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anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) anko2154 夏のゆっくり山守さん(後編) anko2193 夏のゆっくり山歩き
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『夏のゆっくりと青年』 7KB 愛で 制裁 希少種 二作品目 『夏のゆっくりと青年』 ゲス 希少種 人間 前作 「駄目でいぶ」 誤植があると思う 二回目 駄文 季節は夏、人間にとっては、山、海、など夏休みで子供達は大はしゃぎ だがゆっくりにとっては冬とならんで鬼畜な季節 そしてここは町の公園の隅っこにあるダンボールの中 天気は雨のち晴れ・・・・・ 「ザァァァァァァァァァァァァ!!」 「ゆぅ・・・あめさんなのぜ・・・・」 「あめさんはゆっくりやんでね!!れいむたちがゆっくりできないよ!!」 「「ゆっきゅちやんでぇにぇ!!」」「ピカッ!!」←雷 「「「「ゆひぃ!!」」」」 「ピシャア!!」 「「ゆっぎゃああっ!!」」 「「ゆんやぁああぁぁあぁぁぁ」」 「ゆぇぇぇぇん!ゆぇぇぇぇぇぇん!きょわいょぉぉぉぉぉ!!」 「ゆぅ・・・おちびちゃんゆっくりなきやんでね・・・」 「ゆえぇぇぇぇん!ゆぇぇぇぇん!」 ダンボールの中にいるのはおなじみの、れいむ、まりさ、れいみゅ、まりちゃ、の四体 数十分後、雨が止んだ、本当に恐ろしいのはここからだった、 「ゆゆ~ん!!あめさんがやんだのぜ!」 「まりさぁ・・・でも・・・みずたまりさんが・・」 公園は水溜りがいっぱいあり、狩り(笑)に行けるような時間はなかった [[みじゅたゃまりしゃんはゆっくちちないでどいてにぇ!!」 「しかたないのぜ、きょうはぷれいすさんでゆっくりするのぜ・・・」 「ゆぅ・・」 ー翌日ー 12時23分 晴れ、しかも猛暑 「れいむ!ゆっくりしていってね!」 「おはようまりさ!!ゆっくりしていってね!!」 「「しゅーや・・しゅーや」」 「「ゆっゆーん!!!おちびちゃんかわいいよぉ!!」」 「れいむ!そろそろかりにいってくるのぜ!」 「ゆゆっ!まりさいってらっしゃーい!!」 手を振るようにもみあげをぴこぴこして、まりさを見送る (なんかきょうはあついあついのぜ?なんでだぜ?) 秋に産まれたまりさは夏というものを知らなかった 公園の出入り口の先、車が一台通れそうな道路に差し掛かった瞬間 「ジュッ!!」「ゆっ?」 「あっつ!あっつ!あんよがあっついのぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 近くにあった壁の影にあんよを休めた 「じめんさんがあっちっちなのぜ!なんでだぜ?じめんさんはいじわるしないでね!!」し~~~~ん 地面からは何の反応もない 「だまってないでなんとかいってね!!」し~~~~~~ん 「ゆぅ・・でもここはすずしいのぜ、でもこれじゃあかりにいけないのぜ」 「でもそんなことはいってられないのぜ!!」 「ジュウゥ!!」 「あっちぃのぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ジュ!「ゆぎゃああああ!!」 そして狩場(笑)に着いたまりさ 「ゆひぃ・・・ゆひぃ・・・なんでだぜ・・・」 「じめんさんはいじわるするし!のどさんはからからだし・・」 「あだいぃぃぃ・・・」 夏場は節水などで水がでない、ゆっくりじゃあ蛇口に届かない、届いても回せない 噴水も止まっている 人の店を襲おうとも春に一斉駆除が何回もあったため人間に関わるとどうなるかは分かっている 「ゆひぃ・・のどがからからなのぜぇぇぇぇぇぇぇ」 力のない声で叫ぶまりさ タッタッタッタッ 「やったんだよー、おみずさんがてにはいったんだよー」 ペットボトルの中には水が入っていた、多分、昨日降った雨の水 ゆっくりのプラセボ効果で中に入ってるのが雨水でもただの水を飲んでることになる ※ちなみにゆっくりは雨で溶ける 「おみずさんをたすのぜぇぇぇぇ、そこのちぇん」 「まりさなんだねー、でもゆずれないんだよーこれはらんしゃ(ry「うるさいのぜぇぇぇええ!!」 ズンッ!!「に゛ゃ゛ぁ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛゛!?」 水を求めていたまりさは狂ったようにちぇんをせいっさい!!した 「ゆぅぅぅ、やっとおみずさんがごくごくできるのぜぇぇ」 「あだい゛っだらざい゛あぐねえ゛」 「ゆっ?」 ペットボトルには何もなかった 「なんでおみずさんがないのぜええぇぇぇぇぇええ!」 まりさがちぇんを潰したときペットボトルが逆さになり水がとびちった 「ゆぅ・・・もううごけないのぜぇぇぇ「そこのゆっくり、大丈夫か!!」 オレンジジュースと氷と水を持ってる青年が走って来た 「ゆぅ?にんげんざぁん?」 まりさは青年が持ってる物に気づいた 「ゆっ!おれんじじゅーすざぁん!おにざぁんはやくおれんじじゅうーすさんをちょうだいねぇ゛!たくさんでいいのぜ゛!、ゆっ? 青年が見ていたのはまりさではなかった 「あだい゛い゛」 「待ってろ、すぐ助けてやるからな!」 「ゆっ?ゆっ?」 青年が助けたのはまりさではなく近くに居たちるのだった 通常種は ちるの、めーりんなどを自分より下だと思っている そのためちるのやめーりんを見つけると石ぶつけたり罵声を浴びせる (なんでまりさより、あんなゆっくりできないばかちるのをたすけるのぜ?) 「 ほら、オレンジジュースだ」「あたいぃあたいぃ」 (あのにんげんさんはばかなのかぜ?ちるのばかがうつったのぜ?) 「中身が結構出てるな」そう言い氷をちるのに食べさせる青年「あたい!」 (なんでこんなにかわいそうなまりさをたすけないのぜぇぇ、くそにんげん!) いつしか家族にやさしかった(笑)まりさの口調はかわっていた 「ほら水を。「ゆっがあぁあぁあああぁぁぁぁああ!!」 最後の力を振絞ったようにまりさは青年に飛び掛った っと言ってもボロボロのまりさには大きい声を出すのが精一杯だった 「どぼじで!どぼじで!まりざをだずげな゛いの゛おおおおお゛おお゛゛お!!」 「どぼじでゆっくりできないばかちるのをたすけるのぉぉぉぉおぉおお゛おお゛お゛!!」 「ぞんなやつほっといではや゛くばりざをだずげろおおぉおおおおおお!!」 狂うようにまりさが叫ぶ 「知るか、テメーの命なんてどーでもいーんだよ!!喋んな!さっさと消え失せろ!ゴミ饅頭!」 青年がまりさを踏む「ゆぎっ!!」 「どうじでぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ばりざだっでい゛ぎでるん゛だよ゛お゛お゛お゛、ばりざっだっで!ばりざだっで! いぎでるんだよ゛お゛お゛お゛お!かげがえ゛のな゛い゛いのぢな゛んだよ゛!!」 この言葉を言い切った瞬間まりさはニヤけていた、どうせ勝ったと思っていたのだろう 「あ?お前さっきちぇん潰してたよなぁ!!お前がそんな事言える立場かぁ!?おい!」 「ゆぐっ!!ま、まりさ゛、ぞんな゛ごとじでないよ゛、」 「見てたんだよ、ちぇんが見つけた水を自分が飲みたいからってせいっさい!!してたのをよぉ!! この青年ちぇんとまりさが水を欲しがり渡さなかったちぇんを潰した そしてその近くにちるのが永遠にゆっくりしかけていたから近くのコンビ二まで急いで走った 「ゆ゛ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぅ゛ぅ゛ぅ゛」 「どうした、言い返せないか?ちるの以下のまるきゅーまりさ」 「ゆっがあああああああああああああああああ!!」 「じゃあ゛!じゃ゛あ!な゛ん゛で!あ゛ん゛な゛!ばがぢる゛の゛を゛だずげだあ゛あ゛あ゛゛あ゛あ゛ぁぁ」゛ 「だってさぁ俺ちるの好きだし」 「ゆっ゛!?」 「お前らゲス野良って「あまあまよこせ」「くそどれい」「はやくたすけろ」しか言わないじゃん」 「そんなら、めーりんとかみょんとかもみじとかちるのとかれてぃ、ゆゆことかそういうのが俺好きなんだよ」 「だからお前は嫌いなのりきゃいできりゅ?」 「ぞんな゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あもっ゛どゆ゛っ゛ぐじ」 「じだがっd「グチャ」 「あーあもう終わりか」 「あたい!あたい!」 「どうした?こっちに来て?」 「いっしょにゆっくりしたいのか」 「あたい!!!!」 「分かったよ、お兄さんについて来い」 「あたいさいきょーーー!!」二人は笑いながら帰っていった 一方その頃 「ゆぅ・・・まりさゆっくりしすぎだよ・・・」 「おにゃきしゅいたのじぇええええぇぇぇえぇぇぇ!!」 「ごはんしゃんんんんんんんん、ゆええええええええん!!」 「おちびちゃん!」 「ゆっ?」 「どうちたのおきゃーしゃん」 「れいむはゆっくりまりさをさがしにいってくるよ!!」 「おちびちゃんはゆっくりぷれいすでゆっくりまってててね!!」 「おきゃぁぁぁぁぁぁしゃぁぁぁぁん」 「ゆぇぇぇぇぇぇぇんごはしゃんんんんんん」 バサッ!! 「うー☆うー☆」 れみりゃ捕食種一匹であり、六時に行動を開始 夏場は六時も明るいのでれみりゃが大半の野良ゆがれみりゃで永遠にゆっくりする 「「「れみりゃだあああああああああああああああああああ」」」 「れいむはゆっくりにげ「ジュ!!」あっづ!!あんy「ガシッ!!」うー☆ 「ゆぎゃあああああああああああああああああ」 「ゆんやあああああああああああああああああきょわいよおおおおおおおお!!」 うー☆うー☆ ガシッ!! 「「ゆっぴゃあああああああああああああああああああああああ」」 明日そこにはれみりゃが食い漁った後があった 完 あとがき 前作が自信なかったのでもう一個作ってみました あとちるのかわいいよちるの
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・駄文長文注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。そしてガチのHENTAIです。 ・それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。 ・重要:おまんじゅうあきさん、HENTAIあきさんリスペクト。でもごめんなさい。 *** 「ん~、ゆっくり狩りなんて久しぶりねー!」 夏の日差しの中、ゆかりん姉ちゃんが大きく伸びをした。 いつもの紫のドレスに白の長手袋。 そして今日は白い日傘をさしている。 「ねえ、ゆかりん姉ちゃん。それどう見ても山に入る格好じゃないよね?」 「いいのよ。私は弟ちゃんに付いてスキマ移動するだけだから」 「南無三っ! 最初から楽する気満々なのは良くないと思いますよっ!?」 「こぼね~。ひじり様、気にしてもしょうがないですよ~。それがゆかり様ですから~」 「……ゆゆ、さりげなく酷いこと言ってない?」 「ゆかりん姉ちゃんこそ、少しは自分の所行を顧みようよ」 その横にいるのはひじり姉とゆゆ先生。 ふたりとも格好はいつも通りだが、流石に足にはトレッキングブーツを履いているし、頭にお飾りのないひじり姉は麦藁帽子をかぶっている。 「なによぉ~? そんなこと言うなら、弟ちゃんのゆっくり袋運んであげないんだからね?」 「スキマって便利だよねっ、ゆかりん姉ちゃん最高!」 「弟さん……」 「弟様ぁ……」 「だってゆっくり袋運ぶのマジで大変なんだよ!?」 ゆっくりが詰まっているだけあって、ひと袋50キロ前後あるし! 生け捕りだから中で動いて運びにくいし! 「それも修行です……と言いたいところですが、少しくらい私が運んであげますよっ!」 「私がゆっくり使って運んであげてもいいのよ~?」 「やめてよふたりとも! そんなことされたら、私が弟ちゃんの側でべたべた出来なくなっちゃうじゃない!」 「「べたべたさせない為に言ってるんです!!」」 「ゆがーん!?」 「いやゆかりん姉ちゃん、ばあちゃんの山なんだし、少しは自重しようよ……」 ショックを受けるゆかりん姉ちゃんに、俺はそっと突っ込んだ。 そもそも俺達が何故ばあちゃんの山にいるかと言うと、うちの村の名物のひとつ、夏巣立ちのゆっくりを捕まえる為だ。 この季節。春に生まれ、梅雨を乗り越えた赤ゆっくり達は、夏がもたらす豊富な餌によって亜成体にまで成長する。 そして、この地域では8月に入ると一斉に亜成体ゆっくりは巣立ちしていくのだ。 その主な理由は三つ。 夏であり、狩りの腕が未熟な亜成体でも十分な餌が取れること。 秋の越冬準備前に縄張りを決められ、その間に番を探せること。 そして、子ゆっくりの成長で巣の中が手狭になり、暑気に当てられたゆっくり達が余裕のある巣穴を希求しだすことが挙げられる。 その結果、この時期の山は、巣立ちしたばかりの亜成体ゆっくりがあちこちで跳ね回ることになるのだった。 赤ゆっくりよりは引き締まり、しかし生体ゆっくり程には固くない独特な食感の皮。 豊富な栄養によって太り、かつ程よく苦労を味わって深みを増した餡。 その味はさる著名な食通をも唸らせた程であり、それゆえにこの村の夏巣立ちゆっくりは貴重な天然食材として珍重されている。 特に、ばあちゃんの山のゆっくりは限りなく自然のままに飼育されていることもあって、質が高いと評判だった。 まあ、ぶっちゃけた話。 狩りを手伝うと結構いい小遣い稼ぎになるのだ、これが。 「なによなによっ!? そんなに私だけべたべたするのが駄目なら、ゆゆとひじりも一緒にべたべたすればいいじゃない!」 「「それでいいなら喜んで!」」 「2秒で懐柔されちゃ駄目でしょおおおおおおぉ!?」 さくっと意気投合しかけた三人に、今度は全力で突っ込む。 なんだその『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』理論はっ!? 「そもそも今日は村の人と班分けするから一緒に回れるかも判らないんだよ!? つか俺なら絶対別々にするから、自重しようよ三人とも!」 「え~?」 「こぼね~?」 「南無三~?」 「揃ってぼやかない! あとひじり姉は南無三の使い方おかしいから!」 スキマを使って捕まえたゆっくりを運べるゆかりん姉ちゃん。 中枢餡を破壊したゆっくりを使役できるゆゆ先生。 そもそも体力が羆並みなひじり姉。 山でのゆっくり狩りで一番重労働な、ゆっくりを詰めた袋を運ぶことに長けている三人をひとつところに固める理由はない。 村のみんなに声をかけて応援を頼んでいるのだから、輸送力も含めて能力が均等になるよう班分けするのは当然だ。 そして経験上、ゆかりん姉ちゃんは俺と同じ班に回される。 別の班にしても、どうせスキマ移動で俺にちょっかいかけに来るのが判っているから。 だからここは、ひじり姉とゆゆ先生には涙を呑んでもらうしかないのだ。 決して俺が楽をしたいからではない。班決めは俺ノータッチだし。 「なにを騒いでいるのよ……」 「はははっ! 相変わらず弟殿のところは賑やかだな!」 「あ、えーりん姉さんにかなこさん。班分けは決まった?」 そう。班決めでゆっくりを振り分けているのは、本部詰めのえーりん姉さんと、ばあちゃん監督のもと全体の指揮を執るかなこさんなのだ。 決して俺を贔屓したりはしないふたりだが、ゆかりん姉ちゃんの性格と行動を考えれば俺と同じ班にするしかないのである。 まあ……その結果、大抵俺とゆかりん姉ちゃんの班は他の面子が戦力外になるんだけども。 「ええ、決まったわよ。ゆゆことひじりは弟君とは別の班ね」 「南無三っ? えーりん姉さん、今年も別なんですかっ?」 「こぼね~。残念です~」 「ゆゆこは仕方ないでしょ。今年も学校の児童達が来てるんだから。叔母様ひとりに引率させるつもり?」 「こぼね~」 赤と青、いつものナース服っぽい衣装の上から白衣を羽織り、何故か眼鏡をかけたえーりん姉さんがゆゆ先生を諭す。 ま、夏休みの自由研究で、村の名産品である夏巣立ちのゆっくり狩りに参加する子供は毎年いるからな。 ゆゆ先生も叔母さんの飼いゆっくりである以上、叔母さんと同じ班……つまりは児童の引率役として割り振られるのは仕方がない。 「ひじりは母さんと同じ班に入って」 「南無……はい、判りました」 もちろん孫の俺が駆り出されているのだから、娘である母さんも当然駆り出されている。 一緒に野良仕事をしているひじり姉はそこに入ることが多い。 「ということは……今年も私は弟ちゃんと一緒ねっ?」 日傘をくるくる回し、ゆかりん姉ちゃんが笑みを浮かべる。 「……そういう事になるわね。いい? 弟君の邪魔しないで、ちゃんと働くのよ?」 「判ってるわよ姉さん、今年も私と弟ちゃんが一番になってみせるわ」 「ははっ、さすがは三年連続の捕獲量トップ班だな! 今年も期待しているぞ?」 「ゆっかり任せなさい!」 「かなこ、この子をあまり煽らないで……すぐ調子に乗るんだから」 「なに、ゆかりは少し調子に乗って生意気なくらいがいいのさ。その方が私も張り合いがでる」 「指揮する人間が張り合ってどうするのよ……」 ゆかりん姉ちゃんとかなこさんの会話に、えーりん姉さんがそっとこめかみを押さえる。 長女は大変だね、姉さん。 末っ子の俺が言うのもなんだけど。 ちなみに、元が保護ゆっくりだった姉さん達の年齢は厳密には不明だ。 なにしろ生年がいつかも正確には判らないのだから。 ただ……母さんやばあちゃんに拾われた時はみんな子ゆっくりだったので、登録票には拾われた歳が生年として記されている。 その順番で言うと、えーりん姉さんが長女、かなこさんとゆかりん姉ちゃんが同い年で二女と三女、ひじり姉が四女でゆゆ先生が五女になる。 だから、ゆゆ先生とかなこさんは母さんが保護して躾けたあとに叔母さんやばあちゃんに譲られたけど、姉ちゃん達の感覚では自分達は五姉妹なのだそうだ。 えーりん姉さんが何かとかなこさんやゆゆ先生を気にかけるのも、多分その辺があるからなのだろう。 それで苦労してる辺りも、えーりん姉さんらしいと思う。 「それで姉さん、俺達の班にはあと誰が入るの?」 「かなこの処のさなえとすわこよ」 「……人間は俺だけか」 「人手不足だからな!」 「そうだね、人手不足じゃ仕方ないよねー」 でもかなこさん、それ自慢げに言う事じゃないからね? 確かにうちの村は加工場関係者抜くと人口も平均年齢もちょっと笑っちゃうことになるけどさ。 「それじゃみんな、あと30分で出発だから所定の場所に移動しなさい……気をつけるのよ?」 「はい、えーりん姉さん」 「こぼね~。弟様、またね~」 「ゆっかり頑張るのよ~」 えーりん姉さんに促され、所定の位置へと移動するひじり姉達。 それを見送っていると、本部のある方からぽいんぽいんと二匹のゆっくりが跳ねてきた。 緑の髪にカエルとヘビのお飾りを付けたゆっくりさなえと、金髪に目玉の付いた黄色い帽子をかぶったゆっくりすわこだ。 「ゆゆっ……かなこさま、ゆっくりしていってくださいね!」 「あーうー!」 「おお、来たか。弟殿、こいつらが今日一緒に山に入るさなえとすわこだ。宜しくしてやってくれ」 「ん、了解。すわこもさなえも頑張ろうな」 「はい! さなえ、ゆっくりがんばります!」 「あーうー! すわこがんばるー!」 ぽいんぽいんとその場で跳ねながら、すわことさなえが元気に答える。 そのお飾りには、狩猟用ゆっくりであることを示す『猟』と刻印された銀色のバッジが輝いていた。 まあ、狩猟用と言っても能力的にほぼ対ゆっくり限定だから、ゆっくりの多く棲むこの山くらいでしか使えないんだけどね。 *** 「ゆっゆっゆっ……!」 山の中、ゆっくりが踏み固めた道をゆっくりまりさが跳ねていく。 「ゆっくりにげるよ! にんげんさんにはつかまらないよ!」 「はいはいゆっくりゆっくり」 それを歩いて追いかけながら、俺はまりさを観察していた。 バレーボールより一回りほど小さいサイズ。金髪にくすみはなく、まりさ種独特の帽子は黒々としていてリボンも綺麗な白。 うん、この夏巣立ちした亜成体で間違いない。 それもかなり状態の良い個体だ。 「まあ俺に捕まらなくてもいいんだけどなー……さなえ、すわこ、行けっ!」 「あーうー! いっくよー、さなえー!」 「はい、すわこさま!」 俺の号令に応え、すわこが跳ねる速度を上げてまりさを追いかけていく。 それを確かめ、さなえは跳ねながら大きく空気を吸い込んだ。 「まりささん! ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!? ゆっくりしていってね!?」 「ゆっくりしていってね!?」 さなえの挨拶に立ち止まり、ぽいんと跳ね上がってまりさが挨拶を返す。 その隙にすわこはまりさに近づき、着地するまりさにタイミングを合わせてのしかかった。 「あーうー!」 「ゆびいいぃっ!? ちゅ、ちゅぶれるううううぅ!」 上から押さえつけられ、まりさが苦しげに呻く。 そこに追いつくと、俺はまりさを掴みあげ、背負ってきた袋に放り込んだ。 「おそらをとんでるみたいっ!? ゆゆっ? ここはなんだかゆっくりできるよ? ゆ……ゆゆうぅ……」 加工場特製のゆっくり袋は、中に放り込まれたゆっくりを暗さと狭さと袋に染みつかせた匂いで強制的にゆっくりさせる。 まりさが大人しくなったのを確かめ、俺は袋を背負い直した。 「よくやったぞ、さなえにすわこ。ほら、ご褒美だ」 「ありがとうございます、おにいさん!」 「あーうー! おにいさんありがとー!」 ポケットの小袋から特製かりんとうをふたつ取りだして二匹に与える。 「あまあまー! しあわせですー!」 「あーうー! あまあまー!」 「そっか。そこで大人しくしてろよ?」 このかりんとうは甘さ控えめで、ゆっくりにも食べやすい硬さに焼いてあるので、ゆっくりへのご褒美に丁度いい。 しあわせー、な表情でかりんとうをむーしゃむーしゃするさなえとすわこをその場に残し、俺は獣道を離れる。 草を掻き分けて少し進むと、半坪ほどの窪地に一匹のゆっくりまりさがいるのが見えた。 のーびのーびして、獣道の様子をしきりに伺っている。 さっきの挨拶で余分な声が聞こえたと思ったが、やっぱりか。 「……ゆゆ!? にんげんさんなのぜ!?」 「はいはいゆっくりゆっくり。まりさは巣立ちしたばかりのゆっくり?」 見た感じバスケットボールサイズの成体だし、金髪も帽子もちょっと汚れているからまず違うとは思うが、一応聞いてみる。 「ゆっ? ちがうのぜ! まりさはこのまえおちびちゃんをすだちさせたのぜ! いまはあきさんのしゅっさんっ! にむけてかりをしてるのぜ!」 聞かれたこと以上の事を勝手に喋ってくれるまりさ。 「そーなのかー」 「そうなのぜ! このあたりにさいきんゲスがすみついたってうわさをきいてたから、けいかいしていただけなのぜ!」 こういうところで余計なことを口走って潰されるのがゆっくりなんだが、このまりさはそこまで餡子脳ではないらしい。 むしろ、ゆっくりにとっては重要な、今の俺にしてもそれなりに有用な情報を喋ってくれた。 「情報ありがとう。それじゃ、ゆっくり狩りをしていってね!」 「ゆゆ? ゆん、ゆっくりしていってね!」 俺の挨拶に行っても安全だと判断したのか、まりさはぴょんぴょんと跳ねていった。 うーん。やっぱ、ばあちゃんの山のゆっくりは出来ているなあ。流石かなこさんが容赦なく躾けているだけはある。 「にんげんはまりさをゆっくりさせるんだぜ!」 とか、 「れいむにあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 とかのビキィワードは口にせず、人間を見下げたりしないが、かといって人間を必要以上に怖れもしない。 人間は自分達を食べるし、ゆっくりさせてくれない怖い存在。 でも、里に下りて畑を襲ったり、おうち宣言をしたり、『とおせんぼ』しない限りはそうそう制裁されることはない事も知っているのだ。 なので俺も、ああいうゆっくりは何もせず見逃すことにしている。 捕まえたところで選別する時にはねられるから、荷物になるだけだし。 「しかし、ゲスねぇ……」 多分、山の外から流れてきたんだろうけど……タイミングの悪い奴だ。 今回の狩りは夏巣立ちのゆっくりだけを捕まえて、他のゆっくりは見逃すのが基本方針。 だけど、ゲスとれいぱーは除外されてるんだよなー。 街ならともかく、かなこさんが管理して常にある程度の淘汰圧をゆっくりに与えている(今回の狩りもその一環だ)この山に、ゲスやれいぱーは邪魔なだけ。 だから今回も、ゲスやれいぱーは見つけしだい駆除していいことになっている。 もちろん虐待だってOKだ。 ばあちゃんの山のゆっくりを虐待できる機会なんてそうそうないので、中には夏巣立ちのゆっくりよりもゲス虐待目当てな鬼威惨もいる。 俺はそこまでする気ないけど。 ゲスに出遭ったら制裁はするにしても、自分から探そうとは思わない。 それよりも夏巣立ちのゆっくりを探した方がいいからな……主に、俺の懐的に。 夏は何かと入り用だし。 「惜しいわね~。ゲス言動したら、私がスキマ落下の刑にしてあげたのに」 不意に。 背中に柔らかな感触が押しつけられ、耳元で声がした。 「ゆかりん姉ちゃん、地味に怖いこと言わない。あと肩に顎乗せないで」 「ん~? いいじゃない、姉弟なんだし」 「いやそれ姉弟関係ないでしょ。だいたいそれ、くすぐったいんだからさ……」 「んふふ」 俺の抗議を軽やかにスルーして、スキマから身を乗り出したゆかりん姉ちゃんが、俺の肩に首を乗せたまま頬をすり寄せてくる。 といっても、かなこさんみたいに積極的なすりすりじゃなく、そっと押しつけてくる感じだ。 「ん~、弟ちゃん、すべすべ~。でもやっぱり男の子よね、逞しくなってぇ……」 「だからくすぐったいってば……ほら、抱きつかないのっ」 「弟ちゃんったらつれないわね~? せっかくふたりっきりなんだから、もうちょっと甘えてくれてもいいのよ?」 「甘えてたら夏巣立ちのゆっくりを捕まえられないでしょ。今年も捕獲量一番になるんじゃなかったの?」 「大丈夫よ~、もう二十匹、二袋も送っているんだから。少しくらいゆっくりしても他の班は追いつけないわ」 ……その油断は敗北フラグだと思うけどなー。 とはいえ、山に入って3時間ちょっとで22匹はかなりのハイペースなのも確かだ。 巣立ちゆっくりは当然だが大抵単独行動しているから、家族狩りみたいに芋づる式に獲れる訳じゃない。 それを考えると、少しくらいは休憩してもいいか。 「じゃあ、少し早いけどここでお昼にする?」 「ええ、そうしましょ。すわこ、さなえー、こっちいらっしゃーい」 「あーうー」 「はい、ゆかりさま」 草を踏み分け、さなえとすわこが跳ねてくる。 その二匹を迎え、俺は草の上に座り込んだ。 「姉ちゃん、弁当~」 「はいはい」 スキマを開き、ゆかりん姉ちゃんが手を突っ込む。 しばらくして引き抜かれた手には、風呂敷に包まれたお重と水筒が抱えられていた。 「今日のおかずは鶏の唐揚げに卵焼きよ」 「あーうー! すわこたまごやきすきー」 「おむすびはみんなで作ったの。具は食べてみてのお楽しみっ」 「またびっくりおむすびかっ!?」 「この間みたいに実ゆは入ってないから安心しなさい」 「それなら……」 「入っているのは赤れみりゃだから」 「おむすびの具としてはマシだけどそれもどうよ!?」 「……さなえはごはんさんだけでいいですよ?」 お重を開き、わいわい言いつつ弁当を使う。 「あら弟ちゃん、両手が唐揚げとおむすびで塞がってるじゃない……はい卵焼き、あーんっ」 「別に自分で食えるんだけどなあ……あーん」 ゆかりん姉ちゃんが、卵焼きを箸で摘んで差し出す。 それを一口で食べると、卵の旨みと砂糖の甘さがじんわりと口内に広がった。 「ね、美味しい?」 「うん、旨いよ……この味付けはゆかりん姉ちゃん?」 「正解! さすが弟ちゃんね、ご褒美あげる……んっ」 突っ込む間もなく、頬に柔らかな感触が触れる。 小さく差し出された舌が、ちろりと頬を舐めあげていった。 「ぶうっ!? ねっ姉ちゃんっ、こういうところではソレ止めようよっ!?」 「いいじゃないの~、お姉ちゃんの愛の証よっ」 「……」 「あーうー! たまごやき、すわこもー!」 「くす……はい、すわこもあーん」 「あーん! むーしゃ、むーしゃ……しあわせー!」 すわこに卵焼きを食べさせ、姉ちゃんが微笑む。 流石にかなこさんが躾けたゆっくりは、胴なしでも虐める対象にはならないらしい。 まあ、姉ちゃんもゲス制裁派であって虐待派じゃないからな。 「……じー」 ふと気付くと、さなえがこちらを見上げていた。 「さなえは何が食べたい?」 「えっ? あ、さなえは……その、からあげさんがたべてみたいです……」 「ん、それじゃ俺のを半分やるよ。ほら、口開けろ」 「ありがとうございます、おにいさん……あーん」 手に持っていた唐揚げを半分に千切り、口の中に放り込む。 「むーしゃ、むーしゃ……おいしいですー! かなこさまがくださるやきとりさんみたいですね!」 「そりゃ同じ鶏肉だからな……ほら、皮も旨いぞ~」 「ありがとうございます! あーん」 ぱあぁっと顔を輝かせるさなえに俺もゆっくりしながら、残りの唐揚げを食べさせてやる。 「むーしゃ、むーしゃ……しあわせですー! かなこさまがおっしゃるとおり、おにいさんはとてもやさしいにんげんさんなのですね!」 「そうかぁ? 唐揚げひとつでそこまで言うのは正直どうかと思うぞ?」 「そうですか? でもかなこさまはいつも、おにいさんのことをほめていますよ?」 「……そうなの?」 「はいっ」 「うあー……」 姉が自分の知らないところで自分を褒めていた。 それを他人(ゆっくりだけど)から聞かされるのってなんでこう気恥ずかしいんだろう。 「……あいつ、自分のゆっくりに変なこと吹き込んでないでしょうね……」 「へんなことってなんですか?」 「弟ちゃんは自分の婿だとか、そう言う類の事よ」 「いや流石にソレはないだろ……」 「はい! かなこさまは、おにいさんのおよめさんになるのだといつもいっています!」 「んぐうっ!?」 「だじょおぉっ!?」 あ。 喉に。 赤れみりゃが。 「~~っ!」 「あーうー!? お、おにーさーん!?」 「たいへんですゆかりさま! おにいさんが!」 「……ほほぉ。かなこの奴、そんなこと言ってたの……」 「いえ、ほほぉじゃなくてですね!」 「~~~~っっ!!」 「はいはい、お水ね弟ちゃん。麦茶でいい?」 「~~~~~~っっっ!!!」 コップに入った麦茶。 一気に。 流し込む。 「ちゅべたいんだぢょおおおおぉぉ!?」 「~~~~~~~~~~~っっっっ!!!!」 「ああっおにいさんがしちてんっばっとうです!!」 「あーうー!?」 やべえ。 赤れみりゃ。 活きよすぎ……。 「ああ、大丈夫よ。水は飲めたし、あとはこうして背中を叩けば……」 ぽんぽん、ぽんぽん。 「っっ!? っ!! っっっ!!!」 「そろーり、そろーり……」 「ほ、ほんとうにだいじょうぶなのですか?」 「そろーり、そろーり」 「あーうー!?」 「しょろーり、しょろーり……」 「大丈夫、大丈夫……だからすわこ、さなえ」 喉で、赤れみりゃが、じたじた。 「はい?」 「あーうー?」 「そこのゲス一家にお弁当取られないようにね」 「ゆっへっへ……このまりささまが、こっそりごはんさんをいただく……って、なんでばれてるのぜええぇ!?」 「気付かない方が餡子脳でしょ……ほら弟君、吐いちゃいなさい」 ぽんぽん、背中が、叩かれて。 優しく、背中を、撫でられて。 苦しいけど、気持ちいい。 「ゆへへ……ばれちゃしかたないのぜ! このごはんさんはまりささまがいただくのぜ!」 「れいむがむーしゃむーしゃしてあげるよ!」 「まりちゃがたべちぇあげりゅのじぇ!」 「ゆん! そんなことはさせません!」 「あーうー! すわこたちのごはんだよー!」 すわこと、さなえが、ゲスのまえ。 「うるさいのぜ! くそにんげんをたおしたまりささまにさからうのかぜ!?」 「ゆっふっふ、まりさはつよいんだよ! あのくそどれいをやっつけたんだよ!」 「おとーしゃんはちゅよいのじぇ!」 俺が、いつお前らに、倒された? ゲスは本当に、餡子脳だな……。 「それいじょうちかづくのなら、かりますよ!」 「たたっちゃうよー!」 「ゆへん! これをみても、そんなことがいえるのかぜ!?」 「っ!?」 ゲスが、口からナイフを、取りだした。 「ゆっ!? そんなもの……さなえはこわくありません!」 「すわこもだよー!」 「ゆっへっへ……ばかなかいゆっくりなのぜ。このないふさんのさびになるのぜ!」 やばい。 すわことさなえに何かあったら。 かなこさんが、悲しむ……! 「ゆんっ! いくのぜええええぇ!!」 ゲスまりさが、ナイフを振るう。 かなことすわこが、身構える。 二匹を制そうと、口を開く。 ゆかりん姉ちゃんが、背中を叩く。 赤れみりゃが、喉で暴れて。 「~~~~っっ……げほっっ!!!!」 俺は思いきり咳き込んだ。 何かが飛び出していく感覚がして、喉が一気に楽になる。 「おじょらっ!?」 「ゆべえええぇっ!?」 一瞬後。 びしゃりという音がして、ゲスまりさの右目に小さな肉まんが激突した。 「ゆびぇえええええぇぇっ!? ま、まりざのおべべがあぁ~~っ!?」 「ううぅ~、いぢゃいんだじょ~!」 あ、赤れみりゃまだ生きてた。 さすが捕食種、凄い生命力だ。 多分、柔らかい目の部分にぶつかったからだろうけど。 「いだいじょ~……う? こりぇ……あまあまだじょ~!」 潰れた目玉の奥から餡子が滲んできたのか、赤れみりゃの声が嬉しげなものに変わる。 「あまあまちゅーちゅーしゅればいぢゃくなくなるんだじょ~! ぢゅ~っ!」 「ゆがあああああぁぁ!? なんでれみりゃがいるんだぜええええぇ!? ま、まりざのあんごずわないでねえええええぇぇ!?」 「う~! あまあま~!」 「いだいいだいいだいいいぃ! おべべにはいらないでえええぇ!!」 あー……思いがけず捕食種による残虐行為手当が。 ま、ゲスだからいいか。 「ゆぎゃああああぁっ!? れ、れみりゃはばりざだげだべでねええぇ!? がわいいでいぶをだべないでねええええぇ!?」 「おぎゃーじゃんなんじぇぞんにゃごぢょいうんだじぇえええぇ!? ぞんにゃごどをいうげしゅおやはぢねええええぇぇ!!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおぉぉ!? ぞんなごどいうゲスおぢびじゃんはいますぐじんでねええええぇぇ!!」 ゲスまりさを助けようともせず、親子で罵倒しあいながら逃げようとするゲスれいむとゲス子まりさ。 「げほっ、げほ……ゆかりん姉ちゃんっ!」 「はいはい。弟ちゃんを奴隷呼ばわりしたゲスは送っちゃうわよぉ?」 「ゆっぐりにげるよおおおぉ!!」 「にげるのじぇええええぇぇ!!」 知らなかったのか? 姉ちゃんからは逃げられない。 俺の背中を優しくなで続けながら、ゆかりん姉ちゃんはゲスれいむとゲス子まりさの足元にスキマを開いた。 「ぞろぉーりっ、ぞろぉーっ……おぞりゃっ!?」 「おじょらどんでりゅみじゃいっ!?」 開いたスキマに親子ゲスが吸い込まれる。 「はい、繋げちゃうわね」 そして、そのスキマの真上に開く新たなスキマ。 そこかられいむとまりさが落ちてきた。 「どんでるみだいいいいいいいいぃぃ……どぼぢでまだおぢてるのおおおおおぉ!?」 「ぎょわいのじぇえええええええぇぇ……ゆっ、にゃんで、にゃんでまちゃおちるのじぇえええぇぇ!?」 上と下に開いたスキマの間を落ち続けるゲス親子。 「これはおまけ」 更にゆかりん姉ちゃんは近くの木の枝を何本か手折り、スキマを落ちるゲス親子にぶつかるように投げ入れた。 一緒に落下しだした枝葉が、空中でもがくゲスれいむとゲス子まりさの身体を容赦なく叩く。 「ゆゆっ!? えださんやべでっ、やべでねえぇ! ぢくぢくじないで、えださんはれいむをだずげでねええぇ!!」 「まりじゃを! まりじゃをだじゅげるんだじぇえええええ!!」 更に枝に繁ったままの葉がぶつかり、ゲスれいむとゲス子まりさの身体に緑の葉肉を擦りつけていく。 「「ゆっ……ゆげええええええぇぇぇっ!?」」 ……それだけで、ゲス親子は苦しみだした。 「にがっ! にがあああぁっ!! なにごれえええぇぇ!! なんでえださんもはっぱさんもにがいのおおおぉ!? ゆげええ!!」 「にぎゃいのじぇ、くるちいのじぇえええええええ!! ゆげっ、ゆげっち! げりょ、たしゅ、だじゅげでえええぇ!!」 「姉ちゃん、あれって……」 「ええ、ニガキの枝よ」 ゆかりん姉ちゃんが楽しげに微笑む。 ニガキ。この辺だと普通に見る樹木だ。 木材としては軽く丈夫で加工しやすく、樹皮には殺菌作用があって漢方薬にもなるのだが……。 この木、とにかく苦い。 幹も枝も実も葉も、全ての部位に苦味成分があるのだ。 そんな物に、体表全てが感覚器官なゆっくりが触れ続けたらどうなるか。 「ゆぎゅっ、ゆぎょおおおおぉ! にがっ、にがいいいいいいぃ!! おじょらっ、おぢでええぇ……にぎゃいのおおぉ!!」 「おじょらどんでっ、にぎゃっ! にぎゃいのじぇええぇ!! ぼうやだぁ、まりじゃがえるっ、おうじがえるううううぅ!!」 ……控えめに言って、地獄の苦しみを味わう事になる。 文字通り全身で恐怖と苦痛を感じつつ、ニガキの枝と一緒にスキマを落ち続けるゲスれいむとゲス子まりさ。 「ゆっゆっゆっゆっ……も、もうゆるじでえええぇぇ! ぢんじゃう、ばりざじんじゃうのぜええええぇ……!!」 「うー、うー! あまあまいっぱいだじょー!」 潰れた目玉から赤れみりゃに侵入され、身体の中から餡子を吸われ続けているゲスまりさ。 「……うわぁー……」 「……あーうー……」 それを見て呆然としているさなえとすわこに、俺は声をかけた。 「おーい、戻ってこーい。さっさと飯済ませて狩りに戻るぞー? この辺はこいつらの声でゆっくりも逃げてるだろうし、足伸ばすからなー?」 「まだここでごはんたべるんですかっ!?」 「あーうー!? ゲスおいてどこかいこーよー?」 「当たり前でしょ?」 「何言ってるんだ?」 驚く二匹に、ふたり同時に口を開く。 「ぼうやべでええええぇぇ!!」 「おぢるううううううぅぅ!!」 「にぎゃいいいいいいいぃ!!」 「「たっぷり苦しませたあと、ちゃんと潰すまでがゲス制裁。ここを離れて万が一にもゲスを逃がす訳にはいかないの」」 ゲス達の悲鳴に、俺と姉ちゃんの声が重なった。 *** 「お帰り、弟殿! いやー、今年も見事なものだったな!」 夕方。 山を下りてきた俺達を、かなこさんが出迎えてくれた。 「ふふっ、今年も私達が捕獲量はダントツでしょ?」 「ああ。娘殿とひじりも随分と頑張っていたが、弟殿達には及ばずだ。大したものだな、ゆかり!」 「当然! これが愛の力って奴よ!」 俺の腕に抱きつき、ゆかりん姉ちゃんが得意げに微笑む。 ゆかりん姉ちゃんはゆっくり詰めた袋をスキマで送っただけで、それ以外の労働は俺とさなえとすわこでやったんだが……まあ、言うまい。 楽させてもらったのは確かだからな。 ゲスも潰したあとはスキマ送りで村の加工場に廃棄させてもらったし。 「そうか! 愛なら私も負ける気はないが、今回は素直に褒めてやろう! 弟殿の班のゆっくりは量も質も素晴らしかったからな!」 「あーうー! かなこー!」 「かなこさまー!」 嬉しげに笑うかなこさん。 その足元に、すわことさなえがぴょんぴょん跳ねてきた。 「おお、さなえにすわこもご苦労だった! 弟殿の言うことをちゃんと聞いたか? 良い子にしていたか?」 その二匹を抱き上げ、かなこさんが笑顔を向ける。 そんな育ての親を見上げ――。 「もちろんですっ! れみりゃすぱーくでゲスをせいさいするおにいさんに、さなえはぜったいさからいません! どんなめいれいにもしたがいます!」 「あーうー! すわこはいいこー! すわこはいいこー! だからせいさいしないってゆかりにおねがいしてー! スキマこわいー!」 「「せいさいごはんはもういやー!!」 半泣きの表情で、さなえとすわこは必死にそう訴えた。 「……ゆかり、弟殿?」 「あ、あははは……山でゲスに絡まれたから制裁したんだけど……ちょっと、その子達には刺激が強すぎたみたいでねー……」 「いやー、なんか色々あって、俺が変な能力持ってるって誤解しちゃってさ……あ、天に誓ってその二匹には手を出してないよ? な?」 「「はっはひいいい!! おにいさんはとってもすてきでやさしいにんげんさんですううぅ!!」」 うん、どう見ても俺が無理矢理言わせてる風だねっ。 でも本当に何もしてないんだよ? ゲス達は俺らが食事終わるまで放置して、制裁の仕上げに揉み込んだニガキの葉をたっぷり口に突っ込んでやったけど、それだけだし。 ゲスまりさを喰ってた赤れみりゃなんかちゃんと逃がしてやって感謝されたんだぜ? 「おにいさんのなかはままみたいにぬくぬくだったじょー!」って。 それなのに、この反応。 ……いや、ゆかりん姉ちゃんのノリに合わせてちょっと調子に乗っていたのは認めるけどさ。 「……ふぅ。とりあえず、こいつらはえーりんに診て貰うことにして……弟殿、ゆかり?」 「はっはいっ!?」 「な、なによぉ……!?」 「何故このようなことになったのか……説明して貰うぞ?」 笑顔のまま、怒りのオーラを浮かべるかなこさん。 その迫力に射すくめられながら、俺はゆかりん姉ちゃんと一緒に笑顔で頷きつつ、心の中で呟いた。 『どうしてこうなった?』と。 ・おまけ『ゆっくりさなえは胴付きになりたい』 「ごめんねさなえ、怖がらせちゃって」 「いいんですよゆかりさま。さなえがみじゅくだったのですから……」 「そうも行かないわ。かなこのゆっくりに借りを作ったままなんて私が嫌なの。だから……私にして欲しいこと、ない?」 「してほしいこと、ですか? えっと……」 「何でも言っていいのよ?」 「それならっ、おねがいがあるのですがっ!」 「なに?」 「ゆかりさまのなかみを、ちょっとだけたべさせてください!」 「……え?」 「かなこさまにききました! ゆかりさまのなかみはなっとうカレーさんなんですよね?」 「え、ええ……そうだけど……」 「わたしたちゆっくりさなえは、カレーさんをたべるとどうつきになれるんです!」 「……それ、おまん亜種のさなえだけよ?」 「そうなのですか?」 「まあ、あなたにおまん亜種の餡統が混ざってる可能性はあるし、胴付きの私の中身だから、普通のカレーよりは胴付きになる確率も高いだろうけど……」 「では、おねがいします! すこしでいいですから、わたしにゆかりさまのなかみをたべさせてください!」 「胴付きになりたいの?」 「はい! かなこさまみたいになりたいんです!」 「仕方ないわねえ……弟ちゃんには内緒よ? ……ん、しょ……」 「ゆわぁ……お、おっぱいからでるのですかっ!?」 「他の胴付きは知らないけれど、私達姉妹はみんな、ね……スープだけで具は出せないけど、それでいい?」 「はいっ! それではっ、しつれいしますっ! はむっ……ちゅうっ……!」 「んんっ……!」 「ちゅっ、ちゅっ……ちゅ……あの、ゆかりさま」 「んっ……ん……なに?」 「こういうこと……その、おにいさんと、したかったのではないですか?」 「ふふっ、案じてくれるの? 大丈夫よ、弟君には何度も吸わせてあげてるから」 「そ、そうなんですか……ゆかりさま、すごいです……ちゅう……」 「ん……っ……ふぁ……」 「ゆかりん姉ちゃ~ん、この間貸したルルブ、今度使うことになったからちょっと返し」 「んにゃあああああぁぁっ!?」 「うわああぁっ!? ゆっ、ゆかりん姉ちゃんっ!?」 「!? ち、ちちち違うのよ弟ちゃんっ! これには訳がっ!!」 「しつれいしてます、おにいさん! ちゅーちゅー!」 「ゆかりん姉ちゃん……俺だけじゃ飽きたらず胴なしにまで……」 「ゆっかり斜め上の解釈しないのっ!!」 「だってそれどう見ても搾乳プレ」 「プレイ言わない! 弟ちゃんの時と違ってこれはさなえにとって真剣な行為なんだから!」 「真剣な搾乳プレイ?」 「だからプレイ言わない! ……って、あんっ!」 「ちゅっ、ちゅうっ……ん、ゆっ、ゆううっ……!」 「ええっ? さ、さなえの様子がっ……!?」 「……ヘエーエ、エーエエエー! エーエエー、ウーウォーオオオォー! ララララ、ラァーアーアーアー!」 「ああっ姉ちゃんのせいでさなえがとんでもないことにっ!?」 「ゆっくり聞きの悪いことを言わないでっ! さ、さなえ大丈夫っ!?」 「あ~らはんま~や! みんな~そ~ちんな! ゆっ、ゆっ、ゆ……」 「さなえーっ!?」 「ゆーっ! ゆっくり胴付きになりましたー!!」 「「なんでじゃああああああああぁぁぁぁっ!?」」 このあと、ゆかりん姉ちゃんはさなえ種を胴付きにする素材として、中身を定期的に加工場に提供することになりました。 搾るのは俺です。 いや、本当に……どうしてこうなった!? 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) anko2154 夏のゆっくり山守さん(後編) 感想、挿絵ありがとうございます。感謝です。
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・駄文長文詰め込みすぎ注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。 ・そしてガチのHENTAIです。どうしようもないです。 ・それでもいいという方はゆっくりどうぞ。 妙な寝心地のよさに目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。 カーテンの隙間からは朝の光が入り込み、部屋を照らしている。 「ん……ゆぴぃ……すぴぃ……」 そして横からくる規則正しい寝息が、俺の耳をくすぐっていた。 ついでに、わき腹の辺りに感じる柔らかな弾力。 押しつけられてちょっと潰れているのか、ぷにぷにと押し返してくる感じがまた気持ちいい。 「いや、そうじゃなくてだな」 自分に突っ込みつつ、ため息をつく。 まただ。また侵入を許してしまった。 しかもこの感触は明らかに……。 まあ、済んでしまったことは仕方ない。 ここは毅然と注意しなくちゃな。 「……ゆかりん姉ちゃん?」 「ん~……? なに、弟ちゃん……?」 俺の声に、ゆかりん姉ちゃんが眠そうに瞼をあげる。 「なんで俺の布団に入っているのかな? 俺言ったよね、一緒に寝るのは構わないから、ちゃんと承諾は取ってくれって」 「承諾は取ったわよ……『お姉ちゃん添い寝するけどいい?』って言ったら、弟ちゃん頷いてくれたもの」 「普通寝ている時の反応はノーカンだと思いませんか?」 「なによぉ……? そんなこと言って、弟ちゃんも悦んでるクセに……」 ゆかりん姉ちゃんの手が、いきなり俺のオンバシラを握った。 「ぶはっ!? 待て姉ちゃん、そこ握っちゃ駄目だろっ!?」 「ほら、こんなに大きくなってる……弟ちゃんは素直じゃないわねー」 「それは朝の生理的な反応だよ姉ちゃんっ!?」 八割くらいは姉ちゃんからの刺激だけどそれはそれだ。 「だいたい、なんで潜り込んでるんだよ……俺、部屋の鍵かえてたはずだぞ?」 「夜中トイレに起きたら、弟ちゃんどうしてるかなーって気になって……スキマ移動してきちゃった」 てへ、と上目遣いに微笑むゆかりん姉ちゃん。 いや可愛いんだけど、そしてそんな姿でそんな顔されると注意しなきゃって気勢もそがれるんだけどっ。 「だ、だったらせめて服は着ろよっ! なんで全裸なんだよ!?」 「私が裸にならなきゃ用を足せないの、弟ちゃんも知ってるでしょ?」 「ここに来るまでに! 服を着ろと! 言ってるんだよ!」 「うまれたままのお姉ちゃんを感じてもらいたかったんだもの」 「姉ちゃん産まれた時から服着てるでしょおおおおお!」 胴付きゆっくりにとって服はお飾りみたいなもの。 だから産まれた時から身に付けているし、破れたり奪われたりしても時間が経てばまた生成されるとえーりん姉さんは言っていた。 ちなみに胴なしも、お飾りは再生すると教えてやれば、時間はかかるが再生成されることがあるそうだ。 もっとも、大抵は再生成する前に『ゆっくり出来ないゆっくり』として制裁されてしまうのだが。 「それはそれ、これはこれよ」 きっぱり言い切って、ゆかりん姉ちゃんは微笑みつつ俺に身体を押しつけてきた。 姉ちゃん達の中では一番控えめとは言え、十二分なボリュームの胸が柔らかく潰れる。 「いや言ってる意味わかんねえから」 「とにかく、こんなになってたら苦しいでしょ? 弟ちゃんさえ良ければ、私がすっきりーさせてあげるけど……?」 オンバシラにぎにぎ。 うぅ……いつものことながら、ゆかりん姉ちゃんの指めっちゃ気持ちいい……。 そりゃそうだよな、ゆっくりなんだから。 あのもちもち感触の皮に包まれた手指は、それだけで下手な人間と本番するより気持ちいい『甘手』らしいし。 ソースはネットなんで本当なのかは知らないが、少なくとも俺の五人組よりは気持ちいいからな。 とはいえ、このまま流される訳にはいかない。 俺達は姉弟なのだから。 「朝からそんな爛れた関係になるのは良くないと思います!」 「なによ……嫌なの?」 「嫌じゃないけど! それはそれとして自重しようよ姉ちゃんっ!」 こういう流れでいっちゃうのはあんまり宜しくないと思うんだ、これからの姉弟関係的に考えて! 姉ちゃん達オカズにしてる俺が言う事じゃないの判ってるけど! 「……しょうがないわね」 ため息ついて、ゆかりん姉ちゃんがスキマを開く。 とりあえず今日は引いてくれるみたいだ。 「それじゃ、お姉ちゃん部屋に戻るけど……弟ちゃんはそろそろ起きなさいよ? 母さんが朝ご飯用意してるみたいだし」 「判ってる……ゆかりん姉ちゃんは部屋で寝直しなよ」 ゆっくりゆかり種は寝ることでゆっくりする。 ゆかりん姉ちゃんは胴付きになったことで多少の無理はきくようになっているけど、それでも一日最低八時間、出来れば十二時間は睡眠を取らないと調子が出ない。 まあ、だから小さい頃は昼寝の時とかによく添い寝してもらったし、そのせいで今でもゆかりん姉ちゃんと一緒に寝ると落ち着けはするんだけど。 「そうするわ……っと、弟ちゃん?」 「ん? なに、ゆかりん姉ちゃ……んんっ!?」 「ん……っ、んく……っ、ちゅ……ちゅぷっ……」 「……っぷあぁっ!? な、ななななななっ!?」 「ふふっ……目、覚めたでしょ? じゃーねー」 目を回す俺を尻目に、ゆかりん姉ちゃんがスキマに消える。 (確かに目は覚めたけど……) 別のところも、ちょっとリビングに行くには問題あるくらい起きちゃったんだがどうすんだよ? ため息つきつつ、俺はもそもそと服を着替えた。 今日も一日が始まる。 そして、数時間後。 「……あづい……」 俺は噴き出る汗をタオルで拭いつつ、林道を歩いていた。 木々の間から降り注ぐ夏の日差しが気温を上昇させる。 煩いくらいの蝉の声が、さらに体感温度を増していく。 「ったく……母ちゃんも人使い荒いよなー」 思わず愚痴もでる。 右手に提げた魚籠が重い。 ちなみに中身は親父が昨日釣ってきた鰻。 ご近所さんへのお裾分けってやつだ。 「ひじり姉は母ちゃんと畑仕事、えーりん姉さんは診療所。ゆかりん姉ちゃんは家事させるからって、俺に押しつけなくてもなー」 ちなみにひじり姉は俺より力があるので(というかエア巻物まで使うと熊とガチで相撲取れるので)肉体労働になると真っ先にかり出される。 えーりん姉さんは仕事持ちだから仕方ない。 そして、こういう時こそ役に立ちそうなゆかりん姉ちゃんのスキマは、無生物とゆっくりしか通さないという制限ゆえに使用不可。 収穫した野菜や果物ならギリ大丈夫なのだが、生きた魚はスキマに送れないのだ。 そして、どちらがお裾分けにいくかを決めるじゃんけんで俺はゆかりん姉ちゃんに負け、ゆかりん姉ちゃんは家事を、俺は暑い中魚籠を持ってご近所回りとなったのだ。 「それにしても暑い……ゆっくりも熱で融けるぞ、こりゃ」 この辺には大きな群れはないが、家族単位でなら野生ゆっくりが結構生息している。 普段ならこの時間は狩りで木々の間を跳ねるゆっくりや、畑に向かうゆっくりを見かけたりするのだけども、さすがにこれだけ暑いと姿も見えない……。 「そこのじじい! とまるんだぜ!」 「とまりゅんだじぇ!」 「とみゃれ! くしょじじい!」 「あー……」 前言撤回。 どうやら暑さで餡子が茹だってゲスになってただけらしい。 『とおせんぼ』 いきなり道に飛び出し、ぷくーで威嚇しつつ人間に通りたければあまあま寄越せと通行料を要求する。 山に済むゲスゆっくりの定番にして、成功率は1%以下という死亡フラグだ。 「なにしてるの? ここを通りたかったらはやくあまあまよこしてねくそじじい!」 「あみゃあみゃよこしぇ! でにゃいとれいみゅおきょりゅよ!」 「こーろこーろしゅるよっ!」 俺の前にいるのはバスケットボールサイズのまりさとれいむのつがい。 そして、その子供らしいハンドボールサイズのまりさとれいむがそれぞれ二匹ずつ。 総勢六匹のゲス饅頭共だ。 「あまあまねぇ……渡さなかったらどうするんだ?」 見ゆん必殺で潰してやってもよかったが、一応聞いてみる。 時々、こういう事をやって成功した1%のゆっくりを見て模倣しただけの『バカだが善良』な個体がいたりするからだ。 俺は害獣としてのゆっくりは嫌いだが、野生ゆっくり全てを潰そうとまでは思わない。 バカなだけなら教えてやれば静かに山で生きていく可能性はあるし、なにより山の甘味としてのゆっくりは好物なのだ。 全て潰してしまったら、折角の甘味が戴けなくなる。 晩秋、冬ごもりに入ったゆっくりを姉達と一緒に捕まえて作る干しゆっくりは子供の頃からの楽しみだし。 というわけで温情一割、暑くてもうゆっくりとかスルーしたいでござる九割な気分で尋ねたのだが。 「ゆがあああああ! まりささまにあまあまをけんっじょうっ! しないゲスじじいはせいっさいっ! するのぜええ!」 「かわいいれいむにあまあまをわたさないとかばかなの? しぬの?」 「はやきゅあみゃあみゃもっちぇきょいくしょじじい!」 「まりしゃちゃまはぷきゅーしゅるのじぇ! ぷきゅー!」 「れいみゅもぷきゅーしゅるよ! ぷきゅー!」 「ゆわああああっ! きょわいよおおおおおぉ!」 「「どぼぢでいみょーとぎゃきょわぎゃっちぇるのおおおぉ!?」」 あー、ゲス確定で言質取れましたー。 制裁とか言い出すのは善良バカにはいないからな。 さて、それじゃ面倒だし一気に潰すかー。 バランスのために魚籠を肩にからって足を振り上げ……。 「こっぼね、こぼね、こーぼね~」 ……ようとして、俺は後ろから近づいてくるおっとりとした声に振り返った。 「こぼね~……あら? 弟様、こんにちは」 「ゆゆ先生、こんにちは」 「はい、ゆゆこですよ~」 俺に気付いて、ピンクの髪にふわふわとした服を着たゆゆ先生が微笑みながら手を振る。 その小さな動作で、ふんわりした服越しにも判る程のサイズの膨らみがゆさっ、と揺れた。 「ゆゆ先生は何をしてるんです?」 「夏休みで学校もないから、お散歩よ……ゆかり様達はご健勝かしら?」 「それはもう、象が踏んでも壊れないくらいに」 「こぼね~。それはよかったわ。今度またお訪ねするから、よろしくとお伝えしてね」 「判りました。ゆっくり料理山ほど用意して待ってますよ」 「それはいいわね~。弟様の母上は、ゆっくり料理の名人だし……こぼね~」 嬉しそうに微笑むゆゆ先生。 その可愛らしい顔も姿も、俺の担任をしてくれていた小学校の頃から変わっていない。 まあ、胴付きゆっくりゆゆこ種なんだから当然なんだけども。 ゆっくりってナマモノは、見た目上老化したかどうかなんて、ほとんど判らないものなのだ。 特に胴付きは1年ほどで成長を終えると、それからは容姿は殆ど変化せず、寿命まで若々しいままでいることが多いらしい。 全体の肉付きというか、スタイルは変わったりすることもあるけれど。 ゆゆ先生も身体の一部は前より豊かになってるし。 「……ところで~、弟様はどうして、こんなところで立ち止まっていたの?」 「ああ、ご近所に鰻をお裾分けに行く途中で、ゆっくりに『とおせんぼ』されてたんですよ」 小首を傾げるゆゆ先生に告げ、改めて野生ゆっくり達を振り返る。 「「「「「「………………」」」」」」 見事なまでに親子揃って固まっていた。 どいつもこいつも、ゆゆ先生を見上げた状態のまま顔に恐怖を貼りつかせている。 「なんだ、お前ら? なに固まって……」 「こーぼね~。これは、なかなか美味しそうな野生ゆっくりね~」 嬉しそうにそう言って、ゆゆ先生がゆっくり共を一瞥する。 「……あー……」 そうか、そうだった。 ゆゆ先生……ゆっくりゆゆこって……。 「ゆわああああああぁぁっ!? ゆ、ゆゆこだああぁ!!」 「なんでだぜえぇ!? なんでぐぞじじいがゆゆこどいっじょにいるんだぜええぇぇ!?」 「きょわいよおおおおおぉ!!」 「にげりゅんだじぇえええええええ!!」 「かぞくのあいどりゅすえっこれいみゅはれいみゅがまもりゅよ!」 「ゆわーん! ゆわーん!」 ……捕食種、だったっけ。 「あらあら、みんなそんなに怖がることはないですよ~? 先生は痛いことはしませんからね~」 笑顔を浮かべたまま、ゆゆ先生がゆっくり一家に近づいていく。 「ゆ? いたいことはしないのぜ?」 ゆゆ先生の言葉に、真っ先に立ち直った親まりさがおそるおそる尋ねる。 「ええ。先生がゆっくり虐待なんてしたら、教え子に示しがつかないもの」 その答えに、まりさ達は一斉に破顔した。 「そうなのかぜ! それならあんしんなのぜ!」 「よかったねまりさ! これであんっしんっ! してあまあまもらえるね!」 「ゆ! そうなのぜ! ここを通りたかったらあまあまよこすのぜ!」 「あまあまがないならゆゆこはゆっくりしんでね!」 「あみゃあみゃもらえるのじぇー!」 「あみゃあみゃ! あみゃあみゃ!」 「はやきゅまりちゃしゃまにあみゃあみゃもっちぇくりゅのじぇ! わきゃってるのじぇ、くちょびゃびゃあ!」 「ゆっきゅりー! あみゃあみゃ-!」 うん、潰そう。 俺の恩師であるゆゆ先生をばばあ呼ばわりとはいい度胸だこの糞饅頭ども。 水泳の授業で一緒に川で泳いだ時の水着姿は未だに俺のオカズ常連もといスイートメモリーなんだぞ? 「ゆゆ先生、こいつら潰しますから離れて下さい。餡子で汚れるんで」 「こぼね~。それは駄目よ? ゆっくりも山の恵み、ただ潰すなんて勿体ないことをしてはいけません」 足を上げかけた俺を、ゆゆ先生が優しくたしなめる。 「ゆっ! そうだぜ、どれいはゆっくりしてないのぜ! だからはやくあまあまもってくるのぜ!」 「そうだよ! そしてゆっくりしてないゆゆこははやく死んでね! すぐでいいよ!」 「はやくしゅるのじぇ! でなきゃまりしゃがぷきゅー! するのじぇ!」 「まりちゃもちゅるのじぇ! ぷきゅー!」 「すえっこれいみゅもいっちょにぷきゅーちようね! ぷきゅー!」 「ゆー! ぷきゅー!」 それを見てますます調子に乗る野生ゲス一家。 得意げにぷくーをしている子ゆっくりを即潰したい衝動に駆られるのを、俺は辛うじて抑え込んだ。 俺が潰さなくても、ゆゆ先生がこいつらへの制裁はしてくれる。 ゆゆ先生は優しいから、確かに虐待はしないだろうが……ゆっくりゆゆこは捕食種なのだ。 つまり、虐待はしなくても……。 「それじゃみんな、ゆっくりご馳走になるわね~」 「「「「「「………………ゆ?」」」」」」 不思議そうに鳴くゆっくり親子の頭を、ゆゆ先生が優しく撫でていく。 「こ~ぼね~」 それだけで、まりさ達は呆けたような恍惚の表情を浮かべ……動きを、止めた。 そんなまりさ一家を、ゆゆ先生はスカートを持ち上げて一匹ずつ乗せていく。 「ゆうぅ~……」 「ゆぴっ、ゆぴい」 「ゆゆ~ん……」 「みゅー、みゅー」 そんな事をされてもゆっくり達は抵抗せず、ゆゆ先生のされるがままだ。 やがて全部のゆっくりをスカートで包むと、ゆゆ先生は俺を見てにっこりと笑った。 「ねえ、折角だからいっしょに食べない? もちろん、弟様には一番新鮮なものをご馳走するから……」 もちろん俺に不服はなかった。 少し遅くはなるけど、このくらいの道草ならいいだろう。 何より、久しぶりに逢ったゆゆ先生ともう少し話したい。 そう思い、俺は森に入っていくゆゆ先生の後を追った。 ざあざあと水の流れる音がする。 岩にぶつかった流れが水飛沫をあげ、それが気化して涼しげな風になる。 林道から少しおりたところにある渓流。 そこの小さな河原に座って涼みつつ、俺とゆゆ先生はゆっくりに舌鼓を打っていた。 「こぼねー。このまりさ、餡がしっとりしていて美味しいわ~」 幸せそうに子まりさ(妹)の頬をかじるゆゆ先生。 ゆっくりと餡と皮を咀嚼し、味わいながら飲み込んでいる。 ひと口が小さいし仕草も上品なので一見あまり食べてなさそうに見えるが、これで子ゆっくりは四匹目だ。 ここに座ってまだ十分くらいなのに、ハンドボールサイズだった子ゆっくりをさくっと三匹完食するとは。 「……ゆゆ先生、相変わらず健啖家ですね」 「夏はエネルギーを使うのよ~。弟様も遠慮しないで食べてね?」 「ええ、戴いてます」 とはいえ、ゆゆ先生の食べっぷりを見ているとそれだけで割と満腹になるんだけど。 そんな事を考えつつ、掌で転がしていた実ゆっくりを口に放り込む。 「ゆぎゅっ……!」 口のなかで微かに悲鳴をあげるのを舌で転がしつつ、奥歯で一気にかみしめる。 (ゆぎゃっ! も、もっぢょ……ゆっぐぢ……) 断末魔もみなまで言わせず、一気に咀嚼し飲み込む。 すっと解ける甘さと、きめ細やかな餡と皮の食感をのど越しに味わって、俺は次の実ゆっくりに手を伸ばした。 「……あ、もうないや」 「こぼね? あら、本当」 子まりさから唇を離し、ゆゆ先生が呟く。 「弟様、おかわりはいる?」 「そうですね……もうちょっと欲しいかな」 「こぼね~。判ったわ、じゃあまりさ、れいむ。またすっきりー! して赤ちゃん作りましょうね」 ゆゆ先生の言葉に、恍惚に呆けた表情のまま、まりさとれいむはぬちょぬちょと身体をこすりはじめた。 「ゆっ、ゆゆっ……れいむううぅ……」 「まりさぁ……ゆゆっ、ゆーっ……」 幸せそうにすーりすーりを繰り返す二匹。 「「すっきりー」」 やがて同時に叫ぶと、まりさとれいむの額から蔓がにょきにょきと生え、実ゆっくりが膨らみはじめた。 「相変わらず見事ですね、ゆゆ先生の実ゆっくり饅頭作り」 思わず感嘆の声が漏れた。 ゆゆ先生のこれを見るのは卒業以来だが、その時よりもさらに実ゆっくりの成る速度は上がっているようだ。 「こぼねー。当然よ……みんなのおやつを用意するのも、私のお仕事だもの」 子まりさを片手に微笑むゆゆ先生。 ちなみに子まりさは、もう3分の1ほどしか残っていない。 「そうでしたねぇ……俺がゆっくり好物になったのも、ゆゆ先生のおやつからですし」 「ふふっ、そうだったわね」 ゆゆ先生は、俺が産まれる少し前の山狩りで、ゆかりん姉ちゃんが保護したゆっくりだった。 その頃は胴なしだったらしいが、捕食種なのを生かして畑番にしようと、えーりん姉さん達が躾けた結果胴付きに成長したらしい。 そしてゆゆ先生は、村の学校の先生をしていた叔母さんのところに引き取られた。 畑番としてゆっくりを捕食しつつ、飼い主である叔母さんの手伝いをしていくうちに、だんだんと人手の少なかった学校の手伝いをすることが多くなり……。 俺が村の学校に入学した時、叔母さんが体調を崩したのもあって、その年度唯一の生徒だった俺の担任になってくれたのだ。 もちろんこれは非公式なもので、書類上はずっと叔母さんが俺の担任だったのだが……俺がゆゆ先生に懐いてしまったのもあって、なんだかんだで村の学校を卒業するまでの9年間、俺はゆゆ先生のもと勉学に励んだ。 俺が志望校に入れたのは姉さん達とゆゆ先生の熱心な指導のお陰だと、今でも感謝しているくらいだ。 「勉強のあとにご褒美だって食べさせてくれた、ゆゆ先生お手製の実ゆっくり……甘くて柔らかいあれ欲しさに、勉強頑張ったようなものでしたから」 まりさの茎から実ゆっくりれいむをひとつ千切り、口に放り込む。 舌と口腔で静かに潰すと、プチプチとした感触と一緒にトロリとした餡が口内に広がり……淡く、解けていく。 懐かしい味と食感。 他のゆっくりでは味わえない、ゆゆ先生だけの味だ。 「こぼね~。そう言ってくれると、毎日作った甲斐があるわ」 「中枢餡だけを壊しただけの植物ゆっくりを操るのって大変なんでしょう?」 「コツはいるわね。弟様のために毎日作っていたら覚えちゃったけど」 「この実ゆっくり、ゆゆ先生がオリジナルですもんね……」 ゆっくりは餡子で形質や言語、知識などを子に伝える。 そして、その中枢となるのは琥珀色の餡子の塊……中枢餡だ。 ゆゆ先生は、ひと撫でしただけでそのゆっくりの中枢餡だけを破壊することが出来る。 しかも、そうして中枢餡が破壊されたゆっくりを自在に操ることが出来るのだ。 中枢餡を破壊されると言うことは、ゆっくりにとって死を意味する。 他の餡子は残っているので外傷がなければ生きているように見えるし反射なども残っているが、自ら動くことはなくなる。 そして、そのまま放置していれば次第に餡子を消耗し、衰弱死していく。 だが、そうやって中枢餡だけを破壊されたゆっくりの餡は程よく甘く、なにより口内の体温で淡く消える口溶けの良さをもつ。 特に元々餡が柔らかく口溶けのいい実ゆっくりがその形質を受け継ぐと、これが独特の触感を持つ逸品になるのだ。 このゆっくりの製法はえーりん姉さんによってまとめられ、加工所によって商品化されている。 しかし、加工所の実ゆっくり饅頭など、ゆゆ先生手製のものに比べれば月とスッポン、ゆうかにゃんとでいぶだ。 こうして目の前で、ゆゆ先生によって操られ、幸福な表情のまますっきりーをして実ゆっくりを生やすゆっくりを眺めつつ、新鮮な実ゆっくりを堪能する。 えーりん姉さんと加工所には悪いが、この贅沢を味わってしまったら、大量生産品なんかで満足出来るわけがない。 「いやー、それにしても、今の生徒達が羨ましいですよ。ゆゆ先生のこの特製饅頭を食べられるんですから」 久しぶりの実ゆっくり饅頭に舌鼓を打ちつつ、俺は思わずそんなことを口走っていた。 嘘ではない。 俺の時は上と下二学年に子供がいなかったこともあり、学校にいる時はゆゆ先生をほぼ独占していたのだ。 人間さんでも多感でかつド阿呆な義務教育の9年間を共に過ごし、指導されてきたゆゆ先生はぶっちゃけ俺の初オカズさんだったりする。 「こぼね~……」 ちなみに姉さん達は小学校に上がるまでガチで血の繋がった姉だと思っていたし、その上で初恋の相手だったりするのだが、その辺は黒歴史なので是非記憶ごと封印したい。 『ぼくおねーちゃんたちみんなをおよめさんにするね!』 だから封印したいつってんだろ俺! 誰か俺の黒歴史を消しされ! すぐでいいよ! 「ゆゆ先生との学校生活は楽しかったですからねー。出来ることなら、またお願いしたいくらいですよ」 黒歴史を頭から追い出そうと、俺は話を続けた。 今の学校も楽しいけど、田舎からひとりだけ通っているというのはそれなりに大変だからな。 通学に片道二時間じゃ学校の友達ともろくに遊べないし。 「この特製饅頭を、村のガキ達と一緒に食べて……」 渓流の音のなか。 「……今の子達には、そのお饅頭は食べさせてないわ。普通の実ゆっくりだけ」 微かに。 ゆゆ先生の唇が動いたような……気がした。 「……え? なにか言いました、ゆゆ先生?」 「ううん、なにも? それより弟様、お饅頭もうひとついかが?」 「あ、いただきます」 「判ったわ。それじゃ……」 ゆゆ先生のしなやかな指が、実ゆっくり饅頭を摘み取る。 「先生が、食べさせてあげる……んっ」 そしてそれを唇で挟み。 ゆゆ先生は身を乗り出し、実ゆっくり饅頭を俺に差し出してきた。 「……ふぇ?」 あれ? 俺、今なにしてるの? ナニサレテルノ? なんでゆゆ先生が饅頭そっと咥えて俺に顔を寄せてるの? 「ん……さあ、弟様……」 ゆっくりらしく、唇に実ゆっくりを挟んだまま、ゆゆ先生が誘うように囁いてくる。 って、なんか実ゆっくり饅頭も幸せそうな寝顔してるし。 「えっと……」 このまま実ゆっくりを食べちゃっていいの? でもそうすると必然的にゆゆ先生の顔が超接近だよね? というか普通に食べると最後は唇までいっちゃうよね? 俺……姉ちゃん達以外とは経験ないんだけどっ? 「んっ……」 ゆゆ先生の頬がほんのりと染まっている。 だんだん身体が近づいて……俺の胸に、ゆゆ先生の上体が押しつけられる。 ふわふわの服の下で、反則級のボリュームが柔らかく潰れて……うわ、これはひじり姉よりっ……!? 「ゆ、ゆゆ先生……いいの……?」 思わず餡子脳なことを口走ってしまう。 いいも糞も、これってどう見てもOKサインだよな? でも……ゆゆ先生だぞ? 姉達とは別の意味で、俺にとっては特別な存在なのに……。 い、いいのか……? 「……こぼね~……」 口癖とともに、ゆゆ先生が小さく頷く。 もう、俺との距離はほとんどゼロになっていた。 お互いに抱き合って、顔を寄せているような状態。 「そ、それじゃ……」 覚悟を決め、俺はゆゆ先生……もとい、実ゆっくりに唇を寄せた。 小さく口を開き、そっと――かじる。 「ゆっ……」 ゆゆ先生の能力のせいか、実ゆっくりはそれでも穏やかな表情のままだ。 そんな実ゆっくり饅頭を、少しずつ咀嚼していく。 「こぼね……ん……っ……」 ゆゆ先生の顔が近づいてくる。 桜餡の淡い匂いが鼻腔をくすぐる。 そして、俺は……。 「……じー……」 俺は……。 「……ふーん……ゆゆったら結構やるわねぇ」 ……。 なんで視線を感じるのでしょう? ここには俺とゆゆ先生しかいないはずなのに。 誰か来ればすぐ判るはずなのに。 オチを大体予想しつつ。 微かな希望を込めて、おそるおそる視線を横に向ける。 「……じー……弟さんが、大人の階段をまた一歩登ろうとしています……南無三っ」 「やほー、弟ちゃん」 そこには。 スキマから顔を覗かせ、こちらをじっと見つめるゆかり姉ちゃんとひじり姉がいた。 「どぼぢで姉ちゃん達がここにいるのおおおおおおおおぉぉ!?」 「こぼねっ!? あ……ゆっゆかり様、ひじり様っ!?」 バックダッシュでゆゆ先生が俺から離れる。 胸に当たっていた柔らかな感触が消えて、ちょっと寂しい。 「どうしてって……ねえ?」 「畑仕事が終わったので、涼みがてら水浴びでもと思いゆかりん姉さんを誘ってスキマ移動してきたのですよ」 「そ、そうなんだ……」 スキマ移動ファック。 「そ。そしたら河原で、ゆゆと弟ちゃんがポッキーゲームならぬ実ゆっくりゲームをしてたのよ……ねえ、私も混ざっていい?」 「駄目に決まってるでしょおおおおぉ!?」 「ゆかりん姉さんっ!? そうです、そんなの駄目ですっ……混ざるなら私も一緒ですよっ!」 「ひじり姉もナニいってるのおおぉ!? おかしいでしょおおおおぉ!?」 「こっこぼねっ……すいませんゆかり様っ! 私は教師なのに、弟様を惑わすようなことっ……!」 スキマから出てきたゆかりん姉ちゃんに、ゆゆ先生が深々と頭を下げる。 ゆゆ先生にとって姉ちゃんは自分を保護してくれた命の恩人であり、躾け育ててくれた恩師でもあるのだ。 俺を『弟様』と呼ぶのも、ゆかりん姉ちゃんの弟だからだし。 ゆゆ先生からすれば、今の行為は、ゆかりん姉ちゃんへの裏切りに近いものだったんだろう。 しょんぼりと俯いて河原にしゃがみ込んでいるゆゆ先生は、ひどく小さく見えた。 そんなゆゆ先生を見下ろし、ゆかりん姉ちゃんは……。 「あー、別に私はいいわよ? 弟ちゃんを独占しようってつもりなら話は別だけど、ゆゆならそんな事しないだろうし」 あれ? 「……許して……くれるのですか……?」 「許すも許さないも……ゆゆの気持ちなんて、とっくに気付いてたわよ」 「むしろ、教師と生徒という関係の間はよく我慢してましたよね」 「そうよねー。私ならむしろそれをスパイスにしちゃうわ」 「……ゆかりん姉さんは爛れすぎです。煩悩退散、南無三っ」 ちょっと待って。 ふたりともなに言ってるの? ゆゆ先生の気持ちって……えっと、あれ? あれ? 「さて、と。折角だし、このまま弟ちゃんも一緒に水浴びする?」 がしっ。 棒立ちになっていた俺の左腕に、ゆかりん姉ちゃんが笑顔で抱きついた。 「そうですね……この間の、お風呂の続きを……」 右腕にひじり姉が抱きついて、身体を押しつけてきた。 姉妹の中では一番豊かな膨らみが、俺の腕を挟む。 「え? ちょっとふたりとも、ナニ言ってるの? 俺着替えとか持ってきてないし、まだお裾分けの途中だよ?」 「そんなの、日暮れまでに終わらせれば問題ないわよ……さて、ゆゆ?」 「は、はいっ!」 ゆかりん姉ちゃんに呼ばれ、ゆゆ先生が緊張した面持ちで顔をあげる。 「あなたの師として、友として誘うわ……私達と、弟ちゃんと一緒に……『水浴び』、しない?」 微笑みながらゆかりん姉ちゃんが告げる。 その言葉に……ゆゆ先生は、俺も見たことのない、少女のような満面の笑みを浮かべた。 「こぼね~! はいっゆかり様っ、喜んでっ!」 「ゆゆ先生までえええぇ~~っ!?」 「弟さん、暴れては駄目ですよ?」 「ふふっ、こうなるとえーりん姉さんも呼ばなきゃ恨まれるわね……ひじり、私ちょっと行ってくるわ」 「はい、ゆかりん姉さん」 「いっちゃ駄目でしょおおおおおおおおぉぉぉぉ!?」 夏の渓流に、俺の絶叫がどこまでも響く。 ……そして。 「いくらなんでも野外は羽目を外しすぎです。反省しなさい」 「うぅ、えーりん姉さんのいけずぅ……」 「南無三っ……すいませえええぇん……」 「こ、こぼね~……」 藪をつついたゆかりん姉ちゃんは、えーりん姉さんという大蛇に襲われて三人仲良く正座説教を喰らったそうな。 いや、俺は即行魚籠持って逃げ出したからよく判らないんだけど。 それにしても……。 女教師って、胸きゅんだよね? 「弟君もあとで正座」 「どぼちてっ!?」 ・おまけ 「こぼね~。ゆかり様、えーりん様、ひじり様~。お邪魔します~」 「いらっしゃい、ゆゆ。今日はいっぱいご馳走用意してるからゆっかりしていってね!」 「……あの、姉ちゃん。なんで俺エア巻物で簀巻きにされてるの? しかも全裸なんですけど……」 「それはもちろん、これから弟さんにゆっくり料理を盛りつけるからです!」 「俺にとってちっとも嬉しくない展開じゃねえか! 誰得だよ!?」 「そんなことないわよ? 盛りつけたゆっくり料理は、私達がみーんな直接口をつけて食べてあげるから」 「こ、こぼね~……先生も、ゆっくり料理残さず綺麗に食べるからね? 弟様の身体も、おくちで綺麗にしてあげる……」 「ゆゆ先生リミッター外れすぎでしょおおおぉ!? 姉さん! えーりん姉さん助けて! 助けてえーりん姉さん!」 「……野外じゃないから、セーフね」 「どうみてもアウトどころか没収試合でしょおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」 「と、弟さんが騒いでいる間に盛りつけ完了です、南無三っ」 「どぼちてっ!? うわっ、ゆっくりがキモイ! おもにローストゆっくりがキモイ!」 「では、いただきます。ん……はむっ」 「もぐ……ん、さすが母さんの料理は美味しいですね……ぺろ」 「なんで料理だけ置いて会合いっちゃうのかあさあああああぁん!」 「ちゅ……ちゅる、ちゅぷ……ん、んっ……弟君……」 「えーりん姉さんどこ食べてるのおおおおぉ!?」 「こぼね~」 あ? それでどうなったって? どうにもなってねえよ。 姉と恩師になに期待してるんだよ。 ……本当だよ? 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん(感想・挿絵ありがとうございます)
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夏の太陽がぎらつく中一人のゆっくりがふらふらと飛んでいた。ゆっくりチルノだ。 普通チルノは夏の間ひんやりした鍾乳洞をゆっくりプレイスとし、夏をやり過ごすものだが 中にはこのチルノのように鍾乳洞(ゆっくりプレイス)を見つけられないゆっくりもいる。 「きゅ~。」 ついに力尽きたチルノは地面に落ちてしまった。雪見だいふくのようなチルノの体は中身が溶けて小龍包のようにたぷたぷになっている。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ!」 チルノは冬までこのままなのだろうか? 「うー!うー!」 空を見上げるとうーぱっくが空を飛んでいる。 行き倒れのチルノを見つけると降りてきたうーぱっくはチルノを中に入れ、再び飛びあがった。 森の奥に飛んでいくと岩肌に板のような石が立てかけてあるのが見える。 うーぱっくは石の前で「うー!うー!」と鳴いた。すると中から石が開きひんやりとした空気が流れてきた。 そのまま中の洞窟に入っていく。洞窟の中はヒカリゴケの青い光でよりひんやりとした感じを与える。 中にはゆっくりチルノ達が飛びまわっている。うーぱっくの中のたれチルノを発見すると洞窟の中に出し、ふーふーと冷たい息を吹きかける。 みるみるうちにチルノの肌は張りを取り戻した。 「あたいってばさいきょーね!」 「うふふ・・・目が覚めた?」 視界の中に入ってきたのは胴付きのふくよかなゆっくり…ゆっくりレティだ。 「さあこれを飲んで元気になりなさい。」 差し出されたのはアイスコーヒーだった。チルノはそれを飲み干すとゆっくり心地がついた。 「ゆっくりしていってね!!!」と他のチルノ達があいさつすると チルノも「ゆっくりしていってね!」と挨拶を返す。しかしこんなところに鍾乳洞は無かったはずだが。 「ここはレティとあたいたちのゆっくりプレイスだよ!」 レティの説明によると洞窟ぐらいの広さならレティの力で冬のように冷やすことができる。食料は他のゆっくり達の食料をを冷蔵する代わり 一部を分けてもらっている。食料を運んできてくれたゆっくりにはかき氷をふるまっている。そうして冬が来るまでゆっくりしているのだ。 冬以外にレティを見かけないのはそのせいだ。しかしゆっくりチルノは”さいきょー”の自負が強いのか単なるおバカなのかカエル取りに夢中になって 鍾乳洞などのゆっくりプレイスから離れすぎて行き倒れになるチルノも多い。レティはそういったチルノを保護しているのだ。 早速このチルノも「恩返しがしたい」と言って外に出ようとしている。 「じゃあこのうーぱっくに入って行きなさい。」 レティはアイスや冷凍ミカンなどこの季節に食べられないものをうーぱっくで配達している。 チルノ達はうーぱっくの中に入って保冷剤の代わりをするのだ。その道すがらこのチルノのようにゆっくりしすぎて行き倒れたチルノを保護するのだ。 「ゆっくりいってくるよ!」 うーぱっくとともにゆっくりの森に飛んでいくチルノ。 「うー!うー!」 「ゆゆっ!うーぱっくだぜ!」 ゆっくりまりさの元に冷凍みかんが届けられた。 「ごくろうさんなんだぜ、これはお礼のコーヒー豆だぜ!」 お礼の豆を受け取ってうーぱっくの中に入ると今度はゆっくり川のゆっくりにとりの魚を預かった。今日は大漁だったようだ。 荷物を積み終えたうーぱっくはレティの洞窟へ帰って行った。 しかし帰り際カエルの群れを見かけるとチルノはたまらず外に飛び出した。 危うくまたたぷたぷになりかけたが今度はそうなる前にうーぱっくに戻り難を逃れた。 カエルの氷漬けも成功しお土産に持って帰った。 こうしてレティとチルノ達は夏を耐え凌ぐ。 ゆっくりできる冬が来るまで。 こういう助け合いの関係 良いですね♪ -- 名無しさん (2010-03-11 14 24 16) 名前 コメント
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・駄文長文注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。そしてガチのHENTAIです。 ・それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。 ・重要:おまんじゅうあきさん、HENTAIあきさんリスペクト。でもごめんなさい。 *** 「ん~、ゆっくり狩りなんて久しぶりねー!」 夏の日差しの中、ゆかりん姉ちゃんが大きく伸びをした。 いつもの紫のドレスに白の長手袋。 そして今日は白い日傘をさしている。 「ねえ、ゆかりん姉ちゃん。それどう見ても山に入る格好じゃないよね?」 「いいのよ。私は弟ちゃんに付いてスキマ移動するだけだから」 「南無三っ! 最初から楽する気満々なのは良くないと思いますよっ!?」 「こぼね~。ひじり様、気にしてもしょうがないですよ~。それがゆかり様ですから~」 「……ゆゆ、さりげなく酷いこと言ってない?」 「ゆかりん姉ちゃんこそ、少しは自分の所行を顧みようよ」 その横にいるのはひじり姉とゆゆ先生。 ふたりとも格好はいつも通りだが、流石に足にはトレッキングブーツを履いているし、頭にお飾りのないひじり姉は麦藁帽子をかぶっている。 「なによぉ~? そんなこと言うなら、弟ちゃんのゆっくり袋運んであげないんだからね?」 「スキマって便利だよねっ、ゆかりん姉ちゃん最高!」 「弟さん……」 「弟様ぁ……」 「だってゆっくり袋運ぶのマジで大変なんだよ!?」 ゆっくりが詰まっているだけあって、ひと袋50キロ前後あるし! 生け捕りだから中で動いて運びにくいし! 「それも修行です……と言いたいところですが、少しくらい私が運んであげますよっ!」 「私がゆっくり使って運んであげてもいいのよ~?」 「やめてよふたりとも! そんなことされたら、私が弟ちゃんの側でべたべた出来なくなっちゃうじゃない!」 「「べたべたさせない為に言ってるんです!!」」 「ゆがーん!?」 「いやゆかりん姉ちゃん、ばあちゃんの山なんだし、少しは自重しようよ……」 ショックを受けるゆかりん姉ちゃんに、俺はそっと突っ込んだ。 そもそも俺達が何故ばあちゃんの山にいるかと言うと、うちの村の名物のひとつ、夏巣立ちのゆっくりを捕まえる為だ。 この季節。春に生まれ、梅雨を乗り越えた赤ゆっくり達は、夏がもたらす豊富な餌によって亜成体にまで成長する。 そして、この地域では8月に入ると一斉に亜成体ゆっくりは巣立ちしていくのだ。 その主な理由は三つ。 夏であり、狩りの腕が未熟な亜成体でも十分な餌が取れること。 秋の越冬準備前に縄張りを決められ、その間に番を探せること。 そして、子ゆっくりの成長で巣の中が手狭になり、暑気に当てられたゆっくり達が余裕のある巣穴を希求しだすことが挙げられる。 その結果、この時期の山は、巣立ちしたばかりの亜成体ゆっくりがあちこちで跳ね回ることになるのだった。 赤ゆっくりよりは引き締まり、しかし生体ゆっくり程には固くない独特な食感の皮。 豊富な栄養によって太り、かつ程よく苦労を味わって深みを増した餡。 その味はさる著名な食通をも唸らせた程であり、それゆえにこの村の夏巣立ちゆっくりは貴重な天然食材として珍重されている。 特に、ばあちゃんの山のゆっくりは限りなく自然のままに飼育されていることもあって、質が高いと評判だった。 まあ、ぶっちゃけた話。 狩りを手伝うと結構いい小遣い稼ぎになるのだ、これが。 「なによなによっ!? そんなに私だけべたべたするのが駄目なら、ゆゆとひじりも一緒にべたべたすればいいじゃない!」 「「それでいいなら喜んで!」」 「2秒で懐柔されちゃ駄目でしょおおおおおおぉ!?」 さくっと意気投合しかけた三人に、今度は全力で突っ込む。 なんだその『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』理論はっ!? 「そもそも今日は村の人と班分けするから一緒に回れるかも判らないんだよ!? つか俺なら絶対別々にするから、自重しようよ三人とも!」 「え~?」 「こぼね~?」 「南無三~?」 「揃ってぼやかない! あとひじり姉は南無三の使い方おかしいから!」 スキマを使って捕まえたゆっくりを運べるゆかりん姉ちゃん。 中枢餡を破壊したゆっくりを使役できるゆゆ先生。 そもそも体力が羆並みなひじり姉。 山でのゆっくり狩りで一番重労働な、ゆっくりを詰めた袋を運ぶことに長けている三人をひとつところに固める理由はない。 村のみんなに声をかけて応援を頼んでいるのだから、輸送力も含めて能力が均等になるよう班分けするのは当然だ。 そして経験上、ゆかりん姉ちゃんは俺と同じ班に回される。 別の班にしても、どうせスキマ移動で俺にちょっかいかけに来るのが判っているから。 だからここは、ひじり姉とゆゆ先生には涙を呑んでもらうしかないのだ。 決して俺が楽をしたいからではない。班決めは俺ノータッチだし。 「なにを騒いでいるのよ……」 「はははっ! 相変わらず弟殿のところは賑やかだな!」 「あ、えーりん姉さんにかなこさん。班分けは決まった?」 そう。班決めでゆっくりを振り分けているのは、本部詰めのえーりん姉さんと、ばあちゃん監督のもと全体の指揮を執るかなこさんなのだ。 決して俺を贔屓したりはしないふたりだが、ゆかりん姉ちゃんの性格と行動を考えれば俺と同じ班にするしかないのである。 まあ……その結果、大抵俺とゆかりん姉ちゃんの班は他の面子が戦力外になるんだけども。 「ええ、決まったわよ。ゆゆことひじりは弟君とは別の班ね」 「南無三っ? えーりん姉さん、今年も別なんですかっ?」 「こぼね~。残念です~」 「ゆゆこは仕方ないでしょ。今年も学校の児童達が来てるんだから。叔母様ひとりに引率させるつもり?」 「こぼね~」 赤と青、いつものナース服っぽい衣装の上から白衣を羽織り、何故か眼鏡をかけたえーりん姉さんがゆゆ先生を諭す。 ま、夏休みの自由研究で、村の名産品である夏巣立ちのゆっくり狩りに参加する子供は毎年いるからな。 ゆゆ先生も叔母さんの飼いゆっくりである以上、叔母さんと同じ班……つまりは児童の引率役として割り振られるのは仕方がない。 「ひじりは母さんと同じ班に入って」 「南無……はい、判りました」 もちろん孫の俺が駆り出されているのだから、娘である母さんも当然駆り出されている。 一緒に野良仕事をしているひじり姉はそこに入ることが多い。 「ということは……今年も私は弟ちゃんと一緒ねっ?」 日傘をくるくる回し、ゆかりん姉ちゃんが笑みを浮かべる。 「……そういう事になるわね。いい? 弟君の邪魔しないで、ちゃんと働くのよ?」 「判ってるわよ姉さん、今年も私と弟ちゃんが一番になってみせるわ」 「ははっ、さすがは三年連続の捕獲量トップ班だな! 今年も期待しているぞ?」 「ゆっかり任せなさい!」 「かなこ、この子をあまり煽らないで……すぐ調子に乗るんだから」 「なに、ゆかりは少し調子に乗って生意気なくらいがいいのさ。その方が私も張り合いがでる」 「指揮する人間が張り合ってどうするのよ……」 ゆかりん姉ちゃんとかなこさんの会話に、えーりん姉さんがそっとこめかみを押さえる。 長女は大変だね、姉さん。 末っ子の俺が言うのもなんだけど。 ちなみに、元が保護ゆっくりだった姉さん達の年齢は厳密には不明だ。 なにしろ生年がいつかも正確には判らないのだから。 ただ……母さんやばあちゃんに拾われた時はみんな子ゆっくりだったので、登録票には拾われた歳が生年として記されている。 その順番で言うと、えーりん姉さんが長女、かなこさんとゆかりん姉ちゃんが同い年で二女と三女、ひじり姉が四女でゆゆ先生が五女になる。 だから、ゆゆ先生とかなこさんは母さんが保護して躾けたあとに叔母さんやばあちゃんに譲られたけど、姉ちゃん達の感覚では自分達は五姉妹なのだそうだ。 えーりん姉さんが何かとかなこさんやゆゆ先生を気にかけるのも、多分その辺があるからなのだろう。 それで苦労してる辺りも、えーりん姉さんらしいと思う。 「それで姉さん、俺達の班にはあと誰が入るの?」 「かなこの処のさなえとすわこよ」 「……人間は俺だけか」 「人手不足だからな!」 「そうだね、人手不足じゃ仕方ないよねー」 でもかなこさん、それ自慢げに言う事じゃないからね? 確かにうちの村は加工場関係者抜くと人口も平均年齢もちょっと笑っちゃうことになるけどさ。 「それじゃみんな、あと30分で出発だから所定の場所に移動しなさい……気をつけるのよ?」 「はい、えーりん姉さん」 「こぼね~。弟様、またね~」 「ゆっかり頑張るのよ~」 えーりん姉さんに促され、所定の位置へと移動するひじり姉達。 それを見送っていると、本部のある方からぽいんぽいんと二匹のゆっくりが跳ねてきた。 緑の髪にカエルとヘビのお飾りを付けたゆっくりさなえと、金髪に目玉の付いた黄色い帽子をかぶったゆっくりすわこだ。 「ゆゆっ……かなこさま、ゆっくりしていってくださいね!」 「あーうー!」 「おお、来たか。弟殿、こいつらが今日一緒に山に入るさなえとすわこだ。宜しくしてやってくれ」 「ん、了解。すわこもさなえも頑張ろうな」 「はい! さなえ、ゆっくりがんばります!」 「あーうー! すわこがんばるー!」 ぽいんぽいんとその場で跳ねながら、すわことさなえが元気に答える。 そのお飾りには、狩猟用ゆっくりであることを示す『猟』と刻印された銀色のバッジが輝いていた。 まあ、狩猟用と言っても能力的にほぼ対ゆっくり限定だから、ゆっくりの多く棲むこの山くらいでしか使えないんだけどね。 *** 「ゆっゆっゆっ……!」 山の中、ゆっくりが踏み固めた道をゆっくりまりさが跳ねていく。 「ゆっくりにげるよ! にんげんさんにはつかまらないよ!」 「はいはいゆっくりゆっくり」 それを歩いて追いかけながら、俺はまりさを観察していた。 バレーボールより一回りほど小さいサイズ。金髪にくすみはなく、まりさ種独特の帽子は黒々としていてリボンも綺麗な白。 うん、この夏巣立ちした亜成体で間違いない。 それもかなり状態の良い個体だ。 「まあ俺に捕まらなくてもいいんだけどなー……さなえ、すわこ、行けっ!」 「あーうー! いっくよー、さなえー!」 「はい、すわこさま!」 俺の号令に応え、すわこが跳ねる速度を上げてまりさを追いかけていく。 それを確かめ、さなえは跳ねながら大きく空気を吸い込んだ。 「まりささん! ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!? ゆっくりしていってね!?」 「ゆっくりしていってね!?」 さなえの挨拶に立ち止まり、ぽいんと跳ね上がってまりさが挨拶を返す。 その隙にすわこはまりさに近づき、着地するまりさにタイミングを合わせてのしかかった。 「あーうー!」 「ゆびいいぃっ!? ちゅ、ちゅぶれるううううぅ!」 上から押さえつけられ、まりさが苦しげに呻く。 そこに追いつくと、俺はまりさを掴みあげ、背負ってきた袋に放り込んだ。 「おそらをとんでるみたいっ!? ゆゆっ? ここはなんだかゆっくりできるよ? ゆ……ゆゆうぅ……」 加工場特製のゆっくり袋は、中に放り込まれたゆっくりを暗さと狭さと袋に染みつかせた匂いで強制的にゆっくりさせる。 まりさが大人しくなったのを確かめ、俺は袋を背負い直した。 「よくやったぞ、さなえにすわこ。ほら、ご褒美だ」 「ありがとうございます、おにいさん!」 「あーうー! おにいさんありがとー!」 ポケットの小袋から特製かりんとうをふたつ取りだして二匹に与える。 「あまあまー! しあわせですー!」 「あーうー! あまあまー!」 「そっか。そこで大人しくしてろよ?」 このかりんとうは甘さ控えめで、ゆっくりにも食べやすい硬さに焼いてあるので、ゆっくりへのご褒美に丁度いい。 しあわせー、な表情でかりんとうをむーしゃむーしゃするさなえとすわこをその場に残し、俺は獣道を離れる。 草を掻き分けて少し進むと、半坪ほどの窪地に一匹のゆっくりまりさがいるのが見えた。 のーびのーびして、獣道の様子をしきりに伺っている。 さっきの挨拶で余分な声が聞こえたと思ったが、やっぱりか。 「……ゆゆ!? にんげんさんなのぜ!?」 「はいはいゆっくりゆっくり。まりさは巣立ちしたばかりのゆっくり?」 見た感じバスケットボールサイズの成体だし、金髪も帽子もちょっと汚れているからまず違うとは思うが、一応聞いてみる。 「ゆっ? ちがうのぜ! まりさはこのまえおちびちゃんをすだちさせたのぜ! いまはあきさんのしゅっさんっ! にむけてかりをしてるのぜ!」 聞かれたこと以上の事を勝手に喋ってくれるまりさ。 「そーなのかー」 「そうなのぜ! このあたりにさいきんゲスがすみついたってうわさをきいてたから、けいかいしていただけなのぜ!」 こういうところで余計なことを口走って潰されるのがゆっくりなんだが、このまりさはそこまで餡子脳ではないらしい。 むしろ、ゆっくりにとっては重要な、今の俺にしてもそれなりに有用な情報を喋ってくれた。 「情報ありがとう。それじゃ、ゆっくり狩りをしていってね!」 「ゆゆ? ゆん、ゆっくりしていってね!」 俺の挨拶に行っても安全だと判断したのか、まりさはぴょんぴょんと跳ねていった。 うーん。やっぱ、ばあちゃんの山のゆっくりは出来ているなあ。流石かなこさんが容赦なく躾けているだけはある。 「にんげんはまりさをゆっくりさせるんだぜ!」 とか、 「れいむにあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 とかのビキィワードは口にせず、人間を見下げたりしないが、かといって人間を必要以上に怖れもしない。 人間は自分達を食べるし、ゆっくりさせてくれない怖い存在。 でも、里に下りて畑を襲ったり、おうち宣言をしたり、『とおせんぼ』しない限りはそうそう制裁されることはない事も知っているのだ。 なので俺も、ああいうゆっくりは何もせず見逃すことにしている。 捕まえたところで選別する時にはねられるから、荷物になるだけだし。 「しかし、ゲスねぇ……」 多分、山の外から流れてきたんだろうけど……タイミングの悪い奴だ。 今回の狩りは夏巣立ちのゆっくりだけを捕まえて、他のゆっくりは見逃すのが基本方針。 だけど、ゲスとれいぱーは除外されてるんだよなー。 街ならともかく、かなこさんが管理して常にある程度の淘汰圧をゆっくりに与えている(今回の狩りもその一環だ)この山に、ゲスやれいぱーは邪魔なだけ。 だから今回も、ゲスやれいぱーは見つけしだい駆除していいことになっている。 もちろん虐待だってOKだ。 ばあちゃんの山のゆっくりを虐待できる機会なんてそうそうないので、中には夏巣立ちのゆっくりよりもゲス虐待目当てな鬼威惨もいる。 俺はそこまでする気ないけど。 ゲスに出遭ったら制裁はするにしても、自分から探そうとは思わない。 それよりも夏巣立ちのゆっくりを探した方がいいからな……主に、俺の懐的に。 夏は何かと入り用だし。 「惜しいわね~。ゲス言動したら、私がスキマ落下の刑にしてあげたのに」 不意に。 背中に柔らかな感触が押しつけられ、耳元で声がした。 「ゆかりん姉ちゃん、地味に怖いこと言わない。あと肩に顎乗せないで」 「ん~? いいじゃない、姉弟なんだし」 「いやそれ姉弟関係ないでしょ。だいたいそれ、くすぐったいんだからさ……」 「んふふ」 俺の抗議を軽やかにスルーして、スキマから身を乗り出したゆかりん姉ちゃんが、俺の肩に首を乗せたまま頬をすり寄せてくる。 といっても、かなこさんみたいに積極的なすりすりじゃなく、そっと押しつけてくる感じだ。 「ん~、弟ちゃん、すべすべ~。でもやっぱり男の子よね、逞しくなってぇ……」 「だからくすぐったいってば……ほら、抱きつかないのっ」 「弟ちゃんったらつれないわね~? せっかくふたりっきりなんだから、もうちょっと甘えてくれてもいいのよ?」 「甘えてたら夏巣立ちのゆっくりを捕まえられないでしょ。今年も捕獲量一番になるんじゃなかったの?」 「大丈夫よ~、もう二十匹、二袋も送っているんだから。少しくらいゆっくりしても他の班は追いつけないわ」 ……その油断は敗北フラグだと思うけどなー。 とはいえ、山に入って3時間ちょっとで22匹はかなりのハイペースなのも確かだ。 巣立ちゆっくりは当然だが大抵単独行動しているから、家族狩りみたいに芋づる式に獲れる訳じゃない。 それを考えると、少しくらいは休憩してもいいか。 「じゃあ、少し早いけどここでお昼にする?」 「ええ、そうしましょ。すわこ、さなえー、こっちいらっしゃーい」 「あーうー」 「はい、ゆかりさま」 草を踏み分け、さなえとすわこが跳ねてくる。 その二匹を迎え、俺は草の上に座り込んだ。 「姉ちゃん、弁当~」 「はいはい」 スキマを開き、ゆかりん姉ちゃんが手を突っ込む。 しばらくして引き抜かれた手には、風呂敷に包まれたお重と水筒が抱えられていた。 「今日のおかずは鶏の唐揚げに卵焼きよ」 「あーうー! すわこたまごやきすきー」 「おむすびはみんなで作ったの。具は食べてみてのお楽しみっ」 「またびっくりおむすびかっ!?」 「この間みたいに実ゆは入ってないから安心しなさい」 「それなら……」 「入っているのは赤れみりゃだから」 「おむすびの具としてはマシだけどそれもどうよ!?」 「……さなえはごはんさんだけでいいですよ?」 お重を開き、わいわい言いつつ弁当を使う。 「あら弟ちゃん、両手が唐揚げとおむすびで塞がってるじゃない……はい卵焼き、あーんっ」 「別に自分で食えるんだけどなあ……あーん」 ゆかりん姉ちゃんが、卵焼きを箸で摘んで差し出す。 それを一口で食べると、卵の旨みと砂糖の甘さがじんわりと口内に広がった。 「ね、美味しい?」 「うん、旨いよ……この味付けはゆかりん姉ちゃん?」 「正解! さすが弟ちゃんね、ご褒美あげる……んっ」 突っ込む間もなく、頬に柔らかな感触が触れる。 小さく差し出された舌が、ちろりと頬を舐めあげていった。 「ぶうっ!? ねっ姉ちゃんっ、こういうところではソレ止めようよっ!?」 「いいじゃないの~、お姉ちゃんの愛の証よっ」 「……」 「あーうー! たまごやき、すわこもー!」 「くす……はい、すわこもあーん」 「あーん! むーしゃ、むーしゃ……しあわせー!」 すわこに卵焼きを食べさせ、姉ちゃんが微笑む。 流石にかなこさんが躾けたゆっくりは、胴なしでも虐める対象にはならないらしい。 まあ、姉ちゃんもゲス制裁派であって虐待派じゃないからな。 「……じー」 ふと気付くと、さなえがこちらを見上げていた。 「さなえは何が食べたい?」 「えっ? あ、さなえは……その、からあげさんがたべてみたいです……」 「ん、それじゃ俺のを半分やるよ。ほら、口開けろ」 「ありがとうございます、おにいさん……あーん」 手に持っていた唐揚げを半分に千切り、口の中に放り込む。 「むーしゃ、むーしゃ……おいしいですー! かなこさまがくださるやきとりさんみたいですね!」 「そりゃ同じ鶏肉だからな……ほら、皮も旨いぞ~」 「ありがとうございます! あーん」 ぱあぁっと顔を輝かせるさなえに俺もゆっくりしながら、残りの唐揚げを食べさせてやる。 「むーしゃ、むーしゃ……しあわせですー! かなこさまがおっしゃるとおり、おにいさんはとてもやさしいにんげんさんなのですね!」 「そうかぁ? 唐揚げひとつでそこまで言うのは正直どうかと思うぞ?」 「そうですか? でもかなこさまはいつも、おにいさんのことをほめていますよ?」 「……そうなの?」 「はいっ」 「うあー……」 姉が自分の知らないところで自分を褒めていた。 それを他人(ゆっくりだけど)から聞かされるのってなんでこう気恥ずかしいんだろう。 「……あいつ、自分のゆっくりに変なこと吹き込んでないでしょうね……」 「へんなことってなんですか?」 「弟ちゃんは自分の婿だとか、そう言う類の事よ」 「いや流石にソレはないだろ……」 「はい! かなこさまは、おにいさんのおよめさんになるのだといつもいっています!」 「んぐうっ!?」 「だじょおぉっ!?」 あ。 喉に。 赤れみりゃが。 「~~っ!」 「あーうー!? お、おにーさーん!?」 「たいへんですゆかりさま! おにいさんが!」 「……ほほぉ。かなこの奴、そんなこと言ってたの……」 「いえ、ほほぉじゃなくてですね!」 「~~~~っっ!!」 「はいはい、お水ね弟ちゃん。麦茶でいい?」 「~~~~~~っっっ!!!」 コップに入った麦茶。 一気に。 流し込む。 「ちゅべたいんだぢょおおおおぉぉ!?」 「~~~~~~~~~~~っっっっ!!!!」 「ああっおにいさんがしちてんっばっとうです!!」 「あーうー!?」 やべえ。 赤れみりゃ。 活きよすぎ……。 「ああ、大丈夫よ。水は飲めたし、あとはこうして背中を叩けば……」 ぽんぽん、ぽんぽん。 「っっ!? っ!! っっっ!!!」 「そろーり、そろーり……」 「ほ、ほんとうにだいじょうぶなのですか?」 「そろーり、そろーり」 「あーうー!?」 「しょろーり、しょろーり……」 「大丈夫、大丈夫……だからすわこ、さなえ」 喉で、赤れみりゃが、じたじた。 「はい?」 「あーうー?」 「そこのゲス一家にお弁当取られないようにね」 「ゆっへっへ……このまりささまが、こっそりごはんさんをいただく……って、なんでばれてるのぜええぇ!?」 「気付かない方が餡子脳でしょ……ほら弟君、吐いちゃいなさい」 ぽんぽん、背中が、叩かれて。 優しく、背中を、撫でられて。 苦しいけど、気持ちいい。 「ゆへへ……ばれちゃしかたないのぜ! このごはんさんはまりささまがいただくのぜ!」 「れいむがむーしゃむーしゃしてあげるよ!」 「まりちゃがたべちぇあげりゅのじぇ!」 「ゆん! そんなことはさせません!」 「あーうー! すわこたちのごはんだよー!」 すわこと、さなえが、ゲスのまえ。 「うるさいのぜ! くそにんげんをたおしたまりささまにさからうのかぜ!?」 「ゆっふっふ、まりさはつよいんだよ! あのくそどれいをやっつけたんだよ!」 「おとーしゃんはちゅよいのじぇ!」 俺が、いつお前らに、倒された? ゲスは本当に、餡子脳だな……。 「それいじょうちかづくのなら、かりますよ!」 「たたっちゃうよー!」 「ゆへん! これをみても、そんなことがいえるのかぜ!?」 「っ!?」 ゲスが、口からナイフを、取りだした。 「ゆっ!? そんなもの……さなえはこわくありません!」 「すわこもだよー!」 「ゆっへっへ……ばかなかいゆっくりなのぜ。このないふさんのさびになるのぜ!」 やばい。 すわことさなえに何かあったら。 かなこさんが、悲しむ……! 「ゆんっ! いくのぜええええぇ!!」 ゲスまりさが、ナイフを振るう。 かなことすわこが、身構える。 二匹を制そうと、口を開く。 ゆかりん姉ちゃんが、背中を叩く。 赤れみりゃが、喉で暴れて。 「~~~~っっ……げほっっ!!!!」 俺は思いきり咳き込んだ。 何かが飛び出していく感覚がして、喉が一気に楽になる。 「おじょらっ!?」 「ゆべえええぇっ!?」 一瞬後。 びしゃりという音がして、ゲスまりさの右目に小さな肉まんが激突した。 「ゆびぇえええええぇぇっ!? ま、まりざのおべべがあぁ~~っ!?」 「ううぅ~、いぢゃいんだじょ~!」 あ、赤れみりゃまだ生きてた。 さすが捕食種、凄い生命力だ。 多分、柔らかい目の部分にぶつかったからだろうけど。 「いだいじょ~……う? こりぇ……あまあまだじょ~!」 潰れた目玉の奥から餡子が滲んできたのか、赤れみりゃの声が嬉しげなものに変わる。 「あまあまちゅーちゅーしゅればいぢゃくなくなるんだじょ~! ぢゅ~っ!」 「ゆがあああああぁぁ!? なんでれみりゃがいるんだぜええええぇ!? ま、まりざのあんごずわないでねえええええぇぇ!?」 「う~! あまあま~!」 「いだいいだいいだいいいぃ! おべべにはいらないでえええぇ!!」 あー……思いがけず捕食種による残虐行為手当が。 ま、ゲスだからいいか。 「ゆぎゃああああぁっ!? れ、れみりゃはばりざだげだべでねええぇ!? がわいいでいぶをだべないでねええええぇ!?」 「おぎゃーじゃんなんじぇぞんにゃごぢょいうんだじぇえええぇ!? ぞんにゃごどをいうげしゅおやはぢねええええぇぇ!!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおぉぉ!? ぞんなごどいうゲスおぢびじゃんはいますぐじんでねええええぇぇ!!」 ゲスまりさを助けようともせず、親子で罵倒しあいながら逃げようとするゲスれいむとゲス子まりさ。 「げほっ、げほ……ゆかりん姉ちゃんっ!」 「はいはい。弟ちゃんを奴隷呼ばわりしたゲスは送っちゃうわよぉ?」 「ゆっぐりにげるよおおおぉ!!」 「にげるのじぇええええぇぇ!!」 知らなかったのか? 姉ちゃんからは逃げられない。 俺の背中を優しくなで続けながら、ゆかりん姉ちゃんはゲスれいむとゲス子まりさの足元にスキマを開いた。 「ぞろぉーりっ、ぞろぉーっ……おぞりゃっ!?」 「おじょらどんでりゅみじゃいっ!?」 開いたスキマに親子ゲスが吸い込まれる。 「はい、繋げちゃうわね」 そして、そのスキマの真上に開く新たなスキマ。 そこかられいむとまりさが落ちてきた。 「どんでるみだいいいいいいいいぃぃ……どぼぢでまだおぢてるのおおおおおぉ!?」 「ぎょわいのじぇえええええええぇぇ……ゆっ、にゃんで、にゃんでまちゃおちるのじぇえええぇぇ!?」 上と下に開いたスキマの間を落ち続けるゲス親子。 「これはおまけ」 更にゆかりん姉ちゃんは近くの木の枝を何本か手折り、スキマを落ちるゲス親子にぶつかるように投げ入れた。 一緒に落下しだした枝葉が、空中でもがくゲスれいむとゲス子まりさの身体を容赦なく叩く。 「ゆゆっ!? えださんやべでっ、やべでねえぇ! ぢくぢくじないで、えださんはれいむをだずげでねええぇ!!」 「まりじゃを! まりじゃをだじゅげるんだじぇえええええ!!」 更に枝に繁ったままの葉がぶつかり、ゲスれいむとゲス子まりさの身体に緑の葉肉を擦りつけていく。 「「ゆっ……ゆげええええええぇぇぇっ!?」」 ……それだけで、ゲス親子は苦しみだした。 「にがっ! にがあああぁっ!! なにごれえええぇぇ!! なんでえださんもはっぱさんもにがいのおおおぉ!? ゆげええ!!」 「にぎゃいのじぇ、くるちいのじぇえええええええ!! ゆげっ、ゆげっち! げりょ、たしゅ、だじゅげでえええぇ!!」 「姉ちゃん、あれって……」 「ええ、ニガキの枝よ」 ゆかりん姉ちゃんが楽しげに微笑む。 ニガキ。この辺だと普通に見る樹木だ。 木材としては軽く丈夫で加工しやすく、樹皮には殺菌作用があって漢方薬にもなるのだが……。 この木、とにかく苦い。 幹も枝も実も葉も、全ての部位に苦味成分があるのだ。 そんな物に、体表全てが感覚器官なゆっくりが触れ続けたらどうなるか。 「ゆぎゅっ、ゆぎょおおおおぉ! にがっ、にがいいいいいいぃ!! おじょらっ、おぢでええぇ……にぎゃいのおおぉ!!」 「おじょらどんでっ、にぎゃっ! にぎゃいのじぇええぇ!! ぼうやだぁ、まりじゃがえるっ、おうじがえるううううぅ!!」 ……控えめに言って、地獄の苦しみを味わう事になる。 文字通り全身で恐怖と苦痛を感じつつ、ニガキの枝と一緒にスキマを落ち続けるゲスれいむとゲス子まりさ。 「ゆっゆっゆっゆっ……も、もうゆるじでえええぇぇ! ぢんじゃう、ばりざじんじゃうのぜええええぇ……!!」 「うー、うー! あまあまいっぱいだじょー!」 潰れた目玉から赤れみりゃに侵入され、身体の中から餡子を吸われ続けているゲスまりさ。 「……うわぁー……」 「……あーうー……」 それを見て呆然としているさなえとすわこに、俺は声をかけた。 「おーい、戻ってこーい。さっさと飯済ませて狩りに戻るぞー? この辺はこいつらの声でゆっくりも逃げてるだろうし、足伸ばすからなー?」 「まだここでごはんたべるんですかっ!?」 「あーうー!? ゲスおいてどこかいこーよー?」 「当たり前でしょ?」 「何言ってるんだ?」 驚く二匹に、ふたり同時に口を開く。 「ぼうやべでええええぇぇ!!」 「おぢるううううううぅぅ!!」 「にぎゃいいいいいいいぃ!!」 「「たっぷり苦しませたあと、ちゃんと潰すまでがゲス制裁。ここを離れて万が一にもゲスを逃がす訳にはいかないの」」 ゲス達の悲鳴に、俺と姉ちゃんの声が重なった。 *** 「お帰り、弟殿! いやー、今年も見事なものだったな!」 夕方。 山を下りてきた俺達を、かなこさんが出迎えてくれた。 「ふふっ、今年も私達が捕獲量はダントツでしょ?」 「ああ。娘殿とひじりも随分と頑張っていたが、弟殿達には及ばずだ。大したものだな、ゆかり!」 「当然! これが愛の力って奴よ!」 俺の腕に抱きつき、ゆかりん姉ちゃんが得意げに微笑む。 ゆかりん姉ちゃんはゆっくり詰めた袋をスキマで送っただけで、それ以外の労働は俺とさなえとすわこでやったんだが……まあ、言うまい。 楽させてもらったのは確かだからな。 ゲスも潰したあとはスキマ送りで村の加工場に廃棄させてもらったし。 「そうか! 愛なら私も負ける気はないが、今回は素直に褒めてやろう! 弟殿の班のゆっくりは量も質も素晴らしかったからな!」 「あーうー! かなこー!」 「かなこさまー!」 嬉しげに笑うかなこさん。 その足元に、すわことさなえがぴょんぴょん跳ねてきた。 「おお、さなえにすわこもご苦労だった! 弟殿の言うことをちゃんと聞いたか? 良い子にしていたか?」 その二匹を抱き上げ、かなこさんが笑顔を向ける。 そんな育ての親を見上げ――。 「もちろんですっ! れみりゃすぱーくでゲスをせいさいするおにいさんに、さなえはぜったいさからいません! どんなめいれいにもしたがいます!」 「あーうー! すわこはいいこー! すわこはいいこー! だからせいさいしないってゆかりにおねがいしてー! スキマこわいー!」 「「せいさいごはんはもういやー!!」 半泣きの表情で、さなえとすわこは必死にそう訴えた。 「……ゆかり、弟殿?」 「あ、あははは……山でゲスに絡まれたから制裁したんだけど……ちょっと、その子達には刺激が強すぎたみたいでねー……」 「いやー、なんか色々あって、俺が変な能力持ってるって誤解しちゃってさ……あ、天に誓ってその二匹には手を出してないよ? な?」 「「はっはひいいい!! おにいさんはとってもすてきでやさしいにんげんさんですううぅ!!」」 うん、どう見ても俺が無理矢理言わせてる風だねっ。 でも本当に何もしてないんだよ? ゲス達は俺らが食事終わるまで放置して、制裁の仕上げに揉み込んだニガキの葉をたっぷり口に突っ込んでやったけど、それだけだし。 ゲスまりさを喰ってた赤れみりゃなんかちゃんと逃がしてやって感謝されたんだぜ? 「おにいさんのなかはままみたいにぬくぬくだったじょー!」って。 それなのに、この反応。 ……いや、ゆかりん姉ちゃんのノリに合わせてちょっと調子に乗っていたのは認めるけどさ。 「……ふぅ。とりあえず、こいつらはえーりんに診て貰うことにして……弟殿、ゆかり?」 「はっはいっ!?」 「な、なによぉ……!?」 「何故このようなことになったのか……説明して貰うぞ?」 笑顔のまま、怒りのオーラを浮かべるかなこさん。 その迫力に射すくめられながら、俺はゆかりん姉ちゃんと一緒に笑顔で頷きつつ、心の中で呟いた。 『どうしてこうなった?』と。 ・おまけ『ゆっくりさなえは胴付きになりたい』 「ごめんねさなえ、怖がらせちゃって」 「いいんですよゆかりさま。さなえがみじゅくだったのですから……」 「そうも行かないわ。かなこのゆっくりに借りを作ったままなんて私が嫌なの。だから……私にして欲しいこと、ない?」 「してほしいこと、ですか? えっと……」 「何でも言っていいのよ?」 「それならっ、おねがいがあるのですがっ!」 「なに?」 「ゆかりさまのなかみを、ちょっとだけたべさせてください!」 「……え?」 「かなこさまにききました! ゆかりさまのなかみはなっとうカレーさんなんですよね?」 「え、ええ……そうだけど……」 「わたしたちゆっくりさなえは、カレーさんをたべるとどうつきになれるんです!」 「……それ、おまん亜種のさなえだけよ?」 「そうなのですか?」 「まあ、あなたにおまん亜種の餡統が混ざってる可能性はあるし、胴付きの私の中身だから、普通のカレーよりは胴付きになる確率も高いだろうけど……」 「では、おねがいします! すこしでいいですから、わたしにゆかりさまのなかみをたべさせてください!」 「胴付きになりたいの?」 「はい! かなこさまみたいになりたいんです!」 「仕方ないわねえ……弟ちゃんには内緒よ? ……ん、しょ……」 「ゆわぁ……お、おっぱいからでるのですかっ!?」 「他の胴付きは知らないけれど、私達姉妹はみんな、ね……スープだけで具は出せないけど、それでいい?」 「はいっ! それではっ、しつれいしますっ! はむっ……ちゅうっ……!」 「んんっ……!」 「ちゅっ、ちゅっ……ちゅ……あの、ゆかりさま」 「んっ……ん……なに?」 「こういうこと……その、おにいさんと、したかったのではないですか?」 「ふふっ、案じてくれるの? 大丈夫よ、弟君には何度も吸わせてあげてるから」 「そ、そうなんですか……ゆかりさま、すごいです……ちゅう……」 「ん……っ……ふぁ……」 「ゆかりん姉ちゃ~ん、この間貸したルルブ、今度使うことになったからちょっと返し」 「んにゃあああああぁぁっ!?」 「うわああぁっ!? ゆっ、ゆかりん姉ちゃんっ!?」 「!? ち、ちちち違うのよ弟ちゃんっ! これには訳がっ!!」 「しつれいしてます、おにいさん! ちゅーちゅー!」 「ゆかりん姉ちゃん……俺だけじゃ飽きたらず胴なしにまで……」 「ゆっかり斜め上の解釈しないのっ!!」 「だってそれどう見ても搾乳プレ」 「プレイ言わない! 弟ちゃんの時と違ってこれはさなえにとって真剣な行為なんだから!」 「真剣な搾乳プレイ?」 「だからプレイ言わない! ……って、あんっ!」 「ちゅっ、ちゅうっ……ん、ゆっ、ゆううっ……!」 「ええっ? さ、さなえの様子がっ……!?」 「……ヘエーエ、エーエエエー! エーエエー、ウーウォーオオオォー! ララララ、ラァーアーアーアー!」 「ああっ姉ちゃんのせいでさなえがとんでもないことにっ!?」 「ゆっくり聞きの悪いことを言わないでっ! さ、さなえ大丈夫っ!?」 「あ~らはんま~や! みんな~そ~ちんな! ゆっ、ゆっ、ゆ……」 「さなえーっ!?」 「ゆーっ! ゆっくり胴付きになりましたー!!」 「「なんでじゃああああああああぁぁぁぁっ!?」」 このあと、ゆかりん姉ちゃんはさなえ種を胴付きにする素材として、中身を定期的に加工場に提供することになりました。 搾るのは俺です。 いや、本当に……どうしてこうなった!? 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) anko2154 夏のゆっくり山守さん(後編) 感想、挿絵ありがとうございます。感謝です。
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初投稿です。駄文長文詰め込みすぎ注意。 愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。 そしてHENTAIです。どうしようもないです。 それでもいいという方はゆっくりどうぞ。 午前中、部屋で姉の指導のもと夏休みの課題をこなしていると、庭の方からゆっくりの声がした。 「ゆへへへ……ここなのぜ、れいむ!」 「ゆゆっ! ついたよおちびちゃん! ここがれいむたちのゆっくりプレイスだよ!」 「ゆわーい! れいみゅ、ゆっきゅりしゅるよ!」 「おかーしゃん、ここがまりちゃたちのゆっくりプレイチュなのじぇ?」 「そうだよ、おちびちゃん! さあ、それじゃみんなでいっしょにせんっげんっ! するよっ!」 「わかっちゃのぜ、おかーしゃん!」 「れいみゅも!」 「じゃあいくのぜ! せーの!」 「ここをれいみゅの!」 「ここをまりちゃの!」 「ここをれいむの!」 「ここをまりさの!」 「「「「ゆっくり(ち)プレイスにするよ(のじぇ)!!!!」 あー。また馬鹿な野良が来たのか。 まあ、うちの庭は一部が裏山に隣接というか、ほぼダイレクトに繋がっているからなあ……。 「どこを見ているの? 今日のノルマはまだ終わってないわよ?」 庭の方に視線をやりながらそんな事を考えていると、俺の様子に気付いた姉が軽く咎めてくる。 「でもほら、庭に野良ゆっくりが来てるみたいだし。ゲスっぽいから潰さないと」 「そんなことは、あの子達に任せておけばいいの。今あなたがすべきなのは課題をこなすことでしょ?」 正論だった。 少なくとも人間であり学生である俺は、課題をこなしておかないとゆっくり出来ない。 課題をこなすこと自体があんまりゆっくり出来ることではないのだが、幸い俺には頼りになる姉がいる。 色々問題があるとは言え、この姉は実に優秀なのだ。 「でもなあ……ふたりに任せると後片付けが……」 それでも、少しだけ抵抗してみる。 「……それなら、早く今日のぶんの課題を片付けなさい。課題が終われば私もこんなこと言わないんだから」 またも正論だった。 仕方なく、俺は目の前に拡げられたノートにペンを走らせる。 そうしていると、庭の方で声がした。 「あら、ゆっくり」 「なに~? また糞饅頭がおうち宣言?」 のんびりとしたふたつの声。 そのベクトルは天然と怠惰で大きく違うけど、ゆっくりからすればゆっくりした声に聞こえるらしい。 「ゆゆっ!? ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっちぇね!」 早速二匹のゆっくりが挨拶をしている。 声からしてれいむ種……母れいむと赤れいむだろう。 「ゆっ! ここはまりさたちのゆっくりプレイスなんだぜ! おまえたちはでていくんだぜ!」 「しょのまえに、あまあまもってくりゅんだじぇ!」 挨拶もなく要求しているのはまりさ種。母まりさと赤まりさか。 赤まりさの方は早速ゲス因子が発現しかかってるみたいだ。 ……潰してえ。 「あらあら、そんなこといってはいけませんよ? ここは私達家族のおうちなんですから」 「……ここはね、私達のゆっくりプレイスなの。アンタ達こそ早く出て行きなさい。今すぐ出ていくなら何もしないから」 諭すような声と、面倒くさそうな声。 庭に侵入しておうち宣言をするような野良ゆっくりはまずゲスだ。 それを、一応対話で済ませようとしているのは立派なんだが……。 「うるさいんだぜ! いいからはやくあまあまもってくるんだぜくそばああ!」 「くしょばばあ! まりちゃのどりぇいのくちぇにうりゅしゃいんだじぇ!」 まりさとまりちゃはその温情に気付くことなく踏みにじった。 「みゅ? おばしゃん、れいみゅにあまあまくりぇりゅの? はやくちてにぇ!」 「あまあまいっぱいほしいよ! はやくもってきてね! すぐでいいよ!」 つがいがゲスい発言をしたからか、ちゃんと挨拶できたれいむとれいみゅもあっさりゲス発言を始める。 ああ、死亡フラグがどんどん立っていくよ。 こいつらゲスゆっくりって、なんで話し合いで済まそうとしただけでこうも増長するんだろうな? こういうゲスがいるせいで善良個体も問答無用で潰されるようになってるってのに。 「……そんな言葉を口にしてはいけませんよ?」 「逃げる気ない? ならゆっくり出来なくするけど、いい?」 ふたつの声が少しだけ剣呑なものになる。 「ほら、集中する。早く課題を終わらせないとあのふたりが暴れ出すわよ?」 「わかってるよ」 姉に促され、課題に取り組む。 「そうそう、その問いは、この公式を――」 教え上手で知識も深い姉のアドバイスで課題は順調に進んだ。 いつもならもう少し放置されるのに、ここまで細かくアドバイスしてくれるあたり、姉はさすがに空気読んでくれている。 「うるさいのぜ、くそばばあ! ゆっくりできなくなるのはそっちなのぜばばあ! へんなおかざりのばばあ!」 「くしょばばあ! まりちゃのどりぇいのくしぇにえらしょうにすりゅんじゃないんだじぇ!」 「あみゃあみゃ! れいみゅ、あみゃあみゃほちい! おばしゃんあみゃあみゃ~!」 「ばばあ! はやくれいむたちにあまあまもってきてね! たくさんでいいよ!」 そしてこちらはまったく空気を読んでいない野良ゆ達。 さっきからふたりが無言なのは……多分溜めてるんだろうなあ、色々と。 「なにをしているのぜ? このいだいなまりささまにはやくあまあまをけんっじょうっ! するのぜ!」 「げりゃげりゃげりゃ! まりちゃたちがこわきゅてこえもでにゃいんだにぇ? ばきゃにゃの、ちぬにょ?」 「れいみゅあみゃあみゃほちーい! はやくちてねおばしゃん!」 「かわいいおちびちゃんをみたんだから、あまあまくれるのはとうっぜんっ! なんだよ! ばばあはゆっくりりかいしてね!」 駄目だこいつら、早く何とかしないと。 でないとまた俺の手間が……。 「こちらの提案を無視しての罵詈雑言! いかにも浅慮、横暴であるっ!」 そう思った瞬間、庭から貼りのある叫びが聞こえた。 綺麗でよく通る声だが、その気迫は素晴らしく、部屋の窓ガラスがビリビリ震える。 「ゆぴっ!? く、くそばばあはなにを言っているのぜ! はやくあまあまもってこないとまりさがせいっさいっ! するのぜっ!」 その迫力に押されながらも、まりさは虚勢を張っているようだ。 素直に逃げればまだ生き延びる目もあったのに……終わったな。 「制裁するのはこちらの方よ」 怒りを含んだ声が聞こえ……次の瞬間。 「いざ、南無三!」 「醜く残酷にこの庭から去ね!」 「ゆっ!? ゆっ、ゆっぎゃああああああぁ!!」 「ゆぴっ!? お、おとーしゃあああああああぁんっ!?」 「おとーちゃんがちゅぶれちゃったあああぁ!?」 「あああぁばりざああああああああぁぁ!!」 柔らかな物体を殴打する音が続けて響き、一拍おいてゆっくり一家から絶叫が上がる。 それを聞いて、俺は呟いた。 「潰れたかぁ……ちょっとは手加減してくれたかな?」 「どうかしらね? ほら、最後の一問がんばりなさい」 姉に言われてノートに向かう。 庭からはふたつの声とよっつの絶叫。 「いだいいいい! ぼうやべでええ! ばりざなにもじでないでじょおおおお!?」 「ぴぎゃあああああ! いちゃい、いちゃいのじぇええええ!?」 「ゆんやー!? やめちぇ、ちゅぶれりゅ、ちゅぶれりゅうう!」 「おぢびじゃああああん!? や、やべでねっ、でいぶのがわいいおぢびじゃんばなじでねっ!? ゆ、ゆんやー!!」 うちが田舎で良かったよ。 お隣さんまで100メートル、蝉の声もうるさいし、ゆっくりの悲鳴も迷惑にはならないだろう。 「あなたの意を通そうというのなら、私に意気地を見せなさい!」 「ぶべっ! ゆべっ! やべでっ、もっ、もういやなんだぜええええええええええ! ばりざおうじがえるうううううう!!」 「ほらほら、たっぷりお空を飛ばせてあげるから感謝しなさい」 「おしょりゃをとんでりゅみちゃい! ……なんじぇじめんしゃんがないんだじぇええええぇ!?」 「ゆんやー! ゆんやー! おじる、れいみゅおじじゃううううううううう!!」 「どぼぢでおぢびじゃんがずっどおじでるのおおおおおお!?」 「……また無駄に力を使っているわね……まったく、我が妹ながらもう少し大人しくできないのかしら?」 呆れたように言いながら、ため息をつく姉。 「自分だって野良ゆや野生ゆ使ってさんざん実験してるだろ……」 「なにか言った?」 「なんでもないです」 ツッコミは入れてみるが、こちらをみてにっこり微笑む姉に2秒で降参する。 いやまあ、そんな必要はどこにもないんだが……子供の頃の刷り込みはなかなか払拭できないのだ。 姉には逆らえない。 それに、この笑顔と……服の上からでも自己主張しているふたつの胸の膨らみを見てしまうと、もうなにも言えない。 「……しかし、なんで今日に限ってそんな薄手のノースリーブなんだよ?」 「暑いからよ? それに……弟君は横から見えるおっぱい好きでしょ?」 大好きです。むしろ横乳以外もいけます。 というかその脇から手を差し込んで揉みたいです。 「ノーコメントで」 心の声を封じつつ、最後の問題を片付ける。 「終わったよ。これでいいよな?」 「……はい、正解。それじゃ今日のぶんはここまでね」 ノートをざっと眺め、姉が頷く。 「よっしゃ! それじゃ早速庭を見てくる!」 それを合図に俺は部屋を飛び出した。 「いってらっしゃい」 姉の声を背中に聞きながら廊下を走り、部屋を抜ける。 「さあ、どうしたのですっ!? ここをあなたのゆっくりプレイスとしたいのならばその意を通して見なさい!」 「ゆがあああああぁ! ぼうやだ、おうじがえるううううう!!」 「家族を見捨てるなど言語道断! お仕置きです!」 「ぼうやべでええええええ! ばじざじんぢゃうううううう!!」 柔らかなナマモノを殴打する音。 「ゆんやー! ゆんやあああああ! ずっちょおちりゅのきょわいよおおお! おかーしゃんたしゅけちぇええ! ゆげえええ!!」 「あー無理無理、あんたのお母さんも一緒に落ちてるでしょ」 「ゆんやあああああああ!! おぢびじゃんごべんでええええええええええええ!!」 「まりじゃをゆっぐぢざぜないぐじゅおやばゆっぐぢじないでじねえええええええ!! ゆげえええええ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおお!? ゆげえええええええええ!!」 延々と続く恐怖の叫びと吐餡の音。 それを聞きながら俺は庭に飛び出し、ふたりに声をかけた。 「ゆかりん姉ちゃん、ひじり姉っ! 餡子掃除が大変な制裁は禁止だって言っただろっ!?」 俺の声に、庭でおうち宣言したゲスゆっくり親子を制裁していたふたりは振り向いた。 その姿は愛らしい少女。その割に胸は豊かで、服の上からでも判る程自己主張している。 ナイスバディに整った顔立ち……人間が見れば、十人が十人ともこう褒めるだろう。 『なんという美ゆっくりだろう』と。 そう。 俺が姉と呼んでいるのは部屋の姉含め全員が胴付きゆっくりなのだ。 「宿題が終わったのですね弟さんっ!!」 「それじゃ早速、私とゆっかりしましょうね弟ちゃんっ!!」 「とらいでんとっ!?」 制裁していたゆっくりを放置して放たれた抱きつきという名のタックルを喰らい、俺は仰向けに押し倒された。 30分後。 俺とゆかりん姉ちゃんとひじり姉は仲良くリビングに正座していた。 「……それで、ゲスまりさが逃げ出すのも放置して、弟君に抱きついたままちゅっちゅしてたの?」 それを見下ろすのは課題を見てくれていたえーりん姉さん。 うちのゆっくりの中では一番の古株であり、ゆかりん姉ちゃんとひじり姉もえーりん姉さんには頭が上がらない。 「面目ありません……」 「だってまりさはひじりんが制裁してたんだもん。私が制裁してた赤ゆ達とれいむはしっかり確保してるし」 「ゆがーん! ひどいですよゆかりん姉さんっ!」 「だって事実だし」 「ふたりとも喧嘩しないで……えーりん姉さんも本気で怒ってるわけじゃないんだし」 「元々怒ってはいないわ。ただ、面倒な事になったら困るでしょ」 えーりん姉さんが軒下に置いてある透明な箱に近づく。 そこには寄り添いあってがたがた震えている親れいむと赤ゆ達がいた。 ゆかりん姉ちゃんがスキマという謎能力を使って無限に落下させていたゆっくり達だ。 最初は『おそらをとんでるみたい!』とはしゃいでいたれいむも延々と続く落下に心をへし折られたらしい。 「ゆわわわ……こわいよ、おそらとびたくないよぉ……」 「おきゃーしゃん、れいみゅもうおしょらいやじゃよぉ」 「きょわいのじぇ……もういやなのじぇ……」 どう見ても精神崩壊一歩手前です。 「……ゆかりん姉ちゃん、ゆっくり壊しすぎ。何やったんだよ」 「別に~? ただふたつのスキマ繋げて、その間を延々落下させて泣き叫ばせたあと、地面におろしてあげただけよ?」 「いやそれだけじゃ絶対ここまで怖がらないだろ?」 「……それでいったん安心させたあと、地面スレスレにスキマをつくってまた落とし続けたんですよ」 「なにそれこわい」 ひじり姉の解説に思わず呟く。 助かったと思ったら地面そのものが消えて落下したなんて、俺なら確実にトラウマるぞそれ。 「なによぉ? それを言うならひじりだって、エア巻物であのまりさを保護しながら潰さないよう殴ってたでしょ!」 「あー……だから逃げる余力があったんだ」 「あれはっ……か、片付けを考えて、餡子が飛び散らないようにしていたんです!」 「いやそれも怖いよひじり姉」 ゆかりん姉ちゃんのスキマに対し、ひじり姉はエア巻物という巻物の芯だけみたいなモノを持っている。 これは他のゆっくりのお飾りと同じようなものなのだが、ゆっくりびゃくれん種であるひじり姉はその巻物から空中に輝く絵文字を引き出し、描くことが出来るのだ。 しかもこの絵文字、若干ながら物理的干渉が可能でバリヤのように使ったり物を乗せて運ぶことが可能。 それを展開してまりさを包み、拳で殴り続けていたらしい。 まあ、ひじり姉の身体能力は人間の俺よりずっと強いから、本気で殴ったら生体ゆっくりなんか一撃で潰れるもんな。 以前ゲーセンでパンチングマシンやらせたらカンストさせたし。 一度裏山にツキノワグマが出た時はガチの殴り合いで退散させたしな。 熊の攻撃をいなし、殴りつけるたびにひじり姉の胸が服越しにぶるんぶるん揺れていた光景は結構な目の保養で、しばらくはそれが俺のメインオカズに……。 「そんなっ……弟さんに怖がられるなんてっ……」 「あーららー、ひじりったら弟ちゃんに嫌われたー」 落ち込むひじり姉を、ここぞとばかりにからかうゆかりん姉ちゃん。 普段ぐーたらで寝てばかりの癖に、なんでこういう時だけフットワーク軽いんだよ。あと一応姉ちゃんにも怖いつったんだけど。 「……で、姉さん何かわかった?」 とりあえずふたりのじゃれ合いはひじり姉が鉄拳出してくるまで安全なので放置し、えーりん姉さんに声をかける。 ちなみに正座はまだ崩してない。勝手に崩すと姉さん怒るし。 「こいつ、野良じゃないわね」 親れいむの額から指を引き抜き、えーりん姉さんが呟く。 「ゆっゆっゆっゆっ……」 親れいむは白目を剥いて呻いていた。 「……何使ったの、姉さん?」 「いつもの記憶誘発剤よ。餡子安定剤も一緒に注入しておいたから壊れることはないわ」 さらりと言うえーりん姉さん。 ちなみにえーりん姉さんはうちでは両親以外で唯一の仕事持ちだったりする。 こんな田舎でも飼いゆっくりはそれなりにいるので、村のクリニックでゆっくり専用の医者として働いているのだ。 しかも怪我も病気も良く治すと言う事で割と名医扱いされている。 これはえーりん姉さんが持つ『薬を体内で生成分泌する程度の能力』によるところが大きい。 えーりん姉さんの身体の中には水飴が詰まっている。 姉さんはその成分を変質させ、様々な薬物を生成、分泌することが出来るのだ。 まあ、生成できる薬物はゆっくり用のモノがほとんどで、人間用のモノは数種類(ペニシリンとか)しか合成出来ないんだけど。 「そっか……で、野良じゃないって? いま、この辺に野生の群れってあったっけ?」 記憶を辿る。 確か、裏山に住みついた群れは二ヶ月前に壊滅したはずだ。 洗濯物を取り込みに庭に出た俺に、たまたま侵入してきた野生ゆっくりが罵倒しながら体当たりしてきたから。 普段ならノータイムで潰すんだが、両手が塞がっていてとっさに足が出なかったのを姉ちゃん達に見られたんだよなあ。 そのゆっくりはゆかりん姉ちゃんのスキマで即行捕まり、えーりん姉さんの薬で色々群れの情報をゲロさせられ。 ひじり姉が単身群れに乗り込んでゆっくりの八割潰したとか。 (ちなみに残り二割は姉ちゃんと姉さんが仲良く分け合った) それ以来、この村近辺にゆっくりは居なかった筈なんだが……またどこかから流れてきたのか。 「どうやら山ふたつ向こうから流れてきたみたいね……このれいむの記憶によると、群れの長はドスらしいわ」 「ドスかぁ……また協定とか結びに来たら面倒だなあ」 溜息がもれる。 だって、ドスとか駆除とかのゆっくり絡みの問題になると大抵は親父(村役場勤務)がうちの姉ちゃん達に話振るんだもん。 そうなると、いくら血も餡も繋がっていないとはいえ、ずっと姉弟として育ってきた俺としては放っておけないわけで。 人間基準で見ても可愛い(美人とまでは言わない。弟の欲目で言いたいけど俺にも理性ってものはある)うえ、ちょっと目のやり場に困るくらいのナイスバディな姉達に何かあると困る。 家族愛と……少しだけ、俺の夜のオカズ的な意味で。 「大丈夫よ、弟ちゃん」 不意に、背中で柔らかな弾力がふにゅりと潰れた。 「おうっ!? ゆ、ゆかりん姉ちゃん……」 「なーに、弟ちゃん?」 囁きと共に、耳元に吐息がかかる。 「その……当たってるんだけど……?」 「当ててるに決まってるでしょ? ほらほら、今夜のオカズだぞぉー?」 嬉しそうに囁きながら姉ちゃんが胸を押しつけてくる。 あー、今日はドレスの方だからか感触が割とダイレクトに来て気持ちいいなー。 胴付きゆっくりと言っても、ゆかりん姉ちゃん達は小柄な少女って感じで丸みのある顔以外ほとんど人間と見分けつかないからなー。 村のHENTAIお兄さんの間じゃ三人とも大人気って話だしなー。 時々姉さん達の使用済み下着売ってくれってこっそり持ちかけられることもあるし……いや、売らないけどね? 「ってそうじゃなくて! 何が大丈夫なんだよっ!?」 「ん~? そんなの決まってるでしょ?」 背中に胸を押しつけたまま、ゆかりん姉ちゃんが答える。 「どんな群れが来ようと、ドスが来ようと……私達がいる限り、弟ちゃんには指一本触れさせないってことよ」 「そ、そうですっ! 私達が、弟さんを守ります!」 腕にぎゅっとしがみつきながら、ひじり姉が俺を見上げる。 ああ……ゆかりん姉ちゃんより弾力の強い膨らみが腕に……でも大きさは甲乙つけがたいよな……。 「……ふたりとも、正座はどうしたのかしら?」 「ひあっ!?」 「ひゃっ!?」 えーりん姉さんの静かな声に、ゆかりん姉ちゃんとひじり姉がびくりと身体を震わせた。 どうやら、じゃれ合っているうちに正座のことを忘れてしまったらしい。 「あ、あははは……いやー、これはゆっかりしちゃったわね」 「ごごごめんなさい姉さん! 反省してますっ! 南無三っ!」 慌てて誤魔化そうとするゆかりん姉ちゃん、ひたすら頭を下げるひじり姉。 そんな妹達を見下ろし、えーりん姉さんは静かに告げた。 「ゆかりもびゃくれんも後で私の部屋に来なさい」 「ひゃ、ひゃいっ!」 「うぅ……わかったわよぉ……」 がっくりうなだれる姉ちゃん達。 「それじゃ弟君、そろそろお昼にしましょうか……何が食べたい?」 そんな妹達を一瞥し、えーりん姉さんは俺に優しく微笑んだ。 俺の家は元々農家で、ゆっくりによる畑害に悩まされていた。 裏山にゆっくりの群れが住みつくたびに畑に侵入するゆっくりを駆除し、目に余る時には群れ自体を滅ぼす。その繰り返し。 普通ならそんな状態でゆっくりなど飼うはずもないのだが、えーりん、ゆかり、びゃくれんの三匹は母さんが拾ってきたゆっくりだった。 三匹とも駆除の際に群れにいたのを母が見つけ、保護したのだ。 みんな、保護した時の状態はひどいものだったという。 まだ小さな、それこそぬいぐるみのような胴付きゆっくりが傷だらけで、巣穴のひとつに蔦で首を巻かれて繋がれていた。 クリクリとした瞳は死んだ魚のように澱み、表情には絶望だけが貼りついていた……らしい。 母親は農家の生まれで長くゆっくり駆除をしていたこともあり、姉ちゃん達の正体にすぐ気付いたそうだ。 それは、本来の親の種族でない種のゆっくりが産まれるという稀な現象。 チェンジリングと呼ばれるものだった。 人間の間では幸運を呼ぶ存在と言われ珍重されるチェンジリング。 しかし、野生のゆっくりにとっては『ゆっくりできないゆっくり』でしかない。 ましてや胴付きなのだ。 えーりん姉さんも、ゆかりん姉ちゃんも、ひじり姉も……群れの奴隷、ストレス解消の道具として嬲られ、虐められていたらしい。 ある程度の知能があるゆっくりが長を務める群れでは、スケープゴートを作って群れ全体をゆっくりさせる事はしばしば行われるんだそうだ。 とにかく、姉さん達はゆっくりの群れで、奴隷……いや、それ以下の扱いを受けていたという。 それを見つけ、哀れに思って保護したのが俺の母親だった。 結婚したが子宝に恵まれていなかった母親は、胴付きゆっくりである三人を我が子のように可愛がり、教育していった。 姉さん達もそんな母親の愛情を受けてすくすく育ち、金バッジ試験にも合格する。 そして、ゆっくり嫌いが多い村の人達にも、善良な胴付きゆっくり姉妹として受け入れられた時……。 俺が産まれたそうだ。 その時、三人はとても不安になったという。 母親はいままで自分達に愛情を注いでくれていた。 でも、今はもう母親には本当の子供がいる。 どんなに愛情を注がれても、どんなに教育を受けても、自分達は所詮ゆっくり。決して人間と同じにはなれない。 えーりん姉さんも、ゆかりん姉ちゃんも、ひじり姉も……なまじ教育を受け、知能も高い胴付きゆっくりだったからこそ、そのことをよくわきまえていた。 わきまえていたからこそ、怖かった。 本当の子供が出来た以上、自分達は母親に捨てられるのではないか……そう思ったらしい。 だけど、そんな三人に、俺の母親は赤ん坊の俺を見せて笑顔で言ったのだという。 『ほら、この子があなた達の弟よ……可愛がってあげてね?』と。 「……その時にねー、弟ちゃんは私に向かってにこって笑ってくれたのよ? その笑顔で私は、この子を絶対に可愛がろうって決めたの」 食後のデザートであるプリンを口に運びながら、ゆかりん姉ちゃんが懐かしそうに笑った。 「ゆかりん姉さん……弟さんが微笑んでくれたのは事実ですが、あれは姉さんだけに向けたものではないと思いますよ?」 「私達三人に父さんもいたのだから、ゆかりだけにってことはあり得ないわね」 「えー?」 そこに入るひじり姉とえーりん姉さんのツッコミ。 姉ちゃん達がえーりん姉さんの部屋で何かされたあと、俺達は食事を済ませ、夏の午後をまったりと過ごしていた。 捕まった親れいむと赤ゆ達はえーりん姉さんの部屋行きだ。 また実験をするつもりなんだろう。 「えーっと……」 「まあ、あの時の笑顔で、弟さんは絶対にこの手で守ると私も誓ったのですけど」 「そうね。私も弟君の力になると約束したわ。指切りで」 「……姉さんだけなのよねー。ずるいわよ、あれ」 「あなた達が弟君の手を無理矢理取ろうとして泣かせたからでしょ? それで騒ぎになって面会時間過ぎたのだから自業自得よ」 思い出話をしながら、えーりん姉さんが俺の口元にスプーンを運ぶ。 「えーりん姉さん、別に俺、自分で食えるから……」 「遠慮しないでいいのよ。課題頑張ったご褒美なんだから」 「そうよ弟ちゃん? 遠慮しないで、お姉ちゃん達にお世話させなさい」 「つ、次は私ですよっ?」 「うぅ……」 姉に囲まれ、姉も使ってるスプーンでプリンを口移しされながら昔話に花を咲かせる……。 なにこの家族による羞恥責め。いっそ殺して。 この瞬間だけは「おたべなさい」の一言で自殺できるゆっくりが羨ましいわマジで。 「ほら、弟君」 俺の後頭部に、ゆかりん姉ちゃんともひじり姉とも違う豊かな弾力がぷにゅんと当たって形を変える。 それはまるで俺の頭にの形にあつらえたかのように優しく包み、なんとも言えないジャストフィット感を与えてくれた。 ……まあ、それが何かというとえーりん姉さんの胸、乳房、OPPAIな訳だが。 具体的に言うと、えーりん姉さんは俺の上半身を背後から抱きしめるような格好で乳枕をしているのだ。 「あーん……」 プリンを優しく口に差し入れられ、飲み込む。 「わ、私がつくったんですよっ? どうですか、弟さんっ?」 ひじり姉が俺を上目遣いに見つめてきた。 ちなみにひじり姉は俺の腰のあたりに身体を寄せ、しがみつくように胸を押し当てている。 「うん、いつも通り旨いよ」 俺がそう言うと、ひじり姉の表情がぱあっと輝いた。 「よかったぁ……いっぱい食べて下さいね弟さんっ」 「これ豆腐なんでしょ? 良くここまでちゃんと作れるわね」 こういう時はマイペースなゆかりん姉ちゃんは、投げ出した俺の足に抱きついて頬ずりなどしている。 胸を押しつけられるのもたまらないが、時折俺の太股に顎を乗せたまま喋るのがなんともくすぐったい。 「姉ちゃん……暑いし、くすぐったいんだけど……」 「なによー、暑いって言うならひじりんもえーりん姉さんも一緒でしょ?」 そういって軽くぷくーをするゆかりん姉ちゃん。 「いやだって姉ちゃんが一番接触面積大きいし」 「えー? なんでよ?」 「この体勢だと、弟君の背中と私のお腹には結構隙間が出来るのよ」 えーりん姉さんの乳枕のお陰でね。 「私も、そんなに身体は密着させていませんよ?」 そのかわり胸は若干すーりすーりされてますが。 しかし上体を少し浮かせたその体勢で胸だけ押しつけて涼しい顔してるってのも凄いよねひじり姉。中身筍ひじきなのに。 「むー……仕方ないわねえ、それじゃ私も全身で弟ちゃんの足に絡みついてのすーりすーりは我慢するわ」 「是非そうしてくれ姉ちゃん」 主にボルケイノしかけてる俺のオンバシラの為に。 「ちぇ……あと少しだったのに」 「ちょっと待ていまなんつった!?」 なんかもの凄い小声で不穏当な発言された気がするぞ!? 思わず身体を起こしてゆかりん姉ちゃんを問い詰めかける。 「まりさをいじめたゆっくりできないゆっくりは出てきてね!」 そこに、やたらとでかい声が響いた。 「なんだっ!?」 本気で起き上がり、声のした方……庭に視線を向ける。 「あら。予想より早かったわね」 「家族を見捨てるゲスですからね。思ったより栄養状態が良くて、回復も早かったようです」 「うわ、しかもいっぱい引き連れてきたわよ? 馬鹿だわこいつ」 冷静に会話している姉達の声もあまり聞こえなかった。 なんせ今、うちの庭には体高4メートル近いドスまりさが怒りの表情を浮かべていたのだから。 あとおまけで周囲に成体ゆっくり達。 俺は姉さん達に手で下がるように指示すると、一歩前に出た。 「ゆん! にんげんさん、ドスはおこってるんだよ! ドスのむれのまりさをいじめた、ゆっくりできないゆっくりはどこ!?」 声をあげるたびに空気が震える。 うーむ、さすがドスまりさ、なかなかの迫力。 希少種除けば全ゆっくり最強と謳われるだけはあるな。 しかし……。 「虐めたって、なんのことだ?」 「とぼけないでね! お山をあるいてただけのまりさをつかまえて、ゆっくりできないことをいっぱいしたゆっくりだよ!」 「はぁ?」 自然と俺の語尾が上がる。 「そのせいでまりさはあんよがいたいいたいなんだよ! しばらく狩りも出来ないよ! だからドスはそのゆっくりをせいっさいっ! するよっ!!」 「はぁ」 今度は語尾が下がる。 「つまりお前は、怪我をして戻ってきたまりさの言い分をまるっと信じて、人間の庭に入り込んだのか?」 「ゆゆっ!? うそ言わないでねにんげんさん! ここはまだお山でしょ! まりさはそういってたよ!」 「……」 駄目だこのドス、自分の群れのゆっくりの話しか聞いてねえ。 つまり馬鹿だ。ゲスではないみたいだが明らかに馬鹿ドスだ。 「あのなドス。まりさがなんと言ったか知らないが、そこは俺の家の庭……人間のゆっくりプレイスだぞ」 「ちがうんだぜ! ここはおやまで、まりさのゆっくりプレイスなんだぜ! それをゆっくりできないゆっくりがとったんだぜ!」 頭上で声がした。 視線をあげると、ドスの帽子のつばにボロボロのゲスまりさが乗っかってこちらを見下ろしている。 「お前なに言ってるんだ? おうち宣言して制裁されて、家族見捨てて逃げ出した癖に」 「にげたんじゃないのぜ! まりさはドスにゆっくりできないゆっくりをせいっさいっ! してもらうためにむれにもどっただけなのぜ!」 「……普通それを逃げたって言うのよ」 ゆかりん姉ちゃんがぼそりと呟く。 あー、これは臨界点まであと30%ってところかな。 「で、ドスはそのまりさの言うことを信じたのか?」 「とうぜんだよ! ドスはむれのみんなをゆっくりさせるためにいるんだからね!」 「だから、ゆっくりできないゆっくりをせいっさいっ! すると?」 「そうだよ!」 「なんという無知蒙昧……」 うん、ひじり姉もけっこーギリギリだな。 俺は後ろ手で姉達に指示を出す。 ざっと見たところ、ドス以外のゆっくりは百以上二百以下。 種類は周りにいるのがれいむ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん。 ドスの帽子のつばに乗っているのが例のゲスまりさとぱちゅりーで、希少種や胴付きはいない。 まりさとちぇん、みょんの半分は木の枝やガラス片で武装している。 ……って、何匹かフォークやナイフ咥えてるよ。危ないなおい。 まあ、こいつらはどうにでもなるとして……やっぱり問題はドスだな。 ドススパークは厄介だし、こっちの話は聞く耳持ってないし。 正直あの巨体でのしかかられたら普通に家が傾きそうだ。 ゆかりん姉ちゃんのスキマは自分と同じサイズまでの無生物かゆっくりしか通さないからドスには使えないし……よし。 「なあドス」 「なに、にんげんさん? はやくゆっくりできないゆっくりをつれてきてね!」 うわービキィと来るなー。まあここはまだ我慢。 「連れてくるのはいいが……そのゆっくり出来ないゆっくりが俺の飼いゆっくりだと言ったらどうする?」 「べつにどうもしないよ! かいゆっくりだろうとなんだろうと、むれのゆっくりをいじめたゆっくりはせいっさいっ! だよ!」 「人間の飼ってるゆっくりだぞ? 手を出したらお前達こそ人間に制裁されるだろ?」 「ゆぷぷぷっ! なに言ってるのにんげんさん? ドスはつよいんだよ! ドススパークでにんげんさんはいちころっ! だよ!」 「……余程小さな集落を相手にしてきたのね。ドススパークの脅迫に屈服するしかないほどに」 静かに呟きながら、えーりん姉さんの指先が俺の掌に触れた。 ……微かなぬめりが掌に広がっていく。 「つまり、こいつは運が良かったんだな……」 ため息。 馬鹿の相手は本当に疲れる。 まあいいや。わざわざこいつを教育してやる義理はないし。 そういうのはえーりん姉さんの領分だ。 「さあにんげんさん、はやくまりさをいじめたゆっくりできないゆっくりをつれてきてね! でないとすぱーくをうつよ!」 はい言質取りました、ドススパークによる脅迫。 うちの村では、こういう行為に及んだゆっくりは害獣として駆除することが出来ることになっている。 ゆっくり絡みのトラブルに『娘』が関わりやすい職員が議会に運動した結果がこれだ。 「そうだよ! くそにんげんはゆっくりしないでどすのいうことをきいてね!」 「れいむたちはつよいんだよ! それがわからないの? ばかなの? しぬの?」 「にんげんにかちめなんてないんだねーわかれよー」 「たんしょう! ほうけい! そーろー!」 口々に俺を罵倒するゆっくりども。 オーケーみょん、お前だけは絶対に許さないよ。 「判った判った……じゃあ、そっちに連れて行くから待ってろ」 後ろ手に柔らかなゼリー状のものを軽く握ったまま、俺は姉さん達を連れて庭に出た。 「ゆぎぎぎ……れいむとおちびちゃんのかたきがでてきたんだぜ! せいっさい! せいっさいっなんだぜえぇ!!」 ドスに乗っているゲスまりさが歯ぎしりをする。 その表情はさっきひじり姉から受けた屈辱と、それをこれから返せるという悦びで醜く歪んでいた。 うん、軽くゲロ吐けそうなくらいに。キモイ、マジでキモイ。 「ゆゆっ……どうつき……ゆっくりできないゆっくりだよ……」 「なんかどうたいにまるいのがくっついてるのぜ! きもいのぜ!」 「とかいはじゃないわ……」 「ゆっくりできないゆっくりはゲスなんだねーわかるよー」 「ちじょ! いんらん! にくべんき!」 「むきゅ……どす、おもったよりもおおきいわ。これはむれにつれてかえるより、ここでせいっさいっ! したほうがいいわね」 周りのゆっくり達も姉ちゃん達を見て口々に蔑みの言葉を放つ。 よし、みょんに加えてまりさ種も皆殺しな。 どっちにしろ全部殺すけど。つか送るけど。 「ゆゆっ! よくつれてきたねにんげんさん! じゃあいまからドスがそこのゆっくりをせいっさいっ! するよ!」 「そうなのぜ! せいっさいっ! してえいえんにゆっくりさせるのぜ! れいむのかたきなのぜ! しぬのぜえええええ!!」 にたにたと笑うドス、口から泡を吹いて怒鳴るゲスまりさ。 「その前に、ひとつだけいいか?」 そんな糞饅頭を睨み、告げる。 「ゆっ? なに? はやくしてねにんげんさん! でないとにんげんさんもせいっさいっ! するよっ!」 「くそにんげんはどくんだぜえええ! あとでまりささまのどれいにしてやるから、ありがたくおもうんだぜええ!」 後ろ手に、ゼリー状の塊を握る。 「実はな、ここにいるのは飼いゆっくりじゃないんだ」 「そんなことどうでも……」 俺の言葉を遮るように、ドスが口を開く。 そこをめがけ――。 「……俺の大切な、姉ちゃんなんだよっっ!!」 俺は掌に握ったゼリーの塊を投げつけた。 「ゆげっ!?」 「ゆゆっ! ど、どうしたのぜドス!?」 狙い過たず、ゼリーの塊はドスの口腔内でべしゃりと潰れる。 刹那、ドスは動きを止め。 「あ……あまいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 次の瞬間――白目を剥いて絶叫した。 「じっ、じあばぜええええええええええええええええええええええ!!!!」 口中に広がる圧倒的な甘味に、ドスの表情が蕩けていく。 「ど、どす……どすっ!?」 「ドスの心配をしている余裕なんてないわよ?」 ざわつく群れを、ゆかりん姉ちゃんが睨みつける。 「醜く残酷にこの大地から去ね!」 「おそらをとんでるみたい! ……おぢるうううううううう!?」 「わがらないよー! にゃんでちぇんがおぢてるのー!?」 「たこつぼ! きんちゃく! さんだんじめー!!」 「んほおおおおおぉ! すいこまれるわあああああ!?」 それだけで、ゆっくり達の足元に次々とスキマが開き、出口も判らない虚無へとゆっくりを吸い込んでいった。 「きょわいよおおおぉ! だずげでどずぅー!」 「むきゃっ!? みんながきえちゃううぅ! えれえれえれ……」 「ま、まりさはにげるよっ! みんなはまりさのためにおとりになってね!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおぉ!?」 ドスに助けを求めるもの、仲間の惨状を見て吐餡するもの、訳も判らず逃げようとするもの、それを責めるもの。 「逃がすわけないでしょ」 「おそらをとんでるみたい!」 「おぞらっ……おぢでるううううううぅ!!」 一切の区別なく、ゆかりん姉ちゃんのスキマは等しくゆっくりを謎空間に送っていく。 「どす! どす! どうしたの、はやくうごいて!」 ドスの帽子の鍔に乗ったぱちゅりーが必死に声をかける。 「あまっ、あまっ! あまあまああああああぁぁ!!」 それでもドスは恍惚の表情を浮かべているだけだ。 「無駄だよ。さっきドスの口に放り込んだ薬は白砂糖の3000倍の甘さがあるモネリンって甘味料が含まれてるんだ」 「む、むきゅっ!?」 「しかもこいつは一度口にすると数時間は甘味が残留するからな……ドスはしあわせー過ぎてしばらく使い物にならんよ」 「そ、そんなっ……ひきょうよ!」 「なんで? 俺はお前らの大好きなあまあまをやっただけだぜ? ほら、ドスだって喜んでるだろ?」 「どす! どす! しっかりして!」 「あまっ! あま、あまいいいいぃ! じあばぜえええぇ~っ!」 涎を垂らし、しあわせー! 絶頂な表情で叫ぶドス。 その周囲ではドスの群れゆっくりが次々とスキマ送りにされているにも関わらず、ドスはまったく動こうとしない。 「なにやってるのどすうううううううううぅ!!」 「でいぶをだずげどおおおおおおおおお!! おぞらっ!!」 「ばりざおじだぐないいいいいい……おじょらっ!」 「がばまん! ゆるゆる! たいへいよう!」 どんどんスキマに落ちていくドスの群れゆっくり。 だが、なかには運良くスキマから逃れる奴もいる。 そういうゆっくりはどこに行くか。 逃げる? そんな事にはならない。 何故ならここには……何もしてはいないけど、あまあまを食べて確実にゆっくりしているドスがいるのだから。 「どずうううううううう! だずげでええええええ!!」 「わぎゃらにゃいよおおおおおおおおおおおお!!」 「むきゅきゅー! どすー! うごいで、うごぐのよおおお!!」 体当たりするようにドスに身体を寄せていく、生き残りのゆっくり達。 スキマ送りになったゆっくり以外は全員がドスの側にいる。 それを確かめ、俺は姉の名を叫んだ。 「ひじり姉っ!」 「はいっ!」 いままで後ろで静かに力を溜めていたひじり姉が、弾かれたようにドスに向かって突進する。 「いざっ――!」 ひじり姉の身体が沈み込み、突き上げるように拳が伸びていく。 「あばっ……ぶげええええええぇっ!?」 その拳はドスのあんよを直撃し、そのまま体長4メートルの巨体を宙に浮かせる。 そこに、ひじり姉の拳が連続で叩き込まれた。 「ぶげ! ぶげげげげげげげげげげげげっ!!」 拳を打ち込まれるたびにドスのあんよが跳ね、身体が浮く。 「――南無三っ!!」 「ぶげらっ!!!!」 そして……最後の気合いと共に、ひじり姉の蹴りがドスのあんよを直撃し、ドスは上空に吹き飛ばされた。 その巨体を、ひじり姉のエア巻物が捕らえる。 「ど、どす……!?」 「なにっ!? なんなのごれええええええぇ!?」 「どがいばじゃないばあああああああ! んほおおおおおぉ!!」 ドスが吹き飛ばされる。 その光景に、ゆっくり達は信じられないとでも言いたそうな顔で馬鹿みたいにドスを見上げる。 その頭上に……エア巻物で微調整されたドスの巨体が落下した。 「わぎゃらっ!!!!」 「じごずりっ!!!!」 「どがいばっ!!!!」 「むぎゅうっ!!!!」 生き残りのゆっくりがドスに潰され……ぱちゅりー達が地面に激突してクリームの花を咲かせる。 「ぶげええええええええええっ!!!!」 そして、ドスの皮が何カ所かはじけ……餡子が噴き出た。 「うわっ!?」 「きゃ!?」 「ひゃんっ! ちょ、ちょっとひじりっ! 力入れすぎでしょ!」 「ふ、不可抗力ですよっ!?」 ドス落下の衝撃で動けず、餡子をもろに浴びてしまう。 庭中に漂う甘ったるい匂い。 ……見渡してみると、動いているゆっくりはいなかった。 「……駆除完了ね」 えーりん姉さんが告げる。 「だね。さすがにドスはまだ生きているけど……」 「中枢餡は外してますし、出餡も命に別状あるほどではない筈ですよ。これ、姉さんが使うのでしょう?」 「ええ。折角のドスだもの」 「そろーり……」 残りのゆっくりはスキマに送られたか、いまのドス落下で潰されたか、巻き添えで飛ばされて墜落死したかだ。 「そろーり……そろーり……」 「それじゃ、あとは……」 えーりん姉さんが歩を進め、片手を伸ばす。 「このゲスまりさだけね」 「ゆゆっ!? は、はなすんだぜえええ!?」 姉さんに掴まれ、ゲスまりさはぐねぐねと身体をくねらせる。 「どっどどばなぜぐぞゆっぐり! ばりざざまはごんなげずどもじらないんだぜえ! ばりざだげでゆっぐりずるのぜええ!!」 「……さすがゲスね。自分のせいで群れが壊滅したのに反省の色なしとは」 「外道ですね」 暴れわめくゲスまりさに、むしろ感心したように呟くゆかりん姉ちゃんと、憤懣やるかたないといった風情のひじり姉。 そんな姉ちゃん達に、えーりん姉さんが微笑んだ。 「大丈夫よ。どうせこのゲスも、すぐに自分のしでかしたことを理解してしまうから」 「ゆぎいっ!?」 そう言って、えーりん姉さんがゲスまりさのこめかみに指を突き刺す。 うねる身体がびくん、と跳ね……やがて、ゲスまりさの瞳に理性の色が宿り始めた。 「な、なにごれ……なにごれえええぇ!?」 全身から汗を拭きだし、狼狽の声をあげるゲスまりさ。 「ばりざ、ばりざなんでっ……なんで、わがっちゃうのおおおぉ!? ばりざわるいごどじでるっ、じぢゃっだよおおぉ!?」 庭を見渡し、飛び散ったあんことクリームを眺め、ゲスまりさはガチガチと歯を鳴らす。 「あなたの餡子に、ドスに飲ませたのと同じ薬を投与したわ」 そんなゲスまりさに、えーりん姉さんは冷徹に告げた。 「知ってる? 私達ゆっくりは、甘味で記憶し、判断するの。強い甘味は一時的にゆっくりの知能を劇的に引き上げるのよ?」 「あ……あぁっ……ばりざ……ばりざあああ……!」 「そしてあの薬には、その甘味を定着させる効能と、私自身の記憶の一部が入っているわ。私の……良心がね」 「やだっ……やだ、やばあああ! ばりざわるいごっ、いげないごだどおおおぉ!!」 ゲスまりさの目から涙が滂沱と溢れる。 知ってしまったのだ、ゲスまりさは。 いままで自分がやってきたことの意味を。自分の犯した、罪を。 「あとであなたのつがいと子供にも逢わせてあげる。自分のしたことを理解して……悔やんで、畏れて、苦しんで死になさい」 えーりん姉さんがゲスまりさに微笑む。 弟の俺から見てもぞっとするような笑顔で。 そして、姉さんはゲスまりさを軒下の透明な箱に放り込むと、うずくまったままのドスまりさに向けて、言った。 「判ったでしょう、ドス? いまのあなたには、自分が何をしたか理解出来ている筈よ」 「ば、ばいいいいぃ……どずはばがでぐずでじだああぁ……むれのゆっぐりのごどじががんがえでないゲズでじだああぁ……!」 巨体を震わせ、ドスが呻く。 「よろしい……なら、これからどうすればいいかも判るわね?」 「ばがりばずうう! どずは、よごじだおにわをがだづげまずうぅ! ぞれがらっ、えーりんざまのぎょういぐをうげまずうぅ!」 まるで巨大なゆんやー。 何度も全身を使って土下座すると、ドスは舌を出して自分と仲間の餡子とクリームを舐め取りはじめた。 「ぐずっ……べーろ、みんば……ごべんね、ごべんねええぇ……べーろ、べーろ……」 「……姉さん、こいつどうするの?」 「折角のドスだし、教育して裏山に放つつもりよ。今まで、この辺りの群れにはまともな長がいなかったから……」 「このドスにゆっくりを統率させるのですね?」 ひじり姉の言葉に、えーりん姉さんが頷く。 「ドスを生け捕りに出来たのは初めてだし、有効活用するわよ……まあ、とりあえず今夜は庭の掃除をしてもらいましょう。いいわね、ドス?」 「ばびいいいぃ……おぞうじ、じばずぅ……べーろ、べーろ……」 嗚咽を繰り返しながら、地面の汚れを舐め取っていくドス。 「ごべん……ごべんねえ……ばりざが、ばりざがああ……」 涙を流しながら、ひたすら空中に向かって謝罪し続けるゲスまりさ。 そんな2匹のまりさを一瞥し、俺達は家にあがった。 「あーあ、服が餡子とクリームでびしょびしょだわ……気持ち悪い」 「ゆかりん姉さんはまだいいですよ。私はドスの側にいたから下着まで餡子漬けです」 「私はそこまでじゃないけど……汗もかいたし、さっぱりしたいわね」 服をつまんだり、タオルで顔を拭ったりしながら、姉さん達が同時に俺を見る。 「……はいはい。風呂の準備してきますよ」 「ありがとうございます、弟さん」 「悪いわね~、弟ちゃん」 「お願いするわ、弟君」 三者三様の声を聞きつつ、風呂場へ向かう。 ま、今回もいっぱい働かせちゃったし……この位はいいよな。 なんだかんだ言って俺は弟なんだし。 たとえゆっくりでも、姉には逆らえないものなのだ。 「にしても……今更だけどさ、姉ちゃん達って同じゆっくり潰すのに抵抗とかないの?」 こういう事のあとの、お決まりの問いかけ。 それに、姉さん達は笑って答えた。 「「「私達、ゆっくりは嫌いだもの……特に、大切な弟に危害を加えようとした胴なし共に生きる価値なんてないから」」」 まったく。 これだから、姉には勝てる気がしない。 たぶん、ずっとゆっくりするまで。 おまけ 「えーりん姉さん、ゆかりん姉ちゃん、ひじり姉~。風呂湧いたぞー」 「ご苦労、弟ちゃん。それじゃ早速入りましょ」 「へ? 一緒に?」 「当たり前じゃないですか。弟さんも汚れているんですから、私達が綺麗にしてあげます」 「い、いや……いくら姉弟でも、それはまずいんじゃ……」 「なに言ってるの。私達が何度弟君と一緒にお風呂入ったと思ってるの?」 「それは小学校の頃の話でしょおおおおオオ!?」 抵抗空しく俺は服を剥かれ風呂場に放り込まれた。 そこに入ってくる、一糸まとわぬ姿の姉ちゃん達。 「さ、それじゃ洗うわよー」 「なんで肌に直接ボディソープ垂らしてるのっ!?」 「お、弟さんっ……南無三っ」 「な、なんかぷにぷにしたので擦られてるーっ!?」 「では、私はここで……んっ」 「壺~~~っ!?」 「あら、立派なオンバシラ」 「や、やっぱりそこは……ここで洗うべきですよねっ!?」 「あ……んっ、んんっ……ふぁ……」 いや。 その。 姉弟だし……何もなかった……よ? 挿絵:おねにーあき
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・夏のゆっくり山守さん(前編)の続きです。 ・駄文長文詰め込みすぎ注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。 ・そしてガチのHENTAIです。 ・後編では人間が肉体的に痛い目をみます。 ・それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。 *** 「れいぱーありすの駆除?」 リビングに戻った俺は、えーりん姉さんの淹れてくれたコーヒーを啜り、改めてかなこさんに尋ねた。 「そうだ。ここのところ、主殿が管理しているお山のゆっくりが、れいぱーありすに襲われるという被害が相次いでいる」 氷の浮いたオレンジジュースを口に運びながら、かなこ様が頷く。 「それも、どうやら奴らはそれなりの数がいるようでな。私が管理している群れのひとつが半壊させられてしまった」 「それは、かなこの管理不足……と言いたいところだけど、れいぱーはどうしようもないわねえ」 オレンジフロートのアイスをストローで突きつつ、ゆかりん姉ちゃんが唸った。 れいぱーありす。 ゆっくりありす種が異常発情することで生まれる変異種であり、第三種危険ゆっくりに指定されている。 その特徴は捕食種とすら対等に渡り合える身体能力と、自分の中身を全て出し尽くすまで止まらない異常な性欲。 一度れいぱー化したありすは近くにいるゆっくりを見境なくレイプし続け、すっきり死させてしまう。 そして最終的には自分自身の中身も全て吐き出し尽くし、命を落とすのだ。 大量のすっきり死したゆっくりと、そこから生き延びて生まれ落ちた、れいぱー因子を強く受け継ぐ赤ありすを残して。 「かなこさんが管理していた群れのありすがれいぱー化したのですか?」 ゆゆ先生特製の赤ゆ饅頭をかじり、ひじり姉が尋ねた。 「いや。群れにありす種はいたが、れいぱーへの恐怖で強制れいぱー化した個体が出ていた程度だ」 「こぼね……という事は……」 「ああ。れいぱー共は、山の外からやって来たヨソ者の可能性が高い」 「それはまた……厄介ね……」 かなこさんの答えに、ゆゆ先生とえーりん姉さんが表情を曇らせる。 どんな種類のゆっくりからも一定の割合でゲスが含まれるように、ありす種には一定の割合でれいぱー化する個体が含まれている。 ただし、全てのありす種は強精発情させることで無理矢理れいぱー化させる事が可能だ。 だが、そういう強制れいぱーは餡子(カスタード)の消耗が激しく、寿命は保ってせいぜい一日。 場合によっては最初のゆっくりに全精子餡を注ぎ込み死亡する事すらあるので、自然界ではさほどの脅威にはならない。 繁殖用の精子餡を採取する時や、虐待用に使うには便利な生態だという程度だ。 それに対し、自然にれいぱー化した個体は遙かに厄介な存在だった。 何しろ、れいぱーとして活動しながらも自分の生命活動の維持が行え、過剰なカスタードの消費を抑えられるのだから。 自然発生したれいぱーは、すっきり死したゆっくりや、生まれることなく永遠にゆっくりした実ゆを捕食する。 そうしてカスタードを補充しつつ、少しでも多くのゆっくりに『とかいはなあい』を与えるべく活動し続けるのだ。 こういうれいぱーが発生した場合、最悪たった一匹のゆっくりに群れが全滅させられる事もある。 自然発生したれいぱーの集団は、群生相を生じた蝗なみに面倒な存在なのだ。 そして、なにより。 「なるほどね。自然発生したれいぱーが相手じゃ、ゆかりん姉ちゃんはともかく、ひじり姉達には応援を求められないし……」 「御祖母様の処に居る山守ゆっくりを動員する訳にもいかないわね。最悪、触れられただけで妊娠しちゃうもの」 俺の言葉に、ゆかりん姉ちゃんが頷いた。 そう、自然発生れいぱーの最も恐ろしい点……それは通常では考えられないほどに強力な繁殖能力にある。 元々すっきりーすれば妊娠率100%というデタラメナマモノであるゆっくりだが、自然発生れいぱーは更に質が悪い。 なんせ、自然発生のれいぱーは分泌する体液が全て精子餡に等し生殖能力を持つのだ。 れいぷは勿論、すっきりーでないすりすりや、最悪飛び散った体液や吐いた餡子を浴びただけで、並のゆっくりなら妊娠してしまう。 妊娠率が極端に低いはずの胴付きでさえ、自然発生れいぱーの精子餡をまともに浴びると5割近い確率で妊娠してしまうのだ。 その特性を生かし、加工場などでは胴付きゆっくりを生産する為に自然発生れいぱーの精子餡を使っていたりするのだが。 「なるほどね。俺が指名された訳が判ったよ。ま、自然発生れいぱーなら加工所に依頼してもいいと思うんだけど……」 「主殿曰く、これも弟殿と私が受けるべき愛の試練だそうだ。力を合わせ、山に侵入したれいぱーを排除せよ、と仰せでな」 「ばあちゃん……」 愛の試練ってなんだよ、愛って。 そりゃまあ、かなこさんは俺の恩人ならぬ恩ゆっくりだし、姉ちゃん達やゆゆ先生同様、大切な相手だけどさ。 「愛の試練、ね……」 「御祖母様はかなこさんがお気に入りですから、仕方ないですね」 「かなこ様を弟様に譲る気満々ですものね~」 「ま、愛とかは置いておいて」 「置くのかよ」 俺の突っ込みをスルーし、ゆかりん姉ちゃんはアイスクリームをスプーンで掬うと、ぱくりと咥えた。 「んぐ……御祖母様は他人の手を借りようとしない方だから、かなこと弟ちゃんにまず任せようとするのは当然ね……ちゅ」 ちろりと唇を舐め、微笑む。 「ま、そう言う事なら私も協力してあげるわ。かなこのオンバシラ同様、私のスキマはれいぱーに触れることなく駆除できるから」 「やってくれるか、ゆかり?」 「当然よ。弟ちゃんが前に出るのなら、せめて後ろから援護するのが姉としての務でしょ?」 「そうか……すまん、助かる。正直ゆかりの助力は欲しかったのでな」 かなこさんが神妙に頭を下げる。 「いいのよ、このくらい。それで、いつから始めるの?」 「ああ……群れの行動範囲は大体把握できているから、出来るならばすぐにでもやりたいのだが……弟殿はどうだ?」 「山の装備に着替えるだけだし、俺は構わないよ?」 ばあちゃんの山なら勝手は判っているし、携帯も大抵の場所で通じるしな。 「南無三っ! 私もお手伝いしますよっ」 「私も及ばずながら~。中枢餡さえ破壊できればれいぱーを操る事も出来ますので~」 「……弟君に対ゆっくり用薬剤を持たせなければね」 ひじり姉にゆゆ先生、えーりん姉さんも力強く頷く。 「皆……すまん、恩に着る」 「ええ、たっぷり恩を着せてあげるから覚悟しなさい?」 「……弟殿は譲らんぞ?」 「この程度の恩で譲らせるつもりもないから安心しなさい」 神妙なかなこさんと、それをからかうように笑うゆかりん姉ちゃん。 なんだかんだ言って、このふたりは仲がいい。 妙に張り合うところはあるけれど……それはふたりが同い年で、ライバルみたいな関係だからなんだろう。 「それでかなこさん、俺達はどう動けばいいんだ?」 「うむ。それはこの地図にだな……」 スカートの中から、かなこさんが1枚の地図を取り出して、拡げる。 「奴らが襲ったゆっくりの群れはここ。他のゆっくり巣で襲撃を受けていたのがこことここ……つまり、奴らの移動経路は……」 ばあちゃんの山を示した地図の上を、かなこさんの白く長い指が滑る。 顔をつきあわせてそれを覗き込み、俺達は作戦を煮詰めていった。 *** 風が頬を撫でていく。 足元がふわふわする。 見下ろせば、青々とした木々の梢。 「どうだ弟殿? 久しぶりの空中散歩は?」 「相変わらず股間がきゅーっとするよ……かなこさんは大丈夫?」 「問題ない。弟殿と一緒ならば何時間でも飛べるぞ!」 「頼もしいなあ……でも、絶対に無理はしないでね?」 力強く答えるかなこさんに、俺は引きつった笑みで答えた。 ここはばあちゃんの会社が所有する山の上空。 かなこさんに抱えられ、俺は目的地目指して飛んでいた。 「大丈夫だ、私の注連縄セイルは絶好調だからな! 今ならばジェット気流でも捉えてみせるぞ!」 「それかなこさんはともかく俺死ぬからね?」 かなこさんが第一種危険ゆっくりに指定されている理由。 そのひとつが、この注連縄セイリングジャンプ……注連縄の持つ不思議な力で風を捉え、空を飛ぶ能力だった。 高い知能を持つ胴付きで、空を飛ぶ事が出来る。 害獣となった場合、これだけでもかなりの脅威だ。 そのうえ、かなこ種はオンバシラという武器を持っている。 胴なしですら木刀並のサイズと威力を持つオンバシラだが、胴付きであるかなこさんのそれは丸太に近い。 直径約15センチ、長さは約90センチ。重量にして15キロを越えるオンバシラ。 これをかなこさんは意志の力で4本同時に自在に動かし、ある時は舵として、あるときは武器として使っているのだ。 ……どう見てもサイコキネシスです、本当にありがとうございました。 動かせるのはオンバシラ限定とはいえ、これだけの質量がある物質を自由に振り回せれば、それは十分な殺傷力を持つ。 実際、かなこさんは狩猟期間には山を飛び回って猟を行っているし、オンバシラで100キロ級のイノシシを仕留めた事さえあるのだ。 人間並の知能があり、空を飛べ、オンバシラで人を殺傷せしめるだけの攻撃力をも有している。 そんなかなこさんが第一種危険ゆっくりに指定されるのは、人間側の理屈で言えば当然の事だった。 俺にとってそれは、命を救ってくれた素敵な能力なのだけど。 「ときに弟殿っ」 背中から俺をしっかりと抱きしめて、かなこさんが耳元で囁いた。 「なに、かなこさん?」 「そのっ……街の学校に通うようになって、生活は何か変わったか?」 「何かって、なにが?」 「……そのっ……懸想する相手が出来た、とかっ……!」 「あー……! 無理無理、だって俺の学校男子校だもん! 女っ気なんて先生含めても皆無だよー!」 「そ、そうか……そうか! それは良かっ……いや、残念だったな!」 俺を慰めながらも、かなこさんは何故か嬉しそうだ。 姉ちゃん達もそうだけど、なんか俺に彼女が出来たかってことを気にするんだよなー。 やっぱりアレか、弟に彼女というのは娘が彼を連れてきた的なショックがあるんだろうか。 俺的には心配される事自体がちょっと心外なんだが。 まったく。 「もうちょっと、弟を信じてほしいよな……」 「ん? 弟殿、何か言ったか?」 「いや、なにもー! それよりかなこさん、そろそろ降下ポイントだよー!」 「了解だ! では頼むぞ、弟殿!」 「任せて! かなこさんこそ気をつけてよ!」 「案ずるな! 私はれいぱーありすなどに穢されたりはせん! 弟殿との約束があるからな!」 力強く答えるかなこさんに頷く。 目の前には木々が迫り、梢を抜けると薄暗い森のなか。 ほとんど人の手の入っていない自然林の斜面に、俺達は着地した。 「よし……ちょっと待っててね、かなこさん」 「判った」 俺を下ろしたあとで注連縄セイルを調整し、かなこさんが再び空に舞う。 その姿を見上げ、俺は携帯を取りだした。 短縮ダイヤルをコールし、三回。 『……弟君?』 「えーりん姉さん? ポイントに着いたよ。ゆかりん姉ちゃん達を待機させといて」 『判ったわ……気をつけてね』 「大丈夫だよ。かなこさんもいるし……」 通話を続けながら腹に抱えていたリュックを下ろし、中からウォーターガンを取り出す。 「えーりん姉さんが持たせてくれた甘辛ウォーターガンもあるからね」 これは2000円ほどで買った玩具を改造したものだが、ポンプアクション式で最大射程20メートルというなかなか強力な奴だ。 そして、1リットルという大容量タンクに詰まっているのは、えーりん姉さん特製の対ゆっくり用超甘味&辛味ブレンド液。 砂糖の3000倍という甘味成分はゆっくりを一瞬で虜にして動きを封じ、20万スコヴィルの辛味成分は成体ゆっくりさえ一瞬で非ゆっくち状態に陥れる。 最高のしあわせーと最悪のふしあわせーを同時に叩き込まれた中枢餡は処理能力の限界を超え、機能停止へと追い込まれる。 その威力はこの夏の畑番で証明済みだ。 『ええ。それを使えば、れいぱーに触れることなく中枢餡だけを機能停止させられるはずよ……ただ』 「ただ?」 『れいぱーは大量に大量の体液を分泌しているから、少量だと流されてしまうかも……しっかり狙って、無駄撃ちは控えてね』 「判った。じゃあ、れいぱーを見つけたらメール入れるよ」 『了解……待っているわ』 携帯を切る。 顔をあげると、空に浮かぶかなこさんと目が合った。 「それがえーりんの用意した銃か? かなり強力なものだと聞いているが」 「うん。畑番で何度か使ったけど凄いよ。一発で動かなくなって、潰れないし餡も吐かないから後片付けも簡単だしね」 「それは重畳。れいぱーを潰すと地面に残った餡でゆっくりが孕む事もあるからな」 「れいぱーってパないよね」 「だからこそ、野生の群れが崩壊する原因のひとつにれいぱーの襲撃があるのだ……さあ行こう、弟殿」 「了解」 かなこさんに先導され、歩きだす。 山の中は日の光が遮られて薄暗く、蒸し暑い。 蝉の声が煩いくらいに響いていて、いつもなら頻繁に聞こえてくるゆっくりの間延びした声もかき消されていた。 「暑いな……」 「今年は特にな。弟殿、こちらだ」 「あいあい」 山の斜面を登り、わずかに踏み分けられた山道を進む。 ぉぉぉ……。 「ん?」 そうして進んでいると、蝉の声に混じって微かにゆっくりの声が聞こえてきた。 ほおおぉぉ……! 「かなこさん」 「ああ、居たな」 んほおおおおおおおぉぉ! やめちぇええええぇぇ!! だんだんと、声がはっきり聞こえるようになってくる。 どうやら複数のれいぱーありすに、野生ゆっくりが襲われているらしい。 悲鳴の方はそれほど聞こえないから、群れじゃなく家族単位で住んでいる連中だろうか。 慎重に声のする方に歩を進め、木の影に隠れながら覗き込むを。 ……そこは、れいぱーの饗宴の真っ最中だった。 「んほおおおおおおおおぉぉ!! おちびちゃんまりさのまむまむはすっごくしまるわああぁ! とってもとかいはねええぇぇ!!」 「やめちぇええええぇ!! まりちゃのばーじんしゃんぎゃああああぁ!! おかーしゃん、おにぇーしゃん、たしゅけてえぇ!!」 「んほおおおぉ! そんなこといって、まむまむはありすのとかいはなあいをうけいれてるわよおおぉ!! つんでれさんねえぇぇ!!」 「やめるのぜぇ……みんなのあいどるすえっこまりちゃをはなすのぜええぇ……ゆぐっ、ゆがああああぁ!!」 「やっぱりおとなのまりさはいいわぁ! とってもとかいはよぉ!」 「まむまむもいいけどあにゃるもいいわあぁ! んほおおおおぉ!」 「やめてね! れいむのまむまむれいっぷっぷしないでね! あかちゃんできちゃうよ! すっきりしちゃうよ!」 「れいむのまむまむもいいわああぁ!! なかなかとかいはよおおぉ!!」 「ゆ……ぎゅ……まりしゃもっちょ、ゆっきゅり……しちゃかった……」 「んほおおおおおぉ!! とかいはなあいをうけとめられないなんて、まりしゃはいなかものねえぇ! いなかものはむーしゃむーしゃするわよおぉ!!」 「やめてね! れいむのおちびちゃんたべないでね! ゆっ、ゆゆっ、ゆんやー! す、すっきりー!!」 「んほおおおおおぉぉ! すっきりいいいいぃぃ!!」 数十匹のれいぱーありすが、まりさとれいむの家族に群がっている。 見たところ、親れいむと親まりさ、子れいむと子まりさが2匹ずつ、赤ゆがれいむとまりさ各3匹というそれなりの大所帯なようだ。 そのせいで一匹あたりに取り付いているれいぱーの数が減り、結果的にれいぷの苦しみを長く味わう事になっているみたいだが。 「これはひどい」 思わず呟く。 最大限に控えめな表現で、精神的ブラクラ。 それでいて一部HENTAIな方々には垂涎の光景がそこに繰り広げられていた。 「……かなこさん、こいつらで全部かな?」 「判らん。いずれにせよれいぱーは潰すだけだ」 「まりさとれいむは?」 「奴らもこの山のゆっくり、助けられるものなら助けてやりたいが……」 「了解。それなら何とかしましょ」 「弟殿……出来るのか?」 「俺ひとりだけじゃ無理だけどね。でも……」 ポケットを探り、携帯からメールを送る。 そして、待つこと十数秒。 「弟ちゃん、やっほー」 「こぼね~」 俺の側にスキマが開き、ゆかりん姉ちゃんとゆゆ先生が顔を出した。 「四人寄れば文殊も越える、ってね……ゆゆ先生、俺がれいぱー何匹か壊すから、そいつら操って他のれいぱーをれいむとまりさから出来るだけ離して」 「わかったわ~」 「ゆかりん姉ちゃんはそうやって引き離したれいぱーをスキマ送りに」 「任せなさい。お姉ちゃんがゆっかり加工場に送ってあげる」 「……加工場?」 なんでそんなところに。 いやまあ、ゆかりん姉ちゃんのスキマは見知った場所や馴染み深い相手の側なら見えてなくても開けるの知ってるけどさ。 だからこうして、俺の側に来てもらえているんだし。 「自然発生のれいぱーって加工場としては欲しい素材ゆっくりだから、出来れば何匹か捕まえてって母さんがメール寄越したのよ」 「カーチャン……」 息子と娘がそれなりに危険冒して頑張ってるのにひどいや。 「……まあいいか。で、スキマから逃れた連中にはかなこさんのオンバシラをお願い」 「任せろ弟殿、れいぱー共は過たず潰してやる」 近くの枝に腰を下ろし、かなこさんが頷く。 さて、それじゃ行きますか。 ウォーターガンのポンプを動かし、空気圧を高める。 「じゃあ、いくよ……照準」 十分に空気圧が高まったところで構え、狙う。 まあ、所詮玩具のウォーターガン、そこまで正確な照準は望めないけど気は心。 出来るだけまりさとれいむ一家を避けるように狙いを定め、俺は引き金を引いた。 「発射……!」 噴射口から勢いよく甘辛液が噴き出す。 「ぼ、ぼうやべでねええぇ! ばりざずっぎりじだぐないよおおおぉ……!!」 「んほっ、んほおおおおおおぉ!! まりさはほんとうにつんでれさんねえ! からだはいやがっててもくちはしょうじきだわああぁ!!」 「それ普通に嫌がってんじゃん」 噴射を続けながら思わず突っ込む。 その間も甘辛液は迸り、途中で飛沫となりながらも、一番外側にいたれいぱー達数匹のの饅頭皮に降り注いだ。 「んほ!? あめさんかしら?」 「んほおおおおぉ! あめさんのなかのすっきりー! もとかいはねええぇ……ゆぴっ!? ゆび、ゆびいいいいいいいっ!?」 「んほっ!? ど、どうしたのありす!? そんなこえはとかいはじゃない……ゆびいいいぃ!!」 「んほっ、んほおおおぉ! あ、あんまああああぁぁがらああああああああああぁ!! ゆびびっ!!」 奇声をあげ、れいぱー達が動きを止める。 それでもペにペにはでかくなったままなのがキモイ。 「よし、と……それじゃゆゆ先生、お願いします」 「こっぼね~。任せて~」 くるくる指を回しながら、ゆゆ先生が動きを止めたれいぱー達を見つめる。 「んほおおおぉ! なにやってるのおおぉ!? ありすのとかいはなあいのじゃまをするならどいてねえええぇ!!」 「んほおおおおおおおお!!」 「んほっ!? なんでありすのじゃまするのおおおおおぉ!?」 やがて、中枢餡が壊れたありす達が、れいむとまりさ一家かられいぱー達を引き剥がすように動きはじめた。 「んほー」 「んほほー」 間延びした声をあげながら、あるありすはれいぱーに体当たりし、別のありすはペにペにをれいぱーに突き刺していく。 それも、ありすがぺにぺにですっきりー! しようとするタイミングを見計らい、すっきりを邪魔するように。 「んほおおおおおぉ、やべてねええええぇ!? ありすのまむまむですっきりー! するなんてとかいはじゃないわああぁ!!」 「んほー」 「んほおおおおおおおおお! なにをするのぉ!! ありすのとかいはなあいをじゃまするなんてとんだいなかものねええぇ!!」 「んほほー」 「ありすのとかいはなあいをじゃまするゲスはしねええええぇ!!」 「んっほほー」 れいぷを邪魔されて怒ったのか、れいぱー達は中枢餡破壊ありす達に攻撃を始めた。 「んほおおおおおぉ!! ありすのとかいはなあいをありすにもわけてあげるわああ!」 「んほー」 「とかいはなあいをうけとってしぬのよおおおおぉ! んほおおぉ!!」 「んっほー」 「んほおおおおおおおおぉ!! もうこのさいありすのまむまむでもいいわあああぁ!!」 「んーほー」 中枢餡を破壊されて感覚もなにもないありす達は、れいぱーの攻撃を受けながらも適度に反撃し、れいむとまりさ一家から離していく。 「そろそろね。行くわよ、かなこ」 「承知! いけっ、オンバシラ!」 ゆかりん姉ちゃんの声に合わせ、かなこさんの背に浮いていたオンバシラがれいぱー達に向かって飛んでいく。 そのれいぱー達は、自分達の『とかいはなあい』を邪魔するありす達への制裁に夢中だ。 れいぱーって身体能力は捕食種並みになるって話だけど、そのぶん頭は悪くなってるんだろうか? まあ、基本「んほおおおぉ!」しか喋らないんだからアレなのは確かだけど。 「ゆっかり加工場にいってらっしゃい!」 れいぱー達の足元にスキマが開く。 中枢餡破壊ありすや、れいむまりさ一家を避けるように開いているせいか、普段と比べてスキマ送りにされる数は少ない。 「んほおおおおおおおおぉぉぉ!? おそらをとんでるみたいいいいいいぃ!!」 「おちるっ、おちちゃうのねえええぇ!? おそらとんでるのおおおぉ! んほおおおおおおぉ!!」 「とかいはなあいをこのスキマにあげるわあああぁ!! んほっ、おそらにだしてるみたいいいぃ!!」 それでも何匹ものれいぱーがスキマに送られていく。 あるれいぱーはんほおおぉと叫び。 あるれいぱーはおそらをとんでるみたい! と笑顔を浮かべ。 あるれいぱーは落ちながらすっきりー! する。 「って私のスキマをなんだと思ってるのよあのれいぱー!?」 「私が潰してやろうか?」 「お願いするわ」 「判った。オンバシラ!」 そして、それ以外のれいぱー達はかなこさんのオンバシラによって容赦なく潰されていった。 「んぼおおおぉっ!?」 「どぎゃいばっ!!」 「おそらにすっきりいいぃぶべぢゃ!!」 「んほおおおおぉ! ありすはもっととかいはなあいをつたえべべっ!!」 スキマに落ちながらすっきりー! していたれいぱーを空中で貫き潰す。 中枢餡破壊ありすにのしかかっていたれいぱーを叩き潰す。 スキマから逃れたれいぱーを押し潰す。 潰す、潰す、とにかく潰していく。 ゆっくりにとって圧倒的な質量を持つオンバシラは、れいぱーを永遠にゆっくりさせる死神となって周囲を蹂躙していった。 「んっ、んほおおおおおぉ!! なんでありすのとかいはなあいがつうじないのおおおぉ……ぶべぎゃ!!」 最後のれいぱーがオンバシラに潰され、カスタードの花を咲かせる。 それを確かめ、俺は立ち上がった。 「かなこさん達はそこで待機してて」 「判ったわ~」 「いってらっしゃい、弟ちゃん」 「うーん……出来るだけカスタードが飛び散らないよう潰したら、オンバシラがドロドロになってしまったか」 「あとで私の操るありすちゃん達に綺麗にさせましょうか~?」 「すまん、助かる」 背中でかなこさん達の声を聞きながら、れいむとまりさ一家に駆け寄る。 「ゆ、ゆぐぐ……ゆべええ……」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……」 「もっちょ…ゆっきゅり……ちちゃかっちゃ……」 「さすがに酷いもんだな」 れいむとまりさは親子赤問わず、強制すっきりーにより疲弊していた。 赤ゆや子ゆにはれいぱーにのしかかられて潰れているのもいるし、茎も複数生えている。 実ゆに餡子を吸われて死ぬのも時間の問題だろう。 親まりさと親れいむ、それに子ゆっくりと赤ゆっくりの何匹かは植物妊娠だけですんでいるのが不幸中の幸いか。 こいつらは、今すぐ茎を千切ってオレンジジュースをかけてやれば助かる見込みもあるだろう。 そう思い、手近にいた親まりさの茎を掴むと、親まりさはうっすらと目を開けた。 「ゆぐうぅ……に、にんげんさん……おねがいなのぜ……まりさよりも……れいむを、おちびちゃんをたすけてほしいのぜ……」 「ああ、出来るだけのことはしてやる。とりあえず茎は抜くぞ? でなきゃ死ぬからな」 「……わかったのぜ……ごめんなのぜ、おちびちゃん……」 再び目を閉じ、まりさは俺に身を委ねる。 流石というか……かなこさんが管理している山だけあって、ゆっくりの質はなかなかだな。 自分もすっきりーされてるのに、番や子供を優先するとは。 ま、それなら本当に出来るだけのことはしてやろう。 「よ、っと」 「ゆぎっ……」 親まりさの額から茎を引き千切る。 実ゆが小さく声をあげ……餡子供給が絶たれて、みるみる黒ずんでいく。 それをその辺に放り投げ、俺はリュックからペットボトルを取りだした。 中身はえーりん姉さん特製の加糖調整オレンジジュース。 「ほら、元気になれよ」 親まりさにオレンジジュースをふりかけ、同じように親れいむ、子れいむ、子まりさ、赤ゆ達と処置をしていく。 ……一応、胎生妊娠してるやつも茎抜いてオレンジジュースかけるくらいはしてやるか。 万が一助かる可能性はあるんだし。 「ゆ、ゆゆぅ……」 オレンジジュースのお陰か、次第に安らかな顔になっていくまりさ一家。 赤ゆも、胎生妊娠していなかった一匹は黒ずみかけていた皮が元の色を取り戻してきている。 それを確かめ、俺は親まりさ達の身体をペーパータオルで簡単に拭き取って、まだ息のある一家を抱え上げた。 「ここにいると、最悪移動しようと跳ねただけで妊娠しかねんからな……」 潰れたれいぱーのカスタードが四散している現場から、親まりさ達を連れ出す。 「ゆっ、ゆぢっ……ゆっゆっゆっ……」 微かな呻きが聞こえたので見下ろすと、そこには千切った茎についていた実ゆ達が、額から細い茎を生やして黒ずんでいる。 よく見ると、茎を放り投げた地面にはカスタードが飛び散っていた。 それが実ゆに触れて、強制妊娠させているらしい。 カスタード溜まりに浮かび、にょきにょきと細い茎を生やしては苦悶の表情で黒ずんでいく実ゆ達は、控えめに言ってキモかった。 「実ゆまで孕ませるのかよ……もう何でもありだな、れいぱー」 呟いて、慎重に現場から抜け出す。 俺は精子餡をどれだけ浴びても平気だが、うっかり精子餡身体に付けて、うっかり姉ちゃん達に触れでもしたら大変だ。 胴付きだからそうそう妊娠はしないと判ってはいるけれど、万が一にでも俺の姉ちゃんや先生やかなこさんをれいぱーなんぞの精子餡で妊娠させる訳にはいかない。 それどんな寝取られだよって感じだし。 「連れてきたよ、かなこさん。流石に全部助けるのは無理だったけど……」 慎重に戻り、抱えてきたまりさ達を地面に並べる。 親まりさ、親れいむ、子れいむ、子まりさ、赤まりさの総勢五匹。 ……つまり、この一家はおちびちゃんの半分以上が永遠にゆっくりしたことになる。 「いや、十分だ……ありがとう、弟殿」 それでも俺に頭を下げ、かなこさんはまりさ達の前に降り立った。 「まりさ、私が判るか?」 「ゆゆぅ……わかるのぜ、『やまもり』のかなこさまなのぜ……。まりさたちを、たすけてくれたのかぜ……?」 「ああ。残念ながら、おちびちゃんは全部助けられなかったがな……」 「ゆぅ……しかたないよ……れいぱーにおそわれて、おちびちゃんがぜんっめつ、しなかっただけでもしあわせー、だよ……」 かなこさんの言葉に、れいむがうつむきながらも殊勝なことを言った。 うーん、この山のゆっくりって出来てるなあ。 それに引き替え……うちの裏山に住みつくゆっくりは、なんでああもゲス率が高いんだろ……。 「『やまもり』のかなこさま……まりさたちをたすけてくれて、ありがとうなんだぜ……」 「れいむからもおれいをいうよ……『やまもり』さまがきてくれなかったら……れいむたちみんな、えいえんにゆっくりしちゃってたよ……」 「ゆぅ……まりしゃのいもうちょが……ゆぐっ……」 「れいみゅのおねーしゃんが……」 「ゆっくち……まりちゃ、れいぴゃーきょわいきょわいぢゃよ……」 丁寧に、かなこさんに向かってお礼の言葉とともにお辞儀する親れいむと親まりさ。 さすがに子供達はお礼を言う余裕はないみたいだが、変な言いがかりを付けて助けた俺達を罵倒するようなゲスではないようだ。 ……かなこさんの山は教育できてるなあ。 本当、なんで毎回駆除して新しい群れが入ってるはずなのに、うちの裏山はデフォでゲスの巣窟になるんだろう……。 「なに、私は『山守』としてお前達の危機を見過ごせなかっただけだ……ところで、ひとつ聞きたいことがあるのだが」 「ゆ? なんなのかぜ? まりさがしってることなら、なんでもはなすのぜ」 「れいむもだよ……なんでもきいていいよ、かなこさま……」 「まりしゃもなのぜ……」「れいみゅも……」「ゆっ、まりちゃも……」 殊勝な態度のまりさ達に、かなこさんが優しく微笑む。 「なに、難しいことではない……お前達が見たれいぱーは、ここにいたので全部か?」 「ゆっ……ゆーん……」 まりさが記憶を辿るように考え込む。 といっても、思い出すのは難しいだろう。 ゆっくりは記憶を保存する為に餡子を使っている。 しかし、まりさ達はれいぱーの強制すっきりーによる妊娠で餡子を消耗している。 今まりさの体内にあるのは俺が与えたオレンジジュースによって再生した新しい餡子だ。 数時間前とはいえ、記憶を呼び起こすのは難しいというかほぼ不可能だろう。 そう思っていると。 「……ぜんぶじゃないよ……なんにんかのれいぱーが、れいむたちをむしして……もりさんのおくにいっちゃったよ……」 れいむが記憶を辿るように、ぼそぼそと答えた。 記憶力いいなこいつ。 「そうか。どちらの方向だ?」 「あっちだよ……ゆっくりできないれいぱーもいっしょだったよ……」 「……ゆっくりできないれいぱー?」 「ゆゆっ……そうだよ。ペにペにがたくさんっはえてて……ゆっくりできなかったよ……」 れいむの答えに、俺と姉ちゃん達は顔を見合わせた。 「……それって」 「たぶん、テンタクルありすね」 「れいぱーだから~……テンタクルれいぱーありす?」 「寿限無かよ」 テンタクルありす。 ゆっくりありすの変異種で、あんよから触手状のペにペにが複数生えているのが特徴だ。 普通はゆっくり出来ないゆっくりとして排斥されるのだが、れいぱーの場合のみリーダー的な存在として祭り上げられることがある。 れいぱーには、ぺにぺにが複数生えているのが『とってもとかいは』と認識されるらしい。 実際、れいぱー化したテンタクルありすは一匹で同時に何匹ものゆっくりを強制すっきりーする厄介なゆっくりになる。 それが、れいぱーから見れば『ゆっくり出来る』ってことになるんだろう。 「まずいな。テンタクルありすがいるとなると、被害はそちらの方が上かも知れん」 腕を組み、かなこさんが険しい表情を浮かべる。 「かなこさん、そいつが向かった先には……?」 「群れと言うほどではないが、家族の巣が数世帯集まった集落がある……急ぐ必要があるな」 「だね」 頷いて、俺は立ち上がった。 「行こう、かなこさん。ゆかりん姉ちゃんとゆゆ先生は俺が連絡するまで家で待機してて」 「そうするわ。山を歩くのは疲れるし」 「こぼね~……弟様、気をつけてね~」 ゆかりん姉ちゃんとゆゆ先生がスキマに消える。 「ああ。急ごう、弟殿」 かなこさんがふわりと宙に浮く。 その瞬間。 どごおおおおおおおおおおおぉぉん!! んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 地面が揺れ、木々の倒れる音と……野太い叫びが山に響いた。 「っ! なんだぁ!?」 慌てて声のした方に駆ける。 獣道を走り、かなこさんの手を借りて斜面を登る。 ……すると、すぐに『それ』は見えてきた。 木々の切れ間に出来た、小さな広場。 周りには樹齢の高い樹が並び、大きなうろやゆっくりの巣穴らしきものがそこかしこに見えている。 恐らくここが、かなこさんの言っていた集落なのだろう。 だが、そこに動いているゆっくりはいなかった。 あるのは無数の餡子とカスタードの染みと、額から茎を生やして黒ずんだ、元はゆっくりだったもの。 そして。 広場の中央に陣取り、周囲に触手を伸ばして暴れている……体高3メートルはある巨大なテンタクルありすの姿だった。 「んほおおおおおおぉぉ!! ありすはクィーンになったのねええええぇぇ!! とってもとかいはだわあああああぁぁ!!!!」 「自己申告かよ!?」 思わず突っ込む。 いやそんな場合じゃないのは判ってるんだが! 「クィーンに進化したか……ますます厄介だな」 「いやもうこれ厄介とかそう言う問題じゃないよかなこさん」 とりあえずメールを送る。 これはもう電話で説明するより、ゆかりん姉ちゃん達に来て貰った方が早い。 「どうしたの弟ちゃん……うわぁ……」 すぐにスキマが開き、顔を出したゆかりん姉ちゃんがクィーンを見て顔をしかめた。 「クィーンテンタクルれいぱーありす……よりによってこのタイミングで進化するとはねぇ」 「こぼね……本格的に寿限無ですね~」 「南無三っ!? 寿限無というより怪獣ですよあれはっ」 「……これはまた、厄介なことになってるわね」 ゆゆ先生達も顔を覗かせ、息を呑む。 「まあ……自分の仲間も含めて全員すっきり死させてるみたいだから、余計な気を遣わなくていいのがせめてもだな」 とりあえず動きを止めよう。 そう思ってウォーターガンを構える俺を、えーりん姉さんが制した。 「駄目よ弟君。クィーンの体液量は普通のれいぱーとは比べものにならないから、その銃じゃ体液に流されて皮まで届かないわ」 「こちらの存在を教えるだけよ~?」 「通常サイズでさえ、テンタクルありすの触手は1メートル近く伸びる……クィーンとなればその十倍はいくぞ」 「精子餡に濡れたオンバシラ級の触手ですか……喰らえば、私達でもただじゃ済みませんね……南無三っ」 「肉体的にも、すっきり的にもね……お姉ちゃん寝取られちゃうわよ?」 「姉ちゃんそれ用法間違ってるから……しかし、それじゃどうするんだよ?」 ウォーターガンを下ろし、ぼやく。 「私のオンバシラを直撃させられれば、致命傷を与えることも出来るだろうが……」 「その為には触手が邪魔ね」 「だな。力比べでは分が悪い。オンバシラを捕まえられてはそれこそ手も足も……」 「南無三っ、クィーンが動きだしましたよっ?」 ひじり姉の声に、全員の視線が集中する。 「んほおおおおぉぉ!! クィーンになったありすには、もっともっととかいはなあいをあたえる『しめい』があるのよおおおぉ!!」 周りを探るように、クィーンの触手がうねうね動く。 やがて、それはぴたりとこちらを向いて、止まった。 「んほおおおおおぉ!! そこにゆっくりがいるわねええぇ!!」 「気付かれたか……! みんな、逃げて!!」 ウォーターガンを構え、立ち上がる。 「判ったわ……って、弟ちゃんはどうするのよっ!?」 「なんとか逃げるよ!」 「何とかって、相手はクィーンですよっ!?」 「あの触手を喰らったら、弟様でもただでは済まないわよ~!?」 「それでも妊娠しないだけマシだろっ! 俺が囮になるから、みんなはスキマで逃げて! そして加工場に連絡を!」 ゆかりん姉ちゃんのスキマは無生物とゆっくりだけを通し、一瞬で移動できる。 相手がクィーンだから準備は必要だろうが、加工場に連絡すれば今日明日には山狩りが行われるだろう。 あとは俺が何とか逃げ切れれば、それで万事問題なしだ。 「無茶言わないで下さい! クィーンと追いかけっこなんて、弟さんの体力が保つ筈ないでしょうっ!?」 「それでも! 姉ちゃん達が囮になるよりはマシだろ!」 「んほおおおおおおぉ!! どうつきなんてゆっくりしてないわねええぇ!! でもあんしんしてねええぇ!!」 「来るわよっ……!!」 触手を蠢かせ、地響きを立てながらクィーンがこちらに進んでくる。 体表を流れる粘液のせいか、這い進んでいる割にクィーンの動きはスムーズで、しかも速い。 というか、俺が走るのとほとんど変わらない……!? 「ありすはクィーンだからああぁぁ! ゆっくりしてないどうつきにも、とかいはなあいをあげるわあああぁぁ!! んほおおおおおおおおおおお!!」 「くそっ! 来るんじゃねえよこのれいぱー!!」 ウォーターガンを発射する。 「んほおおおぉ!? なんだかゆっくりできないわねえええ?」 だけどそれをあっさり触手で防ぎ、クィーンはどんどん迫ってきた。 「姉ちゃん、先生! 逃げて、はやく!!」 「わっ、判ったわっ……気をつけて、弟ちゃん!」 甘辛液をものともせず、クィーンれいぱーの触手が伸びる。 ゆかりん姉ちゃんがスキマを閉じる。 ウォーターガンを発射しながら、俺は後ろに下がり――。 「っ!?」 木の根に足を取られ、体勢を崩した。 「んほおおおおおおぉ!! にんげんはゆっくりできないわあああぁ!!」 触手が、酷くゆっくりとした動きで目前に迫る。 その太さはまるで、かなこさんのオンバシラのよう。 あー……これ直撃したら打撲どころか粉砕骨折コースだなぁ。 囮になるとか逃げるとか言ってたのに、初手からつまずくとか俺めっちゃ格好悪いよなあ……。 ごめんよ、姉ちゃん……。 「つかまれ、弟殿っ!!」 不意に。 目の前に、腕が伸びてきた。 「くうっ……!」 反射的にそれを掴む。 足が地面から浮き、自重に掴んだ腕が悲鳴をあげる。 それでも腕にしがみつき、身を委ねる。 「んほおおおおおおぉぉ!!」 一瞬後、俺のいた地面をクィーンの触手がえぐった。 地面が震え、木々が揺れる。 その擦れ合う枝の間をすり抜け――俺は空を飛んでいた。 「大丈夫か弟殿、怪我はないか!?」 俺の身体に腕を回され……背中から、かなこさんの声が聞こえてくる。 「大丈夫、ありがとうかなこさん――でもなんで逃げてないんだよっ!?」 その腕に手を重ね、俺は思わず叫んでいた。 クィーン、それもれいぱーでテンタクルなんて第一種危険ゆっくりの中でもトップクラスの『害獣』だ。 ゆっくりを蹂躙し、人間にすら危害を加え、環境を破壊する天災。 そんなゆっくりと対峙して、かなこさんを危険な目に遭わせたくなかったのに……。 「弟殿に駆除を頼んだ私が、先に逃げるなど出来るものか」 かなこさんの腕に力がこもり、俺をぎゅっと抱きしめる。 「それに私は『山守』だ。この山を守り慈しむのが、主殿より与えられた私の使命で――」 背中に感じる柔らかなぬくもり。 かなこさんの身体は熱をもち、燃えているように熱い。 その熱い吐息が、耳をくすぐり……。 「――弟殿と交わした、『約束』だからな」 かなこさんの囁きに、俺の心臓が、跳ねた。 「かなこさん……」 「とはいえ、このままでは埒があかん。一度引いて応援を待とう。えーりん達が加工場に連絡しているだろうから、じきに――」 「それじゃ駄目だ」 「……弟殿?」 「それじゃ駄目だよ、かなこさん……ほら、クィーンの奴は木々を薙ぎ倒して進んでる」 足元を見下ろし、告げる。 「んほおおおおおぉ! じゃまなきさんはたべてあげるわあぁ!! ぼりっ! ぼりっ!! むーしゃ! むーしゃ!!」 「これじゃゆっくりだけじゃなく、他の生き物……山そのものが荒れる。一秒でも早く、あいつを倒さないと」 「……だが、どうする? 樫の木をもへし折る触手相手では、私のオンバシラも牽制にしか使えんぞ」 「それはそうなんだけどさ……」 精子餡を飛ばしながら、山を蹂躙していくクィーンテンタクルれいぱーありす。 その触手はあんよのように蠢いて、進行上の木々をへし折り、なぎ払い、自分の口へと運んでいる。 「……まてよ?」 あんよのように動いている触手。 長さで言えば触手も十分届きはするだろうが、それでも頭上は死角の筈。 かなこさんの能力と、俺の装備があれば……。 「どうした、弟殿?」 「……かなこさん」 訝しげに尋ねるかなこさんに、俺は唇を吊り上げて答えた。 「俺、クィーン倒す方法思いついちゃった」 眼下を這い進むクィーンを見下ろしながら、かなこさんに作戦を説明する。 「それは……弟殿が危険すぎはしないか?」 俺の話を聞いて、かなこさんは不安げに声をあげる。 まあ、それは仕方ないよな。作戦の内容が内容だし。 「でも、これならクィーンも倒せるだろ?」 「確かに倒せるだろうが……しかし、弟殿にもしもの事があったら、私は……」 「大丈夫……とは断言できないけど、何とかするさ! だから……」 俺を抱きしめる腕を優しく撫で、強く握る。 「俺を信じてよ、かなこ姉様」 「っ!? 弟殿……っ!」 かなこ……姉様が、俺をぎゅっと抱きしめてくる。 「判った! 私も覚悟を決めよう……弟殿、仕損じるなよ!」 「大丈夫、まーかせて!」 俺の軽口に、背中でかなこ姉様が笑う。 笑いながら旋回し、クィーンの背後につけ……そのまま上昇する。 クィーンの姿がだんだん小さくなり、頬を撫でる風が微かに冷たくなる。 「行くぞ、弟殿!」 「行って、かなこ姉様!」 一瞬、お互いの手を重ね。 俺達は一気に降下した。 地面が近づき、クィーンの姿が大きくなっていく。 その背中に向かって、俺は怒鳴りつけた。 「クィーンありすううううううぅっっ!!!!」 「んほっ!?」 ありすが動きを止め、振り返ろうとする。 その瞬間。 「ゆっくりっ……!!」 俺はかなこ姉様の手を離れ、クィーンめがけて落下した。 「していってねええええええええええぇぇっっ!!」 「んほおっ!? ゆ、ゆっくりしていってねええええええぇぇっ!?」 俺の挨拶に応えながら、それでも触手は俺を敵と認識したのか、迎撃すべく伸びてくる。 「いけっ、オンバシラっ!!」 それを、かなこ姉様のオンバシラが迎え撃った。 触手とオンバシラがぶつかり、互いに弾かれる。 「必殺っ……!」 そして生じた空間を俺は落下し――。 「弟キイイイイイイイイイィィィック!!!!」 「んほおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!?」 クィーンの頭頂に、トレッキングシューズの底を叩きつけた。 落下の勢いと俺の体重に頭皮が裂け、両脚が生暖かいカスタードに包まれる。 「あがああああああぁぁ!! いだい、いだいわああああぁ!! ごんなのどがいばじゃないいいいいいいいぃ!!!!」 「あーんど……」 苦痛にクィーンの身体が震え、俺を振り払おうと触手が伸びる。 だが、それより早く。 俺はウォーターガンから取り外しておいたボトルをクィーンのカスタードの中に突っ込み……握り潰した。 「ブレイクウウウウウゥ!!」 「んぎょおおおおおおおおおおおぉぉっ!!!!」 えーりん姉さん特製の甘辛液がカスタードの中で炸裂する。 「あばっ、あばあああああああああぁぁ!! がらっ、がらああああああぁぁ!? あばがらあああああああああぁぁ……ゆびびびっ!!!!」 カスタードで直接味わう超絶な甘味と辛味に、クィーンの身体がビクビクと震え……。 ひときわ大きな叫びをあげると、クィーンは動きを止めた。 「うわっ!?」 断末魔の叫びにカスタードが収縮し、俺の身体を吐き出す。 そのまま受け身をとる間もなく、俺は地面まで滑り落ちた。 「ぶべっ!」 顔からイッて地面にキスをする。 うぅ……クィーンの通った痕で粘液なかったら鼻イッてたかも……。 一瞬だけクィーンに感謝しつつ、仰向けに転がる。 「ゆびっ、ゆび、ゆびびび……」 クィーンはまだ呻いていた。 しかし、触手がだらりと下がり、瞳は焦点を失って、ぽかんと開かれた唇からは舌と涎が垂れている。 「なんとか……なった、かな?」 クィーンを見上げ、呟く。 あとはゆゆ先生に来てもらって、こいつを安全に処理できるところまでもっていけばいいだろう。 「まったく……お前も運がなかったな。他の山なら、もう少しくらいは長く生きていられたかも知れないが……」 身体のあちこちが痛い。 特に足と肩はズキズキと脈打っている。 カスタードがクッションになったとはいえ、十数メートル上空からのダイビングを敢行したんだから当然だ。 最悪、ヒビくらいは入っているかも知れない。 「生憎、ここはかなこ姉様が……俺の命の恩人である『山守』が守護しているんだ。お前達れいぱーが好きに出来る場所じゃないんだよ」 それでも、俺はいい気分だった。 かなこ姉様と一緒に、クィーンを駆除できたから。 この山を守る事が出来たから。 思わず、厨二病満載のセリフを呟いてしまうくらいに……良い気分だった。 「弟殿~~っ!!」 空からかなこ姉様が降りてくる。 起きたら姉さん達に連絡を取らなきゃな。 ああそうだ、その時にはかなこさんを『姉様』と呼ばないよう気をつけなくちゃ。 俺はまだ、約束を果たしていないんだから。 「大丈夫か、傷はないかっ!? よくやったぞ、弟殿っ!!」 かなこさんが笑顔で降りてくる。 俺に抱きつかんばかりの勢いで。 そんな、ここの山守ゆっくりである姉様を見上げ――。 「かなこさん抱きついちゃ駄目~っ! いま俺れいぱーのカスタードまみれだから! 妊娠しちゃうからっ!!」 俺は全力で、かなこさんを避けたのだった。 ・おまけ 「はぁ……弟君、なんでそう無茶をするの?」 「まったく、弟ちゃんは仕方ないわよね~」 「本当ですっ。弟さんだけの身体ではないのですよっ!?」 「こぼね~……本当よ、弟様。先生すごく心配したんだから」 「うぅ、ごめんなさい……」 「まあまあ、弟殿も反省しているのだから許してやってくれ。それに今は、治療の方が先だろう?」 「……そうね。では弟君、患部に薬を塗るからじっとしてて」 「はい……でもえーりん姉さん、なんでみんな裸なの? そしてなんで俺、かなこさんに抱きしめられてるの?」 「動かないようによ……じゃあ、いくわよ……ん、ぺろっ」 「ちょ、ちょちょちょっと待ってえーりん姉さんっ!? なんで舐めるの!? ぺーろぺーろなの!?」 「んっ……私が『薬物を分泌できる程度の能力』をもつ第二種危険ゆっくりだって事は知ってるでしょ?」 「いや知ってるけど! 問題はそこじゃないでしょおおおおぉ!?」 「私達はゆっくりなんだから、同じ分泌塗布するにしても、こうした方が高い効果を出せるのよ……ん、てろぉ」 「待って姉さん! それゆっくり相手の話だよね? 人間の俺には関係ないよねっ!? あっ駄目、そこはマジで駄目っ!」 「ほらほら暴れるな弟殿、大人しくしていないとえーりんが薬を塗れないだろう?」 「画的には全然薬塗ってるように見えないでしょおおおおおおおぉ!?」 「ん……ほら、暴れないの。もう終わるから……ちゅぷ……」 「ううぅ……お、終わったの……?」 「ええ弟ちゃん、薬を塗るのは終わったよ~。あとはぁ……」 「私達が馬肉ならぬゆっくり湿布になって、ぎゅーっとしてあげますねっ、南無三っ」 「患部にゆっくりを当てるゆっくり湿布は、ちゃんと医学的にも効果があるって証明されているのよ~?」 「さあ弟殿、私達で包んでやるぞっ」 「みんな裸だったのはその為かあああああああああぁぁぁ!!!!」 ああ、いや。 これは治療だからね? 何もなかったからね? なんかもう最後の一線越えてるんじゃねとか、そんなことないから。 最後の一線は越えてないから。 ……それ以外全部越えてるだろとか言うな。 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) 感想、挿絵ありがとうございます。感謝です。
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・駄文長文詰め込みすぎ注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。 ・そしてガチのHENTAIです。どうしようもないです。 ・それでもいいという方はゆっくりどうぞ。 妙な寝心地のよさに目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。 カーテンの隙間からは朝の光が入り込み、部屋を照らしている。 「ん……ゆぴぃ……すぴぃ……」 そして横からくる規則正しい寝息が、俺の耳をくすぐっていた。 ついでに、わき腹の辺りに感じる柔らかな弾力。 押しつけられてちょっと潰れているのか、ぷにぷにと押し返してくる感じがまた気持ちいい。 「いや、そうじゃなくてだな」 自分に突っ込みつつ、ため息をつく。 まただ。また侵入を許してしまった。 しかもこの感触は明らかに……。 まあ、済んでしまったことは仕方ない。 ここは毅然と注意しなくちゃな。 「……ゆかりん姉ちゃん?」 「ん~……? なに、弟ちゃん……?」 俺の声に、ゆかりん姉ちゃんが眠そうに瞼をあげる。 「なんで俺の布団に入っているのかな? 俺言ったよね、一緒に寝るのは構わないから、ちゃんと承諾は取ってくれって」 「承諾は取ったわよ……『お姉ちゃん添い寝するけどいい?』って言ったら、弟ちゃん頷いてくれたもの」 「普通寝ている時の反応はノーカンだと思いませんか?」 「なによぉ……? そんなこと言って、弟ちゃんも悦んでるクセに……」 ゆかりん姉ちゃんの手が、いきなり俺のオンバシラを握った。 「ぶはっ!? 待て姉ちゃん、そこ握っちゃ駄目だろっ!?」 「ほら、こんなに大きくなってる……弟ちゃんは素直じゃないわねー」 「それは朝の生理的な反応だよ姉ちゃんっ!?」 八割くらいは姉ちゃんからの刺激だけどそれはそれだ。 「だいたい、なんで潜り込んでるんだよ……俺、部屋の鍵かえてたはずだぞ?」 「夜中トイレに起きたら、弟ちゃんどうしてるかなーって気になって……スキマ移動してきちゃった」 てへ、と上目遣いに微笑むゆかりん姉ちゃん。 いや可愛いんだけど、そしてそんな姿でそんな顔されると注意しなきゃって気勢もそがれるんだけどっ。 「だ、だったらせめて服は着ろよっ! なんで全裸なんだよ!?」 「私が裸にならなきゃ用を足せないの、弟ちゃんも知ってるでしょ?」 「ここに来るまでに! 服を着ろと! 言ってるんだよ!」 「うまれたままのお姉ちゃんを感じてもらいたかったんだもの」 「姉ちゃん産まれた時から服着てるでしょおおおおお!」 胴付きゆっくりにとって服はお飾りみたいなもの。 だから産まれた時から身に付けているし、破れたり奪われたりしても時間が経てばまた生成されるとえーりん姉さんは言っていた。 ちなみに胴なしも、お飾りは再生すると教えてやれば、時間はかかるが再生成されることがあるそうだ。 もっとも、大抵は再生成する前に『ゆっくり出来ないゆっくり』として制裁されてしまうのだが。 「それはそれ、これはこれよ」 きっぱり言い切って、ゆかりん姉ちゃんは微笑みつつ俺に身体を押しつけてきた。 姉ちゃん達の中では一番控えめとは言え、十二分なボリュームの胸が柔らかく潰れる。 「いや言ってる意味わかんねえから」 「とにかく、こんなになってたら苦しいでしょ? 弟ちゃんさえ良ければ、私がすっきりーさせてあげるけど……?」 オンバシラにぎにぎ。 うぅ……いつものことながら、ゆかりん姉ちゃんの指めっちゃ気持ちいい……。 そりゃそうだよな、ゆっくりなんだから。 あのもちもち感触の皮に包まれた手指は、それだけで下手な人間と本番するより気持ちいい『甘手』らしいし。 ソースはネットなんで本当なのかは知らないが、少なくとも俺の五人組よりは気持ちいいからな。 とはいえ、このまま流される訳にはいかない。 俺達は姉弟なのだから。 「朝からそんな爛れた関係になるのは良くないと思います!」 「なによ……嫌なの?」 「嫌じゃないけど! それはそれとして自重しようよ姉ちゃんっ!」 こういう流れでいっちゃうのはあんまり宜しくないと思うんだ、これからの姉弟関係的に考えて! 姉ちゃん達オカズにしてる俺が言う事じゃないの判ってるけど! 「……しょうがないわね」 ため息ついて、ゆかりん姉ちゃんがスキマを開く。 とりあえず今日は引いてくれるみたいだ。 「それじゃ、お姉ちゃん部屋に戻るけど……弟ちゃんはそろそろ起きなさいよ? 母さんが朝ご飯用意してるみたいだし」 「判ってる……ゆかりん姉ちゃんは部屋で寝直しなよ」 ゆっくりゆかり種は寝ることでゆっくりする。 ゆかりん姉ちゃんは胴付きになったことで多少の無理はきくようになっているけど、それでも一日最低八時間、出来れば十二時間は睡眠を取らないと調子が出ない。 まあ、だから小さい頃は昼寝の時とかによく添い寝してもらったし、そのせいで今でもゆかりん姉ちゃんと一緒に寝ると落ち着けはするんだけど。 「そうするわ……っと、弟ちゃん?」 「ん? なに、ゆかりん姉ちゃ……んんっ!?」 「ん……っ、んく……っ、ちゅ……ちゅぷっ……」 「……っぷあぁっ!? な、ななななななっ!?」 「ふふっ……目、覚めたでしょ? じゃーねー」 目を回す俺を尻目に、ゆかりん姉ちゃんがスキマに消える。 (確かに目は覚めたけど……) 別のところも、ちょっとリビングに行くには問題あるくらい起きちゃったんだがどうすんだよ? ため息つきつつ、俺はもそもそと服を着替えた。 今日も一日が始まる。 そして、数時間後。 「……あづい……」 俺は噴き出る汗をタオルで拭いつつ、林道を歩いていた。 木々の間から降り注ぐ夏の日差しが気温を上昇させる。 煩いくらいの蝉の声が、さらに体感温度を増していく。 「ったく……母ちゃんも人使い荒いよなー」 思わず愚痴もでる。 右手に提げた魚籠が重い。 ちなみに中身は親父が昨日釣ってきた鰻。 ご近所さんへのお裾分けってやつだ。 「ひじり姉は母ちゃんと畑仕事、えーりん姉さんは診療所。ゆかりん姉ちゃんは家事させるからって、俺に押しつけなくてもなー」 ちなみにひじり姉は俺より力があるので(というかエア巻物まで使うと熊とガチで相撲取れるので)肉体労働になると真っ先にかり出される。 えーりん姉さんは仕事持ちだから仕方ない。 そして、こういう時こそ役に立ちそうなゆかりん姉ちゃんのスキマは、無生物とゆっくりしか通さないという制限ゆえに使用不可。 収穫した野菜や果物ならギリ大丈夫なのだが、生きた魚はスキマに送れないのだ。 そして、どちらがお裾分けにいくかを決めるじゃんけんで俺はゆかりん姉ちゃんに負け、ゆかりん姉ちゃんは家事を、俺は暑い中魚籠を持ってご近所回りとなったのだ。 「それにしても暑い……ゆっくりも熱で融けるぞ、こりゃ」 この辺には大きな群れはないが、家族単位でなら野生ゆっくりが結構生息している。 普段ならこの時間は狩りで木々の間を跳ねるゆっくりや、畑に向かうゆっくりを見かけたりするのだけども、さすがにこれだけ暑いと姿も見えない……。 「そこのじじい! とまるんだぜ!」 「とまりゅんだじぇ!」 「とみゃれ! くしょじじい!」 「あー……」 前言撤回。 どうやら暑さで餡子が茹だってゲスになってただけらしい。 『とおせんぼ』 いきなり道に飛び出し、ぷくーで威嚇しつつ人間に通りたければあまあま寄越せと通行料を要求する。 山に済むゲスゆっくりの定番にして、成功率は1%以下という死亡フラグだ。 「なにしてるの? ここを通りたかったらはやくあまあまよこしてねくそじじい!」 「あみゃあみゃよこしぇ! でにゃいとれいみゅおきょりゅよ!」 「こーろこーろしゅるよっ!」 俺の前にいるのはバスケットボールサイズのまりさとれいむのつがい。 そして、その子供らしいハンドボールサイズのまりさとれいむがそれぞれ二匹ずつ。 総勢六匹のゲス饅頭共だ。 「あまあまねぇ……渡さなかったらどうするんだ?」 見ゆん必殺で潰してやってもよかったが、一応聞いてみる。 時々、こういう事をやって成功した1%のゆっくりを見て模倣しただけの『バカだが善良』な個体がいたりするからだ。 俺は害獣としてのゆっくりは嫌いだが、野生ゆっくり全てを潰そうとまでは思わない。 バカなだけなら教えてやれば静かに山で生きていく可能性はあるし、なにより山の甘味としてのゆっくりは好物なのだ。 全て潰してしまったら、折角の甘味が戴けなくなる。 晩秋、冬ごもりに入ったゆっくりを姉達と一緒に捕まえて作る干しゆっくりは子供の頃からの楽しみだし。 というわけで温情一割、暑くてもうゆっくりとかスルーしたいでござる九割な気分で尋ねたのだが。 「ゆがあああああ! まりささまにあまあまをけんっじょうっ! しないゲスじじいはせいっさいっ! するのぜええ!」 「かわいいれいむにあまあまをわたさないとかばかなの? しぬの?」 「はやきゅあみゃあみゃもっちぇきょいくしょじじい!」 「まりしゃちゃまはぷきゅーしゅるのじぇ! ぷきゅー!」 「れいみゅもぷきゅーしゅるよ! ぷきゅー!」 「ゆわああああっ! きょわいよおおおおおぉ!」 「「どぼぢでいみょーとぎゃきょわぎゃっちぇるのおおおぉ!?」」 あー、ゲス確定で言質取れましたー。 制裁とか言い出すのは善良バカにはいないからな。 さて、それじゃ面倒だし一気に潰すかー。 バランスのために魚籠を肩にからって足を振り上げ……。 「こっぼね、こぼね、こーぼね~」 ……ようとして、俺は後ろから近づいてくるおっとりとした声に振り返った。 「こぼね~……あら? 弟様、こんにちは」 「ゆゆ先生、こんにちは」 「はい、ゆゆこですよ~」 俺に気付いて、ピンクの髪にふわふわとした服を着たゆゆ先生が微笑みながら手を振る。 その小さな動作で、ふんわりした服越しにも判る程のサイズの膨らみがゆさっ、と揺れた。 「ゆゆ先生は何をしてるんです?」 「夏休みで学校もないから、お散歩よ……ゆかり様達はご健勝かしら?」 「それはもう、象が踏んでも壊れないくらいに」 「こぼね~。それはよかったわ。今度またお訪ねするから、よろしくとお伝えしてね」 「判りました。ゆっくり料理山ほど用意して待ってますよ」 「それはいいわね~。弟様の母上は、ゆっくり料理の名人だし……こぼね~」 嬉しそうに微笑むゆゆ先生。 その可愛らしい顔も姿も、俺の担任をしてくれていた小学校の頃から変わっていない。 まあ、胴付きゆっくりゆゆこ種なんだから当然なんだけども。 ゆっくりってナマモノは、見た目上老化したかどうかなんて、ほとんど判らないものなのだ。 特に胴付きは1年ほどで成長を終えると、それからは容姿は殆ど変化せず、寿命まで若々しいままでいることが多いらしい。 全体の肉付きというか、スタイルは変わったりすることもあるけれど。 ゆゆ先生も身体の一部は前より豊かになってるし。 「……ところで~、弟様はどうして、こんなところで立ち止まっていたの?」 「ああ、ご近所に鰻をお裾分けに行く途中で、ゆっくりに『とおせんぼ』されてたんですよ」 小首を傾げるゆゆ先生に告げ、改めて野生ゆっくり達を振り返る。 「「「「「「………………」」」」」」 見事なまでに親子揃って固まっていた。 どいつもこいつも、ゆゆ先生を見上げた状態のまま顔に恐怖を貼りつかせている。 「なんだ、お前ら? なに固まって……」 「こーぼね~。これは、なかなか美味しそうな野生ゆっくりね~」 嬉しそうにそう言って、ゆゆ先生がゆっくり共を一瞥する。 「……あー……」 そうか、そうだった。 ゆゆ先生……ゆっくりゆゆこって……。 「ゆわああああああぁぁっ!? ゆ、ゆゆこだああぁ!!」 「なんでだぜえぇ!? なんでぐぞじじいがゆゆこどいっじょにいるんだぜええぇぇ!?」 「きょわいよおおおおおぉ!!」 「にげりゅんだじぇえええええええ!!」 「かぞくのあいどりゅすえっこれいみゅはれいみゅがまもりゅよ!」 「ゆわーん! ゆわーん!」 ……捕食種、だったっけ。 「あらあら、みんなそんなに怖がることはないですよ~? 先生は痛いことはしませんからね~」 笑顔を浮かべたまま、ゆゆ先生がゆっくり一家に近づいていく。 「ゆ? いたいことはしないのぜ?」 ゆゆ先生の言葉に、真っ先に立ち直った親まりさがおそるおそる尋ねる。 「ええ。先生がゆっくり虐待なんてしたら、教え子に示しがつかないもの」 その答えに、まりさ達は一斉に破顔した。 「そうなのかぜ! それならあんしんなのぜ!」 「よかったねまりさ! これであんっしんっ! してあまあまもらえるね!」 「ゆ! そうなのぜ! ここを通りたかったらあまあまよこすのぜ!」 「あまあまがないならゆゆこはゆっくりしんでね!」 「あみゃあみゃもらえるのじぇー!」 「あみゃあみゃ! あみゃあみゃ!」 「はやきゅまりちゃしゃまにあみゃあみゃもっちぇくりゅのじぇ! わきゃってるのじぇ、くちょびゃびゃあ!」 「ゆっきゅりー! あみゃあみゃ-!」 うん、潰そう。 俺の恩師であるゆゆ先生をばばあ呼ばわりとはいい度胸だこの糞饅頭ども。 水泳の授業で一緒に川で泳いだ時の水着姿は未だに俺のオカズ常連もといスイートメモリーなんだぞ? 「ゆゆ先生、こいつら潰しますから離れて下さい。餡子で汚れるんで」 「こぼね~。それは駄目よ? ゆっくりも山の恵み、ただ潰すなんて勿体ないことをしてはいけません」 足を上げかけた俺を、ゆゆ先生が優しくたしなめる。 「ゆっ! そうだぜ、どれいはゆっくりしてないのぜ! だからはやくあまあまもってくるのぜ!」 「そうだよ! そしてゆっくりしてないゆゆこははやく死んでね! すぐでいいよ!」 「はやくしゅるのじぇ! でなきゃまりしゃがぷきゅー! するのじぇ!」 「まりちゃもちゅるのじぇ! ぷきゅー!」 「すえっこれいみゅもいっちょにぷきゅーちようね! ぷきゅー!」 「ゆー! ぷきゅー!」 それを見てますます調子に乗る野生ゲス一家。 得意げにぷくーをしている子ゆっくりを即潰したい衝動に駆られるのを、俺は辛うじて抑え込んだ。 俺が潰さなくても、ゆゆ先生がこいつらへの制裁はしてくれる。 ゆゆ先生は優しいから、確かに虐待はしないだろうが……ゆっくりゆゆこは捕食種なのだ。 つまり、虐待はしなくても……。 「それじゃみんな、ゆっくりご馳走になるわね~」 「「「「「「………………ゆ?」」」」」」 不思議そうに鳴くゆっくり親子の頭を、ゆゆ先生が優しく撫でていく。 「こ~ぼね~」 それだけで、まりさ達は呆けたような恍惚の表情を浮かべ……動きを、止めた。 そんなまりさ一家を、ゆゆ先生はスカートを持ち上げて一匹ずつ乗せていく。 「ゆうぅ~……」 「ゆぴっ、ゆぴい」 「ゆゆ~ん……」 「みゅー、みゅー」 そんな事をされてもゆっくり達は抵抗せず、ゆゆ先生のされるがままだ。 やがて全部のゆっくりをスカートで包むと、ゆゆ先生は俺を見てにっこりと笑った。 「ねえ、折角だからいっしょに食べない? もちろん、弟様には一番新鮮なものをご馳走するから……」 もちろん俺に不服はなかった。 少し遅くはなるけど、このくらいの道草ならいいだろう。 何より、久しぶりに逢ったゆゆ先生ともう少し話したい。 そう思い、俺は森に入っていくゆゆ先生の後を追った。 ざあざあと水の流れる音がする。 岩にぶつかった流れが水飛沫をあげ、それが気化して涼しげな風になる。 林道から少しおりたところにある渓流。 そこの小さな河原に座って涼みつつ、俺とゆゆ先生はゆっくりに舌鼓を打っていた。 「こぼねー。このまりさ、餡がしっとりしていて美味しいわ~」 幸せそうに子まりさ(妹)の頬をかじるゆゆ先生。 ゆっくりと餡と皮を咀嚼し、味わいながら飲み込んでいる。 ひと口が小さいし仕草も上品なので一見あまり食べてなさそうに見えるが、これで子ゆっくりは四匹目だ。 ここに座ってまだ十分くらいなのに、ハンドボールサイズだった子ゆっくりをさくっと三匹完食するとは。 「……ゆゆ先生、相変わらず健啖家ですね」 「夏はエネルギーを使うのよ~。弟様も遠慮しないで食べてね?」 「ええ、戴いてます」 とはいえ、ゆゆ先生の食べっぷりを見ているとそれだけで割と満腹になるんだけど。 そんな事を考えつつ、掌で転がしていた実ゆっくりを口に放り込む。 「ゆぎゅっ……!」 口のなかで微かに悲鳴をあげるのを舌で転がしつつ、奥歯で一気にかみしめる。 (ゆぎゃっ! も、もっぢょ……ゆっぐぢ……) 断末魔もみなまで言わせず、一気に咀嚼し飲み込む。 すっと解ける甘さと、きめ細やかな餡と皮の食感をのど越しに味わって、俺は次の実ゆっくりに手を伸ばした。 「……あ、もうないや」 「こぼね? あら、本当」 子まりさから唇を離し、ゆゆ先生が呟く。 「弟様、おかわりはいる?」 「そうですね……もうちょっと欲しいかな」 「こぼね~。判ったわ、じゃあまりさ、れいむ。またすっきりー! して赤ちゃん作りましょうね」 ゆゆ先生の言葉に、恍惚に呆けた表情のまま、まりさとれいむはぬちょぬちょと身体をこすりはじめた。 「ゆっ、ゆゆっ……れいむううぅ……」 「まりさぁ……ゆゆっ、ゆーっ……」 幸せそうにすーりすーりを繰り返す二匹。 「「すっきりー」」 やがて同時に叫ぶと、まりさとれいむの額から蔓がにょきにょきと生え、実ゆっくりが膨らみはじめた。 「相変わらず見事ですね、ゆゆ先生の実ゆっくり饅頭作り」 思わず感嘆の声が漏れた。 ゆゆ先生のこれを見るのは卒業以来だが、その時よりもさらに実ゆっくりの成る速度は上がっているようだ。 「こぼねー。当然よ……みんなのおやつを用意するのも、私のお仕事だもの」 子まりさを片手に微笑むゆゆ先生。 ちなみに子まりさは、もう3分の1ほどしか残っていない。 「そうでしたねぇ……俺がゆっくり好物になったのも、ゆゆ先生のおやつからですし」 「ふふっ、そうだったわね」 ゆゆ先生は、俺が産まれる少し前の山狩りで、ゆかりん姉ちゃんが保護したゆっくりだった。 その頃は胴なしだったらしいが、捕食種なのを生かして畑番にしようと、えーりん姉さん達が躾けた結果胴付きに成長したらしい。 そしてゆゆ先生は、村の学校の先生をしていた叔母さんのところに引き取られた。 畑番としてゆっくりを捕食しつつ、飼い主である叔母さんの手伝いをしていくうちに、だんだんと人手の少なかった学校の手伝いをすることが多くなり……。 俺が村の学校に入学した時、叔母さんが体調を崩したのもあって、その年度唯一の生徒だった俺の担任になってくれたのだ。 もちろんこれは非公式なもので、書類上はずっと叔母さんが俺の担任だったのだが……俺がゆゆ先生に懐いてしまったのもあって、なんだかんだで村の学校を卒業するまでの9年間、俺はゆゆ先生のもと勉学に励んだ。 俺が志望校に入れたのは姉さん達とゆゆ先生の熱心な指導のお陰だと、今でも感謝しているくらいだ。 「勉強のあとにご褒美だって食べさせてくれた、ゆゆ先生お手製の実ゆっくり……甘くて柔らかいあれ欲しさに、勉強頑張ったようなものでしたから」 まりさの茎から実ゆっくりれいむをひとつ千切り、口に放り込む。 舌と口腔で静かに潰すと、プチプチとした感触と一緒にトロリとした餡が口内に広がり……淡く、解けていく。 懐かしい味と食感。 他のゆっくりでは味わえない、ゆゆ先生だけの味だ。 「こぼね~。そう言ってくれると、毎日作った甲斐があるわ」 「中枢餡だけを壊しただけの植物ゆっくりを操るのって大変なんでしょう?」 「コツはいるわね。弟様のために毎日作っていたら覚えちゃったけど」 「この実ゆっくり、ゆゆ先生がオリジナルですもんね……」 ゆっくりは餡子で形質や言語、知識などを子に伝える。 そして、その中枢となるのは琥珀色の餡子の塊……中枢餡だ。 ゆゆ先生は、ひと撫でしただけでそのゆっくりの中枢餡だけを破壊することが出来る。 しかも、そうして中枢餡が破壊されたゆっくりを自在に操ることが出来るのだ。 中枢餡を破壊されると言うことは、ゆっくりにとって死を意味する。 他の餡子は残っているので外傷がなければ生きているように見えるし反射なども残っているが、自ら動くことはなくなる。 そして、そのまま放置していれば次第に餡子を消耗し、衰弱死していく。 だが、そうやって中枢餡だけを破壊されたゆっくりの餡は程よく甘く、なにより口内の体温で淡く消える口溶けの良さをもつ。 特に元々餡が柔らかく口溶けのいい実ゆっくりがその形質を受け継ぐと、これが独特の触感を持つ逸品になるのだ。 このゆっくりの製法はえーりん姉さんによってまとめられ、加工所によって商品化されている。 しかし、加工所の実ゆっくり饅頭など、ゆゆ先生手製のものに比べれば月とスッポン、ゆうかにゃんとでいぶだ。 こうして目の前で、ゆゆ先生によって操られ、幸福な表情のまますっきりーをして実ゆっくりを生やすゆっくりを眺めつつ、新鮮な実ゆっくりを堪能する。 えーりん姉さんと加工所には悪いが、この贅沢を味わってしまったら、大量生産品なんかで満足出来るわけがない。 「いやー、それにしても、今の生徒達が羨ましいですよ。ゆゆ先生のこの特製饅頭を食べられるんですから」 久しぶりの実ゆっくり饅頭に舌鼓を打ちつつ、俺は思わずそんなことを口走っていた。 嘘ではない。 俺の時は上と下二学年に子供がいなかったこともあり、学校にいる時はゆゆ先生をほぼ独占していたのだ。 人間さんでも多感でかつド阿呆な義務教育の9年間を共に過ごし、指導されてきたゆゆ先生はぶっちゃけ俺の初オカズさんだったりする。 「こぼね~……」 ちなみに姉さん達は小学校に上がるまでガチで血の繋がった姉だと思っていたし、その上で初恋の相手だったりするのだが、その辺は黒歴史なので是非記憶ごと封印したい。 『ぼくおねーちゃんたちみんなをおよめさんにするね!』 だから封印したいつってんだろ俺! 誰か俺の黒歴史を消しされ! すぐでいいよ! 「ゆゆ先生との学校生活は楽しかったですからねー。出来ることなら、またお願いしたいくらいですよ」 黒歴史を頭から追い出そうと、俺は話を続けた。 今の学校も楽しいけど、田舎からひとりだけ通っているというのはそれなりに大変だからな。 通学に片道二時間じゃ学校の友達ともろくに遊べないし。 「この特製饅頭を、村のガキ達と一緒に食べて……」 渓流の音のなか。 「……今の子達には、そのお饅頭は食べさせてないわ。普通の実ゆっくりだけ」 微かに。 ゆゆ先生の唇が動いたような……気がした。 「……え? なにか言いました、ゆゆ先生?」 「ううん、なにも? それより弟様、お饅頭もうひとついかが?」 「あ、いただきます」 「判ったわ。それじゃ……」 ゆゆ先生のしなやかな指が、実ゆっくり饅頭を摘み取る。 「先生が、食べさせてあげる……んっ」 そしてそれを唇で挟み。 ゆゆ先生は身を乗り出し、実ゆっくり饅頭を俺に差し出してきた。 「……ふぇ?」 あれ? 俺、今なにしてるの? ナニサレテルノ? なんでゆゆ先生が饅頭そっと咥えて俺に顔を寄せてるの? 「ん……さあ、弟様……」 ゆっくりらしく、唇に実ゆっくりを挟んだまま、ゆゆ先生が誘うように囁いてくる。 って、なんか実ゆっくり饅頭も幸せそうな寝顔してるし。 「えっと……」 このまま実ゆっくりを食べちゃっていいの? でもそうすると必然的にゆゆ先生の顔が超接近だよね? というか普通に食べると最後は唇までいっちゃうよね? 俺……姉ちゃん達以外とは経験ないんだけどっ? 「んっ……」 ゆゆ先生の頬がほんのりと染まっている。 だんだん身体が近づいて……俺の胸に、ゆゆ先生の上体が押しつけられる。 ふわふわの服の下で、反則級のボリュームが柔らかく潰れて……うわ、これはひじり姉よりっ……!? 「ゆ、ゆゆ先生……いいの……?」 思わず餡子脳なことを口走ってしまう。 いいも糞も、これってどう見てもOKサインだよな? でも……ゆゆ先生だぞ? 姉達とは別の意味で、俺にとっては特別な存在なのに……。 い、いいのか……? 「……こぼね~……」 口癖とともに、ゆゆ先生が小さく頷く。 もう、俺との距離はほとんどゼロになっていた。 お互いに抱き合って、顔を寄せているような状態。 「そ、それじゃ……」 覚悟を決め、俺はゆゆ先生……もとい、実ゆっくりに唇を寄せた。 小さく口を開き、そっと――かじる。 「ゆっ……」 ゆゆ先生の能力のせいか、実ゆっくりはそれでも穏やかな表情のままだ。 そんな実ゆっくり饅頭を、少しずつ咀嚼していく。 「こぼね……ん……っ……」 ゆゆ先生の顔が近づいてくる。 桜餡の淡い匂いが鼻腔をくすぐる。 そして、俺は……。 「……じー……」 俺は……。 「……ふーん……ゆゆったら結構やるわねぇ」 ……。 なんで視線を感じるのでしょう? ここには俺とゆゆ先生しかいないはずなのに。 誰か来ればすぐ判るはずなのに。 オチを大体予想しつつ。 微かな希望を込めて、おそるおそる視線を横に向ける。 「……じー……弟さんが、大人の階段をまた一歩登ろうとしています……南無三っ」 「やほー、弟ちゃん」 そこには。 スキマから顔を覗かせ、こちらをじっと見つめるゆかり姉ちゃんとひじり姉がいた。 「どぼぢで姉ちゃん達がここにいるのおおおおおおおおぉぉ!?」 「こぼねっ!? あ……ゆっゆかり様、ひじり様っ!?」 バックダッシュでゆゆ先生が俺から離れる。 胸に当たっていた柔らかな感触が消えて、ちょっと寂しい。 「どうしてって……ねえ?」 「畑仕事が終わったので、涼みがてら水浴びでもと思いゆかりん姉さんを誘ってスキマ移動してきたのですよ」 「そ、そうなんだ……」 スキマ移動ファック。 「そ。そしたら河原で、ゆゆと弟ちゃんがポッキーゲームならぬ実ゆっくりゲームをしてたのよ……ねえ、私も混ざっていい?」 「駄目に決まってるでしょおおおおぉ!?」 「ゆかりん姉さんっ!? そうです、そんなの駄目ですっ……混ざるなら私も一緒ですよっ!」 「ひじり姉もナニいってるのおおぉ!? おかしいでしょおおおおぉ!?」 「こっこぼねっ……すいませんゆかり様っ! 私は教師なのに、弟様を惑わすようなことっ……!」 スキマから出てきたゆかりん姉ちゃんに、ゆゆ先生が深々と頭を下げる。 ゆゆ先生にとって姉ちゃんは自分を保護してくれた命の恩人であり、躾け育ててくれた恩師でもあるのだ。 俺を『弟様』と呼ぶのも、ゆかりん姉ちゃんの弟だからだし。 ゆゆ先生からすれば、今の行為は、ゆかりん姉ちゃんへの裏切りに近いものだったんだろう。 しょんぼりと俯いて河原にしゃがみ込んでいるゆゆ先生は、ひどく小さく見えた。 そんなゆゆ先生を見下ろし、ゆかりん姉ちゃんは……。 「あー、別に私はいいわよ? 弟ちゃんを独占しようってつもりなら話は別だけど、ゆゆならそんな事しないだろうし」 あれ? 「……許して……くれるのですか……?」 「許すも許さないも……ゆゆの気持ちなんて、とっくに気付いてたわよ」 「むしろ、教師と生徒という関係の間はよく我慢してましたよね」 「そうよねー。私ならむしろそれをスパイスにしちゃうわ」 「……ゆかりん姉さんは爛れすぎです。煩悩退散、南無三っ」 ちょっと待って。 ふたりともなに言ってるの? ゆゆ先生の気持ちって……えっと、あれ? あれ? 「さて、と。折角だし、このまま弟ちゃんも一緒に水浴びする?」 がしっ。 棒立ちになっていた俺の左腕に、ゆかりん姉ちゃんが笑顔で抱きついた。 「そうですね……この間の、お風呂の続きを……」 右腕にひじり姉が抱きついて、身体を押しつけてきた。 姉妹の中では一番豊かな膨らみが、俺の腕を挟む。 「え? ちょっとふたりとも、ナニ言ってるの? 俺着替えとか持ってきてないし、まだお裾分けの途中だよ?」 「そんなの、日暮れまでに終わらせれば問題ないわよ……さて、ゆゆ?」 「は、はいっ!」 ゆかりん姉ちゃんに呼ばれ、ゆゆ先生が緊張した面持ちで顔をあげる。 「あなたの師として、友として誘うわ……私達と、弟ちゃんと一緒に……『水浴び』、しない?」 微笑みながらゆかりん姉ちゃんが告げる。 その言葉に……ゆゆ先生は、俺も見たことのない、少女のような満面の笑みを浮かべた。 「こぼね~! はいっゆかり様っ、喜んでっ!」 「ゆゆ先生までえええぇ~~っ!?」 「弟さん、暴れては駄目ですよ?」 「ふふっ、こうなるとえーりん姉さんも呼ばなきゃ恨まれるわね……ひじり、私ちょっと行ってくるわ」 「はい、ゆかりん姉さん」 「いっちゃ駄目でしょおおおおおおおおぉぉぉぉ!?」 夏の渓流に、俺の絶叫がどこまでも響く。 ……そして。 「いくらなんでも野外は羽目を外しすぎです。反省しなさい」 「うぅ、えーりん姉さんのいけずぅ……」 「南無三っ……すいませえええぇん……」 「こ、こぼね~……」 藪をつついたゆかりん姉ちゃんは、えーりん姉さんという大蛇に襲われて三人仲良く正座説教を喰らったそうな。 いや、俺は即行魚籠持って逃げ出したからよく判らないんだけど。 それにしても……。 女教師って、胸きゅんだよね? 「弟君もあとで正座」 「どぼちてっ!?」 ・おまけ 「こぼね~。ゆかり様、えーりん様、ひじり様~。お邪魔します~」 「いらっしゃい、ゆゆ。今日はいっぱいご馳走用意してるからゆっかりしていってね!」 「……あの、姉ちゃん。なんで俺エア巻物で簀巻きにされてるの? しかも全裸なんですけど……」 「それはもちろん、これから弟さんにゆっくり料理を盛りつけるからです!」 「俺にとってちっとも嬉しくない展開じゃねえか! 誰得だよ!?」 「そんなことないわよ? 盛りつけたゆっくり料理は、私達がみーんな直接口をつけて食べてあげるから」 「こ、こぼね~……先生も、ゆっくり料理残さず綺麗に食べるからね? 弟様の身体も、おくちで綺麗にしてあげる……」 「ゆゆ先生リミッター外れすぎでしょおおおぉ!? 姉さん! えーりん姉さん助けて! 助けてえーりん姉さん!」 「……野外じゃないから、セーフね」 「どうみてもアウトどころか没収試合でしょおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」 「と、弟さんが騒いでいる間に盛りつけ完了です、南無三っ」 「どぼちてっ!? うわっ、ゆっくりがキモイ! おもにローストゆっくりがキモイ!」 「では、いただきます。ん……はむっ」 「もぐ……ん、さすが母さんの料理は美味しいですね……ぺろ」 「なんで料理だけ置いて会合いっちゃうのかあさあああああぁん!」 「ちゅ……ちゅる、ちゅぷ……ん、んっ……弟君……」 「えーりん姉さんどこ食べてるのおおおおぉ!?」 「こぼね~」 あ? それでどうなったって? どうにもなってねえよ。 姉と恩師になに期待してるんだよ。 ……本当だよ? 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん(感想・挿絵ありがとうございます)
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2359.html
リリーさん 春じゃなくても 元気Death 困ったな 夏のゆっくり おらんがな 秋姉妹 今年はわりと 頑張った レティさん コタツにうどん 暑くない? 名前 コメント