約 931,251 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6846.html
ルイズが子山羊を召喚しました。 「使い魔になんてしないで下さい。 僕の次に召喚される兄さんの方が大きくて強いですよ」 子山羊はそう言って去って行きました。 人語を話したのはとりあえずスルー。 ふたたびの召喚。 今度現れたのは、角も立派な大きなたくましい山羊でした。 しかし。 「僕を使い魔にするより、次に召喚される兄貴の方が大きくて強いからそっちにしなよ」 山羊はそう言ってまた去っていきました。 なんでしゃべれるんだお前。 そして三度目の召喚。 爆発。 土煙の中からぬうと現れたのは。 それは山羊と言うにはあまりにも大きすぎた。 大きく険しく重く、そして大雑把すぎた。 それはまさに以下略。 「使い魔にしてやるわ!」 ルイズが怒鳴りました。 『やってみろオラァ!こっちにゃ二本の槍がある!これで目玉は田楽刺し! おまけに大きな石も二つある! にくも! ほねも! こなごなにふみくだくぞ! 谷底にブチまけてやる!』 こうして、すさまじいたたかいがはじまりました……。 一方ティファニアはすてきな三人組を召喚して孤児の王国を作り上げ幸せに一生を送った。 おわり。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5276.html
ドラゴンクエストより りゅうおうを召喚 ルイズが世界を征服するようです-01 ルイズが世界を征服するようです-02 ルイズが世界を征服するようです-03
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7661.html
それは使い魔召喚の儀式の際に起こった出来事である。 この事件に関してわがU,Kは一切の責任を負わない。 事故報告.1 召喚時の暴走事故 ルイズ嬢(仮名)は車輪状の使い魔を召喚したそうだ。 しかし不用意に火気を近づけた?(爆発したか?)によりロケットに点火。 暴走し、教師一名、モグラ一匹を跳ねとばし停止。幸い速度が出ていなかったので、一人と一匹は軽傷で済んだ。 同校では以前にも我が国製粘着爆弾暴発事故が起こっている。 ルイズはイギリス軍が開発した珍兵器?グレート・パンジャンドラムを召喚したようです。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3712.html
始祖ブリミル降臨暦6242年、春。トリステイン魔法学院の使い魔召喚の儀式にて。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、今日も今日とて呪文を唱える。 それが、この世の終わりを告げる言葉となるとも知らず。 「宇宙の果てのどこかにいる、私のしもべよ!」 「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 「私は心より求め、訴えるわ! わが導きに応えなさい!!」 その瞬間、爆発は起きなかった。……が、すうっと空が暗くなった。皆は思わず空を見上げる。 「……え? 何? 何なの?」 「夕立じゃないよな」「日蝕?」「でも、そんな予報はまだ……」「いや、あれは……」 その日それは、ハルケギニア大陸のあらゆる場所から、あらゆる人々の目で確認された。 空を何か、月ではない、大きなものが飛んでいる。……馬鹿馬鹿しいほど巨大な、隕石だった。 直径はおよそ、400リーグ。アルビオン大陸の横幅の、倍以上はある。 ハルケギニア大陸に大きな日陰ができ、またすうっと明るくなる。 眩しいほどの、よく晴れた空だった。 「…………え? まさか、その、偶然? 冗談よね?」 宇宙の果てのどこかから、それはやって来た。 落下場所は、トリステインの北1,500リーグの、大洋上となろう。 隕石の速度は、時速72,000リーグ。 しかし、隕石があまりに巨大なため、不気味なほどゆっくりに見えた。 ああ、誰がそれを、想像し得たであろう。 世界の滅亡は、ある穏やかな春の昼間、突如としてやって来たのだ。 「え、あの、嘘、ちょっと、何なのよアレはルイズ」 「コルベール先生、あの、私ちょっと、もう一度召喚を」 「アレですか、ここはその、叫ぶ場面なのですかな?」 ついにそれは、この世界に落ちた。その時、全ては震えた。 「………じ、地震よ、これはただの地震よ!! みんな落ち着いて!!」 「「「ああああああああああああ、世界の終わりだあああああああ!!!!」」」 衝突による途轍もない衝撃波で、厚さ10リーグの地殻が、丸ごと捲り上げられていく。『地殻津波』だ。 『地殻津波』に張り付いた、水深4,000メイルの海も、まるで薄皮のように見える。 一辺が1リーグもある巨大な破片が巻き上がる。 内戦中のアルビオン大陸も、ハルケギニア大陸も、あっさりと粉砕されてしまう。 砕かれた破片は、高さ数千リーグ。大気圏を突き抜けて、星空まで達した後に、再び隕石となって地表に降りそそぐ。 煮えたぎるクレーターの縁は、高さ7,000メイル。巨大な山脈のようだ。 クレーターの直径は、4,000リーグ。アルビオンのあった場所から、サハラの一部までを飲み込む。 ……しかし、これは、この災難のほんの入り口にしか過ぎなかった。 隕石の衝突直後。クレーターの輪の中心に、異変の主役が現れる。 灼熱色に輝く巨大な塊。気体になった岩石、『岩石蒸気』だ。その量は、ざっと1,000億メガトン。 ドーム状に膨れ上がった後、押し出されるようにして、一気にあらゆる方角へと広がってゆく。 トリステインの北の海上に落下してから、3時間あまりで、『岩石蒸気』は聖地に達した。 温度4,000度の熱風が、風速300メイルで駆け抜ける。 『岩石蒸気』に覆い尽くされた中、オアシスは瞬時に吹き飛ばされ、蒸発する。 恐るべき『岩石蒸気』は、遥かな『東方』にも到達する。高熱のために、木が次々と自然発火していく。 ジャングルは瞬く間に、火の海と化す。 衝突から一日で、ついに世界は、灼熱の『岩石蒸気』に覆い尽くされた。 『岩石蒸気』は、地表全体を一年近くにわたって覆い続ける。間近に、無数の太陽が出現したのと同じだ。 生命のふるさと、海も、変動に巻き込まれてゆく。 『岩石蒸気』に覆われて間もなく、海面が激しく泡立つ。海が、沸騰を始めたのだ。 激しい蒸発によって、海は、1分間に5サントという猛烈なスピードで下がっていく。 海水が干上がると、真っ白な海底が現れた。塩だ。その塩もたちまち蒸発していく。 むき出しになった海底は、容赦なく熱に晒され、熔岩のように熔け出す。 衝突から、およそ一ヵ月後。海に水はない。平均水深4,000メイルの大洋も、干上がっている。 人類の、またエルフの文明どころか、あらゆる地表に存在した生物は、痕跡も残らず消え去った。 宮殿も、都市も、全て燃え尽き、熔けて流れ落ちた。 直径400リーグの巨大隕石の衝突。 それは、あらゆる生物を根絶やしにしてしまうような、恐ろしい出来事なのだ……。 「……トバ・イチロおおおおおごおおおッッ!!?」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、自分の部屋のベッドから跳ね起きた。 夢だ。夢、だ。……ただの、夢、だ。おお、世界は今朝も美しい。 今の絶叫は、ただの意味のない寝言だ。ちょっと寝る前に変な本を読んでいたせいだろう。 「そ、そーよ! なんで私の召喚で、爆発が起きるならまだしも世界が滅亡すんのよ!! そんなの起きるはずないじゃない! 世界は永久に不滅よ!!」 ルイズは意識してあははははは、と笑い、不吉な夢を忘れようと努める。 そうだ、今日は神聖な『使い魔召喚の儀式』の日。精神力を無駄にしてはいけない。 今日こそ『ゼロ』の汚名を晴らすような、素晴らしい使い魔を召喚してやろう。 やっぱりドラゴンかな、グリフォンも捨てがたいし、マンティコアなら母様も乗っておられた幻獣だ。 おかしな奴が出てきたら、即刻ご退場願おう。大体こないだから、変なのを召喚する夢ばっかり見ている。 「さ、立派な使い魔を召喚しなきゃ! そのためにはまず、朝食をしっかりとって……」 さて、いよいよ本番。ルイズは精神を集中させ、自己流にアレンジした『サモン・サーヴァント』の呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいる、私のしもべよ……」 その頃、地球という惑星のアメリカという国の野球場で、素晴らしい野球選手によって打球がキャッチされた。 彼は強肩だ。その送球はまるで光線のように、まっしぐらに三塁へ向かっていく。 ……あ、その直線上に、銀色の鏡が!! (完)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5277.html
前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 唐突だが、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、同級生であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのことが嫌いだ。 それはツェルプストーとヴァリエールの確執などという問題ではなく、純粋に、キュルケ個人として、ルイズ個人のことが、だ。 嫌っていた、という表現では、少々生温いかもしれない。 憎悪していた、というのはややニュアンスが違う。 忌み嫌っていた、というべきか。 キュルケは、常々こう思っていた。 一言で彼女のことを言い表すならば。 まさしく、『邪悪』だと。 この言葉を聞いたキュルケの親友、タバサは、無言で頷いたという。 幼きある日、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、自宅の池に浮かべた小舟の上で考えていた。 先ほどのメイドの言葉を思い出す。 小腹が空いた、何かつまもうとキッチンに入り、たまたま聞いてしまった陰口。 『貴族の癖に、魔法が使えないなんて――』 もっともな言葉だと、ルイズは歪んだ笑みを浮かべた。 貴族とは即ちメイジであり、魔法が使える。 当たり前の認識だ。 その常識に照らし合わせれば、なるほど、確かに自分は落ちこぼれのクズだろう。 しかも、ここは名家も名家、誰もが畏れるヴァリエール伯爵家なのだ。 姉や父が怒るのもわかろうというもの。 だが、彼女はそれをまったく、これっぽっちも気にしていなかった。 ある予感がするのだ。 いや、確信と言ってもいい。 ――自分はおそらく、貴族だとか平民だとか、そういう下らない次元ではなく、もっと遥かに大きな概念で括られる存在になるのだ、と。 ルイズは、そんなひどく傲慢な確信を抱いていた。 ……しかし、ゴチャゴチャとうるさくさえずる輩を、このまま放置しておくのも癪だ。 ここらでひとつ、黙らせておく必要があるだろう。 それには、魔法を成功させるのが一番だ。 今やってもどうせ失敗するだろうが、しかし、試さずして魔法が成功することなどありはしまい。 魔法が使えない、と言っても研鑽を怠っているわけではない。 専属の教師を雇い、多くの書物を読み漁って、彼女は既に一人前の魔法使いたるに十分な程の知識を蓄えていた。 どの魔法を試してみようか。 魔法に成功した、ということが一目でわかるようなものが良いだろう。 仮に『ライトニング・クラウド』に今成功したとしても、誰にも見られず空しく散るのがオチだ。 となれば、錬金。いや、使い魔召喚が妥当か。 本来ならば魔法学院の進級試験になる筈のものだが、構うまい。 先に召喚していたとしても、さして問題があるわけでも無いだろう。 そうして彼女は、詠唱を始めた。 成功する、とは思っていない。失敗して元々。成功したら――むしろ驚く。 「5つの力を司るペンタゴン――」 驚いた。 「なんだ……ここは……?」 舞い上がる水飛沫の向こう、現れたものを見て、ルイズは更に目を見張った。 おまけに喋った。ということは、あれは――人間なのか? 身を包んでいるのは紫のローブ。手にしているのは先端に竜の頭部を象った杖。 しかし、その姿は人間とはかけ離れている。亜人、だろうか。 そして、何よりも異常なのが、こうして面を向かい合わせているだけで伝わってくる凄まじく強大な魔力と、その邪悪さである。 一瞬にして理解した。理解する間もなく思い知らされた。 これは、巨悪なのだと。 「……小娘。これを引き起こしたのは貴様か? 何なのだ、これは」 こちらを睨めつけてくる。 ひるんではならない。こいつは、私の、使い魔なのだ。 「小娘じゃない。私は、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 お前の、主よ」 「……主、だと?」 圧迫感が更に強くなる。 怯える心に鞭を入れ、ルイズは笑った。引くな。笑え。傲岸不遜であれ。 それが、主だ。 「そうよ。アンタは私の使い魔召喚に応じた。 使い魔ならば、主である私に従うのが道理でしょう」 次々と重ねられる問いに、ルイズは答えていった。 召喚の儀式。使い魔。主。ハルケギニア。トリステイン。ヴァリエール。魔法。貴族。 やがて、その応答も尽きた頃。そいつは、突如として笑い始めた。 「ク……ハハハハハハハハハハ! 窮地に突然現れたものに、飛び込んでみれば……別の世界とはな! これぞ、精霊のお導きだろうよ! 感謝するぞ!」 「…………」 ルイズにはわかっていた。 精霊だと? そんなもの、こいつが信じているわけがない。 こいつは、自らこそ神と称するような者。 精霊など、鼻で笑い飛ばして無視するような輩だ。 ――だが。 それでこそ、私の使い魔に相応しい。 「よかろう。小娘よ、貴様と契約してやる。 この世界は、少々我とは馴染まぬようでな。力が出てこん。 貴様と繋がれば、我は十二分に元の力を発揮できるだろうよ」 これで、まだ不調だというのか。 だとすれば、一体、こいつはどれだけの力を持っているというのだろう。 「結構。でも、小娘ではないわ。あんたは使い魔。私に従属する者よ。わかる? 私のことは、主と呼びなさい」 「クククク! 承知した、我が主」 膝を着き、頭を下げる使い魔を見下ろしながらルイズは考える。 こいつは、決して素直に従うような奴ではないだろう。 『使う』のには、ひどく苦労する筈だ。 だが、そのデメリットを補って余りある力。 そう、この力だ。これさえあれば、――国を手に入れることすら、不可能ではあるまい。 「主よ。我にはわかる。貴様も、おそらく我と近しい者。 躊躇無く世界を踏みにじる種類の人間だ。 我は待っていた。貴様のような者が現れるのをな」 「随分と言ってくれるわね。私はそんな、あんたみたいな悪じゃないわよ。 で、何が言いたいの?」 そいつは立ち上がると、ルイズの目を見て笑った。 どこまでも邪悪でありながら、赤子のように無垢な笑い。 「もし我の味方になれば――世界の半分をお前にやろう」 こうして。 後に歴史書に『魔王』と記される、主と使い魔は出会った。 2人は、幼い子供でも笑い飛ばすような目的を叶えるための行動を、ここに開始する。 即ち。 世界征服である。 「乗ったわ」 使い魔――りゅうおうの額に、ルーンが刻まれた。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 進級試験でもある召喚の儀式は、滞り無く終わった。 そして大半の予想を裏切り、あのルイズは召喚に成功した。 『ゼロ』の異名を持ち、今まで一度も魔法を成功させたことの無い、あのルイズが成功したのだ。 それに驚かなかったのは、学院生徒では僅か2名。 キュルケ。そして、タバサである。 儀式を終え、夕暮れ時。学院の廊下を並んで歩きながら、キュルケが漏らす。 「――茶番ね」 「おそらくそう」 普段は寡黙なタバサが、珍しく言葉を続けた。 「彼女が召喚したあの小さな黒竜。 あれはおそらく、既に前から使い魔だった。でもなくとも、彼女と何らかの繋がりがあったと思われる」 「そう思う理由は?」 熱にうかされたように、タバサは喋り続ける。 「ヴァリエールは魔力を使っていなかった。詠唱の真似事をしていただけ。 あそこであの竜が現れたのは、おそらくは竜自身の能力に拠るもの。 転移時の爆発で砂埃を起こし、それを皆の目から隠した」 「……私も同意見よ。問題は、どうしてそうしたのかってことね」 キュルケが眉根を寄せ、タバサが応じた。 「たった今召喚したように見せかけたのは、あの竜を今まで隠匿していたため。 あれは、普通の竜ではない」 「……まさか、韻竜、ってこと?」 韻竜。 極めて高い知性を持ち、先住魔法すら操るとされる、伝説の存在である。 「違う。……おそらくは、それをも越える存在」 「どうして、わかるわけ?」 タバサが立ち止まる。 ちょうど、彼女の自室の前だった。 「それを今から見せる。が、他言はしないで欲しい」 「了解よ。ツェルプストーの名にかけるわ」 キュルケは即答した。 この時間の短さこそが、揺るがぬ信頼の証であり、 つまるところ彼女達の関係を如実に示すものだった。 タバサがドアを開く。 窓から夕焼けの陽光が差し込み、赤く染まった部屋。 その隅で、巨大な何かが蹲っていた。 「……さっきあんたが召喚した風竜じゃない。どうしたの? こんなとこに蹲って」 タバサは問いに答えることなく使い魔に近づいていく。 竜の背にそっと手をやった途端、竜が痙攣するように跳ねた。 身を縮め、更に部屋の隅へと体を押し込めていく。 「ヴァリエールがあれを召喚してから――したように見せかけてから、ずっと怯えている」 ぶつぶつと、何かを呟く声が聞こえる。 はじめ、キュルケは誰が喋っているのかと部屋を見回し――やがて、その顔に理解の色が浮かんだ。 「まさか……」 「そう。私が召喚したのは、韻竜だった」 キュルケが目をひん剥いた。 「す、凄いじゃないアンタ! 韻竜を使い魔にするなんて、聞いたこt」 「今はそれを問題にしている時ではない」 興奮するキュルケの言葉を遮り、タバサは続けた。 「この竜はずっとこう繰り返している。 『あのお方が来た。あのお方が。あのお方がいらっしゃった』。 ……極度に怯えてしまっていて、会話は難しい状況。 何とか聞き出せたのは、あの黒竜が、竜を統べる『王』のような存在であることだけ」 キュルケの顔が歪む。 「伝説の韻竜をそこまで怯えさせる、『王』……。 一体、なんなのよそれ」 タバサは頷いた。 その顔は、夕日に照らされていてもはっきりとわかるほどに青白かった。 「ヴァリエールが今まで魔法が使えない『フリをしていた』のは、皆を油断させるためではないかと私は思う。 今ここでその偽装を止めて、黒竜を皆の目に晒した。 おそらく彼女は、本格的に『目的』に向かって動き出す筈。 あの黒竜が、どれだけの力を持っているのか。……私は、恐ろしい」 ――そして、沈黙。 部屋には、怯える風竜の呟きだけが響いていた。 「どうしたの? リュウオウ」 儀式から数日後、食事の場。 肩に乗せた小竜が妙な素振りをしていることに気付き、ルイズは小声で話しかけた。 「まさか、あの騒ぎが気になるわけ? 放っておきなさい、あんなの」 ルイズが目を向けた先では、金髪の少年――ギーシュが黒髪のメイドを怒鳴りつけていた。 関わる意味も価値も無い、どうでも良いことだ。 だが。 「あの髪……目……いや、まさか」 「リュウオウ? どうしたの?」 「バカな、まさか、そんな筈は。 だが、あの瞳、忌々しい輝きの瞳、間違える筈も」 ルイズは顔をしかめた。 幼い頃からの付き合いで、動じた所など1度も見せたことのないリュウオウが、どうしたというのだ? 「こんなところに、かの血を受け継ぐ者が居る筈がっ……!」 「リュウオウ!」 声量を抑え、使い魔を怒鳴りつける。本当にどうしたのだ。まったくもってらしくない。 リュウオウは沈黙し、……やがて、掠れた声を出した。 「……主よ。あのメイドは理不尽な謝罪を要求されている。 助けてやるべきではないのか?」 「……アンタ、頭腐ったの?」 「あのメイドに恩を売っておけ。なんとしても、あやつを敵に回してはいかん。 あれは――我らの『運命の敵』だ」 「はははは! ルイズ! 『ゼロ』の君の使い魔が、僕と決闘だなんてね! 確かに竜種は強力さ! だけど、手のひらサイズのそれじゃあね! 僕の敵じゃない!」 言葉と同時に、青銅の戦乙女が組み上げられる。その数、7。 それを鼻で笑い飛ばし、ルイズは己の使い魔に念話を伝えた。 『リュウオウ。――蹴散らしなさい』 『承知した、我が主』 異世界の魔法、『ギラ』。 初歩の魔法である筈のそれ。 だが、魔王の手によるものとあれば――最早、別の魔法と言っても過言ではない威力を持つ。 小さき黒竜から放たれた閃光は鋭く、ただの一瞬ですべてのゴーレムを溶かし尽くした。 「な!? ぼ、僕のワルキューレが!」 「……『大嵐の聖剣』?」 「うむ。城の宝物庫に収められていたのだがな。 昨夜の騒ぎで、それが盗まれた。かの大悪党、『土くれのフーケ』じゃ」 どうでもいいわ、と鼻をほじるルイズに、使い魔からの念話が届く。 『主よ。この討伐、引き受けよ。他の者に譲り渡してはいかん』 『リュウオウ?』 ほじった鼻××を飛ばす主に顔をしかめながら、りゅうおうは笑った。竜のくせに器用な顔である。 『最早、驚くことも出来ぬ――この世界と我の世界とは、想像以上に縁深きようだ』 「『エクスプロージョン』!」 ルイズから放たれる、『虚無』の魔法。 りゅうおうの指導を受け、自らの属性に目覚めてから幾数年。 使い魔からあふれ出る魔力のバックアップをも受け、ルイズの力は凄まじいレベルに達していた。 一撃で巨大なゴーレムを砕き、無数の残骸へと散らす。 「がっ、ぐっ……な、なんだその魔法は……」 地に叩きつけられ、動きを止めるフーケ。 その傍らから、ルイズは奪われた物を拾い上げる。 「これが、『大嵐の聖剣』……?」 光差さぬ森の中で、自ら光を放つように輝く一振りの長剣。 それと対を成すように、小さき黒竜が闇に包まれる。 闇から現れたのは、紫のローブを纏った亜人。彼本来の姿である。 「ク……ハハハハハハハハハ! 愚か者どもめ! 『大嵐の聖剣』だと!? ああ、確かにその剣は、念じれば強力な風の刃を生み出す! 我らが扱う魔法の一つ、『バギクロス』をな! なるほどなるほど、強力な魔法だが……その剣の本質は、そんなものではない!」 おかしくてたまらない、というように腹を抱えて笑うりゅうおう。 そう、この剣の強さは、そんなものではない。 それは、希望。 それは、光。 それは、正義。 それは、絶望と悲しみの暗闇の中を、燦然と照らす一条の光。 それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほどに輝きだす白銀。 それは、例えすべてを無くしても、尚この胸より生まれ出る最強の力。 それははじめ、ただの強力な剣だった。 だがそれは、時を経るにつれ、人々の希望を、意志を、夢を、その剣身に集めていった。 折れるわけにはいかないから、折れなくなった。 曲がるわけにはいかないから、曲がらなくなった。 故に最強。最強であれ、と望まれた――それ故に最強の、勇気ある者のための剣。 それは、絶望を知りながら、それでも尚闇に抗う人々の希望を担った、伝説の剣。 それは、人々の歓声を一身に受け、血を吐いて泥に塗れながらも強大な魔王へ立ち向かう、勇者の剣! 「この剣に相応しき名は2つ! 『王者の剣』! そして……『ロトの剣』だ!」 ルイズは悟った。 ああ――この剣を持つ者こそが、私たちの『敵』なのだ。 剣は、りゅうおうが魔法でどこぞに転送してしまった。 「この剣を破壊することは出来ぬ。よって、封印した」 ということらしい。 「さて。――じゃあ、こいつね」 ルイズはそう言うと、土くれのフーケへと顔を向けた。 「ひっ!」 フーケは先ほどから、りゅうおうの出す凄まじい邪悪な気配に怯え切っていた。 腰が抜けており、それでも何とか逃げようと、手を使って後ずさる。 「怯える必要は無いわ。私たちは、アンタに危害を加えるつもり無いから」 りゅうおうがククク、と笑う。 ルイズは満面の笑みを浮かべ、尻をついているフーケに手を差し伸べた。 「先ほどのゴーレム。見事だったわ。 私達は、力のある人材を求めてるの。 ああ、アンタなら、十分にその資格がある」 フーケは、理解できないものを見る目でルイズを見つめ、震える声で尋ねた。 「な、なに、を……?」 「もし、私たちの味方になれば――そうね、世界の2%くらいはくれてやってもいいわ」 捜索の甲斐無く、奪われた『大嵐の聖剣』は、戻らなかった。 騒ぎの後、ミス・ロングビルが突然の辞職願いを残し、実家に帰ったという。 「……ふぅ。疲れた。頭の中花畑な奴の相手は疲れるわ」 「クク。そんなことを言ってよいのか、主? あやつはこの国の王族であろう?」 「は。だから花畑だってのよ。王女のくせに、その責務すら理解していない。 あれ、放っておくとその内この国を滅ぼすわね」 アンリエッタが、寮の自室を去った後。 ルイズは寝台に寝転がって愚痴を漏らしていた。 テーブルの上に乗っている小竜は、ルイズに問いかける。 「しかし、主よ。先ほどの話、どうするのだ?」 「ああ、アルビオンの話? 受けるに決まってるじゃない。 そもそも、あいつを傀儡にしてこの国から手に入れる計画なんだから、 繋がりは強くしておかないとね。何をきっかけに近づこうかは悩みの種だったし、渡りに船ってやつよ」 「クハハ! あの王女も、まさか親友がそんなことを考えておるとは、夢にも思うまい!」 堪え切れぬ笑いを漏らす使い魔に、ルイズは輝くような笑顔を向けた。 「知ってるかしら、リュウオウ? ――親友ってのはね、お互いそう思ってるから親友なのよ」 「そこまでよ、ワルド」 今まさにウェールズを刺し殺さんとするワルドの背後。 ルイズは、突如としてそこに出現していた。 「これ便利ね。『トヘロス』だっけ?」 「ああ。自らより弱き者に、気配を悟られぬようにする魔法だ。 今の我らならば、気付かれる心配は皆無だろうよ」 「そんな便利な魔法あるならもっと早く使いなさいよ、バカ竜」 「な……!」 突然現れたかと思えば、肩に乗せた使い魔との会話を始める婚約者。 ワルドは、絶句していた。 「ミ、ミス・ヴァリエール! こ、このワルドは裏切り――」 「ああ、アンタ黙ってて」 使い魔が何事かを呟くと、ウェールズは瞬時に昏倒した。 ……どうやら、眠っているらしいことをワルドは見てとる。 「る、る、ルイズ……? 一体、何なのかな……これ……?」 恐る恐る尋ねるワルドに、ルイズはようやく顔を向けた。 「ワルド。あなたが、『レコン・キスタ』の尖兵だってことは、もう知ってるわ」 「――――!」 瞬時にその場から飛びのき、距離をとる。 考える。悟られていた。ならばこれは? 王女の罠か? あの腐れビッチ、愚鈍なのはまさか演技なのか? いや、ならば何故ルイズを選んだ? 戦闘力も皆無な筈なのに? 婚約者ならば情で落とせると思ったのか? ――混乱する頭ではじき出された、最初の言葉はこれだった。 「る、ルイズ。……何で、私、呼び捨て?」 片言であった。 「……ぷ、ははははは! いいわ、ご希望なら今まで通り、ワルド様と呼びましょうか?」 「ああ、頼む」 「頼むのか」 使い魔が突っ込んだ。珍しい光景である。 「さて、ワルド」 「様をつけてくれ」 「こだわるのね。――あなたが先に勧誘した『土くれのフーケ』は、私たちの仲間よ」 「……そういうことか」 先日、『レコン・キスタ』に加わった大盗賊、『土くれのフーケ』。 ……間諜だったか、とワルドは失敗を悔いる。 「けどね。私たちは、別にトリステインに仕えているわけではない。 これがアンリエッタの罠だとか想像しているかもしれないけど、大外れ。 安心なさい。あの王女は、見かけ通りよ」 「なに?」 困惑するワルドを前に、ルイズは笑った。高らかに笑った。 「聖地奪還? 下らない。ああ、下らないわ。小さいわね、ワルド。 仮にも、私の婚約者ならば――世界征服くらいは言って欲しいものよ」 「様を」 「貴様、しつこいぞ」 魔王は突っ込み役に回っていた。他に居ないのだから仕方が無い。 ルイズは腕を広げ、演説を続ける。 「私達は、世界を欲している。 『偏在』をはじめとした強力な魔法を駆使するスクウェア・メイジ。 おまけに騎士としても極めて優秀なあなたならば、私たちの仲間たるに十分な力よ。 このりゅうおうが居れば、更なる力をあなたに与えるのも容易。 ねぇ、ワルド。あなたが、必要なのよ」 そうして、ルイズはワルドに手を差し伸べた。 「あのクロムウェルにいつまで従属しているつもりかしら? あれはただの小物。あなたが付き従う価値など、欠片も無いような男なのに? さぁ――この手をとりなさい、ワルド。そして、一緒に世界を踏み躙りましょう? もし、私たちの味方になれば――うーん、えー、世界の1%くらいは、あげなくもないというか、善処するわ」 ワルドはしばらく黙考する。今の状況。レコン・キスタ。クロムウェル。ルイズ。そして、この使い魔。 「……君の目的は、何だ?」 「ククク。物分りの悪い男だ。 世界征服だと、先ほどから言っておろう」 ……本気なのか、とワルドは額に汗を浮かべる。 世界征服。聖地奪還どころの話ではない。 人間やエルフ、この世界に住む全てを敵に回すつもりなのか。 「……クロムウェルは、伝説の『虚無』の使い手だ。 『レコン・キスタ』を敵に回せば、いずれ相対することになる。勝算は、あるのか?」 「ああ。あれ、嘘よ」 「は?」 ワルドの口があんぐり開いた。 「う、嘘? ……………………嘘ぉ?」 「あいつが使ってるのは、水の秘宝で……ってああもう、面倒ね」 ルイズは嘆息すると、おもむろに杖を腰から引き抜いた。 ワルドに突きつける。 「言葉で納得できないなら、力で示すわ。 かかってきなさい、ワルド。力とは何なのか、教えてあげる」 「……いいだろう。私も、口先だけでは納得できない。 そこまで言うなら、お手並み拝見といこう。 君たちが、あのクロムウェル卿をも上回る力を持っていると、納得させてくれれば―― その時は、君の下につく」 ワルドは自らの愛杖を抜くと、詠唱を始めた。 「ユビキタス・デル・ウィンデ――」 手加減をしている余裕など無いだろう。 最初から、全力でいく。 「ユビキタス。『偏在』せよ!」 5人にその数を増やしたワルド達が、ルイズに殺到する! 「リュウオウ」 「承知した、我が主」 『ベギラマ』。中級閃熱呪文。 魔王の手によって放たれたそれは、4人のワルドを瞬時に消し飛ばした。 「な――!」 慌てて動きを止める、残り物。 ワンアクションで、分身全てを消し去るほどの威力。 しかも、あいつは今――わざと、本体を避けた。 つまり、本体がどれか、ということも、一瞬で把握したのであり―― 「……なるほど。わかったよ、ルイズ。確かにこの使い魔の力は、君が言うだけのことはある。 使い方次第では、まさしく世界を征服し得る力だろう。 わかった。君に、従う」 「それは重畳。じゃ、こいつはさよならね」 黒竜から放たれた、初級爆裂呪文『イオ』。 眠るウェールズ・テューダーは、無数の肉片へと散った。 「姫様。……ウェールズ皇太子は、裏切り者の手により、その胸を刺し貫かれて――」 「我が力及ばず、申し訳ありません」 アンリエッタの前、平伏するルイズとワルド。 「……そう」 平静を装うアンリエッタだが、その顔は蒼白。 「ご苦労様でした。……もう、下がって下さい」 「これで、よかったのかい? ルイズ?」 王宮の廊下を並んで歩きながらの問いかけに、ルイズは微笑む。 「ええ。これでアルビオン貴族派への憎悪は煽った。 あとは、きっかけがあれば――トリステインは、アルビオンへと侵攻する」 ワルドは肩をすくめた。 「やれやれ。可愛い婚約者が、こんな酷いことを考えるようになっていたとはね。 君の仕業かな、リュウオウ?」 使い魔は念話で低い笑いを漏らした。 『ククク。何を言うか。主は、我と出会った時よりこの有様であったぞ。 それを見抜けなかったのは、貴様の目が腐っておることの証であろう』 「おや。手厳しいね」 2人と1匹は、声を揃えて笑った。 「タバサ。いえ、シャルロット・エレーヌ・オルレアンと呼ぶべきかしら?」 学院裏庭の片隅。 突然かけられた言葉に、タバサは一瞬にして迎撃体勢を整える。 「見事ね。流石はシュヴァリエ。 その恵まれない体格でありながら、よくもそこまで磨き上げたものだわ」 拍手をしながら姿を見せたのは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 タバサは無表情のまま、杖を握り締める。 「緊張する必要は無いわ。私に、あなたを害するつもりは無い。 私の用は、ただ一つ。勧誘よ」 ククク、と肩の上の黒竜が哂う。 「……私に、あなたに与する意志は無い」 断言するタバサ。 この邪悪に、手を貸すことなど決して無いと、目が告げていた。 「ああ、知っている。知ってるわ。 あなたとキュルケが、何やらコソコソ動いていたのはね。 ――でもね、シャルロット。この言葉を聞けば、あなたはきっと、私の味方。 私の信頼する仲間になってくれるわ」 「その名前で、私を呼ぶな」 敵意をむき出しにするタバサを前に、ルイズは笑った。 それは、絶対的な優位に在る者の傲慢。 抵抗を可愛く受け止める、強者の微笑み。 「こんなのはどうかしら。 もし、私の仲間になれば――あなたに、母を返してあげる」 タバサの顔が、凍った。 「どうしたっていうのよ、いきなり!」 「これ以上の協力は、出来ない」 突然態度を変えたタバサに、キュルケは苛立ちを隠せない。 あのルイズが裏で、何をしているのか。 それに関する調査もようやく進んできたというのに、一体どうしたのか。 「何があったの!? あいつに、何かされたわけ!?」 「これ以上は、言えない」 目を伏せ、視線を合わせないタバサ。 それを見て、キュルケは嘆息した。 「……そう。あんたなりの、思いやりってわけ?」 「関わらない方がいい」 ふん、とキュルケは鼻を鳴らした。 「冗談。あいつは、私の敵よ。あの邪悪を、放っておくことは出来ないわ」 「許して欲しいとは言わない。が、これ以上は言えない。 もう一度言う。関わらない方がいい」 「くどいわ」 タバサが顔を上げ、キュルケを見上げる。 ――一瞬だけ。2人の、視線が交わされた。 それで、十分。 まるで違う性格でありながら、それでも親友だった2人。 幾つもの死線を潜り抜け、互いの背中を任せあった2人。 その2人にとっては、その一瞬で十分だったのだ。 「じゃあね、タバサ。楽しかったわ」 「今まで、ありがとう。さようなら」 それは。 親友同士の、決別の瞬間だった。 「……知っていたんですか」 自室の扉を開け放ち、突然現れた黒髪のメイド。 ルイズは驚き、音を立てて椅子を離れる。 「シエスタ!」 「……知っていたんですか、アルビオンが、タルブに侵攻するのを!」 シエスタは叫ぶ。握り締めた拳を震わせていた。 『……話を聞かれたか。少々、無用心だったようだな』 使い魔の念話に、ルイズは硬い表情で頷きを返した。 「……まぁね。あっちには、何人か間諜を忍ばせてあるから」 「なんで、なんで、それを前に――」 「必要だったからよ」 返された答えに、メイドは戸惑う。 「必要――?」 「そう。トリステインがアルビオンに侵攻するための、口実としてね。 バカが向こうから来てくれたおかげで、やりやすくなったわ。 これでこちらとしては、何の憂いも無くアルビオンを叩き潰せる」 シエスタが目を伏せる。 握り締めた拳から、一筋の血が垂れた。 「そんな理由で、見捨てたんですか。 タルブを。私の、故郷を。お父さんも、お母さんも、弟も、みんな、死んだ」 「見捨てたわ。――どうでもよかったから」 視線を上げ、ルイズを睨みつけるシエスタ。 その瞳の輝きに、りゅうおうは体を震わせた。 ――ああ、あの瞳、あの瞳の輝きこそが、かの血脈の証。 幾度倒されても決して折れぬ意志の現れ。 人々の希望を背負う、一筋の光。 正にあれこそ――勇者たるものだ。 「……優しい人だと思ってた。 名前を覚えてくれたり、私を助けてくれたり。 今、この時より。あなたは、私の敵です」 『……厄介なことになったな』 メイドが去った後。 また盗み聞きされるのを警戒してか、念話でりゅうおうは話しかける。 『ま、なってしまったものは仕方が無いわね。 いずれ敵対するのならば、それがいつであっても大差は無いわ』 「……参ったわね。ちょっと、水の指輪を舐めてた」 「あれほどの力を持つとはな。少々、計算が崩れた」 小高い丘の上。本来の亜人の姿に戻ったりゅうおうと、ルイズは語り合う。 「よいのか? 今まで隠匿していた力、ここで晒してしまって? 7万の敵が相手となれば、流石に隠し通すことは不可能であろう」 「仕方無いわね。ここでトリステインの兵力を失うのはまずい。 ま、もう政府の8割がたは掌握したし、国内は力押しで何とかなるでしょう」 7万の敵を単騎で食い止める、決死の任務。 ルイズとその使い魔は、自ら志願してここに立っていた。 「お、来たわね。よくもまぁ、あんなに群れちゃって」 「数こそが人間の力。主よ、侮るでないぞ」 「わかってるわ」 遠目に見える丘の向こう、見え始めた敵の先頭集団。 それに向かい、ルイズは意識を集中させた。 「最初から全開でいくわよ。叩き潰すわ」 「承知した、わが主」 制御できる限界スレスレの出力で放たれた『エクスプロージョン』と、最上級爆裂呪文『イオナズン』。 初撃は、数千の敵を消し飛ばした。 「がっ――!」 「リュウオウ!」 ルイズは目を疑った。 本来の姿を取り戻したリュウオウが、あのリュウオウが――圧倒されている。 アルビオンの片隅にある、小さな村。 こんな所に、何故こんな使い手が! 「くっ……何者だ、貴様!」 言葉と共に、『ベギラマ』を放つりゅうおう。 しかしその閃光は、敵の左手にある大剣に吸収されてしまう。 この世界のものとは思えぬ奇妙な服装に、黒い髪の若い男。 何かのルーンが浮かび、光り輝く左手には大剣。魔法を吸収する、対魔法使いのためと思われる兵装。 そして、その右手には―― 「何で、その剣がここに――!」 ルイズの疑問ももっともだった。 その剣は封印した筈。あのリュウオウが封印したのだ、そう簡単に破れるわけもない。 だというのに、何故、ここにあるのか。 『大嵐の聖剣』。いや―― 「『王者の剣』。……『ロトの、剣』――!」 「か、カカカカカカカカ! クハハハハハハハ!」 戦闘中、しかも劣勢だというのに、りゅうおうは笑い出した。 魔法を放ち、剣を杖で防ぎながら、堪えきれぬ笑いに身をよじらせる。 「そうか。――そうか! ついに現れたか! この世界にも、やはりいたか! だとすれば、その剣を持っているのも不思議ではない、必然だろうよ! 運命、だからな!」 そう。その剣は、必ずやある者の手に渡る。 闇に抗う者。 勇気ある者。 人でありながら、ただ自身の努力と意志だけで人を超えた存在。 「現れたか! 我が愛しい怨敵! 我が愛すべき天敵! ――『勇者』よ!」 ここに、物語の主人公は降臨した。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7669.html
まともに召喚させてもらえないルイズ 「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールはトリステイン魔法学園の生徒。今日は進級試験の日、ルイズはその試験の課題である使い魔召喚の儀式の真っ最中です。 「私は求め訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズは魔法が得意ではありません。今日もどうせ爆発で終わるんだろうなとルイズを含めたその場全員が思っていたのですが… 「あれ?何かいるわ…?まさか成功した?」 なんと召喚魔法は一発で成功。鏡からゆっくりと現れる緑色のフォルム。二本足で立ち、背中には黒い羽のような物がついている。 召喚されたのはどうやら亜人…?何はともあれルイズは喜び召喚したそれに話しかけます。 「アンタ亜人ね?この私に召喚されたんだから光栄に…」 「ここは…何処だ?…まぁそんな事はどうでも良い…まさか孫悟空が私と一緒に自爆するとは…な?」 緑の亜人はブツブツと何かを呟いています。ルイズは自分が無視されている事に気付き緑の亜人の側でぎゃーぎゃー喚きますが、亜人の耳には全く届いていない様子。 「ククク…だがおかけで新たな力が手に入った…待っていろ孫悟飯…このセルが…パーフェクトに貴様を消してやろうー…!」 亜人は人差し指と中指を額に押し付けます。次の瞬間、緑の亜人は姿形もすっかり無くなっていました。 「はぇ?あれ?」 辺りがシーンと静まります。召喚した本人はというと、一体何が起きたのかといった様子で事態が飲み込めていない様子。 数分後、事態を理解したルイズが儀式のやりなおしを教師のコルベールに申し出、再びルイズの使い魔召喚が行われました。 再召喚で現れたのは黄土色の鎧と鉄仮面を被った男だった。今度は成功したとルイズが鉄仮面に近づこうしたその時… 「ここは…神崎士郎の望む世界ではない。…修正が必要だ」 鉄仮面は腰の黒い箱から一枚の札を取りだし…! 『TIME VENT』 「え?」 チクタクチクタクチクタクチクタク… 「はっ!あれ?あいつは!?」 一瞬、何かが起きた後、黄土色の鎧の男はどこかへと消えていました。ルイズがコルベールに「アイツはどこへ行ったの!?」と問いかけましたが、コルベールは何の事やらさっぱりといった態度で接します。 いまいち納得のいかないルイズは再び召喚魔法「サモン・サーヴァント」を行います。今度は爆発が起こりました。召喚成功の手応えを感じたルイズでしたが、周りを見渡しても使い魔が見当たりません。 ふと足元に目をやると何かが浮かんでいました。文字です。ハルケギニアの言葉で「ここにいた」と書かれています。 おまけに矢印まであるではありませんか!ルイズが足を上げるとそこには体の潰れた自分の使い魔がいました。 やっぱり諦められないルイズはまたまたコルベールにやり直しを申し出、コルベールはこれを承認。四回目の召喚。 「やった!今度こそ成功よ!」 今回召喚されたのは、青い帽子を被った平民のようでした。しかし、それと一緒に見たこともない『魔物』が居ます。 これは当たりだとルイズが喜んでいるとどこからともなく青い毛に包まれた魔物が現れました。 「わたっ!わたっ!テリー、ここは異世界の扉で飛ばされた世界じゃないわた!ひとまず城に帰ろう!」 「そうなのか?じゃあ帰るかな!」 と平民の少年が言いました。ルイズの脳裏に嫌な予感が過ります。 「ちょ…ま…」 「わたわたわた~!」 取りつく島もなく少年は遥か空へと飛んでいってしまいました。 流石にストレスが溜まってきたルイズはコルベールに許可を取ることも忘れ召喚魔法を唱えます。 五回目に現れたのはおかしな帽子を被った少女、しかし背中には大きな羽が… 「よくも私を召喚してくれたな…人間。このレミリ…」 あるのを確認するところで日に当てられた少女は灰になった。 再再再再再再度召喚に挑むルイズ。現れたのは紅蓮の巨人! 「なめんじゃねぇ…異次元だろうが…多元宇宙だろうが…ハルケギニアだろうが関係ねぇ…俺を誰だと思っていやがる…穴堀りシモンだあぁ!」 紅蓮の巨人は気合い(螺旋力)で空間をねじ曲げ元の世界へ帰っていった。 それでもめげないルイズは渾身の力を込め召喚を行います。 「ドカ「ウボァァァ!」ァァン!」 断末魔の叫びと共に爆発が起こります。土煙が引くと底には黒こげになった鉄のゴーレムがいました。 ルイズが召喚した残骸が増える中、ルイズは藁にすがる思いで使い魔を召喚します。 召喚されたのは平民の少年とどう見ても人間には見えない異形の者。両者共に腕に何かを着けています。良く見ると少年の方は何かを手にしています。しらない文字書かれた緑色の札です。どうやら少年はその札で何かをするようです。 「俺のターン!魔法カード『超融合』を発動!…来い、ユベル!」 「十代…!」 すると二人は一つに重なり、眩い光となって空へと消えていった。 その後もルイズは召喚を続けました。 「あぅあぅ~…ここはカケラの世界じゃないのですよ…オヤシロワープ!」 …しかしいずれも 「はかせー、ここにはサルいないよー」 「ははは、悪かったなカケル君、今転送するぞい」 皆帰るなり死ぬなりして、 「エトナの奴こんなボトルの中に閉じ込めおって…おい、時空の渡し人!さっさと俺様をエトナのところへ飛ばせ!」 とうとう100回を超えたところでルイズの意識が 「キテレツー、ここどこナリ?」 途切れた。 次の日の朝、ルイズが起きると平民の少年が彼女の部屋にいました。何でも気を失う前にルイズが召喚したそうです。 その平民は「早く元の世界に帰せよ」等と馬鹿らしい事をほざいている。早く自分の力で帰れば良いのにと思いながら再びルイズは眠りについたそうな。 お し ま い 以上小ネタ ドラゴンボールよりセル 仮面ライダー龍騎より仮面ライダーオーディーン ぷよぷよよりのみ DQモンスターズ1よりテリー 東方プロジェクトよりレミリア・スカーレット 天元突破グレンラガンよりグレンラガン(シモン入) ボンバーマンよりボンバーマン 遊戯王GXより十代とユベル その他もろもろ… でした
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5365.html
前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 「始めるわよ」 首都トリスタニア、某所。 明かりはただ一本の蝋燭のみという、薄暗く狭い小部屋に、数人が集まっていた。 いずれもローブに身を包み、フードで顔を隠している。 「……まずは、現状確認からいきましょうか」 アルビオンを制圧したトリステインは、すぐさま帝政ゲルマニアに宣戦を布告。 同日、ゲルマニア首都ヴィンドボナは壊滅した。 ……噂を信じるならば、ただ1騎の竜騎士によって。 主要都市をわずか数日の内に陥落させられたゲルマニアは、成す術無く降伏した。 現在、トリステインはロマリア連合皇国と交戦中。 トリステインはトロルやオークなど亜人に加え、エルフ、 更には無数の強力なドラゴンまでも戦線に投入している。兵力差は圧倒的だった。 アルビオン、ゲルマニアを傘下に加え、更には『東方』――エルフ達と同盟を結ぶことにすら成功。 最早、トリステインは小国などでは無く、世界有数の覇権を誇る大国だ。 「そして、それを操るのがあの2人。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、その使い魔ね」 女王に即位したアンリエッタ。 それを傀儡とし、裏から操る者が居た。 マザリーニなど、優秀な人物は既にあらかた粛清され、この世から去ってしまっている。 「このままでは、世界は本当に、あの2人のものになってしまう」 無論、ルイズ達に対する抵抗が無かったわけではない。 送り込まれた暗殺者は、既に3桁にまで上る。 しかし。グリフォン隊隊長を務めるジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵や、 『シュヴァリエ』の称号を持つ少女といった凄腕の側近。 そして何より、本人達の力の前にあっては、暗殺者などカス同然だった。 「そうはさせない。絶対にね。 ――ここに、レジスタンスの結成を宣言するわ。 同意する者は素顔を晒し、血判状にサインを」 そう言い放った人物が、まずフードを脱ぐ。 素顔が、蝋燭の淡い光に下から照らされた。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 祖国を蹂躙され、復讐に燃える火のトライアングルメイジである。 「――彼女らは。私の、敵です」 シエスタ。 かつて魔法学院にて、メイドを務めていた少女。 「あいつらを、許しておくわけにはいかないよな」 「はい。頑張りましょう。 ……それに、彼らはウェールズ兄様を……!」 異世界人であり、伝説の『ガンダールヴ』である平賀才人。 そして、その主、ルイズと並ぶ『虚無』の使い手、ティファニア。 「人数こそ少ないけど、十分ね。 このメンバーならば、十分あいつらに勝利し得るわ」 朗々と、誓約の言葉を読み上げる面々。 それは、遥か昔よりこの大陸に伝わる、死地へ赴く人々が交わす誓いの証である。 この言葉が一体、どこで生み出され、どう伝わったのかは定かではない。 一般的には、始祖とその仲間達の言葉が、その始まりであるとされる。 ――だが。 それは、遥か異世界、とある冒険者が集う酒場にて、 今まさに邪悪に立ち向かわんとする1人の少年、そして3人の仲間達が交わした言葉と。 奇しくも、まったく同じものであった。 "我はここに集いたる戦友の前で厳かに精霊に誓わん。 我が生涯を光と共に過ごし、我が使命を忠実に果たさんことを。 我は全ての邪悪なるもの、闇たるものを絶ち、 悪しき力を用いることなく、また知りつつこれを許さざるべし。 我は我が命の限り、我が意志の揺るがざることをつとむべし。 我が使命にあたりて、与えられし力に驕らず、慢心に捉われることなく、幾万の敵を恐れることも無し。 我は心より人々を助け、 我が手に託されたる未来の幸のために身を捧げん。" ――アリアハン戦士誓詞 「――さぁ。反撃開始といきましょうか」 キュルケは、獰猛に笑った。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 「ウェールズ様……」 「アンリエッタ可愛いよアンリエッタ」 ぶちゅー。 「はん。よくもまぁ、飽きないものね」 「クク。1度離れた分、余計に愛が深まったということであろうよ。麗しきものではないか」 トリステイン王国、王宮。 人目を憚ることもなくウェールズと抱き合うアンリエッタに、主は呆れ、使い魔は哂う。 「水の指輪。アルビオンでは苦しめられたけど、手に入れてしまえばこんな便利な物も無いわ」 右手中指に嵌められた指輪を眺めながら、ルイズは漏らした。 アルビオン侵攻の際にクロムウェルから奪ったマジックアイテム、『水の指輪』。 ルイズは先住魔法の力がこめられたそれを使い、ウェールズの死体を操ることでアンリエッタを骨抜きにしていた。 (※これも、前編にてルイズがウェールズを殺害する際、 きちんと死体に傷がつかない方法で殺していたからこそ成せる業である。 仮に、『イオ』で爆破するなどという愚かこの上無い方法を取っていたならば、まず不可能であっただろう。 筆者が前編投下真っ最中にこのミスに気付いて頭を抱えたなどという事実は決して存在しないので、 その旨ご了承いただきたい。というか、正直ごめん) 「ヴァリエール宰相。前線より伝令です」 「聞くわ」 「最前線にて、極めて強力な竜騎士と遭遇。 交戦の結果制空権を奪われ、現在戦線は膠着状態にあるとのことです」 報告を聞いた小竜が顔をしかめる。 「何? スカイドラゴン大隊はどうしておる」 「……そのほとんどが戦死。残った者も、本格的な戦闘は不可能と聞いております」 「バカな。我がスカイドラゴンが、そこらの竜騎士隊に劣る筈が――」 「それが、その。……相手は、僅か一騎だと、報告にはあります」 「何だと?」 りゅうおうはしばし黙考する。 ……ただ一騎にスカイドラゴン隊がやられるなど、通常ではまず考えられない。 いや、それどころか、あれ一体で竜騎士小隊を壊滅させられる程の戦力差なのだ。 それは敗れるとなると――相手も、この世界の常識では計れないクラスの戦力か。 「……やむをえんな。すぐにしんりゅう大隊の出撃をさせよ。 同時に、地上戦力も補強する。 そうだな……ダースドラゴン連隊を、しんりゅう隊に載せてゆけ」 「了解しました」 下がろうとする武官を、ルイズは引き止める。 「ちょっと待ちなさい。――ワルド?」 「何かな?」 「いくらりゅうおうのマジックアイテムで遠距離からすぐ連絡出来ると言っても、 いちいちこちらに指示を仰いでいるのでは対応が遅れる。 アンタ、前線指揮官として行ってきなさい。全て任せるわ。 必要なものがあれば送るから、何でも遠慮せず伝えなさいよ」 「しかし、護衛はいいのかな、ルイズ?」 ルイズは鼻息を漏らす。 「ここ1ヶ月は暗殺も減ってきてるし、シャルロットだけでも十分よ。 いいから行ってきなさい。 そしてとっとと、その竜騎士とやらの首を晒しなさい」 「このような時のために力を授けたのだ。わかっておろうな?」 ワルドはりゅうおうの指導と『改造』により、 『バギ』系統の全ての呪文を、更に『ピオリム』『スカラ』などの補助魔法すらも身につけていた。 「わかった。行ってくるよ、ルイズ。 さぁ、行ってらっしゃいの接吻を――」 「2週間以内に教皇の首を持ってきたら、褒美にね」 「マジで!?」 「マジよ」 うっしゃー、と全力で走り去るワルド。 「よいのか?」 「いいのよ。どうせ、私のファーストキスはあんたなんだから。もうどーでもいいわ」 「カカカカカカカ! そうであったな!」 ――数日後。 「やぁ、ルイズ。いや、ヴァリエール宰相とお呼びするべきかな?」 「どうでもいいわ。とっとと用件を言いなさい、ギーシュ」 王宮の片隅、一室。 突然姿を見せた元級友相手に、ルイズはうんざりと返す。 今は、少しの時間であっても無駄にしたくない状況なのだ。 深く椅子に体を沈め、ルイズはため息をついてから促した。 「こんな時に何なの?」 「今日はグラモン家の代表として来たんだ。父も兄さん達も、それどころではないようでね。 ロマリア侵攻の状況について、グラモン家として――と、」 そこでギーシュは言葉を切り、室内を見回した。 「あの使い魔はどうしたんだい?」 「りゅうおうなら、戦力の補強のために部下を召喚中よ。いいから、とっとと話しなさい」 「やれやれ、忙しないねルイズ。まぁいいか。こちらも、遊びに来たわけじゃないんだ。 まずは、この資料を見てもらえるかな?」 ギーシュが懐に手をやると、ルイズは背もたれにもたれたまま、無言で右手を伸ばし、 「驕ったな、ルイズ」 瞬間。 鋭利な何かが、背後からルイズの胸を貫通した。 「がっ……!」 吐血。 思わず体を丸めようとするも、椅子に縫い付けられているような状況では、それすら許されない。 続けて2、3と、何かがルイズの体を貫通する。更に大量の血を吐き出し、ルイズは痙攣した。 必死で痛みを堪えながら、自らの体を貫通し、突き出ているものを確認。 鋭く、槍のように尖った青銅。……椅子を、『錬金』したのか。 懐から出した杖を突き出すギーシュを、睨みつけた。 「油断したね、ルイズ。 護衛の1人もつけないとは、僕も舐められたものだ。ドットメイジごとき、警戒する必要も無い? いや、それとも信用してくれていたのかな? だとしたら、嬉しいね。 そのおかげで、君をこうして葬れるのだから」 「……ギーシュ……あんた……!」 ギーシュは暗い瞳でルイズを見下ろした。 「ゲルマニア戦で父は死んだよ。2人の兄も、ロマリアでね。 知っていれば、さっきの僕の言葉がおかしいことに気付いた筈だ。 仮にも、元帥の死を知らなかったのかい? だとすれば、僕がこうして直接手を下すことも無かったかな。 そんな有様では、いずれ誰かが君を殺しただろう」 喋ることすら出来ず、血にまみれ、痛みにあえぐルイズ。それを眺めながら、ギーシュは哂う。 傍らのランプを手に取り、『錬金』。青銅の剣を作り出し、構えた。 「あぁ、でも。こうして君を直接殺すことが出来て、嬉しく思うよ。 ――さらばだ、『魔王』ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 貴族の誇りなど欠片も無い、愚かな侵略戦争で多くの命を散らした罪。死で償え」 剣が、振り下ろされる。 早く、速く、疾く迅く捷く! 転移魔法『ルーラ』を超短距離間で使用、それを連発することで限りなく最速に近づく。 扉を吹き飛ばし、階段の上を飛翔して、目的の一室へと全力で向かう。 油断した。驕っていた。 いくら主が大丈夫だと主張しようと、聞き入れるべきではなかったのだ。 その傲慢こそ、敵が狙っていた隙に他ならないというのに――! 最後の扉を中級火炎魔法『メラミ』で焼き尽くし、部屋に文字通り飛び込む。 目に入ったのは、振り下ろされる剣、歪んだ笑みを浮かべた少年、そして血に塗れ瀕死の主。 怒りに、視界が赤く染まった。 轟音。 大量出血のせいか、霞む目を凝らす。 ――自分とギーシュの間に、紫のローブを纏った背中が立ち塞がっていた。 ああ、きてくれたんだ。よかった。もう、あんしんだ。 「りゅう、おう」 「喋るな、主」 杖でギーシュを牽制しながら、片手でルイズを即興の槍から引き抜くりゅうおう。 苦悶の息が漏れ、血が噴き出す。りゅうおうはすぐに回復魔法『ベホマ』を起動。ルイズを床に寝かせる。 あまりに深い致命傷だったが、何とか間に合ったらしく、傷は塞がっていった。 怒り狂う使い魔は後ろ手に回復を続行しつつ、剣を下ろした少年を睨みつける。 ギーシュは、全てを諦めたかのように笑みを浮かべていた。 「好機を逃したか。――無念だよ」 「我が主をここまで傷つけた罪、千度殺しても尚余りある。死ね」 りゅうおうの杖に、膨大な量の魔力が集中する。発動すれば、塵も残さずギーシュを焼き尽くすだろう。 ルイズは震える腕を何とか動かし、ローブの裾をつまむ。 「りゅうおう、まって」 「喋るな、主。傷はまだ塞がっておらん」 使い魔の言葉を聞き流し、ルイズは掠れた声で続けた。 「ギーシュ、みごとだったわ。 ドットメイジでありながら、ここまでのけいびをすりぬけて、わたしにいちげきをくわえるなんてね。 みなおした。やるじゃないの」 「は。ここまで絶好の条件でありながら、殺せなかったのは僕の落ち度だ。 褒められるようなことじゃないよ」 「喋るなと言っておろうが、貴様も黙れ!」 激昂するりゅうおうを尻目に、ルイズは荒い息を隠そうともせず言葉を継ぐ。 「いいえ。たまたまりゅうおうはいなかったけれど、 そうでなくともあんたはやったはず。 すぐにころされるのをかくごで、いちげきにすべてをかけてね。 そのかくごとじっこうりょく、しょうさんにあたいするわ。 ねぇ、いまからでもおそくはないわ、わたしたちのなかまにならない? あんたになら、せかいの5%くらいはくれてやってもいいわ」 ギーシュは鼻を鳴らした。 「冗談にしても最悪の部類だね。殺せ」 「ならばその望み、叶えてやろう!」 杖を振り下ろそうとするりゅうおうはしかし、後ろからローブを引かれる感触に動きを止める。 「主よ……! 何故止める!」 「ひつようだから。……そいつをちかろうに。けっしてみはりをおこたらないよう」 「は、はい!」 ようやく現れた武官達に命じるルイズ。 ギーシュは杖を取り上げられ、数人に拘束されて運ばれていった。 「まったく。あるじのいうことはちゃんとききなさい、りゅうおう」 「何故止め……いや、いい、喋るな主」 「だいじょうぶよ。あんたがこうしてくれてるんだから。 あいつはグラモンけのゆいいつのいきのこり。いかしておけば、なにかとべんりよ」 「回復魔法では傷を塞ぐことしか出来ぬと、知っておろうが! いい加減に黙らんかこの痴れ者が!」 激怒する使い魔を前に、ルイズは青白い顔でくすりと笑う。 「ふふ。しんぱいしてんのね、あんた」 「当たり前であろうが! 黙れ!」 ルイズはその笑みをやがて大きくし、肩を震わせて笑い始めた。 「ふ、ふふふふ! ねぇりゅうおう、あんたはわらう? たかがどっとめいじひとりとゆだんして、そのけっかがこれよ! あはははは! こっけいね! これが『まおう』ですって!」 「主!」 「ふふふふふふ! ねぇきいてよ、わたしね、もしかしたら、 じぶんからいけんをいいにくるなんて、ギーシュはなかまになるのかもっておもってた! もとは、おなじがくいんせいなんだしって! あはははははは! ここまでしておいて、なにをいまさら! はははは!」 ルイズは自嘲する。 ――ああ、そうだ。愚鈍なことこの上無い。 私は、人に恨まれることをしてきた。 数え切れない程に人を殺し、多くの村を、町を、国を、叩き潰し、蹂躙した。 後悔はしていない。全ては、目的のため。必要な行動だ。 その私が! 今更! 「主……」 「あははは! そう、はじめから、こうしておけばよかった!」 ルイズは右手を掲げ、魔力を集中する。 『水の指輪』が起動。城内全てに、力の波紋を広げていった。 「ギーシュがつえをもってここまではいってこれたということは、 じょうないにそのてびきをしたやつがいるはずよ。 これで、あんしん。じょうないのほとんどのにんげんは、かんぜんにあやつれるわ」 有事にそなえ、『水の指輪』を使うための下準備は済ませてある。 特に城内の人間には、秘薬を混入した食事や水を摂取させることで、 『完全盲従』という暗示をかけることに成功していた。 「わかった、もうよい。休め、主」 「あはは……はぁ」 ルイズは再び、ローブの端を握り締めた。 ローブでルイズを包むように、抱きしめるりゅうおう。 「……あんたのからだ、つめたいわね」 「ああ。竜であるからな」 ルイズは微笑む。 それまでのような狂乱したものではなく、穏やかな、安心し切った赤子のような笑み。 「……ほんと、つめたい。ああ、でも――」 きもちいいわ、と呟き、ルイズは瞼を閉じた。 りゅうおうは睡眠魔法『ラリホー』を使った手を下ろし、杖をしまって両手でルイズを抱き上げる。 まさに、一国の姫を攫う魔王のような構図。 それにしては、その手つきは、酷く慈愛に溢れていたが。 「…………」 ルイズの寝室にたどり着き、ゆっくりとベッドに下ろす。 枕元に置かれた宝玉を起動。魔力で編まれた、緑色の幕が豪奢なベッドを包み込む。 元の世界にあった結界装置を更に改良したもので、 耐衝、耐熱冷、防音、更に魔法を反射する『マホカンタ』の機能をも併せ持ち、 りゅうおう以外の内部への侵入を決して許さない、鉄壁の守り。 例え城が崩落しようとも、ルイズはそれに気付かず眠り続けるだろう。 「…………」 りゅうおうはしばらくの間、眠る主の姿を見つめ、やがて部屋を出た。 廊下を渡り、階段を下る。進むにつれ、徐々に騒音が大きくなっていく。 爆発音に、風を切る音。何者かが、戦闘しているのだ。 「そこまでだ」 その階全体を貫く、一際広大な廊下。 護衛を勤めるタバサと共に、数人の近衛兵が奮戦していた。 相手は、4人。 その内の1人――燃えるような赤髪の少女が、現れたりゅうおうを見て目を剥く。 「な――!」 「そこの貴様ら。我が相手をしよう。それが目的であろう?」 驚きを露わにしてこちらを向くタバサ達に向けて、顎をしゃくる。 「貴様らは、上で主の護衛だ。決して誰も近づけるな」 「しかし――」 「行け」 たった二文字の言葉に込められた感情を瞬時に汲み取り、タバサは顔を青ざめながら頷く。 他の兵たちを引き連れ、上のフロアへと去っていった。 「まさか、そっちから来るとはな。前の戦いでつけられなかった決着、ここで決めてやる」 言葉と共に、2本の剣を構える少年。他の3人も体勢を整える。 りゅうおうは笑い、演説するかのように手を広げた。 「まぁ待て。ここで我が戦っては、城が無くなってしまう上に人的被害も膨大だ。 それは、貴様らにとっても不都合であろう? 場所を変えるぞ」 「ど――」 どこに、とメイドが続ける暇も無く、彼らの体は遠方へ転移されていった。 「……ここは、アルビオン?」 「そうだ。ここでなら、周囲を気にする必要はあるまい」 半年ほど前、7万のアルビオン軍とルイズ達が対峙した草原。 りゅうおうと4人は、一瞬にしてそこに辿り着いていた。 転移魔法『ルーラ』及び『バシルーラ』を併用した結果である。 「さて、戦う前にひとつ聞いておきたい」 「何でしょうか?」 ハーフエルフの少女が、背の丈ほどの大きな杖を構えながら返す。 「先ほどの小僧。あれは、貴様らの差し金か?」 キュルケが厳しい表情で答える。 「……ええ、そうよ。ここにあんたが居るってことは、失敗ってことだろうけどね」 「ククク。いや何、立派であったぞ。主も賞賛していた。 いやいやしかし、そちらも中々に残酷な作戦をとるものだな。 戦力にならないドットメイジに、一か八かの特攻をさせるとは」 りゅうおうの嘲笑に、キュルケは悔しげに唇を噛み締めた。 「……あいつの発案よ。私たちに、その覚悟を止める資格は無い」 「なるほど。ああ、しかしなるほどなるほど――貴様らの策か」 何を言いたいのか。シエスタは訝り、そしてすぐあることに気付く。 りゅうおうの瞳。 普段は黄色のそれが、真っ赤に染まっていた。 「…………っ!」 シエスタは直感する。まずい。 あれは、逆鱗だ。 「よくも、主をあのような目にあわせてくれたものだ」 戯れるような口調。 それを口にするりゅうおうの脳裏には――血まみれで苦しげに喘ぐ、主の姿があった。 りゅうおうの額のルーンが、輝き出す。 「――皆殺しだ」 りゅうおうは、真の姿を見せた。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2560.html
たいへんだ! 大統領が隣の世界からたくさんルイズを連れてきちゃったぞ! ヒロインがいなくちゃ話は続けられない! 彼女たちの話を聞いて元の世界へ帰してあげよう! (問題)次のルイズはどこの作品のルイズか答えなさい。 ルイズA「私の悩み? そうね、こうしていると時々、ひどく寂しくなるの。前はもう少し賑やかだったもの。 でもデルフもワルドもマチルダもいるから孤独とは思わないけれどね」 ルイズB「ねえ聞いて! 才人ともっと一緒にいたいのに、ううん、もっと身体も心も一緒になりたいのに、 ギーシュもエレオノールお姉さまも邪魔するの! 愛してる、私が欲しいって才人も言ってるのに!」 ルイズC「べ、別に大した事じゃないんだけど、最近、なんだかあいつタバサと仲良くしてるみたいなの。 惚れ薬のせいだけじゃなくて、それにタバサの方も少し変わったような気がするわ。 タバサの他にキュルケとも会社を興したり、シエスタとも楽しげに話しているし……ああ、思い出したら腹が立ってきた! 忘れないでよね! わたしがご主人様なんだからね! ないがしろにしたら許さないわよ!」 ルイズD「ちいねえさまも(弾け過ぎな気はするけれど)元気になったから悩みなんてないわ。 ただキュルケの様子がおかしいのよ、ブツブツと体液だの触手だの呟いて変な目で見てくるし」 ルイズE「……色々あるわね。たとえば使い魔が私よりデルフと親しそうだったり、 元婚約者が変な性癖の持ち主でソムリエ呼ばわりされたり、ギーシュは……もういいわ、諦めたから」 正解はWEBで! (正解) ルイズA:『仮面のルイズ』(第一部より石仮面) ルイズB:『ギーシュの奇妙な決闘』(第七部SBRよりリンゴォその他) ルイズC:『ゼロと奇妙な鉄の使い魔』(第五部よりリゾット) ルイズD:『ゼロの来訪者』(バオー来訪者より橋沢育郎) ルイズE:『アヌビス神・妖刀流舞』(第三部よりアヌビス神)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2295.html
ゼロのルイズが塾長に拉致されました ドン! 何か重たいものが校庭に落ちる音を聞いたとき、鬼ヒゲは思わず飛び出していた。 予感がしていたのだ。 その予感を裏付けるように、飛行帽や鉄カブトも廊下に飛び出してきた。 共に視線を交わし頷くと、全速力で校庭へと走っていった。 そこには 「「「塾長~!!」」」 その姿を見た江田島平八は、ゆっくりと振り向くと一言発した。 「わしが男塾塾長江田島平八である!」 「ここはいったいどこなのよ~!」 一方、感動の再開を背景に、ルイズとドラゴンは途方に暮れていた。 「いい加減に説明しなさいよ!」 ルイズが江田島に詰め寄る。 比較的落ち着いているように見えるルイズであるが、実は内心相当焦っていたのだ。 江田島とそれを取り囲む男達との会話や、建物の雰囲気から、ここが自分の使い魔達のいたところであると想像はついたが、全く見知らぬ場所でもある。 戸惑うのも仕方がない。 そんなルイズを見た江田島は、この場所の説明をしようとした。 その時、サイレンの音が鳴り響いた。 近所の者達が、重たい物の落下音に不審さを感じて警察に通報したのだ。 その音に気がついた江田島は、ルイズにこう告げた。 「後で状況は説明しよう。今は、わしの話に合わせておけい!良いな?」 その台詞に、ルイズは疑問符を浮かべながらも頷いた。 「こらー!ここから不審な爆発音がしたと聞いたが、責任者はどこだー!」 そう言って警官が二人ほどパトカーから降りてくると、校庭にいる竜の姿を見てぎょっとした。 それを見咎めた江田島は、何とも奇遇、という顔を作ってこう応えた。 「おお!それは心配をお掛けしましたな。 実は今、青春ファンタジーロマン、「江田島平八ハルケギニア変」を撮影しておりましてな。」 そこで警官達は江田島の姿に気がついたようだ。 江田島の方を向くと、事情を聞くために言葉を発した。 「あなたは、いつぞやの映画俳優! ということは、あの竜も模型かなんかですか?」 その言葉に、竜が反応して動こうとするが、江田島の一睨みによって沈黙をした。 「そういうことですな!そしてこちら主演女優の」 そこで言葉を区切って、ルイズの方を見る。 事情は良く分からなかったが、とりあえずルイズは、望まれたとおりに動くことにした。 「ルイズよ!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」 そう名乗ったルイズに、警官達は感心したような目線を向ける。 「ほ~う。しかし綺麗な方ですなー。 それに相変わらずセットも凝っていますね。 少しあの竜を触らせてもらってもよろしいですか?」 江田島は、その言葉に大きく頷きを返した。竜を一睨みするのも忘れない。 いつの間にか和やかに会話をしている姿を見ていた、新一号生の一人が呟いた。 「あいつら、脳が腐ってんじゃねーか?」 ここ数ヶ月というもの、理不尽な運命に翻弄され、不条理(特に塾長絡みの) になれたこの一号生の性は平賀と言ったが、本筋にとっては関係のないことであるので割愛する。 警官達を追い返した江田島は、ルイズを塾長室へと通し、状況を説明しだした。 意外なことに、ルイズの理解は早かった。 これには、今までの経験も絡んでいるが、テレビや東京タワーなどの景観も大きく関係している。 そう、ルイズはここを別の世界と認めたのだ。 「それで、どうすればわたしは帰れるのよ?」 ルイズが返答する。彼女にとって一番大切なのは、このことだけであるのだ。 ここがどんなに便利な世界であろうと、平和な世界であろうと関係がない。 何故ならば、ここには学院の友人達がいないし、シエスタもいない。 それに何より親友のアンリエッタも、家族もいないのだ。 ならば、ルイズは帰らねばならない。 そこまで考えが及んだ時、ルイズは一つ決心をした。 (あいつらも絶対にここに帰さなきゃね。) そんなことを考えるルイズの顔は、実に江田島好みを顔をしていた。 女性をたとえるには不適切かもしれないが、まさしく「漢」の顔であった。 校内放送が鳴り響いた時、赤石剛次は愛刀一文字兼正の手入れをしていた。 赤石にとって命とも言うべき斬岩剣である。最後の手入れを自分でするのは当然のことであった。 「赤石剛次!至急塾長室に出頭せよ!」 赤石の手が止まり、思わずスピーカーの方へと顔を向ける。 (やはり、そう簡単にさらわれたままでいる人ではなかったな。) 手早く刀を鞘にしまって背負うと、早足で塾長室へと出頭した。 「赤石剛次入ります!」 そう言って入室した赤石剛次は軽く驚いた。 女人禁制の大本山とでも言うべき男塾の、しかも塾長室に年端もいかない少女がいるのだ。 尋常の事態ではあるまい。そう判断した赤石を真剣な顔で塾長を見つめる。 「今から大河内民明丸のところへと向かう!共をせい!」 塾長の一言から事態が動き始めた。 「何これ?すごいじゃない!」 ルイズは今を楽しんでいた。 初めて見る異世界は、まさしく現実離れをしていた。 遥かに高くそびえ立つ塔(東京タワーと後で聞いた)は、近くで見ると圧倒的な迫力があった。 さらに、トリステイン城よりも遥かに巨大な建造物がそこかしこに溢れているのだ。 目を引かない方がおかしいであろう。 極めつけはこの車という乗り物だ。 魔法も何も使用していないというのに、馬よりも早く、そして圧倒的に素晴らしい乗り心地を提供してくれるのだ。 「うむ。流石は中ちゃん。いい車を持っておるわ。」 そう、これは江田島の帝國大学時代の友人の中ちゃんより借りた『マイバッハ』であった。 ルイズの外見が大変目立つものである事を考慮した江田島は、自動車で移動することにしたのだが、肝心の車がない。 そこで江田島は、先日のJの受け入れの借りとして、中ちゃんより車を借りたのだ。 それが最高級車になったのは一重に江田島の人徳と言っても良いであろう。 「赤石。そこを右だ。」 「押忍!」 運転手代わりとして使われている赤石であるが、特に不満の色はない。 他の者であるならともかく、他ならぬ江田島の運転手兼護衛とあらば光栄というものだ。 周囲が渋滞をしている中、何故かその車の周りだけが混雑していなかったのはただの偶然であろう。 周りが、運転手と車の迫力に自発的に道を譲った、などということは断じてない。 「なに?アレ、楽しそうねえ。」 ルイズが後楽園遊園地を指して凝視していた。 世は全てこともなし。実に平和であった。 「ふーむ。なるほど、それは興味深い!」 一通り江田島から事情を聞いた民明丸は眼を輝かせて聞いていた。 「何かこの娘を帰す手がかりとなりそうなようなことに心当たりはないか?」 江田島がさらに問いかける。その言葉に民明丸は、煮え切らない返事をする。 民明丸が言うには、手がかりを知っていそうな人物には心当たりがあるが、今は行方不明で連絡がつかないということだ。 その言葉を聞いた江田島は、そうかとだけ答えると、民明丸に捜索を任せて立ち去ることにした。 「どこに行くのよ?」 部屋の汚さに辟易した様子のルイズが問いかける。一転してルイズの機嫌は悪くなっていた。 快適であった車の移動から一転して小汚い男の部屋へと移ったのだ。 むしろ、思春期の少女としては良く耐えた方と言っても良いかもしれない。 「塾生達がわしの身を案じて戦いに身を投じようとしておるのだ。塾長のわしが安穏としているわけにはいくまい。」 そう、江田島が宿敵藤堂兵衛にさらわれたと知った男塾は紛糾していたのだ。 現在総代を務める桃たちも行方不明、三号生死天王は重症、いざという時は塾長の代理を務めるはずの王大人まで行方不明とあっては仕方があるまい。 率直にそのことを藤堂に話したところ、意外にも死天王の回復がすみ次第で構わぬという返事が返ってきたのだ。 そのために、まだ三号生達は、いざという時の為に赤石を男塾に残してつい先日旅立って行ったのだ。 ようやく第一のプリズンを一人の死者も出すことなく終えたという連絡が入ってきたばかりである。 しかし悠長に構えている暇はない。一刻も早く宿敵藤堂兵衛を捕らえねばなるない。 その為にも、江田島は奇襲を仕掛けるべく、鬼ヒゲを死者として三号生達の元へと向かわせたのだ。 そんな江田島を見たルイズは顔を引き締めた。そこには、深い深い笑顔を浮かべた男の顔があったのだ。 だからこそルイズは申し出ることにした。自分が貴族である為に、そして世話になった自分の使い魔達の為に。 「何をする気?手伝ってあげても良いわよ。」 フン、という擬音が聞こえそうな様子で目線をそらしたルイズが、如何にも渋々といった様子で声を出した。 しかし、江田島はまるで全てお見通しとばかりにさらに笑みを深めて礼を言った。 「すまぬな。恩に着よう。」 ルイズの顔が赤くなる。照れを隠すかのように言葉が続いた。 「べ、べつにあんた達のためじゃないわよ!ただの暇潰しよ!ひ・ま・つ・ぶ・し!」 そんな素直でない彼女の様子に、さらに江田島が笑みを深める。 それに更にルイズが言葉を重ねていった。 そんな風景を赤石は、珍しそうに眺めていた。 「おー。久しぶりに出番が来たぜ!」 「うるさいわね。何ならすぐに鞘にしまってあげても良いのよ?それが嫌ならとっとと私の質問に答えなさいよ。」 ルイズと江田島、赤石、それに竜が他の者達と別のヘリで移動していた。 そんな中、ルイズと会話を繰り広げるデルフリンガーに興味を引かれたのか、赤石が問いかける。 「意志を持つ剣とはな。話には聞いてたことがあったが、おもしれえ。」 赤石が壮絶な笑顔を貼り付けてデルフリンガーを見る。 この世に斬れぬものなし、一文字流斬岩剣。さて、六千年の硬さを教えて貰おうじゃねえか。 そんな赤石の様子にデルフリンガーが思わず声を荒げる。 「えっ?もしかしてオレって今ピンチ?オ、オレを試し切りなんてしても面白くねーぞ!!」 どうやら軽く錯乱しているようだ。この後に、貞操の危機だのと言った言葉が続く。 その様子にルイズがこめかみを思わず押さえながら声を出す。 「あんた達。そういう事は、わたしが聞くこと聞いてからにしなさい。」 「ちょっとまてー!オレ何でも答えるから、試し切りは勘弁してくれー!」 「……まあいいわ。とりあえず、虚無の魔法についてあんたの知っていることを全て話しなさい。」 そう言った後、チラリと赤石の方に目線をやったルイズに、デルフリンガーはかつてないほど恐怖を感じていた。 (ガンバレ!ガンバレ!俺!思い出すんだ……ってブリミルそこで何手招きしてんだよ、って思い出した!」 赤石が背中から剣を抜いた所でデルフが声を挙げた。その様子に、赤石は少し残念そうに剣を鞘に収める。 「そうだ!虚無の魔法は精神力なんだよ、精神力。お前さんが強い思いを抱けば抱くほど強くなるはずだ! さらに、前回のエクスプロージョンみたいに一定量まで精神力を溜めておくことも出来たはずだぜ。」 さらにデルフリンガーが続けるには、今のルイズならば簡単なコモンマジック程度ならば使えるらしい。 その言葉に、ルイズはなるほどと納得し、口の中で短くフライの呪文を唱える。 すると、微かではあるがルイズの体が中に浮いた。 思わずガッツポーズを取るルイズであった。 デルフリンガーも試し切りの材料にならずにすんで、安堵の溜息を吐いていた。 ルイズは考える。 自分の故郷のことを。懐かしい家族のことを。 そして……アンリエッタに学院であった者達、自分の使い魔達が思い浮かんだ。 (わたしは絶対に帰らなければならないのよ!) ルイズの想いが強くなる。 ルイズは、そんな想いをそのまま言葉に込めた。 「エクスプロージョン!」 竜に乗ったルイズが虚無の魔法を唱えると同時に、大爆発が巻き起こる。 その破壊力は、アルビオン艦隊を沈めた時ほどではないにしろ、城の上部を吹き飛ばすには十分すぎる破壊力であった。 「今よ!」 その言葉と同時に江田島が竜から飛び降りる。 もちろんパラシュートなどという軟弱なモノは装備していない。 そんなものをしていては、藤堂兵衛に逃げられる可能性が生じてしまうのだ。 それに (捉えた!逃がさんぞ伊佐武光よ!) すでに江田島の目線は藤堂兵衛を捉えていた。 落下してくる江田島に気がついた、髷を結った男が慌てて藤堂を庇う 「貴様!この俺がいる限り好きには」 「どけい!千歩気功拳!」 しかし最後まで台詞を言うことなく、江田島渾身の千歩気功拳に弾き飛ばされてしまった。 その男を、ルイズを背中に載せて空を飛んでいる竜が同情するかのように見ていたが、きっと気のせいであろう。 少なくともルイズはそう思うことにした。 (人間って、意外と頑丈なのね。こんな高さからでも普通に飛び降りることが出来るなんて。) ルイズの思考が最近ずれてきているかどうかは定かではないが、そういうことである。 「とうとう年貢の納め時よな!藤堂兵衛!」 「くっ!しかし貴様一人で何ができる。者ども、出会え!」 その言葉に次々と忍者達が飛び出してくる。全員数々の暗殺をこなしてきた、一騎当千の猛者たちだ。 その手には、たっぷりと毒が塗り込められた武器を持っている。 いかな江田島平八であろうとも、これ程の毒を持った手練れ達からは逃れられまい。 そう確信して江田島を見やる藤堂。 (馬鹿な!何故この状況でこうも落ち着いていられる!) 江田島の顔からは不敵な笑みが消えていなかった。 その様子に、むしろ忍者達の方が微かに押されたかのように後ずさる。 その時、一筋の光が閃いた。 チィーーン 納刀の音が響く中、天より音もなく降りてきた男はこう呟いた。 「この世に斬れぬものなし、一文字流斬岩剣。」 藤堂と江田島達がいる場所を除いて高さがズレる。 次の瞬間、全ての忍者達が城を取り巻く堀へと落下していった。 そう、赤石は城の一部のみを除いて、切り落としたのだ。 「これで残すは貴様のみ!」 江田島が藤堂に詰め寄る。 藤堂はそれを強く睨み返していた。 「それにしてもこいつ等も良くやるわよねー。」 竜に乗ったルイズが、空の上から地上を眺めていた。 どうやら江田島達の方は決着がついたと見たルイズは、自分の使い魔の後輩にあたる者達の活躍を見ていた。 「貴様等!道をあけろーーーーー!!」 中でも特にむさ苦しい男が雄叫びを挙げながら、工事用のハンマーを『手で』振り回していた。 男が雄叫びを挙げながらハンマーを振り回すたびに、人がゴミのように吹き飛ばされていく。 技もへったくれもない正しく力技であった。 塾長曰く、思わぬ掘り出し物であったため、半ば無理矢理スカウトしたというその男は、巨漢同士の塾生の中でも一際大きな体躯をしていた。 (アレが男塾に入る前は、ギーシュに似た体形をしていたなんて、想像もつかないわね。) よほど男塾の水があったのであろう。 その男の姓は平賀と言ったが、またしても本編とは関係がないので割愛させていただく。 なおデルフリンガーが、 「あの兄ちゃん、まさか使い手か?」 などと言った謎の台詞を吐いていたが、同じく本編とは関係がないので割愛させていただくが悪しからず。 ふとルイズの視界に、江田島達がこちらに向かって手を振っている姿が入った。 そこへ竜を急降下させたルイズが尋ねる。 「もう終わったの?」 「うむ。協力に礼を言おう。」 そう言って江田島が深々と頭を下げる。 思わぬその様子に、ルイズは慌てたように声を出した。 「わたしは単に暇潰しに手伝っただけよ!勘違いしないでちょうだい。」 しかし江田島は見逃さなかった。 ルイズの顔は気恥ずかしさからか、赤く染まっていた。 その時、鬼ヒゲの声が響く。 「塾長!連絡が入りました。なんでも探していた人物が見つかったそうです。」 短い時間ではあったが、ルイズの異世界旅行譚は終わりを迎えようとしていた。 あの戦争から二日後のことである。 ここ、新男根寮の地下から何か声が聞こえる。 いつの間にか出来上がっていた階段を降りた所には、王大人にシエスタ、ルイズの使い魔達は勿論のこと、 タバサやキュルケにギーシュ、そして怪しい覆面をした助っ人二号がいた。 いや更にもう一人、助っ人二号の横に、服の上からでもスタイルが良いと分かる女性もいた。 助っ人二号と同じ怪しげな覆面をしているその女性は、助っ人四号と名乗った。 王大人と助っ人二号が今回のために連れてきたという、ルイズと関係の深い女性である。 「貴様等、準備は良いな?」 その声に、皆が思い思いの声で肯定の返事を返す。 「貴様等の想いこそが、今回の逆神毬送りに於いては鍵となる。何か質問はあるか?」 するりとしなやかな手が挙がる。 王大人が目線で促すと、質問者の助っ人四号は声を挙げた。 「もし失敗しましたら、どうなりますでしょうか?」 「貴様等全員が死亡して終わるだけである。想い残すことがあるのならば、大人しく退くがいい。」 微塵も表情を変えずに、残酷なことを告げる王大人に、皆が静まりかえ……らない。 「どうせそんなことだと思ったぜ。」 「フン、問題ないな。」 「成功させれば良いだけのことでしょう。」 いつものことだと騒ぎ立てる周囲の様子を意に解することなく、王大人は真っ直ぐに助っ人四号を見つめる。 助っ人四号はその眼をじっと見つめると、破顔した。覆面の上からでも、その笑顔は美しいのがわかった。 「安心しました。たとえ私達が失敗してもルイズに害はないのですね。」 ルイズがいたおかげで、自分は好きだった人にも会うことができた。 ルイズがいたおかげで、トリステインは滅亡の危機から救われた。 ならば、今回自分が命をかけるくらい、どれほどのことがあろうか。 そう助っ人四号は、アンリエッタには命を懸けるに足る理由がある。 それに (私達は親友よね、ルイズ?) たとえ理由がなくともアンリエッタは命を懸けるに違いない。 アンリエッタが促すような視線を向けると同時に、皆の視線が王大人に集まった。 王大人が重々しげに口を動かす。 「それでは只今より、逆神毬送りの儀を執り行う!」 「えーーー。もう帰ったですって!」 ルイズが思わず声を挙げる。 そう、ルイズの帰還の手がかりを知るという人物は既に帰ったという。 それでは意味がないじゃない、と詰め寄るルイズに、民明丸は後ずさりながら返事をする。 「ま、まあ落ち着け!ちゃんとハルケギニアに渡るための方法は聞いたから」 その言葉に、ようやくルイズの勢いが止まるが、今度は、いいからとっとと吐きなさい、とでも言いたげな視線が民明丸に突き刺さる。 そこへ江田島が本題へと入るように促す。 「それで何をすれば良い?」 「うむ。男塾に伝わる秘儀、神毬送りをお願いしたい。」 その言葉に江田島の顔が険しくなる。 民明丸は、気づいたが、それを無視して話を続ける。 「その際に、彼送還者はこれを持っているように、と阿諷呂は言っておったな。 なんでも、今ならこれが地球とハルケギニアを繋ぐ鍵となりうるらしい。」 そう言って民明丸は一つのロケットをルイズに手渡した。 つい中を開いたルイズの目に、黒い髪の、綺麗な女性の写真が飛び込んできた。 よほど丁寧に扱っているのだろう。 経年劣化はしているが、それ以外に汚れはなく、とても丁寧に保管してあったのがわかる。 他人の心に土足で入り込むような感じを覚えたルイズは、ロケットを閉じてじっと握りこんだ。 もうここには用はない、とばかりに立ち去ろうとするルイズの背中に、民明丸の声がかかる。 「そのロケットは、ついでに王大人に渡してくれ!とのことだ。よろしく頼む。」 振り向いたルイズは、その言葉に大きく頷くことで返事とした。 「わしが男塾塾長江田島平八である!全塾生は速やかに校庭に集まるように」 江田島の声がスピーカーから流れ出る。 普段スピーカーから聞くことのないその声に、新一号生達が怪訝そうな顔をしている。 そう、まだ三号生との対面式を済ませていない彼らは知らないのだ。 江田島しか三号生への命令権を持っていないということを。 まだ一号生しかいない校庭が多少のざわめきに包まれている。 「のう、平賀に東郷よ。三号生ってどんなやつらじゃろうな?」 その中の一人が、新一号生の中でもとりわけ目立っている二人組みに声をかけた。 「フン。知るか。」 「きっと鬼みてえにいかついやつらばかりじゃねえのか?こんなところに二年以上もいるんだぜ。」 バイクに跨った男が無愛想な返事を返す中、雲をつくような巨漢の男が陽気に言葉を返す。 陽気に帰した方は、幼い頃から叩き込まれていたという馬蘭弩磐流範魔亜術の才能にようやく開花した男である。 それは、この男塾に入ってから身長が40cm以上伸びるという脅威の成長を遂げたからでもあるが、詳細については本編とは関係がないので割愛する。 しかし、そんな陽気な会話も長くは続かなかった。 彼らの世話係を行っていた江戸川が大声を張り上げる。 「全員、気をつけーーー!」 その声がした瞬間、場が静まり返った。 平賀と東郷だけが目を光らせて前方を見つめている。 閻魔と恐れられる男塾三号生、そして男塾死天王の入場である。 「わしが男塾塾長江田島平八である!全員そろったようだな。」 場が一触即発の空気を含みはじめた頃、江田島平八が壇上から声をかける。 「塾長!我々までお呼びとは、一体いかなる事態でしょうか。」 皆の疑問を代表するかのように、影慶が質問をする。その目はいたく真剣であった。 「貴様等、新二号生達のために死ねるか?」 三号生達に向かって放ったはずのその言葉であるが、三号生達に動揺はない。 全員取り乱すことなく江田島の方を向いている。一方、その言葉に一号生達の方からざわめきが起こる。 「静まれい!まだ面識がない貴様等にまで命をかけよとは言わぬ。出来るか、影慶よ?」 「これは塾長とは思えぬお言葉。親が子の為に命をかけるのが真理であるならば、先輩が後輩の為に命をかけることもまた真理でありましょう。」 不思議と透き通るその声に、ざわめいていた一号生達ですらも静まりかえる。 三号生達が無言で前へと進み出た。全員影慶と志を同じくする猛者達である。 その様子に満足した江田島は、神毬送りの説明をはじめた。 理屈は簡単である。 ハルケギニアと男塾、双方と強い繋がりのあるルイズを一度ハルケギニアに送り返す。 その際に、この地球と強い繋がりを持つ物体を持たせる。 それを用いて頃合を見計らって、同じく王大人が神毬送りで全員を地球に送り返すというものだ。 ただし、問題点はいくつもある。たとえば必要とする気の量だ。 刀一本を地球上のどこかに送るのですら、莫大な気を必要とする。 それを今回は異世界へと人間を送り届けるのだ。 人は不可能と言うに違いない。 しかし、三号生達の顔に恐れはない。 ルイズを中心として、二重の円が出来ていた。 内側に三号生達、外側に一号生達である。 今回直接念を送りつけるのを三号生達が担当し、一号生達はただのブースター役に過ぎない。 「いくぞ!貴様等準備はいいな。」 羅刹が声を張り上げる。 そうして男塾の秘儀、神毬送りが始まった。 「「「「「「ハアアアアア!」」」」」」 三号生達が次々と念を送り始めると場から光が溢れ出した。 その光を浴びながら、ルイズは一心にハルケギニアのことに思いを馳せていた。 一方ハルケギニアに於いても、皆一心不乱に念を込めていた。 「くっ!」 ギーシュが呻いて体制を崩しそうになったその瞬間、 「しっかりしたまえ!」 助っ人二号が、ウェールズがギーシュを支える。 また、タバサが倒れそうになって、キュルケに支えられていた。 確かに彼らの体力は、男塾の猛者達と比べる少ない。 だが、体力では劣っていても決して心は折れていない、否、折れるわけがない。 歯を喰いしばって、支えあいながら、それでも彼らの目の光は衰えるどころかむしろ輝きを増していた。 (ルイズ様!早く帰ってきて下さい!) シエスタの祈りが響いたその時、一際強い光が発生した。 (くそ!俺達はこんなものかよ!) 平賀は悔しさから唇をかみ締めていた。 見渡すと、一号生達が次々と力尽きて倒れていく一方で、命をかけている筈の三号生達に脱落者はいない。 限界を遥かに超えて出血を重ねている者もいるというのに、なおも気合の声を挙げ続けている。 そこ平賀一号生は埋めようのない差を感じた。 確かに、自分達は現在の二号生とはあったことがない。 だが、 (そんなこと関係あるかよ!) そう関係なく、今の自分達ではたとえ二号生を知っていたとしてもあそこまで出来そうにないのだ。 だからこそ、平賀一号生は声を張り上げる。 「てめえら!俺と違って好き好んでこの学校に入ったんだろうが!ならば気合の一つでも入れやがれ!」 自分も限界が近い中、平賀一号生は声を張り上げることで己を鼓舞する。 見ると隣では、東郷が更に気合を入れているのが分かった。 (負けてられるか!) さらに強くそう念じると、それに共感するように周りの一号生達の出力が挙がるのが分かった。 「入学時は一番華奢だった平賀にあそこまで吼えられて、黙っていては男がすたるぜ!」 珍しく、東郷が雄叫びを挙げる。 そうして一号生達の出力は臨界へと近づいていった。 (いつか必ず、先輩達を超えてみせる!) 平賀一号生は強く念じた。 「今年も一号生達は豊作のようだな。」 センクウが話しかける。如何に男塾死天王とはいえ、既に余裕などない。 「ああ。俺達もうかうかしてられねえな。」 卍丸が軽口で返す。 たとえ彼らに余裕がないとしても、搾り出さねばなるまい。 何故ならば、彼らは三号生の、それも死天王であるのだ。 「これが最後だ!全員気合を入れろ!」 赤石の声が大きく響き渡った。 次の瞬間、湧き起こった光がルイズの元へと集まる。 「今だ!嬢ちゃん、強く念じろ!虚無の魔法の可能性は無限大だ。」 デルフリンガーの声が響く中、ルイズは更に強く念じた。 (みんな!私絶対に帰るから!) その時、ルイズを中心に集まった光が爆散した。 「「「「「ぬおー!」」」」」「「「きゃあ!」」」 新男根寮の地下に衝撃と光の奔流がほとばしる。 全員思わず体制を崩してしまう。 だが、光が治まった次の瞬間、 「みんな、ただいま!」 顔を涙で濡らしたルイズがそこに立っていた。 「「「「「ルイズ(様)!」」」」」 ルイズがハルケギニアに帰還した瞬間であった。 男達の使い魔間章 ゼロのルイズが塾長に拉致されました 完
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/54.html
トリステイン魔法学院の秘書、ロングビルはもう何もかもブッ壊してやりたい気持ちだった。 緑のロングヘアに眼鏡が似合う、知的そうな美人である。だが今はそんな雰囲気は微塵も無く、身体を震わせながら身体の内に壮絶に込み上げてくるドス黒い殺意を必死に押さえていた。 何故そんな状況なのか? ロングビルのいる場所は魔法学院の最高責任者であるオールド・オスマンの仕事部屋である。そこにロングビルを除いて二人の老人がいた。 一人はこの部屋の主であるオスマン本人。そしてもう一人こそがロングビルの苛々の最大の元凶だ。学院の生徒であるルイズ・フランソワーズが呼び出した使い魔、マトリフである。 立場も肩書も全然違う二人は現在、揃いも揃った動きでロングビルの身体を思いっきり撫で回していた。好色極まりない顔で「\(^O^)/うほほーい」とか言いながらその手をミミズの如く這わせて来る。 ロングビルは、たまらずその手を払い退けたがその隙にもう一つの手に尻や乳を触られる。その手を掴んで殴り倒した所でまた手……。そんな光景がもう三日も続いていた。女なら彼女でなくても冒頭の様になるというものである。 「もみもみ……いやぁ召喚された時にゃ一体どうなる事かと思ったが……ここも中々どうしてパラダイスじゃねえか♪」 「ほっほっほ♪そうやって人生を楽しめるのも年の功じゃて。ん~すりすり♪」 「馬鹿言っちゃいけねぇ。これでも俺はまだ99歳だぜ……おっと……この肌触り!……人間が200年以上生きてるってどんな化け物……だよ」 「まあそう言ってくれるない。けど長生きの秘訣は……ああんそこ儂が取って置いたポイントなのに……やっぱりいつも変わらず横で微笑んでくれる美女の存在じゃな……儂くらいの良い男になればまだまだ余裕のよっちゃんじゃて♪……のぅ、ミス・ロングビル?」 「ええ……そうですわねミスタ・マトリフにオールド・オスマン」 たわいない日常会話で包まれながら、その実子供にはとてもお見せできない波状攻撃にもロングビルは堪え続けた。 彼女がこうまで我慢しているのには理由がある。彼女のロングビルという名は偽名であり、その正体は巷をお騒がせ中の怪盗フーケだった。 土のゴーレムを使った犯行は時に慎重に、時に大胆に行われ、そんな彼女を人々は『土くれ』と呼んだ。そして今回の『土くれ』のターゲットはこの学院の宝物庫の宝である。 なればこそ、秘書になり、情報を得ながらオスマンのセクハラにも堪えてきたのだが……。 (何でセクハラジジイがもう一人増えてんのよ!!) 胸中で彼女が絶叫した。もう一人とは勿論マトリフの事だ。 魔法が使えず『ゼロ』と評された学院一の有名人、ルイズが春の使い魔召喚の儀式で呼び出したこの老人はつい三、四日前に、生徒の一人であるギーシュ・ド・グラモンと決闘騒ぎを起こし、その時に使ったとされる魔法の様な妙な力について問い正す必要がある、とオスマンに呼ばれたのだった。しかし…… (このエロジジイのどこに力があるって言うんだい!!いつの間にか学院長室に入り浸ってセクハラ三昧じゃないか!!) 初対面から恐ろしくウマが合ったらしい二人はこの三日間、『力』について碌に聞き出そうともせず、それどころかがっちりとタッグを組んで、もうそれはフリーダムにロングビルの身体を狙って来る。 一人だから堪えられたセクハラが倍増したのだ。おまけにこの男はオスマンと違ってこちらの攻撃をあっさりとかわしてしまうのである。 溜飲を下げられる術が無い事も手伝って彼女の理性はもはや限界に近かった。 「\(^O^)/うほほーい♪次は『直』にチャレンジしてみようかの」 ブッチーン! 訂正、既に限界であった。突如静かになった彼女はいきなり屈んだかと思うと恐ろしい早さで二人の手を叩き落とした。そのまま身体を反らし、その勢いで後ろへ跳ぶ。空中で綺麗に一回転して着地した彼女の手には杖が握られていた。 「ははは……もういい……もう終わりにするよ……」 顔に手をやり、虚ろな乾いた笑いをロングビルが上げる。この三日間でありとあらゆる箇所を触られ、すっかり汚れきってしまった自分が上げるには相応しい笑いではないか。 手を上げゆっくりと髪をかき上げた瞬間彼女の目の白黒が反転し、濃密な殺気と怒気が部屋中に充満する。それと同時に部屋の窓を影が射した。いや、影ではない。土で固めた巨大な『腕』がこの部屋目掛けて殴り掛かって来た―― 「死ねええええええ!!このエロジジイどもがああああああ!!」 轟音ともの凄い衝撃が起こり、オスマンの部屋が半壊した。ゴーレムの開けた穴を中心として壁や天井に無数の亀裂が入る。 倒れている二人の老人を尻目に、部屋の中心を陣取るゴーレムの拳にロングビルが跳び乗った。杖を一降りしてゴーレムを操作すると、ゴーレムの開けた穴からそのまま外へと脱出して行く。 「おーいてて……あの秘書さんちょっとジョークがキツ過ぎねえか?また腰いわしちまう所だったぜ……ん?どした?」 マトリフが腰を押さえてよっこらせと立ち上がる。だがオスマンはゴーレムの開けた穴をじっと見たまま動かないでいた。この三日の付き合いの中では二人だけの時のみに見せる顔である。 「どうしたもんかのう……どうやらミス・ロングビルは巷で噂のフーケだったらしいんじゃよ」 「……何だよ?そのフーケって」 鼻をほじりながら適当な調子でマトリフが聞き返す。オスマンはフーケの事を掻い摘まんで説明した。 「はん……!まあ大体はわかった。それが何でこんな所で秘書なんかやってんだ?」 「おそらく目的は学院の宝物庫じゃろうな。うかつじゃったわい。あの乳に騙されてつい色々喋っちゃったかもしれん。セクハラに怒らなかったからと酒場でスカウトしたのはやはり間違いじゃったか!」 心底悔しそうな顔をするオスマンに「さっきまでノリノリで触ってたじゃねえかよ」とマトリフが突っ込みを入れた。すぐに「お主もじゃろ?」と手痛い反撃が帰って来る。部屋が壮絶な状態になってるにも関わらず二人の顔は余裕そのものだった。 「それで、どうすんだ?こっちの世界の魔法じゃ『あれ』を相手にするにはちとしんどいだろ?」 「やむを得んのう……ここはお主の力を借りるとするか。やれやれ、城やアカデミーの連中に嗅ぎ付けられん事を祈るわい」 「まあそこはあんたの裁量次第だろ?よろしく頼むぜ♪――おっとお客さんだ」 マトリフの言葉を合図とするかのタイミングで扉がノックされた。躊躇う様に数瞬の間を置いた後、扉が乱暴に開かれる。 「ちょっとマトリフ!いつまで学院長室にいるの!?私に魔法を教えてくれる約束でしょ!!……って何これ!?部屋がバラバラじゃない!!」 現れたのはマトリフのご主人様であるルイズだった。ピンク色の髪をなびかせ目を吊り上げたその形相が部屋の参事を見るにつれて困惑のそれへと変えていく。 そんなルイズの疑問にシニカルな笑みを浮かべてマトリフが答えた。 「見ての通り現在取り込み中さ。そこの学院長さんのセクハラが少々過ぎたみたいでな。秘書さんがとうとう癇癪起こしちゃったのよ」 え?儂だけ悪者?と言った顔で自分とマトリフを交互に指差すオスマン。それをルイズがジト目で睨む。 「どう見ても癇癪ってレベルじゃ無いじゃない!!学院長、今すぐミス・ロングビルに謝罪して来て下さい!!」 取り付く島も無いルイズの剣幕に、汚名返上の機会は永久に失ったと判断すると、ため息を一つついてオスマンが零した。 「あー、勿論儂もそのつもりなんじゃがな。どうも今回は彼女も本気らしくてな、ゴーレムを持ち出してきたみたいなんじゃ。だからそこにいるマトリフ君にちょっと手伝ってもらおうと思っとるんよ」 「いや今回『は』って……」 オスマンの弁解に女性としての怒りと途方も無い疲労感を生じさせながらも、ルイズは何とか状況を理解した。 「わかったわ。それでマトリフ。一体どうするの?」 「……まずこの壁が邪魔だな。ちょっとすっきりさせるわ」 そう言って二人を下がらせたマトリフが壁に手をかざす。「イオラ」と叫んだマトリフの手から純白の光球が生まれると壁を粉々に破壊した。 「これが『イオラ』だ。この前ギーシュのゴーレムに使った奴だな。お前さんの失敗魔法と似ている所もあるしあとでじっくり教えてやるよ。……さて」 見晴らしのよくなった部屋から外へと体を覗かせてマトリフがロングビルを捜す。巨大なゴーレムに乗っているのですぐに見つかった。既にこちらに背中を向けて宝物庫の方向へ歩き出している。 マトリフは「しゃーねぇな」と小さく呟くとロングビルの背中に向けて大声で呼び掛けた。 「おーい秘書さんよ!随分と軽いお仕置きだったけどもう終わりかい?なら今度は『直』に触らせて欲しいんだがなぁ!!」 その声にゴーレムの足がぴたりと止まる。術者の心を代弁するかの様にぷるぷる巨体を震わせたかと思うと腕を振り絞った体勢でこちらに向き直った。そのまま肩に止まっているロングビルが寒気の走る凶悪な笑みを浮かべる。 「そうですか……。わかりました。そこまで言うのなら――存分に堪能なさって下さいな!!『直』をーー!!」 言って『直』姿のゴーレムが再び向かって来た。向かって来る勢いを付けて繰り出されるであろう拳はまともに当たれば肉片すら残らずバラバラになる事が容易に想像できる。 思わず青ざめるルイズだが当のマトリフは動じない。腕を広げた格好をしながら教師の様な口調でルイズに語り始めた。 「炎の魔法と氷の魔法を全く同じ威力で合成するとよ……『矢』ができるんだ。この『矢』は強力でな、触れた物全てを無に帰しちまう」 この状況で突然何を言い出すのだ?マトリフの言う事がさっぱり理解できないルイズが非難の声を上げる。 「そんな事言ってる場合じゃ「この原理は魔法力の調整にある。+方向に魔法力を上げてやると炎魔法。-方向に下げてやると氷魔法だ。じゃあそれを合わせたらどうなる?」 そう言ってマトリフの両手から魔法が生まれた。説明通りに右手に冷気を、左手に炎の塊を掌に抱えている。二つの魔法を同時に操るというおよそ常識外の事をして見せたマトリフにルイズは見ている他無かった。 「+と-が合わさるとどうなるか?答は無(む)。つまりは『ゼロ』だ……そう、お前さんの二つ名だ。どんな魔法でも爆発すると聞いた時思ったよ……もしかするとお前さんの得意な系統ってのは、この魔法の様に常識の枠を越えた所にあるんじゃないかってな!」 マトリフが両手を合わせた。互いの魔法が溶け合って一筋の光が生まれる。弓矢を構える様にそれを引き絞ってマトリフがルイズの方をを向いた。 「まあ俺に任せとけって!ここに召喚されたのも何かの縁だ。この俺がいっちょ、お前を地上最強の魔法使いに仕立ててやらあ」 にやぁっと笑みを浮かべた後ようやくマトリフが外へ向き直った。いつの間にか間近に来ていたゴーレムが全体重を乗せて拳を出す。同時にマトリフも光の矢を打ち出した。 「さあぶっ飛びやがれデクノボー!!――メドローア!!」 解き放たれた光の矢がゴーレムの巨大な拳に突き刺さる。その瞬間拳は光に飲み込まれ、まるで太陽の様な閃光を放った。 光が収まり目を開けた次の瞬間、ルイズが見たものは体のほぼ全てが消失したゴーレムの欠片だった。燃えたのでも凍り付いたのでもない、まさに『消えた』のだった。 「やれやれ、久しぶりなもんで力加減間違えちまった。秘書さん生きてるかな……お、いたいた」 マトリフの視線をルイズが追う。土に戻ったゴーレムの足元にロングビルが倒れていた。気絶している様だが目立った外傷は無さそうだ。 「ふむ。ミス・ロングビルも無事なようじゃしこれにて一見落着かのう」 いつの間にか隣に並んだオスマンが髭をいじりながらしみじみと言った。「誰のせいですか!」と汗をたらしてルイズが突っ込む。 「まあそういうこったな……で、どうする?この一件、『上』に報告すんのかい?」 「いやあ学院内での事じゃし……。別に良いじゃろ。彼女には罰代わりにまた秘書をやってもらう事にするわい」 二人の会話をルイズはロングビルが暴れた事への処罰についての事だと思っていた。勿論二人にとっては『土くれ』のフーケの処遇の事であるのだが。 とにかくロングビルにお咎めが無かった事にルイズは安堵した。ついでに「学院長こそちゃんとミス・ロングビルに謝罪して下さい」と付け加える。 だが言われた当の本人は「軽いスキンシップのつもりだったのにのう」とかのたまっていた。駄目だこいつ早く何とかしないと。 と――ルイズはふと自分の使い魔を見た。同時にさっき言われた言葉が思い返される。自分の中にそんな未知の力があるのだろうか?今までずっと『ゼロ』と蔑まれて来たのだ。そんな実感などさっぱり湧いて来ない。だけど―― 「俺が地上最強の魔法使いにしてやるよ」 嬉しかった。マトリフの言ったのはただのハッタリかもしれない。けれども自分の失敗魔法を見た後に例えお世辞でもそんな事を言ってくれる者は一人もいなかった。魔法が使える事を望んでいたのではない。彼女の欲しかったのは自分を認めてくれる存在だったのだ。 ルイズが顔を上げた。いつの間にか自分の思いに耽ってしまっていたようだ。かぶりを振る事でそれを打ち消す。 とにかく今はこの使い魔に礼を言わねばならない。け、決してあの言葉に感動したとかそんなんじゃなくて、そう!ミス・ロングビルへの手際が中々良かったから、しゅ、主人たるもの臣下の者に対する労いが必要よね。あ、そうなると今後は床じゃなくてちゃんと机で食べさせる方が良いのかしら?うんそうね。それで寛大な自分を演出すればあのマイペースな男でもさすがに―― 脳内で様々な一人ツンデレシアターが上映された後、ようやくルイズは先程マトリフのいた方向へ向いた。照れと恥ずかしさで顔が赤くなってしまい、前を向けないでいる。 「あ、あのねわた……し…?」 途中で違和感に気付いてルイズは顔を上げた。見るとそこにさっきまでいた筈のマトリフがどこにもいない。不審に思ったルイズが辺りを見渡すと―― 「……という事はじゃな。これはもうOKの証だと思うんじゃが?」 「ああ、『存分に堪能なさって下さいなー!』だろ?主語が抜けている以上、もうこれはGOサイン以外の何物でもないと思うぜ」 「嬉しいのうww嬉しいのうwwこんなたぎった気持ちになるのは実に30年ぶりじゃて」 「170歳でたぎるジジイなんか初めて知ったよ……ったく。あんたに比べりゃ俺もまだまだ子供だな。……という事で子供は子供らしく色んな所を触らせてもらうとするかな♪」 「ああん!ずるいずるぅい!そのポッチは儂が先なんじゃあ!!」 気絶したロングビルに二人のジジイが我先にと群がっていた。性欲を満面に押し出した顔で鼻息荒く迫るその姿は誰が見てもヤバイ光景である。 ルイズは黙って杖を構えた。怒りで身体はぷるぷる震え、杖を握る手は痛い程なのに頭の中はスッキリしている。今ならおそらく百発百中であの汚物どもを消し飛ばせそうだった。 ルイズの殺気を感じたのか二つの汚物が凄惨な顔でこちらを向く。が、時既に遅くルイズの咏唱は完了した。 「し…し……死ねえええええぇぇぇ!!この性犯罪者どもおおおおおおぉぉ!!」 ルイズの叫びは特大の爆発へと変わり、二人の老人を吹き飛ばしたのだった。