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七音音階及び特殊な音階を用いた楽曲の考察 (編集中) 東方Projectに関する楽曲では、ニロ抜き短音階という五音音階が主旋律によく使われると前のコラムで述べました。 ほとんどの楽曲においてニロ抜き短音階を土台としたフレーズで曲が出来ているので、統計的に五音(六音)音階の楽曲が圧倒的に多い訳ですが、ほんの一部にニロ抜き短音階から外れる例外的な楽曲も存在します。 ここでは、その(少なくとも東方に関しては)例外的な音階と楽曲例を記載します。 1. 七音音階 東方の楽曲では、ニロ抜き短音階を用いた五音音階(実のところは第二音を例外的に含むので六音音階)の楽曲が大半を占めるのですが、その特徴もあって一方では、今まで私達が日常で慣れ親しんでいる七音音階を用いた楽曲が、そう多くはありません。 (※七音音階とは、ハ長調のC-D-E-F-G-A-B-C、イ短調自然短音階のA-B-C-D-E-F-G-Aや教会旋法等も含めた、1オクターブに7つの音が含まれる音階のこと) 東方Project全体の世界感もあって、ニロ抜き短音階は主旋律に日本風な雰囲気を醸す為の音階として使われますが、今回はその逆で、日本風でない、つまりクラシックに近い西洋寄りの響きやサウンドを求める場面では、作曲者にとっては七音音階を用いるのが有効ということになります。但し、これが必ずしも全ての楽曲に該当するとは言い切れません。 アリスミュージック ? ニロ抜き短音階の雰囲気作りは、音階第六音(F)がないことによって決定づけられます。 この逆で、音階第六音(F)を主旋律中に積極的に取り込むことで七音音階の世界観を形成します。 以下はその楽曲例です。 人形裁判 ~ 人の形弄びし少女 風神少女 妖怪の山 ~ Mysterious Mountain 信仰は儚き人間の為に 少女さとり ~ 3rd eye 妖精大戦争 ~ Fairy Wars リジッドパラダイス 等々etc. 補遺:人形裁判や少女さとりを見れば、日本風とは違った印象を持つキャラクターの楽曲に七音音階を使うようにしてあると解釈することが可能か? 他の楽曲で気付かれた方は追加をよろしくお願いします。 2. ブルーノートスケール メイガスナイト 3. 半音階的(無調?) U.N.オーエンは彼女なのか? 霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion 等々etc. 4. 旋律的長音階 妖精大戦争 ~ Fairy Wars ※諸解釈有り 5. 増二度を含む和声的短音階 リジッドパラダイス アラビアチックに聞こえる要素は和声的短音階の第六音~第七音間の増二度によるもの。 更に知識をお持ちの方々は、是非とも編集・改訂にご協力をお願いします。 執筆(2013/02/21):白鷺ゆっきー@黒雪ごはん Twitter
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音階(scale)とは 音が高低の順番に並べられている音列のことで、音階は時代や国によって違いがあり、各地域や時代の音楽の特色の原因となる。 音階とは、一定の音が一定の隔たりでオクターブの中に音の高さの順に並べられたもの。 音階は各国各時代で変化し、現在世界で広く知られ主に使用されている音階は、五音音階、全音階、半音階である。 日本音楽の場合は音階のことを旋法とよぶ。 クラシック音楽では、音階は「音が高低の順番に並べられた音列」という無機的な概念であるのに対し、旋法は音階に旋律の作法を加えた有機的な概念である。 音階の種類 1オクターブに含まれる音の数によって五音音階、七音音階などと分ける場合もある。 一般的に西洋の音階は音度記号によって表記される。 コード(和音)においては大文字のローマ数字が使われるが、音階の場合はクラシック音楽では小文字のローマ数字、ポピュラー音楽ではアラビア数字を使う。 クラシック音楽における名称と分類 (伝統的な音階) 1)全音階 ①長音階 ②短音階 ③教会旋法 2)半音階 (19世紀後半以降に人工的に作られた音階) ①全音音階 ②移調の限られた旋法 ③チェレプニン音階 ④倍音列音階 参考:http //ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E9%9A%8E
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ニロ抜き短音階の考察 東方Projectに関する楽曲のほとんどが短調であり、その中でも主旋律には“ニロ抜き短音階”をベースに作曲されていると言います。 ニロ抜き短音階とは? ここから先は全てイ短調(Am)を基準に、アメリカ・イギリス式音名表記を用いて進めて行きます。 イ短調(Am)の自然短音階、 A-B-C-D-E-F-G-A から、第二音(ニ)と第六音(ロ)を抜いた A--C-D-E--G-A この五音音階のことを指します。 世界には民族音楽などを中心にこれと似た五音音階が存在しますが、同様に日本でもこのような五音音階が存在します。 短調の楽曲においてこの音階を用いてメロディを書けば、日本人が聴くと日本風な曲に聴こえやすいということになります。 日本古来の音階・旋法だと、民謡音階、陽旋法に当てはまります。 ポピュラー音楽用語では、マイナーペンタトニックスケールと同様です。 神主の幻想郷に対する世界感からして、ただ単なる感覚ではなく、(日本風な雰囲気を醸す為に)意図的に(そうでなくとも感覚的に)この音階を使って作曲をしているという可能性は否定できません。 特に、明日ハレの日、ケの昨日のイントロ及びAメロの主旋律や、旧地獄街道を行くの主旋律は、このニロ抜き短音階の代表的存在と言っても過言ではありません。 しかし、本当に東方の楽曲の主旋律に、自然短音階の第二音(B)と第六音(F)がないのかというと、実はそうではありません。 第六音はほとんど使われていませんが、実際のところ第二音は例外的に使われることが多いです。 なんなら東方におけるいつものフレーズ「A D E G E D B C B G」にも含まれています。 「A B C」「C B A」「C B G A」といった形はごく普通に見られますし、 第二音を全く使わない旋律の方がむしろ珍しいです。 だったらニロ抜きじゃないじゃんという話にもなりますが、 西洋音楽の七音音階である自然短音階(A-B-C-D-E-F-G-A)と、 五音音階であるニロ抜き短音階(A--C-D-E--G-A)を決定的に区別させる点は特に、 第六音(F)があるかないか ということに尽きます。 ニロ抜き短音階が使われている中で第六音(F)が突然登場すると不自然に明るい感じが出ることが 多いですが、第二音(B)が突然登場してもほとんど違和感はありません。 第六音を使わないだけでも、かなりニロ抜き短音階の雰囲気に近くなるということです。 また、七音音階に比べて五音音階は、使用できる音が二つ(B,F)も減らされていますので、作曲が可能なフレーズのバリエーションに限りが生まれやすく、パターン化が起きやすいという問題が少なからず生じます。 そこで、第二音(B)を例外的に追加してやることにより、表現の幅が広がり、尚且つ第六音を使用しないので、ニロ抜き短音階の雰囲気をあまり壊すことなく作曲が出来ます。 これで、東方のほとんどの楽曲の主旋律において、実質的にニロ抜き短音階が使用されていると言えます。 補遺1:クラシックではホルスト作曲の、組曲「惑星」から第四楽章「木星」の中間部にある有名な主旋律が、ヨナ抜き長音階(C-D-E--G-A--C)をベースとして作られているという見解があります。しかし、これも第四音(F)は使っていないものの、例外的に第七音(B)は随所使用されています。特に西洋人にとってそのままのヨナ抜き長音階は、スコットランド民謡の響きを連想させることが多く、クラシックの場合は、第七音を例外的に追加してやることで、民族音楽らしさを除きながらもヨナ抜きの独特の情緒や叙情を残すことが出来ます。 補遺2:また、ZUN作曲ではありませんが、黄昏フロンティアのあきやまうに(U2)氏作曲の「東方萃夢想」や「砕月」のフレーズは、ZUN氏が普段作曲する楽曲よりも極めてニロ抜きの性格が強いとされます。理由は第二音(B)が使用される頻度が少ない為。 また、ニロ抜き短音階は、主旋律(もしくはそれに付随する内声パート)のみに通用するものであり、伴奏のコードやベースの音には影響を及ぼしません。(ここ重要) 例:主旋律には第六音(F)がないのに、コードにはF-G-Amで第六音(F)が使われている。 更に知識をお持ちの方々は、是非とも編集・改訂にご協力をお願いします。 執筆(2013/02/21):白鷺ゆっきー Twitter
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五声(五音)十二律って ? 解答1 杉井 ? 五声(ごせい)は、中国音楽で使われる五つの音。五音(ごいん)ともいう。 宮(きゅう)、商(しょう)、角(かく)、徴(ち)、羽(う)の五つ。音の高低によって並べると、五音音階ができる。西洋古典音楽の階名で大体、宮はド(Do)、商はレ(Re)、角はミ(Mi)、徴はソ(Sol)、羽はラ(La)にあたると説明されることが多い。後に変宮(宮の低半音)と変徴(徴の低半音)が加えられ、七声または七音となった。変宮と変徴は大体、シと#ファ(fis)に相当する。音の低いものから並べると、宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮で、七音音階を形成する。秦以降、七声は、宮・商・角・清角(角の高半音の意)・徴・羽・変宮、または宮・商・清角・徴・羽・清羽などでも表された。なお中国伝統音楽にはファに相当する音がない。 また、これらの音は、相対音高があるのみで、絶対音高はない。実際の音楽において、これらの音高は十二律によって確定される。理論上、各十二律で、五声の各音すべてを確定することが可能で、五声では60宮調、七声では84宮調を得ることができる(宮を主音とする調式を「宮」、その他の各音を主音とする調式を「調」と呼んだので、84の調式は12宮72調、合わせて84宮調)。ただし、実際の音楽で用いられる調式は限られており、例えば、燕楽では7宮21調、北曲では6宮11調、南曲では5宮8調のみが使われた。 ? 十二律(じゅうにりつ)とは、中国や日本の伝統音楽で用いられる12種類の標準的な高さの音。三分損益法によって1オクターブ間に平均律でない半音の間隔で配された12の音である。律とは本来、音を定める竹の管であり、その長さの違いによって12の音の高さを定めた。周代において確立した。 中国の律を低いものから高いものへと並べ、西洋音楽の音名と対照すると以下のようになる(規準音である黄鐘をCとした場合。時代によって違い、あくまでも目安である)。 1. 黄鐘(こうしょう)-C 2. 大呂(たいりょ)-C♯/D♭ 3. 太簇(たいそう)-D 4. 夾鐘(きょうしょう)-E♭/D♯ 5. 姑洗(こせん)-E 6. 仲呂(ちゅうりょ)-F 7. 蕤賓(すいひん)-F♯ 8. 林鐘(りんしょう)-G 9. 夷則(いそく)-G♯/A♭ 10. 南呂(なんりょ)-A 11. 無射(ぶえき)-B♭ 12. 応鐘(おうしょう)-B なお十二律は陰陽に分けられ、奇数の各律は陽律であり、律と呼ばれ、六律(りくりつ)と総称される。偶数の各律は陰律であり、呂と呼ばれ、六呂(りくりょ)と総称される。よって律呂の名がある。 日本では、壱越(いちこつ)・断金(たんぎん)・平調(ひようじよう)・勝絶(しようせつ)・下無(しもむ)・双調(そうじよう)・鳧鐘(ふしよう)・黄鐘(おうしき)・鸞鏡(らんけい)・盤渉(ばんしき)・神仙(しんせん)・上無(かみむ)と呼ぶ。
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科目 資料 説明 五声(五音)十二律って ? 解答1 杉井 ? 五声(ごせい)は、中国音楽で使われる五つの音。五音(ごいん)ともいう。 宮(きゅう)、商(しょう)、角(かく)、徴(ち)、羽(う)の五つ。音の高低によって並べると、五音音階ができる。西洋古典音楽の階名で大体、宮はド(Do)、商はレ(Re)、角はミ(Mi)、徴はソ(Sol)、羽はラ(La)にあたると説明されることが多い。後に変宮(宮の低半音)と変徴(徴の低半音)が加えられ、七声または七音となった。変宮と変徴は大体、シと#ファ(fis)に相当する。音の低いものから並べると、宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮で、七音音階を形成する。秦以降、七声は、宮・商・角・清角(角の高半音の意)・徴・羽・変宮、または宮・商・清角・徴・羽・清羽などでも表された。なお中国伝統音楽にはファに相当する音がない。 また、これらの音は、相対音高があるのみで、絶対音高はない。実際の音楽において、これらの音高は十二律によって確定される。理論上、各十二律で、五声の各音すべてを確定することが可能で、五声では60宮調、七声では84宮調を得ることができる(宮を主音とする調式を「宮」、その他の各音を主音とする調式を「調」と呼んだので、84の調式は12宮72調、合わせて84宮調)。ただし、実際の音楽で用いられる調式は限られており、例えば、燕楽では7宮21調、北曲では6宮11調、南曲では5宮8調のみが使われた。 ? 十二律(じゅうにりつ)とは、中国や日本の伝統音楽で用いられる12種類の標準的な高さの音。三分損益法によって1オクターブ間に平均律でない半音の間隔で配された12の音である。律とは本来、音を定める竹の管であり、その長さの違いによって12の音の高さを定めた。周代において確立した。 中国の律を低いものから高いものへと並べ、西洋音楽の音名と対照すると以下のようになる(規準音である黄鐘をCとした場合。時代によって違い、あくまでも目安である)。 1. 黄鐘(こうしょう)-C 2. 大呂(たいりょ)-C♯/D♭ 3. 太簇(たいそう)-D 4. 夾鐘(きょうしょう)-E♭/D♯ 5. 姑洗(こせん)-E 6. 仲呂(ちゅうりょ)-F 7. 蕤賓(すいひん)-F♯ 8. 林鐘(りんしょう)-G 9. 夷則(いそく)-G♯/A♭ 10. 南呂(なんりょ)-A 11. 無射(ぶえき)-B♭ 12. 応鐘(おうしょう)-B なお十二律は陰陽に分けられ、奇数の各律は陽律であり、律と呼ばれ、六律(りくりつ)と総称される。偶数の各律は陰律であり、呂と呼ばれ、六呂(りくりょ)と総称される。よって律呂の名がある。 日本では、壱越(いちこつ)・断金(たんぎん)・平調(ひようじよう)・勝絶(しようせつ)・下無(しもむ)・双調(そうじよう)・鳧鐘(ふしよう)・黄鐘(おうしき)・鸞鏡(らんけい)・盤渉(ばんしき)・神仙(しんせん)・上無(かみむ)と呼ぶ。 名前 コメント
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武満徹「鳥は星形の庭に降りる」分析パッチ 今回は武満徹のオーケストラ作品「鳥は星形の庭に降りる A Flock descends into the Pentagonal Garden」で使われた和音構成を、作曲者本人の著書「夢と数」(リブロポート社 1987年(絶版)、ただし「武満徹著作集 第5巻」新潮社 2000年 に再録)に書かれた自作分析の解説をもとに、OpenMusic上で再現するためのパッチを作ってみよう。 武満徹「鳥は星形の庭に降りる」Toru Takemitsu A Flock descends into the Pentagonal GardenSpotify (2曲目) 武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」は1977年に書かれたオーケストラ作品で、作曲家の代表作の一つである。この作品は、それ以前の1960年代までの複雑な音響を伴う作風から、初版の小澤征爾指揮のレコードでカップリングされた同時期の作品「カトレーン」、あるいは雅楽「秋庭歌」(のちの秋庭歌一具)などと共に、作曲者本人によって「汎調性(パントーナル)」と呼ばれる、基調音の明らかな調性の色調の濃い1980年代以降の氏の作風へと移行して行く過渡期に書かれた作品である。 この曲を含む幾つかの作品について、作曲者本人が講演録を元に自作の分析を書き起こした「夢と数」という著書がある。 初版はリブロポート社から1987年に出版されたが、これは2013年現在絶版である。横書きで書かれており、必要な図版の他にも、武満自身のスケッチを元にしたカラーの様々なイラストで彩られた美しい装丁の本なので、図書館などで閲覧できる環境にある人は、ぜひこのリブロポート版を手に取って読んでみてほしい。 さもなければ、新潮社から2000年に刊行された「武満徹著作集 第5巻」にも収録されている(注:小学館から2002年に刊行された音楽作品CD全集とは別もの)。こちらは縦書きの装丁でイラストは省かれているが、最低限必要な図版は載っている。現在も入手可能であり、各地の図書館にもこちらの方が所蔵されている可能性が高い。 この曲については、マルセル・デュシャンの写真展へ行き、彼の後頭部を星形に刈った写真の印象から、その晩に見た「鳥の群れが舞い降りる夢」を元に書かれたという。 星形というタイトルにあるとおり、この曲では5という数値が重要なファクターとなっている。ピアノの黒鍵に端を発する伝統的な五音音階から、数理操作に寄って複雑なプロセスを経て「汎調性」の響きを得るまでの過程が書かれている。 今回のパッチの目的は、この「夢と数」の記述を元に、武満自身の数理操作をリアライズしてみることである。 はじめにお断りしておくが、画像左側のn-cercleに関する部分は、n-cercleとZnの解説のためのもので、少々蛇足である。本稿の読者の皆さんがご自分でプログラミングするときは、この部分を省略しても構わない。右側の部分は、ここまでの非公式チュートリアルで触れて来た知識で十分理解できるはずである。 まずはその、クラスn-cercleについて見てみよう。 cercleはフランス語で「円環」の意味で、英語のcircleに相当する。基本的にOpenMusicの各オブジェクトは英語のはずだが、開発しているのがパリのIRCAMであるため、たまにフランス語由来のものがあるので注意。 これは半音階を円環上に表示するためのクラスで、ピッチクラスセットなどを見やすく表示するのに使う。通常では12個の点が与えられ(変更も可能)、一番上はドを意味し、時計回りに半音ずつ高くなるように並んでいる。(いわゆる五度圏の円環とは異なるので注意。) ここでは五音音階を作るのが目的なので、まずは「夢と数」から該当する部分を見てみよう。 以下の引用文はすべて「夢と数」によるものである。 この作品では、夢に現れた(五角形の)星の庭がイメージとして重要なので、5という数から、すべての音程(ハーモニック・ピッチ)と音場(ハーモニック・フィールド)を作りました。5という数から、私たちが(音楽的に)すぐ思いつくのは五音音階(ペンタトニック)という、東洋やアフリカの旋法(モード)ですね。それは簡単に言えば、ピアノの黒鍵だけの音階です。つまりC# E♭ F# A♭ B♭の五つの音です。ちょうど中央にF#があって(これはドイツよみでFisといいますが)、この音をフィクス(fis)ーー何か語呂合わせのようですがーーとして、持続音(ドローン)のように扱う。 この五音の音程関係(インターバル)を見てみると、図6のように、長2度(2)、短3度(3)、長2度(2)、長2度(2)、そしてオクターヴ上の基音C#に到る短3度(3)です。 (注:原文は長2度(+2)、短3度(-3)のように書かれているが、数値をプラスするかマイナスするか非常にややこしい記述なので、以後演算子は省く。) というわけで、まずこの音程をn-cercleで図表化してみよう。 まず「夢と数」の表記に従い、 (2 3 2 2) という音程の数列を用意する。dx- xを用意し、左辺に1を、右辺にこのリストを繋げる。ここでの出力結果は、 (1 3 6 8 10) となる。 ここでn-cercleを用意し、mキーで中身を表示し、すこし広げておく。 このdx- xの出力をn-cercleのinput 2(LISPは0からものを数えるので左から3番目、つまり一番右)に繋ぐ。ここでevaluateしてみると、このような図が表示される。 これのoutput 0に、c2chordというファンクションを作り、その下にクラスchordを作り、それのinput0(一番左)に繋げる。ここまでのチュートリアルでは全てinput 1(左から2番目)に繋げていたが、ここでは異なるので注意! ここでそのchordをevaluateしてみると、「ド#、レ#、ファ#、ソ#、ラ#」(C#4, D#4, F#4, G#4, A#4)という和音が現れる。 これにom+で1200を足して1オクターヴ高くしたchordを作っておこう。後の話はここから再開する。 その前に、n-cercleとの組み合わせに不可欠なZn関連のファンクションについて触れておく。 invというファンクションを用意する。input 0はオプション選択式だが、標準のintegerのままで良い。input 1に先ほどのdx- xを繋ぐ。 その下にさらにtranspというファンクションを作り、input 1には 2 を、input 2にはinvの出力を繋ぐ。 ここで新たにn-cercleを用意し、transpの出力をinput 2に繋いでみると、その結果はこのようになる。 同じ五角形を保ってはいるが、構成音が替わっている。 これらは、後で引用する「夢と数」の図8と同一のものである。 これを先ほどと同じようにc2chordで繋ぐ(それぞれoutput 0, input 0であることに注意)。これを見ると「ド#、ミ、ファ#、ソ#、シ」という和音が出力されるが、orderモードにして良く見ると「ド#、シ、ソ#、ファ#、ミ」という配列になっている。これは先ほどinvでリストを反転させ、さらにtranspで移動させたことによるものだが、つねにドが一番低い値になるのでこのような表記となるのである。 そこでこれをsort.(語尾にドットがつくことに注意)で低い順に並び替える。それをcdr(クダー)で最初の値を切り落としたものに、firstで最初の値を取り出してom+で1200(1オクターヴ)上げたものをx-appendで繋げると、「ミ・ファ・ソ#・シ#・ド#」という並びになる。 n-cercleの部分を読み飛ばした人は、ここから作り始める。その場合は以下に記述する和音をchordで入力し、ブロックしておこう。 さて、ここまででピアノの黒鍵に相当する「ド#、ミ♭、ファ#、ラ♭、シ♭」(C#5, Eb5, F#5, Ab5, Bb5) が構築できた。 このように調性が明確な音響に於けるシャープとフラットの混ぜ書きは通常しないものだが、原著を尊重してここでは敢えて原著のまま記述する。 OpenMusicでは通常はシャープだけで表示されているが、chordの中身を開いて各音符を右クリックすれば、フラットはもとよりダブルシャープやダブルフラットなどにも臨時記号を変更できる。 ここでいよいよ「夢と数」で触れられている分析解説をパッチ化して行く。 (「武満徹著作集 第5巻 夢と数」新潮社 より引用) 先ほどと引用箇所がかぶるが、もう一度引用最後の一節を読み返してみよう。 この五音の音程関係(インターバル)を見てみると、図6のように、長2度(2)、短3度(3)、長2度(2)、長2度(2)、そしてオクターヴ上の基音C#に到る短3度(3)です。 この場合は、x- dxを使えばこの値はすぐに参照できる。(非公式チュートリアル5を参照) まずオクターヴ上の音が必要ということで、chordのoutput 1からfirstで最初の音程(C#5)を読み取り、om+で1200(オクターヴ)を足した「1オクターヴ上のC#6」をx-appendで融合し、各音程の差をx- dxで抽出してみよう。 結果は (200 300 200 200 300) となる。 OpenMusicではセント単位で音程を表記するので、ここでは先ほどの2と3を100倍したものと考えれば良い。 原著の次の段落を見てみよう。 この、2、3、2、2、3の関係を、一種の単純な魔方陣のように組み立ててみます。(図7) 上向拡大 ↑ Bb 3 2 3 2 2 上向拡大 ↑ Ab 2 3 2 3 2 下向拡大 ↓ F# 2 2 3 2 3 下向拡大 ↓ Eb 3 2 2 3 2 下向拡大 ↓ C# 2 3 2 2 3 (「夢と数」図7、ただし上下の順は反転した。) 和音は下から上へ積み重ねて書くものなので、読みやすさの点から敢えて武満のオリジナルのものと上下を反転していることをお断りしておく。 この図表をよく見ると、1段目の最後の数値が2段目の先頭に来ており、以後その繰り返しになっていることが分かる。 これはOpenMusicではrotateを使えば再現できる。 F# (fix) を中心に、上の三音C# E F#、そして下の二音Ab Bbを、この魔方陣によって上下に拡大する操作をします。C#を例にとると、まず長二度(2)下がってBナチュラル(H)、つぎに短三度(3)下がってAb(G#)、また長二度(2)下がってF#、同じようにつぎも長二度(2)下がってEナチュラル、最後に短三度(3)下がって元の(オクターヴ低い)C#になります。(図8)この音程は図9のようになります。 それぞれの音は、上向下向、同じようなプロセスによって図10のような音程(ハーモニック・ピッチ)を得ることが出来ます。 ということでこのプロセスをパッチ化してみる。 まずomloopを作成してinputを2つ用意する。 input 0には先ほどのx- dxの出力を繋ぐ。 input 1には、chordのoutput 1からfirst-nで最初の3つ(下向拡大)を取り出して繋ぐ。 omloopの中身を開く。 input 0にはx- dxの出力結果が入力されている。「下向拡大」するのだから、先ほどの差をom*で-1を与え、負数に変換しておく。ここの出力は (-200 -300 -200 -200 -300) となる。 input 1を使ってここでは図のようにループを構築する。 forloop, length, nthの組み合わせは、つまりはlistloopと同様であるが、ここでの利点はforloopによって何回目のループであるかの数値を取得できることである。 listloopとcountを使っても同様のカウントが出来るが、この方法は多少冗長ではあるものの見た目が分かりやすい。 これを用いて、nthでリスト内の値を順番に呼び出すと同時に、rotateで先ほどのx- dxおよびom* -1 で得られた負数の音程を順次ローテートして行く。これで先ほどの図7の「下向拡大」の部分が再現できる。 ここまでをcollectに繋ぎ、eachTimeとfinallyに繋いでおく。 ローテートされた音程と、和音の各音(最初の3音のうちの1つずつ)をdx- xに入れると、引用図9のような「下向する音程」が得られる。 この原理を応用して「上向拡大」用のもう一つomloopを作る。 今度はinput 0の値は負数ではなく正数のままで良いが、処理の都合上reverseしておく。 forloopからの出力にom* -1を与えて負数にする。input 0, reverse, length, om+の順に繋ぎ、先ほどのom*の出力と足す。 ここでのom+の出力結果はまず5となり、次に4となり、そこまでである。 これをrotateに繋ぎ、ローテーションをそれぞれ変える。 ここまでをcollectに繋ぎ、eachTimeとfinallyに繋いでおく。 これら2つのomloopをx-appendすると、その出力結果は以下のようになる。 ((7300 7100 6800 6600 6400 6100) (7500 7200 7000 6800 6500 6300) (7800 7600 7400 7100 6900 6600) (8000 8200 8500 8700 8900 9200) (8200 8500 8700 9000 9200 9400)) 試しにこれをchord-seqのinput 1に入れてみると、意図とそぐわず以下のようになる。 (ここでのchord-seqの表示は、五線譜staffをGGF(ト音記号2つとヘ音記号1つ)にしてある。) これは和音の横のラインの各「声部」がそれぞれ一まとまりの括弧となり、その括弧を縦のラインの「和音」として読み込んでいるためである。 このような場合にはmat-transを用いる。 mat-transは(非公式チュートリアル5で説明した通り)、((1 2 3)(4 5 6)(7 8 9))というリストがあると、それらの各値を最初から順に読み込み、((1 4 7)(2 5 8)(3 6 9))の順に配置する。 このパッチの場合、x-appendの後にmat-transを用意すると、その出力は以下のようになる。 ((7300 7500 7800 8000 8200) (7100 7200 7600 8200 8500) (6800 7000 7400 8500 8700) (6600 6800 7100 8700 9000) (6400 6500 6900 8900 9200) (6100 6300 6600 9200 9400)) これをchord-seqのinput 1に入れれば、「夢と数」に掲載されている図10のようになる。 さて、この和音だけで終わりではない。「夢と数」の次の部分を見てみよう。 (図10の)0と5は、当然同じ五つの音ですが、音程関係は著しく異なった結果になっています。そして、この1、2、3、4、5、五つの異なった音階に、つねに、前に述べたように、F#が持続音(ドローン)として鳴っています。また、それぞれの音階の基音(ファンダメンタル)に、基本の(五音音階の)逆行(リヴァース)を葡萄の房のようにたらしてみます。さて、以上のすべてを図示すると図11のようになります。 ということで、ここで付け加えるのは「持続音としてのF#」と、「基本の五音音階の逆行」である。 まず「基本の五音音階の逆行」を作ってみよう。これはx- dxおよびom*で-1を掛け、firstから値を取ってdx- xに通せば良い。 これについては公式チュートリアルの2と3で触れられているので、それを参考にしてほしい。 これによって「ミ、ファ#、ソ#、シ、ド#」(E4, F#4, G#4, B4, C#5)という和音が得られる。 ただし、このプロセスの代わりに、先ほどn-cercleとinvを用いて反転させて作った同じ和音を用いても良い。 ここで3つめのomloopを用意する。inputは3つ用意する。 まずinput 0には逆行した五音音階(E4, F#4, G#4, B4, C#5)を入れる。 input 1にはオリジナルの五音音階(C#5, Eb5, F#5, Ab5, Bb5)からthirdでF#5 7800を取って入れる。 input 2には先ほどのchord-seq(「夢と数」の図10に相当するもの)のoutput 1を繋ぎ、listloopを与える。これでそれぞれの和音がループごとに呼び出されることになる。 input 0では既に「加工する音形」としての負数がomloop以前のメインパッチで得られている。ここでの入力は (7300 7100 6800 6600 6400) となる。 これをx- dxして各音程 (-200 -300 -200 -200) を出力する。先ほどのlistloopからfirstを呼び出し、dx- xの左辺に繋ぐ。これで、 それぞれの音階の基音(ファンダメンタル)に、基本の(五音音階の)逆行(リヴァース)を葡萄の房のようにたらしてみます。 の部分が実現できることになる。 しかしながらそうすると基音の部分の音が二重に表記されることになるので、ここではcdr(クダー)を使っておこう。ここでのcdrの役割は「リストから最初の値を省いて出力するもの」と思っておけば良い。(実際はLISPの基本にかかわる重要な概念だが、これは後にLISPを扱う時に詳述する) x-appendを用いて、今のcdrの出力、input 1、listloopを順に繋ぐ。最後にcollectに繋ぎ、eachTimeとfinallyに繋いでおく。 いよいよ最終的な出力である。新たにchord-seqを用意し、input 1に繋いでevaluateしてみる。 これで出力が「夢と数」の図11のようになれば、成功である。 この和音の出力を聴いてみたら、「鳥は星形の庭に降りる」の録音の11 30付近を聴いてみよう。 同じ和音が現れるのが聞き取れる。 武満徹「鳥は星形の庭に降りる」Toru Takemitsu A Flock descends into the Pentagonal GardenSpotify (2曲目) 最後にこれは本編とあまり関係の無い内容だが、「夢と数」の中でも特に筆者(Imahori)が好きな一文が前述の引用の直後にあるので、本稿の締めくくりとしてその武満徹の言葉を引用しておこう。 私が音楽を考える時には、お話しして来たように、楽譜の上で平面的に音を見、記号的に音を捉えていますが、私の音楽の場合には、それが実際に楽器によって響きとして具体的なものにならない限りは意味がありません。書法の論理だけでは、音は響きとしての肉体を持ったことにはなりません。私の場合には、具体的な響きが重要ですし、すべてのシステムは、響きを念頭に案出されたものです。 バッハという偉大な作曲家がいますが、あの素晴しい「フーガの技法」にしても、構造そのものがとても重要で、どんな楽器で演奏しても、それは害われることはありません。その論理は極めて普遍的です。ところが私の場合は、それとは事情がいささか異なります。私は、ドビュッシーの音楽から多くを学んでいます。おおむね独学ですが、私の師匠はドビュッシーだと思っています。ドビュッシーがどうして私にとって価値ある存在かというと、かれの音楽はいくつかに要約できるけれど、大事なのはその色彩、光と影だと思います。それは独特な管弦楽法において顕著です。一個の主題を強調するのではなく、音響焦点を複数にした、一種の汎焦点(パンフォーカス)のようなオーケストレーションは類例のないものです。(中略) 日本の伝統的な音楽は、音色に対して並外れて敏感でした。ーー先ほどまでは便宜的に音をひとつの機能として話を進めてきましたが、ひとつひとつの音、Eとか、E♭とか、Aとかいう音にはそれぞれいろいろなスペクトラムがあり、またそれぞれ異なった運動があります。ーーそうした繊細な動きを聞き出そうというのが、強いて言えば、ドビュッシーや、私たち日本人の音楽の感受性だったと思います。 参照 非公式チュートリアル 前後 非公式Tutorial 06 バッハ平均律 非公式Tutorial 08 multi-seq voice poly 非公式Tutorial 概要
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全音音階(whole tone scale)とは 全音のみで1オクターブを6等分した音階。 ポピュラー音楽ではホールトーン・スケールと呼ばれる。 C, D, E, F#, G#, A#, C 概要 一般に馴染まれているドレミファソラシドといった音階では、全音と半音の両方が使われているが、全音音階では、全音(長2度)しか使われない。音階を構成する音の数は6個である。 ドレミの次はファではなく、ファ#、ソ#、ラ#、となる。ラ#の次はドになってしまう。 同様に半音ずらすとド#、レ#、ファ、ソ、ラ、シとなる。 主音をどれに持ってきてもこの2種類しか存在しない。 古典的な意味での和声の調和を、全く目標としていない音階である。 全音と半音の配置から決定される全音階における主音のような音階の中心音を認識することが不可能となり、古典派やロマン派の音楽の大前提であった調性を崩壊させることにもつながった。 独特の印象のある音階である。勿論どんな音階もそれぞれ独特の印象を持っているのだが、全音音階は(普通のピアノで表現可能な範囲での)他のどの音階とも似ていない。 オクターブを単純に等分することによる平坦さは、平均律と相性が良い。 また調性感覚をぼかすのにも都合が良く、ドビュッシーはそれを目的に多用した。 オクターブの単純分割と言う意味では、減七和音(ディミニッシュ・コード)も同様である。 こちらは短3度によって4分割され、転回を除けば3種の移調のみが存在する。 ベートーヴェンが好んで多用したが、西洋音楽の理念では基本的には3度の積み重ねは和音として認識されるため、これは音階とはみなされない。 参考:http //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E9%9F%B3%E9%9F%B3%E9%9A%8E
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N.ジャンツァンノロブ(Natsagiin Jantsannorov, b.1948) ウブルハンガイ県生まれ。小学校のとき小さなアコーディオンで遊んでいたのが音楽に親しんだ最初。1971年ウランバートル市の師範学校講師、75~79年ウクライナのキエフ音楽院にて作曲と音楽学を学ぶ。日本でも上映された映画音楽《マンドハイ賢妃》、ラジオ番組のテーマ音楽《モンゴルのメロディー》などは頻繁に聴かれ、人気作家である一方、83~92年モンゴル作曲家同盟委員長、80年代初頭にはモンゴル人民革命党政治局イデオロギー局員、文化省副大臣、国会議員を務め、文化政策に影響力を持っている。また1988年馬頭琴協奏曲、1991年箏協奏曲を作曲したがこれはこの種の民族楽器の協奏曲の最初となった。1989年と2002年に国家賞受賞、2005年には人民芸術家の称号を得た。作曲家としての立場からモンゴル音楽を研究している音楽学者としても名を知られ(1993)『モンゴル語音楽用語小辞典』、(1996)『モンゴル音楽の12の肖像』、(2005)『オルティン・ドー用語研究』、(2006)『モンゴル音楽の五音音階への論説集』、(2009)『モンゴル音楽における音感の原理解題』など著作も多い。馬頭琴アンサンブルの育成にも力を入れている。 代表作 馬頭琴とギターのための《モンゴルのメロディー》、映画《マンドハイ賢妃》の音楽(1988)、映画《悠久なる天神の加護の下》の音楽(1991)、交響曲第1番(1979)、交響的序曲(1981)、交響的行進曲(1981)、弦楽四重奏曲(1976)、ヴァイオリンソナタ(1976)、箏とオーケストラのための協奏曲(1989)、馬頭琴とオーケストラのための協奏曲(1988)、声楽のための24の前奏曲(1994)、
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モンゴル歌謡の分類について モンゴル民謡の曲を分類する作業は、その初期において、言語学者により行われた。唄、儀式歌、祝詞(ユルール)、讃詞(マクタール)、叙事詩をその詞の構造、内容、表現に沿って分類していたので、これは音楽的な面で根拠に欠けるものであった。音楽作品の生命であり真の存在要件たる調子や旋律、音組織の観点からは検討されていなかったのである。 モンゴル民謡の分類をかなり早い時期に行った研究者の一人にA.ポズネーエフがいる。彼はモンゴル民謡の分類を、まずモンゴルの多くの部族ごとに分け、その中でさらに分類した。それをここに示すと: ハルハ族の歌: 1、宗教歌 2、生活歌および父母への賛歌 3、想い人に向けて歌う歌 ウールト族の歌: 1、叙事歌 2、年代記歌 3、祝詞または婚礼の先導唄 ブリヤート族の歌 1、益荒男の歌 2、生活歌 3、叙事歌 4、巫歌 と分類した。 A.D.ルードネフ は、自ら蒐集し、出版した歌集に収められた歌のうち、31曲を分類不能、30曲を叙情歌、21曲を生活歌、13曲を踊り歌、11曲を仏教歌、6曲を叙事詩、5曲を宗教道徳歌、4曲を巫歌という項目に割り振り、音調の特徴によりモンゴル、ブリヤート、カルムイクという3つの種類に分け、その際音調や旋律と詞を結びつけ、それに関連して上記のうちのモンゴルの歌が総じてハルハ族の歌と東部モンゴルの歌に分け、更に聖俗二種類のジャンル区分を設けて研究した。 V.Y.ウラディミールツォフ は 1、荘厳さ、叙情、英雄的たちを歌い上げたもの(オルティン・ドー)、勇敢な駿馬、古の事物にまつわる歌 2、宗教的な内容の年代記歌 3、放蕩の歌、恋歌(ボギン・ドー) というように分類し、語り物(ウルゲル)師の弾く曲を祝宴の儀と結びつけた別の項目を設けてそこに分類した。 モンゴル国の文学者G.リンチェンサムボーはモンゴルの歌の分類法に大小の項目を設けるにあたり、1960年代までに出された先行研究の成果を利用して研究を行い 1、哲学叙情歌 2、生活叙情歌 3、仕事歌 4、革命歌 5、歴史歌 6、鞍歌 7、風刺歌 8、宗教歌 9、書かれたテクスト起源の歌 という項目を設定した。これは音楽と作詩術の関係に注目した分類を提唱したものである。このような分類法を採用した研究者には文学者のソドノムがいる。またそのような中からバボードルジは歴史歌を取り出して研究したし、劇作家のE.オヨーンは2人以上が歌詞を劇のように掛け合って歌う「掛け合い歌」に注目して研究している。 そんな中、ソ連の音楽学者B.F.スミルノーフはモンゴルの伝統的歌唱を4つの基本的分類項に振り分けたが、これはモンゴル音楽学の観点からの研究の大きな前進と見られている。 オルティン・ドー的な音楽的特徴を持つ曲を一つの項目にまとめ、更にその中にA、B二つの小項目を設けた。そのオルティン・ドーの項目である第一項を Aグループ オルティン・ドーの類の、呼び声の旋律、ギーンゴーおよび牧民の呼び声旋律、競馬の称号呼び上げ、宴の歌、旅の道中歌、家畜の子取らせの歌、オルティン・ドーの唱和、賛辞の唱和(オーハイ) Bグループ 歌い手一人で歌うオルティン・ドー とし、Bでは一人で歌うものを独立させて扱った。 第二項には通常の民謡ボギン・ドーを、第三項には叙事詩、語り物、読経、讃詞(まくタール)、祝詞(ユルール)、芝居の台詞回しを分類し、第四項には喉歌(ホーミー)、口笛(イスゲレー、普通の口笛とは異なる)、祈祷の詠唱が含まれる。 モンゴル国の文学者P.ホルローは民謡の内容、構造、詩作術の独自性と結びつけて歌の種類をその表現上の特徴によって叙事歌、叙情歌、掛け合い歌という三つに分類した。 他にも、伝統的歌唱が以下のように分類されることもある。 1、民間口承文芸の伝統的調子 2、仕事、慣習と結びついた音調 3、祝儀、婚礼、宴の音調 4、宗教、信仰の性質をもつ音調 この分類では旋律の特徴を分析している。あるいはまた、モンゴル文化の広い領域の中で、オルティン・ドーと直接、あるいは間接的に結びつけ 1、狩猟あるいは遊牧の生活様式 2、シャーマン音楽のグループ 3、叙事詩音楽の基層、および他の語りものの類 4、伝統的な祝い、儀礼のための付随音楽 5、宮廷音楽、儀式の伝統 6、宗教音楽 というように6段階に分類した。 モンゴルの民俗音楽を分類する際「伝承されてきたモンゴル民俗音楽の全資料やモンゴル音楽にまつわる民間伝承、モンゴルの民間のプロフェッショナルな古典音楽、これら全て同様に注意深く観察し、それ以外にもモンゴルの民俗音楽の作品に関わる民間芸能文化の土台全てにあるそれぞれの特質、構造、造型、その起源および発展の諸段階、発展の順序等等にも同様に注意を向ける」ように、音楽学者のJ.バドラーは前世代の研究者たちの傾向を研究の方法論のレベルで整理しながら研究し 1、モンゴル民俗音楽のうち発声器官による芸能 2、(相撲、競馬などの際の)呼び声の旋律 3、なぞなぞ、謎解き、問答、讃詞および祝詞、語り物および叙事詩の旋律 4、器楽曲 5、モンゴル民謡 という「文法論、文体論、形式論、分類論から見た5つの大分類に」分けるのが適当であると主張し、以後全て上記の方法に沿って研究を進めたのだった。この分類では宗教音楽および宮廷音楽が民俗芸能に含まれていないが、それは民間伝承(フォークロア)の側面から研究を行っていたせいである。 モンゴルの伝統音楽の旋法と音高の相互関係の問題を研究するのに、先達の上記の分類が助けになるのではあるが、同時に、五音音階のイントネーションの独自性、旋法の特徴の点を取り出してみると、どの分類も完全には合致しないようだ。特に声の芸能において詞の内容に基づいて種類分けしているので、先方の研究には全く適さない分類になってしまっているのである。ただしスミルノーフの教えを受け、モスクワにも留学した作曲家のL.ムルドルジはモンゴル民謡の旋律をオルト(長いもの)、ボギン(短いもの)の2つからなるとし(この分類法がモンゴル伝統のものなのか、音楽学者によるものなのかはっきりしないが)、さらにオルティン・ドーを音の跳躍が特徴的なモンゴルの古典音楽と位置付けた。一方ボギン・ドーは清朝時代に起源をもつとした。 作曲家・音楽学者のN.ジャンツァンノロブは以上を総括して言う。「モンゴルの伝統音楽のほとんど全てのジャンルの作品をペンタトニックの旋法、その様々なヴァリアントに含めることができるが、イントネーション(形式、構造、リズム、規模も含まれる)の発展の点でそれぞれ同じであったり、異なったりするし、それ以外にも当該の分類法の発生や伝統、歴史的時間、歌唱および演奏の作法など多くのことと結びつけて、各々特異な分類になることがしばしばである。我々はハルハ、ブリヤート、ウゼムチン、バルガ、ホトン、ドゥルベドなどモンゴル諸族の歌の旋律をすんなり区別している。またボルジギン氏族の、西バラート地域のというように地域ごとの部族内部の違いまで聞き分けている。一つの川の流域で生活しているある部族の中の旗(ホショー)ごとの違いをも区別できる特技を持っている。ある山の北側と南側の違いすらわかることさえあるのだ。この違いは旋法の一般的な組成や構造の上では同じであってもリズムやイントネーションが異なる。しかしモンゴルの伝統音楽の中の五音音階の特徴を可能性の枠内で解明しようとすると、伝統音楽の代表的な種類の比較の必要性が必ず出てくる。そこで伝統音楽のジャンルを区分けし、その際上記の先行研究のどれかひとつを取り出し、モンゴル式五音音階の独自性を明らかにするのは非常に困難であることを認識しながら作品ジャンルをイントネーションの総合的特徴によって分類するのが妥当であろう。」彼が試みに四つの基本的項目に分類したのがこれである。 1、生活の中の、讃詞・祝詞の、語り物・叙事詩の旋律の音階 2、シャーマニズム音楽、宗教音楽の音階 3、伝統的器楽作品の音階 4、伝統的歌唱の旋律の音階 以上は音楽学者が研究のために提示した分類である。ではそれを歌う主体であるモンゴルの人々は、どのように考えてきたのだろうか。それはまだ研究されていないが、1つには大まかな旋律の特徴オルティン・ドーとボギン・ド―(このオルト(長い)とボギン(短い)を分ける言い方自体は少なくとも1930年代には著作物にみられる)が考えられるが、これは民間のものなのかはっきりしない。もう一つ、おそらくもっとも重要なのが歌われる場に即した分類である。宴の歌、家畜への掛け声、劇の歌、などである。これは「民話」、「民謡」という区別が実生活には存在せず、単に昔話だとか噂話、古い歌、流行り歌というように語られること、そして語られる場によってはその名称は流動的であることを念頭に置いて考えてくべきである。
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文字@アルールシア帝国 目次 概要 この世界の文字は、一般に神聖文字と呼ばれ、もっとも基本のものはたった二つの記号でできている。 その二つの記号を使って、この世の森羅万象を記述する。 一般に使われるのは数字も含めて18の記号と、種族記号の人、ヴォル、プリマを表す3つの記号しか存在しない。(実際には種族記号は4つあるが、最後のイルカをあらわす記号はほとんどしられていない。また、神聖文字に種族記号を持たない種族を亜族、亜種と呼ぶ。差別や偏見、迫害等の要因ともなっている) ちなみに数字が9記号(基本則的にはローマ数字に近いが、3999以上の数字でも使われる)あり、文章には残りの12記号が使われる。 一般的に、人族の数字にゼロ、零は存在せず、極一部の魔導師達の間に、概念上の秘術として伝わっているだけある。 また、算術はヴォル族が使う8進法が一般的で、数学もそれに合わせて作られている。 プリマの国や、一部の人族の商人集団では、10進法も使われている。 当然、数字の記述もそれに合わせて違うため、国が違うと同じ記述でも数値が違う場合があるが、一般的に数字の場合、一番最初に人、ヴォル、プリマを表す種族記号が付け足される事で、それが10進法か8進法かの区別がつけられるようになっている。 文字や数字が、事実上暗号と同様の、難解な規則によって縛られているため、専門家でないかぎり、それを自由に読み書きするのが不可能。 貴族達はもちろんそうした文字や数字の読み書きは習うが、自在に利用できるかというと、やはり問題がある。 文章とは、書かれた内容を読み解くために必要な解読法が、一番一般的な法則で記載されており、その後に記号化された情報が並んでいるものを言う。 大半の書物も同様の書き方になっており、口語を記号化した文字で書かれた文書など存在してはいけない事になっている。 また、これらとは別に、音を記号化する、音階に似た表記法が、一部の神殿と吟遊詩人の間に伝わっており、これには5つの記号使って表す五音音階に全音階、半音階が存在し、歌として物語を記述するのに使われているが、全て秘伝である。 周辺国では、チルが比較的文字使用に関して寛容。 アルールシア帝国 暦法 気候風土 身分制度 経済 軍事 宗教 文化 技術 歴史 1 政治 貴族 都市と交易路 皇帝軍 神殿勢力 性差別と恋愛 魔法 神々以前 2 文字 豪族・郷士 物価・価格表 帝国軍 結婚 建築土木 神々の時代 3 言語 平民 交易品 領主軍 服飾 金属加工 第一期 4 大陸公路 奴隷 信用経済 傭兵と自由戦士 妓楼 工芸 第ニ期 5 ロマ 資産と運用 騎士団 街と村 農業 第三期 6 騎士 両替商 戦争 農村の生活 畜産 第四期 7 学者と魔導師 度量衡 都市での生活 狩猟 第五期 8 協会とギルド 商会 食生活 漁業 第六期 9 職能組合 貨幣体系 運輸 第七期 a 書記官 流通経路 歴史年表 b c ネル半島 d 用語 -