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「忍たま乱太郎」の乱太郎・きり丸・しんべえが召喚される話。 ルイズと忍たま-1 ルイズと忍たま-2 ルイズと忍たま-3 ルイズと忍たま-4 ルイズと忍たま-5
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ここは一体? の段 ルイズはうつむいた。よりによって人間を呼び出してしまうなんて。自分が呼び出した三人を眺めてまたうつむく。 三人組は揃って同じ服装をしていた。頭巾のようなものをかぶっている。 メイジではない、おそらく農作業でもしている平民だろう。 きり丸「どこだここ?」 乱太郎「さっきまで校庭で遊んでたんだけど」 しんべえ「ねぇ乱太郎、きり丸ここどこなの。変な服着た人がいっぱいいるよ」 (何が変な服よあんた達の方がよっぽど変じゃない) 「キャー、ルイズあなた幸せ者よ。だって三回もキスできるんだから」後ろから冷やかしが聞こえる。ルイズは振り向いてきっと睨みつけた。普段から仲が悪いようだ。 ちょっと待って、今なんて言った?えっ、三人と?一人じゃないの? 助けを求めるようにコルベールを見たがコルベールは黙って頷いた。仕方ない。 ルイズはつかつかと歩み寄る。それまでキョロキョロしていた三人の視線が一斉にルイズに向けられる。 ルイズ「あ、あんた達、これは名誉な事なんだからね、感謝しなさいよ」 ルイズはボケ~とつっ立っている三人に言うと儀式を始めた。 乱太郎「むがっ」 きり丸「むごっ」 しんべえ「ふごっ」 三人の左手にルーンが刻まれた。 儀式は一瞬で終わった。ルイズはさっさとその場を離れたが三人は直立不動だった。 そこから三人を自室まで連れていくのは中々骨だった。三人があまりにもバラバラな行動をとるのでルイズは縄で縛ってひとまとめにしてやろうかと思ったほどだ。 乱太郎「ここどこですか?忍術学園じゃないですよね?」 きり丸「あっ、やべ午後からバイトだった。早く帰らないと」 しんべえ「僕お腹すいちゃった。ステーキ食べたい」 おまけにうるさい。 ルイズ「あんた達いい加減口閉じなさい。いつまで喋ってんの」 一人一人は大して話していないが三人ともなると賑やかだ。 (貴族に対する口のききかたといい、態度といい何なのこの平民) 乱太郎「ここはどこなんですか?どうして私たちはここに?」 ルイズ「ここはトリステイン魔法学院よ」 きり丸「そろそろバイトだし帰してくれませんか」 ルイズ「無理」 しんべえ「バリッバリッ」 ルイズ「勝手にあたしのお菓子食べないでよっ」 そんなこんなでルイズと三人の使い魔の新しい生活が始まった。
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使い魔って大変だの段 三人がルイズに呼び出されてもう3日になる。もし、普通の人間だったら呼び出された時点でパニックに陥っていたかも知れないが、三人はそれなりにここの生活に適応していた まず、ルイズよりも早く起きて、着替えの服を準備する。洗濯をする。部屋の掃除をする。その他。三人はしっかりと仕事をこなしていた。それなりの理由があったのだ。 ふぁ~あとあくびをする。今日は乱太郎が最初に目を覚ました。 「おい、起きてよきりちゃん、しんべえ。早くしないとまたご飯抜きにされちゃうよ」 乱太郎はそう言うとはいまだ平和な寝息をたてている二人の体を揺すった。 「もう食べられない。お腹いっぱい。タニシプリン」 「金だ、金が降ってくる。わひゃわひゃ」 どうやら寝ぼけているようだ。可哀想だが無理にでも起こすしかない。 三人が仕えることになってしまったこの少女は使い魔が自分よりも遅く起きることを許さない。昨日は一応それが原因で夕飯抜きを宣告された。 乱太郎は眼鏡をかけ、カーテンを開けた。太陽が眩しい。きり丸としんべえがのろのろと起きた 「さてと」 乱太郎はルイズに声をかけた。 「朝ですよルイズさん」 ルイズがベッドから出る前にクローゼットから下着を取り出して手渡し、着替えを手伝う。 初めはずいぶん緊張したが慣れてしまった。まだ顔を背けながら作業する乱太郎であったが。 乱太郎が職務をこなしている間きり丸としんべえは部屋の隅に立っていた。 完全に目が覚めていないのだろう、かろうじて意識を保っている状態だ。目が虚ろである。 着替えを終えたルイズが部屋から出ていくと乱太郎はぼうっとしている二人をつついて後に続いた。 どうやら朝ご飯は抜かれなくて済みそうだ。 ルイズの後について食堂に向かう途中のこと。 「はぁ~あ、給料くれないんじゃ働く気も起きないなぁー」 「僕お腹すいて死にそう」 しんべえだけでなく三人とも腹ペコであった。何しろ昨日の夕飯を食べていないのだから。ふと思い出したようにきり丸が言った。 「そういや、しんべえあの子のあだ名知ってるか?なんでも『ゼロのルイズ』っていうらしいぜ」 「こら、きりちゃんそれ言っちゃだめ。ルイズさんすごく嫌がってたから」 慌てて乱太郎はルイズをうかがったが聞こえていないようだ。ルイズの機嫌を損ねる事はなるべく避けたい。 でないとまた飯抜きの刑に処されることになる。 「だってよー、魔法使いのくせに魔法が使えないなんて道具が使えないドラえもん、サイコキネシスが使えないミュウツーみたいなもんだろ」 乱太郎は止めようとしたがなおもきり丸は続けた。 「あ~あ、ケチくさい上に魔法が使えないなんてなぁ。なんのために毎日働いてやってんだか」 「ちょっときりちゃん、声が大きいよ。そろそろやめなよ」 「いや、まてよ。魔法が使えない魔法使い・・・・・・、これで歌でも作ったら案外儲かっちゃったりして」 「人は呪文を紡ぎながら魔法を創る~♪魔法なんて出来ないまま私は生きる~♪」 きり丸は上機嫌だった。CD化、漫画化、ドラマ化。一体どれ程の儲けになるだろうか。成功すれば億万長者も夢じゃない。 しかし、きり丸の妄想はそこで打ち切られた。何かにぶつかった。どうやら急に立ち止まったしんべえにぶつかってしまったようだ。 「どうしたしんべえ?」 しんべえは答えない。見ると震えながら固まっている。なんと隣の乱太郎もである。二人の視線をたどると・・・・・ルイズがいた。わなわなと震え、青筋をたてている。 どうやら自分は気付かれているとも知らずに言いたい放題喋ってしまったらしい。さすがのきり丸も身じろぎできなくなる。 これまでも何度か怒られたことはあったが、ここまで迫力のあったルイズは初めてだ。 「あたしがケチくさいって?そうね、今までご褒美の一つもあげなかったもんね」 ルイズの声は不気味なくらい落ち着いていた。 「ゼロで悪かったわね!」 三人はしょんぼりと食堂の前に立っていた。慈悲深い主人は三人に今日一日食事抜きを言いわたした。
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あいつらがやって来たの段 ルイズは自分が召喚したものが何であるか分かった。しかし、いくら才能がない自分でもしかも・・・・・・。 悲しいことであるがルイズは自分があまり、いやほとんど魔法を使えない事をよく自覚していた。 自分が魔法を失敗するたびに周りから笑われていた。使い魔の召喚も成功するはずがないだろうと半ば諦めていた。 でも、もし、万が一成功することが出来たら。サモン・サーヴァントで周りがあっと驚くようなヤツを召喚出来たら。 ルイズはそんな淡い期待を込めて臨んだ。 呪文を紡ぎ、杖を振る。すると、目の前の空間に召喚のゲートが開かれた。 やった、これであたしにも使い魔が・・・・、何がくるのかしら・・・・そこまで考えたときそれは現れた ルイズは嬉しかった。ゲートが開いた瞬間に使い魔が来てくれたのだから。 その幸せは使い魔が何であるかを認識すると落胆に変わったのだが。 ルイズの前に現れたのは人間であった。おまけに、3人。人間を呼んでしまった事を悟ったルイズは激しく動揺していた。 さらに、呼び出された使い魔の方も慌てふためいていた。なんとなく、間抜けな風貌である。よく見ると年下のようだ。 ルイズ「あんた達何なの」 3人はしばらく間を置いてこう答えた。 「乱太郎」 「きり丸」 「しんべえ」 名前までも抜けててるなぁとルイズは思った。
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苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは人生最大の試練に立ち向かっていた。 何せこの使い魔召喚を失敗したら進級出来ず退学もありうる。 まさに背水の陣、ルイズにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても良い。 ルイズは全身全霊を込めて呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 呪文の成立とともに目の前が爆発し、煙が辺りを覆う。 すわ失敗かと落胆するルイズだが、その煙が晴れてくると、そこに何かが要る事に気づき喜色満面となるも、煙が 晴れていくにつれ当惑の表情へと変化していく。 召喚された物体は、彼女が思い描いていた使い魔とはあまりにもかけ離れていたからだ。 するとそこにいた物体、手足の生えたりんごは、その渋い顔にマッチした渋い声で言った。 「俺が神聖で美しく強力な使い魔だ」 召喚主であるルイズはおろか、周りで事態を見守っていたクラスメイト、さらには教師であり今まで数々の召喚儀 式を監督してきたコルベール出さえ、あまりの発言に言葉を失い戸惑う。 と、その使い魔は絶妙の間をおいて言い放った。 「ウソだけど」 ルイズは素早く足を上げると、思いっきり踏みおろした。 果肉と果汁が飛び散り、見るも無残な轢殺死体が出来上がる。 内心の怒りの為かさらに何度か踏みにじり、完全に粉砕すると何事も無かったように再び呪文を唱え始めた。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 見た事も無い服装をした平民の使い魔が召喚されたのは、その後しばらくたってからであった。 完 -「極楽りんご」より
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「やっちゃったね・・・・・」 これで何度目だろう。性懲りもなくまたやってしまった。 食堂から流れてくるおいしそうな匂いが恨めしい。 「きり丸!なんであんなこと言ったの!僕もう昨日から何も食べてないんだよ」 普段はおとなしいしんべえが声を荒げる。無理もない。しんべえにとっては一食抜かされただけでも一大事なのに、丸々一日何も食べることができないなんてのは拷問としか言いようがない。 「まぁまぁしんべえ、きりちゃんだって悪気があった訳じゃないんだし。仕方ないよ」 半ば自分に言い聞かせるように乱太郎が言った。 乱太郎は肩を落とした。まさか、丸一日分の食事を没収されるなんて夢にも思っていなかった。土井先生や山田先生でもこんな罰は与えないだろう。せいぜいゲンコツが飛んでくるぐらいなものだ。 これからどうしようかと考え、隣を見るとボケェと前を見ているきり丸の顔が目に入った。 (きりちゃんもご飯食べられなくてガッカリしてるんだよね) そう思った矢先きり丸の目が輝きだした。乱太郎はこれが何を意味するのかよく知っている。 「金~金金金金かね~」 どうやら彼の探知機が金を探し当てたらしい。 「行ってらっしゃい」 きり丸はこちらの世界の金の音も聞き分けることができるようになっていたらしい。さすがはきり丸である。 しかし、きり丸を見送ってしまってからはたと気づいた。ルイズが食事を終えて戻ってきた時、きり丸が居ないとまた怒られるんじゃないだろうか。 「『使い魔のくせに勝手に歩き回ってんじゃないの!罰として一週間食事抜き!』なんて言われたらどうしよう」 呼び戻そうにも二人とも一文無しである。きり丸召喚魔法は使えない。 「どうしようしんべえ。またルイズさんに怒られ・・・・・あれ?しんべえ?」 乱太郎は隣にいたはずのしんべえに話しかけていたつもりだったのだが・・・・・。なんとしんべえまでもがいなくなっていた。 (どこに行っちゃったのさしんべえ?)私一人にしないでよ。あぁどうしよう、どうしよう・・・・・・・。 「あんた何ぶつぶつ言ってんの?」 キター。 ビクビクして何も言えないでいる乱太郎にルイズは畳み掛けた。 「他の二人はどうしたの?」 「どうしたの?答えないよ」 乱太郎は突然の襲撃に口をパクパクさせていた。怒ってはいないようだが、ルイズの顔が真ん前にある状態で質問されると正常に頭が働かなくなる。 「まさか、何かやましい事でもしてるの?」「ち、違いますよ」 「じゃあ何なのよ」 「トイレに行くって言ってました」 こんな言い訳を考えつくのに普段の10倍かかってしまった。 「あっそう。じゃあ行くわよ」 落ち着いて考えれば心配する必要はなかったのかもしれない。まぁルイズにとって何が気に障るのか乱太郎はわからなかったので仕方がないことではあるが その頃しんべえは久し振りのご馳走を頬張り満面に笑みをたたえていた。次から次へと口に運ぶ。昨日の夕飯は抜かされたし、ここに来てまともに食べた料理と言ったらスープぐらいのものだ。いつにも増して美味しく感じられる。 さっききり丸が金を求めて走り出したのと同時にしんべえは食堂に足を踏み入れた。余りにも美味しそうな匂いだったので磁石の如く引き寄せられてしまったのだ。 一段落してしんべえが口を開く。 「さっきはありがとう。ここの料理美味しいね」 しんべえの隣には青い髪の少女が座っていた。
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トリステイン魔法学院の学生にして失敗ばかりの落ちこぼれ『ゼロのルイズ』。 二年生への進級をかけた『春の使い魔召喚の儀式』へと臨んだ彼女は”彼”を召喚した。 召喚されたばかりの”彼”を見たルイズはただの平民の子供だと思った。 自分よりも年下のようだが、そう年が離れているわけでもなさそうだ。 ともかく召喚自体は成功したのだから、まるでダメと言うわけではないのだとルイズは自分を元気付けた。 そして周囲を不安げに見回し、怯える犬が威嚇するように唸る”彼”を宥めながら使い魔の契約をした。 使い魔のルーンは”彼”の胸へと刻まれた。 そんな”彼”との生活が始まったのだが、それはとても多忙な日々となった。 まず、”彼”は何かしらの障害を持っているのか、言葉を話さないのだ。 ”あ~”、”う~”などの唸り声を上げるだけ。 次に好奇心が旺盛であり、感情の起伏が激しい。他の使い魔を見れば時と場合を選ばず飛び掛り、 魔法の授業の時には練金で小石が真鍮に変わったのを見るや、怯えて暴れ出した。 更に食欲も旺盛。最初に食堂に連れて行った時は野生児の如くテーブルに飛び乗り、料理を散々に食い荒らした。 その事があって食事の件は知り合いのメイドであるシエスタが何とかしてくれる事になったのだが、 結局はこれらの事実にルイズは頭を悩ませる事になった。 だが、それでもルイズは”彼”を見放そうとはしなかった。 自分が召喚できた使い魔だと言う事もあるが、何より”彼”はルイズやシエスタに懐いていたのだ。 その懐きぶりは自分が下の姉に甘える姿にとてもよく似ていたのだ。 それゆえ、無下に突き放す事も出来なかったのだ。 そんな”彼”をルイズは日が経つにつれ、ただの平民だとは思えなくなった。 …その原因は”彼”の成長にあった。どういう訳か、”彼”は常人とは比べ物にならない速度で成長していったのだ。 どんどん成長し、ついにはドラゴンなどと比べられるほどの大きさになった”彼”に、 使い魔召喚の儀式から”彼”に刻まれたルーンに興味を持っていたコルベールも驚きを隠せなかった。 そして、最初はルイズと同じか多少低い位だった”彼”の背丈は、今や二十メイルに達しようかとしていた。 最早疑う余地は無かった。”彼”の常人とは異なった言動もこれで説明がつく。 ”彼”は亜人だ――そうルイズは思い至った。 そんなある日…、学園にルイズの姉であるエレオノールがアカデミーの研究員数名と共にやって来た。 ハルケギニアに生息するどの亜人よりも巨大で異質な”彼”は王宮の、アカデミーの興味を引いたのだ。 そして実験体としてアカデミーに連れてくるように指示が出て、エレオノールらが来たのだ。 エレオノールは”彼”の引渡しを妹に伝えるが、ルイズは当然それを拒否した。 幾ら頭の上がらない姉であろうと大事な使い魔を渡せるはずが無かったのだ。 すると他の研究員が”彼”を魔法で捕縛し、強引に連れ出そうとしだした。 ”彼”は怯え、激しく抵抗し、暴れた。その結果、研究員の内二名が巻き込まれて死亡した。 そのまま”彼”は魔法学院から逃げた。一度だけ、ルイズの呼び声に振り向き、悲しそうな表情を見せて。 ルイズは”彼”を連れ戻すべく、魔法学院を飛び出した。コルベールとエレオノールもそんな彼女に付き添った。 消えた”彼”は食料となる家畜を襲いながら、トリステイン中を放浪しているようだった。 目撃情報を得ながら、ルイズ達は”彼”の姿を捜し求めた。 そんな最中、ガリア南部の山地の中に点在するアンブランと言う村が何かに襲われ、村人全員が行方不明となる事件が起きた。 その村は以前からコボルドに襲われていた為、最初はそれらの仕業かと思われたが、そうではない事が解った。 破壊された家々はコボルドとは思えない、巨大な物に叩き壊されたような物ばかりであり、 何より人の死体が一つも無い所が妙であった。 コボルドに人の死体を一々始末するような知能が無い事は、ハルケギニア中の人間は知っているのだ。 そして、この奇怪な事件の犯人が先日トリステイン魔法学院から逃げ出した亜人では無いかと、人々は噂しあった。 無論、ルイズはそんな事は信じなかった。”彼”が自分から人を襲った事など、ただの一度足りとも無いのだ。 だが、世間はそんな少女一人の気持ちなどでは動かなかった。 事件がガリアだけに止まらず、ロマリア、ゲルマニアでも起こり、”彼”を完全に危険視したのだ。 各国の王宮は討伐隊を編制し、”彼”を捜索を開始するに至った。そんな状況にルイズ達は焦った。 そして、ルイズ達は朝靄が掛かる森の中でそれと遭遇した。 突如として地面が盛り上がり、巨大な怪物が姿を現したのだ。 それを見たコルベールは、その怪物が何か解った。 それは大昔に韻竜と共に絶滅したはずの火竜の亜種『バラナスドラゴン』であった。 怪物は地面から這い出るや、ルイズ達を見つけて大きく咆哮する。 その耳まで裂けた口から赤い液体が滴り落ちている。 それが人の血液であると言う事は直ぐに解った。…口の端から”人だった物”が除いていたのだから。 ルイズは吐き気を覚えたが、それを上回る激しい怒りが頭の中を駆け巡った。 ルイズは杖を振り、失敗魔法の爆発を怪物に放ち、エレオノールとコルベールも魔法を唱えるが、 怪物はそれらに全く怯む気配を見せなかった。 ついに精神力が切れ、魔法が撃てなくなったルイズ達は怪物から逃げた。 だが、ルイズだけが躓き、地面へと倒れてしまった。そのルイズへと怪物は牙の並んだ口を開けて迫る。 もうダメだ、とルイズが絶望した時、怪物の角が何者かに掴まれた。 見上げれば、怪物の角を掴んでいるのは”彼”だった。 ”彼”が怪物と戦っている隙にやって来たコルベールがルイズを抱え上げ、その場を離れた。 ”彼”と怪物の戦いは、人間と獣の戦いだった。 怪力と知恵で戦う”彼”に対し、怪物は牙や爪、ブレスを進化させたかのような強烈な熱戦、 更には最高百メイルに達する跳躍力で持って”彼”に襲い掛かる。 そんな理性と野生の対決は壮絶な物となった。 結果的に頭脳プレーで攻める”彼”に怪物は遂に逃げ出し、地中へと逃れた。 その後、”彼”は逃げる最中に謝って足を滑らせ、崖下へと転落したエレオノールを助け出し、 ルイズとコルベールの下へと送り届けるや、再び姿を消したのだった。 トリスタニアへと戻ったルイズ達は王宮へと事の次第を報告した。 全ての事件はバラナスドラゴンの生き残りの仕業であり、”彼”は無関係だと。 しかし、絶滅したはずのバラナスドラゴンが生き残っているなど在り得ない、と否定された。 更には、使い魔だからと問題の亜人を庇っているのではないか、と言われる始末だ。 結局、何を言っても信じてはもらえなかった。 そして、バラナスドラゴンの生き残りである怪物は再び現れた。 夜闇に隠れ、シエスタの生まれ故郷であるタルブの村の人々に襲い掛かったのだ。 次々と家が壊され、村人が老若男女の区別無く食べられていく。 タルブ領主のアストン伯が慌てて討伐隊を率いたが、一人残らず熱戦に焼かれたり食物にされた。 そんな地獄の様な光景を見ながら震えるシエスタに怪物は迫った。 その時、再び”彼”が姿を現し、怪物へと立ち向かった。怪物の首を締め上げ、投げ飛ばす。 だが、怪物もやられてばかりではなかった。二度も食事を邪魔された事は怒りを爆発させるには十分だった。 怒りの所為か、威力の増した熱戦が怪物の口から迸り”彼”に命中する。 最初は耐えられたそれも、威力の増している状態では耐え切れなかった。 僅かに怯んだ”彼”の隙を突き、怪物は大きく跳躍して覆い被さる。 鋭い牙で噛み付こうとする怪物の口へ、”彼”は岩を押し込み蹴り飛ばした。 ひっくり返る怪物に”彼”は更に岩を投げつける。 怒り狂う怪物は熱戦を吐き散らしながら”彼”に襲い掛かる。 ”彼”は怪物の注意を自分に引きつけ、村から引き離していった。 遅れて村へとやって来たルイズは、”彼”の意図を理解し、馬に乗るや後を追って森へと入った。 移動を続けながら二体の戦いは激しさを増していく。 やがて森を抜け、二体はハルケギニア随一の巨大な湖『ラグドリアン湖』へと辿り着いた。 そこで遂に戦いは終わりを迎えようとしていた。 ”彼”に投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた怪物はフラフラになる。 その怪物の首を”彼”は渾身の力で締め上げる。 怪物は苦しみ、激しく暴れたが、”彼”も必死に締め上げる。 やがて、怪物の鳴き声が弱々しくなっていき、大きく一声鳴くとそのまま口を閉じた。 直後、骨が折れる音が首から響いた。 不自然に首が折れ曲がった怪物は地面に力なく横たわる。 その怪物の身体を”彼”は二、三度蹴り飛ばしたが反応は無い。完全に事切れていた。 ”彼”は怪物の死骸を持ち上げると、湖に向かって力任せに放り投げた。 大きな水飛沫を上げて怪物の身体は湖底へと沈んでいった。 怪物が沈んだのを見届け、”彼”は勝利の雄叫びを上げる。 その彼の勇姿に駆けつけたルイズだけでなくエレオノールやコルベールも笑顔を浮かべた。 ――だが、事はそれで終わらなかった。 突如、ラグドリアン湖の水面から巨大な水柱が立ち上り、そこから声が辺りに響き渡る。 声の主はラグドリアン湖の水の精霊だと名乗った。 水の精霊は自らの領域を侵した”彼”へと制裁を加えると言った。 直後、水面が盛り上がり、巨大な蛸が姿を現した。それは水の精霊の使いだ。 呼吸する音が不気味な鳴き声のように聞こえ、足や胴体が動く度に粘液が嫌な音を立てる。 大ダコは八本の大蛇の様な足を振り回しながら”彼”へと襲い掛かった。 ”彼”は必死に戦ったが、怪物とは勝手が違いすぎた。 柔らかい柔軟性に長けた身体は木や岩を投げつけられても大したダメージを受けずに弾き返してしまう。 業を煮やした”彼”は肉弾戦を仕掛けたが、逆に大ダコの足に絡め捕られてしまった。 そのまま”彼”は大ダコに力任せに湖へと引きずり込まれる。 ”彼”の危機にルイズは助けようと杖を抜くが、エレオノールに止められる。 水の精霊を怒らせればどんな事になるか解らないのだ。 そんな事はルイズも解っている。だが、理屈では割り切れない事もあるのだ。 しかしエレオノールは譲らず、暴れるルイズの頬を叩いた。 そして、ルイズは気付いた。…姉もまた、自分の命の恩人の危機を見つめている事しか出来ないのに苦しんでいるのを。 結局、”彼”が大ダコによって湖底に引きずり込まれるのを見ている事しか出来なかった。 こうして、事件は一応の終わりを迎えた。 この日を境にルイズは一つの可能性を考える事となった。 それは”異種族との和解と共存”だった。 この後、ルイズはアルビオンで一人のハーフエルフの少女と出会い、 彼女と協力してエルフとの和解を実現させる事になる。 そして、彼女は和解成立のその後も毎日ラグドリアン湖へと通った。 何時の日にか”彼”が戻って来てくれる事を信じて…。 『終』
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「パタリロ!」のジャック・バルバロッサ・バンコラン ルイズ!-1 ルイズ!-2 人物紹介 パタリロ 前世がパンドラ、愛読書が「人をおちょくる50の方法」、あとは本編の描写でどんな人物か判断出来るはず。一番分かりやすい言い方をすれば「両津の同類」 ジャック・バルバロッサ・バンコラン MI6のダブルオーエージェント。実際はバルバロッサの姓は家庭事情から名乗っていない。プレイボーイだが相手は必ず美少年。つまりそういう人。超能力とか信じてない割りに超能力者、ただし視線が合った相手を虜にするというはた迷惑過ぎる能力。 マライヒ・ユスチヌフ 元暗殺者の女性……的な美少年(♂)で、バンコラン(♂)の愛人。彼の子を出産(!)したことも。ナイフと格闘術に長けていて、天才的な頭脳の持ち主。嫉妬深い性格で、浮気を続けるバンコランは度々ズタズタにされている。 アーサー・ヒューイット CIAの腕利きエージェントにして射撃の名手。重度のロリコンでCIA長官の娘に手を出したり、任務中に少女に気を取られて任務に失敗するなどの失態でよく左遷させられている。それでもクビにならないのは彼がバンコランに匹敵するほど有能だから。 ミハイル S国(どう考えても旧ソ連)のエージェントで「氷のミハイル」の異名を持つ。異名の由来は自分の体温を零下32度まで自由に変えられる超能力から。有能だが危ない橋を渡るのは嫌い。意外にも家族思い。何故かパタリロをカリメロと呼んでしまう。 タマネギ タマネギみたいな髪形とひし形の口をしたマリネラ国の中枢を担う役職についた人達の総称。相当なエリート軍人しかなれない重要な人材……なんだが有給は10年に1日で普通の会社の日当並みの年収と、労働環境はピラミッドの最底辺に位置する。
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ルイズとその使い魔として召喚された猫耳少女・南波の2人は、学院の温室でキノコ狩りをしていた。 「あったー! ほら見て見て!」 そう言って南波が差し出したキノコは、鼻にツンとくる異臭が漂い傘が蕩けかけていた。 「……真面目にやる気あるの?」 「えー!?」 取ってきたキノコを投げ捨てたルイズに不満そうな南波。 「それにしてもタバサちゃんも来ればよかったのにね」 「用事があるって言ってたから仕方ないわよ」 そう肩をすくめたルイズだったが、最初からタバサを誘ってはいなかったのだ。 「きっと残念がってるから今日の話はしないようにしましょ!」 「ルイズちゃんやっさしー!」 「そっ……、遭難したー! まだ2レスしか経ってないのに遭難しちゃったよ!」 「うるさいわね。落ち着きなさいよ」 「私のせい? 『そうなん』です。なんちゃっ――」 「落ち着けー!」 この状況で笑えないギャグをかました南波に、ルイズは容赦無く魔法で吹っ飛ばした。 遡る事30分前。 南波はルイズの手を取って今にも崩落しそうな崖の先端部に生えているキノコを取りに行き……、 お約束通り崖が崩落、2人は断崖絶壁から落下した。 さらにその下を流れる激流の川に流されて、熱帯性の植物が繁茂するこの場所に漂着し現在に至る。 「ここどこ? ジャングル?」 「私が聞きたいわよ!」 ――グキュルルル~…… 朝食から数時間、そろそろ昼時という事もあって南波の腹の虫が盛大に泣き声を上げた。 「お腹空いたなあ……。そういえば、さっき崖で取ったキノコ……」 南波が懐からキノコを取り出した瞬間、ルイズはそれを神速の速さでひったくり、 「! ……あんたほんっとーにキノコを見る目が無いわね! この毒々しい色、臭い! どう見ても毒キノコよ! こんなキノコのために私達遭難したの!?」 しかし南波はそんなルイズの言葉に耳を貸さず、 「……ルイズちゃん。そう言ってこのキノコ独り占めする気なんでしょ!」 「!?」 と一口で丸呑みしてしまい、案の定、 「お……、美味しい……」 ばったり倒れ伏してしまった。 「嘘おっしゃい!」 キノコの毒を受け、南波は脂汗を垂らしつつうんうん呻いている。 「大変!! 凄く苦しそう! 毒キノコを食べた時の治療法は……」 ルイズは慌ててなぜか持っていたサバイバルに関する書物から治療法を得ようとするが、その内容は彼女の想像を超えていた。 「……じ、人工呼吸!?」 思わず赤面するルイズだったが決意を固め……、 「そうね、今は一刻を争うんだから仕方ないわ……こ、心の準備が……」 ……たものの、やはり照れからか顔を背けてしまった。 「よし、今度こそ……」 「あ~、死ぬかと思った!」 今度こそ人工呼吸をと思った瞬間、何事も無かったかのように南波がむっくり起き上がった。 「治るの早いわよ!」 「???」 「ルイズちゃん、ごめんね。まさか本当に毒キノコだったなんて……」 「まあ、体が何ともないならいいんだけどね」 体調は回復したものの空腹までは回復しなかったようで、南波は何か食料が無いか周囲を見回していた。 「あ~、お腹空いたなあ……バナナだ!」 とある木にバナナがなっているのを発見はしたものの、実には到底手が届かない。 「でも高いなあ。あ、棒と箱が落ちてる!」 南波は棒を振り回してみたり箱の上でジャンプしてみたりしたが、バナナには手が届かなかった。 その様子を見かねてルイズが箱の上に乗り棒でバナナを叩き落すと、南波は心底感心した表情で手を叩き、 「ルイズちゃん、凄ーい!」 「私にこんな恥ずかしい格好させて……。わざとやってんじゃないでしょうね!?」 ルイズは怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「お腹は膨れたけど、私達帰れるのかなあ……」 俯いて深刻な表情の南波だったが、バナナの皮の山を背にしているためいまいち緊張感に欠ける。 「だ、大丈夫よ! 帰れるに決まってるわ! ……それにいざとなったら私がいるんだから」 自分の言葉に赤面したルイズだったが、 ――アーアアー 「ターザンだ!」 その時既に南波の興味は遠くから聞こえてきた謎の声に向いていた。 「は?」 「凄い! ターザンって本当にいたんだ! こっち来た!」 そして垂れ下がった蔓にぶら下がって2人の前に現れたのは――、 「タバサちゃんにそっくり!」 どう見てもタバサです。本当にありがとうございました。 じー…… さっ じー…… さっ 顔を覗き込んでくるタバサの視線からルイズは必死に顔を背ける。 「なぜ目を逸らすの」 「タバサ、誘わなかったから怒ってるんでしょう?」 「私はターザンだからわからない。でも近々素敵な事が起こる」 肩を竦め無関係なふりをしてさらりと不吉な発言をするタバサ。 「ひぃいいい!!」 「ルイズちゃん、ターザンと知り合いなんて凄い!」 「だから、あんたはわざとやってんの!?」 そんな2人を南波はやはり心底感心した表情で目を輝かせて見つめ、ルイズはまたも怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「こっち」 そう言ってタバサは藪をかき分け2人を先導し始める。 「帰り道も知ってるなんて流石ターザン!」 「……何にせよ助かってよかった……」 「でもルイズちゃんと2人で遭難するの、結構楽しかったよ。また一緒に遭難しようね!」 「まったく、縁起でもない!」 南波を魔法で吹き飛ばしたものの、少し嬉しいルイズだった。 (いつまで歩くのかしら) ルイズがそう思い始めた時、突然ラバサが立ち止まった。 「? タバサ?」 「迷った」 『ええええええ~!??』 「てへ」とでも付けそうな口調でのタバサの発言に、南波・ルイズの悲鳴がジャングル中に響き渡った。 その時、 「ミス・ヴァリエール~!」 そう3人に向かって大声を張り上げる人影――コルベール――がゆっくり降下してきた。 「ミス・ヴァリエール、心配させないでください」 「ミスタ・コルベール……」 「しかし、まさか隣接する人工ジャングル温室に迷い込むとは……」 「何でそんな温室があるのよ!」 翌日……、 「それでね、ターザンがね!」 救出後に書いてもらったサイン片手に心底楽しそうに昨日の話をタバサにしている南波の様子を、ルイズはジト汗を垂らして見ていた。