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タイトルのまま、JOJOとフルメタが冒険をするストーリー ちょっと電波はいってる 等身大と巨大ロボットとが混合した、まさにSRCならではの作品だッ! だがッ! ジョジョが都合よくバンプレロボに乗って戦うとか、そうゆう、 ギャルゲヲタきもいんだよどうやったらそういう発想になんだよ知障どもが的な よくある軟派なシナリオではない! ジョジョは生身で戦わなくてはならない しかもモビルスーツサイズくらいに巨大化した「柱の巨人」たちを相手に! (いや、宗介はさすがに生身じゃないけど) 無茶だ! 無茶すぎる! だがそこにシビれる憧れるゥ! うまく戦えば生身でデスアーミーとか倒せてしまうJOJO! サイコーだ! [戦闘] 難易度は高い! ダメージをくらえばくらうほど攻撃力も低下し、不利になってゆくシステムに なっているッ! しかも! にもかかわらず修理装置をしてくれるユニットが いないというのだから、黙ってはいないスキャンダル! 「柱の巨人」たちに対して、アームスレイブはたしかに火力でまさる…… だがッ! 素体Lv16のヤツらは絶対に「波紋」使い以外には倒されることはない JOJOォ! 「波紋」エネルギーは「太陽」のエネルギー! 攻撃力の高い武器でヤツらの体力を削った後、JOJOの波紋でとどめを 刺さなくてはならないッ! ……これがまた難しい! ザコもてごわいッ 例えばデスアーミー! 殴っても殴ってもポンポン 蘇ってくると思ったら、どうりで素体Lv4! ……たしかにキリがないッ! [登場作品] これがまた 非常に混沌としている…… 「柱の巨人」のためになぜフォーミュラ!? と疑いたくなる サイバーフォーミュラや、半ばスーパーロボットなZガンダム…… そして忘れてはいけないのは、ピンチの時にとつじょ高い所から現れる変態、 ”クロノス”のロム=ストール ……かれの強さは異常だ! 作者の登場作品に向ける愛の強さをうかがい知ることができようッ…… [総括] ジョジョ第2部、フルメタル・パニックの両方を知っている者なら 今スグやれ! Ver2.0には対応していないので、起動時にエラーの嵐だが、気にするなッ! しかし!…… なんと! ……ああ! ……あえて言わせてもらうなら! JOJOを語る上では逃れられない超人間、 シュトロハイム少佐が出てこないとは 何事だッ! それだけが惜しまれると思いつつ…… わたしは筆を置き旅に出ることにする。 2852年7月8日 岸辺露伴 7話で詰まったので取りあえずそこまでの感想で。 SRPGWの国盗りをかろうじて終わらせた程度の人間には厳しい難度。 正確にはむらがあると言うべきか。 楽なところは楽なんだがきついところは激しくきつい。 とはいえ展開も悪くないし、JOJOしか知らないが今後の展開に期待は持てる。 ……ただな。eveファイルを見る限り最後が上のカキコであったとおり打ち切り風味だ。 完結ストーリーしか受け付けない人間は辛いかも知れない。 ヘタレの俺にはこれが限界だ。先に進む自信もないし。 敵が落ちる前にこっちがガンガン落ちる……orz
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もともとはとあるスタンド使いたちの集団だったが、激化する『不可能な』凶悪犯罪及び、『超常的』凶器。 それらに対抗する為、司法執行機関の依頼を受け、それに属する集団となった。 固定メンバー4人の他、事件に応じて別にスタンド使いの協力を得ていた。 メンバー二人の死亡及び、オレルド・オルブレンの離脱を以って、機関としては成立が難しくなり、解体されている。 ・メンバー ・城島静人『ユニオン・ジャック』 ・オレルド・オルブレン『ファントム・ロード』 ・ジャン=ミッシェル・ジャックミノー『マーシフル・フェイト』 ・オリビア・オンスモルガン『トータル・エクリプス』
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能力者達が足繁く通う焼肉屋。 良質な肉とヴァニラ・アイスが美味しい優良店。 注文したものがすぐさま届いたりするので店員や店主に能力者疑惑がある。やれやれだぜ。
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「自信をたたき折るとか…………そんなめんどくせーことはどうでもいいからよ……。 早くそいつ開放してやれよ……人が死ぬのを黙って見過ごすのはよ……夢見がわりーからな……。」 「ククク……こいつを放してほしいんだったらこの俺を倒すんだなッ!」 芥川――以降は親しみを込めて「アクター」と呼ぶことにしよう――がそういうと同時に、二人は戦闘態勢に入った。 両者の距離は「5m」といったところ……それから少し離れて亜希がいる。 (……なんてこった(オーマイ)…………俺の『腕』の射程は俺の本物の腕自身とほぼ同じ……。 精精1mがいいとこだ。……大して相手のスタンドは上半身が発現されている分、俺の『腕』よりリーチが長い……。 この「リーチ」…………どうやってカバーしたもんかな……やれやれ……。) (くそが!気取りやがってこの男――ッ!!こいつは俺のことをナメやがったんだから死にかけて当然! 自業自得の男だってのにッ!さてはこいつも俺のことをナメてんだなッ?俺のことをナメる奴は全員 俺の『ブラック・アイズ・ピース』で窒息してくたばりやがれ―――――ッ!!!) (JOJO……確かに君の言うとおり、戦闘は君に任せる……。でもね……もし君が危険になったら、 たとえ戦闘の最中だろうと容赦なく介入するからね…………。) 三者三様の思惑が交錯する……。 「………………。」 「………………。」 両者の間に緊張が走る。両者ともに微動だにしない。うかつに隙を見せれば、相手にやられるからだ。 いくら射程が短いとはいえJOJOの『腕』。パワーとスピードは間違いなくトップクラス。 これは侮れないことをアクターもJOJOの放つ「凄み」から察したのだろう…………。 と、唐突に足を擦る音ッ!沈黙を破ったのは……!! 猫……だった。偶然通りがかった猫だ。二人の剣呑な雰囲気に圧され、逃げただけのようだった。 「……猫……やれやれ、紛らわしいぜ」 JOJOが猫に対して呟く。ほんの一瞬の油断。しかし、アクターはそれを見逃さなかった。 一瞬で、たばこが燃える。煙が増大する。 「『ブラック・アイズ・ピィ―――――ス』ッッ!!!」 増量した煙の量で、『ブラック・アイズ・ピース』の全身像がその姿を現す……。 そして、JOJOめがけ突進する! 『オオオオオオオオッッシャアアアアアアッ!!』 『ブラック・アイズ・ピース』が雄たけびをあげる。大気が震える……。JOJOも、感じたことのない怖気を感じる。 自然と、構える『腕』にも力が入る。 「食らわせろッ!『ブラック・アイズ・ピース』!」 「来い……迎え撃ってやる。」 両者の距離が縮まる……『ブラック・アイズ・ピース』とJOJOの距離――1mッ! 『オオオオオオオオッ……シャシャシャシャシャシャアアアアア―――ッ!!』 「うおおおおおおおおおッ!」 『腕』のラッシュと『ブラック・アイズ・ピース』のラッシュのぶつかり合い。 右の拳と左の拳が衝突する。しかし両者の拳にもヒビひとつ入ることはない。 両者のパワーは互角。残るはスピードの勝負だが……数瞬の拮抗の後……。 『ウゲェ!』 「やったっ!敵スタンドよりもJOJOの『腕』のスピードの方が上だァ!」 亜希がうれしそうに叫ぶ。 JOJOの『腕』が打ち勝った。JOJOがこれ幸いと『ブラック・アイズ・ピース』の方へさらに踏み込む。 ……が…………。それ以上進むことはない。もちろん、とどめのラッシュを叩き込むこともできない。 「……どうした?え?踏み込めよ……ラッシュに打ち勝ったんだ……流れはお前にあるんじゃあねえか? ……それとも……まさかできない理由でもあるんじゃあねーだろォなァア~~~?」 ラッシュで打ち負けたにもかかわらず、あせりひとつないアクターはニヤリと笑う。 (……く…………こいつ……シラジラしいぜ……さっきのラッシュ勝負のとき、 少しずつてめーのスタンドの体を煙状にして俺を吸い込ませて………… 徐々に酸欠状態にさせていやがった……くそッ……不覚をとった……ぜ……。) ついにJOJOはひざをついてしまう。 「俺の啖呵に変更はねえッ!邪魔をするならきさまもあのゴロツキと同じように 白目剥かせて気絶させるッ!今から謝るなら許してやってもいいがなァア~~~~ッ」 JOJOの目の前まで行き、見下した調子で話し始めるアクター。 彼は完璧に勝ち誇っていた。当然だ。相手はひざをつくまでに酸素が足りない状態。 もはやまともにスタンドを動かせる気力もない―――――。 「じょ、JOJO!やっぱりだめだよ!私が!」 「いや。亜希……余計なマネはするんじゃあねーぜ。やっと……この極限状態でつかみかけてきたんだ。」 止めに入ろうとする亜希を静止するJOJO。 彼の傍らにいる『腕』の表面には、何か「メラメラしたもの」が踊っている。 「俺の……『スタンド』……俺のスタンドはな…… 腕だけなんかではなかった(●●●●●●●●●●●●)ッ!」 瞬間、JOJOの体から『何か』が剥離するッ!! 現れたのは亜希の『グラットニー』やアクターの『ブラック・アイズ・ピース』のような…… 「人」……『人型スタンド』!!全身に腕と同じような炎の模様、頭部は流線型に延びている。 随所にパイプのような装飾があり……そして何より。 「……なんだ……この『スタンド』はッ!? このスタンド……『腕が燃えている』ッ!!」 腕が燃えている……そう、アクターの言うとおりである。 「なんだかよくわからんが、このまま余裕ブッこいてお前に能力を把握されるのは俺にとって困ることだぜ……。 悪いがこのまま畳み掛けさせてもらおうかッ!!」 『ウオオオオオオオオオシャアアアアアアアッッ!!』 得体の知れない「不安」から、一気にとどめをさそうと向かうアクター。 『ブラック・アイズ・ピース』の拳が『人型スタンド』の頭部めがけ振り下ろされる! しかし『人型スタンド』が動く気配はない (……?なぜ動かないんだ?こいつまさか人型スタンドを出したはいいが、もう操作できるパワーはなかったってことか!? こいつは笑いものだぜッ!何はともあれこのまま決着をつけさしてもらうッ――!) フルスイング!『ブラック・アイズ・ピース』の拳が振り下ろされたッ! ……が、そこに『人型スタンド』はいない。JOJOもいない。 不振に思ったアクターは、周りを見渡す。……いた。JOJOと『人型スタンド』は自分の左に移動していた……知らぬ間に……。 「……フン!一瞬何が起こっているのか分からなかったが、何かと思えばただの「瞬間移動」かッ! そんなちゃちな不意打ち、この俺に二度は通用しねーぜッ!!」 手品も種が割れればなんてことはない。アクターはJOJOを蔑み、さらなる攻撃を加えようと……。 「……どうやら、分かってねーようだな。自分の身に、何が起きているのか……。 足元を見てみろ、貴様はすでに負けているということが分かる。」 JOJOに言われて、アクターは下を見る。下には、地面にめり込んでいる自分の足。 「……馬鹿なッ!?いつの間に……いや、スタンドは1人1能力!! 「瞬間移動」と「めり込ませる」能力は2つ!つじつまがあわない!おかしいぞ!!」 「……やれやれ……信じられないくれーどんくせーやつだな……。亜希、説明してやれ。 お前の位置からだったらよくわかったろ?俺のスタンド能力が。」 「……うん、分かったよ。アクター……でいいのかな?君、JOJOが瞬間移動したと思ってるみたいだけど、 それは違うよ。動いたのは……JOJOじゃない。 君が動かされたんだ(●●●●●●●●●)。アクター、君自身が……ね。」 亜希がそこまでいうと、アクターもさすがに『自分が何をされたのか』気づいた。 「……まさか貴様ッ!その『炎』のついた両腕でッ!!地面を『粘土』みてーにドロドロにして…… 俺の足を埋め込んでラッシュの方向をズラしやがったなッ!なんて抜け目ないやつ!!」 やっと分かった様子のアクターに、JOJOはニヤリと笑う。 「……そこまで分かってりゃあ、もう十分だろ。降参しな。」 これは、JOJOなりの精一杯のやさしさだった。もうここまできたら、アクターに勝機はなかった。 だが、アクターはそれに気づかない。 「……何を言うかと思えば『降参しろ』だとォオ~~~~?やっぱてめー俺のことナメてやがるなッ! こんなコンクリぐれー、俺の『ブラック・アイズ・ピース』だったら破壊することは造作もね―ぜッ!!」 「……やれやれ…………いっそコンクリートも破壊できない程度のパワーだったら…………。 幸せだった(●●●●●)のによォ…………。」 JOJOのその言葉に、やっとアクターは自分の置かれている状況に気がついた。 さきほどまでひざ程度までしか埋まっていなかった自分の体が……既に腰まで埋まってしまっている。 うずくまっているJOJOとほぼ同じ目線に来ているのだ。 「…………!! 俺の体が……どんどん埋まって来ている……!?」 「ああ、そのとおりだぜ。たとえお前の『ブラック・アイズ・ピース』とやらがコンクリートを破壊できるとしても、 お前ひとりをひっぱり出せるほどのパワーはねえだろう?悪いがこのまま埋まってもらうぜ……!」 JOJOが無慈悲な言葉を投げかける。 「う、うわああああああああああァアアアアアア~~~~~~~~~~ッッ!!! …………なんてな。」 アクターが恐ろしさのあまり悲鳴を上げた。……かと思いきや、急に態度を豹変させる。 「……その程度でてめー……いい気になりやがって……俺の体が半分埋まってるから、 もう俺に勝ち目はねーとナメてかかっていやがったな?馬鹿にしやがって…………。 俺はナメられるのが何より嫌いなんだよ――――ッ!!」 咆哮をあげるアクター。 「……お前に聞こえるか?この『地響き』が。この際だから教えてやるがよ……。 俺のスタンド像の「本体」は……ほんの少し……腕が一本作れるかくれーの「煙」だ。 なら何故俺が「人全体」を形作れるほどの煙を持ってると思う?なあ、分かるか……これはお前にとっても重要な問題なんだぜ。 「煙」ってよォ~~~……排気ガスとかタバコの煙とかいろいろあるが……俺は全部同じに見えるんだよなァ……。 まして混ざっちまえばよォ……もう同じ煙にしか見えねェよなァ……!!」 「……!!まさか!きさま……。」 アクターの話に、思わず戦慄するJOJO。 「そォうだッ!俺のスタンド能力は『ほかの煙を自分のスタンドの一部にする』ことッ! 最近はエコやらなにやらでいろいろ削減されちまってはいるが……それでもお前を倒すための煙は十分集まったッ!!」 アクターの背後にいる『ブラック・アイズ・ピース』……すでに大きさは『グラットニー』に匹敵するものになっているッ! 「そして俺のスタンドは煙の密度が高まるほどパワーが増加するッ! これを一気に人間サイズに押し込めてェェェ――――。」 アクターの号令とともに、3mを超える大きさだった『ブラック・アイズ・ピース』が小さくなる。 そして、その色合いはさらに濃くなっていく。 「これで俺の『ブラック・アイズ・ピース』……おまえの『人型スタンド』のパワーは超えた……きさまをブッ飛ばしてから ゆっくりと脱出してやるぜェエエ―――――――ッ!!」 『オオオオオオオオオオオオオオッッッ………………ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――――ッッ!!!』 『ブラック・アイズ・ピース』の雄たけびとともに、嵐すら吹き飛ばしてしまいそうな力強いラッシュが飛ぶ。 一瞬でJOJOの姿が見えなくなった。……しかし、ラッシュは続けられる。 「JOJO……!」 亜希も思わずJOJOの身を案じる。 「…………。」 ラッシュが過ぎ去ったとき、そこにあったのは…………。 無傷のJOJOッ!! 「……やれやれ……煙を全部集めてパワーアップだと?かえって俺にとっては好都合だったな……。 だっておめー……俺の口にまとわりついてた煙も、ゴロツキの煙も、全部集めてくれたもんなァ……。 酸素さえあればてめーのスタンド、スピードは俺のスタンドの敵じゃあねー。 俺のスタンド能力でお前のスタンドの腕を歪ませて、ダメージは回避させてもらったぜ。」 「な……何ッ……。」 見ると、『ブラック・アイズ・ピース』の両腕はあらぬ方向に曲がっていた。 だが、本体であるアクターの腕はなんともない。 「やれやれ……煙を集めて操るスタンド……。どうやら人型をどれだけ破壊しても煙だからダメージはねーようだな。 だが、修復しねーと格闘はできねーぜ。」 「……しまったッ!この間合い……『ブラック・アイズ・ピース』の形を治している暇が……。」 アクターがそれに気づいたときには、もう遅かった。 「苦労したんだ……このままブチのめさせてもらうぜ。」 『人型スタンド』が拳を構える……。まとう炎が強く揺らめき……。 『FIREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE―――――――――――ッ!!!!!』 高速のラッシュを叩き込むッッ!! 「うげエエエ――――ッッ!!」 アクターもたまらず吹っ飛ぶ。……が、目だった怪我はない。 「……俺のスタンド能力。アクター、てめーを粘土みてーに軟らかくして俺自身のスタンドの拳を無効化させた。 そもそもお前はゴロツキに絡まれただけだからな……病院送りにはしねーさ。」 ……かくして、JOJOの初陣は白星に終わった。 「JOJO!!大丈夫だった!?」 亜希が心配して駆け寄る。と、JOJOがクラリと揺らぐ。 「……どうやらまだ酸欠の影響が残ってたようだ。悪いが亜希……肩借りるぜ。」 そういって亜希に寄りかかるJOJO。そして倒れたアクターをチラリと見て……。 「そうだな。あいつも一緒に連れて行こうぜ。多分同じ方向だろーしよォ……。」 そう言ってアクターを指差す。本当は同じ方向であるなど、知る由もないのだが、JOJOはなんとなく、 「こいつとは近所な気がする」と悟っていたのだった。(スタンド使いは引かれあうものなのである。) そして、自宅近くへ向かうバスの中。最後尾の席で、JOJO、亜希、アクターが座っている。 ……まだアクターは気絶していた。 「……そうだ、亜希。」 「なあに?JOJO」 JOJOが唐突に亜希に話しかける。 「俺のスタンドの名前……決めたぜ。」 「何何!?聞かせて!」 「燃えるように『アツい』スタンド……。 俺のスタンドは……。」 「『ヒートウェイヴ』だ。」 JOJO⇒スタンド名決定。『ヒートウェイヴ』 アクター スタンド名『ブラック・アイズ・ピース』⇒敗北 To Be Contenued... 使用させていただいたスタンド No.459 【スタンド名】 ヒートウェイヴ 【本体】 川端靖成 【能力】 両手に炎をまとった状態になると、物体を粘土のように扱い、形を自由に変えてしまう < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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承太郎をベースにしたパロディキャラ。格好が ロックファンネルに似ているが成長したわけではない。 スタンド名:棒の白金 特徴:星の白金と同じ性質を持っている。 ~技一覧~ 通常攻撃:スティックフィンガー(しっぽ) 技1:プッツンオラ(クウェイクタックル) 技2:オラオラ(おらおら)
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四月上旬、ある晴れた日の放課後。JOJOは亜希とともに帰路に就いていた。 「あれから色々あったけど、結局何にも見つからないよー……。」 「……まあそんなもんだろ。」 こいつは――佐野 亜希……。 高校生活初日の放課後に知り合った女だ。あとで知ったところによると 年齢は15歳。(同い年だから当然だな。)父親は研究者をしていて、 学会ではなにやらムズカシイ論文で有名な人らしい。(『理由』にこだわるのはこの父の影響かもな。) こいつに俺は 恐怖は感じなかった。女らしくない言葉遣いはしているが 知性と親しみやすい態度があった。恐怖を感じたのはこのあと出会った奴だ。 「アクター」というあだ名で呼ばれた男だった。 「何しとんじゃッ!」 「なんのつもりだ きさまッ!」 バスを待っていると、向こうのほうからガラの悪そうな男たちが数人で、少年にたかっていた。 「……。」 少年は、「いまどきはやるのかそんなヘアスタイル?」と言いたくなるような髪形―― いわゆるリーゼントだった。 しかも気合の入った学ランを着ている。タバコも吸っている。 「なにってよォ~~ッ、この池のカメが冬眠から覚めたみたいだからただジィーッと見てただけだぜ。 カメってちょっと苦手なもんでよォオ~~~~ッ。さわるのも恐ろしいモンで……。 その怖さ、克服しようかなァ~~~と思ってさ……。」 「……んなこたァ聞いてんじゃあね――ッ!」 「立てッ!ボケッ!」 ゴロツキどもに言われ、渋々……といった様子で立ち上がる少年。急に立ち上がったもんだから煙が顔に被って苦しそうだ。 ……でかい。JOJOと同じくらい(190cm)はある。 「ほほォ~~~、一年坊にしてはタッパあるっちゃ~~~っ。」 「おいスッタコ!誰の許可もらってそんなカッコウしとるの?中学ん時はツッパってたかもしんねーがッ!」 そういって、ゴロツキの一人はカメを掴む。それを少年に突き出し……。 「うちに来たら、わしらにアイサツがいるんじゃあッ!」 「ちょ……、ちょっと爬虫類ってやつはニガテで……やめてくれよ」 それを少年はよけようとしている。口元がニヤついている。自分が置かれた状況を分かっていないのか? 「ウダラ何ニヤついてんがァ―――ッ!」 当然、ゴロツキのうちの一人はいい気分にはならない。顔を思い切りはたく。 唇の端から、血がにじむ。(当然だが)その瞬間、少年の顔から笑顔が消えた。 「…………。」 「何黙りコクってんだこのボケナスがァ――ッ!さっさと詫びいれねーと てめーもこのカメのように……」 そう言ってカメを振りかぶり、 「してやろうかッ!コラ――ッ!」 壁に投げつける。カメは床にしたたかに叩きつけられた。あれだけの勢いで投げられれば、もう命は助からないだろう。 「さ……さいてェー。」 亜希が呟く。 ゴロツキたちはというと、カメをいたぶったことで多少気が晴れたようだ。 「ケッ!心がけよくせーよー。今日のところはカンベンしてやる」 「その学ランとボンタンぬいで、おいていきな。それと銭だな。献上してってもらおうか。」 「…………。」 少年は無言だ。 「自業自得ってヤツだ。目つけられるのがいやならあんなカッコウするなってことだ……。 逆にムカつくのはカメをあんな風にされて、怒らねえあいつの方だ。」 JOJOが亜希に語りかける。 「おい!腰抜け!きさまの名前をきいとくか!」 ゴロツキのうちの一人が少年に声をかける。 「……1年B組、芥川……」 そのクラスを聞いた瞬間、JOJOと亜希の体が反応した。 「なにィ……1年B組……! (オーマイ……!どーして俺の周りにはこういう奴らが出てくるんだ……!?) 「芥川? 草冠に介護の「介」」 「「川」?」 ゴロツキのうちの数人が確認を取る。 「けっ!これからてめーを芥川!アクターって呼んでやるぜ!」 「それでおい!下の名前は教えねーつもりじゃあねえよな! ただでさえ腰抜けなのにさらに腰が抜けてるわけじゃねえよな!」 そういわれた瞬間、芥川の動きが完璧に止まった。 「『辰助』だ……」 ボソリ、と、芥川が呟く。 「後生大事に覚えておけよ……今からきさまらをぼこぼこにする男の名前だ……。」 「え?」 「え?」 「え?」 芥川が突然、不穏な言葉を持ち出す……。 瞬間、芥川がくわえていたタバコの煙が、『人の腕』の形を成す。 「!!」 (なにッ!スタンド(●●●●)!) そして、次の瞬間…………。 煙で形作られた『腕』が、力強くゴロツキの顔を打つ。 「ホゲェ―――ッ!」 「うわ――ッ!」 殴られたゴロツキは吹っ飛び、他のゴロツキに衝突する。 「鼻がッ!ハガがッ!」 苦しそうに響くゴロツキの悲鳴。最早阿鼻叫喚といっても過言ではなかった。 しかし、芥川の逆襲は終わらない。ゴロツキの口元……に、煙が纏わりついている。 さっき殴ったときにタバコの煙がくっついたのか……?そして、その方向へ向かう芥川。 「てめーさっきから黙ってりゃアつけあがりやがってッ!挙句の果てにこの俺を 『腰抜け』だとォ?ふざけんのも大概にしやがれッ!」 「わ、悪かった……悪かったから許してく」 あまりの迫力に、ゴロツキが謝りはじめる。 「れ」 「今更謝ったって虫がよすぎんだよ、コラ――――ッ!」 倒れたゴロツキの頭を踏み潰した!外道だ……外道がここにいる……。と、亜希は思った。 「ひええええ」 他のゴロツキたちはその恐ろしさにいっせいに逃げ惑う。 (こいつ……『スタンド』を見せた……。今確かに……背後に何らかのスタンドが見えた!) 「あっ!ねえ見てJOJO!」 亜希が驚いてJOJOの肩を叩く。指差すその先には、カメを持ち上げている芥川の姿が。 カメは―― 無傷だ。怪我なんて何一つしていない。それを、元の池に返す芥川。 「? あ……あれ?お……おかしいよ。カメ……の……カメの傷がないよ…… あれだけの勢いで叩きつけられたんだから、甲羅がイタイタしく割れているはずなのに。」 「なっ!」 先ほど頭を踏み潰されたゴロツキも声を上げる。 見るとゴロツキは顔を真っ青にして煙をかきむしっている。 「なんだあ~~~っ!」 「いま煙が殴ったときについた煙の残滓が!」 件のゴロツキがついに白目をむき始めた。 「口に纏わりついて窒息させてやがる!!」 「てめーのおかげでさわりたくもねーのに……、 カメにさわっちまったぜ……そっちのほうはどーしてくれるんだ?ア?」 そしていつの間にかゴロツキの背後に来ていた芥川が手を前に突き出す。 何だかバッチイものを触ったあとのような感じになっている。 「う、うわああああああ――――!」 ゴロツキたちは、恐れおののいて逃げていった。……一人を除いて。 煙が纏わりついて窒息させているゴロツキは、依然倒れたままだ。 白目をむいて、口から泡を吹き出し始めている……このままでは死んでしまうだろう。 「オーマイ(何てこった)……こいつが…… こんなのがこれからおれのクラスメイトになるであろう人間だとは!」 そう言って、JOJOは足を前に進める。その足には「闘気」がこもっていた。 「!」 その「闘気」に、芥川も気づいた。 「それ以上はよォ~……やめとくのが賢明ってヤツだぜ。本気で死んじまうからよ……ソイツ。」 芥川の方へ向かいつつ、話しかけるJOJO。 「うるせ―なッ!俺のスタンドの加減は俺が一番よく分かってる!こういうナメたことするやつはなァァ~~……、 ちょっとばかし『痛い目』見さして、格の違いってもんを見せてやるのがやさしさよッ!」 言うが早いか、タバコの煙がさらに増し、人型のスタンドを作り出す。 「……!こいつも亜希と同じように『人型』を……!やはり『腕』だけじゃあねーのかッ!」 「邪魔するってんならよォォ~~~~ッ!俺の『ブラック・アイズ・ピース』!きさまも同じように 白目剥いて泡吹かせてやるぜッ!」 人型スタンドが、ファイティングポーズをとる。 ……上半身だけが、はっきり見えている。下半身はタバコからでる煙へとつながっていて……、 そして随所に車の「排気口」のようなものが生えている……。 「……!コイツ……!いいよ!JOJO!君がやる必要はない!私が……」 「いいや、亜希。お前はそこで見ててくれ。こいつは俺が…… この川端 靖成がじきじきにブッ飛ばす!」 JOJOが『両腕』を発現する。 「ほほォ~~ッ。お前その『両腕』だけで俺の『ブラック・アイズ・ピース』に勝てると思ってんのか! いいだろう!その自信、根っこから叩き折ってやるぜッ!」 To Be Contenued... 使用させていただいたスタンド No.246 【スタンド名】 ブラック・アイズ・ピース 【本体】 芥川辰助 【能力】 煙の密度によりパワーと射程が変わる < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
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『エピローグ:JOJO』 Get back, get back(帰れ、帰れ) Get back to where you once belonged(もといた所へ帰れ) Get back jojo(帰れ、ジョジョ) 『Get back』byビートルズ ◆ 蒼穹の中を一隻の戦艦が飛んでいる。 ユニウス戦役最後の戦い、今では戦場となった場所が、南アメリカ合衆国の首都である ブエノスアイレスであったことから、『ブエノスアイレス攻防戦』と名付けられた戦いで、 最上の戦果をあげた艦。 タリア・グラディス艦長が指揮する、ミネルバである。 その艦の中で、搭乗員たちは日課の訓練を行っていた。 「フッ!」 「痛ッ!」 一人のザフトレッドが、相手の持っていたナイフを弾き飛ばした。 勝敗は決し、勝利した側が、安全のためにしていたヘルメットを脱ぐ。 「ふう、これで、昼飯はお前の奢りだな。スティング」 「ちっ、わかっている」 スティング・オークレーは、自分に勝利した相手、シン・アスカを悔しげな目で見る。 「これで5敗目ね。負け越しじゃんカッコ悪ー」 「うっせえ! てめえは黙ってろ!」 見物していた少女、メイリン・ホークが野次を飛ばし、スティングが怒鳴り返す。 一見して仲が悪いように見えるが、シンは割と仲がいいんじゃないかと思っている。 確かにいつも悪口を言い合い、小競り合いの絶えない2人だが、付き合いを断つことはない。 なんだかんだと言いながら、部署が違うにも関わらず、メイリンはスティングに会いに来るし、 スティングも追い返さない。互いに顔を合わせている時間が一番長いのだ。 いつものように二人が仲良く喧嘩している間に、シンはスポーツドリンクを口にし、 水分とミネラルを補給する。視線を移動させると、金髪の少女と水色の髪の少年が、 シンたちと同じようにナイフの訓練をしている姿を捕らえた。 (………まさかこんなふうになるとはなぁ) シンは現状に対して、幾度も繰り返した感想を、胸中でまた呟いた。 終戦後、ミネルバは勝利の象徴としてその名を大いに高めた。 その名を利用する形で、今度はミネルバを平和と協力の象徴とすることが決められたのだ。 すなわち、ザフトと連合軍の両陣営が、共にミネルバで活動し、協力し合って戦後の復興や、 戦後の混乱に乗じた犯罪の撃破などを行うことになったのだ。 ザフトからは元からのミネルバのクルー。連合軍からは人々の信頼も厚く、最後の戦いでも活躍し、 ミネルバとの協力の実績もある『スリーピング・スレイヴ』が選ばれた。 こうして今、彼らは共にここにいる。 かつて敵味方であったものが、共に世界の未来のために、人々の明日のために、頑張っている。 その奇跡のような光景に、シンは何度もこの上ない喜びを胸に込み上げさせるのだった。 「シン! ご飯に行こう!」 「何ぼーっとしてるんだよ、早く行こうぜ」 ステラとアウルの声が、シンにかけられる。 「………ああ、レイ、ルナ、お前たちも行こうぜ!」 シンは、射撃訓練を行っていた二人にも誘いをかけた。 相変わらずクールさを崩さないレイ・ザ・バレルは、頷きを返した。しかし、ルナマリアの方は、 「だから、ブチャラティさんは私と一緒にお昼に行くんです! おばさんは遠慮してください」 「フン、ブチャラティは私と、今後の部隊のスケジュールについて話し合うのよ。 心配しなくてもちゃんと私が昼食は作ってきたわ。お子様は邪魔しないで」 「……………」 火花を散らすルナマリア・ホークとレナ・イメリア、青ざめた顔のブチャラティ。 これもまたいつもの光景だ。 「しょーがねえな、ったく。おいブチャラティ! さっさと食いに行くぞ!」 「今日はブチャラティの好きなホタテ貝のいいのが入ってるってよ! ボルチーニ茸といっしょにオーブン焼きにしてもらおうぜ!」 アバッキオが助け舟を出し、ナランチャが続く。 毎度のことながら、アバッキオの度胸には感心させられてしまうシンだった。 さすが『スリーピング・スレイヴ』の副リーダー。リーダーを助け、支えられる男は彼しかいまい。 「レナ教官、一緒に行こう」 「お姉ちゃんも早くしないと、時間無くなっちゃうよ」 ステラとメイリンにも言われ、ルナマリアとレナは、渋々ながらも対決をやめて、 二人ともブチャラティの両脇を歩きながら、共に食堂へと向かう。 ブチャラティもやや疲れた顔をしながらも、逃げはしない。 彼も多少の迷惑はあっても、決して二人のことを嫌っているわけではない。 むしろ好ましく思っているのだから。 今、この太陽系で最も強く、最も名のある艦の日常は、おおむねこのようなものであり、 誰もがこの日常を好いていた。ここが彼らの居場所であり、彼らの帰ってくる場所なのだ。 『シン・アスカ』 ストライクフリーダムの撃墜等の功績により、ネビュラ勲章を授与される。 デスティニーは修理され、今もシンの専用MSである。 ヴェルサスとの最終戦で感じた『光の中』にいるような感覚、自分だけに馴染む行動は、 その後一度も感じることはできていない。しかし、スタンドは感覚で捉えられるようになった。 その白兵戦能力は、まさにザフト最強である。 しかし近ごろ、右腕の内部に『何か』があるような感じがしている。 検査でも異常はなかったが、どうにも気になっている。 『ステラ・ルーシェ』 失われたガイアに代わり、連合軍からブルデュエルを与えられている。 あの戦いの後、ミーアたちと仲良くなり、辻彩からは化粧のやり方を教わったりした。 今も時々、連絡を取り合っている。 『レイ・ザ・バレル』 戦後、ザフトのトップエリート、特務隊『FAITH(フェイス)』に任命される。 レジェンドは大破してしまったため、プロトカオスを機体として与えられる。 検査により、肉体の老化がなくなっていることが判明。 レイはこれを、形兆が残りの命を分けてくれたのだと解釈している。 ガルナハンの少女、コニール・アルメタとの文通は、継続中である。 『ブローノ・ブチャラティ』 連合軍側の部隊のリーダーとして、毎日が激務の日々。 ルナマリアとレナの想いは理解しているものの、まだどちらを選ぶかは決めていない。 今、強引に選ばせれば、どちらの想いも断り、一人、戦いの道を歩き続けるだろう。 それはルナマリアとレナもわかっているので、無理に関係を迫ることはない。 アバッキオは、元ギャングらしく、二人同時に付き合ってしまえばいいのにと、 反倫理的なことを考えながらも、口出しするようなことではないと、静観している。 『スティング・オークレー』 ダイアーから受け継いだ波紋の練習を、ずっと行っている。 波紋による身体強化ができるようになった彼に勝てるのは、スタンド使い以外ではシンくらいのものである。 メイリンと交際することになるかどうか、クルーたちの間で秘密裏に賭けが行われていたりする。 カオスが撃墜されてしまったため、ヴェルデバスターを使っている。 『アウル・ニーダ』 アビスが破壊された後、ネロブリッツを使っている。 スティングから波紋を教わっているが、あまり才能が無いとわかりへこんでいる。 スティングを見返すため、ネオのような隊長となることを目指し、勉強中。 時折、ナランチャに算数を教えている。 ◆ 古びたビルの中で、戦闘が行われていた。 いや、戦闘というよりは、圧倒的な殲滅戦と言った方が正しいのかもしれない。 戦力比は、1人に対してテロリスト25人。 テロリストの方は銃火器で武装しているのに対し、1人の方はせいぜい拳銃程度。 しかし圧倒しているのは、その1人の方だった。 「何だって言うんだテメェ!! こっちは機関銃持ってんだぞ!」 機関銃を乱射するテロリストの一員は蒼白であった。銃弾はかわされ、爆弾は炎と風を跳ね返され、 こちらは見えない何かに斬り裂かれて倒れ伏していく。妖怪か何かを相手にしているようなものだった。 「いやぁ、そりゃ俺でも機関銃を正面から相手にしたらやべぇけどよぉ」 対する1人の男は気楽な口調で言い、指揮者のように指を振る。 すると、テロリストの機関銃が、綺麗な断面を残して切り裂かれた。 次いで、テロリストに衝撃が与えられ、気絶する。 「ホル・ホースみたいに自在に動く弾だったらともかく、真っ直ぐ飛ぶだけの弾丸なら、 この距離からだったら、ま、銃口の向きを見てれば何とか事前に避けられる」 全てのテロリストを倒した彼は、通信機を取り出して連絡する。 「ああ、こっちは片付いた。ブルーコスモスの残党は一人残らずだ。ああ、わかってるってサラ」 1人でブルーコスモス過激派を打ち倒した男、ジャン・ピエール・ポルナレフは、 自分のパートナーに連絡を取る。 「ああ、こっちは傷一つ………何? ネギとトマトと酢を買ってこい? ミーアの好きなお菓子も? オイオイ、ガキの使いじゃねえんだぜ、って、ああもう切っちまいやがった」 ため息をつきながら、ポルナレフは笑っていた。 この世界に思い出のある故郷は無いが、それでも待ってくれる人と、帰る場所があるから、 彼は幸せであった。 『ジャン・ピエール・ポルナレフ』 戦後、ザフトを辞す。サラと婚約した。ンドゥールたちの行方や、『天国』について調べている。 時折、デュランダル議長に頼まれ、バイトでテロリストを壊滅させたり、要人警護をしたりしている。 その時、報酬などの契約をするのはサラの仕事である。 『サラ』 戦後、ザフトを辞す。ミーアに助力し、ポルナレフを尻に敷きながら、 二人のマネージャーとして、力強く生きている。 『ミーア・キャンベル』 ポルナレフとサラの養女となり、素顔のまま、歌手としての道を生きることを決意した。 ◆ 「フ~~、プラント最高評議会の議長というのはそんなにお暇なのかしら。 よくここに足を運ぶ余裕があるものね」 「君にとっても損にはならない話だよ、辻彩」 エステサロン『シンデレラ』の女主人、辻彩は、店を造るための経費をくれた男、 ギルバート・デュランダルを胡散臭げに見る。ギブ&テイクの関係であり、貸し借りは無く、義理も無い。 その上、油断ならない狸相手に心許す気にはなれない彼女だった。 「少し、私に幸運を施してもらいたいんだ。 これから行く場所で暗殺計画が練られているという情報があってね」 「フ~~、そういったタイプの幸運は私の専門ではないのですけど、まあいいでしょう。 貸しにしておきます」 やる気の低い態度で臨む彩に、デュランダルは苦笑する。 「よろしく頼むよ。君とは仲良くやっていきたいんだ」 「私も好んで敵対する気はありませんけど、下手に深く関わりたくはないの。 愛人関係にある、なんて噂がたったらたまりませんわ」 権力者におもねる態度の全くない辻彩を、デュランダルは好ましく思う。 タリアもポルナレフも近くにいないこの頃、自然な会話を楽しめるのは彼女とだけだ。 無論、恋愛感情が互いに芽生えることはないだろうが、それでもこの関係は長く続けていきたいと思う。 そしてそんな二人の会話を、1人の男と、1匹の犬が眺めていた。 彼らはこのまま自分たちには関わることなく会話が続くのだと思っていたが、その考えは裏切られた。 「………ところで、そこの護衛の方。中々面白い素材ですわね。 フゥーー、いわゆる美形というものではありませんけど、味のある顔つきですわ。 いかがかしら議長、私への報酬として、彼で私のエステの試験を行わせてもらうというのは?」 突然、矛先がこちらに向いたことに、男、すなわちモハメド・アヴドゥルは目を丸くした。 「ああ、そんなことくらいお安い御用だよ」 「な! ちょっと待ってください!」 慌てるアヴドゥルをよそに、辻彩はアヴドゥルの顔に美しい指を伸ばす。 顔を真っ赤にして逃げようとするアヴドゥルを、面白がったイギーが、スタンドまで使って捕まえる。 たちまち大騒ぎになる店内で、デュランダルは彼にしては珍しい表情を浮かべた。 いつも浮かべている、政治的な、造られた笑顔ではなく、 心からの安らぎと楽しさゆえに自然と浮かぶ、柔らかな微笑みを。 『ギルバート・デュランダル』 プラントの最高権力者としての立場は継続中。 護衛として、モハメド・アヴドゥル、イギーを常に連れている。 最近、彼らを連れて辻彩の店『シンデレラ』に行くのが趣味。 『辻彩』 デュランダルからの報酬で、プラントに念願の店を開く。 既に雑誌に取り上げられるほどの大盛況である。 最近、デュランダルが連れてくるアヴドゥルに興味があるようだ。 ◆ オーブ行政府に、帽子を被った、顔に傷のある男が訪れていた。 普通なら気後れしそうな堂々たる建物に、全く怖じることなく足を踏み入れ、目的の人物と顔を合わせる。 「ようカガリにアスラン。ユウナとウェザーも元気だったか?」 スピードワゴンは、このオーブ連合首長国において最上位に立つ政治家2人と、 それぞれの筆頭護衛である2人に、軽く挨拶する。 「ああ何も問題はないさ。終戦条約を結んで以来だな、スピードワゴン。 それで、彼らは上手くやっているかい?」 カガリは、今スピードワゴンの部下となって働いている者たちのことを思い起こす。 思い起こしながら、少し寒気がしてくるのは抑えきれず、笑顔がひきつってしまう。 「まあな。相当クセがある連中だから、難しいがな。 敬意を払って対応すれば、結構大人しいもんだぜ。舐めた真似した相手には、容赦しないがな」 スピードワゴンも少し困ったように笑う。 彼ら――かつて『暗殺チーム』と呼ばれた者たち。 リゾット、プロシュート、ホルマジオ、イルーゾォ、ペッシの5人は、 今、スピードワゴンの営む何でも屋の一員となっていた。 極力、荒事であっても殺人はしないように申し渡してある。 意外にも、と言ってはなんだが、その言い付けを守り、よほどのことが無い限り、 敵であっても殺しまではしないようにつとめてくれている。 かつて自分たちが不当に扱われているという意識から、反逆を起こした彼らだが、 正当な報酬と、相応の礼儀を守れば、割と忠実に従ってくれるようだ。 「有能なのは確かだからな。重ちーが抜けた分、助かってるぜ」 「重ちーか………。彼はキラとラクスについていてくれているんだったな。今頃どうしているか………」 アスランは親友たちのことを思い出す。 キラ・ヤマトとラクス・クラインは、かつての戦争で死んだことになっている。 彼らを下手に裁判にかけると、彼らをかくまっていたオーブを始め、ラクスの所属していたプラント、 キラが所属し、アークエンジェルの所有権のある連合など、様々な責任や関係性が絡み合うはめになる。 どこからどう解決していけばいいのか、誰を罪に問い、どう裁くか、わけのわからないことになってしまう。 これから世界を復興していこうというのに、そんなことで揉めている暇はない。 結局、国同士示し合わせて、キラたちは死んだものとして、無かったことにしてしまったのだった。 カガリたち以外は、生かしておいた方が後々役に立つこともあるかもしれないという考えもあったのだろう。 褒められたことではないが、今はそうするしかなかった。 「それはさておき。本題に入ろうか。貴方がここに来た理由のね」 「ああそうだったな。まずはこの資料だ」 カガリに促され、スピードワゴンは書類を前に出す。 書類に記されていたのは、目撃情報。 南アメリカのとある空港に設置された、監視カメラに映されていた映像。 杖をつく盲目の男、ンドゥールは連れの男たちと共に、小型飛行機を強奪して飛んで行ったという。 「アバッキオがいれば『ムーディー・ブルース』で行方を探ることもできたんだが、 今は別の用で飛びまわっているからな。気軽に呼ぶことはできない。 俺らが捜しまわるしかねえんだ。小型飛行機は乗り棄ててあったのを発見した。 その後、船でアフリカ方面に渡ったとこまでは突き止めたんだが、そこで金が尽きた。 捜査費の上乗せと、人員の増強を希望する」 「うーん………捜査費はギリギリまで出すけれど、人員はなぁ」 ユウナが悩んでいると、ウェザーが声をかけた。 「あの二人を出してみてはどうだ?」 「あの二人って、こないだ見つけた彼らかい? そりゃ適任かもしれないけど、まだ詳しいことはわかっていないだろう? 信用できるかどうか………」 「おい、誰のことだ?」 「ああ。少し前、オーブ内で見つかったスタンド使いでね。 一応、交渉してウェザーの部下になっているけど、まだ人格が見定めきれていないから、 重要な仕事はさせていない」 「ふうん………そいつらに会わせてみてくれ。それから考える」 「君がそう言うなら、会わせるけど、用心してくれ。 ウェザーが太鼓判押すほどの、熟達したスタンド使いらしいからね。 味方であれば心強いが、敵に回したくは無い。名前は、えーと何て言ったっけ」 ユウナに代わって、ウェザーが答えた。 「マウンテン・ティムと、ホット・パンツだ」 『カガリ・ユラ・アスハ』 オーブ代表として精力的に活動中。 精神的に落ちつき、以前よりも地に足がついた印象を受けるようになった。 最近、一人でいる時に指輪を取り出して、薬指につけてはにやついている様子を、 メイドに目撃されている。 『アスラン・ザラ』 ザフトからオーブに戻り、カガリの護衛に戻る。最近、給料3カ月分ほどの買い物をしたらしい。 『ユウナ・ロマ・セイラン』 カガリの補佐として活躍中。カガリとの婚約は解消した。 ウェザーを側近とし、スタンド使い関連の出来事の対処について、ほとんどを任されている。 『ロバート・E・O・スピードワゴン』 リゾットたちを部下とし、何でも屋は今日も営業中。 マウンテン・ティム、ホット・パンツという新たな部下を得て、 オーブとプラントの共同依頼である、ンドゥールと『天国』の捜索を進めている。 ◆ 3人のスタンド使いが、ユーラシア連邦領にある、かつてのエジプトを訪れていた。 ンドゥール、スクアーロ、そしてデーボ。最後の戦いから生還した彼らが、そこにいた。 彼らはこの時代になってもなお古めかしい、石造りの屋敷に入っていく。 電気も通わぬ、暗い屋内を進んでいくと、大きな部屋に辿り着いた。 中には、十人ほどの人間たちがテーブルにつき、3人を待っていた。 「待たせたかな」 ンドゥールが口を開いた。テーブルの最も上座にいた人物が、それに応える。 「何、時はまだ来ておらぬ。準備する時間はたっぷりあるわい」 その人物は小さな老婆だった。 100年以上生きていても不思議ではないほど皺に覆われた顔は、魔女のそれを思わせる。 奇妙なことに、彼女の両手はどちらとも『右手』の形状をしていた。 「チョコラータからの通信は、受け取れたのでしょう?」 「おおとも。奴め、中々いい仕事をしてくれたわ」 笑う老婆は、テーブルの上に置かれた機械のスイッチを押した。 『我が『アンダー・ワールド』は過去を掘り起こす能力……… 『DIOの血』の力を、掘り起こして『目覚め』させた!! 目覚めた『DIOの血』は、生贄を、『36人以上の罪人の魂』を求め、活動を開始した。 魂を吸収し終わった時、『天国』は生まれるであろう!!』 ヴェルサスの声だった。チョコラータが持っていた通信機から得た声を、録音したものだ。 「ヴェルサスの奴め、チョコラータが自分を尾行していたことは悟っていても、 チョコラータが別の誰かと既に組んでいたとは思わなかったようじゃ。 おかげで、思いもよらぬ情報が手に入った」 ヴェルサスにも気付かれず、チョコラータと手を結んでいた老婆は、爛々と輝く狂気じみた眼で言った。 「DIO様の血から生まれた『天国』………それが何かはわからぬ。 ただ、DIO様は何かを計画しておられた。このわしにも隠し、何かを考えておられた。 今ならば思い当たる節はある。しかし過去はもういい。問題は未来にある」 老人の、見た目以上に力に満ちた手が握り締められる。 「もしもDIO様がその御意志によって計画していたことが、『天国』とやらの誕生であるというならば、 それがどんなものであれ、わしらが手に入れねばならん」 暗黒の意志に満ちた老婆は、決然と言葉を放った。 「それに………それがあの方の血から生まれたのなら、そこにあの方の魂も存在するかもしれない。 それは、わしらの最大の目的を達成する糸口になるやもしれぬ……… ゆえに『天国』の捜索は、もう一つの計画と並行して行う」 もう一つの計画、と口にした時、老婆はテーブルにつき、獰猛に微笑む、一人の男に目を向けた。 黒い長髪を後頭部で縛ってまとめた、黒い肌の男。 熱い空気の中、はだけた服から素肌の胸がのぞき、その胸には文字が痕のように浮かんでいた。 「『天国を捜索する』、『遺体を収集する』……… どちらもやらなくちゃならんのが、つらいところじゃが……… すべては、DIO様と再び逢わんがために」 ◆ ベルリン。かつてドイツの首都であり、コズミック・イラにおいても ユーラシア連邦の大都市であったそこは、デストロイの攻撃によって壊滅状態にあった。 視察に訪れていたシュトロハイムも、陰鬱なため息をつく。 「ため息をつくと幸せが逃げると言う。胸を張っていない君など、らしくないぞ。花京院はどうした?」 彼に声をかけたのは、復興支援に訪れていた、ロンド・ミナ・サハクだった。 「お前か……ふん、俺だってこういう風になる時はあるさ。ここは、向こうの世界では俺の故郷だったんだ。 それと、花京院は瓦礫の下に貴重品や重要な物が無いか探っている。 あいつのハイエロファントはこういう時に便利だ。 それはそうと、支援については改めて礼を言おう。 お前もライブラリアン事件とかいうので大変だったろうに」 「まあな………だが心強い味方も二人いてくれたのでね。今度紹介しよう。君の世界から来たらしいしね」 「………名前は聞いたが、多分、俺はそいつを知っている。 シーザー・ツェペリと言ったな。バンダナをつけた、女好きのイタリア人だろう。 なら十中八九、知っている。もう一方の、あー、ジャイロと言ったか? そちらは知らないが」 「ほう……縁と言うのは奇妙なものだな」 そんな話をしていると、シュトロハイムはミナが手にしている古い紙――動物の皮で造ったらしい――に 気がついた。 「何だそれは?」 「ああこれか? さきほど古い教会跡を片づけていたら出てきた物だよ。 博物館で調べたら価値があるかもしれないが、多分偽物だろうな。 面白そうだから見せてもらっていたのだが」 「偽物?」 「見ろ、箱の日付が、教会に収められたものだとすると西暦でいう15世紀のもの、 実際はもっと古いだろうに、こんなに詳細な世界地図になっている。当時にそんな知識があるはず無い」 「なるほど確かに偽物だな」 描かれた地図は、イスラエルを中心としたメルカトル図法で、海岸線も正確に表されており、 南極まで記されていた。地名などは無いが9つのバツ印がつけられていた。 「宝の地図か何かか? それにしても凝った悪戯だな。この古さ、偽物とは思えん」 シュトロハイムがそう呟いたとき、 「いや、それは本物だろう。西暦が始まって間も無い頃に描かれた地図だ」 突然、背後から声がかけられた。 (な! 俺ともあろうものが、気配に気付かなかった?) 驚き振り向くシュトロハイムが見たのは、二人の男だった。 一人は洒落たスーツを着た、細い口髭を生やした男。 一人は大きな襟のある服を着た、武人的な男。 どちらも只者ではないと、シュトロハイムは直感した。 「驚かせてすまないね。私はウィル・A・ツェペリ。彼はウェカピポ。 こうしてここでその地図と出会うのも運命というものか。 ここに地図があるらしいことは突き止めていたんだが……」 『ルドル・フォン・シュトロハイム』 ブルーコスモスの盟主となってから、以前にも増して溌剌と働いている。 側近である花京院は毎日ため息をついている。 元々上昇志向が強いので、今度はユーラシア連邦の首相になろうという野心が炎上中。 ウィル・A・ツェペリたちに出会い。古地図と遺体について知る。 できればこの世界におけるヴァレンタイン大統領にならないでほしいものだ。 『ロンド・ミナ・サハク』 色々と苦難も経験したが、更に仲間を増やし、以前よりもその力を強めていっている。 シュトロハイムのことは面白い男として評価しながらも、その向上心と愛国心が過ぎて 新たな戦争の火種にならないか心配し、目を光らせている。 ◆ 仲間と合流した後、ンドゥールの新しい役目は護衛であった。 危険な笑みを浮かべる、その護衛対象の名は、ルカス・オドネル。 元ザフトのエースパイロットであり、今でも鍛え抜かれた肉体は健在である。 通常なら護衛など必要の無い存在であるが、もし今、彼を狙う相手がいるとしたら、 その相手は決して通常の存在ではありえない。ゆえに、非常の対応が求められる。 更に言えば、護衛対象のルカス自身、目を離すと何を企むかわからない危険人物である。 監視もまた必要なのだ。 「………それは、わかっているのだがな」 それでもンドゥールはこの任務に気が向かない。 彼がやりたいことは、やはりポルナレフたち、DIOの敵の抹殺である。 そもそも、なぜルカスを護衛せねばならないのかが、あまりよく説明されていないのだ。 「というわけでだ………そろそろ詳しいことを聞かせてくれ」 ンドゥールは、傍らの男に言う。 格子模様の大きな帽子を被った、暗い雰囲気をまとうその男は、頷いて口を開いた。 「ルカスには、『遺体の心臓』を所有している………それは説明されたな?」 「ああ……しかし、納得できない。パワーをもたらす『聖人の遺体』だと? 今更、そういったものが実在することを驚きはしないが、この『宗教の消えた世界』で、 キリスト教の聖人に、一体何の力がある?」 このコズミック・イラには、キリスト教や仏教と言った、 かつて世界的な宗教であったものがほとんど存在しなくなっている。 一説によれば、C.E.22年、地球外生命体が存在する証拠となる『エヴィデンス01』の発見により、 地球外を視野に入れない、既存の宗教の信頼度が下がったためとされているが、 その程度で廃れるようなら、進化論が出てきた辺りで滅びていてもいいだろう。 それ以前から、既に既存の宗教は衰退していたのだ。 キリスト誕生を始まりとする『西暦』が使われなくなった時点で、それがわかる。 理由は多々あるだろうが、おそらく人類はもはや『神』というものを必要となくなっているのだ。 強力な宗教組織が無くなっても、人類が存続していることからそれがわかる。 宗教の存在意義。それは、信仰対象を同じくすることによる組織の結束の強化、 神という上位存在や、死後の世界を持つことによって安心を得るといったものがあるが、 そういったものが無くとも、この世界では人は存続できるのだ。 なればこそ、『聖人の遺体』などありえない。信仰は力であり、信仰が失われた神は無力。 神に連なる聖人もまたしかり。実際に聖人が存在したとしても、この世界では無力のはずなのだ。 「確かにそうだ。ほんの少し前までは、確かにそうだった。しかし、もう違う。 この『遺体』があること、『奇跡』が発揮されていることが、その何よりの証拠だ」 信仰は力であり、信仰が失われた神は無力。 逆に言えば、力があるのなら、それは信仰があることに他ならない。 「人々は神を求めている。人を超えた力を求めている。 なぜなら、もはや人の力は、人ではコントロールできないほどに強くなってしまったからだ」 かつての大戦、ヤキン・ドゥーエ戦役の終盤にて、『ジェネシス』が撃たれた日、 人は、自分たちが地球さえ滅ぼせてしまうことを、理解してしまった。 ゆえに人は、自分たちを自分の力で滅ぼさないために、神を求めている。 ゆえに、『遺体』は再び力を得た。 そして人々の願いのままに、より大きな『奇跡』を引き起こした。 『遺体』を完成させ、『神の力』を完成させるために。 「そのために、我々がこの世界に来た、と? 我々がここに来たのは、『ボヘミアン・ラプソディ』なるスタンド能力のためではなかったのか?」 「それも正しい。これは推察だが、まず『ボヘミアン・ラプソディ』によって、君たちの世界から、 多くのスタンド使いや、スタンド使いでなくとも、スタンド使いと深い運命で繋がっている者たちが、 この世界に招かれた。それが始まり」 多くのスタンドたちがこの世界に来た時、この世界の『遺体』は、 スタンド使いとスタンド使いが引かれ合う力を利用した。 やってきた者たちがいたのとは別の世界、『遺体』を奪い合うスタンド使いがいる世界と、 この世界を繋げ、『遺体』の争奪戦に脱落した者たちを、この世界に呼び寄せた。 信仰がまだ弱い、こちらの世界の『遺体』だけでは、世界を繋げるまではできても、 スタンド使いたちを呼び寄せることはできなかっただろう。 だが、同じ『遺体』であるということにより、向こうの『遺体』と同調し、 向こうの『遺体』と力を合わせて、この『奇跡』を成し遂げたのだ。 「その奇跡によって、『遺体』は『遺体』を知る者を、より強い信仰を持つ者をこちらに呼び寄せ、 その力を更に強めることができた。そして、スタンド使いたちの不可思議な力により、 この世界の人々は信じてしまった。 神も奇跡も、ありうるということを。自分たちの持つ、科学や道理だけでは、計れぬものがあることを。 その未知への畏怖こそが、更なる信仰を生む。信仰は増え続け、更に『遺体』を強くしていく。 そして、『遺体』の争奪戦がこの世界でも起こるだろう」 「………つまりこう言いたいのか?」 ンドゥールは、情報を整理し、自分の頭の中でまとめて、結論を出した。 「ユニウスセブン落下から始まる、この大戦争が、信仰を醸成し、 『遺体』の力を強めるためのものであったと。 ユニウス戦役が、次に来るだろう『神の力』をめぐり行われる戦いの、下準備にすぎなかったと」 「そういうことになるな」 男はあっさりと認めた。 「だがそれも人々が求めたがためだ。『遺体』の力は人々の信仰、人々の意志によるもの。 戦いと犠牲の果てに得られる、絶対の力を、人々は求めている。 遺体はいわば『種』だ。今回の戦争は『種』を芽生えさせるための、水や肥料のようなものさ」 「『種』か………」 ンドゥールはルカスの方に耳をすませる。 今、彼は昼食をとっており、サンドイッチを咀嚼する音がしている。 ルカスの左胸には、『聖人の心臓』が宿っており、ンドゥールには見えないが、 すでに何らかの神託を示す聖痕が文字として浮かび上がっているという。 聞いた話では、聖痕は『GUNDAM』となっているらしい。 「この世界、この時代の要となるのはMSであり、MSの最高峰である『ガンダム』。 誰もが知り、誰もが最強と信仰し、その力を信頼し、畏怖している。 この世界において最高の信仰の対象だ。ならば遺体の所有者として、ガンダムパイロットが最も相応しい」 それがルカスを護衛する答え。ライゴウガンダムの凄腕パイロットであり、 同時に善人でもない彼は、ンドゥールたちにとって非常に有用だ。 「既に他のガンダムパイロットにも遺体が宿っているかもしれない。彼など怪しいな」 男は傍にあった週刊誌を手に取る。その写真の一枚に、シン・アスカのものがあった。 反コーディネイター派テロリスト殲滅の記事だが、その写真のシンの右腕に、 文字のような痣が浮かんでいるように見えた。 「まあ今は遺体も大した奇跡を起こしてはいない。少し違和感がある程度だろう。気付きはすまい」 「奪いに行かずともいいのか?」 「我々にはまだそこまでの力は無い。まずは力をつけなくてはな。幸い、ポルポという大男を仲間にできた。 彼はスタンド使いを生み出す『矢』を所持してこちらに来ていた。時間さえあれば、仲間は増える」 「まずは力をつけてからか。仕方ないだろうな」 「そうだな。遺体が所有者にスタンドを授けるようになるまでは、準備期間とするべきだろう。 ルカスにもスタンドは見えている。スタンドを得る資格はある。いずれはな」 ンドゥールはルカスが昼食を終え、移動を始めたことを感じて、立ち上がる。 歩き出そうとして、一度動きを止め、ンドゥールは男の方へ顔を向けて言った。 「まだその『遺体』に、果たしてDIO様を復活させるような力が、 あるかどうかもわかってはいないのだ。過度に期待はしない。 しかし、それでも今のところ、『遺体』がこの世界における最大のパワーであり、 可能性であることも確かだ」 死者を復活させ、自らも蘇ったという至高の存在の遺体。二つの世界を繋げた、凄まじいパワー。 それならばDIOを復活させられるかもしれない。 あるいは、まだDIOが生きている世界へ連れて行ってくれるかもしれない。 だからと、ンドゥールは殺意を垣間見せる。 「裏切りは許さんぞ。もしDIO様が蘇るのなら、その後は遺体などくれてやる。 だからせいぜい力を尽くすことだ―――アクセル・RO」 「裏切りはししないよ。少なくとも、そちらとは、利害が一致しているからな」 遺体の力は求めても、遺体そのものは求めないンドゥールと、 遺体そのものによる、聖なる救いを求めるアクセル・RO。 信頼も信用も無く、互いに己が求めるものへの執着と執念によって結ばれた、邪悪の同盟。 彼らは想いを馳せる。次なる戦いに。前よりももっと、恐ろしいであろう戦いに。 ◆ 「一目でわかった………」 金髪の眉目秀麗な若者が、そのしなやかな腕に抱いたモノに向けて語りかけていた。 「『俺』と『お前』は『同じ』だってな」 彼は数日前まで、強い野心に溢れた連合軍人だった。多くの敵を殺し、手柄をたててきた。 その甲斐あって、若くして大尉にまで上り詰め、このままユニウス戦役が集結した後は、 佐官に出世することは確実とされていた。 しかしブエノスアイレス攻防戦の後、腕に抱くモノと出会った時、 すぐさま周囲にいた同僚の連合軍人たちを皆殺しにし、自分も死んだと偽装して、 全てを捨て去って出奔した。 会った瞬間、感じたのだ。この『緑色の赤ん坊』は、自分と通じるものであると。 その正体はまったくわからないが、自分の魂が教えるのだ。これを手放してはならないと。 「いつか必ず、俺とお前は一つになる。鍵さえあればいいんだろう? わかっている。見つけ出してやるさ。待っていてくれ………『俺』」 男は知識を持たずとも、本能的にするべきことを理解しながら、緑色の赤ん坊を愛しげに撫でる。 しばらく撫でた後、彼は赤ん坊を鍵のついたボックスに入れ、蓋を締める。 赤ん坊は暴れることもなく、大人しくしていた。 「さて………仕事の時間だ」 男は軍人として生きていた間に手に入れた情報やコネを駆使し、ある種の何でも屋になっていた。 盗み、詐欺、脅迫、暗殺、どんな汚れ仕事でも行う、何でも屋に。 戦争が終わっても、人の悪と欲は尽きないゆえに、商売は中々繁盛している。 今日の仕事は暗殺である。男が最も得意としている仕事だ。 標的は、この赤道連合を形成する国々のうちの一国を代表する政治家の一人。 護衛は多いが、何も問題は無い。 標的の居場所を確かめて、彼は己の力を発動させる。 「『スケアリー・モンスターズ』」 男の肌が硬質化し、鱗を生やしていく。手の爪が鋭く伸び、ナイフのように尖る。 目は蛇よりもぎらつき、歯は鮫よりも凶悪になる。 十秒とかからずに、男は爬虫類と人間を掛け合わせたような怪人と化していた。 男は獣の俊敏さで跳躍し、命を刈り取るために走り行く。 いずれ来るべき時まで、自分たちが一人の自分となり、全てを手に入れる日まで。 飢え続けた自分が、満たされる日まで。 ディエゴ・ブランドーは、走り続ける。今までも、これからも。 ◆ かつてのインド、今は汎ムスリム会議領となっている地域で、二人の女性と、一人の少年が、 三人とも心配そうな顔つきで、店のテーブルにつきチャーイを飲んでいた。 女性二人は、ミリアリア・ハウとFF。少年は重ちー。 彼らはカメラマンとそのアシスタントという身分で、世界を巡っていた。 FFがMSパイロットとして得た報酬のおかげで資金は万端。 写真の評価も中々で、生活や仕事に、彼らの顔を曇らせる要因はない。 彼らが気にかけるのは、今、ガンジス川のほとりでその流れを見つめている二人の少年少女にあった。 どちらとも、傷はまだ癒えず、体に包帯を巻いている。 キラ・ヤマトとラクス・クライン。 大戦を掻きまわし続けた存在。死んだことにされた存在。 彼らに悪意があったわけではないし、利用されていたのも確かだが、 やはり彼らの行動はあまりに迷惑だったし、責任が無くなるわけではない。 今や、彼らの自分たちの過ちは理解している。キラの方は、まだ償おうとする意志がある。 だが、ラクスの方は完全に止まってしまった。 ほとんど言葉を発することもなく、ろくに食事を口にすることもない。 今まで自分についてきてくれた多くの人々は、ただ自分の能力によって傍にいてくれただけと知り、 絶望してしまっている。その、人を引き付ける能力も、今は無い。 リゾットに傷つけられた喉は治療され、声は出せるようになったものの、 以前とは声質が微妙に変わったらしく、そのため力も消滅した。 もはや彼女には何もない。カガリやアスラン、ミリアリアたちのような、 以前からの友人以外の人間には区別なく怯え、夜に眠ってはうなされる。 どこに行き、どんな人と出会っても、どんな景色を見てもその調子で、 このインドでもそれは変わらなかった。 キラはそんなラクスを悲しげに見守りながら、ずっと傍についている。 「どうしたもんかなぁ………」 FFはぼやきながら、カメラを構える。たとえつらい時間でも、思い出は思い出として残しておくため、 彼女は気が向くとキラとラクスの写真を撮る。いつか、彼らの笑顔を撮れることを祈りながら。 しかしこの時、FFはキラたちに近づく人影を発見した。 それだけなら大したことではない。 ナンパか、商品の売り込みか、お恵み(バクシーシ)のおねだりか、大抵はそんなところだ。 その程度はキラが何とかする。強盗や犯罪者なら、FFがここから撃てばいい。 彼らが死んだはずのキラとラクスであると、気付いた人間であったら面倒なことになるが、 まあ逃げれば何とかなる。 だが、今回はそのどれとも違った。 近づく者たちは二人の男女。 どちらも外見は20歳ほどと若いが、見た目通りの若さとは思えぬ、深く落ち着いた雰囲気があった。 服装は、どこにでも売られている、動きやすく丈夫ではありそうだが、さほど高価でもないものだった。 しかし、身なりではなく、その内面から発せられる輝きが、彼らの人間的な気高さを見る者に教えていた。 「ねえ貴女………何を見ているの?」 女性の方が、ラクスの傍に立ち、声をかけた。ラクスはビクリと身を震わせ、キラにしがみつく。 その体を抱き止め、キラは女性を申し訳なさそうに見る。 女性の方は、ラクスの反応に気を悪くした様子も無く、 「ああ、ごめんなさい。怖がらせるつもりはなかったの。 ただ、あまり悲しそうにしているものだったから。怪我をしているの? 大丈夫。痛い触り方はしないわ。こう見えても、私、看護婦をしていたの」 そうして女性が浮かべる優しい微笑みを、キラとラクスは夜闇を払う朝日を見るように、 雨の止んだ空にかかる虹を見るように、眩そうに見つめていた。 キラはともかく、ラクスが他人をそのように注目するなど、戦争が終わってから一度も無かった。 今まで、元からの知り合い以外に、キラたちをこんなに優しく見た人はいなかった。 その慈愛は、まるで聖母のようだった。 「少し、いいかな?」 そこに、今まで口を出さなかった男性の方が、キラとラクスにそっと両手を差し出す。 男性は、二人を怖がらせないよう、生まれたばかりの赤ん坊にするように、 ゆっくり優しく、手を伸ばし、二人の肩に触れた。 その途端、男性の手が、太陽のような力強い輝きを放った。 同時に、キラとラクスの体に、強く暖かい力が流れ込み、血の流れを通して全身を巡った。 「「!!?」」 その光が止んだ時、キラとラクスの体に残っていた傷は癒えており、痛みもすべて消えていた。 キラもラクスも、その現象に驚いて目を見張る。 「ふう………治ったかな?」 キラとラクスが頷くと、男性は良かったと笑った。 その笑顔を、FFは知っていた。重ちーも知っていた。 違いはあれど、本質は同じだ。 人間が賛歌に値する存在であると、証明するかのような輝かしい笑顔。 「僕は、キラ・ヤマト」 「私は………ラクス・クラインです」 キラたちは、自ら進んで名乗っていた。ラクスさえも。彼女の時間が、今動き始めたのだ。 他者はありのままの自分など見ないと思っていたラクスを、見た人がいたことで。 そして、ラクスの方から、自分を見てほしいと願ったのだ。 FFも重ちーも、それがわかる。 自分たちだって、彼らに憶えていてほしい。思い出に残ってほしい。忘れられたくない。 その気持ちを知っていたからこそ、FFと重ちーは思う。 ああ、もう大丈夫だ、と。 「私は、エリナ」 「僕は、ジョナサン・ジョースターだよ」 新たなる出会いは、新たなる運命を生み出す。 今ここに、新たなる『冒険』が芽生えた。 それゆえに、古い冒険の物語、『種』が芽生えるまでの『奇妙』な物語は、これで、終わりとなる。 『ガンダムSEED・BIZARRE』 【完】
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは人生最大の試練に立ち向かっていた。 何せこの使い魔召喚を失敗したら進級出来ず退学もありうる。 まさに背水の陣、ルイズにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても良い。 ルイズは全身全霊を込めて呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 呪文の成立とともに目の前が爆発し、煙が辺りを覆う。 すわ失敗かと落胆するルイズだが、その煙が晴れてくると、そこに何かが要る事に気づき喜色満面となるも、煙が 晴れていくにつれ当惑の表情へと変化していく。 召喚された物体は、彼女が思い描いていた使い魔とはあまりにもかけ離れていたからだ。 するとそこにいた物体、手足の生えたりんごは、その渋い顔にマッチした渋い声で言った。 「俺が神聖で美しく強力な使い魔だ」 召喚主であるルイズはおろか、周りで事態を見守っていたクラスメイト、さらには教師であり今まで数々の召喚儀 式を監督してきたコルベール出さえ、あまりの発言に言葉を失い戸惑う。 と、その使い魔は絶妙の間をおいて言い放った。 「ウソだけど」 ルイズは素早く足を上げると、思いっきり踏みおろした。 果肉と果汁が飛び散り、見るも無残な轢殺死体が出来上がる。 内心の怒りの為かさらに何度か踏みにじり、完全に粉砕すると何事も無かったように再び呪文を唱え始めた。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 見た事も無い服装をした平民の使い魔が召喚されたのは、その後しばらくたってからであった。 完 -「極楽りんご」より
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トリステイン魔法学院の学生にして失敗ばかりの落ちこぼれ『ゼロのルイズ』。 二年生への進級をかけた『春の使い魔召喚の儀式』へと臨んだ彼女は”彼”を召喚した。 召喚されたばかりの”彼”を見たルイズはただの平民の子供だと思った。 自分よりも年下のようだが、そう年が離れているわけでもなさそうだ。 ともかく召喚自体は成功したのだから、まるでダメと言うわけではないのだとルイズは自分を元気付けた。 そして周囲を不安げに見回し、怯える犬が威嚇するように唸る”彼”を宥めながら使い魔の契約をした。 使い魔のルーンは”彼”の胸へと刻まれた。 そんな”彼”との生活が始まったのだが、それはとても多忙な日々となった。 まず、”彼”は何かしらの障害を持っているのか、言葉を話さないのだ。 ”あ~”、”う~”などの唸り声を上げるだけ。 次に好奇心が旺盛であり、感情の起伏が激しい。他の使い魔を見れば時と場合を選ばず飛び掛り、 魔法の授業の時には練金で小石が真鍮に変わったのを見るや、怯えて暴れ出した。 更に食欲も旺盛。最初に食堂に連れて行った時は野生児の如くテーブルに飛び乗り、料理を散々に食い荒らした。 その事があって食事の件は知り合いのメイドであるシエスタが何とかしてくれる事になったのだが、 結局はこれらの事実にルイズは頭を悩ませる事になった。 だが、それでもルイズは”彼”を見放そうとはしなかった。 自分が召喚できた使い魔だと言う事もあるが、何より”彼”はルイズやシエスタに懐いていたのだ。 その懐きぶりは自分が下の姉に甘える姿にとてもよく似ていたのだ。 それゆえ、無下に突き放す事も出来なかったのだ。 そんな”彼”をルイズは日が経つにつれ、ただの平民だとは思えなくなった。 …その原因は”彼”の成長にあった。どういう訳か、”彼”は常人とは比べ物にならない速度で成長していったのだ。 どんどん成長し、ついにはドラゴンなどと比べられるほどの大きさになった”彼”に、 使い魔召喚の儀式から”彼”に刻まれたルーンに興味を持っていたコルベールも驚きを隠せなかった。 そして、最初はルイズと同じか多少低い位だった”彼”の背丈は、今や二十メイルに達しようかとしていた。 最早疑う余地は無かった。”彼”の常人とは異なった言動もこれで説明がつく。 ”彼”は亜人だ――そうルイズは思い至った。 そんなある日…、学園にルイズの姉であるエレオノールがアカデミーの研究員数名と共にやって来た。 ハルケギニアに生息するどの亜人よりも巨大で異質な”彼”は王宮の、アカデミーの興味を引いたのだ。 そして実験体としてアカデミーに連れてくるように指示が出て、エレオノールらが来たのだ。 エレオノールは”彼”の引渡しを妹に伝えるが、ルイズは当然それを拒否した。 幾ら頭の上がらない姉であろうと大事な使い魔を渡せるはずが無かったのだ。 すると他の研究員が”彼”を魔法で捕縛し、強引に連れ出そうとしだした。 ”彼”は怯え、激しく抵抗し、暴れた。その結果、研究員の内二名が巻き込まれて死亡した。 そのまま”彼”は魔法学院から逃げた。一度だけ、ルイズの呼び声に振り向き、悲しそうな表情を見せて。 ルイズは”彼”を連れ戻すべく、魔法学院を飛び出した。コルベールとエレオノールもそんな彼女に付き添った。 消えた”彼”は食料となる家畜を襲いながら、トリステイン中を放浪しているようだった。 目撃情報を得ながら、ルイズ達は”彼”の姿を捜し求めた。 そんな最中、ガリア南部の山地の中に点在するアンブランと言う村が何かに襲われ、村人全員が行方不明となる事件が起きた。 その村は以前からコボルドに襲われていた為、最初はそれらの仕業かと思われたが、そうではない事が解った。 破壊された家々はコボルドとは思えない、巨大な物に叩き壊されたような物ばかりであり、 何より人の死体が一つも無い所が妙であった。 コボルドに人の死体を一々始末するような知能が無い事は、ハルケギニア中の人間は知っているのだ。 そして、この奇怪な事件の犯人が先日トリステイン魔法学院から逃げ出した亜人では無いかと、人々は噂しあった。 無論、ルイズはそんな事は信じなかった。”彼”が自分から人を襲った事など、ただの一度足りとも無いのだ。 だが、世間はそんな少女一人の気持ちなどでは動かなかった。 事件がガリアだけに止まらず、ロマリア、ゲルマニアでも起こり、”彼”を完全に危険視したのだ。 各国の王宮は討伐隊を編制し、”彼”を捜索を開始するに至った。そんな状況にルイズ達は焦った。 そして、ルイズ達は朝靄が掛かる森の中でそれと遭遇した。 突如として地面が盛り上がり、巨大な怪物が姿を現したのだ。 それを見たコルベールは、その怪物が何か解った。 それは大昔に韻竜と共に絶滅したはずの火竜の亜種『バラナスドラゴン』であった。 怪物は地面から這い出るや、ルイズ達を見つけて大きく咆哮する。 その耳まで裂けた口から赤い液体が滴り落ちている。 それが人の血液であると言う事は直ぐに解った。…口の端から”人だった物”が除いていたのだから。 ルイズは吐き気を覚えたが、それを上回る激しい怒りが頭の中を駆け巡った。 ルイズは杖を振り、失敗魔法の爆発を怪物に放ち、エレオノールとコルベールも魔法を唱えるが、 怪物はそれらに全く怯む気配を見せなかった。 ついに精神力が切れ、魔法が撃てなくなったルイズ達は怪物から逃げた。 だが、ルイズだけが躓き、地面へと倒れてしまった。そのルイズへと怪物は牙の並んだ口を開けて迫る。 もうダメだ、とルイズが絶望した時、怪物の角が何者かに掴まれた。 見上げれば、怪物の角を掴んでいるのは”彼”だった。 ”彼”が怪物と戦っている隙にやって来たコルベールがルイズを抱え上げ、その場を離れた。 ”彼”と怪物の戦いは、人間と獣の戦いだった。 怪力と知恵で戦う”彼”に対し、怪物は牙や爪、ブレスを進化させたかのような強烈な熱戦、 更には最高百メイルに達する跳躍力で持って”彼”に襲い掛かる。 そんな理性と野生の対決は壮絶な物となった。 結果的に頭脳プレーで攻める”彼”に怪物は遂に逃げ出し、地中へと逃れた。 その後、”彼”は逃げる最中に謝って足を滑らせ、崖下へと転落したエレオノールを助け出し、 ルイズとコルベールの下へと送り届けるや、再び姿を消したのだった。 トリスタニアへと戻ったルイズ達は王宮へと事の次第を報告した。 全ての事件はバラナスドラゴンの生き残りの仕業であり、”彼”は無関係だと。 しかし、絶滅したはずのバラナスドラゴンが生き残っているなど在り得ない、と否定された。 更には、使い魔だからと問題の亜人を庇っているのではないか、と言われる始末だ。 結局、何を言っても信じてはもらえなかった。 そして、バラナスドラゴンの生き残りである怪物は再び現れた。 夜闇に隠れ、シエスタの生まれ故郷であるタルブの村の人々に襲い掛かったのだ。 次々と家が壊され、村人が老若男女の区別無く食べられていく。 タルブ領主のアストン伯が慌てて討伐隊を率いたが、一人残らず熱戦に焼かれたり食物にされた。 そんな地獄の様な光景を見ながら震えるシエスタに怪物は迫った。 その時、再び”彼”が姿を現し、怪物へと立ち向かった。怪物の首を締め上げ、投げ飛ばす。 だが、怪物もやられてばかりではなかった。二度も食事を邪魔された事は怒りを爆発させるには十分だった。 怒りの所為か、威力の増した熱戦が怪物の口から迸り”彼”に命中する。 最初は耐えられたそれも、威力の増している状態では耐え切れなかった。 僅かに怯んだ”彼”の隙を突き、怪物は大きく跳躍して覆い被さる。 鋭い牙で噛み付こうとする怪物の口へ、”彼”は岩を押し込み蹴り飛ばした。 ひっくり返る怪物に”彼”は更に岩を投げつける。 怒り狂う怪物は熱戦を吐き散らしながら”彼”に襲い掛かる。 ”彼”は怪物の注意を自分に引きつけ、村から引き離していった。 遅れて村へとやって来たルイズは、”彼”の意図を理解し、馬に乗るや後を追って森へと入った。 移動を続けながら二体の戦いは激しさを増していく。 やがて森を抜け、二体はハルケギニア随一の巨大な湖『ラグドリアン湖』へと辿り着いた。 そこで遂に戦いは終わりを迎えようとしていた。 ”彼”に投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた怪物はフラフラになる。 その怪物の首を”彼”は渾身の力で締め上げる。 怪物は苦しみ、激しく暴れたが、”彼”も必死に締め上げる。 やがて、怪物の鳴き声が弱々しくなっていき、大きく一声鳴くとそのまま口を閉じた。 直後、骨が折れる音が首から響いた。 不自然に首が折れ曲がった怪物は地面に力なく横たわる。 その怪物の身体を”彼”は二、三度蹴り飛ばしたが反応は無い。完全に事切れていた。 ”彼”は怪物の死骸を持ち上げると、湖に向かって力任せに放り投げた。 大きな水飛沫を上げて怪物の身体は湖底へと沈んでいった。 怪物が沈んだのを見届け、”彼”は勝利の雄叫びを上げる。 その彼の勇姿に駆けつけたルイズだけでなくエレオノールやコルベールも笑顔を浮かべた。 ――だが、事はそれで終わらなかった。 突如、ラグドリアン湖の水面から巨大な水柱が立ち上り、そこから声が辺りに響き渡る。 声の主はラグドリアン湖の水の精霊だと名乗った。 水の精霊は自らの領域を侵した”彼”へと制裁を加えると言った。 直後、水面が盛り上がり、巨大な蛸が姿を現した。それは水の精霊の使いだ。 呼吸する音が不気味な鳴き声のように聞こえ、足や胴体が動く度に粘液が嫌な音を立てる。 大ダコは八本の大蛇の様な足を振り回しながら”彼”へと襲い掛かった。 ”彼”は必死に戦ったが、怪物とは勝手が違いすぎた。 柔らかい柔軟性に長けた身体は木や岩を投げつけられても大したダメージを受けずに弾き返してしまう。 業を煮やした”彼”は肉弾戦を仕掛けたが、逆に大ダコの足に絡め捕られてしまった。 そのまま”彼”は大ダコに力任せに湖へと引きずり込まれる。 ”彼”の危機にルイズは助けようと杖を抜くが、エレオノールに止められる。 水の精霊を怒らせればどんな事になるか解らないのだ。 そんな事はルイズも解っている。だが、理屈では割り切れない事もあるのだ。 しかしエレオノールは譲らず、暴れるルイズの頬を叩いた。 そして、ルイズは気付いた。…姉もまた、自分の命の恩人の危機を見つめている事しか出来ないのに苦しんでいるのを。 結局、”彼”が大ダコによって湖底に引きずり込まれるのを見ている事しか出来なかった。 こうして、事件は一応の終わりを迎えた。 この日を境にルイズは一つの可能性を考える事となった。 それは”異種族との和解と共存”だった。 この後、ルイズはアルビオンで一人のハーフエルフの少女と出会い、 彼女と協力してエルフとの和解を実現させる事になる。 そして、彼女は和解成立のその後も毎日ラグドリアン湖へと通った。 何時の日にか”彼”が戻って来てくれる事を信じて…。 『終』