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京太郎「こんなにたくさん女の子がいるんだ、俺にも彼女くらい出来るはず…」 京太郎「よし!じゃあハギヨシさんに告白しよう!」 京太郎「って男じゃねえか!ダメだろ!」 京太郎「まあ安価は絶対だしな…どうせ告白しても成功しないだろ…」 京太郎「それじゃあ行ってくるか…」 ハギヨシ「それで話というのは?」 京太郎「いや実はですね…」 京太郎「前からあなたの事が好きでした。付き合ってください。」 ハギヨシ「!?」 京太郎(やべー…言っちまったよ…) ハギヨシ「それは…本気で言ってるのですか…?」 京太郎「はい?」 ハギヨシ「本気で言っているのかと聞いているんです。」 京太郎「え、ええ…もちろんです。」 ハギヨシ「そうですか…分かりました…」 京太郎(怒らせちゃったかな…) ハギヨシ「実は私も貴方の事が好きでした。喜んでお付き合いさせて頂きます。」 京太郎「えっ」 ハギヨシ「それでは服をお脱ぎ下さいませ…」 京太郎「えっ?いやっ、ちょっ…やめ…」 大沼「何をしとるんじゃ!お前ら!」 京太郎「あなたは確か…大沼プロ!」 ハギヨシ「ちっ…邪魔が入ったか…」 大沼「まったく…近頃の若い奴は…ワシも一緒にやらせんか!」ポロンッ 京太郎「」 大沼「ほれ、さっさと尻を出さんか。」 京太郎「ちょっ…やめっ…」 ハギヨシ「お待ち下さい。私の方が先です。」 大沼「なんじゃと!老人に先に譲らんか!」 ハギヨシ「いいえ。こればかりは譲る訳にはいきません。」 京太郎(何なんだこいつら…) 大沼「さっさと譲らんか!この若造が!」 ハギヨシ「いいえ。こればかりは絶対に譲れません。」 京太郎「二人とも落ち着いて…」 大沼 ハギヨシ「うるせえ!黙ってろ!」 京太郎「(´・ω・ `) 」 ハギヨシ「分かりました。ならばどちらが京太郎様を満足させられるか勝負しましょう。」 大沼「ふん…小癪な…まあ良いだろう…」 大沼「それでルールは?」 ハギヨシ「お互いに挿れ合って先にイった方が負けという事でどうでしょうか。」 大沼「良いだろう…ワシに勝負を挑んだ事を後悔させてくれるわ!」 京太郎(今のうちに逃げよう…) 京太郎「やっと逃げてきた…まさか裸のまま追ってくるとは…」 京太郎「偶然警察の人にすれ違わなかったらヤバかったな…」 照「君は確か咲の高校の…」 京太郎「そういうあなたはチャンピオンの宮永照じゃないですか。こんなところで何を?」 照「それはこちらのセリフ。きみこそ何をしているの。」 京太郎「えーとですね…ちょっと危ない奴らから逃げて来たというか…そういうあなたは何を?」 照「「すがきょうたろう」とかいう咲にくっつく虫がいるそうなので始末しにきた。」 京太郎「えっ」 照「ところでまだ君の名前を聞いていなかったけど…」 照「君…名前は?」 京太郎「え…えーと赤木しげるです!」 照「アカギ…?どこかで聞いた事がある名前…」 京太郎「いやちょっと色々とやってるんですよ…はは…」 照「まあすがきょうたろうじゃないならいいよ。」 ハギヨシ「京太郎様…私達から逃げてこんなところで何を…?」 京太郎「お前…どうしてここに…」 照「おい…京太郎とはどういう事…?」 ハギヨシ「フフフ…今度は逃がしませんよ…」 京太郎(色々やべえ!こうなったら狂言を吐いて場を混乱させるしかない!) 京太郎「こいつが須賀京太郎です!錯乱して俺と中身が入れ替わったと思い込んでいるんです!」 ハギヨシ「なっ…」 照「そうなの?」 ハギヨシ「いやそんな訳無いでしょ!」 京太郎「やっぱコイツ錯乱してますよ!咲さんに手を出す前にやっちゃって下さい!」 照「よし…君たちホモセックスしよう…」 京太郎「うんうん!…って何だってええええええ!?」 京太郎「何でそんな事しなきゃいけないんですか!普通に始末すれば良いでしょ!」 照「いやだってコイツをホモにすれば咲に手を出さなくなるし….それに咲も京太郎にホモになって欲しいって言ってたからな。」 京太郎(咲…お前…) 照「さあ始めよう…逃げようとしたら…わかるよね…?」ギュルルルルル 京太郎「うう…」 ハギヨシ「( ´ ▽ ` )」 照「さあ早く」 ハギヨシ「wktk」 京太郎(もう終わりか…さようなら俺の童貞と処女…) 大沼「やめんかお前ら!」 京ハギ照「!?」. 京太郎(げええええ!よりによって今一番来て欲しくない奴が!) 京太郎(ん?待てよ…これを利用して…!) 京太郎「あのチャンピオン…ちょっといいですか?」 照「何…?」 京太郎「実は大沼プロはホモなんです。なので大沼プロとヤらせた方が色々と良いかと。」 照「そうなの…?ならそうしようかな…」 京太郎(よっしゃああああああ!) 照「さあ…早く始めて…」 ハギ 大沼「いやいやいや!」 照「…」ギュルルルルルル ハギ 大沼「はいいいい!」 京太郎(今のうちに逃げる!) 京太郎「やっと家に着いた…もう疲れた…」 京太郎(よく考えたら彼女を作ろうとしたらこうなったんだよな…もう彼女なんかこりごりだ…) 咲「あ!京ちゃんどこいってたの!」 京太郎「おう咲…ちょっと色々とな…」 咲「もう!心配させないでよ!すごく心配してたんだからね!」 京太郎「ごめん…」 咲「本当に悪いと思ってる…?」 京太郎「ああ…当然だろ。」 咲「ならキスして。」 京太郎「えええ?ドユコト?」 咲「本気で悪いと思ってるんでしょ?なら謝るかわりにキスして。ね…?」 京太郎(えーとつまりこれは告白ですか!?咲が!?俺に!?) 咲「早くしてよ…誰か来ちゃう…」 京太郎(こいつこんなに可愛かったっけ…?くそっ咲の癖に!もうやっちまえ!) チュッ 咲「んっ……はあっ」 京太郎(やっちまった…) 京太郎「…咲…何でこんな事を…」 咲「何でって?決まってるでしょ…京ちゃんが好きだからだよ。」 京太郎「そうか…………咲」 咲「何?京ちゃん?」 京太郎「好きだ。付き合ってくれ。」 カン
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1371129227/ はやり「たっだいまー!!」 京太郎「義姉さんおかえ、って酒臭っっ!!」 はやり「女の子に臭いなんて言っちゃ駄目だぞ♪」 京太郎「ハイハイ」 はやり「う゛っ……吐きそう……」ガシッ 京太郎「え、いや、ちょっと、なんで俺にしがみつく!?」 はやり「あ、無理……。もう無理……」 京太郎「……ひどい目に遭った」 はやり「許してニャン♪」 京太郎「流石に(28)でそれはない」 はやり「ひっど~い!!お義姉ちゃんにそんなこと言うなんて京太郎君もとうとう反抗期かな?」 京太郎「(この義姉キツい)」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 怜「なぁ、きょーたろー。冷蔵庫のジュース取ってきてくれへんか?」 京太郎「姉ちゃん、それくらい自分で取ってこいよ」 怜「せやかて私病弱やからな、動くのしんどいねん」 京太郎「またそんなこと言って、病弱はアピールやめろって竜華姉さんに怒られるぞ」 怜「あーあ、きょーたろーはお姉ちゃんの言うことは聞かへんのに竜華の言うことは聞くんやなー、やっぱりおもちが大きいからなー」 京太郎「べ、別にそんなんじゃねえよ!?」 怜「弟分のきょーたろーが自分のことそんな目ぇで見とるって知ったら竜華もショックやろうなー、かわいそうになー」 京太郎「いやいやいや、何言ってるんだよ姉ちゃん!」 怜「はぁ、喉乾いたなぁ。冷たいジュースでも飲んだらこの事は私の胸の内に閉まっておくんやけどなぁ」 京太郎「ぐっ・・・、何なりとお申し付けください。お姉さま」 怜「ふふっ、きょーたろーのそういうとこ可愛くて私は好きやで」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 福路美穂子の場合 京太郎「ねえさん、洗濯は終わらせたよ」 美穂子「ありがとう京太郎くん、こっちもお掃除が終わりますよ」 京太郎「まったく、そんなこと俺がやっとくのに」 美穂子「ふふっ、ありがとう、でも、お掃除は好きだから、それよりも京太郎くん、こっちに来てくれる?」 京太郎「なんだよねえさん」 美穂子「ふふっ、お手伝いしてくれてありがとう」ナデナデ 京太郎「なっ!やめてくれよねえさん!」 美穂子「もう……照れることないのに……」 京太郎「そ、それじゃ夕飯の買い物行ってくるから!」 美穂子「おねがいします、気をつけていってらっしゃい」 京太郎「おうねえさん!行ってくる!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 天江衣の場合 衣「きょーたろーきょーたろー遊ぶぞー」 京太郎「ん?なんだ?衣お姉ちゃん」 衣「……!今なんと言った……!」 京太郎「へ?衣お姉ちゃんって……」 衣「……もう一回」 京太郎「へ?」 衣「もう一回だ!」 京太郎「こ、衣お姉ちゃん!」 衣「もう一回!」 京太郎「衣お姉ちゃん!」 衣「ふ、ふふふ、そうだ!衣はお姉ちゃんだからな!特別にっ!特別に京太郎のワガママを聞いてあげよう!何かあるか?」 京太郎「いや、特にないけど……」 衣「………………ふんだ」 京太郎(めんどくせぇ) 衣「キョータロー!!」 京太郎「なんすか」 衣「また衣に確認せずに朝食を用意してー!」 京太郎「あれ? 姉ちゃんって朝はご飯派じゃ無かったっけ」 衣「とっても美味だったぞ!」 京太郎「そりゃどうも」 衣「……って、そうじゃなくて!」 衣「衣はお前の姉なのだから、家事のことは衣に任せなさい!」 衣「姉の尊厳を見せられないではないか!」 京太郎「はぁ」 衣「それと、キョータロー!」 京太郎「なんすか」 衣「朝の抱っこ!」スッ 京太郎「姉の尊厳何処まるでないっすよ、姉ちゃん」ギュッ 衣「うるさい!」ギュー ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 朝 京太郎「姉さん早く起きて!今日は大事な試合があるんだろ!」 健夜「んー、京くんおはよー・・・ってもうこんな時間!? 何でもっと早く起こしてくれなかったの!?」 京太郎「何回も起こしたけど姉さんが起きなかったんだろ!」 昼 健夜「うー疲れたー、対局は全然気にならないけどスーツで人前に出るって疲れるよー」 京太郎「ちょっ、姉さん着替えたらスーツは掛けておいてくれよ。シワになっちゃうだろ」 健夜「京くん掛けといてー」 京太郎「家に帰ってきたらすぐにジャージに着替えてゴロゴロし始めるなんて我が姉ながら…」 夜 健夜「京くん晩御飯まだ?」 京太郎「今作ってるからちょっとまっててー」 健夜「私、京くんのお嫁さんになる。京くんがいないと生きていけない」 恒子「!?」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 照「京ちゃんが姉が欲しいと聞いて」 菫「確かにお前は姉キャラだが……」 京太郎「おもちをお持ちの姉が欲しいなぁっていう話なんですけどね」 照「!?」 京太郎「弘世先輩みたいなお姉さんなら大歓迎ですよ」 照・菫「「!?」」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「姉さん早く起きないと遅刻すっぞー」 布団「…………」 京太郎「また頭から毛布被って……おい姉さん!」 バサッ 布団(丸めた毛布) 京太郎「いない!?」 戒能「フリーズ、京太郎」ムギュ 京太郎「……姉さん、当たってます」 戒能「お馴染みのアレは言いませんよ。言うまでもなくわざとですし」 京太郎「スキンシップも良いけど、早く準備しないと時間が……」 戒能「ドントスピーク、ドントムーヴ」 京太郎「……」 戒能「この程度のトラップに引っ掛かるとはまだまだですね。ここが戦場なら三回は死んでますよ」 京太郎(なにいってだこの姉) 戒能「む……にしても、また背中が広くなりましたね。それに以前より筋肉質になった気もするし汗の匂いも」スーハー 京太郎「嗅ぐな擦るな頭でグリグリすんな!毎朝やってんだから昨日今日でそんなに変わる訳ないだろ!」 戒能「あ」 京太郎「え?」 戒能「喋りましたね?」 京太郎「いや、そんな理不尽な」 戒能「喋りましたね?」 京太郎「……はい」 戒能「ペナルティ、ですね」ニッコリ 数十分後、やたら紅潮した顔の二人の男女が駅まで走っていったとさ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 淡「さぁキョータロー!お姉ちゃんって呼んで!」 京太郎「いや、お前はどう考えても妹だろ」 淡「えー、呼ぶくらいいいじゃん、お姉ちゃんって呼んでよー」 京太郎「はいはい、淡お姉ちゃん」 淡「ムフー、お姉ちゃん…お姉ちゃん…いい響きだなぁ~ よしキョータロージュース買ってこい!お姉ちゃんの命令は絶対フクジュー!」 京太郎「弟はパシリじゃねえよ!?」 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洋榎「麗しのお姉様に向かってなんちゅう口聞いとるんやこの阿呆は…」オヨヨ 京太郎「阿呆はどっちだっつーの。この前末原先輩に半泣きで勉強教えて貰ってたこと母さんにバラすぞ?」 洋榎「はあっ!?なんで京太郎がんなこと知っとるんよ!」 京太郎「へっ。姉ちゃん達の情報は良い意味でも悪い意味でもすぐに広まるんだよ」 京太郎「たまには何の非もないのに笑われる俺の身になってみやがれ!」 洋榎「京太郎、あんた………」 洋榎「めっちゃおいしいやんそのキャラ!」b グッ 京太郎「いい加減張り倒すぞ」 洋榎「アレやで?自分分かってんの?」 洋榎「身体張らずに笑いとれるとか最高過ぎるやん」 京太郎「……その芸人体質が一番俺を困らせてんだよ」 洋榎「なら京太郎もこっち側来るか?」 京太郎「断固拒否する!洋榎姉ちゃんの側って事故ってるとこしか見たことねぇよ」 洋榎「まあまあ。人間誰しも失敗はするやろ?」 京太郎「姉ちゃんの場合は失敗し過ぎてるけどな」 洋榎「その失敗を笑いに変える!そしたら失敗が無かったことになるんやで?最高やんか!」 京太郎「姉ちゃんの中限定でな」 洋榎「ちょっ…合間合間にツッコミ入れるとか欲しがりやな京太郎は」ニヤニヤ 京太郎「供給過多なんだよ!ちょっとくらい需要に合わせてくれ!」 洋榎「嫌や。他人にボケのペース握られるとかしょーもないやん」 京太郎「絹恵姉ちゃん早く帰って来てくれー!!」 洋榎「そんでさ、さっきから気になっとってんけどさ」 京太郎「んぁ?何?」 洋榎「うわっ、あからさま…。ってそうやなくて」 洋榎「なんか焦げ臭ない?」 京太郎「…………そう言われてみれば」クンクン 京太郎「あ、から揚げ火にかけっぱだった!」 洋榎「なんやてぇ!!すぐ作りなおせはよぉ!!!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 淡「ひーまー」ゴロゴロ 京太郎「麻雀やろうぜ! 麻雀!」 衣「ふむ、いいだろう。」 DIEジェスト 衣「ロン、海底役役混一で18000。」 淡「ローン! ダブル立直表表裏裏の12000!」 衣「ロン、門断平ドラドラ、8000。」 京太郎「かーてーなーいー!」 衣「愚弟は弱いな。」 淡「うん、ぐてーは弱い!」 京太郎「強くなりたいです、御姉様方……」 淡「……! キョータローいい方法があるよ!」 京太郎「なに何!?」 淡「まず淡ちゃんがキョータローの上に座ります。」ドスン 京太郎「うぇ?」 淡「次におねえちゃんを私の上に座らせます。」 衣「ふむ。」ストン 淡「これで最強の組み合わせだよ!」 京太郎「どうやって打つの?」 淡「私が自摸ってー。」 衣「衣が切ればいいのだろう?」 京太郎「俺何もしてないじゃん!」 淡「細かいこと気にしたらハゲるよー。」 京太郎「あとさ、気になったんだけど……」 衣「何だ?」 京太郎「俺達誰と打つの?」 衣・淡「「あ」」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 健夜「京太郎く~んお酒切れた~♪」プラプラ 咏「きょーたろー、おつまみなくなったんじゃねぇの? 知らんけどー。」フリフリ 良子「きょうたろう、こっちもビールプリーズ。」カンカン 京太郎「あ~! もう! 少しは自分で動け! このぐうたら姉ども!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 成香「…………ひぅ!」ビクッ 京太郎「……あのー……姉さん?」 成香「な、何ですか?」 京太郎「……なんでホラー映画なんて見てんの?前からそういうの苦手だったよね?」 成香「麻雀部のお友達から『絶対に面白いから見た方が良いよ!』と言われて貸してもらったので……」 京太郎「なにも苦手な物を無理して見なくても……」 成香「京くん……相手の子も好意から貸してくれたんですから」 京太郎(涙目の姉さんが見たいだけだと思う) 成香「それに……こんなの作り物なんですよ?いつまでも子供みたいに怖がらなくとも……」 テレビ<モルスァ! 成香「ひぃ!」ビビクン 京太郎「……」ナデナデ 成香「ふわぁ……!ちょっと京くん!姉の頭を子供にするみたいに撫でるなんて」 テレビ<ブルスコファ! 成香「あぅ!」 京太郎(……見終わるまで一緒にいてあげよう) ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「小蒔姉さんちゃんと布団で寝なきゃ風邪ひくぞ」 小蒔「ムニャムニャ・・・京君はやさしいです・・・・」 京太郎「巴姉さん掃除手伝います。」 巴「いつも助かります。初っちゃんにも見習ってほしいですね」 京太郎「春姉ぇあんまり食ってると太るぞ」 春「いくら食べても太らない・・・・。それが自慢・・・」ニコッ 京太郎「初っちゃん、もう子供じゃねーんだから服ぐらいちゃんと着ろよ。」 初美「なんで私だけ姉さんって呼んでくれないんですかー!」 京太郎「霞母さ・・・・姉さん!」 霞「あらあら・・・・」ニコニコ(神を降ろしながら) 京太郎「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 村吉「あ、須賀君」 京太郎「どうも、村吉さん。毎度御迷惑かけて申し訳ないです」 村吉「いえいえ……こちらこそ未成年をこんな時間に呼びつけてるからお互い様ね」 京太郎「……あはは。それで、姉は……?」 村吉「ええ……いつもと同じよ」 野依「遅い!」=З=З=З 京太郎「遅いじゃないよもう……どんだけ飲んだんだ?」 野依「ちゃんぽん!」=З=З=З 京太郎「数を聞いてるんだよ……ほら、帰るぞ」 野依「まだ飲み足りない!」=З=З=З 京太郎「二日酔いで地獄見るのは自分なんだからな」 野依「大丈夫!」ムフー 京太郎「あー、もう……」 グイ 野依「!?」 京太郎「帰ろうよ、姉さん」(そっと耳うち) 野依「…………ん」 京太郎「ほれ、おぶさって。んじゃ、連れて帰りますんで……御迷惑おかけしました」 野依「ました!」=З=З=З 京太郎「あんたが言うな」 村吉「末恐ろしいわね……」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ コンコン 京太郎「シロ姉ー、朝だぞー」 京太郎「今日は日直なんだろ?」 京太郎「もうメシ出来てるから、早く降りてきなよ」 シロ「ん……」 ダルー シロ「……」 シロ「……ぐぅ」 京太郎「二度寝するな!」 バターン シロ「おはよ……京太郎……」 京太郎「ん、おはよ、シロ姉」 シロ「着替えさせて……」 京太郎「羞恥心とか無いの!?」 シロ「……」 ジー 京太郎「……し、下までは運ぶからさ」 シロ(甘いなぁ……) シロ「いただきます……」 京太郎「はい、いただきます」 シロ「……うん」 シロ「今日も美味しい……」 京太郎「お、ホントに?サンキュー、シロ姉」 京太郎「でも、俺なんてまだまだだって」 京太郎「この間食べさせてもらった塞さんのお弁当、美味しかったなぁ……」 シロ「……」 京太郎「どうやったらあの煮物の味が――」 シロ「京太郎」 シロ「私には、京太郎の作るご飯が一番だから……」 京太郎「……そっか」 シロ「ん……」 京太郎「忘れ物ない?」 シロ「……うん」 京太郎「んじゃ行きますかー」 シロ「おんぶ……」 京太郎「はいはい、途中までだからなー」 ヨイショ シロ「……」 シロ「京太郎」 京太郎「んー?」 シロ「ずっとこうしてられたらいいね……」 京太郎「ははっ、そうだなー」 京太郎「まぁ、そんなこと言っても途中で下ろすのは変わりないんだけど」 シロ「……だる」 京太郎「まったく、お見通しだっての」 ハハ シロ(別に、嘘じゃないけどね……) ギュ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「あのさ、俺の学ラン着るのもう止めてくれない?」 セーラ「なんで?これごっつい着心地ええねんで」 京太郎「いやいや。でも実弟が着てたのを着るのは抵抗あるだろ普通」 セーラ「全っ然!これっぽっちも無いわ」キッパリ 京太郎「なんでそこまで断言出来るかな……」 セーラ「ええやん別に。てかそんなん一々気にしとったら禿げるで?」 京太郎「姉ちゃんが気にしなさ過ぎなんだってば」 セーラ「気にするゆーても千里山は女子高やん。バレへんバレへん」 京太郎「俺にだって女子の友達くらい居るんだけど。で、千里山に進学した奴も居るんだぜ?」 セーラ「そうなん?」 京太郎「だからさ、わかるよな?」 セーラ「ごめん分からんわ」シレッ 京太郎「姉ちゃぁぁんんん??!!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 和「ところで京太郎、最近咲さんとはどうなんですか?」 京太郎「……なんのことだよ」 和「ですから、『咲さんと愚弟を結婚させて咲さんにお義姉ちゃんと呼んでもらう計画』の進捗具合を聞いているんです」 京太郎「その計画名キてるから変えたほうがいいぞ、姉貴」 京太郎「どうって言われてもなぁ、普通だよ、普通」 和「……まったく、相変わらず見た目はチャラいのに奥手ですね、京太郎は」 ハァ 京太郎「気にしてるんだからやめろよ!地毛だよ!知ってるだろ!」 和「……仕方ありません、明日、女の子のエスコートの仕方を教えてあげます」 京太郎「は?」 和「駅前に……そうですね、10時に待ち合わせしましょう」 京太郎「え、ちょ……一緒に出れば良いじゃん……」 和「遅れたら来月のお小遣いは無しですからね」 京太郎「誠心誠意エスコートさせていただきます!」 和「はい、よろしい」 ニッコリ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ ……て…………きて 塞「早く起きる!」ゴスン 京太郎「……うっ!」 塞「シロじゃないんだから、休日だからって昼まで寝てないの」 京太郎「ひどい……あんまりだぁ……」 塞「はいはい、うだうだ言ってないで、さっさと顔洗ってくる」 京太郎「へーい……」 塞「顔洗ってきた?よし、それじゃ」 「「いただきます」」 京太郎「あ、この煮物うまい。柔軟剤使った?」 塞「それは洗濯物だよ!でも、わかった?お母さんに教えてもらったんだ」 京太郎「ほー」 塞「ほーって……あんた見た目といい反応といい、本当にシロに似てきてない?」 京太郎「姉ちゃん、言って良い事と悪い事があると思うんだ」 塞「……うん、なんかごめん」 京太郎「ははは……食い終わったら掃除でもしようか」 塞「うん、休日なんだから隅々までやろうか」 塞「……よし、掃除終わりっ」 京太郎「姉ちゃーん、こっちも風呂掃除終わった」 塞「ありがと。じゃあ、お茶でも淹れよっか」 京太郎「午前中で家事もほとんど終わったし、午後はどうする?」 塞「んー……ちょうどセールがあるんだよねぇ……」 京太郎「うげ……荷物持ちですか……」 塞「そう言わないの、あんたの服も選んであげるから。――っと、その前に」 ポフン 塞「充電♪充電♪」 京太郎「最近よくやるよな、胡桃先輩のそれ」 塞「やってみると意外と良いのよこれ。胡桃がハマるのも納得だわ」 京太郎「俺は吸いとられてるんですけどねー……ところで、姉ちゃん」 塞「んー?何?」 京太郎「姉ちゃんの尻柔らかいけど、柔軟剤使った?」 塞「使ってないよ!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「咏義姉さん、おかえりんこ」 咏「ただいまん……あ///」 咏「ま、まったく///お義姉ちゃんに何を言わせる気なんだか///」 京太郎「ゴメンゴメン」 ガチャ えり「二人とも玄関で何をしているのですか?」 京太郎「あ、えり義姉さん。おかえりんこ」 えり「はいはい。ただいまんこただいまんこ」 京太郎「お、おう」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 一「じゃあ、行ってくるねー京くん」 ヒラヒラ 京太郎「待て」 ガシッ 一「うわっ!なに今から外に行くんだけど。あっもしかして京くん、ボクに甘えたい?」 京太郎「違うわ!姉ちゃん外に出るなら服を着ろ服を!」 一「服?それならちゃんと着てるじゃないか」 京太郎「着てるけど、全然着てないからね。見え見えだから」 一「そうかなーボクにはこれが普通なんだけど」 京太郎「よく痴女扱いされないな姉ちゃん。もう隣に歩けねーよ」 一(……うん?それじゃちゃんとした物を着れば京くんが隣に歩いてくれるのか) 一「よし」 ガシャ 京太郎「うわっ!姉ちゃんなんで俺に手錠をかけるんだよ」 一「そこまでいうなら、京くんはボクの服を選ぶことお姉ちゃん命令だからネ!」 京太郎「ヤバいから俺の社会的地位がヤバいから」 一「ほら行くよ!京くん」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 玄「第一○六回松実家おもちドラフトを開始いたします」 京太郎「ではまず俺から」 ──京太郎第一指名『岩戸霞』── 玄「やはりそう来ましたか……」 京太郎「……それで義姉さんの第一指名は?」 ──玄第一指名『岩戸霞』── 京太郎「確実に取りに来たか」 玄「当然です。岩戸さんの長打力は無視できないのです」 宥「(……何が楽しいんだろう)」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 咲「京ちゃん、一緒に服買いに行こー」 京太郎「……なあ姉さん、たまには他の誰かと服買いに行ったらどうだ?」 咲「えっ?もしかして、私と買い物行くの嫌になっちゃったの……」 京太郎「いや、俺と姉さんが服買いに行くと、姉さんの服まで男物っぽくなるから……」 咲「そんなの、私と京ちゃんで着回しすること考えると当たり前じゃない?」 京太郎「今じゃ背丈違うからあんまり着回ししてないだろ」 京太郎「やっぱり女の子がパーカーやジーンズばっかり着てるのはどうかと思う訳よ。身内としては」 咲「えー、動きやすいし、あったかいし、私は気にしてないよ?」 京太郎「少しは気にしろよ!それに和達と一緒の方がもっとおしゃれなの買えるんじゃないか?」 咲「うーん前に一回、3人で服買いに行ったんだけどね……」 咲「原村さんは高そうなフリフリのモコモコ、優希ちゃんは変わった柄のプリントTシャツ買ってて……」 京太郎(うわー……) 咲「なんか私には遠い世界のことだなーって感じだったの」 京太郎「で、でもやっぱり男と一緒じゃ買いにくいものあるだろっ?水着とかほら…下…着…とかさ」 咲「(…下着?)水着なら去年も一緒に買いに行ったじゃない。それに一番最初に姉の水着姿見られるんだから役得でしょ?」 京太郎「で、でも……」 咲「それに私一人で行ったら迷子になるし、荷物持ちも欲しいし、あと京ちゃんの服選びも楽しいし!」 京太郎「……」 咲「ねっ、だから一緒に買い物行こっ!」 京太郎「……んだよ」 咲「えっ?何?」 京太郎「姉さんと一緒だと俺がパンツ買いにくいんだよ!!!」 咲「!!?」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 怜「竜華ー。膝枕してーな」 京太郎「姉さん。ちょっといい?」 竜華「ん、なんや京太郎。ごめんな、怜。膝枕はまた後でな」 怜「……これで何度目や、後回しにされるの」 怜「京太郎。竜華の膝枕をかけて勝負や」 京太郎「なんですか。いきなり」 怜「京太郎が入部してから、竜華が膝枕してくれる回数が減ったんや」 怜「私が勝ったら、回数を元に戻す。京太郎が勝ったら、竜華の膝枕を1回させてやるわ。」 京太郎「俺にそんな権限ないですし、それにもし勝てても、家でやってくれるんで…」 怜「ほう、それは聞き捨てならんな。詳しく聞かせてもらわんと」 京太郎「す、すいません。用事思い出したんでもう帰ります。お先に失礼します」 怜「ちょっと、お姉さんとお話しようか。なに、お話だけやで」ガシッ 京太郎「え、何この力。誰かー、助けてー」ズルズル 竜華「京太郎と怜は仲ええなー。」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「ただいまー」 智美「おかえりー。きょーたろー」 京太郎「ただいま、姉ちゃん。あれ、何それ?」 智美「これか? 免許取ろうと思ってな。パンフレットもらってきたんだ」 京太郎「へぇー。頑張ってね」 智美「おう。免許取ったら一番に乗せてやるからな。楽しみにしとけよー。」 京太郎「ああ、楽しみにしてるよ。その時は佳織姉さんも誘おうか。」 智美「残念だけど、佳織はその次かな」 京太郎「え、なんで? 乗れないわけじゃないし、多い方が楽しいと思うけど」 智美「やっぱり幼なじみとはいえ、初めての運転で他人を乗せるわけにいかないだろー」 京太郎「姉ちゃんなら、そんなこと気にせず誘うと思ったけど」 智美「失礼な。私だって、それくらいの気は使うぞ」ワハハー 智美(…本当は、京太郎と二人きりがいいからだけどな) ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ ある日突然、あなたに12人もの姉ができたらどうしますか? それも……とびっきりかわいくて とびっきり素直で、とびっきり愛らしくて、とびっきりの淋しがりや。 しかも、そのうえ……彼女達はみんなみんな、とびっきり! 弟のコトが大好きなんです…… 洋榎「京太郎、起きろやー!!」ドムッッ 小蒔「zzz・・・京太郎くん・・・」 美穂子「京太郎くん、朝ご飯できてるから、しっかり食べてね」 京太郎「アネキ・・・鳩尾、鳩尾はやめて・・・」 京太郎「ねーや・・・また俺の布団に入ってきて・・・」 京太郎「お姉様、いつも美味しいご飯ありがとう」 でも、残念なことに弟と姉は現在離れ離れに暮らしていて…… 実際に会うことができるのは、 2ヵ月に1回と決められた“弟の日”だけ。 大好きな弟と自由に会えない姉は…… さみしくて、いつも弟のことばかり想ってしまいます。 「神様……どうか、早く弟に会えますように私の大事な大事な弟……」 「会えないでいると……淋しい気持ちでいっぱいになっちゃうよ……」 衣「京太郎は衣に逢えなくてさみしかったろう? 存分に甘えるがいいぞ、衣はお姉ちゃんだからな!」 豊音「京太郎、ちょー逢いたかったよー」 宥「京ちゃんだぁ、背中おっきくってあったかーい」 京太郎「おねえたまは、さみしかったんですね、いっぱい甘えてくださいね」 京太郎「姉ちゃま、ちょっ、近すぎるって!!」 京太郎「ねえさままで・・・、でも二人ともポカポカしてあったかいよ」 だから、ようやく2ヵ月に1度の「弟の日」がめぐってきて…… 2人が会えたときには、 姉は世界中の幸せを独り占めしたみたいに、 とってもとっても……幸せ もちろん姉弟なんだけど、気分はまるで楽しいデート! セーラ「バスガデルデー」 ワハハ「京太郎でかけるぞー」 すばら「今日は、なんてすばらな一日でしょう!」 京太郎「姐さん、今行くよー」 京太郎「お姉ちゃん、安全運転で頼んます」 京太郎「おねぇ、よかったね」 そして姉は、弟のそばにぴったりくっついて…… 心配そうに弟の顔をのぞき込み、 こう……言うのです。 「弟は……私のコト、好き?」 姉達はちっちゃい頃からずっとずっと ただ純粋に弟のコトが大好きでした。 やさしくってステキで世界にただ1人、 自分だけの大切な弟……。 照「・・・京太郎」ゴゴゴゴ 智葉「・・・・京太郎」ゴゴゴゴ やえ「・・・お見せし(ry」ゴゴゴゴ 京太郎「・・・姉君さま、姉上さま、姉チャマ、プレッシャーで胃に穴が開きそうです」 だから、いつもいつも弟と一緒にいたくて、 いつもいつも弟にかまってほしくて……。 ここに登場するのはそんな素直な女の子達……。 外見も性格もちがう12人の姉達ですが、 想いだけはみんな同じ……そう 「……京太郎、大好き!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ エイス「キョウタロ!キョウタロー!」 京太郎「んあ、どうした姉ちゃん」 エイス「………」カキカキ ポン! 【お菓子を作っている京太郎の絵】 京太郎「お?おぅ……」 エイス「………」カキカキ ポン! 【お菓子を食べているエイスリンの絵】 エイス「………」キラキラ 京太郎「えぇと………」 京太郎「作れって…ことだよな?」 エイス「!!」コクコク 京太郎「しょうがないなぁ、何作ればいいんだ?」 エイス「ク…クッキー?」 京太郎「なんで疑問系なんだよ…まぁ作るけどさ」 ..................1時間後 京太郎「姉ちゃーん、できたぞー?」 エイス「………」モグモグ 京太郎「ってもう食ってるし…腹減ってたのか?」 エイス「………」コクコク エイス「キョウタロ」パンパン 京太郎「ん?座れって?はいはい」ストッ エイス「えへへー」ナデナデ 京太郎「なんだよ、急に頭なんか撫でて」 エイス「アリガト……ね?」ナデナデ 京太郎「………ん」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「……はぁ」 ゆみ「どうした、京太郎」 京太郎「どうしたもこうしたもないよ、また同学年の女子からラブレター渡されたんだぜ?」 ゆみ「それの何が問題だというんだ?」 京太郎「『ゆみ先輩に渡してください』って来るんだよ」 ゆみ「なんだ、それは……」 京太郎「こっちのセリフだよ全く。なんだって女の子のラブレターを女の子に渡さなきゃなんないのさ」 ゆみ「……女の子?」 ピクッ 京太郎「ん?あ、ごめんごめん。姉さんは女の子って柄じゃないか」 ゆみ「いや……まあ、そうだが」 京太郎「そこで納得するのも姉さんらしいけど。俺だってまっとうにモテてみたいよ」 ゆみ「……まるで私がまっとうにモテてるみたいな言い草じゃないかそれでは」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 智紀「…………」カタカタカタカタ 京太郎「ね…姉ちゃーん?入るぞー」ガチャ 智紀「…………」カタカタカタカタ 京太郎「姉ちゃん、飯持ってきたんだけど…」 智紀「…………」カタカタカタカタ...ッターン!! 京太郎「!?」ビクッ 智紀「そこ……置いといて………」 京太郎「う…うん。あ、あと風呂沸いてるから」 智紀「…………」カタカタカタカタ 京太郎(もうゲームに戻ってらっしゃる…) ----10分後・リビング 京太郎(姉ちゃん最近また引きこもってるけど大丈夫なのか?) 京太郎(龍門渕で仲良く麻雀してると思ってたんだけどな…) 智紀「大丈夫、問題はない」 京太郎「うわッ!!?姉ちゃん!いきなり背後から思考を読むな!!」 智紀「透華からちょっとだけお休みを貰ってただけだから。あとね…」 智紀「ご飯、おいしかったよ?」チュッ 京太郎「ねっ姉ちゃん…」カァァ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 「じゃあね。」 京太郎「おう、また明日な。」 桃子「……お兄ちゃん、今の誰っすか……?」 京太郎「うお!? いきなり現れんなよ!?」 桃子「私を見れるのはお兄ちゃんだけ……だからお兄ちゃんはは私のことだけ見ていればいいっす……」 京太郎「はぁ~」 桃子「どうしたっすか?お兄ちゃん」 京太郎「桃子か。いや、何か最近女子に避けられてるみたいでさ」 京太郎「何か噂では、俺と仲良くなると不幸が起こるらしいんだが…」 桃子「噂は噂っすよ。現に私は何にも起きてないっす。」 桃子「それに麻雀部の先輩たちだって、何も起きてないじゃないっすか」 京太郎「そうなんだけどな~。委員長も俺を避け始めてるみたいでな」 桃子「あ~、あの女っすか。あいつはなかなか諦めなかったっすね」ボソッ 京太郎「ん、何か言ったか?桃子」 桃子「なんでもないっすよ。そんなことよりどこか遊びに行こうっす。」 京太郎「…そうだな。いつまでも暗い気分でいてもしょうがないしパーッと遊ぶか」 桃子(麻雀部の人たちは学年も違うし、部活だけだから監視もしやすいっすけど) 桃子(ほかの人は、ずっとは監視できないし、向こうから離れてもらうのが一番っすね) 京太郎「ほら、桃子遊びに行くんだろ。早く行こうぜ」 桃子「はいっす。お兄ちゃん」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 恭子「……ただいま」 京太郎「姉ちゃんお帰り。なんか随分疲れてるみたいだな……」 恭子「まあね。漫ちゃんの特訓に付き合ってたら主将と代行が乱入してきてその相手もしとったんよ」 京太郎「お、おおぅ。そりゃ疲れるわ」 恭子「それで悪いんやけど、鞄部屋に置いといてくれん?」 京太郎「はいよ。それくらいなら任せてくれよ」 恭子「おおきに。じゃあお風呂で汗流してくるわ」 京太郎「へーい。ごゆっくりどーぞ」 恭子「あと相談なんやけどな。いつもの『アレ』も頼まれてくれる?」 京太郎「『アレ』って『アレ』のこと?」 恭子「そーそー。楽しみにしとくから念入りにお願いな」 …。 ……。 …………。 ……………………。 恭子「くぅぅぅ~~っっ!そこそこっ!もうちょい強めで」 京太郎「へいへい。―ふっ、ふっ」グッグッ 恭子「効くぅ~♪相変わらずマッサージ上手いな」ホッコリ 京太郎「そりゃねぇ。伊達にやらされてないさ」 恭子「そういや私が高校入ってからはほぼ毎日頼んでるんやっけ」 恭子「時間が過ぎるんて早いなぁ……」シミジミ 京太郎「なに、年寄り、臭いこっ、言って、んの!」グッグッグッグッグッ 恭子「まあ実際京太郎よりも年食ってるけどな」 京太郎「たかだか二年だろ……」 恭子「それでも年上なんは事実やろ?」 京太郎「花の女子高生が何言ってんだか」 恭子「口動かすよりも手ぇ動かして。あ、もうちょい下ね」 京太郎「はいよ。こんなもんですかお客さん?」 恭子「あっ♪それ最高やん」 京太郎「そりゃ良かった。でさ姉ちゃん。話変えるけど髪退けてくんないかな?」 京太郎「さっきから巻き込みそうで怖いんだよ」 恭子「そうなん?じゃあショートにした方がええのんかな……」 京太郎「いやいや。結ぶだけで良いから。ポニテとかサイドとかさ」 恭子「……京太郎。いくら私がお姉ちゃんでもいきなり性癖暴露されたら困るんやで」 京太郎「ばっ!物の例えだよ!!」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「買い出しから戻りました~」ドサドサ 誠子「うわ、凄い量だな。これ全部一人で買ってきたのか」 照「京ちゃんご苦労様」 菫「ご苦労。ついでに買ってきたなまものは全部冷蔵庫に入れておいてくれ」 京太郎「菫ねぇは俺をこき使いすぎ!部員俺だけだけど一応俺は男子麻雀部の部長なんだぞ」 菫「そう言うな。ほら、ご褒美だ」ナデナデ 京太郎「あのさ菫ねぇ。俺も15歳なんだから頭撫でられるのははずいんだけど」 菫「なら止めるか?」ナデナデ 京太郎「……このままでいい」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「ただいまー......ん?」ガチャッ 奥の部屋 姫子「...んあぁ!ぶちょーダメです...京太郎が...ん、もうすぐ...帰ってき...ひうっ!」ビクビク 哩「そうか、弟さんもこげんだらしなくよがっとる姉の姿見せられよったら、どげん反応しよるんやろな?」クチュクチュ 姫子「やめっ......んっ、やめて.....!」ビクビク 哩「口ではそう言いよってもココは症状たい!」 京太郎「......」 京太郎「なんもかんも政治が悪い」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 佳織「京くん、京くん」 京太郎「はいはい姉ちゃん」 佳織「今日は…何の日かわかるかなぁ?」 京太郎(今日は…姉ちゃんの誕生日だ。もちろん覚えてる) 京太郎(でもここはちょっと…) 京太郎「ん~?なにかあったっけ?特に予定はないはずだけど」 佳織「!!」アワアワ 佳織「京くん…ほんとに覚えてないの…?」ウルウル 京太郎「なんだよ姉ちゃん、なんか約束してたっけ?」 佳織「~~ッ!!」ションボリ 京太郎(ションボリしてる姉ちゃん可愛い) 京太郎(小刻みに震えてるところがなんとも…) 佳織「京くん……」ウルウル 京太郎(あーっもう!上目遣いは反則だって!) 京太郎「………嘘だよ、嘘。姉ちゃん今日誕生日だろ?」 佳織「!!」パァァァ 佳織「でも京くん……お姉ちゃんに嘘ついたんだね」 京太郎「ご…ごめん。つい可愛いくてさ」 佳織「お姉ちゃんをからかうんじゃありません!」ポカポカ 京太郎「いたた…ごめんって。はいこれプレゼント」 佳織「もう!京くんの意地悪!」 佳織「でも…ありがとう、京くん。大好きだよ」ナデナデ 京太郎「…………ん」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 透華「あ、京太r――」 京太郎「ハギヨシさん、ここのレシピってどうやるんですか?」 ハギヨシ「ああ、ここはですね。少しスパイスを強めにして――」 透華「……」 透華「あ、京t」 京太郎「ハギヨシさん組手の稽古お願いできますか!」 ハギヨシ「かしこまりました。それでは武道場でお待ちしております」 京太郎「はい!」 透華「…………」 透華「なんなんですのあれは!ハギヨシとばかりべったりして!」 イライラ 衣(素直に寂しいと謂えばよかろうに……) ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 貴子「ただいま。」 京太郎「おかえり、姉さん。ご飯出来てるよ」 貴子「いつも、悪いな。お前だって疲れてるだろうに」 京太郎「姉さんの方が大変じゃないか。これくらいは当然だよ」 貴子「…本当に池田はなんであんな状況でチーピンを…」 京太郎「ははは、姉さんは本当に池田さんのこと大切にしてるんだね」 貴子「べ、別に今の3年が引退したらあいつが中心になるからな。それだけだ」 京太郎「まぁ、そういうことにしておくよ」 貴子「そんなことよりお前はどうなんだ。彼女とかできたのか」 京太郎「姉さんの方が大切だし、姉さんと比べると皆同じように見えるんだよ」 京太郎「姉さんみたいな人が彼女ならいいんだけど」 貴子「な…」カァァ/// 京太郎「そうしたの、姉さん? 顔赤いけど」 貴子「な、なんでもない。ほらさっさと食べるぞ」 貴子「池田ァァッ! てめェ何度言ったらわかるんだ」 華菜「ごめんなさいだしコーチ。」 未春「華菜ちゃん大丈夫かな」 美穂子「大丈夫よ、華菜は強い子だし。」 美穂子「それより、コーチ何かいいことでもあったのかしら?随分嬉しそうだけど」 未春「そうですか?いつもと変わらないように見えますけど」 美穂子(ふふ、多分京太郎くん関連ね。あれは) ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 胡桃「んーっ!んーっ!」ピョンピョン 京太郎「この段ボールか?」ヒョイ 胡桃「もうっ。なんで取るかなぁ?!」 京太郎「え?駄目だった?」 胡桃「あと“ちょっと”で取れたのに台なしだよまったく……」 京太郎「姉さんの“ちょっと”は俺の知ってる“ちょっと”とズレてるのは分かった」 京太郎「つーか感謝こそされても、なんで怒られてんだよ!」 胡桃「それは……はぁ。仕方ない。“姉の”私が折れてあげるよ」 京太郎「仕方なくねぇよ。自然の成り行きで常識だって」 胡桃「んーっ。んーっっ!!」ピョンピョン 京太郎「なにしてんの……?」 胡桃「空気読んでしゃがむっ!」ピシッ 京太郎「あ、はい」 胡桃「ふっふっふっ。優しいお姉さんからのご褒美だよ」ナデナデ 京太郎「…わざわざしゃがませてしなくても……」ボソッ 胡桃「何か言った?」ギロッ 京太郎「イエ、何モ言ッテマセンヨオ姉サマ」 胡桃「ならよろしい」ムッフー 京太郎(そもそも姉弟で身長差が顕著に表れ過ぎだろ母さん……) 京太郎(これじゃ、ませてる妹って言われても仕方n――) 胡桃「―フンッ!!」ゲシッ 京太郎「いてぇ!!?なんで踏むんだよ姉さん!」 胡桃「京が失礼なこと考えたからでしょ?」シレッ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「ただいま」 巴「お帰りなさい~」ヌギヌギ 京太郎「って義姉さん!!何で服脱いでんだよ!」 巴「さっき霞さんのお祓いをして汗をかいたので拭いてるんですよ」 京太郎「だ、だからって自分の部屋とか風呂場でしろよ!!居間ですんな!!」 巴「あら?もしかして京くんお義姉ちゃんの裸見て照れてるの?」 京太郎「な///べ、別にそうじゃなくてだな……その……つつしみとかそういうのだよ///」 巴「はいはい。そういうことにしておいてあげます」クスクス ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 女子「いきなり呼び出したりしてごめんなさい」 京太郎「それで用事って?」 女子「あ、あのこれ!」サッ 京太郎「これって……もしかしてラブレター?」 女子「はい!」 女子「お姉さんに渡してください!」 京太郎「(うん。分かってたよ。こんなオチだって)」 京太郎「純ねぇ。またラブレター預かってきた」 純「お、サンキュー。もてる女はツラいねぇ~」 京太郎「はぁ……毎回毎回純ねぇの代わりに呼び出される俺の身にもなってくれよ」 純「お、なんだ?大好きなお姉ちゃんが取られちゃうか心配なのかな?」ダキッ 京太郎「ちょっ!抱き付くなよ暑苦しい!」 京太郎「(ささやかながらも柔らかいおもちが当たってる……!!)」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 玄「あれは鹿児島の神代さん!こっちは千里山の清水谷さん!去年テレビで目をつけてた極上おもちが、今!私の目の前に!」 京太郎「クロ姉落ち着いて、声でかいから、めちゃ白い目で見られてるから」 玄「しかも岩手代表の小瀬川さんとか、姫松の愛宕さんの妹さんとか」 玄「初出場の人のなかにも特Aレベルのおもちさんがいっぱいいるし!凄いよ京くん、全国大会はまさにおもちの宝庫だよ!」 京太郎「わかった、わかったからちょっとこっち来て!」グイグイ 玄「ま、まって京くん!せめて写真だけでも!」 京太郎「まったくクロ姉は…。いつも言ってるだろ、素晴らしいおもちを見て感動する気持ちはわかる、それこそ俺は誰よりもわかる」 京太郎「でもだからってその感動を表に出しちゃだめなんだよ、俺達の趣味は秘してこそ」 京太郎「人目があるとこで全開おもちトークとかしたら変態さん扱いは免れんのです」 玄「申し訳のうござる、興奮を抑えきれずつい…」 京太郎「確実に顔覚えられただろうな、クロ姉みたいな美人さんがいきなりおっぱいおっぱい騒ぎ出すなんてインパクトありすぎるし」 玄「うう、あれだけのおもちさん達と仲良くなれるせっかくのチャンスなのに、次あった時警戒されちゃうかなぁ」 京太郎「まあそこは俺が一緒にいる時ならフォローするよ。その時はクロ姉もちゃんと自重するように」 京太郎「言っとくけど初対面の人に挨拶からワンツーのテンポで品質調査(乳揉み)!」 京太郎「とかやられたら今度はさすがにフォローしきれないからな」 玄「その節は大変ご迷惑を…」 京太郎「大体我慢が足りないんだよクロ姉は。俺なんかいつもめちゃ我慢してるってのに」 京太郎「男の俺と違って女の子のクロ姉は多少のことなら許されるんだからほどほどで満足しなきゃ」 京太郎「さっきのだってクロ姉がするぶんにはなにあの変人て思われるだけですむけど俺がやったら普通に通報されてるだろうし」 玄「失礼な話だよね、私達のおもちに対する気持ちにいやらしいものなんか全然ない」 玄「いわば芸術を見る気持ちでおもちに向き合ってるっていうのに」 玄「おもち丸出しのミロのヴィーナスの造形について品評するのは芸術鑑賞」 玄「なら私達のしてることも同じ扱いになっていいはずなのです!」フンス 京太郎「クロ姉は知らないかもしれないけど世の中には常識ってもんがあってだな…」 京太郎「あと内緒だけど俺の場合仮にも男なんでいやらしい気持ちが全くないとは言いづらいっす」 玄「でも京くんは女の子の嫌がることはしない紳士さんだし大丈夫大丈夫へーきへーき。それになんたって京くんは私一筋だもんね!」 京太郎「うっ…」 玄「おもちはおもちで別腹、京くんが女の子で一番好きなのは私だっておねーちゃんちゃんとわかってるから!」フフン 京太郎「べ、別にいつまでもそうとは限らないんだからな!」 京太郎「俺だってもう高一だし、そろそろクロ姉以外の好きな人ができてもおかしくない、はず」 玄「そんな無理して他の女の子好きになろうとしないでいいよー」 玄「私は今までもこれからもずーっと京くん一筋だし、ほーらくっついちゃうぞー!」 京太郎「ば、ばか、人に見られたらどうすんだって」 玄「とか言いつつ振り払おうとはしない京くんなのでしたー」 ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 衣「♪」テクテク 衣「?」 京太郎「Zzz……」 衣「……!」タタタッ 衣「!」タタッ 衣「♪」バサァ 京太郎「Zzz……」 衣「♪」トントン 衣(まったく仕方ない弟だな、衣がタオルケットを掛けなかったら風邪を引いてしまうぞ。) 衣「……Zzz。」 衣「Zzz……」 透華(あら……姉弟で仲良くお昼寝ですわね。) 透華(なんとも微笑ましい限りですわ。) ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「姉さ~ん、飯できたぜ」 霞「あっ…あら京君」 京太郎「またネット掲示板やってるのかよ……」 霞「もうっなによ……いいじゃないちょっとくらい」 京太郎「別に普通にするのは構わないけど、俺と姉さんのSSを書くのは止めろって言っただろ」 霞「そうは言ってもね?これが好評なんだからしょうがないじゃない?私も書いてて楽しいもの」 京太郎「俺のどこがいいんだかねぇ……」 霞「ふんふむ……ちょっと来なさい京君」 京太郎「なんだよ?一体」 霞「京君は私の知ってる中の男性で一番魅力的なんだからね」 ギュッ 京太郎「ありがと、姉さん」 ボソッ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 京太郎「姉さん、羊羹出来たけど食べる?」 尭深「うん。それじゃあ私お茶入れてくるね」 京太郎「ありがと。じゃあ用意して待ってるよ」 尭深「…おいしい。」 京太郎「良かった。作った甲斐があったぜ」 尭深「…でも、京君はいつもお菓子作ってくれるのに私は お茶入れるだけで申し訳ない。」 京太郎「何言ってんだよ、姉さん。俺は姉さんが入れてくれる お茶が好きだし、姉さんの喜ぶ顔が見たいからこうやって作ってるんだぜ」 尭深「ありがとう。私も京君が作ってくれるお菓子好き。」 京太郎「好きなのは、俺のお菓子だけ?」 尭深「そんなわけない。京君のことは全部好き」 京太郎「俺も姉さんのこと全部好きだよ」 尭深「……うん。ありがと京君」カァァ ╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋ 久「京太郎~?いないの~?」ガチャ 久「愛しのお姉様よ~?」ポフン 久「お茶くらい出しなさいよ~」ペラペラ 京太郎「…………おいヒサ姉」 久「あ、そこにいたの?全然気付かなかったわ」ポリポリ 京太郎「いきなり人の部屋に入っといてその態度は何だよ」 久「いやぁよく言うじゃない。『弟のものは姉のもの』って♪」 京太郎「そうだなよく聞くな」 久「でしょ?」 京太郎「―ヒサ姉の口から」 久「うそやだー。どこ情報?どこ情報よそれー」ペラペラ 京太郎「しまいにゃ放り出すぞ」 久「なになに?DV?」 京太郎「姉弟でDVもあるかって。喧嘩にしか見られねーよ」 久「それもそうよねー。あ、この前の巻ってどこ?」 京太郎「それなら確か……っとあった。ほらよ」 久「ありがと。立ったついでにジュース取ってきて」 京太郎「どこがついでだっつーの」 久「いいじゃない別にぃ。減るもんでもなし」 京太郎「減らなきゃいいって話じゃねぇよ!むしろ手間が増えてんの!」 久「大丈夫よ。私は増減してないもの!」キリッ 京太郎「………」 久「な、なによ……」 京太郎「べっつにぃ~?」 京太郎「昨日のリビングでダイエット特集に集中してたのは誰だったのかと思い出してただけですしぃ~?」 久「ダイエットは女子にとっちゃ話のネタになるんだから知識だけでも仕入れないとねぇ」 京太郎「へぇ……ふぅ~ん」 久「あ、全っ然信じてないでしょ!?」 京太郎「だってなぁ。ヒサ姉だしなぁ」 久「減らず口を叩くのはこの口?ならこうしてやるっ!」 京太郎「ばっ!やめろよ!ポテチ摘んだ手を近付けるな!」 久「大丈夫。漫画読む時に手は拭いてるから」 京太郎「そう言う問題じゃねぇ!良いから手洗ってこい!」 久「気が向いたら善処する方向に検討するわ」 京太郎「明らかに拒否ってるじゃん!」
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1340792711/ 和「…?」 咲「京ちゃん今何か言った?」 京太郎「ハッ!…いや、何も言ってないぞ!」 咲「…変な京ちゃん。原村さん、それでね…」 京太郎(危ねー、思わず口に出てた…) 京太郎(最近咲と和の仲がいいせいで登下校に和がついてくる…。正直あのおっぱいは目に毒だ) 咲「…ちゃん!、京ちゃん!聞いてる?」 京太郎「お、おう!どうかしたのか!?」 咲「もう。さっきからどうかしたの?調子悪い?」 京太郎「お前に心配されるほどのことじゃねーよ」 咲「でも…」 和「フフッ…、宮永さんと須賀くんはほんとうに仲がいいんですね」 咲「は、原村さん!そんなんじゃないよ!」 咲「京ちゃんとは中学校から腐れ縁なだけだし、それに京ちゃんは私みたいなチンチクリンには…」アセアセ 和「フフッ、宮永さん。少し落ち着いてください」 咲「あぅ…」 京太郎(あぁ…、おっぱい揉みたいな) 京太郎(あの破壊的なまでののどっぱいを心ゆくまで…)ゴクリッ 咲「…」ジー 授業中 京太郎(おっぱい…) 教師「須賀ー、ボーッとするなよー」 昼休み 京太郎(おっぱい…) 咲「京ちゃん、ご飯こぼしてるよ」 放課後 京太郎(おっぱい…) 優希「ローンッ!12000だじぇ!」 久「あらあら。また須賀くんのトビ終了ね」 まこ「いつにもまして集中できとらんのぉ」 和「須賀くん、どうかしたんでしょうか?」 咲(京ちゃん…) 京太郎(おっぱい…) 帰宅 和「それでは私はこちらなので。さようなら宮永さん、須賀くん」 咲「うん、また明日ね!原村さん!」 京太郎「じゃあな和」(おっ…ぱい…) 和「はい、また明日」スタスタ 咲「いこっか京太郎ちゃん」 京太郎「おう」 京太郎「…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎「…」スタスタ 咲「…」 京太郎「どうかしたのか?」 咲「…それはこっちのセリフだよ」 京太郎「え?」 咲「京ちゃん、今日ずっとボーッとしてるよ。どうしちゃったの?」 京太郎「お前にだけはボーッとしてるとか言われたくないんだけど…」 咲「もう、ごまかさないで!今日の京ちゃんおかしいよ!」 京太郎「咲…」 咲「京ちゃん…」グスッ 京太郎「ごめん、咲。俺が間違ってたよ…」 咲「…それじゃあ、話してくれる?」 京太郎「全部話すよ、俺が今日考えてた全部。聞いてくれるか?」 咲「うん!」 京太郎「…おっぱい」 咲「ん?」 京太郎「おっぱい…おっぱい…おっぱいおっぱいおっぱい」 咲「え、ちょ、ちょっと京ちゃん?」 京太郎「和の、和ののどっぱい!のどっぱいを!俺は!俺はッ!」 咲「」 京太郎「揉みしだきたいんだぁぁあああああああああああッ!」カッ! 咲「」 京太郎「あのメロンを!あのマシュマロを!俺の両手で!形が変わるまで!」 咲「きょ」 京太郎「ハァハァ和ののどぱい…。ハァハァのどぱいのどぱい…」 咲「京ちゃんの…」ゴゴゴ 咲「京ちゃんの、バカァアアアアアアアアアア!!」バチーン! 京太郎「のどぱっ!」 咲「ハァハァ…」 京太郎「ハァハァ…」 咲「京ちゃん、少しは落ち着いた?」 京太郎「…あぁ、目が覚めた」 咲「どうして?どうして急にあんなことに…」 京太郎「今朝からだ」 咲「え?」 京太郎「どうも朝からなんかおかしくてな。いや、おかしいのはここ数日か…」 咲「ここ数日?」 京太郎「そうなんだよ。ここ数日間ふと気がついたら和のおっぱいのことばっかり考えてるんだ…」 咲「原村さんの…」 京太郎「細かく言えば部長のおっぱいとかにも反応はするんだがやっぱり一番は和だな」 咲「ど、どうしてそんなことになったの?」 京太郎「わからん。まるでお腹が減るみたいに自然におっぱいを揉みしだきたくなってくるんだ…」 京太郎「今もそうだ…。頭の片隅に和のおっぱいを揉みしだきたいと思う俺がいる」 咲「京ちゃん…」 京太郎「俺はもう麻雀部にいかない方がいいのかもな…」 咲「ど、どうして?」 京太郎「これ以上自分を抑えられる自信がないんだ。たぶん次に和にあったら俺は…」 京太郎「ごめんな。でもそういうことだから部長にはしばらく部活は休むって…」 咲「それならッ!」 咲「それなら私の胸を揉んでよ!」 京太郎「へ?」 咲「だ、だ、だから!今の京ちゃんはお、おっぱいを揉みたくてしかたないんでしょ!?」/// 京太郎「お、おう」 咲「だ、だったら原村さんを襲っちゃう前に私の胸を揉んでストレスを発散したらいいんじゃないかな!?」/// 京太郎「いや、でも揉むって言ってもな…」ジーッ 咲「」ペターン 咲「京ちゃんのバカ!」ドゴォ! 京太郎「ひでぶっ!?」 京太郎「ハァハァ…。そ、それに咲だって俺なんかに触られるの嫌だろ?」 咲「…ジャナイヨ///」 京太郎「へ?」(おっぱ…?) 咲「べ、別にこれぐらい原村さんのためだから!それに京ちゃんに麻雀部をやめて欲しくないから…」 京太郎「咲…」(おっぱい…) 咲「いいよ…、京ちゃん。来て…?」 京太郎「咲、咲ぃぃいいいいいい!」(おっぱいおっぱいおっぱい!) 咲「京ちゃん///ダメだよ、優しくして///」 京太郎(こ、これは!たしかに質量では圧倒的に和にとどかない! だがしかし、たしかにある!たしかに今!俺の手の下に咲のおっぱいが存在している!)サワサワ 咲「ふ、ふわぁ!?///」ピリピリ 咲(な、なにこれ!?なんだかピリピリするよ!) 京太郎(しかもこれは…。和の胸にはない慎ましさだと!? 暴力的なまでの破壊力のせいで和のおっぱいには存在しなかった慎ましさがこのおっぱいにはある!)フニョフニョ 咲「…ふっ、ん…///」ビリッビリッ 咲(声でちゃうよぅ…。ピリピリが強くなってきたような気がする…) 京太郎「おっぱ…」 咲「だ、ダメ…///」ビリビリ 京太郎「おっぱぁぁあああああああああああああいッ!」 咲「ふわぁぁ///」ビリビリビリビリ! 咲「も、ダメぇ…///」フラッ 京太郎「咲!」 咲「あ、ありがとう京ちゃん…///」 京太郎「礼を言うのは俺の方だよ!さっきまでのが嘘みたいだ!」 咲「ほんとう?!じゃあ…!」 京太郎「ああ、これならもう大丈夫そうだぜ!ありがとな、咲!」ダキッ 咲「///」 咲「さっ、さっきのことは秘密だから!絶対誰にも言わないでよね!」 咲「じゃ、じゃあね京ちゃん私こっちだから!」ダッ! 京太郎「お、おう!じゃあな咲!ってもう行っちゃったか…」 翌日 京太郎「~♪」スタスタ 和「おはようございます」 京太郎「うわっ!…って和かおはよう」 和「ビックリしすぎです。それより今日は宮永さんは一緒じゃないんですか?」 京太郎「あー…、うん、ちょっとな」 和「?そうですか。須賀くんは今日は大丈夫そうですね」 京太郎「和にもばれてたのか…。心配かけてすまん、でももう大丈夫だから」 和「同じ麻雀部の1年生なんですから何かあったら相談して下さいね」ニコッ 京太郎(のどっちマジ天使) 和「あら?あれは…」 咲「…」コソコソ 和「宮永さん?みょうに周りを気にして、どうかしたんでしょうか?」 京太郎(なにやってんだあいつは…) 和「宮永さーん!」 咲「ビクッ!…な、なんだ原村さんかって…」 京太郎「よ、よう咲」 咲「うわわわわ!?きょ、きょ、京ちゃん!?///」 咲(どどどどうして京ちゃんがいるの!?通学時間いつもとズラしたのに!) 京太郎(なんでこいつがここにいるんだよ…、昨日のこと気つかって通学時間ズラしたのに!) 和「おはようございます、宮永さん。須賀くんもですけど今日はずいぶん早いんですね。 まあ、私も今日は早く目が覚めてしまったんですけど」フフッ 咲「お、おはよう原村さん!悪いけど私今日は急ぐから!また後でね」ドヒューン! 和「あ、宮永さん!」 京太郎「咲!」 和「行っちゃいましたね…」 和「はぁ…、昨日は須賀くんで今日は宮永さんですか」 京太郎「なんかごめんな…」 和「別にせめてません。とりあえず私たちも学校に行きましょう」 京太郎「ああ、そうだな」 昼休み 京太郎「咲ー、飯食いに行こうぜー」 咲「!?///」ドヒュ… 京太郎「逃がすか!」ガシッ 咲「わひゃあ!?///」 京太郎「ほら、行くぞ!俺は今日レディースランチが食べたい気分なんだ!」 咲「ちょっ!ちょっと、離してよ京ちゃん!」 京太郎「問答無用!」ズルズル 咲「…」ジーッ 京太郎「よしよし、今日のレディースランチもうまそうだな」 咲「…」ジーッ 京太郎「いいかげんだんまりはやめてくれよ…」 咲「バカ京ちゃん…」 京太郎「バカでもいいし昨日のことも謝るからさ、いいかげん機嫌直してくれよ」 咲「はぁ…、貸し一つだからね」 京太郎「おお、さすが姫!寛大なお心をお持ちだ!」 咲「調子いいんだから…。ワタシニハアンナコトシタクセニ…」 京太郎「でも咲のおかげでほんとに助かったぜ!今朝も普通に和と話せたしな!」 咲「うん、そのことなんだけどね京ちゃん。昨日からどこか変わったこととかない?」 京太郎「変わったこと?まあ、頭のモヤが晴れたような気分ではあるけどどうかしたのか?」 咲「うん…。昨日のその、京ちゃんにゴニョゴニョされたあとからちょっと違和感があって…///」 京太郎「違和感って?」 咲「うーん…。なにって言われるとなんだか説明できないんだけど…」 京太郎「なんだそりゃ。別に特に変わったことはないし、強いて言えばいつもより調子がいいくらいだぜ!」 咲「それならいいんだけど…」 京太郎「っと、そろそろ昼休みも終わるな…。教室に戻ろう」 咲「うん、そうだね」 放課後 京太郎「こんにちわーっす!」 久「あら?昨日と違って今日はずいぶんと元気がいいのね、須賀くん」 京太郎「いやーっ!昨日は情けないところ見せてすいません!昨日の負けは今日取り返しますから!」 優希「なんだか犬が調子に乗ってるじぇ! これは調教が必要だな!」 まこ「まあ、元気なんはええことじゃ。あと一席余ってる…じゃが入るか?」 京太郎「あれ、和はどうかしたんですか?」 久「掃除で遅れるらしいわ。須賀くんこそ咲はどうしたの?」 京太郎「あー、あいつは図書室に本返すから先に行ってくれと」 優希「犬ー!そんなことはいいからとっととと卓につけ!貴様の飼い主が誰かわからしてやるじぇ!」 京太郎「だれが犬だこのタコスめ…」 久「それじゃあ面子も揃ったしはじめましょうか」 中断します この先闘牌シーンが入る予定 萬子 一 赤五 索子 1 赤5 筒子 ① 赤⑤ みたいな感じで書くつもりです かなり適当なのでミスがあった場合は指摘と脳内補完をよろしくお願いします 東一局 親 優希 ドラ⑧ ジャラジャラジャラジャラ 優希(今日こそは京太郎を東一局で飛ばしてやるじぇ!) 一 一 三 八 3 赤5 6 8 8 ② ③ 東 東 白 久(優希の起家…、安く流してしまいたいところね) 三 五 六 九 1 4 5 ⑤ ⑧ ⑨ 南 西 白 まこ(東場の優希は要注意じゃけぇ当たらんように立ち回らんとのう…) 二 六 七 八 九 2 3 7 ③ ⑥ 東 北 中 京太郎(…) ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 咲「遅れましたー」 和「遅れてすいません」 久「あら、二人ともいらっしゃい。悪いけど先に始めてるわよ」トン 優希「のどちゃん、咲ちゃん!私が京太郎を東一で完封するところ見てるといいぞ!」 まこ「ええからはよ打ちんさい…」 京太郎「おっーす…」 8巡目 一 一 八 八 5 赤5 8 8 ⑧ ⑨ 東 東 白 ⑧ 優希(よし、張ったじぇ!ツモ、一発乗れば倍満!) 優希「先制リーチ!」 打⑨ 久(あちゃー、先制リーチかかっちゃったわね。二向聴だしここは降りかな) まこ(聴牌しとるが場に2枚見えとる6のカンチャン…。ここはとりあえず現物で回すかのう) 京太郎(…) 和(優希の待ちは出アガり狙いですか。部長と染谷先輩にはないし二人とも降り気配、これは須賀に当たりそうですね…) 咲(京ちゃんに当たりそうかな…) 優希「一発ならずたじぇ!」パチン 久「…」トン マコ「こりゃーいかんのう」トン 京太郎「…」 京太郎「…槓!」 ?①①? 優希(京太郎が自分で墓穴を掘った!これは私の勝ちだじょ!) 久(いつもの須賀くんらしくない打ち方ね…) まこ(勘弁して欲しいのう…) 和(親リーに暗槓。非効率的ですね) 咲(嘘…。この感覚、もしかして)ピリッ… 京太郎「…」スッ… 咲(京ちゃん) 京太郎「ツモッ!面前リンシャン三暗刻! 4000・2000!」 四 四 四 2 2 ④ ⑤ ⑥ ⑨ ⑨ ?①①? 2 優希久まこ和「「!?」」 咲(やっぱり…) 優希「わ、私の先制リーチが犬ごときに流されるなんてありえないじぇ!」ガタッ! 京太郎「これが俺の実力なんだよ、タコス!」 優希「~!きょ、京太郎のくせに今日は一段と生意気だじょ!」 久「はいはい、二人ともそこまでね。優希は悔しかったらしっかり麻雀で返しなさい。 須賀くんも一回アガれたからって調子のらないこと」 まこ「久の言うとおりじゃ。はよう卓につきんさい」 優希「む~…、ぶっ飛ばしてやるじぇ!」 京太郎「やれるもんならやってみやがれ!」 和「二人ともほんとに元気ですね…」 南四局 優希 22100 久 30200 まこ 20100 京太郎 27600 久(オーラスまできて須賀くんが2位。いつもと違うアガりに打ち回し少し奇妙ね…) まこ(京太郎自身が気づいとるかは知らんがここまで捨て牌、まるで咲を見とるようじゃのう…) 優希(オーラスまできて京太郎がいるのに私が4位。こんなのありえないじぇ!) 京太郎「ふっふっふっ…。最初の威勢はどうしたんだ?」 優希「う、うるさいじぇ!このオーラスで役満ぶちかましてやるから覚悟しとくんだな!」 和(ここまで須賀くんは槓が4回。平均から見ると多いですね…) 咲(…) ドラ 四 京太郎「さぁて、俺の親番だぜ!」 三 七 九 1 2 4 7 8 ② 赤⑤ 東 北 白 中 優希(ぶっ飛ばすじぇ!) 一 四 八 九 4 9 ① ⑤ ⑥ 東 南 南 發 久(逃げ切りね) 二 三 六 六 16 7 9 ② ③ ④ 發 發 まこ(無理はしとぉないが十分まくりも可能な点差じゃけぇのう) 一 四 赤五 3 5 ③ ④ ⑥ ⑧ 東 西 白 中 京太郎(…)トン 打 北 優希(こい!) ツモ 北 10巡目 一 八 九 9 ⑧ ⑨ 東 西 南 南 北 發 中 1 優希(よし!国士一向聴だじぇ!) 打 ⑧ 久(優希の手は国士ね。捨て牌でバレバレなんだけどそろそろ張りそうね) 二 三 六 六 七 5 6 7 ② ③ ④ 發 發 ⑤ 久(うーん…、發もでないし手も遅い。とりあえずいつも通りいきましょうか) 打 ② まこ(あかんのう…。降りじゃね) 京太郎(…感じる。いつもならわからないのに今は牌が 見える 。ならここは…) 打 ① 優希(む、これは…) ツモ ① 優希(よし、これで聴牌だじぇ!あとは京太郎にぶちかますだけ!) 打 ⑧ 京太郎「槓」パタッ 優希「!?」 京太郎「…」スッ 京太郎「ツモ、リンシャンカイホウ、700オール」 優希「」 久「ふぅ…」 まこ「…」 和「須賀くんが200点部長より+…。終了ですね」 ミスです ⑧は槓できませんね… 優希捨て牌を⑧→八の順で八を槓に補完しておいて下さい 五 六 七 1 2 3 7 7 ② ③ ?八 八 ? ④ 久「直前の①でツモアガりだと500オールで私にはとどかない…。明槓の符をのせて700オール、見事ね」 優希「わ、私が京太郎に負けた…」グスッ まこ「麻雀は運もあるけぇしかたなーよ…」 優希「…こんなオカルト!ありえないんだじぇ!」ガタッ、ドヒューン 和「あ、優希!待ちなさい!」 咲「優希ちゃん!」 久「あらあら、よっぽどショックだったのね…。和、追っかけてあげてくれるかしら?」 和「しょうがありませんね…。すぐに連れ戻します」ガチャ まこ「やれやれ、優希にも困ったもんじゃのー」 京太郎「優希…」 久「さて、和もいなくなったし丁度いいわね。須賀くん、今日の種明かしをお願いできるかしら?」 京太郎「種明かしって…、別に何もないですけど」 まこ「それにしては咲の打ち筋によーにとった気がするけーのう」 久「そうね。京太郎くんにはなくても咲にはなにか心当たりがあるんじゃないかしら」 咲「え、わ、私には別に心当たりなんて…」/// まこ「わっかりやすいのう」 京太郎「え、でもほんと今日は調子良かっただけですよ?」 久「フフッ、それでも咲にはなにか心当たりがありそうだけど?」 咲「ちょっ、ちょっと京ちゃんこっち来て!」 京太郎「?」 京太郎「どうしたんだよ咲?」 咲「あのね、京ちゃん。今日の麻雀どんな感じだった?」コソコソ 京太郎「どんなって、なんて言うかやたらとツモがよかったり、説明できないけど次になにが来そうとか…。そんな感じだけど?」 咲「…やっぱり」 久「どうかしら。なにかわかった?」 咲「部長…」 久「わかってることだけで良いから説明して欲しいわね」ニコッ 久「昨日須賀くんの調子が悪かったから下校の途中で少し話しをした」 まこ「そこで色々あってそんときに変な感覚がした、か…」 咲「はい…」 久「その変な感覚っていうのが気になるわね…。具体的にはどんなかんじだったの?」 咲「私の中の感覚が京ちゃんの方に引っ張られるっていうか、なんだか不思議な感覚でした」 久「ふーむ。それで、須賀くんは特になにも感じてないのね?」 京太郎「いやー…、なんていうかその、咲が言ってる瞬間の感覚があまりないんで良くわからないですね…」 まこ「ほんにお前はダメじゃのお…」 京太郎「うっ、すんません…」 久「まとめると。咲がいつも麻雀を打ってるときに感じる勘みたいなものが、 昨日咲と須賀くんにあったいろいろで須賀くんにも身についたかもってことね」 咲「はい」 京太郎「???」 まこ「うーむ、にわかには信じられんのお」 久「それはそうね、勘なんて和ならオカルトの一言で切り捨てる感覚だし その不確かなものが須賀くんにもうつった、なんて信じられるわけないし」 まこ「じゃけど、それにしては京太郎の豹変ぶりはあまりにも異常ってことじゃね?」 久「そうね。たった一半荘だけど、それでも昨日一昨日の須賀くんとはまったくの別人だったもの」 京太郎「いや、でもほんとに調子が良かっただけなんじゃ…」 久「もちろんその可能性もあるわ。でも私はまだ二つ重要なことをきいていないわ」 京太郎「?」 咲「…」 久「昨日の須賀くんの調子が悪かった原因とそのあと二人の間であった いろいろ の部分よ」 京太郎「…」ギクゥ 咲「…」/// 久「さぁて…、二人には洗いざらい吐いてもらおうかしら…?」ニコォ まこ「和のおっぱいに視線が釘付け…」 久「道端で叫びながら女子高生の胸を触る…」 京太郎「」 咲「///」 京太郎「ち、ちがうんです!昨日の俺はおかしくて…」 久「そのことはわかってるわ。でも、流石にそれは…」 咲「あ、そう言えば原村さん以外だとぶ」 京太郎「もうやめてぇぇええええええええ!!」 久「まあ、須賀くんの処分はひとまずおいておくとして…。これでハッキリしたわね」 久「咲は胸を触られたときに力が抜けていく感覚がしたのよね?」 咲「は、はい…///」 久「ふむ、でも咲の中の感覚はなくなったわじゃなくてそのまま…、さらに須賀くんの中にその感覚みたいなのがうつった」 京太郎「いや、でもそんなことやっぱりありえませんよ!それにそうだとしても証明できないじゃないですか」 まこ「ほーじゃのう。ここまでやっといてなんじゃがどうするんじゃ?」 久「簡単に試す方法が一つあるわ」 咲「方法?」 久「ええ、私の胸を揉みなさい、須賀くん♪」ニコッ まこ「ちょっ、ちょっとまちんさい!」 咲「そそそ、そうですよ部長!何言ってるんですか!?」 京太郎「」 久「あら、なにかおかしいかしら?」 咲「お、おかしいですよ!な、なんで…」 久「簡単な話よ。咲は1回触られてるから効果があるかどうか判断できない。それなら私のを触らせれば実験できるでしょ?」 京太郎「いや、部長、でも」 久「須賀くんは不満?私の胸を合法的に触るチャンスよ?」 京太郎「嬉しいです!すごく嬉しいです!」 (そんなのダメに決まってますよ!) 咲「京ちゃん…、本音と建前が入れ替わってるよ」ジトーッ 京太郎「ハッ!…いや、でもやっぱりダメですよ!」 久「フフッ、べつに遠慮しなくていいのよ?須賀くんはいつも 私たちのために頑張ってくれてるしほんのご褒美みたいなものだから」 京太郎「ご、ご褒美…」ゴクリッ まこ「だらしないのぉー…」 咲「きょ、京ちゃん…」 久「須賀くんもやる気十分みたいね。さすがに二人に見られてるところで触られるのは恥ずかしいからあっちでやりましょうか」 京太郎「あ、あっちって…」 まこ「まさか…」 咲「ベッド…」 久「あそこならカーテンで仕切れるし問題ないでしょ。須賀くんが襲いかかってきてもすぐに逃げられるし」 咲「お、襲うって…///」 京太郎「そ、そんなことしませんよ!」 久「ふふっ、どうかしら?」 久「それじゃあ、万が一のときは頼むわね」 まこ「はいはい、りょーかいりょーかい」 咲「京ちゃん…、わかってるよね?」ニコォ 京太郎「さ、咲さん…?なんかすごく怖いですよ…?」 咲「もしなにかあったらその時は…、ね?」 京太郎「ひぃ!?」ガタガタガタガタ 久「二人とも、あまり聞き耳を立てないでね?それじゃ、カーテン閉めてくれるかしら」 京太郎「は、はい!」シャー! 久「これで二人からは見えなくなったわね。さて、須賀くん?」 京太郎「な、なんでしょうか!」 久「はぁ…、緊張しすぎよ。できるだけ声を落としなさい」 京太郎「すいません…」 久「わかればよろしい。本題にはいるけど昨日みたいな感じはする?」 京太郎「いやー…、よくわからないです」 久(んー、わかってはいたけどやっぱり不安ね…。まあ、私が誘ったんだからリードはしてあげないと…) 京太郎「部長?」 久「うん、そうね。とりあえずやってみましょうか」 京太郎「や、やってみるって…!///」 久「もう、なに恥ずかしがってるの。怒らないからドーンときなさい」 京太郎「…そ、それでは、し、し、失礼します」 久「ん…」フニョン 京太郎(さ、触ったぁぁああああああああ!あの!清澄高校学生議会長!竹井久麻雀部部長の胸に!俺の!俺の手が!)サワサワ 久「なんだかくすぐったいわね」…リ 京太郎(これが…、これがのどっぱいの次に夢見た…)サワサワ 京太郎(のどっぱいには一段見劣りする!だが麻雀部で誰が 一番ベストサイズおっぱいかと聞かれれば間違いなく部長!)サワサワ 久(あら…?)ピリッ… 京太郎(和のように制服を押し上げることはないが手のひらには ジャストにフィットするベストサイズ!俺の想像通りだ!)フニョフニョ 久(これが咲の言ってた…)ピリ…ピリ… 咲「部長、大丈夫かな…」 まこ「さすがの京太郎もここで襲うなんてことはないじゃろう」 咲「いえ、襲うとかじゃないんです…」 まこ「?」 久(ふっ…これで何分くらいかしら…?なんだか身体の奥がフワフワして…んっ)ピリビリ 京太郎「ハァハァ」フニョンフニョン 久(変な感じ…、咲の言ってた通りね)ピリピリ 京太郎「ハァハァ…っぱい…ハァハァ」モミモミ 久(んっ…!また強くなった…?ダメ、力入らない)フラッ ドサッ 咲「今なにか音がしませんでしたか?」 まこ「んー?気のせいじゃろ」 ガチャ 和「遅れてすいません、優希捕まえてきました」 優希「心配かけてごめんだじょ…」 まこ「まずいタイミングで帰ってきたのう…」 和「部長と須賀くんはどうしたんですか?」 咲「え、えーと二人はあの!その…」チラッ 和「部長はベッドですか? 咲「え、え、え」ビクゥ まこ「そ、そーじゃ!疲れて寝とるようじゃからそっとしておいてやってくれんかのう!?」 和「そうですか。須賀くんは?」 まこ「きょ、京太郎ならさっきトイレにでていったとこじゃ!」 和「須賀くんはトイレですか」 優希「うー、京太郎のやつは肝心な時にいないんだじぇ」 咲「ど、どーするんです!これで京ちゃんが部長と一緒に出てきたら!」コソコソ まこ「ど、どーしようもないじゃろ!そうならんことを願うだけじゃ!」コソコソ 和「そう言えばさっきから衣擦れの音がしますね」 咲「きっ、きっと寝苦しいんだよ!」 和「そこはかとなく荒い息遣いも…」 まこ「わ、悪い夢でもみとるんかもしれんのう!」 和「?」 久(ま、ずいわね…んっ、ふぅ…。この声…和と、ふっ…、優希ね)ビリビリビリ 久(ここで、バレるのは…、すごくマズいわ…)ビリビリビリ 京太郎「おっぱい…、おっぱい…」モミモミモミモミ 久(つ、まり…ふっ…、ここで声を出すのは許されない…!)ビリッビリッ 久(でも、正直もうかなり、はぁ…、辛いわね…)ビリビリビリ 京太郎(素晴らしい…エクセレント…これなら一生揉んでても飽きない!柔らかいこの感触!最高だ!)モミモミ 京太郎(おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい)モミモミモミモミ 久(も、だめ…。我慢の、んっ…限界…よ) 京太郎(おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい!!)モミモミモミモミ! 久「ひゃっ!~~~~~~ッ!?」ビリビリビリビリッ‼ 和「今ベッドの方から部長の声が…」 咲「そ、そうだ!私すごく喉乾いてるんだったよ!原村さん、一緒に飲み物買いに行こう!」ギュッ 和「え、ちょっと宮永さん?そんなに手をひっぱらないでください///」ズルズル まこ「そ、それにしも京太郎は遅いのぉ!優希、一緒に飲み物でも買いに行かんか!?」 優希「私は京太郎を…」 まの「よしよしわかったわかった!そいじゃはよう行こう!」ギュッ 優希「ちょ、ちょっと待つじぇ!」ズルズル バタン、シーン シャー! 久「ハァハァ…、す、すごかったわ…」 京太郎「ぶ、部長…///」 久「と、とりあえず須賀くんはベッドを直しておいて!わ、私は少しトイレでいろいろと直してくるから…」 京太郎「は、はい!」 久「いい!間に和たちが戻ってきたら適当にごまかすこと!」スタスタ!ガチャ 京太郎「わかりました!」 京太郎「…」 京太郎「すごかったな…///」 ガチャ 優希「ただいまだじぇー」 京太郎「…」ボーッ 優希「あぁ!京太郎、貴様いつの間に戻ったじぇ!」 京太郎「…あ、タコス。それに染谷先輩も」 まこ「久のやつはどーしたんじゃ?」コソコソ 京太郎「髪とかが乱れたから直してくるって言ってトイレに行きました」コソコソ 優希「二人ともなんの話してるんだじぇ?」 まこ「こっちの話しじゃ。それよりもおんしは京太郎に言わんといけんことがあったじゃろ?」 京太郎「?」 優希「うぐ…」 京太郎「どうしたんだ、優希?」 優希「い、犬!…じゃなくてきょ、京太郎!」 京太郎「なんだよ」 優希「さっ、さっきは急に怒ったりして、その…」モジモジ 京太郎「?」 優希「だから、えーと…。ごめんなさいだじぇ…」 京太郎「さっきのって俺が勝ってお前が出て行ったことか?」 優希「そうだ!いつも京太郎なんかに負けないから悔しくて…」 京太郎「なんだ、そんなことかよ…」ハァー 優希「そ、そんなことって」 京太郎「別に気にしてねーよ。お前がわがままなことなんていつものことだろ?らしくないぞタコス」ナデナデ 優希「な、京太郎のくせに生意気だじぇ!」 京太郎「あーはいはい、急に元気になりやがって…」 まこ「おーおー、京太郎はたらしじゃのぉー」ニヤニヤ 京太郎「な!?そんなんじゃないですよ!」 まこ「そうかのぉー?」ニヤニヤ 咲「ただいまー」ガチャ 和「戻りました。須賀くんも戻ってきてたんですね」 京太郎「お、おう。染谷先輩たちより一歩はやくな」 和「優希、ちゃんと謝りましたか?」 優希「もっちろんだじぇ!」 和「そうですか。良かったですね、優希」ニコッ 和「部室に戻る途中で泣きそうな顔で須賀くんに嫌われたら」 優希「の、のの、のどちゃん!そこまでだじぇ!」ガバッ! 和「きゃ!ちょっと、優希!」 ワーキャー! 咲「京ちゃん終わったの?」コソコソ 京太郎「ああ、打ち方っていうのか?あれが移ったかはわからないけどな」コソコソ 咲「そうなんだ…。やっぱり揉んだんだね京ちゃん…」 ガチャ 久「みんな揃ってるみたいね」 まこ「久、遅かったのう」 和「ハァハァ…、そ、そう言えば部長はそこのベッドで寝てたんじゃ…?」 久「あなたたちが出て行った後くらいに起きてね。少し外を歩いてたのよ」 和「そうなんですか。体調のほうは?」 久「まあ、ぼちぼちってところね」 久「せっかくみんなが集まってるけど.もうあまり時間がないから今日は解散にするわ」 まこ「お、そう言えばもうけっこうな時間じゃのう」 和「仕方ありませんね。宮永さん、優希、途中まで一緒に帰りましょう」 咲「あ、うん!京ちゃんも一緒でいいよね?」 和「もちろんです」 久「咲、悪いけど少し須賀くんを借してくれるかしら?」 咲「さっきのことですか?」コソコソ 久「ええ、今日は時間がないから確かめられないけど少し話しをしておきたくて」コソコソ 咲「わかりました。京ちゃん、早く追っかけてきてね!」ガチャ 和「それでは」 優希「また明日だじぇ!」 まこ「久、校門のところでまっとるけぇーのう」バタン 京太郎「俺の人権は無視ですか…」 久「フフッ…。須賀くん、さっきのことだけど…」 京太郎「えっと、さっきのことって言うのは…」 久「トボけなくてもいいじゃない…。私の胸、揉んだでしょ?」ズイッ 京太郎「ぶ、ぶぶ部長!近い!近いです!」 久「さっきはあんなに鼻息を荒げて私を求めてくれたのに…」 京太郎「な!?」 久「ねぇ、須賀くん、違うわね…京太郎くん?」 京太郎(し、下の名前で!?) 久「ふふっ、意外としっくりくるわね」ギュ 京太郎(あばばばば…) 久「京太郎くん…、私、さっきからなんだかおかしいの…」 京太郎「」 久「なんだか身体の奥が熱くて、それに…」 京太郎「」 久「京太郎くん…?」 京太郎「」 久「あなたはどうなの?」 京太郎「」 久「私は、もう我慢できないわ…」 京太郎「」フラッ… 久「もう、急に倒れるとは思わなかったわ」 京太郎「部長があんな演技するからでしょ!」 久「あれくらいすぐに演技って見抜いて欲しいところね」 京太郎「うぐっ…」 久「時間とっちゃったわ。用件だけ手短に言うわね」 京太郎「用件?」 久「あなたを残した用事よ…。須賀くん、明日まで誰の胸も揉まないでね」 京太郎「えーと、どういうことですか?」 久「私の推測でしかないのだけど…。あなたの力が本物なら他人の胸を揉むことで前の人のが上書きされる可能性もあるわ」 京太郎「上書き…」 久「ええ。とりあえず今日の結果は明日確かめるから、その間に誰かの胸を揉まれると困るのよ」 京太郎「いや、さすがにないですよ…」 久「わからないわよー。昨日は咲、今日は私ときてるんだから明日の部活までに優希の胸を揉むことがあるかもしれないわ」 京太郎「いや、優希のおっぱいとかなおさらあり得ませんよ」 久「フフッ、まあないならないでそれでいいわ」 久「さて、これ以上まこを待たせるのも悪いから帰りましょうか」 京太郎「そうですね。俺も早く行かないとですし」 校門 まこ「おお、来おったか」 優希「京太郎、遅いじょ!」 京太郎「あれ、優希?咲たちと帰ったんじゃなかったのか?」 優希「ふっ、飼い犬を待ってやるのもご主人様の勤めだじぇ…」 京太郎「はいはい」 久「まこ、ごめんなさい」 まこ「別にかまわんよ。それよりなにしとったんじゃ?」 久「そんなにたいしたことじゃないわ」 まこ「気になるのう…」ニヤニヤ 久「もう、ほんとにたいしたことじゃないわ」 久「須賀くん、それじゃあね」 京太郎「お疲れ様です、部長、染谷先輩」 優希「また明日だじぇ!」 まこ「それじゃあの」 優希「よし!帰るぞ犬!」 京太郎「わかったから引っ張るなよ…」 帰り道 京太郎「咲と和追いかけなくていいのか?」 優希「二人ともたぶんもう相当遠くに行ってるじょ」 京太郎「んー、そうかぁ?」 優希「そうだじょ。それよりせっかくこの私と二人なのに他の女の話とはどういうことだ!」 京太郎「別にどうとも思わねえけど?」 優希「なんだとー!!」 京太郎「それよりなんで俺のこと待っててくれたんだ?」 優希「!…べ、別に。京太郎が一人だと寂しいと思っただけだじょ」 京太郎「へー、そうなんだ」 優希「…」 京太郎「…」 優希「…ってそれだけか、犬ゥ!」グワッ! 京太郎「どわぁ!?それだけってなんだよ!どうしろっていうんだよ!?」 優希「普通はもっと他になにかあるじょ!せめてありがとうくらい言えのが礼儀ってもんだじぇ!」 京太郎「そんなの知るかよ!つーかなにきれてんだ!?」 優希「グルルルルル…」 京太郎「な、なんだよ…」 優希「…女心のわからんやつだじぇ…」 京太郎「はぁ?」 優希「ここまでだじぇ」 京太郎「ん、そうだったな。じゃあな優希」 優希「ちょっと待つじぇ!」 京太郎「…なんだよ?」 優希「今日はほんとにごめんだじぇ…」 京太郎「なんだ、まだ気にしてんのかよ。さっきも言ったけど俺は全然気にしてないから安心しろ」 優希「ほんとか…?」 京太郎(あれ、なんか優希のやつ可愛くないか?) 京太郎(いつもは強気なのに今日はすごくしおらしくて…) 優希「京太郎…?」 京太郎(ヤバい、すっげー優希が可愛く見える…。いつもタコスばっか食ってるタコス女のはずなのに…) 優希「どうかしたのか…?」 京太郎(おっぱい…) 優希「京太郎、しっかりするじぇ!」 京太郎「ハッ!」 優希「大丈夫か…?」 京太郎「あ、あぁ、大丈夫だ。心配かけてすまん」 優希「どうしたんだじぇ?急に黙ったりして」 京太郎「いや、ほんとになんでもないから気にすんな!ほら、俺こっちだからそろそろ行くわ!じゃあな!」 優希「あ、京太郎!」 京太郎「…」ドヒューン! 優希「いっちゃったじぇ…」 京太郎「さっきはマジで危なかったぜ…」 京太郎(急に優希の野郎が可愛くて見えて俺は…、俺はあいつを…) 京太郎「ほんとギリギリだったな…」 京太郎(うぅ…、でもどうする。優希のせいでこの前のモヤモヤが…) ?「あっ、京ちゃん!」 京太郎(なんで咲がここにいるんだよ…) 咲「先に帰ってごめんね。でもどうしても京ちゃんと話しておきたくて…」 京太郎(咲…) 咲「えーと、その、さっき部室で部長と話してたことなんだけど…」 京太郎(咲のおっぱい…)ハァハァ 咲「二人だけでなんの話してたのかなーって…、京ちゃん?」 京太郎(これもう揉んじゃってもよくね?) 咲「京ちゃん…、もしかしてまたなの?」 京太郎「…すまん、咲」ギュッ 咲「きゃっ!?ちょっと、京ちゃん…いきなり抱きつかないでよ///」 京太郎「ダメだ。我慢できそうにない」サワサワ 咲「んっ…。京ちゃん、いったいどうしたの…?」 京太郎「優希を襲いそうになった…」フニョンフニョン 咲「ふわぁ、それで、逃げて来たの?」 京太郎「…」モミモミ 咲ふっ、優希ちゃんは襲わないのにんっ…、私のことは迷わずに襲うんだね…」 京太郎「咲…咲…」モミモミ 咲「フフッ、良いよ。京ちゃん…」ビリビリビリビリ 京太郎「ハァハァ、咲ィ!」 咲「京ちゃん!ん~~~ッ!!」ビリビリビリビリ‼ 咲「ハァハァ…。落ち着いた?」 京太郎「咲…。ほんとにごめん…」 咲「ほんとに京ちゃんはバカだよね。急に女の子を抱きしめて胸揉んだら捕まるよ、普通」 京太郎「はい、ほんとにすいません。反省してます」 咲「私だったからいいけど…」ボソッ 京太郎「?」 咲「とりあえず!京ちゃん、絶対に他の人を襲ったりしちゃダメだからね!」 京太郎「わかってはいるんだけどな…」 咲「2日で2回はさすがにヒドいよ」 京太郎「ごめんなさい…」ズーン 咲「やっぱりなんの前触れもなくその、モヤモヤしたりするの?」 京太郎「んー、前触れもなくっていうか今回は優希を見てたらなんだか無性におっぱいが揉みたくなって」 咲「京ちゃん、次からそんなことになった時はすぐにそこから離れること!わかった?」 京太郎「はい…」 咲「ど、どうしてもって言う時はわ、私が…///」 京太郎「私が?」 咲「///…、その、京太郎を止めてあげるから!」 京太郎「お、おう。よろしく頼むぜ」 咲「うん///」 咲「と、とにかくこの話はおしまい!京ちゃん、部長とあの後なにしてたの?」 京太郎「ずいぶんと強引に話変えるなぁ。部長と話したことって言われてもそんな多くないぞ?せいぜい明日の部活までに…」 咲「明日の部活までに?」 京太郎「あ」ピシッ 咲「どうかしたの?」 京太郎「俺、明日の部活までおっぱいもんだらダメなんだった」 咲「…」 京太郎「…」 咲「京ちゃん?」ニコッ 京太郎「はい、なんでしょうか姫」 咲「どうする気なの?」 京太郎「…どうしょっか?」 咲「はぁー…。ほんとにどうするの、京ちゃん」 京太郎「ま、まあ、明日になったらなにかおもいつくだろ!」 咲「典型的なダメなパターンだよ」 京太郎「とりあえず今日は帰るわ…」 咲「…そうだね。それじゃあまた明日ね、京ちゃん」 京太郎「あぁ、また明日学校でな」 ガサガサ! 優希「きょ、京太郎を追いかけてきたらす、すごいの見ちゃったじぇ…」 優希「京太郎が、さ、咲ちゃんを…///」 翌日 京太郎「どうしよう…」 京太郎「いや、やっぱまずいよな」 京太郎「なんとかして部長をごまかす方法」ウーム… 咲「おはよう、京ちゃん!」 京太郎「ああ、おはよう」 咲「けっきょくどうするか思いついてないの?」 京太郎「いやー、俺が部長に似せて打った程度じゃ絶対納得しないだろうし、かと言って黙っとくと後が恐いだろ…?」 咲「そうだねー」 京太郎「なんでそんなに軽いんだよ」 咲「大丈夫だよ、京ちゃん。きっとなんとかなるから」 京太郎「なんで、断言できるか教えて欲しいもんだな」 咲「んーとね、女の勘ってやつかな?」 京太郎「お前みたいなちんちくりんに女の勘ねぇ…」 咲「なっ…」 和「おはようございます」 京太郎「おっと。おはよう、和」 咲「むー…。おはよう、原村さん!」 京太郎「優希は一緒じゃないのか?」 和「ええ。呼びに行ったんですけど先に行ったみたいで…」 京太郎「あいつが早起きして、学校に行く…?」 和「私も少しおかしいと思ってます。昨日別れるまではいつも通りだったんですけど…」 和「そう言えば、優希は須賀くんを待っていたんでしたね…。須賀くん、優希と何かあったんですか?」ジトーッ 咲「…」ジーッ 京太郎「い、いや、とくに何もなかったけどなー」 和「…」 和「そうですか。学校には行ってるみたいなので話はあの子から直接聞きましょう」 咲「そうだね、それがいいよ!」 京太郎「うぐっ…」 昇降口 和「それではお昼休みに」 咲「うん!優希ちゃんをよろしくね」 和「わかりました」 咲「…ねえ、京ちゃん。ほんとに優希ちゃんには何もしてないんだよね?」 京太郎「さすがにあいつにまで手はださねぇよ…」 咲「うん、それならそれでいいんだけど」 京太郎「?」 咲「あ…、ご、ごめん京ちゃん!ちょっとトイレ行ってくる!///」 京太郎「咲のやつ…。ん、下駄箱になんか入ってる?」ガチャ 京太郎「手紙?」 京太郎(お、落ち着け俺!下駄箱に手紙=ラブレターなんて安直な発想だ! そうだ、とりあえず差出人を!差出人を確認するんだ!) 京太郎「表にも裏にも書いてない…。しかも文面」 『昼休みに体育館裏で待つ』 京太郎「簡潔すぎるわ!」 京太郎(いや、待てよ。簡潔だからこそラブレターという可能性が残るのでは?てか、今のところラブレターの可能性が最大?) キーンコーンカーンコーン 京太郎「とりあえず昼休みに体育館裏に行けば誰が出したかわかるか…」 ?「…」ジーッ 昼休み 咲「京ちゃん、お昼ご飯行こう」 京太郎「あー…、悪いんだけど先生に呼ばれてるから先に行っててくれるか?」 咲「またなんかやったの…?」 京太郎「アホか。ふつーに呼ばれただけだ」 咲「そっか。じゃあ先に食べてるからね!」 京太郎「おう、間に合うかわからんから俺のことはあんまり気にしないでくれ」 咲「はーい!」 京太郎「…行ったか」 京太郎「そろそろ俺も行こうか」 体育館裏 京太郎「…さて、俺を呼び出したやつは」 ?「遅い!」 京太郎「お、お前は!」 優希「京太郎、3分遅刻だじぇ」 京太郎「…お前かよ。ドキドキして損したぜ」 優希「むっ…」 京太郎「どうしたんだよ。和が昼飯に誘ったんじゃなかったのか?」 優希「京太郎、私はお前に話があるんだじぇ」 京太郎「?なんだよ」 優希「昨日…」 京太郎「昨日?ああ、先に走って帰ったことか?あれは悪かった…」 優希「違うじぇ!」 京太郎「!…じゃあなんなんだよ」 優希「あの後のことだ。私はお前の後について行ったんだじぇ」 京太郎「な!?」 京太郎「…見てたのか?」 優希「見てた」 京太郎「どっからだ」 優希「最初っから最後まで全部!」 京太郎(やべー…。ってことは優希のやつに俺が咲のおっぱいを触りまくってたとこ見られてたってことだよな…) 優希「京太郎…」 京太郎「は、はい!」 優希「京太郎は、咲ちゃんと付き合ってるのか?」 京太郎「え!?」 京太郎(てっきり問答無用でぶん殴られるんだと思った…。それよりこの質問どう答えたらいいんだ?) 優希「…」 京太郎(YESって答えるとあとあとまずい。かと言ってNOって答えると彼女でもない女の子のおっぱいを触りまくった変態…) 京太郎(あれ、俺今の時点でも変態じゃね?) 優希「京太郎!」 京太郎「うっ、その、あれはだな…」 優希「やっぱり、京太郎と咲ちゃんは…」グスッ 京太郎「な、なんで泣いてるんだよ!?」 優希「だって…、京太郎と咲ちゃんは付き合ってるんだろ…?」 京太郎(ああ!もう、どうにでもなれ!) 京太郎「違うんだ、優希。あれには理由があって…」 優希「理由って…?」グスッ 京太郎「話せば長くなるけど…」 説明中 優希「…それで、発作的におっぱいが揉みたくなったから私から逃げたってことか?」 京太郎「ああ、その途中で咲に会ってさ。一回やってるからなんか抵抗とかなくそのままってわけなんだけど…」 優希「信じられないじょ!」 京太郎「ですよねー…」 優希「…だが、京太郎が昨日部活で強かったのは事実。咲ちゃんの打ち方をコピーしてたなら、 私が犬如きに負けたのも納得できるじぇ」 京太郎「はいはい」 優希「…むー」 優希「よし、犬!」 京太郎「なんだよ?」 優希「きょ、今日は特別に私の胸をさ、触らしてやるじょ!///」 京太郎「へ!?」 優希「京太郎はほっておくとすぐに女の胸を触るど変態の駄犬! だから、ここは京太郎の飼い主として私が餌を与えるのがスジってもんだじぇ!」 京太郎「いや、でもな…」 優希「遠慮するな!貴様のその欲望、私が全て受け止めてやるじぇ!」 京太郎(いや、昨日咲の触ったし咲よりぺったんこなお前じゃ興奮しない… 京太郎(待てよ。俺がおっぱい触ると力が抜けるって咲が言ってたな…) 京太郎(昨日のしおらしいこいつは可愛かったしな…。試してみるか) 優希「さあ、犬!はやくくるじぇ!」 京太郎「そうかぁー、じゃあ遠慮なくいかせてもらおうかなー」ニヤニヤ 優希「いつでもいいぞ!」 京太郎「じゃあ、いくぞ」スッ 優希「んっ…」 京太郎(やっぱりほとんど感触がないなー。いや、でも先端の感触はあるか)サワサワ 優希「ふ、ふわぁ…、きょうたろぉ」 京太郎(わかってたけどブラつけてねーのな)スッ 優希「だ、だめぇ、ハァハァ…///」 京太郎(咲と部長より感度良いのかすっごい顔とろけてる…。これは、エロいな)スリスリ 優希「きょ、きょーたろぉ、す、とっぷだじぇ…///」 京太郎「何いってんだよ優希。ここからだろ?」サワサワ 優希「ひゃぁん!?い、今は、これ以上…!」 京太郎(なんかすごい冷静だな。これが慣れってやつか…。優希も辛そうだし昼休みも終わりだしそろそろ終わりかー)サワサワ 優希「ふっ、ふわぁああっ、あっ、あっ…///」ビクッビクッ 京太郎「ん、大丈夫か、優希?」 優希「きょーたろー…?」ボーッ 京太郎「立てるか?」 優希「ダメって言ったのに…」 京太郎「へ?」 優希「京太郎の、バカぁぁあああああああああッ!!」 京太郎「へぶっ!?」ズガンッ! 京太郎「な、なんで…?」ガクッ 教室 京太郎「…」 咲「あ、京ちゃん。どこいってたの?」 京太郎「いや、いろいろあってな…」 咲「ずいぶんやつれてるね」 京太郎「まあな、はぁー…」 咲「そうだ、昼休み優希ちゃんいなかったんだよ。原村さんも気がついたらいなくなってたって…」 京太郎「あー、あいつなら大丈夫だとおもうぞ」 咲「どうして?」 キーンコーンカーンコーン 京太郎「っと、授業始まるな。また後でな」 放課後 咲「京ちゃん、部活行こ?」 京太郎「うー…、憂鬱だ」 咲「きっと大丈夫だよ」 京太郎(ヤバいな、このままじゃ優希のおっぱい揉んだのがバレる…) 京太郎「そう言えば咲の言ってた感覚っていうのはまだ俺の中にあんの?」 咲「んー、私もよくわかんないけどあると思うよ?」 京太郎「いいかげんだなー」 咲「うまく説明できないんだよね…」 京太郎「話して間についたな…」 咲「入らないの?」 京太郎(もうどうにでもなれ…) 京太郎「こんにちはーっす」ガチャ 咲「こんにちはー」 久「いらっしゃい二人とも」 まこ「遅かったのう」 咲「原村さん、優希ちゃんは?」 和「それが…、今日はタコスの新メニューを探すと言って帰ってしまって…」 咲「そっか…」 久「あの娘が部活をさぼるねぇ…」チラッ 京太郎「…」 久「まあいいわ、今日も部活始めまししょうか。まずは和、まこ、咲、須賀くんが入って」 和「はい」 京太郎(やべー、やべーよ…) 東一局 親 京太郎 ドラ4 京太郎(優希っぽい打ち方になるなら東場はやっぱかなり強いのか?) 一 一 赤五 六 七 4 6 7 ② ⑥ ⑨ 東 西 ⑦ 京太郎(これって良配牌なのか?ま、とりあえず)打 西 咲(うーん…、京ちゃんが私と同じだとやっぱり嶺上牌取られちゃうのかな…) 二 七 八 2 3 3 7 ④ ⑨ ⑨ 南 北 中 六 打 北 まこ(さてさて、久の打ち方ならわしもよーみとるからのう…。京太郎に注目じゃな) 三 八 1 6 9 ① ③ ④ 赤⑤ ⑦ ⑨ 東 白 九 打 1 和(予選まであと少し、一局一局を大切にしていきましょう) 五 六 八 九 6 9 ⑦ ⑧ 南 西 西 發 發 中 打 南 四巡目 京太郎(止まることなく手が進んで一気に平和、三色、ドラ2聴牌…) 一 一 赤五 六 七 4 5 6 7 9 ⑤ ⑥ ⑦ 3 京太郎「リーチ!」打 9 咲(速い…。しかも私じゃなくてなんとなく優希ちゃん?みたいな気がするよ…)打⑨ まこ(うーむ、ここは様子見じゃのぉ)打⑨ 和(一向聴ですがとりあえず様子見)打9 京太郎(もしこれが優希の力ならこのツモはたぶん…)スッ 京太郎「…ツモ。リーチ一発メンピンドラ2。6000オール」 一 一 赤五 六 七 3 4 5 6 7 ⑤ ⑥ ⑦ 8 咲まこ和久「「!?」」 京太郎(三色乗ってたら倍満…。これは間違いないな) 咲(やっぱりだよ…、今のアガり方) まこ(これは久というよりは) 久(優希ってかんじね…。須賀くんにも困ったもんだわ)ハァ 和(なかなかの偶然ですね) 東一局一本場8巡目 ドラ一 一 一 一 二 七 八 2 3 4 8 8 ② ③ ① 京太郎(聴牌、役なしだけどドラ3か…。ここはいくところだろ!) 京太郎「リーチ!」打 二 咲(優希ちゃんの胸揉んだのいつなんだろ…?昨日最後に会ったのは私だよね…。 それじゃあ学校?お昼休みに優希ちゃんと京ちゃんがいなかったのってそういうこと?)モンモン 打 六 京太郎「ロン!12300だ」 咲「…え?」 久(あらあら…) 和「宮永さん、ぼーっとしてましたけど大丈夫ですか?」 咲「え、あ、うん!大丈夫大丈夫、12300だよね。はい、京ちゃん」 咲(全然きがつかなかったよ…) 咲(そうだよね。とりあえずこの半荘を終わらせて、京ちゃんに直接聞けばいいんだよ。そのためには…)ゴッ 東一局二本場13巡目 ドラ東 一 一 二 三 四 七 七 八 八 東 東 東 北 六 京太郎(なんつーバカヅキだよ。ー盃口までつけば十分に三倍満まで見える手牌か。 捨て牌はもろ染め手だし出アガりは期待できない) 京太郎(他に聴牌ってそうなのは咲くらいか?和もかもしれんがドラは抑えてるしそう高くはないはず!) 京太郎「リーチ!」打 北 咲「槓」 京太郎「へ?」 咲「もういっこ槓」スッ 咲「ツモ。嶺上開花、タンヤオ、トイトイ、三暗刻、赤。責任払いで16600です」ゴッ! まこ「でたのう…」 咲(あいかわらずの偶然です) 京太郎「」 咲「ふふっ、すぐに終わらせて話を聞かせてもらうからね、京ちゃん」 京太郎「」 久(これはいい方向に進んでるのかしら?) 咲「槓、嶺上開花」 咲「槓、もいっこ槓」 咲「麻雀って、楽しいよね!」 京太郎「」 まこ「」 和「染谷先輩のトビで終了ですね。お疲れ様でした」 久「あらー…、咲が絶好調ね」 咲「そんなことないですよ。ね、京ちゃん?」ニコッ 久「そうねー、今日の須賀くんの東場での活躍はなかなか見所があったわ」ニコッ 京太郎「」 和「次の半荘はどうしますか?」 久「うーん、私は須賀くんにちょーと話があるんだけど…」 和「二人が抜けるとメンツがたりませんね」 久「まこ、代わってくれるかしら?」 まこ「別に構わんが?」 久「ありがと。さぁて、須賀くん?続けましょうか」 京太郎「」 和「時間もありませんから、早く次にいきましょう」 咲「京ちゃん、麻雀って楽しいよね?」 京太郎「」チーン 咲「あー、楽しかった」 久「そうね、久しぶりに全力で打ったわ」 和「ええ、なかなか濃い部活でした」 まこ「たしかに今日はのびのび打てたのお」ニヤニヤ 京太郎(搾り取られた…)プルプル 久「須賀くんお疲れ様!」 咲「京ちゃん頑張ったね!」 久「悪いんだけどちょーとこのあと時間もらえるかしら?」 咲「大丈夫だよ。なにもしないから」ニコッ 京太郎「はい…」 和「宮永さん」 咲「原村さん、悪いんだけど今日は先に帰ってもらってもいいかな?」 和「何か事情があるんですね。わかりました、それではまた明日」 咲「うん、また明日ね!」 まこ「わしは下で待っとるからのお」ガチャ 久「わかったわ。できるだけすぐに行くわ」 久「須賀くん、話しをしましょうか」 咲「なにがあったの、京ちゃん?」 京太郎「いや、ほんとすんませんでした…」 久咲「説明」 京太郎「はい…」 咲「昼休みにそんなことがあったんだ…」 久「須賀くん、あなたねぇ…」 京太郎(なんとか昨日の時点で咲のおっぱいを揉んでたのは誤魔化せた…) 京太郎「でも待ってくださいよ!優希のおっぱい揉んだのは一概に俺のせいとは言えませんよ!」 久「まあ、たしかに今回は優希にも注意される点もあるわね」 京太郎「そ、そうですよ!つーか今回は、っていうかこの前の部長の時も」 咲「京ちゃんは黙っててね?」 京太郎「」 咲「京ちゃんは優希ちゃんから逃げようと思えば逃げられたよね?」 咲「ねえ、どうなの京ちゃん?」 京太郎「いや、たしかに逃げられたけど…」 咲「ふーん…。じゃあやっぱり京ちゃんは優希ちゃんの胸が触りたかったんだね」 京太郎「逃げられたけどその場の雰囲気というかあのまま逃げてもあとが怖いし…」 咲「言い訳は聞きたくないよ、京ちゃん」 京太郎「す、すいません」 久「まあまあ、咲も落ち着いて。須賀くんも反省してるしそこまでにしといてあげなさい」 咲「…」ツーン 久「須賀くんも須賀くんだけど今回は優希も悪いわ。 それに、私の打ち方がコピーできてたのかはわからないけど優希のほうでデータも取れたわ」 京太郎「データ、ですか…」 久「ええ。須賀くんの力はまだよくわからない点が多いわ、 けど少なくとも胸を触れば触った相手の打ち方をコピーできるっていうのはわかった」 京太郎「力ってそんな大層な」 久「いいえ、これは力よ。咲の嶺上開花や優希の東場の火力のようなもの。 まあ、和に言えばオカルトの一言で切り捨てるでしょうけど」 咲「でも、京ちゃんのそんな力を調べてどうするんですか?」 久「ふふっ、いい質問ね。私はね、須賀くんの力に気がついた昨日のあの後にすごいこと思いついちゃったの」 京太郎「思いつき、ですか?」 久「須賀くん、あなたの力はものすごいポテンシャルを秘めているわ」 京太郎「…」 久「相手の胸を揉めばそれだけで相手がどんな打ち方がコピーできる、これがどういうことかわかる?」 京太郎「えーっと、強くなれるってことですか?」 久「それもあるけど、私が言いたいのはあなたの偵察能力よ」 咲「偵察?」 京太郎「部長、まさか…」 久「私が言いたいことわかった?」 京太郎「…俺が、他校の麻雀部員のおっぱいを揉む…?」 久「正解よ」ニコッ 咲「」 京太郎「ちょっ、ちょっと待ってください!」 久「あら、なにか問題があるかしら?」 京太郎「問題大有りですよ!?」 久「須賀くん、もうすぐ大会なのはわかってるわね?」 京太郎「わかってますよ!」 久「大会まで時間がないなかで相手チームの詳細な打ち方かを偵察するのは、普通ならかなり難しいわ」 久「けれど、あなたの力を使えば少なくとも相手のエースの詳しい打ち筋を知ることができるの」 京太郎「いや、理屈はわかりますけどそれって俺が見ず知らずの女の子のおっぱいを揉むってことですよね!?」 久「そうなるわね」 京太郎「無理ですよ!」 久「やらない前から決めつけるのは須賀くんのよくないところよ?」 京太郎「今それ関係ないですから」 久「ふぅ、いったいなにが不満なの?他校の女の子の胸を揉んでもいいって言ってあげてるのよ?」ヤレヤレ 京太郎「揉んだら捕まりますから!」 久「須賀くん」 京太郎「なんですか…」 久「私はね、今年が最後のIHなのよ…」 京太郎「…」 久「最初の一年は一人で、二年目にまこが来て、そして今年になって和、優希、須賀くん、 そしてあなたが咲を連れて来てくれた。ようやく…ようやくIHにでられるようになったの」 久「でも長野には名門の風越があるわ。それに、その風越を去年倒した龍門渕も…」 久「私はもっとみんなと麻雀を打ちたい。とっても今が楽しいのいつまでもこのメンバーで打ち続けたいくらいに」 京太郎「部長…」 久「そのためには相手の情報がいるわ。協力してくれるわね、須賀くん?」ニコッ 京太郎「それとこれとは話が別ですよ」 久「チッ…」 京太郎「はぁー、諦めてくださいよ部長…。そんなことしなくても咲や和や優希、染谷先輩、それに部長なら勝てますよ」 久「強情ね…」 京太郎「そりゃそうですよ、やったら捕まりますから!」 久「須賀くんならなんだかんだでなんとかなりそうだけど」 京太郎「買いかぶりすぎですから!」 久「しょうがないわねぇ…。私もこのカードは切りたくなかったんだけど…」 京太郎「はい?」 久「咲は…」 咲「」 久「大丈夫ね。まだしばらく戻ってきそうにないわ」 京太郎「なにを企んでるんですか…」ジトーッ 久「須賀くんには頑張ってもらわないと困るのよ。だから頑張ったらご褒美をあげようと思って」 京太郎「ご褒美…」ゴクリッ 京太郎「ってなると思ったんですか?あいにくですけどなにがあっても俺は行きませんからね!」 久「…のおっぱ…」 京太郎「!?ぶ、部長、今なんか言いましたか!?」 久「あら、思わずご褒美の内容が口から零れたみたい。でも須賀くんはなにがあってもいってくれないのよね、残念だわ…」 京太郎「部長、もう一回ご褒美の内容を」 久「行かないんでしょう?」 京太郎「少し気が変わりました。もしご褒美の内容が俺の聞き間違いでないなら…」 久「ふふっ、しょうがないわねぇ…。一回しか言わないからよく聞きなさい」 京太郎「…」ゴクリ 久「…おっぱい」 京太郎「…」 久「和のおっぱいを触らせてあげる、これがご褒美よ」 京太郎「!?」 久(堕ちたわね) 京太郎「そんな、そんなことが許されるんですか…!?」 久「もちろん、須賀くんが自分の仕事を完全にまっとうできたときだけよ?」 京太郎「もし風越と龍門渕のエースが偵察できれば和のおっぱいを!?」 久「ええ、私があらゆる手段でそれを可能にするわ」 京太郎「」 久「今決めろとは言わないわ。そうね、明日の放課後に返事を聞かせてちょうだい」 京太郎「は、はぁ…」 久「それじゃ私は帰るわね。良い返事を期待してるわ、京太郎くん♪」ガチャ 京太郎「…」チラッ 咲「」 京太郎「とりあえず咲を起こして帰るか…」ハァー 下校 京太郎(偵察にいけば和のおっぱいを揉みしだくチャンスがある…!) 京太郎(けど、偵察にいくってことはつまり俺が見ず知らずの 女の子のおっぱいを揉むってことで、そんなことしたらもちろん俺は…) 京太郎「どうすりゃいいんだ…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎(捕まるリスク…、果たして和のおっぱいにそれほどの価値があるのか?) 京太郎(俺はここ数日間で3人もおっぱいを揉んだ…、そろそろ潮時じゃないのか?) 京太郎(そうだよ。麻雀でも大量に稼いだらあとは手堅く守るもんだ。やっぱりここは…) 咲「…ねえ、京ちゃん」 京太郎「なんだ?」 咲「…やっぱり、なんでもない」 京太郎「変なやつだな」 咲「…」 京太郎「あのさ、逆に聞きたいんだけど咲なら、安全なまわり道と危険な近道ならどっち選ぶ?」 咲「…京ちゃんがどっちに行きたいかによる、かな?」 京太郎「俺がどっちに行きたいか?」 咲「うん。京ちゃんがどっちの道にほんとに行きたいのかが一番大事だとおもう」 京太郎「俺の行きたい方か…」 咲「私はね、今は自分かほんとに打ちたいから麻雀をやってるの。 子供の頃とも、京ちゃんに連れて来られた最初の頃とも違う」 咲「私は麻雀を打つのが楽しいからこうやって今も清澄高校麻雀部のいるんだよ!」 京太郎「…」 咲「だから、京ちゃんが好きな方を選べばいいよ。京ちゃんが偵察に行ってくれたら そのぶんグッと優勝に近づくし、行かなくても私が全部倒すから」ニコッ 京太郎「咲…」 京太郎(俺の、本当にやりたいこと) 京太郎(おっぱい…) 京太郎「咲のおかげで目が覚めたぜ」 咲「うん」 京太郎「悪いけど先帰るわ。いろいろ準備もしないとだめだからな」 京太郎「じゃあな、咲!」ダッ 咲「また明日ね、京ちゃん」 咲「行っちゃった…」 咲「うぅ、失敗したよぉ…」 咲「京ちゃんに行かないでって言うつもりでしゃべりかけたのに、京ちゃんの顔みてたら応援したくなって、それで、それで…」 咲「ハァー…、あんまり無茶しちゃダメだよ、京ちゃん…」 翌朝 コンコン 「いるわ、入ってきなさい」 京太郎「失礼します」ガチャ 久「おはよう、須賀くん」 京太郎「おはようございます、部長」 久「ずいぶん今朝は早いのね。私がいなかったらどうするつもりだったのかしら?」クスッ 須賀「部長ならいてくれると思ってましたよ」 久「ふふっ、それで、どうするかは決まったのね?」 京太郎「俺は、他校の偵察に行きます!」 久「そう。やることはわかってるの?」 京太郎「なんとかして相手のエース、レギュラーのおっぱいを揉む!」 久「そのとおりよ。須賀くん、いい顔になったわね」 京太郎「咲に励まされましたから…。俺は自分のやりたいことを全力でやります!」 久「わかったわ。もうずく学校が始まるから詳しい話は放課後にするわね」 京太郎「はい!」 放課後 久「今日は全員揃ってるわね。みんなに話があるわ」 和「なにについてですか?」 久「県予選に向けての話し合いよ」 まこ「県予選にむけてなにをするんじゃ?」 久「ええ、私たちは今度の休みを使って強化合宿をしようと思うの」 優希「合宿?」 久「旅館をとってあるからそこでみんなの弱点克服をするわ」 優希「おお、それはすごいじぇ!喜べ犬、美少女の私と旅館に行けるぞ!」 京太郎(タコスのやつ、一日たったら元どおりかよ…)ハァー 久「優希、須賀くんは別行動よ」 和「別行動、ですか?」 久「須賀くんには他校、特に風越と龍門渕の偵察にいってもらうの」 咲「…」 まこ「偵察のぉ。結果はみこめるんじゃな?」 久「もちろんよ。須賀くんにはもっといろんな人の打ち方をみてもらいたいから、丁度いいと思ってね」 久「みんな、絶対に県予選勝つわよ!」 京咲ま優和「「とうぜん(です)(じぇ)(じゃ)!」」
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357308226/ 京太郎「部長、聞いて下さいよ。生まれて初めて彼女が出来ましたよー」 久「あら、そうなの?おめでとう」 京太郎「いやー、毎日が楽しくて楽しくて。もー」ワハハ 久「優希?咲?」 京太郎「あんな幼児体型のお子ちゃま達じゃないっすよ。俺の彼女は。ボインボインです」 久「まさか…、和と!?あの子、レズじゃなかったんだ」 京太郎「いえいえ違います。あれはガチです。ガチ。男に興味ないっす」 久「じゃあ…まこね。まぁ、ボインボインではないけど普通なんじゃない?」 久「昔から知ってるけど、いい子よ。磨けば光るタイプだし。大事にしてあげてね」 京太郎「メガネ外すと意外に可愛かったりしますね。でも、俺の彼女は長野一カワイイっす」 久「へぇー、興味あるわね。須賀君みたいなのが美少女と付き合えたの?」 京太郎「そうっすね。いやー、今でも信じられないっす。あっ、これ写メです」パカッ 久「…美穂子じゃん!?」 京太郎「そうですそうです。風越の元キャプテンの」 久「…」プルプル 京太郎「何でもタコスを作った事がないらしくて、一緒にハギヨシさんに教えて貰ってたんですよ」 久「…そう言えば、サンドイッチ、おにぎりの他にタコスを差し入れに来た事があったわね」 京太郎「料理好きですからね。タコス作りは負けたくないですけど」 久「ふーん、じゃあ二人で仲良くタコス作りしてたんだ?」 京太郎「はい。今は二人ともオリジナルレシピを独自に開発してますけど」 久「ふーん」 京太郎「彼女、機械音痴じゃないですか?」 久「そうね。異能レベルね」 京太郎「日常生活で困るからって、一緒にヤマダ電機とかによく行ってたんですよ。日曜日とか」 久「…あぁ、そう」 京太郎「老人、幼稚園児向けの機能がほとんどない携帯ですけど、美穂子もようやく使えるようになりました」 久(私、アドレス知らないけど…) ブーブー 京太郎「おっ、メールだ。美穂子か!見て下さいよー」パカッ From 福路美穂子 タイトル Re 本文 にちようびのでーとどこに行きますか 久「ホントだ…。あの子がメールを一人で送れるようになったとか…」 京太郎「いやー、日曜日楽しみだなぁ///」テレテレ 久「リア充爆発しろ」ボソッ 京太郎「何か?」 久「何でもないわよ」 京太郎「部長って恋愛経験豊富じゃないですか?」 久「タラシって言われてるけどね。私は仲良くなりたいから、普通に話してるだけよ」 京太郎「相談に乗って下さいよー」 久「相談?彼女持ちが私に?」 京太郎「そうっす!経験は部長の方が多いですし」 久「まぁ、話聞くだけなら…」 京太郎「今回のデートで、決めたいです!」 久「…何が?」 京太郎「脱・童貞!」ドン 久「」ポカーン 久「童貞って…。まぁ…、高校一年生だものね。ヤりたい年頃か」 京太郎「えぇ!俺の初めては美穂子で貫き通すって決めてます!」 久「美穂子も確か…」 ぽわわーーーん 合宿、お風呂場 美穂子『いいお湯ですねー』 久『そうねー』 美穂子『う、上埜さんは男性とお付き合いした事は、あ、ありますか!?』 久『なによ、藪から棒に』 久『男ねぇ…。親父がロクでもない男だから、実は男性って苦手なのよね』 美穂子『そうなんですか…。それは悪い事を聞きましたね…』 久『女の子と付き合った事はあるわよ。初体験も女同士だった』 美穂子『は、初体験///』カァーー 久『なんか通販で買った、変なオモチャとか突っ込まれて、突っ込んで…』 美穂子『わわわ///』プシュー 久『急にどうしたの?こんな話に興味あるの?』 美穂子『初体験と言うか、エッチって痛いのかな…怖いのかな…って思いまして』 久『うーん、人によるんじゃないかしら?最初は痛かったけど…』 美穂子『やっぱりですか』ズーン 久『女は仕方ないんじゃないかしら?まぁ、案外我慢出来るわよ。好きな人とすれば』 美穂子『好きな人と…』 久『美穂子って処女なの?』 美穂子『お恥ずかしながら…。この年になって、男性とロクに会話した事すらありません』 久『女子校だもんね。風越は』 久「そんな会話したような…」ウーン 京太郎「年上のお姉さんだからリードしてくれるはず。…なんて考えは甘いですよね」 久「うん。美穂子だと、須賀君がアクション起こさないと何も起きないと思うわよ」 京太郎「部長!いえ、竹井先生!」ガバッ 久「う、うわっ」 京太郎「どうか…、お力添いを…、俺を男にして下さい」ドゲザ 久(よりにもよって、私に頼むか…) 京太郎「俺、来年も再来年も清澄のために雑用を。優希のためにタコスを。何でもしますから!」 久「わかったわかった…。貴方の力、思ったより重要なのよ…。麻雀部唯一の男手だし」 京太郎「じ、じゃあ!俺と美穂子の恋のキューピットに!?」 久「まぁ…、出来る限り頑張るわね。最終ゴールはラブホ照?はいはい、わかったわかった」 日曜日 京太郎「…」ドキドキ 久「日曜日なのに、私、何やってんだか…」 和「なんで私まで…」ブツブツ 久「一人じゃやってらんないのよ。まぁ、これが終わったら咲との仲を取り持つから」 和「お願いしますよ」 物陰で見守る二人 京太郎(待ち合わせ15分前だな) 美穂子「おはようございます。いい天気ですね。すいません、少し遅れました」ニコッ 京太郎「いいいいい、いえ。まだ待ち合わせ時間過ぎてませんから!」 久(ポイントその1。デート開始時は、必ず服装を褒める) 京太郎「み、美穂子。今日の服、すごくカワイイ!」 美穂子「えっ…、そ、そうかしら///」 京太郎「髪型も変えてて、ドキドキする!」 美穂子「たまにはヘアピンもいいかなって思いまして///褒めてくれてありがとう」 京太郎(流石、部長だぜ!)グッ 物陰 部長「まだまだ、70点ね」 和「はい?」 久「メールメールっと」ポチポチ ブーブー 京太郎「あっ、すまん」 美穂子「どうぞどうぞ」 From 部長 タイトル 70点 本文 瞳を褒めろ 京太郎(ふむふむ、なるほど) 京太郎「そ、そのさ…。美穂子」 美穂子「はい、何ですか?」ニコッ 京太郎「片目を閉じたままって…、やっぱり俺にも見せたくないって事かな?」 美穂子「あぁ、これね。癖なんですよ。まぁ、左右で瞳の色が違うって、変ですよね?」 京太郎「変なんかじゃない!」 美穂子「」ビクッ 京太郎「左目も…、右目も…、どっちの色もキレイだ!俺は、変だとか思った事なんか一度も無い!」 美穂子「まぁ…」ポロポロ 美穂子「うれしい…。こんな事、言ってくれたの二人目だわ」 京太郎「ね、猫もオッドアイの猫が一番好きだし」 美穂子「ふふふ、私は猫じゃありませんよ。まぁ、須賀さんが好きって言うなら…。開けて見ようかしら」カイガン 京太郎「須賀さんじゃなくて、京太郎って呼んで欲しい」 美穂子「き、京太郎さんですか///」ポン 久「どうやら上手く行ったみたいね」 和「ふぁ~~~」ポチポチ 久(ポイントその2。男の子は、女の子の鞄を持ちましょう) 久(ただし嫌がる女の子も居るので、臨機応変に) 京太郎「美穂子。その鞄、重そうだな」 美穂子「えっ…、あぁ。それほどでもないですよ」 京太郎「俺が持つよ」ヒョイ 美穂子「あ、ありがとうございます///」 美穂子(優しい人だわ…) 久「ふぅーむ。多分、美穂子は嫌がる素振りなんか見せないタイプね」 和「聖人ですからね。私は、須賀君に鞄を触られたら、蹴飛ばしますよ」 久(ポイントその3。女と男は歩く速度が違う。必ず女の子の歩幅に合わせる事) 京太郎「なるほど」 美穂子「はい?」 京太郎「天気もいいし、公園をブラブラしないか?」 美穂子「はい♪」 久「よしよし、美穂子は歩く速度が遅いのよ」 和「女同士だとあまり気にしませんよね。私は無意識に咲さんに合わせてるみたいです」 久(ポイントその4。かなりの高確率で、お弁当を用意して来る。いい食べっぷりを見せる事) 京太郎「おっ、もう昼か。お腹すいたなー」グー 美穂子「お弁当作って来ましたよ」ニコッ 京太郎「マジか!?気が利くなー。いいお嫁さんになるぜ」 美穂子「うふふ///」テレテレ 久「昼、何食べる?」 和「お弁当は…」 久「私が料理できないって知ってるでしょ」 和「はい。コンビニでパン買って来ました。一つ200円です」 久「はっ!?倍の値段じゃない!」 和「嫌なら、公園の水でも飲んでて下さい」パクパク 京太郎「うめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」ガツガツ 美穂子「そんなに慌てて食べると…」 京太郎「うぐっ!?」トントン 美穂子「うぐぅは私の台詞で…。って、アイスティー!アイスティー!?」アセアセ 京太郎「…」ゴクゴク 京太郎「ふぅ…、助かった」 久(ポイントってわけでもないけど、間接キスとか意識させるといいかも) 京太郎「はぁ~、このアイスティーうめー」ゴクゴク 京太郎「美穂子もグイっと」スッ 美穂子「えっ!?」 美穂子「い、頂きます」ゴクゴク 美穂子(間接キスしてしまった///もうお嫁に行くしかない///) 久「間接キスで赤くなる高校生カップルとかwww」 和「…」チュパチュパ 久「さっきから何舐めてんの?」 和「咲さんが、昨日捨てて帰ったペットボトルの空き容器ですが?」 久(ポイントその5。初デートはとりあえず奢っとけ) 京太郎「映画でも見るか」 美穂子「そうですね。面白い映画あるといいけど」 京太郎(ワンピース見てー。だけど…) 京太郎「何が見たい?」 美穂子「うーん、この憧の教典が見たいですね」 久「映画だってー」 和「何見ますか?」 久「レズ映画以外何でも」 和「じゃあ、このコードテルテル反逆のピンクですね」 京太郎「出すよ」 美穂子「いえいえ、私の方が年上ですから…」 京太郎「いや、奢らせて!頼むから、奢らせてくれ!」 美穂子「いやいやいやいや…」 久「割引券ある?」 和「ありますよ。一枚」 久「先輩に譲るべきじゃないかしら?」 和「は?普通、先輩が奢るでしょ?舐めてるんですか!?」 久「くっそ…、相手が和じゃなきゃ奢らせる事が出来るのに…」 久(ポイントその6。映画とかカラオケとか、暗いから私はよく手を握るわよ。無理矢理やるとフラグが全て崩壊するので、要注意) 京太郎「…」 京太郎「…うーむ」 美穂子「ほおぉぉぉぉ」ワクワク 亜子『静乃以外全て殺す!ありとあらゆる殺し方で、お前たちを殺す!静乃のだけ生きてればいい!』 京太郎(正直、この映画キツイ。ちゃちゃのんが試写会を途中で退場した理由がわかる) 美穂子「うふふ」ハァハァ 京太郎「…」ツンツン 美穂子「…」ビクッ 京太郎(行けるか…) 京太郎(もう一度だけ…、軽く) 京太郎「…」ツンツン 美穂子「…///」ツンツン 京太郎(よし…、分の悪い賭けは嫌いじゃない!) 京太郎「…」ギュッ 美穂子「…///」ギュッ 手を握る二人 亜子『あはははははは!黒、お前は一番むごたらしい殺し方をしてやる! 偏差値70舐めんじゃないわよ、このIQ70が!お前じゃ思いつかないような、苦しい苦しい殺し方で…あひゃひゃひゃ!』 映画が終わる 久「あぁー、あの二人。映画が終わったら、ずっと手を繋いでるわね…」 和「恋人繋ぎってヤツですね。そんなオカルト…事実ですね」モグモグ 久「ってかアドバイスなんて必要だったの?」 和「最初のメールくらいですかね。まぁ、あれで帰っても良かったかと」モグモグ 久「何、食べてるの?」 和「ポップコーンですよ。キャラメル味の。部長も食べますか?」 久「いいの?」 和「何だか泣きそうになってる部長を見てたら、ポップコーンくらいあげてもいいかなって」 久「そう…」モグモグ 久(で、最後ね。これはアドバイスでも何でもないかも。男らしく、当たって砕ければいいのよ) 久(酔わせて…とか。騙して…とか。高校生じゃ無理だからね) 久(断わられたら素直に諦めなさい) ラブホ照 美穂子「あ、あの!ここって!?」 京太郎「すまない。そう言う事をする場所だ!」 美穂子「京太郎さんも男の子ですからね、やっぱり考えますよね///」カァァァ 京太郎「お、おぅ…。軽蔑するか?」 美穂子「…」フルフル 京太郎「もし無理なら…、後日でも違う日でもいいし…」 美穂子「…私も興味がないわけではありません///その…、経験が無くて…、恥ずかしいだけです///」 京太郎「俺も経験ない。だから、実は震えてる」カタカタ 美穂子(そっか…。男の人でもやっぱり怖いんだ…。ここはお姉さんらしく…) 美穂子「…行きましょう!」 和「もう見てられないですよ。血反吐が出ます」 久「…」ボーーー 和「部長、帰りますよ」 久「…」ウルウル 和「部長!」 久「私は…、私は…」プルプル 久「和、ごめん」 和「何がですか?」 久「私…、今から追いかけてくる!」 和「は?あの二人、ラブホテルに入ったんですよ!?」 久「う、うん。わかってるけど…。ものすごく空気読めないって言うか…、ぶち壊しだけど…」 和「須賀君、怒りますよ。福路さんも」 久「…でも。行って来る!最後に告白して、振られて来る!」タッタッタ 和「1113号室に入りましたよー」 久「了解!」 和「さてさて」ピポパ 久「って…入ったものの…」キョロキョロ 久「オートロックだわね」 久「扉ドンドンして、開けて貰うか…。間違いなく、目立つし…。これ捕まるかしら、私?」 久「はぁ…、高校生活で最後の最後にやらかすとか…、ホント…、私ってば…」 ドンドン 久「おーい、須賀君!美穂子!」 ドンドン 久「おーいおーい」 「空いてますよー」 久「えっ…、ホントに…」 ガチャ 久「須賀君!美穂子!こんな所に、乱入して来てごめん!」ペコリ ベッド「なんの用だじぇ?」ゴソゴソ ベッド「今、いい所なんですよー」ゴソゴソ 久(うそっ…、もうヤッちゃってるの!?) 久(でも…) 久「ごめんなさい!私、須賀君の彼女の事、ずっと気になってたみたいなの!今日気付いた、あの子が好きって事に!」 ベッド「ふーん、部長はミッポの事が好きなんだじぇ?」モゾモゾ 久「う、うん。それだけは言っておきたくて…。ごめんなさいね。初体験の邪魔してしまって…」 久「こ、これお金。少ないけど」ポトッ 久「お幸せに!」ポロポロ 久「…」クルッ ガシッ! 久「えっ…」 久の腕を掴む 京太郎「まぁ、そう慌てないで下さいよ」 久「須賀君!?貴方、ベッドの中に居たんじゃ…」 ガバッ! 優希「いないない…」咲「ばぁ!」 久「咲に優希!?」 京太郎「あぁ、福路さん。すいませんでした。間接キスとか、してしまって」 美穂子「…今から消毒します」クィ 久「えっ…」 美穂子「んぐっ…」チューーー 久「はむっ…」チューーー 京太郎「おおっ…、俺の目の前で美少女二人が熱い口づけを…、おい!優希!咲!写メ!写メ!」 優希「おほほほー」パシャ 咲「うふふふー」パシャ 久「ちょっと…ヤダ!みんな見てる!?」カァァァァァ 美穂子「須賀さん」 京太郎「はいはい、両手失礼しますね」ガシッ 美穂子「まだ足りません」チューーーー 久「んんっ!?んんッッ」ジタバタ 美穂子「ふぅ…、大変美味しゅうございました」 久「…」ポカーン 和「はぁー、もう。めんどくさい人ですね、部長は。と言うか!須賀君!」 京太郎「はい!」 和「貴方、かなり楽しんでましたね!優希、この男。浮気しますよ」 優希「なんだとごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!このバカ犬!」 和「ここラブホテルじゃないんですよね」 久「は?」 和「ラブホテルに見えるただの家です。龍門渕さんの」 久「えっ…、料金表とか…」 咲「ただの看板ですよ。それにしてもラブホテルってこんな所なのかー。いい勉強になった」 和「咲さん。あくまでもラブホテル風です。本物のラブホテルは私と行きましょう」キリッ 久「とほほほ。私、全部騙されてたのか…」ヘナヘナ 美穂子「須賀さんと一緒にタコスを作ってたの本当ですよ?」ニコッ 久「えっと…、今の告白無しで」 美穂子「却下です」 久「写メ消しなさいよ」 優希「もう一斉送信しちゃったじぇ」 久「…」 美穂子「…」 久「…付き合う事になるのかな?」 美穂子「当然です。初めてのキスだったんですよ?」 久「…宜しくお願いします」ペコリ 美穂子「さぁ、上埜さん。デートのやり直しですよ。あっ、かなり目立ってましたから尾行になって無かったですよ」 終わる 『if -京太郎ルート-』 久「…帰る」 和「は?」 久「帰るったら帰る。何が悲しくて、友人と後輩のラブホテルなんか尾行しなきゃ行けないのよ!」 和「でも、福路さんが…」 久「お似合いじゃない。二人とも、家庭的だし。美穂子は完璧超人だし。須賀君は、オッパイ大きい子好きだし」 久「もういい。私は他校の生徒と仲良くなったし!帰る!帰る!!帰る!!!」フン 和「ホントに帰りましたよ…」 和「うわぁ…、肝心な所でメンタルが弱いのは相変わらずですか…」アタマカカエル 咲「なかなか来ないねー」 優希「うー、暇だじぇ」バタバタ 美穂子「上埜さん…」ポロポロ 京太郎「きっと来ますって!部長は、福路さんが大好き!本人に確かめた事はないけど、きっと…」 バタン! 美穂子「上埜さん!?」クルッ 和「…私です」 和「みなさん、撤収しますよ」 咲「部長は!?」 和「帰りましたよ。正直、少し失望しました。女なんか他にもいくらでも居るみたいな態度で」 京太郎「あぁー」 美穂子「うっ…うっ…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん」ポロポロ 優希「ミッポお姉さん、元気出すじぇ…。その…、また新しい恋を見つければいいじぇ」 美穂子「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」シクシク 和「この様子じゃ、一人で帰らせるわけには行かないですね」 咲「京ちゃん」 優希「犬」 京太郎「は、はい!」 咲・和・優希「送って差し上げろ」 美穂子「…」トボトボ 京太郎「…」 京太郎「その…元気出して下さい。俺、福路さんとデートしててすごく楽しかったですから」 美穂子「ありがとう」 京太郎「いやはや…、こんなキレイなお姉さんが本当に彼女だったらなってずっと妄想してましたよ」ハハハ 美穂子「そう?私なんかのどこがいいのかしら?」 京太郎「キレイだし、料理は美味いし、家事だって完璧って聞くし、優しいし…。欠点が逆に見つからないですよ」 美穂子「機械とかよく使えないから…」トボトボ 京太郎「逆にそれだけが欠点ってすごいですよ!」 美穂子「あっ…着いたわ。ありがとう」 京太郎「いえいえ、俺は何もしてませんよ」 美穂子「オリジナルタコス完成したのかしら?」 京太郎「はい、だいたいは。福路さんはどうですか?」 美穂子「美穂子でいいですよ、京太郎さん。あっ、どうぞ。送って貰ったお礼と、ぜひ食べて頂きたいので…」 京太郎「わかりました。お邪魔します」 美穂子の部屋 美穂子「どうぞ…、改良に改良を重ねた、福路スペシャルです」 京太郎「おおっ…これはこれは…」ゴクリ 京太郎「うめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?なんだこりゃ!?タコスなのかこれ!?」 美穂子「一応、タコスのはずよ。まぁ、ハギヨシさんのタコスの原型は留めてないけど」 京太郎「上手い!上手いっすよ!これ!」ガツガツ 美穂子「良かった、お口に合って」ニコッ 京太郎「ふぅー、食った食った」ポンポン 美穂子「次は京太郎さんのタコスの番ね」 京太郎「あっ、来週とか…」 美穂子「えぇ、特に用事はないけど…」 三週間後 咲「京ちゃん、京ちゃん。今週の日曜日なんだけど、一年生みんなで…」 京太郎「あっ、ごめん。日曜日は無理だわ」 咲「そっか…」 四週間後 和「須賀君、日曜日、部活をしようと思うのですが…」 京太郎「ごめん、ちょっと日曜日は…、勘弁して欲しい」 五週間後 優希「犬、最近付き合い悪いじぇ。罰として、日曜日に映画を奢…」 京太郎「すまん。日曜日は外せない用事がある。また今度にしてくれ」 優希「…じぇ」グスン そして八週間後 優希「わ、別れたい?」カタカタ 京太郎「ごめんな。他に好きな人が出来た」ペコリ 優希「嫌だ!嫌だ!嫌だじぇ!!!!!!」ガタガタ 京太郎「もう決めた事だ。もし部活、辞めろと言うなら辞めるし…。タコスを作れって言うなら作り続けるが…」 優希「そんなのわからないじぇ!もう何が何だか…」 京太郎「…少し、部活休むな」 優希「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ポロポロ 福路家 美穂子「最近、京太郎さんとタコス作るの楽しいわねー。清澄って日曜日は部活してないのかしら?」 ぴんぽーん 美穂子「はーい、今出ます」 京太郎「…」 京太郎「うっ…ひぐっ…」シクシク 美穂子「京太郎さん!?どうしたの?」 京太郎「すいません…、俺に泣く資格なんて…ないのに…」ポロポロ 美穂子「よしよし」ナデナデ 京太郎「…すいません」 美穂子「はっ!?」 美穂子(つい華菜の泣き顔を思い出して、膝枕してしまった…) 美穂子「片岡さんに謝らないと…」 京太郎「その必要はないっす。別れましたから」 美穂子「えっ…」 美穂子「…そう。他に好きな人が」 京太郎「はい、もうその人の事しか考えられません」 美穂子「私も上埜さんの事ばっかり考えてた時期があるし…、わかるわよ」 京太郎「毎週日曜日が楽しみ過ぎて…。平日が退屈です」 美穂子「へぇー、日曜日」ナデナデ 京太郎「メールとかも楽しいですね。変換ないと読み辛いですけど」 美穂子「私も変換はよくわからないから、みんなに迷惑かけてるわね」ナデナデ 京太郎「…もしかして気付いてないですか?」 美穂子「何がですか?」ナデナデ 京太郎「美穂子の事、好きなんだけど…」 美穂子「へぇー…」 美穂子「ん~~~~?」 美穂子「あれあれ?」 美穂子「ミホコって私かしらね?」 京太郎「親戚のおばちゃんに居ますけどね。もちろん、その人は今、関係ないですよ」 美穂子「わ、私を好きになったですってーーーーーーーー!?!??!??!」 京太郎「優希と別れたばっかりで、こんな事も言うのも何ですが…」 京太郎「俺とお付き合いして下さい!」ペコリ 美穂子「えっ…えっ…、えぇぇぇぇ!?」 美穂子「ちょっと待って下さい!10分ほど、心の整理をします!」アセアセ 京太郎「はい」 美穂子「うーん…。むむむ…」 美穂子(そう言えば…) 美穂子『ねぇ華菜。人生相談いいかしら?』 池田『キャップが私に?珍しいですね。全然いいですし。たまには後輩を頼って下さい』 美穂子『そうね…。失恋の痛みを忘れるには…どうしたらいいかしらね?』 池田『失恋ですか…』 池田(キャップが竹井さんに振られたって噂は本当だったんだ…) 池田『簡単ですし。違う恋を見つければいいんですし』 美穂子『違う恋ねぇ…』 池田(ソースは恋愛漫画だし) 池田『ほら、キャップの周りには、お似合いの人が…。華菜ちゃんとか、華菜ちゃんとか…』チラッチラッ 美穂子『別の人…、好きになれるかしらね…』タメイキ 美穂子「華菜の言うお似合いの人は…、京太郎さんだったのかしら…」ウーン 美穂子「私、京太郎さんの事、嫌いではありません」 京太郎「本当ですか!?」ガタッ 美穂子「少なくとも数少ない男性の交友関係の中では一番好いています」 京太郎「くぅ~~~~」ガッツポーズ 美穂子「しかし、私自身、失恋の痛みから立ち直れてないのと、片岡さんの事で今すぐ付き合う事は出来ません」 京太郎「そうですか…」ガックリ 美穂子「せめて年内はお友達としてお付き合いしましょう」 京太郎「お友達か…」ハァ 美穂子「もし…、年が明けて…、その時まで私の事を好いてくれてたら…」 美穂子「私も覚悟を決めます」ニコッ 京太郎「それくらい!待ちます!全然待ちます!」 そして、年が明ける 神社 優希「恋愛運恋愛運…」 咲「いい結果出るといいねー」 和「須賀君なんて、タコスマシーンです。ただの雑用奴隷。今年もこき使ってやりますよ」 優希「おおっ…、待ち人来たる。そして中吉。これは貰ったじぇー」 ザクザク… 美穂子「片岡さん、少しお話いいかしら?」 優希「ふん、去年からずっと待ってたじぇ」ギロッ 優希「言いたい事はわかってるじぇ」 美穂子「そう…、私…、京太郎さんと…」 優希「いいじぇいいじぇ。私は振られた女。ただの敗者だじぇ」 美穂子「そんな事…、思ってないわよ…」ポロポロ 優希「…一発殴ったら、全てチャラだじぇ。別にミッポお姉さんが奪ったとか思ってないし」 美穂子「いいわよ。殴られるのは…、コーチのおかげで慣れてるから」ニコッ パーーーーーーン!!!!! 美穂子「…」ヒリヒリ 優希「これで私の分は…、チャラだじぇ」 優希「次はミッポお姉さんが私を殴る番だじぇ」 美穂子「えっ、私に貴方を叩く資格なんて…」 「おーい、優希、咲、和。おまたせー」 優希「あ・な・た!遅いじぇ」 和「元部長、優希の家に居たのに、なんで一番最後に来るんですか。優希と一緒に来ればいいのに」 久「ごめんごめん。ついつい炬燵の中が気持ち良くて…。美穂子!?」 美穂子「…上埜さん」ポロポロ 優希「な。殴る理由あるじぇ。私、部長に慰めて貰ったんだじぇ。部長が居なかったら、麻雀部辞めてたかも…」 久「…美穂子。久しぶりね」 美穂子「お元気そうで…」グスン 久「そう言うわけだから…」 美穂子「わかりました。片岡さんを幸せにしてあげて下さいね」ニコッ 美穂子「さてと」 優希「じ、じぇ…。なんか急に怖くなって来たじぇ…」 美穂子「本気で人を叩くのは、一年の時にコーチを叩いてしまった時以来かしら」ニコニコ バチーーーーーーーーン!!!!!!!! 優希「あがっ…」ドサッ 美穂子「…」ツーーー 久「ひえぇぇぇぇぇぇ、容赦ないわね…」 美穂子「さて、彼氏待たせてますから、帰りますね」 久「あぁ、うん。須賀君に部活に出なさいって言っといて」 美穂子「はい」 京太郎「あぁ、もう終わったのか?」 美穂子「えぇ、部活にもちゃんと出て下さいね」 京太郎「お、おぅ…」 美穂子「…あっ、そうそう。今日からキス解禁です」チュッ♪ 終わり
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咲「京ちゃん…デキちゃったみたい…///」 京咲? 京太郎「原付?」和「違います!」 優希「……メガネ男子?」京太郎「違うわ!」 京太郎「咲って同性愛者なのか!?」咲「う、うん」 竹井久「暇だし安価で何かするわ」 咲「京ちゃんそこはうんちの出る穴だよ――」 京太郎「俺は人間国宝だ!」 咲「部室に来たら金髪の女の子が倒れてた」 咲「京ちゃんって何気にお金持ちですよね」久「そう?」 京太郎「女になった」 京太郎「たまには咲でも蹴るか」 久「それって… 浮気?」 咲「京ちゃぁぁぁああああぁぁん!!」 優希「京太郎の浮気を疑っているじぇ」 和「はい?」 優希「代理出産だじぇ?」京太郎「あぁ、頼みたい」 京太郎「清澄高校麻雀部一年組同窓会」 咲「ちょっと!京ちゃんに近づかないで!」和「え?」 京・清澄 ※咲発狂 菫「白糸台麻雀部は恋愛禁止だ」照「恋愛した人は坊主にするよ」 咲「おちんぽ欲しい」 咲「…京ちゃん?」京太郎「お前らが麻雀を楽しめるのは今日までだ」 京太郎「彼女が欲しい…」 京太郎「メアド交換オネシャースwww」 京太郎「よっ、優希ちゃん」優希「!?」 京太郎「パンツ~パンツはいらんかね~」照「パンツ屋さんだ」 ハギヨシ「合席よろしいですか」京太郎「あ、どうぞ…」 京優? ※ボーイズトーク 京太郎「おもちを奪い合う麻雀だと!?」 咲「強くてニューゲーム?」 咲クロス小ネタ集 咲(京ちゃんの指美味しそう…)池田「麻雀しようぜー!」 京太郎「オカルトの正体が分かった」 和「退部してくれませんか?」京太郎「え…」 ※百合和 京太郎「長野って結構オシャレだと思うんですけど」 玄「きょ、京太郎君!好きです!私と付き合ってください!!」カァァ 京憧←玄 ※玄凌辱 久「美穂子を貸して欲しい?一回、三万円ね」 ※嫌がるキャップとエッチ、鬼畜久 優希ちゃん「みやなヶ島のテル退治だじぇ!」 ヒサえもん 京太郎「朝起きたらオチンチンが生えてた!」咲・優希「ええっ!?」 京太郎「中ビーム!!」 京太郎「俺って部長のこと好きだったんだなwww俺てっきり」 京太郎「ついマジギレしたら部長が超しおらしくなった」 京太郎「おいタコス食わねぇか」 久「できたわ優希!須賀君を少しだけ幸せにするスイッチよ!」 京太郎「…力抑えるの忘れてた」咲「」 京太郎「オレを弟子にしてください」ハギヨシ「弟子ですか?」 ※ホモ 京太郎「もいっこ、カン!!」 ※未完 京太郎「染谷先輩、結婚しましょう」染谷「すまんがわしは…」 咲「愛宕絹恵さんが金玉を蹴り潰すという風潮」 京太郎「誕生日だぜ!」 京太郎「脱衣麻雀…?」 京太郎「どうせチョコ貰えないだろうから自分で作った」 咲(京ちゃんの指美味しそう…)池田「麻雀しようぜー!」 京咲←池田 京太郎「はぁ!」ネギュウッ 悪い奴「ぐはあやられたー」 ハギヨシ「悩み…ですか」京太郎「……はい」 京太郎「ドキドキが壊れそう1000%ラブ」 京太郎「麻雀を教えてください!」ハギヨシ「はい?」 ※ホモ 京太郎「ククク・・・孕め」 咲「え・・・・?」 京・清澄・龍門渕・白糸台 ※凌辱 京太郎「ゲイ・ストーリーってオモチャ達の映画にレズ・ライトイヤーってキャラ居たよな」 玄宥「松実旅館へようこそ!!」 ※クレイジーサイコレズ 京太郎「生死の境をさまようと雀力が上がる……?」ゴクリ ※唐突なTS 京太郎「いや、俺に恋愛相談されても……」 京太郎「女の子が淫魔になった」 ※R-18 京太郎「女の子がどんどん淫魔になっていく」 和「ips細胞?あぁ、そんなのありましたね」 和「ips細胞?ふふふ、もう私には必要ありませんよ」 淡「京太郎を寝取られた……」 白望「京太郎が寝取られた……ダルい……」 末原「須賀君が寝取られた……メゲるわ……」 ナレーター「須賀京太郎の朝は早い」 和「ホモなんだろ?」 京太郎「こんな麻雀部は嫌だ」 京太郎「悠久の時を越えてくる」玄「君に逢いにきた」宥「あったか~い!」 QB「僕と契(y」 須賀京太郎「…いいだろう、結ぶぞっ!!その契約!!」 京太郎「癒されますね…」プカプカハギヨシ「そうですね」プカー 京太郎「安価で部活を作るぞ」 エトペン「京太郎、イくぞ…ウッ!」 京太郎「〜♪」ハギヨシ「あ、危ない!」 京太郎「小説家を目指してみようと思う」 ※小説批評、未完 咲「京ちゃんの存在価値って…」 京太郎「コーエー龍門渕から咲無双が発売したらしい」 京太郎「おちんちんチャンバラ?」久「ええ。相手は龍門渕の執事よ」 京太郎「い、痛いです先輩…」染谷「大変じゃあ!?」 京太郎「『アカイイト』? 霞「本当に潰してもよろしいのですね?」京太郎「・・・はい」 怜「Y染色体D2系統、ハプログループM7a。合格や」 京太郎「タコスの限界に挑戦?」優希「そうだじぇ!」 咲「で、出たーwwチンチン股に挟んで女の子奴ーwww」京太郎「…」 京太郎「ビューティフル・ライフ」 京太郎「咲和こそ至高」 京太郎「部キャプは王道」 京太郎「咲のことが好きだ」 京太郎「愛されてえ…」 京牌 京太郎「咲で抜くのももう飽きたな…」 京太郎「俺をバンビーノって呼ばないで下さい」染谷「じゃかあしい」
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ 京太郎「東横ー。いるか?」 桃子「いるっすよ。席に座ってるっす」 京太郎「ああ、そこにいたのか。何やってるんだ?」 桃子「パソコンで麻雀をやってるっす。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見ればってお前……」 桃子「……」 京太郎「……」 桃子「……はぁー。ノリ悪いっすね! ここは『いや見えねえよ!』とか言うところっすよ!」 京太郎「それで悩んでる奴にいきなりそんなこと言えるか!」 桃子「まったく、次からは気をつけるっすよ」 京太郎「はいはい……。で、麻雀って誰とやってるんだ? ネット麻雀ってやつ?」 桃子「んーネットはネットっすけど、学内ネットでやってるっす」 京太郎「そういうのもあるのか。てことは相手は同じ学校の人だな」 桃子「そうっす。麻雀部が最近始めたみたいっすね。掲示板にチラシが貼ってあったっす」 京太郎「へー。挑戦者来たれ! みたいな感じか?」 桃子「そういう感じではないっすね。チラシには麻雀に興味ある人歓迎って書いてたし」 桃子「何度か勧誘も受けてるから部員集めの一貫だと思うっす」 京太郎「初心者歓迎ってことか」 桃子「興味あるなら須賀くんもやってみたらどうっすか?」 京太郎「いや、俺はいいよ。ノートパソコン持ってないし、そもそも麻雀の役もわからないしな」 京太郎「興味はあるからよければ観戦させてくれ」 桃子「いいっすよー。私の勇姿を見るがいいっす!」 京太郎「おう、期待してるぞ」 桃子「くーっ! また勝てなかったっす!」 京太郎「麻雀部3人を相手に2位なら十分凄いじゃないか」 桃子「これでも麻雀の腕には自信があるんすよ。そこらの麻雀部員にも引けをとらないくらいには」 桃子「なのにこのかじゅって人にはなかなか勝てないっす」 京太郎「麻雀って運に左右されるんだろ? そういうこともあるさ」 桃子「20局以上打って勝ったのは数回だけ。さすがに悔しいっす……」 京太郎「20局で数回……。麻雀はよくわからないんだけど、それはどのくらい強いってことなんだ?」 桃子「ええと、そうっすね。風越女子は知ってるっすか?」 京太郎「そりゃもちろん。長野の女子麻雀部では一番強いとこだろ」 桃子「その風越でレギュラーになれる。少なくともそれくらい強いと思うっす」 桃子「まあもちろん、実際に打つのはダメって人も中にはいるっすけどね」 京太郎「そんなに強いのか……ん? なんか書いてるみたいだぞ」 かじゅ『打ち筋からしていつも打ってくれている人だろうか? 今日も来てくれてありがとう』 むっきー『また負けちゃいました。やっぱり強いですね。一度だけでも麻雀部に見学に来てくれませんか?』 カマボコ『しつこかったらごめんなー。でも毎日来てくれて本当に嬉しいんだ』 カマボコ『見学に来たから入れ、なんてことは言わないし、それに来てくれればきっと気に入ると思うんだ』 かじゅ『気が向いたら来て欲しい、と言いたいところなのだが私たちには時間がない』 かじゅ『だから君が麻雀のことを好きなら、ぜひ部室に来て欲しい。後悔はさせない』 京太郎「おお……。凄い勧誘だな。ほら、返事書こうぜ」 桃子「……今書くっす」 default player『気持ちは嬉しいです。でもごめんなさい』 ---default playerはログアウトしました--- 京太郎「……ってあれ?」 桃子「どうかしたっすか?」パタン 京太郎「いや、見学くらい行ってもいいんじゃないか? あれだけ熱心に言ってくれてるんだしさ」 桃子「……まあいいじゃないっすか。ほら、帰るっすよ」 京太郎「あっ、おい」 桃子「先に行ってるっすよー」 京太郎「ちょ、ちょっと待て。先に行かれたらまた見つからなく……」 桃子「校門から出るまでに見つけられなかったら明日の昼ご飯おごりっす!」タッタッタッ 京太郎「いきなり何言って……って待て、走るなー! 見つからなくてもおごらないからな!」 桃子「見つけたら私がおごってあげるから頑張って探すっすよー!!」タッタッタッ 京太郎「絶対見つけてやる……!!」 その後東横のことは校門の辺りで電話をかけて、その着信音で見つけた。 東横には卑怯っす! ノーカウントっす!! と怒られた。理不尽だ。 ---3日後--- 京太郎「東横ー、いるか? 今何やってる?」 桃子「パソコンで麻雀っすよ。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見れたらこんなこと聞かないっての」 桃子「……他人のコンプレックスにズバズバ切り込んでくるっすね」 京太郎「この前スルーしたらノリ悪いとか散々言ったよな!?」 桃子「記憶にないっす!」 京太郎「まったく……。麻雀はこの間の麻雀部の人とか?」 桃子「そうっすよー」 京太郎「俺あれから役とか覚えてみたんだよ。また見せて貰っていいか?」 桃子「いいっすよ。今ちょうど終わったところなんでちょっと待つっす」 京太郎「了解」 桃子「……いつもはすぐ次の局に入るんすけど今日はちょっと時間かかるっすね。席を外してるみたいっす」 京太郎「まあそういうこともあるさ。ゆっくり待とうぜ」 京太郎「……ん? あれ、今日はこの前みたいにチャットで勧誘されてないんだな」 桃子「そうなんすよね。今日は勧誘してこないみたいっす」 京太郎「脈なしと思って諦めたんじゃないか?」 京太郎「4月が終わっても勧誘してたってことはメンバーが足りないんだろうし、他の人を探すことにしたとか」 桃子「そう、かもしれないっすね。まあ何度も断っちゃったししょうがないっす」 京太郎「……毎日のようにパソコンで打ってるんだし麻雀は好きなんだろ? なんで入らなかったんだ?」 桃子「んー、まあ大した理由じゃないっす。こういう体質っすから集団行動とか苦手なんすよ」 桃子「今までこんなに必要とされたことがなかったから嬉しかったは嬉しかったっすけどね。ただ……」 京太郎「ただ?」 桃子「言うのはちょっと恥ずかしいっすけど、やっぱり、直接言ってもらうのに憧れる」 桃子「目の前で、私の目を見て必要だって言って欲し――」 そこまで言ったとき、突然教室のドアが開かれ ゆみ「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」 そんなことをいいながら、上級生が1人教室へと入ってきた。 穏やかな放課後に突如乱入してきたその人は、教室の真ん中までツカツカと足を進め、 忙しげに周りを見渡したかと思うと大きく息を吸い込んだ。 そして―― ゆみ「私は君が欲しい!!」 京太郎・桃子「「!?」」 大声でそんなことを叫んだ。 クラスメイト達は遠巻きにして成り行きを見守っている。 下級生の教室で突然あんなことを大声でいう上級生が相手だ。普通なら俺だって関わろうと思わない。 でも事情を知っているからにはどうにかしないとなーみたいな責任感が芽生えてしまう。 だからまずは、目を白黒させている友人を焚きつけてやろう。 京太郎「東横。よかったな、まだ勧誘諦めてなかったみたいだぞ!」 桃子「その笑顔をやめるっす!」 京太郎「でもほら、東横の望み通り直接誘いに来てくれたわけだし」 ワタシノハナシヲキイテホシイ!!> 桃子「まあそれは心底嬉しいっす」 桃子「須賀くんは茶化してると思うっすけど、私の中では嬉しさが溢れかえってるっすよ」 マジか。いやまあ茶化しているわけではないんだけど。 桃子「ただそれはそれとして、今あそこに行くのはちょっと恥ずかしいっす……」 ワタシニハキミガヒツヨウナンダ!!> 京太郎「注目の的になれるぞ。本望じゃないか」 桃子「限度があるっす!」 今も叫んでるもんな。見た目と違って情熱的な先輩らしい。 スコシデイイ、ハナシヲシヨウ!!> 京太郎「冗談はともかく、ここまで来てくれたんだし、麻雀部に入りたいとは思ってるんだろ?」 桃子「それはそうっすけど……」 京太郎「よし、じゃあ行くぞ」 桃子「ちょ、手を引っ張らないで……!」 ゆみ「頼む、姿を見せて――」 京太郎「あの、ちょっといいですか?」 ゆみ「!! ああ! もち、ろん……だ…………」 念願の新入部員が来たというのになぜか語尾が弱々しい。 ってそうか、東横のこと見えないんだったな。 ゆみ「その、もしかして君が私たちと麻雀を一緒にやっていた人、なのか……?」 俺しかいないと思って目に見えて落ち込む先輩。 美人のしゅんとした姿を見ていると、なんというか、もっといじめたくなってしまう。 まあかわいそうだからやらないけど。 京太郎「あれは俺じゃないですよ。ちゃんと女子です」 ゆみ「本当か!! あ、い、いや、これは君が悪いとかそういうわけではなくてだな」 落ち込んだ様子から一転して明るい表情に。そして間を置かず見せる焦った姿。 ああ、可愛いなこの人。クールビューティーな見た目とのギャップが凄くいい。 京太郎「大丈夫ですよ、事情は聞いてますしわかってます」 ゆみ「そ、そうか。ありがとう」 京太郎「それで俺の隣にいるのが先輩の探しているやつです」 ゆみ「……? すまない。隣には誰もいないように見えるのだが」 京太郎「見えないけどいるんですよ。ほら、ここです」 桃子「どうも、初めまして。東横桃子っす」スゥ ゆみ「」ビクッ 京太郎「あ、やっぱり驚きますよね。いつものことなんで気にしないでください」 桃子「他人に言われると無性に腹が立つっすね」 ゆみ「君は一体いつからそこに……いや、そうか。君はそういう体質なんだな」 桃子「自分で言うのもなんですけど、受け入れるの早いっすね」 ゆみ「チャットの会話から何か理由がありそうだとは思っていたのでな」 ゆみ「我ながら少々派手なことをしたかなと思ったが、結果的には間違っていなかったようだ」 京太郎「いま少々って言ったか?」ヒソヒソ 桃子「言ったっすね。ちょっと見習いたいっす」ヒソヒソ ゆみ「聞こえてるぞ……まあ、それはともかくだ。改めて言わせてもらいたい」 ゆみ「東横くん。私は、私たちには君が必要だ。麻雀部に入って欲しい」 加治木先輩は、真っ直ぐに東横の目を見つめてそう言った。 傍から見ていてもこの上なく真剣に言っているのだと感じる。 東横の望み通り、もしかしたらそれ以上のシチュエーション。 これならきっと麻雀部に入るだろうと東横のほうを見ると 桃子「…………」 あれ、なんか微妙な表情。 京太郎「東横?」 桃子「うーん」チラリ 京太郎「?」 ゆみ「……」ソワソワ 桃子「えっと、一つ条件、というかお願いがあるっすけど……」 ゆみ「何だ? 何でも言ってくれ」ガタッ 東横はなぜか加治木先輩ではなく俺の方を向く。 そして―― 桃子「……須賀くんも麻雀部に入って欲しいっす」 京太郎「……は?」 突然、そんなことを言い出した。 ゆみ「……その、須賀くん……でいいのかな」 京太郎「……へ!? あ、はい!」 ゆみ「今の東横くんの提案なのだが君としてはどうだろうか」 京太郎「ええと、そのですね……。と、東横? なんでいきなりそんなこと」 桃子「えっと、どうしても嫌なら無理にとは言わないっす。わけも……」チラリ ゆみ「?」 桃子「……別に隠すようなことじゃないしすぐ教えるっす。ただ、出来れば須賀くんにも麻雀部に入って欲しいっす」 桃子「ダメっすか……?」ウワメヅカイ 京太郎「う……」 京太郎「か、加治木先輩はどうなんですか」メソラシ ゆみ「あ、ああ。突然で驚いたが麻雀部としては断る理由はない」 ゆみ「……というか、その、入って貰わないと凄く困る」 ゆみ「君にとっても突然みたいだし困惑していると思う」 ゆみ「君にも都合があるだろう。だから助けると思ってとは言わない」 ゆみ「それでも、君がもし少しでも麻雀に興味を持っているなら、麻雀部に来て欲しい」 ゆみ「……だめだろうか?」ウワメヅカイ 京太郎「うう……!」 右を向けば東横が、左を向けば加治木先輩が、上目遣いで俺を見ている。 タイプは違うけれど美人といって差し支えない2人。 京太郎(……こんなの断れるかー!!) 京太郎「俺でよければよろしくお願いします」 ゆみ「本当か! ……ありがとう」フカブカ 京太郎「ちょ、頭を下げるのはやめて下さい!」 京太郎「さっき麻雀に興味があるなら来て欲しいって言ってたじゃないですか。だから入るんですよ」 ゆみ「……うん、そうか。須賀京太郎くん。入部してくれてありがとう」 ゆみ「東横くんは……」 桃子「女に二言はないっす! 加治木先輩、よろしくお願いします」 ゆみ「ああ、よろしく。……東横くん、ありがとう。君のおかげで私たちは大会に出ることが出来る」 桃子「私も興味があったからネトマしてたんですよ。何度も断ってたのに直接誘いに来て貰えたなんて……本当に嬉しいっす!」 桃子「それより、誘った私が言うのもなんっすけど須賀くんはこの場で決めちゃってよかったんすか?」 京太郎「どうせ放課後暇してたしさ。それに麻雀に興味を持ったってのも本当だぜ」 桃子「無理してないならよかったっす」エヘヘ ゆみ「2人とも、入部ありがとう」 ゆみ「それでは早速だが、2人がよければ今から麻雀部に来て貰いたい。部員の紹介もしたいんだ」 桃子「私は大丈夫っす」 京太郎「俺も特に予定はないです」 ゆみ「よし、じゃあ私は先に廊下に出ているよ。あまり長居しても迷惑だろうし」 京太郎(……はっ!? 急展開すぎてここが教室だって忘れてた) 京太郎(冷静になるとクラスメイトの視線が痛い……!!) ゆみ「ん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ、なんでもないです。廊下で待ってて下さい」 京太郎(明日の反応が怖いな……)ハハハ 加治木先輩が先導して、俺と東横はその後をついていく。 意識しないと声が聴こえないくらいの距離を取り、ついて来ているか確認しているのかときおりこちらを振り返る。 京太郎(東横と話しやすいように気を遣ってくれたのかな) 京太郎(せっかくだし今のうちに聞いておくか) 京太郎「なあ、東横。俺を誘った理由って何だったんだ?」 桃子「え? ああ、ほら、私ってこういう体質じゃないっすか」スゥ 京太郎「話してるときに消えるな!」 桃子「冗談っすよ。こうやって意識して消えることも出来るっすけど、基本的には人に見つけてもらえない厄介な体質なんすよ」 京太郎「ああ、知ってる。俺が見つけられたのも偶然だったしな」 桃子「加治木先輩が教室に来て、誘ってくれて嬉しかった。でも私がこういう体質なのは知らなかったじゃないっすか」 京太郎「まあそんな体質があるなんて普通思わないよな」 桃子「それで、こういう体質の私とコミュニケーション取るのって大変っすよね」 桃子「私から話しかければ驚かれる。話しかけて貰おうにも私のことは見えないから、いるかわからないところに声をかけるしかない」 京太郎「ん……楽と思ったことは確かにないな。けど面倒だとか思ったことも一度もないぜ」 桃子「ありがとうっす。須賀くんはそうやって受け入れてくれたっすね」 桃子「麻雀部の人たちは私を必要としてくれた。でもそれと私を受け入れるかっていうのは別っすよね」 桃子「加治木先輩もきっと私に合わせてくれると思うっす。だけど他の人たちもそうやって受け入れてくれるか不安だったっす」 桃子「だから私との付き合いに慣れてる須賀くんが入ってくれたら安心だなって。それが理由っすよ」 京太郎「……気にしすぎじゃないか?」 桃子「そういうと思ったっす。須賀くんは私の体質は知ってても苦労までは知らないっすからね」 京太郎「それを言われるとな……。まあ不安だっていうなら、俺でよければいくらでもいくらでも入るよ」 京太郎「でもあそこまでして必要としてくれる麻雀部だ。きっと東横の心配するようなことにはならないと思う」 桃子「私の取り越し苦労だったらそれが一番っすね。そうすると須賀くんには迷惑かけただけになっちゃうっすけど」ニコッ 京太郎「さっきも言ったろ。好きで入ったんだって。……お、着いたみたいだぞ」 ゆみ「ここが麻雀部だ。入ってくれ」ガラッ 京太郎「おじゃまします」 桃子「おじゃまするっす」 智美「ゆみちんおかえりー。期待の新入部員はどうだ……ってあれ?」 睦月「ええと、先輩。もしかして麻雀の相手はそっちの男の子だったんですか?」 ゆみ「ああいや、ちゃんと女子だったよ。ええと……」キョロキョロ ゆみ「すまない東横くん。姿を見せて貰えるか」 桃子「はいっす。私はここっすよ!!」バーン 智美「」ビクッ 睦月「」ビクッ ゆみ「」ビクッ 京太郎(おー、みんな驚いてるなー) ゆみ「すまない、どうもまだ慣れていないようだ……」ドキドキ 桃子「私は慣れてるので気にしないで欲しいっす」 ゆみ「そうか……なるべく早く慣れるようにするよ」 智美「ゆ、ゆみちん……」 ゆみ「ん? どうした」 智美「私はついに霊感を獲得したみたいだ!」 ゆみ「失礼なことをいうな!」 睦月「その、先輩。彼女が新入部員ですか? 今のは手品かなにかですか?」 ゆみ「ああ、彼女が今日から麻雀部に入部する東横桃子くんだ。今のについては彼女自身から聞いたほうがいいだろう」 桃子「改めまして、今日から麻雀部に入部することになりました東横桃子っす」 桃子「私は極端に存在感が薄くて、中々気づいて貰えない体質なんすよ。 さっきのも隠れていた訳じゃなくて私はずっとそこにいたっす」 桃子「こういう体質っすから迷惑かけることもあると思うっすけど、これからよろしくお願いします」ペコリ 睦月「そうだったのか……ごめんなさい、驚いてしまって」 智美「私もごめんなー。でももう驚かないぞ」ワハハ 智美「しかし世界は広いなー。こんな体質もあるなんて」 睦月「そうですね。目の前にいたのに気づけなかったなんて……」 京太郎(2人とも驚いたみたいだけど、気味悪がったりはしていない) 京太郎(別に特別な反応じゃない。普通の人なら誰だってこんな反応をするはずだ) 京太郎(まあでも……)チラリ 桃子「……」 京太郎「な、俺の言ったとおりだったろ」 桃子「……そうっすね!」 智美「ところでゆみちん。そこの金髪の子は誰なんだー」ワハハ ゆみ「ああ、こっちは須賀京太郎くん。彼も同じく新入部員だ」 京太郎「須賀京太郎です。麻雀は初心者ですがよろしくお願いします!」 睦月「うむ、よろしく。一気に2人も入ってくれて嬉しいよ」 智美「君も新入部員かー。鶴賀麻雀部史上初めての男子部員だな!」 睦月「まあ共学化したのも今年からですしね」 京太郎「ははは……泥を塗らないように頑張ります」 智美「頼むぞー少年」ワハハ ゆみ「さて、次は私たちが自己紹介する番だな」 智美「まずは部長の私からかなー」ワハハ 京太郎「えっ」チラリ 桃子「えっ」チラリ ゆみ「……私は部長じゃないぞ」 智美「……このくらいでは泣かないぞ」ワハハ 京太郎「す、すみません!」 桃子「ごめんなさい!」 智美「冗談だよ、冗談。期待通りの反応してくれて嬉しいぞー」ワハハ 智美「私は蒲原智美だ。麻雀部の部長をやってるぞー」 京太郎「いやその、すみません。よろしくお願いします、蒲原部長」 智美「智美」 京太郎「え?」 智美「智美って下の名前で呼んでくれ。私たち3年生は早ければ6月の頭には引退しちゃうからなー。早く仲良くなりたいんだー」ワハハ 京太郎「ええと、それじゃよろしくお願いします。智美部長」 智美「よろしくなー京太郎」 桃子「よろしくっす! 智美部長!」 智美「よろしく……モモって呼んでいいかー?」ワハハ 桃子「……! はいっす! 嬉しいっす!」 智美「よかったー。よろしくなーモモ」 睦月「じゃあ次は私が。私は津山睦月。部長たちとは違って2年生だ」 京太郎「よろしくお願いします、えっと……」 睦月「……? ああ、そうか。よろしく、京太郎くん」 京太郎「はい! よろしくお願いします、睦月先輩」 睦月「うむ」 桃子「私もよろしくっす! 睦月先輩!」 睦月「うん、よろしく。モモ」 ゆみ「さ、最後は私か……」 京太郎「どうかしましたか?」 ゆみ「い、いや。なんでもないんだ」 ゆみ「2人とも知っていると思うが改めて」コホン ゆみ「私は加治木ゆみ。3年生だ」 桃子「よろしくっす! ゆみ先輩もモモって呼んで欲しいっす」 ゆみ「ああ、わかった。よろしくな、モモ」 京太郎「よろしくお願いします、ゆみ先輩」 ゆみ「――!」カアァ 京太郎「……ええと、本当に大丈夫ですか?」 ゆみ「だ、大丈夫だ!」 ゆみ「よろしく、きょ、きょう……うぅ」 ゆみ「ちょ、ちょっと待ってくれ」スーハー 京太郎「はい、ゆみ先輩」 ゆみ「――――!!」カアァァァ 桃子(空気読まないっすねー) 睦月(あれはわざとやってるのかな) 智美(期待の新人だなー)ワハハ ゆみ「……その、すまない。須賀と上の名前で呼ぶことにしていいだろうか」 京太郎「え? え、ええ。いいですよ」 ゆみ「それと私のことも加治木先輩と呼んでくれると助かる」 京太郎「わかりました……」 京太郎(俺嫌われたのかな……)ズーン 桃子「そんなことないから安心するっす」ポン 京太郎「え、今の声に出てたか!?」 桃子「顔見れば須賀くんの考えてそうなことくらいわかるっす」 桃子「……あ、そうだ。今度から須賀くんも私のことはモモって呼んで欲しいっす」 京太郎「ああ、これから頑張ろうな。モモ」 桃子「一緒に頑張るっす! 京太郎!」 --------------------------------------- ゆみ「自己紹介も済んだことだし麻雀を打とうか。モモとはネットで何度も打っているが実戦での実力も知りたいしな」 桃子「私は実戦のほうが得意っすよー」フフフ ゆみ「それは楽しみだな。須賀くんも一緒に入ってもらっていいか?」 京太郎「いえ、俺は実戦どころかネットでもやったことないので……」 ゆみ「それなら最初は見学からだな」 京太郎「はい、そうさせてもらいます」 智美「誰か一人のをじっくり見てるといいと思うぞー」 京太郎「わかりました。じゃあモモ……」 桃子「あ、私はやめたほうがいいっすよ」 京太郎「え?」 桃子「勉強するつもりなら私のは見ないほうがいいっす」 京太郎「……? まあそういうなら。ええとそれじゃあ――」 京太郎(やっぱり強い人のほうがいいよな。かじゅは加治木先輩だろうし) 京太郎「加治木先輩。見てていいですか?」 ゆみ「わ、私か!?」 京太郎「だ、駄目なんですか?」 ゆみ「い、いや。ちょっと驚いただけだ」コホン ゆみ「私で良ければ参考にしてくれ」 京太郎「え、ええ。もちろんです」 智美「ゆみちん。そういうのちょっと直した方がいいなー」ワハハ ゆみ「わ、わかってるっ」 智美「じゃあ始めるぞー」タン 桃子「負けないっすよ」タン 睦月「ネトマで何度も負けてるけど、先輩として最初くらいは……!」タン ゆみ「私も譲る気はないぞ」タン ………… ……… …… … 【南二局】 智美「リーチ。ゆみちんをまくってやるぞー」ワハハ 桃子「……」タン 睦月(うーん……降りよう)タン ゆみ(蒲原の捨て牌は……)チラ ゆみ(こっちかな)タン ……… …… … 智美「テンパイ」 桃子「ノーテンっす」 睦月「ノーテンです」 ゆみ「テンパイだ」 智美「うっ、また止められてたか。今回はわからないと思ったんだけどなー」ワハハ ゆみ「蒲原とは何度も打ってるからな。なんとなくわかるさ」 京太郎(南二局まで終わって、振り込んだのは睦月先輩と蒲原先輩が一回ずつ) 京太郎(加治木先輩ももちろんだけど、他の3人も全然振り込まないな) 京太郎(……見ててもどうやって止めてるのかさっぱりわかんねえ!!) ゆみ「須賀くん? どうかしたか?」 京太郎「あーその。染め手とかは分かるんですけど、今のとかどうやって止めてるのかなと思いまして」 ゆみ「ああ、なるほど。基本的には捨て牌を見て予測しているんだ。筋とか色々あるんだが……まだ君には早いな」 京太郎「はい」キッパリ ゆみ「そう断言されても困るな」ハァ ゆみ「他にも相手を直接観察して理牌や目線を見ているが、これは慣れるまではやめたほうがいいだろう」 ゆみ「まあ特に理牌は相手の癖を知らなければわからないから、あまり使うべきではないのかもしれないが……ん?」 京太郎「」ポカーン 智美「」ポカーン 睦月「」ポカーン ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。そんなことまで考えて麻雀をしているんだなと」 ゆみ「まあ必ず当たるわけではないし、そんなに大したことではないさ」 ゆみ「というか須賀くんはともかく、蒲原と津山は知っているだろう」 睦月「いえ、そういう技術があるのは知ってますがこんな身近に実践している人がいたなんて……」 智美「私はそこまでの余裕はちょっとないなー」 ゆみ「何もずっと見ているわけじゃないぞ? 重要なところだけ見ればいいんだ」 ゆみ「まあその辺りは対局が終わったら教えようか。雑談はこの辺りにして、次の局に行こう」 桃子「…………」 京太郎(そういえばモモのやつさっきから全然話してないな。集中してんのかな……?) 【南三局】 睦月(ラス親かあ。まだ焼き鳥だしここでなんとか)タン ゆみ(今のところトップで2位のモモとは約1万5千点差) ゆみ(配牌は四向聴か)タン タン タン タン タン タン…… 桃子「リーチっす」タン 京太郎(モモは索子の染め手っぽいな。これくらいはわかるぞ!) 睦月(一向聴から中々進まない……!)タン ゆみ(形聴は狙えそうだな)タン 智美(ううん、引きが悪いなー)タン 京太郎(あれ、リーチしたのにみんなあんまり反応してないな) 桃子「……」タン ゆみ(役牌が重なった。これなら上がりも狙えるか)タン 京太郎(索子!? しかも1枚も見えてない三索!?) 桃子「ロン! 立直、混一色で7700っすよ!」 ゆみ「なっ!?」 智美・睦月「えっ!?」 ゆみ「モモ、リーチ宣言は……」 桃子「ちゃんとしたっす!」 京太郎「俺も聞いてました。そんな小さな声じゃなかったと思うんですが……」 ゆみ「ん……そうか。それはすまない」 ゆみ(さっきの反応からして蒲原も睦月も、モモのリーチ宣言を聞いていない) ゆみ(かといってモモも須賀くんもそんな嘘を付きはしないだろう) ゆみ(つまりおそらく――――) 【南四局】 ゆみ(配牌はあまり良くないか……どこまで対抗できる分からないが、やるだけやってみるとしよう)タン 智美(今のは何だったんだー?)タン 桃子(フッフッフ。ネトマのリベンジ達成はもうすぐっすよー)タン 睦月(リーチが聞こえなかったなんて、こんなの初めて)タン ゆみ「チー!」タン 桃子(仕掛けが速いっすね) ゆみ「ポン!」タン 智美(東を鳴かれたかー。いや、でもこれは速いというか……) ゆみ「チー!」タン 睦月(こんな先輩らしくない無理矢理な仕掛けをなんで……?) ゆみ「ポン!」タン 京太郎(四副露!? なんでここまで急ぐ必要が……) 桃子(ううー、なるほど。そういう手もあるんすね……) ゆみ「ロン。東のみ」 1位 加治木ゆみ 2位 東横桃子 3位 蒲原智美 4位 津山睦月 【終局】 桃子「いやー参ったっす。初見では絶対負けない自信があったんすけどねー」 ゆみ「たまたま運がよかっただけだよ。トータルではおそらく私が負け越すさ」 桃子「そもそも東場で消えられるのが普通なんすよ。まさか南二局までかかるとは思わなかったっす」 京太郎「ええと、モモ。何の話?」 桃子「最後の二局のことっすよ。ゆみ先輩が私に振り込んだのは見たっすよね?」 京太郎「ああ。加治木先輩にしてはおかしいなと思った」 ゆみ「あのときだが、私にはモモの捨て牌が見えていなかった……いや、それでは正確ではないな」 ゆみ「私にはリーチ宣言も聞こえていなかった。モモのことが認識できていなかったんだ」 京太郎「……はい?」 睦月「よかった。聞こえなかったの私だけじゃなかったんですね」 智美「むっきーも聞こえてなかったか。私も聞こえてなかったぞー」ワハハ 京太郎「いや、確かにモモは存在感薄いですけど一緒に麻雀してて消えるなんて……」 桃子「ほら、来る途中にもやったじゃないっすか。私は自分の意志でも消えられるんすよ?」 京太郎「……あー。そういえば」 桃子「麻雀でやると私だけじゃなく牌も消せるんすよ。正確に言えば気づかなくさせるっすけど」 京太郎「つまり相手に警戒されなくなるし、振り込むこともなくなるってことか? そりゃすごいな」 桃子「気づかれない私の唯一の利点といっても過言じゃないっす! まあまさか初見で破られるとは思わなかったっすけど……」 京太郎「ああ、加治木先輩が鳴きまくってたのはそれで……」 ゆみ「破るなんて大層なものじゃないさ。たまたま運よく行っただけだ」 ゆみ「どうせ見えないなら防御するのも不可能だからな。上がられたら確実に まくられてしまうし、なら鳴いて速く手を進めてしまえというだけだよ」 桃子「まあ理屈ではそうっすけど……私が鳴けないから手が遅いってのもわかった上でやったんすよね。凄いっす!」 ゆみ「ネトマのときから極端な面前思考で気になっていたから試してみたんだ。上手くいって幸いだった」 京太郎「なんというか……追いつける気がしない」 智美「気にするな京太郎。私もだー」 睦月「私なんてリーチ宣言聞き逃したとしか思ってませんでしたよ……」 ゆみ「さて、じゃあもう1局打とうか」 桃子「次は負けないっすよー」 智美「京太郎、私が抜けるから代わりに入るんだー」ワハハ 京太郎「え!? でも俺ほんと初心者で……」 睦月「私も入ってすぐ打たされたよ。とりあえずやってみよう?」 ゆみ「とりあえず簡単なルールさえ分かっていれば大丈夫だ。別に練習だし軽い気持ちでいいぞ」 京太郎「……そうですね。よろしくお願いします!」 ………… ……… …… … 京太郎「」ズーン 智美「見事に飛んだなー」 桃子「見事に飛んだっすねー」 睦月「先輩の倍満と跳満に続けて振り込み……」 ゆみ「その、すまない。どうも運がよすぎたようで……」アセアセ 京太郎「い、いえ。手加減しちゃ練習になりませんしね……」ハハハ ――帰り道―― 智美「それじゃあ私たちはこっちだから」 桃子「また明日っすー!」 睦月「さようなら先輩。京太郎くん、また明日」 京太郎「はい、お疲れさまでした」 ゆみ「ああ、また明日」 下校途中の大きな交差点。鶴賀の生徒の多くはここで大きく二手に分かれて帰宅する。 俺達麻雀部もそのご多分に漏れず、俺と加治木先輩は右へ、部長と睦月先輩とモモは左へと分かれることになった。 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……その、加治木先輩自転車押してますけど家遠いんですか?」 ゆみ「あ、ああ。学校まで大体自転車で20分ちょっとかかるな」 京太郎「そうなんですか。……急いでるようでしたら俺に気を遣わなくても大丈夫ですよ」 ゆみ「いや、今日は特に何もないから大丈夫だ。途中まで……い、一緒に帰ろう」 京太郎「そうですか……」 ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク 京太郎(……き、気まずい!!) 京太郎(なんか会話もぎこちないし、嫌われたのか苦手に思われたのか……) 京太郎(こっちから話しかけないほうがいいかな。でもこのまま無言ってのも……) 京太郎(うん、悪いところがあったら直せばいいんだしな。もう一回声をかけて) ゆみ「須賀くん!」 京太郎「は、はいぃ!!?」 京太郎(な、なんだ!? なんかしたか俺!?) ゆみ「その、だな……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎「…………」 ゆみ「……すまない、ちょっと情けないことで話すのに心の準備が必要でな」 京太郎「……?」 ゆみ「ふぅ……」スーハー ゆみ「……その、私は男子と話すのが得意ではなくてな」 京太郎「……は?」 ゆみ「君に対してそっけない態度を取っていると思うのだが、決して君のことが嫌いとかそういうわけではないんだ」 京太郎「え、いやでも部活とか教室ではそんなこと全然」 ゆみ「麻雀なら君に対しては指導するという立場でいられるからな。普通に話すのに比べれば大した緊張はない」 ゆみ「教室は……あのときの私はどうかしていた」カァァァ ゆみ「部員を見つけることだけを考えていて、他のことは何も頭になかった。緊張なんてする暇もなかったよ」 京太郎「そうだったんですか」 ゆみ「だから、その、だな。君を不快にさせてしまったかもしれないが、決してわざとというわけではないんだ」 京太郎「ははは、嫌われたのかと思ってましたよ」 ゆみ「す、すまない……」シュン 京太郎「い、いえ。そういうつもりでは」 京太郎「言ってくれて嬉しかったですよ。言われなかったら誤解したままだったかもしれないです」 ゆみ「ん……そうか。そういってくれると助かる」 京太郎「でも意外ですね。男子とか苦手な風には見えないです」 ゆみ「ふむ、まあ女の子らしい見た目ではないからな」 京太郎「そんなことないですよ!」 ゆみ「はは……うん、そう言ってくれるのは嬉しいよ」 京太郎(本心なんだけどなあ……) ゆみ「男子と話すのが苦手な理由は、まあ単純に話す機会がなかったんだ」 京太郎「小さい頃から女子校だったんですか?」 ゆみ「いや、そういうわけではないんだが、私は小さい頃から何かと男子を注意するような役回りになることが多くてな」 京太郎「あー……」 ゆみ「今日一日一緒にいただけだが、何となく分かるだろう?」 京太郎「ええ、なんとなくわかります」 ゆみ「自分から言うことはそんなになかったんだが、女子から注意してくれとよく頼まれた」 ゆみ「そのせいで男子からは敬遠され、女子からはさらに頼られ、男子と普通に話す機会をほとんど持てなかった」 ゆみ「その上女子校に入学してしまったからな。自業自得ではあるんだが、慣れようがなかったんだ」ハハハ 京太郎「共学化したときとかはどうだったんですか?」 ゆみ「麻雀部に来るかもしれないと思ってやはり緊張したよ。結果は……まあ今日見た通りだが」 京太郎「あはは……」 ゆみ「まさか1人も入らないとは思わなかった。まあ確かに麻雀をやりたい子がわざわざ鶴賀に来るわけはないんだが」ハァ ゆみ「だから今日、モモと君、2人も入ってくれて本当に感謝している」 京太郎「モモはわかりますけど俺もですか?」 ゆみ「ああ、もちろんだ」 京太郎「でも俺は男子ですし、麻雀も初心者ですよ」 ゆみ「確かに大会には出たいし、そのために部員を集めていた。 でも私が卒業した後、部員不足で麻雀部が潰れてしまっては悲しいだろう?」 ゆみ「女子だろうと男子だろうと、麻雀の経験があろうとなかろうと関係ない。私は君が入ってくれてとても嬉しかったよ」ニコッ 京太郎「――!」カァァ ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 京太郎(ほんと先輩はストレートだな……!) 京太郎「そういえば部員って今日いたので全員なんですか?」 ゆみ「? あれで全員だがそれが?」 京太郎「いえ、麻雀の団体戦って5人でやるじゃないですか。1人足りないんじゃないかと」 ゆみ「ああ、そのことか。確かに説明していなかったな」 ゆみ「蒲原には幼馴染がいるんだが、その子が4人集まったら入ってくれると言っているらしいんだ」 京太郎「ああ、じゃあモモが入ったからその人も入ってくれるんですね」 ゆみ「そういうことだ。彼女は初心者と言っていたかな。君と一緒だ」 京太郎「へーそうなんですか。よかったです、1人初心者で気後れしてたんで……」ハハハ ゆみ「誰だって始めたときは初心者だよ。これから上手くなればいい」 京太郎「今日の加治木先輩とモモの会話聞いてたらそうは思えませんよ……」 ゆみ「モモのは彼女の生まれ持った資質だけど、私のは練習の賜だ。努力次第だが私くらいにはなれるさ」 京太郎「うーん、なれますかねえ」 ゆみ「なに、これから私たちが教えるんだ。独学で学んできた私より上手くなって貰わないとな」 京太郎「ははは、そうですね。ご指導よろしくお願いします」ペッコリン ゆみ「ああ、任された」フフッ 京太郎「それじゃあ俺はこっちなんで」 ゆみ「ああ、それじゃあ……もうこんなところか。君との話に夢中で気がつかなかった」 京太郎「ありがとうございます。――あ、そうだ。加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「加治木先輩が男と話すの苦手っていうの、きっと思い込みだと思いますよ」 ゆみ「そうだったらいいが、現に私は君にぎこちない態度を取ってしまっていたと思うのだが……」 京太郎「全くないとは言いませんが、そういうのって大体俺が急に話しかけたときとかじゃないですか」 京太郎「多分話すのが苦手というよりは、何を話せばいいのか分からないんですよ」 ゆみ「それは確かにそうだが、その2つにあまり差はないんじゃないか……?」 京太郎「だってほら、先輩と俺、帰り道は普通に話してたじゃないですか」 ゆみ「ふむ、確かに言われてみればそうだな」 京太郎「あんまり固く考えなければいいんですよ。そうすればきっとすぐ直ります」 ゆみ「ああ、君の言うとおりかもしれないな。でも、須賀くんだからというのもあると私は思う」 京太郎「えっ……」ドキッ ゆみ「私に話しかけてくる男子はほとんどいなかったからな。高校に入ってからは須賀くんが初めてだ」 京太郎「あ、ああ。そういう……」 ゆみ「すぐには慣れないと思うが、これからも話しかけてくれると嬉しい」 京太郎「え、ええもちろんです」 ゆみ「ありがとう。それではまた明日。部室で」 京太郎「さようなら……」 京太郎「……」 京太郎「…………」 京太郎「天然でやってんのかあれは!?」 ――自室―― 京太郎「お、咲からのメールか」 京太郎「1日ぶりだな。どれどれ……」 咲『京ちゃん元気?』 京太郎『おう、元気だぞ。昨日はメールなかったけどどうしたんだ?』 咲『本を読んでたらそのまま寝ちゃって……』 京太郎『はは、お前らしいな』 咲『うぅ……そ、そんなことより、今日私文芸部に行こうとしたんだよ!』 京太郎『おお、ついに入部し……行こうとした?』 咲『う、うん。その、ドアの前までは行ったんだけど、中がすごく和気あいあいとしてて入りづらくて……』 京太郎『まあもう5月だからなあ』 咲『どうしよう京ちゃん! 私文芸部に入れないよ!!』 京太郎『いやそのくらい気にせず入れよ……そもそもなんで4月に入らなかったんだ?』 咲『ええと、ほら、清澄に行った友達がいるじゃない?』 京太郎『ウチの中学から清澄に結構行ってたよな? 図書委員のやつ?』 咲『ううん、そっちじゃなくて班で一緒だったクラスの子』 京太郎『ああ、あいつか。結構仲良かったよな』 咲『そうそうその子。まあ京ちゃんとほどじゃなかったけどね』エヘヘ 京太郎(俺基準って……まあいいか) 京太郎『それでそいつがどうしたんだ?』 咲『うん、その子に一緒に文芸部に見学に行かない? って誘ったんだけど断られちゃって』 京太郎『へー、見学くらい行ってくれてもいいのにな』 咲『まあ先週誘った私も悪かったんだけど』 京太郎『先週!? ちなみにあいつ部活入ってるのか?』 咲『入学してすぐ園芸部に入ったよ。私も見学に付き合ったの』 京太郎『断られるに決まってんだろ!!』 咲『やっぱりそうだよね……』 京太郎『っていうか4月に行ってない理由にはなってなくないか?』 咲『ええと、さっき言ったとおり4月の初めにあの子と一緒に園芸部に行ったんだけど、私も体験入部したんだ』 京太郎『咲は花育てるのも好きだったよな』 咲『うん、最初はお花を育てるの楽しいし、本は1人でも読めるからここに入ろうかなと思ったんだけど……』 京太郎『ふむふむ』 咲『園芸部って土とかお花の鉢運んだりするんだ。それが結構重くて……』 京太郎『あー、それがきつくてやめたのか』 咲『そのくらいじゃやめないもん!』 京太郎『え? じゃあなんでやめたんだよ』 咲『ええと、頑張って運ぼうとしたんだけどお花植えてるプランターこぼしちゃって……』 京太郎『お、おう。まあでも一回くらいならやめるほどではないんじゃないか』 咲『ううん、何度も』 京太郎『…………』 咲『無言はやめてぇ!!』 京太郎『ま、まあ居づらくなって園芸部やめたのはわかった。それで?』 咲『え?』 京太郎『体験入部のうちにやめたんだろ? なら文芸部だって体験入部期間に行けたんじゃないか?』 咲『そ、それはそのう……』 京太郎『……うん、言わなくていいぞ。大体わかった』 咲『うぅ……で、でも勇気出したよ! 先週は友達誘ったし、今日は部室の前まで行ったもん!』 京太郎『まあなんだ。咲が頑張ったのはよくわかった。でももう少し頑張ろうな』 咲『京ちゃぁん……』 京太郎『入っちゃえば意外となんとかなるもんだぜ。俺も今日部活入ったけどみんな歓迎してくれたよ』 咲『京ちゃん部活入ったの!? 何部?』 京太郎『麻雀部』 咲『麻雀……京ちゃん麻雀出来たっけ?』 京太郎『いや全く。完全に初心者だよ。でも歓迎してくれた』 咲『そっか』 京太郎『咲は麻雀出来るのか?』 咲『……うん、出来るよ。昔よく家族でやってた』 京太郎『へー、なら麻雀部入ったらどうだ?』 咲『麻雀部?』 京太郎『ほら、清澄の麻雀部って聞いたことないからきっと強くないだろ? なら5月からでもウチみたいに歓迎してくれるさ』 京太郎『それに麻雀部なら大会でお前と会えるかもしれないしさ』 咲『……そうだね。考えてみる』 京太郎『まあ最終的には咲が後悔しないようにすればいいと思うけどな』 咲『これだけ言っておいて結局それ? ……うん、でもありがと』 京太郎『おう』 咲『ところで京ちゃん。大会で会えるかもってもしかして女子と合同の部活なの? そういえば鶴賀って元女子校だったよね?』 京太郎『ああ、というか俺以外全員女子だよ』 咲『な、何それ!!』 京太郎『何って……去年まで女子校だったし麻雀部も俺含めて今のところ5人だしな。そういうこともあるだろ』 咲『どうせハーレムだー! とか思ってるんでしょ!』 京太郎『初心者俺1人だぜ? そんな余裕ねえよ。……まあ嬉しくないって言ったら嘘になるけど』 咲『京ちゃんのバカ! もう知らない!!』 京太郎「おおう……まあ部活入れないって相談してきたのに、俺は部活でハーレムだって言ったらそりゃいい気分はしないか」 京太郎「なんて返すかなあ。ってあれ、咲からメールが」 咲『言い忘れてた、おやすみ!!』 京太郎『おやすみ。別に男子が俺だけだから入ったわけじゃないからな!』 咲『うん……その、私急に怒っちゃったけど、京ちゃん怒ってない? 明日もメールしていいよね?』 京太郎『これくらいで怒るわけないだろ? 明日は俺からメールするよ』 咲『京ちゃんありがとう!!』 京太郎『俺も悪かった。また明日』 京太郎「10時半か。ちょっと早いけどもう寝……ん? 加治木先輩からメール?」 ゆみ『今日はありがとう。男子と話したのは久々だったよ』 京太郎『いえ、俺も楽しかったですよ。それにしてもアドレス交換しましたけど、まさか今日メール貰えるとは思いませんでした』 ゆみ『蒲原に話したらその日のうちにメールするべきだと言われたんだが……』 京太郎(早く仲良くなるようにって部長が気を遣ってくれたのかな……うん、まあ嬉しいんだけど) ゆみ『男子にメールしたのは初めてなのだが何かおかしなところがあっただろうか』 京太郎『いえありませんよ。せっかくですし、教本で気になったところがあるのでよければ教えて下さい』 ゆみ『勉強熱心だな。いいぞ、なんでも聞いてくれ』 京太郎『それじゃあ――』 ………… ……… …… … 京太郎「ロ、ロン!! 立直平和で裏ドラは……乗った! 3900です!」 ゆみ「む……」 京太郎「よっしゃあ! やっと加治木先輩から直撃取れた!」 智美「ついにゆみちんから直撃かー。気分はどうだー」ワハハ 京太郎「最高です!」 桃子「後は私から直撃取れば全員制覇っすね!」 京太郎「モモ、一度消えないでやってみないか?」 桃子「消える前に頑張るっす!」 京太郎「せめて東場は消えないでくれよ……」 桃子「気合で頑張るっす!」 京太郎「うぅ……」 佳織「うわー凄いね京太郎くん!」 京太郎「ははは、佳織先輩には負けますよ」 佳織「? 私加治木先輩からロンしたことないよ?」 京太郎「あははは……」 京太郎(代わりに初めての麻雀で役満上がってるんだよなあ……) 睦月「おめでとう京太郎くん。でもまだ打ってる最中だからほどほどに」 京太郎「あ、すみません。つい嬉しくて」 睦月「ふふ、私も初めてのときははしゃいだから気持ちはわかるよ」 京太郎「睦月先輩がはしゃぐのってあんまり想像つかないですね」 ゆみ「今の須賀くんのような感じだよ。まあそのうち見られるさ」 京太郎「そのうち?」 ゆみ「津山はプロ麻雀せんべいをよく食べているだろう?」 京太郎「そうですね。俺も睦月先輩に影響されて食べ始めましたよ」 ゆみ「いつの間に……まあいい。津山はレアカードが当たったとき、人が変わったように喜ぶんだ」 睦月「そ、そんなことないですよ!」 京太郎「へー。楽しみにしてますね」 睦月「しなくていいから!」 智美「3人とも、そろそろ次の局行くぞー」 ゆみ「そうだな。すまない」 京太郎「この勢いでトップを狙います!」 ………… ……… …… … 京太郎「結局3位か。配牌は良かったんだけどなあ」 桃子「京太郎は牌効率がまだまだっすね。いくら配牌がよくてもそれじゃ勝てないっすよ」 京太郎「一応考えてるつもりなんだけど難しいな。筋とか壁とかそういうのは決まってるから覚えやすいんだけど」 桃子「え? もう覚えたんすか?」 京太郎「ああ、教本読んだり加治木先輩に教わったりしてるからな。もうバッチリだ!」 桃子「見た目と違って真面目っすねー……ってゆみ先輩に?」 京太郎「見た目は関係ないだろ! そうだけどどうかしたか?」 桃子「部活でそんなにじっくり話してるの見たかなーと」 京太郎「ああ、帰ってからメールで教えて貰ってるんだよ」 桃子「む。個人指導っすね」 京太郎「まあそうなるな」 桃子「羨ましいっす!」 京太郎「は?」 桃子「私もゆみ先輩に教えてもらいたいっす!」 京太郎「それを俺に言われてもなあ」 ゆみ「私なら構わないぞ」 京太郎「加治木先輩!?」ビクッ ゆみ「あんまり驚かれると傷つくな……」 京太郎「す、すみません」 ゆみ「い、いや、冗談だ。気にしないでくれ。……それよりモモ、聞きたいことがあったらいつでもメールしてくれて構わないぞ」 桃子「ほんとっすか!?」 ゆみ「ああ、後輩の指導も先輩の役目だ。なるべく速く返信するよ」 桃子「嬉しいっす! ゆみ先輩大好きっすー!」 智美「ゆみちん、ちょっと来てくれ」コイコイ ゆみ「?」テクテク 智美「部員が集まって嬉しいのはわかるけど、最近ちょっと詰め込み過ぎてないかー?」 ゆみ「そんなつもりはないんだが……」 智美「牌譜持ち帰る量も増えたし、他校の研究も本格的に始めたんだろー?」 ゆみ「バレていたのか」 智美「これでも部長だぞー」ワハハ ゆみ「……まあそうだな。お前の言うとおり以前より熱心にやっているよ」 ゆみ「折角部員が集まったんだ。1回戦で負けて終わりなんて嫌じゃないか」 智美「それには同意だなー。でも少しくらい分けてくれてもいいんだぞ」 ゆみ「そうだな……」ムゥ 智美「私とゆみちんの仲だろ? 遠慮せず言ってくれていいぞ」 ゆみ「ん……こういうのはなんだが、私のほうが向いていると思うんだ」 智美「やっぱり私じゃ力不足かー」ワハハ ゆみ「いや、性格的に」 智美「想定外の方向から突き刺さったな……」 ゆみ「遠慮するなと言ったのはお前だろう」 智美「そっちから来るとは思わなかったぞ」 ゆみ「まあ1人でやったほうが効率的だというのもなくはないがな」 智美「じゃ、じゃあアドバイスの方なら! それなら私でも出来るぞ!」 ゆみ「私がやると言ったことだしな。それを任せるというのも」 ゆみ「それに……」チラッ 智美「?」 ………… ……… …… … 桃子「むっちゃん先輩! この間話してた喫茶店に行く話っすけど、今日の帰りどうっすか?」 睦月「今日は予定もないし……うむ、行こうか」 桃子「かおりん先輩はどうっすか?」 佳織「~♪」 京太郎「佳織先輩、モモが呼んでますよ」 佳織「えっ!? ご、ごめんね桃子さん」 桃子「私はこっちっすよ」 佳織「あわわわ……」 京太郎「気にしないでください。そのうち見つけられるようになりますよ」 桃子「京太郎が言うんじゃないっす!」 睦月「あはは、京太郎くんはどうする? 一緒に行く?」 京太郎「行きたいんですが課題が残ってるので……」 睦月「そう……あ、そうだ。この前約束したプロ麻雀カード、ダブってるやつ持ってきたよ」 京太郎「おお、ありがとうございます!」 佳織「キラキラだねー」 睦月「結構貴重なレアなんだ。大事にしてね」 京太郎「はい!」 ゆみ「」ジー 智美「どうしたゆみちん。恋する乙女かー」ワハハ ゆみ「なっ!? バ、バカを言うな!!」 智美(からかいがいがあるなー)ワハハ ゆみ「……私はあんな風に仲良くなれていないからな。せめて麻雀で距離を縮めたい」 智美「そんなことないと思うけどなー」 ゆみ「それに実際大した負担ではないんだ。頼ってもらえるというのは純粋に嬉しいしな」 智美「まあゆみちんがそういうなら。でも無理はダメだぞ」 ゆみ「ああ、わかってるよ」 京太郎「智美部長、加治木先輩! 早く帰りましょう!」 ゆみ「すまない、今行く……っと」フラッ 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「少しふらついただけだ。心配ない」 桃子「先輩も喫茶店行かないっすか?」 ゆみ「ありがとう。だけど牌譜の整理があるから遠慮しておくよ」 桃子「残念っす……」 智美(……やっぱり心配だなー) 京太郎「こんにちはー……ってあれ。部長だけですか」 智美「みんなまだみたいだなー」 京太郎「じゃあ来るまで教本でも読んで……」 智美「なあ京太郎、息抜きするなら何がいいと思う?」 京太郎「唐突ですね」 智美「いいからいいから」 京太郎「そうですねー……まあ普通に遊びに行くのが一番じゃないですか?」 智美「やっぱりそうだよなー」ワハハ 京太郎「急にどうしたんですか?」 智美「最近ゆみちん根詰めてるだろ? 息抜きに買い物に誘ったんだけど断られちゃってなー」 京太郎「そういえばたまに辛そうにしてますね」 智美「だろー? 大会まで時間がないのは確かだけど、あれで持つのか心配なんだ」 京太郎「時間がないといっても無理が続くほどではないですしね」 智美「気を抜いてくれればまた違うと思うんだけどなー。京太郎、何かゆみちんに息抜きさせるいい方法はないかー?」 京太郎「ただ誘うだけだとダメだったんですよね? うーん……」 智美「まあすぐじゃなくてもいいさ。考えておいてくれ」 京太郎「わかりま……」 ゆみ「」ガラッ 京太郎「」ビクッ 智美「」ビクッ ゆみ「ど、どうしたんだ?」 智美「い、いや。なんでもないぞー」ワハハ ゆみ「怪しいな……何かよからぬことでも考えてたんじゃないだろうな」 京太郎「そ、そんなことないですよ! それよりその雑誌はなんですか?」ガタタッ 智美(ナイスフォローだ京太郎!) ゆみ「バ、バカっ! 近い!」カアァァ 京太郎「はっ! す、すみません!」カアァァ 智美(……わざではないんだろうなー) ゆみ「ざ、雑誌だったな。これは麻雀の専門誌だよ」コホン 京太郎「そ、そういえばそういう名前の見たことあります」 ゆみ「初心者向けのコーナーもある。参考になるだろうから読んでみるといい」 京太郎「へー、読んでみますね」ペラペラ 京太郎「……ん?」 ゆみ「どうかしたのか?」 智美「どれどれ……高校生チャンプ宮永照?」 京太郎「ええ、はい」 智美「確かに美人だから気になるのもわかるけど、女子2人の前でそれは感心しないなー」ワハハ ゆみ「須賀くん、そうなのか……」ジー 京太郎「違いますよ!」 智美「ワハハ、冗談だ」 ゆみ「わ、私はわかっていたぞ」 京太郎「加治木先輩……まあいいです。えっと、前に住んでたところに宮永って幼馴染がいるんですよ」 ゆみ「なるほど、同じ名字だな」 京太郎「そいつも女子なんですけど、なんとなく雰囲気が似てるなーと思いまして」 ゆみ「宮永照のいる白糸台は東京だろう? 須賀くんは前に住んでいたところも長野だったと聞いた覚えがあるのだが」 京太郎「ええ、そうなんですけど他人の空似とは思えなくて」 智美「ふーん。なら親戚なのかもしれないなー。その子も麻雀は強いのか?」 京太郎「いえ、そもそも打ってるところも見たことが……」 京太郎「あ、いや。そういえば家族麻雀はしていたみたいです。俺も最近聞いたんですが」 ゆみ「ふむ、仮に宮永照がその幼馴染の親戚だとすると、我が部には高校生女子麻雀チャンピオンの 親戚の幼馴染がいることになるわけか」 智美「世間は狭いなー」 京太郎「近いのか遠いのか微妙な繋がりですけどね」ハハハ 佳織「何を話してるんですか?」ガラッ モモ「私も入れて欲しいっすー!」 佳織「わっ! 桃子さん!?」 睦月「最初からいたよ」クスクス 智美「みんな来たかー。今は京太郎が女子麻雀チャンプの知り合いだって話をしてたんだー」ワハハ 京太郎「ちょっと部長!?」 桃子「なんと、衝撃の事実っす! さては今までの麻雀素人っぷりも演技っすね!?」 佳織「京太郎くんそんな人と知り合いなの!? 凄いねー。でもおんなじ初心者だと思ってたからちょっと寂しいな」 京太郎「モモ悪ノリするな! 佳織先輩、智美部長のもモモのも嘘ですからね!?」 佳織「智美ちゃん嘘だったの? もう、信じちゃったじゃない」 ゆみ「正確にはチャンピオンの親戚の幼馴染かもしれないというところだな」 睦月「反応が難しいですね……」 京太郎「雑誌見てての雑談ですから! もうやめて下さい……!」 桃子「その屈辱は麻雀で晴らすっすよ! さあ勝負っす!」 京太郎「お前のせいでもあるからな!? 畜生、今日こそは勝ってやる!」 桃子「受けて立つっすよー!」 ゆみ「はは、今日は最初は1,2年生に譲ろうか」 智美「私たちは見学だなー」 睦月「ありがとうございます。モモも京太郎くんも、2人で盛り上がってるけど私も負けないよ」 佳織「私も頑張ります!」 ………… ……… …… … ――帰り道―― 京太郎「それじゃみなさんまた明日」 佳織「また明日」 睦月「さようなら」 智美「2人ともまたなー」 モモ「今日の雪辱はまた果たすっすよ!」 京太郎「今日だけで何度も果たされたよ!」 ゆみ「はは、4人ともまた明日」 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎(何度も一緒に帰ってるけど、やっぱり別れてすぐは会話が途切れるなあ) 京太郎(俺から話しかければいいんだろうけど……)チラ ゆみ「……」ソワソワ 京太郎(……うん、もうちょっと待ってみよう) 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク ゆみ「……す、須賀くんっ」 京太郎「はい、何でしょう」 ゆみ「その、だな。今日は初めての2位おめでとう」 京太郎「ありがとうございます!!」 ゆみ「うわっ」ビクッ 京太郎「いやもうほんと嬉しかったんですよ! いつ話振ってくれるかなってそわそわして……って」 ゆみ「」 京太郎「そ、その、すみません……」 ゆみ「ふっ、くくっ……」 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「ふふ、すまない。ついおかしくてな」 京太郎「う……ついはしゃぎすぎましたけど、初めての2位なんですよ。嬉しくて当然じゃないですか」 ゆみ「それにモモの上を行ったのも初めてだった」 京太郎「そうです。目標が2つ同時に達成できたんですよ。そりゃ喜びますって!」 ゆみ「うん、まあ気持ちはわかる。でもな」 京太郎「?」 ゆみ「まだ君は部に入って間もないが、その努力を私は誰よりもよく知っているつもりだ」 ゆみ「君はよく努力している。そんなに喜ばなくともこれから何度でもなれるし勝てるよ。私が保証する」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「うん? どうした」 京太郎「いえ、感動してました」 ゆみ「なっ!?」 京太郎「他人に真正面から評価されるってこんなに嬉しいものなんですね……!」 ゆみ「大げさだな……そういう感動はもっと大事なときに取っておいたほうがいい」 京太郎「じゃあ今度は1位になったときにまた言って下さい」 ゆみ「ん……まあいいだろう」 京太郎「はい、頑張ります!」 ゆみ「ではそのためにはもっと実力を上げなければな」 京太郎「え……」 ゆみ「須賀くんの牌譜も集まってきたしな。ちょうど言いたいことがあったんだ」 京太郎「ええと、今日のところはいい気分のままでいさせて頂けたりとかは……」 ゆみ「1位を目指すんだろう? わかっているとは思うが、須賀くんの実力はまだまだ足りていないぞ」 京太郎「それはまあ、最初に2位になった後はいつも通り3位や4位ばかりでしたし……」 ゆみ「なら勉強だ。まず君は対子を集める傾向があるな。何か意味はあるのか?」 京太郎「いや、その、ポンってどこからでも鳴けるから得だなーと」 ゆみ「まあそんなところだろうと思っていた」ハァ ゆみ「単純に有効牌の数を考えてみてくれ。塔子なら両面待ちで8枚、嵌張や辺張でも4枚あるだろ? 対して対子では2枚しかない」 京太郎「……おお、言われてみれば!」 ゆみ「まあもちろん場に出ている枚数や手役との兼ね合いもあるがな。基本的には対子より塔子を残すことを考えてくれ」 京太郎「勉強になります」 ゆみ「さて、次は……」 京太郎「ま、まだあるんですか!?」 ゆみ「当たり前だ……む、もうこんなところか」 京太郎「あ、分かれ道ですね。それでは俺はここで……」 ゆみ「帰ってからメールするから返信するように」 京太郎「ですよね……」 ゆみ「ああ、それじゃあまた夜に」カラカラカラ 京太郎「はい、さようなら」テクテク 京太郎「加治木先輩結構スパルタだよなあ。まあ親身になってくれてるってことだけど」テクテク 京太郎「……ん? あれ、なんで加治木先輩歩いて帰ってたんだ? ……ん、メールが」 ゆみ『さっきはああ言ったが、正直君がモモに勝てるのはもっと先のことだろうと思っていた』 ゆみ『モモのステルスは偶然だけで勝てるようなものじゃない。麻雀を初めて一週間ほどで勝てたのは誇っていいと思う』 ゆみ『君の打ち方については帰ってからメールで言うつもりだったんだが……その……』 ゆみ『君に言われたことが恥ずかしくて、誤魔化すように言ってしまった』 ゆみ『きつい言い方になってしまったと思うんだが、よければこれからも頼ってほしい。すまなかった』 京太郎「……頼らないわけないのになあ」ハハ 京太郎(歩いてたのはすぐメールするためだったんだな) 京太郎「さて、なんて返そうかな。まずは気にしてないということと、それからお礼と……」 ――自室―― ゆみ『今日はここまでにしておこう。また明日』 京太郎『ありがとうございました。また明日よろしくお願いします』 京太郎「ふー……おお、2時間も付き合って貰ってたのか!?」 京太郎「部長に言われたばっかりなのに頼りすぎた……ちゃんと息抜きのしてもらい方考えないとなあ」 京太郎「ま、今はそれより咲からのメールに返信を……っと」 京太郎『悪い悪い、返信遅れた』 咲『もーいつもはすぐ返ってくるのに1時間も来ないから心配したよ』 京太郎『悪かったよ。それより今日は何かあるのか?』 咲『ううん、特にはないかな。今日は京ちゃんの話聞かせてよ』 京太郎『その言葉を待ってた! 聞いてくれ!』 咲『な、何?』 京太郎『今日初めて2位になれたんだよ!』 咲『京ちゃんおめで……2位?』 京太郎『2位だよ! 悪いか!』 咲『すっごく喜んでたから1位になったのかなって思ったんだけど……』 京太郎『初心者が麻雀部相手に2位になったんだから十分凄いだろ!』 咲『京ちゃんも今は麻雀部じゃない』 京太郎『それはそうだけど! 初めてトップ2になれたんだよ!』 京太郎『咲も麻雀やってたなら初めて2位になったときの気持ちわかるだろー』 咲『……そうだね。きっと嬉しかったんだと思う』 京太郎『思う?』 咲『昔のことだもん。でも、うん。昔は楽しくやってた気がする。だから思う、かな』 京太郎『そうか……それと、咲に聞きたいことがあるんだけどいいか?』 咲『なあに?』 京太郎『今日麻雀の雑誌読んだんだ』 京太郎『それに高校生女子麻雀チャンピオンのインタビュー載ってたんだけど、そのチャンピオンの名前が宮永照っていうんだよ』 京太郎『その宮永照って人は東京の高校に通ってるんだけど、なんとなく雰囲気がお前に似てるから気になったんだ』 京太郎『もしかして親戚だったりするか?』 ………… 京太郎「メール返って来ないな……なんかマズイこと聞いちまったか? とりあえず……」 京太郎『その、答えにくかったら無理に答えなくていいぞ? こっちも突然聞いて悪かったし』 咲『ううん、大丈夫……その人は、宮永照は私のお姉ちゃんだよ』 京太郎『お前にお姉さんなんていたのか?』 咲『うん、京ちゃんと会う前にお父さんとお母さん別居しちゃってたから』 咲『私は長野でお父さんと住んでるんだけど、お姉ちゃんは東京でお母さんと一緒に住んでるの』 咲『……そういえば京ちゃんに私の家族の話したことなかったね』 咲『ちょうどいいし聞いてもらっていいかな? ちょっと相談したいこともあるんだ』 京太郎『確かになかったけど……俺が聞いていいような話なのか?』 咲『別に隠すようなことじゃないし気にしないで』 京太郎『そっか。それなら咲、久々に電話かけてもいいか?』 咲『うん、いいよ。……ありがとう京ちゃん』 京太郎『もしもし、聞こえるか?』 咲『もしもし、聞こえるよ』クスクス 咲『それじゃあ話すね。ええと、どこから話そうかな』 咲『家族麻雀をよくしてたって話はしたよね?』 京太郎『ああ、この間聞いた』 咲『私ね、実は家族麻雀そんなに好きじゃなかったんだ』 京太郎『そうなのか? 家族で出来るなんて楽しそうだななんて思ってた』 咲『うん、私の家ではね。お金をかけて麻雀やってたんだ』 京太郎『それで負けてたのか?』 咲『ううん、そんなことないよ。多分勝ち越してた』 京太郎『じゃあお金をやり取りするのが嫌だったとか?』 咲『それもちょっと違うかな。勝っても怒られてたんだ。負けたらお金を取られるし、勝ったら怒られる。京ちゃん、これどう思う?』 京太郎『なんというか……酷い話だな』 咲『でしょ? だから私は麻雀のことがそんなに好きじゃないんだよ』 京太郎『……』 咲『それで相談っていうのはここからなんだけど……』 京太郎『おう、ゆっくりでいいぞ』 咲『えっとね。京ちゃんが読んだっていう雑誌なんだけど、私も見たんだ』 京太郎『もう知ってたのか?』 咲『うん、お父さんから見せてもらってたんだ』 咲『私ね、一度東京へ、1人でお姉ちゃんに会いに行ったことがあるんだ』 京太郎『1人で行けたのか?』 咲『ちっちゃい子じゃないんだから行けるよ! 京ちゃんは私のことをなんだと思ってるの!?』 京太郎『悪い悪い。続けてくれ』 咲『うん、それで家まで行ったんだけど、お姉ちゃんは一言も口を聞いてくれなかった――』 咲『お姉ちゃん、きっとまだ私のこと怒ってるんだ』 京太郎『怒ってる?』 咲『家族麻雀の話で、負けたらお金を取られる、勝ったら怒られるって話はしたよね? それで私はどうしたと思う?』 京太郎『どうしたって……麻雀をやらなくなったとかじゃないのか?』 咲『ううん、違うよ。私はね、±0にしちゃえばいいんだって思ったんだ』 咲『それならお金を取られないし、取らないから怒られることもないから』 京太郎『……は? いや、そんなの狙ってできるものじゃないだろ?』 咲『狙ってやったんだ。狙えるようになったって言ったほうがいいかな。ちっちゃい私の精一杯の抵抗だった』 京太郎『……凄いな』 咲『あはは、ありがと。でもお姉ちゃんは私の勝ちを狙わないやり方が気に入らなかったんだと思う』 咲『きっと、だから今でも私と話してくれないんだ』 京太郎『……咲はお姉さんと仲直りしたいのか?』 咲『うん、だから雑誌の記事を見て、麻雀部に入ればお姉ちゃんとまた会えるかもしれないって思ったんだ』 京太郎『ああ、俺もそう思う』 咲『それで麻雀部に入ろうかどうか迷ってるの』 京太郎『結局文芸部には入らなかったんだろ? 麻雀部に入ればいいじゃんか』 咲『でもさ、京ちゃん。お姉ちゃんを怒らせた原因は麻雀なんだよ?』 咲『その麻雀を使ってお姉ちゃんに会おうなんて余計に怒らせたりしないかな?』 京太郎『それは……』 咲『麻雀部に入らなければ、時間はかかるかもしれないけどその内お姉ちゃんは私のことを許してくれるかもしれない』 咲『麻雀部に入ればすぐお姉ちゃんに会いに行ける。でも、もっと怒らせて私のことをずっと許してくれなくなるかもしれない』 咲『京ちゃん、私はどうしたらいいのかな……』 京太郎『……咲は麻雀のことどう思ってるんだ?』 咲『え?』 京太郎『だからさ、咲は麻雀のこと好きなのか?』 咲『……さっき言ったじゃない。あんまり好きじゃないよ』 京太郎『でもさ、それは勝つことじゃなくて、±0を目指してたからじゃねーのかな』 咲『……』 京太郎『俺はさ、麻雀始めたばっかだけど、勝てるとすげー楽しいよ』 京太郎『初めて3位になれたときでも嬉しかったし、今日初めて2位になれたときなんかは思わず叫んじまった』 京太郎『まだ1位になったことはないけど、なれたらきっともっと楽しいんだろうなって思う』 京太郎『咲はどうだ? 1位になって楽しいとか嬉しいって思うことなかったか?』 咲『……昔、まだ家族で仲良く麻雀でやってたとき、1位になれたら凄く嬉しかった』 咲『そうだね。京ちゃんの言うとおり、あの頃は家族仲良く、楽しく麻雀やってた』 京太郎『そっか。それなら咲は麻雀部に入るべきだ』 京太郎『今度は勝つことを目指して、楽しんで麻雀をすれば、それをお姉さんに見てもらえば、きっと咲のこと許してくれるよ』 咲『そう、かな』 京太郎『ああ』 咲『……うん、そうだね。会わなきゃ何も始まらないよね。わかったよ京ちゃん。明日、麻雀部に行ってみる』 京太郎『ああ、それがいいよ』 咲『相談に乗ってくれてありがとう、京ちゃん』 京太郎『気にするな……そうだ。咲、ちょっといいか?』 咲『何?』 京太郎『さっきお前麻雀部に入ればお姉さんにすぐ会えるみたいなこと言ってたよな? 県大会に勝つ前提とは随分偉くなったなあ』 咲『ふぇっ!? も、もう、揚げ足取らないでよ! 京ちゃんのバカ!』 京太郎『ははは……実際咲は強いのか?』 咲『京ちゃんなんか足元にも及ばないくらい強いよーだ!』 京太郎『……』 咲『な、何か言い返してよぉ……』 京太郎『いやまあ、あの宮永照と家族麻雀で±0狙ってるやつだと思うと……』 咲『お、お姉ちゃんだって高校入って上手くなってるはずだよ!』 京太郎『と言ってもなあ』 咲『うぅぅ……』グスン 京太郎『はは、冗談だよ』 咲『もう、あんまりからかわないでよ……』 京太郎『面白いからついな』 咲『ついじゃないよ! こっちは本気で気にするんだからね!』 京太郎『悪かったって。それじゃあな』 咲『またね。……京ちゃん、今日はありがとう』 京太郎『気にするなって。またなんかあったら電話しろよ。大会で会おうぜ』 咲『うん、大会で』 女生徒「残りは私がやっておくから。須賀くんは部活行ってていいよ」 京太郎「いいのか?」 女生徒「いいっていいって。私帰宅部だし。部活頑張ってねー」 京太郎「おう、ありがとな」 京太郎(今日こそは1位になるぞー! ……あ、階段に加治木先輩が) 京太郎「加治木先輩、これから部活に行くところですか?」ウエミアゲ ゆみ「ん、須賀くんか。そのつもりだよ」 京太郎「じゃあ一緒に行きましょう。昨日聞きそびれたところがあるんですけど途中で聞いていいですか?」 ゆみ「ああ、構わな……」フラッ 京太郎「加治木先輩!?」 ドタッドタタタタッ! 京太郎「いてててて……加治木先輩、大丈夫ですか?」シタジキ ゆみ「あ、ああ、大丈夫だ。ありがとう、今どく……痛っ!」 京太郎「どうしたんですか!?」 ゆみ「き、気にするな。なんでもないっ」 京太郎「なんでもないわけないじゃないですか! ……足ですか?」 ゆみ「……そうだとしても君に迷惑をかけるわけにはいかない。先に部室に行っていてくれ」 京太郎「……そういうこと言うならこっちにも考えがありますよ」ムッ ゆみ「?」 京太郎「だっことおんぶと肩を貸す。どれがいいですか?」 ゆみ「……は?」 京太郎「保健室まで連れて行くって言ってるんです。さ、だっことおんぶと肩を貸す。どれにします?」 ゆみ「ま、待て! そんなどれを選んでも恥ずかし……い、いや。そもそも必要ないと言っているだろう!?」 京太郎「あんな声出して何言ってるんですか。選ばないならだっこで運びます」 ゆみ「なっ」 京太郎「よいしょっと」グイッ ゆみ「う、うわっ! な、なんでよりにもよってお姫様だっこなんだ!? というかそもそも重いだろう!?」 京太郎「一番持ちやすいからです。それとむしろ軽いくらいですから大丈夫です……さあ、保健室まで行きましょうか」 ゆみ「わ、わかった! 肩を借りるから! だから下ろしてくれ!!」 京太郎「始めからそうやって人の好意を受け取ればいいんですよ……っと」 ゆみ「好意じゃないとは言わないが、とてもではないが素直には受け取れないな……」 京太郎「加治木先輩、腕はちゃんと肩に回しました?」 ゆみ「ああ、回した」 京太郎「じゃあ行きますよ。ゆっくり歩きますね」 ゆみ「ありがとう」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎(加治木先輩と話すのは最近慣れてきたけどさすがにあんなことした後だとキツイな……) 京太郎(なんであんなことしたんだろう……)ズーン ゆみ(ん……私が肩に手を回しやすいように少し屈んでくれているのか) ゆみ(その体勢で歩くのは決して楽ではないはずなのに。……優しいやつだな) ゆみ(さっきの強引な三択も、普段の須賀くんなら絶対にやらないはずだ) ゆみ(それでもやったということは、それはきっと――) ゆみ「なあ須賀くん」 京太郎「はっ、はい!」 ゆみ「そんなに力を入れなくても……いやそういう話になるかもしれないな」 ゆみ「その、さっきのことなのだが……」 京太郎「?」 ゆみ「さっきの君は怒っていたのか?」 京太郎「……当たり前じゃないですか」 ゆみ「……理由を聞いてもいいか?」 京太郎「決まってるじゃないですか。加治木先輩がまた無理しようとしたからです」 ゆみ「私は無理なんて――」 京太郎「してるから倒れたんです」 ゆみ「ぐっ」 京太郎「無理して倒れたのに、なんでさらに無理しようとするんですか」 ゆみ「君には――」 京太郎「関係ない、なんて言わないでくださいよ。自分が麻雀部にどれだけ大切か知らないわけでもないでしょう」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「ほら、早く言わないとまたお姫様だっこしますよ」 ゆみ「や、やめろ! わかった、言うから!」 ゆみ「……麻雀部は私が麻雀をもっと本格的にやりたいから、なんて身勝手な理由で作ったんだ」 ゆみ「だから自分で出来ることなら自分でやりたい。他人に無駄な負担はかけたくない」 ゆみ「雑務は私がやるから、君たちには純粋にただ麻雀を楽しんで欲しいんだ」 京太郎「……はあ」 ゆみ「な、なんだ」 京太郎「加治木先輩は優秀なんですから、出来ること全部やろうなんて思ってたらパンクするに決まってます」 ゆみ「そんなことは……」 京太郎「実は部長から加治木先輩をなんとか息抜きに誘えないかって相談を受けてたんですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「部活の仲間が辛そうにしてるのに純粋に麻雀を楽しむなんて出来ませんよ」 ゆみ「…………」 京太郎「あ、保健室ですね。その、無理しないって考えて貰えると嬉しいです」 ゆみ「……ああ」 京太郎「失礼します……先生はいないみたいですね」 ゆみ「ああ、外出の張り紙はないからすぐ戻ると思うのだが……」 京太郎「とりあえずこの椅子に座って下さい。湿布探しますね」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「ええと、湿布は……お、あった」 ゆみ「ああ、それじゃ渡してく――」 京太郎「それじゃ脱がしますね。足上げて下さい」 ゆみ「ああ……って、え?」 京太郎「」スルッ ゆみ「んっ」 京太郎「」スルスルスルッ ゆみ「ふあ」 京太郎(綺麗な足だな……触ってみた――はっ!?) 京太郎(な、何やってんだ俺!? 咲の手当てずっとしてたからその癖か!?)ダラダラダラ 京太郎(か、加治木先輩が意外と平気にしてるかも……) ゆみ「……」カアァァァァ 京太郎(やっちまったー! ど、どうする!?) 京太郎(……ああ、でも白くてスラっとして艶々としてて、いつまでも見ていたくなるような――) ゆみ「す、須賀くん。あまり見られていると、その、恥ずかしいのだが……」カアァァァ 京太郎「す、すみません!!」バッ ゆみ「あ……」 京太郎「あ……」 謝ろうと顔を上に向けると、顔を真っ赤にした加治木先輩と目があった。 ゆみ「……」 京太郎「……」 ゆみ「…………」 京太郎「……………」 ゆみ「――き」 保険医「誰かいるの? ごめんね席外しちゃ……」ガラッ 保険医「……ええと、お邪魔だったかしら?」 京太郎・ゆみ「「そんなことないです!!」」 保険医「んー軽い捻挫ね。病院に行く必要はなし。湿布を貼ってれば明日、明後日には治ってると思うわよ。もちろん安静にね」 ゆみ「ありがとうございます」 保険医「それと疲れてるみたいね。顔色悪いわよ。若いから無理は効くでしょうけど、ちゃんと休みは取ったほうがいいわ」 ゆみ「……はい」 保険医「部活はやってるの?」 ゆみ「麻雀部に入ってます」 保険医「それならやっても大丈夫ね。これから行くのかしら」 ゆみ「そのつもりです」 保険医「そう。ここには松葉杖とかはないから、彼氏くんはちゃんと連れてってあげるのよ」 ゆみ「かっ……!? 京太郎「ただの後輩です!」 保険医「そう」クスクス 保険医「まあ無理はしないことね。大会も近いんだし怪我で実力を発揮できないのはつらいわよー」 ゆみ「……わかりました。ありがとうございます」 保険医「お大事にー」 京太郎「ありがとうございました」ガラッ 京太郎(……さっきまでは怪我に気が行って意識しなかったけど、肩を貸すとかなり密着するな……) 京太郎(加治木先輩、普段凛としてるけど触れると女の子らしく柔らかいんだな……特に胸とかバストとかおもちとか) 京太郎(それになんかいい匂いも……) ゆみ「須賀くん」 京太郎「ひゃいっ!」 ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 ゆみ「そうか。……須賀くん、ちょっと聞きたいことがあるのだが」 京太郎「なんです?」 ゆみ「……君は躊躇せずお姫様だっこをしたり私のソックスを脱がしたりしてきたが……女性の扱いに慣れているのか?」 京太郎「……はい?」 ゆみ「普通はああいうことをやるときは多少なり躊躇するものだと思うのだが」 ゆみ「君は自然にやるものだからこっちも反応が遅れてな……」 京太郎「お姫様だっこなんて慣れてないですよ! やったのも初めてです!」 京太郎「……その、あのときはちょっとカチンと来まして、勢いでといいますか……」 ゆみ「ふむ」 京太郎「脱がした方はですね。その、幼馴染みの手当てをいつもやっていたのでついそれと同じように……」 ゆみ「なるほど……須賀くん」 京太郎「はい」 ゆみ「それは直したほうがいい。いつかきっと問題を引き起こす」 京太郎「あはは……でも大丈夫ですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「大切な相手じゃなきゃあんなに焦ったりしませんから。そういう相手ならきっと怒るくらいで許してくれます」 ゆみ「――っ」カァァ 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「だからそういうところを直せと言っているんだ……」ハァ 京太郎「す、すみません。もしかしてそんなに嫌でした……?」 ゆみ「そういうわけじゃ……いや、もういいか」 ゆみ「須賀くん」コホン 京太郎「は、はい」 ゆみ「意地を張っていた私を引っ張ってくれてありがとう」 ゆみ「1人じゃ保健室へ行くのは正直厳しかったと思う。手当てをしようとしてくれたこと、嬉しかったよ」 京太郎「……はい!」 京太郎「すみません。遅くなりましたー」ガラッ 智美「おお、2人とも何してた……」 睦月「そ、そんなにくっついてどうしたんですか?」 ゆみ「くっつ……! あ、足を捻ったから肩を貸してもらっているだけだ!」 佳織「歩けないみたいですけど大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、座っていれば大して痛まないし、明後日には治ると言われたよ」 桃子「そんなに重傷じゃなくてよかったっす」 智美「今日は部活やらずに帰るのかー?」 ゆみ「いや、痛むのは足だけだし参加するよ。須賀くん、すまないが椅子まで運んでもらっていいか?」 京太郎「もちろんです」 ゆみ「……っと、ありがとう。対局が終わるまで君の牌譜を見ていこう」 京太郎「よろしくお願いします」 ………… ……… …… … 智美「それじゃそろそろ帰るかー」 ゆみ「まだ早くないか?」 智美「怪我人は早く帰って安静にしなさい」 ゆみ「む……」 京太郎「はは……そういえば加治木先輩、その足で自転車に乗れますか?」 ゆみ「さっきに比べれば痛みも引いているしまあ大丈夫だろう」 智美「……ゆみちん、ちょっと歩いてみてくれるか?」 ゆみ「ああ……痛っ」 智美「ゆみちん、そんな足で自転車漕ごうなんて無理はよくないぞー」 睦月「そうですよ。悪化しちゃいます」 ゆみ「そう言われてもな。バスを使おうにも私の家からバス停までは遠いし、両親も仕事だ」 京太郎「家まで肩を貸す……のはちょっと外では恥ずかしいですね」ハハ ゆみ「出来れば校内でもそう思って欲しいんだがな。もちろん感謝はしているが」ハァ ゆみ「それに、そもそも須賀くんに家まで付き合わせるのは悪いだろう」 京太郎「俺が歩く分には大丈夫ですよ。いい運動です」 ゆみ「ん、そうか……」 ゆみ「……ああそうだ。そんなことをしなくてもタクシーを呼んで――」 智美「思いついたぞー!」ワハハ ゆみ「もら……蒲原、嫌な予感はするがとりあえず言ってみろ」 智美「失礼な。今回は名案だぞー」 桃子「どんな案なんすか?」 智美「京太郎がゆみちんの自転車でゆみちんを送ればいいんだ」 睦月「ああ、二人乗りですか」 ゆみ「ま、待て。他人の前でそんな……」 智美「肩を貸すくらい密着してたんだからこれくらいは大丈夫だろー?」 ゆみ「うっ……」 佳織「でも智美ちゃん、二人乗りなんてやってたら危ないし注意されちゃうんじゃないかな?」 ゆみ「そ、そうだ。だからタクシーを――」 智美「非常事態なんだしいいだろー。それに学校が見えなくなるまではゆみちんを乗せて押せばいいし」 佳織「そっか。それもそうだね」 ゆみ「妹尾!?」 桃子「まあいいじゃないっすか。タクシーは高いっすし、それに二人乗りやってるくらいじゃ誰も見ないっすよ」 睦月「二人乗りそんなに嫌なんですか?」 ゆみ「い、嫌というわけでは……す、須賀くんはどうなんだ!?」 京太郎「二人乗り自体は中学の頃よくやってたので、加治木先輩が嫌でなければいいですよ」 ゆみ「」 桃子「問題が片付いたところで帰るっすー!」 智美「ゆみちん、置いてくぞー」 睦月「それじゃ、肩貸しますね」 ゆみ「ありがとう。ついでに頼みがあるんだがタクシーを――」 睦月「京太郎くん、自転車乗り場からはよろしく」 京太郎「任されました!」 ゆみ「ああ、うん。わかっていた。私はいい後輩たちを持ったよ」 京太郎「照れますよ」 睦月「照れますね」 佳織「照れちゃいます」 桃子「照れるっすよー!」 ゆみ「よし、お前たちは明日までに『麻雀何切る?』を1冊終わらせて来い」 智美「後輩たち、あんまりからかっちゃダメだぞー」ワハハ ゆみ「蒲原は2冊だ」 智美「ワハ!?」 智美「ゆみちん、ここまで自転車を押して貰った気分はどうだ?」 ゆみ「見られてばかりで全く落ち着かなかった……二人乗りくらい目立たないと言ったのは誰だ」 桃子「二人乗りじゃなくて京太郎が押してたじゃないっすか。6人いて1人だけ自転車に乗って押されてればそれは目立つっすよ」 智美「どこの女王様だって感じだなー」ワハハ 京太郎「まあ嘘は言ってなかったですね」 ゆみ「嵌められたか……」 桃子「人聞きが悪いっすねー」 睦月「まあまあ、明日には誰も覚えてませんよ」 ゆみ「そうだといいんだがな」ハァ 京太郎「じゃあ前乗りますね」 ゆみ「ああ、今後ろに移る」 京太郎「よっ……と」 ゆみ「……そ、それじゃあ捕まるぞ」ギュッ 京太郎「!?」ビクッ ゆみ「ど、どうかしたのか?」 佳織「わわわ……」カァァ 睦月「凄い……」カァァ 桃子「だ、大胆っすね」カァァ 智美「どうかってゆみちん、それはこっちのセリフだぞ」カァァ ゆみ「え、えっ?」 ゆみ「だ、だって少女漫画とかでは二人乗りするときはこうやってギュッと抱きしめて……」 桃子「どんだけ乙女っすか!」 智美「本気で言ってるんだよなー……」 ゆみ「ど、どこがおかしいんだ!? ちゃんと捕まらないと危ないだろう!?」 睦月「抱きしめなくても腰を掴んだり荷台やサドルを持ったりすれば落ちないのでは……」 ゆみ「……!!」 智美「いや、そんなその発想はなかったみたいな顔されてもなー」 佳織「と、とりあえず京太郎くんを離してあげたらどうでしょう?」 ゆみ「え?」 京太郎「」パクパク ゆみ「う、うわっ! す、すまない!!」バッ 京太郎「……はっ!? い、いえ! こちらこそ!」 桃子「何がこちらこそなんすか?」 京太郎「……いや、なんでもないぞ?」 桃子「ところで感想は」 京太郎「柔らかくていい匂いがし……しまった!?」 睦月「素直だね」 智美「正直者だなー」ワハハ ゆみ「」プシュー 桃子「……さて、それじゃあそろそろ帰るっすか」 智美「邪魔者はお暇するかー」 京太郎「ま、待った! せめてこの空気をどうにか――」 睦月「そうですね。早く帰りましょう!」 佳織(何でもいいからここから逃げ出したいなあ……) 京太郎「睦月先輩!? 佳織先輩もだんまりはやめましょうよ!」 智美「それじゃあまた明日なー」ワハハ 京太郎「ちょっとー!?」 スタスタスタスタ…… 京太郎「ほ、本気で帰りやがった……」 ゆみ「」プシュー 京太郎「え、ええと、その加治木先輩。さっきのは……」 ゆみ「い、いや、いいんだ。悪いのは私だから」 京太郎「そんなことは……」 ゆみ「と、ともかく! 自転車を出してくれ!」 京太郎「は、はい! 加治木先輩の家遠いですもんね!」 ゆみ「あ、ああ! 早く行かないと日が暮れてしまう」 京太郎「わかりました! それじゃしっかり捕まって――」ハッ ゆみ「あ……」ジー 京太郎「そ、そういう意味じゃないですからね!?」 ゆみ「わ、わかっている! それじゃあ荷台を掴んで……」 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、ちゃんと掴んでいる」 京太郎「それじゃ出しますよー」 ゆみ「よろしく頼む」 京太郎「……」シャー ゆみ「……」シャー 京太郎(中学のとき、咲とよくこんなふうに二人乗りしてたなー) 京太郎(初めてやったときは咲が憧れだったって言って横乗りしたっけ) 京太郎(ちょっと漕ぎだしたら咲が倒れそうになったからすぐやめたけど。あいつ悔しそうな感じで涙目になってたな) 京太郎(その後も何度か挑戦しようとしたから止めるのが大変だった。あいつ変なところで頑固だからなあ) 京太郎(咲とのどうでもいい話とか結構楽しかったな。そのうちあいつの重さがない自転車が物足りなくなったりして) 京太郎(風を切る感覚も感じる重さも似てるけど、見える景色はやっぱり向こうと違う。……当たり前か) 京太郎(……おんなじ長野なのにな)ハァ ゆみ「なあ、須賀くん」 京太郎「なんですか?」 ゆみ「二人乗りはよくやっていたと言っていたな」 京太郎「そうですね。前に言った幼馴染をよく乗せてました」ハハ ゆみ「そうか。……間違っていたらすまないのだが、今そのときのことを思い出してはいなかったか?」 京太郎「……もしかして声に出したりしてました?」 ゆみ「そういうわけではないが、ため息をついたり考え込むような顔をしていたからな」 京太郎「はは……加治木先輩には敵わないですね」 ゆみ「それで、これももしなんだが」 京太郎「何がです?」 ゆみ「今、寂しい、と思っていないだろうか」 京太郎「寂しい……ですか」 ゆみ「ああいや、違っていたらそう言ってくれ。別に何か特別な根拠があって言っているわけではないんだ」 京太郎「ん……考えたこともなかったですけど」 京太郎「けど、言われれば寂しかったのかもしれないです」 京太郎「俺、幼馴染……咲って言うんですけど、そいつと毎日メールしてるんですよ」 京太郎「昔からよくメールはしてたんですけど、引越す前は毎日なんてことはなかったです」 ゆみ「ふむ。聞いた私が言うのも何ではあるが、違うところにいるんだ。それくらい普通じゃないか?」 京太郎「いえ、そこじゃないんです」 京太郎「咲は地元の高校に行ったんで、やっぱり中学の友達もたくさん一緒のところ行ってるんですよ」 京太郎「咲とのメールにもよく出てくるんですけど、それがちょっと羨ましいなとかいいなとか思っちゃうんです」 京太郎「こっち来て使ってる道も、普段登校に使ってる道はもう見慣れた風景になってるんですけど」 京太郎「今こうやって違う道を行くとやっぱり全然見覚えがなくて」 京太郎「前のところはどこ行っても大体見慣れてたんで、自分はここの人間じゃないんだなとか感じたんです。 京太郎「それでさっきため息ついちゃったんですよ」 京太郎「そんなこと考えてると、俺はなんで1人でこっち来たのかなってちょっと後悔が」 ゆみ「……そういえば須賀くんがこっちに来た理由を聞いていなかったな」 京太郎「ああ、親の仕事の都合ですよ。まあ向こうで一人暮らしすることも出来たんで、決めたのは自分です」 ゆみ「高校生が1人で暮らすのは言うほど簡単じゃない。自分のせいだなんて思う必要はないさ」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「……まあ私もしたことはないからどんなものかわかるわけではないが」 京太郎「加治木先輩……」ジー ゆみ「と、ともかくだ! 自分が選んだからしょうがないなんて思わず、寂しければ素直にそう思えばいい。そのほうが楽になる」 京太郎「……そうですね。ありがとうございます」 ゆみ「……」シャー 京太郎「……」シャー ゆみ(あまり表情は明るくなっていないな……ああ) ゆみ「寂しくて、じゃあどうするかまで言わなければ片手落ちか」ボソッ 京太郎「何か言いました?」 ゆみ「いや、なんでもない」 ゆみ「……須賀くん。この先に急な坂道があるのが見えるか?」 京太郎「ああ、結構急ですね。しっかり捕まってください」 ゆみ「ああ」ギュッ 京太郎「っ!? か、加治木先輩!?」グイッ ゆみ「きゃっ! ハンドルを急に切るな! 危ないだろう!?」 京太郎「それはすみません! でも何ですかいきなり!?」 ゆみ「き、急な坂だからしっかり捕まったんだ。それに……」 京太郎「それに?」 ゆみ「……このほうがいいかと思ってな」 京太郎「……ええと、それは、まあ、さっきのも嬉しかったですけど」 ゆみ「そ、そういう意味じゃない! 君は寂しいのかもしれないと言っていただろう?」 京太郎「そ、そっちですか」 ゆみ「私は地元を離れてはいないから、君がどれほど苦しいか分からない」 ゆみ「でも、君のつらさを和らげたいとは思う。そのためにはこうするのがいいと思った」 ゆみ「君の故郷にいなかった私が君のその寂しさを埋めたいというのはおこがましいかもしれないが、それでも私を頼って欲しい」 ゆみ「君は、私の大切な後輩だからな」 京太郎「……そんなに心配されるような顔してました?」 ゆみ「ああ、何かしてあげたいと思うくらいにはな」 京太郎「……まったく、加治木先輩は背負い込みすぎですよ。 麻雀部のことだけで倒れちゃったのに、俺のことまで背負ってどうするんですか」 ゆみ「う……」 京太郎「でも、ありがとうございます」 ゆみ「ああ、いい声だ」 京太郎「これからも頼っていいですか?」 ゆみ「もちろん。いつでも頼ってくれ」 京太郎「それじゃ、加治木先輩も俺を頼ってください」 ゆみ「うん?」 京太郎「麻雀はまだ全然敵いませんけど、でも牌譜の分析とか出来ることはやりますから」 ゆみ「しかし……」 京太郎「ただでさえ倒れたのに、この上さらに加治木先輩に頼るなんて言ったら部長に何言われるかわかりませんよ」 ゆみ「だが私が勝手にやっていることで負担をかけるわけには……」 京太郎「加治木先輩が俺に大切だって言ってくれたのと同じで、俺にとっても加治木先輩は大切な先輩なんですよ!」 ゆみ「……それを言われるとはな」フゥ ゆみ「量を減らそうと思っていたんだが、そう言ってくれるならお願いするよ」 京太郎「任せてください!」 京太郎「…………」シャー ゆみ「…………」シャー --------------------------------------- ゆみ(……今まで意識していなかったが、背中、広いな。それに固い) ゆみ(男子とこんなに密着したのは初めてだが、体の作りがこんなに違うのか)ポー ゆみ(……前はどうだろう)サワッ 京太郎「」ビクッ ゆみ(腹筋の辺りも引き締まっている。細身だけど筋肉質だ。鍛えているんだな……今さらか。部活の前にお姫様だっこをされ――) ゆみ(いかん、自分で考えていて恥ずかしくなってきた)カアァァ ゆみ(いつの間にか鼓動も速くなっている)ドクンドクン ゆみ(こ、これは須賀くんに伝わっているんじゃないだろうか)ドクンドクン ゆみ(……もっとこう、トクントクンと可愛らしくならないものかな)ハァ ゆみ(……須賀くんも緊張しているんだろうか) ゆみ(……えい)ピト ドキドキドキドキ…… ゆみ(私よりも速い。私よりも緊張してくれているのか。……なんだか嬉しいな) ゆみ(心地いい音だ。もう少し、家に着くまでこのまま――) --------------------------------------- 京太郎(……ぴったりくっついてるな)ドキドキ 京太郎(加治木先輩と密着したの今日何度目だ!? 今まで一度もこんな経験なかったのに!) 京太郎(ああ、背中に柔らかいおもちが……いかん、運転に集中しろ集中!) 京太郎(ふー……うん、少し落ち着いてきた) 京太郎(柔らかく包まれてるみたいでなんか安心する。こういうの母性っていうのかな) 京太郎(加治木先輩が言ったとおり、ギュッとされてると寂しさが和らいできた) ドクンドクン…… 京太郎(……ん? なんだこの振動) 京太郎(これは……心臓の音か。もしかして加治木先輩も緊張して――) ゆみ「」サワッ 京太郎(って!? な、何やってんだこの人!?)ドキドキドキドキ 京太郎(寂しさなんか吹っ飛んだけど! ただでさえ我慢してんのに!) 京太郎(この人ついこの間まで男と話すの苦手とか言ってたよな!? 話してなきゃいいのか!?) ゆみ「ん……」ピト 京太郎(背中に耳を……まさか俺の心臓の音聞いてるのか? うおお、恥ずかしい!!) 京太郎(ど、どうしよう。何か話しかければ離れてくれ――) ゆみ「――もう少し、このまま――」ボソッ 京太郎(……まあ、俺も加治木先輩の音聞いたんだしお互い様か) 京太郎(家まであと少しだし、このままでいいか) 京太郎(俺もそのほうが嬉しい……って何考えてんだ俺)ドキドキ --------------------------------------- ――加治木宅前―― 京太郎「加治木先輩、家ってここですか?」 ゆみ「……ん? ああ、ここだ――」ポー ゆみ「――っ!?」バッ ゆみ「す、すまない! ずっとこんな、だ、抱き締めるような真似を……!」 京太郎「い、いえ、大丈夫です。全然」ドキドキ ゆみ「そ、そうか。それとその、さっきの君のお腹を確かめようと思ったのも……」 京太郎「そっちも少しくすぐったかっただけですから大丈夫です」ドキドキ 京太郎「……って確かめ?」 ゆみ「っ! な、なんでもない!」 ゆみ「そ、そんなことより」コホン ゆみ「私のためにこんな遠回りまでしてくれてありがとう、須賀くん」ニコッ 京太郎「っ!!?」ドキィ!! ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」ドキドキ ゆみ「そうか、それならいいのだが……」 京太郎(な、なんだ急に? 加治木先輩の笑ったとこ初めて見たってわけでもないのに)ドキドキ ゆみ「なんだか顔が赤いな……もしかして私が重くて疲れたのだろうか」シュン 京太郎「」ムッ 京太郎「そんなことないです!!」 ゆみ「わっ!」 京太郎「部活の前にも言ったじゃないですか! 加治木先輩は重くなんてないです!」 ゆみ「そ、そうか。そこまで強く言われると照れるな……」カアァァ 京太郎「あ……すみません」 ゆみ「まあそう言ってくれたのは嬉しいよ。ありがとう」フフッ 京太郎「っ!」ドキッ 京太郎(さっきからのこれは) 京太郎(加治木先輩が自分のこと卑下するのがなんか嫌で、笑うと胸が高鳴って) 京太郎(ああ、もしかして) 京太郎(――俺、加治木先輩のこと好きになったのか) ゆみ「須賀くん? 本当に大丈夫か?」 京太郎「大丈夫です。むしろスッキリしました」 ゆみ「? まあそれならいいんだが」 京太郎「それより加治木先輩。牌譜渡して貰っていいですか?」 ゆみ「ああ、そうだったな。それじゃあ半分――」 京太郎「全部下さい」 ゆみ「何?」 京太郎「これからは牌譜の整理と分析は俺がやります」 京太郎「加治木先輩は作戦を考えたり自分の練習をしたり、加治木先輩じゃなきゃ出来ないことをやって下さい」 ゆみ「しかし……」 京太郎「最初はやり方を聞くことになると思いますけど、でもすぐに覚えます!」 京太郎「麻雀部の、加治木先輩の役に立ちたいんです!」 ゆみ「……自転車に乗っているとき、お願いすると言ったしな」フゥ ゆみ「わかった。それじゃあ牌譜の整理と分析は君に頼んだよ」 京太郎「はい!」 ゆみ「ちなみにこれだけあるんだが本当に大丈夫か?」ドサッ 京太郎「お、おお……すごい量ですね」 ゆみ「やはりこの量は……」 京太郎「いえ、大丈夫です! やってみせます!」 ゆみ「そうか……ただ、失敗を経験した者として言うが、無理だと思ったら私を頼るんだぞ」 京太郎「倒れる前に頼ります」ハハ ゆみ「それじゃあ須賀くん、自転車の鍵を取ってもらっていいか?」 京太郎「あ、はい、これです。足まだ痛みます?」 ゆみ「ん……歩くのは少しつらいな。まあ明後日には治ると言っていたから大丈夫だろう」 京太郎「そうですか……その、加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「明日の行きも送らせて貰えませんか」 ゆみ「なっ!? あ、明日の行きとはつまり登校のことか」 京太郎「はい」 ゆみ「し、しかし登校時間には人も多いし朝からというのは目立ちそうだな……」 京太郎「二人乗りが目立つなら、人が多くなったらまた押しますよ」 ゆみ「余計に目立つだろう!?」 京太郎「じょ、冗談です」 京太郎「無理にではないですけど、もし痛むようなら明日も大変かなと思ったので……」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 ゆみ「……そうだな。お願いしてもいいだろうか」 京太郎「はい、喜んで!」 ゆみ「ありがとう。それじゃあこれを」 京太郎「これは……自転車の鍵ですか?」 ゆみ「ああ、明日も来るんだ。自転車のほうが楽だろう? どうせ私は使えないしな」 京太郎「ありがとうございます!」 ----------------------------------------- 京太郎「そろそろ帰りますね」 ゆみ「ああ、今日は助かった」 ゆみ「保健室へ連れて行ってもらって、家まで送ってもらって、牌譜を引き受けてもらって、明日も来てもらう」 ゆみ「君には借りが随分と出来てしまったな」 京太郎「どれも好きでやってることですから。気にしないでください」 ゆみ「私はいい後輩を持ったよ。……何か埋め合わせをしないとな」 京太郎「いえ別にそんな……」 ゆみ「後輩に助けて貰いっぱなしの先輩というのも情けない。私に出来ることなら何でもいい、考えておいてくれ」 京太郎「……わかりました。考えておきます」 ゆみ「ああ」 京太郎「それじゃあ加治木先輩、また明日」 ゆみ「また明日。今日はありがとう」 京太郎(いい後輩かあ……)シャー 京太郎(いつか、後輩としてじゃなく俺を見てもらえるように、頑張ろう) -----------------------------------------
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/552.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342270571/ 久「みんな、団体戦お疲れ様」 咲「はい、何とか優勝できてよかったです」 和「全国に向けて、さらに頑張りましょう」 まこ「その前に個人戦もあるがの」 優希「おー! この勢いで個人戦も代表取るじぇ!」 京太郎「……おう、頑張れよ!」 優希「京太郎、お前も一回くらいは勝ってみせるじぇ!」 京太郎「…………」 京太郎(はぁ……みんなは県大会優勝か……) 京太郎(きっと個人戦も、誰かは代表を取るだろう……それにひきかえ俺は……) 京太郎(自分なりに勉強はしてるつもりだし、時々みんな相手でも2位くらいなら取れることもある) 京太郎(だが……やっぱり咲みたいな力はない) 京太郎(これが才能なのか……? 俺はどんなに頑張っても、凡人の雑用係で終わるのか……?) 京太郎(みんなはあれほど活躍しているのに、俺は……) 京太郎(このまま……) 京太郎(このまま、終わりたくねぇ!) 優希「……一発ツモだじぇ!」 まこ「ふぅ、やはり東場は優希には勝てんのう」 優希「京太郎、タコスを買ってくるじぇ!」 京太郎(俺にも……) 咲「ツモ、嶺上開花です」 和「うぅ、またですか……」 久「絶好調ね、個人戦も期待できるわ」 京太郎(俺にも、あんな力があれば……!) ……… …… … ハギヨシ「失礼します、衣様」 衣「ハギヨシか、何用だ」 ハギヨシ「それが、衣様にぜひとも面会したいという客人が……」 衣「む……こんな夜にか。一体何者だ?」 ハギヨシ「それが、どうやら清澄麻雀部の方のようです。須賀京太郎と名乗っていました」 衣「清澄の……?」 ハギヨシ「いかがいたしましょうか?」 衣「……面白い、通せ」 京太郎「……そういうわけで天江さん、お願いします。その力の秘訣を教えてください」 衣「話はわかったが……なぜ、そこまでして強さを求める」 衣「お前は決して、清澄の麻雀部を退屈に感じていたわけではなかったのだろう?」 京太郎「……確かに、以前はそうでした。雑用は大変だったけど、嫌ではありませんでした」 京太郎「でも、気付いてしまったんです。自分が、みんなから取り残されているって」 京太郎「俺も……みんなに認めてもらいたい。一緒に戦いたい。そのために、勝ちたいんです」 衣「……そんなことをしなくとも、他の部員はおそらく今でもお前を認めて……」 京太郎「でも、それは麻雀の強さで……ではない」 衣「……呆れたものだ。結局のところ妬みや嫉みではないか」 衣「そのような感情で強くなったとしても、お前の幸福に結びつくとは思えぬ」 京太郎「それでも……お願いします、天江さん」 衣「…………」 衣「……長々と話してから申し訳ないが、衣の力は気付いたら身についていたもの」 衣「決定的なアドバイスを送ることはできない……せいぜい、もしかしたら程度だ」 京太郎「かまいません」 衣「京太郎と言ったな。お前は、麻雀を打つ時に何か覚悟はあるのか?」 京太郎「覚悟……ですか?」 衣「今までずっと負け続きなのだろう。だから『今度もどうせ負ける』『負けて当たり前』と思ってないか?」 京太郎「…………」 衣「勝つ気のない者に道は開けぬ。まず、勝つ気を持つことだ」 衣「たとえば……勝つための制約、目標、条件……など、様々なことを考えてみよ」 衣「思えば衣も……不自由と引き換えに、雀力を得たのかもしれぬな」 京太郎「……勝つための……」 京太郎(…………!) 衣「む、何か考え付いたようだな」 京太郎「……はい」 衣「ならば、もう衣の助言は必要なかろう……せっかく来たのだ、一局ほど打っていくか?」 京太郎「いいんですか?」 衣「問題ない、ちょっとした戯れだ。ではハギヨシ、卓へ案内せよ」 ハギヨシ「かしこまりました。皆様もお揃いです」 純「……弱い……」 智紀「……弱い……」 一「……弱いね……」 透華「……弱いですわ……」 京太郎「……これが今の俺の、全身全霊の力です。皆さんの足元にも及ばない、これが」 京太郎「でも……やってみせますよ。すぐに、強く……そう、天江さんよりも……」 衣「……ほう、ずいぶん大きく出たな」 京太郎「天江さん、皆さん。ありがとうございました」 京太郎(天江さんと話して、収穫はあった) 京太郎(強くなるための、覚悟……勝つための制約、目標、条件……俺にはそれが欠けていた) 京太郎(優希はタコスを食べることで、東場に圧倒的な力を発揮する) 京太郎(あれはもしかして『タコスを食べなければ力が出せない』という制約を無意識に作ってたのでは?) 京太郎(咲は『勝つことも負けることも許されない』という条件に縛られることで、プラマイゼロや嶺上の力を得たのでは?) 京太郎(なら俺も、何かを食べなければ力が……いや、俺の雀力じゃそれでは生ぬるい!) 京太郎(もっと、強い覚悟が必要……そう……) 京太郎(何かを、犠牲にするような) 京太郎「おはよう、咲に優希」 咲「おはよう、京ちゃん」 優希「あ、のどちゃんもあそこにいるじぇ!」 咲「おはよう、原村さん」 和「おはようございます。優希、宮永さん……須賀君もご一緒ですか?」 京太郎「……ああ。じゃあ教室行くから」スタスタ 和「あ……須賀君?」 優希「京太郎の奴、ずいぶんそっけないじぇ。咲ちゃん、何かあったのか?」 咲「さ、さぁ……」 久「それじゃ、今日も打つとしますか」 優希「おー! タコスも水も準備かんりょ……あっ、手が滑ったじぇ!」バシャッ 和「きゃあっ!」 優希「うわっ、のどちゃんのおっぱいがスケスケだじぇ!」 咲「きょ、京ちゃん、見ちゃダメぇーっ!」 京太郎「……始めましょうか。和は着替えてきな」 久「……へ?」 優希「ど、どうしたんだじぇ京太郎!? のどちゃんのおっぱいだじょ!?」 京太郎「個人戦も近いんだ。時間は無駄にできない、それだけのことだろ」 和「す、須賀君……?」 まこ「……な、何があったんじゃ……」 久「須賀君が、和に興味を示さないなんて……雪でも降るのかしら……」 久「ふぅ、そろそろ終わりにしましょうか」 まこ「京太郎やるのぅ。今日はわしらといい勝負だったぞ」 京太郎「いい勝負……ですか?」 優希「京太郎もたまには勝つ時もあるのか、なかなかやるじぇ」 京太郎「……いい勝負じゃ、駄目なんだよ……」 咲「え? 何か言った?」 京太郎「……お先に失礼します。では」 京太郎(……和……) 京太郎(俺は、お前が好きだった。でも今は……それ以上に、麻雀が強くなりたい) 京太郎(麻雀と比べれば、恋心などチンケなもんだ。俺はもう、お前に一切興味を示さない) 京太郎(でも……まだまだ足りない。男子のレベルは高いんだ) 京太郎(みんなといい勝負程度じゃ駄目だ……和だけじゃ足りない。まだまだ、何かを捨てないといけない) 京太郎(最後に一体、俺に何が残るのか……いや、今は考えるのはよそう) 京太郎(……さよなら、和……) 咲「……ねぇ京ちゃん、最近やっぱりおかしいよ」 京太郎「……そうか?」 咲「そうだよ。クラスの友達とも全然遊んでないじゃん」 咲「原村さんとも……優希ちゃんとも、染谷先輩とも、部長ともあまりお喋りしなくなったよね」 京太郎「気のせいだろ」 咲「嘘だよ……京ちゃん、何か隠してない?」 京太郎「…………」 京太郎「ツモ……4000オール……」 優希「ま、また京太郎の勝ち……?」 久「……凄いわね、下手したらもう咲や和よりも強いんじゃないの?」 まこ「京太郎、一体どんな特訓をしたんじゃ?」 京太郎「別に、大したことは……はぁっ……してません、よ……」 和「須賀君、大丈夫ですか……? 具合悪そうですが……」 久「でも、これなら個人戦でもかなりのところまで……」 京太郎「かなりのところ……? 俺は優勝以外、考えてない」 京太郎「そう、勝たなきゃ駄目なんだ……勝って、優勝しなきゃ……」 咲「きょ、京ちゃん……」 京太郎「そうだ部長……俺、少なくとも個人戦が終わるまでは……もう、部活には来ませんから」 久「えぇ!? な、何言ってるの!?」 京太郎「ご心配なく……雑用はメールででも連絡していただければ、ちゃんとやりますんで」 まこ「京太郎、やっぱりお前さん最近変じゃぞ!」 久「須賀君……どうして……」 京太郎「……麻雀部は、俺にとって大切なものなんです……」 久「だったら……」 京太郎「だからこそ、来ちゃ駄目なんです……それじゃ、また大会で……」 優希「京太郎……一体どうしたんだじぇ……」 咲「…………」 京太郎「ぐっ……はぁ、はぁ……」 京太郎「ここ最近、ずっと体が重い……息が苦しい……」 京太郎「やっぱり……急激な強化に、体がついてこれなかったか……」 京太郎「だが大会は、もう近い……何とか、もたせないと……」 京太郎「…………」 京太郎「……今夜は、満月か……」 京太郎「行って、みなければな。龍門渕に」 京太郎「……ロン、2000点」 衣「なっ……」 純「ば、馬鹿な……」 智代「満月の、衣に勝った……」 一「それも、つい最近まで初心者だったのに……」 京太郎「ぐぅっ!」 透華「ちょ、ちょっと大丈夫ですの!?」 京太郎「……いえ、問題ありません……」 衣「それほど急激に強くなり、それほど体を酷使し……」 衣「京太郎……お前は、一体どれほどのものを犠牲にしたのだ……」 京太郎「…………」 衣「そこまでして得る勝利に……一体、何の意味があるというのだ」 京太郎「……天江さんには、わかりませんよ。凡人の、苦悩は……」 京太郎「俺は、ただ……みんなと一緒に、戦いたいだけです」 衣「京太郎……」 京太郎「天江さん、皆さん。お世話になりました」 京太郎「絶対に……代表、取ってきますんで」 衣(…………) 衣(須賀京太郎……あの強さは本物だ) 衣(このまま頂点へ駆け上がるか、地獄の業火に焼かれるか……衣にも分からぬ) 衣(だが……お前は言っていた。みんなと一緒に、戦いたいだけだと) 衣(京太郎……気付いているのか?) 衣(どの道を歩むにせよ、そこには……お前の望む『みんな』はいないということに) 京太郎「個人戦まで、あと三日か……」 京太郎「はは……もう、学校からの帰り道すらもきついな……」 京太郎「だが、勝たなきゃ……勝って、みんなに……」 京太郎「…………」 京太郎「……よぉ、どうした?」 京太郎「この時間は……部活じゃ、ないのか?」 咲「……部活よりも、京ちゃんが心配だよ」 京太郎「俺のことは……心配ない。勝って、みせるさ……」 咲「どうしたの……学校でもずっと一人だし、顔色だって……」 京太郎「でもさ……俺、強くなっただろ。優勝、狙えるくらい……」 咲「……強くなんか、ならなくていいよ。私は、いつもの京ちゃんが戻ってきてくれれば」 京太郎「……駄目だ。俺は、勝たなきゃいけない」 咲「どうして、そこまでして勝ちたいの!」 京太郎「……咲には、わからないだろうな。力のある咲には……」 京太郎「みんなに、取り残された者の気持ちは……」 咲「……京ちゃん……」 個人戦当日 久「さて、集まったかしら」 優希「みんなで代表取るじぇー……って、あれは……」 まこ「……京太郎?」 京太郎「はぁ、はぁ……ひ、久しぶり……みんな」 和「須賀君……どうしたんですか? 真っ青ですよ……」 京太郎「だ、大丈夫さ……今日一日だけ、もたせてみせる」 京太郎「それより…部長、お願いがあります」 久「お願い?」 京太郎「もし女子の部が終わって、俺がまだ勝ち残っていたら……見てください」 京太郎「どうしようもなく弱くて、いつもみんなの遥か後ろを歩いていた……俺の、戦いを」 咲「……京ちゃん……」 久「……わかったわ。でも、無理しちゃ駄目よ」 京太郎「ありがとうございます……それじゃ、みんなも頑張れよ……」 優希「京太郎……なんなんだじぇ……」 久「今は……私たちも、目先の大会に集中するしかないみたいね」 まこ「……じゃのう」 和「あれ……宮永さんは?」 京太郎「…………」 咲「京ちゃん!」 京太郎「……何だ、咲。女子の会場は向こうだぜ」 咲「戻って、来るよね……」 京太郎「…………」 咲「いなくなったり……しないよね……」 京太郎「……ははっ、当たり前だろ。じゃないと誰が、お前の面倒見るってんだよ」 咲「……京ちゃん……」 京太郎「もう行くぜ。お前も……勝てよ、咲」 咲(京ちゃん……) 咲(京ちゃんは、ああ言ったけど……私はやっぱり、今の京ちゃんには勝ってほしくないよ) 咲(ただ、いつもみたいに……私の隣で、笑っていてくれれば) 優希「お昼だじぇー!」 和「部長、このご飯は……」 久「須賀君が買ってきてくれたのよ……頼んでないんだけどね」 まこ「……あんな状態でも、本来の仕事は欠かさないってことかの」 咲「あの……京ちゃんの、様子は……」 久「さっき男子の部を見てきたけど……一応、勝ち進んではいるわね」 和「一応……というのは?」 久「……フラフラだったわ。それこそ、今にも倒れそうなくらい」 優希「きょ、京太郎……やっぱり風邪なのか?」 久「……風邪なら、まだいいんだけど……それ以上の、何かのような気がしてならないのよ」 久「今は……何とも言えないけど」 咲「…………」 京太郎(麻雀部も、友人も……) 京太郎(この日のために、全てを犠牲にしてきた……) 京太郎(みんな、負けるんじゃないぜ……俺も必ず、そこへ……) 京太郎(たとえ……) 『それでは、男子個人戦の一回戦を始めます!』 京太郎(この体が、壊れようと!) 京太郎「げほっ、げほっ……」 京太郎「苦しい……あと、何回戦えば……」 京太郎「いや……何回だろうと、関係ねぇ」 京太郎「十回だろうと、二十回だろうと……」 京太郎「立ち塞がる奴は……全員、倒してやる!」 優希「咲ちゃん、のどちゃん。代表おめでとうだじぇ」 和「ありがとうございます、優希」 まこ「部長も惜しかったのう」 久「残念ながら、届かなかったわね。ところで……男子の方は?」 まこ「……最後の半荘のようじゃ。ここで勝てば……京太郎が、代表じゃ」 久「そう……あの、須賀君が……」 優希「あんなに弱かった京太郎が、あと一勝で代表……」 まこ「信じられんのう……」 和「……みなさん、男子の会場に行ってみましょう。スクリーンで様子も見られるでしょうし」 咲「……うん……」 京太郎(みんなは……勝ったのか? いや、勝ったに決まってるな) 京太郎(俺も、すぐそこだ。驚いたかみんな、あの弱っちい男が今や全国目前だぜ) 京太郎(絶対に勝って、みんなと全国に……) 京太郎(あと一半荘なら……きっと体の方は、何とかなる……いや、何とかしてみせる……) 京太郎(だが今回に限っては、別の問題があるようだ) 京太郎(それは……) 「狂気の沙汰ほど面白い……」 「傀……と、呼ばれています。よろしくお願いします」 「さて……打(ぶ)つか」 『さぁ、ついに男子の部も最後の半荘!』 『赤木選手、傀選手、阿佐田選手、須賀選手! 代表の切符を手にするのは誰だ!』 京太郎(相手が、今の俺でも……勝てるかどうかわからない、化け物揃いだってことだ) 京太郎(いいぜ……やってやるよ!) 傀「御無礼、ロンです」 哲也「これで南入だな」 京太郎「く……12000か。げほっ、げほっ……」 赤木「ククク……病院にでも行った方がいいんじゃねえのか?」 京太郎(さすがは決勝まで勝ち進んだ猛者……とても同じ、高校生とは思えない……) 京太郎(今の俺でも……敵いはしないのか?) 京太郎(ここまで、なのか……?) 優希「京太郎、押されてるじぇ……」 まこ「それより、今にも倒れそうじゃ……」 咲「京ちゃん……」 衣「……清澄よ。あの男の様子はどうだ」 和「あ、あなたは……」 久「天江さん……なぜ、ここに?」 衣「む……そうか、勝ち進んでおるのか……馬鹿者め、無茶をしおって……」 まこ「お前さん……何か、知っとるんか……?」 衣「……京太郎は以前、衣を訪ねてきたのだ」 和「……そんなことが」 まこ「何考えとるんじゃ、あいつは! そんなことをして手に入れた強さに、何の意味がある!」 咲「……それでも、京ちゃんは勝ちたかったんです。私たちの、ように」 久「咲?」 咲「京ちゃんは、ずっと苦しんでいました。自分だけ、麻雀が弱いということに」 咲「団体戦で、優勝した時も……自分ひとりだけ、輪の外にいるような気分だったんだと思います」 咲「私は……」 咲「私は、京ちゃんのことを忘れたことなんか……一瞬たりともなかったのに」 和「宮永さん……」 『ついにオーラス、最終盤だ! トップは傀選手、このまま決まってしまうのか!』 衣「いずれにせよ、このまま進めば京太郎の敗北は必至だ」 衣「あの三人……今の京太郎でも太刀打ちできぬほどの、魑魅魍魎の類」 衣「このまま、終わってくれればよいのだがな」 久「まだ、何かあると?」 優希「で、でも……この点差じゃ、もうどうしようもないじぇ」 衣「……それはわからぬ」 衣「まだ……京太郎に、捨てるものがあれば」 咲「!」 京太郎(逆転条件は役満ツモ……厳しいってもんじゃねぇな) 京太郎(くっ、牌が重い……目も霞んできやがった……) 京太郎(みんなと共に、全国へ……行きたかった) 京太郎(全てを捨てても……やっぱり、届かないのか?) 京太郎(……いや……まだ、手はあったな……) 京太郎(全てを捨てたつもりだった。でも、それは違う) 京太郎(まだ、残ってたじゃないか……一番、大切なものが) 京太郎(でも、それを捨ててまで……勝つ意味が、あるのか……?) 京太郎(…………) 京太郎(俺の、一番大切なもの……) 京太郎(それは……) 京太郎(全てを、捨てたつもりだった……) 京太郎(でも、お前だけは……ずっと、俺の心の中にいた。捨て切ることができなかった) 京太郎(こんなになった俺でも……いつも心配してくれて、話しかけてきてくれた……) 京太郎(誰よりも大切な、幼馴染……) 京太郎(…………) 京太郎(ごめんな、咲……) 京太郎「リーチ」 和「多面張を捨てて、単騎待ちリーチ……?」 優希「それ以前に……これではリーヅモタンヤオ、赤1。逆転には届かないじぇ」 まこ「京太郎……なんのつもりじゃ……まさか久の……?」 久「……違うわ。須賀君は、悪い待ちを選んだんじゃない」 まこ「何じゃと?」 久「彼は……」 京太郎「……カン」 久「カンできる待ちを、選んだのよ」 京太郎(あいつの……一番得意な役だったな) 京太郎(咲、見てるか?) 京太郎(今まで、ありがとな……) 京太郎(でも、これで……さよならだ) 咲「京……ちゃん?」 京太郎「ツモ。リーヅモタンヤオ赤1、嶺上開花」 京太郎「裏……8。逆転だ」 京太郎「はぁ……はぁ……」 京太郎「はは、勝ったぜ……見てたか、みんな……」 咲「……京、ちゃん……だよね?」 京太郎「……その声、咲か……」 咲「…………」 京太郎「咲……俺は、勝つためにお前を捨てた」 京太郎「もう、お前とは……会話することもないだろう」 咲「……なんでなの……」 咲「京ちゃん、こっち向いてよ……」 京太郎「…………」 咲「また、昔みたいにさ……頭なでたり、ほっぺたつついたりしてよ……」 咲「昔みたいに……笑ってよ……」 京太郎「……咲、今の俺とお前……どっちが強い?」 咲「……京ちゃんの方が、強いよ……ずっと」 京太郎「そうか……」 咲「私よりも、勝つことが大事なの……?」 京太郎「……あぁ」 京太郎「これで俺も、お前らと一緒に全国の舞台で戦える」 咲「全然、一緒なんかじゃないよ……本当はわかってるんでしょ、京ちゃん」 京太郎「咲、ありがとな……お前は、最後の最後まで俺を……」 京太郎「でも、これが俺の選んだ道なんだ……だから……」 京太郎「さよなら、咲」 咲「京ちゃん、待って!」 咲「うっ……うぅ……」 咲「京……ちゃん……」 -数年後- 同僚A「……じゃあ、かんぱーい!」 同僚B「かんぱーい! ふぅ、仕事あがりのビールはおいしーね!」 同僚C「これであとは彼氏でもいれば、言うことなしなんだけどね」 同僚A「こら、それは言っちゃだめ!」 咲「あははは……」 同僚B「あーあ、須賀プロみたいなイケメンの彼氏欲しいな~」 咲「……!」 同僚A「須賀プロかー、若いのにすっごい強いって評判だよね」 同僚C「あまりの強さに、地獄の皇帝(ヘルカイザー)とか呼ばれてるんだっけ」 同僚A「でも友人とか全然いないって話聞くけど本当なのかな?」 同僚B「一匹狼って感じでカッコイイじゃん」 咲「…………」 同僚B「咲なんかは、彼氏とか好きな男とかはいないの?」 咲「……好きな人なら、いたよ……」 咲「でも……私がいると、あの人の邪魔になっちゃうから……」 同僚A「へぇ、何か色々あったのね」 同僚B「須賀プロといえばさ、咲って麻雀めっちゃ強かったんでしょ」 同僚C「え、そうなの?」 同僚B「高校の頃、全国とか行ったって聞いたんだけど」 同僚C「マジ? そんな強いなら、プロになればよかったのに」 咲「……私はプロには、なれないよ」 咲(プロになったら……) 咲(きっと、また顔を合わせちゃうから) 咲「ふぅ、ただいま……と」 咲「何か面白い番組はないかな……」ピッピッ 咲「…………」 『須賀プロ、またもタイトル奪取!』 『まさに圧殺! 強い、圧倒的に強い! この強さは本物だぁーっ!』 『地獄の皇帝、ヘルカイザー京太郎!』 咲「京ちゃん……また勝ったんだ」 咲「本当に、強くなったね……」 咲(京ちゃん……) 咲(清澄のみんなで一緒に麻雀を打ってた日が、懐かしいよ) 咲(京ちゃんは……今の自分に、満足してるの?) 咲(いや、してるはずだよね……あんなに、強くなれたんだから) 咲(そう、京ちゃんが望んでいたように……) 咲(でも……) 咲「私は、寂しいよ……京ちゃん」 END 【分岐ルート①】 京太郎(……まだ、捨てられるものがあったじゃないか……) 京太郎(それは……俺の命) 京太郎(もう、みんなには二度と会えなくなってしまう……) 京太郎(それでも……俺はみんなと、ずっと共にある) 京太郎(あの世から……一緒に、戦おう。全国の舞台で!) 京太郎「……いくぜ」ゴォッ! アカギ「……へぇ」 傀「…………」 哲也「……こいつ……」 咲「京ちゃん!」 衣「まずい、あの馬鹿者……死ぬ気だ!」 和「ど、どういうことですか!?」 衣「京太郎の体から、溢れ出ている力……あれはまさに、京太郎の生命力そのもの」 衣「死と引き換えに……勝利を手にする気か……」 優希「そ、そんな!」 久「須賀君……なんで……」 優希「京太郎!」 京太郎(優希……もっとお前にタコス、作ってやりたかったぜ) まこ「京太郎!」 京太郎(染谷先輩……いつも俺を気にかけてくださって、ありがとうございました) 久「須賀君!」 京太郎(部長……散々迷惑かけて、申し訳ありませんでした) 和「須賀君!」 京太郎(和……知ってるか? 俺、お前に憧れてたんだぜ) 咲「京ちゃん!」 京太郎(咲……) 京太郎(今まで、色々なことがあったな……どれもこれも、懐かしい日々だ) 京太郎(もっと……) 京太郎(お前と、一緒にいたかった) 京太郎「ツモ……数え役満……」 京太郎「逆、転……だ……」 咲「京ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 和「もう一年ですか、早いものですね……」 優希「まったく、京太郎のせいで雑用が大変だったじぇ!」 まこ「……それじゃ、もう行くかの」 咲「……私、もう少しだけここにいます」 久「咲?」 和「……部長、ここは一人にさせてあげましょう」 久「……そうね。じゃあ、先に行ってるわ」 咲「京ちゃん、お墓の下でも聞こえてるかな……?」 咲「この一年、色々なことがあったよ」 咲「部長は卒業して、新入部員も入って……あ、私はお姉ちゃんとも会えたんだ」 咲「優希ちゃんはタコス係がいないっていつも不満たらたら。和ちゃんは相変わらずだけど、時々寂しそうだよ」 咲「……そうだ、あの決勝の牌譜……みんな、驚いてたよ」 咲「衣ちゃんも、見事だって褒めてた。えへへ、凄いね京ちゃん……」 咲「…………」 咲「……ねぇ、京ちゃん……」 咲「京ちゃんは……幸せだった?」 咲「命を落としてまで、麻雀を打って……勝って……」 咲「……ううん、きっと幸せだったよね。じゃないとあんな素敵な牌譜、残せないから……」 咲「……でもね、京ちゃん……」 咲「私は、あんまり……幸せじゃない、かな」 咲「…………」 咲「……ぐすっ……」 咲「忘れないよ……京ちゃん」 咲「清澄高校の麻雀部には……須賀京太郎っていう、ものすごく強い男の子がいたこと……」 咲「絶対に……うぅっ……忘れないから……!」 咲「京ちゃん……!」 END 【分岐ルート②】 京太郎(命も……咲も……どちらも捨てる) 京太郎(もう、何もいらない。勝利の二文字さえあれば、それでいい) 京太郎(この勝負に……何もかもを賭ける!) 京太郎(……さぁ、いくぜ……みんな、見ててくれ) 京太郎(俺の人生の……最終幕だ!)ゴォッ 衣「……ッ! 馬鹿者が!」 京太郎(さようなら、みんな……) 京太郎(俺なんかに付き合ってくれて、ありがとうな……) 京太郎(でも、これで……永遠に、お別れだ……) 京太郎(これが俺の……手向けだ!) 京太郎「リー……」 (京ちゃん……) 京太郎「……!」 哲也「ん? どうした?」 京太郎「……いえ……」 傀「……御無礼、ツモです」 『試合終了! 代表の切符を手にしたのは、傀選手だぁーっ!』 赤木「クク……ちょっと届かなかったか……」 傀「……対局、ありがとうございました」 哲也「おう、お前もお疲……ん?」 京太郎「…………」グラッ 哲也「お、おい!」 ドサァッ 京太郎(ん……ここは……) 京太郎(天国か? 俺、死んだのか……?) 京太郎(みんなには……最後まで、迷惑かけっぱなしだったな……) 京太郎(でも……天国って、案外狭……) 京太郎(いや、違う……ここは、病院?) 衣「気が付いたか、京太郎」 京太郎「天江、さん……」 衣「ここは龍門渕家所有の病院だ。あの後、倒れたお前を運んできた」 京太郎「そっか……俺、負けたんですね……」 衣「魔の領域から、人の世に舞い戻った感想はどうだ?」 京太郎「……不思議ですね。本当は、あの場で……燃え尽きるつもりだった」 京太郎「でも……その時、咲の声が聞こえた気がしたんです」 京太郎「そうしたら……最後の一歩を踏み出すことを、ためらってしまった」 衣「…………」 京太郎「俺は、勝利に飢えながら……やっぱり何も、捨て去ることができなかった……」 京太郎「結局、俺は……弱いままだったんですよ」 衣「……それは違うぞ。京太郎よ」 衣「お前の闘牌は……実に、素晴らしいものだった。衣も見たことのないほどの」 衣「衣だけじゃない。純も、智紀も、一も、透華も……清澄の面々も」 衣「誰もを魅了する……見事なものだった」 京太郎「…………」 衣「衣は忘れぬよ。この夜を、あの魔物ひしめく半荘を、あの数百打を」 衣「それを戦い抜いた……須賀京太郎という、誰よりも強き男のことを」 衣「あの試合を見ていた者は……あの時のお前の雄姿を、未来永劫忘れぬよ。きっと」 京太郎「天江さん……」 衣「さて、そろそろ衣は退散するとしよう」 京太郎「……帰るんですか?」 衣「ふ……馬に蹴られたくはないんでな。では、また何処かで会おうぞ」 タッタッタッタッ ガラッ! 咲「はぁ、はぁ……京、ちゃん……」 京太郎「咲……」 咲「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 京太郎「お、おい……」 咲「よ、よかった……京ちゃん……無事で、本当によかったよぉ!」 京太郎「咲……ごめんな」 咲「京ちゃん……! 京ちゃん……!」 京太郎「お前のおかげで……俺は、踏みとどまれた」 京太郎「もう、どこにも行かないよ……」 咲「京ちゃん……!」 久「じゃ、須賀君。買い出しよろしくね」 京太郎「へいへい、了解です……」 和「ごめんなさいね、須賀君」 優希「京太郎、タコスちゃんと買ってくるんだじぇ!」 まこ「いつもながら、迷惑かけるのう」 京太郎「ははは……みんなはこれから全国大会なんですから、お気になさらず」 咲「京ちゃん」 京太郎「ん……咲、ついてきたのか?」 咲「えへへ……無理言って来ちゃった」 京太郎「やれやれ……じゃ、一緒に行くか」 咲「うんっ!」 咲「京ちゃん……正直、残念だった?」 京太郎「……あの個人戦のことなら、まぁ確かに惜しい気持ちはあるよ」 京太郎「でも……今になってわかった。俺は……やっぱりこれが、一番性に合ってるさ」 京太郎「もちろん、麻雀は強くなりたいけどな!」 咲「ふふ……一緒に頑張ろうね、京ちゃん」 京太郎「だけど、俺やっぱ馬鹿だから……また、馬鹿なことをするかもしれない」 京太郎「だからさ、咲……」 咲「……うん、いいよ」 咲「京ちゃんがまた無茶をしそうになったら、私が止める」 咲「だから……ずっと、そばにいてあげるよ。何か月でも、何年でも……」 京太郎「……ありがとな、咲。」 京太郎「全国大会……俺の分まで頑張れよ!」 咲「うんっ!」 咲「……ねぇ、京ちゃん」 京太郎「ん……何だ?」 咲「……大好きだよ、京ちゃん!」 END
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ 智美「鶴賀麻雀部の健闘を祈って……かんぱーい!!」 一同「かんぱーい!!」 京太郎「こうしてるといよいよ大会だって気がするな!」 桃子「と言ってもお菓子食べたりするだけっすけどねー」パクパク 智美「まあ練習しないで休むことが目的だからなー。1人でいたらなんだかんだ休めそうにないし」ワハハ ゆみ「確かにここのところ1人でいるとつい大会のことを考えてしまうな」 京太郎「ここのところ……?」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「い、いえ。なんでも」 桃子「私もそうっすけど、先輩でも緊張するんすね」 ゆみ「それはまあ私にとっても初めての大会だしな」 京太郎「鶴賀の麻雀部は先輩と部長で作ったんでしたよね」 ゆみ「ああ、最後の最後で大会に出られるほどメンバーが集まってよかったよ」 桃子「そういえば、先輩はなんで麻雀部のある高校に行かないで鶴賀に来たんすか?」 ゆみ「ん? 元々は麻雀をやる気はなかったから、単純に通いやすさや校風を考えて選んだが」 智美「女子校の中からなー」ワハハ ゆみ「う、うるさい!」 京太郎「……あれ、麻雀部作ったのは1年のときで、作ったのは本格的に麻雀をやりたかったからですよね?」 ゆみ「ああ、そうだな」 京太郎「最初は麻雀続ける気なかったんですか?」 ゆみ「続ける? そもそも高校を選ぶときは麻雀をやっていなかったんだが」 京太郎「え?」 桃子「え?」 ゆみ「ああ、言っていなかったか。私が麻雀を始めてやったのは1年の文化祭だ。本格的にやろうと思ったのはそれからだよ」 京太郎・桃子「ええっ!?」 ゆみ「そ、そんなに驚くことか?」ビクッ 桃子「ゆみ先輩って昔からの達人とかそういうのじゃないんすか……?」 ゆみ「麻雀歴ならモモのほうが長いと思うぞ」 桃子「うはー」 京太郎「麻雀歴2年ちょっとでそんなに強いんですか……」 ゆみ「私が始めて1ヶ月の頃は京太郎くんよりずっと弱かったさ」 京太郎「自分が2年でゆみ先輩くらい強くなれるとは思えないです……」 ゆみ「それは私の教え方が上手くないということか?」シュン 京太郎「そ、そんなことないですよ!」 ゆみ「冗談だ」フフッ ゆみ「とはいえ私が教えられることは全て教えるつもりだ。3年生のときには、少なくとも今の私より強くなって貰わないとな」 京太郎「ど、努力します」 桃子「京太郎、責任重大っすねー」 ゆみ「モモ、お前もだ。ステルスは確かに強いがそれに頼りすぎているようではダメだぞ」 桃子「うっ、藪蛇だったっす……」 智美「まあまあ、ゆみちんもその辺で。今日はそういう話は置いとこう。ほら、むっきーと佳織を見習って」 京太郎「え?」クルッ 睦月「おおお……! 小鍛治プロのキラカードだ!!!」 佳織「わー縁起がいいね!」 ゆみ「……結局プロ麻雀せんべいを買ったのか」 睦月「い、いいじゃないですか! 1袋くらい!」 京太郎「でも小鍛治のキラカードってトップレアでしたよね? ほんと幸先良いですよ!」 睦月「だよね! 京太郎くん、分かってくれて嬉しい!」 京太郎「なんか分かり方が違う気がしますが、とりあえずおめでとうございます!!」 睦月「ありがとう!!」 智美「テンション高いなー。私たちも見習うかー」 ゆみ「あれは見習っていいのか……?」 智美「何事も気からだぞー」 佳織「運が向いて来そうだね」 桃子「テンションについて触れない辺りさすがっすね」 佳織「?」 桃子「あ、いや、何でもないっす」 京太郎「小鍛治健夜プロって国内無敗の伝説のプロなんですよね。憧れるなあ」 睦月「うむ、かっこいい。この写真も数少ない姿を収めたんだろうね」 桃子「どれどれ……レアカードってもっとこう、凛々しい感じのほうがいいんじゃないっすかね?」 睦月「レアだから普段見れない姿を載せてるんだよ」 ゆみ「前に見せてもらったときも、かっこいいというよりはその……親しみやすい姿が多かったように思うんだが」 睦月「普段やらない姿をカードにするなんて優しいですよね」 佳織「……普段からそ──」 智美「佳織、そこまでだ」 佳織「」ムググ 京太郎「でもジャージ姿は珍しいですね」 睦月「健夜っていう名前の通り、健康に気を使って運動も欠かさないんだろうね。文武両道、かっこいいなあ」 桃子「名は体を表すって言うっすけど……ううん?」 ゆみ「まあ体力があるかどうかは見た目では判断しづらい、が……」 智美「名は体を表すかー。ウチの部ではどうなんだろうなー?」 桃子「そうっすね、私は……あんまり桃っぽくはないっすね」 佳織「そうかな? そんなことないと思うけど」 桃子「桃って花も実も結構目立つじゃないっすか。私とは大違いっすよ」 京太郎「……十分桃らしいな」ボソッ 桃子「そうっすか? どのへんが桃っぽいんすか?」 京太郎「えっ、聞こえたか!?」 桃子「聞こえたっすよ。どのへんっすか?」 京太郎「い、いやほら、か、顔とか?」 桃子「なんで疑問形なんすか……んーまあ丸っぽいっすからねえ」 京太郎「そ、そうだな」アハハ ゆみ「……京太郎くん、さっきはモモのどこを見ていたんだ?」ゴッ 京太郎「ひっ!」ビクッ ゆみ「どうした? 素直に言ってくれればいいんだ」 京太郎「か、顔ですよ……」アハハ ゆみ「ふむ、そうか」フッ 京太郎「は、はい」ホッ ゆみ「……」ツネリ 京太郎「痛っ!?」 桃子「2人は何してるんすか?」 智美「気にするなー」ワハハ 桃子「むっちゃん先輩はどうっすか?」 睦月「私は1月生まれで睦月だからあんまり意味とかはなさそうかな」アハハ 京太郎「でもなんか月ってクールな感じするじゃないですか」 智美「それならむっきーにピッタリだなー」ワハハ 睦月「そ、そうですか?」テレ 桃子「プロ麻雀カードのときは……」 ゆみ「それは触れてやるな」 智美「私の名前もむっきーに負けず劣らずピッタリだと思うんだー」 京太郎「ああ、蒲の穂ってカマボコの語源らしいですね」 智美「なんでそんなこと知ってるんだ!? というかカマボコって何のことだー!?」 佳織「あー智美ちゃんよく笑うから確かにピッタリだね」 智美「佳織まで! だからカマボコはなんなんだ!?」 睦月「口の形ですよ」 智美「あー……って、私がピッタリって言ったのはそっちじゃなくて智美の智の方だー!」ワハハ 桃子「智に適当って意味なんてあったんすか」 京太郎「さすが智って名前にある人の話は勉強になるな」 智美「しまいにゃ泣くぞ―!」 ゆみ「2人ともその辺りにしておけ」 京太郎・桃子「ごめんなさい」ペッコリン 智美「謝る気あるのか!?」ワハハー! 佳織「まあまあ」 智美「佳織の漢字はどういう意味なんだー?」 佳織「私? 調べたことないから……」 ゆみ「妹尾の佳は美しいという意味だよ。佳人とか言うだろう?」 桃子「さっぱりっす!」 京太郎「初めて聞きました!」 ゆみ「お前たち……」 佳織「そういう意味なんですね。名前負けしちゃってるなあ」アハハ 智美「そんなことないと思うぞ?」 睦月「うむ、妹尾さんによく合っていると思う」 佳織「えっ、ええっ!?」テレテレ 智美「京太郎はどうなんだー?」 京太郎「よくぞ聞いてくれました。俺は……」 桃子「語感っすよね。苗字が2文字だと名前が長いほうがバランスいいっすし」 京太郎「ああそうだよ! よくわかったな!!」 桃子「本当にそうだったんすか……」 京太郎「ウチの親適当だからな……」トオイメ ゆみ「つけた理由はそうかもしれないが、私は合っていると思うぞ?」 京太郎「え?」 ゆみ「京には人の集まるところという意味があるんだ。部員が集まったのは京太郎くんがいるからという部分もあるしな」 京太郎「ゆ、ゆみ先輩……」ウルウル 睦月「そんな意味があるんですね。京太郎くんに合ってると思うよ」 佳織「ピッタリだね!」 京太郎「睦月先輩、佳織先輩……」ウルウル 智美「私には負けるけどなー」ワハハ 桃子「罪悪感がなくなったっすよ!」 京太郎「そこの2人」 京太郎「ゆみ先輩も佳織先輩と同じですよね」 ゆみ「ん? どういうことだ?」 京太郎「え? ゆみって名前じゃないですか」 ゆみ「ああ、そういうことか。私の名前はひらがなで"ゆみ"と書くんだ」 京太郎「へー。なんとなく意外ですね」 ゆみ「まあひらがなの丸いイメージは私には合わないだろうな」 京太郎「ああいえ、そうじゃなくて」 ゆみ「うん?」 京太郎「美しいって漢字が入ってると思ったんでピッタリだなーと――」 京太郎「……はっ!? すみません今のナシで!」 ゆみ「……うぁ」カアァァ 桃子(相変わらずっすねー) 睦月(前から思ってたけどわざとやってるのかなあ) 佳織(確かにピッタリだなー) 智美「京太郎、早く直そうなー」 京太郎「」 ………… ……… …… … ゆみ「そういえば京太郎くんの幼馴染は麻雀部に入ったのか? ほら、チャンピオンの親戚とか言っていた」 京太郎「あ、言ってませんでしたね。入ったみたいですよ」 智美「チャンピオンの親戚かー。その子も強いのかなー?」 京太郎「親戚というか咲……あ、俺の幼馴染ですけど、咲はチャンピオンの妹だったみたいです」 一同「妹!?」 京太郎「わっ!?」ビクッ ゆみ「なんだそれは本当なのか!?」 京太郎「そんなことで嘘つくようなやつじゃないんで、本当だと思います」 桃子「ダークホース出現っすね……」 睦月「ま、まあ妹と言っても強いとは限らないし」 佳織「そ、そうだよね!」 京太郎「ええと……」 ゆみ「知っているなら言ってみてくれ」 京太郎「小さい頃は両親と宮永照と咲で家族麻雀してたらしんですけど、咲は狙って点数を±0にしていたらしいです」 桃子「そ、想像以上にエグいっすね……」 睦月「狙って±0って……」 京太郎「ま、まあ少なくとも小中学校で麻雀はしてなかったからブランクもありますし」 京太郎「宮永照だってその頃からずっと強くなったから個人戦2連覇してるんですよ!」 佳織「でもきっと強いよね……」 ゆみ「ちなみにその宮永はどこの高校へ行ったんだ?」 京太郎「清澄って高校に行きました」 睦月「清澄……どこかで聞いたことがあるような……」 ゆみ「大会の牌譜は大体見たはずだがその名前は見覚えがないな」 京太郎「ええ、清澄も今年部員が揃ったみたいで、大会に出るのも初めてって言ってました。ウチと一緒ですね」 桃子「風越とかならどうしようと思ったっすけど、それならまだ勝ち目はありそうっすね!」 佳織「当たるのはいつになるんだろう」 智美「えーと、順調に勝ち進んでも決勝だなー」ワハハ ゆみ「だいぶ先だな」 桃子「当たる可能性は低そうっすね」 睦月「……あ、そうだ!」 智美「どうかしたのかー」 睦月「清澄ってインターミドルチャンプの原村和が行ったところですよ! 前に雑誌でなぜ無名校にみたいな特集がありました」 桃子「い、インターハイチャンプの妹と、インターミドルチャンプがいる高校っすか……」 ゆみ「中々手強そうだな」 京太郎「手強そう……ってことは負ける気は全然ないんですね」 ゆみ「元々私たちは初出場で相手はどこも格上だ。1つ格上が増えたくらい、いまさら変わらないさ」 智美「ゆみちんの言うとおり今から怖がってもしょうがないしなー。私たちはまず1回戦突破を目指さないと」ワハハ 睦月「……そうですね。そんな先のことを考えられる立場じゃありませんでした」 桃子「負ける気はないっすけど、確かに部長とゆみ先輩の言うとおりっすね」 桃子「そういえば京太郎の方はどうなんすか?」 京太郎「俺か?」 桃子「自分たちで手一杯で気が回らなかったんすよ。勝てそうなのか聞きたいっす!」 京太郎「んーネトマではそれなりに勝ててるけど……」 睦月「雀荘に行ったりはしなかったの?」 京太郎「何度かは行きましたよ。ただ本格的にやってる人はあんまりいなかったです」 智美「それじゃああんまり参考にはならないなー」ワハハ 睦月「他の高校と試合出来ればよかったんだけどね」 京太郎「人数が揃ってる女子でも無理だったんですし、1人だけの男子ならなおさらですよ」 ゆみ「決勝リーグに進んでもおかしくない実力は付いているよ。それは保証する」 桃子「おかしくないってことは行けないこともあるんすね」 ゆみ「それはそうだ」 京太郎「うぅ……」 ゆみ「結局はあの2人に当たったときにどうなるかだな。無難にやり過ごせれば決勝リーグに行けるさ」 京太郎「他人次第って不安ですね……」 桃子「初めて1ヶ月で決勝に行けるかもしれないってだけで十分っすよ」 京太郎「それはそうなんだけどな」 智美「まあ麻雀なんて水物だからなー。そんなに気負っちゃダメだ」 京太郎「そうですね。男子1人の個人戦なら何があっても自分の責任ですし、精一杯頑張ります」 佳織「っ!」ビクッ 智美「佳織もだぞー」 佳織「ふぇっ!?」 智美「初心者の佳織を無理言って麻雀部に入れたのは私たちなんだから、勝てないかもなんて気にしなくていいんだぞ」 ゆみ「そんなことを気にしていたのか。団体戦はチームでやるんだ。少々失敗しても私たちが挽回すればいい」 佳織「智美ちゃん、加治木先輩……ありがとうございます」 佳織「でも私も鶴賀麻雀部の一員ですから、役に立てるように頑張ります!」 睦月「うん、期待してる」 桃子「かおりん先輩、役満頼むっすよー!」 佳織「そんな、無理だよー」アハハ 一同(……絶対1度は役満で和了るんだろうなあ) 智美「それじゃあそろそろお開きにしようか」 ゆみ「そうだな。あまり遅くなっては明日がつらい」 桃子「いよいよ明日は大会っすね。腕が鳴るっすよー!」 京太郎「俺は明後日からだから、明日は応援だな」 桃子「ちゃんと横断幕は用意したっすか?」 京太郎「今からしてやろうか?」 桃子「出来るもんならしてみるがいいっす!」 京太郎「俺が本気を出したら一晩で完成させられるぞ?」 ゆみ「そんなところで本気を発揮しなくてもいい」 睦月「というかそもそも掛ける場所ないからね」 佳織「そっか。明日はもう大会なんだね」 智美「何だ佳織、そんなことも知らなかったのかー?」ワハハ 佳織「ち、違うよ! そうじゃなくって実感がわかないなって思って」 睦月「みんなが集まってから1ヶ月経ったんだね……確かに実感わかないや」 智美「3人のときも楽しかったけど、6人になってからはもっと楽しかったなー」 ゆみ「そうだな、ようやく部活らしくなった気がしたよ」 桃子「……大会が終わったらゆみ先輩たち引退しちゃうんすよね」 京太郎「……!」 智美「うん、私たち3年は引退だなー。でも部活には顔を出すと思うぞ。な、ゆみちん」 ゆみ「ああ。大会に出られなくても麻雀は出来るし、後輩の様子も見たいしな」 ゆみ「まあ受験勉強があるから毎日というわけにはいかないが」 智美「……ワハハー」 ゆみ「おい、なぜ目をそらす」 智美「ゆみちんは気が早いなー」ワハハ ゆみ「むしろ遅いくらいだ」 佳織「応援しかできないけど頑張ってね」 智美「ついに佳織にも見捨てられたかー……」 佳織「智美ちゃん3年生じゃない」 智美「佳織は厳しいなー」 ゆみ「ほらみんな、いい加減帰るぞ」 智美「佳織に付き合ってたらいつまでも帰れそうにないし帰るかー」ワハハ 佳織「私のせい!?」 睦月「まあまあ」 桃子「ほら京太郎も帰るっすよー。……京太郎?」 京太郎「ん? あ、ああ。大丈夫、帰るよ」 桃子「どうかしたんすか?」 京太郎「何でもないから大丈夫」 桃子「ならいいっすけど……」 ゆみ「なんだ、どうかしたのか?」 京太郎「大丈夫ですって! ……ゆみ先輩、今日は送らせて貰っていいですか?」 ゆみ「え?」 京太郎「ほら、俺は明日試合がないけどゆみ先輩はあるじゃないですか。疲れを残しちゃいけませんし」 桃子「それなら私も送ってくれていいんすよ?」 京太郎「お前は自転車じゃないだろ」 桃子「贔屓っすー」ブーブー 京太郎「話は自転車を持ってきてからだ。……それでゆみ先輩、どうですか?」 ゆみ「まあ君がそう言ってくれるならお言葉に甘えようか」 京太郎「ありがとうございます!」 ゆみ「こちらこそ、ありがとう」 智美「青春だなー」 睦月「そうですねえ」 佳織「2人ともああいうことあったの?」 智美「……むっきー、抑えてろー」 睦月「はい」ガシッ 佳織「えっ、な、何? ど、どうしたの急に……あ、アハハハ!! く、くすぐったいよ! や、やめてー!!」アハハハ 智美「そういうこというやつはお仕置きだー!」コチョコチョ ――帰り道―― 京太郎(寂しいけど、ゆみ先輩とは大会が終わったら会えなくなるかも知れないんだよな。少なくとも、今よりは絶対に会えなくなる) 京太郎(ゆみ先輩は受験勉強もあるから、これから先俺とゆみ先輩が会う時間はどんどん減ってく) 京太郎(待てば今より仲良くなれるか? ……ダメだ。考えるほど疎遠になるんじゃないかって考えちまう) 京太郎(それなら、今日告白したほうが……) ゆみ(京太郎くん、今日はあまり話しかけて来ないな。明日が大会だから気を使っているんだろうか……そんなこと必要ないんだがな) ゆみ(京太郎くんに送ってもらうのはこれが何度目だろう。足の怪我が治った後も何度か送ってもらったしな……) ゆみ(……まあいいか。今日は静かな分京太郎くんの鼓動がよく聞こえて、これはこれで落ち着く)ギュッ ゆみ(最初の頃に比べると随分鼓動が落ち着いているのは喜ぶべきなんだろうか)ウムム ゆみ(……大会が終わったらこれも出来なくなるのか。それは、少し寂しいな――) 京太郎「ゆみ先輩、着きましたよ」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「その…… ゆみ「今日は」」 ゆみ「っと、すまん、先にいいぞ」 京太郎「い、いえ。ゆみ先輩が先に」 ゆみ「そうか。まあ大したことではないんだが、今日は最近の君にしては珍しくあまり話さなかっただろう?」 京太郎「そ、そうでした?」ギクッ ゆみ「いや、別にだからどうだというわけではないんだが……ちょっと考えこんでしまってな」 京太郎「考え込む?」 ゆみ「ああ。大会が終わったら京太郎くんとこうして帰ることもなくなってしまうのかと思うと少し寂しいな、と」 京太郎(ゆみ先輩も俺と同じことを感じて――) ゆみ「つまりその、後1ヶ月程度しか君と2人で帰ることが出来ないと思うと凄く嫌で、だからもっと君と……」 ゆみ「ああ、もう! 私は何を言っているんだ! すまない忘れてくれ!!」カアァァ 京太郎「え?」 ゆみ「だ、だから忘れてくれ! 大会前で少し気が動転して――」 京太郎「あ、いえそうじゃなくて。後どの程度って言いました?」 ゆみ「だから本心ではな――いや本心じゃないわけじゃないんだが……」 ゆみ「ってうん? 1ヶ月程度と言ったんだ。全国に行けばそのくらいになるだろう?」 京太郎「……!」 ゆみ「それより私のさっきの発言は忘れて――」 京太郎「大丈夫です。正直よく聞いてませんでした」 ゆみ「そ、そうか……」シュン 京太郎「?」 ゆみ「それじゃあ次は君の話を……」 京太郎「いえ、そっちは大丈夫です」 ゆみ「私の時間なら問題ないぞ?」 京太郎「何でもなかったんです。また後でちゃんと言います」 ゆみ「ん、そうか。応援期待しているぞ」 京太郎「任せてください! 自分の個人戦以上に気合を入れて応援します!」 ゆみ「それはやりすぎだ。……まあ楽しみにしているよ」フフッ 京太郎「はい、期待しててください!」 ゆみ「ああ。また明日」 京太郎「はい、また明日」 京太郎「あー……俺はバカか。全国に行けばもっと長く部にいてくれるなんて、言われれば当たり前じゃねえか」 京太郎(ゆみ先輩はやっぱカッコいいな……。いやまあ、そういう人だから好きになったんだけど) 京太郎(大会が終わったら言いますとか言ったけど、俺がゆみ先輩に告白する資格なんて元からないんじゃないか……?) 京太郎「……まあ大会で勝てばいいんだよな。上手く行けば決勝、奇跡が起きれば全国だ! やってやる!」 ――大会会場―― 智美「ついに来たぞー!」 ゆみ「いよいよ本番だな……」 桃子「腕が鳴るっすよー!」 佳織「緊張してきたよ……」 睦月「私も……ちょっと気分が」フラッ 京太郎「む、睦月先輩!? 試合はまだですよ!?」 智美「むっきーはプレッシャーに弱いなー」ワハハ ゆみ「まあ試合をこなせば慣れるだろう」 睦月「先輩たちは全然緊張してませんね……」 智美「いやーそんなことないぞー」ワハハ 京太郎「えっ、どこがですか?」 智美「失礼だなー。佳織なら分かるよなー?」 佳織「え? う、うん。もちろんだよ!」 智美「ほら、佳織を見習えー」ワハハ 桃子「どこで分かるか聞かないんすね」 ゆみ「ああ、察したんだろう」 京太郎「にしても人多いですねー」 ゆみ「年々参加者が増えているらしいぞ」 佳織「麻雀人気って凄いんですねえ」 智美「佳織みたいに全く知らないってのは珍しいと思うぞ」 佳織「か、簡単なルールは覚えたよ!?」 智美「結局全部の役は覚えられなかったなー」 佳織「特に役満だけど、麻雀は役が複雑すぎるよう……」 睦月「妹尾さんは役満を真っ先に覚えるべきだったとは思うよ……?」 佳織「でも役満って出づらいんだよね? なら出る役から覚えたほうが……」 睦月「う、うむ。それはそうなんだけど……」 ゆみ「まあ麻雀は水物だ。3つ揃えるということさえわかっていれば後はなんとかなるさ」 ザワザワザワザワ 京太郎「なんか騒がしいですね」 ゆみ「あれは……」 「風越女子だ!」 「部員80人を擁する強豪!!」 京太郎「あれが風越ですか。部員80人ってすげー」 ゆみ「ウチの10倍以上か……」 桃子「なんの、こっちは少数精鋭っすよ!」 佳織「えっと、桃子さん。初心者の私が鶴賀にはいるんだけど……」 桃子「……団体戦は5人いれば十分っすよ!!」 京太郎「仕切り直した」 智美「あっちは80人からの精鋭だしなー」ワハハ 桃子「そこ、うるさいっすよ!」 ゆみ「お前たちは緊張しないな」ハァ 睦月「あはは、でも見てると気が楽になりました」 ゆみ「ああ、そうだな」 ザワザワザワザワ 京太郎「また騒がしくなりましたね」 「四天王は2年になっても健在だ!」 「目立ってなんぼですわ!」 ゆみ「今度は龍門渕か」 京太郎「なんかあのメンバーの中から声が聞こえたような……」 智美「目立つのが好きなんだろー」 京太郎「……あれ、4人しかいないみたいですけど龍門渕は部員少ないんですか?」」 睦月「あそこは団体戦メンバーの5人しかいないみたい」 京太郎「それで全国……まさに少数精鋭」 桃子「団体戦は5人いれば十分って証明っすね!」 ゆみ「龍門渕と同じと考えれば私たちもやれる気になるな」 睦月「ものは考えようですね」 佳織「が、頑張りましょう」 智美「気楽になー?」 智美「それじゃあ対局室見に行くかー」 京太郎「はい、わかりまし……ってあれ?」 ゆみ「どうかしたのか?」 京太郎「あいつは……すみません、ちょっと待っててください」タッタッタ ゆみ「あ、おい――」 咲「うぅ、ここどこ……」キョロキョロ 京太郎「おい」ポンッ 咲「ひぅっ! わ、私違います!!」ビクッ 京太郎「何が違うんだよ……咲、俺だよ」 咲「え?」クルッ 咲「きょ、京ちゃん!?」 京太郎「おう、久しぶりだな」 咲「うん、久しぶり! ……ってもう、脅かさないでよ! ほんとにびっくりしたんだから!!」 京太郎「久々に見つけたと思ったらいきなり迷ってるんだぜ? そりゃ脅かしたくもなるって」 咲「どんな理屈なの!?」 京太郎「まあまあ、案内してやるから機嫌直せよ」 咲「私を脅かしたような人の案内なんて……!」 京太郎「いらないのか?」 咲「……お願いします」ウゥ… 京太郎「分かればよろしい」 京太郎「それじゃあ先輩たちに断ってくるから咲も来い」 咲「先輩たち?」 京太郎「……お前俺がなんでここに来てると思ってるんだ?」 咲「えーと……女の子の物色?」 京太郎「あ、そうだ。迷子なら事務所に運んで放送してもらったほうが速く合流できるよな」グイッ 咲「じょ、冗談だから!! それはやめて!!」アセアセ 京太郎「まったく……それじゃほら、付いて来い」 咲「う、うん……」オドオド 京太郎「人見知りまだ直ってないんだな」 咲「そ、そんな早く直らないよ」 京太郎「麻雀部の仲間とは上手くやれてるのか」 咲「うん! みんな良い人たちだよ」 京太郎「そっか。ならよかった」ポン 咲「あ、頭撫でないでよ……」 京太郎「悪い悪い」 桃子「あ、戻ってきたっすよ」 京太郎「すみません、こいつが……」 智美「会場に着くなりナンパはどうかと思うぞー?」 桃子「さすがの私もドン引きっすよ」 睦月「ちょっと擁護できないかな」 佳織「いいことじゃないと思うよ?」 ゆみ「京太郎くん……」 京太郎「違いますよ! こいつは何度か話した幼馴染の咲です! 迷ってたから連れてきたんですよ!」 京太郎「……ていうか俺そんなことするやつだと思われてたんですか!?」 智美「日頃の行いだなー」ワハハ 咲「京ちゃん部活で何してるの……?」 京太郎「真面目に練習やってるよ! 畜生、なんだこの扱い!」 桃子「まあ冗談は置いといて、あんたが宮永咲っすか……」ジロジロ 咲「な、何ですか?」ビクビク 桃子「……京太郎と付き合ってたりするんすか?」 京太郎・咲「え?」 ゆみ「」ピクッ 桃子「身体の距離が近かったり頭撫でたり手引っ張ったりしてたじゃないっすか。もしそうなら……」 咲「あはは、やだなー。私が京ちゃんと付き合うって……そんなことあるわけないじゃないですか」 京太郎「そうそう。俺が咲と付き合うなんてありえねえ」 咲「どういう意味?」ムッ 京太郎「お前も同じ事言ってること忘れてないか?」 咲「私が言うのはいいけど、京ちゃんに言われると腹立つ」 京太郎「めちゃくちゃ言ってんなお前!」 桃子「……まあ違うならいいっすよ」 佳織「2人とも仲いいねえ」 京太郎「あーまあ、幼馴染ですから」 睦月「そんなに仲良くなるものなの?」 京太郎「そんなもんですよ」 京太郎「それで、こいつ迷ってるみたいなんで清澄のところに送って行っていいですか? すぐ戻りますから」 咲「ま、迷ってるって……」 京太郎「いや迷ってんだろ?」 咲「そうだけどそんなにはっきり言わなくたって……」アセアセ 智美「送ってきてもいいぞー。私たちは対局室見たら控え室に行ってるから」 京太郎「すみません、部長」 咲「あ、ありがとうございます!」ペッコリン 智美「気にするなー。初出場同士、お互い頑張ろうなー」ワハハ 咲「は、はい!」 京太郎「それじゃちょっと行ってきます」 睦月「気をつけてね」 京太郎「咲、部員はどこにいるんだ?」 咲「組み合わせ見てるって言ってたかな……?」 京太郎「よし、じゃあまずはそこ行くか……咲、そっちは逆だ」 咲「えっ!?」 京太郎「お前よく1人で東京行けたな……」 咲「下準備をこれでもかってくらいやったんだ」 京太郎「……うん、お前のそういうところは偉いと思うよ」 咲「でしょー」エヘン 智美「あれが宮永咲かー」 佳織「見た目は普通の女の子って感じだったね」 桃子「そうっすねー。見た目で麻雀の強さはわからないっすけど、チャンピオンの妹っていうからもっと威圧感あるかと思ったっす」 桃子「ただそれより……」 睦月「うむ。幼馴染とは聞いていたけど、想像よりずっと仲良かったね」 ゆみ「」ピクッ 智美「……ゆみちん、さっきから全然喋らないなー」 ゆみ「え、なっ、何のことだ?」ビクッ 智美「それで誤魔化してるつもりなのかー……?」 桃子「まあ私も付き合ってたらお仕置きしてやろうと思ったっすけど、あの反応は本当に付き合ってないと思うっすよ?」 ゆみ「そ、そうかな」 睦月「そうですよ。幼馴染だとあのくらい仲良くなるもんだって言ってたじゃないですか」 智美「そうだぞー。私と佳織も仲いいだろー?」ワハハ ゆみ「確かにそうだが、しかし男女であれは……」 佳織「幼馴染だと男女とかより家族って感じだと思います。だからそんなに落ち込まないでください!」 ゆみ「なるほど家族か……って、だ、誰も落ち込んでなんていない!」 佳織「ええっ!?」 智美(地雷踏んだなー) 桃子(相変わらず躊躇なく行くっすね) 睦月(私も妹尾さんの強さは見習いたいなあ) ゆみ「た、ただ私は京太郎くんがああいうことを人前でするのは、あまりよくないのではないかと思ってだな……」ワタワタ ゆみ「だから、べ、別に京太郎くんが仮に付き合ってたとしても、人前でああしないなら私は特に……何も……何も、うぅ」シュン 智美「ほら佳織、あんまりゆみちんをいじめちゃダメだぞー」ワハハ 佳織「わ、私何かした!?」 睦月「無自覚なのが一番怖いよ」 桃子「大物っすねー」 佳織「えっ!?」 智美「ゆみちん、対局室見に行こうか」 ゆみ「ああ……そうだな。そうしようか」 智美「それじゃあ行くぞー」ワハハ 京太郎「組み合わせ表はこの先か」 咲「うん……あ、みんな!!」 優希「咲ちゃん! 探したじぇ!」 和「心配しましたよ」 咲「ごめんね、ちょっと迷っちゃって……」 久「まあすぐ見つかってよかったわ。それでそっちの彼は?」 咲「何度か話に出した、私の幼馴染の京ちゃんです」 久「ああ、あの彼ね。初めまして、私は清澄高校麻雀部部長の竹井久よ」 京太郎「初めまして。鶴賀学園1年の須賀京太郎です」ペコリ 京太郎(……あの?) まこ「おい、今何度かというたか?」ヒソヒソ 優希「言ってたじょ。一時期なんか毎日のように話してたのに……」ヒソヒソ 京太郎(視線を感じる……) 久「鶴賀? 聞いたことないわね……」 京太郎「ああ、ウチも清澄と同じで初出場なんですよ」 久「そうなの。どおりで……お近づきの印にお互い情報交換でもしない?」 京太郎「なんか怖いので……すみません」 久「ちぇっ」 和「須賀さん、咲さんを送って頂きありがとうございました」 京太郎「いえいえ、昔から俺の役目なんで」 咲「昔から私が迷ってたみたいな言い方……!」 京太郎「迷ってたろ?」 咲「……迷ってたけど」シュン 久「咲は須賀くんに随分助けられてたのね」クスクス 京太郎「高校に入ってからもメールで色々やってますからね。もう生活の一部ですよ」 咲「京ちゃんのバカ」ムッ 京太郎「なんでだよ!」 咲「なんでも!」 和「仲がいいですね」クスクス まこ「妬けるのう」 優希「羨ましいじぇ」 京太郎「それじゃそろそろ戻るんで……」 久「ええ、ありがとう。人数ギリギリだし助かったわ」 和「鶴賀学園でしたよね。戦えるのを楽しみにしてます」 京太郎「伝えときます。それじゃ失礼します」 咲「京ちゃん、またね!」 京太郎「ああ、またな」 優希「さて、それじゃあ咲ちゃん……」 まこ「キリキリ話してもらおうかのう」 咲「え? 何をですか?」キョトン 久「とぼけようったってそうはいかないわよ。咲の話してたとおり中々いい子だったじゃない。見た目も70点ってとこかしら」 咲「とぼける……? でも見た目は高すぎですよ」クスクス 久「……あれ、低いって言ってくると思ったのに意外ね」 咲「だって京ちゃんですよ? せいぜい50点です」 久「き、厳しいわね」 まこ「基準があれじゃから辛口なんじゃろうか」 優希「なるほど……」 和「試合の前に何をやってるんですか……それに悪趣味ですよ」ハァ 久「まあまあ、少しくらいいいじゃない。それで咲、須賀くんとは月にどのくらい会ってるの?」 咲「月にですか? 高校に入ってから会うのは今日が初めてですけど……」 久「ダメよ、ちゃんと手綱握っておかなきゃ。遠距離だからって何ヶ月も会わなかったら逃げられちゃうわよ?」 咲「逃げられる……? ……あ! もしかしてみんな勘違いしてます?」 優希「勘違い?」 咲「えっと、私と京ちゃんは別に付き合ったりはしてませんよ? 単なる幼馴染です」 和・優希・久・まこ「えっ!?」 咲「鶴賀の人にも言われたんですけど、私と京ちゃんが付き合うわけないじゃないですか」アハハ 咲「……あれ、みんなどうし――」 和「じょ、冗談ですよね!!??」ガッ 咲「わっ! ど、どうしたの和ちゃん!?」 和「毎日メールしてたり須賀さんのこと毎日のように話に出したりしてるじゃないですか!」 和「それで付き合ってないなんてそんなオカルトありえません!!」 咲「そ、そう言われてもメールしてるのは幼馴染だからだし、話は、その、話題が思いつかなくて……」 和「読書とか園芸とか色々あるじゃないですか!?」 咲「……あー」 和「天然ですかっ! 可愛いですねもうっ!」 優希「の、のどちゃん落ち着くじぇ」 和「はっ! ……すみません、取り乱しました」 咲「和ちゃん意外と早とちりなんだね」アハハ 和「……」 久「和。言いたいことは色々とあると思うけどここは私たちに代わりなさい」 まこ「咲よ、おんしにとってあやつはどういう存在なんじゃ?」 咲「京ちゃんは麻雀部に入れって背中を押してくれたり、中学のときも人見知りな私のことたくさん気づかってくれたりして……」 咲「本人には言えませんけど、大切な存在です」 久「咲から見た須賀くんってどういう人なの?」 咲「えーと……京ちゃんって見た目軽そうですけど根は真面目で優しいんです」 咲「私が上手く話せなくてもずっと待っててくれますし、私のことからかったりはするけどバカにすることは絶対ないですし」 咲「ちょっとバカでエッチで私のこと子供扱いしてきますけど、でもすっごく頼りになる幼馴染です!」 優希「……メールは毎日1時間してるんだっけ?」 咲「うん。……あ、1時間は最低で、普段はもっと長くやってるからね!?」アセアセ 優希(何の話をしてるんだじょ……?) 和「あくまで咲さんと須賀さんの関係は幼馴染だと言うんですね?」 咲「? うん、そうだよ?」 和・優希・久・まこ「…………」 咲「え、えっと?」 和「そんなオカルトありえません……」 優希「のどちゃん。私も信じられないけど世の中には色んな付き合いがあるってことだじぇ」 久「……まあ本人がそういうならそうなのね。あまり追及するのもやめましょう」 まこ「そうじゃな。ほれ、試合が始まるし移動じゃ」 咲「はい! 強い人と戦えるのが楽しみです!」 久「やっと咲に共感できたわ……! それじゃ登録したオーダーを発表するわよ――」 ゆみ(……女の子らしい女の子だったな。京太郎くんはずっと彼女と……やはり好みもああいう子なのだろうか)ソワソワ ゆみ(いや、それ以前に京太郎くんはああ言っていたけど実は付き合って……いやいや、信じないでどうする。だがしかし……)ソワソワ 京太郎「すみません、戻りました!」 桃子「ようやく来たっすか」 智美「中々戻らなかったからゆみちんがそわそわしてたぞー」 ゆみ「なっ、別に私は――」 京太郎「え? なんでですか?」 ゆみ「っ……その、だな。君と宮永との関係は……」 京太郎「幼馴染ですよ? さっき言ったじゃないですか」 ゆみ「……すまない、聞きたいのはそういうことじゃなかった。……京太郎くんは彼女のことをどう思っているんだ?」 京太郎「どうと聞かれると難しいですけど……可愛い手のかかる妹みたいな感じです」 ゆみ「妹……そうか。変なことを聞いたな。ありがとう」 京太郎「いえ、別に気にしてないですけど……やっぱり対戦相手と思うと気になるんですか?」 智美「まーそんなところだ。あんまりいじめてやるなー」 京太郎「いじめ……ええ!?」 桃子「女の敵っすねー」 睦月「京太郎くんは悪い男だね」 佳織「もっと周りを気にしてね?」 京太郎「俺何かしました!?」 ゆみ(……されたよ。バカ) 智美「ついに試合だなー」 桃子「念願の晴れ舞台っすね!」 佳織「ドキドキしてきました」 睦月「私は緊張で気分が……」ウッ ゆみ「さっき緊張がほぐれたと言っていたじゃないか」 睦月「まさか先鋒だとは思わなかったからですよ……」 京太郎「先鋒だと何かあるんですか?」 睦月「先鋒で突き放せたほうが有利だから、団体戦だとエースを先鋒に持ってくることが多いんだ……」 京太郎「なるほど、エース対決……それだとゆみ先輩かモモのほうがよかったんじゃないですか?」 ゆみ「それも考えはしたんだが龍門渕の大将はおそらく天江衣だ。私でも間違いなく力不足だが、それでも任せるわけにもいかない」 佳織「桃子さんが先鋒じゃないのはなんでですか?」 ゆみ「どこまで効果があるのかわからないが、ステルスを活かすにはあまり目立たないほうがいいと思ってな」 ゆみ「先鋒で不自然な振り込みが続けば他校の中から異常に気付く人間も出てくるかもしれん。まあ気休め程度だが」 睦月「私が一番最初で躓いたりしたら……ああ、考えるのが怖い!」 智美「まあまあ。取り返すために私たちがいるんだぞ」ワハハ ゆみ「ああ、それに別に消去法で選んだわけじゃない」 睦月「え?」 ゆみ「津山なら多少流れが悪くとも大崩れはしない」 ゆみ「どんな状況でも確実に後ろにバトンを繋いでくれると思っているから先鋒を託したんだ」 睦月「先輩……」 ピンポンパンポーン 「1回戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」 京太郎「始まるみたいですね」 ゆみ「ああ、津山。行ってこい」 智美「期待してるぞー」ワハハ 桃子「頑張るっす!」 佳織「ふぁ、ファイトっ!」 睦月「は、はい!」ガチガチ 京太郎(まだ緊張してるな……よし) 睦月「そ、それじゃあ行ってきます」 京太郎「」コソッ 睦月「」スタスタ 京太郎「えいっ」メカクシ 睦月「ひゃあ!?」ゴスッ 京太郎「ぐぉっ!?」 ゆみ「何をやっているんだ君は……」 京太郎「い、いえ。緊張をほぐそうといたずらをしたら肘打ちが……」ウゥ… 睦月「ご、ごめんね?」アセアセ 桃子「謝らなくていいっすよ」ハァ 智美「ほら、遅れるから対局室へ急げー」ワハハ 睦月「は、はいっ」タタッ 京太郎「うぅ…まだ痛む」 ゆみ「緊張をほぐすにしてもあれはないだろう」 京太郎「驚かすのが一番だと思ったんです……」 智美「試合前にあれはなー」 桃子「緊張を解くのに何が一番か、京太郎はわかってないっすねー」 京太郎「む、じゃあモモは知ってるのかよ」 桃子「当たり前じゃないっすか。むっちゃん先輩ならすぐ出来るっすよ」 京太郎「じゃあなんで言わなかったんだ?」 桃子「言ったら意味ないっすからね。ほら、始まるっすよ」 京太郎「?」 ゆみ「私たちが言うのもなんだが、初戦の相手に強豪はいない。津山なら普通に打てば見劣りしないさ」 智美「むっきーは堅実だからなー。配牌も悪くないし上手く行けば1局目で……」 佳織「あ、聴牌しました!」 京太郎「立直はしないんですね」 ゆみ「すべきだとは思うが……まあ緊張からだろう。だがこれで」 睦月『ロ、ロン! 3900です!』 京太郎「やった!」 智美「むっきーいいぞー!」 桃子「流石っす!」 ゆみ「肩の力も抜けたようだな」 京太郎「え? あ、ほんとですね。見て分かるくらい……」 桃子「」ドヤァ 京太郎「……その顔はなんだモモ」 桃子「さっき言ったじゃないっすか。緊張を解くための方法」 京太郎「言ってはねえよ!?」 桃子「細かいっすねー。要するに一度上がれば緊張なんて取れるもんすよ」 京太郎「あーなるほど」 ゆみ「津山も長くやっている。緊張しているといっても全く上がれないことはないと思っていたが、1局目で上がれたのは幸運だったな」 京太郎「じゃあ後は大丈夫ですか?」 ゆみ「まあ相手はおそらく各校のエースだ。楽な勝負とはいかないだろうが、津山に任せよう」 京太郎「はい……睦月先輩、頑張って下さい!」 睦月「た、ただいまー」 京太郎「睦月先輩お疲れ様でした!」 睦月「うん……ありがとう」 佳織「区間2位おめでとう!」 睦月「ありがとう……でも1位になれなかったのは悔しいな」アハハ 智美「この欲張りさんめー」ワハハ ゆみ「よくやった。後は任せろ」 睦月「はい。ゆっくり応援してます……」 京太郎「飲み物どうぞ」リョクチャ 睦月「うん、ありがとう」ゴクゴク 桃子「気がきく……ってそのペットボトルいつ用意したんすか!?」 ゆみ「対局中は外に出ていないはずだが……」 京太郎「来るときに用意してたんですよ。今日は出ないですしこれくらい用意しておかないとって思ったんで」 智美「なんかデカイ箱持ってるなと思ったらクーラーボックスだったのかー」 京太郎「全員の好きなの持ってきたんでよければ飲んでください」 佳織「わあ、ありがとう! 頑張ってくるよ!」オレンジジュース 桃子「私も1本貰うっす」モモノテンネンスイ 智美「応援頑張ったし私も飲もうかなー」コーラ ゆみ「私も貰おうかな。ありがとう、京太郎くん――」ハッ ゆみ(好きな飲み物なんて話した覚えがないな……) ゆみ「京太郎くん、この飲み物は……」 京太郎「え? ああ、俺からの差し入れですよ。気にしないでください」 ゆみ「そういうことじゃ――いや、それはそれで後で払おう」 ゆみ「そうじゃなくて私がレモンティーを好きだなんて話した覚えがないんだがどうして知っていたのかと」 京太郎「ああ、そっちですか。1ヶ月も一緒にいればわかりますよ」 ゆみ「ん、そうか……」 桃子「あーそれで私が桃天好きだって知ってたんすね。隠してたつもりなんすけどねー」 京太郎「毎日のように桃天飲んどいてどこが隠してんだよ!?」 ゆみ「え」 智美「私のコーラ好きもバレてたかー」 京太郎「モモほどじゃないですけどよく飲んでますしね」 ゆみ「な」 睦月「私は……」 京太郎「あれだけせんべいと緑茶飲んでればそりゃわかりますって」 睦月「いや、実はストレートティーのほうが」 京太郎「じゃあせんべいも紅茶と一緒に食べてくださいよ!?」 睦月「そこは相性の問題だね」 京太郎「なんで誇らしげなんですか……はい、ストレートティーです」 睦月「あるんだ!? いや、流れに乗っただけで緑茶も好きだし、こっちで大丈夫。わざわざありがとう」 京太郎「じゃあしまっておくんで後で飲んでください……あれ、ゆみ先輩どうしました」 ゆみ「なんでもない……」 ゆみ(私だけじゃなかったんだな)ハァ 京太郎(ゆみ先輩は色々飲んでるからわかりづらかったけど当たってよかった……!) 京太郎(遊びに行ったとき飲んでたのをよく覚えてた! 偉いぞ俺!) 桃子「なんかまた2人でやってるっすね」 智美「一回戦とはいえ余裕だなー。というかいい加減にしろー」ワハハ 佳織「うぅ……すみません……」 京太郎「ドンマイです。4万点差くらいどうとでもなりますよ」 佳織「でも区間4位で役立てなくて……」 ゆみ「昨日も言ったじゃないか。1ヶ月前に入れるなんて無理を頼んだのは私たちだ。妹尾の取られた点棒は私たちが取り返す」 桃子「かおりん先輩の後は部長に私にゆみ先輩。まさに盤石っすよ!」 智美「そうそう気にするなー。佳織の敵は私が取るぞ」ワハハ 佳織「みんな……」ウルウル 智美「ワハハー。それじゃ逆転してくるかー」 ゆみ「ああ、行ってこい」 睦月「お願いします!」 桃子「ファイトっすー!」 ………… ……… …… … ゆみ『ツモ。2000・4000』 一同「…………」プルプル 京太郎「か、」 智美「勝ったぞー!」 睦月「勝ったんだ……」ヘニャ 佳織「よかった……!」 桃子「みんな喜びすぎっすよー。初戦突破なんて通過点っす!」ニヘラ 京太郎「その顔で言うなよ」ハハ 桃子「嬉しいんだからしょうがないっすかー」バシバシ 京太郎「痛っ!」 桃子「もー大げさっすねー」バシバシバシ 京太郎「やめい! ほんと痛えよ!?」 睦月「あはは、夢じゃなさそうだね」 佳織「うん、痛がってる」フフ 京太郎「微笑ましそうにするのやめてください!」 桃子「やーでも私たち勝てたんすねー。夢じゃないんすねー」ニヘラ 京太郎「部長、モモ、ゆみ先輩が区間1位だぜ。順当だよ」 智美「ワハハ、そんな褒めるなー」 佳織「智美ちゃんありがとう!」 睦月「モモも先輩たちも、やっぱり凄いですね」 智美「2人が踏ん張ってくれたからだぞー。……そろそろゆみちんが帰ってくるなー。ちゃんと迎えよう」 桃子「そうっすね! 盛大に出迎えるっす!」 ガチャ 京太郎「ゆみ先輩! おめでとうございます!!」 ゆみ「」ポー 京太郎「飲み物どうぞ……ってどうしたんですか?」 ゆみ「私たちは勝ったのか……?」ポー 京太郎「何いってんですか! ゆみ先輩なんて一度も振り込まずに圧勝したくせに!」 ゆみ「実感がない……京太郎くん、ちょっと後ろを向いてくれないか?」ポー 京太郎「? はい」クルッ ゆみ「ん……」ピト 京太郎「はい!?」ビクッ 桃子・智美・佳織・睦月「!?」 ゆみ(いつもの……いつもよりは速いか? でも聞き慣れた京太郎くんの鼓動だ……) ゆみ「……うん、ありがとう。ようやく現実に戻ってきた気分だ」 京太郎「」 ゆみ「京太郎くん?」 智美「……あー、現実に戻ってきたところ悪いんだけどなー?」 ゆみ「なっ、え!? なんでお前た……あ」 桃子「これは本気で私たちのこと忘れてたっぽいっすね……」 睦月「しゅ、集中力凄いですね」 佳織「凄い慣れててこっちが赤くなっちゃいました」 ゆみ「い、今のは、その……忘れてくれ……」カアァァ 智美「ちょっと難しいなー」ワハハ 桃子「というか今さら1個忘れたくらいじゃどうにもならないっすよ?」 ゆみ「なら今までの全部だっ!」 睦月「あ、自覚がないわけじゃないんですね」 佳織「私は無自覚って言われたましたけど、さすが加治木先輩ですね!」 ゆみ「うぅ……」シュン ゆみ「京太郎くん……」ジッ 京太郎「」 桃子「京太郎?」 京太郎「……はっ。一瞬意識が飛んでたぜ」 智美「いつから飛んだんだー?」 京太郎「その、ゆみ先輩が俺の背中に……」 ゆみ「……そこからは記憶にないんだな?」 京太郎「ええと、そうですね」 ゆみ「……ならまあ」 桃子「いいんすか!?」 智美「それくらいいつもやってるって感じだなー」 京太郎「よくやられてますけど、やっぱ心の準備してないと驚きますね」アハハ 佳織「よくやってるってほんとに慣れてたんだ……」 京太郎「ところで俺の意識が飛んでる間に何が」 ゆみ「いいから! ほら次の試合が始まるぞ!」 桃子「……今さら何が恥ずかしいんすかね」ヒソヒソ 智美「ほら、自覚があるって思われると恥ずかしいんじゃないか?」ヒソヒソ 睦月「なるほど」ヒソヒソ ゆみ「聞こえてるぞ!」 ゆみ「……どう思ってるかなんて自分でもよくわからない」ボソッ ゆみ(京太郎くんとまだ一緒にいたいと思うのは、蒲原たちと一緒にいたいと思うのと違うものなんだろうか……) 京太郎「佳織先輩、あっちで何か話して……」 佳織「い、いやあの……そ、それより私ちょっと喉が渇いたから飲み物が欲しいかな!?」 京太郎「あ、はい。どうぞ」 智美「2回戦はさっきより手強いなー」 桃子「さすがは1回戦を突破しただけあるなー」 京太郎「睦月先輩苦戦してる……休憩がほとんどないのは辛いですね」 ゆみ「確かに辛いがそれは相手も同じだ。裾花に天竜に高瀬川……やはり一筋縄では行かないな」 佳織「津山さん! 頑張って!」 ………… ……… …… … 睦月「すみません、もっと点数取って繋げたかったんですが……」 ゆみ「なに、相手はそれなりの強豪だ。その先鋒を相手にして2位と僅差の3位なら十分だよ」 睦月「2位の次は3位……このままだと次は4位に」ウゥ… 智美「相手は強くなっていくわけだしなー。でもエースを相手に踏ん張ってくれるってのはそれだけでありがたいんだぞ?」 桃子「そうっすよ。最終的にチームが勝てば問題なしっす!」 ゆみ「まあもちろん勝ってくれるのが一番だ。決勝は期待しているぞ」 睦月「……はい、切り替えます!」 佳織「わ、私も差を広げられないよう頑張ります!」 智美「そうだなー。まずは目の前の試合に勝たないと。期待してるぞー!」ワハハ 京太郎「佳織先輩、頑張ってください!」 佳織『よ、よろしくお願いします』ペッコリン 桃子「かおりん先輩は緊張が解けないっすねー」 智美「緊張というかあれはよくわからなくて戸惑ってるんじゃないかー?」 京太郎「起家ですか。配牌はよさそうですね」 ゆみ「ああ。……いや、よさそうというかこれはもしや」 睦月「ま、まさか……」 佳織「3つずつ、3つずつ……」 裾花次鋒「……その、ごめんなさい。速く切ってもらいたいんだけど……」 佳織「ご、ごめんなさい! ええと、これは……」 裾次(初心者の子なのかな。初心者がいて勝ち進むなんて要注意ね) 佳織「うーん? これはどうすればいいんだろう……?」 3人「?」 佳織「最初からでもいいのかな。ええと、ツモのみ、です。500オールかな?」 3人「なっ!!?」 佳織「えっ!? 間違ってました!?」ビクッ 天次「……最初から揃ってるときは天和って言って役満になるの。点数は……16000オール」 佳織「これも役満なんですか!? わあ……」 京太郎「さ、さすが佳織先輩……」 ゆみ「起家で天和とは……恐ろしい」 智美「やってくれるとは思ってたけどここまでやるとはなー」ワハハ 桃子「かおりん先輩カッコいいっす!」 睦月「妹尾さん凄いな……私も次こそは!」 佳織「ただい――」 智美「よくやったぞ佳織ー!」 京太郎「区間1位おめでとうございます!!」 佳織「あ、ありがとう。でも運がよかったよ」アハハ 桃子「開幕天和は凄まじかったっすねー」 ゆみ「相手も動揺したのかベタオリが多かったからな。妹尾の独特の捨て牌にも翻弄されたようだ」 睦月「実際その後も倍満とか上がってますからね。凄いなあ」 佳織「一回戦の分、取り返せてよかったです」エヘヘ 智美「私もこの流れを切らないようにしないとなー」ワハハ ゆみ「ああ、期待しているぞ」 京太郎「頑張ってください!」 智美「ワハハ、任せろー」 ………… ……… …… … 智美「ワハハ……」 京太郎「お、お疲れ様です」 智美「区間4位とはなー……」 ゆみ「まあそういうこともあるのが麻雀だ。気にするな」 睦月「そうですよ! 配牌は悪かったですけど、悪い打ち方した訳じゃないですし」 桃子「私とゆみ先輩が取り返すから問題ないっすよ!」 佳織「総合順位はまだ3位だし大丈夫だよ」 智美「……そうだなー。これからは応援頑張るぞー!」 桃子「頼んだっすよー! それじゃサクッと逆転してくるっす!」 京太郎「おいおい、そんな甘く見てて大丈夫か?」 桃子「大丈夫っす。言葉の綾っすよ。まあ私が1位にしてくるのは本当っすけどね!」 ゆみ「最悪私で逆転するつもりだが、頼んだぞ」 桃子「任されたっす!」 桃子(さて、ああは言ったけど裾花も天竜も強敵っすね。中々振り込みそうにないっす) 桃子(序盤はおとなしくして終盤勝負っすね。我慢比べになりそうっす) 裾副(配牌はいい、今日は好調ね。リードを守るなんて考えるよりこのまま差を広げましょう) 天副(裾花やっぱり強い……! ここでなんとか巻き返さないと) 高副(4位だけど諦めるわけにはいかない! 全員捲ってやるわ!) 京太郎「硬直してますね……」 ゆみ「実力はモモのほうが上だと思うが……相手も強豪校でレギュラーを取っている選手だ。中々上手くはいかないな」 睦月「まだ消えられてないみたいですね。打牌が慎重です」 智美「冷静に考えると消えられてないって凄いこと言ってるよなー」 佳織「応援頑張るって言ったのはどうしたの!?」 桃子(……消えられたみたいっすね。南2局までかかるなんてやっぱりこの人達強いっす) 桃子(まあゆみ先輩ほどじゃないっすけどね!) 裾副「立直」 桃子(立直っすか。あの捨て牌は……。ちょうどいいっすね。反撃開始っすよ!) 裾副(今日は絶好調! 二-四-五-七待ちならすぐ上がれそうね) 桃子「」タン 天副「」タン 高副「」タン …… … 高副「うー」タン 裾副「ロン! 裏ドラは……」 桃子「ちょっと待った! ダメっすよ。捨て牌はちゃんと見ないと」 裾副「は? 何言って……っ!!?」 天副「え!?」 高副「なっ!?」 裾副「ちょ、ちょっと! すり替えたりしてないわよね!?」 桃子「審判がいてカメラで撮影されてるのに出来るわけないじゃないっすか」 裾副「そんな、見落としてたなんて……」 桃子「ともかくチョンボっすから罰符っすよ」 裾副「くっ……」 京太郎「いやーほんとえげつないなあ」 ゆみ「あれに関しては回避しようがないからな。ロン上がりを放棄するか運に任せるしかない」 智美「私は事故みたいなものだと思って無視してたなー。罰符を何度払ったか数えてないけど」ワハハ 京太郎「俺も何度あれにやられたことか……」 睦月「わかっててもショックだよね。上がれると思ったのに罰符を払うことになるなんて」 ゆみ「ああ、そして相手はモモのステルスを知らない。受ける衝撃も数段上だろう」 京太郎「見るからに落ち込んでますね。気持ちわかるなあ」 佳織「私は何故か桃子さんのステルスで罰符払ったことないんですよね。なんででしょう?」 京太郎「……佳織先輩だからですよ」ニコッ 佳織「な、なんか喜べないな……」 桃子「宣言通り1位になってきたっすよー!」 京太郎「すげえぞモモ!」 ゆみ「よくやった」 桃子「私にかかればこんなもんっすよ!」ドヤッ 智美「ワハハー、生意気だなー」ウリウリ 桃子「ちょ、ちょっと部長!」 智美「凄いぞモモー」ワハハ 桃子「わかったからやめて欲しいっすー!」 智美「……ありがとなー」 桃子「……チームなんだから当然じゃないっすか」 佳織「これで1位ということは……」 睦月「後ちょっとで決勝……!」 京太郎「ゆみ先輩、頑張ってください」 ゆみ「みんながここまで繋いでくれたんだ。必ず守り切るさ」 智美「飛ばしてしまっても構わないんだぞー?」 ゆみ「無理をする必要がどこにある……行ってくる」 桃子「頼んだっす!」 ………… ……… …… … 京太郎「決勝進出だー!!」 桃子「なんで私たちより喜んでるんっすかー!?」ニヘラ 京太郎「お前も十分喜んでるだろ!」ニヘラ 智美「まさかここまで来れるとはなー」ワハハ 睦月「2回戦に行けただけで嬉しかったのに、まさか決勝に行けるなんて……」 佳織「私も凄い嬉しくて……」グスッ 智美「こらこら、泣くのはまだ早いぞ」 佳織「なんか気が抜けちゃって……」 ゆみ「気を抜くのはまだ早い。明日は決勝だぞ」 京太郎「ゆみ先輩! おかえりなさい、おめでとうございます!!」 ゆみ「ありがとう……だがみんな、明日はもっとキツイ試合になる。喜ぶのはいいが疲れは残さないようにな」 京太郎・智美・桃子・睦月・佳織「……」 ゆみ「な、なんだ?」 智美「……一回戦の後何したか忘れたのかー?」 ゆみ「うっ」 桃子「棚に上げるってレベルじゃないっすよね」 ゆみ「よ、喜んでいたわけじゃないしいいじゃないか!」 智美「浮かれっぷりは飛び抜けてたと思うぞ?」 桃子「周りが目に入ってないってああいう事をいうんすねー」 ゆみ「なんで私はあんなことを……!」 京太郎「ま、まあまあ。ゆみ先輩が言ってることは正しいじゃないですか」 佳織「確かにそうだね。そっか、明日で決まるんだね……」 睦月「明日で最後にしたくないね……ここまで来たら全国に行きたい」 桃子「後1勝だけっすしね。負けたくないっす」 ゆみ「ああ、私もだ。明日も早いし今日は帰ってゆっくり休もう」 智美「そうだなー。私たちの家は遠いし帰るかー。明日は頑張るぞー!」 一同「おおー!」 ――帰り道―― 京太郎「ゆみ先輩、今日はお疲れ様でした。カッコ良かったですよ」 ゆみ「ああ、ありがとう。だが明日の相手は正直言ってレベルが違うからな……」 京太郎「龍門渕と風越と……清澄ですね」 ゆみ「そうだな。天江衣は牌譜を見てもわけがわからない」 ゆみ「素人のような打ち筋だが全てが勝ちに繋がっている。実際に打ってみるまで対抗手段は思いつかないだろうな」 ゆみ「池田華菜は火力が凄まじい。9割近く満貫以上で上がっているんじゃないかあれは。あのツモ運は素直に羨ましいよ」 京太郎「咲はどうですか?」 ゆみ「ううん、今年からの出場でデータがないからな。牌譜がないとなんとも……」 京太郎「あ、それならこれをどうぞ」バサッ ゆみ「これは……!」 京太郎「清澄と龍門渕と風越の今年の牌譜です。一応注釈も付けてます。応援で待ってる間に作ってみました」 京太郎「応援だけしか出来ませんでしたから、出来る範囲で役に立ちたくて。まあゆみ先輩ほど上手く注釈出来てないですけど」アハハ ゆみ「いや、あるとないとでは大違いだよ。ありがとう京太郎くん」 ゆみ「ふむ……」ペラリ 京太郎「どうですか?」 ゆみ「軽く宮永のを見たが、1回戦で4万点以上残している相手を飛ばしているのか……さすがというべきだろうか」 ゆみ「打ち方に関しては正直よくわからない。無駄があるように見えるがきっちり勝っている。何にせよ要注意だな」 京太郎「やっぱり強いんですねあいつ……全然そんな感じしないのに」 ゆみ「見た目と麻雀は関係ないが、随分と女の子らしい女の子だったな」 京太郎「女の子らしい女の子って……まああいつがダメなのは中身ですから見た目じゃわからないですね」 ゆみ「そんなふうには見えなかったが……」 京太郎「まず会場入ってすぐ迷子になってる時点で察してください。昔からああなんですよ」 ゆみ「そうか……やっぱり仲がいいんだな」 京太郎「まあそうですね。あんなんですけどいいやつだからほっとけないです」 ゆみ「……」 京太郎「あ、もちろん明日は鶴賀を応援しますよ! 今の俺にはゆみ先輩が1番です! 咲なんかやっつけちゃってください!」 ゆみ「……信じるぞ? その言葉」 京太郎「もちろんです……っていうかわざわざ念を押すほど信用ないですか!?」 ゆみ「ん……そうだな。今日のナンパの一件で君の信用はガタ落ちした」フフッ 京太郎「だから誤解……それ咲じゃないですか!?」 ゆみ「幼馴染を見つけて助けようとするのはいいが、それならもっとちゃんと伝えろ」 京太郎「うっ……すみません」 ゆみ「わかればいい……明日は応援頼んだぞ。ちゃんと私にするように」 京太郎「はい!!」 ゆみ「……絶対だぞ」 ――控え室―― ゆみ「ついに決勝戦だな」 智美「そうだなー。泣いても笑っても今日が最後だー」ワハハ 睦月「2日目にもなると緊張もほぐれてきますね」 佳織「あれ? さっきから右手と右足一緒に出してるから緊張してるのかと思ってたよ」 睦月「……自分に言い聞かせてたんだ」 佳織「ご、ごめんなさい!」 桃子「緊張感のない会話っすねー」 京太郎「これなら今日は大丈夫そうですね」 睦月「まあ昨日の初戦よりは緊張してないと思う。ただ今日は相手が……」 京太郎「風越の先鋒、強かったですね」 桃子「龍門渕の先鋒も10万点飛ばすとかわけわかんないことやってたっすねー」 睦月「うん、私でどこまで離されずにいられるか……」 智美「ダメだぞー初めからそんなんじゃ」 ゆみ「蒲原の言うとおりだぞ。初めからそういう意識では守りに入ってしまう。そこを狙われると最悪だし、それが出来る相手だ」 桃子「そうっすよ。むっちゃん先輩は堅実なとこがウリで元々攻撃的じゃないんすから」 桃子「最初から守りに入ったら上がれなくなっちゃうっすよ」 睦月「でも……」 京太郎「俺が言うのも何ですけど、1人が調子悪くても周りのみんなでフォローするのが団体戦じゃないですか!」 ゆみ「津山を先鋒に置いたのは私なんだから、自分の好きに打ってこい。後のことは任せろ」 ピンポンパンポーン 「決勝戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」 智美「ちょうど始まるみたいだなー」ワハハ 佳織「津山さん、頑張って!」 桃子「期待してるっすよー!」 睦月「……うむ、精一杯やってくる」 京太郎「決勝はルール変わるんでしたっけ?」 ゆみ「ああ、半荘が2回になる。長丁場になるから逆転の可能性は増えるな。逆もしかりだが」 智美「麻雀は運に左右されるから、2回にして実力を発揮してもらおうってことなんだろうなー」 桃子「まあ2回じゃまだまだ運が大きいと思うっすけどね」 ゆみ「1回じゃ味気ないというのも理由なのかもしれないな……さあ、始まるぞ」 京太郎「清澄と龍門渕の配牌がいいですね」 ゆみ「ウチと風越は我慢の展開だな。なんとか耐えて欲しいが……」 桃子「ああ、なんで南を切るんすか!」 京太郎「生牌とはいえ聴牌だしなあ。俺も切りそうだ」 佳織「あそこにいると早く上がりたくなるよね」 ゆみ「オリの判断は難しいが、うーむ……」 智美「まあ今戦ってるのはむっきーだ。私たちは落ち着いて見守ろう」 京太郎「それにしても龍門渕の先鋒は変な鳴きしてますね」 智美「確かになー。それに鳴いたあと清澄のツモが悪くなってないか?」 ゆみ「ふむ、亜空間殺法の使い手なのかもしれないな」 京太郎「あく……なんですか?」 ゆみ「亜空間殺法だ……改めて言わせるな」カアァ ゆみ「コホン。亜空間殺法というのは、簡単に言えば鳴いてツモ順をずらして相手のいい流れを切ったり」 ゆみ「自分に運を引き寄せたりするものだ」 佳織「そんな上手くいくものなんですか?」 ゆみ「私には出来ないな。何か独自の感覚なり理論なりがあるんだろう」 京太郎「なるほど……清澄の先鋒も配牌もツモもいいのに後一歩で上がれてないですね」 ゆみ「あれを狙ってやっているとすると恐ろしいな。10万点飛ばしてのはさすがに運も絡むんだろうが……」 桃子「狙われてないのは幸いっすね。調子がいいほど狙われてるみたいっすからあんまり喜べないっすけど」 智美「清澄には悪いけどこのまま引きつけてて貰いたいなー」 智美「前半戦終了かー」 佳織「龍門渕がリードしてるね」 ゆみ「ああ、しかし風越も目立たなかったが堅実に稼いでいるな」 京太郎「あれ、ほんとですね。最初は調子良さそうじゃなかったのにいつの間に」 桃子「風越のキャプテンは伊達じゃないっすねー」 佳織「津山さん、ため息ついてる……」 ゆみ「先鋒という厳しい中でよくやってくれているんだが……しまったな。対局室の近くへ行っていればよかったか」 智美「直接声かけたほうがよかったかなー」 京太郎「後半戦始まりますね。睦月先輩なら大丈夫ですよ」 桃子「そうっすよ。部長とゆみ先輩にとっては守るべき後輩かもしれないっすけど、私たちにとっては頼れる先輩なんすから!」 ゆみ「……そうだな。一度先鋒を任せた私がうろたえていては津山に申し訳ないな」 智美「どっしり構えるかー」ワハハ 京太郎「はい、睦月先輩を信じましょう!」 ………… ……… …… … 睦月「ただいまー……」 京太郎「お疲れ様です」 睦月「うん……負けちゃった。次は4位なんて冗談で言ってたけどなあ」ハァ ゆみ「……確かに津山の満足な結果ではなかったと思うが、4位とは言っても2,3位とは僅差だ。よくやったよ」ポン 智美「そうだぞー。前半から5000点しか削られてないじゃないか。よく耐えてくれたなー」 桃子「そうっすよ! 前半よりずっとよくなったんすからもっと胸張るっす!」 佳織「あ、後は私たちに任せて」 睦月「妹尾さんまで……うん、ありがとう。後はよろしくね」 智美「佳織も言うようになったなー」 佳織「か、からかわないでよう」 ゆみ「1人浮きなら他の3校も風越を狙うだろうからかえってやりやすいが……妹尾は好きなように打ってこい」 佳織「私も風越をマークしたりしなくていいんですか?」 京太郎「……出来るんですか?」 佳織「……出来ないね」 ゆみ「慣れないことはしなくていい。そんなことをして持ち味を消す必要はないさ。点数調整は私たちの役目だ」 桃子「点数で負けてるのに飛ばすのだけは注意っすよ!」 佳織「そ、それはちょっと無理かな」 智美「ほらほら、話すのはそのくらいにして出陣だー」 佳織「お、押さないでぇー」 ゆみ「次鋒戦の開始だな」 京太郎「……全員メガネっ娘ですね」 ゆみ「言い方に何か違和感を感じるな」 京太郎「気のせいですよ……あれ、1人外しましたね」 桃子「あれで見えるんすかね?」 智美「伊達メガネだったりしてなー」ワハハ 睦月「オシャレしたいのかしたくないのかよくわからないですね」 ゆみ「まあ何か理由があるんだろう。さすがに意味もなく外しているとは思えん」 京太郎「メガネを外すと印象が変わって……」 ゆみ「何を考えている」ゴッ 京太郎「ヒィッ!?」 桃子「少しくらい懲りたらどうなんすか」ハァ 智美「風越がリーチしたなー」 睦月「清澄は堅実にオリてますね」 桃子「かおりん先輩は……あぁ中が」 智美「これは振り込むなー……やっぱり」 京太郎「佳織先輩度胸ありますよね」 ゆみ「それなりには教えているはずなんだが、中々難しいな」ハァ ゆみ「まあこれも含めて妹尾の打ち方だ。あれでも部内断トツビリというわけではないしな」 桃子「そうっすねー。かおりん先輩の調子がいいときは少しくらい削っても役満で一気に取り返されるっす」 智美「今回も出るといいなー」ワハハ 京太郎「……うおお、四暗刻聴牌」 睦月「あの配牌から四暗刻目指すのかぁ……」 智美「まあ本人には目指してるって意識はないと思うけどなー」 ゆみ「何にせよあの捨て牌はそれだけで脅威だな。清澄もオリたようだ」 桃子「私ならステルスでオリなくても平気っすけどね!」 京太郎「なんで対抗してるんだ……というか押したほうが点数的には有利じゃないか?」 ゆみ「結果論ではそうだが、長い目で見ればオリたほうが正解だろう。もちろんこの試合に限れば別だが」 京太郎「お、言ってる間に佳織先輩ツモりましたね。この舞台で役満か……」 ゆみ「スター性というか、何か持っているのだろうな」 智美「無理にでも麻雀部に入ってもらってよかったなー」 睦月「これで相手も攻め込みづらくなるといいですね」 京太郎「佳織先輩防御はからっきしですからねえ。早めにオリてくれるといいな」 ゆみ「いきなり中を切ってしまっているからな……難しいところだが慎重な相手なら可能性はあるか」 桃子「メガネキャラは慎重派って相場が決まってるっすよ!」 京太郎「いや佳織先輩がいきなり違うじゃねえか」 桃子「……何事にも例外はあるっす!」 ………… ……… …… … 智美「佳織ー! 大活躍だったなー!!」 佳織「あ、あれでよかったかな?」 ゆみ「十分すぎる。あの収支に不満などない」 京太郎「区間1位ですよ1位! 凄いですよ!」 桃子「麻雀は何があるかわからないっすね。凄いっす!」 ゆみ「麻雀は運ではないが、決勝でこの結果をだせるのは妹尾の力だろうな」 睦月「なんとか風越が射程内に入りましたね」 ゆみ「ああ、……蒲原!」 智美「ん?」 ゆみ「射程にはいった的を逃すな」 智美「撃ち落せばいいんだろー、風越を!」 京太郎「……あの、ゆみ先輩、智美部長」 ゆみ・智美「うん?」 桃子「……何もそんな死亡フラグ立てなくてもいいじゃないっすか」 ゆみ「な!? い、いやそんなつもりではなかったんだが……」 京太郎[言ってしまったものはしょうがないです。部長、フラグなんかに負けないでください」 智美「新しい応援だな……。まあ頑張ってくるぞー」ワハハ 京太郎「風越の中堅は1年生か。凄いなあ」 桃子「私も1年っすよ!」 京太郎「ウチは人数がいないだろ」 桃子「ぐぬぬ」 ゆみ「まあモモの実力なら風越でもレギュラーを取れるさ」 桃子「フフフ」ドヤァ 京太郎「腹立つわー」 睦月「何遊んでるの……ほら、始まるよ」 京太郎「おっとそうで……龍門渕のあれは手錠?」 佳織「ファッションなのかな?」 桃子「世の中には色んな人がいるんすね」 ゆみ「だから気を散らすなと」ハァ 睦月「あ、清澄が立直しましたね。でもなんで単騎に……?」 京太郎「⑧切りなら5門張ですよね? まあ他の手牌見る限り5門張でも上がれなさそうですけど……」 ゆみ「打牌を見る限り少なくとも一萬を引いたのは偶然だと思うが……」 桃子「和了る確率は間違いなく下がるっすけど、振り込んだときのダメージは大きいっすね」 京太郎「変な待ちだとオリるのも難しくなるしなあ」 睦月「手強いですね……」 ゆみ「蒲原はあれでオリるときはしっかりオリるからそうそう振り込まないとは思うが、やはり厳しそうだな」 桃子「清澄また和了ったっすね」 佳織「風越が2位になってウチが1位だね!」 京太郎「清澄が風越を撃ち落としてくれましたね」 ゆみ「あまり喜べないな……」 睦月「清澄強いですね。あんな待ちで和了れるなんて」 京太郎「狙われてるって感じではないですけど、風越がよく振り込んでますね」 佳織「智美ちゃんは全然振り込まないね」 ゆみ「風越が見かけによらず攻撃型のようだからな。蒲原は守備重視だしその辺りの差だろう」 桃子「後はそもそも当たり牌引いてないっすからね。悪待ちだから引く確率も少なくなるっすし」 京太郎「うわ、清澄またテンパッてる……」 睦月「今度は嵌張待ち……手なりでなったんだろうけどこれなら和了らないかも」 ゆみ「この流れだと厳しそうだが……うわ」 桃子「……凄いっすねあれは」 佳織「ツモった牌を指で弾いてその間に手牌を倒して、弾いた牌掴んで叩きつけて……練習してるのかな?」 京太郎「清澄も今年麻雀部出来たんですよ。中堅の部長の人は1年生のとき1人だったはずなんできっとその間に……」 睦月「冷静に考えるのはやめよう」 ………… ……… …… … 智美「」ワハハー 睦月「横並びですから! 気を落とさないでください!」 京太郎「風越に比べれば全然マシですよ!」 桃子「マシって言い方もどうなんすかね」 智美「リード守れなくてごめんなー……」 佳織「私も運がよかっただけだから」 ゆみ「まだまだ1位を狙える位置だ。後は私とモモでなんとかしよう」 智美「頼んだぞー」 睦月「お願いします!」 桃子「任せるっす! 半荘2回なんてまさに私のためにあるようなルールっすからね!」 京太郎「どういう意味だ?」 桃子「私のステルスは消えるのに時間がかかるんすよ」 京太郎「ああ、知ってるけど」 桃子「半荘が終わったくらいで私のステルス効果が消えることはない……この意味がわかるっすか?」 京太郎「」ゴクリ 桃子「つまり私は半荘1回丸々ステルス状態で戦えるんすよ!」 京太郎「な、なんだってー!」 ゆみ「出番直前だというのに余裕だな。いやまあいいんだが」ハァ 桃子「いやー今からじたばたしてもしょうがないっすからね。出来ることをやるだけっすよ」 智美「ステルスの使える時間が長くなるってのは単純に強いからなー。期待してるぞ」 京太郎「消える前に点数削られないようにな」 桃子「消える前に削るのは散々ゆみ先輩にやられたっすね」 睦月「見てて怖くなるくらい狙われてたね」 ゆみ「し、仕方ないだろう!?」 桃子「わかってるっすよ。おかげで素の実力も上がったっす!」 佳織「頑張ってください、桃子さん!」 桃子「かおりん先輩に負けないくらい稼いでくるっすよ!」 睦月「副将は原村和が出るんですよね。インターミドルチャンプかあ」 ゆみ「決勝で清澄が注目されている理由の1つだな」 京太郎「鶴賀は全然注目されてませんね」 智美「運でたまたま勝ち上がってきたって思われてるんだろうなー」 佳織「……何も言い返せないなあ」 ゆみ「……運も実力のうちだ」 佳織「フォローされてない!?」 京太郎「それで勝ち上がったんですからむしろ凄いですよ」 睦月「無名のまま勝てたらカッコいいよね」 ゆみ「そうだな。最後まで注目されずに勝つというのも面白い」 京太郎「とりあえずはモモ次第ですね。応援しましょう」 京太郎「あれはペンギン……?」 ゆみ「エトピリカになりたかったペンギン、略してエトペンだな」 佳織「可愛いですねー」 智美「ゆみちん詳しいなー」ワハハ ゆみ「た、たまたま知っていただけだ」 智美「恥ずかしがらなくてもいいだろー」 京太郎「でも人前でペンギンを抱えたまま麻雀なんてよく出来ますね」 ゆみ「彼女なりの集中方法なのだろう」 智美「清澄は先鋒から副将までみんなキャラ濃いなー」 京太郎「東場のタコス、メガネを取るメガネっ娘、牌投げ悪待ち、ペンギン抱っこ……確かに」 智美「ウチは佳織くらいかな。モモも対戦相手には強いけど目立てはしないしなー」 佳織「そんなことないと思うけど……」 睦月「私も何かしたほうがよかったのかな」 京太郎「いや清澄以外は普通にしてますから!」 ゆみ「キャラが薄くても別に構わないだろう。試合に勝てればいいんだ」 ゆみ「……それに注目されたら普段通り打てなくなりそうだ。目立つのには慣れていない」ボソッ 智美「1年生の教室で大声で勧誘したのは誰だったかなー」ワハハ ゆみ「だからこそだ!!」カアァァ 京太郎(可愛い) 睦月「あんまり動きがないね」 京太郎「みんな固い打ち手みたいですね」 ゆみ「こういう打ち手にモモのステルスは効果的だろうな」 京太郎「高い手を作るタイプじゃなさそうですから、消えるまでに削られるのも大丈夫っぽいですね」 佳織「でもみんな参考になりますねー。なんでそう切ってるのか全然わからないや」 京太郎「佳織先輩はあんまりとらわれないほうがいいと思います」 ゆみ「いや、技術が身についても今の運のままでいられるかもしれない」 京太郎「なるほど……」 佳織「な、なんか扱いがおかしいような……」 智美「気にするなー。お、モモが上がったぞー」 京太郎「龍門渕の副将驚いてますね!」 ゆみ「ふむ、消えたようだな」 睦月「裾花のときもですけど、今回は更に時間かかりましたね」 佳織「最終局でようやくだね」 智美「ここからはモモの独壇場だなー」 京太郎「お、早速龍門渕が振り込んだ!」 睦月「ドラとはいえモモが見えていなければ切りますね」 ゆみ「ここからは安心して見ていられそうだな」 智美「このまま飛ばしてくれればいいんだけどなー」ワハハ 京太郎「そうなればいいですね……ん?」 睦月「清澄がツモらな……!?」 智美「ス、ステルスモードのモモが」 ゆみ「振り込んだだと!?」 佳織「消えられてなかったんでしょうか……?」 ゆみ「いや、少なくとも龍門渕は明らかに不自然な振り込みをしていた」 京太郎「となると原村にはモモが見えてるってことですか……?」 ゆみ「そう考えるのが自然だが……まいったな」 智美「明らかにモモの天敵だなー」 ゆみ「ああ、私のオーダーミスだ。副将に置くべきではなかった」 京太郎「仕方ないですよ。モモが見える相手がいるなんてわかりませんし」 京太郎「わかったところで副将になるかどうかなんて完全に運じゃないですか」 佳織「原村さんに見えてても他の人には見えてないみたいですし、まだまだ有利ですよ」 智美「それに普通の麻雀でもモモは十分強いだろー?」 睦月「そうですよ。元々ネト麻見て勧誘したんじゃないですか」 ゆみ「……そうだな。これで落胆してはモモにも失礼だ。モモを信じよう」 ………… ……… …… … 桃子「いやー参ったっす。どーにも清澄だけ抜くことが出来ませんでした」 京太郎「原村には見えてたみたいだな」 桃子「あんな相手がいるんすね。自信無くしたっすよ」 ゆみ「何を言う。獲得点数を見れば誰が活躍したか一目瞭然だ」 ゆみ「去年トップの2校と原村和を相手に1番点を稼いだんだ。お前が一番だよモモ」 桃子「先輩――」 智美「そうそう、佳織ほど稼いではないけど1位なんだから胸を張っていいぞー」 桃子「最後にそういうこと言うんじゃないっす!!」 智美「褒めてるんだぞ!?」 桃子「どこがっすか!?」 智美「胸を張っていいって言ってるじゃないかー!」 桃子「最初を言わなくてもいいじゃないっすか!」 京太郎「あの2人はほっといて」 佳織「いいのかな……」 京太郎「いいんですよ。……ゆみ先輩、こんなことしか言えませんけど、頑張ってください」 ゆみ「……月並みだな」フフッ 京太郎「う……なんかカッコいいこと言えればよかったんですけど……」 ゆみ「いや、嬉しいよ。……うん、凄く嬉しい」 ゆみ「昨日言ったが、かっこ良くなくても気の利いた台詞じゃなくても、私を応援していてくれればそれでいい」 京太郎「それなら任せてください。ちゃんと対局室に聞こえるくらいの応援しますから」 ゆみ「それは恥ずかしいからやめてくれ」 京太郎「注文が多いですね」 ゆみ「君が無駄な条件を付けるからだ……それじゃ行ってくる」 京太郎「はい、優勝を決めるところを楽しみにしてます」 ゆみ「ああ、期待していてくれ」テクテク --------------------------------------- ゆみ(決勝の対局室は随分と広いな。……広くする意味はあるのだろうか) ゆみ(1人先に来ているな……あれは宮永か) ゆみ「よろしく。決勝で会うことになるとはな」 咲「あ、はい。よろしくお願いします。えっと……昨日はすみませんでした」 ゆみ「京太郎くんがやったことだよ。気にしないでくれ……まあどうしても気になるなら、お手柔らかにしてくれると助かる」フフッ 咲「そ、それはちょっと」アセアセ ゆみ「すまない、冗談だ。君の話は京太郎くんから話を聞いていて一度戦ってみたかったんだ」 咲「きょ、京ちゃんはなんて言ってたんですか……?」 ゆみ「ふむ……宮永照を手玉に取っていたというようなことを聞いたよ」クスッ 咲「京ちゃんやっぱり……! う、嘘ですからね?」 咲「もっとずっと小さい頃で、お姉ちゃんが邪魔しなかったからなんとかですよ!?」アセアセ ゆみ「……そこまでは事実なのか」 咲「あぅ……」 ゆみ「……こんなことはあまり話しても仕方がないか。すまない、試合前に話すことではなかったな」 咲「い、いえ、悪いのは京ちゃんですから。もう……」 ゆみ(……やはり仲がいいのだろうな。きっと私よりも……) 咲「? どうかしましたか?」 ゆみ「いや、何でもない。お互い全力を尽くそう」 咲「はい!」 --------------------------------------- 京太郎「あ、天江衣ってあんな小さい子供みたいな人だったんですか!?」 智美「京太郎達の1つ上だぞー」ワハハ 桃子「あの可愛い見た目で全国トップクラスの打ち手っすか。見た目は当てにならないっすねー」 佳織「あ、加治木先輩が早速立直ですね!」 京太郎「おお、幸先いいですね!」 桃子「そうっすねー……え? 清澄カンっすか?」 睦月「ウチとしてはありがた……!?」 智美「嶺上開花!?」 佳織「これって珍しいことでしたよね?」 桃子「ほとんどないって言っていいんじゃないっすかね……運が悪かったっすよ」 京太郎「……そういえば昨日の1,2回戦の牌譜でも嶺上開花で和了ってたような」 睦月「ぐ、偶然かな?」 京太郎「そうだといいですけど……」 睦月「2度目の嶺上開花……」 京太郎「咲がこんなこと出来たなんて……」 桃子「まあ幼馴染だからって知らないことくらいあるっすよ。ゆみ先輩ならどうにかしてくれるっす」 智美「そうだなー。ゆみちんならどうにかするだろー」ワハハ 京太郎「そう、ですね。応援するって約束しましたし」 佳織「あ、早速聴牌しましたよ!」 睦月「え? 南切り?」 智美「これはまさか宮永を狙ってるのかー……?」 京太郎「うわっ! 槍槓決まった!?」 桃子「先輩最高っすー!!」 ……… …… … 智美「一時は風越が0点にされてどうしようかと思ったけど……」 智美「風越が役満和了ったりゆみちんが天江から直撃取ったり、まだまだわからないなー」ワハハ 睦月「そうですね、まだまだこれから……!?」 桃子「ぬ、脱いでもいいですかって!?」 京太郎「あ、ああ靴か……最初からそういえよ!」 佳織「でもなんで急に脱ぎだしたんでしょう?」 桃子「おっぱいさんのぬいぐるみと一緒で集中方法の一つなんじゃないっすかね?」 智美「それでもなんで今までやらなかったのかわからないなー。京太郎は何か知ってるか?」 京太郎「いえ、俺も全然……」 睦月「力を抑えていたとかだったりは……」 智美「そ、それは笑えないなー」 京太郎「そんなこと出来るやつじゃないと思いますけど……あ! あいつただ単に脱ぐの忘れてたのかも……」 桃子「わ、忘れる? そんなことあるんすか?」 京太郎「咲ならありえる」 桃子「麻雀からは想像つかないっすねー……」 桃子「……終わったっすね」 京太郎「国士無双一向聴……後1巡あれば……!」 智美「ゆみちんが山を見なかったんだ。そういう後悔はしたらダメだぞー」 佳織「悔しいね……」グスッ 睦月「うむ……出れただけで嬉しかったけど、それでも……」 桃子「私がおっぱいさんに見つからないくらいちゃんと消えていれば……」 京太郎「いや、それは無理なんじゃ……」 桃子「それくらいの気持ちってことっす」 智美「みんな全力は尽くしてたし運も向いてたと思うぞー。これで届かなかったんだからしょうがないさー」ワハハ 智美「私たちは長野県3位になったんだ。風越より上だぞー? 胸を張って帰ろう」 一同「……はい!」 桃子「ゆみ先輩まだ帰って来ないっすね」 京太郎「……部長、その、俺……」 智美「ゆみちんのところかー? 迎えに行ってやれー」ワハハ 京太郎「はい!」タッタッタッ ――階段際ベンチ―― 京太郎「ゆみ先輩、お疲れ様でした」 ゆみ「京太郎くん……」 京太郎「……横、座りますね」 ゆみ「ああ……」 京太郎「……」 ゆみ「……今は、悔しいというより残念な気分だ。私はあの場で終わらない祭りを楽しみたかったんだ……」 ゆみ「そして行きたかった。みんなで全国に――」 京太郎「ゆみ先輩……」 ゆみ「……そうか、私は勝ちたいというより、ただ部のみんなと、君ともっと長くいたいとしか思っていなかったんだな」 京太郎「それは勝つ理由になるじゃないですか」 ゆみ「1つの理由になるかもしれないが、麻雀部でなくともいくらでも会えるだろう? 少なくとも君の幼馴染ほど強い理由ではないさ」 ゆみ「神様がいるなら強い思いの方に微笑むはずだ」 ゆみ「私は勝ちたいという意志が足りなかったのだろう。だからきっと肝心な場面で勝ちきれ――」 京太郎「……俺は、嫌です」 ゆみ「うん?」 京太郎「ゆみ先輩が引退して、麻雀部で会える時間が減るなんて、俺は嫌です!」 ゆみ「……私も引退したいわけではないが、いずれ引退するのは分かっていただろう?」 京太郎「それはそれです! 今引退しなくてもいいじゃないですか!」 京太郎「それに、みんなで全国は無理になったかもしれないですけど、個人戦があるじゃないですか!」 ゆみ「個人戦か……負けに行くつもりはないが、しかし今日の試合を見ていただろう? 私が勝ち抜けると思うか?」 京太郎「もちろんです!」 ゆみ「……清澄の原村は今日も十分活躍したが、長期戦でこそ輝くのが彼女だ」 ゆみ「間違いなく上位に食い込むだろう。中堅の竹井も強かった」 ゆみ「天江は出ないにしろ龍門渕は全員全国クラスの打ち手だし、風越の福路はおそらく長野で天江に次ぐ実力者だ」 ゆみ「そしてその天江に打ち勝った宮永……この面々が相手にいるんだぞ?」 京太郎「ゆみ先輩なら勝てるって信じてます」 ゆみ「しかし……」 京太郎「でももしゆみ先輩に自信がないなら、俺がなんとかします」 ゆみ「え?」 京太郎「俺が全国に行きますよ。そうすれば俺の全国が終わるまで、ゆみ先輩は麻雀部にいてくれますよね」 ゆみ「それはそうだが、しかし全国なんて……前に今年は目指さないとも言っていたじゃないか」 京太郎「あのときはあのとき、今は今です。……ゆみ先輩が全国に行けないと思うなら、俺が行くしかないじゃないですか」 ゆみ「……なんでそこまで私と一緒にいたいと思うんだ?」 京太郎「……俺はゆみ先輩が」 ゆみ「っ」ドキッ 京太郎「あなたのことが……」 ゆみ「……」ドキドキ 京太郎「…………俺はあなたが欲しい!!」 ゆみ「!?」 京太郎「俺はあなたと一緒にいたいんです! 少しでも、一秒でも長く!!」 ゆみ「」 京太郎「だから俺は……あれ、ゆみ先輩?」 ゆみ「」 京太郎「……そこまで嫌でした?」ガクッ ゆみ「違う!! 君は! なんでよりにもよってそれを言うんだ!?」 京太郎「告白するときは俺がゆみ先輩と出会うきっかけになったこの台詞しかないかと思って……」 京太郎「場所はあれですけどまあいいかなーと」アハハ ゆみ「そういうことじゃない!! ああ、もう……」ブンブン ゆみ「……そ、そうだ。返事は、だな」カアァァ 京太郎「そ、それはまだいいです」 ゆみ「……は?」 京太郎「俺が全国に行けたらゆみ先輩の返事を聞く資格が持てると思うんです。だからそのときに返事をください」 ゆみ「いや待て。何を意味のわからないことを……」 京太郎「と、とにかく今日は先帰ります。荷物は持って帰るんで明日またー!」ダダダダ ゆみ「ちょ、ちょっと待て! ……あのバカ」ガクッ 智美「いやーあれは酷いなー」ワハハ ゆみ「か、蒲原!? いつからいたんだ!?」 桃子「私たちもいるっすよー。個人戦の話してる辺りからいたっす!」 佳織「ど、どうも」 睦月「まさかあんな話になるとは……」 ゆみ「」 睦月「それで返事はどうするんでしょう」ワクワク ゆみ「……しようとしたらいなくなっただろう」カアァァ 桃子「全国行くなんて無茶苦茶な条件つけて何考えてるんすかね」 智美「ゆみちんどうするつもりなんだー?」 ゆみ「……まあ京太郎くんがああいうことをしてきたんだしな。私にも考えがある」 桃子「この状態でもすぐ対応するのはさすが先輩っすねー」 ゆみ「この状態……?」 桃子「さっきから顔真っ赤っすよ」 ゆみ「っ!?」バッ 睦月「今更隠さなくてもいいじゃないですか」クスッ 智美「ゆみちんは可愛いなー」 ゆみ「あぅ……」カアァァ 智美「それじゃゆみちんからかうのも程々にして帰るかー」ワハハ 佳織「明日の個人戦も頑張ろうね」 睦月「加治木先輩、全国行ってくださいね」 桃子「私も狙うっすよ! 2人で行くっす!」 ゆみ「ああ、目指すよ。だから少し先に行っていてくれ……」カアァァ 桃子「了解っすー」パタパタ 智美「ゆみちん、意気込みはどんな感じだー?」 ゆみ「そうだな……一緒にいたいと思うことがダメなんじゃない。一緒にいたいと思う強さが足りなかったんだというところだな」 智美「何の話だー?」 ゆみ「精神論だよ。気の持ちようだ。……明日は必ず勝つ」ゴッ 智美「……燃え尽きてないかと思ったけど心配はいらなそうだなー。じゃあ帰るかー」 ゆみ「ああ」 --------------------------------------- 和「こんなところであんな告白するなんて破廉恥です!」カアァァ 優希「台詞も凄かったなー。周りがざわついてるじぇ」 咲「……」 優希「でも私は嫌いじゃないな。あれくらい情熱的に告白されたらグラッとくるじぇ」 和「ゆーき、またそんな……」 優希「のどちゃんは嫌か」 和「嫌ですよ! ……まあ気になっている相手からなら、嬉しくないかというとそんなこともないでしょうけど……」 優希「のどちゃんも好きだなー」 和「違います! ……宮永さん? どうかしました?」 咲「えっ!? ううん、何でもないよ? 京ちゃんバカだよね。あんなところで告白なんて……しかもあなたが欲しい!! って」 咲「あんな、あんな恥ずかしい台詞をこんなに人の多い所で言えるくらいあの人のことが好きなのかな」 咲「でもいくら好きだからってこんなとこで……」 和「……」 優希「……」 咲「ほら、2人とも何か言ってあげてよ。京ちゃんからかうのに使いたいんだ」 咲「……あ、話したことないから言いづらいよね! 大丈夫、名前出したりしないから――」 優希「咲ちゃん」 咲「え?」 優希「目の下、触ってみて」 咲「なんで急に……あれ、なんだろこれ。なんで濡れてるんだろ」ポロポロ 和「宮永さん、いいんですよ。優勝しておめでたいときですけど、辛かったら泣いていいんです」ギュッ 咲「……う、うわあっぁっぁぁぁぁあ!!」 咲「京ちゃん、私のことずっと気にかけてくれてて、優しくて、私が中々友達作れなかったときも……」 咲「えぐっ、京ちゃんが助けてくれたの!!」ヒック 咲「違う高校に行ってからも毎日メールしてくれて、私の愚痴とか聞いてくれて、相談に乗ってくれて……!」 咲「ずっと、ずっと京ちゃんのこと大切な幼馴染だって思ってて……!」 京太郎「えぐっ、それだけだと思ってたのに、告白してるとこなんて見ちゃった……」エグッ 和「宮永さん……」ポンポン 咲「京ちゃんが私のそばからいなくなっちゃうんだって思ったら、胸が痛いんだ。 ……なんで気づかなかったのかな」グスッ 咲「私、こんなに京ちゃんのこと好きだったんだ……今更気付いても、もう遅いのに」ヒック 優希「近すぎて気づかないってこともあるじぇ……慰めにもならないけど」ナデナデ 咲「うん……」ヒック 和「気の済むまで泣いていていいですよ。落ち着くまで待っていますから」ポンポン 咲「原村さん、ありがとう……もう少しだけお願い。ちゃんと落ち着くから……」 咲「うあぁぁっぁ……、うわああぁぁぁっぁあぁん……!! うわあぁぁっぁぁぁ――」 ………… ……… …… … ――京太郎自室―― 京太郎「明日はついに俺も試合に出るのか……緊張するな」 京太郎「あ、そうだ咲にメール送ってなかった。こういうときはいつもあいつから来るのに珍しいな」 京太郎『今日はおめでとう、咲ってあんなに強かったんだな。知らなかった。全国では俺たちの分も頑張ってこいよ』 京太郎『それと明日の個人戦は俺も出るから応援頼んだぞ! 咲のことも先輩たちの次に応援してやるから!(笑)』 京太郎「こんなもんでいいか。送信っと」 ――2時間後―― 京太郎「……返信来ないな。珍しいってかこんなことなかったのに」 京太郎「勝ったからって気を使ってんのかな。んなこと気にするなよなあ。まあ優しいのは咲のいいとこだけど」 京太郎『勝ったからって気を使ってんのか? もし気を使ってんならそんなこと全然気にしなくていいぞ』 京太郎『明日はお互い頑張ろうな。お前みたいに俺も全国行ってやるぜ!!』 京太郎「……返信は来ないだろうな。明日もあるしもう寝よう」 京太郎「しかしゆみ先輩に言ったこと我ながら支離滅裂だったな……まあ勝てば問題ないんだけどなあ」ハァ 京太郎「ゆみ先輩、俺頑張ります……!」
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ ――控え室―― 京太郎「ここに来るのも1週間ぶりかー。やっぱ移動も疲れますね」 佳織「私たちの住んでるところからだと遠いよね」 京太郎「ほんとですよね。明日も来るんだから泊まらせてくれればいいのに」 桃子「こんな狭い部屋で女子5人とお泊りなんて何するつもりっすか!」 京太郎「何もしねえよ!! というかなんでここで泊まるんだよ!」 智美「ウチの部じゃホテルとかは難しいなー」ワハハ 睦月「風越はホテルで泊まってるみたいですね。羨ましい……」 京太郎「やりくりすればなんとかなったりしませんかね。その……ゆみ先輩」カアァァ ゆみ「あ、ああ。で、出来なくはないだろうが……」カアァァ 京太郎「?」 ゆみ「その、全国へ行く……んだろう? ただでさえ部費が足りていないのに、ここで使ってしまってはな」 京太郎「っ! そ、そうですね。ちゃんと考えてませんでした……」 智美「まだそれやってるのかー?」 桃子「まあ最初に比べたら良くなったじゃないっすか」 佳織「目を合わせる度顔真っ赤にしてたね」 睦月「その割にお互いがお互いを見ようとするんだよね」 智美「さすがの私もどうしてやろうかと思ったなー」 ゆみ「うぅ……」カアァァ 京太郎「あなたたちがからかうからでしょ!? っていうかなんでみんな知ってたんですか!」 桃子「そんなのあんなところで大声で告白すれば当然じゃないっすか」 京太郎「あんなふうに送り出しといてついてくるか普通!?」 智美「ゆみちんと京太郎を2人きりで遊びに行かせたとき、私たちが何をしたか忘れたようだなー」ワハハ 京太郎「開き直らないでください!!」 睦月「まあでも、ついていかなくてもその内知ることにはなってたと思うよ?」 ゆみ・京太郎「……え?」 桃子「いや当たり前じゃないっすか。あんな人の多い所であんな告白したら噂になるに決まってるっす」 佳織「あなたが欲しいって告白は中々ないよね。聞いてて恥ずかしくなったよ」アハハ 京太郎「……で、でももうみんな忘れてますよね!?」 ゆみ「そ、そうだな。一週間も経っているのだし……」 智美「それは難しいかもなー。鶴賀の大将が金髪に告白されてたってちょっとインターネットで話題になってるぞ」 桃子「さすがに一時期程じゃないっすけど、グラマスって人がまだまだ飽きそうになくて目立ってるっすね」 佳織「私も見たけど執念みたいなのを感じたよ……」 睦月「ちょっと怖かったね。文字だけなのに……」 京太郎「お、俺そんなの知らなかったんですけど!?」 ゆみ「私もだ。なんで教えてくれなかったんだ」 智美「いやー大会前に見せるにはちょっと怖くてなー」 京太郎「じゃあ終わってからにしてくださいよ!?」 桃子「今からなら見ないだろうからいいかなーと思ったっす」テヘペロ 京太郎「見なくても気になるんだよ!」 智美「まあ別にテレビで映ったとかじゃないし、知らない人は知らないから大丈夫だろー」ワハハ 桃子「ちょっとからかっただけっすよ。気にするほどじゃないっす」 ゆみ「それならいいんだが……」 京太郎「そうですね……」 京太郎「初めての公式試合……というか部員以外の人と戦うの初めてだ。緊張するなあ」 桃子「ネトマでいくらでもやってるじゃないっすか」 京太郎「そりゃそうだけど、現実にやるとやっぱり緊張するよ」 桃子「ネトマでやってるんだから大丈夫と思えってことっすよ。緊張してもいいことないんだから、解消しようと思わないとダメっす」 京太郎「あ、なるほど。発想の転換だな」 睦月「個人戦じゃ仲間がフォローしてくれないからね。私も個人戦が先だったらと思うと……うぅ、気分が」ヨロッ ゆみ「想像でダメージを受けるな」 智美「来年までには直すんだぞー」ワハハ 佳織「でもそっか。他の人たちはほとんど団体戦で慣れてるけど、京太郎くんは個人戦が初めてなんだね」 桃子「そう考えると少し不利かもしれないっすねー。まあ普通1試合くらいで緊張も解けるとは思うっすけど」 智美「逆に調子崩して引きずることもあるかもなー」 京太郎「縁起悪いこと言わないでくださいよ……」 智美「そこで私から提案だ」 京太郎「はい?」 智美「ゆみちん、京太郎の緊張をほぐす一言をどうぞ!」 ゆみ「なっ!?」 京太郎「えっ!?」 睦月「」ドキドキ 佳織「」ドキドキ 桃子「ドキドキ」 京太郎「声に出すのやめい!」 ゆみ「そ、その。京太郎くん」 京太郎「は、はい!」ビクッ ゆみ「団体戦の後に君が言ってくれたこと、凄く嬉しかった」 ゆみ「団体戦で感じた他校の高い壁。それを私なら乗り越えられると言ってくれて、たとえお世辞でも勇気づけられた」 京太郎「それはお世辞なんかじゃ――」 ゆみ「自分の実力ならよくわかっているよ。私は個人戦で1位にはなれない」 ゆみ「だから京太郎くんが本気で言っていても、それはお世辞だ」 京太郎「……」 ゆみ「……私が一番嬉しかったのは君が全国を目指すといってくれたことだよ」 京太郎「え?」 ゆみ「私は長野で1番強いなんて思っていない。けれど、それでも京太郎くんに比べれば、全国に出られる可能性は遥かに高いだろう」 京太郎「あ、あはは……」 ゆみ「……き、君は私に、その、こ、告白、をしただろう?」カアァァ 京太郎「は、はい」カアァァ ゆみ「そ、それがどれほど決意が必要か私も分かるつもりだし、きっと返事もすぐ聞きたいと思う」 ゆみ「そんな大事なことを全国に出ることを条件にした」 ゆみ「……君が部で過ごす時間をそんなに大切に思っていてくれたことが、本当に、本当に嬉しい」 ゆみ「私も君も、けして長野で1番強い雀士ではない。だけど、麻雀は強い者が必ず勝つものじゃない」 ゆみ「君ともっと長い時間を過ごしたいのは私も同じだ。一緒に全国へ行こう。私と、君で」 京太郎「ゆ、ゆみ先輩……」プルプル ゆみ「……」 京太郎「……」プルプル ゆみ「……? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ、その。必死で耐えてます」 ゆみ「何をだ?」 京太郎「その、えーと……やっぱりやめときます」 ゆみ「気になるじゃないか」 智美「察してやるんだ。多分ゆみちんを抱き締めたいんだと思うぞ?」 ゆみ「えっ!?」 京太郎「ちょ、ちょっと部長!!」 桃子「気持ちはわかるっす! 私は今みたいなこと言われたら迷わず抱きつくっすよー!」 ゆみ「そ、そういうものなのか?」 睦月「そういうものというか、さっきのはそうしたくなる台詞だったかなと……」 佳織「私は嬉しくて逆に動けなくなっちゃいそうです」アハハ 智美「全然一言じゃなかったしなー」ワハハ ゆみ「……」 京太郎「お、俺は嬉しかったですよ! やる気もめちゃくちゃ出ましたし! 緊張してる場合じゃないなって感じで……」 ゆみ「……いいぞ?」 京太郎「……え?」 ゆみ「そ、それが君のためになるのなら、私のことを、だ、抱き締めてもいい」カアァァ 京太郎「」 ゆみ「た、ただ! あ、あんまり強くはしないでくれ。痛いのは……いや、君ならいいか」 ゆみ「……私のことを好きにしてくれ、京太郎くん」ウワメヅカイ 京太郎「……う」プルプル ゆみ「うん?」 京太郎「うおおおおおぉぉぉぉ!!」ダダダダッ ゆみ「あっ、おい! ……行ってしまったか」 桃子「行ってしまったかじゃないっすよ!! いきなり何してるんすか!?」 ゆみ「いや、見ての通りだが」 佳織「そういうことじゃないと思います……」 睦月「なんであんなことを?」 智美「さすがにちょっと京太郎がかわいそうだぞー」 桃子「そうっすよ! 確かにヘタレとか思ったっすけど!」 睦月「そこは真面目って言ってあげようよ」 ゆみ「……もちろんわかっているよ。だからこそだ」 佳織「どういう意味ですか?」 ゆみ「京太郎くんが全国へ行けなかったら返事をしない。私はあれを厳密に守る」 桃子「いやもうほとんどしてるようなもんだと思うっすけど……」 ゆみ「……付き合うかどうかはまた別だ」プイッ ゆみ「ともかく、だから私は京太郎くんに抱き締めてもいいと言ったんだ」 ゆみ「……私自身も出来ないと思うと寂しいしな」ボソッ 智美「そ、そこまで本気だったのか?」 睦月「正直なんだかんだで負けても付き合うんだと思っていたんですけど……」 ゆみ「それは京太郎くんにも失礼だろう」 桃子「それはそうかもしれないっすけど、全国っすよ? しかもあの怪物がいる長野男子個人戦っすよ?」 ゆみ「だからこそ可能性も出てくるだろう? 普通なら可能性はないと言っていいくらいだ」 桃子「それはそうっすけど、モノは言いようって感じで……」 佳織「でも信頼してるってカッコいいですね! 憧れます!」 ゆみ「ああ……だ、大丈夫かな?」ウルウル 桃子「そこでヘタレるんすか!?」 ゆみ「い、いや。心配される分にはいいんだが期待されると急に不安に……」 智美「そういえば前に考えがあるって言ってたなー。それはなんなんだ?」 ゆみ「うん? それは……まあ追々な」 桃子「むぅ、気になるっすね」 ゆみ「大したことじゃないから気にするな」 --------------------------------------- 京太郎「ああもう、ゆみ先輩何考えてんだ! 試合前だってのに心臓が!」ドクドクドクドク 京太郎「……まあ緊張は吹っ飛んだな。さすがに戻れないしこのまま別館の試合会場に行くか」 京太郎「でも惜しいことしたかなあ。ゆみ先輩があんなこというなんて夢みたいなこと、もうねーだろ絶対……」 京太郎「はぁ……あれ、おーい咲ー!」ブンブン 咲「」ビクッ 京太郎「また迷ったのかー!? まだ時間あるし控え室に連れてってやるぞー!」 咲「……っ!」タッタッタッ 京太郎「あ、おーい! ……聞こえなかった……にしちゃ不自然だよな」 京太郎「まさかまだ気にしてんのかな。先週からメールも全然してこねえし……いい加減普通に話して欲しいんだけどなあ」 ピンポンパンポーン 「男子個人戦、予選が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」 京太郎「ついにか……」ブルッ 京太郎「うわ、震えてきた。……ゆみ先輩にあんなこと言って予選落ちなんてシャレにならないしな。やってやる!」 京太郎「おお、男子ばっかりだ。鶴賀は女子が多いからこの感じ久々だなー」 京太郎「……しかしなんか視線を感じるな。噂されてるような……」 「おい、あいつだろ? 先週ロビーで告ったってやつ」 「あんな話題にされてるのに普通に出てくるなんてすげえな。俺はとても来れないわ……」 「あなたが欲しいってそもそも告白なのか?」 「その告白でも許される顔だな……クソッ、許せねえ!」 京太郎「な、なんかここにいるとマズイ気がする」ブルッ 京太郎「さっさと対局室に行くか……」 京太郎「ふう、対局室の辺りはさすがに静かだな……そういえば対戦相手見てなかったっけ。誰だろ?」テクテク モブA「」ガタガタガタガタ 京太郎「あれ、すげえ震えてる。緊張してるの……」 アカギ「ククク……」 傀「どうも」 京太郎「」 アカギ「どうした? 席はそこだ」 京太郎(神様。いくらなんでも、初戦からこれはあんまりではないでしょうか……) ………… ……… …… … 京太郎「戻りましたー!!」 ゆみ「……お、お疲れ様。京太郎くん」カアァァ 京太郎「え、あ、ありがとうございます」カアァァ ゆみ「……見ていたよ。予選突破は出来ると思っていたが、それでもよくやった。おめでとう」 京太郎「は、はい!」 睦月「……もういいと思いますか?」ヒソヒソ 智美「もうちょっと待ったほうがいいと思うぞー」ヒソヒソ 京太郎「聞こえてます! いつでもいいですから!!」 睦月「うむ、お疲れ様。予選突破おめでとう」 佳織「凄いよ京太郎くん!」 桃子「最初の組み合わせ見たときはもうダメかと思ったっすよ。2人で牽制しあってくれてよかったっすね」 京太郎「みんな何事もなかったかのように……! まあそうだなー。最初見たときは生きた心地がしなかったぜ」 ゆみ「あの2人が揃った卓は散々に削られるか、牽制しあって膠着状態になるかどちらかだからな。日頃の行いがよかったんだよ」 京太郎「ほんと最初は生きて帰れるかどうかの心配してましたからね……」 睦月「さっきからそんな大袈裟だよ」アハハ ゆみ「いや、天江衣かそれ以上が2人と考えるとあながち大袈裟では……」 京太郎「ほんとですよ。なんなんですかあのプレッシャー!? 物理的な圧力を感じましたよ!!」 ゆみ「それが魔物と呼ばれる雀士なんだろうな。私も天江や宮永からそれを感じたよ」 京太郎「咲もそうなんですか……」 ゆみ「天江に勝ったのは伊達ではないさ」 智美「初めての試合の感想はどうだー?」 京太郎「そうですね……意外とやれる! ってのとまだまだだ……ってのが半々くらいです」 桃子「半々とは大きく出たっすね!」 京太郎「1ヶ月必死でやったし、ゆみ先輩にも鍛えられたからこれくらいはな」 京太郎「……ただ俺より強い人もいくらでもいるんだってのも実感したよ」 京太郎「わかってはいたけど化物2人ほどじゃなくても俺より強い人たくさんいるんだなあ……」 桃子「当たり前っすよ。上には上がいるっす。まして京太郎は初めて1ヶ月の初心者じゃないっすか」 京太郎「そりゃそうだけど、俺は今ここで勝たないと……!」 桃子「勝つつもりではいるんすね。よかったっす」 智美「うんうん、弱気になってないのはいいと思うぞ。ゆみちんも全国に行かないと返事しないって宣言してたしなー」ワハハ ゆみ「……ああ、それについては考えを変えるつもりはないよ」 京太郎「覚悟はしてます。自分で言ったことですから」 ゆみ「そうか。……それじゃあ次は私たちの応援を頼んだぞ」 京太郎「はい、先輩たちに負けないように5人分応援しますよ!」 智美「素直にゆみちんの応援を一番頑張るって言ってもいいんだぞー」ワハハ 桃子「所詮友情なんてこんなもんっすか」シクシク 京太郎「何も言ってねえよ!」 佳織「まあまあ、私たちのことも加治木先輩の10分の1くらいは応援してね」アハハ 睦月「同じくらいとは言わないからよろしくね」 京太郎「先輩たちまで! ……まあその、8割くらいで何とか」ボソッ ゆみ「バ、バカっ。う、嬉しくないとは言わないがみんな同じように応援を――」カアァァ 桃子「あ、いやそういうのいいっす。ほんとに」 智美「惚気に付き合わせるのはやめて欲しいなー」 ゆみ「ああもうっ! 京太郎くん、君がどうにか……」 ピンポンパンポーン 「女子個人戦、予選が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」 佳織「じゃ、じゃあ行きましょうか」 睦月「うむ、ここにいるといつまでも巻き込まれそうだしね」 ゆみ「ま、待て。このまま行かせては……!」 桃子「ほらほら、遅れるっすよ」 智美「行くぞー」グイッ ゆみ「こ、こら。引っ張るなー!」ズルズル 京太郎「……」 京太郎「よし、応援頑張るぞ!」 ………… ……… …… … 睦月「うぅ、負けてしまった……」 佳織「私も。……技術も経験も足りてないのはわかっていたからしょうがないけど、でも悔しいなあ」 睦月「実力がまだまだ足りてなかったね……」 京太郎「でも佳織先輩が国士無双和了ったときは盛り上がってましたよ! 睦月先輩も最後まで諦めてなくてカッコ良かったです」 睦月「ありがとう、京太郎くん。でも私たちより先輩たちにおめでとうって言ってあげて」 京太郎「……はい! 部長、モモ決勝進出おめでとうございます!!」 智美「いやーなんとか残れてよかった」ワハハ 桃子「東風戦はつらいっすね。中々点を伸ばせなかったっす」 京太郎「ステルスが長く使える東南戦のほうがやっぱり好きなのか」 桃子「当たり前じゃないっすか! 明日が楽しみっす。言っとくけど私も全国狙ってるっすよ?」 京太郎「知ってるよ。明日も頑張れ」 桃子「もちろんっす!」 京太郎「それで……えっと、ゆみ先輩。決勝進出おめでとうございます。予選4位ですし全国まで後一歩ですね!」 ゆみ「ああ、ありがとう。……しかし試合開始前は凄い視線を浴びせられたよ」ハァ 京太郎「ゆみ先輩もですか。俺も見られましたよ。というか多分睨まれてたに近いですね」 ゆみ「うん、やはり一週間程度では噂は収まらないんだな……」 京太郎「その、俺のせいで、すみませんでした」 ゆみ「……君はしなければよかったと思っているのか?」 京太郎「そんなことないです! 俺はしたことも言ったことも後悔してません!」 京太郎ただ、それでゆみ先輩に迷惑をかけてるならやらなければよかったと……」 ゆみ「私は迷惑だなんて思っていないよ。あんな場所でしたのはまああまりいいことではないだろうが。だから気にするな」 京太郎「ゆみ先輩……はい!」 ゆみ「そんなことより、ちゃんと応援してくれていたか?」コホン 京太郎「もちろんですよ! 熱くなりすぎってくらい応援してました」 京太郎「東風戦なんて短い間にも相手の癖を見抜いて即対応して……」 京太郎「そういうときは見惚れて応援できてなかったですね。カッコ良かったです」 ゆみ「……ありがとう。4位とはいえ全国に行くには届いていない」 ゆみ「少し不安になっていたが、君がそう思ってくれているなら頑張らないとな」フフッ 京太郎「3位の風越のキャプテンは恐ろしく安定してましたね」 京太郎「でも2位の片岡は団体戦見る限り、多分東場で異常に強いタイプですよ」 ゆみ「そうだな。風越の福路を上回るのは難しいと思わされたが」 ゆみ「片岡は東場で恐ろしく強い分、東南戦になれば付け入る隙はありそうだ」 ゆみ「……しかし、その東場で無類の強さを誇る片岡ですら2位とはな」 京太郎「歴代最高得点塗り替えたのに2位ですからね。……咲、そんなに強かったなんて」 ゆみ「私もほとんど何も出来なかったよ。せっかくの親番も嶺上開花の親被りが怖くて他家への差し込みに使ってしまった」 京太郎「あのときの咲は三倍満くらい狙える手牌だったんで正解だったと思います」 ゆみ「そうか……。宮永はあまりにも圧倒的だ。彼女は間違いなく1位になる。全国へは実質2席を奪い合うことになりそうだよ」 京太郎「一緒に頑張りましょう。大丈夫、俺は1席ですからそれに比べれば!」 ゆみ「……フフッ、そうだな。君に比べればチャンスは2倍か」 京太郎「そうですよ! ……俺は明日どう戦えばいいんだろう」ガクッ ゆみ「それについては少し考えが――」 智美「いいところ悪いけど、電車の時間がまずいからそろそろ帰るぞー」 桃子「2人の時間もいいっすけど、電車の時間もちゃんと考えなきゃダメっすよー!」 京太郎「ふ、ふた……! 上手いこと言ったつもりか!?」 睦月「それは置いといて時間がちょっとまずいから」 佳織「次の電車に乗れないと帰るのが2時間くらい遅くなっちゃうよ」アセアセ 京太郎「も、もうそんな時間ですか? ゆみ先輩、すみません話はまた後にしましょう」 ゆみ「……そうだな。私も気づかなかったしまた後で」 智美「それじゃ早く帰るぞー」ワハハ ――帰り道―― 京太郎「今日はお疲れ様でした」 ゆみ「ああ、君もな」 京太郎「電車間に合ってよかったですね。遅くなると明日に疲れが残っちゃいますし」 ゆみ「あんなに走ったのは久しぶりだったよ。……走って疲れるのと遅く帰って疲れるのではどちらのほうがいいんだろうな」 京太郎「どうなんでしょう。俺は精神的に疲れるよりは走ったほうがいいですね」 京太郎「それでその……帰りがけに言いかけたことってなんですか?」 ゆみ「ああ、君の打ち方についての話だよ」 京太郎「俺の打ち方ですか? まさかどこかおかしかったり……」ズーン ゆみ「ああいや、今のところ京太郎くんの打ち方に問題はないよ」 ゆみ「経験や技術はまだ足りていないだろうが、少なくとも私の教えた通りに打っている」 ゆみ「将来的にもそれでは困るが、まあ今の時点では何の問題もないし、よくやっている」 京太郎「それじゃあ一体何についてなんですか?」 ゆみ「……君は全国へ行きたいんだろう?」 京太郎「えっ……はい! もちろんです。ゆみ先輩と約束してますし!」 ゆみ(あの一方的な言い捨てを約束と言うか……) ゆみ(まあ、私も京太郎くんの言ったとおりにするつもりだが、言われた私が一体どう感じたと思って……!)ゴゴゴ 京太郎「え、えっと、ゆみ先輩?」ビクッ ゆみ「あ、ああ。すまない。……君も今日戦ってわかったと思うが、現時点の君では全国へ行くには力不足だ」 ゆみ「たとえあの2人がいなかったとしても、君が全国へ行くのは極めて難しいだろうと私は思う」 京太郎「……はい。俺もそう思ってます」 ゆみ「京太郎くんの今の実力では届かない。それなら実力以外のものを使えばいい」 京太郎「え?」 ゆみ「君が前に言っていただろう? この牌は切れるとかこの牌を切ればマズイとかがなんとなくわかると。今日はどうだった?」 京太郎「確かに今日も感じましたけど……でも部でやっても全然勝てなかったじゃないですか」 ゆみ(ふむ、技術ではなかったか……羨ましいな) 京太郎「ゆみ先輩?」 ゆみ「ああ、すまん。私が言いたいのは感覚に頼れということだよ」 ゆみ「大負けする可能性が高いが、しかし全国へ行ける可能性も間違いなく高くなる」 京太郎「それはそうかも知れませんけど……」 ゆみ「まあ1%が5%になる程度だろうが」 京太郎「そんなもんですか」ガクッ ゆみ「そんなものだよ。……それでも君が全国へ行きたいのなら、これが最良だと思う」 京太郎「上手くいくかどうか博打ですね……」 ゆみ「普通に打っても全国へ行ける可能性は低いのだから、どちらも博打に変わりないさ」 ゆみ「要は君が何を目指すかだよ」 ゆみ「少しでも高い順位を目指すのなら今のやり方を続けるべきだし、全国を目指すのなら感覚を頼りにしたほうがいい」 京太郎「なるほど……。確かに今までのやり方よりよさそうですね」 ゆみ「ああ……私だって君には全国へ行って欲しいんだ」 京太郎「はいっ! 朝も言ってくれましたしね!」 ゆみ「うるさい」プイッ 京太郎「な、なんか地雷踏みました!?」 ゆみ(2人きりで言っているんだから、告白の返事をしたいという意味だと分かれ……というのは私のわがままか)ハァ ゆみ「君が全国へ行けたら教えよう」 京太郎「ハードル高いですね」 ゆみ「わからない君が悪い」 京太郎「えぇー」 ゆみ「……泣いても笑っても明日で全てが決まる。私も、君も」 京太郎「はい」 ゆみ「どうなるかわからないが、悔いのないよう頑張ろう」 京太郎「……なら俺は勝たないとダメですね」 ゆみ「何?」 京太郎「昨日も言ったじゃないですか!」 京太郎「ゆみ先輩といられる時間が短くなるなんて嫌です。そうなったらどれだけ健闘したって悔いは残ります」 ゆみ「……」ポカーン 京太郎「……あれ、またなんか変なこと言いました!?」アセアセ ゆみ「いや、君はそういうやつだったな」フフッ ゆみ「……実はさっき走って少し疲れているんだ。少し腕を貸してくれ」 京太郎「はい? 肩じゃなくてですか?」 ゆみ「んっ」ウデクミ 京太郎「ちょ、ゆ、ゆみ先輩!?」アセアセ ゆみ「疲れているからあまり騒がないでくれると嬉しい」 京太郎「あ、う……」カアァァ ゆみ「嬉しかったよ。京太郎くん」ボソッ 京太郎「うぅ……え? すみません、今ちょっとよく聞ける状態じゃなくて」 ゆみ「何でもない。明日期待しているよ」ギュッ 京太郎「……期待に応えられるよう頑張ります」 京太郎「……決勝リーグか。ここまで来れるなんて思わなかったな」ブルッ 桃子「何緊張してるんすか。昨日勝ち抜いたんだから自信持つっすよ」 京太郎「いや、昨日は初めての試合で緊張したけど、今日は勝たなきゃってプレッシャーが……」 桃子「負けて元々じゃないっすか。当たって砕けろっすよ!」 京太郎「負けたら砕けちゃダメなところもまで砕けるんだよ!」 智美「ハートブレイクだなー」ワハハ 京太郎「多分物理的に砕けますね」 佳織「死んじゃうよ!?」 京太郎「それくらいの勢いで砕けそうです……」 桃子「全然物理的じゃないっすね。……そんな情けない京太郎に代わって、私が負けたときの案を考えてあげたっすよ!」 京太郎「不吉なこというなよ……で、どんな案だ!?」ガタッ 睦月「食いつきすぎじゃない!?」 佳織「そんなに必死に……切実なんだね」 京太郎「今の俺に見た目を気にする余裕なんてないんですよ! モモ、さあ早く!」 桃子「イラッと来るっすねー。まあ教えてあげるっす」 桃子「京太郎は全国へ行ったら返事をくださいと言ったっすけど、いつとは言ってないっす」 桃子「つまり今回負けても次を目指せばいいんすよ!」 京太郎「……」 睦月「さ、さすがにそれは……」 京太郎「……アリだな」 佳織「ありなの!? 次は秋だよ!?」 京太郎「い、いや。だって勝てるかわからないっていうか昨日戦った感じだとむしろ……」 智美「まあアリかナシか以前に、それはゆみちんが待っててくれないとダメなんだけどなー」ワハハ 京太郎「あっ」 智美「さっきから全然喋ってないけど、ゆみちん的にはどうなんだー?」 ゆみ「ん? ああ。そ、そうだな……」 ゆみ「ま、待つ待たない以前に負けることを前提に考えるのは感心しないな。うん」コホン 智美(ていよく逃げたなー)ワハハ 京太郎「ですよねー! いやー俺もそんなのいいって言ったんですけどモモが無理矢理」 桃子「ゆみ先輩がいるところで話したのにそういうこと言えるのは尊敬するっすよ」 智美「ところでゆみちん静かだったのはなんでだー?」 ゆみ「まあ……その、緊張してな」 睦月「団体戦のときも昨日も全然そんな風に見えませんでしたけど、先輩でも今日は緊張するんですね」 佳織「大丈夫ですよ! 加治木先輩なら勝ち抜けます!」 ゆみ「いやそれで緊張しているわけじゃ……」ハッ ゆみ「そ、そうだな。ありがとう、落ち着いてきたよ」 桃子「?」 智美「……? まあいいかー」 ピンポンパンポーン 「男子個人戦、決勝が始まります。出場選手の方は対局室へ集合してください」 京太郎「もう始まるのか……」 桃子「暗いっすねー。もっとやってやる! みたいな意気込みで行くっすよ」 京太郎「や、やるぞー」 桃子「だからテンション低いっすよ」 智美「ゆみちん、出番だぞー」 ゆみ「ま、また私か!?」 桃子「それはまあゆみ先輩しかいないっすよ」 ゆみ「そ、そうなのか……それじゃあ京太郎くん」 京太郎「は、はい」 ゆみ「言うべきことは昨日言ったから、今日は一言だけ。……勝ってこい」 京太郎「……はい!!」 ………… ……… …… … アカギ「ロン、12000だ。トビだな」 モブ「は、はい……」 京太郎(……よし! 最終戦前の山場を何とかしのいだ!!)グッ 京太郎(俺より順位が上だった人が飛んだから、今大体6,7位くらいか……最後1位になればまだ可能性も!) 京太郎(しかし信じられないくらい絶好調だな。部活じゃあんな酷かったのに……) 京太郎(ゆみ先輩の返事聞きたいから、実力以上の力が出てるのかな)ハハ アカギ「……おい、そこの金髪」 京太郎「は、はい!?」ビクッ アカギ「昨日と打ち方が違うな……今は上手くいっているようだが、どんな武器を持ってようが何も考えずに打ってると怪我するぜ」 京太郎「な、なんでそんなこと……!?」 アカギ「まるで別人だ。誰だって分かる」 京太郎「……俺は今勝たないとダメなんです。だから、変えるつもりはありません」 アカギ「ククク……人の話を聞くのは苦手か? ……まあいい。残り1局、頑張りな」 京太郎「は、はい……あの、なんでいきなり俺に声かけたんですか?」 アカギ「飛ばそうと目を付けた相手が、昨日と全く違う打ち方をしていたから興味が湧いた。それだけだ」 京太郎(俺飛ばされるところだったのか……)ブルブル アカギ「せいぜい楽しませてくれよ」スタスタ 京太郎「……あー緊張したぁっ!」 京太郎「やっぱ今の打ち方危ねえのかな……まあ、変えてなかったら飛ばされてたみたいだけど」 京太郎(どっちにしろ俺に出来るのは全力で打つだけだ。次で決まるんだ。やってやる!) --------------------------------------- ゆみ「」ジッ 智美「いくら見てても最終戦はまだ始まらないぞー」ワハハ 桃子「京太郎めちゃくちゃ調子いいっすねー」 睦月「うむ、非効率な打牌もあるけど、それがことごとくいい結果になっている」 佳織「相手の当たり牌を抑えててカッコいいね」 ゆみ「……とはいえあまりにも上手く行きすぎだ。最後までこの調子で行ってくれればいいが……」 桃子「いや、最後までこの調子じゃダメっすよ!」 智美「そうだなー。最後はもっと調子を上げないと全国へは行けないなー」 睦月「今が6位ですか……」 佳織「初めて1ヶ月の初心者で6位なんて凄いなあ」 桃子「確かに凄いっすけど、全国へは届いてないっすから……」 ゆみ「……運良くというべきか、決勝の同卓に3位の選手がいる。そして例年通りトップの2人が図抜けていてその下は接戦だ」 智美「ここで1位が取れれば3位になれる可能性はあるなー」 睦月「まさに天王山ですね」 桃子「京太郎は乗り越えられるっすかね?」 佳織「きっと大丈夫だよ。応援しよう」 アナ『全国高校生麻雀大会長野県予選、男子個人戦決勝最終局。いよいよ始まります!』 ゆみ「ついに始まるか……」 桃子「京太郎は……お、映ったっすね」 アナ『男子個人戦、全国への切符は3枚。そのうち2枚はほぼ決まっているので、残り1枚を争う形になっています』 靖子『現在3位がいるのがこの卓か』 アナ『はい。それに同じ卓には現在6位の須賀選手もいますね』 靖子『須賀は……鶴賀の選手か』 智美「おお、京太郎の名前が出たぞ」 睦月「注目されてるんですね」 智美「全国3位ってのはどの相手だー?」 睦月「京太郎くんの下家です。上家と対面は両方共10位中盤くらいみたいです」 佳織「3位って強いんですか?」 桃子「少なくとも京太郎よりはずっと強いっすね」 ゆみ「だが最低でも下家に勝たないと全国へは行けない……厳しいな」 アナ『女子の決勝に残った高校で、男子でも決勝に残っているのは須賀選手だけのようです』 靖子『彼を褒めるべきなのか他の高校の男子が情けないと思うべきなのか……』 アナ『ちなみに風越は女子校ですし、龍門渕と清澄は共学ですがそもそも男子麻雀部がありません』 アナ『鶴賀も男子は彼1人のようですね』 靖子『……凄いことは凄いんだが、何かこう……』 アナ『男子と女子の強豪はあまり被っていないようですね』 靖子『身も蓋もないことをいうな。というかなぜそんな話を振った』 アナ『ダークホースと騒がれた鶴賀ですが、今後男女共に長野の強豪となることは出来るでしょうか?』 靖子『完全に無視か……まあ数人が強いくらいでは継続して強くなるというのは難しい。実績を残さなければ厳しいだろうな』 アナ『なるほど。6位とはいえ3位までは接戦です。全国まで行けば十分な実績と言えますね』 靖子『そうだな。厳しいことに変わりはないが、可能性はある』 アナ『そういった意味でもこの試合は注目ですね。では次の卓を見て行きましょう』 ゆみ「何だったんだこの解説……いや解説というか……なんだ?」 桃子「まあ注目されてるってことっすよ」 智美「ウチが強豪って呼ばれるなんて全然考えてなかったなー」ワハハ 佳織「全国行けたらかあ。厳しいね」 睦月「まあ強豪って言うならそのくらいは必要だよね……」 桃子「女子は私たちが行ってやるっすよ! 問題は京太郎っすね。根性見せるっすよー!」 ゆみ「……頑張れ、京太郎くん」ギュッ --------------------------------------- 京太郎(ここで稼げないと全部終わりか……やべ、緊張してきた) 京太郎(二向聴で三色も狙えるな。配牌は悪くない。まずは最初に上がって流れに乗って――) 下家「ツモ。1000・2000」 京太郎「うっ……」 京太郎(くそ、好配牌だったのに! ……落ち着け。こんなの事故みたいなもんだ。次だ次!) ………… 京太郎「ロン、3900」 京太郎(よし、この調子で……) 下家「ロン、12000」 下家「ツモ、2000・4000」 京太郎「……っ!」 --------------------------------------- 桃子「……京太郎も決して悪くない、というかむしろ絶好調なのに……!」 ゆみ「ああ、上家も対面も全く寄せ付けていない。……だが下家がそれ以上だな。打点、速さともに凄まじい」 睦月「点は稼いでるけど、3位の下家に勝てなきゃ全国へは行けない……」 智美「京太郎ももどかしいだろうなー。自分が今までにないくらい絶好調なのに、それでも上回れないなんて」 佳織「京太郎くん、勝てますか?」 ゆみ「……点差をひっくり返すためには、満貫の直撃以上で和了らなければならない」 ゆみ「今日の京太郎くんの調子は最高だ。だからきっと諦めなければ逆転手も入ってくるはずだ……!」グッ 智美「ゆみちん……」 桃子(自分に言い聞かせてるんすね……) 智美「京太郎が諦めるわけないさ。私たちは京太郎が勝つことを祈ってよう」ワハハ ゆみ「ああ、そうだな……」ギュッ --------------------------------------- 京太郎(くそっ、結局差を縮められないままオーラス……) 京太郎(頼む、逆転手が入ってくれ……っ!!) 手牌 一四四七七七⑥⑧888西西 ドラ九 京太郎(刻子が2つ、対子が2つ! 四暗刻二向聴!! これなら逆転できる!) 二巡目 一四四七七七⑥⑧888西西 ツモ西 打⑧ 京太郎(よし来た!) 下家「……」タン 対面「っ……」タン 上家「ちっ……」タン 七巡目 一四四七七七⑥888西西西 ツモ⑥ 打一 京太郎(聴牌だ! ツモれば最高、直撃でも逆転!! 4位の人がよっぽど稼いでなければ全国に行ける!) 京太郎(後は他家だけど……)チラッ 京太郎(……捨て牌を見る限り上家と対面は今のとこ大丈夫そうだ) 京太郎(下家は微妙か……まあだからって変わらない。後は早く和了るだけだ!) --------------------------------------- アナ『須賀選手、四暗刻聴牌しました! 1位へのロン和了りで逆転です!!』 藤田『まくるための最低条件は諦めないこと。和了っても和了っても追いつけない中よく耐えたよ』 アナ『このまま須賀選手は逆転できるでしょうか』 藤田『聴牌とはいえ待ちは4枚。1つは溢れそうにないから実質3枚だ』 藤田『1位の選手も好形の聴牌になりそうな形だ。このまま終わるとは思えないな』 アナ『なるほど。長い試合も最終盤。最後まで白熱した戦いが続きそうです』 ゆみ「よしっ!」グッ 桃子「きたきた、来たっすよー!!」 智美「ここであんな手が入るなんて持ってるなー」ワハハ 佳織「六筒は下家が1つ持ってますけど、四萬は生牌です!」 睦月「京太郎くん早く和了って……!」 ゆみ「くっ……なかなか引けないな」 桃子「京太郎か1位が引かないと意味ないっすからね。なかなか……あ!」 下家『……』ピクッ 手牌 455678⑥⑦⑧東東東白 ツモ5 打白 智美「下家が聴牌しちゃったかー……」 ゆみ「しかも四門張……厳しいな」 アナ『須賀選手に少し遅れましたが聴牌しましたね』 藤田『ああ。だが待ちの広さが段違いだ。先に聴牌したとはいえ須賀は苦しくなったな』 アナ『須賀選手は直撃かツモらなければならないですが、どんな形でも和了ればいいとなるとその差は大きいですね』 藤田『ここからはどちらの運が上回るかという戦いになるだろうな。もちろん追う須賀のほうが厳しいが』 アナ『果たして須賀選手は逆転全国行きを決めることが出来るのか。注目です』 佳織「だ、大丈夫ですよね?」 睦月「うむ……そう信じたいな」 智美「後は京太郎の運を信じるだけだ……って、え?」 桃子「待ちを変えた……っすか?」 下家『……』タン 手牌 4555678⑥⑦⑧東東東 ツモ五 打4 ゆみ「この待ちは……!」 アナ『四門張を捨てて五萬単騎待ち!! 藤田プロ、これはどう考えますか?』 藤田『普通に考えればありえないな。メリットはほとんどない』 アナ『ほとんどと言いますとゼロというわけではないんですね?』 藤田『ああ、捨て牌を見てみろ』 アナ『捨て牌……ですか?』 藤田『二萬と八萬が捨ててあるから五萬は両筋になる』 藤田『さらに自風の東も切っているし、どの役牌も最低1つは見えているから目眩ましになっている』 アナ『誰かが振り込むのを狙っているということですか?』 アナ『それにしても待ちが狭くなるデメリットのほうが大きいように思いますが……』 藤田『ああ、それは間違いない』 藤田『こればかりはその場にいなければわからんが、あの待ちでは和了れない、もしくは須賀に負けると思ったんだろう』 アナ『雀士の勘というやつですね。これが吉と出るか、それとも凶と出るのか!』 藤田『そういえば、この待ち方は女子団体戦で加治木が天江から直撃を取ったものとよく似ているな――』 ゆみ「……私の場合は和了るために手を進めていたら、たまたまああいう形になっただけだ。意味がまったく違う」 桃子「そうっすよね。京太郎がここからオリるなんてそもそもありえないっす」 睦月「それでもやったってことは勝算があるってことですよね?」 ゆみ「……そうだな。私にはわからないが、何らかの確信があるんだろう」 佳織「天江さんみたいな人なんですね」 智美「さすがにあそこまでじゃないと思うけどなー」 睦月「それでも自分のことを信じきるのは凄いです。私だったらあそこで四門張は捨てられない」 ゆみ「それが津山の麻雀なんだろう? 自分を貫くという意味では同じ……っ!」 桃子「……掴まされたっすね」 --------------------------------------- 十二巡目 手牌 四四七七七⑥⑥888西西西 ツモ五 京太郎(くそっ、まだ揃わないか。もう十二巡目なのにっ!) 京太郎(次だつ――)ピタッ 京太郎(……下家の捨て牌。そして今俺がツモった牌。ゆみ先輩が決勝で天江から直撃取ったときと似てるな……) 京太郎(って、待て。何考えてんだ俺。別に俺の感覚が危ないって言ってるわけでもないのに) 京太郎(そもそも、デジタルで考えてもここで引くなんてありえない) 京太郎(もう十二巡目だぞ!? ここから手を崩してまたテンパッて和了るなんて……!) 京太郎(……くそっ! 頭じゃ分かってるのにどうしても切れない!) 京太郎(……そういえばさっき考えないと怪我するとか言われたな……少し落ち着いて考えるか) 京太郎(レベルは全然違うけど、天江が咲に振り込んだときもこんな感じだったのかな。あれは間違いなく迷ってたと思う) 京太郎(そして天江は咲に負けた……あれはきっと感覚に頼ったからだ) 京太郎(俺は何をしてんだ? 感覚は大丈夫と言ってるし、デジタル的にもここで引くのはありえない) 京太郎(……なのに、ゆみ先輩の打ち筋が頭から離れない) 京太郎(天江から直撃を取った、あの打ち筋。ゆみ先輩の集大成のような綺麗な麻雀) 京太郎(この場面で突っ張るのはゆみ先輩を信じてないみたいな、そんなことになる気がする) 京太郎(……どう考えても言うこと聞かないほうがそうなのに、バカみたいなこと言ってんな)ハハッ 京太郎(それでも、俺の感覚はあくまで俺のもので、ゆみ先輩の打ち筋はゆみ先輩のものだ) 京太郎(どっちを信頼するかなんて言うまでもない) 京太郎(……俺がここまで来れたのはゆみ先輩のおかげだ。なら、最後までそれを貫こう) 京太郎(自分の感覚を捨てるより、効率を無視するより、俺はゆみ先輩の麻雀を裏切るほうがずっと嫌だ!) 京太郎(ゆみ先輩、言うこと聞かずに、これで負けたらすみません。全部俺の責任です。それでも俺は、これを切ります!)タンッ 打⑥ --------------------------------------- ゆみ「えっ……」 アナ『須賀選手、なんと四暗刻聴牌を崩して六筒切り! 絶体絶命の危機を回避したーー!!』 藤田『……驚いたな。あの状況から止めるとは』 アナ『須賀選手はなぜ止めることできたのだと思われますか?』 藤田『感覚的に当たり牌を察知したとしか思えないな』 藤田『これ以外にも効率的には間違っているが上手く回避しているという場面がいくつかあるようだし』 アナ『なるほど。須賀選手、素晴らしい打ち筋を見せました』 藤田『もっとも、厳しいようだが終わりが遠のいただけともいえる』 藤田『須賀には狙った牌をツモる才能はない。ここからまた聴牌をして直撃かツモを狙うにはのは厳しいな』 アナ『ファインプレイではありましたが結果的には聴牌から一歩引いた須賀選手。果たして全国へ行くことは出来るのか!?』 桃子「おおっ! よく避けたっす京太郎!」 智美「切っちゃダメだっていう感覚があったんだなー」ワハハ ゆみ「……違うと思う。きっとあれは京太郎くんの感覚では大丈夫な牌で、それを自分の意思で止めたんだ」 桃子「え? なんでそう思うんすか?」 ゆみ「今日の京太郎くんが明らかにおかしい打牌をするときはほぼノータイムで切っていたが、さっきのはだいぶ迷っていたからな」 智美「聴牌崩したらほとんど和了れないんだぞ? 迷わないほうがおかしいと思うけどなー」ワハハ ゆみ「……凄く、辛そうな顔をしていたからな」 ゆみ「当たり牌だという感覚があるのならあんなに辛そうな顔はしないさ。感覚に頼れといったのは私だ」 ゆみ「自分で言うのもなんだが、私は京太郎くんにそれなりに信頼されていると思う」 ゆみ「私の言ったことを守るだけならあんなに迷うことはない」 桃子「……け、結構すごいこと言ってるっすね」 智美「自分の言うことなら役満聴牌だって迷わず諦めるって言うとはなー」ワハハ ゆみ「そ、そういうつもりで言ったんじゃ……」アセアセ 睦月「言ってますよ」クスッ 佳織「でも合ってると思いますよ。きっと京太郎くんならそのくらいには加治木先輩のこと思ってます」 ゆみ「うぅ……」カアァァ 桃子「……さて、じゃあ後は京太郎がここから和了れるかどうかっすね」 智美「こればっかりはなー。京太郎にその運があるかどうかだ」 睦月「下家のほうを止めたとはいえ、自分が和了れなければどうにもならないですしね……」 佳織「そうだね……あ、下家の人が待ちを変えた!?」 桃子「むぅ、もう出ないと思ったんすね。凄まじい勘の良さっす」 ゆみ「しかも引いたのが9索か……フリテンとはいえ両面待ちだ」 桃子「厳しいっすね……」 ゆみ「……」ギュッ ………… ……… …… … 対面「聴牌」 上家「ノーテン」 京太郎「……聴牌、です」 下家「聴牌。和了り止めします」 京太郎(ああ、クソ。俺は間違ってなかった。間違ってなかったけど、それでも勝てなかった……!) 下家「……なあ、なんであそこで止められたんだ?」 京太郎「え?」 下家「俺が五萬の単騎待ちに切り替えたところだよ」 下家「なんとなくこっちのほうが和了れそうな気がしたんだけど、まさか引いたのに止められるとは思わなかった」 京太郎「……先輩がおんなじような打ち筋で天江から直撃取ってましたから。どうしても踏み込めませんでした」 下家「……それだけで役満聴牌を崩したのか?」 京太郎「あそこでそれ以上に信頼出来るものなんてありませんでしたから」 下家「ハハハッ! あーすげえなお前。勝たせてもらったけど勘弁しろよ!」 京太郎「え? ……ああ、告白のことですか」ハァ 京太郎「まぁ、自分で言ったことですからしょうがないです。悔いは山ほどありますけど」ハァァァァ 下家「え? あれ本気だったのか……気を落とすなっても無理だろうけど、秋に会えるのを楽しみにしてる」 京太郎「はい、今度は負けません!」 下家「ああ、またな」スタスタ 京太郎「はい……はぁ」 --------------------------------------- 智美「お互いに和了れなかったなー」 桃子「後一歩だったっすね……」 ゆみ「そう、だな。聴牌までは行けたのに……」ギュッ 智美「ゆみちん……」 睦月「で、でも京太郎くん凄いじゃないですか! 初めて一ヶ月で6位ですよ!」 佳織「そ、そうですよ! 入賞するなんて凄いです! だから……」 ゆみ「……京太郎くんが言ったことだからな。私から曲げさせるわけにはいかないさ」 佳織「でも!」 ゆみ「……少し早いが決勝の会場へ行ってくる」 智美「京太郎が来るの待ってからでも遅くないぞー?」 ゆみ「きっと今会いたくはないだろう」 桃子「そんなこと……」 ゆみ「……私だって今会いたくはない。だから京太郎くんもそうだよ」 一同「……」 ゆみ「私と京太郎くんの話だ。みんなはあまり気にするな……巻き込んでいるほうが言う台詞じゃないか」 ゆみ「京太郎くんに、よくやった。入賞おめでとうと伝えておいてくれ」 智美「それはゆみちんが言わないとダメだと思うなー」 ゆみ「……それもそうだな。わかった。直接言うよ」 ゆみ「それでは、先に行っている」スタスタスタ …… … 京太郎「はぁ……」バタン 桃子「ドアを開くなりため息ってどういう了見っすか」 京太郎「しょうがねえだろ……あれ、ゆみ先輩は?」 桃子「先に行ったっす。京太郎は今会いたくないだろうし、私もそうだからって」 京太郎「まあそうだよなあ」ハァ 智美「やっぱり会いたかったか?」 京太郎「ホッとしたのが半分、残念なのが半分です」 京太郎「あんなこと言って負けたのは気まずいですけど、声かけて貰いたかったなってのも少し」 佳織「全国惜しかったね……でも、入賞したのは凄いと思うよ!」 京太郎「ありがとうございます……ああ、後一歩だったのにな」ハァ 睦月「四暗刻聴牌を諦めてまで振り込まなかったのはカッコよかったよ。もう少しだったね」 睦月「……そういえばあそこで五萬を止めたのは……」 京太郎「ゆみ先輩が天江から直撃取ってたじゃないですか。あれと似てたんでどうしても切れませんでした」 一同「……」 京太郎「ど、どうかしましたか? いや自分でも滅茶苦茶なこと言ってるなとは思いますけど」 智美「いや、よくお互いのことわかってると思ってなー」 京太郎「えっ」 桃子「京太郎、ゆみ先輩のこと諦めるんじゃないっすよ」 京太郎「いや、そりゃまあ諦めるつもりはないけど、なんだいきなり」 桃子「惚気に巻き込まれそうで説明するのは嫌っすから、後でゆみ先輩と話すといいっす」 智美「それじゃ私たちも行くかー」スタスタ 桃子「はいっす!」スタスタ 京太郎「ちょっと、気になるんだけど! 睦月先輩と佳織先輩は知ってます?」 睦月「うむ、ただまあ……」 佳織「後で加治木先輩と2人で話すといいと思うよ?」 京太郎「先輩たちまで!」 佳織「もうすぐ決勝始まるね。加治木先輩たち映るかなあ」 京太郎「ん、そうですね……」 睦月「……妹尾さん、ちょっと飲み物買いに行かない?」 佳織「え?」 京太郎「あ、俺が買いに行きますよ」 睦月「ううん。京太郎くんは疲れてると思うから、京太郎くんの分も私たちが買ってくるよ。ね、妹尾さん」 佳織「……あ、そうだね。一緒に行こう」 京太郎「いやそんな……」 睦月「頑張った後輩をねぎらうのも先輩の仕事だから。京太郎くんはここで待ってて」ギィ 佳織「それじゃあ行ってくるね」バタン 京太郎「……1人にしてくれたんだよな」ハァ 京太郎「ああ、くそっ。ほんと後もう少し。少しだけ俺に運があれば……!」ドンッ アナ『いよいよ女子個人麻雀決勝が始まります!』 藤田『男子に負けず熱い戦いを期待したいな』 京太郎「始まったか……あ、ゆみ先輩」 京太郎「……勝ちたかったなあ」 睦月「京太郎くん、お待たせ。飲み物買ってきたよ」 京太郎「ありがとうございます」 佳織「みんなはどんな感じ?」 京太郎「モモとゆみ先輩は調子いいですね。モモはステルスが長く使えるのが単純に強いですし」 京太郎「ゆみ先輩は……鬼気迫るというか、凄い気迫が」 睦月「京太郎くんが後一歩届かなかったから、きっと思うところがあるんだよ」 京太郎「そう、なんですかね。俺のことなんかあんまり気にしないでやって欲しいんですけど」ハハ 佳織「京太郎くんが全力を尽くしてたの伝わったから、頑張らないわけにはいかないんだと思うよ」 京太郎「な、なんか照れくさいです」 佳織「ふふ……ところで智美ちゃんはどう?」 京太郎「……厳しそうです。なかなか上手く和了れてないですね」 佳織「そっか……やっぱり決勝はみんな強いんだね」 京太郎「そうですね。団体に出ていなかった人にも強い人がいますし」 睦月「平滝高校の南浦さんだね。お爺さんは元プロなんだよ」 京太郎「へー、英才教育とか受けてそうですね」 睦月「実際受けてるみたいだよ。スタイルも似てるみたいだし」 京太郎「そうなんですか。詳しいですね。一体どこでそんな……」 睦月「プロ麻雀カードには往年のプロシリーズもあるんだ! 今ちょうど持ってるから見せて……」 京太郎「い、いえ。大丈夫です」 睦月「そう? 若いころの大沼プロとかもあるんだけど」 佳織「あ、加治木先輩と桃子さんが同じ卓みたい」 睦月「ほんと? それは見ないと」クルッ 京太郎(佳織先輩! さすがです!!) 京太郎「……ってモモとゆみ先輩が同卓ですか!?」 佳織「うん。今始まったところみたいだよ」 アナ『ここは鶴賀の加治木選手と東横選手が同卓になりましたね』 藤田『ああ。鶴賀以外の生徒はこの卓をよく参考にしたほうがいいだろうな』 アナ『といいますと?』 藤田『東横はどうも対戦相手に自分の捨て牌を隠すことが出来るようだ』 アナ『捨て牌を隠す……ですか? 物理的にということではないですよね』 藤田『それは反則だろう……。要するに東横の対戦相手は東横の捨て牌を認識することができなくなるということだ』 アナ『そんなことが出来るんですか。対処が難しそうですね』 藤田『ああ。だからこそ普段から対局をしているだろう加治木の打ち方をよく見たほうがいい』 アナ『なるほど。東横選手への対抗策を学ぶということですね』 藤田『そういうことだ』 アナ『ちなみに藤田プロならどのような対策をされますか?』 藤田『ふむ。まあいくつか考えてはいるが、ここで喋ってしまっては不公平だからな。やめておこう』 京太郎「モモのステルスも有名になってきたのか……にしても見逃すところだった。危ない」 佳織「普段から部活で戦ってるけど、やっぱり見逃せないよね」 睦月「そうだね。いつも以上に真剣勝負って感じだし。……今のところどっちの順位が上なんだろう」 京太郎「ええと、モモのが少し上みたいですね」 佳織「ほんとだ。2人とも一桁かあ。凄いなあ」 睦月「……私も来年はこの2人みたいになれるかなあ」 京太郎「一緒に頑張りましょう。今日の俺は運が良すぎましたし」 睦月「うん。それじゃあまずはこの試合をしっかり見てようか」 京太郎「はい!」 ………… ……… …… … 京太郎「東場はゆみ先輩がリードしてましたけど、南場はやっぱりモモが強いですね」 佳織「絶対に振り込まないのはやっぱり強いんだね」 睦月「うむ。……わあ、加治木先輩あれ鳴くのかあ」 京太郎「まだ点数で勝ってるうえ三向聴で……」 京太郎「急所が残っちゃいますけど、やっぱりモモ相手だと少しでもスピードを上げるんですね」 佳織「桃子さんは普段戦ってるからっていうのもあるけど、それでも加治木先輩は対応が早くて凄いなあ」 京太郎「そうですね。あんなふうな麻雀やってみたいです」 睦月「私も。後一年であれって考えると少し大変だけど」ハァ 佳織「私は早く麻雀のルールちゃんと覚えないと……」 京太郎・睦月(ちゃんと覚えたら凄いことになりそうだなあ……) 佳織「ど、どうかした?」 京太郎「いえ。なんでもないです」フイッ 睦月「もう対局が終わりそう。これは加治木先輩の早仕掛けが成功するかな?」 佳織「反応してくれないんだ……ええと、風越の人が切りそうかな?」 京太郎「そうですね――あ、ゆみ先輩が和了りました!」 睦月「さすが加治木先輩。モモは悔しそうだね」 京太郎「部活じゃ東南戦だとゆみ先輩とモモは大体互角か」 京太郎「モモが少し成績よかったですけど、ここ一番で勝ち切るのは最上級生の意地ですかね」 佳織「そうだね。実力以上ってわけじゃないけど、いつもより負けそうにない感じがする」 京太郎「これでゆみ先輩は……今5位ですね! モモもまだ9位です!」 睦月「1位はちょっと厳しいけど、まだ接戦だし加治木先輩もモモも3位以内目指せそうだね」 佳織「2人とも頑張れー!」 ………… ……… …… … アナ『長かった全国高校生麻雀大会長野県予選もいよいよ終わりが近づいております。女子個人戦決勝最終戦、まもなく開始です!』 藤田『女子もなかなかレベルが高いな』 藤田『風越の主将の福路、インターミドルチャンプの原村は注目していたが、それに勝るとも劣らない選手も多い』 アナ『はい。福路選手はやや余裕を持って2位ですが、現在3位の原村選手は7位まで接戦。まだまだ安心は出来ません』 藤田『最終戦次第では一気にひっくり返ることもあるだろうな。……しかし1位の宮永は凄まじいな』 アナ『昨日歴代最高得点を大きく塗り替えた宮永選手ですが、決勝でもその実力を遺憾なく発揮していますね』 藤田『決勝でも記録を更新するのは確実だろうな。ただ、少し気になるところもある』 アナ『盤石に見えますが何が気になるのでしょうか』 藤田『団体戦のときと比べて和了る速度が少し遅くなっている』 藤田『それでも大抵の場合対戦相手よりは速いが、何度か速度で負けている局があるようだ』 アナ『そう言われますと確かにそうなっていますね。何が原因なんでしょう?』 藤田『カンの回数が増えていることだろうな』 アナ『カンが増えているからですか? しかし宮永選手はカンをして有効牌を持ってくることが多いように思いますが……』 藤田『それはその通りだが、カンをしようとすると最低刻子を手牌に入れなければならない』 藤田『宮永でも最初から刻子をいくつも抱えているわけではないからな。必然的に手は重くなる』 アナ『なるほど。つまり早和了りに勝機があるというわけですね』 藤田『気になるところではあるが、一概には言えないな』 藤田『速度が落ちた分、打点が大幅に上がっているから少々のリードではすぐ逆転されてしまう』 藤田『早和了りを続けられればいいが難しいだろう。何も考えないよりはマシという程度かもしれないな』 アナ『それだけでは足りないということですね。他にはどのような戦い方が考えられますか?』 藤田『カンをするということはこちらの打点も高くなりやすい。それを狙うのも一つの手だろう』 アナ『しかし宮永選手は嶺上開花で和了ってしまうのではないでしょうか』 藤田『まあ主導権を奪われるということだからな。リスクはあるが、そもそも不利な状況でどう戦うかという話だから仕方ない』 アナ『藤田プロでも宮永選手相手では不利なんですか?』 藤田『……うるさい』 京太郎「いよいよ最後ですね。ゆみ先輩は今6位か……」 睦月「でも3位との差はあんまりないね。ちょうどさっきの京太郎くんと似たような感じかな。ただ、最後の相手が……」 佳織「宮永さんが相手だね……。プロの人も不利って言う相手なんて」 京太郎「ま、まあ咲に勝たなくても点数稼げれば3位にはなれますよ! どのくらい稼げれば行けます?」 睦月「元々点数で負けてるからどのくらいっていうと難しいけど……」 睦月「原村さんはこういう状況で負ける人じゃないから、きっと1位になると思う」 睦月「そうするとオカが入っちゃうから、加治木先輩も1位にならないと厳しい……と思う」 京太郎「そうですか……」ガクッ 佳織「で、でも宮永さんも振り込まないってわけじゃないし、きっと勝てるよ!」 京太郎「けど昨日の予選では……」 睦月「……京太郎くん、これから宮永さんと戦うのは誰?」 京太郎「……? ゆみ先輩ですよね?」 睦月「そう。私たちの頼れる先輩で、麻雀始めてたったの2年であんなに強くなった人」 睦月「そんな加治木先輩が、戦うのが3度目になる相手に何も出来ないなんて思う?」 京太郎「それは……思いませんけど」 睦月「相手は宮永さんだから、私も絶対勝てるなんて言わないよ。でも京太郎くんが弱気になっちゃダメ」 睦月「加治木先輩は最後まで諦めずに京太郎くんのこと見てた。だから京太郎くんも諦めずに応援しよう?」グッ 京太郎「……ありがとうございます。そうですよね。応援してるほうが先に諦めるなんて絶対ダメですね」 京太郎「目が覚めました! ゆみ先輩が勝つって信じます!」 睦月「うん。私たちの分も頑張ってもらおう!」 --------------------------------------- ゆみ(最終戦、そして相手は宮永か。……団体戦を思い出すな。まあ再現になってしまっては困るが) ゆみ(予選ではどうにも出来なかった。今回はどうにかしないとな……あ) 咲「……」 ゆみ(私もそこそこ早かったと思うが、さすがに私より速いか) 咲「……あ」 ゆみ「よろしく。こうして君と戦うのは3度目だな」 咲「はい……」ウツムキ ゆみ(緊張しているのか? そういうところは1年生らし……私も大会は初めてだったな。大差はないか)フッ 咲「……いつから……」ボソッ ゆみ「? いつから? 麻雀のことか?」 咲「ふぇ、聞こえ……! な、なんでもないです!」 ゆみ(麻雀ではないのか。なら一体……)ハッ ゆみ(バカか私は。彼女と私の共通点なんて、麻雀を除けば1つしかないだろう) ゆみ「……もしかして京太郎くんのことだろうか?」 咲「っ! ……はい」 ゆみ「……私が京太郎くんと初めて会ったのは大体ひと月前だ。それからは部活で大体毎日会っていたが」 咲「そう、ですか。たったのひと月前……」 ゆみ(……やはり、彼女も京太郎くんを) 咲「……私、京ちゃんに昔からよく助けられてたんです」 咲「高校生になって離れてからも、麻雀をまた始めるきっかけをくれたり、相談に乗ってくれたりして」 咲「ずっとこんな関係でいるのかなって思ってました」 咲「……ううん、今でも私が今まで通りに接したら、きっと関係は変わらないんだろうなって思います」 ゆみ「……」 咲「一緒にいるときは気づかなくて、離れてもそれがなんだかわからなくて。……失くして初めて知りました」 咲「だから悪いのは私です。恨んでるとかじゃないです。だけど、これで麻雀まで負けたらあんまりだから……」 咲「……試合前に関係ない話してごめんなさい。でも、私は負けられません。原村さんと一緒に全国に行くって約束したんです」ゴッ ゆみ「……そうか」 ゆみ「だが、私も負けないよ。全国へ行けなければ引退だ。ようやく5人揃って大会に出られんだ」 ゆみ「たとえ団体で行けなくなっても、まだ夏を終わらせたくはない」 咲「……お互い、負けられないですね」 ゆみ「ああ。団体決勝と個人予選のリベンジ、果たさせてもらうぞ」 咲「絶対負けません!」 --------------------------------------- 京太郎「ゆみ先輩のところが映りました!」 睦月「うん、点数は……ちょっと差が開いてるね」 佳織「宮永さん以外の対戦相手は天竜の人と裾花の人なんだ」 京太郎「加治木先輩もちょっと削られてますけど、他の2人のほうがだいぶ点数低いですね……」 睦月「宮永さんは断トツだ。さすが……」 佳織「あ、ダイジェストが始まるみたいだよ」 アナ『宮永選手のいるこの卓。先制したのは意外にも加治木選手でした』 藤田『強引な仕掛けをしていたがそれが上手く嵌っていたな』 アナ『藤田プロのおっしゃっていた宮永選手の隙を上手く突いた形でした』 アナ『しかしその後試合をリードしたのはやはり宮永選手。嶺上開花での和了りは実に4回!』 藤田『その間に加治木も何度か和了っているが、やはり打点の差はいかんともしがたいな』 アナ『はい。宮永選手と2位加治木選手との差は約5万5千点。厳しい点差となっています』 藤田『宮永以外に和了っているのは加治木だけだったと思うが、それでもこの差か』 アナ『そうですね。天竜女学院、裾花は両者とも1万点を割っています』 藤田『どちらもけして実力がない選手ではないんだが……相手が悪かったな』 京太郎「こう改めて見ると咲凄まじいですね……」 睦月「手がつけられないってこういうことを言うのかな」アハハ… 佳織「あ、加治木先輩この局は和了れそうだよ!」 京太郎「ほんとですか! ……あ、でもこれだと」 佳織「え、どうかしたの?」 睦月「ちょっと点数が低くなりそうだね。仕方ないんだけど……」 アナ『現在は南3局。加治木選手にとってはここで点差を縮めたいところでしょうか』 藤田『宮永も加治木も南4局では子で、役満でもツモ和了りでは逆転が出来ないからな。せめて4万8千点以内にはしたいところだろう』 アナ『おっと、言っている間に加治木選手が和了りましたが……これは5200ですね』 アナ『宮永選手からではないので、依然として三倍満が直撃してもでも逆転は出来ません。勝利には役満の直撃が必須です』 藤田『少しでも稼ごうと思ったか、それとも宮永に和了られると思ったか。おそらく後者だろうな』 アナ『宮永選手がポンをしているのを見て、直撃を待つ時間はないと判断したわけですね』 藤田『ああ、宮永の場合はそこから加槓で有効牌を1つ引いてくるからな』 アナ『なるほど。加治木選手の判断が光ります。……しかし点差は依然として大きい。いよいよ南4局。決着はもうすぐです!』 --------------------------------------- ゆみ(まったく、予選のように逃げられないのがつらいな) ゆみ(さて、最後の配牌は……!!)ピクッ 手牌 14一九九①⑨東東南西白發 ツモ7 ドラ七 ゆみ(国士無双二向聴……宮永と打つときはよくよく国士に縁があるようだな) ゆみ(……さてどうするか。この状況、普通に考えれば、というより正気なら続けないという選択肢はありえないが) ゆみ(特に宮永に対して、国士無双は暗槓でも直撃を取れる。おそらくこれ以上ない配牌だろう) ゆみ(しかし……)チラッ ゆみ(宮永はカンによる有効牌の引きや嶺上開花が目立っているが、おそらくそれだけじゃない) ゆみ(池田への差し込み、最終局近くでの細かい和了り、天江に掴ませた当たり牌) ゆみ(天江と同じく配牌やツモにも影響を与えていると考えるのが妥当だろう) ゆみ(ならばこの配牌も……) ゆみ(……天江に対して普通に和了ろうとしても無駄だった。宮永に対してもそれは同じではないだろうか) ゆみ(団体戦の決勝では実際に止められている。まあ、あれは捨て牌が露骨だったが) ゆみ(なまじ天江に比べて和了れるから勘違いするが、それは宮永に届かない範囲でしかないのでは……?) 天竜「あの、すみません。そろそろ……」 ゆみ「ああ、すまない。もう少しだけ待ってくれ」 ゆみ(……いずれにせよ普通に和了りを目指しては敵わないだろう) ゆみ(京太郎くんもこんな気分だったのかな。確かにこれは辛い表情にもなる)フッ ゆみ(彼は自分を盲信するでもなく、効率を追求するでもなく、自分の打ち方を見出して貫いた) ゆみ(ならば私がすべきことも1つだ。これでは勝てない。そう考えよう) ゆみ(最善手ではないかもしれない。馬鹿げた選択かもしれない) ゆみ(けれどそれが如何に無謀に見えても、自棄になったように思えても、私は私の感じるベストを尽くす) ゆみ(それが後輩に、京太郎くんに示せる私の麻雀だ!) ゆみ「九種九牌。……流局にしてくれ」パタン 天竜「……はあ!?」 裾花「えっ、それで……?」 咲「!?」 --------------------------------------- 睦月「え!? なんで九種九牌なんて!」 佳織「1つずつ……あれってもう少しで役満だよね?」 京太郎「そうですね……国士無双です」 佳織「なんで加治木先輩は国士無双目指さなかったんだろう?」 睦月「うーん……あ、解説やるみたいだよ」 アナ『まさかの九種九牌。驚きましたがこれはどのような理由で流局にしたのでしょうか』 藤田『普通に考えればありえないな。何ひとつメリットがない』 アナ『先ほどの男子個人戦決勝で、同じ鶴賀の須賀選手も気になる打牌をしていましたが……』 藤田『それはメリットが薄いというだけでなくはないからな。これはそもそもメリットがないと言っていい』 藤田『ただ加治木は大胆なところはあっても基本的に手堅い選手だ』 藤田『博打ですらない判断だが、その場にいなければ感じられない何かがあったのかもしれないな』 アナ『須賀選手のように危険を感じた結果ということでしょうか』 藤田『そうではないだろうな。加治木のこれまでの牌譜は理に適ったものだ』 藤田『これも感覚ではなく、団体決勝でやった宮永への槍槓のように加治木なりの筋を通した結果が九種九牌なんだろう』 藤田『私には理解できないがな』 アナ『なるほど。ありがとうございました。仕切り直しの南4局。勝利の女神は誰に微笑むのか!』 睦月「話題に出てたけど京太郎くんは加治木先輩の判断はどう思う?」 京太郎「そうですね……ゆみ先輩が考えないであんなことやるわけありませんから、正しいって信じてます」 睦月「そっか……私はやっぱりあのまま続けてたほうがいいと思う。間違ってるとまで言わないけど……」 京太郎「それも正しいと思います。変える必要なんてない場面ですし」 睦月「うむ……ただ団体戦の決勝で2回もあんな形のを和了れなかったから、続けたくなかったんだろうなとは思うよ」 京太郎「そうですよね。あそこまで揃うのもめったにないのに、そこから和了れないなんて……」 佳織「え? そんなに珍しい?」 京太郎・睦月「……」 佳織「えっ、え?」 京太郎「さあ応援しましょう!」 睦月「頑張れ加治木先輩!」 佳織「うぅ。前もこんなことあったような……」 --------------------------------------- ゆみ(さて、あんなことをしてケチがついていなければいいが……)カチャッ 手牌 279一四七①⑧⑨南西北中 ドラ北 ゆみ(……自分でやったこととはいえ気が滅入るな)ハァ ゆみ(本当に団体戦の再現になってしまいそうだが、まあ弱音を吐いてはいられないか) ゆみ(その前に、天竜と裾花の2人は……) 天竜「……」ギラギラ 裾花「……」フゥ ゆみ(2人とも絶望的な点差だが諦めてはいないようだ。団体戦終盤の池田と同じような目をしている……ありがたい) ゆみ(最初のツモは……む、上手く自風の南が重なったか)タン 打2 天竜「……」タン 裾花「……っ」タン 咲「ポン!」 ポン九 ゆみ(随分仕掛けが早いな。ポンは九萬か。こんなに早いうちに仕掛けたということは……!) ゆみ(最終形は決まった。後は私にそれを和了りきる力があるかどうかだ!)タンッ 打西 咲(加治木さん、なんで九種九牌なんてしたんだろう。確かに北と九索は嶺上牌にあったけど……) 咲(ううん。もう流局したんだから、さっきのは関係ない。私は今ここで勝たなきゃ) 咲(和ちゃんのために。……それと、自分のために) 咲(京ちゃんのおかげでまた始められた麻雀だもん。京ちゃんが好きに……)ズキッ 咲(……好きになった人には負けられない!) …… … 十一巡目 咲手牌 三三三五六六七發發發 ポン九 咲(うん、揃った。嶺上牌に發と九と六があるから、後は三萬が出れば和了れる) 咲(天竜と裾花の2人は和了らないよね。後は加治木さんだけど、加治木さんも役満の直撃じゃないと和了れない) 咲(捨て牌を見る限り国士無双ではなさそう。大三元とか發が必要なのは出来ないし清老頭も多分違うよね) 咲(やっぱり四暗刻かな。単騎待ちのはずだから気をつけるのは難しいけど……) 咲(……どっちにしろカンしちゃえば問題ない! それで勝てるんだ!)タン 天竜「……」タン ゆみ「っ! 立直!」タンッ 咲(え、立直? 立直すれば届くってことかな。清一色とか……?) 咲(まあ私が萬子を揃えてるから、清一色でも萬子じゃないはず。三萬さえ出れば……!) …… … 天竜「うー」タン 咲(来たっ! 三萬!) 咲「カン!」 カン三 嶺上ツモ發 新ドラ3 ゆみ「っ!」 咲「もいっこカン」 カン發 嶺上ツモ九 新ドラ⑤ 咲(これで……!) 咲「もいっこカン!!」 カン九 嶺―― ゆみ「ロン!」 咲「……え?」 ゆみ「ロンだ。……上手くいってよかった」ホッ 咲「そ、そんな! 槍槓じゃ足りるはずが……」 ゆみ「そうだな。このままでは足りないよ」パタッ 手牌 789七八⑦⑧⑨南南南北北 ロン九 ゆみ「立直、槍槓、三色同順、場風、自風、混全帯?九、ドラ2。10翻だ」 咲「じゃあなんで……!」ハッ 咲「まさか裏ドラ狙いで……?」 ゆみ「カンで出てくれると心臓に良かったんだが……まあどちらでも同じか」 咲「そんな無謀なことするより初めから役満狙ったほうが……」 ゆみ「普通の相手ならそうしたが、なにぶん相手は宮永咲だからな」 咲「私は別に――」 ゆみ「……すまない、そろそろめくらせてもらうぞ」 咲「……」 ゆみ(私が乗り越えなければならないハードルは3つあった) ゆみ(1つは九萬を引かないこと。2つ目は宮永が和了るより先に聴牌すること) ゆみ(宮永がカンをするのは分かっていたから、これでほぼ確実に宮永から和了ることが出来る) ゆみ(……そしてこれが3つ目。カンドラ、もしくは裏ドラで3翻を得ること) ゆみ(幸い九萬の加槓は3回目のカンだった。おかげで3枚裏ドラをめくれる)ドキドキ ゆみ(ここまで分の悪い賭けに勝ってきたんだ。最後も頼むぞ……!)ドキドキ ゆみ「……っ」 裏ドラ② ゆみ(次は……!) 裏ドラ中 ゆみ(数牌3つや数牌と北と組み合わせは色々あるが……まさか5つドラがあるのに1つも出ないとは)フゥ ゆみ(後は東をめくるしかない。幸い東はまだ1枚も見えていない。頼む……!)ドキドキドキドキ 咲「……」ギュッ ゆみ「――」スーッ 裏ドラ南 『数え役満ーーーーー! 加治木選手の逆転で決着!!!』 ゆみ「――――よしっ!!」グッ 咲「……あ」 天竜「……はぁ、まったく良い物見せてもらったわ」テクテク 裾花「……信じられない」テクテク ゆみ「……まあ、私も二度とやりたくはないな」 咲「そっか。負けちゃったんだ。……絶対負けたくなかったのに」 ゆみ「まあまだ原村を上回ったわけでは……いや、上回っていなければ困るんだが」 咲「……負けられなかったのは和ちゃんのためでした。でも、負けたくないのは私のためです」 ゆみ「……そうか」 咲「その、加治木さんが全国へ行ったら……あ、えっと、行けなくても、もう一度打ってもらえますか?」 ゆみ「……もちろん。負け越しているのは私の方だからな。まあ、全国で戦えることを望んでいるが」 咲「ありがとうございます! ……それと、1つだけ聞いていいですか?」 ゆみ「答えられることなら」 咲「……先週の京ちゃんの告白。京ちゃんは全国に行けなかったですけど……」 ゆみ「……京太郎くんの言ったとおりだよ。彼は全国へ行けなかった。だから返事はしない」 咲「そう、ですか。……ごめんなさい。もう1つだけ聞かせてください。加治木さんは――」 --------------------------------------- アナ『裏ドラが乗って数え役満! 加治木選手、見事宮永選手から役満を和了りました!!』 アナ『これで加治木選手は逆転。宮永選手を抜きトップとなりました』 アナ『早和了りやドラが増えるところを狙うなど、試合前に藤田プロが言っていた点を突いての勝利でしたね』 藤田『まあ特別な作戦というわけではないからな。誰しも考えるが実践は難しいという類いのものだ』 アナ『そうですか。まくりの女王と呼ばれる藤田プロから見てこの逆転劇はどうでしたか?』 藤田『カンでドラが増えるとはいえ、九萬が最初にカンされるかもしれない。最後のカンでもドラが出るかはわからない』 藤田『しかし実力が上の選手に勝つには無茶も必要だ』 藤田『結局は勝つと信じ切れなければまくることは出来ない。泥臭いがいいまくりだった』 アナ『加治木選手、素晴らしい逆転劇でした。……あ、どうやら全ての卓で試合が終わったようです』 アナ『最終結果が発表されます……1位は宮永選手、2位福路選手。そして3位は……』 アナ『……加治木選手です!加治木選手、僅差で原村選手を逆転!』 アナ『総合順位でもまくりを決め、全国行きの切符を手にしました!!』 藤田『原村も最終局は1位か。2人とも見事だな』 アナ『数々のドラマがあった女子麻雀個人戦決勝、ハイライトで振り返りたいと思います――』 京太郎「すっげえ……」 睦月「あれで逆転するなんて、しかも宮永さんに」 佳織「私もあんなにドラが乗ったことはないなあ。凄いや」 京太郎「シビレました。もう鳥肌が立っちゃいましたよ」 桃子「鳥肌が立つって言葉にいい意味はないんすよ」 京太郎「しょうがねえだろ実際立ったんだから……ってモモ、いつの間に」 桃子「いつの間にって……私の体質だからしょうがないじゃないっすか……」 京太郎「そういう意味じゃねえよ!?」 桃子「冗談っす。ついさっきっすよ。……にしても凄いっすね。考えてもやらないっすよあんなこと。まして和了りきるなんて」 智美「まあウチの部で一番無茶するのはゆみちんだからなー」 智美「たまに冷静さをどこかに置いてっちゃうんだ。そこがいいところなんだけどな」ワハハ 京太郎「そういえば俺たちが入ったのもそれででしたね」 智美「私も今来たところだけど、私には何も言わないんだなー」 桃子「やっぱり私が見えないから……」 京太郎「2度目はもういいでしょ!?」 智美「緊張をほぐすために重ねてみたぞー」ワハハ 京太郎「はい? 今さら何に緊張を……」 智美「ゆみちんのとこ行くんだろー?」 京太郎「えっ……」 桃子「いやまあ、ここで私たちに見られながら振られるのがお好みっていうならそれはそれでいいっすよ」 京太郎「嫌だよ! というか振られるわけじゃねえ! ……でもそうですよね。俺は行かないと」 睦月「うむ、加治木先輩も真っ先に京太郎くんに会いたいと思うよ」 佳織「頑張って!」 京太郎「まあ返事は貰えないんですけどね……」ハハ… 京太郎「それじゃ一足先に全国大会出場を祝ってきます!」タッタッタ 智美「頑張るんだぞー」ワハハ --------------------------------------- ゆみ「……あ、京太郎くん」ドキッ 京太郎「ゆみせんぱーい!」タッタッタ ゆみ「こ、こら。ただでさえ注目されているんだからあまり大声を出すな」 京太郎「す、すみません、早く伝えたくて。全国大会出場、おめでとうございます!」 ゆみ「――! そうか、私は原村に勝てたのか……」 京太郎「はい! 槍槓からの数え役満凄かったです! 俺じゃとても出来ないですよ」 ゆみ「私も2度やろうとは思わないな」フフッ ゆみ「……これで麻雀部のみんなで過ごせる時間が長くなった」 京太郎「そうですね。全国大会が終わるまでは一緒にいられます」 ゆみ「ああ……君と同じ部に、長くいられる」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎「……」 ゆみ「……京太郎くん」 京太郎「はい」 ゆみ「よく頑張った。入賞おめでとう」 ゆみ「ずっと見ていたよ。君の先輩として、君に麻雀を教えた1人として、君のことを誇りに思う」 京太郎「ありがとうございます」 ゆみ「こう言っては何だが実力以上の力を出していたと思う。ただ、本番でそういうことが出来るのも才能だと私は思う」 京太郎「いつもこのくらい出さればいいんですけどね」ハハハ ゆみ「まったくだな」フフッ ゆみ「……だが、それでも全国には届かなかった」 京太郎「……はい」 ゆみ「君が言った条件だから、私が勝手に破るのはよくないと私は思う」 京太郎「……俺からもやっぱりなしでとは言いません。一度言ったことですから」 ゆみ「そうか……それなら私も返事はしない」 京太郎「……はい」 ゆみ「だから、ここからは私の話だ」 京太郎「はい?」 ゆみ「」スゥーッ ゆみ「私は君が欲しい!」 京太郎「!?」 --------------------------------------- 咲『加治木さんはこれからどうするんですか?』 ゆみ『どうとは……』ドキッ 咲『えと、京ちゃんに会ったら何をするんですか?』 ゆみ『……やっぱりわかるものなのか』 咲『それはまあ。同じ人を好きになったんですから』 ゆみ『そんなものか……まあ君にならいいか』 ゆみ『告白するよ。返事はしないと言ったが、告白しないとは言っていないからな』 咲『凄い屁理屈』クスクス ゆみ『京太郎くんが勘違いしているのが悪い。返事をしないというのがどういう意味だと思っているんだろうな』 咲『同感です。基本的に気配りしてくれて優しいんですけど、たまに抜けてるんですよね』フフッ ゆみ『まあ彼も私から言ったら意地を張ったりはしないだろう』 咲『そうですね。……すみません。最後にあと1つだけいいですか?』 ゆみ『……意外とグイグイ来るな。まあ構わないが』 咲『ごめんなさい。どうしても聞きたかったんです』 咲『……加治木さんが全国へ行けなかったら、どうしてましたか?』 ゆみ『……変わらないよ。たとえ全国へ行けなくても、私は私から告白していた』 咲『……そうですか。ありがとうございました。おかげで最後勝ってれば、なんて悔いは残らなかったです』 ゆみ『……そうか』 ゆみ『さて、それでは私はそろそろ控室へ戻るよ』 咲『はい。今日はありがとうございました。今度は負けません!』 ゆみ『それは私の台詞でもある。それじゃまた。次やるときもいい試合にしよう』スタスタ 咲『楽しみにしてます! ……』 咲『……』グスッ --------------------------------------- 京太郎「え。え、えっ?」 ゆみ「……思った以上に恥ずかしいなこれは。前と違ってなまじ理性が残っている分つらい」カアァァ 京太郎「い、今なんて……」 ゆみ「君がこの前言ったのと同じだ。もちろん意味も」 京太郎「で、でも俺勝てませんでしたし」 ゆみ「だからこれは返事じゃない。私からの告白だ」 京太郎「けど俺、情けない姿しか見せられなくて……」 ゆみ「もし、それが君の麻雀のことだとしたら、私は本気で怒るぞ」 京太郎「……ゆみ先輩はそう言ってくれても、ゆみ先輩と比べると俺は……」 ゆみ「……」ハァ ゆみ「なあ、京太郎くん」ズイッ 京太郎「は、はい」ドキッ ゆみ「告白の返事をしないでいいというのはどういうつもりで言ったんだ?」 京太郎「どうってあのときは……」 ゆみ「いやまあ焦っていたのはわかるが……きっと一種の罰みたいなものと考えていたんだろう」 京太郎「罰っていうと大げさですけど、まあ勝てないようなら返事貰う資格なんかないっていうハードル的な……」 ゆみ「分かってはいたが、やっぱりそういうつもりか……」ハァ 京太郎「ゆみ先輩?」 ゆみ「あのな、京太郎くん。告白の返事をしなくていいというのは、私と君が付き合えないということだ」 京太郎「そりゃまあ、俺はゆみ先輩と付き合えないという意味で言って――」 ゆみ「君がじゃない。私と、君がだ」 京太郎「……え? い、いやでもそれ」 ゆみ「私の気持ち、知らなかったとは言わせないぞ」ポスッ 京太郎「……」 ゆみ「京太郎くんは1年生だからわからないと思うが、3年生になると残りの高校生活の短さを実感するんだ」 ゆみ「全国へ行けるのは早くても半年近く経ってから」 ゆみ「近くにいるのにそんなに長い間君とこれ以上親しくなれないなんて、私は耐えられない」 京太郎「ゆみ先輩……」ドキッ 京太郎「俺だってそんなの嫌ですよ!」 ゆみ「……そうか。それなら、返事をしてくれ」ドキドキ ゆみ「一応言っておくが、これは私が私のためにした告白だからな」 京太郎「はい。……ゆみ先輩、俺も、あなたのことが大好きです!! こんな俺でよければ、よろしくお願いします!」 ゆみ「京太郎くん……ありがとう。嬉しい」ポロ 京太郎「俺のほうこそですよ……ってゆ、ゆみ先輩? 涙が……」 ゆみ「え?」ポロポロ ゆみ「あ、あれ。気を張っていた反動か……ヒクッ 安心したら止まらないな……エグッ」 京太郎「……ゆみ先輩、落ち着くまでこうしててください」ギュッ ゆみ「わっ……ありがとう、少し……ヒクッ 胸を借りる」ポスッ …… … ゆみ「……今日は、朝から緊張していたんだ」 京太郎「今日で引退かどうか決まっちゃいますから、そりゃしますよ」 ゆみ「いやそうじゃなく。君がもし全国へ行けなかったら告白しようと決めていたんだ」 京太郎「……ああ、そういえば朝、最後なのとは別に緊張してるとか言ってましたね」 ゆみ「ああ。……君に告白することは決めていたが、断られたらどうしようって頭の中をグルグル回っていたんだ」 京太郎「俺だってゆみ先輩に告白したじゃないですか」 ゆみ「告白されたからって断られる可能性は0じゃない。君が俺はまだ勝ててないからなどというかもしれないしな」 京太郎「うっ……」 ゆみ「……まさか本当に言うつもりだったのか」 京太郎「い、いえ。ただその、頭をよぎらなかったといえば嘘になるかなーと……」アハハ ゆみ「笑い事じゃない。まったく……」 ゆみ「まあ、これで緊張するのもわかっただろう。OKされて一気に緊張が解けたんだ」 ゆみ「……本当に嬉しかった。ありがとう、京太郎くん」 京太郎「俺のほうこそ、というかほんとは俺からちゃんと言いたかったんですが」 ゆみ「君がバカな条件なんてつけるからだ」ムゥ 京太郎「あはは……ゆみ先輩。涙、もう大丈夫ですか」 ゆみ「ああ、ようやく収まってきた。これで君の顔を見れるよ……京太郎」 京太郎「っ!」ドキッ 京太郎「ゆみ……さん」 ゆみ「さん?」 京太郎「今すぐはちょっと……」 ゆみ「私は呼び捨てのほうが嬉しいんだがな」 京太郎「すみません、俺の問題です」 ゆみ「そうか……まあ追々直してくれ」 ゆみ「……京太郎。もう一度呼んで貰っていいか?」 京太郎「ゆみさん……」ジッ ゆみ「京太郎……」ジッ 京太郎「……」 ゆみ「……ん」メツブリ 京太郎「! ……」ソーッ ゆみ「……」ドキドキ 京太郎「……」ドキドキ 京太郎「――」スーッ 桃子「はいそこまでっすよー」 京太郎「うおぉっ!!??」バッ ゆみ「も、モモ!?」バッ 桃子「お楽しみのところ悪いっすけど電車の時間が迫ってるから帰るっす」 京太郎「お、お前ステルス悪用するなよ! 全然気づかなかったぞ!」 桃子「今回ばかりはステルス関係ないっすよ」チラッ 京太郎・ゆみ「え?」 智美「ワハハー」 睦月「えっと……」 佳織「あはは……」 京太郎「い、いつの間に……!」ガタタッ 智美「入賞おめでとうの辺りかなー」ワハハ ゆみ「ほぼ初めからじゃないか!!」 桃子「少し離れてただけなのに気づかないのが悪いっす」 睦月「ちなみに他校の人も周りに結構いましたよ。先輩が泣いた辺りから辛くなったのかいなくなりましたけど」 智美「私達も置いて帰ってやろうかと思ったなー」ワハハ ゆみ「うぁ……」バタバタ 京太郎「ぐおぉ……」バタバタ 佳織「でもなんにせよよかったです。おめでとうございます!」 桃子「そうっすね。ゆみ先輩には上手く騙されたっすけど」 ゆみ「……あれだけ答えないと言っていれば、気を使って来ないだろうと思って誤魔化してたんだがな。私が甘かったよ」ハァ 智美「あれだけ人前でイチャついておいて隠そうだなんて甘いぞー」ワハハ 京太郎「イチャついてなんかいませんて!」 桃子「……動画でも録っておけばよかったっすかね」 睦月「それはさすがに……」 佳織「で、でも効果はありそうだよ!」 京太郎「佳織先輩!? モモのフォローのつもりですかそれは!」 佳織「えと、半分はそうかな」 ゆみ「待て、残りの半分はなんなんだ」 智美「そんなのわかりきってるだろー。それよりほら、いい加減時間がないぞ」 京太郎「お願いですからしっかり反論できる時間を……!」 ゆみ「……まあ時間がないのは確かみたいだし、残りは帰りの電車の中ででも話そう」 桃子「私たちを先に帰らせて、2人は残って楽しんできてもいいんすよ?」 京太郎・ゆみ「するか!」 佳織「え? 意が……あ。それじゃあ私たちは玄関で待ってますね」 ゆみ「何か言いかけたのが気になるが……もういいか」ハァ 京太郎「あはは……それじゃ荷物取ってきますね。行きましょうゆみさん」 ゆみ「ああ、京太郎」フフッ 京太郎「……」キョロキョロ ゆみ「どうかしたのか?」 京太郎「いえ、ちょっと周りの確認を……よし」 ゆみ「?」 京太郎「」ギュッ ゆみ「きょ、京太郎!? て、手を……!」アワアワ 京太郎「その、周りに誰もいないみたいなんで……ダメですか?」 ゆみ「ダ、ダメじゃない! た、ただ驚いただけだ!」ワタワタ 京太郎「ありがとうございます!」ギュッ ゆみ「……」テクテク 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」テクテク 京太郎「……な、なんか緊張しますね」アハハ ゆみ「あ、ああ。もっと見られて恥ずかしいことはやっているのにな」 京太郎「なんでこんな気分になるんですかね?」 ゆみ「……きっと恋人らしい行為だからだろうな」 京太郎「な、なるほど……」カアァァ ゆみ「……京太郎」 京太郎「はい」 ゆみ「全国大会が終わって私が引退しても、出来るだけ一緒にいような」 京太郎「はい。学校であんまり会えないのが寂しいですけど」 ゆみ「……部室で勉強するのはありだろうか」 京太郎「嬉しいですけど、集中できますか?」 ゆみ「集中力はある方だと思うが……」チラッ 京太郎「?」 ゆみ「……君に見惚れるかもしれないな」ボソッ 京太郎「~~~!!」カアァァ 京太郎(やべえ、抱きしめたい!) ゆみ「コホン……京太郎、大好きだよ。これからもよろしく」ギュッ 京太郎「ゆみさん、俺も大好きです。よろしくお願いします」ギュッ 京太郎「……そういえばなんで俺は先週怒られたんですか?」 ゆみ「先週? ……君が大声で叫んだときか?」 京太郎「せめて告白と言ってもらえると……いやまあそうなんですけど」 京太郎「さっきゆみせんぱ……ゆみさんも同じ告白したじゃないですか!」 ゆみ「なんだそんなことか」 京太郎「そんなことって……」 ゆみ「私が言おうとしていた台詞を京太郎に言われたんだ。あのくらい言わせろ」プイッ 京太郎「……え? ゆみさんも告白しようって思ってたんですか。しかも同じ台詞で……」 ゆみ「……京太郎が私を好きな気持ちと同じかそれ以上に、私は君のことが好きだよ」 ゆみ「それに私が君に告白するならあの台詞しかないと思った。理由は君と同じだ」 京太郎「」ポカーン ゆみ「……どうした?」 京太郎「ああいえ、今めちゃくちゃ嬉しいんです。もうなんか、顔が緩まないようにするのが大変なくらい」ニヤニヤ ゆみ「十分緩んでるぞ」 京太郎「ヤバイ、すっげえ嬉しいです。ゆみさんと同じこと考えてるってだけでこんなに嬉しいんですね……!」ニヤニヤ ゆみ「私も嬉しいが、京太郎は少し緩みすぎだ」ニコニコ 京太郎「ゆみさんも口元ニヤついてますよ」クスッ ゆみ「なっ!」ワタワタ 京太郎「ほら、急ぎましょう。電車遅れちゃいますよ」 ゆみ「お、おい。言いっぱなしにするな!」 ゆみ(……同じことを考えている、か) ゆみ(こんなことでドキドキしてしまうなんて、本当、私もどうしようもないな)ドキドキ ……… …… … ゆみ「京太郎だけか?」ガラッ 京太郎「はい。先輩たちもモモもまだ来てないですよ」 ゆみ「ふむ。まあちょうどいいか」 京太郎「何かあったんですか?」 ゆみ「ああ。推薦が決まったんだ。早く君に伝えたかった」 京太郎「ほんとですか! おめでとうございます!」 ゆみ「ありがとう、京太郎。これで大学も自宅から通えるよ」 京太郎「はい。……卒業してからも一緒にいられますね」 ゆみ「うん、素直に嬉しいよ」フフッ 京太郎「俺も嬉しいです! にしてもやっぱり不安がることなんてなかったじゃないですかー」 ゆみ「君もこの立場になってみればわかる。第一、私の実績なんて大したものではないからな」 京太郎「全国大会で決勝リーグまで行ったじゃないですか。十分凄いですって」 ゆみ「行ったからこそわかる実力の差というのもあったよ。順位もよくなかったしな」 京太郎「でも少なくとも全国で2桁以内の実力じゃないですか」 ゆみ「それはまあ、うん」 京太郎「じゃあ自信持ちましょう! プロ目指すんですから、謙遜しすぎるのもよくないですよ」 ゆみ「……そうだな。私のことを評価してくれたわけだし」 京太郎「そうですよ。それに推薦が出た大学って藤田プロが推薦してくれたとこでしたよね?」 ゆみ「ああ。合宿で少し話したときに、ちゃんとした指導は受けたことがないと言ったら藤田プロの出身校を紹介してくれたんだ」 ゆみ「まあほんとに紹介だけだったんだがな」 京太郎「自分の力で受かれってことですか。藤田プロらしいですね」 ゆみ「そうだな。プロを目指すならこのくらい他人に頼るなということなんだろう」 京太郎「……プロ目指したのって、やっぱり藤田プロに大学紹介されたからなんですか? 聞いたのは全国終わってからでしたけど」 ゆみ「いや、全国大会が終わってからだよ」 京太郎「そうなんですか? 差を感じたって言ってたような……?」 ゆみ「だからこそかな。悔しかったんだ。特に宮永には一度手が届いた分なおさらな」 京太郎「全国大会の咲凄かったですね。特に最後の照さんをまくったところ、長野の決勝のゆみさんみたいでしたよ」 ゆみ「総合順位で上回ったというところが私と違うがな」フフッ 京太郎「仕方ないですよ。逆転できる点差じゃなかったですし」 ゆみ「わかってる……少し話がそれたな。その宮永や宮永照のような圧倒的に格上の相手に負けて悔しいと思ったんだ」 京太郎「? そりゃ悔しいですよ。俺だってアカギさんや隗さんに負けたときも、当然ってわかってても悔しかったです」 ゆみ「それが君のいいところなんだろうな」 ゆみ「私は団体戦で負けたときも、悔しいというよりは寂しいと感じてたよ」 ゆみ「だからこそ、悔しいと感じたことは自分でも意外だった。勝てるなんて思っていなかったはずなんだがな」 京太郎「……麻雀をするとき、心の底から勝てないと思ってする人なんていませんよ」 京太郎「一度勝てたからそれが表に出ただけです。きっと」 ゆみ「……そうだな。まあ、だから全国大会のあとこのままじゃ終われないと思ってプロを目指そうと思ったんだ」 ゆみ「大体だな……そんな大事なこと、決めたらすぐ君に話すに決まっているだろう」 京太郎「」 ゆみ「ど、どうかしたか?」 京太郎「いえ、愛されてるなあと」ジーン ゆみ「あ、愛っ!? へ、変なことを言うな!」カアァァ 京太郎「……俺は愛して貰えてなかったんですね」ガクッ ゆみ「誰もそんなこと言ってないだろう!」 京太郎「冗談ですよ」アハハ ゆみ「まったく。……そんなこと冗談でもあまり言って欲しくはないな」 京太郎「う、反省します」 ゆみ「ああ。ちゃんと反省してくれ」 京太郎「でもゆみさんがプロ目指してくれてよかったです」 ゆみ「うん? 受験するにせよ麻雀をやめるつもりはなかったが」 京太郎「それはそうですけど……」 ゆみ「けど?」 京太郎「俺はゆみさんの、技術と対応力で相手を倒す麻雀が大好きなんです」 京太郎「牌に愛された子みたいな特別な力がなくても、麻雀を愛してれば対抗出来るんだなって思えて……」 京太郎「これからも全力で打ち込んでるところを見ていたかったんです。……まあ、俺の勝手な押し付けですけど」 ゆみ「……君は恥ずかしいことを平気でいうな」カアァァ 京太郎「ゆみさんが言いますかそれ」 ゆみ「まるで私が恥ずかしいことを言っているみたいな言い方じゃないか」 京太郎「言ってないとは言わせませんよ!?」 ゆみ「……まあいい」プイッ 京太郎(自覚ないわけじゃないんだな) ゆみ「京太郎にそこまで言われたら私も頑張らないわけにはいかないな。だからその……」 ゆみ「わ、私をその気にさせたのは京太郎だ。だから、責任をとってちゃんと最後まで一緒にいてくれなきゃ嫌だぞ」カアァァ 京太郎「……当たり前じゃないですか。俺こそ一緒にいさせてください」 ゆみ「京太郎……」 京太郎「……」 ゆみ「……」メツブリ 京太郎「……」ソーッ ゆみ「ん……」ドキドキ 京太郎「――」スーッ ゆみ「……んっ」チュッ 京太郎「……な、なんか恥ずかしいですね」カアァァ ゆみ「そ、そうだな」カアァァ ゆみ「……でも、嬉しい。ようやく君と出来た」 京太郎「モモとかに邪魔されてなかなか出来ませんでしたもんね。……」ジーッ ゆみ「? ……っ! あ、あまり唇を見つめるな。恥ずかしいだろう」バッ 京太郎「す、すみません! つい……」 ゆみ「……実は、さっきは嬉しさでいっぱいでな。あまり感触がわからなかったんだ」 京太郎「! お、俺もです」 ゆみ「だからな、その……」チラッ 京太郎「……目、閉じてください」 ゆみ「……うん」スッ 京太郎「――」ドキドキ ゆみ「――」ドキドキ 睦月「……」ドキドキ 佳織「……」ドキドキ 桃子「……」ニヤニヤ 京太郎「……え?」 ゆみ「どうかし――っ」 桃子「こんにちはっすー!」ニヤニヤ 京太郎「っ!」ガタタッ ゆみ「っ!」ガタタッ 睦月「あ、ご、ごめんなさい。気にしないでください!」 佳織「ど、どうぞ続けてください!」 ゆみ「続けられるか! いつからいたんだ!?」 桃子「最初はドアの窓から隠れて見てたっすから、どこからかはわからないっす。まあキスする前っすね」 京太郎「隠れるなよ! というか見るなよ!」 睦月「うむ。それはもっともだけど、今まで何度も邪魔しちゃったから今回は見守ろうと思って……」 京太郎「見る必要あります!? 気を使って見るのもやめてくださいよ!」 睦月「そこはまあ……好奇心?」 京太郎「素直ですね畜生!」 桃子「でもキス終わってからドア開けて入ったのに、気づかれなかったのは予想外だったっす」 ゆみ「え?」 桃子「だからキスした後冷やかそうと思ってドア開けたのに、気づかなかったじゃないっすか。おかげでいいもの見れたっすけど」 佳織「集中してましたよね。2人だけの世界って感じでした」 ゆみ「……うぅ」ガクッ 京太郎「ゆみさん!? しっかりしてください!」 ゆみ「どこかに消え入りたい気分だ……」 京太郎「俺がついてますから。恥をかくときは2人一緒ですよ!」 ゆみ「京太郎……」ジーッ 京太郎「ゆみさん……」ジーッ 桃子「そこのバカップルはほんと懲りないっすねー」 ゆみ「ひゃっ!」バッ 京太郎「うおっ!?」バッ 睦月「邪魔して悪いけど、そろそろ部活始めよう?」 京太郎「い、いえ。全然悪くないです! むしろ歓迎です!」 佳織「三麻やっててもいいけど……」 京太郎「大丈夫ですから!」 睦月「加治木先輩はどうされます? 久しぶりに打ちますか?」 ゆみ「いや、邪魔になっては悪いから。ここでおとなしくしているよ」 睦月「わかりました……じゃあ皆、始めよう」 一同「はい!」 …… … 智美「遊びに来たぞー」ガラッ 京太郎「あ、ぶちょ……智美先輩」タン 智美「そろそろ慣れようなー。部長はむっきーだぞ」 睦月「ちゃんと私のことも部長って呼んでくれてますよ。智美先輩は1日ぶりですね」タン 智美「昨日は来れなかったからなー。毎日来たいんだけ……」 ゆみ「お前、そんなに来ているのか」 智美「ゆ、ゆみちん!? め、珍しいじゃないか」ワハハ ゆみ「今日は推薦が決まったからその報告にな」 智美「おお、決まったのかー! ゆみちんおめでとう!」 ゆみ「ありがとう。後は蒲原だな。さあ勉強をするぞ」 智美「ちょ、ちょっとくらい息抜きも」 ゆみ「来たばかりで息抜きも何もないだろう。早くノートを出せ」 智美「ワハハ……」 智美「ゆみちん、ここ教え――」 ゆみ「……」ジーッ 京太郎「……」タン 智美「……ゆみちん?」 ゆみ「はっ! どうした?」ワタワタ 智美「京太郎と何かあったのかー?」 ゆみ「な!? な、なにもないぞ」 智美「ゆみちんはいつも京太郎のこと見てるけど、今日はいつもより見てる時間が長いからなー」ワハハ ゆみ「うっ、無意識にそんな……」 智美「それで何したんだー?」ワハハ ゆみ「……キスした」ボソッ 智美「ワハッ!?」 ゆみ「な、なんだ。悪いか!」 智美「いやーちょっと驚いたぞー。そうかついにかー」ワハハ ゆみ「誰のせいだ誰の」 智美「確かに何度か邪魔したけど悪気はなかったんだぞ?」 ゆみ「信じられるか」 智美「まあまあ。それで1度目は告白のときで、2度目は全国大会だったかー?」 ゆみ「その次は公園。その後は学校でだったな。……4回だぞ!」 智美「不幸な偶然だなー」ワハハ ゆみ「どれだけ気まずくなったことか……」 智美「まあ遅くなったけど出来てよかったじゃないか」 ゆみ「……あ、ああ」カアァァ 智美「ちなみにモモたちは知ってるのかー?」 ゆみ「……まあ、見られたしな」プイッ 智美「そうなのかー」ワハハ 智美(後で様子を聞いておこう)ワハハ 睦月「お疲れさま。今日はこれで終わりにしよう」 京太郎「お疲れさまでした! くそー全然勝てなかった」 桃子「あんなとこ見せられたら麻雀で勝たせるわけには行かないっすよね」 京太郎「ちくしょう、いいとこ見せたかったのになあ」 ゆみ「大丈夫。結果には出ていなかったけどよくなってるよ」 京太郎「ありがとうございます!」 智美「むっきーも部長が板についてきたなー」 睦月「いえ、まだまだ先輩たちのようには」ハァ 智美「まあ私にはゆみちんがいたからなー」ワハハ 智美「そうだ。推薦も決まったんだし、ゆみちんも手伝ってあげたらどうだ? 自分の練習も必要だろー?」 ゆみ「いや、引退した私がいては津山もみんなもやりづらいだろう」 睦月「そんなことないですよ。まだまだ教わりたいこともありますし、加治木先輩の練習の手伝いもさせてください」 ゆみ「しかし……」 佳織「えっと、加治木先輩は今も京太郎くんに教えてるんですよね?」 ゆみ「……それは、うん」チラッ 京太郎「ゆみさんも忙しいからずっとってわけじゃないですけど」 佳織「それなら私たちにも教えてくれると嬉しいです」エヘヘ ゆみ「……わかった。それならもう少しお世話になるよ」 桃子「決まりっすね!」 智美「それじゃあ私もお世話になろうかなー」ワハハ ゆみ「……蒲原の勉強を見ながらになるが、よろしく」 一同「よろしくお願いします!」 蒲原「ワハッ!?」 ………… ……… …… … ゆみ「じゃあまた明日」 京太郎「お疲れさまでしたー」 一同「さよならー」 ゆみ「さて、私たちも帰ろうか」 京太郎「はい」 ゆみ「……今日は家まで送ってもらっていいか?」 京太郎「もちろんです! というか毎日送るって言ってるじゃないですか」 ゆみ「君が大変だろう」 京太郎「そんなことないって言ってるのに……」 ゆみ「私の家がもう少し近ければ別なんだが……京太郎に無理をさせたくないという私の気持ちもわかってくれ」 京太郎「それは嬉しいですけど」 ゆみ「まあいいじゃないか。週に1回くらいは君に送ってもらってるんだから」 京太郎「……そうですね。それじゃたまにしか一緒に帰れない分、頑張って送りますよ!」 ゆみ「ああ……いや、ゆっくりでもいいぞ」 京太郎「……はい、じゃあゆっくりめで」 …… … ゆみ「――それは君らしいじゃないか」フフッ 京太郎「そんなことないですって」ムゥ 京太郎「……そういえば今日はなんで送らせてくれたんですか?」 ゆみ「うん?」 京太郎「今週は一度送ったじゃないですか。だから珍しいなって。いや嬉しいですけど」 ゆみ「ああ、なるほど。それは……その、今日君と、しただろう?」カアァァ 京太郎「? ……っ! は、はい」カアァァ ゆみ「あ、あのときはすぐモモたちが来ただろう? だからその、余韻というか、君と2人の時間が欲しかったというか……」 ゆみ「と、ともかく! だから君に送って貰いたいと思ったんだ」 京太郎「は、はい! その……俺も一緒にいたかったです」 ゆみ「そうか……嬉しい」ギュッ 京太郎「!」ドキッ ゆみ「……久々にこの状態でドキドキさせられたかな」フフッ 京太郎「くっ……今度俺がドキドキさせてリベンジしますからね!」 ゆみ(いつもさせられてるんだけどな)ギュッ 京太郎「ゆみさん?」 ゆみ「いや、楽しみにしてるよ」フッ ――加治木宅前―― 京太郎「ゆみさん、着きましたよ」 ゆみ「ああ、もう着いてしまったか」 京太郎「話してると早いですよね……やっぱり俺が毎日送りますよ!」 ゆみ「それはダメだ」 京太郎「強情ですね」グヌヌ ゆみ「それは君の方だろう」 ゆみ「……まあ、その代わりに」 京太郎「?」 ゆみ「……」コイコイ 京太郎「? はい」テクテク ゆみ「――」グッ 京太郎「えっ――!」 ゆみ「」チュッ 京太郎「」 ゆみ「…………」スッ ゆみ「……お、送ってくれたお礼だ。どう、だったかな」カアァァ 京太郎「えっと……」スッ ゆみ「うん? ――!」 京太郎「」チュッ ゆみ「!?」 京太郎「…………」フゥ 京太郎「こんな感じです」ニコッ ゆみ「ば、馬鹿か君は!?」カアァァ 京太郎「ち、違いますよ! 突然されたからよくわからなかったんでもう一度しようと……」 ゆみ「すぐやり返すやつがあるか!」 京太郎「で、でもちゃんと感触はわかりましたよ。柔らかくて……」 ゆみ「……ふぁ」カアァァ 京太郎「……や、やめましょうか」カアァァ ゆみ「あ、ああ。思った以上に恥ずかしいなこれは……」カアァァ 京太郎「それじゃそろそろ帰ります」 ゆみ「うん……なんだか寂しいな。いつもはこんなことないのに」 京太郎「俺もです」 ゆみ「……寄っていくか?」クイッ 京太郎「……ご両親いらっしゃるんですよね?」 ゆみ「母だけな」 京太郎「ま、まだ勘弁してください。心の準備が……」 ゆみ「まあそういうと思ってたよ」 京太郎「明日からはまた毎日部活で会えますね」 ゆみ「そうだな。……今度こそ全国へ行けるように鍛えるから覚悟するように」 京太郎「うっ。甘い部活生活はないんですかっ」 ゆみ「そういうのは部活の後だ」 京太郎「厳しいですね……まあ、俺も強くならないと」 ゆみ「ああ、私も頑張るから京太郎も一緒に頑張ろう」 京太郎「はい!」 ゆみ「……これからもよろしく。大好きだよ、京太郎」ニコッ カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3443.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ ヒソヒソヒソ…… 京太郎「こんにちはー」ガラッ 桃子「こんにちはっすー!」 智美「おー京太郎、モモ」 睦月「思ったより気にしてなさそうだね」 京太郎「? モモなんかしたのか?」 桃子「特に覚えはないっすけど……」 佳織「あれ、もしかして噂になってるの知らない?」 京太郎「噂? 幽霊が出たって噂ですか?」 桃子「その喧嘩買うっすよ」 智美「それくらいじゃ今さら話題にもならないなー」 桃子「先輩だからって遠慮すると思ったら大間違いっすよ! 姿の見えない怖さを思い知るがいいっす!」 智美「実は最近、モモの居場所が匂いでなんとなくわかるようになってなー」ワハハ 桃子「なんと!?」 佳織「智美ちゃん、話が進まないよ」 智美「それもそうだなー」ワハハ 睦月「噂になってるのは京太郎くんたちの方だよ」 京太郎「俺ですか? というか"たち"?」 睦月「うん、京太郎くんと加治木先輩」 京太郎「そ、そうですか。どんな噂が?」ドキッ 睦月「ええと、二人乗りしてたカップルがいて、後ろの女の子が金髪の男の子をギュッと抱き締めてたとか」 京太郎「」 智美「鶴賀で金髪の男子と言ったら京太郎だよなー」 桃子「女子の方は男子の背中に顔をうずめてたと聞いたっす」 智美「まったく。私たちに隠れて大胆なことするじゃないか」 京太郎「」ビクッ 佳織「智美ちゃん、あんまりからかわないの」 睦月「うむ、昨日加治木先輩が抱きついてしまったときたまたま見られて、それが広まったんでしょう」 京太郎「ソ、ソウデスヨ」 桃子「まあそれはわかってるっすよ」 智美「噂話は伝言ゲームみたいなところがあるからなー」 桃子「幽霊がいたとかいう噂もあるっすよね。ちょっと私が見えづらいからって大げさっす」 智美「それは例としてどうかなー」ワハハ 桃子「まだ言うっすか!!」 佳織「もーダメだよ智美ちゃん」フフフ 京太郎「アハハ……」 ゆみ「」ガラッ 京太郎「!」ビクッ ゆみ「すまない、遅くなった……なんだか騒がしいな」 桃子「あ、ゆみ先輩! 部長が酷いんすよー!」 ゆみ「なんだ蒲原? 後輩イジメは感心しないぞ」 智美「心温まる触れ合いのつもりだったんだけどなー」ワハハ 桃子「熱くはなったっすね。怒りで」 ゆみ「何をしているんだ……」ハァ ゆみ「騒いでいたのはそれでか?」 桃子「いや、そもそもは京太郎と先輩のうわ――」 京太郎(まずい! このままじゃ昨日のことがバレちまう!) 京太郎「モモ、ちょっとこっち来い!!」 桃子「もう、なんなんすか?」 京太郎「いいから!」 桃子「あーれー」ズルズル ゆみ「…………」ジー 京太郎「その噂はわざわざ加治木先輩に言わなくていいんじゃないか?」ヒソヒソ 桃子「え? いやでも京太郎みたいに知らないかもしれないっすし」 京太郎「加治木先輩だってあんまり触れられたいことじゃないだろ?」 桃子「むぅ……それは確かにそうっすね」 京太郎「だろ? だから話題に出すのは避けよう」 桃子「わかったっす」 京太郎(よし!)グッ ヒソヒソヒソ…… ゆみ「……」ジー 睦月「どうかしましたか?」 ゆみ「えっ!? い、いや。なんでもない」 睦月「? ……ああ、さっきモモが言おうとした話ですね。それなら――」 京太郎「睦月先輩!! ちょ、ちょっとこちらへ」ガシッ 睦月「うわっ!? い、いきなりどうしたの?」 京太郎「とりあえず来て下さい。モモ、部長たちには頼んだぞ」 桃子「了解っす」 京太郎「それじゃあ睦月先輩。行きましょう」グイグイ 睦月「ちょ、ちょっと。あんまり押さないで……」 ゆみ「……」ジー 京太郎「」ペラペラ 睦月「」ウンウン 京太郎「」ペラペラ 睦月「」ンー 京太郎「」ペラペラペラ 睦月「」……コクッ 京太郎「」グッ 桃子「ジーっと見てどうしたっすか?」 ゆみ「っ!? い、いや。なんでもないぞ。そ、それよりさっきの話は……」アセアセ 桃子「あ、あれっすか? あれもなんでもないっす」アセアセ ゆみ「そ、そうか」 桃子「そ、そうっすよ」 京太郎「ふう……」 ゆみ「あ、須賀くん」 京太郎「か、加治木先輩!?」ドキッ 京太郎(昨日と今日の朝は二人乗りの勢いで話進められたけど、改めて加治木先輩と話すと思うと緊張が!) ゆみ「津山やモモと何の話をしていたんだ?」 京太郎「い、いえ。なんでもないですよ?」 ゆみ「だが……」 京太郎「モモ、速く麻雀打とうぜ!」ダッ ゆみ「あっ」 桃子「えーと……待つっす京太郎ー!」タタタ 桃子「もーさっきからなんなんすか」 京太郎「り、理由はわかるだろ?」 桃子「わかるっすけど、やり方ってものがあるっす」 京太郎「うぅ……」 佳織「まあまあ、京太郎くんも焦ってたんだよ」 京太郎「佳織先輩……」ウルウル 佳織「もうちょっといいやりかたはいくらでもあったと思うけどしょうがないよ」 京太郎「ぐはっ!」 佳織「えっ、えっ!?」 睦月「悪気がない分キツそうだね」 京太郎「あ、睦月先輩。一緒に打ちません?」 睦月「立ち直り早いね……いいけど、今日も負けないよ」 京太郎「望むところです」 ゆみ「……」ジー 智美「どうしたゆみちん?」 ゆみ「いや、仲がいいなと思ってな」 智美「まあ2つ違いよりは同い年や1年違いのほうが話しやすいよなー」ワハハ ゆみ「それはそうだが……」 智美「もしかして拗ねてるのかー」ワハハ ゆみ「なに?」 智美「ゆみちんとの会話を途中で切り上げて他の女の子に走ったんだもんなー」 ゆみ「ん……」 智美「でもな、ゆみちん。あれには京太郎なりの理由があったんだ。だからあんまり責めちゃダメだぞ」 ゆみ「そうだな。それについてはそんなに気にしていない」 智美「ワハ?」 ゆみ「須賀くんは理由もなしにそういうことをする人間ではないからな」 ゆみ「私に言えない何かがあったことくらいわかるし、詮索する気もない」 ゆみ「だから今の私は、蒲原が言ったとおり拗ねているんだろう」 智美「まさかツッコミがないどころか、言ったとおりなんて言われるとは思わなかったぞ」 ゆみ「はは……私は須賀くんとあんな風には話せていないからな」 ゆみ「帰りが一緒だから話す機会には恵まれていると思うのだが、だからこそな」 智美「そんなことないと思うけどな」 智美(キャラの問題もあるしなー) ゆみ「だが……」 智美「どうしても気になるならこっちから歩み寄るなきゃダメだと思うぞ」 ゆみ「歩み寄る?」 智美「こっちは年上だからなー。後輩から話しかけるのはやっぱり気後れするだろー?」 ゆみ「ふむ……」 智美「だからこっちからこういう感じで話しかけていいんだぞと伝えないと、向こうも話しづらいだろ?」 ゆみ「なるほど」 智美「だからゆみちんから行動しないとダメだぞ。アプローチしたいならなおさらなー」ワハハ ゆみ「な、なにを!?」 智美(からかい甲斐があるなー)ワハハ ――部活終了―― ゆみ「須賀くん」 京太郎「な、なんですか?」ドキッ ゆみ「いや、昨日の話について確認しようと思ったんだが……」 京太郎「き、昨日のというと」 ゆみ「ほら、私に出来ることならなんでもやると言っただろう」 京太郎(なんでも……)ホワンホワン 京太郎(な、何考えてんだ俺は!)ブンブン ゆみ「?」 智美「ゆみちん、あんまりそういうことは言わない方がいいと思うぞー」ワハハ ゆみ「なぜだ? 昨日今日と助けられたんだからこのくらいはしてもいいだろう」 智美「健康な男子高校生には毒だぞー」 ゆみ「毒?」 智美「あー……」チラッ 京太郎「な、なんですか!? お、俺はなにも」 智美(大丈夫そうだなー) 智美「とりあえず、せめて京太郎以外には言わないようになー」 ゆみ「それはまあ助けてくれたのは須賀くんだしな」 智美「……まあいいかー」 桃子「それで京太郎は何を頼むんすか?」 京太郎「うわっ!? 突然現れるなよ」 桃子「失礼っすねー。で、どうするんすか?」 京太郎「えーと……」 桃子「エッチなこと頼んじゃダメっすよ」ヒソ 京太郎「ばっ、た、頼むわけねえだろ!?」 ゆみ「うん?」 京太郎「な、なんでもないですよ!」 桃子「ふふふ……それじゃあ私はむっちゃん先輩とかおりん先輩と先に行ってるっすよー」 京太郎「言うだけ言ってそれかこの野郎!」 桃子「野郎じゃないっすー!」タッタッタッ 京太郎「モモめ……」 智美「まあまあ。まだ決まってないんなら提案があるけどいいかー?」 京太郎「なんです?」 智美「日曜日にみんなで遊びに行こう!」 ゆみ「待て待て。大会も近いのに……」 智美「そうやって根を詰めすぎなんだよゆみちんは」 智美「京太郎とモモと佳織が入って本格的に大会を目指してから2週間、大会まで後2週間。休むにはちょうどいいだろー?」 ゆみ「しかし……というかそもそも須賀くんに対する埋め合わせなんだが」 京太郎「い、いえ。俺もそれがいいです」 京太郎(このまま1人で考えてると色々とドツボにはまりそうだしな……) ゆみ「むぅ……」 智美「あーもちろん足が治ってないなら無理はさせないけどな。実際どうなんだー?」 ゆみ「まだ少し痛むが、まあ日曜日までには治るだろう」 智美「なら決まり。みんなには私から伝えとくぞ」 ゆみ「……まあ息抜きは必要か。須賀くんは本当にそれでよかったのか?」 京太郎「え、ええ。もちろんです」メソラシ ゆみ「っ……」 京太郎(加治木先輩と遊びに……い、いや。他の4人もいるんだ。いつもの部活と一緒だ! うん!) 智美(やっぱりやったほうがよさそうだなー) ――分かれ道―― 智美「それじゃまたなー」 京太郎「はい、さようなら……そうだ、部長。日曜日のことは」 智美「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと言っておくから任せとけー」ワハハ 睦月「何の話ですか?」 智美「帰り道で話すよ」 ゆみ「別に今話してもいいと思うんだが……」 智美「まあまあ。それじゃあなー」 佳織「さようなら」 桃子「さよならっすー」 睦月「それではまた」 ゆみ「ああ、またな」 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎(や、やっぱり緊張するな……) 京太郎(何か話したいけど何も思いつかねえ) ゆみ「なあ、須賀くん」 京太郎「は、はい!!」 ゆみ「部活の前にモモや津山と何か話をしていたな」 京太郎「えーと、それは……」 ゆみ「ああいや、別に何を話していたのか知りたいというわけではないんだ」 京太郎「?」 ゆみ「その、なんだ。私に言えないことも言えるような仲なんだなと思ったというか」 京太郎「い、いえ。そういうわけじゃ」 ゆみ「私は何を言っているんだろうな……すまない。忘れてくれ」 京太郎「は、はい……」 --------------------------------------------- 京太郎「…………」テクテク ゆみ「…………」カラカラカラ 京太郎(ああもう、加治木先輩にあんな顔させて、何やってんだ俺) 京太郎(……ていうか今なら別に言ってもよかったんじゃないか? 元々モモたちにバレたくなかったわけだし) 京太郎(よし、それなら今からでも……) ゆみ「須賀くん」 京太郎「!?」ビクッ ゆみ「その、あ、歩いていたら足がまた痛んできたんだ」 京太郎「えっ? 大丈夫ですか!?」 ゆみ「ああ、まあ心配される程ではないんだが家まではちょっとつらいかもしれん」 京太郎「そんな……」 ゆみ「だから、その、もし良ければでいいん――」 京太郎「加治木先輩! 今日も俺に送らせて下さい!!」 ゆみ「」ビクッ 京太郎「悪化したら大変です! その、また恥ずかしい思いをさせることにはなりますが」 ゆみ「あ、ああ。須賀くんがよければこちらこそ頼みたい」 京太郎「俺のことなら気にしないで下さい。加治木先輩のほうが大切です」 ゆみ「う……」 京太郎「自転車借りますね。よ……っと。それじゃ後ろに乗って下さい」 ゆみ「あ、ああ」 京太郎「それじゃ出しますよ」 ゆみ「ああ、よろしく」 京太郎「」シャー ゆみ(……ここまで本気で心配されると胸が痛むな)シャー ゆみ(でもまあ、目の前で隠し事をされたんだ。これくらいは許されるだろう)ピトッ 京太郎「」ビクッ ゆみ(おそらくこれが最後だろうし、たっぷりこうしていよう……) ――加治木宅前―― 京太郎「つ、着きました」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「明日の朝はどうします?」 ゆみ「それまでには治っていると思う。2日間ありがとう」 京太郎「気にしないでください。俺が好きでやってることですから」 ゆみ「そういうわけにもいかないさ。日曜日のとは別に何か言ってくれても構わないぞ」 京太郎「はは……じゃあ日曜日は麻雀のことは考えないで全力で遊んでください」 ゆみ「それは難しいな……」 京太郎「加治木先輩はそれくらいでちょうどいいですよ」 ゆみ「むぅ……そんなに麻雀ばかり考えているように見えただろうか」 京太郎「見えたっていうか事実じゃないですか?」 ゆみ「……それなら気をつけないといけないな」 京太郎「是非気をつけて下さい……それじゃ、そろそろ帰ります」 ゆみ「ああ、さよなら。……き、京太郎くん」カアァァ 京太郎「はい、さよ……い、今なんて!?」 ゆみ「き、聞き返すなバカ!!」 京太郎「す、すみません! そ、それでは失礼します。……ゆ、ゆみ先輩」カアァァ ゆみ「あ、ああ。またな京太郎くん」 京太郎「はい、ゆみ先輩」 ゆみ「ああ、京太郎くん」 京太郎「はい、ゆみ先輩」 ゆみ「京太郎くん」 京太郎「ゆみ先輩」 ゆみ「……京太郎くん」 京太郎「……ゆみ先輩」 ゆみ「…………早く帰れ」カアァァ 京太郎「は、はい」カアァァ --------------------------------------- 智美「……というわけで、日曜日に遊びに行こうという話になったんだ」 睦月「元々部活のつもりでしたし大丈夫ですけど、結構急ですね」 智美「うんうん。それで、ちょっと相談があるんだ」 佳織「相談?」 智美「ああ、私たちはドタキャンして2人きりにしたらどうかなと思ってなー」 睦月「2人きりですか?」 智美「なんかゆみちんが京太郎とモモたちみたいに仲良く話せないとか思ってるみたいでなー」 桃子「そんなことないと思うっすけど」 智美「私もそう思う。ただまあこういうのは本人の気持ちの問題だからなー」 智美「それに実際京太郎が下の名前で呼んでないのゆみちんだけだから、あながち的外れとも言えないしなー」 智美「まあそれはゆみちん自身がそうさせたんだけど……」 智美「部活とか帰り道じゃなくて、休みの日に2人で1日過ごせればそんなことも思わなくなると思うんだ」 睦月「うーん、言ってることはわかりますけど……」チラッ 佳織「そうだね。それだとちょっと……」チラッ 桃子「?」 智美「うん、まあだから最初はみんなで行こうって話にしたんだ。モモはどう思う?」 桃子「私っすか?」 智美「ああ、もちろんモモの都合もあるだろうから、嫌ならそう言ってくれて構わないぞ」 智美「仲良くさせる機会なんて他にも作れるからなー」 桃子「嫌なわけないじゃないっすか。私は賛成っすよ?」 一同「……」ポカーン 桃子「ど、どうしたっすか?」 智美「い、いや。ちょっと意外でなー」 睦月「うむ。本当にいいのか?」 佳織「桃子さん、嫌ならそうはっきり言ってくれていいんだよ?」 桃子「はっきりも何も、ゆみ先輩と京太郎が仲良くなるならそっちのほうがいいことじゃないっすか」 桃子「それはまあみんなで遊びに行けないのは寂しいっすけど、それはまた次行けばいいことっすよ」 睦月「そういうことじゃなくて……」 佳織「ええと、なんていうか……」 桃子「?」 智美「つまりだな。単刀直入に言うと、モモは京太郎のこと好きなんじゃないのか?」 桃子「好き……それはいわゆる男女関係的な好きっすよね」 一同「」コクコク 桃子「うーん……」 一同「……」 桃子「うーん……分かんないっす」 睦月「分からない?」 桃子「一人ぼっちだった私を見つけてくれた京太郎のことは好きっすよ。でもそれが恋愛的なものかどうかは分かんないっす」 桃子「元々深く人と関わったことがなかったっすから。友達的な好きなのか、恋愛的な好きなのか。区別がいまいちつかないんすよ」 智美「それなら判断がつくまで保留というか、少なくともデートさせたりとかはしないほうがいいんじゃないかー?」 桃子「それはそうかもしれないっすけど、でも今回はそうしたらきっと後悔するっす」 智美「後悔?」 桃子「京太郎は私を見つけてくれて、ゆみ先輩は私の世界を広げてくれた」 桃子「……私は京太郎と同じくらいゆみ先輩のことも好きなんすよ」 桃子「高校に入るまで誰も私を見てくれなかったっすけど、今では5人も私を見てくれる人がいる」 桃子「それはゆみ先輩と京太郎のおかげっす」 桃子「私にとってはその2人が仲良くなってくれることが何よりも大事っす。少なくとも今は」 桃子「もしかしたら後で後悔するかもしれないっすけど、今させなくても絶対後悔するっす。だから2人で行かせたいっすよ」 佳織「桃子さん……」ウルウル 桃子「ちょ、そんな反応されると恥ずかしいっす!」 智美「うん、そういうことなら日曜日は2人にさせるぞー」 睦月「わかりました」 智美「ゆみちんと京太郎の集合場所はあそこの神社の前にするから、みんなはあそこからちょっと離れたところに集合なー」ワハハ 佳織「覗くつもりなんだ!?」 智美「こんな楽しそうなこと放っておく手はないぞー」ワハハ 睦月「色々と台無しですよ……」 桃子「私にあれだけ言わせてオチを付けるとは思わなかったっす」 智美「そこまで不評だとは……じゃあやめるか?」 睦月「い、いえそれは……」 佳織「み、見守りたいかなーなんて」 桃子「行くっすよ!!」 智美「……みんな好きだなー」ワハハ ………… ……… …… … 智美「みんな遅いなー」 智美「いや、来ていてもわからないのかもしれないな。私の変装は完璧だからなー」ワハハ 睦月「……もしかして部長ですか?」 智美「おお、よく見つけられ……どちらさま?」 睦月「津山です!」 智美「むっきーなのか!? 全然気づかなかったぞ……」 睦月「髪を二つ結びにしてメガネかけただけじゃないですか」 智美「ということはそっちにいるのはもしかして……」 佳織「私にも気づいてなかったの!? 智美ちゃん酷いよー」 智美「気づく気づかないというか、もはや誰って感じだなー……」 佳織「ストレートにしてコンタクトに変えただけなのに……」 睦月「そんなに印象変わりますか?」 智美「髪もあるけど服装がなー。2人ともそんな服持ってたのかー」 睦月「あ、これは昨日2人で交換しました」 智美「ワハ!?」 佳織「やっぱり普段の印象と変えなきゃダメかなって思って」 智美「ふ、2人ともやる気出しすぎじゃないか……?」 佳織「デートを覗くんだしこのくらいやらないと!」 智美「そ、そんなものか……?」 佳織「それより、智美ちゃんのそれはちょっと……」 智美「え?」 睦月「サングラスに帽子、ですか……」 智美「て、定番だろー?」 桃子「むしろ余計目立つっすよ」 智美「モモいたのか!?」 桃子「最初っからいたっすよ! いやでも正直その変装はないっす」 智美「なっ!?」キョロキョロ 佳織「」サッ 睦月「」サッ 智美「な、なんで目を合わせないんだ」 睦月「いえ、まあその……」 佳織「ええっと、ひと目で智美ちゃんだってわかったかなって」 智美「!?」 桃子「言い出しっぺがそれはどうかと思うっすよ」 智美「そ、そういうモモは何も変装してないじゃないかー!」 桃子「……本気を出した私が見つかると思うっすか?」スゥ 智美「うっ……」 睦月「ま、まあどちらにしろ極力視界に入らないようにするわけですし」 桃子「見つからないように頑張るっす!」 佳織「気をつけてね!」 智美(絶対私はおかしくないんだけど……) 智美「なのにこの敗北感はなんなんだろうな……」ワハハ… 桃子「それにしても京太郎もゆみ先輩も遅いっすね」 睦月「もう5分前なんだけどなあ」 佳織「あの2人が時間前に来ないなんて意外だね」 智美「ああ、集合時間は12時って伝えておいたからなー」ワハハ 桃子「えっ、私は11時って聞いたっすよ?」 智美「ここにいる3人には11時って連絡したんだ」 佳織「なんでそんなことを……」 智美「下手したらあの2人は30分前に集合しそうだからなー」 睦月「それはわかりますが……」 智美「まあまあ。それまでガールズトークでもしてようじゃないか」 桃子「ガールズトークって言うほど潤いのある会話は出来そうにないっすけどね……」 智美「女子がやってればそれがガールズトークだ。細かいことは気にするなー」ワハハ 佳織「智美ちゃん……」 ――15分後―― 睦月「へえ、部長、免許取ったんですか」 智美「大会が終わったらみんなでドライブに行きたいなー」 桃子「楽しみっす! ――あ、京太郎が来た……って早いっすね!?」 佳織「京太郎くんは集合時間を12時って思ってるはずだよね……?」 睦月「50分前……」 智美「さ、さすがに予想外だな」 桃子「11時集合にしててよかったっすね……」 智美「だ、だろー」 ――10分後―― 睦月「あ、加治木先輩が……」 桃子「早すぎるっすよ!!!」 智美「あの2人のことをなめてたなー」ワハハ 睦月「加治木先輩、いつもこんなに早く来てたんですね……」 佳織「ま、まあ早めに集まってよかったよ」 智美「それもそうだなー。さて、それじゃかおりん。メールをするんだ」 佳織「うん…………これでよし。ちゃんと送ったよ」 睦月「私とモモは昨日送りましたから、後は部長だけですね」 智美「ああ、ちょっとしたら送るぞー」 --------------------------------------- 京太郎「あ、ゆ、ゆみ先輩。おはようございます」 ゆみ「まだ慣れていないんだな」フフッ ゆみ「おはよう、京太郎くん。……というか早いな」 京太郎「ゆみ先輩だって40分前に来てるじゃないですか。どっちもどっちです」 ゆみ「まあそれはそうか」 京太郎「ん……あれ、佳織先輩からメールが」 ゆみ「私にも来たな」 京太郎「今日は行けません……佳織先輩もかよ!!」 ゆみ「これで私たちと蒲原以外が休みか……なんだか嫌な予感がしてきたな」 京太郎「同感です……」 ゆみ「まあ今から心配してもしょうがない。時間まで待とう」 京太郎「そうですね」 ゆみ「それまでは……そうだな。麻雀関連で何か聞きたいことはあるか?」 京太郎「今日は麻雀を忘れて遊ぶことにしたような……」 ゆみ「なに、集まるまでだよ。そんなに熱を入れるつもりはないさ」 京太郎「そういうことでしたら。そうですね……」 京太郎「質問という感じじゃないですけど、皆さん守備堅いですよね。俺はどうしても振り込んじゃうので」 ゆみ「京太郎くんは押しすぎだ。相手が低そうに見えるからといって、何でもかんでも突っ張るのはやめたほうがいい」 京太郎「うっ……で、でも稼げるときに稼がないと勝てないじゃないですか!」 ゆみ「満貫以上のような高い手なら時と場合によるが、安い手で押すのは愚策だ」 ゆみ「ダマテンは仕方ないが、リーチに突っ張るのはリターンよりリスクのほうが大きい」 ゆみ「まあ余程の根拠があるか、自分の感覚を信じてやるのならそれはそれでいいんだがな ゆみ「ただなんとなくというのであれば押すべきじゃない」 京太郎「おっしゃるとおりです……」 京太郎「ちなみにその守備はどうやって身につけたんですか?」 ゆみ「ああ、最初はネットを中心にやっていたからな。上がり重視より振り込みを少なくするほうがトータルで見ると成績がいいんだ」 ゆみ「3人ともそれで自然と身についた。たださっき言ったこととは逆になるがそれも良し悪しあってな……」 京太郎「振り込まないのはいいことじゃないですか」 ゆみ「ああ、それはもちろんだ。だが大会だとちょっと勝手が違ってな」 京太郎「というと?」 ゆみ「ネトマなら4位にならなければレートは下がらないから、最下位にならないことを目指すんだ」 ゆみ「そうすれば自然にレートは上がっていくからな」 ゆみ「だけど大会では得点で順位が決まるだろう? 特に団体戦では1位にならなければ次に進めない」 ゆみ「守備的なのは悪いことではないんだが、早めにオリるということでもある。得点を稼ぎづらいから、大会向きではないんだ」 京太郎「なるほど……」 ゆみ「昔からいる私たち3人はその傾向が強い。そういう意味でモモや妹尾には期待しているな」 京太郎「モモはステルスモードに入れば守備を気にしなくていいですからね。佳織先輩も役満バンバン出しますし」 ゆみ「ああ、2人とも頼れる部員だ。……まあモモはともかく、初心者の妹尾に頼るというのも情けない話だがな」 京太郎「情けないなんてことないですよ。同じ鶴賀麻雀部の部員なんですから、頼れることは頼っちゃいましょう!」 ゆみ「…………」 京太郎「あ、あれ。変なこと言いました?」アセアセ ゆみ「いや、君の言うとおりだと思ってな。情けないなんて思う必要はない、か」 ゆみ「きっとそういう意識が私には足りていないんだろうな」フッ 京太郎「ええと……?」 ゆみ「君に教えられたというだけだよ。あまり気にしなくていい。……ん、蒲原からメールか」 京太郎「今日は行けなくなった……ですか」 ゆみ「まったく、白々しい」ハァ 京太郎「どうします?」 ゆみ「ここまでお膳立てされたんだ。2人で遊ぶことにしよう」 京太郎「俺はいいですけど……」 ゆみ「私も構わない。これで決まりだな」 京太郎「おお……2人乗りをあれだけ渋ってた人とは思えないです」 ゆみ「2人乗りとこれでは全然違うだろう」 ゆみ「……それに、この間の私の態度が原因だろうしな」ボソッ 京太郎「すみません、今なんて?」 ゆみ「何でもない。それより京太郎くん、エスコートよろしく頼むぞ?」」 京太郎「ま、まだこの辺りは全然わからないんですが……」 ゆみ「ああ、アドリブがどれほど利くのか楽しみにしているよ」フフッ 京太郎「えっ!?」 ゆみ「ほら、待ち合わせ場所でいつまで立たせているつもりなんだ?」 京太郎「はっ!? そ、それじゃあお昼も近いですしどこかで食べたりとか……」 ゆみ「そうだな。京太郎くんのオススメの店に案内してくれ」 京太郎「お、オススメですか……」ダラダラ ゆみ「……すまない、からかいすぎたな」クスッ 京太郎「心臓に悪いんでやめて下さい……」 ゆみ「……? 確かにからかいすぎたとは思うが、いくらなんでも緊張しすぎじゃないか?」 京太郎「そ、それはその……」 京太郎(相手がゆみ先輩だからです!! とは言えねえ……!) ゆみ「……まあいい、近くにファミレスがあるからそこへ行こうか」 京太郎「はい!」 ---------------------------------------- 智美「お昼はファミレスかー」 睦月「定番ですね」 佳織「わあ、デートしたことあるんだ」 睦月「……友達で遊びに行くときの定番ですね」 佳織「ご、ごめんね……」 睦月「いや、気にしないで……」 智美「なんで傷を抉りあってるんだ」ワハハ 桃子「ドリンクバー持ってきたっすよー」 智美「おお、ありが……このよくわからない色はなんだー?」 桃子「いやードリンクバーでミックスするの一度やってみたかったんすよ」 智美「今まで麻雀部でやられたことなかったから無警戒だったなー」ワハハ… 智美「さて、佳織とむっきーにはどんなジュースが……」 桃子「かおりん先輩には頼まれてたオレンジジュースっす」 佳織「ありがとー」 智美「えっ」 桃子「むっちゃん先輩はアイスティーっすよね」 睦月「うむ、ありがとう」 智美「ワハ!?」 桃子「私は烏龍茶で……」 智美「ちょ、ちょっと待った!」 桃子「どうかしたっすか?」 智美「な、なんで2人は普通のなんだ!?」 桃子「それを頼まれたからっすよ?」 智美「確かに何でもいいって言ったな……」 桃子「小学生の頃から一度友達にやってみたいって思ってたから感謝してるっす!」キラキラ 智美「そ、そうかー」ワハハ 智美(純粋な目で見られている……!) 智美(こ、これは飲まないとダメな雰囲気か……?)チラッ 睦月・佳織「」コクッ 智美「ううぅ……」 桃子「」ワクワク 智美「えいっ」ゴクゴク 睦月・佳織「……」 智美「……うまいっ!!」 睦月・佳織「えっ」 智美「これうまいぞー! よければこれからも作ってくれー」ワハハ 桃子「適当に混ぜたからまた作るのは無理っす……」 佳織「智美ちゃん、その色で本当においしいの?」 智美「ああ、佳織も一口飲んでみるかー?」 佳織「じゃ、じゃあ」ゴクゴク 佳織「……おいしい!!」 睦月「じゃあ私も」ゴクゴク 睦月「……ほんとだ、おいしい!!」 桃子「むぅ、おいしいなんてつまらないっす……」 智美「まあまあ。モモも飲んでみろー」 桃子「んー」ゴクゴク 智美「どうだー?」 桃子「……マズイじゃないっすか!!」 智美「うまいわけないだろー!!」 桃子「かおりん先輩もむっちゃん先輩もノリよすぎないっすか!?」 佳織「騙されたと思うと悔しくて……」 睦月「こうなったらモモにも飲ませようと思って」 桃子「くっ!! 思えばあれがおいしくなるわけないっすよね!!」 智美「だからなにを混ぜたんだ!?」 桃子「騙されたのに教えると思うっすか!?」 --------------------------------------- <サキニヤッタノハソッチダロー! <ソレハソレッス! ゆみ「向こうが騒がしいな」モグモグ 京太郎「そうですねえ」ジー ゆみ「ここのパスタはなかなかおいしいぞ」モグモグ 京太郎「そうですねえ」ジー ゆみ「……君はバカか?」 京太郎「そうですねえ」ジー ゆみ「……おい!」 京太郎「は、はい!?」ビクッ ゆみ「まったく、先に食べ終わったからといって上の空なのは感心しないな」 京太郎「す、すみません」アセアセ 京太郎(見惚れてたとは言えないな……) ゆみ「京太郎くんとお昼を一緒に食べるのはこれが初めてだったな」モグモグ 京太郎「学年も違いますし、部で食べることもないですしね」 ゆみ「去年は何度かやったんだが……今度部室かどこかで食べようか」モグモグ 京太郎「いいですね。楽しみです」 ゆみ「ああ……ふぅ、おいしかった」 京太郎「ドリンクバー何か取ってきましょうか?」 ゆみ「いや、大丈夫だ。それよりこれからどこに連れて行ってくれるのか聞かせて貰わないとな」 京太郎「えっ!? い、いやさっきのは冗談だったんじゃ……?」 ゆみ「他人が話しかけているのに気づかなかったんだ。もちろん何か考えてくれていたんだろう?」 京太郎(意外と気にしてた!?) ゆみ「ほら、あんまり待たせるとこのまま帰ってしまうぞ?」 京太郎「え、ええとですね……」 京太郎(な、何かないか!)キョロキョロ 京太郎(ん? これは……) 京太郎「ゆみ先輩! ここ行きましょう!」 ゆみ「どれどれ……水族館か」 京太郎「はい。多分そんなに行くことないでしょうし、久しぶりに行けば楽しいと思うんですよ」 ゆみ「確かにここ数年行っていないな」 京太郎「なら行ってみません? ちょうどここに優待券も置いてありますし」 ゆみ「……一応聞いておくが、それが目についたからという理由ではないよな?」 京太郎「あ、あはは……」 ゆみ「……まあいいか。そこへ行くとしよう」 京太郎「い、いいんですか?」 ゆみ「久しぶりなのは本当だしな。聞いてて行きたくなったよ」 京太郎「それならよかったです。もう出ます?」 ゆみ「そうだな。早く行こうか」 --------------------------------------- 智美「2人を追って着いたのがここかー」 睦月「水族館ですか。デートコースの定番ですね」 桃子「まあ優待券ありきだとは思うっすけどねー」ピラピラ 佳織「イルカショーだって! 可愛いんだろうなー」 智美「2人がどこに行くかよく調べてくれたなー、モモ」 桃子「麻雀部に入って私の影の薄さは磨かれたっすからね! それなりに自由自在に出来るっすよ」 智美「おお、凄いなー」 睦月「さすがモモ」 佳織「桃子さん凄いよ!」 桃子「素直に褒められると照れるっすね」テレテレ 睦月「ふむ……体質を悪用するのはよくないと思うぞ」 智美「……あんまり他人の恋路に踏み入るのはどうかと思うぞ?」 桃子「先輩たちもノリノリだったじゃないっすか!」 睦月「いや、こういう反応を望んでいるのかと」 桃子「照れ隠しっすよ! わかって欲しいっす!」 佳織「わかってやってるんだよきっと」 桃子「きっとというのが不安っすね……」 --------------------------------------- 京太郎「この水族館長野で一番大きいらしいですよ」 ゆみ「ほう、そうなのか」 京太郎「人も結構多いですね」 ゆみ「長野には海がないから……というのはあんまり関係ないか」 京太郎「それじゃあ早速入りましょうか」 ゆみ「ああ」 ………… ……… …… … 京太郎「最初は熱帯ゾーンですね」 ゆみ「色とりどりの魚が可愛らしいな」 京太郎「アロワナは大きいですねー」 ゆみ「世界最大級の淡水魚だったか。見た目のインパクトも凄いな」 京太郎「あの口は特徴的ですよね。……おお、水から飛び出して虫を食べてる」 ゆみ「見た目によらず動きが早いな」 京太郎「あっ、クマノミがいますよ!」 ゆみ「ファインディング・ニモだな。親子の愛情が感じられて好きだったよ」 京太郎「今度続編もやるらしいですよ」 ゆみ「そうなのか」 京太郎「その……公開されたら一緒に見に行きませんか?」 ゆみ「えっ……ああ、いいぞ。楽しみだな」 京太郎「ほんとですか! やった!!」 ゆみ「よ、喜びすぎだ」カアァァ 京太郎「次は餌やりが体験できるコーナーですね」 ゆみ「凄い数の鯉だな」 京太郎「幸福池っていうらしいですよ」 ゆみ「ふむ、特定の色の鯉に餌をあげると願いごとが叶う……か」 京太郎「……特定の色ってなんなんですかね?」 ゆみ「……それも含めて運試しというところなのか?」 京太郎「とりあえず餌あげてみましょうか」 ゆみ「そうだな。珍しそうな色の鯉にあげてれば当たるだろう」 京太郎「えい!」ポーイ ゆみ「それっ!」ポーイ 京太郎「……当たったかなあ」 ゆみ「それは神のみぞ知るだな」 京太郎「ゆみ先輩の願いごとはなんです? やっぱり麻雀で全国行けますようにとかですか?」 ゆみ「いや、違う。……それに、他人に聞くときはまず自分から言うものだぞ?」 京太郎「俺ですか? 俺は先輩たちが全国に行けますようにってお願いしました。一緒だと思ったんですけどね」ハハハ ゆみ「ふふ、それならある意味一緒のようなものだよ」 京太郎「え?」 ゆみ「私は京太郎くんが全国に行けますようにとお願いしたからな。お互いがお互いに同じことを祈ったんだから一緒だよ」 京太郎「ぜ、全国ってハードル高いですね……」 ゆみ「言っておくが私たちも大会に出るのは初めてだぞ? 無理を言っているのは君も同じだ」 京太郎「それはそうですが……」 ゆみ「なに、所詮はおまじないだ。あんまり気負わず喜んでくれると嬉しい」 京太郎「……そうですね。俺も頑張ります!」 ゆみ「うん、その意気だ」 京太郎「お待ちかねのイルカショーですよ!」 ゆみ「確かに楽しみにしていたが、お待ちかねというほどではないぞ」ソワソワ 京太郎(そんなにソワソワして言われてもなあ) ゆみ「どうする? 前のほうに行くか?」グイグイ 京太郎「どうするというか引っ張ってるじゃないですか!?」 ゆみ「な、なんのことだ?」 京太郎「先輩……まあともかく、前のほうはやめときましょう」 ゆみ「何故だ!? ドルフィくんが近くで見られるんだぞ!?」 京太郎「そのうちわかりますよ。だから座るのは真ん中辺りにしておきましょう」 ゆみ「君がそこまでいうなら……」 ゆみ「おお!」 京太郎「すげー、尾ビレで水の上歩いてる」 ゆみ「人を乗せて運んでる!?」 京太郎「プールの端から端まで鼻の上に人を乗せて……初めて見た」 ゆみ「おー!」 京太郎「定番ですけどジャンプで輪を連続してくぐるのは見てて楽しいですね」 ゆみ「……なあ京太郎くん。やっぱり前で見ててもよかったんじゃないか?」 京太郎「さっきが小さいジャンプだったから……そろそろですよ」 ゆみ「?」 調教師「さあ次はドルフィくんの得意技、大ジャンプです! 見事このハードルを越えることが出来るでしょうか!」 ゆみ「」ドキドキ 調教師「ドルフィくん行くよー!」ピッ ドルフィ「」ジャンプ バッシャーーン!! 調教師「見事ハードルを越えましたドルフィくんに、盛大な拍手をお願いします!」パチパチパチ <ウワッビショビショニヌレタッス!! <ダカラヤメトコウッテイッタロー!? 京太郎「ほら、前のほうだとあんな風にジャンプしたときの飛沫がかかることがあるんですよ」 ゆみ「思ったより大量にかかるんだな……」 京太郎「いや、あれはさすがに運が悪かったんだと思います」 ゆみ「なんにせよ君のおかげで濡れずに済んだよ。ありがとう」 京太郎「どういたしまして……それより前で濡れてた人蒲原先輩に似てませんでした?」 ゆみ「ああ、確かに似ていたな。だが周りに3年の友人も、妹尾や津山の姿もなかったから別人だろう」 京太郎「なんとなくあの辺りの雰囲気が麻雀部っぽかったんですが……まあでも先輩たちがいなかったんですから違いますよね」 ゆみ「そうだな。それに隠れてついて来ているなら私たちの前に座ったりしないさ」 京太郎「それもそうですね」 京太郎「最後は海水魚コーナーですか」 ゆみ「最後だけだいぶ括りが広いな」 京太郎「きっと色々あるんですよ。あ、2万匹のイワシ玉とかあるみたいですよ」 ゆみ「2万匹とは凄いな」 京太郎「えーと、でも……」キョロキョロ ゆみ「……見当たらないな」 京太郎「ですねえ。あ、これ……」 ゆみ「……用意していたイワシはサメやアジに食べられてしまいました」 京太郎「……魚の世界も厳しいんですね」 ゆみ「狭い水槽だから玉になったくらいでは誤魔化せなかったんだろうな」 京太郎「……スイミー」ボソッ ゆみ「あれは海だし、大型の魚に化けていただろう!」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎「次、行きましょうか」 ゆみ「ああ……」 京太郎「あ、先輩! カジキマグロですよ!」 ゆみ「ほう」 京太郎「え、ええと……加治木先輩とカジキマグロで……」 ゆみ「ああ」 京太郎「その……」 ゆみ「どうした? 続けろ」 京太郎「すみませんでしたぁ!!」 ゆみ「わかればいい」 京太郎「でも水族館でカジキマグロって珍しくないですか?」 ゆみ「カジキマグロは外洋で泳いでいる魚だからな。水槽の中では壁やガラスにぶつかってすぐ傷つくから、飼育に向かないんだ」 京太郎「詳しいですね」 ゆみ「昔何度もからかわれたからな。意地になって調べてやった」 京太郎「……すみませんでした!」 ゆみ「謝るな!」 京太郎「おお、マンボウ!」 ゆみ「初めて見たが思っていた以上に大きいな」 京太郎「知ってます? マンボウってプランクトンの一種なんですよ」 ゆみ「ああ、知っている」 京太郎「えっ」 ゆみ「プランクトンは浮遊生物という意味です。マンボウも泳ぐ力が弱くて海流に逆らえないため、プランクトンの一種に含まれます」 ゆみ「そこに書いてあるのを読んだんだろう? 私もさっき読んだよ」 京太郎「あ、あはは。よく見てますね」 ゆみ「こういうものが目につく質だからな。それにここに書いていないマンボウの特徴も知っているぞ?」 京太郎「へー。どういうのがあるんですか?」 ゆみ「さっき言ったようにマンボウは泳ぐのが下手で岩にぶつかってよく死んでしまうんだ」 ゆみ「水族館ではそれを防ぐためにネットやフィルムで保護しているが、それに引っかかって死んでしまうこともあるらしい」 京太郎「へー」 ゆみ「更にマンボウは寄生虫を取るために水中からジャンプして水面に自分の体を叩きつけるんだが、それで死ぬこともある」 京太郎「え?」 ゆみ「それと魚は泳ぐことで呼吸をしているんだが、マンボウは泳ぐのが下手だからすぐ酸欠になってしまう」 ゆみ「場合によってはそのまま死ぬ」 京太郎「えっ?」 ゆみ「他にも……」 京太郎「他にも!? ちょ、ちょっと待って下さい! 何ですかそのひ弱な生き物! そんなのすぐ絶滅するでしょう!?」 ゆみ「マンボウは絶滅しないために、体を強くするのではなく子孫をたくさん残すことを選んだんだ」 ゆみ「一度に数億個の卵を産むことは知っているだろう」 京太郎「いや知ってますけど!」 ゆみ「まあそういう生物もいるという話だ」 京太郎「こんな呑気そうな顔してますけど、厳しい競争を勝ち抜いてきたエリートなんですね……」 ゆみ「ああ、私たちもこのマンボウのように大会を勝ち抜かないとな」 京太郎「う、うーん……」 京太郎「……そういえばゆみ先輩、マンボウにも詳しいんですね」 ゆみ「ああ、カジキマグロのことを調べるときに目についたからついでにな」 京太郎「すみませんでした!」 ゆみ「だから謝るな!」 京太郎「おみやげコーナーですね」 ゆみ「地元だとあまり買うこともないな」 京太郎「麻雀部には……」 ゆみ「来なかったのはあっちだ。いらん」 京太郎(意外と怒ってたのか……) ゆみ「京太郎くんは何か買いたいものがあるのか?」 京太郎「んー……はい。ちょっと買いたいものが」 ゆみ「そうか。なら私はここで待っているよ」 京太郎「はい、すぐ戻ります」 京太郎(ゆみ先輩に何か買いたかったけど、思ったより時間かかっちゃったからなあ) 京太郎(ここであげられそうなのを見つけないと……)キョロキョロ 京太郎(あ、イルカのストラップ) 京太郎(これくらいなら気軽に受け取ってもらえそうだな。あんまり待たせても悪いし……) 京太郎「すいません、これください」 店員「はい、ありがとうございましたー!」 京太郎「すみません、お待たせし……ってあれ、いない?」 京太郎「も、もしかして先に帰ったのか!? やばい、何かしたか俺!?」 ゆみ「待て、いくらなんでも連れを置いて帰ったりはしない」 京太郎「あ、ゆみ先輩!」 ゆみ「すぐ戻るとは言っていたが本当に早いな」 京太郎「お待たせしたら悪いですから。それよりゆみ先輩はどこ行ってたんですか?」 ゆみ「あーその……あまり聞くな」 京太郎「……? はい」 ゆみ「それじゃあそろそろ帰ろうか」 京太郎「はい。結構長居しちゃいましたね」 ゆみ「そうだな。だが楽しかったよ。誘ってくれてありがとう」 京太郎「こちらこそ。凄く楽しかったです。それとその……」 ゆみ「ん?」 京太郎「よ、よければ今日も家まで送ります」 ゆみ「なんだ。そんなことならかしこまらなくてもいい」フフッ ゆみ「最後までエスコートを頼んだぞ。京太郎くん」 --------------------------------------- ――帰り道―― 佳織「そういえば智美ちゃん、今回のデートで2人にはどのくらい仲良くなってもらうのが目標だったの?」 智美「ん? そうだなー。名前で呼ぶくらいになってくれたら満足かなー」 睦月「あの2人だと難しそうですねえ」 桃子「え? それなら喫茶店のときにもう『ゆみ先輩』『京太郎くん』って呼びあってたっすよ?」 智美「えっ」 睦月「えっ」 佳織「それじゃあこの間帰るときにそう呼ぶようになってたのかな?」 桃子「そうみたいっすねー」 智美「……無駄な気遣いだったかなー」ワハハ…… 睦月「そ、そんなことないですよ! きっともっと凄く仲良くなってると思います!」 智美「……付き合うまでいったら悔しいなー」 睦月「うっ」 桃子「そのときは全力でからかってその悔しさを晴らせばいいっす!」 佳織「凄く自分たちが惨めになりそうな……」 桃子「振り返っちゃダメっすよ! 勢いが全てっす!」 智美「……そうだなー。そのときは全力でからかおう! 部長として許す!」 佳織「部長とかって問題なのかな……?」 睦月「まあまだ付き合ってるわけでもないしね」 桃子「こういうことは先に決めておくほうがいいんすよ」 智美「嫉妬する心の準備もできるしなー」ワハハ --------------------------------------- ――加治木宅前―― ゆみ「着いたか……いつもありがとう」 京太郎「どういたしまして」 ゆみ「久しぶりに麻雀のことを忘れたよ。いい息抜きになった」 京太郎「大会まで後2週間ですね」 ゆみ「ああ、これからはまた厳しくやらせてもらうぞ」 京太郎「お、お手柔らかにお願いします」 ゆみ「それは君次第だな」フフッ 京太郎「あはは……」 京太郎「えっと、ゆみ先輩。ゆみ先輩に渡したいものが」 ゆみ「何だ?」 京太郎「水族館で買ったんですけど……イルカのストラップです」 ゆみ「わぁ……! 可愛いな。嬉しいよ。ありがとう」 京太郎(よかった、喜んでもらえた……!)ホッ ゆみ「それでだな。その、私からも渡したいものがあるんだ」 京太郎「え?」 ゆみ「マンボウのストラップだ。キャラもののような可愛い系ではないから、男子が付けていてもおかしくはないと思うのだが……」 京太郎「お、俺にですか!? うわ、すっげえ嬉しいです!」 ゆみ「喜んでくれたか。よかった……」 京太郎「喜ぶに決まってるじゃないですか!」 ゆみ「マンボウが成長するように、君に大会を勝ち抜いて欲しいという思いも込めてみたんだ。よければ付けてくれ」 京太郎「そんな期待まで……! もちろん付けますよ! ありがとうございます!」 ゆみ「ありがとう。私もイルカのストラップ、付けさせてもらうよ」 京太郎「本当ですか! 水族館選んでよかった……!」 ゆみ「――――……正直なところ、私はどこでもよかったんだがな」ボソッ 京太郎「ちょっ、これでも必死に考えたんですよ!?」 ゆみ「君は耳がいいな」ハハ ゆみ「別に悪い意味で言ったんじゃない。とても楽しかったのは本当だよ。久々で新鮮で、水族館でよかったと思ってる」 京太郎「まあ、ならよかったですけど。後何かその前に言おうと――」 ゆみ「それよりほら、あまり遅いとご両親が心配するぞ」 京太郎「いえ女子じゃないんですから……というか、まだそんな遅い時間でもないですよ」 ゆみ「なんだ、家に上がって行きたいのか?」 京太郎「どうしてそうなるんですか!?」 ゆみ「まだそんなに遅い時間ではないんだから家に上げろと言いたいんだろう? 一応言っておくが両親はいるからな」 京太郎「上がりづら……というか上がりませんよ! 帰ります!」 ゆみ「ああ、また部活でな」 京太郎「はい、さようなら。また学校で!」 ゆみ「……行ったか」 ゆみ(……危なかった。追求されていたら口を滑らせたかも……ああ、考えるだけで恥ずかしい!) ゆみ(何より、君が私のために考えてくれたということが嬉しいんだ。だから正直なところ、私はどこでもよかったんだがな、なんて) ゆみ(何を考えているんだ私は!! 考えさせたのは私だろう! それに口に出すなんて!)カアァァ ゆみ「前半のほうを聞かれていなかったのは幸いか……」 ゆみ「……京太郎くんは、私のことをどう思っているんだろうな」 ゆみ「……いや、違うな。京太郎くんより、私がどう思っているのか……」 ………… ……… …… … 京太郎「こんにちはー。ゆみ先輩1人ですか?」ガラガラガラ ゆみ「ああ、みんなまだ来ていないようだ。……ぜひとも聞きたいことがあるんだがな」 京太郎「あはは……あ、ゆみ先輩。この間言われてた牌譜の分析です」 ゆみ「ああ、ありがとう……うん、よく出来てるよ」 京太郎「ありがとうございます!」 ゆみ「だが京太郎くんは自分の打牌には甘いところがあるな。ほら、ここ」 京太郎「えっ?」 ゆみ「生牌ならともかく、1枚切れの嵌張に受けるくらいなら役牌の対子を残したほうがいい。順目も早いしな」 京太郎「あーなるほど」 ゆみ「別にミスがあることで責めたりはしないさ。ただ直さないのはよくないな」 京太郎「うう、見落としてました……」 ゆみ「自分の打牌は、なまじ意図が完璧にわかっている分ミスに気付きづらい。特に注意してみるといい」 京太郎「はい!」 ゆみ「うん、頑張れよ」 ゆみ「さて、次は他校の生徒の分だ。ここの牌譜が分かりませんと書いているな」 京太郎「そこはほんとにわかりませんでした」 ゆみ「そうか。この捨て牌の意図はな…………」 桃子「入るっすよー」ガラガラガラ 智美「おー2人とももういるのかー」 睦月「早いですね」 ゆみ「ああ、4人で来たのか」 智美「途中で一緒になってなー」 ゆみ「そうか。私は京太郎くんと話しているから、先に始めていていいぞ」 京太郎「ゆみ先輩、もう大会も近いんですから俺の指導なんて後回しでいいですよ」 ゆみ「大会が近いのは君も同じだろう。それに牌譜はどうせ見るんだ。君に教えながら見たほうが効率がいいさ」 桃子「うーん、仲良くなったっすねー」 智美「気を回した甲斐があったなー」 ゆみ「元々悪くなんてない。いらない気遣いを」ハァ 智美「ちょっとゆみちんには金曜日の言動を思い出して欲しいなー」 ゆみ「き、記憶にないな」 智美「ゆみちん……」ハァ 智美「まったく、そんなに嫌だったのか?」ワハハ ゆみ「そんなわけな……! そ、それとこれとは話が別だ!」 智美「素直なほうが人生得だぞー」ワハハ 桃子「ある意味すっごく素直っすけどね」 佳織「というか、用事があって休んだわけじゃないって気づいてたんですね」 睦月「ちょっと露骨すぎましたか」 京太郎「4人も休んで偶然だなんて思うわけないじゃないですか」ハァ 桃子「部員のことはちゃんと信じなきゃダメっすよー?」 京太郎「結局嘘だったじゃねえか!」 桃子「それは結果論っす! 信じるかどうかが大切なんすよ!」 京太郎「酷い屁理屈だな!」 京太郎「……あれ? ゆみ先輩。そういえば俺が先輩のこと下の名前で呼ぶようになったのって、金曜日でしたよね?」 ゆみ「ん? ああ、私が京太郎くんと呼ぶのもそれからだな。しかしそれがどうかし……そうか」 睦月「?」 桃子「?」 智美「うん? それがどうかしたのか?」 京太郎「いや、普通少しくらい反応があるんじゃないですか?」 佳織「なんのこと?」 ゆみ「私が須賀くんではなく京太郎くんと呼んでいて、京太郎くんが私のことを加治木先輩ではなくゆみ先輩と呼んでいることだ」 4人「「「「あっ」」」」 京太郎「まるで知っていたかのように自然に受け入れてましたよね」 智美「そ、それはほら。あんまりからかっていいことでもないかと思って」 ゆみ「わざわざ2人きりで遊びに行かせるほど私たちの仲を気にしていたんだ。別にからかいとしてでなくとも聞くほうが自然だろう」 桃子「あ、あれっすよ! 今日学校で2人が喋ってるのを聞いて」 京太郎「残念ながら今日ゆみ先輩とは放課後しか喋ってない」 睦月「2人の呼び方が自然だったので違和感なく……」 ゆみ「さすがに苦しいな」 佳織「ええと、それじゃあ……」 京太郎「今それじゃあって言いましたよね!?」 佳織「ふぇっ!? い、いや、違うの!」 ゆみ「そもそも最初の"あっ"という反応でわかっている」ハァ 京太郎「そういえばイルカショーのとき蒲原先輩らしき人がいましたね」 ゆみ「ああ、結局は君の言ったことが正しかったというわけか」 桃子「ほら、やっぱりあの変装じゃバレバレだったんすよ!」ヒソヒソ 智美「前の方に行きたいって言い出したのはモモだろー!?」ヒソヒソ ゆみ「内輪もめはいい。それよりいつから見ていたんだ?」 智美「い、いやたまたま水族館に遊びに行ったら偶然ゆみちん達が……」 佳織「智美ちゃん、もうやめよう」ポンッ 睦月「待ち合わせのときからです」 京太郎「最初からですか!? 俺たち結構早く移動しましたよ!?」 ゆみ「遊ぶ場所は集まってから決めたし、待ち合わせ時間よりだいぶ早く動いたから安心していたんだが……」 桃子「先輩たちより1時間早く集まってたんすよ。部長に言われて」 智美「さりげなく私に責任を負わせるなー! 後をつけるのやめるかどうかちゃんと聞いたろー!?」 桃子「私たちは先輩が言わなかったら後をつけようなんて言わなかったすよ!」 智美「む……そもそもモモが言わなければ名前を呼んでるのにちゃんと驚けたんだぞー!」 桃子「話題に出したのはそっちじゃないっすか!」 ギャーギャー ゆみ「……おい、2人とも」ギロッ 智美・桃子「」ビクッ ゆみ「騒いでうやむやにしようという努力は買おう」 智美・桃子(バ、バレてたかー/っすか……) ゆみ「だがまあ……誤魔化されると思うなよ?」ニコッ 智美・桃子「ヒッ」 ゆみ「津山、妹尾。お前たちもだからな」 津山・佳織(黙ってやりすごせなかった……) 京太郎「せ、先輩? 穏便にしてくださいね?」 ゆみ「ああ、うん……まあ、京太郎くんは気にするな」ニコッ 京太郎(こ、こえー……)ブルブル ゆみ「さて、蒲原。次はこの局だ。まずどこが悪いと思うか言ってみろ」 蒲原「こ、ここかなー?」 ゆみ「ふむ、そこだけか?」 蒲原「こ、ここもかな?」 ゆみ「違う」 蒲原「ひっ」 ゆみ「そこのドラ切りは一見危なく見えるが、下家の手牌にドラがあることが濃厚だから通りやすい。少なくとも他の牌よりは安全だ」 蒲原「な、なるほどー」 ゆみ「大会も近いし、やはりもう少し厳しくしないとダメか……」ブツブツ 蒲原(ひ、ひええ)ガクガクブルブル 京太郎「よっしゃあああ!!!」 桃子「くぅ、悔しいっす」 睦月「京太郎くん、おめでとう」 佳織「凄いよ、おめでとう!」 京太郎「ありがとうございます!」 ゆみ「ん? どうしたんだ?」 京太郎「ゆみ先輩、俺ようやく1位になれました!!!」 ゆみ「本当か!? 凄いじゃないか!」 京太郎「なんとかモモから逃げ切れました。先輩のおかげです!」 ゆみ「君の実力だよ。モモに勝てたんだな」 桃子「後一歩だったっすよー。今回は手牌もそこまで悪くなかったし、大会までにもう一度負けるとは思わなかったっす」 京太郎「ふっふっふ。1位も取ったし、これで残った目標は先輩に勝つだけです」 ゆみ「そうか、私もそう簡単には負けないぞ?」 京太郎「望むところです。さあ打ちましょう!」 ゆみ「ああ、勝負だ」 智美「た、助かった……」 桃子「先輩は京太郎との勝負に集中してくれそうっすね。負けて悔しいっすけど、ある意味助かったっす」 睦月「京太郎くんも強くなったね」 佳織「そうだね。始めたの同じくらいなのにもう全然敵わないや」 智美「まだまだ2週間ちょっとだろー。佳織には役満があるんだし、これからこれから」 佳織「その役満が出るってのは偶然だと思うんだけど……」 睦月「いや、妹尾さんが役満で上がった数、私が今までに上がった役満の数より多いよ?」 佳織「えっ?」 桃子「もうちょっと自分の凄さを自覚して欲しいっすね」 智美「貴重な才能だぞー」ワハハ 佳織「そ、そんなこと言われても……」 京太郎「先輩ー。速く席着いてくださいよー」 智美「ああ、悪い悪い」 佳織「いま行くよー」パタパタ 桃子「んー京太郎も強くなったっすけど、佳織先輩ももっと自信持って欲しいっす」 睦月「うん、爆発力は凄いし、1位になったことだって何度も……」 佳織「あ、ロン。清一色……かな?」 ゆみ「……妹尾、それは九蓮宝燈と言ってな。役満の一つだ」 佳織「えっ」 智美「京太郎のトビで終了だなー」ワハハ 京太郎「」 佳織「ご、ごめんね? 京太郎くん」 京太郎「い、いえ。さすが佳織先輩……」ハハハ… 睦月「……」 桃子「……」 睦月「なんで自信持たないんだろう」 桃子「ほんとっすね」 京太郎「……立直です」 佳織「」ドキドキ 睦月「」ドキドキ 桃子「ううん」タン ゆみ「……」タン 智美「んー」タン 京太郎「……ツ、ツモ! 2600・1300です!」 智美「おおー!」 ゆみ「1位だな。おめでとう」 桃子「むー、また負けたっすか」 睦月「おめでとう京太郎くん」 佳織「今日初めて1位になったのに、同じ日に2度もなるなんて凄いよ!」 京太郎「……」 ゆみ「京太郎くん?」 京太郎「…………よっしゃああああ!!!」 ゆみ「」ビクッ 京太郎「やっとゆみ先輩に勝てた! しかも1位! 2回目! うわ、すっげえ嬉しい!!」 京太郎「今日の俺凄いなー! ゆみ先輩、やりましたよ! ……ゆみ先輩?」 ゆみ「……京太郎くん、まずはおめでとう」 京太郎「ありがとうございます!」 ゆみ「だが、いきなり大声を出すのはやめろ」 京太郎「あ、すみません」 ゆみ「それと……目の前でここまで喜ばれるとな。さすがにリベンジしないわけにはいかないな」ゴッ 京太郎「えっ」 ゆみ「蒲原、モモ。順番だと私と京太郎くんだが、私たちの代わりに津山と妹尾と交代して貰っていいか?」 智美・桃子「」コクコク 京太郎「えっ?」 ゆみ「さあ、京太郎くん。続けよう」 京太郎「……えっ?」 ………… ……… …… … ――帰り道―― 京太郎「先輩……酷いですよ……」 ゆみ「す、すまない」アセアセ 京太郎「1位になってゆみ先輩に褒めてもらいたかったのに……」ボソッ ゆみ「? 今なんて……」 京太郎「何でもないです!」 京太郎(ゆみ先輩、前言ったこと忘れてるのかなあ)ハァ 京太郎「それより、あの後3位とか4位ばっかりで心折れかけましたよ!?」 ゆみ「べ、別に負けたときから本気だったから実力が変わるわけでは……」 京太郎「ゆみ先輩は手牌読んだり出来るじゃないですか。俺の手牌集中して見てませんでした?」 ゆみ「うっ」ギクッ 京太郎「やっぱり!」 ゆみ「悔しかったんだ、わかれ!」 京太郎「逆ギレ!?」 ゆみ「……まあその、別に京太郎くんだけ見ていたわけじゃない。ただ調子がよさそうだから警戒を強くしたというか――」 京太郎「! ゆみ先輩!」 ゆみ「な、なんだ?」 京太郎「それって、俺のことを強い相手だって認めてくれたってことですか!?」 ゆみ「うん? まあそうだな」 京太郎「本当ですか!? やった!!」 ゆみ「何をそんなに喜……ああ、君は勘違いしていたのか」 京太郎「勘違い?」 ゆみ「京太郎くんが強いだなんて前から知っているよ」 ゆみ「警戒したのだって別に今回が初めてじゃない。というかそうでなければもっと早く1位になれていたさ」 京太郎「えっ」 ゆみ「前にも言ったが……そうだな。1位になったのだし改めて」 ゆみ「君の努力は私が誰より知っている。君は強くなった」 ゆみ「今回1位になったのも偶然じゃない。これから何度だってなれるさ。私が保証するよ」 ゆみ「京太郎くん、よく頑張った」ポン 京太郎「……!!」 京太郎「ゆみ先輩、覚えててくれたんですね……!」ウルウル ゆみ「あ、当たり前だ。何も泣くことはないだろう」カアァァ 京太郎「いや、もうほんと嬉しいです。俺、これからも頑張ります!!」 ゆみ「……しかし正直に言って、京太郎くんが入ったときは2週間でここまで上手くなるとは思わなかった」 京太郎「そこまで言われるほど上手くなりました?」 ゆみ「もちろんだ。特にモモにはステルスもある」 ゆみ「私とモモがいる卓で1位を取るのは、早くても大会が終わってからだろうと思っていたよ」 京太郎「今日勝てたのは嬉しいですけど、ゆみ先輩とモモはもちろん、睦月先輩にも部長にもあんまり勝ててるわけじゃないですよ?」 ゆみ「そこまで上手くなられたら私たちの立つ瀬がないな」ハハハ ゆみ「京太郎くん、大会でどこまで行ってみたいと考えてみたことはあるか?」 京太郎「どこまでというとやっぱり決勝リーグまで行ってみたいです。ただそもそもどんな感じなのかが……」 ゆみ「ふむ、そういえばそういう話をしたことがなかったな。それじゃあ分かる範囲で説明しよう」 ゆみ「……説明するといったが、正直言って男子の方は私もよくわからん」 ゆみ「だがまあ、君は麻雀を初めたばかりの初心者だ」 ゆみ「男子のほうがレベルが高いと聞くし、決勝リーグまで進むのはかなり難しいだろう」 京太郎「ですよねー」ガックリ ゆみ「だが、ここ長野に限っては可能性がある」 京太郎「え? なんでですか?」 ゆみ「長野の男子には恐ろしく強い3人の選手がいるんだ。全国大会の1位から3位までその3人が独占していた」 ゆみ「点数も圧倒的でな。その3人とその他大勢というか、とにかく別次元の強さだった」 京太郎「そんな強かったんですか?」 ゆみ「その3人の誰かがいる卓では、1万点残ったら運がいいと思えと言われている」 京太郎「なんですかそれ!?」 ゆみ「信じがたいが本当だ。去年1人は卒業したんだが、まだ2人いる。予選では全選手と当たるからな。その2人とも当たることになる」 京太郎「ふんふむ」 ゆみ「その2人と当たったときにどれだけ点を取られないか。決勝リーグに出られるかどうかはそれにかかっている」 ゆみ「まあつまり、経験の少ない君でもその2人から上手くオリられれば、決勝リーグまで進める可能性があるということだ」 京太郎「そんな、予選が何試合あると思ってるんですか。そのうち2試合くらいで……」ハハハ ゆみ「……」 京太郎「……マジなんですか?」 ゆみ「ああ、一切誇張はない」 京太郎「……ちなみにもしゆみ先輩が戦うとしたらどうします?」 ゆみ「配牌で一向聴でなければベタオリだ。それでも5巡目までに聴牌しなければオリる」 京太郎「はい?」 ゆみ「まあ実際にはベタオリすら狙われるからな」 ゆみ「自分の意志ではなく、ランダムな法則でいつオリるか決めたほうがいいんだろうが、基本的はそうなる」 京太郎「ちょ、ちょっと待って下さい。なんですかそれは」 ゆみ「なんですかもなにも私ならそうするという話だ。実際に打ったことはもちろんないが、それほど圧倒的な相手だ」 京太郎「お、恐ろしいですね……」 ゆみ「ああ、だからこそ決勝リーグも狙えると思う」 京太郎「正直その話聞いて自信なくしたんですが……」 ゆみ「何もその2人に勝てというわけじゃない。このペースで成長すればいい線まで行くと思うぞ?」 京太郎「……そうですね。どうせ初心者ですし、当たって砕けろですよね! 決勝リーグ目指します!」 ゆみ「うん、その意気だ。一緒に頑張ろう」 京太郎「一緒に……! はい、もちろんです!」 ――食堂―― 睦月「部のみんなでお昼を食べるのは久し振りですね」 ゆみ「ああ、妹尾と京太郎くんとモモが入ってきてからは初めてだな」 桃子「こういうの憧れだったんすよー!」 智美「たまには部活以外でも集まろうと思ってなー。大会も近いことだし。それと……」 佳織「それと?」 智美「京太郎が調子悪いだろー? それをゆみちんから相談されたんだけど、これで何か気分転換になればと思ってなー」ワハハ 桃子「あー、この間1位になったのに、それから3位とか4位ばっかりっすよね」 ゆみ「調子の波自体は誰にでもあるが、京太郎くんは初めて経験するだろうからな」 智美「大会直前のこの時期になるのは不安なはずだからなー。こういうのは部活以外で話したほうがいいと思うんだ」 睦月「そうですね。あんまりプレッシャーかかっちゃいけませんし」 佳織「ところでその京太郎くんは……?」キョロキョロ ゆみ「そういえば遅いな」 桃子「いつもパンかお弁当だから手間取ってるんすかね? 私もそうだったっすし」 智美「モモはおばさんがモモのことを見つけられなかったからだろー」ワハハ 桃子「だから学食は困るんすよ!」 睦月「でもそのモモより遅いのはなんでなんだろう?」 ゆみ「ふむ……ああ、ちょうど来た、よう……だ……?」 佳織「うわあ……」 桃子「あ、あれは凄いっすね」 睦月「あれ食べきれるのかな……?」 智美「さすが男子高校生だなー」ワハハ 京太郎「す、すみません。遅くなりましたっ」ドスン ゆみ「い、いや。それはいいんだが……」チラッ 桃子「それ食べきれるんすか?」 智美「山盛りの唐翌揚げに大量のエビフライ」 佳織「ハンバーグとメンチカツも2つずつ」 睦月「ご飯も2人分くらいあるね。それと申し訳程度にサラダが」 桃子「聞いてるだけで胃がもたれそうっすね」 京太郎「……死ぬ気で食べます」ゲッソリ ゆみ「普段学食で食べているが初めて見るな。なんという料理なんだ?」 京太郎「メンズランチを注文したらこうなりました……」 睦月「ああ、男子が入って来てから出来たメニューだね。だから見たことないんだ」 佳織「今まで女子だけだったから、きっと食堂のおばさんが張り切ってこんなメニュー作ったんだね」 ゆみ「しかし学食で食べるのが初めてにしても、友人から聞いたりはしなかったのか?」 京太郎「今日は普段一緒に昼食べてるやつに、麻雀部のメンバーと食べるって言って来たんですよ」 京太郎「そしたらそいつ学食ではメンズランチがオススメだって言って……!」 桃子「あー……。まあご愁傷様っす」 京太郎「うう、あいつ覚えてろよ……!」 ………… ……… …… … 京太郎「き、キツイ……」キュウ ゆみ「だ、大丈夫か?」 京太郎「す、少し休憩すればまだ行けます」 睦月「うむ、まあ無理はしないように」 京太郎「はぁ……そうだ。最近俺スランプで、麻雀全然勝てないんですがどうすれば直りますかね?」 智美「おお、そっちから切り出したかー」 京太郎「はい?」 智美「いや、なかなか言い出しづらいだろうと思って、どう切り出そうか考えてたんだけど必要なかったなー」 京太郎「ああ、そういうことですか。まあ聞くは一時の恥って言いますし」ハハハ 桃子「ちなみに京太郎的には何が悪いと思ってるんすか?」 京太郎「んーネトマでは変わらずそれなりに勝ててるから、なんか癖とかあるのかなあって」 ゆみ「うん? ネトマのほうでは勝てているのか?」 京太郎「はい。部活でやるときだけどうも上手く行かなくて……」 ゆみ「ふむ……」 睦月「何か気になるんですか?」 ゆみ「いや、最近の京太郎くんの牌譜を見ると明らかに不自然な捨て牌があるから」 ゆみ「ネトマでやっていないなら何が原因なのかと思ってな」 智美「確かにこの間見た牌譜は変なとこがいくつもあったなー」 京太郎「どのへんが変でした?」 ゆみ「具体的にではないが、そうだな」 ゆみ「ところどころ比較的安全な牌を切らずに他の牌を切っているだろう? たまに向聴数を上げてまでしていることもある」 ゆみ「それにあからさまな危険牌を振り込むこともある」 ゆみ「正直今の君のレベルからしたら不自然だと思うんだが、何か理由はあるのか?」 京太郎「それは……なんというか上手く言えないんですけど、感覚でこれを切ったらヤバイとか」 京太郎「これなら行けるみたいなのを感じるというか……」 ゆみ「……」 ゆみ(確かに読み切れそうもない難しい待ちを回避していることもある……)フム 桃子「勘違いじゃないっすか?」 京太郎「そんな気もするけど、ステルスとかいうお前が言うな!」 佳織「私はそういうの全然感じたことないなあ。まだ始めたばっかりだし、その内感じられるようになるのかな?」 京太郎「むしろ感じたことがないことにちょっと驚いてます」 佳織「えっ!?」 ゆみ「ちなみにそれは何割くらいで成功しているんだ?」 京太郎「体感で大体5割くらい……だと思います」 智美「結構高いなー」ワハハ 京太郎「まあいつも感じられるってわけじゃないんですけどね」 ゆみ「そうか……」 睦月「先輩はどう思ってるんですか?」 ゆみ「そうだな。ネトマではいつも通りに打っているんだろう?」 京太郎「そういえばネトマではないですね」 ゆみ「ならそれは対局相手の癖や雰囲気を感じているんじゃないか?」 京太郎「癖や雰囲気ですか? でもそういうのを考えたことはあんまりないですよ?」 ゆみ「この短い期間に何度も同じ相手とだけ打っているんだ。無意識に刷り込まれていてもおかしくはない」 智美「でもそれだと私たちも感じてないとおかしくないかー?」ワハハ ゆみ「それは個人差があるだろう。京太郎くんがそういう面に優れているのかもしれない」 京太郎「うーん……」 ゆみ「ピンと来ないか?」 京太郎「はい。他の人はともかく、ステルスしてるモモ相手にもたまに感じることがあるので……」 桃子「そういえばそんなこともあったっすね。後で牌譜見てちょっと驚いたっす」 ゆみ「ふむ……モモもステルスとはいえ本当に消えているわけじゃない。見えていないが見ているということはあるんじゃないか?」 京太郎「ああ、なるほど」 ゆみ「まあこれはあくまで私の解釈だから、これを君にを押し付けるつもりはないよ」 ゆみ「……それより話が脱線してしまったな」 ゆみ「京太郎くんのその感覚が観察によるものか、それとも他の何かかどうかなんてどっちでもいい」 京太郎「えっ」 睦月「バッサリ行きましたね」 智美「ゆみちん、もうちょっと言い方ってものが……」 ゆみ「む、結論から言ってしまおうと思ったんだが……」 京太郎「い、いえ。全然大丈夫です。続けてください」 ゆみ「そうか、よかった」ホッ ゆみ「話を聞く限り、京太郎くんは感覚の通りに打った結果、それが裏目になって勝てていないんだろう?」 京太郎「はい」 ゆみ「なら簡単だ。感覚に頼ってスランプになっているんだから、それに頼るのをやめればいい」 京太郎「あっ」 桃子「何度か裏目った時点で気付いて欲しいっすねー」 京太郎「みんなこうやってると思ってたんだよ!」 京太郎「でも対策がわかったんだ! 今日は1位になるぞー!」 桃子「まあその前に目の前の食事を片付けるっすよ」 京太郎「うっ……」 睦月「あはは、少しぐらいなら食べてあげるよ」 佳織「私もちょっと手伝うよ」 京太郎「睦月先輩、佳織先輩……! ありがとうございます!」 ゆみ「……」 智美「ゆみちんどうかしたのかー?」 ゆみ「……いや、何でもない」 智美「そうか? まあゆみちん、悩んだときは当たって砕けろだー」 ゆみ「……まったく、わかっているなら聞くな」ハァ ゆみ「でもそうだな。ありがとう」 智美「ワハハー」 ――帰り道―― 京太郎「ゆみ先輩、今日はアドバイスありがとうございました!」 ゆみ「アドバイスという程のものじゃないさ」 京太郎「そんなことないですよ! 1位にはなれませんでしたけど、久々に2位になれてめちゃくちゃ嬉しいです!」 ゆみ「……ちなみに、今日も切るべきかどうかという感覚はあったのか?」 京太郎「そうですね。半荘で3,4回くらいはありました。今日は言われたとおりそれ無視してやりましたけど」 ゆみ「それでいい結果になったんだな」 京太郎「はい! やっぱり基本に忠実にやったほうがいいですね」 ゆみ「話を聞いている限りでは振り回されているだけのようだったからな」 京太郎「アハハ……恥ずかしいですね」 ゆみ「……ただ、昼に言ったことと逆になるんだが、もったいないとも思っているんだ」 京太郎「え?」 ゆみ「京太郎くんのそれはきっと磨けば大きな武器になるはずだ。だから昼に言ったことが全部正しいわけじゃない」 京太郎「ええと、それなら昼はああ言ったのは……?」 ゆみ「さっき言ったとおり、君が振り回されているからだ」 京太郎「確かにあやふやな感覚に頼るくらいなら完全に無視したほうがよかったですね……」 ゆみ「京太郎くんは感覚に頼るのではなく、使いこなさなければダメだと思うんだが、大会までは時間がない」 ゆみ「付け焼刃の感覚を使おうとするよりは、無視したほうがいいと私は思う」 京太郎「使いこなすというと成功率を上げるってことですか?」 ゆみ「……それは出来るのか?」 京太郎「いやさっぱりわかりません」 ゆみ「だろうと思ったよ」ハァ ゆみ「そうだな……例えば危険牌だとわかっていても押さなければならない場面や」 ゆみ「おそらく安牌だと感じていてもオリたほうがいい場面があるだろう?」 京太郎「はい」 ゆみ「君の場合はそれをより正確に感じることが出来るわけだから、当然押し引きの基準も変わってくるはずだ」 ゆみ「これは単純な例だが、もっと複雑な場面も多くあるだろう?」 ゆみ「その時々で最も有効な打ち方を判断できるようになったら使いこなせたといえるんじゃないかと思う」 京太郎「なるほど……」 ゆみ「私が教えてあげられればいいんだが、なにぶん君にしかわからない感覚だ」 ゆみ「君が実戦で磨くしかないし、それに基礎力ももちろん必要だ。そうすると大会までにはおそらく間に合わない」 京太郎「あっ、だから頼るのはやめろって……」 ゆみ「ああ、君は強くなった。普通に成長すれば決勝リーグに残ることもそう無理なことではないと思う」 ゆみ「私は大会が終わるまでは普通に練習をして、大会が終わってから」 ゆみ「その感覚を活かした打ち方を見つければいいんじゃないかと思う」 京太郎「……私はってことは、他の道もあるってことですか?」 ゆみ「そうだな。今からその感覚を活かした打ち方を見つけるという方法もある」 ゆみ「次の大会で全国に行こうと思うならこれが一番可能性があるだろう」 京太郎「ぜ、全国ですか!?」 ゆみ「まあ完璧とまで行かなくとも、ある程度完成させられればという前提だがな。ただおそらく無理だろう」 京太郎「き、厳しいですね」 ゆみ「当たり前だ。自分のスタイルなんてそう簡単に身につくものじゃない。前例にない特殊な打ち方をするならなおさらだ」 ゆみ「さらに言うなら、そこまで上手く行ったとしても可能性が出てくるという程度だ」 京太郎「どっちを選ぶべきか……」ウーン ゆみ「……実はな、この話は言おうかどうか迷ったんだ」 京太郎「え? なんでですか?」 ゆみ「京太郎くんが迷うと思ったからだよ。誰だって全国は目指したいだろう?」 京太郎「そうですね」 ゆみ「だけどそのスタイルが完成するまでは、きっと昨日までのように負け続けることになる」 ゆみ「誰だって負けるのは嫌だろう? そんなことで京太郎くんが麻雀を嫌いになったら悲しいからな」 京太郎「そんなことは……」 ゆみ「……まあそれで嫌いになるというのも、私の勝手な想像だ。だから最終的には君自身に決めてもらうことにしたんだが」 京太郎「はい」 ゆみ「どっちを選んでもいいぞ。どちらでも出来る限りのサポートはしよう」 京太郎「……大会までは普通に練習することにします」 ゆみ「うん? そうか。わかった」 京太郎「あれ、ちょっと意外そうですね」 ゆみ「そうだな。正直京太郎くんは、今から感覚を活かした打ち方を見つけると言うと思っていた」 京太郎「3年ならそうしたかも知れないですけど、無理して次の大会で勝とうと思わなくても俺はまだ1年ですから」 ゆみ「ああ、確かに私もそう考えたから今は普通の練習をしたほうがいいと言ったんだが……」 京太郎「……あー、その。ですね」 ゆみ「うん?」 京太郎「ええと……」 ゆみ「?」 京太郎「……ゆ、ゆみ先輩が俺のためって考えてくれたのが嬉しかったんですっ!!」 ゆみ「なっ!?」カアァァ 京太郎(い、言っちまったああああ! ひ、引かれたりしないよな……?) ゆみ「そ、そのだな」アタフタ 京太郎「……」ドキドキ ゆみ「た、確かに京太郎くんは大切な後輩だし」 ゆみ「君のために考えたというのも正しいが、それでももう少しいい言い方があるだろう!?」カアァァ 京太郎「っ!」 ゆみ「そ、それともわざとそういう言い方にしたのか?」 京太郎「……そ、そうなんですよー。やだなバレちゃいましたか」 ゆみ「や、やっぱりそうだったか……」シュン 京太郎(先走ったかあ……まあ、誤魔化せただけいいかな)ズーン ゆみ「まったく、京太郎くんも言うようになったな」ハァ 京太郎「あ、あはは」 ゆみ「でも嬉しいよ。モモとはいつもこんな感じで話しているだろう?」 京太郎「モモはああいう奴ですからね。ゆみ先輩には、もし同じ学年でもモモと同じようには話せませんよ」 ゆみ「今言っていたじゃないか」 京太郎「そ、そうでしたね……」アハハ ゆみ「これからも言ってくれていいんだぞ? 私は気にしない、というか楽しい」 京太郎「そうですか? 意外ですね」 ゆみ「今まであまり言われたことがなかったから新鮮なのかもしれないな。……それかもしくは」 京太郎「もしくは?」 ゆみ「……京太郎くんとは特別話しやすいからかもしれないな」 京太郎「えっ――」ドキッ ゆみ「……」ジー 京太郎「……」ドキドキ ゆみ「……ふふ、冗談だ。あまり後輩に言われてばかりではな」 京太郎「もう、俺が悪かったですから、からかうのはやめてくださいよ……」 ゆみ「ちょっとした仕返しだよ」 京太郎「まったく、ちょっと前までが男と話すの苦手とか言ってたの誰ですか」 ゆみ「……今も他の男子とはほとんど話さないし、話すのは苦手だ」 京太郎「えっ?」 ゆみ「私がこういうことをできるのは京太郎くんだからだよ。きっと」 京太郎「なっ」カアァァ ゆみ「……」ドキドキ 京太郎「こ、こんな続けてはさすがに引っかかりませんよ!」ドキドキ ゆみ「……ああ、そうだな」 京太郎「ゆみ先輩は冗談も真顔で言うから分かりづらいです……」 ゆみ「見分けられるようになることを期待しているぞ」 京太郎「努力します……それじゃあゆみ先輩、また明日」 ゆみ「ああ、もうこんなところか。また明日」 ゆみ(まったく、あまり慣れないことはするものじゃないな)ハァ ゆみ(見分けられるように……そもそも私はどういう返事を期待していたんだ?) ゆみ(自分でも分かっていないのにあんなことを……いや、やめよう。考えるのは大会が終わってから――) ゆみ「そうか、大会が終われば私は引退……」 ゆみ「もう少しだけでも長く続けられればな。蒲原と妹尾と睦月とモモと、それに京太郎くんがいる今のメンバーで」 ゆみ「大会がなくても放課後に集まって麻雀をして」 ゆみ「それも全国まで行けば、か……ただ楽しみが続けばと思うだけなのに、つらい道のりだな」ハァ ゆみ(それでも、目指さなければ届かない……頑張ろう!) 京太郎「こんにちはー。部長だけですか?」ガラッ 智美「ああ、みんなまだ来てないなー」 京太郎「そうですか。それじゃあみんな来るまで牌譜の整理でも……」 智美「まあまあ、そんなのいいからちょっとこっち手伝ってくれー」 京太郎「なにやってるんですか?」 智美「決起集会に必要なものを考えてるんだ」 京太郎「決起集会?」 智美「ああ、大会直前だから、気合を入れるためにもやっとこうと思ってなー」 京太郎「へえ。初めての大会ですしいいかもしれませんね」 智美「それで京太郎に決めて貰いたいことがあるんだ」キリッ 京太郎「む、責任重大ですね。なんでしょう?」 智美「ああ、きのこの山とたけのこの里のどっちを買えばいいかと……」 京太郎「真剣な顔してなにかと思えばそんなことですか!?」 智美「そんなこととは失礼だなー。きのこたけのこ戦争を甘く見ると痛い目にあうぞー」ワハハ 京太郎「じゃあ大袋のでいいじゃないですか。両方入ってますし量もありますから」 智美「おお、名案だなー。そうしよう」カキカキ 京太郎「……ていうか決起集会で何をするつもりなんですか?」 智美「お菓子とジュースで楽しく過ごすつもりだ」ワハハ 京太郎「決起集会なんですかそれは!?」 智美「堅苦しいのは嫌だろー?」 京太郎「いやそれはそうですが……」 智美「まあ別になんとなくやってるわけじゃないんだ」 京太郎「ほんとですか?」 智美「ああ、最近大会が近いからかみんな緊張してるだろ?」 京太郎「確かに睦月先輩と佳織先輩は牌落としたりミスが多くなったりしてますね」 智美「うん、むっきーと佳織は分かりやすいなー。でもモモとゆみちんもだぞ?」 京太郎「そんなふうには見えないですけど……」 智美「例えばモモは消えるのが遅くなってるだろ?」 京太郎「え? あれって慣れたからじゃ……」 智美「慣れたくらいで見えるようになるならモモも苦労はしてないと思うぞ?」 智美「多分緊張からだと思うけど、牌を捨てるときに音が大きくなってたり」 智美「打ってるときにソワソワしたりしてていつもより目立ってるんだ」 京太郎「全然気づきませんでした……」 智美「京太郎はまだまだだなー」ワハハ 京太郎「それじゃあゆみ先輩はどんな感じなんですか?」 智美「なんか考えこんでることが増えたなー」 京太郎「……それ緊張からですか?」 智美「うーん」チラッ 京太郎「?」 智美「……緊張じゃないかもしれないけど、何かあったんだろうなー。多分京太郎のせいで」 京太郎「俺何もしてないですよ!?」 智美「気にするなー」ワハハ 京太郎「しますよ!?」 智美「それに他人事みたいに言ってるけど京太郎もだぞー」 京太郎「露骨に話そらしましたね! でも俺は負けて元々ですしそんなに緊張は……」 智美「この間廊下で京太郎を見かけたんだけど、歩きながら教本見るのは危ないからやめたほうがいいと思うぞ」 京太郎「うっ」ギクッ 智美「ところで負けて元々だからなんだっけー?」 京太郎「いやー、初めての大会は緊張しますねー!」 智美「そうだろー」ワハハ 京太郎「でもみんなのことよく見てますね。さすが部長」 智美「京太郎も殊勝なことを言うようになったなー」 京太郎「え?」 智美「初めて会ったとき、部長に見えないとか言われたの覚えてるぞ」ワハハ 京太郎「勘弁して下さい……」 智美「ワハハ。まあゆみちんのほうが部長らしいもんなー」 京太郎「そんなことないです!」 智美「ん?」 京太郎「最初自己紹介で下の名前で呼ぼうって言ってくれたじゃないですか」 京太郎「実際あれがなければこんなに仲良くなれなかったと思いますよ」 京太郎「モモなんかむっちゃん先輩とかかおりん先輩とか呼ぶくらいの仲になってますし」 智美「あれはちょっと驚いたなー。でもそれはモモ自身のことで」 京太郎「それだけじゃないですよ。ゆみ先輩たちのことも俺たち後輩のことも、色々と気を配ってくれてるじゃないですか」 京太郎「麻雀部に入って思いました。鶴賀麻雀部の部長は智美部長しかいません!」 智美「ワ、ワハハ」 京太郎「部長?」 智美「て、照れるじゃないかー」ワハハ 京太郎「でも本当に部長には感謝してるんですよ」 智美「そ、そういうのはもうちょっと遠回しに言ってくれると……」カアァァ ゆみ「まだ2人だけ……何をやっているんだ?」ガラッ 京太郎「あ、ゆみ先輩。今はいかに部長に感謝しているかということを――」 智美「京太郎に弄ばれてたんだ」グスン 京太郎「部長!?」 ゆみ「京太郎くん、詳しく話してもらおうか」ゴゴゴ 京太郎「ゆみ先輩も信じないでくださいよ!?」 ゆみ「別に信じているわけじゃない」 京太郎「え?」 ゆみ「蒲原の様子を見るに何かしたのは事実だろう。隈なく教えるように」ゴッ 京太郎「お、俺は悪いことしてませんからね」ビクビク ――説明中―― ゆみ「ふむ」 京太郎「何もしてませんよね?」 ゆみ「君が悪いな」 京太郎「なんでですか!?」 ゆみ「悪気はないんだろうが、ストレートに言うのはもうちょっと控えたほうがいい。君と相手のためだ」 京太郎「そんなつもりはないんですが……ゆみ先輩がそういうなら」 ゆみ「……私以外にもそうだったんだな」 京太郎「えーと、まあ自覚してないので……」 ゆみ「そうか……」 京太郎「それがどうかしましたか?」 ゆみ「いや、何でもない」フイッ 智美「……要はヤキモ」ボソッ ゆみ「何か言ったか?」 智美「何も言ってないぞー」ワハハ 京太郎「?」 桃子「こんにち……あれ、修羅場っすか。むっちゃん先輩、かおりん先輩。ちょっと外出てましょう」 佳織「あれ、桃子さんとじゃないんだね」 睦月「いつかやるとは思ってたけど部長ととは思わなかった」 ゆみ「京太郎くん、どういう意味だ?」ゴッ 京太郎「知りませんよ! 終わった話をややこしくするのは止めてください!」 桃子「あれは私を京太郎が見つけたとき……」 京太郎「特にお前に言ってるんだよモモ!!」 ………… ……… …… … ゆみ「決起集会か」 智美「顧問もいないようなものだし、注目されてる部でもないから内輪だけだけどなー」 睦月「いいんじゃないですか? やりましょう」 佳織「でもお菓子とジュースって全然決起って感じはしないね」 智美「堅苦しいのはウチの部に合わないだろー?」 桃子「そうっすね! リフレッシュして大会に出るのもよさそうっす」 ゆみ「ああ、私も賛成だ。……しかし大丈夫かな。まだやるべきことが……」 智美「ないない。もう十分だ」 ゆみ「だが対策が出来ていない高校がいくつも……」 智美「1校にしか通じない対策を練るより、私たちが普段通りの麻雀が出来るようになるほうが効率いいだろー?」 ゆみ「……!」 智美「まあゆみちんが最後で全部捲ってくれるって言うなら別だぞ?」ワハハ ゆみ「……私には最後で捲るほどの力はないからな。ここは蒲原の言うとおりにしておこうか」フフッ 智美「決まりだなー」ワハハ 桃子「場所は部室っすよね?」 智美「ああ、ついに部費を使うときが来たなー」ワハハ 佳織「それはさすがにマズイんじゃ……」 智美「バレなきゃ大丈夫だろー」 京太郎「いや、バレたらシャレにならないことになる可能性が……」 ゆみ「そんなことで大会出場停止なんて笑い事にもならないぞ」 智美「しゅ、出場停止までは考えてなかったな。おとなしくお菓子とジュースは持ち寄るか……」 睦月「そうしましょう!」 ゆみ「……津山。みんなで食べるからってプロ麻雀せんべいばかり買ってくるんじゃないぞ」 睦月「そ、そんなことしませんよ!!」アセアセ 京太郎(持ってくるつもりだったんだな) 桃子(ブレないっすねー) 佳織(本当に好きなんだ) ――帰り道―― ゆみ「最近調子がまた上がってきたようだな」 京太郎「はい、今日は久々の1位ですよ!」 ゆみ「まあ私がいる卓ではなかったがな」 京太郎「ぐっ……結局ゆみ先輩に勝てたのはこの間の1回だけでしたね」 ゆみ「そもそもあれから対戦数が少ないというのも……」 京太郎「どうかしました?」 ゆみ「いや、君には我慢をさせていると思ってな」 京太郎「我慢ですか?」 ゆみ「ああ、ここ最近は以前に比べて対局時間がだいぶ減ってしまっている。君には貴重な時間だというのにすまない」 京太郎「大会に向けて作戦会議してるんだから当然じゃないですか。そんなこと気にしないでくださいよ」 ゆみ「しかし私たちが話しているのは女子のことばかりだしな」 京太郎「この短い期間で男子の対策も立ててくれなんて言いませんよ。それに俺だって牌譜を見るくらい出来るようになりました」 京太郎「ゆみ先輩たちが女子の対策話してるとき、俺だって男子の牌譜見てどう打つか考えてます! 無駄になんかしてませんよ!」 ゆみ「……ありがとう。そう言ってくれると教えた甲斐があって嬉しいよ」ニコッ 京太郎「!」ドキッ ゆみ「ん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでも」 京太郎(ゆみ先輩、人にストレートに言うなって言ってるんだから自分も気をつけてくれないと……!)カアァァ ゆみ「……本当に大丈夫か?」 京太郎「だ、大丈夫ですよ! そ、それより大会は勝てそうなんですか?」 ゆみ「大会か、そういえば細かいところは君に話していなかったな」 京太郎「はい、俺の方は当たって砕けろというか、いかにあの化け物達から逃げるかって感じですけど」 ゆみ「ああ、うん。まあ仮に砕けたとしても気にするな。あれは多分災害のようなものだ」 京太郎「気にするにも実力が必要ですよね」 京太郎「まあ、直撃で決勝リーグ行けないとかだとさすがに落ち込みそうですけど。それで女子はどうなんですか?」 ゆみ「そうだな……裾花はわかるか?」 京太郎「えーと、今長野の女子団体でランキング県3位の高校でしたっけ?」 ゆみ「ああ、そこだ。妹尾の調子が良くて、モモに相手が上手くはまってくれたという前提だが」 京太郎「だが?」 ゆみ「勝つことも夢ではない……というか五分五分以上で戦えそうだ。妹尾の調子が悪くても勝ち目がないわけじゃない」 京太郎「凄っ!?」 ゆみ「っ」ビクッ 京太郎「鶴賀って去年まで大会とか全然出てないんですよね!?」 京太郎「それで長野3位に互角以上って、そんな先輩たち強かったんですか!?」 ゆみ「京太郎くん、とりあえず少し声を抑えよう」ドキドキ 京太郎「す、すみません。ちょっと驚いて……」 ゆみ「うん、分かってくれたらいい」コホン ゆみ「そうだな……まず何より、モモのステルスの強さは君もよく知っていると思う」 京太郎「理不尽ですよねーあれ。何度振り込んだことか……」 ゆみ「妹尾は何故か分からないがよく役満で上がっている」 京太郎「何度も飛ばされましたね……」フッ ゆみ「……そういえば君はよく振り込んでいるな」 京太郎「何なんですかねあれ。……というか今そんなこといいじゃないですか!!」 ゆみ「ああ、すまない。脱線したな。津山と蒲原はどちらも大崩れはしないだろう?」 京太郎「2人とも守備堅いですもんね」 ゆみ「そして私自身もみんなが稼いでくれたリードを守るくらいの力はあると思っている」 京太郎(むしろ広げられると思います) ゆみ「それに裾花レベルの高校であれば対策もしっかりしている。データのない向こうに比べればこちらがだいぶ有利だろう」 ゆみ「さっき話したのはそういう面も含めての勝率だな。まあ、麻雀である以上水物ではあるんだが」 京太郎「いやそれでも凄いですよ。本当に全国も夢じゃないですね!」 ゆみ「……」 京太郎「……あれ?」 ゆみ「裾花は3位といったが、その上の1位2位はまた別次元なんだ」ハァ 京太郎「そんなに強いんですか?」 ゆみ「そうだな。まず風越は主将の福路が読みと洞察力に優れている上、対応力もずば抜けている」 ゆみ「天江衣を除けば間違い無く長野一の雀士だ」 ゆみ「去年1年で大将をやっていた池田もおそらく出てくるだろう」 ゆみ「彼女は高火力が武器だ。安定性では福路に劣るが、爆発力では妹尾並かそれ以上だろうな」 京太郎「佳織先輩以上とか想像したくないですね……」 ゆみ「まったくだ」ハァ ゆみ「風越のことだし、去年いなかったメンバーもそれぞれ高い実力を誇るはずだ。正直勝ち目は薄いだろう」 京太郎「さすが名門ですね……。もう一つの高校は龍門渕でしたっけ? そっちはどうなんですか?」 ゆみ「龍門渕は去年全員1年で県大1位だったんだが、その時点で先鋒から副将まで4人とも全国レベルだ。隙がない」 ゆみ「そしてその4人が霞むくらいの脅威が大将の天江衣」 ゆみ「昨年の決勝ではさっき話した風越の池田を圧倒しているし、全国大会でも平均打点はトップだ」 京太郎「凄まじく強そうですね……勝てそうですか?」 ゆみ「遠慮無く聞くんだな」 京太郎「す、すみません」アセアセ ゆみ「気にするな。こういうときのそれは直さなくてもいい」 ゆみ「まあそうだな……。万に一つ勝てればよしといったところだろうな」 京太郎「そうですか……」ズーン ゆみ「君が落ち込んでどうする」 京太郎「それはそうなんですが」 ゆみ「なに、そもそも大会に出られるかどうかもわからなかったんだ」 ゆみ「妹尾とモモと、そして京太郎くん。いいメンバーに恵まれて大会に参加出来るだけで満足だよ」 京太郎「でも……」 ゆみ「ああ、もちろん諦めているわけじゃないぞ?」 ゆみ「万に一つを掴めるようにどうすれば勝てるか必死で考えてきた。それでもそれは君が気に病むことじゃないさ」 ゆみ「……それにそんなに勝って全国に行くことに拘るなら京太郎くんが頑張るといい」 ゆみ「私たちが団体で全国に行くより君が全国に行くほうがおそらく可能性が高いぞ」フフッ 京太郎「お、俺は決勝リーグ目標にしてる男ですよ!?」 ゆみ「君が言っているのはそういうことだよ」 京太郎「あ」 ゆみ「砕けて元々は私たちもだ。まあもちろん砕ける気はないし、勝って欲しいと思ってくれるのは嬉しいが、もっと気楽にな」 京太郎「……ゆみ先輩にそれを言われるとは思ってませんでした」 ゆみ「君に言われた通りに変わったと思ってくれ」 京太郎「俺が言った通り変わるだなんてそんな……」 ゆみ「これは冗談じゃない。その……素直に、受け取って欲しい」ウワメヅカイ 京太郎「――です」 ゆみ「……? すまない、よく聞こえなかった」ズイッ 京太郎「はっ!? も、もうこんなところですね。それじゃさようなら!」 ゆみ「あ、おい! ……もう、なんなんだ」 ゆみ「……また明日くらいちゃんと言わせろ。バカ」 京太郎(何するんだあの人、今日2度目だぞ!? 危なかった! 好きですとか言うとこだった!!)カアァァ 京太郎(俺に言う前に自分を直してくれ!! 今度絶対やめさせ――) 京太郎「……あれ他の男にもやってるのか?いや、男と話すのはまだ苦手とか言ってたし3年に男子はいないしやってないはず……」 京太郎(……まだ注意しなくていいか。うん、大会前だし。無駄なことを意識させると悪いし) 京太郎(別にもっとやって欲しいとかそういうのじゃないけど!)