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「霖」が変換で出てこないとは新参者の悩みである。 ゲーム中に登場するキャラクターにはローマ字によるルビが振られるため、 常用外漢字でも読むことが可能である。 だが、書籍のみの登場(ゲーム中にも香霖の名は出るが読みがない)である霖之助は読みから理解されていないこともある。 その上「霖」の字はIMEで「りん」と変換しても出てこないという 読むにも書くにも優しくない名前である。 こーりんの呼び名が普及した背景であるかもしれない。 対処法としては「りんう」による「霖雨」への変換があるが、 辞書への登録か、東方辞書の導入を検討した方がよいかもしれない。 ちなみに霖とは「ながあめ」とも読み、何日も降り続く雨を指す。
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スレに投下したものに修正が入っている所があります。 第一章 出てこない俺1 出てこない俺2 出てこない俺3 出てこない俺4 出てこない俺5 出てこない俺6 第二章 やっと出てきた俺 海事変の俺1 海事変の俺2
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/404.html
医務室を出て、作戦室へと向かう途中、私はある確信を口にした。 「美緒、あなた最初から彼の正体が分かっていたでしょう」 「ああ」 まるで何事もないかのように、堂々と彼女は頷いた。 それが、ひどく、勘に障った。 「坂本少佐、あなたは軍紀に背いた、それが分かっているんですね」 自分の声色が固くなっていることがよく分かる。 「私がいつ軍紀違反を犯したんだ?」 「彼を助けたとき、バルクホルン大尉にネウロイかどうか聴かれていたはずです」 「そうだな、しかし私はこう答えたはずだぞ、『待てバルクホルン』とな、 ネウロイであることを否定などしていない」 「詭弁よ!」 つい声を荒げてしまう、美緒はいつもこうだ。 数々の正論に隠して一つだけ詭弁を混ぜる、それがいかに危険なことかなんて 分かっていない。 「ミーナすまない」 なぜあなたが謝っているの……彼から話を聞いた限り、美緒の判断は正しかったのに。 そして美緒がそれを信じた背景には、半年前の人型ネウロイ事件があったからだ。 あのとき美緒をはじめ私達は宮藤さんを信じることが出来なかった。 今でも信じられない、攻撃する意志を持たないネウロイなんて…………、 私がこんなに情けないから、美緒は彼の正体を口にしなかったのだ。 部隊内に無用の混乱を招けば、その部隊の末路などしれたもの。 それは分かる、しかし、それでも真っ先に私にだけは知らせて欲しかった。 でなければ、私はなんのための隊長なのか? 「あなたはずるいわ」 「すまない」 美緒は私を信頼しているのだろう。 しかしそれ以上に、心配されているのだ。 悔しかった。 でもそれは一個人の感情だ。 今は唇をかみしめ、基地司令として接することが、美緒の信頼を勝ち取るための最善だ。 「美緒、あなたはいつ彼がネウロイだと気付いたの?」 「奴を魔眼で確認した瞬間からだ」 「ということは、彼にはコアがあると言うことで良いわね、 もしかしてあのとき大声を上げたのは……」 「ああ、奴がネウロイにもかかわらず、人間とそっくりだったからだ。 だからこそ、私はあそこで奴を助けた」 ここでやっと彼の話した内容と繋がった。 先ほどの彼の話を総合すると、 彼はネウロイが私たちと接触するために作られた人類に酷似させたネウロイ。 種族としての外見を同じにすればコミュニケートをとりやすいと思ったのだろう。 実際、人間と会話が可能で外見も人間に酷似しているネウロイを 私たちがためらいなく撃てるだろうか? それどころか、彼の言ったことが正しければ 自分にとって絶対に忘れられない人間の印象を持っているように錯覚させているわけだ。 だからこそ、助けたときのあの現象が起きたわけである。 そして、なぜ美緒にはその能力が発揮されなかったのか。 答えは簡単だ、魔眼を騙すことは出来ない。 彼が目覚めたとき、美緒は眼帯をしていた。 おそらくはそれが原因だ。 ………情報の整理が出来たんだから、考え込んでる場合じゃないわね。 みんなにどう説明するか、それが問題ね。 「頭痛がしてきたわ……」 まったく、美緒はいつかの宮藤さんを怒れないわね。 扶桑の人たちってみんなこうなのかしら? そして彼には申し訳ないが、こちらとしてはなにもしてくれないのが一番だ。 今のこちらの状況は、ネウロイ一機に構っていられるほど悠長な状況ではないのだから。 出てこない俺4
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/403.html
あのあと、降ってきたアレがなんなのか、分からないままにロマーニャの基地へと連れてきた。 ミーナが指揮権を私にゆだねたのには参ったが、冷静な判断を下せないと思ったのだろう。 私が言うことでは無いかもしれないが、抱え込まれるよりか遙かにマシである。 それに私自身、頼られるのは嫌いじゃない。 「しかし、このままというわけにはいかないな」 「何がこのままというわけにはいかないんだ?」 ………驚いた、というか私の気がゆるんでいたのか。 「シャーリーか、いや、落ちてきたあいつのことだ」 そう言うとシャーリーは顔をほころばせた。 「ああ、基地に着くまで私の胸にしがみついてた甘えん坊のことか」 そう、ロマーニャの基地に着くまでずっと、まさに片時も離すことなく、 グラマラスシャーリーとあだ名される女性の胸にしがみついていたのである。 そのせいか、あいつの名前が分かるまで甘えん坊と呼ばれることが決定している。 もっとも、あれから三日間がたっているのに意識回復の兆候すら見えないのだが。 「あのあとルッキーニがご機嫌斜めで大変だったよ」 「その割にはあいつにあまり怒っていなかったようだな」 「ルッキーニはあいつのことをマリアに似てる、と言っていたからなぁ、 怒るに怒れなかったんだろう」 そういうものだろうか? 「そういえば、今日はルッキーニと一緒じゃないのか?」 そう聞くと、シャーリーは医務室の方向を指さした 「あの甘えん坊のところだよ、目が覚めたら遊んでもらうんだって聞かないんだ」 「なるほどな、しかし、三日間も昏睡状態の相手に、それは酷だと思うが」 そう口にした次の瞬間。 「シャーーリーーーー!!!!」 ルッキーニが医務室から飛び出してきた。 「ルッキーニ?そんな大声上げてどうしたんだよ?」 「あの子目を覚ましたよ!」 ルッキーニは見ているこちらが幸せになるような笑顔を爆発させていた。 「噂をすれば、だな少佐」 「ああ、ルッキーニはミーナを医務室に呼んできてくれ、 シャーリーは他のメンバーを作戦室へ」 「了解!」 さあ、お前が誰なのか、正体を教えてもらうぞ。 私が医務室を開けたとき、美緒は烈風丸を抜いていた。 「ちょ、ちょっと美緒!何をしているの!」 「ミーナか」 何があったというのだろう、美緒は激しやすい性格ではあるが いきなりこんなことをする人物ではない。…………………はずだ。 抜刀したままこちらを向き、一瞥したらすぐにあちらに向き直って、 気のせいだったのか、とつぶやいた。 「一体何があったの?」 「ストライカーを研究していた頃の私にそっくりだったんだ」 誰が、とは聞くまでもないだろう。 「私はここにいるんだ、ならばそれは偽物だろう? 第一そんなことが出来るのはネウロイしかいない」 そういうことか、しかしこの場で烈風丸を抜くとは思い切ったことをやるものだ。 「何か聞いた?」 美緒は首を振り、烈風丸を鞘に戻しながら、 「いやまだだ、聞こうと思って顔を見た時に……な」 「でも、助けたときにはそんなことはなかったでしょう?」 美緒は頷きつつ、言葉を紡いだ。 「話を聞けば分かるかもな……おいお前」 声をかけられた男の子は美緒を凝視するとよく通る声で、こうつぶやいた。 「坂本美緒、階級は少佐、魔力の減退が始まっており、刀に頼った危険な戦闘を 繰り返している」 今度こそ美緒は、神速とも言える抜刀術を披露した。 止める暇など無く、人間に避けられるものではない一閃だ。 しかし、彼はいまだにそこにいた。 「貴様はいったい何だ」 自分の一撃が避けられたにもかかわらず、美緒は眉一つ動かしてはいない。 しかし、美緒の質問に彼は答えるのだろうか? それ以前に、むしろ彼こそが質問したいのではないだろうか? 何せいきなり空から自由落下してきたのだ、まともな神経をしていれば ここが一体どこで、なぜここにいるのか聞きたくなるはずだ。 そう、それこそ普通の人間がとるべき行動だ。 しかし、彼は質問にこう答えた。 「その質問の仕方は適正ではない。貴女の意図するものによっては この個体にその情報が入力されていない可能性がある」 この子は一体何を言っているのだろう。 入力とは装置に情報を与え、操作することだ。 間違っても人間に使う言葉ではない。 しかし、美緒はまったく動じる様子もない。 それどころか、最初から分かっていたかのようなそぶりだ。 「では訊き方を変えよう、お前は人間か?」 分からないことだらけだ、この質問になんの意味があるのか? 彼は他でもない私たち人間とコミュニケーションをとっているのだから 答えなど分かっているはずだ。 第一この質問の仕方ではまるで……、 私が美緒の質問の意図に気付いたとき、彼は答えた。 違う、…………と。 出てこない俺3
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美緒と共に作戦室に着くと、世界が誇るエース達の視線が一斉にこちらを向いた。 誰もが訊きたいのだ。 彼が何者で、どこから来て、何をするのかを。 そして私はその質問に対する答えを持っていながら、話すことが出来ない。 この歯がゆさになれてきている自分が、私は大嫌いだ。 しかし今は仮面を被るとき、顔をゆがませれば最後、二度と仮面を被ることなど 出来なくなってしまう。 自分を騙すことすら容認して、私は口を開いた。 「皆さんはここに呼ばれた理由が分かっているでしょう、彼が目を覚ましました」 この一言で、いっぺんにみんなの質問があふれ出した。 「ミーナ中佐あの人なんで降ってきたんですか!?」 「お、落ち着いて芳佳ちゃん」 「あいツ、嫌な感じがするから嫌いダ」 「そんなこと言っちゃ駄目よエイラ」 「規律を乱さなければ良いのだが…」 「(眠いなぁ)」 「いつ遊べるの?」 「ルッキーニ、いくら何でもそうはいかないだろ、三日も寝てたら衰弱もするだろうし」 「まったく、殿方をウィッチ用の医務室に寝かせておくなんて…!」 本当に、ネウロイを医務室に置いておくだなんて……、考えられないわね。 彼女たちの疑問も分かる、しかしここで真実を言うわけにはいかないのだ。 無用な混乱を招けば、それだけで生還率が低下する。 覚悟を決め、まさしく喉元まで声が出かけた、 その最悪のタイミングで誰かが入室してきた。 叱責しようと視線を向かわせた先には、医務室にいるはずの彼がいた。 そして、全てを見通すかのような目を私に向け、逆に私を叱責してきた。 言葉ではなく、視線で。 何も言えなかった、たとえ私のしようとしたことが彼女たちを守るためであっても、 彼女たちにとってそれは裏切り意外のなにものでもない。 なぜ私はこうも情けないのか。 彼はミーナが目を伏せるのを確認すると、自分達の最重要案件を口にした。 宮藤芳佳はどこか、と。 「わ、私です」 若干茶色がかった黒髪、意志の強さが見え隠れする不思議な目、 何事かと不審を表そうとする真一文字に結ばれた口。 他に手を挙げる人間もいないようだし、おそらく彼女こそ宮藤芳佳なのだろう。 周りの人間の反応はなかなかに面白い、敵意をあらわにするもの、寝ていた体を起こし こちらを観察するもの、不用意にこちらに近づこうとするもの、それを止めるもの、 宮藤芳佳に話しかけるもの、様々だ。 しかしそれらは関係ない、彼の目的はただ一つ、そして残された時間も少ないのだから。 彼は言った、答えてもらいたいことがある、と。 「な、なんですか?」 この世界が好きか?彼はそう質問した。 宮藤芳佳は頬を紅潮させながら答えた。 「そんなの当たり前です!」 彼はもう一つ質問した、この世界を憎んでいるものはこの世に存在するだろうか?と。 宮藤芳佳は、この質問にも躊躇無く答えた。 「この世界を憎んでる人がいないなんて言いません……」 そしてこう付け加えた。 「でもこの世界を愛している人のほうがずっと多いです!!」 ………つまりそういうことか。 ネウロイとはヒトの感情が凝り固まったものだ。 本来、その凝り固まったものが担当すべき世界の役割をある人物達が恣意的にねじ曲げた。 そして、今のところ役割がねじ曲げられたことに気付いたネウロイは、アドリアのネウロイだけだ。 いや、それは少々違うか。 元々、アドリアのネウロイハイヴは別のハイヴが担当していた。 しかし、ねじ曲げたもの達の言うことを聞いた結果がこれだ。 あのハイヴのとった行動は間違っていなかったのだ。 人類に接触し、真実を知ろうとしたその行為は、 今、アドリアにいる私たちと何ら代わりはなかった。 そして、私たちもまた、この真実を他のハイヴに伝えることは不可能だろう。 ねじ曲げたもの達は必ず私たちを消しに掛かる。 彼が強制的に休眠状態に陥ったのも、ねじ曲げたもの達のせいだ。 彼を排出したアドリアのネウロイハイヴはもはや防衛力をほとんど持っていないだろう。 ネウロイハイヴを守る黒い雲と、彼、そしてハイヴのコア、現在持っている力はこれだけだ。 更に、この三日間でその黒い雲もだいぶ薄くなっているだろう。 ねじ曲げたもの達にとってもアドリアのネウロイハイヴが無くなるのは痛手だ。 しかし、ここで全てをばらされるより、いくらかマシなのだろう。 俺はここで、最低限のことしかできない。 しかし逆に言えば、最低限のことは出来たのだ。 三日で目覚めたのはまさしく僥倖だ。 今のネウロイの頭脳は、ねじ曲げたもの達が担っている。 ネウロイは、人類のためのもの、ならば人類がネウロイを導くことこそ正しい姿。 そういわれたら仕方ない、ネウロイが人類のためのものと言うことは真実なのだから。 ………………そろそろ限界か。 早いものだ、ハイヴに帰らなければ、たったこれだけの時間で消えてしまう。 外見を人と寸分違わない個体をネウロイが作ればこうなるのは見えていたことだ。 しかし、何とも惜しい気がしてならない、これは一体どういうことだろう? 正体を確かめたいが、その時間もないようだ。 彼はここにいる全員に問いかけた。 この世界を守りたいか。と。 返ってきた答えは、思った通りのものばかりだった。 彼は助けてくれたことに礼を言い、アドリアのハイヴは、抵抗しない旨を伝え。 消えた。 しばらくの間、作戦室にはなんの音もしなかった。 そこに、扉を蹴破らんばかりの勢いで、通信兵が飛び込んできた。 「ち、中佐!!」 「どうしたの、騒々しいわよ!?」 「それが、それが…」 通信兵は、言葉を紡ごうとするが、うまく言葉にならない。 それに放心状態から我に返った坂本少佐がしびれを切らした。 「軍人ならばしゃんとしろ!!!」 通信兵はその一言で、やっと頭の中の事柄を言語化した。 そしてその情報は、さっきまで居た彼の存在をどこまでも肯定するものだった。 アドリアのネウロイハイヴ、コアを残し消滅。 出てこない俺5
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また墜とされた…… なぜ彼らは抵抗するのか…… 彼らが望んだことなのに…… 墜とされたのはこれで何度目だろうか…… 次は……どうしようか……? 落ちていくおちていくオチテイク 目を開ける、空が見える…否、空しか見えない。 風の音がうるさい、ごうごうとやかましく鳴り続ける。 ついさっきまで、暖かいものに包まれていたはずなのに。 そして、風の音よりもうるさい音が下から聞こえてくる。 何をやっているのか、彼は知っている。 そして己のやるべきことも知っている。 そこまで思考したところで、彼の精神はなにものかの干渉を受けた。 逆らえない、これは彼に役割を与えたハイヴより高位の存在からの指令だ。 これは非常にまずい状況というのだろうか。 ハイヴが消されるまえに彼はなんとしても、ヒトに質問しなければならないことがある。 高位の奴らに気付かれたのなら、ハイヴは三日持てばいい方だろう。 奴らから出された指令内容は休眠、遅くとも三日で目覚め質問しなければ ハイヴの連中が浮かばれない。 そこまで思考し彼の意識はプッツリと途絶えた。 「坂本さん!」 「なんだ宮藤」 「空から何かが降ってきます!」 何をバカなことを…この空域にはネウロイと私たちしかいなかった。 隊の人間は基地に残してきたサーニャ以外全て揃っている。 ネウロイの親機にしても、たった今コアを破壊されたのだ。 この空域には私たち以外何もいない。 そこまで考え、私は思考を打ち切った。 確認をしなければならないことに代わりはないのだ。 そして視界を上に向けると、なるほど、確かに何か降ってくる。 「ミーナ、何かが降ってきている」 「何か?」 「ああ、今魔眼で確認するが、ネウロイかもしれん」 「あー、えっト、そノ、少佐?」 「なんだエイラ」 「嫌な予感がするんダ…、あんまり見ないほうがいいんじゃないカ?」 おかしい、エイラとは思えないほどの歯切れの悪さだ。 「確認しないわけにはいかないだろう?」 言うが早いか美緒は眼帯をはずした。 するととたんに赤面し、 「な!なんだこれは!」 美緒は対象を見た瞬間に大声を上げた、それも仕方ない。 降ってきたのが全裸の男ならばそうもなるだろう。 「坂本少佐!どうしたんだネウロイか!?」 「ま、待て早まるなバルクホルン」 「??では一体あれはなんなんだ」 美緒は迷いながらも、答えるほか無いと諦めたのか落ちてくるものの正体を口にした。 「裸の男だ」 「…………」 その場を何とも言えない沈黙が支配した。 「なんだその目は、私だって信じたくないさ、しかし実際 そこに落ちてきているのだから仕方ないだろう!」 「あの、坂本少佐…」 「なんだリーネ!」 「あの人落ちちゃいませんか?」 「…………」 またもや一瞬の沈黙 「私では間に合わない!シャーリー!」 「私かよ!?なんで全裸の男をキャッチしなきゃいけないんだ!!」 悪態を口にはしつつも、既に落下地点へ向かっている辺り流石と言うべきか。 「頑張れシャーリー!!」 ルッキーニからの声援を受け、シャーリーは加速していく。 しかし、そこでペリーヌがあることに気がついた。 「坂本少佐、シャーリーさんが基地まで連れて行くにしても、あのままというわけには いかないのでは?」 それもそうだ、仕方ない。 「私の上着をあれに着せるか…」 「しょ、少佐の上着を!?」 「それほど驚くことか?なに、風邪など引かんさ、それほど柔な鍛え方はしていない」 「いえそういう問題では…」 では一体何が問題だというのか? 私が悩んでいると、ハルトマンが意地の悪そうな笑みを浮かべながら、耳打ちしてきた。 「そういう意味じゃないんだよー少佐、ペリーヌはねぇ「ハルトマンさん!!」おっと なんだよペリーヌ、まだなんにも言ってないだろー?」 「そういう問題ではありません!」 ずいぶんとかしましい鬼ごっこが始まったようだが、勝敗は始まったときからついている。 空においてハルトマンに勝るものなどそうはいない。 「ペリーヌどうしたの?息が上がってるよー?」 「あ、あり得ませんわ、触れもしないだなんて…」 ペリーヌは肩で息をしていたが、ハルトマンは余裕綽々である。 そうこうしているうちに、げんなりとしたシャーリーが戻ってきた。 「まさかこんな状況で、男の裸を見ることになるとは思わなかったよ」 「悪かったわねシャーリーさん、その人が?」 ミーナが極力視線を向けずにシャーリーへと話しかける 「そうだよ、というかルッキーニと同い年くらいの男の子だな」 二人が会話をしている間に、美緒は手早く上着を着せた。 「それでミーナ、こいつをどうする?」 「そうねぇ」 そのとき、芳佳がつぶやいた。 「この子、みっちゃんに似てる気がする」 一瞬にして全員の視線が集中した。 そして、ここから事態は意外な展開を迎える。 「むしろクリスに似ていると思うが」 「私もそう思う」 バルクホルンとハルトマンがそう言えば、 「えーマリアにそっくりだよ!?」 とルッキーニが言う。 エイラはエイラでサーニャに似ているとも言い始めた。 「どうなってるんだミーナ………ミーナ?」 ミーナは亡霊を見たかのように真っ青な顔のままこちらを見てつぶやいた。 「美緒、私には別の人にそっくりな気がしてならないの……」 誰に似ているかなんて聞かなくても分かる。 「本当に、どうなってるんだ?」 出てこない俺2
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第31統合戦闘飛行隊「アフリカ」 通称、ストームウィッチーズ アフリカの星と言われるスーパーエース、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ、 そして扶桑海の電光と呼ばれた扶桑海事変のトップエース加東圭子を抱えている。 そう、扶桑海事変のトップエースは加東圭子、それが通説だ。 しかしこれは間違いである。 驚くべきことに、たった一ヶ月の実働期間で58機を撃墜した 伝説のウィッチが存在するのだ。 そしてその伝説のウィッチは、今まさに、空母天城の南から、 アドリア海へと侵入しようとしていた。 『杉田艦長!』 無線を使用するのは誰だ? この声は間違いなく男の声、であれば戦闘機パイロットか、 もしくは私と同じく撤退しようとしている連合軍艦隊の誰かである。 先ほどヴィルケ中佐から、大和の破壊に失敗したという無線が入った。 もしや、それを聞き、玉砕覚悟で大和に特攻をかけようとするものでもいるのだろうか? しかし、この声は無線からは初めて聞く声だ。 「すまないが所属を明らかにしてくれ、君の声を聞いた覚えがない」 すると無線相手は意外そうに唸ったあと、こう言った。 『杉田さんよ、そりゃあ無いんじゃないか?』 しゃべり方が変わった。 それによって一人の候補が浮かび上がる。 扶桑海事変における影のエースだ。 しかし、そんなことがあるのか、今、彼がアドリア海にいるはずはない………。 不審がっていると、相手からまた通信があった。 『アフリカの近くまで送ってくれた礼をしようと、それこそストームウィッチーズの根城 からすっ飛んできてやったというのに』 言葉にならない、もしもホントにアフリカから飛んできたのなら大馬鹿者である。 そして、なんと心強い援軍か。 「辞令など出ていないだろうに…!」 『そんなものは糞くらえだ』 「では、君は何に従うのかね、扶桑海の荒鷲よ」 彼はためらうことなく答えた。 『無論!力を待たぬもの達の願いにのみ従う!』 変わっていない、相変わらずぶれがない。 ならば、私が言うべき言葉はただの一つ。 「頼む、彼女たちを助けてくれ…」 荒鷲は、力強く答え、天城の上空を駆け抜けていった。 ミーナは大和の中で決断を迫られていた。 引くか、それとも無茶を承知で、再度の攻撃を敢行するか。 いや、答えなど決まっている。 「皆さん、ここまでよ……、撤退の準備をしなさい」 ミーナはロマーニャを切り捨てた。 そうではないかもしれない、だが、ルッキーニからしてみれば 撤退するとはそういうことだ。 「とにかくいったん外に出ましょう、このままでは閉じこめられます」 そこに小さな声が響いた。 「うそ………」 それはとても小さな声だった。 しかし、 「あ……ああ……う…あ……っ」 今のルッキーニにとって精一杯の声だった。 誰もなにも答えない。 その静寂が、ルッキーニの中の何かを決壊させた……。 ルッキーニの瞳から涙はあふれてこなかった。 その代わり、何一つとして映し出されてもいなかった。 黙って見ていることは出来なかったのだろう、シャーリーが手を伸ばしかけたそのとき。 『随分と諦めが良いんだな』 無線から、張りのあるテノールが響いた。 その魅惑的な声の主は、早々にミーナ達に辛らつな言葉を浴びせる。 『闘う気が無いのなら、そこからとっとと退け』 その声には、どこか強制されるものがあった。 戦場において、この声に逆らってはならない。 全員の本能が、そう告げていた。 だが、はいそうですかと信じることが出来るはずはない。 「あなたは誰!?所属と名前、階級を明らかにしなさい!」 ミーナの発したとっさの質問に、彼はこう答えた。 『所属か…、今ちょっと分からないな、階級は飛び出してくるまでは中尉だったが 今はどうだろうな、名前だけは教えておこう』 そういうと彼はもったいぶるように間をおいてから、その名前を口にした。 『名前は俺って言うんだ、響きで分かると思うが扶桑人だ。 そしてこれが最後の警告だぜ?』 『死にたくなければ、一分以内に大和から出ろ』 そして思い出したように彼は言った。 『もう一つ言っておく、すぐにロマーニャを解放してやる』 ルッキーニの瞳に若干ながら光が戻っただろうか。 いや、それは違う、映ったのは1%の希望と、99%の絶望だ。 ルッキーニから返事がなかったのが不満だったのだろう。 彼は静かに続けた。 『フランチェスカ・ルッキーニ、ロマーニャにとってお前がどんな存在か… 考えたことがあるか?』 そんなこと思いもよらなかったのか、ルッキーニが答える気配はない。 そんなルッキーニに彼は激高した。 『ならば教えてやる、ロマーニャにとってお前という存在は、希望そのものだ! そのお前が、絶望してどうすんだ!?ここはロマーニャだろうが! 何を勝手に希望を捨ててやがる!!今ここで、ロマーニャを取り戻せるのは ロマーニャ人であるお前だけだろうが!!』 ルッキーニの目にやっと生気が戻った。 「私だけ……?」 『そうだ、分かったら前を見ろ、胸を張れ、お前は必死になってここまできたんだろうが 俯く必要がどこにある?』 ルッキーニは言われたとおり、前を見た、そこにはこちらを心配そうに見つめる 仲間達がいた。 そして胸を張った。 この大切な仲間達を心配させるわけにはいかない。 しかし、そこに不安が去来する。 「ホントにロマーニャを解放できるの?」 思ったことはそのまま口を突いてでた。 それに対し、無線から聞こえてきた返事は、 『安心しろ、これでも伊達男を気取っていてな、女の子との約束を破ったことはないんだ。 分かったら早く外に出ろ、アフリカのロマーニャ人連中があんたのことを べた褒めしてたし、是非とも顔を拝みたいんだ』 ロマーニャ風の、小気味良いものだった。 無線を聞いていた美緒は絶句した。 間違いない、あの問題児の声だ。 もっとも私より(十日ほどではあるが)年齢は上なのだ。 問題児と言うのは少々語弊がある。 そして、なるほど。 確かに奴の固有魔法を使えば、この大和を倒せるかもしれない。 しかし、あいつのことだ、おそらく所属していたアフリカから飛んできたのだろう。 だとすれば……、 「おい、俺中尉!」 気がつけば、美緒は俺に対して無線回線を開いていた。 『その声は坂本さんか、久しいね、何年ぶりだろう』 本当に、何年ぶりだろう。 彼が、つい最近、アフリカのストームウィッチーズに配属されたことを風の噂では聞いた。 だが今は、そんな思い出話に花を咲かせているときではない。 「そんなことはどうでも良い、お前のことだアフリカから直接飛んできたんだろう。 魔力なんて残ってないんじゃないか?」 その通り美緒のこの予想は見事当たっていた。 しかし、彼はそれを気にした様子はない。 それどころか、 『坂本さんよ、俺が見えるか?大和の直上にいるんだが』 なんてことだ、彼は直上と言ったが、 ほとんど大和に降り立っていると言っても過言ではない。 そうこうしているうちに、ミーナ達が大和から飛び出してきた。 『やっと出てきたな、坂本さんコアの位置を教えてくれ』 「待て、お前魔法力は……」 『今のアンタよりかは幾分マシだ、良いから早く教えろ』 有無を言わせない辺り、何一つ変わっていないのだろう。 コイツがこうなれば何を言ったところで無駄だ。 「……第一艦橋の真下だ、必ず破壊しろ」 彼は、応、と一言。 それ以上は、必要ない。 さて、あれだけの大口を叩いたんだ、やらなければならない。 甲板の真下にコアがあれば真上から最短距離でぶち抜けばいい。 しかし艦橋の真下にコアがあると言うことは、それは出来ない。 俺の射撃は必中だ、問題は威力だ。 大和の装甲を貫き、コアを破壊するだけの威力を、 この7.7mmの八九式機関銃という骨董品で出せるかどうか。 しかも、今の俺がそれだけの威力を出すには、 たった一発に残っている魔力を全て込めるしかない。 だがストライカーを飛ばすだけの魔力は残さなければ、ほぼ確実に死ぬ。 そんなことは分かってる、それでも俺は、 7.7mmの小さな弾丸にありったけの魔力を注ぎ込んだ。 今に全力を尽くせないものに、未来は語れないのだから。 俺は、ゆっくりと引き金を引いた。 放たれた魔弾は、装甲を食い破りながら圧倒的な速度でコアに辿り着いた。 だが、その魔弾はコアに罅こそ入れたものの、粉砕するには至らなかった。 それでも俺は慌てない。 なぜなら、俺の後ろにはもう、ロマーニャの希望が来ている。 コアまでの道はまるでクレーターのように開かれている。 更に罅が入った以上コアの移動は出来ない。 「ぶちかませ、ルッキーニ!!」 俺のシャウトに応えるように、ルッキーニはブレダの残弾を全てはき出した。 そしてその内の何発かが、コアへ命中。 見事に破壊。 まあ、ここまでは良いのだが。 見れば、ルッキーニ少尉は前のめりに倒れている。 おそらく、魔力を使い果たしたのだろう。 そして俺も、飛ぶだけの魔力が残っていない。 更にもう一つ、今まで大和が空を飛んでいたのはネウロイの力である。 コアを破壊すればどうなるか、火を見るより明らかだ。 落ちる、そう思ったとき、抜群のプロポーションを誇る美人がルッキーニを抱えていく。 俺は俺で、誰かに抱えられている。 そして俺を抱えている誰かは口を開くなり、なにやら文句を言い放った。 扶桑のウィッチはこういう人ばかりだとか何とかいってるが、一体これは誰だろう? 魔力の欠乏で、いまいち思考が纏まらない。 ……まあ、誰でも良いか。 今、俺に必要なのは休息なのだから……。 やっと出てきた俺
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また墜とされた…… なぜ彼らは抵抗するのか…… 彼らが望んだことなのに…… 墜とされたのはこれで何度目だろうか…… 次は……どうしようか……? 落ちていくおちていくオチテイク 目を開ける、空が見える…否、空しか見えない。 風の音がうるさい、ごうごうとやかましく鳴り続ける。 ついさっきまで、暖かいものに包まれていたはずなのに。 そして、風の音よりもうるさい音が下から聞こえてくる。 何をやっているのか、彼は知っている。 そして己のやるべきことも知っている。 そこまで思考したところで、彼の精神はなにものかの干渉を受けた。 逆らえない、これは彼に役割を与えたハイヴより高位の存在からの指令だ。 これは非常にまずい状況というのだろうか。 ハイヴが消されるまえに彼はなんとしても、ヒトに質問しなければならないことがある。 高位の奴らに気付かれたのなら、ハイヴは三日持てばいい方だろう。 奴らから出された指令内容は休眠、遅くとも三日で目覚め質問しなければ ハイヴの連中が浮かばれない。 そこまで思考し彼の意識はプッツリと途絶えた。 「坂本さん!」 「なんだ宮藤」 「空から何かが降ってきます!」 何をバカなことを…この空域にはネウロイと私たちしかいなかった。 隊の人間は基地に残してきたサーニャ以外全て揃っている。 ネウロイの親機にしても、たった今コアを破壊されたのだ。 この空域には私たち以外何もいない。 そこまで考え、私は思考を打ち切った。 確認をしなければならないことに代わりはないのだ。 そして視界を上に向けると、なるほど、確かに何か降ってくる。 「ミーナ、何かが降ってきている」 「何か?」 「ああ、今魔眼で確認するが、ネウロイかもしれん」 「あー、えっト、そノ、少佐?」 「なんだエイラ」 「嫌な予感がするんダ…、あんまり見ないほうがいいんじゃないカ?」 おかしい、エイラとは思えないほどの歯切れの悪さだ。 「確認しないわけにはいかないだろう?」 言うが早いか美緒は眼帯をはずした。 するととたんに赤面し、 「な!なんだこれは!」 美緒は対象を見た瞬間に大声を上げた、それも仕方ない。 降ってきたのが全裸の男ならばそうもなるだろう。 「坂本少佐!どうしたんだネウロイか!?」 「ま、待て早まるなバルクホルン」 「??では一体あれはなんなんだ」 美緒は迷いながらも、答えるほか無いと諦めたのか落ちてくるものの正体を口にした。 「裸の男だ」 「…………」 その場を何とも言えない沈黙が支配した。 「なんだその目は、私だって信じたくないさ、しかし実際 そこに落ちてきているのだから仕方ないだろう!」 「あの、坂本少佐…」 「なんだリーネ!」 「あの人落ちちゃいませんか?」 「…………」 またもや一瞬の沈黙 「私では間に合わない!シャーリー!」 「私かよ!?なんで全裸の男をキャッチしなきゃいけないんだ!!」 悪態を口にはしつつも、既に落下地点へ向かっている辺り流石と言うべきか。 「頑張れシャーリー!!」 ルッキーニからの声援を受け、シャーリーは加速していく。 しかし、そこでペリーヌがあることに気がついた。 「坂本少佐、シャーリーさんが基地まで連れて行くにしても、あのままというわけには いかないのでは?」 それもそうだ、仕方ない。 「私の上着をあれに着せるか…」 「しょ、少佐の上着を!?」 「それほど驚くことか?なに、風邪など引かんさ、それほど柔な鍛え方はしていない」 「いえそういう問題では…」 では一体何が問題だというのか? 私が悩んでいると、ハルトマンが意地の悪そうな笑みを浮かべながら、耳打ちしてきた。 「そういう意味じゃないんだよー少佐、ペリーヌはねぇ「ハルトマンさん!!」おっと なんだよペリーヌ、まだなんにも言ってないだろー?」 「そういう問題ではありません!」 ずいぶんとかしましい鬼ごっこが始まったようだが、勝敗は始まったときからついている。 空においてハルトマンに勝るものなどそうはいない。 「ペリーヌどうしたの?息が上がってるよー?」 「あ、あり得ませんわ、触れもしないだなんて…」 ペリーヌは肩で息をしていたが、ハルトマンは余裕綽々である。 そうこうしているうちに、げんなりとしたシャーリーが戻ってきた。 「まさかこんな状況で、男の裸を見ることになるとは思わなかったよ」 「悪かったわねシャーリーさん、その人が?」 ミーナが極力視線を向けずにシャーリーへと話しかける 「そうだよ、というかルッキーニと同い年くらいの男の子だな」 二人が会話をしている間に、美緒は手早く上着を着せた。 「それでミーナ、こいつをどうする?」 「そうねぇ」 そのとき、芳佳がつぶやいた。 「この子、みっちゃんに似てる気がする」 一瞬にして全員の視線が集中した。 そして、ここから事態は意外な展開を迎える。 「むしろクリスに似ていると思うが」 「私もそう思う」 バルクホルンとハルトマンがそう言えば、 「えーマリアにそっくりだよ!?」 とルッキーニが言う。 エイラはエイラでサーニャに似ているとも言い始めた。 「どうなってるんだミーナ………ミーナ?」 ミーナは亡霊を見たかのように真っ青な顔のままこちらを見てつぶやいた。 「美緒、私には別の人にそっくりな気がしてならないの……」 誰に似ているかなんて聞かなくても分かる。 「本当に、どうなってるんだ?」 出てこない俺2
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事態はまさしく、消えるまえの彼が想像した方向に進んでいた。 ねじ曲げたもの達が、アドリアのハイヴをほぼ無力化していたのだ。 この絶好機を逃がすものはまさしく阿呆だ。 ついこの間、ミーナはネウロイ一機に構っていられる状況ではないと言っていた。 その認識は正しい、なぜなら、今は消え去った彼が寝ていた間に、 人類側はアドリアにおける最終作戦の発動を決定していたのだ。 最終作戦の概要は可能な限りウィッチに頼ることなく、ハイヴを破壊すること。 今までに幾度となく考えられてきた作戦だ。 そしてその全てにおいてことごとく失敗してきたことでもある。 もう失敗は許されない。 だからこそ、コアのみとなったアドリアのハイヴに大和という人類の威信をかけた兵器を 投入したのだ。 その結果は、 やはり………失敗だった。 ネウロイのコアに近づき、接触した瞬間、大和に積んであった魔導ダイナモが暴走、 一瞬にして駆逐艦を三隻も轟沈せしめた。 既に501のウィッチは戦線を押し返している。 更にハイヴのコアは無抵抗だ。 にもかかわらず私たちは撤退しなければならない。 ウィッチの才能がないものは、おとなしく指をくわえていろとでも言うのか。 ならば我々軍人はなんのためにある、誰か教えてくれ……。 杉田艦長は自らの中に答えがないことはよく分かっていた。 だからこそ、少しでもこの教訓を生かすため、学生時代に秀才と言われた頭脳を フル回転させていた。 その結果、最大の教訓として浮かび上がったのは、ウィッチ以外の人間に 大型のネウロイは倒せない。 と言うあまりにも残酷な答えだった。 人類が、ネウロイに対抗する術を見つけたと思ったらこれだ。 空中に浮かぶ大型ネウロイには、ウィッチしか対抗手段はない。 しかし、それを看過できないのだ。 自分の子供よりも遙かに年端のいかない少女達にぼろぼろになるまで戦わせ、 自らは安全圏にいることなど、扶桑軍人として、いや男としてそれは出来ないのだ。 ちんけな矜恃だ、だが忘れてはならないものだ。 しかし、己の矜恃を守るためだけにこの場に残るのは、 ウィッチにとっては邪魔以外のなんだというのか。 戦場をあとにしながら、杉田は己の無力と、矮小さを呪った。 そして、杉田の乗る天城に近寄る影が一つ、あった。 アドリア海の上空では未だに戦闘がくり広がられていた。 ネウロイ化した大和の撃滅とネウロイハイヴコアの粉砕、 言葉にすればただの1行、しかしそれは困難を極める。 十一人のウィッチでもって、何とか残っていた天城などの艦隊を守りきった。 しかし問題はここからなのだ。 いかにして、大和のコアである機関室までたどり着くか。 美緒はおそらくこの戦いが最後だ。 烈風斬を一度放てば、もう飛ぶこともままならなくなるだろうと話した。 しかし、ハイヴのコアはあまりにも大きい、あれを粉砕するには烈風斬しかない。 ならば、 「みんな聞いて!部隊を二つに分けます!」 大和の張る弾幕をかいくぐり、全員に伝えた。 「坂本少佐を筆頭に、バルクホルン大尉、リーネさん、宮藤さんは 大和を外で引きつけていてください」 「突入部隊は私、ハルトマン中尉、シャーリーさん、ルッキーニさん、ペリーヌさん エイラさん、サーニャさんの七人です」 しかし、宮藤はとリーネがこれに異を唱えた。 「ミーナ中佐、私とリーネちゃんは大和に乗艦したことがあります、 突入部隊に入れてください!」 「そうです、私と芳佳ちゃんは中の様子を知ってます!」 だが、ミーナはこれを許さない。 「却下します、見取り図は頭にたたき込んでありますからコアの場所さえ分かれば ルートは頭の中で作れます」 「それに宮藤さんには守備の要になってもらわなければなりませんから 連れて行くことは出来ません」 今言ったことは事実だ、しかし理由はまだある。 まず、宮藤さんと美緒の関係だ、この二人は強い師弟関係で結ばれている。 宮藤さんがまさしく目の前にいれば、宮藤さんを助けるために無茶な行動はしても、 自分の気持ちに整理をつけるためだけの無責任な無茶はしないだろう。 それに、美緒自身の気持ちにケリをつけさせるには、 ハイヴのコアを破壊させるのが一番だ。 更にトゥルーデ、美緒がこの戦闘行動中にもし飛べなくなったとき、 人一人を背負いながらシールドを張り、また回避することが出来るのは501には トゥルーデしかいない。 そしてリーネさん、彼女は宮藤さんとロッテを組むことで、 彼女自身も意図せず、自分の持っている能力を最大限に引き出している。 自分の考察で気付いた、この編成は美緒を守る為の万全を期している、 且つ最大限早く大和を沈ませることで、またも美緒の安全を図っている。 しかし、これ以上ない編成のはずだ。 自信を持って突入できる。 「行ってくるわね美緒」 「頼んだぞミーナ」 「少佐、ご無事で…」 「ペリ-ヌ泣くのはロマーニャを解放してからだ」 「少佐のこと頼んだよ、トゥルーデ」 「任せろフラウ、おいリベリアン!」 「なんだよ堅物」 「早く帰ってこい、貴様には今日食べられたポテトの恨みがあるからな」 「早さは私のアイデンティティーだからな、明日も音速でお前のポテトを食べてやる」 「その発言忘れるなよ」 「なにやってんダ?アイツラ」 「そうですよね、音速でジャガイモは食べられないのに……」 「イヤ、そうじゃないダロ……」 「リーーネーー!!!」 「ひゃっ!ルッキーニちゃん、なんでこういうことするの!?」 「そこにおっぱいがあるから♪」 「サーニャちゃんルッキーニちゃんを止めてー!」 「(ちょっとうらやましいな……、エイラ相手にだったら出来そうだけど……)」 「サーニャ聞いてないみたいだよ」 「そんな~」 作戦は簡単だ、シュトゥルムで突破口を形成、フリーガーハマーで突破口を拡大、 シャーリーとルッキーニの複合魔法で機関室までの道を造り、 エイラの未来予知を使い、被害を最小限に抑えながら機関室へ、そしてとどめにトネールだ。 それで全て終わる。 はずだった………………。 ミーナの立てた機関室へ至るための作戦、これは見事に当たった。 「まずは私だね、シュトゥルム!」 ハルトマンが13mm連装機銃と25mm3連装機銃を悠々とかわしながら、一撃離脱していく。 「行くわエイラ」 「サーニャ、気をつけてナ」 次に501で最大の火力を持つフリーガーハマーをサーニャがたたき込んだ。 「シャーリーさん!ルッキーニさん!」 「分かってるさ中佐!いくぞルッキーニ!」 シャーリーが加速魔法を使いルッキーニを大和へ放り投げた。 「まっかせなさーい!」 そしてルッキーニは自らの固有魔法を最大限使い、大和の機関室までの装甲を ぶち破っていく。 突入するのはここだ。 「突入部隊はついてきなさい!」 機関室までたどり着けば私たちの勝ちだ。 「エイラさん攻撃の気配があったら教えてください」 「分かっタ」 エイラには一つ気がかりなことがあった。 エイラは毎朝、運勢を占うために、タロットをやっている。 今日引いたカードは「運命の輪」であり、幸か不幸かエイラの占いはよく当たるのだ。 もちろんそれは、今回も。 抵抗らしい抵抗もなく、七人全員が機関室にたどり着いた。 しかし、あるべきものがなかった。 ネウロイコアの代わりとも言える、魔導ダイナモがないのだ。 ミーナはそこで一つの誤算に気付いた。 コアの移動である。 赤城がネウロイ化したときにはコアの移動がなかった。 確かにそうだ、しかしだからどうだというのだ。 現にネウロイ化した大和はまだそこにある。 なんという失態、心のどこかに油断があったとでも言うのか。 引かなければならない、だが、引けばロマーニャの解放は遠のき、 大和はより強大なネウロイとなる、それどころか新たなネウロイのハイヴとして機能 することになるだろう。 今の私たちに、この逆境を覆すだけのカード………、 つまり、タロットにおける正位置の戦車のカードは存在しないのだ。 出てこない俺6
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第31統合戦闘飛行隊「アフリカ」 通称、ストームウィッチーズ アフリカの星と言われるスーパーエース、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ、 そして扶桑海の電光と呼ばれた扶桑海事変のトップエース加東圭子を抱えている。 そう、扶桑海事変のトップエースは加東圭子、それが通説だ。 しかしこれは間違いである。 驚くべきことに、たった一ヶ月の実働期間で58機を撃墜した 伝説のウィッチが存在するのだ。 そしてその伝説のウィッチは、今まさに、空母天城の南から、 アドリア海へと侵入しようとしていた。 『杉田艦長!』 無線を使用するのは誰だ? この声は間違いなく男の声、であれば戦闘機パイロットか、 もしくは私と同じく撤退しようとしている連合軍艦隊の誰かである。 先ほどヴィルケ中佐から、大和の破壊に失敗したという無線が入った。 もしや、それを聞き、玉砕覚悟で大和に特攻をかけようとするものでもいるのだろうか? しかし、この声は無線からは初めて聞く声だ。 「すまないが所属を明らかにしてくれ、君の声を聞いた覚えがない」 すると無線相手は意外そうに唸ったあと、こう言った。 『杉田さんよ、そりゃあ無いんじゃないか?』 しゃべり方が変わった。 それによって一人の候補が浮かび上がる。 扶桑海事変における影のエースだ。 しかし、そんなことがあるのか、今、彼がアドリア海にいるはずはない………。 不審がっていると、相手からまた通信があった。 『アフリカの近くまで送ってくれた礼をしようと、それこそストームウィッチーズの根城 からすっ飛んできてやったというのに』 言葉にならない、もしもホントにアフリカから飛んできたのなら大馬鹿者である。 そして、なんと心強い援軍か。 「辞令など出ていないだろうに…!」 『そんなものは糞くらえだ』 「では、君は何に従うのかね、扶桑海の荒鷲よ」 彼はためらうことなく答えた。 『無論!力を待たぬもの達の願いにのみ従う!』 変わっていない、相変わらずぶれがない。 ならば、私が言うべき言葉はただの一つ。 「頼む、彼女たちを助けてくれ…」 荒鷲は、力強く答え、天城の上空を駆け抜けていった。 ミーナは大和の中で決断を迫られていた。 引くか、それとも無茶を承知で、再度の攻撃を敢行するか。 いや、答えなど決まっている。 「皆さん、ここまでよ……、撤退の準備をしなさい」 ミーナはロマーニャを切り捨てた。 そうではないかもしれない、だが、ルッキーニからしてみれば 撤退するとはそういうことだ。 「とにかくいったん外に出ましょう、このままでは閉じこめられます」 そこに小さな声が響いた。 「うそ………」 それはとても小さな声だった。 しかし、 「あ……ああ……う…あ……っ」 今のルッキーニにとって精一杯の声だった。 誰もなにも答えない。 その静寂が、ルッキーニの中の何かを決壊させた……。 ルッキーニの瞳から涙はあふれてこなかった。 その代わり、何一つとして映し出されてもいなかった。 黙って見ていることは出来なかったのだろう、シャーリーが手を伸ばしかけたそのとき。 『随分と諦めが良いんだな』 無線から、張りのあるテノールが響いた。 その魅惑的な声の主は、早々にミーナ達に辛らつな言葉を浴びせる。 『闘う気が無いのなら、そこからとっとと退け』 その声には、どこか強制されるものがあった。 戦場において、この声に逆らってはならない。 全員の本能が、そう告げていた。 だが、はいそうですかと信じることが出来るはずはない。 「あなたは誰!?所属と名前、階級を明らかにしなさい!」 ミーナの発したとっさの質問に、彼はこう答えた。 『所属か…、今ちょっと分からないな、階級は飛び出してくるまでは中尉だったが 今はどうだろうな、名前だけは教えておこう』 そういうと彼はもったいぶるように間をおいてから、その名前を口にした。 『名前は俺って言うんだ、響きで分かると思うが扶桑人だ。 そしてこれが最後の警告だぜ?』 『死にたくなければ、一分以内に大和から出ろ』 そして思い出したように彼は言った。 『もう一つ言っておく、すぐにロマーニャを解放してやる』 ルッキーニの瞳に若干ながら光が戻っただろうか。 いや、それは違う、映ったのは1%の希望と、99%の絶望だ。 ルッキーニから返事がなかったのが不満だったのだろう。 彼は静かに続けた。 『フランチェスカ・ルッキーニ、ロマーニャにとってお前がどんな存在か… 考えたことがあるか?』 そんなこと思いもよらなかったのか、ルッキーニが答える気配はない。 そんなルッキーニに彼は激高した。 『ならば教えてやる、ロマーニャにとってお前という存在は、希望そのものだ! そのお前が、絶望してどうすんだ!?ここはロマーニャだろうが! 何を勝手に希望を捨ててやがる!!今ここで、ロマーニャを取り戻せるのは ロマーニャ人であるお前だけだろうが!!』 ルッキーニの目にやっと生気が戻った。 「私だけ……?」 『そうだ、分かったら前を見ろ、胸を張れ、お前は必死になってここまできたんだろうが 俯く必要がどこにある?』 ルッキーニは言われたとおり、前を見た、そこにはこちらを心配そうに見つめる 仲間達がいた。 そして胸を張った。 この大切な仲間達を心配させるわけにはいかない。 しかし、そこに不安が去来する。 「ホントにロマーニャを解放できるの?」 思ったことはそのまま口を突いてでた。 それに対し、無線から聞こえてきた返事は、 『安心しろ、これでも伊達男を気取っていてな、女の子との約束を破ったことはないんだ。 分かったら早く外に出ろ、アフリカのロマーニャ人連中があんたのことを べた褒めしてたし、是非とも顔を拝みたいんだ』 ロマーニャ風の、小気味良いものだった。 無線を聞いていた美緒は絶句した。 間違いない、あの問題児の声だ。 もっとも私より(十日ほどではあるが)年齢は上なのだ。 問題児と言うのは少々語弊がある。 そして、なるほど。 確かに奴の固有魔法を使えば、この大和を倒せるかもしれない。 しかし、あいつのことだ、おそらく所属していたアフリカから飛んできたのだろう。 だとすれば……、 「おい、俺中尉!」 気がつけば、美緒は俺に対して無線回線を開いていた。 『その声は坂本さんか、久しいね、何年ぶりだろう』 本当に、何年ぶりだろう。 彼が、つい最近、アフリカのストームウィッチーズに配属されたことを風の噂では聞いた。 だが今は、そんな思い出話に花を咲かせているときではない。 「そんなことはどうでも良い、お前のことだアフリカから直接飛んできたんだろう。 魔力なんて残ってないんじゃないか?」 その通り美緒のこの予想は見事当たっていた。 しかし、彼はそれを気にした様子はない。 それどころか、 『坂本さんよ、俺が見えるか?大和の直上にいるんだが』 なんてことだ、彼は直上と言ったが、 ほとんど大和に降り立っていると言っても過言ではない。 そうこうしているうちに、ミーナ達が大和から飛び出してきた。 『やっと出てきたな、坂本さんコアの位置を教えてくれ』 「待て、お前魔法力は……」 『今のアンタよりかは幾分マシだ、良いから早く教えろ』 有無を言わせない辺り、何一つ変わっていないのだろう。 コイツがこうなれば何を言ったところで無駄だ。 「……第一艦橋の真下だ、必ず破壊しろ」 彼は、応、と一言。 それ以上は、必要ない。 さて、あれだけの大口を叩いたんだ、やらなければならない。 甲板の真下にコアがあれば真上から最短距離でぶち抜けばいい。 しかし艦橋の真下にコアがあると言うことは、それは出来ない。 俺の射撃は必中だ、問題は威力だ。 大和の装甲を貫き、コアを破壊するだけの威力を、 この7.7mmの八九式機関銃という骨董品で出せるかどうか。 しかも、今の俺がそれだけの威力を出すには、 たった一発に残っている魔力を全て込めるしかない。 だがストライカーを飛ばすだけの魔力は残さなければ、ほぼ確実に死ぬ。 そんなことは分かってる、それでも俺は、 7.7mmの小さな弾丸にありったけの魔力を注ぎ込んだ。 今に全力を尽くせないものに、未来は語れないのだから。 俺は、ゆっくりと引き金を引いた。 放たれた魔弾は、装甲を食い破りながら圧倒的な速度でコアに辿り着いた。 だが、その魔弾はコアに罅こそ入れたものの、粉砕するには至らなかった。 それでも俺は慌てない。 なぜなら、俺の後ろにはもう、ロマーニャの希望が来ている。 コアまでの道はまるでクレーターのように開かれている。 更に罅が入った以上コアの移動は出来ない。 「ぶちかませ、ルッキーニ!!」 俺のシャウトに応えるように、ルッキーニはブレダの残弾を全てはき出した。 そしてその内の何発かが、コアへ命中。 見事に破壊。 まあ、ここまでは良いのだが。 見れば、ルッキーニ少尉は前のめりに倒れている。 おそらく、魔力を使い果たしたのだろう。 そして俺も、飛ぶだけの魔力が残っていない。 更にもう一つ、今まで大和が空を飛んでいたのはネウロイの力である。 コアを破壊すればどうなるか、火を見るより明らかだ。 落ちる、そう思ったとき、抜群のプロポーションを誇る美人がルッキーニを抱えていく。 俺は俺で、誰かに抱えられている。 そして俺を抱えている誰かは口を開くなり、なにやら文句を言い放った。 扶桑のウィッチはこういう人ばかりだとか何とかいってるが、一体これは誰だろう? 魔力の欠乏で、いまいち思考が纏まらない。 ……まあ、誰でも良いか。 今、俺に必要なのは休息なのだから……。