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中華料理店 に該当するカテゴリー 一般的な中華料理店 Category1:Chinese Restaurant:中華料理店 Category2: Category3: 飲茶店 Category1:Dim Sum Restaurant:飲茶・点心レストラン Category2: Category3: Memo ラーメンを提供する店だからと「Ramen or Noodle House ラーメンまたは麺類店」とする場合があるようですが、メニューの一部にラーメンがあっても、中華料理店はちゃんとそれなりのカテゴリーに入れたほうがいいとおもいます。 コメントを簡単に書き込めます。 内容によっては、管理者がMemo欄に移動したり、削除したりすることがあります。 難しいのは本格的台湾料理です。ほとんどの料理は飲茶系ですが、焼きビーフンとか酢豚なんかもあるので一応Chinese Restaurantにしています。 - arfred(su1) 2011-08-10 17 53 21 やっと台湾料理のカテゴリができましたが、はっきり言って必要だとはおもえません。 - 管理人 2013-12-18 22 24 03 名前
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中華料理店 幸楽 シンオウ地方のさびれた商店街に名を連ねる飲食店。 昼間から暇な人間がたまり、おおよそ営業しているとは思えない様相。 料理の味は微妙である。 鷹幸(たかゆき/ムクホーク♂) 20代。おだやかな性格。あばれることがすき。 『中華料理店 幸楽』の2代目店主。自称『おだやかな性格』だが短気で手が早くけんかっ早い。 芙蓉(ふよう/ムウマージ♂) 20代。きまぐれな性格。こうきしんおうせい。 『中華料理店 幸楽』の居候。年頃の少女のような見た目だが…。
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339 名前:中華料理店龍龍 :2008/08/17(日) 14 58 33 ID ???ココは駅前の中華料理店『龍龍』サイ・サイシーの店である。なんだかんだで今日も繁盛 ドモン「ガツガツガツガツッ…っう」ノド詰まらせた ジョルジュ「まったく、急いで食べるからこうなるのですよ。美しくない」 アルゴ「だが空腹時に豪勢な料理を目の前にして、がっつくなと言うのも無理がある」 チボデー「ヘイ、チャイニーズ。俺の胃袋の大きさをなめんなよ!!」 サイ「っへ、その割にはドモンの兄貴に遅れを取ってるぜ、チボデー」 五飛(アルバイト)「全く!彼奴らいつものようにがつがつ食って!!作る身にもなってみろ!!」 アレルヤ(アルバイト)「まあまあ、あの人達がいっぱい食べてくれるおかげで、家も繁盛してるんだから」 痔悪化(炒飯専門)「グレィト!!数だけは多いぜ!!」 カランカランカラン ヒイロ「今日もきたぞ、五飛、俺は後何回リリーナの弁当から逃げればいい、ゼロは…」 五飛「その話はいい!!とにかく注文しろ」 ヒイロ「リリーナの弁当以上の料理なら何でも…」 デュオ「んじゃぁ俺はかに玉定食。あと食後にあんまん付けてくれ」 トロワ「チンジャオロース定食…」 カトル「ん~と僕はあんまり中華には詳しくないから…とりあえず満貫全席で」 五飛「そこっ(1と4)!!適当にいいやがって!!作る側の気持ちも考えろ!!」 アレルヤ「…いや~大変だね、五飛君は…」 痔悪化「へい!!炒飯大盛り三人前(ドモン用)おまち~」 340 名前:中華料理店龍龍 :2008/08/17(日) 15 13 37 ID ??? カランカランカラン ロックオン「よお、アレルヤ。来てやったぜ」 アレルヤ「CBのみんな、何しに来たの」 刹那「俺がガンダムだ!!」 ロックオン「いや~何、今北京オリンピックやってるだろ、」 ティエリア「ネットでの中国叩きもヒドイ…ここにもテロが起こる確率が…」 アレルヤ「ここそんな有名じゃないよ…てゆーか素直にオーダーしてよ」 カランカランカラン 痔悪化「お、来たなお前ら」 イザーク「っくっそぅ!!ストライクめ~!!」 ミゲル「はいはい、もういいだろ。ディアッカ、今日もみんなで来たぞ」 痔悪化「ふ、今日のお勧めは何と言っても炒飯!!そもそも炒飯は中国四千年の歴s…」 ミゲル「五目炒飯、と見せかけあんかけ固焼きそば」 イザーク「蟹炒飯、と思わせAランチ定食」 ニコル「海鮮炒飯、と言う冗談は抜きにしてワンタンメン」 アヅラン「若布炒飯、と言うフェイントはおいといてワカメラーメンワカメ大盛り」 痔悪化「グゥレィトゥ!!誰も炒飯を見向きもしねぇ!!」 341 名前:中華料理店龍龍 :2008/08/17(日) 15 36 20 ID ??? そして… カランカランカラン シナプス「ほう、ここが食通の間で噂の龍龍か…」 バニング「と言っても、シナプス先生の肥えた舌にあうかどうか」 サイ「お、久々に来たね!大食いチャンピオン!!」 コウ「はは、照れるなぁ」 ドモン「なに!!」 ヒイロ「コウが!!」 刹那「ガンダムだ!!」 キース「おまえがチャンピオンだなんて、ふつー信じないもんな」 バニング「こいつはニンジン一つ混じっただけで食欲をなくすが、ニンジン以外なら何でも食べれるからな」 キース「以外ならな~」 シナプス「そこの君、済まんがこの店のスペシャルメニューとやらを頼めるかな。お代ははずむぞ」 サイ「残念だね、スペシャルメニューを食べ尽くした人にはむしろ賞金が出るんだ。 だけどおいらも料理人としての意地があるから、生半可な量じゃないぜ!!」 キース「コウ、何着込んでんだ…」 コウ「このノーマルスーツを着ると、精神が集中するってゆうか…」 ギンガナム 「うむ!!小生その時久々に中華が食べたくなってなぁ!!行きつけの店に行ったのである!! するとコウ・ウラキが特殊なノーマルスーツを着て体中金色に光っていたのである!! さらに普通喰えるわきゃねーだろーな量の中華料理を、がつがつと食っていたのであーる!! もはやあの食いっぷりは地球人類の物ではない!!小生思うに、アレは闘争本能に身を委ねた 宇宙最強の戦闘民族の食べ方であーーーーーる!!!!!!!!!」 ドモン「俺はまだ…修業不足だったのか…」 ヒイロ「俺の、俺のミスだぁあああ!!」 刹那「ガンッッダァアアアアム!!!」 その日中華料理店龍龍は食料がそこを尽きたとか… 342 名前:中華料理店龍龍 :2008/08/17(日) 15 40 52 ID ??? マイ「追記:その時コウ・ウラキのテーブルの下にマリナ・イスマイールを確認。少々コウの料理に手を出していた しかし皆コウの食べっぷりに驚いて、気付かなかったようである…」 アムロ「お前そんな事にまで記録付けるのか…」
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ちゅうかりょうりてん あいや 公式 稲羽市中央通り商店街北側にある中華料理店。多くのプレイヤーが愛家(あいか)と読んだ事だろう。少なくともアンソロジーでは「あいや」と読んでいるのでこれが正式名称と思われる。 里中千枝行きつけの店。 他にも一条康・長瀬大輔の運動部コンビ、小西尚紀、巽完二などのコミュ、更に本編のイベントでも登場する。 内装は前作に出てきた「はがくれ」に近い。 主人がよく「アイヤー」と言うから愛家(あいや)なのだろうか? 因みに主人は完二の事を「完ちゃん」と呼んでいる。店も巽屋に近い故彼が幼少の頃から顔馴染みなのだろう。ある意味では怖いもの知らず? アニメ版の主人は語尾にアルと付けたりやや片言の日本語で中国人風に話しているが、娘のあいかが言うには父親は別に中国人ではない筈とのこと。曰く、本当の中国人は語尾にアルなんて付けないから。 実際完二コミュで登場する主人は普通の日本語で喋っている為、恐らくはサービスの一環か何かなのだろう。 <メニュー例> 麻婆豆腐定食 かに玉チャーハン 肉丼(千枝絶賛のメニュー) パーコー麺 スペシャル肉丼(雨の日限定メニュー) 食べるとそれぞれ対応するステータスがアップする。 アニメ版ではきつねラーメンや、果てはかき氷用の氷までメニューに存在する。本当に中華料理店なのだろうか。 また、アニメ版では主人の娘が登場。中村あいか(CV.悠木碧)という名で、八十神高校に通う主人公・鳴上悠たちのクラスメイト。 名前の由来は愛家が「あいか」と読めることからというのが通説。 「どこでも出前を届ける」というサービスを行っており第6話では千枝から注文(肉丼2つ)を受け、完二から逃走中にバイクで配達に現れた。どうやって居場所を突き止めたのかは謎である。その後も林間学校だろうが道端だろうが祭りの会場だろうが届けに来ている。特に林間学校はどうやって出前を持ってきたのだろうか…。 配達の際あいかは「どんぶり、置いといて」と発言する辺り、路上に放置された食器類も回収されているようだ。 なおアニメ版ではあいかは修学旅行中に「はがくれ」で修行しており、「知り合いの店」と語っている。 因みにアニメ8巻の特典ドラマCDで店主の妻、あいかの母親もちゃんと存命で店を手伝っている設定を確認出来る。しかし、原作・漫画・アニメのどれにも姿は登場していない。 アニメ版においてはジュネスのフードコートに次ぐ特捜隊のたまり場にもなっている。
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ある中華料理店店員シリーズ シリーズ概要 主人公である中華料理店のバイト員「拍手敬(かしわで たかし)」が 風紀委員見習いの通称:外道巫女の「神楽二礼(かぐら にれい)」に 無理矢理事件に巻き込まれて酷い目にあう作品です シリーズ作品 【ある中華料理店店員の悲劇 前編】 【ある中華料理店店員の悲劇 中編】 【ある中華料理店店員の悲劇 後編】 【ある中華料理店店員の七夕の日】 【ある中華料理店店員の夏の悲劇】 【ある中華料理店店員の南瓜祭】 【祭りの後の反省会、一日目夜の事】 【ある中華料理店店員の聖夜】 【ある中華料理店店員の選択】 その1 【ある中華料理店店員の選択】 その2 【ある中華料理店店員の選択】 その3 【ある中華料理店店員の選択】 その4A 【ある中華料理店店員の選択】 その4B 【ラルの新連載―双葉学園・最強料理王編3】 タグ:チャーハン 主な登場人物 拍手 敬 神楽 二礼 自作時系列表(NPCSS、異能本編除く)ガナあきページから丸パk……お借りしました ○昨年度4月 拍手入学して早々に、大車輪にバイトに入る 以降、ずっとバイト三昧で実家に帰らず ○今年度 4月上旬 拍手と神楽が出会う 直後、神楽が大車輪に通うようになり以降常連に 5月 6月 「~悲劇」(会長紹介SSをシェア) 大車輪にトラックが突っ込む、数日後には改装完了して店再開 7月 「~~七夕の日」 8月 「~~夏の悲劇」 木山(ガナリオン)と知り合う 9月 10月 「~~南瓜祭」 11月 12月 「~~聖夜」 「~~選択」 拍手、自分の能力が何かを知る Aルートは作者が元々考えていた話 +その後 #拍手は光に 、神楽は年が明けて早々に双葉学園を辞め実家に Bルートが双葉学園としての正史 拍手は年末に目を覚まし、その後また緩々した生活へと戻ります 以前との変化は、意味のある戦いからは逃げなくなったこと 1月 2月 3月 作者コメント 初めてSS(?)を書いたので文法とか書き方が破綻してますが「こいつらバカだ」と笑っていただければ幸いです 関連作品 まだありません 戻る
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【任務概要】 内容 抗争仲裁に入った警察署長を抹殺し、赤龍会の手口に仕立て上げる クリア条件 ・赤龍会側交渉人の暗殺 ・赤龍会側交渉人の死体隠蔽 ・警察署長の暗殺 ・赤龍の首飾りの現場遺棄 抗争に際し仲介に入った警察署長及びを抹殺し 赤龍会の仕業にするため、赤龍会交渉人に変装する必要が あります。赤龍会交渉人の死体も見つからない様に隠蔽し 署長を殺害、証拠として首飾りを現場に放置する。 スタート前に武器を購入しておきましょう。今回は少しだけ ドンパチする必要性があります。 1スタートしたらまず、レストランに行きマスターに話しかけて トイレの鍵をもらってトイレに入り、武器などを落としておきます。すぐに赤龍会交渉人がマップ北東からやってくるので 少し急ぎ気味で〆に行きましょう。中華料理屋に到着する前に やらないと面倒なことになりかねません。ちなみにここの店員は タンメン食わせてくれません。 2赤龍会交渉人がやってきたら、背後から〆ます。 (警官がうろうろしているので見つからない様に) 死体をそのへんの下水に隠蔽したら、死体から服と赤龍の首飾り を頂いておきます。 3変装して中華料理店に向かい、ボディチェックを受け、中に入りトイレに入りましょう。先ほど隠しておいた武器を装備してターゲットが来るのを待ちます。 4署長が来たら迷うことなく撃ちのめします。 マスターもソーンオフショットガンで撃ちまくってくるので 必要なら殺りましょう。 5現場に赤龍の首飾りを放置してとっとと逃げます。 正面からだと警官がいるのでトイレの窓からがいいかも。 6すみやかに回収地点に向かい、任務達成となります。 コードネーム47攻略にもどる
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【ある中華料理店店員の悲劇 前編】 この作品をラノで読む 1.中華料理店 大車輪 「はいよ、レバニラ定食あがったよー!」 週末の土曜日、時刻は正午を少し回った頃だろうか安くて美味くはないが量はあるをモットーとした大衆向け、いやどちらかと言えば貧乏学生御用達の中華料理店「大車輪」は今日も大盛況だ。 学食の量では餓えた腹を満たすことが出来ない新陳代謝多目の運動部系学生達が午後への活力を得ようと必死にレンゲを口へと運ぶ様は、本当にここが飽食の国日本だとは思えないほどのもの。 清水の舞台下にいると言われた餓鬼すら引きそうな程にがっついている学生達に食料を提供している俺もまた、そんな一生徒だったりするんだが。 「ああ、畜生どもめ! 俺も腹減ってるってのに何でおまえらに先に飯食わさなきゃいけないんだよ」 空きっ腹を抱えつつ、中華料理特有の火力重視のガスコンロを前にして左手で鉄鍋を振るう。 時折熱されて弾け飛んだ油が左手を容赦なく焼くが、それに関して文句言ってちゃ中華は作れない。 中身が飛び出さないように注意しながら右手のお玉で熱が均等に伝わるようにかき混ぜると、香辛料と素材の焦げる良い匂いが鼻から脳を直撃した。 その途端に恨めしそうに胃袋が抗議の声を上げる。 「ううう、我慢だ。 我慢しろ俺!」 客室にはヒンヤリとしたクーラーの冷気が伝わり、その中で汗を流しながら美味そうに飯を頬張る客達がいる。 それとはまるで対照的に、キッチンの中熱気に包まれて流す汗も乾ききり空きっ腹を抱えながら更に鍋を振るっていく。 ああ、俺は今頑張ってるよなぁ……なんて自分で自分を慰めつつ。 そうしないとやってらんねぇしな。 「はいよー! お次チャーハンあがったよー!」 右手のお玉で鍋をなぞる様に一回転。 チャーハンがお玉一杯に詰まり、そこに皿を被せるように載せてひっくり返す。 そしてそのまま形を崩さぬように気をつけながらお玉を上に抜くと、綺麗に半球状のチャーハンの完成。 うむ、自分の仕事ながら見事な出来だ。 胃袋がまた一度切なそうな声を上げているのがその証拠だろう。 普段ならすぐにホールの奴が引き取りに来るんだが、この盛況ぶりの中こちらまで手が回らないと見える。 入っている注文のうち、自分に割り振られている所での料理が無いのを確認すると。 「……しょうがねぇなぁ」 第一に空きっ腹の目の前に美味そうなチャーハンを置いておくのは俺にとって非常に目の毒であるため。 第二に同じく空きっ腹を抱えつつ俺よりも先に腹一杯になるために待っている客畜生のため。 本音はずっと鉄鍋を振るっていた左手が悲鳴を上げていたから。 俺はチャーハンの皿を持ってホールへと足を向けた。 暖簾のようにキッチンとホールを隔てるようにして掛かっているビニール製の仕切りを右手で払いホールへ出る。 ここは……天国だろうか? 火照った頬を冷やすクーラーの風に感動しつつ、周りを見渡す。 「てめぇ! 俺のから揚げ食いやがったな!」 「あぁ!? 一個くらい良いじゃねぇかよ、おまえも俺の餃子食ったくせに!」 「ばっかおめぇ! 俺はキチンと米とおかずの配分計算して食ってんだよ! あと、から揚げ一個と餃子一個だと単価どんだけ違うと思ってやがる!!」 前言撤回、筋肉至上主義みたいなゴツイ馬鹿どもが似たような話題で盛り上がり(?)つつ飯を貪る姿はまるで地獄のようだった。 つうか、原価数円の違いで喧嘩すんな馬鹿ゴリラどもめ。 口から米粒を飛ばすゴリラを横目に出来たチャーハンを指定のテーブルへを運んでいく。 ああ、さらば俺のチャーハンよ! 「お待たせしました! ご注文のチャーハン満貫盛りでー」 満貫盛りというのはうちの店でのチャーハンのサイズだ。 通常の倍程の量がある、さらにハネで3倍盛り、倍満で4倍盛り、そっからは想像してくれ。 ちなみに倍満なのに4倍盛りだということを知らずに二人前だと思って注文するヤツが週に2,3人は出る。 なんでこんな分かりづらい表記でやってるんだかなぁ。 「早く置いてくださいよ、お腹すいてるんっすから」 ああ、しまった現実逃避してた。で、 「またお前か」 「客に向かってお前とは客商売失格っすね、店長呼ぶっすか?」 「性根の腐った外道巫女めが、悪魔みたいなやつだよお前は!」 「仮にも神道系目指してる人が”悪魔”は無いと思うんすけどねー、チャーハン早く置いてくださいよ?」 こんなヤツに俺の丹精こめたチャーハンは食われるのか…… 奥歯が軋むほどに深く歯を噛み、無駄な労力を使うのは今ではないとすぐに緩め。 僅かばかりの反抗心を皿を机に置く時に多少音がなるように込め、ニヤニヤと性根の曲がりきった顔でこちらを見る一つ下の後輩へとチャーハンを差し出した。 俺の名前は拍手 敬(かしわで たかし)、苦学生である。 実家が傾きまくった地方の神社で、跡継ぎになる為にここ「双葉学園」へと勉学に励むため上京してきた。 京都の方にも良い学校はあるのに何故東京にまで出てきたかと言うと、非常に面倒なことに俺が魂源力と呼ばれる物を僅かながらでも使うことが出来るかららしい。 あまりに田舎なせいか、高校に入るまで一度も検査を受けなかったのが発覚が遅れた理由らしい。 そりゃ、故郷の村には病院どころか小さな個人の診療所が一軒あるだけだったしな。 魂源力とやらがある学生は優先的に「双葉学園」へと集められ、能力を伸ばし、鍛錬し、あるいは普通の学生と変わらぬ学生生活を送る。 が、当たり前だがそんな生活にも当然金が必要となってくるわけだ。 衣は学生服が支給されるので問題ない、食もまぁ学食のチケットがほどほどには支給される。 問題は住とその他の雑費と学食で足りない食費だ。 生徒数の多いこの学園では裕福な生徒は月にそこそこの金を支払って寮に入る。 個室で割りと良い感じの寮だ。 対して金の無い学生が入るのが通称スシヅメと呼ばれる狭っ苦しい数人で一部屋の共同寮である。 こっちに来てすぐの時にバイトもせずに勉学に励んでいたら、あっさりと金が尽きて共同寮に落とされた事がある。 なんていうか、その、地獄だった。 何で連中裸で歩き回るんだよ! ちょ、パンツからキノコが生えるってどういうことよ!? 今でも鮮明に思い出せる、あの腐海のような住処。 ええ、それはもうトラウマが残るくらいに。 それ以降は故郷の知り合いからのツテで今いる中華料理店でバイトさせてもらって何とか元の学生寮に戻ることが出来ている。 学食で足りない分の食事もまかないとして食わせてもらっているし店長様様だ。 そして、目の前で俺の魂のチャーハンを美味そうに食ってる外道。 神楽 二礼(かぐら にれい)、高校一年で一つ下の後輩だ。胸がでかい。 一度も染めたことが無いだろう黒のストレートヘアーを腰の後ろの辺りで赤いリボンを使って留めている。 よくある巫女さん御用達の髪型だ。それもその筈、俺と違って都内のそこそこ有名な神社の跡取り娘で本職の巫女らしい。顔も綺麗と言うよりは可愛い部類に入るだろう、黙っていればかなり人気が出そうな外見をしている。胸もでかいし。 しかし、そんな外見とは全く逆で内面は恐ろしいほどの性格の悪さ! バカだろうけど、こっちが悔しいが同じくらいバカなので程度が合うのか俺の堪忍袋の尾を何時も程よく刺激してくれやがる。 入学早々に風紀委員長に憧れたとかで、現在見習いとして日々木刀を振るっては被害者を出している。 仮にも巫女としてそれはいかがなものか、と一度注意したのだが。 「大丈夫、刃物じゃないからセーフセーフ」 と笑顔でのたまいやがった。 きっとこいつは人を殴るのが大好きなドSか何かなのだろう。 あまりに見かねてその後、 「神道は別に刃については禁止されて無いぞ、あと人はそんなもんで殴ったら死ぬだろ。 というか巫女として、いや人としてどうよ?」 と言ってしまったのが運の尽き。 我ながら変なやつに関わってしまったと思う。胸はでかいが。 それ以降、俺が僅かでも神道から外れたような行動を取るたびに、 「神道に関わるものとしてそれはどうなんっすかねー?」 と意地悪そうに笑いながらこちらを注意してくる悪魔になりやがった。畜生め。 不意に、腹がまた軽く鳴いた。 そりゃ目の前であれだけ美味そうに飯食われちゃこっちの腹も減るわなぁ。 次の注文も入っているようだし、馬鹿は勝手に飯食ってろとキッチンに向かって踵を返そうとしたが 「あ、ちょっと」 「チャーハン運んだだろ、何か追加注文でも?」 「スープ、付いてる筈なのに持ってきてもらってないんすけど?」 ぐあ、と思わず口から声が漏れた。 うちのメニューは米系にはスープが無料で付くのを忘れていたのだ。 振り返った先では、頬にチャーハンのものとみられる米粒をつけながら外道巫女がニヤニヤとこちらを見上げていた。 壁に備え付けられた古ぼけて、中華料理店特有の油で少し黄ばんだテレビが午後二時を告げてきた。 客足もようやくまばらとなり週末特有の忙しさもどうやら過ぎ去ったようだ。 ホールの方を見渡せば僅かに客はいるものの、空席が大半を占めている。 さっきまでここで飯を食っていた連中は今はお日様の下で思う存分汗を流していることだろう。気持ち悪ぃ。 従業員用のロッカールームで油の飛んだコックスーツを脱いで制服に着替える。 余った材料で勝手に作った自分用の賄いをもってホールへ足を進めた。 今日のメニューは俺特製具の少ないチャーハンと火力の調整を誤って少し焦げた野菜炒め、残ってたスープにサラダ。 貧乏学生が食うに相応しいメニューだ、泣けてくる。 しかし、チャーハンは俺が丹精こめて作った一品だし余り物ゆえ無料で食える。 無料、うん、素晴らしいことだ。 店は余り物の処分に困ることは無いし、俺の腹も膨らむ、飯代もかからない。一石三鳥だ、全く持って素晴らしい。 まだホールとキッチンの境部分にあるカウンターで鍋を振るっている店長に一言挨拶を入れて適当な席へと座る。 午前の授業の4限目を自主休校として鉄鍋を振るっていたせいで、ずっと腹が鳴り続けている。 正直今なら白米をおかずに白米を食うことも出来そうだ。 とりあえず、喉の渇きを潤すために水を一口。割り箸を手にとって、さぁいただきまー 「あれ、今からご飯っすか?」 顔を横に向けると、外道巫女が美味そうに冷えた杏仁豆腐を口に入れながらこっちを見ていた。 固まるこっちをよそにレンゲで白い杏仁豆腐を切り分け、掬い、口に運ぶ。 「んー、やっぱここの杏仁豆腐は美味しいっすねー」 本当に美味しそうに食うなこいつは。 それに、うちのはアーモンドエッセンスじゃなくて本当に杏仁使ってるちゃんとした杏仁豆腐だからな。 そこらのスーパーで売ってる紛い物と一緒にされちゃ困る……って、 「なんでお前まだこの店にいんのよ? チャーハン出してからもう1時間半以上たってるじゃねぇか」 「風紀委員の仕事としてこの地域を軽く一周してたらデザートの杏仁豆腐食べ忘れてたから食べにきただけっすよ。 何? もしかして、仕事終わりを待っててくれたとか思ってるんすか? もてない男は想像力が逞しいっすねー」 食べ終わった器を軽い音を立ててテーブルに置くと、腕組んで恐ろしく自分勝手なことをのたまいやがった。 無駄にでかい胸がさらにでかく強調される。ちくしょう、俺の中では今の順位は性欲よりも食欲なんだ、誘惑すんな。 「そんな事更々思ってないわ、この性悪巫女が! ……いただきます」 故郷の母さん、俺、少しだけ嘘つきました。 神道主義だからって、肉食えないのはつらいよなぁ……なんて思いつつ肉の入ってないチャーハンの最後の一口を咀嚼する。 肉は入ってないが、その代わりに豚のラードを使っているから香りだけなら普通のチャーハンと変わらないんだけどな。 皿に米粒一つ残っていないことを確認すると、すでに置いてあった箸の横にレンゲを並べ水を一口。 「ごちそうさまでした」 両手を合わせ体の一部となってくれる食物に感謝の言葉を述べ、油物を口にした時特有の喉の渇きから改めて水を一口啜る。 「で、おまえさん何してんのよ?」 キッチンに持っていく為に食器を重ねながら何故かテーブルの向かいで頬杖突きながらこちらを見ている後輩に問いかける。 面倒くさいとは思うがどうせついでだと、向かいにある杏仁豆腐の皿をとってこちらの食器の上に重ねた。 「何って、隠れて肉食ってるか確かめてやろうと思ってただけっすけど?」 「最悪だなお前! そういう自分は細切れチャーシューたっぷり入ったチャーハン食ってた癖に!」 「うちの神社は肉食禁止じゃないから問題ないっす」 「くそっ半端に古い実家がうらめしい」 150年くらい前に肉食が解禁されてそれ以降に出来た神社は肉食OKだったりする。 この肉食巫女の実家は分社した時に解禁したそうで、肉食ったからそんなに胸でかくなったのだろうか。宗教豆知識だね。 キッチンに食器を運ぼうと腰を上げたら、店長が話しかけてきた。 「おーい、敬よーう」 「あ、はいおやっさん何ですか?」 「客もひけたしちょっとタバコ買ってくらぁ、店番頼んだぜぇ」 「あい、分かりましたー」 独特のダミ声を響かせながら店長が店の外へと出て行く。 他の店員達も昼の休憩に入ったり上がったのだろう。 ふと見れば何時の間にやら店内に残っているのは俺と二礼だけのようだった。ああ、二礼=外道巫女な。 「おまえさん、パトロールとやらはどうしたんよ?」 「暑いからこんな時間に外出たく無いっす」 俺がキッチンに向かった為か、土曜の午後のつまらないバラエティーを垂れ流すテレビに視線を向けてぼーっとしている二礼が応える。 確かに外の気温は上がりっぱなしで何もしないで日陰にいても汗をかくだろう。 でも、それとこれとは別だ。 「おい、それで良いのか風紀委員」 「まだ見習いっすからねー、特権特権」 いや、普通は見習いこそ昇格目指して頑張るものじゃないんだろうか……? 釈然としない気持ちを抑えつつ、流しの中、水の張ったタライへと食器を放り込んだ。 2.双葉研究所所属運搬トラック 目が覚めたとき、ソレは暗い箱の中にいた。 下からは軽い振動と人工物が奏でる音が聞こえてくる。 ソレは単純な思考しか持たないため、今の自分の状況を把握するなんて出来なかった。 ただ、自分の身が何か良く分からない物で動けないようにされ、光も通さない箱の中に入れられているというのは分かる。 軽く身を捩るが、戒めはびくともしない。 二度、三度と体をゆする。動かない。 四度、五度と体をねじる。動かない。 六度、七度と体をゆらす。動かない。 この時点で単純な思考しか持たないソレは、我慢の限界に達していた。 自分を束縛する現状に不満しか持たなかった。 しかし、なんという偶然だろうかソレが怒りに任せて体を捻ったのと同時 箱の外ずっと続いていた軽い振動が不意に大きな振動となり重なった。 ピシッ 暗い空間に響く僅かな音と共にソレを束縛していた戒めの一部に亀裂が走る。 それを見たソレは大きな目を歪ませて笑った。 学園都市双葉区へと繋がる唯一の橋をトラックが進む、サイズは何処にでもありそうな2t程のトラックだ。 背部、銀色に鈍く光るコンテナには鮮やかな緑で描かれた双葉の若芽の上に「双葉研究所」の文字が黒で書かれている。 表向きはただの科学研究所のようなものだが、その実人類にとっての脅威となりえる存在「ラルヴァ」を解析、解明して少しでも有利に被害を減らすことを目指す研究機関である。 そこへと向かうトラックの荷台に積まれた物、それはとある遠方で捕獲され研究のために輸送されるラルヴァそのものだった。 特殊な薬液で眠らせ固定し、慎重に慎重を重ねて運ばれるべきものだったのだが。 運搬を続ける方はあくまで一般人なのだ、これは異能者に低年齢の者が多く車を運転できる年齢に達していないものがほとんどだという事が理由として挙げられる。 そして、一般の「人」である以上どうしても完全ということはありえなかった。 遠方の地方都市から都内にある双葉区への運送、しかも荷物は凶悪なラルヴァとあれば普段よりも集中せねばならない。 結果、精神を擦り切らせながら二交代制で運転を代わりながらベテラン運転手と中堅まであと少しというほどには技術を磨いた若手が何とかここまで運んできたのだ。 ようやく着いた人工島、思わずハンドルを操るドライバー達にも気の緩みが出ていたのだろう。 そこに偶然に道路の未整備部分、深さ10cm程の舗装の切れ目をトラックが走ってしまったのだ。 車体が激しく上下した。若手ドライバーの運転ミスである。 「馬鹿やろう! 気を抜くんじゃねぇ!」 ベテラン運転手が後部のコンテナの中を確認すべく座席裏の格子窓から様子を探る。 ……大丈夫、異常は無い。 コンテナに積まれている厳重注意の一辺が50cm程の気味の悪い箱はピクリとも動かずに鎮座している。 思わず背を伝った冷たい汗に、知らずの内に止めていた息を吐き出す。 あの程度の揺れで壊れるわけは無い、そう納得する。 今までも似たような段差を踏んでの衝撃はあったんだ、今回も大丈夫だろう。 助手席から外を見渡すと週末の午後だからだろうか、普通の車よりも高めの窓からは街を闊歩する学生達が見える。 後少し走れば目的地の研究所だ、今回も無事荷物を運ぶことが出来た。 ラルヴァの存在自体は機密になっているが研究所の職員である自分達も運んでいるものの危険度は理解している。 自分の年齢を考えるともうそんなに何度もこの仕事を行うことは出来ないだろうと考えながら、ふと、運転席の方に目をやってベテランは目を疑った。 運転席の計器の中、定期的に操作して打ち込まなくてはならない薬物が運搬物に打ち込まれていないと警告が出ていたのだ。 一体何時からだ!? 再度ベテランの背中に冷や汗が走る。 前回は自分が捜査し打ち込んだはずだ。 時間を逆算する。 既に打ち込まなくてはいけない時間を15分は回っていた。 マズイ、何がマズイのかは分からない。 ベテランとはいえ荷物はヤバいものとしか説明は受けていない。 だから、この薬物を打ち込まなかった場合どうなるかも当然聞いてはいない。 自分達はただ「指定されたものを指定された時間までに指定された場所まで運ぶだけ」なのだから。 その際に薬物投与を行うという事と手順の説明だけを受けて、運搬しているのだ。 そして長年の経験と背を伝う冷たい汗から自分がどれだけマズイ状況下にあるのかを咄嗟に判断し。 若手を叱る時間すら惜しんで、震える手で薬物投与の手順を打ち込み叩きつける様に最後のボタンを押し込んだ。 …………大丈夫、背後のコンテナからは異音は一切発せられていない。 急に慌てて操作盤をいじりだしたこちらに驚いた顔を向ける若手を睨み付けながら大きく息を吐き出した。 こいつは研究所に到着したら何発かお灸を据えてやらなければなるまい。 念の為、目視での確認と精神的な安堵を得るためにもう一度コンテナとを繋ぐ窓に手をかけ開く。 目が合った。 格子窓越しに、こちらの顔との距離は僅かに50cmも無いだろう。 黒い何かがその格子窓のほとんどを占める大きな目でこちらを見ていた。 「キシィィィィッ」 口のようなものが見当たらないのに何処から音を発しているのかは分からない。 とにかく、ベテランがそれを目にして出来たことは……叫ぶことだけだった。 自分の理解の範疇を超えた何かにこちらを見据えられ、全身の毛という毛が浮き立つ。 若手が何事かとこちらを向いて、同じように何かに見据えられて叫び声を上げる。 結果、ハンドル操作を誤ったトラックは道を外れ。 中華料理店へと正面から突っ込んでいった。 3,崩壊した中華料理店 ふと目を覚ます。 ……目を、覚ます? いやいやいや、俺さっきまでキッチンで洗い物を終えて、それが終わったから二礼が杏仁豆腐もう一個くれっていうから「太るぞ」とか「営業時間外なんだけどなー」とか思いつつ結局もう一度キッチンに向かうことになって。 作ってるところを見たいっすーとか言いながら恐らく、いや絶対その本心は杏仁豆腐の分量かさ増しを狙ってキッチンに入ってきたであろう外道巫女との無言のバトルが繰り広げられていたはずでーって、 「う、うええええ!? うご、ゲッホゲホ」 何時の間に寝たのかも分からない、とりあえず埃だらけになった体を払って身を起こす。 狭い筈の店内は見える範囲は粉塵と瓦礫の山、そりゃ変な声も出るわ。 あと、空気悪すぎだ。ちょっと口あけただけで喉が砂っぽい。 とりあえずの応急処置としてハンカチを口に当てる。 配電線が切れてるのか、外はまだ明るい3時前だっていうのに舞い散る埃のせいか視界は薄暗い。 電球が割れているのだろう、時折電気が弾ける音に混じって狭い視界の向こうから小さく光が見える。 程近い場所では水道管が破裂したのだろうか、水が跳ねる音も聞こえる。 何があったのか、いや「何かがあった」んだろうけど見当もつかん。 視界が悪すぎて完全に手探りで進まないとどうしようも無い。 とりあえず、変な破片で手を切らないように慎重に辺りを探る。 数回空を切った手が、何か柔らかいものに触れた。 指を押し込んでみる……ふにふにとして柔らかい。 OK、落ち着け俺。 目が覚める前、俺の近くには誰がいた? 応えは簡単、あの胸と態度だけはでかい外道巫女だけだ。 つまり! この手が! 触れているのはーっ!! 「う、うぅぅ……」 瓦礫の中で響く低い唸り声。 誰、このおっさん。 年の程は50くらい割とガッチリとした体形のおっさんの、しかし年の衰えは隠せない二の腕を俺は揉んでいた。揉んでいた。 「泣きそうだ」 俺の期待していたのは、もっと! もっと! 違う神秘的な物だったはずなのに! 酷いよ神様! まぁ、嘆くのは後にしてこのうつ伏せに倒れこんでいるおっさんをどうにかしないと。 とりあえず謎のおっさんをうつ伏せから仰向けになるよう引っ繰り返し、両脇に手を入れて上体を起こさせ抱きかかえる。 おっさんがこっちの首に両手を回すような形になった。 ちくしょう、何が悲しくておっさんなんぞを抱きかかえなきゃいけないんだ。 もし視界がハッキリとしていて、今の状態を見ることが出来るならおっさんと俺の熱い抱擁シーンが見て取れるだろう。 ……本気で泣くぞ俺。 目の端が潤むのはきっと粉塵だけのせいじゃない。 おっさんの位置が安定するように数回揺すり、頭の中で店の間取りを思い出すと店の入り口よりも近い裏口へと向かう。 キッチンからだと数メートル普段だと数歩の距離が、重いおっさんと視界を埋め尽くす粉塵のせいでかなり遠く感じられる。 一歩、一歩、確かめるように後退する。 自分の体重よりも間違いなく重くて背も高いだろうおっさんを胸に抱きながら前進は無理だ。 背負った方が良いのかもしれないが、何の補助も無く気絶中のおっさんから手を離すとどう考えても地面に頭をぶつけるだろう。 初めに抱き上げた時に抱き起こすんじゃなくて背負うべきだったよなぁ、これ。 今更言っても遅いんだけど……ああ、息が上がる。 ただでさえ、体力は何とか人並み程度なんだ。人一人抱えて歩くとか無理すぎる。 頭がぼーっとしてきたところで、背中が固いものに触れた。 なんとか振り返ると見覚えのある鉄製のドア。裏口だ。 おっさんごしにドアノブに手を伸ばし捻る。 「くっ! あれ……? ぐっ!!」 おかしい、押して開けるはずのドアが開かない。押しても引いてもうんともすんとも言わない。 引いても開かないのは当たり前だっつうの。 結論から言うと、この惨状の衝撃を受けたのか歪んだ裏口のドアは壁に嵌りこみ開かなくなっていた。 おいおい神様、俺あんたの為に肉も食わずに頑張ってるってのにこの仕打ちかよグレるぞチクショウ。 今から表に回るか? 冗談、近い方の裏口にくるだけで肩で息してる状態だってのに今更表に回るなんて無理無理。 じゃぁ、どうするか? 「まぁ、出来ることをするしかないわなぁ」 おっさんが頭を打たないようにゆっくりと下に降ろしていく。 幸いなことに足元に瓦礫は少なく、中華料理店ゆえ油ぎってねとねとする床がおっさんの頬に触れる。 気絶していても気持ち悪いのか唸るおっさん。やかましい。 粉塵が舞っているので、大きく息を吸うのは無理。 正直余りやりたくないけどしょうがないよな。 制服、ブレザーの首元を緩めて肌と服の間にある僅かな空気を吸う。 「うぇ、自分が原因とはいえ汗臭ぇなやっぱり」 だけど外の空気よりかは幾分マシだ。 吸って、ゆっくりと息を吐くを数回繰り返すと息の乱れも収まった。 首元に添えていた両手を離して、手のひらが下になるようにして腰の前へと持っていく。 息は吸ったままだ。 そしてゆっっっくりと腹の下、丹田と呼ばれる部分にあたる場所へと意識を集中しながら吐き出す。 吐く息とともに丹田から何かが湧き上がってくるイメージを持て、故郷の師範の言葉が頭に思い出された。 湧き上がった何かが全身に浸透していくのを感じつつ、下に向けられていた手のひらをそっと開かない鉄扉に添える。 次いでイメージするは螺旋の動き、足の指、足の裏、足首、膝というように全ての間接の動きを連動させる。 動きは腰を通り、背骨を抜け、肩を経由し、肘、手首、そして手のひらへー! 「ハァッ!!」 渾身の勁が鉄扉に叩き込まれる。 同時、鈍い音を立てながら開かなかった扉は止められていた蝶番を引き剥がすようにして店の外側へと弾け飛んだ。 鉄扉が発頸の衝撃で歪んだまま動き回り、あたりに鉄が硬いものに当たった時にあげる特有の甲高い音を撒き散らす。 発勁を打った後の残心をときつつ、裏路地に顔をだす。 新鮮とは言いがたいが、汗臭くも粉塵が舞っている訳でもない空気は美味かった。 「あー、今更だけど誰もいねぇよな?」 聞きつつ路地裏を見渡すが、特に人影は無い。 普段からそんなに人通りのあるような道では無いし、こちらも緊急時だったとはいえ鉄扉が当たった人がいたら傷害事件に成りかねない。 「誰も……いないな」 よし、とひとりごちてから粉塵が外へと逃げ出す裏口を再度くぐった。 体の中から何かが抜けるような、虚脱感を感じつつ倒れたままのおっさんを引き起こす。 発頸使った後はいつもこれだ。だからこそあんまり使いたく無いんだが。 とりあえず、いくらか離れた位置に壁にもたれ掛からせる様におっさんを座らせると裏口に戻る。 中にはいけ好かないが巨乳の外道巫女が倒れている可能性があるからだ。 「よし、もし気絶してたら揉みしだこう」 それで良いのか神道。いや、おっぱいは崇高なものだ。 きっと神様も納得してくれるだろう。 自分でも勝手だとは思うが相変わらず細かい粉塵が飛びまわる空間に戻るんだし、それくらいの役得はあっても良い筈だ。 しかし、とドライアイスを水につけたときに出る煙のように路地裏に出てくる粉塵を見てふと思う。 大分古い建物だけど、昔問題になった石綿(アスベストとかいったか?)じゃねぇだろうな? いや、この島出来たのそんなに古くはないからこの建物の見た目が古臭いだけか。 ……深く考えるのは止めておこう。 入ってゴールまでいけばおっぱいが待っているんだから。 「待ってろおっぱい!」 己に活をいれるようにして叫ぶ。 うん、これは良い。 人間目的意識が無いとダメだなやっぱり。おっぱい! 「何を卑猥な発言してるんっすか、風紀委員として逮捕しますよ?」 「……うぇ?」 粉塵の中から出てくるのは見慣れた外道巫女。 埃に塗れて何時も手入れしてそうな綺麗な黒髪は汚れ、頬には埃が汗に溶けたのか黒い汚れとなってこびり付いている。 その肩にはさっきのおっさんと同じ作業服を着た30くらいの男性が寄りかかっていた。 こちらもおっさんと同じで気絶しているようだが、担ぐのに楽になるようにするためだろうか。 男性の左手が二礼の肩を通り、力が抜けたその腕がおっぱいの上に乗っかっている。 「てめぇ! それは俺のもんだぞ!!」 「訳分からないこと言ってないで、男なんだから手伝ってくださいよ!」 ああ、何時もの「~っす」が無いってことは大分疲れてそうだな。 さすがに俺も反省、ていうか発勁の為の錬気呼吸と粉塵の中おっさん担いで頑張ったせいでちょっと脳がおかしくなってるのかも知れん。 二礼と二人がかりで男性をおっさんと隣り合うように座らせた。 二人とも気絶しているだけのようだ、擦過傷での傷や打撲はあるようだが骨折や致命的な傷は負ってない。 「さて、とりあえずはこれで良しかな?」 「そうっすね、とりあえず現状把握しないといけないっすから行くっすよ」 マシな空気を吸って体力が多少回復したのだろうか、何時もの口調に戻った二礼が言う。 あれ、今何か聞き捨てなら無い言葉を耳にしたような…… 「は? 行くって何処へ?」 「寝ぼけてるんすか? この中っすよ」 さも当然とでも言うかのように、二礼が吹き飛んで常時開店状態になった裏口を指差す。 いやいや、さすがにそんな体力も気力もねぇよ。 って、ああこら勝手に中に入るんじゃありません! 「ちくしょう、外道巫女が……!」 せめてもの対抗策として、制服(もう泥と埃だらけで洗って着れるのかなぁクリーニングどうするよ?)のポケット中からバンダナを取り出して口に巻く。 これで息するのが大分マシになるだろう。 それでもかなり憂鬱でやる気の出ないのはしょうがない。 中からは、 「何ちんたらしてるんすかー?」 という先輩を敬う気持ちが一切篭っていない後輩の声が聞こえる。 とはいえこのままここに突っ立ってるわけにもいかず。 危険な香りが漂う裏口から何時ものバイト先とは到底思えなくなった中華料理店へと、今日何度目か分からないが足を踏み入れた。 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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ある中華料理店店員の聖夜 空には暗雲が立ち込め、至る所で爆発音や赤黒い煙が上がっていた。 耳につけたイヤホンマイクからは各地からの絶望的な悲鳴交じりの報告が引っ切り無しに流れる。 左手の腕時計を見ればデジタル表示で今日の日付が示されていた。12月24日。 「そうか、今日クリスマスイブだったか」 分かっていたが今一度確認すると辛いものがある。 まぶたを閉じると、前線に出る自分を心配そうに見送るあの子の姿が浮かんだ。 お祭り騒ぎが好きで何時も笑顔を絶やさないあの子の泣きそうな顔を見たのは初めてだった。 本当なら今頃はあの子や気の会う仲間たちと暖かい部屋でケーキや料理を食べて馬鹿騒ぎする筈だったっていうのに。 今はイヤホンからではなくもう自分の耳で聞き取れるほどに少しずつ大きくなってくる破壊音と悲鳴に、震える足を押さえつけながら息を潜めている。 「なんだってこんな日にこんなことになっちまったんだろうなぁ」 ジャケットのポケットからはあの子に渡すはずだったプレゼントの入った小袋がラッピングのリボンを少し覗かせている。 友達以上恋人未満の俺たちを固めようとした仲間たちに背中を押され、ようやく今日のパーティで一世一代の告白をするつもりだった。 ポケット越しにプレゼントを触ると包装紙がぐちゃぐちゃになっているのがよくわかる。 待機している路地裏の片隅にはさっき前線を突破してきた化け物の死体が転がっている。 さっきは背後から不意打ち気味にしかけてなんとか仕留める事が出来た。 しかしそれでも潜めようとしているのに息は徐々に荒く、膝もガクガクと震えを増してきている。 「クソッ、なさけねえ」 なんとか震えを止めようと太ももを叩くがまったく止まる気がしない。 普段から仲間に訓練や実習の成果を見せて格好いいことを言っていたっていうのに今の余裕のなさはなんだ。 化け物がいくら来ようが負ける気がしないなんて言ってた俺はどこへいったんだ。 『前線が突破されました! 第一次防衛ラインに敵が押し寄せます!!』 イヤホンからノイズの混じった報告が入る。 前線からの報告がどんどんと減っていく。多分向かった連中は生きてはいないだろう。 ここへ敵が来るのもそう遠い話では無さそうだ。 つまり、それはイコール俺自身の最期でもある。 俺よりも強いやつが戦っていた前線が崩壊したんだ、俺だけが生き残れるなんて都合のいい話があるはずがない。 もう一度目をつぶると、またあの子の顔が思い出された。 でも今までたくさんの笑顔を見てきたっていうのにあの子の泣き顔しか思い出せない。 「もう一度笑顔が見たい、それから」 それから俺は彼女に―― 突如、背後で爆発音が響き衝撃が背中を殴りつけた。 転がるように潜んでいた路地から大通りへと転がり出た俺の目には、ゆっくりとこちらへ進行してくる化け物の集団が映った。 俺と同じように潜んでいた仲間が建物や路地裏から攻撃を加えるが進行を少し遅らせる程度にしかなっていない。 路地裏からもさっきの爆発の原因だろう化け物がこちらへ歩いてくるのがみえた。 やっぱり、俺が生き残るのは無理だろう。 でもこいつらを行かせればあの子はどうなる? 行かせない、行かせてはならない。 今まで受け取るだけだったイヤホンマイクの送信スイッチを押す。 「第一次防衛ラインの――だ。敵が来た。 多分持ちこたえられそうにない」 路地裏を爆破させたであろう火球を吐き出してくる敵の攻撃を横に飛んで何とか回避する。 直撃していないというのに熱気だけで頬が焼け付いたように痛む。 次弾を撃とうと口を膨らませ仰け反る敵に距離をつめて顎に一撃。 口の中で火球が爆発したのだろうか、凄い音を鳴らして辺りに肉片が飛び散る。 しかし、顎へ攻撃を入れたこちらの右手も爆発の余波をもらって指が何本か折れたようだ。 アドレナリンで痛みは余り感じないが少しすると地獄の痛みが襲ってくるだろう。 大通りを見ると潜むのを止めたのか仲間が列を作って敵の進行に相対していた。 俺もそれに加わるために足を動かそうとして、イヤホンマイクの送信スイッチが押されたままになっていた事に気づく。 「指令本部、まだ繋がっているか? 出来れば伝えてほしい言葉があるんだ――」 『あなたは恋人になんという言葉を遺して逝けますか?』 客がほとんどおらず扉の外から僅かにクリスマスソングが聞こえる店内に、テレビから現在放映中の映画CMが流れた。 最新のSFXやらCGやらを使って臨場感あふれる様になっており、テーマ曲にのって主人公とヒロインの平和な学園生活の映像が続いている。 上手くごまかしてるけど、あれエキストラに能力者混じってたりしてるんじゃないかなー、とテーブルを拭きながらなんとなく眺めていたのだが。 「いや、クリスマスにこのCMはねーだろ」 思わず俺、拍手敬 かしわで たかし はクリスマスイブの夜10時一人さびしくテレビに突っ込みを入れていた。 ある中華料理店店員の聖夜 クリスマス、12月25日。 キリスト教でイエスキリストが生まれたとされる日。 その前日、24日の夜だからクリスマス・イブ。 街中は煌びやかなネオンに彩られて、商店街に備え付けられたスピーカーからは数十年間変わり映えのないクリスマスソングが流れる。 本来は教会でミサやらなんやらが行われて厳かに過ごす日のはずなんだが、そこはそれ。 とにかくイベントにかこつけて遊ぶのが多種メーカーの販売戦略に踊らされる悲しい日本人のさだめだろうか。 町中では恋人たちがキャッキャウフフしつつホテルやら自宅やら寮の自室で愛を育んでいるんだろう。 だというのに、なんで俺はのれん畳んで店じまいしたバイト先でひたすら掃除なんてしてるんだろうか。 夕方に後輩の木山仁からクリスマスプレゼントとしてもらったステキアイテムは楽しむ間もなく突如現れた被写体本人によって再生不可能な程に砕かれてしまった。 何枚かは脳内で保存済みだが、全部を楽しむ前だったのが非常に残念すぎる。 マスターデータを消したとは言ってなかったし、今度またコピーしてもらいに行っても大丈夫かなーなどと考えつつテーブルに布巾を這わせる。 何度もいうが、今日はクリスマスである。 別れ際に凄い良い笑顔を見せた木山を思い出すが、あれは間違いなく桃色未来を期待している顔だった。 「ああ、チクショウ。 木山のやつ今頃は乳神さまと鍋でもつついてキャッキャウフフしてやがんだろうなぁ。 そんで食後は乳神さまの乳をつつくってか、あのリア充め」 夏に会ったおっぱいを思い出して思わず歯軋り。 おっぱいのサイズとインパクトがでか過ぎて名前をド忘れしちまったが、あれは良いおっぱいだった。 それを手に入れた木山……妬ましい。 妬ましいが、同じ志を持つものとして見事理想を達成したのは賞賛するべきだろう。妬ましいが。 乳神さまのおっぱいを思い出して思わずため息をひとつ。 「俺の近くにもいることはいるんだけどなぁ」 常連となって裏口からのご来店余裕でした、なのが一人。 何時も心に外道の心を、な「他人をからかうこと」と「チャーハン食うこと」が楽しみだと公言してはばからない外道巫女こと神楽二礼 かぐら にれい 。 ……あれに恋愛感情が沸くかって言われたらなんとも微妙な顔をせざるを得ない。 いや、おっぱいは理想でドがつくほどのストライクなんだが。 顔を会わすたびにネチネチと俺の精神を削ってくれるのが難にも程がある。 さっきなんて尻に木刀を捩じ込まれかけたくらいだ。 「ああ、そういえば」 他にも選択肢があったのを思い出した。 数日前の終業式以降顔を会わせてないがクラスメイトの星崎とか六谷も良いものをお持ちだ。 でも、この一年であの二人にされた諸行を思い出すと背筋に冷たいものが走る。 ヤメテヤメテもう寒中水泳は嫌ー! ヤメテヤメテもう頭を竹刀で殴らないでー! 「なんで俺の周りの巨乳ちゃんは性格に難のあるやつばっかりなんだろう……」 世の中にはもっと性格も素晴らしいおっぱいもいるだろうに。 なんで俺の周りのおっぱいは邪悪なのばっかなんだチクショウめ。泣くぞ。 ……考え事をしながら掃除をしていたら布巾が結構汚くなっている事に気がついた。 中華料理店で油料理が多いせいかこまめに掃除をしないとすぐにこれだ。 餃子のたれやらでテーブルに染みが付いてるのが大衆向け料理店だということを思い出させてくれる。 バケツに汲んでおいた水に布巾を浸して揉み解していると、もう時計の短針が11に近づいこうとしているのが見えた。 「どうすっかなぁ、待つべきか帰るべきか」 3時間半ほど前に二礼が去り際に言い残していったことを思い出して肩をすくめた。 「問答無用ー!! そこになおれー!」 「ア゛ッーー!!」 外道巫女の木刀が唸りをあげて俺のケツへと襲い掛かる。 仰向けへ倒れこんだ俺に足元から迫っていた凶器をなんとか寸前で止めることに成功したが、夏の時と同様にジリジリと尻と木刀の距離が縮まっていく。 「ふふふ、ほーれもうちょっとっすよー?」 「ら、らめー! それだけは勘弁してくれー! 助けて神様ー!」 「神さまを下ろせる私が審判するっす、却下」 「い、一方的過ぎる! 控訴だ控訴ーっ!」 口端をキリキリと吊り上げて凄い嫌な笑顔を見せながら二礼が力を込めてくる。 ちくしょう、相変わらず力強ぇよこいつ。 何が悲しゅうてクリスマスに尻の処女を捨てにゃならんのだ! 「いやー、しかし先輩も堕ちたもんっすねー。夏に誘拐したかと思ったら今度は盗撮っすか?」 「撮ったのは俺じゃねーってア゛ッー!! 先端が尻に! 尻に!」 あわや、俺の純潔が散ろうかというその時。 立て付けの悪くなった扉を乾いた音を鳴らして救世主が現れた。 高い背に病的なまでに細い体をしたその人物は俺たちを見て一言。 「……邪魔をした」 そう一言だけ述べると来た時を逆再生したかのように扉を閉めて出て行こうと―― 「待ってー! 助けて蛇蝎 だかつ さーんっ、晩飯おごりますからー!」 「ふむ、構わんがそっちの……1-Bの神楽二礼か、もう離れているぞ」 「へ?」 顎に手を当てながらもう片方の手で扉とは逆の方向を指差す蛇蝎さん。下の名前までは覚えてないが今更聞くこともごにょごにょ。 普段から蛇蝎さんとしか呼ばないから問題ないだろう。 とりあえず指差された方を見ると俺の尻の純潔を狙っていた外道巫女は何時の間にやらテーブルに着いていた。 バッチリ凶行を見られたというのに今更取り繕ってどうするってんだコイツは。 「まぁいい。時に拍手よ、先ほどのおごるというのは嘘では無いのだろうな?」 「え、あ、まぁ後ろの純潔を救っていただきましたから相応には」 さすがに満漢全席とか言いださねぇよな、この人。 見た感じ下手すりゃ外道巫女よりも軽そうだし、ああでも痩せの大食いってあるからなぁ。 まぁ何はともあれ立ち話もなんだ。 「んじゃ、カウンターにでも座ってくださいよ」 床から起き上がりつつ蛇蝎さんにそう言う。うう、少しだけど尻が痛い。 綺麗にしているように心がけているとはいえ、そこは中華料理店特有の油っさに微妙な汚れがついた服を払う。 馬鹿なやりとりも後先考えてないと酷いことになるな。 学園の制服じゃなくてコックスーツだったのがせめてもの救いか。 元々油汚れが染み付いているのでさほど気にはならない。衛生的に普通のお客には見せられないが今いるのは「普通の客」じゃないので気にしないことにする。 「んで、ご注文は? 今日はそんなに食材に余裕がないのでたいした物は出来ませんけど」 キッチンに移動してからコンロに火を入れて相棒である鉄鍋のジャンをのせる。 中華は何といっても火力と速さ、何頼まれても鍋は要るんだからとりあえず熱しておくのが最善だ。 「客商売の料理店が掻き入れ時の夕飯時に余裕がないとは珍しいな」 訝しがる蛇蝎さんを横目に時計に目をやる。 「今は……7時か、もう一時間程したら貸切で団体客の予約が入ってるんですよ。 気前の良い客みたいで今日はその客だけ、どうせクリスマスイブに中華なんてあんまり流行りませんしね。 そういう訳でその分は用意してるんですけど、ちょっと準備に手違いありましてね。 加減していただけると嬉しいです」 「それは量か? 品目か?」 「あー、品目ですね。鳥と米は結構あるんですけど他の一品もの作る食材が正直予約分くらいしか」 「よくもそれで晩飯を奢るなどと言えたものだな」 何時もの仏頂面のまま鼻で笑う蛇蝎さん。 知り合い連中にされたらイラっときそうなその態度も、何と言うか悪の幹部みたいで似合ってるのが逆に面白い。 「それはまぁ、とっさに口から出ちまったんで」 「後先考えずに口走るのは愚か者の行動だ、拍手。 ……ではチャーハンを役満盛とから揚げを5人前ほどもらおうか」 「だ、蛇蝎さんって痩せの大食いだったのか」 頭の中で注文金額を計算して、今日の分のバイト代が半分くらいになったことに絶望する。 というか、役満盛にから揚げ五人前とかそこで座ってる外道巫女のところのせんせーさんが腹八分目になるくらいの量だぞ。 いや満腹まで食ってるのみたことないからあくまで予想の話なんだが。 「勘違いするな、持ち帰りでだから揚げ代は払う。チャーハンを奢りでいいだろう?」 「ああ、なるほど。微妙に納得できない気もしますけどオッケーです」 一気に総額が三分の一くらいになってほっと胸を撫で下ろす。 てか、この人さらっと注文が出てくるあたり始めから持ち帰りで注文しに来たんじゃないのだろうか。 どうせ聞いてみたところで「はい、そうです」だなんて絶対に言わないんだろうけど。 まぁ、予約の30分前にはそっちに取り掛からなきゃならんのでさっさと作るかね。 作り始めて10分ほど特に会話も無く店内には俺が中華なべを振るう音と、テレビから流れる大して面白くも無い特番の音声だけが流れている。 蛇蝎さんはカウンターに、二礼は先ほどのままテーブル席に腰掛けてセルフサービスの水が満ちたコップ静かに傾けるだけだ。 微妙に気まずいので蛇蝎さんに話しかけようか悩んでいると、蛇蝎さんが僅かに二礼の方を見た。 「そういえば最近風紀が活発に動いているようだな」 「ふぇっ!? 私っすか、まぁクリスマスっすからね変なのが良く沸くっすから」 猫背でテーブルに突っ伏してだらけていた二礼が飛び起きる。 あいつ寝てたんじゃねぇか? 蛇蝎さんも普段より眉間に皺を寄せて怪訝そうな表情をしている。 「クリスマスだけではなくここ2ヶ月ほどを含めてだ」 「……一応機密なんすけどねー、それ。なんで知ってるんすか?」 怪訝そうな声で答えるその顔は何時もの人を小馬鹿にしたような半笑いの表情。 だけど少しだけ何かが違う――ああ、目が笑ってないな。 二人の間に静かに火花が散る。 お互い腹にいくつも何か抱え込んでるようなタイプだし探りあいでもしてるのかねー。 しかし2ヶ月ってことは10月の末くらいからか。 そういえばそれくらいから二礼の来店が減ったような気もするな。 まぁ、週4が3になったくらいだけど。 「蛇の道は蛇、というやつだ。情報を制したものが全てを制する定石だろう。夏の事もある、こそこそと動き回っているうちに後手に回らんことだな」 「下っ端の見習いに言うんじゃなくて、上に言って欲しい言葉っすね。あ、仕事増えるんでやっぱ無しで」 「拍手よ、何故こいつが見習いとはいえ風紀に入っているのだ?」 「いや、そんなの俺に言われても困りますよ。 俺だって何でクビにならないのか何時も不思議でしょうがない――っとはい出来上がり。 岡持ちに入れて貸し出しますんでまた明日にでも回収に行きますよ」 出前用の岡持ちに料理を入れる。 何時も思うんだが役満盛は1つで岡持ち1個いるのって非常に問題あるな、これ。 大盛り過ぎて岡持ちの中を2段に分ける鉄製の区切りを抜かないと入らないのだ。 というかそれ以前に、 「蛇蝎さん、これ持って帰れるんですか?」 役満盛にから揚げ5人前だとかなりの重さになる上に岡持ちも2個になる。 合わせて7,8kgになるんだが、実際やってみると分かるがかさ張って重いものを持って移動するのは非常に疲れる。 蛇蝎さんって病人かと思うくらいに細いから物凄い心配だ。 ラップで封をしているとはいえ転んだり落とせばどうなるか分かったもんじゃない。 「無用の心配だ、相島に来るように言っている」 「ああ、夏にさっさとナンパしてどっか行ったガキんちょですか。空間系能力者でしたっけ?」 夏に海の家の手伝いに行ったときに顔は見たことがある。 相島陸 あいじまりく 、蛇蝎さんの野鳥研究会だったかなんだかいう所の会員だったはず。 直後にナンパしてどっかいって帰ってこなかったんで直接喋ったことはないけど。 「うむ、代金はここに置くぞ」 「あ、蛇蝎さん待った。これも持って行って」 さらに岡持ちを1個プラス。 「……役満盛は1つしか注文していなかったはずだが?」 「から揚げ5人前で役満盛1つじゃ米足りないでしょ、うちのはから揚げも結構大目だから5人で食うもんじゃないと予想してみました」 「ふん、余計なことを」 「今年はお世話になりましたから」 海でのバイトがあったおかげでスシヅメ回避出来たしなぁ。 他でも地味にいろいろとお世話になったから野口さん一人くらいはお礼になって然るべきだろう。 とりあえず冷めないように岡持ちの蓋を閉じてから入り口そばのテーブルの上に置く。 岡持ち3つはさすがに持ち運べないな。 「蛇蝎おにいちゃん、クリスマスイブに呼び出しとか止めてよー」 「うるさい相島、お前もたまには会合に顔を出せ」 出来上がってからたっぷり10分ほどして、心底嫌そうな顔で相島がやってきた。 8つ程年上の蛇蝎さんを相手に、片手で頭をボリボリと掻きながら全く不満を隠そうともしないのは凄いというかなんというか。 そういえば、初等部でありながらその可愛い顔で女性を食いまくるというジゴロらしい。 こちとらキスすらしたことないっつうのに、羨ましい。 「こっちにだって都合があるんだよ、ぼくじゃなくて工さん呼べば良いじゃない」 「工は飾りつけと留守番で忙しい、どうせお前は女の尻ばかり追いかけているのだろうがこんな時くらいは参加しろ」 「こんな時(クリスマスイブ)だから言ってるんだよ、今日だって3人とデートの約束あったのに」 椅子に座ると悪びれもせずに足をブラブラとさせながらぶーたれる相島。 言ってる内容は酷いが見た目が愛らしいから許せるんだろうなぁ。 相島が手を翳すとそれだけでまるで手品のように岡持ちが消える。 テレポートか何か良く分からないが普通の荷物もちを呼ぶよりも効率はよさそうだ。 「つべこべ言うな、さっさと戻るぞ」 「はーい」 「返事をのばすな」 「……はい」 うむ、と若干表情を緩めて蛇蝎さんが頷く。 「ではな」 「はい、まいどどうも寒いんで気をつけて」 逃げ出さないように監視するためか相島を先に立たせて細い背中が店を出て行く。 蛇蝎さんには失礼だけど反抗期の子供に苦労してる父親みたいだな、と思った。 いや、苦労人だし父親というよりは母親かだろう。 パタンという軽い音を立てて扉が閉まった。 「んで、お前さんは何してんだ?」 使って減った分の食材を準備しようと包丁を振るう俺の目の前。 先ほどまで蛇蝎さんが座っていた席に座ってこちらを見つめる外道巫女。 普段よりも覇気が無いというかなんというか。 「私の分のまだっすか?」 「ねーよ、お前注文してなかったじゃねぇか」 「……むぅ」 突っ伏して動かなくなる二礼。カウンターにおっぱいを載せてセルフ乳枕か。 って、やっぱり変だな。 普段だったら何かしら食いかかってくるもんなんだが。 「どうしたよ、なんか変だぞ」 「うっさいっす、寝不足で疲れてるんでさっさとチャーハン寄越せっす」 「寝不足でチャーハンは胃にキツイんじゃねぇか?」 まぁ、注文入れば作るのが料理人だけどさ。 まだ余熱の残る鍋に再び火をいれる。 薄く油を入れていざ作ろうとすると、テレビではない軽快な電子音が聞こえた。 「あー」 だるそうな声をあげて体を起こすとおもむろに胸元に手を突っ込む二礼。 しばらく豊満な谷間をごそごそとやって引き抜かれた手には学生証が。 あいかわらず学生証はそこが定位置なのかよ。 変わってくれ学生証。 「……先輩、チャーハンキャンセルっす」 画面を見た二礼がため息交じりで言う。 「だいたい分かった。見習いとはいえ風紀委員なんだから行って来い」 「寒いの嫌なんでここでのんびりしてたいんっすけどねぇ」 二礼が空のコップのふちを持ってクルクルと回しながら上目使いで見上げてくる。 学生証を取り出すときに緩めたままの胸元から魅惑の谷間が見えた。 なんという誘惑、6ゾロでも出さない限り回避は不可能だ。 ああ、もう面倒くさい。 「何時終わるんだ?」 「んー、10時には解散するんじゃないっすかねー?」 「10時か……貸切の団体終われば閉店だけど、暖簾だけ下ろして待っててやるから行って来い」 「おやー? クリスマスイブに一人は寂しいから私みたいな可愛い子と一緒に居たいってことっすか?」 だれてた顔が何時ものにやけ顔に変わる。 ふむ、少しだけ何時もの調子が出てきたか? 「神道にクリスマスイブなんて関係ねーよ」 「はいはい、そういう事にしとくっすよ」 二礼がコップをカウンターに置くと立ち上がり出入り口へと歩いていく。 ガラリと勢いよく扉を開け、すぐ閉めた。 「寒いんでやっぱり行くの止めに」 「とっとと行って来い!」 「……ちっ」 だから舌打ちすんなっつうのに。 態度の悪さを見せたまま二礼は外へと出て行った。 時計を見ると7時半を過ぎた頃か、うちでやってる大衆向け中華は食材の準備さえしておけば調理自体は時間がかからない。 8時の予約だし気が早い客ならそろそろ来る頃だろう、店長たちもぼちぼち帰ってくるだろうし頑張りますかねー。 しかし8時の予約で夕方全部貸切って変な話だよなぁ。 んで、現在11時も回って久しいんだが。 貸しきり客は9時半に帰っていって、後片付けも10時半には終わっちまった。 明日は定休日の水曜なんで下準備も無いんで店長以下店員&バイト仲間も引き上げて店に居るのは俺だけ。 とりあえず掃除してるんだが、あらかたそれも終わってしまった。 「……俺帰ってもいいかなぁ」 テレビなんて普段余り見ないから何が面白いのか良く分からないし、コンロの火を落とすと暖房入れてあっても寒いことこの上ない。 もう終わったのか確認を取ろうにも相変わらずあいつの学生証番号知らないからどうしようもない。 後30分ちょっとで日付変わるからそこまで待ったら帰るかな。 「ん?」 裏口のほうから何か聞こえたような気がした。 俺が居るホールの方からは電灯を切ったキッチンを抜けた奥にある裏口の方からだ。 気のせいかもしれないが、たまに二礼は裏口からやってくるからなぁ。 従業員専用だってのに、店長が常連だからってあいつに甘いんだよまったく。 とりあえずキッチンの電灯を点して裏口へ。 「来たのかー?」 鍵を外して裏口から路地裏を覗く……外に誰もいませんよ。やっぱり勘違いか。 というか、寒い、凄く寒い。 12月末のコンクリートジャングルの気温低下半端無い。 急いで扉を閉めて鍵も掛ける。 さすがに半そでに腕まくりしてるコックスーツで外になんて出るもんじゃないな。 「おおおおおおお」 捲くっていた袖を伸ばして両手で逆の手をそれぞれ摩る。 ちょっと出ただけでこれなんだ、警邏に行く二礼が渋ったのも理解できる。 「お?」 また音が聞こえた。 さっきのは空耳だったが、今度は間違いない。 目の前の裏口の向こう側で何か重たいものが動いたような変な音が聞こえた。 「はて、さっきは何も無かった筈なんだが……暗くて見落としたんだろうか?」 もう一度確認しようとドアノブを掴もうとした寸前、 「はー、暖かいっす」 背後でガラガラという音を立てて立て付けの悪い扉が開き、ようやく待ち人が来た。 裏口の向こう側の音は風でダンボールか何かが飛ばされてビールケースにでも当たったんだろう。 「お疲れさん、今ちょっとだけ外に顔出したんだが寒いな」 「寒いっすよ、早くチャーハン作って欲しいっす。もうお腹ペコペコっすよ」 寒さ対策に巻いていたマフラーを取りながら二礼がカウンター席に座る。 余りに寒かったのか鼻水が出てるんだがさすがに女子高生に面と向かって 『あんた鼻水出てますよ』 とはいくら外道巫女が相手であってもさすがに言えん。 「ほれ、これでも使え」 「お? おおお、暖かいっす」 念のため蒸し状態で放置していた蒸篭からまだ大分暖かいオシボリを渡してやる。 蒸篭は湯気がこもるから保温に優れている、取り出すのに触った指がちょっと痛いくらいだ。 これならかじかんだ指先も暖まるだろう。 「今から鍋に火入れるからちょっとだけ待ってな」 材料はもう切ってあるので鍋が熱されればすぐにでも作れる。準備は万端だ。 ついでにポットから暖かいお茶を注いで置いてやる。 これで出来上がるまでにある程度寒さで硬くなっている体もやわらぐ。 中華は脂っこいから体調悪いと胃にくるんだよなぁ。 薬膳もあるんだが、俺はそっちにはとんと疎いし。 「はー、暖まったっす」 「そいつはよござんした……ってお前何してんの?」 オシボリで顔を拭いて(おっさんくせぇ)指先を暖め、お茶で中から暖まった二礼が立ち上がってテーブルを動かしていく。 どんどん1人で器用に4人掛けのテーブルを壁端へと動かした後は椅子もひっくり返してテーブルに載せる。 ものの数分で店の真ん中にちょっとした空間が出来た。 綺麗に掃除してて良かった、汚いままテーブル動かしたら床がえらいことになってたと思う。 「んーと、あったあった」 二礼がポケットをごそごそとやった後に小さい石のようなものを取り出した。 今度はその石を部屋の四隅にそれぞれ何か呟いて置いていく。 この時点でだいたい何しようとしてるのかは分かったが。 「もうチャーハン出来るぞ、てか何で今『神下ろし』しようとしてんだよ」 「うっさいっす、いいから早く作れ」 「命令かよチクショウ」 油を跳ねさせながら鍋を振る、その度に独特の匂いを撒き散らして材料が宙を舞う。 火力で引っ付かぬようバラバラに、だけど焦げ付かないように水分も抜け切らぬよう。 一年半の経験を生かして腕を振るう。 この間だけは他に気を向けることは出来ない、ただ最高の出来具合を目指してひたすらに腕を振る。 「よっし、出来た」 何時もよりもチャーシュー大目に入れたチャーハンの出来上がり。 多分今までで最高の出来だ。 「出来たぞーって、おいこら」 二礼を見ると、かなりマジに神楽を舞っていた。 まぁ、準備してる時点でやる気まんまんだとは思っていたがまさか本当に『神下ろし』するとは。 『神下ろし』は二礼の能力、決められた範囲を舞台として神への奉納である神楽を舞うことで実家の神様をその地に下ろす。 つまりは俺のクラスメートの召屋みたいに召喚するっていうやつなんだが…… 問題は『神下ろし』が終わるのにそう短くない時間が掛かるということ。 「冷めるだろうが、何で舞ってんだよお前は」 「~~~♪」 俺を完全に無視して祝詞を上げながら舞う二礼。チャーハン作るのに集中していて聞こえなかったが何処から取り出したのやら棒の先には鈴がついて音を奏でている。 ……ん? よくみれば目だけでこっちに何か言ってるような。 目線を辿るとキッチン奥にある従業員専用のロッカールームに向いていた。 「ああ、そういうことか。だいたい分かった。」 二礼がやって欲しいことが半分ほど理解できたので、とりあえずキッチンペーパーをチャーハンの上に被せてからロッカールームへ向かうことにする。 『拍手』とネームプレートに記されているロッカーを開けると、中には教科書やら変な小物やらがギッシリ詰まっている。 寮、学園、バイト先の三点が主な移動先な俺は学園が終わってから直接ここに来ることも多い。 逆に学園に行く前にその日の仕込みを手伝ってから向かうこともある。 なので、寮と学園の間にあるバイト先を物置代わりに使ってたりするのだ。 学園で選択科目で神道を取っている俺がロッカーに放り込んであるもの、今回必要なそれを取り出す。 細く長くて穴の開いてあるもの……まぁ、笛なんだが。 龍笛と呼ばれるものでフルートの祖先だとかなんだとか。 とりあえず舞台に入る前に二礼二拍手一礼を、これを欠かすと物凄い重力みたいなものが両肩に圧し掛かるのだ。 踊っている神楽の邪魔をせぬように床に腰を下ろして、それに口をつけ神楽の祝詞に合わせて笛を吹く。 油くさい中華料理店の店内が一気に厳かに、静かに重く神聖な神殿へとなっていく。 もう数人の楽者がいて本当の神楽になるんだが、そこはご愛嬌。 この外道巫女にしてあの神様あり、とでも言おうか。 大概適当なので気分さえ乗れば割と簡単に顔を出すらしいんだが。 「お、出てきたっすね」 「お前、神様相手にその言い草は無いだろう」 『なんじゃお前ら、こんな時間に』 二礼の背後に……ぬいぐるみ? ああ、いやいや違った。 2頭身の物凄いデフォルメされた幼女というか、うん、まぁそんな光ってるのが浮いている。 召喚時間を短くしてとにかく早く呼び出した結果がこれだよ。しかし早ければ2,3分で出てくるのか。 以前に3頭身とか6頭身のを見たことはあるんだが、2頭身まで行くとデフォルメがきつ過ぎてまるでぬいぐるみだな。 大きさも4,50cmって所か――って、 「おぶっ!?」 『誰がぬいぐるみじゃ、この馬鹿が』 唐突に両肩に重さを感じて前のめりに顔から地面へと突っ込んだ。 舞台の中では神様に対して不敬を働けば罰として食らうものなんだが。 そういえば、この神様舞台内にいる者の不敬な思考を感じ取れるのか考えただけでえらい目にあったりする。すっかり忘れてた。 「神様、そんなの放って置いてこっちっすよー」 『ふむ?』 踊るのを止めてカウンターへ向かう二礼の後をゆっくりした速度でふよふよと浮きながら神様が追って行く。 てか、そんなのって何だ。俺か、俺のことなのか。 ゆっくりと体を動かす……あれ、思ったよりも簡単に動くな。 2頭身ではほとんど力も出ないのかさっき倒れたのは唐突に食らったせいでバランス崩したからか。 重いことは重いんだがそんなに苦になるほどの力は感じられなかった。 「チャーハンっすよー、はい神様の分っす奉納奉納」 『……』 なんか神様固まってないか? カウンター席に腰掛けた二礼が取り皿に蓮華でチャーハンを取り分けて神様の前に供えていた。 いきなり呼び出されて食えっていうのを神様にやってのける外道巫女。 そこに痺れも憧れもしないが、当の神様が唖然としてるのを気にしてやれよと思う。 『これが何度も聞いた「ちゃあはん」とやらか』 「やー、もうお腹ペコペコっす。ほら神様食べてくださいっす、神様が口つけてくれないと私が食べれないっすからね」 「今のは不敬に当たらないのかよ」 一応なりとも神様が先に食べないと食べれないっていう作法(?)を守っているのは分かった。 だが、どう聞いても自分が食いたいから早く食えって言ってるようにしか聞こえない。 相変わらず理不尽な神さんだ――って、 「う、ぬ、ぐぐぐ」 肩の重さがじわりと増す。 じわりで済むあたりが2頭身の限界だろう。 もっと頭身高ければ間違いなく地面とキスするはめになっていただろうが。 しかし二人ともこっちを見ようともしねぇ、そのチャーハン作ったの俺だっつうの。泣くぞチクショウ。 さすがに2頭身では持ちにくいのか神様が蓮華で四苦八苦しながらチャーハンを掬って口に運ぶ。 それから数秒じっくりと租借、飲み込んで一言。 『油っこい』 「ダメー! 中華料理にそれ言っちゃダメー!!」 いくら神様でも言って良い事とダメなことがあるでしょう? 和食があっさりしすぎなんだよ、勤労学生にとっちゃ油っこくて腹にドスンと来る方が良いんだよ! 「おいこら、笑い転げてないでお前も何か言え! お前のとこの神様だろうが!」 二礼は神様の感想を聞いてツボに嵌ったのか、カウンターをバンバン叩きながら涙目になって震えていた。 まさかこの感想を予想してたのかこいつは。 「いやいや、貴重な感想じゃないっすか?」 「中華料理食って『油っこい』は貴重でも何でもねーよ!」 「まぁとりあえず神様が一口食べたんで私も食べるっす……ってあれ?」 「ん?」 二礼が見る先を見ると神様が。 蓮華をひたすら口と皿とを往復させて――食ってる? あっという間に取り分けた分を食い尽くす神様。 次に狙うのは当然二礼の目の前に置かれた皿にこんもりと盛られたチャーハン。 『おかわりじゃ、もっと寄越せ!』 「いくら神様でもダメっすよ! これは私の分っす!」 チャーハンの皿を抱え込んで渡すまいとする二礼だが、胸のせいで皿が奥まで隠せず外に出ている所に神様が突っ込んでいく。 防ぐのは無理と判断したのだろうか、神様に負けじと二礼も蓮華を動かして口へとチャーハンを運ぶ。 さっき神様が言った『油っこい』は不味いって意味ではなかったようだ。 結局普段より多め、量的にはハネ満くらいの盛で出したチャーハンはものの数分で二礼と神様のお腹へと姿を消していた。 神様は食い終わってしばらくカウンターに転がっていたが、満足したのかもう消えてここにはいない。 というか無理して詰め込んだのか転がってるときとか2頭身の体がまん丸に膨れ上がっていたんだが大丈夫だったんだろうか、あれ。 「あー、ちょっと食べたり無いっすよー」 「何言ってんだ、十分食っただろ」 普段並み盛ちょっと多めとかいう謎メニュー頼んでるのが今日は三倍盛のハネ満なんだから二倍以上の量だったんだ。 半分を神様が食ったとしても足りてるはずだろう。 「いやいや、後ちょっと甘いものでもあればーと思うんっすけどねー」 ようするにデザートの要求か、よく食うやつだな。 いや、美作には負けるからこれが普通なのか? よく分からんが。 「……回りくどい言い回ししやがって、ほれ」 杏仁豆腐の作りおきを冷蔵庫から一人前取り分けて出してやる。 油っこい中華の〆に甘いけどさっぱりとした杏仁豆腐は口直しに丁度良いようだ。 本当は夏季限定だったはずが根強い人気と要望により復活したので完全レギュラー、地味に注文率№1の不動の地位を気づいてしまった。 中華料理店なのにデザートが一位ってなんだそりゃ。 「ふっふっふ、こればっかりは神様にも譲れないっすからねー」 「お前、まだ舞台解除してないのにそんな事言って後でどうなっても知らんぞ」 「大丈夫っすよ、気にしない気にしない」 「巫女がそれで良いのか……」 俺は下手なこと考えるだけで肩に重し食らうってのに、こっちは関係ないと言わんばかりに二礼凄い良い顔で杏仁豆腐をかっ込んでいく。 まぁ、良い顔で食ってくれるんなら俺は良いんだけど。 「って、おいお前これはさすがにマズイだろ!」 巫女VS神、チャーハン争奪戦の際に放り出したのが変なところにぶつかったのだろうか。 神楽を踊る際に手にもつ鈴がついていた棒から結いつけられていた紐が解けたのか鈴が地面に落ちて転がっていた。 一応神具だというのに外道巫女の名が悪い意味で証明されてるじゃねぇか。 「ん? あちゃー」 「あちゃー、で済ませるもんじゃねーだろうが!」 「まぁ起こっちゃったことはしかたないっすよ、神様だって気にしてないっすよ多分」 「本当にそれでいいのか神様よ……というか巫女がこんなんで良いんだろうか」 「うっさいっすねー、はい」 「ん?」 杏仁豆腐を食いきったのか容器をカウンターに置いてから二礼が鈴を拾い上げてこちらに渡してきた。 思わず受け取った、のだが。 「はいって……どうするんだよこれ」 「あげるっす」 「いや、あげるってお前な」 まがりなりにも神具をそんな粗末に扱って良いのだろうか? ……しょうがない、ポケットに常に放り込んであるものを取り出すと二礼に渡す。 「んじゃ、お返しにこれやるよ」 「うわ汚い、何すかこれ?」 「汚い言うな、俺がちっこい頃から持ってるお守りだよ」 本当は渡していいようなもんでもないんだが。 神具と同等の価値ありそうなのってそれくらいしかないからなぁ。 大分ぼろっちいけど。 「……先輩、これ『安産祈願』って書いてあるんすけど?」 「うっせ、お守りはお守りだ受け取っとけ」 「ふーん、まぁ、もらっといてあげるっすよ」 二礼がお守りを胸に間に突っ込む。 マテ、そこに入れるのかよ。俺と変われお守りー! 「お」 「おや」 お守りに嫉妬している間に日付が変わったようだ。 壁の時計から12時を告げる音が鳴り響いた。 さすがに冬休みとはいえ二礼には風紀の活動があるだろうし、俺も明日はまたバイトだ。 こんな時間にまでここでグダグダせずに早く帰って明日に備えるべきだろう。 「あー、そんじゃ私帰るっす」 「おう気をつけてな」 「……先輩こそ気をつけてくださいね」 「あん? 男の俺が何に気をつけるっつうんだよ?」 「んー、先輩割とひょろいんすからその手の趣味の人に襲われないか心配で心配で」 「怖いこというんじゃねぇよ!」 夕方に失いかけた尻の純潔が怖くなるわ! それだけ言うと二礼は笑いながらさっさと店を後にした。 「はぁ、とりあえずテーブルとかの片付けは明日に回して俺も帰るか」 コックスーツから普段着代わりにしている制服へ着替えて、ガスや戸締りを確認してから外に出ると身を裂くような寒さが襲い掛かってくる。 たまらん、正直コートかジャケットあたりを羽織ってくるべきだった。 思わず突っ込んだポケットの中で、指先に何か硬いものがあたる。 「ん? ああ、これか」 先ほど二礼と交換した神具の鈴。 「あれ、これよくよく考えたらプレゼント交換になるのか?」 などと思いついたが、そういう類のものではなかった思い直す。 さっさと戻って風呂に入って寝ないと次の日ってもう今日か、ツライからなぁ。 部屋に帰ることを優先して寮への道を走り抜けていく。 ……結局家について、布団に潜り込んだのは午前1時を過ぎてからのことになった。 翌朝、寝るのが1時であっても5時くらいには目が覚める体内時計のおかげで寝坊することもなく目が覚めた。 それから何時も通り日課のトレーニングをこなして部屋へと戻る。 朝飯を作って、食べてバイトまでの時間をどうしようかと悩んでいると呼び鈴が鳴った。 俺の部屋の呼び鈴がなるのは非常に稀だ。 なんとなく嫌な予感をしながら部屋のドアを開けると制服姿の学生が二人立っていた。 年齢も身長も性別もバラバラな二人の共通点はその袖に通された腕章。 「おはよう、2-Cの拍手敬で間違いないか?」 「あー、風紀委員さんが俺に何かご用で?」 片方の学生からの質問に答えている間にもう片方が部屋へと入ってくる。 「おい、こら勝手に入るんじゃねぇよ」 「君に聞きたいことがあってね」 「何よ、とりあえず先に相方に部屋に勝手に入らないように言ってくれないか?」 了承も得ずに部屋に入られて良い顔をするとでも思ってるんだろうか、こいつらは。 「神楽二礼が失踪した、君に容疑がかかっている」 「……は?」 to be next 「ある中華料理店店員の選択」 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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「ふたば系ゆっくりいじめ 716 中華料理店 麻辣/コメントログ」 ドゲスざまぁw -- 2010-07-02 02 15 32 優しいなこの鬼意山 -- 2010-07-31 09 42 38 テンポが良く、説明もくどくないからとても読みやすかった 加えて鬼意山の無茶振りがうけたw お前は超人かとw そして何故か激辛麻婆豆腐食べたい、真っ赤な辣油コレでもかとぶっかけて一味をまぶしてな -- 2010-08-01 01 05 17 普通、天引きってするかな。こういう場合。 -- 2010-08-20 11 56 34 しょうだよ、わりゅいのはあのにんげんしゃんだよ 自分達が強盗に入ったって事、全然反省してねぇな。 こんなゲス助けるなんて、お兄さん優しすぎるぜ -- 2010-11-07 17 32 54 お兄さん、なぜゆっくり保険に入らないんだ! -- 2011-02-14 23 38 34 群れの未来に光はないことだけはわかった -- 2011-02-21 18 37 24 なぜ中華料理店のお兄さんはめーりんを飼っていなかったのか… -- 2011-02-21 20 06 37 良いSSかと思ったら鬼意山は支那人かよ死ね -- 2011-05-21 23 56 22 やさしいなおにーさん -- 2011-05-31 01 16 18 そういえば中華料理人って高温の油が手にかかっても平気だと聞いた事があるな 真偽のほどは知らんけどw -- 2011-06-29 07 33 36 コック鬼意は和むね しかし揚げゆはさすがだな 近年稀に見る良作 -- 2011-07-24 21 03 04 揚げてる途中、油をドスにまわしかけてほしかったなあ。 じっと見てるだけってのは不自然に感じた。 -- 2011-10-03 17 32 28 んほぉぉぉぉぉぉおぉぉっ!! すっきり~~~~~!! -- 2011-10-15 09 26 13 ジャンとキリコで再生される… 丸くなったジャンだけどww -- 2012-04-05 02 44 25 9 支那人はお兄さんじゃなくて材料揃えに行った店の方だろうが。ちゃんと読め低能 -- 2012-09-20 18 38 40 作者の国語能力が低すぎる 無駄に説明的なところとか中学生の自作ラノベレベル -- 2013-02-01 03 40 57 どぼじでどすがいるのぉぉぉぉ -- 2013-04-03 12 02 47 ↓↓じゃあ、無駄に説明的な文章しか書けないラノベ作家にも同じこと言えや -- 2013-11-29 00 49 24
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難しいのは本格的台湾料理です。ほとんどの料理は飲茶系ですが、焼きビーフンとか酢豚なんかもあるので一応Chinese Restaurantにしています。 - arfred(su1) 2011-08-10 17 53 21 やっと台湾料理のカテゴリができましたが、はっきり言って必要だとはおもえません。 - 管理人 2013-12-18 22 24 03