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7-241-242 ミハチヨ ある夏の日 三橋くんを家まで送るよう監督に言われた私は三橋くんと二人帰路にいた。 「今日の試合すごかったね 三橋くん完封だよ!」 「オレじゃなくて 阿部くんとみんながすごいんだ よっ!」 「みんなもだけど、三橋くんが凄いんだよ?」 「オ レはただ投げるてるだ けだから…」 「そんな事ないよ!すごくかっこよかったもん!」 三橋くんはピクっと反応して歩くのをやめた。 「三橋くん?」 なんだろう…なんか悪いこと言っちゃたかな? 「オレっ 篠 丘…さんに聞いて欲しいこと があるんだっ」 「うん?」 「オ……ッオレはっ篠丘さんがスキだ!!」 「えっ!?」 突然の告白に私は頭の中が真っ白になった。 今私のこと好きって…ど どうしよう。私は三橋くんのことどう思ってる?西浦野球部の一人だよ…ね?ううん違う…それだけじゃない。気付けばいつも目で追ってたし、おにぎり作るときも三橋くんのを作るときだけドキドキしてた。 私もきっと…。 自分の気持ちに気付いたら急に顔が熱くなってきた。 私きっとまっ赤になってる。でも、言わなくちゃ…。 「私も…三橋くんのことスキだよ?」 言った瞬間私は三橋くんに抱き締められていた。 自転車が倒れた音とともに、ジンワリと胸の奥が満たされていくのを感じる。私は目を閉じてそれを受け入れた。 あぁこれが幸せなのかな…。一人幸せに浸っていると三橋くんが唇を重ねてきた… 私今キスしてる!? 好きな人との初めてのキス。嬉しい…本当に嬉しい。気付くと目から涙があふれていた。 「ごッ ゴメン」 三橋くんが慌てて謝ってくる。 「え?」 「……その、嫌だった よねっ? オレ…いきなり きっキスなんて……」 なんか三橋くんらしいな。 「あははは嬉しかったんだよ? 嬉しくて、嬉しすぎて泣いちゃったの!」 「だから…もっとして?」 自分でもびっくりするくらい恥ずかしい事言ってる。 でも…仕方ないよね? 三橋くんはすぐにキスをしてくれた。私は三橋くんをちゃんと感じたくてまた目を閉じる。閉じると同時に三橋くんの舌が入ってきた。 「ん……」 私は不意にきた快感に声を我慢することが出来なかった。 三橋くんの息が荒くなっていく…。 激しく舌が絡められていく。私も必死に三橋くんを求める。お互いの唾液を交換しあい、舌を絡ませあう。私はその行為に夢中になっていたのに…。 「ぁ……?」 三橋くんが突然キスをやめた。 どうしてやめちゃうの?って顔をしているのが自分でもよく分かる。 「篠丘さん な…んか エッチだっ!」 「えぇっ!! そ、そんなことないよ!?」 三橋くんに言われて私は必死に否定する。 けど…そうだよね?エッチな女って思われるよね。どうしよう嫌われちゃったかな? 「篠丘さんは…こ こういうこと、スキなの?」 三橋くんは顔をまっ赤にして聞いてくる。 「んーと…三橋くんとだからだと思う」 私は自分の気持ちを素直に伝える。 「オ……ッオレも篠丘さんとだから よかっ た!」 よかった三橋くんも同じ気持ちだったんだ。私は泣きそうになるのを隠すためうつむく。 「そ、それで 今日…は親が帰ってくるの、おそいん だ!」 そ それって、そういうこと…だよね? ちょっと怖いけど、三橋くんとなら…。 「三橋くんち入っていいの?」 「うん!大丈夫だ よっ!」 「じゃあ…おじゃまさせてもらおうかな?」 「うん!家、こっちだよ!」 三橋くんは凄く嬉しそうに答えた。 そんな三橋くんを見ながら私は呟く。 「三橋くん大好き…」 マネジとエース ある夏の日
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1-39-42 ミハチヨ1 あめ、すごいね。 ぽつりと呟いた言葉は、千代の耳に入っていないだろう。 それくらい雨の勢いは激しくなってしまっていて、三橋の声を消した。 それに加えて、傘をさしていても全く濡れずに帰ることは無理だろうなあ、と考えていたものだから、 返ってきた声を三橋は、はっきりと聞き取れなかった。 「え」 少しだけ低い位置にある顔を見れば、千代の目と合った。 (篠岡さんは、いつだって俺の目を見て話してくれてる) けれど、まだ少し慣れない自分は、合った視線をそろりと千代の眉間へとずらしてしまうのだ。 「雨、すごくひどいね」 千代は、三橋が呟いたことと同じことを言って、三橋君ちゃんと帰れる?ともうひとつ続けた。 (どういうことだろう?) 首をかしげながら、うん、と三橋が頷けば、そうじゃなくって、と千代が首を振った。 言い直そうとしているのを、彼女の思考の邪魔にならないように三橋は黙って待つ。 少しだけ千代と三橋の間に流れた沈黙に、ざあざあとふり続ける雨の音がいっそう強くなった気がする。 けれど、また千代が口を開けば、三橋の耳には雨の音は弱く聞こえ、 ずいぶんおかしな耳なんだなあ、と三橋はぼんやり思う。 雨が、三橋に千代の声を聞きやすくしてくれているのか、三橋の耳が千代専用になってしまったのか。 (どっちなんだろう) 分かっているのは、どきどき、と胸が鳴ることだけだ。 「そうじゃなくて、三橋君、濡れずに帰れる?」 「え、と、ムリ、だと 思う…」 「だよね」 「うぉ」 「家帰ったら、誰かいる?」 「きょ うは、いない」 「そっか。じゃあ家まで一緒に行くよ」 「え!」 「三橋君、濡れたとこちゃんと拭かないで放置して、風邪引きそうなんだもん」 事実その通りだと思ったから、三橋は黙った。 でも、千代に言葉を返さなかった本当の理由はそうじゃない。 どきどきと鼓動が早くなった心臓が、三橋にそれを自覚させる。 (うれしい、なんて思ったら、篠岡さんは怒っちゃうかな) 行こ、という千代の声に、ぱんと傘をひろげて三橋は彼女の後に続いた。 そして少しだけ待ってくれている千代の隣りに肩を並べようとして、あ、と声を出してしまった。 「三橋君?どしたの?」 「な、なんでも、 ない、よっ」 ふるふると首をふって、なんでもないよともう一度重ねて笑う。 足元からは、ぴちゃぴちゃと、スニーカーが雨を踏む音がする。 嬉しいという気持ちが、すこしだけ沈んでしまった。 雨を蹴るように前に出した足に、お返しとばかりにじわりと水分がしみこんで、スニーカーが重くなる。 嬉しいのに、なんだか、気分が重い。 二人が傘をさしているせいで、千代との距離がいつもより離れている。 それが、三橋には寂しかった。 (あ あいあいがさ、とか) ふと、思って三橋はその考えを打ち消すように首をふった。 (そんなこと、言えるわけない よっ) そっと伺う千代の横顔は何を考えているのか分からなかった。 二人、並んでいるのに、千代の肩が遠い。 「ねえ、三橋君、ちゃんと傘さして、濡れないようにしてね」 「うん」 うん、と素直に頷きながら三橋は雨の降ってくる方とは全然違う方向に傘をまわした。 ひょっとしたら千代は怒るかもしれない。あきれるかもしれない。 (わざ と濡れたりなんかしたら、 でも) 少しでも濡れた面積が大きければ、それだけ、千代が自分を構ってくれる時間が増える。 そんなことを思う三橋の耳に、 しょうがないなあ、と千代が小さく笑ったのが、聞こえた気がした。 豪雨は収まるところを知らず、三橋と千代は駆け込むように三橋の家にたどり着いた。 腕を伝って指先からぼたぼた水を垂らしながら玄関先で立ち止まる。 二人の足元に水滴がじわじわと滲み、丸い絵が描かれていく。 三橋家の玄関に立つ自分たちの姿を見て、 千代は一瞬呆気にとられて、それからくすくす笑い出した。 「やっぱり濡れちゃったね」 「うん」 千代は、濡れて腕に貼り付いた白いカッターシャツを指先でつまみ上げて、 あーあ、と溜息を吐いた。 「水吸ってベスト重くなっちゃってる」 傘をさして濡れるのを凌いでいた二人だが、横殴りに降る雨はもの凄い勢いで衣服を浸食した。 濡れたカッターシャツがぴったりと身体に触れる感触が気持ち悪い。 千代は顔をしかめながらシャツをひっぱり、だけどどうにもできずにまた元に戻した。 ポケットの中からタオルハンカチを出してきて、三橋の髪の毛についた細かい水滴を払う。 「あ りがとっ」 ぽつりと呟いてうつむいた三橋を見て、千代は小さく笑った。 「風邪引かないように、ちゃんと拭いて着替えて、髪も乾かしてね」 「うお」 「寒いようだったらお風呂に入った方がいいかも」 「うん」 「あとは…あ、もう外出ちゃダメだよ」 こくこくと頭を立てに振る三橋に、安心した千代は頷いて微笑んだ。 「じゃあ帰るね、バイバ」 「え!」 千代が三橋に向かって言いかけた声を遮って玄関に三橋の声が響いた。 わんわん、と耳の後ろで反響している気がする。 何がおこったのかと、思わず隣に目を向けると、妙な声を出した三橋がわたわたと動いている。 「か、か、帰るの!?」 「え?うん。三橋君をちゃんと送る使命は果たしたからね」 「で も、篠岡さんも、濡れてる」 「気にしないで、私体強いから、これくらいじゃ風邪も引かないよ。じゃあね」 千代は胸を張って得意げそうに言うと、くるりと体を反転させて玄関を開けた。 「待って!!」 三橋は外に出ようと乗り出した千代の腕をぎゅうと掴んだ。 普段の三橋から想像出来ないくらいの力強さに千代は目を見開く。 首を左右に振り、帰らないで、とふるえる声で呟く。 髪から滴る水がぽたりと玄関に落ちた。 「三橋君、痛いよ」 「し、しっ、篠岡さん、ごめ んなさ」 ぱっと掴んだ腕を離し、どもりながら早くも涙目になっている三橋の手を、千代は優しく握った。 ふるえるその手は、雨に濡れて冷たくなっていた。 「…じゃあ、ちょっとだけお邪魔してもいい?」 「!」 三橋がおずおずと千代の手を握り返した瞬間、千代は確かに、 ああ、私って恋してるんだなあ、なんて実感してジンときた。 続きます。
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5-53-61 ミハチヨ 「ねぇ、三橋君…。しようよ」 放課後の練習が終わった部室でだった。 他の皆はもう帰ってしまっていて、 人一倍着替えるのが遅い俺は、やっと着替え終わって ユニフォームをかばんにつめ終わったところだった。 その篠岡さんのセリフを聞いて、そのセリフを持つ意味を 理解した瞬間、俺は首まで真っ赤になり全身の血液が沸騰するのを感じた。 「うぇっ!え…えと…あの」 口が上手く回らない、篠岡さんが見たことのないような潤んだ目で 俺を見上げている。 まずい、なにか分からないけど、その目はとってもまずい。 篠岡さんはいつの間にか俺のそばまで近寄ってきていて、 しかも近寄りながらシャツのボタンを上から順々に外していく。 わぁっ!それ以上外したら、し…下着がっ…見える、よ! 見ちゃだめだ、見ちゃだめだ、と思うのに俺の目は、 篠岡さんのはだけたシャツの間から見える艶かしい白い肌と、 ささやかな胸の谷間に釘付けにされたように動かなかった。 「三橋君…」 いつの間にか俺と篠岡さんの間を隔てるものは、 俺がぎゅっと自分の身を守るかのように抱えたバックだけだった。 後ろにはロッカーがありこれ以上さがれない。 どうしよう。どうしよう。 そりゃ、俺だって男だし、これって据え膳ってやつなのか。 けど、いくらなんでもまずいと思う。篠岡さんはマネージャーで、 俺は野球部員で…だいたいここは部室だし、いや、部室以外だったらいいよ、 ってことじゃなくて…あぁ、何か頭が混乱してきた。 何も言えずに真っ赤になりながら、きょどきょどといつも以上に 挙動不審になっていると、篠岡さんの細い腕がすっと俺の顔にのびてきた。 俺は思わずびくっと身をすくめる。 そんな俺の様子に構わずに、篠岡さんは俺の頬に手をかけると、 ぐっと一気に俺のほうに顔を近づけてきた。 顔が近い、息がかかる。 「三橋君…」 頬を染め、俺の名前を呟いた時、半開きにした口から赤い舌が ちろりと覗き、ぞくっとした。篠岡さんの目にはうっすらと 水の膜が張っていた。その水の膜が張った瞳の中に真っ赤な顔をした俺が ゆらめいて映っている。 ゆらゆら、とまるで自分の今の心の状態を映しているようだ。 理性と欲望の間で揺らめく俺の心の状態を映しているようだった。 思わず下をむいてしまう。しかし下をむいたことで今度は、 はだけたシャツの間から、白い胸元と、白いレースがついたピンク色の 下着が見えてもっとドギマギしてしまう。 首のところは日に焼けて少し黒くなっているのに、日に焼けていない 胸元部分は透き通るように白くて、そのコントラストが逆に艶かしい。 部室でチームメイト達の着替えを見ていて、こんな焼けかた 見慣れてるはずなのに(もちろん自分だってそうだ)なんでこんなに…。 くらり、とめまいを感じた。頭の芯が熱い。体の一部が自分の意思とは 反して意思を持ちはじめているのが分かった。 まずい、本格的にまずい。 俺はごくりと唾を飲み込み、自分の体の変化を知られたくなくて …指の先が白くなるくらいバックをぎゅっと抱きしめた。 そんな俺の状態を知ってか知らずか、篠岡さんは更に体を密着させてくる。 俺の腕になにかやわらかいものが密着する。 マシュマロのようにふわふわしていて、でも弾力があるソレが 篠岡さんの胸だと分かったとき、俺は情けないことに思わず声をあげてしまった。 「う、わ!」 「なに、どうしたの…三橋君」 篠岡さんの、胸が当たってるんですっっ!! そう叫んだつもりだったのだが、俺の口からは 「むっ…む、ねがっ…」 という言葉しか出てこなかった。 そんな俺の様子にくすりと笑いながら、篠岡さんは両手を俺の首にまわして、 ぐっと耳元に顔を近づけてきた。そして、少し笑いを含んだ声で ささやくように俺の耳元でつぶやいた。 「分かってるよ。ワザとだもん」 その意味を理解するかしないかのうちに、俺の耳に電流のような快感が突き抜けた。 「…ぁっ…あぁ…!!」 思わず声がでてしまった。 篠岡さんが俺の耳を舐めている。 耳たぶにそっと息を吹きかけ、ちろちろと耳の穴を舐められると、 どうしようもないほどの快感が体中を駆け巡る。 「ふぅっ…うぅ…ぁっ…」 初めて感じる快感に声が抑えきれない。 篠岡さんの舌が俺の耳や首筋をねっとりと這いずりまわるたびに 必死に食いしばった口からは声がもれた。 「三橋君…かわいい」 「ひゃっ…あぁっ!」 耳たぶを甘がみされ、耳の裏まで舐められると、 快感でぞくぞくっと全身が震えた。 俺自身はもうとっくに勃っていて、早く熱を解放したいと訴えかけていた。 「はぁっ…はぁ…」 あまりの快感に涙目になりながら、息をしていると、耳を甘がみしながら 篠岡さんが話しかけてきた。 「…感じた?」 「いっ!」 「ねぇ、感じた…?」 「か、感じてなんか…」 「うそ」 そういうやいなや、今度は篠岡さんは自分の足を俺の…俺の股間に 擦り付けはじめた。 「はっ…!あぁ!!」 あまりの刺激にのけぞった。 すぐにでも射精してしまいそうな快感に耐えようと、目をぎゅっとつむり 歯をくいしばった俺の耳元で、熱に浮かされたようなささやき声が聞こえる。 「こんなに、なってるのに…?」 「………っ」 「感じてないなんて…なんでそんな嘘つくの…?」 「………う」 「…やらしーんだ、三橋君て。足で、こんなことされて感じちゃうなんて」 耳からの言葉での刺激と、足での直接的な刺激に頭がおかしくなりそうだ。 思わず顔を上げると、今度は無防備になったのど元に、篠岡さんが舌をはわせた。 耳とは違った感触にさらなる快感が体中を駆け巡る。 「ふふっ…また固くなった」 「あっ…ぁ」 その瞬間俺の頭は真っ白になり、腕の中からバッグが滑り落ちた。 「うわぁ!!!」 ばっと飛び起きると、そこは自分の部屋だった。 ゆ、夢か…なんていう夢を見てしまったんだ。自己嫌悪で暗くなる。 俺…こんなふうに篠岡さんにいじめられたい…とかいう欲望があるんだろうか? 自分の考えに頭を抱えた。 でも、これは田島くんが持ってきて見た 『放課後の情事~マネージャーと部室で××~』っていうAVの影響かも… 確かあれもマネージャーに気弱な一年生が羞恥プレイで責められる、っていう 内容だった。…っていうことはもう一度寝たら続きが見れるかな? …って、何を考えてる、んだ!!俺は羞恥プレイは好きじゃない! 好きじゃ、ないよ!!ってそうじゃなくて、篠岡さんごめんなさい。ごめんなさい。 俺はベットの上に正座すると、我らがマネージャーの家があるであろう方角に向かって、 額を何度もこすりつけたのだった。 そして、その後冷静になった俺は、自分の体に起こったことに気づき、 真っ赤になったあと青くなって、お母さん達に気づかれないように洗面所に向かった。 その日の練習では俺は篠岡さんの顔がまともに見れなくって、 しかも「俺は羞恥プレイは好きじゃない、絶対好きじゃない」とか考えていたため、 みんなで野球談義になったとき花井君に 「三橋はさ、どういう(野球の)プレイが好き?」 って聞かれて思わず 「しゅ、羞恥プレイはす、好きじゃない、です!!」 と大声で答えてしまった。 …そのおかげで俺はしばらくみんなから、何か喋りかけられる時 「羞恥プレイ好きの三橋は~」 って自分の苗字の前にこんな枕詞をつけられるハメになった。 …羞恥プレイは好きじゃない、って言ったのに…
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1-76-79 ミハチヨ2 「た、タオル持ってくるから、部屋、上がってていい よー」 「うん、お邪魔しまーす」 水でべちゃべちゃになった靴下とベストは、乾燥機を使わせてもらうことにした。 わたわたと動き回る三橋に一言断って、千代は先に三橋の部屋へと足を踏み入れる。 (モノが少ないなー) ベットと机、それから床に転がっている幾つもの白球に、三橋の野球への思いが見て取れて、小さな笑みが漏れる。 三橋廉という人は、卑屈でおどおどしていて、泣くとくしゃりと顔がくずれるくせに、 マウンドにあがるとひどく綺麗な目をして球を投げる人だった。 千代はそのことを知っている。 (西浦は皆かっこいいけど、三橋君が一番かっこいいよ) ボロボロと大粒の涙をこぼす三橋も好きだと思ってしまうのは、千代の惚れた欲目だろうか。 「おっ、おまたせー」 ドタドタと階段を上る足音が聞こえたかと思うと、部屋着に着替えた三橋がバスタオルを脇に抱え、 お盆にカップとポットをのせて戻ってきた。 「これ、使って!よ よくふいて ねっ」 「ありがとう」 「さ、寒くない?喉は?かわく?紅茶あるんだけどっ」 「大丈夫、だから三橋君も座ってて」 「うおお」 落ち着かないように捲し立てる三橋を見て、千代は緩んだ頬がまた緩み、眉が少しだけ下がったのが自ら分かる。 その時三橋の腕の中で、母親の趣味であろう花柄のカップとポットが不安定にぐらぐらと揺れた。 「あ」 ぶないよ、と千代が注意しようとした瞬間、派手な音を立ててカップが落ちた。 「ヒェっ!?」 カチャン、と破片が飛ぶと、三橋はがっちり固まって毛を逆立たせてしまったネコのようになってしまった。 目にあっという間に涙がたまっていく。 「ケガしてない!?」 「おおおお母さん、が 気に入ってた、の割った…」 千代は三橋との間に転がる割れたカップを慎重に拾い集めた。 机の上にひとつの破片をのせる。 「大丈夫、直せるよ」 「ふぇえ?!」 びくりと三橋の肩がはねる。まるで警戒しまくっているネコみたいだ。 ふふふと千代はおかしくなって笑ってしまう。 それにまた三橋が反応して、新しい涙が生まれた。 「大丈夫、取っ手が割れただけだから、接着剤でくっつければ直るよ」 今度は三橋に向けて千代は同じ台詞を繰り返した。 だから泣かないで、そう言って千代はふわりと微笑んだ。 その姿に、三橋は思わず息を呑む。 三橋の心臓は、千代の笑みが動力作動の合図かのように早打ちし始める。 暑くもないのに汗が滲んで止まらなかった。 意識し始めてしまうと、もう前にしか進めなくて。 「三橋君?」 私、何か変なこと言った?訊けば、ぶるぶると頭が大袈裟に揺れた。 「お、お、オレ、ッ」 「ん?」 三橋が何かを言いたそうだったので、千代はぐっと顔を近付けた。 近付いたほうが彼の小さな声を聞き取りやすいかと思ったのだが、別にそんなことはなかった。 むしろ、三橋には逆効果だったみたいだ。 赤い顔がもっと赤くなって、ぎゅっと眉が寄る。 三橋は唐突に立ち止まったかと思ったら、千代の顔をたっぷり一分は見つめて、 「あー」とか「うー」とかわけの分からぬ声を出して、そのうち意を決したように大きな声で、 「し、篠岡さんにさあ!」 と言った後は、だんだん声も小さくなって自信なさそうに俯いて、最後の方はよく聞こえないくらいだった。 それだけでもう、千代には彼がどんなにこの言葉を言うのに悩んだのか、迷ったのかが、手にとるように分かってしまう。 俯いた三橋がどんな表情をしているのか千代には見えないけれど、いつものように泣きそうな顔をしているに違いない。 そして、二人の間の空気が静まっていることに居た堪れなくて、顔を上げるタイミングがつかめずに、三橋は俯いたままなのだ。 千代は三橋の腕を握って引っ張って座らせる。細い印象に反して、がっちりと固い肉のついた腕だった。 ついでに、手首から彼の手へと指を移動すると、びくりと三橋の体が強張った。 だからといって離す気もなくて、握ったままでいると、ぼそぼそと小さな声で三橋が呟くのが耳に入った。 声は途切れて聞きずらいけれど、耳を寄せなければならない程じゃない。 「したいん だ」 「篠岡さんにキス、したい」 ちりちりと肌が総毛立つ。すぐ目の前に座っている三橋から目をそらせない。 こういうときに、三橋君も男の子なんだなァと改めて思うのはどうなんだろう。 ぼんやりと三橋の顔を眺めながら千代は思った。 三橋の口はそこにある。もう、近付きすぎでおぼろげな位置にある。 三橋が少し前に乗り出して千代の唇に、その熱い唇を押し付けた。 触れ合った唇は音もたてずに離れた。 ぎゅっと固く結んだ唇に、ぬくもりが掠めたかと思った瞬間、離れていってしまったので 千代にはそれが三橋の唇なのかどうか本当のところは分からない。 けれど、ぱちりと瞬いた視線の先、恥ずかしそうに顔をそむけている三橋が千代に答えを教えてくれた。 (ああ、三橋君と私、キスしたんだ) 改めて頭の中で整理すると、途端にカッと全身が熱くなって千代は慌てた。 「あ、あのさ」 「えっ!?」 「もういっかい…」 三橋の言葉にぱちりと目を瞬かせるその顔を見て、離れたばかりの唇を再び千代へと寄せた。 熱い口付けは言葉よりも雄弁に三橋の気持ちを伝えてくる。 背筋にはしるぞくぞくとした感覚に流されないよう、 掴んだ三橋の腕をよりいっそう強く握りしめて千代は唇と唇の隙間から切ない声を漏らした。 苦しい。息が出来なくて苦しい。 でも千代は唇を離してほしいとは思わなかった。 三橋の熱い舌がぬるぬると千代の歯列をなぞっている。 それから奥でちぢこまっていた千代の舌をひっぱりだして、 くすぐったり絡めたりと、好きに動き始めた。 (三橋君に食べられそう…) 千代の知っているキスといったら、唇と唇を押し付けあうような稚拙なもので、 こんな風に心と一緒に体も熱くなるような体験は初めてだった。 千代は三橋の腕を掴んでいた手をそっと離すと、そのまま三橋の背中へと移動させた。 両腕で三橋の体をぎゅっと抱きしめる。 応えるように三橋の腕も千代の体を強く抱きしめた。
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2-56-67 ミハチヨ あれほど蒸し暑さを覚えていた空気は、いつの間にかひんやりとした空気へと変わっていた。 先程まで着替えるたびに誰かの腕と触れていたのに、もうその腕はない。 ゆっくり瞳を巡らせても、そこにオレ以外の誰かの姿はなかった。 「……また、オレ、最後……」 思わず溜息が零れる。 部室にある長机の上には、部誌と鍵が無造作に置かれていた。 最初は、オレの着替えが終わるのを、みんな待っていてくれたけど、そうやって人に待たれると余計焦って着替え終わるのが遅くなるし、何よりも待たせるのは申し訳ない。 だから、みんなにお願いして、部誌と鍵を職員室に届けるを、オレの役目にしてもらった。 オレは、人よりも鈍臭い。 一生懸命頑張っているんだけど、どうしても二つのことを同時に出来ないオレは、話しながら着替えると手が止まってしまうのだ。 みんなは、そこら辺がすごく上手で、話しながらでも着替えの手を止めることはない。 やっぱりオレは、人に比べて、鈍いみたいだ。 仕方ないことだとは分かっているし、全部オレが鈍いのが悪いんだけど、やっぱり一人ぼっちで着替えるのは寂しい。 のろのろとシャツに袖を通す。 後は、ボタンを留めるだけ。 足元を見遣れば、オレが脱ぎ散らかしたユニフォームが放ってある。 だけど、これはバックに押し込めればいいから、すぐに終わる。 ちゃんとたたんで仕舞わないから、お母さんに皺になるって怒られるけど、でもたたんでいたら、多分オレは当分帰れないだろう。 きっとたたむのだって、すごく時間掛かるに決まっている。 自分で想像してみると、ぎこちなくユニフォームをたたむ自分の姿が簡単に浮かんで、情けなくなった。 本当にオレは鈍臭い。 もう一度溜息が零れた時だ。 不意に、ドアがノックされて、その音が部室に響く。 予期しない音に、思わず体が跳ねる。 「だっ……誰っ?」 緊張から、声がひっくり返ってしまった。 「三橋君? 入っても平気?」 扉の向こうから聞こえてきた声は、篠岡さんの声だった。 「しの……おか……さん?」 「うん。私。まだ着替えてる途中? だったら、外で待ってるけど」 慌てて自分の格好を見る。 確かに着替え途中だけど、ズボンは着替え終わっているし、あとはシャツのボタンを留めるだけだ。 別に篠岡さんが入っても問題ない。 「へ、へーきっ! い、今開けるっ!」 足元に引っ掛かっているユニフォームを蹴散らして、ドアへ向かった。 ドアを開けると、そこには篠岡さんが少しだけ肩で息をしながら立っていた。 「えへへ。帰ろうとしたら、部室に電気点いてたから、三橋君がいるかなと思って走って来ちゃった!」 「オ、オレ!?」 「うん。いつもは三橋君の方が帰るの早いでしょ? それに、帰る方向が違うから一緒に帰れないし」 懸命に首を縦に振って、相槌を打つ。 「だから、ここの電気点いてて嬉しかったの」 そう言うと、篠岡さんはうふふと可愛い声で笑った。 篠岡さんの高すぎず、かといって低すぎない心地良い笑い声が耳を擽る。 「と、とりあえず、あがって! オ、オレしか、いない、しっ」 「ホントだ。みんなは?」 篠岡さんの首が傾げられる。 可愛らしい大きな目がくるりと動いて、オレを見つめてきた。 真っ直ぐな瞳が全て見透かしちゃいそうで、どこか罰が悪い。 思わずオレはその視線から逃れるように俯いた。 「み、みんな……帰った……」 「そうなの?」 「オ、オレ、遅いから……。いつも、一番、さい、ご……」 言っていて恥ずかしい。 これでは、自分が鈍いって、大好きな彼女に言ってるようなものだ。 情けなくて、恥ずかしくて、このまま消えてしまいたい。 「でも、そのお陰で、こうやって三橋君と二人きりだから、嬉しいな」 「……へ?」 思いも寄らない言葉に、弾かれたように顔を上げると、柔らかな笑みを浮かべた篠岡さんが、やっぱりうふふと可愛らしい声を上げた。 「三橋君のゆっくりとした時間、私はすごく好きだよ」 「……っ!」 「一緒にいると、幸せになれるんだよ」 気づいてた? と少しだけ悪戯めいた笑みを浮かべて、首を傾げて笑う。 そんな姿がすごく可愛くて、顔が熱くなった。 「う、お……あ、あの……」 お礼を言いたいのに、上手く唇が動かない。 口から出る言葉は、呻き声に似た意味不明なものばかりで、まともに言葉にならない。 結局オレの口からは、それ以上のものは出てこなかった。 篠岡さんは、そんなオレに慣れているみたいで、気にした様子もなく、部室に上がり長机に置かれていた部誌をペラペラと捲り始めた。 「す、すぐ、着替える、からっ」 「んーん。へーきだよぉ。ゆっくりでいいからね」 部誌を眺めながら、小さく首を横に振る。 その動きに合わせて、篠岡さんの柔らかそうな髪がふわふわと揺れた。 何度か触れたことないけど、その髪が柔らかいことをオレは知っている。 オレの髪とは、確実に違う。 柔らかくて、いい匂いがして、女の子の髪。 触るだけで、幸せな気持ちになれるんだ。 何度か触れたその感触を思い出す。 それは、いとも簡単に掌に蘇った。 それだけで、体が熱くなって、頭の芯がじんわりと痺れる。 嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったいような、不思議な気持ち。 ボタンを留めながら、ぼんやりと篠岡さんを眺めていると、不意に篠岡さんから小さな笑い声が漏れた。 「……え?」 「あ」 オレに聞かれたことが、恥ずかしかったのかな。 篠岡さんのほっぺが、微かに赤く染まる。 そして、その顔に、はにかんだような笑みが広がった。 「もしかして、聞こえちゃった?」 同意を示すように、首を縦に振る。 「な、んか、面白いこと、書いて、あっ、た?」 そう尋ねると、篠岡さんは小さく首を横に振った。 「ううん。なんか、三橋君が書いた所を見てたら、嬉しくなったの」 「オ、オレの!?」 「うん。三橋君と同じクラスじゃないから、ノートとか見たことないし。だから、すごく新鮮」 嬉しそうに笑う。 オレの書いた所を……? その瞬間、羞恥で全身が震える。 「ダ、ダメ! 見ちゃ、ダメ、だっ!」 「え!?」 「と、閉じて! すぐ閉じてっ!!」 慌てて篠岡さんから部誌を奪おうとするも、篠岡さんの方が少しだけ動きが早くて、オレの手から逃れる。 「なんで見ちゃダメなの?」 「だ、だって、恥ずかしい!」 オレの字は、お世辞にも上手とは言えない。 阿部君なんて、オレのノートを見て、汚いっていつも顔を顰めるんだ。 ミミズが這ったような字だ、ってよく言われる。 そんな字を、篠岡さんに見られるなんて、恥ずかしくて泣きそうだ。 「なんで恥ずかしいの?」 「だ、だって、オレ、字、きたないっ」 懸命に手を伸ばして、篠岡さんから部誌を奪おうとするけど、篠岡さんは中学時代ソフト部だったこともあって、すごく動きが機敏で、上手く奪えない。 「そんなことないよぉ」 「そんなこと、あるっ! か、返してっ!」 「全然汚くないよぉ」 「ある、よっ!」 「だって、好きな人の字だよ? 見てるだけで嬉しいよぉ」 「え……?」 篠岡さんの言葉に、思わずオレの体が固まる。 そのせいでバランスを崩してしまい、そのまま篠岡さんの方に倒れこんでしまった。 慌てて体勢を立て直そうとするものの、もう崩れたバランスは戻らない。 腕を伸ばして、篠岡さんの体を庇う。 「うわあ!」 「きゃあ!」 畳が声を上げた。 体に、鈍い痛みが走る。 「やだ! 三橋君平気!? 痛くない!? ケガは!?」 いち早く体を起こした篠岡さんから、矢継ぎ早に尋ねられた。 「オレ、は、へーき。篠岡さんは?」 「私は、三橋君が庇ってくれたから、平気だよ。全然痛くないもん」 「よ、よかったぁ……」 「良くない!」 その瞬間、篠岡さんの両手がオレの手をそっと掴んできた。 篠岡さんの大きな瞳と、至近距離で重なる。 「三橋君はエースなんだよ。私なんか庇うよりも、自分の体を大切にしなくちゃ」 「篠岡さ……」 「三橋君が嬉しそうにボール投げてると、私も幸せなの。だから……」 篠岡さんはそっと顔を傾けて、そのままオレの肩に顔を埋めた。 「篠岡さん!?」 「だから……もっと体を大切にして……」 篠岡さんの声が震えている。 いつもの元気な篠岡さんから想像もつかないほど、その声はすごく頼りない。 「心配、かけて、ごめんなさい……」 「ううん。謝るのは私だよ」 そっとオレの肩から顔を上げて、オレの瞳を真っ直ぐ見つめる。 その瞳はうっすらと赤くなっていて、濡れていた。 泣いていたのかもしれない。 「私が、悪ふざけしたせいだもん。ごめんなさい」 「う、ううん! 篠岡さん、は、悪くない、よっ! オ、オレが、部誌、取ろうとした、から……」 「でも、私がすぐに部誌を三橋君に渡さなかったから……」 「ち、違う、よっ! オレが、諦めなかった、から……」 ふと、オレらの間に言葉が消える。 篠岡さんとオレの視線が重なって、次の瞬間、同時に噴出した。 「なんか、私達、バカみたいっ」 「う、うん。同じこと、言い合って、るっ」 「ねっ!」 部室が、オレらの笑い声で溢れる。 しばらく笑っていたら、篠岡さんは笑いを飲み込むと、もう一度オレと瞳を重ねてきた。 「本当に、どこもケガしてない? 私に気を遣って、嘘吐いてない?」 真っ直ぐ見つめてくる。 嘘を吐く時に出てしまうサインを、見逃さない、とでも言うように。 「ほ、ホントに、ホント、だよっ! どこも、ケガして、ないっ!」 懸命に首を縦に振って、嘘を吐いていないことを示す。 そんなオレを、しばらく凝視していた篠岡さんの顔に、ゆっくりと笑みが広がった。 「よかったぁ」 ふわりと花の香りがするような甘い笑顔。 さっきまではそれどころじゃなくて気づかなかったけど、今すごく顔が近い。 だから、篠岡さんが少し動く度に、フローラルの香りが鼻を掠めた。 多分シャンプーか何かの香りだと思う。 オレのとは違う香りに、篠岡さんが近いんだっていうことを実感して、ドキドキした。 しかも、少し顔を寄せれば、簡単にキス出来ちゃうぐらい至近距離で。 挙句、目の前にある顔は、すごく可愛らしい笑顔だ。 これで、ドキドキするなって言う方が無理な話だと思う。 頭の芯が熱く痺れる。 手に汗を握る。 手を繋いでいるから、バレちゃうのに。 それでも、手を握る力は更に強くなってしまう。 「三橋君?」 力を込めた指先に気づいた篠岡さんの首が、小さく傾げられる。 そんな仕草も可愛くて。 気づいた時には、オレはそのまま顔を寄せてしまっていた。 唇に触れるだけのキス。 それでも、オレにはすごく勇気が要ることで、だから心臓が壊れちゃうんじゃないかってぐらいバクバクしていた。 だけど、それ以上に、オレの意識は、唇に広がる柔らかな感触に集中してしまう。 まだ数えるほどしかしてないけど、何度触れても篠岡さんの唇はすごく柔らかい。 そして、不思議とすごく甘く感じる。 まるでシロップのようだ。 もっともっと篠岡さんの甘さを味わいたくて、控えめに舌を伸ばして、唇を割る。 「……んっ」 篠岡さんから、小さく声が漏れる。 その声が、聞いたことないような甘い声で、背中が粟立った。 篠岡さんは、オレなんかを好きだと言ってくれた天使のような人だ。 だから、そんな人にこんなことをしちゃいけない。汚しちゃいけない。 オレの中で、警報が甲高い音を立てて鳴る。 だけど、煽られた欲は、そんなことで引いたりはしない。 篠岡さんの舌を追い求める。 舌を絡める度に、甘さはどんどん増していって、頭がおかしくなりそうだった。 「み、はし……く……」 唇の合わせ目から零れた声は、驚くほど甘美で、眩暈を覚えた。 手を離して、そのまま篠岡さんの背中に腕を回す。 それに応えるように、篠岡さんの腕もオレの首に回された。 これは、この先に進んでもいいってことかな。 だけど、オレなんかが、そんなことをしちゃってもいいのかな。 複雑な思いが、オレの中でぐるぐる回る。 そんなオレの気持ちが伝わったのか、唇がそっと離れると、「優しく……して……下さい」って小さく耳の傍で囁かれた。 もう間違いない。 その言葉に背中を押されるように、オレは手を篠岡さんの胸に伸ばした。 掌に、胸が触れる。 そっと掌で包むと、ちょうど掌のサイズでピッタリと合った。 掌に馴染ませるように、優しく揉む。 その度に、篠岡さんの唇から、甘い吐息が漏れて、オレの首筋に触れた。 直に味わいたくて、シャツの中に手を入れようと思うけど、オレは不器用だからきっと上手くボタンを外せない。 皺になって申し訳ないと思うけど、スカートの中に入っていたシャツを無理矢理引っ張って、そこから手を入れた。 そして、下着をずらして触れる。 「三橋君っ」 篠岡さんの声が大きくなる。 ごめんなさい。 こんなことをして、ごめんなさい。 こういう時だけ、前向きでごめんなさい。 頭の中で何度も謝る。 だけど、オレの手は止まるどころか、どんどん進んでいく。 下着をずらされて、解放された乳房を指で何度も擦った。 その度に、聞いたことのないような声で、オレの名前を呼ばれた。 その声が、すごく下半身に来る。 篠岡さんの声を聞いていると、もっと頭がおかしくなりそうになるから、オレはその声を消すように、篠岡さんと唇を合わせた。 篠岡さんの熱い息が、オレの口の中で溶けていく。 座ったまましていると、どこかやりづらくて、そっと畳の上に押し倒した。 そのせいで、もっと篠岡さんと唇が深く合わさる。 舌も絡まった。 シャツをたくし上げる。 その瞬間、真っ白な肌が目の前に広がった。 そこにある桜色の乳房に、唇を寄せる。 「あっ……」 舌で転がすと、更に篠岡さんの声が大きくなる。 その声は、嬌声へと確実に変わっていた。 そっと手を下へ伸ばして、スカートへ差し入れる。 そして、優しく内腿を撫で上げた。 その瞬間、ビクリと篠岡さんの体が跳ねる。 その手を、中心へと伸ばすと、更に篠岡さんの体が跳ねた。 もしかして、ここがいいのかな。 それを確かめるように、何度も触れる。 オレの想像が間違えてなかった、と教えてくれるように、下着が湿ってきた。 「や……あっ……んっ」 声が更に甘さを増す。 初めて聞く声に、頭がクラクラした。 下着はあっという間に濡れてしまって、オレの指まで濡れてきた。 もう下着越しに触れるのがもどかしくて、下着を剥ぎ取る。 直接触れると、驚くほどそこは濡れていた。 知識としては知っていたけど、本当に濡れることに驚く。 「篠岡さん……ぬ、ぬれて、る……」 「やぁっ」 思わず呟いた声に、篠岡さんは両腕で顔を隠した。 「言わないでぇ」 恥ずかしかったみたいで、その声は涙を含んでいた。 大好きな子に、そんな思いをさせてしまい、申し訳ない気持ちが広がる。 「ご、ごめん、なさっ……も、もう言わないっ」 ゆっくりと顔の前でクロスしていた腕が解かれ、篠岡さんの潤んだ瞳が現れた。 篠岡さんの瞳から、堪えきれなくなった涙が零れ、流れる。 それをそっと唇で受け止めた。 篠岡さんの涙は、不思議としょっぱくなくて甘い味がした。 再開するのを伝えるように、指を再び篠岡さんへ伸ばす。 濡れているせいか、湿った音が聞こえてきた。 何度も割れ目を擦る。 その度に、水音が辺りに響いた。 指がそこに馴染み始めた頃、そっと中指をそこへ伸ばし入れる。 濡れているから入ったけど、そこはすごくきつかった。 篠岡さんの顔を見れば、形の良い眉が少しだけ歪んでいた。 「い、いたいっ?」 「ううん。平気……だよ」 「でも……」 「本当に平気だから」 篠岡さんは、小さく微笑んだ。 ゆっくりと、篠岡さんに負担が掛からないように指を動かす。 最初はきつかったそこは、次第に指の動きに合わせて広がっていく。 それに合わせて、水音が大きくなっていった。 最初は、苦痛の色しか浮かんでいなかった篠岡さんの顔も、変わっていく。 次第に、頬が赤く染まり始めた。 声も大きくなる。 だから、オレの指の動きも大胆になった。 掌まで濡れるほどだし、多分篠岡さんの準備は大丈夫だと思う。 ゆっくりとそこから指を離して、自分のズボンに手を掛けた。 ベルトを外す時にする金属音が、どこか他人事に聞こえるのは、多分オレの頭の中が沸騰しているからだ。 財布の中に入れてあったゴムをつける。 以前、田島君から、無理矢理渡されたものだ。 その時は、すごく困ったけれども、もらっておいて良かった、と心底思う。 準備が出来て、そっと篠岡さんの足を抱えた。 「あ、の……挿れ……ます……」 「う、うん」 最初はゆっくり擦り付けるように。 だんだん腰に力を入れて、沈めていく。 「————っ!」 篠岡さんから、声にならない叫び声が上がった。 体が反って、オレの背中のシャツが強く握られる。 きっとすごく痛いんだ。 「い、痛い!?」 声を出すのもつらいのかもしれない。 篠岡さんは、小さく首を横に振った。 だけど、その顔はすごくつらそうで、とても痛くないようには見えない。 「で、でも……。すごく、痛そう、だっ」 「平気」 「でも……」 ふと、背中のシャツを強く握っていた手が離れ、オレの頬に触れた。 篠岡さんの顔にゆっくり笑みが広がっていく。 「篠岡さ……」 「三橋君は、心配性だなぁ」 「だ、だって……すごく、痛そうだし、篠岡さん、こ、こわれちゃう」 篠岡さんから、うふふといつもの可愛らしい笑い声が上がった。 「私は、壊れたりしないよ。そんなことじゃ、壊れたりしない」 「篠岡さん……」 「だから、来て下さい」 「……いいの?」 「うん」 そっと篠岡さんの腕が、オレの首に回る。 篠岡さんの優しい笑顔が、胸に沁みる。 じんわりと目頭が熱く痺れた。 「じゃあ、いく、よ?」 「うん」 再び腰に力を込める。 それに合わせて、どんどん篠岡さんの中にオレが沈んでいった。 それと共に訪れる、今まで体感したことのないような快感。 頭がおかしくなりそうだ。 ゆっくりと腰を動かし始める。 最初はきつかったそこも、次第にそれもなくなり、水音を辺りに響かせた。 腰の動きを早めると、強大な快感が体を駆け抜けて、もう止まらない。 オレは、何度も篠岡さんの体を突いた。 それに合わせて、篠岡さんの体が揺れる。 声が上がる。 息が乱れる。 暑い。 熱い。 シャツを脱いで放り投げると、篠岡さんにキスをした。 唇の合わせ目から、オレらの卑猥な声が漏れる。 熱い吐息と一緒だから、余計いやらしく感じた。 篠岡さんの指が、背中を滑る。 ピリッと、一瞬背中に痛みが走った。 だけど、そんなものは、強大な快感の前では、大したものではない。 お互いの熱で、繋がっている部分が蕩けそうだ。 熱も、粘膜も溶け合って。 快感が迫り上がる。 更に動きが早くなる。 もう何も考えられない。 ただ目の前にある快楽を貪るだけ。 懸命に腰を動かした。 何も聞こえない。 聞こえるのは、互いの乱れた呼吸と、篠岡さんから上がる卑猥な声と、水音だけ。 それ以外は、鼓膜を震わさなかった。 「篠岡さん、オレ、オレ……」 もう快感が上り詰めて、今にも弾けそうだ。 篠岡さんから上がる声の間隔は、ほとんどない。 「私も……っ」 更に強く腰を打ちつけた。 そして、次の瞬間、上り詰めた快感が一気に弾けた。 「ごめんなさいっ!」 気だるさが残る中、片づけが終わると同時に、正座して頭を下げた。 「え?」 篠岡さんの瞳が丸くなる。 その顔は、まださっきまでの行為の名残があって、どこか色っぽい。 「だ、だって、オレ、篠岡さんに、無理、させ、た」 ゆっくりと下を見ると、ほんの少しだけ畳に血の跡があった。 一見、ただの汚れに見えて分からないけど、事情を知っているオレからすれば、血であることは分かる。 そして、こんな血が出るような行為を、大好きな篠岡さんにしてしまったことに、懺悔の気持ちで一杯だ。 いくら大好きだからって、篠岡さんに負担を掛けていい理由にはならない。 その上、こんな部室で初めてのエッチをするなんて、最悪だ。 頭を下げていると、突然篠岡さんの手が伸びてきて、オレの手が握られた。 「え?」 驚いて顔を上げると、そこにはいつもの笑みを浮かべた篠岡さんがいた。 「なんで謝るの? 私は、三橋君の事大好きだから、すごく嬉しいよ?」 「……で、でも……こんなとこなんて……」 篠岡さんは、小さく首を横に降る。 そのせいで、篠岡さんのフワフワした髪が揺れた。 「場所なんて関係ないよ。そりゃ、確かに初めては、こんなシチュがいいなとかあったけど……」 その言葉に、申し訳なくてまたオレは項垂れる。 「でも、好きな人と一緒なら関係ないんだね! 今日分かった」 「うぇ!?」 「だから、謝らないで。謝られたら、三橋君は後悔してるんじゃないかって思っちゃうよ」 「お、おもってない! おもわ、ない、よっ!」 慌てて首を大きく横に振って、否定する。 「じゃあ、謝るのはなしっ」 篠岡さんの優しい笑みが、胸の中を温かくしてくれる。 涙で篠岡さんの笑顔が滲んだ。 すごく嬉しい。 そして、こんなに思ってもらえて、オレはすごく幸せだ。 だから、オレもちゃんと言葉にしなくちゃいけないんだ。 恥かしいとか。 涙で上手く言えないとか。 そんなことを言ってちゃダメなんだ。 「し、篠岡さんっ!」 「ん?」 篠岡さんの大きな瞳がオレに向けられる。 「オ、オレ……っ」 篠岡さんの手を握る。 オレの手は汗でベタベタに違いない。 だけど、不思議と気にならなかった。 「篠岡さんのこと、だ、だ、だ、大好き、ですっ!」 唐突だったから、驚いたのかもしれない。 篠岡さんの大きな瞳が、瞬く。 そして、次の瞬間、その瞳が綺麗な弧を描いた。 「私も、三橋君が大好きだよっ」 そのまま両手を引っ張って、もう一度篠岡さんにキスをした。 やっぱり篠岡さんの唇は、シロップみたいにすごく甘かった。
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5-453-457 ミハチヨ2 ミハチヨ後日談1 ◆LwDk2dQb92 (303氏) 今年の夏は当初は冷夏というはずだった気象庁の予報は見事に外れ、日本中で記録的な猛暑日を連日に 渡って観測していた。 もちろん、私たちが住む埼玉も例外に漏れることはなく、八月はうだるような暑さが続いていた。 ようやくのことで暑さにも一段落ついた九月最初の日――。 自宅のダイニングにいる私は、目の前にいる一人の女の子と対峙していた。 清潔感に溢れる栗色の髪を、左右で白のリボンでまとめてツインテールにしている彼女。顔立ちも 年相応の可愛らしさを見せながらも、将来は美人になるだろうなーと期待を抱かせる。 ――って、私も親バカよね そっと苦笑を浮かべていた。 くぅ~っとかわいいお腹の音が聞こえてくる。それもそのはずで、うちの家庭が夕食を取るのは 夕方の六時半ぐらい。時計の針は午後八時を回ったところなので彼女の空腹の虫が鳴くのも 無理もないことだった。 女の子は恥ずかしくて顔を真っ赤にして俯く。私はその様子を見て笑いを堪えるのに必死だった。 「ねえ、まりあ。お父さんはまだ帰ってこないよ。ご飯冷めちゃうから早く食べなさい」 私と夫の高校時代の恩師からいただいて名付けた娘へと語りかける。 先日、五才になったばかりの可愛い可愛い大事な一人娘だ。 「いや。おとーさん、まってるもん……」 私の手作りハンバーグと甘口のカレーライス――大好物から未練タラタラに目を引き剥がしていく。 この微妙に頑固なところは夫――廉に似たのかなと思う。 私たちが三年生の夏に、西浦高校は夏の甲子園大会に初めて出場できた。 公立校からの、純粋な地元のチームということで、私たちはとても大きな応援をもらった。公立 からの代表は実に十年ぶりということも大きかったらしい。 しかし、一回戦を突破したものの、二回戦でダントツの優勝候補筆頭に挙げられた常連校に 延長戦の末に敗れてしまった。 それでも、全力を尽くしての敗戦だったので私たちに涙はなかった。 私たちに勝利した学校は、この後に圧倒的な力を見せ付けて優勝を果たした。 自分たちの戦いぶりに満足したのはそれは私たちだけでなく見ていた地元の人たちも感じていたようで 埼玉に帰ってからも、よくやったといろいろ手紙や差し入れが届いていた。 その後、廉は野球の推薦で大学に進学。私は子供が好きで、在学中から保育士になりたいと考えて いたので、資格を取得できる短大へと進んだ。 その二年後には無事に地元の幼稚園へと就職も決まって社会へと出て、更に二年後には彼も 大手の家電メーカーへと就職した。 それからすぐに私たちは結ばれ、一年後には娘のまりあを授かることができた。 視線を娘へと戻して説得する。まあ、たぶん、言うことを聞かないだろうけど……。 「まりあ。お母さんは今日中にお父さんが帰ってくるよって話したけど、何時になるかは 聞いていないのよ」 「……まつもん」 愛娘はなかなかしぶとい。目の前に置かれた大好物に今にも涎を垂らしそうなほどに追い込まれて いるのに、見事な粘りを見せてくる。 ――ガチャ 不意に玄関の施錠が解かれて扉が開く音がするとともに、『ただいまー』と声が聞こえてきた。 「――っ! おとーさんだっ!」 私が気づいたときにはイスからひらりと降りた娘は玄関へと駆け出していた。呆れるやら関心するやらで 腰を上げて夫を迎えていく。 「おおっ、ただいま。まりあ、いい子にしてたか?」 「うんっ! おとーさん、だっこ!」 うーん。先ほどまでというか、廉が留守にしていたこの一週間に渡って散々私を困らせていたのに。 そんなことを言うのか。 廊下にてまりあを抱いた夫とようやく顔を合わせた。 「お帰りなさい」 「うん。ただいま」 一週間ぶりとなる彼の笑顔は特別なものだった。 はしゃぐ娘をお風呂に入れてもらって、久々の家族三人揃っての夕食後に、お土産に買ってきてもらった 絵本を読んでもらい、ようやく満足したまりあを寝室にて寝かしつけた。 仕事で疲れているところを悪いと思うけど、廉は喜んで彼女の相手をしてくれる。やっぱり、 なんだかんだで愛娘と遊ぶのは楽しいらしい。 二人して娘が寝たことを確かめて、リビングへと入る。私はダイニングに引き返して、冷やしておいた グラスとビールを取ってくると彼にお酌をした。 「お仕事、お疲れ様でした」 「ありがと。んー……仕事かな? 野球が仕事みたいなものだから、それもそうか」 会社の野球部に所属している廉は、今でも社会人野球で野球を続けている。 今週は東京で開かれている都市対抗野球に参加していたため、一週間ぶりの夫婦の時間となった。 「この一週間大変だったのよ。まりあが、ずーっと『おとーさんがいない』ってぐずりっぱなしでね。 第一反抗期は終わったはずなのに、私の言うことは聞かなくて、あなたの言うことはなんでも 聞くのよね……。懐き方が違うっていうか。私のほうが一緒にいる時間は長いはずなのに」 私の愚痴に廉は困ったような笑みを浮かべるだけだった。 グラスが空いたのでお代わりを注いでいく。 「おっとと……ありがと。そうだ。千代さ。ここしばらく体調が悪かったろ? ずっと気になって いたんだけど」 さすがは優しい自慢の旦那様。 気を使わせないように顔には出さないようにって心がけていたのに、微妙な変化でも気づいたらしい。 「あっ、うん。昨日病院に行ってきたけど、大したことないから大丈夫よ」 「病院に行くほどきつかったの? しばらくゆっくりしたほうがいいんじゃ……」 これ以上隠すのは、純粋に心配してくれている彼に悪い。 そろそろ種明かしをしようか。 「ねえ。今年に入ってからまりあも大きくなったし、そろそろ二人目が欲しいよねって頑張って いたでしょ?」 「うん……って、まさか」 「三ヶ月だって。自分でも生理が遅れているなって思っていたけど、ぬか喜びさせちゃ悪いと思ったのよ。 それに、大事な大会前だったからね」 二人がけのソファに並んで座っていた私たち。静かにグラスをテーブルへと置いた廉からぎゅっと 抱きしめられていた。 「千代、ありがとう」 やっぱり、この腕で――愛する人から抱かれていると思うと、心がやすらいでいく。 「――千代」 いけない。この目で見つめられるとどうも弱くなってしまう。 「ダメよ……。お腹の赤ちゃんに悪いから」 「わかってる。キスだけだよ」 そっと顎に手を這わされて上へと向かされる。目を閉じて、そのまま廉へと身を委ねようとしたところで、 「あーっ! おかーさんばっかりずるい! わたしもおとーさんとちゅーする!」 愛娘によって妨害されていた。 おそらく、大好きな父親が久しぶりに帰ってきて興奮して眠りが浅かったのだろうか。 お互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべると、足元に来たまりあを抱き上げて左右のほっぺたに 二人でキスをした。 「来年以降は、二人きりの時間はもっと取れなくなるのか……」 廉はまりあを抱きながら残念そうな表情を浮かべていた。軽くため息をついた姿を見て、くすっと 笑ってしまった。 「……?」 抱かれた娘は父親が言っていることの意味がわからないらしく、可愛く首を傾げていた。 「うん。そうかも。だけど、家族皆で幸せになろうね」 瞳を閉じてキスをねだる。 その前に、あの夏に貰った大事な――ボールが目に入ってきた。 しっかりとしたケースに入れてある大切な宝物であるそれにそっと心の中で囁く。 ――ありがとう。これからも私たちを見守っていてね 廉の息遣いを感じながら、私はそっと唇を受け入れていった。 (今度こそ終わり)
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5-361-376 ミハチヨ ナースコスミハチヨ1 「三橋くんってどんな格好が好き?」 隣を歩く少しだけわたしより背の高い彼にそう問いかけた。 三橋くんとは付き合って2ヶ月ほどになる。 入学式のときに彼を見かけたときから気になって、野球部でマネジをやろうとおもったらちょうど彼がいて。 彼の投げる姿は本当にかっこよくていつも目を奪われていた。 だから彼に告白をして、「・・お、俺もずっと好きだっ、た・・・」なんて返されたときは本当に嬉しくて飛び上がりたいような気持ちだった。 あくまでも部活のほうを優先した上で何回かデートもしてわたしはこの関係にとても満足していたのだけれど。 「千代って、三橋くんと付き合ってから結構たつけどまだやってないの?」 なんて昼休み中に友達にさらっと言われたときには飲んでいたジュースを噴出してしまいそうになった。 「やってって・・ま、まだに決まってるよ・・」 「えーっ、ちょっと遅くない?飽きられちゃうよ?」 「そーそー、やるばっかりも駄目だけどさ、やらせないのもどうかと思うよー男の子だし」 「しかもさ、三橋くんってそういうの自分から言えなさそうじゃん?ここは千代がリードしてやりなよ」 「そ・・そんなこといったってわたしだって無理だよ!」 ぶんぶんと両手をふって否定するわたしを二人の友達はじーっと見てくる。 「で、でも三橋くんはそんな素振り全然見せないよ?」 「そりゃそうだろうよ、そんながっついてきたらあんたが幻滅するでしょ」 「そうだけど・・・」 「まあもし本当にそうだとしたら千代には色気が足りないのかもしれないねぇー」 「あーそだね、千代って可愛いけど幼いっていうか・・服もかわいいけど際どいのは全然着ないし」 「そんな服わたしには似合わないよ!スタイルだってそんなに良くないから色々頑張って誤魔化してるのに・・」 お風呂場で毎日みる自分の貧相な体型を思い浮かべてため息をついた。 そんなわたしが女らしい部分を強調する服なんて似合うはずもない。 「まーそう言いなさんなって、三橋くんもあんたのこと好きだって言ってんだから自信持ちなよー」 「なんならさ、今度率直に聞いてみればいいじゃん?やっぱ本人の意見が一番大事だよ」 「うん・・そうしてみる」 そんなこんなで、友人たちにまんまとそそのかされて今に至るのである。 三橋くんはやっぱり困ったみたいに目を泳がせている。 「え・・と・・篠岡さんは・・何着ても可愛いよ・・」 そういってえへへといった風に笑う。そんな笑い方をする彼のほうがずっと可愛いかもしれない。 かといってここで大人しく引き下がればまた友人たちとの会話がループするかもしれない。 ここはもう一押しだ。 「んー・・じゃあ強いて言うなら!」 「し・・しいて・・?」 「うん!どんなのでもいいよ!」 問題のスタイルのほうも改善するのに頑張るから! とひとり心の中で呟く。 「えー・・しいていうなら・・看護婦さんとか・・・」 「・・・・へ?」 まったく予想だにしていない答えにわたしは目が点になった。 次の日の学校で、三橋くんの意見をありのまま友人たちに報告すると、 今度は友人たちが飲んでいる飲み物を噴出しそうになっていた。 「ナースって・・三橋くんって変態の気でもあるの?」 「本人の意見が大事っていったのそっちでしょー!? ・・わ、わたしは三橋くんが喜んでくれるならナースだってなんだっていいよ、三橋くんだもん」 そういって口を尖らせると、友人は呆れたようにわたしを見てため息をついた。 「恋は盲目ってやつね・・まあ千代がいいんならいいんだけどさ、でもどうするの?ナース服」 「あ・・勢いで言っちゃったけど忘れてた・・」 そんなわたしの様子に友人はさらに呆れたようだった。 「もーほんっとそーゆーとこ抜けてるよねー結構値段張るんじゃないの?ああいうのって」 「あ!あたし小学校のとき劇でナース服着たことあるよ!まだ家にあると思うし、持ってこよっか?」 「ほんと?でも小学生のときのなんて小さすぎるんじゃ・・」 「小6のときのやつだし多分大丈夫だって!それに少し小さめのほうが三橋くん的にはいいんじゃない?」 「ええー・・そんなの・・」 にやにやしたような顔で友人たちはわたしを見つめてくる。 そんな視線に耐え切れなくなってわたしはふっと廊下側に目をやった。 すると、ちょうど三橋くんが通り過ぎるところで、目が合うと彼は軽く頭を下げて笑った。 わたしも同じように笑い返して、再度友人たちをじっと見据えた。 「う、ううん、やっぱり持ってきて、わたし頑張るよ!」 三橋くんのためだもん。 いよいよ決戦の日。 右手にはおいしいと評判のシュークリームと例の衣装が入っている。 彼の家には何度か行ったことはあるけれど、いつも部屋で二人でただぼーっとしてるか話してるかしかしてなくて、 あっち系の雰囲気になったことなど一度もなかったから、家へ行くといってもいつもならさほど緊張はしなかった。 けれど、今回は違うのだ。少しだけ震えてるように見える指でゆっくりとインターホンを押す。 すぐに中で騒がしい音が聞こえたかと思うと、急に静まりかえってゆっくりとドアが開いた。彼の顔が半分だけ現れる。 「ど、どうぞ、入って」 「うん、お邪魔します」 そう元気よく言うと、いつもは三橋くんのお母さんが出てくるのだけれど。 今日はただわたしの声が廊下にこだましただけでなんにも反応はなかった。 「あ、あの、今日、うち親、い・・いないんだ・・」 そう聞いた瞬間にわたしは一気に緊張が高まってきた。 ありがちなドラマや漫画なら、部屋へ行ってからそういう方向へもつれこむのだ。 「そうなんだ・・あ、これ、シュークリーム、おいしいんだって」 極度の緊張をごまかすために紙袋からシュークリームを取り出して押し付けるように差し出した。 「そ・・そんなの全然いいのに・・あ、ありがとう、じゃあ先、部屋行ってて・・飲み物、持って来るから」 「うん、わかった、じゃあ先いってるね」 彼の部屋に一人ではいると、急に心臓の鼓動の音が耳につくようになった。 とりあえず深呼吸をして、息だけは整えてみる。 そして、紙袋に入ったナース服を取り出して広げてみる。着れないことはないが、やはりわたしには少しだけ小さい。 三橋くんがまだ来る気配はない。あまりにも不器用で優柔不断なのか、彼はいつも飲み物を持ってくるときとかは手間がかかるのだ。 なら、今のうちに着替えてしまって驚かせてしまおうか。 緊張の中少しだけ芽生えてしまった悪戯心に負けて、私は急いで服を脱いだ。 そして、まず先にナースキャップを取り付け、問題のナース服にとりかかる。 するりとはいかなかったものの、なんとか着れたナース服の前のボタンを閉めている最中にドアががちゃりと開いた。 「わっ・・!!」 入ってきた三橋くんは当然驚いてお盆を取りこぼしそうになる。 なんとか落とすのは免れたが、今にも蒸気が出そうなくらい彼の顔は赤く染まっていた。 「み・・三橋くん、あ・・あの驚かそうと思ってね、えへへ」 笑ってごまかしていると、まだ前のボタンが閉めきれていないのに気がついて慌てて手をかける。 しかし、三橋くんにその手を止められる。 わたしはそんな様子の三橋くんに驚いて彼を見上げる。 「あ、ちょ・・ちょっとその、ままで・・」 そういうと三橋くんはお盆と机の上に置いてなにやら箪笥をごそごそと漁ったかと思うと、グレーのカーディガンを取り出してきた。 多分三橋くんのものだろう、わたしには大きめのサイズのそれを差し出される。 「あ、あのこれ・・軽く羽織ってみて・・ほしい・・」 「うん・・・こう?」 やはり大きかったので袖のところはぶかぶかになっているし、裾だってナース服より長かった。 そんな状態のわたしをみた三橋くんは目を何度も瞬きさせている。 「す・・・すごい・・かわいい・・・」 そっと腕が伸びてきて、軽い力で抱きすくめられた。 付き合ってから三橋くんとしたことといえば、手をつなぐのとキスぐらいで、こんなに体が密着したのは初めてだった。 意外と大きかった三橋くんの腕の中は、ドキドキしたけれどとても温かい気持ちになれた。 だから、その腕がだんだんと離れていったときは素直に寂しいと感じた。 改めて顔を見合わせると、三橋くんの頬は赤いままで、視線がだんだん目から外れて顎を通り過ぎて、 はだけた胸元(まだボタンを閉めていなかっただけだが)に焦点をあわせた。 「・・いいよ・・?触っても・・」 「えっ・・・」 「ここまで約束してないけど、三橋くんがしたいんならいいの・・やっぱり、好きだから」 「そっそんな・・悪いよおればっかり我が侭、で・・」 「じゃあ、わたしからも我が侭言うね。・・三橋くんにもっと触れてほしい、これでおあいこだよね」 そう言ってにこりと微笑みかけると、三橋くんはこくりと頷いて「じゃ・・あ、お願い、されます・・」といって、 ゆっくりとわたしの身体を床に押し倒して、ものすごく遠慮がちにやわやわと胸を服の上から揉んでいく。 しかしそれはだんだんリズミカルになり、とうとう三橋くんはボタンをいくつかはずし、肩が露出するぐらいに上半身を脱がされた。 そして下着をすこしだけ上にずらされると、少し慣れてきたものが一気に崩れ、急にとても恥ずかしくなった。 大きいとはいえないわたしの胸は、ホックがはずされていないブラに圧迫されて窮屈そうに縮こまっている。そんな様子を三橋くんはじっと見つめていた。 「や・・、そんなに見ないで・・」 「ご・・ごめん・・!」 三橋くんは慌てて目線を少しだけずらし、胸への愛撫を再開する。 やはり、服の上からと直では全然感触が違っていて、恥ずかしくて声を漏らさないように必死だった。 先端の周りをくるくると指が滑ってもどかしいと思っていたら、急に軽く摘まれて、思わず声が出てしまう。 「んぅっ・・!」 その反応を見逃さず、そのまま先端をこりこりといじって、口に含んだ。 三橋くんの舌の感触が、胸の先端からじんじんと脳に伝わってくる。 空いている方の先端はさきほどの指で再度つまみあげたりされる。 同時に与えられる刺激に、わたしの頭のなかが少しずつ変な感じになっていっているような気がした。 「んやあぁっ・・あぁんう・・や・・っ」 そして、少しだけ音を立てるようにして吸い上げた。 「やっ・・あん!!やあぁ・・」 ぴくん、と身体がのけぞると、三橋くんはようやく口から解放してくれた。 顔が上気して、何度深呼吸しようとしても荒い息がなかなか整わない。 その間に三橋くんの右手はするすると太ももの内側あたりに移動して、軽く撫で上げたかと思うと指の先端はもう秘所にあてられていた。 そして、そのまま下着の上から割れ目をなぞるように指の先が動く。 「ひああっ」 「す・・すごい・・湿ってる」 「いわないでぇ・・!」 三橋くんはさっきまでの遠慮はどこへ吹き飛んでしまったのか、さも楽しそうに指の動きをやめない。 それどころか、下着の下から指を差し入れ、直接触れてくる。 何かを探っていたかと思うと、小さな突起を見つけ出しきゅっと軽くつまむ。 「んやぁああっ・・!何・・やっやあ、・・ああぁん」 「こ、ここがいい・・?」 「やっやっ・・だめぇ・・んぅう、あ、ひゃぁああんっ!」 指の腹でこすったりひっかいたりして、とどめに強くつままれるとまたさっきみたいに頭が真っ白になって、 とろりとした液が出てくるのをリアルに感じた。 そして、三橋くんはそれを救いあげるみたいに割れ目もなぞる。 秘所から手を離し、さきほど出したばかりの粘液にまみれた指二本を目の前に突き出される。 「・・・ほ、ほら・・いっぱい出たよ・・」 「み、見せなくていいよっ!」 目の前に突き出された指を三橋くんは自分の口元へ持っていくと、それをぺろりと舐めあげた。 わたしはその光景をみてまたカッと顔が熱くなる。 「だっだめだめっ!!汚いよ!すぐ出してっ!」 「い、・・いや、だ・・全然汚くなんか、ない・・」 そういって三橋くんは下着をするりとはぎとって、足の間に身体を割り込ませて秘所に顔をうずめた。 わたしがやめて、と言う間もなく割れ目を舌で裂くみたいに舐める。 「ひ、ひいぃん!あぁぁ、あん・・や、やめ・・っ」 ピチャピチャといやらしい水音が部屋中に響く。 わたしはせめてもの抵抗でふるふると首を振るけども、一向にやめてくれる気配はなかった。 舌が突起のほうに場所移動すると同時に、秘所の中へ指が進入してくる。 「は、・・やっいたぁ・・」 「も・・少し力抜い、て・・」 少しだけ入れられた指の先をくりくりと動かされると、また粘液がとろりとあふれ出す。 その液を利用して、指はどんどん奥へ入っていき、とうとう第二間接のあたりまでぬぷりと飲み込んでしまった。 はじめての異物感に軽く嫌悪感を感じるのとは反対に、秘所はその指を喜んで出迎えるようにひくひくと収縮を繰り返す。 指がなにかをさぐるように前後に動き出すと、さきほどまで休憩していた舌の動きも再開した。 その同時攻めはすさまじいもので、甘い嬌声がただただ漏れるだけだった。 「ひあっ・・!?」 蠢いていた指があるところを擦った瞬間、一際高い声をあげてしまった。 三橋くんはその反応を見逃さず、同じところを何回も何回も擦る。 そのたびに何度も何度も身体がぴくりと反応してしまう。 「やぁっ・・ぅうん・・やめっ・・はあぁっ・・やっ、ああっ!!」 指を激しく動かされて突起を吸い上げられると一瞬目の前がちかちかしたような気がして、身体の力が抜けて、ぐったりとなった。 三橋くんは秘所からうずめていた顔を上げると「篠岡さん・・すごく、色っぽい・・」といって立ち上がり、傍を離れた。 倦怠感にみまわれて三橋くんが何をしているのか見る気にもなれなかったけど、何かを探しているような気配がした。 目的のものを見つけ出したようで、また元の位置に戻ってくる。 右手になにかをもっているようだ。よく目を凝らしてみると、それは家庭用電動マッサージャーみたいなものだった。 「それ・・・どうするの・・?」 「え、・・と・・こ、こうするんだと、思う」 そういってカチッと電源を押すとブゥウウンというモーター音が耳につくように響く。 そして振動しているそれの先をわたしの秘所に押し当てる。 「ひっ、な、なに、いやぁああああっ・・!だ、だめえぇ!」 またさっきみたいな快感の波が押し寄せてきて、ひいていったけれども三橋くんはそれを離そうとする気配はない。 「やっやだああっ、ま、また、・・んやぁああっ・・」 何度も何度も強制的に上り詰められる絶頂に本当に頭が変になりそうだった。 「はあっん、はぅ、んうううぅ、も、ゆ、許してえぇ・・お願いぃ・・やぁああ」 思わず一粒の大きな雫がぽろりとこぼれて頬をつたう。 それをみた三橋くんははっとしたようにその機械を押し当てるのをやめた。 「ごっ・・ごめん!!お・・おれ、調子に乗りすぎて、た・・」 本当にごめんと何回も頭をさげられて、逆にこっちが悪いような気がしてきた。 なんとか上半身だけを起こして三橋くんの顔をみると、さっきまでの別人みたいな三橋くんじゃなくて、ちゃんと元の三橋くんに戻っていた。 「・・ううん、いいよ・・ただ、もうちょっと優しくしてくれると嬉しいかな・・」 「う、うん!わかった・・!」 こくこくと首が折れてしまうんじゃないかというくらい頷く三橋くんにわたしは笑みがこぼれる。 その顔がどんどん近づいてきて、その唇がわたしの一筋の涙のあとをたどると、唇を重ねた。 さっきまでとは違うとても優しいキス。 そっと唇が離れると三橋くんは自分のベルトのあたりをかちゃかちゃとはずそうとしはじめた。 わたしはぼーっとその様子を見ていると、そのベルトをはずす手が止まる。 三橋くんが「あの、あんまり・・見ない、でほしい・・」といったときにようやく理解してわたしは慌ててぎゅっと目を閉じた。 「じゃ、・・じゃあいき、ます・・」 「うん・・」 ぐっと大きくて熱いものがわたしのなかを満たしていく。 いろんなもので慣らされたといっても、まだ初めてなのだ。 すごく痛くて、思わず顔をしかめると、三橋くんはとても心配そうに顔を覗きこんできた。 「あのっ・・あの・・」 「大丈、夫・・さっきのも、全部できたもん」 「ほ・・ほんとうに・・?」 わたしが素直にこくりと頷くと三橋くんも頷いて止めていた腰をゆっくりと動かす。 三橋くんが動くたびにさっきとは比にならないくらいの快感が全身を駆け抜ける。 「あっ、はっ・・んんっああぁ、」 「しの、おかさんっ・・・」 何度も途切れそうになる意識を必死で繋ぎとめる。 それでも薄れていく景色のなかではまとまった言葉を話すことすらできない。 「やんぅっ・・み、はしくん・・へ、変に、なっちゃうぅ・・」 「い、いいんだ、・・そのまま、で・・」 「あぁあぁ、やだあぁ、んぁあっやっ・・・」 「しのおかさん・・、もう、すこし・・」 「やあっ・・はぁっ・・あああっ――――!」 ぐいっと大きく突き上げられたとき、わたしはかすかに繋ぎとめていた意識をとうとう手放した。 視界がどんどん白くなっていき、急に重くなったまぶたに耐え切れずに白い視界を真っ暗に閉ざした。 あのあと、わたしは少しだけ眠っていて、その様子を三橋くんはずっと見守ってくれていたらしかった。 「で、なんでナースなんかに興味もったの?」 ナース服から普通の服に着替え終えると、率直な疑問を彼に投げかけた。 「えー、っと・・それ言ったら・・篠岡さん・・怒る・・阿部く、んも・・」 「なんで阿部くんなの?」 三橋くんはしまった、みたいな顔をして肩を大きく震わせた。 「わたしは怒らないし、阿部くんにも言わないから、言って?」 できるだけ怖がらせないように優しく問いかける。 それでも彼はずっとわたしの視線をそらしつづけ、どうするか迷っていたようだが、ようやく意を決したように彼は口を開いた。 「えっと・・阿部くんが・・あんまりためこむと調子出ないぞ、っていって、きて、貸してもらっった・・んだ・・そ・・その・・そういう系の・・ビデオを・・」 「あ、阿部くんが俺の好み、を考えて選んでくれたみたい、なんだ・・けど・・それが看護婦のやつで・・、 と、とりあえず・・せっかく貸してくれた、から、みてみようとおもっ、て・・みたら・・それがまた・・ぴったりで・・ こんなことまで分かるなんて、ほ、本当に阿部くんはすごい人だよ、ね・・」 あはははと三橋くんは笑ってごまかそうとするけれど、顔はずっと赤いままだった。 すると、遠くから電話のコール音が響いてくる。 きっと三橋くんの家の電話だろう。 「あ、ちょ、ちょっといってくる、ね・・」 そういって三橋くんが部屋を出て行った途端わたしは大きく息を吐いて全身の力を抜いた。 全部阿部くんが吹き込んでいたのか。 うらめしく阿部くんの顔を思い浮かべて、部屋を見渡すと本棚に本とは思えないようなものがちらりと見えた。 悪いとは思うけれど、気になって手にとってみる。 すると、それはさっきいっていた例の貸してもらったビデオのようだった。 裏のパッケージにはナース服を着てカーディガンを羽織った女のひとがいやらしい格好でポーズをとっている。 わたしがさっきまで着ていた格好とほとんど同じである。 その女のひとの周りに、ビデオの内容のシーンがいくつかちりばめられていて、それはほとんど全部さっきやったことと酷似していた。 ただひとつだけ違う部分があった。決定的な違いであり、わたしがもっとも気にしている場所。 その女のひとの胸はもうモモカンやそれ以上の大きさであり、半分くらいわけてもらっても今のわたしの胸より大きいだろう。 到底及ばない自分の胸と見比べてため息をつく。 (もう・・ほんと・・阿部くんのバカ・・) おわり
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3-197-209 ミハチヨ「メダカが見た虹」 「……キレイ だ。……す、すい こまれ そう」 少年は、頭上にある満天の星を眺めていた。 今立っているのは誰もいないマウンド。フェンスには野球ボールが、一個だけ転がっていた。 少年は夜空の星座を観ながら、左手の刃物を静かに右手首に置いた。 夏の甲子園に向けた初戦を、西浦高校は勝ちあがった。 野球部は次の試合に向けて、さらに練習に熱を入れていた。 「あ、阿部君……、み み 見て 欲しい ものが あ あるん…だ」 捕手用の防具を身につけたあと、阿部は三橋に声をかけられた。 阿部の顔にはいくぶんかの驚きと好奇心があった。三橋の方から話題を振られるのは、かなり珍しいことだからだ。 「ああ。なんだ?」 三橋は、阿部の準備ができしだい、話しかけようと待っていたようだった。 「お オレ、最近……球が速くなったみたいなんだ」 「え!?マジで!?三橋スゲーじゃん!」 部室内では練習着に着がえている部員でにぎわっていた。そして、誰もが三橋の言う球速が上がったことを話題にした。 「なぁ、たしかめてみようぜ!」 「うん」 田島は三橋の背中を押して、ブルペンまで連れて行こうとした。 「やれやれ、モモカンが居ない時に……」 三橋の肩慣らしが終わると、阿部はスピードガンを持っている千代の方を向いた。 「篠岡、準備はいい?」 「はい、オーケーです」 了承が出されると、阿部は定位置に座った。そしてミットを構えてボールが来るのを待った。 「い いきます」 三橋は全力投球をした。 「篠岡、どう?」 田島は結果が出るまで我慢できずに、スピードガンの表示をのぞきこんだ。 「114キロです」 おお!と周りから歓声が上がる。 春のころの三橋の球速は、速球でも100キロそこそこのものだった。そのころに比べれば、格段の進歩のあとが見て取れた。 「三橋、114だってさ」 「うん!」 三橋はマウンドの上で、小さくガッツポーズをした。それはまるで、いいことをした後に褒めてもらってうれしがるのに似ている。 「もっと、もっと速く……投げられるよ」 グラブを挙げてボールの返却を求められたので、阿部はグラブめがけて放り投げた。 三橋はもう一度振りかぶり、力のこもった球を投げた。 「117キロです」 先ほどよりもさらに大きな歓声が湧きおこった。三橋は、歓声に気を良くしたようで、照れくさそうにうひゃうひゃしている。 阿部にとっても、三橋の球速はうれしい誤算だった。これだけの才能をもった投手を、できるだけ日のあたる場所へと行かせてあげたかった。 「これなら、120も夢じゃないかもな」 周りの熱が阿部にも移ったかのように、阿部も饒舌になった。 「よし、今度はサインも入れるぞ。もう1球こい」 阿部の返球を受け取ると、三橋は大きくうなずいた。 そして、全力投球の3球目。 いつも以上に気合を入れると、三橋はおおきく振りかぶり、阿部のミット目がけて投げた。 「――!?」 三橋の球はあらぬ方向へと飛んでいった。阿部は、フェンスに跳ね返った球が地面につくよりも早く、マウンドでうずくまる三橋のもとへと駆けだした。 「三橋!?三橋!?」 部員たちが駆け寄っても、三橋は起き上がらなかった。 冗談、冗談、怪我した演技、抜群だったでしょ? 三橋がこういう軽口を言わないことを、全員がよく知っていた。 三橋は右肩を押さえたまま、口から泡を噴いていた。 三橋は千代に付き添われて救急車に乗った。 練習後の部室は、誰もが意気消沈していた。 「ねぇ、三橋の肩ってどうなったの?」 西広は、野球経験の不足ゆえ、ピッチャー陣にたずねてみた。 「野球肩っていうやつ。ピッチャーの急所である肩と肘を酷使し続けて、フォームが崩れたりして筋肉やスジを傷めるんだ」 沖は自分でピッチングフォームを演じながら西広に説明をした。 「それって直るの?」 「んーー」 花井は腕組をして渋い顔をした。 実際に、野球肩、野球肘を起こしても、もとのように投げられるケースは多い。キチンとした治療とリハビリに時間をかければ直るだろう。 「三橋の場合はなぁ、かなり症状もデカそうだしな」 「そ、そうか……。でも、救急車もすぐ来てくれたし、不幸中の幸いだよね」 西広は場の雰囲気を少しでも明るくしようと、精一杯の材料を提供しようとした。 「いいわけねぇよ!」 それまでイスに座っていた阿部は、大声を上げると、目の前のテーブルをひっくり返した。 室内に悲鳴が起こり、みな阿部に注目する。 「アイツは、中学のとき散々な目にあったんだ。西浦に来て、ようやくまともな野球ができるはずだったのに……」 阿部は、うつむきながら両こぶしを固く握った。 「タマ遅いピッチャーでも、9分割に投げ分けられるコントロールがあったから、アイツはやってこれたんだ。これで、本当に肩を壊しちまったら、アイツ……」 また同じイスに座りだし、頭を抱えてうずくまった。 「あべ……」 (オ オレ がんばる から 球威も コントロールもある投手に) (速いタマ……、投げたい!) 誰よりも投げることが好きで、そのための努力をおしまない。三橋はそういう人間だった。 <バッカヤロウ……。無茶しやがって> 阿部が見たところ、三橋は桐青戦でさらにピッチャーとしてひと皮むけた。 今までが卑屈に投げていた分、勝利の味を覚えて、より強い欲が芽生えた。 おそらく、試合後も我慢できずに、制限も関係なく家で全力投球していたに違いなかった。 「俺のせいだ」 阿部は部屋にいる仲間に謝罪した。 「俺がアイツに夢見るようなこと言ったせいだ」 「ちがうよ。最初に確かめようって言ったの、俺じゃん。……俺が三橋を怪我させたんだよ」 田島はロッカーの中でおとなしく座っていたが、ようやく言葉を発した。 翌日から、三橋は野球部の練習を休み、病院へ通院することになった。 阿部は千代に三橋のことを頼んだ。 「なるべくアイツといっしょにいてやってくれないか?」 「うん。私も三橋くんと一緒に病院につきそう」 「たのむ。俺たちもなるべくアイツに話しかけるようにすっから」 三橋は、怪我をした後、また誰にもしゃべらなくなった。時には、同級生でさえ逃げるように避けている。 放課後、二人はバスに乗り、市内の総合病院へむかった。 「今日は病院に来る人少ないし、受診もはやくおわりそうだね。……たぶん」 千代はできるだけ明るい声で三橋に話しかける。しかし、その返事は生半可だったり、話を聞いていなかったりすることも多い。 「ホラ、信号青!わたろう!」 「あっ」 右手で三橋の左手をつかむと、横断歩道を連れてひっぱり歩いた。 つめたい手をしていた。力が入らず、無気力で、あせりと自責の念がみえた。 「ケガをすると、やっぱり、自分を責めちゃうもんなのかな……」 千代も長い闘いになることを覚悟した。 三日後。 「つ おっ……次の試合、お 俺、でれない よね」 病院の待合室のベンチに二人で座っていると、三橋は試合の話題をした。 「…うん。今回はさすがに止めといたいいよ」 「……うん」 三橋はさびしくうなずいた。今の状況にあっても、やはり、マウンドは誰にも譲りたくないようである。 「投げたい なぁ」 三橋はつぶやいた。 「大丈夫。みんな、三橋くんが戻ってくるまで、勝ち続けるよ」 「うん」 その後は、看護師に名前を呼ばれるまで無言になった。 外科の担当医は、キレイに髪を分け、官僚を思わせるような眼鏡をかけた人だった。 「三橋さんの肩のレントゲンですが、こちらの右肩後背筋に深く障害を起こしています」 パネルにはめ込んだ写真を二人で見ると、医師の指すところを注目した。 「こちらの部位は、治療がとてもしにくい部分です。別の筋肉に隠れて中に入り込んでいるので、手術も困難です」 千代は説明を聞きながら、医師の顔と三橋の顔を交互にみた。 三橋は話を聞きながらふるえていた。 「先生、肩はどれくらいで直るもんなのでしょうか?」 千代の質問に、医師は三橋の顔を見ずに、千代に向かって答えた。 「日常生活で不自由なくすごすまでには、数年はかかります」 「あの……あの……、三橋くんは投手なんですけど、……もとの球を投げるまで、どれくらいかかりますか?」 千代は三橋のため神に祈った。せめて最善の知らせを聞いて帰りたかった。 「まず無理でしょう」 病院前のバスの停留所で、二人は何台もバスを乗り過ごした。 二人は病室を出たときから、ひと言もしゃべっていない。三橋はベンチに座ったまま、石のように固まっていた。 千代はそれでも動くことをうながさなかった。ただ三橋の傍らにいてあげたかった。 すると、千代の携帯が鳴り出した。 「俺だ。三橋に何度もかけてるんだが、全然通じない。病院だから切ってたか?」 阿部からだった。三橋は、電話越しに阿部の声を聞くと、ビクッと反応した。 「うん。もうすぐ帰るから。……大丈夫。……うん。…・・・それじゃあとで」 電話を切ると、三橋はひざを抱えだして泣き始めた。 「あ あ あ べ…くん」 「ええ。みんなも、たった今練習あがったんだって」 「ど どう し よう……。かっ えっ かえれ ない……」 千代にも西浦のみんなにどう説明すれば良いかわからなかった。医師の話だと右肩が戻るのは絶望的。 三橋にとって、西浦野球部にとっても、受け入れ難いことだった。 「今日は学校に戻らずに、このまま家に帰ろう。ね?」 バスに乗って最寄りの停車場までくると、バスの中で三橋と別れた。 「み、三橋くん。あの、さ……、病院はあそこだけじゃないから。ホラ、怪我したときは複数のお医者に看てもらった方がいいって、志賀先生もいってた」 三橋は泣いていなかったが、暗く落ち込んだ顔を千代の方に向けようとしなかった。 「だから、明日は別の病院に行こうと思うの。……今日はおつかれさま。それじゃあ、ね」 あごだけでうなずくと、三橋はバスを降りていった。 扉が閉まり、窓の外の三橋が歩いていったのを確認すると、千代は顔を覆って泣き崩れた。 「ひどすぎるよ……かみさま」 三橋は別れたあと、自然と足が西浦高校にむかっていた。 すでに練習時間は終わっている。グランドは整備されてあり、誰もいないマウンドまでやってきた。 カバンの中から、いつも携帯している硬球をとりだした。さらに、ふで箱の中のカッターナイフも取り出してズボンにしまいこんだ。 カバンを置いて足場を確かめると、ゆっくり肩を伸ばした。 (だいじょうぶ……。いたくない) いつもの通りに構え、左足をあげて、オーバースローで投げてみた。 「うぐっ」 肩をまわしたところで激痛が走った。球はそのまま2メートルほどしか飛ばず、てんてんと転がっていった。 (……うそじゃ ないんだ。……ホントに オレ なげられなく なった) 三橋は空を見上げた。頭上の夜空が自分を包んでくれた。 「……キレイ だ。……す、すい こまれ そう」 三橋は見上げながら、ポケットに入ったカッターをとりだす。そして、刃を伸ばしきると、静かに右手首にあてた。 この時、不思議と三橋には死ぬ怖さはおきなかった。 それは、マウンドの上だったからかもしれないし、星空に感動して死がどうでもよくなったのかもしれない。 扉がひらく音がすると、人が突っ込んできた。両手で刃物を持つ手を押さえると、三橋から強引に奪い取り、遠くへ投げ捨てた。 「しっ し し 篠岡 さん」 「バカッ!」 千代は三橋の頬をはたいた。夜中に乾いた音が響く。 「バカッ!バカッ!バカッ!バカッ!……うぅ」 「ごめっ ごっ ごめん ……なさい」 三橋はその場に腰砕けになり、うつむいて泣き出した。 学校に戻ってきた千代は、マウンドで立ち尽くす三橋を見つけた。 はじめはとても声をかけられる雰囲気ではなかった。ポケットからカッターをとりだしたのを見るとかけだした。 「どうして……こんな……」 三橋のリストカットを防いだ千代は、足元でうずくまっている三橋に声をかけた。 返事はなかった。しかし、 「お オレ、まだ ピ ピッチャー つ づけ…られるよ。……ひ ひだり腕だって ある し」 下を向いてつぶやき始めると、今度は千代の足にすがりついた。 「あ 阿部くんだって い いる から。だから、……だから、お願い。……お オレ に 投げさせて」 三橋が千代にせまり、おもわず仰向けに倒れこんでしまった。 「……ひ ひどい ヤツ …だよね。……こ こん なに なっても、……マウンド ゆずらない」 「みはしくん……」 「意味がないんだ……。オ オレ ピッチャー や やら ないと、……生きてる 意味なんて……ない」 ぐっう、う、ううう。 再び三橋は、堰を切ったように号泣しだした。 「そんなこと……ないよ」 「あるよ!」 「そんなことない!」 千代は三橋の顔を上に向かすと、顔を近づけ、そのまま口づけをした。 「……あむ……」 マウンドで重なりあう二人には、虫の声しか耳に入らない。 千代が三橋の唇をはなすと、そのまま三橋にすがるように抱きついた。 「私は、イヤ。私が好きな人が悲しむのも、居なくなっちゃうのも、イヤ」 「……えっ?……えっ?」 「三橋くんが好きだって言ったの!」 そういうと、再び千代は三橋の唇を己で塞いだ。 今度は千代の舌が、三橋の中に入り込んでくる。舌と舌が触れ合うと、口の中でかきまざるように絡み合った。 「あふぅ……んう、……れむ」 (あたまが、クラクラする。きもちよすぎて) 千代も息を吸うために、顔を離した。三橋は側にある千代の顔を眺めてみた。 大きくキラキラした瞳は、涙でうるませている。唇はやや厚めで、今しがたその柔らかさを味わったばかりだった。 「お おオレ のこと?」 「うん……。だって、すごくカッコいいから」 三橋にはこれまでに自分に向けられた台詞の中で、聞いたことのないものばかりだった。 千代は着ているシャツのボタンをはずし、自分の胸で三橋の顔を抱きしめた。 「吸って」 三橋は顔を真っ赤にしながら、どうするか躊躇した。目の前には千代のまだ幼いつぼみがある。 それは暗いピンク色をしており、頂点は天に向かってツンとしていた。 三橋は我慢できずにワレを忘れてむしゃぶりついた。 「はぅ…あ、…あ、あん」 舌で突起物を転がすたびに、硬度が増していくのがわかる。そして、かたくなればなるほど、刺激を与えやすくなる。 「あぁ、そんな……、いっ…、はげ…しく」 三橋は口をはなした。乳首と唇が、自分の唾液で橋がかかった。 今度は左の胸を攻め始めた。そして、右手の人差し指で、右胸をいじくり続ける。 「あーっ、あっあっ、や……はんっ、ぁん、どうに、か、……なっちゃうっ」 先端部につよく衝撃をあたえたとき、千代ははげしく乱れるのがわかった。 二人はお互いの顔を見合わせた。どちらも肩で息をするほど舞いあがっている。 「ここで…してもいい?」 「で、でも……」 三橋はもう一度周りを見渡した。相変わらず、この時間では誰も見あたらない。 「私はかまわない。それに…」 「そ それに?」 三橋は千代の先の言葉をうながした。 「三橋くんは、マウンドの上が一番かっこいいから」 二人は立ち上がった。 千代ははいているスカートの下から、パンツだけを脱いだ。 三橋はズボンのチャックを下ろすと、かたくなったペニスをとりだした。 三橋がマウンドの上であぐらをくみ出すと、千代は三橋と向き合うように、三橋の腰に向かって姿勢を低くさせていった。 「あ、あの……」 三橋が何か言おうとしたので、千代は三橋に注目した。 「そ その…… オ オレも しのおか さん …が、……す、 すきだっ」 「うれしい」 感謝の意味をこめて、千代は三橋のほほに軽く唇をふれた。 三橋の自身をつかむと、自分の秘部にあてた。ゆっくりと、時間をかけて腰を下ろしていく。 千代の股から処女の証である鮮血がしたたれた。 千代は痛みに耐えるために、三橋の首にすがりついた。三橋も千代の腰に手を回し、体を密着させた。 「私たち、つながってるんだね」 「うん」 二人は目を合わせると、舌を絡ませあった。 千代は体を上下しはじめた。三橋が胎内に挿入ってくるたびに、卑猥な声がでてくる。 体の中の三橋の温度は熱く、外見からは想像のできないたくましさを感じた。 「そ その、 お オレ 射精…そうっ」 「うん」 千代は三橋から離れると、股間をにぎり、三橋のために愛撫をはじめた。 「あうっ!あ、あ……、ぅあ!あああああああっ!!」 絶頂がくると夜空にむけて咆哮した。 「おちついた?」 「……うん」 行為のあと、疲労のため、お互いが気持ちを確かめ合うために、千代は三橋の肩に寄りかかって座っていた。 「ごめん なさい。……と とりみだしちゃって」 「ううん」 千代は拒絶した。 「あのさ、三橋くん、帰りの話の続きなんだけど、聞いてくれる?」 「うん」 「今度はね、総合病院じゃなくて、スポーツ医学の専門医の先生に診てもらおうと思ってるの」 千代は説明した。野球肩は治癒可能な怪我であること。外科医の診察と専門医の診察の見解が違うことはありえること。そして、リハビリで再びボールを投げられること。 「あとね、下から投げてみたらどうかな?」 「えっ?あ ア アンダースローってこと?」 三橋が投げられないのは、肩をまわして力をこめるときの筋肉が破損していて痛みがでるからだった。 しかし、痛みがあるときと、ない時がある。これは、使用している筋肉がことなるゆえだった。 「わたしね、ソフトボールやっていたから、ある程度は投げ方を教えることができると思うんだ。もちろん、ソフトの投げ方とアンダースローはちがうけど」 そこで千代は三橋に向いた。 「でもね、監督だって、阿部君だって、西浦のみんなもきっと協力してくれる」 「オ、オ オレに?」 「うん。だって、三橋くんは、私たちのエースだもん」 その後のことを少しだけ書く。 東京にある病院へ通院を始めたあと、三橋は長いリハビリを始めた。 怪我から半年の間はボールに触ることができなかった。 それからはアンダースローへの改造に費やされた。そして、わずかな可能性にすがる三橋の傍らには、いつも千代がいた。 そして、2年生の夏。 三橋は『サブマリン』と呼ばれるアンダースローとなっていた。 球速は110キロそこそこ。しかし、地面スレスレから放たれるボールは、打者からは浮き上がるように錯覚し、タイミングをあわせることすら難しかった。 「し しまっていこーーーーっ!!!」 「おおぅ!!!」 田島と栄口はマウンドのエースに微笑みかけた。巣山と水谷は、1年ぶりに見る背番号1番に目頭を熱くさせた。 「ながい寄り道だったな、三橋。だけど、またココにもどってきてうれしいよ」 ここにも協力者が一人。阿部はリハビリの段階から三橋の投げる球をすべて受け取ってきた。 「ここからだ。ここからまた、俺たちで虹を作っていこうぜ、三橋」 先頭打者は初球から強振。ボールはレフトの頭上に高々く舞い上がった。 了
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8-69-72ミハチヨ ◆HfmxcJU/6Q 4月に入り、三橋にとって初めて経験するイベントがあった。 今までの三橋の学校生活では縁がなく、二重の意味でカルチャーショックだった。 田島の嬉しそうな笑顔、田島に呆れた泉の顔、栄口の気にかけてくれる優しい顔。 花井は呆れていて、阿部はいつも怒ってるから普段通り。 今日は「そーいう日」、だ。 練習の休憩時間に、三橋はみんなの顔と、田島の言葉を思い出していた。 (オレ、も) 一瞬、三橋はそう考えたが、なにも思いつかなかった。 * * * * * 春休みとはいえ、入学を前に熱心な新1年生が3人、既に野球部に顔を出していた。 さすがにマネジはまだだったが、代わりに篠岡の手伝いを覚え始めている。 自転車にジャグを乗せて押しながら、少しだけ西浦高校野球部の空気になれた生徒たちが、 篠岡を「優しい先輩」と認識して、気軽に話をする。 「で、本当のところ、どの先輩なんですか」 唐突な1人の生徒の質問に、他の生徒も興味深そうに頷く。意味が判らない篠岡は質問で返した。 「なにが?」 「彼氏ですよ」 「ああ、そーいうのはナイの、ウチは」 嘘だろぉ、と驚きの声が上がった。 「しのーか先輩かわいーのに、ありえねえって」 「本当は彼氏いんですよね?別の部ですか?」 「高校生にもなって、先輩たちどっかおかしいんじゃねーの?」 と、どんどんエスカレートしていく。 それを受け流すか、先輩として注意するか篠岡が迷っていると、 「あ、三橋先輩だ」 部員の1人が、フェンス沿いをふらふらと歩いて行く三橋に気づいた。 「阿部先輩は花井主将より偉そう」「田島先輩は話しやすい」「栄口先輩は優しそう」等、 大雑把な認識は、既に彼らの中には既に根付いていた。 が、この三橋先輩は全くの未知数なのだ。 挙動不審で繊細そうなのに、投手としては凄い選手らしい。 今はまだ仮入部の新入りに、本当は気が短いのに猫を被っている可能性もある。 馴れ馴れしく話しかけ、入部届を提出したとたん豹変するその確立すら読めない、扱いに困るタイプだった。 「どーしたの、三橋くん」 篠岡が声をかける。 三橋は篠岡の声に顔を上げ、周りに複数の部員がいるのに気づき、比喩でなく本当に飛び上がってビビった。 「お水?ああ、水道行くんだ。ドリンクが遅れてごめんね」 三橋は頭がもげるんじゃないかという勢いで、首を左右に振りまくった。 いつ見ても、行動が怪しすぎる……。 それにしても、なんで篠岡先輩は、この宇宙人みたいな生き物と、ごく当たり前のように コミュニケーションが取れてんだろう? 「あの……。三橋先輩、喋ってないっすよね?」 「なんで判るんですか?」 不気味そうに部員たちは三橋と篠岡を見比べる。 「判るよー。マネジだもん」 「そんなの理由になんないっすよ」 だって、単語すらないんだよ?落ち着き無いし、俺らの目も見れてないし。 1人の生徒が、ぽつりと呟いた。 「もしかして、しのーか先輩の彼氏って……?」 他の生徒が凍りつく。 いや、それはナイって。だって、この人明らかに変だし。 でも、三橋先輩は逃げないし、篠岡先輩とは会話が成立している。 「三橋先輩?」 「へっ」 「篠岡先輩と、付き合ってんですか?」 その場の全員に注目されて、三橋の目と口が大きく開く。 冷や汗を流しながらキョロキョロと忙しなく目線が彷徨い、口がぱくぱくする。 聞いた俺らが悪かった、ぜってーありえねえ。 そんな空気が流れた。 が。 三橋は震えが治まると、意を決したように息を呑み込み、こくんと頷いた。 「は、いぃぃ?」 満場一致。驚きの声が上がった。 「なんで、よりによってこの人ー?」 責めるような回りの視線に篠岡はにっこり笑って、 「一緒に野球やれば、判るよ」 と、穏やかに答えた。 「そーいう訳で、私をからかうと三橋くんが怒るからね」 そんな風に言われたら、見かけによらず三橋先輩は想像を絶するキレ方をするんじゃないかと、 怖いイメージが膨らんでしまい、それ以上何も言えなくなってしまった。 青ざめながらこくこくと下級生らは頷き、ジャグを運びながら離れて行った。 首をかしげ、チラチラ振り返るその姿を2人で見送りながら、篠岡は満足そうに笑う。 「三橋くん、ありがとう」 「ふ、ひ」 達成感で三橋も興奮していた。 頷いただけだけど、上手くいったのだから、成功だ。 「最初はちょっと驚いちゃったけど……。今日が、4月1日だからだよね?」 篠岡の問いに、嬉しそうに三橋は何度も頷く。 数時間前、田島に「今日午後から雪降るってさ」と小学生のような嘘をつかれ本気で 信じてしまうという、「エイプリルフール」を三橋は初めて経験したのだ。 今日は嘘をついて良い日。だから、三橋もやってみたかった。 でも、嘘は良くない。みんなを騙してしまった。 急に反省して俯く三橋に、心配して篠岡が声をかけた。 「三橋くん、迷惑でしょ。あとで、みんなに訂正しとかないとね」 「うへ」 深く考えずに頷いてしまい、三橋は慌てた。 「しのお、かさん、は」 悪くない。自分さえ嘘をつかなければ、篠岡も嘘をつくことはなかったのだから。 謝りたい気持ちでいっぱいで、三橋は懸命に首を左右に振る。 その様子を見て、篠岡が目を見開いて、三橋を見つめた。 「迷惑じゃ、ないの?」 「……?」 少し間を置いて、三橋は頷いた。 なにについて聞かれたのかは判らなかったが、迷惑をかけたのは自分で、篠岡ではないから。 たっぷり1分ほどそうして緊張まじりにお互いを見ていたが、篠岡がふっと笑顔になったので 三橋はホッとする。 「じゃあ、本当にしちゃおうか?」 「う、ひ?」 会話に頭がついていかない三橋は、ただ篠岡の言葉に頷き、その後で意味を考える。 だから、篠岡が自分に歩み寄り、困ったような顔をして見上げ、ほっぺにキスをされた時も、 一体なにが起こったのか全く理解が出来なかった。 (???) 急激に体温が下がり、冷や汗が流れる。かと思えば、頭が熱くなってぼーっとしてきた。 力が抜けて、へなへなと座り込んでしまう。 「み、三橋くん、大丈夫?」 篠岡もしゃがんで、三橋の顔を覗き込んだ。 「ダイジョウ、ブ……」 条件反射のように、三橋は頷いた。これ以上みっともない自分を見せるのは嫌だから。 三橋は、篠岡は怖くない。 篠岡は三橋にとって、おいしいおにぎりを作ってくれる、ジュースもくれる優しい人だ。 なんとなく、自分の嘘に、忠実に篠岡が合わせてくれたのだということだけは判った。 (い、いい人……) 心の中が、ほんわかと暖かくなる。 そこに、遠くから三橋の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。 「三橋!……って、篠岡まで。マジだったのか」 阿部の顔が引きつっている。それを押しのけるように、田島が叫ぶ。 「しのーかー!三橋と付き合ってるってホントかー?」 その後ろから、他の同級生の興味深そうな顔もちらほらと見えた。 ドリンクを受け取った際に下級生たちから聞かされたのだろう。 「ホントだよー。三橋くんが、嘘つく訳ないでしょー?」 篠岡が答えて、ね、と三橋に笑いかける。 (しのおか、さん、わらってる) 三橋はふひっと、息を吐いた。 じゃあ、きっとそれで良いのだ。驚いたけど、さっきのは、自分もちょっと嬉しかったし。 右手でほっぺのその場所に触れると、篠岡が小声で言った。 「嘘じゃないって証拠に、明日から、三橋くんから出来る?」 三橋は即座に頷いて、その後に意味を考えようとした矢先に田島の声に驚き、思わずそっちを見て、 間違えて阿部と目が合ってしまった。 みんながこっちに来るのが見えて、三橋は思わず立ち上がる。 「あ。テメー、なに逃げよーとしてんだ!」 「みはぁしー、なんで教えてくれなかったんだよーっ」 阿部や田島に捕まり、ウメボシをされたり髪をぐしゃぐしゃにされたりする。 こんなことになったのは、嘘をついたせいだという思いだけはあった。 だから、約束は守らなきゃ、と三橋は心に決める。嘘はよくない。 (あ、した……) 自分から。三橋の心の中で、何かが弾ける。 笑顔の篠岡と目が合って、三橋も思わず笑顔になっていた。
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