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りりかるな黒い太陽 クロス元:仮面ライダーBLACK RX 最終更新11/02/01 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 前編 第十六話 後編 第十七話 第十八話 第十九話 第二十話 前編 第二十話 後編 第二十一話 第二十二話 第二十三話 第二十四話 コメント欄です 感想や応援メッセージなどをお気軽にどうぞ(無名コメントも可能です) なお、過度な展開予想や要望はご遠慮ください。コメント同士の会話もお控え願います。 ※コメ欄を開始しました。本編でおかしな部分があった場合はどうぞご報告ください。 ※誤字等は避難所の誤字報告スレでのご指摘をお願いします。 これほどの傑作、コメント欄があってもいいと思ってましたので、嬉しい限り。不器用な光太郎の優しさが上手く表現されていて毎回楽しませてもらっております。個人的にはフェイトそんをもっと頼ってくれると嬉しいかな、と(w)。最新作でもよもやの漫画版BLACKの設定まで混ざり、続きがますます楽しみですしね。そしていよいよ六課に参加ですし、sts時ならフェイトそんも大人になって来てますから、もっと進展するかなとも(w)。次回も期待しております! -- おお、やっとコメント欄が(w) (2009-08-02 23 33 13) ウーノさん新妻モードが終わりですか、、、酷く悲しい そしてマスクドライダー2号のセッテちゃんよ、、、これからどういう役回りになるのか 期待して待ってます! -- バッツ (2009-08-03 01 37 04) その時不思議なことが起こったw いつも楽しませてもらってます。光太郎が今後どうなっていくのか、目が離せない展開ですね! -- 名無しさん (2009-08-05 19 10 34) バイオライダーwww便利すぎるww -- 名無しさん (2009-08-15 10 13 24) ザッフィーがんがれww -- 名無しさん (2009-08-15 12 04 09) 処刑用BGMww噴いたww -- 名無しさん (2009-08-15 12 15 29) 抱き枕やったり、しょんぼりするフェイトそんが可愛い(w)。つーかシグナムの訓練要求はV3レベルですか(w)?それでふと思いましたが所属別扱いのザフィーラも、RXと同じように六課人員に組み込まれてるようなものなんですかね? -- ザフィーラに幸あれ(w) (2009-08-15 15 36 19) し、処刑用……。 -- 名無しさん (2009-08-17 12 00 40) RXの文字は半角の方が良いような気がします -- 名無しさん (2009-08-17 17 35 56) マジで特訓内容コレだったのかw ところで、この特訓に使うだけならラジコン操作でよかったはz… -- ザフィどんまい (2009-08-17 19 53 24) 原作厨と言いたければ言えば良いさっ、RXがその程度受け止められないわけ無いだろ。 -- 名無しさん (2009-08-17 22 35 33) 思えば東映で最後に鉄球トレーニングやったのは、救急戦隊ゴーゴーファイブの災魔獣スパルタン。平成のライダーは氷川くんとヒビキさん位しか特訓してねえ! -- 名無しさん (2009-08-17 23 09 20) 処刑用BGM・・・宮内タカユキボイスで「君は光の戦士だ! 熱くみなぎる闘志と!」とか流れてるんですね。 -- 名無しさん (2009-08-17 23 13 24) バイオのテーマソング。バトルoh!RX…「来るぞ!×3恐怖のRX」が脳内に流れました。 -- 名無しさん (2009-08-18 21 28 14) あなた、ちゃんと仮面ライダーBLACK RX 見ました?どんなギャグ見るよりもおもしろかったですよ -- 名無しさん (2009-08-28 20 19 12) 真面目に南光太郎という人間を考えて書きましたか?あなたの光太郎を例えるなら、魔法少女の格好をしたケンシロウ、メイド服を着たバキ、セーラー服をきたジョウタロウです。偽ライドロンのシーンですが光太郎の場合RXで駄目ならパワー特化のロボライダーになって受け止めるなり、スピード特化のバイオライダーになって液化して避けるなり状況によって臨機応変な対応をするはずです。もういっぺんRXを見直してください。 -- 通りすがり (2009-08-29 01 10 08) 単に作者が原作コピペではなくV3的特訓で今後の対策をやらせただけでは?それが妥当かどうかは知らないが。 -- 名無ン (2009-08-29 16 38 46) ちゃんと読んでないで言ってるようだから触らない方が良いよ -- 名無しさん (2009-08-30 00 13 49) 効果はよくわからないけど凄くハードな特訓は、昭和世代の特撮ではよくあること。様式美を理解できないなら、昭和世代の特撮・アニメを見るべきではない。 -- 名無しさん (2009-08-30 12 48 25) いつも読ませてもらってます。光太郎が今後どうなるのか?キングストーンの言うように世紀王となってしまうのか?気になります。そして自分の楽なぺースで頑張ってください -- 名無しさん (2009-08-30 20 27 00) あらしになりたくないから発言抑えましたけど本音言うと一万文字以上いきますけどいいですか? -- 通りすがり (2009-09-10 21 24 06) ライダーは昔から興味ないから知らないけど。おもしろかったです。 -- 名無しさん (2009-09-11 01 01 54) この南光太郎やってる俳優ってエンリケですか? -- 名無しさん (2009-09-11 16 05 24) この南光太郎やってる俳優って小島よしおですか?それとも山本高広の物真似ですか?あなたは仮面ライダーBLACKRXのファンに喧嘩売ってるんですか? -- 名無しさん (2009-09-11 16 52 04) 何だやっぱりただの荒しか -- 名無しさん (2009-09-11 19 07 31) ああ次が楽しみだ -- 名無しさん (2009-09-12 00 30 17) RXの直撃世代だが、特に違和感は感じず楽しく読んでるよ。仮面ライダーSDマイティライダーズのアホRXも、疾風伝説のRXも受け入れたSD世代なせいかもしれんが。 -- 名無しさん (2009-09-13 01 57 21) 差し出がましいかもしれませんが… 誉める事が出来ないのなら、せめて蔑む事をやめられませんか? ファンの方々からすれば許せない部分があるのかもしれませんが、公式なものでは無いのですから作者さんの中のRXが読んだ人の中のRX像と違うのはある意味当たり前の事なんですから。気に入らないのなら、それこそ読むのをやめてこの作品の事を忘れて原作を良さを再確認すればいいと思います。長文ですいません。 P.S 私は楽しめましたよ -- 通りすがり (2009-09-14 20 11 10) 真上(上から28番目)のコメント書いた者なのですが… すでに"通りすがり"さんが上から16番目と21番目にいらっしゃったので、別人なのにまぎらわしいから今後は改名した方のHNで感想を書かせていただきますね -- "通りすがり"改め"太郎" (2009-09-15 22 26 46) シリアスになりきれない微コメディな空気がいいなwこれから追いかけさせて貰うよ -- 名無しさん (2009-09-16 15 29 28) 光太郎はBLACKの時サボテンに対して水をあげる過ぎるとヒタヒタになって枯れてしまうというヒントでサボテン怪人を倒したのにもかかわらず一年後(役半年かもしれませんが)彼女から預かったサボテンに水をやりすぎて枯らした挙げ句泥棒が入って盗まれたことにすると言って誤魔化そうとした男なのですがそんながさつな男がたかだか仕付けられた程度でおしゃれに気を遣うような几帳面な男になるんですか? -- 名無しさん (2009-09-16 23 30 22) SS内では何年も経ってる訳だが -- 名無しさん (2009-09-16 23 40 01) 叩きたがりは大抵読解力が乏しい法則 -- 名無しさん (2009-09-16 23 57 07) 最新話でエリオと風呂に行こうとしてたけど、変身はどうするつもりだったんだろうか -- 名無しさん (2009-09-17 00 25 04) 人間性格はそう簡単に変わらないと思いますよ。ていうかBLACKからRXの間に一回大々的に性格が変わった人なら特に。ただ性格変わっても生活週間はそう変わらないと思いますよ。少なくともディケイドだったらパラレルワールドで性格変わった(他の平成ライダーが電王以外キャラというか人物自体変わって本物の俳優が出てきてもキャラ変わりましたから)なら分かりますが、見た感じRXのテレビ本編の続きから、なのはの話にかませた感じなのでテレビ本編の光太郎だったら不自然だと思います。 -- 名無しさん (2009-09-17 01 28 15) 極端な話をすると偏見含んでいると思いますがドラゴンボールの悟空は一生基本的な性格は変わりませんでしたし、戦国バサラの明智光秀が何年か経ったくらいで快楽殺人を止めると思いますか?ブリーチの更木剣八が何年か経ったくらいで戦い好きが無くなると思いますか?スクールデイズの伊藤誠のクズぶりが何年か経ったくらいで直ると思いますか?最遊記の三蔵の性格と口癖が何年か経ったくらいで丸くなると思いますか? -- 名無しさん (2009-09-17 01 29 34) RXの光太郎は南光太郎を演じた倉田てつを氏が某雑誌のインタビューで簡単に噛み砕いて述べさせてもらうと「信彦との戦いを終えて成長した光太郎を演じたい」とスタッフに頼んでRXの性格になったのですが、その為か結構達観しているところが見られましたが(ディケイドでも達観しているライダーでした。同じ年齢くらいのデビット伊東のヒビキはダメライダー呼ばわりされていましたし、同じ昭和ライダーの俳優がエンリケのアマゾンは一回裏切られたくらいで自分の世界を守ることを放棄しようとしたし) -- 名無しさん (2009-09-17 01 31 26) なんか小説見ると成長系主人公に見えるのですが達観した主人公を成長系主人公に戻す必要があるのですか? お前南光太郎を美化しすぎているだけだろと思われているだけならそれまでですが。 -- 名無しさん (2009-09-17 01 33 42) いつも一緒にいる相手に小言言われれば直す気にもなると思うがね、しかも相手はウーノだし。まあそんな事より次の話も期待してます -- 名無しさん (2009-09-17 01 49 55) キャラクターが作者の解釈で変化するのが嫌ならなぜ二次創作を見に来るのやら、クロス物ならなおさら -- 名無しさん (2009-09-17 03 00 51) 中学生にだって穴だらけの見当違いだと分かる主張をどうしてこうも長々続けられるかね。アンタのために言っておく。アンタは思い込みが激しく視野が狭すぎる。それを少なくとも自覚できるようになるまでは他人にもの申すべきじゃない。公私共にひとりぼっちになっちまうぞ -- 名無しさん (2009-09-17 08 15 42) 人間の根幹にかかわる部分とただの生活習慣をごっちゃにしてる時点で相手にする価値無いよ。作者さん、外部の声に惑わされないで頑張ってください。私はあなたの描く光太郎とRXの光太郎との間にブレは無いと思っています。 -- 名無しさん (2009-09-18 00 07 47) いちいち発言が相手にされるのもウザくなったてきたし相手にするのもかったるくなったんでもう二度と現われないんで安心してください。てか何で作者じゃない奴が吠えるかな。 -- 名無しさん (2009-09-18 15 28 44) 面白く読ませて貰ってます。しかしまあ流石は仮面ライダー、イナゴの大群でも呼び寄せてしまったようだね? はっはっは -- 名無しさん (2009-09-19 01 00 40) 誰が上手い事言えと。昭和ライダーの泥臭さが出て好きですね、この作品。 -- 名無しさん (2009-09-19 09 22 03) RXは機械部品を使ってない遺伝子改造だし、ライドロンも設計図通り組んだだけでは動かなかった。単なる機械ではないのだよ -- 名無しさん (2009-09-27 03 11 21) なんか悪口言ってる人がいるな。まあやってるほうも相手にしてるほうも知能幼稚園児だな。てか悪口言われたくなかったらこんなコメント欄作るなよ。本編でおかしな部分があった場合はどうぞご報告ください。なんて言うなよ。悪口言ってるやつもどうせまっとうな意見言ったって補正かかってる奴等から叩かれるだけなんだから無駄なことはとっとと止めろよ -- kekekeke (2009-09-29 16 15 56) なんか仮面ライダーの悪口言っている人がいるけど。あたしから言わせればこの作者リリカルなのはもわかってない気がします。というか両作品のキャラ変わりすぎ。ここまで設定変えるなら最初からオリジナルキャラクターで夢小説にしたほうがよかったんじゃないの?既存のキャラクターでやる意味がわからない。ここまで変わるとクロスオーバーの意味がない。たとえ二次創作であろうと自重するところは自重して。超えちゃいけない一線くらいは守ろうよ -- 名無しさん (2009-09-29 16 24 26) 変身の際に服破損なんてどこの超者ライディーンと響鬼だよ -- 名無しさん (2009-09-29 16 28 01) また狙いすましたようにイナゴが群れて来るね。まあそれだけ色々引き寄せる物を発しているということかな? -- 名無しさん (2009-09-29 18 33 47) 触れるな危険って事か -- 名無しさん (2009-09-29 20 57 21) あ、変なこと言ってる奴の事ね -- 名無しさん (2009-09-29 20 58 04) データファイルのリボルケイン見たが予想以上にチート過ぎて吹いた。これじゃSSに出しにくいな(^-^;) -- 名無しさん (2009-09-30 23 34 41) イナゴイナゴ言ってるお前もうぜえなこのハイエナ -- 名無しさん (2009-10-02 01 01 16) ↑自分がハイエナに食われる程度の存在だと自覚はしてるんだね -- 名無しさん (2009-10-02 09 08 01) 個人的には楽しんでるので頑張ってほしいと思う -- 名無しさん (2009-10-11 21 01 35) 時のその体を吹き飛ばしかねない強風 時のは誤字? 後気にしなくて良いことかも知れませんがリボルケイン抜く時は左手で抜いてませんでしたっけ? -- 名無しさん (2009-10-22 21 39 37) 渋いぜ光太郎 -- 名無しさん (2009-10-22 22 48 31) このゲル化してるのまさか……赤スバルな彼女か? -- エミリオ (2009-10-23 01 02 14) いつも更新楽しみにしてます!あと↑、セッテじゃね? -- 名無しさん (2009-10-24 13 12 22) ↑セインじゃね? -- 名無しさん (2009-10-24 15 53 59) このギャグ面白いですね。あらびき団の渡辺ラオウやキュウトンには負けますけど -- 名無しさん (2009-10-24 23 28 07) 六つ上の指摘「時の」は「時に」が正しいのかな? あと、作者は本作を適宜修正しているようなので、作品の面白さには関与しないかもしれないが8話のミスも修正してもらえたらうれしいなぁ。(「初めて訪れる友人の家」でリンディとも初対面なのに「今日が初めての訪問と言うわけではないが」とある) -- 名無しさん (2009-10-25 12 38 29) ゲル化してたやつ死んだのか!? 奇跡は起こそうと思っても起きない……ライダーらしいといえばらしいのかな。先輩の必殺技……描写は格好良いのに名前がww -- 名無しさん (2009-10-25 22 46 50) 更新嬉しい 光太郎の精神状態が心配だ -- 名無しさん (2010-02-08 10 06 54) ゼスト死んだー!? -- 名無しさん (2010-02-09 08 32 42) 早く続きが読みたい! -- サムライ (2010-02-10 23 41 21) ゼスト命落としてもーた!!しかし中々にご都合主義立ち向かった内容。このシビアさが仮面ライダーの真骨頂か -- 名無しさん (2010-02-14 22 55 16) この作品始まってからBLACK・RXを見直しました。RXなのにロングロングアゴーばかり流れてる…… -- 名無しさん (2010-02-23 18 19 20) ゼスト無念……こういう展開に魅力を感じるw -- 名無しさん (2010-02-25 22 38 07) セッテが帰ってきたー!! -- 名無しさん (2010-03-07 00 24 40) ( ゚∀゚)セッテ!セッテ! -- 名無しさん (2010-03-08 00 28 12) 敵にわざと捕まり再改造で強化!これに自己催眠が加われば完全に昭和のライダー!頑張れセッテ。いつも楽しく読ませて頂いてます -- 名無しさん (2010-03-10 20 32 29) 光太郎とセッテのライダーダブルキックが見れるといいなー -- 名無しさん (2010-03-10 23 18 48) 散りばめられたネタに噴くw セッテの活躍に期待! -- 名無しさん (2010-03-23 23 02 19) フェイトとセッテの絡みが見てみたい -- 名無しさん (2010-03-26 19 51 11) 兄妹ライダーが六課にそろった!! -- 名無しさん (2010-03-27 22 03 57) 早く続きが読みたい -- 名無しさん (2010-04-01 23 56 49) ふははは、レジアスもげろ -- 名無しさん (2010-04-05 15 05 26) スバル・ギンガ・セッテと、戦闘機人が味方に増えている。もっと増えて! -- 名無しさん (2010-04-05 18 25 04) そういや、ギンガがまだ出てない -- 名無しさん (2010-04-08 14 17 19) アギトはRXを見たらどうするだろう -- 名無しさん (2010-04-10 00 26 19) 全部見させて貰いましたが実にいいですね。我々のかつて見ていたヒーローの話が読めるのは嬉しいです。作者さん頑張って下さい。 -- イトウ (2010-04-11 21 12 30) 「時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る」を思い出した -- 名無しさん (2010-04-12 19 45 34) アクロバッター久しぶりだな -- 名無しさん (2010-04-15 17 05 53) 早く続きアップされないかな -- 名無しさん (2010-04-19 17 20 31) ザフィーラの苦労はどこまで続くのやら -- 名無しさん (2010-04-19 23 42 22) 嫁に弱いレジアスw -- 名無しさん (2010-04-22 21 15 05) 相変わらずクズだな -- 名無しさん (2010-04-25 01 58 28) なのは知らないのに、この作品を読んだら好きになりました!!是非とも頑張ってください!! -- マシュマロ大使 (2010-04-26 21 24 41) 最近クロノ登場しないな -- 名無しさん (2010-04-26 21 31 55) フェイトVSセッテがいい感じ(w)。ここで光太郎とフェイトの距離ももっと縮まれば尚いいんですが(w) -- 名無しさん (2010-04-27 00 44 17) RXのOP見たけど今でも十分通用する -- 名無しさん (2010-04-27 21 20 30) ここのウーノは数あるリリなのssの中で一番可愛いと思う。 -- 名無しさん (2010-04-28 01 12 41) ↑俺もそう思う。特に最初の頃の新妻っぷり。 -- 名無しさん (2010-04-28 22 07 27) アギトはどうなったんだろう -- 名無しさん (2010-05-01 13 26 32) 協会の人間はでてくるのか -- 名無しさん (2010-05-03 19 35 34) セッテ可愛いw そして哀れザフィーラw -- 名無しさん (2010-05-04 11 20 43) だいぶ六課に馴染んできたセッテいいです。これからも頑張って!! -- 名無しさん (2010-05-05 21 08 01) 新作楽しみに待っています(^^) -- 名無しさん (2010-05-06 21 29 35) 光太郎とフェイトの関係がセッテにより、いい意味で変わるといいのですが -- 名無しさん (2010-05-08 23 25 22) レジアスがとてもいいキャラだ -- 名無しさん (2010-05-10 23 18 19) ワクワクしながら次回を待っています! -- 名無しさん (2010-05-13 23 13 36) 光太郎争奪戦にギンガが参戦!? -- 名無しさん (2010-05-16 19 10 17) なかなか新作ができてないな -- 名無しさん (2010-05-20 23 11 02) 光太郎×フェイトは初心なのがいい -- 名無しさん (2010-05-24 14 56 07) 作者は続き書いてるのかな? -- 名無しさん (2010-05-26 15 43 24) そうやって急かすの、よくないよ。 -- 名無しさん (2010-05-26 20 52 37) 気長に待ってます -- すいません (2010-05-27 19 28 37) 前後編になってうれしいです!Wや電王ネタに笑わせてもらいました。 -- 名無しさん (2010-05-29 18 12 18) 次はセッテの活躍もよろしくお願いします -- 名無しさん (2010-05-29 21 21 02) お帰りなさい!光太郎のいい男っぷりにニヤニヤが止まらない! -- 名無しさん (2010-05-29 22 57 58) 待ってました!!スカリエッティの人望の無さに笑ってしまいました -- 名無しさん (2010-05-30 15 35 26) 光太郎がいい兄貴っぷりを発揮してて良かった。クロノもうかうかしてられないなw -- 名無しさん (2010-05-31 14 01 05) スバルもバイクに乗りそうだな -- 名無しさん (2010-06-01 14 23 04) フェイトの嫉妬がなんか可愛いw -- 名無しさん (2010-06-03 13 39 04) 仮面ライダーのくせに悪の組織の生活保護受けているところがクズ。その世界の人間に解決できる事に首突っ込んでいるとこがクズ(例えるならチンピラの喧嘩に仮面ライダーになって仲裁に入っているのようなもの)。創世王になったら宇宙規模を支配できる力を持つはずなのにそんな力で犯罪者だろうが危害加えたら死ぬだろうが、力のミリタリーバランス考えてないのがクズ。ウィキペディアで調べた程度の知識をひけらかしているところがクズ。 -- 名無しさん (2010-06-05 20 39 38) 光太郎て元の世界に彼女いなかったけ? -- 名無しさん (2010-06-06 12 01 38) ガールフレンドはいたな -- 名無しさん (2010-06-06 20 09 44) クロスなんだしいいんじゃない? -- 名無しさん (2010-06-06 21 28 56) クアットロが生きてた事に驚いた -- 名無しさん (2010-06-10 15 26 28) ギンガの口説き文句に吹いた -- 名無しさん (2010-06-13 12 40 50) いまだにフェイトが光太郎とくっついてることに納得逝かない -- 名無しさん (2010-06-16 11 09 49) なのはの仕業だ! -- 名無しさん (2010-06-16 22 41 16) さりげなくユーノもいたんだよね・・・ -- 名無しさん (2010-06-16 23 40 10) 久々にセッテの活躍が見れるかな -- 名無しさん (2010-06-19 21 00 21) nice boatしたら仮面ライダーじゃないよ -- 名無しさん (2010-06-23 20 52 46) そろそろ新作くるかな -- 名無しさん (2010-06-25 22 10 28) クアットロの動向が鍵になるか -- 名無しさん (2010-06-27 14 49 17) そういえば、最近戦闘シーンが無いな -- 名無しさん (2010-06-29 13 25 19) ヴィヴィオはどうやってアクロバッターに乗っていたんだ? -- 名無しさん (2010-07-01 20 50 16) 光太郎が人間体を見せるのは次の回くらいか -- 名無しさん (2010-07-02 14 52 37) ガジェットを殆ど持っていかれるスカリエッティw -- 名無しさん (2010-07-03 18 52 40) 遂に始まった最終決戦。光太郎vsヴィヴィオ、セッテvsクアットロに期待!! -- 名無しさん (2010-07-05 15 30 20) スカさんブロント語w -- 名無しさん (2010-07-06 10 08 38) スカよ、RXの無敵さを舐めてもらっては困る -- 名無しさん (2010-07-06 14 35 15) ギンガが攫われていないのは今後の展開に影響するのだろうか? -- 名無しさん (2010-07-08 17 22 04) RXが子供を見捨てられないと見て「倒そう」とするのではなく「足止め」とはドクターもやるなぁ -- 名無しさん (2010-07-08 20 47 18) 太陽のアルティメットワン、キングストーン、その時奇跡が(ry どうやって勝てと?クライシスがバナナを凍らせて殴って倒そうというヤケを起こす程ありとあらゆる作戦、謀略、罠を理不尽パワーで叩き潰した最強(笑)ライダーにどうやって勝てと!? -- 名無しさん (2010-07-09 16 56 07) キングストーンがチートすぎる。こりゃ勝てんわw -- 名無しさん (2010-07-10 13 21 28) 無敵すぎるから子供たちを切り捨てられないRX、叫ぶ暇も与えないとは… -- 名無しさん (2010-07-11 22 21 52) ……何回も人質取られた事あるから何を今更。つーかスカ、火に油注いでどうする。 -- 名無しさん (2010-07-11 23 23 35) シャドームーンは……出ませんよねぇ(本編で死んじゃったし)。スカリエッティからゴルゴムの名が出たのにはビックリ。いつ知ったんだ? -- 名無しさん (2010-07-13 03 40 05) ウーノもさっさとRX側に来ればいいのに。 -- 名無しさん (2010-07-14 21 36 49) 何時の時代、どこであろうとも、紳士はいるものなのですね(w)。 -- 名無しさん (2010-07-14 23 24 34) あれだ、スカが何故あんなに余裕しゃくしゃくなのは既に月のキングストーンを体内に埋めてあってだな。(ry -- 名無しさん (2010-07-15 12 13 30) 既にRXに入ってるからそれはない -- 名無しさん (2010-07-15 13 00 29) まさかディケイドに……!? -- 名無しさん (2010-07-15 14 24 18) やめろ!勝てるわけがない!あいつは伝説のチートライダーなんだぞ! -- 名無しさん (2010-07-16 15 43 31) スカが焦る顔が見れるかもしれない -- 名無しさん (2010-07-18 22 53 05) そろそろシャドームーンが使用した能力を使うに違いない -- 名無しさん (2010-07-18 23 24 31) こうなったらスカも変身だ!ゴルゴムかクライシスの超科学でガジェット怪人になるのだ! -- 名無しさん (2010-07-19 15 32 14) そしてリボルケインでクライシス皇帝の如くドカーン -- 名無しさん (2010-07-19 19 15 23) do-yatte勝つっちゅーんじゃ!もうサイヤ人かヴァンパイア十字界の赤バラくらいしか勝てねーだろRx!! -- 名無しさん (2010-07-19 21 40 29) 創世王になる前の能力しかほとんど使ってないから恐ろしい。あとサイヤ人って物理攻撃が主だから相性最悪じゃね? -- 名無しさん (2010-07-19 22 35 47) 面白いわ~。話の流れもオリジナリティがあって、続きが読みたくなるし。原作と同じ流れじゃこうはならないよ。 -- drhayate (2010-07-20 04 19 03) 逆にRXが敗北あるいはピンチになるとしたら、どんな状況なんだろ? -- 名無しさん (2010-07-21 14 09 20) ヘルガデムみたいにキングストーンに支障をきたさせれたりグランザイラスみたいに極端な強さ+倒したら街一つ破壊する爆発(爆弾)持ってる相手には苦戦するんじゃね?あとは人質や仲間に被害が及ぶ状況だと足止めになるだろうけどやりすぎると不思議なこt -- 名無しさん (2010-07-21 17 23 07) まあキングストーンは常に守られているしな、リボルケイン抜く一瞬だけ無防備になるけど、同じ攻撃は通用しないだろうなあ -- 名無しさん (2010-07-21 17 53 04) まだやってないですよね? ラストのリボルクラッシュに期待してます。 -- 名無しさん (2010-07-22 01 44 42) 別世界のヒーローも登場しそうだな -- 名無しさん (2010-07-24 12 44 27) 怪傑ズバットとか?「残念だが奇跡に関しちゃああんたは日本で2番目だ」 -- 名無しさん (2010-07-25 13 13 25) 先輩に間違われるぞw -- 名無しさん (2010-07-25 15 42 05) 平行世界からBLACK、ロボ、バイオ参上!最終的には先輩ライダー大集合!『RX!ガジェットは俺たちに任せてスカリエッティの野望を叩き潰せ!!』になる恐れがある! -- 名無しさん (2010-07-26 07 29 35) それはそれで見てみたい気もする。その場合、セッテは一番後輩に当たるのか -- 名無しさん (2010-07-26 13 23 47) スカさんは天才だな、RXと正攻法でやればSランクの魔導師や騎士が三桁いても足りんしねWW……いや、マジで。 -- 名無しさん (2010-07-27 13 15 38) そろそろ六課も戦闘に参加してほしい -- 名無しさん (2010-07-28 15 05 04) だれかロボライダーに炎をあげないと -- 名無しさん (2010-07-28 18 49 48) 正義の味方に対して人質は死亡フラグ又は覚醒フラグ、もしくは増援フラグだぞスカ。 -- 名無しさん (2010-07-28 20 54 35) 政宗「また不思議なことか?こっちはいつでもいけるぜ」 -- 名無しさん (2010-07-29 02 14 49) そろそろ新作くるころか? -- 名無しさん (2010-07-31 15 41 02) HELLSING リップバーン中尉の部下に言わせると、「何なんだ、お前はああああああああ!!!!」 -- 名無しさん (2010-08-01 17 45 16) 駄目だ。どう考えても処刑BGM「光の戦士」で爆発(当然RXはキメポーズ)しか思いつかない。 -- 名無しさん (2010-08-01 18 06 30) やっぱ、レジアスも死んでしまうのか?このSSのレジアスはそんなに嫌いではなかったのだが -- 名無しさん (2010-08-02 21 58 00) 釣り人に助言されるってネタわかる人いる? -- 名無しさん (2010-08-05 13 44 11) ↑光太郎的に石森先生? -- 名無しさん (2010-08-05 20 27 09) 新作キター。ホント、夢でよかったなw -- 名無しさん (2010-08-07 10 46 31) ロボライダーとバイオライダーが出てきたときはどうなることかと。夢で安心した -- 名無しさん (2010-08-07 14 43 39) しかしながらまだ先輩ライダーフラグが残ってるんだよね。 -- 名無しさん (2010-08-07 21 08 45) セッテが、ヴィヴィオを利用したことに怒っているのを見て、彼女も仮面ライダーだと改めて実感した -- 名無しさん (2010-08-08 17 57 15) もうあいつ一人でいいんじゃないかな吹いたwww夢で良かった。 -- 名無しさん (2010-08-09 10 02 11) ついにアルビーノ親子も参戦か。原作とは違う展開が面白い -- 名無しさん (2010-08-09 17 48 10) 仮面ライダーSPIRITSの時空魔方陣があれば、先輩ライダーが来れるか? -- 名無しさん (2010-08-11 22 13 34) SPRITSの連載終わったらBLACK編やってくれないかなぁ。 村岐画で光太郎が見たい。 -- 名無しさん (2010-08-13 08 05 29) ↑かっこよすぎて吹く自信があるぞ >但しRXは除く、ワロタwww -- ヒーヌ (2010-08-13 19 25 13) 石ノ森先生がBlack(BLACKではなく)の漫画なら書いたな。そのクロスSSもあったはず -- 名無しさん (2010-08-14 21 17 20) 石森御大のあの救いようの無いラストは未だに俺の中では神指定です。正義にも悪にもなれない仮面ライダーって一体……。 -- 名無しさん (2010-08-15 07 45 27) もうすぐ最終回も近いな。できれば、RXに出会ってからのスバルなどの外伝的なものを書いてもらいたい -- 名無しさん (2010-08-15 20 25 01) ルーテシアが登場したから、アギトも次くらいで出るか? -- 名無しさん (2010-08-17 20 51 26) キングストーンが第一話で「新たなゴルゴムを作るな」と言っていが、ここにきてそれが繁がったような気がする。 -- 名無しさん (2010-08-19 21 26 18) 言っていが→言っていたが、です。すみません -- 名無しさん (2010-08-19 21 34 29) セッテの変身したライダーってどんなスタイルなんだろう?何となくWで言う「トリガー・トリガー」みたいな感じかなと類推しているのだが。 -- 名無しさん (2010-08-22 14 45 19) スカが、初代仮面ライダーの原作のビッグマシンみたいになったら面白い -- 名無しさん (2010-08-23 21 32 18) もっと戦闘シーンをお願いします -- 名無しさん (2010-08-26 21 06 39) 真の黒幕がいそう -- 名無しさん (2010-08-28 19 40 44) ひょっとして、納谷悟朗さんの声の黒幕? -- 名無しさん (2010-08-28 21 44 04) このSS、村枝画で書いたらなのは達どんな顔になるんだろ -- 名無しさん (2010-09-01 21 46 11) そろそろ来るかな -- 名無しさん (2010-09-10 21 18 28) しかしスカ博士可愛いな、必死にRXに構ってもらおうとするとこが -- 名無しさん (2010-09-14 17 37 13) やっぱりこの小説面白いな -- 名無しさん (2010-09-29 21 52 20) なんというスーパースカリエッティタイム -- 名無しさん (2010-10-06 00 34 28) スカリエッティの考え方が現実的で面白いですね。 -- 名無しさん (2010-10-06 13 32 14) RXが現在空気から消し炭にジョブチェンジしつつあるが、さてどんな不思議なことが起こるやら -- 名無しさん (2010-10-06 21 32 29) 早くRXの活躍が見たい -- 名無しさん (2010-10-07 21 47 57) スカさんの言っていることはありそうだな……所詮、腐りきった組織だからもうどう仕様も無い、クズぶち殺すに限ります -- 暗黒星 (2010-10-07 23 18 02) セッテVSクアットロの戦いが見たい -- 名無しさん (2010-10-20 21 56 36) 新作が来るまで待ってます!! -- 名無しさん (2010-11-13 14 12 52) 光太郎をめぐる戦い(主に女達の)が面白いなw -- 名無しさん (2010-11-25 16 19 19) RXが半端なく空気(笑) -- 名無しさん (2010-12-17 22 41 23) 面白かったです。是非最新話を読みたいので頑張って下さい。ふと思ったのですがこのまま魔法を食らい続けていると、その時不思議な事が起こって「俺は魔法の力から生まれた魔導の王子! R! X!マギウスライダー!」という感じで新たな形態をgetしそうな気が…。 -- 志郎・アマダ (2011-01-04 21 39 25) 完結しましたか!お疲れ様です! -- 名無しさん (2011-02-03 10 08 32) ウーノ姉様一人勝ちですね!!わかりますw -- 名無しさん (2011-02-03 17 40 37) お疲れ様でした!光太郎×ウーノ大勝利か?!ヒャッホイ -- 名無しさん (2011-02-04 00 49 11) お疲れ様です!次回作に期待していますが、今はゆっくり休んでください。 -- 名無しさん (2011-02-04 20 25 00) これで完結なのはいいですけど、出来れば後日談をお願いします。 -- かのもの (2011-02-04 22 02 34) 完結おめでとう御座います!少々駆け足感も感じましたが概ね満足です。偉そうな意見で申し訳ないです。やはり戦闘のラストはリボルクラッシュだなと思いました。そういえば今年またオールライダーを上映するみたいですが、倉田さんはまた出演して下さるのでしょうか? -- 志郎・アマダ (2011-02-09 23 08 07) 完結、お疲れさまでした!素晴らしい作品でした! -- 名無しさん (2011-02-15 13 41 21) ブロント -- 名無しさん (2011-06-13 12 53 12) すまん、感想書こうとしたら妙な操作ミスした。上のコメはきにしないでくれ。 -- 名無しさん (2011-06-13 12 54 59) ウーノwwww -- 名無しさん (2014-12-07 23 31 52) ロボ「過去のお前がやられると未来の俺が困るからな!」 -- よっぺー (2016-04-21 12 39 57) 時々読み返したくなる -- 名無しさん (2017-10-01 00 31 30) 名前 コメント TOPページへ このページの先頭へ
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乾ききり、荒れた荒野を転がる光太郎を数条の熱線が追いかける。 光太郎が飛び去った地面を焼く熱線は、変身していない光太郎の体を容易く貫く威力がある。 その威力を光太郎は既に自身の身を持って体験していた。 だが二度に渡る戦いを潜り抜けた光太郎光太郎の表情は冷静だった。 スカリエッティの所に来た当初は簡単な能力チェックに過ぎなかった。 だが徐々にそれは実戦的な色合いを強めていった。 そのことを指摘する光太郎に、スカリエッティは『クライシス帝国の改造人間が何かの間違いで見つかってしまった時のために、実験に協力してほしい』 早々に光太郎の体を調べても無駄だと判断したスカリエッティは、指摘に対して逆に光太郎にそう頼んで来た。 光太郎は最初、それを断っていた。 未だに光太郎は、戦いで支払った犠牲の重さから立ち直ることが出来ていない。 それにスカリエッティが持ち出した理由は如何にも苦しく、スカリエッティの方も単に光太郎の力を見たいだけなのだと言う本心を隠そうとしなかった。 だが、ウーノ達を使い何度も頼み込んでこられると…光太郎は無碍に断る事が出来なかった。 そうして、光太郎はスカリエッティの実験に付き合うこととなり、開始してから数分が経過していた。 既に光太郎は負傷している。 実験開始直後に、反応が遅れ数本の熱線が光太郎の体を貫いていた。 まだ精神的に参ったままの光太郎は、体の動きまで鈍っていたのだ。 お陰で先日新調された光太郎の真っ白だったシャツは、無残な姿を晒している。 確実に改造されているのに、普通の人間と同じように擬態した血液が溢れ、シャツは赤黒く染まり、血を吸った砂が乾いて貼り付いて元の姿を取り戻すのは不可能であろう。 だが光太郎の心身は、一時的に本来の姿を取り戻そうとしていた。 髪と服に入り込む砂を零しながら光太郎は転がり、横に飛び土煙の中を走り抜けていく。 そうして、一度に放たれる数と次が放たれるまでの間隔を計るふりをする。 光太郎は視線を四方へ世話しなく動かしながら、迷っていた。 (このまま素直に協力していていいのか?) 機動兵器を排除する為に動き始めた光太郎の脳裏に、急にそんな考えが湧き上がっていた。 ただの建前に過ぎないが、グランシス帝国の改造人間が現れた時の為にデータが欲しいという事情は、光太郎にも分からないでもない。 という事は、この姿で戦って見せても彼らがクライシス帝国と戦う時に必要なデータは全く集まらないことになる。 むしろ、無い方がいい位だと言ってもいいだろう。 だが、自分から相手を裏切ることに罪悪感も感じても、それでも光太郎はまだ変身する気にはならなかった。 一見友好的ななスカリエッティが信用できない。 たかがそれだけのことが、変身をするかどうかの判断を決めかねさせていた。 その間にも機械兵器のアームケーブルが伸び、先端に付いたアンカーが風を切って襲い掛かってくる。 光太郎は、人間の姿のまま勝負を決めることを決断した。 倒すだけなら変身するまでもない…光太郎は機械兵器との距離を確実に詰め、唯一の武器である拳を突き出す。 改造される前に習い覚えた空手の突きは、熱線を放とうとしていた機体正面の黄色い、センサー状のパーツを貫き通す。 戸惑うことを知らぬ異世界の機械兵器は尚も反撃に転じた獲物を殺すべく射線を確保しようと移動していく。 それに応じて、光太郎も拳に貫かれ壊れかけた機械兵器を盾に動き回る。 光太郎はゆっくり二体目を撃破しにかかった。 …そんな光太郎を、検査の場合と同じくスカリエッティはモニター越しに観察していた。 「見たまえ、(初めて見る皆達の為に説明するが)彼が例の検査不可能なクライシス帝国の改造人間だ」 「ドクターでも無理だったんですか?」 「ああ、素晴らしい隠蔽技術だ。手を尽くしてみたが、困ったものだよ。まるで普通の人間のようだ」 困っているどころか実に楽しそうに言うスカリエッティに、複雑な顔でモニターを見つめていたチンクが尋ねた。 「ドクター、彼のスペックは?」 「君達よりは全体的に高めだが、それだけだな。ISもない…まぁこれだけのステルス能力はそれだけで価値があるがね」 何人かはそれを聞いて内心首を傾げた。 彼女らの目には、光太郎は彼女らの生みの親がわざわざ姉妹を集めて見物するほどの物ではないように映っていた。 浮かんだ疑問をウーノが口に出そうとした瞬間新たに一つ、大きな通信画面が開いた。 光太郎の映るモニターと同じく、砂埃の舞う荒野を背景にしてクアットロが顔を出す。 「えー? ドクター、みんな呼び出しておいてそれだけなんですかぁ~?」 話を聞いていたらしく、クアットロはおどけた仕草で口元を手で隠す。 彼女が愛用する伊達メガネのレンズが強い日差しを反射し、スカリエッティ達からはその表情は窺えなかった。 だが詰まらなさそうな言葉の端々でクアットロが嘲笑っているのは明白だった。 「キモッ!!、IS無しで許されるのは人造魔導師までよねぇー。ねぇチンクちゃん、あなたもそう思わない?」 嫌らしい笑みを手で隠したクアットロはガジェットの放つ熱線をかわし、距離を詰めて殴り壊す光太郎を嘲う。 ガジェットを素手で倒す程度の能力はあるようだが、異世界の改造人間である光太郎を彼女は見下していた。 ISもなくガジェットとの距離を詰め、的確にガジェットの急所を拳で貫き一機撃破するしかない光太郎を実に楽しそうに見ている。 「クロスレンジの能力は高い」 一つしかない目でその動きを眺めていたチンクは冷静な口調で姉に返事を返す。 返事を聞いたクアットロはチンクに含みのある笑みを一瞬向けた。 それに顔を顰め、チンクはナンバー3トーレへと目で意見を求める。 ナンバーズの実戦リーダーであるトーレは実戦経験も多く、光太郎の能力を正確に評価できる。 自分に同意してくれるはずと期待しての行為だったが、トーレは素っ気無い口調で「だがそれだけだな」と答えた。 身体能力で上回るものがあろうと、彼女らのISと比べられる程の物には彼女には見えなかった。 「皆、結論を急いではいけないな。次はもっと大量にだして見よう。どのくらいいけるか試して見ようじゃないか」 そう言って、スカリエッティは会話を止めると多数のガジェットを光太郎の側へ送り出す。 だがそれから…ガジェットと格闘を行う光太郎を見て10分もすると、スカリエッティの顔からは笑みが消えていた。 光太郎の戦い方は近接戦闘を行うナンバーズの参考にはなるかもしれないが、そんなもの見せられても研究者であるスカリエッティが面白いはずも無い。 数を増やし逃げ回るだけになっても、光太郎はどこからか武装を出すわけでもない。 光太郎の焦りの無さも気に入らなかった。 光太郎は傷を負っているが、そんな状況であってもスカリエッティの素人目にも動じた様子は微塵も感じられなかった。 「フム、期待はずれだったかな…」 スカリエッティの呟きが光太郎と彼の作り出したガジェットが生み出す騒音に紛れて消えた。 あの眼差し。 (ちょっと勘が鋭すぎるが)お人好しの間抜けな青年が向けてくる、スカリエッティ達を見るあの眼差しはモニターの中でも何ら変わりない。 その目の奥にある輝きも…あの、黒い瞳の奥で時折光る火花も変わりはない。 信頼するウーノにさえ言っていない(最もウーノはウーノ独自のスカリエッティ観察眼によって何か気付いているのかもしれないが)、 今はまだスカリエッティだけが気付いている閃光に、スカリエッティは科学者らしくもなく、何か神秘的で、とてつもなく危険なものを直感的に感じた。 それだけでなく、その直感を理由もなく信じていた。 スカリエッティがその火花に気付いたのは、光太郎の体を隅々まで検査し何もわからないでいる時だった。 光太郎の持つ雰囲気、その一挙手一投足。 光太郎の肉体が、素人はおろかスカリエッティの目にも普通の人間の細胞の一つ、血液の一滴にしか見えないサンプルが、何かを。 何かを、異端だが紛れも無い天才であるスカリエッティに訴えかけ、スカリエッティに何度も何度も見直させていた。 そんなある日、スカリエッティは検査を行った後光太郎に幾つかの質問を行った。その一つに答える光太郎と目が合った瞬間だった。 その瞬間、研究の為に訪れたある世界での体験で味わった感覚が去来した。 全く気象を気にせず出かけたせいで、偶然皆既日食を体験した時のような、言い表せない感情が稲妻となってスカリエッティの体を突き抜けたのだ。 光太郎は何か切り札を隠し持っている―スカリエッティはその感覚の原因をそう考えた。 だが今、実験開始直後は激しく燃えるきらめきに、わけもなく胸を躍らせていたスカリエッティはモニターを見上げて拍子抜けしていた。 日曜の朝テレビの前である番組が始まるのを待つ子供と大差ない気持ちで、古代ベルカの機械兵器を基に作り出したカプセル型の機械兵器と戦う光太郎を見始めただけに落胆は大きかった。 クライシスの改造人間達と同等以上の光太郎の戦闘データを得たいというのは事実だが、そんなのは、ただのつまらない作業だ。 機械兵器と対峙させれば、隠している何かを見られるのではないかと期待したからナンバーズを集めてみたが、これではただ泥臭いだけ。 必死に戦う様が美しいとか言う輩もいるらしいが、スカリエッティにそんな趣味は無かった。 ため息混じりにデータも大体取り終え、光太郎の肉体のスペックは計り終えたのを確認したスカリエッティは、今はどうすれば面白いデータが取れるか、この落胆が薄まるかを考え始める。 こんな下らないデータを得る為に無駄な時間を過ごしたのかと、多少苛立ちも沸いていた。 だが、この程度の危機では切り札を隠し通すつもりなのかもしれない…リスクはあるがスカリエッティは、破棄も止むなしと決定した。 「これ以上やらせても意味がない………」 計りながら作成していたスペック表をざっと眺め、彼は光太郎から少し離れた場所で待機している娘達を見る。 「ディエチ、君のイノーメスカノンで彼を狙撃してくれないか?」 「ドクターったらひっどぉーぃい!もう壊しちゃう気なんですかぁ!?」 頼んだディエチより先にクアットロが砂に塗れながら無邪気に笑う。 嗜虐心に輝いた目は、クアットロのいる場所から微かに見える小さな点へと向けられた。 「まだ巻き込むけど…?」 そしてモニターの枠の外で、砂に塗れながら待機していたナンバー10 ディエチの声が返ってきた。 念には念をと、スカリエッティの指示でクアットロと隠れていたディエチは、目の中に埋め込まれた機械を作動させ照準を合わせていた。 レーダーや電子システムさえも惑わすクアットロのIS、シルバーカーテンで姿を隠し光太郎の動きを観察していたディエチは消極的だった。 ロングヘアーを後ろで縛った頭を振り、髪の毛に入り込んだ砂を振り払う。 茶化すクアットロと平然と先日まで愛想良く会話をした相手を撃てと言うスカリエッティに、微かに表情が歪んでいた。 「構わないさ。それはそれでイノーメスカノンの良いデータになる。もういいからさっさと片付けてしまってくれ」 笑みを浮かべたスカリエッティは戦い続ける光太郎へと、表情とは裏腹に感情のない視線を送っていた。 そんなスカリエッティを見たディエチは即座に横に置いていた固有武装『イノーメスカノン』を手に取った。 大きな無反動砲のようなそれを抱え、狙撃体勢を作る間に微かに表情に出ていた不満はすっかりとなりを潜めていた。 だが、姉妹達の中でディエチと組むことが多いクアットロは、騙されている光太郎を狙撃することにディエチが納得していないことに気付き、「お馬鹿なディエチちゃん」と小さく零した。 幸いその呟きも、イノーメスカノンの駆動音に紛れてディエチの耳には入らなかった。 優秀な狙撃手であり、つい今しがたまでゆっくりと観察していたディエチには、相変わらず機械兵器群と格闘を繰り返す光太郎を狙撃することは容易いことだった。 クライシス帝国の怪人が流れ着いた時の為のデータ取りなんて適当な言葉に騙され、葬り去られようとする光太郎に同情が募るが…この距離なら、光太郎は何も気付かず気付いた時にはイノーメスカノンのエネルギー弾に潰されている。 それが不幸中の幸いかもしれないと彼女は考えた。 ディエチの先天固有技能『ヘヴィバレル』がディエチのエネルギーを変換していく。 そして精神を研ぎ澄まし、遠くに映る小さな的へと照準を合わせた彼女は、不意に光太郎と目が合った。 驚いたものの、ディエチは構わず引き金を引く。赤い光の束がイノーメスカノンから発射された。 狙い違わず、エネルギー弾は光太郎に着弾し、ガジェット達も巻き添えにして大きな爆発を起こす。 「ふふふ、証拠隠滅まで完了よね」 「…黙って。まだ生きてる」 ディエチは警戒を解かず、着弾点を睨みつける。 脳裏に自分をはっきりと見ていた光太郎の目が焼きつき、自分でも気付かぬ内に微かに青くなるディエチと、妹の臆病な態度に呆れるクアットロの視線の先で着弾地点の煙が晴れていく。 「あっらー…なんだかもっとキモくなってなぁ~い? ドクター、どうしましょうか?」 唖然としてクアットロが言う。 煙の中で光る感情の感じられぬ赤い目が、ディエチを見つめていた。 やがて…近くにいたガジェットを破片も残さず粉微塵にし、離れていたガジェットの破片が散らばる荒地に立ち上っていた煙の殆どが消える。 姿が完全に見えた。 『っクっクっクッ…はは、はははははははは!!』 スカリエッティの笑い声が響く。 煙が晴れた砂埃舞う大地に光太郎の姿は無い。 光太郎の立っていた場所には、光さえ飲み込むような黒い…バッタに似たフォルムを持つ長身の怪人が立っていた。 黒い体に深い緑色の腿と二の腕…そして、胸に刻まれた紋章「R……X?」男の全く損傷の無い四肢が微かに蠢き、残っていた煙が薙ぎ払われる。 煙が完全に晴れたお陰で、体中が煤け、着弾したらしい部分の色が微かに変化しているのが見えた。 だが、恐らくは損傷の為に色が変化したその部分も見る間に美しい緑色へ戻っていく。 あれ?っとディエチが自分の目を疑い瞬きをする。 だが何度瞬きをしても緑色の皮膚にはもう、傷一つ見当たらなかった。 『はははははははは! ウーノ! 光太郎に回線を開いてくれ。二人には聞こえないようにね』 自分に聞こえないようになどと言うスカリエッティにディエチは抗議したが、スカリエッティは鼻歌を歌いだしそうな上機嫌さで光太郎に通信を開いた。 画面に映った光太郎は、整った顔立ちをした青年ではなく…黒い肌赤く輝く昆虫そっくりの複眼が映った。 触覚もついているのを見て本格的だなと、スカリエッティがほぅ、と興味深げに呟いた。 『光太郎。新たな目標として試作機を出したんだが、見えるかい?』 『…見えないが、居場所はわかる』 満面の笑みのまま、スカリエッティはさも申し訳ないといった態度を装おうとして謝罪を口にした。 『あぁすまない…!どうやら暴走してしまったらしい。破壊してくれ』…ディエチには聞かせずに交わす言葉に、ナンバーズ達の表情も青褪める。 『……お前の作った戦闘機人じゃないのか』 『いやいや心配はいらない。人型だが、さっきまでの機械兵器と何も変わらないことは私が保証しよう』 チンクらと同じような存在ではないのかと気にする光太郎とそれでも問題ないと考えるスカリエッティ。 二人の視線が交差した。 『本当だな?』 『こんな嘘をつく必要などないだろう?』…スカリエッティは通信を切り、勢いよく白衣を翻して振り向いた。 『よし、これでRX?の攻撃データを得られるぞ。ウーノ準備はいいかね?』と彼は上機嫌に言った。 その間ずっとバッタ怪人は、ディエチを見ていた… 通信が切れたのと時を同じくして―ゆっくりと近づき始めていた怪人は、何も言わず走り出す。 ただ走っているだけのようだが、速度はそこいらの魔導師の飛行呪文や車よりも速い。土煙をあげながら、大きくなっていく標的からディエチは目を逸らした。 何も知らないディエチが慌ててスカリエッティに尋ねた。 「え? ド、ドクター…ど、どうするの!?」 『ん?…え?……ああ、! そうだね。近頃流行の管理局のエースオブエースを見習って、全力全壊というのはどうかな?』 スカリエッティ自身はやけに素早い赤い複眼の怪人に迫られて無いからか、ディエチの耳にはドクターの声は寧ろ先程までより楽しそうに聞こえた。 だが彼女らにはそれまで、スカリエッティの言動に疑念を持ったりすることもなければ、反対することもなかった。 彼女は素直に大砲を構えなおした。 長距離から狙撃を行ったお陰で、チャージする時間はある…しかし、距離を詰めてくるバッタ怪人から受ける本能的な恐怖にディエチの精神力は減衰していた。 そんなディエチに生理的に受け付けないのか、視線を逸らしたクアットロが言う。 「ディエチちゃん、急がないと取って食べられちゃうわよぉ。ドクターの仰るとおり、全力全開でさっさと壊しちゃいましょう?」 「う、うん」 スカリエッティの命令と嫌悪感たっぷりのクアットロの声に背中を押されたディエチは素直に照準を合わせ、もう一度引き金を引く。 着弾…だが、だがすぐにバッタ男は煙の中から無傷で出てきた。 いやよく見ると、着弾した部分が煤けているしどことなく怒っているような気がした。 二度目の砲撃で二人の位置を掴んだのかその足は真っ直ぐディエチへと向かっていた。 「ちょ、ちょっとドクター!? これって本当にAランク並の威力出てるんですかぁ!?」 ヒステリックに叫ぶ姉に、生みの親は安全な場所で小躍りしながら視線を向けようともしなかった。 「うん、それは間違い『勿論それは間違いない。改良の余地はあるが測定データもちゃんとそれに見合う値を示しているよ。ほぅ…先ほどよりもダメージは少ないようだが、もしかしてもう耐久力が増したのかな? ウーノ、データは取っているだろうね』 『勿論ですわ』 迫ってくるバッタ男を見た瞬間から恐怖に駆られていたディエチは、暢気な創造主達の会話を聞いてイノーメスカノンを投げ捨てた。 一番上の姉の口調がどこか得意げだったのが腹立たしかったが、そんな余裕はディエチにはなかった。 迫り来る得体の知れない存在への恐怖が、スカリエッティに作り出された彼女の体を支配し、飛行能力のないディエチは飛行能力を持つクアットロの体へとしがみ付いた。 『二人とも逃げろ! 姉が行くまでなんとか生き延びるんだ!』 我に返った姉の一人が何か叫んでいるのが耳に届き、クアットロの体が宙に浮いた。 『おお、! 足も速い…皆、ここを見てくれ。時速にして約300にまで到達したぞ』 大砲を捨て、その場を放棄したディエチは姉に言われるまでも無く全速力で走り出していた。 だが、バッタ男はもっと速く…二人の移動に気付いたのか鮮血の色に光る複眼が、空へと舞い上がった二人に向けられていた。 「ド、ドクター!? 助けてくださいッ!!」 『フフフ、いいぞ!! 面白くなってきた。これならいくら調べても中身がわからないのも頷ける…映像から再度データを検証しなおそうじゃないか!』 二人がスカリエッティの笑い声に絶望し、バッタ男が追いついた瞬間…バッタ男の前に通信画面が開いた。 『待ってくれ光太郎! すまない、今のはちょっとしたドクターの悪ふざけなんだ』 モニターに映っているのはチンクだった。 その背後に腹を押さえて、くの字になって床に転がるスカリエッティと、介抱するウーノの姿が見えたが誰も気にしなかった。 「ふざけるなッ、変身してなかったら怪我じゃすまないところだったぞ!」 スカリエッティや世話役のチンクも初めて聞く怒声に、妹思いなナンバーズから一撃食らって床に転がっていたスカリエッティは満面の笑みで光太郎を見上げた。 『変『悪かった。それについては謝ろう、本当にすまない…ドクター、貴方からも謝ってください』 『あぁそうだね、すまない。君の反射神経もチェックしたくてね。だからせめて弱い設定にしておいたんだが、必要なかったかな? 君のその姿について教えておいてくれれば、他のやり方もあったんだけどねぇ…?』 好奇心に胸を満たされ、恐怖や相手に対する配慮などどこかに置き忘れてしまった創造主を見てナンバーズ達は皆「これが無ければ…」と零した。 ディエチも思わず、「光太郎さん、嘘です。信じちゃダメです。」と目で訴えかけた程だ。 だが当の光太郎は、「全く、もう少し考えてくれ」と不満を零すだけだった。 迎えをやる。 そういわれた光太郎達は、多少気まずい空気を残しながら、砂塵の舞う荒野に暫く残されることになった。 光太郎は何も言わず、変身を解くこともない。 自分が襲いかかろうとしていた二人から目を放し、照りつける太陽と雲ひとつ見えない空を見つめていた。 空の色は緑がかっていて、ここが地球ではないことを光太郎に突きつけていた。 光太郎は気にしていない風を装おうとしながら、内心冷や汗をかいていた。 嫌な予感は消えてはいない。 裏づけとなる客観的な理由はないが、スカリエッティに変身した姿を晒したのは間違いだったのではないか…と感じている。 だが実際、生身なら今の砲撃は耐えられなかった。 変身させられたせいでこの姿のデータも奴は取りたがるだろう。 協力することは約束したのだから、最初から見せるのが筋だったのだろう。 だが…嫌な予感がする。 それに以前の光太郎なら、もっとダメージを追っていたのではないかと思う。 狙われている事に気付きそのエネルギー弾がかなりの高エネルギーである事を察知した時、"不思議なこと"が起こったのかもしれない。 以前はもっともっと追い詰められなければ、こんなことはなかった。 (俺の体は、魔法に対して神経質になっているのか?) 胸に浮かんだその考えは、スカリエッティへの追求を弱めていた。 (それに撃たれる直前…スカリエッティ達の声が聞こえたような?) 念話の存在を知らない光太郎は不思議がりながら宙へ浮かぶ二人の足元へと向かっていく。 二人を光太郎が殺そうとしているに気にも留めないとは、光太郎は考えなかった。 ここに連れてこられた時のように、転送魔法によってスカリエッティの研究所へと戻るなら二人と一緒にだろうと近寄ってきた光太郎に…悲鳴が上がった。 宙に浮かぶクアットロは黒い物体を発見したかのように頬を引きつらせて離れていく。 それに気付いた光太郎は無言で足を止める。 RXの姿になっているせいだとはわかったが、新調した服は駄目になってしまった光太郎は変身を解除することもできない。 迎えを待つ間、三人の間にはより気まずい空気が流れていた。 前へ 目次へ 次へ
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リリカルなのはディバインウォーズ クロス元:スーパーロボット大戦ディバインウォーズ ~PROLOGUE~ TOPページへ このページの先頭へ
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常に頭を悩ませる諸問題のせいで深く皺が刻まれた顔。 長い年月に頑なになった目に赤い光が映っていた。 非常灯だけが点灯する廊下に幽鬼のように現れたマスクド・ライダー… 最も早くその怪人の存在に気付き、取り上げた雑誌の記者がつけた呼び名で少しずつ民衆の間で親しまれるようになった怪人の足元に、また犯罪者が転がされていた。 帰宅間際、人気の失せた地上本部で日課の筋肉トレーニングを済ませたレジアスの口元に微かに笑みが浮かんだ。 日が没しても中々下がらない暑さのせいで額に浮かぶ汗をハンカチで拭き、レジアスは怪人に言う。 「良くやった。後のことはワシに任せてもらおう」 凶悪な犯罪者を逮捕できたことを素直に喜びながら、怪人の甲冑の如き皮膚下にある無駄のない肉付きやちょっとした動きを冷静に観察する。 怪人は何も言わずに佇んでいる。仮面に遮られ、怪人が何を思っているのかを窺い知ることは何人にも出来ぬように思われた。 薄く笑みを浮かべたレジアスがゆっくりと歩み寄り、二人の距離は狭まっていく。 地上本部の数多くの実権を握り、多大な影響力を行使できる事実上の地上本部総司令であるレジアスと怪人との関係は突然生まれた。 今日と同じく、怪人は突然現れ自分で捕らえた犯罪者をレジアスに引き渡して去っていった。 何故かと引き渡された犯罪者を牢にぶち込みながらレジアスは頭を捻った。 今のように犯罪者を引き渡してくるのだが、その理由は皆目検討が付かない。 その上素性もわからない。 目的も。名前もだ。どんな音楽を聞くのか。筋肉についてどう考えるかも知らない。 昆虫を模した姿は恐ろしく、怪人が犯罪者を捕らえた場所は壊滅させられていることを考えれば、レジアスが体一つで対面するのは危険な存在だ。 相手のことは全くわからず、今もこうして地上本部の警備を潜り抜けて姿を現した。 入局以来30年近くに渡って盟友と一位を争い続けたナチュラルビルダーだったが、最近は贅肉がついてしまった上に魔力を全く持たないレジアスなど瞬きをする間に殺してしまえるのだ。 警戒して当然の存在だった。 だが、レジアスはこの怪人に対していつのまにか好意を持つようになっていた。 地上本部の戦力増強の為にレジアスが裏では犯罪者に兵器開発を依頼しているからではない。 何度目だったか、怪人が犯罪者を連れてきた夜…その日に限ってゆっくりと去ろうとする怪人のしぐさに、何の感情も見せない飛蝗の仮面が切なげに見えた。 冷静に考えればそれは恐らく偶然合わさった角度や、灯りの加減のせいであろうとは思うのだが、レジアスの中にあった怪人に対する疑念は不思議と消え去っていた。 普段のレジアスを知る者達が聞けば耳を疑うような話。 レジアス自身でさえそれには同意するのだが、腹には一物もない。 己の過失から失ってしまった部下であり友人だった男に向けていた感情に似た気持ちが沸いていた。 「だがマスクド・ライダー。貴様のやっていることは犯罪だ」 レジアスは鼻息荒く言い放つ。 例え怪人に襲われるのが犯罪者だけだったとしても、好感を持っていようとも地上本部は怪人を捨て置くわけにはいかなかった。 「地上の治安を守るのは、ワシら管理局の責務だ。貴様のようなならず者の仕事ではないわ!」 怪人がやっていることは法に照らし合わせれば犯罪となる部分が多数存在する。 その上、犯罪者達は、この怪人を警戒して有能な魔導師や武器を集めていくことだろう。 もしその影響で犯罪者達が武力を増したとしたら、地上本部の戦力で対抗できるのかは甚だ疑問だ。 レジアスは手を打つであろうし、何より今建設中の「アインヘリアル」と呼ばれる地上防衛兵器があればどうとでもなるかもしれない。 しかし怪人の力に更に頼るしかなくなるやもしれない… 怪人が心変わりをして犯罪を起こさないことを祈り、いや…この怪人はいい奴だから心変わりして犯罪者となるはずがない、などと楽観的な考えを持つわけにはいかないのだ。 怪人は何も答えなかった。 視線を避けるようにレジアスよりも遥かに上にある顔を伏せて犯罪者を置き去りに背中を向けようとする。 「マスクド・ライダー…! ワシの部下になれ」 怪人は足を止めた。触覚を揺らしながら肩越しに振り返り、レジアスに爛々と光る複眼を向ける。 「犯罪者が司法取引を行った後管理局で働いている例は少なくない。そうして自らの派閥を強めるというのもよくある話だ」 返答はないがレジアスはそれを気にする風もなく、拳を握りしめてより自信に満ちた力強い口調で語りかけた。 「ミッドチルダ地上の平和を守るには、陸には…! お前の力が必要なのだ。破格の待遇で地上本部に迎え入れると約束する」 予め用意しておいたカードを出しながらレジアスは言った。 カードの使用場所から怪人の生活圏を割り出す目的で用意されたそのカードには、これまで怪人が捕まえた犯罪者達に見合う報酬が振り込まれている。 金額には一切嘘はない、むしろレジアスの要望で色が付けられている。 目的は目的として、レジアスにしてみれば怪人が受け取るべき正当な報酬だったからだ。 「…断る。俺は管理局が信用できない」 怪人は受け取ろうともせずに乾いた金属質の声で返事をした。傷ついたような表情を一瞬だけ見せてレジアスは尚も熱心に言い募った。 地上本部から魔導師・人材の引き抜きが日常茶飯事に行われ、地上の戦力が揃わない現状を強く訴えた。 「確かに管理局にも黒い噂は事欠かん…ワシ自身の手も汚れておらんとは言わぬ。だが、」 「すまない。言いたいことはわかるが、それでもまだ俺は…」 首を振り、口を濁す怪人は何かに迷っているようにも見える。 静まっていく彼らの間に、レジアスが強く噛み締めた歯がギシリ、と鳴る音がやけに大きく響いた。 「断れば…ワシはいずれ貴様を指名手配する。しなければならん! そう言ってもか!」 「わかっている。それでもだ」 レジアスは険しい表情の中に、苦いものを含ませた。 微かな変化に気付いたのか怪人はそそくさとレジアスの前から立ち去っていく。 「強情な奴め。そこを、曲げてはくれんのか………」 背を向けた怪人にレジアスは苦みきった声でそう言った。 今の状態。怪人が自由意思で犯罪者を捕らえている状態ならば、本局から引き抜かれる心配はない。 盟友であったゼスト・グランガイツとその部下達のような有能かつ本局からの誘惑に耐え切れる者などそうはいないのだ。 そういう意味では、怪人に断られたことは許せないことではないという気持ちも沸いているが、そう考える以上に…レジアスにとっては残念だった。鍛え抜かれた大胸筋が咽び泣いている。 * レジアスに勧誘されても光太郎はそんなことがあったなどとは全く感じられない、至って普段どおりの生活を営もうとしていた。 少なくとも同居しているウーノの目にはそう映っていた。 ドレスシャツと夏向けの薄い生地のジーンズを着たウーノの姿に少し困ったような顔をし、外出の用意をする光太郎の姿を見ていたウーノは初夏を迎え、眩しすぎる程の日差しに目を細めながら外へ出る。 困り顔をしているのはスカリエッティの所にいた頃に作ったウーノの体にフィットするドレスシャツに気付いたのかとも思われたが、視線の先を見るにどうも違うらしい。 どうやら光太郎は屈みこむとお尻や種類によっては下着が見えてしまうローライズのジーンズがお気に召さないようだった。 暑い日差しに目を細める彼女に続き、光太郎も家から出てくる。 ウーノの服装を見る光太郎の視線と同じように、ウーノも光太郎の服装を見てもの言いた気な眼差しを向けた。 光太郎もウーノと同じ色のジーンズを履いている。こちらにはオレンジ色の糸を使ったステッチが入っていた。 スタイル等が良く丈も合っており良く似合っているが、何故わざわざそんな安物を着たがるのかウーノには理解しづらかった。 低家賃のアパートに住んでいるとは思えない安くない生地と職人の技術で作られたスーツを何着も持っていたのだが、光太郎のたっての願いで何着かは売却してわざわざ購入したという経緯も心象を悪くしていた。 歩き出した二人は今日の予定やレジアスの勧誘があったという大きなニュースに紛れて話そびれた他愛ない出来事を報告しあいながら細い道から、多少大きな道路に面した道へと出た。 二人はそこで別れ、ウーノは一人街の中央へと向かっていった。 同居人が暑さに少し参っているのに気付いた光太郎の申し出もあって、彼女は今日一日は休むことになっていた。 働く人々を尻目に一日暇になったウーノは一軒のカフェへと立ち寄った。 古い建物を改修した店内に客は少なく天井近くの壁に付けられたテレビに流れるニュース番組で凶悪な事件を読み上げる声だけが響いていた。 奥のテーブルに着いた女性がウーノに手を振る。 それに気付き、微かに相好を崩したウーノが手を振った女と可愛らしいワンピースを着た少女のいるテーブルに寄っていく。 ウーノは店員に熱いコーヒーとミルクが半々のカフェ・オ・レを、砂糖大目で注文すると、普段のボディスーツの変わりに可愛らしい服を着てきた妹を褒めた。 負傷した片目を無骨な眼帯で覆った妹は今はウーノの代わりにスカリエッティの世話の大半をしているはずだった。 「ウーノと比べられて困っているよ」 久しぶりに再会した妹、チンクは彼女らしからぬ微かな疲れを見せてそう零した。 聞く所によるとウーノが突然いなくなり仕舞っていた必要な道具や研究材料、未整理のデータから調味料の位置までわからなくなり大変らしい。 その上料理の味が違ったりスカリエッティの言外の要望まで汲み取れずにしかめっ面をされることもよくあると語り、沈痛な表情でケーキを口に運ぶチンクに二人は苦笑いをした。 そこへ店員が注文したカフェ・オ・レを運んでくる。 置かれた持ち手のないカップを手に取りウーノが口をつける間に、入店した際に手を振った女性がうなだれるチンクにしみじみとした口調で同情して見せた。 姿形は二人と全く似ていないが彼女も二人の姉妹でスカリエッティのことはよく知っていた。 ウーノ、トーレに並んで古い稼動暦を持ち彼女は固有技能「偽りの仮面」と名づけられた変身能力で潜入諜報活動をしている彼女はその任務上気苦労を強いられているのかいやに説得力のある優しい声だった。 一しきりチンクを慰めた彼女は、今度はウーノに目を向けた。 「ドゥーエ、気持ちは嬉しいけど私に慰めは必要ないわ」 「フフ、旦那が仕事をしなくて困ってるんじゃなかったかしら」 彼女が教育を担当しクアットロにも引き継がせたスカリエッティそっくりの軽薄な笑みを浮かべるドゥーエ。 先日までは同じ笑みを浮かべることも多かったはずだが苛立った声でウーノは返事を返した。 「ドクターの邪魔になりそうな相手は片付けてくれるし、私の分で暮らしていくには十分よ」 「ウーノ、それってなんだか駄目亭主に聞こえるんだけど…ドクターに利用されてるとも知らないで」 「分かっているから性質が悪いわ」 微かに沈んだ声を出すウーノをドゥーエは興味深そうに見る。 研究所にいた頃は世話役だったチンクも気遣わしげな視線を姉に向けている。 今のウーノと光太郎の状況はほぼ完全にスカリエッティの耳に届いている。 そのため他の姉妹と一緒にウーノがいなくなってできた穴を埋めているチンクも凡その事情は掴んでいた。 気を取り直すようにウーノはまたカップに口をつけた。 「それと、彼は夫じゃないわ」 「え? 嘘でしょ」 ドゥーエは酷く驚いたように目を見開いた。 その反応にウーノは気分を害して自然とカップを持つ手に力が篭っていった。 ドゥーエは機嫌を損ねたことが分かってもなお信じられないといった風にチンクの顔とウーノの顔を交互に見つめる。 「そのコウタローってゲイ? 健全な男性って聞いてたからてっきり妹達にはとても言えないような…」 「ドゥーエ! い、幾らなんでも二人に失礼だぞ!」 若干顔を赤くしたチンクがテーブルを叩く。 そうしてやっとウーノの言葉を信じたのか、困ったように眉を寄せて腰掛けた椅子を軋ませながら、背もたれに倒れこんだ。 「ん………」 微かに吐息を零して頬を片手で撫でるドゥーエは、スカリエッティそっくりの笑みを浮かべるとウーノに軽く流し目を送った。 「困ったわね。ドクターは期待してるみたいだったけど」 「ドクターが?」 「貴方とコウタローが信頼関係を築けるのか。そっちの機能はどうなのか。子供が出来るのか。どんな子供が生まれるのか」 クククでもフフフでも構わないが、満面の笑みを浮かべたスカリエッティがそう言っている姿を幻視したウーノとチンクの表情が引きつった。 全身改造を受けた改造人間である光太郎がそんな機能まで備えているかどうか。 人間の姿、RX、ロボライダー…彼女らの想像を超える変身を遂げる光太郎をどちらと断言することは彼女らには出来なかった。 ナンバーズにそんな機能まで備わっているということ自体初耳ということもあったが…何よりスカリエッティならば、その為に自分達が知らぬ間に何らかの改造を行っていても何らおかしくはなかった。 スカリエッティの計画の中には、スカリエッティが万が一捕らえられた場合の措置として極小サイズのカプセルに収められたスカリエッティのクローンとなる「種」を簡易な外科的処置で埋め込む事も含まれている。 これによりある技術を応用して体内に仕込まれているスカリエッティのクローンが約一ヶ月で記憶を受け継ぎ新たなスカリエッティとして産まれてくる。 遠い昔、旧暦時代の権力者の間では常識とされた準備だが、期間的にそれは全く別の手段だと考えていた。 これについてはスカリエッティや危機に陥る度に『不思議なことが起きる』光太郎自身も本当の所は分からないのかもしれない。 スカリエッティがどんな結果が出るにせよそれを実験する為のリスクを負う決定をしたのは間違いないようだが。 「ドゥーエ、私はそんな話初耳だぞ」 「? クアットロから聞いた話ですもの。ほら、彼の基本的な能力も計りきれてなかったでしょう? だからその辺りは全く分かってないんですって」 厳しい表情で言うチンクに、何を怒っているのか分からないとでも言うようにドゥーエは笑ったまま返事をした。 ウーノは目を細めて何も言わなかった。 他の誰かがクアットロから…と言ったなら信憑性は薄まるが、クアットロは教育役を務めたドゥーエを半ば心酔している。 ドゥーエの口から出たクアットロから…という言葉はほぼ確実と言ってもよかった。 「貴方が無理なら私でもいいけれど…もう切欠は作ってあるし」 「……というと?」 掠れた声で尋ねるウーノにドゥーエは悪戯を成功させた子供のように得意げに言う。 「マスクド・ライダーって何度か強姦魔から女性を助けてるんだけど、フフ。その一人が私だし…彼のバイト先のお得意様でもあるわ。首にしないよう彼に分かるように手を回してあげたしね」 とても感謝されたわよと言うドゥーエをウーノとチンクは敵に向けるような目を向ける。 でも、とドゥーエは二人の視線など気にせずにどこか芝居がかった、媚るような動きで自分を抱きしめた。 「余り興奮させると砕かれてしまいそうだし、もっと肉体増強された妹達に任せた方がいいかしら。二人はどう思う?」 彼女の肉体増強レベルは姉妹の中ではそう高い方ではなかった。 常人よりは遥かに強靭だったが、トーレや今後増えていく姉妹達に比べれば劣っている。 何時変身するとも分からない光太郎の相手をするにはリスクが高すぎるとドゥーエは考えていた。 「駄目に決まってるでしょう。仮にうまくいっても、貴方の体にどんな影響があるかわかったものじゃないわ」 ウーノとしては光太郎の耳に入っていないことを祈るばかりだ。 この話を聞いて激怒する光太郎の顔を思い浮かべウーノはげんなりした。 不愉快気にそう言われ、ドゥーエは居住いを正して二人に別の話題を振る。 それぞれに不満を零したり興味のある話題について話し合った彼女らが分かれたのはそれから数時間後のことだった。 * ナンバーズ達の間で交わされる会話に一時自分が上がった事など知る由もない光太郎はバイトを早々に終えて廃棄都市区画をアクロバッターに駆って移動していた。 相変わらず決まった仕事がなく、真っ当な人々より犯罪者の方が言葉を交わした人数が多くなった光太郎は時折複数ある廃棄都市の様子を少しでも感じ取ろうとしていた。 首都とその近郊にある7つの廃棄都市はどれも酷い有様だが、それでも少なからず人の気配があることを光太郎の超感覚は察知していた。 わざと大きな音を立てて走らせアクロバッターが撒き散らす騒音に怯える犯罪者達も現れだしていた。 強盗するために入った店から慌てて出て行く強盗犯。 金品を巻き上げようとしていた手から杖を落として逃げ出す魔導師。 怪しげな取引現場で息を潜め、過ぎ去ったと思った瞬間に降り注ぐ瓦礫の飛礫に大怪我を負って仲間か管理局の救援を待つ悪党共。 都市の状況はどこもさほど違いはなかった。違うのは廃棄都市に限っては、一見静かな地区ほど内に秘めた闇は危険だということだ。 平穏に見える区画は耳を澄ますと悲鳴が聞こえてくる時があった。 その日もまた、RXへと変身した光太郎は不意にアクロバッターを停止させた。 誰かが呼ぶ声がした。 空気を振るわせた音ではない。 進化を続ける肉体の新しい力に光太郎は気付こうとしていた。 生命の気配を感じ、聞こえないはずの叫びに気付こうとしていた。 爛々と赤い光を宿す二つの複眼を。 その間にある第三の目とも言うべきセンサーを。 RXは廃ビルや崩れた建材が転がる道へと向ける。 始めは気のせいだと思っていた。 だが先日、スカリエッティの所にいたウーノ達のような少女らが生み出されようとしているのに光太郎は気付き…不完全な命を消し去っていた。 それを思い出して、不必要に強く握り締めた黒い拳が地面へと振り下ろされた。 RXパンチが廃棄都市に微かな振動を起こす。 舗装された道路や地下道をぶち抜き、光太郎は地下に築かれた空間へと降りていった。 一見真っ黒なブーツにも見える極小の鉤爪を備えた足先が研究施設の床を音もなく踏みしめる。 瓦礫を床にばら撒き、施設に損傷を与えながら現れた怪人に驚き、白衣を着た男達が様々な反応を見せている。 白衣を着た者達の奥に光太郎は巨大なガラスケースが複数確認できた。そこに浮かぶ小さな女児も、見つけた。 恐らくは一歳前後の赤子の瞼が薄く開く。 左右で目の色が違う女児が意志の見えない目でRXを見た。 光太郎が聞いた声はその子や周りに並ぶケースから聞こえていた。 夜闇のような男達も、研究施設も一切合財を飲み込んでしまいそうな黒に染まる怪人が握りしめた拳が音を立てる。 複眼に写る彼らの引きつった表情。冷静に助けを、警備員を呼ぶ姿やそれに安堵して研究を再開しようとする姿。 誰かの意思によって非合法な研究を行う為に作られた施設。ケースの中に浮かぶ女児や、失敗作と見なされた者達。 女児の隣のケースに浮かぶ見覚えのある宝石。ロストロギア『レリック』…全てが昆虫の物を模した真っ赤な複眼に映っていた。 映りこんだそれらが、四肢を動かす熱量を生み出す燃料として蓄えられ(記憶され)ていく。 静かに光太郎は告げた。 「例え貴様等が誰かを救うために研究を行っていたとしても、その子達を苦しめる貴様等を俺は許さん…!」 散発的な魔法や防衛施設が動き出していた。 背中に魔法の砲撃が当たっているが、光太郎は歯牙にもかけなかった。 以前より更に進化していた体の表面を魔法が流れていく。水滴が弾かれるようにRXの体表に弾かれた魔法が施設を傷つけ、流れた光の一滴が研究者を巻き添えにする。 一瞬毎に恐慌に陥っていく彼らを光太郎は一人残らず制圧していった。 「生きられるのは、この子だけなのか…」 科学者達、警備員を悉く倒し、飛蝗怪人の姿をトラウマとして残しながら意識を刈り取られた彼らを入ってきた穴から放り出した光太郎はロボライダーへと姿を変えて呟いた。 ロボライダーのハイパーリンクを用いて研究内容を吸収した光太郎は女児をケースから出し、レリックとを抱える。 初めて水槽から出され、自分を見つめる女児を抱き上げた光太郎も自分が開けた穴から出ようと上を見上げる。 大穴から降り注ぐ日の光がスポットライトのように光太郎を照らし黒光る怪人の姿に、女児は瞬きをした。 光太郎はそれに気付いて微かに笑う。だがその脳裏に、突如稲妻が走った。 一度そのレリックの爆発に巻き込まれた光太郎はレリックについてウーノに尋ねていた。 レリックは高エネルギーを帯びる『超高エネルギー結晶体』でその為外部から大きな魔力を受けると爆発する恐れがあると… 『超高エネルギー結晶体』…自分の腹部に埋め込まれたキングストーンが思い浮かんだ。 手に掴んだ『レリック』、詳しくは残されていなかったが何かの計画の為にレリックに合わせて生み出された子供… 「信彦…」 愚かな考えだと光太郎は頭を振った。 重ねてしまうのは信彦を犠牲にしたことに負い目を持つ自分の悪い癖なのだと。 ボルテックシューターを二、三度放ち、RXの姿へと戻った光太郎は高く跳んだ。 ロボライダーからRXに姿が戻っていくのを少女は不思議そうに見ていた。もう助からない不完全な生命を飲み込み、施設が破壊されていく。 光太郎の呟きが聞こえたのか、赤子が小さく声をあげた。 「俺は仮面ライダーBlackRX…安心してくれ」 「…?」 言葉が通じないことは分かっていたが、上昇が止まり一瞬だけ浮遊感に包まれながら光太郎は女児を見つめて言った。 「俺は味方だ」 いや…信彦の、自分の為に光太郎は何も分からない赤子に向かってそう言わずにはおれなかった。 自分で開けた穴から飛び出した光太郎は放り出した男達の白衣を奪い取り女児を包んだ。 本当ならもっとちゃんとした、柔らかい布で包んでやりたかったがそんな用意はない。出来れば早くちゃんとした施設に連れて行ってやりたいと思った。 そして意識を失い死屍累々と転がる科学者達の向こう側に眼を向け、庇うように、体をずらす。 「セインか。今度は何の用だ?」 「む。またばれちゃいました?」 光太郎に指摘され五メートルほど離れた地面から、戦闘機人の少女が顔を出す。 どこから嗅ぎ付けているのか、光太郎の動きは未だにスカリエッティに筒抜けであるらしい。 それが光太郎を少し苛立たせる。 水色の髪をセミロングにした戦闘機人の少女は愛想笑いを浮かべながら転がる科学者達に同情するような視線を向けた。 死んでるわけではないが、彼らの体験を思うと同情せずにはいられなかった。 「何の用だ?」 「ドクターのお使いです。光太郎さん、その子私達に預けてもらえません?」 セインは、光太郎が抱える少女をチラッと見る。 「その子の面倒私らならちゃんと見れますからね。私達と同じようなもんですから」 「…君達はいいところもあるな」 光太郎は抱えた子供とレリックを見る。 「普通ですよ。で、返事を聞かせて貰えます?」 光太郎から言われたのが意外だったのか、少し照れたように言うセインには任せても大丈夫かもしれない。 だが、スカリエッティがこの赤子をまっとうに育てるとは全く思えなかった。 「断る。お前達こそ抜け出さないか?」 「せめて自分の身分証くらい持ってから言わないと説得力ないですよ?」 軽く苦笑して言うセインは指摘を受けて乾いた笑い声をあげる光太郎から視線を逸らし、まだ気絶している白衣の男達を見てげんなりした顔で視線を戻した。 「あれでも私達にとっては創造主ですし、姉妹達のこともあります。軽々しく裏切れないですよ」 「そんなつもりじゃないんだが。すまない…!?」 光太郎は何かに気づいて顔をあげた。 きょとんとするセインに低い声で言う。 「セイン、今日はもう引くんだ。誰かこっちに飛んでくる。今まで会った魔導師では一番早い」 どう受け取ったかはわからないが、セインは地面に沈んでいく。 セインの身を案じての発言ではなかった。 既に地上本部の長であるレジアスに犯罪者として追うと告げられている自分だ。 抱えている赤子のことを考えれば、話をこじらせる可能性のあるセインは邪魔だった。 光太郎はセインが去ったことを確認しようともせず、接近してくる金色の頭を見上げていた。 腕の中の赤子よりはずっと年上だが、まだ若い。 いいとこ高校生か中学生位の可愛らしい少女だった。 堅い表情をしている。目や、無骨な杖を構える姿は勇ましい。 可愛らしいというよりは美人という言葉が似合いそうな容姿をしていたが、金色を見て光太郎の脳裏に浮かぶのはクライシス帝国の最強怪人ジャークミドラ。 あれに比べれば、光太郎と光太郎が開けた穴の周りに転がる白衣の男達を見て警戒した少女に金色の刃を出し巨大な鎌になった杖を向けられてもなお、光太郎の目には微笑ましく映った。 「時空管理局執務官フェイト・T ・ハラオウンです。マスクド・ライダー、貴方に幾つか質問があります。ゆっくり、その女の子を下ろして武装を解除して手を挙げてください」 「…わかったよ。だけど、変身は解除できない」 変身という単語を聞き、フェイトの目が細まる。 「何らかの魔法…?」 恐らくは光太郎に聞こえないつもりで囁かれた呟きを耳にしながら、光太郎は白衣に包んだ赤ちゃんを慎重に地面へ置いた。 固く砂利の散らばった地面を見て一瞬躊躇う光太郎の頭上にフェイトの声がかかる。 「何故ですか?」 警戒心と共に魔法を行使しようとしているのか黄色の恐らくは魔力が彼女の体の中で動くのが光太郎にもわかった。 優しげで一見、善人そうな少女に(と言ってもこの世界に着てから自分の眼力の無さに足を掬われっぱなしだが)光太郎は言う。 「俺は管理局を信用していない」 確かに一瞬で人間の姿に戻ることは可能だ。 だが、顔を覚えられ探し回られでもしたら光太郎の今の生活が終わってしまうのは間違いない。 自分の暮らしは最悪どうとでもなるが…瞬時にウーノを切り捨てる判断を光太郎はすることが出来なかった。 理由の一つにウーノが浮かんだことは光太郎自身意外だったが。 フェイトの表情は、それを聞いて微かに険を増した。 「わかりました。そのままで結構です」 ですが、とフェイトはいつでもバインドがかけられるように準備を行いながら言う。 「ですが、少しでも攻撃する素振りを見せたらこちらもそれ相応の対応をさせていただきます」 「ありがとう。それと先にこの子を安全な所に預けたい。話はその後にしてくれないか?」 「…その子は?」 「この科学者達にここの地下で生み出され実験体にされていたらしい…」 周囲に横たわる白衣の男達や地面に開いた穴から一つの可能性として頭に浮かんでいたらしく、フェイトに動揺した様子はなかった。 微かに険を増した目で地面に転がった者達を一瞥し、フェイトは首を振る。 断られたことにこちらも大した動揺も見せず、光太郎は両足に力を込めていた。 それに気付いたフェイトは慌てて今にも飛び退きそうな光太郎を呼び止めた。 「待ってください! マスクド・ライダー。勘違いしないで、貴方を捕まえたりその子に危害を加える気はありません。念のためにその子の体を調べさせて欲しいだけなんです」 「…調べるだと?」 スカリエッティと出会う羽目になった経験から光太郎は訝し気な声を出す。 「まだまだ問題の多い技術ですから。管理局にはとても腕のいいドクターが何人もいますし、その後の事も。必要ならちゃんとした専門の施設に預けます」 「…信用できないな。検査すると言われて俺はスカリエッティのところに連れて行かれたぞ」 アクロバッターに援護をさせようと呼びかけながら、光太郎は時間稼ぎに自分の経験を言おうとする。 その為に挙げた名前は、思いも寄らぬ劇的な効果をあげた。 フェイトの雰囲気が変貌していた。 「スカリエッティ…? 次元犯罪者のスカリエッティのこと!?」 怒り、嫌悪。複数の感情が入り混じる赤茶の瞳。微かな焦燥に険しさを増した表情は幼さの残る顔立ちのせいで光太郎を不安にさせた、 「答えてくだ…!」 知っているのか? そう尋ねようとした光太郎に先んじた怒鳴りつけるような言葉は、子供の泣き声にかき消された。 光太郎の腕の中で静かにしていた赤子は、フェイトの様変わりに驚き、今の声で泣き出してしまったようだ。 杖を光太郎に向けたまま目に見えておろおろし始めるフェイトに嘆息して光太郎は一つ条件をつけることにした。 「…俺は管理局を信用できない」 「そ、そんなことはありません。私が責任を持ってその子を預かります」 少しムッとした顔で言うフェイトの可愛らしい瞳は危うく信用し頷いてしまいそうな真摯な光を湛えている。 だが光太郎はゆっくり首を振った。 「すまないが君だけじゃ不安が残る。時空管理局本局のクロノ・ハラオウン提督に連絡を取れないか? 君と同じ執務官でもあると言っていたんだが」 「お知り合いですか?」 「以前世話になった」 アクロバッターが光太郎の呼びかけに答え、威圧するような騒音など一切起こさずに瓦礫を乗り越えてやってくる。 光太郎に寄り添うようにして止まったバイクに、赤子とフェイトの視線が集まりフェイトは警戒を解いた。 「クロノ・ハラオウンは私の義兄です。兄が預かったバイクの持ち主は貴方なんですね?」 一瞬間を置いて、光太郎は頷いた。 そうでしたかと納得した様子で白衣の男達全員にバインドをかけて拘束していくフェイトに光太郎はついていけずに首を傾げる。 バインドを掛け終えたフェイトは「彼らを引き渡すまで少し待ってください」と笑顔で言うと、まだ泣いている赤子をあやし始めた。 その赤子はこの後紆余曲折を経てハラオウン家に引き取られることになる。 警戒する光太郎と再会し、光太郎が次元犯罪者のもとにいたことを聞かされたクロノが、内通者の存在を疑ったことと、その赤子と共に光太郎から渡されたロストロギア『レリック』を管理局に渡す条件として(最も後者は建て前に過ぎなかったが) 赤子の名前はヴィヴィオ。ヴィヴィオ・ハラオウンとなった。 ヴィヴィオはリンディと共に地球へ移り住み、翠屋という店を営むご近所さんにも可愛がられすくすくと育っていく。 光太郎はそれを暫く見守り、ヴィヴィオの前から姿を消した。 南光太郎は失われた世界、怪魔界から…正確には怪魔界に侵略された地球から迷い込んだ改造人間である。 そんな自分に関わらぬよう距離を置いたのかも知れない、と新しい義妹にも甘過ぎるクロノはヴィヴィオに言った。 管理局にいるとも他の仕事に就いたともどちらともつかない言い方をして肝心なところははぐらかした。 だが光太郎が姿を消しても、暗い研究施設のケースから助け出された記憶は強くヴィヴィオの中に残った。 ヴィヴィオの心にはいつまでも黒い太陽が輝いていた。 火種が絶えない次元世界で、才能と人手不足を盾に就労年齢は低下の傾向にある。 そして有能であれば犯罪者をも積極的に登用し、重要なポストを与える管理局で… 地球で暮らそうとも、そこで新たな一大派閥となろうとするハラオウン家で、ヴィヴィオの気持ちを止められる者はいなかった…! ヴィヴィオは、地球の芸能人や華々しい活躍をする管理局のエースオブエースに憧れるより先に、マスクド・ライダーに憧れるようになったのだ! 数年後、小学校に上がる年頃となったヴィヴィオに、翠屋の看板娘が尋ねた時それは判明することになる。 「将来の夢かー。ヴィヴィオは何て書くの?」 作文を書いていたヴィヴィオは、不敵な笑みと子供らしからぬジョジョ立ちに若干引き気味の隣のお姉さんの問いに胸を張って答えた。 「このヴィヴィオ・ハラオウンには叶えたいと思う夢があるの!」 だがそうなることなど露とも知らぬ光太郎は、同居人のウーノに今夜は遅くなる旨を伝えフェイトに赤子を渡した。 前へ 目次へ 次へ
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『今でこそ犯罪者に向けられているが、その拳はいつ何時市民へと向けられるか分かったものではない。現に! 奴が犯罪者を捕まえる過程で破壊した建物には歴史的な建造物も含まれておる! これこそ奴がただ勝手気ままに暴力を振るう無法者である証拠である!』 「時空管理局地上本部のレジアス・ゲイズ中将は記者の質問にこう答えられ、また時空管理局地上本部は市民の間でマスクド・ライダーと呼ばれ親しまれつつあるこの怪人"BLACK"を指名手配しました。 これについて管理局創設当初から多大な援助を続けるミッドチルダ有数の資産家オルシーニ家のうら若き当主であり、先日首都クラナガンにマスクド・ライダークラブを開かれたジュリア・オルシーニ氏からコメントを頂いております」 『黒い怪人だからBLACKとはまた安直だが、マスクド・ライダー"BLACK"なら少しはいいかな? 私は彼の胸に書かれている文様が"RX"と読めることからRXと呼ぶことを提唱したいのだが…ん? ああ、彼が捕まったら保釈金を払う用意はある。これでいいかね? ああ最後に一つ、RX。これからも私をワクワクさせて…』 ミッドチルダでは稀にいる才覚の持ち主らしくどう見ても十になるかならないか位の偉そうな小娘のコメントが流れる途中でウーノは不愉快気に眉を寄せてテレビを切った。 光太郎は恐らく今日は帰ってこない。 ヴィヴィオという赤子を助けてから、光太郎は管理局内で勢力を伸ばしつつある新興の家ハラオウン家と連絡を取っている。 今日はヴィヴィオの様子を見に来ないかとクロノ・ハラオウンに誘われて出かけていった。 光太郎が非合法の研究所で保護した幼子はヴィヴィオと名付けられ、ハラオウン家に引き取られることになっている。 管理局の調査では、保護した研究所で生み出された人造生命体であることと約300年前の古代ベルカ時代の人物が元になったということまで分かっているらしい。 これ以上詳しく調べるのは聖王教会の協力か無限書庫のユーノ・スクライア司書長の休暇を犠牲にして資料を漁ってもらわなければ困難らしく、調査は今は打ち切られている。 ユーノ・スクライアの顔色が、最後にいつ休暇を取ったのかを尋ねるのも憚られるものだったからだ。 この話をした時のドゥーエの様子から、ウーノにはヴィヴィオの正体に一つ心当たりがあった。 ハラオウン家の養女フェイト・テスタロッサ・ハラオウンがスカリエッティを執拗に追いかけているのでウーノはこの問題に関わらないようにしていたが、恐らくは間違いないだろう。 詳しい話まで聞くつもりはウーノになかったし口を挟むつもりもなかった。 光太郎には気付かなかったと言えば良いし、スカリエッティの不利になるかもしれないので現状は静観でいいと判断していた。 それよりもウーノにとって切実なのは光太郎の態度から見るにハラオウン家を気に入っているようだということだ。 そのハラオウン家といい、この女といい光太郎に協力するという者が少しでも現れて来たのは非常に気に入らない。 このままでは光太郎の中でウーノの地位が危ぶまれてしまうからだ。 ウーノの情報で動いていたからスカリエッティにとってよい結果も引き出せる可能性がある。 他に信頼の置ける情報源が出来てしまってはウーノの情報を必要としなくなるかもしれないではないか…誓ってそれだけである。 そう、それだけだ。言い聞かせるように何度か確認しウーノは妹達と会う為に家を出て行った。 * その頃光太郎は、第97管理外世界の海鳴市を訪れていた。 友人の手引きで日の昇る前、人通りの少ない時間を見計らって第97管理外世界へと移動した光太郎は、まず故郷の地球と表面的にはそっくりな第97管理外世界の地球を郷愁と物珍しさに満ちた表情で歩き回った。 故郷とこの世界との違いを肌で感じ、開店する時間を待って図書館に立ち寄って本を漁る…光太郎はウーノの懸念に全く気付いてはいなかった。 そうやってわかったのはこの世界には仮面ライダーはいないらしいということだ。 先輩の姿を、仮面ライダーという漫画や特撮の中に見つけた光太郎の表情は、悲しいような、嬉しいような…相反する感情が混ざり合ったなんとも言えぬ表情を浮かべた。 「…どうでした?」 「ん?…ああ、探し物は終わったよ」 そうすることで多少なりとも光太郎の気持ちを読み取ろうとするかのように、金色の目を真っ直ぐにあわせ尋ねるフェイトに光太郎は言葉を濁した。 「ありがとう」と休暇を取り光太郎に街を案内してくれたフェイトに礼をいい、光太郎は彼女と共にハラオウン家に向かった。 探し物も理由も説明しようとしない光太郎の態度は不満だったが、フェイトには一歩踏み込んで尋ねることはできなかった。 子供相手にならそうでもないのだが、自分より年上の大人の男性に対してはまだまだ経験が足りない。 親友なら「お話聞かせて欲しいの」と踏み込んでしまうのだろうけど、とフェイトは光太郎を先導しながら思った。 「光太郎さんこっちです」 「ま、待ってくれよ」 「クロノ、貴方と会うのを楽しみにしてるみたいですよ」 でも…まさかあの怪人の中身がこの人だなんて。 黒髪黒目、整った顔立をしていてスタイルも良い。服装の趣味も自分の義兄に見習わせたいくらいと、マスクド・ライダーの姿からは想像できない。 光太郎の外見をフェイトはそう評価していた。 この世界に来た当初、十数年程流行がズレた世界からやってきた光太郎の服の趣味は洗練されたとは言いがたかったのだが、最初はチンクに、最近はウーノによって矯正されているのだった。 二人は並んでハラオウン家に向かった。 ハラオウン家は管理世界にも家を持っているらしいのだが、数年前の事件の折にこの世界でマンションを借りてからそこに住み続けている。 フェイトに案内され、光太郎は今その家の前に到着した。 少し待っててください。 そう言ってフェイトが中に消えると、光太郎は少しだけマンションから見える街並みを観察した。 部屋はマンションの上の方の階にあり、そこから見える街並みは光太郎を和ませる。 ミッドチルダで暮らすよりもこの街の方が穏やかに暮らせるのかもしれない。 そう思っていると家の扉が開き、光太郎の知らない女性が顔を出した。 「いらっしゃい。貴方が光太郎さん?」 「はい。あの、貴方は…クロノのお姉さんですか?」 「お上手ね。私はリンディ・ハラオウン、クロノの母親ですわ」 光太郎より年上の息子がいるとは思えない若々しさを保つリンディは嬉しそうに笑う。 「す、すいません…」 「謝らなくってもいいのに。さ、中に入ってくださいな」 恐縮したまま、光太郎はクロノの母、リンディ・ハラオウン総務統括官に促されるまま家に上がる。 よく掃除された、清潔感のある玄関を通りリビングまで通された光太郎は促されるまま席につく。 「クロノは…」 「ごめんなさいね。あの子、急な仕事が入って一足違いで出て行ってしまったの」 「そ、そうだったんですか!? 困ったな…」 どうしたものかと光太郎は呻いた。 クロノがいなくても目的を果たすことはできるのだが、初めて訪れる友人の家に当の友人がいない間に上がりこむことに光太郎は少し抵抗があった。 「御気になさらないでくださいな。あの子が悪いんですから」 向かいに座りながら言うリンディに相槌を打ち、光太郎はフェイト達にあやされているヴィヴィオへと視線をやった。 検査の結果ではヴィヴィオは平均より高い魔力を持つだけで特におかしな点はないとお墨付きを頂いていた。 人造生命体であるがゆえに未知の能力を秘めているかも知れないとも言われていたが。 優しい眼差しを二人目の養女に向ける男性をリンディは観察していた。 人を見る目はそれなりにあるつもりだったが、何度見ても目の前の青年がミッドチルダの一部で有名人となっているマスクド・ライダーとはとても思えなかった。 リンディがなんとなく分かるのは、光太郎は誰か大事な人を亡くしたのだろうということだ。 隠しているようだが、整った横顔の上に時折過ぎる憂いの色に覚えがあった。 かつてロストロギア『闇の書』を輸送する任務で夫のクライド・ハラオウンが命を落としてすぐの頃、毎朝見たものと同じ色だ。 クロノが少し童顔なことを差し引いても、リンディの息子であるクロノよりも1才年下らしい光太郎の憂いを覗かせた横顔は、クロノより十も上に見えた。 だがクロノから聞いた話や今こうして言葉を交わした感想としては、逆にクロノよりもずっと幼い印象を受ける。 詳しくは尋ねていないのでわからないが、故郷を離れて色々とあったらしく不安定になっているようだった。 闇の書事件も無事解決しクロノも一人立ちしたせいかもしれないが、母性本能をくすぐられてリンディは微苦笑を浮かべていた。 余り見るのも失礼に当たる。リンディは視線を外しずっと角砂糖を入れ続け、飽和した砂糖がほんのちょっぴりカップの底に溜まったコーヒーを出した。 笑顔で受け取った光太郎は口をつけ、「ありがとうございます……ブッ」 そして噴出した。 「ゲホッゴホッ…な、なんだこれは!?」 「あら光太郎さん。そんなにむせてどうしたのかしら? さ、これで拭いてくださいな」 「あ、ありがとうございます…こ、これは」 差し出されたハンカチを受け取りながら、光太郎は砂糖が沈殿したコーヒーを見つめる。 コーヒーを見つめる表情はリンディの顔に浮かぶ笑みとは逆の深刻な表情だった。 「甘くておいしいでしょう? 今日はクロノもいないし、私が淹れさせてもらったわ」 「そ、そうですね! と、とても個性的な味でちょっとびっくりしちゃいましたよ」 「でしょう! 底に砂糖が溜まってるから上澄みだけ飲むのが通の飲み方よ」 上澄みだけを飲む飲み方も幾つかあることは知っていたが、何か違うんじゃないか? そんな気がしたが、苦笑いを浮かべたまま真剣な顔で暫しコーヒーとリンディを見つめた光太郎は、覚悟を決めてグッと飲み干した。 胸焼けでは済まされない甘さが、光太郎を襲う! 微かに震えながらそれを飲み下した光太郎の前には、二杯目の甘い、まったりとしていてどろりとした黒い飲み物が出されるのだった。 ヴィヴィオをあやしていたフェイトは、やせ我慢をして二杯目を飲み干す光太郎を見て苦笑いを浮かべている。 「母さんそれくらいで止めた方が…光太郎さん、苦い顔してるよ?」 「そうかしら? 残念ね。慣れればおいしいと思うんだけど…」 そう言って自分の分を飲む母の隣にフェイトは腰掛けた。 膝に光太郎の方へと行こうとしているのか手足をばたばたさせる義妹を乗せる。 「はは、疲れている時にはいいと思いますよ…」 「光太郎さん…やせ我慢も程ほどにしてください。ねぇヴィヴィオ~やせ我慢は体に悪いよね~?」 膝に乗せたヴィヴィオの顔を覗き込んで尋ねると、ヴィヴィオは小さく首を傾げた。 小さな両手を持って上下に動かす娘に玩具にしないのと注意して、リンディは苦笑を浮かべた。 義妹が出来て以前より家にいる時間が増えたのは嬉しいのだが、フェイトがまだまだ子育てをするには少し早いようだ。 リンディは再び光太郎に目を向ける。 「ところで光太郎さん」 呼びかけられ、膝に乗せられたままのヴィヴィオの手に指を与えていた光太郎はリンディを見た。 ヴィヴィオに指を握られたままの光太郎に言う。 「良かったらフェイトのお友達にも会ってあげてくださらないかしら?」 「母さん、それ私が言うつもりだったのに」 「…それは構いませんが、一体どうして」 相槌を打った光太郎に少しむくれるような顔を見せたフェイトが言う。 「はやては貴方の大ファンなの。それで貴方の話を聞いて一度会って見たいって。それと…」 言いづらそうに、フェイトは光太郎の硬い指を強く握って放そうとしないヴィヴィオの後頭部に視線を落とす。 窓から入る光を反射して、額から垂れたフェイトの髪とヴィヴィオの幼い子供の柔らかい髪が黄金に輝いていた。 不思議に思いながらもフェイトを待つ光太郎を顔を下げたまま、上目遣いに見てフェイトは言う。 可愛らしい少女からのお願いに光太郎は困ったような顔をして、ヴィヴィオに差し出していた手を引いた。 指を追って身を乗り出すヴィヴィオを慌てて押えるフェイトとリンディに光太郎は首を振った。 「すまないけど、俺は」 「光太郎さん、一度会ってみてからもう一度考えてあげてくれないかしら…」 断りの言葉を遮って口を挟むリンディと視線で訴えかけてくるフェイト…母娘二人の視線に光太郎は渋い顔をした。 二人はどうして光太郎が躊躇うのか理解できていない様子だった。 管理世界には人造魔導師を始めとした非合法な研究によって生み出された魔導師が多数いるが、彼らはその力に疑問を持たない。 姿においても、人型の昆虫がいるくらいで写真で既に見ている彼女らには心構えもある程度は出来ている。 だが光太郎にとっては進んで見せるものではない。 故郷の地球では戦いに巻き込まないように正体を隠して戦い続けるのが常であり、余程信頼を置く者でなければ正体は隠していた。 要は慣習の違いなのだが、フェイトの膝に座るヴィヴィオを見て光太郎は頷いた。 クロノ達は信頼の置ける人物だし、ヴィヴィオの件では世話になっている。 大半はその借りを少しは返したいという気持ちからだった。 残り少しは、余り深く考えずに郷に入れば郷に従おうと思ったからだが。 頷くと同時に、光太郎がたった今入ってきたばかりの扉が開き、ダダダッと騒々しい足音を立てて一人の少女が現れる。 茶色がかった黒髪をショートカットにし、瞳を好奇心に輝かせたその少女は光太郎に向かって軽くおじぎをした。 「初めまして光太郎さん。うちは八神はやてっていいます。よろしゅうお願いします!」 無邪気な笑顔を向けてくるはやてに光太郎が返答に困っていると、はやての後ろから赤い髪をポニーテールにしたスタイルの良い凛々しい女性が入ってくる。 見たところ二十歳前後くらいの女性の足取りは訓練された人間のもの。鋭い眼差しは光太郎を値踏みしているようだった。 恐らくはこの二人がその友人なのだろうが、困惑する光太郎を見かねてか困ったような笑顔を浮かべてフェイトが言う。 「…はやて。せめて呼ぶまで待っててって言ったのに…」 「ごめんフェイトちゃん、あのマスクド・ライダーに会えるって思たらいてもたってもいられんかったんよ」 「リンディ総務統括官申し訳ありません。主はやては何故かとても楽しみにしておりまして…」 はやてと名乗った少女とそう言って頭を下げる女性の振る舞いを光太郎は少し不思議に思った。 家族だと聞いたばかりなのだが、何故か年上のはずの女性の方が一歩引いた場所にいる。 不思議に思う光太郎を他所に女性…「剣の騎士」の二つ名を持ちはやての守護騎士(ヴォルケンリッター)のリーダーを務めるシグナムは垂れた頭を挙げて、提案した。 「光太郎。私は今すぐでもやれますが、いつやりましょうか?」 「あ、あなたねぇ。光太郎さんはお客様なんですから…」 「構いません。先に済ませちゃいましょう」 そう言うと、光太郎は甘ったるいどろどろとしたコーヒーを飲み干して、席を立ち上がった。 決闘趣味とも言える趣向を持つシグナムは、自分より背の高い光太郎と視線を交わし不敵な笑みを浮かべた。 渋っていたわりにやる気のある光太郎と最初からやる気満々のシグナムをフェイトの膝に座るヴィヴィオは色の違う瞳で見つめていた。 光太郎が受けたことで、マンションの周りには速やかに結界が張られていく。 マンションの屋上に立った光太郎は結界が張られ外界との間に薄い壁が出来た周囲を不思議そうに眺める。 原理はよくわからないが、これで気兼ねなく戦える…らしい。 その間にシグナムは戦う準備を整えていた。 彼女も魔導師だとばかり思っていた光太郎は、戦闘準備を終えて光太郎を待つシグナムの姿を見て面食らっていた。 鞘に収められた剣を片手に、大きな胸など体の線が見えるボディスーツの上からジャケットを羽織っている。 下半身もスカートのようになっているもののスリットから太ももが露になっていて、なんだか昔やったゲームに出てくる戦士のように見えた。 なにより、なまじ人間を超えた視力を有するせいで一瞬とはいえ肌が露になったのがとても気恥ずかしい。 顔が赤くなっているのがばれないかと光太郎はひやひやしたが…既に臨戦態勢となったシグナムにそんな様子は見られなかった。 「どうした? まさかそのまま戦うというのではないだろうな」 気付かれていないようであるし、ただの手合わせとはいえ気持ちを戦いへと向けた光太郎は気持ちを速やかに静め……無言で肩幅に足を開いた。 人間の姿のままでも、彼の足は猟犬の速さを有していた。 ベルトの位置で左手を大地に向け、右手が太陽へと手を伸ばす。 その手は人間の姿のままでも岩を砕き、鉄の板を容易く突き通すが目の前の超常の力を有する美女を相手にするには恐らく足りない。 シグナムが怪訝そうに眉を潜め、観客としてその場にいるフェイト達も首を傾げる中、ただ一人"わかっている"人間であるはやては目を輝かせていた。 天を指す右手がゆっくりと下ろされ、中心に至ると横へ真一文字に振るわれる。 ベルトの、キングストーンの位置にあった左手も薙ぎ払うように横へと振るわれ、空を掴み引き寄せられた。 その瞬間、光太郎の目の奥。 スカリエッティが魅せられた火花は巨大な光に変わった。 ベルトから一瞬、太陽の如き閃光が迸り、この空間を覆っていた結界を消し飛ばす。 閃光の中で光太郎の姿は変貌していった。 黒い飛蝗人間へ、そして更に黒い甲冑の如き皮膚が体を覆い、飛蝗怪人へと…光太郎は一瞬の内に変貌を遂げた。 軽く曲げた左拳を前に、握り締めた右拳を腰に構えた光太郎…いや、RXが姿を現す。 変身に伴い全身へと行き渡った莫大なエネルギーの残滓が微かにベルトで輝いていた。 「俺は太陽の子、仮面ライダーBLACKRXッ!!」 「あ、あの…光太郎さん? 母さん、急いで結界を張りなおして!」 慌てて叫んだフェイトをきっかけに、シグナムは突進した。 一息で構えをとったままのRXへと距離を詰め、流れるような動作でアームドデバイス"レヴァンティン"を抜刀する。 マスクド・ライダーはシグナムの間合いに入っても、抜刀したレヴァンティンを振り上げても微動だにしなかった。 今回はミッドチルダに潜伏していた犯罪者を複数挙げた実績を考慮してか、主からも加減無用と言われている。 非殺傷設定にはしてあるが、RXは魔導師ではない為場合によっては大怪我を負う可能性もあるというのに、だ。 つまり存分に真剣勝負にのめり込めるということ。 シグナムは未だ動きを見せないマスクド・ライダーに構うことなく刀身を振り下ろす。 胸に刻まれたRXの文様へと刃が迫っていく一瞬が、集中力で引き伸ばされシグナムにはとても長く感じられた。 彼女の感覚では、RXが今から何をしようが間に合わない。幾らRXの皮膚が頑丈であろうと深手を負わせるだけの自信をシグナムは持っていた。 だがそのまま切り裂かれるかと思われたRXは、機械兵器や魔導師の結界と防護服を物ともせぬ魔剣レヴァンティンの刃をいつの間にか左手で掴んでいた。 全身を使い一刀に込めた力も気迫も、シグナムが一撃に込めた全てのエネルギーが始めからなかったかのように無造作に止められていた。 掴まれたレヴァンティンはその場所に固定されたかのように動かない。 自分の体力では引く事も押すこともできない。 微かに腕を動かしたシグナムはそう悟ると、左手に掴んだ鞘を振るおうとしているかのように重心を傾け、鞘を持った左腕を動かした。 それに気付いたRXが、右手を出すと同時にレヴァンティンが圧縮魔力を込めたカートリッジをロードした。 刀身の付け根にあるダクトパーツがスライドし、魔力増強の為に組み込まれた魔力増強のシステム"カートリッジシステム"の特徴でもある排莢が行われる。 薬莢が吐き出され、爆発的にシグナムの魔力が跳ね上がると共にレヴァンティンの柄から剣先へ向かって炎が燃え上がる。 吹き上がる魔法の炎によって微かに力が緩むのをシグナムは見逃さなかった。 鋭さを増した刃を引き戻し、再びレヴァンティンを振り上げる。 驚異的な力で刃を固定していたRXの左腕へ向けて、裂帛の気合と共に炎を纏ったレヴァンティンの刃が振り下ろされた。 「紫炎一閃ッ!!」 そのまま胴まで。否途中にある物は全て切り裂くつもりで放たれた斬撃はRXの腕に食い込んだ。 しかし、そこまでだった。硬い金属同士が衝突したような音が鳴り、レヴァンティンが弾かれる。 刹那驚愕に囚われるシグナムへ、それまで動きを観察していたRXが襲いかかった。 傷つけられた前腕を気にも留めず、RXは腕を伸ばし弾かれたレヴァンティンの腹を左手の甲で叩く。 甲高い音が鳴った。軽く手首のスナップをきかせただけの一撃がなまくらな剣など粉々に砕き、並の剣士の腕から剣を弾き飛ばすのに十分な威力を持っていた。 そのどちらにも当てはまらないシグナムとレヴァンティンは、見た目とは裏腹に重過ぎる一撃に持っていかれそうになる腕を堪える。 筋に痛みが走ったが、シグナムは表情を変えることなくその場から飛び退く。 それを追って、屋上の床を蹴ったRXの左拳がシグナムの腹に突き刺さった。 いや、かろうじて鞘を間に入れ直撃を防ぐことに成功したシグナムは、鞘を突き抜けて肺腑を突く衝撃を後ろへ飛ぶことで更に多少なりとも逃がす。 喉の奥から上がってくる熱いものを吐き出すのを堪えながら、シグナムは確かめるようにレヴァンティンの刃とRXの腕を見比べた。 「…ッ」 紫炎一閃が通じない…いや、と黒い腕に走る傷を見てシグナムは思う。 決定打にならないとは。 魔法による強化を受けずにこれほどの力を持つ相手は久しく見えたことがなかった。 驚愕と体に走る痛みを歯を食いしばって耐えながらシグナムは、体の奥から歓喜が湧き上がってくるのを感じた。 「面白い…ッ! お前の力、全て見せてもらう。レヴァンティン!」 "Explosion." シグナムがレヴァンティンを振るうのを合図に、再びレヴァンティンがカートリッジをロードする。 過剰なカートリッジロードは制御不能や暴発をまねく危険性があるが、シグナムは後数回カートリッジロードを行うことが可能だった。 刀身の付け根にあるダクトパーツで、三度スライドと排莢が行われる。 レヴァンティンには片刃の長剣以外にも鞭状連結刃へ刃を変えるシュランゲフォルムと大型の弓となるボーゲンフォルムがあったが、三度カートリッジをロードしてもフォルムに変化はなかった。 クロスレンジは同等の速度で動き、パワーで上回るRXの方が有利かもしれないが引く気はなかった。 今見せられたRXの反応速度では鞭の先端を叩き落し、矢を避けるかもしれない…シグナムは頭に浮かんだ建前を鼻で笑った。 フォルムを変えないのは、何より心が躍るからだ。 シグナムの足元に三角形の魔方陣が現れる。 小さな円を隅に配置し、中央で剣十字が回転する古代ベルカ式魔方陣。 技量ではシグナムが勝っているが、彼女には力が足りない。 カートリッジで一時的に増した魔力が体全体に行き渡り、シグナムに力を与えていく。 「行くぞッ」 裂帛の声を上げ、魔法による強化を終えたシグナムが床を蹴った。 RXも同時に床を蹴り、体を低くしてシグナムへ一直線に向かってくる。 それに対しシグナムは宙を舞い、上空から剣を振り下ろした。 初太刀をシグナムの左側へかわすRXへ、魔法により空中を自在に舞うシグナムは追撃を行う。 重力を無視した動きに微かに対応が遅れるRXへ、フェイントを交えた斬撃が見舞われる。 物理的な法則を無視して行われる落下や浮上に惑わされ、RXは面白いようにフェイントに引っかかり手足を強打される。 真正面から打ち合ったかと思えば、頭上から剣を叩きつけ、着地したかと思えば滑るように低空を飛び距離を置く相手にRXは次第に防戦を強いられていく。 それを見る観客達は、思い思いの感想を口にする。 シグナムと翻弄されるRXの動きを辛うじて目で追いながら、その道に関する造詣の深いはやては知ったような顔で深く頷いた。 「んーやっぱり仮面ライダーの弱点は空戦やね」 フェイト達も頷く。 RXの拳圧が強風となって髪を揺らした。 「そうだね。もしかしたら遠距離攻撃や広範囲も対応できないのかも」 「それは多分、間違いないと思うんよ」 「どうして?」 「だって仮面ライダーやもん」 「?」 はやての返答に怪訝そうな親子を見て、わかってないなと言いたげな顔ではやてはため息をついた。 そして目を輝かせながらもはやての頭の中では、光太郎をどうすれば引き抜けるだろうかと考えが膨らもうとしていた。 臨海空港で起こった大規模火災の現場を体験し、定めた夢。 自分の部隊を、それも少数精鋭のエキスパート部隊を持つという夢にどうすれば参加してもらえるだろう?と。 最初は翻弄されてばかりだったが、RXは徐々にシグナムに慣れてきている。 胴体や頭部へ受けた一撃はなく、両手足が何より強力な盾となってレヴァンティンを受け止めていた。 何発もカートリッジをロードし強力になった斬撃を受け腕が傷だらけになっているようだが、その傷がこうして戦っている間にも少しずつ治っていくのもはやては見逃していなかった。 魔導師で部隊を組む場合、隊員は特性に基づいて陣形中のポジションを割り当てられる。 そうして各々の部隊の中でどのように動くのかを徹底して訓練していくのだが… 二人の戦闘を見ていると、単身で敵陣に切り込んだり、最前線で防衛ラインを守るフロントアタッカーにRXがどうしても欲しいと思ってしまう。 攻撃時間を増加させ、サポートの必要性を減らすため、防御能力と生存スキルが重要となるポジションにRXが入れば、その部隊の能力がどれ程上がるものか。 「はやてちゃんダメよ。そんな目で見ちゃ…」 物欲しそうな目で亀のように縮こまって攻撃を凌ぎ、隙を窺うRXを見るはやてを咎めるようにリンディが言う。 「彼は存在自体が管理局法で違法になる可能性が高いわ」 「…リンディ総務統括官でも無理ですか?」 「無理とは言わないけど……簡単な話じゃあないわ。彼の出身世界、彼の体…皆興味深々でしょうね。私も、なのはちゃんやフェイトについてもらいたいんだけど」 抱きかかえたヴィヴィオをあやしながら言うリンディにフェイトは表情を曇らせた。 リンディもそれを見て抱きかかえたヴィヴィオの手を握ったまま押し黙る。 フェイトとはやての親友、なのはは蓄積された負担の所為で瀕死の重傷を負ったことがあった。 教導隊所属になり、昔ほど無茶をする機会は減ったが…なのはをよく知る者は口を揃えて「なのはだから心配なんだ」と言っている。 なのはが重体になった時、彼女の両親を説得した分ある意味フェイト達よりもショックを受けたリンディはその気持ちが強かった。 今実力を見たリンディはなのはか、あるいは二の舞にならぬようにフェイトの手助けをして欲しいと考えていた。 速やかに管理局に引き入れそれを実現するにはリンディでもかなりのコネを使わなければならないだろうし、RX…光太郎には迷惑な話でしかないが。 押し黙った彼女らを置いて、二人の戦闘に決着がつく。 レヴァンティンがRXの首の前で止まり、RXの拳がシグナムの鳩尾の前で止まっていた。 * 二人の戦闘が終わり、光太郎が再びハラオウン家に戻って談笑している頃。 干してあった洗濯物を畳み、食器も洗い終えてお茶で一服していたウーノは、ニュースを見てお茶を吹いた。 「けほっ…! けほ」 キャスターも戸惑った様子で読み上げた最新ニュースは、幼稚園バスを襲う覆面の男達を獣人の男性が蹴散らしたという話題だった。 その銀髪の獣人についてはウーノも知っている。 八神はやての守護騎士の一員『盾の守護獣』ザフィーラ。 蹴散らされている者達はウーノも初めて見る。 だがそのベルトのバックルに描かれたデザインのタッチはどこかで見た覚えがあった。 慌ててISを使って情報を調べて見ると…ベルトのバックルに描かれた絵はやはり妹の、ウェンディが描いた絵と良く似ているような気がした。 証拠となるものは何もない。似ているような気がするだけだ。 だが、ウーノはスカリエッティの犯行に違いないと確信していた。 「チンクは何をしてるの!? あれほどドクターの自由にさせちゃ駄目って言っておいたのに…!」 その後、犯人は煙のように溶けて消えた。 手がかりとなるものも一切残らず、同一犯による犯行も行われなかったが、その犯行は一部の者達の記憶に強く残った。 前へ 目次へ 次へ
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光太郎がこの世界に来てから三度目の秋が訪れた。 ミッドチルダの秋は短く、すぐに冬が訪れる。 その為か現在光太郎が住まう廃棄都市区画近辺では、既に冬に向け衣類や防寒具が店先に並んでいた。 三人…光太郎とウーノの暮らしはセッテが加わっても然程変わっておらず、短い秋を楽しもうと季節の野菜や果物を買い、帰り道を歩いていた。 途中古本屋と露天を覗いてウーノが並べられた商品の中から、外出時、べスパを運転する際にと少し古いタイプのカイロを購入して光太郎に渡す。 「ありがとう…変わった色だな?」 どこか別の管理世界から輸入したらしい、得体の知れない皮製のケースに入った金属製の薄っぺらいカイロを受け取った光太郎は、カイロに眼を落として言う。 ポケットの中に入れやすいサイズで皮製のケースに入っているのは直接触ると火傷しかねない温度まで熱くなってしまうからのようだ。 「その姿の時は寒いんでしょ。管理外世界(番号は忘れたわ)の惑星ポポルにいるカエルの皮だったかしら」 「……何ていうか、胡散臭さいな。しかもカエル?」 「何よ?」 「あ、ありがたく使わせてもらうよ。でもよくわかったな」 「去年冬にコーヒー豆をきらした時、少し震えてたでしょ」 財布を仕舞い、マフラーを直しながら歩き出すウーノに少し遅れて光太郎と光太郎の傍に無言で立っていたセッテも歩き出す。 魔法が発達しているとはいえ非常に珍しいカートリッジを挿して、込められた魔力を燃料にして発熱するらしいカイロを弄りながら歩く光太郎をウーノは軽く嗜める。 明日は久しぶりにシグナムの相手を務める予定だったので早速使ってみようと決めて、光太郎はカイロをポケットに仕舞った。 シグナムとの関係は続いているが、回数自体は減っていた。 ハラオウン家に預けたヴィヴィオが大きくなり、シグナムもよく顔を出しているらしい。 いい子で皆に可愛がられている、ということだった。 大した悪さもしないからちょっと物足りないくらい、とは母親であるリンディの弁だ。 そういえば、と不意に光太郎は黙って隣を歩いているセッテに顔を向けた。 共に暮らして暫くたったが、セッテはあまり二人の会話に口を挟もうとはせず、光太郎の挙動を観察することが多かった。 元々話し下手というか人間味の薄い性格らしいと既に理解している光太郎達は何も言わず、セッテのしたいようにさせていた。 今もセッテは光太郎を観察していて二人の目があった。 「どうして俺が兄なんだ?」 「ではパパとお呼びしましょう」 「ど、どういう意味だっ!?」 「セッテ。もう少し最初から話さないと私にもわからないわ」 狼狽する光太郎に少し前を歩くウーノから助け舟が入った。 「貴方が私の戦闘形態のオリジナルに当たる方だからです。パパよりは兄様の方がいいだろうと言われたのですが、間違いだったようですね」 「い! いやそのままでいいぜ」 「…わかりました。光太郎兄様。帰ったらまたバイクの整備を手伝ってもらえませんか?」 「ああ、勿論構わない」 セッテの頼みに光太郎は二つ返事で頷いた。 光太郎がアクロバッターやベスパを持っているようにセッテも一台のバイクを持っている。 お金を貯めて買ったものではない。一緒に住む事が決まると直ぐに何処かからセッテの元にバイクが届いたのだ。 一見するとそのバイクはミッドチルダでそこそこ有名なメーカーのバイクだった。 だがウーノの他の二人から比べると用心深い性格と、RXの目は誤魔化されない。それは擬態に過ぎなかったのだ。 本性はどこかアクロバッターを意識したデザインをしたセッテをサポートするだけの性能が与えられたバイクだった。 光太郎がスキャンした情報を正確に設計図としてチラシの裏に書き込むと、それを見たウーノは使われている技術から言って間違いなくスカリエッティの生み出した作品だと断言している。 ついでにスキャンしたとはいえフリーハンドで設計図を引いて見せた光太郎にウーノ達は感心したことを記しておく。 「光太郎ってそんな特技があったのね」 「以前ワールド博士の設計図からライドロンを作ったお陰かな」 感心していたウーノは返された返事に興ざめしたような顔をみせた。 「冗談はいいわ。貴方にそんなこと出来るわけないじゃない」 「嘘じゃないって! 見てろ、今から全部チラシの裏に書いてやるから! セッテ、悪いけど向こうからチラシを持ってきてくれ!」 躍起になった光太郎に言われ、セッテがゴミの日に出すために溜め込んであるチラシを取りに行くのを尻目にウーノは席を立った。 「はいはい。頑張ってね」 チラシの裏に書き込まれた専門家が書いたような設計図―それもクライシス帝国の学者が設計した超マシンのもの、を見せられたウーノはまた別の意味でため息をついた。 詳しくは割愛させていただくがウーノは一言「この人、早くなんとかしないと…」と零したらしい。 ともかくセッテはそれを愛車として使うことにした。 最初光太郎はすぐにスクラップにしてしまおうとしたのだがウーノに勿体無いと一言で却下されて今に至っている。 「ふぅん?」 「なんだ?」 前を歩いていたウーノの思わせぶりな反応に光太郎は眉を潜めた。 「光太郎はドクターが作った物なんて触りたくないんじゃない?」 「奴がどんなつもりで生み出したかは知らないが、今は一緒に人を助ける仲間だからな」 道端の売店で売られている新聞の写真に視線をやりながら光太郎は応えた。 そこにはライダーの記事が載せられていて、共に活動しているライダー…セッテと彼女が乗るそのバイクが写真には写っていた。 「単純ね」 「そんなことはないぜ」 ウーノがフッと鼻で笑う。 光太郎は聞き逃さずに抗議したが、全く相手にはされなかった。 反論は無視されて、話題はすぐにセッテから振られた今晩の夕飯や明日のことに変わる。 だがそれを気にする風も無く光太郎は二人と古い路地を歩き、アパートへと戻っていった。 家に近づくにつれて光太郎の表情に微かな変化が訪れた。 光太郎の超感覚が三人の部屋の前にいる何者かの気配を伝えてきていた。 セッテも遅れて気付き、光太郎の指示を仰ぐようにちらちらと光太郎の目を見る。 そんな能力はないウーノの方は、部屋に近づくなり怪訝そうな顔をした光太郎とセッテが視線を交わすのを見て気付いていた。 ウーノは変身しない所から見て、脅威ではないのだろうと考えていた。 「光太郎さんお久しぶりです」 戻ってきた光太郎を見てそう言っておじぎをした少女に光太郎は困ったような顔をして挨拶を返す。 「やっぱりフェイトちゃんか。こんな時間にどうしたんだ? 悪いがヴィヴィオのことなら…」 「ち、違います。今日は仕事の依頼に来ました」 慌てて頭を振るフェイト。 ヴィヴィオを助け出した時に知り合ったクロノの義妹で、今はヴィヴィオの義姉でもある少女をウーノとセッテは胡乱げな目で見つめた。 執務官の制服が様になって よく手入れされ腰の辺りでリボンで結ばれた金色の髪が、沈んでいく夕日に照らされていた。 眩しく黄金に輝く髪が女性へと成長しつつある少女を彩っていて、ウーノは思わず自分の製作者に文句を言いたくなるほどであった。 「シグナムから話は聞いています」 「殴り合いならご免だぜ。彼女だけでも困ってる位なんだ」 「くす。シグナムはヴィヴィオの相手をしながら嬉しそうに話してくれましたよ?」 「ねぇ光太郎―夕飯の用意もあるし早く済ませてくれないかしら?」 困ってはいるのも確かだろう。だが、それ以上にどこか楽しげに言う光太郎とそれを見て笑いながら脱線しようとするフェイトに釘を刺すようにウーノが言う。 セッテは姉の邪魔にならないようにどこからか取り出した最近お気に入りの新聞(―その新聞社はマスクド・ライダーの記事をよく掲載している上に好意的な書き方をするのだ)を読み始めていた。 助けた女の子からのお礼が書かれている辺りを見ながら、セッテはさり気なく光太郎に助けを求めるような目をやった。 「ご、ごめんなさい。すぐに済みますから」 少したじろぎながら、軽く謝罪をしてフェイトは気持ちを切り替えたのか凛々しい表情で光太郎を見た。 「光太郎さんにはレリックの輸送の護衛を依頼したいんです」 「レリックだと…」 呟く光太郎の脳裏に、光太郎がスカリエッティと袂を別ち、ウーノらと奇妙な同棲をすることになった原因が浮かび上がった。 体を焼く膨大なエネルギーと、消滅していく人々の姿を幻視した光太郎の拳が硬く握り締められた。 * 数日後、光太郎は普段見せない硬い態度で異世界から移動する船に乗り込んでいた。 時折周囲を刀のような鋭い眼差しで撫で、スカリエッティのところにいた頃作ったスーツを着込む姿に隙はない。 依頼したフェイトは驚いたものの、執務官の制服を着て隣に立つ姿は普段通り冷静に職務をこなしていた。 移動の合間にヴィヴィオと会うように説得する時は熱く語りかけ、保護者になっているという子供のことを話す時は年相応の表情をしていた。 突然この厄介な荷を運ぶことになり、人手が足りないので協力を依頼したのだが…フェイトやリンディには別の思惑もあった。 光太郎がレリックに対して思う所があるのはクロノ経由で知っていた。 レリック絡みの任務なら積極的に協力してくれるのではという予想は当たった。 後はこの運搬中に管理局…自分達との関係を深め、今後も協力してくれるきっかけにしたいと彼女らは考えていた。 そして折を見てヴィヴィオと会わせてしまおう、なども。 それは光太郎も…正確には同居人のウーノがフェイト達はそういうつもりだろうと釘を刺していたが、光太郎は気にしちゃいなかった。 今も、相槌をうつ光太郎の意識は抱えたトランクに向けられていた。 トランクにはもう二年以上も前に空港の大火災を引き起こしたロストロギア『レリック』が入っている。 以前と同じく空港を通る事。人員不足により人手は二人だけであることも同じだった。 ふと気になり、部外者にこんな重要な物を運ばせて良いのかと問うてみたが、フェイトは自分もいますしと不思議そうな顔をしていた。 あ、と何かに気付いたようにフェイトは不満そうに顔を顰めた。 「もう、私だって執務官なんですよ?」 「あ、いやそういう意味じゃない「もっと私を信用してください。なのはと出会うきっかけになったあるロストロギアの事件の時なんて、9歳の魔導師が責任者だったんですから」 「9歳? いくらなんでもそれは無茶だろ!?」 光太郎が自分を認めていないと感じたらしいフェイトに光太郎は驚いて聞き返した。 フェイトはやっぱりと、以前と余りにも酷似した状況に緊張する光太郎を地球の常識からすると若すぎる自分を信頼出来ていないのだと決め付けた。 「こちらの世界では能力が認められればこれが普通なんです」 「あ、ああ…そう」 呻くように言う光太郎を連れてフェイトは歩いていく。 その後ろ姿からは光太郎が普段暮らしているミッドチルダを守る地上の陸士部隊が束になっても敵わない程の魔導師にはとても見えなかった。 初めて行く管理世界への移動もそこでの受け取りとそこからの輸送は何の滞りも無く進んだ。 面倒な手続きも全てフェイトがこなしてしまい、何の襲撃も無く日程だけが進んでいく。 光太郎はトランクを抱えて、彼女の後を子供が親に手を引かれ出かけるようについていくだけだった。 時に大人達と交渉するフェイトの仕事振りに光太郎は感心し通しだった。 そうして、トランクを持って、空港へと戻ってきた光太郎は以前爆発を起こした場所とそっくりのホールで思わず足を止めた。 行きかう人々の喧騒も、建物の内装も殆ど変わらない。 突然足を止めた光太郎に、前を歩いていたフェイトが気付いて足を止めた。 行きかう人々の邪魔になっている光太郎をフェイトが呼ぶ。 「光太郎さん? どうかしましたか」 「いや…なんでも」 その時だった。光太郎の前に見覚えのあるウィンドウが開いた。 映ったのは見覚えのある部屋と焦っている同居人達の顔。 「光太郎…! 急いでそのトランクを破棄して!!」 「どういうことだ…まさか!」 「ええ。あの時と同じよ! そこに入っているレリックは…!!」 最後まで聞く必要はなかった。 やはり……! そんな言葉が胸に浮かび、光太郎の体を動かした。 「光太郎さん? どうし…くっ!」 光太郎はフェイトにトランクを投げつけて、開いた掌を天に向けて突き出した。 何事かとフェイトを除く高速戦闘などとは縁の無い周囲の客達の目には幾つもの残像が見えたであろう。 それほどの速さで十字に振るわれた腕が巻き起こした風が華奢な者達を吹き飛ばす。 「駄目です! ここじゃあ…!」 突風に足を踏ん張って耐えたフェイトはその動きを見て光太郎を止めようとして叫び光太郎の目の奥、巨大な光に変わっていくスカリエッティが魅せられた火花に魅せられて息を呑んだ。 腹部に浮かび上がったベルトから一瞬、太陽の如き閃光が迸る。 光太郎は人から黒い飛蝗人間へ、そして更に黒い甲冑の如き皮膚を持つ飛蝗怪人へと変貌を遂げる。 軽く曲げた左拳を前に、握り締めた右拳を腰に構えた光太郎…いや、RXは変身に伴い全身へと行き渡った莫大なエネルギーの残滓で微かにベルトを輝かせながら名乗りを挙げた。 「俺は太陽の子、仮面ライダーBLACKRXッ!!」 そして光太郎の行動はそれでは終わらなかった。 RXの姿が青い閃光と化しフェイトの前から姿が消えた。 「え…?」 一瞬遅れてフェイトは、遅れてやってきた取られた瞬間のトランクであるはずの何かの感触に息を呑んだ。 しっかりと受け取ったはずのトランクは何処かへと消えてしまっていた。 何処へ消えたのか。 考える暇もなく遠くで生まれた大きな光に強く照らされ、余りの眩しさにフェイトは目を閉じた。 太陽が増えたかのような強烈な光。フェイトはそれを周りの一般人に混じって見上げた。 まだ驚きの抜けない頭の中で先ほど変身する直前の光太郎が言っていた事と空港、レリックなどの言葉が繋がり、以前救助を行った空港の災害がフェイトの脳裏に浮かび上がった。 「光太郎さんはまさか…」 どんな手を使ったのかフェイトにもわからなかったが、トランクを奪い去った光太郎はあそこまで瞬時に移動したのだろう。 恐らくそこでレリックが暴走したのだ。 死んでしまったのではないか…そう考えて青ざめたフェイトは、光の中に浮かぶ小さな人影を見つけて安堵の息を吐いた。 よく考えれば、あれほどの災害を引き起こしたものと同じレリックの暴走であるにも関わらず、この程度の距離でこの空港には何の被害も出ていないのはおかしい。 衝撃波の一つも届いてこないのは恐らくはあの光の中で光太郎が何かしているのだろう。 まさか力尽くで押さえ込んでいるとはフェイトも思いもしなかったが。 走りだし、三角形のプレートを取り出したフェイトの体が金色の光に包まれる。 執務官の制服を基にしたバリアジャケットを纏って空へ飛び立った。 そのまま加速を続け、光が収まっていく爆発現場へと急速に近づいていく。 その間にも収まっていく光に目を細めていたフェイトは、光の周囲を見て今起きたレリックの爆発の威力を想像し背中に冷たい汗が流れた。 上空の雲は消滅し、青い空がどこまでも広がっていた。 一部のビルが溶けて融解しているのも目に入り、光の中心地にいる光太郎の身が心配だった。 その時だった。急速に弱まっていく光から青い人影が海へと落下していくのが彼女の目に入った。 「バルディッシュ!」 主人の求めに従って魔力が込められたカートリッジがリロードされる。 増大した魔力を使って加速したフェイトは、海面へと激突するギリギリで青いライダーの体を抱きとめた。 RXの黒い昆虫を思わせる体と比べ、スマートな体格をしている。 昆虫の外骨格を模した硬い鎧のような印象はなくしなやかで、腕に伝わってくる感触も何処か柔らかい。 「光太郎さん、ですか?」 「ああ。ありがとうフェイトちゃん、助かったよ」 初めて見るバイオライダーの姿に半信半疑に尋ねられた光太郎は、RXの姿に戻って頷いた。 ゲル化して移動することも出来なくは無いが、二度目とはいえ精神的な疲労感から光太郎は身を任せた。 が、すぐに太陽の光を浴びてRXは全快した。 「体は大丈夫ですか?」 「全然大丈夫さ。ほら、どこも怪我なんてしてないだろ?」 「それもそれで信じられないんですけど…」 フェイトが苦笑した瞬間、光太郎は口ごもりながら下ろしてもらえないかと申し出た。 瞬時に全快した途端自分より年下の少女に抱きかかえられて空を飛ぶのが光太郎にとってはどうにも恥かしく感じられていた。 「ちょっと恥かしい」 「一つ約束してくださったらすぐに下ろしてあげますよ」 「…なんだ?」 間近にある少女の顔から顔を逸らす光太郎に、フェイトはこういうことには定評のある親友のことを脳裏に描き口を開いた。 「お、お話…聞かせて欲しいの」 「は?」 「え!ええっと…! その、ごめんなさい」 親友の口調で言ってみたものの、それが思いのほか恥かしかったらしく今度はフェイトが顔を赤くして顔を逸らした。 光太郎は口調に違和感を感じて赤く染まった彼女の耳たぶを眺めた。 「こんなことが出来るのに、どうしてヴィヴィオと会ってくれないのか話を聞かせて欲しいんです」 「シグナムから聞いてないか?」 「…教えてください。教えてくれたら、私にも協力できることがあるかもしれないから」 フェイトの目は真剣だった。 今回同行する間にも義妹のことを光太郎に話してきたフェイトの表情は信じられる。 話したくは無いが、ヴィヴィオの家族である彼女には話しておくべきなのかもしれないと光太郎は思った。 「………わかった」 光太郎は暫く悩んだ末、建物の影に入った瞬間を見計らい変身を解いた。 人間の姿になったせいでフェイトは最初光太郎が味わっていた恥かしさを味わう羽目になり、誰かに見られていては困ると光太郎の顔を隠しながら飛ぶ事に集中しようとする。 建物の陰に隠れて飛び続けるフェイトの顔をぼんやりと見ながら、どこから話そうか光太郎は頭の中を整理しようとした。 光太郎が接触を拒む理由は、クライシス帝国との戦いで世話になった叔父夫妻を死なせ、まだ幼い彼らの子供達に銃を取らせてしまったことに起因している。 クライシス皇帝を倒し、そのままこの世界へと来てしまった光太郎は残された子供達がその後どうなったか知る術はない。 先輩ライダーや共に戦った仲間達がいるからそう心配することはないと楽観的に考えるようにし、深く考えないようにしてきたが… ゴルゴムとの戦いで全てを失い、疲れ果てていた光太郎を迎え入れてくれた家族を守れなかったことは、光太郎の心に未だ残る傷の一つだった。 話しだすのを待っているらしく沈黙するフェイトに気付き、光太郎は考えを止め内心を語った。 「…俺は怖いんだ。ゴルゴムの時も、クライシス帝国と戦った時も、俺は大事な人達を守れなかった。信彦もおじさん達も…俺は、またいつか同じような敵が現れた時にヴィヴィオから家族を奪い去ってしまうんじゃないかって不安が、消えないんだ」 一度言葉を切る光太郎の憂いに満ちた顔をフェイトは信じられない面持ちで眺めながら、人目につかない適当な場所に降り立った。 「それでも関わりを完全に絶てないのは、俺が臆病だからだ。覚悟したつもりでも、まだ一人になるのは耐えられない…」 まだ先輩達のようにはなれないのだと自嘲気味に語る光太郎にまだ困惑しているフェイトは、その場で上手く言葉を返す事が出来なかった。 自分が全て無くしたと思った時になのはが手を差し伸べてくれた。 そうして親友になった。なのはのようにはうまく出来ないと落ち込むフェイトを見て光太郎は誤魔化すような笑みを浮かべた。 「すまない。年下の女の子に言うようなことじゃあなかったな。ヴィヴィオが望んでくれるのは嬉しいけど、悪いな」 * その頃フェイトと同じく一般人に混じって光太郎を眺めていたスカリエッティは、チェーン店のコーヒーを飲みながら先ほどの光景を思い出して恍惚としていた。 まだどこか別のところを見ているような目を隣に座るセインと何故か最近口うるさいチンクに目を向ける。 「チンク、今の映像は後で入手できるかね?」 尋ねられたチンクは眉間に皺を寄せ、ずずーッとカフェラテを一息に飲み干してからスカリエッティを睨みつけた。 「ああ。それは出来ると思うが…ドクター、本当に爆発するなんて聞いてないぞ!」 「何を言っているんだね。私は危険はないと言っただけさ。対応が間に合ったりして爆発しないとは言っていないよ」 「いいや言った! 何度も確認したじゃないか!」 「そうだったかな? それはすまないね」 スカリエッティはどうでもよさそうにそう言うと、今回の成果を整理し始めたのかニヤニヤしながら明後日の方向を眺め始めた。 適当な手駒がなかった事もあり、わざわざ横流しされたレリックを管理局に返還し、爆破させた目的は達成されたのだ。 もうこの場に留まる理由は無かった。 未だ見ていないRXの能力を見ようとしてまさか不定形のゲルっぽい物体に姿を変えて高速移動するとは…予想の斜め上どころではなかったが。 「…まあいい。先ほど光太郎は私達に気付いたかもしれない。早く戻りましょう」 「ああそうだね。ちょっと熱心に見すぎたらしい」 全く悪びれないスカリエッティを殴り倒そうかと真剣に考えて拳を震えさせるチンクの手を、苦労してるなぁと他人事のように乾いた笑いを浮かべたセインが掴んだ。 どうしようもない男だとは思うが、流石に手を出すのは拙い。 「じゃあ行きますね」 セインに抱えられ、床に沈んでいく男を見送って店内で一斉に安堵のため息が零れた。 薄笑いを浮かべたまま体にぴったり張り付くボディスーツを着た幼女と少女を連れた白衣の男がいなくなっただけで、店内は全く別の店になったかのようだった。 前へ 目次へ 次へ
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「彼とルーテシア達を会わせてはいけない」 無駄な物はおろか物自体が殆どない研究室の中央で、集めたデータを解析していたスカリエッティは白衣から伸びた腕を、指先をせわしなく動かしながら、傍らの美女に言った。 青紫の髪に、金色の瞳。彼の特徴を色濃く受け継いだ最初の作品"ウーノ"は冷めた目で創造主を見つめた。 光太郎を変身させてから更に数日が過ぎていた。 今度こそ光太郎の、クライシス帝国の改造人間と同等以上の性能のデータをスカリエッティは熱心に行っている。 今日も朝から光太郎に変身してもらい、その場でジャンプさせたり走ってもらったり、あるいはこの世界の武器を使わせてみたりと、様々な実験が行われた。 「それは、光太郎が知ったら暴れだすからでしょうか?」 「暴れる? いやいや、」 長年の助手の言葉を鼻で笑い、スカリエッティは両腕を広げ、天井へと手を伸ばした。 スカリエッティの指示で、無機質な光源から太陽光と同じ成分の光を放つ物へと変えられた―光をスカリエッティは仰いだ。 「彼のことだ。我々を皆殺しにするかもしれない」 愉しそうに言うスカリエッティに困惑を表に出したウーノは、手元に表示される画面へと目を落とした。 もうドクターの悪い言い方をすれば変態趣味には慣れていたが、スカリエッティがなぜそんなに嬉しそうに言うのかが理解できない。 「ドクター、一つお伺いしてもよろしいですか?」 「なんだい?」 「ドクターが、どうしてそんなに喜んでおられるのか私には分かりかねますわ」 取得したデータを解析するスカリエッティの傍らでデータの整理などを行っていたウーノはその殆ど全てのデータを見ることができた。 いや、数値に変えて見る必要もないほど記録された黒曜石を思わせる外皮を纏う怪物は圧倒的だった。 記録された光太郎=RXの姿は意外なほどスマートだ。 バッタをモチーフにしたらしい高身長かつ、鎧の様な外皮を持つ手足は長くて、一見細身に見える。 だが光太郎は単純な早さだけを言っても、ウーノの妹の一人であるトーレのISに迫る数値を早さで走り抜け、外皮もディエチの砲撃を受けても意に返さない耐久力を持ち…何より恐ろしいまでの破壊力を内に秘めていた。 はっきり言ってしまうと、現状のウーノ達では正面からでは相手にならないほどだと一目で分かる。 辛うじて単純な早さでは姉妹の中では最速のトーレが上回っているが、トーレは遠距離よりも接近戦を得意とする。 接近すれば、光太郎はトーレをカウンターで粉々にしてしまうだろう。 そんな手合いだということをスカリエッティが理解していないはずはないのだが、光太郎の変身した姿を見てからスカリエッティはウーノの目から見ても異常なほど機嫌が良かった。 今も、鼻で笑う直前、スカリエッティはウーノが質問したこと自体が変なことだとでも思っているのか、目を丸くしていた。 光へと手を伸ばすのを止めたスカリエッティは喜悦で輝く目を変身した光太郎の姿が映るモニターへと転じた。 「私は自然と科学が融合しているモノにグッと来るのさ。光太郎に施された改造は自然に対する畏敬の念を感じる…」 そう言って、スカリエッティは困惑するウーノを見た。 「私と方向性に違いはあるが……彼の製作者には私と同じ愛を感じずにはいられない」 「私は彼のようにされなくて大変感謝していますわ」 「おや? それは残念だ。彼を参考に変身機能を新たに加えようかと思っていたのだが」 「絶対やめてください。流石のあの子達も泣いてしまいますわ」 ふむ…と呟いてスカリエッティは肩を竦めた。 変身途中の、醜悪な姿を見ているにも関わらず、スカリエッティはウーノ達が嫌がるとは露とも考えていなかったらしい。 スカリエッティの様子からそれを感じ取ったウーノは、青白くなって体を硬直させた。 これまで聞いたことがなかった、うっとりとうわ言めいて聞こえる創造主の口調に困惑から戻りつつあるウーノの顔は、胸中から噴出した嫌悪感に覆われていた。 冗談ではない…! 最良の味方となるか、最悪の敵となるか。 それまで、ウーノは光太郎との関係はそのどちらにするか最終的な判断は下していなかった。 だがそのスカリエッティの態度を見て、ウーノは光太郎を敵とすることを心に決めた。 「ドクター、やはり…彼を処分することを進言します」 「ほぅ…何故だね」 「危険すぎます。彼は決してドクターと相容れないタイプの人間です」 「それがいいんじゃないか!」そうだからこそ焦がれているのだと言わんばかりに、スカリエッティは芝居がかった口調でいい、熱い視線を映像に映る黒いバッタ男に向けた。 スカリエッティはウーノの考えを全く気付こうともせずに、楽しそうに研究に戻っていた。 光太郎にデバイスを持たせてみたらどうなるか真剣に考えているらしく取得したデータを整理しながら、魔導師の杖『デバイス』の設計図を引いていく。 高価なパーツを惜しげもなく使おうとしているスカリエッティに、ウーノの表情は曇っていく。 対照的な表情で作業を進めていたスカリエッティの手がまた停止した。 「あぁそうだ。ウーノ、スポンサーにお願いしていたプロモが届いたのだが…光太郎は今どこかな?」 「クアットロからの報告によれば、トレーニング中です」 「ほぅ…?」 興味深げにスカリエッティが言うと、間をおかずにウーノが光太郎がいる部屋を幾つか表示させた。 光太郎は動きやすい、スカリエッティがナンバーズ用に開発した服と同じ素材で作った肌着と羞恥心に負けてズボンを履いている。 腕立て伏せをする光太郎の背中には、先日光太郎が戦ったカプセル型の機動兵器が本来は敵を捕縛する為の魔法、バインドで括り付けられていた。 更にその上で…足を組んだクアットロがあくびをしているのを見てスカリエッティは少し噴出した。 その傍では、チンクがルームランナーの上で走っていたり、任務を与えていなかったウェンディも光太郎の様子を口を開けて眺めているようだ。 「ドクターも一緒になさいますか?」 「いやいや、遠慮しておこう」 そこは元々は、スカリエッティがウーノに対して持つ幾つかの不満点の最たるものを具現化した部屋だった。 研究をする為の場所とはいえ、スカリエッティは生身の人間。 使わなければ衰えていく肉体を維持すること、ストレスの解消等運動を行った方が良いというのが彼女の考えで、その為にいつの間にか作られてしまった。 スケジュールにも加えられ、スカリエッティもその部屋には週3回は通わされている。 自分が使っているものと同じ機械を使っているとは思えない速さで動いているルームランナーを極力見ないようにしながら、スカリエッティは光太郎の様子を観察し始めた。 * ウーノが仮面ライダーになった妹達の姿を想像し拳を握り締めていた頃。 光太郎はチンクと、何故かその日はクアットロにまで付き添われながら体を動かしていた。 ついでに体を動かしていたチンクは、光太郎の上に乗った機動兵器の更に上で足を組むクアットロに片方が眼帯に閉ざされ一つしかない目を向けた。 「…お前がいるなんて珍しいな」 「私も嫌だったんだけどぉ、ウーノ姉様にお願いされちゃって…一緒に監視しなさいって」 「監視…?」 クアットロは顎で自分の下。黙々と腕立て伏せをする光太郎を示す。 自分の能力が疑われたような気がして、チンクは不満げな顔を見せた。 「私一人では不十分だと…いや、すまない。これは姉上に直接尋ねることだな」 はぁ、とチンクはため息をつくと走るのを止めた。 姉達の会話を他所に、ウェンディは黙々と姉の下で腕を曲げ伸ばしする光太郎に声をかけた。 「光太郎さん。ちょっと質問があるッス」 「…なん、だい?」 顎から汗を落としながら、光太郎は少し苦しげな顔をウェンディに向けた。 ウェンディはその横に行って屈むと好奇心で光る目をして、光太郎に聞いた。 「光太郎さんって全身改造された改造人間なんッスよね? 体鍛えて意味あるんッスか?」 ウェンディも強化され、機械を埋め込まれた肉体を持っているが、鍛えることは出来る。 だが、光太郎の肉体はスカリエッティの技術とは完全に異なる技術で全身を改造されていると、ウェンディは聞かされていた。 創造主の言葉を無条件に信じてはいたが、先日それを怪物の姿になるという信じられない方法で見せ付けられ、ウェンディは光太郎に興味を持つようになっていた。 「確かに、俺の筋肉は人口的なものだ。だけど、…鍛えれば鍛えるほど、強くしなやかになる」 命を懸けた特訓を行い、改造された肉体に設定された限界を超え戦い続ける先輩達の姿を思い浮かべながら光太郎は答えた。 返事を返した光太郎は自分の上に乗ったクアットロに呼びかける。 「クアットロ! ありがとう、そろそろ降りてくれ!」 「はぁい」 詰まらなさそうに返事をし、クアットロが光太郎の背中から飛び降りる。 バインドも解除され、自由になった機動兵器が退いてから、光太郎は立ち上がった。 光太郎を極力見ないようにしながら、クアットロが提案する。 ウーノの言いつけでかれこれ何時間かつき合わされていたクアットロはうんざりしているようだった。 「じゃあそろそろお風呂にでも…」 「それなら、先に行っててくれないか。俺はもう少し体を動かしておきたい」 「まだやる気なの?」 汚いものでも見るように眼を細めるクアットロに頷き、光太郎は離れていく。 「ああ」 トーレ達が模擬戦闘も行えるよう広く取られた部屋の隅に、申し訳程度に置かれていたスカリエッティ用の運動器具から離れ構えを取る。 うんざりした顔のクアットロを無視して、空手を基にした型を光太郎は黙々となぞっていく。 ウーノからの言いつけで、一時間以上前に同じ事をするのを見ていたクアットロは心底疲れたようにため息をついた。 「ウェンディちゃん、貴方代わってくれないかしら?」 「クアットロ。自分が嫌な仕事を妹に押し付けるなんて、感心しないぞ」 「いいッスよチンク姉。あたしもまだここにいるッスから」 「そうよね! 本当ウェンディちゃんはいい子で助かるわ」 仕事を押し付けて、晴れ晴れとした顔で部屋を出て行くクアットロをチンクは不満げな顔で見送り、ウェンディに謝る。 「すまないな」 「あたしはノーヴェみたいに光太郎さんが苦手って事もないッスから。何ならチンク姉も休憩してきていいッスよ?」 妹からの提案にチンクは困ったように眉を寄せた。 「姉が妹に仕事を押し付けるわけにはいかないさ…ノーヴェは光太郎が苦手なのか?」 「んー? なんか、顔赤くしてどっか行っちゃったッス」 「変だな…二人の間に何かあったか?」 釈然としない返事にチンクは首を傾げた。 チンクはできれば光太郎と姉妹達が仲良くなればいいと思っていた。 漂流者であり、自分の意思とは関係なく改造された人間である光太郎にチンクは同情しているからだ。 世話をする内に情が移ったといわれればそれまでだが、創造主であるスカリエッティも好意的な態度を見せていることだし、このまま自発的にここにのこるようになればよいと思ってた。 「さあ…? あたしにはよくわかんないッス」 これ以上は本人に尋ねるしかないらしい。 チンクはそれ以上深く尋ねはしなかった。 教育を担当したノーヴェのことはある程度は理解しているつもりだった。 だから変身した姿が生理的に受け付けないらしいクアットロとは違うと断言することは出来たが…思い当たる節はなかった。 スカリエッティから世話役と監視役を命じられ、姉妹達の中では光太郎と最も長く一緒にいるが、二人は余り顔を会わせたこともない。 「私の知らないところで何かあったとも思えないが…」 呟いてチンクは考え込む。 ノーヴェも光太郎も周りが普段考えているよりもデリケートなところがある。 特に光太郎は、戦っていた時に何かあったのか、一人になると思いつめたような顔でジッとしているらしい。 彼女が姉のウーノから聞いている話では、光太郎の方も持っている情報を全て打ち明けたわけではないので詳しくはわからないが。 加えて、光太郎に与えられている彼女達の情報は極僅かだ。 まだ管理世界の一般的な事柄についても知らない光太郎に教えても仕方がないと言うこともあるが、スカリエッティが自分の楽しみとして口止めをしている。 それらのせいで軽い行き違いがあったのかもしれない、とチンクは考えた。 「チンク姉、どうかしたッスか?」 「スマン、考え事をしていた」 チンクは慌てて首を振ると、呼吸を整えている光太郎に呼びかける。 「光太郎ッもういいか!」 「え? あ、ああ…」 「ではもう行くぞ」 チンクはそう言うと二人に背中を向けて歩き出す。 ウェンディもその後に続いて歩き出し、三人は風呂場へ足を向けた。 「二人は先に行っててくれないか? 俺はそれより先に何か飲みに「洗浄してこい」 「べ、別にいいだろ。風呂は寝る前にでも…「ちょっと臭うッス」 二人から冷たく言われ、光太郎は顔を顰めて黙り込む。 確かに汗はかいているのはわかるが流した水分を補給しい光太郎は、納得の行かない顔で後に続いた。 姉のウーノが放っておいたら研究室に篭りっぱなしのスカリエッティの衛生管理に手を焼く様を見て過ごしてきたせいか二人は存外に綺麗好きで、この手の話で譲ることはないからだった。 特に目印もない殺風景な通路を三人は無言で歩いていく。 『光太郎、少しいいかね』 「なんだ? 悪いが今日はもう実験に付き合うのは勘弁してくれよ」 無言で風呂場に向かうのに、辟易していた光太郎は警戒心から表情を引き締めて足を止めた。 目の前に現れた画面の中でクアットロそっくりの笑みを浮かべたスカリエッティは言う。 先を歩いていた二人も足を止めて、スカリエッティの言葉を待った。 『君に見せたいものがあるんだ。後で私の部屋に来てくれ』 「……わかった。すぐに行く」 頷く光太郎にチンクとウェンディは揃って咎めるような目をした。 誤魔化すような笑顔を作る光太郎に、スカリエッティも一人満足そうに頷き、通信を切る。 だが、切れたと思った瞬間、新たな通信画面が光太郎の目の前に開く。 今度は、スカリエッティではなく、同じ部屋にいたウーノからだった。 ウーノはすぐには何も言わず、光太郎の服装と妹達の顔を見てから口を開いた。 『光太郎。貴方、今まで運動をしていたはずですけど、お風呂は?』 答えをわかっていて尋ねるウーノの口調は冷たいものだった。 「…今からだ」 『わかりました』 ばつが悪そうに言う光太郎に、ウーノはため息をついて言う。 『では一時間後にこちらに来てください。ドクター、それでも構いませんね?』 『ん? あ…う、む。構わないよ?』 『では後ほど。飲み物を用意してお待ちしていますわ』 一方的に話を進めてウーノは通信を切った。 姉の手際に、チンクが感心したように頷いているのを見て光太郎は少し肩を落とした。 それを見たクアットロが鼻で笑い、改めて歩き出す。 程なくして着いた風呂場では、ウーノにより脱衣所には新しい服が用意されていた。 恐らくは入浴後の飲み物も脱衣所の隅に設置された冷蔵庫の中に入っているのだろう。 無頓着なスカリエッティの為に調べられ、普通に発注するわけにも行かずに機械の手で作られた無駄に広い浴場で光太郎はため息混じりに服を脱いでいった。 流石に男湯と女湯を分けてはいなかったが、小さな銭湯程度の広さはある風呂場から上がってくる湯気と聞こえてくる水の流れる音に急かされ、タオル片手に歩き出す。 この後、待たせているナンバーズの二人も入るのだろうと、(物によって洗い方が違うらしい)複数の自動洗濯機に脱いだ服を分けて投げ込んだ光太郎は、風呂場に入っていった。 だが源泉掛け流しの湯船には向かわず、十二、三個ほど並んだシャワーの一つへとその足は向けられた。その後ろで、扉が閉まる音がする。 今後増えていくナンバーズが全員同時に入る事態も考慮された湯船は広く、光太郎は少し落ち着かない。 待たせているのだからと、光太郎はシャワーだけを浴びて、引き返していく。 しかし、勝手に閉じられた扉は開かない。鍵が掛けられたのか? 破壊するわけにも行かず光太郎は途方にくれる。 だが破壊したり、変身して通り抜けるような気にもなれない…光太郎は諦めて源泉溢れる湯船へと向かった。 パシャパシャと微かに硫黄の臭いがするお湯が跳ねた。 湯に浸かり、頭にタオルを乗せる。思わずまた、ため息が出た。 「まぁ、仕方ないよな…」 「そうだね。裸の付き合いと行こうじゃないか」 ぼやく声に返事が返され、扉が開く。 全裸のスカリエッティがタオルも持たずに現れた。 何も返す気にならない光太郎が黙っていると、薄ら笑いを浮かべたスカリエッティは同じようにシャワーを浴びて、「ウーノがうるさくてね」と髪と体を丹念に洗ってから光太郎の隣に入ってきた。 「待つよりもこの方が早いと思ってね」 スカリエッティは悪戯っぽく笑って言うと、湯船に体を持たれかけた。 そして、思い出したように光太郎に冷えたペットボトルを一つ渡す。 「飲むといい。外にいたチンクからだ」 「すまん」 素直に礼をいい、受け取った光太郎はペットボトルの中身を一気に飲み干す。 喉を通っていく液体は、レモンの匂いと地球で飲んだスポーツドリンクと似通った味がした。 飲んだ瞬間スカリエッティがニヤリとしたせいで、成分には不安が残るが懐かしい味だった。 「ふぅ…生き返るな」 「ふむ…君は生きるのに水を必要とするのかね?」 「ん? どうかな? 変身している間は太陽の光があればどうにでもなるが…」 「ほぅ…それは素晴らしい機能だね。私も再現してみたいものだが」 スカリエッティは感嘆の声を上げて視線を宙へと彷徨わせる。 「…今日そう言ったらウーノには全否定されてしまったよ」 「当たり前だ!」 声の調子を落として言うスカリエッティに光太郎は苦笑を返し、真剣な目をして己の掌を見つめる。 お湯でふやけた手。空手の練習で皮が厚くなり、ごつごつとした手にBLACKの、RXの指を幻視する。 険しい表情で拳を握り締める光太郎をスカリエッティは頭にタオルを載せながら眺める。 「彼女達を作るのも、俺は感心しない「光太郎、それについてはこれを見てくれたまえ」 「これは…?」 「君が信頼できる人物だとわかったのでね…」 光太郎の言葉を遮るようにスカリエッティがお湯を零しながら合図をする。 すると、どこかでウーノが見ていたのか、壁の一角が突然モニターへと姿を変えて、映像が流れ始めた。 「私の仕事を、君に明かそう!」 彼の円形の研究室の一角を占める程無駄に大きいモニターよりは少し小さい画面には少女の姿が映った。 「これが私が生み出され、スポンサーがついた理由だ。実は…管理局の優秀な魔導師が不手際を起こした例は少なくない…!! 人手不足だからと犯罪者さえも勧誘し、優秀な才能の持ち主だからまだ幼い少年少女を局員として働かせるのだから当然の結果だろうね」 スカリエッティの言葉に、光太郎は愕然とした。 「馬鹿な…そんな酷い話が許されるのか!」 「この子も当時まだ小学生だったそうだ」 まだ学生…つまりは子供をこんな災害現場に送るなんて…「おのれ、管理局…!」 湧き上がる怒りに突き動かされそう呟く光太郎。 その台詞に噴出しそうになるのを堪えながら、スカリエッティは説明を続ける。 「フ、フフフ。人手不足だ。大局的にと言えば許されるのが現状なのさ。実際、見てもらえばわかるが力量はある」 そう言ってスカリエッティが合図を送るとその少女が白いバリアジャケットを着て、桜色のビームを放ち敵を粉砕していく姿が映し出される。 子供を利用することに怒りに震える光太郎の目の前で、強力な魔法が幾つもの事件を解決していく…光太郎は直ぐには言葉が出なかった。 「凄まじい力だろう? 私は彼女らの力を借りなければならない現状や、頻繁にこんな状況に陥る現場を嘆くスポンサーからの依頼を受けて戦闘機人計画に協力しているのさ。ウーノ達の力は、慢性的な人員不足に陥っている管理局には必要な力というわけだ」 「そう、だったのか…」 嫌な予感はしたものの、光太郎は掠れた声で呟く。 小学生のような少年少女らが、笑顔の大人達にに見送られて危険な現場へ向かう姿は現実感が薄く、光太郎にとっては異世界に来て以来最大の衝撃だった。 熱い湯に浸かる体の芯が、冷えきっていく。 「もう少しで、もう2、3年も時間をかければ完全に運用できる所までこぎ着けることが出来るだろうねぇ。だが…」 呆然とする光太郎を嬉しそうに眺めた後、スカリエッティは芝居がかった仕草で嘆いた。 映像には、都合よく事件に巻き込まれ運ばれていく負傷者の姿が映っていた。 「だがこんな彼女らにはもう任せておけないのでね。そろそろ我々も動かなければならないと常々感じているのだよ」 「…何が言いたい?」 「私に協力してはもらえないかね? 私の戦闘機人ではまだまだ心元なくてね。君が協力してくれると非常に助かるんだが…」 またウーノに合図を送り、映像の中から施設の壁をぶち抜いて目的を完遂する幼い魔導師の姿が映し出される。 拳を握り締める光太郎の腕に浮かび上がっていく血管を見て、スカリエッティは細かい所まで違和感のない擬態をさせる『クライシススゲー』と内心感嘆した。 実際は地球―made in ゴルゴム製が太陽の光を浴びて自己魔改造したものなのだが。 気を落ち着けようと深く深呼吸した光太郎は、湯に浸かりなおして思い悩み眉間に皺を寄せた顔でスカリエッティを見た。 「俺は…この世界の事には関りたくないと思っている。今の話にしても、元の世界に帰るつもりの俺が、片手間に関わっていい話しじゃないだろう?」 体を抱えるように、光太郎は自分の考えを再考しようと流れ続ける映像へと再び目をやった。 返事は嘘に近かった。 拝み倒され、実験に付き合っておいて今更と取られるのを嫌い、もっともらしいことを言ったに過ぎない。 光太郎の心は、今はまだ戦いに赴く事が出来るような状態まで立ち直る事が出来ないでいた。 子供が戦っている姿を見せられても、こちらの慣習だと言って逃れようとするまでに…否定的な言い方をするならば、弱くなっていた。 光太郎の心情を汲み取ることができないスカリエッティは、そんな光太郎を鼻で笑った。 「私はそうは思わないがね…まぁ気が変わったら協力してくれたまえ」 「ああ…」 光太郎が今言った理由が断った本当の理由ではないことだけは理解したスカリエッティは、肩を竦めて風呂場から出て行く。 シャワーで汗を流し、コーヒー牛乳を腰に片手を当てて飲み干すスカリエッティを深刻な顔をしたまま光太郎は見送った。 風呂上りの一杯もせずに悩み始めた光太郎を見てスカリエッティは笑い、飲み干した瓶を置いて風呂場を出て行く。 残された光太郎は、痺れを切らして脱衣所に進入してきたトーレにいい加減にしろと叩き出されるまで悩み続けていた。 今光太郎が見せられた映像は、当然ある程度印象操作した映像に差し替えられている。 勿論スカリエッティもこんな子供だましで光太郎が完全に騙されるとも思えなかったが…戦闘機人を作っている理由などは嘘ではないし、RXキックを顔面に叩き込まれるようなことにはならないだろうと踏んでいた。 光太郎には行く当てもないのだから時間は十分にあると考えていたのだ。 デバイスを用意して『改造人間も魔導師の適性があるのか?』など試して見たいことは山ほどあり、スカリエッティの方から手放すことなどありはしないのだから。 だが、スカリエッティのその実験は結局行われることはなかった。 デバイスの完成を見る事もなく、一週間後。光太郎はスカリエッティの元から去った… 二人の間に諍いが起こったのではない。 光太郎の待遇はスカリエッティらしからぬ厚遇だったし、光太郎も基本的には協力的だった。 ナンバーズの何人かとも、より仲良くなろうとしていた。 だがちょうど一週間たったその日…日が沈み、太陽の光が完全に消えたのを確認したかのようなタイミングで、事件が起きた。 光太郎はその時一人で空港にいた。 自分の抱えていたトランクから瞬間的に発生した凄まじい熱量に身を焼かれ、叫び声をあげて彼は膝を突いた。 クライシス帝国とゴルゴム。二つの戦いの中で受けた攻撃とは種類の異なる力、魔力が…深いダメージを負おうとしている光太郎の体を強制的に変身させ、一瞬遅れて放たれたキングストーンの輝きが、光太郎を保護する。 変身を遂げた光太郎の体は、自分を消滅させようとする魔力衝撃波にも耐え切り、回復を促していく。 変身前に受けたダメージから片膝をついていた光太郎は、地面についた己の黒とオレンジ色の手の異変に気付いた。 トランクを抱えていた指が消滅している。体も焼け爛れていた…だがキングストーンに秘められた再生能力によってそれも癒えていく。 周囲の物質が消滅していく最中を、失われたはずの指が伸びて容易くかきむしった。 破壊的なエネルギーを放つトランクの中身、巨大な宝石のように見えるロストロギア『レリック』が、秘められたエネルギーを一瞬で使い切り消失する。 そのお陰で、光太郎は少しだけ落ち着きを取り戻した。 片膝をついた状態で変身を遂げた光太郎の真っ赤な複眼から、赤い腺が一本涙のように金属の質感を持つ頬を伝っていた。 体を覆っている皮膚はRXのものではない。耐熱・耐衝撃性に優れた金属質の装甲、ロボフォームがロボット然としたラインを作り出していた。 黒とオレンジ色を基調とした、『悲しみの王子』ロボライダーの姿だった。 RXでは体を襲う耐え切れないと感じたのか…この惨状を本能的に感じ取った光太郎の嘆きがこの姿を取らせたのかは、光太郎自身にもわからなかった。 キングストーンに秘められた力が必要になる程のエネルギー衝撃波は、周囲の光景を一変させていた。 光太郎の周囲だけが綺麗にえぐり取られ、円形の窪みになっていた。 どういう理屈なのか想像もつかないが、エネルギーの殆どは暴走したレリックの周囲10メートル程に集束していたようだ。 だがその分、光太郎が受領することを頼まれたロストロギアのエネルギーは一定の空間に存在した物質を根こそぎ消滅させていた。 その余波でさえ、大規模な火災を一瞬で引き起こしす程で、溶け固まった床や壁が辺りを包む炎に照らされて煌めいている… 所々、人の影の形に黒ずんだ跡が残り、外周で炎の中に、炭化した人の像が崩れ沈んでいくのが見えた。 光太郎はもう一度叫んでいた。 自分が預かったトランクの中身が暴走する瞬間に自分の周りにいた人々の姿が脳裏に浮かび上がり、光太郎を苛んでいた。 その間にも余波が生じさせた火災は燃え広がり、さらに拡大していく…ロボライダーの体には何の影響もない火災に巻き込まれ、苦しむ人々の声が光太郎の叫びを止めた。 「アクロバッター! ライドロンッ!」 クロノに預けた相棒の名を叫び、光太郎…ロボライダーは立ち上がる。そして声に向かって走り出した。 炎を吹き飛ばし、ひび割れた床を踏み砕く勢いでまだ生き残っている人々の下へとロボライダーは急いだ。 ライドロンとアクロバッターが、自分の下へと向かってくるのを感じる。 アクロバッターは、光太郎の変身に応じてロボイザーへと姿を変えてロボライダーの下へと辿り着こうとしていた。 不思議だったが惨状を見る限り、10メートルも離れていれば一瞬で消し炭にされるようなことはないらしい。 拳の風圧で炎を消し飛ばし、壁を破壊して光太郎は人々の救助を行っていく。 (何故こんなことが起きた?) 救助に専念しようとする光太郎の頭には疑問符が浮かび続けていた。 受け取ったトランクは厳重に封印されているという話だったはずだ。 そう、共に受け取りに来ていたクアットロは言っていた。 (突然暴走を起こすような代物なのか?) そのクアットロの存在が今空港内に感じられないのは、彼女が死んでしまったからなのか? それでもおかしくないはずだ。 だが、光太郎はどうしてもそう考える事ができなかった。 最後の生存者である改造人間の姉妹をライドロンに乗せて送り出し、一人火災の中に残った光太郎の頭には嫌な考えが浮かび上がろうとしていた。 ことの始まりはウーノだった。 彼女に頼まれ、ロストロギアを受け取る為に光太郎はクアットロと一緒にこの空港にやってきた。 彼女等のことが、どうしても引っかかる。 ロボライダーの姿のまま、現場に一人残された光太郎は救助に向かう間とは似ても似つかないおぼつかない足取りで歩き出した。 頭の中は、この件を頼みに来た二人の姿と彼女等に対する疑いで占められていた。 『光太郎。一つお願いがあります』 スカリエッティの研究に協力した光太郎の前に、ウーノがクアットロだけを連れて現れた。 ウーノから頼まれたらしいクアットロが、渋々と言った様子で言う。 『ウーノ姉さまの頼みよ。私とある空港まで荷物を受け取りに行ってくださらない?』 『いいぜ。でも二人がそんな頼みをしてくるなんて珍しいな』 普段なら通信で済ませるような内容を伝えにわざわざやってきた二人に、内心首を傾げたが…光太郎は二つ返事で引き受けた。 そうして、笑顔を見せた光太郎と顔を引きつらせたクアットロは二人でこの空港にやってきて、空港はレリックの暴走により火の海に包まれた。 証拠はない。 だが、ゴルゴムが起こした事件に関わった際の直感と同程度の確信を持って、光太郎は彼女等の仕業だと確信していた。 回想する光太郎は、強制的に自分の体を冷凍しようとする力を感じ、我に返った。 誰かが使った大規模魔法が、考えに耽っていた光太郎ごと辺り一帯を急速に冷却していく。 自分のいる区画も含め、燃え上がる空港の幾つかの区画が凍り付いていくのを、光太郎は呆然と眺めた。 光太郎の超感覚は、誰がそれを行ったのかを光太郎に正確に感じ取らせていた。 まだ学生の枠を出ない女の子が一人、杖を振るった体勢のまま浮かんでいた。 その周りに数名の大人の魔導師もいたが、彼らでないこと位はわかる… 先日、管理局へ怒りを覚える原因となった少年兵に自分の不始末の後処理までさせている。 ロボライダーとなった肉体になんら影響のない程度の環境であることは変わらないというのに、見上げていた光太郎は冷凍され…炎が遠ざかったせいか更に冷静さを取り戻していく。 超感覚が捉え続けている空港内の惨状が、よりクリアになって光太郎の心を揺さぶった。 苛立ちに、自己嫌悪と行き場のない怒り。 あるいは悔恨に…複雑な感情に全身を震わせながら、光太郎は表情の変わらない仮面の内で己の間抜けさを呪った。 真相を確かめなければならない。 ウーノ達に嵌められたのか? 彼女らと共に過ごした時間が、彼女らを疑う光太郎自分を咎めたが…まずはそれを確かめなければならない。 その様子を感じ取ったのか、壁をぶち抜いてロボイザーが光太郎の前で停止する…未だ半分以上の区画が勢いよく燃え盛るミッドチルダ臨海第八空港から、ロボイザーが光太郎と乗せて走り出した。 ロボイザーが静かに音速を超え、闇夜を駆け抜けていく。 不思議なことが起こっているのか、巻き起こる衝撃波で周囲に傷跡を残すこともなくその姿は何処へと消えた。 だが、光太郎がスカリエッティの研究所にたどり着いた時既に、身の危険を感じたスカリエッティも事態が掴めないまま姿を消していた。 そうして後には、もぬけの殻となったスカリエッティの研究所の壊滅と膨大な被害者。 救助された者達の記憶に、マスクド・ライダーの姿が残った。 前へ 目次へ 次へ
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男は逃げていた。 一仕事終えて、いつも通り管理局も撒いた。 構成員の殆どがB未満に過ぎない陸士相手なら、準備さえ怠らなければこの男にとっては対処できない相手ではない。 その日もせいぜい空の連中が出てこない程度に稼ぐだけの予定だった。 準備は万端。彼が根城とする廃棄都市の一角まで予定通り逃げ込み、このまま廃ビルの間に出来た狭い道を抜ければ…だが、路地に入った彼の背後に何か降り立った。 「目の前で罪もない人々を襲い、強盗を働いた貴様を放ってはおけない」 男は何も言わずに振り向き、魔法を放つ。 だが、直撃するはずだった青い魔力の光は暗闇の中で微かな光を反射する艶っぽい真っ黒なボディスーツの上を流れ、空中で弾けて四散していった。 四散する魔力の光に照らされて表情のない、昆虫めいた不気味な仮面が廃墟の影に浮かび上がる。 大きな、血のように赤い眼が爛々と光っていた。 「自首しろ」と得体の知れぬ怪人は言った。 「まさか…う、海の連中か!?」 自分の魔法を受けても平然としている怪人に恐れをなした男が叫んだ。 焦り始めた男の頭に思い浮かぶ魔法を苦もなく弾くバリアジャケット、あるいはそんな皮膚をした化け物が所属する組織はそこしか浮かばなかったからだった。 「才能がありゃ犯罪者でも子供でも構わず引き入れてこき使うゲス野郎共に言われたくねぇな!」 「犯罪者でも…?」 だがそう思い込んだ男が得体の知れぬ存在に対する恐怖を、怒りで塗りつぶし歯をむき出すと、怪人は訝しむようにそう呟いた。 怪人の言葉を白々しく感じた男は逃げる機会を窺いながら舌打ちした。 「……知らねーとは言わせないぜ」 「……おい、今の話。詳しく聞かせてくれないか?」 「…! まさか。あんたも騙された口か?」 男は嫌悪も露に怪人を睨みつける。 沈黙する怪人も被害者なのかと勝手に思い込んだ男は、警戒を若干和らげて廃ビルのひび割れた壁にもたれかかった。 遠くを見るような眼で語り始めた。 「数年前、闇の書事件ってのがあった。で、俺の兄貴は巻き込まれ魔導師を廃業する羽目になっちまった」 腹の中に溜まりきっていたのか男は饒舌だった。誰かに聞かせたかったのかもしれない。 内側で淀んでいた思いを口にする男の顔には苦い笑みが広がっていた。 「管理局が保護するとか言われて俺達は管理局の保護下に入った。で、数年して恩義もあったし若干憧れもあってな、俺は管理局に入った。 そしたら…それをやった犯罪者共がエリートコースに乗っかって上官になりやがった。それとなく聞いてみりゃまだあんな昔の話をする奴がいるんだって顔だったぜ」 話を聞かされた怪人はうんともすんとも言わずに佇んでいた。だが何か思い悩んでいるのか、微かに頭は俯いている。 「そんなわけさ。なぁ、事情はわかっただろ? 見逃してくれよ」 「事情はわかった。だが、罪もない人を傷つけるのは許せん」 「そうかよ!」 男は話す間に準備しておいた魔法を壁に放とうとする。 だが、魔法が放たれる直前に、距離を詰めた怪人の甲冑のような皮膚に包まれた拳が腹に打ち込まれた。 「今回だけは突き出しはしない。真っ当に働いて、傷つけた人々に償っていけ」 鳩尾に拳がめり込み、くの字に折れた男の体から力が抜けてから怪人は男がその日仕事で奪い去った金品を抜き取っていく。 その後犯人は捕まらないまま奪われた金品は返されるということが続き、同時に一時的に首都近郊の犯罪件数に変化が訪れた。 だがそれは所詮短期的なモノに過ぎず誰かの目に留まることはなかった。 金品を人目につかない距離から人間を超えた筋力で遠投すると言う強引な手段で返品した後、怪人、光太郎は首都クラナガンを離れ七つある廃棄都市区画の一つへ移動していった。 大きな魔力の動きや自然災害の把握のためにと、一定区画ごとへのセンサー配置が義務付けられているミッドチルダだが、廃棄都市区画は既にセンサーが機能していない区画も多数存在している。 人目を避けて仮の住まいとした廃ビルの一つもそんな区画にあった。 割れたまま放置されている窓から飛び込み、(無意味だが)正体が分からないよう変身する為に脱いでおいた服を拾い上げ、片手に持って光太郎は奥へと歩いていく。 奥からは滝壺のような大量の水が流れ落ちる音が響いてくる…進むに連れて、光太郎の足先をひび割れ歪んだ床に溜まっていた水が濡らした。 そのまま進むと光太郎の手でまだ生きていた上水道の一部を破壊して作り出した滝が見えてくる。 廃棄された区画だが、水質は光太郎が満足できる水準を保っており、光太郎はシャワー代わりにその滝に打たれた。 汚れを落とした光太郎は太陽の光を浴びて食事を済ませる…スカリエッティの元を離れてから既に一月以上が過ぎていた。 ロボライダーの接近を知ったスカリエッティは研究施設をあっさりと放棄し、姿を消した。 光太郎はロボライダーの能力の一つ、ハイパーリンクと呼んでいるハッキングと廃棄された施設の跡からスカリエッティが何を行っていたのかある程度察したのでとりあえず研究所は破壊しておいたが、スカリエッティの真意はわからないまま、ここへと流れ着いた。 まともな食事にもありつけずにいるが太陽の恵みで至って健康、お肌もツヤツヤの光太郎は、肌が乾くのを待って日雇いの仕事で得た金銭で購入した量販店のシャツに袖を通していく。 下着は履かないままパンツを履く光太郎の表情は少し苦かった。 時々首都や廃棄都市の貧民街でIDが存在しない光太郎を雇ってくれる日雇いやアルバイトもあったのだが、事件が起きる頻度が思っていたよりも高く、光太郎が給与を受け取る機会はあまりなかった。 この世界に来て初めて会ったクロノに会いに行くことも考えた。 スカリエッティに光太郎を引き渡したのが彼が所属する管理局でなければ、会いに行っていただろう。 バイト先で電話を借りることは出来るので、一度電話越しにでも話してみようと考えたこともあった。 だが、管理外世界には繋がりませんだのオフィスでは長期航海中ですから伝言をだのと散々だった。 アクロバッターを隠す為に用意してくれたらしい倉庫はこの世界にあったが、アクロバッター達が抜け出したことが騒がれているらしく、二機も戻せていない。 食事を終え、服も身に着けた光太郎は今日捕らえた犯罪者のことを考えていた。ずっと頭から離れずにいる。 光太郎が介入した事件は管理局地上本部の有能さもあり全体のほんの一握りに過ぎない。 その少ないケースの中で今日のような犯罪者は稀だった…既に何人か同じような犯罪者と光太郎は出会っていた。 ミッドチルダの土地柄なのかは光太郎にもわからない。 ただ、管理局が実はゴルゴムや先輩ライダー達が戦っていた組織と本質的に差がないのではないかと言う思いが光太郎の中に浮かんでいた。 瓦礫を積み上げて作った即席の椅子に腰掛け、光太郎は眼を閉じる。 だが直ぐに眼を開き、天井を見上げた。ひび割れたコンクリートに非常に良く似た材質の天井の中を泳ぐものを、光太郎の超感覚は捕らえていた。 「セイン。奇襲する気なら無駄だ」 「あちゃー、ばれちゃいました?」 光太郎に指摘され五メートルほど離れた所から、戦闘機人のナンバーズ6番セインが顔を出す。 空中で回転し、器用に着地する。 笑顔で近づいてくるセインを見つめる光太郎の表情は硬かった。 「何のようだ?」 「ドクターのお使いです。光太郎さん、ウチらの所に戻って来ません?」「ふざけるな!」 怒鳴り声を上げて立ち上がる光太郎にセインは足を止める。 今は人間の姿だが、一瞬で本性を現すことを知っているセインは怖気づき、頬を引きつらせた。 「く、空港でのことなら不幸なすれ違いなんですよ」 光太郎の眉間に眉が寄った。 怒りを露にしたままセインに向かって歩き出した光太郎は硬い声で尋ねた。 「どういうことだ」 「そ、それについてはドクターが説明しますって」 初めて見る剣幕に怯えたセインが大げさな身振りで手を横に振りながら、下がっていく。 床の割れ目に引っかかり、可愛い悲鳴を上げてセインが倒れると同時に二人の間に通信画面が開いた。 『やあ、久しぶりだね』 スカリエッティは一月前と変わらない親愛の情の篭った笑顔を浮かべ、恐らくは新しい研究所らしき場所に立っていた。 自然と光太郎はウーノを探したが、ウーノの姿は見えない。代わりにチンクがウーノが立っていた位置で複雑な顔をしていた。 『一月前は姿を消してすまなかったね。あれが君だとは思わなくて、クライシス帝国の怪人が現れたのかと思ったのだよ』 「あの時のことでお前に聞きたいことがある」 『そうだね。まずは誤解を解くとしよう』 「誤解だと!? あの事件でどれだけの人が犠牲になったと思っている!!」 怒声を上げる光太郎に、スカリエッティはへらへらと軽薄な笑みを絶やさず頷いた。 身の潔白を訴えようとしているのか、胸に手を当てて、『だが事実だ。光太郎、アレは私が仕組んだことじゃない。私は知らなかったんだよ』 「なら、何故アレは爆発したんだ!? 何故、あの場所からクアットロは姿を消した!」 『…そこだけはウーノの企みだったからさ』 光太郎とセイン。スカリエッティの横に控えたチンクは息を呑んだ。 スカリエッティは申し訳なさそうな表情を浮かべて首を横に振る。 しかし、他人事としか考えていないのか誠意は感じられず、ため息ををつきながらスカリエッティは説明を続けた。 『管理局からレリックを受け取るだけの話だったのだが、途中で新たな事実がわかった』 もったいぶるように一度言葉を切り、『反管理局を掲げるテロ集団があのトランクに細工していたのだよ』 「テロ集団…あれが、テロ」 呆然と呟いた光太郎に、理解を求めてでもいるのか悲しげに眼を細めて言う。 『そう!、君達が受け取った直後だ。正にクアットロが君と離れた時…私の耳にはその情報が届いた。タイミング的に災害を未然に防ぐことはできない、 私はそう判断し君達だけでも逃がそうとして、ウーノに連絡するように伝えた』 そこで白衣を翻し、芝居がかった態度で手が振り上げられた。 『だがそこで! ウーノは一計を講じた。君には伝えずに、クアットロだけに帰還するように命令したのさ!!』 「俺に伝えればよかっただろう! そうすれば俺はあれを抱えて、全力で人のいない場所に向かった!!」 『君を確実に消す方を選んだというわけさ。最も、君が外へ運ぼうとした時点でレリックは暴走していたかもしれないがね』 その言葉に、怒りが限度を超え、光太郎の姿を変えようとする。 スカリエッティの金色の目が大きく見開かれた。 歓喜に笑みが広がり、狂ったように笑い出す。 『だがそこまでしても倒せなかった。君は無傷だ!! ク、クク。実に馬鹿馬鹿しい、無駄遣いだと思わないかね? ロストロギア一つ失って、アレだけの惨状を引き起こしながら、 ……素晴らしい性能だよ!!』 そう言って笑い声をあげる。 身を捩り、腹を抱えて笑うスカリエッティと対照的に更に怒りを募らせて「そんなことはどうでもいい!」と、光太郎は握った拳を震えさせた。 「ど、ドクター。それくらいにした方がいいですよ」 いつのまにか立ち上がり、尻についた埃を払いながらセインが言うと、スカリエッティの笑いは止まった。 『ああすまない。まぁそういうわけだ』 画面の向こうで、怒りに震える光太郎に向けてスカリエッティは手を差し出した。 『だからまた仲良くやろうじゃないか………』 だが手を差し出された光太郎の顔には、嫌悪感が浮かんでいた。 「断る…! 貴様の研究を俺は認めることはできん!」 『あぁ、なんだ。知ってしまったのか』 一度手を引っ込めて、スカリエッティはそっぽを向いた。 廃棄された研究所の中で見たもの、そこには人体実験を行い廃棄されたとしか思えないものも残っていた。 何が残っていたかスカリエッティも全ては把握していない。 だが恐らくはそうした部分のことだろうと予想をつけてスカリエッティは反論した。 『だがね、光太郎。私の研究は全て、管理局が欲したものさ』 光太郎の耳には言い訳がましい言葉にしか聞こえない軽薄な声でスカリエッティは言う。 『実験材料も必要だと言った私に彼らから提供されたに過ぎない。幾ら私が天才とはいえ、動物実験をしてみなければ実際の所はわからないからね。むしろ、どのくらい必要か見当もつく私の方が、フフ、他の科学者達よりは遥かに少ない犠牲で事を成してきたくらいさ』 「俺がそれを認めると思うのか!?」 『思わないな。だが、私が悪いわけでもない。ということも君は理解してくれたのではないかね? 君の倒した組織には、無理やり協力させられた科学者もいたはずだが?』 「彼らはお前とは違う。お前は、楽しんでいる!」 叫ぶ光太郎の脳裏にロードセクターを生み出した科学者や、先輩の一人ライダーマンの姿が浮かんだ。 彼らを踏みにじられたように感じた光太郎の体が、怒りによって姿を変えようとしていた。 指摘を受け、スカリエッティは頷き返した。 だが、あくまで仕方なくと青に染まっていく皮膚を眺めながらスカリエッティは言った。 『仕方ないじゃないか。私はそう生み出された存在で、逆らえるはずもない。クク、逃れられない以上、精神を保つにはこうした性格になるか、潰れるかしか道はないのだからね』 嘘は言っていない。半分ほど内容を伏せ、同情の余地が欠片でもありそうな話をしている創造主にセイン達は複雑な表情をしていた。 その拘束から逃れる為の計画を、スカリエッティは長い時をかけて進めている。 最も逃れた後は更に自由に研究をさせてもらうつもりだが…このまま話していても時間の無駄だと思ったのか、スカリエッティは強引に話を戻そうと用意していたプレゼントを披露する。 『私は君のことが気に入っている。その為にあの惨状を引き起こしたテロ集団についての情報も、集めてある。首謀者の居場所もだ』 衝動的に決裂の言葉を叫ぼうとした光太郎は、寸での所で奥歯をかみ締めた。 誤って内側を噛み千切ったのか、光太郎の口内に血の味が広がっていく。 セインはこのまま帰る訳にもいかないが、出来るだけ鬼のような形相を浮かべる光太郎から離れようと更に後ろへと下がり、ISを使うのも忘れて壁に頭をつけた。 『私の顔が中々広いことはわかってもらえていると思う。信憑性は高いよ? ウーノも自首させるか、なんだったら君の手で殺してくれても構わない』 「ウーノは…貴様の助手だろうが!」 『その通りだ。私にとっても手痛い損失だね。できれば自首で許してやって欲しいものだが…君の怒りが収まらないというのでは』 今度もあっさりと光太郎の言を認めて、肩を竦めるスカリエッティ。 『RXキックでもパンチでも気の済むようにしてもらおうというわけさ』 軽薄な笑みを浮かべる通信相手を睨む光太郎の目が視線だけで殺そうとでもいうような、鋭い眼光を放つ。 ウーノの身を心配して光太郎に視線を向けるナンバーズ二人は息を呑んで見つめていた。 「俺は……、俺に裁く権利はない。自首するというなら、そうするがいい! そうして、どうやって罪を償うかを考えろ!」 苦しげに吐き棄てた光太郎を満足げに見やって、スカリエッティは頷いた。 『ありがとう、勿論さ光太郎。いますぐに、とは言えないようだから今回は情報を渡して、また出直すことにするよ。次に連絡を取る時までによく考えてくれ』 姉のことと、自分の身の危険は過ぎ去ったと判断しセインが安堵の息を吐く。 だがスカリエッティはそんなセインを嘲笑うかのように余計な事を口にする。 『あぁ、もしよければ君が置いていった服を持たせようか? 特に下着なんて必要だと思うんだが…」 「必要ない…!」 「………いや、光太郎さん。それは、いりますよ?」 セインは首謀者の情報と、無理やり「ここにちょっと入ってますから」とお金の入ったカードを押し付けて去っていった。 ドクターだけでなく、私たちもいい返事を期待している。 そう言ってセインが去った後、光太郎は膝を突き、拳を床に叩き付けた。 床はその威力に耐え切れず粉々に砕け散り、破片となって光太郎と一緒に落下していく。 一階下の階が、衝撃を受けて揺れ、ひび割れながらも光太郎と瓦礫を受け止めた。 着地する気力が沸かず、無様に一階下に落下した光太郎は頭を掻き毟る。 上の階に溜まっていた水が光太郎があけた穴から零れ落ち、下へと、流れていく。 心配したアクロバッターとライドロンが駆けつけても、光太郎は蹲り、暫く動こうとはしなかった。 この状況で先輩ライダー達ならどうするのだろう? 自分で決めるしかないとわかっていても、光太郎の弱った心にはそんな疑問が浮かんだ。 ゆっくりと自分に近づいてくる二機の相棒が気遣わしげに声を発した。 光太郎はそれに励まされて静かに立ち上がる。 セインが残していった情報が記載された書類を瓦礫の中から拾い上げ、一跳びで上の階に戻る。 瓦礫に寝そべって、書類に目を通していく。 事件との関連性を裏付ける情報、その組織と首謀者の情報。 光太郎を信じさせる為に労を惜しまなかったのか、特に空港で起きた事件の顛末と組織と事件との関連を裏づける部分については何十ページにも渡って書かれている。 深く息を吸い込み、ゆっくりと吐く。 体に襲い掛かった痛み、周囲に齎された被害がどれ程のものだったかは光太郎の脳裏に焼き付けられている。 火災程度の熱さはロボライダーの装甲に全て遮られてしまったが、中身まではそうはいかなかった。 ゆっくりとその日は日が暮れるまで何度も情報に眼を通して、光太郎は眠りについた。 瓦礫の上で眠りについた光太郎の代わりに、アクロバッターが周囲を警戒し傍に居続けた。 「光太郎、起きてください」 翌朝、女性の声で光太郎は目を覚ます。 聞き覚えのある声だった。だが、この場にいるはずのない女性の声。 光太郎は目を見開き、素早く体を起こすと声の主を睨みつけた。 その態度に呆気に取られたような顔を一瞬だけ見せて、ウーノは自嘲気味の笑みを浮かべた。 紫のロングヘアー、スカリエッティと同じ色の瞳。本人に違いはなかったが、光太郎には何故ここにいるのかがわからなかった。 疑問は表情に表れていたのか、ウーノは理由を告げた。 「ドクターの命令で貴方に今後のことをお聞きしにきました」 「…どういう、ことだ?」 寝起きに、この場にいないはずのウーノが現れ戸惑う光太郎。 ウーノは皮肉げな笑みを浮かべた。 「お約束したとおり、昨日貴方とドクターの通信の後直ぐに私は自首しました」 その言葉に光太郎の困惑は深まった。 疑問を口にする前に、ウーノが言葉を補う。 「そして管理局の上層部…ドクターのスポンサーが私から自分の情報が漏れるのを恐れ、その日の内に釈放となりましたわ」 私をどうされますか?と微笑を浮かべながら尋ねてくるウーノに、光太郎は直ぐに言葉が出なかった。 ただ今の時点では、光太郎にはもうウーノを殺すことはできそうにないということだけは実感としてあった。 警戒する気持ちはあっても、光太郎の胸に渦巻く感情に任せて殴り殺すことなど光太郎には… 「……ドクターの怒りも買ってしまって他に行くところもないの。目処が立つまで、貴方のお手伝いをさせていただこうと思いますが、よろしいですか?」 「消えろ!」 大音声で叫ぶ光太郎に、ウーノは首を振る。 「恐らく俺は、何れスカリエッティを倒す」 「わかっていますわ。だから、あの時なんとしても貴方を殺しておきたかった」 切なげに目を伏せたウーノに光太郎の頭に血が昇り、衝動的に身勝手な事を言うウーノの胸倉を掴み上げる。 なんら反応することも出来ず胸倉を掴みあげられたウーノの足が地面から離れていく。 だが首が絞まり、苦しげに喘ぎながらもウーノは抵抗をしなかった…光太郎の手から力が抜ける。 開放されたウーノは、膝を突きながら素早く光太郎が受け取ったのと同じ内容が表示された画面を空中に表示させる。 「げほっ…げほ、この上は、お許しいただけるように貴方を、手助けしますわ…」 咳き込みながら、画面を操作して見上げてくるウーノの眼差しに隠れたものを光太郎は感じ取り、眉間に眉を寄せた。 光太郎の性能を見れた事自体は喜んだのだろうが、不興を買ったのもまた事実なのだろう。 不安や、恐れ…身勝手な思いに光太郎は歯軋りした。 光太郎はしかし同時に、恐らくは生み出されてよりずっとスカリエッティの手助けをして生きてきた戦闘機人という存在に対して哀れさも感じていた。 「はぁ…はぁ、この、組織に関する新しい情報が入っています。首謀者はいつ姿を隠すとも限りません。私なら最適な情報を…」 「…ッ消えろ! 貴様は罪のない人々を巻き込み、今も遺族に涙を流させている。そんな貴様の手など入らん」 怒りのままに青白いバッタ男へと姿を変えつつある光太郎は静かにそう言って、寝そべっていた瓦礫に腰掛ける。 感情を押さえ込もうと目を閉じた光太郎に、ウーノは一瞬涼やかな微笑を浮かべた。 光太郎が感じ取ったものは嘘ではなかったかもしれないが、冷静に勝算の有無を感じ取っていた。 必死さをまた表に出した彼女は背を向けて、太陽の光を浴びる光太郎に言う。 「後悔しています。償う方法は貴方に協力することしか思いつかなかったわ。お願い光太郎。私にチャンスを頂戴」 ウーノの言葉を完全に信じることは光太郎にはできなかった。 スカリエッティやウーノらに対する信頼が落ちに落ちていた…それでも。 チャンスをと言うウーノを割り切って手を出すことができずにいるのは。 過去にある組織の兵士として、何人もの人々を殺した罪を抱えながら戦い続ける男を一人、光太郎は知っていたからだ。 自分もまた、皇帝を滅ぼし五十億のクライシス人を見殺しにしてしまったことも、光太郎を躊躇わせていた。 「勝手にしろ」 そうして、ウーノの協力を得た光太郎は、複数の次元世界に跨った組織の中心人物を一夜にして消し、幹部達をバイトや日雇いの仕事をする間に名前を聞いた二人の男に引き渡した。 地上を長年守護し、辣腕を振るい続ける男と、人柄の良さで通称海と呼ばれ地上と折り合いの悪い時空管理局本局にも広い人脈を持つ男。 時空管理局地上本部のレジアス・ゲイズと陸士108部隊長ゲンヤ・ナカジマは、突如指名手配犯を簀巻きにして現れた怪人に驚くと共に感謝と危惧を抱いたという。
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リリカルなのはVS厚生省 クロス元:ジオブリーダーズ 最終更新:07/10/24 第一話 第二話 第三話 TOPページへ このページの先頭へ