約 3,173,797 件
https://w.atwiki.jp/unidolteam/pages/75.html
嫌いじゃないけど好きじゃない。(K大学) twitter:嫌いじゃないけど好きじゃない。 instagram: 動画
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/6773.html
きらいじゃない【登録タグ き 初音ミク 娘細胞P 曲】 作詞:娘細胞P 作曲:娘細胞P 編曲:娘細胞P 唄:初音ミク 曲紹介 思春期の子の恋愛を気持ちを歌ったアップテンポな歌 シンプルな乗せて勢い良く自分の気持ちをぶつけながら歌う声が心地良い 歌詞 (HPより転載) ぜんぶ ぼくのかんちがいで けんとうはずれのとばっちり ぜんぶ ぼくのおもいこみで きみたちには かんけいない 「いたい いたい きずをえぐられ それでもいっしょにいたいの?」 ちがう ちがう ほんとはちがう ぜんぶぜんぶ もうそう きみのこときらいじゃないんだ どちらかといやむしろすきなんだ あのことにてるから それだけなんだ ごめん。 みんな ぼくのかんがえすぎで そんなことはないんだろう みんな ぼくのたんらくしこう はずかしいことこのうえない 「いたい いたい きずをえぐられ それでもいっしょにいたいの?」 やめて やめて わすれてたのに そんな ひがいもうそう べつにきみはどうでもいいんだ どちらかといやすこしすきかな かれらをみてるようで いやなだけだよ ごめん。 コメント 好きですなぁ・・・この曲の感じ そっと評価されてほしい -- ポン酢 (2009-10-07 20 57 53) これいいなあ!! -- 名無しさん (2009-10-07 21 13 43) 最高です -- みっくみく (2009-10-08 17 49 39) 嫌いじゃない・・・てか好き!! -- 名無しさん (2009-10-20 20 24 44) コレ好きなんだ・・・ -- 名無しさん (2010-02-07 17 37 50) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/17607.html
登録日:2010/07/25 Sun 08 47 09 更新日:2023/10/25 Wed 18 02 08NEW! 所要時間:約 4 分で読めるのねッ、嫌いじゃないわ! ▽タグ一覧 Vシネマ アドリブ イケメンで強いのねッ オカマ シリアスブレイカー セイヤー! ネタの宝庫 ルナ・ドーパント 仮面ライダー 仮面ライダーW 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ 仮面ライダーエターナル 仮面ライダーオーズ 便利な言葉 劇場版 台詞 名台詞 名言 圧倒的存在感 奇跡的アドリブ 嫌いじゃないわ! 映画 泉京水 発言 腹筋崩壊 腹筋崩壊兵器 迷台詞 迷言 運命のガイアメモリ 須藤元気 須藤元気の本気 魔法の言葉 イケメンで強いのねッ、嫌いじゃないわ! 「嫌いじゃないわ!」とは、映画『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』で誕生した迷言である。 使用者は泉京水。 【誕生】 愛する克己ちゃんの為に、Wと戦うオカm…レディ「泉京水」。 そこに現れたのは、京水好みのイケメンだった! 誰?このイケメン?誰このイケメン? 素敵なイケメンの登場に興奮する京水。 「変身!」 京水(とW)の前で、イケメンはオーズに変身した! アナタは何者!? オーズ!仮面ライダーオーズ! こうして、ルナ・ドーパントと仮面ライダーオーズの戦闘が始まる! その戦闘の最中、誕生した迷言が… イケメンで強いのねッ、嫌いじゃないわ! デンッ♪ \ハッピバァァァァァァスデイ!!/ 新しい迷言の誕生だ! この迷言は、多くの腹筋を崩壊させた! 素晴らしい!! 【解説】 シリアスな場面が多い『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』でも、コミカル且非常に濃いキャラで多くの者の腹筋を崩壊させた「泉京水」。 これは、そんな彼女(?)が放った迷言である。 新ライダーとのシリアスな戦闘…になるかと思いきや、この台詞の連呼によって劇場は爆笑の渦に包まれた。 それにより、今なお多くの者の心に深く残る迷言である。 尚、この迷言は京水役の須藤元気氏のアドリブである。 より正確に言うと、京水のオカマ設定自体が須藤氏のアドリブ(*1)であり、これ以外の京水の名・迷台詞も(元の脚本に沿ってはいるが)アドリブである。 流石に本作の後に製作された『エターナル』ではオカマ設定を前提として脚本が書かれたが、須藤氏は本作同様にガンガンアドリブをぶっこんだとか。 【後々…】 非常にインパクトの強いこの迷言は、多くの反響を呼び、 嫌いじゃないわ! 嫌いじゃないわ! に対し セイヤー! と返すのはある意味お約束。 某動画サイトでオーズ関連の動画をタグ検索する時、この台詞の方がよく引っかかるらしい。 【仮面ライダーエターナル】 『仮面ライダーダブルRETURNS 仮面ライダーエターナル』にも…「嫌いじゃないわ!」は登場した。 「気を付けて克己ちゃん!こいつ強いわ!特に…縛りがね!嫌いじゃないわ~ん!」 だが今回はコミカルな場面だけでは無く、克己と協力して戦ったレイカに対する讃辞としても贈っている。 「無茶して…。だからド素人は!でも嫌いじゃないわ……。頑張ったじゃない、素人なりに」 この「嫌いじゃないわ…」は少しだけクールな言い回しでカッコイイ。 しかし…例によって他の場面の京水は須藤氏のアドリブ全開でコミカルになっている。 「ビンッビンに勃たなくっちゃ!」 【ロストヒーローズ2】 コンパチヒーローシリーズのRPG作品にもこの言葉が登場。 オーズ→イケメンのライダーがいるのね!嫌いじゃないわ! ウルトラ戦士→金色と銀色…嫌いじゃないわ! ∀→立派なオヒゲね!嫌いじゃないわ! バイアランカスタム→立派な怒り肩ね!嫌いじゃないわ! …まるで前作のウェザー先生やブシ仮面を彷彿とさせる原作以上の暴走っぷりにプレイヤーの腹筋が崩壊したのは言うまでもない。 追記・修正してくれるのねッ、嫌いじゃないわ!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\嫌いじゃないわ!/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 魔法の言葉だよな -- 名無しさん (2013-06-24 09 45 03) この人が言うから説得力がありすぎるというかなんと言うか・・・・。 -- 名無しさん (2013-10-28 21 59 46) ↑仰る通りだわ~っ! -- 名無しさん (2013-12-12 17 08 53) 真似出来ない迫力があったな。 -- 名無しさん (2013-12-12 17 35 28) 私について来てwww -- 名無しさん (2013-12-12 18 59 05) ある意味乙女なセリフ。 -- 名無しさん (2013-12-12 20 03 18) いやホント京水は3150です! -- 通りすがりの名無し (2013-12-31 11 55 00) 本当にこれをアドリブで生み出した須藤さんの発想が凄いと思う。演技力もだが。 -- 名無しさん (2013-12-31 12 02 36) 平成ライダー全員で嫌いじゃry 五代さん:イケメンで笑顔が素敵なのね!嫌いじゃないわ!翔一くん:イケメンでお料理上手なのね!嫌いじゃないryシンジくん:イケメンで可愛いのね!嫌いじゃryたっくん:イケメンでツンデレなのね!嫌いryケンジャキ:イケメンでオンドゥルなのね、きryヒビキさんイケメンで鍛えてるのね、ry天道:イケメンで俺様なのry -- 名無しさん (2014-01-14 20 26 20) 良ちゃん:イケメンで不運なry渡:イケメンで753は315です!もやし:イケメンで俺様ry翔太郎:イケメンでハードボイルド(笑)なのね!ryフィリップ:昔の克己ちゃんに似てるわね!嫌いじゃないわ!えいじ:除外。ゲンちゃん:イケメンで友達思いなのね!嫌いじゃryハルくん:イケメンで魔法使いなのね!嫌いryオレンジ:イケメンでまっすぐなのね!嫌ry(これからどうなるか分からんが)コヨミ:死人仲間ね、嫌いryブラーボ:オカマ仲間ね、仲良くしましょ! -- 名無しさん (2014-01-14 20 33 29) ↑気をつけて克己ちゃん…こいつ、長い♂わ…特に、コメントがねっ!嫌いじゃないわ~ん! -- 名無しさん (2014-01-15 03 10 04) ↑仰る通りだわぁぁ~!長くてごめんなさいね!だが私はry -- 名無しさん (2014-01-15 09 00 04) ↑でもそういう人って迷惑ね、私様子を見てくるわ! -- 名無しさん (2014-01-15 09 36 50) ↑克己ちゃん!こいつは私に任せて!楽しみましょう! -- 名無しさん (2014-02-05 18 08 56) ↑まかせた…… -- 名無しさん (2014-02-05 18 22 12) アドリブなのかよ(驚愕) 愛される迷言を生み出した中の人に敬礼 -- 名無しさん (2014-04-05 22 53 47) ↑↑コメント欄で遊んで。だからド素人は…でも嫌いじゃないわ -- 名無しさん (2014-04-06 22 39 39) やっぱり京水ちゃんは・・・嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-04-06 22 46 28) 何このコメ欄!?オカマばっかりじゃない!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-04-06 22 48 59) みんな嫌いじゃないわって言いたいだけじゃない…でも嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-05-13 10 33 26) 好きよ! -- 名無しさん (2014-05-13 10 35 28) やっぱりこの人・・・嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-05-13 10 42 49) 言い換えると「好きだわ」www -- 名無しさん (2014-05-13 10 49 06) あなたの後ろににほら・・・嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-05-13 12 39 28) イケメンで10歳で魔法使いで先生なのね!嫌いじゃないわ!イケメンで借金執事でタフなのね!嫌いじゃないわ!イケメンで猫アレルギーで不幸体質なのね!嫌いじゃないわ!イケメンでイケボでラッコの坊やに頼られてぐーたらなのね!嫌いじゃないわ!イケメンで喫茶店マスターでダジャレ好きなのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-05-15 22 59 09) 初めて映画館で見た時は笑ったなw でも嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-06-28 19 54 36) だめだ・・・早くセイヤーしないと・・・ -- 名無しさん (2014-06-29 01 02 55) ↑誰このイケメン。嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-07-08 09 18 26) イケメンなんて、嫌いじゃわいな! -- 名無しさん (2014-07-08 10 19 53) なんだよこのノリ・・・嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-07-13 11 06 40) ↑↑誤字…嫌いじゃないわ!嫌いじゃないわ!! -- 名無しさん (2014-07-13 11 26 13) ↑×3誤字して…だからド素人は…でも嫌いじゃないわ。頑張ったじゃない素人なりに。 -- 名無しさん (2014-08-14 18 23 16) ↑全部 セイヤー! -- 名無しさん (2014-08-14 23 44 44) ↑全部纏めてなんて…イケメンで強いのねッ、嫌いじゃないわ! -- 無限ループって怖くね? (2014-08-14 23 47 05) セイヤー!セイヤー!セイヤー!セイヤー!セイヤー!セイヤー!セイヤー! -- 名無しさん (2014-09-29 15 39 24) 今度は3DSでゲームで出てくるのよね、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-09-29 17 16 41) セイヤー! -- 名無しさん (2014-09-29 17 24 56) ドライブ:イケメンでギア全開なのね!ワタシのギアもビンッビンよ! -- 名無しさん (2014-10-12 23 45 50) 京水!黙ってろよもう頼むから… -- 名無しさん (2014-10-13 02 12 17) ドライブもオカマ出すんだろうか -- 名無しさん (2014-10-13 02 17 45) ↑それは「ひょうきん族」のスキルを活かして本願寺さんがなるんじゃいのか? -- 名無しさん (2014-10-13 09 26 30) ↑まぁ「小森のおばちゃま」っぽくなるかも・・・・・。 -- 名無しさん (2014-10-13 12 37 28) ↑ なかなかいいじゃない!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-10-13 16 41 51) コメ欄はじめて見たけど何か会話してるし…。でもこの流れ、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-10-20 00 47 20) 鎧武に出てたらバナナ♂(意味深)アームズになってたのかな… -- 名無しさん (2014-10-20 15 44 19) ↑ イケメンで俺様系で我が道を行くのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-12-21 12 55 29) ↑そうね、ムッシュバナーヌも魅力的だわ…でもアテクシがお慕いしているのはメロンの君ですわ!! -- 名無しさん (2014-12-21 13 02 17) ↑ アラ、イケメンでドジっ子で頑丈でとっても強いのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2014-12-21 13 15 48) 誰か「堂本さん」呼んで来い!キリがない!! -- 名無しさん (2014-12-21 13 26 50) 皆んなビンビンに立っているのね!!嫌いじゃないわ!!! -- 名無しさん (2014-12-21 15 54 17) セイヤー! -- 名無しさん (2015-01-05 13 57 05) およそ全コメント欄で一番ノリがいいのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-01-05 14 21 18) 人気が有るのね、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-01-05 15 13 49) 須藤さん、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-01-05 17 27 24) イケメンでヒトデで王様でファラオなのね!嫌いじゃないわ! イケメンでクラゲで精霊と話せてチートドローなのね!嫌いじゃないわ! イケメンでメ蟹ックでクールでデュエルするのね!嫌いじゃないわ! イケメンで海老でかっとビングでオーバーレイなのね!私もビンッビンッになってきたわ! イケメンでかわいくて素敵なショーね!私のハートも揺れるわ! -- 名無しさん (2015-01-05 17 45 04) 刑事さんで強いのね、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-08-09 14 35 06) ビートライダーで強いのね、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-08-10 09 10 25) セイントセイヤー!! -- 名無しさん (2015-08-11 17 18 01) ↑古いけど今も色褪せない名作…嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-08-11 18 15 22) きりがないじゃないか!!でも嫌いじゃないわ!! -- 名無しさん (2015-08-11 21 05 59) この流れ…嫌いじゃないわ‼ -- 名無しさん (2015-11-17 12 25 07) セイハー! -- 名無しさん (2015-11-17 14 17 52) ↑背は低いけどイケメンなのね!嫌いじゃないわ!オレンジの甲冑も嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2015-11-17 14 43 10) 須藤元気の演技力は本職が俳優以外の人の中でもトップクラスじゃないか? -- 名無しさん (2016-02-27 21 59 14) 幽霊で強いのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2016-03-28 17 22 16) ゲーマーで強いのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2016-09-30 09 13 42) ゲーマーでお医者さんだなんて…ワタシの体も診察してちょうだい! -- 名無しさん (2016-09-30 10 23 06) ↑言いそうだw -- 名無しさん (2016-09-30 10 40 12) コメ欄で笑えるわw -- 名無しさん (2016-11-23 20 34 26) 昭和ライダーってイケメンというよりも男前って人が多いのね…嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2017-02-23 00 26 07) ルナ「イケメンで引きこもりなのね!嫌いじゃn(アマゾンオメガ「ガァァァァァァァァ!!!」 -- 名無しさん (2017-02-28 21 23 04) 物理学者…イケメンで強くて頭もいいのね!おまけに記憶喪失なんてミステリアス!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2017-09-15 23 10 48) 嫌いじゃないわ!むしろフェイバリット! -- 名無しさん (2017-09-15 23 15 22) イケメンで生まれたことが罪なのね・・・嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2018-05-25 01 10 37) カオスなコメント欄wwwww -- 名無しさん (2018-05-25 11 16 44) イケメンで強くて王様になりたいのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2019-01-27 23 09 36) イケメンで社長なのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2019-08-23 23 41 32) テロリストの正体がヒューマギアだったのね!嫌いじゃないワッ!! -- 名無しさん (2019-12-04 15 48 28) ねこなのね嫌いじゃないわっ、よろしくお願いいたします -- 名無しさん (2020-06-09 11 49 22) あたしそういうの嫌いじゃないから! ……違う? -- 名無しさん (2020-07-08 18 19 12) いいセリフだ、感動的だな 嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2021-06-13 21 18 06) イケメンで文豪なのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2021-06-13 21 30 17) イケメンで家族思いで、悪魔が潜んでいるのね!嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2022-08-16 08 08 07) アーッ!切れちゃった! -- 名無しさん (2022-12-25 15 34 09) 昭和ライダーはイケメンって言うより男前なのね、嫌いじゃないわ! -- 名無しさん (2023-06-25 15 05 51) ギーツ:化かされた!?乙女のハートをたぶらかしたのね!?でもそんなあなたが嫌いじゃないわ…(はぁと) -- 名無しさん (2023-06-25 22 29 11) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ixgchord/pages/87.html
楽曲情報 アーティスト名 ≠ME 編曲 如月結愛 作詞 指原莉乃 作曲 水野谷怜 備考 TVアニメ『最近雇ったメイドが怪しい』OP コード イントロ サビ 恋なんて 知らないよ 教科書に載ってないじゃん Key=F F C Dm7 Cm7 Cb@ Bb C/Bb Am7 Ab Gm7 Db C Ⅰ Ⅴ Ⅵm7 Ⅴm7 bⅤ@ Ⅳ Ⅴ/Ⅳ Ⅲm7 bⅢ Ⅱm7 bⅥ Ⅴ 分類:裏コード型 対応スケール: Cbリディアンドミナントスケール Cb Db Eb F Gb Ab Bbb Bbに対するⅤのFをaug化し、ベースを裏に持ってきたもの。 参考 【最近雇ったメイドが怪しい OP】す、好きじゃない! コード譜 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/momosuki_kame/
もも 俺の事好きじゃなくなった? 才能さんと会ったら 好きになっちゃった 「もも好き」の経緯
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1485.html
冬じゃないけど ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……本当に大丈夫なのか?」 「しつこい男は嫌われるわよ、早く案内しなさいな」 「まぁいんだけどさ……無理はするなよ」 これで何度目か、俺もわからない。 でも、言わざるをえないだろ?だって本来ならまだ…… 「くどい、ほら早く行きましょ、時間は短いのよ」 そういって俺の手を引っ張る彼女の手はひんやりとしているがどこか暖かさを感じさせてくれる。 その彼女になす術もなく引っ張られる俺を周囲はどんな感じに見ているやら。 しかし実に意気揚々としていられるとこちらとしては仕方ないというもの。 全く困ったものだ、そして実はほとんど困ってない俺が一番困ったちゃんなわけだがな。 彼女、レティ・ホワイトロックに手を引っ張られながら俺はもう帰ってこないと思った【こっちの世界】の駅を歩かされていた。 始まりは長月の最初の頃に俺の家に直接スキマ妖怪が天狗の新聞を持ってきた事から始まる。 「と、いうわけで幻想郷の色んな連中で神無月限定下界旅行を計画中ってわけ」 「それはこれを見ればわかる。 まぁお前さんにしては周囲に対してかなり親切なのがかなり怪しいくらいで、至って問題はないだろう。 俺のように下界から来た連中と一緒にラブラブデートやら取り合いとか発生しまくりで一般人が可哀想な事になりそうだが その辺はまぁごまかしくらいは簡単だろう、むしろしてくれんと困る」 その辺はいくら妖怪さんやらなんやらでも色々とやってくれるだろう、見た目ほとんどわからんのが多いわけだし。 しかし、だ。 「相手のいない俺にこれを持ってくるのは八雲流の嫌がらせか……?」 それだったら俺は博麗神社にあることないこと言って泣きつくぞ本当に…… 幻想郷に来たというか迷い込んだ時この女には酷い目にあわされたからなぁ…… この女が寝ぼけてて俺が喰われかけたのはトラウマもんだったぞ、藍さん止めてくれなかったら今頃俺は……考えなかった事にしよう。 まぁそんなこんながあって今じゃこうして友人みたいな会話できるっていうんだから世の中わかったもんじゃない。 俺は自称、というか自他共に認めるはずである普通の人間だからな…… 「あら、相手ならあなたにだっているじゃない。 ほら、地下室で寝ているあなたの愛しい愛しい彼女さん」 むっ……知っているのか、彼女の寝床を。 「安心なさい、さすがに寝室御拝見はしてないわ、寒そうだし。 私、こう見えてもその辺は弁えておりますもの」 うさんくせぇ……と表情に浮かべたらスキマ開かれそうになったのでお茶菓子を追加した。 ちくしょう、虐めはよくないんだからね! 「何にしたって今はまだ長月だ、彼女が起きてくる時間じゃあない。 無理矢理起こすような事だってしたくはないしな」 今更あっちの世界に未練などは無い。 そう、未練はもう…… 「まぁまぁ、ここは彼女に決めてもらいましょうか、案内お願いね。 私、こう見えても人の家を勝手に捜索しませんのよ」 今度こそうさんくせぇと表情で浮かべたらいつの間にかスキマから出していたであろう傘で殴られかけた。 俺の白羽取りが後一秒遅れていたらでかいたんこぶできてたに違いない。 だから弱い者虐めはやめろよなぁ…… 「……あんまり起こしたくはないんだが」 「寝起きが悪いとかかしら?」 家の奥にある地下室を下っていく。 入口の時点で長月とは思えぬ寒さを感じるがもう慣れたものだ。 八雲紫もその辺は大丈夫のようだ、さすが長年生きてる大妖怪はちが・・・ 「おーけーゆかりん、頼むから肩から手を放してくれ。 か弱い俺はそのまま脱臼どころじゃすまなくなるから勘弁な!」 「女性に年は厳禁って前にも言ったでしょうに」 えぇえぇ存じております、彼女にも凍死させられかけた事ありますからね。 だけど言葉に出してない事までは勘弁してくれよぅ…… そんな馬鹿な会話というか命は投げ捨てるもの……とか言ってしまいそうな俺の生命の危機を何度か体験しながら一番下まで到着した。 ほんと、ここまでやるのは大変だったなぁ……何年かかったか忘れちまったい。 掘り始めは俺もまだ……おぉっと、まだ俺は20代20代。 「何一人で感慨に耽ってるか知らないけどここに彼女……レティ・ホワイトロックがいるのね?」 八雲紫の指差す先にある扉、そうそこに…… 「あぁ、お姫様は夢の中って感じだな」 彼女と会って、そして彼女を好きになって、彼女に受け入れられて、そして彼女と共に暮らしている今。 レティは冬以外地下にいるけれど、それでも俺は一向に構わなかった。 彼女が俺を信頼して地下で寝ていてくれている、それだけで十分すぎるものだ。 「さて、ちょっと夢の中のお嬢さんとこの素敵な魔法使いが夢の中で話をさせてもらおうかしらね」 「頼むから変な事はあんまりするなよ?」 「わかってるわ、悪夢にはしないわよ」 そういって八雲紫はスキマの中に消えていった。 青年待機中…… 「うーむ、何をしているのやら」 地下にいるが故に時間の流れはよくわからんが10分は経っているだろう。 しかし全く向こうからの反応はない。 防音処理はしてあるから中の音はそう聞こえないとは思うが…… 「うーむ気になる、何か疚しいことをしていないか気になってしまう。 入って、いやいや駄目だ、俺の決まりに反する」 冬以外はこの先には入らない事に俺はしている。 レティは別に「別に入ってもいいのに……」と言っていたが向こうは寝ているのにそれは迷惑になる。 それに、その、なんというか……可愛い寝顔を見ると色々と、な。 故に俺は入らないことにしている、しているのだが…… 「いや、今ある意味非常時だし…いやしかし…一度見ちゃうと…いやもう起きてる可能性も…うぅむ…」 座り込んで入ろうか入らずにこのまま待とうかいよいよ俺の脳内会議が白熱してきた頃…… 「何一人で座ってぶつぶつと頭抱えてうねってるのよ……」 声の方を向くとそこには去年の冬の最後にここで見たままのレティがそこに立っていた。 少し眠そうに眼をこすっているがちゃんと起きているレティ・ホワイトロックがそこに…… 「あぁ……いや、もういいんだ、済んだことだから」 いきなりの事で少々冷静になれていないが何とか頭を落ち着かせながら俺は立ち上がった。 眼前にはレティ、あの時彼女がこの部屋に入って長い眠りにつく前と変わらぬレティ。 「そう」 微笑するレティに俺の頭は未だ落着きを取り戻せない。 何か言わねば、そういつもこの時に必ず言う言葉を…… 「えーと、その、なんだ……おはようレティ」 「ふふっ、おはよう、今回はちょっと早起きだけどまた冬までよろしくね」 お互い同時というくらいに抱きあった。 ひんやりとレティから冷気を感じる、しかしまったく寒さを感じない。 むしろレティの温かさを俺は感じるほどだ。 「やっぱり……〇〇を感じれないと寂しいわね」 俺の胸にレティが顔を埋めてきた。 「あぁ……俺も寂しかったよレティ」 レティが顔をあげる、そのまま目を閉じてその唇が俺に迫って… 「ぎりぎり、私だって相手がいるのに人のを見るのってこんなに嫌なものなのねぎりぎり」 扉からスキマ妖怪がハンカチ噛み締めながらこっちを見ているのに気づいて慌ててお互いに離れた。 ていうか忘れてた、すまん…… 「冬の妖怪もこう春じゃ幻想郷はもう四季なんて無くなってるわねぇ……いいものいいもの、家に帰って××とイチャイチャするから」 嘘泣きしながらスキマに帰ろうとする八雲紫、こりゃ××はこの後相当大変な目にあいそうな・・・すまん××。 帰ろうとした矢先に何か思い出したのかこちらを八雲紫が振り向いた。 「あぁ、それとあなたの彼女さん行くっていったからちゃんと向こうの事とか話しておきなさいねー それじゃあ、よい旅プランを期待してるわ」 そういって隙間の中へ消えていった。 後に残ったのはまだちょっと赤みが抜けきっていない俺とレティのみ…… 「無理していかんでも……」 本来ならまだ寝ている期間だというのに。 「いいの、一度見たかったのよ……あなたが生まれた、育った場所を」 迷惑だった……?とちょっと困った顔をされると何も言えない。 「うーん、何も楽しいものはないと思うがそれでもいいのか?」 「あなたと一緒に行ける、それだけで十分だもの」 後ろから抱き締められた。 俺は無理はしないでくれよ……と言いながらレティの手に手を合わせた。 こうして俺とレティの下界旅行参加が決定した…… さて、何事も無ければいんだがなぁ…… ─────── 「いやまて、そんなに急がなくてもまだ余裕あるから……」 俺の制止もどこ行く風、といった感じで目的のホームに向かうレティ。 もちろん俺の手を握ったまま、つまり俺は引き摺られるように連れていかれているわけだ。 正直周囲の目が……あ、今プリズムリバー次女とその旦那と目が合った、えぇいやめろ、その笑みはやめろ! うわっ、今度は三女とその彼氏か、だからそのニヤニヤはやめろってぇの! 「あーもう……好きにしてくれぇ」 俺が一度手を離し、ホールドアップすると今度は後ろ首持たれた状態でずるずると引き摺られていくことに。 向かう先は港町を通る電車のホーム。 つまり行く先は……俺の生まれ故郷。 「んで、どこか行きたいところはあるのか?」 八雲紫が帰った後、今で俺は記憶にある限りの向こうの情報を話した。 レティはアイスティーを飲みながらうーん、と少し考えだしたが直ぐに答えは出たらしく、こっちを向いて 「あなたの生まれ故郷に行きたいわね……」 とやんわりと微笑んで言った。 それはあれか、俺の親が見たいとかそういう類か。 「いえ、ただ見たいだけよ。あなたの故郷が」 そういって窓の外を見るレティの顔はどこか愁いを帯びていた。 他に行きたいところは無いのかと聞いたが特には無いらしく、俺任せにされてしまった。 まぁレティを喜ばせられるところでも何とか考えておくか、ということにして俺たちは当日の準備をした。 ちなみにだが別に咲夜、じゃない昨夜はお楽しみでしたね、とかいう内容は……ない、ということにしておく。 えぇい、いいだろ別に、久しぶりだったんだから! 「それじゃあかいさ~ん、各自あんまり羽目を外し過ぎて時間オーバーしたりしないようにね~」 八雲紫の号令の下、それぞれ各々の面々と駅内に散っていく。 聞いた話じゃ北は北海道、南は沖縄とまぁ広い範囲に皆散るらしい、羽目外し過ぎて厄介な事しなきゃいいけど。 「それじゃー○○ー楽しんでらっしゃーい」 相方の××の手を引きながら悠々と八雲紫は改札に消えていった。 おーおーぎゅっと繋いじゃってまぁ、幻想郷の大妖怪も愛の前じゃ女の子ってやつかね。 「さて、では私達も出発しよう。ではな○○、気をつけてな」 続いてその式、八雲藍とその夫の△△の二人がこちらに挨拶に来た。 行く先は温泉で有名な地とのこと、まぁ色々と疲れが溜まっているであろう二人だ、ゆっくり休みを取りたいところだろう。 「あぁ、そっちもな」 手を両名に振る。二人は八雲紫とは別の改札方面に向かって行った。 しかし狐の尻尾とか耳とかよく隠せるもんだな・・・まぁ見えたらまずいわけだが。 解散場所にはどうやらこれで俺とレティ以外いないようだ。 「さて、では行きま……うぉっとぉ!? 」 レティに向いて行くかーと言おうと思ったらもう我慢の限界だったのかレティに手を引かれる形で連行される羽目となった。 はぁっ、まったく困ったお嬢様だ、こういうのも俺ぐらいにしか見せない可愛いところではあるが。 「全く、そんなに急いでいかんでも……電車は逃げんぞ、時間内は」 結局駅のホームまで引き摺られて俺の襟はすこーし長くなってしまっている。 今はレティはそんな俺に気づいてか少ししゅんとした感じになっている。 「だって……早く見たかったんだもの」 頬を少し赤く染めてぷいっとそっぽを向かれてしまった。 むぅ、相変わらず可愛い奴だ。 「いやまぁなんというか別に怒ってるわけじゃないんだがな。 急がばなんちゃらといったりだな、えぇといや、うーむ……」 頬を掻きながらその可愛さに根本から負けている俺がいた。 俺の慌てる様が面白かったのかくすりとレティが俺を見て笑った。 かなわんなぁ、やっぱり。 「あら、冬のカップルじゃない」 声に振り向くとそこには紅魔館メイド長と紅魔館執事長が。 主人の吸血鬼やら魔女やらはいないようだ。 「何かその言い方だとこの人も冬にしか起きないみたいね…… あ、でもその方がずっといられていいわね」 「やめい、現在進行形で人間の俺にそこまで寝れるはずがないだろう?」 まぁずっと一緒というのには惹かれるけど。 しかし、彼女と一緒に生きていくには最終的には俺も…… 「あら?どうかしました?」 おっといかんいかん。 「いや、何でもないさね。 そういえばそちらさんはどちらへ?」 「私たちは北へ。 高原で羽を休めてくるわ」 なるほど、こちらの従者も羽休めか。 どこの従者も苦労してるもんだ。 「私たちは上のホームだからもう行くわね。 あなたたちも良い旅を」 「あぁ、良い旅を」 手を振りメイド長が、一礼してその後を執事長がそれぞれ上の階段へ消えていく。 そういやあの執事長全く喋らなかったな。 あいつにとっちゃ外ではメイド長が主なのかもしれんな。 二人っきりのときはどうかはしらんが。 「いつまで他の女を見ているのかしら?」 いっていって!背中を抓らないでくれ! 相変わらず嫉妬深いぜ、とほほ 「これが電車…… 人間は凄いわね、色々な術を編み出すんだから」 「まぁどこぞの魔女とかスキマのように瞬間移動でもできたほうが楽だろうけどな」 幻想郷の住人は空飛べるの多いし。 しかし長距離を移動する分には電車の方が楽そうではあるが。 むっ、発車のアナウンスが。 そしてゆっくりと俺とレティが乗った電車が動き出した。 「そういえばさっき何を買ってたの?」 「ん?あぁ、これか」 電車に乗る前に売店で見て思わず買ってしまったもの、〇印のコーヒー牛乳を取り出す。 向こうじゃ飲む事はできんがこっちじゃよーく飲んでたんでついつい買っちまったぜ。 「飲み物だ、こうストローを刺して、そして吸うんだ」 うむ、美味い。 前と変わらぬ味だ、本当にこっちの世界に戻ったのが実感できる。 「ほれ、飲んでみそ」 レティに渡してみる。 少し戸惑いながらレティはストローに口をつけた。 「甘いわね……うん、結構美味しいわ」 おっよかったよかった。 あれ? 「そういやこれ間接キスだな」 俺が何気なく言うとレティがんんっと吹き出しそうになった。 おっと失言だったか。 「げほっげほっ!そ、そういう事は思っても言わないでよ!」 「いいじゃないか、別に減るもんじゃないんだし。 それに、だ」 レティの肩を抱く。 あっ、とレティは俺の成すがままに寄りかかる体勢に。 「キスなら寝る前だー朝起きてだーとか色々とやってるじゃないか。 今更、恥ずかしがることでもないだろ?」 耳元で囁くと真っ赤な顔してストローをちゅーちゅー吸い始めた。 あ、俺の分は無くなるなこれ。 「ぜぇっ、ぜぇっ、こ、ここか……」 そんなこっぱずかしいことをしていると声が。 見ればプリズムリバー長女とプリズムリバーマネージャーが息を切らしていた。 慌てて俺とレティは少し離れる。 「ど、どうしたんだそんなに息を切らして」 努めて平然に俺は二人に話しかける。 二人は落ち着いてきたのか対面の席に座った。 とりあえず缶の緑茶を開けて二つあげた。 「す、すまない……んくっ……はぁっ…… メルランとリリカ達が勝手にどっかに行ったきり帰ってこないで探していたんだ。 ようやく見つけて行く前に色々と話をして気づいたらこの電車とやらの時間が危ないことになっていたんだ」 そいつはご愁傷様……おそらく全速力でこの電車に乗ったんだろうなこの二人。 まったく人の事笑っておいてあいつらは。 「それでレティさんと〇〇さんはこれからどちらへ?」 「俺たちは俺の故郷にでも行こうかと。 お前さん達は?」 「私たちはバイオリンの演奏会を聞きに行きます。 後は色々と見て回ろうかと」 なるほど、騒霊とそのマネージャーらしい。 それ以後取り留めのない会話をしている間ずっとレティはコーヒー牛乳をちゅーちゅーしていた、気にいったのだろうか? 「ふぅ、前よりもさすがに賑やかになってるか。 しかし変わらぬところは変わらないもんだ」 俺達の方が目的地は近かった為、別れと良き旅をお互いにかわし、俺とレティは俺の故郷に足を踏み入れた。 幻想郷に入ってこっちじゃ何年か……変わり行く時を感じさせる。 そして俺はもう幻想郷の住人だということも。 「さぁてと、俺の故郷についたわけだが何か見たいものでもあるかいお嬢さん」 着いてから微妙に暗いレティを見る。 一体何を考えているのか……予想はできても聞けん。 軽い調子でこれからどうするかを聞くくらいしかできない。 「あなたの好きな所に連れてって、私にはこっちの世界が全くわからないんだし」 そうさねぇ……あ、いいところ思いついた。 「んだば、お嬢様お手を拝借、そしてへいタクシー!」 別に叫んでも来ないし自分から乗り場にいかないといけないけどな! 「はい、到着。 んん~久し振りに嗅ぐこの匂いは新鮮だな」 「ここは……海?」 「おっさすが知ってるか。 幻想郷には無いからなぁ海」 しかしなぜか鯵やら秋刀魚が手に入る謎。 おそらく八雲紫辺りが何かやったに違いない。 砂浜に上げられたボートを椅子替わりに座る。 「ほら、座りな。 幻想郷じゃ見れん光景さね」 レティを隣に座らせる。 憂いを帯びた目は海の、いや、その先の地平線の彼方を見続けていた。 綺麗だ、と思っちまうのは惚れた弱みなのか。 「ふぅ……ねぇ?私が何を考えているのか大体はわかっているんじゃない?」 「俺は既に幻想郷の一員だぜ?もうこっちの世界に未練はないよ」 故郷がみたいと言った時に聞かれるだろうとは思っていた。 たぶん他の連中も聞いたり心の中で思ってたりするだろう、この世界に帰りたくはないかと。 まっ十中八九俺の様に答えるだろうな。そうじゃなきゃやれ相棒だ、やれ彼氏だ、やれ夫婦だなんぞ言わんだろ。 しかしレティはそれ以上の考えにいっていた。 「でも私達は他の子達とは違う。 あなたと共に過ごせる季節は冬だけ、皆の4分の1しかないわ。 だったらいっそ……」 確かに基本レティとは冬にしか会えない。 最初はそれが大きな壁となって俺達の前に立ちふさがった。 だが俺はそれでなおレティを愛した。 それぐらいで愛せないようなら初めから彼女を好きになんてなってないも同義だ。 「なぁレティ、お前さんと一緒に暮らすようになって結構経つけどさ。 俺はお前さんと暮らしたいからと地下室を作った、お前さんは喜んでくれた。 俺は一年中レティと一緒にいられる気がしてたんだ。 俺とレティの家だって、実感が沸いていたんだ」 結局自己満足かもしれないことだけどさ、と心の中で付け加える。 「……えぇ、あそこはあなたと私の家だわ。 でも、私は寝ている間あなたに温もりも何も……」 「いいんだレティ。君がいてくれることがわかるだけで俺はいい。 まぁそうだな欲を言えば寝てる時に俺の夢でも……」 話している途中で俺はレティに抱きつかれた。 顔を俺の服に埋めている、俺はレティの頭をぽんぽんと少し撫でる。 「ごめんなさい、ごめんなさい……私が……私が……」 「いいんだ、俺が好きでやってることだ。 男は甲斐性、このぐらいの事でへこたれちゃ恋人なんざ持てんさ」 しばし俺は海を眺めることにした。 彼女が泣き終わるまで、頭を撫でながら。 「おいっす久しぶりだなばぁちゃん。 言われたとおりブローディアの花だ、無けりゃ手ぶらって約束も忘れちゃいないぜ」 レティが泣き終えた後、俺はとある場所へ案内した。 変わらぬその場所にホッとしたが相変わらず人は少ない場所だ、まぁ無理はない。 しかしほんとうちのばぁちゃんは変人だな、ブローディアの花以外受け取らぬ、無けりゃ手ぶらで来いだからな。 どんだけ好きなんだブローディア。 「ねぇ〇〇、まさか……」 「あぁ、そうだ。俺には両親はいないよ。 いたのはばぁちゃんだけさ、そのばぁちゃんも、な」 俺とレティの先にあるもの、それは墓石。 俺の育ての親であるばぁちゃんはここに眠るわけだ。 一応こっちに帰って来たならその日に報告するのが孝行ってもんだろ。 「俺の両親は幼い時にどっかに消えちまったっきりだ。 そしてばぁちゃんはそんな俺を育ててくれたってわけだ」 ある種今の俺があるのはばぁちゃんのおかげだな。 「一時両親が帰ってくるなんて希望を持ってた時もあった。 だからさ、レティ、待つのなんて慣れっこだ。 気にせず冬が終わったら寝てくれ、俺は起きるまでちゃんと待ってるさ」 手を合わせながらレティに言う。 今は振り向けない、だって恥ずかしいじゃないか。 「おっと、報告忘れてたな。 ほればぁちゃん、俺の恋人だ、綺麗だろ?こっちじゃ羨ましがられる程の美人だろうな。 それと俺は今こっちの世界にゃいないんだ……だからたぶんこれが最後だろうな。 さらにいえばたぶん俺は人間やめちまうよ、すまねぇ」 「ちょ!?〇〇!?」 まぁレティが驚くのも無理は無い。今まで言ったこともないからな。 でもさっきの事が最後のひと押しだ。 「本気……なの?」 「待つには人の身じゃ限界が、な。 手段なんていくらでもあるさ」 よっという掛け声をあげて立ち上がる。 俺の報告はこれで終わりだ。 長々と色々と説明するのは俺も、ばぁちゃんも好きじゃない。 さて、行くかと言おうとしたが俺の座っていた場所にレティが座り、手を合わせた。 「ごめんなさい、私みたいな化生があなたの大事な息子を取ってしまって。 私は今まで妖怪という立場で人に数多の害を及ぼしてきたわ。 私みたいなのがあなたの息子と一緒にいる事に腹を立てるかもしれない」 あのばぁちゃんだとなに?妖怪?よくやった!とか言い出しそうで困る。 珍しいもの好きだからなあのばぁちゃん…… 「でも私は本当にこの人を愛してしまった。 あの人が私を本当に愛してくれている事がわかってしまった。 私は、この幸せを失う事が怖くて、でも、いけないと思って悩んできました。 だけど、だけど……自分に素直になろうと思います。 この人と一緒に歩んでいこうと思います…… ごめんなさい、私の我儘を許してほしいとは思いません、でも、私は…」 「もういいよ、レティ。 うちのばぁちゃんは話のわからない人じゃ無かったさ。 わかってくれてるさ、きっとな」 レティを後ろから抱き締める。 手に何かが零れているのがわかるが気にしない。 なぁばぁちゃん、俺は今幸せだぜ。 例え1年の4分の1しか会えなくたって俺は構わない。 こんなに可愛い恋人がいるんだ、それだけで十分だ。 さて、湿っぽいのはもう終わりだ。 明日から、楽しい楽しい二人っきりの旅行にしないとな。 俺たちにとって大事な、大事な1ヶ月だ、楽しく過ごさなきゃ損ってもんだろ。 さぁて、どうしょうかな…… 新ろだ65、326 ─────────────────── 「んーーー秋もそろそろ終わりね」 「そろそろ冬かねぇ」 神無月旅行から帰りレティは相変わらず起きてくれている。 少し体調とか気にしていたのだが彼女の調子に問題はないようだ。 心配は杞憂だった、といったところか。 元気に縁側で深呼吸してる姿を見て俺はそう思った。 「……心配してくれてありがとう」 「むっ……」 俺の考えなど御見通しというわけですかそうですか。 まったく……本当にこの雪女様にはかなわんなぁ…… 「ねぇ、こんなに日和がいいのだからどこかへ行かない? せっかくだし、秋の終わり際もちゃんと味わいたいわ」 「おーけーお嬢様、お相手を務めさせてもらいましょ」 拒否する理由などない。 本来冬にしか起きてこない彼女と秋にデートできるなんて嬉しい限りだしな。 「ふふふ、しっかりとエスコートしてね旦那様、かしら?」 腕に抱きついてくる彼女に俺は目を逸らして頬をかくのであった。 わかっててやってくるんだもんなぁ。 きっと俺の顔は真っ赤になってるだろう。 あー、秋なのに顔が熱いぜまったく。 「秋の山もまだまだ紅葉が残ってるわね」 外に出ても行くところなどそうはない。 人里はお互いあまり気乗りはしないし博麗神社は毎年一人身巫女に帰れと言われるだろう。 いや、別にどこだって俺達にはいいのかもしれない。 秋の幻想郷さえ見れればよいのだ、つまり今の様に目的地もなくただ歩いているのも問題はない。 ちなみにレティは腕に抱きついたままだったりする。 目を逸らしたままというわけではないがやはり外に出ると家の中よりも気恥ずかしさが増えてしまう。 彼女はそんな俺を本当に面白がっているのか離す気配はない。 まぁ安心しきった笑顔で抱きついてくれてる分には男としては嬉しい限りなのだが。 「秋の幻想郷も本当にいいものね……春も、夏も、いい景色を見せてくれるのでしょうね」 レティの顔を思わず見てしまう。 少しだけ自嘲気味な笑みを彼女は浮かべていた。 「あ、ご、ごめんなさい……」 それに気づいたレティが謝ってきた。 「いや、レティが悪いわけじゃない、誰かが悪いわけじゃないんだ。 でも、さレティ」 彼女の腕を解き、彼女を抱き締める。 そして驚いている彼女の唇を奪う。 抵抗しないことをいいことに彼女の唇どころか舌を、口の中を犯していく。 彼女は未だ目を瞑ったまま俺の成すがままでなにもできない。 お互いの息が切れそうになるくらいで唇を離した。 互いの唾液はちょうど二人の顔の中間点くらいで切れる。 「俺は何時だってレティの傍にいる。 たとえ君が寝ていたって俺は必ず君と共にある。 だから、俺は春も夏も秋も一人じゃないよレティ」 「……ごめんなさい。私、どうしても不安になってしまう時があるの。 寝ている時に時々夢に出てしまうの……私が寝ている間にあなたが消えてしまう夢。 あなたが旅行中にあんなことまで言ってくれたのに……」 人をやめて尚彼女と共に歩くと俺は言った。 それでも彼女は不安なのだと言う。 もしかしたら人をやめた時点で俺は俺を失うかもしれない。 そうなる前に俺は死んでしまうかもしれない。 それが彼女にとってどうしょうもなく不安なのかもしれない。 「レティ」 彼女をさらに強く抱き締める。 彼女に俺の存在を強く意識させる為に、俺の気持ちを知ってもらう為に。 彼女はそれに応えてくれる俺を抱きしめ返してくれた。 「俺は絶対に君の前から消えたりしない。 君を守る為にも、君をもうこれ以上悲しませないためにも。 俺は君と一緒だ、前に誓ったように君がもしもまた冬以外寝てしまっても俺はずっと待つよ。 君とまた、こうして触れ合う為に、ね」 「……ずるい、わ。そんな風に言われたら何も言えないじゃない」 レティが少し涙を溜めながらこちらを見つめてきた。 「こういうのは言ったもん勝ちだってな」 勝ち誇ったような笑みでおどけてみせる。 この先俺はさらなる苦難が待っているだろう。 だがそれでもいい、彼女の為ならばそんな苦難乗り越えてみせよう。 それが愛する女を守る男の誓いというものだ。 「……何よりずるいのは、いきなりで私に何もさせてくれなかったこと」 「むっ?なんのこ、んんっ!?」 眼前の彼女の顔が零距離にまで接近していた。 そして無論そんな状況になればキスになってるわけで。 「これは誓いの口付け、あなたと私が絶対に離れない為のね。 だから消えないでね、私も……消えたりしないから」 もう一度口付けを交わす。 決して離さないように、決して幻ではないように。 俺達はもう……決して離れない。 余談だがこの時どこぞの胡散臭いのにばっちり盗み見されて結構後までからかいのネタにされたりする。 まぁなんというか……友人なのをやめたくなった瞬間ではあった。 新ろだ690 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「もうすぐ神無月か……もう一年になるんだな」 「ついこの間のように思うわ」 時々なぜか秋なのに夏かと思うような日もあるが 概ね日中も涼しく、秋に入ったのだと実感できる。 この前何で秋なのにこんな暑いのよと隣のお嬢さんがキレてまた巫女と白黒に二人でボコられたが。 あんたらも大概にしなさいよねとか言われても困る、俺に止める事も止める理由もないのだから。 「八雲紫の事だ、今年も計画して記録でもする気かもなぁ」 もし第2回があれば参加者は大いに注意することだろう。 あーでもあれか、大多数は見せつけてやろうなんて考えもあるかもしれないな。 少し前に起きた糖分異変(なぜか俺が言ったのが今回の異変名になったがまぁ気にしない)は色んな意味で酷かった。 私たちこそが一番幻想郷でイチャついてるとでも張り合ってるかの如き密度。 おかげでそれに当てられた俺とレティも普段より積極て…あーあー忘れよう忘れよう。 「やっぱり時々あなたは本当に熱い人なのよねぇ。溶けてしまいそうだったわ」 「恥ずかしい事を思い出させないでくれ……」 恥ずかしすぎてそっぽを向かせてもらう。 おそらくレティは意地の悪い笑みを浮かべているのだろう。 今宵は満月、二人で寄り添いながら眺めている。 あの旅行の後程ではないが少し心の距離が縮まったような気がした。 ああいう異変も本当にたまになら……いいのかもしれんな。 「それで、今年は参加するの?」 「あーどうしょうかねぇばぁちゃんにたぶん来ないって言っちゃったけどなぁ」 俺の勘だと絶対八雲紫がまた来るのか来ないのか来訪してくる。 「レティはどうしたい?」 「私は今回はあなたに委ねるわ。前回は私の我儘を聞いてくれたのだから」 うーむ、まいったなぁ。 あーでもあれか、一応報告くらいはしたほうがいいのかなぁ。 自分が今どれだけ幸せなのか、前回はあんまりいい内容聞かせられなかったしな。 1年こうして一緒に過ごして柵は消えかけている。 孫の幸せを見て逝きたいと言ってたばぁちゃんの願い、果たしておくか。 「よし、それじゃあ行くか。もしあったらの話だけど」 「喜んで、今回は最初から楽しい旅にしましょうね?」 チンとお互いのお猪口を触れ合わせ乾杯の合図。 1年目はお互いの想いを本当の意味で通じ合わせた。 ならば2年目は思い出をしっかりと作れる旅にしたい。 俺はくいっと一飲みして月を眺めた。 俺の傍らには嫉妬深くて恥ずかしがり屋だけど可愛くて綺麗で俺を必要としてくれる雪女。 この幸せを、しっかりと報告しよう。 そして、いい思い出を作ろう。 決意を新たに俺は神無月の旅がまたある事を祈っていた。 「ところで、新たに起きた最近のブームって知ってるかしら?」 「ん?あの異変の後も何か騒いでるのか?」 そういう話はわからないのだが。糖分異変後あまり来ないしねぇ客。 「ベビーブームだそうよ」 「ベビー……ブーム……ねぇ」 おめでたブームか……存分にイチャついた後でというには早い気がしないでもないが。 あー祝儀の用意しておくべきかねぇ。 ん?何ですかその鈍いなぁみたいな目は 「勿論……乗るわよね?」 「えっ?いやあのその……えぇっ!?」 「うふふ、あなたの全てを受け止めてあげる だから……………………私の全てを受け止めて?」 そう言って俺にキスを求めてくるレティ。 あーもう……本当にこの雪女様にはかなわんなぁ…… お互いの影が重なる。 それを見ているのは夜空に輝く星と、そして大きな、大きな満月だけだった…… ───────── 「えぇと、冬のカップル組、と。 これで大丈夫だ。しかしいいのか?今年もおそらく紫様の事だから……」 だろうな。俺もそう思う。 何か理由でもなければ八雲紫の思惑にわざわざ乗ってやることもない。 「少し外に用があってな。 というかやり直しだ、色々とな」 八雲藍はそれで察してくれたのかそうか、と言っただけだった。 この辺の配慮はマヨイガで世話になってた時から好ましいと思う。 伊達にあの困った妖怪の世話をしているわけではない、ということだ。 「ところで……その頬は大丈夫か?凄い紅葉だぞ」 それでもやはり『これ』を気にするのは優しさ故にと思いたい。 ちなみに後ろでこの元凶の方はまだぷりぷりしてたりする。 あまり長話をすると両頬に紅葉という奇妙な顔になるかもしれん。 「大丈夫……と思いたい」 「本当に大丈夫っすか?凄い痛そうですけど」 何時の間にやら八雲藍の旦那さんまで来ていた。 「悲しい誤解の末の名誉の負傷みたいなものだ。 お前さんも気をつけな、女は怖いぞ」 「大丈夫っすよ俺は藍さんしか見てないですから」 「ば、ばか、そんな事を平然と言うんじゃないっ!」 おー熱い熱い。 とりあえずそろそろ後ろからのプレッシャーが限界なのでお暇させてもらおう。 「それじゃあ八雲紫によろしく、お互いいい旅を送れるといいな」 今にでもイチャイチャしそうな二人に後ろ手で挨拶して家から出る。 そして目の前にはとにかく不機嫌なうちの雪女様。 帰ろうと手を差し出すとぷいっと顔を背けてすたすたと行ってしまう。 困ったものだなぁとその後を追うことにした。 「そろそろ機嫌を戻してくれないかねぇ」 家とマヨイガの真ん中くらいで説得に入る。 こんな事になった原因はというと今この場にいない第三者の悪ふざけが原因だったりする。 そんな迷惑な第三者の名前は風見幽香という。 レティの昔からの知り合い、というか傍から見れば友人(本人達は激しく否定したが)なその妖怪とたまたま行く途中に出会い レティも交えて世間話などしていると悪ふざけだと思うが腕に抱きつくなどのスキンシップをしてきた。 当然それをみた嫉妬深いうちのお嬢さんはというと 「馬鹿ぁ!」 と素晴らしい速度のビンタを喰らわせてくれたのであった。 そしてマヨイガからの帰り道の今に至る。 「知らないわ」 まだまだご機嫌は直りそうにない角度のようで。 困ったなぁと頭を掻きながらレティに寄っていく。 「あまり怒ってると実力行使に出なきゃいけないぞ」 「あら、何をする気なのかしら?」 不敵な笑いでこちらを見る彼女の手を引いて人目になるべくつかないよう森の木の裏へ。 通りからは見えないはず、たぶん。 「俺がどれだけレティを愛してるかの証明だ」 レティの腰に手を回して抱きしめる。 移動した時点で期待していたのか抵抗はしなかった。 少し前の俺なら恥ずかしくってできそもなかったがこの前の糖分異変のおかげか、少しだけ抵抗が薄れたのかもしれん。 「抱きしめる……だけ?」 「どこまで欲しいんだ…?」 「あなたに任せる、私はどこまでも受け止めてあげる。あなたの好きなようにして」 もう機嫌は直っている気がするがここで止めると機嫌が危険なカーブを描きながら斜めに行くのは確定的。 かといって行き過ぎは色々とよくない。 ただまぁ……後一段階くらいはいいのだろうか。 むしろレティはそれがお望みのように頬を少し赤くしながら機体の眼差しを向けてくる。 まったくかなわんなぁ……このお嬢さんには。 顔を近づけると彼女は目を閉じた。 仕方ない、と彼女のご希望通りに彼女の頭に手を回して口付けを交わす。 最初は唇を軽く合わせる程度に。 そして少しずつ互いに我慢が出来なくなってくる。 先にしたのはどちらか、それとも同時か。 舌も交わしながら互いを激しく求めるようになった。 場所が場所ならばこのまま情欲に任せてどこまでもしてしまいそうだがここは外である。 どこに人の目妖怪の目があるかわかったものじゃない。 甘いレティの唇の誘惑をなんとか抑え込み顔を離す。 互いの唾液が繋がっていたのも顔と顔の真ん中くらいで途切れた。 「んっ……やっぱり熱い人。心まで溶かされちゃう」 唇を指でなぞりながら微笑むレティの表情に俺は息を呑んだ。 羞恥のおかげで何とか踏み止まれたのは幸いともとれる。 でなくばこの知ってか知らずかわからない美しさと妖艶さに理性など粉々に消し飛んでいたはずだから。 「こ、これで満足かなお嬢さん」 彼女を解放し、恥ずかしさのあまり背を向ける。 あー頬が熱い、今季節は秋だっていうのに…… 「うん、許してあげるわ、今だけは」 彼女は俺の腋の下手を俺の胸に回す形で背後から抱きしめてきた。 背中に彼女の女としての主張と頬の感触が伝わってきた。 「今だけか」 「そう、今だけ。帰ったら………………続きをしてくれないと許してあげないんだから」 あー……今日は閉店にしておいてよかった。 (帰った時の事はレティさんによって地下で凍らせて封印されました。ちょぴっと説明すると夕ご飯は朝ご飯と一緒でしたとさ) 「それじゃあかいさ~ん、各自あんまり羽目を外し過ぎて時間オーバーしたりしないようにね~ あれ?昨年も同じ事言ったかしら?」 前の時と同じ駅、同じ場所で八雲紫による号令によって各々好きな場所へ散っていく。 前の年よりは人数は増えているな。最近知り合った新顔もいるようだし…… とりあえずあそこの傘妖怪とその彼氏にそのナスビ傘仕舞うようにいっておけ、とかく目立ってるぞ。 「うふふ~今年もいい旅をね」 八雲紫が私、とても楽しいですみたいな笑顔でこちらに手を振りながら旦那と消えていった。 腕に抱きついて歩いて行く姿は日頃の胡散臭い女のイメージとは全くの別物であった。 そしてやはり最後までこの場所に残ったのは俺とレティ。 なんとなくまた最後まで見送る立場になってしまったな。 「それじゃあ……いきますか」 彼女に手を差し出す。 前とは違い、重ねるようにレティは俺のを手を取る。 「えぇ、やり直しの旅を、ね」 彼女は笑顔で俺の手を持ちながら抱きついてきた。 ───────── 「前とは……ホームの中は変わってないようだな」 全員を見送りレティと共に改札を抜け、目的のホームへ。 1年前とほとんど変わらない光景が広がっていた。 売店もそのまま、つまり…… 「レティ、1年振りに飲まないか?」 俺は売店で買ってきた物をレティに渡す。 あ、とレティは胸に抱くようにそれを受け取る。 〇印のコーヒー牛乳。 レティが初めて口にしたこっちの世界の飲み物。 やり直すならこれを飲むのもまた必要な事だ。 ストローを差し、中身を吸う。 1年振りの味は変わらずに俺を迎えてくれた。 「1年前と変わらないわね」 「大量生産される品だからな、早々変わるものじゃない」 飲み方は覚えていたようでレティはストローをぷすりと刺し、中身を吸い始めた。 ん?あぁ、そういえば…… 「そういえばあの時は間接キスだったな」 「んんっ!?けほっ……そ、そんな事いきなり言わないでくれる!?」 どうやら前と同じく妙な所に入ってしまったようだ。 1年の間、それまでに色んな事があったが大事な事は忘れない。 それが大事な想い出ならば尚更だ。 「うむ……ならば、ちょっと貸してくれレティ」 「何をするの?」 「こうするのさ」 レティからコーヒー牛乳を受け取り飲む。 そしてレティへさっきまで飲んでいた俺のやつを渡す。 これで互いに間接キスだ。 「……今日は普段より積極的ね」 少し赤い顔をしながらレティは俺が渡したコーヒー牛乳を大事そうに飲み始めた。 前のようにちゅーちゅー吸うような感じが可愛い事。 だがしかしそう言われると俺も恥ずかしくなってくる。 「まぁ、少しだけな。少し気分が高揚してるからかもしれん」 1年振りの旅行、今回は互いに悩む事無く参加している。 帰った時の事が八雲紫のおかげで少し憂鬱になりそうだが俺は本気で今回の旅行が楽しみなのだろう。 こうしてレティと二人だけの旅行はまたできるのだから。 「私も……楽しみよ。 こうしてまたあなたと一緒に旅行ができる、嬉しくないはずがないわ」 そう言ってレティは俺の腕を抱きしめつつ赤い顔で少しそっぽを向きつつコーヒー牛乳を飲みだした。 また口に出ていたのかと思いながら痒くもない頬を掻きつつレティとは逆側に視線を向ける俺がいた。 妙な空気を出しながら結局電車が来るまで俺たちはそのままの状態だった。 「こ、こっちだと海の魚は簡単に食べられるのよね、そこは本当に羨ましいわ」 「まー幻想郷には海がないしなぁ」 電車に乗り、まずは最初の目的地に向かう間に腹ごしらえとして車内サービスの駅弁を二人で食べる。 俺はひつまぶし、レティはちらしずしを食べている。 幻想郷には海がない、が、数種類の海の魚が取れたりする。 おそらく八雲紫が何かやったのだろう、ありがたいけど大丈夫なのか生態系とかそういうの・ そして微妙にレティの頬がまたもや赤い。 駅弁を車内サービスで貰うまではよかったのだがその女の子が中々におしゃべりなようで 「恋人との旅行ですか?それとも新婚旅行?横の方綺麗ですものさぞ自慢でしょう? いいなぁいいなぁ結構ラブラブなのよくわかりますよえぇそういうのは見ればわかりますもん」 これが俗に言うマシンガントークというやつかと言わんばかりに捲し立てるわ 何時の間にか自分に何故彼氏ができないのかと自分の話になってるわで困った子だった。 レティはレティで「し、新婚……やっぱりそういう風に見えるのかしら」とか真に受けてしまうし。 前の方の席で呼ぶ声無かったらあの子何時までも喋っているような感じだった。あの新聞屋の親戚じゃないだろうなさっきの売り子。 というわけでまぁ妙に意識されてしまいちょっと居心地が悪かったりする。 「あーその、なんだ。や、やっぱりそういうのはやったほうがいい、のか?」 「えっ!?ど、どうかしらね……」 あー自爆した。 互いに真っ赤な顔して黙々と食わざるを得なくなった。 婚約か……互いに一生を誓いあったわけだがそういう話をしたことは今まで一度もなかった。 考えてみれば指輪も渡した事がない。 普通の思い出ばかりを求めてお互いに【そういうこと】を全く考えてなかった。 「何だか、すまないなレティ。 そういう当たり前のことをわからないで」 弁当を置いてレティを見る。 その視線を察したのかレティもこちらを見てくれた。 「いいのよ、私達は他の子達の当たり前のいつもをできないでいたんだもの。 だから気にしないで、私も気づかないでいたんだから。 この一年、あなたとの思い出が多すぎてそういう事を考えるような事も無かったし」 しかし互いに気付いてしまった、そういうことに。 男として、彼女に惚れた男として、考えねばなるまい。 うーむ、と深く考えすぎていたのだろう。 レティが面白そうに微笑して俺の頬に手を伸ばして何かを取った。 「ごはんつぶ、ついてるわよ」 取ったご飯粒はすぐさまレティの口へ消えた。 その行為に俺は再び頬を赤くする。 「今はいいの、今はこの旅を楽しみましょう? そんなしかめっ面で考えても楽しめないわよ」 「……それもそうだな」 心の中で彼女に謝罪をしておく。 「でも」 「ん?」 今度は彼女が頬を赤くし始めた。 「そういう事をちゃんと考えてくれたのは……凄い嬉しくて、胸の中があなたが好きって気持ちでいっぱいで壊れそうになるわ」 はにかむレティがあまりに可愛くて茫然としてしまった。 おかげで割り箸を落としてしまい、彼女の割り箸であーんしながら食べさせられる羽目になり、 俺は恥ずかしさで俺自身が壊れそうになった。 しかし少し恥ずかしそうでありながら凄い嬉しそうにはい、あーんとか言われると断る事が出来ない俺がいたのも事実。 あぁ、もう……かなわんなぁ。 そんなこんなで目的地まであと少し、まずは俺の生まれ故郷へ。 俺達の旅のやり直しもまだまだ始まったばかり。 今年は、どんな思い出ができるのやら…… ───────── 「1年やそこらじゃさすがに変わらないわな」 「そうね」 最初の目的地、俺の生まれ故郷に辿り着いた。 1年前と変わらない光景がそこに広がっていた。 駅前には少しばかりのビル、そして商店街が並び、 多少なりとも人の賑わいを見せている。 「さて、では行きますか……」 「えぇ、言うべき事は先に言っておかないとね」 俺とレティは1年前と同じようにタクシー乗り場に行き、タクシーで目的地へ。 今回は先に海岸には向かわない。 先に、会っておくべき人がいるから。 「おっすばぁちゃん。 たぶん最後なんて1年前言ったけど来れたから顔を出しに来たよ。 話忘れた、話さないといけない事もあったしな。 あぁ、ブローディアの花は忘れてないぞ」 手を合わせて墓に、ばぁちゃんに挨拶をする。 1年前と同じようにブローディアの花を供える。 レティは俺の後ろで同じように手を合わせていた。 「あれから1年、彼女とは色んな思い出を作ったよ。 あっちじゃ今まで冬にしか俺達会えなかったんだ。 普通の恋人たちが当たり前といってるような物さえ俺達には貴重な時間だった。 俺、いや、俺達は間違いなく幸せだよばぁちゃん。 これでばぁちゃんの願いは叶ったか?本当はそっちが生きてる間に見せたかったけどな」 ばぁちゃんが死んだのは幻想郷に行く前の話だ。 俺が一人になって何も無くなってしまったときに幻想郷に迷い込んだ、いや、連れて行かれたというのが正しいか? そして幻想郷に迷い込んだ、そしてレティと出会った。 辛い過去ばかりがあったけれど、俺達は幸せになれた。 この言葉はあの世にいるばぁちゃんには届いたと、思いたい。 「さて、こんなもんかな。 ばぁちゃん、もう来ないかもしれないとは言わないでおく。 また、会えるかもしれないからな」 立ちあがって墓の前から移動すると俺がいた位置にレティが移動してきた。 ……また、何か言っておくことがあるってことか。 「……もしも私を許してくれているのなら、ありがとう、こんな私を許してくれて。 彼のおかげで私は今とても幸せに過ごしています。 もう、彼無しの生活は考えられないほどに私は彼を愛しています。 この幸せがいつか壊れてしまうんじゃないかと思えてくるほどに。 私が妖怪の中でも普通じゃない妖怪のせいで彼には色々な迷惑をかけてしまっています。 彼は優しいから私をずっと待ってくれているけどそんな彼に私はほとんど返せていません。 そんな不甲斐ない私ですけど、これからも〇〇と一緒にいる事を許してほしい。 ……身勝手なのはわかっています、でも……」 最後まで言わせずに俺はレティを背後から抱きしめた。 「湿っぽいのは無しだって言ったじゃないかレティ。 俺達は1年前に許しを求め、そして許されたはずだ。 それでいい、それでいいんだ。もう許しを乞う事は無いんだ。 後は俺達が幸せである事を見せるだけ、それだけでいいんだよ」 手に何かがぽたりと落ちてきたのがわかった。 レティは俺に向き直り俺の胸に顔を埋めた。 背中を優しく撫で、彼女を優しく抱きしめる。 ばぁちゃん、辛い過去はどうやっても変えられないけどさ、俺達は今本当に幸せだ。 俺達は二人で生きていく、だから……見守っててくれ。 頭を撫でながらレティが落ち着くまで俺はレティを抱きしめ、ばぁちゃんの墓石を見ていた。 その間ばぁちゃんが笑いながら俺達を見ていたような気がした。 認めてくれるよな?俺達を。こんなに幸せなんだから、さ。 「あーレティさんや?そんなにくっついては動き辛くはないかい?」 帰りの歩きもタクシーも電車の中もレティは俺の腕にべったりとくっついていた。 明日には直ってそうだが……この状況でホテルに行くのは恥ずかしいぞ。 だが今のレティは羞恥よりも俺にひっつくほうが大事らしい。 目と頬を少し赤くして少し安心した様子で俺の腕を抱きしめるレティは正直可愛い。 ……何だか俺達までバカップルの影響を受けている気がしてきた。 そんなこんなでタクシーで目的のホテルへ。 前回とは同じ宿というのもつまらないだろうということで八雲紫のお勧めのホテルを選んだのだが…… 「何か凄い豪華なホテルだが本当にここか……?」 あーでも八雲紫だからなぁ、こういうのが好きという可能性もある。 とりあえず受付に八雲紫に渡された封書を出す。 それを見た受付の人は凄い畏まって案内してくれた、おいスキマ、何を書いたお前。 そして案内された部屋は一番のスイートだった…… 「お、落ち着かん……」 奴のお勧めで決めたのは失敗だったかもしれない。 レティは何やら化粧部屋に入っている。 何かいい服でもあったのだろうか? とりあえず何かアルコールでも少し入れて落ち着くか…… 「ねぇ……」 レティがドアを開けて顔から出してこちらを見ていた。 俺はウィスキーを淹れるの中断する。 「どうした?」 「い、いや、あの、ね。ちょっと着てみたのはいいんだけど……」 着てから似合うか似合わないか自信がないって感じか。 そんなに妙な物でも見つけたのだろうか? 「大丈夫だろ、そんな妙な服はこういうところにあるはずはないし。 レティならほとんどの服は似合うと思うぞ?」 「わ、笑わない?」 「うむ」 「じゃ、じゃあ…………………………………………どう、かしら?」 出てきたレティの姿に俺は声が出なかった。 心を奪われた、といっても過言ではない。元からレティしか見えてないが…… 彼女は純白のドレスを着ていた。 装飾は控えめ、肩が出ているものであった。 普段あんまりしない化粧を少ししているのもわかった。 普段とは全く違う彼女の姿に俺は固まり、動く事すら忘れて彼女を見ていた。 「や、やっぱり似合わないかしら、こういうのは……」 彼女に声をかけられたおかげで何とか動く事が出来た。 言わなくては、恥ずかしがっている彼女に言葉をかけねば。 「あ、い、いや、あの……に、似合ってる、ぞ。 本当に、本当に綺麗だ……レティ」 俺の言葉にさらに顔を真っ赤にして「あ、ありがとう……」とレティが返してくれた以後、 ボーイさんがチャイムを鳴らすまで俺達は見つめあっていた。 お互いに顔を真っ赤にしてたのは覚えているがどれくらい見つめあっていたかまでは覚えてなかったが。 ルームサービスで夕飯を貰い、レティと二人ウィスキーを飲む。 さすがに慣れたおかげで部屋の豪華さに萎縮しなくなってはいないが やはりレティを見るとどうも緊張してしまう。 レティはそれに気付いているのかどうにも互いに無言になってしまう。 あー、胸元が少し見えるのが気になってしまうのは男の性か。 時折やる気が出る俺の積極性も今日はどうやらお休みか。 自然ウィスキーを飲む量が増えていく。 「……その、やっぱり着ないほうがよかった?」 「い、いや。俺がまだ慣れないだけだ。 レティがあまりに綺麗過ぎて俺が参っちまっただけさ」 何か妙な事を口走ってしまった気がする。 あー……全部アルコールのせいにしておこう。 気付いたらレティが隣に来ており手を引っ張られていた。 俺はそれに逆らわずに連れて行かれた場所は寝室だった。 そしてレティが下になって抱きしめられるようにベッドの上に引き込まれた。 「レ、レティ…?」 「実は、ね……私も少し参っちゃってるの。あなたが綺麗って言ってくれた時から」 「レティ……」 一旦離れてレティの顔を見る。 「こうしてると初めての時を思い出さない?」 あぁ、お互い初めてでガチガチになった時か。 今にして思えば微笑ましい光景といえたのかもしれない。 少しだけ緊張が解けてきた。 「……いっぱい愛して、私もいっぱいあなたを愛するから」 そう言って両手をこちらに向けて誘う様にするレティ。 俺はそれを受け入れそして…… *省略されました。読みたければ雪山で遭難してください。 「さて、と。今日で最後か……いいのか?どこか特定の場所に行かなくて」 最後の日は町並みを歩くだけでいいとレティは言った。 それまで室内プールやら映画館やら色々と行った最後がこれでいいのだろうか。 「いいの、こうして歩くのも貴重よ」 そういうものかと思い、不図横の店を見た。 宝飾店か……ん?あぁ、丁度いいか。 「あーレティ、ちと寄りたいところができた、いいか?」 「?えぇ、構わないわ」 そしてその宝飾店へ。 目当ての物は……あぁここか。 「レティ、選んでくれ。俺はそれを君に渡す」 「え……これって……」 レティを連れてきたのは指輪のある区画。 店員さんは何もアドバイスはいらないと先に言っておく。 「その、なんだ……婚約指輪、と思ってくれていい。 式は何時になるかわからんが……指輪だけは送っておきたい」 レティはじーっと注意深く指輪を見ていく。 そして少し経ち、一つの指輪を選んでくれた。 それはアメジストとアクアマリンが半々になってついていた指輪だった。 俺は迷わずそれを購入した。 そしてホテルに戻りレティの左薬指に填める。 「……どうしょう、嬉しくて、嬉しくてどうにかなってしまいそうよ」 「俺もだ、今回はそんなのばっかりだな…… 改めてその指輪に誓わさせてもらう。 レティ、君を愛してる。これからもずっと、一緒にいてくれるか?」 「喜んで……私も誓わせて。 あなたを本当に愛しています、だから……これからも一緒にいてください」 キスを交わす。 何時か、この前のドレスとは少し違うドレスを彼女に着せる事がこれで決まった。 何時になるかはわからない。 だがそう遠くない未来ではあると思う。 彼女との大事な大事な思い出がこの時生まれた。 この旅はやり直しの旅だったはずだがそれ以上の旅となった。 何時か二人で笑いながらこの旅を語る時が来るだろう。 「来て……よかったわ、本当に」 「あぁ、本当に、な」 八雲紫には感謝しておかないと、な。 ちなみにその八雲紫だがやっぱり俺達の旅は盗撮されていた。 とりあえずアレな時とかは省略されていたが指輪を送る時やらレティがドレスを着ているときなどの恥ずかしい光景を映像で出される羽目になり、 俺は恥ずかしさのあまりぶっ倒れそうになるなんていう後日談があったりもした。 勘弁してくれよ本当に…… 新ろだ724,759,785,799 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あー今年のは凄かったなぁ」 「久しぶりの体験だったわ……」 秋ももう真ん中くらいまで来てる頃だというのに 個人的には夏の代名詞と思う台風が来るとはなぁ、完全に予想外だ。 夜中に凄い音立ててくれてあんまり眠れなかった、尤も、レティがぎゅっと俺の服を握っていたのも理由の一つだが。 「しょ、しょうがないでしょう!?久しぶりの体験だったから……その、少しだけびっくりしてたのよ」 真っ赤な顔で後半あんまり聞こえなかったがどうやらまた俺は考えていた事が口に出ていたようだ、要反省。 窓を開け、状況確認。あー庭の木の死亡を確認しましたとさ。 「吹雪なら起こせる事けど台風は嫌だわ……」 「どちらも幻想郷の住人には迷惑だろうな」 台風が過ぎ去り空には青空が広がっているが風は強い。 縁側に出ると風の強さにレティの髪が靡く。 「そういえば昔は春が来ないようにって吹雪起こしまくった事もあったわ。 懐かしいわぁ、あの時は色んな方面から凹られたけど」 「そいつはまた派手な事を」 おそらく八雲紫はその時の博麗の巫女辺りがやったのだろう。 案外風見幽香もその時にいたかもしれんな。 「そのおかげか知らないけど季節が流れるのが当然なのだと思えるようになったわ。 あら?でもあなたと別れたくないと思ってた時にその手段に出ようとしなかったのは何故なのかしら……」 レティの顔が遠くを、まるで過去の自分を思い返しているようであった。 「冬にしか会えない。別れたくない。そう毎年思ってたのに……」 何かまた深く考え込んでいるみたいだな…… 確かに俺も毎年そう思ってはいた。 だが、 「もしかしたらだが次に会う時が楽しみでもあったのかもしれないな。俺の願望だけど」 「楽しみ?」 レティが不思議そうに首をかしげた。 「あぁ、確かに俺も一人でさびしかった。 でもな、また冬に会えるのを待つのがどこか楽しくもあったんだ。 次会う時までに何か変わっていようか、それともそのままか。 レティを何かで驚かせようかとか考えると次に会う時までが楽しくもあった」 彼女を驚かして忘れられない冬の思い出にしたい、そんな事を考えていた時もあった。 まぁ結局あまり大層な事はできなかったがな。 「楽しみ……そうかもしれないわね。 次の冬にあなたがどれだけ逞しくなっているかとか考えた事はあったわ。 私もあなたと同じように不安の中に楽しみも抱えていたのかもしれない」 レティが微笑しながら空を見始めた。 俺もそれに倣って空を見る。 秋の青天というべきか、台風が全ての雲を連れていったかのように青空が広がっている。 「でもねその楽しみは……もう感じられないかな」 どうして、と言おうとするとレティがこちらに抱きついていた。 「もう我慢しないって決めたわ。私は1年中あなたと一緒にいるって決めたわ。 地下で寝ているなんてもう耐えられない、私はあなたとずっと一緒に生きていたい、生きていたいの」 レティを抱き返す。 レティは潤みながら俺の顔を見ていた。 「そう言われると……俺ももう耐えられない、待つ事が。 こうして1年レティとやりたい事、過ごしたい事をしてしまうと、な。 ちゃんと我慢しないといけない事かもしれないのに」 そう言うとレティは首を振り 「我慢しないで、私を好きなだけ求めてほしいの。 私はずっとあなただけが欲しいのだから……」 口付けを交わす。 こういうのもたまには……いいのだろうな。 「でも」 「む?」 「昼間から縁側では……恥ずかしいわ」 「お、俺だって恥ずかしくてできるわけないだろうが!」 「でも家の中で見えないようにしてくれれば……」 「……………………」 あぁまったく、かなわんなぁ…… 新ろだ763 ────────────────────────────────────────────────── 「ハロウィンパーティ?」 「というよりは仮装パーティかしらね」 また妙な物を届けてくるな本当に。 レティは現在お得意様の一角である白玉楼に氷を届けに行っている為不在。 そしてその間を狙ってきたのかどうか目の前には八雲紫。 来て早々茶を出せと言ってくる図々しさはいつも通り。 慣れてしまった自分もいつも通りだし渡されたチラシを怪しむのもいつも通り。 「下界旅行の関係も一息ついたしここでパーティでもしてぱーっと騒ぎたいじゃない。 というわけで御誂え向きなイベントがあるのでやってみましょって事よ。 でも私達元々妖怪でしょ?だったら何かに仮装するだけでいいかなぁと思ったわけ。 もちろん人間であるあなたはそういう類に仮装してもいいのよ?」 何に化けろと。 はぁっ、しかしこいつの適当な計画は今に始まった事じゃないか。 場所は博麗神社か、巫女にどうせまた伝えてないんだろ?怒るぞまた。 「その目を見る限り参加してくれそうね」 「断った場合どうなる?」 「そりゃもちろん無い事無い事言いふらそうかしら」 無い事だけかい。 営業妨害はそこまでよ、だ。 「はぁっ、わかったわかった参加するさ。 しかし衣裳の用意が難儀になりそうだな」 うちにはその手の衣裳は皆無だ。 そもそもやりたいような仮装もなぁ。 「はいどうぞ」 「いやナマハゲとか無理だろ、むしろ何故持っている」 「冬のカップルには似合うかなぁと」 そんなのを仮装したらどうみても浮くだろうが。 いやむしろそれが狙いか、なんて妖怪だ…… 「冗談はおいといてそうねぇ……こんなのどう?」 渡されたのは何やら黒いジャケット、ネクタイ、白シャツなど。 何だこれ、タキシードではないな。 「うーむ……?あぁ、執事服か」 紅魔館の執事がこんなのを着ていたな。 「ご名答、お嬢様には執事が合うでしょ?」 その言葉に俺は下界旅行の時のレティのドレス姿を思い出した。 お前、まさかあれをレティに着させる気か。 「ただいまーっと、あら八雲紫。 また、妙な、お誘いかしら?」 妙なを強調するあたりこの家でも八雲紫へのイメージがよくわかる瞬間だな。 まぁ自業自得ではあるが。 「このカップルは私を何だと……まぁいいわ。 はいハロウィンパーティのお誘い、旦那さんは参加してくれるって言ったからあなたもしてくれるでしょ?」 レティはこちらを一度一瞥し、チラシを見る。 「まぁ、彼が行くなら私もいいけど……仮装ねぇ。 彼も言ったとは思うけど私にはないわよ?そういうの」 「そういうだろうと思って彼にはあげたわ。 あなたにはそうね……前のドレスは皆は見たわけだし…… あ、そうだ。ちょっと来てくれる?」 そう言って寝室へ二人は消えていった。 何か八雲紫が思いついてこれはどう?みたいな状況だとは思うが一体何を着せる気なのやら。 10分くらいで二人は出てきた、何かレティの顔が赤いのだが気のせいか?何やったスキマ。 じと目でとりあえず八雲紫を見ておく。 「何もしてないわよ、ただ衣裳を見せただけなんだし。 それじゃあ明日のパーティよろしくねー」 そう言って八雲紫はスキマに消えていった。 衣裳、ねぇ。 「何貰ったか聞いたほうがいいか?」 「衣裳持ってかれちゃったし当日まで内緒よって言われたわ」 何を企んでいるあのスキマ…… とりあえず俺の衣裳は見せておくか。 「俺は執事だとさ。 てっきり俺は旅行の時のドレスかと思ったぞ」 お嬢様とか言われたからな。 しかし俺に合うのかこの執事服。 紅魔館の執事は若いし似合ってる感じだが俺はもうみそ・・・いやまだ20代20代。 「あの時のがよかった?」 「いや、それならレティを家から出せなくなる。 あの姿は他の奴にはもう見せたくないからな」 あの映像は後で八雲紫にあの部分だけ修正してほしいくらいだ。 あの下界旅行時のレティのドレス姿は俺の頭に今なお焼き付いている。 あんな綺麗なレティ、他の奴にはもう見せるわけにはいかない。 俺だけの、俺だけのレティであってほしい一部分だ。 ん?ちょっとまて、今物凄い恥ずかしい事言わなかったか俺? 「あぅ……そ、その、ありがとう?でいいのかしら」 「えっ!?いや、えーと……どういたしまして?」 レティの反応に俺まで恥ずかしくなってドキマギしてしまう。 最近こんな事ばっかりじゃないか俺達。 だから恥ずかしい事は苦手なんだ、その、悪い気はしないが……彼女もそう思ってくれてると思うけど。 結局客が来るまで俺達の微妙な空気は消えなかったとさ。 「あー宛ら闇鍋かなうん」 博麗神社はまさに混沌とした空間となっていた。 確かに仮装パーティ会場だがジャンルは統一したほうがよかったんじゃないかとすら思えてくる。 誰だあのムカデみたいなコスプレしてるのは、何か怖いぞ、妙にリアルで。 「あらこんばんわ、中々似合ってるわよその執事姿」 入り口で声を掛けられそちらを向くと白衣姿の紅魔館メイド長と看護師姿の紅魔館執事長の姿が。 おい待てそこの執事長、なんでそれを着たお前、無表情なのが怖いぞ。 まさかそういう趣味か?と思わざるをえない。 「あ、あぁ、ありがとう。ところでその執事長のは……」 「くじ引きでね、決まっちゃったのよ……面白そうだからお嬢様はそれで行けっておっしゃってそれで、ね」 二人で少しだけ遠い目をする。 大変だな……執事って…… うっ、何か腕にかかる圧力が強まってる気がする。 「ところであなたのご主人様は仮装してないようだけど?」 腕を組んでいるレティは確かにいつも通りのような服装。 ちなみに手はそろそろぎりぎりと握りしめられそうな感じである。 何とか最近では腕を組むぐらいならお互い恥ずかしがって緊張する事はあまりなくなった、ゼロではないが。 それより先に進んでるのにこういうのでも一々恥ずかしがる俺達は他と比べると本当に初々しいのかもしれない。 長い付き合いなんだがな……どうもこういうのは未だにお互い慣れない。 「あぁ、八雲紫が持ってるんだが……知らないか?」 「スキマ妖怪?見てないけ「あぁ、いたいたこっちよー」 メイド長の声を遮った方を見……なかった事にした。 メイド長も俺もレティもその方を見ていない。 あれは夢だ、夢に違いない。 「ちょっと、何で3人ともこちらを見ないのよ、失礼じゃない」 「あ、あぁすまんすまん、ちょっと首を向こうに向けたくなっただけなんだ」 何とか顔だけを意識するようにする。 落ち着け、意識するな、これは奴の挑戦状だ。 「それで、レティの衣裳は?」 「あぁ、それなら神社の衣裳部屋として借りてる部屋に置いてあるから行ってみるといいわ」 それを聞いたレティが腕を離し、神社へと向かっていった。 ……逃げたな?まぁ俺もそうしたと思う。 「それで、どう?似合うかしらこの衣裳」 オマエイマナンテイッタ。 ニアウカダト?イエト? 目の前のセーラー服姿の八雲紫の感想を言えというのか、俺に…… 「あ、あぁ似合うんじゃないか?うん。 お前の彼氏は何と?」 「何か失礼な事言ったからちょっとお仕置きしちゃったわ。 まったく、どっからどうみても【八雲紫、17歳です】みたいな感じなのに……」 哀れ八雲紫の相方、お前のおかげで俺は生き残った。 おそらくこの会場でほとんどの奴が思ってるだろう一言を言ったに違いない。 ありがとう、お前のおかげで俺は言う事を躊躇う事ができた。 生きていたら後で酒を飲もう、うん。 「さーてと、一番に見てあげたら? 一番にあなたに見てほしいだろうしね」 気がつくと何時の間にか博麗神社の居間にいた。 スキマ送りにされたようだが今の俺は助かったとまず思うしかなかった。 何か会場で爆発音聞こえたけど気のせいだうん、誰だ言ってしまった奴、生きてろよ。 「あら?そこにいるのは○○?」 襖越しにレティの声がする。 どうやらこの襖の先が衣裳部屋のようだ。 「あぁ、やっぱり最初に見たくてな、八雲紫に送ってもらったんだ」 「そ、そう……えーと……笑わないでよ?」 「大丈夫だ、というかこんなやり取り前にもあったな」 下界旅行のあの時を思い出す。 あの時はドレスだったが今回は何だろうか? レティならば何でも似合うと思ってるから安心しきって見れるが ドレスの時のように綺麗過ぎて何にもまた言えなくなるかもしれんな。 ……どう考えてもレティにどっぷりだな、仕方ないが。 意を決して襖を開く。 見せられる前に見に行ったほうが驚かないと思った自分の頭はどうかしていると思ったのは正しいと後で思った。 そこにいたのはメイド服を着たレティだった。 普段のレティのイメージ似合ったロングスカートのものだった。 何だろうか自分は執事だがひどく自分がこのレティのご主人様かと思ってしまうと今この場で…… 「きゃっ!?ど、どうしたのよ」 気付いたらレティを背後から抱きしめていた。 あーそうか、余りに綺麗で可愛らしいせいで理性が壊れかかってるのか…… しかし、あれだ。ここは博麗神社、尚且つ外には人妖いっぱい、そんな状況が俺の理性を何とか留めていてくれた。 これが自分の家だったら理性は一瞬にして粉々になっていたに違いない。 ありがとう羞恥心、か。 「その……凄く、似合ってる。 自分の家に留めて他の奴に見せたくないくらいに」 こんなに俺は独占欲が強かったのか…… 普段レティの嫉妬を貰ってる癖に俺はレティを一人占めしたいなんて。 どうにも恋愛というのはわからんものだ。 「ありがとう、でも今はパーティに参加、するんでしょ? この衣裳は貰ったわけだし、その後は……好きにしていいのよ?」 八雲紫に感謝しておかないと、か。 外の騒動は俺達の耳には聞こえない。 つまり今なら何があってもばれはしない。 「あ、そうだ、ハロウィンはこういう事を聞くらしいわね。 トリック、オア、トリート」 向き直ってはい、と手を出してくるレティ。 当然ながら 「さすがに甘い物は持ってきてないな……ということはいたずらか」 「家に帰ればいっぱい貰えるけど……そうね、今はその甘いので我慢よね、お互いに」 何の事かと思えば不意にレティにキスをされていた。 突然の事に俺は反応できずになすがままだったが直ぐにレティは離れた。 「い、今はこれで我慢よね」 「あ、あぁ、そ、そうだな」 ……まったく、かなわんなぁ。 二人してそっぽ向いて顔を赤くする。 いつもの事であり嬉しい感じ、そうだな、俺達にとってはこれでいいんだ。 何も他のアベック達と同じように平然としている必要はないわけだしな。 む、どうやら騒ぎも収まりそうか。 「それじゃあいきましょうかご主人様」 「今の俺は執事なんだがな……」 彼女の手を取り表へ。 さて、素敵なメイドさんとの一夜だ、素晴らしいハロウィンパーティとなろうよ。 雲無きいたずらの夜はこうして過ぎていった。 ちなみに帰ってからの事は覚えていない。 たぶんお互い暴走しすぎたのだと思う、うん。 それとレティのメイド服と俺の執事服は押し入れに仕舞われている。 また着る機会ははたしてあるのかどうか、期待はしないでおくが もしもまたレティが着た時の事を考えると落ち着けない俺だった、まる 新ろだ809 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ねぇ、実は昨日はポッキーの日でもあったらしいわよ?」 「……もやしの日なんていう情報も聞いたぞ」 お互いに昼寝した後、唐突にレティが切りだしてきた。 何でもかんでも記念にすればいいというものではないとは思うが…… 道理で昨日各方面から甘い感じがしたわけだ。 試しにレティが雪を作ろうとしたら砂糖が降ってきた始末。 最近糖分過多すぎるな幻想郷、人里の甘味屋潰れるぞ本気で。 「それで、もらってきたけど……やる?」 レティの手にあるのはポッキーの箱。 どこから貰ってきたのかは知らないがやる?というのは何をだろうか。 「知らないの?お互いに咥えて食べて先に離した方が負けって遊びがあるらしいわよ」 咥えてという単語に昨日のレティとの最後のピーナッツに関しての甘過ぎて恥ずかしすぎたあれを思い出した。 互いに半分に割ったピーナッツを食べるだけならよかったがその渡す方法は口移し。 おまけに片方は互いの唾液に塗れたもの、まさかあれと同じような事をまたするというのか。 正直お互いあの後寝れずにこうして昼寝までしたわけだが…… 「それで、どうする?やる?私は……やってもいいわよ?」 むしろやるでしょ?という感じがするのは俺の気のせいか。 ちなみに誘ってる当人の顔は期待とこれからの羞恥で真っ赤。 ここまでされると引けまい、彼女の恋人ならば。 ……あー自分で恋人とか言うの恥ずかしすぎる。 「……今日は昨日みたいなの無しな」 まだ日は落ち切っていない。つまり一応まだ開店中だ。 暇だったから昼寝できたがこれから客が来ないとも限らない。 そんな状況であれみたいな事をしたら正直恥ずかしくて恥ずかしくて首を括るだろう。 「わかってるわ、ふぁい、どぉぞ」 レティがチョコ側を咥えた。 それを見て俺もついてない方を咥える。 お互い少しずつ食べていき顔が触れ合うぎりぎりまで寄っていく。 もうほとんどないチョコ、もう唇が互いに触れるかくらいのところで俺は口を離した。 これはかなり恥ずかしい、よくこんな事をできるものだ他の連中は…… しかし昨日それ以上みたいな事をしてしまった身からすればどっちもどっちなのかもしれないが…… 「もう……触れるくらいなら大丈夫でしょ?」 どうやら雪女様はご不満のようだ。 しかし、しかしだ…… 「ここで触れたら止まれる自信がない。 その後は最悪新聞で恥ずかしい公開写真だ……それだけは、な」 昨日のあれから時間がそこまで経っていないせいでまだ鮮明にあの時の記憶が思い出せてしまう。 そんな状況でキスなどしてみろ、お互いの理性の壁が一瞬にして崩れ去る。 そうなったらお互い止まらない、止められない、止めたくない。 それで来客など来られたら問題だからな…… 「それじゃあ……今夜は期待してるわね」 えっという前にレティは地下へ入って行った。 残された俺は顔を真っ赤にして立っていた。 あんな風に言われると嫌でも夜まで意識する事になるじゃないか…… 入っていく時のレティの耳の赤さから見て自分も相当恥ずかしいはず。 それでも言ったという事は確実に今夜は……うぅむ。 あぁもう……かなわんなぁ。 新ろだ844 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お父様、ここでよろしいのですか?」 「あぁ、ありがとう。そこに置いておいてくれ」 はい、と危なげない様子で頼んだ物を置く少女。 少女から女にもう少しでなるかならないかくらいの儚さ。 そしてその顔は母親の血を色濃く受け継いだのか白く、そして美しい。 親ながらよくもまぁ美人に育ったものだと思う。 言葉使いは全く親に似なかったのはよかったが……誰に似たのだろうか? 客の中から考えると紅魔館のメイド長が一番可能性あるが……まぁいいか。 「お父様、それとお母様が呼んでおりましたよ?」 「むっ、何の用かねぇ」 「何でも重要な話とかで、運び物はやっておきますのでどうぞ行ってらっしゃいませ」 ふむ、何があるのやら。 ん、あぁそうだ。 「とりあえず行ってくるが…………つまみ食いは駄目だからな?」 「なっ!?わ、私を何歳だと思ってるんですかお父様は!」 ははは、と赤い顔して怒る娘を見ながら俺は地下から地上へ。 昔はよーく摘んで腹壊したなんて事してたからなぁあの子。 それを自分でも覚えてるのか言うと真っ赤な顔して怒る。 それがまた可愛いんだからまぁ困る。 やり過ぎるとうちの人が増援に来て俺が殲滅されるけどな。 「何かあったのか?」 リビングに入るとそこにはうちの嫁さんが座って待っていた。 何やら真剣な顔だが……何があった。 「あの、ね……その、また、来ないの、ツキのものが」 …………つまりそれは 「二人目、ってことか」 ま、まぁその、なんだ、俺も嫁、いや、レティも年はとらないようなものだ。 そして何時までも恥ずかしがり屋でありながらバカップル一歩手前な事ばかりしていた故、か…… だからこそ娘はちゃんと育ってくれたともいう、うん、本当に。 「そうか……二人目、か」 「えぇ、また……貰いすぎちゃったみたい」 赤い顔して俯くレティの横に座り、そっと抱く。 あ、と言ったもののなすがままのレティの耳元まで顔を近づける。 「俺は……嬉しいな。レティとの愛の結晶がまた一人、生まれてくれるのが」 「あ、あうぅ……」 今までで鍛えられた故か、少しは恥ずかしい台詞もまぁまぁ言えるようになった。 ちなみにだが娘が盗み見してるのは気付いている。 やはり子ができると色々と違うのかもしれないな、度胸とかその辺。 「レティ、愛してるぞ、世界で一番に」 「私もよ……あ、あなた」 互いに軽くキスをする。 真っ赤な顔してやっぱりこちらを見る娘に内心苦笑しながら俺はさて、名前をどうするかと思うのであった。 「………………むぅ」 いい夢を見たのはいいが内容が何とも言い難い。 ある意味一つの未来を見せられたというか…… 「すぅ……すぅ……んっ……」 隣ではまだレティがすやすやと寝ていた。 そっと彼女の頭を撫でる。 気持よさそうな顔で寝ている彼女に自然と頬が緩んでいる気がした。 不図、彼女の唇に目が行ってしまう。 先程の夢の最後を思い出したせいか酷く意識してしまう。 少しくらいなら大丈夫だろうと顔を近づけ、キスしようとすると急に彼女の腕が動き出し、顔も近付きそして… 「んむっ!?」 「んんっ…ちゅっ…はむ…」 いつものような積極的な交わりを求められた。 何度もしているせいか直ぐに対応できるが……まさか起きていたとは。 「ぷはっ…朝駆けなんて珍しいわね」 「この場合どっちがだか……」 お互い少し顔を赤らめ苦笑する。 そしてじーっとこちらを期待の眼差しで見つめてくるレティ。 「今日結構早かったと思うが」 「我慢、できる?」 「……でき「私はできないの……あなたが欲しくて」……左様で」 あぁもう……かなわんなぁ。 夢が何時か正夢になるんじゃないかと思いつつ俺はレティの求めに応じる。 きっといつか、あんな日が来るんじゃないかと、思いながら…… 新ろだ853 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「んーーーっと、ようやく私達の季節がやってきたわねぇ」 「売上的にはあまりいい季節ではないけどな」 冬は出不精になりやすい。 寒い中わざわざ里から離れた場所へ寒い食べ物、アイスを買いに来る客は普通、そうはいない。 尤も、普通じゃない連中達、というかカップル達は炬燵で一緒に食べるとか言って買いに来る事は多いが。 そういう意味では一年中、家の売上はあんまり落ち込まないのはありがたいことだが。 「あら、冬が嫌いになった?」 「まさか。俺達の、季節なんだろ?」 よろしい、と雪によって白く彩られた道を楽しそうに歩くレティ。 その少し後ろを歩きながらついていく自分。 冬が訪れた時は決まって店を休みにし、二人でこうして幻想郷を歩くのが決まりになっている。 レティが冬まで寝ている時は幻想郷が春から秋、どのようになったのかが見たいが為に。 そして……本人が言った事だが俺と同じ光景をまたちゃんと見れるように、ということだ。 あの時はお互い真っ赤になって途中まで無言で歩いていたものだ、懐かしい。 「あ、また過去を思いだしてるわね」 「どうにも自分の季節になると感慨深くなっちゃってな」 冬はレティとそして俺の季節。 それだけに思い出が深い。 彼女と冬にしか会えなかったが故に冬となると思い出を思い出してしまうのは仕方ない事だと思う。 「もう……過去の私を見るなら私がいない時にして。今の私を見てもらえてない気がして嫌だわ」 過去の自分にまで嫉妬されるとどこぞの嫉妬妖怪になりそうだ。 言うと他の女と同じみたいだと言いたいの?と怒られそうだが。 「すまん……しかしそうなると過去を思い出す時があるのか?」 年がら年中一緒となった俺達だ。 そう言われるとないわね、うん。とレティは少し頬を赤くして答えた。 冬は寒い物だと俺達は言う。 しかし心までは寒くない。 むしろ冬だからこそ心の温かさをより感じるのだと。 ……何とも恥ずかしい事を考えるな俺。 「さて、今日はどこをまず見て回ろうかしら。 湖、魔法の森、無縁塚、妖怪の山……見るところはいっぱいね」 俺の右腕に抱きついてくるレティ。 これはあれか、俺に決めろというのか。 「そうだな……なら、最初はあそこにするか」 ここから少し遠いがまぁ問題は無いだろう。 おそらく何も無いと思うが何となく、見たくなった。 「見事に何も無い、ここまで夏と景色が違うのも面白いな」 「そうよねぇ、幽香はちょっと不機嫌かもね」 来たのは向日葵畑。 夏の幻想郷を彩る有名な場所であるこの場は冬になればその輝きを失う。 一面の雪の下には春まで眠りにつき、夏のステージを待つ向日葵達がいる。 誰もいない、誰も来ないこの場所に今俺とレティが二人だけこの場所を眺めていた。 「綺麗ね」 「あぁ、銀世界は2番目くらいに綺麗だと思うよ」 「あら、じゃあ1番綺麗なのは何かしら?」 「……レ、い、言えるか、そんな恥ずかしい事を」 こんな恥ずかしい事を口走れるか。 そっぽを向いて頬を掻く俺がおかしいのかクスクスと笑うレティ。 時折起こるこの状況だが別に悪い気はしない。 お互いの事がわかっているからこその状況だから、な。 「1番目って言われたら少しだけ冬が嫌いになってしまってたかもね」 「そいつはまた何でだ?」 「あなたの1番になれないのは嫌だから、かしら」 ……あぁ、もうかなわんなぁ。 ストレートに言った本人もそれを聞いた俺も今相当顔が赤いだろう。 あーその、うーむと何も返せない俺。 俺の腕を抱き締め、そして顔を少し俯かせるレティ。 これも何度あった光景か。 本当に何時まで経っても初々しいと言われる所以ではある、ほっとけと言いたいが。 それでもやっぱり悪い気はしない。 その、なんだ……とてつもなく今が幸せだと思えるから。 「暖かいな、本当」 「暖かいわ、本当」 何時の間にかレティは俺を正面から抱き締めていた。 そんなレティを抱き締め返す。 誰もいない、誰にも見られない。 だからだろうか、自然とレティがこちらを見、そして軽い口付けを互いに交わしたのは。 「ん…ふふっ、幸せね私達」 「そうだな、本当に幸せだ」 さぁ、次はどこを見て回ろうか。 今は冬以外もレティと一緒にいる事ができるようになったけど、 やっぱり冬だけは特別な季節だ。 なんたって……レティと俺達の季節だからな。 ちなみに実は風見幽香に見られていた事を追記しておく。 あんまりにも自分達の世界に入ってるから声をかけられなかったとなぜか俺だけが怒られた。 考えてみれば太陽畑近くに風見幽香の家があったじゃないか。 とりあえずお詫びなのかわからないがアイスのサービスをしてご機嫌を取るとレティのご機嫌が斜めになった。 むぅ……女子は難しいものだ。 新ろだ896 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「さて、とお仕事かね」 「そうね、年に一回のお仕事」 店を閉め、レティと一緒に外に出る。 レティは初めにあった時の白と青の服。 本人曰く、やる時はこれでやるのが決まりらしい。 「しかし毎度思うんだが……」 「ん?」 「いや、俺まで行く理由があるのかなぁと」 俺達、というかレティの仕事なだけで俺は見てるだけもいい所だ。 正直邪魔じゃないかと思ってしまう。 「重要よ、そこにいてくれる事が」 とレティが俺の腕を抱き締める。 「あなたがいないと駄目なのよ。 これは一人じゃ駄目なの、二人じゃないと、ね?」 あぁ……そういうことか。 誰に頼まれた事でもない自分たちでやろうとした仕事。 確かに当初の考えからすれば俺達も二人で無いといけない、か。 「それに……一緒に見たいもの。 ○○と一緒に、ね?」 「そうだな、今年も一緒に見るか。 最初から見れるのは俺達だけの特権だものな」 妖怪の山中腹の丘の上に二人で立つ。 ここからならば幻想郷の光景はほとんど見える。 そしてレティが空を飛び、力を使って幻想郷に雪を降らせる。 次第に銀世界に覆われていく幻想郷。 「メリーホワイトクリスマス、レティ」 「メリーホワイトクリスマス、○○」 そう、今日はクリスマス。 幻想郷にホワイトクリスマスをプレゼントするのが俺とレティの今日だけの特別な仕事。 ある意味サンタかもしれないな、幻想郷の。 「全ての恋人達に幸あらん事を、かな」 「あら、その中に私達はいないのかしら」 降りてきたレティを抱き締める。 「もちろん俺達も、だ」 「ん……」 口付けを交わす。 そして二人で雪が積もりゆく幻想郷を眺める。 今日だけは巫女も文句は言いまい。 さて、恋人達の夜だ。 こちらを見上げてきた俺の恋人とも幸せな聖夜を過ごさないと、な。 新ろだ929 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あー、何か各方面で雪が砂糖になっちゃってる気がするぞ」 「あら怖い。私の天敵かもしれないわね」 クリスマスの仕事を終え、家に二人で帰ってきた。 今頃幻想郷のカップル達は銀世界の中で愛を語り合ってるか育んでいるか。 無論恋人達の為だけではない。 子を持つ家族、男だけの宴会でもいい。 この聖夜を楽しんでくれればそれでいい。 それが俺達の願いである。 「あ、何か難しい事考えてるわね」 「べひゅにきゃんぎゃえてないじょ」 むにーと頬を伸ばされた、ちょっとだけ痛い。 伸ばしてる方は満面の笑顔で伸ばしている。 やがて伸ばすのを止めて俺の顔をロックする。 そして軽いキスをしてくる。 「後は各々次第、考えるだけ無粋ってものよ?」 「……そうだな」 まったく敵わぬものだ、俺の考えてる事なんて直ぐにわかってしまう。 気持ちを切り替え、二人の聖夜を過ごすとしよう。 とりあえず二人で食事の準備をする事に。 事前に用意はしてあるので後は温めたり持っていったりするだけだ。 テーブルの上には普段よりも豪華な食事。 そして何時の間に着替えたのかレティは神無月旅行の時のドレスを着ていた。 まるでどこかの高級なお店で食事でもしているかのようだ。 「こういう時でもないと着れないでしょ?」 「そうだな……本当によく似合ってる」 現にまだ見惚れ過ぎて意識が飛びそうになる。 前の時よりはさすがに慣れたがそれでも自分がこんな綺麗な女性と一緒にいる現実を夢と思ってしまう。 膝を自分で抓り、意識を戻す。 彼女を待たすわけにはいかないしな。 お互いにシャンパンのグラスを持つ。 「では改めて、メリークリスマス、レティ」 「えぇ改めて、メリークリスマス、○○」 お互いにグラスを合わせ、乾杯する。 チンッといい音がなり、二人で飲む。 二人の世界の聖夜の食事の始まりである。 「んっ……ふぅ、久しぶりのワインはくるわね」 「だな、2か月ぶりくらいか……?ふぅ」 ケーキまで全て食べ終わり、最後は二人、ソファーの上に座り直し、隣同士で座って赤ワインを飲み合う事に。 紅魔館メイド長による熟成されたワインはさすがの味だった。 しかし大体日本酒ばかりだった俺とレティにはワインは飲みなれない飲み物であるせいか酔いが早く回ってきた。 レティの目は少しとろんとしており、顔も中々赤くなってきている。 尤も、俺自身もそんな感じであろうことは間違いないのだが。 「ねぇ?この半分くらい残ったワイン、一番美味しい飲み方しない?」 「そんな飲み方があるのか、是非と……んむ!?」 気付いた時には隣のレティに口付けをされていた。 そしてその口の中には赤ワインがあり、口移しをされる。 突然の事に反応が出来なかったがレティにまたも頬をロックされており抵抗はできない、いや、する気もないが。 「んちゅ…んんっ、ちゅっ、ぷはっ、ちゅぱっ」 ワインを俺に流し終えても彼女の舌は俺の口の中を動き回る。 その上気し、陶酔した顔を見つつ俺もそれに答える。 互いに最早ワインを味わうというよりも互いを味わう事に集中している。 聖夜のせいか酔いのせいか、恥ずかしがり屋である俺達にしては積極的な絡み合いをしているとは思う。 しかしこの心地よさを手放すことはありえない。 やがて彼女の勢いのまま俺が押し倒される形になる。 そしてさらに熱くとろけてしまいそうな口付けをし、名残惜しそうにレティの唇が離れる。 「んっ…」 「ふぅ…」 しかしレティの顔は依然近いまま。 彼女は期待の眼差しでこちらを見つめてくる。 その期待に応えるべく彼女に口付けをする。 「んんっ、はむっ、んちゅ…」 待ってましたと言わんばかりに舌を絡めてくるレティ。 最早お互い止まる事を知らない。 彼女が俺の服を脱がし、俺が彼女のドレスに手をかけ…… (この辺はスキマ送りにされました、見たい場合はしっと団としてアベック100人斬りを実行してください) 「んん…」 「うぅむ…」 気が付いたら朝だった。 お互い全裸でベッドの中にいた。 昨日の事を思い出そうとしたがあまり思い出せない。 だが確実に燃え上がったのだけは状況的に確実ではあるのだが。 そんな感じで俺とレティの聖夜は過ぎていったのであった、まる 新ろだ952 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「もうすぐかぁ……今年は色々あったなぁ」 「そうねぇ、いっぱい思い出ができちゃったわね」 数えるのも馬鹿らしい。 春夏秋冬こうして二人で過ごせば思い出など簡単に出来るものだ。 まして愛し合う者同士、おまけに特別な理由で会える期間が1年程前までは少なかったのだ。 俺達にとっては本当に目まぐるしい程の一年であった。 雪が降る夜を見ながら酒を飲む。 無論この雪は家の方が少し弄った雪。 強過ぎず弱過ぎず、巫女はこんな時まで余計に寒くするなと怒っているだろうか。 幻想郷の除夜の鐘は博麗神社の巫女が鳴らす事に代々なっているそうだ。 雪の降る中鐘を鳴らす巫女に普通なら同情をするがまぁ普段俺と彼女をボコボコにする礼とでもしておこう。 ところで、だ。 「何時までそうしてるおつもりなのでしょうかレティさんや」 座っている俺の後ろから俺を抱き締めるようにしているレティ。 顔を横に動かせば直ぐにでも彼女の顔とは零距離になれる程である。 「寒くないのかしら、と思ってね」 ちなみにさすがに窓は開けていない。 いくらアイス屋主人であり冬の妖怪の恋人やってても俺はまだ人間である。 限界というのはもちろん存在するわけだ。 「一人で飲んでた時は寒かったかもな」 また一口酒を飲む。 「じゃあ今は?」 やはり聞いてくるか。 機体の眼差しを横目で確認しつつ酒を煽り、 「……とっても暖かいよ、冬の妖怪さんのおかげでね」 と痒くもない頬を掻きながら返す俺だった。 今の俺の顔は酒以外の理由でも赤いのだろうな。 そんな俺の答えに満足したのか嬉しそうにレティはさらに抱き締めてきた。 あぁ、まったくもってこの冬の妖怪には敵わない。 そんな折、遠くからゴーン、ゴーンと鐘を鳴らす音がしてきた。 「明けましておめでとうレティ」 「明けましておめでとう○○」 そして口付けを交わす。 今年も一年二人で歩いて行く誓いと幸せの為に。 「どう?似合うかしら?」 「……とっても良く似合うぞ」 白に赤の模様を混ぜた綺麗な着物を着たレティが目の前にいる。 髪には簪もしており、まさに和服美人という名を形にしたかのようである。 「また少し、参っちゃってる?」 「少し、な。まったく、綺麗なお嬢様がいて俺は幸せだ」 馬鹿、とそっぽを向かれたがこれがいつもの変わらぬ俺達だろう。 初日の出は二人で拝んだ、後は博麗神社と守谷神社に初詣と決めている。 俺達の変わらぬ正月の過ごし方だ、きっとずっとこのまま続けていくと思う。 「じゃあ行きますか」 「えぇ、行きましょ」 手を繋ぎ外に出る。 雪はそこまで残ってはいない。 初日の出はしっかり出るようにと調整した結果だろう。 さて今年一年どうなるだろうか。 またレティと楽しい思い出が作れるだろうか。 ぎゅっと強く手が握られた。 横を見ればレティがさらに抱きついてきた。 あぁ、そうだな…… 作れないはずがないじゃないか。 俺は彼女を愛している、彼女も俺を愛してくれてると言ってくれたのだ。 なら何も不安は無いではないか。 さぁ始めようか俺達の一年を。 また幸せな一年を、な。 新ろだ963 ───────────────────────────────────────────────────── 「んー……」 無意味にグラスを揺らして氷の音を聞く。 冬の寒い時期、アイス屋に来る客なんぞそうはいない。 それが人里と妖怪の山の真ん中くらいにあるのだから尚更ではある。 尤も、夏場は人妖問わず客が来るので後者は実は当てはまっていないのだが。 こんな時は暇つぶしと称してくっついてくるお嬢さんも本日は外出中。 友人の風見幽香の家に遊びに行っているわけで。 とにもかくにも暇を持て余してしょうがないような状態である。 こんな時くらいはあの厄介な友人の八雲紫でもいいから来てくれないかと思っていると 家の呼び鈴が鳴り、○○はいるかーという聞いた事のある声が玄関からした。 まさか本当に八雲紫が来たのかと思ったがあれならば隙間から土足で入ってくるだろう。 では誰かと玄関を開けてみるとそこにはその式の八雲藍、そしてさらにその式の橙がいた。 「珍しい、2人だけか」 この2人だけで来るのは初めてではないだろうか。 普段ならば八雲紫に連れて来られるのだが今日に限ってはその主犯はいない。 「あぁ、紫様はデートらしい。 なのでたまには2人でいつも迷惑をかけている○○と冬妖怪の家に行かないかと思ってな」 ん?何か忘れているような…… 「旦那さんは?」 「……家に吊るしてきた」 なるほど喧嘩中か。 「ねぇねぇ○○ーアイスはー?」 そんな微妙な空気も知らず橙は無邪気に俺にアイスをせびってきた。 橙はうちのアイスをいたく気に入っており、来る度にアイスを幸せそうに食べていく。 作った側としてはそんな風にして目の前で食べてもらえるのは感謝の極みで どうにもサービスをしてしまう、前にそれでおなか壊されてそこの方に怒られたが。 「あぁ、勿論あるから心配するな。 んじゃ上がっていくといい、今はとにかく暇で話相手を欲しがってたところなんだ」 「有難う、だがあまり橙を甘やかさないでくれよ?」 「一度で懲りてるよ」 同じ轍は踏みたくはない。 2人を家に招きいれ、さてどの紅茶を淹れようかと考える事にした。 「うむ、いい味だ。さすがだな」 「おいしー」 橙にはアイスを、藍さんには紅茶を出す。 客には出来得る限りの最上の物を、が俺のモットーだ。 故に客に出す紅茶も紅魔館や人里で最上の物を選んでいる。 時折懲りすぎだとうちのお嬢さんに呆れられるのがちと心に痛い。 「満足してもらってなによりだ」 「ふぅ、こうしていると時間とは本当に過ぎてしまえば早いものだと思うよ。 もう○○が幻想郷に来て10年が経とうとしているのだからな」 そうか……そういえばもう10年か。 時が経つのは本当に過ぎてしまえば早いものだ。 「覚えているか?○○が幻想郷に来た頃を」 「忘れられるか、幻想郷に来ていきなり死にかけたんだからな」 そう、冬眠中の八雲紫による寝ながらの神隠しにより俺はこの地に連れてこられた。 おまけにその拉致った奴に喰われかける羽目にすらあったのだ。 あそこでこの方が様子見に来なかったら今の俺はあるまい、本当に感謝している。 そこから1年程、マヨイガで世話になった。 「そういえば何故最初、向こうに帰らなかったんだ?」 「ん?あぁ……戻っても何も無かったから、かな」 自分を絶望から救ってくれた人物はこっちに来る少し前に他界。 友人は多少なりともいたが心の隙間はぽっかりと空いたままで過ごしていた。 そのせいだろうか、八雲家での生活が居心地が良かったのだ。 そう、まるで本当の家族のように扱ってくれた、それが嬉しかったのだ。 まぁ八雲紫に関しては本気で俺をおもちゃにしていた節があるが。 「すまん、今更だったな」 「いや、映像編集はお前さんがやったんだろ?知られててもおかしかない」 神無月旅行の出刃が目映像記録の時墓参りに関しては出なかった。 おそらく八雲紫と2人で編集する際に消したのだろう、ありがたいことだ。 「まぁ、な。あぁいうのは当人達しか知らんほうがいい事だろう。 他言はしないから安心してくれ」 「信用してるさね」 尤もあの隙間妖怪はあんまり信用できないが。 酒の席でぽろっと言いそうで困る、いやまぁあんまり困らないが。 「それにしてもまさか1年後に出て行くとは思っていなかったぞ」 「ケジメってやつだ。世話になりっぱなしは気が引けてたんだ」 そう、1年の今頃。 俺はマヨイガを出る決意を固め、2人に話をし、マヨイガを出たのであった。 別に八雲紫が寝ている時期を狙ったわけではない。 ただ1年を過ごし、何時までも甘えるわけにはいかないというケジメをつけたかったのだ。 男は何時か巣立つもの。 何時までも甘えているわけにはいかなかったのだ。 「それで人里に行き、冬の妖怪と知り合い、こうして一緒になったわけだな。 ……なぁ○○、私はあの時何があったのか詳しく知らんのだ」 確かに八雲藍は詳しくは知らないはずだ、あの8年前に起きたことを。 それを知っているのは4人だけ。 俺と、レティと、八雲紫と、上白沢慧音だけ。 2人には本当に感謝している。 「私が知っているのは『あの光景』とお前のその後の決意と苦労だけだ。 紫様や里の守護者はお前に口止めされていると言って何も教えてくれない。 教えて欲しくばお前に聞けというだけだ。 聞いても、いいか?8年前にお前と冬の妖怪に何があったのかを」 ……八雲藍になら言っても問題はないだろう。 彼女にもあの一件以後も世話になっている……話すべきなのだろう。 「わかった、あの時からこうして店を構えるまで世話になったしな。 ただ、わかってるとは思うけど他言はしないでくれ。 俺の為じゃない、彼女の、レティの為に」 「……誓おう」 忘れることのできない過去の記憶。 彼女との出会いは運命だったのだろうか。 そしてそこから起こったあの事件すらも運命だったのだろうか。 今となってはわからない。 ただわかることはある。 それはこれから先も忘れてはいけないということだ…… 「ふぅん、それじゃあ相変わらずのイチャイチャぶりなわけね」 「失礼ね、そ、そんなにべったりしてないわよ、たぶん」 そうだと思う。 世間一般の俗に言うバカップルと言われる者たちのほうが遥かにイチャついているだろう。 公共の面前であれやこれやと恥ずかしいだろうに、な事なんて私たちにはできようもない。 幽香の家に遊びに来て、最近どうよ?と言われ、いつも通りだと言ったら返ってきたのは冷やかしの言葉。 他の連中と比べればまだ普通よ……たぶん。 「この前の件、忘れたとは言わせないわよ? 誰も見てなければどうせべったりと○○にくっついてるんでしょうし」 「うっ……しょ、しょうがないじゃない……好き、なんだから……」 たぶん真っ赤な顔をしているだろう自分が憎い。 冬の初めに雪しかない向日葵畑を2人で見に行き誰もいないだろうと油断したのがいけなかった。 そこは幽香のテリトリー、彼女が見てしまう可能性を考えるべきだった。 結果、彼女に○○との口付けなどなどを見られ、 ○○は人の家の直ぐ側で何してんのよと怒られ、私はからかわれる要素を一つ増やしてしまった。 愛は盲目って言葉がよくわかったわ、本当に不覚よ…… 「変わったわねほんと。前はもっとつめったぁーい女だったのに」 「あなただって変わったわよ、幻想郷絵巻だか縁起だっけ?あれの危険度下がったそうじゃない」 幻想郷の有名な人妖の事が書かれた書物が半獣の人里にあると聞いたことがある。 何でも著者は代々短命で記憶を引き継いでいくとかなんとか。 それにはもちろん私も書かれている、幽香も、そしてつい最近彼も書かれた。 曰く冬妖怪の恋人であり寒さに少しだけ強い人間だとか。 そのせいか私の危険度は無いも同然扱いになっているそうな、いいのか悪いのか。 彼の事を考えればいい事なのでしょうけど、後今の代の阿求って子の好みはカラメルのアイス、結構渋い。 そして危険度最高と名高いと自分で豪語していた幽香の危険度も少し高い位に下がったそうだ。 確かに最近丸くなったような気はするけど…… 「いいのよ、私、弱いものいじめはしない主義なんだから。 そもそも普通の人間がここまで来ることなんて早々出来ないんだから」 と自分の前に置かれている紅茶を飲む彼女。 確かに人里からここまでは離れている。 つまり妖怪に襲われる危険は高く、好き好んでくる奴なんてそうはいない。 ならば何故幽香も丸くなったのか、巫女とか黒白はあんまり関係ない気がするけど……うーん。 「ところで、話は変わるけど。 『それ』、婚約指輪なんでしょ?結婚はまだしないの?」 それ以上あまり触れられたくないのか幽香は話題を変えてきた。 その言葉に私はそれ、つまり○○から貰った指輪を触れる。 あの時から肌身離さず持ち歩いており、大体は薬指に填めている指輪。 「もう少し待っててくれ、だそうよ」 「まだ決心できないって……そんなわけないか、あの○○が」 そう、おそらく何かを待っているか準備している。 それが何なのかは私にはわからない、そして今は知る気も無い。 だって、あの人は待っててくれって言ったんだもの。 ずっと、ずっと今まで1年の4分の3を待たせていた私が初めて待つ側になった。 だから今度は私が待つ番だ、彼がどんな事を言ってくれるのか楽しみだしね。 「何を考えてるんだかね。 あ、そうだ。前から聞こうと思ってたことがあるのよ。○○との馴れ初めについて」 「え?○○との?」 「そ、あのつめったぁーいレティ・ホワイトロックがどうして人間と恋に落ちたのか。 たぶんだけど何か普通じゃないことあったでしょ、あんたら」 ……普通じゃない事、か。 「少し長くなるしあまりいい話じゃないわよ?」 「上等、私を驚かせるような話を期待しておくわ」 どんな話をすればこの性悪が驚くのか聞いてみたいぐらいよ。 ……○○との馴れ初め、か。 あの件は正直あまり思い出したくは無い。 けれど忘れる事はできない。 ○○が絶対に忘れてないから。 だから私も忘れるわけにはいかない。 たとえそれがどんなものだったとしても…… 「そうだなぁ」 「そうねぇ」 「初めて彼女と会ったのは吹雪の中だったな」 「初めて彼と会ったのは吹雪の中だったわね」 「なんでこんな事に……」 気づいたら山の中、しかも猛吹雪の中とか俺は最初呆けるしかなかった。 右も左もわからない、尚且つ吹雪様が全力で俺を凍えさせてくれる状況。 とりあえずどうにかしないと、と思いながらくしゃみを連発しながら歩き回った。 しかし吹雪の中の山歩きをなんの準備もなくできるほど山は優しくはない。 むしろ何故こんな迷い方をしたのか。 あの隙間熊が寝ぼけて道の境界弄ったのかとすら思えてくる。 俺は疲労と寒さに雪の上に前のめりに倒れた。 このまま知らぬ土地で果てるしかないのかという絶望が押し寄せてくる。 意識が朦朧とし、瞼が重くなってきた。 そんな折、サクサクと雪の上を歩く足音が聞こえたような気がした。 「あら?こんなところに人間?でも見たところ外の人間かしらね? 」 おまけに人の声が聞こえるなんていう幻聴まで聞こえた。 幻聴まで聞こえるなんてもう俺もお仕舞いだな、なんて思いながら俺の意識は途絶えていった。 「本当だったら助けてあげる義理はないんだけど……感謝なさい、私の気まぐれをね」 ―――暖かい。 え?暖かい?なんでだ?俺は吹雪の中倒れたはずだろ? じゃあなんで?あぁ、そうか、俺は死んだからか。 しかしなんで動けないんだろうか、死後の世界は動けないのだろうか?とか馬鹿な事を思いながら目を開けるとそこには…… 「すぅ……すぅ……んぅ」 「えぇぇぇぇぇぇ!? 」 綺麗な女性が横ですやすやと寝ているではないか。 おまけにその女性に抱かれる形になってるからさーらに驚きだ。 いやいや待て待て、いったいなんだってこんな状況に? 「んんっ……ん?あら、起きたのね」 っていうかおまけに裸!?あ、俺の上半身も!?うぇ!?あれ、俺どうなって!? 「こういう時はこうするようにって聞いたけど問題はなかったみたいね」 慌てふためく俺とは逆に冷静に状況を見て服を着始める美女。 とりあえず畳まれていた服を俺も着る事にした、さすがにこのまま話し合うほど俺は変態じゃない。 「えーと、とりあえずありがとうというべきだな、ありがとう」 「どういたしまして」 着替え終わった俺は助けてくれた恩人に礼を言う。 まぁまだ頭の中は少し混乱してるがな。 「えーと、自己紹介でもしておくか。俺は○○という凡人だ」 「レティ・ホワイトロックよ。冬の吹雪の中山に入るなんてあなた、自殺願望者?」 「いや、本当は希望を持って人里を目指していたはずなんだがな……」 どこをどう間違えた結果こうなったのか…… 八雲藍からちゃんとした地図を貰えばよかった。 「すまんがえーと、レティさんと呼べばいいのか」 「別に呼び捨てで構わないわ」 助かる。どうもさんづけは苦手だ。 「じゃあレティと。この辺の人里の行き方なんかわかったりしないか?」 「んー麓にあるのは見た事あるわね。あっちの方角から下りればわかるんじゃないかしら」 そういって右の方を指さすレティ・ホワイトロック。 ほっ、なんとかなりそうだな。 「ありがとう、この借りはいずれ」 「……ねぇ、聞かないの?私が何でこんなところにいるのかを」 「ん?あぁ……見た目人間にしか見えないのに妖怪だ人間だと騒ぐ理由もないだろ。 それに俺にとっちゃ命の恩人なわけだし」 こうして言葉を交わす事に何の不思議があろうか。 まぁこちらに来た時に妖怪に世話になったからそういう事が言えるのだけどな。 普通だったら死んでてもおかしくないとか言われたしなぁ、こうして2度も妖怪に助けられてるんだ、俺は本当に運がいいのだろう。 尤も、山で遭難したのは運がいいとは言い切れないが。 「……変わった人、外から来た奴は皆そうなのかしら」 「よく外から来たってわかったな」 そう言うと俺の服を指さされる。 ……あぁ。 「こっちじゃ外の服は地味な物でも珍しいか」 こっちとしてはこちらの服装のほうが珍しいが。 前の方の服装も青と白を基調としたあまり見ない服装。 しかしファッションには疎い俺にはスカートとマフラーくらいしかわからない。 「それにそんな感性持った人間幻想郷じゃいないわ。 人間と妖怪は境があってこそ、って。 さぁ、そろそろお行きなさい。あまり長居してると食べられちゃうわよ」 「それは君になのか、それとも別の妖怪なのか」 直感ではあるが前者は無いと何故かこの時俺は言い切れる自信があった。 恩人だからとかそういうものではない、そう何故か、だ。 「さぁて、どっちかしらね」 そう言ってデコピンを何故かされた、意外と痛い。 「んじゃとりあえずここで。 普段からこの山に?」 「えぇ今はここら辺にいるわよ。 来るなら構わないけどどうなっても知らないからそのつもりでね」 そう言って彼女は微笑しながら空を飛んでいった。 これが彼女との出会いであり、そして始まりだった。 ────────────────────── 「成程、出会いは良好であったと」 「まぁ一応は。彼女にとってはそうであったのかはわからないが」 その時のレティの気持ちまでは俺には分からない。 どうしてあの時助けてくれたのかと彼女に聞いてみた事はあった。 「単なる気まぐれだったわ、まさかそれが運命の出会いだなんて誰も思わないでしょ? でもね、今の私ならいえる。あれが私とあなたとの運命の出会いだったって」 聞いた結果は嬉しくもあり、聞くんじゃなかったという後悔だった。 お互い真っ赤になって少しの間互いの顔を見れなくなったものだ。 「それで、人里に着いて住まわせてもらったわけか」 「あぁ、レティの案内通りに山を下りて直ぐに見つかったよ。 あの時は見ず知らずの下界人の俺を快く受け入れてくれて感謝したなぁ。 感謝の度合いでいえば3番目くらいだ」 1番は言わずもがなレティである、と言いたいのだが…… 「1番目は誰なんだ?」 「……八雲家の3人だ」 俺の言葉にびっかりした顔になる八雲藍。 「今更だが言わせてくれ……俺をこの世界で生かしてくれてありがとう」 深く八雲藍に頭を下げる。 橙はアイスに夢中でこっちの事なんざ見てないが構わん。 本来ならもう一匹にも下げるところだがおそらく奴はあまりいい顔をしないだろう。 奴に男が出来た時は祝福してやった、友人だから。 俺とレティがこうして春夏秋冬いるようになって1番に冷やかしに来た、友人だから。 俺と八雲紫は友人だ、それ以上でもそれ以下でもない。 今更、感謝の気持ちなんぞ言わなくてもわかっている。 言葉にしなくても奴は俺が感謝してる事を知っている。 八雲紫だから、という理由もあるが それよりなにより10年も続いている付き合い、互いの事はわかりきってるものだ。 尤も、この話を聞いたら拗ねるだろうけどな。 「……感謝などしなくていいんだ○○。 お前は私達を家族のように思ってくれた、それだけで十分だ」 頭を上げる。 気付かれていた、か……まぁ当然なのかもしれない。 孤独の身となった俺にはあの当時は暖かった、いや暖か過ぎた。 今とは違う幸せを俺は確かにマヨイガに感じていたのだから。 「……さて、話が逸れてしまった。 それで村の外れにちょうどよく空家があるというんでそこに住まわせてもらったわけだ」 少し気恥ずかしくなって話を戻す事にさせてもらった。 その家は人がしばらく住んでいなかった空家ではあったのだが中々に大きく、一人で住むには結構広かった。 今の家の1.5倍はあったような気がする。 おまけに里から山に一番近かったのはありがたかった、そしてそれが要因ともなった。 「それで次の日山に入ってレティに感謝のお礼をして以来ちょくちょく山に入って彼女と世間話をしていたわけさ。 村長さんからは山には妖怪がいるからなるべく入らないようにと注意を受けていたんだがな」 当時の俺、いや今もだが俺は妖怪というものに危機感をあまり感じていなかった。 ……いや、それだけじゃないな。 何故わざわざ危険を冒してまで彼女に何度も会いに行ったのか。 気が合ったから?話すのが楽しかったから?いや違う、たぶん…… 「一目惚れしたんだろ、彼女に」 「さすがだが人の心の中を読まないでくれ」 そう、俺は最初から彼女に惚れていたんだと思う。 それに気付いたのはその冬の終わりだ。 何に惹かれたのかと聞かれたら彼女の全部、としか答えようがない。 それ程に、彼女が好きになっていたのだ。 「そんでまぁ冬の最後に彼女と一旦別れたわけだ、まぁあの時はまさか冬の間しか会えないとは思わなかったなぁ」 「ふむふむ、いい友人だと俺は思うんだがなぁ」 「冗談、宿敵っていうのよ」 あの幽香と友人?ばかも休み休み言ってほしいものだわ。 それよりなにより冬も終わりだというのに何故私はこの人とこうして話しているのかしら。 今日は来るのか来ないのか、気がついたら楽しみにしていた自分がいた。 こんな事は初めてで自分がどうかしてしまったのかと思ってすらいた。 しかし何故だろう、彼との会話が楽しくて心地よいのだ。 「そうかねぇ……喧嘩しても変わらぬ付き合いだなんて友人てか親友だと思うが」 「いやよ気持ち悪い、向こうも私と同じように言うと思うわ」 私の言葉に彼、○○が苦笑した。 今までこんな事考えた事が無かったわ……誰かと一緒にいて、そして……別れる事を。 寂しい? 別れるのが嫌? もっと話したい? わからない、なぜ自分がそう考えるのかも。 「○○、実は、ね」 「うん?」 しかし言わなければならない。 私は冬の妖怪、それ故に 「私は、冬の間しかいられないの……だから、また次の冬まで……会えなくなるの」 冬の間しかいられないという事を彼に言わなければならなかった。 「それで何?よろしくやったとかそんなわけ?」 「誰がするか!」 ばん、とテーブルを叩く。 顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。 勿論そんな気は全くなかったし全く起きなかった。 「それで○○はそれを聞いてどうしたわけ?」 「最初はかなり驚いてそれでどうにかならないのかって聞いてきて無理だと話したわ。 そして○○はじゃあ次の冬になったら必ずここで会おうと言ってくれたわ」 今だから言える事だけど……そんな事を言ってくれた○○が私は嬉しかった。 冬は嫌われ者、冬の妖怪である私も当然のように妖怪の中でも嫌われ者だった。 そして何時の間にか私は孤独を感じるようになった、しかしそれが寂しいなんて思った事は無かった。 冬を愛し、冬と共に生き、冬が去れば私も去る。 数多の生き物は冬の終わりを望み、春を焦がれる。 だからだろうか、私をきちんと見てくれて、心配してくれて、再会を誓ってくれた事がとても……嬉しかった。 「変わり者だものねぇ、○○は。 こんなつめったい妖怪のどこがいいのかしらね」 「あら、じゃあ何でそんなつめったい妖怪をあなたは家にあげてるのかしら」 実際には○○だけが私を見てくれたわけではない。 妖怪の代表としては目の前のこの憎たらしい顔で紅茶を飲んでいる奴だ。 ○○に会うさらに昔、一度冬を長引かせようとした事があった。 あの時の私は今よりも、○○に会う時よりも若過ぎたのだった。 自分の置かれた状況に納得がいかず、反逆の意味を込めての事だった。 そんな時に彼女に出会った。 「あなたが今回の豪雪異変の元凶?花が何時までも咲かなくて困ってるんだけど。 即刻止めるならばよし、さもなくば花吹雪であなたを埋めるわよ」 スペカルール上とはいえお互いに本気の弾幕の撃ち合いだった。 一歩間違えていたらどちらかが死んでいたかもしれないほとだった。 あの時当時の博麗の巫女と八雲紫が来なかったら今の私達は無かっただろう。 それ程に二人とも若かった時もあった。 それ以来の腐れ縁、会えば口喧嘩弾幕当たり前、○○がいたら絶対間で苦労していたに違いない。 「……勝手にあがられたから今困っていますの」 「あら、家の前に着いたらドアを開けて、いらっしゃい、とか言ったのは誰だったかしら」 「それ誰かしら、私の知らない奴ね」 減らず口を、と内心苦笑する。 さて、そろそろ話を戻す頃合いかしら。 私は幽香との出会いから再び○○と出会いを思い出す。 「話戻すけどそれでその冬はお仕舞い……お互いに後ろ髪を引かれながら、ね」 互いにそれには気づいていたはず。 しかしその一歩はまだ私達には踏み出せなかった。 会って時間が間もないからではない。 その一歩を踏み出す勇気が無かったのだ。 そして私達は先延ばしにしてしまった。 しなければひょっとしたら次の冬に起きた事は無かったかもしれない。 私は未だに思い出の中でも一番の「傷痕」を思い出す。 私達が結ばれる要因でもあり、そして……後悔でもある。 「これからの話がまぁある意味私達の原点かしら、ね」 「あらクライマックス?いい盛り上がりを期待するわよ」 「どちらかというと下がりっぱなしになるわよ」 一度空を見上げる。 再開した日も、あの日も、こんな風に晴れた日だったわね…… 私は冷めた紅茶を飲み干し、話の続きを始めた。 彼が私を本当に好きだったのだと言う事を。 そして――――――――――――私の罪を。 ────────────────────── 「おぉ寒い、これじゃあ雪が降るのも無理は無いな」 昨日よりも防寒具、といっても外の頃に着ていたベストを一枚追加しただけなのだが、を着て来たのは正解だったようだ。 一面の銀世界に覆われた山の光景は一年前を簡単に思い出させる。 気付くといつも冬はまだかと思ってしまっていた。 人里の仕事の中でつい思い耽ってまたサボりかと小言を言われたものだ。 それ程に、今日という日を待ち望んでいた、いてしまった。 一年今の暮らしをして分かった事がある。 今いる人里の妖怪に対する敵意を。 最初は実は妖怪に少し世話になったと言ってしまった事があった。 その時の里長の目は今でも思い出せる。 疑念と動揺と敵意を含んでいた目を。 それ以来俺は人里の中で「妖怪」という単語を言わないように心掛けてきた。 尤も、春に彼らに知られずに俺の家に来て以来、時折嫌がらせをしてくる憎い奴のおかげで少しは気が楽だったが。 今頃奴は冬眠でもしているだろう、顔に落書きでもしてやりたい。 そんな些細で絶対に不可能な復讐を考えていると顔面めがけて何かが来…… 「いたっ!?雪玉でも顔は痛い!」 冷たさと強度でそれが雪玉なのだというのがわかった。 問題は何故飛んでくるのか、である。 今は快晴なのだ、吹雪などあろうはずがない。 と思いきや前をちゃんと見れば誰かがいた。 「……」 そしてちょっと不機嫌だった。 「あー……?今来たとこだ!」 返答は剛速球だった。 「ぷ……ははははは!それは待ってる側が言う台詞だろうが」 「いや、な……なんていえばいいのかわからなかったんだ」 ツボに入ったらしく、八雲藍が大声で笑う。 橙はそんな彼女の声に全く気づかずに彼女の膝で眠りについている。 レティはどうやら俺が来るのが遅かったのがご不満だったらしくその後も雪玉で追い回された。 必死に許してくれと言うとじゃあ次会う時に何か持ってくるように、でその日は事無きを得た。 そして枯れた木の根に座り、一年前と変わらず色々と世間話をしたのだ。 「ふむ、それにしても……それ程に敵意があったのか、あの場所は」 「過剰なまでに、ね。昔何かあったんじゃないかとは思ったが……」 結局聞けはしなかった。 軽く聞いていいような内容ではないだろうと思ったのもそうだが そんな村でもしもレティとの事が知れれば、という危機感もあったのだ。 しかし俺は彼女に会うことをやめられなかった。 彼女に惚れてしまったから。 彼女が俺をどう思っているのかはわからない。 悪いようには思っていない、というのは俺でもわかる。 もしかしたら、なんていう甘い考えもあった。 それに何より、彼女との時間がとても楽しかったのだ。 故にその時間を捨てられなかった、そんな俺の甘さ。 「そしてその冬の真ん中くらいだな、あの件が起きたのは」 「8年前、何が起きてあの光景ができたのか、今なら何となく予想はできる。 しかし、だ。それはお前たちが原因ではなかったんじゃないか? 特に○○、お前は……」 「いや」 俺にも責任がある。 俺の甘さが彼女に罪を負わせてしまったのだ。 「原因はどうであれあの事件が起きてしまったんだ。 俺は彼女に罪を負わせてしまったのには変わりない」 閻魔は店にふらりと来た時に言った。 「あなたたちは苦難の道を選んだ。それに押し潰される事は私が許しません。 しかし、それを負い過ぎるのもまた罪なのです。 幸せに、なりなさい。そして2人で背負って生きなさい。それがあなたたちの善行です」 彼女は俺を許してくれた。 俺も彼女を許した。 そして2人で背負うことを約束した。 だからこそ今の俺たちがいる、そう思うんだ。 「それじゃあ話すぞ、あの時、あの村で何があったのかを……」 俺は痛みを感じながらもぽつりぽつりと語りを始めるのであった。 後ついでに閻魔の選んだアイスはぽんかんだった、さすがの渋いチョイスである。 「美味しい、外の世界っていうのはこんな美味しい物で溢れてるのね」 「お口に合って何より、だな」 彼は時折こうして食べ物を持ってくる。 今日は外の世界での甘味物の「あいす」とやらを持ってきた。 彼が自作して持って来たらしい、うん、冷たくて美味しい。 「でもこっちで作れるものなの?こんなの」 「いや、実は外の世界を行き来できる知り合いがいてな……作る為の物を色々と貰ったんだ」 外の世界を行き来できる奴……まさか。 「それって八雲紫?」 「知り合いなのか、むしろあいつが有名なのか」 やっぱり。 あの女には世話になったし面倒をかけさせられた事もあった。 いえ、それよりも八雲紫と接点があったなんて…… あら?それじゃあもしかして。 「それじゃあこっちに来て最初世話になったのって」 「あぁ、八雲紫のとこだ。あの野郎寝ぼけて人の事喰おうとしてくれたんだ。 それで紆余曲折あって1年程世話になった、尤も、その式の世話になっただけだがな」 嫌そうに語る○○の目は本当に嫌そう、ではなかった。 前に私と幽香の関係を友人同士だと言った事が思い返される。 きっと彼と八雲紫の関係も似たようなものなのだろう、そうわかってしまった。 ……少し、八雲紫が羨ましい。 「しかしまぁこうして生きてるしその、なんだ、レティとも会えたしな」 ○○が頬を少し掻きながらそっぽを向いた。 そ、そんな事を言われると私も何だか恥ずかしくなってしまう。 けれど、悪い気はしない。 この時はまだ彼への恋心を自覚は出来ていなかった。 本当は既に彼の事を好きになってしまっていたというのに…… 「……恥ずかしい事を言う口は封じないと駄目ね」 そっとアイスを掬ったスプーンを彼の口の中に押し入れる。 彼は突然の私の行動に驚いた顔をしたが抵抗はしなかった。 「んむぅ……よ、よくできてたようだ、よ、よかったよかった」 「……そうね、よくできてるわ」 互いに顔を背けてしまう。 どうやらお互いにこういうのは、その、慣れていないみたい。 私に関して言えばそりゃそうよ、である。 何せこんな事初めてなのだ、どうすればいいのかなんてさっぱりわからない。 それはきっと……彼も同じなのだ。 しかしそんなぎくしゃくも日が暮れるのには勝てず…… 「おっそろそろ帰るか。 じゃ、じゃあなーレティ、気にいったならまた作って持ってくるよ」 彼は勢いよく立ち上がり早足で山を降りて行った。 一瞬止めようとしたけれど直ぐに手を引っ込めてしまった。 「……はぁっ」 私は彼と座っていた木の幹に座り直す。 何をしてるんだろうか私は。 「こんな姿を幽香に見られたら笑われるじゃ済まないわね……」 10年はからかわれる類だわ。 尤も、会わない年もあるのだからそんなでもないとは思うのだけど。 「はぁっ……」 自分はどうしたいのか。 ずっとこのままでいいのか、ぬるま湯に浸かっていていいのか。 しかし私は妖怪、彼は人間。 種族の違いを彼は気にしないだろう、しかし、しかしだ。 私は彼を一年のほとんどの期間、待たせなくてはいけないのだ。 冬にしかいない私を彼は待ってくれるだろうか? たぶん待ってくれるだろう。 でもそうさせなきゃいけない事が溜まらなく……怖いのだ。 こんなに悩むなら彼に心を許すべきではなかった。 彼に恋心など抱くべきではなかった。 「……どうするべきなのかしらねぇ」 何度目かわからない溜息をつく。 何時解けるかわからない難問は私を悩ませ続けるのであった。 そんな事ばかり考えていたからだろう。 見られていた事に気がつかなかったのは。 その甘さが……本当に命取りになってしまった…… 「本当かそれは」 「あぁおらは見ただ、妖怪とあの男が会ってるのを、おまけに好き合ってる感じだで」 「里長、わかってるよな?」 「……あぁ、わかっている。彼には悪いが掟は掟だ……」 「……むぅ」 集中できない。 俺は筆を置き、横になる。 思い起こされる今日のレティとの件。 レティはおそらく俺の想いに気づいている。 そして満更でもない、とは思う、思いたい。 しかし何というか互いに意識し過ぎると恥ずかし過ぎて何にも言えなくなってしまう。 ここまで自分は純情だったのかと思い知らされる。 「あぁぁぁぁぁぁぁもう……こういう時は一杯飲んでおくか」 都合よく良い月が出ている。 俺は酒を持ってきて縁側に座る。 そして何やら明りが里から近づいて来ている事に気がついた。 それも複数。 一体何事かと外に出てよく見れば里長達であり、尚且つ火矢や槍などで武装までしていた。 ……嫌な、予感がする。 そして彼らは俺の家の前で止まった。 「一応聞いておきます。どうしたんですかそんな物騒な雰囲気で」 「すまないね○○君……出来るなら抵抗はしてほしくない」 里長が代表して答えた。 「さらに聞いておきます。何故ですか」 「君が妖怪と会い引きしている所を村の人間が見つけた、故に君は村の掟により処罰される」 処罰、か。 しかし処罰というよりかはこの状況では処刑といったほうが正しいとは思うが。 いつか里に知られるんじゃないか、とは思っていた。 「頼みがあります。その妖怪には手を出さないでもらいたい」 せめて彼女には知られてほしく無い。 いつか知られてしまうかもしれないけど、彼女には、彼女だけには…… 「約束はできか……雪……?」 先程まで月の見える夜空だったのにも拘らず空はいきなり曇り、そして雪が降ってきた。 こんな事、いくら冬だからって……まさか!? 「その人間に手を出す事は私が許さないわ」 気がつくと空から彼女が降りてきた、降りてきてしまった。 状況は、最悪の様相になってしまったのだ…… 「さ、里長!この妖怪がこの○○と会ってた奴だべ!」 嫌な予感がして様子を見に来てみれば事態は急を要していた。 私とした事が迂闊だった。 何時か、里の人間に私と○○の事がばれるんじゃないかとは思っていた。 だから気をつけて警戒してたのに、この様だ。 「私がこの山から去れば問題ない話でしょ? だから彼には手を出さないでちょうだい」 「レティ……!」 彼を手で制す。 これで、よかったのよ。 人間と妖怪はやっぱり相容れない。 たとえ○○個人が大丈夫でも、他の人間はそうではない。 彼は人間の中で生きていくべきなのだ、私と一緒にいるよりも…… 「それはできない話だ、と言ったらどうする」 人間達の長らしき男が尋ねてくる。 もちろん、その場合は…… 「村を失いたくは無いでしょ?」 私は悠然と答えた。 別に武装している人間なんて問題は無い。 彼らは所詮普通の人間なのだ。 ただし彼の目を見ればわかる、そんな事は望んでいないことくらい。 彼は私にもこの人間たちにも傷ついてほしくないのだということくらいわかっている。 だから彼は自分を犠牲にしようとした事くらいわかっている。 だけどそれを私は許さない。 だって私は……彼が好きなのだから。 私の脅しに男の顔が歪む。 どうしたものか、と悩んでいるのだろう。 そして話し合うような形を取った。 その状況に安堵したのがよくなかった。 「この雪女があああああああああああああああああああああああああ!!!」 矢が飛んでくる事を一瞬気付けなかったのは。 しかし多少反応が遅れたくらいでこの程度、造作もな…… 「ぐっ……!」 「……………………え?」 何故私は○○に抱かれているのだろう。 何故私を庇う様に○○が私を抱いているのだろう。 何故、彼に矢が……刺さっているのだろう。 「えっ、○○……何を」 「ぐっ……体が、勝手に、な」 彼の背中に矢が刺さっているのが見えてしまう。 彼はそんな状態だっていうのに私に笑いかけていた。 「馬鹿!こんな矢、私には……!」 「レ、ティ、行ってくれ」 次第に○○が苦悶の表情を浮かべ始める。 やめて 「お、れは、きみが、傷つくの、も、傷つけ、るのも、見たく、ないんだ」 お願い、やめて 「い、まだから、い、いうけど、さ」 そんな悲しい目で私を見ないで 「俺、さ、レティのこ、こと……」 彼が私にもたれかかる。 彼の呟きが途絶えた。 それが何を意味するのか。 私はそっと彼を彼の家の縁側に横たわらせた。 そして私は……憎しみに全てを委ねた。 「それで村は壊滅、まさにバッドエンド、というわけじゃないんでしょ?」 ほらつまらなそうな顔。 だから楽しい話じゃないって言ったのに。 「……まぁ、そう、ね」 「何よ歯切れの悪い」 幽香がさらにつまらなそうな顔をする。 仕方ないじゃない。 「いらない奴に貸しができちゃったから」 「あー何となく誰だかわかったわ。 ところでやっぱりその人間達は……」 そうであったなら私と○○は……おそらく一緒にはいないでしょうね。 「生きてるんじゃないかしら。おせっかいな連中が助けたと思うし」 ○○は教えてくれなかったけれど。 怒りと憎しみに身を任せた私は人を凍らせ、村を雪だけの世界に変えた。 しかし人間達を殺すまではしなかった。 怒りで我を忘れても、彼を忘れる事は出来なかったのかもしれない。 人間達の体のほとんどは凍らせても命だけは助けていた。 まぁ助けがなければ結局死んでいた事には変わらなかったとは思うけど。 「後はもう短い話よ、聞いておく?」 「ここからがクライマックスでしょ?聞いておきますわ最後までってね」 嫌な奴ね、本当に。 「お帰り、憂さ晴らしはどうだったかしら?」 「……何であなたがいるのよ」 「私、彼の友人ですもの」 「……助かるの?」 「えぇ、処置は施し済み。彼ならちゃんと戻ってくるでしょうね」 「そう、よかった……」 「あら、どこへ行くのかしら」 「……彼にはもう会えないわ」 「自分の気持ちくらいは伝えておきなさい、その後は知らないけど」 「…………」 何だろうか、気持ちがいい。 柔らかで、暖かくて、そして何より気持ちがいい。 俺はどうしたんだ?確かレティを庇って矢に撃たれて……もしかして死んだのだろうか? しかし何だろうか、誰かに抱きつかれているような…… 「む……むぅ?」 目を開くと天井が見える。 見覚えがあり過ぎるくらいだ、どうみても俺の家である。 つまり俺は……生きているのか? 「いっつ……ん?」 痛みに自分の体を見ると包帯が巻かれており、そして何より誰かに抱きつかれていた。 布団を捲るとそこには…… 「すぅ……すぅ……んんっ」 レティが寝ていた。 これはもしかしたら夢なんじゃないかと思うような類だ。 思い起こされる彼女と初めて会った時の事。 まるで焼き直しでもされているんじゃないかっていう状況である。 ただし俺がさらに重症っぽいのだが、いてて。 「ん……あっ○…○…」 レティが俺が起きたのに気がついたようで目を覚ました。 そして俺の顔を見て悲しみと嬉しさが入り混じったような顔をした。 「よかった!よかった……!」 ぎゅっとレティに抱き締められる。 一瞬びっくりしたが彼女が涙を流しているのを見て何も言わない事にした。 頑張れ俺の体、すっごく痛いけど気のせいだ。 「あ、ご、ごめんなさい」 「い、いや……」 抱きついている事にだろうか涙を流している事にだろうか俺の傷に関してだろうか。 お互いに顔を真っ赤にする状況となり、レティがそっと離れた。 それでもほぼ隣接距離、触れる事など容易い程だ。 「あーその、なんだ。何というべきか……告白、覚えちゃってるよなぁ?」 「……」 コクリと真っ赤な顔で頷かれた。 そりゃそうだろう、あんな状況だったのだ、覚えてない方がおかしいというものだ。 恥ずかしくて死んでしまう程に俺も真っ赤になってる事は確実である。 しかし、彼女の表情が急に曇った。 「○○、その、告白の返事だけど……」 「あ、あぁ」 「……私もあなたが好きです、だけど、私の事は忘れてください」 何故かと聞こうと思ったが瞼が急に重くなってきた。 何かの力か?でも、これじゃあ、これじゃあ彼、女、に…… 「あまり気持ちいいものじゃないわね」 「ありがとう八雲紫。これで、いいのよ。 私は彼を裏切ってしまったんだから……」 気がついた時には既に彼女はいなくなっていた。 傷が痛むのも構わずに俺は外に出て里を見に行った。 しかし、道中には何かが凍っていたような跡が点々としており、着いた村はまさに死に絶えていた。 雪と氷に覆われており、人が住める場所には既に無くなっていた。 もしかして、彼女はそれで…… 「安心なさい、ここに住んでた連中なら無事よ」 「ゆ、紫様!?何時冬眠からお目覚めに!?そ、それに○○じゃないか!?しかも何だこの光景は!?」 声に振り向くと悠然と八雲紫が立っており、八雲藍が気の毒な位に慌てふためいていた。 大方どこかで見ていたのだろう、そして何も言われずに連れてこられたのだろう、可哀相に。 「お前さんがどっかに神隠ししてくれたわけか」 「失礼ね、助けてくれたっていうのが正解よ」 それもそうだがまぁ挨拶のような物だ。 それは向こうもわかっているのは目を見ればわかった。 「……ありがとう。里の人間を救ってくれて」 「気まぐれよ、ただ単なるね。それよりも○○、勿論追うでしょ?」 どこまで出刃亀してやがったこの隙間妖怪。 とりあえず何が何だかわかってない八雲藍は悪いが今は放置させてもらう。 「追う前にこの里をどうにかしたい」 「大丈夫、スペシャリストを呼ばせてもらうわ」 そう言って隙間を開くとちゃぶ台で食事をしている青と白の髪をした女性が拉致されて来た。 「……!?な、なんだ!?私はさっきまで食事をしていたはずなのに!?」 後で謝っておこう。 見たところ誠実そうな人だし話せばわかる、気がする。 「さ、ここからはあなた次第。見事雪のお姫様を説得してごらんなさいな」 「悪い魔法使いめ、出刃亀はもうするなよな?」 ぱんっとお互いの手をタッチする。 本当に俺は、いい友人を持ったものだ…… 「まったく、あの時程の置いてきぼりは喰らった事が無かったぞ」 「いやぁすまない、まさかその後に教えてないとは思ってなかったんだ」 空はそろそろ夕方に差しかかろうとしているところだろうか。 青空を徐々に夕焼けが浸食を始めていた。 橙は未だに睡眠中である、寝る子は育つ、かね。 「そしてお前は彼女を探し出し、見事に口説き落としてきたわけか」 「言わないでくれ恥ずかしい。奴さんが覗き見してたら即座に首つりものだ」 約束はちゃんと果たしてくれた、と思いたい。 でもわからないから困る、えぇい隙間とは厄介な。 「その辺は聞かないでおくとするよ。むっ?もうこんな時間か」 「そろそろ旦那さん許してやれよ、何があったか知らないけど」 仕方ない、と彼女は笑顔で応えて橙を起こし、立ち上がった。 帰ったら仲直り、かねぇ。 「○○、これからも二人で頑張れよ。これは家族だった、いや家族としての応援だ」 「……ありがとう」 八雲藍は後ろ手でこちらに手を振りながら帰っていった。 さて、彼女がそろそろ帰ってくるかねぇ。 と言いつつも俺は縁側に座り、空を眺める。 頭はあの時の冬の終わり、彼女をようやく見つけた時の事を思い出していた。 忘れるはずがない、忘れられるはずがない。 俺と彼女の出発点を、忘れるわけがないじゃないか――― 「もう、冬も終わりね」 夢から覚めるように、冬も終わり春が来る。 今年の冬は本当に、最悪な終わり方をしてしまう。 私は逃げた、彼から逃げたのだ。 きっと今頃彼は私を探している。 あんな別れ方じゃ彼が納得しないのはわかっている。 けれど、私にはああいうしか、できなかったのだ。 彼が無事だった事の安堵、彼が私を好きだという嬉しさ、そして彼を裏切ってしまった罪。 そんな多彩な感情が私をどこまでも追い詰めた。 だから私は逃げた、彼から。 好きだと言っておきながら私は彼から逃げたのだ。 「……何年経てば忘れてくれるかな」 幻想郷は狭い。何時か会ってしまうかもしれない。 会いたい、会いたいけど会いたくない。 逃げた私に今更彼に会う資格なんてないもの。 彼がいなくなれば、うぅん、結局一生後悔する事になるのに変わりは無い。 私は……どうすればいいのだろうか。 でも運命っていうのは酷いもので。 「レティィィィィィィィィィィィィィ!!!」 「っ!?○○!?」 会いたくない人には会ってしまう、運命とは本当に酷いものだと思った。 私はこっちに走ってくる○○から反射的に走って逃げた。 今は会いたくない、会って彼の言葉を聞けば彼の優しさに全てを任せてしまう。 彼に、重しを与える事になるのだ。 彼も必死に追ってくる。 私も必死に逃げる、でも距離が離せない。 わかってる、彼に捕まえられたいのも。 けど、けど…! 「きゃっ!?」 木の幹に足を取られて転んでしまった。 気がつけばそこは、彼といつも会っていた場所だった。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!よーやく見つけた……」 息を切らせて○○が私に手を出してくる。 一瞬躊躇し、しかしもう逃げられないのだと悟った私は彼の手を取り、立ち上がる。 「レティ、俺は君を忘れることなんて到底できない」 私を真っすぐ○○は見ていた。 そこには純粋な私への思いがつまっていた。 「○○、でも私、あなたを裏切った。里の人間を……」 「里なら大丈夫だ、八雲紫と助っ人の人がなんとかしてくれた」 「でも…!」 「レティ、止められなかった俺にも非はあるんだ。 だから、俺は君を許す、そして俺を許して欲しいんだ」 「○○は悪くないわ、私が……それに私と一緒になったら冬以外の季節、あなたを待たせなきゃいけないのよ? 私は自分の好きな人にそんな思いをさせたくないの。だから……!?」 気がつけば私は○○に抱き締められていた。 あぁ……これが私が求めていた……暖かさ。 「レティ、俺には君が必要なんだ。 だからたとえ君が冬以外いなくったって待っていられる。 俺は君が好きなんだ、だからレティ、そんなに自分を責めないでくれ。 君は何も悪くない、俺が好きにやる事なんだから」 「○……○……」 私の心は彼への思いを抑える事が出来なくなった。 「○○……!!!」 ぎゅっと彼に抱きつく。 そして彼と強く口付けを交わした。 私と、そして何時の間にか泣いていた彼との涙でキスの味はとてもしょっぱかったけど、 私のファーストキスはとても忘れる事が出来ないようなものとなった。 「それで今のようにイチャイチャラブラブになるわけか」 「イチャイチャラブラブ言うな」 あー恥ずかしい。 やっぱり話すべきじゃなかったわ。 「いいじゃない。十分に熱々で」 「うぅぅぅぅ……」 今日はどうやら私の負けのようだ。 ふふん、と勝者のように振る舞う幽香を少し睨んでおく。 「もう帰るわ、さっきまでの話は他言無用よ?」 「しょうがない、今日はここまでにしておいてやるわ」 空は既に夕方になってきている。 家に着いたら夜の帳も訪れてきているかもしれないわね。 「幸せにやんなさいよレティ、友人として、少しくらいは見守ってあげるわよ?」 「冬の妖怪を寒がらせないでくれる?そっちこそとっとと相手を見つけなさいよ」 お互いに余計な世話だとあっかんべーをする。 確かに今となっては○○の言った通り私と幽香は友人同士。 全く、彼には敵わないなぁ。 「んー今日もいい天気だ」 銀世界となった幻想郷を歩く。 1年前とは暮らす場所も状況も変わった目まぐるしい程の生活であった。 しかしようやく落ち着き、俺は人里と妖怪の山の中間くらいに家を持つ事が出来た。 青と白の髪の女性、上白沢慧音には感謝している。 前にいた里の件、そして今の生活に至るまでに随分と世話になったものだ。 今度きちんとお礼をしなくてはな。 「さて、と。彼女は受け入れてくれるかねぇ」 俺の我儘を。 地下室を作り、そこで寝てくれなんて頼んで果たして大丈夫だろうか。 「何を受け入れてくれるって?」 「いやねぇ、冬以外は自分の家の地下で眠ってくれなんて普通頼めないよなぁってね」 ……あれ?誰と会話してるんだ俺は。 「あら素敵な提案ね。これで冬以外も○○が浮気してないか監視できるわね」 振り向けばそこには俺が待ってた妖怪がいた。 あぁ、まったく、かなわんなぁ…… 戸が開く音がした。 それでも俺は振り向かず、冬の星空を見ながら一杯飲んでいた。 そして足音が徐々に近づいて俺の後ろで止まった。 「ただいま、○○」 「おかえり、レティ」 俺達はそっと口付けを交わした。 そこに彼女が、俺が、いるという証の為に…… 新ろだ995 新ろだ2-069,2-112 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「うーん……」 まさかこんな事で悩む事になるとは思わなかった。 彼は今店頭で客商売をしている。 私はこうして中に戻ってうんうんと悩んでいる。 今までならばこんな事は無かった。 けれど意識してしまうとどうしょうもない。 どうやってバレンタイデ―のチョコレートを作り、彼に渡すか。 私の思考はその問題だけを今なお考え続けるのであった。 2月14日がバレンタインデーという日だと知ったのは4日前。 神無月旅行でどこからか情報を知ったのか、はたまた八雲紫からの差し金か。 烏天狗の新聞が届けられそこでそういうのがあるのだという事を知った。 曰く女性が好きな相手にチョコを送る日である、と。 彼と朝食を食べている時に届いたのでそれが真実かどうか聞いてみた。 「んー…まぁそういう日でもあるっていえばあるかなぁ。 でも親しい人間、同僚とかに上げるのが大体だと思うが」 一応正しいようね。 と、なれば。 「私もやっぱり……送らないといけないわよね……」 別に天狗の新聞に乗ってあげるつもりじゃない。 14日がそういう日だっていうのを知ったらやらないといけないだけよ。 だって好きな人にチョコを送る日なんでしょ? だったら渡さなきゃ、○○に。 でもこういうのは当日まで○○には知られたくはない。 故に困ってしまった。どうやって彼に渡すチョコレートを作るかを。 今は12日、そろそろどうにかしないといけないのに…… 「んー……あ、そうだ」 このアイス屋に来ている客に料理に精通しているのがいるじゃない。 そこに頼めば一緒にやってくれるんじゃないかしら、向こうも送る相手いるとは思うし。 となれば善は急げ、今から交渉に行ってこようかしら。 「ふぅ……ん?出かけるのか」 支度を始めた私を戻ってきた○○が見つけてきた。 「うん、ちょっと出かけてくるわ。 帰りはたぶん遅くならないと思うわ」 そして彼の前に立つ。 出かける前のいつもの事。 私の肩に彼の手が置かれ、そしてその後彼の首に両手を回す。 「ん……」 そして口付けを交わす。 しかしあくまで軽く交わすだけでお互いに離れる。 お互い恥ずかしがり屋なのもあるけど……彼が言ってた事だけど求めたら我慢できなくなるもの。 彼よりも我慢できなくなる事が多い私はこれが限界。 彼をこれ以上求めたらどこまでも、どちらかの限界が来るまで求めてしまう。 だから最低限これだけでお互いに止まる。 それに誰かに来られたら困るじゃない、見られる趣味なんてないわ。 私は彼が好きだ、どうしょうもない程に。 彼もそうであってほしいと思う、私をどうしょうもない程に好きになってほしい。 我儘……なんでしょうね。 「?どうかしたレティ」 あ、考え過ぎてたわね。 キスの余韻を感じながらも私は彼の横を通り過ぎる。 「ちょっと余韻に浸ってただけ、よ」 ほら赤くなった。そして言ってる自分も。 頬を掻きながら困ってる彼が可愛い、これは私だけが見れる特権ね。 「……かなわんなぁ」 「うふふふ、それじゃあいってくるわね」 後ろ手で手を振りながら私は家を出た。 彼は今頃溜息でもついてくるかしら。 気分を一転させていざ紅魔館へ。 彼が喜んでくれる物を作れると、いいなぁ… 「と、いうわけでこんにちわ。メイド長いるかしら」 「と、いうわけでこんにちわ。どういったご用件でしょうか」 ここにはパーティに招かれて何度か来たけれど青空の下でもこの館の紅は浮いてるわよねぇ。 その門の前で真面目ーに立っている門番の前に降り、メイド長がいるかどうか聞く事にした。 たぶん中にはいると思うんだけど…… 「ちょっと頼みごとをしたいのよ」 「はぁ……今すぐじゃないと駄目ですか?」 「なるべくなら」 「んーーーじゃあしばらくお待「何か私に用かしら?」 あら早い。 時間を止めて来たのだろう、何時の間にか門番の横にメイド長が立っていた。 ほんと便利ねその能力。 「う、うわぁ!?さ、咲夜さぁん…時間を止めて来るのはやめてくださいって言ったじゃないですかぁ!」 「あなたがサボってなければ問題ないでしょ?それで何か用かしら。氷なら今はまだ大丈夫よ」 ○○はアイス屋としてアイスクリームと氷を売っている。 その常連客としてこのメイド長がいる。 たぶんこの館の食糧保存とかに使ってると思うけど。 「ちょっと……チョコレートの作り方を教えてほしいのよ」 その言葉に門番もメイド長も何事か理解したようであった。 家に天狗の新聞が来たって事はここに来てないはずがないものねぇ。 「なるほど、教えてもらうわけにもいかないわよねぇ、冬の旦那さんには」 家のメニューにチョコレートアイスはある。 でもチョコに関して今○○に聞くわけにはいかない。 今聞けばばれちゃうわけだから、ね。 「そういう事。というわけで教えてくれないかしら」 ふむ、とメイド長が思案する。 やがて嬉しそうな顔をし、 「えぇいいわ。極上のチョコを教えてあげる」 (チョコ作りは咲夜さんによって時間をすっとばされました) そして当日。 お客の中にはやはりチョコアイスを頼む客、というよりはカップルがちらほら。 なんとも甘ったるい事だけど目の前でイチャつくのだけは止めてほしいのよね。 「うーむ、さすがにこの日はカップルが来てくれるなぁ。 冬の中じゃありがたく売れるからあまり困らない……が、イチャつくのは帰ってからにしてもらいたいものだ」 ○○も同じことを考えていた。 けど…今は少しだけ許せるかもしれない。 私の部屋にまだチョコは置いてある。 メイド長に習いながら作ったチョコレートケーキ。 私の冷気でちゃんと保存してあるから問題はない、はず。 後は渡すタイミングだけど……今は仕事中だから駄目よね。 やっぱり夜かなぁ…… 「どうかした?レティ」 「ん?あぁ何でもないわ、ちょっと店の前のテーブルとか椅子とかをどかしたくなっただけ」 それは俺もしたい、と○○は返してきた。 勿論言うだけでやらないけど。 勝負は夜、○○が美味しいって言ってくれるといいのだけど……大丈夫かしら。 自分がこんなに弱いなんて思わなかった。 ○○の反応を考えて一喜一憂してる自分がいる。 けれど一人だった時には考えられないほどの幸せを今私は感じている。 ありがとう○○、私に愛を教えてくれて ありがとう○○、私に幸せを教えてくれて だから私はこの気持ちをチョコにこめてあなたに差し上げます。 その時を今か今かと私は仕事をしながら待つのであった。 もう外のカップルが気にならないほどに。 「ね、ねぇ○○。ちょ、ちょっと渡したいものがあ、あるの」 夜、夕食もお風呂も終えて彼の部屋に入る。 彼は今日の売上を集計している最中だったようだ。 「ん?渡したいもの?……まさか」 彼がこちらを驚きの表情で見た。 そして後ろ手で隠してた物を私は前に出す。 ○○を思いながら作ったチョコレートケーキを。 緊張のあまり私は顔を俯き彼の顔が見れなくなった。 彼は私のケーキを受け取り、リビングに戻った、何も言わずに私の横を通り過ぎて。 慌てて彼の後を追うと既に彼はチョコレートケーキをテーブルに置き、皿とフォーク、ナイフを台所から持ってきていた。 適当なサイズに切り、それを皿の上に。 「……」 「……」 お互い無言。 彼がケーキを食べ始めた。 「ど、どう?美味しい?」 彼は何も言わない。 しかし彼のフォークは止まらない。 そして切った一片は直ぐに無くなった。 不意に彼が私の方を向いたかと思ったら抱き締められていた。 そしてさらに口付けをも…… 「んん!?……ん……ちゅ……んんっ」 驚いて反応が出来ない私をまったく意に返さずと言わんばかりに彼は侵攻してくる。 只管に私を求めてくる。甘いチョコレートケーキの味がした。 普段なら私が求めているというのに今日は違った。 彼が私を無我夢中に求めてくる。それがたまらなく嬉しかった。 「ぷはっ……すまない、気持ちが抑えられなかった」 「……いいの、○○が私を求めてくれたのが嬉しいから」 「ケーキ、美味しいよ。今までで一番のチョコレートケーキだ。 ……そしてたまらないほどにレティが欲しくなった」 彼の目が私を捕えて離さない。 私はそれに応える意味合いでそっと彼の頭に手を回す。 彼の目が嬉しそうに細まり、そして彼の顔がまた接近して…… (ここから先はまたも咲夜さんによって時間をすっとばされました) 「……うーむ」 深夜、ベッドの上に座り彼は唸っていた。 どうしたのかと尋ねると 「いや、ここまで前後不覚になるなんて、と思ってね。 それ程参っちゃう威力はあったけど……」 困った顔をして頬をかく彼の手を取り、腕枕として頭に敷く。 それだけで彼は理解してくれた。 私を抱き締めるようにして一緒の布団に入る。 「おやすみ、レティ」 「おやすみ、○○」 今日はいい夢が見れそうだわ。 新ろだ1013 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ぬぅ……困ったものだ」 店頭で悩むわけにもいかず(決して客が来ないわけではない、断じて違う) こうして家側に戻りあれやこれやと考えているが中々にいいアイディアが浮かばない。 幸いレティは出かけている。 別にアイスの新商品で悩んでいるわけではない、今年の春はブンタンのアイスで勝負は決定されている。 別に春雪異変で大変な目にあったからではない、でも頼むから本気で俺とレティを退治しにこないでほしい。 では何か、カレンダーを見れば世の男性は理解するであろう。 3月12日、ホワイトデーが迫っているのである…… 「どうしたものか、やはり手作りには手作りで返すのが礼だろうなぁ…… しかし何を渡せばいいのか……向こうでは何を返していたのかさっぱりわからん」 外の世界でもホワイトデーはあった、むしろこちらが本来あるべき場所ではある。 しかしそもそもバレンタインデーでチョコを貰ったことがない俺がホワイトデーに興味があろうはずがない。 チョコを返すべきなのだろうかそれとも他の物を返すべきなのか。 「さっぱりわからん……こういう時くらいあの困った奴が助言でもしに来てくれないものか」 いやその考えは浅はか過ぎる。 何を代わりに要求されるかたまったものではない。 しかたない、あまり行きたくはないが人里で情報収集でも…… 「あら、困った奴って誰の事かしら?」 …………背後から今まさに聞きたくない声がしたが気のせいにしておこう。 「あら、無視とは酷いじゃない。せっかく教えてあげようというのに」 はぁっ、まったくもう……タイミングがいいのか悪いのか。 俺は振り向き、そして自分の耳が正常で無い事を祈った。 しかしそこにいたのはやっぱり困った奴だった。 「はいはいわかったわかった、とりあえず紅茶出してやるからスキマから出ろ」 スキマから上半身だけ出して優雅にこちらを見つめる八雲紫がいたのであった。 こいつは地獄耳か、もしくは俺の事監視でもしてるんじゃないのかと思う。 「んーやっぱり○○の紅茶は美味しいわねぇ」 「ふむふむ、成程、キャンディがよく渡されるのか」 とりあえず紅茶と茶菓子を出すと外の本を渡された。 ホワイトデー特集と書かれた本は外の代物、よくホワイトデーで渡すもの第一位はキャンディとあった。 ……よし、決めた。 「あら、じゃあ楽しみにしておこうかしら」 「待て、お前から貰ってないぞ」 「今渡せば14日に貰えるかしら?」 「彼氏から貰え」 「ぶぅ、○○が最近けちになったわー」 「困った奴に対する当然の対応だと思うんだがな」 ふくれっ面のまま八雲紫が立ち上がる。 どうやら帰るようだ。 「彼女、楽しみでしょうね」 「お前もだろ」 違いないわね、と微笑み、スキマで八雲紫は帰っていった。 おそらく他のカップルやら夫婦やらの片割れも緊張してるか楽しみにしながら14日を待つのだろう。 男達は自分の愛する女に感謝と愛を込めて送るのだろう。 俺もその一人である、故に自分の全力を出さねば、な。 「よし……やるか!」 自分の頬を一度バチンと叩き、厨房へと向かう……前に店先に準備中の札を置いた。 春雪異変くらいから客足が遠のいた気がするのが最近の悩みである。 いや、まぁ雪はレティが原因という意味じゃ自業自得だけどさ…… 少しだけ、夏が早く来ないかぁとか思った。 まだ春になったばかりではあるんだがな。 3月14日、当日である。 客足は多少回復の兆しを見せてくれた。 尤も店先で一つのアイスをダシにイチャつかれても困るわけだが。 そしてホワイトデーということでアイスキャンディを新たに出してみたりもした。 本来ならば夏場のものではあるのだがキャンディ繋がりで出してみたが中々の売り上げである。 だが頼むから一本のアイスキャンディを店先で舐め合わないでくれ、営業妨害で訴えるぞ。 「……」(その光景を赤い顔しながらも羨ましそうな目で見るレティ) ……頼むからうちのお嬢様に影響を及ぼさないでくれ。理性が大変な事になる。 「うむ、集計終わりと」 「お疲れ様」 売り上げ計算を終えるとレティがアイスティーを持って来てくれた。 ふぅ…冷たい飲み物は疲れを癒してくれる。 「ありがとう。ホワイトデー効果のおかげか中々の売り上げだな」 「そ、そう…」 ホワイトデーという言葉にレティが少し反応した。 あー…やっぱり楽しみにしていてくれたんだな。 今日今になるまでそういうのを彼女は全く示さなかった。 俺が忘れている、という考えは無かったはずである。 ホワイトデーで出す物などは彼女に喋ったので俺がホワイトデーを忘れてないんだというのはわかっていたはずである。 しかし何も彼女は俺にそういう事は言わなかったし態度にも出さなかった。 信じていてくれたのであろう、俺がレティに渡すのを。 だから今の今まで変わらずに待っていてくれた。 仕事が終わり、そろそろ待ちきれなくなってきた、といったところなのかもしれない。 「……レティ」 「な、なに?」 懐から小さな袋を取り出す。 「ホ、ホワイトデーだ。アイス屋としてはアイスキャンディを渡そうかと思ったが…… 商品と同じ様な物を出すのはなんというか、微妙に感じたので普通のキャンディにさせてもらった。 一応桜のキャンディだ、味は……まぁ大丈夫だとは思う」 作り方は知ってはいたが作るのは実は初めてだったりする。 少し緊張しながらも彼女に渡す。 彼女は大事そうに両手でそれを受け取ってくれた。 「ありがとう、とっても嬉しいわ。 そうだ、今食べてもいいんでしょ?」 「あ、あぁ、構わんぞ」 少し恥ずかしいのでそっぽを向く。 彼女は袋から一つ取り出し、口の中に入れた。 「……うん、とっても美味しい」 「そいつはよかった……」 彼女の美味しいの言葉に肩の荷が下りたような感じがした。 「ねぇ○○、実はやってみたい事があるの」 そして彼女は唐突にそんな事を言ってきた。 「やってみたい事?いったいなん……んむっ!?」 返事をしようとレティの方を向くと彼女の顔が眼前に迫っていた。 そして一瞬にして抱き締められ、キスをされていた。 おまけに彼女の舌は俺の口の中にキャンディを入れてくる始末。 昼間のバカップルのような事を思い出した、やりたかった事とはこれか! 「ん…ちゅっ、んんっ」 そして俺の舌とキャンディを味わうように舌を交わしてくる。 彼女の目を見れば情欲に彩られているのがわかる。 応えて欲しい、そう言っているのがわかる。 俺はそんな彼女の望みに応える。 嬉しそうに彼女の目が少し細まった。 結局キャンディを全部こうされたおかげで顎と舌が結構痛くなってしまった。 まぁ幸せそうに横で寝ているレティを見ているとまぁいいか、と思ってしまうのだから困る。 レティの頭を抱くと俺の胸に納まるようにして寄り添ってくる。 「おやすみ、レティ」 「おやすみ○○」 やっぱり起きていたのかなんて無粋な事は言わずに眠りにつく事にした。 今日も、お互いにいい夢が見れますように…… 新ろだ2-038 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/akbdata/pages/1376.html
https //ja.wikipedia.org/wiki/す、好きじゃない!
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/58067.html
【検索用 まほうしゃないけと 登録タグ 2023年 Synthesizer V いちた ま 曲 曲ま 重音テト】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:いちた 作曲:いちた 編曲:いちた 唄:重音テトSV 曲紹介 2023/10/10 テトの日おめでとう! 曲名:『魔法じゃないけど』(まほうじゃないけど) いちた氏の19作目 テトの日2023参加作品 歌詞 (動画より書き起こし) トっテもトっテも掬えないんだから 涙で枯れた蕾でも 誰も聞かない音楽も 心は確かにそこには在る筈だからね 誰かの言えない気持ちも 誰にも解けないナゾナゾも 答えは見つからないのかもね 驚天動地の大事件なんて言うなよ 夢のポケットで君が作んだよ 切っても切っても千切れない魔法のロープなんて無いけど 星(てん)と星(てん)を結んで何に見えるかなんて言うけど 真っ新に駆け出して 人に笑われ転び詰まっちまっても 笑い話でおしまいさ 空っぽなままの人生なんてどうなったっていい もうどうにも止められないようです 相当にもう止められないようです コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/2725.html
173 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 15 16 44 ID ??? 休日の大切な時間で思い出した。 2年前の話なんだけど、6時間で終了予定のオンセの募集があったんだ。 でも、実際は15時間近くかけやがるの。 初日6時間+翌週7時間+次の日2時間 もう、最後の方だれちゃって消化試合さ。 あのセッションは本当に辛かった。 セッション終了後に導入はハンドアウトを使えば時間短縮できたんじゃないですかってアドバイスがでたんだ。 そしたらさ、予定調和は好きじゃないんですよ だぜ? 予定時間の2倍もかけてセッションする人の言うことじゃないよな。 ちなみに、オンセ三倍則を知らん人じゃないらしい。 僕のサイトでは~って話をして言い訳をしてたから。 オンセ歴5年以上とか言ってたけど、内輪で過ごした経験ほどあてにならんものはないね。 スレ163
https://w.atwiki.jp/jezemalu/pages/15.html
もしかして、1時間くらい余らせることができるかも。 となるともう1つの仕事もどうにか外出前に終わらせることができちゃうかもしれない。 本当は7月の仕事の予定とか立てたいところなんだけど、それはちょっと無理そうなので、仕方ないからまぁ・・・あれですね。w とりあえず、面倒だけど、それは明日か今日の夜で。 それでもって・・・今日出かけるんだけど、明日発売のCDが並ぶのって夕方だっけ? ってことは今日の昼過ぎではダメ? FBのアルバム欲しいんだけど・・・ダメかな?って思っているんだけど、どうですかね? っていうかまだ収録曲に関しても知らない状態なんだけど。 最近好きじゃないの・って言われたらそれは全く違うんですが、その辺まで情報を細かく調べていないんですよね。w