約 4,253,494 件
https://w.atwiki.jp/japanesehiphop/pages/3829.html
Format Title Artist Label Model Number Release Press 7 優しくしないで 95 MGF ROSE RECORDS ROSE 208 2017/04/01 - Side Track Title Produce A 1 優しくしないで 95 feat.曽我部恵一 KSK B 2 優しくしないで 96 KSK PERTAIN RECORD 優しくしないで'95 feat.曽我部恵一 [Analog] PERTAIN MP3 Float in the Dark
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7117.html
髪を撫でる風にほんの少しだけ秋の気配を感じる午後 川面に反射する穏やかな陽光 壊れ物を優しく包む様に抱きしめてくれる憂の腕が温かくて… でも…お願い…これ以上優しくしないで… 私にはそんな資格なんてないよ… どうしてこんなに弱くなってしまったんだろう… 強かった私は壊れた…もう、戻る事は無いんだ… 憂「我慢しなくていいよ、私が受け止めてあげる」 梓「…優しくしないで…お願い」 涙が溢れる…ダメだよ、こんなの…なのに憂の優しさに甘えようとしている 自分が…嫌いだ 視線が交わる…憂の目には憐れみの影なんて一片も浮かんでいない ひたむきなまでに真剣なまなざし…そこにあるのは吸い込まれそうな透明さと優しさ お願いだよ…そんな目で見つめないで 思わず瞳を逸した… 憂「…梓ちゃん」 梓(!?) 戻した視線の先には瞳を閉じた憂だけ 重なる唇から伝わるぬくもり…優しさ…身体の奥深く…凍えてしまった私の心まで溶かすように染みわたっていく 凍った時が動きだす…でも、壊れた夢は戻らないよ、きっと… きっかけはクラスメートとの他愛も無い会話 「中野さん、今年も学園祭ライブするんでしょ?」 梓「うん、良かったら見に来てね」 「もちろん!楽しみにしてるよ」 これが先輩方との最後のライブになるかも知れない そんな一抹の不安を胸の奥に抱きつつも、私は張り切っていた 「でもさ、中野さんも色々大変だよね」 「だよね。ほら、さっきの子達だってさ」 「あぁ、あんなのただのやっかみだってば」 梓「え?どうかしたの?」 「さっき廊下で聞いちゃったんだ」 梓「だから、何を?」 「他の組の子達がね、中野さんの事を…」 「よしなよ、そんな事言うの。告げ口するみたいで嫌じゃん」 「でもさ、こういうのって見知らぬ誰かにいきなり聞かされるよりは知ってたほうがよくない?」 梓「ハッキリ言ってくれていいよ。そのほうが私もスッキリするし」 「あのね、中野さんの事を軽音部の先輩達に可愛がって貰ってるからって、いい気になってるんじゃないかって」 梓「…え?」 「ほら、軽音部ってウチでは目立つ存在じゃん」 確かにこれは否定しない。桜ヶ丘の部活の中でも軽音部が目を引く存在なのは薄々承知している 「そのバンドメンバーだからって注目を浴びて、自分はみんなとは違うって感じで、ちょっと勘違いしてるんじゃないかってさ」 正直驚いた…そんな事は考えた事すら無いのに 純「ちょっとあんた達さぁ、さっきから梓に何の恨みがあるって言うのよ!」 呆然としていて気付かなかったが、いつの間にか純がクラスメート達の後ろに立っていた 「わっ私達じゃないわよ!他の組の子達が」 純「だったら、何組の誰よ!ハッキリ言えばいいじゃん」 「その、廊下ですれ違っただけだから。それに私達もよく知らない子達だったし、だよね!」 「う、うん。そうそう」 「うん、うん」 梓「純、私は平気だから。とにかく少し落ち着こう、ね?」 純「でもさぁ、梓」 梓「本当に私は気にしてないから。あの、みんなも教えてくれてありがとうね」 「う、ううん。なんかゴメンね」 「ライブ頑張ってね」 「じゃあ、ね」 純「もう、梓は優しすぎんのよ!私ならあんな事言われた日にゃあ」 梓「ありがとう、純、心配してくれて。でも私は平気だよ」 純「…ホントに?」 梓「本当に本当」 純「うーっ、それでもなんかイライラするぅ!絶対許せないっていうかさぁ」 私の為に本気で怒ってくれる、これが純の良い所でもあるけど、今は事を余り荒立てたくない 憂「ほら、純ちゃん落ち着いて。それじゃ返って梓ちゃんを困らせちゃうよ?」 こんな時にすかさずフォローに入ってくれるのが憂だ。どうやら憂も一連の会話を聞いていたらしい 純「…まぁ、梓が気にしないって言うんなら」 梓「全然。朝日のように爽やかに、だよ」 純「おやおや、ジャズ研にはそんな洒落たナンバーを会話に混ぜる小粋な子はいないわ。だから梓って大好きなのよね」 さっきまでのお怒りモードはどこへやら。満面の笑みを称えて大好き、なんて恥ずかしい台詞を平気で言っちゃうのも、これまた純の良い所だ 純「さってと、それじゃ私は部活に行くわ。梓もお茶ばっかり飲んでないで練習頑張りなさいよ」 梓「大きなお世話ですぅ」 純「まっ、軽音部はライクアローリングストーンよね」 梓「…純。あんた本当にジャズ研?」 純「…未だにもって、ジャズとは何なのか分かんないわ」 憂「SMOKE GETS in The EYEsだね、純ちゃん」 梓「憂のほうがよっぽどスイングしてるわ」 純「…これ以上いたら目どころか、心までやられるわ。では、サラバじゃー」 なんと言うか、純は平和だ。それもまたよし 梓「ふぅ」 憂「梓ちゃん」 優しく微笑みながら、机の上の私の手に温かな掌を重ねる。余計な言葉で飾らない優しさ、これが憂だ 梓「ありがとう、憂」 重なる掌が心地よい。こんな時いつも思う、憂にはかなわないって 憂「ううん、私はなんにもしてないよ。それにしても純ちゃんは優しいよね」 梓「だね」 重なった互いの掌を見つめる。これが…って、私まで恥ずかしい台詞を口にしそうになって思わず笑みがこぼれた 梓「純なら言いそうだよね。これが青春だぁ!なーんて」 憂「アハハ、きっと言っちゃうよね」 梓「だよね」 この時の私はまだ笑えていたんだ… それは突然だった 帰宅する憂と別れ、いつものように音楽室へ続く階段に向かう廊下。不意にその声は聞こえた 「いい気になってんじゃないわよ」 思わず声のした方向を見る…でも、そこには誰もいない 梓「気のせい、だよね」 気を取り直して階段を昇る。楽しそうに会話をする二人の生徒達とすれ違う。背後で彼女達の笑い声が響いた 梓「…別に私を笑った訳じゃないし。感じすぎだよ、私」 降り積もり始めた心の澱に、まだ気付いていなかった… 音楽準備室、いつもの賑やかで楽しい軽音部への扉を開く 梓「こんにちはー」 穏やかな陽光の降り注ぐ室内。しかし、先輩方の姿は無い 梓「まだ誰も来てないんだ…」 特別意識する事も無く、自然と足が部屋の片隅に向かう 梓「トンちゃん、今日も元気かな」 水槽の中でゆらゆらと泳ぐトンちゃんと目が合う。軽く水槽を指で弾く 梓「ねぇ、トンちゃん。私って嫌な子なのかな…」 勿論トンちゃんは答えてくれない 梓「アハハ、何を考えてるんだろう、私」 誰もいない部室、ふと胸の奥が軽く痛んだ… 梓「…遅いな、先輩方」 長椅子に腰掛けて、室内を見渡してみる いつもの見慣れた室内。ホワイトボードに描かれた他愛の無い落書き 梓「唯先輩の絵って、結局進歩しなかったなぁ」 少し驚いた…進歩しなかった…なんで過去形なの、私? 梓「…練習しようかな」 ギターケースを開き、ムスタングを取り出す。なぜだろう…少し違和感を感じてしまう 梓「なんかシックリこない…ネックがモタレたかな?」 軽くフィンガーボードを押さえて、水平に構えてみる。 指が…手が…震えていた 梓「集中、集中しよう、私」 目を閉じて意識を指先に集中…出来ない 不意に誰かの視線を感じた気がして、慌てて目を開き周囲を見渡す 梓「…誰…もいない」 不快なノイズが響く…震える指先が弦を擦る音だと気付くまでに数秒を要する程に動揺していた 梓「どうしよう…震えが止まらないよ」 指先から全身へ伝播する震え…決して暑くない室内で前髪が額に張り付く程に汗を浮かべていた 梓「…気持ち…悪いよ」 降り積もる澱が心を、身体を浸食していた… 耐え難い不快感…駄目だ…今日はもう帰ろう 梓「先輩方にメールしないと」 震える手を励まし、携帯のメールキーを押す…空白の画面を見つめた途端、思考が停止する 梓「なんて…書けばいいの」 嘲るような声が耳の奥に響いた 「あんたなんて必要無いんじゃないの?」 そうだ…元々軽音部は先輩方4人だった 私がいなくても… 虚ろな意識の片隅に、様々な記憶の欠片が浮かんでは消える やめて…今は思い出したくないよ 真っ白だった… 気がつけばギターケースを抱えて、部室を飛び出していた 梓「こんなの…嫌だよ」 すれ違う人々が私に嘲りの視線を向けているようで…怯えた子犬のように家路を急ぐ 自宅の玄関に飛び込む…息苦しさは消えない 静まり返った家…靴を脱ぐのももどかしく、階段を駆け上がって自分の部屋に入る 制服のままでベットに潜り込み…身体を丸めて全身の震えを止めようとした 何も見たくないよ…聞きたくないよ…考えたく…ないよ 降り積もる澱は、小さな私から溢れようとしていた… まどろみの中で先輩方の姿が浮かぶ 見知らぬ校舎…桜が咲き誇る道を私服姿の4人が並んで歩いている 「しっかしまさか、軽音部どころかサークルすらないなんてなぁ」 「ここって結構お嬢様学校だしな。バンドよりクラシックて感じだろ」 「なければ作ればいいんだよっ!」 「そうよね。高校の時だって、私達4人で始めたんだから」 「だな。よっしゃー、いっちょやるかぁー!」 「相変わらず私の参加は決定事項なのか?」 「当ったり前じゃん!大学でもファンクラブが出来るくらい大活躍してやれぇい」 「それだけは絶対に嫌だっ!」 「んー、でもそうなりそうな気がする」 「嫌だっ!」 「まぁまぁ、人気者の宿命ってやつだな」 「嫌だっ!」 「先ずは部室を確保しないと、ティーセットも運び込めないわ」 「いや、それは微妙に間違えている気がするぞ」 「えー、お茶とお菓子の無い軽音部なんて軽音部じゃないよっ!」 「いや、それは絶対に間違えているぞ」 「あら、それじゃティーセットは無しにする?」 「いやーん、イケズゥ。分かってる癖にぃ」 やっぱり私は要らない子なんだ… 頬を伝う涙の感触に意識がまどろみの中から引き戻される… 梓「…嫌な夢」 鉛が入ったかのように重たい身体…なんとか両腕で支えて上半身を起こす 暗闇の中で携帯の着信を示すランプが明滅している、確認することも無く電源を切る… 壁掛け時計の蛍光に彩られた長針と短針が深夜3時を報せていた 梓「酷い寝汗…最悪だ」 シワクチャになった制服を脱ぎ捨て、着替えもそこそこにバスルームへ向かう 着替えたばかりの服を脱衣所で脱ぎ捨てる 鏡に映る姿…泣き腫らした目、涙の筋がついた頬 自分でも嫌になるくらい未成熟な身体に視線を移す 華奢な肩と薄い膨らみしかない胸、緩やかなラインの腰 身体が心を写すのなら、私は全てにおいて子供だと実感させられる 鏡に映る誰かが呟く 「大嫌い」 その醜悪な表情に恐れを感じて、慌てて鏡から視線を逸してバスルームに飛び込む シャワーを全開にして叩き付けるような水の奔流に身を委ねる 梓「…汗と一緒に全部流れちゃえばいいのに」 翌朝、ドアをノックする音に目覚める 「梓、もう起きないと遅刻するわよ」 時計は7時30分を報せていた 相変わらず重たい身体を引摺り起こし、母に答える 梓「起きてるから大丈夫だよ」 大丈夫…嘘だ。ちっとも大丈夫なんかじゃない 「時間が無くても朝食はちゃんと取りなさいよ。あなた昨日は夕食も取らずに寝ちゃったんだから」 いつもなら優しい母の声も今日は違って聞こえるのは…きっと私自身のせい 思わず苛立ちをぶつけそうになる自分をなんとか律する 梓「はーい。分かってるよ」 嘘で固めた自分…降り積もる澱はもう私を押し潰そうとしていた ダイニングテーブルで母と他愛の無い会話を交わしながら食事を取り、学校へ向かうべく玄関を出る 「いってらっしゃい、梓」 梓「行って来まーす」 母の姿がドアの向こう側に消えた途端、なんとか体裁を繕っていた空元気も消え失せた… 背負ったギターケースがまるで罪人の枷の如く、私を戒める 梓「…こんなに重かったんだ」 分かってる、重いのはギターじゃない 我侭で臆病な自分自身 結局昨晩の着信やメールは確認することなく全て消去してしまった 梓「…もう先輩方に会わせる顔もないよ」 いつもと違う道を選んで学校へと向かう 遅刻ギリギリのタイミングで校門をくぐり、教室に入った 純「おっはよー、梓。珍しいじゃん、遅刻寸前なんて」 今朝も元気な純だ。今の私には眩しいくらいに… 梓「おはよー、純。昨日はちょっと夜更かししちゃってさぁ」 純「ふーん、どうせまたネットで怪しげなグッズを探してたんでしょ」 梓「そんな事言っていいのかなぁ。折角安くて効きそうな縮毛矯正コンディショナーを見つけたのに」 純「なっ!マジで?」 大丈夫…こんな嫌な私を誰にも知られたくない…笑うんだ、例えそれが偽りの笑顔でも 憂「おはよう、梓ちゃん」 梓「お、おはよう、憂」 ヤバい…今一瞬声が震えそうになった 唯先輩から昨日部活をサボった事、きっと聞いてると思うとつい… 憂「…少し寝不足みたいだね。目の下が少しクマってるよ」 梓「ちょっとネットに熱中しちゃってさぁ」 始業を告げるチャイムが鳴る…助かった 憂「それじゃまた後でね」 梓「うん」 自分の席に戻るべく振り返った憂から、なんだかいい香りがした なんだったかな…花の香りだよね 私の不安をよそに、時間は流れた 休み時間の他愛もないおしゃべり 憂と純と食べる昼食 いつもと変わらない穏やかな学校生活 …嘘。いつもと変わらないフリをしているだけ まるでもう一人の自分を見るように、心は少し離れた位置にある 本当は泣き出したかった…お願いだよ、誰か偽りの私に気付いて… 誰か…助けてよぉ そんな心の叫びとは裏腹に、もう一人の私はいつもと変わらない笑顔を浮かべている… 降り積もった澱は、もう私を壊してしまったのかな… 最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る 純「んーっ、今日も勉学に勤しんだぁ」 梓「うむ、偉いぞ、純くん」 純「ははぁ、有り難き幸せです、梓大先生!って、誰?」 梓「私が知る訳ないじゃん」 純「アハハ、そりゃそうだ。さってと勉学の後は、音楽に勤しみますか」 ギターケースを背負う純の姿を見て、なんとか押さえていた胸の痛みが甦る… 純「途中まで一緒に行く?」 梓「先に行っていいよ。私はちょっと用事を済ませてから行くわ」 純「ほいほーい。じゃあまた明日ー」 梓「うん、ばいばい」 …嘘つき。用事なんてない癖に 2
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7118.html
三三五五教室を出るクラスメート達 どれくらいの時間が経ったのか…人影がまばらになった教室で、机の上に視線を落とした私の鼻腔に微かな甘い香りが届いた …憂の香り 憂「梓ちゃん」 内心の動揺を悟られないように、偽りの笑顔を貼り付けて声のした方向に視線を向ける 梓「なんか、ボーッとしちゃった」 大丈夫…いつもと変わらない私だ… 憂「ふふっ、ちょっぴり秋の気配を感じる午後って、ついボンヤリしちゃうよね」 梓「だよね」 …お願い…もう少しだけ…いつもの私でいさせて… 罪人の枷のように重たいギターケースを背負い、憂と並んで教室を出る 帰宅する憂と階段の前で別れた 憂「それじゃ梓ちゃん、また明日ね」 梓「うん、ばいばい」 結局憂は何も言わなかったな… 遠ざかる甘い香り…思わず叫びたくなる… イカナイデ ヒトリニシナイデ 鼻腔をくすぐる甘い香りが消え失せると同時に、あの不快感が心も身体も覆い尽くしていく… 梓「…今日は先輩方来てるかな」 音楽室へと続く階段が険しい急峻の如く感じられる 白濁していく意識の片隅で先輩方の姿が浮かぶ 「あれ?ケーキが6個もあるよ」 「さわちゃんの分だろ、ってそれでも1個余るか」 「あら、私ったら何か勘違いしちゃったのかしら」 「お茶の心配もいいけど、少しは練習もしような」 「あら、私の午後の優雅なティータイムにケチをつけるつもり?」 「って、さわちゃんいたのかよっ!」 「相変わらず神出鬼没ですね」 「アハハハハ」 …やめて…こんなの見たくない…もう…嫌だ 後退りするように階段の前を離れ、気がつくと誰もいない教室に戻っていた… 誰もいない教室… ギターケースを机の脇に立て掛け暫く放心したように立ち尽くしていた… 梓「…帰ろ」 重たい身体を引摺るように教室を出る 音楽室へと続く階段の存在を無視して、エントランスへと向かう 上履きを履き替え、校舎を後にする 部活の喧騒を背に聞いて、初めてギターケースを置き忘れた事に気付いた… 梓「もう…いいよ」 振り返るのも煩わしく、校門をくぐり抜ける… 近付く秋の気配を秘めた微風に乗って、あの甘い香りが届く 振り向くと門柱を背に憂が空を見上げて立っていた 梓「…憂」 穏やかな微笑みを称えた憂が空を見上げたままで口を開いた 憂「空が高いね、梓ちゃん」 私も見習うように視線を空に向ける 梓「うん」 午後の風に前髪をくすぐられるままに、瞳を閉じた憂が続ける 憂「吸い込まれちゃいそうだね」 梓「うん」 …甘い香り…その透明さを隠す事無く佇む憂の存在にこそ吸い込まれそうになる… ゆっくりと私に視線を移した憂がいつもの柔らかい微笑みを浮かべる 憂「一緒に帰ろう」 不意に込み上げて溢れそうになる涙を押さえて、ただ静かにうなづいた 梓「うん」 昨日は怯えるように走り抜けた帰路を、今日はゆっくりと歩みを進める 私を覆い尽くした心の澱は消えてはいない…それでも昨日とは違って嘲るような視線に怯える事もない ただ憂がそこにいてくれる…並んで歩いてくれる…たったそれだけなのに 微かな甘い香りが、記憶の片隅に眠る幼い日の自分を見せたような気がした… キラキラと穏やかな午後の陽光を反射する川面を下に見る土手の道を無言で歩く 不意に憂の柔らかくて温かな手が私の手を包んだ 憂「少し寄り道しちゃおうか?」 川面を間近に見る芝生の斜面に並んで腰を降ろす お互いの掌は重ねたまま この場所で、唯先輩と2人で演芸会の演目を練習したあの日が遠い過去のように浮かんで消えた… ただ黙って川面を見つめる…重ねた掌から憂の存在が流れ込んでくる …駄目…だよ、こんなの 私は憂の優しさに甘えているだけだ… 分かっていても離れられない… 甘い香りが不意に私に近付いた気がした 振り向くと視線の先には憂の透明な存在だけ… …お願い…優しく…しないで 瞳が揺れる…駄目…泣いちゃ駄目だよ… こんなのは狡い…憂の優しさに付け込むような真似だけはしたくないよ… 重なる視線…どこまでも透明で吸い込まれそうな憂の瞳 …私なんかに…どうして… 不意に重ねた掌が離れた …嫌…お願い…離さないで… まるで時間の流れがゆっくりになったような世界の中で、憂が私を優しく抱きしめてくれた 押さえていた全てが溢れ出す…嗚咽が耳に届く…泣いてるの、私? …駄目だよ…こんなのは…嫌だ 抱きしめてくれる憂の全てが心地よくて… でも…お願い…駄目だよ…私の存在が憂の透明さを汚してしまったら…私は自分を許せなくなってしまう 憂「我慢しなくていいよ、私が受け止めてあげる」 梓「…優しくしないで…お願い」 抱き締めてくれる憂がほんの少しだけ離れる…互いの顔を至近に見つめられるだけの間に 瞬間、透明さを称えた憂の瞳に鮮やかな色彩が浮かんだ気がした… これが本当の憂の色…なのかな あまりの鮮やかさに瞳を逸す… 憂「…梓ちゃん」 互いの唇が触れ合う 重ねた唇から伝わるぬくもり…優しさ…身体の奥深く…凍えてしまった私の全てを溶かすように沁みわたっていく 触れた唇が離れると同時に凍っていた時間が動きだす… 梓「憂、いまの…」 憂「素直になれるおまじない」 いつもと変わらない透明な笑顔…色褪せた世界が鮮やかに色を成していく それからはよく覚えていない…ただ憂の胸に身を委ねて全てを溢れさせた 出会いの喜びと別れの予感の辛さ… 不安と増長した己の醜さ… 我侭で臆病な私… 気がついた時には降り積もり溢れた澱が全て消え去っていた 胸一杯に広がる憂の甘い香りが、さっき一瞬垣間見せた幼かった頃の記憶を鮮やかに甦らせてくれた アルトサックスを携えて私に微笑む若き日の父 隣りには真紅のドレスに身を包んだ若き日の母 私と同じ黒くて艶やかな髪に鮮やかな花が飾られていた 甘い香り 母が己の髪に飾られていた花を私の髪に挿してくれた 無邪気な笑顔を浮かべる私 梓「そうか…クチナシの香りだ」 初めて父と母の立つステージを見たあの日、いつか自分も…音楽の道を志した瞬間… 何も言わずにただ優しく抱きしめてくれた憂の胸から身を起こした 照れ隠しに笑顔を浮かべてみせる 梓「エヘヘ」 偽りなんかじゃない、心からの笑顔だ そんな私を優しく見つめた憂が、胸のポケットから小さな紙片を取り出して私に差し出す 憂「梓ちゃんにあげる」 受け取った小さな紙片は紙包みになっていた 甘い香り…憂の香り クチナシの花びらが押されたそれを自分の胸ポケットにそっとしまう 憂と同じ香りになった自分に少し照れたりもする 寄り添うように座り、川面を見つめる 浮かんだ疑問を素直に聞ける私がいた 梓「ねぇ、憂は知ってたの?この花がビリー・ホリデーの代名詞のような存在だって」 小さく小首を傾げる憂 憂「有名な女性ジャズシンガーだよね?でも、クチナシの花の事は知らなかったなぁ」 偶然なんだ…ううん、むしろこの花を憂が好きな事が必然に感じられた 憂「それじゃあ梓ちゃん、クチナシの花言葉って知ってる?」 今度はこっちが小首を傾げる番だ 憂「私は幸せです」 最高の笑顔、やっぱり憂にはかなわないよ 突然土手の上から大きな声が上がる 純「やーっと見つけたぁ!」 土手を下る階段を純が駆け降りてくる 梓「どうやって見つけたのかな?」 憂「野生の本能?」 顔を見合わせて笑いあう、なんの屈託もない笑い声が耳に心地よい 純「なによそれー。人が折角…って、梓いい顔してんじゃん」 梓「そうかな?」 分かっていて少し惚けてみせる 照れ隠しだよ、うん 純「まぁ、いいや。ほい」 両肩に1本ずつ、2本のギターケース そのうちの1本、紛れもなく私のムスタングが入ったケースを私の膝の上に置く 梓「純、わざわざこれを?」 純「教室に忘れ物を取りに帰ったら、梓の机に立て掛けてあんじゃん。これはおかしい!と思ってさぁ」 憂「それで野生の本能で駆け出した、と」 純「そうそう!って、その野生はやめてよねっ」 憂「アハハ、ごめーん」 憂、純…何を悩んでたんだろうね、私 私の隣りに腰掛ける純 ケースからベースを取り出すと、おもむろに弦を弾く アンプを通さなくても伝わる 秋の訪れを拒むように奏でる盛夏のリズム 梓「Summertime bluesって…それでいいのか、ジャズ研?」 純「好きなんだからいいじゃん。んな事よりあんたも弾きなさいよ、どうせ弾けるんでしょ?」 梓「その挑発、乗った!」 ギターケースからムスタングを取り出す もう指先が震える事もない いつもの私とムスタングだ 梓「やってやるです!」 ちょっぴりチープでマヌケなセッション それでもなぜか満足感 乗ってきた純が憂にムチャ振り 純「ほら、憂も歌う!」 おいおい、ジャズ研。そりゃ無理ってもんでしょ 憂♪~O Lord,I got to raise a fuss 梓「にゃっ!」 純「うわおうっ!」 憂♪~sometimes I wonder what I m a gonna do 透明感溢れる歌声、それはまるで憂の存在そのものが音になったように耳に心地よく響いてくる 憂♪~Lord,there ain t no cure for the summertime blues 観客もいない、ちっぽけだけど最高のライブだ、うん 純「梓はともかく、憂には参ったわ」 憂「エヘヘ、お粗末様でした」 純「なんで歌えちゃうの?」 憂「ナイショ」 本当に憂は宝石箱みたいだ 中に詰まったピッカピカの宝石で、時々私を驚かせてくれる って…ヤバいヤバい!さっきの憂の柔らかい感触が甦って…アツいよ 純「んで、梓はなんで真っ赤になってんのよ?」 梓「ちょっと気合い入れすぎて、火照っただけだもん!」 純「本当かぁ?なーんかあんた達怪しいのよねぇ」 梓「な、なによそれ?」 純「んー、べっつにぃー」 純「んで、憂。本当のところはどうなのよ?」 こらこら、変な所で鋭い奴め まぁ、憂が何も言う訳が… 憂「あのね、梓ちゃんとキスしちゃった」 …え?憂?なにそのホッペを押さえて、照れ照れアピールは 純「なんだとぉー!」 憂がチラッと視線を投げてくる、悪戯な色が瞳に踊っている …アハハ、やっぱり憂にはかなわないや 純「うーっ、憂ばっかりズルイー。私も梓にチューしてやるぅ」 おいおい、熱中症にやられたか、ジャズ研? 憂「ダメだよ、純ちゃん!梓ちゃんは僕のものだよっ」 純「僕って…誰?」 憂「さぁ、分かんない」 梓「アハハハ」 おっかしい。笑いが込み上げてくる 胸ポケットにしまったクチナシの押し花の香りが教えてくれる 「私は幸せです」 純「よし、それじゃ半分こしよう!」 憂「それなら許す!」 いや、許すとか許さないとかそんな問題? 憂純「せーの」 憂と純が私を挟んで両側からホッペにキスをする こらこら憂、その携帯のカメラは何を撮るつもり? その夜 自室のソファーに腰掛け携帯の画面を見つめる 両側から悪戯な微笑みを浮かべて、私の頬にキスする憂と純 困ったような戸惑うような、それでも笑顔の私 もう大丈夫だよ…ありがとう 憂の香り、テーブルの上に置いたクチナシの紙包みに視線を移す 昼間は気づかなかった、中に書いた文字がうっすらと透けて見える ゆっくりと慎重に包みを開く 中には茶色く変色したクチナシの花びらと、一篇の歌 我が恋をなどて語らむ夕闇にクチナシの花はただ香るなり 梓「…大好きだよ、憂」 私は幸せです お し ま い 戻る
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/218.html
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 11 52 23.86 ID nrfCYLD00 [2/42] 『そんな優しくしないで。どんな顔すればいいの』 ライトブラウンの髪に端正な顔を縁取られた美少女は、 空色の瞳に大粒の涙を浮かべて言った。 俺は彼女をそっと抱きしめる。 『どうして優しくしちゃいけないんだ?俺はこんなにもお前のことが好きなのに』 腕の中の小さな体が震える。 『わたしも……お兄ちゃんのことが好き。大好き』 妹の告白が、胸にじんと染み渡る。 禁断の恋。許されざる愛。そんなことは分かっている。 でも自分の気持ちに嘘はつけない。俺は世界中の誰よりも妹を愛しているのだ。 『顔を上げて』 『ダメ。今のわたしの顔を見ないで』 いやいやする妹の顎先を持ち上げる。涙に濡れてなお、美貌は損なわれていない。 『綺麗だよ』 『お兄ちゃん……』 俺は朱に染まった妹の唇に、そっと自分の唇を合わせた――。 「っしゃ!CGコンプ!」 現実世界に帰還した俺は天井を仰いで快哉を叫んだ。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 12 15 37.95 ID nrfCYLD00 [3/42] 現在時刻AM5:22。 カーテンの隙間から覗く東の空は、ぼんやりとした飴色を帯びていた。 「もう朝か」 時間を確認した途端、待ってましたと言わんばかりに眠気が押し寄せてきたが、 ここでベッドに倒れ込むと、次に目覚めたときに休日がまるまる終わっている目算が非常に高い。 なので俺は充血した目を擦り擦り、シャワーを浴びて眠気を飛ばすことにした。 シャットダウンする前に、液晶画面上で熱烈にキスを交わし合う二人を眺める。 積年の想いが実を結んだ感動的なシーンだ。 ここまで二人の気持ちの擦れ違いや、葛藤を追ってきた俺にとっても待望のシーンであり、 両目の充血や涙なしには直視できなかったのだが、 生憎、それは昨夜からぶっ続けてプレイしていることによる眼精疲労の結果であって、 誓って、このエンディングに感動しているわけじゃない。 だって、こいつら兄妹なんだぜ? 血の繋がってる家族なんだぜ? 現実に妹がいる俺から言わせれば、ちゃんちゃらおかしいね。 こういうゲームを純粋に楽しめるのは、兄弟姉妹に幻想を抱いている一人っ子くらいだろうさ。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 12 33 37.13 ID nrfCYLD00 [4/42] ――じゃあ、なんでてめえは面白くもねえ妹モノのエロゲをCGコンプするまでやってんだ? 至極当然の疑問だよな。 その問いに、俺は溜息と共に答えたい。 「うっひょー!!!ヘレナちゃんのHシーンキタ――――!!」 現在壁越しに奇声を上げている俺の妹こそが、そもそもの元凶だと。 『これ、マジ泣けるから。明日までにフルコンプしといて』 まるでポストに葉書を投函するような気軽さで手渡してきた直方体には、 目が異常に大きく有り得ない髪の色をした女の子たちが純真無垢な笑顔を振りまいていて、 なのに右下には小さくR18のマーク、つまりはエロゲだった。 なんで中学生の妹がエロゲを嗜んでいるのか、という突っ込みはナシだ。 ついでに妹――桐乃――が俺にエロゲを寄越してきたとき、桐乃が設けた制限時間内にそのエロゲを攻略するというのも規定事項だ。 拒否権? あるわけねえだろ、兄妹の上下関係的に考えて。 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 12 53 04.80 ID nrfCYLD00 [5/42] PCの電源が完全に落ちたことを確認して、俺は立ち上がった。 長時間同じ姿勢を維持していたせいで腰が痛む。 さてと、熱いシャワーを浴びに行くか――。 俺は着替えを適当に選び、部屋を出た。 先ほどの奇声を最後に、桐乃の部屋からは物音が聞こえてこない。 据え膳を目の前に眠気に屈しちまったのか? 抜き足で桐乃の部屋の前を通り過ぎようとしたとき、突然ドアが開き、俺は盛大に額を打った。 「痛ぇ!?」 「なっ、なんでアンタがここにいんの!?」 桐乃は、驚愕、茫然、赤面と表情を三変化させて、 「まさか夜這い――」 「なわけねえだろうが」 俺は痛む額を押さえながら言った。 「俺は眠気覚ましにシャワー浴びようと思ってただけだよ。お前は?」 と尋ねた後で、桐乃の手にある着替えと下着一式を認める。 どうやら桐乃も同じ目的だったらしい。 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 13 17 03.78 ID nrfCYLD00 [6/42] 「キモ。ジロジロ見んなっ」 桐乃は着替えを後ろ手に隠し、思い出したように尋ねてきた。 「アレ、もうクリアしたの?」 「まあな。ついさっきTrueエンド見てきたところだ」 「ふーん。やるじゃん」 最初は数ある選択肢が生み出す無数の組み合わせに悩まされたもんだが、 今では自分でフローチャートを描けるくらいに成長し、 そこらのエロゲプレイヤーよりは遙かに効率よくエロゲを攻略できるという自負もある。 世間一般ではそれを立派なオタクという……が、俺はあくまで一般人を気取りたい。 桐乃は廊下側に足を踏み出すと、 「感想はまた後で聞くとして、シャワーの順番はあたしの方が先だから」 「へいへい、さっさと出てこいよな」 ここで突っかかっても喧嘩の種になるだけだ。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 13 33 53.71 ID nrfCYLD00 [7/42] 俺は大人の余裕でもって、諍いを未然に回避したのである。 妹は兄の譲歩に花のような笑顔で「ありがとう」と言うこともなく、 鼻歌交じりの軽快な足取りで階段を下りていった。 とまあ、以上の描写からざっと俺と桐乃の奇妙な兄妹関係が理解できたのではないかと思う。 妹モノのエロゲをこよなく愛する妹――桐野と、 その桐乃になかなか頭が上がらない兄貴――俺。 昔は普通の仲の良い兄妹で、 小さな喧嘩が俺たちの間に深い溝を作って、 同じく些細な切欠で、俺はまた桐乃と兄妹をやりなおすことができている。 やりなおすと一言で言っても、そこには大層な紆余曲折があったのだが……、今となっては過去の話だ。 俺は階段傍の手すりにもたれ、欠伸をしながら妹の帰りを待った。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 13 47 06.12 ID nrfCYLD00 [8/42] 土曜の朝。 シャワーを浴びた後もエロゲをプレイし続けていたらしい桐乃と、 寝るに寝られず大音量でメタルを聞いていた俺のテンションは最低で、 お互いに言葉少なくシリアルを口に運んでいる。 ちなみに親父とお袋は、遠方の親戚が亡くなったとかで昨日から家を空けている。 「…………んの」 「ん、なんか言ったか?」 顔を上げると、桐乃は焦点の曖昧な寝ぼけ眼で俺を眺め、 「アンタさぁ、今日は何か予定あんの」 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 14 06 54.79 ID nrfCYLD00 [9/42] 「別に予定とかはねえけど?」 「ぷっ。やっぱりねー。そんなことだろうと思った」 イラッ。予想ついてたならいちいち聞いてくんじゃねえっての。 「自室で優雅に休日を過ごすことの何が悪いんだ?ああん?」 「それって誰からも遊びに誘われなかったことに対する言い訳じゃん」 「ぐっ……」 「誰かから誘われてぇ、それでも一人で過ごすことを選んだなら話は別だケドぉ、兄貴の場合は違うよね?」 「た、たまにはそんな日があってもいいだろ?お前だって……」 言いかけたところで気づいた。 陸上部のエースにして県内屈指の学力を誇り、容姿は完璧という まさに天から二物も三物も与えられたこいつに、孤独という文字は無縁なのだ。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 14 24 18.02 ID nrfCYLD00 [10/42] 「お前だって、何?」 「なんでもねえよ。ごちそうさま」 俺は手早く食器を台所に運びリビングを出た。 桐乃の実にムカつく指摘は、しかし当たっている。 広く浅い人付き合いよりは、狭く深い人付き合いを重視していた俺にとって、 受験終了後の日々ははっきり言って退屈極まりない。 誰からも誘われないならば、こちらから――と携帯を取りかけたものの、 沙織は家の所用、黒猫は新衣装の制作でそれぞれ忙しいとブログに書いてあったし、 赤城は地元サッカークラブで精を出し、麻奈実は和菓子作りの勉強に専念すると金曜に話していた。 こうなりゃ桐乃からゆっくり攻略しろと言われていたエロゲを消化するか? ダメだ……マジで根暗オタ街道一直線じゃねえか。 結局、俺は大した休日の過ごし方を思いつくことなく、ベッドに横になった。 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 14 39 45.06 ID nrfCYLD00 [11/42] 『起きて、お兄ちゃん』 誰かが体を揺すっている。 『もうっ……おかーさんがねぇ、ご飯できたって……起きてよぅ、お兄ちゃん』 小さな手が俺の背中を押しては引いてを繰り返す。 俺は毛布を剥がされまいと、胎児のように体を丸め――。 「起きろ、バカ兄貴っ!」 耳許で絶叫してんじゃねえ!鼓膜破れたかと思ったわ。 飛び起きた俺は、一瞬、ベッドの脇にぬいぐるみを抱いた幼い桐乃を見たような気がして、 それがまったくの幻覚であったことを知る。 「もうお昼だよ?いつまで寝てんの?」 余所行きの服を身に纏い、ライトブラウンの長髪を綺麗に整え、精緻な顔に完璧なメイクを施した桐乃が、 軽蔑を込めた目で俺を見下ろしていた。 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 14 49 20.30 ID nrfCYLD00 [12/42] 「その格好……、どっか出かけんのか?」 「あやせや加奈子と買い物いくの」 仲の良い友達と買い物ね。羨ましいこって。 「で?」 「で、ってなに?」 俺は目頭を押さえつつ、 「……なんで俺を起こした?」 桐乃は平然と言い放った。 「そんなの荷物持ちに使うために決まってんじゃん」 ですよね。 熟睡する兄貴を叩き起こしておきながら、罪悪感の欠片も見当たらねえ無垢な顔してやがる。 「あのな、俺は今猛烈に眠いわけ。 荷物持ちならお前のクラスの男子に頼んだらどうだ」 諸手を挙げて駆けつけてくるだろうよ。 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 15 05 35.32 ID nrfCYLD00 [13/42] 「はぁ?そんなことしたら変な勘違いされるに決まってるっしょ?」 「まあ、されるだろうな」 中学生男子というものは性欲の忠実な僕であり、実に単純かつ愚かな生き物である。 クラス、いや学校内でも指折りの美人たちに休日デートに誘われれば、舞い上がり交際を意識してしまうのは無理からぬ話だ。 もしも俺が今15歳で中学校に通っていたら、毎日あやせの靴箱にラブレターを投函している自信があるもんな。 「お昼ご飯は作っといてあげたから、さっさと食べて、服着替える!」 強引に俺の毛布を剥ぎ取りにかかる桐乃。 「わぁーったよ!起きる、起きるから!」 今から思えば、朝の質問は俺を荷物持ちとして使えるか否か確かめるためのものだったに違いない。 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 15 26 38.47 ID nrfCYLD00 [14/42] 昼過ぎ。 渋谷に到着した俺と桐乃は、あやせや加奈子との待ち合わせ場所である喫茶店に向かっていた。 冬の底はとうに過ぎ去り、三寒四温の温にあたる今日は全国的に快晴だそうで、 雑踏の中を歩いていると軽く汗ばむほどの陽気が街に満ちている。 カランコロン、と涼しい鈴の音とともに喫茶店の扉を開けると、 そう広くない店内の奥の席に、見知った顔がふたつ並んでいた。 「うーっす、桐乃―――って、なんで桐乃の兄貴がここにいんの?」 いち早くこちらに気づき、顔を顰めているのが加奈子。 「遅かったね桐乃――って、お兄さん!?」 少し遅れてこちらに気づき、あからさまに動揺しているのがあやせ。 二人とも桐乃の学校の友達で、モデル仲間でもある。 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 15 37 18.92 ID nrfCYLD00 [15/42] 「どーいうことか説明しろヨ」 説明を求められた桐乃は笑顔で応じる。 「孤独こじらせて死にそうにしてたから連れてきたんだ。 みんなも荷物持ちに使っていいよ」 「ふーん、そういうことなら……」 黙ってりゃ可愛い童顔を歪めて、 「くひひ、たっぷりこき使ってやっからな」 「もう~加奈子ったら、年上のお兄さんには敬語を使わないとダメじゃない」 「いッ!?」 飛び跳ねる加奈子。 テーブルの下で制裁(おそらく足踏み)が行われていることは想像に難くない。 「こんにちわ、お兄さん」 激痛に涙を浮かべる加奈子を余所に、あやせははにかむような笑顔でぺこりと頭を下げる。 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 15 50 12.52 ID nrfCYLD00 [16/42] 「邪魔して悪ぃな。俺のことは本当にただの荷物持ちだと思ってくれていいからよ」 「そんな……せっかくなんですから、お兄さんも買い物を楽しめばいいじゃないですか。 お兄さんは春物の服、もう買いました?」 いんや、と首を横に振ると、あやせはパッと顔を輝かせて言った。 「それならわたしたちが選んであげます。桐乃も加奈子も、今日は時間たくさんあるし、いいよね?」 二人は不平不満を噴出させるかと思いきや、 「チッ、しゃーねーなー」 「ま、まあ、別にあたしは構わないケド?」 頷く二人。こうして今日の予定の最後に、新たな予定が付け加えられた。 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 16 05 33.35 ID nrfCYLD00 [17/42] さて、もうお気づきの方もいるだろうが、 既にあやせは俺に対する誤解(近親相姦上等の鬼畜)を解き、 加奈子は俺が桐乃の兄=自分のマネージャーだということに気づいている。 誤解が解けてからというものの、 あやせの俺に対する態度は初対面時のそれともいうべき、穏和で温かいものに変わった。 それは当然喜ぶべきことなんだろうが、すっかり丸くなったあやせに一抹の物足りなさを感じることは否めない。 断じて罵倒されたいと思ってるわけじゃねえからな。そこは勘違いすんじゃねえぞ。 加奈子が真実に気づいたということは、桐乃のオタク趣味が発覚したのと同じことであり、 当然オタクを毛嫌いしている加奈子は桐乃との縁を切ってしまうかに思えたのだが、 意外や意外、加奈子は今も桐乃の大切な友人の一人だ。 曰く、オタク趣味はキモいが、桐乃とダチであることには変わらないんだそうだ。 その件で加奈子のことを少し――いや、かなり見直したのはここだけの内緒だぜ。 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 16 19 44.18 ID nrfCYLD00 [18/42] 買い物は恙なく進行した。 「ありがとうございましたー」 十件目の店を出たところで、俺の腕に吊られた買い物袋は積載量限界間近に迫っていた。 店員の同情するような視線に見送られ、俺は一足先に店の外に出ていた三人の元に歩み寄る。 「んーっ、今日はこんなところかなー」 「あはは、思ったよりたくさん買っちゃったね」 「○○(聞き取れない単語。多分ブランド名)の新作残ってたの有り得なくねえ? 加奈子チョー幸せなんですけどぉ~」 こいつら金遣い荒すぎ。金銭感覚狂いすぎ。 年端も行かないガキに大金与えるのはいけないことだと思います。マジで。 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 16 40 46.58 ID nrfCYLD00 [19/42] 「それじゃ、行こっか」 「そだね。まずは――」 俺を一瞥するや、顔を見合わせて次なる目的地について相談しはじめる桐乃とあやせ。 「おいおい、まだ何か買うつもりか?」 さすがにこれ以上は腕が持たないぜ。 すかさず加奈子が俺の臑を軽く蹴飛ばして言った。 「ハァ?何言ってんだ? ダセェ服しか持ってねえテメーのために服見繕ってやるって話もう忘れたのかヨ――ふぎゃっ」 脇腹に肘鉄を打ち込まれた加奈子が沈み、代わりにあやせがニッコリ笑って続けた。 「着いてきて下さい、お兄さん」 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 16 55 42.07 ID nrfCYLD00 [20/42] 十分後。現在俺は試着室の中で、自分のシケた面と睨めっこしている。 この店はメンズファッション誌で頻繁に取り上げられている優良店らしく、 なるほど陳列されている服はどれも品が良く、さてどれから試着してみようかなと思った矢先、 『あんたは試着室の中で待ってて。 あたしらがそれぞれ良いと思った服持ってくから』 と桐乃に言いつけられたのである。 ま、服の流行に疎い俺よか、読モしてるこいつらの方がよっぽど見る目があるとは分かっちゃいるが、 少しくらい見て回らせてくれてもよくね? そうこうしているうちに、試着室のカーテン越しに声が響いた。 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 17 23 34.14 ID nrfCYLD00 [21/42] 「お兄さん?お着替え中ですか?」 カーテンを開けると、胸に服を抱いたあやせが立っていた。 「いや、お前が最初だぜ。他の二人はまだ時間がかかってるみたいだな」 「そうですか。では早速これを……」 俺は再びカーテンを閉め、手渡された服に袖を通していく。 上は白いシャツに黒のテーラードジャケット、下はベージュのチノパンツ。 姿見を見てみると、流石はキレイめの定番というべきか、可もなく不可もなくといった感じだ。 選んできてくれた本人に披露すると、 あやせはちょっと大袈裟なくらいに誉めそやしてくれた。 「あんまり煽てんなって」 「わたしは思ったことをそのまま口にしてるだけですから。 ……本当に、よく似合ってますよ」 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 17 39 17.30 ID nrfCYLD00 [22/42] あやせは陶然とした様子で目を細め、不意に俺に身を寄せてきた。 「襟元がおかしいです。今直しますね」 鼻孔を擽る女の子の匂い。 桐乃の香水とは違う、石鹸に似た清潔感のある香りに頭がくらくらする。 こんな至近距離まで近づけば、 半年前のあやせなら、「近寄らないで下さい変態穢らわしい」と文字通り一蹴してくるはずだが、 現在のあやせは真剣な眼差しで、しかし拙い手先で、一生懸命に俺の衿を直してくれている。 「ふぅ、できました」 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 17 56 24.46 ID nrfCYLD00 [23/42] あやせは一歩距離を取ると、俺を眩しそうな目で見つめた。 そしてささやかな沈黙の後で、 「大学合格、おめでとうございます。 電話ではもう言いましたけど、やっぱり直接言いたくて」 おめでとうの言葉は何度言われても面映ゆい気分にさせられるもので、俺は頭の後ろをかいて応える。 「ま、半分以上は麻奈実のおかげなんだけどな」 「それでも実際に頑張ったのはお兄さんじゃないですか」 「あやせのお守りにも助けられたよ」 「そう言ってもらえると嬉しいです」 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 18 08 38.48 ID nrfCYLD00 [24/42] 受験日の数日前、あやせがわざわざ自宅まで出向き、 桐乃と揃って合格祈願のお守りをプレゼントしてくれた時はびっくりしたっけ。 「つーか、俺もお前にまだ直接言ってなかったな。 高校合格、おめでとう」 「ふふっ、ありがとうございます」 「不安はないか?」 「加奈子も桐乃も一緒なんですよ? あるわけないじゃないですか。 わたし、今からお姉さんと同じ制服を着るのがすごく楽しみで……」 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 18 22 00.30 ID nrfCYLD00 [25/42] あやせはそれからしばらく高校生活への抱負を語っていたが、 にわかに表情を翳らせると 「ひとつだけ心配なことがあって……」と前置きし、 「高校に入ると、わたしはこれまでよりももっと芸能関係のお仕事に時間を割くことになります」 モデル業界に通暁しているわけじゃないが、 モデルの容姿が最も映えるのは、十代後半から二十代前半くらいまでだと思う。 中学時代の仕事は、あくまでその激務の予行演習みたいなものだ。 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 18 31 42.05 ID nrfCYLD00 [26/42] 「そうすれば友達と遊ぶ時間はもちろん、勉強する時間も減らさなくちゃならないと思うんです」 俺は答えを知りながら言った。 「それでも、モデルの仕事を辞める気はないんだろ?」 あやせは力強く頷く。 「はい」 「モデルはお前の天職だもんな」 「……はい」 今度は静かに、自分の決意を確かめるように頷く。 「それで、ですね。お兄さんにお願いしたいことがあるんですけど……聞いてもらえますか?」 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 18 46 47.00 ID nrfCYLD00 [27/42] 「なんだ?」 「高校が始まったら、週に一度、わたしとお兄さんの都合が合う日に勉強を教えて欲しいんです。……あのとき、みたいに」 あのとき。 去年の初秋頃、俺はあやせに一ヶ月ほど勉強を教えてやったことがあった。 具体的な顛末は割愛するが、その家庭教師を切欠にあやせの俺に対する誤解は解け、 まるでそれまでの反動のように態度は一転、俺に心を開いてくれるようになったのだった。 あの時のようにあやせに勉強を教えてやることは、全然嫌じゃない。が、しかし……。 俺の渋面から気持ちを読んだのか、あやせは慌てた様子で、 「都合は出来る限りお兄さんに合わせますし、 約束の日には、わたしがお兄さんのところに出向くつもりです。もちろんお金も――」 「落ち着け」 「っ……」 あやせは揺れる瞳で見上げてくる。俺は言った。 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 19 05 39.12 ID nrfCYLD00 [28/42] 「あのときは、俺以外にあやせに勉強を教えるのが適当なヤツがいなかったから、俺がその役を買って出たんだ。 今はあのときと状況が違う。 あやせが頼めば、あやせのお袋さんは喜んで本職のデキる家庭教師を捜してくれると思うぜ」 「わたしは……知らない人に教えてもらいたくありません」 「じゃあ麻奈実はどうだ」 「お、お姉さんですか……?」 「麻奈実なら俺よりも分かりやすく、丁寧に教えてくれるぞ、きっと」 あやせは下唇を強く噛み、半ば俺を睨み付けるようにして言った。 「わたしは……お兄さんがいいんです。お兄さんじゃなきゃ、嫌なんです」 「あやせ……」 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 19 20 54.80 ID nrfCYLD00 [29/42] 「わたしはずっと、お兄さんみたいなお兄さんが欲しかった。 あのとき……お兄さんに勉強を教えてもらっていたときは、本当のお兄さんができたような気持ちになれました。 確かに家庭教師を頼める人はいくらでもいます。 でも、わたしのお兄さんの代わりをしてくれるのは、"お兄さん"以外にいないじゃないですか」 あやせはそこで我に返り、恥ずかしげに目を伏せる。 「ご、ごめんなさい。 迷惑なら、遠慮無く断って下さって結構ですから」 「迷惑なんかじゃねえっての。 俺なんかでいいなら、喜んで勉強を教えてやる。 出来るだけお前の都合の良い日に教えてやるし、お金も要らないよ」 麻奈実は俺に勉強を教えるとき、金を取ったりしなかったからな。 「でもさ、俺は……俺には……」 「その続きは言わないで下さい。わたしは、それで充分ですから」 あやせは顔を上げると、右手の人差し指を立てて唇に当てた。 あやせは全部分かった上で、俺に家庭教師を頼んできたんだ。 「四月からよろしくお願いしますね、先生」 悪戯っぽい笑みを残して、あやせは試着室から去っていった。 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 19 33 47.31 ID nrfCYLD00 [30/42] あやせと入れ替わるようにしてやってきたのは加奈子だった。 「おーっす、京介……って何そのカッコ、マジ似合わねぇwww首から上と下が合致してねぇしww」 黙れ。そして草を生やすな草を。 「これでもあやせは絶賛してくれたんだぞ」 「マジ?」 「大マジだ」 「ま、ちっとは似合ってねえこともねえけど……加奈子のに比べたら全然ダメだわ。 あやせ京介には甘いからなー。加奈子が京介の悪口言ったらすぐに手ぇ出してくるしよォー」 先ほど肘鉄を食らった脇腹を撫で撫で、 スカートのポケットから電子タバコを取り出す加奈子。 「これなきゃやってらんねえわ」 「お前な……」 「何か文句あるワケ?」 「いいえないです」 「テメーはさっさと加奈子様が選んでやった服を着る作業に移れっつーの。 あ、カーテンはぴっちり閉めとけよナ。 男の着替え姿とかマジ目の毒だしヨ」 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 19 49 55.43 ID nrfCYLD00 [31/42] ちんちくりんのくせしやがって年上いびるのも大概にしとけやコラ!と言いたいところだが、 加奈子のドスの利いた双眸に射貫かれた俺はすごすごと試着室の奥に引き下がりカーテンを閉めた。 くっそマジ腹立つなこのクソガキ。いつか泣かす。 「なんか言ったか?」 「何も言ってねえよ」 俺はいそいそと加奈子が選んだ服に袖を通し――姿見の前で絶句した。 まあ、加奈子が選んだって時点である程度予想はついてたんだが……これは酷い。 何が酷いって、サイズが致命的に合ってねえ。特にボトムス。 俺は爆笑されることを覚悟してカーテンを開いた。 すると加奈子は目を丸くした後、得意げに口角を上げて、 「へっ、やっぱり加奈子様の目に狂いはなかったナ。ばっちし似合ってんじゃん」 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 20 02 49.88 ID nrfCYLD00 [32/42] 「どこがだよ!全然サイズが合ってねえじゃねえか!」 鏡の中に映った自分は、座高120cmはあろうかという短足男だった。 「ハァ?どっからどう見てもぴったりじゃんかよォ。 あっ、さては京介、サルエルパンツのこと知らねーなー?」 「なんだそれは」 「元々股上が長く作られてるパンツのことをサルエルパンツっていうんだヨ」 「短足に見えるのは仕様だってことか?」 「おうよ」 なるほど、それなら納得――できるわけがねえ。 「テメー、加奈子様のセレクトにケチつけるのか?ああん?」 「あのな、割と真剣に聞くが、お前にはマジでこのサルエルパンツとやらが俺に似合っているように見えるのか?」 「見えるけど?」 邪気のない声音で真っ直ぐに言い換えされる。 ……少なくとも悪気はないみたいだな。 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 20 21 10.56 ID nrfCYLD00 [33/42] お前の真摯な気持ちは嬉しいがこのパンツは絶望的に俺の趣味と合致しない、ということを、 どうやって加奈子に納得してもらおうかと頭を悩ませていると、 加奈子は電子タバコを指先で弄びつつ、 「京介さあ、四月の頭にメルルのイベントあんだけど、そんときまたマネージャーやってくんね?」 「はぁ?」 「だから、マネージャー。 金払ってやっから、加奈子様の専属奴隷になれって言ってんだヨ」 専属奴隷て。 「お前の事務所は慢性的なマネージャー不足なのか?」 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 20 31 48.17 ID nrfCYLD00 [34/42] 「そんなこともないけど?」 「じゃあそいつらでいいだろ」 「事務所が抱えてんのは糞マネばっかで、全っ然使えねーんだもん」 こいつ、自分がメルルで一躍ブレイクしたからって天狗になってねえか? いや、絶対なってるな。 「お前はそういうが、俺はその糞マネ以下の、そもそもマネージャーの基礎も知らない素人だぜ?」 「あのさあー加奈子は別に京介に本物のマネージャーみたく働けって言ってるわけじゃねえし。 京介はこれまで加奈子に正体隠したままマネージャーの真似事して、なんとかなってたじゃん? それでいいわけ。加奈子が『ジュース買ってこい』って言ったらすぐに買ってくる。 加奈子が『肩揉め』って言ったらすぐに揉む。それくらいできれば一人前だっつーの。 事務所の糞マネ連中はプライドばっか高ぇから困るんだわ」 ふぅーっと煙を吐く仕草をする加奈子。 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 20 48 13.06 ID nrfCYLD00 [35/42] チラ、と横目で俺を盗み見て、 「ブリジットは京介に懐いてるみてーだし? マネージャーやるってんなら、イベントの特等席、桐乃に用意してやってもいいし……」 「………」 「ダメ……かな……?」 「わかったよ」 急にしおらしい声を出すな気色悪い。 「ただし、入学式と日程が被ってたらダメだからな。イベントはいつあるんだ?」 加奈子が口にした日にちは四月の第二日曜だった。 「オーケーだ」 と俺が言うと、加奈子は破顔し、 「なんか来期の新作アニメの主役も加奈子に似てるらしくてよォ、 多分、つーかぜってぇイベント増えるから……これからはチョクチョク使ってやんよ。 美少女のマネージャーできて京介も嬉しいだろ?いひひ」 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 21 04 32.73 ID nrfCYLD00 [36/42] 「嬉しくねえ」 「無理すんなっての。テメーが大の付くロリコンだってのは周知の事実なんだからヨ」 「……お前、自分が幼児体型だって自覚はあんのな?」 「かっ、加奈子の体はまだ発展途上なんだヨ! 次に幼児体型って言ったらぶっ殺してやっからな!」 肩をいからせて去っていく加奈子。 マネージャーをやるのはいいバイト代わりになりそうだが、 加奈子がこの先ずっと芸能界でやっていくつもりなら、 きちんとした専属マネージャーが必要になってくるだろう。 いずれ俺はお払い箱になる。 が……加奈子の性格に四六時中付き合える聖人君子みてえな人間がこの世に存在するのかね? ま、俺の知ったこっちゃねえけどさ。 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 21 15 14.28 ID nrfCYLD00 [37/42] 最後にやってきたのは桐乃で、 一応俺と加奈子以外の第三者からの意見を聞こうと、 加奈子の選んだ服を着たままカーテンを開けたのだが、案の定、桐乃は息も絶え絶えに、 「ぷっ……くくっ……なにそれ……信じらんない……」 と評価を下してくれた。 察しの悪い人のために注釈しておくが、 「信じらんない」とは「信じられないほど似合ってない」という意味である。 「どっちが選んだの?加奈子?あやせ?」 「お前はどう思う?」 「……加奈子?」 「当たりだ」 「だと思った。服の組み合わせ自体は悪くないんだケド……」 俺の顔を見るや、最後まで言い終えずに噴き出す桐乃。 没個性的な服しか似合わない地味顔で悪かったな。 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 21 33 52.87 ID nrfCYLD00 [38/42] 自分でも分かってるさ。 俺がサルエルパンツを穿くのは地蔵がアロハシャツ着てるようなモンだってな。 「で、お前はどんなのを選んできてくれたんだ?」 「あたしの?あたしのは無難なアメカジ系。大学生に多い感じの……あ」 桐乃はそこで口を押さえ、 抱えていた服を俺に押しつけると、外側からカーテンをぴしゃりと閉めてしまった。 「さっさと着替えて。あたしで最後なんでしょ?」 「お、おう」 いったいどうしたんだろうな、桐乃の奴は。 訝しみつつも桐乃に選んでもらった服を着ると、 あやせセレクトのシックな装いでも、加奈子セレクトの奇天烈な装いでもない、 どこにでもいるような、しかし適度に垢抜けた男が鏡の中に立っていた。 上はヴィンテージ加工されたライトブルーのデニムジャケット、下はストレートシルエットのカーゴパンツ。 カーテンを開くと、桐乃は携帯から目を離して俺を見て一言。 「いいんじゃない?」 なんだそりゃ。 お前、ずっと前に言わなかったか? 良いか悪いかなんてガキでも言えるってよ。 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 22 00 26.62 ID nrfCYLD00 [39/42] 「……似合ってる。これでいい?」 全然気持ちがこもってねえ。こいつ、本気で俺の服を選ぶ気があんのか? 普通自分が選んだ服が相手に似合ってたらもっと喜ばねえ? しかし桐乃が選んだ服が一番自分に似合っていると感じているのも事実、 俺は釈然としない面持ちでいると、 「ほら、さっさと元の服に着替えて」 またしても試着室の奥に押し込まれ、カーテンを閉められる。 どうやら着せ替えタイムはこれにて終了のようだ。 三人で意見を交わしている様子もないので、あくまで俺の主観で気に入ったものを選べ、ということだろう。 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 23 28 27.22 ID nrfCYLD00 [41/42] とりあえず加奈子のは選択肢から外すとして……。 あやせと桐乃、どちらが選んでくれた服を選ぶべきか。 いやいや、こういうのに選んでくれた人間は関係ない。あくまで服の善し悪しで決めないとな。 ちなみに両方の服を購入するという選択肢はない。 何故かって? 俺が今いるのは、Tシャツ一枚とっても値札にゼロが四つ並んでるような店だからだ。 悩むこと数分。俺が出した結論はコレだ。 一度三人を呼び集めて、同時に見てもらって意見してもらおう。 優柔不断?うるせえ。 というわけで俺がカーテンを開くと、 既にそこには桐乃、あやせ、加奈子の三人が揃っていて、その脇に控えていた店員が近づいてきて言った。 「お預かりします」 「ああ、ハイ、どうぞ」 言われるがままに三人に選んでもらった服を渡しちまったが……。 「お兄さんはお店の外で待っていてください」 「いや、でも」 「チッ、っせぇーなー。さっさと出てけっつうの」 「は、はぁ?」 「いいから。黙って言うとおりにして」 桐乃の駄目押しを食らい、俺はすごすごと店外に退散する。 え、何コレ、どゆこと? 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/05(土) 23 47 20.31 ID nrfCYLD00 [42/42] やがて店から出てきた三人は、混乱覚めやらぬ俺の前に並ぶと、 ぎこちない目配せの後、それぞれの手に携えた大量の買い物袋から、 つい先ほど付け加えられたらしい一つを差し出してきた。 「わたしたちからの合格祝いです。 わたしからは、あのときのお礼も兼ねて……」 あやせは横目で加奈子ににらみを利かしながら、 しかし表情には微笑みを浮かべて、 「この服、お兄さんに本当に似合ってましたから……。 今度会うときにでも着てもらえたら嬉しいです」 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/06(日) 00 02 35.99 ID na+PTL7G0 [1/5] あやせの視線から逃げるように顔を背けつつ、早口で加奈子が捲し立てる。 「まっ、テメーには何回かただ働きさせてたみたいだからヨ、 これはその報酬っつーか、これからもこき使ってやるから頑張れよっていう激励的な、そんな感じ」 加奈子は得意げな表情になり、 「加奈子様が選んでやったんだから、ヘビロテ間違いなしだよナ。きひひ」 ぎゅむ、と買い物袋をぞんざいに押しつけてくる。 最後に桐乃が言った。 「ほら、あんたってまともな服、あたしがずっと前に選んであげたやつしか持ってなかったじゃん? あれだけじゃローテ回せるワケないし、 大学でパッとしないグループに括られるかぼっちになるのは目に見えてるし……。 ちょっとはまともな服増やしてあげようって思ったの!」 この三人は、それぞれ服を試着室に運んできて、 それを俺に着せ、似合っていると判断した時点で、俺のために購入する腹積もりだったのだ。 俺は何を悩んでいたんだろうな。 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/06(日) 00 19 31.22 ID na+PTL7G0 [2/5] 「……ありがとな」 プレゼントの値段と気持ちは必ずしも比例しねえし、 一万二万の出費なんざ、目の前の読モ三人娘には痛くも痒くもねえだろう。 それでも、この三人が俺の大学生活を応援するために、 良い店で、良い服を真剣に選んでくれたことが、俺にとってはつい涙ぐんじまうくらいに嬉しかった。 「お、お兄さん?大丈夫ですか?」 「キメェw男泣きしてやんのw……ふぎゃっ。このーっ、あやせテメーいい加減にしろよなーっ!」 キャットファイトに突入した二人を背景に、桐乃はそっとハンドタオルを差し出してくれる。 「街中でいきなり泣き出すとか、本気で恥ずかしいからやめてよね」 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/06(日) 01 07 28.96 ID na+PTL7G0 [3/5] 「お前らが不意打ちするのが悪いんだろうが」 「ん……まあ、それは認める。あたしもホントは、今日プレゼントするつもりじゃなかったし」 「どういうことだ?」 「あやせも加奈子も、あんたには何かしらプレゼントしたかったらしくてさ。 丁度良い機会だから、みんなで一斉にプレゼントしようって話になったの」 「そうだったのか……」 桐乃は言った。 「もう何回も言ったと思うケド、もう一度言うね。……合格、おめでと」 いったいコイツは何度俺の涙腺を緩ませれば気がすむんだろうな。 使い古された言葉に、俺はやはり使い古された言葉で応じる。 「ありがとな、桐乃」 この感謝の気持ちと礼を、あやせには四月からの家庭教師として、 加奈子には同じくマネージャーとして頑張ることで返していけたらいいと思う。 じゃあ、桐乃には――? 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/06(日) 01 23 57.62 ID na+PTL7G0 [4/5] 俺のポーカーフェイスはサプライズプレゼントでどうしようもなく崩れているらしい、 容易く俺の思考を読み取ったらしい桐乃は、溜息をついて俺の顔を覗き込み、 「もしかしてお返しに何かしようとか、そういうコト考えてる?」 「………」 桐乃は沈黙をそのまま肯定と受け取ったようだ。 「いらない。あたしは、今のままで充分だから。 兄貴が、あたしの兄貴でいてくれる……それだけで充分だから」 おや、と思う人はたくさんいるだろう。 妹にとって兄はいつまでも兄であり、それは当たり前のことで、そこに意志や努力は介在しないと。 でも俺たちの兄妹関係は、普通のそれとは少し違う。 俺は桐乃の……桐乃だけの兄でいるために、少なからず意識し、努力している。 桐乃はその努力に感謝し、同時に負い目を感じてくれているのだ。 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/06(日) 02 15 46.66 ID na+PTL7G0 [5/5] 今のままで充分、か。 変化を望んでいるようで、その実、変化を望んでいないのか。 それとも変化を望んでいないようで、その実、変化を望んでいるのか。 俺は後者だと信じたい。 桐乃が高校に入学すれば、否応なく桐乃を取り巻く環境は変わる。 環境が変われば、もちろん人間関係も……。 その変化に乗じて再び桐乃から離れようとするのは、客観的に見れば、卑怯なことなのだろうか? 「桐乃……」 「………?」 「……いや、なんでもねえ」 「ふふっ、変なの」 打ち明けるのは、まだもう少し先延ばしにしてもいい。 俺はキャットファイトに明け暮れる二人を止めるべく歩き出した。 9(偽)-4 終
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7115.html
1 2 憂梓 2010/08/21 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1282401302/ 梓「今の私の幸せは憂とのキス3回分」~秋想奏 1 2 3 2010/09/04 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1283559484/ 梓「それが憂の答えなら」~秋追奏 1 2 3 4 2010/09/20 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1284983131/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 少しタイトルが…と思ってしまうが、中身には引き込まれる。 -- (名無しさん) 2016-12-01 21 26 45 何度読んでもこれは良い作品。 この二人は『変わり続ける永遠じゃない永遠』に続いて欲しい‥ -- (名無しさん) 2012-12-17 04 01 41 「何もかも読んでいました」という李牧さなからの梓両親と憂。 流れを悪くするようで申し訳ないが、俺個人としては少し気持ち悪い文章だった。 -- (名無しさん) 2012-11-26 18 55 12 続きぃ〜(泣 -- (名無しさん) 2012-11-22 23 15 01 神だ……少し泣けた…… -- (名無しさん) 2012-11-22 20 27 09 作者の文才に脱帽した… 名作だろこれは -- (名無し) 2012-03-21 20 44 11 素晴らしい 憂も純もめっちゃええ子やん(´;ω;`) -- (名無しさん) 2011-11-26 11 45 24 梓、憂、純の掛け合いのテンポが好きだ -- (名無しさん) 2011-04-26 18 56 57 胸にくるな・・・ -- (名無しさん) 2011-04-09 12 50 12 冬・春も期待してるんだけどな…もう来ないのかな… -- (名無しさん) 2011-03-29 19 54 56
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7116.html
戻る いやー。良い話だな。 憂は良いやつだ。 -- (通りすがり) 2010-09-09 23 40 26 梓の不安は、人間誰しも大なり小なり抱えてる物だと思う。 それを優しく解かしてくれる憂は本当に凄いってか嫁になって下さいマジで。 純も友達思いで良いよなー。 -- (名無しさん) 2010-09-09 23 48 01 これぞ憂だな いつも一歩引いてるのにここぞという時頼りになる きれいなSSだわ -- (名無しさん) 2010-09-09 23 55 03 クラス内ではうまくやれてるのかなあずにゃん… -- (名無しさん) 2010-09-10 00 10 44 綺麗だ。 途中途中に挟まれている曲も雰囲気で出てて素敵。 -- (名無しさん) 2010-09-10 00 19 09 この話だと脇役だけど、純も存在感があっていいね。 2年生組は3人のバランスが絶妙だ。 -- (名無しさん) 2010-09-10 00 29 04 切なくも微笑ましい不思議な読後感。憂も純も、梓を支えている大切な存在だと捉えられる描写が個人的に好きです。 -- (名無しさん) 2010-09-10 01 49 35 素晴らしい…とても後味爽やかな内容でした。 -- (名無しさん) 2010-09-10 02 56 29 素晴らしい -- (名無しさん) 2010-09-10 03 29 05 憂も純もいいキャラなのに漫画やアニメでは梓は軽音部の事しか頭にないもんなぁ 純「あたしらさながら背景ですぜ」 -- (名無しさん) 2010-09-11 08 59 08 素晴らしい 百合というより、青春時代の友情だな 感動した -- (名無しさん) 2010-09-11 12 24 37 純と憂がいい人すぎた泣 -- (名無しさん) 2010-09-11 13 53 26 幻想かあ・・・ これぞ百合って感じだわ -- (名無しさん) 2010-09-16 22 30 21 これ良すぎ。最後の所うわーってなった。 -- (通りすがり) 2010-09-16 22 49 34 タイトルが寒いといまいち読む気にならない -- (名無しさん) 2010-09-16 23 29 52 上手いなあ。 -- (名無しさん) 2010-09-16 23 35 13 いつものけいおん!の激しくて爽やかな青春もいいけど、たまにはこんな優しくてどこか懐かしい、まさに幻想のような青春もいいなぁ。 素敵だ。 -- (名無しさん) 2010-09-16 23 48 47 すごく後味いい 素晴らしいの一言に尽きるわ -- (名無しさそ) 2010-09-16 23 55 03 超良い -- (名無しさん) 2010-09-17 02 46 56 なんて あまくて 素晴らしい 憂梓なんだ -- (名無しさん) 2010-09-17 03 12 44 何か深いSSだったな。 -- (かとちゃ) 2010-09-17 12 49 25 すごくいい 冬と春も期待 -- (名無しさん) 2010-09-17 15 08 01 憂が可愛すぎて生きるのが辛い -- (名無しさん) 2010-09-17 22 39 02 あずにゃんはむはむ -- (名無しさん) 2010-09-25 22 06 31 新しいやつかな? この二人ラブラブですな。 -- (通りすがり) 2010-09-25 22 37 19 憂梓の最高傑作と断言出来る程の作品。 思慮深く、哲学的で、幻想的で、甘美な……とても後味の良い作品。 -- (名無しさん) 2010-09-25 22 44 41 中野家両親がすごくいい味を出してるなあ。 -- (名無しさん) 2010-09-25 23 48 55 秋追奏が微妙だった -- (名無しさん) 2010-09-26 09 00 09 梓さんさらっと麦茶を飲まないで! -- (名無しさん) 2010-09-26 14 02 40 憂にはむはむされたい。 -- (名無しさん) 2010-09-27 21 59 20 人の幸せか…なんか考えさせられる話だな。 素敵だ。 -- (名無しさん) 2010-10-02 00 30 51 不意に出る憂のセリフにどきどきさせられっぱなしだった… 梓父母も良いなぁ。綺麗な憂梓でした、ありがとうございました。 -- (名無しさん) 2010-11-05 10 53 43 あー これはすげえわ。素晴らしい百合だった -- (名無しさん) 2010-11-23 01 51 09 百合と呼ぶにふさわしい秀作 -- (名無しさん) 2010-11-26 16 39 45 「憂ちゃんくれ」 と思わず叫びそうになった あずにゃんの幸せ者め -- (名無しさん) 2010-11-27 03 44 54 切なくて、なのに暖かい、これぞ憂梓の百合って感じの作品。 憂の可愛さは素晴らしいの一言。 他の作品も是非読みたい。 -- (名無しさん) 2011-01-10 13 56 17 これ続きは? -- (名無しさん) 2011-01-23 02 12 49 拍手したのは、唯紬「秋、夏、春、そして冬」以来だわ 小難しい言葉並べずに話し言葉を使うことで、感情移入もできるし分かりやすい 二人とも原作に沿った可愛さで良かった 中野家も良い家庭だな。変わり者ってイメージがあったけど、これなら納得 落ち着かないから、にやけながら部屋何回もウロウロしてしまったw いや素晴らしい -- (名無しさん) 2011-01-23 23 59 00 美しい。 -- (名無しさん) 2011-01-24 16 23 58 憂の誕生日だから新作を期待してたけど無かったな。 もう続きは書かないの? -- (名無しさん) 2011-02-22 23 58 23 登場人物がみんな魅力的。 満たされる。 -- (名無しさん) 2011-03-24 22 46 17 久しぶりに読んだがこれはやっぱり良い作品だ。 あっさり綺麗っつうか……続きが読みたくなるな。 -- (名無しさん) 2011-03-25 01 16 21 憂の答えがかっこよすぎ それに答える梓もかっこいい 純は頑張れ!w -- (ねむねむ) 2011-03-29 16 56 05 冬・春も期待してるんだけどな…もう来ないのかな… -- (名無しさん) 2011-03-29 19 54 56 胸にくるな・・・ -- (名無しさん) 2011-04-09 12 50 12 梓、憂、純の掛け合いのテンポが好きだ -- (名無しさん) 2011-04-26 18 56 57 素晴らしい 憂も純もめっちゃええ子やん(´;ω;`) -- (名無しさん) 2011-11-26 11 45 24 作者の文才に脱帽した… 名作だろこれは -- (名無し) 2012-03-21 20 44 11 神だ……少し泣けた…… -- (名無しさん) 2012-11-22 20 27 09 続きぃ〜(泣 -- (名無しさん) 2012-11-22 23 15 01 「何もかも読んでいました」という李牧さなからの梓両親と憂。 流れを悪くするようで申し訳ないが、俺個人としては少し気持ち悪い文章だった。 -- (名無しさん) 2012-11-26 18 55 12 何度読んでもこれは良い作品。 この二人は『変わり続ける永遠じゃない永遠』に続いて欲しい‥ -- (名無しさん) 2012-12-17 04 01 41 少しタイトルが…と思ってしまうが、中身には引き込まれる。 -- (名無しさん) 2016-12-01 21 26 45
https://w.atwiki.jp/wrtb/pages/6334.html
冷たくしないで 原題:Don t Be Cruel 作曲・作詞:オーティス・ブラックウェル* その他の楽曲:エルヴィス・プレスリー オリジナル 英語 エルヴィス・プレスリー バリエーション リロイ・アンド・スティッチ 英語 Everlife* エンド・クレジットで使用されるカバー・バージョン。 『リロ・アンド・スティッチ ハワイアン・アルバム』(北米版)に収録。 カバー 一十三十一* 英語 一十三十一* 『リロイ・アンド・スティッチ』の日本語版テーマソングとしてカバー。日本版DVDにはミュージック・クリップを収録。 日本のカラオケ映像では本作の映像が使用され、ディズニーキャラクターの映像がカラオケ店で使われる初の事例となった。 『リロ・アンド・スティッチ オリジナル・サウンドトラック 1 2 デラックス・エディション』に収録。
https://w.atwiki.jp/coharu/pages/705.html
「チアキちゃん、痛くない?」 「ん。大丈夫だ」 僕はゆっくりとチアキちゃんの入り口を押し広げる。 チアキちゃんの肌はすべすべで、穴の周りにはうっすらと産毛しか生えていない。 肌自体はつやつやした透明感のある肌。 緊張してるのか、うっすらと充血してかすかにピンクの色を帯びてるのが可愛い。 「ふわっ」 僕が指で触れたのに驚いたのか、チアキちゃんの可愛い唇からそんな声が漏れてくる。 「チアキちゃんの穴って狭いなあ」 僕はチアキちゃんの穴を覗き込みながらそんな感想を口にしてしまう。 「だ、大丈夫、だから、優しくしてくれ」 緊張してるのか、チアキちゃんは口ごもりながらもそこに入ってくるのを待ち望んでるようだ。 よし。だったら。 僕は細い棒を手に取ると、ゆっくりとチアキちゃんの中に差し入れてみる。 チアキちゃんの敏感な器官の中を探るように棒を差し入れ、手繰り出す。 チアキちゃんの中を傷つけないように。チアキちゃんを痛がらせないように。 「大丈夫? 痛くない?」 「…ん。…ふじおかだから大丈夫だ」 頬を赤く染めてそう言ってくれるチアキちゃんは可愛い。 熱い吐息が僕の身体に掛かるのも可愛い。 今まで男に触れられたことのない敏感な器官を僕の手にした棒が触れ、撫で、擦っていく。 声にならない小さな喘ぎをチアキちゃんは漏らしている。 汗ばんだ掌をぎゅっと握り、その刺激に耐えてるみたいだ。 チアキちゃんの狭い穴の入り口はもうすっかり充血してしまっている。 触ってるだけで毛細血管がズキズキと脈動してるのがわかる。 何の気なしにその肌を撫でてみると、チアキちゃんはぴくっとその小さな身体を跳ねさせる。 危ない危ない。入れてるときじゃなくて良かった。 「痛かったらすぐに言ってね」 「…うん」 僕はさらにチアキちゃんの奥深くを探るようにしてその抽送を続ける。 「うあっ」 チアキちゃんの桜色の唇からそんな声が漏れる。 「痛かった?」 「ち、違う、そこ、キモチイイからもっとやってくれ」 「こう?」 そう言ってチアキちゃんがよがったところを擦ってみる。 「そ、そうだ、ふじおか、そこ、いいよ」 いつも眠たげな目を閉じて、チアキちゃんは鼻を鳴らすようにしてその刺激を身体で味わってるみたいだ。 「ん。じゃあこっちは終わろうか」 「…もっとやってくれないのか?」 「もう耳カスは取りきっちゃったよ。 それにあんまりやりすぎると皮膚が炎症を起こしちゃうからね。さ、つぎ、反対側」 チアキちゃんは僕の膝枕の体勢からころんとそのまま回転して、僕の股間すぐに顔が来る様な逆の膝枕の体勢になった。 「こっち向きでいいの?」 「…ふじおかの匂いをかいでるほうが安心するんだよ」 「じゃあ痛くしないようにするからね」 「うん」 チアキちゃんの嬉しそうな、安心しきった声が僕の耳に届く。 「ふっ…んくっ…」 チアキちゃんの吐息が僕の腰とか腹とかに直接かかる。 「チアキちゃん、痛かったら言ってね」 「痛くないよ。気持ちいいんだ」 「そっか。チアキちゃんが気持ちいいなら僕も嬉しいよ」 「なんだよチアキー。私が耳掻きしてもそんなに喜んだりしないくせにー」 「うるさいばかやろー。だいたいお前の耳掻きはガサツすぎるんだよ。ちょっとはふじおかを見習え」 梵天でこしゅこしゅと耳の穴の中を擦って終了。ああ、いい仕事をしたあとは気持ちがいいな。 チアキちゃんも喜んでるみたいだし。 「ありがとう。お礼に、私が耳掻きしてやるよ」 とチアキちゃん。でもいいのかな。女子小学生とはいえミニスカートの女の子に膝枕してもらうなんて。 「さあ、ここに頭を乗せるんだ」 とチアキちゃんはぽんぽん、と太腿を叩く。 いいらしい。 (とくに落ちはないしつづかない) 名前 コメント 11-221氏 11スレ目 保管庫
https://w.atwiki.jp/casterchronicle/pages/303.html
〔優(やさ)しくしてね〕 詠唱(禁止カード,2018年02月01日から施行) コスト3/金星 瞬動 このターン、あなたは攻撃されない。 開幕☆魔法決闘で登場のコスト3の金星の詠唱。 瞬動と自身が攻撃されなくなる能力を持つ。 非常に強力な防御性能を誇る、最高級の詠唱である。 このカードを発動するだけで、そのターン中に敗北することはなくなり、オーブすらも減らない。 怪異を守ることはできないものの、それは敵が味方怪異よりも強力な怪異を保有している場合のみであり、そうでなければ敵は無駄なターンを過ごすことになる。 コントロールデッキにおいては手軽な遅延手段になり、コスト3であることも合間って非常に勝負を長引かせやすい。 またサルベージも問題なく可能であり、このカードとサルベージ手段の2枚だけで、対処法を用意していないデッキには敗北しなくなる。 このカード登場当初は、このカードを含めたコンボに対応できるカードは非常に少なく、まさに鉄壁であった。 その後、詠唱に対するメタカードなどが登場しているものの、その登場を待たずにこのカードは禁止カードとなってしまった。 現在ではメタカードは増えているものの、このカード自体をサーチするカードが増加し、むしろより凶悪になっていると言える。 その後も、このカードの調整版とも言える《エトワール・ローズ LV1》などが登場しているが、通常のデッキでも突破しやすいよう調整されている。 その性能により、第2弾発売後すぐに禁止カードとなった。 このカード1枚でゲームの勝利条件である攻撃をシャットアウトできてしまう。 また墓地の詠唱をサルベージできる〈TENGU48・豊前坊〉・《森の音楽家 クラムベリー LV1》による使い回しにより、対策を講じなければ絶対に負けない状況を作ることができた。 第2弾ではそれらをメタできるカードが複数収録されたが、デッキの大半をそのメタカードにしなければならない状況を鑑みて、禁止カードへ設定された。 その後、このカードの代わりとなる交換対応が行われる。 このカードを公式イベントに持参するか、郵送することで《あおい LV1》と交換可能。 カード情報 フレーバー・イラストレーター 出来るの? illust 白野椋 収録 開幕☆魔法決闘 BP01-187 U
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/55543.html
【検索用 なんてもない 登録タグ 2023年 VOCALOID syare な 初音ミク 曲 曲な 色鉛筆12色】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:syare 作曲:syare 編曲:syare イラスト:色鉛筆12色(piapro,pixiv) 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『なんでもない!』 歌詞 (piaproより転載) なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないからさ! なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないから むりむりむり! アタシ落されそうなの3秒前 硬いガードのはずだった 君は突破してく その笑顔 ムリです その仕草 ムリです その優しさ 罪です 近寄らないで きっときっときっと キミを好きになっちゃったら きっときっときっと あたしキミしか見えなくなって きっときっときっと キミを困らせるから だからお願い近づかないで ウラハラな なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないからさ! なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないから きっときっときっと キミを好きになっちゃったら きっときっときっと あたしキミしか見えなくなって きっときっときっと キミを困らせるから だからお願い近づかないで ウラハラな なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないからさ! なんでもないの!ほっといて! 優しくしないで ほっといて なんでもないの ほんとなんでもないから コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。