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「炎神戦隊ゴーオンジャー」からヨゴシュタイン・ケガレシア・キタネイダス召喚 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-01 GP-01「三悪ツカイマ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-02 GP-02「最初ノイッポ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-03 GP-03「確率ゼロパー」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-04 GP-04「決闘ストーム」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-05 GP-05「買物ホリデー」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-06 GP-06「魔剣バンキ!?」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-07 GP-07「女給(メイド)ダッカン」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-08 GP-08「奇襲ツチクレ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-09 GP-09「急襲ゴーレム」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-09.5 GP-09.5「トリステインゼミナール-1」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-10 GP-10「捏造ホウドウ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-11 GP-11「合流ヒラメキ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-12 GP-12「姫君ライホウ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-13 GP-13「閃光シシャク」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-14 GP-14「推参プリンス」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-15 GP-15「最高ノキセキ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-16 GP-16「子爵ノホンネ」 炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!-16.5 GP-16.5「トリステインゼミナール-2」
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 「ここはマジックワールドのトリステイン魔法学院。今2年生の進級に必要な春の使い魔召喚試験の真っ最中だぜ!」 既に召喚を終えた生徒達は、退屈そうにまだ召喚に成功していない唯一の生徒・ルイズを眺めていた。 彼女は目下20回目の挑戦中だ。 自身の起こした爆発で髪は乱れ服は埃にまみれ、目を血走らせ息を荒げても、まったく諦めないルイズをコルベールは密かに応援し続けていた。 ルイズはなおも大仰な呪文を唱え必死に杖を振るう。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しくそして強力な使い魔よ! 私は心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさいっ!!」 周囲に轟音が響き閃光が溢れる。 周囲はまた失敗かと呆れていたが、ルイズ本人の考えはまったく違った。 (手応えがあった!) 「……ゲホ、ゲホゲホ……ゲホゲホゲホゲホ……!!」 ルイズの確信に答えるかのように、白煙の中から男の激しい咳の音が聞こえてきた。 それと同時に白煙も薄まり、ぼんやりながらその中に3つの人影が見えてきた。そのうちの1つが激しく動いている。おそらくそれが咳き込んでいるのだろう。 「人間!? まさか平民じゃないわよね……?」 「あっ、何だあれは!?」 白煙が視界を妨げないまでに薄まった時、一同の目の前に現れたのは……、 ――GP-01 三悪ツカイマ―― 「うむむ……、いったい何事が起こったなり?」 真鍮色の鎧と仮面に身を包んだがっしりした体格の人間……いや、ゴーレムがそう呟いた。困惑を表現するかのように頭部から生える金属棒がゆっくり上下している。 「どうやら事故か何かで、ヒューマンワールドの外に転送されてしまったようでおじゃるな」 真鍮色のゴーレムにそう返したのは、召喚された中で唯一人間らしく見える銀色の部分鎧を纏った女性だった。 「ゲホゲホ……、そうとしか考えられんぞよ! ヒューマンワールドの空気はここまで綺麗ではないぞよ、ゲホゲホゲホ!」 激しく咳き込みつつも女性の発言に同意したのは背の高い鉄色のゴーレム。体の各所から煙を噴出している。 「あれがルイズの使い魔か!?」 「女は平民のようだが、ゴーレムを2体も連れてるぞ! 何者なんだ!?」 ルイズの召喚した正体不明の使い魔に一同がざわめく中、コルベールだけがその存在を示す音――咳に違和感を覚えていた。 (なぜ彼は咳を……?) コルベールの疑問はもっともだ。 正史においてルイズが召喚した使い魔の故郷・ヒューマンワールドならともかく、ここマジックワールドにおいて常人が咳き込むほど空気の汚染された場所といえば、活火山の火口付近か何年も掃除されていないような埃の溜まりきった場所程度だ。 こんな自然溢れる中に建てられたトリステイン魔法学院においてここまで激しく咳き込むと、本来であれば何らかの病気を疑うのが自然だ。 しかし相手はゴーレム、病気とは考えられない。 (何か気になりますが……、判断材料が少なすぎますね) 現時点では考えてもどうしようもないと思い、唯一の人間と判断した銀色の鎧の女性に声をかける。 「失礼しますミス、私はこの学園の教師コルベールと申します。突然の事で困惑されるのは当然かと思いますが、まずはお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」 その言葉に真っ先に反応したのは真鍮色のゴーレムだった。 「人間、コルベールと言ったな? まあ名前がわからねば呼びにくいのは確かなり。我が名は害地大臣ヨゴシュタインなり」 「わらわは害水大臣ケガレシアでおじゃる」 「害気大臣キタネイダスぞよ。コルベールとやら、とにかく状況を説明するぞよ」 「大臣だって!? とんでもない方を召喚したもんだな」 「下手打ったら戦争ものだぜ……」 「という事はあのゴーレムみたいなのも、凄い鎧を着てる人間って事だよな」 3人の発言に生徒達は騒然となり、コルベールも緊張を隠しきれない口調で答える。 「だ、大臣ですか……。それではミスタ・ヨゴシュタイン、ミスタ・キタネイダス、ミス・ケガレシア、率直に言います。皆様方はミス・ヴァリエールのサモン・サーヴァントによって召喚されたのです」 「召喚!? ……率直に言うぞよ、コルベール。……もしやここはマジックワールド……いや、ハルケギニアか?」 「マジックワールドという地名に心当たりはありませんが、ハルケギニアなのは確かです」 「やはりか。マシンワールドほど文明が進んでいないのに世界間転移が可能なのは、マジックワールドの魔法しかありえないぞよ」 「それで、皆様はミス・ヴァリエールの使い魔として契約していただく事になるのですが……」 「……まあいいでおじゃる。どのみちヒューマンワールドに戻ったところで手詰まりなのは変わらぬ。それならばマジックワールドを新たな標的にして、しばらくほとぼりを冷ますのが得策でおじゃる」 「ヴァリエール、だったな? さっさと契約とやらを済ますなり」 3人とコルベールとの会話を眺めていたルイズがおずおずと進み出る。 「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え我の使い魔となせ」 「この後、コントラクト・サーヴァントの苦痛に耐えかねたケガレシアとキタネイダスが汚水と黒煙を撒き散らしよったせいで、生徒が全員倒れて学園中の水のメイジがてんてこまいしたんやけど、それはまた別の話や! ブイブイ!」 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 「いきなりマジックワールドに召喚されちまったガイアークの三大臣! どうやらマジックワールドでも懲りずに悪だくみ考えてやがんな。いずれマジックワールドに乗り込んで叩き潰してやるから覚悟しろぃ! オンオン!」 うっすら開けた目に光が差し込んだ。 ルイズは眩しい朝日に少々眩んだ目を擦りつつ上半身を起こす。 室内は窓から差し込む光に照らされている。 (う~……、もう朝なの……) 朝である以上ベッドに寝ているのは当然だが、それ以前が問題だ。 ルイズは昨夜、ベッドに入った記憶は無い。 「確か昨日は使い魔召喚の儀式をしたはずよね。私もサモン・サーヴァントを唱えて……、それから……」 その辺りから記憶が不鮮明になっている。 召喚が成功したのはぼんやり覚えているが、 「何を召喚したんだったのかしら……?」 それがどうしても思い出せなかった。思い出してはいけないわけではなさそうだったが、思い出したくないような予感がする。 とりあえずベッドから出ようとルイズが手を突くと、そこに不自然な硬さがあった。 ベッドは柔らかいから硬いのは不自然だ。 ルイズがシーツを怖々めくるとその下にいた女性がルイズを見て一言、 「遅かったでおじゃるな」 ――GP-02 最初ノイッポ―― 「あああああ、あんた! 何人のベッドに勝手に入って……」 「『勝手に』とはご挨拶ぞよ。何やら訳のわからぬまねをして、我らが吹き出した煙をしこたま吸って意識を失ったお主を」 「この部屋のベッドに運び込んだのは我らなり」 「あー……、そうだったわ……。確かあんた達昨日私が召喚した……」 「ヨゴシュタインなり」 「ケガレシアでおじゃる」 「キタネイダスぞよ」 「……それで、こんな時間に何の用なのよ?」 「わらわ達は何をすべきなのでおじゃるか?」 「は?」 「我らにもここマジックワールドで果たしたい目的はあるぞよ。しかしお主の使い魔でもある以上、使い魔としての役目も果たすべきだぞよ」 「……なかなかわかってるじゃないの。まず使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるわ」 「お主の見聞きしているものが見えたり聞こえたりはしていないなり」 「それから使い魔は主人が望む物を見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」 「見つけるのは無理でおじゃるが、設備さえあれば大抵の薬品は作れるでおじゃるよ」 「最後にこれが1番大切なのだけれど、使い魔は主人を守る存在であるのよ。その能力で主人をその身に迫る脅威から守り抜くのが1番の役目」 「まあ腕に覚えはあるぞよ。望むならもっと荒事専門のやつも用意できるぞよ」 「とりあえず今のところはこの服を洗濯して綺麗にしといて」 「綺麗にだと!?」 「わかったでおじゃる」 露骨に不満そうな表情をしたヨゴシュタインに対し、ケガレシアはあっさり承諾した。 「それじゃ、私は食堂に行くから」 そう言い残してルイズは自室を出た。 「ケガレシア、洗濯物を『綺麗に』するなど、到底我慢できぬぞよ!」 「まったくその通りなり。我らはヒューマンワールドの前にここマジックワールドを我が物にするため、大地を汚し水を濁らせ大気を汚すつもりなり」 「確かにその通りでおじゃる。しかし何もそれは蛮機獣にしかできぬわけではないでおじゃる」 「言われてみればもっともなり」 「忘れたでおじゃるか、キタネイダス? 確か『ヒューマンワールドの空気はここまで綺麗ではない』と言っていたでおじゃるな? ヒューマンワールドの空気をわずかとはいえ汚染したのは、ヒューマンワールドの人間達自身でおじゃる」 「むむむ……、確かにその通りだぞよ」 「その最初の1歩をまずはわらわが踏もうというのでおじゃる。文句は無いでおじゃるな?」 「うむ」 「くくく、わらわ秘蔵の超強力合成洗剤。これを使えば確実に『服は』綺麗になるでおじゃる。しかし……」 そこまで呟いてケガレシアはふと立ち止まる。 「……しかし洗う場所はどこでおじゃるか?」 真意を考えればそこらで洗ってもいいのだが、まだそれを気付かれるわけにはいかない。 するとそこに洗濯物の入った籠を抱えた1人の少女がやってきた。 黒髪黒目というヒューマンワールドの人間(特にケガレシア達と敵対していた一団)の特徴を持つ少女に若干警戒するものの、ここは素知らぬふりで接触した方が賢明と判断し声をかける。 「ちょっとよいでおじゃるか?」 「はい、何かご用ですか?」 「洗濯をする場所はどこでおじゃるか?」 「あ、はい、こちらです」 洗濯場に案内されたケガレシアはそこに置かれていた大量の洗濯物を見て、 「これをお前が1人で洗うでおじゃるか? 大変でおじゃるな」 「いえ、もう随分慣れました」 「よし、わらわが手伝ってやるでおじゃる」 「そ、そんな、いくら使い魔の方とはいえ、そんな失礼な事……」 「なに、わらわがやるわけではないでおじゃる。わらわの持つ秘薬の効果、とくと見るでおじゃるよ」 そう言ってケガレシアは手にした瓶の中身をたらいに入れて、少女に洗うように言った。 2~3度揉み洗いしただけで際限無く膨れる泡に驚愕した少女だったが、ケガレシアはその泡の山の中から服を1着つまみ出してすすぐよう彼女に言った。 真っ白になった水から出した洗濯物は、新品と見まごうばかりに綺麗になっていた。 「えっ!? どうなってるんですか、これ!? ちょっと洗っただけなのに新しいお洋服みたいに綺麗になってますよ!?」 「わらわが作った特製の秘薬でおじゃる。まだまだあるからこれを使ってどんどん洗うでおじゃるよ。洗い終わったらそこらの川にでも流せばいいでおじゃる」 「いいんですか?」 「特製でおじゃるからな」 数日後、トリステインの主要河川が正体不明の泡に汚染されて国内全域で深刻な水不足が発生する事になるのだった。 「ケガレシアめ、やっぱりとんでもない事をやらかしてたな。マジックワールドの人達の大切な飲み水に……。それに姿を見せないヨゴシュタインとキタネイダスはどこで何を企んでるんだ? その話はまた次の機会だ。ガンガガーン!」 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 次回予告 「ガンパードだ。何だかみんなの様子がおかしいぜ。どうやら新聞に惑わされてるみたいだな。何、キュルケが逮捕された? どうなってんだ? GP-10 捏造ホウドウ ――GO ON!!」 フリッグの舞踏会翌日の昼過ぎの学院中庭、ギーシュは手を振ってケティと別れていた。 「今日のデートはこれで最後……と」 「ギーシュ、今日のデートは随分少ないのね?」 「うん、ミスタ・コルベールから大任を受けたし、いざという時にデートなんて事が無いようにね。……はあー、僕の事が大好きな妹が12人くらいできないかなー……」 「ギーシュは暢気ね。まあ、今のところ平和だしね」 「ルイズの使い魔達も特に変わった様子は無いしね」 キュルケもギーシュも油断していた。しかし事件とは得てしてそういう時にこそ発生するものなのだ。 丁度その時、 「号外ー、号外だよー。マジックワールド一早くて確かな真実の泉、『蛮々。新聞』の号外だよー。これを読まないとあなたに明日は無いわー」 少女の甲高い声が上空から響いたかと思うと何枚もの紙切れが舞い落ちてきた。「蛮々。新聞」と書かれたその新聞の1面には、 『「ガリア王国王位継承者」シャルロット王女 クーデターにより簒奪者ジョゼフから王位奪還』 の文字とタバサの写真が。 『タバサが王位継承者に!?』 新聞に載っているタバサは普段通りの無表情のままVサインをしている。 その2人の混乱に追い討ちをかけるように、 「号外ー、号外だよー。マジックワールド一早くて確かな真実の泉、『蛮々。新聞』の号外だよー。これを読まないとあなたに明日は無いわー」 の声が再び響き空から大量の新聞が舞い落ちる。 『ビプリーベ伯爵 19人の孫娘全員の婚約者にギーシュ・ド・グラモンを指名』 「ええーっ!? ぼ、僕!?」 「ギーシュ、このビプリーベ伯って人知ってるの?」 「いいや、全然」 「ええっ!?」 「でもこの新聞によると僕が指名されたって……。今日からハーレム、ナンパ生活とはおさらばだ!! イエーイ!!」 ギーシュはそのまま喜び勇んで中庭から走り去っていってしまった。 「ちょっとギーシュ……。……王位継承者にハーレム? いったいどうなってるの?」 ――GP-10 捏造ホウドウ―― 場所は変わってヘルガイユ宮殿。モニターには幾つものウインドウが開かれ、タバサやギーシュに関する新聞記事が映し出されている。 「これがキタネイダス達の邪魔をさせないための作戦? キュルケ達何だか楽しそうよ」 「ああ……、何か腹立つな……」 「いや、これでいいなり」 ルイズ・デルフリンガーの反応に反論しつつヨゴシュタインが現れた。 「我が害地目のリンテンバンキよ!」 呼びかけと共にモニターの映像は、トリステインの城下町上空を飛行しつつ大量の新聞を印刷・散布している少女型蛮機獣のものに変わった。 「その調子で作戦を続行するなり」 『かしこまろうぜ、蛮々。新聞! 世界で一等電波な新聞~』 「だが奴らの楽しそうな顔を見るのは……」 「何だか癪だぞよ」 「そう思ってキュルケは趣向を変えてやったなり。フフフ……」 ヨゴシュタインは不気味に微笑むのだった。 一方女子寮・キュルケの部屋では……、 「何がどうなってるのよ、これ……」 空中から降ってきた新聞を眺めつつ溜め息を吐くキュルケの耳に、 「犯人に告ぐ、無駄な抵抗はやめて出てこい!」 「何? 事件?」 キュルケが部屋を出ると、数人の武装衛兵がキュルケの部屋に入り込んできた。 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプシュトーだな!」 「ええ、そうだけど?」 コルベールの研究室の窓を突き破って新聞が飛び込む。そこには、 『「土くれ」の正体判明 連続窃盗犯人キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプシュトーを指名手配』 「……大変です!」 いきなり壁に叩きつけられるキュルケ。 「何するのよ!」 「お前を窃盗の容疑で逮捕する!」 「そんな馬鹿な! 何かの間違いよ!」 「無駄な抵抗はするな!」 「盗みなんかしないわよ!」 衛兵を突き飛ばして逃げ出すキュルケ。何とか衛兵達を巻いて溜め息を吐く。 「何で私がこんな目に……」 ――キュルルル (主だけではありません。他の皆さんに起きている事も何だか奇妙です) 「確かめてみるわよ」 ガリア王国・ヴェルサルテイル宮殿。 簡素ながら上品なつくりの執務室内では、タバサが部下から持ち込まれる案件に指示を出していた。 「パンデ子爵に反乱画策と噂されるアルビオン貴族との密会疑惑が……」 「……現場に踏み込んで身柄拘束……」 「クッジャ川堤防が老朽化し今度の雨季に決壊の恐れが……」 「……軍工作部隊出動……」 「ナテンア男爵配下の騎士団が男爵解任を求め……」 「……男爵は解任……首謀者は投獄……」 「キンバ財務大臣が……」 「……私が口を出す問題じゃない……」 廊下に出たタバサをキュルケが呼び止める。 「タバサ!」 「……キュルケ……」 「いったい何やってるのよ?」 「……新聞……見なかったの……私はジョゼフから王位を取り戻した……」 「タバサ、あんた……また来るわ!」 タバサを非難しようとしたキュルケだったが、衛兵隊に気付いて即座に逃げるのだった。 「おい! いたぞ! 待てえ!」 そのタバサの目の前をキュルケを追いかける衛兵達が駆け抜けていった。 「………」 逃げまとうキュルケの様子が映し出されたモニターに、満足気な表情のルイズ達。 「この調子なり。リンテンバンキ、作戦をセカンドステージに進めるなり」 『かしこまり! 号外ー、号外だよー……』 再度新聞を撒き散らすリンテンバンキ。 『工房排煙10倍法案可決 今日から全ての工房で従来の10倍の煙を出す事が法律で義務付けられた』 一方ビプリーベ伯邸では……、 「おうおうおう、新聞に載っていた通りの立派な少年じゃ。ハハハハハ。うんうん、じゃあ早速孫達に紹介しよう」 ビプリーベ伯の傍には大きな本を抱えた薄桃色の髪の少女・リボンを結んだ青髪の少女・金髪を縦ロールにまとめた少女。 「今屋敷にいるのはこの子達5人じゃが、他のみんなが帰ってきたらまた紹介しよう」 そこへ、東方風の白い上着に赤いロングスカート姿の黒髪の少女がやってきた。 「兄者、そちに客人が来ておるぞ」 「え? 客人?」 客人とはキュルケの事だった。 「確かに不思議だけど……、新聞に書いてあったじゃないか」 「それでいいの!? 私達と一緒にミスタ・コルベールから大任を任された時の気持ちは忘れちゃったの!?」 ギーシュの両肩をつかむキュルケだったが、ギーシュは非情にもその手を払いのけ、 「ルイズの使い魔の相手より、可愛い妹達の相手の方が楽しいかも!」 「あの、お兄ちゃん、チェリーと遊んでくれますか?」 「うん、行こう、チェリー!」 そう返事して紫色っぽい茶色の髪の頭に大きな帽子を被った少女と一緒に立ち去ってしまった。 「そんな……」 道端にうずたかく積み上げられたゴミの山。 騎馬衛兵達の通過を確認してキュルケ・フレイムはその中から這い出した。 「……ねえフレイム、野良犬って知ってる?」 ――キュルルルル…… (さあ、火竜山脈にはいませんでした。……それよりここはどこでしょう? ゴミ捨て場とは思えませんが……) 周囲では町の人々があちこちにゴミ袋を捨てている。 顔をしかめてキュルケは1組の父娘に声をかける。 「駄目じゃない、こんなとこに捨てちゃ」 しかし父親はまったく悪びれた様子も無く、 「知らないのですか? 新しい法律ができて、家庭のゴミはどこに捨ててもいい事になったんですよ」 「え?」 「工房から出す煙も今までの10倍にする法律ができたって、新聞に書いてあったよ」 「新聞で?」 『号外、号外ー。町を汚すための新しい法律が出来たよー!』 「あっ……」 その時、キュルケの脳内で一連の異変のキーワードが浮かび上がった。 (――……『新聞』……見なかったの……) (――『新聞』に書いてあったじゃないか) 「まさか……」 「ミス・ツェルプシュトー!」 そこへコルベールが駆け寄ってきた。 「ミスタ・コルベール!」 「ミス・ツェルプシュトー! 無事だったのですね」 「ええ。それより新聞を調べてください。ルイズの使い魔が何か細工をしているに違いありません!」 「なるほど……。こちらも新聞の発信源の場所が特定できました」 「………!」 決意の表情で歩き出すキュルケ。 ――キュルル? (1人で行くのですか、主?) 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! フーケの身柄確保から数時間後、学院長室でオールド・オスマンは戻った一行の報告を聞いていた。 「ふむ……、まさかミス・ロングビルが『土くれのフーケ』だったとは……。美人だったので何の疑いも無く秘書に採用したのがまずかったのう……」 髭をも弄りつつ返答するオールド・オスマン。 「……少しは反省してください。いったいどこで採用されたんですか?」 「町の居酒屋でまあいろいろと……おっほん、まあ深い詮索は人間としては恥ずべき事じゃ。何はともあれ君達がフーケを捕まえた事に変わりは無い、本当にありがとう。ミスタ・ヨゴシュタイン、命と引き換えにゴーレムを倒した貴方の部下・ドリルバンキには謹んでご冥福をお祈りしようぞ」 誇らしげに礼をする一同。 「フーケは城の衛士に引き渡した。これで一件落着じゃ。ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプシュトー、ミスタ・グラモンにはシュヴァリエの爵位申請を、既にシュヴァリエであるミス・タバサには精霊勲章授与申請を宮廷に出しておこう。追って沙汰があるじゃろう」 「……本当ですか……」 「もちろんじゃ、君達はそれぐらいの事をしたのじゃからな」 「あの……、オールド・オスマン。ケガレシア達には何も無いのですか?」 「……残念ながら彼女達は貴族ではない……。じゃがわしは彼女達の働きにとても感謝している。代わりと言っては何じゃが、わしから個人的に謝礼をさせてもらえぬか?」 「それなら、『ルサールカの鎧』が欲しいでおじゃる」 「ミス・ケガレシア、何やら『ルサールカの鎧』について知っているようじゃな。すまぬがミス・ヴァリエール達以外は席を外してもらえぬか? 今日はフリッグの舞踏会じゃ、存分に楽しんでくれ」 キュルケ・タバサ・ギーシュ・コルベールの4人は、一礼して学院長室を出ていった。 ――トリステインゼミナールー1―― 「さてミス・ケガレシア、君が『ルサールカの鎧』について知っている事を言える範囲でいいから教えてくれんかね? わしも力になれる事があれば出来るだけ力を貸そう」 「『ルサールカの鎧』をどこで手に入れたかは後で聞くとして、それが勝手に動いているところを見た事があるでおじゃるか?」 「うむ! 勝手に動くという事はガーゴイルの一種かとも思ったのじゃがな……」 「あれはわらわ達の仲間と言うべき存在、害水機士ウズマキホーテに間違い無いでおじゃる」 「ウズマキホーテ? 害水機士? とにかく生きているという事じゃな。それがなぜ鎧に……?」 「『ルサールカの鎧』を手に入れた経緯を聞かせるでおじゃる」 「あれはそう……、30年以上も昔の事になるか。森の中を散策していたわしはワイバーンに襲われてな。そこを助けてくれた騎士が纏っていた鎧じゃった。不思議な事にワイバーンを倒すと突然苦しみだして姿が消え、『ルサールカの鎧』だけが残されたのじゃ」 「やはり『ルサールカの鎧』は、仮死状態になったウズマキホーテでおじゃるな」 「仮死状態? つまりミスタ・ウズマキホーテはまだ生きているというのか?」 「おそらくワイバーンとの戦いで重傷を負ったのか、鎧のようになって生きながらえているでおじゃる」 ……それは嘘だった。おそらくウズマキホーテはマジックワールドの清浄な環境に耐えられず仮死状態になったのだろう、とケガレシアは予想をつけていた。 しかしここでそれを言うわけにはいかない。ルイズならともかく、オールド・オスマンにまで真意を知られたくは無いのだ。 「そうか……。まだ生きているというのならばいつか蘇る日も来るのじゃろうな……」 「わらわ達も何とかしてウズマキホーテを復活させたいでおじゃる」 「頼んだぞ、ミス・ケガレシア。わしもいろいろ調査してみよう」 溜め息はそのまま夜気に溶け込んだ。 「よくやったなギーシュ! パーティーなんだから楽しんだらどうだ?」 いつも通りの軽い口調でマリコルヌが言った。 皿の上の料理を1口食べてから再度の再度の溜め息と同時に答える。 「楽しんでるさ」 そう言いつつも、ギーシュの心の中にはコルベールの言葉が焼きついたまま離れなかった。 ケガレシアがオールド・オスマンに『ルサールカの鎧』ことウズマキホーテについて説明していた頃、キュルケ・タバサ・ギーシュはコルベールの研究室に呼ばれていた。 扉の鍵を閉めたコルベールは開口一番、 「ミス・ツェルプシュトー、ミス・タバサ、ミスタ・グラモン。これからあなた達にはある大任を果たしてもらいたいのです」 「大任……ですか?」 ただならぬ雰囲気に緊張するキュルケ。 「ええ。……皆さん、ミス・ヴァリエールの使い魔をどう思いますか?」 「……只者じゃない……」 「僕もそう思います。特にミスタ・ヨゴシュタインは何と言うか……危険だと」 「私はそこまで思わないけど、蛮機獣だったかしら? あのゴーレムは凄いわね」 「やはりそう思いますか……。実際ここしばらくトリステインでは怪事件が頻発しています。国内の主要河川で原因不明の泡汚染が発生したり、モット伯邸が正体不明の溶解液に沈んだりと」 「……それとルイズの使い魔に……何か関係が……?」 「……いえ……、私の思い過ごしならばいいのですが、皆さんにはミス・ヴァリエールの友人として彼女が道を誤らないように注意を払ってもらいたいのです」 「ルイズが?」 「はい。……そしてもし私の危惧が現実のものになろうとしたら……」 「………」 「……いかなる手段を駆使してでも最悪の事態の回避を」 『はい……』 「いかなる手段」、それには当然ルイズ達の命を奪う事も含まれている。コルベールの言葉が苦渋に満ちた決断である事は表情から容易に伺う事ができた。 「……ギーシュ」 「………」 テラスでぼんやり2つの月を眺めていたギーシュに、キュルケが声をかけた。後方にはタバサもいる。 「キュルケか。それにタバサも。どうしたんだい?」 「ミスタ・コルベールに言われた事、どう思う?」 「まだミスタ・コルベールの考えが正しいと決まったわけじゃないだろう。どうもこうも無いさ。だけど……」 「……覚悟はしておいて……キュルケ……」 「ええ……、いざという時には私がルイズを止める……!」 一方その頃、もう1人の主役達であるルイズは舞踏会会場の喧騒を嫌い、ヘルガイユ宮殿で2度目の祝勝会……といきたいところだったが神妙な表情で画面に映ったキュルケ達を見て会話を聞いていた。 「……ふむ、勘付き始めたかもしれないぞよ」 「可能性としては大いにあるでおじゃるな」 「念を入れておいた方がいいかもしれんなり」 「お嬢、お嬢はどうするんだ? 何か不穏な事になってるけどよ」 「決まってるわ。私はケガレシア達の力になりたい。……どこまでもついていくわ、邪魔なんて気にせずに」 ――ガイアークゼミナールー1―― 『ガイアークゼミナール!!』 「害悪(ガイアーク)エゴラップって、炎神エコラップの替え歌なのよね?」 「その通りでおじゃる」 「じゃあ全部の歌詞ってどんなのなの?」 「そ……、それは……」 「答えはエンディングなり!」 「害悪(ガイアーク)エゴラップ Pollution-Custom」 悪役ナンバー1 蛮機族ガイアーク バン(バン)バン(バン)君の番 そう明日のために ブン(ブン)ブン(ブン)ゴミ処分 エゴな投棄GO! 電気はやたらにスイッチオンだぜ スモッグ青空汚してGO-ON! 買い物スマイルほらレジ袋 ドキドキ資源は使い捨て ダッシュで自然をブレイクだ 海・空・大地をメチャメチャに 汚染が大好き 蛮機族ガイアーク リデュース・リユース リサイクルやめちゃおう 絶望させたいから頑張れる GO-ON! 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 次回予告 「ガンパードだ。ギーシュとかいう気障な野郎が、よりによってケガレシアに決闘を挑んできた。いけ好かねえ奴だが、ガイアークに殺されるのを見過ごすわけにはいかねえな。 GP-04 決闘ストーム ――GO ON!!」 ルイズは呆然としていた。 いつの間にか自室に隠し扉が作られていたばかりか、その向こうは明らかに学院ではない正体不明の建造物内部に通じていたのだ。 「ど……、どこなのよ、ここ!?」 「言ったはずでおじゃる。わらわ達の居城、ヘルガイユ宮殿でおじゃる」 部屋の隅で何やら機械を操作していたキタネイダスが、2人の気配に気付いて振り向く。 「おお、ケガレシア! 丁度よかったぞよ、あと少しでマジックワールドでの蛮機獣第1号が完成するぞよ……む、ルイズもいたのか」 「その様子ならたぶん間に合うでおじゃるな」 「間に合う?」 「なに、自分から蛮機獣性能テストの実験台になりたいという奇特な小僧がいるでおじゃるよ」 ケガレシアはギーシュと決闘するに至った経緯を、キタネイダス・ヨゴシュタインに説明した。 「なるほど、それは好都合なり」] 「挑戦を受けたケガレシアには悪いが、我が害気目蛮機獣でひとひねりぞよ」 喜色満面で決闘の勝利を確信しているケガレシア達の聞いた事の無い言葉への質問を、ついでに召喚以来感じていた疑問を尋ねる好機と考えてルイズは声をかけた。 「……ねえケガレシア」 「どうしたでおじゃるか?」 「蛮機獣っていったい何なの? それにケガレシア達っていったい何者? 人間でもゴーレムでもなさそうだけど……」 「そういえば、そこのところの話はまだしていなかったでおじゃるな。まず蛮機獣でおじゃるが、機械生物……マジックワールド風に言えば『生きているゴーレム』といったところでおじゃる。 作った者によって害地目・害水目・害気目の3種類に分類されるでおじゃる。わらわが作れば害水目、ヨゴシュタインなら害地目、キタネイダスは害気目といったように」 「そして我らは蛮機族ガイアークなり。元々はマシンワールドというここマジックワールドとは別の世界の住人だったが、訳あってマシンワールドともマジックワールドとも異なるヒューマンワールドという世界にいたなり」 「そこをルイズに召喚されて、ここマジックワールドに転送されたのだぞよ」 「ケガレシア達もケガレシア達で結構苦労してるのね……」 「果たしたい目的があり、そのためなのだから辛くはないでおじゃる。ルイズも魔法を使いこなすべく訓練をしているようでおじゃるが、辛く思ってはいないでおじゃろう?」 「……ええ。その通りよ、ケガレシア」 「さて、そろそろ頃合なり。ルイズ、ケガレシア、ヴェストリの広場とやらに向かうなり。キタネイダス、我らも一緒に行くなり」 「わかっているぞよ」 ――GP-04 決闘ストーム―― ルイズ達4人がヴェストリの広場に到着すると、既にギーシュと何十人もの観客が集合していた。 「待っていたよ、使い魔諸君。この青銅のギーシュから逃げなかった事は褒めてあげよう」 「貴様ごときになぜ逃げる必要があるでおじゃる?」 「それからお前と戦うのはケガレシアではないなり。ルイズの手前、お前に勝ち目の無い相手とは戦わせられないのでな」 「もっとも、死力を尽くしてようやく正気が見えるという程度だぞよ」 「そこまで言うなら見たまえ、僕のワルキューレを!」 そう言ってギーシュがバラの杖を振るうと花弁が1枚散って地面に落ち、そこから青銅製の武装した女性型ゴーレムが出現する。 「なるほど、それが貴様の手駒か。ならばこちらの手駒も見せるぞよ」 そう言ってキタネイダスは右手を上げた。 すると突然ヴェストリの広場に一陣の風が吹き始めた。風はいっこうにやむ気配を見せず、反対にみるみるうちに強まっていった。 丁度その頃、学院長室にコルベールを伴ったロングビルが入室してきた。 「何じゃ? 2人揃って」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。大騒動になっていて、止めに入ろうとする教師もいますが生徒達に邪魔されて止められないようです」 「まったく、暇を持て余した貴族ほど質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「1人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンとこの馬鹿息子か。親父に輪をかけて女好きじゃからの。大方女の子の取り合いじゃろう。まったくあの親子は……。相手は誰じゃ?」 「ミス・ヴァリエールの使い魔なのですが、どうもゴーレムを作って戦わせようとしているようです」 「……それは本当か、ミスタ・コルベール」 「教師達が決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めておりますが」 「たかが子供の喧嘩を止めるために秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 ロングビルが退室するのを見て、オスマンは杖を振り壁に掛かった姿見にヴェストリの広場の様子を映し出した。 「な、何これ? タバサ、わかる?」 キュルケは訳がわからず、手近にいる中で最も風属性に詳しいタバサに質問した。 「……起こしてるのがいる……」 「え、どこに?」 「……お出まし……」 タバサの指差した方向から、高さ・直径共に2メイル程度の竜巻が飛来してきた。 竜巻はやがてルイズ達の前に降り立つと、回転速度を落とし禍々しさを漂わせるゴーレム……蛮機獣の正体をあらわにする。 「バラララララ、センプウバンキ!!」 「センプウバンキ、蛮機獣の恐ろしさをそこの小僧に体で覚えさせてやるぞよ」 「かしこまり。小僧、お前じゃ何回やっても何回やっても俺は倒せないぜ?」 「言ったな……! ならばセンプウバンキとやら、メイジの恐ろしさを思い知れ! 突撃だ、ワルキューレ!」 センプウバンキ目指して突撃していったワルキューレだったが、 「エアーマーン」 ――ゴウッ! センプウバンキが胴体のプロペラファンから発生させた突風の前に、あっさり元来た方向に吹き飛ばされた。 「何だ、まだ風速50メイルだぞ? 確かにメイジは恐ろしいな。その程度の力でガイアークに喧嘩を売るとは恐るべき馬鹿共だ」 吹き飛ばされ凄まじい勢いで自分に向かって転がってくるワルキューレを、ギーシュは紙一重で回避した。転がる度ワルキューレは破損していく。 「それで終わりか?」 センプウバンキの挑発にギーシュは激昂、杖を振って6体のワルキューレを作り出す。 「一斉攻撃だ、ワルキューレ!」 その言葉に3体のワルキューレがセンプウバンキの風をかいくぐって体をつかみ、動きを封じた。そこを残る3体が袋叩きにしようとした時、 「バラララララララ」 登場時同様センプウバンキは体を高速回転させて竜巻と化し、6体のワルキューレ全部を弾き飛ばした。 その勢いでワルキューレのうち3体が空中激突し大破、残る3体にも即座に追撃がかかる。 「センプウプロペラ攻め」 左腕のプロペラファンが連続発射され、ワルキューレを切り裂いていく。 連射はワルキューレ全滅後も止まらず、最後には大道芸のナイフ投げの要領でギーシュの周囲の壁面に突き刺さり、ギーシュを張り付けにした。 「ぼ……、僕の負けだ……」 事ここに至ってはギーシュは最早戦闘続行不可能。杖を落として降伏を宣言した。 「ふん、その分別がもっと早くついていれば、余計な恥をかかずにすんだでおじゃるよ」 「センプウバンキ、もう戻っていいぞよ」 キタネイダスからの帰還命令を受けて、センプウバンキはまたも自身を竜巻に変えて空の彼方に消えていった。 蛮機獣センプウバンキ 【分類】害気目 【作製者】害気大臣キタネイダス 【作製モデル】扇風機 【口癖】「バラララララ」「エアーマーン」 【身長】218cm 【体重】221kg 「扇風機」をモデルとして製造された蛮機獣です。 扇風機とは、暑い時期に使われるプロペラファンを回転させて風を発生させる道具です。 センプウバンキは、体の各部に強力なプロペラファンを持っています。 プロペラファンを高速回転させ、最大風速100メイルの竜巻や突風を発生させる事ができます。 注1)発生させる竜巻は何回やっても回避できないうえ、タイム連打を試してみても無意味です。 注2)何回やっても相手が倒せなかったとしても、次は絶対勝つために産業革命だけは最後まで取っておきましょう。 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 「ハーイ! 朝のお目覚めいかがかしら、ルイズ?」 洗濯をシエスタに任せたケガレシアがルイズと合流した直後、そう声をかけてきた少女がいた。しかしルイズとは性別以外ほぼ違っている。髪の色、身長、胸囲……。 「おはようキュルケ」 「おはよう。それよりもあなた平民を使い魔にしたって言うけど本当? 興味があったからお披露目まで待ちきれなかったの」 キュルケはルイズの傍に立っていたケガレシアをまじまじ見つめる。 「ふーん、なかなか美人ね。お名前聞かせ願いますかしら、ミス?」 「ケガレシアでおじゃる」 「初めましてミス・ケガレシア。私はキュルケ、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプシュトー」 「何親しげに挨拶してるのよ!」 それがどちらに向けられた言葉かは不明だが、ルイズは非常に苛立たしそうに声を荒げた。 「それにしても本当に平民を使い魔にしたのね。魔法学院の歴史で初めてだそうよ」 「うるさいわね」 「私も昨日使い魔を呼んだのよ。いらっしゃい、フレイム」 開けられた扉からのそのそ入ってきた赤銅色の生物は、ワニ程もある大きなトカゲだった。 「サラマンダーね」 「そうよ。しかも火竜山脈に生息する亜種よ。普通のサラマンダーよりもずっとレア物なんだから」 「そりゃよかったわね」 ルイズは鬱陶しそうにキュルケの相手をし、ケガレシアはフレイムに侮蔑的な笑みを浮かべていた。 「それじゃ使い魔も見させてもらったし、失礼」 一方的に話し終えるとキュルケはフレイムを連れて去っていった。キュルケの去った方向を火を噴きそうなほど睨みつけるルイズ。 「きー! 何なのよ! 自分がレア物の使い魔を召喚できたからって!」 「あんなトカゲごときで何を悔しがっているでおじゃる?」 「いい? メイジの実力を見るには使い魔を見よ、っていうのよ。つまりあいつがレア物のサラマンダーを呼んだって事は、あいつが優秀な火のメイジだって事を明らかにしているんだから」 「ふん、あんなトカゲの炎など、かつてキタネイダスの配下だったショウキャクバンキの足元にも及ばないでおじゃる」 「……ところで、そのキタネイダスとヨゴシュタインはどこに行ったのよ?」 ――GP-03 確率ゼロパー―― そんなキュルケとの会話の後、ルイズはケガレシアを今日最初の授業が行われる教室に連れていった。 使い魔召喚の儀式後最初の授業は各自の使い魔の披露という一面もあるため、本来であればヨゴシュタイン・キタネイダスも同席させたかったところなのだが、不在のためケガレシア1人を連れていく事にしたのだ。 教室内は多数の生徒と多数の使い魔がいるため、面積のわりに騒々しかった。 教壇前には温和そうな中年女性が立っていて、 「皆さん、春の使い魔召喚はどなたも成功したようですね。このシュヴルーズは毎年この日を楽しみにしているのですよ」 紫のマントを纏った女性教師・シュヴルーズは周囲を見渡し満足そうに頷く。 「ゼロのルイズ! 召喚できなかったからってそこら辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 「違うわよ! きちんと召喚したもの。こいつらが来ちゃっただけよ! 風邪っぴきのマリコルヌ!」 マリコルヌの暴言に負けじと返したルイズの反論に、マリコルヌは憤怒のあまり赤面した。 「誰が風邪っぴきだ! 僕は風上のマリコルヌだ! 風邪なんてひいてないぞ! ゼロのルイズ!」 「ミスタ・マリコルヌ、ミス・ヴァリエール、友達を馬鹿にするものではありませんよ。ゼロだの風邪っぴきだのと」 シュヴルーズが杖を振ると突然数個の小石が出現、うち2つがルイズ・マリコルヌの顔面を直撃した。 「それでは授業を始めます。皆さんは私とこれから1年間、土属性の魔法について学んでいきましょう」 そう言うとシュヴルーズは教室内を一通り見渡し、 「ミス・ヴァリエール、基礎錬金です。ここにある石ころを金属に変えてごらんなさい」 ルイズは立ち上がらずに困惑の表情を浮かべて周囲を見渡すと視線が合ったキュルケが、 「ミス。シュヴルーズ、危険です。やめといた方がいいと思いますけど」 「失敗を恐れていては何も変わりません。ミス・ヴァリエール、やってごらんなさい」 「お願いルイズ、やめて!」 しばらく間を置いてルイズが呟く。 「……やります」 途端にざわめきが増大した。大急ぎで机の下に潜り込む者、始祖ブリミルに祈りを捧げる者、力ずくでルイズを止めようと試みる者……。 そんな生徒達の騒ぎを意に介さずルイズは教壇に向かった。 洗濯後の排水をケガレシアの指示通り川に流しに行こうとしているシエスタの後方で、爆音が聞こえた。 音のした方向を見ると、教室から白煙が噴き上がっていて窓から誰か(シエスタは知らないがマリコルヌ)が吹き飛ばされていくのが見えた。 シエスタはしばらく呆然と放物線を描いているマリコルヌを目で追ったが、マリコルヌ砲弾が着弾したあたりで状況を把握した。 「大変です!!」 シエスタは着弾地点に人間砲弾を追っていった。 昼食前の教室、黙って箒で床を掃くルイズの姿があった。 ルイズは罰として魔法無しでの教室掃除を命じられ、ケガレシアは「ゴミを捨ててくる」と言って瓦礫類を担いで教室を出たため、教室内に散乱したガラスや燃えかすをルイズとケガレシアが自分の代わりにとよこしたウガッツ達が掃除をしていた。 「ルイズ」 そこに戻ってきたケガレシアがルイズに声をかけた。 「……失望した? 私はどんな魔法を使っても爆発するの……。だから“ゼロ”なんて呼ばれてるのよ……」 「ルイズ、お前はなかなか見所があるでおじゃるな」 「見所……?」 「あの爆発でおじゃる。魔法を使うといつもああした爆発が起こるのでおじゃるな」 「ええ……、そうよ……」 「その力で、わらわ達に協力してはくれぬでおじゃるか?」 「協力……? こんな爆発でいったい何に協力できるって言うのよ……?」 「我らの目的のために、ルイズの魔法は大きな助けになるでおじゃる。……まあ、あらかた片付けも終わった事でおじゃるし、昼食を取りながらゆっくり話すでおじゃる」 場所は変わって食堂。 「実はゴミを捨てに行った帰り、ヨゴシュタインとキタネイダスから連絡があったでおじゃる」 「どこに行ってたのよ、2人とも」 「今後の事を考えて、わらわ達の拠点を作る場所を探していたでおじゃる。それが完成したと」 「は? 今朝場所探しを始めてもう完成? 何なのよ、それ?」 「今夜にでもルイズを招待するでおじゃる、わらわ達の居城・ヘルガイユ宮殿に」 「ヘルガイユ……、あんまりいい響きじゃないわね」 その時、向こう側から数人の男子学生が歩いてくるのが見えた。 中心にいるのは、金髪でバラをシャツのポケットに挿している気障そうな少年・ギーシュだ。 ギーシュの周囲にいる者達が彼を次々冷やかす。 「なあギーシュ! お前今は誰と付き合っているんだよ!?」 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「ふっ、僕の心の中には特別な女性なんかいないよ。それぞれが僕の花なんだ」 ギーシュが取り巻きの1人の質問に答えると、彼のマントから紫色の小瓶が落ちる。 「落し物でおじゃる」 「ミス、それは僕の物ではありません。勘違いではありませんか?」 「いや、確かにお前が落とした物でおじゃる」 ギーシュは否定したが、その瓶を見た彼の友人と思わしき生徒達が続けて言う。 「あれ? あの香水はもしかしてモンモランシーのじゃないのか?」 「そういや、その色はモンモランシーが作ってるやつと同じだな」 「それが君のポケットから落ちてきたという事はだギーシュ、君はモンモランシーと付き合ってるんだな!」 すると茶色のマントの少女がギーシュに向かって歩いていき、平手打ちをギーシュの頬に浴びせて去っていった。 「……やれやれ、バラとて栄養をやりすぎれば根腐れを起こしてしまうよ。彼女達はバラの存在の意味というか、扱いも理解してないようだ」 「ふふふ、無様でおじゃるな。だがそれがよい。わらわは咲き誇るバラなどよりも、枯れ果て腐れ落ちた花が好みでおじゃる。……今のお前のような」 微笑を浮かべながらのケガレシアの茶々に、ギーシュは矛先を彼女に向けた。 「そ、そもそも君が不用意にも瓶を拾ったせいで、2人のレディーの名誉が傷付いた。いったいどうしてくれるんだい?」 「どうもせぬでおじゃる」 「いいだろう、決闘だ! その思い上がった頭を冷やしてあげよう! 貴族に対する礼儀というものも教えてあげよう!」 「受けて立ってやるでおじゃる。場所はお前次第。時間は……1時間後」 「よし、1時間後にヴェストリの広場で!!」 ギーシュはバラを象った杖をケガレシアに向けると、食堂から出ていった。 「こ、殺されちゃう……。き、貴族を怒らせたら、殺されちゃう……!」 「殺される? 誰が? 誰にでおじゃるか?」 「ケガレシアがギーシュにに決まってるわよ! 馬鹿じゃないの! 相手はメイジなのよ!? いくらあんたが腕に覚えがあるって言っても勝てるわけないじゃないの!」 「勝てるわけが無いのはあの小僧の方でおじゃる。……まあよい。ルイズ、ヘルガイユ宮殿への招待を前倒ししてこれからにするでおじゃる」 「ちょっ、何言って……ってどこに行く気よ!?」 「いよいよルイズにその力を見せつけ始めたガイアーク! 果たしてギーシュは生きて帰れるのか? その全てはまた次の話だ、ドルドル!」 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 次回予告 「ベアールVやで。ルイズが出会った言葉を喋る魔剣。えーっ、もしかしてこいつを蛮機獣に!? どないする、みんな!? GP-06 魔剣バンキ!? ――GO ON!!」 何だかんだで過ぎていった最初の虚無の曜日の夜、ルイズ達4人はヘルガイユ宮殿の広間に集合していた。 「そうそう、ルイズの魔法はなかなか役に立ちそうでおじゃるよ」 「ふむ、それは心強いぞよ」 「ケガレシア、この前も聞いたけどただ爆発するだけの魔法があなた達にどう役立つの?」 「爆発する『だけ』? それは間違いなり。これを見るなり」 そう言うとヨゴシュタインは機械を操作し画面に何やら映像を映し出した。映っているのはどうやら都市のようだった。建ち並ぶ無数の四角い塔。 『ハッパ61! ハッパッパー!』 無数の棒を背負ったり棒をベルト状に繋げた帯を持つ蛮機獣が、束ねた棒をあちこちに放り投げていた。 「まるで『遠見の鏡』ね。それにしてもここはどこなの?」 「ヒューマンワールドでおじゃる。こいつはヨゴシュタイン配下・ハッパバンキ」 若干無機質に見えるものの洗練された雰囲気を持つヒューマンワールドの都市風景にルイズが見とれていたのも束の間、 画面内のハッパバンキは立て膝を突き、 『ダイナマイトドンドン!』 言葉と共に膝のスイッチを押す。 次の瞬間激しい爆発が都市の各所で発生し、塔は無残に破壊されていった。 『ハーッパッパッパー! ハーッパッパッパー!』 その光景にハッパバンキは満足げな笑い声を上げ、後方に控えるウガッツ達も小躍りしていた。 『待ちやがれ、ガイアーク!』 声のした方向に振り向いたハッパバンキの視線を追うように画面が切り替わり、赤・青・黄・緑・黒の奇妙な衣服を纏った5人組がハッパバンキの方に駆け寄ってきた。 『邪魔するな、ゴーオンジャー』 ――GP-06 魔剣バンキ!?―― 「何なの、こいつら?」 「炎神戦隊ゴーオンジャー。わらわ達とヒューマンワールドで敵対していたにっくき奴らでおじゃる」 『ハッパバンキ様からのプレゼントだっパー』 ハッパバンキは例によってダイナマイトをゴーオンジャーの足元に投げつけ、 『ダイナマイトドンドン!』 再度スイッチを押してゴーオンジャーを爆炎の中に飲み込ませた。 『うわあーっ!!』 たまらず吹き飛ばされて地面に転がるゴーオンジャー。 『ハッパッパッパッパッパッパー!!』 苦しみながらも立ち上がろうとするゴーオンジャーの側から、愉快痛快という表情でその様子を眺めているハッパバンキ・ウガッツ達が映し出されたところでヨゴシュタインは映像を消した。 「あんた達あんな相手と戦ってたの!? あんな爆発を受けても痛がるだけなんて……あ!」 そこまで言ったところでルイズは、ケガレシアが自分の魔法が役立つと言った理由を悟った。 「もうわかったでおじゃろう? 攻撃・破壊……、魔法を使おうとして発生させた爆発そのものは失敗と見られても、その爆発自体が十分に役立つでおじゃる。そしてそれはルイズが成長すればより強力になるでおじゃる。ルイズは『爆発しか起こせないメイジ』ではないでおじゃる。『誰にも負けない爆発が起こせるメイジ』でおじゃるよ」 「……誰にも負けない……? それは本当なの……? 『ゼロ』って言われてた私でも強くなれる……、ケガレシア達の役に立てるの……?」 「もちろんでおじゃる」 「ルイズ、そのためにもしっかり学業に励み訓練を積む事なり」 「あ、当たり前じゃないの!」 「おっと、忘れていたでおじゃる。強力といえばデルフリンガー、そろそろお前を強力にしてやるでおじゃる」 そう言うとケガレシアは、広間の隅にあった小部屋の中にデルフリガーを入れる。 「うわなにをするやめ――」 デルフリンガーの悲痛な叫びは扉が閉ざされた音に遮られた。 「ルイズ、ここはひとつルイズにやらせるでおじゃる」 「私? っていうか、いったい何をするつもりなの?」 「このデルフリンガーにビックリウムエナジーを注入して、改造するでおじゃる。成功すればデルフリンガーの潜在能力(曖昧)は100倍にもなるでおじゃる」 「面白そうね」 「……や、やめろ! やめてくれ!!」 「ふふふ、まあ信用するでおじゃるよ……。ルイズ、まずここのボタンを押してレバーを右に動かすでおじゃる」 「こうかしら?」 「そうそう、次にそこの画面に出ているカウントダウンの数字が80を切ったら……」 ケガレシアの指示に従い作業工程を進めていくルイズ。とその時、 「うわあああ!? 何じゃこりゃあああああ!?」 激しく放電していた扉の隙間から白煙が噴出し、デルフリンガーの悲鳴が響いた。 「ん~……? 間違ったでおじゃるか~?」 軽い口調ながらも急ぎコンソールを操作するケガレシアだったが、やがて小部屋の室内で火花が散り始め小規模な爆発も数回発生した。 「◎△$♪×¥●&%#!!」 デルフリンガーの絶叫と重なるように一際大きな爆発音が轟き、その勢いで小部屋の扉が開く。 「これ……、どうなってるの?」 おっかなびっくり小部屋の中を覗き込んだルイズは思わず声を上げた。 小部屋の中にあったのは1本の剣。しかし簡素な造作のデルフリンガーとは大きく異なり、全長はルイズの身長程で、複雑な形状のつばには飾りなのだろうかつり上がった目が彫り込まれていた。さらには柄からつばにかけて蠢く触手が生えている。 明らかに尋常な剣ではなく、外見は普通の剣であるデルフリンガーでもなかった。 「これがケガレシアのいってた『強力にする』って事?」 「いや、わらわはデルフリンガーを蛮機獣に改造するつもりだったでおじゃる。どうしてこうなったのやら……」 ルイズが何の気無しに大剣を握ろうとした時、大剣は数かな金属音を立てた。 「む!? 離れるぞよ!」 キタネイダスの言葉にルイズが飛び退いた一瞬後、大剣はガチャガチャ音を立てて部分鎧を纏い金属質の肌を持ったゴーレムへと変形した。 「……おでれーた」 「もしやデルフリンガーなりか!?」 「おうよ」 「ケガレシア、やっぱりこれって失敗してこんな姿になったのよね? 決闘の時のセンプウバンキとか、さっき見たハッパバンキとは全然違うもの」 「失敗したのは確かでおじゃるが……。それにしてもこのエネルギー量は半端でないでおじゃる。元々高いエネルギーを持っていたところにビックリウムエナジーを注入したのが、こうなった原因でおじゃるか……? これは蛮機獣と呼ぶには勿体無いでおじゃる。機士……そう、機士でおじゃる」 「どういう事?」 「蛮機族の名門・アレルンブラ家にニゴールという変態王子がおるでおじゃるが、その配下に害水機士ウズマキホーテというやつがいるでおじゃる。そいつをデルフリンガーの新たな姿から連想したでおじゃる」 「でもデルフリンガーは絶対水属性じゃないわよね?」 「そこなのでおじゃる。しかも害地とも害気とも言えないでおじゃるし……、うーむ……」 しばし沈思黙考するケガレシア。 ポク……ポク……ピーン! 「ひらめいたでおじゃる!」 「おおっ!?」 「ここはマジックワールド、魔法の属性を持つ蛮機獣を作ってもおかしくないでおじゃる。しかも作製したのはメイジであるルイズ。決定! お前の名前は害魔機士デルフリンガーでおじゃる」 「害魔機士か、何かかっこいいじゃねえか! それにさっきみてえなばかでっかい剣になれるのもな!」 「でも普段からあんなの持ち歩くわけにはいかないわよ?」 「心配すんな、お嬢。自分の体いじくられたからわかるんだが、元の剣にも戻れるんだぜ? もちろん錆はしっかり落ちてるがな。それにいじくられる前から持ってた能力も幾つか思い出したんだ!」 「あんた、つくづくとんでもないのになったわね……」 害魔機士デルフリンガー 【分類】害魔目(仮) 【役割】ヴァリエール家害魔機士(仮) 【武装】刀身状の鉤爪・剣形態になった自分自身 【口癖】「おでれーた!」 【身長】213cm 【体重】240kg 三大臣を召喚したルイズによって、魔剣デルフリンガーがビックリウムエナジー注入改造を受けて生まれ変わった姿です。 魔剣本来の能力により、魔法のエネルギーを吸収し自分の力とする事ができます。 他にも各種特殊能力を持っていますが、本人が忘れているため大半が活用できません。 注)口が悪いので武器屋の店頭に置かないでください。 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 次回予告 「オン! バスオンでぃ。今日は虚無の曜日って事で魔法学院も休みなんだが、ヒューマンワールドじゃ毎週日曜日にガイアークが蛮機獣送り込んでっからな。油断はできねぇぜ! GP-05 買物ホリデー ――GO ON!!」 学院長室では、コルベール・オスマンが「遠見の鏡」で決闘の様子を見届けていた。 「……圧倒的でしたな。あんなゴーレムを作り出すとは何とも恐るべき使い魔です。あの突風と竜巻……、トライアングルクラスのメイジにも劣らぬものですよ、オールド・オスマン」 コルベールは厳しい視線でセンプウバンキ・ギーシュ戦を見ていた。 「どういうゴーレムなのじゃろうな、あれは」 「かなりのメイジの手によると思うのですが……」 「……うむ、あのルーン、君の持ってきた資料に間違いが無ければ確実なのじゃろう。それも気になるが……」 「オールド・オスマン! 早速王室に報告して指示を仰がない事には……」 「それには及ばん、ミスタ・コルベール。王室のボンクラどもに過分の力を与えてどうしようと言うのだね? 戦争でもしようと言うのか?」 「そ、それは……」 「この一件、わしが預かる。他言は無用じゃ」 「仰る事はわかりますが、状況は……」 「そうじゃ、ゴーレムを通じてとはいえ彼らは自分達の存在と能力を堂々とさらけ出した。ミスタ・グラモン、ドットクラスの土メイジなど敵ではないゴーレムを作る自分達の能力をな。人の口に戸は立てられぬ、アカデミーの耳に入るのもそう遠くないぞ」 「それに何やら嫌な予感がします。下手をすればハルケギニアが戦火に包まれるどころか、死の世界と化すかもしれません……」 コルベール・オスマンは夕焼け空を眺める。晴れ渡るだろう明日の天気のような明るい未来など期待できないと知りつつも。 ――GP-05 買物ホリデー―― 「ううう……、頭痛い……」 ギーシュとの決闘の翌朝、ルイズの目覚めは激しい頭痛と共にあった。 「……確か昨夜は……、決闘の後ヘルガイユ宮殿で祝勝会とばかりに酒盛りをやったんだったわよね……」 ケガレシア達が嬉々として呑んでいる「DIOXIN BEER」だの「錆の雫」だのというぞっとしないラベルの瓶の中身を呑む気になれなかったルイズは、シエスタに持ち出させたワインを1瓶空けて泥酔した。 すっかりできあがって大声で、 「♪害悪(ガイアーク)ナンバー1 大地を汚すヨゴシュタイン バン(バン)バン(バン)君の番 そう明日のために ブン(ブン)ブン(ブン)ゴミ処分 エゴな投棄GO!」 やら、 「♪汚染が大好き 蛮機族ガイアーク リデュース・リユース リサイクルやめちゃおう 絶望させたいから頑張れる GO-ON!!」 やら素面に戻った今にして思えば実に不穏当な歌を歌っていた記憶はあるが、そのあたりから記憶が曖昧になっている。 激しく痛む頭部を押さえつつケガレシアに声をかける。 「……ケガレシア、街に買物に行くわよ」 ルイズは休日である虚無の曜日を利用しケガレシアと街に買物に行く事にした。ヨゴシュタイン・キタネイダスは相変わらずヘルガイユ宮殿で機械いじりをしている。 蛮ドーマから見下ろすトリステインの城下町はまさに自然と都市が調和した美しい町並みなのだが、ケガレシアはそれらにあまり興味が無さそうだった。 「これがトリステインの城下町でおじゃるか?」 「ええ、ブルドンネ街はトリステインで1番大きな通りよ」 「なかなか賑やかでおじゃるな」 「スリも多いから気をつけるのよ」 「目当ての店は決まっているのでおじゃるか?」 「ええ、こっちよ」 その頃学園寮のモンモランシーの自室では……、 「……ルイズ達がどこかに行った……キタネイダスって奴は別行動っぽい……」 そう言いつつトランプを広げるタバサ。 「買い物にでも行ったんでしょ。それよりタバサ、あんた何でそんなにミスタ・キタネイダスの事目の敵にするの?」 トランプを1枚置くモンモランシー。7並べをしているようだ。 「……パス……」 「それよりあたしはあのケガレシアって女が何か気に食わないのよね。ギーシュがどうこうっていうより生理的に。そうそう、ギーシュはギーシュでミスタ・ヨゴシュタインが嫌いみたいよ」 「……そう……ところでハートの6と8を早く出して……」 「ん……、何であたしが止めてるのを知ってるの?」 「……2人で7並べをしているから……」 「なるほど」 「……出して……」 「……嫌」 「………」 無表情のためそうは見えないが、キレて手持ちのトランプを放り投げるタバサ。 その時、 「タバサ! こんなとこにいたのね! 今から出かけるわよ! 早く支度してちょうだい!」 声と共にキュルケが部屋に飛び込んできた。 「……何……」 「ミス・ケガレシアがルイズに連れられて街へ行っちゃったの! 今日こそは女を上げる方法を教えてもらおうと思ってたのに! だから追いかけるのよ! ルイズ1人に女を上げさせたりはしないわ! それにはあなたの協力が必要なのよ、タバサ!」 ケガレシアの名前を聞いたモンモランシーが眉をひそめるのにもかまわず、キュルケは早口でまくし立てた。ごくかすかにうんざりした表情を浮かべつつも頷くタバサ。 「ありがとう! タバサ!」 一方、ルイズ達はある武器屋に入っていた。 「こいつはおったまげた! 貴族が剣を! おったまげた!」 武器屋に入ると店主は最初はルイズ達をガサ入れに来た役人かと驚愕したが、客だと言うとそれ以上に驚愕した。 「ねえ、貴族が客だからってちょっと大袈裟過ぎない?」 「いえ、お嬢様方。農民は鍬を、兵隊は剣を、貴族は杖を振ると相場は決まっておりやすんで」 「使うのは私じゃなくて彼女よ」 「こりゃまた随分と用心深いお方で。ゲルマニアかガリアの国境に近い所の出身ですかい?」 「どうしてそんな事を?」 「なあに、ちょっとした推測でさあ。でかい戦まではいかなくても、お隣さんとのいざこざに備えてるのかと思いやして」 「まあそんなところね。彼女に合うような武器を見繕ってくれる?」 「へえ、でしたらこちら! かの高名なゲルマニアの錬金魔術師・シュペー卿が――」 「駄目でおじゃるな。これならわらわの鞭の方がましでおじゃる。まあマジックワールドの技術では、あまりいい武器は望めないでおじゃるが……」 「……まあ、あんなのを魔法抜きで作れるケガレシア達から見ればねえ……」 『ナマ言ってんじゃねーぞ! 剣もろくに使えねえアマが!!』 ルイズ・ケガレシアの会話に割って入った何者かの声がした方向に、2人は注目する。 「あ、こらデル公。てめえ何言ってやがんだ」 ケガレシアは樽に乱雑に突っ込まれていた剣の中から、1.5メイル程度の長剣を取り出す。 「ほう」 「インテリジェンスソード?」 「へい、何せこんななりですが……」 「……ふむ、いただくでおじゃる」 「そ、そりゃ毎度」 「ちょっとケガレシア、そんな錆だらけの買ってどうする気!?」 「少々面白い事を思いついたでおじゃる。……たぶんルイズも気に入るでおじゃるよ」 『い、いったい俺をどうする気だ!? ……ってこいつ「使い手」か!? こんなとこで使い手にめぐり会えるたーね……な、何だこりゃ!? こんな奇妙な「使い手」は初めてだぞ!?』 「いくらでおじゃるか?」 「新金貨で100ですかね」 「高くないの?」 「馬鹿言っちゃいけやせんぜ。あの大きさの大剣なら相場で最低200でさ。ただあいつは見た目通りで置いとくだけで商売の邪魔になりやすんでね。中古の値段でいいでさあ」 「買ったわ」 ルイズは財布を取り出すと、新金貨を100枚店主の前に積み上げた。 2人が店を出ると、色気をふり撒いている赤髪の少女とその後方をついてくる小柄な青髪の少女が店の前にいた。共に杖と何かしらの荷物を持っている。 「ハーイ、ご機嫌いかがかしら、おふたりさん」 「キュルケ、タバサ! 何でここにいるのよ」 「あら、どこにいようと私の勝手でしょ。剣を買ったみたいだけど、そんなボロ剣で済ますなんてヴァリエールもケチね」 「うるさいわね」 「そんなボロ剣よりこっちの方が素敵よ」 キュルケが持っていた包みの中から出てきたのは、華麗な装飾のレイピアだった。しかしケガレシアはふんと鼻で笑い、 「元々武器としてならわらわの鞭の方がましでおじゃる。これはちょっと面白い事に使えそうなので買ったでおじゃるよ」 『……っていうかよ、姐さん、ほんとに俺が必要なの?』 ケガレシアが帯びているデルフリンガーが自信無さげに質問した。 「そう言うものではないでおじゃるよ、デルフリンガー。わらわ達はまだマジックワールドについて知らない事が多いでおじゃるから、お前の知恵は役に立つでおじゃる。それに戻ったらもっともっと強力にしてやるでおじゃるよ」 『……嫌な予感がするのう』 デルフリンガーは溜め息を吐くような雰囲気で呟いた。 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!
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前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!! 次回予告 「バスオンでい! おい姫さん、ルイズの嬢ちゃんに勝手な頼みするんじゃねえ! おいおい、アルビオンが大変な事になっちまってるぜ!? あれを? 急ぐ? 皇太子? GP-12 姫君ライホウ ――GO ON!!」 新聞騒動から数日後、リンテンバンキのばら撒いた新聞記事による諸々は無かった事となっていた。影響といえば街のあちこちに捨てられた大量のゴミの後始末程度で、魔法学院はすっかり日常を取り戻していた。 「最強の系統とは何か判るかね?」 授業中、前座を務める風属性担当教師・ギトーが質問した。 「虚無ですか?」 生徒の1人の答えに教壇に立っているギトーは不機嫌そうな表情で、 「現実での話だ。ミス・ヴァリエール、答えなさい」 「そんなものは存在しません。攻撃するだけなら確かに火が最強でしょうが、そんなもの個人の実力差と戦術でどうにでもなります。ミスタ・ギトーは常々風が最強と言っていますけれど、風を使われなければオールド・オスマンにも勝てるとお思いですか? さらに言えば戦略・謀略によって持てる力を十分発揮できなかったとしたら?」 「なるほど、確かに私とて属性の強さだけでオールド・オスマンに勝てるなどとは思っていない。だがメイジの実力差が同程度であれば最強は風属性に他ならない」 「たいそうな自信ですね?」 「君の得意な魔法で私にかかってきたまえ」 「それならば私が相手になるぞよ」 ルイズの背後からした男の声に全員がその声の主に視線を向ける。 「キタネイダス……」 「ミスタ・キタネイダス、確かあなたは大気……つまり風属性でしたな。ひとつお手合わせ願いましょうか」 「いいぞよ」 ギトーの挑戦を受けたキタネイダスの言葉に、2人の間にいる生徒達が慌てて批難していく。 「それではどうぞ」 「それではいくぞよ」 そう言うが早いか杖を振り呪文を詠唱するギトー。風の刃がキタネイダスに殺到する。 それに平然と耐えてキタネイダスは黒煙をギトーに浴びせた。 「ゲホッゲホッ、ゲホゲホゲホ!」 激しく咳き込み行動不能に陥ったギトーの隙を突いて、キタネイダスはその喉に自身の杖を突きつける。 「お前がさっき言ったとおり風属性には大気、すなわち空気もまた含まれるぞよ。空気を吸わずに生きられる者は少ない。そこを工夫すべきだぞよ」 ――GP-12 姫君ライホウ―― 「ミスタ・ギトー、失礼します……どうしましたか?」 丁度その時コルベールが教室に入ってきた。 「本日の授業は全て中止です」 生徒達が歓声を上げる。 「いかなる理由があっての事ですかな?」 「最後まで聞いてください、ミスタ・ギトー。それをこれから説明するのです」 「最後から話してください、ミスタ・コルベール」 「……皆さんにお知らせです。恐れ多くも先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が本日ゲルマニアご訪問からのお帰りにこの魔法学院に行幸されます。そのため今度の使い魔品評会には姫様も御出席されます」 生徒達がざわめく。 「アンリエッタとは何者でおじゃる?」 「このトリステイン王国のお姫様よ」 「したがって粗相があってはいけません。急な事ですが授業は中止し、今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。生徒諸君は正装し門に整列すること」 生徒達の間に緊張が走る。 「皆さんが立派な貴族に成長した姿を姫殿下にお見せする絶好の機会です。しっかり杖を磨いておきなさい。よろしいですか」 王女一行が魔法学院の正門をくぐった時、既に生徒達は整列していた。 ――シャン! いっせいに杖を振った音が見事に重なって喜びの挨拶を王女に伝える。 停車した馬車の横に代表者オールド・オスマンが迎える。 召使達が赤絨毯を素早く敷き詰める。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーりー!」 衛士が王女登場を告げる。 馬車から降りたアンリエッタはにっこり微笑んで優雅に手を振った。 彼女は童話から抜け出してきたようないかにもという姫がいた。すらりとした気品ある容貌、薄青の瞳、高い鼻が目をひく瑞々しい美女。男子ばかりか女子も歓声を上げている。 大慌てで進められたわりには立派に準備が整った使い魔品評会会場。 キュルケ・タバサ・ギーシュ等が各自趣向を凝らして使い魔を披露していき、ついにルイズの順番が回ってきた。 「火竜山脈のサラマンダーや風竜にもできない事がケガレシア達にはできるのよ! それは素敵な歌を歌う事!」 「うん。だから目一杯歌うでおじゃるううう!」 ドラムスティックでヨゴシュタインがカウントを取り、 『サンギョーカクメイだ!!』 ルイズがギター、ケガレシアがベース、ヨゴシュタインがドラム、キタネイダスがキーボードでメタルサウンドに乗って高らかに歌い始めるのは「害悪産業革命宣言」。 「♪澄んだ空は気色悪い」 「♪豊かな大地反吐が出る」 「♪綺麗な水飲めやしない」 「♪夢や希望は邪魔なだけ」 『♪ケガれヨゴれてキタナくするぜ』 「ビックリウムエナジー発動!」 『♪サンギョーカクメイだ!(ジョッジョバー) 俺たちゃガイアーク(気高く) サンギョーカクメイだ!(グチャグチャー) 俺たちゃガイアーク(かしこまれ) 地獄に悪の華咲かせ ガイアーク』 ノリにノッて歌う4人とは裏腹に、キュルケ達を含む観客の大部分は耳を押さえて悶絶していた。 「ぐああーっ! 何よこの酷い歌は!」 「歌って言うよりほとんど雑音じゃないか!」 ――コーンコーン、コンコンコン…… 夕食を終えたルイズが寝る支度を始めていると突然扉を叩く者が現れた。 「このような時間に何者でおじゃる?」 ――コーンコーン、コンコンコン…… ルイズはその音の規則性に気付いて扉の方に向かうと扉を開いた。 その途端、真っ黒なフードを被った少女が室内に入ってきた。 「……何者ぞよ?」 キタネイダスの問いかけにフードを被った少女は「静かに」と口元に指を立て、杖をマントから取り出して軽く振り光の粉を室内に舞わせる。 「……ディティクトマジックなりか?」 ヨゴシュタインが尋ねると少女は静かに頷き、 「どこに目と耳が光ってるかわかりませんからね」 周囲を確認してフードを脱いだ少女は神々しいほどの高貴さを持つ美少女だった。 「姫殿下!」 慌てて膝を突くルイズにアンリエッタは笑みを浮かべ、 「お久しぶりね、ルイズ」 「姫殿下、いけません。こんな下賎な場所へお越しになられるなんて」 「ルイズ、そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだいな。あなたと私はお友達じゃないの」 「勿体無いお言葉でございます。姫殿下」 「……席を外した方がよいでおじゃるか?」 思わずそう声をかけてしまったケガレシアにアンリエッタは気付いていなかったようで彼女に視線を向け、 「あら、ごめんなさい。お邪魔だったかしら?」 「お邪魔? どうして?」 「だってそこの彼女、ルイズの恋人なのでしょう? 嫌だわ、私ったら懐かしさにかまけてとんだ粗相をしてしまったみたい」 「違います!」 「あら、では何でこんな時間に?」 「ケガレシア――そしてヨゴシュタインとキタネイダスは私の使い魔なのです」 「ルイズ、あなたって昔から変わっていたけれど相変わらずなのね」 「信じられないでしょうけれど実力は保障します。火竜山脈のサラマンダー以上、風竜の幼生体以上、『土くれ』のフーケのゴーレム以上です」 強く言い切ったルイズにアンリエッタは頷いて微笑む。 「いい使い魔を召喚しましたね。……これなら安心して頼めるというものです」 「……頼める?」 アンリエッタの依頼というのは以下の通りだ。 アルビオンでクーデターが発生、王朝は転覆寸前の状況になっている。 王朝転覆後の新政権とトリステインは確実に敵対するが、現時点でトリステインの軍事力は対抗策として大きな不安が残る。 そこでアンリエッタがゲルマニアの王と政略結婚をする事になったが、その政略結婚の障害となる可能性のある内容の手紙をアルビオン皇太子が所持している。 アンリエッタとしては王朝転覆前にそれを回収せねばならない。 しかしトリステイン貴族達はアルビオンクーデター派との内通の危険性が高いため、アンリエッタは信用できる人物としてルイズに依頼に来たという事だ。 「国王陛下とウェールズ皇太子はニューカッスル城に篭城、陣を構えておられます。『土くれ』のフーケを難無く捕まえたルイズ達ならば、この困難な仕事もきっと果たせるものと見込んで参りました。可能ならばお二方をも密かにお救いし王位奪還を成し遂げられるようご援助したいものですが。……しかしこれは危険な仕事です。だからこそ王女としての命令ではなく、受けるか否かをルイズの判断に任せられる依頼という形を取ったのですが……」 「姫様、涙をお拭きになってください。たとえ地獄の釜の中でも異世界ヒューマンワールドでも、この私は姫様と王国の危機を見過ごしません。その一件是非お任せください。必ず完遂した上で生還してご覧に入れます」 「その通りでおじゃる。ルイズとわらわ達が姫殿下の命を果たせぬはずがないでおじゃる」 「まあ、頼もしい方。私の大事なお友達をこれからもよろしくお願い致しますね」 「かしこまり」 アンリエッタは頷いてルイズの机を借り一筆したためる。最後に躊躇しつつも末尾の一文を書いた。 「始祖ブリミルよ……、この愚かな姫の自分勝手をお許しください……。でも私はやはりこの一文を書かざるを得ないのです……」 そう呟くとアンリエッタは手紙を巻き杖を振るった。手紙に封蝋がなされ花押が押される。 そして指から青いルビーの指輪を外し手紙と共にルイズに手渡す。 「ウェールズ皇太子にお会いしたらこの手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょうから。それと……、これは母君から頂いた『水のルビー』です。身分証明とせめてものお守りに持ってください。旅の資金が不安ならば売り払ってもかまいませんが……」 「そんな、王国に伝わる始祖の秘宝に値段など付きませんわ」 「この任務には我が国の未来がかかっています。この指輪がアルビオンの猛き風より貴女方を守りますように。……明日の早朝、学院正門前に来てください。案内の者を呼んでありますので」 前ページ次ページ炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!クロスオーBANG!!