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てのひらからまばたき【登録タグ て 曲 浮世P 雪歌ユフ】 作詞:浮世P 作曲:浮世P 唄:雪歌ユフ 曲紹介 5月なので5拍子。take5 富嶽三十六景 江戸日本橋/葛飾北斎 歌詞 (本人歌詞コメントより転載) 聞こえる 君の声 雑踏に紛れて 聞こえる 君の声 雑踏に紛れて 紛れてった 遠くなる 遠くで揺れ 手のひらから瞬き 放り投げ 揺れて消えた もう嫌だ 聞こえた 君の声 柔かく響いて 聞こえた 君の声 柔かく響いて 響いてった 遠くなる 遠くで揺れ 手のひらから瞬き 放り投げ 揺れて消えた もう嫌だ コメント 名前 コメント
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ギーシュ空間とは! ひとつ、哀れなり! ふたつ、決して攻撃されず! みっつ、決して救われることは無い! よっつ、あらゆる同情や憐憫を兼ね備え、しかもそれらを無意識で行う! そしてその空間はとても居辛く、嗚咽交じりの沈黙を基本形とする。 うお!?今何か電波を受信したような気がする。なんだったんだあれは…… いや、今はそんなことを考えている場合ではない。早くこの雰囲気を何とかしなければ! ギーシュをこづいたりしてやめさせたいがあまりにも不憫すぎてためらわれてしまう。無視したいが無視できない何かを兼ね備えているがごとくその場から離れられない。 もう望みはワルドだけだ。さっきもこの雰囲気を壊そうとしたんだ。ならもう一回してくれるはずだ。何か策があるはずだ。もうこの雰囲気はごめんだ! そう思いワルドに目をやるとワルドもこちらに目線を向けていた。なにやら目配せをしてくる。何かするつもりのようだ。 そしてワルドはルイズを見やりルイズにも目配せをする。 ワルドは突然口笛を吹く。すると朝靄の中から何が出てくる。それは奇妙な生き物だった。 鷲の上半身にライオンの下半身がくっついた生き物だった。何かで読んだことがあるな。たしかグリフォンとかいう空想上の生物だ。 この世界には本当に居るのか。 ワルドはグリフォンに颯爽と跨ると、 「おいで、ルイズ」 と手招きする。 「は、はい」 ルイズはこれに便乗し跨る。そしてワルドは「さあ、きみの番だ!」とでもいう風に視線を向けてて来る。 ああ、私の番だ。ギーシュ空間が緩んだ今しかない! 「剣を忘れたからとって来る」 そう言い残し時自分でも惚れ惚れするような速さで逃げ出した。 そしてデルフリンガーをとって帰ってきてみた光景は、いくらか憔悴した顔のワルドとルイズ、そして復活し馬に跨っているギーシュだった。 どうやら二人でギーシュ空間を治めたらしい。ワルドとルイズの恨みがましい視線を極力無視し馬に跨る。 そしていつまでもこうしているわけにはいけないと思い出したのだろう。 「では諸君!出撃だ!」 ワルドが思いを振り切るように杖を掲げた! グリフォンが駆け出す。それを追うように私とギーシュも馬を走らせた。 さて、一体どれくらい馬に乗ることになるのやら……
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「……あ……う…………!」 声が聞こえる。微かに、だが確かに聞こえる。 「相…………………ぼ……!しっか…し……………!……え……の………!」 これほど小さい声なのにどうしてこうまで五月蠅く聞こえるのか? 「立て………よ!……たい……!何とか…………!……こ……まだ生き………!」 もう話しかけないでくれるか?体がだるくてさ、眠たいんだよ…… 「死んじまってもいいのかよ相棒っ!」 死ぬ?その言葉だけはやけにはっきり聞こえた。 死ぬとはどういうことだろう?考えてみる。死とは生命活動が不可逆的に止まる事ことだ。それ以上でもそれ以下でもない。 今の言葉を思い出してみろ、それが誰に当てはまる? (死んじまってもいいのかよ相棒っ!) 相棒……、そうか、この声はデルフだったのか。私の中で相棒という言葉が当てはまるのはデルフだけだ。 デルフは私のしてきたことを知っている。私の考えを全てではないが知っている。私は社会的に見ても個人的に見ても悪だ。 自分の欲望を達成するためには殺人すらいとわないという考え方はどんな文明社会だろうと悪だろう。 私自身はそれを悪いと自覚していても躊躇いや後悔などは一度もしたことがない。罪悪感を抱いたことすらない。 当たりまえだ、自分のことにしか興味がないのだから、他人がどうなろうと知ったことではない。幽霊だったときは勿論のこと、生き返った今でもそうだ。 そんな私の考えを知ったものがいたらそいつは私のことを軽蔑するだろう。非難するだろう。避けるだろう。それが当たり前だ。 しかしデルフはなんと言った?私の本性の一端を知ってもなお何と言った!? (俺はいつだって相棒の味方さね。なんたって俺の相棒だからな!) 私はこの言葉をどう受け止めただろうか?答えは出ている。 デルフリンガーをデルフと呼び始めたあのときから答えは出ていた。私はデルフを信じている。俺はデルフを相棒だと認めている! 「『幸福』になりてえんだろ!こんなところで死んだら『幸福』も何もねえじゃねえか!答えろよ相棒!」 デルフは俺に向かって死んじまってもいいのかといった、つまり俺は死に掛けてるってことだ! ふざけんな!俺は死なねー!死んでたまるかよ!この『吉良吉影』は生き抜いてみせるぞッ!絶対『幸福』たどり着いてみせる! 認識した瞬間意識が急速に浮上する。しかし何かがそれを阻害しようとする。何だこれは!? それは無数の手だった。その手に恐怖する。何故かはわからない。だがその手が今何よりも恐ろしかった。 その手の力は凄まじく浮上した意識がまた落ちていく、そして体に罅が入っていく。 やめろ!やめてくれ!俺を何処に連れて行く気なんだ!?死にたくない!死にたくないんだよ! 「まだ『幸福』じゃねえんだろーがよおおお!」 デルフのその声が、その叫びが、その咆哮が自分を動かす! 死にたくないという意思が、生きるという執念が、幸福になるという妄執が阻害する手を振りほどく! 「う お お ぉ ぉ ぉ お あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ ぁ ぁ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーツ」 …………そして私は立ち上がっていた。 「相棒ッ!」 デルフの声が聞こえる。早くそちら向きたい!感謝を伝えたい!ここまで素直なのは初めてのことだが今はそんな気分なのだ! しかし体が動かない。それどころか体全身が激痛に苛まれている!気絶したくても痛みで気絶できない!気絶したくないので気絶できないのは利点だが…… 何だこれは!?何がどうなっている!?何故こんなにも体が痛いんだ! 「ヴェ…ルゥフ……」 声もまともに出ない!それどころか喋ろうとすれば咽喉が焼け付くように痛い!せっかく死なずに済んだというのに!このままではまた死んでしまう! 「相棒こっちだ!俺をとるんだよぉ!」 床のほうからデルフの声が聞こえる。お前を握ればいいんだな。わかった!お前に従おう! 痛みを意思の力で捻じ伏せ動かない体を無理やり動かす。しかしそれは更なる痛みを生み出す。しかしそれを無視し動かす。 死ぬよりも痛みの方がマシだ!痛みは生きている証なのだから! ようやく床を見ることが出来た。何か剣のようなものが見える。おそらくそれがデルフなのだろう。 そして認識する。目が霞んでいるのだと。 しかしデルフが認識できれば問題ない。さらに体を動かしデルフへ手を伸ばそうとする。 「頑張れ相棒!」 頑張るさ相棒。しかし体が動きを止めてしまう。これ以上動かなかった。 しかしこれでいい!この距離まで手を伸ばせればいいのだ! 「…………………ッ!」 もう一つの腕を発現させる。腕には罅が無数に入っていたが何とか動かせる。 あれ?今私は何と言った?腕を出すときなんと言ったんだ?ダメだ。頭に霞が掛かったかのように思い出せない。しかし今はそんなことを追求している場合じゃない。 腕を伸ばすとデルフを掴みそのまま手繰り寄せる。そして自分の掌に持ってこさせる。そして満身の力を込めデルフを握った! その瞬間、体中の痛みが消えた。視界が鮮明になる。そして体が何時にも増して軽い。デルフが自分の体の一部のようだ。 デルフを見るとその刀身はまさに今研いだかのように光り輝いている! 「起きるのが遅いぜ相棒。あんまり起きるのが遅いんで生まれ変わっちまったよ」 デルフはさっきとは打って変わっていつものように喋りかけてくる。 「どうしたんだその姿?」 そしていつものごとくそれを無視してたずねる。ああ、やっぱり感謝なんて私には似合わない。これが一番いい。 「よくぞ聞いてくれました!」 デルフが喜びの声をあげる。 「これが俺の本当の姿さ!相棒!いやぁ、てんで忘れてた!そういや、飽き飽きしてたときに、テメエの体を変えてたんだった!なんせ、面白いことはありゃあしねえし、 つまらん連中ばっかりだったからな!」 デルフが叫ぶ。刀身の輝きを誇るがごとく。 「俺はちゃちな魔法は全部吸い込める!だからもう相棒にあんな魔法はくらわせねえ!この『ガンダールヴ』の左腕、デルフリンガーさまがな!」 その言葉には言い表しようがない覚悟が見えた。 私はデルフの言葉に喜びを覚え、それと同時に不快感を感じるという矛盾した自分に戸惑うしか出来なかった。
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デルフが何か言う前にデルフを鞘に収める。喋る隙など与えない。 「参ったね」 ワルドが困ったようにそう言う。キュルケもそれに賛同し頷く。 しかし何でこんな目にあうんだ!いつもいつも私が平穏を手に入れそうになると必ず邪魔が入る! 幽霊屋敷の時も!そして今も!私に魂の休息は訪れないのか!? 「やっぱり、この前の連中は、ただの物盗りじゃなかったわね」 キュルケが呟く。 「……やつらはちびちびとこっちに魔法を使わせて、精神力が切れたところを見計らい、一斉に突撃してくるわよ。そしたらどうすんの?」 「仮にぼくの『ワルキューレ』で攻撃しても一個小隊ぐらいが限界かもしれないしね。戦い方を見るに相手は手錬れの傭兵だろうし」 キュルケとギーシュが敵を戦力を淡々と分析する。よく見ているな。とても任務中に酒を飲んでいた奴らとは思えない。 タバサに到ってはこの状況で優雅に本を読んでいる。しかもパジャマだ。こいつら、戦い慣れしているのかただの馬鹿なのか判別できんな。 「いいか諸君」 突然ワルドが私たちに呼びかける。 「このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、成功とされる」 するとタバサがすぐに囮と桟橋へ行く者を決める。 囮はタバサ、キュルケ、ギーシュ。桟橋へ行くのは私、ルイズ、ワルドだ。 タバサはどうやら戦い慣れしている方らしいな。 「時間は?」 「今すぐ」 ワルドの問いにタバサが返す。 「聞いてのとおりだ。裏口に回るぞ」 「え?え?ええ!」 ワルドの言葉にルイズが驚きの声を上げる。私としては何で桟橋に行くんだ?って驚くがな。船は明日の朝じゃないと出航できないんだろう? 別に囮は驚くようなことじゃない。私としてはギーシュたちが死んでも問題ないしな。 それにしても本当にこの世界の船はどんなのなんだろうか? 「今からここで彼女たちが敵をひきつける。せいぜい派手に暴れて、目立ってもらう。その隙に、僕らは裏口から出て桟橋に向かう。以上だ」 ワルドがルイズに説明する。 「で、でも……」 ルイズはそう言いながらキュルケたちを見る。 「ま、しかたないかなって。あたしたち、あなたたちが何しにアルビオンに行くのかすら知らないもんね」 「油断しなければ負けはしないさ。それにヨシカゲに屈辱を返すまでは死ねないしね」 キュルケは髪をかきあげながら、ギーシュは口に杖を銜えて言う。ギーシュは絶対ただの馬鹿だな。 「行って」 タバサが私たちを促す。 「でも……」 しかしルイズはそれでも尻込みしている。もう置いていったらいいかもしれんな。 「ねえ、ヴァリエール。勘違いしないでね?あんたのために囮になるんじゃないんだからね」 そんなルイズにキュルケがそう言い放つ。 「わ、わかってるわよ」 その言葉に押されたのかようやく決心がついたようだ。ルイズがキュルケたちに頭を下げる。何だかんだ言っても感謝はしているらしい。 ルイズとワルドと一緒に低い姿勢を保ちながら厨房を目指し歩き出す。矢が飛んできたが何かで防がれる。きっとワルドかタバサだろう。 「ダーリーン!帰ってきたらキスしてねーーー!」 キュルケが言ってくる。そんなこと言ってももう帰ってこないけどな。 酒場から厨房に出て通用口にたどり着く。そして酒場のほうから爆発音が聞こえてきた。 「……始まったみたいね」 ルイズが呟く。ワルドはドアに身を寄せ外の様子を探っている。 「誰もいないようだ」 そう言ってドアを開け外へ出る。 「桟橋はこっちだ」 そう言ってワルドが先頭を走り出す。そしてそれに続いてルイズ、しんがりが私という形になった。 夜だが月明かりで明るい。これなら敵がいてもすぐにわかる。 走っているとワルドが建物の間に入る。そこには階段があった。ワルドとルイズはその階段を上がり始める。 長い、とにかく長い階段だ。なんで上がるんだ?やはりこの世界の船は元の世界とは違うらしいな。 上がっていると何か大きな音がする。 振り返ってみるとさっきの酒場があった場所に巨大なゴーレムが存在していた。さっきのゴーレムだ。ということは敵はまだ死んでなかったらしい。 腹と胸に2発ずつ撃ったんだぞ!?ダメ押しで顔にも撃ったのに!?それで死なないなんてどんな奴だよ! ルイズとワルドもゴーレムを確認したらしく足を止めている。 「……あれ、やばいんじゃない」 ルイズの声が震えている。おそらくキュルケたちのことを心配しているのだろう。ゴーレムは傭兵たちを巻き込んで暴れているらしく人間の悲鳴がここまで聞こえてくる。 「それでも僕たちは先を急がなければいけないんだ。囮になった彼らのために……」 ワルドはそう言うとまた階段を上り始める。ルイズも頭を振り払いまた上り始めた。 私としてはキュルケたちには死んでほしい。もしかしたアルビオンに来るかもしれないからだ。まあ、あの様子じゃ死んだな。 そして私もまた階段を上り始める。 やがて階段を上りきると丘の上に出た。そこには巨大な樹があった。あまりの大きさにさすがに驚いてしまう。 上を見上げると大きな枝が四方八方に伸びている。本当にでかい。まるで山だ。 よく見ると枝に何か付いている。飛行船みたいなものだ。もしかしてあれが船だろうか? ワルドは樹の根元へと駆け寄る。ルイズと私もそれに続く。樹の根元は空洞になっていた。吹き抜けみたいな感じだ。 夜だからだろうか、人影は見えない。空洞の各所に階段と鉄(であろう)で出来たプレートが貼ってある。 ワルドはその中の一つに駆け寄り上り始める。私たちもそれに続く。 しかしこの階段は意外に怖いな。木で出来ていて、1段登るごとにしなる。手すりはボロく有るようで無いようなものだ。 扱けたらどうなるかは考えないようにしよう。 暫らく上がっていると踊り場があった。やっと安定した場所だ。そう思っていると後ろから追いすがるような足音が聞こえる。 敵か!?そう思いデルフを抜くとその勢いのまま後ろに斬りかかる。もし敵じゃなくてもこの状況じゃ仕方ないよな! しかしその攻撃は掠っただけで相手に当たることはなかった。 なんと自分の上を跳び越した!マジかよ!? デルフを振った反動でさらに振り返ると敵(絶対に敵だ)はルイズの背後に着地する。ルイズが振り向くと敵はルイズを一瞬で抱え上げる。 「きゃあ!」 ルイズの悲鳴が上がる。人質のつもりか!?馬鹿め!私に人質が通用すると思うか!むしろチャンスだ。そのまま男に躊躇無く剣を振り下ろす。 ルイズを抱え上げるその一瞬が勝負の分かれ目だ!ルイズ諸共死ね!
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しかし参ったな。 デルフを手に取ったときから体が動くようになり目の霞も解消したと思ったんだが左目だけはいまだに霞んだままだ。 「相棒?どうかしたのか?」 突然黙った私に疑問を持ったのだろう、デルフが話しかけてくる。 「いや、左目の調子がおかしいんだ」 「そりゃあそうかもしれねえな。体が動くようになったからって言っても治ったわけじゃねえんだし」 「そうなのか?」 「そうさね。動けるようになっただけさ。それに相棒の体は限度を超えてるんだ。ガンダールヴの力でも庇い切れない所も出てくるぜ」 なるほど。そんなものか。 そんな会話をしているうちにどんどん左目はおかしくなっていく。 何で左目だけなんだ?おかしいだろ? しかし急に目の焦点が合い始める。よかったよかった。 「なあ相棒。これからどうすんだ?」 おかしい、左目と右目で見えているものが違うぞ?どうなっている? 「おい相棒?おーい。もしかしてポックリ逝っちまったのか?」 ん?何か見える。人だな、誰だ?見覚えがあるぞ、確か……、 「えっ?おい相棒!まさかマジで死んじまったのか!?」 「ワルドだ」 「へ?」 そうだ、ワルドだ。顔が血だらけだが確かにワルドだ。殺したはずのワルドが何故か左目に見えている。 一体どういうことだ?いや、そもそも私はワルドを殺したのか!?あのときワルドの首を確かに撥ねた。しかし死体は消えていた。そのあと凄い衝撃が体を襲って…… 「デルフ、聞きたいことがあるんだが」 「うおっ!生きてるじゃねえか!心配させんなよ!」 「私はワルドを殺せたか?」 その質問にデルフが黙る。やっぱり殺せてなかったか。 「私の傷はワルドにやられたんだな」 デルフに確認を取る。そしてデルフの先ほどの言葉を思い出す。 (だからもう相棒にあんな魔法はくらわせねえ!) つまり私は魔法をくらったんだ、おそらくワルドに。 「相棒が斬ったのは風の遍在ってので、簡単に言うと本体と同じ力を持った分身さ。んで、くらったのが『ライトニング・クラウド』っていう『風』系統の呪文だ。 くらって生きてんのが奇跡みてえなもんさ」 デルフは、もういいや、感じで説明してくれる。私が斬ったワルドは分身で本体には影響なし。 意識を失う前に聞いたデルフの言葉から推測するに、本体は後ろにいて、私の気が緩んだところで『ライトニング・クラウド』で攻撃したというわけか。 「デルフ、行くぞ」 デルフを改めて握り締め歩き出す。左目に映るワルドは何かを探すようにあたりを見回している。 何故かわからないがワルドの見える場所がわかる。それを頼りにそこへ向かう。 「何処に行く気だよ相棒?」 「ワルドを殺す」 そうだ、殺さなければ気がすまない! 「はあ!?何言ってんだ!いま生きてんのが奇跡だって言っただろーが!そんな体で戦うなんて無茶にも程があるぜ!それに相棒はそんな性格じゃねえだろ!死ぬ気か!」 「そんなつもりはない。ただあれを敵と認識しただけだ。私はな、敵がいると夜も安心して熟睡できないんだ」 「相……棒?」 「それに、勝算はある」 そう言って首を振る。私はこういったことを考えるような奴だっただろうか?相手はどうせ死んだと思っているのだから逃げればいいはずなのに。それに勝算ってなんだ?勝敗を決める決定打なんて私は持ってないぞ?なのに勝てるという自信が満ち溢れている。しかしそういったことを考えても体はワルドのほうへ近づいていく。移動するごとに左目の景色に近づいているのがわかる。 そして随分と近くに来た。目の前の壁を壊せばそこにいるだろう。 「わかったよ!もう心配しねえ。何処までも着いていくぜ相棒!」 「ああ行くぞ相棒」 デルフを思いっきり壁に叩きつける! 壁が崩れ落ち、そして目の前にはワルドがいた。私を見るワルドの顔に驚愕が張り付いているのがわかる。 左目で見たとおりワルドの顔は血だらけだった。よく見ると肩もざっくり切れており血が出ている。 「貴様……、生きていたのか」 しかしすぐに冷静さを取り戻した隙を見せない。ワルドの言葉に何も返さない。ただワルドを見据える。 「だが、そんなにボロボロの状態で何が出来るって言うのだ」 ワルドは残忍な笑みを浮かべて私に言ってくる。おそらくこれが本性なのだろう。杖を私に向けて構える。 「どうして生きているのかは知らんが、今度は蘇らないようしっかり止めを刺してやる!安心しろ。ルイズもすぐに後を追わせてやるさ」 そしてこちらに向けて呪文を唱えながら杖を振るう。それと同時にデルフを前方に構えワルドへと駆け出す。そしてデルフの言葉を思い出す。 (俺はちゃちな魔法は全部吸い込める!だからもう相棒にあんな魔法はくらわせねえ!この『ガンダールヴ』の左腕、デルフリンガーさまがな!) 信じるぞお前の言葉!そしてワルドが放った魔法はデルフへ吸い込まれた。 「なにぃ!?」 ワルドの驚きの声が上がると同時にワルドを斬りつける!しかしワルドはそれを飛んで回避し掠っただけに終わる。飛んだワルドをさらに追撃するが杖で受け止められる。 その隙に距離をとられさらに魔法で追撃される。それをデルフに吸い込ませ無効化させる。 「驚いたぞ、まさか魔法を吸い取るとはな。では、こちらも本気を出そう」 その言葉を無視しワルドに斬りかかるがやはり掠るばかりでかわされてしまう。皮を切っても意味がない、肉を斬らなければ! 「相棒、無茶をすればそれだけ『ガンダールヴ』として動ける時間は減るぜ。今こうして戦ってること自体が無茶なんだ。早く決着つけねえとやばいぜ」 そのつもりだ!そう思いながらワルドに攻撃しようとすると、ワルドがいきなり分身した。目の前に5人のワルドが立ちふさがる。 これが風の遍在ってやつか!ワルドたちが呪文を唱えると、ワルドたちの杖が青白く光り始める。 「杖自体が魔法の中心だ。その剣で吸い込むことは出来ぬ!」 5人のワルドが躍りかかってくる。受け止めるわけにはいかない。それでは体に負担が掛かりすぎる。ではどうするか、受け流すしかない!相手の攻撃の勢いを全て逸らして受け流せば体への衝撃は減る! そしてそれを実行に移す。次々と杖を振るってくるワルドたちの攻撃を全て受け流す。おそらく極限状態の集中力がなせる業だろう。普段なら絶対にできない。 「平民にしてはやるではないか。さすがは伝説の使い魔といったところか。しかし何時まで持つかな?」 その言葉と同時に少しだけ、ほんの少しだけ攻撃が緩まる。他から見たら緩まったようには見えないだろう。しかし戦っているものからすれば十分に認識できる緩みだ。おそらく自分の優位に少しだけ気が緩まったのだろう。それが命取りだ! 受け流した攻撃の勢いを乗せワルドの顔を斬りつけ腕を返しさらにもう一人に斬りつける! 「ぐおおおぉぉあああああぁぁ!」 悲鳴が響き渡る。顔を斬ったほうは本体だったようだ。目を中心に顔の右半分を斬ったからな。もう目は見えないだろう。斬りつけたもう一人のワルドは消えている。 ワルドたちが後ろに下がる。 「おぉぉぉぉのぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇ!!!!!」 顔を押えていたワルドが手をどける。その顔は悪鬼が如き形相だった。 それと同時に膝が崩れ落ちる。どうしたというんだ!?まさか『ガンダールヴ』の効果が切れたのか!? 意識が……ぼやける。 She keeps Moet and Chandon in her pretty cabinet 彼女は綺麗な飾り棚にモエ・エ・シャンドンをとっておいて Let them eat cake she says, just like Marie Antoinette 「ケーキを食べれば」ってマリー・アントワネットみたいに言うんだ A built in remedy for Khrushchev and Kennedy フルチショフやケネディだって手玉に取る And anytime an invitation you can decline いつだって彼女が誘えば断れるはずもない Caviar and cigarettes well versed in etiquette キャビアとタバコを上品にたしなんで Extr ordinarily nice 素敵すぎるよ あの歌が聞こえてくる。 「死ねえええええぇぇぇぇぇい!」 ワルドたちが向かってくる。そしてそのうちの一体が爆発して消えた。 「ルイズか!?」 ワルドはそう言うと周囲を見回す。それを好機と見て素早く立ち上がる。ワルドもそれをみて視線をこちらに戻す。ワルドの残りの遍在は後2体。簡単に倒せるじゃないか。 「『闘争』は私が目指す『平穏な人生』とは相反しているから嫌いだ…。ひとつの『闘い』に勝利することは簡単だ…」 「相棒……?」 「何を言っている?」 ワルドが私の突然の言葉にいぶかしむ。 「だが次の『闘い』のためにストレスがたまる……、愚かな行為だ。他人と争うのはきりがなくて虚しい行為だ」 「今更命乞いなど聞くとでも思うか!」 ワルドが叫ぶ。しかしそれを気にはしない。 「いや、これは私の価値観でね。本当にそう思っているんだよ。ただ、君が敵である以上闘わざるをえないがね」 「ほざくなぁ!!!!!!!!」 2体の遍在が突っ込んでくる。しかし負ける気はしないな。なぜなら私はサビを知っているからだ。 「『キラークイーン』!」 She s a killer queen gunpowder gelatine, dynamite with a lazer beam 彼女はキラー・クイーン 火薬にゼラチン ダイナマイトにレーザービーム Guaranteed to blow your mind... (anytime) 君の心を吹っ飛ばす...(いつでも) Recommended at the price Insatiable an appetite (wanna try?) お買い得だよ あくなき食欲(お試しあれ)
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「……もし、『そうだ』と言ったら?」 ルイズにそう問いかける。 ルイズはすぐには答えず私を見詰める。睨むでもなく、観察するのでもなく、静かなる威圧感をその眼に宿し、ただ見詰める。 ルイズはこういった眼をするよう、……いや、出来るような女ではなかった。 正直言えばこの程度の威圧感など犬に咆えられるよりも効き目はない。 しかし問題なのはそういった眼が出来るようになったことなのだ。ルイズが、この甘ちゃんが、この馬鹿が、そういった眼をできるようになったというのが問題なのだ。 それを見極めるためにはまず観察するしかない。 そのためには相手の出方を見なければならない。心でも読めれば楽なんだがそんなことは出来ないしな。 くそッ!なんて面倒なんだ!早く始末してしまいたい!早くこの忌々しい使い魔という呪縛から開放されたいのに! いっそ今ここでルイズを殺すことが出来たらどれだけすっきりするか……、ルイズの眼の変化なんて気にしなくて済むしな。 だがここで殺すときっとワルドが私を攻撃してくるだろう。ワルドを倒せたとしてもこの船の船員が黙っていられるだろうか? 答えは、ノー。だから皆殺しにするしかない。しかし私に船の運転ができるか?ましてや空を飛ぶ船だ。いつ落ちるかわからない。 そんなもの無理に決まっている。結局ルイズはアルビオンで隙を見て殺すしかないのだ。 というより何故自分はここまで苛立っているんだ? たかがルイズに質問されたぐらいで、たかだか眼が少し変化したぐらいで、何故自分はここまで苛立っている? いつもみたいに誤魔化せばいいじゃないか。眼の変化など気にかけなければいいじゃないか。 何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故? ……何故かって?そんなもの決まっている! 私の『静かなる人生』を!『幸福生きる』という願いを! そして私を打ち砕いたクソカスどもの眼に似ているからだ!○○やくそったれ○○に似たな! 今はまだ違う。奴らのような○○を秘めているという訳ではない。 だが、この吉良吉影の『勘』が……いずれ奴らのような○○をその眼に宿すのではないかと告げている。 そう、奴らのような○○という名の○○を…… しかしそれはあってはならない!そのような○○を宿らしてはならない! 自分を否定するものが有ってはならないんだ! 「……私は」 ルイズが話しかけてくる。 それをきっかけに再び意識が浮上する。 私は今何を考えてたんだ?『私を打ち砕いた』……だと? どういうことだ?まるで静かな人生も幸福に生きるということも潰えたみたいな感じじゃないか!? 今目指しているものなのに何故潰えた感じ何だ! しかも『打ち砕いたクソカスども』?どういうことなんだ!? 「ちょっとヨシカゲ?顔色悪いわよ?」 ○○やくそったれ○○?○○?○○という名の○○? あれ?さっきまで考えていたはずのことがなぜ思い出せない?しかもまるで穴あきのように1部分だけだ。 自分を否定するもの? 勘? 眼? ○○? 吉良吉影? あれ?なんで自分の名前に疑問を持ってんだ? 「ねえ?聞いてるの?本当に顔色悪いわよ?大丈夫なの?」 膝が震える。汗が噴出してくる。自分の中の何かが、決定的な何かが壊れたかのように! く、苦しい!何で苦しいんだ? 息が出来てないからだ!じゃあ何で息が出来ないんだ? 体が言うことを聞かない!じゃあ何で言うことを聞かないんだ? あれ?何でこんなこと考えてるんだ?じゃあ何でこんなことを考えてるんだ? 咽喉を押さえ膝を突く。 もう立っていられない!思考もまともにまとまらない! 「ヨ、ヨシカゲ!?」 そうか…… 問題は、一番の問題は、自分が何で自分でもわからないこと考えたということではない。 一番の問題は……自分の名前に、いや、自分に疑問を持ったことだ! その瞬間から体に変調が起きたんだ。間違いない! じゃあ何で自分に疑問を持ったんだ?私は吉良吉影!私は私であり他の誰でもない!疑問を抱く余地なんてないじゃないか! いや、本当にそう言えるのか?言えるに決まっている! 突然腕が視界に入る。誰の腕かはすぐにわかる。私の腕だ。しかし私の腕といってもただの腕ではない。もう一つの腕だ。何故現れているんだ? 暫らく見詰めていると頭がすっきりした感じがする。 そうか、簡単なことじゃないか…… 「……こ………!」 「え……!……………………」 ついに体が地面に倒れ付す。音も殆ど聞こえなくなっている。 自分が自分のこ……とを疑……問を持ったのは、自分の考え……た吉良吉……影を他人と思っ……たからだ。 目の前が暗くなり始める。 私が認識し……ている吉良吉影ではなく別人とし……て考……えたからだ。 それじ……ゃあ、ど……うして他……人と思ったんだ? ま、まさか!……も……しか……したら私……の死ぬ前の……!? そして目の前は暗くなった。
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今日は月に一度の中掃除。普通の掃除と大掃除の中間ぐらいの規模ってわけで。一人暮らしの時はやっていなかったのだが、天河石たちが来てからは……まぁ、その、珊瑚がうるさくてな。 「マスタぁー、終わったよー♪」 押し入れの中から出てくる天河石。どうしてこんなところに入っていたかって、中の整理を一番小さいのにやってもらっていただけだ。 「おっし、じゃあこの部屋は終わりだな。次は向こうの……」 「主、台所の清掃、終わったぞ」 「お、さすが珊瑚だ。早いな」 「天河石は?」 「お前も充分早いよ。よく頑張ってる」 子犬のような幼い顔つきでこちらを見上げてくる。こういう顔を見ると、どうも頭を撫でてやりたくなるんだよなぁ。 「えへへ~」 と、気がついたらこうして天河石の頭に手が行ってるわけだ。そして、こういうときの珊瑚の顔もまた……。 「珊瑚も撫でて欲しいか?」 「む、いや某は別に……」 「ふーん。まぁいいや、んじゃあ最後の部屋はみんなでやってしまうか……あ、風呂掃除が残ってたたか。俺そっちやってくるわ」 「手伝うよぉ?」 「ドレス濡れたら嫌だろ? 俺一人で充分だから、お前らは二人で残りの部屋を頼む」 「はーい」 主に言われた通り、残りの部屋の掃除を進める某と天河石。残りの部屋と言っても、あとは皆で過ごすことの多い居間のみ。それほど時間が かかるわけではない。 しかし、先の主の言葉……某も撫でて欲しいか、だと? ……頭を、撫でる? そういえば某、今まで頭を撫でて貰った記憶が……。 「……天河石」 「なぁに、珊瑚お姉ちゃん?」 「頭を撫でられるときは、どういう感じなのだ?」 「ふぇ? んーと……ごしごしーってされる感じかなぁ」 ごしごし……乾布摩擦みたいなものなのか? だとしたら体にはよさそうだが。 「でねー、マスタぁーに撫でてもらうとぉ、幸せな気持ちになれるんだよー」 「幸せ?」 頭に手のひらを乗せられることで得る幸せ……そういう互いの触れ合いは嫌いではない。だが、やはり某にも恥ずかしいものはある。主の手で頭を触れられる……そんな子供っぽいことはちょっと、な。 「そっち終わったか?」 風呂掃除も一通り終わり、飲み物片手に二人の元へと戻る。 「終わったよー」 「天河石が頑張ってくれたからな、早く終わった」 「さすがだな、二人とも。ほら、お疲れさん」 二人にそれぞれ飲み物を手渡す。天河石にはコーヒー牛乳、珊瑚には麦茶。一応二人の好きな物……だと思う。 「わーい♪」 「かたじけない」 「いいっていいって」 俺はもちろんビール……なんてわけには行かず、天河石御用達のコーヒー牛乳を一気飲み。天河石が来てから、苦手だった甘い物を克服してしまった気がする。もちろん酒も好きだけど。で、コーヒー牛乳の一気飲み。もちろん腰に手を当てて、頭は45度で固定。そして一気に流し……。 「……どうしたんだ、珊瑚?」 「え、いや……ゆっくり味わって飲んだ方がよいぞ」 「いやいや、こうして一気飲みするのもまたいいモンだぞ? 何なら珊瑚も……って、宝石乙女にそんなことやらせちゃダメか」 「当然だ」 相変わらずだなぁ、珊瑚は……って、まだ珊瑚の視線を感じる。一体何なんだ? 「……まだ何かあるのか?」 「えっ、あ、いや別に……なんでもない」 何でもない奴がそんな慌てて目を逸らすかよ……。 「そ、それより、今日は天河石がよく頑張っていたんだぞ。いつもの奴はしないのか?」 「いつもの? いつものって何だ?」 「あ、いや……先ほど褒めた割には頭を撫でてなかったからな、それが気になって」 「頭? あぁそういや……ほほぉ」 なるほど、そういうことか……お、珊瑚顔赤くなったぞ。俺が気づいたことを察したみたいだな。 さて、こうなるとからかってみたくなるのが人間の性ってモンだ。 「マスタぁー、何してるのぉ?」 「おぉ天河石か。お前掃除頑張ったんだってな」 「お姉ちゃんも頑張ったよぉ?」 「そりゃあ、珊瑚はお姉さんだからなぁー」 いつものように天河石の頭を撫でる。もちろん純粋に褒める意味で撫でているが……それ以上に珊瑚の反応が気になる。 「えへへー」 「……っ」 我関せずとそっぽを向いてはいるが、横目で天河石の顔を確認している。 「天河石の髪は綺麗だなぁ」 「お姉ちゃんも綺麗だよー。あっ、さっきねー、お姉ちゃんが頭撫でられるのはどんな感じかって言ってたよー」 「あっ、こら天河石……ーっ」 おぉっと、天河石の思わぬフェイント攻撃だ! これには百戦錬磨の珊瑚も相当効いたようだな。もう俺と顔を合わせられないほど赤くなっている。しかし珊瑚の照れる表情なんて初めて見たな。しかもかなり可愛いぞ。 「なんだよー、気になってたんだったら俺に言えばいいのにぃー」 「そ、そ、某は……うぅー」 さすがにいじめすぎたか、反応が痛々しくなってきた。もうこちらを見てないし……よし、じゃあそろそろだな。俺は珊瑚の隣に立ち、桜色の髪の毛に手をかざす。 俺の手のひらが、珊瑚の頭を軽く撫でた。 「っ!?」 まるで猫のようにその場から飛び退き、俺と間合いを取る珊瑚。 「おいおい、そんな警戒するなよぉ。ちょっと撫でるだけだって」 「そそ、某に触るなっ!」 「声が上ずってるぞー」 「い、いいいつも通りだっ! 某はうろ、うろたえてなどっ!」 あーあ、完全にテンパらせてしまった……ここまで照れ屋だとは、少し反省。 「ははは、悪い悪い、さすがにいじめすぎたな」 「主はおかしいぞっ、さっきから……なぬ、いじめ?」 「そ。だってあまりにも珊瑚の反応がおかしくてなぁ」 「いじめはダメだよ、マスタぁー。でもお姉ちゃん面白かった」 天河石は純粋に面白かっただけだろう。でもまぁ、同じ意見なので二人で笑い合う。いやぁ、可愛い珊瑚を見ることができてよかったよかった。 「……ふ、ふふふ……そうか、からかっていたのか……某を、か……ふふ……許さん」 「え……?」 慌てる珊瑚は可愛かったが、キレた珊瑚はマジで怖いということを痛感した。 「ってぇー……まさか斧の腹で殴ってくるとは」 「某を侮辱するからだ! 今回ばかりは主とはいえ簡単に許すわけにはいかぬぞ」 「へいへい。で、どうすれば許してくれるんだ?」 「ん、それは……」 あごに手を当てて考え込む珊瑚。そしてわずかに頬を赤くして……。 「……なら、からかうのではなく……ちゃんと褒める意味で、その……撫でてくれ」 「へ? まぁ、うん、いいけどよ……フェイント攻撃はなしだぞ?」 「それは某をからかった罰だっ」 「わ、分かった分かった……」 まぁ、俺も悪ふざけが過ぎたから反省しよう……。 「……ダメ、か?」 怒ってるような照れてるような、そんな珊瑚の横顔。 ……結論。お願いをするときの珊瑚は、どんなときに見せる顔よりも可愛い。だから俺はもう……。 「全然OK。100回でも200回でも撫でてやるっ」 「え、主何を……うわわっ、あ、主っ、物事には限度がっ」 「おぉ、見た目通りの綺麗な髪じゃないか。さらさらだな」 「そ、それは……そうか、それならいい……」 結局、珊瑚が頭を撫でさせてくれたのは1分ほどだった。 「今回のことで、主が変人だという事がよく分かった」 「アレはあくまで勢いだって」
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私のそばに現れたのは2mほどの人型だった。猫のような頭部を持ち、肩や手の甲、腰等に髑髏の装飾がついている。 その人型の全身には細かな罅が無数に入っており今にも崩れそうに見える。 しかしその体からは言葉にし難い力強さが発せられている。 『キラークイーン』 それがこの人型の名前であり、私のスタンドであり、自身の殺人衝動の具現化とも言えるまさにもう一人の私。 そして向かってくるワルドの遍在を見据える。その動きは速い。しかしくそったれ仗助や忌々しい承太郎に比べれば遅すぎる! 「しばッ!」 ワルドたちが振るってくる杖をキラークイーンで弾き飛ばし殴り飛ばす。スタンドにはスタンドでしか攻撃できない。ゆえにワルドではスタンドに対抗する術はない。 自身の体の傷はスタンドに反映される。今の私の体は重傷だ。 よってキラークイーンには殴り飛ばすぐらいの力しかない。重傷でなければ体をぶち抜けたんだがな。 「な、なにが起こったんだ!?」 ワルドがうろたえる。当たり前か、スタンドはスタンド使いでなければ見えない。ゆえにワルドには遍在が吹っ飛ばされたわけがわからないだろう。 遍在の顔にすら驚愕の顔が張り付いていた。 ワルドに向けて1歩踏み出す。殴り飛ばされた遍在は体勢を立て直すとワルドを守るように立ちふさがる。 「貴様……、一体何をしたぁ!」 「私は常に『心の平穏』を願って生きている人間でね。『勝ち負け』に拘ったり頭をかかえるような『トラブル』とか夜も眠れないといった 『敵』をつくらない……というのが私の社会に対する姿勢でありそれが自分の幸福だということを知っている……」 「何をしたのかと聞いているんだ!」 「もっとも闘ったところで私は誰にも負けんがね」 ワルドの問いを無視喋りかける。 「ワルド君、つまり敵である君は私の睡眠を妨げる『トラブル』なんだよ。だから君を始末させてもらう」 ワルドたちが1歩後ろに下がる。その顔に見え隠れするのは恐怖だった。 私はそれを煽るように1歩前に進む。 「う、う、う、う、うおおおおおおおおおおおおおおお!」 覚悟を決めたのかワルドたちが突っ込んでくる。 「平民如きにこの私がやられるはずがないいいいいいいいいいいいいい!!」 「いや死ぬよ。何故すでに君は『キラークイーン』によって始末されてしまっているのだからね」 そう既にワルドの遍在はキラークイーンに触られている! 右手のスイッチを押す。瞬間、ワルドの隣にいた遍在が爆発した。 こんなことが起こるなんて予想もできなかったであろう、ワルドは何も出来ずに吹っ飛んだ。同時に残っていたもう一つの遍在も消える。 「うっ、うっ……」 やはりあれだけ離れてたら1発じゃ死なないか。 倒れ付しているワルドに近づいていく。 「な、何が!何が起きているというのだ!」 ワルドが立ち上がる。しかし死ななくてもやはりダメージはあったのだろう。爆発を受けた側の衣服は破けており血が出ている。 足はガクガクと震え今にも倒れそうだ。 しかしそれでもなお必死にこちらに杖を向け抵抗の意思を示している。 その杖にキラークイーンで触れ、杖を媒体にして腕を爆破する。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 杖が地面に落ちる。杖を持っていたワルドの腕は無くなっていた。 ワルドが腕を押さえ膝をつく。 それから杖を拾い上げ杖を爆破する。もうこれでワルドは魔法を使えない。 「おいおいワルド君、その程度で悲鳴を上げるなよ」 呻いているワルドの口に爪先を突っ込む。その衝撃で前歯が何本か折れる。 「私はこれほどまでにひどい傷を負いながら悲鳴の一つも上げなかったぞ。私を見習いたまえ」 そう言って爪先を引き抜くと顔を思いっきり蹴り上げ、ワルドを地面に転がす。 そしてワルドに向けて踏み出そうと足を前に出し、体が突然崩れ落ちた。は? 手からデルフリンガーが離れ全身に痛みが戻る。これは一体!?今度こそ『ガンダールヴ』の効果が切れたのか! やばい!やばいぞ!今ここで倒れたら!前に目を向けるとワルドが立ち上がって私を見ている。ワルドは喋らない。その代わりその眼が物語っている。 『殺してやる』 その純粋な殺意だけが確認できた。 やばすぎる!早く何とかしなければ殺されてしまう!キラークイーンを動かそうとしても動かない! ワルドがそこらへんにあった大き目の瓦礫を掴み上に掲げる。まさか! 「死ねえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 ワルドがその腕を振り下ろした瞬間、ワルドの体は爆発して吹き飛んだ。 何が起こったんだ?そう思っていると視界の隅に人影が映る。 「ヨシカゲー!」 それはルイズだった。どうやらルイズがワルドを吹き飛ばしたらしい。ワルドに視線を向けるとそれは酷い有様だった。 衣服がボロボロになっており所々こげている。体中血だらけで残っている腕も変な方向に曲がっておりその体はピクリとも動かない。誰の目から見ても死んでいるだろう。 ルイズが駆け寄ってきて私の頭を抱えあげる。 「ヨシカゲ!大丈夫!?しっかりしなさい!ねえ!ヨシカゲ!」 目に涙を溜め悲痛そうな声で私に呼びかける。 しかしそれにしても綺麗な手だな。少し小さいがそれも可愛げがある。それが私の顔に触れていると思うと興奮するな。 しかし手だけの方が静かで清いお付き合いが出来るな。最後の力を振り絞りキラークイーンでルイズに触る。そしてスイッチを入れようとして気づく。 右腕が……無い!? どういうことだ!?たしかにさっきまであった筈だぞ!私の右腕が切り離されたわけでもないのに!? そもそもここは何処だ!?私はあの道で振り返った後どうなったんだ!?何故生きている!?私を抱えている少女は誰だ!? 何がどうなっ……ている…………んだ…… 意識が無くなった吉良をルイズが抱きかかえ呼びかける。その呼びかけは涙声で、もはや呼びかけではなく懺悔のよう、いや懺悔だった。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 その顔は涙と埃にまみれ汚く歪んでいる。 そしてその様子を見ながらデルフリンガーは先ほどまでの吉良を思い出していた。 「……ありゃあ相棒じゃねえ。一体誰だったんだ?それにあの白い奴は一体……」 その場に聞こえるのは怒号と爆発音、そして懺悔の声。 その場にあるのは後悔と疑問、そして戦争だった。
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「頼もしい使い魔さん」 考えに耽っていると王女が喋りかけてくる。 「何でしょう?」 さすがに王女だ。ルイズと同じ風に喋るわけにはいかない。 「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」 王女はそう言うと左手を差し出した。握手かと思ったが手の甲が上を向いている。 じゃあ何をすればいいんだろうか?しかしこういった場面をどこかで見たことがあるような気がしないでもない。 「いけません!姫さま!そんな、使い魔にお手をを許すなんて!」 ルイズが声を荒げる。つまり普通私ぐらいの身分じゃされることはない行動のようだ。 「いいのですよ。この方はわたくしのために働いてくださるのです。忠誠には、報いるところがなければなりません」 いや、私はお前に忠誠心なんて持ち合わせてないがな。それにお前のために働くなんていつ言った? 働くのはルイズだけだ。しかしルイズも仕事中に死んでしまうがね。 しかしお手を許す?何のことだ? 「ルイズ、何をすればいいんだ?」 ここは素直に聞いておこう。間違ったことをして怒鳴られるのは面倒だ。 「まったく、平民は何も知らないんだから。お手を許すってことは、キスしていいってことよ。砕けた言い方するならね」 思い出した。何かの本で読んだな。騎士がお姫様の手にキスをするやつ。あれと同じか。確かああいったのはキスするふりをするんだったけ? 王女の前にひざまずき手を手に取り甲に唇を近づける。さっさと済ましてお帰り願おうか。 キスするふりをする。回りからはキスをしているように見えるだろう。そして顔を離して立ち上がる。 立ち上がったはずだった。どうしても顔が上げれない。王女の手を離すことが出来ない。王女の手から目が離れない。 あれ?どうしてだ?何がどうなっている? 「ちょっと、ヨシカゲ?」 ルイズが話しかけてくる。それはわかるが何を言っているかは理解できない。 そういえば前にもこんなことが無かったか?しかしそれにしてもいいにおいだな。それに王女は顔もいいしな。 しかも手が綺麗だ。こんな手にキスのふりだけなんてもったいない。ちゃんとキスしなきゃな。 そう考えしっかりとキスをする。それはもうキスというよりは唇を押し付けてるといったほうが正しい。 「キャッ!」 王女の声がする。いい声だ。それに綺麗な手だ。頬ずりしたくなる。その手を嘗め回したくなる。 はじめてあれを見たときの感覚に近い。もう一つの腕で王女の腕を掴む。 「痛!?」 まだこれだけしか使えないのは残念だ。それにしても君は見れば見るほど綺麗だ。でも手だけの君はもっと…… 「姫殿下に何してんのよッ!」 顔に衝撃が走り床に転がる。何だ一体!? 驚いて立ち上がるとルイズが顔を真っ赤にしており、王女は腕を痛そうに押さえている。 そういえばさっきまで俺は何を考えていた!?何をしていた!?如何して思い出せない!? 「も、申し訳ありません!使い魔の不始末は、わたしの不始末です!っていうかあんたもほら!謝りなさいよ!」 「すいませんでした」 王女に謝罪するが上辺だけのものだ。今はそれに関心を払っている場合ではない! さっきまでのことが思い出せないなんてあるだろうか!何をしたのか、何を考えたのか、何を思ったのかがまるで思い出せない。 壁を隔てて向こう側にある感じだ。 ただ王女の手に口付けをしようとした瞬間感じたものは……何かが曖昧になるような感覚だった。
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「ギュ、ギュラモン?もしかしグラモンですか?あの、グラモン元帥の?」 沈黙を破ったのは王女だった。さすがに沈黙に耐え切れなくなったのだろう。 頬を引きつらせながらギーシュに聞く。 「ひゃ、ひゃい!むしゅこでございましゅ。姫殿下」 当然声を掛けられギーシュは驚いた様子だったが力強く声を返し一礼する。 ギーシュは顔を赤く染めている。私が殴ったことや歯が折れたことは後回しに決めたようだ。 しかしあれだな。基はいいが鼻血と折れた歯じゃ格好がつかないな。唇も腫れてきてるし。 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 「任務の一員にきゅわえてくだしゃるなりゃ、きょれはもう、望外のすぃあわせにぎょざいます」 ギーシュの言葉に王女は微笑む。聞き取りづらくても大体わかるからな。 「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたのその血を受け継いでいるようですね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」 「ふぃめ殿下がぼくのにゃ前を呼んでくだしゃった!ふぃめ殿下が!トリしゅテインの可憐にゃ花、びゃらの微笑みの君がきょのぼくに微笑んでくだしゃった!」 ギーシュは喚きたてるのと後ろに仰け反り気絶してしまった。こいつここまで王女に心酔してたのか? ギーシュだけでなく他にもこういった奴が多く居るなら王女のカリスマは凄いな。 とりあえずこの場に居る全員がギーシュを無視する。 「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」 ルイズが王女に宣言する。 「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」 「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」 「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」 もうなにも思うまい。もしこの王女に何か言える立場にあっても何も解決しそうにない。 要するにバカなんだ。王女もルイズもギーシュも…… バカは死なないと治らないからな。 王女は突然机に座り羊皮紙と羽ペン(ルイズの物だ)を使いなにやら書き始める。 王女は書いたものを見ると悲しげに首を振る。もう王女を見る目が凝り固まっているのか何から何までうそ臭く見える。 第一印象でここまで人を見る目っていうのは変わるものなのかね? 「姫さま?どうなさいました?」 王女の表情を見て怪訝に思ったのか、ルイズが声をかける。 「な、なんでもありません」 王女は顔を赤らめると、頷きさらに何かを書き足し、なにか呟く。 生憎この位置では何を言っているのかは聞き取れなかった。興味なんてないがね。 王女は羊皮紙を巻くと杖を振る。すると巻かれた羊皮紙に封蝋がされる。羊皮紙は手紙のようだ。 王女がルイズに手紙を渡す。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」 そう言うと王女は右手の薬指にしていた指輪を引き抜くと、ルイズに渡す。 「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」 ルイズは指輪を受け取ると深々と頭を下げた。 「この任務にはトリステインの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなたがたを守りますように」 ガキに未来を任せるなよ……