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No シナリオ名 内容 214 仇討ち 寄り合い所に入ると、今にも客に斬りかかろうとしている、冒険者を見掛ける。その後、英雄妖精が見掛けた冒険者が、友の敵だと言うドワーフと出会い、冒険者を見掛けた事を告げると、冒険者を追いかけ立ち去っていく。ドワーフはようやく友の仇を見つけ出すが、むなしくも返り討ちにされてしまう。ドワーフの無念の想いを胸に、英雄妖精が代わりに武器を取る。 ▼噂話 「長い間連れ添った奴が、命をまっとうしました。長生きした方でしょう。カーシーにしては。」 「とある名匠が、何者かの手によって殺されたらしいんだ。いや魔物の仕業じゃないんだ。どうやら物盗りらしいんだよ。」 「この前、凄く怖いソルジャーのお客さんがいらっしゃったの。お水を少しこぼしただけで、殺すなんて言われたの…。本当に怖かったわ。」 ▼イベント発生 発生エリア:II 発生レベル:6,11 寄り合い所で発生 ▼イベント詳細 1.寄り合い所に入ると殺気立ったソルジャーが今にも客に斬りかかろうとしていた。客が必死に謝り、その場は何とか収まった。 2.野外でドワーフにソルジャー(の名前)を知らないかと訊ねられる。 はい→3へ いいえ→イベント終了 3.〔発生した町〕に入ると女の悲鳴が聞こえた。英雄妖精を見たソルジャーは舌打ちをして去っていく。負傷したドワーフを宿屋に運ぶ事に。 4.負傷したドワーフを宿屋に運んだ英雄妖精達。女は医者を呼びに行った。 5.数日後、宿屋に行くとドワーフが居なくなっていると騒ぎになっている。ドワーフは〔指定の迷宮〕の事を独り言で呟いていたという。 6.〔指定の迷宮〕で傷ついたドワーフを見つける。彼が見つけた鉱石で剣を作り、その剣で友の仇を討ちたいと言い、その場を立ち去った。 7.野外でドワーフがソルジャーを見つけた所に遭遇する。ソルジャーはドワーフの剣を狙って襲いかかってくる。ソルジャーとの戦闘。 撤退する→イベント終了 勝利する→8へ 8.英雄妖精はドワーフの代わりにソルジャーを倒し、仇を討った。ドワーフは英雄妖精にお礼として剣を託して息をひきとった…。(イベント終了) 『マスターブレード』を入手
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仇討ち戦記 草加床ノ間の回胴日誌である。 よくホールに献金しているボルヴィラーHGの仇討ちでホールに出向くという意味で名付けられた。 第1章 1~38+外伝の39話で構成されている。 回胴機「デンセツヘノミチD」,通称「秘宝伝」に登場するシャロンさんとの出会いと別れが描かれている。 最終成績は+111千円だった。 第2章 1~25話で構成されている。 大人のダークな事情でシャロンさんがお亡くなりになった後,「まごころを,君に」をメインに打っていた。 しかし,5号機のスペックの悪さに気持ちがついていけなくなり,本意ではないが引退となってしまった。 第24話以降,ホールには入ったことはあるが全く打っていない。 「まごころを,君に」の最終成績は-13千円だった。
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計略 仇討ち 武力が上がる。この効果は撤退している味方部隊数が多いほど大きい 必要士気4 武力+? 効果時間?c Ver1.1.0D
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07/06/08(金)20 18 09 No.9763148 ■童話世界■ 仇討ち屋の兎市(アダウチのトイチ) 表の顔は損料屋「徒々屋(カチカチヤ)」の主である兎族の男 いつもニコニコとしていて人のよさが自慢の男 しかし裏では様々な人々の「怨み」を聞き届け「仇討ち」により世を救う「仇討ち人」の一人 得物は巨大な杵で目にも止まらぬスピードでそれを振るい確実に相手の脳天を打ち砕く その技は見事の一言で、例え名医が見ても転んで頭でも打ったかのようにしか見えないという 童話世界には数組織の仇討ち屋が存在するが、彼だけは一人で仕事をこなす孤独の仇討ち屋である
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友人の仇討ち 遂行地域 エレシュランタ - 墜落の島 適正レベル 取得 38 / 遂行 40 報酬 経験値 2,108,696 / 122,200 ギーナアビスポイント 150 関連クエスト --- 進行順序 1.NPCバキウスと会ってクエスト獲得2.墜落の島にいる第38部隊 ドラコニュートを倒せ-第38 ドラコニュート 歩兵(5)-第38 ドラコニュート 強襲(5)-第38 ドラコニュート 警戒兵(5)3.NPCバキウスと会ってクエスト完了
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113 名前:仇討ち 1/3 投稿日:2006/11/01(水) 00 48 35 走る。走る。 息が切れる。足がもつれる。臓腑が喉まで競り上がって来るようだ。 それでも走る。主君の待つ元へ。 北に向かって移動していた甘寧は、放送の後、猛烈な勢いでもと来た道を戻っていた。 嘘だ、嘘だ、嘘だ。 殿が死んだなんて嘘だ。 別れたのはたった数時間前のことだ。 あの城の中に隠れていれば、危険なんて無い。 あの中をわざわざしらみつぶしに探す人間がいるものか! 荀イクだって一緒にいたんだ! …そうだ、その荀イクが放送で呼ばれなかったのだ。 殿が死ぬはずがない、なにかの間違いだ。 殿は言っていた。俺の武勇伝を楽しみにしていると、待っていると! 空が白み始めた頃、城に辿り着いた。 「…と、の」 立ち止まると膝が笑う。息をすると口の中に血の味が広がった。 「殿、どこですか…殿」 階段を登る。 …血の臭いがする。ちがう、これは自分のものだ。 血の臭いなんてしない、するはずがない、するはずがない! 114 名前:仇討ち 2/3 投稿日:2006/11/01(水) 00 49 23 ――やがて臭いの元に辿りつく。 ひときわ大きな窓のある部屋。 白み始めた東の空に、うっすらと照らされたその部屋にあったものは、 「…あ」 どこか穏やかな表情の孫権の…「首」と 「あ…あ」 血の海に浮かぶその「体」。 「――ああああ、あ、あ」 甘寧は首を抱いて声にならぬ慟哭をあげた。 朝日が登る。 甘寧は壁にもたれかかり、孫権の首を膝にしばらく放心していたが、 暖かくなっていく光に照らされているうちに、冷静さを取り戻していった。 …俺が馬鹿だからいけなかったんだ。 大事そうに、孫権の首に手をやる。 守ろうと思ったら、傍にいなきゃいけなかったんだ。周泰みたいに。 これは戦じゃないんだ。城にいても安全じゃなかったんだ。 悔やんでも悔やみきれない。 もう涙は流れなかったが、噛み締めた唇からは血が流れた。 「…殿を、埋めないと」 のろのろと立ち上がる。主君を見殺しにしたうえ、このままにしてはおけない。 甘寧は首を仰々しく抱えて卓に置くと、体を抱えあげようと手をやった。 「…?」 孫権の右手は、爆ぜたかのように無くなっていた。 …もしかして、これで首輪を掴んだのか? 「…そこまで弱っておられたんですね」 不安に耐えられずに自殺したんだろうか。孫権の穏やかな表情が悲しい。 ますます自己嫌悪が酷くなる。 なんで気付かなかったんだろう。なんで一人にしてしまったんだろう。 荀イクがいるから大丈夫だなんて、どうして――― …そうだ、荀イク。 115 名前:仇討ち 3/3 投稿日:2006/11/01(水) 00 50 49 荀イクはどうしていた?殿を止められなかったのか? いや、それより…何故ここに荀イクがいない? 恐ろしくなって出て行ったのか? それにしてもあまりにも薄情ではないか、殿をこのまま、こんな―― 孫権の体を抱えあげた時、甘寧は違和感に気付いた。 出かける前の孫権との会話を思い出す。 『本当に置いていっても大丈夫なんすね?』 『ああ、大丈夫だ。武器もあるし、私は防弾ちょっき、という物も着ている』 『防弾?』 『そうだ。これは銃から身を守れる鎧なのだ』 『へえ、そりゃいいですね』 『ああ、そうだ。だからお前は安心して―』 そう言って、開いた襟元から見せられた頑丈そうな防弾チョッキ。 …ない。 それが、孫権の体に無い。 急速に頭が冷えていく。 孫権が他に持っていた、刀と作り物の銃も探す。 無い。 ――無い!! 「…あいつ、だ」 荀イクだ。荀イクが奪ったんだ。 孫権を殺し、武器と防具を奪い去り、意気揚々とこの城を立ち去ったに違いない!! 「畜生…」 荀イクを連れてきたのは自分だ。なんて馬鹿なんだ。 「殺す」 先ほどよりも強く、唇を噛む。 「殺してやる…荀文若!」 116 名前:仇討ち(すみません入らなかった) 3/3 投稿日:2006/11/01(水) 00 51 53 @甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針、諸葛亮の衣装】 ※孫権を埋葬後、荀イクを探すために移動します。臥竜岡へ。 荀イクは見つけ次第問答無用で殺します。他の人物に対しての戦闘は必要無い限り行いません。 が、気が立っているので友好的でもありません。
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[部分編集] 第5章 裏切り←前章 第5章外伝 仇討ち 次章→第6章 レンティアの双真珠 ページの情報補完は随時お願いします 基本情報 敵情報 アイテム・イベント情報 店 攻略のポイント出撃後のポイント 攻略手順の一例 高難度情報難易度「ハード」以上の場合 [部分編集] 基本情報 勝利条件 - 敗北条件 - 出撃人数 1人 強制出撃 加入キャラ --:---- 敵情報 敵のステータスは、難易度により変化するため掲載していません。 初期配置 骨狼()×5 敵レベル 1 ドロップ ボス ボス会話 アイテム・イベント情報 情報収集 なし 村訪問 北東の村 1000G 宝箱 なし 会話 ▲ページ上部へ 店 武器の詳細はアイテム関連各ページを参照して下さい。 武器屋名前 耐久 値段 攻略のポイント 難易度易しい・普通、戦術点なしでのポイントを載せています。~ 出撃後のポイント 攻略手順の一例 高難度情報 難易度「ハード」以上の場合 ▲ページ上部へ
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武松・兄の仇討ち ステージ構成・・・陽穀県の街中が舞台。西門慶の薬屋の前から酒楼まで 酒楼は店内に入れて、二階に上がれる 武松軍 :★武松(西門慶の薬屋の前から) 西門慶軍:★西門慶-ゴロツキ、(酒楼の二階から開始)●ゴロツキ×4(西門慶の薬屋と酒楼の間から開始) イベント・・・1:西門慶の逃亡開始-開始から一定時間後に、酒楼の二階から退却を始める 勝利条件・・・武松軍:西門慶の撃破 西門慶軍:武松の撃破 敗北条件・・・武松軍:武松の敗走、西門慶の退却成功 西門慶軍:西門慶の死亡
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CMWC NONEL COMPETITION6 仇討ち・flashback 作:已岬佳泰 気がついたら、下腹に木枯らしが吹き込んだような、冷え冷えとした感覚があった。ずっしりとした重量感を伴っている。視界は一面の灰色霞だったが、耳元で警鐘がけたたましく鳴っており、突き上げるような怖れと警戒心にうろたえながら、私は急いで自分の腹を見下ろした。黒い異形のモノがそこにあった。そして、それが何であるかを理解して、慄然とした。 日本刀だった。それが抜き身になって、私の腹部に刺さっていたのだ。 なぜ? まるで悪夢の中に突然放り込まれたような気分だった。現実感に乏しい夢。夢だと思いこみたい。ところが右手に現実の重みがあった。ざらざらした感触もある。 私の右手はもう一本の抜き身の日本刀を握り締めていた。手のひらのざらざら感は日本刀の柄に巻かれた滑り止めの布地らしい。刀は重かった。重さを支えきれず、切っ先は地面を向いていた。 どうやら、腹に刀を突き刺し、右手には刀をぶら下げて、私は突っ立っているらしかった。 どうしてそういう経緯(いきさつ)になったのかは、なぜか思い出せない。ふとした拍子に階段から足を踏みはずしでもしたかのように、私はこんなのっぴきならない状況にはまり込んでしまっていた。 わけがわからなかった。刀が腹に突き立てられた瞬間に、まるで記憶や思考能力がどこかへ弾け飛んでしまったかのようだった。それまでのことがまったく思い出せないのだ。 ひょっとしたら、人間は死ぬ間際には頭が空白になってしまうのだろうか。確かに私は死んだも同然の状態ではある。いや、それとも、私はもう死んでしまったのか。それで現世からあの世へと移ったから、俗世の記憶がなくなったのか。 人の気配を感じた。前方に一人。どうやら背後にもう一人。風が頬を撫でて通り過ぎる。風に合わせて足元が揺れた。草だった。私は膝丈くらいまで伸びた草原にいた。正面に大きな木が見えた。視界が少しずつ晴れてゆくように、周りの景色が目に入ってくる。 異様に目を見開いた男が肩で息をして立っていた。頭に髷はあったが、伸び放題の髭と綻びの見える袴が男の素性を物語っている。素浪人、それに違いなかった。両手をきつく握り締め、両腕は体からわずかに離れたところで凍り付いていた。空の鞘だけが右わき腹に残っていた。とすると、私の腹に刺さっているこの刀は、正面の男のものという事か。どうやら私は男に刺されて、死にかけている? 正面の男はいったい何者なのか、どうしてこの男とこうして向かい合っているのか。疑問ばかりが積み上がった。私はこの男と戦ったのか。これは果し合いか。そして、私は負けたのか。 正面の男をじっと見る。男に対しての感情を探る。憎しみも恨みも湧いてこない。わずかに憐憫のような淡い思いが細波のように動くのを感じるだけだ。 憐憫? 「新三郎(しんざぶろう)さま……」 背後から女の声がした。振りかえると武家風の髪結いをした女が青い顔をしていた。手には懐刀を持ち、澄んだ目は怒りに燃えている。 志野どの……。心がひとりでに女の名前を呟いた。その時、霧をかき分けるようにして、女に関する記憶の切れ端が、からっぽの私の頭の中に降ってきた。 女が駆けていた。着物の裾が乱れるのも構わずに、慌てふためいて駆けていた。通りかかる人にぶつかるように、長屋の狭い路地を駆けていた。志野だった。 「見つかったのかい」 長屋から出てきた年かさの侍が志野に向かって声をかけた。 志野が大きく頷く。 「はい、向こう岸の一軒家に、たしかに! 早く知らせねば」 「そうかい、そいつは良かったねえ。新三郎様もこれでやっと、だね」 年かさの侍は嬉しそうに歯を剥き出しにして笑った。 志野が駆ける。私はそのひたすらな後ろ姿を追いかける。志野の後ろ姿が路地の向こうへと消えるまで、私は追いかけた……。 そういうことか。 私は自分の立場を理解した。 どうやら、これは志野の仇討ちなのだ。仇(かたき)は向こう岸の一軒家にいた男、つまりは私の目の前に仁王立ちしている素浪人。志野が見つけて、仇討ちの果たし合いを申し込んだのだろう。私の役割は志野を助けて、この男を倒す助太刀か。 突然、私に強い思いが蘇る。 志野どのを傷つけてはならぬ……。そのためには、私は死んでも良い。 それは確固たる決意だった。しかし私はまだ死ねわけにはゆかなかった。志野が本懐を遂げるところを見届けたい。なんとしてもその時までは生きて、志野を助けたい。不覚にも腹に刀を受けていたが、そのお陰で相手は丸腰なのだ。 「さあ、志野どの、その懐刀でひと突き……」 しわがれた声で、私は志野を促した。 志野は小さく肯き、懐刀を胸の前にまっすぐに突きだした。 「よせ!」 仇の素浪人が悲鳴のような声をあげた。志野の足音が小走りになって・・・。 軽い衝撃があった。脇腹に冷たいものを感じた。見下ろすと、志野が私の脇腹にしがみつくような姿勢になっていて、志野の両手は懐刀を私の脇腹に突き立てていた。すぐさま腹の辺りから激痛が駆け上がってきて、視界が歪んだ。力が抜け、膝から崩れ落ちるように体が倒れ込む。 なんということだ。 地面に倒れた私は、胃から逆流してくる血の味を舌に感じながら、自分の思い違いを笑いたくなった。なんということだ。 「志野殿の仇(かたき)が素浪人ではなく、私だったなんて」 しかし、とにもかくにも志野は仇討ちを完遂した。志野の仇討ちを見届けたいという私の願いは達成されたのだ。そのことに私は満足だった。人間は死ぬときに満足ならば、それで充分ではないか。いまだにそれまでの記憶が戻っては来ないが、少なくとも今、死の間際で私は幸せだった。 頬に風を感じたその時だった。まるでろうそくの火が吹き消されたかのように、私の意識は遠くなって消えた。 (フラッシュバック) 「よせと言ったではないか!」 悲鳴のような声がした。記憶にある懐かしい声。声を主を求めて私は目を開こうとした。暗闇だった。何も見えなかった。それでも私は張り詰めた空気に緊迫したものを感じていた。獣の吐くような生臭い殺意だった。 「これでいいのです。目をお覚ましください」 低い冷たい声がした。殺意が冷たい声に混じっていた。 「女は無抵抗であったぞ。なにも殺さなくても良いではないか、志野」 新三郎さま……。私は思わず叫び出したかった。 「奪われたものは奪い返す、わたくしはそういう女です」 暗闇に響く志野の声にはきっぱりとした決意があった。 私は暗闇をまさぐり、記憶をたぐり寄せた。 志野を追いかけていた。長屋の狭い路地。志野は行き交う人にぶつかりながら、一心不乱に駆けていた。 「見つかったのかい」 長屋から出てきた年かさの侍が志野に向かって声をかけた。 志野が大きく頷く。 「はい、向こう岸の一軒家に、たしかに! 早く知らせねば」 「そうかい、そいつは良かったねえ。新三郎様もこれでやっと、だね」 侍は嬉しそうに歯を剥き出しにして笑った。 私は追いかけるのやめて、立ちつくした。 見つかってしまったのだ。新三郎が家を捨て、浪人姿にまで身をやつして、私の家に留まってくれたというのに。とうとう、妻女の志野に見つかってしまったのだ。 志野の後ろ姿が路地の向こうへと消えるまで、私は見送りながら、素早く観念した。 志野の新三郎への愛は変わっていない。 家来衆が新三郎を連れ戻しに来る前に、二人で志野に会って、話し合いをしましょうと提案したのは私だった。志野が決して私を許してはくれないことは分かっていた。だから、私が新三郎の大刀を抜き取った。別に用意しておいた刀で自分の腹を刺したのも、目の前で私が死ねば、志野の気が済むだろうと思ったから。それにもし私の屍が見つかっても、刀が違うから新三郎にまで嫌疑は及ばないはず。 「あなた様はこの女と死んでいただかないと困るのです。そうでなければ、私に、いや、我が家に新たな婿養子を迎えられませぬ」 横たわる私の耳に志野の冷たい声が響く。志野の殺意は空気を震わせ、私の気持ちも冷え冷えとなった。しかし、私にはどうすることもできない。たぶん私はもう死んでいる……はず。 でも待てよ。 死んだ後でもこんなにいろいろ考えることができるのだろうか。 私はもう一度、目を開けようと試みた。 その瞼を上から押さえるものがあった。薄ぼんやりとした視界に新三郎らしい白い顔が見える。 「分かった、志野。お前が新しい婿を望んでいるとは思わなかった。そうすると、私が死んだことにすればすべて良いわけだな。それじゃ、これを持って行け。約束しよう、私たちはこの江戸から姿を消す」 何かを切り落とす音がした。空気に混じった殺意が薄まり、小さな足音が遠ざかる。 私は気づいた。遠ざかる足音が確かに聞こえる。風が頬をなでて吹き抜けて行く。それも感じることができた。ということは、私はまだ、死んだわけではなさそうだった。 「しっかりしろ。傷は浅いぞ」 私の体はひょいと抱き上げられた。新三郎の匂いがする。うっすらと目を開けるとザンバラ髪の素浪人が笑っていた。 よかった、やっぱり私はまだ死んではいない。 【了】 . . .
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10 仇討ち 宮殿のいくつかの場所には、ごく一部の人間しか知らない通路が隠されている。それらは地下へと続き、そしてガリアの首都リュティスのさまざまなポイントへとつながっている。つまり何か危機迫る有事が起こった際には、この秘密通路を使って宮殿外へ脱出するというわけだ。 わたしの普段から使用している居室も、書棚を動かし仕掛けを動作させることで、その通路を開くことができる。そこをさらに進むと分かれ道や、用途不明な部屋がいくつもあったりするのだが……もともと、そう何度も利用するものでもないので、わたしはそれほど詳しくは把握していなかった。せいぜい、通路をまっすぐ行きつづけると、リュティス南東にある修道院と練兵場営舎につながっているのを知っているくらいだ。 そんなわたしだが、昨日今日でこの通路はめずらしく何度も通っていた。 冷たく淀んだ、地下へと続く階段。コツコツと歩みを進め、やがて幅広の通路に躍り出た。 わたしはヴォルテールに灯していた、“ライト”の魔法の光を消した。さっきまでの階段と違って、ここからは等間隔で恒久的に光を発する魔法照明が設置されている。それほど強い明かりではないが、動き回るには困ることはない。 錬金で簡易的な舗装がなされている通路を少し行くと、右手側にいくつかのドアが並んで現れた。 それらのドアの先は、完璧な“固定化”がかけられた寝室であったり、魔法的に保存された食糧と水の備蓄庫であったりと、なかなかに親切な造りとなっている。先人の誰がこの通路を作ったのかはわからないが、手間と念の入れようには思わず感心してしまうほどだ。 だけど、わたしの目的はいちばん奥のドア。 そこを開けると、まず飛び込んできたのは頑丈そうな牢獄の光景だった。どうしてこんなものがあるのか、といちいち考えるのは面倒だ。とにかく、そういうものがあるのだから、“使わない手はない”だろう。 わたしは、鉄格子の奥に横たわる影に話しかけた。 「気分はどうだい?」 返ってきたのは無言だった。昨夜ここに放り入れた時は、無様にも命乞いを続けていたのだが、もはや諦めたのかもしれない。 吸血鬼――エルザは、手足を拘束用の魔法の縄で動けないよう完全に縛られている。いくら吸血鬼と言えども、厳重な魔法処理がなされた拘束を抜けるのは不可能だ。それに、ここまで手足の動きを封じられていれば、精霊に働きかける先住魔法も使えなくなる。 「少し話でもしようか」 わたしがそう言うと、エルザはゆっくりと体をこちらへ向け、睨むように目を細めた。 「……早く、殺したらどう?」 「心配しなくても、今日のうちにお前は死ぬさ」 もとより、生かすつもりなどない。 それでも、こうしてわざわざ、この吸血鬼をリュティスまで連れてきたのには理由がある。 「……お前には、親はいるかい?」 ふと思い出し、尋ねる。 サビエラ村の初日の夜、エルザはわたしに言った。両親はメイジに殺されたと。 あれはすべて作り話だったのか、それとも事実だったのか。 しばらく無言が続いたあと、エルザは疲れたように口を開いた。 「言ったでしょ? メイジに殺されたって。そのあとは、ひとりで30年くらいをずっと生きてきた」 「人間を殺して、かい?」 「それ以外に方法がないでしょ?」 エルザは冷笑的に顔を歪めた。 「あなたたちが動物や植物を殺して食べるのと一緒。わたしも人間を殺してその血を飲んできただけ」 「なら、その人間に殺されるのも仕方ないね。お前も、お前の親も」 わたしの吐き捨てた言葉に、エルザはぴくりと反応した。 そして、怒りを含んだ調子で言い返してくる。 「仕方ない? うそつき。何もしなくたって、殺そうとするくせに」 「ふん。だが現に、あんたたちは人間を襲っていたんだ。当然の報いさ」 「違うッ!」 狭い室内に、激昂した叫びが響き渡った。 その幼い外見に似合わず、エルザはまさに鬼のような形相でわたしを睨んでいた。 一瞬、それに少しだけ怯んでしまう。エルザは畳みかけるように、言葉を続けた。 「パパとママは、違った。殺して血を吸うのは、人攫いや盗賊のような悪人たちだけだった。なのに……あなたたちメイジは、そんなパパとママを殺したッ! ただ“吸血鬼だから”という理由でッ! 悪いのはあなたたちなのよッ!」 激昂した叫び声に、気圧される。 エルザの瞳には、憎悪が強く宿っていた。 それはおそらく、すべてのメイジ――人間へと向けられた感情なのだろう。 だけど、 「ねぇ、あんたは、その両親を殺したメイジたちを殺したの?」 自分でも思わぬほど冷たい声で問う。 わたしは形容しがたい、奇妙な感情を持っていた。 それは、問いへの答えに対する期待だったのかもしれない。 だからわたしは、 「…………そ、そいつらは……殺してやりたいけど、もうどこにいるか」 「――――アハハハハハハッ!」 その返答に、腹を抱えて笑った。いや違う。嗤ったのだ。 だって、これだけ傑作なことはない。 両親をメイジに殺されて、それから30年以上、コイツは“平民”を襲って満足していたのだ。それだけの年月と、吸血鬼としての力があれば、“親の仇”を探し出して殺してやることもできたであろうはずなのに。 殺してやりたい? それは嘘だ。本当は“自分が生きたい”のだ。 臆病者で愚か者なこの吸血鬼は、本当にすべきことをしないで、親の死を利用して、自己弁護しながら生きてきたのだ。 恥辱で顔を赤くしたエルザをわたしは鼻で笑い、そして宣告する。 「さあ……死の時間だよ」 コツコツコツ、と誰かが通路を歩む音。それは次第に近づいて聞こえてくる。 部外者、ではない。この頃合いにやって来るよう、わたしが仕向けさせていた。 しばらく続いた足音は、この部屋のドアの前でとまった。 「入ってきなさい」 わたしの言葉で、ゆっくりとドアは開かれた。 そして現れたのは――眼前の光景に驚いている彼女の姿だった。 右手には地下水が握られているが、彼がここまで彼女を案内してきたのだ。 ノエル。かつての名は、ノエル・ド・スラン。 彼女はびくつきながらも室内に足を踏み入れ、牢獄の前までやってきた。 「……これはいったい、どうなっているのですか?」 身体を完全に縛られ、しかも左手首を欠損している子供を見て、ノエルは怪訝そうな顔をしている。 わたしは無言で、懐中から一つのものをノエルに手渡した。 ロケットの付いた、ネックレス。 ノエルの父親――セドリックの、唯一の形見。 「……どうして、これを? もしかして……父とお会いになったのですか!?」 「ああ、会ったさ」 驚いて問うノエルに、わたしは暗く呟いた。 「……けれど――」 わたしは話した。任務地の村でひとりのメイジに出会ったことを。 わたしは教えた。そのメイジの名は、かつてセドリック・ド・スランというものであったことを。 わたしは伝えた。だけど彼は――もうこの世にいないということを。 そう。 「セドリックは死んだ」 ――どうしてですか? 「……殺されたのさ」 ――誰に……ですか? 「吸血鬼に……」 ――それは 「そう」 息を呑むノエルに、わたしは使い魔――ヴォルテールを、地下水と交換するように握らせた。 どうやら主人たるわたし以外には、身体能力や魔力の増加は及ばなくなっているようだが、それでも重量は女子供でも振りまわせるほどであるし、その切れ味は死をもたらすのには充分だ。 牢獄の扉の鍵を開け、ノエルを中へと導く。 「さあ」 囁くように、告げる。 「“親の仇”を討ちなさい」 息を呑む音。 それはノエルのものか、それともエルザのものか、あるいはわたしのものだったのかもしれない。 燃え上がるような炎を宿した剣が、振り上げられる。 張り詰めた時間は、永遠のようだ。 だけど、それはヴォルテールの一振りによって切り裂かれた。 「ひっ……」 と、エルザが小さく悲鳴を上げた。 それだけだ。 本当に、それだけだった。 吸血鬼は――死んでいない。 当たり前だ。 ヴォルテールは、何もない地面に向かって振り下ろされたのだから。 「……どう、して?」 なかば呆然と、わたしは問うた。 外れたのではない。相手は少しも動いていなかったのだから。わざと外したのだ。 じゃあ……どうして? 「すみません、イザベラさま」 うつむいて、ノエルは言った。 「わたしには、できません」 その言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。 だけど、その心中は依然として理解できない。 「そいつは……吸血鬼よ! あなたの父親を殺した、敵。見た目で人を騙して、今まで多くの人間も殺してきたのよ! 気兼ねする必要はないわ!」 声が熱くなる。 なぜ、殺さない? わからない。 「違うんです」 違う? 何が? なぜ? 「だって――」 わからない。 思いつかない。 いや、もしかしたら。 わかりたくなかったのかもしれない。 「復讐のために殺すなんて、悲しいだけじゃないですか……」 知らずのうちに、手が出てしまっていた。 頬を叩かれたノエルは、それでも、わたしを見透かすように見つめている。 何か自分が惨めになったような気がして、ひどく気分が悪かった。 「……消えなさい! この宮殿から、立ち去りなさい!」 そんなことは、本心から思っていなかったはずだ。 それでもあふれ出る感情を抑えきれずに、いつの間にか言葉を出してしまっていた。 ノエルは無言で一礼すると、ヴォルテールをわたしに返して、部屋を出た。 重苦しい。 誰も言葉を発しない。 混ざり合った感情を鎮めることもできない。 わたしは衝動的にヴォルテールを振り上げた。 吸血鬼。 多くの人々を殺した、忌むべき存在。 殺したってかまわない。殺すのが当然だ。殺すべきなのだ。 振り下ろす。 今度は、エルザは動揺すらしなかった。 ただ、何か考えるように目を伏せているだけ。 その首の真上で静止させた剣のことなど、気にも留まらないと言うかのように。 「……くっ」 ……今はもう、ここにいたくない。 わたしは牢獄に鍵を掛けなおすと、逃げるように立ち去った。 ◇ 大切なものは、いつもなくなってから気づくのだ。 最初に気づいたのは、父――ジョゼフがオルレアン公を謀殺した時のこと。それから父は気をおかしくして、娘のわたしでさえ、まともに会話もできなくなってしまった。親子の絆なんて、もはやわたしと父の間には存在しないのだろう。でも、それだけなら……まだマシだったかもしれない。 その時、わたしは、わずかに残っていたもう一つの絆をも、投げ棄ててしまった。 『お前……、誰に口をきいているの?』 あの時のわたしは、バカみたいに思い上がっていた。父の所業についてよく考えもせず、ただ一時の優越感に流されて、無力で罪のない少女を死地へと追いやった。 それでも、アイツは生きて帰ってきた。殺した化け物の巨大な爪を携えて。 短く切られた青い髪、泥と血に汚れた服、そして冷たい雪のような瞳。 不可能だったはずの任務を成し遂げたアイツに、わたしは戦慄と嫉妬と憎悪を湧き上がらせて、そして道を大きく誤った。 「今度はどうするんだい?」 わたしの顔、わたしの記憶、わたしの性質を持った人形は、わたしの心を見透かしたように問うてくる。 この人形の言うことはいちいちムカつく。だって……わたしのことを、いちばんよく理解しているのだから。 「また意地を張って拒絶して、そして自分も貶めるつもり?」 うるさい。黙れ。そんなことは百も承知よ。 気に入らない、気に入らないと子供のように振る舞った結果が、これまでのわたしの醜い姿だったのだから。 でも、ヴォルテールを召喚してからは変わった。 いえ、違うわ。変われたのよ。わたしの意志で。 召喚からまだ日は浅いけれど、それでもわたしは学び、知った。 ひとは変われるんだ、って。 「なら、変わりなさい。つねに前を歩んで、変わりつづけなさい。――そんなふうに、下ばかり向いていないで」 うるさいうるさい! わかったわよ! だったら……進んでやるわよ。歩いてやるわよ。 止まっていたって、何も変わりやしない。 でも歩き続ければ、何かが変わるだろう。 辛かったり、苦しかったりするかもしれないけど……でも、何もしないよりは、何もできないよりは、ずっと辛くないし、ずっと苦しくないだろうから。 だから――行くわ。 先へ。 “さらに先へ” 「ええ、行ってきなさい。イザベラ――」 ◇ 「とある少女の話をしよう」 牢獄の前で座り込んだわたしは、独り言のように呟いた。 ぼうっと天井を見上げていたエルザは、ゆっくりとわたしに視線を向けた。 「彼女の父親は、その時世の国王の、二人目の男子だった。つまるところ、彼女は未来に一国のお姫様にもなり得る身分だった」 本当は、“なるはずだった”と言うべきなのかもしれない。 だって、オルレアン公が選ばれるであろうことは、明々白々だったのだから。 「でも、彼女の日常は唐突に終わりを告げた。国王の一人目の男子、つまり彼女の父親の兄――彼女の伯父が、謀略に及んだから」 「……謀略?」 「彼女の父親は暗殺され、彼女の母親は毒によって心を狂わされたのさ」 しばしの沈黙の後、「……彼女は、どうなったの?」とエルザは問う。 「当然ながら、身分は剥奪された。でも、それだけじゃない。彼女は無理やり“騎士”にされて、そして危険な任務に送り出されるようになった――今もね」 父親を殺されて、彼女はどう思ったのだろう。 母親を狂わされて、彼女はどう感じたのだろう。 そして仇敵にいいように扱われて、彼女はどう考えているのだろう。 もし。 「もしも――彼女が、伯父に復讐を果たした時」 その時、わたしはいったい。 「その“伯父の娘”は、何を想うのかしらね」 そして、どうすればいいのだろうか。 今度は、わたしが父の仇を討つのだろうか。 そうしたら、今度は彼女の仇を討とうと、誰かがわたしのことを狙うようになるのだろうか。 「……ま、今は、そんなことより」 わたしは牢獄の鍵を開けた。 ヴォルテールを引き抜き、右手に提げる。 「お前は、どうしたい? 両親を殺したメイジに復讐をしたいか? それとも――人を殺して、生きつづけたいか?」 「…………わからない」 答えに迷うように、エルザは答える。 「パパとママを殺したメイジたちは憎い。そして死にたくないって思いもある。だけど――どうすればいいの? どうすればよかったの? ……もう死ぬっていうのに、意味のない問いかもしれないけれど」 それはきっと、わたしにも完璧な答えはわからない。 だけど、吸血鬼としての生き方にも、もっと良い方法はあったはずだ。 「――条件次第で、お前を生かしてやってもいい」 エルザの目が大きく見開かれた。 訝しげな表情が、その真意を求める。 「わたしは、たくさんの人間を殺したのに? そんな吸血鬼を生かすって言うの?」 「勘違いしないで。そんな簡単に、野放しにするわけでもないわ。そう……人間を傷つけずに、人間のために、働いてもらうことになるわ」 「…………わたしが嘘をついて逃げ出そうとしたら、どうするの?」 「好きにすればいいさ」 もし本当にそんな思惑を持っていたのなら、それは逆に“地獄の苦しみ”になるだろう。 自分の意に反して、“制約”は身体に絶対服従を求めるのだから。 だから、この質問は、字義どおりの肯定か否定だけで全てが決まる。 わたしは左手に地下水を持ちながら、エルザに問いかけた。 「――人間のために、その身と魂を捧げる覚悟はあるか」 ◇ 突然だが、わたしは街としてのリュティスについて、それほど詳しく知っていない。どこにどういった施設があるか、ということなら為政者の娘としてそれなりの知識は持っているのだが、もっと俗なこと――たとえば酒場の場所などについては、さっぱりわからないのだ。 だから酒場の名前だけを頼りに、“同行者”と半日近くもかかって(新鮮味のある街の店々に、道草を食っていたわけではない、断じて)、わたしはようやく目的の酒場を見つけ出すことができた。 “同行者”は店の外で用件が終わるのを待つことになり、わたしは独りでその中へ入ることになった。 酒と料理の匂いが混ざり合い、つんと鼻をつく。 騒ぐ客たちに呆れながらも、わたしは店内を見回した。 ――いた。 料理を運んでいる使用人の顔を見定めると、わたしは厨房の入り口近くのカウンター席に腰掛けた。 「ご注文はいかがいたしましょうか?」 カウンターの向こうから、人の良さそうな初老の男性が聞いてきた。 注文といっても、もともとここへは食事や酒のために来たのではない。とはいえ、席を取りながら金を落とさないというのも卑しいので、財布から硬貨を取り出して男性に渡す。 「悪いが、注文しに来たんじゃない。それで勘弁してくれ」 「え、いやこれは……何も出さないで1エキューも頂くなんて……」 「気にするな。それよりも……っと」 先程の使用人が厨房へ戻ろうと、こちらのほうへ歩いてきていた。 手提げ鞄をから一枚の封筒を取り出し、目を閉じる。 彼女が隣を通り過ぎようとしたところで、わたしはその名前を呼んだ。 「――ノエル」 びくりと慌てたように、彼女は振り向いた。 髪をブラウンに染色していたせいで今まで気づかなかったようだが、呼びかけられた声のおかげで、すぐにわたしのことはわかったようだ。 「イザベラ、さま。どうして……」 「知っているやつに聞いたのさ。ヴァレリー、って娘だったかしら」 「……ご用件は、なんでしょうか」 恐る恐る、といったふうに尋ねるノエル。 まあ、その反応ももっともだろう。出ていけと言った主人の王女が、こんな場所にまでやって来たのだから。 わたしはにやりと笑って言った。 「あなたの今の仕事を、できなくさせようと思ってね」 「――――」 息を呑むノエルに、わたしは封筒の中身を取り出して手渡した。 「――――え?」 途端に、今までの険しかった表情がぽかんと崩れた。 わたしは笑いをかみ殺しながら、彼女に話す。 「根回しに少し時間がかかったけど、なんとか手筈は整えられたわ」 「ノエル・ダルトーワ……この名前は……?」 「アルトーワ伯に協力してもらったのさ。ま、名義としてだけだから、それほど気にする必要はないわ」 「でも、この時期なら、もう」 「たった数週間足らずの遅れでしょ? 今からでも充分、やっていける」 「……本当に、よろしいのですか?」 「当たり前よ。そのために、ここまで来たんだから。それで……返事は?」 手紙の文面をしばらくじっと見つめていたノエルは、静かに目を閉じた。 その内容を咀嚼するように、大きく深呼吸する。 そして開かれた目は、かすかに潤みを帯び、言葉を紡ぐ口元は、柔らかく笑っていた。 「こんなにしていただいて、無下になんてできませんもの」 「――喜んで、お引き受けします」 そんなノエルにつられて。 わたしもほほえんで祝辞を述べた。 「リュティス魔法学院への入学おめでとう、ノエル――」 ◇ 酒場を出たわたしは、小さく伸びをした。 ここのところ、いろんなことがあって、少しくたびれた。 といっても、まだまだ休むこともできないが。ノエルのことに関する後始末も残っているし、これからのケアも必要だ。 それと、北花壇騎士団の仕事も。……いっそのこと、面倒だから全部、あのスキルニルに押しつけようかしら。 などと思いながら、店の横の細い路地に小さな影を見つけたわたしは、声をかけた。 「用事は終わった」 わたしに気づいた影は、どこか重苦しい様子で歩み寄ってきた。 「……あの子、は?」 「了承してくれたよ。これで少しは――セドリックの想いも、果たせるかもしれない」 「…………そう」 うつむいた彼女は、自嘲するように呟く。 「やっぱり……顔を合わせるのが怖かった。わたしは……どうすればいいのかな、あの子に……」 「……いつか、会いにいけばいい。そこで、話せばいい。自分のこと、自分の思い、自分の意志を」 「……………………うん」 弱々しく頷く彼女。 なんとなく、しんみりとした空気を振り払うように。 わたしはくるりと背を向けた。 「帰ったら、お前にも手伝ってもらうことが山ほどある」 「…………うん」 「ちゃんと働かなかったら、“ごはん”も抜きにするから覚悟しなさい」 「……うん」 「一段落したら、任務にだって行くことになるんだから、もっとしっかりしなさいよ」 「うん」 「それじゃあ、行こうか――エルザ」 NEXT