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349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 00 43 21.66 ID U1shy0aw0 「貴様、僕のヴェルダンデに何をするんだ!」 興奮するギーシュが薔薇の造花を掲げるより早く、その喉元に羽帽子の貴族の杖が 突きつけられていた。 ギーシュが凍りつく。 「僕は敵じゃない。姫殿下より君たちに同行することを命じられた、女王陛下の魔法衛士隊、 グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 ギーシュは相手が悪いと知ってうなだれた。魔法衛士隊は全貴族の憧れである。 ギーシュも例外ではない。 ワルドはそんなギーシュの様子を見て、首を振った。 「すまない。婚約者が、モグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 「コーホー」 機械製の両脚が重いため、乗馬で腰に負担がかかるのが避けられないベイダー卿は、やはり どこか憂鬱そうに馬に載せた鞍を撫でていた。 359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 00 47 45.90 ID U1shy0aw0 「ワルドさま……」 立ち上がったルイズが、震える声で彼の名を呼んだ。 昨日の昼、姫君の馬車を守るその姿を見てから、ルイズは押し寄せる甘美な思い出の波に さらわれ、魂が抜けたようになっていたのである。 親同士が取り決めた婚約ではあったが、幼いルイズにとって優しく強いワルドは憧れの人だった。 ワルドの両親が相次いで亡くなり、彼が魔法衛士隊に入隊してからは、会う機会もなくすっかり 忘れていたのだった。 だが昨日の再会を経て、幼い日の憧れは唐突にルイズの胸を焦がしていた。 363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 00 50 19.57 ID U1shy0aw0 「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、そのまま抱き上げた。 「相変わらず軽いな、きみは。まるで羽のようだ」 「お恥ずかしいですわ」 ワルドに抱き上げられたまま、ルイズは少々離れて立つベイダーの方を横目で見た。 腕組みをして馬を見ている。 馬の方はと言えば、彼から発せられる威圧感に、怯えたようにいなないていた。 一体何をやっているんだろう……。 373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 00 53 27.34 ID U1shy0aw0 「彼らを、紹介してくれたまえ」 ワルドはルイズを地面に下ろすと、再び帽子を目深にかぶって言った。 「あ、あの……、同級生のギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のダース・ベイダーです」 ルイズは交互に指差した。 ギーシュは深々と頭を下げた。 ベイダー卿はそもそも聞いていない。 「あれがルイズの使い魔かい? 人……なのか?」 ワルドが呟く。 「平民です、ワルド子爵!」 ギーシュが顔をしかめた。 「おまけに貴族に対する礼儀を知らない、粗野で生意気な平民です」 ルイズはじと目でギーシュを見た。大物かと思ったが、また格下げだ。 ワルドは頷きながらギーシュの愚痴を聞いていたが、あまり興味を引かれた様子はない。 「時間だ。そろそろ出発するとしよう」 ワルドが口笛を吹くと、朝もやの中からグリフォンが現れた。 鷲の頭と上半身に、獅子の下半身がついた幻獣である。 立派な羽も生えている。 380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 00 56 12.04 ID U1shy0aw0 ワルドはひらりとグリフォンに跨ると、ルイズに手招きした。 「おいで、僕のルイズ」 ルイズはしばらくモジモジしていたが、ワルドに抱きかかえられ、グリフォンに跨った。 ギーシュは慌てて馬の方に駆け寄り、ベイダーと目を合わせないようにしながらひらり、 と馬上に身を躍らせた。 ベイダー卿も、しぶしぶといった気配を漂わせながら騎乗する。 ワルドは手綱を握り、杖を掲げて叫んだ。 「では諸君! 出発だ!」 グリフォンが駆け出す。 ギーシュも感動した面持ちで後に続く。 ベイダー卿は腰の位置を色々と試行錯誤しながら後に続いた。 394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 01 03 12.04 ID U1shy0aw0 アンリエッタは出発する一行を学院長室の窓から心配そうに見つめていた。 ひざまずいて目を閉じ、手を組んでお祈りする。 「彼女たちに、加護をお与えください。始祖ブリミルよ……」 隣では、オスマン氏が鼻毛を抜いていた。 アンリエッタは立ち上がり、オスマン氏に向き直った。 「見送らないのですか、オールド・オスマン」 「ほほ、姫、見てのとおり、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますでな」 アンリエッタは呆れた様子で首を振った。 「トリステインの未来がかかっているのですよ。なぜ、そのような余裕の態度を……」 444 : 429採用して差し替え :2007/05/04(金) 01 16 31.19 ID U1shy0aw0 「なあに、彼ならば、道中どんな困難があっても必ずややり遂げてくれますでな」 アンリエッタは眉根を寄せる。 「彼とは? ワルド子爵ですか? それともグラモン元帥のご子息の……?」 オスマン氏は首を振った。 「ならば、あのルイズの使い魔が? まさか! ルイズが言うには、彼は平民では ありませんか!」 「……彼は別れ際に何と言ってましたかな?」 アンリエッタはしばし宙を見つめ、記憶を手繰り寄せた。 「『メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー』と」 「なら姫もそう祈って差し上げなさい」 言われて、アンリエッタは再び膝を突いた。 (メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー、わたくしのルイズ) 428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/04(金) 01 12 29.76 ID U1shy0aw0 一方こちらは寄宿舎の一室。 グリフォンを呼ぶ口笛で目を覚ました、卓越した耳の持ち主が、駆けていく一行の背を窓越しに じっと見つめていた。 朝もやの中に消えていく、一頭のグリフォンと二頭の馬。 「心配」 雪風のタバサはそう呟き、自分も口笛をひと吹きすると、身支度を整えて親友の部屋に向かった。 窓の外にやって来た巨大な影が、辺りに誰もいないことを確認してから、呟いた。 「お姉さまったら、あんなののどこがいいのね。きゅいきゅい」 888 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 00 57 59.23 ID pxe2xmpa0 馬を何度も替え、アルビオンへの玄関口ラ・ロシェールに到着したのはその日の夜であった。 途中でキュルケとタバサが合流し、一行はにわかに賑やかになった。 そして、宿を探す途上……。 「ツェルプストー、あんた何しに来たの?」 ルイズは腕を組むと、キュルケをにらみつける。 「勘違いしないで。あなたを助けにきたわけじゃないの。ねえ?」 キュルケはしなをつくると、グリフォンに跨ったワルドににじり寄った。 「おひげが素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 どうやらキュルケが誘いに乗ったのは、ワルドに気があったからのようだ。 だがワルドは、ちらっとキュルケを見つめて、左手で押しやった。 「あらん?」 「助けは嬉しいが、これ以上近づかないでくれたまえ」 「なんで? どうして? あたしが好きって言ってるのに!」 とりつく島のない、ワルドの態度であった。 「婚約者が誤解するといけないのでね」 そう言って、ルイズを見つめる。ルイズの頬が染まった。 「なあに? あんたの婚約者だったの?」 キュルケはつまらなそうに言った。やって来た理由の半分がいきなりなくなってしまった。 「そういえばあんたの使い魔は?」 辺りをきょろきょろ見回してから、キュルケは警戒心もあらわに尋ねた。 一番の懸案事項はこちらだ。 893 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 02 44.58 ID pxe2xmpa0 「ギーシュと一緒に馬を駅に預けに行ってるわ」 それを聞いて、キュルケは面白そうに笑った。 「彼と一緒なんて、ギーシュは生きた心地もしないでしょうね」 「青ざめた顔してたわ。ま、ベイダーも馬が苦手で疲れてるみたいだし、騒動は起こさないで しょうけど」 ワルドが二人の話に割って入った。 「ルイズ、きみの使い魔の平民はそんなに凶暴な奴なのかい?」 そんなに危なくもない――とルイズが口を開こうとするのをさえぎる形で、キュルケが発言した。 「凶暴も凶暴よ。危険人物。学院の教師だって持て余してるわ。ね、タバサ?」 キュルケが平行して歩くタバサに話を振る。夜だけに、さすがに本を読んではいなかった。 タバサはキュルケの方をじっと見て、一言も喋らない。賛成しかねる、とその表情が語っていた。 「あらあら、タバサはずいぶんとあの使い魔の肩を持つのね」 「よしなさいよ、ツェルプストー」 そこで、後方の闇の中からあの呼吸音が聞こえてきた。 895 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 05 07.38 ID pxe2xmpa0 「噂をすればなんとやら、ね」 キュルケがちょっと緊張した声色で言った。 ルイズは、傍らに立つワルドがすこし体を強張らせた気がした。 898 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 09 53.53 ID pxe2xmpa0 「ほとんど休みもなしで駆け続けるなんて、衛士隊の連中は化け物か」 ギーシュが独り言をこぼす。 本来馬で二日かかる道のりを一日で駆け抜けたのだから、体が疲労で悲鳴を上げていた。 「コーホー」 人一人分の距離をおいて歩くベイダー卿も、口にこそ出さないものの相当疲れている様子が うかがえる。 900 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 12 29.12 ID pxe2xmpa0 「きみ……卿も疲れるん……ですね」 ギーシュの口調はぎこちない。 港町ラ・ロシェールは人口三百ほどの小さな町だが、アルビオンと行き来する人々で、常に その十倍以上の人間が通りを闊歩している。 その大半が荒くれ者の船乗りや怪しげな行商人たちなので、揉め事が絶えない。 下手にベイダー卿の機嫌を損ねれば、そうした事件の一つとして闇に葬り去られかねなかった。それなのに、相手が平民であるという意識が抜け切らないため、こんな口調になってしまうのである。 かと言って沈黙を守り続けることができないのも、ギーシュがギーシュたる所以であった。 「あ、あのワルドって奴、かなりの腕利きみたい……ですね。スクウェアクラスかも。きみ…… いや、卿とどっちが強いでしょうか」 903 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 17 57.68 ID pxe2xmpa0 うるさそうに取り合わなかったベイダー卿が、ようやく口を開いた。 「ダークサイドの前に敵はいない」 「そ、そうですよね、あははは……」 どこまでも寒々しい二人の会話であった。 「港町ラ・ロシェールといったか」 しばらく歩くと、唐突にベイダーが口を開いた。 「は、はいベイダー卿」 「見た所山しかないようだが?」 ベイダー卿の知る『港』といえば第一義的には宇宙港を指すのだが、この星に大気圏を脱出する 技術がないのは確認済みだ。 とすれば、砂漠の星で育った彼には馴染みが薄いものの、いくつかの星で見たことのある、 海を行く船が寄港する場所と踏んでいたのである。 ところが予想に反して、ラ・ロシェールは峡谷に挟まれた峠のような場所であった。 「きみは、アルビオンを知らないのか?」 思わずそう言ってしまってから、ギーシュは慌てて口をつぐんだ。 酒場の店先から漏れる光で、ベイダー卿が自分の方を見たのがわかったからである。 「あ、アルビオンは浮遊大陸なんですよ。ふ、『風石』を積んで空を飛ぶ船で行き来するんです」 ベイダー卿の持つ常識と、どこまで合致するかわからない。ゆえにどこまで説明するべきなのかも わからない。ギーシュは半泣きだった。 幸いそこで、ルイズたちの後姿が見えたので、ギーシュはほっと胸を撫で下ろした。 905 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 23 52.41 ID pxe2xmpa0 「なんできみたちがここに?」 いつの間にか増えていた二人を見て、ギーシュは目を丸くした。 だが、キュルケとタバサは彼を無視した。 キュルケはルイズを背に隠すようにして立ち、タバサの方はベイダーの前に歩み寄る。 「ベイダー卿」 ぺこり、とお辞儀。ほとんど、臣下が君主に対して取る礼に近い。 そんなタバサを、キュルケがハラハラしながら見守っている。 908 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 26 46.25 ID pxe2xmpa0 ワルドはこの有様を見て、この場の力関係を概ね把握した。 隣のルイズにそっと話しかける。 「君の使い魔はずいぶん優秀なようだね」 「そ、それほどでもないけどね」 グリフォンの背の上での雑談で、ルイズとワルドは打ち解けた口調で話せるようになっていた。 「胸を張ったほうがいい。使い魔は呼び出したメイジその人を表す」 「あ、あんなのがわたしを表してるっての?」 ルイズはキュルケの肩越しにベイダーを見た。 相変わらず黒ずくめで、闇に溶け込んでいる。これが自分を表してるだなんて言われたら、 ちょっといやだ。 「揃ったようだね、諸君。宿は見つかった」 ワルドが高らかに宣言し、一行はラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に向かった。 910 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 30 07.93 ID pxe2xmpa0 『女神の杵』亭一階の酒場で、一行はくつろいでいた。とはいえ、酒の飲めないベイダー卿は さっさと部屋に引っ込み、ギーシュは疲労困憊、タバサは相変わらず無口なので、ほとんど 飲み物を飲むだけである。 そこに、『桟橋』へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。 「アルビオンに渡る船は、明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに……」 ルイズは口を尖らせている。それを聞いて、半ば卓に突っ伏すような姿勢のギーシュは ほっとした。これで明日は休んでいられる。 915 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 33 45.81 ID pxe2xmpa0 「あたしはアルビオンに行ったことないからわかんないけど、どうして明日は船が出ないの?」 そう問うキュルケの方を向いて、ワルドが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう? 『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最も ラ・ロシェールに近づく。……さて、今夜はもう寝よう」 ワルドは鍵束を机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そして、ギーシュとベイダーが相部屋」 ギーシュは天を仰いだ。あの呼吸音を聞きながらでは、一晩中眠れないかもしれない。 「僕とルイズは同室だ。婚約者だからな。当然だろう?」 ルイズがはっとして、ワルドの方を見る。 「そんな、ダメよ! まだ、わたしたち結婚してるわけじゃない!」 しかしワルドは首を振って、ルイズを見つめた。 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 919 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 36 24.66 ID pxe2xmpa0 ギーシュがとぼとぼと階段を上り、部屋に入ると、暗闇の中でベイダー卿が窓に向かって 突っ立っていた。 「コーホー」 「う、うわぁッ! お目覚めでしたか、ベイダー卿!」 ベイダーがゆっくりとギーシュの方を振り返る。 闇の中に、色とりどりに発光する胸の部分が浮かび上がった。 923 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 38 56.04 ID pxe2xmpa0 「ギーシュといったな」 「は、はっ」 思わず膝を突くギーシュ。他にどんな選択肢があったろう。 「あのワルド子爵がどうも気に入らないのだが、なぜだと思う?」 ギーシュは返答に窮した。そもそもこの暗黒卿が気に入る人間などいるのだろうか。 「わ、わたくしめにはわかりかねます」 「よい。初めから期待してはいない。もう休むがいい」 「はっ」 ギーシュは頭を下げ、部屋の入り口に近い方のベッドに潜り込んだ。 もはや安眠は諦めていた。 932 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 42 30.67 ID pxe2xmpa0 翌朝、ルイズが目を覚ますと、ワルドはもう起きていた。 昨夜話し合ったことが、ルイズの小さな胸に去来する。 思い出話から始まり、いきなり結婚を申し込まれた。 答えに躊躇していると、ベイダーが始祖ブリミルを守護する最強の使い魔『ガンダールヴ』で あることを告げた。 そのガンダールヴを召喚したルイズは、もう十分立派なメイジである、そう口説かれた。 しかしながら、ワルドとの結婚と、ベイダーとの契約、どうしたわけか両者は秤の両天秤に 思われた。 果たして自分はワルドと結婚してもベイダーを使い魔としてそばに置くのだろうか? 煩悶するルイズに、ワルドは優しく微笑みながら、もう寝るように言った。 「急がないよ、僕は」 別々のベッドに向かいながら、ワルドはそう付け加えたのだった。 憧れの人からの求婚に、どうして即座にイエスと言わなかったのだろう……。 一夜の夢から覚めてもルイズにはわからなかった。 937 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 44 29.17 ID pxe2xmpa0 枕から頭をもたげながら、不意に身支度を整えるワルドと目が合った。 「ルイズ、君に立ち会ってもらいたいことがあるんだ。服を着たら、先に中庭に行ってくれないか?」 ルイズが目を覚ましたのを確認して、ワルドはそう言った。 941 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 46 05.96 ID pxe2xmpa0 ワルドが部屋の扉をノックしたとき、ベイダー卿は既に起きていた。 誰よりも少ない睡眠で最大限に体力を回復できるよう訓練されている。 窓から外を見ていたベイダーがフォースでドアを開けると、そこにはワルド子爵の姿があった。 「おっと。さすがだね、使い魔くん」 気配もなくドアが開いたことに面食らった様子ではあるが、ワルドはにこやかに言い放った。 「きみに決闘を申し込みに来た」 950 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 48 26.91 ID pxe2xmpa0 5分後、ベイダーとワルドは中庭で対峙していた。 元々アルビオンからの侵攻に備えた砦であった『女神の杵』亭の中庭は練兵場をかねており、 決闘にはもってこいの場所である。 「きみは伝説の使い魔、『ガンダールヴ』だそうだね」 一歩半程度の距離をおいてベイダー卿と向き合いながら、ワルドは言った。 ベイダー卿は口を開かない。ただ呼吸音が中庭に響くだけである。 ワルドは少々馬鹿にされてるような気がした。 「決闘には介添え人が必要だ」 ワルドがそう言うと、物陰からルイズが姿を現した。 ルイズは二人を見ると、はっとした顔になった。 「ワルド、来いって言うから来てみれば、何をする気なの?」 「彼の実力を、ちょっと試してみたくなってね。決闘してみることにした」 963 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 51 54.61 ID pxe2xmpa0 ルイズは息をのんだ。 このバカ――思わず言いかけた。 以前のギーシュとの決闘の際、自分がどれほど苦労してベイダーを止めたか……。 ベイダーに対して決闘だなんて、禁句にも程がある。 「もう、そんなバカなことはやめて。今は、そんなことしているときじゃないでしょう?」 「そうだね。でも、貴族というヤツはやっかいでね。強いか弱いか、それが気になるともう、 どうしようもならなくなるのさ」 ワルドは取り合わない。 967 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 55 07.32 ID pxe2xmpa0 ルイズは今度はベイダー卿に向かって口を開いた。 「ベイダー、お願いだからやめてちょうだい。あんたが強いのは知ってるから、ね?」 ベイダーも首を振った。 「僕はどちらでもかまわないが、ワルド子爵はどうしてもと言う」 ダメだ。ルイズは一瞬でベイダーの説得を諦めた。 ならば説き伏せるべき相手は一人。 「ワルド、ほんっっっとにやめて」 ルイズはワルドに泣きそうな顔で懇願する。 ワルドは意外そうな顔でルイズを見つめた。 「使い魔が怪我をするのがそんなにいやかい? 大丈夫、手加減はするさ」 975 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 01 56 49.88 ID pxe2xmpa0 ワルドはどうあっても止まらない、そう判断したルイズは、ベイダーの方をちらりと見た。 「ベイダー」 そう言い、こくり、と小さく頷くしぐさ。 その意図するところを了解したのか、ベイダー卿の右手が僅かに動いた。 ほとばしる赤い光が、朝もやを吹き払った。 990 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 02 03 05.23 ID pxe2xmpa0 ワルドは呆然といった面持ちで、右手に持つ自分の杖を見ていた。 人間離れしたスピードではあったものの、ベイダー卿の斬撃には辛うじて反応できたはずだった。 しかしながら、それを受け止め、反撃に転じるはずの杖は、根元から消失していた。 平民の扱う大剣以上の頑強さを誇る衛士隊の杖が、ひゅんひゅんと風を切りながら宙を舞って いた。 赤く光る刃を仕舞うベイダー卿。 「まだやるなら好きにするといい」 ワルドはがっくりと膝を突いた。 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 02 06 00.47 ID pxe2xmpa0 「ば、ばば、ばばば、バカーーーッ!」 ルイズが精一杯ジャンプして、ベイダー卿の後頭部を思い切りひっぱたいた。 思わぬところからの攻撃に、さすがのベイダー卿も反応できなかった。 「コーホー」 ヘルメットを叩いたルイズの手の方が痛かったのは、言うまでもない。 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 02 08 57.90 ID pxe2xmpa0 「誰が切りつけろって言ったのよ! あのよくわかんない力で適当に切り抜けなさいって 合図だったでしょ!」 赤くなった右手を押さえながら、ルイズはわめいた。 とはいえ、無論双方とも、そんな合図を取り決めた覚えはない。 「マスターが決闘を避けてほしがっているのはわかった。杖を破壊して戦力を奪うという、一番 手っ取り早い方法を採ったつもりだが?」 「あ、ああ、あんたっ! メイジの杖がどんだけ大事なものかわかってるの? 何日もかけて 契約して、ようやく使い物になるのよ!」 ルイズの言動は、はしなくも今現在のワルドがまったくの役立たずであることを物語っていた。 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 02 10 54.25 ID pxe2xmpa0 ワルドはどうにか体面を取り繕いながら立ち上がり、ルイズを片手で制した。 「し、心配ないよ、僕のルイズ。ほら、杖の切れっ端はここにある。丸一日かければ、修繕できる だろう」 その表情には、しかしながら先ほどまでのような覇気が見えない。 杖を叩き切られたのが、よほどこたえたようだ。 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/05(土) 02 15 02.29 ID pxe2xmpa0 「杖を修繕するのにどれくらい時間がかかるかわからない。最悪の場合、船出に間に合わなくても グリフォンで追いつくから、明日は先に出発してくれ」 そう言い残して部屋に引っ込んでいくワルドを、ルイズとベイダーはかける言葉もなく見送った。 ワルドの姿が見えなくなってから、ルイズは口を開いた。 「ベイダー」 「卿をつけろと言ったはずだが?」 「責任とってよね?」 「コーホー」 いらえの言葉を失うベイダーの視線の先でルイズは両手をもじもじさせてから言った。 「ワルド子爵が役立たずに成り下がった以上、わたしを守るのはあんた以外にいないんだからね」 朝日の逆行を浴びて、その表情はベイダー卿からは確認できなかった。 yu
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ゴング。 同時にレフェリーを務めるコルベールが、リング上で拳を交える二人を引き離す。 「ゴング! ゴングだ!」 双方は一瞬にらみ合った後に振り返り、肩で息をしながらもしっかりとした足取りでニュートラルコーナーへと戻った。 セコンドにより椅子が出され、一分間で少しでも体力を回復するための道具が次々と取り出される。 赤コーナーの椅子へ座り込んだのは、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 現在、HBC(ハルケギニアボクシング評議会)のランキング3位に属する、異例の女性ボクサーである。 ぶかぶかの赤いボクシングパンツに、白い無地のTシャツを着ていた。 「ルイズ、やったじゃねぇか! あいつのフィニッシュブローを破ったぜ!」 セコンドの一人を務めるのは、腹巻に坊主頭、左目の眼帯と異様な格好の中年男性だ。 名を、丹下段平。ルイズによってこのハルケギニアに召喚された、かつて異世界で名を馳せた名ボクサーである。 「あれだけ特訓したんだから、当然でしょ! 次のラウンドで勝負をかけるわ!」 疲労困憊であるにも関わらず、ルイズはニヤリと笑ってみせる。 「動かないで」 腫れ上がったルイズの顔を、魔法で出した氷で冷やしていたタバサが呟いた。 ルイズの級友である彼女もまた、セコンドを勤める一人である。 「それにしても、まさかあんたが本当にここまで強くなるとはね……。 女の癖にボクシングなんてバカじゃないかと思ったけど、あんた才能あるのね」 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが呆れたように漏らした。 その名の通り、ツェルプストー家の一員である彼女は、ヴァリエール家のルイズとはまさしく犬猿の仲である。 が、ルイズが「ボクシングやるから。絶対やるから。もう決めたから」とぬかし、 周囲を仰天の嵐に巻き込んだ際、初めにそれを応援した人間でもあった。 要は、何だかんだ言って親友なのである。 『微熱』の通り名を持ち、恋に生きると公言してはばからないような女性であるキュルケにとって、 その理由が納得いくものだったからかもしれない。 「そりゃそうでしょ」 ルイズが真顔に戻り、呟いた。 「絶対サイトの仇を討つって決めたから。そう、誓ったんだから」 そうして、向かいの青コーナーを睨みつける。 そこには、不適に笑う元婚約者――HBC現王者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの姿があった。 ハルケギニア大陸において、ボクシングとは全てである。 六千年前、ブリミルと呼ばれる人物が編み出したとされるその競技は、瞬く間に大陸全土へと広がった。 現在において、各国の代表を出す国際戦が最早代理戦争と化していることからも、その人気ぶりは知れよう。 そして、貴族の誇りとは、強いボクサーであることであり、即ちボクシングで勝つことである。 現在を生きる全ての貴族の男子にとって、ボクシングで強くなるのは確固たる目標であり、遥か遠い夢だ。 HBC上位ランカーともなれば、下級貴族の三男坊などでも結婚相手は選び放題、生涯の成功は最早約束されたと言ってもいい。 その妻も、夫の試合となれば必ずセコンドに立ち、声を枯らして応援。 勝てば抱き合ってリング上で接吻し、負ければ控え室で涙を流した。 『俺のセコンドに立ってくれないか』というプロポーズの言葉は、最早使われすぎて陳腐であるにも関わらず 『好きな異性に言いたい/言われたい台詞ランキング』で132年連続一位ぶっちぎり独走中。 ちなみにランキングの集計が始まったのは132年前である。 要は。どいつもこいつも、バカみたいにボクシングに燃えているのだ。 ルイズが、使い魔契約の儀式で異世界の二人――平賀才人と丹下段平を召喚したのは、もう二年前のことになる。 二人はやがて、ボクサーとセコンドとしてHBCランキングへ参加。 グローブをはめると身体能力が向上するという、伝説の『ガンダールヴ』のルーン、丹下段平のやたら根性部分に特化した指導、 喋るインテリジェンスグローブ『デルフリンガー』などもあり、瞬く間に上位へと上り詰めた。 しかし、その年のトリステイン王国代表決定戦。決勝戦において、ワルドの繰り出したフィニッシュブロー、 『ライトニング・クラウド・アッパー』によって、終始優位にあった才人は逆転負けした。 ルイズはその時、婚約者と使い魔、どちらのセコンドに着くか悩んだ挙句、賓客用観客席という中途半端な立ち位置に居た。 そして見たのだ。絶対に見た。二人がコーナーで戦っていたせいで、自分以外には誰にも見えなかったろうが、 しかしそれは確かだったとルイズは確信している。 フィニッシュブローを撃つ瞬間、ワルドは才人の足を踏んでいた。 そして、試合終了から三時間十二分後。 平賀才人は、絶命した。 試合から数日後。 ルイズは、ワルドを問い詰めた。何故だ。何故、あんなことをしたのか。 ワルドは哂った。高らかに哂っていた。 「まずい、まずいんだよルイズ。あそこで負けてしまっては、僕はルイズと結婚出来ない。 ヴァリエール家の麗しきご令嬢と結婚するんだ、HBC現王者くらいの立場は必要だろう?」 くくく、と堪えきれない哂いを漏らす。その眼は、何か名状しがたきものに侵されていた。 明らかに尋常では無い様子に、表情を硬くするルイズ。 その腕を突然、ワルドが掴む。 「さぁ、もう十分だろうルイズ。僕はHBCの頂点、ハルケギニアにおける全ての男子の頂点に立ち、九回それを守り抜いた。 かつての伝説、『イーヴァルディの闘士』と並ぶ大記録。ああ、ああもう十分だ、そうだろう? 君と僕は結ばれる。誰にも邪魔はできない。そして君の、『虚無の拳』の力がついに――!」 恐怖。しかし、それ以上にルイズの心を埋め尽くしたのは、憤怒だった。 ルイズは腕を振り解き、ワルドを睨みつける。それを気にもせず、相変わらず、哂い続けているワルド。 ワルド――いや、こいつが何を言っているのかはわからない。 だけど。 これだけはわかる。 「そんなことのために……!」 その目的は、あいつ――才人に比べれば、屑にも劣る最低の代物だということだけは。 「サイトを……!」 あいつを。いつまで経っても従おうとしなかった、小憎たらしい使い魔を。給仕やら、他の女性にすぐ傾く惚れっぽいあいつを。 でも、……どうしようも無い程、どうしようも無くなる程に好きだったサイトを! 「殺したのねっ!」 ルイズは先日の自分を悔やんだ。何故、自分はこいつとサイトを比べて、しかも迷いなんてしたんだろう。 こんなにも。こんなにも、私の気持ちは分かりきっているというのに! 「……いいわ。あなたがもう一度だけ、その王座を守りきったなら、私はあなたの妻になる」 「どうしたんだい? 僕の愛しいルイズ。別に、今すぐにでも僕は構わな――」 「その口で、次に『愛しい』と言って御覧なさい。――その口、引きちぎってやるから」 ワルドは哂い止み、値踏みするような眼でルイズをじろり、と眺めた。 完全に様子は一変し、実につまらなそうな、退屈そうな眼をしている。 「ふん。……成る程。君は僕の、『敵』になったと、そういうことなのかな、ルイズ?」 「ええ。完膚無きまでにね、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド」 「くくく。もう『ワルド様』とは呼んでくれないのだね、僕のルイズ。 だが、まぁいい。僕が次に勝ちさえすれば、全ては問題とはならない。 いくら君が反対しようとも、前人未到のHBC王座十連続防衛を果たした男となれば――君のお父上にほんの少し働きかければ済むことさ。 それで? 残りの一回、君は誰をけしかけるつもりなのかな?」 馬鹿にしきった様子のワルドを前に、しかしルイズは動じなかった。 眼を煌々と光らせ、胸を張り、怒りの炎に身を焼いて、誰よりも誇り高く、彼女はそこに居た。 「私よ。私自身が、あなたに挑む」 「セコンドアウト!」 ロープを乗り越えながら、ルイズのセコンド達が次々に声をかける。 「いいか、ルイズ。足だ、足を使え。かき回した所に、お前のフィニッシュブローを叩き込んでやりな!」 「……本で読んだ言葉。あなたに。……Stand, and Fight.(立って、そして戦いなさい)」 「頑張りなさいよ。サイトのためなんでしょ?」 ルイズは僅かに微笑みをこぼし、そして相対する敵へと向かっていった。 着ているTシャツを握り締める。かつて、彼女の使い魔がこの世界に召喚された時に着ていたものだ。 「サイト」 何かを噛み締めるように、ルイズはその使い魔の名前を呟く。 「らぅーん、えいと! ふぁいっ!」 ゴング。 開幕直後、ワルドは冷静に牽制の左を放つ。 速く、鋭く、確かな芯のあるジャブ。『エア・ニードル・ジャブ』。 『閃光』の二つ名の元になった、ワルドの主武器の一つである。 ルイズも動じず、ステップとガードで対処する。 しばし、静かな攻防。盛り上がる観客席とは正反対に、凍りついたような緊張感がリングには満ちていた。 ――と、その空気を打ち破るかのように、ワルドが大きく下がる。 そのまま腕を広げ、オープンガード。そして、あろうことか対戦相手であるルイズへと話しかけた。 「いや、驚いたよルイズ。まさか、君が――君自身が! 僕に挑むと聞いたときには、正直正気を疑ったがね。 僕の『ライトニング・クラウド・アッパー』を破るとは、やるじゃないか」 『ライトニング・クラウド・アッパー』。ワルドが幾多もの敵をリングに沈めてきた、彼の必殺技である。 その拳は相手に命中すると同時に、グローブすら焼き尽くす強力な電撃を発し、その動きを止める。 ガードも不可能、当たったらそこで終わり。まさしく、『フィニッシュ』ブローだ。 (尚、スレ住人の皆さんは技のあまりのネーミングセンスに眉をひそめていることだろうが、 これは筆者の趣味では無く、名作ボクシング漫画――アレをボクシングと呼称するのなら、という前提だが―― 『リングにかけろ』へのリスペクトである。知らない人はググってwikipedia。すげーネーミングだから) ルイズは警戒。試合中に対戦相手に話しかけるなど、正気の沙汰ではない。コルベールが困っている。 「驚いたよ。本当に驚いた。まさか、『虚無の拳』の力を、僅かとはいえ引き出すとはね。 それに敬意を表して――僕の、正真正銘、本当の本気を見せるとしよう!」 そう言い放つと、ワルドは突然詠唱を始める。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 ルイズはワルドへと突き進んだ。まずい。何の詠唱をしているのかはわからないが、本能が告げている。 あの呪文を、完成させてはならないと。 「っ!」 ワルドの顔面へ、右ストレートを放つ。 そして、誰もがその眼を疑う光景。 その拳が、ワルドの頬を『貫通』した。 「!」 驚愕に凍り、動きが止まるルイズ。面前のワルドの姿が、かき消える。 そして、 「ユビキタス。――風は、遍在する」 ルイズの背後。そこに、五人のワルドが立っていた。 振り返ったルイズの顔が、更なる驚愕で歪む。 「風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」 ルイズは混乱しながらも、必死でジャブをうつ。 涼しい顔でそれを防ぐ、ワルドの一人。 「物理的影響力を持ち、ある程度の衝撃なら消えることもない。そのそれぞれが意思を持っている。 ――どうだい、僕の愛しいルイズ? これが僕の、本気だよ」 一人がルイズのパンチをガードしている間に、もう一人が懐に潜り込み、ルイズの気をそらす。 更に二人が牽制のジャブを放つ。 「くっ!」 ルイズは必死で、それをかわそうと『イリュージョン・ステップ』を使う。 自分自身の幻影を作り出し、敵を翻弄する足捌き。 先ほど『ライトニング・クラウド・アッパー』を破ったのもこの技だ。 しかし、 「無駄だ!」 そして、最後の一人はルイズの死角へと回り込んで―― 「これで終わりだ! 『エア・ハンマー・フック』!」 「――――!」 空気の塊を伴った拳は、その力を元の数倍にまで増大。 ルイズの顔面を捉え、悲鳴をあげることすら許さず数メイルの距離を吹き飛ばした! きもちいい。 なんだか、すごくきもちいい。 めのまえがぐにゃぐにゃする。なにもみえないや。 ああ、ねちゃいそうだなぁ。 「――――!」 なんだか、とおくでたくさんのひとがさわいでる。 うるさいなぁ。 わたしはもう、ねたいのに。 「――――!」 ああもう、ほんとうにうるさい。 たちあがることなんて、もうできないのに。 「――って!」 え? いま、なんて……。 「立って! ルイズ!」 リング上、ピクリともしないルイズ。勝ち誇り、ロープへもたれかかるワルド(×5)。 それを見つめながら、キュルケは呻く。 「分身……。ボクシングで五対一なんて、勝てるわけがないじゃない……!」 「…………」 無言のままのタバサ。 3。 「ちくしょう……。ルイズは、ルイズはあんなに頑張ったのによぅ……!」 丹下は俯き、何かを堪えるように歯を食いしばっていた。 「…………」 無言のままのタバサ。 5。 「……限界ね」 倒れたまま動かない姿を見、キュルケがタオルを取り出す。 止める丹下。 「待て! そいつぁダメだ! ルイズを、あいつの気持ちを裏切るつもりか!」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」 「せめて、10カウントの間は――」 「一刻を争う状況だったらどうするつもりなの!? その数秒が、あの子を殺すかもしれないのよ!」 「…………」 無言のままのタバサ。 8。 「ダメだ! そいつはやらせられねぇ!」 丹下がキュルケに、タオルを投げさせまいと食らいつく。 そうしながらも、叫ぶ。 「立(て! 立つんだ、ルイズ!)――」 「立って!」 割り込むかのような突然のタバサの絶叫に、丹下は言葉を止められてしまう。 タバサはルイズを見つめ、何かを訴えるように、目に涙を浮かべながらも叫ぶ! 「立って! ルイズ!」 その一言で、心臓に火が入った。 足が動かない。 頭はグラグラだ。 体中が痛みを訴えている。 ――それでも。 その全てを屈服させて、ルイズは立ち上がった。カウントは、9。 霞む視界の中、リング下のタバサを捉える。 そちらに向けて、頷いた。 ――そうだ。 驚くワルドが見える。 ――負けられない。 足を一歩、動かす。 ――絶対に、 「負けないんだからっ……!」 ワルド達が、再びルイズへ襲い掛かる。 先手を取り、重い左手を必死で動かして、ジャブ。 どうしようもなく鈍いそれを、ワルドは苦も無くガードした。 先ほどと同じ流れか、と誰もが思ったその瞬間。 ガードをしたワルドが、跡形も無く消え去っていた。 「な――!」 驚きで動きを止めるワルド達。馬鹿な。あの程度のパンチで、分身が消え去るなどあり得ない。 更に連続でルイズのジャブが放たれる。 一発。一人のワルドが消える。 一発。また一人のワルドが消える。 残るワルドは、二人。 「馬鹿な、そんな筈は!」 混乱するワルド。そこに、ルイズがぽつりと、だが確かな強い声でその技の名前を告げた。 「――『ディスペル・ジャブ』」 「っ! 『解除』したというのか、僕の分身を!」 更に、一発。更にワルドが消えうせる。 残るは本体。たった一人の、ワルドのみだ。 「僕は……僕は負けないっ! 『虚無の拳』を手に入れ、ボクシング界の全てを手に入れるまで、決して!」 錯乱したワルドが、ルイズへ吶喊する! 「あ、ああああああああああああああっ!」 再び、『ライトニング・クラウド・アッパー』を放つ。 決まれば、間違いなく終わる。その威力を秘めた一撃。 しかし。その技は既に―― 「ああああああああああああああっ!」 命中! ワルドの眼に、電撃に撃たれながら吹っ飛んでいくルイズの姿が映る! 「あああああああああああああ、ああ、あ……?」 再び倒れるルイズ。電撃で体中が焼け焦げ、見る影も無い。 「あ、ああ、は、ははははははは! 勝った! 『虚無』に、伝説に、僕は勝ったんだ!」 ワルドは気づくべきだった。 ルイズにその拳が命中した――否、そう見えた瞬間。 しかしそれに反して、その手には何の感触も無かったことに。 倒れていたルイズの姿が消える。 「ははははははははっはああははは、はぁ? あれ?」 『イリュージョン・ステップ』。 そして、 「喰らいなさいっ! サイトの――仇っ!」 ワルドの目の前から放たれた拳は、 「『スマッシュ』――」 その顎にクリーンヒットし、 「――『エクスプロージョン』!」 大爆発によって、ワルドを上空十数メイルまで吹き飛ばした! 一瞬の沈黙。 その会場にいた全ての人間が、歓声一つ上げず、、空中のワルドを見つめていた。 ぐしゃり。 何かが潰れるような音と共に、ワルドがリング外へ顔面から墜落する。 コルベールがそれを覗き込み、――その両腕を、頭上で交差させた。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 歓声が爆発し、ゴングはこれでもかと鳴り響く! 「やった! ついにやったぜ、ルイズ!」 「……やった」 「あの、バカ……! 心配させて……!」 コルベールがルイズの腕を、高々と掲げる。更に音を増していく観客の声援。 腕を下ろされたルイズは、その中を、ふらふらとニュートラルコーナーへ戻る。 「っ! タンゲ! 椅子!」 「言われるまでもねぇわっ!」 出された椅子に、崩れるように座り込むルイズ。 「ちょっとルイズ? 体は、大丈夫なの?」 「待ってろ。今、わしがとっておきの薬を――」 「要らない。水のメイジが医務室からすぐに来る」 「ルイズ? ……ちょっとルイズ? ルイズ!」 「おいルイズ! 返事しねぇか!」 「…………救護班、早く!」 ねぇ、サイト。 やったよ。 私、あんたの仇を討った。 サイト。 もう一度だけでも、あんたに会いたいわ。 言いたいことがあるのよ。 前には言えなかったけど、今なら、素直になれそうな気がする。 でも。 燃え尽きちゃった。 燃え尽きちゃったわ。 真っ白にね……。
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サモン・サーヴァントでルイズが召喚したのは・・・S&W-M29 フォーティーフォーマグナムだった ダーティー・ルイズ ルイズはそのマグナムと契約を交わし使い魔として持ち歩くが、ある日ギーシュと決闘をする事になる 44マグナムで7体のゴーレムを倒した(内2体はワンショット・ダブルダウン)ルイズは ギーシュにマグナムを向け「5発か・・・6発か・・・わたしも撃つのに夢中で覚えてないのよ・・・」 「・・・まいった・・・」 そんなこんなある日、タバサがワルド子爵に誘拐される事件が起きた ワルドはルイズを名指しし、トリステイン中に設置された遠見の鏡を通してルイズに要求を伝える 「走れや走れ・・・ルイズさん・・・」 結局、マグナムを奪われたルイズがパンツの中から出したナイフで刺され、ワルドは逮捕された その後、証拠不十分で釈放されたワルドがアルビオンの戦艦レキシントン号を乗っ取る事件が起きる 「アルビオン軍のみんな、今日は軍務を休んでみんなでアイスクリーム工場を見学に行くんだ」 レキシントンはワルドの脅迫により、トリステイン魔法学院の上空に向かう、ワルドは皆を歌わせた 「♪こ~げこ~こ~げよ~、ボートこ~げよ~ ランランランラントリステイン空爆♪」 そこへ現れたのはルイズ、レキシントンに飛び移り、ワルドを戦艦から引きずり出して人質を救出 逃げるワルドと追うルイズは風石鉱山にたどり着き、遂にルイズはワルドを44マグナムでブチ抜いた 池に浮かぶワルドの死体を背に、ルイズは五芒星のバッジを投げ捨てて歩き去った ----------------------------------------------- ダーティー・ルイズ2 トリステイン国内では連続した殺人事件が起きていた それらを実行していたのはレコンキスタと呼ばれる一味、法で裁けぬ悪を処刑する集団だった ルイズは彼らの行う処刑活動への勧誘を受けるが、「しまいにゃ芝生にクソした奴まで殺されるわ」と 断ったことがきっかけで彼らに命を狙われることになるが、彼らから風竜を奪ったルイズは反撃に転じる マグナムと風竜を武器にレコンキスタの暗殺集団を全滅させたルイズは処刑事件の捜査を指揮していた ワルド子爵へと報告するが、その暗殺集団の黒幕こそが彼だった、ルイズはマグナムを奪われる しかしルイズに暗殺事件の罪を押し付けるべく風竜で逃亡したワルドは、ルイズに風竜ごと爆殺される 「ガラにもないことやるからそうなるのよ・・・」 ----------------------------------------------- ダーティー・ルイズ3 ある事件のほとぼりを冷ますため、アンリエッタにより学院の人事課に送り込まれてクサっていたルイズは ワルド一味が学院を襲い、破壊の槍を盗み出した事を機に最前線に呼び戻された ルイズは新入生のベアトリスと共にワルド達の行方を追うが、彼らはチェルボーグの監獄跡を占拠する 血気盛んなベアトリスは監獄跡へと突入し、ワルド達によって惨殺されてしまう 「カタキを取ってやるわ・・・」 強力な軍用マジックアイテムで武装したワルドの手下はルイズのマグナムで次々と屠られ ついにルイズは奪い返した破壊の杖で、ワルドを木っ端微塵に撃ち飛ばした ----------------------------------------------- ダーティー・ルイズ4 学院を休学しトリステイン郊外に引っ越したルイズは、平賀才人という地球人を飼うことになった どこにでも小便をする馬鹿犬がきっかけで、ある隣人と仲良くなるが、ルイズとその隣人の周りで 殺人事件がおき始める 「泣けるわ・・・」 ルイズの隣人スカロンはかつてワルドとその手下達に辱めを受け、復讐のために殺人を重ねていた 手下が次々と殺されている事を知ったワルドはフーケを餌にスカロンを遊園地におびき出す ワルドに銃を向けられ絶対絶命のスカロン、そこへマグナムを下げたルイズが現れた ティファニアの召喚したもうひとつのマグナム・・・44オートマグが火を噴き、ワルドを葬った ----------------------------------------------- ダーティー・ルイズ5 舞台芝居の監督をするワルドは、自分の暴力的な演劇に迫力をつけるべく「殺人ゲーム」を始める 標的にされたルイズは自分の乗る風竜への放火や遠隔操作魔法による移動爆弾に命を狙われるが ルイズは殺人の興奮に狂ったワルドを船の上に追い詰め、竜撃ちの銛で貫いた
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692 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 39 54.85 ID lbgBr8l60 ワルドは風竜の上で、にやりと笑った。 彼はこの時を、『レキシントン』号の上空の雲に隠れ、ずっと待っていたのであった。 次々に味方の火竜を撃墜した、謎の竜騎兵。 己の風竜がまともにぶつかったのでは勝ち目は薄い。ならば虚を突かねばならぬ。 そして、優秀な敵ならば『レキシントン』号が上方に死角を持っていることを見抜くはずと読み、 そこに張っていたのである。 果たして彼の予想通りやってきた敵の姿は、興味深いものだった。 これは竜ではない……、一目見てワルドは思った。 これは、ハルケギニアの論理で作られたものではない…… 696 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 43 06.13 ID lbgBr8l60 「ワルド!」 ルイズがハッとして顔を上げる。二度と会うことはあるまいと思っていたかつての婚約者と、 こんな状況で再会するとは。 一瞬だけ、ワルドと目が合ったような気がした。 この途方もない相対速度の中である。錯覚かもしれない。 だがその瞬間、確かにルイズは背中に冷たいものが伝うのを感じた。 一方のワルドの目は、キャノピー越しに桃色がかったブロンドの髪を捉えていた。 そして、敵の尾翼に踊る『ゼロ』の文字。 ならば、あの竜モドキを操っているのは……。 失った右腕がうずく。 風竜のブレスは役に立たぬが、自分には強力な呪文と光線銃がある。 ワルドは手綱を握り直し、周囲の雲海に散らばった“彼ら”に思念を送った。 700 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 45 12.65 ID lbgBr8l60 「偏向シールドのないこの機体にとっては、ブラスターは脅威となるな」 言いつつ、ベイダーは大きく機を旋回させ、風竜でも追従できない速度で後ろに回り込もうと した。 ワルドの射撃の腕前は未知数だが、正面からの接近は避けた方がいいだろう。 しかし、完全に死角からのアプローチであったにもかかわらず、ワルドはそれを見越したかの ように正確にブラスターを撃ってきた。 驚きつつも咄嗟に反応し、機を傾けて避けようとしたが、かわし切れず右翼の下に被弾。 頑丈なハードポイントが一撃で破壊され、ミサイルが地上目がけて落下していった。 バランスを崩し、機体が大きく揺れた。 横向きのローリングに加え被弾の影響で一気に減速したため、体にベルトを食い込まされた ルイズが呻いた。 704 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 49 31.19 ID lbgBr8l60 ベイダー卿はどうにか機の体勢を立て直すと、再びスピードに乗せた。 「きゃあきゃあ、きゃあ!」 今度は座席の背もたれに押し付けられる格好になり、悲鳴を上げるルイズ。 「大丈夫かよ、娘っ子?」 デルフリンガーが思わず口を開いた。 ルイズはきっ、と目を吊り上げた。 「わたしの心配なんていいわよっ! それよりベイダー、何やってんの! こんな所で手こずっ てる場合じゃないでしょ!」 ルイズの言うとおり、『レキシントン』号が弾種を散弾から砲弾に戻し、再びラ・ロシェール目 がけて艦砲射撃を開始しようとしていた。 陸軍も混乱を収拾させつつある。 「コーホー」 たしかに、あまりワルドの相手に時間をかけるわけにはいかなさそうだ。 707 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 54 39.17 ID lbgBr8l60 「だから、頑張りなさい! ワルドなんかに撃ち落されたりしたら、わたしがあんたを殺すから ねっ!」 そんな矛盾きわまる台詞で発破をかけると、ルイズは再び『始祖の祈祷書』のページに目を落とした。 光の中に、文字が浮かび上がっていた。 古代のルーン文字で書かれたそれを、真面目な勉強家であるルイズは読むことができた。 「序文。 これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。四 の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統 は、『火』『水』『風』『土』と為す。 710 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 56 53.09 ID lbgBr8l60 神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒よ り為る。神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に 干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚 無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。 これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いし ものなり。『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われ し『聖地』を取り戻すべく努力せよ。『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多 大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として『虚無』はその強力により命を削る。し たがって我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開 かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。 ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ 714 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 01 59 51.97 ID lbgBr8l60 ルイズは呟いた。 「ねえ、始祖ブリミル。あんたヌケてんじゃないの? この指輪がなくっちゃ、『始祖の祈祷書』 は読めないんでしょ? その読み手とやらも……、注意書きの意味がないじゃないの」 そして、はたと気づく。読み手を選びし、と文句にある。ということは……。 自分は読み手なのか? 思えばこれまで自分が魔法を使おうとすると、そのたびに爆発が起こった。 周りのみんなは失敗と笑ったが、その原理を説明できる者は誰一人としていなかったでは ないか。 よくわからないけど、あれが『虚無』なのだとしたら……? それに、自分が召喚したベイダーはかつて始祖ブリミルが使役した伝説の使い魔、『ガンダー ルヴ』だという。――皮肉にも、最初にルイズにそのことを告げたのはワルドであったが。 すると自分はやはり読み手なのかもしれない。 信じられないけど、そうなのかもしれない。 ルイズは緊張で渇いた喉に唾を飲み込んだ。 718 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 02 07.36 ID lbgBr8l60 しかし、次のページを開いて失望した。 それ以降はまた、今までどおりの文字の記されていない白いページが続いていたからだ。 「なによ、もう……。期待させておいて」 失望と共に無性に腹が立った。涙さえ出てきた。自分は相変わらず『ゼロのルイズ』なのだ。 だからルイズは、前の席に座るベイダーに向かって腹立ち紛れの声を張り上げたのだった。 「もうっ! もどかしいわね、なにやってんのよ! あんなの早く落としなさいよ!」 722 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 07 00.49 ID lbgBr8l60 ベイダー卿は背後から飛んでくるルイズのわめき声を無視しながら思案していた。 ワルドは思った以上に手強い。 左手一本で正確な射撃をしてくる上に、こちらの射線に入るのをぎりぎりの所で回避している。 「さすがは『風』のスクウェアといったところか」 かつてフォースグリップをかわしただけのことはあった。 しかしそれ以上に気にかかるのが、ワルドの異様な反応の良さだ。 死角から攻撃しようとしてもあっさり看破され、逃げられる上にブラスターを撃たれる。 二倍以上のスピードで飛ぶハリアーの動きを、手に取るように掴んでいる様子である。 まるで、フォースを感知する力でもあるかのように。 スピードの面で絶対的な優位にあるはずなのに、ベイダー卿は攻めきれずにいた。 724 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 10 27.95 ID lbgBr8l60 そうこうしている内に、とうとうアルビオン艦隊の艦砲射撃が再開された。 途方もない砲声が轟き、大気がびりびりと震撼した。 「姫さま……!」 ルイズが顔色を変えた。 ベイダーのハリアーは何度目かのアプローチに失敗し、光弾に追い立てられるようにして ワルドから距離を取っていた。 どの方位から接近を試みても、どうしても射線に捉えることができない。 「相棒、あいつは時間を稼ぐつもりだぜ。先にあのデカブツをなんとかしなきゃ、姫さんたちが やばいんじゃないのか?」 そのデルフリンガーの言葉に、ルイズも同意した。陸軍も再び進行を開始している。 「そうよ、ベイダー。もうワルドなんてどうでもいいわよ。もっと物事を大局的に見て動きなさい よ」 727 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 13 01.01 ID lbgBr8l60 そんな何気ないルイズの言葉に、ベイダーは何かを思いついた様子で少し考え込み、やや あって頷いた。 「なるほど、大局的に、か。……そういうことか」 フォースの探知範囲を拡大し、確かめてみる。どうやら間違いない。 そしてそれから、ベイダー卿は背もたれ越しにルイズを見た。 「奴のからくりがわかった。マスター、今まで以上に危険な操縦をするぞ。耐えられるか?」 ルイズは内心の恐怖を気取られまいと精一杯胸を張って答えた。 「あっ、あったりまえじゃない! わたしを誰だと思ってんのよ! わたしはルイズ・フランソ ワーズ・ル――」 「わかった」 ベイダー卿は小うるさそうに手を振って遮ると、操縦桿を握り直した。 ルイズが何か言いたそうに口を開きかけたが、結局彼女は一言も声を発することができな かった。 ハリアーが大きくロールし、またもや悲鳴を上げる羽目になったからである。 739 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 20 54.86 ID lbgBr8l60 「ふふふ、とうとう痺れを切らしたか」 風竜に跨るワルドはほくそ笑んだ。敵の竜モドキが転進し、『レキシントン』号目がけて飛んで いったからである。 彼はこの時を待っていた。 「どんなに速く飛ぼうと、この銃の弾からは逃げられんぞ!」 常識を越えたハリアーの速度も、光速の銃弾にとっては無に等しい。 風竜に『レキシントン』号を目指すハリアーを追尾させながら、ワルドはブラスターを連射した。 それは、ワルドにとっては理想的な形だった。 「『ガンダールヴ』、それにルイズ、きみたちに引導を渡すのは残念ながら僕じゃない」 地上目がけて艦砲射撃を続ける『レキシントン』号であるが、その両舷の艦首と艦尾にある 一門、計四門の大砲には、ワルドの指示で熟練の砲撃手が散弾を準備している。 焦ったベイダーがワルドを無視して『レキシントン』号に向かい、ワルドがそれを追いかける ――ブラスターを避けるのに精一杯のこの時こそ、不意打ちの散弾に対して最も無防備に なるはずである。 743 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 24 11.59 ID lbgBr8l60 ワルドは周囲に思念を送った。 『フライ』の呪文で飛ぶ“彼ら”は風竜のスピードには追従できないが、とりあえずついてきて はいる。 ブラスターをかわすのに精一杯の竜モドキは、トップスピードに乗ることができないでいる ようだ。 (竜とは違うその直線的な動きこそお前の弱点だ……) ワルドはその見慣れぬ竜モドキの運動性能をよく観察していた。 加速、速度ともに申し分ないが、常に羽ばたき身をくねらせる竜に比べると、小回りが利かな いようである。 もうすぐ散弾の射程に入る。この相対速度で散弾を喰らったら、間違いなくあの竜モドキは バラバラになるだろう。 750 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 27 23.34 ID lbgBr8l60 しかしほくそ笑むワルドの目の前で、竜モドキは『レキシントン』号との間に浮かぶやや大きめの 雲の中に飛び込んだ。 「ちっ!」 ワルドは小さく舌打ちした。 この銃が、濃密な雲の中では本来の威力を発揮できないことをワルドは知っていた。当てても 致命打にならないかもしれない。 だが、圧倒的優位に立っているという自信と、憎き仇敵をもうすぐ倒せるという喜びが、ワルドを 躊躇なく雲に飛び込ませていた。 ワルドは気づいていなかった。 ワルドが追尾しやすいよう、ベイダー卿が速度を抑えていたことに。 そして、雲に飛び込んだ彼の目の前で、竜モドキの影が忽然と消えた。 「バカな!」 いかに雲の中とは言え、見失うわけがない。第一、それほど濃い雲ではないのだ。 前方に悠然と漂う『レキシントン』号もしっかり視認できる。 慌てて上下左右に視線を走らせるワルド。 その頭脳に、“彼ら”の内の一人から思念が届いた。 例の竜モドキが自分の方に向かっている、と。 754 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 32 03.99 ID lbgBr8l60 「目が覚めたか、マスター」 ルイズが薄目を開けたのを察知し、ベイダー卿は後部座席に向かって声をかけた。 「う、ん……? わたしどうしてたの?」 「ほんの数秒だが気を失っていた。初めて味わう加速度に、体が耐え切れなかったのだろう」 「そ、そう……」 ルイズが額に手を当てる。まだ視界がぼんやりと暗い。 しばらくそうしてから、唐突に置かれた状況を思い出し、ルイズは大声を上げた。 「わ、ワルドは!?」 ベイダー卿は固定武装のトリガーを引きながら答えた。 「これで四人目だ」 機関砲が火を噴き、空中を逃げようとしていた人影に弾を叩き込む。 その人影はワルドだった。二、三発の砲弾をその身に受けたワルドはバラバラに砕け、そして、 消えた。 762 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 35 11.17 ID lbgBr8l60 ルイズは息を呑んだ。 「――ユビキタス・デル・ウィンデ!」 ベイダーが頷く。 「そうだ。子爵は自分の周りを固めるように分身を配置していたのだ。それも、一キロ近い距離 を置いて。目にも止まらぬこの機の速度も、遠くからなら把握可能だからな。そうして互いに 何らかの手段で連絡をとり、こちらの動きを教え合っていたのだろう。魔法を利用した全方位 レーダーと火器管制システムいうわけだ」 最後の単語はわからなかったものの、なるほど、とルイズは思った。それならばワルドのあの 反応の良さも納得できる。 気づかぬ内にルイズたちは、常時四対の瞳から監視を受けていたのだ。 765 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 37 52.45 ID lbgBr8l60 「でも、どうやってその囲みを脱出したの?」 「簡単なことだ。誰も把握できない動きをしてみせればいい。特に一番危険な、ブラスターを 持った本体に対して、な。この機体はエンジンノズルの向きを変えることで、予測不可能な 動きができる。そうやって本来ありえない所から雲を抜けた時、分身たちはのこのことこちらに 飛んでくる最中だった」 デルフリンガーが後を引き受けた。 「もっともこの機動は機体と乗り手にとんでもねぇ負担がかかっちまうがな。お前さんはそれで 気絶しちまったんだよ。だけど相棒、さっきみたいな真似はもう無理だぜ。機体がバラバラに なっちまうよ」 ベイダー卿が頷く。 その視線の先で、雲の中で反転したワルドの風竜がようやく姿を現した。 「なかなかいい策だったが……、終わりだ、子爵」 777 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 43 30.88 ID lbgBr8l60 ワルドは破れかぶれにブラスターを連射してきた。 無論、もはやそれに当たるベイダー卿ではない。 ハリアーを加速させ、旋回。目で追えぬ程のスピードでワルドの死角に回り込み、一気に距離 を詰める。 火竜に乗った竜騎士たちがそうであったように、今のワルドはハリアーの動きに反応すること ができなかった。 ブラスターを撃つ余裕はない、そう判断したワルドは咄嗟に杖を振った。 ハリアーの機関砲が、風竜の華奢な体を穴だらけにする。 ワルドは辛うじて自分の背後に空気の壁を作り出すことができた。 しかし、スクウェアメイジの風の障壁ですら、三十ミリ機関砲の弾を防ぎきることはできなかった。 肩と背中に弾が食い込み、ワルドは風竜と一緒に地面に墜落していった。 「さよなら、ワルド……」 落ちていくかつての婚約者を見つめながら、ルイズは口の中で呟いた。 だが、感傷にひたっている暇はない。 今度こそ全ての邪魔者を片付けたベイダー卿が、ハリアーの機首を『レキシントン』号に向けた。 785 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 45 49.73 ID lbgBr8l60 「ワルド子爵、撃墜されました! 謎の敵が再度本艦に向かってきてます!」 『レキシントン』号の後甲板で指揮をとるボーウッド艦長に、伝令兵が悲鳴に近い声でそう報告 した。 ボーウッドは歯噛みした。 すでに地上の軍勢はラ・ロシェールに到達し、トリステイン軍と戦端を開いている。 今こそ艦砲による援護射撃が不可欠な時だというのに、またあの厄介な奴がやってくる…… 793 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 48 40.96 ID lbgBr8l60 「弾切れだぜ。どうするよ、相棒?」 操縦桿を握るベイダー卿に、デルフリンガーがそう問いかけた。 彼の言うとおり、機関砲の弾倉はワルドとの戦闘で空になっていた。 「まだ一発ミサイルが残っている。木造船など、この一発で沈めてみせる。それでも沈まない 時には……」 「時には?」 ルイズとデルフリンガーが同時に尋ねた。 「――混乱に乗じて直接乗り込み、制圧する」 ルイズは仰天したが、デルフリンガーは興奮したかのようにカチャカチャと震えた。 「いいねぇ、相棒。お前のそういう無茶なとこ、わりかし気に入ってるぜ」 それには答えず、ベイダー卿は操縦に集中した。 815 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 02 56 23.18 ID lbgBr8l60 アルビオン艦隊の内、『レキシントン』号だけが砲撃を止めている。 おそらくハリアーに対して弾幕を張るために、弾種を散弾に変えているのだろう。 だが、左手の『ガンダールヴ』のルーンが教えていた。この機体に積まれているミサイルは、 対空砲火届く範囲の遥か手前から攻撃可能である、と。 ベイダー卿はためらうことなく発射ボタンを押した。 翼の下のハードポイントから分離したミサイルが、すぐさま音の壁を越えた。 『レキシントン』号左舷の監視員が、敵の竜モドキから何かが発射されたのを視認した時には、 既に何もかもが遅すぎた。 何門かの大砲が独自の判断で散弾をぶっ放したが、まったくかすりもしなかった。 837 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 03 47.68 ID lbgBr8l60 ハリアーが発射したミサイルには、コルベールが作った『ディテクトマジック』を発信する魔法 装置が組み込まれていた。 中間誘導を終えたミサイルのシーカーは、巨大な魔法力の塊――『レキシントン』号の動力源 たる『風石』をロックし、散漫に飛んでくる対空砲火をものともせず最高速まで加速した。 回避運動を取る暇など、あるわけがなかった。 ミサイルは音の二倍を優に越える速度で『レキシントン』号の船体の中央部に突き刺さり、ベイ ダー卿が設定した遅発信管により、その弾頭に秘められた破壊力を余す所なく解放した。 高性能炸薬の爆発力に巨艦が傾ぎ、左舷から火柱が上がった。 862 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 14 50.74 ID lbgBr8l60 『レキシントン』号の甲板にいた将兵の多くが、爆発の衝撃で宙に投げ出された。 魔法が使える貴族の内、意識を保っていられた者は幸いだった。 『レビテーション』や『フライ』の呪文を唱え、宙に浮くことができたからだ。 しかし、それ以外の大多数、気を失ったメイジや平民は皆、遥か彼方の地面目がけて落下 していった。 艦長のボーウッドも同様に艦から振り落とされたが、辛うじて意識を保っていることができた 幸運なメイジの一人であった。 そして、『フライ』の呪文を唱えた彼は、今はなきアルビオン王室が威信を賭けて建造し、王権 の象徴であった不沈艦が、たった一発の攻撃で信じられない損害を受けているのを目の当た りにした。 外壁と何枚もの隔壁を破ってから爆発したらしき敵の兵器は、『レキシントン』号の左舷に大穴 を開けていた。 甲板から火の手が上がり、すぐにそれはマストの帆布に延焼した。 おそらく艦内の被害はさらに甚大だろう。 だがしかし、幸いにして弾薬庫やバイタル区画への被害は免れたようである。 不沈艦の名に相応しく、『レキシントン』号は辛うじて宙に浮いていた。 887 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 23 24.88 ID lbgBr8l60 「沈まないじゃない! どうすんのよ、ベイダー!?」 ハリアーのコクピット内に、ルイズの甲高い声が響いた。 ベイダー卿は振り向きもせずに答えた。 「やはり空対空ミサイルでは破壊力不足だったか。……だが、言ったろう。沈まないなら乗り 込んで制圧する、と。今なら対空砲火も止んでいる。甲板のスペースになら降りることが可能 だ」 やれやれ、とでも言うようにルイズが首を振った。 「ま、いいわ。あんたの無茶は今に始まったことじゃないし。付き合ったげるわよ」 894 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 26 32.28 ID lbgBr8l60 そう言うとルイズはベルトを外し、操縦席の背もたれに両手をかけて抱きつくような形で体を 預けた。 そしてそのまま身を乗り出し、シートからはみ出たベイダー卿のヘルメットにコツン、と額を 当てる。 「ちゃんとわたしのこと、守ってよね?」 「コーホー」 ベイダー卿は沈黙の中に逃げ込んだ。 その姿勢を保ったまま、ルイズが続ける。 「それから、約束して。必ず二人で生きて帰るって。……わたし、置いてけぼりはぜーったいに ヤなの」 ベイダー卿はしばらくの間やはり無言だったが、やがてポツリと呟いた。 「肝に銘じておこう」 904 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 34 22.97 ID lbgBr8l60 ベイダー卿はハリアーで『レキシントン』号の上を一巡りしみたが、抵抗らしい抵抗は皆無 だった。 他の戦列艦も、司令官の座乗艦たる『レキシントン』号から火の手があがったことで混乱して いる様子だった。 『レキシントン』号を制圧するには、絶好のチャンスと言える。 そして、後甲板の竜騎兵の発着スペースになら機を着陸させられそうだ――ベイダー卿が そう当たりをつけ、その上まで移動して着陸姿勢を取ろうとした時だった。 フォースがかつてないほどの警告を発した。 916 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/26(火) 03 38 32.03 ID lbgBr8l60 「ッ!!」 ベイダー卿は弾かれたように操縦桿を押し込んだ。 「……きゃああああぁぁぁぁッ!?」 腰を浮かせ、操縦席の背もたれにしがみついていたルイズが、後部座席まで弾け飛んだ。 垂直に切り替わりつつあったエンジンノズルが水平に戻り、ハリアーは全速で『レキシントン』 号の上から離脱した。 そしてその直後、天地を貫く一条の光の束が『レキシントン』号の甲板に突き刺さり、その船体 を真っ二つに引き裂いた。 ベイダー卿とルイズは同時に空を見上げた。 一隻の巨大な船が、遥か上空に浮かんでいた。 高度の差を考慮すれば、その船が『レキシントン』号とも比較にならないほど巨大なものである ことは、すぐにわかった。 「スター・デストロイヤー……」 彼にしては珍しく呆然とした口調で、ベイダー卿がその名を口にした。
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ハルケギニア唯一の水蒸気機関を備えたフネ、探検船《オストランド号》が往く。 伝説の虚無の担い手とその使い魔としての使命を果たした、一組の男女を、遙かなるオストランド(東方)へと遣わすために……。 もう戦わなくていい。舵を取るコルベールを始めとした乗組員達の顔にはやっと訪れた平和への喜びと、これから向かう新天地への希望に満ち溢れていた。 ――――ただ一人を除いて。 多くの人に見送られた華々しき旅路の空は、そのまま忘却の彼方に消え去るはずだった宿敵との決戦の舞台となったのだ! オストランド号、機関室。 置きっぱなしにされていた工具箱にぶつけた脛を抑えて屈み、ルイズはか細い呻き声をあげた。 これが平時だったらば「かかか片付けときなさいよ! っもう!」とか何とか言って蹴っ飛ばす所だが、さすがに今はダメ絶対。 息を殺して追っ手の動向に全神経を注ぐ。杖を落としたのだ。助けが来るまでは逃げるしかなかった。 「……っ!」 すぐに風を感じるほどの近さでエア・ハンマーが炸裂。折れた蒸気パイプが熱い中身をけたたましく噴き上げる。 「今のは当たったかな? ……当たったか~い? 痛かったか~い? 痛かったら泣けぇ! 泣いて許しを請うんだぞ、ルイズぅ~~~」 汗を流してルイズを追うのは、今や見る影もなくなった元婚約者ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドである。 彼女の使い魔に味わわされた屈辱的な敗北からか、それともレコン・キスタ瓦解後の筆舌に尽くし難い労苦のせいか……とにかく彼は復讐の鬼。 貨物箱の中に隠れ、単身オストランド号に潜入。妄念漲る二十体もの偏在でブリッジを占拠し、ルイズの使い魔と仲間達を抑え、こうして無力となった 彼女を鬼気として追い回しているのであった。 「ハッハッハッハ! 見つけたぞ、ルイズぅ~~! 眉間なんか撃ってやるものか! ボールを吹っ飛ばしてやる!!」 「ボールって何よーーーーーっ!!?」 お互いに逃げ場のない空の上、逃げるルイズに追うワルド。 どちらも必死の健脚だが後先考えてないワルドが勢いで勝り、とうとうルイズの首根っこをふん捕まえた。 「怖いかいクソッタレ? 当然だ。元グリフォン隊隊長の僕に勝てるものか!」 「た…試してみる? わたしの使い魔だって元コマンドーよ……!!」 「ルイズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」 「来たな、大佐ぁ!!!」 機関室へ飛び込んできた憎むべき相手に、振り向きざまのエア・カッター。 「メイトリクス!!!」 逞しい右肩から散る鮮血を見て、ルイズは使い魔の名を叫んだ。 「大佐ぁ、腕はどんなだい?」 「こっちへ来て確かめろ!」 「いいや結構。遠慮させてもらうよ」 手応えあり。柱の陰に隠れたメイトリクス大佐の傷の深さに余裕の狂笑を浮かべるワルド。 繰り出した偏在のほとんどは彼の操る〝ガンダールヴの槍〟によって案山子のように撃ち倒されてしまったが、それももはや弾切れ。あの魔法を吸収する インテリジェンス・ソードもない。 後は、この筋肉もりもりマッチョマンの変態をぶっ殺すだけだ! 「実に気分が良い。ハハハッ! これから死ぬ気分はどうだ大佐ぁ? 貴様は老いぼれだ!!」 「ワルド! ルイズは関係ない。放してやれ! 目的は俺だろう?」 「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」 「ワルド、お前でも勝てる」 見え見えの挑発。軋る奥歯の音。 分かっていても受け流せないほどに、ワルドはメイトリクスへの憎悪に蝕まれていた。 「来いよワルド。杖なんか捨てて…かかって来い……!!」 「楽に殺しちゃつまらんだろう? ナイフを突き立て、俺が苦しみもがいて死んでいく様を見るのが望みだったんだろう?」 「~~~~~っ!!!」 「そうじゃないのか、ワルド?」 図星である。あの礼拝堂での敗北から付いてしまった人生のケチを払うにはそれしかない。それしかないのだ。 逃げようとした所に投げられた丸ノコっぽい物で切断された左腕が痛む。残酷に削られた頭皮が疼く。 タルブ上空では騎乗していた風竜ごと、ロケランとかいう破壊の杖で火の玉にされた。 その後も崖から落とされたり、首の骨を折られたり、スパッと出番が無くなったり……恨み言を数え上げればキリがない。 「テメェを殺してやる……!!」 そして何よりも我慢ならないのは、自分がこいつに恐怖しきってしまっているということだ。 「さあ、ルイズを放せ。一対一だ! 楽しみを不意にしたかないだろ? ……来いよワルド。怖いのか?」 「ぶっ殺してやる……!!!」 対峙するだけで足が震える股間が湿る。 「人質なんて必要ないっ……ヘヘヘッ…そうだ! ルイズにゃもう用はねえ! ヘヘヘヘハハ…偏在も必要ねえや…! 杖もいらねえ!! 誰がテメェなんか! テメェなんか怖かねえ!!」 何とかしてよ、お母さん。 「野郎、ぶっ殺してヤぁルぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!」 もはや理性は聖地の彼方。ワルドは絶叫にも似た雄叫びと共に突進した。 「いいいい一体、何が始まるの……?」 自らの思考を超えた急展開に呟くルイズ。 至極冷静に折れた蒸気パイプを拾って振りかぶるメイトリクス。 ちなみに左手のガンダールヴのルーンは炉心限界の輝きを放っている。 この鉄面皮、愛娘ジェニーにも等しいルイズを危険な目に遭わされて密かに激怒しているのだ。 「ふんッッ!!」 バリスタの勢いで投擲された蒸気パイプは狙い過たずワルドの鳩尾を貫き、背後のボイラーに縫い止めた。 「ぎゅうううぇうううぅふうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!!!!?!!!!」 〝蒸気抜き〟ダァァ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!! 「地獄へ堕ちろ、ワルド!!」
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ワルド S「いや、やっぱり…『シエスタ』……『オスマン?』………『ルイズは流石に…』…………!!」 ワルド S「ところで…『…針串刺し…』……『…輪切り…』………『…消し炭…』…………」 仮面ワルド「皆久しぶりだなあ!いったい何を話しているんだ?良かったら私も混ぜてくれないかな?」 いぬっ!ワルド「やあ、仮面ワルド。君は今来たところか?」 仮面ワルド「ああ、君はいぬっ!ワルド…会えて光栄だよ。ところで皆は一体何を話しているんだ?」 いぬっ!ワルド「いや私も今来たところだから彼らが何を話しているかは解らないな…ところで話は変わるが、君は中々活躍しているそうじゃあないか。聞いたぞ?この色男め!」 仮面ワルド「いやいや僕なんか所詮はルイズの引き立て役だよ。君に比べたら…よっ!!このハルケギニアを…いや!!ルイズを護るイーヴァルディの勇者をも超える英雄、その名も『黄金ワルド』!!」 いぬっ!ワルド「勇者だなんて照れるよ…君は自分を卑下することは無い、君は僕なんかよりずっと格好良いさ!!もう『ロリド』だの『アカタイサ・モドキ』だの言われない位立派だぞ!君こそ真の『黄金ワルド』だよ…」 仮面&いぬっ!ワルド「「ああ『黄金ワルド』…なんて素晴らしい響きなんだろうか…」」 星屑ワルド「やあ『ルイズの相棒=死亡フラグ(運が良ければ離脱で済む)が立っちゃったワルド』!!」 仮面ワルド「え?」 見えないワルド「それに『デルフ&リスキニハーデン・セイバー・フェノメノンの二刀流で微塵切りにされるワルド』じゃあないか!!!今ちょうどお前らの事話してたんだよ…」 いぬっ!ワルド「はい!?」 星屑&見えないワルド「「お前らがどんな風に死んでしまうか、をな。」」 DIO魔ワルド「波紋シエスタに殺されてしまえ、仮面ワルド」 隠者ワルド「犬でもいいから使い魔にルイズ取られて殺されろ、いぬっ!ワルドめ」 静かワルド「ルイズに爆殺されろ」 ヘビー&鉄ワルド「「トラウマ作れ、それで一生治るな」」 不死ワルド「男とキスしてしまえ、そんで死ね」 白亀&愚者&遺産ワルド「「「仮面ワルド…お前は半裸のルイズを見たり、おんぶして貰ったり…羨ましいんだよこのクソ野郎!死ね!!氏ねじゃなくて死ね!!!」」」 ワルド S「「「「「「「「兎にも角にも惨めに死んじまえ。それから白亀&愚者&遺産ワルドは自重しろ」」」」」」」」 いぬっ!ワルド「死ねとか洒落にならない事言うなよ!それ以前に嫉妬なんて見苦しいぞ!!」 仮面ワルド「いぬっ!ワルドの言うとおりだ!!それにDIO魔ワルド、君は今後の展開次第で上手く行けば黄金ワルドになれる可能性があるかもしれないじゃあないか?」 DIO魔ワルド「五月蝿い!!お前に解るか!?ルイズの目の前でメイドにボッコボコにされた上に何だか負けフラグ踏んでる俺の気持ちが!!!」 見えない&星屑&静かワルド「「「お前ら『黄金ワルド様』には解らないだろうな…俺達みたいに惨めに死んでいく悲しみと虚しさはな…」」」 ワルド S「「「「「「「「今はそのポジションを喜べ!!だがこれから常に死の恐怖に取り付かれて精々おっかなびっくり暮らすんだな!この『死亡フラグ踏みかけワルド』どもめ!!!」」」」」」」」 仮面&いぬっ!ワルド「「五月蝿い!!本当に死んだらどうする!?縁起でもない事を言うな!!!このダメワルドどもめ!!!!」」 ナンダトー!? シネー!シンデクサッチマエー!! ダマレ!ダメ゙ワルメドドモ!! ウルセー!コノロリコン!! ワタシタチハロリコンジャナイ!!! タマニハロリコンモイイヨネ!!! ジチョウシロ、コノヘンタイドモ!!!! シンジマエー! チクショー! ワーワーギャーギャー… アヌビスワルド「僕もギーシュさんのお陰で愛に目覚め、おっぱ…ゲフンゲフンルイズ達の仲間になれた黄金ワルドなのに、二人と違って他のワルド達に狙われていない。これはきっと…」 アヌビスワルド「きっとギーシュさんの愛の力だな!!流石ギーシュさん、その愛の力は僕を他作品ワルド達からの嫉妬から護ってくれる…そんなミラクルラブパワーに痺れる、憧れるゥ!!!」 仮面&いぬっ!ワルド「「(お前みたいなおっぱい野郎が黄金ワルドとは言い難いし。仮に黄金だとしても、『三枚目キャラは生き残りはすれどもルイズとくっ付ける訳無い』からだろうが…)」」
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ルイズが呼び出したのは数十枚の裏の模様が共通の絵札と腕につけ絵札をセットするために作られたような盤だった。 召喚のやり直しを要求するルイズだが監督のコルベールはそれをそれを却下しルイズにそれと契約するようきたした。 しぶしぶといった感じでとりあえず絵札に口付けるルイズ…だが、その途端ルイズは苦しみだし気絶してしまった。 彼女は医務室へと運ばれていった。 なお、使い魔のルーンはコルベールが確認したところ一番上の絵札の表側に刻まれていた… それによりとりあえず進級の方は認められたようだ。 翌日姿を見せたルイズの雰囲気は激変していた… なんというか今まで品位等には気を使っていたのに衣類は雑に着こなし朝から飲酒。 食堂を出た後には完全にふらついていた。 手には昨日召喚した盤をつけていた… さらに最初のシュヴルーズの授業でも明らかにやる気がなくふざけた態度、激怒したシュヴルーズは 周りが止めるのも聞かず彼女に錬金をやらせたが彼女はめんどくさそうに行った錬金は失敗、 爆発によりシュヴルーズは気絶してしまった。 何人かの目にはいつもと違いまるで成功させるという気概さえもないようにさえ思えた… これらのルイズの激変は召喚したのが変なものだったせいで狂ってしまったようだ…と周囲には認識された。 別にもともと問題児だ。気にするほどでもないと大体の者は思ったが… ただ、元々は成績的問題児だったのが素行的問題児になったというのには参ったもんだと思ったようだが… その様子だ…いつ問題ごとを起こしてもおかしくない… 案の定、昼食時に早速厄介ごとが起こった。 食堂でギーシュが2股がばれたのを飲んだくれていたルイズが思いっきり笑ったのだ。 他の連中も笑っていたがルイズの笑いは他の笑ってる人間が笑いをとめてそちらを見るほど大きく 心底から笑っているようだった。まして今のルイズはチンピラの様… 明らかに自分より落ちぶれた人物に笑われ黙っているギーシュではない。 ギーシュは怒りに任せて彼女に決闘を申し込んだ。ルイズはそれをカモが来たのを喜ぶ様に笑い受けた。 ヴェストリの広場にて対峙する2人。まずはギーシュがワルキューレを呼び出した。 所詮はルイズと侮ってるのか彼女を挑発する。 「先に仕掛けたまえ、無駄だと思うがね」 それを聞いたルイズはそれを鼻で笑う。 「いいわよ…あんたこそ一体だけでいいの?それじゃあつまらないわ…」 やや、酔っ払い気味のルイズのその言葉に怒ったギーシュはワルキューレを7体に増やした。 それを確認したルイズは盤に束ねてセットしてあった絵札を一枚抜き盤の別の場所に置いた。 その瞬間、ルイズの前に竜に近い外見で金属製のゴーレムが現れた。 「なッ!?」 絶句するギャラリーとギーシュ。ルイズは相変わらずの調子で言う。 「ねぇ、ギーシュ。あなたギャンブルってやったことある?なんか、急に興味でてきてさぁ…ちょっとやってみない? こいつはね、頭と手のところに弾丸が3発ずつ装填されてるの…最大装填数は6だから確率は2分の1… このギャンブルでやると最大3回一気に攻撃できるの…じゃあ…始めましょうか!ロシアンルーレット!!」 ルイズがそう言うとゴーレムを構成するパーツの3箇所が回転を始める。そして停止。 「2発アタリね…リボルバードラゴンの攻撃!!ガンキャノンショット!!」 銃弾はワルキューレ2体を粉々に打ち砕いた…動揺したギーシュはワルキューレ1体をルイズへと向かわせるが リボルバードラゴンが前に立ちはだかる。 「話聞いてなかった?この方法でやると…つまり普通に攻撃もできるのよ? 一体だけ向かわすなんてお馬鹿さん…リボルバードラゴンの迎撃!!ガンキャノンショット!!」 その攻撃でワルキューレがまた一つ砕かれた。さらにうろたえるギーシュ。 「あらぁ!?何もしないのぉ!?じゃあ、また私の番ね…リボルバードラゴンの銃弾も装填されたし… ロシアンルーレット!」 再び一部が回転するリボルバードラゴン。そしてまた止まる 「3個当たり…ついてるわぁ…ガンキャノンショット!!」 ワルキューレの数は一気に1体になった。呆然とするしかないギーシュ。 「呆けた隙に銃弾装填♪ロシアンルーレット!!」 弾倉が回る…ギーシュに不吉を告げる弾倉が…と、ルイズが口を開いた… 「ああ!言い忘れてたわ!場に撃つ物がなかったらねぇ…撃たれるのはギーシュあなただから」 「え?」 語られた事実に一瞬呆けるもギーシュは慌てて静止をかける。 「ま、待ってくれ!僕が悪かった!僕の負けでいい!謝るから!許してくれ!」 「許してあげたいのはやまやま何だけどねぇ…一度稼動したら止まらないの… これぞロシアンルーレットってことかしらねぇ?」 ルイズは苦笑いを浮かべた。といってもわざとらしい苦笑いであったが… いや…そもそも攻撃が止まらないといっても目標まで変えられないわけではなかったりする。 つまり、ルイズはギーシュの命で完全に遊んでいた… 「そ、そんな…」 蒼白になるギーシュ。そして弾倉の回転が止まり銃声が響いた… 「…アタリは1発…ワルキューレのみ撃破…運が良かったわねぇ、ギーシュ~?アハハハ!」 気絶し下半身を湿らせたギーシュに向かいそう言うとルイズは去っていった… それから数日後… 盗賊土くれのフーケにより学院の宝物庫から黒き召喚の板なるマジックアイテムが盗まれたらしい… ルイズはフーケの討伐に暇つぶしとでもいうように参加した… フーケのアジトと思われる小屋の前でルイズ、キュルケ、タバサは様子を伺っていた。 3人をここまで案内した学院長秘書のロングビルは周囲を偵察してくるいってといってしまっていた 「で、どうするの?」 「誰か一人がいって様子を見てくる」 タバサが提案する。だが、ルイズが動いた。 「まどろっこしいわねぇ…フーケから攻めさせてフーケを倒した後に回収すればいいじゃないの」 「あんたね。いくらなんでもそりゃあ無謀ってもんよ。大体どうやってフーケの方から仕掛けさせるの? 挑発なんて罠があること丸わかりでしょ?」 「ならこうすればいいでしょ」 ルイズは絵札の束からカードを選び出し盤にセットする。 「罠・魔法カード 守備封じ発動!!」 としばらくして、近くの草むらからロングビルが現れた。だが、様子が変だ。 「ちょっと!?どうなってるんだい!?クッ…」 彼女は杖を振ろうとする。だが、表情や時たま起こる硬直からは自身の動きに抵抗しているような節が見られた。 だが、それを振り切るように彼女の手は杖を振る。その瞬間、地面から巨大なゴーレムが出現する。 「なっ!?」 「!?」 驚愕するキュルケとタバサ。だが、ルイズだけはその事実を淡々と享受し嘲笑を浮かべていた。 「なるほど…ずいぶんとせこい真似してくれるわね…ロングビル…いえ、土くれのフーケさん?」 図星をつかれた彼女は顔を歪ませるもどうやらもう自由になったらしい体でゴーレムの肩に飛び乗る 「チィ…まあいい…お前さんの持っているそれはどうやら宝物庫にあった秘法と同じ物らしい… どうやらその絵札がないと使えないみたいだけど…あんたからいただくことにするよ!!」 ゴーレムが向かってくる。だが、ルイズはあざけるかのような笑みを浮かべ新たな絵札を盤に置く 「出てきなさい…デモニックモーターΩ!!」 次の瞬間ルイズとロングビル…フーケのゴーレムの間にどこか禍々しい姿をした光沢を持つ ゴーレムが出現した。それがフーケのゴーレムを迎撃する。 「デモニックモーターの迎撃!!攻撃名は…そうねぇ…ヴァリエールクラッシャー!!」 デモニックモーターの攻撃…ヴァリエールクラッシャーがいとも簡単にフーケのゴーレムを切り裂いた。 フーケは一瞬呆然となるがすぐにゴーレムを再生しようとする。 しかし、タバサとキュルケが捕縛し決着はついた。 ルイズは遊び足りないと呟いたようだが… 「ところで、ルイズ…そのネーミングセンスはないでしょ?」 「別にいいじゃない」 「…いかす…」 「タバサ!?」 フーケを捕らえたあと小屋に入ると黒き召喚の板…ルイズが手につけてる盤と同じ形をしながらも漆黒に染まった それを発見した。ルイズは自分の手にはめているものを外し、絵札の束もそれから外すと 漆黒の盤にそれをさし込み自らの手につける… 「気に入ったわ…」 レコンキスタの間者であったワルドの魔法がアルビオンの皇子ウェールズの体を貫いた。 「これでウェールズの暗殺の任務は完了だ… さて、あとはルイズ…君さえ素直に言うことを聞いてくれればすんなりことは済む… いうことを聞いてくれないかな、ルイズ?」 ワルドがルイズに問いかける。だが、ルイズは体をただ振るのみ… 怯えていると思ったワルドは彼女に優しく言葉をかける。 「怯えなくていい…君が何もしなければ僕も」 と、震えがとまりルイズが顔上げ…そして叫んだ。 「あ~!?ふざけたこといってるんじゃないわよ!!このカスが!! 私はあんた如きの命令をきくなんざクソ食らえよ!!」 「ッ…ならば仕方ない…ウェールズの後を追って…!?」 ワルドは気づく…いつの間にかウェールズのいた場所の付近に霧が出現しているのに… その霧の中から何かが出てくるのに…それはおそらく入れ物…そう思えた… 「皇子様の後ぉ!?何言ってんのよ?ほら~!」 その入れ物が開く…中から現れたのはわけのわからないといった感じの表情のウェールズ。 「なっ!?」 「罠カード発動…タイム・マシーン!!あんたにやられる前の皇子様をおとりにしてそのちょっと前の皇子様を 呼び寄せたのよ…残念だったわね」 「クッ…ならばもう一度!!」 ワルドが杖を振り魔法を放つ。状況を理解してないウェールズは回避できない。と、 「アハハハ!!罠カード発動!!メタル化魔法反射装甲!! 殿下…失礼ですが少しの間、体をメタル化させてもらうわ!!」 ルイズのいうとおりウェールズの体は金属となる…それにワルドの魔法が直撃する。 それを見て愉快そうにしながらルイズはワルドへと口を開く… 「この罠はねぇ…対象の体をを私のモンスターと同じ…対魔法仕様フルメタルに変化させるの… そして…」 次の瞬間、ウェールズに命中した魔法はワルドの元へと反転し向かう。 「魔法攻撃を攻撃してきた馬鹿のほうに反射させるの!! ちなみに私が横に侍らせてるのも反射はしないけど魔法は効かないわよ?残念だったわね。 そしてあんたの魔法の攻撃力を殿下の攻撃力に変換!! 殿下の攻撃力も400ポイントアップした…微弱ながら攻撃力は逆転したわ!」 跳ね返った魔法がワルドに直撃しワルドが消える… 「チッ…遍在か」 「そういうことさ…」 ルイズの前に3人のワルドが姿を見せる。 「本体は別の場所さ…まさか、君がここまでやるとは思わなかった…今回は退かせて貰う」 「逃がすか…くたばれ!カスが!!」 ワルドの遍在…その一人の首に奇妙な輪が装着される。そしてそれが爆発しワルドの遍在一体を消し飛ばした。 「無駄だ…なっ…!?」 瞬間…残りのワルドの遍在が消えた… そして彼の本体は… 「馬鹿な…」 口から大量の血を吐き出し…そして崩れ落ちた… 「フフフ…罠カード 破壊輪…自身の分身で近しい能力を持つ遍在を破壊した… ダメージは甚大でしょうねぇ…生きていても味方に救出してもらえるか…それともそのまま力尽きるか…」 ルイズが対するは7万の軍勢…その軍勢を前にしてもルイズの表情は変わらない。 その表情は相変わらず相手を舐めきった傍若無人なものだった… 「アハハ!…嬲り殺しがいがありそうねぇ…それに上も私一人に殿を任せてくれるなんてわかってらっしゃる!」 ルイズはそういいながらいつものように…それでいて少し厳かに絵札の束から一枚の絵札を選び…抜いた… その札に語りかける… 「あ~…はいはい、わかってるわよ…そろそろ、私を遊ばせるだけじゃつまらなくなってきたんでしょ? …ったく…いいわよ…思う存分暴れ狂いなさい!!」 叫びながらルイズは絵札を漆黒の盤の上に置く…いつもより重たい雰囲気が漂い… そしてそれは出現した…邪悪なる波動を持つ凶つ神… ルイズのコントラクトサーヴァントにより絵札にルーンが刻まれしもの… それを利用し、自らの力を増幅し自らの元々の邪悪なる力と元々の持ち主の病んだ魂の残光によりルイスを蝕んだ… その存在の名は 「邪神イレイザー!!!」 降臨したそれにアルビオン軍は一瞬ひるむ…だが、それに向かっていく… それが圧倒的な存在感を放っていても… と、ルイズが呟く。後から呼び出したリボルバードラゴンの上に乗りながら… 「邪神イレイザーの攻撃力は敵の物量に依存する… あたしを蝕んだ癖にとんだヘボい能力だけど… 相手は7万…敵1つにつき1000ポイントらしいから…7000万…これなら充分やれるでしょう?」 向かってくるアルビオン軍を迎撃せんと邪神は口をあける。 「邪神イレイザーの攻撃!!ダイジェスティブ・ブレース!!」 その攻撃は一気に多数のアルビオン軍を消し去った… しばらくして…邪神は弱っていた…邪神の力は敵が多ければ多いほど高まり少なければまた弱まる… 弱まった邪神は確実にダメージを受けていた。 どうやら魔法に対し抵抗自体は持っているようだがルイズがそれまでに使用した存在たちと違い 完全に受け付けないというレベルではないらしい。 そしてついに邪神が倒れる。 その様子をルイズは笑みを浮かべ見ていた… 「あらら~…やっちゃった♪」 ルイズがそう呟いた瞬間だった…邪神の体からそのサイズを超える量の黒い…血液が流れ出した。 それは戦場一帯に染み込み血の池を作っていく…そして… 「…この馬鹿使い魔はね…やられるとその場にいた他の連中も巻き添えにするの… 味方がいると巻き添えにしちゃうしホントこんな時にしか役に立たないわね!! まったく使い勝手が悪いったらありゃしないわ!! …フフフ…アハハ!!!」 ルイズがそういった瞬間…血の池はその場に存在するすべてを飲み込んだ…主であるルイズさえも… だが、飲み込まれる最後までルイズの顔は快楽に歪んでいた… 数日後…血の池に飲み込まれたはずのルイズはトリステインへと帰還する… その時、彼女の無事を尋ねた者たちにルイズはこう語ったという… 「地獄ってのもなれりゃあ、結構快感なものなのねぇ…何であんなにみんな苦しがるのかしら?」 こともなさ気にそういったルイズに人々は恐怖した… もはや彼女は魔法のつかえない落ちこぼれで嘲笑の対象ではなかった…彼女の方が人々を嘲笑する… 魔法を受け付けぬ鋼鉄の襲撃者達… そして、それをも凌ぐすべてを無(ゼロ)に帰す凶つ神を従える… 敵から希望も命もすべてを快楽を以てして無に帰す彼女を侮蔑の意味を込めて改めてこう呼んだ… ゼロのルイズ…と…
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強烈な閃光。それが私が見た最後の光景だった。 この日、ハルケギニアの地図上からトリステイン魔法学院は文字どうり消滅した。 ゼロの大統領ー完 「ってそんなのあるかー!」 と、ベッドから飛び起きそのまま転がり落ちるルイズ。 「きゃんッッいたた・・・あれ?」 辺りをキョロキョロ見回すルイズ。 「やっぱり夢?そうよね!夢よね!夢かーって何の夢だっけ?まあいいわ それより明日は大事な使い魔召喚の日だから早く寝なくっちゃ!」 そう言って再びベッドに潜り込みすやすやと寝息を立て始めるルイズ。 だが彼女は、夢は夢でも正夢だったと分かるのはそれから数時間後の事だった。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 何度も失敗し周囲の黒煙が風に流された後、そこに居たのは一体のゴーレムだった。 「ゼロのルイズがゴーレムを召喚しただと!」 「あのルイズが?」 周りの驚く声など聞こえず、ルイズは自分が召喚したゴーレムをじっと見る。 「あれ?これって・・・・・」 彼女の脳裏に忘れたはずの夢の記憶が映し出される。 『オゥケェェイ、レッッツパァリィィィー!!!』 「ヒッ!」 夢の記憶を思い出したルイズは小さく悲鳴を上げるが、彼女の夢とは違いゴーレムは指一本動かさなかった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」 その後、コルベールの指示に従い嫌々ながら契約を済ませるルイズだが 「いったーって何で私にルーンが浮かび上がるのよ!」 彼女の左手には使い魔のルーンが浮かび上がっていた。 それを見ていた周りは一部を除いて大爆笑。ルイズとゴーレムを残し皆学院へ帰っていったあと、ルイズは泣いた。 始めはゴーレムに八つ当たりし、喚き散らし、最後にはシクシクと泣いた。 どの位そうしていたか、ルイズはヨロヨロと立ち上がりゴーレムに手を着いた時、彼女は理解した。 今までの彼女なら決して理解できなかった、しなかったであろうことも。 ガンダールヴのルーンの力でこのゴーレム“メタルウルフ”の持ち主の熱き“大統領魂”を。 平和だったハルケギニアの地に戦乱の嵐が吹き荒れる。だが、我々には最後の希望が残されている。 熱き大統領魂を受け継ぐ“メタルウルフ”の使い手。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。 これから派手なパーティーが始まるんですね。私もこんな派手なパーティーは初めてです・・・・・ミス・ヴァリエール? 平民の名誉を守るため決闘を受けるルイズ。 「平民を守るのは大統ryげふんげふん・・・貴族の勤めよ」 ヴェストリの広場にギーシュと“メタルウルフ”を着けたルイズが対峙する。 「いけ!ワルキューレ」 『淑女なのは17時までよ!』 ギーシュはワルキューレを一体造りルイズに向かわせるのに対し、ルイズは黒い筒をワルキューレに構える。 『オーケー!レッツパーティー!』 ドカン! 『ビンゴー!』 一撃で破壊されるワルキューレ。その威力に驚くギーシュだが 「それは銃か?威力は凄いがそれで終わりだろう!」 そう言って六体のワルキューレを造りルイズを攻撃するギーシュ。だが、それに対してルイズは 『大歓迎ね、お返しに穴あきチーズにしてやるわ!」 ドガガガガガガガ!!! 武器を持ち替えたルイズが発砲。ワルキューレは粉々になり、穴あきチーズになったのは学院の一部と宝物庫だった。 その様子を遠くから見ていたメイドは、ぽつりと呟いた。 「前々からこんなに壮観なトリステイン魔法学院を壊したら、どんなに綺麗かと気になっていたんですよね」 宝物庫損壊の隙をつき、破壊の杖を盗み出す土くれのフーケ。 それを追うルイズたち、破壊の杖を取り戻すもその直後襲い掛かる巨大ゴーレム。 巨大ゴーレムの攻撃に対し、それを正面から受け止めるルイズ。 『見なさい!これがヴァリエール魂よ!』 そう言って巨大ゴーレムをぶんぶん振り回しぶん投げるルイズ。 ありえない光景にあんぐりと口を開けるキュルケとタバサとシルフィードとフーケ。 「私を捕まえないのかい?」 『私たちが受けたのは破壊の杖を取り戻すことよ。それにあんたは根っから の悪人には見えないし』 破壊の杖を取り戻して数日後、アンリエッタ姫殿下の密命を受け婚約者のワルド子爵、途中からキュルケ、タバサ、そして なぜかいるギーシュたちと共にアルビオンへ向かうルイズ。 だが、そこで待っていたのは婚約者の裏切りだった。 「んふはははははは。ルイーズ!」 「ワールドー!」 密命の為“メタルウルフ”の無いルイズは、ウェールズの命を懸けた行動により逃がされ、キュルケたちと合流し アルビオンを去ることしか出来なかった。 アレから数日後、不可侵条約を破り侵攻するアルビオンの艦隊。 『親愛なるトリステインの皆さん、私はレコン・キスタの一市民としてこのような状況は非常に残念です トリステインの女王にそそのかされた人々よ、思い出して欲しい“正義の心”を、ハルケギニアを思う心を 今投降すればまだ罪は軽いはずだ。貴方たちに“正義の心”が残っているならばその女を捨てて 17:00までに投降しなさい。これは最後通告です。合言葉は“ウィー・ラブ・クロムウェル”』 そのような言葉になど従わず攻撃を開始するが、圧倒的な火力の差によりほぼ壊滅状態のトリステイン艦隊。 「いくらあなたでもムチャよルイズ!」 『ムチャではないわ!なぜなら私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだからよ!』 「ちょっと、まちなさいルイズ!」 『キュルケ、ちょっとタルブまで行って来る』 戦火の火が迫るタルブの村では、シエスタがある決意をしていた。 「招待したわけでもないのにずうずうしいですね・・・・・お爺ちゃん、これ使わせてもらいます」 そう言って伝説の竜の骸、灰色の“メタルウルフ”に乗り込むシエスタ。 『ンフハハハハ!レッツパーリィー!』 アルビオンの艦隊旗艦レキシントン号に突撃するルイズ。 『ナイスランディング』 次々に現れ取り囲む敵兵に対して、ルイズは不敵につぶやく。 『ようこそ、トリステインへ。ハローボーイズ、そしてそのままおやすみボーイズよ』 ドガガガガガガガ!!! 待ち構えていたワルドと最後の戦いを繰り広げるルイズ。 アルビオンの艦隊はシエスタの“メタルウルフ”に落とされ、旗艦レキシントン号はルイズとワルドの戦闘により 落ちていくが、その際暴走した風石によりはるか高くへ飛ばされてしまう。 『これがハルケギニア・・・綺麗・・・』 「美しい・・・だがその下では醜い争いが起こっている、いまの我々のようにね さあ、これが最後の戦いだ!」 決着はルイズの勝利に終わる。風の魔法を使って息をするのがやっとの状態では、大気圏突入の摩擦熱までは防げなかった。 ワルドがこのまま燃え尽きるのかと覚悟した時、ルイズが救いの手を差し伸べる。 「ルイズ・・・・・なぜ」 『貴方がハルケギニアを思う気持ちは本物だった。けど、貴方は方法を間違ったのよ』 だが、ワルドはルイズの手を突き飛ばし、最後の力を振り絞り風をルイズの周りに張り巡らせる。 「さよならだ・・・・・僕の小さなルイズ」 『ワルドー!』 そのままルイズはハルケギニアの地に落ちてゆく。 『ルイズさん、ルイズさん、答えてくださいルイズさん!』 シエスタの応答にルイズが答えることは無かった。だが、ルイズを知る者は誰も彼女が死んだとは思わなかった。 あのルイズがこんなことで死ぬはずがないと。 「人間が!この包囲から抜けられると思うなよ!」 『ノープロブレム。熱々のローストチキンにしてやるわ!』 ゼロの大統領ルイズ変 メタルウルフルイズー完
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (5)海無き港町ラ・ロシェール ラ・ロシェール近くに無事不時着した羽ばたき飛行機械。 ウルザがそれを手際よくと折りたたみ、待つこと暫し。 空に二つの影。グリフォンとワイバーン。 「ミスタ・ウルザ!彼女達がついて来ていることをご存知だったのですか!? なぜ追い返さなかったのです!」 「落ち着きたまえワルド子爵。 私も気付いたのは少し前のことだ。確信したのは奇襲後だがね。」 トリステイン魔法学院からつけて来たというタバサとキュルケ。 その処遇をどうするかで、ワルドとウルザの言い争い。 ワルドは追い返すべきだと主張。 一方のウルザは奇襲を受けた以上、タバサとキュルケの存在が敵に察知されたのは確実。それならば戦力として期待出来る以上、連れて行っても構わないと主張。 真っ向から対立する意見。 ルイズがグリフォンに騎乗するときもそうであったが、なぜこの二人はこんなにそりが合わないのだろう。 ウルザ、ワルド、共に普段は他人との軋轢を起こすタイプの人間ではない。 その二人が話を始めると、どうしてこうなってしまうのだろう。 ルイズは首を傾げるばかりである。 結局タバサとキュルケは連れて行くが、旅の目的を伝えない、という形で決着がついた。 ラ・ロシェールで一番上等な宿『女神の杵』亭に宿泊することにした一行は、その一階の酒場で、この後どうするかと話し合っていた。 別にアルビオンへ行ってどうする、といった話ではない。 空路を取った為、予定よりもかなり早くラ・ロシェールに到着したので、買い物にでも出ようかという算段である。 そこへ『桟橋』へ一人、乗船の交渉へ行っていたワルドが帰ってくる。 ワルドは席につくと困ったように、話を切り出した。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」 「ええ!?急ぎの任務なのに……」 「つまり!今日一日はフリーってことね!おじさま、ショッピング、ショッピングに参りましょう!?」 「ふむ、なぜ船は明日にならないと出ないのかね?」 キュルケを無視してウルザ。応えてワルド。 「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」 山中の港町、月夜に関係して距離を変える陸地、果たしてアルビオンとはいかなる場所であるか、ウルザは考える。 「さて、それでは先に宿を取ってしまおう」 ワルドがそう口に出すと、ウルザが声をかける。 「そのことだがね、ワルド子爵。君が桟橋へ向かっている間にこちらで手続きを済ませておいた。 部屋割りは、ミス・タバサ、ミス・キュルケが相部屋。ミス・ルイズ、ギーシュ君が相部屋。 ……そして私と君が相部屋だ」 石膏のように固まるワルド。 「私は、ルイズの婚約者なのだが?」 「私もそういったのだがね、ミス・ルイズが君と自分はまだ結婚前だと言うのでね」 ワルドがギ、ギ、ギと首を動かしルイズを見る。 「………ルイズ?」 「子爵様、やはり、いけないわ、そんな…」 「そういうことだ、ワルド子爵。夜は年長者同士、仲良くしようではないか」 この時、淡々と話していたウルザの口元がにやりと笑ったように、ワルドは感じた。 その後、夜までの時間は各々自由時間という形で解散することとなった。 しかし、危険な任務ということもあり、自然と集団で行動するというのが暗黙の了解であったのだが、 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 とのワルドの言で、ワルドとルイズだけは別行動をとるということとなった。 まだ日が残っている、しかし、暫くすれば夜の闇に包まれるであろう、桟橋。 「覚えているかい?あの日の約束……。君のお屋敷の中庭」 「あの、池に浮かんだ小船?」 あの夢の小船。 「君は、いつもご両親に叱られたあと、あそこで丸くなっていたね。まるで捨てられた子猫のように…」 「ほんとに、もう、変なことばかり覚えているのね」 「そりゃ覚えているさ。僕にとっては昨日の日のことのように思い出せるよ。 君はいつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、出来が悪いなんて言われていたね」 ルイズは恥ずかしそうに俯くことしか出来ない。 それでもワルドは楽しそうに続ける。 「でも僕は、それはずっと間違いだと思っていた。 確かに君は不器用で、失敗ばかりだったけれど…誰にも無いオーラを放っていた。 それは君の魅力だった。君が他人にはない特別な力を持っているからさ。 僕だって並みのメイジじゃない、だからそれが分かるんだ」 「まさか…」 言いながら思い出す、以前、キュルケとどちらが買った剣をウルザが使うかを賭けて行った勝負。 その時に始めて成功した魔法、あの高揚感。不思議な感覚。 ――――――そして、手のぬくもり。 「まさかじゃない。例えば、そう、君の使い魔」 「ミスタ・ウルザのこと?」 「そうだ。彼が武器を掴んだときに、左手に浮かび上がるルーン、あれはただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説の?」 「そうさ、あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔の印だ」 ワルドの目が、鋭く、妖しく光る。 「誰でも持てる使い魔じゃない。君はそれだけの力を持ったメイジなんだよ」 「………信じられないわ」 「君は偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、歴史に名を残すような、素晴らしいメイジになるに違いない。 僕はそう予感している」 ワルドの熱病に冒されたような熱っぽい口調、ルイズの中に、小さな、棘の様な違和感。 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 突然のプロポーズ。 一瞬、何を言われたのかを理解出来ないルイズ。 「え……」 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりは無い。 いずれは、国を、このハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」 ルイズの顔を覗き込むように、距離を近づけるワルド。 「確かに、君をずっと放っておいたことは謝るよ。婚約者だなんて、言えた義理じゃないことも分かってる。 でもルイズ、僕には君が必要なんだ」 ワルドがすっと、距離を離す。 「今、返事をくれとは言わないよ。 でも、きっとこの旅が終わったら、君の気持ちは僕に傾むいているはずさ」 夕焼けの中、ワルドが背を向けて去ってゆく。 その背中を見ながら、ルイズはいつも見ている背中を思い出した。 どうしてワルドは優しくて、凛々しいのに……。ずっと憧れていたのに……。 結婚してくれと言われて、嬉しくないわけではない。 けれど、何かが心に引っかかる、引っかかったそれが、ルイズを前に進ませないのであった。 『人を殴る時は、せめて椅子をお使いください』 ―――荒くれの港町ラ・ロシェール 『金の酒樽亭』の張り紙 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む