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サムドラマンタン 事象地平戦線アーディティヤの用語。 7200年ほど前に『始まりの地』で生じた宇宙災害。作中では単に“撹拌”と呼ばれる。 これが原因ですべての生命が死を失い不死者(アムリタ)になった。 災害の原因も、死を失った理屈も全く不明。諸説あるが答えは出ていない。 流れがあったり段階的に不死の世界に仕組みが変化していったわけではなく、撹拌の発生と共にスイッチが切り替わるかのように宇宙全土の在り方が変化した。 撹拌からすでに7000年の時が経過し、その間にも数多の天才達が生まれていたはずだが撹拌の謎は未だ解けていない。テルミヌスはこれを「不死者は撹拌の真実についてあまり考えない様に創り変えられている」と考察している。 撹拌時には、人類の営みがあった星で例外なく軍事的革新(スラビでは大陸間航路の確立、ダヌワンタリでは銃火器の発明、カウストゥバでは無線通信の誕生など)によって当地の歴史上最大規模の血が流れていた。そしてそれらの開花した技術を先住民の虐殺等で真っ先に利用した人物がおり、その罰であるかの様に死を失ったという記録が多数残る。 第四劫暦において、3つの巨大宇宙国家は始まりの地に辿り着くことで“撹拌”を再び起こし、各国家に都合の良い世界に変えることを目的にしている。 現状3つの国家は始まりの地の座標を観測するために劫波を完成させようとしているところ。 備考 元ネタはヒンドゥー教の神々による天地創造神話「乳海攪拌」から。神々とアスラによる不老不死の”霊薬アムリタ”をめぐる話。 ガチで万象がかき混ぜられたせいで日本列島だけの星なんてのがあるのではとか今のところ想像してる -- 名無しさん (2022-03-29 21 25 43) ↑確か日本雛形論というトンデモ説があった様な気がする。 -- 名無しさん (2022-04-01 21 26 22) ↑x2 成恵の世界? -- 名無しさん (2022-06-29 21 44 35) 覇道の流出と見せかけて全く別物の現象なんだろうな -- 名無しさん (2022-07-09 18 35 47) 真実はみんな水槽脳にされてシミュレーションに使われてるとかだったりしてね。 -- 名無しさん (2022-08-01 04 40 19) ここに良く出来たオープンワールドゲームと水槽脳があるじゃろ? -- 名無しさん (2022-08-01 04 51 23) 日本だけの星ってそれなんて第二太陽… -- 名無しさん (2022-09-06 16 07 29) 名前 コメント
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『異界撹拌』 国営18禁ファンタジーVRMMO。 寝ている間にゲーム出来て、睡眠バッチリ、体調スッキリ。ゲーム内では時間加速あり(3時間で1日計算)。しかもVAで、五感も搭載している。 お上の運営のもと日本サーバーは、倫理観お高めで営業されている。 なにせ日本の法律でアウトな行為は銃刀法以外、大抵が憲兵さんにしょっ引かれる仕様(脱獄も出来ない刑務所プレイのどこに需要が?)。 治安はよろしい『異界撹拌』。何が問題かと言えば、イベントストーリーだ。 情はある。だからこそ鬼、畜生と評判だ。 『異界撹拌』の1日=リアルの3時間に拡張される。 例)現実で10時に就寝する→こちらの朝6時起床の計算。 こちら連続イン2日目の6時だから、リアルでは1時になったところ。日本時間では最もプレイヤーが多い時間帯になる。 イベントストーリーの闇 現地は異世界間の戦争開始秒読み。 いい奴も悪い奴も容赦なく死んでいく。 プレイヤ-死ぬ=キャラロスト このゲーム人命が本当に儚かった。 二次元のゲームや映画ならありふれた物語でも『異界撹拌』はVRなんだぞ。 五感がリアル! なんで、異界間人類同士の争いとか、えげつないシナリオを組んでくる運営。 エロ有り、エロがなくても18禁 というくらいグロもヤバい。 表現の規制に配慮してくれるやさしさは、ストーリーにも欲しかった。 プレイヤ-が作成して使われなかったアバターは現地民として登場する。 心に傷持ち設定のある子を運営に渡したら『ああ、あの子は可哀想だったね…』的なイベントにされてしまう。 【やることリスト】 報酬がつくからとなにも考えず指示どおり動くと、大変なことになったりする。 【○○を暗殺】とか、成功報酬に目が眩んで実行すると官憲に捕まる。 粛々と裁判、刑の執行、キャラロストか服役のコンボだ。 功績ポイントが貯まったから、円満隠居できる システムは同じでも、他の国は日本サーバーと界が違う設定。国それぞれ別シナリオらしい。 大元のシステムは共通 冒険者ギルド等 日本サーバーのギルドランクは冠位十二階 血筋で上のランクに昇れはしないが、昇殿ランクから学科試験がついてくる やんごとないところのクエストは昇殿資格がないと受けられない仕様でござる。 =「つまりは科挙?」 倫理テストや刑法やテーブルマナーとか有り
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目が覚める時、というのは、嫌いな人こそあれど、好きだと心から言える者は少ないだろう。かく言う私も、目覚めを好まない一人だ。だが『何故嫌いなのか』については私と他人では異なる。それは私が七曜姉妹の一員であることに起因するのだ。よって理解出来るのは、私と残りの六人だけであり、この不幸によって私たち七人は絆を深めることが出来た。 私たちは死ぬ。それがどのような理由であれ死ぬ。撃たれて、殴られて、爆発に巻き込まれて死ぬ。考え付くあらゆる方法で、その難易度は別として最終的には私たちを殺すことが出来る。そして私たちは再誕するのだ。姿形は変わらないけれど、精神を変容させて再び生まれる。七人ずつの記憶を持った七人が生まれるのだ。つまり当初、七曜姉妹は、私も残りの姉妹も含めて誰でもない。全員がサンディであり、マンディやマーズであり、プルートでもある。生まれた後、私たちは受肉すると言うこともあるが、生まれた後に役割を振り分けられ、かつてマーズであった者がサンディとなり、ヴェヌスがユピテルとなり、と言った具合に決められる。こんぐらがるのでは、という危惧は尤もだが、案外気にするほどでもない。慣れれば全然問題なくやっていける。学習能力に万歳三唱だ。 「現状理解──各部正常」 呟き声を出す。これは癖とかじゃなくって、そうするようにと人工脳に定められているので、黙ろうったってそうさせてはくれないのだ。前述のように、このありがたい儀式により私は私が誰であるかを知るのだが、何にしても目覚めの憂鬱さでその嬉しさも何処かへ消える。 「……今度は指揮役か」 これは自分自身の意思で口にした。無意識に口をついて出た言葉ではあるが、兎に角、無理矢理出すように決められた言葉ではない。私の入っていたポッドが開く。排水は既にされているので液体が漏れる心配はないんだが、事前にタオル一枚出してくれてもいいと思う。それが駄目ならせめてポッド開放後でもいいから、バスタオルをくれればいい。私は無意味に肌を露出してどうこうという性質ではない。しかも寒いし。濡れてるせいで凄い寒いし。くしゃみ機能オフにしてなければするし。それくらい寒い。 液体温度の上昇は私たちの表層、皮膚を暖めてくれるけど、長持ちしないのだ。あれがもう数分でいいから持てばいいのだけど。どうせ服を着る前にタオルで拭くけど、それならポッドに備えてよと思う気持ちは誰にも邪魔出来ないものだ。取り留めのないことを考えながら目を動かす。 他の六人も出て来た。メルクリウスが両腕で自分の体を抱えながら、急いで服を取りに行こうとする。私たちもそれに追従した。早く体を拭いて、服を着たい。修道服しかないのはどうかと感じるが、一糸纏わぬ姿よりはマシになる。本当は毛皮のコートとか欲しい。出来るだけ、あったかい奴がいい。 私たちの更衣室に入り、タオルを配給する。最初に入った者が皆に投げつける(イコール渡すってことだ)ので、メルがそのようにした。受け取ったタオルで丹念に液体を拭う。背中は完璧にするのは難しいのでお互い協力し合う。自分一人でも出来ないことはないけれど、やはり人にやって貰った方が何倍も早いし、時間を無駄遣いする暇はないのだ。修道服を着ながら、私の義務を思いだして、遂行する。 「えー、第三回良かった探しの会を開会します」 「罠を感づかれたのは敵から見えるところでちらちら後ろを気にしてたメガネのせいだと思いまーす」 ユピテルが言う。確かにマンディは軽率にもそのような行いをしていた。が、そりゃ悪いところだ。それは後にするようにと言い含める。良いところ、良いところ、良いところ? そんなものが今回あっただろうか? 私たちはエレベーターから出た後、びっくりしたのだ。十二姉妹の進撃があんなに早かったなんて聞いていなかったので、慌てて撃ちまくって、どうにか通路の曲がり角に飛び込んだのである。戦闘開始直後から最悪だった。良いところなど一つも見つからない気がするが、それならば我々は本来どうするべきだったかを考えよう。 「まず、次の瞬間には戦闘になっているかもしれない、という基本的な事実を認識することが重要じゃないかと思うんだけど、どうかな」 マーズが尤もらしいことを提案する。それはそうだ、と皆で納得した。心にメモしておく。これが欠けていたが為に、私たちは遅れた。もしあの時、私たちがそこに敵がいるかもしれないと考えていたら、私たちはあれよりはまだ良く戦うことが出来たと思われてならない。 「後さ、私たちの戦い方ってのを確立しなくちゃいけないよね。例えば自分は狙撃手だから狭いところじゃそんなに役には立たないしさ、十二姉妹が通る広い場所を見つけてそこで待ち伏せるとか、こんな施設の中なんだし色々出来ると思うのよ。考え無しは駄目でしょ」 言葉に詰まる。今の指揮官は私だからだ。が、黙りっぱなしでもいられない。彼女の言うことは正しい。待ち伏せや奇襲、私たちの利点、施設の構造を把握していることなどをフルに活用して、入念に調整された攻撃を行うのが、私たちの命を無駄にしない戦い方だろう。戦闘経験を積まぬ内に殺されては、前回の私も救われないというものだ。 それから私たち七人であれやこれやと戦術上の問題点だとか、前回の戦闘で私たちがやってしまった失敗のことも含めて討議した。適当なところで切り上げ、更衣室を出る。次は私たちの武器倉庫だ。私たちの、とは言ったが、実際にはこのプラントの兵たちに渡されることもある銃器を保管しているので、狭義での私たちの、なのだが、そこにある銃の全てを好きに使える権限を与えられているのだから、自分たちのものだと呼ぶことに誤りはないだろう。 そこに行って、拳銃や、突撃銃や、短機関銃や、軽機関銃や、散弾銃や、狙撃銃や、爆発物の類を手に入れる。今回は弾を使い切ってから死にたいが、生憎とそれは難しい話だと考えるしかないだろう。 * * * 「十二姉妹の侵入部隊、順調に進撃中のようです。カメラ映像をご覧になりますか? もしくは、戦闘中の兵士たちの通信などでも」 「そんなものがあるのか、生きているカメラが?」 副官は頭を振った。俺は兵士たちの通信を聞くことにした。俺が動かした男たちだ。七曜姉妹の指揮はあの老熊、ルスランが行っている。俺は、頭が二つあることに対する懸念を大いに表明したものだったが、そこは若輩者より、古強者との評価も高い彼の意見が通った。血の絆よりも実績、という訳だ。ある意味ではそれは正しいのだが、新たに有力なライバルが生まれることを、誰も望まなかったのかも、と思っている。彼ら幹部たちは誰もが小心で、己の地位を何としても守ろうとする傾向にある。それらを捨てて何かを手に入れるなど、考えることさえしたことはあるまい。そこが俺とは違うところだ。俺が求めるものは今の地位ではない。ましてやより高い地位でもない。 副官が無線を繋ぐと同時に『伏せろ、手榴弾だ!』『ベンノが撃たれた、くそっ、奴は死んだよ』『あの褐色女は十二姉妹じゃないぞ!』 「ちょっと待て。あれだ、あれ。七曜姉妹の開発に当たって、スタッフを連れて来て技術を流用したりした、あいつ──」 「ニグリティア・アイオーン、ですか」 それだ。そいつがここに来ているのか? そりゃまた、なんで。 彼女たちが十二姉妹と合流したという情報はない。彼女たちは目立つ。カジノ惑星で一暴れしてくれて以来、ギルドは彼女らの動向を完全ではないにしろ、その前よりは正確に掴めるようになったのだ。でも、俺も誰も、十二姉妹と彼女たちが何らかのコンタクトを取ったとの情報は得なかった。ということは可能性は三つある。 一つは、偶然だ。度重なるギルドの襲撃で嫌気が差したペトルッツィ(彼はまだ行方不明?)の三姉妹と、ここに仲間が囚われていると知った十二姉妹が、物凄い確率を引き当てて同時に襲撃を掛けて来た、と。馬鹿か。そんな訳がない。二つ目は、調整攻撃だ。彼女らが我々を出し抜いたか。だがギルドの情報網がそんなにザルとは思わない。我らは世界。世界の闇。何処より暗く、深い水底に沈殿する、正しく汚泥そのもの。あらゆるところに存在する、空気のような闇である。となれば最後の可能性だ。誰かが、何処かの誰かが仕組みやがった。俺と、気に食わない古狸野郎と、後は何人かのロマノフ・ギルドの幹部たちを嵌めやがったんだ。 そいつは重大事だ。我々は如何なる侮辱をも宣戦布告と同意と見做す。心が狭いとか何とか、度量云々は戯言だ。思い知らせてやる方が、後から余計な血が流れずに済むものである。ここは慎重に戦わなくてはいけない。それが誰にしろ、十二姉妹と三姉妹を呼び寄せた奴がいたなら、外患誘致がそれだけで終わるとは考えられないからだ。統合政府も疑わしい。最近彼らの動きが怪しいのは俺の耳にも入っていることだ。でも、彼らに大規模な軍の投入が不可能なのは、一考するまでもなく明らかである。となれば特殊部隊か。そう言えば最近、特殊作戦群の一部が、ロマノフ近辺で演習を行うとの情報がこちらに流れていた。俺たちはそれを疑いもしなかったが、そうか、きっとそうだ。奴らは来る。 ならいよいよ、これを仕組んだ人間が誰かと考えなければならない。十二姉妹ではない。彼女たちにこんなことは出来ない。能力的に、ではなく、セプテンバーのAIを奪還するつもりなら、統合政府だの何だのと余計な要素が含まれるべきではないからだ。三姉妹は要素として、まだいい。彼女らは恐らく、彼女らの目的が姉を助け出すことと知れば、協力するようになるからだ。だが統合政府軍はどうだ? 十二姉妹にメリットがない。まさか彼らと接触せずに済むとは思わないだろうし、彼女たちと政府が休戦条約を結んだなんて話は聞かない。 俺の背筋を悪寒が襲った。 誰かがいる。第四の勢力がいる。マルチアーノ十二姉妹を、ペトルッツィ三姉妹を、七曜姉妹を、統合政府をこの星に集めた者がいる。それが誰か。俺には確信が持てなかったが、気に掛かることがあった。あの老婆。別方面で開発中だった汎用アンドロイド四体を奪取し、自らもサイボーグと化して忽然と姿を消した、あの女狐。あれが関わっている気がする。これは事実だが、俺は記録の上でしか彼女を知らない。であっても、彼女のやり口に似ていた。簡単なことだ。一箇所に纏めて、それから叩き潰す。単純で効率的で狡猾なのが彼女の戦い方なのだ。 俺は副官に命じた。 「急ぎ、奪取された四体のアンドロイドに関するあらゆる情報を集めてくれ。気が進まないが、ルスランにも渡すんだ。恐らく彼はもう、気付いているだろうがね。あいつめ、どうせ俺が頼って来るとでも思ってるんだろうが、あの老いぼれた脳味噌をいつか砕いてやるぞ、俺の名誉に懸けてもいい」 「ヤーヴォール、ヘル・ヴィンクラー」 慇懃に一礼して行こうとする彼を呼び止め、注意する。俺は血の絆を利用することもあるが、内面的、本質的には民族主義者ではない。スラヴ人とゲルマン人なんて馬鹿な括りは、可能な限り早く廃される必要がある。その為にも我々は言語面で統一されなければならない。彼に初めて会った時からずっとそう言い聞かせているのだが、未だ同意を得られていない。彼にすれば、スラヴ人などくそ喰らえらしい。俺には良く分からないが、人の考え方がそう容易く変わって貰っても困るから、彼に怒ったことは一回もない。 彼が出て行き、俺が残る。ここからは俺が兵を動かす。通信を聞く限り、褐色肌の暴虐君主は暴れ回っているのかと思いきや、彼女は大人しめに戦っているようだ。 「こちらライマー、応答せよ」 『隊長は既に戦死なさいました、自分が引き継いでおります!』 あいつが死んだか。俺はまた一人、顔見知りが減ったことを残念に思った。彼に命じて、現在彼らが交戦中である位置を教えさせる。 『B-32通路です。狭い通路なので何とか持ち堪えておりますが、このままでは』 B-32か! そこなら知っていた。左右へのドアの他は通路もない一本道だ。好都合である。彼が冷静さを失わないことは分かっているが、落ち着けと言い、これから俺がやろうとすることを説明した。十二姉妹とその兵士たちを分断するのだ。その為の兵力は姉妹兵たちの背後に回っている。フェブラリーの能力が常時使用されているのではないことは、一年前のクーロン戦でも明らかになっていることだ。俺はそれに賭けた。後は、回り込んだ兵士たちが攻撃を始め、そちらに姉妹兵たちが回った時に、緊急事態用シャッターを下ろし、開閉回路を焼き切るのだ。 そうすれば十二姉妹隊は幾つかに切り分けられ、七曜姉妹や俺の兵隊で始末し易くなる。パワー型のマーチでも、新型の力であってさえ、シャッターは開けられない。二人揃っても無理だろう。宇宙空間での非常事態でも気密を保って、安全を確保してくれる隔壁なのだから。 「いいか、遮蔽物に身を隠して、敵の接近に気を付けながら撃つんだ。十五秒待て。こちらの制御盤で、後は万事上手くやるから」 『了解しました、おい、全員カバーに入れ! 戦況は悪いが、なに、本当に悪いって訳じゃないんだからな!』 周波数を変える。俺直属の(さっきのはプラント守備兵で、かねてからの俺の兵ではなかった)兵が出る。彼は全く、冷静沈着であった。 『我々は攻撃の準備を終えました。発砲許可を申請します』 「許可する」 * * * 背後からの攻撃に、俺たちは対応し切れなかった。見ただけで四人が一挙に撃たれ、一人は死に、二人が重傷を負い、一人は軽傷だった。立場は逆転したのだ。姉妹の命令を待つまでもなく、俺は手近な掩蔽物へと転がり込んだ。そこには先客のステア・ヒートと、それに、オーガスト様がいた。俺に下敷きにされてステア・ヒートが潰れそうになっていたので、体をずらす。彼女は大袈裟に息を吹いてみせた。 「ヴィクトール!」 声を出し、彼の居場所を探ろうとする。通信回線を使うのはまずい。混線させてしまう恐れもある。どうせ声を出せば聞こえる距離だ。銃声が掻き消してしまわなければ、だが。何度か叫んだが、彼の返答は聞こえなかった。おいおい、死んだんじゃないだろうな、あいつ。代わりと言ってはなんだが、俺は通路の左側にある掩蔽物にいたんだが、反対側に俺の小隊長──相変わらず馬が合わない──がいた。 彼に手を振り、取り敢えずオーガスト様、ステア・ヒート、それに俺と小隊長の二人で弾をばら撒き、反撃を仕掛ける。オーガスト様が、身は出さず、手だけを突き出して、煙幕手榴弾を投げた。数秒で煙が充満する。 オーガスト様が、エイプリル様に呼ばれた。彼女が俺とステア・ヒートの肩を叩いたので、俺は彼女に付いていく。途中後ろを見ずだが数発撃ち、牽制を行っておいた。俺たちと入れ替わりに、他のANSを含む兵士たちは、新手の敵の方へ殺到して行く。錬度は新手も古手も同じくらいだ。オーガスト様が息を可愛らしく切らせ、彼女の言うお姉様たちの隣に身を隠す。俺はやはりそうする訳には行かないので、別の誰もいない掩蔽物に、と思ったら、そこには既に、ANSが一人いた。 と、後ろから首をむんずと掴まれて、更に別の遮蔽物の影に投げ込まれる。空中にいる間に俺は理解した。あの褐色女の相棒だったのだ。ちゃんと見なかったから分からなかったが、メイド服を着ている。俺はどうも相方の不興を買ったらしい。 「何をやってますの?」 近くにいたジャニアリー様が呆れてかそう言った。投げられたことを言ったのかと思ったが、そうではなかった。俺とステア・ヒートは、大きな間違いをしたのだった。オーガスト様は俺たちに付いて来いという意味で肩を叩いたのではなく、その場を離れる意で叩いたのだ。そうとは思わず、俺とステア・ヒートは十二姉妹にくっついている訳か。宇宙きっての精兵がなんてざまだろう。急いで二人で戻ろうと、駆け足をしようとする。でもその行動は、鳴り響く警告音で止められた。なんだ? そう疑っていると、遠くで大きな音が響いて来た。銃声の中でも聞こえたのだ。相当に大きい音なのだろう。何なのかと訝しんでいると、突如それは正体を現した。通路の奥で、災害用の、かなり分厚いシャッターが落ちたのだ。マーチ様とニグリティアとか言う褐色女が、弾かれたように走り出した。彼女らはシャッターを食い止めようとしたのだ。しかし間に合わなかった。彼女たちの目前で、鋼鉄より堅固な金属で構成されたシャッターは、無情に下りた。向こうの音が殆ど聞こえない。通信回線を開き、ヴィクトールに繋ぐ。彼は生きていたが、困惑していた。俺も、同じような気分だった。 だが考える暇は、彼にも俺にも誰にもなかった。俺たちは退路を断たれた。他の姉妹兵たちは進路を阻まれた。そして彼らも俺たちも、敵に圧迫されているのだ。フェブラリー様が隔壁を電子操作で開けられないか試したが、回路は物理的に破壊されてしまった後だった。銃撃戦に戻る。と、オクト、ノヴェ、ディッセ様が、制止を振り切って飛び出した。危険だ! 俺も咄嗟に掩蔽物から飛び出て援護をし、彼女らの手伝いをしようとするが、横腹に飛んで来た物体によって、強引に遮蔽物の中に押し戻された。物体とはステア・ヒートで、俺の自分のことを顧みない無鉄砲さを軽蔑する旨を端的に伝えてくれたが、それより十二姉妹の方が俺にとっては重要なことだったのだ。 身を起こして敵の方を見たが、その時にはもう何もかも終わっていた。姉が突撃したのを見て、褐色の妹が奮起したのである。彼女は、何やら物々しい両手の武器で挽肉を大量生産してくれた。お陰で、当分俺の装甲服からは臭いが取れそうにない。増援も来ないようだし、ヴィクトールたちの方に回り込む方法はないかどうか探してみたが、こういう時に限って、ダクトも何も、一つとして見つからなかった。 「……駄目です、私たちは完全に分断されました。今は進むしかありませんわ」 フェブラリー様がこう言うと、ジャニアリー様が激昂し食って掛かる。すぐそこで交戦中である自分の部下を放って行けと言うのか、と。今にも殴り掛かりかねない剣幕の彼女が詰め寄ろうとすると、マーチ様が割って入る。互いに強い非難の色を瞳に映し、睨み合っていた。エイプリル様もジュライ様も、ジューン様たちでさえも、両者が落ち着くまで何を言っても悪化させるだけだ、とばかりに静観している。そんな中で、俺に話し掛けて来るのは、何とニグリティア、あのクーロンでエイプリル様とメイ様を筆頭とする我らが十二姉妹を、危うくスクラップにしやがろうとしたとんでもない女であり、ステア・ヒートの姉だけだった。 彼女は一つの非常に不本意な結果として、俺に話し掛けるのだとわざわざ断りを入れてくれたが、そんなことしなくったって、彼女の顔で一目瞭然であった。嫌そうな顔だった。俺だって彼女と話すのに積極的にはなれない。もし出来るなら、俺は彼女の目の奥に一発撃ち込んでやりたくて仕方ないのだ。 「どうして、お姉様たちはあんなに険悪な雰囲気なんですの?」 「それは俺には説明しにくい。ステア・ヒート、代わりに頼む。だが、静かにな。いいか、『静かに』だぞ」 分かりました、と彼女は言い、そうするのに必要なあれこれを伝えた後、通信でニグリティアに教えた。彼女は深刻そうな顔になって、大体は俺と同じ見解を示した。ジャニアリー様は間違っておられ、フェブラリー様に落ち度があったにしろ、裏切り者では絶対にないと。相手が相手であることは確かだったが、俺と同じ意見を持つ者がいたことは素直に嬉しかった。 適当なところでジューン様が仲裁に入り、ジャニアリー様とフェブ様を引き離す。メイ様は冷めた目つきでそちらを見つめている。その視線が、フェブ様に向いてなければいいが。 「何にしても、ここから移動しなければどうしようもありません。私たち十七名で前進します」 ジュライ様の決定はそれだった。あれ、しかし十七名と? 今のところ十一人の姉妹と、三姉妹、それに俺とステア・ヒート。後一人は?そう思って探すと、もう一人ANSがこっち側にいた。それはANSの現副隊長、ユージーンだった。ジュライ様は、彼女に俺と俺の相棒の面倒を任せた。 * * * 深い井戸の底から訪れる太くて低い叫び声。私はその音に、そんな印象を持った。回転する巨大な刃。実際にはそれは送風扇なのだが。 私は、我が主の計画なのだから失敗する訳がないと信じていた。サマーはそうでないらしく、気乗りしないと言った顔だ。スプリングは、作戦とか計画というつもりではなく、スリリングなゲームみたいなものだと思っている様子である。それは私に不興を催させたけれども、反抗的であるよりはマシだった。我が主は回転刃の前に立ち、風に紫煙をたなびかせた。半透明の線が先端から掻き消されていく。 「スプリング、やれ」 「はーい、同志……モード2、起動っと」 モード2で情報統御を行い、送風扇を停止させる。当然、慣性というものがあるので、すぐには止まらない。そこでモード3の出番だ。この状態は、簡単に言えば防御力と腕力の上昇を特長とする。これは彼女に使われている人工筋肉の特性を活用したものでもある。 彼女は危なっかしげに送風扇の中央、迫り出している部分を両手で掴んだ。強化された力によって、指が金属の内側にめり込む。腕を捻り千切ろうとする送風扇を、しかしスプリングは御し得た。私たちはすぐに、その送風扇の奥に入り込んだ。下に曲折した送風管を飛び下り、二つ目の送風扇。これは既に回転を緩めている。なので我々は容易に、更に下へと進むことが出来た。 主の横顔を盗み見る。滅多に本心を出さない方なのだ。我が主はつまらなさそうな顔をしていた。最近見た中でも特に酷く嫌そうな顔だ。私はその理由を知っていた。この計画が気に入らないのだ。我が主は遊び好きな一面もある。それを色濃く受け継いでしまった二人の孫、殆ど受け継がなかった二人の孫、お互いに時間がある時はどちらにも同じように誘いを掛けた。時にはあのスプリングが呆れるほどだった。その主がこの作戦を考えつき、これはいいと私たちに発表して、その後の自由な時間に災害救助ものの映画を見た。それが良くなかった。両側の出入口を炎と瓦礫に閉ざされた海底トンネルからの救出劇。トンネルへの侵入方法は、正に今私たちがやったのと同じものだった。 「待て、それ以上は進むな」 主が止めたが、スプリングはもう一段下に下りたところだった。あの女……私の心が苛立ちに染まり、目つきもきつくなる。我が主は、分かっている、という風に私の肩を優しく叩いた。サマーが先に送風ダクトに入って行く。塵や埃はないらしかったが、ただ寒いそうだ。狭いところを強風が襲って来るのだから、それも当たり前だが。スプリングはジャンプして壁を蹴り、扇の羽を掴むと、体を引き上げた。 体を払い、サマーに続く。主はその後ろ。最後にこの私。我が主は常に、私に自分の背後を任せる。それは名誉であり、私の誇りである。故に私は私の力の限り、その誇りを汚さぬようにして、獰猛かつ抜け目なく、正々堂々とでも、卑怯にでも戦うのだ。求められた通りに。 ダクトは確かに、サマーの言った通り寒かった。私たちはロクに手をダクトの底面に突くこともなく、膝と肘だけを使って這って行った。 ──ストップ! 短く鋭く小さく、先頭のおふざけ屋が注意の通信を発する。私たちは完全に凝固し、サマーの状況説明を聞いた。彼女の前方近くに、金網を張ったサッシがあったのだ。そこからは下の様子が見え、声も少しだけ聞こえた。そう近くはないみたいだが、安心は出来ない。ここから下りるのは止めた方が良さそうだ、と我が主は結論した。サマーは暴れたいと通信で駄々を捏ねたが、最終的には主に従った。 声が近づいて来たので、腰の位置を低くして、ダクトの底面に張り付く。私の体表も張り付きそうだったが、我慢しなくてはならない。数は二十名ほどで、兵士たちだった。これから十二姉妹に対する防衛線構築に参加するらしく、手に手にバリケードの材料を持っている。この近くまでもう侵攻しているのかと思ったが、そうでもない様子だった。それは良いことだ。こちらの準備をする時間がより多くなる。 サマーが警戒を解除し、私たちは再び前進を始めた。途中で左に曲がり、暫く行くと、また網サッシがあった。サマーが下を覗き見る。 ──うーん、何処からどう見てもトイレだわね。ねえ、スプリング、ここ居住区じゃない? 非居住区にしちゃ、どうも無駄が多いもの。 ──ウォシュレットとか暖かい便座のことなら、最近じゃあ標準装備らしいけど。で、えっと、御名答って言ったげる? カーモス。 ──お喋りはお終いだ。スプリング、周囲に誰かいるか? 小さな統御盤を出して弄りながら、彼女はいないと言った。サマーが許可を得て、サッシを慎重に外し、首を突き出して周囲を見て、危険の一つでもないかを調べる。スプリングが監視カメラの類も同時に検索しているので、心配はないのだろうが、それでも我が主は、最後には自分の目で確かめたことを信じろと我々に教えたのだ。だから私たちはそうする。安全を確信して、サマーは鞄を網サッシの向こう側に置いた。飛び降り、着地し、突然敵が現れたとしても対応出来る態勢を整える。続いてスプリングが下りて行き、その後、我が主がサマーの鞄と、スプリングのトランクケースを下ろした。我が主が下り、私だけになる。私の槍は人に下ろして貰う必要はない。 下に誰もいないことをちゃんと見てから、トイレに下りた。もうスプリングとサマーはトイレの出入口に張り付き、辺りを窺っている。我が主はトイレの個室を一つ一つ確かめて、顔をしかめた。私が何なのか見ようとしたが、黙ってそれを止め、足先でレバーを押して、水を流した。数えると十五、六ほどある個室を全部調べ終わって、我が主がスプリングとサマーを呼ぶ。彼女たちは並んで戻って来た。 「ここからは全員がばらばらの行動を取る。だがそれらは実のところ、緊密な連携関係にある。そんなことは言わなくても分かるだろう。私が言いたいのはだ、スプリング」 「なーに、カーモス」 「私が何らかの状況下で指揮が出来なくなった時はお前に任せる。それと、サマー」 「早くしてよ。撃ちに行きたいんだから」 我が主は肩を竦めた。その若さが羨ましいよ、と言って、言葉の続きを発する。それはスプリングに向けたような言葉ではなく、単なる、孫娘への激励と諌めの言葉だった。要するに彼女の火力の必要性と、後はだからと言って撃ち過ぎるんじゃないぞ、という言葉だった。 「オータム」 「はっ」 心身を引き締める。我が主はそんな私の足先から頭までをしげしげと見つめ、それから、お前は、と何か言おうとしたが止めて、言った。 「……また後で会おう」 私は大きく頷いた。 * * * 僕は歩きながらバックアップ部隊との連絡を試してみた。プラントから離れた地点で電子機器を満載した小型艇に身を潜めている彼らは、主にパトリオットの状態を常にモニターし、情報戦が必要とされた時、フェブラリーに対抗するのだ。人間がそうするには、小型艇に、もう少しで飛べなくなるところまでスタッフと機材を積み込むことが要された。人間とアンドロイドが戦うというのがもう間違いなのだ。 アンドロイドは完璧な存在だ。対等な条件で人と戦わせて人に勝てと言うのは、無茶以外の何者でもない。人間が戦車に乗り、アンドロイド側が素手だって言うなら、勝機は十分にあるが、対戦車ロケットがあっちにあればほぼ負けるのはこっちだろう。そうでなくともこっちが一両であっちが複数なら、 二人だけでさえ、戦車の勝利は危険に晒される。一人に掛かりっきりになっている間にもう一人が三次元的移動を駆使して肉薄するのだ。 バックアップ隊とパトリオットの通信は、今のところ問題はなかった。研究所ということでサーバーくらいあるだろうと思っていたが、僕の予想は正しかったようだ。それらを勝手に中継点として使い、パトリオットは彼らと連絡している。居住区ならより多くの端末が、彼と彼の援護者たちを繋ぐだろう。なれば、中継点を破壊することによる情報戦の制覇は不可能になる。フェブラリーがその恐るべき電子戦能力によって中継点を破壊しようとしても、そんなことに力を傾けている間に、僕のスタッフに彼女をクラッキングして貰う。そうすれば、彼女の人工脳(本当にこの呼び名は嫌いだ)を破壊し、十二姉妹の力を大きく減じさせられるのだ。 そうされてくれるほど彼女たちが間抜け揃いだといいのだが、我々やギルドに苦汁を舐めさせ続けているマルチアーノ十二姉妹だ。期待出来ない考えである。 「大尉、そこの部屋に入ってよ。丁度いい機会だし、作戦について追加説明があるからさぁ」 ふと見つけた部屋を指差す。そこは多分、研究員の仮眠・休憩室だったのだろう。ベッドが二つほどあったし、冷蔵庫などもあった。その中から無断で缶ジュースを取り出し、僕はプルタブを開けた。他の隊員たちも思い思いにビールだのお茶だのを取って行く。大尉だけはそれに手を付けず、僕が作戦に関しての追加説明をするのを待っていた。僕は彼を待たせるのには何も思わなかったけれども、説明しないとマズいことではあるので、飲みながら説明をすることにした。それはそれとして、うう、このグレープジュース外れだよ。 「えと、まず大切な話ね。出発前にしたアンドロイド生産施設への破壊工作作戦って話。アレ、嘘だから。ぜーんぶ嘘。もう嘘ばっかり」 そこで一息吐いて、兵士たちを見回す。大尉はそういう反応だろうと思っていた通り、動じていない様子だ。兵士たちの半分もそうだし、残りの半分もそこまで驚いているようには見えない。これが特殊部隊員ならではの落ち着きという奴か。無頓着とも言えないこともない。 「実際には施設は破壊しませぇん。だって勿体無いでしょ? 僕らはギルド、十二姉妹、それにギルド開発の新型アンドロイド三姉妹、こいつらを纏めて始末する。あ、後は見たでしょ、映像? 金髪の七人姉妹。あれも一緒に撃破するつもりだから」 「まあそりゃいいんですが、待って下さいよ、中佐。どうして嘘を吐かなくてはならなかったんです」 「んー? 統合政府のノミをくっつけたくなかったからって言えばいいかな」 僕は彼のことを思い出す。ムスタ・プナイネンとかいう変な名前の男。統合政府の監視員として僕らに同行しようとしたが、彼の魂胆は、この偉大な我が英雄のデビュー戦を出しにして、出世をするところにあった。勿論、僕も大尉もそれを許さなかった。彼の夢は潰えたが、そうするには彼が付いてくると作戦に対し貢献するどころか、作戦をぶち壊すことになると、上の連中に納得させなければならなかった。 で、でっち上げたのが隠密裏の破壊工作作戦兼アンドロイドの実戦テストだ。パトリオットが大暴れしている間に我々は破壊工作を行い、彼と共に撤退する。説明したのが軍事作戦の専門家相手じゃなくて良かった。誇張して話しても全然気付かないんだからな、あいつら。実際に僕がやりたかったのは、ギルド連中の開発した新型アンドロイドたちのデータを横取りすることとか、生産施設の鹵獲であった。パトリオットの実戦投入試験については嘘ではないが、そもそも生産施設の破壊なら僕らが同行する必要はないのだ。彼に任せればいい。銃と弾と、爆発物他を彼に持たせれば、彼は実に上手くやる。大尉の率いる部下の技術を合わせて二乗したよりも高度な技術を持つ彼が。 「それで、結局の話、我々は何をすればいいんです」 「え? 戦ってよ」 落ち着きの割に色々と頭悪い連中でがっかりする。僕は何も、僕を守らせる為だけに彼らを侍らせているのではないのだ。追い出された変な名前の男、真に残念ながら任務を果たせなかった統合政府の監視員は、現大統領の派閥にいる潜在的敵対勢力から送り込まれた人間だった。では現大統領の派閥が正式に認可している監視員は誰か? それが大尉だ。彼が部下を連れているのは、任務を遂行し易くする為なのだ。 彼は特定状況において、僕を無視して行動する権限を与えられている筈だ。実戦士官は技術士官に従わない、と言えば、一般的な原則か。僕が臆病風吹かせてパトリオットを出し惜しみしたりしたら、銃を突きつけることも出来る。そんなこと僕は絶対にする訳ないんだけど。 大尉は権限を明らかにしなかった。自分の役職についても口外しなかったが、それが余計僕の確信を強めさせた。彼こそ監視者に相応だ。僕は彼の特殊な役割に関しては言及しなかったが、その他の伝えるべき情報は、出し惜しみすることなく伝えた。彼らの敵になる存在や、探し物の情報だ。生産・研究プラントである以上ここで得たあらゆるデータを集積する場所がある筈だ。そこを確保しなければならない。そしてパトリオットを経由することで、バックアップ隊の方にデータを送信するか、パトリオットにダウンロードさせて持ち帰るかする。統合政府は新たなノウハウ、人工筋肉や火器管制、戦術的思考能力などの現在の政府研究機関には革新的なアプローチを手に入れるのだ。我々の能力に掛かれば、大量生産など難しい話ではない。パトリオットがそう出来ないのは、偏に単価の問題なのだ。 彼は一品物である。ここからコストダウン出来るところをコストダウンしまくって、彼の魅力を殆ど全部スポイルした量産型を作る魂胆なのだ、統合政府は。一人の夢見る少年研究者(25)としては激憤止められぬところであるが、正義執行代理機関に就職した者としては、受け入れる他ない。 僕らは小休止を終えて、中枢部目指しての移動を再開した。……うーん、頭悪い連中と遊ぶのも楽しいんだけど、そろそろ潮時かなあ。元来、僕は群れるより一人か、どんなに多くたって二人の気の合う相手と一緒にいる方が好きなのだ──お、もうすぐ居住区か。よしよし。 * * * 我々の分断に成功すると、敵はモーゼを前にした紅海のように二手に別れて撤退して行った。我々は彼らを追撃しようとしたけれども、誰かが見ているかの如き絶妙なタイミングでシャッターが滑り落ちて来て、僕たちは完璧にプラント深奥部から締め出されてしまった。爆破も考えないではなかったが、そんなことをすれば壁も床も天井も吹っ飛んでしまうだろう。 僕らは部隊を二つに分けることにした。一隊は地上に戻り、防衛戦に加わる。僕の正確に合わせられた時計は、ロマノフにもうじき暗闇が訪れるということを教えてくれている。ロマノフに疎い僕たちは苦戦を強いられるだろう。そんな時、兵力は多い方がいい。負傷兵だって少なくないのは、通信で聞いている。 こっちにも負傷者はいる。分断前にも出たし、分断時にも三人が負傷した。死者も運ぶ必要があるだろう。我らの偉大な英雄たちを。塹壕を掘り、負傷者を退避させて、夜に備えなければならない。敵が攻めて来るのは目に見えている。彼らはロマノフを知っているのだ。 もう一隊はこのままプラントを捜索し、地下への入口を発見出来るよう頑張ることになっていた。希望は薄いが、見つかれば確保する。フェブラリー様にはスキャンを頼んでは見たものの、こう範囲が広いとその精度も落ちがちであるし、十二姉妹の手を余り煩わせるのは、僕たちにとって禁忌だ。よってヴィクトールとその仲間たちは再び外の冷たい空気を吸うことにして、僅か数人のANSは残るのだった。 キャス──キャサリン・カークランドは残ろうとしたが、あの分断でユージーンが十二姉妹側に行ってしまった為、それは叶わなかった。しかしそうでなかったとしても、彼女は上に行くべきだと思う。彼女はANSの指揮官なのだし、彼女の指揮は優秀なものである。僕らの大半は憂鬱にも、階段で地上に戻らなくてはならなかった。そりゃ、訓練や懲罰で似たようなことをやったことは何回かあるが、その時は十秒から三十秒の休憩を時折挟んでいたのだ。今回はノンストップだった。何階層を駆け上がったのかは考えたいことではない。 通信で連絡し、地上に出る。連絡したのは出入口を見張る仲間が、僕たちを撃って来ないようにだ。彼らは僕らを心から歓迎してくれた。ANSの登場が士気を大いに高めもした。こう言うのも何だが、皆、彼女たちが好きなのである。姿はオクト様たちに瓜二つなのだし、それでいて個性は個々人にちゃんと存在する。ハンスといつも一緒にいるステア・ヒートのようなANSは少ないが、だが誰だって、戦場でも日常でも頼りになる彼女らと仲良くして行きたいと思っているし、今のところそうなっている。そんな存在が横で共に戦うのだ。 それはさておき、こちらの到着時にはロマノフはほぼ暗闇に包まれていた。暗視装置を使うが、緑色の視界の中では敵が見えにくい。ロマノフ兵たちは真新しいシーツのように純白なコートを、装甲服の上から着込んでいるのだ。この衣服は制式採用の装備ではないが、効果は絶大なものだった。僕らの中で目敏いというか頭の回る奴らは、監視塔の仮眠室からベッドシーツを引き裂き、見よう見まねで、似た感じの服を作ったが、傍から見ると馬鹿に見えた。でもその装備は役立ったのだ。 雪はいよいよ強まっていた。僕らは白の中に伏せ、呼吸をする度に吐き出される水蒸気を何とかして抑えようと頑張った。迫撃砲班は、観測が難しいので撃つのを止めていた。彼らは明日、日が昇ってから、その威力を発揮することになるだろう。でなければ今日の夜、敵がやって来たらそうなる。砲弾の消費が激しいので、慎重に撃たなければならないらしい。いつだって弾薬は足りないものだ。対戦車ミサイルの残りも気にしなくてはならない。あるのは、重機関銃の弾薬と手榴弾、それに突撃銃の弾薬だけである。次に敵の装甲車が共同攻撃して来たらと思うと、僕は気が気でならなかった。それに航空部隊も心配だ。こちらの隙を突かれれば、携帯式SAMも使う暇なく掃討されてしまう。空にいるという利点は大きい。敵兵たちの攻撃射程範囲外から、一方的に相手を打ち据えることが出来るのだから。雪が敵航空部隊を阻害してくれることを祈るのみだ。 「ヴィーチャ、敵の動きが少な過ぎて、どうにも怪しいとは思わないか」 僕をこの愛称で呼ぶのは、姉妹隊ではキャスだけだ。彼女は不愉快そうに塹壕の中にしゃがみ込んで銃を撫でていた。僕は小さく頷いた。彼女は立ち上がり、スカートに付いた雪を払ったが、その方がありがたかった。彼女たちのスカートの長さからしてしゃがんでしまうと下着が見えそうになる。どういう仕組みか見えたことは一度としてなかったが、行うべき紳士的な振る舞いは見ずに済むようすることだ。 にやっと彼女は笑った。これは別に僕をからかったのではない。彼女は人をからかうということを余りしない性格だ。キャスが笑うのは、例えば誰かを不寝番にしてやろうとか、無反動砲を持たせて十五キロ走破させるだけの理由を、誰かの中に見つけ出した時なのである。過去に三度、僕は彼女の笑いを見た。そのどれもが、後に僕を間接的、もしくは直接的に、何らかの小さいか大きな不幸に叩き落とした。 「こういう時は教本に書いてあったな? そう、あのシチュエーションだ。イアドランで航空騎兵大隊が三個連隊を相手にした戦闘の」 「川床の向こう側に隠れた敵をいぶし出すあれですか。悪かありませんがね、むざむざ狙撃兵の餌食になってのた打ち回るのは嫌ですよ」 熱帯国におけるその戦闘で、川床にいた兵士たちは、反対側の木々やら茂みに隠れていた敵兵を、試しに撃ちまくることによって炙り出した。彼らには敵など見えていなかったのだ。それは単に静か過ぎることへの懐疑から生まれた一つの命令によるものだった。三分間全力射撃。正しくキャスの通達した提案と命令も同じものであった。三分間、無制限の発砲が許可された。我々は撃ちまくった。あらゆる場所を、撃って、撃って、撃った。時々硬いものに当たったような音もしたが、気のせいか石か何かを跳ね飛ばしたのだろうということになった。 三分が経って、しかし敵はいなかったのか、乗って来なかったのか、現れなかった。キャスも僕も結果にがっかりして、敵との根競べを再開しようとして、僕は弾倉に弾が一発だけ、残っていることに気付いた。これは気持ち悪い。かといって出して小物入れに突っ込んでおく気にもならない。だってたかが一発だ。僕はそれを撃った。弾丸は硬いものに当たった時の音がしたが、僕はそれより着弾と同時に、こちらの塹壕から数メートルの命中地点で、人間サイズの『動き』があったことに注目した。僕はすぐに弾倉を入れ替えた。キャスもいつの間にか見ていて、短機関銃を構えていた。 息を吸い込む。冷たい酸素が喉に痛い。周囲を見回すと、全員が臨戦体勢だ。彼らがいつ僕の発砲を見ていたのか、良く分からない。音が無くなった。ああ、と思った。クーロンでも、あの作戦でも、こんな時があった。そうして、また、今日、僕はそれを味わった。 「進め!」 「立って、俺に続け、突撃!」 「進撃、進撃だ!」 奴ら暗くなってからずっと、少しずつこっちに這い寄って来てたのか! 「こいつはまずいぞ、ヴィーチャ、砲撃させろ! 私たちの頭の上にだ!」 * * * セプ様のAIの在り処は一向にして分からなかった。フェブラリー様の探知能力でさえ見つけられないとなると、幾つかの可能性がある。丸っきり我々が勘違いをしていて、セプ様はここにはいない可能性。何らかの手段で、セプ様がフェブ様の力から隠されている可能性。最悪なのは破壊されてしまった可能性だ。でも最後の可能性だけはないと信じたい。ギルドはまだまだセプ様のAIを必要にするだろう。そうであって欲しい。俺とステア・ヒートはそう話したが、今一ステア・ヒートはペシミスト的観点から抜け出せないでいるようだった。 ジャニアリー様を刺激しないよう、彼女がそんなことを言うのを止めさせる。それに、俺たちは敵中真っ只中で孤立しているのである。決してお喋りしながらの楽しい早朝ウォーキングではない。四人が横一列になって進めるくらいの広さを持った通路を歩く。俺たちは武器を構えて、何にでも対処出来るよう心を決めていた。ジューン様とジュライ様、メイ様にオーガスト様は後方を守備し、中央をANS二人と俺、アルヴィスとか言う大人ボディの年末型に、セプ様の偽者ノネットが固め、前方を残りの姉妹と褐色女のニグリティアが警戒している。 はっきり言って人数が多過ぎた。十二姉妹、三姉妹、それに兵士三名。計十七人だ。一個分隊と一班作れる。これは明らかに過多状態だ。部屋がある度に俺たちは適当な数でその中に突入してクリアリングしたが、こんなにいるといい的である。おちおち歩いてもいられない。 『探査終了……反応、なし。再精査を開始します』 フェブ様の機械的な声。俺は肩を落とすが、これが最初の落胆ではない。気を取り直して進む。次は引っ掛かるかもしれないじゃないか。 『停止』 先頭を行くエイプリル様が左手を挙げ、我々を止める。ニグリティアの頭に邪魔されて前が見えていなかった俺は、顔を傾けて眺めた。道が別れている。そりゃ、ここまで殆ど一本道だったことの方が驚きだし、そろそろこうなって欲しかったところだ、むしろ歓迎である。 ジュライ様が戦闘の指揮を任されているので、彼女が誰がどの道に行くかを決めた。このまま進んで下りると、居住地区に入っていける。すぐここで下りるといよいよ生産プラントらしい。これはフェブラリー様の情報なので、間違いということはあるまい。ジュライ様は、我々イレギュラー三人組と、メイ様を居住区に派遣することにした。これで残りは十三人、一個分隊にかなり近くなった。これならいい。 プラントでは敵アンドロイドと交戦する蓋然性も、居住区と比べて格段に高くなる。それに、このクソ広い研究所の居住区なのだから、兵士や武装した研究員たちが多くいることが予測出来る。それならば少人数で偵察し、ゲリラ的に戦い、彼らを動けなくするのが適切だ。敵を撃滅するだけが戦闘の目的ではない。大体、四人ぽっちで居住区に立て篭もる敵兵たちをどれくらい痛めつけられるか、なんてのは、考えるだけ無駄なことなのだ。ゲリラ戦をしない、というのならばだが。我々は残酷に、当然だが効率的に戦わなくてはならないだろう。 恐怖を与え、疑心暗鬼に陥らせ、ありもしないものを見て、彼らの要塞から一歩も出られなくなるまで、その精神を打ちのめす。肉体は、鍛えるのは容易い。精神は違う。俺だって何人も壊れた人間を見て来た。時には三十分前、横で欠伸して股座を控えめに掻いていた男も、壊れて戻らなくなってしまったところを見た。ならばどうすればそんな人間を作れるか、理論で学んだだけの連中よりは詳しいつもりだ。罠を張ろう。死者を嬲り、吊るし、腐敗するままにさせ、手榴弾を仕掛け、銃に細工をして、狙撃を行い、爆発物を投げつけ、隠れよう。 居住区は一つの町のような構造だと、フェブラリー様は言っていた。つまり宇宙港市街地みたいなもので、施設の中に町があるのである。歌が宇宙の少なくとも極一部に平和をもたらしたというオチの、古いスペースオペラ・アニメーションを見たことがある。その中に出た、宇宙船の一隻が全くのところ、そのような町を備えていた。高層とまでは行かないが、ビルがあり、ファーストフード店があり、喫茶店、CDショップ、本屋、ゲームセンター、凡そ人が楽しむのに必要になるものの数々がそこにある。この研究所もそんな風だといいのだが。 エイプリル様がその親友の方を見て、一つばかり頷きを見せた。メイ様は頼りになる笑みを見せた後、俺たちよりも先に歩き出した。敬礼してから、彼女の背中に付いて行く。果たして俺の思ったような町が広がっているのだろうか? 階段に差掛かり、メイ様を先頭に、俺、ジーン、ステア・ヒートの順番で下りて行く。階段は長かった。何度か躓いたり階段を踏み外しそうになったりしながら下り切って、ドアを見つける。電子的に施錠されていたが、フェブ様へ連絡して開けて貰った。彼女の力は確かなものだ。ドアが開き、我々は進んだ。 何とまあ、思い描いた通りであることだよ! 一番高い建物は柱のように天井と地面を繋ぐものだった。それが一つでなく複数あるのだ。考えればそうする理由も納得出来る。天井と床を繋いでしまえば、強度的にも安心そうじゃないか。行き来もよりやり易くなることだし、悪いことは多くない。さあ、ここからが問題だ。居住区には光があった。プラスチック製じゃない本物の植物があった。噴水もあった。 でも人の姿は見えなかった。何故だか考えることは重要な行動だ。隠れていて俺たちを待ち受けているとも考えられるので、注意を払い、道のど真ん中なんて歩かずに、建物の影に隠れる。そこでメイ様がジュライ様に報告すると、彼女はフェブ様にこの区域の探査を命じた。これはありがたいことだった。ジュライ様は敵兵の反応を探るように言い、それは実に良いタイミングだったのだ。 俺たちの少し近くに、移動中であるロマノフ兵の分隊が確認出来た。フェブ様は引き続き探りつつ、その反応の移動経路をばっちりこちらに教えてくれた。なので俺たちは彼らを待ち構え、好きに料理することが可能になったのだ。メイ様は捕虜を取ることの重要性を説きはしなかったけれど、彼女が望んでいることを僅かばかりでも察する能力があれば、彼らを皆殺しにするのが正しい選択でないと、誰だって理解出来るだろう。 『反応なし、居住区の十分の六を探査終了。おかしいですね、もしかしたらプラントの方に?』 『分からないな。何にせよ、これからとっ捕まえる連中が素直に教えてくれればいいんだが。アタシは面倒は嫌いだよ』 俺はその通信を聞きながら、十二名ほどの敵兵を全員捕まえるのは骨だし、半分か三分の二は射殺してもいいだろうかなどと思っていた。ステア・ヒートが俺の腕を叩く。彼女は通信を使い話し掛けてきたが、秘密にしなければいけない話でもなかった。まあ、状況が状況だ。万が一にも声が聞こえてしまったら、こちらの奇襲は失敗する。古来よりの教訓だが、失敗した奇襲より悲惨に終わる作戦はないものだ。 我々四人は鼠みたいに縮こまって隠れ、敵の分隊を待った。時間が長くは過ぎない内に、敵の反応が俺たちの近くにやって来たので、目より上の部分だけ出して確かめる。襲う相手がどんな武装を持っているか知りたかったのだ。でも俺の目は別のことに釘付けになった。 なんだってんだろう、あのやったらめったら背の高い、ハンフリー“ボギー”ボガートは? * * * 私はじっくりと彼を見つめてみた……あのハードボイルド・マンをだ。距離があったので、ハンスは詳細には分からないようだったけれども、異様な風体だった。ヘルメットを被ればいいのに、彼の顔にはフェイスマスクと思しきものが張り付いていたし、そもそも服装が異常だ。ハンスが奴のことをハンフリー・ボガートに喩えたのも決して間違いではない、というか正しいだろう。ボガートは彼ほど肩幅が無いし、背丈も六十センチくらい彼が高いが、ファッションセンスは似ていると言えば似ている。中折帽を少々目深に被り、ゆったり歩いていた。 彼は何か背負っていたが、角度の問題で詳細は不明だった。近づいてくれば分かるだろう。彼が何を持っているのか、それは武器なのか。メイお姉様は慎重論を展開した。敵分隊は、先述の男を除いて警戒しながら進んでいる。奇襲を掛けるにしても、そう簡単には行くまい。やるとすれば二手に別れ、両側に陣取って、破片手榴弾を投げつけることが最適の案だろう。彼らもそれなりの防御はしている様子だが、至近距離の爆発が敵を殺せないとは思えない。それから十字砲火を浴びせる。そうすれば、敵の錬度によっては、全滅にまで追い込める。 が、お姉様は戦闘機動を許さなかった。なので私たちは観察を続け、兵士たちの陣列にとことこ付いて行く、一人の青年を見つけて訝しんだ。彼は周りの兵たちと同じ装備を身に付けていたが、窮屈そうに、頻りに首元や手首辺りを弄繰り回していた。彼が兵士でないのは明確だ。しっかりと訓練された兵士であれば、あんなことはしない。 私たちは通信で話し合い、彼らに対する攻撃をどのように行うかを決めた。お姉様のショットガン、私とジーンのMP7、ハンスの突撃銃。どれも遠距離攻撃には向かない。となれば、引きつけてから戦闘開始か。それには気付かれないよう距離を詰めさせるのが重要だ。我々が隠れた建物の下に来るまで息を潜めて監視し、頭上に手榴弾を落とす。私たちはそれで行こうと決めた。お姉様はユージーンと二人で近くの窓に張り付いて隠れ、私は別の窓の傍に、ハンスと一緒に隠れた。 だがそこで、お姉様の方の窓は低い位置にあったから良かったものの、私の使う窓ではどうしようもない身長の問題がある、と気付く。急いで私は行動し、椅子を引き摺って来た。四本足の安定した奴だ。これでいいだろう。ハンスは横目でこちらを見たが、何も言わない。こっちも、椅子のことでからかわれるのは嫌だったし、そうでない話題にしても、敵の待ち伏せ時にお喋りするのはとても賢明ではない。 ──居住区班、こちらジュライ。プラント班は分散してセプを捜索中。私はジューンと一緒にいますが、そちらの様子はどうですか? 彼女らも目的地に到達したか。メイお姉様は情報を洗いざらいジュライお姉様に話した。この報告はきっと全姉妹に行き渡ることだろう。ジュライお姉様はメイお姉様にこちらのこと全てを一任した。これは言うまでもないことで、自分が現場にいないならそうする他にない。けど一応言っておかないと、命令系統に問題を生じることもある。そういう訳でジュライお姉様はわざわざ言わなくても良さそうなことを言うのである。 ──プラント班は進展なし。何かあれば連絡しますわ。ああ、それと、フェブに助力を頼む時には、私を通さなくても構いません。 ──了解だ(ここでフェブお姉様に繋ぎ変えた)フェブラリー、そちらの状況は? アタシの周囲にいる敵兵をスキャンして欲しい。 彼女は快諾し、すぐにデータを寄越した。それを受け取った私は疑問を持って、敵を肉眼で確かめてみる。一、二、三……一人少ない。フェブお姉様のデータで提示された敵の数と、実際にいる数が違う。お姉様も同じことに気付いて、フェブお姉様に確認連絡を行ったが、やはり彼女はそれだけしか反応は無いと言った。メイお姉様は首を捻りつつ、ショットガンのフォアエンドを引き、薬室に散弾を込めた。 私とハンスは手榴弾を一つずつ手に取り、ピンを抜く時を待っている。彼らはもう、建物からそう遠くないところにいた。ハンスが、突撃銃の安全装置を動かして、フルオートからセミオートに切り替える。そうだ、私もそうしよう。今は室内戦じゃない。ばら撒くより、狙い澄ました一撃が、自分の命を救うのだ。短機関銃持ちの私がそんなことを言うのも変かも知れないが、弾薬の節約にも繋がることだ。 ──まだ撃つなよ。後ろから攻撃するんだ。下手に動くなよ、バレたらヤバいぞ。アタシが思うに、あの装備と分隊の動き方は……ッ! メイお姉様が息を呑んだ。私は怪訝に思って尋ねた。彼女は何度か悪態を吐き、未だ攻撃予定ラインを敵が通り過ぎていないというのに、攻撃命令を出した。ならば従うだけだ。ピンを抜いて、投げつける。落ちて行く間に起爆までの短い時間の大半が過ぎて、回避は不可能。ハンスはおまけにもう一個投げつけてから、窓から身を乗り出した。そして、愕然とした。私もだ。何が起こっているのか把握するのに、不覚にもコンマ数秒取られてしまった。ハンスがハンフリー・ボガートと形容したあの男は、背負っていたものを構えていた。それはミニガン。無痛銃。ヘリに搭載されるような、人間が構えるものじゃない。それを向ける先は、自らの前を行く男たち。弾丸が放たれる先も同上。 驚きの短い声を上げる間に、分隊の大半が動かない挽肉になった。残った二人、撃った男と、その後ろでそれを眺めていた兵士が場に残る。そこに、投げた手榴弾が落ちた。ボギーの動きは素早かった。彼は即座にミニガンをかなぐり捨てると、棒立ちの兵士を庇ったのである。 爆発。破片が幾つも突き刺さったことだろうし、爆風は通常の人間なら宙に舞い上がらせるだろう。それでも男は立ち続けていたし、身じろぎ一つ、手榴弾のせいではしなかった。彼は敏捷にミニガンを拾い上げ、呆気に取られていた私たちに向けた。お姉様が伏せろと叫んだが、私は、ハンスが押し倒してくれなかったらずっと突っ立っていただろう。彼は自分が伏せる前に私が呆けているのを見て取り、そうしたのだ。強化コンクリート壁を貫通、弾が部屋に突き刺さる。メイお姉様はフェブお姉様に、別のアンドロイドを見つけたことを伝えた。彼女は、今度こそ正しく数を把握した。そうして、弾丸の雨が止まったのを好機と反撃に移ろうとしたお姉様とジーンを、叫び声が押し止めた。 ──攻撃を中止! 攻撃を中止! 攻撃を中止なさって下さい、お姉様! そのアンドロイドに攻撃するのを止めて下さい! ──何だってんだ、そんなこと出来る筈がないだろ! あれは今にもこっちに撃って来てるんだぜ! メイお姉様も負けじと叫び返すがフェブお姉様は譲らなかった。今度はメイお姉様の辺りにミニガンの発砲が始まり、彼女たちは伏せた。私は注意が向けられてないのをいいことに、壁に開いた穴から敵を観察する。ミニガンを乱射する男の傍には、兵士の装束を脱ぎ捨てた、白衣の男が立っていた。そっちが本業なのだ、だからあんな不適切な振る舞いだったのか。お姉様の毒づく声にフェブお姉様の声が続く。 ──そのアンドロイドがスキャン出来ないんです! 何かを隠しているのでもなければ、スキャン防止策など取らない筈でしょう! ──ああ、もう、くそっ……くそっ! フェブ、これでもし何も無かったらどう責任取ってくれるのか、後で聞かせて貰うからな! そこまで聞けば次の行動は分かった。私とハンスは弾かれたように出口へ向かい、メイお姉様とジーンも倣った。周囲で鉛が爆発したが、どうでもいい。私たちの逃走ルートはフェブラリーお姉様に指示されたものだったが、敵は一枚上手だった。あの油断ならざる敵は、あの荷物を抱えたままで、指示されたルートに先回りしていたのだ。これは非常にまずい。フェブお姉様は新しいのを探してくれたが、それより先にメイお姉様が考えついたことがあった。 彼女は我々を先導、ある部屋までやって来て、そこの窓のカーテンを引き剥がした。向こう側に、別の建物の窓を見つける。私は嫌な予感を抱いたが、遅かった。彼女はショットガンを無造作に一発発砲して窓を割り、もう一発で向こう側の建物の窓も割った。それから球形手榴弾をこの部屋のドアのドアノブに挟み、第一安全装置であるピンを外した。 「ユージーンが最初に飛ぶ。アタシが最後だ。次にステア、ハンスはアタシの前、いいな?」 手早く順番を決める。ジーンは殆どどころか全然躊躇しなかった。恐怖など存在しないのではと思わせるほどだったが、私は知っている。彼女がとある苦手なものと遭遇した時、普段見せないような表情をたっぷり私に見せ付けてくれたものだ。私は秘密にすると誓約したが。 続いて私の番だ。ユージーンが窓から離れたのを見計らって、助走をつけ、飛び上がって窓枠に足を掛け、それを強く蹴って跳躍する。高く跳び過ぎて頭を窓枠にぶつけそうになったが、つんのめりそうになったのを除けば、無事に着地出来た。ハンスが助走しようとする。 「早く跳べ、あいつが来た」 彼を急かすメイお姉様。私は足音を聞けないが、お姉様には聞こえているのだろう。助走なしで窓枠を蹴って跳ぼうとするハンス。だが、跳ぶ直前にドアが開いてあのアンドロイドが入って来て、次に手榴弾が爆発した。足を滑らせるのは目に見えていた。私は窓に走った。彼が不安定な状態から、僅かな足場を蹴ってこちらに跳ぶ。私とユージーンがその両手を片方ずつ掴んだ。メイお姉様の方を向くと彼女は、入って来た敵と格闘戦の真っ最中だった。情勢はお姉様の不利だ。男性型アンドロイドが馬乗りになり、首を締め付けようとしている。 私とユージーンは急いでハンスを引き上げた。彼はほうほうの体で入り込んで来ると、元気なことに跳ねるようにして立ち上がった。 ──お姉様、そいつの頭を何とか押し上げて下さい! 彼女はそうした。私とハンスとジーンは銃を構えて、同時に射撃を始めた。彼の帽子が飛び、黒い目出し帽を被った感じの顔が露になる。被弾を嫌ったのか、窓から撃てない位置にお姉様を引き摺って行こうとする。だがメイお姉様はその時にはショットガンを構えていた。射撃音が一際高く響き、メイお姉様の片足を掴んでいた腕が離れたようだった。その隙を見て彼女は立ち上がり、こっちに跳んで来る。 思えば、彼がこっちに来るのも道理と言えば道理だった。同じ手を使って、彼は私たちを追撃しようとした。背負ったミニガンを器用に、窓枠にぶつからないようにしながらこちらに跳んで来る。メイお姉様は焦らなかった。ショットガンを向け、窓枠をくぐろうとした彼に、銃口を突きつける。 射撃。両足と体重移動だけで安定を保っていた彼は落ちるしかなかった。片手が窓枠の縁を掴むが、それも解決した。ユージーンが、お姉様が引き金を引く前に、銃撃したのだ。MP7の5.7ミリ弾は彼の指を引き剥がすのに要るだけの威力があった。 「あーっ!」 誰の声かと思い、びくっとする。それはさっきまで私たちがいた建物の方から聞こえていた。良かった、アンドロイドの声じゃないんだ。緊張感の無い声だった。白衣のあの男だろうか? ちらとそっちを見ると、果たしてそうだった。彼は私たちに何かを言おうとしたけど、ハンスが銃を構えようとすると敏感にそれを感じ取り、逃げてしまった。それを追いかけるのも無駄だし、今は逃げるのが目的なのだ。 メイお姉様と私たちは踵を返してこの部屋、この建物から出ることにした。が、ふと気になって、私は窓の下を覗き込んでみた。最悪だ。 ──メイお姉様、敵アンドロイドは生きてます。こちらに回り込んでいるか、もしくは待ち伏せしているかと。視覚データを転送します。 ──見たよ。ありそうな展開って奴だな。プラン変更、さっきと同じ手を使おう。くそっ、さっきからフェブラリーが通信に出ないんだ。 心配しながら、私は次の建物を探した。それは程なく見つかったが、窓を割ろうとするのをハンスが止めた。音を聞きつけられたくない。二枚目の窓は、一人目が飛び込む時に割るしかない。前回のことを考えて、私はメイお姉様が先に跳ぶことにしてくれるよう頼み込んだ。頭は彼女だ。言いようは良くないが、私やハンスなど、爪先ほどでしかない。それが正常な戦闘部隊というものだ。彼女は最初に跳んだ。窓を割って向こうに飛び込んだ後、メイお姉様が言った。 「さあ、じきに奴さんがやって来るぞ。ジーン、早くしろ」 これも頭に近い方を助けるべきという尤もな考えから生まれた順番だ。ANS副隊長の彼女が生き残った方が、我々にはありがたいのだ。残った二人、つまり私とハンスは互いに頷きあい、その部屋を出た。メイお姉様とジーンの声を背にしてだ。元より、私たちはここから、あの方法で出る気はなかった。奴が音でこっちに追いかけて来るなんて、私もハンスも考えてはいなかったって訳だ。 先だっての経験から、大男は必ずメイお姉様とジーンのいる建物に入って行こうとする筈である。その背を撃ち抜く。ハンスの突撃銃は無意味かもしれないが、私の5.7ミリなら貫通させられるだろう。彼の隠し玉? そうだ、それが残っている。でもこれも心配ない。メイお姉様には言った。彼が例えば自爆装置を積んでいたとしても、更に一回か二回、建物から別の建物へと言った具合に移動すれば、完璧に無効化出来るのだ。彼のボディのサイズから推測しただけだが、まさか核爆弾を仕込んでる訳じゃないだろう。 私が残る必要性? ……まあ、ハンスだけでやらせる訳には行かないし、爆弾がそこまで強力じゃないかもしれないし、遮蔽物に隠れれば助かるだろう。なのでそこまで気落ちはしない。最悪、止めを刺す寸前こっちも逃げ出すって手もある。そんな状況ではあっちも追っては来るまい。完璧である。私はうんうんと頷いたけれど、しかし唯一のイレギュラーが発生した。よもやというようなことではなかったが、しかし。 ──なんだよー、そっちの方がいい案じゃないか、ステア? もっと早く思いついててくれればアタシたちも無駄足せずに済んだのにさ! ──ステア、お前のその行動には敵前逃亡と受け取れる向きがある。帰ったら隊内査問会議だ、三日以内に係付士官のところに出頭しろ。 メイお姉様の冗談を言う時の声と、彼女の人柄を知らぬ者には横柄極まりない印象を与えるだろう、ユージーンの声。彼女たちと来たら、分かってたに違いないのだ。だって私たちの考えは伝えたし。でも彼女たちはこっちに来た。戻って下さいと頼んでも無駄なのだろう。であるなら、私はこう考えることにする。音であの建物に引き寄せて、我々はその実移動していない、という引っ掛けだ。掛かってくれればいいが。 足音を立てて階段を駆け下り、正面玄関に出る。付近を見回す。いない。ハンドシグナルでジーンを呼んで、一緒に警戒。よし、いない。そう思った私に、ミニガンが発砲直前に回転する時の、耳障りな音が聞こえた。私は戦友と顔を見合わせる前に、建物の中に逃げ込んだ。メイお姉様もハンスもそれで分かった。私たちは裏口から逃げようと考えた、そんなのがあれば。 我々はそれを見つけられなかったのか、それとも存在しなかったのか。しかしまあ、一階の部屋の窓から出られた。そう時間は掛からなかったと思うのだが、敵はすぐに我々を、無痛銃の射程圏内に収めた。気付いたことだが、あいつの火器管制ソフトは随分優秀のようだ。遮蔽物がないなら、撃たれる前に見つけた方が良さそうだった。私たちは距離を取って建物の影に隠れ、巨体に似合うミニガンを抱えてやって来るあの男に撃ちまくった。彼はそれを些少な問題にもせず、ずかずかと進んで来ると、背中にミニガンを戻した。戦意を失ったとは思えないが、無防備なのはいい。不気味さを除けば、命の危険も少なくなる。 周りを検める彼を見て、メイお姉様はこの場から離れることを決めた。そうして、私たちが建物の影から道に走り出たその途端、私たちの眼前に何かが突き立った。それが何なのかはすぐ分かった。ジュースの自動販売機だ。壊れた自動販売機から、炭酸飲料が噴出していた。ハンスは直撃を受けるところだったが、幸いにして肩を少し濡らしただけで済んだ。 ミニガンを背負ったまま、奴が走り出す。重さのせいか、スピード型アンドロイドの速度には達さないが、しかしあれを背負ってこれか。ということはだ、ミニガンやその他持っているだろう多種多様な装備を最低限のものまで切り詰めれば、すばしっこくも走り回れるのだ。私たちは必死で走った。ハンスなど気が気でなかっただろう。あのアンドロイドがその気になって武器を捨てれば、最初に追いつかれる。 またあいつが自販機を抱え上げた。メイお姉様が、来るぞ! と叫び、私たちは散開する。直後、ユージーンの一メートル右に着弾した。走りながら、メイお姉様はエイプリルお姉様に連絡しようとした。ジュライお姉様に連絡せず彼女へと連絡したのは、この新しい敵の厄介な特徴を含めた様々なことを、総指揮官こそ最初に知るべきだと思ったからだろうが、そんなことを深く考える暇は私にはなかった。だがメイお姉様の通信よりも早く、そのエイプリルお姉様からの通信がこちらに届いた。それは声を嗄らさんばかりの必死の声だった。 ──救援要請! 救援要請! ──エイプリルッ、こっちは手一杯だッ! 変なッ……変なオッサンにガトリングで釘付けだ! ──こちらも例の七人組に追われてますわ! うぇぇ。何処も彼処も交戦中か! * * * 部隊を幾つかに分けたのは失敗だったと、エイプリルは認めた。ジュライとエイプリルが珍しく意見を一致させたのにも関わらず、だ。 「梱包爆薬は後何個ありますの、オーガスト?」 「三つ! じゃない、今一つ投げたから二つ!」 「頼み少なやという訳ですのね、さあ、走りなさい!」 マダム・マルチアーノの遺品の一つである拳銃を向けて、フルオートで発砲。金髪頭たちが物陰に隠れ、その弾丸をやり過ごそうとする。弾が切れるまでは三秒掛からない。切れるとすぐに、ルガーを撃つ。オーガストが次の遮蔽物に到着したのを確認して、身を翻した。入れ違いに転がって来る手榴弾。七曜姉妹は、それを走って越えて行く。爆発は彼女たちに大した傷も与えない。これは予想外だった。オーガストは咄嗟の判断で、シルクハットを脱いで敵に向けた。エイプリルはオーガストの横をすり抜けるように跳んだ。 その次の瞬間、シルクハットの中からボールベアリング弾が飛び出した。この七曜姉妹の誰も想像しなかった攻撃は、彼女らにそれなりの打撃を与えた。加えてエイプリルとオーガストにとり運の良かったことは、ヴェヌスが目に一発を受け、ピンの抜けた手榴弾を取り落としたことだった。ほぼ一本道の通路を走る。ここを抜ければ広いところに出られる。広いところでならば、動きも制限されずに済む。つまり、逃げられる。 「お姉様!」 姉の手を引っ張って、立たせる。七曜姉妹たちは近くの遮蔽物に隠れようと動いていた。エイプリルが立った途端爆発が起きたけれど、そこまで危険なレベルでもなかった。エイプリルたちは再び走り出し、何とか他の姉妹たちと合流しようとし始めた。彼女としては、近くにいることになっているジューン・ジュライの二人と合流したかったが、エイプリルの呼び出しに二人の内どちらも答えなかった。仕方なく彼女は全プラント班に連絡したが、応答したのはニグリティアとその連れ添い二人だけだった為、エイプリルは大いに失望した。その三人は、捜索担当区域がエイプリルたちから最も離れていたのである。その上、彼女がジューンとジュライの方に近づいていたので、余計に三人から離れてしまっていた。十二姉妹のリーダーは、浅はかな考えだったことを痛感した。二人だけでは少な過ぎだったのだ。せめて四人で行動するべきだった。でも、今更そんなことをああだこうだと言っても、どうにもならないことも分かり切ったことだった。 ──オーガスト、お願いしたいことがあるの。聞いてくれますわね。 走りながら、通信で妹に声を掛ける。妹も走りながら問い返す。エイプリルは言うのに数秒逡巡したが、結局それを口にすると決めた。 ──梱包爆薬を一つ貰いたいんですの。いいかしら? 妹は快諾し、残った梱包爆薬の一つを姉に渡した。彼女はそれを懐に突っ込み、走るのを再開した。エイプリルは最悪の事態に陥った際、オーガストを逃して七曜姉妹を道連れにするつもりだった。勿論、この姉想いで、エイプリルに強い憧憬の念を抱いているオーガストが、そのような用途に使われると分かっていて、エイプリルに爆薬を渡す訳がない。だから姉は敢えて、必要な理由を教えずに爆薬を求めた。 やれることをやろう。長姉は悲愴な決意を心に抱いた。手始めに、再度答えなかった姉妹たちに通信を試みた。まずはメイへ言葉を送る。 ──救援要請! 救援要請! すると、さっきとは違って彼女は答えを返したが、エイプリルは余計に失望感を抱いただけだった。 ──エイプリルッ、こっちは手一杯だッ! 変なッ……変なオッサンにガトリングで釘付けだ! 全く完全に未確認の敵。その余裕が長姉にあれば、げっそりした顔を見せたことだろう。エイプリルは率直に、言いたいことを言った。 ──こちらも例の七人組に追われてますわ! それっきりだった。エイプリルは親友の方も辛い状況になっているのだと知って、嫌な気持ちになる。この研究施設は余りにも広大だ。分断された時、何とか兵士たちと進撃出来るようにした方が良かった。オーガストが後ろ手に卵型手榴弾を投げる。七曜姉妹は回避する。モーゼルとルガーに再装填し、見もせずに後方の敵へ射撃。これで数メートルの彼我距離を取ったが、さして安心出来る距離ではない。現に、七曜姉妹の幾人かはその距離を早くも詰めようとしていた。オーガストの走るスピードがどうしても遅くなってしまうので、それに合わせるエイプリルも自然遅くなってしまうのだ。妹はそれを正しく把握しており、自分のせいで姉まで危険に曝すことに対して、強い拒否感と回避への義務感を覚えた。 彼女は賭けに出ることにした。まず幾つかの手榴弾を同時に投げて、彼女たちとの距離を広げる。ここで不可解なことが起こった。七曜姉妹が姿を消したのだ。何らかの理由で諦めたかと思ったが、単純に安堵するのは危機を招く元だ。エイプリルは逃げるのに夢中で、変化には気付いていないようだった。オーガストが教えて、初めて姉はそのことを知ったのである。己の余裕の無さに呆れ、長姉は情けなさを感じた。心中嘆きながら曲がり角を見つけ、曲がろうとして足が止まる。四人、その先にいた。 * * * 私の部下には、火が好きな者がいる。性別は女だ。彼女が言うには、ちろちろと炎の先が空気を舐めるように揺れる、その艶かしさには、ある種の人を虜にする何かが絶対に存在するのだという。私にはそれが何のことだかさっぱり分からない。炎があの形に整えられるのは、熱された空気の移動が理由だったような気がするが、私はあの造形に対し何の感想も抱かない。炎の美そのものを否定するのではないが、個人の考えはその通りなのだ。まして整頓されてもない無造作な火炎など、何をか言わんやだ。それならば私はむしろ嫌う。つまり、だ。 「三人共伏せなさいッ!」 ……つまり、私はこの女の攻撃が嫌いだった。帽子。場に似合わない服。アンドロイドの可能性高だ。サイボーグという可能性もあるが、オクトたちのMP5を受けて全然ダメージが通っていないようだから、サイボーグであるとは考え難い。サイボーグは脆い作りなのだ。 迅速に行動した私たちの頭上を、熱く滾った死の舌先が舐めゆく。酸素が広範囲に渡り奪われ、瞬間その部分は死の世界に変貌するのだ。この頑丈なコンテナが、二倍の高さだったら良かったのだが。かつては物資を入れられていただろう鋼鉄の箱は、今や強固な盾だった。 私たちが敵に遭遇したのが、というか、私たちが敵に発見されたのが、というか、どちらが正しいのかは分からないのだけれども、交戦を始めた場所がここ、物資搬送室で良かったと思う。ここに送られて来た貨物が生産施設に回されると考え、やって来てみたのだが、生産施設への道どころか、もっと大変なものを見つけてしまった。私たちは今、その運の悪さの代償を支払っている真っ最中なのである。 「熱いよー」 「帰りたいー」 「つまんないー!」 忌々しさを視線に込めて、カバーから顔を出して彼女の隠れた辺りを見る。彼女の持つ鞄は鞄ではなかった。火炎放射器だったのだ。そうとは知らず彼女を襲った際、私は酷い目にあった。スカートを焼かれたのである。今の私のスカートは、本来の半分までしかない。 私が引率を任されたオクト、ノヴェ、ディッセは、交戦を始めてからというもの文句たらたらだ。敵は強い。しかも熱攻撃系オンリーだ。グレネードランチャーは着弾と同時に揮発性燃料に着火して一面にばら撒くし、鞄はさっきの通り、火炎放射器になっていると来ている。 何とか近づいて無力化したいが、火炎放射器がネックだ。あれは炎の壁を作って防御的兵装としても扱える。考えてないようで考えてる。音で、彼女がグレネードランチャーの装填を始めたことを知る。打って出るには時期尚早。あの鞄を無効化してからでなくてはならない。代わりに、ジュライに伝えておくことにした。未確認の敵の情報は、出来るだけ早く、正確に、詳しく知らせる必要がある。勝利の為に。 ──こちらジャニアリー、アンノウンと交戦中! ──そちらもですか。情報を、出来る限り詳細にお願いします。 『そちらも』という言葉に引っ掛かったが、私は情報伝達を優先した。これまであの女が使った武器を思い出す。オクトたちが攻撃を、これ以上の防御を厭って反撃開始を求めて来るが、それは黙らせた。少なくとも今は、被害を出してまで勝つことを要する状況ではない。 ──武装は火炎放射器にナパームグレネード、十中八九アンドロイドですわ! ……あっ、こら、待ちなさい! 声でなく通信に言葉を出してしまった。三人は命令を無視して飛び出したのだ。長い青髪の女が、その動きに気付く。彼女は躊躇なく、左手に持った装填済みのランチャーを手放した。スリングで垂れ下がる。右手の鞄の放射口を向け、持ち手の上に左手を添え、手を開く。私はその時、この女がアンドロイドであることを確信した。皮膚が剥がれる。銃口が現れる。八つの筒。八方向に。彼女は指鉄砲を作る。 ──訂正! 武器内臓型アンドロイド! 「戻りなさい、オクト、ノヴェ、ディッセ!」 「さあ! もーっとお熱く行きましょう!」 女は楽しそうに言った。指鉄砲を作ったらそうなるようにしてあったのだろう。八つの銃口が前を向く。三人がはっとして止まる。鞄から炎が噴出。発砲音。右に左に跳び、近くのコンテナや機材の影に隠れる。だがノヴェがのた打ち回っていた──火炎放射器の燃料が服に付いてしまったのだ。ここにこうして留まっている訳には行かなかった。私が指揮官で、統率者なのであるからには、私は彼女を必ず助けなければならない! P90を連射、乱射する。5.7ミリは脅威なのか、左腕の内臓銃を収納しながら彼女は引っ込んだ。布は無い。脱ぐのも時間が掛かる。水も無いし、あったとしても燃料に水を掛けるのは逆効果だ。私に出来るのは、奪酸素式消火法しかなかった。 私はノヴェを力一杯に抱き締めた。熱い! 感覚機能を遮断して、熱さを感じないようにする。ノヴェは突然のことにパニックになり、そう出来なかったのだ。 ──オクト、ディッセ、援護射撃なさい。ノヴェのことは心配しないでも大丈夫ですわ。 言葉だけは冷静ぶってそう言っておく。指揮官は落ち着いているように見えなければいけない。私までが慌てていると思われたならば、我々の連携は崩壊してしまう。ノヴェは熱に痛みを覚え、抑えた呻きを上げながら私に謝って来たが、責める気はなかった。彼女を責めて何になる? それよりも、彼女に痛覚機能の遮断を行わせ、苦しみから解放する方が創造的な行動である。腰にぶら下げていた手榴弾を掴んで投げた。爆発と共に楽しげな悲鳴が聞こえて来る。ああ、徒に私の苛々を増しただけだったか。あの女にはニグリティアに通じる何かがあるな。 ──ジャニアリー……。 ジュライの声。深刻な声だ。私は無い心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。彼女のこんな声を聞いたことが過去にあったろうか? ──悪いですが、こちらも遅くなりそうですわ……。 それっきりだった。無線が封鎖されて、それっきり、ジュライと私との繋がりは断ち切られた。慌てて色々とやってみるが、無駄だった。途中、少し前にエイプリルの通信が入って来ていたのに気付いたが、私はそれを重大なものだろうとは考えず、後回しにすることにして、ジュライと一緒に行動しているジューンに繋ごうと試みた。でも、ジュライと同じように、彼女にも繋がらなかった。私は焦燥を感じた。 * * * 落ちた時、人は声を上げる。犬はどうか? 吠えるかもしれない。牛は? 豚は? さあ、それぞれの声を出すかもしれない。但し猫は静かだ。静かに回転し、優雅に着地する。私は知っていることだが、ジューンはそれを感嘆と尊敬の眼差しですら見ていた。だが、彼女が猫のように着地出来たかは、私の知るところではない。知りたかったが、知ることも許されない逼迫した状況だったのだ。通信? なるほど、後ほんの少しでも余念を持つだけのことが出来れば、それこそ取れる唯一つの手段だ。それも出来なかったのである。 私は初めて、自分より強いやもしれぬと感じられる相手と相対し、剣戟を交わし、殴打打擲撃蹴の限りを共に尽くし合おうとしていた。朱色の軌跡が、私の首を打とうと振るわれる。受けてかわすか、いや、避けなければ次の攻撃を捌けない。なら避ける。私は身を反らし、首の皮一枚に触れるか触れないかで回避した。身を反らす勢いを使って、右足で腹を蹴り上げようとする。これは失敗だった。敵は私のふくらはぎを掴んだ。このまま放っておけば槍を使って叩き折られることは目に見えていたので、左足で跳び、相手の顔を蹴りつけて、その力で拘束を抜ける。丁度、バック転したような感じだ。槍と同じような色の髪を持った、昔からどうもドリルとしか形容出来ない、ここ暫く見ていなかった髪形の敵は、速攻をせず顔を拭って一段落をつけた。攻めるのに疲れたのではなく、これも一つの攻撃なのだ。精神的な、心情的な攻撃なのである。 私は彼女の動向を探っている。イニシアチブなんて、あったものではない。情けないものだった。刀を持ち直す。ジューンがいないのが痛い。彼女の無事が心配だ。私が気付かなかったから。この敵、この女に、ジューンは落とされた。何処でかとか、その時にどんな状況だったのかは詳述しない。簡単に、ジューンが高いところから蹴り落とされたのだというのに留める。 女が槍を両手で構えた。来る、と予測する。これはその通りだろう。だから私は踏み込んだ。素直に相手の攻撃を待たなければならない、という道理はあるまい。実戦的な訓練の賜物なのだろう、彼女の動きは正しかったが、固さがあった。通常、このような状況において、行うべきは迅速な攻撃か、回避ないしその両方である。相手がこちらに飛び掛かって来たとしても、その攻撃が届く前に、こちらの刃が相手を捕らえていればいい。それが無理そうだったなら避けることを最優先し、行動の余地があれば空振った相手に己の力を叩きつける。 彼女は最後の行為、そして追加するなら最悪の行為を選択した。過剰な闘争心がもたらす過ちの最もありがちな例という奴で、彼女は、仕掛けたからには何としても相手に一撃入れなければ満足しない性質だったのだろう。果てに彼女は不自然な姿勢からの一撃を放った。私の刀はそれを難なく受け止め、押し返すことを可能とした。肘を曲げて、顎を打とうと試みるも、首を傾けてかわされる。その間に敵は体勢を立て直し、片手で槍を突き出した。 突き技は一番対処しにくい技だ。刀でもそうなのだが、刀と違って保持する点、つまり掴む場所が広い槍では、より突きの速度も精度も上がる。今度のは片手で突き出した攻撃だったので、捌くのも難しいことはなかったが、両手で突き出されたこの槍を手傷なしに捌けるかどうかとなれば、完璧な自信は無い。次の攻撃かと思ったが、何か言おうとしたので、私はそれを聞くことなく斬りかかった。すんでのところでそれを受け止め、唇を舐める女。槍の腹で受け、今も押し合いが続いている。 「勝利への飽くなき渇望、と言ったところですか。いえ、あなたを責めるつも」 膝が襲って来る。言葉に僅かなりとも気を取られていた私は、防げなかった。槍の尾でしたたかに横顔を打ち据えられる。 刀が落ちた。時折勘違いされるのだが、私にとってこの刀は重要ではない。切れ味がいいものを選んでいるのは確かだが、贈られたものではないし、愛着はあるにはあるが、これでなければ戦えない、などとセンチメンタルなことを言ったことはただの一回もない。落とした? そうか。 拳を握って、女の顔を殴りつける。その手で、彼女が自由に槍を振るえないように、こちらからも槍の柄を掴む。殴打に力が緩んでいた。力強く押して、柄で彼女の首を殴ろうとする。でも、力を取り戻すのは早かった。動きが止まり、力が拮抗する。こうなれば諦めは早い。 肩を叩き付けて少しよろめかせておいて、後方に飛び退りつつ、刀を拾う。不利だった。攻めているのは相変わらずあっちで、私の方はあくまで勝利からは遠ざけられている。焦慮を感じて、歯軋りをする。聞こえないようにした気だったが、彼女には聞こえていたようだ。 間合いに踏み込まれる。刀を振るう。刺打突繚乱。上。下。左。右。それら四つの幾つかを組み合わせた方向から、あらゆる方向から。無数の剣戟音。私の薄い防御を容赦なく強打する、質量を伴った朱色の暴風。柄での打撲を目的とした横薙ぎ。それを払う。払う。払う。耳障りな金属同士が、擦れ、ぶつかり合う音。穂先と柄の攻撃の合間に、時にはそれらと共に訪れる、拳と脚の技。その速度、正に神速。 凌ぐ。次の反撃の時まで。一撃ごとに賭けるのだ。潔く認めよう。この女は強い。得物の相性のことも相まって、私を圧倒している。 突き。左に捌く。尾部による打撃。屈んで回避。上から頭を貫こうとする穂先。後転で避ける。振り下ろされた槍を刀身で受け止める。そのまま立ち上がりながら跳ね返そうとして、思いがけない圧力の大きさにバランスを崩しそうになる。左手が泳ぐ。敵がそれを見る。まずい。槍から片手が離れ、私の左手首を掴もうとした。そのまま放っておいたら、きっと掴むだろう。もし掴まれて引かれたなら、すぐ私は貫かれ、死ぬだろうことに違いないと思う。だが私は死にたくはなかった。刀を振るう。左肩からの感覚が瞬時に切断されるが、完璧に切り離せてはいなかった。そこで、私は精一杯腕を引いた。既に左手首を掴まれていたので、ほんの数本残った筋組織であるとか、皮膚であるとかが千切れる。 私は痛みに顔をしかめた。ほう、という溜息を吐いて、敵は掴んだ左腕を見やり、それを床に投げ落とす。私は目を開いた。誰でも、自分の体の一部だったものをぞんざいに扱われれば良い気はしないだろう。私もそうだっただけのことだ。 ──ジャニアリー……悪いですが、こちらも遅くなりそうですわ……。 渾身の強がりで、言わなくとも良い断りを言っておく。それでほんの少々、心は静まり、冷徹な闘争を繰り広げる心積もりが整えられた。 「咄嗟に自身の腕を捨て、死を回避しましたか……良い判断ですね。思いついても、実行は難しいものなのですが」 彼女は言い、それから私の目の辺りに視線を縫い付けて、せせら笑うような態度で続けた。 「そうです。眼は良く開いた方がいいですよ?」 * * * ──尾行されてますわね。一、二、三、四、五、六、七。宇宙港で叩っ殺……じゃない、『対応』したアンドロイドの同類かしら、アル? ──七曜姉妹ですか。ええ、全く同形に見えますが、けど、アンドロイドに一々独自の顔を作るほどギルドは優しくないとも思いますね。 ──何にせよ気に食わないな。アルヴィス、新しい武器に関する訓練を覚えているな? UMPはいいとして、もう片方には気を付けろ。 彼女は頷いた。背負ったパンツァーファウストⅢが揺れる。バックブラストが小さいこの良く出来た武器はしかし、危険な代物だった。後方炎が室内発射時に問題にならないのはいいが、アンドロイド用にスプラッシュダメージ強化を弾頭に行った為、着弾時の爆風が増大、それに伴う破片の散乱も発生。変なところで撃つと、自分や味方にまで傷をつけかねない装備なのだ。可能なら、使って欲しくはない。けれども、UMPやMP7だけで戦うのも難しい話だ。 ニグリティアにはその金剛力がある。彼女はそう言われるのを好まないのだが、バレットや、より重量のある武器を小枝みたいに振り回すのだ、否定は出来ないだろう。素手であっても、敵アンドロイドの脅威になる。私は小火器だけだが、狙撃も出来るし、近~中距離における戦闘にも、それなりに秀でていると自負している。一対多数なら退いてから、狙撃や罠で一人ずつ数を減らしたり分散させたりして倒せるし、最悪の場合に陥っても、強行突破が可能だ。身のこなしにも自信がある。 だがアルヴィスにはそのどれも無かった。戦闘用ボディに乗り換えたので、体が小さいという弾丸相手にこれ以上ない有利な点も消え、ニグリティアのような力も、私のような俊敏さも無い。代わりに彼女にあるのが、戦場での立ち回りの上手さだ。彼女はクーロンでさえ、大した傷を負わなかった。直撃弾に至っては、ニグリティアの近く(要は弾の集中するところ)にいたにも関わらず一弾も受けなかった。そのことを鑑みると、彼女は戦場の空気と摂理を、ある面において私やニグリティアよりも理解しているのだ。 何処にいれば安全なのか、相手の頭を押さえるのに何処に撃てばいいのか、私たちは訓練やデータの書き込みによって学ぶ。彼女はそれを学ぶことなく知ったのだ。ならば、彼女が手中に収めたく思う残りのものは、敵を屠ることの出来る武器だけだった。考慮の末、彼女は肩に背負ったそれを選んだ。ニグリティアが選んだのなら私は反対しただろうが、アルヴィスなら心配はそこまでない。彼女は考えなしに撃つような真似はしない。 ──さっきから顔が痒くて痒くて仕方ないな。それもこれも、あそこで私に照準を合わせている狙撃手もどきのせいだ。そろそろやるか。 ──意外ですわね、あなたから交戦を始めようとするなんて。そんなにレティクルの中に捉えられているのが気に入りませんの? ──誰だって十字線の交錯点に顔を置かれればイラっとするものですよ、お姉様。ま、神経の図太いあなたは別かもしれませんが、ねえ? 軽口を叩きながら、アルヴィスが肩からパンツァーファウストⅢを下ろして、逆向きに構えた。一見、持ち易いようにしただけに見える。無論、背後に付き纏っている小蠅を撃砕することを目的としているのだ。ニグリティアも武器を握る手に力を込めている。私も身構えた。かちり、と音がする。トリガーに掛けたアルヴィスの指が、発砲寸前まで引かれたことを示す音だ。直後、震動が走った。 小銃を構える。狙うは一点。眼孔部。そうする為に、演技が苦手な私も気付かない振りをして、スコープをきらきらと輝かせる甘ったれた新米雑兵に、内心不快感を抱きながら近づいていたのだ。装甲された皮膚を疲弊させ、突き破るというのでもなければ、眼孔を狙う他に手は殆どない。 狙いは外れなかった。新米にしてはバリケードに上手く隠れていたのは認めるが、スコープが輝いていては話にならない。彼女は死んだ。また、アルヴィスによって、後ろから付いて来ていた二人も吹き飛ばされた。残りの四人が急襲して来るが、奇襲にはなっていない。ニグリティアは馬鹿らしいとばかりに鼻を鳴らして、近くにいた一人を素手で殴った。加減したのか、壁に激突したが、生きてはいる。 ──興醒めですわね。こんなことをしていたら生きるのも嫌になって自殺してしまいそ……お姉様から入電ですわ! ──うるさいので黙って下さい。 アルヴィスが即座に黙らせてくれた。私たちは戦いつつ、エイプリルからの救援要請に耳を澄ませた。ニグリティアは己の世界に没入し、銃弾が周囲を飛び交っていても気にしない風だった。一度、彼女に、私の銃弾を受けた七曜姉妹の一人がとんと当たったけれども、彼女にしては良心的な処置、殴打で敵を許したのである。情けない姉の言葉を聞いてすら、ニグリティアの姉に対する崇拝は変わらなかった。こんなところで遊んでないで行かなくてはなりませんわ、だの何だのと残し、結局アルヴィスと私にこの場を任せて行ってしまったのだ。 残された私たちは、彼女のどうしようもない性格に嫌になり、むかっ腹が立つのを敵を撃ったり殴ったりすることで、晴らすことにした。だらだら遮蔽物に隠れて銃撃戦を行う間に、アルヴィスの一撃が敵の胸を射抜いて倒した。もがいているが、あれは最早立ち上がれまい。 ──見事だ、これで突っ込めるようになった。アルヴィス、残り三人だ。始末するから、援護してくれ。早くあの馬鹿と合流しないとな。 ──はい、同感ですね。あの人と来たら、本当にまあ飽きもせずお姉様お姉様と、自身もその姉であることを考えて欲しいものですよ。 ──なんだ、嫉妬か? 小さくても女は女か……いや、ニグリティアも女だったな? だが十二姉妹も女だし、私は理解あるつもりだぞ。 いつからそんな冗談を言うようになったんでしたかね、とアルヴィスは言った。私は、随分前からだ、と嘯いておいて、遮蔽物を飛び出す。数の利を信じていたのか、二つの遮蔽物に二人と一人に分かれて隠れていた彼女たちは、私たちが押さえ付けられていると誤解していた。そんなところに私が突っ込んだのだ。それも、満腔の殺意を持って、ナイフと拳銃を持って、それを実現するに十二分の技量を持って。 突撃銃の発砲をジグザグ走行で回避し、二人の内の一人を捕捉。すると私は背後に一人の敵を許す。これは良くない。優先的に始末だ。捕捉した一人を蹴り飛ばして奥のもう一人に当てつつ、体を回転させ、腕を伸ばして背後の一人に発砲。仕留められなかったけれども、彼女の銃のバレルは壊せた。味方が体にぶち当たった不運な敵の喉にナイフを突き立てる。神経系統を破壊、無力化。ナイフは抜かず、無力化した敵の握っていた銃を取って、私に組み付こうとしていた、突撃銃を壊されて怒り心頭らしい女を撃つ。彼女は身を庇ったが、こんな時は受けるのでなく避けなければならない。さもなくば死ぬ。彼女はそしてそうなった。立ち上がろうとする、最初に蹴られた女。 私は彼女の肩を押して床に倒し、ナイフを握った左手で首を締め、右手の拳銃を目に突きつけて、発砲した。がくん、と仰け反って死ぬ。それから無力化した敵にも一発と、アルヴィスが仕留めた一人が微動していたので、念の為に、人工脳に突撃銃で止めを刺しておいた。さて、それではニグリティアを追いかけるとしよう。彼女が何処にいるかはどうせ想像がつくから、合流までに時間は掛からないだろう。 * * * 「通信する余裕もないなんて、これまであったかしら」 「割とあったわよ」 ミニミの一連射が、銃を撃って来る装甲服姿の敵兵を舐める。貫通された者は倒れ、運良く弾いた者は、倒されるまで撃ち続けるのだ。 リロード! フェブラリーの声がそう響いた。敵から奪った銃を使っている彼女は、私に比べて頻繁に再装填する。三十発ごとだ。一人撃つ者が減ったことで、敵が優位を奪い取ろうと攻撃の手を強める。私は虎の子の手榴弾を取って、投げつけた。これで後、二個か。手榴弾はフェブの再装填を助けるのに大いに役立ってくれた。生き返った突撃銃を構え、彼女は分八百発の高レートで敵に弾を送り込む。嬉しいことに、弾薬に心配はなかった。私たちが今こうして立て篭もっているこの部屋に到るまでに、私たちは何人もの敵兵を殺害した。で、私とフェブは彼らが必要としないものを剥ぎ取ることを忘れなかった為、弾はたっぷりあるのだ。手榴弾もそうなら良かったのだが、彼らの身につけたそれは余りに少なかった。 私のミニミも弾切れになる。すぐにブローニング拳銃(これは自分の)を構え、発砲する。強装弾を使っているので、九ミリでも装甲服を貫通する。敵も彼らの経験から知っているので、拳銃だからと馬鹿にはしていられないだろう。左手の拳銃が十四発の弾丸を撃ち終わるまでに、右手だけでミニミの再装填行程の半分を終える。撃ち終わった拳銃は床に置いておいて、私も敵から奪った突撃銃を発砲する。普段これを撃つ機会がある時は、この銃の全長について私は不満を持つが、今ばかりはありがたい。この程度なら片手で撃てるのだ。三十発を撃ち切るまでには、ミニミの再装填は終わっている。 何とか突っ込んで来ようとした兵士に、四発の機関銃弾をくれてやった。彼はこっちに走って来ながら倒れたので、私たちの立て篭もったこの部屋、兵士食堂と思われる場所の、私たちが身を隠しているボックス席の前に身を横たえた。私は彼のことをそれで死んだものと思っていたのだけれど、違ったようだった。彼は最期の力を振り絞って手榴弾のピンを抜き、それをボックス席の中に投げ込んでから絶命したのである。私はその刹那は慌てたが、訓練とこれまでの経験は何より正しい解決方法を行わせてくれた。 丸い手榴弾を掴み、敵の方に投げつける。がっかりなことであったが、それは爆発しなかった。不発だったのだ。なんとお粗末な結果だろうか、折角、文字通りの死力を出し切って投擲した手榴弾だったのに。爆発するかもしれないと思い一発撃ち込んでみたが、ばしりと音を立てて外殻が炸裂しただけで、爆発までは起きなかった。拍子抜けだ。 「それにしても、良くありませんわね」 「何が」 いつも通りの調子で返すが、私は内心喜んでいた。敵兵に包囲され、追い詰められている為か、フェブはかつての自分を取り戻している。どうせただのギルド兵など幾ら来ても怖い相手ではないので、彼女の気が紛れるならば、ずっと戦闘を続けていてもいいくらいだった。ロマノフの兵士が粘り強いのは確かなことだが、室内戦の錬度では十二姉妹兵に劣るところがある。また、彼らは数が多いのも一つの利点だろうが、室内ではその利点が死ぬのだ。 「私の任務はセプの発見ですわ。こんなところで銃を持って戦っているのは、本来の目的からすれば間違っていますのよ?」 「けど戦わないとやられる。状況を変えたいなら、ここは何とか凌いで、誰かに連絡して救援を待つか、そうでもなければ」 ミニミを長く連射した。フェブラリーが轟音に身を強張らせる。私には心地よい震動と騒音でも、フェブにはそうではないということだ。 「敵の頭を抑えて逃げるしかない。やるとすれば弾薬がある今の間。北側にある調理室を通って行けば、ジャニアリーたちと合流出来る」 私は努めて個人的感情を出さないようにしたつもりだ。フェブは撃ちながら考えた後、手榴弾二つを一気に使って敵を一時的に鎮圧し、調理室に逃げ込み、そのまま脱兎の如く逃げ出すという計画を提案した。それを承諾し、拳銃と突撃銃に再装填し、腰や背にそれを持つ。弾もあるだけ入るだけ、ポーチや懐に突っ込んだ。フェブに一つ手榴弾を渡して、タイミングを合わせ、身を乗り出して敵の方に投げる。 フェブも私も、爆発を待たなかった。敵が怯んだ隙にボックス席を飛び出し、調理室に走り、同時にカウンターを滑るように飛び越えた。弾丸が追い掛けて来て、近くのフライパンやその他の調理器具に命中する。私は穴ぼこのフライパンを掴んで、地面と水平にして投げた。思いの外コントロールは上手く行き、敵兵の頭に当たって、彼は倒れた。動かないところを見ると首の骨が折れているのではなかろうか。 「フェブ、二人一緒に行くと追撃される。先に行って、私が援護するから」 冗談でしょ、と彼女は返したが、私は別に冗談を言ってはいなかった。フェブは何とか私と一緒に行きたかったみたいだが、無理なのだ。逃げようと思うなら、ここは敢えて誰かが留まり、敵に、迂闊に追撃すると痛い目に遭うと知らせなければならない。それは誰の役目か? 私だ。私の役目なのだ。フェブは戦闘に向かないし、軽機関銃の制圧力はこの任務に打ってつけだ。何とか彼女を説得し、先に行かせた。 中腰になって、ミニミを障害物越しに撃つ。隠れたままで突き出して撃っているので当たっているかどうかは分からないが、彼らの頭を、不用意に出させないようにはしているだろう。銃を引き戻し、調理室に何かないかざっと調べる。ガス管、オーブントースター、グラス。冷蔵・冷凍庫もあった。冷凍庫から氷を出し、グラスにたっぷり入れる。そこに水も入れた。氷がばちばちと音を出す。まずは準備良し。カウンターの方を確認し、シャッターを見つける。営業時間外はこれを下ろして、盗み食いを阻止する、という訳で、必需の装備である。 近くの壁にあった開閉装置を使ってそれを降下させ、銃弾を防ぐ急場の盾にする。突撃銃の弾丸は貫通していない様子だ。ガス管を開き、さあ逃げようとして、私は一つのことに気付いた。私とフェブは、カウンターを乗り越えて入って来た。そしてフェブは通用口の一つを通って出て行った。ジャニアリーに合流出来る道を選んだのだ。では、今私が目にしているもう一つのドアは何なのだ? 更に言うなら、その向こうからやって来るのは敵ではないのか? 私は銃を構えたが、ガスのことを考えると発砲は出来なかった。舌打ちして、逃げる。次の寸時に、彼らは愚かにも万能鍵でドアを開放した──銃弾と呼ばれる万能鍵で。大きな爆風に吹き飛ばされて、壁に叩きつけられる。くっ、と声が漏れた。背骨が痛むが、これで敵も追撃して来ないだろう。通用口のドアを閉め、頭を振りながら立ち上がり、親友を追う。氷水入りのグラスのことを思い出す。私はあれをオーブントースターの中に入れて時限起爆装置にする気だったのだが……向こうから足音だ。 * * * ジャニアリーに合流した時、彼女は遭遇した新しい敵、青髪の放火魔の居場所を探るように命じただけで、後は一切何も言わなかった。マーチと一緒にいた私が、どのような経緯でここにいるのかも、マーチがどうなったのかも問わなかった。面倒だったのだろうと思う。居場所を教えると彼女はそこに撃ち始めたが、私はそうする前に相方に連絡したかった。後に残して来てしまったのだ、それも親友を。その身を案じずにはいられない。 彼女の周波数に呼び掛ける。四度目に彼女は億劫そうに返事をしたが、私は彼女の欺瞞を見抜いた。詳しく聞き出す前にジャニアリーに見咎められ、後でと言って通信を切る。銃を構えようとして、突き飛ばされた。文句は言わない。自分のいたところに付着している燃え盛る燃料を見れば、乱暴さに苛立ちを覚えたとしても、誰だって文句を言う気にはならないだろう。こここそ炎の嫌な点で、その前では遮蔽物は私たちを遮蔽してくれないのだ。逃れるには動き回るのが最適な手段である。 私はそうした。個人的な心情からジャニアリーの傍にはいたくなかったし、纏まっていると炎でやられる確率も上がる。発砲を続けて制圧し、移動だ。接近が叶えば勝機はあるのだが、その前に私たちは炎の壁を掻い潜らなければならない。そんな手段があるだろうか? 考え込む。そうして、私はコンテナに目を付けた。ジャニアリーが隠れているような小さなものではなくて、人が立って入れるような大きさの奴だ。 ジャニアリーに先に話をつけてから、オクトとディッセの力を借りる。直接頼めれば早いのだが、この場の指揮官はジャニアリーなので、私がそうするのは越権行為に当たり、無意味な軋轢を生むことになる。ただでさえ、現時点で私と彼女は反目しあっているというのに、そこに喧嘩の種を蒔くこともないだろう。コンテナの中に入り、蓋を閉める。外側の錠前は閉じていない。でないと中の私が出られない。 オクトとディッセ、それに火傷をおして出て来たノヴェが、そのコンテナを押す。コンテナは私に炎の壁を突破させてくれ、そうすれば、あの女は彼女の持つ殆どの武器を無力化される。次は一方的な攻撃になるだろう。ジャニアリーと私が主に攻めて、オクトたちは支援だ。 オクトたちにしっかりやってくれるよう頼む。彼女たちは頷いて、私は三人を信頼することにした。嬌声じみた声を上げて、押して行く。これにはさしもの敵も驚いたようで、彼女も声を出して驚いていた。炎がコンテナの前面を包むのが分かる。隙間から侵入した燃料がコンテナ内部を少しは焼くが、炎の壁は突き抜けた。蹴り開けると、予期していたように跳び退り身構える敵。向けられる鞄。させない! 蹴り上げる。思ったよりも重くて足首が痛んだが、炎は私を焦がさなかった。グレネードランチャーを撃とうとして来るが、叩いて阻止。明後日の方向に榴弾が飛んで行く。彼女がもう一回引き金を引く前に、私は殴りかかっていた。敵は身を引こうとしたが、間に合わない。左フックが顎を捉える。帽子が頭から離れそうになりながらも、ぎりぎり留まった。二撃目は避けられ、彼女はランチャーを手から離す。ファイティングポーズを取った。先に仕掛けるということは、先導権を得るということだ。私も彼女も同じ考えだった。同時に攻撃する。 大振りな左腕によるパンチを手首の外側で受けて、腕を絡みつけ、肘を逆方向に向ける。鞄でぶん殴ろうとして来るが、それは困る。なので彼女には転んで貰うことにした。片腕を固定され、もう片腕を限界まで引いた状態で、重心制御が出来るかどうか? 戦闘中に? 彼女は足を引っ掛けてとんと押すだけでバランスを崩した。タックルみたく体ごと当てることで、女は転倒した。銃を構え撃とうとする。途端、私は何か巨大な塊に腹を殴られた。きついボディブローだった。女の左足が上がっており、脛からは二十ミリグレネード砲身が、グロテスクにも突き出していた。俊敏な動きで立ち上がり、女は離脱する。私がその意味に気付いて先のコンテナの中に飛び込んだのは、爆発までに距離が足りないでごとりと床に落ちた二十ミリ榴弾が、備え付けられた時限装置で爆発する一、二秒前と言ったところだった。 幸運だったのは、彼女の榴弾が小口径であったことだ。四十ミリでも防げたろうが、野砲級の直径でも持っていれば、やられただろう。ジャニアリーは今頃になって突撃して来た。あの女を追撃する格好を見せようとしたのか、本当に判断を誤ったのか、私には不明だった。私情を多分に含んだ個人見解では、いかに私と最近不仲である彼女であっても、不公平であり過ぎる。私は釣り合いの取れた天秤を好み、公正さを愛した……ジャニアリーはそうではないようだったが。彼女は早々に追跡を諦めて、コンテナを出た私のところに戻って来た。 「どうして追おうとしませんでしたの」 片腹痛いとは正しくこのことであった。戦おうともせずに引っ込んでいた女が、良くもそんなことを口に出来たものだ。これが姉だとは、私には思えなかった。しかしそれが厳然たる事実であるなら、関係が破綻するその瞬間まで、それを受け入れ続けるのが私のすることだ。 やる気なく、余りに敵の動きが俊敏だったので、と答えた。自分が私よりも先に生まれたからか、その答えが気に食わなかったようだ。目に見えて不機嫌になる。それから、やっと私の相棒のことを尋ねた。私は自分の知る限りのことを伝えながら、マーチに通信を行った。彼女はこの時も不自然だった。私はふと焦燥めいた恐怖に駆られて、彼女の現在地点であることが出来ると思しき場所に範囲を限定して、敵の兵士とアンドロイドの反応を探った。 現出する多くの反応。それが何なのかははっきりしていた。彼女は遂に逃げられなかったのだ。説明を途切れさせた私に詰問するジャニアリー。データを示す。親友を助け出さなくてはならない。その為の助力を請おうとして、驚く。口を動かす前に体を動かした。近くのコンテナの陰に滑り込み、5.7ミリ弾の脅威から免れる。私は彼女の正気を疑った。撃つだって? 姉妹を? 自分の妹を? この許されがたい重大な凶行に及んで、私とジャニアリーは、完膚なきまでに対立した。 私は迷わなかった。オクト、ノヴェ、ディッセは現況を理解してないし、彼女たちはこちらと敵対していないので狙わないことにして、ジャニアリーを撃つ。一発が身を引いた彼女の肩を捉えた。激憤を隠さず、私の名を叫び、手に持った銃を乱射して来る。私はボルトを引いて、戦闘に備えた。 * * * フェブラリーに潰されたカメラを復旧させるのは単調でつまらない作業だったが、それも彼女と彼女の姉が不和の極みにいるのを見ると、我慢しようって気になれた。オータム風に言えば我が主、私の言いたいように言えば同志カーモスに通信を繋ぐ。彼女が何をしているか、そう言えば私だけ情報操作に忙しくって聞いていなかったので、ついでに聞こう。 同志は平常そのものの声を返して来た。私は何よりも、映像を見て、音を聞くのが理解する早道だと思ったので、そうした。カーモスは何ら感情を動かされないといった具合でそれを受け止め、この事態を用いて何をするかは私に任せる旨を伝えた。了解し、何をやるかと考える。敵を呼び寄せると、再び協力される危険もある。 なら、次はマーチとジャニアリーの不仲を激化させるとしよう。それで殺し合うようになれば我々としては万々歳というものではないか。意味も無く一人で頷いて、カーモスに彼女が実行中の任務について聞く。同志は私がそれを尋ねることをまず不思議に思い、それから、ああ、と声を漏らして納得した。私はカーモスのやるつもりであることを聞いて、そのえげつなさに辟易するポーズだけ見せておいた。 良くも悪くも彼女の考えそうなことだ。我々が動き易くなる為にはいい案だけど、敵には効果的だろう。これでもし指揮官を失ったなら、ロマノフの兵士は瓦解し、不確定要素も消える。大規模地下施設であることを活用した、戦争で使えばばっちり軍法会議か国際刑事裁判所ものの作戦だ。それでいてアンドロイドには何の痛みも与えない。我々が活動するのには、その分の空間があればいいだけなのだから。 全くシンプルで、しかし並の神経では、ギルドだろうと、いつかはギルドであった者だろうと、やろうとは思うまい。そこをやるのが同志カーモスなのだ。私はオータムと違って、彼女に忠誠心を抱いているのではない。感謝はしているつもりだ。個人的な好感もある。だが、忠誠だけはない。彼女は面白い世界を見せてくれる人で、博識であり、効率的で、子供っぽさを適度に備え、私の戦友であって、また私たちの戦友である。私が彼女に跪いているのは、それらが理由なのだ。特に頭の、「面白い世界」というのは大切である。彼女といると、退屈がないのだ。この作戦が終わった後、我々がどうなって行くか。カーモスはそんな無限に見果てぬ夢を見せ続けてくれる人だ。亀の甲より年の功とは、良く言ったものである。その格言の体現者こそ、彼女に他ならない。私は、そんな彼女がどうにも好きなのだ。 そうだ、彼女には人間的な魅力がある。それはアンドロイドには百年掛かっても身につけられない類のものやもしれない。でも目指したくなる、同志カーモスはそんな人である。だから私は鞠躬如としてではなく己の意思で、彼女に付き従い、彼女の命に従って動き、彼女に教導されたように戦い、彼女に跪くのだ。 隠れていた部屋から出て、マーチが挟撃されているところに向かう。近いところだ。通路を動き回るとカメラに捉えられるのではという、説明不足から来る心配は解決しておこう。私は自分が映像を見られるように復旧しはしたが、私の敵が見られるようにまではしなかった。そこから先は別料金だ。私はスカートの位置をちょっとだけ上げて調整して、走り出した。 トランクの重みが私をわくわくさせてくれる。私が持ったこのトランクケースには、私の力が収められているのだ。ロマノフ兵相手に用いるのは勿体無いが、目的はマーチの撤退完了、ひいては目下戦闘中であるジャニアリー並びにフェブラリーとの合流である。恐らくマーチを置き去りにして逃げたと敢えて曲解して、ジャニアリーはフェブラリーを撃ったのだろうから、当の本人が現れれば戦闘を中止せざるを得ない。親友が撃たれているという時に、マーチは慮って銃を下げた状態でいるかどうか。私の予想では彼女はジャニアリーを撃つだろう。オクト、ノヴェ、ディッセの三人は、それを止めるには幼過ぎる。出来て、三人で身を寄せて縮こまってるくらいだろう。もしかしたら、誰かに連絡することも考えられる。 おっと、そろそろ戦場だ。ようやく私の銃を取り出す時が来た。トランクを開き、銃を出し、トランクを閉める。取ったのは散弾銃だ。独特の給弾機構を持つ銃で、カーモス曰くローラーディレイ方式とか言うのだそうだ。簡易な説明だと、給弾チューブを四本束ねてあり、バレルにセットされたチューブ内のショットシェルを撃ち切ったら、手動でチューブを回転させる給弾方式だということになるが、これが大変便利なのだ。SRMモデル1216というこの散弾銃は、フォアエンドにチューブを備えており、セミオートオンリーである。何を言っているか分からなくても別に構わない。 通常、散弾銃では銃弾の撃ち分けが難しい。一粒弾が撃ちたくとも、チューブに装填されているのは00バック九粒弾。そんな時にも、M1216ならチューブを手で回転させるだけでスラッグと00バックを変えられるのだ。ドアを破壊したい時にはドアバスターにすればいいし、殺傷能力を抑えたいならフレシェット弾……ダーツの矢みたいなものを射出する弾薬を、給弾チューブを切り替えてから使えばいい。何なら全部00バックにしたっていいし、戦術によって様々な組み合わせを行える。かてて加えて、チューブは意外と嵩張らないのだ。 あたかも戦闘加入せんとする兵士たちを見つける。撃ってもいいが、私のM1216は十六インチモデルなので、装弾数は十六だ。四発ごとに回転させねばならないのは面倒だし、彼らは気付いてない様子だからまず背後から殴り倒そう。銃で殴ると歪みかねないので、素手で殴る。モードは3だ。用心してそうしたのだが、うーん、別にモード5(特に能力なしの素の状態)で殴っても良かっただろう。 襲った一人の首はぽっきり折れた。どさっと倒れる。五人で移動していた兵士らは、仲間が突然現れた得体の知れないピンク頭に殺され、呆気に取られる。これぞ間隙であり、突くべきものだった。一人の顎を銃の銃床底部の突起部分で殴打。左に構えて発砲。反動を殺さず、むしろその力で銃を動かして発砲位置に配置し、射撃。これで三人が死んだ。ということは、最初の一人と合わせて四人を殺害した訳だ。では最後の一人である。彼は銃を私に向けた。私は撃たれるのを待っているほど、親切な女ではなかった。それくらいの自覚はあるのだ。 撃たれる前に密着し、力で引き金に指を掛けさせたまま銃口の向きを変えた。次の弾丸の行き先は、私でなく銃の持ち主の脳髄であった。全滅させた彼らの体に手榴弾を二つ三つ見つけ、それを取って、敵のいる方向に歩く。使えるものは何でも使え、だ。 マーチは脱出前と同じように、一つの部屋に追い込まれ、それでも孤軍奮闘していた。姿を見せると彼女がそこから何を考えるか分かったものでないので、姿は見せず、彼女を支援しなくてはならない。殺す為に助けるというのも変な感じだと笑いながら、敵から取った手榴弾のピンを抜き、投げつける。転がる先は、部屋の入口で固まってる連中と、部屋の中、戸口付近で障害物に隠れた連中。入口の奴らは狙い通り行ったが、中の奴らは、やはり物が多いので思ったほど成果を挙げられなかった。モード2で探知すると、逆包囲されていると知ってか、防御態勢を敷いている。とすると、顔を見せずに援護するのは難しいか。同じくモード2の能力で、この部屋の反対側のドアを強制封鎖する。それは敵を減らす効果がある。 マーチが動いた。私の方でなく、閉じたドアの方に行って、そこの敵兵を始末してからこちらに来る気と見える。敵も動きを理解して、三人、思わず私のいるところに飛び出て来た。私は二人を撃ち倒し、残りの一人を体術で仕留めた。マーチはあちらの敵を屠ったようだ。私の姿を見られない為にも、早めにここを撤退しようか。フォアエンドの給弾チューブを回転させてから、私は安全な場所に走り始めた。 途中でカメラを復旧させたり、他の仲間たちの様子、ロマノフ・ギルドとか、先程七曜姉妹と交戦を確認したペトルッツィ三姉妹や、十二姉妹の位置を確認する。私の計画では、喧嘩を売った七曜姉妹を、ニグリティアは許さないだろう、自分の手で滅茶苦茶に叩き殺し、彼女たちの本拠地を目指して奥へ奥へと考え無しに突き進んで行く。それが彼女を始末するのに大切なことだ。もし孤立させたとしても、ニグリティア他二名は脅威である。十二姉妹と同じかそれ以上に脅威だ。私は彼女らを先に始末したかった。エキセントリックな性格は、理知的な性格よりも予測が困難である。ニグリティアの場合は単純馬鹿という、サマーみたいなところがあった為に予測が出来たのだが。 さて、その彼女は今何処──おいおい。私は立ち止まり、きちんと位置を確認した。それが事実だと分かり、頭を抱え、怒鳴ってしまう。 「ハァ? ……ハァ!? ふざけんじゃないわよッ!」
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VRMMOタイトル「異界撹拌」 主な引用元(ほか作中) VRMMO『異界撹拌』 政府ちゃんは国民の皆さまの良識に期待しています
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異界撹拌 ・めも0(異界撹拌) ・めも1(キャラクター) ・めも2(スキル) ・めも3(クエスト) ・めも4(『TRPG異界撹拌 version0』)
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2012年6・7・8・9月、第一回目の実験班活動報告です。 お久しぶりです。 カナダから帰ってきましたまっしゅです。 さっそくアルドール反応の報告でもしましょうか。 さて、まずは謝罪から… アルドール反応についてのレジュメが間違っていました。 皆様すみませんでした。 計算しなおしたところ、 モル質量と密度(25℃時)は Acetone:58.08g mol-1, 0.788g ml-1 benzaldehyde 106.12g mol-1, 1.0415g ml-1 薬品の量の比はOrganic Synthesesより NaOH:EtOH:アセトン:ベンズアルデヒド = 2000(ml):1600(ml):1(mol):2(mol) 以上より、 NaOH:EtOH:アセトン:ベンズアルデヒド = 40ml:32ml:0.02mol(0.737056ml×2):0.04mol(2.03784ml×2) ということで、実験第2回(9/16(金))の実験書を作ったところ、 第1回(6/6(水))の実験書が間違っていることに気づきました…。 (ベンズアルデヒド・アセトンの量がNaOHとEtOHに比べて多い) 実際に行った実験手順は以下の通りです。 <使用した器具(実験第2回)> 試験管、試験管立て、ガラス棒、100mlビーカー、5ml駒込ピペット、1000µlマイクロピペット、マイクロキャップ、水槽、スターラー、撹拌子、アルコール温度計、電子天秤(小数第3位まで)、ブフナーろうと、吸引ビン、アスピレーター、5Cろ紙、純水 <使用した薬品(実験第2回)> 10% NaOHaq(水酸化ナトリウム水溶液), C2H5OH(エタノール), CH3COCH3(アセトン), C6H5CHO(ベンズアルデヒド), CH3COOC2H5(酢酸エチル), BTB溶液 <実験手順(実験第2回)> ① 10%水酸化ナトリウム水溶液40mlとエタノール32mlを100mlビーカーの中に入れ、よく混ぜる。 ② ビーカーを水浴下にしてビーカー内の混合溶液を20℃~25℃に保ちながら、1000µlマイクロピペットを用いてアセトン0.737ml(0.01mol分)を加え、次にベンズアルデヒド2.1ml(0.02mol +α分)を加える。 ③ ビーカー内の混合溶液を15分間激しくかき混ぜる(ベンズアルデヒドが多め)。 ④ 15分待つ間にBTB溶液を用いてベンズアルデヒドのpHを確認する(安息香酸の確認)。 ⑤ ビーカーに再びアセトン0.737ml(0.01mol分)とベンズアルデヒド2.1ml(0.02mol +α分)を加える。 ⑥ ビーカー内の混合溶液を15分間激しくかき混ぜる(ベンズアルデヒドが多め)。 ⑦ 混合溶液をろ過する。試験管派で水ですすぎ、余すことなくろ過する。 ⑧ ろ紙上の結晶を1~2日放置し、完全に乾かす。 しかし、第1回の実験で得られた実験結果(計2点)もありました。以下の通りです。 ※第2回の実験結果も含めて、報告します。 ①激しく撹拌しないと謎のポリマーができる 実験結果:第1回の実験(試験管スターラーで普通に混ぜた)では謎のポリマー(写真①)が生じたのに対し、 第2回の実験(スターラーで激しく混ぜた)では、ポリマーは全く生じません(写真②)でした。 以下考察。 第1回は第2回に比べ、同量の溶媒に対し、 より多くのベンズアルデヒドとアセトン(反応物)が混ざっていました。 →ジベンザルアセトンの沈殿により、試薬が撹拌不足に陥る →ポリマー生成か? ↑写真① ↑写真② また、第1回の実験ではベンズアルデヒドとアセトンの入った試験管2本のうち、 試験管スターラー(撹拌力弱い)を用いて試験管を撹拌したもの 手で撹拌(撹拌力強い)を用いて試験管を撹拌したもの の2種類を用意しました。 このとき、試験管スターラーで撹拌した試験管のみにポリマーが生じました。 →撹拌力が弱いとポリマーが生じる? よって、「激しく撹拌しないと謎のポリマーができるのではないか」という結論にたどり着きました。 ②ろ紙の目がNo.5Cろ紙よりも細かくないといけない 実験結果:第1回の実験では、No.5Aのろ紙を用いてジベンザルアセトン(生成物)を吸引ろ過しました。 しかし、ろ液にジベンザルアセトンが漏れ出てしまいました。(写真③) 第2回の実験では、No.5Cのろ紙(2枚重ね)を用いてジベンザルアセトン(生成物)を吸引ろ過しました。 それでもなお、ろ液にジベンザルアセトンが漏れ出てしまいました。(写真④) ↑写真③ ↑写真④ 以下考察。 ADVANTEC社によると、No.5Cのろ紙は1㎛の粒子まで除去することができるとのこと。 参考までにURL:http //www.advantec.co.jp/products/detail/?id=706 また、ADVANTEC社さんのHPを調べたところ、ろ紙の中ではNo.5Cのろ紙の目が最小であった。 つまり、これ以上ろ紙の目を細かくすることはできない… →次からはろ紙を3~4枚重ねにして吸引ろ過をしてみようと思う。 とりあえず、以上で9月1回目の実験班活動報告を終わりにしたいと思います。 近日中に 9月2回目の実験班活動報告を行い、 収率など、実験第2回の詳細な結果をお伝えする予定です!! いつも実験班活動報告をご覧になってくださりありがとうございます。 今後とも応援よろしくお願いします。 (担当:部長 実験班班長 まっしゅ) 参考文献など 清水功雄他,(2011),『ベーシックマスター有機化学』,オーム社 『Organic Syntheses, Coll. Vol. 2, p.167 (1943); Vol. 12, p.22 (1932)』, http //www.orgsyn.org/orgsyn/orgsyn/prepcontent.asp?prep=cv2p0167 星野泰也, (2010), 『チャート式シリーズ新化学』, 数研出版 製品詳細ページ - ADVANTEC, http //www.advantec.co.jp/products/detail/?id=706
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蓄冷ポットを使うタイプ 原理 蓄冷ポットを冷凍庫で冷やし、外に出して撹拌させる。 価格 数千円程度 完成度 なめらか インターバル 半日 利点 安くて完成度が高い 欠点 丸一日冷やす必要がある 1日2回しか動かせない 蓄冷ポットが大きい 備考 ソフトクリームメーカーもこれと同じ。 選び方としては、消費電力(≒出力)の大きさと容量を見る。 出力が上がればより強く撹拌できるが、よほどの粗悪品でなければ出力不足になることはない。(6.5WのDL-0272でも問題なし) 容量は材料だけで500ml、完成後1L程度は入るものが望ましい。 というのも、材料を使い切ることを前提にするとだいたい500ml×1~2程度になるためである。 該当するもの DL-0272 (6.5W) 冷凍庫で撹拌するタイプ 原理 冷凍庫にアイスクリームメーカーを入れ、撹拌させる。 価格 数千円程度 完成度 シャリシャリ インターバル 4時間前後 利点 材料の予冷をしなくても良い(した方が完成度は高まる) 欠点 完成まで時間がかかる 冷凍保存するとシャリシャリになる 他の容器に移しているうちに側面から溶けてしまう 電源がリチウム一次電池なので、コストパフォーマンスが悪い。単三電池等で動くものもあるが、電池持ちも出力も悪い。 備考 作ったらすぐ食べきるくらいの用途にしか向かない。 アイスバーしか作らないなら、これでも良いだろう。 該当するもの BH-941 (生産終了) BH-941P 業務用に近いタイプ 原理 単体でポットを冷やし、中身を撹拌させる。 価格 数万円程度 完成度 物による インターバル 1~2時間 利点 短時間で大量に作れる 冷凍庫を使わない 欠点 価格が非常に高い(数万円) 予冷時から材料を投入するタイプは、シャリシャリになりやすい。 該当するもの JL-ICM100A (ペルチェ式) 備考 完成度は蓄冷ポットを使うタイプと変わらないので、短時間で大量に作る必要がなければ買うメリットはない。
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はじめに 撹拌しない オーバーランを上げる シャリシャリ感をなくす 半分以上が固形分 温度を上げる レシピ? はじめに 作り方/ジェラートも参照すること。 撹拌しない セミフレッドは撹拌せず型に入れて作る。 この点では撹拌しないアイスバーと同じだが、アイスバーと違ってシャリシャリ感を消さなければならない。 オーバーランを上げる 柔らかくし更にシャリシャリ感を抑えるために、オーバーランを上げる。 生クリームばかりだとくどい味になってしまうため、イタリアンメレンゲも使うと良い。 シャリシャリ感をなくす アイスクリームやジェラートと同じだが、アイスクリームメーカーに頼れないので材料を工夫するしかない。 固形分を増やし、できればトレハロースを使いたい。 半分以上が固形分 他のアイスクリームは半分以上が水分だったが、セミフレッドは半分以上が固形分である。 甘味料で固形分を増やすのは難しいので、卵黄・生クリーム・トッピングなどで固形分を増やす。 温度を上げる ジェラートと同じくある程度温度を上げる。
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#blognavi 牛糞は弟の所までいけば必要な分無料で貰えますが遠いのが難で時間や燃料代が掛かります。 地元で2トン車満載、配達込みで5千円、と割り安感がるので頼んでありましたが今朝配達してくれました。 堆肥製造場に下していただきました。 すでに木材チップ、牛糞、木材チップと3重に積んであり今日の牛糞下す前に米ぬか40Kを撒いてあります。 牛糞を下した後塾生を促進させるようにショベルカーで撹拌しました。 隅々までは撹拌できないので弟が来た時にでもまた撹拌してもらいます。 カテゴリ [日記] - trackback- 2011年07月09日 00 27 22 名前 コメント #blognavi
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タッチパネルKDIS-001出荷時の設定方法 1.「逆▲」と「確認」「停止」を 同時に3秒以上押す パネル面が「OP01」と表示される。 2.「確認」キーを押す 3.下記パラメータを変更する。 表示-KTM-HPI---説明 OP01---手動タイマー表示:標準設定「1」 0:無 1:有 OP02---タイムカウントダウン:標準設定「0」0:ダウンカウント 1:アップカウント OP03---ブザー吹鳴:標準設定「12」 10の桁=キープブザー 0:OFF 1:ON 1の桁=撹拌終了ブザー 0:休止 1:連続音 2:断続音 OP04---カクハン終了ブザー時間:標準設定「10」 0~60秒設定可能 OP05---カクハン昇降インターロック:標準設定「0」 0:インターロック無し 1:撹拌起動キーと昇降運転のインターロック 2:撹拌寸動キーと昇降運転のインターロック 3:撹拌起動キー及び撹拌寸動キーと昇降運転のインターロック OP06-6-1-カクハン・ボールインターロック OP07-5-1-昇降運転モード OP08-3-3-ボールインターロック(無時0) OP09-13-13-外部確認PB有り(無時0) OP10-0-0-安全ガードインチングインターロック OP11-0-0-ボール確認タイマー OP12-1-1-中間LS有り OP13-0-0-安全ガード開でも昇降可能 注意:HPIでも中間LS有り時、OP7=7 ボールセンサー無し時、OP8=0 4.寸動速度設定 「確認」「停止」を同時に3秒以上押す パネル面に「1」と表示される。 「▲」で表示を「6」にする。 「確認」を押す。「00」が表示されたら 「▲」で「05」にセットする。 「停止」ボタンで書き込み終了 5.出荷時の確認 手動運転時の試験 SP01からSP05まで各速度確認 自動運転の試験 CH01-SP01-5分 CH02-SP02-5分 CH03-SP03-5分 CH04-SP04-5分 CH05-SP05-5分 CH06-SP04-20分 全自動試験 Pt01-St01-SP01-5分 St02-SP02-5分 St03-SP03-5分 St04-SP04-5分 Pt20-St01-SP01-5秒 以上