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憲法改正の手続 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。 この項目についての意見 オルタナ憲法サイトに書き込まれた条文は国会に関係なく投票に掛けられる(笑)ただ投票はマイノリティに不利なので難しいな… とりあえず、まず「国民」投票ではないということははっきりさせておく。 -- Bati (2007-07-23 00 31 56) すごいwww>オルタナ憲法サイトに書き込まれた条文は国会に関係なく投票に掛けられる国民投票じゃないというのは重要ですね。 -- 名無しさん (2007-07-24 02 52 59) 名前 コメント
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憲法尊重擁護義務 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 この項目についての意見 主語に当たる人たちは憲法全然守ってないので…守ってなかったらクビにできるとか。誰が判断してどう決定するかが問題ですが。 -- Bati (2007-07-17 01 16 16) リコールの手続きをもっと簡素化する必要がありますよね -- 名無しさん (2007-07-20 01 01 00) 憲法を条文に則って変えるべきと考えること、ある政策が憲法の条文に合うかどうか検討すること、なども「尊重」「擁護」です。 -- fpop (2007-08-01 02 15 53) 名前 コメント
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他の国の憲法 アメリカ合衆国憲法(アメリカ大使館より) フランス共和国憲法(第五共和国憲法) (Weblio) ドイツ連邦共和国基本法
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憲法ってなぁに? 超簡単に言うと「国民から国家への指令書」のこと。宇宙戦艦ヤマトで言えば、国民=乗組員、国家=戦艦ヤマト、憲法=戦艦ヤマトの操作マニュアルorプログラム、みたいなカンジ。
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最高法規 基本的人権の本質 憲法の最高法規性、条約・国際法規の遵守 憲法尊重擁護義務 改正手続き 憲法改正の手続
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憲法の最高法規性、条約・国際法規の遵守 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。 この項目についての意見 「誠実に遵守する」というのがあいまいですよね。人権規約とか守られていないし。形式的な遵守(単に法的な改正をするとか)だけではなくて、実質的な遵守(積極的に状況を変えるようなアクションをおこすとか。アファーマティブアクションに近いかな?)をしなければならないという風に変えたらどうでしょうか -- 名無しさん (2007-07-20 17 51 52) 重要なことだと思います。実際に状況が変わらなければ形式的な遵守はあまり意味を為しませんからね。 -- Karakuri (2007-07-23 16 44 06) 名前 コメント
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憲法 〔体系書〕 芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』岩波書店(2011年3月・5版) ◇各種資格試験受験者にとって,まずはこの本がすべての基本。しっかり読み込んで憲法の基本的な考え方をたたき込むこと。(新司法試験・上位合格者のメソッド)★★★★ ◇芦部は1999年他界。憲法で伝統的通説といえば、おおむね芦部説を指す。記述は簡潔ながら基本的な知識(共通理解)は本書で一通りおさえられるため、長年受験生からの圧倒的支持を集めている。もっとも、芦部憲法学を凝縮した本書の記述を真に理解するには「行間を読む」ことが求められる。つまり、ある程度の実力がなければ読みこなせない。内容はかなり古く、おおむね平成以降の議論には対応していないが、高橋和之による補訂は依然小規模にとどまっており、芦部原文にはノータッチである。5版においてドイツ憲法の三段階審 査についての解説が付せられた(基本書まとめwiki)。 高橋和之『立憲主義と日本国憲法』有斐閣(2010年5月・2版) ◇私は参考書程度に使っていたが,これを使っている人はロースクールにも結構おり,教官の推薦図書でもあった。違憲審査基準の使い分け等が明確に示されており,新司論文対策としては,芦部憲法よりも役に立つかもしれない。(新司法試験・上位合格者のメソッド)★★★★ ◇書名は論文集のようであるが、人権・統治の全範囲にわたるれっきとした体系 書である。著者は前東大教授。芦部の一番弟子で、芦部に続く現在の第一人者。ケルゼンの法段階説に立脚した独特の統治機構論を展開。国民内閣制論の提唱 者。私人間における人権の無効力説、司法権の定義に関する独自説、外国人参政権賛成など。古い芦部を補うためのテキストとしてロースクール生の間でも人気 があるが、内容は高度。芦部に目線を合わせた単なる芦部のサブノートではなく、芦部よりずっと新しい議論を展開している。したがって、腰を据えて取り組む 必要がある。また、直前期の総まとめ等には向かないだろう。(基本書まとめwiki) 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法I』有斐閣(2012年3月・5版) 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法II』有斐閣(2012年3月・5版) ◇いわゆる「4人本」です。詳細かつわかりやすい(行間を読む必要があまりない)。僕はこれをロースクールの2年目から本番直前までメインの基本書にしていました。(新司法試験・上位合格者のメソッド)★★★★ ◇通称四人組。芦部門下らによるスタンダードな教科 書。共著だが各者の自説主張はほぼなく(高橋執筆の15章「内閣」に自説を含むが、一読の価値ある内容)、共著の弊害がそれほど出ていない。大抵のことが 詳しく載っており、最近の説にも一応配慮しているが、全体としては芦部ベースの穏当な道を踏み外していない。宍戸教授いわく「質、量ともに最高の基本 書」。憲法学の共通理解を学生向けに丁寧に示した本といえるが、記述が平板なため初学者にはやや読みづらい面がある。通読するというより、辞書として使う 学生が多い。2冊あわせて900ページ超。択一対策に万全を期すならば(特に統治に関して)本書以外に選択肢はありえないだろう。(基本書まとめwiki) 渋谷秀樹『憲法』有斐閣(2007年12月) ◇学説の対立が鮮明になるような記述。体系が独特。註の文献引用が便利。(基本書まとめwiki) ◇4人組同様に網羅性が高く,調べものの際に有用。 佐藤幸治『日本国憲法論』成文堂(2011年4月) ◇かつて青林書院から出版されていた旧著『憲法』(第3版、1995年。今では絶版となって いる)の実質的な改訂版。もっとも本書においてはレイアウトが横書き・二色刷に変わったほか、叙述の順序も芦部と同じ(人権→統治→違憲審査)になってい る。なお旧著は、芦部が刊行されるまでは定番の基本書だった。解釈論は精密で、論理的。漢語を駆使して一つ一つのセンテンスに情報を詰め込んでいるため、 全体として情報量がかなり多い。とくに統治の分野の情報量は他の追随を許さない。(基本書まとめwiki) 長谷部恭男『憲法』新世社(2011年3月・5版) ◇定跡+新たな視点。政治哲学(リベラリズム)の視点から判例と学説を補強・再解釈してい る。平成19年度旧司択一第4問エにて長谷部の解釈が取り上げられている。現東大教授。最近は一般人向けの新書も多く出している。副読本として 『Interactive憲法』有斐閣(2006年9月)、『続・Interactive憲法』有斐閣(2011年10月)、『憲法入門』羽鳥書店 (2010年1月)。(基本書まとめwiki) 松井茂記『日本国憲法』有斐閣(2007年12月・3版) ◇プロセス的憲法観。自然権思想をベースとする芦部説を中心とした通説と対立。(基本書まとめwiki) 伊藤正己『憲法』弘文堂(1995年12月・3版) ◇元最高裁判事。自説主張が控えめなので最高裁判事時代の少数意見集『裁判官と学者の間』有斐閣(1993年2月、OD版 2001年12月)と併読すると吉。全体として読みやすい文章で丁寧な解説がなされている。前田会社法入門と同じタイプの本。縦書き700頁弱と厚い本だ が、スイスイ読み進められるだろう。芦部と同世代の学者であり、本書の内容も比較的古い方に位置する。(基本書まとめwiki) ◇伊藤正己執筆本としては,初学者向けの比較的新しい本として,『憲法入門』 有斐閣双書(2006年)がある。 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法1 人権』有斐閣アルマ(2010年3月・4版) 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法2 統治』有斐閣アルマ(2010年3月・4版) ◇憲法が苦手な人、演習書を見ても解き方がわからない人はとにかくこれを読め、という本。(基本書まとめwiki) 辻村みよ子『憲法』日本評論社(2012年3月・4版) ◇杉原イズムの継承者。東北大学教授。人民主権を発展させた市民主権を提唱。最終的に少数説をとる場合があるも、学説の整理は客観的で丁寧。収録判例も多く下級審からの流れも分かる。(基本書まとめwiki) ◇判例等が西暦表示のため,若干使い勝手は悪い。 阪本昌成『憲法1(国制クラシック)』有信堂高文社(2011年8月・全訂3版,2011年9月・4版) 阪本昌成『憲法2(基本権クラシック)』有信堂高文社(2011年8月・全訂3版,2011年9月・4版) ◇古典的リベラリスト。(基本書まとめwiki) 大石眞『憲法講義I』有斐閣(2009年4月・2版) 大石眞『憲法講義II』有斐閣(2012年10月・2版) ◇比較的穏当な保守。ただし、判例実務を尊重しつつも、 集団的自衛権を肯定していたりする。専門である議会法、信教の自由あたりの記述は詳しい。旧来の説では解決困難であった問題をブレイクスルーしようとする 姿勢は評価したい。(基本書まとめwiki) 浦部法穂『憲法学教室』日本評論社(2006年3月・全訂2版)……塾テキスト。論理的で明快だが独自説多し。くだけた表現も特徴の一つ。左翼的との評価あり。 樋口陽一『憲法』創文社(2007年4月・3版)……体系書とは性格を異にし、司法試験テキスト向きとはいえないが(違憲審査基準論が弱い)、教 養としては読むに値する。本書以外ではなかなか目に触れないような、しかし芦部などが行間で当然の前提にしている歴史的・比較法的知識を補うことができ る。通説・判例の問題点を的確に指摘している個所も多い。芦部と同様、網羅性は他に一段劣るが、択一で問われるような重要なポイントは意外にきちんと押さ えている。 小林昭三他『日本国憲法講義 憲法政治学からの接近』成文堂(2009年9月)……真正保守必携の憲法体系書。明治憲法を評価し、昭和10年代の 出来事は西洋が悪いというスタンスで一貫している。集団的自衛権は当然認め、愛媛玉串訴訟では法廷意見を批判して三好意見に賛同するといった具合である。 体系書だが論点や判例は余り拾っていない。 初宿正典『憲法2 基本権』……体系は基本的に芦部に則っているので芦部の参考書としては非常に使いやすい。判例の引用と評釈も丁寧な隠れた一品。中でも信教の自由の解説は秀逸。 赤坂正浩『憲法講義(人権)(法律学講座)』信山社(2011年4月)……人権のみ。各種人権について細かく合憲性審査基準を提示しているのが特徴。記述は比較的あっさり。 毛利透,小泉良幸,淺野博宣,松本哲治『リーガルクエスト憲法1 統治』有斐閣(2011年3月) ◇情報量が多く、時事的な話題にも富むが、叙述に難あり。学説・自説等の整理区別・引用にも精細さを欠く。他のテキストとの併読が吉。(基本書まとめwiki) 安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿『憲法学読本』有斐閣(2011年12月) ◇ 高橋門下の若手3人による最新の憲法の教科書。コンパクトなサイズ であるが、憲法学の最先端の議論にまで突っ込む箇所もある(当然、私見は出ていない)。芦部から急所や作法などにステップアップして違和感を感じるような 場合に本書はその橋渡しとなるであろう。(基本書まとめwiki) 戸波江二『地方公務員の法律全集1 憲法』ぎょうせい(1998年7月・新版) ◇ 芦部門下。改訂が遅れ半ば貴重書扱い。芦部亡き後の憲法基本書の代表となると思われた が、一向に改訂の気配なし。一部に少数説もみられるが、基本的には芦部ベース(章立てもよく似ている)。芦部憲法の初版ともいうべき『国家と法』及び芦部 憲法の執筆に関わっている。そのためか芦部憲法よりもほどよく掘り下げられた記述は芦部の行間を埋めるのにちょうどよい。公務員の読本として執筆されたた め、芦部よりも統治の部分に厚く、かつその記述は秀逸である。(基本書まとめwiki) 〔その他〕 芦部信喜『憲法学I・II・III』有斐閣(1992年12月,1994年1月,2000年12月・増補版)……芦部『憲法』の人権論を補うための体系書。脚注の参考文献欄が充実しているが、自説についての説明は意外に多くない。収録は居住移転の自由まで。 高見勝利『芦部憲法学を読む』有斐閣(2004年11月)……芦部『憲法』の統治機構論を補うための体系書。また、最初に書かれている芦部の戦争体験は芦部憲法学を理解するために有益。 小山剛=駒村圭吾編『論点探究憲法』弘文堂(2005年7月)……有力若手・中堅が執筆。演習書と銘打ってあるものの、論文集として読んだほうが適切。体系書で深く論じられない問題について解説。 安西=青井=淺野=岩切=木村=齋藤=佐々木=宍戸=林=巻=南野『憲法学の現代的論点』有斐閣(2009/09・第2版)……高橋弟子による論文集。高橋説の補充に使える部分もあるが、著者の独自説も強い。 井上典之=小山剛=山本一『憲法学説に聞く』日本評論社(2004年5月)……編者の内の1人とゲストの学者が対談し、編者は通説の立場からゲス トの学説について質問を投げかけ、それに対してゲストが答える形式。ゲスト陣は、戸波、戸松、市川、大石、長谷部、初宿、棟居、内野、浦部、辻村、高橋、 岡田、松井、岩間、浦田と豪華。それぞれの学説に興味がある場合、また学説の立場から判例や通説の欠点を見極めたいときに本書は役に立つだろう。 佐藤幸治ほか『ファンダメンタル憲法』有斐閣(1994年7月)……昔の種本。論点解説集。比較的薄めだが、内容は明快かつ簡潔。一行問題時代なので宍戸、急所などの論点よりも易しいが一読の価値有り。 大石眞・石川健治編『憲法の争点(新・法律学の争点シリーズ3)』有斐閣(2008年12月)……10年ぶりに改訂された。執筆者も大幅に入れ替わったが抽象的なテーマが多い。 〔コンメンタール〕 ☆芹沢斉・市川正人・阪口 正二郎編『新基本法コンメンタール 憲法』日本評論社(2011年10月)……最新の判例・学説を網羅している。解説はいわゆるその分野の権威が執筆しているというものではなく、むしろあえ て外しているようなところもあり、論点の本格的な検討という点では物足りない。しかし、その分客観性が高く情報量は多いので、受験用の参考書としては好適 である。 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂『注解法律学全集 憲法I・II・III・IV』青林書院(1994年9月,1997年8月,1998年 12月,2004年2月)……憲法のコンメンタールでは随一。判例・学説の紹介が、非常に網羅的。いわゆる論点は完全に網羅されているうえ、非常に細かい 点まで議論されている。たとえば、刑事手続上の人権については、詳しめの基本書でも言及がかなり乏しく、緊急逮捕や盗聴の合憲性が論じられる程度にとどま るが、このコンメンタールは違う。憲法34条の「抑留」には逮捕・勾引が含まれ、「拘禁」には勾留・鑑定留置が含まれるために、後者についてのみ、憲法 34条後段により理由開示が保障される、など、かゆいところに手が届く丁寧さ。特に、佐藤幸治と中村睦男の執筆箇所は、学説資料へのリファーが充実してい るので、調べものにも大変役に立つ。司法試験対策のための学習にも有益。学習で疑問が生じて、本書を調べれば、疑問は氷解するだろう。本書1巻のうち、佐 藤幸治が憲法13条について解説している箇所は、学説が自己決定権を論じる際、いまだに頻繁に引用されるなど、特に評価が高い。 芦部信喜監修『注釈憲法』有斐閣(2000年12月)……全6巻(予定)。芦部信喜を監修者として、野中俊彦・戸松秀典・江橋崇 ・高橋和之・高見勝利・浦部法穂という豪華メンバーで編集作業に当たる予定だったが、芦部の死去により1巻が出たのみとなっている。1巻は総説から9条ま で。なお同タイトルの新書が有斐閣から出ているがこちらは出版年が1995年とやや古い。 〔判例集〕 高橋和之・長谷部恭男・石川健治『憲法判例百選I・II』有斐閣(2007年2月,2007年3月・いずれも5版)……執筆者は大幅に入れ替わったが、解説は相変わらず玉石混交。 戸松秀典・初宿正典『憲法判例』有斐閣(2010年3月・6版)……解説なしの判例集。判旨引用は百選より長く、反対意見等の掲載も豊富。章立ては独特。 野中俊彦・江橋崇編著『憲法判例集』有斐閣新書(2008年12月・10版)……解説なし。要点を要約しており新書サイズなので便利。 井上典之『憲法判例に聞く』日本評論社 (2008年4月)……違憲審査基準以外の判例の思想を分析。引用文献を見ないとわからないことが多い。 大石眞・大沢秀介『判例憲法』有斐閣(2009年4月)……適度に解説が付せられた憲法判例集。 憲法判例研究会編『判例プラクティス憲法』信山社(2012年3月)……同シリーズの民法・刑法と同様、分野ごとに同一執筆者が解説。判例相互の理解に役立つと思われる。しかし、原則1頁1判例なので、判旨や解説などは短い。 〔ケースブック〕 長谷部恭男・赤坂正浩・中島徹・阪口正二郎・本秀紀『ケースブック憲法』弘文堂(2010年3月・3版)……判旨のみ。設問が難解。独習 はまず不可能、可能な人も(試験対策としては)やる必要がないレベル。長谷部執筆箇所と思しき章は、長谷部の一人説が全面的に展開される、長谷部ワール ド。 初宿正典・大石眞・高井裕之・松井茂記・市川正人『憲法Cases and Materials 人権基礎編・人権展開編・憲法訴訟』有斐閣(2005年8月,2005年8月,2007年5月)……判例の解説、文献の引用が充実。 ケースブックの中では一番わかりやすく、独習にも使用できる。 LS憲法研究会『プロセス演習憲法』信山社(2007年4月・3版)……主要な判例について第一審から最高裁まで当事者の主張とともに記載されている。 浦部法穂・戸波江二編著『法科大学院ケースブック憲法』日本評論社(2005年7月)……一審からの判決文にちょこちょこっと問題文を付加。解説はない。 〔演習〕 木村草太『憲法の急所―権利論を組み立てる』羽鳥書店(2011年7月) ◇本書は,重要な条文の趣旨(人権の保障根拠),条文の読み方について丁寧に説明がなされ,重要判例(薬事法違憲判決等)に関する鋭敏な分析がなされるなど,非常に高水準かつ分かりやすい内容となっており,曖昧模糊とした憲法の知識・理解をブラッシュアップさせることができる優良な参考書となっている。加えて,原告(or被告人等)の基本権侵害の主張,それに対する被告(or検察官等)の反論をどのような理論構成,事実主張で組み立てるか,最後に裁判官視点ではどのような落ち付きどころを見つけ,説得力ある結論を導けるかを,上記の人権の保障根拠,条文構造,最高裁判例の解釈等を踏まえ,じっくり解説しており,模範解答例も付いている。このように,憲法の理論,実践について解説した良書としては,『憲法 解釈論の応用と展開』,『憲法上の権利の作法 新版』があったが,本書は,新司法試験の問題形式に則しているため,より実践的である。(新司法試験・上位合格者のメソッド) 木下智史・渡辺康行・村田尚紀編著『事例研究憲法』日本評論社(2008年6月)……長文事例問題集。判例・裁判例をベースとした設問多 数。問題文における「問いかけ方」は本番と同様だが、本当の意味で本番と同じ質・量を兼ね備えた問題は稀である。解説にはやや癖のあるものが多い。 棟居快行『憲法解釈演習』信山社(2009年5月・2版)……評価待ち。 小山剛・新井誠・山本龍彦『憲法のレシピ』尚学社 (2007年4月) ……評価待ち。 棟居快行『旧司法試験 論文本試験過去問 憲法』辰巳法律研究所(2001年1月)……旧司法試験の過去問集。棟居教授の解説講義を書籍化。辰巳作成答案、解説(+答案検討)、教授監修答案からなる。全24問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。 宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』日本評論社(2011年2月)……法学セミナー連載(640号〜669号)の単行本化。最近の学説に基づいた事例問題・論点解説。一 通りの学習を終えた中級者向けとし、芦部説の劣化コピペ論証作業を批判して、いちおう芦部説から解説を始める。しかし、三段階審査や高橋説等の予備知識が ないと理解の難しい部分が多い。「雛見沢」「ハレ晴レユカイ」等のキーワードも一部に。 石川健治・駒村圭吾・亘理格「憲法の解釈」(法学教室連載・319号〜342号にて完結)……憲法学者2人、行政法学者1人による公法系融合問題のリレー連載。連載のねらいは違憲審査基準による憲法事例問題の安易な解答を戒めること。 〔違憲審査制度〕 芦部信喜『憲法判例を読む』岩波書店(1987年5月)……市民セミナーでの講演を収録。非常に古いがいまだに芦部違憲審査基準論の入門書として広く読まれている。 戸松秀典『憲法訴訟』有斐閣(2008年3月・2版)……憲法訴訟の体系書。訴訟の中で憲法が問題になる場面、問題になった後の処理について詳細に分析。判例のとる違憲審査基準についての分析が秀逸。著者の自説は極めて控えめ。 永田秀樹=松本幸夫『基礎から学ぶ憲法訴訟』法律文化社(2010年11月)……口語的な文章で書かれており、多少辛辣な口調が見られるが、それ も含めて読みやすく分かりやすい本であろう。一方、内容に疑問を持つ者も多い。例えば、法令違憲と文面判断の関係の指摘、LRAの基準を中間審査ではなく 厳格審査としている点等。また、記述は特定の立場に基づくもののみで、複眼的思考に対する配慮を欠く。詳細はアマゾンのレビュー参照。この批評自体も一方 的な面が拭いきれず、結局のところ人によって好き嫌いが分かれる本であろう。後半は問題集となっている。 ☆小山剛『「憲法上の権利」の作法』尚学社(2011年9月末・新版)……三段階違憲審査制を簡潔にわかりやすく叙述したもの。都合上、本書の紹介はページの最下層に来てしまっているが、ロースクール生の間で最近もっとも読まれている本である。 野坂泰司『憲法基本判例を読み直す』有斐閣(2011年6月)……法教に連載されたものを書籍化。著者は司法試験委員。重要判例につき事案・判旨の分析は非常に丁寧かつ秀逸で、安易に既存の学説にはめ込むような判例解釈の姿勢に距離を取っている。
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【基本書】〔メジャー〕 〔その他〕 【その他参考書】〔違憲審査論〕 〔憲法訴訟論〕 【入門書】 【注釈書・コンメンタール】 【判例集・ケースブック】〔判例集〕 〔ケースブック〕 〔その他判例〕 【演習書】 【基本書】 〔メジャー〕 芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』岩波書店(☆2023年9月・第8版)……著者は1999年に死去。第3版(2002年)からは弟子の高橋により、おおむね4年ごとに補訂が続けられている。憲法で伝統的通説といえば、概ね芦部説を指す。記述は簡潔ながら、全ての学説の前提となる伝統的通説(=憲法学における共通理解)を一通りおさえられるため、長年にわたり受験生から圧倒的支持を集めている。短答式試験の問題に記述の内容がそのまま出題されることも多く、メインの基本書に据えないにしても一読する価値がある。もっとも、芦部憲法学を凝縮した本書は、記述が簡潔に過ぎるきらいがあり、読みこなすにはある程度の予備知識が必要となることから(「芦部憲法は行間を読む必要がある」と巷間よく耳にするのはこのため)、全くの初学者が本書を読んでも表層的な理解しか得られないだろう。また、高橋の方針で、芦部による原文には一切手を加えず、補訂も最小限に留めていることから、平成以降の議論にはほとんど対応しておらず、内容がかなり古くなりつつあることに留意する必要がある。第7版のはしがきで、最晩年の芦部が憲法9条につき政治的マニフェスト説を採るに至っていたかもしれないとの補足が付された。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」憲法3位。電子書籍版あり。全3部、全18章。A5判、492頁。 安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿『憲法学読本』有斐閣(2018年12月・第3版)……高橋門下の3人による共著。コンパクトながら高橋説や長谷部説などの憲法学の最先端の議論にまで突っ込む箇所もある(もっとも、私見は出ていない)。ただし、論点によっては簡単に問題提起をするだけで終わることも多いため、メインの基本書とするには心許ない面がある。特に統治機構については記述が薄いため、他の基本書で補う必要がある。本格的な入門書として、芦部等の標準的な基本書を読む前に通読するというような用途に適しているだろう。また、芦部から木村・憲法の急所や小山・「憲法上の権利」の作法などにステップアップして違和感を覚える場合にも、本書によって最新の議論を捕捉することがその橋渡しとなるだろう。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」憲法2位。電子書籍版あり。全3部、全18章。A5判、412頁。 木下智史・伊藤建『基本憲法I——基本的人権』日本評論社(2017年2月)……憲法学者(木下)と弁護士(伊藤)による共著。刑法と行政法が人気を博している『基本シリーズ』の憲法編。試験対策を強く意識しており、学術的な議論には深入りせず、全体的にコンパクトに記述している。判例を重視しており、判例の示した規範を、論文式試験に使える形で整理して解説している。「受験新報」2019年12月号の特集「合格者が使った基本書」の憲法部門で1位を獲得しており、近時受験生からの支持を得ているようである。なお、統治機構に当たる部分は現在のところ未刊。電子書籍版あり。序章(判決文に学ぶ)+全15講。A5判、372頁。 渡邉康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗『憲法I——基本権』『同II——総論・統治』日本評論社(I:☆2023年3月・第2版、II:2020年9月)……通称『新四人組/本』。「三段階審査」を基軸とする体系書。本書の特徴は、①判例を重視していること、②三段階審査の手法を全面的に活用して基本権に関する判例を位置づけていること、③三段階審査の妥当しない領域における審査手法を開拓しようとしていること(以上、はしがき)である。三段階審査は従来の違憲審査基準論に取って代わる類の理論ではなく、それに新たな視点を付け加えることによって、より緻密・密度の濃い合憲性審査・判例分析を可能にする理論であるといえる。したがって、本書をマスターすれば、基本権分野について、より緻密な論証を書くのに役立つだろう。ただし、従来の学説対立をさらっと流しているので、芦部や高橋といった伝統的立場の予備知識があることが前提となるだろう。電子書籍版あり。全20章・全14章。A5判・548頁・512頁。 〔その他〕 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法I・II』有斐閣(いずれも、2012年3月・第5版)……通称『四人組/本』。中村は2020年に死去。Iは憲法総論・基本的人権、IIは統治機構を扱う。宍戸常寿曰く「質、量ともに最高の基本書」。著者らの自説主張はほとんどないため(但し、高橋執筆の15章「内閣」には一部自説を含む)、共著の弊害としてしばしば挙げられる立場のばらつきは少ない。大抵のことが詳しく載っており、最近の説にも一応配慮しているが、全体としては芦部ベースの穏当な道を踏み外していない。憲法学の伝統的理解を学生向けに丁寧に示した本といえるが、記述が平板なため初学者にはやや読みづらい。辞書としての使用が主となるであろう。圧倒的な情報量を誇ることから短答対策(特に統治)に有用。なお、本書は今後改訂する予定はないとのことである。全3編、全20章。A5判、606頁・468頁。 佐藤幸治『日本国憲法論(法学叢書)』成文堂(2020年9月・第2版)……京都学派の重鎮による一冊。旧司法試験時代に定番書だった『憲法(現代法律学講座)』青林書院(1995年4月・第3版)の実質的な改訂版。本書ではレイアウトが横書き・二色刷に変わったほか、叙述の順序も芦部と同じになった(人権→統治→違憲審査)。旧著に比べて受験生の間でのシェアは大きく低下したが、情報量は豊富で、その解釈論は精密・論理的であり、今なお基本書として有用である。特に統治の分野の情報量は他の追随を許さない。第2版で、最新の判例に対応。自己情報コントロール権説につきプライバシー外延情報についても保護を与えるべきとするなど、初版から記述に変更あり。全4編、全16章。A5判、772頁。 高橋和之『立憲主義と日本国憲法』有斐閣(2020年4月・第5版〔※2021年11月3刷にて補訂〕)……一見して論文集を思わせる書名であるが、人権・統治の全範囲にわたる歴とした体系書である。著者は芦部の一番弟子で、芦部に続く現在の第一人者。ケルゼンの法段階説に立脚した独特の統治機構論を展開。国民内閣制論の提唱者。私人間における人権の無効力説、司法権の定義に関する独自説、外国人参政権肯定説などを採る。本書は初学者向けに執筆されたもので、四人組等の本格派体系書へとステップアップすることを意識しているとのことだが、内容のレベルは高い。第5版は、議員定数訴訟などの重要判例はもとより、性的マイノリティの権利、インターネット上の表現の自由など、憲法をめぐる最新の議論を踏まえてアップデート。電子書籍版あり。 全3部、全16章。A5判、524頁。 高橋和之『人権研究1——表現の自由』『同2——経済活動の自由および社会権』有斐閣(いずれも2022年12月)……有斐閣法律学大系の『人権』を構成する予定であった章を分冊した書き下ろし作。しかしその執筆スタイルは研究書というより教科書風(はしがき)であり、高橋『立憲主義と日本国憲法』の人権パートを敷衍した内容となっている。いわば高橋版・芦部憲法学(人権パート)。というわけで司法試験向けにはオーバースペックだが、高橋憲法学を極めたい人向け。『人権研究3——人権総論』が続刊予定。A5判、462頁・234頁。 長谷部恭男『憲法(新法学ライブラリ2)』新世社(2022年2月・第8版)……芦部門下。定跡+新たな視点。政治哲学(リベラリズム)の視点から判例と学説を補強・再解釈しており、内容は高度で考えさせられる記述が多い。著者自身がオルタナティブな教科書として本書を位置付け、芦部・四人組・高橋などの標準的教科書との併用を推奨している。A5判、512頁。他に、学生向けの参考書として『Interactive憲法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2006年9月)、『続・Interactive憲法(同)』有斐閣(2011年10月)等がある。 市川正人『基本講義憲法(ライブラリ法学基本講義)』新世社(2022年3月・第2版)……現役司法試験考査委員による概説書。発展的な論点はコラム扱いとされ、重要事項は青字にされているので、メリハリのついた学習が可能である。400頁少々(しかも文字が大きめ)で人権から統治までカバーするため、分量もコンパクト。特に第15章「違憲審査制」は、凝縮された記述と図解が大変有用。人気を博する潮見イエローと同シリーズのため、受験生には慣れたレイアウトで読みやすい。第2版では、最新判例に対応したほか、コラムも充実させた。正誤表。全3編、全17章。2色刷。A5判、398頁。 戸松秀典『憲法』弘文堂(2015年5月)……芦部門下。著者は憲法訴訟論の第一人者(後掲の『憲法訴訟』も参照されたい)。学説の対立や不毛な議論に立ち入ることなく、憲法の根幹に迫ることだけを追い求めた骨太な概説書。著者は「日本国憲法の実情を観察し、それをありのままに描き、憲法秩序が形成されている様相を考察すること」(はしがき)に力を注いできた。そのため、本書においては、いわゆる歴史的沿革や学説紹介、独自説を主張することを控え、いかなる憲法秩序が形成されているかが、探求されている。とりわけ、憲法秩序の形成がもっとも展開されている憲法14条(平等原則)、31条(法定手続の原則)の領域については詳しく論述されている。人身の自由についても類書に比べて詳しく判例が紹介されている。こうした事情もあって、法実務家によって利用されることも望まれている。他方で、憲法秩序の形成が乏しい人権分野についての展望がない点が難点といえば難点かもしれない。現在の司法試験においては、単なる人権処理手順及び論証パターンの吐き出しではなく、出題された事案と類似したリーディングケースを見つけ出し、その判旨に当該事案を具体的に適用する作業が要求されている。その意味でも本書は有用だろう。全3部、全18章。A5判、552頁。 浦部法穂『憲法学教室』日本評論社(2016年3月・第3版)……芦部門下。記述は論理的で明快だが、独自説が多い。砕けた表現が多いのも特徴の一つ。他の基本書に比して左派色がとりわけ強い。他の基本書よりも多くの頁数を割いた第6章「平和のうちに生きる権利」(419〜503頁)は、本書の最も特徴的な箇所であろう。電子書籍版あり。序章(憲法というものの考え方)+全7章。A5判、636頁。 渋谷秀樹『憲法』有斐閣(2017年5月・第3版)……芦部門下。人間の生活領域に対応する分類に基づいた独自の憲法体系を採る。学説の対立が鮮明になるような記述が特徴。註の文献引用が便利。戸松秀典による書評あり。電子書籍版あり。序論+全4編、全15章。A5判、836頁。 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法1 人権・2 統治(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(いずれも、2022年3月・第8版)……芦部門下(渋谷)と小嶋門下(赤坂)による共著。初学者、憲法が苦手な学生が通読用として使用するのに最適な選択肢のひとつ。電子書籍版あり。四六判、432頁・456頁。 毛利透・小泉良幸・淺野博宣・松本哲治『憲法I 統治・II 人権(LEGAL QUEST)』有斐閣(2022年3月・第3版、2022年4月・第3版)……情報量が多く、時事的な話題にも富むが、叙述に難あり。学説・自説等の整理区別・引用にも精細さを欠く。他の教科書、特に芦部・佐藤などの単著教科書との併読が吉。統治に比べて人権はコンパクトにまとまっているものの、やはり共著の弊害が強く出ている。全9章・全12章。A5判、434頁・476頁。 大石眞『憲法概論I・II』有斐閣(いずれも、2021年12月)……『憲法講義I・II』に大幅な加筆・リライトを施した本格的体系書。判例・学説の端的な紹介が、頭の整理に資する。『憲法判例(第8版)』の判例番号が適宜記されている。Iで総論・統治、IIで人権を扱う。縦書き。A5判、584頁・502頁。 大石眞『憲法講義I・II』有斐閣(I 2014年3月・第3版、II 2012年10月・第2版)……小嶋和司門下。Iで統治、IIで人権を扱っている。比較的穏当な保守。判例実務を尊重。集団的自衛権については肯定説を採る。専門である議会法、信教の自由あたりの記述は詳しい。旧来の説では解決困難であった問題をブレイクスルーしようとする。第1部(憲法と政治制度):序章(憲法と憲法学)+全8章、第2部(人権と権利保障):序章(基本権の観念と歴史)+全9章。A5判、386頁・346頁。 辻村みよ子『憲法』日本評論社(2021年3月・第7版)……杉原泰雄門下。人民主権(プープル主権)を発展させた「市民主権」を提唱。収録判例が多く、下級審からの流れがコンパクトに整理されている。最終的には少数説を採ることが多いが、学説の整理は客観的で丁寧。電子書籍版あり。序章(憲法を学ぶ視点)+全3部、全20章。A5判、604頁。 松井茂記『日本国憲法』有斐閣(2022年12月・第4版)……プロセス的憲法観。自然権思想をベースとする芦部説を中心とした通説や長谷部説と対立している。電子書籍版あり。全4部、全18章。A5判、636頁。他に、学生向けの参考書として『日本国憲法を考える (大阪大学新世紀レクチャー)』大阪大学出版会(2022年8月・第4版)等がある。 阪本昌成『憲法1 国制クラシック・2 基本権クラシック』有信堂高文社(2011年8月・全訂第3版、2011年9月・第4版)……ネオリベラリズムの立場から書かれている。著者はハイエクやハートの理論に影響を受けており、法哲学的な憲法理論が展開され、その議論はかなり高度で示唆に富むものとなっている。A5判、320頁・336頁。他に、『ベーシック憲法 憲法学の基礎と周辺』弘文堂(1989年4月)等がある。また、著者の手になる本格的な体系書として、『憲法理論Ⅰ』成文堂(2000年・補訂第3版)、『同Ⅱ』成文堂(1993年)、『同Ⅲ』成文堂(1995年)がある。 初宿正典『憲法2 基本権(法学叢書)』成文堂(2010年10月・第3版)……日本国憲法の保障するさまざまな“基本権”を、ごく最近の判例までフォローして解説した体系的教科書。体系は基本的に芦部に則っているので、芦部の参考書としては非常に使いやすい。判例の引用と評釈も丁寧な隠れた逸品。中でも信教の自由の解説は秀逸。全3編、全12章+補論(平和的生存権)。A5判、566頁 赤坂正浩『憲法講義(人権)(法律学講座)』信山社(2011年4月)……人権のみ。各種人権について、細かく合憲性審査基準を提示しているのが特徴。記述は比較的あっさり。全30章。A5変型判、408頁。 工藤達朗・畑尻剛・橋本基弘『憲法』不磨書房(2014年2月・第5版)……全4編、全19章。A5変型判、424頁。 大日方信春『憲法I 総論・統治機構論』『同II 基本権論』有信堂高文社(I:2015年4月、☆II:2024年3月・第3版)……A5判、392頁・416頁。 川岸令和ほか『憲法』青林書院(2016年3月・第4版)……執筆者(川岸令和・遠藤美奈・君塚正臣・藤井樹也・高橋義人)。川岸は2022年に死去。全16章。A5判、427頁。 松浦一夫・奥村公輔編著『憲法概説』成文堂(2020年10月・第2版)……防衛大学校の教科書であった、西修編著『エレメンタリ憲法』成文堂(2008年6月)の実質的改訂版。防衛大学校の教員を中心とした著作ということもあってか、憲法の基本書としては珍しく、集団的自衛権について肯定説を支持する。リベラル的な論調の多い憲法の基本書の中、本書は穏健な保守で、判例・通説を図表を交えて淡々と説明しており、著者の思想が強く打ち出された書籍が苦手な者に向く。全28章。A5判、484頁。 本秀紀編『憲法講義』日本評論社(2022年3月・第3版)……民科系の執筆者が多いせいか、通説的憲法解釈から離れた政治的な主張が散見される。ただし、各論点の記述は丁寧。電子書籍版あり。序章+全3部、全15章。A5判、560頁。 永田秀樹・倉持孝司・長岡徹・村田尚紀・倉田原志『講義・憲法学』法律文化社(2018年4月)……ドイツ憲法の理論を踏まえた概説書。三段階審査の解説などが特に有用。全7章。A5判、368頁。 大林啓吾・岡田順太・白水隆・鈴木敦編著『憲法』法学書院(2019年3月)……全4章、全34Lecture。A5判、468頁。 植野妙実子『基本に学ぶ憲法』日本評論社(2019年4月)……電子書籍版あり。全33章。A5判、492頁。 君塚正臣『憲法——日本国憲法解釈のために』成文堂(2023年2月)……「法律学としての憲法学習の基軸となる教科書」を目指して書かれた本。重要判決については、事実・判旨・少数意見および有力な批判・コメントがまとめられている。図解も豊富で、論述のコツまで書かれている。特に審査基準の解説は明快で、著者の専門性が生かされている。もっとも、幸福追求権の性格につき、一般的自由説を多数説/人格的自律説を有力説(169頁)としている点などは疑問。制度的保障(121頁以下)の説明についても、少なくともシュミットの制度体保障論との間には距離がある。また、143頁の流鏑馬の写真は、おそらく余計&画質が悪い。著者なりの遊び心だろうか。なお、本書の記述の大部分は、君塚「教科書的憲法記述⑴〜⑷」横浜法学29巻2号〜30巻2号、図表の大部分は、同「〈資料〉教科書的憲法記述図表」横浜国際社会科学研究26巻2号にて公表されている(いずれもWeb上で閲覧可能)。全18章。A5判、656頁。 ☆柳瀬昇『憲法(ライブラリ今日の法律学1)』新世社(2023年8月)……A5判、416頁。 (古典) 芦部信喜『憲法学I・II・III』有斐閣(I:1992年12月、II:1994年1月、III:2000年12月・増補版)……法学教室で82回にわたって連載された「憲法講義ノート」を単行本化した、芦部による憲法の本格的体系書。学生向けの教科書として執筆された岩波『憲法』とは性格を異にする。記述が簡潔すぎるきらいのあった『憲法』の人権論を補うのに有用。脚注の参考文献欄が充実しているが、自説についての説明は意外に多くない。著者急逝により絶筆のため、収録内容は居住移転の自由まで。A5判、324頁・440頁・622頁。なお、芦部説をさらに掘り下げようとする場合、いわゆる「芦部三部作」と呼ばれる、『憲法訴訟の理論』有斐閣(1973年8月、オンデマンド版:2003年4月)、『現代人権論——違憲判断の基準』有斐閣(1974年8月、オンデマンド版:2004年8月)、『憲法訴訟の現代的展開』有斐閣(1981年11月、オンデマンド版:2012年12月)が有用。 高見勝利『芦部憲法学を読む——統治機構論』有斐閣(2004年11月)……統治機構論の体系書。「法学教室」誌上で32回に渡って連載された「芦部憲法講義ノート拾遺——統治の機構と作用」の単行本化。芦部の「憲法講義ノート」は未完で幕を閉じたが、統治機構論部分について、芦部の東大での講義録・講義ノート等をもとに、著者が素描した。芦部『憲法』の統治機構論を補うのに有用。また、初めに書かれている芦部の戦争体験は、芦部憲法学を理解するために有益。特に前半には、図が豊富に掲載されており、読んでいて楽しい。出版社品切れ。A5判、520頁。 伊藤正己『憲法(法律学講座双書)』弘文堂(1995年12月・第3版)……元最高裁判事。2010年に死去。全体として読みやすい文章で、丁寧な解説がなされている。芦部と同世代の学者であり、本書の内容も比較的古い方に属するが、芦部『憲法』の「行間」を埋めるのに本書は有益であり、副読本としてなお有用。人権制約の合憲性判断基準としての利益衡量論(とりわけ精神的自由権の制約における枠付けられた利益衡量)は判例の立場(千葉勝美元裁判官の見解)に親和的である。自説主張が控えめなので最高裁判事時代の少数意見集『裁判官と学者の間』有斐閣(1993年2月〔2001年12月:オンデマンド版〕)と併読すると吉。出版社品切れ。全11章。A5判、744頁。 戸波江二『憲法(地方公務員の法律全集)』ぎょうせい(1998年7月・新版)……芦部門下。著者が芦部憲法の原型である『国家と法』及び芦部憲法初版の執筆に関わっていることもあり、記述は基本的に芦部ベース(一部に少数説あり)。芦部憲法よりもほどよく掘り下げられた記述は芦部の行間を埋めるのにもちょうどよい。もともとは公務員の読本として執筆されたもののため、芦部よりも統治の部分に厚く、その記述は秀逸である。芦部亡き後の憲法基本書の代表となると思われたが、長らく改訂がなく、現在では半ば貴重書扱い。A5判、516頁。 奥平康弘『憲法III——憲法が保障する権利』有斐閣(1993年5月〔2005年8月:OD版〕)……著者は2015年に死去。A5判、488頁。 戸波江二・松井茂記・安念潤司・長谷部恭男『憲法(1)・ (2)(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(1 統治機構:1992年5月、2 人権:1992年10月)……豪華な執筆陣による概説書だが、30年以上改訂されておらず、内容はかなり古くなってしまっている。しかし、基礎的な論点についてはなお参照の価値あり。とりわけ安念執筆部分は、彼が今のところ単著の体系書を著していないこともあり貴重。全9章・11章。四六判、280頁・340頁。 小嶋和司『憲法概説』信山社(2004年10月・復刻版)……著者は1987年に死去。A5判、578頁。 阿部照哉『憲法(青林教科書シリーズ)』青林書院(1991年4月・改訂版)……A5判、314頁。 阿部照哉・池田政章・初宿正典・戸松秀典編『憲法1-4(有斐閣双書)』有斐閣(1 総論:1995年5月・第3版、2 基本的人権1:1995年2月・第3版、3 基本的人権2:1995年1月・第3版、4 統治機構:1996年1月・第3版)……四六判、274頁・280頁・248頁・364頁。 樋口陽一編著『ホーンブック 憲法』北樹出版(2000年5月)……隠れた名著。出版社品切れで、中古価格も高騰しているため入手しづらい。執筆者は、樋口陽一、安念潤司、長谷部恭男、石川健治、内野正幸、遠藤比呂通、渡辺康行。A5判、336頁。 長尾一紘『日本国憲法』世界思想社(2011年6月・全訂第4版)……著者は2019年に死去。著者の右派への転向に伴い、外国人参政権における「部分的許容説」といったリベラル色の強い学説を撤回するなど、第3版(1997年8月)とはほとんど別物と言ってよい内容となっている。法律論から離れた政治的な記述や少数独自説が多く、著者の興味ある事柄以外は記述が薄い。さらに、粗雑な論証や判例引用が目につく。もっとも、第3版及び『はじめて学ぶやさしい憲法』実務教育出版(1997年12月)の記述は精緻であり、特に後者はわかりやすいと一定の評価がある。A5判、344頁。 青柳幸一『憲法』尚学社(2015年2月)……新司初年度から2015年に至るまでの長きに渡り考査委員の中心人物として権勢を振るい続け、最後は試験問題漏洩が発覚して処罰された著者による概説書。人権部分は、同著者による『警備業実務必携 わかりやすい憲法(人権)』立花書房(2013年9月)とほぼ同内容である。判例の引用が多く、その重要部分に著者自らアンダーラインを付しているのが特徴。2016年2月に新版が刊行予定であったが、先の事件のため立ち消えとなった。正誤情報(PDF)あり。出版社品切れ。A5判、430頁。 【その他参考書】 曽我部真裕・赤坂幸一・新井誠・尾形健編『憲法論点教室』日本評論社(2020年2月・第2版)……有力若手・中堅が憲法の論点について平易に解説した著書。はしがきにあるように、その内容は、学生のFAQへの回答といえる。ただし、想定されている「学生」のレベルはやや高い。例えば、判例の事案や通説の理解は議論の前提となっている。いずれかの基本書と判例集は、座右において読みたい。電子書籍版あり。A5判、224頁。 樋口陽一『憲法』勁草書房(2021年3月・第4版)……憲法の体系書ではなく、日本国憲法とその運用を近代憲法史・憲法思想史の流れの中に位置づけてとらえ、憲法学についての著者なりの「見とおし図」を提示したもの。そのため、司法試験的な観点からは、内容の網羅性の点で基本書には向かないが(もっとも、択一で問われるような重要なポイントはきちんと押さえている)、参考書・教養書としては読むに値する良書。本書以外ではなかなか目に触れない、芦部などが行間で当然の前提にしている歴史的・比較法的知識を補うことができる。通説・判例の問題点を的確に指摘している箇所も多い。第3版までは創文社から刊行されていたが出版社廃業のため第4版は勁草書房から出版。電子書籍版あり。縦書き。四六判、528頁。なお、司法試験的にはオーバースペックであるが、同著者による体系書としては、『比較憲法(現代法律学全集)』青林書院(1992年2月、全訂第3版)、『憲法I(現代法律学全集)』青林書院(1998年1月)、『国法学——人権原論(法律学大系)』有斐閣(2007年3月・補訂)がある。執筆者も教科書として意図していないため、その内容は大陸法系の憲法学の理解を追求し、極めて高度であるが、樋口憲法学の理解のためには必須である。他に、雑誌『法律時報』にて、「幻の創文社版『憲法綱要』とその批判的検討」と題する連載が展開されている(2023年1月号〜)。こちらも高度ではあるが、樋口憲法学を現代的視点から見ることができる重要な連載である。 大石眞・石川健治編『憲法の争点(新・法律学の争点シリーズ3)』有斐閣(2008年12月)……10年ぶりに改訂された。執筆者も大幅に入れ替わったが、抽象的なテーマが多い。B5判、348頁。 小山剛・駒村圭吾編『論点探究憲法』弘文堂(2013年6月・第2版)……有力若手・中堅が執筆。演習書と銘打ってあるものの、論文集として読んだほうが適切。体系書で深く論じられない問題について解説。A5判、412頁。 安西文雄ほか『憲法学の現代的論点』有斐閣(2009年9月・第2版)……高橋弟子による論文集。高橋説の補充に使える部分もあるが、著者の独自説も強い。執筆者(安西文雄・青井未帆・淺野博宣・岩切紀史・木村草太・小島慎司・齊藤愛・佐々木弘・宍戸常寿・林知更・巻美矢紀・南野森)。A5判、500頁。 内野正幸『憲法解釈の論点』日本評論社(2005年2月・第4版)……55年組を代表する著者による、憲法解釈の入門書。薄目ではあるが、重要な論点は抑えている。A5判、258頁。 井上典之・小山剛・山元一『憲法学説に聞く』日本評論社(2004年5月)……編者の内の1人とゲストの学者が対談し、編者は通説の立場からゲストの学説について質問を投げかけ、それに対してゲストが答える形式。ゲスト陣は、戸波、戸松、市川、大石、長谷部、初宿、棟居、内野、浦部、辻村、高橋、岡田、松井、岩間、浦田と豪華。それぞれの学説に興味がある場合、また、学説の立場から判例や通説の欠点を見極めたいときに本書は役に立つだろう。A5判、288頁。 高見勝利・岡田信弘・常本照樹編『日本国憲法解釈の再検討』有斐閣(2004年6月)……A5判、452頁。 只野雅人『憲法の基本原理から考える』日本評論社(2006年3月)……「法学セミナー」連載に加筆修正して単行本化したもの。「国民主権」などの基本原理を近代憲法の根源から考え、現代への展開と今日の憲法状況を対置してみることで憲法への理解を深める一冊。A5判、312頁。 杉原泰雄編集代表、山内敏弘・浦田一郎・辻村みよ子・阪口正二郎・只野雅人編集委員『体系 憲法事典』青林書院(2008年7月・新版)……体系書の特色と項目辞典の機能を併せ持つ大型『憲法事典』。旧版『体系憲法事典』(田上穰治編)のコンセプトが継承される一方、編者、執筆者、編成、執筆内容等すべてが一新された。A5判、890頁。 野中俊彦・浦部法穂『憲法の解釈I ・II・III』三省堂(I 総論:1989年9月、II 人権:1990年12月、III 統治:1992年 5月)……憲法解釈の学習書。A5判、336頁・344頁・320頁。 佐藤幸治・中村睦男・野中俊彦『ファンダメンタル憲法』有斐閣(1994年7月)……「法学教室」に連載された「ファンダメンタル憲法」に、書下ろしを加えて一書にまとめたもの。昔の司法試験の種本。論点解説集。比較的薄めだが、内容は明快かつ簡潔。一行問題時代なので、宍戸・展開、木村・急所などの論点よりも易しいが、一読の価値有り。A5判、364頁。 南野森編著『憲法学の世界』日本評論社(2013年7月)……気鋭の研究者達が、既に憲法を一通り学んだ学生を対象として憲法学の主要テーマについて掘り下げて解説した論考集。A5判、288頁。 リチャード・H・ファロン・Jr著、平地秀哉、福嶋敏明、宮下紘、中川律訳『アメリカ憲法への招待——The Dynamic Constitution』三省堂(2010年8月)……本書はアメリカ憲法の入門書であるが、とくに第1部 合衆国が保障する個人の権利、はわが国の違憲審査基準論を理解する上で役に立つ。原著:"The Dynamic Constitution An Introduction to American Constitutional Law and Practice"(本書は初版の邦訳。原著は現在第2版が出ている。) A5判、376頁。 新井誠・小谷順子・横大道聡編著『地域に学ぶ憲法演習(法セミ LAW ANGLE シリーズ)』日本評論社(2011年11月)……A5判、320頁。 新井誠編著『ディベート憲法』信山社(2014年3月)……憲法をディベートで学ぶテキスト。四六判、280頁。 大林啓吾・見平典編著『憲法用語の源泉をよむ』三省堂(2015年7月)……本書は、原則として、憲法の基本書(主に芦部信喜『憲法〔第6版〕』(岩波書店、2016年)や佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)等が想定されている)に登場する外来用語(56の言葉)を取り上げ、その解説をしているもの。A5判、304頁。 松井茂記『インターネットの憲法学』岩波書店(2014年12月・新版)……全13章。A5判、502頁。 松井茂記編著『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』有斐閣(2016年5月)……いわゆる「55年組」の憲法学者らが、最先端の憲法問題について自由度高く論じた論考集。四六判、320頁。 宍戸常寿・林知更編『総点検 日本国憲法の70年』岩波書店(2018年3月)……A5判、320頁。 樋口陽一・石川健治・蟻川恒正・宍戸常寿・木村草太『憲法を学問する』有斐閣(2019年4月)……2016年に大学セミナーハウスで開催されたセミナーの模様を整理・編集したもの。全4部。四六判、394頁。 曽我部真裕、見平典編著『古典で読む憲法』有斐閣(2016年3月)……古典的テクスト(いずれも法学徒ならば教養として読んでおくべき基本的文献)を手掛かりとして憲法の思想水脈をたどる。発展的学習(司法試験合格には直接的に役立つものではないが。)のための文献ガイドとしても至便。全2部、全20章。四六判、348頁。 曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説』弘文堂(2019年5月・第2版)……「情報法」の基本書。プライバシー権や放送の自由など、憲法学と関連する論点も多い。全5編、全11章。A5判、480頁。 近藤敦『人権法』日本評論社(2020年7月・第2版)……人権条約適合的解釈(はしがき)という立場から書かれた本。国際条約の視座を取り入れた憲法解釈は、時に新鮮である。脚注の参考文献が充実しているのもありがたい。他方、そうした方針故に多くみられる条約に関する記述は、司法試験には直接関係しない。あくまでも「参考書」の一つとすべきであろう。A5判、404頁。 大沢秀介・葛西まゆこ・大林啓吾編著『憲法.com』成文堂(2010年7月)……全17章。A5判、300頁。 大沢秀介・大林啓吾編『確認憲法用語』成文堂(2014年12月)……A5判、137頁。 安念潤司・小山剛・青井未帆・宍戸常寿・山本龍彦編者監修『憲法を学ぶための基礎知識 論点 日本国憲法』東京法令出版(2014年11月・第2版)……日本国憲法の意義や論点が1テーマにつき2ページごとに集約。第二版では、集団的自衛権、特定秘密保護法、国家安全保障会議、ヘイト・スピーチ、改正国民投票法など、最新の論点を追加。全国学校図書館協議会選定図書。B5判、264頁。 斎藤一久・堀口悟郎編『図録 日本国憲法』弘文堂(2021年12月・第2版)……資料集(約350点の写真・図解)。全30項目。B5判、144頁。 木村草太・西村裕一『憲法学再入門(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2014年3月)……法学教室連載の単行本化。一度憲法学を学修した者が曖昧な理解となりがちな部分について、基本知識に立ち返ることで正確な理解を促すことを目的としている。木村が統治機構、西村が人権を担当。A5判、218頁。 小嶋和司・大石眞『憲法概観(有斐閣双書)』有斐閣(2011年1月・第7版)……小嶋は1987年に死去。基本書とは性格が異なるが、入門書としても極めて難解という位置づけの難しい本。第3版(1986年4月)までは小嶋の手による。小嶋の死去後、第7版まで版を重ねる間に、大石による加筆が全頁にわたりなされた。小嶋は、第3版の「序」において「憲法学を法学として構築すること、国際的に通用する学問水準に立って日本憲法を剖解すること、日本の現在にしか通用しないような議論をしないことを、学問上の念願としている」と宣言している。その表れか、人権及び統治にわたって、各制度につき、まず憲法の条文を挙げ、その後各々の制度をコンパクトに説明している。コンパクトではあるが、示唆に富む硬派で深い本である。宮沢に対する批判に溢れており、弟弟子の芦部信喜に注意されたという曰くつき。四六判、312頁。大石眞が本書を評して曰く、「この書物は、僅か二〇〇頁弱の小冊ですが、憲法学の対象は実質的意味の憲法であるという立場から、練りに練って纏められた冗文のない体系的な憲法論となっていて、その立論の簡潔と内容の濃縮によって、故佐々木惣一博士の名著『日本国憲法論』の系譜に属するものと思われます」(『憲法断章——観照への旅』信山社(2011年)219頁)、と。なお、小嶋による見解を深めたい場合には、『憲法概説』信山社(2004年・復刻版)がよい。 山本龍彦・横大道聡編著『憲法学の現在地——判例・学説から探究する現代的論点』日本評論社(2020年12月)……主として若手・中堅の研究者が、冒頭に設けられた一行問題を起点として、憲法学上の主要論点についてSNSやGAFAといった時事的なテーマも織り込みつつ解説した中級者以上向けの論点解説集。A5判、456頁。 谷口真由美編著『資料で考える憲法』法律文化社(2018年5月)……A5判、302頁。 髙山裕二『憲法からよむ政治思想史——立憲主義の実践に向けて』有斐閣(2022年9月)……四六判、321頁。 〔違憲審査論〕 岡山大学法科大学院公法系講座編著『憲法 事例問題起案の基礎』岡山大学出版会(2018年5月)……学生が司法試験公法系第1問の答案を作成する練習をする際、その書き方で困ったときに参照するTip集ないしFAQ集。そのため執筆者の学問上の見解は封印し、判例または通説を前提とした記述に徹している。また三段階審査論ではなく違憲審査基準論を前提にした説明をしている。ホームラン答案ではなく、とにかく球に当てるレベルの答案を書けることを目標として作成した資料(以上、はしがき)。人権分野における合憲性審査の主要な判断枠組みを網羅しており、ひととおり憲法学修を終えた人が一読すれば役に立つ内容が必ず含まれていると思われる。まずはここから。通称「岡大本」。全9章。A5判、114頁。 ☆齊藤正彰『力点憲法』信山社(2024年4月)……ジャンルとしては憲法全範囲にわたる副読本であるが、全31章のうち26章を人権分野に充てて「力点」を置いていること、250以上の図解を用いていること、勉強を始める段階では見通しが効いている審査基準論の方が(比例原則より)好都合ではないかという実践的な配慮がなされていること等から、ロー生が違憲審査を中心に知識を再確認するのに向いている。各章の解説いずれも比較的客観的な内容でオススメできる。全31章。A5変型判、268頁。 小山剛『「憲法上の権利」の作法』尚学社(2016年8月・第3版)……ドイツの理論である三段階違憲審査論を簡潔にわかりやすく叙述。「三段階審査で答案を書くためのマニュアル本」といった趣。三段階審査で答案を書きたい受験生は必読。第3版では、新版(2011年9月)刊行以降の新判例(堀越事件、婚外子法定相続分平成25年決定、夫婦同氏規定判決、再婚禁止期間訴訟等)が織り込まれ、権利性の否定、制度準拠審査、「事情の変化」論の記述が大幅に改められた。全8章。 A5判、298頁。 駒村圭吾『憲法訴訟の現代的転回 憲法的論証を求めて(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2013年9月)……法学セミナーにおける同名連載を書籍化。アメリカ流の違憲審査基準論にいかにドイツ流の三段階審査の利点を取り入れるかというスタンスで書かれている。司法試験受験生の「学んだものをどうやって答案にすればいいのか?」という問いに一つの回答を示したもの。自由権については判例を類型別にまとめており、三段階審査に則って判例が整理されている。自由権だけではなく平等権や生存権などの三段階審査が一般的には妥当しない人権についてもどのような審査が妥当するのかも提示してくれているので親切。ただし、香城理論の今後や石川健治の三段階審査の順序に対する問題提起への応答など、必ずしも受験対策とは関連しない分野についての言及もある点については注意が必要。全4部、全23講。A5判、442頁。 芦部信喜『憲法判例を読む(岩波セミナーブックス)』岩波書店(1987年5月)……芦部の市民セミナーでの講演を収録。古いが芦部違憲審査基準論の入門書として今でも広く読まれている。四六判、272頁。 大島義則『憲法の地図——条文と判例から学ぶ』法律文化社(2016年4月)……『憲法ガール』の著者による著作。主要な人権条項(13条、14条1項、19条、20条、21条、22条1項、23条、25条、29条)につき、リーディングケースとなる最高裁判例、そして調査官解説を素材に、いかなる判例法理が形成されているかを模索。各章末に判例のポイントを整理した、わかりやすい樹形図(憲法の地図)と主要最高裁判例の判決抜粋が載っているのは便利。全9章。A5判、194頁。 千葉勝美『違憲審査——その焦点の定め方』有斐閣(2017年5月)……最高裁においていわゆる多数意見を構成し、憲法判例の形成に関与した元最高裁判事による「司法判断を巡る随想」(はしがき)。著者が関わった重要な最高裁判例について著者なりの内在的理解を示す。著者の立場が最高裁の立場そのものではないことにつき注意が必要だが、それを踏まえて読めば「司法部の立ち位置」を知るために参考になるだろう。同著者の『憲法判例と裁判官の視線——その先に見ていた世界』有斐閣(2019年10月、四六判、276頁)も参照。四六判、214頁。 伊藤健『違憲審査基準論の構造分析』成文堂(2021年3月)……論文集であるが、3つの審査基準(厳格審査基準・厳格な合理性の基準・合理性の基準)につき、それぞれいかなる構成要素からなるかを論じており、違憲審査基準論を正しく理解するのに有用と思われる。なお、著者はBEXA(司法試験予備校)の伊藤建弁護士とは別人。A5判、440頁。 〔憲法訴訟論〕 高橋和之『体系 憲法訴訟』岩波書店(2017年4月)……著者は日本の違憲審査論について、わが国の最高裁判所は憲法訴訟の体系をいまだ判例理論として形成しているとは言い難いとの認識から、アメリカやドイツなどの憲法訴訟「先進国」の理論に学びつつ、日本に適した分析枠組を構想し、それによる判例分析と裁判所による応答という展開を続けるべきであるとする(はしがきより)。これは、いかなる憲法秩序が形成されているかを主に探究する戸松とは力点の置き方が異なる。高橋説は、アメリカ的審査基準論の枠組みに優位性を認め、これを基本に据えながら、ドイツの理論(保護領域と介入の区別、比例原則における段階理論)を採り入れていこうとする立場。なお、私人間における人権の無効力説、司法権の定義、内容確定型人権・内容形成型人権の区分などの独自説、文面上判断・適用上判断という(独自の)用語法などが前提とされていることには注意を要する。序章(憲法訴訟の意義)+全4章。A5判、432頁。同著者による憲法訴訟に関する著書として他に『憲法判断の方法』有斐閣(1995年3月、四六判 、290頁)がある。 戸松秀典『憲法訴訟』有斐閣(2008年3月・第2版)……憲法訴訟の体系書。訴訟の中で憲法が問題になる場面、問題になった後の処理について詳細に分析。判例の採る違憲審査基準についての分析が秀逸。著者の自説は極めて控えめ。序章(憲法訴訟と憲法訴訟論)+全4編、全16章。A5判、522頁。 新正幸『憲法訴訟論(法律学の森)』信山社(2010年8月・第2版)……オルタナティブ憲法訴訟論体系書。第1部(司法権と裁判所)と第2部(憲法訴訟)の全2部、全15章。A5変型判、728頁。 (古典) 芦部信喜編『講座憲法訴訟 1-3』有斐閣(1987年4月-6月。OD版対応)……憲法訴訟に関する論文集。A5判、420頁、396頁、338頁。 戸松秀典、野坂泰司編『憲法訴訟の現状分析』有斐閣(2012年4月)……講座憲法訴訟に引き続く憲法訴訟の論文集。A5判、474頁。 【入門書】 新井誠・曽我部真裕・佐々木くみ・横大道聡『憲法 I 総論・統治(日評ベーシック・シリーズ)』『同 II 人権(同)』日本評論社(I:2021年3月・第2版、II:2021年3月・第2版)……憲法学の標準的見解を丁寧に説明した良書。初学者であっても無理なく通読できるように工夫された、分かりやすく読みやすい記述によってスラスラと読み進めることができる。また、判例や通説的見解を中心として解説されているため、オーソドックスな憲法解釈を学修することができる。応用的な部分については適宜コラムで触れられており、入門書でありながらある程度の網羅性も備えている点も優れている。総じて、入門書としては最良の選択肢の一つと言えよう。横大道ほか『憲法判例の射程』とは執筆者が一部被っており相性が良いことから、中・上級者にとっても、『射程』と組み合わせて使えば、まとめ用として効果を発揮すると思われる。電子書籍版あり。全15章・15章。A5判、280頁・296頁。 青井未帆・山本龍彦『憲法1 人権(有斐閣ストゥディア)』『同2 総論・統治(同)』有斐閣(2016年4月、☆2022年10月)……全2編、全12章。A5判、282頁・274頁。 戸松秀典『プレップ憲法(プレップ・シリーズ)』弘文堂(2016年2月・第4版)……全3部、全9章。四六判、202頁。 戸松秀典『プレップ憲法訴訟(プレップ・シリーズ)』弘文堂(2011年10月)……序章(憲法訴訟の目的と役割)+全3部、全9章+終章(憲法訴訟の課題と活用)。四六判、148頁。 伊藤正己『憲法入門(有斐閣双書)』有斐閣(2006年3月・第4版補訂版)……元最高裁判事による入門書。著者は2010年に死去。全10章。四六判、286頁。 初宿正典・高橋正俊・米沢広一・棟居快行『いちばんやさしい憲法入門(有斐閣アルマInterest)』有斐閣(2020年3月・第6版)……具体的なケースをもとに、憲法について平易に説く。第6版において、ブラック校則問題など近時の話題も織り込まれた。全22Theme。四六判、272頁。 棟居快行・松井茂記・赤坂正浩・笹田栄司・常本照樹・市川正人『基本的人権の事件簿——憲法の世界へ(有斐閣選書 )』有斐閣(2019年9月・第6版)……四六判、290頁。 笹田栄司・原田一明・山崎友也・遠藤美奈『トピックからはじめる統治制度——憲法を考える』有斐閣(2019年9月・第2版)……全23Unit。四六判、270頁。 長谷部恭男『憲法講話——24の入門講義 』有斐閣(2022年2月・第2版)……有斐閣のHPでは「やさしい入門書」として位置付けられているが、その記述のレベルは高い。例えば、第9講「学問の自由」の記述は、長谷部編『注釈日本国憲法⑵』の長谷部執筆箇所(480頁以下)を簡略化したものとなっている。全24講+文献案内、日本国憲法〔全文〕。縦組み。四六判、466頁。 駒村圭吾編著『プレステップ憲法(プレステップシリーズ 17)』弘文堂(☆2024年2月・第4版)……全15章。B5判、184頁。 毛利透『グラフィック憲法入門(グラフィック[法学]2)』新世社(2021年2月・第2版)……入門書。豊富な図表や、論点を簡潔にまとめた記述は、学習が進んだ時点での頭の整理にも有益。全16章。2色刷。A5判、264頁。 初宿正典・大沢秀介・高橋正俊・常本照樹・高井裕之編著『目で見る憲法(「目で見る」シリーズ)』有斐閣(2018年3月・第5版)……B5判、118頁。 水島朝穂『18歳からはじめる憲法(〈18歳から〉シリーズ )』法律文化社(2016年5月・第2版)……全3部、全39項目。B5判、128頁。 宍戸常寿編『18歳から考える人権(〈18歳から〉シリーズ)』法律文化社(2020年11月・第2版)……B5判、106頁。 右崎正博・加藤一彦・石川多加子・小林直樹『事例で学ぶ憲法』法学書院(2018年4月・第2版)……A5判、324頁。 橋本基弘『日本国憲法を学ぶ』中央経済社(☆2023年3月・第3版)……本書は、憲法について自ら考えるための素材を提供することを目的としており、読者としては学生や市民が想定されている。豊富な図が嬉しい。筆者の学部における講義ノートがベースとなっている。A5判、384頁。 只野雅人・松田浩編 『現代憲法入門』法律文化社(2019年5月)……旧版にあたる山内敏弘編『新現代憲法入門』(法律文化社、2009年・第2版)の改訂新版。全4部、全19章。A5判、396頁。 君塚正臣編『高校から大学への憲法』法律文化社(2016年4月・第2版)……全12章。A5判、220頁。 君塚正臣編『ベーシックテキスト憲法』法律文化社(2017年4月・第3版)……全3部、全18章。A5判、352頁。 君塚正臣編『大学生のための憲法』法律文化社(2018年3月)……全3部、全18章。A5判、342頁。 小泉洋一ほか『憲法の基本』法律文化社(2016年4月・第3版)……全3編、全25章。A5判、328頁。 齋藤康輝・高畑英一郎編『憲法(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2017年4月・第2版)……全21章。A5判、300頁。 工藤達朗編著『よくわかる憲法(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ )』ミネルヴァ書房(2013年5月・第2版)……全3部、全17章。B5判、240頁。 加藤隆之『人権判例から学ぶ憲法』ミネルヴァ書房(2014年4月)……序章(法律学からの紛争解決)+全5部、全36講。A5判、384頁。 裁判所職員総合研修所監修『憲法概説』司法協会(2010年2月・再訂版)……全2編、全11章。A5判、142頁。 棟居快行『憲法フィールドノート』日本評論社(2006年4月・第3版)……判例の事案を紹介し、各審級における判断を検討した上で、著者の考え方が述べられる。筆致が極めて軽快で、サラサラ読める。全16章。A5判、228頁。 赤坂正浩・井上典之・大沢秀介・工藤達朗『ファーストステップ憲法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2005年5月)……全24章。A5判、380頁。 笹田栄司・井上典之・大沢秀介・工藤達朗『ケースで考える憲法入門』有斐閣(2006年5月)……全4章。四六判、388頁。 戸波江二編『やさしい憲法入門』法学書院(2008年5月・第4版)……A5判、240頁。 中村睦男・佐々木雅寿・寺島壽一編著『はじめての憲法学』三省堂(2021年9月・第3版)……北大系の研究者による入門書。中村の死去に伴い、第3版より佐々木と寺島が新たに編者に加わった。全23講。A5判、320頁(本文294頁)。 松浦一夫編著『憲法入門』三和書籍(2012年3月)……全14章。A5判、323頁。 松井幸夫・永田秀樹編『憲法教室』法律文化社(2012年4月)……阿部照哉編『新憲法教室』(1997年)の全面的改訂版。全30講3部構成(総論/基本的人権/統治の原理・機構・作用)。四六判、328頁。 岡田信弘『事例から学ぶ日本国憲法』放送大学教育振興会(2013年3月)……放送大学の教材。A5判、248頁。 横田耕一・高見勝利編『ブリッジブック憲法( ブリッジブックシリーズ)』信山社(2003年1月)……憲法初学者の理論入門書。四六判、328頁。 大沢秀介『憲法入門』成文堂(2003年10月・第3版)……A5判、408頁。 大沢秀介編著『はじめての憲法』成文堂(2003年3月)……B5判、250頁。 君塚正臣・藤井樹也・毛利透『VIRTUAL憲法』悠々社(2005年11月)……全20講。A5判、316頁。 新井誠・高作正博・玉虫由樹・真鶴俊喜『憲法学の基礎理論』不磨書房(2006年6月)……A5変型判、344頁。 片桐直人・井上武史・大林啓吾『一歩先への憲法入門』有斐閣(2021年10月・第2版)……高校から大学への橋渡しとなる入門書。全30Unit。A5判、326頁。 曽我部真裕・横山真紀編『スタディ憲法』法律文化社(☆2023年3月・第2版)……全15章。A5判、248頁。 井上典之編『「憲法上の権利」入門』法律文化社(2019年6月)……全18Chapter。A5判、256頁。 ☆新井誠・上田健介・大河内美紀・山田哲史『世界の憲法・日本の憲法——比較憲法入門』有斐閣(2022年7月)……四六判、304頁。 (一般読者向け) 大林啓吾・小林祐紀編著『ケースで学ぶ憲法ナビ(ファーストステップ教養講座)』みらい(2021年4月・第2版)……全3編、全10章。B5判、224頁。 井上典之編『憲法の時間』有斐閣(2022年2月・第2版)……全5編。四六判、292頁。 渋谷秀樹『憲法への招待(岩波新書)』岩波書店(2014年2月・新版)……敬体と常体が混在する独特の文体。新書判、254頁。 樋口陽一『憲法入門』勁草書房(2017年2月・6訂)……全15章。四六判、232頁。 長谷部恭男『憲法とは何か(岩波新書)』岩波書店(2006年4月)……新書判、193頁。 長谷部恭男『憲法入門』羽鳥書店(2010年1月)……全16章。四六判、188頁。 長谷部恭男『日本国憲法』岩波書店(2019年1月)……憲法の体系書ではなく、戦後日本の憲法体制の理解のため、日本国憲法及びその他関連文書を集め、解説を付したもの。日本国憲法のほか、英文日本国憲法、大日本帝国憲法、パリ不戦条約(戦争7棄ニ関スル条約)、ポツダム宣言、降伏文書、日本国との平和条約、日米安全保障条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)を収録。文庫A6判、240頁。 長谷川正安『憲法とはなにか(新日本新書)』新日本出版社(2002年4月)……マルクス主義憲法学者。著者は2009年に死去。出版社品切れ。新書判、189頁。 日笠完治『憲法がわかった(わかったシリーズ)』法学書院(2015年6月・改訂第2版)……全160項目。A5判、432頁。 大林啓吾ほか編著『トピックス憲法』三省堂(2014年12月)……A5判、144頁。 デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント憲法』三省堂(2018年4月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの最新法学教養シリーズの憲法編。四六判、192頁。 【注釈書・コンメンタール】 長谷部恭男編『注釈日本国憲法(有斐閣コンメンタール)2・3〔全4巻(予定)〕』有斐閣(第2巻:2017年1月、第3巻:2020年3月)……憲法をめぐる最新の議論を踏まえた注釈書。A5判、第1巻(前文・§§1-9・§§96-103):頁、第2巻(§§10-24):548頁、第3巻(§§25-64):906頁、第4巻(§§65-95):頁。 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂『注解法律学全集 憲法I・II・III・IV』青林書院(I:1994年9月、II:1997年8月、III:1998年12月、IV:2004年2月)……同著者らの『注釈日本国憲法』上下巻(1984年3月、1988年9月)を4分冊にしてリニューアルしたもの。憲法のコンメンタールでは随一。判例・学説の紹介が非常に網羅的。いわゆる論点は完全に網羅されているうえ、非常に細かい点まで議論されている(『完全』というのは言い過ぎであろう)。たとえば、刑事手続上の人権については、詳しめの基本書でも言及がかなり乏しく、緊急逮捕や盗聴の合憲性が論じられる程度にとどまるが、このコンメンタールは違う。憲法34条の「抑留」には逮捕・勾引が含まれ、「拘禁」には勾留・鑑定留置が含まれるために、後者についてのみ、憲法34条後段により理由開示が保障されるなど、かゆいところに手が届く丁寧さ。(同様の記載は新基本法コンメンタールにある)。特に、佐藤幸治と中村睦男の執筆箇所は、学説資料へのリファーが充実しているので、調べものにも大変役に立つ。学習で疑問が生じて、本書を調べれば、疑問は氷解するだろう。本書1巻のうち、佐藤幸治が憲法13条について解説している箇所は、学者が自己決定権を論じる際に頻繁に引用されるなど、特に評価が高い。古本価格が高騰しており入手困難だが基本的な記述は旧版と変わらないので安価な旧版を手に入れても良い。A5判、428頁・410頁・288頁・373頁。 木下智史・只野雅人編『新・コンメンタール憲法』日本評論社(2019年6月・第2版)……日本国憲法の条文の趣旨を、関連法令、重要判例、学説を踏まえながら解説。第2版において、18歳選挙、天皇の生前退位、ヘイトクライムなど近時の問題もフォロー。なお、インターネット版・電子書籍版あり。A5判、840頁。 芹沢斉・市川正人・阪口正二郎編『新基本法コンメンタール 憲法(別冊法学セミナー)』日本評論社(2011年10月)……最新の判例・学説を網羅している。解説はいわゆるその分野の権威が執筆しているというものではなく、むしろあえて外しているようなところもあり、論点の本格的な検討という点では物足りない。しかし、その分、客観性が高く、情報量は多いので、受験用の参考書としては好適である。平成22(2010)年までの関連法改正に対応。B5判、552頁。 村上尚文原著、清野憲一改訂『憲法逐条注解』立花書房(2022年4月・2版)……元検察官が警察官のために執筆した逐条解説書。A5判、528頁。 辻村みよ子・山元一編『【概説】憲法コンメンタール』信山社(2018年6月)……憲法論議に向け必要な憲法条文の基礎知識・判断を培う概説コンメンタール。A5変型判、500頁。 渋谷秀樹『憲法を読み解く』有斐閣(2021年6月)……日本国憲法のコンパクトなコンメンタール。1ヶ条ずつ「趣旨」「背景」「内容(現時点における裁判例、学説)」を解説。四六判だが2段組みなので情報量は多い。事項索引・判例索引つき。四六判、258頁。 (古典) 法学協会編『註解日本国憲法 上巻合本、下巻合本』有斐閣(1953年11月、1954年2月・改訂版、OD版:2012年12月)……A5判、693頁、819頁。 美濃部達吉著、宮沢俊義補訂『新憲法逐条解説』日本評論社(1956年7月・増補版、2016年9月・復刻版、 〔2018年5月・新装復刻版〕)……美濃部が日本国憲法が公布されてまもなく法律時報に連載した逐条解説を単行本にまとめて刊行したもの。「その趣旨とするところは綿密な学問上の研究を目的とするよりは、むしろ平易簡明に憲法各条の趣旨を解説しようとするにある」(序文より)。美濃部の死後、宮沢によって増補がなされたが、本文の内容に変更はなく(ただし、漢字及びかなは、すべて当用漢字及び新かなづかいに改められるとともに、一部の漢字がかな書きに改められている)、増補部分は、註として「*」で明示されている。「増補の目的は、もっぱら本書第一版公刊以後の法令の変遷との関連において本文の記述をup to dateなものにするにあるから、それらの註では、当然のことながら、増補者の個人的意見は、いっさい述べられていない」(増補版はしがきより)。増補にあたっては、佐藤功および芦部信喜が協力している。四六判、232頁。 宮沢俊義著、芦部信喜補訂『日本国憲法』日本評論社(1978年9月・全訂)……B6判、880頁。 佐藤功『憲法(ポケット註釈全書4)上下』有斐閣(1983年4月、1984年4月・新版、OD版:2002年1月)……古いが内閣法制局などではいまなお参考に値する注釈書として使用されている。上巻は40条まで、下巻は41条以降を注釈。小B6判、630頁、736頁。 伊藤正己・尾吹善人・樋口陽一・戸松秀典『注釈憲法(有斐閣新書)』有斐閣(1995年5月・第3版)……新書判、262頁。 憲法的刑事手続研究会・編『憲法的刑事手続』日本評論社(1997年11月)……刑事人権規定(憲法31-40条まで)につき、憲法制定過程に遡って注釈解説した著書。したがって、英文草案や母法である米国憲法の解釈論に依拠するところが大きく、この点は賛否が分かれるところだろう。執筆者はいずれも日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会・調査研究部会に属する弁護士なので、立場の偏りがあり、いわゆる憲法学上の通説とは異なる立場を採るものの、資料的に参考になる。A5判、538頁。 芦部信喜監修『注釈憲法(1) 』有斐閣(2000年12月)……芦部信喜を監修者として、野中俊彦・戸松秀典・江橋崇 ・高橋和之・高見勝利・浦部法穂という豪華メンバーで編集作業にあたり、全6巻を刊行予定であったが、芦部の死去により1巻が出たのみとなっている。1巻は、総説から9条まで。なお、本書(本シリーズ)は、刊行が中止されたため、第2巻以降の刊行の予定はありません。とされている(有斐閣HP)。A5判、540頁。 【判例集・ケースブック】 〔判例集〕 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選I・II』有斐閣(いずれも、2019年11月・第7版)……おおむね6年ごとに改訂されている定番の判例集。第6版から「客観的な観点から当該判例の論理と意義を内在的に解説する」という編集方針に改められ、判例を内在的に分析した解説が増えたことによって、これまでと比べ多少使い勝手が良くなった。I〔基本的人権〕は、106件ほかAppendix 9件、II〔基本的人権、統治の原理・機関・作用〕は、102件ほかAppendix 10件を収載。B5判、236頁・228頁。 長谷部恭男・山口いつ子・宍戸常寿編『メディア判例百選』有斐閣(2018年12月・第2版)……第2版において、内閣官房報償費情報公開訴訟、住基ネット訴訟、NHK受信料訴訟、GPS捜査事件、インターネット検索結果削除事件など31件の重要判例を新収録。全124件。B5判、264頁。 戸松秀典・初宿正典編著『憲法判例』有斐閣(2018年3月・第8版)……解説なしの判例集。『憲法判例(有斐閣双書)』を46判から、読みやすいA5判にするなど、装いも新たに全面改訂されたもの。判旨引用は百選より長く、反対意見等の掲載も豊富。司法試験及び予備試験の短答式試験対策に最も有益な判例集であろう。章立ては憲法典に忠実なものとなっている(第1章:天皇、第2章:戦争放棄、第3章:国民の権利および義務、第4章:国会、第5章:内閣、第6章:司法、第7章:財政、第8章:地方自治の全8章)。第8版において、再婚禁止期間、夫婦同氏制、GPS捜査およびNHK受信料に関する最高裁判例など、2017(平成29)年までの重要判例が収録され、アップデートが図られた。A5判、658頁。 宍戸常寿・曽我部真裕編『判例プラクティス憲法』信山社(☆2022年11月・第3版)……通称『判プラ』。同シリーズの民法・刑法と同様、分野(全29項目)ごとに同一執筆者(淺野博宣・尾形健・小島慎司・宍戸常寿・曽我部真裕・中林暁生・山本龍彦)が解説。各項目冒頭の「判例の流れ」も含めて判例相互の理解に役立つと思われる。しかし、原則1頁1判例なので、判旨や解説などは短い(もっとも、2頁を割いている判例も70件以上ある。また、同シリーズの刑法と異なり、すべての判例に解説が付されている)。第3版では、ろくでなし子事件、岩沼市議会出席停止事件、那覇孔子廟事件、在外邦人国民審査権事件など、増補版(2014年6月)から43件増の408件を収録。B5判、546頁。 上田健介・尾形健・片桐直人『憲法判例50!(START UPシリーズ)』有斐閣(☆2023年3月・第3版)……厳選された50の最重要判例を解説した初学者向けの判例教材。予備校本のようなポップなレイアウトが特徴的。事案が詳細に示されている、判例の重要部分に下線が引いてある、「この判決が示したこと」が端的にまとめられているなど、一冊目の判例集に最適。前提知識が不要・または少なくて済むため、憲法の入門書にも好適。第2版において、最新の大法廷判決を含む3件が差し替えられた。電子書籍版あり。2色刷。B5判、186頁。 小泉良幸・松本哲治・横大道聡編『憲法判例コレクション』有斐閣(2021年11月)……上記の戸松・初宿編『憲法判例』と同じく、解説をほとんど付さないタイプの判例集。判例の重要度を5段階で表示している点が特徴。A5判、334頁。 大石眞・大沢秀介『判例憲法』有斐閣(2016年3月・第3版)……適度に解説が付せられた憲法判例集。全3部、全21章。A5判、438頁。 高橋和之編『新・判例ハンドブック 憲法』日本評論社(2018年1月・第2版〔☆2024年4月・第3版改訂予定〕)……事実・判旨・解説を、1頁(重要判例については見開き1頁)にまとめた判例集。もっとも、コンパクトに過ぎるため、判旨・解説ともに極めて短い。初学者には簡潔すぎてわかりにくく、上級者には物足りない、「帯に短し襷に長し」といった趣の本。第2版において、初版(2012年8月)刊行以降の判例が追加・差し替えられ、アップデートが行われた。231件を収録。四六判、282頁。 宍戸常寿編著『新・判例ハンドブック 情報法』日本評論社(2018年11月)……全228件を収録。四六判、272頁。 工藤達朗編『憲法判例インデックス』商事法務(2014年3月)……見開き2頁で、判例のエッセンスを関係図とともにコンパクトに整理され、182件の憲法判例を概観する。A5判、388頁。 初宿正典編著『基本判例 憲法25講』成文堂(2015年11月・第4版)……近代憲法成立史における日本国憲法の位置づけ、日本国憲法第3章の人権規定にかかわる基本的な判例などを主に取り扱う、大学の講義のためにまとめられたテキスト。A5判、478頁。 渋谷秀樹編著『憲法判例集(有斐閣新書)』有斐閣(2022年2月・第12版)……憲法に関わる重要判例を新書サイズに凝縮。約160件の判例の「事実の概要」「争点」「判旨」を示し、適宜コメントが付されている。婚外子差別違憲訴訟、再婚禁止期間違憲訴訟など、近年注目の最高裁判決ももれなく収録。要点を要約しており新書サイズなので便利。新書判、290頁。 中村睦男・常本照樹・岩本一郎・齊藤正彰編著『教材憲法判例』北海道大学出版会(☆2024年3月・第5版追補版)……通称「北大本」。判例の収録数は30テーマ60判例と多くはないが、主文と理由を原文のまま掲載しているほか、解説が大変充実しており、学習に至便。A5判、616頁。 佐藤幸治・土井真一編『判例講義 憲法I・II』悠々社(2012年4月)……やや古いものの、鋭い評釈が並ぶ。同一分野を一人(ないし二人)の著者が解説している点も、読みやすさに貢献している。Iの基本的人権は、平成22年1月までの108判例を収録。IIの基本的人権・統治機構は、平成21年11月までの128判例を収録。A5変型判、200頁・220頁。 右崎正博・浦田一郎 編『基本判例1 憲法』法学書院(2014年5月・第4版)……憲法の学習に欠かすことのできない重要基本判例238事件を、それぞれ1頁に〈争点〉〈事実〉〈判旨〉〈解説〉に分けて収録。A5判、296頁。 辻村みよ子・山元一・佐々木弘通編『憲法基本判例——最新の判決から読み解く』尚学社(2015年9月)……重要判例と(当時の)最新判例を取り上げ、相互の関係性を読み解く。玉石混交だが、精緻な分析も多く、なお有用。A5判、470頁。 大沢秀介・大林啓吾編『判例アシスト憲法』成文堂(2016年3月)……A5判、408頁。 櫻井智章『判例で読む憲法』北樹出版(2019年10月・改訂版)……全17章。A5判、318頁。 岡田順太・淡路智典・今井健太郎編『判例キーポイント憲法』成文堂(2020年4月)……若手の憲法学者が主要な判例を噛み砕いて解説。初学者のみならず、法学を専門に学んでいない学生でも理解できるよう工夫されている。判例の事案を図解している点も特徴。各項目のタイトルで滑っている感も無いではないが、教育的配慮が行き届いた好著。B5判、132頁。 柏﨑敏義・加藤一彦編著『新憲法判例特選』敬文堂(2021年4月・第3版)……A5判、504頁。 〔ケースブック〕 木下昌彦編集代表『精読憲法判例[人権編]』『同[統治編]』弘文堂(人権編:2018年2月、統治編:2021年5月)……日本版ケースブックを目指して作られた本書の特徴は、①最高裁の判決理由は、少数意見も含め、原則としてその全文を掲載していること、②多数意見については、原則としてパラグラフごとに解説を付しており、そこでは調査官解説の内容にできるだけ触れるようにしていること、③事案と判決内容についての設問を設けていること(以上、はしがき)。情報量は質・量ともに圧倒的で独修も可能だが、本書を消化できる学部生・ロー生がどれだけいるのかはなはだ疑問。ただし、判決全文の解説以外にも、各章冒頭の「とびら」、判決の論理構造の図解、「補足説明」と題されたコラムなど、有益な箇所は多い。通読せずとも、必要な箇所をつまむことが可能。難点は字が小さいこと。「人権編」は、73の最高裁判例を収載。編者(片桐直人・村山健太郎・横大道聡・西貝小名都・御幸聖樹・山田哲史)。「統治編」は、39の最高裁判例を収載。人権編:B5判、全23章・682頁。統治編:B5判、全13章・428頁。 長谷部恭男・中島徹・赤坂正浩・阪口正二郎・本秀紀編著『ケースブック憲法』弘文堂(2013年3月・第4版)……判旨のみ。設問が難解。独習はまず不可能であり、独習が可能な人も、司法試験対策としてはやる必要がないレベルである。ただし、検討の視点を得るためには有用。憲法ゼミなどで活用したい。全9章。A5判、944頁。 LS憲法研究会編『プロセス演習憲法(プロセスシリーズ)』信山社(2012年3月・第4版)……主要な判例について、第一審から最高裁まで当事者の主張とともに記載されている。特に石川健治執筆箇所は、高度でありつつも重要。B5判、680頁。 初宿正典・大石眞・高井裕之・松井茂記・市川正人『憲法Cases and Materials 人権基礎編・人権展開編・憲法訴訟』有斐閣(2005年8月、2005年8月、2007年5月)……判例の解説、文献の引用が充実。ケースブックの中では一番わかりやすく、独習にも使用できる。全15・16・19章。B5変型判、454頁・532頁・594頁。 初宿正典・大石眞編『憲法Cases and Materials 人権』有斐閣(2013年5月・第2版)……上記ケースブックの改訂にあたり人権分野を1冊に収めたもの。解説と独立して問いを設けるのではなく、Noteと題した解説の中に適宜問いが挿入されている。参考文献の引用も豊富。ただし、最新の収録判例が堀越事件・宇治橋事件と古くなっており、第3版の刊行が望まれる。全17章。B5変型判、724頁。 浦部法穂・戸波江二編著『憲法(法科大学院ケースブック)』日本評論社(2005年7月)……一審からの判決文に少し問題文を付加。解説はない。B5判、688頁。 高橋和之編、安西文雄・佐々木弘通・毛利透・淺野博宣・巻美矢紀・宍戸常寿『ケースブック憲法』有斐閣(2011年4月)……全28ユニット。B5変型判、890頁。 〔その他判例〕 横大道聡編著『憲法判例の射程』弘文堂(2020年8月・第2版)……重要判例を素材に、メイン型・対比型・通覧型という3つのアプローチから判例を分析して憲法判例の射程を抽出。憲法判例の論理を内在的に理解し、その射程を適切に把握して、事例に応じて判例を「使いこなす」力を養う(はしがき)ためのテキスト。受験生にとっては定番の書となりつつある。各章は、「はじめに」「判旨」「基本解説」「発展説明」「まとめ」「FAQ」から構成されており、とりわけ、「まとめ」は当該判例の射程を箇条書きにしており、たいへん有用。「FAQ」も、ありがちな疑問に丁寧に答えていて、とても親切。他方で、判例の事案については原則触れられておらず、通説的見解についても一定の理解があることを前提としている。あくまでも、中級者が判例のより精確な理解のために読むべき本である。第2版において、初版(2017年4月)から、9つの書き下ろし新章が追加された。第0章(憲法判例の「射程」を考えるということ)+全35章。判例索引・事項索引あり。A5判、428頁。 野坂泰司『憲法基本判例を読み直す(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2019年8月・第2版)……法学教室連載の書籍化。23の重要判例につき事案・判旨を丁寧に分析して、判例の理解を深めることを目的としている。安易に既存の学説にはめ込む判例解釈の姿勢からは距離を取っている。全23章。A5判、530頁。 棟居快行・工藤達朗・小山剛編『判例トレーニング憲法』信山社(2018年3月)……憲法判例の論証作法に着目した判例解説書。重要最高裁判例22件を題材としている。A5変型判、232頁。 中林暁生・山本龍彦『憲法判例のコンテクスト(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2019年10月)……法学セミナー連載を書籍化したもの。憲法の基本判例について、下級審との関係や、当時の時代背景を踏まえて読み直し、理解を深めることを目的としている。A5判、328頁。 大林啓吾・柴田憲司編『憲法判例のエニグマ』成文堂(2018年4月)……憲法判例の18のエニグマ(謎)を取り上げ、問題点と、判例が示すものを明らかにし、問いに対する解答を提示するもの。全6部、全18章。A5判、418頁。 戸松秀典・今井功編者『論点体系 判例憲法~裁判に憲法を活かすために~ 第1巻~第3巻〔全3巻〕』第一法規(2013年5月)……広範囲の実定法分野にまたがる憲法上の論点を網羅的にとりあげ、各論点に関する判例の到達を客観的に解説した実務解説書。A5判、第1巻〔前文、天皇、戦争の放棄、国民の権利及び義務Ⅰ(前文~第21条)〕:580頁、第2巻〔国民の権利及び義務Ⅱ(第22条~第40条)〕:536頁、第3巻〔国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正、最高法規、補則(第41条~第103条)〕:452頁。 榎透・永山茂樹・三宅裕一郎『判例ナビゲーション憲法』日本評論社(2014年9月)……A5判、256頁。 樋口陽一・山内敏弘・辻村みよ子・蟻川恒正『新版 憲法判例を読みなおす 下級審判決からのアプローチ』日本評論社(2011年4月)……A5判、320頁。 井上典之『憲法判例に聞く(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2008年4月)……違憲審査基準以外の判例の思想を分析。引用文献を見ないとわからないことが多い。A5判、348頁。 駒村圭吾編著『テクストとしての判決——「近代」と「憲法」を読み解く』有斐閣(2016年12月)……著名な憲法判例を法テクストとしてのみならず、思想テクストとして読解し、「近代的なるもの」を見つけ出す「試み」。一見してわかるとおり、司法試験に直接役に立つ類の著作ではないが、一読の価値はある。A5判、338頁。 加藤隆之『憲法判例から考える 自由と平等——権利をめぐる多様性と妥当性』ミネルヴァ書房(2019年11月)……序(自由と平等の享有主体)+全2部、全24講+補(人権規定の適用範囲)。A5判、370頁。 樋口陽一・佐藤幸治・高橋和之・阪本昌成・戸波江二・竹中勲『考える憲法』弘文堂(1988年3月)……A5判、320頁。 宍戸常寿「判例講座・憲法人権」警察学論集連載(2022年4月号-連載中)……警察幹部向けに憲法の人権分野につき連載。 【演習書】 大島義則『憲法ガール』『同II』法律文化社(2018年1月・Remake Edition、2018年9月)……『憲法ガール』は平成18〜24年の、『同II』は平成25〜30年の司法試験の過去問を解説しており、全問に著者による解答例が付されている。内容はかなり高度で本格的。解説がライトノベルの形式によっている点は好みが分かれるところ。『Remake Edition』では、平成18~24年の答案例として、従前の全論点網羅型のものに加え、試験当日の限られた時間内で作成できる実践的な短い答案例が追加された。電子書籍版あり。A5判、262頁・224頁。 宍戸常寿編著『憲法演習ノート——憲法を楽しむ21問(演習ノートシリーズ)』弘文堂(2020年4月・第2版)……全問に解説を担当した学者自らによる参考答案が付されている。進んだ学習のための「関連問題」付き。第2版は新たな立法や判例、文献の改訂などをふまえ、設例、解説、解答例の見直し、関連問題の差し替えを行った改訂版。執筆者(大河内美紀・齊藤愛・柴田憲司・西村裕一 著・松本哲治・村山健太郎・横大道聡)。A5判、466頁。 宍戸常寿・曽我部真裕編著『憲法演習サブノート210問』弘文堂(2021年7月)……短文の事例問題集。210問で、人権・統治のいずれも扱う。解説は、基本的には判例の解説・時々学説。ただし、質にばらつきもあり、判例を紹介するに留まる解説も見られる。また、頁数の制限か、一読して意味が判然としない解説も含まれる。適宜基本書に戻ることが求められよう。時事的な内容も取り扱っており、読んでいて飽きない反面、(試験的な)重要度が一律に高いとは言い難い。A5版、444頁(本文428頁)。 木村草太『憲法の急所——権利論を組み立てる』羽鳥書店(2017年3月・第2版)……講義編と演習編の2部構成。憲法上の権利に関する問題を一通り網羅している。事例問題の取り組み方を明快に解説しているが、用語の使い方や学説など、木村の独自説が前面に押し出されている点には留意されたい。第2版では、新たに「憲法上の権利概説」の章(第3章)が加えられ、頁数が初版から80頁増加した。A5判、440頁。 木村草太『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 木村草太憲法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(2014年12月)……上掲『憲法の急所』のやり方で平成18年から平成26年までの新司法試験過去問を解説したもの(あとがき参照)。辰已法律研究所での本試験解説講義がベースとなっている。第1部では平成18年の本試験を素材に基本的な議論の組み立て方を解説し、第2部では平成19年~26年の本試験をQ A方式で解説。全問題に木村執筆の「参考答案」が掲載されている。A5判、492頁。 小山剛・畑尻剛・土屋武編『判例から考える憲法』法学書院(2014年5月)……雑誌「受験新報」誌上の人気連載(716-740号掲載)を書籍化したもの。なお、出版社が廃業したことから今後の改訂は見込めない。A5判、304頁。 大沢秀介・大林啓吾編著『憲法事例演習』成文堂(2017年7月)……67の事例を収録。全問に解説を兼ねた答案構成例が付されている。出版社品切れ。A5判、500頁。 宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2014年7月・第2版)……法学セミナー連載の単行本化。一通り憲法の学習を終えた中級者を対象とした事例問題および論点解説集。学生の芦部説の劣化コピペ論証作業を批判し、最新の学説に基づく解説をする。しかし、三段階審査や高橋説等の予備知識がないと理解の難しい部分もあり、読書の実力によっては消化不良に陥る可能性がある。また、本書の記述を真に理解しようとすれば、逐一参考文献にあたることが求められる。公法系で上位を狙う人向け。A5判、384頁。 松本和彦『事例問題から考える憲法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2018年5月)……全30問。A5判、258頁。 松井茂記『LAW IN CONTEXT 憲法——法律問題を読み解く35の事例』有斐閣(2010年12月)……A5判、396頁。 内野正幸『公法(憲法)(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2009年3月・第2版)……B5判、194頁。 木下智史・村田尚紀・渡辺康行編著『事例研究憲法』日本評論社(2013年7月・第2版)……長文事例問題集。判例・裁判例をベースとした設問多数。改訂に伴い、約半数の問題が刷新された。問題文における「問いかけ方」は本番と同様だが、本当の意味で本番と同じ質・量を兼ね備えた問題は稀である。解説にはやや癖のあるものが多い。現在、出版社品切れ。A5判、616頁。 棟居快行『憲法解釈演習 人権・統治機構』信山社(2009年5月・第2版)……人権と統治行為をあわせ23テーマ、36の演習問題。法科大学院入試レベル。A5変型判、310頁。 棟居快行『旧司法試験 論文本試験過去問 憲法(LIVEシリーズ)』辰已法律研究所(2001年1月)……旧司法試験の過去問集。棟居教授の辰已での解説講義を書籍化。辰已作成答案、解説(+答案検討)、教授監修答案からなる。全24問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。A5判、430頁。 小山剛・新井誠・山本龍彦編『憲法のレシピ』 尚学社(2007年4月) ……B5判、354頁。 石川健治・駒村圭吾・亘理格「憲法の解釈」(法学教室連載・319号~342号・完、全23回)……2007年4月〜2009年3月まで法学教室誌上で行われた、憲法学者2人、行政法学者1人による公法系融合問題のリレー連載。違憲審査基準による憲法事例問題の安易な解答を戒めることを狙いとしている。 笹田栄司編『Law Practice 憲法』商事法務(☆2022年10月・第3版)……基礎知識を確認し、実践的な応用力を身につける自学自習用教材シリーズの「憲法」編。基本問題28問、発展問題18問からなる演習書。クオリティは低い。判例索引あり。電子書籍版あり。A5判、336頁。 永田秀樹・松井幸夫『基礎から学ぶ憲法訴訟』法律文化社(2015年4月・第2版)……法科大学院生向けに執筆された、憲法訴訟を題材とした演習書および芦部憲法の副読本。本書は二部構成となっており、第I部が永田による憲法訴訟についての論考、第II部が松井による事例問題とその解説という構成。事例問題は主にロースクールで実施した試験問題が元になっており、学生の間違えやすい点なども解説されている。口語的な文章で書かれており、多少辛辣な口調が見られるが、それも含めて読みやすく分かりやすい。一方、内容に疑問を持つ者も多い。例えば、法令違憲と文面判断の関係の指摘、LRAの基準を中間審査ではなく厳格審査としている点等。また、記述は特定の立場に基づくもののみで、複眼的思考に対する配慮を欠く。なお、第2版で第II部の事例問題がすべて差し替えられた。A5判、326頁。 渋谷秀樹・大沢秀介・渡辺康行・松本和彦『憲法事例演習教材』有斐閣(2009年12月)……法科大学院生向け事例演習教材。基本的テーマと分野横断的テーマの2部構成全32題。B5変型判、294頁。 渋谷秀樹『日本国憲法の論じ方』有斐閣(2010年12月・第2版)……合計50のQuestions。A5判、478頁。 渋谷秀樹『憲法起案演習 司法試験編』弘文堂(2017年12月)……司法試験の出題問題(平成18年度~平成29年度)を素材とした憲法の演習書。渋谷自身の手による「起案例」が全問に付されているが、一般的な論文答案の書き方とは大きく異なっているため、あまり参考にならない。他方で、解説部分については参考になる記述が多い。A5判、488頁。 原田一明・君塚正臣編『ロースクール憲法総合演習 〈基礎〉から〈合格〉までステップ・アップ』法律文化社(2012年10月)……学者による演習書としては珍しく、全問に答案例が付されている。B5判、308頁。 青柳馨監修『設題解説 憲法(二)』法曹会(2015年1月)……「法律研修講座(憲法)」として連載された「設題解説」に選挙制度の改正等を反映するため、加筆修正し、取りまとめられたもの。全16章。判例索引、条文索引、事項索引あり。新書判、240頁。 浦田賢治・愛敬浩二編『演習ノート憲法』法学書院(2010年9月・第4版)……A5判、224頁。 甲斐素直『憲法演習ゼミナール読本 上・下』信山社(2008年7月、2008年8月)……旧著『憲法ゼミナール 』信山社(2003年6月)の改題・改訂版。B5判、392頁・352頁。 小林武・後藤光男『ロースクール演習 憲法』法学書院(2011年7月)……受験新報の誌上答練をまとめた新司法試験向けの長文事例問題集。著者のイデオロギーが前面に押し出された、司法試験ではまず出題されないような極めて偏った設問が多く、全く実践的ではない。A5判、320頁。 辻村みよ子編著『ニューアングル憲法 憲法判例×判例研究』法律文化社(2012年5月)……A5判、424頁。 法学教室編集室編『問題演習 基本七法』有斐閣(2018年7月、2019:2019年12月、2020:2020年12月)……便宜上、「憲法」の頁に掲載しているが、書名のとおり、基本7法を扱う法科大学院入試や予備試験等の対策向け演習書(「法学教室」誌の演習欄1年分(7法分野×12問=84問)を1冊にまとめたもの)。「演習の活用法」、各分野「論点索引」が掲載されている。「2018」の執筆者(巻美矢紀・大脇成昭・占部洋之・笠原武朗・加藤新太郎・十河太朗・三好幹夫)。「2019」の執筆者(新井誠・松戸浩・都筑満雄・鈴木隆元・渡部美由紀・豊田兼彦・清水真)。B5判、188頁・188頁・188頁。 (古典) 芦部信喜『演習憲法(法学教室選書)』有斐閣(1988年11月・新版)……四六判、334頁。 芦部信喜・戸松秀典・高見勝利・戸波江二編著『ユーブング憲法(法学教室増刊)』有斐閣(1997年9月・第2版)……B5判、274頁。 江橋崇・戸松秀典『基礎演習憲法(基礎演習シリーズ)』有斐閣(1992年12月)……四六判、356頁。 岩間昭道・戸波江二編『憲法1・2(司法試験シリーズ)』日本評論社(1 総論・統治:1994年4月・第3版、2 基本的人権:1994年5月・第3版)……B5判、頁・頁。 粕谷友介・向井久了編『事例で学ぶ憲法』青林書院(1997年4月)……憲法を一通り学んだ学部の3、4年次向けの演習書。構成は、総論3問、人権11問、統治機構12問、平和主義1問を収録。編者である粕谷は2007年に、向井は2010年に死去。A5判、234頁。 浦部法穂『事例式演習教室 憲法』勁草書房(1998年6月・第2版)……A5判、304頁。 小林孝輔編『憲法 演習自習セレクト50』勁草書房(2004年4月)……学部での演習・講義を念頭におき、厳選した憲法の主要論点50を解説したテキスト。編者は、2004年に死去。A5判、224頁。 → このページのトップ:憲法に戻る。 → リンク:行政法、公法系
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憲法 固有の意味の憲法 実質的意味の憲法 形式的意味の憲法 立憲的意味の憲法 近代的意味の憲法
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〔体系書〕 芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』岩波書店(2011年3月・5版)……芦部は1999年他界。憲法で伝統的通説といえば、おおむね芦部説を指す。記述は簡潔ながら基本的な知識(共通理解)は本書で一通りおさえられるため、長年受験生からの圧倒的支持を集めている。もっとも、芦部憲法学を凝縮した本書の記述を真に理解するには「行間を読む」ことが求められる。つまり、ある程度の実力がなければ読みこなせない。内容はかなり古く、おおむね平成以降の議論には対応していないが、高橋和之による補訂は依然小規模にとどまっており、芦部原文にはノータッチである。5版においてドイツ憲法の三段階審査についての解説(1ページ弱)が付せられた。 高橋和之『立憲主義と日本国憲法』有斐閣(2010年5月・2版)……書名は論文集のようであるが、人権・統治の全範囲にわたるれっきとした体系書である。著者は前東大教授。芦部の一番弟子で、芦部に続く現在の第一人者。ケルゼンの法段階説に立脚した独特の統治機構論を展開。国民内閣制論の提唱者。私人間における人権の無効力説、司法権の定義に関する独自説、外国人参政権賛成など。古い芦部を補うためのテキストとしてロースクール生の間でも人気があるが、内容は高度。芦部に目線を合わせた単なる芦部のサブノートではなく、芦部よりずっと新しい議論を展開している。したがって、腰を据えて取り組む必要がある。また、直前期の総まとめ等には向かないだろう。 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法I・II』有斐閣(2012年3月・5版)……通称四人組。芦部門下らによるスタンダードな教科書。共著だが各者の自説主張はほぼなく(高橋執筆の15章「内閣」に自説を含むが、一読の価値ある内容)、共著の弊害がそれほど出ていない。大抵のことが詳しく載っており、最近の説にも一応配慮しているが、全体としては芦部ベースの穏当な道を踏み外していない。宍戸教授いわく、「質、量ともに最高の基本書」。憲法学の共通理解を学生向けに丁寧に示した本といえるが、記述が平板なため初学者にはやや読みづらい面がある。通読するというより、辞書として使う学生が多い。2冊あわせて900ページ超。択一対策に万全を期すならば(特に統治に関して)本書以外に選択肢はありえないだろう。 佐藤幸治『日本国憲法論』成文堂(2011年4月)……かつて青林書院から出版されていた旧著『憲法』(第3版、1995年。今では絶版となっている)の実質的な改訂版。もっとも本書においてはレイアウトが横書き・二色刷に変わったほか、叙述の順序も芦部と同じ(人権→統治→違憲審査)になっている。なお旧著は、芦部が刊行されるまでは定番の基本書だった。解釈論は精密で、論理的。漢語を駆使して一つ一つのセンテンスに情報を詰め込んでいるため、全体として情報量がかなり多い。とくに統治の分野の情報量は他の追随を許さない。 長谷部恭男『憲法』新世社(2011年3月・5版)……定跡+新たな視点。政治哲学(リベラリズム)の視点から判例と学説を補強・再解釈している。平成19年度旧司択一第4問エにて長谷部の解釈が取り上げられている。現東大教授。最近は一般人向けの新書も多く出している。副読本として『Interactive憲法』有斐閣(2006年9月)、『続・Interactive憲法』有斐閣(2011年10月)、『憲法入門』羽鳥書店(2010年1月)。 戸波江二『憲法』ぎょうせい(1998年7月・新版)……改訂遅れる。しかも改訂待ちのため在庫切れ。一部に少数説もみられるが、基本的には芦部ベース(章立てもよく似ている)。読みやすく、ほどよく掘り下げられた記述は芦部の行間を埋めるのにちょうどよい。 松井茂記『日本国憲法』有斐閣(2007年12月・3版)……プロセス的憲法観。自然権思想をベースとする芦部説を中心とした通説と対立。 伊藤正己『憲法』弘文堂(1995年12月・3版)……元最高裁判事。自説主張が控えめなので最高裁判事時代の少数意見集『裁判官と学者の間』有斐閣(1993年2月、OD版 2001年12月)と併読すると吉。全体として、読みやすい文章で丁寧な解説がなされている。前田会社法入門と同じタイプの本。縦書き700頁弱と厚い本だが、スイスイ読み進められるだろう。芦部と同世代の学者であり、本書の内容も比較的古い方に位置する。 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法1・2』有斐閣アルマ(2010年3月・4版)……ロー1年生、憲法が苦手な人、演習書を見ても解き方がわからない人はとにかくこれを読め、という本。 辻村みよ子『憲法』日本評論社(2008年3月・3版)……杉原イズムの継承者。東北大学教授。人民主権を発展させた市民主権を提唱。最終的に少数説をとる場合があるも、学説の整理は客観的で丁寧。収録判例も多く、下級審からの流れも分かる。 ☆阪本昌成『憲法1(国制クラシック)・2(基本権クラシック)』有信堂高文社(2011年8月・全訂3版,2011年9月・4版)……古典的リベラリスト。 大石眞『憲法講義I(2版)・II』有斐閣(2009年4月,2007年1月)……薄かったが2版で厚くなった。内容は高度。 粕谷友介『憲法』ぎょうせい(2003年4月・改訂)……判例豊富。 渋谷秀樹『憲法』有斐閣(2007年12月)……学説の対立が鮮明になるような記述。体系が独特。註の文献引用が便利。 浦部法穂『憲法学教室』日本評論社(2006年3月・全訂2版)……塾テキスト。論理的で明快だが独自説多し。くだけた表現も特徴の一つ。左翼的との評価あり。 樋口陽一『憲法』創文社(2007年4月・3版)……体系書とは性格を異にし、司法試験テキスト向きとはいえないが(違憲審査基準論が弱い)、教養としては読むに値する。本書以外ではなかなか目に触れないような、しかし芦部などが行間で当然の前提にしている歴史的・比較法的知識を補うことができる。通説・判例の問題点を的確に指摘している個所も多い。芦部と同様、網羅性は他に一段劣るが、択一で問われるような重要なポイントは意外にきちんと押さえている。 小林昭三他『日本国憲法講義 憲法政治学からの接近』成文堂(2009年9月)……真正保守必携の憲法体系書。明治憲法を評価し、昭和10年代の出来事は西洋が悪いというスタンスで一貫している。集団的自衛権は当然認め、愛媛玉串訴訟では法廷意見を批判して三好意見に賛同する、といった具合である。体系書だが論点や判例は余り拾っていない。 初宿正典『憲法2 基本権』……体系は基本的に芦部に則っているので芦部の参考書としては非常に使いやすい。判例の引用と評釈も丁寧な隠れた一品。中でも信教の自由の解説は秀逸。 赤坂正浩『憲法講義(人権)(法律学講座)』信山社(2011年4月)……人権のみ。各種人権について細かく合憲性審査基準を提示しているのが特徴。記述は比較的あっさり。 毛利 透,小泉 良幸,淺野 博宣,松本 哲治 『リーガルクエスト 憲法1 統治』有斐閣(2011年3月)……情報量が多く、時事的な話題にも富むが、叙述に難あり。学説・自説等の整理区別・引用にも精細さを欠く。他のテキストとの併読が吉。 〔その他〕 芦部信喜『憲法学I・II・III』有斐閣(1992年12月,1994年1月,2000年12月・増補版)……芦部『憲法』の人権論を補うための体系書。脚注の参考文献欄が充実しているが、自説についての説明は意外に多くない。収録は居住移転の自由まで。 高見勝利『芦部憲法学を読む』有斐閣(2004年11月)……芦部『憲法』の統治機構論を補うための体系書。また、最初に書かれている芦部の戦争体験は芦部憲法学を理解するために有益。 小山剛=駒村圭吾編『論点探究憲法』弘文堂(2005年7月)……有力若手・中堅が執筆。演習書と銘打ってあるものの、論文集として読んだほうが適切。体系書で深く論じられない問題について解説。 安西=青井=淺野=岩切=木村=齋藤=佐々木=宍戸=林=巻=南野『憲法学の現代的論点』有斐閣(2009/09・第2版)……高橋弟子による論文集。高橋説の補充に使える部分もあるが、著者の独自説も強い。 井上典之=小山剛=山本一『憲法学説に聞く』日本評論社(2004年5月)……編者の内の1人とゲストの学者が対談し、編者は通説の立場からゲストの学説について質問を投げかけ、それに対してゲストが答える形式。ゲスト陣は、戸波、戸松、市川、大石、長谷部、初宿、棟居、内野、浦部、辻村、高橋、岡田、松井、岩間、浦田と超豪華。それぞれの学説に興味がある場合、また学説の立場から判例や通説の欠点を見極めたいときに本書は役に立つだろう。 佐藤幸治ほか『ファンダメンタル憲法』有斐閣(1994年7月)……昔の種本。論点解説集。比較的薄めだが、内容は明快かつ簡潔。一行問題時代なので宍戸、急所などの論点よりも易しいが一読の価値有り。 大石眞・石川健治編『憲法の争点(新・法律学の争点シリーズ3)』有斐閣(2008年12月)……10年ぶりに改訂された。執筆者も大幅に入れ替わったが抽象的なテーマが多い。 〔コンメンタール〕 ☆芹沢斉・市川正人・阪口 正二郎編『新基本法コンメンタール 憲法』日本評論社(2011年10月)……最新の判例・学説を網羅している。解説は、いわゆるその分野の権威が執筆しているというものではなく、むしろあえて外しているようなところもあり、論点の本格的な検討という点では物足りない。しかし、その分客観性が高く、情報量は多いので、受験用の参考書としては好適である。 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂『注解法律学全集 憲法I・II・III・IV』青林書院(1994年9月,1997年8月,1998年12月,2004年2月)……憲法のコンメンタールでは随一。判例・学説の紹介が、非常に網羅的。いわゆる論点は完全に網羅されているうえ、非常に細かい点まで議論されている。たとえば、刑事手続上の人権については、詳しめの基本書でも言及がかなり乏しく、緊急逮捕や盗聴の合憲性が論じられる程度にとどまるが、このコンメンタールは違う。憲法34条の「抑留」には逮捕・勾引が含まれ、「拘禁」には勾留・鑑定留置が含まれるために、後者についてのみ、憲法34条後段により理由開示が保障される、など、かゆいところに手が届く丁寧さ。特に、佐藤幸治と中村睦男の執筆箇所は、学説資料へのリファーが充実しているので、調べものにも大変役に立つ。司法試験対策のための学習にも有益。学習で疑問が生じて、本書を調べれば、疑問は氷解するだろう。本書1巻のうち、佐藤幸治が憲法13条について解説している箇所は、学説が自己決定権を論じる際、いまだに頻繁に引用されるなど、特に評価が高い。 芦部信喜監修『注釈憲法』有斐閣(2000年12月)……全6巻(予定)。芦部信喜を監修者として、野中俊彦・戸松秀典・江橋崇 ・高橋和之・高見勝利・浦部法穂という豪華メンバーで編集作業に当たる予定だったが、芦部の死去により1巻が出たのみとなっている。1巻は総説から9条まで。なお、同タイトルの新書が有斐閣から出ているがこちらは出版年が1995年とやや古い。 〔判例集〕 高橋和之・長谷部恭男・石川健治『憲法判例百選I・II』有斐閣(2007年2月,2007年3月・いずれも5版)……執筆者は大幅に入れ替わったが、解説は相変わらず玉石混交。 戸松秀典・初宿正典『憲法判例』有斐閣(2010年3月・6版)……解説なしの判例集。判旨引用は百選より長く、反対意見等の掲載も豊富。章立ては独特。 野中俊彦・江橋崇編著『憲法判例集』有斐閣新書(2008年12月・10版)……解説なし。要点を要約しており新書サイズなので便利。 井上典之『憲法判例に聞く』日本評論社 (2008年4月)……違憲審査基準以外の判例の思想を分析。引用文献を見ないとわからないことが多い。 大石眞・大沢秀介『判例憲法』有斐閣(2009年4月)……適度に解説が付せられた憲法判例集。 〔ケースブック〕 長谷部恭男・赤坂正浩・中島徹・阪口正二郎・本秀紀『ケースブック憲法』弘文堂(2010年3月・3版)……判旨のみ。設問が難解。独習はまず不可能、可能な人も(試験対策としては)やる必要がないレベル。長谷部執筆箇所と思しき章は、長谷部の一人説が全面的に展開される、長谷部ワールド。 初宿正典・大石眞・高井裕之・松井茂記・市川正人『憲法Cases and Materials 人権基礎編・人権展開編・憲法訴訟』有斐閣(2005年8月,2005年8月,2007年5月)……判例の解説、文献の引用が充実。ケースブックの中では一番わかりやすく、独習にも使用できる。 LS憲法研究会『プロセス演習憲法』信山社(2007年4月・3版)……評価待ち。 浦部法穂・戸波江二編著『法科大学院ケースブック憲法』日本評論社(2005年7月)……一審からの判決文にちょこちょこっと問題文を付加。解説はない。 〔演習〕 木下智史・渡辺康行・村田尚紀編著『事例研究憲法』日本評論社(2008年6月)……長文事例問題集。判例・裁判例をベースとした設問多数。問題文における「問いかけ方」は本番と同様だが、本当の意味で本番と同じ質・量を兼ね備えた問題は稀である。解説にはやや癖のあるものが多い。 棟居快行『憲法解釈演習』信山社(2009年5月・2版)……評価待ち。 小山剛・新井誠・山本龍彦『憲法のレシピ』尚学社 (2007年4月) ……評価待ち。 棟居快行『旧司法試験 論文本試験過去問 憲法』辰巳法律研究所(2001年1月)……旧司法試験の過去問集。棟居教授の解説講義を書籍化。辰巳作成答案、解説(+答案検討)、教授監修答案からなる。全24問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。 宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』日本評論社(2011年2月)……法学セミナー連載(640号〜669号)の単行本化。最近の学説に基づいた事例問題・論点解説。一通りの学習を終えた中級者向けとし、芦部説の劣化コピペ論証作業を批判して、いちおう芦部説から解説を始める。が、三段階審査や高橋説等の予備知識がないと理解の難しい部分が多い。「雛見沢」「ハレ晴レユカイ」等のキーワードも一部に。 石川健治・駒村圭吾・亘理格「憲法の解釈」(法学教室連載・319号〜342号にて完結)……憲法学者2人、行政法学者1人による公法系融合問題のリレー連載。連載のねらいは違憲審査基準による憲法事例問題の安易な解答を戒めること。三段階審査 〔違憲審査制度〕 芦部信喜『憲法判例を読む』岩波書店(1987年5月)……市民セミナーでの講演を収録。非常に古いがいまだに芦部違憲審査基準論の入門書として広く読まれている。 戸松秀典『憲法訴訟』有斐閣(2008年3月・2版)……憲法訴訟の体系書。訴訟の中で憲法が問題になる場面、問題になった後の処理について詳細に分析。判例のとる違憲審査基準についての分析が秀逸。著者の自説は極めて控えめ。 永田秀樹=松本幸夫『基礎から学ぶ憲法訴訟』法律文化社(2010年11月)……口語的な文章で書かれており、多少辛辣な口調が見られるが、それも含めて読みやすく分かりやすい本であろう。一方、内容に疑問を持つ者も多い。例えば、法令違憲と文面判断の関係の指摘、LRAの基準を中間審査ではなく厳格審査としている点等。また、記述は特定の立場に基づくもののみで、複眼的思考に対する配慮を欠く。詳細は、アマゾンのレビュー参照。とはいえ、この批評自体も一方的な面が拭いきれず、結局のところ人によって好き嫌いが分かれる本であろう。後半は問題集となっている。 ☆小山剛『「憲法上の権利」の作法』尚学社(2011年9月末・新版)……三段階違憲審査制を簡潔にわかりやすく叙述したもの。都合上、本書の紹介はページの最下層に来てしまっているが、まさにバカ売れという表現がふさわしいほどに、ロースクール生の間で最近もっとも読まれている本である。 野坂泰司『憲法基本判例を読み直す』有斐閣(2011年6月)……法教に連載されたものを書籍化。著者は新司法試験委員。重要判例につき、事案・判旨の分析は非常に丁寧かつ秀逸で、安易に既存の学説にはめ込むような判例解釈の姿勢に距離を取っている。