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■警告■ いわゆる虐待設定を使用した作品です。ゆっくりが死ぬシーンや弱肉強食やデタラメ生物設定が苦手な人はプッシュ戻るボタン。 れみりゃの一日。 朝。 「ふわぁぁぁ、朝がきたどー!」 れみりゃは太陽に負けじと大きなあくびをしながら、木の枝の上で大きな伸びをした。 れみりゃは習性として高い木の上で腹を中心にして枝に干されるようにぶらさがって寝る。 胴体があるため、普通のゆっくりのように巣を作って中で寝るといったことは難しいのだ。 れみりゃが住める程度の大きさがある洞窟を偶然発見できた場合は、そこを巣にすることも稀にあるが、自分で作ることはあまりしない。 もっとも、れみりゃはそこそこ大きいため、巣がなくとも鷹や梟に襲われることは少ない。 高いところにいる限りは外敵の心配はほぼない。高い場所にいるれみりゃを狙うのはふらん種くらいであろう。 「うー、おはよう!」 「うー!」「うー!」 起きたれみりゃは、近くの木の枝でぶら下がって寝ていた胴体のない子れみりゃ数匹に声をかけた。 ゆっくりが群を作るものと作らないものがいるように、れみりゃも家族を作るものと作らないものがいる。このれみりゃは前者だ。 だが、この一家に血の繋がりは全くない。たまたま出会って、たまたま一家になっただけだ。 れみりゃの主食であるゆっくりはいくらでも転がっており、外敵も少なく命の危険もあまりないため、 れみりゃ同士には協力感情や敵対感情といったものは基本的に存在しない。 組むこともあるが組まないこともあり、それらは全て完全な気まぐれで決まる。 起きたれみりゃ一家が空をふらふらと飛んでいると、さっそく草むらの中で草を食べているゆっくりの一家を発見した。 「うー、ぷっでぃーん♪」 れみりゃは素早く降り立ち、近くで追いかけっこをしていた赤ゆっくりを捕まえて一口で飲み込んだ。 子れみりゃたちも近くに居た子ゆっくりに牙を立てて襲い掛かる。 「ゆゆっ!? れみりゃだよ!?」 「こっちこないでね! ゆっくりしていってね!」 ゆっくりの親は近くの子供だけ口に含み、れみりゃ付近の子ゆっくりを見捨てて逃げ出した。 取り残された子ゆっくりの助けを呼ぶ声を無視し、親ゆっくりは涙を呑んでひたすら疾走した。 一見残酷な行為に見えるが、野生では仕方のないことだ。下手に歯向かって全滅する方が最悪だ。 子供なんていくらでも作ればいい、それが自然の世界では真理なのである。 だが、れみりゃが一匹で来ているならよかったが、今回は子れみりゃも一緒だ。 れみりゃたちはあっと言う間に子ゆっくりを頂き、ターゲットを親ゆっくりに切り替える。 子供をおとりにした決死の逃亡も虚しく、空中から取り囲まれてあっと言う間に捕まってしまった。 「ぷっでぃん、ぷっでぃーん♪」 「うー♪」「うー♪」 捕まった親ゆっくりたちは、口内の子ゆっくりごと全てその場で平らげられてしまった。 れみりゃに「エサを溜めておく」という習性は基本的にない。 れみりゃは生まれたときから狩りができるため、赤れみりゃに食べ物を調達するようなことはなく、 中身がほかほかの肉まんなので寒中でもよっぽどひどい吹雪でもなければ問題なく行動でき、冬眠や越冬もしない。 ゆっくりの場合、ごくれまに動けない仲間に食べ物を運んでいくことがあるが、 れみりゃはその再生力のおかげで「全く健康」と「死んでいる」の極端な状態しかなく、そういうことはしない。 ただし、何らかの理由で巣を作ったれみりゃは、ゆっくりをその場で食べずに浚って保管(「しまっちゃう」と呼ばれる)する事もあるが、 珍しい現象であまり確認されておらず、研究の進展が待たれるところである。 れみりゃ一家はゆっくりの吸殻を放り捨て、また別の場所に飛んでいった。 そして数時間経ち、夜になる。適当に空を飛んでいると、段差の近くに木の枝や葉っぱの屑が集まっているところを発見した。 よく目を凝らせば、地面の土が不自然に固まり、周辺の草木の中には大きな穴があることが分かる。ゆっくりの巣だろう。 ゆっくりは巣の入り口を葉っぱや木の枝など自然物でカモフラージュするが、 巣には頻繁に出入りするし最終的には内側からしか隠せないため、巣の入り口が大きいこともあってどうしても完璧な隠蔽はできない。 また、内部を増築するためにはどこかに土を捨てなければいけないし、 雨などで大きく動けない日は巣の周りに生えた草を食べる事が多いので、住めば住むほど巣の入り口は更に目立ってくる。 入り口を塞ぐのは風を防ぐにはいいが、他の生き物からすれば一目瞭然だった。 「うー、ぷっでぃん発見だぞ! 入るんだど!」 「うー! うー!」 親れみりゃは子れみりゃに、入り口を指差して指示した。 さすがに胴体付きの成体は狭い入り口に侵入できないので、入るのは子れみりゃの仕事になる。 丸っこいゆっくりの巣はどうしても入り口が広がってしまうので、子れみりゃが入れないことはない。 知性の優れた成体が巣を発見し、子れみりゃが巣を襲う。実に合理的だ。 もっともれみりゃの食事は、昼や夜に出歩いているゆっくりだけ食べられれば足りるので、巣を襲うことは珍しい。これも気まぐれだ。 子れみりゃは空中で勢いをつけて入り口の適当に束ねられた草木を体当たりでぶっ飛ばし、巣にスルスルと入っていく。 子れみりゃは小さい足があるため、狭い場所では這いずる事しかできない通常のゆっくりよりも遥かに早く移動できる。 「ゆ・・・? うわああああ! れみりゃだあああああああ!!」 巣の中でお昼寝していたゆっくり一家が起き、安全なはずの閉鎖空間で逃げ場を失って慌てふためく。 体格と数はゆっくりの方が勝るが、狭い巣の中では体当たりも押しつぶしもできない。 後は噛みつきでの戦いになるが、そうなれば牙という武器があり移動も素早いれみりゃが負ける事はない。 まず、子れみりゃは一家の中で一番大きいまりさに噛み付いて大きく切り裂いて仕留めた。 動けなくなったまりさの餡子を、子れみりゃはちゅーちゅーと吸っていく。 「うわあああああああ!! うわあああああああ!!」 一家で一番大きいまりさがやられたゆっくり一家は必死で逃げ惑い、押し合い圧し合いの大混乱になっていた。 だが、何とか一部のゆっくりは落ち着きを取り戻し、れみりゃが来なかった方の通路を使って巣から脱出した。 巣には別の出入り口があったのだ。 ただし、本来のゆっくりは巣に非常口などを掘ることはあまりしない。 ゆっくりの力では新たな通路を掘るのは重労働だし、そもそも掘ろうとしても穴の中ではどっちが外に通じるか分からないからだ。 実際は貯蓄庫でも作ろうとして、たまたま外に出てしまったのであろう。が、とにかく今回はこのおかげで命拾いをした。 「うー、そっちにもぷっでぃん発見だぞー!」 しかし、せっかく拾った命も数秒で手放すことになってしまった。 入り口でゆっくりを待ち伏せしていたれみりゃたちが、ゆっくりが別の場所から出てきたのに気付いたのである。 ゆっくりの巣の大きさなどせいぜい数メートルしかない。当然、入り口同士の間隔も全然離れていない。 その上ゆっくりには叫びまくるため、せっかく脱出してもどこから出てきたのかバレバレである。 「たーべちゃうぞー!」 こうしてゆっくりと生きていたゆっくりの一家は、一夜で全滅した。 だが死んだわけではない。その生命は今でもれみりゃの血肉と同化して生き続けているのである。 巣に住むゆっくりは皮だけ残して天に昇ったが、巣は残った。 ゆっくりが巣に住まなくなると、土が崩れたり草が生えたりして巣の入り口がより見えにくくなっていくのは皮肉である。 この巣も今は持ち主がいなくとも、いつか偶然発見した他のゆっくりが住むこともあるかもしれない。 ゆっくりが巣を作るのは非常に大変で、最初から完成された巣は貴重だからだ。ゆっくり同士で巣を奪い合うことすらよくある。 巣を見つけたゆっくりが、先客がいたとしても思わず「ここは○○のおうちだよ!」と言ってしまうのも仕方ないだろう。 数十分後、れみりゃ達は大きな木を発見すると、太い枝を探してその上に乗った。 もう時間は完全に真夜中だ。 「ふわああ、おねむだど。zzz・・・」 子れみりゃは逆さまになって足で掴まり、成体れみりゃは腹を中心にして手足をぶらーんと垂れ下げた体勢になる。 そして一家は先ほど食べたばかりなのに、もう眠ってしまった。おいおい、こんなんだから太るんだぞ。 子れみりゃが多数いるこの一家だが、ゆっくりを食べた量は決して決して多くない。一体のれみりゃ辺り、一匹半も食べていないだろう。 れみりゃは非常に小食である。ゆっくりに対して無敵に近い捕食種でも、ゆっくりを食べつくしてしまわないのはそれが理由だ。 それでもれみりゃの数を考えれば、結構なペースで毎日多数のゆっくりが食べられてしまうのだが、 ゆっくりは繁殖力が高いので、ちょうど拮抗している。自然のバランスは非常にギリギリの部分で保たれているのである。 だから人間が下手な手を入れれば、自然なんて簡単に壊れてしまう。 「むにゃむにゃ、さくや、もう食べられないんだぞー・・・」 れみりゃは下膨れした顔をニヤニヤさせながら何やら独り言を言っている。 自分がこーまかんのおぜうさまになった夢でも見ているに違いない。 我々人間も地球の一員として、この不思議な生き物たちの笑顔を失わせないように気を引き締めなければならないだろう。 終 可愛いぜ・・・ -- 名無しさん (2009-05-17 23 02 40) 食物連鎖というか自然の摂理を見た -- 名無しさん (2009-05-25 03 39 33) れみぃはかわいいな -- 名無しさん (2010-11-27 15 22 53) 食べられたゆっくりが可哀相だな。 -- 名無しさん (2012-12-29 01 03 30) 名前 コメント
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「鬼はー外ー、福はー内ー」 「おにはーそとー♪、ふくはーうちー♪」 この季節になるとどこの家からも威勢の良い声と共に豆の散らばる音が聞こえてくる この紅魔館でも例に漏れず豆撒きが開催されていた 「うー☆ うー☆ つぎはあっちにまくどぉ~♪」 「あんまり散らさないでね、片付けるのが面倒だから」 「だいじょうぶだどぉ~♪ でかけてくるどぉ~♪」 「はい、いってらっしゃい・・・ん?」 パチュリーの元を離れ一人で豆撒きを開始するれみりゃ とはいっても広い図書館。豆を撒き散らしながら入口へ向かっていく 「うー♪ こあー♪」 「あら、れみりゃ嬢。どうしたんですか?」 図書館の出口付近で小悪魔に見付かるれみりゃ 不思議そうな目で見て来る小悪魔に事情を説明する 「豆まきしてるんだとぉ♪」 「なんですか?それ」 「おにさんをやっつけるんだどぉ♪」 「鬼を・・・ですか?ここには鬼はいませんよ?」 「このおめんをつけておにさんのかわりをやってほしいどぉ♪」 「こんな感じで良いですか?」 「うー♪ にあってるどぉ♪」 頭につけていたお手製の鬼のお面を小悪魔につけてもらい準備は完了 再び豆撒きの再開である 「ではいきますよ・・・がおー!!たーべちゃうぞー!!」 「うー♪ たーべられちゃうどぉー♪」 「れみりゃ嬢・・・食べられちゃ駄目ですよ・・・」 「そうだったどぉ☆ おにはそと~♪」 「うわーやーらーれーたー!!」 少々大げさなリアクションを取りながら床に倒れる小悪魔 鬼を倒したれみりゃはご機嫌らしく踊っている 「う~♪ かったどぉ♪ うー♪ うー♪」 「いたた・・・はいれみりゃ嬢、お面返しますね」 「ありがとうだとぉ♪ おしごとかんばってねぇ~♪」 とてとてと走っていく背中を見送ったあと自分の回りを見る これだけの豆を持っていたのだ、多分ここだけではない 自分の主と奥でもっと撒いているはずだ 「ふう、図書館の豆掃除今日中に終わるかなぁ・・・」 つい溜息が出てしまうが口元は笑っていた その後も屋敷の中を歩きながらそこかしこに豆を撒いていく 最後に向かったのは門番である美鈴のところ相変わらずシエスタの真っ最中であった 起こさないようよじ登り頭に鬼のお面を乗せる 「うー♪ つぎはめーりんがおにだどぉ♪」 「zzz・・・」 「おには~そと~♪ うっ♪う~♪」 「んあ・・? れみりゃ嬢? なにしてるんですか?」 「まめまきだどぉ♪ おにはやっつけるどぉ♪」 「豆撒きって・・・!? 咲夜さーん!! パチュリー様ー!!」 突然大声で咲夜とパチュリーを呼ぶ美鈴 なぜなられみりゃのもっていた豆は『炒った豆』 この館の主の弱点だったのだ 「な、な、なんでそんなものも持ってるんですか!?」 「うー? ぱちゅりーがくれたんだどぉ?」 「パチュリー様が? なぜ?」 「きょうは『せつぶん』だっていってたんだどぉ?」 「よく事態が飲み込めないですけど・・・」 待つ事数刻、合流した咲夜とパチュリーから今回の事件についての説明を受ける美鈴 「そういうことだったんですか・・・びっくりしましたよ」 「悪い事をしたわね。次からは事前に説明するようにするわ」 「つぎはしゃくやがおにのばんだどぉ♪」 「えっ!? まだやるんですか? 館の片づけがまだ・・・」 とは言いつつも鬼の面を頭に被る咲夜 「しゃくやかっこいいどぉ~♪ かりすまだどぉ~♪」 吸血鬼の住む館、紅魔館 今日もまったり時は流れる 名前 コメント
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キャラクター名 れみりゃ子 Pスキル:★財力 :★厨房度 :★★★★★ ランカークラス Class G キルクラス Class G デット数 Class SSS 所属部隊名 発言の痛さ 勝ち馬属性 負けフラグ 戦闘スタイル タグ 総評 本人への要望 大人フランの別キャラ
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冬も終盤を迎え始めた3月。暖房が唸りを上げるホームセンターに僕は居た。わんわん、にゃあにゃあという鳴き声が響く動物ブースの隅っこにおいてある、縦に長い長方形の鉄かごの住人に僕は心惹かれていた。天井の黄色いライトに照らされながら、両足の爪で止り木をつかむ鋭い目付きの白いフクロウだ。肉を啄む尖ったクチバシに堂々と張った胸。まさに、ハンターの相貌そのものである。 純粋にかっこいいと僕は思うが、その分、怖くて買える気がしない。それに、値段もすごいし、鳥を飼うにあたっての醍醐味である放し飼いなんてもってのほか。買うスペースがない、小屋の掃除が大変だ、などなど思いつく限り飼える要素は全くない。 しかし、憧れる。鷹匠のように自由に鳥を使役できればなと。なら、それをクリアできる生き物を買えばいいじゃない! そう思った僕は動物ブースのとなりにあるゆっくりブースへと移動した。 『れみりゃを飼おう』 書いた人:がいうす・ゆっくりうす・かえさる(今後は“ゆっくりうす”で通します) 注意 作者には文才が無いです。チープな作品でも許すという方だけ続きを読むことをお勧めします。 タイトル通り、捕食種がでます。 現代設定です。 誤字・誤謬があっても寛大な精神で・・・・っ! ゆっくりしていってね! 今度は「ゆっくりしていってね!」という挨拶と共に自己アピールをし始める不思議饅頭ゆっくりが僕を待ち構えていた。ショーケースの中に入れられたそれらはウィンクをしたり、ケースに向かって飛びついてきたり、あるゆっくりは妙なポージングで誘惑しようとしたり。多種多様である。 「れ・み・り・あ・うー!」 「おお、コイツだ」 僕の目の前でれみちゃは羽をバサバサと拡げては閉じる。自分の名前と“うー”と“あまあま”と“まんま”と言う言葉以外まず喋られない胴なしれみりゃはボディーランゲージで愛想を振りまわる。純粋に可愛い。他のゆっくりたちも可愛いのだが、言葉を喋らない分、体をフルに使って意思を伝えようとするその姿にキュンとしてしまった。 「予想に反して可愛い生き物だが、果たしてコイツはハンターなのだろうか?」 ケースの前でブツクサと独り言をつぶやく自分は怪しい人にほかならないかもしれない。少し反省。 一応、ゆっくりに疎い自分でもれみりゃのことは知っている。野良のれみりゃは捕食種以外のゆっくりの中身を吸って生きているとか。味にうるさく、甘いもの以外は受けつけないらしい。だが、甘いものさえ与えていればおとなしく、種によってはなついてくれる可能性もあるそうだ。これは買いだろうか。 ショーケースで飼われているれみりゃの値札の横に“躾済み”と書いている。最低限のしつけがなされていると書いているがどの程度かはわからない。言葉のボキャブラリが少ないので犬猫を飼うつもりでいけば大丈夫だろう。 「えーと値段は……一万円超えないんだな」 財布の中身を確認し終えてから、店員さんを呼んでれみりゃの前に立たせた。 「この子ください」 店員に勧められて買った初心者用ゆっくり飼育セット(内訳は折りたたみ式のスチール製のカゴ・ゆっくりフードお徳用・トイレセット等など)と持ち運び用のカゴを持ちながら帰りの道を歩いて行く。持ち運び用のカゴに入れられた、ラムネガスで眠らされたれみりゃは可愛い笑顔でうとうとと寝ている。少し顔を除くとピクンと反応するのがまた可愛い。 ああ、忘れるところだった。僕の片腕にはビニール袋がぶら下がっている。その中に入っているのは赤ちゃんゆっくり6匹だ。内訳はれいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇん・みょんのポピュラーな種族をそれぞれ一匹ずつ。 れみりゃの主食は甘いものである。しかし、人間の持つ甘いものでは糖度が高く、人間の食べ物に依存してしまう。それによって、体調を崩したりする可能性もあるので、れみりゃには食べ慣れているゆっくりを与えるのが良いそうだ。 会計の場でうんちくを垂れ流す店員のお陰でこれらのことを知ったのだが、少し恨めしい気分でもある。 「じゃあ、なんでゆっくりフードも買わせたんだ?」 試供品ということで安くしてもらったが、その場のノリと店員のトーク力で買ってしまったいらないものだ。ぶっちゃけ、一番重量が重いので持っている手が痛い。 それにしても、自分の予定通りゆっくりを買ったわけだが、いざ生き餌のゆっくりを見るとちょっと背筋がブルッとする。僕が欲しいペット像は従順で、部屋を自由自在に飛び回り、それでいてクールなペット。弱肉強食という現実を見るために買ったわけでもないが、飼う以上、現実と向き合うのも飼い主としての義務だろうな。 「よろしく頼むよ、れみりゃ」 眠り姫の小屋を軽くノックして僕はこれからのことについてもう少し考えてみた。 ホームセンターがある駅前から10分の所に僕の家がある。グレーを基色とした小さな2階建ての横長コーポだ。その一室が僕の部屋である。 一階にある我が家の扉に鍵をさして、回してから中にはいる。廊下なんて高度なものはない。眼の前に現れるのが僕の部屋だ。 早速、僕は部屋の電気をつけてから荷物をすべて下ろす。片手で持っていた持ち運び用のカゴの中かられみりゃをそっと取り出す。生暖かい体温が手のひらを覆い、このまん丸いのが生きものであるという 実感を覚えさせてくれる。 「ぅううう……うー?」 どうやら、人の手に触れたことで目覚めてしまったようだ。感動のご対面というやつかな。僕はどんな表情を取ればいいのかわからず、とりあえずいつも通りの表情で返事をした。 「やあ、こんばんは」 気軽に挨拶をする。だが、れみりゃはココがどこだかわからないようで少し困っているようだ。 「えっとね、僕は君の飼い主さんになったんだ。お兄さんと気軽に呼んで欲しい……って無理か」 首を傾げるポーズを取ったれみりゃは次第に怪訝そうだった顔を笑顔いっぱいに咲かせ唸った。 「うー! うー!」 パタパタと弱々しく浮上しながられみりゃは僕に返事を返してくれた。どうやら意図は伝わったらしい。躾済みは伊達じゃなかったそうだ。 「良かった良かった。それで、自分の立場はわかるかな?」 「うー!」 頷く素振りを見せるれみりゃ。中々、賢い。まるで、人間の子供と会話をしているつもりになってしまう。 「いい買い物だったかな?」 うんうんと納得しながら、僕は放置していたセットの中かられみりゃの家となる折りたたみ式のカゴを組み立てることにした。 「給水ボトルを付けてと」 小動物を飼うときに使う舌で玉を押しだして水を得るアレである。それを柵に取り付け、餌箱とトイレ用の容器を設置。破った新聞紙を敷き詰めると出来上がりである。 「できたぞ!」 「うー!!」 嬉しそうに部屋中を跳ねまわるれみりゃに僕の頬もほころぶ。 「ところで、れみりゃ。お腹空いてないか?」 「うー? うー!!」 僕の肩に乗ったれみりゃは僕の頬と自分の頬をすりあわせてくる。ゆっくりで言うとすーりすーりという愛情表現の一種だ。 「おお、かわいいやつめ! 甘いの三個くれてやろう!」 角砂糖ではなく、僕はビニール袋ですやすやと寝ているれいむとまりさとありすを取り出した。 「ゆぴぃ、ゆぴぃ」 「おきゃぁしゃん、むにゃむにゃ」 「ゆっくちしたおはなしゃん……」 呑気に寝ているところも可愛い。寝言をしゃべるところが人間臭くてゆっくりって結構いいなぁとか思い始めている。だが、首を振って考えなおす。 今から始まるのはゆっくりがゆっくりを食べる時である。弱肉強食というリアル。生きるための必須行動。れみりゃを買うと決めた以上、冷酷な目で見なければならない。 「悪いけど、餌になってくれ」 三匹を片手でつまんで、れみりゃの前においてみた。 「ほら、お食べ」 覚悟の時だ、と僕はじっとれみりゃを観察する。 「うー……」 だが、れみりゃは一向にゆっくりに手を付けないのだ。何よりも、表情が曇りつつある。なぜだろう? 「食べたくないのか?」 「うー!」 会釈するれみりゃに僕は驚いた。 「でも、れみりゃ、君はゆっくりを食べるんだろ? それともお腹が空いてないのかな?」 「うー! うー!」 体を横に振って違うとアピールするれみりゃ。この場合、両方違うということなのかな? 質問の仕方を間違えた。 「えって、れみりゃはお腹は空いてる?」 「うー!」 体を縦に振ってイエスと答えるれみりゃ。 「それじゃあ、君はゆっくりを食べるんだよね?」 「うー! うー!」 今度は横だ。あれ? 何がどうなってるんだ? 「ゆぅ、うるさいのじぇ……ゆっくちねむ……れみりゃだ!!!」 「ゆん、うりゅさい……れみりゃだ!!!」 「まっちゃく、とかいはじゃ……れみりゃだ!!!」 三者三様にれみりゃにビビる。中には失禁してしまった子もいる。 「ゆっくちたべないでくだしゃい!!」 「たしゅけて! おきゃあしゃん!」 「に、にんげんしゃん!? はやくたしゅけて!!」 逃げるということは出来なかったのだろう。涙を流してその場で立ち止まっている。それ程までにゆっくりにとってれみりゃは畏怖の対象らしい。 「うー!」 れみりゃは先程までのしょんぼりした顔から、笑顔に返り咲いた。 「ゆぴぃいい!!! こわいのじぇぇえええええ!!! にんげんしゃん、たしゅけて!!」 三匹が僕の足元に寄ってくる。だが、僕はれみりゃがなぜ笑顔に変わったのかが知りたかった。 「う~!」 れみりゃも僕の足元に近づいてくる。どうやら、三匹に用事があるようだ。……もしかして活き活きとしたゆっくりを食べたかったのかな。 「「「ゆわーん!!! ゆわーん!!!」」」 大泣きする三人に接近し、身体一個分の距離出れみりゃは止まった。 「うー……」 すると、自前の羽で顔を隠してしまう。いったい何がしたいんだろう。 「うー!!」 声を沈めてから、れみりゃは羽を広げていないないばーをしてみせたのだ。子供をあやすその素振りはまるで、実の子をお喜ばせようとする親のように。 「「「ゆぅ、ゆゆゆゆ!」」」 先程まで泣きべそを書いていた三匹は静かになり始めた。もしや…… 「うー……」 今度は先程よりもためて、 「うー!」 いないないばーをしてみせた。 「ゆぅ! とっちぇもゆっくちしてるのじぇ!」 「もっちょして!」 「ときゃいはだわ!!」 「う~」 三匹が喜びながられみりゃに近づいていく。それを頬を赤らめて照れてしまったれみりゃが優しくコウモリの羽で包み込む。 「うー!」 赤ん坊を抱きながられみりゃは嬉しそうに鳴いた。 どうやら僕の誤算だったようだ。ゆっくりフードを買ったのは正解で、れみりゃは赤ゆっくり6匹の面倒を見ながら一緒に食べていた。 店員の話は野良のれみりゃを飼う場合の話だった。飼いゆっくりはたとえ捕食種でもゆっくりフードを食べるように躾されているらしい。いかんいかん。勘違いだった。 「むーちゃむーちゃ、ちあわしぇー!」 「そうだにぇ!」 「ときゃいはなあじだわ!」 「むきゅん!」 「おいちいんだにぇーわきゃるよー」 「もっちょだびぇるみょん!!」 微笑ましいその姿を見ながられみりゃは満足気にしている。想像していた猛禽類とは違えど、中々、見応えのあるものだ。 「母性でも目覚めたのかな」 僕はケースの中の1シーンを見ながら机の上でカップラーメンをすする。色々とゆっくりのために準備をしていたら夕食を作る時間がなくなってしまったのだ。 「これからどうしよう」 多頭飼いは初心者がすることではないということは分かっている。しかし、れみりゃとそのチビどもを見ていたらなんとも言えない空気が漂っていた。 「そうだよなぁ……仲を裂いちゃうのはダメだよなぁ」 飼い主としての義務もあるし。とりあえず、僕がするべきことは今以上の節約生活と、新しいゆっくりセットの購入かな。 ゆっくりでペットネタって久しぶりに見たかも。 なんて言うか、違和感は覚えるけど面白いと思う。 -- かに (2012-03-06 00 10 19) 07 01 12 12) れみりあかわええ -- 阿部さん (2013-10-26 20 59 48) 赤ちゃんもくれたのはれみりゃが甘えん坊だからか? -- 名無しさん (2014-04-05 13 34 32) とりあえずお前ら黙って見ろ -- 蛇尾 (2015-03-08 08 20 23) 批判コメする奴は見に来んなよ -- 名無しさん (2015-10-07 13 05 38) れみりゃ可愛いです。 飼ってみたい(笑) -- 名無しのおねーさん (2015-10-16 20 25 14) れみりゃと一緒に生きたいものですね... 早く明晰夢が見れるようになりたいものです。 -- 名無ノ権兵衛 (2015-12-12 21 35 37) リアルでゆっくりがいたら良いのになー -- 緑茶 (2016-05-03 14 32 46) 荒らしコメントを削除しました。 注意して下さった方、すみません。 -- 名無しさん (2020-02-16 11 30 47) れみりあが母みたいやー!。 -- 黒曜石 (2021-01-09 09 07 05) れみりゃはやっぱりかわいいね! -- にゃる (2021-04-03 02 17 20) ゆっくりちぇんがリアルでいたらいいのに -- DOM527 (2021-09-04 14 24 39) むちゃくちゃかわいい抱きつきたい! -- user4598 (2021-12-09 01 23 31) 名前 コメント
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『れみりゃと俺』 俺の家には胴付きれみりゃが居る。 初めはゆっくりなんざいらねと、外に放り出したもんだが 「う~う~うええええええええん!!」 とまあ、子供みたいに泣くもんで何とも言えず気分が悪い。 ご近所の目もあることだし、とりあえず家に上げることにしたんだが、 「うー♪」 何とも嬉しそうに笑うのよ、このれみりゃって奴は。 ああ、俺は負けを確信したね。この笑顔はホンモンだ。 で、家に上げたのは良いものの、ホントどうしたものか困ったもんで。 たしか、最初はこんな感じだった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 家に上げたら、泣き疲れて腹が減ったとのことで、 聞いていた話だとこいつは他のゆっくりを食べるらしい。 「ここはれいむのおうちだよ!!さっさとでていってね!!」 と、まあ都合の良いことに俺の家の庭に、家を失くした野良のゆっくりが来た。 で、そのゆっくりを鷲掴みにしてれみりゃにぷれぜんつ。 「れみりゃいやあ゛あ゛あ゛!!はなじでええええええ!!だべられだぐなぃぃぃぃいい!!」 「うー、ぷでぃん!!ぷでぃんがいいぞー!!あまあまだぞー!! れみりゃはかりすまだかられいむなんてたべないぞぅ!!」 あらま、お嬢様ご機嫌斜め。つか我侭だなこのれみりゃ。他のれみりゃは食べるそうだぞ。 まあ、お嬢様はれいむはいらないとのこと。 とりあえずこのれいむとやらには、せんべいをプレゼントした上で。 「しあわせー!!」 がし!!ぶん!!!! 「ゆっくりしていってねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 と大投擲して帰っていただいた。ここはわたくしのお家です。自分でお家を作ってね!!! じゃあ、ぷりんか。今から店に行って来るけど、プリン以外なんか食わないのかな。 よし、試してみよう。 つ白飯 つ焼き魚 つ野菜炒め 「うー、ぷい!!」 「くんくん、ぐざいぞぅ~・・・。」 「ぴーまんきらいだぞう!!」 んー。俺の晩飯は気に入らないそうで。じゃあこれはどうだ? つチョコ 「うー!!うーうーうまうまー!!!あまっあまっだぞぅ♪!!!!」 大変お気に召されたようで楽しそうに腰を振って踊っておられる。 こらこら、チョコが溶けて服についてるだろう。本当にお子様みたいだな。 「うーうー、しあわせだぞー!!」 で食べ終わったら終わったで、べたべたの手のまま色んなもん触るからたちが悪い。 「うーうー!!きょうからここはこーまかんだぞぅ!!!よきにはからえー?!!」 はいはい、自分で言ってて意味が解らない言葉を使おうとしないの。 てな感じで、俺は完全にやられたね。俺の妹のちっさい頃みたいで素直に可愛いと思ったよ。 今のあんたの妹はって?ああ、聞かないでくれ。年月ほど怖いもんもねえ。 即興の人 可愛いですね。続きがあれば見てみたいです。 -- れみりゃ好きの人 (2008-11-19 08 16 36) 可愛いぜ・・・ -- 名無しさん (2009-05-17 23 04 21) れみぃマジプリティ! おぜうさま最高! -- 名無しさん (2010-11-27 19 00 11) うー★ -- 愛で好きの人 (2012-12-06 16 17 19) 名前 コメント
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れみりゃの悲劇 グロ注意 ゆっくりれみりゃ。それはゆっくり界の捕食種と呼ばれる強力なゆっくり。 大体のゆっくりはれみりゃには勝てない。 しかしこのゆっくり国には、れみりゃ退治専門のゆっくりたち通称「れみりゃばすたーず」という組織がある。彼らはれみりゃからの襲撃を守るための特別なゆっくりたちのことである。そして今回は、そんなことを1mmも知らない野良れみりゃとそのおチビの話である 「うわぁー!れみりゃだぁー!」「う~♪食べちゃうぞ~♪」「う~♪」 グシャッ… 「う~…あんまり美味しくないどー…」「たしかにまずいんだど〜。ぷりんが食べたいんだど〜」そんなことを言いながらも食べ続けるれみりゃ親子、しかしその目の前に謎のゆっくりが現れた。「う~♪新しいゆっくりが来たんだど〜♪」「う~♪食べちゃうぞ♪」 「……」謎のゆっくりは黙ったままだ。 「う~?こいつ、ずっと黙ったままだど〜…」れみりゃは思った。もしかして、恐ろし過ぎて気絶しているのではないのかと、しかしその予想は、おチビの悲鳴とともに消え去った。「うー!!!いだいー!!!ざぐやぁぁぁばやぐだずげろぉ!!!……も…もっじょ…ゆっぐ…じ…」「うー!!おちびぃ!!まざがおばえがやっだのがぁぁ!だべでやるぅぅ!!!」「……誰を食べるのぜ」「おばえにぎまっでるだろぉぉぉ!!」「……お前ごときにまりさは食われないのぜ」何を言っているんだこのゆっくりは、れみりゃはそう思った。お前も他のまりさと一緒だから食えないはずはないと。 「う~♪ないにってるの?お前は今までのまりさとぜぜん変わってるところはないんだど〜♪」そして、れみりゃが攻撃しようと牙を出す。このゆっくりがおちびを殺したことはもう覚えていないのかものすごく強気の態度だ。しかし次の瞬間…… ザクッ 何かを切り刻む音がした。そして急に頭がいたきた。 そう、このゆっくりはれみりゃの頭を木の棒でぶっ刺したのだ。「ぅぅぁー!!!おぼにあだまがいだいんだどぉ!!!」「だから行ったのぜ。お前ごときにまりさは食われないのぜ。」「どぼじでぇ!!!ただのゆっぐりのぐぜにぃぃ!!!」ピクッまりさの動きが止まった。「まりさがただのゆっくりに見えるのぜ?一体どこまでばかなのぜ?」「どごがらどうみでもだだのまりざでしょぉぉ!!!」「はぁ…仕方ないのぜ。ばかなれみりゃのためにも名乗って上げるのぜ…いいか、まりさは対れみりゃ業者、通称れみりゃばすたーずなのぜ」「れみりゃばずだーず…ぞんなのじらないんだどぉぉ!!」「まあもうすぐ死ぬお前には関係のない話なのぜ…それじゃあさよならだぜ」 「じょっどまでぇぇぇ!!!それならこの上の棒を……も…っどゆっぐ…り………」「……本部、聞こえるのかぜ…ああ、ターゲット無事死亡したのぜ…今から帰るのぜ……」 こうして、このゆっくり国の平和は守られたのであった。 終わり あとがき おっすおっす1だそ〜わかれよ。 ということで鉄壁の軍人まりさの作者(タクアンとでも呼んでくれ)です 記念すべき大2作目! ネタは寝てたら思いつくいや〜最高やな。 ということでイカヨロシクー! 以上!閉廷!
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※これはれみりゃとゆっくりできるおちびちゃんの直後の話です。 設定もそちらに準じています。 これを読む前に、まずそちらをお読みいただきたいと思っております。 大丈夫なら、そのまま下へお進みください れみりゃの育児奮闘記 「…ふぅ」 「う~…う~…」 …別に変なことをしている訳じゃないぞ。 俺とれみりゃは散らかった部屋の掃除をしているだけだ。 家に帰ってきたばかりで動きたくはないが、片付けなければ足の踏み場もなかったくらいだから仕方がない。 その犯人(?)は今はぐっすりと眠っている。 「…う~…まんまぁ~…さくやぁ~…むにゅむにゅ…」 清々しいくらいに気持ちよさそうな寝顔だな。 人がこっちでお前の後片付けに苦労しているってのに。 ま、生まれてまだ2日目だから仕方ないのだろうがな…。 「う~…おにいさ~ん…これどこにおけばいいのぉ~?」 「ああ、それは…ここに置いておいてくれ」 「う~…」 れみりゃもさすがに疲れているのだろう。 先程から動作の一つ一つがいつも以上に危なっかしい。 床が非常に乱雑になっているということもあって、何度も転んでしまったり。 それでも泣き言一つ言わない辺り、親として責任を感じているのかもしれない。 それはともかく、片付け終わらない事にはとてもゆっくり出来そうもない。 疲弊した体に鞭を打ち、俺は再び体を動かし始めた。 「終わったな…」 「おわったぞぉ…」 何とか部屋を片付け終わった俺とれみりゃ。 といっても、爽快感というものは俺にもれみりゃにもなく、残ったのは疲労感だけだった。。 それはともかく腹が減ったな。 「れみりゃ、今日はミルクプリンを…って、おい。どうした?」 俺はれみりゃの姿を見て驚いた。 れみりゃが涙を流していたからだ。 「うっ…うっ…ぐすっ…」 しかもいつもとは違うすすり泣き。 これには俺も動揺してしまった。 れみりゃが泣く時はいつも大声を上げて泣くからだ。 「おにいざ~ん…」 れみりゃが泣きながら俺の名前を呼ぶ。 何故泣いているのだろうか。 俺がちびりゃを怒るとでも思っているのだろうか。 注意しなければいけないとは思うが、それは出来る限りれみりゃに任せるつもりだった。 俺は四六時中一緒にいる訳でもない。 それに、れみりゃが親なのだから。 そこまで考えたところで、れみりゃの鼻声が再び俺の耳にまで届いた。 「でみぃ…ばんばぁにぃ…なでづど…がなぁ…」 鼻声だったせいで聞き取りづらかったが、れみりゃが何を言いたいのかは理解できた。 れみりゃは自信をなくしているのだ。 自分が本当に親になれるのかを。 …俺も親になったことなどない。 実際のところは親というものは俺にもよくわからない。 だが、部屋の中の物をぽいぽい投げていたちびりゃを注意していた時のれみりゃの姿はまさに親と呼べるものではなかったのだろうか。 …泣いていたけど。 まあとにかく、このままじゃ話しにくいことこの上ない。 「れみりゃ、ちょっと来い」 「ぐすっ…ぐすっ…う~…」 俺は床に胡坐で座り、れみりゃを呼ぶ。 れみりゃは涙を流しながらもゆっくりと俺の方へ歩いてくる。 そして、れみりゃが俺の至近距離まで寄ってきた時、俺の両腕がれみりゃの体を捉えた。 簡単に言えば、れみりゃを抱きしめたのだ。 「れみりゃ、泣け。泣いてすっきりゆっくりしよう」 れみりゃを俺の方へ引き寄せる。 れみりゃの顔は俺の胸へとすっぽり収まった。 俺はれみりゃの背中を摩りながられみりゃに出来るだけ優しく話しかける。 れみりゃが安心できるように。 「う…ううっ…うああっ…」 れみりゃの涙の勢いが強くなる。 ダムが崩壊するかのように。 「うああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」 れみりゃはついに大声を挙げて泣き出した。 俺は泣いているれみりゃの背中を摩る。 何だか知らんが、ガキの頃は母親にこうされれば安心できたんだよな…。 俺はれみりゃが泣きやむまでずっと背中を摩っていた。 小一時間経った頃 「ぐすっ…ぐすっ…おにいざ~ん…」 涙の勢いは多少弱くなってきた。 少し落ち着いてきたのか、れみりゃが不安げに話しかけてくる。 何も不安になることなんてないんだけどな。 俺はれみりゃの背中をぽんぽんと軽く叩く。 「なんだ、れみりゃ」 れみりゃが顔を俺の胸から放し、俺の顔を見上げる。 その顔は、まだ涙は止まっていないが、先程よりは大分マシにはなったな。 「う~…れみぃ…まんまぁにぃ…なれるのかなぁ…」 「…れみりゃの考える…まんまぁってのはどんなもんだ?」 『まんまぁ』って言葉は想像以上に言いにくい。 主に羞恥心的な意味で。 だが、今は四の五の言っていられない。 「…よくわからないぞぉ…でもぉ…れみぃはぁ…まんまぁになれないんじゃないかなぁ…って…」 …というか、冷静に考えればこれは俺にもかなり責任あるよな…。 れみりゃにちびりゃの教育をぶん投げてしまったのだから。 親だから大丈夫だろう、とれみりゃに甘えてしまった。 これからは俺ももっと積極的にちびりゃに話しかけていかなければ。 かつてれみりゃにそうしたように。 「れみりゃ、最初は誰だって上手くは行かないんだ」 「でもでもぉ…れみぃは…」 「それにお前一人で背負う必要はないから。俺も一緒にやるから」 真っ先にれみりゃにぶん投げた奴が何を言っているのかと言われるかもしれないが…。 すまん。 マジで反省してる。 「ごめんな、れみりゃ」 「う~…どうしてぇ…おにいさんがあやまるのぉ…?」 れみりゃには俺が何故謝るのか分からないようだ。 では、わかるように説明しないとな。 「俺もお前に甘えていた。ちびりゃのことをお前に全部任せてしまった。ごめんな」 「う~!!れみぃがぁ…まんまぁだからぁ…れみぃががんばらなきゃいけなかったのぉ…」 いつの間にか、親の自覚というものがこんなにもあったんだな、と感心する。 しかし、ここでれみりゃにぶん投げてしまってはダメだろう。 「れみりゃ…俺はお前もちびりゃも家族だと思っている」 「う~…れみぃ、おにいさんがなにいいたいのかわからないぞぉ~?」 「家族なら…助け合っていかなきゃいけないんじゃないか?」 ゲロ以下の臭いがしそうなセリフを吐いたことでなんだか恥ずかしくなってきた。 しかしここで恥ずかしがっても仕方ない。 それに大の大人が恥ずかしがるのはキモすぎる。 ええい、ままよ! 「…れみりゃは俺のことを家族だと思ってくれていなかったのか?」 「そ、そんなことないぞぉ!で、でもぉ…おちびちゃんのことはぁ…まんまぁのれみぃがやらなきゃいけないぞぉ…」 俺の意地悪な質問にれみりゃは慌てる。 思っていたより頑固だな。 親の自覚というものがそうさせるのか。 うーん…じゃあ言い方を変えるか。 「れみりゃ、俺にも手伝わせてくれ。あくまで親はお前だ。お前がちびりゃのことで困っていたらちびりゃではなくお前を助ける。これじゃダメか?」 元よりれみりゃに主体としてやってもらわねばならない。 言い方を変えただけの話だ。 「う、う~…わかったぞぉ………ごめんなさい…おにいさん…」 「ん?」 まさか謝られるとは思っていなかった。 むしろこっちが謝る方だと思っていたし。 「おへやのものをぽぉ~いしちゃったことと…あと…れみぃがまんまぁとしてうまくやれなくて…おにいさんをゆっくりさせられなかったぞぉ…ごめんなさい…」 ああ、そうか。 れみりゃが俺の協力を拒んだのは、親の自覚もあるだろうが、俺に迷惑かけたくないというのもあった訳だ。 れみりゃが気を使えるようになったのは嬉しいが…何だか悲しくもある。 水臭い話だ。 「れみりゃ、俺達は家族だ。俺がお前に甘えてしまったように、お前も俺に甘えて良いんだ。親になったからって何もかも急に出来る訳じゃないんだ」 「う~…」 れみりゃは親というものに強い憧れを抱いていたのだろう。 親なら一人でも子供をしっかり育ててあげられる、と。 しかし、現実はそう上手くはいかなかった。 その理想と現実の差がれみりゃを苦しめ、自信を奪っていったのだろう。 れみりゃは俺の言葉に難しい顔をしてしまう。 何やら考えることがあるのだろう。 しかし…恐らくれみりゃも晩飯は食べてはいないだろう。 そんな状態で考えても良い考えが浮かぶとは思えなかった。 「よし!れみりゃ、とりあえず飯にしよう!」 「う~?」 「ぷっでぃん食べよう!ぷっでぃん!」 「う、う~♪ぷっでぃ~ん♪」 れみりゃは『ぷっでぃん』という言葉を聞いて笑顔になる。 うん、相変わらず可愛い笑顔だ。 やっぱりれみりゃには笑顔でいてほしい。 そうじゃなきゃ俺がゆっくり出来ない。 「う~♪ぷっでぃ~ん♪」 「そうだ、ぷっでぃんだ、ぷっでぃん」 そんなことを話しながら、俺達は飯を食うべく立ち上がった。 「あれ?」 俺は冷蔵庫の中を見て、プリンの数に違和感を感じた。 れみりゃの3食の食事+3時のおやつは基本的に1食プリン1個だ。 (ちなみに、プリンはカスタードプリン以外にも色々な種類は置いてある) ちびりゃがどれだけ食べるか分からなかった為、暫定的にれみりゃと同じプリン1個ということをれみりゃには指示しておいた。 だから、今日の朝の状態より朝・昼・おやつの分でプリンは6個減っていなければならない。 (ちなみに、ちびりゃは俺が家を出る頃はまだ寝ていたし、れみりゃはちびりゃと一緒に食べると言っていた) だが、今の冷蔵庫の中のプリンの数を見る限り、どう見てもその半分の3個しか減っていなかった。 プリンの数は毎日数えているからな。 すぐにわかる。 「おい、れみりゃ…お前、ちゃんとプリン食べたのか?」 俺が質問をすると、れみりゃは下を向きながら手をもじもじさせ始めた。 この反応をするという事は…こいつ食ってないな? 俺は思わず溜息をついてしまう。 「れみりゃ、ちゃんと食べなきゃダメだろう。親になったからってそんなことする必要はないんだぞ?」 「ちゃんとたべたのぉっ!!」 「でもなぁ…プリン減ってないじゃないか」 れみりゃは必死に主張するが、プリンの数は明らかに3個しか減っていない。 れみりゃは「う~…」と唸っていたが、やがて観念したかのようにぼそぼそと話し始めた。 「おちびちゃんがぁ…たべきれなくてぇ…れみぃがそのおのこしを…」 呆れた。 きちんと食えば良いのに。 いや、出産をしたばかりだから体も多少弱っているはず。 だから食わなければいけないはずなのに。 俺はれみりゃの頭をこつんと叩く。 「うぁっ!」 れみりゃは帽子の上から手で頭を抑える。 その目は軽く涙目になっている。 かなり軽く叩いたつもりだったが…それでも痛かったか。 というか痛くなきゃ意味ないしな。 「…いっだいぞぉ…」 「お前は出産したばかりで体が弱ってる。医者にも出産後を一番気を付けるように言われたんだから、遠慮せずに食え。ちびりゃのお残しと合わせて2個食べていいから」 「う~…わかったぞぉ…」 何だかな。 れみりゃの成長は実感できるのだが、一歩引いている様にも感じるな。 「ミルクプリンにするか?さっき買ってきたばかりだけど、お前これ好きだっただろ」 本当は賞味期限が古い順番から食わなきゃいけないのだが、たまには良いだろう。 「う~♪しろいぷっでぃ~ん♪しろしろぉ~♪ほわほわぁ~♪」 俺はれみりゃに自然体でいてほしいんだがなあ。 それは俺の我儘なのだろうか。 「しろしろぉ~♪あまあまぁ~♪うまうまぁ~♪」 れみりゃがよだれかけを付けてミルクプリンを食べて満面の笑顔を浮かべているところで思い出したことがある。 俺、ちびりゃの分のよだれかけ買ってないじゃん…。 れみりゃのよだれかけを付けようとしても、サイズはまるで違うし。 先程までは気付かなかったが、改めてちびりゃの服を見ると、微かに黄色く汚れていた。 これは間違いなくカスタードプリンの残骸だろう。 恐らくれみりゃが食べさせたおかげで汚れは少なくはなったのだろうが、それでも全く汚さない、というのは無理だっただろうな。 …ダメダメじゃん、俺。 軽く自己嫌悪になる。 明日は土曜日だ。 ちびりゃのよだれかけとか代えの服とか色々買いに行かなきゃな。 「ごちそうさまでしたぁ~♪」 れみりゃが満面の笑顔でごちそうさまをする。 そして後片付けをしに台所へ消えていくその後ろ姿を、俺は見つめながら考えていた。 あの笑顔を守れるようにしなきゃな、と…。 「で、だ…」 「う?」 「『ぽいぽいボール』は使わなかったのか?」 後片付けから戻ってきたれみりゃに俺は質問をする。 目の前にいるれみりゃも、来た当初は部屋の中の物を『ぽぉ~い』としてしまった経験がある。 俺は最初、『ぽぉ~い』を禁止させようとした。 しかし、なかなか収まらなかった。 そもそも、医者に言わせれば『ぽぉ~い』を禁止すること自体が危険らしい。 『ぽぉ~い』というものは胴付れみりゃ種にとって癖のようなもので、それを禁止するという事はストレスの増加につながるからだ。 そこで必要になったのが『ぽいぽいボール』だ。 玩具メーカーが考えた商品で、胴付れみりゃ種用に作られた物だ。 れみりゃ種の不器用な肉まんハンドでも持ちやすい大きさで、材質はぬいぐるみに近い。 あの柔らかさなら、窓ガラスや家具に当たっても傷が付かないだろうな。 『ぽぉ~い』の対象をこのボールだけにしてしまえば、れみりゃもストレスが溜まらず、部屋の中も汚れず、まさに一石二鳥の結果が導き出された。 いや、中にはこれを使って人間と胴付れみりゃがキャッチボール等をして遊ぶこともあるらしいから一石三鳥かな。 …確かに、ちびりゃ用の『ぽいぽいボール』も買っていなかったが、あれってそれぞれに必要なんだろうか。 一応、さっき部屋の中の物と一緒に転がっていたので全く使っていないという事はないとは思うのだが。 それらを考えた結果が、先程の質問だ。 「う~…『ぽいぽいぼーる』だけをぽぉ~いしてっておちびちゃんにいったんだけど…」 れみりゃはまた泣きそうな顔になった。 先程の光景を思い出しているのだろう。 「おちびちゃん…『ぽいぽいぼーる』だけならゆっくりできないって…おへやのなかのものを…ぐすっ…」 れみりゃの言葉に混じって鼻水をすする音が聞こえる。 ああ、そうか。 『ぽいぽいボール』だけなら満足できなかったってことか。 正直言ってそれは思いつかなかった。 目の前にいるれみりゃの場合は 「れみりゃ、ぽぉーいしたくなったら、この『ぽいぽいボール』だけをぽぉーいしなさい。そうすれば部屋の中も汚れずに済むから」 「う~…これはぽぉ~いしてもいいのぉ?」 「これだけならな」 「う~♪ぽぉ~~~~い♪だっぞぉ♪」 と、このような会話だけで『ぽいぽいボール』以外はぽぉーいしなくなったようで、部屋の中が突然汚れることはそれ以来なくなった。 だから『ぽいぽいボール』一つあればすぐにそれ以外の物は『ぽぉ~い』しなくなると思っていた。 「う~ん…そうだな…」 俺はちびりゃへの注意を考える。 いや、やはり俺からちびりゃに注意することは出来るだけ避けたい。 親はれみりゃなのだから。 俺ではない。 もし俺が下手に親代わりとなって中途半端に口を出すと、それは親子関係に響くことにもなるだろう。 俺のやることは、あくまでれみりゃの手伝いに過ぎない。 自分の場合を思い出す。 自分の場合は、こういう時に親になんて言われてきたかを。 う~ん…。 そうだ!! 「れみりゃ、良いこと思いついた」 「う?なぁ~にぃ?」 「今度ちびりゃが『ぽいぽいボール』以外をぽぉーいしそうになったらこう言うんだ。それをぽぉーいするとお化けが来て食べられちゃうぞ~って」 子供には結構有効なんだよな、これ。 場合によっては、大人になっても習慣付けられてしまうこともあるとか。 まあそれは人間の場合だが、恐らくゆっくりにも通じるだろうと思っていた。 「お、おばけ…だっぞぉ?」 現に、目の前のれみりゃが怯えている。 自身も色々な物を『ぽぉ~い』した経験があるからだろうが。 「ああ、お化けといっても本当に来る訳じゃない。だけど子供はそう言われれば恐くなって辞めるようになるはずだ。一度で聞かなくても、何度でも言ってみろ」 「う、う~…。わかった…ぞぉ…」 何だか歯切れが悪い返事だな。 れみりゃ自身どこか納得できない部分でもあったのだろうか。 なら違う案も考えてみるべきだろうか…と考えていたその時。 「まんまぁ~♪れみぃおなかすいたどぉ~♪」 俺とれみりゃの耳に平和そうな甘えた様な声が聞こえてきた。 「おちびちゃ~ん♪まんまぁだっぞぉ♪」 満面の笑顔でちびりゃの元へよたよた走っていくれみりゃ。 先程まであんなに悩んでいたというのに、やっぱり子供は可愛いんだろうな。 「う~♪まんまぁ~♪れみぃぷっでぃんたべたいどぉ~♪」 ちびりゃは駆け寄ってきたれみりゃに抱きつく。 こちらも満面の笑顔だ。 「う~♪う~♪まんまぁがぁ♪ぷっでぃんもってくるぞぉ~♪ゆっくりまっててねぇ~ん♪おちびちゃ~ん♪」 「う~♪う~♪ゆっくりまってるどぉ~♪」 そう言って、れみりゃはちびりゃの体を離し、プリンの入っている冷蔵庫までよたよた走っていく。 「う~♪ぷっでぃ~ん♪ぷっでぃ~ん♪」 ちびりゃが『ぷっでぃん』という言葉を連呼する。 そこまでプリンが気に入ったんだな。 ところで、れみりゃ種って何故プリンをぷっでぃんと呼ぶのだろうか。 愛称か? と、そんなどうでもいいことを考えているうちにプリンとスプーンを持ったれみりゃがちびりゃの元へ戻ってきた。 「おちびちゃ~ん♪ゆっくりおまたせだっぞぉ♪まんまぁとぷっでぃんのとうじょうだっぞぉ♪」 「う~♪まんまぁ~♪ぷっでぃ~ん♪」 喜び合う2匹の親子。 微笑ましい光景だよな。 「あ~ん♪だっぞぉ♪」 「う~♪あ~ん♪だどぉ♪」 れみりゃがスプーンでプリンを掬い、それをちびりゃの口へ運んでいく。 そのうち、ちびりゃにもスプーンの使い方を教えねばなるまい。 今はまだ産まれたばかりだから仕方ないが、いつかは親からも自立しなければいけないのだから。 「う~♪ごちそうさまだっどぉ♪」 「う!?もういいのぉ?ぷっでぃんまだあるぞぉ!?」 「まんまぁにあげるどぉ♪れみぃはいいこだからぁ♪まんまぁにぷれぜんとだっどぉ♪」 何回か食べさせているうちに、ちびりゃは満腹になったようだ。 まあ、無理矢理食わせても仕方ないよな。 こっちで調整してやらねばいかん。 「れみりゃ、そのプリンはとりあえず置いておいていいぞ、ちびりゃの優しさに感謝しような」 「う…う~…わかったぞぉ…おちびちゃ~ん♪ありがとうだっぞぉ♪なぁ~でなぁ~で♪」 「う~♪きもちいいどぉ~♪まんまぁ~♪」 俺の声にれみりゃは安心してプリンをテーブルの上に置き、れみりゃはちびりゃの頭を手で撫で始める。 微笑ましい光景が横で繰り広げられている中、俺は余ったプリンを回収する。 ちびりゃが食べる量がどんなものか知らなければいけないからだ。 …大体ちびりゃが食べたのは半分ちょっとくらいか。 今度からは量を調整して出さなければいけないだろう。 後でれみりゃにもそれを教えなければ。 と、そんなことを考えていると 「ぽぉ~い♪だっどぉ♪」 「う~!おちびちゃ~ん!ぽぉ~いしちゃだめだっぞぉ!!」 そんな声が聞こえてきた。 俺は2匹の方を振り返る。 そこには床に転がったスプーンがあった。 恐らく、そのスプーンを『ぽぉ~い』したのだろう。 だが、俺はまだスプーンを拾わない。 ここでスプーンを拾ってしまえば、ちびりゃは勘違いしてしまうだろう。 自分が『ぽぉ~い』しても、俺が片付けてくれるだろう、と。 「おちびちゃん!!この『ぽいぽいぼーる』いがいはぽぉ~いしちゃだめだっぞぉ!!」 「う~!!れみぃはもっとぽぉ~いしたいどぉ!!ゆっくりできないどぉ!!」 禁止されればやりたくなるというものなのか。 それは人間でもゆっくりでも同じなんだな。 「う~!!おちびちゃん!!」 れみりゃが気合の入った声を出す。 俺から言わせれば可愛いだけなんだが、それでも怒っているように見せているつもりなのだろう。 「う?まんまぁ~…?」 ちびりゃはそんな親の姿に怯える。 初めて聞く気合の入った声だからだろうか。 「『ぽいぽいぼーる』いがいをぽぉ~いするわるいこはぁ…もけーれがきてぎゃお~!!たべちゃうぞぉ~!!ってなるぞぉ!!」 両手を頭上に上げながら叫ぶれみりゃの声だけが部屋の中に響く。 『もけーれ』って何だ? れみりゃのアレンジだとは思うが…。 「もけーれこわいどぉ~!!!!!!」 ちびりゃが大声で泣き始めた。 おお、やはり効果はあったようだな。 自分の考えに自画自賛してしまう俺。 「まんまぁももけーれこわいぞぉ~~~!!!!!」 れみりゃも大声で泣きだす…って、オイ。 いや、言い出しっぺのお前まで何故泣くんだよ。 お前は何がしたかったんだよ。 「「うぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!もけーれこわぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」」 お互いを抱きしめ合いながら大声で泣くれみりゃとちびりゃ。 俺は『もけーれ』って何なんだろう、と思いながらその光景を呆然と見ていることしかできなかった。 どうしてこうなった…? …あ、スプーン拾わなきゃ。 後書き このシリーズは書きやすいですね。 皆さんの需要があるかどうかはわかりませんが。 そろそろれみりゃ以外も書いてみたい…とも思っているのですがね。 希望を言えば守矢か永遠亭辺りを。 冬企画は最初は冒険記で行こうと思っていたのですが、こっちになりそうな気もしてきました。 ちなみにまだ書き始めてもいないです。 ああ…… 癒されます。 気負うことなく、ゆっくりなが~く続けていただきたい。 -- syu (2011-01-11 22 06 01) すてきだ。 -- 名無しさん (2011-01-12 10 21 37) れみりゃはどうしてこう、子供っぽい仕草が似合ってしまうのか -- 名無しさん (2012-06-27 09 38 59) もけーれってなんだ? -- 名無しさん (2013-02-02 13 37 06) もけーれもわからないとは… モケーレ・ムベンベだろ?(マジレス -- 名無しさん (2013-11-27 03 29 33) 名前 コメント
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「鬼はー外ー、福はー内ー」 「おにはーそとー♪、ふくはーうちー♪」 この季節になるとどこの家からも威勢の良い声と共に豆の散らばる音が聞こえてくる この紅魔館でも例に漏れず豆撒きが開催されていた 「うー☆ うー☆ つぎはあっちにまくどぉ~♪」 「あんまり散らさないでね、片付けるのが面倒だから」 「だいじょうぶだどぉ~♪ でかけてくるどぉ~♪」 「はい、いってらっしゃい・・・ん?」 パチュリーの元を離れ一人で豆撒きを開始するれみりゃ とはいっても広い図書館。豆を撒き散らしながら入口へ向かっていく 「うー♪ こあー♪」 「あら、れみりゃ嬢。どうしたんですか?」 図書館の出口付近で小悪魔に見付かるれみりゃ 不思議そうな目で見て来る小悪魔に事情を説明する 「豆まきしてるんだとぉ♪」 「なんですか?それ」 「おにさんをやっつけるんだどぉ♪」 「鬼を・・・ですか?ここには鬼はいませんよ?」 「このおめんをつけておにさんのかわりをやってほしいどぉ♪」 「こんな感じで良いですか?」 「うー♪ にあってるどぉ♪」 頭につけていたお手製の鬼のお面を小悪魔につけてもらい準備は完了 再び豆撒きの再開である 「ではいきますよ・・・がおー!!たーべちゃうぞー!!」 「うー♪ たーべられちゃうどぉー♪」 「れみりゃ嬢・・・食べられちゃ駄目ですよ・・・」 「そうだったどぉ☆ おにはそと~♪」 「うわーやーらーれーたー!!」 少々大げさなリアクションを取りながら床に倒れる小悪魔 鬼を倒したれみりゃはご機嫌らしく踊っている 「う~♪ かったどぉ♪ うー♪ うー♪」 「いたた・・・はいれみりゃ嬢、お面返しますね」 「ありがとうだとぉ♪ おしごとかんばってねぇ~♪」 とてとてと走っていく背中を見送ったあと自分の回りを見る これだけの豆を持っていたのだ、多分ここだけではない 自分の主と奥でもっと撒いているはずだ 「ふう、図書館の豆掃除今日中に終わるかなぁ・・・」 つい溜息が出てしまうが口元は笑っていた その後も屋敷の中を歩きながらそこかしこに豆を撒いていく 最後に向かったのは門番である美鈴のところ相変わらずシエスタの真っ最中であった 起こさないようよじ登り頭に鬼のお面を乗せる 「うー♪ つぎはめーりんがおにだどぉ♪」 「zzz・・・」 「おには~そと~♪ うっ♪う~♪」 「んあ・・? れみりゃ嬢? なにしてるんですか?」 「まめまきだどぉ♪ おにはやっつけるどぉ♪」 「豆撒きって・・・!? 咲夜さーん!! パチュリー様ー!!」 突然大声で咲夜とパチュリーを呼ぶ美鈴 なぜなられみりゃのもっていた豆は『炒った豆』 この館の主の弱点だったのだ 「な、な、なんでそんなものも持ってるんですか!?」 「うー? ぱちゅりーがくれたんだどぉ?」 「パチュリー様が? なぜ?」 「きょうは『せつぶん』だっていってたんだどぉ?」 「よく事態が飲み込めないですけど・・・」 待つ事数刻、合流した咲夜とパチュリーから今回の事件についての説明を受ける美鈴 「そういうことだったんですか・・・びっくりしましたよ」 「悪い事をしたわね。次からは事前に説明するようにするわ」 「つぎはしゃくやがおにのばんだどぉ♪」 「えっ!? まだやるんですか? 館の片づけがまだ・・・」 とは言いつつも鬼の面を頭に被る咲夜 「しゃくやかっこいいどぉ~♪ かりすまだどぉ~♪」 吸血鬼の住む館、紅魔館 今日もまったり時は流れる
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メイド秘技「ボ・ラギノール」 注:こんなタイトルですがうどんげは出てきません ========================================== れみりゃは必死に逃げていた。 紅魔館の厨房に侵入し大好きなプリンを手に入れようとしたところ誤って洗い終わった食器の山を地面にぶちまけてしまったのだ。 メイドはみんな怒ったが特に怒ったのはその日の食器洗い担当。 麺棒片手に明鏡止水なんて無視した怒りのハイパーモード全開でれみりゃを追い回しはじめたのだ。 れみりゃにしては上手く逃げたがそれもこれまで。ついに行き止まりに追い詰められてしまった。 「覚悟しなさい、咲夜さんにたっぷり怒ってもらうんだから!」 「う゛、う゛う゛~!」 じりじりと迫るメイド。しかしそのれみりゃの顔には余裕の笑みが。 「やっぱりめいどはばがだどぅ~♪ れみりゃにはおくのてがあるんだどぉ~~♪」 そういうといきなりメイドに尻を突き出した。 (しまった!) そう思ったときには遅かった。ブッボォォォゥッッ!!という凄まじい爆音と共にれみりゃの尻からオナラが放たれた。 顔面に放屁が直撃したメイドは一ヶ月夏場の常温で放置された餃子のようなニオイが鼻を通過したと思うとなすすべもなく卒倒した。 「う゛っう゛~♪ ごーまがんのおぜうさまはさいきょうでかわいいんだどぅ~♪」 勝ち台詞をメイドに言い放ち、リズムがいろいろおかしいヒゲダンスを踊りながら満足げに去っていった。 「お、おにょれぇ~……」 三日後。 またしてもれみりゃは必死に逃げていた。 紅魔館の厨房に侵入し大好きなプリンを手に入れようとしたところ誤って工作用ニスを廊下にぶちまけたのだ。 プリンを手にいれようとしてどうやったら工作用ニスが必要になるかはさておき。 特に怒ったのはその日の廊下清掃担当。 ちなみに三日前、彼女は食器洗い担当だったそうな。 そして案の定、メイドは行き止まりにれみりゃを追い詰める。 「今度は逃がしませんよ!」 「う゛っう゛~! れみりゃはとってもぷりぢ~でがっごよくでつよいんだど~♪」 そう言うとまたしてもれみりゃはメイドに尻を突き出した。 メイドは咄嗟に反応した。 (あのオナラを避けるには――これしかないッッ!) この三日間何もしていなかったわけではない。 ガスマスクも消臭力もない状況であのオナラを回避する方法。 とても危険な方法であるがそれをメイドは発見していたのである。 メイドは両手をあわせ、人差し指を突き出した。 そして覚悟を決め、れみりゃの尻に向かって特攻する。 「うおお~~!!死なばもろとも―――――ッ!!」 ブスッ 決まった。れみりゃの尻に、メイドの七年殺しが決まったのである。 れみりゃの尻に、メイドの七年殺しが決まったのである。(大事なことなので2回言いました) 「ヴギャオ゙お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!?!?」 れみりゃは今まで上げこともないような悲鳴をあげ、尻をおさえてのた打ち回った。 「か、勝った……」 「ぎゃあぉーー!? んぎゃおおおおおうぅっ!!」 よほど痛かったのだろうか、しばらくすると顔は真っ青になり白目を剥き目からは肉汁があふれ出ししばらく小さく痙攣していた。 「お゛っお゛っお゛っ……」 れみりゃにブッ刺した指を見ると肉汁が少し付いていた。若干貫通したようだ、痛くないはずがない。 エプロンで肉汁をぬぐう。油汚れなのでなかなか落ちなくなってしまうだろうが、メイドはとても清々しい笑顔だった。 「さてと。今日こそ咲夜さんに叱ってもらいましょうね~、れみりゃ様~?」 と、メイドがれみりゃを抱き起こそうとした直後。 ブッボォォォゥッッ!!という音と共にれみりゃの尻から屁が噴出した。 まさに最後っ屁。痛みで悶絶していたれみりゃ自身にはその気はなかったようだが。 一時間後、仲良く気絶しているメイドとれみりゃが紅魔館メイド長によって発見されましたとさ。 -了- ========================================== 作:ゆっくりいくさんはフカヒレまんだと思う人 8/27;ミス修正、加筆 このSSに感想を付ける
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※初投稿です ※ぶっちゃけ「しゃくや」で思いついたネタをやりたかっただけです 往々にして、世界という言葉に先行するのは、ひどくあいまいで茫漠としたイメージです。 薄紅色にお化粧をしたお山のむこうには。地平線をこえて広がっていく青空の下には。いったいどんな世界が待ちかまえているのでしょうか。 お歌やお話は、モヤモヤでグニャグニャとしたボクたちの想像に確かな形を与えてはくれます。 しかし、結局のところ、そういったアタマの中の世界は、アタマの中にもともとあったモノだけで成り立った、いわば自分の世界のやき直しです。 その小さな世界に、豊かで充実したひろがりを与えることを、ボクたちは「生きる」と呼んだりしているのかもしれません。 れみりゃが生まれたのは、桜の香気が芳しい春の夜でした。まんまるなお月さまが顔をのぞかせる明るい静かな夜でした。 アタマと羽しかない、五百グラムに満たない小さな命は、小さな世界をもって生まれてきました。 「ぷりん」と「しゃくや」と「れみ☆りゃ☆うー!」 たった三つのせまい世界でした。 ゆっくりと、どこまでも広がっていく可能性に満ちあふれた世界です。 その世界に「ぱぁぱ」と「まぁま」がくわわることは、ついにありませんでした。 でも、れみりゃは、さみしくありません。ばあちゃんがいたからです。 だから、しあわせでした。まいにちがえぶりでい(?)です。 その幸福な日々は、れみりゃにたくさんのおくり物をくれます。 しかし、彼女のちいさな体で、そのすべてを留めることはできません。 「ゆっくり」と「にんげん」。種族が違えば、育ち方や感じ方も違います。 ゆっくり、ゆっくりと広がっていくれみりゃの世界は、すぐにいっぱいになってしまうのです。 ただ、それは、決して悲しいことではないのかもしれません。 変わりばえのない毎日。くり返される日常。あたりまえの光景。 そんなものには目もくれず、地平線を目指して、あしばやに去っていくボクらでは、きっと気づくことなどできないのでしょう。 なんども立ちどまり、ときに引き返し、ゆっくりと進んだ者だけが、足もとに咲いた可愛らしいなスミレの花に気づくことができるのです。 だから、このお話に、ワクワクやドキドキなんかは、一つもありません。 路端に咲いたスミレのような、どこにでもある、なにげないものの一つなのですから。 桜が散り、青々とした新芽の萌える季節。吹き抜ける風が心地よい五月の昼下がり。 れみりゃは、ばあちゃんと一緒にお買い物に出かけました。なんのことはない、お夕飯の買い物です。 出かける前に、背中の羽をお手々のようにつかって、身だしなみを整えます。空色の髪に櫛を通し、薄紅色のお帽子をかぶり直したら、姿見の前で一回転。 バッチリキマった鏡の中のカリスマさんに満足したなら、たのしいたのしいお買い物に出発です。 まっすぐ進んで、ポストを右に、赤はとまって、青ですすめ。 ばあちゃんはテクテク、れみりゃはパタパタ。 ほどなくして、スーパーに着きました。自動ドアを二人一緒に、せーの、でくぐって入店です。 ばあちゃんがカートに買い物カゴを乗せると、クルクルと飛び回っていたれみりゃは、嬉しそうにカゴの中に入りました。 「うっうー☆」と楽しげに笑うと、ばあちゃんも「うふふ」と上品に笑いました。 「しゅっぱつ、しんこ、う~☆」 元気よく言い放つとカートが動きだします。 四つの車輪がカラカラと小気味良く回り、野菜売り場からお肉売り場へと順番に進んでいきました。 たまねぎ、にんじん、パプリカ、トマト、キャベツに、じゃがいも、ミンチに、生ハム。 ばあちゃんが次々とカゴに入れていくと、れみりゃの場所がどんどんせまくなっていきます。 誰だってきゅうくつなのは嫌なものです。れみりゃだって、きゅうくつは嫌いです。品物のお山をよじ登りました。 空を飛べることも忘れて、ヨジヨジ、ヨジヨジ。 れみりゃの険しい登山がおわるころ、カートは、乳製品売り場にさしかかっていました。 お山のてっぺんで喜びにうちふるえ「うっうー☆」とやっていたそのときです。カゴの端からアタマをのぞかせたれみりゃは、目ざとく大好物を発見しました。 糸のように細めた目をカッと見開き、見据えたちんれつ棚のいっかくに羽を向けて、ビシッと指しました。 「ぷりん!!」 ドヤ顔です。どうだ、と言わんばかりの誇らしげな顔でした。 ばあちゃんは、あらあら、と微笑みながら、れみりゃの指した方にうでを伸ばしました。 「れみちゃん、これは、プリンじゃないわ。ヨーグルトよ」 手しにしたヨーグルトをカゴの中にポイッと入れて言いました。 「よーぐぅとー? ぷりん、ちがうー。そーなのかー」 目の前に置かれたプラスチックの容器を羽でパシパシしながら、れみりゃが言います。 どことなく、宵闇妖怪さんのような口ぶりです。 不思議そうに目をまんまるにするれみりゃをしり目に、ばあちゃんは、ちんれつされたヨーグルトの三つ横、一つ下の商品に手を伸ばして言いました。 「プリンは、こっち」 「ううっ!! ぷりん!! ぷりん、う~☆」 透明な容器になみなみと注がれた黄色いプルプルは、まがうことなきプリンでした。 大本命の登場にハフーッハフーッと息を荒げるれみりゃでしたが、しかし、意外にもばあちゃん、これをスルー。 プリンを棚に戻します。 キラキラと輝いていたれみりゃのお目々から光が失われました。熟れたりんごのように真っ赤な瞳は、今や滴り落ちる血潮の色です。 羽のパタパタも止まり、お口も開いたままふさがりません。 まるで、お通夜でした。 イタズラが効きすぎてしまったようです。 少女のようにテヘ☆ペロをしてから、ばあちゃんは、牛乳を手にとって言いました。 「お家に卵とバニラオイルがあるのよ。プリンは、手作りがいっとう美味しいわ」 「あうっ!? はうす☆めいど……。そういうのもあるのか!!」 ふっくらとしたれみりゃの顔に笑顔がもどりました。 新しくカゴに加わった牛乳の紙パックに飛び乗ると、コウモリのような羽を左右に広げて、うっううー☆ カナリアのように愛らしい声で、一鳴きしました。 とても元気のいい声です。 周りのお客さんがびっくりして振り向きます。 あらあら、まあまあと、ばあちゃんは、すこし困った顔で笑いました。 さて、無事にお買い物も終わりました。 もと来た道をたどって、お家へ帰ります。 テクテク。パタパタ。 ポストがある十字路へ戻って来ました。ここを左に曲がれば、お家まで一直線なのですが、二人は足と羽を止めました。 来たときは、気がつきませんでしたが、十字路のいっかくに新しいお店ができていたようです。 スーパーへ向かう道の反対側、ばあちゃんのお家がある方面。なるほど、行きしには、見つけづらいはずです。 店頭には、色とりどりの季節の花がならんでいます。お花屋さんでしょうか。 屋根の上に掲げられた看板には、カラフルなパステルカラーで、こう書かれていました。 ――わくわく ゆうかりんランド―― とても楽しそうで、愛らしい名前です。 それなのに、なぜでしょう。その軽快で耳に心地よい響きの中に、生理的な恐怖を呼び起こす悍ましい音色が混じっているように感じられました。 お店の名前がポップ体のような丸みを帯びた可愛い字体などではなく、流麗で達筆な行書体で書かれているからでしょうか。 字が読めるばあちゃんの頬がひきつりました。字の読めないれみりゃは、いつもの笑顔をよりいっそうほころばせました。 「ばあちゃん!! おはな、おはな!!」 「え、あ、そうね。せっかくだから、見ていきましょうか」 見なかったことにして立ち去ろうと思っていたばあちゃんでしたが、嬉しそうにしているれみりゃの期待を裏切るのも可哀想だと思い、覚悟を決めました。 ビューンとゆっくりらしからぬ瞬速で、一直線に飛んでいくれみりゃの後を追って、お店の中に入ります。 そこは、なんのこともない普通の花屋さんでした。 らっしゃぁせぇ、と気だるそうな声がかかります。店員さんは、ニコリともしない眠そうな若者でした。いわゆる最近の若者です。 しかし、お店の品揃えは、なかなかのものでした。晩春から初夏に咲く季節の花がところせましと並んでいました。手入れもしっかりしているようです。 数瞬、むせ返る花の香りをうっとりと楽しんだばあちゃんは、れみりゃを探しました。 とは言っても、たいして広くもないお店の中ですから、首を巡らせればすぐに見つかりました。 れみりゃは、近くのテーブルに乗って、白い大輪の花をじっと見つめていました。 ふいに、その花を羽で指して言います。 「しゃくや!!」 八分咲きの華やぎの中に、凛とした力強さを感じさせる花でした。そのたたずまいに、一度も会ったことのない瀟洒な従者のイメージを重ね合させたのでしょう。 「あら、おしいわね。そのお花は『しゃくやく』よ」 ばあちゃんが声をかけると、瞳を輝かせて陶然としていたれみりゃは、反すうするように聞き返しました。 「しゃくや……く? しゃくや、く!! しゃくやくぅ、しゃくやくう~☆」 立てば芍薬。風情のある女性の姿をたとえるときに、もっぱら耳にする花の名前ですね。 すっかり、その響きが気に入ったれみりゃは、悪魔のような羽をパタパタとしきりに羽ばたかせながら、天使の笑顔で花の名前をくり返します。 ばあちゃんは、くすりと小さく笑うと、芍薬を何本か手にとって店員さんに言いました。 「これ、いただくわ。おいくらかしら」 「お代は、けっこうっす……。自分の育てた花で、そんなに喜んでもらえて……。なんか嬉しかったんで、プレゼントするっす」 ニコリともしない店員さんは、耳の端を赤く染め、恥ずかしそうにそっぽを向いて言いました。最近の若者も、これはなかなか。捨てたものではありません。 あらあら、と笑みを深いものにしながら、ばあちゃんは、れみりゃの背中をポンと叩きました。 「ほら、れみちゃん。やさしいお兄さんにお礼しないと」 そう言われて、ハッとしたれみりゃは、しばしアタマを抱えて、ウーンウーンとうなります。 お礼の言葉を思い出しているのです。 ゆっくりしていってね!!! これは歓迎の挨拶。違います。 ゆっくりしね!!! 可愛い妹の歪みない愛情表現です。違います。 あっりゃとうやした! おしいけれど、論外です。 「うーっとね、うーっとね……。さんきゅ、うー!!!」 口をついた言葉は、なぜか英語でした。 「ユア、ウェルカム」 負けじと、店員さんも英語で答えます。 「Good for you !」 「え!?」 ならばと、ばあちゃんも英語でれみりゃに語りかけました。流暢な発音に、驚いた店員さんがすっとんきょうな声を上げます。 それがどうにもおかしくて、三人は大笑いしました。 それからしばらくして、二人は、花屋さんをあとにしました。 すっかり長居してしまったようで、西側にある山の稜線は、すっかり朱に染まり、東の空には、チラホラと星がまたたいています。 急いでお家に帰りましょう。 テクテク。パタパタ。 テクテク。ぱたぱた。 テクテク。…………。 羽音がやみました。はしゃぎまわって、すっかりお眠のれみりゃは、ばあちゃんの頭の上で、ウツラウツラと夢見心地です。 ばあちゃんは、その寝顔を見ることができませんが、れみりゃがどんな顔をしているのかなんて、誰にだってわかることでしょう。 満面の笑顔で見るのは、夢の世界です。小さなアタマの中の、内側に閉じたとても小さな世界です。それは悲しいことでしょうか。 芍薬にオールドローズ、水仙にチューリップ、タンポポにスミレ……。そこは、季節も大きさも蕾も満開も、なんもかんも関係なしに花が咲き乱れる花園です。 プリンにヨーグルト、ゼリーにアップルパイ、クッキーにビスケット……。美味しいものならなんだってあります。 その楽園で、仲良しなみんなとお花見をします。 大好きなばあちゃんがいます。引きこもりがちで乱暴な妹がいます。いつか出会うでしょう瀟洒なメイドもいます。少し離れた桜の根元では、花屋のお兄さんがムッツリとした顔で手をふっています。 決してひとりでに広がることのない世界ですが、痛みも悲しみもありません。 風が吹き抜けることのない、花の香りが満ちる世界は、毎日ほんのすこしだけ広がっていく幸せな世界です。 「きっと明日は、もっといい日になるわね」 れみりゃの幸せな世界を知ってか知らずか、ポツリとばあちゃんがつぶやきました。 そのつぶやきは、左手に携えた芍薬の香りと一緒に、五月の涼風に乗って消えていきます。 とっぷちと暮れた宵闇の中、れみりゃの穏やかな寝息だけが、くかーくかーと響きました。 あとがき 「借家ぁー、借家ぁー」「いいえ、あれは、今まさに燃え尽きんとする我々の資産の一部です」 おかしいな。はじめは、こんな話になる予定だったのに……。 心が穏やかになります。(//・ω・//) -- 名無し (2014-01-08 02 26 13) カワイイ! -- 名無しさん (2014-04-05 13 37 10) 名前 コメント