすることもできなかった。あの夜から、半月も経っていない。帝都を走り回った、あの夜に追いかけた「目標」とだけ言われたものが、ここにあるかもしれない、そんなことを言われても困る。困るというか、どうしていいかわからない。 「13連隊の任務は国境の警備強化。賊軍の処理もこれに含まれる。だが帝國からは、別の要請がある。「目標」を処理すること」 「だから、白の三・・・・・・」 思わず、といった様子でマルクスがつぶやく。咎めず、連隊長は続ける。 「しかし「目標」関連は、連隊任務ではない。機密とする。越境については21旅団部隊には特段の命令は下されていない。よって13連隊は部隊として越境することは許されていない。しかし・・・・・・」 連隊長はかすかな笑みを見せる。こんなにきれいな人が、ほんのわずかなことで、恐ろしくすら見える。連隊長は続ける。 「最高司令官陛下の直接の許可を受けて発令された行動命令により、連隊長は「目標」に対する必要な行動をとることが求められている」 シルディール連隊長は、ごく静かに言う。 この行動命令と、行動命令受領者である連隊長の権限により、13連隊より行動部隊を編成する、と。越境任務を実施するが、これは最高司令官陛下の許可に基づくものである、と。そして連隊長は言った。 「両名は、行動部隊に配属する。まずは前進経路を捜索し、偵察せよ。その後に越境。行動を実施する」 この話、最初のアレでは、雪中の話だったんだが、この10年のリアリティラインの向上で、この時代の真冬の戦争というのは、考えづらくなっているので、変更している。事件の由来についても同じだ。 越境の理由については、従前同様にぼかしてある。それはそれで、でかまわない。 帝國正規軍の一個旅団も動けば、衛星国はえらいことになる。 ここで動いているのは、規模的には近くても、戦力的にははるかに劣るものとみなしている。21旅団ですら暴力なのだ。帝國正規軍と親衛軍が動かされなかった理由は、長く謎のままだろう。 そして、レイヒルフトによる直接命令でシル子が動く。 ずっと考えていたけれど、ずっと動かせなかったネタだ。10年過ぎて、やっとできたと思うと、ものすごく感慨深い。 しかも黒の零とオスミナ問題に決着をつけ、ヴェルキンとアレシアに会いに行くために。 現実には対面しないけど。
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オスミナ 殿軍 (2) やはり白の三は良い機で、ルキアニスの思う通りに動く。 何より後続を待つ必要がほとんどない。 進むのは一頭引きの馬車なら進める細い道だ。両脇は、細いまっすぐな針葉樹の森が、近づいたり、離れたりして、曇天は時には狭く、時には広く見える。糸杉、というのだという。 ここはオスミナ軍の道だ。糸杉の丸太を四本か五本、縦に並べて道にしている。ただ並べてあるだけでなく、左右に杭を打ってある。丸太の左右は砂利が敷いてある。かなり厚く敷いてあるらしく、ルキアニスが白の三を歩かせることもできた。もともとは機卒を歩かせるところなのだろう。今の白の三の機重ならば、糸杉の上を歩いても平気だとは思う。ただ、後続の黒の二は踏み崩してしまうだろう。 この道は、そもそも機装甲を通そうとは思っていないだろう。砲もたぶん重すぎて通せない。それにオスミナ軍はあまり砲を使わないと、ルキアニスは聞いていた。弩をよく使うのだという。大きなものだと三、四呎あって、それが機装甲の間接のはざまに突き立てば、機体も動けなくなるという。弩には機装甲が携帯できるくらいのものもあって、機装甲から打ちかけてくるとか、陣地に隠したものから放ってくるとか、時には機卒からも放つのだと聞いていた。 たしかに、この地勢ならそうなるのかもしれない。森の国で、でも森の切れたところは、川の水を溢れさせて水浸しにしてしまう。力押しに進んできたなら、弩を一斉に放つ。 それにしても、この道はうまく隠されている。緑の野と林が、相互いに点々と入り混じった、そんなところだ。道は、多少の凹凸はそのまま縫って進んでいる。丘と丘との狭間を行くところでは、林の中に道が作られている。というより木々を植えたのだろう。そして林には、馬のための水飲み場や、座って休めるように置かれた丸太などがあった。ずっと細いけれど、帝國の街道と同じだ。時には別の道が寄り添って、一つになったりもする。それでも太さは変わらない。小さい隊列と馬の背の荷物、それが少しずつ通る道だ。 『気をつけろよ、ルキアニス』 マルクスの声が魔術で響く。 『この感じだと、そろそろ連中の、主抵抗線だ』 ルキアニスは脚を止め、機体に片膝をつかせる。 「そういうことは、止まってるときに言って。歩いてるときには聞いてられない」 『今気づいたんだよ』 マルクスは応じる。 『一つの陣地に一個分隊くらいか。弩を一つ扱うとして、経路が二度合流したから、複数の小隊ってことだ。この経路一つじゃないから、この先には複数の中隊が合流する。本物の陣地があるはずだ』 「了解」 しかしそこには、今は賊軍も、オスミナ軍もいないはずだ。連隊が聴取した賊軍俘虜の話では、オスミナ軍の反撃はまだここまで至っていない。ただ、確かかどうかはわからない。 「・・・・・・あった」 確かにその通りだった。林の切れて急に大きく広がる。先に低い丘が見える。賊軍の使った道もだ。踏み荒らされた砂利道は、丘へと向かってゆき、めぐって立つ木柵に沿って丘を回り込み、さらに向こうへ続いている。広がる草原、その草原と相互いに噛み合うような森と林。彼方へ向けてやや上りになっている。 道の手前側には、幾段もの可搬柵があったが、いずれも道から押しのけられている。手槍のような長いものがあちこちの地に刺さっている。あれが弩から放たれたものなのだろう。前に砂盤設想でやったような丘と陣地だ。役割もそれに近い。これまで前衛に居た部隊を集め吸収して、その勢力でできるだけ長く足止めする。これを壊さないと、後続が通れない。 だからだろう、賊軍は正面から砲撃して、木柵を打ち壊し、機卒と機装甲を送り込んだようだ。丘の斜面には踏みえぐられたあとがいくつもある。丘の上にあっただろうオスミナ軍の陣営は半分ほどは打ち崩されている。残りは賊軍が使ったのかもしれない。賊軍もオスミナ軍も、こんなところで死力を尽くして戦いはしない。賊軍は砦を開いて逃げれば良しであったろうし、オスミナ軍も、ここが抜かれればおしまいというわけでもない。いずれも進むは、オスミナのより奥へ向かってだ。 連隊前衛をやっているなら、随伴騎兵に先行してもらって偵察してもらう。敵がいたなら、後続の先導中隊に任せる。今はそんな戦力はない。 「陣地は、すでに放棄された模様。丘を検分しょうか」 『連隊長、こちら先導。オスミナ軍の国境主抵抗陣地に到達。すでに両者から放棄されたものと見られるが、確認は取れない。検分するか』 『連隊長より先導へ。先導現位置を視認している。同所を小休止所とする。先導は陣地周辺、その前方の経路を偵察、小休止所へ帰還せよ』 『先導了解』 「了解」 ルキアニスも応じる。肩越しに後ろをうかがう。いつもの位置にマルクス機がいる。そのさらに後ろに連隊長たちの本隊がいる。本隊とはいっても、こないだの臨時編成連隊本部中隊でしかない。 手槍を携えてルキアニスは機を進ませる。オスミナ軍がこの先陣地を作るとしたら、これまでのような、小さな陣地の組み合わせだろう。消耗した国境部隊は、そこに少しずつ依拠しながら、後退する。その先に、第二線があるはずだ。第二線は、第一線との交代や人員供給の部隊が慌てて配置につくところだ。屯田兵だったりもする。それでもまだオスミナ軍や、諸侯の精鋭ではない。時間を稼いで、それら精鋭の糾合を待つ。 丘の陣地へ近づいてゆく。規模はそれほど大きくない。陣地をめぐる道は、白い砂利が敷き詰められているが、轍と機装甲の踏み跡で崩され、泥に茶色く汚れている。水たまりもそのままだ。帝國の道は、そのまま部隊をいくらでも移動させられるが、オスミナのこの道は、帝國に踏み込ませないための道だ。 陣地の柵の下をめぐり、その向こうが開けてくる。踏み崩された道を、どれだけの数が進んでいったのだろう。段列を引き連れる限り、この道から外れるのはむつかしい。だが、ルキアニスたちは違う。 「陣地に配置無し。この道も先では、オスミナ軍の陣地に入り込むみたいだね」 『側面に小陣地を用意して、な。陣地内経路を取ろう』 「二機併進で前方偵察」 『了解』 丘の道をめぐって、マルクス機が追いついてくる。二人して、砂利の道からみどりの野へと踏み出す。今の白の三は軽甲だから、踏んだ野にもそれほど沈まない。二人の目で林を見ながら進む。林のどこを見ても、人の気配は無いけれど、もし撃たれたら互いに援護するために。マルクスの機が足を止める。 『見えた。鹿砦。俺の右から回り込め。敵影は確認できない』 「了解。突入する」 ルキアニスも脚を止める。脚を止めると、撃たれやすくなる。それでも、マルクスの言った鹿砦が見えた。林が草原に向かって膨らんだところだ。なるほど、陣地前衛部といったところだ。そこに先をとがらせた丸太の杭を斜めに打ったものの列が見える。鹿砦だ。機装甲をそこで足止めする。止まった機装甲に刺突爆雷を使うのは常の事だし、オスミナには弩を使う。ただ弩も兵隊も見えない。それにアレが陣地前衛ならば、近くに援護陣地を置くだろう。まだ見えない。 だから、ルキアニスは駆けた。マルクスの背後を回って、大きくめぐり、マルクスの示した林に向かって、横合いから突っ込む。 茂みを蹴り、梢を押し割り、肩で太い枝をへし折る。針のような緑の葉が舞い飛ぶ。 「・・・・・・」 しかし、林の中には何もなかった。残されているのは、鹿砦の杭だけだ。ルキアニスはゆっくりとあたりを見回し、それから林の出口のような木々の切れ目を見つけた。進み、機体を入り込ませれば、やはり林を切り開いたところのように見える。機をかがませ、覗き見る。待ち伏せられてるとは思わないけれど、気を抜けるとも思っていない。 木々の向こうに、また別の木々の集まったところがある。そちらにも、鹿砦の尖った杭とそれをつなぐ横木が見える。援護のための後構えの陣地だ。今ルキアニスたちのいる茂みはここは出城と同じ。ここでの押し合いは、相手も考えている。ここに居座った敵を、あの茂みの後構えの陣地から打つことも。 「マルクス、二機がかり」 『了解』 地の響きに続いて、マルクスの機が林に踏み込んでくる。糸杉の間をすり抜けるようにして、ルキアニスに並ぶ。 示す前を見て、うなずき返してくる。 『行くぞ』 「いまっ!」 ルキアニスの声とともに、二人して地を蹴る。ルキアニスは左へ、マルクスは右へ。林を飛び出して、目指す茂みに、左右から突っ込む。目の前にあった鹿砦の横木を、ルキアニスは飛び越える。その向こうへ舞い降りる。 敵の姿はない。弩を据え付けていただろう、木の床が二つあるだけだ。回りは広めに刈り取られた草原になっている。そしてどこかへ続く、丸木敷きの道が見える。 「敵なし」 ただここからは、賊軍の通った道の方は良く見えない。本当に後構えか、それとも普段の配置なのかもしれない。 「進んでみる」 『慌てることは無いからな』 「了解」 ルキアニスは進む。どうやらこの後構え陣地には、すぐ後ろまで機卒が入れるようになっているらしい。鹿砦も機卒に作らせたのだろう。マルクスの機は、その鹿砦の杭をゆすぶり、引き抜き、投げ捨てていた。道の先は、これまでの物に似ている。枝分かれした先には、やはり小さな陣地があるようだ。いずれも林の中に作られているけれど、中にはその糸杉の木々がへし折られているものもあった。多分、砲撃でだろう。賊軍とオスミナ軍で戦ったのだ。その折れた幹の向こうに、道が見えた。 賊軍の使った道だ。据付の弩が相手なら、あの道を速やかに前進し、敵の主抵抗拠点に到達して、後続をもって周囲を掃討するしかない。オスミナ軍もそれがわかっているはずだ。主抵抗拠点に敵が到達するのを遅らせながら、陣地から退いてゆくのだろう。 『こちら先導、陣地群に敵の姿なし。これまで同様の陣地内通行路を発見する。通行に問題は無いと思われる』 『連隊長了解』 『これより一時後退、小休止所で合流する』 「・・・・・・マルクス」 『どうした』 彼の機の魔道の双眸が、ルキアニスを見返す。妙な顔、というのは、機装甲ではできない。ルキアニスはただ、このまま、どんどん進めてしまえそうだ、と言ってみたくなっただけだ。でもマルクスは、稼働状況とか、手入れとか言うと思ったのだ。 「・・・・・・なんでもない」 小休止、大休止も、機甲ではそれらの関りで行う。機の乗り手が胎内から降りて、機体の手入れをする。機装甲が最も弱いその時とも言える。小休止所では随伴の騎兵が警戒を行い、機装甲の乗り手は手入れを行う。今は、各機の機付きが騎馬で同行してくれているから、一人でやるよりずっといい。 けれど予備の部材は機体自体に積んだ分しかない。白の三で想定されたのは、自力での三日程度の稼働継続だとルキアニスは聞いていた。出撃前整備を入れて、四日の行動猶予がある。二日の前進と、二日の後退。それがこの行動の計画だった。どれだけ進めるかは、経路障害がどれだけないかによる。 「敵陣地群後方経路には、敵の姿は見えません。賊軍の姿も見えません」 マルクスは連隊長を前に報告する。 「連隊陣地に収容された数からすれば、この経路沿いに、さらに多くが後退してきてもおかしくないはずです」 「賊軍が撤退経路を変えたことは、連隊も認知している。しかし現在の私の目的からすれば、賊徒は、行動障害でしかない」 シルディール連隊長は、冷ややかに応じる。 「遭遇しても、賊徒の収容や支援は実施しない。排除して前進する」 はい、連隊長殿、とマルクスも応じる。排除、と言っても、機装甲に抗える兵など多くは無い。ゆえに刺突爆雷で機装甲に立ち向かう猟兵は歩兵連隊最精鋭なのだ。要するに賊徒にかまわず進めということだ。敬礼と答礼。小休止が終われば再び出立する。今度の前位はマルクスの機だ。 「賊徒、か」 「なに?」 つぶやく彼にルキアニスは問い返す。だが素気無い答えがあるだけだ。 「何でもない。俺が前、援護頼む」 「うん。了解」 それは、前と変わりない。どちらか一方が前衛をやったら、次の小休止で交代する。お互い、小隊長任命されてしまうと、小隊の中での交代と、小隊同士の交代になってしまう。だから、こんな風に進むのは、本当に久しぶりだ。もうずいぶん前のことに思える。 マルクスの機は、さっきのオスミナ軍の陣地跡へと進んでゆく。後続が段列を含む部隊ではないから、経路選びも機装甲が通行可能であればよい。鹿砦もすべて壊してしまうことはなく、機体が通れるくらいに山刀で打ち壊し、丸太を折る。 陣地はおおよそ林の中にあり、茂みなどはわざわざ密になるように植えているようだった。陣地の中には、丸太を敷いて床が作られていて、オスミナの弩はそのうえで扱われるようだ。こすれた跡が輪のようにあるから、車輪がついているのかもしれない。それを引き込むための道も、丸太が敷いてある。ほかの道と同じだ。 陣地からは、狙っていた道もよくうかがえた。白い砂利を敷き詰められている道は、ここも轍と水たまりでぐちゃぐちゃになっている。人はそれらを避けて道の外に出入りするから、その部分も踏み荒らされて泥がむき出しになっている。 たくさんの足跡はいずれも北へ向かっている。どれくらいの人なのだろう。戻ってくることはできるのだろうか。 少し進めば、オスミナ軍の中隊規模の営地もあった。水場があり、丸太づくりの倉庫が何棟も建てられている。これまでの陣地や、この営地に、いつも人がいるわけじゃない。何かあった時に、人が送り込まれて、この倉庫の物を使って、いくさに備える。 営地に人影はなく、マルクスの機はかまわず進んでゆく。ルキアニスは待つ。後衛と前衛は近づきすぎたら駄目なのだ。けれど離れすぎてもいけない。ルキアニスも歩き始める。営地の先の道も、細いままだった。せいぜい機卒が単機で進めるくらいだ。その白い砂利と、丸太を敷かれた道が、林を抜け、緑の野の起伏を這ってゆく。 曇天の空が開け、また糸杉の樹頂に切り取られる。林で、見通しはあまりよくないのに、林の切れ目で不意に開ける。 前を行くマルクス機が、脚を止める。 『先導より連隊長へ、賊徒を発見した・・・・・・』 彼はわずかに口ごもり、けれど言う。 『すでに自裁の模様』 マルクスの機が、ちらりと肩越しにルキアニスを見やる。 『来なくていい』 そんなことを言われたからといって、通らぬわけにも行かぬのだ。ルキアニスは歩を進める。そして、木々の向こうのそれを見た。 林の際に賊徒たちが倒れている。 踏み崩された砂利の道に沿った草原だ。小休止にはちょどよく見える。でも生きたものが、その中に在るとは思えない。すぐ近くに濡れた刃や、握る者のいない銃がある。いずれも、主の最後のあとに、取り落とされたものだ。 マルクスの機が、そちらへ歩いてゆく。ルキアニスも続く。林の木々の間を抜けて、砂利の道の前へと踏み出してゆく。 伏せた姿は、いずれも怪我をしている。重い怪我に見える者が多かった。泥だらけの道から、林の際に身を寄せて、いずれも傷に包帯や布を巻き付けていた。まだ赤黒く血の染みのあるものもいた。木々に背を預けて休むようにして、あるいはうずくまって。馬車などは無い。ここまで歩いてこられたのだろうか。それとも降ろされたのだろうか。 そんな姿が幾十か、もう動かない。 連隊長の機もすぐに追いついてきた。 機を降りたシルディール連隊長は、ひどく不機嫌そうに見えた。 あたりを見回す。 機を降りたのは、連隊長だけだった。そう命じたのだ。随伴騎兵すら遠巻きにしていた。 ルキアニスが、機の胎内から魔道の双眸を通して見ても、その背中が何を思っているかなど、わかるはずもない。いつも通りの、黒髪を一本束ねに結った、そのうなじが白く見えているだけだ。 彼ら賊軍は、ここまで戻ってこられたけれど、この先にはもう進めないと思ったのだろう。それは、帝國軍部隊が国境にやってきたからだ、とルキアニスは思った。収容されるというのは、助けてもらえるだけでなく、罪を咎められることでもある。皇帝陛下の許しなく、国境を犯し、異国へ踏み込んだ罪だ。それはとても重いことは、ルキアニスも知っていた。そうでなければ、帝國は気ままに他所の国に踏み込む、野盗のような国になってしまう。 そして、ここで自ら命を絶つということは、皆がそれを判っていたからだろう。国境を犯す前から。判っていたのに、国境を犯したのだ。 不意に、シルディール連隊長の髪が揺れる。 倒れた者たちの中の、どこかを見る。 そちらへ向かって歩き始める。速足に。揺れる剣を鞘ごと抑えて。倒れたままの者を幾人かまたいで。不意に足を止める。何者かを見下ろしている。シルディール連隊長は片膝をついて身をかがめる。 生きてる者がいたんだ、と、ルキアニスは思った。 連隊長は用具を持っていない。けれど、白の三の装具箱にはそれがある。ルキアニスが機の片膝をつかせたとき、連隊長が己の肩越しにルキアニスの機を見たのがわかった。 しかしそれ以上、何のしぐさも、命じる動きもしないまま、再び間近の何者かへと目を向ける。ルキアニスは機との同期を解いて仮面を外し、席を這い出し甲蓋を押し開ける。気に金気臭さを強く感じる。血の匂いだ。ルキアニスは装具箱から医療具嚢を引き出し、機の背を伝い降りる。遺体だらけの草原を、連隊長の元へと走る。 「無用です」 常とは違う口調で、シルディール連隊長は言う。 身を起こし、立ち上がり、しかしその瞳は、足元の何かを見つめている。 「もう助かりません。生きたいとの願いを果たせるものはいません」 連隊長の髪が揺れる。顔を上げ、辺りの倒れ伏せた者らを見やる。 何も言わなかった。 その面が見えない今に、ルキアニスは安堵を覚えていた。たぶん、なにものも浮かべない、いつも通りの美しい面があるだけだろうと、わかっていても、それを直に見るのが、何故か怖かった。 不意に、シルディール連隊長は言った。 「むこうに、なにも、ありはしないのに」 それから肩越しにルキアニスを見た。闇色の瞳に、思わずルキアニスは退いた。 「あなたは、見てきたのでしょう」 ゆっくりとシルディール連隊長は振り返り、ルキアニスをまっすぐに見た。優しいとすらいえる笑みがある。答えなど待っていない。すでにシルディール連隊長の中にゆるぎなくあるのだと、ルキアニスは思った。確かめようとすら思っていないこともわかった。連隊長の答えは、もはや外から揺るがしようもなく強くあるのだから。 問うような言葉は、確かめただけであるのも、ルキアニスにはわかった。ルキアニスが、知らぬはずなどない、と。 ルキアニスは、一度は死んでいるのだから、と。むこうを、垣間見たはずなのだから、と。 彼女は歩く。倒れたものらを取り残して。今ここに在る何ものにも、決して彼女を傷つけることはできない。その頬に浮かぶ笑みは、それら何もかもを見下ろして、何も知らぬものらを、気の毒にとすら思ってるように見える。 「前進する。以後、同様のものには関与する必要はない。生残の人員についても、聴取以上は実施しない」
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[部分編集] 愛 佐久間信盛-脱兎- Sレア #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 2590 防 2950 知 2460 LvMAX 攻 5180 防 5900 知 4920 スキル [退き佐久間【風】] Lv1/7 自分自身の攻防アップ 武芸者計略 HPアップ【発動率 低】 売却価格 両 コメント 「にゃはははははははははっ!!」織田信秀、信長に仕える織田家古参の家臣。戦場では特に殿軍の指揮に長じ、その撤退戦の采配は退き佐久間と称される程。 台詞 「にゃははっげほげほ……むせた!!」 図鑑 イベント:アネガワの戦い 備考 イベント:アネガワの戦いギルドランキング報酬 1-50位進化には素材カード「播知釜」が必要 ↓進化↓ [部分編集] 愛 [殿軍]佐久間信盛-脱兎- Sレア #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 2880 (3398) 防 3340 (3930) 知 2710 (3202) LvMAX 攻 5750 (6268) 防 6670 (7260) 知 5420 (5912) スキル [退き佐久間【風】] Lv1/7 自分自身の攻防アップ 武芸者計略 HPアップ【発動率 低】 売却価格 両 コメント 「うちゃ、殿軍をしっかりやるでよ!!」織田信秀、信長に仕える織田家古参の家臣。戦場では特に殿軍の指揮に長じ、その撤退戦の采配は退き佐久間と称される程。 台詞 「そりゃ、殿軍は逃げやすいでよっ!!」 図鑑 イベント:アネガワの戦い 備考 ()内数値は2MAX進化には素材カード「播知釜」が必要 ↓進化↓ [部分編集] 愛 [撤退戦]佐久間信盛-脱兎- Sレア #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 3200 (3827) 防 3770 (4496) 知 2990 (3582) LvMAX 攻 6930 (7017) 防 7540 (8266) 知 5970 (6562) スキル [退き佐久間【風】] Lv1/7 自分自身の攻防アップ 武芸者計略 HPアップ【発動率 低】 売却価格 両 コメント 「うにゃははははっ!!にっげろぉっ!!」織田信秀、信長に仕える織田家古参の家臣。戦場では特に殿軍の指揮に長じ、その撤退戦の采配は退き佐久間と称される程。 台詞 「これが退き佐久間の真骨頂でよ!!」 図鑑 イベント:アネガワの戦い 備考 ()内数値は3MAX進化には素材カード「播知釜」が必要 ↓進化↓ [部分編集] 愛 [筆頭家臣]佐久間信盛-脱兎- Sレア #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 必要兵力 20 Lv1 攻 3550 (4252) 防 4270 (5097) 知 3290 (3947) LvMAX 攻 7100 (7802) 防 8530 (9357) 知 6570 (7227) スキル [退き佐久間【風】] Lv1/7 自分自身の攻防アップ 武芸者計略 HPアップ【発動率 低】 売却価格 両 コメント 「にゃははっ!!驀退邁退猛撤退でよ!!」織田信秀、信長に仕える織田家古参の家臣。戦場では特に殿軍の指揮に長じ、その撤退戦の采配は退き佐久間と称される程。 台詞 「○○、一緒にいくでよ!!褒美貰いに!!」 図鑑 イベント:アネガワの戦い 備考 ()内数値は4MAX進化には素材カード「播知釜」が必要 コメント 名前