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女の子が、一人で歩いている 夕暮れの道を、一人でてくてく、てくてくと しばらく歩いていると、前方からも、誰かが歩いてきた 女の子は、対して気にすることなく、てくてくと歩いていく 大人の人だろうか その人は、どんどん、女の子に近づいてきて (………あれ?) 女の子は気付いた それが、大人の人ではなかった事に それが、女の子と、同じくらいの年頃の、女の子である事に そして それが 女の子と、まったく同じ姿をしている事に 顔立ち背丈髪型だけでなく 着ている服まで、まったく、同じ 女の子は、きょとん、と立ち止まり、その女の子が近づいてくるのを、ただ見ていた 女の子は近づいてきて、女の子ににっこりと笑いかける 「こんにちは、あなたはだぁれ?」 「こんにちわ。私は………ハナちゃん。あなたは?」 「私もハナちゃんだよ」 にこにこと、女の子は笑っている まるで、鏡に映った姿のように 二人の姿は、瓜二つ 声も、まったく同じだった 「…おんなじ?」 「そうだね、おんなじだね」 まるで、双子のようにそっくりな姿 同じ、「ハナちゃん」と言う愛称 ……偶然にしては、あまりに奇妙 そして、どこか、不自然な現実に しかし、女の子は、その不自然さに気付かずに その偶然を無邪気に喜んでしまった その奇妙な女の子と、女の子が友達同士になることに、そう時間はかからなかった そして、その日以降 女の子は、毎日のように、帰り道、その女の子と会うようになっていた 「ハナちゃんは、私以外にお友達はいるの?」 「ん~ん、私にはハナちゃんしか友達はいないよ。ハナちゃんは?」 「一杯いるよ。レナちゃんにリカちゃんに、サトコちゃんにミオンちゃんにシオンちゃん、ケーちゃんにサトちゃん………それに、リューちゃん」 たくさん、友達の名前を口にする女の子 女の子は、気付かない 女の子が口にした名前に、女の子が、かすかに反応した事に 「そうなんだ。ハナちゃんが、一番仲良しなのはだぁれ?」 「リューちゃんだよ」 そう、一番仲がいいのはその子 …そして、それだけじゃあない その子の事が、女の子は、ほんのちょっぴり、好きだった それは、言い表すならば、初恋 幼い少女が、生まれて初めて抱いた、大切な感情 「ふーん……ねぇ、ハナちゃん、そのリューちゃん、って、もしかして、こういう名前?」 女の子が、ぽそぽそと、女の子の耳元で伝えると 女の子は、びっくりしたように女の子を見つめた 「どうして、知ってるの?」 「やっぱり」 にっこり笑う女の子 その笑みの裏に、邪悪な意志が動いた事に、女の子は気付かない 「私も、リューちゃんに会ってみたいな」 「ハナちゃんも、リューちゃんと友達になりたいの?」 「……………うん、そうだよ」 にっこりと女の子は笑みを深めた 邪悪も深まった事に、女の子は気付かない 「それじゃあ。紹介してあげようか?」 「ん~、それもいいけど……こんなの、どう?」 笑って、とある悪戯を提案してきた女の子 女の子は、それを聞いて面白そうだ、と思った これは、自分達にしかできない悪戯だ きっと、「リューちゃん」もびっくりするだろう このところ、「リューちゃん」は元気がない 前から、クラスメイトに苛められていたらしく、元気がない事が多かった 隣のクラスに所属している女の子は、いつも、「リューちゃん」を助けられず、苦い思いをしていたものだ そのいじめは、最近なくなったらしい けれど、なぜか、「リューちゃん」はさらに元気がなくなってしまったのだ 元気付けたい びっくりさせたい 女の子はそう考えた だから 女の子の悪戯の提案に、乗ってしまったのだ 女の子は気付かない 己の運命の歯車は、既に狂い始めている事に 女の子は気付かない 己の未来に、払いようのない闇が、影が、挿し込み始めている事実に 「………………見つけたぞ……………………………め、父上の仇…………………へし折ってやる」 to be … ? 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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『主人公がバカ』の議事録 【提案内容】 2009年12月26日 題名 主人公がバカ POV説明 主人公がバカなゲーム ●ひろいんコメント エロゲーは主人公がバカで面白い方が多いので、登録してもいいかと思いますが、主人公がバカ、ではなく、主人公がバカで面白いの方が私の感覚に合うかなと思っています。 しかしながら、主人公がバカで面白いという観点でエロゲーを買う方がいるのかはちょっと疑問です。 退屈な共通パートを乗り越えるために、主人公がバカで面白い方がいい…かもしれませんというところでしょうか。 【審議】 2010年07月25日 ~ 2010年08月08日 内容 提案者待ちの期間中、提案者が現れなかった為、見送りとなる。 【結果】 2010年08月08日 審議見送りされました。 タグ一覧:POV
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◆マジで出会い放題!! イクヨクルヨは会員400万人! 登録無料で、以外に簡単に、素人の女の子と知り合いになれてしまいます。ここは結構おすすめですよ。 メル友、携帯電話番号の交換も・・。 出会い易さをモットーに、ユーザー目線の運営が人気のサイト。 有名女性ファッション誌にも多数掲載っ。 サクラ無し素人のみの会員数は400万人を軽く超え、まだまだ増加中♪ プロフ画像・アバター・日記・サークル・動画などのSNS機能も充実♪※会員数400万人! サクラヤラセ無し【イクヨクルヨ】
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後輩の女の子 後輩の女の子とはぷーれの後輩の女の子である。詳細は不明。 ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルドで、 リンクの顔を見たぷーれの発言 で存在が発覚した。 どうやら顔がオブルドのリンクと似ているらしい。その他の情報は不明である。今後のレスワイ枠やぷーれwikiを見る枠で情報が得られるかもしれない。 ぷーれは仕事で後輩を殴っていると自白することが多々あるが、この女の子が殴られているかは不明である。どうやら大学の後輩の女の子らしい。ぷーれが殴っているのは職場の後輩なのでこの女の子が殴られているわけではない。安心である。 関連項目 あbot
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シンはその日、一日中、眠り続けて目を覚まさなかった。 タオルを換えに来たアスランの様子になど、気付くこともできなかった。その姿はひどくやつれ、髪は乱れ、緩慢な動きの彼の様子になど。 だから、夜遅く目を覚ました時、やけに冴え渡った頭に飛び込んできた声に驚いた。 「止めろっ! お前っ、またっ!?」 「君が僕の責務を果たせと言ったんだからね」 階下から聞こえる切羽詰った声にシンは飛び起きた。 「無理だ。お前だって分かっているだろう!」 着る物もとりあえず、階段に踊り出るとロビーで言い争っている男が二人。 「アスランさん!?」 手探りで明かりをつける。照らされたロビーでこの宿の主である青年と、もう一人。ロビーの床に押し倒されている。それだけならただの喧嘩に見えるかもしれない。しかし、シンの目の前で二人は不自然なほどに顔を突き合せるのだ。言い合いが止まって、これはどう見ても如何わしいシチュエーション。 「止めろよっ、嫌がってんだろう!」 シンの知らない成年が振り向く。 あいつはっ! 露天風呂でシンを見下ろしていた男。 病み上がりだというのに勝手に足が動く、一段、階段を降りる度に濃くなる空気。 部屋の中だと言うのに、まるで森にでもいるような感覚。 「なんだっ、これ」 「僕が・・・見えるの?」 風もないのに纏わりつくようで、睨みつけてくる紫の瞳の青年の背後に深い緑の森が広がっている。シンは慌てて目を擦ったが、見間違いではない、苔で覆われた地面と何百年もたった木々と、淡く光を放つ珠が浮かんでいる。 その光の珠が急に制止する。 「キラっ!」 一瞬にして、森が消えうせる。 ただ、明かりのついたロビーにはシン、キラと呼ばれた青年、そして、民宿の主・アスランが立ち上がる所だった。 「どうして、昔は二人でよく種を作ってあちこちに植えたじゃないか」 シンを無視して、相手の男が話し出す。 「お前、俺がどうして追放の身なのか知っているだろう」 民宿の主、アスランの声は随分と掠れていた。 「そんなのもう、時効だよ。それとも若い彼と創るつもり?」 何の話をしているのだろう? 創る? シンは意気込んで乱入したけれど、話にはとんと口をはさむことができない。 「アスラン、覚えている? 初めて作った種のこと」 「ああ」 紫の目の男、キラと言うらしい。 彼が少しだけ寂しそうに言う。 「あの桜の木、今もね、里の外れにあるよ」 それを聞いた宿の主も悲しそうに聞いていて、シンは二人の間の微妙な空気に息をするのも忘れた。むせかえるような濃い森林の空気が、シンの口に入るのを拒む。 やっとこさ息を吸えたと思った時、相手の青年の姿はなく、シンと主が立ち尽くすのはただの民宿の狭いロビー。 「あっ、あれ?」 さっきまでの森は? あたりを見回してみるが、書棚に浮かぶ古ぼけた本、2階へと続く階段と、食堂への入り口、そんなものしか目に入らない。 「もう、起きて大丈夫なのか? 寝てなくちゃ駄目だろう、君は」 何事もないように容態を彼は気にするのだが、シンは自分が病み上がりだということなどすっかり忘れていた。 「今の・・・」 「あいつは古い友人で、たまに来ては文句を言っていくんだ」 誰ですか? あの森は何ですか? 聞きたいことは山程あった。 「よほど俺のやっていることが気に入らないらしい」 「ああ、この民宿、はやってなさそうですもんね」 軽く会話をあわせれば、苦笑しながら彼は話を続けるが、シンは引き下がる気はなかった。 「そりゃあ、地図にも載っていない宿だし、部屋ん中に森が生えるし」 「何から話そうか・・・君は何か上に着ておいで、ロビーで待っているから」 思い起こせば不可解なことばかりだったのだ。存在しない宿、あるはずのない露天風呂、突然変わる景色。 出会いからして尋常じゃない。 浴衣を自己流に着崩したシンはようやく、自分が風邪を引いていてさっきまで寝ていたことを思い出す。外は相変わらず雨が降っていて、せっかく持ち直した体調もこのままだとまたぶり返すに決まっている。シンは上着を取りに、2階へと上がった。 「話をするのは苦手なんだが、俺は、人間じゃない」 「ファンタジーですね」 浴衣に民宿の羽織を引っ掛けて、シンはソファーに腰掛ける。主人はそんなシンに毛布を渡してくれた。 「でも、本当のことだ。この姿だって本当の容じゃない、精霊だったんだ」 軽く腕を上げてみせる。 「・・・だった?」 シンはあまり本を読まない。受験の時の参考書が唯一真剣に開いた本だと言える位だ。雑誌の方がよほど馴染みのあるものだから、世に溢れるファンタジー作品に触れたことなどあるわけもない。 原生林の中にひっそりと存在する精霊の里。 自然のままに花や木に精霊が宿り、精霊達が新しい種を産み育てて森を作り、時と共に枯れていく歳月を幾星霜と繰り返してきた。 彼はそこで生まれた桃の木の精だと言う。 民宿の主が口にする内容は当然始めて聞く話ばかりで、それこそ小さい時に聞かされた絵本や童話のようだった。シンが頭の中を整理している間に、彼が手に暖かいマグカップを持って来て、一つ差し出した。 その手も本当は実体のないもの。 マグカップも産み出せるのだろうか? 「こんなこともできるんですか?」 「材料はズルして入手するけど、食事や飲み物はちゃんと作っているよ」 少々熱い生姜湯だった。 一口含むと、ポカポカと体の心から温まる。 「あの、キラって人は?」 「キラは千年に一度、生まれるかどうかわからない大地の精。大地の精に親はいないから、自然に誕生するのを待つしかないんだ」 親がいない。 シンは彼の寂しそうな顔の理由を知った。 「俺、あの人の気持ち、少し分かります」 アスランとの間に種を作ったことがあるなら、彼にとって目の前の青年はやっとできた家族に違いない。どんな理由があるにせよ、離れ離れになるのはつらいことだ。 「で、どうして、こんな所で民宿をやる羽目になっているんです」 びくりとマグカップを持つ手が震えた。 腰を降ろす1セットしかないソファーでアスランが黙り込む。 「それは―――」 「穢れを孕んだからだよ」 アスランの後に、緑の森を背負って出現したキラが、シンの質問に答えていた。 BGMは戦場のメリークリスマスです。なんか、しっとりとして、物悲しい雰囲気のお話にしたかったんですけど、見事に失敗しているよ、よよよ。ここで、諦めたんです。
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目の前にずらっと並んだ料理に彼はどれから箸を付けたらいいのか困っていた。誕生日だって、こんなに皿が並んだことがないのだ。小さな花びらの浮かんだ、食前酒なんて洒落たものまである。 「食べないのか?」 「あの、えっと、俺作法とかさっぱりで」 「そんなの気にしなくてもいい。早く食べないと、後で焼き物や揚げ物、刺身が出てきた時に困るぞ? メインだってまだだし、茶碗蒸もあるから」 そう言って、宿の主人が去っていく。 暖かい食堂の中、テーブルには彼一人。並べられた夕食を前に、意を決して小鉢を手に取った。 すっかり暮れた外はずっと雨が降っていて、どうしてこんなことになったのかと回想する。暖かい部屋、食事が、雨でずぶ濡れになっていた彼をほろりとさせ、箸を加えたまま目じりに涙を浮かばせる。 彼はシンと言う。身分は大学1年生。 猛勉強して入った大学でこれからと言う時、家族を交通事故で亡くす。両親と妹の葬儀を済ませ、親類も殆どいなかったシンは途方にくれていた。学費は奨学金で何とかなりそうだったが、突然誰もいなくなった家に帰ることができなくなってしまった。 そんな時、サークルの教授が少し休養をしてきたらどうかと知り合いの旅館を紹介してくれたのだ。 『山奥で雨の絶えない所だが、いい温泉がある。少しゆっくりしてきたらどうかね』 後期前の休みに入ろうとしていたこともあって、生返事で住所を電話を受け取った。なんと無しに家にいることができなくて、休みだと浮かれている友人達に気を使わせるのもできなくて、貰った住所を手がかりに聞いたこともない温泉郷に足を向けたところまではよかった。 その旅館が廃業していたと知るまでは。 傘を忘れたと気付き、家族のいなくなった寂しさを噛み締めるまでは。 下り坂だった天気は居座る秋雨前線の影響もあってついに降りだし、初秋の山間に冷たい雨を降らし始める。温泉郷の外れの足湯でしばらく時間を潰し、いよいよあたりが暗くなってきて途方にくれたのだが。 「おっ、良かった。食べてる食べてる、ちょっと熱いから気をつけてな」 主人が姿を現して、茶碗蒸を並べていく。 まだ若いこの民宿の主が、ずぶ濡れのシンを見つけなければ今もあの集落の外れて雨に濡れていたかも知れない。相手もシンに驚いたようだが、シンも彼を見つけて驚いた。雨の中、傘を差さないのはお互い同じ、足湯に突っ込んだままのシンとは正反対に、彼は森の中で枝についた木の実を手に取っていたのだ。 お互いが気付いたのは多分同時だったと思う。 彼の緑の瞳が少し見開かれるのが見えたから。 シンはびっくりして立ち上がっていた。 『行くところがないなら家にくるか?』 と問われてこくりと首を振っていた。連れられたのは小さな民宿で、彼がその民宿の主だと言われてまた驚いたのを覚えている。 民宿・座羅。 潰れた旅館を探して穴が開くほど地図を眺めたというのに、記憶にないその名前。2階建ての民宿の部屋数はきっと10にも満たない。 あっさりしたフロントとあるかなしかのロビー。 今夜の宿の心配をしなくて良くなったシンは現金にも民宿をしっかりとチェックしてしまう。 露天風呂はないんだ・・・。 ちょっとだけがっかりして、夕食もそれなりだろうと踏んでいたら出された料理に絶句する羽目になった。 「もしかして味、変か?」 「えっ、すごくおいしいです」 「そうか。久しぶりだったから、少し心配だったんだ」 ホッと息をつく仕草が本当に庶民じみていて、とても民宿経営者には見えない。その上、料理までどうやら自分で作っているようで、シンはこの先どんなものが出されても平らげようと思った。 最後のお茶をすすって、シンはこっそりお腹をさする。 「食べ過ぎた・・・うっ、腹いっぱいなんですけど、俺」 あの後、次から次に料理が出てきて、焼き魚、てんぷら、岩魚の刺身、土瓶蒸し、と続いて、ようやくテーブルの上に鎮座していた肉に火が入った時にはかなりの量がシンの胃に消えていた。肉料理に舌鼓を打った後に蕎麦。 何より、一通り料理を出し終えた主の彼がシンの斜め前に陣取って、シンが食べるのをじっと見つめているのだ。恥ずかしいながらも他愛もない話を二人でして、御ひつをテーブルに置いてご飯を装ってくれた。 「これくらいは食べられるか?」 話の弾む食卓、暖かい食事、そして差し出されたご飯茶碗。 母の手はもっとしわくちゃだったけれど、それは毎日家事をしていたから。 急いで口にかけこむと、隣の父が『ちゃんと噛め』と言う。父が仕事で遅くなった時は、妹のマユが口調だけそっくりによく真似をして・・・。 今はもうなくなってしまった食卓。 いつも、ふいに思い出す懐かしい面影。 目を細めて、シンは俯いた。 思い出したくないのに、そのくせ、忘れてしまいそうな気がして、こうして思い出すたびにホッとしている。 「どうかしたのか?」 シンの箸が止まる。 「俺、家族をなくしたんです」 どんなに暖かくても、目の前の彼は違う。 彼も、宿の主人と客人の分を超えたと思ったのだろう。 「なかなかここまで来る人が少ないから、俺、嬉しくって、すまない」 「いえ、いいんです。俺もしっかりしなくちゃいけないって分かっているのに」 ふと一人になると、どうして自分だけ生きているのだろうと考え込んでしまう。 家族4人が同じ車に乗っていて、一人だけ助かってしまった。 「君にとって本当に大切なご家族だったんだろう」 あの日までそんな風に考えたこともなかったのだ。いつもそこにいるのが当り前で、口うるさい両親や生意気な妹を疎ましく思うこともあったというのに。 「喧嘩した時なんか、俺ひどいこと平気で言っていたし、親孝行とか全然してなくて、まじめなマユのこといつも馬鹿にしてたのに、俺の方が、本当に馬鹿だ。無くしてから気付くなんて」 もう俺は家族に何もしてやることができないのだと思うと、シンは後悔でいっぱいになるのだ。ついに、箸を置いてしまう。 食堂に雨の音だけが響き、しんと温度が少し下がった。 「いつまでも君がそんな風に沈んでいたらきっとご両親や妹さんはがっかりするんじゃないかな」 何を言い出すんだと、この時、シンは心なし睨みつけていたに違いない。それなのに、彼はそれを平然と受け止める。 「君はもっと強いよ。後悔しても、馬鹿だったと嘆いても、君は歩いていける人だろう? この温泉郷は原生林が近くて樹海のようになっているんだ、行ったきり帰ってこない人もいる」 シンのようにどうしたらいいのか迷い、絶望のまま死を選ぶ人もいる。 この温泉郷がそんな自殺の名所の近くにあるのは、もしかしたら偶然ではなかったのかも知れない。 「でも、君は違うだろ?」 最後の晩餐にしては君は元気が良すぎるよ。彼は笑いながら、シンにお茶を差し出した。 「今夜のお客は君だけだから、露天風呂は貸切だな」 湯飲みにお茶を注いで、彼が席を立つ。 シンは少し引っかかりを覚えつつ、きれいに平らげてしまった食卓を後にする。 誰もいなくなった食堂の外では相変わらず雨が降りしきり、窓ガラスを曇らせていた。霧と消える食卓の景色の中から、シンが手をつけなかった食前酒を拾い上げる手があった。 「勿体無い。アスランのお酒なんて、僕だってめったにありつけないのに」 シンでも民宿の主でもない第3の男が何も乗らない食卓でグラスに口を付けていた。 当初、民宿座羅という直球なタイトルでした。
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『出歯の女の子』(デッパのおんなのこ)は、鈴木優太によるストーリー漫画。「週刊少年チャンピオン」2014年46号に掲載。 概要 出歯の女の子は幽霊。幽霊生活を楽しむ彼女だが、誰も彼女の存在に気づいてくれないことを悲しんでいた。そんなある日、彼女の前にちょっと霊感のある少年・アオイが現れる。 登場人物 出歯の女の子(でっぱのおんなのこ) 出歯で女の子の幽霊。明るい性格。夜の学校に住んでいる。学校にやってくる人々を観察するのが楽しみ。 アオイ ちょっと霊感のある少年。出歯の女の子と夜の学校で出会い、話し相手になる。最近、学校で心霊現象が目撃されているので調べに来た。 アオリ文 「もう死んでるけど元気だよ! 特別読み切り、集中連載!! 夜の学校は意外に賑やか!」(冒頭) 「夏休み最後の思い出に…。 さらに続くぜ、鈴木優太劇場!!次回の「不死身症候群」をお楽しみに!!」(末尾) 作者コメント 「出っ歯の女の子を初めて描きました。しばらく描かなくてよさそうです。」 外部リンク 週刊少年チャンピオン公式サイト
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目を閉じるアスラン。 「僕達、さっきどんな風に見えた?」 少しからかうような口ぶりは明らかにシンの胸の内を読み当てていて、シンは顔が赤くなった。絡み合う二人の姿が頭から離れない。 「まあ、人と同じではないけれど、全く違うってわけでもない。種は力のある精霊が共同で霊力を練り上げて創るからね」 練り、上げる? シンにはちょっと想像がつかない。 「分からない? 君が見たまま、想像したままだよ。フフ」 フフって、俺が見たのは、何というかちょっと口に出せない。 「それをね、アスランは産みの親との間でやったんだ」 人の世にもあるように、精霊の世界でもあまりに近いもの同士では近親による弊害が出る。 「でもそれは、禁忌だから」 「キラ、もういい」 アスランがどんなことが起こったのか、口を開く。 里長と里長の最初の種から生まれた精霊との間の種は、最強に凶悪だった。 育てる間もなく、芽吹き、急激に成長して花粉を巻き散らして勝手に増殖して、それでいて精霊を宿していなかった。 最悪なことにそいつは木々の中で最も寿命の長い杉で、おかげで処分するために力を使い果たした里長は朽ち果て、俺は父との交配と子殺しの、穢れを負った。 穢れた精霊は種を創ることができない。 「だから、里から追放になった」 いつか、穢れが浄化されるまでとは聞いているけど、戻った話を聞いたことはない。 シンは思考がついていかずに、言葉が見つからない。ただ一つ分かることと言えば。 居場所をなくしたのはシンだけでなく、彼も同じ。 一体、どんな気持ちでシンに『君は歩いていけるだろう?』と言ったのだろう。 「そんな顔をするなよ、追放になったこと、少しは感謝しているんだ」 シンもキラも冗談を言うなとアスランを見る。 「外の世界を知ることができたから。迷い込んでくる人間をからかったり、彼らの話を聞くのも面白いものさ」 後始末を押し付けられたキラには悪いけど、俺はそれなりに楽しんでいるんだ。そう言って、肩を竦める姿はさっきまでの吐露する青年と同じには見えない。 「キラはこっそり、外の世界に行ったりしていただろう。ちょっと羨ましかったんだ」 アスランが笑って、手にしたマグカップに口を付ける。 「シンにも出会えたし。まさか、あのフィールドで助けてもらえるなんて思わなかった」 向けられた笑顔がなぜか、どこか物寂しい。 それをシンはなんと呼ぶのか知っている。空元気はここ最近のシンの十八番でもあったのだから。 「ほんと、僕とアスランのラブラブ空間に割り込んでくるなんていい度胸しているよ」 誉められて悪い気はしないけれど、すっかり自分が子供扱いなのに複雑な心境になる。それでもいいと思っていたのは比較対象がいない昔のこと。 カッとなって飛び出したはいいが、格好よく止めに入るまでには至らなかった。 弟で満足できる自信が今はない。 シンは悶々として、立ち上がるアスランを見る。 そうしたら、キラと目が合った。 「今度こそ、うまく行くと思ったのにさ」 「何度やったって、駄目なものは駄目だ」 何度も、やった?って、えっ? 緑の大地に広がる青い髪、横たわる白い肢体と、森林の空気に漂う甘い匂い。 「如何わしい想像をするなっ!」 空になったマグカップで頭を叩かれる。 「えっ、なんで分かっ・・・!?」 ゴンと今度は拳でもう一発。 「お前の恥ずかしい妄想を垂れ流すんじゃない!」 「えー、でも、結構当たってるかも」 「キラもいい加減諦めて、里に帰れ!」 「また来てもいい?」 はぁ・・・とため息をつくアスランは、それでも優しい笑顔で「勝手にしろ」と答える。キラはアスランの髪をひと房持ち上げて、さらりと流して背後の森に帰っていく。 「シンも、風邪引きなんだから早く寝ろ!」 ソファーのカバーを直して、壁にかけたカレンダーを捲る主がシンを頭ごなしに命令する。 照れてる。この人、面白いかも。 あっ、人じゃないけど。 けど、民宿の主人で、俺は紛れ込んだ旅人。 「ひどい言い方ですよね、俺ってば、この寂れた民宿の唯一のお客なのに」 「なっ」 んぐっと、喉を詰まらせて、民宿の主がシンを見る。心なし目を瞠って。 こんな兄がいたらきっと楽しいだろう。 まさか、ど田舎の温泉郷で出会いがあるなんて思いもしない。 でも、出会いには別れが付き物で、俺はまた現実に帰っていく。 「そうだな。布団も変えよう、汗をかいただろうから」 真新しいシーツを広げ、毛布を広げようとする手をシンは掴んだ。 「手を離してもらいたいのだが」 「嫌ですね」 紹介された旅館がなくて途方にくれていたのも、この人が追放されて迷い込む人間を監視していたのも、もしかしたらそこに出会いはなかったのかも知れない。それでも、シンはアスランを見つけ、彼の後に広がる世界を垣間見た。 ならば、偶然の積み重ねが奇跡を呼ぶことさえできるかも知れない。 たった今、きれいにしたばかりの布団の上に二人して倒れこむ。 「何を考えているんだっ、俺はっ!」 「俺なんて都会育ちで穢れまくってますから、ちょうどいいですって」 雨が降りしきる夜更け。 森に溶け込む民宿の2階の部屋で、シンは自分が想像した通り、深い緑の闇の中に浮かび上がる白い肢体を見る。濃密な空気を息遣いと共に吸い込めば、かすかに香る甘い香り。仰け反る首から胸への曲線がしなり、震え、自分の身体を締め付ける淡い緑の帯に締め付けられる。 冷たっ! そう感じたのは一瞬のことで、あっという間に感じられなくなった。 二人の周りの空間は色めいてざわめきたち、自分の鳩尾あたりに集まり始める熱を感じた時、シンは練り上げる感覚がこれなのかと、どこか頭の片隅で思い立つ。 彼の中で何かを作り上げるような、新しく生まれるモノを形作るような錯覚。 無心で全身を使って、衝動のままに何度も突き上げる。 どこまでも静かな夜の森に、吐息と喘ぎと短い悲鳴が駆け抜ける。 人であらざる者はシンを包み込んで、若い精を受け止めていた。 朝日が差し込む碧い世界で、シンは目を覚ました。意識を取り戻したアスランがシンから顔を背けて肩を震わせる。 「まさか、君とこんなことになるなんて」 「何ですか」 シンとて齢18を数えた成人男子である。 俺、ちょっと傷ついちゃうかも。 「ああ、不覚。・・・いつまで乗っかってる気だ、さっさとどけっ!」 シンを押しのけようとするアスラン。 「お客に向かって『どけ』は、ないです」 「こんな不埒なことをする奴が、いっぱしの客を気取るんじゃないっ」 怒った口調も本気で言っているわけないじゃないことくらい一目瞭然。民宿の主は今も剥き出しの肌から神経を刺激する色香を漂わせているのだ。すぐにでも下半身が回復しそうで、身体を離したそこに転がる光を見つけて、思わず隠してしまっていた。 これって、まさか・・・。 でも、俺は人間で。 ちょうど桃の種のような形をした、透き通ったガラスのような塊。 中心がオーロラ色に光ってとてもきれいだった。 身じろぎするアスランから見えないように後ろ手に持って身体を起こした。朝露に濡れた早朝の森はいつのまにか、ちゃんと、シンの部屋へと変わっていた。 カーテンの隙間から光が差し込んでいる。 「また、来ます」 「勝手にしろ」 やはり彼は、憮然としつつも優しさをほんの少し滲ませて、シンを送り出した。 小さなカバンを背負って、シンは歩き出す。 懐に仄かに光を放つ種を隠して。 バス停でバスに乗り込む瞬間、声を掛けられる。 「それ、絶対大事にしてよね」 アスランの古い友人。こうして見ればただの青年と変わらないのに、彼の正体は大地の精。 「諦めたら朽ちるよ。人間にだって霊力がないわけじゃない。芽が出たら、見せに来て。それから、これ」 強引に手渡されたのは、小さな袋。紺と碧の刺繍が施された巾着のようなものだった。 「守り袋だから、僕からの餞別」 「あ、ありがとうございます」 さすが、大地の精。紫の瞳に有無を言わさぬ力がある。 「絶対だからね。枯らしたら許さない」 シンも負け時と見つめ返す。 いつまでも乗り込まないシンに、バスの運転手がクラクションを鳴らす。 「ああ、約束する」 タラップに足をかけてバスに乗り込む。運転手の横を通り過ぎて、どこに座ろうかと車内を見回して車窓からバスを見送る人影が見えた。 その数は二つ。守り袋をくれたキラと民宿の主人。アスラン。 シンはバスの中、窓に走り寄る。 軽く手を上げる姿が遠くなる。 俺、前を向いて歩いていけますから。 家族はもう戻らないけれど、思い出して嘆くこともあるかもしれないけど、それだけじゃないって分かったから。 「俺って、やっぱり馬鹿なんだなあ」 そんなことに今まで気が付かないなんて。 あなたがくれた希望に負けないように。 今度会う時に、見せたいものがあるから。 シンはバスが山道を走って山間の温泉郷が見えなくなると、深く腰掛けて、懐の種を上からそっと抑えた。 「シンと何を話していたんだ?」 「ひみつーっ」 先に歩き出したキラを追って、アスランもバス停を後にする。 谷から望む山頂は白く雪が冠を作り、山麓に紅葉を棚引かせていた。 「冬支度はじめなきゃね、今年こそ、家にお出でよ」 「いい、いつもの木で眠る。それに、お前のところじゃ身体が持たない」 「身体なんてないくせに」 長い冬を越えて、全てが息吹く春に、シンがまたここを訪れるまで、あと少し。 終わり ふう。難産でした。シンがどこまでやるかで二転三転。なんだか、暖かい話になっているし、違うよ、暗い話にする予定だったんだよ。おかげで、前半と後半で全く毛色の違う話になってしまった。 こういうエロシーンを含む話って、どこまでの表現で止めておくかって難しいです。いざ、自分が書くとなると困るなあ。
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【妖怪】人間以外の女の子とのお話17【幽霊】 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138894106/ 種別/SS創作 分類/シチュエーション総合 検索ワード/幽霊、妖怪、天使、悪魔、ロボット、エイリアン、宇宙人、獣人、オリジナル 保管庫 2chエロパロ板SS保管庫 過去スレ 人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死) 【妖怪】人間以外の女の子とのお話Ⅱ【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話14【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話15【幽霊】 【妖怪】人間以外の女の子とのお話16【幽霊】
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「露天風呂まで用意しちゃって、どういうつもりさ、アスラン?」 明かりの消えたロビーを後にしようとして民宿の主が振り返る。そこに立っていたのは、シンを見下ろしていた紫の瞳を持つ青年。 「君の役目を忘れてしまったわけじゃないよね」 「分かっているよ。キラ」 主の碧の瞳が細められて、二人の視線がぶつかり合う。 「分かってない!」 真っ暗だったロビーは一瞬にして葉が淡いグリーンの光を放つ森に変わる。 「人を排除するのが役目の君が、これは何!?」 「雨が止むまでだ」 二人の周りにあるのは樹齢何年とも知れない苔むした巨木と複雑に絡み合う蔦。深い森だけれど、淡い明かりがそこかしこに溢れる神秘の空間だった。 「里には僕とラクスの結界が貼ってある。人間が足を踏み入れることは無理な筈だよ・・・誰かが手引きしない限り」 ざわざわと森の木々が揺れて。風に乗って緑の光が流れる。 「あの小さな子が、現実に戻る勇気を取り戻せるまでだよ」 「小さな子って、彼は十分大人だよ、立派な男のね」 斜に構えて唇の端を上げて言うのは、何か含みがってのことだろうか。主の青年が顔を顰める。 「キラこそ、自分の役目を果たせよ。今夜は満月だろ?」 キラと呼ばれた青年が途端に苦虫を噛み締めたような顔をする。 「君がそんなことを言うの?」 「キラは里長だろ? 追放の身の俺に会ってちゃ、示しがつかないだろう。きっと、今頃ラクスが探しているよ」 森の蔦が一斉に動き出して一つの道を作りだろうとしていた。 緑の光に混じって、淡い白とも桃ともつかぬ光が奥から溢れてくる。 「花の精と大地の精で種を作って、息吹かせるのがお前の役目なんだから、ちゃんと果たせ」 「でも、僕はっ!」 逆に森が主の青年を隠そうと二人の間に木々が蠢きだす。蔦が垂れ、緑の光が濃くなって次元をゆがめる。 完全に二人を分かって、主の後ろから真っ暗なロビーが姿を現す。 闇が引くように、ロビーに佇む主はその足で二階に上がり、シンの部屋の前で立ち止まる。 「おやすみ、シン」 翌朝、シンは起きられなかった。 寒気がして、頭がガンガンして、モーニングコールの電話すら取ることができなかった。 次に意識が浮上した時、頭には冷たいタオルが乗っていた。 「気分はどうだ? 大丈夫か?」 声のした方に頭を動かせば、ずずとタオルがずり落ちる。 ぼやけたシンの目に映ったのは民宿の主の顔。 枕もとにいて、ずり落ちたタオルを絞っている。その様子をみて、シンは自分の容態を認識した。どうやら、風邪を引いたらしい。 「何か飲みたい? 食べられるか?」 「・・・お茶」 とにかく喉が渇いて、何か飲みたかった。 だが、それとて、起きられない今のシンには一苦労。無理して布団の中で暴れる羽目になってしまった。 くそっ。 俺はこんなに弱くないのに、なんなんだよ。 主の青年に抱き起こしてもらってようやく一口、それも咳き込んでとても飲めたものではなかった。 「すみません。俺、迷惑かけて、他にもお客さんいるのに」 「今は君一人だけだから、気にしなくていい」 嘘だ。昨日いた人は? 「そんなはず・・・だって昨日・・・紫の目の人が」 「!」 ほら、息を飲んだ。 「だから、俺一人でも・・・」 青年の手からお茶の入った湯飲みを奪って、口に持っていく。震える手を何とか誤魔化して飲み込んで、息をつく。 「もう、大丈・・・ゲホゲホ」 シンの作戦は失敗した。 手にした湯のみが落ちる。 いつもは何でもない、寝てれば直る風邪でも精神が弱っている時はそうはいかなかった。 強がりさえ、満足にできない。 「無理するな。病人は黙って甘えていればいいから」 布団の上に転がった湯飲みを拾って、背中をさすってくれる。 「とにかく汗をかいて、熱を下げることだな。まずは着替えて、ゆっくり寝ること」 はっ、着替え? そんなものどこから。 シンの熱に浮かされた頭が主の手にしたものを目ざとく見つけた。 新しい浴衣。 「ちょっと、ごめんな」 力の入らない手でじたばたしても、それはたいした抵抗にはならなかったらしい。 シンは恥ずかしさか、熱かで真っ赤になって、宿の主に着替えさせてもらったのだ。 その下着はどこから? とは聞くに聞けない。 風邪引いていても、やっぱり若いって元気だなあ。なんて恥ずかしいこと言わないで下さい。 「ほ、本当にすみません、何から何まで」 「大事なお客様だからね」 胸が痛む。 悔しくて、涙目のまま見下ろす彼を睨みつける。 「・・・何?」 「アンタの・・・名前」 少し微笑んでシンの額に手をやった。ひんやりとして気持ちいい手が、濡れたタオルを置く。 「俺?」 「・・・礼も・・・言えないじゃないか」 家族にはなれなくても、民宿の主と客でしかなくても、シンはこの青年のことが知りたいと思った。一人の人間として、自分の不注意で風邪を引いた馬鹿野郎の面倒を見る彼の。 「アスランだ」 シンは一度、舌の上でその名前を転がした。単純な自分の名前とは違う不思議な響きに自然と瞼が閉じる。 「ありがとう・・・ございます。アス・・・」 眠りに落ちたシンは最後までその名を言えなかった。 ペース配分を間違えて、ちょっとごちゃごちゃしてしまってます。うーん、こんな話の予定ではなかったのだが。