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使い魔はゼロのメイジが好き 第一話
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浮かぶ雲によって太陽が遮られた草原の真ん中で、少女は呆然と目の前の地面を見つめていた。 周りからは先程までの喧騒が消え、異様な静寂で満ちている。 何回も失敗を重ね、他の生徒に嘲笑されながらもやっと「サモン・サーヴァント」に成功した その少女、ルイズ・フランボワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの前には、彼女が今召喚したばかりの使い魔がいた。 しかしその使い魔は、彼女が望んでいたドラゴンやサラマンダーなどの幻獣の類ではない。 また、烏や梟、猫や大蛇などの普通の動物でもなかった。 彼女が使い魔として呼び出したもの、そう、それは―――― 植木鉢に植えられた、一本の『草』だったのだ。 「…………何なのよ、これ」 彼女の呟きは、静寂の中を悠々と横切る風に流されていった。 使い魔はゼロのメイジが好き 第一話 何故使い魔を呼ぶ神聖なる儀式「サモン・サーヴァント」で単なる『草』が召喚されたのか、 そしてこれは、一体何なのかというルイズの疑問は、 「…………ぶあっははははははははは!!」 彼女の召喚を見ていた生徒の一人が発した笑い声によってかき消された。 ガラガラ声で笑い続ける彼はその手でルイズを指さし、可笑しくてたまらないというような声で喋り出す。 「流石は『ゼロ』のルイズだぜ!召喚の儀式でただの草を呼び出すなんてよ!」 その声で我に返ったほかの生徒は、彼に同調するように笑い出す。中には、ルイズに罵声を浴びせる者までいた。 「そうよ、珍しく成功したと思ったらこれだもの」 「使い魔ぐらいきちんと呼べよ、ゼロのルイズ!」 「どういう事だよッ!クソッ!草って、どういう事だッ!魔法ナメやがってクソッ!クソッ!」 「……ちょっと間違っただけよ!失敗なんかしてないわ!」 彼らの嘲笑混じりの罵声に、彼女は耳まで真っ赤にして反論する。 そして後ろを振り返り、儀式の監督を行っていた教師に叫んだ。 「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しをさせて下さい!」 すると、生徒達の間からローブを纏った頭髪が寂しい男が姿を現した。その表情は困惑しきっている。 彼こそが儀式を監督していた教師、コルベールだった。 「うむ……これは……」 滅多に見ない彼の困った表情を見て、ルイズはもう一度チャンスが貰えるかもしれないという淡い期待を抱いた。 だが、その期待は次の言葉により砕かれることになる。 「いや、それは駄目だ。どんなものを呼び出そうと、召喚だけはやり直す事は出来ない」 その返答に、ルイズは少し苛立つ。やり直せないならどうすればいいのだ。こんな草が使い魔になっても、一体何を してくれるというのだろうか。 いつのまにか出てきた太陽に照らされて、強く輝く彼の頭。それを見るも無残な事にしてやろうか、そんな事を考えている間も コルベールの話は続いていた。 「君も分かっているだろうが、今回呼び出した使い魔で今後の……」 そこまで話したところで、唐突に彼の言葉が止まる。 想像の中で彼の頭の焼畑農業を行っていたルイズも、それに気付いて顔を上げた。 「どうかしましたか?ミスタ・コルベー…」 「み、ミス・ヴァリエール!君、あの『草』に何かしたか?」 その視線はルイズの方には向いていない。ルイズの後ろ、さっき召喚した草の方に向けられていた。 コルベールの顔からはさっきまでの困惑が吹っ飛び、ただ驚きと狼狽の色だけが浮かんでいる。 「『草』ですか?別に私は何もしてませんけど」 急に変わった彼の表情を、彼女は訝しみながら質問に答える。あんな草の何に驚いているんだろう、この人は。 「ならッ!ならあれは何なんだミス・ヴァリエール!答えなさい!」 彼の表情が「驚き」から「焦り」に変わった。まるで、信じられないものでも見たかのように。 その表情に圧倒され、ルイズも後ろを振り返る。半分はこの男に対する呆れの気持ちで、そしてもう半分は恐れの気持ちで。 そして彼女は、本当に信じられないものを見る。魔法を自由に扱うメイジでさえ、思わずうろたえるものを。 後ろを振り返って草を見たルイズ、その鳶色の瞳が瞬時に驚きと困惑、そして恐怖に塗り替えられた。 彼女が呼んだ『草』――――さっきまで確かに萎れて土の上に倒れていたはずの『草』が、起き上がっていた。 言葉さえも出ないルイズとコルベール、そして事の異常さに気付いた生徒達が見守る中、その草はゆっくりと起き上がる。 乾いた地面に水が染み込むように、ゆっくりと、だが力強く。 そして完全に起き上がった『草』は、一度大きく震えると、人間でいう『頭』のような部分を持ちあげる。そこには、猫のような 目と口が存在していた。 不意に、生徒達の一群がどっと崩れた。未知の植物に恐怖した生徒が、この場から逃げ出そうとしたらしい。 逃げようとした生徒と留まろうとした生徒が入り乱れ、たちまち辺りは混乱した。 そんな混乱を愛らしい二つの瞳で見つめながら、この世界に召喚された『猫草』は、そんなの関係ないねとでも言うように 小さな欠伸をして、ウニャンと鳴いた。 To Be Continued...?
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一部 ~ファントム ブラッド~ ジョナサン使い魔波紋疾走 ジョジョとサイトの奇妙な冒険 ジョージ逆に考える使い魔 石仮面仮面のルイズ ブラフォード使い魔は勇者 ディオ・ブランドーおれは使い魔になるぞジョジョー! 二部 ~戦闘潮流~ ジョセフジョセフ 忘れえぬ未来への遺産 カーズ究極の使い魔 ゼロの究極生命体 シュトロハイムハルケギニアのドイツ軍人 シーザー割れないシャボンとめげないメイジ 使い魔の魂~誇り高き一族~ ワムウ風の使い魔 風と虚無の使い魔 ストレイツォストレイツォ 三部 ~スターダスト クルセイダース~ DIODIOが使い魔!? 承太郎スターダストファミリアー スターダストは砕けない ゼロサーヴァント・クルセイダーズ ンドゥール見えない使い魔 ペット・ショップゼロの番鳥 花京院法皇は使い魔 ゼロのパーティ メロンの使い魔 ヴァニラ亜空の使い魔 ホル・ホース使い魔は皇帝 エンペラー 銃は杖よりも強し ダービー兄ファミリア―・ザ・ギャンブラー ジョセフゼロと奇妙な隠者 アヴドゥルマジシャンズ・ゼロ ポルナレフポルポル・ザ・ファミリアー イギー愚者(ゼロ)の使い魔 ミドラー女教皇と青銅の魔術師 デーボはたらくあくま エンヤ婆エンヤ婆 アヌビス神アヌビス神・妖刀流舞 ボインゴボインゴ ハーミット・パープルゼロの茨 四部 ~ダイヤモンドは砕けない~ 仗助砕けない使い魔 L・I・A 露伴露伴 静つかいまがとおるっ! 露伴 ブチャラティ味も見ておく使い魔 露伴+静使い魔は天国への扉を静かに開く 吉良使い魔は静かに暮らしたい ※デッドマンズQの吉良吉影 康一アンリエッタ+康一 ACTの使い魔 S.H.I.Tな使い魔 スーパー・フライ『鉄塔』の使い魔 虹村形兆几帳面な使い魔 キラー・クイーン爆炎の使い魔 猫草使い魔はゼロのメイジが好き ねことダメなまほうつかい 間田ゼロの奇妙な使い魔(うわっ面) うわっ面の使い魔 億泰アホの使い魔 ミキタカ使い魔ファイト トニオお嬢様の恋人 シンデレラ使い魔は灰かぶり 蓮見琢馬(The Book)ゼロと使い魔の書 五部 ~黄金の風~ ジョルノ杖をとりかえしにいこう! 僕の夢は三色コロネッ! 黄金の使い魔 ポルナレフ白銀と亀な使い魔 ココ・ジャンボ(亀)も登場 チャリオッツ・レクイエム使い魔の鎮魂歌 ジョルノ+ポルナレフジョルノ+ポルナレフ ディアボロ絶頂の使い魔 ディアボロの大冒険Ⅱ 不死の使い魔 ディアボロの大冒険タバサの大冒険 ブチャラティslave sleep~使い魔が来る アバッキオサーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔 サーヴァントムーディー ゼロの奇妙な道連れ アバッキオ ナランチャサーヴァント・スミス ナランチャ・アバッキオ・ブチャラティナランチャ・アバ・ブチャ プロシュートゼロの兄貴 偉大なる使い魔 リゾットゼロと奇妙な鉄の使い魔 ローリング・ストーン(ズ)凶~運命の使い魔~ ギアッチョサブ・ゼロの使い魔 メローネゼロの変態 ソルベホルマリン漬けの使い魔 ペッシペッシ ルイズ姉ェの栄光への道 ホルマジオ本気男 フーゴ紫霞(しか)の使い魔 スクアーロ鮫技男と桃髪女 トリッシュ一味違う使い魔 使い魔は刺激的 暗殺チームルイズと愉快な暗殺者たち ブラック・サバス影の中の使い魔 パープルヘイズ グリーンデイパープルヘイズ&グリーンデイ ミスタゼロの臭い魔 セッコドロの使い魔 イルーゾォ使い魔は引き篭り サーレーCRAFT OF ZERO ゼロの技工士 六部 ~ストーン オーシャン~ 徐倫引力=LOVE? 星を見た使い魔 フー・ファイターズフー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ アナスイアナスイ 承太郎DISC奇妙なルイズ ウェザーゼロの予報図 ヘビー・ゼロ ドラゴンズ・ドリームゼロの使い魔への道 エルメェスお熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ! 使い魔の兄貴(姉貴)!! プッチ神父新世界の使い魔 狂信者は諦めない マンハッタン・トランスファー変な帽子みたいな使い魔 エンポリオ子供の使い魔 ティータイムは幽霊屋敷で ホワイトスネイクゼロのスネイク ゼロの奇妙な白蛇 DISCはゼロを駆り立てる C-MOONL7 meets C-MOON リキエル使い魔は空高く 七部 ~STEEL BALL RUN~ リンゴォゼロの世界 リンゴォ+才人+色々ギーシュの奇妙な決闘 マウンテン・ティム微熱のカウボーイ ジャイロStart Ball Run サンドマンサンドマン ジョニィ歩き出す使い魔 Dioスケアリー・サーヴァント マイク・Oマイク・O ファニー・ヴァレンタイン(大統領)D0C 八部 〜ジョジョリオン〜 バオー 来訪者 橋沢育郎ゼロの来訪者 バオー犬ゼロいぬっ!
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目次 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 トップページ メニュー 更新履歴 各部キャラ トリップ一覧 第一部 使い魔波紋疾走(ジョナサン) 逆に考える使い魔(ジョージ) 仮面のルイズ 使い魔は勇者(ブラフォード) ジョジョとサイトの奇妙な冒険(ジョナサン) おれは使い魔になるぞジョジョー!(ディオ・ブランドー) 第二部 ジョセフ 究極の使い魔(カーズ) ハルケギニアのドイツ軍人(シュトロハイム) 割れないシャボンとめげないメイジ(シーザー) 使い魔の魂~誇り高き一族~(シーザー) ゼロの究極生命体(カーズ) 風の使い魔(ワムウ) ストレイツォ 忘れえぬ未来への遺産(ジョセフ) 風と虚無の使い魔(ワムウ) 戦闘零流(ジョセフ) 第三部 DIOが使い魔!?(DIO) スターダストファミリアー(承太郎) スターダストは砕けない(承太郎…だけ?) 見えない使い魔(ンドゥール) ゼロの番鳥(ペット・ショップ) 法皇は使い魔(花京院) 亜空の使い魔(ヴァニラ) 使い魔は皇帝<エンペラー>(ホル・ホース) ファミリア―・ザ・ギャンブラー(ダービー兄) ゼロのパーティ(花京院) ゼロと奇妙な隠者(ジョセフ) メロンの使い魔(花京院) マジシャンズ・ゼロ(アブドゥル) ポルポル・ザ・ファミリアー(ポルナレフ) 愚者(ゼロ)の使い魔(イギー) 女教皇と青銅の魔術師(ミドラー) はたらくあくま(デーボ) エンヤ婆 アヌビス神・妖刀流舞 ボインゴ ゼロサーヴァント・クルセイダーズ(承太郎) 銃は杖よりも強し(ホル・ホース) ゼロの茨(ハーミット・パープル) 第四部 砕けない使い魔(仗助) 露伴 使い魔は静かに暮らしたい(デッドマン吉良) アンリエッタ+康一 L・I・A(仗助) 『鉄塔』の使い魔(スーパー・フライ) ACTの使い魔(康一) 几帳面な使い魔(虹村形兆) 爆炎の使い魔(キラー・クイーン) 使い魔はゼロのメイジが好き(猫草) ゼロの奇妙な使い魔(うわっ面)(間田) アホの使い魔(億泰) 使い魔ファイト(ミキタカ) お嬢様の恋人(トニオ) 使い魔は灰かぶり(シンデレラ) 味も見ておく使い魔(露伴&ブチャラティ) つかいまがとおるっ!(静) 使い魔は天国への扉を静かに開く(露伴+静) うわっ面の使い魔(間田) ねことダメなまほうつかい(猫草) ゼロと使い魔の書(蓮見琢馬(The Book)) S.H.I.Tな使い魔(広瀬康一) 反省する使い魔!(音石明) 第五部 杖をとりかえしにいこう!(ジョルノ) 絶頂の使い魔(ディアボロ) slave sleep~使い魔が来る(ブチャラティ) ゼロの兄貴(プロシュート) 偉大なる使い魔(プロシュート) ゼロと奇妙な鉄の使い魔(リゾット) 白銀と亀な使い魔(五部ポルナレフ、ココ・ジャンボ) 凶~運命の使い魔~(ローリング・ストーン) サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔(アバッキオ) サブ・ゼロの使い魔(ギアッチョ) ゼロの変態(メローネ) ホルマリン漬けの使い魔(ソルベ) ディアボロの大冒険Ⅱ(ディアボロ) サーヴァントムーディー(アバッキオ) ナランチャ・アバ・ブチャ ペッシ 本気男(ホルマジオ) 紫霞(しか)の使い魔(フーゴ) 不死の使い魔(ディアボロ) 鮫技男と桃髪女(スクアーロ) 一味違う使い魔(トリッシュ) 使い魔は刺激的(トリッシュ) ゼロの奇妙な道連れ(アバッキオ) ルイズと愉快な暗殺者たち(暗殺チーム) 僕の夢は三色コロネッ!(ジョルノ) パープルヘイズ&グリーンデイ 影の中の使い魔(ブラック・サバス) 使い魔の鎮魂歌(チャリオッツ・レクイエム) タバサの大冒険(ディアボロの大冒険) サーヴァント・スミス(ナランチャ) ルイズ姉ェの栄光への道(ペッシ) ゼロの臭い魔(ミスタ) ドロの使い魔(セッコ) ジョルノ+ポルナレフ アバッキオ 使い魔は引き篭り(イルーゾォ) CRAFT OF ZERO ゼロの技工士(サーレー) 黄金の使い魔(ジョルノ) 第六部 引力=LOVE?(徐倫) フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ(F.F.) アナスイ 星を見た使い魔(徐倫) 奇妙なルイズ ゼロの予報図(ウェザー) ゼロの使い魔への道(ドラゴンズ・ドリーム) お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ!(エルメェス) 新世界の使い魔(プッチ) 変な帽子みたいな使い魔(マンハッタン・トランスファー) 子供の使い魔(エンポリオ) ヘビー・ゼロ(ウェザー) ゼロのスネイク(ホワイトスネイク) ゼロの奇妙な白蛇(ホワイトスネイク) DISCはゼロを駆り立てる(ホワイトスネイク) L7 meets C-MOON(C-MOON) 使い魔の兄貴(姉貴)!!(エルメェス) 狂信者は諦めない(プッチ) 使い魔は空高く(リキエル) ティータイムは幽霊屋敷で(エンポリオ) 第七部 ゼロの世界(リンゴォ) 微熱のカウボーイ(ティム) ギーシュの奇妙な決闘(リンゴォ他) Start Ball Run(ジャイロ) サンドマン 歩き出す使い魔(ジョニィ) スケアリー・サーヴァント(Dio) マイク・O D0C(大統領) バオー ゼロの来訪者(橋沢育郎) ゼロいぬっ!(バオー犬) 短編 小ネタ 完結作品 スターダストファミリアー(承太郎) スターダストは砕けない(承太郎…だけ?) 『鉄塔』の使い魔(スーパー・フライ) 几帳面な使い魔(虹村形兆) お嬢様の恋人(トニオ) 奇妙なルイズ ゼロの使い魔への道(ドラゴンズ・ドリーム) 不死の使い魔(ディアボロ) サーヴァント・スミス(ナランチャ) 味も見ておく使い魔(露伴&ブチャラティ) ゼロいぬっ!(バオー犬) ゼロと奇妙な隠者(ジョセフ) 新着情報 取得中です。 タグ検索 and or タグ一覧 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。
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目を覚ましたリキエルは、まず窓の外を見やった。 日は出ているようだが、まだ薄暗い。早起きには成功したらしい。成功といっても、意識してそれができるほどリキエルは器用な人間ではない。見知らぬ場所で寝たことで、単純に眠りが浅かっただけである。硬い床に、何も被らずに寝転がっていたというのもその一因かもしれなかった。 身を起こしてみると、体の節々が不満を言うようにギシギシと痛んだ。それに少し肌寒い。目が覚めた一番の要因はこれだろうと、リキエルは思った。 そんな肌寒さや、寝起き特有の奇妙な現実感が、今おかれている状況が夢の中ではないことを改めて実感させた。わかりきっていたこととはいえ、リキエルは、自分が夢を見ているのではないか? という考えを捨て切れていなかった。その可能性がどうやら完全に消えたことで、リキエルは少しだけ肩を落とした。 「……とりあえず仕事だな」 多少なりとも憂鬱な気分を払拭しようと、リキエルは今自分がやるべきこと、できることに意識を向けた。好き好んでやるわけではないが、他になにをするわけでもない身の上である。 リキエルは、洗濯を命じられた衣類と下着、ついでに昨晩自分の汗をふき取ったタオルを拾い上げ、ルイズを起こさぬよう、なるだけ物音を立てずに、そろりと部屋から抜け出した。 ◆ ◆ ◆ 好調とはほど遠いものだったが、寝覚めは悪くなく、寝ぼけていたわけでもないとリキエルは思っていたが、実際はそうでもなかったらしく、肝心なことを忘れていた。どこで洗濯をすればいいのかわからないのだ。 この世界には魔法があるためか、科学技術の発展は遅れているようだった。というよりも必要とされていないらしく、所謂、文明の利器と呼ばれるものが存在していない。無論、洗濯機などがあろうはずもなかった。昨晩のルイズとの話でそのあたりの事情はわかっていたのだが、だからどうこうということを考えるのは今日の自分に任せ、昨晩のリキエルはそのまま寝てしまったのである。 そういうわけで、手洗いをするしかないと気づいたリキエルは、適当に当たりをつけて水汲み場を探し始めたのだが、 「広すぎるだろうがッ! 自然公園並か、それよりもっとかもしれない! 本当だな、造形美と機能美が両立しないってのはよォ~」 いかんせん敷地が広すぎた。このトリステイン魔法学院、伊達に城が建っていたり塔が点々と屹立しているわけではなく、全寮制ということもあってか、広大な敷地面積を誇る。 外に出てみたはいいものの、勝手のわからないリキエルは水汲み場を見つけるのに難儀し、小一時間ほど駆けずり回った挙句、未だに見つけられていない。すでに日は昇って、召喚の儀式があった草原も、その光をうけて黄金色に輝いている。早くに目が覚めた意味がまるでなかった。 リキエルは、どうしたものかと頭を抱えた。そんな迷える子羊然としたリキエルを、天は憐れと思ったか、ちょっとした手助けをするつもりになったようである。 「あの、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう方では?」 後ろからかけられた言葉に、リキエルは首を回して振り返り、開いている片目を少し見開いた。 メイド服の少女がいた。ハウスキーパーの類ならば、リキエルのいた世界でもそう珍しくはないが、その少女は、見たところ給仕や女中といった立場の仕事をしているように見受けられた。本職というと語弊があるが、そういったメイドには、そうそうお目にかかれるものではない。 珍しい、とリキエルは思ったがしかし、当然とも思えた。貴族制の生きているこの世界、使用人がいてもなんら不思議はないだろう。 それよりも、見も知らない少女が自分について知っていることの方が、リキエルには気になった。 「知ってるのか? オレを」 「ええ。やっぱりあなたのことだったのですか。奇妙な服装の、隻眼の平民を召喚してしまったって、噂になってますわ」 なるほど、やはり人間を使い魔にすることは、半日で噂になる程度には珍しいことのようだった。 ――ただ。 隻眼というのは格好がつき過ぎるとも、リキエルは思った。 「私も平民で、貴族の方々をお世話するためにここでご奉公させていただいている、シエスタっていいます」 はきはきとした態度から、目の前の少女の気立てがよいことがわかる。歳はルイズと大きな差はないだろうに、内面はえらい違いである。根底にある人間性の違いか、それとも貴族と平民との差だろうか。 初対面の人間にも物怖じしないシエスタに、リキエルは道を聞くことにした。 「オレはリキエル。……ところで、会って早々悪いんだがちょっと聞いていいか」 「はい、なんでしょう?」 きょとん、とした顔でシエスタは答える。 「水汲み場か、井戸みたいなモノはないか?」 「はい、それならこちらです。ついてきてください」 水汲み場は、寮からほど近い場所にあった。 「…………」 「レースのついたものは、無理に力を入れるとほつれてしまうので、指の先で少しづつ、擦るようにして洗うんです。そう、そんな感じです」 桶と洗濯板を借り受けて、シエスタの指示をうけながら、リキエルは一枚一枚丁寧に洗濯物を片付けていく。 貴族が着るものであるからか、それともルイズの趣味なのか、どれも妙に凝った作りで、衣服の手洗いなどしたことがないリキエルには、どう洗えばいいのかわからなかった。そこでシエスタに教示を願ったのだ。 それならば、と自分が洗うことを申し出たシエスタだったが、リキエルは自分の仕事だからと、感謝しながらも申し出を断った。ただ、生理的に洗いづらい下着類については言葉に甘えさせてもらった。 小山ほどもあった洗濯物だが、意外なほど早くその殆どが洗い終わった。汚れのないものも含まれていたからだ。激昂したルイズは、どうやら綺麗なものまでまとめて投げつけたらしかった。 「悪いな。オレの勝手につき合わせちまって」 あとは干すだけとなったころ、リキエルはシエスタに向かって言った。 「いえ、いいんですよ。今は私、仕事もありませんし」 シエスタはこともなげに、謝るリキエルに笑いかける。それから、ほんの少し顔を曇らせてリキエルに訊ねた。 「でも、リキエルさんこそ、大変じゃないですか? 突然使い魔になってしまって。貴族の方に仕えることになってしまって。洗濯も、本来は貴族の生徒さんたちが各自でやるものなんですよ」 それは初耳だ、とリキエルは思い、それも含めて考え、首を振った。 「偶然とはいえ、助けられたからなァ。恩返しだと思うことにしたんだ。それにやることもないんだよ、こんな見知らぬ土地じゃあな」 ついでに、逃げ出して自活しようというような気概もリキエルにはない。 「助けられた、ですか?」 「ああ。オレが……」 首を傾げるシエスタに、リキエルは説明しようとして、やめた。説明したところで信じられるような話でもないだろうし、自分でもなぜこうなったのか理解できていないのだから、うまく話せそうにもなかった。 「いや、なんでもない。そういえばシエスタ、朝食は摂ったのか」 話題を変えるために、多少強引ながらリキエルはそう聞いた。何となく気にかかっていたことでもあったので、ついでである。 シエスタはまた首を傾げたが、あくまでお喋りの一環としての疑問だったため、すぐにそんなことは忘れたらしく、リキエルの問いに答えた。 「私達は、朝食を済ませてから仕事に取り掛かるんです。それで、お掃除をしたりお洗濯をしたり、それから同室の子が多分、今なんかは食堂で――」 そこでシエスタは言葉を区切った。そしてリキエルに向き直る。心なしか、案じるような色を含んだ顔になっている。 「リキエルさん。リキエルさんは、お食事を?」 「いや、まだだ」 考えてみれば、丸一日近く何も胃に収めていない。指摘されるまで気づかなかったが、ひどい空腹を感じる。そう付け加えると、シエスタは目を丸くして、顔を少し青くする。と次の瞬間には、眉尻をこれでもかというくらいに下げ、尚且つまた血相を変えるという器用なことまでした。 「大変。リキエルさん急いでください! まだ、走れば間に合うかもしれません! 洗濯物は私が干しておきますから!」 「お、おい、なにがだ。どこへ行けっていうんだ」 シエスタの剣幕にリキエルはたじろぐ。ころころと変わる表情から必死さは伝わってくるのだが、なにやら焦っているのがわかるだけで、おそらく肝心な部分が抜けている。シエスタもそれに気づき、たどたどしくも説明する。 「使い魔は、貴族の授業についてかなきゃあならないんです。もうすぐその時間が来ちゃうんです! だから急がないと!」 やはり、まだあまり要領を得ない説明だったが、その説明を反芻したリキエルは、漠然とシエスタの言わんとしているところを理解した。 「つまりこういうことか? さっさと食事にありつかないとオレは食いっぱぐれる」 「そうです!」 「なにィィイイイイ」 確かに一大事である。忘れていた空腹感が思い出されたためか、リキエルにはこれ以上食事を抜くことは、耐え切れないことのように思えた。 リキエルはシエスタに食堂の場所を聞き出すと、礼もそこそこに、あとを任せて脱兎の如く駆け出した。 「……あ」 リキエルの姿が見えなくなった頃、平民は食堂に入れないということをシエスタは思い出し、また顔を青くした。 ◆ ◆ ◆ 敷地内で一番高い、真ん中の本塔の中。アルヴィーズの食堂。 アルヴィーズとやらは何か知れないが、目印がハッキリとしているため、リキエルは迷うことなくそこを目指して、ただひたすらに走る。三大欲求の一つに忠実になった身体は、その能力が飛躍的に高まっているようだった。 と、いきたいところだが、急に走り出して空っぽの胃をひっくり返し、鈍痛に顔をしかめているのがリキエルの現状である。 形だけは必死に走り、ようやく本塔の入り口を視界にいれたリキエルは、ハーフマラソンを初めて完走するランナーのような達成感と安堵を感じた。 しかし、ゴールを見つけたからといって安堵するのはいささか早計といえる。マラソンでも、安堵した途端に筋肉が弛緩し引きつり、痙攣して立てなくなって再起不能という事態がままある。要するに、リキエルは間に合わなかった。 リキエルは見覚えのある、桃色がかったブロンドの少女が食堂から現れるのを認めた。 少女は小さめの口を大きく開き、よく通る声で怒鳴った。 「あ、いた! あんたどこほっつき歩いてたのよ! 折角、特別な計らいで中に入れてあげようと思ってたのに! これから授業よ! さっさと付いて来なさい!」 「はぁー、はぁー、お……ぇ」 タッチの差で、リキエルはパンの欠片さえ口にできなかった。人生とは往々にしてそういうものであるが、その僅かな差をやりきれないと思うのが人情である。 やりきれなさを抱えながら、リキエルは疲労で重くなった足を引きずるようにして、目を吊り上げて何事かを叫んでいる主人のもとへ歩いて行った。失意の念が、リキエルの耳を厚く閉ざしていた。 リキエルは心の中で叫んだ。JESUS! とただ一言。 しかめ面のルイズと、消沈した面持ちのリキエルが教室に入っていくと、先にいた生徒達が一斉にくすくすと笑い始めた。 ルイズはそれを無視してずんずんと階段を下り、開いている席に腰を下ろした。 同じようにリキエルが椅子を引くと、ルイズがそれを睨み付ける。 「……なんだ」 「使い魔は座っちゃ駄目。主人をほったらかすような使い魔は特に」 「洗濯をしてたんだ。昨日の夜に渡されたやつをな」 言われるまま、床にひざ立ちしながらリキエルは抗議する。空腹と、食いっぱぐれたことにより気力が減退しているため、勢いはなきに等しかった。 しかし、ルイズは死体を蹴飛ばすかのように容赦しない。 「仕事が遅すぎるわ。行くなら私を起こしてからにしなさいよね。危うく寝過ごすところだったんだから! 着替えも顔洗いも自分でしなくちゃならなかったし」 「それは……すまなかったな」 リキエルは、苦虫をすり潰したエキスをコップ一杯分飲んだような顔になった。 仕事が遅いと言われたのは仕方がないことかもしれないが、他の仕事については聞かされてもいないことであり、その内容もおかしい。掃除洗濯などは覚悟していたが、着替えの手伝いともなると話は別である。いかな貴族とはいえ、会って間もない男にそれをやらせるとは、このルイズという少女、なかなかに図太い神経をしているらしい。それとも、平民には男も女もないということだろうか。 平民というものの扱いに改めて辟易するリキエルだったが、このルイズの様子では、改善の余地もないだろうと諦めた。 しかし、実のところはそうでもないのである。 何かといえばパニックを起こしやすいリキエルを、ルイズは気の毒と思ったか、少なくとも食事については一応の改善を図っていたのだ。粗末ながらも椅子を用意したり、貴族のそれとは北極星とナマコくらいの差があるが、ある程度まともな食事を用意させたりといったことだ。 リキエルにとってそれは当然の待遇といえるが、当初は床で食べさせることなども考えていたルイズにしてみれば、かなりの譲歩である。ただ、結局どれも無駄に終わってしまっただけなのだ。 ルイズの機嫌が悪い最大の原因は、実はこれである。平民のくせに、使い魔のくせに、ご主人様の温情を突っぱねるとはいい度胸じゃない! ははは恥かかせるなんて、やってくれるじゃない! というわけらしい。 「次からは気をつけること。じゃないと朝食抜きだから」 そう宣言し、ルイズは視線を前に移した。 憮然とした顔でため息をつき、リキエルも前を向く。丁度そのとき、扉が開き、教師と思しき中年の女性が入ってきたところだった。全体的にふくよかな容姿と優しげな微笑みが、その人柄を表しているようだった。 「春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。この『赤土』のシュヴルーズ、こうやって新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみですのよ」 彼女、シュヴルーズは教室を見渡しながら言った。そして、その視線がルイズとリキエルのところで留まり、少し驚いたような顔になる。そしてつい、思ったことを口にしてしまった。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したようですね。ミス・ヴァリエール」 その言葉で、生徒たちの忍び笑いが爆笑に変わった。爆笑している内の一人が、腹を抱えながらルイズに向かって言う。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 肩を震わせながらも耐えていたルイズだったが、『ゼロ』の一言は我慢ならなかったらしく、その生徒を睨み付けて言い返した。 「違うわ! きちんと召喚したもの! 平民でも成功は成功よ!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」 いよいよ生徒達の笑いが止まらなくなる。ところどころから、ゼロ、ゼロという単語が飛び出してくる。 ――ゼロのルイズってのは……。 いったい何なのだろうかと、リキエルは思った。こちらに来た当初にもそれを聞き、昨晩のキュルケもそれを口にしていた気がする。何度か耳にしたが、その意味はわからないままだ。ただ、ルイズの様子を見れば、あまりいい意味ではないことだけはわかる。 そのルイズは拳を握り締め、そして静かに、怒鳴りたくなる衝動を抑え、それでも溢れ出る怒りをこめて言った。 「ミミ、ミセス・シュヴルーズ。侮辱、されました。風上のマリコルヌが、わわわ私を、侮辱したわ」 それを聞いて先ほどの生徒、マリコルヌが反射的に立ち上がる。ギラギラした光を瞳に宿らせて、マリコルヌは声を張り上げた。 「風上だ! かぜっぴきじゃあないぞ! オレは風上の――」 「合ってるでしょう?」 「……あれ?」 シュヴルーズが呆れたように杖を振る。 マリコルヌは、何やら消化不良に悩まされたような顔をしたまま、すとんと席に座らされた。糸の切れた操り人形のようなその姿に、生徒達はまた笑い声を上げた。 「わたくしの発言も思慮に欠けました。しかしミスタ・マリコルヌ、お友達を中傷するようなことは感心しませんよ」 少し厳しい顔で、シュヴルーズはマリコルヌに言う。そして、あなたたちもですよ、というように、ルイズを笑っていた生徒にも顔を向ける。それにより笑い声は小さなものになったが、殆どの生徒はゲラララゲラゲと笑い転げたままだ。 その中の一人が笑いをこらえ、表面だけは真面目な顔で叫んだ。 「でもミセス・シュヴルーズ! ルイズのゼロは紛れもない事実です!」 こらえていた分もあってか、先ほどよりさらに大きな笑いが教室を埋め尽くす。 ルイズは、今度はそれらに怒鳴って言い返すこともしなかった。どうやら無視を決め込んだようである。ただ、右肩と眉が、水揚げされた鰯のようにピクピクと震えているので、無視し切れてはいないようだった。 ルイズが言い返さないのを良いことに、生徒達は笑うのをやめようとしない。何がそこまでおかしいのかわからないリキエルから見れば、ここまで来ると一種異様である。 シュヴルーズが眉根に皺を寄せ、再度杖を振るった。すると、笑い声がぴたりと止んだ。 「一度でいいことを二度言わせる気ですか? あなたたちは、しばらくその格好で授業を受けなさい」 大口を開けて笑っていた生徒は口の中に赤土が詰め込まれ、くすくす笑いをしていた生徒は上下の唇に赤土を押しつけられていた。優しげな風貌をしているシュヴルーズも、そこはやはり教師である。生徒に舐められるようでは務まるわけもないということだろう。 授業を始めますと言って、シュヴルーズは机の上に石ころを出現させた。それから改めて自己紹介をし、講釈に入った。 授業は静かに進行する。リキエルはシュヴルーズの話を適当に耳に入れつつ、大学の講義室のような教室を見回してみた。 おそらく皆使い魔なのだろう、カラスやフクロウなどの無難な生き物から、想像上のものだと思っていた生物などが目に入る。尻尾の燃えているデカイ蜥蜴は、昨晩のキュルケが言っていたサラマンダーというやつだろうか。中には生物か否かも疑わしいようなものもいて、窓の外でも数匹ウロウロしていた。リキエル自身もその中の一体だと考えると、確かに笑えることかもしれない。 ――いい迷惑だがな。 それら使い魔達の主人はその殆どが、セメントか粘土のようになった赤土で口を塞がれている。魔法で取り払おうとしてか、杖を振り回している者もいるが、効果はないらしい。 キュルケがそうなっていなかったのは意外だった。 ちなみに、マリコルヌも赤土を免れたらしかった。釈然としない顔のまま黙っていたからだろう。 リキエルは一通りそれらを観察し終え、本格的に授業を聴いてみることにした。この世界の授業が理解できるとは思わないが、暇つぶしになるかもしれない。そう踏んで耳を傾けたのだが、これがどうしてなかなか面白い。 魔法における四つの系統、『火』『水』『土』『風』。失われた『虚無』を合わせて五系統。 シュヴルーズは土の系統らしい。自分の系統であるためか、そこは熱く弁舌を振るっている。その内容から察するに、土の系統は工業や農業にその力を発揮するようである。先ほどのように攻撃的な用途もあるようだが。 聞いているうち、リキエルはなるほどと思った。魔法使い――こちらでいうメイジはそれぞれ得意な魔法に違いが出るようで、二つ名というのも、得意な魔法の系統に因んだものらしい。『赤土』を名乗るシュヴルーズが土ならば、『微熱』を二つ名に名乗ったキュルケは火の系統といったところだろうか。 ――ゼロというのも……。 その二つ名というやつだろうか。だとすれば、その意味するところはなんであるのか。リキエルはまた疑問に思ったが、ルイズ本人に確かめたところで結果は見えているし、熱心に授業を聴いているルイズに話かけるのも気が引けた。とりあえず、今は授業に集中することにした。 今日の授業の本題は『錬金』だった。そのおさらいという話である。 錬金と聞いて、リキエルは以前何かで読んだヨーロッパの錬金術を思い出したが、それもあながち間違いではなかったらしい。 「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」 授業よりも爪の手入れに勤しんでいたキュルケが、興奮した声を上げた。リキエルも開いた口が塞がらない。 初めに用意した石ころに、シュヴルーズが何かを唱えて杖を振ると、それが金属に変わったのである。シュヴルーズの言うところによるとそれは真鍮で、金を錬金出来るのは『スクウェア』クラス、彼女は『トライアングル』クラスなのだということだ。 またよくわからない単語が出てきたが、リキエルは話の流れから、メイジのランクのようなものだろうとあたりをつけた。 なんにしても、魔法はなんでもありなのだ、ということは改めてよくわかった。石ころを真鍮にしたり金にしたり、原子も分子もあったものではない。 次に、シュヴルーズはそれをルイズにやらせようとした。熱心な態度が気に入られたらしい。目を掛けられたということか。ルイズは少し目を見開き、口を開いて何か言おうとしたが、直ぐにまた結び、席から立ち上がった。 途端に教室中からうめき声と悲鳴があがる。うめき声の理由は、口に張り付いたままの赤土である。 「ウんんんン――ッ! ガアアアア――アァッ!」「再びかァ――ッ! 昨日みたいのは勘弁してくれェ!」「逆に考えるんだ。一度きりなんだから昨日よりはマシと考え、られるかアアアァァ!」「ンゴォおおおおぉ――ッ!!」「成功のないままおわ――」「それはもういいんだよッ! さっさと隠れろ!」 悲鳴叫喚どこ吹く風と、ルイズは教卓の前に立つ。生徒達は顔を青くし、我先にと机の下に隠れだした。残っているのは、未だに放心した面持ちのマリコルヌだけである。 シュヴルーズとリキエルはそれらを不思議そうに眺め、ルイズは先ほどシュヴルーズがしたように、杖を掲げて何やらブツブツと唱える。ルーンというらしい。そして石ころに向かって杖を振り下ろした。 「おぉぉお! なにィィイイイ!?」 その瞬間眩い閃光が、轟音を伴ってリキエルの視界を奪った。 ……石ころは爆発した。らしい。 というのも、石ころの置かれていた教卓は粉々で、それがあった場所の床もえぐれているため、正確には何が爆発したのかもわからないのである。 教卓の名残や床だったものは四散し、机に食い込み窓を割り、使い魔たちを脅かし、マリコルヌに突き刺さっている。爆発の中心近くにいたシュヴルーズは目を回しており、マントはズタボロで蜂も住まないほどに穴だらけだ。本人に目立った傷がないのは幸運だったといえる。 幸運といえば、ルイズとリキエルも無傷だ。ルイズは制服のところどころが破れているが、本人はピンピンしている。リキエルは驚きのためか、珍しく両の目を見開き、やはり驚きのために腰が完全に抜けてしまっているが、小石ひとつ体には受けていない。 「魔法は失敗だッ! 依然変わりなくッ!」「ゼロの魔法=爆発!」「マリコルヌを医務室に運べェェ! 息をしていないッ!」「魔法が使えないのにこの学院にいるんじゃあねェ――ッ!」「見せ場のないまま終わり。それがマリコルヌ・グランドプレ」「お前、脇キャラ昇格狙ってねえ?」 教室を叫喚と罵声が飛び交う。シュヴルーズが気絶したためか、赤土を引っぺがすことができたらしい。使い魔たちも暴れ回り飛び回り、色々と収拾がつかなくなっている。しかしそんな中、爆発を起こした張本人は澄ましたもので、制服についた煤を手で払っていた。落とせそうにないことがわかるとすぐに諦めて、コホン、とひとつ咳をしてから、こうのたまった。 「ちょっと、失敗したみたいね」 …………。 誰も何も言わない。皆が皆、餌を待つ池の鯉のように口をパクパクとさせたあと、疲れたように長い溜息をついた。 「こういうことか」 角砂糖を一度に三個ほど飲み込んだような顔をしながら、リキエルは小さく呟いた。『ゼロ』の意味を、言葉ではなく心でもなく体で理解していた。 ――しかしこういうことなら……。 直接聞いておいた方がよかったかもしれないと、机にすがりつくようにして立ち上がりながらリキエルは思った。パニックを起こす間もないほどに驚いたのは、この世界に来て早二度目である。腰はまだガタついていており、先ほどまで開いていた両目は、やはりいつもどおり、片方のまぶたが下がっていた。 ――洗濯といい、食事といい……。 前途は多難。そういった予感が、リキエルにはしている。
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第一章≪使い魔は立ち上がる≫ 一章一説 ~星屑は違う空に流れる~ 一章二節 ~ゼロは使い魔と相対す~ 一章三節 ~使い魔はゼロを見る~ 一章四節 ~使い魔は使い魔を知らない~ 一章五節 ~使い魔は血に慄く~ 一章六節 ~使い魔は千鳥足を踏む~ 一章七節 ~青銅は信念と錆に浮かれる~ 一章八節 ~ゼロは頭を下げない~ 一章九節~使い魔はとりあえず前を向く~ 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(前編) 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(後編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(後編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(前編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(後編) 一章十三節~土くれは機を逃さない~ 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(前編) 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(後編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(前編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(後編)
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【ワンポイントギーシュ】 砕けない使い魔(仗助)登場。レビテーションでC・Dを封じるなどギーシュには珍しく頭脳派。でも結構ゲス野郎。 露伴未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 絶頂の使い魔(ディアボロ)登場。杖を折られて殴られただけで被害は少ない。 使い魔は静かに暮したい(デッドマン吉良)登場。手を撃ち抜かれた後、足蹴にされた。その後も顔面を叩き壊されたり、怪我の絶えないギーシュ。 康一未登場。マスターがアンリエッタの為、出られてもチョイ役か? DIOが使い魔!?(DIO)登場。出るキャラみんなブラックの中、全身ハリネズミになって保険室送り。最近ようやっと復帰したらしい。 slave sleep~使い魔が来る(ブチャラティ)登場。ブチャラティに拷問されるが、モンモランシーの励ましもあって、脱・マンモーニ。妙に強い。ブチャラティに完全敗北するものの、ゲスにもならず目覚めた奴隷。……が、十四股をしていたことがばれ、制裁。 ジョセフ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの兄貴(プロシュート)登場。決闘中、ザ・グレイトフル・デッドによりミイラ同然にされた上、首の骨を折られて死亡。歴代ギーシュの中で一番不幸なギーシュ。 スターダストファミリアー(承太郎)登場。歴代ギーシュの中で一番優しく、紳士的なギーシュ。精神的成長を遂げるなど、ルイズ・承太郎に次ぐスタメン級の扱いを受ける。 見えない使い魔(ンドゥール)登場。二回殴られただけで、絶頂と並んで被害が少ない。 L・I・A(仗助)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 偉大なる使い魔(プロシュート)登場。肘打ちから踏みつけという兄貴の黄金説教コンボをくらう。同じ兄貴でもここまで扱いが違うのはすごい。 引力=LOVE?(徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの番鳥(ペットショップ)登場。肉の芽を植え付けられ、ルイズの忠実な下僕となる。なんかいつもニコニコしている。 ゼロと奇妙な鉄の使い魔(リゾット)登場。リゾットからは何もされることなく、二股相手に平手打ちをくらっただけ。歴代ギーシュの中で最も被害が少ないギーシュ。 フー・ファイターズ 使い魔のことを呼ぶならそう呼べ(FF)登場。のっけから二股を解消しているので、決闘に発展するか疑問視されていた。だが結局勘違いから決闘を申し込んだ。 ハルケギニアのドイツ軍人(シュトロハイム)登場。そこらへんのダメ将軍なんかよりもすごい指揮官っぷりを見せる。時間切れより決着つかず。 アナスイ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 法皇は使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 亜空の使い魔(ヴァニラ・アイス)登場。DIOと並んで最も地獄に近いギーシュとされていたが、何と杖を折られただけで済んでしまった。その後、一部でヌケサクのあだ名が定着する。 白銀と亀な使い魔(亀ナレフ)登場。珍しく真面目なポルナレフに説教された。最後は墜落して保健室行き。 使い魔は皇帝<エンペラー>(ホル・ホース)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ACTの使い魔(康一)登場。康一君を無駄に痛めつけるなど最低のゲス野郎。康一から怒りの鉄拳制裁をくらい、舎弟フラグと低身長フラグが立つ。 几帳面な使い魔(虹村形兆)登場。覚醒したバッドカンパニーにワルキューレを吹っ飛ばされて降参。実は全く被害を受けていない。(だが決闘前に平手打ち、ワインのビンで殴られる、右ストレートのコンボを食らっている) ファミリアー・ザ・ギャンブラー(ダニエル・J・ダービー)登場。ダービーの計略によりワルキューレすら出せずにコイーン。 星を見た使い魔(空条徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 奇妙なルイズ(スタープラチナ)登場。瞬殺。 ゼロのパーティ(サイト、花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロと奇妙な隠者(ジョセフ)登場。他のギーシュ達とは逆に、ジョセフから決闘を申し込まれた。 ゼロの世界(リンゴォ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔波紋疾走(ジョナサン)登場。圧倒的な格の差を見せつけられ敗北。そんなジョナサンを見て成長するだろうか。 メロンの使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? マジシャンズ・ゼロ(アヴドゥル)登場。マジシャンズ・レッドに恐れをなしてしまい、ギー茶を作ってしまった。社会的にかなりの被害を受ける。 老兵は死なず(ジョセフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 凶~運命の使い魔~登場。ローリングストーンズにつぶされた。 微熱のカウボーイ(マウンテン・ティム)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 割れないシャボンとめげないメイジ(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔の魂~誇り高き一族~(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの予報図(ウェザー・リポート)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ポルポル・ザ・ファミリアー(ポルナレフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの使い魔への道(ドラゴンズ・ドリーム)登場。はからずも龍の夢が予知した通りの未来になる。食堂に居た人達全てを不幸にしてキュルケから鉄拳制裁を受けた。 エルメェス未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 愚者(ゼロ)の使い魔(イギー)登場。しかし、決闘の場面をキング・クリムゾンされてしまった。 女教皇と青銅の魔術師(ミドラー)待望のギーシュ主役作品。が、いきなり死亡フラグが立った。 サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔(アバッキオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? サブ・ゼロの使い魔(ギアッチョ)登場。ギアッチョに殺されそうになるが、ルイズの嘆願で一命を取り留める。 逆に考える使い魔(ジョースター卿)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの変態(メローネ)登場。もはや理解不能。 ゼロの究極生命体(カーズ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ディアボロの大冒険Ⅱ(ディアボロ)登場。俺TUEEEEEEEEE状態のディアボロに軽くあしらわれる。経験値要員としか見られていない。 アバッキオ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 鏡の中の使い魔(イルーゾォ)名前のみ登場。鏡の中の世界に引きずり込まれてそこで死亡。 ナランチャ・アバ・ブチャ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? はたらくあくま(デーボ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも。 start ball run(ジャイロ)登場。男の誇りを粉砕されるも、倍になって復活。そのあと男の世界に目覚めた模様。 サンドマン未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 爆炎の使い魔(キラークイーン)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔はゼロのメイジが好き(ストレイキャット)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 本気男(ホルマジオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 新世界の使い魔(プッチ神父)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 戻る
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「シャーリー」からシャーリー・メディスン召喚 ゼロの使い魔はメイド-01 ゼロの使い魔はメイド-02 ゼロの使い魔はメイド-03 ゼロの使い魔はメイド-04 ゼロの使い魔はメイド-05 ゼロの使い魔はメイド-06 ゼロの使い魔はメイド-07 ゼロの使い魔はメイド-08 ゼロの使い魔はメイド-09 ゼロの使い魔はメイド-10
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『十二国記』より中嶋 陽子 ゼロのメイジと赤の女王‐01 ゼロのメイジと赤の女王‐02 ゼロのメイジと赤の女王‐03 ゼロのメイジと赤の女王‐04 ゼロのメイジと赤の女王‐05 ゼロのメイジと赤の女王‐06