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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367056947/ 十二月半ば 咲「もうすぐ十時になるのに、優希ちゃんも染谷部長もこないね」 部室の片隅、元いたベッドは反対の壁へ押しやられ、薄茶色で時代錯誤な円卓のコタツが置かれていた。 京太郎「部長も昨日は『絶対顔出すから!』なんて夜中の十二時にメール送ってきたのに、」 咲「え? 京ちゃんそんな時間に起きてるの? というか竹井先輩とそんな時間にメールしてるの!?」 須賀京太郎の対に座り、今のいままで本から視線を外さなかった宮永咲が驚きの色を隠さず、 京太郎の鼻先に顔を近づけた。腕に顎を乗せ、だらけきった京太郎はたじろぐことすらできなかった。 京太郎「お、おう。部ちょ――竹井先輩も話し相手がほしいんだって。 男友達が俺しかいなくてそれでいろいろ相談を……て、咲さん?」 咲「ふーん。そうなんだー。ほー」 京太郎にとって、ここまで不満を顔に出す咲は珍しかった。どこか感情の起伏に 喜怒哀楽の怒がぬけているし、そもそも面と向かってしゃべるという事がここ最近少なかった。 自分のいないところでは――例えば原村和や片岡優希とおしゃべりをしているとき、 勝手な想像だが、咲は憤慨などしないだろう。彼女らは人をおちょくったりしない。適度な暴走で咲を困らせるだけだ。 京太郎「なんだよお姫様。もしかして嫉妬?」 咲「!!、違っ――違うもん」 一瞬の間に思考の摩擦が見て取れたが、結局は言い直さなかった。 上目でころころ変わる咲の表情を見つめながら、京太郎はちょっとばかりの優越感を得た。 目のやり場に困った咲は読んでいた小説を栞も挟まず閉じ、コタツへと 体を押し込んだ。座布団を枕にすると雀卓へと顔を向ける。 咲「京ちゃん狭い」 京太郎「お前な、子供か」 咲「うん、子供」 京太郎が伸ばしていた足を組んで胡坐をかくと、ポケットにはいっていた 携帯電話が腰に当たった。おもむろに取り出して開くと、メールが三件。 京太郎「咲、竹井先輩と染谷部長は電車が止まって時間がかかるから遅れる。優希は家から出たくないって」 咲「ん」 京太郎「こんな天気だしなぁ。明日もずっと雪降ってるってよ。 朝、お天気のお姉さんが言ってた。美人の、竹井先輩に似たお姉さん」 咲「最後の情報いらない」 横目で睨みつけられても視線ははずさず、京太郎は微笑んだ。 京太郎「和もいまごろカナダのどこだっけ? バンクーバー? いいよなー 俺も海外へ旅行してみたいわ。それであっちの美人で金髪で碧い目をした胸の大きい……」 視線は再び咲へ。睨んではいなかったが、間違いなく頬を膨らませていた。 怒りの表現として最高にかわいいのではないか。あざとさを感じないのが咲のいいところである。 京太郎「なあ、咲はさ、どんな本読むんだ」 円卓に置かれた某書店のカバーがかけられた小説へ手を伸ばす。 一瞬手が止まり咲のほうへ視線を向けるが微動だにしない。実はそれほどこの話題を発展させたかったわけではなく、 あせった咲が自分よりも早く小説をぶんどって顔を真っ赤にして 「これは、その、普通の小説だよ」なんて言いながら、両手で背に隠し、 そこで自分が「なんだよ、隠すようなもんか?もしかして官能s」 「違うよ京ちゃんっ!!!」「冗談だよ、恋愛小説だろ? 別に隠すことじゃないさ」 「ほんと?」そういって咲はしずしずと隠していた本を前に出すと ここまで想像したのに、現実は非情である。察するにこれは恋愛小説などではなく、 その他の推理ものかファンタジー。一度図書室へ一緒に行ったとき、貸し出し書には 確かにジャンルを気にせず有象無象を読み漁る過去の咲がいた。 しかしこの流れから手を引くのは違和感がある。手にとってページを開く。 京太郎「ん? アニメの絵? ああ、ライトノベルってやつか」 咲「京ちゃんでも知ってるんだ」 京太郎「でもってなんだよでもって」 意外なことではあった。咲は文字通りライトな文学は苦手なものだと、京太郎は勝手に思っていたからだ。 ぱらぱらとめくっていく。速読ができるわけではないが、ところどころ会話文を拾っていけば、 意外と小説のおおまかな流れはみえてくる。 咲「それね、最終巻だから読んでてもよくわかんないと思うよ」 京太郎「どんな話?」 咲「宇宙人に対抗できる唯一のすごい女の子と普通の男の子の……恋愛」 それはまるで、 京太郎「まるで俺たちみたいだな」 咲「……え? はあああ?! きょ、京ちゃん何言ってんの!!?」 京太郎「宇宙人に唯一対抗ってのを麻雀最強に置き換え……あ」 無意識だった。 京太郎「いやあの、恋愛ってとこは置いといてだな、登場人物が俺たち、あ、こいつら主人公……」 自爆した。 頬が熱を持つのがわかる。とっさに持っていた小説で顔を隠したが、 一層恥ずかしさが増していった。爆発する羞恥心を沈めようと奮闘する京太郎を尻目に、 同じく、顔をトマトみたいに真っ赤にした咲が噴き出した。 咲「ぷ、あはははっ。京ちゃん、顔真っ赤だよ」 京太郎「お前もだよ。顔、すげえことになってるぞ」 部室は二人の笑い声が反響した。次第におさまりつつある中、咲と京太郎は 視線を交えると先ほどの感情がふっとわき上がり、二人は同時に顔を伏せた。 京太郎「……で、最後は二人はどうなっちゃうんだ?」 咲「女の子が死んじゃった」 即答する咲の言葉に感情はなかった。 咲「女の子は最後、地球を守るために戦って死んじゃうの。でも、それは決められた運命で 最良の選択なんだ。ハッピーエンドではないけど、ベストエンド。女の子は幸せを感じながら死地へとんでっちゃうんだよ」 京太郎「悲しい話なんだな」 咲「悲しい、かな。でも見方を変えれば、戦って死んで行くことしか存在の 価値がなかった女の子に、好きな人ができて幸せな最後。それって」 京太郎「……価値観によっては最高?」 咲「うん。私は途中まで二人は絶対生き残って結婚して赤ちゃん産んで、 健康な老後を送ってほしかった。でも、読み終わると当人が満足を得れば、周りの人たちがどう思おうと幸せなんだ、って思った」 京太郎「幸せの価値観か……。他人の物差しが当てにならないとは確かに思うけど、 でも俺からみたらその作品、やっぱり不幸だと思う。よく自殺をする人に対して、 紛争地域や貧困でろくに飯が食えない人間と比べたらよっぽど幸せだっていうけど、 それは俺も賛成。その女の子だって『宇宙人に唯一の対抗できる』なんて肩書きのせいで、死んじゃったんだから」 咲「価値観はそれぞれって言ったら、この話終わっちゃうね」 京太郎「本人でしか味わえないんだからしょうがないだろ。俺は咲ほど読書家じゃないからそこまで作品に感情移入できないだ」 咲「……そうだね」 京太郎は片方だけカバーを外し、表紙に描かれた少女のイラストを見つめた。 少女は憂いた表情の中に、どこか満足げな微笑みがあった。髪の長さが咲と同じぐらいだった。 咲「京ちゃん、恋愛ってなんなんだろうね」 京太郎「俺に聞く?今まで彼女できたことないのに」 咲「そうなの!?」 京太郎「なんで驚くかなぁ、中一からの付き合いだろ。いたらそういうの、少なくとも噂が出るだろ。まぁ童貞からの言葉でよければ聞いてくれ」 咲「どっ……。セクハラー」 京太郎「恋愛は、……そうだな、他のことがどうでもよくなるぐらい幸せなことなんだろうな。 周りが見えなくなって手につかなくなるって言うし。 不幸を反転させ死に急かす……これはフィクションだけど、 いうなれば抵抗できない絶大な力って感じ。生物的欲求へと続く道筋でもあるしな」 咲「なんか京ちゃん、京ちゃんじゃないみたい。竹井先輩の影響?」 京太郎「かもな」 咲「むー」 咲は熱を逃がさぬよう、音も立てずそろりとコタツから抜け出した。 窓の前に立つと霜がついたガラスを撫でる。不細工なニコニコマークが出来上がった。 咲「京ちゃん」 京太郎「なに?」 咲「二年後の夏、最後の大会が終わったらお話があります」 京太郎「遠っ! それまでどっちも覚えてないだろ」 咲「ううん、私は絶対覚えてるよ。絶対」 京太郎「すぐには言えないことなのか?」 咲「うん、今は、えっと、……麻雀があるから。がんばらないと、ね?」 京太郎は咲から顔を逸らした。絶対に表情を見られたくなかった。 気持ちの悪い笑顔をしていたからである。だって、だってこれは告白に変わりないではないか! この女は天然なのかそれを装った計算しつくした行動なのかわからない。だけど、うれしかった。 京太郎「絶対忘れんなよ。お前忘れっぽいから」 咲「絶対忘れない」 京太郎「絶対? 絶対だな」 咲「ぜったい! ぜったいぜったい!!!」 京太郎「じゃあ二年後、ここで」 咲「うん!」 --- -- - 宮永咲が高校を卒業し、プロ雀士になってから一年がたった。 夏の大会、東日本選手権で優勝した日の暑い夜。ひとりで祝賀会を抜け、ホテル近くの自然公園をほっつき歩いていた。 ぼけた外灯が洋式でデザインされたベンチを照らす。なかなか不気味な光景にも臆せず、遠慮なしに座った。 携帯電話を開く。たくさんの受信メールと着信。高校の部活仲間、大会で知り合った友達、そして、 須賀京太郎の文字はなかった。 咲「そうだよね」 ぽつりとつぶやく。期待してなかったと言えば嘘になる。卒業まで付き合っていた元恋人の電話を待つ、 未練がましい自分が心底気持ち悪かった。 ふったのは自分なのに。 なにが『これからは一緒にいられないから別れよう』だ。臆病だったあの時の自分を絞め殺してやりたい。 京太郎は教育学部のある大学を受けた。東京の有名なところ。彼はそれなりに頭がよかった。 今では彼女も――いるだろうか。もしそうだとしたらこんな暑い日の夜だ、よろしくやってるかもしれない。 空を見上げると、星がまばゆいていた。東京の空でも、星が十分に見えるのはちょっとびっくりだった。 夏の大三角形を眺めていると、アルタイルが陰に隠れた。 照「こんなとこにいたんだ」 咲「あ、お姉ちゃん」 宮永照は咲のとなりに座り込むと、同じように空に顔を向ける。 外灯の光に晒された照の顔はタコのようにできあがっていた。 照「お、あれがデネブ? 大三角形完成」 咲「すごい顔の色……。飲みすぎだよ」 照「いーんだ、大人だから。無駄に高い日本酒がいっぱいあったからな」 咲「お姉ちゃん、強くていいな」 照「そっか咲は弱いから飲んでないのか。もう、二十歳すぎたんだから飲む練習しないと」 咲「練習て……」 照「宮永の血は代々うわばみだから、咲も強くなるよ」 たいそう上機嫌な姉を見るのは耐えがたかった。自分はなぜこんな暗い気分なのだろうと、 考えれば考えるほど京太郎という三文字が頭に浮かぶ。 照「元気ないね」 咲「ん」 照「東日本一はそんなにくだらない?」 咲「そ、そんなことないよ!」 今の自分のテンションを他人から見れば、まぁそうなるだろうとは思う。 だけど、照は自分が絶対にそんなこと思ってないとわかってるのに、 なぜこんないじわるなことを言うのだろう。咲は無性に腹がたった。 照「京ちゃん、でしょ?」 咲「え!?」 照「そう咲が呼ぶから」 咲「そうじゃなくて、えっと」 照「別に考えてることわかるわけじゃないから。咲って自分で思っている以上に表情でやすいし、あ、」 流れ星だー 照「えと、なんだっけ。ああ、表情に出やすいって話だったね。それで、うん、それだけ」 咲「その後なんか言おうとしてなかった?」 照「んー? なんだっけ。照わかんない」 咲「素面じゃないのね」 ああそっか京ちゃんだ。 なぜ照は京太郎を知っていたのか。彼のことは照には一度も話した覚えはないのだ。 知らないところで接点をもたないはずの肉親と元彼が仲良くしているという疎外感。 というより悪い予感しかしない。そこにつっかかろうものなら、仰天する事実がでてくるかも、という恐怖が咲の唇を閉ざした。 少し間を置いて、照が口をあける。 照「咲、聞きたいことがある」 咲「何? そんなにかしこまって」 照「京ちゃ――須賀君てかっこよかった?」 質問の意図が読みとれない。 咲「は?」 照「かっこいい、かっこいくない、どっち」 咲「い、いいよ」 照「じゃあ好き?」 後頭部をぶん殴られたような気がした。自分を欺いてまで隠していたかった感情を、豪快に掘り返されたような気分だった。 咲「す」 照「す?」 咲「別に今はもう」 照「今、『す』っていったじゃん。そしたら好きか好きじゃないかの二択だよ」 咲「……好き」 照「じゃあ電話すればいいと思う」 咲「お姉ちゃん、完全に酔っ払ってるよね……」 照「かけてみて」 咲「なんで?」 照「いいから」 咲「やだ」 照「かけろ。選手団長命令」 咲「っ、」 不安とストレスは反応を起こし、怒りが沸き立った。 咲「別れて一年以上たつんだよ!? もう、全然連絡もとってないし、それにお姉ちゃんに関係ないじゃん!」 照に負けないぐらい顔を真っ赤にして怒鳴った。近くで野犬が鳴きながら逃げていった。 咲「~~~~~~っ、帰るっ!」 照「あ、咲!」 咲「ついてこないで!顔見たくない!」 外灯を背にずんずん突き進んでいく咲はすぐに見えなくなった。 照「……、ミスった」 ・ ・ ・ 咲「なんで京ちゃんが出てくるのっ! なんで京ちゃんの事知ってるのっ!! なんで電話しなくちゃいけないのっ!!!」 途中すれ違ったカップルにも気付かなかった。だから、目の前で通せんぼする男の ことなんてわかんないし、そいつの発する音なんて耳から入って口から出て行った。 「――!咲!」 咲「うわっ」 正面からぶつかった。反作用はやけに大きくて、高校時代からろくに育たない体は笑えるほどふっとんだ。 運動神経のなさが災いし、とっさに片足がでなかった。両手を藁をも掴む勢いで振り回し、 ようやくつかんだそれは男の手首だった。もちろんバランスなどとれず、そのままそいつを巻き込んで尻もちをついた。 咲「いった……、あ!すいません!大丈夫ですか?怪我とか、」 「お、おう」 そいつが持っていた携帯の画面の光がそいつの顔の片側を映した。 咲「京、ちゃん」 京太郎「久しぶり」 次の言葉が思いつかなかった。 咲「ぐ、偶然だね」 言った手前、そんなことあるもんか、と心の中でツッコミをいれる。 京太郎「立てるか?」 咲「あ、うん」 京太郎「ここ、暗いから、もうちょっと明るいところ行こう」 自然と手を握られた。付き合ってたころはたいしたことじゃなかったのに、 いざ意識すると気が狂うほど心拍数が跳ね上がった。あの、夏の大会の日の夜、初めて手をつないだときを思い出した。 自然公園を抜け、夜空を塗りつぶさんとする街灯が姿を現し、 少し歩いたところで自販機を見つけた。そのとなりにはベンチとゴミ箱。設置した人間のご厚意に沿う形で並んで座った。 咲「あ、お茶、ありがと」 京太郎「ん」 京太郎はコカコーラの口を開け、少しだけ喉に流した。 京太郎「咲」 咲「うん」 京太郎「ごめんっ」 咲「えっ、え?」 京太郎「お姉さん使ってお前を探ったのは、全部俺がお願いしたことだったんだ」 咲「……ふーん」 京太郎「本当ごめん! だからお姉さんの事を悪く思わないでくれ」 咲「……」 物言わぬ咲に京太郎の顔色はどんどん青ざめていった。 咲「私、」 間。 咲「私ね、京ちゃんが大学行くって決めたときすごく怖かったんだ」 どこか遠くでセミの合唱が始まった。 咲「遠距離恋愛なんて初めてだったし、それに大学で他の女の子にとられちゃうのが怖かったんだ」 京太郎「俺って、そんな軽そうか?」 咲「あれだけ好きだった人を信じられない自分が嫌になったんだよ」 京太郎「それで、別れようって?」 咲「ごめん、怒った?」 京太郎「いや、全然」 合唱は終わる。 京太郎「好きな人ができたとかめんどくさくなったとか、いやな事ばかり思いついて、 取り返しがつかない状況になっちまったと思った」 咲「うん」 京太郎「だから、連絡をとりたくても、」 咲「そっか」 すっごいバカなんだと思った。自分も京太郎も。素直になっていれば、こんなことにはならなかったのだ。 京太郎「遅れたけど、おめでとう咲」 咲「ありがとう京ちゃん」 京太郎「次は全日本か」 咲「うん、がんばるよ」 京太郎「団体戦のオーラスでまくったときかっこよかったぞ」 咲「うん」 京太郎「白の大明槓から、ツモ切り直後の一位直撃の跳満、録画したやつ何回も見直したよ」 いつからだろう。 咲「京ちゃんは」 いつからだろうか、自分がヒーローとして皆の注目を集めだしたのは。 姉の照は飄々とマスコミ連中に気の利いた一言を繰り出せる。 けど、自分は未だそうではない。容姿、雀力ともに似てはいるが、性格の面で彼女になりきることはできなかった。 自分は大木によりそう数多の子木のひとつでしかない。そう思っていたし、そう望んでいた。 肩書きの最年少タイ東日本一制覇だなんて、重すぎるにもほどがある。 なんだか本当の宮永咲と麻雀を打つ宮永咲が剥離していくような気がした。 咲「京ちゃんは最近どう?」 京太郎「え?あ、俺?」 咲「勉強とか大学生活とか」 京太郎「んー、最近ねぇ……、俺、小学校の先生目指す事にしたんだ」 咲「ほんと? すごい!」 京太郎「いやー、そこまで驚くような事じゃないけど」 咲「それ、昔の私の夢だったんだよ」 京太郎「へー」 咲「……小学校の先生かー」 小説家、学校の先生、お花屋さん。 咲がなりたかった職業ベスト3である。 麻雀のトッププロではないのだ。このことを口にすれば、なりたくてもなれなかった者に、 末代までの恨みを買うだろう。いくら咲とも言えど、流石にその辺りはわきまえている。 咲「うん……、さっきから気になってたんだけど」 京太郎「ん?」 咲「右のポケットに入ってるそれ、なに?」 京太郎がギクリとした。目の焦りから触れてはいけないものだとわかった。 京太郎「お前……、変なとこビンカンだな。これだよ」 でてきたのは6センチメートル四方の箱。角は丸く濃紫で光沢がない。 京太郎「咲、今から俺すごいこと言うからちゃんと聞いとけ」 咲「え?うん」 京太郎の頬がふくらんだ。何を言い出すのかわかった。 京太郎「結婚を前提にお付き合いしてください」 咲「うん、いいよ」 京太郎「軽っ!てか早いよ!もうちょっと驚いたりとか」 咲「なんとなくきそうだなーって。流れ的に」 京太郎「流れ的にかぁ。流石文学少女」 緊張が抜けて、ベンチにへたり込む京太郎に罪悪感が沸く。 一生に一度するかしないかの告白をさらりと受けてしまったのだ。それでも、自分のはずかしさを隠すための攻撃は続く。 咲「もしかして、これ言うのに練習とかした?」 京太郎が笑う。 京太郎「お前、きついこと言うなー。そうだよ、すっごい練習したんだからなこれ。 本当は電話でお前のこと呼び出して、もっと星が見えるところでこいつを渡すはずだったんだよなー」 橋をつなぐ人物に照を選ぶと言うセンスが間違っているのだろう。あの人はいろいろとヘタクソなのだ。 咲「開けていい?」 京太郎「ああ」 止め具はなく、摩擦だけで封がされていた。 金色のリング。プラチナ色の装飾が流れるように交わったシンプルな作りだった。 咲「きれい」 京太郎「よろこんでくれてなによりです」 咲「明日の会見、これつけてでていい?」 京太郎「べ、別にいいけど、なんかつっこまれたらどうするの?」 咲「『婚約者からの優勝プレゼントです』って堂々いうよ」 京太郎「咲、お前が元気でよかった」 ふいな一言に言葉がつまった。 京太郎「やっぱり麻雀続けてよかったと思うよ。俺はそういう明るい咲が好きだ」 目頭が熱くなる。これ以上冷静でいるのは不可能だった。 咲「京ちゃん……キス、して」 京太郎「ん、目つぶって」 セミがまたどこかで鳴きだした。 ◆◇◆◇◆◇ 「あ、なんだここにいたのか」 「!!っ、……菫か」 「びびりすぎだろ。私までびっくりしたぞ。というかなんだそのカメラ」 「しーっ! 静かに! 一緒に隠れて」 「お、おう。あれ、咲じゃないか。それともう一人は誰?男?やけに近いな。あ、」 「おし、そこでちゅーだ! ちゅーするんだ。ハァハァ」 「お、おおおおお……」 「フヒヒ、咲の成長日誌にまた新たな1ページ……」 「……」 「なんで引いてる」 「妹の情事を記録つけるのは気持ち悪いぞ」 「うるさいなー。姉として大切な事なのだ」 「どこの世界の人間だよ」 「それにキスは普通だよ。菫はどうせそういう経験ないんだろ」 「な、私は、い、一応経験あるぞ。そういう照こそないだろ」 「んだと万年処女」 「試してみるか? ああ!?」 「いったな後悔すんなよ」 「は? マジ? いや、冗談だからな。う、酒くさ! お前よっぱらっt」 アッー
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344279364/ 京太郎「よぉ咲」 咲「・・・」ピクッ 咲(またうるさいのがきた・・・) 京太郎「なんだよ、無視かよ~」 咲「・・・なにか用?」ペラッ 京太郎「いやさ、これから一緒にプール行かね?」 咲「・・・プール?」 京太郎「そそプール。いいだろ?」 咲「・・・」 京太郎「楽しいぜ~。この暑い中冷たい水ん中入るのは」 咲「・・・」 京太郎「ほら行きたくなってきたろ? な、行こうぜ?」 咲「・・・いやだよめんどくさい」ペラッ 京太郎「なんだよなんだよ、付き合いわりぃなあ」 咲「・・・他の人と行ってくればいいでしょ」 京太郎「いやさ、他の奴らはみんな受験だなんだいって、塾にこもりっきりでさ~」 京太郎「お前くらいしか一緒に言ってくれる奴いねえんだよ」 咲「・・・だから私は行かないってば」 京太郎「っだよ。どうせ暇なんだろ?」 京太郎「そんな影で本ばっか読んでないで、ちっとは体動かせよ」 咲「・・・」ピクッ 咲「・・・うるさいなぁ。私の勝手でしょっ」ペラッ 京太郎「なにむくれてんだよ」 咲「むくれてないっ! いいからあっち行ってよ!」 京太郎「へいへい」スタスタ 咲「・・・」ペラッ 咲(ほんっとうざい・・・もう私に構わないでよっ) 京太郎「・・・おい、咲」 咲「!?」 咲「な、なんでまだそこにいるの!」 京太郎「いやいや・・・お前が向こう行けって言ったから、ちょっと離れてやったんだぞ」 咲「そ、そういう意味じゃないから! もうここから消えてって意味!」 京太郎「消えてって・・・ひでえやつだな」 咲「読書のジャマする方が悪いんでしょ!」 京太郎「読書なんてつまんねーだろ。プールの方が絶対楽しいって」 咲「京ちゃ・・・須賀君みたいなバカには理解できないだけだよ!」 京太郎「バカとはなんだバカとは。それにお前だって大して勉強できねーじゃん」 咲「うるさいなぁ! いいからどっか行ってよ!」ブンッ 京太郎「ちょ、石投げんな石・・・!」タタッ 咲「はぁ・・・はぁ・・・」 咲(これだから男子は嫌いなの・・・っ!) その夜 咲の部屋 咲「・・・♪」フンフン コツーン 咲「・・・!!」ビクッ 咲「な・・・なに?」ソロォ 京太郎(おーい!) 咲「・・・」 ピシャ! 咲「・・・信じらんない」 コツーン 咲「・・・」 コツーン 咲「・・・っ」イライラ ダダダッ・・・ガチャ! 京太郎「お、出てきた」 咲「・・・」スタスタスタ 京太郎「お、なんだなんだ・・・」 咲「ちょっとどういうつもり!?(小声)」 京太郎「いや~、一回やってみたかったんだよな。窓に石当てて気づかせるってやつ」ハハハ 咲「バッカじゃないの! それに声がでかいってば!」 京太郎「じゃ場所移すか」 咲「どうして私が須賀君についてかなくちゃいけないの!?」 京太郎「じゃあおまえん家入れてくれる?」 咲「なんでよ! もういいから帰ってよ!」グイッ 京太郎「お、押すなって・・・!」 咲「二度と私の家に来ないでよ!」 ガチャン 京太郎「なんだよプリプリしやがって」 咲「・・・」 咲父「誰か来たのか?」 咲「別に・・・誰でもないよ」 咲父「そうか」 咲「それよりお父さん! ちゃんと服着てってば!」 咲父「わ、わかったよ・・・」 ダンッダンッダンッ 咲父「・・・」 咲父(思春期ってやつなのかなぁ・・・) ガチャ 咲「・・・」 咲「っ!」バンッ 咲「ああもう、イライラする!」バタバタ 咲「・・・」 咲「・・・はぁ」 咲(・・・こんなの全然私らしくないよ・・・) 咲(・・・今朝読んだ小説の女の子は、中学生なのにもっとおしとやかで優雅な感じだった・・・) 咲(・・・私ももっとスマートに生きなくちゃ・・・) 咲「・・・」 咲「・・・よし、続き書き始めよう」カキカキ 翌朝 咲「・・・」ペラッ 京太郎「よっす、咲」ポンッ 咲「・・・」イラッ 咲(・・・れ、冷静に・・・冷静に) 咲「・・・スゥ」 咲「・・・」ペラッ 京太郎「なんだぁ・・・今度はガン無視かよ」 京太郎「昨日はひどいことしてくれたよなあ・・・せっかく花火やろうと思って誘いにきてやったのに」 咲「・・・」ペラッ 咲(花火とか・・・ほんとガキっぽい・・・) 京太郎「今日こそ花火やろうぜ。木村も来てくれるってよ」 咲(木村君・・・あのいかにもって感じの不良男か・・・) 京太郎「どうだ? くるだろ?」 咲「・・・」 咲「・・・」ガタンッ 京太郎「なんだ・・・便所か?」 咲「・・・」キッ 京太郎「に、にらむなよ・・・」 咲「・・・」スタスタスタ 京太郎「・・・はあ、女の気持ちってのはわからねえなあ」 --------------------- 咲(女の子の前で『便所』なんて・・・ほんとデリカシーないやつ・・・) 咲「・・・」ブツブツ 咲「・・・」ピタッ 咲(まあ・・・せっかくここまで来ちゃったし、おトイレも済ませちゃおう)スタスタ ・・・ジャー 咲(よしっと・・・) スタスタスタ 咲(ん・・・?) 「―――でさぁ、その先公がマジうざくってぇ」 「わかるぅ~」 咲(うわ・・・クラスの林さんたちだ・・・) 咲(どうしよう・・・あまり顔を突き合わせたくない・・・) 咲「・・・」 「そういえばさぁ、今日の須賀君見たぁ?」 咲「・・・」ピクッ 「見た見たぁ! 髪ちょっと短くしてきてたよねぇ!」 「ちょ~かっこよかったぁ!」 咲「・・・」イラッ 咲(・・・あ、あんなやつのどこがかっこいいんだろ・・・) 咲(・・・デリカシーないし、バカだし・・・) 咲(・・・この女共もバカばっかりだ・・・ほんと見る目なし・・・) 咲「・・・」 咲(・・・髪切ってきたんだ。気づかなかった・・・) 咲(ってなにやってんだろう私・・・) 咲(こんなやつらに怯えてどうする・・・早く教室に戻って本の続きを・・・) 「んでさぁ、須賀君にいつも付きまとってる、あの・・・」 「あぁ~、宮永だっけ? うざいよねぇ」 「そうそう、須賀君もなんであんな地味女なんか気にかけるんだろぉ・・・」 「なんかぁ、小学校からの幼馴染らしいよ?」 「うわ、なんかそれちょ~むかつくんですけどぉ」 「あいつ自身、それ鼻にかけてるとこあるよねぇ」 「わかる! ヘンに優等生ぶってんよね」 「そんなに須賀君や先生に気に入られたいのかねぇ」 咲「・・・」 教室 ガラッ 咲「・・・」スタスタ 京太郎「なんだよ、遅かったじゃん。調子悪かったのか?」 咲「・・・」 京太郎「あ、もしかして便秘だったり」ククッ 咲「・・・!!」ブンッ ボコォッ 京太郎「ぐへぁ!」 ドンガラガッシャーン! 「な、なんだなんだぁ!?」「え、なに今の音?」 咲「・・・っ」ダダッ 京太郎「・・・いてて・・・」 京太郎「・・・さ、咲・・・?」キョロキョロ 京太郎「あ・・・鼻血」 タッタッタッ 咲「はぁ・・・はぁ・・・」 咲「・・・っく・・・はぁ・・・」 咲(最低・・・最低さいてい・・・っ!!!) 咲「・・・っ・・・はぁ・・・」 咲(あの女共も・・・須賀君も・・・みんな最ッ低・・・!!) 咲(誰が付きまとってるって!? いっつも私にちょっかい出してくんのはあいつでしょ!!) 咲(幼馴染とか・・・こっちから願い下げだよ!! 誰が好き好んであいつなんかと・・・!!) 咲「・・・っ・・・はぁ・・・」 咲「地味・・・? 優等生ぶってる・・・?」 咲「どこが!? そんなの嫉妬でしょ! 私はあんたたちとは根本的に出来が違うんだ!!」 咲「たくさん本読んでるし、授業も真面目に受けてるし、それで推薦までもらった・・・!」 咲「毎日彼氏がどうだの言って、くだらないことに時間を費やしてるあんたたちとはワケが違うの!!」 咲「・・・っはぁ・・・はぁ・・・」 「ねぇお母さん、あのお姉ちゃんなに怒ってるの~?」 「こら、見ちゃいけません!」スタタッ 咲「・・・」 咲(・・・もう頭の中ぐちゃぐちゃだ・・・) 咲(・・・あんなことしたんだもん・・・もう教室には戻れない・・・) 咲「・・・はぁ」 咲(たまにはここら辺散歩して、頭でも冷やそう・・・) スタスタ ニャー 咲(・・・猫だ) 咲(・・・いや無視無視・・・)スタスタ ニャァ 咲「・・・」チラッ スタタッ 咲「・・・よしよし」サワワッ 咲「・・・」サワサワ ニャン 咲「・・・」 咲(・・・今までは、学校終わったら家に帰って本読むことしか頭になかった・・・) 咲(・・・道端の野良猫なんか、気にもかけなかった・・・) 咲「・・・」 咲「・・・ごめんね、また今度」 ニャァ! 咲「・・・ふふっ」 スタスタ 咲「・・・」 咲(・・・街並みが違って見える・・・) 咲(・・・今までは灰色や緑の塊でしかなかったものが・・・ちゃんと形と色を帯びてる・・・) 咲「・・・私、少し視野が狭かったのかも・・・」 咲「だから小説書いてても、いつも地の文でつまづいちゃうんだ・・・」 ワーワー 咲「・・・」 咲(そっか・・・もう小学生の下校時間・・・) 咲「・・・」 咲(・・・私にも、あんな頃があったんだよね・・・なんて、まだそんな歳でもないか) ワーワー 咲(・・・あの頃は、まだ須賀君とも仲良かったっけ・・・) 咲(・・・今となっては、ただうざい人でしかなくなっちゃったけど・・・) 咲「・・・」 咲(・・・でも・・・) 咲(・・・私も少し、やりすぎたかも・・・) 咲「・・・大丈夫かな・・・須賀君」 咲(無意識の内に、手元にあったカバン振り回しちゃったから、けっこうダメージでかいはずだけど・・・) 咲(・・・キーホルダーとか一切つけてないから、大怪我にはなってない・・・はず・・・) 咲「・・・」 咲「だ、大丈夫だよね・・・」オロオロ 咲「・・・っ」 --------------------- カァアア・・・ 京太郎「咲のやつ・・・家にも帰ってなかったな」スタスタ 京太郎「どこ行ったんだろ・・・っと、いてて」 「・・・」 京太郎「・・・あ」 咲「・・・ぁ」 京太郎「・・・」 咲「・・・」 咲「そ・・・そそそその・・・」 京太郎「なにドモってんだよ」 咲「ど、ドモってなんかないよ!」 京太郎「ふーん、まあいいけど」 咲「・・・」 京太郎「・・・なんで俺んちの前にいたわけ?」 咲「・・・あ、あの・・・さっきはその・・・」 京太郎「・・・へえ、少しは反省してくれちゃってんだ」 咲「・・・っ」 京太郎「・・・別にいいよ。ちょっとほっぺた切っただけだし」 咲「だ、大丈夫なの・・・?」 京太郎「・・・痛だっだああああああっ!!」ガクッ 咲「・・・き、京ちゃん!?」 京太郎「・・・って言ったらどうする?」 咲「・・・も、もうっ!!」 咲「・・・その分だと大丈夫みたいだね」 京太郎「めっちゃ痛いけどな?」 咲「・・・」キッ 京太郎「なんで俺が睨まれるんだよ」 咲「・・・」 京太郎「・・・あのさ、俺の方もゴメンな」 咲「・・・え?」 京太郎「いや、さっきのこと。俺が便秘とか言ったから怒ったんだろ?」 京太郎「咲はそういうの嫌いだったもんな。ちょっとからかいすぎたよ。反省してる」 咲「・・・べ、別にいいよ・・・」 京太郎「ほんと?」 咲「そういってるでしょ!」 京太郎「怒鳴んなって」 咲「・・・」 京太郎「あ、それとこれ」スッ 咲「・・・え、これって」 咲(わ、私が書いてた小説・・・!? な、なんで!?) 京太郎「たぶんお前がカバン振り回したときに飛び出したんだろ。ほら、チャック開いてるし」 咲(ほ、ほんとだ・・・) 京太郎「・・・よかったな」 咲「・・・よ、読んだ?」プルプル 京太郎「・・・え?」 咲「これ読んだの!?」 京太郎「読ん・・・い、いや読んでない読んでないっ」 咲「いま読んだって言おうとしたでしょ!?」 京太郎「ち、違うって・・・」 咲「読んだのか読んでないかだけ正直に言って!!」 京太郎「・・・読みましたすみません」 ボカッ 京太郎「いでっ!」 咲「はぁ・・・はぁ・・・」 京太郎「な、なにも殴ることないだろ!!」 咲「ぜ、全部読んだの!?」 京太郎「いや、最初の数ページだけ・・・」 咲「ほんと・・・?」ジリジリ 京太郎「ほんとだって! だってめっちゃつまんねえんだもんこれ!」 ボガッ! 京太郎「いだっ!!」 咲「・・・ふんっ」 京太郎「なんで殴るんじゃーーー!!」 咲「も、もっとオブラートに包んで言ってよ!!」 京太郎「知らねえよ!!」 咲「はぁ・・・はぁ・・・ほんと最低!」 京太郎「知るかっつーの・・・」 咲「・・・誰にも言いふらさないでよ」 京太郎「なにを?」 咲「わ、私が小説書いてる・・・なんてこと」 京太郎「い、言わねえよ」 京太郎(・・・誰も読みたがらねえだろうしな) 咲「・・・っ」ガサゴソ 京太郎「・・・まあ、とりあえずあがってくか?」ガチャ 咲「い、いいよ別に・・・」 京太郎「・・・」 グイッ 咲「ち、ちょっと・・・!」 京太郎「いいから入れって、ほら!」 咲「て、手ぇ放してってば!」 京太郎「ほい」 咲「きゃっ!」ドテッ 咲「・・・も、もう! いきなりなにすんの!?」 京太郎「だって、咲はこうでもしないと素直になんねえだろ?」 咲「・・・っ」 咲「そ、そういうのがデリカシーないっていうの!」 京太郎「へいへい、そうでございますか」 京太郎「まあ、早く靴脱げよ」 咲「む・・・」 咲「お、お邪魔します・・・」 京太郎「おう、素直でよろしい」 京太郎「ちょっとそこで待ってろ。麦茶持ってくる」 ガチャ 咲「・・・っ」 咲「・・・」キョロキョロ 咲(小学生の頃は、よく遊びにきてたっけ・・・) 咲(あんま変わってないなあ・・・昔と・・・) 咲「・・・」 咲(あ・・・) ガチャ 京太郎「おまたせ~」 咲「き、京・・・須賀君! それどっか仕舞ってよ!」 京太郎「ん? ・・・ああ! これか」ヒョイ 咲「な、なんでそんなもの出しっぱなしにしてんの!!? 信じらんないよ!!」 京太郎「いや、まさか女の子を家にあげるとは思ってなくてな・・・はは、こりゃ失敬」ササッ 咲「さ、最ッ低!!」 京太郎「まぁとりあえずこれでも飲んで落ち着こうや」コトコト 咲「ま、まったくもう・・・」 京太郎「ほれ」スッ 咲「い、いただきます」ゴクゴク 咲(・・・わぁ、昔と変わってないなぁ・・・この味) 京太郎「前はよくこうして家に遊びに来て、麦茶飲んでたよな」 咲「・・・う、うん」 京太郎「あの頃の咲は純真でかわいかったなあ・・・」 咲「・・・まるで変態みたいだよ、京ちゃん」 京太郎「だって本当のことじゃん。今の咲はブスッとしてばっかでさ」 咲「はいはい、そーですか!」 京太郎「な?」 咲「今のは京ちゃんが原因でしょ!?」 京太郎「・・・京ちゃんって、また呼んでくれるようになったのか?」 咲「あ・・・えっと、その・・・」アセアセ 京太郎「恥ずかしがんなよ。須賀君、とか堅苦しく呼ばれるよりは全然いい」 咲「・・・うん」 京太郎「・・・なあ、咲」 咲「・・・なに?」 京太郎「・・・俺たち、また昔みたいに戻れねえかな・・・」 咲「・・・」 京太郎「・・・咲?」 咲「・・・それは無理だよ」 京太郎「・・・」 咲「私たちは・・・変わりすぎちゃったもん」 咲「趣味や性格、人付き合いだって変わってきた」 咲「それに京ちゃんはもうすぐ受験でしょ? そしたら高校だって違くなるし、こうして会う機会だって減ってくる・・・」 咲「私たち・・・いつまでも子供じゃいられないんだよ」 京太郎「・・・そうだな」 咲「・・・うん」 京太郎「・・・」 咲「・・・」 京太郎「・・・咲ってどこの高校行くんだっけ」 咲「えっと・・・清澄ってとこ」 京太郎「・・・そっか」 咲「・・・?」 京太郎「・・・じゃあさ、俺もその高校受けることにする!」 咲「え、ええ!?」 咲「な、なんで・・・?」 京太郎「・・・俺たち、昔のようには戻れなくてもさ・・・」 京太郎「・・・」 京太郎「それでも俺は、咲のできるだけ近くに居たいんだよ・・・ダメか?」 咲「・・・き、京ちゃん・・・」 咲「・・・もう! 勝手にすれば!?」プイッ 京太郎「ああ、勝手にさせてもらうぜ」 咲「・・・ふん、でも京ちゃんなんかが受かるのかなぁ」チラッ 京太郎「・・・っ」ギクッ 京太郎「・・・さ、咲さん? 頼みがあるんだけど・・・」 咲「・・・なに?」 京太郎「・・・頼む、俺に勉強を教えてくれ!!」 咲「・・・あれ、昨日は私のこと大して勉強できないとか馬鹿にしてなかったっけ?」 京太郎「あ、あれはその・・・」 咲「ふん・・・まあいいよ、教えてあげる。その代わり・・・」 京太郎「・・・な、なんだ?」 咲「・・・」 咲「・・・わ、私の小説・・・また書くから、そのときは読んで・・・くれる・・・?」 京太郎「・・・なんだそんなことかあ」ホッ 咲「そ、そんなことって・・・!」 京太郎「そんくらいならお安い御用だぜ! 原稿用紙10枚でも20枚でも持ってきやがれ!」 咲「・・・あ、ありがとう」 咲「・・・じ、じゃあさ! まずはこれを・・・」ガサゴソ 京太郎「げっ・・・それはさっきの・・・」 咲「む・・・なにその顔は・・・?」 京太郎「いやぁ・・・だってそれめっちゃつまんn」 ボカッ 咲「それはわかってるの! だから全部読んでもらって、ダメな個所とか指摘してもらいたいというか・・・」 京太郎「・・・で、でも俺ド素人だぜ?」 咲「いいの! 誰か他の人に読んでもらうってことが大事なんだから!」 京太郎「そういうもんかな・・・」 咲「そういうもんなの! ・・・ってもうこんな時間か」 京太郎「ああ、帰るのか?」 咲「・・・うん。お父さんも心配するだろうし」 京太郎「・・・咲」 咲「・・・なに? 京ちゃん」 京太郎「今日の9時、中央公園に集合な」 咲「え・・・それって」 京太郎「ああ、昨日できなかった花火の続き」 京太郎「お前のせいでできなかったんだぜ・・・もちろん来てくれるよな?」 咲「・・・うん、いいよ」 京太郎「ただし・・・」 咲&京太郎「「「木村は呼ばない・・・!」」」 咲「・・・っぷ」 京太郎「はははっ」 夜 京太郎「・・・おまたせ~!」 咲「遅いよ!」 京太郎「ごめんごめん・・・ってお前・・・」 咲「お、お父さんがね・・・! 浴衣着てったらどうかって・・・去年買ったやつがあったから」 京太郎「・・・」 咲「・・・ど、どうかな・・・似合ってる?」 京太郎「・・・似合ってる」 咲「ほ、ほんと!?」 京太郎「けどそれお前・・・前んとこ逆だぞ。それじゃ死人じゃねえか」 咲「ぁ・・・」カアア 京太郎「あいっかわらずどっか抜けてるよなあ、お前」 咲「う、ううううるさいなあ!! あっち向いててよ!!」 京太郎「ま、まさかここでやる気かよ・・・!?」 咲「き、京ちゃんがそういうこと言うからじゃん!!」 咲「・・・で、できたよ」 京太郎「おう、それじゃさっそく始めるとするか」 咲「う、うん・・・」 パチパチィ・・・ 京太郎「夏といったらやっぱりこれだよなあ・・・」 咲「そうだね」 京太郎「虫よけ買ってきたから、よかったら使えよ」 咲「・・・京ちゃんってヘンなとこだけ気が利くよね」 京太郎「ヘンなとこは余計だよ!」 京太郎「あ、使い終わったら必ず返せよ?」 咲「う、うん・・・でもどうして?」 京太郎「いや、お前ならスプレー缶に花火向けるとかやりかねねえし」 咲「そ、そんなことしないってば!!」 京太郎「ははっ、ジョークジョーク」 パチパチィ・・・ 京太郎「・・・」 咲「・・・」 京太郎「・・・もうすぐ終わっちまうな」 咲「・・・うん」 京太郎「・・・明日はプール行こうぜ」 咲「でも学校・・・」 京太郎「終わった後でもいいだろ。な?」 咲「うん・・・」 京太郎「・・・んで、明後日は・・・」 咲「・・・明後日は勉強」 京太郎「ええ~」 咲「ええ~、じゃないよ! 今のまんまじゃ、清澄どころかどこにも受かんないよ!」 京太郎「へいへい・・・」 咲「・・・絶対サボっちゃダメだからね」 京太郎「わぁってるよ・・・」 咲「・・・あ、もう終わっちゃった」 京太郎「ちぇ・・・つまんねえの」 咲「またやればいいじゃん」 京太郎「それはそうだけどよぉ・・・」 パンパーン 咲「・・・あれ・・・この音」 京太郎「・・・花火大会でもやってんのか?」 京太郎「・・・お、こっからなら見える」 咲「ほ、ほんと?」 京太郎「おう、なんなら肩車してやろうか?」 咲「イヤだよ!」 京太郎「・・・まあそもそも体重的に無理だけどな」 咲「その一言は余計だよ!」 京太郎「でもどうするよ。お前その恰好じゃここよじ登れないだろうし」 咲「仕方ないよ・・・ここで音だけ聞いてる」 京太郎「・・・咲」 咲「・・・」 京太郎「あ、そうだ・・・咲、こっち!」 咲「えっ?」 咲「ぶ、ブランコ!?」 京太郎「ああ、勢いつければかろうじて見えるんじゃないか?」 咲「そんなうまくいくかなぁ・・・」 京太郎「モノは試しだ・・・早く乗れよ!」 咲「うぅ・・・こんな歳でブランコ押してもらうことになるとは思わなかったよ・・・」 京太郎「よし、いくぞーーーーーーーー! それっ!」グイッ 咲「わわっ・・・き、京ちゃん強いってば!」 京太郎「こうでもしねえと見れねえだろ? それもういっちょ!」グイッ 咲「きゃああああぁっ!!!」 京太郎「どうだー? 見れたかー?」 咲「こ、怖くて目ぇ開けらんないよぉ!!」 京太郎「・・ったく、ヘンなとこで乙女属性発現させるんだからよぉ」 パパパーン! 京太郎「お、でっかいのきたぞ!」 咲「うぅ・・・み、見えない・・・」 京太郎「・・・ダメかあ・・・」 咲「あ、れ・・・」 パパパーンッ! 京太郎「お」 咲「み、見えた! 京ちゃん見えたよ!!」 京太郎「っておまっ・・・危ねえよ!」ダダッ 咲「わわわぁああっ!!!」 ズザーッ! 京太郎「いてて・・・っ」 咲「き、京ちゃん・・・大丈夫・・・?」 京太郎「ああ・・・なんとかな・・・」 咲「・・・ご、ごめんね。私のせいだね・・・」 京太郎「なに言ってんだよ。お前も無事で俺も無事」 京太郎「ついでに花火も見れたんだろ? なら万事オッケーじゃねえか」 咲「なにそれ、適当すぎだよ・・・」 京太郎「んで、花火はどうだった?」 咲「うん・・・いろんな色が混ざり合って、輝いて・・・とっても綺麗だったよ!」ニコッ 京太郎「そっか・・・」 咲「・・・ありがとう、京ちゃん」 京太郎「だからもういいって・・・」 咲「ううん・・・今日はこんなに楽しませてくれて、ありがと」 京太郎「・・・咲・・・」 咲「えへへ・・・」 京太郎「・・・お、お前にしちゃ素直だな」 咲「む・・・そういう言い方しかできないの?」 京太郎「・・・うっせ」 咲「まったくもう・・・素直じゃないのは京ちゃんの方じゃん」 京太郎「うっせうっせ」 咲「はいはい、もう黙りますよーだ」 京太郎「・・・」 咲「・・・」 京太郎「・・・」 咲「・・・」 京太郎「さ、咲・・・」咲「き、京ちゃん・・・」 京太郎「・・・な、なんだよ・・・」 咲「・・・そ、そっちこそ・・・」 京太郎「・・・じ、じゃあせーので行くぞ」 咲「・・・お約束だね」 京太郎「・・・ああ、いいか?」 咲「・・・うん」 京太郎&咲「せーの・・・っ!」 「「好きだよ・・・!」」 カン
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1390125673 咲「私ね、今、先輩の紹介で、フランスのワインセラーで働いてるんだけど、」 咲「って、でも、なんか、あのね、これ嘘でさ、」 咲「実はひきこもりやってるんだけどね」 咲「こんな手紙なんか書くんじゃなかったよ」 咲「泣きそうっていうか、泣いちゃうって思うんだけど、涙が出てこなくてね、」 咲「なんかさ、」 咲「……ごめんね」 咲「ごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんね」 咲「でも、さ、ひきこもり、って、楽しい、よね」ポロポロ 咲「……投函しちゃった」 咲「私って最低だな……でもほんとはそんなこと思ってないのかも……」 咲「……し、死のう、かな」 咲「で、でも……やっぱその、怖いからやめよ……」 咲「……はあ」トボトボ ???「ん……?あれ?おーい、咲ー!」 咲「!!?」ビクッ 咲「(やだやだやだ絶対見られたくないこんなの絶対振り返っちゃダメ!!!)」ダッシュ タタタ… 咲「あ、足音聞こえないし、ふ、振り切った……かな?」フリムキ 久「やっ」 咲「あ、あ、」 久「ちょっとー、せっかく昔の先輩に会ったってのに、何よその反応」 久「まー私くらい器用だと、相手の足音に自分の足音合わせることくらい簡単なのよね」ニヤニヤ 咲「ななななななんで」 咲「(ううう人と会うの久しぶりすぎるからどもっちゃって話せないよお……)」 久「しっかしほんとに……えっと、」ジロジロ 咲「ううう」ポロポロ 久「あ、ご、ごめん……でも、咲、あなた……」 咲「」ポロポロ 久「――前よりなんだか可愛くなってるわよ?」 咲「……え?」 久「な、何で泣いてるのかはわからないんだけれど……」 咲「え、だ、だって、そそその、に、ニキビができてて……」 久「……あっはははははははは!!!!はっ、ひーっひひひひひひひ!!!!!!」 久「ばかもん!!!!!!!!!」ゴツッ 咲「あいったぁ…!!!!!?」 久「咲はねえ、ちょっとひきこもり生活が長すぎただけなのよ」 久「だからそんな自意識過剰になってるし、視線不安になってんのよ」 久「あのねえ、あんた元々美少女なのよ?化粧なしでもアレなのよ?」 久「まあ、元が美少女だからニキビくらいで動転しちゃったのかもしれないけど」 久「あんたの悩みは贅沢すぎんのよ!!!ひきこもり風情が様相なんて気にしてどうするんじゃ!」 久「こっちはねえ、社会生活やってんのよ?ほんと、こっちのが気い使わなくちゃいけないっての!!あのねえ、……うん?」 咲「……うっ」 久「あ、ごめん、ちょっと熱くなりすぎ、」 咲「うううわああああああああああああああああああああああああん!!!!!」 10分後 久「ほい、缶コーヒー」 咲「あ、ありがとうございます」 久「ど?落ち着いた?」 咲「落ち着きましたけど、」 久「けどなんじゃ!!!!!」 咲「ひっ」 久「ったく……すっかりひきこもり精神になっちゃって」 咲「あ、あの……」 久「ん?」 咲「……部長は、どうしてここに?」 久「私はねぇ、実は今――これやってるんだ」名刺 咲「た、探偵――!!!」 久「うん、まあ、だからさっきも、ほら、すっかり視線不安の咲に気づかれないで声かけることができたし、」 久「追いかけスキルもバッチリよ」 咲「び、尾行スキルじゃなくて追いかけスキルなんですか……」 久「だいぶすんなり喋れるようになってきたじゃない。そう、追走術、逮捕術っていうのかしらね」 久「私も無駄に社会人やってないってことよ」ジロッ 咲「うう……」 久「私が卒業してから咲とは全然連絡取ってなかったけど、」 久「そういえば、一年前くらいに年賀状が来たわよね……」 咲「ああああの、えと、ちが」 久「『元気で仕事やってます』って書いてあったから、よかったぁ、って思ってほっこりしてたんだけど」 久「……あれさ」 咲「……う、嘘……です……」 久「……ばか」ガツン 咲「いた……あ、あの、さっきの質問なんですけど」 久「ああ、ごめんごめん、私、とある人物を捜しててねえ」 久「――須賀、京太郎って言うんだけどねえ」ニヤニヤ 咲「――え?」 久「ふっふっふ、詳細を知りたいかい?」 咲「し、知りたい――です」 そう、思えばこの時点で、私はもう、巻き込まれていたのだ。 ひきこもりなんかには抗いようもない、運命の輪というやつに―― 久「ぷはー」タバコ まこ「ったく、ぬしのニコチン中毒は大学以来一貫しとるの」 久「まあねえ、この一服のために世界のすべてはあるって感じだから……」 久「おっと、こういういい加減なことばっか言う癖も、どうも治らないのよね――」 久「で、咲」 咲「は、はい」 久「ほんとのほんとに、知りたいのね?」 咲「……はい。京ちゃんから、去年年賀状が来たんですけど、そこには京ちゃんの住所が書いてあって、」 咲「こことは別の……」 まこ「別の県だった。しかしのう、確かな筋から聞いた情報なんじゃが、奴は現在、この近辺におるそうなんじゃ」 咲「住所が移動したん――ですよね?」 まこ「うむ。そして京太郎は――」 まこ「かなりの借金を抱えとるそうなんじゃ」 咲「……う、嘘です、京ちゃんが、そんな」 まこ「……」 久「……ちょうど今から行こうと思ってたところなんだけど、その途中で咲と会ったんだけどね――あなたも来る?」 咲「――え?」 久「彼の家」 咲「いえ……」 まこ「わしは事務所の留守番しとるか、仕方がない」 テクテク 久「探偵って色んな経験してるからこそこういう夜道が怖くなっちゃうのよねえ」 久「ま、咲は安心してて、もし暴漢が出ても、こう、私がしゅっ、ってさ」 咲「……」 久「……」 咲「京ちゃんが、借金なんて……」 咲「やっぱり、考えられませんよ」 久「おっ、急にいい顔つきになってきたじゃない、やっぱ恋は女を強くするわね」ニヤニヤ 咲「こっっっ、こここ恋とかじゃなくて、あのう……」 久「やっぱり咲って可愛いわよ」 咲「そ、そうですか……?」 久「そうよ-。……ん?」 テクテク ???「……はあ、投函しちゃったなあ」 久「(……お、面白くなってきたわ……)」ワクワク 久「……咲、止まって、ちょっと隠れましょう」ヒソヒソ 久「不審者よ」 咲「え!?」 久「しーっ」 咲「く、暗くてよく見えないんですけど、じゃああのポストの前、100mくらい先にいるのが……」 久「そ、いいからほら、隠れて」サササ テクテク 京太郎「……やれやれ」 京太郎「挙げ句の果てには、ひきこもり生活楽しいとか思ってるんだぜ――」 京太郎「どうしようもねえな」 久「(……っ、ダメダメ、こらえるのよ……)」 咲「(よ、よく見えないよお……もうちょっと)」サササ 京太郎「ほんっとごめんな、咲……」 京太郎「俺っていう幼馴染みを持っちまったばっかりに――」天を仰ぐ 久「ぶーっ」アッ 京太郎「!!?」 咲「きょ――」タチアガリ 京太郎「ひっ!!!!?ケツは勘弁してください!!!!!!」ダッシュ 久「追うわよ!!!!」ダッ 咲「……きょ、京ちゃん、だよね!!!?(あんまり信じたくない、けど……)」ダッ 京太郎「はっ、はっ」 京太郎「さ、さすがにここまでくりゃあ……」フリムキ 咲「……はあ、はあ」 京太郎「……え?」 咲「……」フリカブリ バチーン 京太郎「ってええええ……!!!!!!」ウズクマリ 咲「きょ、京ちゃんの、バカ!!!!!!!ひぐっ、」 京太郎「な、なんで、咲、(あ、やべ……)う、」ウルッ ウワーン 久「……お、面白すぎるんだけど……さすがに遠くから見守るわ……」サササ 京太郎「……落ち着いたか?ほれ、缶コーヒー」 咲「きょ、京ちゃんこそ落ち着いた?はい、缶コーヒー」 二人「あ、あれ、」 咲「……さっきさ、け、け……けとぅ……がどうとかって」 京太郎「……すまん、咲が思ってるようなことじゃないんだ、いや意味は合ってはいるんだけどさ」 京太郎「大学でさ、金なくて、俺――あるビデオ撮影を紹介されてさ、」 京太郎「で、……られそうになったんだけど」 咲「え?」 京太郎「……だから、……られそうになったんだけど、」 京太郎「なんかさ、ほんと、マジでその寸前で、俺めっちゃ怖くなって逃げ出したんだ」 京太郎「それ以来トラウマで――って、すまん、こんな話どうでもいいよな」 京太郎「俺も別に話すつもりじゃ、はは、ごめんな」 咲「べ、別に……私こそ、なんかごめん、」 咲「私京ちゃんがホントに……られちゃったのかと思って、体はホントに大事にしてよって思って、つい」 京太郎「(その言葉、知ってるんじゃねえか……)」 咲「て、ていうか京ちゃんなんでこっち来たの!?」 京太郎「……友人から借金があって、それはなんとか返したんだ」 京太郎「でもそしたらすっからかんになっちゃってさ、はは」 京太郎「県外のボロアパートがいいってのを聞いて来たんだけど――」 京太郎「……ぶはっ」 咲「な、何?」 京太郎「いや、お前ちょっとニキビ増えたよな、そんで泣き腫らした目でこっち見てくるからさ、すまん」 咲「……京ちゃんは変わらないよね、そういうとこ……」ユラッ 京太郎「え?ちょっと待て、なんで拳構えてるん――」 ボッコボッコ 京太郎「……うう」ボロッ 咲「ちょっとやりすぎたね、ごめんね」ニコッ 京太郎「いいいや別に全然っ(こえー……)」ニコッ 咲「あのねえ、私は――」 京太郎「ん?っていうか咲、今お前何やってるんだ?」 咲「え――あ、」 咲「……ひ、」 京太郎「ひ……ひで始まる職業なんてあったかな……」ヒ… 咲「ひ、ひき……」 京太郎「……」 咲「……ひきこもりカウンセラーやってるんだよ!!!!!!」ニコッ 翌日 咲「とんだ嘘ついちゃったよ……」 咲「うう、会いたくないなあ、でも会いたいなあ、」 咲「あ、こ、これは別にそういう感情じゃなくて、旧友と会えた嬉しさ?っていうかさ、」 久「よっ、何やってんのよ」 咲「あ、……」 久「鍵開けっぱなしだけど、今からどっか行こうとしてたの?」 咲「全然っ」フルフル 久「……須賀くんに会うの?」 咲「!!!!!?」 久「いや、その物凄くそわそわした感じとか、昨日の邂逅とか、考えてみたら当然でしょうに」 咲「……そうなんです、けど」 久「けどはやめい!!!!!」 咲「ひっ」 久「――あっははははははは!!!!!!」 咲「そ、そんなに笑わなくても……」 久「再会した幼馴染みがさ、両方引きこもりって、あははははは、はふう、ひー、おかし」 咲「きょ、京ちゃんはきっとやむにやまれぬ理由で借金こさえたんですう!!!!」 久「いやいやいや」 咲「そ、そう!!!私は京ちゃんを信じます!!!」スクッ トテテ… 久「あ、行っちゃった……」 公園 京太郎「……よ」 咲「……ん。座れば?」 京太郎「……おう」 咲「……」 京太郎「……」 ミーンミーンミーン 咲「……もうさ、25回目の夏なんだよ」 京太郎「……」 咲「……私達、こんなんでいいのかな」 京太郎「……」 咲「ねえ」 京太郎「……」 咲「京ちゃん」 京太郎「……すごくどうでもいいんだけどさ、」 京太郎「……お前さ、今、私達って言わなかった?」 咲「!!!!!!?」 京太郎「えっと、あー……もしかして、お前……」 咲「……違うよ」 京太郎「……」 咲「違うんだよ私引きこもりなんかじゃなくて、ほら、たとえばなに?全人類の不幸を一身に引き受けちゃった体質っていうか」 咲「違うんだよ、引きこもりとかじゃないんだよ」 咲「ほら、あるじゃん?やっぱこうなっちゃうのってさ、そういう意志っていうか運命の力っていうか、あのね、ほんとに、そういうんじゃ、」 京太郎「……ごめん」 ボフッ 咲「……私っ、ほんとにひきこもりカウンセラーで、えぐっ、」顔埋め 京太郎「……」ポンポン ――俺はどうしていいかわからなくて、そのまま咲の頭を軽く撫でた。 咲の髪の毛は柔らかくてなんかいい匂いがして、ほんとにこいつ引きこもりかよ、ってちょっと思って羨ましくなった。 咲「……ふんっ!!!」バッ 京太郎「お、おう?」 咲「元気が出ました」 京太郎「よかったよ」 咲「……あのねえ、私、引きこもってる間にけっこう小説読んだんだよ」 京太郎「ふっ、俺なんか家中図書館みたいなもんなんだぜ」 咲「……嘘だね」 京太郎「さすがだな」 咲「まあ、京ちゃんのことは昔っからだいたいわかるからねー」フフフ 京太郎「……」ドキ 咲「それでさ、ある小説に書いてあったんだけど」 咲「京ちゃん、私と契約、しない?」 京太郎「契約って……もしかして、『N○Kによう……」 咲「あーっ!!!!ダメ、ダメです言っちゃダメ!!!!!」 京太郎「」ビクッ 咲「きょ、京ちゃんが知ってるなんて……これじゃ意味ないじゃん」ハアハア 京太郎「……ま、契約の中身とか、趣旨はわかっちゃうな」 咲「……」 京太郎「っつーかそんなことしてもさ、俺たちってけっこう痛いだけじゃ、」 咲「じゃあどうするの!!!!?」 京太郎「……」 咲「このまま二人ともまた引きこもるの!!?京ちゃんだってほんとは社会に出たいんじゃないの?私だって、」 咲「……実は、別に社会に出たくは……ないんだよね」 京太郎「……実は俺もだ」 京太郎「あ!!!」 咲「ど、どうしたの、京ちゃん?」 京太郎「あのさ、二人で引きこもればいいんじゃね?」 咲「――え?」 京太郎「ほら、そしたら二人とも社会に出なくて済むし、引きこもりなのに人とコミュニケーションできるし!」 咲「いや、まず社会に出なくて済むってところから間違ってると思うよ……謎理論だよ」 咲「っていうか二人で引きこもるって……っ」顔真っ赤 京太郎「うん?………」顔真っ赤 二人「……どうしよっか……」 「それならいい物件があるわよ~」 咲・京太郎「!!!?」 テクテク 久「やっ」 京太郎「ど、どうもっす……あ、もしかして昨日咲と一緒にいた人って」 久「察しがよくて助かるわね-。麻雀部にいたときもそうだったわ」 京太郎「俺はそのおかげで散々パシることになりましたからね……」 咲「懐かしいね、全国優勝しちゃったし」 咲「……お姉ちゃんにも、会えたし。変わってなかったなあ」クスッ 久「――ま、今は二人とも、なぜかこうなってるんだけどね」 咲「……そ、それは突っ込まないでくださいぃ……」ウルッ 久「そうそう、さっきの話の続きなんだけどねえ……」 さらに翌日 二人「へー、ここが……」ポカーン 久「そ、あなたたちが二人で住むマンションの一室よ」 二人「!!!!?」 久「え、もう合意してるんじゃなかったの?」 咲「そ、それは……」 京太郎「まだ……っていうか部長が強引に連れてきたんでしょうが!!!!」 久「いやー、だって物凄くお似合いだと思うわよ?」 京太郎「今はそういう話をしてるんじゃなくてですね、」 咲「(お似合いお似合いお似合いお似合い)」カーッ まこ「見事に場が混乱しとるのう……」 まこ「(……まあ、これも依頼ってことは言わんほうがええのう)」 まこ「……」チラッ まこ「(実は、二部屋隣に、「原村」の表札がかかっとるとか……)」 まこ「(言わんほうが、ええんじゃろうのう)」タメイキ 夜 咲「ふう、けっこういいお値段だったねえ」 京太郎「まあ、引きこもりにはホント良心的だよな……でも、」 咲「でも?」 京太郎「……すまん、実は俺、あのときなんか裏があるんじゃないかって疑っちまってさ」 京太郎「だって、あまりにもいい話すぎるって思わないか?」 京太郎「いくら部長だからって、いや、部長だからこそ――」 ペチン 京太郎「――あ、いや、すまん、」 咲「京ちゃんのバカ!!!!」 トテテ… 京太郎「……はあ……今のは俺が悪かったな……」 京太郎「……っていうか、あれ?」 京太郎「ここって、俺と同じアパート……?」 ピンポーン インターホンに向かって 京太郎「もしもし、咲?あのさ、俺だけど、」 咲「!!!?きょ、京ちゃん!?なんで!?」 京太郎「ここ、俺の住んでるアパートの隣のアパートなんだよ」 京太郎「一瞬同じアパートかと思っちまった、はは」 咲「――っ!!!」 京太郎「なあ、咲、さっきはごめん。話を――」 咲「帰って!!!!」 京太郎「……いるぞ」 咲「帰ってよ」 京太郎「……いる」 咲「帰れ……」 京太郎「まだいるぞ~」 咲「帰ってよう……」 ガチャ 京太郎「っはは、お前言ってることとやってること全然違うじゃん」 咲「うっさい!!!!」ガスッ 咲「うっさいうっさいうっさいうっさいうっさい!!!!!」ガスガスガスガス 京太郎「いってえ、はは、やっぱ変わってねえ、お前切れるとすぐそうやって『うっさい』しか言わなくなんのな」 咲「うっさい……うっさい……京ちゃんなんかどっか行けえ……!!!」ポロポロ 京太郎「……ごめんな、ほんと、俺咲好きだわ」 咲「――へ?」ポロポロ 京太郎「……や、なんか、今までさ、ずっと言ってなかったなって思って」 咲「い、いや私だって好きだよ」 京太郎「………セックスしたい」 咲「………え?えーと」 咲「!!?」 京太郎「(……なんだろう、言った瞬間すげー恥ずかしくなったぞ……)」 京太郎「……あー、」 京太郎「……っていうのは冗談かな、あはは、はは、はははははははは」 咲「……」 グイッ 京太郎「うわ、ちょ、危な、」 バタン 京太郎「……はっ、はっ、」 気づいたら玄関の扉が閉まって、真っ暗な部屋の中で咲の顔が物凄く近くにあった。 咲「…………しよ」 そう言う咲はなんかものすごくエロかったし、なんかもうこれが現実かどうかもよくわからなくなっていたので、 俺は雰囲気に飲まれることにした。 そこから先はたぶんお互い夢中だったのだ。だからあんまり覚えていない。 チュンチュン 咲「……起きた?」 京太郎「……ああ」 咲「……せ、責任、取ってね」 京太郎「……お、おう」 京太郎「……なんかさ、部長、俺らを一緒に帰らせたのって案外これが目的だったりしてな」 咲「え?」 京太郎「部長、たぶん俺に会ったあと、俺の家の場所調べて把握したと思うんだけど」 京太郎「咲に隣のマンションだって教えなかったのは、たぶんドッキリだったんだよな」 京太郎「さすがにこうなることまでは予測してなかっただろうけど」 咲「た、たしかにね……」 久の事務所 久「くしゅんっ」 久「あら、誰かが成功の報告をしてくれてるみたいだわあ……」クスクス まこ「おぬしも悪よのー……」棒読み 京太郎「……っていうかさ、」 咲「うん?」 京太郎「俺たち、まだ仕事もないわけじゃん」 咲「うん」 京太郎「そんな状態で責任とかそういう話になるようなことしちゃってさ、」 咲「……ひ、」 京太郎「……」 咲「……ひきこもりカウンセラーだから!!!私!!!!なんとかなるから!!!」 京太郎「……ハローワーク、いこっか」 咲「……うん」 そのあと俺と咲はめでたくというか、策略通りというか、結局あのマンションに二人で住むことになった。 和「……よ、よくも咲さんを傷物に……殺す……須賀京太郎、殺します……」 そこでまた一波乱あるのだけれど、それはまた別の話だ。 優希は部長の話によると、遠いところへ旅に出ているらしい。 あいつらしいとは思う。元気でやっているといい。 さて、俺たち二人はといえば――今日もその日のバイトをしながら、元気にハローワークに通っている。 「職は――ありませんか」 カン!
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1339226168/ 麻雀部部室 咲「…」ペラッ 「すー…」 咲「…」ペラッ 「すー…」 咲「…」ペラッ 「すー…」 咲「…」 「すー…」 咲「…」チラッ 京太郎「すやすやすや…」 咲「…」 京太郎「う~ん…むにゃむにゃむにゃ…」 咲「…くすっ」 咲「…」スタスタ 京太郎「すー…」 咲「…」チラッ 京太郎「すー…」 咲「…」ジーッ 京太郎「すー…」 咲(かわいい寝顔…) 京太郎「すー…」 咲「…あはは。よく眠っちゃって」 京太郎「すー…」 咲「徹夜でゲームしてたんだって?」 京太郎「すー…」 咲「授業中からずっと眠そうだったもんね」 京太郎「すー…」 咲「部室来るなりベッド直行しちゃって」 京太郎「すー…」 咲「で、あっと言う間に爆睡」 京太郎「すー…」 咲「…おバカ京ちゃんめ。あとでノート見せてなんて言ってきても、簡単には見せてあげないんだから」 京太郎「すー…」 咲「…幸せそうな顔だ事。本当、呆れちゃうよ…」 京太郎「うう~ん…」モゾモゾ 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…えいっ。でこぴんっ」ペチッ 京太郎「うぐっ…?」ピクッ 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」ジーッ 京太郎「…すー……」 咲「…」 咲「…ふふふっ♪」 咲「でこぴんしても起きないんだ」 京太郎「すー…」 咲「じゃあ、これならどうかな~?」ギュッ 京太郎「うぐっ…」 咲「あはは。変な顔~」 京太郎「…すー」 咲「…ほっぺつねっても起きない…か」スッ 京太郎「すー…」 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…京ちゃん?」 京太郎「すー…」 咲「…おーい。京ちゃーん?」 京太郎「すー…」 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…京ちゃん朝ですよ~」 京太郎「すー…」 咲「…」 咲「…」ソワソワ 咲「…」キョロキョロ 咲「…」チラッ 京太郎「すー…」 咲(…い、今なら、キスしても、バレない…かな…) 京太郎「すー…」 咲「…」ゴクリ 咲「…」ジーッ 京太郎「すー…」 咲「…」 咲「…って、な、何考えてるの私はっ!」ブンブンブン 咲「そ、そんなの、ダメに決まってるじゃない…」 京太郎「すー…」 咲「…」チラッ 京太郎「すー…」 咲「…」ジーッ 京太郎「すー…」 咲「…っ!///」ボッ 咲「あうう…///」カアアアッ 京太郎「すー…」 咲「…」ウロウロウロ 京太郎「うーん…」 咲「…」ウロウロウロ 京太郎「さ、さき…」ポツリ 咲「はうっ!!?」ビクッ! 京太郎「……さきぃ…」 咲「お、起きちゃった!?京ちゃんっ!」 京太郎「う…。……さきぃ…俺…」 咲(ね、寝言…?) 京太郎「…俺…は…俺は…」ボソボソ 咲(やっぱり寝言だ。けど、さっき、確かに『咲』って言ったよね?) 京太郎「…俺は……お前を…」ムニャムニャ 咲「えっ」 咲(『咲、俺はお前を…!?』) 京太郎「うう~ん…」 咲(ま、まさか…!) 咲(咲、俺はお前を愛してる…とか!?) 咲「咲、俺はお前を!?つ、次は!?続きはなんなの!?京ちゃん!」 京太郎「…さきぃ…俺…」ムニャムニャ 咲「が、頑張って!京ちゃん!」 京太郎「…」 京太郎「」ムクッ 咲「!!」 京太郎「剣崎ぃ!!俺はお前を、ムッコロス!!」 咲「…」 咲「…は?」 京太郎「…仮面ライダーブレイドのゲーム面白いわ」コテッ 咲「え…」 京太郎「くー…くー…くー…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…死にたい」ヘナヘナヘナ 京太郎「すー…」 咲「…はあ」 咲「…読書に戻ろ」クスン 咲「…」ペラッ 京太郎「すー…」 咲「…」ペラッ 京太郎「すー…」 咲「…はあ」 咲(まさか、ゲームの寝言だとは思わなかったよ…) 咲(咲…咲…って…言ってると思ったのに。濁音どこから出てきたのさバカ京ちゃん) 咲(流石の私も挫けそうだよ。…特に最後の) 咲「はぁ…」 京太郎「うーん…のどか…」 咲(はいはい。どうせこれもまたフェイントなんでしょう) 咲(和ちゃんの名前出して私焦らせといて、また仮面ライダーの台詞とかなんでしょー。どうせ) 京太郎「和、可愛い愛してる…」ムニャムニャ 咲「…」 咲「」ピキッ 京太郎「すやすや…」 咲「…あ、あはは…そうだよね。やっぱり、和ちゃんだよね。可愛いし、優しいもんね…私なんか、相手にならないよね…」ズーン 咲「…しょうがないよ。和ちゃんなら。あはは…」 咲「あはははは…」 咲「くすん」 京太郎「美穂子愛してる」 咲「えっ」 京太郎「福路美穂子ちゃんの美乳揉みたい」 咲「えっ」 京太郎「ステルスモモのおっぱい舐めたい」 咲「えっ」 京太郎「沢村智紀ちゃん意外と巨乳」 咲「えっ」 京太郎「絹恵ちゃんが可愛すぎてつらい」 咲「誰」 京太郎「永水女子お姫様と霞さんヤバい。特に霞さん」 咲「永水女子?あの、第3シードの鹿児島の高校?確かに先鋒と大将だし強そうだけど、いきなりどうしたの…」 京太郎「鷺森灼ちゃんは死ね 」 咲「なんだただのおっぱい星人か」 咲「…」ペタペタ 咲「…」 咲「…いいもん。私はまだ成長期なだけだもん」 咲「…遺伝?私はお姉ちゃんとは違うもん。ちゃんと大きくなるもん」 咲「…大きく…なるもん…」 咲「…おっぱいって、どうやったら大きくなるのかな」ボソッ 咲「ネットで調べてみよう」ポチポチ 咲「…えっと、メモ(咲の為にのどっちが作ってくれました)によれば…」 咲「この青いマークのところでマウスのボタンの左側をいっぱい押せば良いんだよね?」カチカチカチカチッ 咲「なんか開いた」 咲「えっと、この検索ボタンの横に矢印を合わせて、ボタン押して…」 咲「お・っ・ぱ・い・を・お・お・き・く・す・る・ほ・う・ほ・う…っと」 咲「あっ。出た出た。いっぱいあるなあ」 咲「それじゃあ、適当なページを選んで…っと」 咲「…ふむふむ」 咲「へー。牛乳って、あんまり意味ないんだー」カチカチ 咲「レバーがいいの?うーん…ちょっと苦手かも…」カチカチ 咲「あっ。あったあった、定番。おっぱい揉んだら大きくなるってやつ」カチカチ 咲「えー?これも嘘なの~?」 咲「あ、補足がある…」 咲「えーっと…なになに?」 咲「乳房を揉むという行為自身に豊胸効果があると云う科学的根拠はありませんが…」 咲「…その行為によって、精神及び肉体的な性的刺激を受動…」 咲「所謂エッチな気分やその感覚を定期的に得続けた事で、豊胸効果を実感した人間が居ると云う報告は多数確認されています…」 咲「…つまり、エッチな気分になる事の多い人は、巨乳になり易い…」 咲「…なんか胡散臭いなぁ。ここ」 咲「…もう止めよ」プチッ←電源直押し 咲「はぁ~。あんまり参考にならなかったなぁ…」 咲「…今度、さり気なく和ちゃんに聞いてみようかな?」 咲「…」 咲「…ねえ和ちゃんって、1日の中で、どれくらいの時間エッチな気分?」 咲「…ストレート過ぎて失礼だよね、これ」 咲「レバニラ好き?」 咲「…わけわかんないよね」 咲「…どうやって聞こうかな」 咲「…はぁ」 京太郎「うーん…」ゴロン 咲「わっ」 咲「…なんだ、寝返り打っただけか」 京太郎「すー…すー…」 咲「あらら。布団がめくれて、手がベッドの外にはみ出ちゃってるよ。京ちゃん」 京太郎「うーん…」 咲「…もー。仕方ないなぁ。このままじゃ風邪曳いちゃう」スクッ 咲「仕方ないから、布団かけ直してあげる」スタスタ 咲「…」 京太郎「すやすや…」 咲「…」 咲(て、手握っちゃうけど、仕方ないよね?) 咲(手を掴まないと、ベッドに引き上げられないもんね…?) 咲「よいしょ」ギュッ 咲「…」 咲(…あったかい) 咲「…それに」 咲(大きいな…京ちゃんの手) 咲「…」 咲「…私の手と比べてみよ」スッ 咲「うわ。凄い。」 咲「私の手のひらよりふたまわりくらい大きいや」ペタペタ 咲「厚さも結構あるし、思ってたより硬い。私と大違い」ニギニギ 咲「…指も、長い」 咲「細くて、すらっとして、綺麗な指…」サスサス 咲「ちょっと羨ましいな…」 咲「…」ジーッ 咲「…ひゃっ!?」ゾクゾクッ 咲「…?…?何今の…」 咲「…」 咲「…あれっ?」 咲「…」ジーッ 京太郎「すやすや…」 咲「…」 咲「なんか…」 咲「なんか、変なの…」 咲(…別に食欲的な意味は無いけど) 咲(すっごく…) 咲(…スッゴく、京ちゃんの指が美味しそうに見えるよ…?)ゴクリ 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…京ちゃーん?」ボソッ 京太郎「すー…」 咲「…」 京太郎「すー…」 咲「…あ。和ちゃんが後ろでビキニに生着替えしてる」 京太郎「すー…」 咲「…うん。完全に寝てる」 咲「…」 咲(…ちょっとだけなら…バレない…よね…?) 咲「…かぷ」 咲「ちゅぱっ」 咲(…しょっぱい) 咲「ちゅぱ…」 咲(…汗の味がする) 咲「ちゅぴ…」 咲(…京ちゃんの…汗の味…) 咲「ちゅぷ…」 咲(………おいしい、な…) 咲「はむっ。ちゅぴ…くちゅっ…ちゅばっ…」 咲「あふっ」 咲「ちゅばっ…ちゅばっ…くにゅっ…れろっ…」 咲「…ほわ。はふぅ…」 咲「…はっ!」 咲「あ、あわわわわ!?」 咲「わ、私ったら、何やってたの!?」 咲「きょ、京ちゃんの指しゃぶって、うっとりしちゃって…」 咲「これじゃあまるっきり変態じゃない!」 咲「もう止め止め!私変態じゃないもん!」 咲「京ちゃんの手をベッドに戻して…っと!」トサッ 咲「お布団かけ直してっと!」ファサッ 咲「も、もう私は読書に戻りまひゅ!」 咲「…」ペラッ 京太郎「すー…」 咲「…」ペラッ 京太郎「すー…」 咲「…」チラッ 京太郎「すー…」 咲「っ!///」ボッ 咲「~~~~っ!!///」ペラペラペラペラペラペラ 京太郎「むにゃ…」 咲「っ!っ!!~~~っ!!!」ドタバタバタバタ 京太郎「ううん…」ゴロン トサッ←布団が落ちる音 咲(わああああああーああああーーーーっ!!!!!)←叫びたいけど叫べない心の声 咲(もうっ!もうっ!!なにやってるのさ、バカ京ちゃん!) 咲(せっかく直してあげたのに、すぐ布団跳ね退けて!) 咲(っ!バカッ!おバカッ!!) 咲(バカバカバカバカバカバカバカ!もう知らないんだからっ!) 咲(知らないんだから!知らないんだから!ぜ~ったい!もうかけ直してなんか、あげないんだからね!!) 咲(ふんだっ!) 咲「…」 咲「…」 咲「…」チラッ 咲「…」 咲「」ウズッ 咲「…」ソワソワソワ 咲(…け、けどやっぱり、風邪曳いたらかわいそうだし、あと一回だけかけ直してあげようかな…)スクッ 咲「…よい、しょ」ファサッ 京太郎「…くぅ…くぅ…」 咲「…」 咲「っ!」ゾクゾクッ 咲(ひっ!?ま、またこの感覚っ!?) 咲「…」ソーッ 咲「…」チラッ 京太郎「すー…すー…」 咲「…」 咲「…」 咲(も…) 咲(もう一回だけ、京ちゃんの手、触ってもいい…?)スッ 咲「…」ギュッ 咲(…なんだか、安心する…)ギューッ 咲「…えへへへへ」 咲「…」チラッ 咲(…やっぱり指、おいしそう…) 咲「…」 咲「ぺろっ…」 咲「…んっ」 咲「…ちゅぷっ」 咲「…ふあっ!?」ビクッ 咲「…はむっ!」 咲「んふぅっ!はむっ!ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ…」 咲(や…やだっ!) 咲「じゅぶっ!ぴちゃぴちゃぴちゃ…れろっ…」 咲(と、止まんないよぉっ!) 咲「~っ!?」ゾクゾクッ 咲(ま、またっ!?) 咲「ひっ…!」 咲(こ、声が出ちゃ…っ!) 咲「…」 咲「…え?」 咲(…なんか、お股に、違和感が…?)スッ 咲「」ヌルッ 咲(…何これ…凄い量の…愛液…?) 咲「」ネバッ 咲(…しかも、いつもと全然違う…普段はサラサラなのに、これはネバネバして、糸まで引いてる…) 咲(と、取り敢えず、拭かなきゃ…おトイレに…) 京太郎「むにゃ…」 咲「…」チラッ 咲(けど、今離れたら…なんとなくだけど、帰ってきたら、京ちゃんが起きちゃってる気がする…) 咲(…それは…すっごく、勿体ない…かも…) 咲「…」 咲「…ちゅばっ」 咲(…もうちょっと) 咲「はぁ…んくっ…ちゅぴっ…」 咲(あともうちょっとだけ…) 咲「ちゅっ…ちゅぴっ…れろっ…」 咲「」ダラーッ 咲(あっ…) 咲「ぺろっ…ぺろっ…はむっ…」 咲(よだれ…凄いいっぱい出てきた…) 咲「ぶじゅっ…ずちゅっ…じゅるるる…」 咲(これも、止まんない…お股からも、愛液…止まんない…) 咲(どうしよう…) 咲「」スッ 咲「…」ベトベト 咲(…指に取ってみたけど…よだれも、なんかいつもよりネバネバしてる…) 咲(…ネバネバのよだれ…) 咲(もし…) 咲(もしも…) 咲(…このよだれ…) 咲(…) 咲(……ち、乳首に塗ってみたら…) 咲(キモチいい…………かも) 咲「…」 咲「…」スッ 咲「ん…」モゾモゾ 咲(…制服は流石に脱げないから、ブラだけ外して…っと)モゾモゾ 咲(…ん。制服ごしじゃ、外すの難しいなぁ。しょうがない、ズラすだけにしとこ)モゾモゾ 咲(…出来た) 咲(うわっ!もうすっかり乳首立っちゃってる!…やっぱり変態だなぁ。私)ハァ 咲(…あと、やっぱり私、おっぱいちっちゃい…)シュン 咲(…っ!け、けどけど!こうしてエッチな気分にいっぱいなったら、おっきくなるかもしれないんだよね!?) 咲(…京ちゃん) 咲(…協力して。京ちゃん) 咲「」スッ 咲「」ヌリヌリ 咲(…こうして、よだれでベトベトにした京ちゃんの手を…) 咲(私の、胸元に…)クイッ 咲「あっ…」 咲「~~っ!!」 咲(きゃあああああ!?) 咲(駄目ッ!これ!!声っ!出ちゃうっ!!) 咲「~っ!!」 咲(な、何か、口にくわえるもの…っ!)キョロキョロ 咲(駄目っ!何も見当たらな…あっ!!) 咲「がぶっ!」 咲「~~~~~~っ!!!!!!」 咲「…」 咲「」ホッ 咲(…良かった…間一髪) 咲(…あれ、でも京ちゃんの寝てる、シーツくわえるつもりだったのに…) 咲(…目測間違えて、枕に噛みついちゃった…) コリッ 咲「んむっ!」ビクッ 咲(ふあああ!?) 咲(いやっ!お、思わず背を丸めたから、無理な体勢になっちゃって…) 咲(乳首に…制服が擦れてるっ!) モニュッ 咲「くふっ!」ピクッ 咲(それに、京ちゃんの手が、私のおっぱいに押し付けられて…!) 咲「」チラッ 京太郎「うーん…」 咲(なにより、枕に噛み付いてるから、京ちゃんの顔が近いよぉおおお!!) 咲(と、とにかく、早く退けないと…) コリッ 咲(ひぐっ!?)ビクッ 咲「~~~っ!!」モゾッ モニュッ 咲(はううううっ!?) 咲「っ!んふぅ!ふぅぅ…!!」ヒクッ コリッ 咲「ふぅ~~~っ!!」ビクビクッ 咲(ひいいいいい!?駄目だ!今、枕から口離したら、絶対悲鳴が出ちゃう!) 京太郎「ん…」コロン 京太郎「すー…」 咲(いやあああ!京ちゃん、首だけ私の方に向けて寝息立てないで!!) 咲(首筋に息吹きかかって、くすぐったいよぉおおおおお!) 咲「~~~~!!!!」ビクンビクン 京太郎「ううん…はぁ…」 咲「ふうんっ!?」ビクッ 咲(あうっ!だからくすぐったいってばっ!もうやめ…) 京太郎「ん…。咲…」 咲「…?」 京太郎「…お前、そんな可愛かったっけ?」ボソッ 咲(え…) 京太郎「むにゃむにゃ…」 咲「…」 京太郎「くー…くー…」 咲「…」 咲(…私の胸に深く突き刺さるその声は…) 咲(鳴り止まぬ歓声に似ている…) 咲「…」 咲(…あ。マズい。理性)プチッ 京太郎「ん…」ピクッ 京太郎(あ…やべ…大分眠ってた…) モゾモゾ… 京太郎(んあ…なんだ~、この音…) 徹夜明けからの深い眠りの中、耳元で響くモゾモゾと云う物音に、 須賀京太郎はその意識を徐々に覚醒させつつあった 京太郎(また優希あたりが悪戯しこんでんのか?) 記憶上の経験から、似たような事例をぼんやりと思い出す 確か、前ベッドで爆睡した時は、優希の奴が眠気覚ましにとゴムパッチンをかましてくれたのだ それも、わざわざ割り箸とかで補強した、カタパルトみたいなごっつい発射台から …最悪の目覚めだった 京太郎(…っ!冗談じゃねえ!あんなの、もう二度とごめんだっつーの!) 焦りと共に、急激に身体が起床モードへと移行する 若い身体は、生命の危機に対し非常に敏感で、頼もしさすら感じられた こんな状況では、情けなさの方が上に立つが …とにかく、まずは何はともあれ、目を開けよう。そう思い立ち、実行する そこには、優希の悪知恵の粋を凝らした凶悪兵器より、よっぽどによっぽどな現実が鎮座ましましていらっしゃった 京太郎「…咲?」 咲「ひっ!?」 …なんでそこまでしておいて、声かけられただけで悲鳴あげるかなー 悲鳴をあげる…って云うか、なんか取り敢えずリアクションしなくてはいけないのは、こっちだろうよ… そんな事を頭に思い浮かべる 妙に冷静なのは、目覚めたばかりでまだ頭に血が巡ってないからに違いない だってほら、その証拠に、今、凄い勢いで頭とか顔に血が昇ってきてるし 京太郎「…って、さ、さささ、咲!?お、お前!な、何してんだよ、咲、お前!!」 自分でも何言ってるかわからなかった 取り敢えずリアクションには成功したと思う 咲「えっ!?あのっ!えっ…そのっ…」モジモジ よく見ると、咲自身、なんか見た目に違和感がある …あ。胸元がちょっとはだけてるのか タイが緩んでて、インナーシャツがずり下がり、ブラチラしている そのブラもなんかズレてるし 京太郎「なんでお前が動揺してんだよ!」 咲「いや…その…」 正直、眼福ものだった。確かに咲は非常に貧しい娘さんだが、決して不細工ではない 臆病で、どこか小動物的な外見は、見る者の保護欲を掻き立てる様でもある 一時の気の迷いで、可愛いなーと思ってしまった事も、一度や二度や三度や十度では無い 京太郎(…って、違うっ!今は、そこじゃない!論点は…最もツッコまなきゃなんねー部分は、そこじゃねぇ!) 京太郎「い、いや!取り敢えず、それはいい!それには答えなくていい!まず、こっちに答えろ!」 咲「え…あ、うん…」 なので、ツッコむ事にする …正直、これ聞くのちょっと…かなり怖いなー… 京太郎「…なんで俺、裸でベッドに括り付けられてんの?」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…えへっ」 京太郎「『…えへっ』…っじゃねぇえええ!!!」 咲「…」 京太郎「…咲?」 ぞわり 妖しい熱を帯びた視線と瞳が合い、背筋に冷たいものが走る ねっとりとした視線は、京太郎の目をしばらく見つめた後、ゆっくりと視線を逸らし、 今度は剥き出しの京太郎の肢体を舐めるように見つめていく ほう…と、うっとりとした溜め息を一つ吐き出し、己に酔うたような言い回しで一言、告げる 咲「京ちゃんが、悪いんだよ…」 訳が分からない 京太郎「おい、咲…」 咲「なーに?京ちゃん」 ゆっくりと…京太郎に見せ付けるように右手をあげてゆく咲 手のひらが肩あたりまで持ち上がったあたりで、一旦停める そして今度は、柔らかく、優しく、そしていやらしい手つきで、こちら側へ伸ばしてくる 背伸び臭さと云うか、似合わなさも感じさせられるぎこちない動作に、 最近読んだ小説か何かに毒された節もあるのだろうとも若干思うが、それでもこの状況では、どうしても… 京太郎「止めろ…」 咲「やーだよっ」 咲が あのちんちくりんの幼なじみの咲が 小動物みたいな咲が 弱虫で、臆病で、運動音痴で、ドジで、鈍臭くて…それでいて大切で大切で堪らない少女の筈の咲が 京太郎「…怒るぞ」 咲「…」 咲「くすっ」 咲「…怒れば?」 挑発的な言葉と共に伸びた手のひらが京太郎の右肩に触れ、左脇腹へ向かう対角線上をゆっくりとなぞってゆく 幼子にも劣らずぷにぷにと柔らかい手のひらは、水気をたっぷりと含んだ、 熟した桃の果実の様な肌触りで、それでいて肌に暖かく吸い付いて離さない 咲の手が肌を滑る度…鳥肌が立つ 京太郎(怖い…?) 京太郎(わかんねぇ…さっぱり訳がわかんねぇよ。咲…) 心の中で、頭を抱える京太郎 頭の中を疑問の嵐が吹き荒れる …だが、分からない尽くしの中に、分かる事だっていくつもある 一つ 咲は今、開き直っていると云う事 二つ 取り敢えず、なんかヤバいと云う事 三つ 今自分が、咲を怖いと感じていると云う事 そして最後に 咲が、かつて無いほど『女』に見えてしまっていると云う事 咲「…京ちゃん…大好き…だよ…」 柔らかい少女の手が固く強張った少年の身体を滑る度、二人の汗を纏い、じっとりと濡れ、そして遂に左脇腹に到着した 咲「ふふ。そんなに強張っちゃって…。怖いの…?京ちゃん…」 怯えた様子の京太郎に、愉悦を感じながら、告げる 咲「普段、ちんちくりんってバカにしてる私が」 精一杯に見下した声をつくり、告げる 咲「弱虫な、私が」 普段からかわれる意趣返しの気持ちも込め、告げる 咲「鈍臭い、私が」 普段なら、決してやれない事を、言えない言葉を、手探りに探しながら、告げる 咲「怖いんだ…私が」 咲「そりゃそうだよね?だって京ちゃん、今私に文字通り手も足も出ないんだもん」 咲「何されても…何も出来ないんだもん…。ね?」 左脇腹に置いた手に少しだけ力を込める 京太郎の身体が、更に強張る 京太郎「咲。おい、お前、何を…」 恐怖を必死に覆い隠そうとしている声 隠し切れてないけど 咲(ふふふ。可愛いなぁ) 今のところ、全て計画通り。嗜虐心を満たそうと、必要以上にわざとらしく振る舞っているが、面白いように怖がってくれている 普段、絶対見れない表情なので、自分しか知らない京太郎を一人占めしてる様な気分もして、心がホカホカする 咲(それに何より、このシチュエーションは…) 咲「ふふ。あ~むっ!」カプッ 京太郎「ひっ!?」 胸板に、おもむろに噛み付く 甘い噛み方だが、後くらいは残るくらいの強さで 咲「ちゅ~っ…じゅっ…じゅじゅじゅじゅっ!ぷちゅっ!」 唇を押し付け、舌でチロチロと皮膚を味わい、飲み込むように、吸引する 小説に登場する、悪女になった気分 普段の自分と全く違う自分に、酔う 京太郎「あ…ぐぅ…」 咲「ふふっ。どうしたの?なんか、切なそうな声が聞こえるんですけど…」 京太郎「ば、馬鹿、お前…こんな場所でこんな事してたら…」 まだ何か言っている 胸板から口を離してみると、案の定真っ赤な噛み跡が付いていた 征服感に満足し、薄く微笑む 咲「ええ~?聞こえないよぉ」クスクス 耳元に顔を近付け、一言 咲「…そんなにちっちゃい声で話すんなら…これくらい近くで話してくれないと、ね?」 咲「…かぷっ」 耳たぶを口に含む 京太郎「うおわぁ!?」 咲が、耳元で囁いてくる シロップの様に甘く、涼風の様に心地良い声 これだけやっておいてまだ緊張でもしてるのか、普段より少しだけ呂律が怪しく、舌っ足らずになっている 得意気な感情を乗せた子供っぽい声が、優越感を込めた声が、薄い唇から発せられて京太郎の鼓膜を震わせる …くすぐったい そう思った瞬間 今度は振動だけでなく、耳たぶを直接にかじられた 今度鼓膜に伝わる音は、じゅぶじゅぶと言う、液体が気体にかき混ぜられる音 京太郎(えっ?) 液体? 疑問に思ったのも束の間、その謎はすぐに解消した 咲の口元から溢れ出した唾が、京太郎の耳を浸してゆく チロッ 粘性を帯びた唾が、まるでローションのように滑らかに耳を濡らしてゆく その中で、その液体を万遍なく肌に届ける為の道具は、舌だ 小さく、細く、熱く、ぬるぬるとした咲の舌が、耳の形をなぞりながら這い回っている 京太郎「ふわ…」 咲「…んふっ♪」 思わず洩れた声に、嬉しそうに鼻を鳴らす咲 その鈴のような声がまた、ころころと濡れた鼓膜を震わせる その繰り返し じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ…と蹂躙は続く じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ… 次第に、京太郎の身体から、力が抜け始める。抵抗する力が奪われていく じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ… じゅぶじゅぶ…ころころ…じゅぶじゅぶ…ころころ… 咲「…ふうっ」 一息つき、顔をあげる 京太郎の顔を見れば、そこには力の抜けた、弱々しい瞳があった 再び征服欲が満たされるのを感じる 咲(次は…何しようかな…) 一旦曲げていた顔を上げ、京太郎の全身を見回す 麻雀以外では優柔不断な咲だが、今回はすぐに決められた 咲「…あはっ♪」 そこに、先ほどまでは無かったモノが、出来ていた 『ソレ』を、食べよう 咲「いただきま~すっ♪」 咲「かぷっ!」 …ぷっくりと膨らんだ、乳首 京太郎「はうっ!」 咲「じゅる…じゅる…」 まず、口から溢れるままに任せ、唾液を京太郎の胸に吐き出してゆく 咲「うふっ」ヌルッ 京太郎「くううっ…!」 次に、一旦顔を上げ、右手でそれを伸ばす 咲「んふふふっ」スリスリスリ 京太郎「はあっ!」 京太郎の胸部を全て己の唾液で濡らし終えたのを確認し、嬉しそうに頷く 咲「…うんっ!」 咲「…はーむっ♪」 最後に、もう一度乳首に吸い尽き、片腕でもう一方の乳首を抓み、クリクリと弄る 乳首を弄るのはお手の物だ。いつも目の前の人を思って、弄っていたから 咲「ちゅばちゅぱあむあむ」 吸って、舐って、舐めて、噛む 同時に片手は、クリクリと、挟んだ乳首をこすり合わせ続ける 京太郎「~~~っ!!!」 快楽に悶えながらも、なんとか声を押し殺す京太郎 咲「…」 再び顔を上げ、話しかける 咲「ん~?…へー。京ちゃん、面白いね。京ちゃんの癖に耐えるんだ。これに」 咲「生意気」 無慈悲に告げ、再び乳首に食い付く 咲「じゅ~っ!!じゅっ!じゅじゅじゅじゅ~っ!!」 京太郎「っ!はああああっ!?」 全力で吸引する。同時に、舌先でこねくり回す 歯で削り、硬くした舌で跳ね、狂ったように舐めまわす 京太郎「あああああっ!!!?」 咲「あはははは!京ちゃん、その悲鳴かわいいっ!女の子みたいだよ!」 その裏返った叫び声に興奮する咲 興奮のあまり、勢いづいて、思わずベッドに飛び乗り、京太郎の腹に跨ってしまう 股の下に腹筋の硬い感触が当たり、キモチいい さっきから濡れに濡れた下着は、もう使い物にならないかもしれない ところで ベッドに括り付けられている京太郎だが、一体、どのようにして括り付けられているのだろうか? 両手首は、がっちりと拘束されている 先が輪になった荷ヒモでフレームに括られ、全く動かせないと言っても良い 足首も同様だ だが、それだけだ 他には、特に拘束らしい拘束もしていない そして、咲は一つミスを犯した 拘束の作業の途中で京太郎に気付かれるのを恐れ、また京太郎の身体を気遣って、それらをきつく縛る事をしなかった しかも、結び方はチョウチョ結び 咲が京太郎の腹に飛び乗ったとほぼ同時、京太郎の腕の拘束は、あっさりと外れた 咲「ふふふ…ねえ?京ちゃん。今の気分、改めて教えてくれる?」 咲「部室のベッドの上で裸で括り付けられて」 咲「私に好き勝手弄くられて、玩具にされて」 咲「女の子みたいな悲鳴あげさせられて」 咲「それでも誰も来てくれない」 咲「私は、まだまだ京ちゃんの事、許してあげる気は無い」 咲「男の子として、これ以上つらくて、情けなくて、悲しいことはないよね?」 咲「…ねえ。どんな気分?」 咲「必死に考えて、私のご機嫌取れるような回答、聞かせてよ」 咲「そしたら、ちょっとくらい手加減してあげる事も、出来るかもしれないよ?」 咲「…ふふふ。けど、逆に私の機嫌を損ねるような返事したら…わかるよね?」 京太郎「…咲」 咲「んふ。…な~に?京ちゃん」 京太郎「…よいしょ…っと」スッ 咲「…えっ?」 気の抜ける掛け声と ともに、手枷を外す その瞬間、京太郎は確かに見た 目の前の魔王モードのちんちくりんが、一瞬文学少女モードのちんちくりんに移行したのを 京太郎「…ふー。やっと外れた…最後なんかすっげえあっさり外れたけど」 咲「あわわわわ?」オロオロ 慌てるちんちくりん 咲「…ハッ!」 気付くちんちくりん 咲「ふ、ふんだ!手枷が外れて、安心しちゃったの?残念でした、京ちゃん。一足遅かったね。だから京ちゃんは甘いんだよ」 取り繕うちんちくりん 京太郎「…あん?何があめーってんだよ。言ってみろおい」 取り敢えず、目の前の魔王様のご機嫌を損ねないよう、精一杯丁寧に尋ねて差し上げる 咲「ふふっ。今の私達の体勢、分からないかなぁ。確認してみるといいよ」 京太郎「…はあ」 勝ち誇り、告げるちんちくりん 何故 咲「これ、格闘技でいうマウントポジションってやつだよね?」 京太郎「…はあ」 咲「聞いたことあるよ。上に居る人間が絶対的に有利な、究極のポジション…」 咲「正直、この体勢になっちゃえば、もう今更手枷なんか必要無いもんね」 咲「京ちゃんは、すでに私に身体の動きを完全に支配されちゃっているんだよ」 にやり これから弱者をいたろうと言わんばかりの残酷な笑顔で告げる魔王様 京太郎「ああ。なるほど」 京太郎(そりゃ、このちんちくりんが、喧嘩なんてした事有る訳ねーよな) 正直、今までされていた事を全部水に流してやっても良いかなーと思うくらい、和んだ 流さないけど 咲「むっ。まだどこか余裕がある?」 咲「…いいよ。その余裕、ゆっくりと奪ってあげる」 再び咲の威圧感が増す 麻雀をしてる咲がたまに纏う、恐ろしい何か 今はまるで、地区大会オーラス並の圧力だ 鳥肌が立ち、背筋が凍り付きそうな感覚 京太郎(なるほど…こりゃ怖い) が、 京太郎(別に肉体的戦闘力上がる訳でも、喧嘩の知識が増える訳でもないしな~) つまりそういう事です 京太郎「ほい」グイッ 咲「きゃああっ!?」 片手を伸ばし肩を掴んで軽く引き寄せてやると、あっけなく無敵の魔王式マウントポジョン()は崩れ去った 京太郎(弱ッ!?) 因みにお姉ちゃんも弱いです 咲「いたたた!京ちゃん!肩痛い!」 京太郎「あ、すまん。強く握り過ぎた」スッ 咲「ふー…」 京太郎「…」ギュッ 咲「…京ちゃん?」 京太郎「…」ギューッ 咲「あの…肩、離してくれないと、近いんですけど…」 今は、京太郎に覆い被さった咲を、京太郎が抱きしめたような格好である 咲「…顔、近いんですけど…」 京太郎「…」ギューッ 咲「…あの…」 京太郎「」ギューッ 咲「は、恥ずかしいん…ですけど…///」モジモジ さあ、反撃だ 京太郎「咲」 咲「はっ!はいっ!!」ビクッ 京太郎「長年俺と付き合いのあるお前ならよーく分かってると思うけど」 咲「う、うん…」 京太郎「俺は今、ひじょ~に、怒ってる」ギュッ 咲「ひゅっ!?」 ちょっと腕に力を込めてやると、苦しそうに息を詰まらせる咲 京太郎(えー…この程度の力も入れちゃ駄目か…) 今のは、怒ってるという意思表示と、どこまで力を入れても大丈夫かの確認 京太郎「咲さぁ…お前、さっき俺が今どんな気持ちか、知りたいっつってたよな?」 咲「え、えっと、えっと…」オドオド 魔王様、小動物の様に震えるの図 京太郎「俺さ、すっげえ悲しかった」 咲「えっ…」 申し訳程度に出ていた魔王オーラ、完全消失。これより通常(文学少女)モードに移行します 京太郎「咲が、こんな変態みたいな事するなんて思った事も無かったから…」 咲「」パクパクパク 文学少女モード、機能停止。これより、強制的に魔王モード再起動します。ただしオーラは出ない 京太郎「けど、ちょっと嬉しいっても思っちまった。何だかんだ咲が俺の事男として好いてくれてるってのは嫌でも分かったし」 京太郎「それに、咲がすげーエロくてかわいかったから…無理やりされるのも、実は興奮してしょうがなかったし…」 文学少女モード再起動します。魔王モード、機能停止し…おい、停止しろ早く。何?嫌だ? 上等だコラ、前から気に入らなかったんだよテメエ。そろそろ蹴り付けようや、おう、この野郎(文学少女モードさんの御言葉) 咲「え…?そ、それって…」 京太郎「うん…」 京太郎「…なんか、すっげー変なシチュエーションで、あれなんだけどさ」 京太郎「…俺も、その、咲の事嫌いじゃないって言うか…」 京太郎「…嫌いになれないって言うか…」 京太郎「むしろ好きって言うか…」 京太郎「…我慢なんねぇ」グイッ 咲「ひゃ…」 京太郎「ちゅっ!」グイッ 咲「…っ!」カチッ 唐突に咲の顔を引き寄せる京太郎 その唇に自らの唇をぶつける あまりに勢いよく引き寄せられた為、二人のファーストキスは、歯と歯が盛大にぶつかり合う音の響く、格好の悪いものになった だが、今の二人にそんな事を気にしている余裕は無い ファーストキスの癖に、お互い、示し合わせたようにスムーズにディープキスへと移行する 京太郎「んむっ!」 咲「はむっ!」 京太郎「くちゅっ…ぐちゅっ…ぶじゅ…」 咲「んっ…ふぁ…はふ…じゅぶっ…」 舌を絡ませ合い、唾を送り合い、受け取り合い、お互い貪る様に相手の口内に侵入し合う 咲「ふぅんっ!?」 京太郎「じゅっ!」 咲「んふっ…んちゅっ!」 京太郎「じゅるるる…」 咲「ふぁっ!?」 京太郎「ちゅぷっ…」 咲「くふぅんっ!?くはっ…」 咲「はっ!はっ!はっ!はっ!」 次第に咲の嬌声が増えてゆく。京太郎の責めが優勢になってゆく 麻雀しか取り柄の無い、耳年増なだけで鈍臭い文学少女に、キスの技術など有る訳が無いのだ 咲「うむぅっ!」 京太郎「じゅぱっ…くちゅくちゅくちゅ…」 咲「ぎぎぎ…」ググググ… 性的快感が限界に達し、京太郎のキスから逃れようと顔を背けようとする咲 京太郎「じゅぷ…」 咲「ふぁあああぁぁ!?」 当然、京太郎は逃がさない 逃げようとしたお仕置きに、歯茎に舌を這わせてみた 面白いように悶える 京太郎「ちろっ…ちろっ…」 咲「ふうんっ!ふうんっ!うあっ!ひっ!ひっく!」 次に、上顎の裏側を触れるか触れないか限界程度の感触で撫でるように 甘い嬌声に嗚咽が混じり始めたのが聞こえたので、そろそろキスは許してやる事にする 京太郎「…ふう」 咲「あ…ふぅ…」 キスだけで顔を真っ赤に染め、とろけるような顔で虚空を見つめる咲 呆れ混じりに考える 京太郎(…俺だって初心者なのに、キスだけで感じ過ぎだろ、咲…。AVより酷い事になってるぞお前) なんとなく、自分に才能が有るからだとは思わない。咲がへっぽこ過ぎなのだ そんな妙な確信があった 京太郎(…面白っ) 京太郎「ちゅーっ」 咲「はうううっ!?」 キスから解放され、ようやく人心地ついた咲の首筋に、またキスしてやる 敏感にも程がある咲の身体が、びくびく大きく震える 抱き締めている腕に、逃げ出そうと身体に力を込めているのが伝わってくるが、軽く力を入れてやるだけで咲は身動きが取れない 唇と舌をゆっくりと這わせながら、鼻でも首筋を擦ってやると、甘い果物のような汗の匂いがした 京太郎(そんじゃあ、そろそろ…いいかな) 腕の力を抜いてやる 咲「っはあっ!!」ガバッ 飛び跳ねるように身を起こす咲 目がぐるぐると渦巻きを巻いているようだ 咲「はぁはぁはぁ…」 咲「ふうっ…ふうっ…ふうっ!」キッ ちょっと怒ったような、恨みがましそうな視線で睨まれる 京太郎(へえ…)ニヤリ 京太郎「まだ自分の立場が分かってないようだなぁ」ニヤニヤ 嗜虐心がムクムクと立ち上がってくる やはり咲は、へっぽこなくらいが一番丁度良い さっきの仕返しは、まだ済んでいない 京太郎「そんな生意気な子は、脱がせちまおっかな」 咲「はぁ…はぁ…えっ?」 京太郎「よっ」スルリ 咲「いやっ!止めて!京ちゃん!」 言いながら、素直に腕を上げて、制服脱がしに協力して下さる咲さん もっと手間取ると思っていたのに、妙に息が合っていたお陰でシャツごと一瞬で脱衣完了だった 京太郎「あ…」 その下には…既にズレたブラと、見ていて哀れになる無乳 京太郎(なんつーか…和の母乳を煎じて飲ませてやりたい気分だ。いや、そんなもん有ったら俺が飲みた…ゲフンゲフン) 咲「…なんかよくわかんないけどムカついた」ギュッ 京太郎「いててて!」 腹の皮抓られた 京太郎「ちゅっ」 咲「はふ…ああっ!?」 身を起こし乳首に食らいつくと、まるで対面座位のような体勢になった 気持ち良さげな声が返ってくる 京太郎「」スッ 京太郎「」サワッ 同時に、左手を太ももに這わせ、撫で回すと… 咲「はああああっ!?」 跳ねる咲 京太郎(…おっぱいより、太ももの方が触ってて楽しい…) 咲「きょ、京ちゃんっ!わ、私っ!もうっ!もう我慢出来ないよっ!」 京太郎「…咲?」 咲「ごめんっ!もうっ!もうっ!我慢出来ないから!」ガバッ 京太郎「…ひっ!?」 咲が、京太郎の腰に跨った 咲「あああああああっ!!!」 終わり おまけ小ネタ 『ランチ』 京太郎「うめー!レディースランチうめー!」ガツガツ 咲「ふふっ。良かったね、京ちゃん」 京太郎「本当、ありがとうな!咲!」 咲「どーいたしまして」 京太郎「がつがつがつ」 咲「…それにしても、京ちゃんって、本当に美味しそうに食べるよね」 京太郎「だって本当に美味いし。咲、レディースランチ食った事ないのか?」 咲「誰かさんがいっつも食べたがるお陰でね。…それに私、基本お弁当だし」 京太郎「ああ、そっか。俺の分いっつも頼ませちまってるせいか」 咲「そーだよ。…ふふっ。この埋め合わせ、高いよ?」 京太郎「そりゃ勘弁」 咲「どうしよっかなー」 京太郎「えー?勘弁してくれよ、怖い」 咲「あ、そんな事言っちゃう?ふーん」ニコニコ 京太郎「…そうだ。じゃ、咲?ちょっと口見せて」 咲「え?」 京太郎「ほら、あー。あー」 咲「あ、あー…」 京太郎「隙有り」ポイッ 咲「んむっ!?…むぐむぐ…」 咲「…こくん」 咲「!!?!?!?」 咲「あ、あわわわわ!いきなり何すんの京ちゃん!」 京太郎「どーだった?レディースランチの唐揚げ」 咲「お、おおおおいしかったけど!確かにおいしかったけど!!」 京太郎「なら、それでチャラなー」 咲「うええええ!!?」 京太郎「はむっ。もぐもぐもぐ」 咲「」プシューッ 咲「…」 咲「…」 京太郎「もぐもぐ…」 咲「…京ちゃん」 京太郎「ん?」 咲「あーん」スッ 京太郎「は?」 咲「」ヒョイ 京太郎「ぱくっ」 京太郎「…もぐもぐ」 京太郎「…ごくん」 咲「…どう?私の作った玉子焼き」 京太郎「…うまっ!」 咲「ならさっきのチャラってのチャラねー」 京太郎「はあっ!?」 咲「私、今日放課後に帰り道のアイスクリーム屋さんのアイス食べたいな~」ニコニコ 京太郎「なにぃ!?」 咲「京ちゃんは、日頃の恩を返さない恩知らずじゃないよね~?」 京太郎「くっそ~。してやられた。思わず素でうまいって言っちまったし…」 咲「じゃあ、放課後楽しみにしてますので~」 京太郎「わかったわかった。ツインまでだからな!」 咲「トリプル」 京太郎「ぐっ!」 咲「トリプル」 京太郎「だ、駄目だ!ツインまで…」 咲「トリプル」 京太郎「…わ、わかりました。善処します…」ガクッ 咲「ふっふ~ん♪」 京太郎「くそう…なんでお前は俺にだけそんな強気なんだ…」 咲「さーね?とにかく、よろしく!京ちゃん♪」 京太郎「はいはい…」 咲(えへへ…) 本日の戦利品 ・京ちゃんからのあ~ん(不意打ち) ・京ちゃんへのあ~ん(不意打ち) ・私の玉子焼き「美味しい」って言ってくれた!! ・アイス(奢り) ・放課後デート←楽しかったよ~(*´∀`*) 以上 某日、宮永咲の日記より抜粋 終わり 『宮永さん』 咲「…」ペラッ 咲(お姉ちゃん、また大会で優勝したんだ…) 咲(…配譜、やっぱり凄い。私も頑張らないと…) 咲(…お姉ちゃんに会う為には、もっと勝たなきゃ…) 京太郎「おっ!何読んでるんだ?咲」 咲「あっ。京ちゃん」 京太郎「ああ。今月号の麻雀雑誌か。…うん?その配譜…うわ。すっげ」 咲「うん…この間の大会の優勝者のだから…」 京太郎「へー。どんな人?」スッ 咲「うわっ!?」ビクッ 咲(か、顔近っ!?腕掴んで、肩越しに…ドキドキ) 京太郎「ふむふむ…おっ。この写真の人か。可愛い人だなー。優しそうな笑顔だ」 咲「むっ!」 京太郎「大人っぽいし、胸はあんま大きくないけど、どことなく漂う色気がセクシー。性格も良さそうだ」 咲「そ、それはどうかな~?」 京太郎「ん?」 咲「い、意外とこういう人って、お腹に一物抱えてたりするんだよ?」 京太郎「どうした、咲」 咲「だ、大体、この笑顔もなんかわざとらしいし、いつもと笑い方違う…じゃなかった、作り笑いっぽいし?頭に寝癖付いてるし?」 京太郎「これはそう言うヘアスタイルなんじゃ…」 咲「違うね。これは不器用だからいくらセットしても全然治らないの」 咲「だから仕方なくお母さんにそれっぽいごまかしヘアスタイルを考えて貰ったような髪型だよ」 京太郎「エラく具体的だなぁ…」 咲「とにかく、駄目だよ京ちゃん。こんな、一番のご馳走が東京バナナですみたいな顔した女の人好きになっちゃ、絶対駄目」 咲「不幸になるよ」 京太郎「お前がここまで他人をdisるの初めてみた…」 咲「…」 京太郎「まあいいや。どうせ俺には雲の上の存在だ。会う事も無いだろうし…」 咲「…会えるよ」 京太郎「…ん?」 咲「…会えるよ。全国に行くんだもん。この人にだって、会える」 京太郎「咲…」 咲「そして、勝つんだ。この人にも…」 京太郎「…そうだな。勝たなきゃ、全国優勝出来ないもんな」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…ぷっ」 咲「…?京ちゃん?」 京太郎「…この野郎っ!咲の癖にカッコ良い事言いやがって!」グイッ 咲「うわっ!?」 京太郎「こーのちんちくりんめ!ちんちくりんめ!」グリグリ 咲「痛い痛い!もうっ!止めてよ京ちゃん!」 京太郎「…」ピタッ 咲「はあはあ…うう…酷い目に合った。髪の毛ボサボサ…」 京太郎「…なあ、咲」 咲「…な、何さ!?今ちょっと怒ってるからね、私!」 京太郎「…頑張れよ」 咲「…京ちゃん?」 京太郎「俺は、直接お前らの力にはなれないからさ…」 咲「…」 京太郎「…性別も違うし、麻雀も下手っぴだし…応援しか出来ないから」 咲「あ…」 京太郎「はは。それがちょっと…いや、かなり、悔しい、かな」 咲「…」 京太郎「ほんと、悔しいなぁ…」 咲「…」 咲「…そんな事無いよ」 京太郎「…咲?」 咲「京ちゃんが居てくれて、みんな凄く助かってる。部長も、染谷先輩も、和ちゃんも、優希ちゃんも。…勿論、私だって」 咲「文句一つ言わずに雑用をこなしてくれてありがとう」 咲「部室で優希ちゃんと一緒に冗談を言ってみんなを笑わせてくれて、ありがとう」 咲「お茶を淹れてくれてありがとう」 咲「アイス奢ってくれてありがとう」 咲「私が迷子になってくれた時、必死になって探してくれてありがとう」 咲「パソコンが苦手な私の為に、ネット麻雀の設定してくれて、ありがとう」 私「お昼休み、私が一人ぼっちにならないようにご飯に誘ってくれてありがとう」 咲「…私を麻雀部に連れて来てくれて、ありがとう」 咲「…あはは。最後の方、私の個人的なありがとうばっかりだね…」 京太郎「…」 咲「とにかく、そういう事だから。京ちゃんには、みんな、凄く凄く、すごーく、助けられてるから。特に私は…」 京太郎「…」 咲「それだけじゃ、駄目…?」 京太郎「…いや。ありがとよ。…なんか、救われちまった。済まねえ」 京太郎「本来なら全国行ってプレッシャーに耐えてるお前を俺が支えなきゃいけねえのに…」 咲「…」 咲「…じゃあ、一個だけ、お願い聞いてくれる?」 京太郎「うん?ああ、俺に出来る事なら、なんでも良いぜ」 」 咲「…私、やっぱりちょっと怖いの。全国で勝てるかどうか…」 京太郎「…」 咲「京ちゃんの言う通り、プレッシャー…凄い…みんなの為にも、勝たなきゃいけないのに」 咲「部長は、今年が最後なのに。一緒に頑張ろうって、誓ったのに…時々、逃げ出したくなっちゃう」 京太郎「咲…」 咲「だから…」 咲「だから…」 咲「勇気の出るおまじない…頂戴?」スッ 京太郎「咲…?」 チュッ 終わり
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357998646/ 和「…というと?」 咲「うーん、何て言うかいつもの京ちゃんじゃないみたい」 タコス「京太郎がおかしいのはいつもの事だじぇ」 ワカメ「随分な言い草じゃのお」 久「いつもとはどう違うの?私が見る限りは変わりないと思うけど」 咲「なんかよそよそしいって言うか…私を避けているような…」 タコス「なにぃ!?あいつ咲ちゃんをいじめてるのか!?」 咲「いや、いじめられてる訳じゃないけど」 和「何か隠し事をしてるのではないでしょうか?」 咲「隠し事?」 和「宮永さんに何か隠し事をしているから態度がよそよそしくなったりするのではないかと思います」 久「そうね、それも宮永さんに知られたら困る事」 咲「そんな…京ちゃんが私に隠し事…?それも知られたら困るような…?」 ワカメ「考えすぎじゃないんか?」 久「そうかもね、でも一番長く一緒にいる宮永さんがそう感じるって言ってるんだから何かあると思わない?」 ワカメ「そりゃそうじゃけど…」 タコス「京太郎の癖に隠し事とは生意気だじぇ!」 咲「でも京ちゃんが私に何を隠してるんだろう…?」 久「そうねえ…例えば恋人ができた、とかね」 咲タコス「!?」 咲「きょ、京ちゃんに恋人なんて…出来るわけないです!」 タコス「そうだじぇ!そんなことあるわけないじぇ!」 久「例えばの話よ、でも須加くんだって青春真っ盛りの高校生なんだから恋人がいてもおかしくは無いんじゃない?」 咲「そりゃそうですけど…でも…」 和「直接聞いてみたらどうですか?」 咲「ええ?」 和「直接須加くんに会って聞いてみたらどうでしょう」 咲「でも…私は今避けられてるし…」 タコス「私もいくじぇ!」 咲「優希ちゃん!?」 優希「犬の癖にご主人様に隠し事なんて許せん!会って問いただしてやるじぇ!」 優希「ほら!咲ちゃん早く!」 咲「うわっ!待って優希ちゃん!」 タッタッタ 久「行っちゃったわね…」 ワカメ「何も無ければいいんじゃが…」 教室 京太郎 ポチポチ 優希「京太郎!いるか!?」 京太郎「うわっ!?なんだなんだ!?」サッ 京太郎「ってなんだ優希かよ、それに咲まで…」 咲「…京ちゃん」 京太郎「な、なんだよ…」 咲「私に何を隠してるの?」 京太郎「えっ!?」ギクッ 咲「最近京ちゃんおかしいよ…何かよそよそしいし私を避けるし…一体何を隠してるっていうの…?」 京太郎「別に隠し事なんかしてねえよ…」 咲「じゃあ何であんな態度を取るの?何で私を避けるの?」 京太郎「…」 咲「まさか… 恋人でも出来たの…?」 京太郎「…」 咲「ねえ京ちゃん!何で答えてくれないの!」 京太郎「…うるせーな」 咲「え?」 京太郎「別に俺に恋人ができようがお前には関係無いだろ!何で教えなきゃなんねーんだよ!」 咲「だって…私は…」 タコス「言い過ぎだじぇ!京太郎!」 京太郎「…ちっ!」 タコス「どこにいくんだじぇ!咲ちゃんに謝れ!」 京太郎「てめーに指図される覚えはねーよ」 タコス「京太郎…」 京太郎「じゃあな」 咲「京ちゃん…」グスン タコス「どうしちゃったんだじぇあいつ…」 部室 咲「…」 タコス「…」 久「何があったかは大体予想できるけど…一応聞いてみてもいいかしら…?」 タコス「咲ちゃんが京太郎に怒鳴られたんだじぇ…」 ワカメ「いや、そうじゃのうてそこまでの経緯を聞きたいんじゃが…」 タコス「実は…」 五分後 久「なるほどね、つまり私の言ったこどが大体現実となっていたと…」 咲「…はい」 タコス「あいつちょっとおかしかったじぇ…」 和「それでもわかりませんね…」 久「何が?」 和「何故恋人がいることを秘密にしていたのでしょうか」 久「恥ずかしかったんじゃなくて?」 和「恥ずかしいだけなら宮永さんを避けたりしませんよ」 ワカメ「たしかにそうじゃのお…」 咲「あの…」 久「あら、どうしたの?」 咲「京ちゃんは多分私に知られたら困るような人と付き合ってるんだと思います…」 ワカメ「何故そうおもったんじゃ?」 咲「京ちゃんがあんな風に怒鳴ったのは初めてだからです」 ワカメ「???それだけか?」 咲「はい」 久「なるほどね」 ワカメ「いやさっぱりわからん」 和「強がり…ですか?」 ワカメ「は?」 和「須加くんは宮永さんとの関係が壊れるのを恐れていたんだと思います。」 ワカメ「お前らは何の話をしとるんじゃ…」 久「つまりこういうことね。」 久「須加くんは最近ある人と付き合いはじめて、その人との関係を宮永さんにしられたら 宮永さんとの関係が壊れてしまう。だから最近宮永さんを避けていた。 しかしついに宮永さんに態度がおかしい事に気付かれてしまい、問いただされる。 須加くんはバレまいと必死に強がって宮永さんを怒鳴った」 咲「はい、その通りです」 ワカメ「そんなアホな…」 和「それにしてもそこまでして知られたくない相手とはどんな方なんでしょうか?」 久「宮永さん、検討はついてるの?」 咲「はい、京ちゃんといったらあの人しかいません」 タコス「あいつか…京太郎の趣味悪すぎだじぇ…」 咲「いくよ!優希ちゃん!」 タコス「おう!咲ちゃん!」 咲タコス「くたばれハギヨシィィィィィィ!!!」 透華自宅 透華「あらハギヨシ、何か聞こえません?」 ハギヨシ「はい?」 ハギヨシ「そう言えば先程から徐々に音が大きくなっているような…」 「ハギヨシィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」 SP「非常事態です!何者かがこの屋敷に潜入しました!ってぐはぁぁっ!!」 ハギヨシ「!?大丈夫ですか!?」 SP「それよりも…侵入者が!」 ハギヨシ「はっ!?」 咲タコス「見つけたぞハギヨシィィィ!!!」 ハギヨシ「あなた方は清澄高校の…私に何のようです?」 タコス「しらばっくれるんじゃないじぇ!さっさと京太郎を返せ!」 咲「お願いです!京ちゃんを…いつもの京ちゃんを返してください!」 ハギヨシ「どう言う事ですか?」 タコス「そのまんまだじぇ!さっさと返せ!」 ハギヨシ「私そのような方存じ上げておりませんが」 咲タコス「!?」 咲「だったら京ちゃんは…」 京太郎「良い加減にしろよ咲」 咲「京ちゃん!」 タコス「おいお前知らないんじゃなかったのか!」 ハギヨシ「いや、今初めてあったんですけど」 京太郎「ここの家の人の麻雀の対戦相手として俺の恋人が呼ばれてな…付き添いで来たんだよ…」 京太郎「さあ来てくれ、照」 照「…」 咲「お姉ちゃん!?」 照「久しぶりだね…咲…」 咲「なんでお姉ちゃんがここに…」 照「…」 咲「待って、それじゃあ京ちゃんの恋人って…お姉ちゃんなの…?」 京太郎「…そう言ってるじゃないか」 咲「なんで…なんで…」 京太郎「お前は俺の恋人が知りたかったんだろ?これで満足じゃないか」 咲「違うよ…こんな…」 照「…」 京太郎「何も違わねえよ」 タコス「良い加減にしろよ馬鹿京太郎!!」 ドンッ 京太郎「!?」 京太郎「優希てめえ!何すんだよ!!」 タコス「お前は本当は咲ちゃんの事が大好きなはずだろ!付き合う奴間違えてるじぇ!」 京太郎「なっ!!」 京太郎「何を言いやがるてめえ!」 タコス「好きじゃないなら何故咲ちゃんにこの事を話さなかった! お前は咲ちゃんとの関係が壊れるのを恐れて隠していたじゃないか!」 京太郎「うるせえ!うるせえ!」 タコス「お前は誰よりも咲ちゃんが好きなはずだろ!!」 京太郎「うるせえんだよおおお!!!」 照「京太郎落ち着いて、私が話す」 京太郎「何だよ照…」 照「咲、聞いて…」 咲「お姉ちゃん…」 照「京太郎は私が不良に絡まれていた所を助けてくれたんだ」 照「別に私は護身術を身につけてるし別に平気だったんだがこいつは聞かずに不良の中に飛び込んでいったんだ」 照「結局ボコボコにされたけど私だけには手を出すなってずっと言ってたのが聞いたみたいで不良はそのまま帰っていった」 照「私は何故体を張ってまでこんな事をするんだって聞いた。そしたらこいつ何ていったと思う?」 咲「…?」 照「こいつはこう言ったよ「アンタ俺の幼馴染に似ててさ。俺が守ってやらなきゃいけない気がしたんだ。」ってな」 咲「京ちゃん…」 京太郎「…」 照「そしたら私はいつの間にか恋に落ちてたんだよ、こいつに」 照「いつの間にかこんな関係にまでなってしまっていた」 照「だけどもうそれも終わりにしようと思う」 京太郎「おい、照…」 照「別れよう京太郎」 照「私はお前が守らなければならない幼馴染ではないんだよ」 京太郎「でも…俺はお前の事…!」 照「私はお前と付き合えて嬉しかった。その思い出だけでもう十分幸せだよ」 京太郎「…!!」 照「それにお前五分に一回は咲からメールきてないか携帯確認してて正直引いた。待ち受けも咲の写真だし」 咲「京ちゃん…」 京太郎「おまっ!余計なことを 」 照「それだけ好きな咲を守ってやってくれよ。そして幸せにしろ。絶対だぞ」 京太郎「…ああ」 照「咲、今の話を聞いて分かったと思うけどこいつはお前の事が一番好きなんだ。それも引くぐらいな」 咲「うん」 照「こいつはお前の事を幸せにできる。元恋人の私が言うんだ。間違いない」 照「幸せになれよお前ら」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「咲、話がある。ちょっといいか」 咲「うん、もちろん」 京太郎「ずっと前から好きだった。付き合ってくれ」 咲「こちらこそよろしくお願いします」 カン
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359731683/ 清澄高校 麻雀部 咲「原村さん、明日は何の日か知ってる?」 和「さあ?節分の前日、でしょうか?」 咲「まあ確かにそうでもあるけど」 咲「実はね、京ちゃんの誕生日なんだよ~」 和「そうだったんですか」 咲「それでね、何かプレゼントしようと思うんだけど…」 咲「原村さんは何がいいと思う?」 和「心さえこもっていれば何でもいいと思いますよ」 咲「えへへ、そうかな・・・」 和「私なら、麻雀の戦術書とかでしょうかね」 咲「うーん」 咲「なんかもっと、こう・・・」 咲「気を・・・引けるものとかの方がいいかな///」 和「気を引けるもの・・・ですか」 久「あらあら、なんの話をしているのかしら?」 咲「あっ部長。こんにちは」 和「実は明日は須賀君の誕生日らしいんです」 久「へえ」 咲「それで、京ちゃんに何をあげたら喜ぶかなぁって」 久「うーん・・・」 久「男の子だし、ゲームソフトとか?」 咲「・・・なんか違う気がするなぁ」 和「私もそう思います」 久「そんなこと言われても、私男の子にプレゼントなんてあげたことないもの・・・」 咲「そうですか・・・」 和「以外ですね」 久「以外ってなによ」 結局、よく分からないままお開きになった 咲家 咲「どうしよーもう時間も無いよ」 咲「もうチョコでいいやっ!チョコにしよう!」 咲「なんかバレンタインと被ってる気がするけど、バレンタインにチョコはちょっと恥ずかしいし///」 ・・・ 和家 和「須賀くんの誕生日ですか・・・」 和「一応部員ですし・・・」 和(・・・・・・私に勝てたら1回抱かせてあげる券、みたいなものでも渡しますか) 和(スケベな須賀くんの事ですし、きっとモチベーションが上がることでしょう) 和(負ける気はさらさらありませんが) ・・・ 久(須賀くんの誕生日ねぇ・・・) 久(いつも雑用とかで迷惑をかけてるし・・・) 久(とはいっても、あんまりお金も無いのよね・・・) 久(もう五円チョコでいいかしら) 京太郎『な、なんですか?これ』 久『誕生日プレゼントよ!いつも雑用ありがとう、須賀くん!』ニコッ 京太郎『わー・・・ありがとうございます』シクシク 久(・・・ふふふ、泣いて喜ぶ顔が目に浮かぶわね)クスクス ・・・ 優希(こっそり聞いてしまったが、明日はあの犬の誕生日なのか!) 優希(・・・チャンスだじぇ!ここは大胆なプレゼントして、距離を縮めるじぇ///) 優希(咲ちゃんに負けないように手作りケーキをプレゼントするじぇ!) 優希(となれば、まずは材料を買い揃えねば!レシピはネットで調べるじぇ!) ・ ・ 優希(ええと、泡だて器でこれをこうやって・・・難しいじぇ・・・ん?) レシピ『ワンポイント☆ 自分の血をたっぷり混ぜ込むと、食べた相手と両思いになれちゃうぞ!☆』 優希(自分の・・・血・・・)ゴクリ 優希(ほ、包丁を手首に当てて・・・)ドキドキ 優希(だ、だいじょうぶ・・・動脈を縦に切らなければ死ぬことはないって聞いたじぇ・・・)ドキドキ 優希「・・・ハア・・・ハア・・・・・・・・・・ふんっ!」シュッ! 優希「痛ッ────!!」パタタタ ・ ・ ・ まこ(そいや久から聞いた話じゃとあしたは京太郎の誕生日なんか) まこ(いつも苦労させとるけんのぅ・・・) まこ(京太郎のやつ、和目当てで麻雀部入ったんじゃっけ) まこ(・・・とはいえ、麻雀が好きなのは見ればわかるし、あいつなりに頑張っとるしのぅ) まこ(とはいえ、あいつの事じゃし卓はおろか牌すら持っとらんじゃろ) まこ(・・・そういや、うちの雀荘が自動卓を導入して使われんくなった手積みの牌と卓があったの) まこ(この機会じゃし、京太郎にプレゼントしちゃるか!) そして翌日 部室 京太郎「失礼しまーっす」ガチャ 咲「あ、京ちゃん!」 和「こんにちは」 久「あらあら、遅かったわね」 京太郎「すみません、日直の仕事と掃除当番が被っちゃったんで・・・」 優希「い、いぬ・・・」フラフラ まこ「おい、優希・・・どうしたんじゃ」 咲「あ、あのっ!///」ズイッ 京太郎「は、はいなんでしょうか!?」 咲「京ちゃん!たっ誕生日おめでとっ!///はい、これ!」 京太郎「咲、覚えててくれたのか!ありがとな!」 咲「ふぇ、あ・・・///うん・・・///」 京太郎「中身はなんだ?」 咲「あっまだ開けないで!家に帰ってから!」 京太郎「お、おう」 久「私からもプレゼントよ、はい!これ!」ポイ 京太郎「・・・は?五円チョコ?しかも溶けて固まって変形して白くなってる・・・」 久「いつも雑用ありがとう!これからも雑用よろしくね、須賀くん!」ニコッ 京太郎「あ・・・ありがとうございます」シクシク 久「あらあら、感涙するほど嬉しかったのかしら」 京太郎「はい、それはもう・・・」 和「私からは、これです」スッ 京太郎「ん?なんだこれ?チケット?」 『部の対局で一回でも私に勝てたら抱ける券』 京太郎「・・・なんじゃこりゃ、まっまさか///」 和「ち、ちがいますよ!これはあくまで須賀君のモチベーションを上げるために作っただけですから!」 和「それと、ハグのほうですよ!ハグ!」 京太郎(和に勝てればハグできるのか・・・!これはヤル気がでてきたぜ!) 咲(原村さん・・・どうしてあんな破廉恥なものを・・・?) 優希「つぎは・・・わたし・・・だじぇ」 優希「ほれ・・・・・・喰え・・・」 京太郎「お、おい・・・大丈夫かよ・・・さっきからフラフラだぞ、お前」 優希「手作りケーキ・・・だじぇ」 京太郎「おう、ありがとな・・・ちょっとそこのベッドで横になってたほうがいいんじゃないか?」 優希「そうさせてもらうじぇ・・・」バッタリ 和「優希・・・何があったんでしょうか?」 久「さあ・・・」 まこ「最後にワシじゃな。ほれ!」ドン 京太郎「うわ、すげえ!」 まこ「麻雀卓と牌じゃ!さすがに自動卓は無理じゃけど、これ使って家で練習しんさい!」 京太郎「染谷先輩・・・ありがとうございます!」 まこ「来年、男子部員が増えればアンタが面倒見なきゃいかんのじゃし」 まこ「しっかり実力つけるんじゃぞ」 京太郎「はい!」 ・ ・ ・ 帰り道 咲「じゃあね、京ちゃん!」 京太郎「おう!プレゼントありがとな」 ・ ・ 咲「ねえ、原村さん」 和「なんでしょうか?」 咲「・・・なんで、あんな・・・えっちな物を京ちゃんにあげたの?」 和「そ、それは・・・彼を真面目に練習に取り組ませるには、ああするのが効率的かと思ったもので」 咲「なにそれ。・・・原村さんってさ」 咲「京ちゃんのこと好きなの?」 和「いえ、そんなことは・・・」 咲「まあいいけどさ・・・」 咲「昨日、原村さんに相談したよね?京ちゃんの気が引きたいって」 咲「それを見といてさ、あんなものを京ちゃんにあげるってさ」 咲「どういうつもりなのかな」 和「ご、ごめんなさい・・・確かに宮永さんへの配慮がたりませんでした・・・」 咲「いいよね、原村さんは」 咲「美人だし」 咲「胸だって大きいし」 咲「頭だっていいし」 咲「その点、わたしなんて貧相だし・・・」 和「そんなことは・・・!宮永さんはとっても素敵ですよ!」 咲「いやみにしか聞こえないよ・・・あはは・・・」 そのころ京太郎家 京太郎「さて、プレゼントを開けてみるか」ゴソゴソ 京太郎「まずは優希の・・・おお、マジでケーキだ。すげぇ」 京太郎「それにしても赤いなぁ。苺にしては色が濃いし、なんだろうな?」パクッ 京太郎「」 咲「分かってるんだよ・・・」 咲「京ちゃんをずっと見てきたから・・・」 和「・・・」 咲「京ちゃんは、私みたいな女の子より」 咲「原村さんみたいな子の方が好きだってことぐらいさッ!」 咲「だからさぁ!!!せめてさぁ!!!」 咲「原村さんが、その気が無いっていうんならッ・・・!!!」 咲「邪魔するようなことしないでよッ・・・!!!!!!」 和「宮永・・・さん・・・」 咲「さよなら」 咲「明日からは一緒に登校するの、やめよ」 咲「じゃあね。原村さん」ダッ 和「待って・・・!ああ・・・うう」 和「・・・ごめん・・・なさい・・・」 ・ ・ ・ 京太郎「なんだこれ・・・鉄の味がする」 京太郎「それに・・・乾燥した部分がカサカサになって剥がれてるけど」 京太郎「これって・・・血じゃないのか・・・?なんでそんなものを・・・」 京太郎「・・・そいやあいつ、手首に包帯巻いてた・・・まさか・・・」ゴクリ 京太郎「なんなんだよ一体・・・あやしげな魔術の供物かよ・・・」 京太郎「この調子じゃ・・・咲のプレゼントも・・・」 咲のプレゼント『・・・・・・・・・』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 京太郎「・・・なんか、途端に禍々しく見えてきたぞ・・・」 京太郎「いや、だが・・・礼を言う為にも中身の確認ぐらいしないと・・・」 京太郎(頼むから動物の死体とか指とか御札とか入ってませんように!)ゴソゴソ 京太郎「ん?チョコ?」 京太郎(いやまて、油断するな・・・何が入ってるか分からないぞ) 京太郎「・・・とりあえず、おいておこう」 京太郎「食べるのはなんか危険な気がする」 京太郎「・・・それより」 ピポパ 優希『・・・もしもし』 京太郎「優希か?オレだ、京太郎だ」 優希『ああ犬か・・・すまんが体調がわるいのだ・・・後にしてくれ』 京太郎「ケーキ、食べたぜ」 優希『!・・・そっか、うまかったか?』 京太郎「まぁそれなりに・・・」 京太郎「そのことで聞きたいんだけどさ・・・」 優希『なんだ?』 京太郎「あれって・・・血、だよな?」 優希『そうだじぇ』 京太郎「どうしてそんなものを・・・?」 優希『・・・それはいいたくないじぇ』 京太郎「それならいいんだけどさ、大丈夫なのかよ?今日だってフラフラだったぞ?」 優希『なんだ、心配してくれるのか?』 京太郎「あたりまえだろ、あんなけ血が入ってりゃな」 優希『大丈夫だ、タコス食って寝ればなおるじぇ』 京太郎「そうか・・・無理すんなよ」 優希『おう!』 ピッ ・ ・ 優希「京太郎が心配して電話かけてくれたじぇ・・・」 優希「血のケーキの両思いのおまじないの効果か?」 京太郎「さて、染谷先輩の卓は・・・っと」 京太郎「おお、すげー・・・」 京太郎「お、これって竹牌ってやつか。初めて見たぜ。今の時代じゃかなりレアなんじゃないか?」 京太郎「牌が手に入ったらやってみたいことといえばイカサマの練習だ!」 京太郎「よし、さっそく・・・」 京太郎(・・・いや、和のプレゼントの券もあるし、真面目に練習しよう) 京太郎(ハグかぁ~///柔らかいしいい匂いするんだろうな~うへへへ) ・ ・ ・ ・ ・ 京太郎(今日の練習はこんなもんでいいか!) 京太郎(部長の五円チョコ食って寝よう)パクッ 京太郎(・・・うん、五円チョコだ。なんの変哲も無い・・・) ・・・ 数日後 優希「きょーたろー!」 京太郎「おう、元気になったみたいだな!」 久「なんか最近あの二人仲いいわよね」 まこ「そうじゃなー」 咲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 咲「ねえ京ちゃん、プレゼント、どうだった?おいしかったかな」 京太郎「あ・・・」 京太郎(やべ、まだ食べてなかった・・・) 京太郎「お、おう・・・!旨かったぜ、チョコ」 咲「よかった!ねえ、何が一番美味しかった?」 京太郎「」 京太郎「え、ええと・・・普通のミルクチョコかな・・・」 咲「・・・・・・・嘘」 京太郎「え」 咲「全部・・・京ちゃんが好きなホワイトチョコにしたのに・・・どうして・・・」 京太郎「ああ、いやそれは・・・・・・」 咲「優希ちゃんのケーキは食べたって言ってたよね・・・」 京太郎「はい・・・」 咲「どうして私のチョコは食べてくれなかったの・・・」 咲「まだ食べていないだけっていうなら・・・どうして食べたなんて嘘付いたの・・・」 京太郎「あ・・・え・・・」 咲「酷いよ・・・・・・」 京太郎「咲・・・ごめん。まだ食べてないんだけど、そう言ったら落ち込むと思ったから、つい・・・」 咲「うん・・・そっか・・・京ちゃんはやさしいんだね」 咲「あ、そうだ」 咲「優希ちゃん、あとでちょっとお話しようよ」 優希「じぇ・・・?」 優希「咲ちゃん、話ってなんだじぇ?」 咲「優希ちゃんはさ、京ちゃんにケーキあげたっていってたよね」 優希「そ、そうだじぇ」 咲「他になんかあるんでしょ」 優希「え?私があげたのはケーキだけで・・・」 咲「嘘よッ!!!だってそれだけのことで京ちゃんがこんなのと急に仲良くなるはずないッ・・・・・・!!!!」 優希「こ、こんなのとは酷いじぇ!」 咲「京ちゃんはね。原村さんみたいな人が好きなんだよ・・・」 咲「優希ちゃんみたいなのが簡単に気を引けるっていうならッ・・・!!!!」 咲「どうして今まで私のことをッ・・・!!!!ああ”!!!見てくれなかったの!??説明が付かないでしょ!????」 咲「教えなさいよッ!!なんかしたんでしょ!?」 優希「も、もしかして・・・血の・・・」 咲「血ぃ?」 優希「そ、そうだじぇ!自分の血を使った食べ物を相手が食べると、両思いになれるって・・・」 咲「・・・・・・・・・・・・・・・」 咲「・・・・それ、本当なの?」 優希「わ、わからん・・・」 優希「でも、ケーキに血を混ぜたら仲良くなったのは事実だじぇ・・・」 咲「ふふふ」 咲「そっかぁ!血かぁ!!!」 咲「ありがとう!優希ちゃん!!」 優希「ど、どういたしまして・・・」 ・ ・ ・ 2月13日 バレンタイン前日 咲(京ちゃん・・・まっててね)ザックザク 咲(私の思いが詰まったチョコレートをあげるからね・・・ふふうふふふふふふ)ブスッブス ドバドバ 翌日 和「はい、もしもし」 和「・・・え?・・・嘘・・・・・・・・・そん・・・な・・・」 咲は自分の腕を一寸刻みにして、自宅の台所にて出血多量で死亡していた。 ボウルの中には多量の血液と湯煎したチョコが残されいていた。 警察は自殺と見て捜査を進めている おしまい
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京ちゃんとは 人物概要 名前 京ちゃん 性別 ♀ 年齢 不詳(推定18〜24) 階級 雌牛チンポ奴隷 経歴 金玉の招待によりこの鯖に舞い降りたネキ。恒例行事(セクハラ)を軽々と受け流した後、鋭いツッコミと包容力でこの鯖内での特異な位置を確立している。 彼女は通話に居る際決して肉声を出すことが無く声を知っているものは船長とほんのひと握りだと言う。気になる人は一部の幹部に当たるといいだろう。だが幹部も知らない人が多い(管理者含む) バイクを乗りこなしているらしく、写真をUPしていることがある。 たまに下ネタが飛び出すことがあり、京ちゃん語録として親しまれている。 京ちゃん語録 京ちゃんが発言する下ネタはシンプルなものから、捻りを加えた物まで様々。数々の発言の中からインパクトの強いものを紹介しよう。 「おなほ」 「風呂で抜いてこよ」 「わたしよケツでシコれ」 「進撃の粗チン」 「シコリなよ」 「貴重なまんこよ。喜べ」 「繁殖力以前に回数重なれば孕むんだよ」 「抱かれた後にババァですわよって言いたい」 その他 グルメで大食いらしく男性並みの胃袋を持っているらしい。 Twitterにて「#きょ〜ちゃんの飯テロ」から本人が食べているグルメが見れるそうだ ページ作成者 サム ページ最終編集者 サム
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咲「東京で迷子になってたら京ちゃんとお姉ちゃんが歩いてるのを見かけた」 咲「京ちゃんの心は私から離れちゃったんだ…」 京太郎「いやあ、すみません。一緒に咲を探して貰って」 照「問題ない。私には咲センサーがある」 照「私の咲センサーによれば……むむむ……」 照「あっち!」ビシッ 京太郎「茶店? 居ますかね、こんなところに」 咲(京ちゃんとお姉ちゃんが一緒に喫茶店に……) 照「センサーによれば……この席!」ビシッ 京太郎「日当たりいいっすねここ。 それで、咲は?」 咲(あの席……カップル専用席じゃ……) 照「センサーによれば……このコーヒーおかわり!」ビシッ 京太郎「うまいですねこのアイスコーヒーねぇ咲は?」 咲(二人でコーヒー飲んで談笑して……) 咲(これじゃあまるで……デートみたいな……) 咲「……グスン」 照「ごめん。 咲ここじゃなかった」 京太郎「俺ら何してたんスか。一時間も」 咲(やっと出てきた……) 京太郎「それで、咲は何処スか?」 照「うーん……うーん……。 こっち」ビシッ 京太郎「甘味処? ホントでしょうね?」 咲(あ、あそこは! いつか京ちゃんと一緒に行こうとしてた甘味処!) 照「らぶらぶはあとごま蜜団子1つ」 京太郎「ネーミングセンスの欠片もありませんね。 で、咲は?」 咲(あ、あれは! いつか京ちゃんと一緒に食べようとしてたごま蜜団子!) 照「京ちゃん。 ごま蜜団子っていうのは互いに食べさせあうのがマナーなんだよ」 京太郎「へぇ。 じゃあ、咲はどこなんですかあーん」 照「あむっ。 ~♪」モッキュモッキュ 咲(あああああれはぁっ!! いつか京ちゃんと一緒にやろうとしてた食べさせ合いっこおおおお!!) 咲「……京ちゃぁん……」メソメソ 照「京ちゃん。甘い物を食べた後は甘い物が飲みたくなるね」 京太郎「全然わからないですし、咲はどこですか」 照「うーん……。 ……あそこにならいると思う」ビシッ 京太郎「スタバ? 一人でスタバとかやるなぁ咲のやつ」 咲(い、行ったことないよあんなリア充の巣窟……) 咲(……どうせ二人だって行ったこと無いくせに……) 京太郎「ホワイトチョコレートモカフラペチーノのグランデで」 咲「 」 照「キャラメルソースヘーゼルナッツシロップチョコレートチップエキストラホイップのエスプレッソショット一つ」 咲「 」 京太郎「行き慣れてますねぇ、照さん」 照「この日の為に練習しといたからね」 京太郎「へぇ」 京太郎(……どういうことだ?) 照「美味しかったね京ちゃん」 京太郎「美味いのはいいんスけど、咲いませんでしたよ」 照「居なかったね。 やっぱり」 京太郎「ん? 今何て言いました?」 照「食べたり飲んだりした後はきちんと運動しなきゃだよね」 照「というわけでゲームセンターに行こう」 京太郎「東京のゲーセンはデカイっすねぇ。 ところでさっきまさかとは思いますけどやっぱりって」 照「グズグズしない」グイッ 京太郎「うおっ」 咲「 」 咲「( ゚д゚)ハッ!」 咲「あ……京ちゃんとお姉ちゃんがゲームセンターに……」 咲「……」 咲「ていうか二人共行ったことあるんだ……スタバ……」 咲「……グスン」 京太郎「……」 照「見て見て。また勝ったよ京ちゃん。 これで5連勝」ドヤッ 京太郎「運動うんぬん言ってたのになんで麻雀格闘倶楽部なんですか」 照「あれ……京ちゃんはMJ派?」 京太郎「いやそうじゃなくて。……というか咲は何処っすか」 照「咲ならいるよ、ほらここ」 京太郎「それは対戦相手の名前が偶然にも『saki』なだけでしょうが」 照「ふふっ。 バレちゃった」 京太郎「……まぁいいや。 ちょっと周り見てきますね」 照「うん」 照(これで……和了りっ) 咲(うひゃあっ! また振り込んだぁ……) 照(……弱いなぁ……この『saki』って人) 咲(うぅ……強いよぉ……この『teru』って人……) 京太郎「うーん……やっぱいねえなぁ」 照「おかえり京ちゃん。 やる?」 京太郎「いや、遠慮しまうわぁ、1コインで12連勝する人はじめて見た」 照「もう飽きちゃった」 京太郎「んじゃ移動しましょうか。 ていうか咲は何処なんですか」 照「あ、そうだったね」 京太郎「素で忘れてらっしゃったなこのぉ」 照「ん~……」 照「あ、そうだ」 京太郎「何か思いつきました?」 照「京ちゃんこっち」グイッ 京太郎「うおっと」 咲「あうぅぅ……3000円も使ったのに全部負けて結局昇格しなかったぁぁ……」 咲「……」 咲「あれ? 京ちゃん達は?」 照「着いた」 京太郎「あの……ここって」 照「入って入って」 京太郎「いや、でも流石にここは……ていうかなんでここに」 照「はーいーるーのっ」ギュルギュルギュルギュル 京太郎「ぐはっ」 咲(あー良かった、日頃から京ちゃんの匂い嗅いでて。 ) 咲(さてと、京ちゃんの匂いは……こっちだっ) 咲(……って、あれ? ここって……) 「ちょっ、テルー! 誰その男ー!!」 「昼間から見せつけてくれますねぇ。 畜生」 「……爆発しろ」 「……というか、誰なんだ? その男子生徒は……」 咲「し、白糸台の控え室ぅ!?」 照「清澄高校麻雀部の須賀京太郎。通称京ちゃん」 菫「はぁ」 照「新入部員に迎えようかと」 菫「……はぁ」 誠子「あっ、寝顔かわいい」 淡「ペンでイタズラ書きしちゃえっ。 うりゃりゃー」 尭深「……」ナデナデ 咲「きょ……京ちゃんが……」 咲「お姉ちゃんだけじゃなく……白糸台の皆にまで……」 咲「……寝取られたぁぁ……」グスッ ―カンッ ――― ―― ― 淡「ちょwwwww何この顔wwwwwwワロwwwwwwwwww」 誠子「おもしれー。 魚拓取ろ魚拓」 尭深「………」ナデリナデリ 照「ほら、皆にも評判良さそうだし」 照「……ダメ?」 菫「ダメに決まってるだろ」 照「……グスン」 ―もいっこカンッ 京太郎「咲の奴どこに行ったんだ?」キョロキョロ ?「京ちゃん?」 京太郎「え?」クル 照「やっぱり京ちゃんだ」 京太郎「て、照さん!? うわ懐かしい、お久し振りです!」 照「うん久し振り。こんなところでどうしたの?」 京太郎「いや、実は咲が迷子になりました……」 照「そう……」 京太郎「ええ……」 照「よし、じゃあお姉ちゃんが手探すのを手伝ってあげよう」 京太郎「そんな悪いですよ」 照「咲は私の妹。なにもおかしくない。それに私には咲センサーがあるからすぐに見付かる」 京太郎「そうですかね? じゃあお願いします」 照「じゃあ、はいこれ」スッ 京太郎「なんですか? これ」 照「お菓子。しばらく私とここでおじゃべりしようか」 京太郎「いや、さっきの手伝うって発言と前後がぜんぜん繋がってないんですけど」 照「大丈夫大丈夫。後で探しに行くから」 京太郎「いや今すぐ探しに行きましょうよ」 京太郎「で、結局おしゃべりに付き合っちゃったてるし」 照「どうかした?」ポリポリ 京太郎「いえ自分の流されやすさを再確認してただけで」 照「そう」 照「咲は……」 京太郎「はい?」 照「咲はどうしてまた麻雀をやり始めたか知ってる?」 京太郎「ああ、それは俺が誘ったからですよ」 京太郎「頭数合わせで適当に誘っただけなんですけどね、まさかそんなあいつが全国大会に出るなんて」 照「そう」 京太郎「あいつの事、なんでも知ってるつもりでしたけど、なんか俺の勝手な思い込みでしたね」 京太郎「っと、すみませんこんなこと。つい昔の感じでしゃべっちゃって」 照「良い。私も聞きたかったし」 咲「ふぇぇ、ここどこ~」 咲「うう、ちょっとおトイレ行こうと思っただけなのに」グスッ テクテク、キョロキョロ ワイワイ 咲(あ、人の話し声。うう、知らない人に話しかけるの恐いけど迷ってられないし……) 咲(頑張って道聞こう) 咲「あの、……!?」ササッ 京太郎「ワイワイ」 照「ガヤガヤ」 咲「なな、なんで京ちゃんとお姉ちゃんが?」 咲「っていうか、なんで私隠れちゃったんだろう……」 照「咲、最初は麻雀嫌いって言ったでしょ?」 京太郎「? ええ、まぁ」 照「京ちゃんから見て麻雀打ってる咲はどう?」 京太郎「楽しそうだと思ういますよ。これは主観とか抜きにして」 京太郎「なんだろう。前まではぜんぜんそんなイメージなかったんだけど」 京太郎「今は咲が麻雀を楽しそうに打ってるがすごくあいつらしいって思える」 京太郎「そういう咲を見てるのが好きなんだ俺」 照「……」 照「それは、恋愛感情とかを含めて?」 京太郎「ファッ!?」 照「単刀直入に聞こう。京ちゃんは咲が好きなの?好きじゃないの?」 京太郎「いや、ちょ、なんでそういう方向の話になるわけ!?」 照「女の子はお菓子と恋バナが大好きなんだよ。さぁお姉ちゃんに白状してごらん」ジリジリ 京太郎「いやぁ、あー……好きじゃない事もない。……って感じですか?」 照「好きじゃない事もない。二重否定か、二重否定は強い肯定。つまり京ちゃんは咲が大好き、と」メモメモ 京太郎「それは英文法の話でしょう! ってかなにメモ取ってるんですか!?」 京太郎「つーか、俺は今恋愛とか誰かと付き合うとかそういうのはあんま考えてないっていうか」 照「枯れてるんだ。可哀想、若いのに」キャッ 京太郎「そういう話じゃねぇよチクショウ!?」 京太郎「とにかく、俺は今は部活を一生懸命やりたいからそっち優先っていうか……」 照「けど聞いた話だと京ちゃん万年雑用係って」 京太郎「一々人の精神を抉るのやめてもらえません!?」 咲「2人とも楽しそう……なに話してるんだろう」コソコソ 京太郎「そうじゃなくて、そろそろいい加減に咲を探しに行かないと」 京太郎「あいつどっかでベソかいてるかも」 照「話逸らした」 京太郎「こっちが本題だからね!?」 照「ちなみに咲ならさっきからあそこにいるよ」ピッ 京太郎「え?」クルッ 咲「あ……」 京太郎「咲?」 咲「いや、あのこれは違くて……」ワタワタ 京太郎(!) 京太郎「ほーら、怖くないよーよーしゃよしゃしゃ、こっちおいでー」チッチッチッ 照(猫相手じゃないんだから) 咲「……」クルッ、ダッ! 京太郎「逃げんなコラァ!」ダッ 京太郎「ご迷惑をお掛けしました」ペッコリン 咲「……ました」ペッコリン 照「迷惑とか別に。私は久々に2人のやり取り見れて楽しかった」 京太郎「っていうか、照さん咲が近くにいることわかってたんですか?」 照「はじめに言ったよ。私には咲センサーがあるから。ここで待ってれば咲が通りかかるって踏んでた」 京太郎(冗談じゃなかったのか……) 照「咲」 咲「ん、なにお姉ちゃん」 照「今はまだちょっと、けど大会が終わったらちゃんと話そう?たぶんお互い話したいこといっぱいあると思うし」 咲「うん……」 照「それと、はいこれ」 咲「なにこれ?」 照「そこの売店で買ったカップケーキ。餞別にあげる」 咲「あ、ありがとう」 照「じゃあまたね2人とも」 京太郎「俺達も戻るか」 咲「うん……」 京太郎「ほれ」スッ 咲「え?」 京太郎「え? じゃあるか、手。握ってないとまたまた迷うだろお前」 咲「そ、そんなにしょっちゅう迷子になってないもん!」プンスコ 京太郎「説得力ゼロ!」 咲「ま、まぁ……京ちゃんが? どうしても? 繋ぎたいって言うなら? 繋いであげなくもないけど?」チラチラ 京太郎「なんでそんな上から目線なんだよ……」ゲンナリ 咲「ど、どうするの!? 繋ぐの!? 繋がないの!?」 京太郎「はいはい繋ぎたいですよお姫様」 咲「も、もぉ! 仕方ないな京ちゃんは!」 京太郎(なんか釈然としない) 京太郎「……」 咲「……」 ギュッ 京咲(か、会話がない……) 京太郎(ああクソ。照さんがあんな事言うから、咲の事変に意識してなにしゃべっていいかわからん) 咲(京ちゃんとお姉ちゃん。楽しそうだったな、なに……話してたのかな) 咲(3年振りに会ったのに、京ちゃん私なんかよりぜんぜん普通に話せてたし) 咲(昔から2人仲良かったもんな……) 咲(好き……なのかな) 咲(なんか……ヤだな) 白糸台控え室 ガチャッ 照「ただいま」 淡「おかえりテルー」 誠子「お疲れサマです!」 尭深「お疲れ様です」ズズ 菫「お疲れ。遅かったな、なにかあったのか? ……ん?」 照「? 菫、どうかした?」 菫「いや、なにか機嫌が良さそうに見えたからな」 照「わかる?」 淡「なになに!?テルーなにか良い事あったの?」 照「うん。実はさっき未来の義弟に………………あ」 菫「どうした?」 照「お菓子買いなおすの忘れた……」 カン!
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1341930167/ 京太郎「な、なんでこんなところにいるんだ!咲!」 咲「ねぇ・・・なにしてるの?」 京太郎「お前には関係ないだろ!」 咲「何言ってるのかな?京ちゃん」クスクス 咲「私には幼馴染として、ううん将来のお嫁さんとして京ちゃんを守って幸せにする義務があるんだよ?///」 咲「だから・・・そんな害虫から離れてよ 早く駆除しないと」 京太郎「お前・・・変だよ・・・」 ???「・・・」 咲「なにかな?なにか言いたげそう顔してるけど、何?遺言?そんなの知らないよ。それより死なないの?死んでよ!死ね!」 咲「今なら、自殺か私に殺されるか選ばしてあげるよ・・・???さん」フフ 時は遡ること数週間前…… 清澄高校 麻雀部部室 優希「それロンだじぇ!!」 京太郎「ぬぁ!?まじかよ!ちくしょー……」 和「須賀君またですか?」 咲「京ちゃん気を付けないとだめだよ?」 京太郎「うぅ…くそう好き放題いいやがって……」 久「本当に弱いわね こんなんじゃ来年の個人戦も…」 京太郎「ぐっ」 まこ「ほんとにのー 才能ないんじゃないか?」 京太郎「ブハッ!」チーン 優希「京太郎が死んだじぇ」ナーム 咲「部長も、染谷先輩もいいすぎですよ」モー 久「ごめんなさいね でも、本当にこのままじゃまた来年も初戦敗退よ?」 京太郎「うっ……部長、どうにかなりませんかね?助けてくださいよぉ」 久「そうは言ってもねー 私たちはIHがあるからそんなに構ってあげられないし」 久「かといってネトマで力も一気につくものでもないのよねぇ……人とやるのが一番なんだけど」 久「あ!そうだ!」ペカッ 京太郎「なにかいい案でも浮かんだんですか?部長!」 久「まこのメイド喫茶でバイトしながらおじさんとやるのよ!勿論メイド姿でね☆」ニヤニヤ 京太郎「ぶ、部長~ふざけないでくださいよ~」ガックシ まこ「そうじゃ~ふざける~こんなむっさい変態がおったら売上ガタ落ちじゃー」 京太郎「否定はできないけど、染谷先輩フォローするところでしょそこは!」 京太郎「で、まさかそのふざけた案を思いついたってわけじゃないですよね?」ジー 久「まさかそんな訳ないわよ ちゃんと思いついたわよ」 京太郎「おー、でその案とは?」 久「武者修行よ」 京太郎「はい?」 久「だから武者修行よ!」 京太郎「どこに?」 久「団体の決勝で清澄と当たったところよ。IHもないし暇そうな龍門渕にお願いするわ」 咲「部長大丈夫なんですか?言っちゃ悪いけど京ちゃんの腕じゃ邪魔になるだけじゃ?」ヒソヒソ 久「まぁなんとかするわ 可愛い後輩のためだもの」ヒソヒソ 咲「はぁ・・・」チラ 京太郎「」ポカーン 下校途中 京太郎「はぁ……いくらなんでもあれはないだろう…」 咲「まぁ、京ちゃんなら大丈夫だよ!」 京太郎「そうかな~」 咲「そうだよ!京ちゃんならできるよ」 京太郎「よっしゃ!元気でた!ありがとな!!」 咲「うん! あ、でも京ちゃん女の子に鼻の下伸ばしちゃだめだよ?」 京太郎「そ、そんなことしねぇよ」アセアセ 咲「じゃあ、明日から頑張ってね」 京太郎「おう 頑張るわ じゃーなー」タッタッタ 咲「…」ポツーン 咲「京ちゃん信じてるからね?」 龍門淵邸 京太郎「来たはいいものの、なんで龍門渕の家なんだろ?」 京太郎「まぁいいや」ピンポーン ハギヨシ「お待ちしておりました、須賀京太郎様 どうぞ中にお入りください」 京太郎「お邪魔します」 透華「待っていましたわ」 透華「私は、龍門渕透華です」 一「ぼくは国広一」 一「透華の専属メイドだよ」 京太郎「清澄高校麻雀部一年 須賀京太郎よろしくお願いします!」 透華「挨拶もほどほどにして……さて」 透華「あなたを龍門渕の持てる全てを使い最高の雀士に育て上げますわ!」 透華「覚悟なさい!オーホッホッホ」 京太郎「えーと、あの、ありがたいんですけど なんでそんなにやる気満々なんですか?」 一「ぼくが説明するね」 一「昨日の晩のことなんだけどね……」 昨日の晩 prrrrr prrrrr ガチャ ハギヨシ「はい 龍門渕でございます」 ハギヨシ「はい……はい……少々お待ちください」 ハギヨシ「失礼します透華お嬢様」 透華「なんですの?」 ハギヨシ「清澄高校の部長からお話があるそうです」 透華「構いませんわ 電話を持ってきてちょうだい」 ハギヨシ「こちらに」 透華「それで話とはなんですの?」 久『いやねーうちの後輩で初心者の子がいるんだけど」 久『私たちIHで忙しいのよ』 久『あなた暇でしょ?強くしてあげてほしいのよ』 透華「暇とは失礼ですわね!なんでそんなことしないといけませんの?お断りしますわ!」 久『そうよねぇ でもたった一人の雀士も強くできないなんて龍門渕も程度がしれるわね』 透華「なっ!」 久『変なこといってごめんねぇ じゃあま透華「お待ちになりなさい!」 透華「そこまで言われては退くに退けませんわ」 透華「あなたに龍門渕の凄さをお見せしますわ!」 久『あらそう?じゃあよろしくね』 一「ということがあったのさ」 京太郎「部長ひどいな……」 透華「それではさっさと始めますわよ」 京太郎「面子は揃ってるんですか?」 透華「大丈夫ですわ 私と一とあなたそれに別館に衣が待ってますわ」 京太郎「oh…」 透華「それに加えあなたには専属のプロ雀士をつけますわ」 透華「24時間麻雀漬けですわよ」 京太郎「覚悟はしてたけど…」 一「まぁ君の為なんだし我慢しなよ」 それから数週間後 一「」 衣「」 透華「よく耐えましたわね」 京太郎「ぐふ……一生分打った…」 透華「本当に今回ばかりは死ぬかと思いましたわ」フラ 京太郎「おっと」ガバ 京太郎「大丈夫ですか?」 透華「///」パクパク 京太郎「あ すいません」ッパ 透華(殿方に抱かれてしまいましたわ///) 京太郎「じゃあお休みなさい」フアァ 一「あ、今日は萩原さん用事でいないみたいだから戸締り気を付けてね」バタ 京太郎自室 京太郎「いやー疲れた」 京太郎「明日で終わりかー長いようで短かったなぁ」 京太郎「ん?携帯が光ってる」 京太郎「『電話ください』か」 ピポパポピ prrrrr prrrrr ピッ アヒサシブリー 京太郎自室前 透華(さっきのお礼を言いに来ましたけど) 透華(電話始めてしまいましたの) ソレデホントタイヘンダッタンダヨー 透華(長くなりそうですわね) 透華(それにしてもさっきの腕とっても逞しかったですわ) 透華(顔も凛々しくて…って私は何を考えてますの///) ウンウンアシタカエルカラアサッテニハアエルヨ 透華(あ 終わりそうですね) ジャアナーウンウンダイスキダヨ ッピ 透華(え…彼女いたんですのね……) 透華(馬鹿らしい戻りましょう……) 透華「……」トボトボ ガタッ 透華「ヒッ!?」 透華「な、なんですの」ガタガタ 透華「誰かいるんですの?」ガタガタ モゾモゾ 透華「だ、だれかぁ……」 京太郎「大丈夫ですか!」バッ 透華「あ」ギュ 京太郎「なんだ?」ジー 黒猫「にゃぁ~」トテトテ 京太郎「なんだ猫か」 透華「へ?猫?」 透華「こ、腰が抜けましたの…」ヘナヘナ 黒猫<ニャァ~ スリスリ 透華「もうまったく…フフ可愛いですわね」ナデナデ 京太郎「かわいいですね」ニコニコ 透華「フエ?!」// 京太郎「この猫本当に可愛いですよね」 透華「あ そうですわね」シュン 一「おーい大丈夫?」 一「大きな声聞こえたけど 何かあったの?」 透華「な、なんでもありませんわ!」 透華「さ、もどりますわよ一」 一「はーい じゃねー」 京太郎「はい お休みなさい」 翌日 京太郎「それじゃお世話になりました!」 一「またねぇ」ヒラヒラ 衣「今度は咲も連れて遊びに来るんだぞ!」 透華「またいらしてくださいね……」 京太郎「はい!」 ハギヨシ「ではお送りいたします」 京太郎「あ、ありがとうございます」 バタン ブロロロロロロロロロロロ 一「透華ぁ~なんかそっけなかったねぇ」ニヤニヤ 透華「な、なんのことですの!」 衣「へ?へ?何々衣にもおしえてぇ~」 一「子供にはまだ早いかな」 衣「衣は子供じゃないぞー!」 その日の晩 透華「ハギヨシ」 ハギヨシ「はい なんでしょうか透華お嬢様」 透華「あなたに好きな人ができたとして、その人に恋人が居たらどうします?」 ハギヨシ「私なら、身を引きます」 透華「…そうですわよね」 ハギヨシ「ですがお嬢様、その様なことは現実になってみなければどうなるかはわかりません」 ハギヨシ「私から言えることは、その時の自分のやりたい事をすればよろしいかと」ニコ 透華「……」 透華「ハギヨシ、明日の放課後は空いてまして?」 ハギヨシ「はい、空いております」 透華「清澄高校に用事を思い出しましたわ」 ハギヨシ「わかりました。では放課後に車でお迎えにあがります」 透華「よろしく頼みますわ」 透華(はふぅ…) 翌日清澄高校(雨) 京太郎「おーっす!お久しぶりです!」 咲「お帰り京ちゃん」 和「お帰りなさい須賀君」 優希「お、犬が帰ってきたじぇ」 久「えらく元気ねぇ」 京太郎「えぇ、早く強くなった俺の実力を見せてあげたいです!」 優希「犬のくせに生意気だじ ぇ」 久「あらあら じゃあ早速やりましょうか」 咲「京ちゃん、お手並み拝見だよ?」クスクス 京太郎「ツモ」 久「え?まじ?」 咲「京ちゃんほんとに強くなったね~驚きのろきだよぉ~」 和「そんなオカルトありえません!」 優希「…犬のくせに……」 久「ってもうこんな時間ね」 久「じゃあ今日はここまで、解散!」 優希「くそぉー!明日覚えておくんだじぇ犬!」 和「SOASOASOA」 咲「京ちゃんまた明日ね」 京太郎「ああまた明日なぁ」 久「……」 京太郎「……」 京太郎「久、寂しかったよ」ギュ 久「私もよ?まったく彼女にこんな思いさせて」ギュ 京太郎「でも、武者修行だなんて言い出したのは久だろ?」ギュー 久「あなたの為に思ってやったのよ」ギュー 京太郎「じゃあ我儘言うなよ」 久「我儘言うのは女の子の特権よ?フフ」 京太郎「……久」 咲「……京ちゃん」 京太郎「ん」チュ 久「んん」チュー 京太郎「ぷは、やばい興奮してきた」 久「フフ、変態さんね?」クスクス 咲「京ちゃん…何してるの?」 京太郎「な、なんでこんなところにいるんだ!咲!」 咲「ねぇ・・・なにしてるの?」 京太郎「お前には関係ないだろ!」 咲「何言ってるのかな?京ちゃん」クスクス 咲「私には幼馴染として、ううん将来のお嫁さんとして京ちゃんを守って幸せにする義務があるんだよ?///」 咲「だから・・・そんな害虫から離れてよ 早く駆除しないと」 京太郎「お前・・・変だよ・・・」 久「・・・」 咲「なにかな?なにか言いたげそう顔してるけど、何?遺言?そんなの知らないよ。それより死なないの?死んでよ!死ね!」 咲「今なら、自殺か私に殺されるか選ばしてあげるよ・・・竹井さん」フフ 久「私たちの関係は元々知っていたの?」 咲「いえ、ただ京ちゃんの近くに最近雌豚がいる気配がしていました」 咲「だけど京ちゃんはなかなか動かない、いやもしかしたら知らないところで動いてたのかな?」 咲「そんな時、部長が京ちゃんを武者修行にだした」 咲「数週間もあれば男子高校生なんて彼女と会いたくなるにきまってると思いました」 咲「だから私は京ちゃんをずっと監視していました」 咲「そしたら、案の定最終日に尻尾をだしてくましたよ」フフフ 久「そう……」 久「咲、あなたがどんな思いで須賀君に接してたか知らないけどね」 久「須賀君は私のことが好きなの」 久「そして私も須賀君のことが好きなの」 久「あなたには悪いけどあなたの方が邪魔よ」 咲「そんなの知らないよ」 咲「どうせたぶらかしたんでしょ?」 咲「このビッチが!!」 咲「京ちゃんから離れろ痴女、アバズレ!!」 久「っな! 私と須賀君は愛し合ってるの!!」 久「それの何が悪いの?」 咲「すべて」 咲「全てだよ。そんなこともわからないの?京ちゃんは迷惑してるんだよ。」 咲「ね?そだよね?京ちゃん」 京太郎「俺は久のことが好きだ。 お前が狂ってるんだ」 咲「え?なに?」 咲「意味わかんない意味わかんない意味わかんない意味わかんない意味わかんない意味わかんない意味わかんない」 咲「……」 咲(そうか……京ちゃんまだよくわかってないんだね) 咲(その女が生きてるから京ちゃんがおかしくなってるだね) 咲(待っててね)ッバ! 咲(迅速にその豚殺すから)ッダ! 久「え?」 京太郎「なっ!」 咲が壊れたかと思った直後、いきなり鞄に手を乱暴に突っ込んだかと思うとよく切れそう包丁を手に掴んでいた。 俺がそれを包丁と認識した時には視界の半分が真っ赤にそまった。クジラの潮吹きのように留めなく血が最愛の 人の首から出ていた。何が起きたのわからなかった。咲はその首元を包丁で切り裂いたあとそのまま動かない人を 押し倒した。そして馬乗りになりめった刺ししはじめた。最初は胸次は腹次は腕次は顔。いたるところ豪雨のように もう誰かさえわからないように。一瞬だけ見えた咲の表情は、 長野県予選決勝の天江衣に優勝をきめる決定打を打ちこんだ時のように、 いやそれ以上の狂喜の顔だった。 包丁の雨が止むと彼女は立ち上がり俺の方を向いた。 満面の笑みで、しかし顔にはべっとり血をつけて…その様はまさに魔王。 彼女はそのまま俺の方に向かって歩き出し、こういった 「邪魔者は私が消したよ?褒めて京ちゃん」 と 、 邪魔者?どこに?お前のことだろ?俺はもうわけがわからなくなっていた。 気づくと俺はなんなのかわからない人を抱き上げ 嗚咽を漏らしていた。何をしているのかわからない表情で こちらを見ている彼女は、だんだん怪訝な顔をし始める。 しかしそんなことはどうだっていい。恐怖よりも畏怖よりも 何よりも悲しみの感情しか溢れてこない。俺はすがるように彼女に頼んだ 「殺してくれ」と 彼女は最初とても嫌そうな顔をした。少し思いつめたような顔をした。 そして京ちゃんんの頼みなら仕方ないと大丈夫体はちゃんと保存してあげるとそういった。 ハギヨシ「透華お嬢様おつきになりました」 透華「えぇ?!もうつきましたの」 透華「あぁ心の準備が…」 ハギヨシ「では行ってらっしゃいませお嬢様」ニコ 透華「えぇ…どんな結果でも受け止めてみせますわ!」 そういうと彼女は清澄高校麻雀部部室を目指し歩き出す。雨のせいで少し歩きずらそうだ。 しかし今の彼女にとってそんな些末なことはどうだっていい 自分の人生で初めての好きな人に会えるのだから。思いを告げるのだから。 玉砕されるのは百も承知。でも万が一があるかもしれない。そんな小さなことを願い、思い彼女は歩く。 透華「つきましたわ」 透華(行きますわよ) 透華「須賀京太郎はいます…」 咲「あ いらっしゃい龍門渕の…今ちょうど面子が足りなかったんだよ」 咲「そこに座ってよ。麻雀しよ?」 乙女の思いに溢れた彼女の前に広がる光景は地獄だった。卓の対面に咲が座り、右隣りにはなにかわからない人らしきもの。 左隣には首のない恐らく男子生徒と思われる人。そして彼女にとっての最大の地獄は人生で初めての想い人の頭が 、頭だけが咲の膝の上で大事そうに抱かれていたことである。 咲「麻雀って楽しいよね!」 おしまい
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281788196/ 清澄高校麻雀部 ガチャッ 京太郎「ふぃー、疲れたぜ―」ドサッ 咲「あっ、京ちゃんおかえり」 まこ「買い出しご苦労さん」 京太郎「いえいえ、これも部のためですから」 優希「それでこそわたしの犬だじぇ」 京太郎「誰が犬だ。それより今卓空いてる?」 和「ごめんなさい。今から私とゆーき、宮永さんと染谷先輩で打つので…」 京太郎「そっか……じゃあ俺はいつも通りネトマでもやるか…」 久「あっ、須賀君今手空いてるなら、 この書類整理手伝ってくれない?」 京太郎「あ、はい…分かりました」 久「あとこれ終わったら、もう一回買い出しに行ってくれない?」 京太郎「ええっ!? 今行ってきたばかりじゃないですか」 久「今週の金曜に、急きょ四校合同合宿をすることが決まってね…… 色々と必要になっちゃったのよ」 まこ「まあこれも麻雀部のためじゃ、頑張りんさい」 京太郎「はぁ…」 そして二時間後、大量の荷物を抱えて京太郎は麻雀部に帰還した。 京太郎「くそー、一日に二回も買い出しなんて…」 ガチャッ 京太郎「ただいまみんな…」 久「―――では、今日の部活はこれまで! 解散よ」 優希「終わったじぇ! 咲ちゃん、のどちゃん、帰りにタコス食べよー?」 和「またですか」 咲「あはは…」 まこ「おっ、京太郎帰っとたんか」 久「お疲れー。今日はもう終わったから、そこに荷物置いて帰っていいわよ」 京太郎「………はい」 そして四校合宿当日 予算の少ない清澄高校は徒歩で会場へと向かっていた。 京太郎「ゼェ…ゼェ…クソ重いぜこの荷物……」ヨロヨロ… 久「須賀くーん、遅れてるわよ―!」 優希「何やってるじぇ犬~! 置いてくじょー?」 京太郎「ハァ…ハァ…今行くよ!!」 京太郎(こんな重い荷物しょってまともに歩けるわけねーだろっ!) 京太郎(とはいえ、今日の合宿は楽しみだ。なんせ俺以外は全員女子だからな……) 京太郎(いつもロクに牌に触らせてもらえず、雑用ばっかりで パシリ同然の扱いだけど、それに耐えてきた甲斐があったというもの…!) まこ「お、ここか…」 優希「着いたじぇ~」 京太郎「やっと…やっと辿りついた……」バタンッ 久「さ、みんな入りましょう。 あと須賀君、今日はお疲れ様。 その荷物を私たちの部屋まで運んでくれたら帰っていいわよ」 京太郎「へっ?」 まこ「言ってなかったかのぅ? さすがにこの年頃の女子と男子が ひとつ屋根の下というのはマズイんじゃ」 和「わたしたちだけならともかく、他の学校の方もいますし…」 久「ごめんね、須賀君にもおみやげ買ってきてあげるから」 優希「じゃあ達者でな、犬!!」 京太郎「………」 先に来ていた風越と龍門渕に続き、鶴賀の面々が遅れて到着し、 四校合わせて二十人全員が、旅館の玄関ホールに集合した。 久「さて、本日はお集まりになっていただきましてまことに…」 透華「堅っ苦しいあいさつは抜きでお願いしますわ!」 久「あらそう? じゃあさっそくみんなで行きましょうか」 ゆみ「行くってどこに?」 久「決まってるじゃない! 温泉よ!」 ワイワイ キャッキャッ 優希「ふぅー、気持ちよかったじぇー」 和「そうですね」 久「ではこれから自由時間にしたいと思いますが…」 一同「異議なーし」 鶴賀の部屋 妹尾「いいお湯でしたねー」 モモ「先輩、これから一緒に露天風呂行きませんか?」 ゆみ「ああ、いいぞ」 蒲原「ワハハ―、仲がよろしいことで。 佳織、ちょっと外に散歩しに行かないかー?」 妹尾「いいよ智美ちゃん」 睦月「あ…じゃあ私はここにいますね」 バタンッ 睦月「みんな出て行ったか…」 睦月(一人売れ残るのはやっぱり寂しいな…) ゴロッ 睦月は畳に寝転がると、仰向けになって天井を見つめた。 睦月(みんなが戻ってくるまで、天井の染みでも数えようか…) ドスッ 睦月「!?」 ズブズブズブ… 睦月「なん…だ…これ……」 睦月の首から何かが生えてきた。銀色に光る切っ先、ナイフの先端だ。 睦月「うあ……」 ドピュウウウウウウウウウ 喉仏のあたりから、まるで噴水のようにばしゃばしゃと血がわき出ている。 睦月「か……は……」 ものの一分もしないうちに、津山睦月はこと切れた。 蒲原「ワハハー、風が気持ちいなー」 妹尾「緑がきれいだね、ここ」 蒲原と妹尾の二人は、合宿場から少し離れた森の近くを歩いていた。 蒲原「ふー、ちょっと休憩」ドサッ そう言って蒲原は近くの木に寄りかかった。 蒲原「いやー、それにしても良かったよ」 妹尾「なにが?」 蒲原「この合宿に呼ばれたことだよ」 蒲原「あの試合が終わって、もう三年はやることがなくなったと思った」 蒲原「でもこの合宿に参加することで、また五人で活動することが出来るからさ」 妹尾「智美ちゃん、私や他のみんなも嬉しいよ」 蒲原「ワハハー、きっと一番喜んでるのはゆみちんだろうなー」 妹尾「きっとそうだね」 蒲原「ワハハー」 ヒュルルルルル……ドスッ!! どこからか飛んできた大斧が、蒲原の顔面に突き刺さった。 蒲原「ワハ…あばば、ががががががががががっ」ピクッピクッ まるで不気味なダンスを踊るかのように、蒲原の身体ががくがくと痙攣し始めた。 口からは壊れたスピーカーのように、同じ単語が発せられている。 異様に重くなった頭部バランスに耐え切れず、蒲原の体はその場に倒れ伏した。 妹尾「ひゃぁああああああ…」ヘナヘナ~ ザザッ 妹尾(し、茂みの奥から誰か出てきた……ナイフ持ってる!) ザッ…ザッ…ザッ…ザッ… その人物はゆっくりと佳織に接近してきた。 妹尾(あああ…体が動かない……) スッ 佳織の喉元にナイフが押し当てられた。切っ先の冷たい感触が伝わってくる。 妹尾「た…助け……」 スパッ ブシュウウウウウウウウ…… 露天風呂 モモ「先輩、せんぱーい」イチャイチャ ゆみ「こ…こら、あんまり引っ付くなよ」 モモ「そんなに嫌っすか?」 ゆみ「いや…そういうわけじゃないが…」 モモ「ここなら誰もいませんから、恥ずかしがることないっすよ」 ゆみ「なぁモモ…」 モモ「なんすか先輩?」 ゆみ「今回の合宿の誘い……私はとても嬉しかったんだ。何故だか分かるか?」 モモ「うちみたいな無名校が、また龍門渕みたいな強豪校と 打てる機会を与えられたからっすか?」 ゆみ「それもある。だけど一番の理由は、こうしてまたお前や他の三人と 一緒に行動することができるからだ」 モモ「先輩…」 ゆみ「今回の件で気付いたんだ。私はお前や他の三人ともっと一緒にいたい。 みんなのことが好きなんだ……」 モモ「せ、先輩……私も大好きっすよー!!」ガバッ ゆみ「うわっ、こんなところで抱きつこうとするな―!!!」 ズブシャァァァァッ!!! ゆみ「……えっ?」 ゆみには何が起きたか一瞬分からなかった。 ピチャピチャ… モモの腹から、鋭利な刃物の切っ先が飛び出している。 モモ「せ…せんぱ……」 ゆみ「モ…」 ズバァァァァァァァ! ブシュゥゥゥゥ…… 刺さったままの刃物が振り上げられ、モモの身体がぱっかと真っ二つに割れた。 ゆみ「うわぁっ…」 グサッ 叫び声をあげる前に、ゆみの胸にも刃物が突き刺さった。 清澄の部屋 藤田「よう、遊びに来たぞ」 まこ「藤田プロまで来とったんですか?」 藤田「ここに来ればいろんなやつと打てると思ってな。個人的には鶴賀の加治木と打ってみたい」 久「そうね。まこ、悪いけど加治木さん呼んできてくれない?」 まこ「ほいほい」 鶴賀の部屋 トントン まこ「すいませんー、加治木さんおりますかー?」 まこ「返事がない……入りますよ―?」ガラッ シーン まこ「あれ? 誰もおらん…」 まこ(仕方ないのう、書置きでも残していくか) まこ「えーっとメモ帳は確かここらへんに…」 ブスッ! まこ「ぎゃあああ!」 ドタッ まこ「ぐあああああ、足が…」 ???「ふふふっ……」スッ まこ「お、お前は…」 ???「ははっ、いい気味だ…俺と同じ空気のくせに、先輩だからって調子乗りやがって」 まこ「お前一体何を…」 ???「このアイスピックを口に突っ込んでやるよ」 まこ「や、やめ…」 ドスッ ズブズブズブ…… まこ「あがっ…うがががががっ」 ビチャビチャビチャビチャ… 再び、清澄の部屋 久「まこのやつ遅いわね―」 藤田「まあこっちはこっちで楽しいが…」 池田「ツモ! 裏はめくらないでおいてやる!」 優希「タコスうまいじぇー」パクパク 藤田「ウザいのがたまにキズだな」 池田「あー楽しかったし! それじゃ華菜ちゃんは部屋に戻るし!」タッタッタッ… 優希「また来いよ―、イケダ―」 藤田「さてと、私もそろそろ行くか。次は衣に会いにいこう」 久「子供好きも大概にしなさいよ。それじゃまた明日」 ガラガラ……ピシャ! 優希「みんな出て行っちゃた。退屈だから外行ってくるじぇー」 久「はいはい、わたしもトイレ行ってこよーっと」 風越の部屋 池田「みんなー、ただいま帰ったし!!」ガラッ 池田「ってアレ? もう布団が敷いてあるし」 室内には五人分の布団が敷かれており、そのうち四つには誰かが入っていた。 どうやら池田以外の四人が寝ているようだ。 池田「やだなー、みんなもう寝るのか? いくらなんでも早すぎだし!」 池田は一番近くで寝ていた文堂の体を揺すった。 池田「おいブンドー、起きろし!」ユサユサ 文堂「………」 池田「よーし、起きないなら布団はがしの刑だ!!」ガバッ ゴロン… 池田「…えっ?」 池田の足元に、文堂の生首が転がってきた。 池田「ひっ…ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 布団はがしの衝撃で、首のない胴体が寝返りを打つ。 池田(文堂が死んでる………アレ? ひょっとしてこれみんな……) 池田は震える手で、文堂の隣に寝ている福路の布団をめくった。 池田「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 福路「………」ダラダラ… 池田(キャプテンが…キャプテンの目が両方とも抉られてる……!) 池田「むごい……むごすぎるし…… 一体だれがこんなことを…」ガクガク… 池田(はっ! 早く警察に電話しないと!!) バッ 池田「むぐぅ!?」 ???「動くな…」 池田「ふがっ、ふいやなせっ」 スチャ 池田の首筋にノコギリが押しつけられた。 ギコギコギコギコギコギコ… 池田「ウガァッ! ムグゥ……!!」ジタバタ ギコギコギコギコギコギコギコ… 池田「フガーッ! ムググググググググ゛…」ジタバタ ブシュウウウウ ピチャピチャピチャピチャピチャ 池田「ガッ………」ガクッ 清澄の部屋 久「ふー、すっきりした」 久(さてと、明日のスケジュールは…) ガタッ 久「えっ?」 久(今…確かに物音がしたわよね…?) 久「誰かいるの?」 シーン 久(……気のせいか) グサッ! 久「うっ!」 久「痛っ…たっ、手が…」 ???「もういっちょ」 ブサッ! 久「きゃぁぁぁ!」 ???「両手を杭で刺されて磔け……聖書のキリストみたいですよ、部長」 久「あ…あなたは…」 ???「部活じゃまるで神様気取りのあんたに散々こき使われてきた。今度はこっちの番ですよ…」 久「な、何をする気なの……」 ???「まだまだ杭はたっぷりありますから……一本ずつ打ちこんでいきましょう」 久「ひっ……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 龍門渕の部屋 ガラッ 藤田「おーい、衣はいるかー?」 一「あ、藤田プロだ」 透華「残念でしたわね。今、衣はともきーと純の三人で露天風呂へ行ってますわ」 藤田「そうか、だったら戻ってくるまでここで待たせてくれ」 透華「あなたホントに衣が大好きなんですわね」 一「せっかくだから、ボクらと麻雀でも打ってましょうよ」 藤田「ん、そうしようか」 玄関ホール 咲「ただいまー」 優希「咲ちゃん、それにのどちゃんも! やっと帰ってきたかー」 和「おみやげを選んでたんですが……咲さんが時間がかかって」 咲「えー、和ちゃんの方こそ、選ぶのに時間かかってたじゃない」 優希「おっ、二人ともいつの間にお互いを名前で呼び合うようになったんだじぇ? さては、何かあったなー?」 和「ち、違います! 遅くなったのは、咲さんが途中何度も迷子になりかけたからで…… 別に二人で神社とかに行ってたからでは……ゴニョゴニョ」 咲「和ちゃん……は、恥ずかしいから、あんまり言わないでよぅ…」モジモジ 清澄の部屋 ガラッ 優希「部長ー、二人が戻ったじぇー」 シーン 咲「あれっ、誰もいないよ?」 和「もぬけの殻ですね」 優希「おかしいじぇ、さっきまでいたはずなのに」 咲「急用ができて、どこかに行ったんじゃないの?」 優希「それにしても変だじぇ。染谷先輩もまだ戻ってないし…」 咲「染谷先輩も?」 優希「鶴賀の大将さんを探しに行ったきりだじぇ」 和「何かあったんでしょうか?」 優希「分からないじぇ……三人で手分けして探さないか?」 和「わかりました。それじゃ私はこっちを…」 咲「私はあっちを見てくるね」 優希「見つけたら連絡してくれー」 龍門渕の部屋 透華「遅いですわね、衣たち」 一「ちょっと長風呂すぎるよね」 藤田「うーっ、もう我慢出来ん! ちょっと風呂場覗いてくる」 透華「幼女の風呂を覗き見……ド変態ですわね」 一「警察呼びますよ」 藤田「お前に言われたくない」 透華「ふぅー、藤田プロの衣好きも困ったものですわ」 一「そうのち、『嫁にする!』 ……とか言ったりして」 透華「不純ですわっ! その……女同士が結婚など……」 一「えっ…そう、かな…?」ズキッ 透華「はじめ…どうしましたの?」 一「じ、じゃあ……ボクの透華への想いも、不純ってことになるのかな…?」 透華「は、はじめ…あなた何てことを……///」カァァ 一「透華、ボクは……」モジモジ 「うわぁああああああああああああああああ!!!!」 バタバタバタバタバタバタバタッ ドッシャーン! 透華「何ですの? 廊下が騒がしいですわ!!」 一(いいとこだったのに……) タッタッタッタッタッ… 透華「誰か走ってきますわね…」 ガラガラッ 藤田「ハァ…ハァ…」 透華「藤田プロ! 一体何の騒ぎですの?」 藤田「お前たち、早く逃げろ!! やつがすぐそこまで…」 ドッ! 藤田「き…て……」ドサッ… 透華「きゃああああああああああ!!!」 一「これ、本物の投げナイフだ。一体誰がこんなものを…」 透華「そんなのどーだっていいですわ! 早く逃げないと…」 ???「残念ながら逃げ場はねえ」スッ 透華「!!」 ???「出口はこうして俺が塞いでいる……さぁ、このナイフで切り刻んでやるよ」スチャ 一「くっ、透華下がって!」バッ ???「くくっ、安心しなよ……お仲間は全員俺が始末した。残ってるのはあんたらだけだ…」 透華「あなた…あなた一体なんですの!?」 ???「俺かぁ? 俺は須賀京太郎……清澄麻雀部の犬さ」 和「咲さん!」 咲「和ちゃん! さっきの悲鳴聞こえた?」 和「はい…それと、部長がいるかもと思って、風越の部屋に行ったんですが…… 誰もいなかったんです」 咲「私もさっき同じこと考えて、鶴賀の部屋に行ったんだけど……やっぱり誰もいなかったよ」 和「咲さん……私には、何か大変なことが起きている気がしてならないのです」 咲「私もそう思うよ。ところで優希ちゃんはどこに……」 優希「きゃあああああああああ!!!」 和「ゆーきの悲鳴? あっちの方からです!」 龍門渕の部屋 優希「あああああ……」ガタガタ… 咲「どうしたの優希ちゃ……あっ、ああああ…!」 和「いやぁあああああああああ!!!」 部屋の中は一面、血の海だった。 扉付近には、額にナイフが突き刺さった藤田プロの死体。 部屋の奥には、全身メッタ刺しにされた透華と一が横たわっていた。 咲「うおぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 和「ひ…ひどすぎます……誰がこんな…」ガタガタ… 優希「と、ともかく…警察を呼ぶじぇ」 咲「う、うん……早く呼んでよ」 優希「あれ? 私の携帯がない!?」 和「ええっ、こんなときにですか?」 咲「わたしはケータイもってないし……和ちゃんのは?」 和「はい、ここに……ってあれ? 私のもない!?」 優希「へ、部屋に戻ればあるかもしれないじぇ!!」 清澄高校の部屋 咲「ダメだ…一個も残ってないよ」 優希「こうなったら他の部屋から借りるしかないじぇ」 和「でも、他の部屋には誰もいなかったんですよ?…… も、もしかしたら……」 咲「まさか…」 優希「生き残ってるのはこの三人だけかもしれないじぇ」 ブツッ 和「きゃ!」 咲「停電……」 優希「これは……犯人がまだここにいるってことだじぇ!」 和「でも一体だれがこんなことを……何故私たちを狙うんでしょう……」ガタガタ… 優希「それは分からないじぇ…」 咲「わたし……犯人に心当たりあるかも」 優希「えっ?」 和「一体誰なんですか?」 咲「……京ちゃん」 優希「ま、まさか……きょうたろーにそんなことが出来るわけないじぇ」 和「そうですよ咲さん……だいたい須賀君がみんなを殺す理由がありません」 咲「……二人とも気付かなかったの?」 和「何にですか?」 咲「部活の時、京ちゃんいっつも哀しそうな目をしていたよ。 みんなと打たせてもらえなくて、かなり苛立ってたみたいだし……」 優希「確かに……部長は京太郎をパシリとして使いすぎだったじぇ」 咲「京ちゃん、今回の合宿にも行きたがってたみたいだし……きっと、行けなかったのが悔しくて私たちを……」 和「でもっ、だからってみんなを殺すのはやりすぎです!!」 ドンドンドンドン!! 和「ひっ!?」 ドンドンドンドン!! 京太郎「咲…いるんだろ……? 俺だ、京太郎だ!」 咲「きょ…京ちゃん……」 京太郎「いないのかー? 和、優希、誰でもいい……ここを開けてくれ!」 ドンドンドンドン!! 和「ひぅ……」 優希「ど、どうするじぇ!?」 咲「和ちゃん優希ちゃん、あの窓から外へ逃げよう!!」 ガラガラッ 咲「さ、早く外へ!!」 優希「目の前に森があるじょ! あそこに逃げるじぇ!!」 ザッザッザッザッ… 優希「この中へ逃げ込めば、やつもこっちを見失うかも…」 和「きゃ…須賀君が追って来ます!!」 京太郎「待て―!! 逃げるな―!!」ダッダッダッ 咲「走って! もっと速く!!」 三人は森のさらに奥深くへと逃げて行った。 タッタッタッタッタッ… グギッ 和「痛っ…」ドサッ 咲「和ちゃん!」 和「足を…挫いたみたいです…」ズキズキ 咲「早く立って! 追い付かれるよ!!」 和「ダメです…もう走れません……」 優希「あっ、あそこに小屋があるじぇ!!」 咲「よかった! あそこへ逃げ込もうよ!!」 優希「のどちゃん、立てるか?」 和「ええ、なんとか……」ヨタヨタ 咲「肩を貸すよ」 二人がかりで和を支えながら、咲たちは小屋に辿り着いた。 ギィ バタン! 咲「ハァ…ハァ…」 優希「何とか…辿りつけたじぇ」 和「ここは……どうやら物置のようですね」 木でできたその小屋の壁には、森林伐採用のチェーンソーやマチェットに ナタや斧、各種ナイフ類まで、大小様々な刃物が掛けてあった。 優希「そ…それで、京太郎のやつはどうしたんだじぇ?」 咲「私たちを見失ったのかな?」 和「だといいのですけど…」 優希「外の様子を窺いたいのは山々だけど……この小屋には、窓がついてないじぇ」 和「もしかしたら小屋の外で待ち伏せてるのかも。 油断はできませんよ」 二十分後 咲「ねえ…もう大丈夫かなぁ…」 和「分かりません…さっきから不気味なくらい静かです」 優希「きょうたろーのやつ、もういなくなったのか?」 咲「わたし、ちょっとだけ外を見てくるよ」 和「ダメです咲さん! ここにいないと」 咲「ごめん和ちゃん……でも、私耐えられない。ここにずっと閉じこもってると、気が狂いそうになるんだよ」 咲「もし外に京ちゃんがいなかったら、一気に森を出て街にでようよ。そして警察に駆け込むの」 優希「わかったじぇ咲ちゃん。それならこの私も着いてくじぇ。いざとなったら、私が咲ちゃんを守る!」 咲「ありがとう、頼りにしてるよ優希ちゃん」 和「そんな、置いてかないでください!」 咲「ちょっと周囲を見て、安全を確認するだけだよ。逃げる時は和ちゃんも一緒だから…」 和「……分かりました。それなら用心のためにこれを」スッ 咲「ナイフを?」 和「ゆーきもです。須賀君は恐らく凶器を持っているでしょうから、これくらいの備えがなければ」 優希「分かったじぇ」スチャ 和「気をつけてください二人とも…幸運を」 咲「うん、ありがとう」 ギィ バタン… 和(はぁ……二人とも出て行ってしまいました。少しの間だけとはいえ、こうなるととても不安です…) そう思って、和は室内をぐるっと見渡した。 和(もし万が一、このスキに須賀君が襲ってきたとしたら……私もなにか武器を持たなければ……) 痛む足を引きずりながら、和は壁に立てかけてあったマチェットを手に取った。 和(重い……でもこれなら、軽く当たっただけでも威力が凄そうですね) ドンドンドンドン! 和「……」ビクッ ドンドンドンドン! 京太郎「おい、誰かいるんだろ!?」 和「須賀く…」 京太郎「開けろー! 開けてくれ―!!」ドンドン! 和「いやぁあああ!!」 バターン! 和は勢いよく小屋の扉を開け放った。 京太郎「うわっ!」ドシーン 和「来ないでええええ!!」 京太郎「和!」 ブンッ 和は思いっきり振りかぶった山刀を振り下ろした。 ブシュ! 京太郎「ぐあっ!」 肩を狙ったつもりが、ほとんど空振りに近い状態でかろうじて足に当たった。 一応ダメージは与えられたものの、傷は浅いようだ。 和「いやああああああああああ!!」 和は悲鳴をあげながら、京太郎に背を向け走り出した。 タッタッタッタッ… 和「ハッ…ハッ……」 和は足が痛いのも忘れて、必死に走り続けた。 和(あれは……?) 前方に、誰かが倒れている。 和(あの顔……見覚えが…) 天江衣の死体だった。 和(うっ……!) どうやら溺死させられたらしく、腹はパンパンに膨れ上がり、肌は青白く変色していた。 和(そんな………他にも?) よく見れば死体はそれだけでなかった。 衣の傍には、口内にアイスピックを突き立てられた染谷まこの死体が。 その真横にある木には、まるでキリストのように、竹井久が磔にされていた。 こちらは全身に何十本もの杭を打ちこまれている。 和「いやっ! いやぁあああああああああ!!!」 和は再び、無我夢中で走りだした。 走りながらも彼女の視界には、惨殺された死体の数々が飛び込んできた。 首をねじ切られた沢村智紀が。 裸で木に吊るされている加治木ゆみが。 お魚くわえた池田の生首が。 姿を消していた彼女の知り合いたちが、死体となって次々と出てくる。 まるで、映画「13日の金曜日」のクライマックスのように。 和「誰か…誰か助けてっ……」 和は祈るように呟いた。 すると前方に、誰かがしゃがみこんでいるのが見えた。 和(また死体?) いや、その誰かは動いている。どうやら死体ではないようだ。 そしてあの後ろ姿は―― 和「咲さん!」 和(よかった…こんな所にいたんですね……) 和(って、安心している場合じゃありませんでした。須賀君はすぐそこまで来ているのに…) 和「咲さん! 早く逃げ…」 ドシュドシュ ビチャビチャ… 和「えっ?」 ザクッザクッザクッザクッ… 優希「あっ……あっ……」ピクッピクッ 咲「えへへへへへ……」ザシュッザシュッ 和「咲さん…一体なにを……」 咲「あ、原村さん! ちょうどよかった、次は原村さんの番だからちょっと待っててね」 和「あなたが…あなたが犯人だったんですか……?」 ザクッ バキン! 優希「………」ピクピク 咲「あーあ、ナイフの柄が折れちゃった。 まあ予備持ってるからいいけどね」 そう言って咲はスカートの中からサバイバルナイフを取り出した。 咲「さ、今度は原村さんだよ」 和「なんで…なんでなんですか咲さん! どうしてこんなことを……」 咲「京ちゃんのためだよ」 和「須賀君の…?」 咲「そうだよ。いっつも部活ではパシリ扱いで、一人だけ男だからって冷遇されてる。 私はそんな京ちゃんが可哀そうで見てられなかった……」 咲「今回だってそうだよ、合宿に一人だけ誘われなかった。 みんなが楽しんでるのに、京ちゃんは一人ぼっち。だからみんな殺すの。これは京ちゃんの望みなんだよ」 和「そんな……いくらなんでも須賀君が殺しを望むわけがありません!!」 咲「望んでるよ。だって私には、京ちゃんの声が聞こえるんだもん」 和「はっ!?」 咲「そうだ咲、あいつを殺せ……あいつを殺せ……」ブツブツ… 咲「だってさ原村さん。覚悟してね」 和「さ、咲さん……一体何を言ってるんですか?」 咲「だからー、私には京ちゃんが何を考えてるかわかるんだってばー」 咲「そうだ。 俺が……俺たちが須賀京太郎だ」 和(この人……狂ってるっ!) 咲「安心してよ。原村さんは、なるべく痛くないように殺すからさ」 和「や…やめて……」 咲「俺も残念だぜ和……俺はお前のこと好きだったのに……」 咲「そうだよ。京ちゃんは原村さんのこと好きだったのに、 いつも原村さんは冷たい目で見てたよね……私はそれが許せない」 和「あ…ああっ……」ガタガタガタ… 咲「じゃあね、原村さん」ヒュッ 京太郎「危ねえ!!」ドカッ 和「きゃっ…」 スカッ 咲「京ちゃん…?」 京太郎「咲! お前なにやってんだよ!!」 咲「なにって……これは京ちゃんが望んだことでしょ?」 咲「そうだ、これは俺が望んだことだ」ブツブツ… 京太郎「お、お前は一体何を言ってるんだ…?」 和「須賀君! 彼女は頭がどうかしているんです!!」 京太郎「くそっ、どうしちまったってんだよ咲!!」 咲「あははっ! 京ちゃんどいて、そいつ殺せない!」 ビュッ! 京太郎「うわっ…本気かよ……」 咲「そりゃそうだよ、これは京ちゃんが命じたことなんだから… 京ちゃんが本気なら、わたしも本気に決まってるじゃない」 咲「そうだ。俺が本気で、咲が本気で、お前も本気で…お前は俺で……」ブツブツ… 京太郎(ダメだ、完全に頭がイカレちまってる…) 咲「誰にも邪魔はさせないよ…たとえ京ちゃん自身であっても!!」 ブスッ! 京太郎「ぐわあああっ! 痛ってえ、足が……」ドサッ 咲「京ちゃんは殺さないよ。そこで大人しくしててね」 京太郎「ま、待て…行くな……」 咲「さあ、原村さん…」 和「くっ……」 和(逃げなければ……) しかし、忘れていた痛みを思い出したように、挫いた足が動こうとしない。 咲「これで終わりだね、京ちゃん……ああ、そうだな咲!」 和(殺されるっ……!) 和は両手をぎゅっと握りしめ…… そこで自分がまだ、あの山刀を固く握りしめたままだったということに気が付いた。 和(そうだ…! 無我夢中で、すっかり忘れていた……) 咲はもう目の前に来ていた。 彼女は余裕たっぷりの動作で、サバイバルナイフを大きく振り上げた。 咲「さあ、死んで原村さん……死ね、和……」 和(……!!) 和「うわああああああっ!!!」 ズシャァァッ! まるで映画のように、気持ちいいくらいまでにスッパリと、 咲の首が胴体から切断されて宙を舞った。 咲「あっ……」 咲の口から、空気の漏れるような音がした。 切断からワンテンポ遅れてナイフが振り下ろされ、空を切った。 そして、首を失った胴体は地面に崩れ落ちた。 ドシャッ 和「はぁ…はぁ……」 京太郎「お、終わった…」 こうして、犯人が生存者に返り討ちにされるという 衝撃の結末で、この事件は幕を下ろした。 犯行に使われた凶器はほとんどが現地調達されたもので、 和たちが逃げ込んだ小屋にあったナタなどから、咲の指紋が検出された。 事件の被害者は四校の生徒計十八名の他に、 遊びに来ていた藤田プロや宿の従業員などを合わせて三十人近くにのぼった。 全て、13日の金曜日に起こった事件である。 一ヶ月後 和「みんな、ここに眠っているんですね」 京太郎「ああ。部長や染谷先輩に優希……そして咲も」 京太郎と和は二人で墓地に訪れていた。 ここは惨劇の舞台となった合宿場の近くに造られた墓地で、 今回の事件の被害者たちが埋葬されていた。 京太郎「咲……お前はどうしてあんなことを…」 京太郎が咲の墓の前で泣き崩れるのを、和は静かに見守った。 彼女は京太郎にとても感謝していた。 あの日、彼が律儀にも部室に残されていた忘れ物を届けに 再び宿を訪れなければ、彼女は恐らく咲に殺されていただろう。 和「須賀君…ありがとう」 京太郎「ああ……」 ひとしきり泣き終えた京太郎が立ちあがった。 その表情は真剣そのものだ。 京太郎「生きよう…みんなの分まで」 和「はい。彼らのことを忘れずに…」 様々な想いを胸に、二人は墓地を後にした。 ザッ…ザッ…ザッ… 二人が立ち去った後、咲の墓を訪れる少女がいた。 「咲……」 その少女――宮永照は、愛しむように優しく咲の墓石を撫でた。 照(痛かったんだろう……怖かったんだろう…… 私には、恐怖に怯えるお前の声が聞こえてくるみたいだ…) 照は静かに立ち上がる。その目には狂気が宿っていた。 照「待っててね咲、お姉ちゃんが仇をとってあげるから……」 照「……そうだよお姉ちゃん……殺して、みんな殺して!」 咲-Saki- 13日の金曜日 完