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まともに召喚させてもらえないルイズ 「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールはトリステイン魔法学園の生徒。今日は進級試験の日、ルイズはその試験の課題である使い魔召喚の儀式の真っ最中です。 「私は求め訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズは魔法が得意ではありません。今日もどうせ爆発で終わるんだろうなとルイズを含めたその場全員が思っていたのですが… 「あれ?何かいるわ…?まさか成功した?」 なんと召喚魔法は一発で成功。鏡からゆっくりと現れる緑色のフォルム。二本足で立ち、背中には黒い羽のような物がついている。 召喚されたのはどうやら亜人…?何はともあれルイズは喜び召喚したそれに話しかけます。 「アンタ亜人ね?この私に召喚されたんだから光栄に…」 「ここは…何処だ?…まぁそんな事はどうでも良い…まさか孫悟空が私と一緒に自爆するとは…な?」 緑の亜人はブツブツと何かを呟いています。ルイズは自分が無視されている事に気付き緑の亜人の側でぎゃーぎゃー喚きますが、亜人の耳には全く届いていない様子。 「ククク…だがおかけで新たな力が手に入った…待っていろ孫悟飯…このセルが…パーフェクトに貴様を消してやろうー…!」 亜人は人差し指と中指を額に押し付けます。次の瞬間、緑の亜人は姿形もすっかり無くなっていました。 「はぇ?あれ?」 辺りがシーンと静まります。召喚した本人はというと、一体何が起きたのかといった様子で事態が飲み込めていない様子。 数分後、事態を理解したルイズが儀式のやりなおしを教師のコルベールに申し出、再びルイズの使い魔召喚が行われました。 再召喚で現れたのは黄土色の鎧と鉄仮面を被った男だった。今度は成功したとルイズが鉄仮面に近づこうしたその時… 「ここは…神崎士郎の望む世界ではない。…修正が必要だ」 鉄仮面は腰の黒い箱から一枚の札を取りだし…! 『TIME VENT』 「え?」 チクタクチクタクチクタクチクタク… 「はっ!あれ?あいつは!?」 一瞬、何かが起きた後、黄土色の鎧の男はどこかへと消えていました。ルイズがコルベールに「アイツはどこへ行ったの!?」と問いかけましたが、コルベールは何の事やらさっぱりといった態度で接します。 いまいち納得のいかないルイズは再び召喚魔法「サモン・サーヴァント」を行います。今度は爆発が起こりました。召喚成功の手応えを感じたルイズでしたが、周りを見渡しても使い魔が見当たりません。 ふと足元に目をやると何かが浮かんでいました。文字です。ハルケギニアの言葉で「ここにいた」と書かれています。 おまけに矢印まであるではありませんか!ルイズが足を上げるとそこには体の潰れた自分の使い魔がいました。 やっぱり諦められないルイズはまたまたコルベールにやり直しを申し出、コルベールはこれを承認。四回目の召喚。 「やった!今度こそ成功よ!」 今回召喚されたのは、青い帽子を被った平民のようでした。しかし、それと一緒に見たこともない『魔物』が居ます。 これは当たりだとルイズが喜んでいるとどこからともなく青い毛に包まれた魔物が現れました。 「わたっ!わたっ!テリー、ここは異世界の扉で飛ばされた世界じゃないわた!ひとまず城に帰ろう!」 「そうなのか?じゃあ帰るかな!」 と平民の少年が言いました。ルイズの脳裏に嫌な予感が過ります。 「ちょ…ま…」 「わたわたわた~!」 取りつく島もなく少年は遥か空へと飛んでいってしまいました。 流石にストレスが溜まってきたルイズはコルベールに許可を取ることも忘れ召喚魔法を唱えます。 五回目に現れたのはおかしな帽子を被った少女、しかし背中には大きな羽が… 「よくも私を召喚してくれたな…人間。このレミリ…」 あるのを確認するところで日に当てられた少女は灰になった。 再再再再再再度召喚に挑むルイズ。現れたのは紅蓮の巨人! 「なめんじゃねぇ…異次元だろうが…多元宇宙だろうが…ハルケギニアだろうが関係ねぇ…俺を誰だと思っていやがる…穴堀りシモンだあぁ!」 紅蓮の巨人は気合い(螺旋力)で空間をねじ曲げ元の世界へ帰っていった。 それでもめげないルイズは渾身の力を込め召喚を行います。 「ドカ「ウボァァァ!」ァァン!」 断末魔の叫びと共に爆発が起こります。土煙が引くと底には黒こげになった鉄のゴーレムがいました。 ルイズが召喚した残骸が増える中、ルイズは藁にすがる思いで使い魔を召喚します。 召喚されたのは平民の少年とどう見ても人間には見えない異形の者。両者共に腕に何かを着けています。良く見ると少年の方は何かを手にしています。しらない文字書かれた緑色の札です。どうやら少年はその札で何かをするようです。 「俺のターン!魔法カード『超融合』を発動!…来い、ユベル!」 「十代…!」 すると二人は一つに重なり、眩い光となって空へと消えていった。 その後もルイズは召喚を続けました。 「あぅあぅ~…ここはカケラの世界じゃないのですよ…オヤシロワープ!」 …しかしいずれも 「はかせー、ここにはサルいないよー」 「ははは、悪かったなカケル君、今転送するぞい」 皆帰るなり死ぬなりして、 「エトナの奴こんなボトルの中に閉じ込めおって…おい、時空の渡し人!さっさと俺様をエトナのところへ飛ばせ!」 とうとう100回を超えたところでルイズの意識が 「キテレツー、ここどこナリ?」 途切れた。 次の日の朝、ルイズが起きると平民の少年が彼女の部屋にいました。何でも気を失う前にルイズが召喚したそうです。 その平民は「早く元の世界に帰せよ」等と馬鹿らしい事をほざいている。早く自分の力で帰れば良いのにと思いながら再びルイズは眠りについたそうな。 お し ま い 以上小ネタ ドラゴンボールよりセル 仮面ライダー龍騎より仮面ライダーオーディーン ぷよぷよよりのみ DQモンスターズ1よりテリー 東方プロジェクトよりレミリア・スカーレット 天元突破グレンラガンよりグレンラガン(シモン入) ボンバーマンよりボンバーマン 遊戯王GXより十代とユベル その他もろもろ… でした
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは人生最大の試練に立ち向かっていた。 何せこの使い魔召喚を失敗したら進級出来ず退学もありうる。 まさに背水の陣、ルイズにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても良い。 ルイズは全身全霊を込めて呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 呪文の成立とともに目の前が爆発し、煙が辺りを覆う。 すわ失敗かと落胆するルイズだが、その煙が晴れてくると、そこに何かが要る事に気づき喜色満面となるも、煙が 晴れていくにつれ当惑の表情へと変化していく。 召喚された物体は、彼女が思い描いていた使い魔とはあまりにもかけ離れていたからだ。 するとそこにいた物体、手足の生えたりんごは、その渋い顔にマッチした渋い声で言った。 「俺が神聖で美しく強力な使い魔だ」 召喚主であるルイズはおろか、周りで事態を見守っていたクラスメイト、さらには教師であり今まで数々の召喚儀 式を監督してきたコルベール出さえ、あまりの発言に言葉を失い戸惑う。 と、その使い魔は絶妙の間をおいて言い放った。 「ウソだけど」 ルイズは素早く足を上げると、思いっきり踏みおろした。 果肉と果汁が飛び散り、見るも無残な轢殺死体が出来上がる。 内心の怒りの為かさらに何度か踏みにじり、完全に粉砕すると何事も無かったように再び呪文を唱え始めた。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 見た事も無い服装をした平民の使い魔が召喚されたのは、その後しばらくたってからであった。 完 -「極楽りんご」より
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苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
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「グローランサー3」のモニカ・アレン召喚 モニカがルイズに召喚されました-01 モニカがルイズに召喚されました-02 モニカがルイズに召喚されました-03 モニカがルイズに召喚されました-04
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トリステイン魔法学院の学生にして失敗ばかりの落ちこぼれ『ゼロのルイズ』。 二年生への進級をかけた『春の使い魔召喚の儀式』へと臨んだ彼女は”彼”を召喚した。 召喚されたばかりの”彼”を見たルイズはただの平民の子供だと思った。 自分よりも年下のようだが、そう年が離れているわけでもなさそうだ。 ともかく召喚自体は成功したのだから、まるでダメと言うわけではないのだとルイズは自分を元気付けた。 そして周囲を不安げに見回し、怯える犬が威嚇するように唸る”彼”を宥めながら使い魔の契約をした。 使い魔のルーンは”彼”の胸へと刻まれた。 そんな”彼”との生活が始まったのだが、それはとても多忙な日々となった。 まず、”彼”は何かしらの障害を持っているのか、言葉を話さないのだ。 ”あ~”、”う~”などの唸り声を上げるだけ。 次に好奇心が旺盛であり、感情の起伏が激しい。他の使い魔を見れば時と場合を選ばず飛び掛り、 魔法の授業の時には練金で小石が真鍮に変わったのを見るや、怯えて暴れ出した。 更に食欲も旺盛。最初に食堂に連れて行った時は野生児の如くテーブルに飛び乗り、料理を散々に食い荒らした。 その事があって食事の件は知り合いのメイドであるシエスタが何とかしてくれる事になったのだが、 結局はこれらの事実にルイズは頭を悩ませる事になった。 だが、それでもルイズは”彼”を見放そうとはしなかった。 自分が召喚できた使い魔だと言う事もあるが、何より”彼”はルイズやシエスタに懐いていたのだ。 その懐きぶりは自分が下の姉に甘える姿にとてもよく似ていたのだ。 それゆえ、無下に突き放す事も出来なかったのだ。 そんな”彼”をルイズは日が経つにつれ、ただの平民だとは思えなくなった。 …その原因は”彼”の成長にあった。どういう訳か、”彼”は常人とは比べ物にならない速度で成長していったのだ。 どんどん成長し、ついにはドラゴンなどと比べられるほどの大きさになった”彼”に、 使い魔召喚の儀式から”彼”に刻まれたルーンに興味を持っていたコルベールも驚きを隠せなかった。 そして、最初はルイズと同じか多少低い位だった”彼”の背丈は、今や二十メイルに達しようかとしていた。 最早疑う余地は無かった。”彼”の常人とは異なった言動もこれで説明がつく。 ”彼”は亜人だ――そうルイズは思い至った。 そんなある日…、学園にルイズの姉であるエレオノールがアカデミーの研究員数名と共にやって来た。 ハルケギニアに生息するどの亜人よりも巨大で異質な”彼”は王宮の、アカデミーの興味を引いたのだ。 そして実験体としてアカデミーに連れてくるように指示が出て、エレオノールらが来たのだ。 エレオノールは”彼”の引渡しを妹に伝えるが、ルイズは当然それを拒否した。 幾ら頭の上がらない姉であろうと大事な使い魔を渡せるはずが無かったのだ。 すると他の研究員が”彼”を魔法で捕縛し、強引に連れ出そうとしだした。 ”彼”は怯え、激しく抵抗し、暴れた。その結果、研究員の内二名が巻き込まれて死亡した。 そのまま”彼”は魔法学院から逃げた。一度だけ、ルイズの呼び声に振り向き、悲しそうな表情を見せて。 ルイズは”彼”を連れ戻すべく、魔法学院を飛び出した。コルベールとエレオノールもそんな彼女に付き添った。 消えた”彼”は食料となる家畜を襲いながら、トリステイン中を放浪しているようだった。 目撃情報を得ながら、ルイズ達は”彼”の姿を捜し求めた。 そんな最中、ガリア南部の山地の中に点在するアンブランと言う村が何かに襲われ、村人全員が行方不明となる事件が起きた。 その村は以前からコボルドに襲われていた為、最初はそれらの仕業かと思われたが、そうではない事が解った。 破壊された家々はコボルドとは思えない、巨大な物に叩き壊されたような物ばかりであり、 何より人の死体が一つも無い所が妙であった。 コボルドに人の死体を一々始末するような知能が無い事は、ハルケギニア中の人間は知っているのだ。 そして、この奇怪な事件の犯人が先日トリステイン魔法学院から逃げ出した亜人では無いかと、人々は噂しあった。 無論、ルイズはそんな事は信じなかった。”彼”が自分から人を襲った事など、ただの一度足りとも無いのだ。 だが、世間はそんな少女一人の気持ちなどでは動かなかった。 事件がガリアだけに止まらず、ロマリア、ゲルマニアでも起こり、”彼”を完全に危険視したのだ。 各国の王宮は討伐隊を編制し、”彼”を捜索を開始するに至った。そんな状況にルイズ達は焦った。 そして、ルイズ達は朝靄が掛かる森の中でそれと遭遇した。 突如として地面が盛り上がり、巨大な怪物が姿を現したのだ。 それを見たコルベールは、その怪物が何か解った。 それは大昔に韻竜と共に絶滅したはずの火竜の亜種『バラナスドラゴン』であった。 怪物は地面から這い出るや、ルイズ達を見つけて大きく咆哮する。 その耳まで裂けた口から赤い液体が滴り落ちている。 それが人の血液であると言う事は直ぐに解った。…口の端から”人だった物”が除いていたのだから。 ルイズは吐き気を覚えたが、それを上回る激しい怒りが頭の中を駆け巡った。 ルイズは杖を振り、失敗魔法の爆発を怪物に放ち、エレオノールとコルベールも魔法を唱えるが、 怪物はそれらに全く怯む気配を見せなかった。 ついに精神力が切れ、魔法が撃てなくなったルイズ達は怪物から逃げた。 だが、ルイズだけが躓き、地面へと倒れてしまった。そのルイズへと怪物は牙の並んだ口を開けて迫る。 もうダメだ、とルイズが絶望した時、怪物の角が何者かに掴まれた。 見上げれば、怪物の角を掴んでいるのは”彼”だった。 ”彼”が怪物と戦っている隙にやって来たコルベールがルイズを抱え上げ、その場を離れた。 ”彼”と怪物の戦いは、人間と獣の戦いだった。 怪力と知恵で戦う”彼”に対し、怪物は牙や爪、ブレスを進化させたかのような強烈な熱戦、 更には最高百メイルに達する跳躍力で持って”彼”に襲い掛かる。 そんな理性と野生の対決は壮絶な物となった。 結果的に頭脳プレーで攻める”彼”に怪物は遂に逃げ出し、地中へと逃れた。 その後、”彼”は逃げる最中に謝って足を滑らせ、崖下へと転落したエレオノールを助け出し、 ルイズとコルベールの下へと送り届けるや、再び姿を消したのだった。 トリスタニアへと戻ったルイズ達は王宮へと事の次第を報告した。 全ての事件はバラナスドラゴンの生き残りの仕業であり、”彼”は無関係だと。 しかし、絶滅したはずのバラナスドラゴンが生き残っているなど在り得ない、と否定された。 更には、使い魔だからと問題の亜人を庇っているのではないか、と言われる始末だ。 結局、何を言っても信じてはもらえなかった。 そして、バラナスドラゴンの生き残りである怪物は再び現れた。 夜闇に隠れ、シエスタの生まれ故郷であるタルブの村の人々に襲い掛かったのだ。 次々と家が壊され、村人が老若男女の区別無く食べられていく。 タルブ領主のアストン伯が慌てて討伐隊を率いたが、一人残らず熱戦に焼かれたり食物にされた。 そんな地獄の様な光景を見ながら震えるシエスタに怪物は迫った。 その時、再び”彼”が姿を現し、怪物へと立ち向かった。怪物の首を締め上げ、投げ飛ばす。 だが、怪物もやられてばかりではなかった。二度も食事を邪魔された事は怒りを爆発させるには十分だった。 怒りの所為か、威力の増した熱戦が怪物の口から迸り”彼”に命中する。 最初は耐えられたそれも、威力の増している状態では耐え切れなかった。 僅かに怯んだ”彼”の隙を突き、怪物は大きく跳躍して覆い被さる。 鋭い牙で噛み付こうとする怪物の口へ、”彼”は岩を押し込み蹴り飛ばした。 ひっくり返る怪物に”彼”は更に岩を投げつける。 怒り狂う怪物は熱戦を吐き散らしながら”彼”に襲い掛かる。 ”彼”は怪物の注意を自分に引きつけ、村から引き離していった。 遅れて村へとやって来たルイズは、”彼”の意図を理解し、馬に乗るや後を追って森へと入った。 移動を続けながら二体の戦いは激しさを増していく。 やがて森を抜け、二体はハルケギニア随一の巨大な湖『ラグドリアン湖』へと辿り着いた。 そこで遂に戦いは終わりを迎えようとしていた。 ”彼”に投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた怪物はフラフラになる。 その怪物の首を”彼”は渾身の力で締め上げる。 怪物は苦しみ、激しく暴れたが、”彼”も必死に締め上げる。 やがて、怪物の鳴き声が弱々しくなっていき、大きく一声鳴くとそのまま口を閉じた。 直後、骨が折れる音が首から響いた。 不自然に首が折れ曲がった怪物は地面に力なく横たわる。 その怪物の身体を”彼”は二、三度蹴り飛ばしたが反応は無い。完全に事切れていた。 ”彼”は怪物の死骸を持ち上げると、湖に向かって力任せに放り投げた。 大きな水飛沫を上げて怪物の身体は湖底へと沈んでいった。 怪物が沈んだのを見届け、”彼”は勝利の雄叫びを上げる。 その彼の勇姿に駆けつけたルイズだけでなくエレオノールやコルベールも笑顔を浮かべた。 ――だが、事はそれで終わらなかった。 突如、ラグドリアン湖の水面から巨大な水柱が立ち上り、そこから声が辺りに響き渡る。 声の主はラグドリアン湖の水の精霊だと名乗った。 水の精霊は自らの領域を侵した”彼”へと制裁を加えると言った。 直後、水面が盛り上がり、巨大な蛸が姿を現した。それは水の精霊の使いだ。 呼吸する音が不気味な鳴き声のように聞こえ、足や胴体が動く度に粘液が嫌な音を立てる。 大ダコは八本の大蛇の様な足を振り回しながら”彼”へと襲い掛かった。 ”彼”は必死に戦ったが、怪物とは勝手が違いすぎた。 柔らかい柔軟性に長けた身体は木や岩を投げつけられても大したダメージを受けずに弾き返してしまう。 業を煮やした”彼”は肉弾戦を仕掛けたが、逆に大ダコの足に絡め捕られてしまった。 そのまま”彼”は大ダコに力任せに湖へと引きずり込まれる。 ”彼”の危機にルイズは助けようと杖を抜くが、エレオノールに止められる。 水の精霊を怒らせればどんな事になるか解らないのだ。 そんな事はルイズも解っている。だが、理屈では割り切れない事もあるのだ。 しかしエレオノールは譲らず、暴れるルイズの頬を叩いた。 そして、ルイズは気付いた。…姉もまた、自分の命の恩人の危機を見つめている事しか出来ないのに苦しんでいるのを。 結局、”彼”が大ダコによって湖底に引きずり込まれるのを見ている事しか出来なかった。 こうして、事件は一応の終わりを迎えた。 この日を境にルイズは一つの可能性を考える事となった。 それは”異種族との和解と共存”だった。 この後、ルイズはアルビオンで一人のハーフエルフの少女と出会い、 彼女と協力してエルフとの和解を実現させる事になる。 そして、彼女は和解成立のその後も毎日ラグドリアン湖へと通った。 何時の日にか”彼”が戻って来てくれる事を信じて…。 『終』
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ルイズが子山羊を召喚しました。 「使い魔になんてしないで下さい。 僕の次に召喚される兄さんの方が大きくて強いですよ」 子山羊はそう言って去って行きました。 人語を話したのはとりあえずスルー。 ふたたびの召喚。 今度現れたのは、角も立派な大きなたくましい山羊でした。 しかし。 「僕を使い魔にするより、次に召喚される兄貴の方が大きくて強いからそっちにしなよ」 山羊はそう言ってまた去っていきました。 なんでしゃべれるんだお前。 そして三度目の召喚。 爆発。 土煙の中からぬうと現れたのは。 それは山羊と言うにはあまりにも大きすぎた。 大きく険しく重く、そして大雑把すぎた。 それはまさに以下略。 「使い魔にしてやるわ!」 ルイズが怒鳴りました。 『やってみろオラァ!こっちにゃ二本の槍がある!これで目玉は田楽刺し! おまけに大きな石も二つある! にくも! ほねも! こなごなにふみくだくぞ! 谷底にブチまけてやる!』 こうして、すさまじいたたかいがはじまりました……。 一方ティファニアはすてきな三人組を召喚して孤児の王国を作り上げ幸せに一生を送った。 おわり。
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの人生とは、 這い寄る闇からの逃走劇も同然だった。 魔法が使えないこと、身体が幼いこと、他人に認められないこと――。 それら闇から逃れるため、ありとあらゆる努力を重ね、研磨し、足掻いた。 ――それでも、何も変わらなかった。 いくら呪文を知っていても、魔法は使えない。 いくら健康になっても、身体は育たない。 いくら貴族として立ち振る舞っても、誰も認めない。 逃げても逃げても追ってくる闇――だが、幸か不幸か、今までそれに捕らわれる事は無かった。 魔法が使えなくても、学園が自分を放り出すことは無かったし、 身体が幼くても、どうしても気を引きたい相手などはいないし、 他人が認めなくても、自分はれっきとした貴族だって分かっている。 けれど、もうここまでだ。 この学園では、2年生への進級するための儀式として、『使い魔の召喚』がある。 今までに一度たりとも魔法を成功させたことの無い自分に、できるはずもない。 案の定、呪文を唱える度に、地面を爆発させた。 他の生徒たちの嘲笑が聞こえる。文句が聞こえる。罵倒が聞こえる。 ――本当は、分かっていたのだ。 魔法が使えなくては、進級できない。 身体が幼くては、婚約者は去るかもしれない。 他人が認めなくては、貴族にはなれない。 それでも、足掻きたかった。 ちっぽけな希望を抱き、この闇を打ち破り、この広い世界に歩みだしたかった。 闇はすぐ後ろにいる。 未来までも黒で覆い、光を奪おうとしている。 お前は、何者にもなれないと、絶望を突きつけようと―― ――そうして、その使い魔は現れた。 ルイズは、その使い魔を召喚したときのことを、一生忘れないだろう。 その姿を目にした瞬間、自らを覆おうとしていた闇は、一瞬で消し飛んだ。 灰色の世界に光が射し込み、自分を、世界を、輝かせる。 ――もう、何も怖くない! 魔法が使えなくても、この使い魔がいれば何でも出来る! 身体が幼くても、この使い魔がいれば何も言わせない! 他人に認められなくても、この使い魔がいれば何も要らない! ショボイ魔法などどうでもよくなり、 チンケなコンプレックスは消え去り、 周囲の視線は、畏怖と羨望の視線となった! 吊り上っていた眼は、絶対なる意志を持ち、 追い立てられるような歩きは、王者の余裕を持ち、 張り詰めていた雰囲気は、覇王のようなカリスマあるものへと変わった! 使い魔が自らと在る限り、 自分に出来ないことなど無いのだと、 自分は何処へでも行けると、ルイズは確信した! ――そう、ルイズは、果てしなく続く戦いの道(ロード)へ歩み始めたのだ!! 喧嘩売って来た色ボケメイジを、ぶっ飛ばしてやった。 悪名高い盗賊を、その僕の巨大なゴーレムごと吹き飛ばしてやった。 国と自分を裏切った婚約者を、そのお仲間諸共消し飛ばしてやった! ルイズは止まらない。 何者にもルイズは止められない! ――そして今! 眼下には、卑劣にも条約を破り、攻め込んできたアルビオン軍が展開している。 「こないだ、アルビオンで躾けてやったというのに……まだ足りないらしいわね」 虫けらを見るような目で――事実、そう思っているのだろう――白の国のゴミクズどもを眺める。 「ならば教えてやるわ……この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのいる、 そして、我が最強のしもべのいる、このトリステイン王国に攻め込んできた、その愚かさを――!!」 ルイズは緩やかに右手を上げる。 それは、ルイズがしもべに敵の殲滅を指示する、号令なのだ――! ルイズは高らかに謳い上げる――破壊を告げる言葉を! 「滅 び の ッ ! バ ァ ァ ァ ス ト ス ト リ ィ ィ ィ ィ ィ ム ッ ッ ! !」 その瞬間――。 青き眼の、白き最強龍は、口内から光を放つ――! それは、あらゆるものを滅ぼす、破壊の光――!! 「強 靭 ッ ! 無 敵 ッ ! 最 強 ォ ―― !!」 光は全てを飲み込んでいく! 戦艦を蹴散らし、ブチ壊し、滅茶苦茶にしていく! 竜騎兵など蝿も同然! 地べたを這いずるメイジや兵士どもなど、塵芥に等しい! 「粉 砕 ッ ! 玉 砕 ッ ! 大 ・ 喝 ・ 采 ―― !!」 何が来ようと、何も恐れることは無い。 我がしもべ、『青眼の白龍』の前には、全てが平伏すのだ――! 「ワハハハハハハハハハハ―――――!!」 その後、ルイズは『滅び』の二つ名と、 ありとあらゆる名誉を手にいれ、トリステイン最強の力として、君臨した。 ルイズは最期まで魔法を使えなかった。 ルイズは最期まで体系はお子様だった。 ルイズは最期までメイジとは認められなかった。 だが―― ルイズは『力』を使えた。 ルイズはあらゆる名家の男たちから誘いがあった。 ルイズは至上最強の竜騎兵として認められた。 そして、友も得た。 ルイズは未来を切り裂き、幸せを手に入れた。 そして、これからも、ルイズは止まらない! ルイズの踏み出した道――それが未来となるのだから――! 「ずっと私のターン!!」 『滅びのルイズ』…… 完 -「遊戯王」より青眼の白龍を召喚
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前ページ次ページ仕切るの?ルイズさん 春――ここに悩める女生徒が一人 「うーん………」 「どうしたの? そんな顔をして。」 「あ、おはようキュルケ。 いや、昨日私が召喚した使い魔の事なんだけどね………」 「ああ、あの四角い形をした使い魔ね。 ……ひょっとして何かすごい能力とか見つけたとか?」 「いや、あの憎き使い魔をどう煮ようか、どう焼こうか、どう蒸そうか………って考えてたらいつの間にか朝になっちゃって………」 「………それは大変だったわね。」 時はサモン・サーヴァントの儀式の翌日。 つまりキュルケが昨日召喚したばかりの使い魔を連れて朝食に向かう途中でクラスメートのルイズに遭遇したのである。 「ところでさ」 キュルケが突然ルイズに話題を振る。 「あなた……何か忘れ物とかしてないかしら?」 「えっ?いきなり何言い出すのよ。 私が忘れ物なんてするわけないじゃない。」 「つまり、その………」 「なっ、何よ。そりゃいつもよりぼーっとしてるかもしれないけど、私は忘れ物なんかしてないわよ! 本当よ!」 珍しくキュルケが言葉に躊躇していたのでルイズはいささか動揺していた。が――― 「じゃああなたのその格好はファッションなのよね?」 なぜか室内に冷たい風が吹いた。いつもより下がスースーした。 (あああああああーーーーーー!!!!!私、スカート履いて無い! どうりで下がスースーすると思ってたら!) 「××××恥ずかしぃーーーー!!!!」 「ルイズ………あなたが何を言っているのかあたしにはわからないわ………」 「……………」 「あっ、タバサ。おはよう。」 キュルケの挨拶を軽くスルーしたタバサは、 目の前のルイズの姿を見て一言。 「若手芸人?」 「ウケ狙いでも、罰ゲームでもないわよっ!」 むしろその方がまだマシなんじゃ………と思ったが口には出さないキュルケであった。 「あんた誰?」 「おう!俺の名前はモロヤマ1号だ! 文部科学省が生み出したラララ科学の子なのさ! もっと俺の事について知りたかったら『10万個』と10k 「ミスタ・コルベール! 今すぐこれを私の魔法で破壊します!」 「おいおい、いきなりこれ扱いなんて酷いぜセニョリータ。 これから俺はお前の使い魔になって生着替え見てはぁはぁしてやるからさ。」 「誰があんたを使い魔にするって言ったのよ!」 時は遡って1日前の春の使い魔召喚の儀式の時である。 他の2年生は難無く使い魔を召喚し、ルイズも失敗はしたが召喚に成功した。 それが、顔がパソコンのモニターの形をしていて耳には高性能っぽい何かが備え付けられていて首から下は学ラン姿のロボット、モロヤマ1号だった。 「ミス・ヴァリエール。これは伝統なんだ。 たとえ何かの臓器であっても黒タイツを履いた私そっくりのおっさんであったとしても契約が成立する。もちろん、これも例外ではない。」 「お前もこれ扱いかっ!」 かくしてルイズはモロヤマとコントラクト・サーヴァントの儀式を行った。 「なんでそこまでして俺との契約を嫌がったんだ?」 「だって………」 ルイズは頬を赤く染めてぽつりと本音を漏らした。 「契約したらあんたの馬鹿がうつりそうで………」 「うわっ、なんて失礼な。」 そして呆然としていた生徒達に向かってモロヤマはこう言った。 「お前達! 俺が超美少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとチューしたこの唇と間接チッスする権利を買うとしたらいくら出す?」 「いっ、いきなり何言い出すのよあんたは!」 「全くだ。僕たちを馬鹿にするのにもほどがある。」 そう突っ掛かってきた男子生徒の名前はギーシュだった。 「そうよ! いくら男子生徒が馬鹿だからって得体の知らない何かとキスするわけないじゃない!」 「そうだよ! 間接キスと言えばラップ越しに決まってるだろうが!」 「あんた達怒るところはそこなの?」 キュルケの冷静なツッコミが飛んだ。 しかしルイズは自分の見通しの甘さに気付いていなかった。 一つは、馬鹿は自分だけでなく学院の皆にうつってしまっている事。 もう一つは馬鹿だけでなく変態にもなっている事―― 前ページ次ページ仕切るの?ルイズさん
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まったく同じ言葉、あるいは名称であっても、時としてそれはまるで正反対であったり、または異なる意味となることもある。 ここに一人の少女がいる。 名をルイズという。 メイジでありながら、魔法が使えない。 成功率ゼロ。 そんなところから、ひと呼んでゼロのルイズ。 この二つ名は生涯変わることはなかったけれど、ある時期から、それはまったく異なる意味を持つようになる。 それは何かというと…………。 「……あんた、何?」 召喚した使い魔と契約を終えた後、ルイズは引きつった表情で、己の従者となった生き物に向かってつぶやいた。 珍しい生き物ですな、などと教師は言っていたが、ルイズ自身はあまり喜べずにいた。 召喚したその生き物はどこをどう見ても、すごそうには見えなかったからだ。 一言で言うなら、丸い魚チックな生き物だった。 本当に真ん丸いのだ。 よく言えば可愛いが、悪く言えば間抜けな姿だった。 ほえええ……。 鳴き声もひどく間抜けだった。 ふよふよと空中に浮かんでいるが、動きも鈍そう、というかちいとも動かない。 使い魔のルーンが刻まれている時もぬぼうっとしたままだった(ちなみにルーンは額あたりに)。 有効性を期待するのは恐ろしく不毛な予感がする。 「あんた、なんて生き物?」 ルイズはこのおかしな使い魔の顔(というか、体全体が大きな顔みたいでもあるが)をのぞきこみながらつぶやく。 ――……くーよん。 「へ?」 その時、ルイズの頭に何か声のようなものが響いた。 驚いてキョロキョロとしていると、とんでもないことが起こった。 使い魔が。 召喚したばかりの使い魔が、消えてしまったのだ。 まるで、煙か何かのように。 「……はい?」 ルイズは事態が飲み込めず、しばらくぼーぜんとしていた。 他の生徒たちから、嘲笑を投げつけられるまで。 朝になって、ルイズは重苦しい気分でベッドから目を覚ました。 気分だけでなく、体全体も重苦しい。 ベッドで泣き伏し続け、そのまま眠ってしまったようだ。 自分ではわからないが、目が真っ赤になり、その下には痛々しい隈ができている。 せっかく召喚したはずの使い魔。 それが、逃げてしまった。 というより、どこかへ消えてしまった。 そこまで思い出し、ルイズは思考を止めた。 頭の中を、毒蛇がのたくっているような、嫌な気分になってきたのだ。 胸がむかむかして、吐き気もしてくる。 そのくせ、心がざわつき、落ち着かない。 ゼロ。 成功率ゼロ。 ゼロのルイズ。 そんな言葉が頭の中でぐるぐるとまわっていた。 何だか、わけのわからない気持ちになってきた。 悔しいのか、悲しいのか、それとも情けないのか。 あるいはその全てなのか、そのどれでもないのか。 ルイズはのろりのろりと身を起こして、何気なく机の上を見た。 ペン刺しのペン。 するりと抜いてみる。 先がとがっている。当たり前だが。 ルイズは、ぼけっと手にしたペンを見ていたが、ふと妙な気持ちになった。 急に、ペンを自分の腕に突き刺してみたくなったのだ。 手の甲でも平でも、どこでもいい。 とにかく自分の体を傷つけたい衝動に駆られた。 そして、ぐいとペンを振り上げてから、そのまま動かなくなった。 (何やってんのよ……!) すんでのところで、行動を制止する。 そんなことをして何になるのか、自分が痛いだけである。 ルイズはいらだつ気持ちを抑えきれず、ペンを床に叩きつけた。 これというのも、あの忌々しいボールのせいだ。 いきなり幽霊みたいに消えやがって。 契約したご主人様を無視して。 おかげで、自分がどれだけ恥をかいたか。 覚えていろ。 もし見つけたら、 (どっかにいるってんなら、出てきなさいよ!! ただですまさないんだから!!!) ルイズは心の中で、叫んだ。 ぼうん。 「うひゃ!」 いきなり、間抜けな音がした。 ひっくり返りそうになりながら、ルイズは何事か目を凝らす。 そして、本当にひっくり返った。 そこには消えた使い魔が、相変わらずの間抜け面でふよふよ浮かんでいたからだ。 「出てきなさい」 小声でルイズは呼びかけた。 ぼうん。 音を立てて、ルイズの前に使い魔が現れる。 「うーーん……」 何回かのテストの後、ルイズは3つのことを理解した。 1、使い魔は逃げたわけでなかった。 2、使い魔はしばらくすると消えてしまう。 3、使い魔はルイズの声(正確には意思)に応えて姿を現す。 「けっこうすごい感じではあるんだけど……」 しかし、だからどうだという気もする。 呼び出せばすぐに出てくるところは便利だが、 (こいつに何ができるか、よねえ?) ただそこでぬぼっとしているだけなら、普通の猫や鼠でも召喚したほうがまだましである。 (でもまあ、ここは……) ひとまず契約は成功していたというところが大事だろう。 (このことを、ミスタ・コルベールに説明しとかないと) そう考えるとじっとしてはいられない。 ルイズは乱れた髪を簡単に整え、部屋を飛び出した。 途中でキュルケと出くわしたが、無視する。 今は相手にする気分でなかったし、そんな暇もない。 コルベールのもとに向かいながら、ルイズが先ほどと異なる棟のざわめきを感じていた。 先のそれが暗いマイナスなものなら、これはプラス。 これから、いいことが起こりそうな気がする。 そんな予感がむくむくと膨らんでいた。 ただし、そのいいことが、ルイズにとってはよくても、他の人間にはどうであるのか。 ルイズはそんなことは考えもしなかったのだけれど。 きっかけは何だったのか。 思い出せばくだらない言い争いが原因だったのかもしれない。 気がついた時には、食堂でギーシュと言い争いになっていた。 だが、決定的なスイッチとなってしまったのは、このやり取りだろう。 「君のその、丸っこい使い魔に何ができるというんだい?」 「さあね? でも、あんたの死ぬほど不細工なモグラよりは可愛いんじゃない?」 売り言葉に買い言葉とはいうけれど……。 それはギーシュをぷっつんさせるには十分すぎる威力を持っていた。 何だかかんだで、ルイズはギーシュと決闘することになってしまった。 ルイズは、不思議と負ける気はしなかった。 それは予感というよりも確信に近かった。 何故そんなことを思ったのかは、謎であるが。 決闘の前にギーシュが何か言っていたが、ルイズは聞いていなかった。 それよりも、早く使い魔を呼び出したくてうずうずしていたのだ。 そんなルイズのなめきった態度に、ギーシュはマジ切れしたのだろう、お得意の青銅ゴーレムを呼び出し、いきなり突進させてきた。 ルイズは目の前に出されたご馳走を出され、さあどうぞと言われたような気分で、 「出てきなさい!!」 使い魔を呼んだ。 主人の呼びかけに応じた使い魔は、この時通常とは異なる行動に出た。 いや、今までは呼び出しても何もしなかったのだが。 ほええええええええええええ!! 使い魔はその口から、何かきらきらと光る粒子のごときをものを吐き出したのだ。 その美しい、宝石の雪のようなものが周囲に降り注いだ瞬間、ギーシュのゴーレムはぼろりと崩れた。 「え? な? なんで??」 うそだろという顔つきで、ギーシュはまたゴーレムを出そうとする。 が、無駄だった。 形を形成する前に、ゴーレムはぼろぼろと土くれになってしまう。 しまいには、それさえも起こらなくなった。 硬直するギーシュの真横を、強烈な爆裂が通り過ぎた。 ルイズの失敗魔法。 普段ならば嘲笑の対象であるそれは、この時のギーシュには悪魔の凶器であった。 「……まいった」 「な~に~? 聞こえんな~~~」 かすれる声でいうギーシュに、ルイズは死ぬほど邪悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと広げた右手を突き出す。 「具合でも悪いのかしら~~? じゃ、下手糞で悪いけど、回復の魔法かけたげるわ」 煙をあげながら倒れるギーシュを見下ろしながら、ルイズは自分の使い魔の能力を理解しはじめていた。 何故、負ける気がしなかったのか。 それは、もしかすると契約を通じて、無意識ながら、使い魔の能力がルイズに伝えられたのかもしれない。 いずれにしろ、 (これはいけるかも……!!) ルイズは笑った。 ルイズが使い魔の能力の、本当の凄まじさを理解するのは、のちにフーケ事件と呼ばれる騒ぎでのことだった。 土くれのフーケと呼ばれる盗賊。 それが学園の宝物庫を狙ってきたのだ。 とはいえ、その時ルイズはそんなことなど知るよしもなかった。 ただ、夜散歩をしていたら、いきなりばかでかいゴーレムに出くわしたのだ。 最初はかなりびびっていた。 けれど、それだけにその後はかなりリラックスしてしまった。 使い魔の吐き出す輝く粒子。 それはあっという間に空中高く舞い上がり、ゴーレムをギーシュと時と同じように土に戻してしまった。 もっとも粒子は風の流れのせいか、宝物庫までとんでいき、防御のためにかけられている魔法も消してしまったが。 ちなみに、何か怪しい人影がいたので失敗魔法でぶっ飛ばしたらそれはミス・ロングビルだった。 ロングビルは爆発をまともに食らって全治三ヶ月の怪我をおい、ルイズはギーシュの一件もあり、謹慎処分をくらう羽目になる。 宝物庫の中は無事だったので、謹慎は短くてすんだのだが。 謹慎を食らっても、ルイズはちっともこたえてなかった。 何故ならば、自分の使い魔がどれだけすごいか、頭ではなく魂で理解できたから。 (メイジの実力を見るなら、使い魔を見ろ……か。なるほど、私にぴったりじゃない!) 部屋でじっとしてても、ニヤニヤと笑いが止まらない。 あの使い魔、原理はわからないがあれの吐き出す粒子は魔法を消去してしまう力がある。 ドットクラスのギーシュくらいのものなら、それなりでしかないだろうが、あの馬鹿でかいゴーレムさえ苦もなく無効にできるのだ。 自分の魔法が消された時の、ギーシュのあの顔! 思い出すだけでも傑作だ! 翼をもがれた鳥みたいにぶざまな姿だった。 ゼロのルイズ。 その二つ名は大嫌いだった。 でも、これから思い切り好きになれそうだ。 「そうよ、私はゼロのルイズ」 ルイズはくすくすと笑う。 (でも、ゼロなのは私じゃない……。ゼロになるのは……) 自分以外の、あらゆるメイジだ。 後年、ゼロのルイズの名は永く広く語り継がれることになる。 いかなるメイジも、彼女の前ではゼロになる。 ただ、虚無の属性をのぞいては。
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二人のルイズ 「なによ、これは……」 彼女にとって今日は記念すべき日になるはずだった。 自らの系統を見定め、より内容的に特化した二年への進級試験も兼ねた春の使い魔召喚の儀式。 何度も失敗し、今度こそは意を決して杖を振り下ろした先に現れたのがコレだった。 「なんだあれは!? 「まさかゼロのルイズが」 「信じられない」 周りの生徒たちが驚愕から喧々囂々の騒ぎを巻き起こす中、ルイズはまるで瀕死の魚のように口をパクパクさせることしかできなかった。 出来ればドラゴンやグリフォンのような幻獣であれば言うことはない、虎や獅子でも大歓迎だ、それが無理なら犬猫でも構わない、いやオールドオスマンのようにネズミでもしょうがないし、さっき頭上を飛んでいった雀でもこの際贅沢は言うまい。 そんな気持ちで挑んだサモンサーヴァントだからと言って、よもやこんなものが出てくるとはルイズは夢にも思わなかった。 それはまず巨大だった、ルイズのすぐ前の生徒が呼び出した風竜の幼生よりも尚大きい。いや大きさだけなら今年と言わずこれまでこの学院で呼び出された使い魔のなかでも最大の部類に入るに違いない。 次にぬめぬめしている、濡れ光る緑の皮膚は周囲の光を反射して微妙な光沢に照り輝いている。 最後にそれは不気味だった、足を全く動かすことなく地面をまるで滑るように動き回り、その巨大な瞳はピクリとも動くことはない。 だが結局のところ、その生物を表すにはただ一言で事足りる。 「なんで、こんなでっかい蛙が出てくるのよ……!」 そうルイズは蛙が苦手だった、もはやルイズ自身覚えていないが幼少の頃に刻まれたトラウマがぬるぬるべたべたした生物を忌避させるのだ。 しかしそんな自分に呼び出されたのは自身がもっとも苦手としている蛙。 それも超特大サイズ。 ルイズは泣き出したくなった、始祖ブリミルよ。私が何か貴方のお怒りに触れるようなことをしたのでしょうか? 貴方は私に貴族だと言うのに魔法の才能を与えなかったばかりか、私がもっとも嫌うものを終生のパートナーにせよと申すのですか? もし私の言葉が届くのなら…… 「もう一度、召喚をやり直させてください」 「駄目です、使い魔召喚の儀式は神聖なものですから」 ほとんど無意識から出たルイズの魂からの叫びは、すぐ隣に居た輝く教師に一言で切って捨てられた。それはそうだいちいち生徒が使い魔が気に入らないからと言って再召喚させていてはきりがないし、それにコルベールの目にはルイズがあたりを引いたように思えた。 なにしろこれほど巨大な蛙である、ルイズの学友が普通の手のひらに乗るような蛙を召喚したことも分かるように一目で見て桁外れの存在だと分かる。 コルベールは教師としてルイズに自らの才能に自信を持って欲しかった、多少本人が呼び出した使い魔を嫌っていようとこのご立派な使い魔は周囲の者たちの目にルイズが「ゼロ」でない証として映るだろう。 実際、普通のアマガエルを召喚したモンモラシ家の一人娘などはロビンと名づけた自分の使い魔とルイズが呼び出した蛙とを見比べて、嫉妬交じりの視線を送っている。 「分かりました……」 コルベールの言葉にルイズは諦めたように頭を垂れた、上目遣いに見上げればルイズの前で彼女の使い魔は候補は間抜けな面を晒している。 その間抜け面を見ているとだんだん憎らしくなってくる、コイツが出てきたばっかりにと言うどうしようもならない運命に対する憤りが現実の相手として現れたことで心のなかで形を成す。 「五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」 コルベールにレビテーションで浮かばせて貰いながら、ルイズははんばヤケクソな気持ちでその呪文を唱える。 新たなる運命の扉を開く、その呪文を。 「きゃっ!?」 「なんだっ、なにが……」 ――その場で何が起こったのか理解できた者はいなかった。 ルイズが巨大蛙に口付けし、その左手にルーンが刻まれた途端に巨大な蛙は猛烈な光と共に塵が砕けるように消えてしまったのだから。 光と塵の乱舞が収まった時、ヴェストリ広場に集まった生徒たちはその声を聞いた。 「守らなきゃ……」 それは涼やかで悲しげな、硝子で出来た鈴のような声だった。 ルイズを含めた全員は、その声に聞き覚えがあるような気がした。 「あの人が愛した世界を、守らなきゃ……」 そこには一人の少女が立っていた。 儚げな姿で、まるでレビテーションでも使っているように地面から僅かに浮きながら。 静かに、その場に佇んでいた。 ルイズは愕然とする。 着ている衣装こそ周辺の国々で見たこの無いものだが、少女の姿はあまりにも見慣れたものだったから。 見慣れたものでありすぎたから。 「あなた……誰…………?」 ルイズは、毎朝鏡のなかで出会うもう一人の自分に向かって問いかけた。 桃色の髪の少女は、僅かに笑って。 「わたしは――グロリア」 己に与えられた名を応えた。 それがゼロと馬鹿にされ続けてきた虚無の魔法使いと、朽ちて尚約束を守ろうと足掻いていた竜との出会いでした。 二人のルイズがこれからどのような物語を紡ぐのかは、我々には知ることは叶いません。 ならばせめて祈りましょう。 傷つき続けた彼女たちがもう二度と傷つくことの無いように。 惨禍に巻き込まれることがないように。 せめて栄光の賛歌〈グロリア〉を贈りましょう。 ――願わくば、ああ願わくば、その旅路の最果てが幸福なものでありますように スクラップドプリンセスから竜機神No7 グロリア を召喚。 戻る