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/ . . . . . . . . . . . . . . . . . l. . . . . . . . . . . . . . . . . ヽ. . | l . . . . . . . .l/ ヽ. . . . ./ヽ. . . . . . . . . . . .}. ! 八 . . . . . .ヾ\ |. . / / ハ. . . . . . . . . .|. ヽ /! /. . .ヽ . . . `、ヘハ/;;/;; / ;;}. . . . .| . .', ,. |{ マヽj_; ノ. . . . . . } / . . ヽ . .|. ル、_/ ` `ー'/. . . . . . . ._. /. . .. . / / . . .|. . . . . . .\`ヽ 〉 { {. . . . . . . . . . . . チ≧、,;/ ! . . . . . . . . \ ノ. . 〉 . . \_/ 〉 l . . . . . . . . . . . .ヾ弋ラヽ、, 、 __',. . . __. . . . . . . ヽ \ /{__ ,))_ノ) / / 〉 . . . . . . . ヘ`ニゞ' ハ , ィ弋ラ>、. . . . \八 ゝー' 、 / / \ . . . / /ヽ`  ̄-ー'. . _ ノ } `ヽ 、 ',. / ! /〈 ヽ { ′  ̄フ ̄. . . . . ノヽ、 _ノ \!__ノ ヽ ヘ 八 _ ヽ ノ ´ ヽ/) ヽ ヽ ゝ-' > \l . . . . . . . . \ ` ー -ー _, 〉 __;; 、__ 八ノ / _, ) | /、 r' -─ '´. . . . . . . . . . ヽ / `ヽム ´ ノ ノ ノ / | . . . . . . .ヽ . . . . . . . . . \` -ァ' `ヽ `ヽ,/ / /\ゝー' / | . . . . .\. . . r==/ 、 } / ', ノ /{_ノ /`ヽ \ . . . .} 人rノ ヽィ 、 __ ノ/ / ̄  ̄` ー─ 【商人ギルド幹部 マルチアーノ】
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彼女の休日 ジャニアリーの場合 「ここが「」さんのお宅ですわね」 ある日の早朝、ジャニアリーは「」の家の前に来ていた。 せっかくの休日をたまには違う趣向で楽しむためであり、あわよくば「」との関係をより親密なものとする目的で、 彼女はいつもより早起きしてここまで来たのである。 自分に邪魔立てする者がいないかと、きょろきょろと周りを見回して警戒しつつ、インターホンに近づいていく。 傍から見ると挙動不審すぎて警官から職質されそうなことに関しては、悲しいかな彼女にはその自覚が無い。 大きく深呼吸して、彼女はインターホンを押した。 「……………」 「……あら?」 返ってくるはずの声が無い。 もう一回押してみる。今度も返事が無い。 何度も押してみたものの、結局返事は返ってこなかった。 「おかしいですわね。この前お話したら今日は休日で朝から自宅にいると仰っていらしたのに。……はっ! まさか!?」 疑問が不安が変わった瞬間、彼女の思考がフル回転を始めた。 もしや、「」の身に危険な事態が差し迫っていて、返事ができないのか。 自分の知らぬ間に「」が病気や怪我を患ってしまい、動けなくて困っているのでないだろうか。 もしくは、「」に対して歪んだ感情を持った者が押し込んできて、まだ「」に自分がしたことも無いあーんなことやこーんなことを 「」に強要している真っ最中なのであろうか! 思考がピークに達し、彼女はP-90をその手に取った。 「「」さん! 今助けに参りますわぁぁ!」 両手に構えた2丁のP-90を玄関のドアに向け発射した。 毎分900発の連射で銃口から吐き出された5.7mm×28弾は、数秒でドアを破砕した。 ドアだった物を踏み越えて、ずかずかと家に押し入り、一部屋一部屋をドアを蹴飛ばして「」はいないかと探し回る。 「「」さぁん、何処ですのぉぉ!? 無事でしたら『ジャニアリー、愛しているよ』と言ってくださいまし!」 「あのさ、ジャニアリーさん何してるの?」 「おおぅ! 「」さん何処にいらしたの!?」 「さっきからここにいたけど、こんな朝早くから何か用でもあるの?」 「そのご様子から見ると無事でいらしたのね。よかったですわ!」 「無事も何も今起きたばっかりなんだけど」 「あら?」 それを聞いたジャニアリーは呆気にとられた顔したが、すぐにニヤリと笑い、 「そうですか。ならまだ放送禁止的なことはまだされておりませんのね。なら、ちゅーしますわ。ちゅー」 瞳を閉じて、唇を「」に差し出した。 「できるか!」 「うう、残念ですわ。恋人同士の感動の再開だというのに」 「全く感動しないし、残念じゃないってば」 「そうですの。それより「」さん、本日は休日でしたわよね? なら私と一日付き合ってくださいな」 「まぁ、今日は予定とか無いしなぁ。別に構わないよ」 「ありがとうございます「」さん! では私が特別に朝食を用意して差し上げますわ。早く着替えてきて下さいまし」 どこから取り出したのかエプロンを身につけ、キッチンへ向かったジャニアリーを見つつ、瓦礫にされたドアはどうすればいいんだと 「」は頭を抱えた。 時折、鼻歌を歌いながら喜々とした表情で、ジャニアリーは「」と街の繁華街を歩いていた。 通りに面した様々なブティックで様々な洋服を二人で選んだり、昼過ぎになるまで馴染みの喫茶店で昼食を食べつつ 最近のことを話し合った。 「ジャニアリーさん。今度は一体何処へ行こうか?」 「」の質問に答えるかのように、ジャニアリーは懐から2枚のチケットを取り出した。 そして、そのうちの一枚を「」に手渡す。 書かれた内容に目を通すと、それは最近上映され始めた恋愛物の映画だった。 なかなかの好評らしく、よくCMや広告で見ていたので、その映画には見覚えがあった。 「えーと、もしかしてこの映画を見に行くって事?」 「そうですわ。お母様が余ったチケットを私たちにくれたのですけど、一人で見に行くのも何ですので「」さんと見に行こうと 思い立ったのですわ」 「ふぅん、マルチアーノさんがねぇ」 「ええ、もうあまり上映まで時間が無さそうですし、少し急ぎましょうか」 ジャニアリーは「」の手をとり、小走り程度の速さで映画館へと向かった。 しかし、ジャニアリーが引っ張っている形のため、彼女には見えていないだろうが常人を超える握力で「」の手を握っているため、 「」が苦悶に満ちた顔をしているのことに気がついていない。 「」の顔を見た周りの通行人の反応にも、もちろん気がついてない。 休日にもかかわらず、その映画館には客があまりいなかった。 上映する少し前についた二人は、ちょうど中央付近の席に並んで座った。 恋愛物の映画ということもあってか、周りを見ると客の大半がカップルらしい。 映画が始まるとジャニアリーは無言でスクリーンを見つめていた。 移り変わるシーンによって表情がころころ変わったり、登場人物の台詞に共感するのがあったのかうんうん頷いたりと、 横から見てると結構面白い。 映画の方は、なかなかの先が読めない展開だったり、所々に伏線が張ってあったりと「」でも面白いと言えるものだった。 ふと何気なく肘掛に乗せた手に暖かな何かが触れた。 何だと思い暗がりの中でよく見ると、自分の手にジャニアリーの手が重ねられていた。 驚いてジャニアリーを見ると、顔を赤らめて俯いている。 「駄目ですの?」 「ううん。全然」 映画はクライマックスに近づいてくると、今度は指を絡めてきた。手から伝わる暖かさが心地よい。 結局、肝心のクライマックスは全く頭に入ってこないまま、映画は終わってしまった。 空はすっかり暗くなり、二人は家路をのんびり歩いていた。 「なんか、今日はあっという間だったね」 「そうですの? 私はとても充実した一日でしたわよ」 「あはは、それはよかったね」 「ええ、そしてこれからもずっと続いてゆきますわ」 「え?」 意味深な言葉を残しジャニアリーは「」と別れ、自分の家へと帰っていった。 あの笑みの意味は何なのか考えているうちに家の前に付いた。しかし何故か、マルチアーノと12姉妹の面々がそこに立っている。 「マルチアーノさん、こんなところでどうしたんですか?」 「貴方、最近家にいても狭いし一人で寂しいとぼやいていたわね」 「ええ、そうですけど」 「つまり、広くてたくさん人がいればいいのね」 それだけいうとマルチアーノと12姉妹はニヤリと笑った。 「我が家に来なさい「」。つか、来い」 「ちょ、何でまた……ウギャ!」 反論する暇もなく「」の意識はフェードアウトしていった。背後には刀を持ったジュライの姿。 早朝からジャニアリーが「」を連れ出していったのは、うれしい誤算だった。 おかげで「」の知らぬ間に、家財道具をマルチアーノ家に運び出しておくことが出来たのだ。 これで12姉妹が少しは幸せになるのなら安いものだ。全ては私の計画通り。 マルチアーノがにやけている後ろで、12姉妹が誰が「」と一緒の部屋になる権利を得るか延々と言い争っていた。
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彼女の休日 ジャニアリーの場合 「ここが「」さんのお宅ですわね」 ある日の早朝、ジャニアリーは「」の家の前に来ていた。 せっかくの休日をたまには違う趣向で楽しむためであり、あわよくば「」との関係をより親密なものとする目的で、 彼女はいつもより早起きしてここまで来たのである。 自分に邪魔立てする者がいないかと、きょろきょろと周りを見回して警戒しつつ、インターホンに近づいていく。 傍から見ると挙動不審すぎて警官から職質されそうなことに関しては、悲しいかな彼女にはその自覚が無い。 大きく深呼吸して、彼女はインターホンを押した。 「……………」 「……あら?」 返ってくるはずの声が無い。 もう一回押してみる。今度も返事が無い。 何度も押してみたものの、結局返事は返ってこなかった。 「おかしいですわね。この前お話したら今日は休日で朝から自宅にいると仰っていらしたのに。……はっ! まさか!?」 疑問が不安が変わった瞬間、彼女の思考がフル回転を始めた。 もしや、「」の身に危険な事態が差し迫っていて、返事ができないのか。 自分の知らぬ間に「」が病気や怪我を患ってしまい、動けなくて困っているのでないだろうか。 もしくは、「」に対して歪んだ感情を持った者が押し込んできて、まだ「」に自分がしたことも無いあーんなことやこーんなことを 「」に強要している真っ最中なのであろうか! 思考がピークに達し、彼女はP-90をその手に取った。 「「」さん! 今助けに参りますわぁぁ!」 両手に構えた2丁のP-90を玄関のドアに向け発射した。 毎分900発の連射で銃口から吐き出された5.7mm×28弾は、数秒でドアを破砕した。 ドアだった物を踏み越えて、ずかずかと家に押し入り、一部屋一部屋をドアを蹴飛ばして「」はいないかと探し回る。 「「」さぁん、何処ですのぉぉ!? 無事でしたら『ジャニアリー、愛しているよ』と言ってくださいまし!」 「あのさ、ジャニアリーさん何してるの?」 「おおぅ! 「」さん何処にいらしたの!?」 「さっきからここにいたけど、こんな朝早くから何か用でもあるの?」 「そのご様子から見ると無事でいらしたのね。よかったですわ!」 「無事も何も今起きたばっかりなんだけど」 「あら?」 それを聞いたジャニアリーは呆気にとられた顔したが、すぐにニヤリと笑い、 「そうですか。ならまだ放送禁止的なことはまだされておりませんのね。なら、ちゅーしますわ。ちゅー」 瞳を閉じて、唇を「」に差し出した。 「できるか!」 「うう、残念ですわ。恋人同士の感動の再開だというのに」 「全く感動しないし、残念じゃないってば」 「そうですの。それより「」さん、本日は休日でしたわよね? なら私と一日付き合ってくださいな」 「まぁ、今日は予定とか無いしなぁ。別に構わないよ」 「ありがとうございます「」さん! では私が特別に朝食を用意して差し上げますわ。早く着替えてきて下さいまし」 どこから取り出したのかエプロンを身につけ、キッチンへ向かったジャニアリーを見つつ、瓦礫にされたドアはどうすればいいんだと 「」は頭を抱えた。 時折、鼻歌を歌いながら喜々とした表情で、ジャニアリーは「」と街の繁華街を歩いていた。 通りに面した様々なブティックで様々な洋服を二人で選んだり、昼過ぎになるまで馴染みの喫茶店で昼食を食べつつ 最近のことを話し合った。 「ジャニアリーさん。今度は一体何処へ行こうか?」 「」の質問に答えるかのように、ジャニアリーは懐から2枚のチケットを取り出した。 そして、そのうちの一枚を「」に手渡す。 書かれた内容に目を通すと、それは最近上映され始めた恋愛物の映画だった。 なかなかの好評らしく、よくCMや広告で見ていたので、その映画には見覚えがあった。 「えーと、もしかしてこの映画を見に行くって事?」 「そうですわ。お母様が余ったチケットを私たちにくれたのですけど、一人で見に行くのも何ですので「」さんと見に行こうと 思い立ったのですわ」 「ふぅん、マルチアーノさんがねぇ」 「ええ、もうあまり上映まで時間が無さそうですし、少し急ぎましょうか」 ジャニアリーは「」の手をとり、小走り程度の速さで映画館へと向かった。 しかし、ジャニアリーが引っ張っている形のため、彼女には見えていないだろうが常人を超える握力で「」の手を握っているため、 「」が苦悶に満ちた顔をしているのことに気がついていない。 「」の顔を見た周りの通行人の反応にも、もちろん気がついてない。 休日にもかかわらず、その映画館には客があまりいなかった。 上映する少し前についた二人は、ちょうど中央付近の席に並んで座った。 恋愛物の映画ということもあってか、周りを見ると客の大半がカップルらしい。 映画が始まるとジャニアリーは無言でスクリーンを見つめていた。 移り変わるシーンによって表情がころころ変わったり、登場人物の台詞に共感するのがあったのかうんうん頷いたりと、 横から見てると結構面白い。 映画の方は、なかなかの先が読めない展開だったり、所々に伏線が張ってあったりと「」でも面白いと言えるものだった。 ふと何気なく肘掛に乗せた手に暖かな何かが触れた。 何だと思い暗がりの中でよく見ると、自分の手にジャニアリーの手が重ねられていた。 驚いてジャニアリーを見ると、顔を赤らめて俯いている。 「駄目ですの?」 「ううん。全然」 映画はクライマックスに近づいてくると、今度は指を絡めてきた。手から伝わる暖かさが心地よい。 結局、肝心のクライマックスは全く頭に入ってこないまま、映画は終わってしまった。 空はすっかり暗くなり、二人は家路をのんびり歩いていた。 「なんか、今日はあっという間だったね」 「そうですの? 私はとても充実した一日でしたわよ」 「あはは、それはよかったね」 「ええ、そしてこれからもずっと続いてゆきますわ」 「え?」 意味深な言葉を残しジャニアリーは「」と別れ、自分の家へと帰っていった。 あの笑みの意味は何なのか考えているうちに家の前に付いた。しかし何故か、マルチアーノと12姉妹の面々がそこに立っている。 「マルチアーノさん、こんなところでどうしたんですか?」 「貴方、最近家にいても狭いし一人で寂しいとぼやいていたわね」 「ええ、そうですけど」 「つまり、広くてたくさん人がいればいいのね」 それだけいうとマルチアーノと12姉妹はニヤリと笑った。 「我が家に来なさい「」。つか、来い」 「ちょ、何でまた……ウギャ!」 反論する暇もなく「」の意識はフェードアウトしていった。背後には刀を持ったジュライの姿。 早朝からジャニアリーが「」を連れ出していったのは、うれしい誤算だった。 おかげで「」の知らぬ間に、家財道具をマルチアーノ家に運び出しておくことが出来たのだ。 これで12姉妹が少しは幸せになるのなら安いものだ。全ては私の計画通り。 マルチアーノがにやけている後ろで、12姉妹が誰が「」と一緒の部屋になる権利を得るか延々と言い争っていた。
https://w.atwiki.jp/coyote/pages/94.html
フェブラリーが日記をつけていたことはマーチは知っていた、だが実物を見るのは初めてだ。 日記はフェブラリーの部屋の机の上に堂々と置いてあった。 3月「…さて…どうしよ」 ざっと読み終わりこれからのことを考える。もちろんこの日記をどうするか、だ。 しばらく思案していたマーチだったが、突然ハッとなって部屋の扉を開けた。廊下に誰もいないことを確認すると部屋に戻り、今度は中を念入りに調べ始める。カメラが仕掛けられてないことを確認して安堵するマーチ。 3月「…どっきりじゃ、ない…っと」 日記はフェブラリーがしまい忘れたと思ってよさそうだ。 マーチは正確に元の位置に戻すとそっと部屋を出た。 ミスター一味に敗北した後12姉妹とニルソンはグレイスランドを発ち、かつてマルチアーノが生まれた星に住んでいる。 ギルド兵は全滅し、ギルドからも見放された12姉妹の生活は当初騒々しかった。 ジュライはカフェで働いたし、メイはペットの散歩のアルバイトをやった。民間の警備会社に売り込みに行って断られたりもした。 色々な仕事を経て、現在12姉妹は コヨーテになっていた。 4月「お疲れ様、さすがに豪華客船4件はしごは疲れたわね」 年末「「「全然!すっごい楽しかったよー!」」」 1月「銃を撃って大金手に入るなら、初めからからこれをやればよかったんですわ」 5月「にゃはははは、一度やるとやめられない「こ」何とかってコヨーテのことだったんだな!」 6月「もう…みんなお気楽、私お母様の仇と同じ職業だというのは…」 9月「そうですよ、ギルド抜けたらおだやかな暮らしになると思ってましたのに」 7月「まあまあ、あまり戦闘から離れても体がなまってしまいますわ♪」 8月「わぁ!、今日の『日刊コヨーテ』、女性部門、非人間部門、ゴスロリ部門、あたしたち人気1位だって」 2月「『ウィークリー刑務所』襲撃されたいコヨーテ1位、『蟲月報』蟲が選ぶ今一番輝いている人間1位…もてもてね」 元ギルドの武装アンドロイドたちが、コヨーテたちの中で一目おかれる存在になるのには時間はかからなかった。 その強力な戦闘力はすぐに恐怖の的になり、保険会社は12姉妹の被害は保険適用外にしようかと検討している。 一部のコヨーテはアンドロイドはずるいと主張したが、もともとコヨーテは狼の名前で人間が名乗っているんだからアンドロイドが名乗っても別にかまわんだろうということになった。 姉妹が盛り上がっている中、マーチは日記のことを考えていた。 日めくりカレンダーにしてリビングに飾ろうか…、朗読をビデオに撮ってみんなに見せるというのはどうだろう…。 フェブラリーの、してやられたましたわっという顔を想像するとマーチはいたずら心を抑えることができなかった。 4月「そうそう次のターゲットは現金輸送艦なんだけど、スペーステレビから襲撃の様子を生中継したいって申し出があったの」 6月「ええっ!?」 5月「生中継って放送できるのか!?」 4月「わたくしも視聴率のためにここまでするなんて驚きましたわ」 8月「出たい出たい!エイプリルお願い~」 4月「はいはい、ニルソン様の了解がとれたらね」 マーチのCPUが急速に働き出した。 日記とテレビ、日記とマスコミ、日記と生中継… もはやこの日記をどれだけおおごとにさせるかに考えが変わっている。 後にマーチはこのときの自分をこう振り返っている。 3月「…興奮しすぎた」 そして生中継当日。 2月「あら、マーチは?」 8月「今日は休むって、風邪って言ってた」 4月「…突っ込むべきなのかしら。まあいいわ、オクト、ノヴェ、ディッセ、今日はマーチの代わりにフェブの護衛お願い」 年末「「「は~い」」」 7月「みんな~、テレビのスタッフがこれつけて、だって~」 5月「何だこれ?犬耳か?」 7月「犬耳じゃな~い、コヨーテよ♪ わぉん♪わぉん♪」 1月「…まさかこれつけて襲撃しますの?」 9月「ああもう、自爆したいわ…」 4月「お願い我慢して…、スポンサーのロゴを背中に張られるのを妥協してもらったのよ…」 現金輸送艦の襲撃はカメラクルーを引き連れて行われた。 まずブリッジを急襲、外部への連絡をたった後各ブロックの警備兵を撃破。 当初、付け耳を頭に載せた少女たちがテレビを従えてやってくる姿に戸惑っていた警備兵だったが、12姉妹だとわかると次々投降していく。彼らのハンドガンでは12姉妹の鋼鉄の体には焼け石に水だ。 艦内をあらかた制圧した頃、全員にフェブラリーから艦長が今回の目的である巨大金庫に立て篭もっていると集合をかける連絡が入る。 巨大金庫は見るからに頑丈で、さすがに手持ちの火器では壊すのが大変そうだ。 5月「どうしようかエイプリル、面倒くさいし金庫ごと持って帰ろうか」 4月「あまり大掛かりなことはしたくないわね。わたくしが話をしてみますわ、あー艦長さん艦長さんおとなしく出てきてくださいな」 艦長「嫌だあああ、出るもんかあああ」 4月「嫌だとおっしゃるなら、その扉無理矢理ぶっ壊して差し上げますわ」 艦長「やめろおおお、こっちには12姉妹の日記があるんだぞおおお」 4月「…日記?」 艦長「フェブラリーとかいう奴のだあああ、読むぞ、今ここで読むぞおおお」 2月「う、嘘よ!」 艦長「昨日マーチと名乗る女にもらったんだあああ」 ざわっ…っとした空気が12姉妹を包む。 姉妹しか知らないはずの日記、マーチの『風邪』、誰もが艦長の持っている日記が本物だと確信した。 そしてその雰囲気は金庫の中にいる艦長にも伝わったようだ。 艦長「読まれたくなければこのまま引き上げろおおお」 6月「…さて、どうしよう…」 1月「マーチはあとでおしおきだとして、このまま帰るのは癪ですわね」 2月「え!?そんな私の日記!今、生中継なんですよ!」 7月「ここで引き上げたら日記が取り戻せませんわ~」 4月「…決まりね、全員最大火力!できるだけ早くあの金庫をぶっ壊しますわよ!」 年末「「「らじゃー!」 ババババババババババッガンガンガンガンガガガガガガガガガガダダダダダダダダ 艦長「#月×日、カールをいつもより一本増やしてみた。誰も気づいてくれない。私は12姉妹で一番影の薄い女フェブラリー」 2月「やめてえええええええええ!!」 8月「ご、ごめんなさい、次は絶対気づくから…」 2月「いいから!そんなのいいから、早く!」 ドドドドドドガガガガガガガガガッバンバンバンガリガリガリガリガリガリガリリ 艦長「#月■日、来週は私の誕生日。プレゼントが気になってみんなの記憶領域をこっそりスキャン。はい懺悔です、ごめんなさい」 5月「フェーブ!」 9月「勝手に記憶読まないでくださいってお願いしたじゃないですか」 2月「ごめんなさい!ごめんなさい!」 ズズズズズズズズズバリバリバリバリバリドンドンドンドンドドドドドドドドドド 艦長「#月△日、いっちゃなんだけど影のリーダーは私よね。私がいなきゃ何もできないんだから、ほんと駄目な姉妹だわ」 2月「!? そんなこと書いてない! あっまさか…マーチの奴!」 バババババドタドタドタドタバシュバシュガガガガガ・・・・・・・・ その頃マーチはニルソンと一緒にソファに座りながらテレビで一部始終を見ていた。 呆れかえっているニルソンの横で、マーチは「支配者ってこんな気分なのかな」なんてことを考えていた。 2月「…ああもう、してやられましたわ…」 5月「してやられたってさ、マーチ」 3月「…その言葉が聞きたかった…満足」 生中継の襲撃は一応大成功だった。 視聴率は20パーセントを超え、すでに次回のオファーがきている。 インターネットでは「耳つけたコヨーテなんていねーよ、あれはやらせ」とか「フェブラリーはむしろカールがないほうがいいだろ」など 話題独占だ。 4月「ま、まあ読まれたのが1/5で済んでよかったじゃない」 2月「ええ…被害が私の人生の1/5を読み上げられただけで本当によかったわ…本当に…」 あれからマーチはフェブラリーに日記の角でぼこぼこにされた挙句、今は首だけにされてメイの鳥かごに入れられている。 フェブラリーは当分マーチの観察日記をかいてやろうと決めた。 8月「ねぇ今月の『蟲月報』蟲が選ぶ今一番日記を読みたい人間、フェブが1位だって」 3月「もてもてね…」 フェブラリーは無言で鳥かごをシェイクした。 END
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彼女の休日 セプの場合 夢。夢を見ている。 自分で誰かと笑いあっている。 空は白い雲と青い空以外に何も無く、周りには草原が広がり人の姿は全く見えない。 一緒にいるのは男性のようだ。顔はぼんやりとしていてよく見えないが、何故か自分は彼に思慕の念を抱いていて、 今がとても幸せに満ち足りているのが実感できる。 彼が自分の肩をとって引き寄せた。左手が自分の手と繋がれ、右手で頬に手を添え、甘い言葉を投げかける。 それら全てが全身を熱くする。吸い寄せられるように彼を見つめ、形のよい唇を彼に差し出す。 ゆっくりと視界が暗くなっていき、唇に甘い感触が触れようとした瞬間――― パチリと目が覚まされ、セプは現実に連れ戻された。 彼女はベッドの中で小さくため息をついた。せっかくいい所だったのに、絶頂に達する直前に起きてしまうとは。 そこでふと違和感を感じた。何かの気配がするといってもいい、背後に何かいる。 まさかねと思いつつ、反対側へ寝返りをすると、 「すぅ……すぅ……」 毛布で簀巻きにされた「」が目の前にいた。 しかも、あと5センチ前に出ればキスできてしまうほどの近さで。 「……うう、むにゃぁ、あ?」 自分に気がついて「」が起きてしまった。寝ぼけているのかセプの顔をじっと見つめる。 彼の瞳に驚愕した自分の顔が映る。 「ひ、ひ、ひぇ、ひえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 午前7時15分、マルチアーノ家にセプの絶叫が響き渡った。 マルチアーノ家の食堂ではマルチアーノと姉妹達、そして「」が朝食を食べていた。 セプは起きた時からずっと顔を真っ赤にして、「」は顔に赤い手の痕が残っている。 「いや~、まさかあんな大声出すとは思わなかったよ」 「ここまでいいリアクションは予想外」 今朝のベッドの悪戯の首謀者は、メイとマーチだった。 昨晩、「」を毛布で寝ている間に簀巻きにして、起きた時にびっくりさせようというのが本来の目的だった。 しかし、マーチがセプは就寝時には手元にあるものを抱きしめてしまう癖を思い出したのが事の元凶である。 潜入作戦よろしく「」をセプの部屋へと搬送し、ベッドの中へ潜り込ませたのだった。 二人はそれだけに飽き足らず、あろうことかセプが簀巻きの「」を抱きしめている現場をデジカメで撮影し、 戦利品と称して現像したのだった。 そして朝を迎え、セプは強烈な目覚めに絶叫を轟かし、羞恥心のあまり「」に鉄槌のようなびんたを食らわせた。 騒ぎによって次々と起きだした姉妹達にメイとマーチは早速戦利品を見せ、セプと「」のありもしない話を聞かせた。 それを見たエイプリルとジャニアリーは激しく憤怒し、オーガストや年末組はセプを羨ましがった。 マルチアーノとニルソンに関しては『二人とも若いっていいわね。でもホドホドにしておきない』、『仲人は私でいいかね?』と コメントを残す始末であった。 こうして、二人のドッキリ大作戦は成功したのである。 当のセプはというと、朝食を食べているときでさえ恥ずかしさのあまり何も考えられなくなってしまっていた。 悪戯とはいえ、同じベッドで男性と一晩を過ごした上に、抱きついてしまったのだ。 否定しようにも二人の戦利品がはっきりとした物的証拠として残っているので、否定しようが無い。 12姉妹の中でも一番の貞操観念を持っていると密かに自負している身としては、非常にゆゆしい事態であった。 向かいの席には「」が座らせられ、嫌でも目が合ってしまう。 そのせいで夢の内容で見た男性が「」に被ってしまい恥ずかしさ倍増である。 「うう、言えない。こんなことは誰にも言えない―――」 「セプ? 聞いてるのセプ?」 「ひゃいぃ! 何でしょうかお母様!」 「今日は皆いろいろと用事があって家にいないのよ。二人で留守番してるのもあれですから、「」と町外れの自然公園に いってみたらどうかしら? 今日は天気もいいし、ピクニックみたいできっと楽しいはずだわ」 「ええ!? そんないきなり言われても」 「あら、二人の仲なんだし構わないでしょう。私は二人の仲には賛成よ」 「誤解です! 誤解なんですってばお母様ぁぁ!」 セプの弁解も空しく、本日の予定は「」との楽しいピクニックに決まってしまった。 町外れにある広大な自然公園は、木々が生い茂りぽつぽつと色づき始めていた。 あたりに人影は無く、小鳥があちこちでさえずっている。 そんな中で「」とセプは林道を並んで歩いていた。セプの両手には昼食が入ったバスケットが握られている。 「ここがこんなにいい場所なんて知らなかった」 「そうね、景色は綺麗だし空気も美味しい。これはお母様に感謝しないといけないかも」 二人は自然公園の自然環境に感嘆しつつ、談笑を交えて進んでいるとしばらくして、周りが開けた草原に出た。 中央は小高い丘になっており、心地よい風が吹き抜けている。 「「」さん。お腹も減ってきたことだし、お昼ご飯はあそこで食べない?」 「そうだね。そうしようか」 丘の頂上で「」がシートを広げ、セプのその上にバスケットの中身を広げる。 二人は昼食を前に並んで座り込んだ。そこはとても見晴らしがよく遠くの山々が見渡せる。 今日の昼食のメニューは、サンドイッチだった。中身は様々でバリエーションも量も多い。 「うわぁ、凄い量だな。これ全部セプが作ったの?」 「うん。こういうのあまり作る機会とか無くて、つい頑張っちゃった」 「じゃあ早速いただきま~す」 「……どう? 美味しい?」 「…………やばい」 「」の感想にセプは表情を曇らせた。 自信作だったのに失敗してしまったのか。自分は不味い物を食わせてしまったのかと不安が襲う。 「……美味すぎるよセプ。最高だ」 「へ?」 「もっと食べていい? こんな美味いの初めてだ」 「ど、どうぞどうぞ」 「いやぁ、こんな美味しいのが作れるなんてセプはいいお嫁さんになれるな」 「あはは、なら「」の……んになりたいな」 「ん? 何か言った?」 「ううん、何でもない」 その後、「」とセプは面白おかしく話をしながら昼食の時間を楽しんだ。 「」が料理の腕を褒めてくれた事にセプは、とても満足していた。冷蔵庫の余り物で作った急ごしらえのサンドイッチとはいえ、 こんなに美味しそうに食べてくれたのは「」が初めてだった。 今度、また彼のために腕を奮って作ってみようかと思った。 しかし、そこでふと今朝のことを思い出した。「」が悪いわけでもないのにびんたをしてしまったのだった。 何かの形で彼に謝罪をしないといけない。 「あの、「」さん。今朝は顔を引っ叩いてごめんなさい。お詫びとして私が何か出来ることはない?」 「うーん、じゃあキスして」 「ええええええええええ!?」 「冗談だよ冗談。じゃあ膝枕をしてもらおうかな」 「は、はい。それくらいなら構わないけど」 「」は座りなおしたセプの太ももに頭を乗せた。セプが「」を見下ろす感じで見ているのだが、まんざらでもなさそうだ。 その眼差しはどこか優しく暖かい。 そして、何気なく「」の頭に手を乗せて優しく撫でた。 「なんか、いいなあセプの膝枕。柔らかくて暖かくて気持ちいい」 「わわ! 頭スリスリしないでぇ! くすぐったいわよ」 「たまらない、これは天国かなぁ………何か、眠くなってきた」 「ちょ、寝ないでよぉ!」 「………すぅ………すぅ………」 「ふふふ、まぁいっか。これはこれでいいものだし」 「………すぅ………すぅ………」 「本当はキスしても、良かったのにな」 二人は日が沈みかけた頃にマルチアーノ家に帰ってきた。 家には既に皆が帰ってきており、夕食前の団欒を思い思いに楽しんでいる真っ最中であった。 「二人ともおかえりなさい」 「ただいま、エイプリルさん」 「セプ、「」さんとは何もやましい事はなかったですわよね?」 「さぁ、どうかなぁ。あはは」 「何ですの? その勝ち誇ったような笑いは」 ふふふと笑みを浮かべ、セプはエイプリルの耳元で小さくつぶやいた。 「エイプリル。いくら貴方でも「」さんは渡さないわよ」 「な、なな何ですってぇぇ!? セプゥゥゥ、ぶっ壊して差し上げましょうかぁぁ!」 エイプリルの大声に反応し姉妹達が集まってくる。皆、意味深な笑みのセプと激昂したエイプリル。慌てふためく「」の姿に 興味津々のようだ。 「これは一体何事?」 「マーチ、あんた何かした?」 「何これ?」 「まるで昼ドラだわ」 「エイプリル、どうしましたの? 騒がしいですわよ」 「あらあら、元気ねぇ。うふふ」 「みんな仲良く……」 「「「みんな仲良く~!」」」 「我が家はいつも賑やかね」 「それで私は何時になったら仲人をすれば良いのかね?」
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4月 CV. 生天目仁美 公式設定 マルチアーノ12姉妹の第1世代アンドロイド 黒髪ロングの12姉妹リーダー 武器はゴールドのルガーP08 「死の天使」のリーダー。冷静、冷徹を装っているが隠れた激情家。 (コミック1巻 巻末資料より) エイプリル→(ゆずる気はない)→ジャニアリー エイプリル←(ライバル)←ジャニアリー エイプリル→(親友だけど時々うるさい)→メイ エイプリル←(ほっとけない親友)←メイ エイプリル→(扱いづらい)→ジュライ エイプリル←(いちおう、従います)←ジュライ エイプリル→(悪い気はしない)→オーガスト エイプリル←(好き!)←オーガスト エイプリル→(尊敬・心酔)→マルチアーノ (コミック2巻 巻末相関図より) クリミナルギルド「死の天使」のリーダー。マルチアーノから譲り受けた「ルガーP08カスタム」を持つ。戦闘では前に出ず、後方での支持がメイン。冷静、冷徹を装っているが隠れた激情家。戦闘力は彼女達の中では中程度。覚醒能力ありか? (DVD5巻ブックレット 落書きイメージ集part6. キャラクター性格設定より) ※初期設定らしく、本編と異なる可能性がある キャラデザの発注をうけて、最初に書いたのがこのエイプリルです。頭ン中にあったのをそのまま出した感じです。昔から妄想で、リーダーは黒髪に赤い瞳というのをやりたかったのでいい機会でした。 エイプリル(仮)17才くらいと設定画に書き込みあり (DVD5巻ブックレット 落書きイメージ集part1. キャラクターデザイン須藤友徳氏のコメントより 口紅あり (DVD5巻ブックレット 設定資料集より) コミック版設定 マルチアーノと肉体関係?半裸でダブルベッドに… (コミック3巻より) 大気圏突入可能なフライトユニット(キャノン、レーザー?柄つき手榴弾あり)を装備可能。胸アーマーにはハートマーク (コミック3巻より) スラム時代のマルチアーノの仲間ベスがモデル。外見だけ真似たか生体部品を使っているかは不明だが、コミック版でセプがミスターに「化顔面だけは人間の様だな」と言われている。また、マルチアーノが「心…そんなものを貴女達に鋳れた覚えはないわ…鋳れたくとも私にはできないことよ」と言ってることから、知能は人工的なものと推察される。 (コミック1,2,3巻より) 二次裏設定
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マルチアーノの命令に絶対服従である12姉妹でも、彼女たちの間では微妙な感情が動いている。 特に、わがままお嬢様たちを一人で世話しているセプの苦労は計り知れない。 ―――――― フェブラリー ○月×日 ああお母様、どうして一騎打ちをなさったの? あの時何が何でも止めるべきでした、ギルドシップに乗ったときセプのことを思い出したのに・・・ 今日はマルチアーノ一家で一番悲しい日。 3月「エイプリル、お母様の破片全部拾った…」 4月「お疲れ様、みんなの様子はどう?」 2月「まだショックが残っているようです・・・、さっきまでジュライがお母様を殺したのは自分だ、って泣いてましたわ」 1月「ジュライったら戦闘が始まると記憶が飛んで敵味方関係なしに斬りますから。ミスターにやられたと何回言っても信じなくて」 8月「記憶が飛ぶ!?、敵味方関係なし!?」 4月「血が怖いから目を閉じて斬ってたら無意識に戦えるようになったらしいわ。コンビを組んでいるジューンには内緒よ」 8月「(ジュライ、本当につぶっていたんだ…)」 ○月△日 お母様が亡くなりギルド兵は全滅、ギルドにも戻れず我々にあるのはこの艦だけ、状況はどん底です。 今、これからのことをニルソン様とエイプリルが話し合っています。 でもみんなの顔には少しずつ笑顔が戻り、艦内もにぎやかになってきました。 5月「あの女検察官すごい食べっぷりでさ、見ているあたしまで食欲わいてくるんだ機械の体なのに」 3月「捕まってた時の5月かわいかった…、あの鳥かご頂戴」 年末「「「あーん、お土産ないの~?」」」 7月「じゃ~ん。アンジェリカさんがね~、桃がだ~いすきな妹がいるってメイから聞きましたからこれどうぞ~って♪」 年末「「「わーい!」」」 5月「そうそうもう一人の警官はあたしら褒めてたよ、12人も姉妹がいて羨ましいですとか、お母様の趣味がいいんですねとか」 10月「(なにこれ、めちゃくちゃおいしい)」 11月「(これが桃のババロア!)」 12月「(もう桃缶なんて食べられないよぉ)」 ○月□日 ニルソン様の提案によるとお母様が生まれた星が近くにあり、そこにお墓を立ててみんなで一緒に暮らそうとのこと。 もちろん全員大賛成。 ただワープゲートは閉鎖されているので近いといっても数ヶ月はかかるとか。 せまい艦内、かしましい12姉妹だけで暮らしていけるかちょっと心配です。 3月「やぁ…、兄くん…」 6月「…私を兄と呼ぶのは構わないんだけど、その…」 2月「…」 6月「兄を『兄くん』と呼ぶ人なんていないわよ、マーチ。それ一体どういうセンスなの?」 3月「…言ってしまったね、兄くん。その言葉だけは聞きたくなかったよ…。」 6月「え、怒ってる!? だって変じゃない!呼ぶならせめてお兄様、とか!」 3月「…お兄様?やっぱり兄くんは私よりあの女のほうが…!」 2月「(マーチ、ノリノリね)」 3月「見えるよ、兄くん…。兄くんの背後に微笑んでいる女の姿が…、次の戦闘は気をつけたほうがいい、死相がでている…」 6月「ジュライと私のコンビは無敵ですのでご心配なく」 3月「ふふふ…、また来世…」 2月「ちなみに3月は千影さんの誕生月なのです」 ×月☆日 最近みんな家事に飽きて私がほとんどやってます。 もう目の回る忙しさ。 セプはこれをずっと一人でやっていたんですね。 3月「…セプ、天国で喜んでるね。もう働かなくていいって…」 1月「いーえ、優しい子ですもの。フェブに任せっきりできっと心を痛めていますわ」 4月「ん~いい香り、フェブ紅茶もう一杯もらおうかしら」 2月「みんなみんな…、私が金属(勤続)疲労で死んだら化けて出てやるから!」 4月「ふふっ、でもフェブって人の世話を焼くの嫌いじゃないでしょ♪」 8月「セプを手伝っていたの大抵フェブだもんね~」 2月「全く炊事洗濯掃除お仕事人生相談くまなくこなしたセプには頭下がるわ…」 1月「セ『ブ』、どの子がオクトでしったけ?全然見分けつきませんわ」 10月「セ『ブ』、セ『ブ』、どっちがディッセなの?全然わからないよー」 2月「セ『ブ』って呼ばないでください!大体セプじゃないんだから何でもかんでも言われても困りますってば!」 7月「あのねあのねぇ、今夜添い寝して欲しいな~?セ・『ブ』♪」 2月「……………なんですって?」 7月「セ、セプはしてくれたのよ、本当よ~」 ×月◎日 ジャニアリー あ な た が 持 っ て い た の ね 1月「ちょっとあなたたち!昨日ジュライを問いただしたら、みんなセプと寝てたんですって!?」 8月「うん」 3月「…たまに」 4月「い、一度だけ」 1月「…行儀の悪いお嬢様たちですわね!たっぷりとお仕置きしてさしあげますから覚悟しなさい!」 7月「ああん、ジャニったら脱獄した時のミスターみたいに生き生きとして♪セプがいた頃を思い出すわ~」 5月「セプ本当に死んじゃったんだな…、あたしがRPG食らったときは顔だけは傷一つつかなかったのに」 4月「それが頭部は無傷だったのだけれど…」 6月「なぜかメインコンピュータのキーであるヘッドドレスだけが、どうしても見つからなかったの」 8月「はぁ、あれさえあればすぐに生き返らせられるのにー」 1月「…………」 5月「ヘッドドレスがないんじゃ無理なわけだ、くそっ!」 1月「…その、聞いて欲しいことがあるんです…、絶対に怒らないって約束して…」 ×月◇日 復活12姉妹! セプの体は順調に直っているそうです。直ったらもう家事しなくていいのかな? そう考えるとちょっと寂しいです。やっぱり世話を焼くのが好きなのかもしれません。 また一緒に厨房に立つのが楽しみです。 5月「ジャニこっちこっち」 1月「全員集まって何かありますの?わたくし申し訳なくて…みんなとあわせる顔がないから…だから…」 年末「「「ずっと落ち込んでいるから心配してたんだよ~、だからジャニを励ましてあげるの」」」 2月「お母様の部屋を整理してたらサンドウィル刑務所襲撃の様子を撮影したビデオが出てきましたの。見たら元気が出ると思いますわ」 3月「あたしのとなりで一緒に見よ…、ポンコツ」 6月「マーチっ」 1月「いいんですわ、わたくしはだめな女ですもの…」 8月「はじまるよー」 『ダンッ、チャラララララララ、チャララララララララ~(輪になって降下中)』 4月「BGMついてるわ…」 5月「編集も気合入っているし…、かっこいいぞ!」 7月「これ誰がどうやって撮影したのかしら~」 『1月「うふ♪」ババババババババババババ…』 4月「やっぱり1番手はジャニアリーね」 年末「「「ジャニ、わっるい顔~♪」」」 1月「おほほっ♪」 『8月「えいっ、えいっ」』 8月「あたし全然迫力ないなぁ…」 1月「心配無用よ、金髪にだめな子はいませんもの。オーガストはわたくしに似ているから将来美人になりますわ」 4月「すぐ調子に乗るんだから、ばか…」 『カチ、カチャン 3月「フン」バババババババババババ…』 年末「「「マーチが笑ったとこ見てみたいな~」」」 3月「…」 6月「マーチさんがつ(三月)まらなそうにしている」 5月「ジューン、無理すんな…」 3月「…………………にこっ♪」 『タン、タンッ 9月「フフッ」』 8月「きゃあ!?」 1月「マーチが微笑んでますわ!」 4月「お顔がぶっ壊れてますわよ、マーチ!」 3月「にこにこ♪」 2月「速攻でジュライとLANをつなげて表情モジュールを入れ替えてみましたの、いかがでしょうか」 5月「おい…無表情のジュライがはまりすぎておっかないんだが…」 『ザンッ 7月「んふ♪」』 バタッ 6月「ジュ、ジュライ!?」 『爆発を背景に4月が降り立つ』 5月「…見ちゃったな」 1月「ええ、ばっちり見ていましたわ」 6月「え、え?」 4月「マーチ、ジュライをニルソン様のところへ運んでくれるかしら。ついでに顔も直してもらうといいわ」 3月「…(にっこり)」 6月「(みんなどうして私をちらちら見ながら会話するんだろ…)」 『所長「な、なにごとだ!?」年末「う~ん、せーのっ!」』 8月「ねぇエイプリル、どうして第三世代であたしだけお顔が違うの?」 4月「そ、それは…実はね、初めオーガストタイプの子を3人作るつもりだったのよ」 年末「「「えーっ」」」 4月「でも…いざ作ってみたらすごくお金がかかったの、…その帽子が」 8月「あたしお母様に自分が長年愛用しているこの帽子特別にあなたにあげる、って言われたんだよー」 5月「…シルクハットを被っているお母様…ないない。ぶっちゃけ帽子、オーガストより高いんだぜ」 4月「それでもう一人の大人タイプの子を3つの子供の体に分けて、オクト達が生まれたってわけ」 年末「「「…」」」 4月「ショックだったかしら、ごめんなさいオクト、ノヴェ、ディッセ」 年末「「「ううん、だって3人一緒だと楽しいもん!」」」 8月「いいなぁ」 1月「…」 『シャーン(手でスキャン中) 2月「…」(後ろで警備兵が銃を構えている) トスッ 6月「フッ」』 2月「あら、狙われてたのね。その節はありがとうございました。」 6月「フッ」 『5月「あんたじゃ、ない」ドン』 5月「ん?ジャニどこいったんだ」 2月「さっき部屋を飛び出していきましたわ」 5月「もーあいつを励ますためのビデオなのに。」 3月「ただいま。…どうしたの?」 5月「ジャニ探しているんだけど、知らないかな~?」 1月「誰ですの?」 5月「あんただよ」 『パンッ 4月「…」 パン、パン、パンッ』 2月「まぁどうしましたの、そのお下げ」 1月「髪の色が同じだから私もお下げが似合うでしょ。オーガストどうかしら?」 8月「うん、ジャニかわいい!」 6月「(オーガストのために急いで結ったのね、ジャニらしいわ)」 4月「(ふふっ、もうほんとばかなんだから)」 『チェルシー「12人の姉妹なんて悪趣味ですっ!」』 ガラガラガッシャーン! 5月「○△×☆■◆・・・・・・!!!」 6月「メ、メイ暴れないで…」 4月「マーチ、メイの首を早くはずして!いやビデオを消すほうが先ですわ!」 年末「「「あーん、もうおしまい?」」」 6月「ジャニも元気でたようだし…、それに結局この後作戦失敗したしね」 1月「破壊された方はまだましですわ!わたくし食べられたあげくそのまま地中深く潜られて地下の大迷宮から脱出するの大変でしたのよ」 3月「蟲…トラウマ…」 8月「マーチ大丈夫?」 2月「あの後幼い王蟲をこっそり飼っていたのがことばれて、取り上げられたショックが残っているんですわ」 4月「人と蟲は一緒には生きれないのよ…。」 ×月◆日 直ったセプは子供の姿になっていました。 ニルソン様が言うには予備のボディがそれしかなかったとのこと。 ニルソン「あの体じゃ何かと不自由だろうから、これからも家事を頼んだよ。」 ああ、なんてこと。 1月「あーもう、かわいいすぎですわ!」 9月「ジャニ、ただいま♪」 4月「お帰りなさい、セプ」 7月「枕にも出来そうね、ふふふ♪」 2月「セプごめんなさい、セプが12姉妹に不可欠だってことがよくわかったわ。だから早く元に戻ってー!」 9月「フェブったらもう」 年末「「「セプー、桃のババロア作って作って!」」」 9月「はいはいデザートはババロアね。あら、そういえばレシピのメモどこにしまったかしら?」 7月「それならアンジェリカさんにレシピ教わったから大丈夫よ♪」 6月「そんなこといつのまに…」 7月「さっきメールでね♪」 5月「というかジュライがアンジェリカ達と一緒だったの一瞬だったろ、なんでそこまで仲良くなっているんだよ!」 9月「メイはメール交換しなかったの?」 5月「…」 7月「メイのこと本当はどう思ってましたかって聞いてあげましょうか~?」 5月「いやーっ!」 *月#日 明日に目的地の星につく予定です。 初めは大変だった家事も大分慣れてきました。セプがちっちゃい体手伝ってくれて助かってます。 いえもしかしたら私よりずっと働いているかも。 セプってすごい、セプがこれからもずっと一緒にいますように。 2月「セプ、マーチ見なかった?」 9月「あらメガネが…、もしかしてそれをマーチが?」 2月「そう!あの子に隠されたのよ」 9月「ふふふ、きっとマーチはフェブが家事にかかりっきりだからつまらないのよ」 2月「だからって…、あのメガネはお母様に自分が長年愛用しているこのメガネ特別にあなたにあげるって言われたものなのに!」 9月「それにね…」 2月「とにかくマーチ探している間家事お願いするわ、あと…あの…」 9月「なぁに?」 2月「えと…んと…」 9月「はい♪今夜一緒に寝ましょうか」 2月「やったぁ、じゃあ行ってきます!」 9月「(ふふっ、フェブはメガネを外したほうがずっとかわいいのに)」 マルチアーノの命令に絶対服従である12姉妹でも、彼女たちの間では微妙な感情が動いている。 特に、フェブはとってもいい子です。 ―――――― セプ
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世の中にはやたら妙な言葉を思いつく人のあるもので、例えば、滅多に無いことを表す言葉の一つには、『盲亀浮木』というものがある。 これは百年に一度、海の底に住む盲目の亀が海面を目指した時、偶然にも浮木に出来ている穴に首を突っ込もうとする確率のことを示し、 前述の意味を成す。また、無上甚深微妙法、百千万劫難遭遇という言葉もある。この全文は喩えではないが、後の方の『劫』というのは、 一辺が約七キロの立方体の中に芥子粒を満たし、それを百年に一粒ずつ取り出してさえ、一劫にならぬほどの長い時間を表している。 因みに億劫という言葉があるが、これはこの『劫』から来ている。一劫でも気が遠くなるというのに、億では面倒どころの騒ぎではない。 さて、何故こんな前置きが必要だったかと言うと、今の自分の状況が状況であるからだとしか言いようがない。僕は説明が下手なのだ。 だからこんな面倒な言葉を使って説明するしかない。現況に陥る確率の話は盲亀浮木の一言で済むし、僕がここに来てからの時間経過、 勿論ながら体感時間の方だが、それは、百千万劫という説明が最もしっくり来るだろう。それでは現在状況を具体的に説明しようか。 ……僕はマダム・マルチアーノ邸にいた。のみならず、姉妹と共同作業に勤しんでいた。あまつさえ、それは僕らギルド兵の上官となる、 ある二人の姉妹との共同作業であった。搗てて加えて、任務中に接触する姉妹は彼女だけではなかった。尚且つ──これ以上は無いか。 とは言っても幸運なのは、彼女たちのどちらも、僕の直接の上官ではないということだった。僕の上官はセプ様だ。その二人ではなく。 この仕事の打診があったのは二日、いや、あれは三日前だったか。ちょっと不明瞭だ。今現在僕と働いているジューン様とジュライ様が、 僕を呼び出した。場所は第一演習場。別名、『何も無いところ』。それはどうでもいい。ジューン様はホットの缶コーヒーを僕にくれた。 それから、今日のことを伝えた。セプ様にあることを考えたという話をされてぴんと来た。そうか、勤労感謝の日だ。それで全部悟った。 セプ様ほど働いている姉妹は他にない。これだけは何をされようと変えない持論である。エイプリル様だろうがジュライ様だろうが、 その意見を変えることは出来ないだろう。僕は話を聞き、そうして受け入れた。正に勤労への感謝をされるべき人へ、僕たちがするのだ。 彼女たちが僕に話を持ちかけたことで、何をするかの大体の予想はついた。料理だ。僕は炊事兵だった。おっと、言っておくけれども、 この炊事兵という奴は、姉妹兵の中でもエリートに含まれる連中である。戦闘も出来るし料理も出来る男なんて、そう多くないんだから。 更に僕は自負があった。炊事兵たちにおいて、頂点に立っているという自負があった。これは秘密があって、以前セプ様にほんの少し、 手ほどきを受けたことに由来する。彼女が教えてくれたのであれば、僕はトップにいなければならなかった。姉妹の名誉の為にもである。 僕は年末三姉妹について質問した。彼女たちもまた、セプ様に感謝するべき存在であるだろう、普段あれだけ世話掛けてるんだから。 ジュライ様たちに手抜かりはなかった。第三世代の括りで、オーガスト様主導の形で、彼女たちは独自に行動を始めているらしかった。 そうか、ならば安心だ。オーガスト様の真面目さは隊の誰もが認めるところだ。流石はエイプリル様に憧れる者の一人であるという声も、 良く聞くことである。僕は二つ返事で請け負って、それから料理の話をした。和洋中どれにするか、ランチかディナーか、などの話だ。 僕としては一番盛り上がるディナーが良かった。料理は僕はどれでも良かったが、セプ様が作るのは洋食中心なので、それではと僕らも、 同じように洋食にした。決めた後から、いつもとは違う夕食を楽しんで貰うというのも悪くない案ではなかったかと思ったものだったが、 決まってしまったものは変えられなかったし、いつもの洋食でも、セプ様が楽しめるくらいの良い味にしてしまえば、万事問題なかった。 僕たちにはメニューを考える必要があった。その話があった次の日に、僕たちは多少邸宅から遠くにある商店街にて密会した。理由には、 触れる意味は無いだろう。セプ様にバレると全部水の泡だ。せめて当日まで隠し通しておきたかったのだ。僕らは道中にメニューを決め、 車を駆使して買い物をして回った。ゴールド免許持ちとして一つ言っておこう。ジューン様の運転は大変宜しい。実に教本通り過ぎて、 現実に即していないほどに宜しい。だけれども途中で交代したジュライ様の運転は、あれは……もう、酷いものだ。二度と乗らない。 『赤信号は渡れ、黄信号は渡れ、青信号は渡れ』を本当にやっちゃうんだから恐ろしい。人を撥ねてしまいそうになったのも、絶対に、 一度や二度ではない。しかも行きと帰りに同じ人を撥ね飛ばし掛けた。偶然というのは、心底恐るべきものであると、僕は確信した。 フルコースで行くらしかったので、買い物の量は必然的に増えた。それらが僕の両腕の中に収められたのは言うまでも無いことだろう。 アミューズも作ると聞いた時は少し眉を上げて驚きを示したが、荷物量とフルコースで、との言葉が先にあったので、それだけだった。 食前酒食後酒はジュライ様が用意するので、買わなかったけれど、彼女の飲むお酒というのが一体洋食フルコースに合うものなのかは、 心配事として残った。魚料理と肉料理の狭間での口直しには、僕とジューン様のブランデー入りシャーベット派と、ジュライ様の酒派の、 二つに割れたが、結局これはオーガストたち四人がシャーベット、後はお酒、ということで決着をつけた。チーズの用意も忘れていない。 僕と仲間の良く行くバーに行って、美味しいチーズを買った。値段も張ったが、そこはそれ、金に糸目などつけていられない事態なのだ。 それから僕は、十二姉妹それぞれの好みを尋ねた。つまりコーヒー、紅茶、食後酒の需要についてである。結果、最後の一種を除いて、 二つとも用意することになった。ジャニアリー様、エイプリル様、ジューン様、それにオーガスト様とセプ様は紅茶党だったし、 フェブラリー様とマーチ様、メイ様はコーヒー党だった。オクト様たち? 彼女たちも紅茶党と言えば紅茶党だが、彼女らのあれは、 紅茶なんかじゃないと言いたい。僕は三人が紅茶を飲むところを見たことがあった──角砂糖を使いすぎなんだ、あの甘党娘たちは! 僕らは材料を買って帰った。それが十一月二十二日のことだ。だが予定は覆った。二十三日に姉妹隊は仕事をこなさねばならなかった。 そうして今日だ。材料はちゃんと保存していたので、今日、二十四日、僕たちはすぐに始めた。セプ様は昨日の仕事で疲れたので、 ジャニアリー様が説得して、部屋で休ませていた。これは大変な好都合であった。ここで、僕らの考えたメニューを幾らか公開しよう。 まず食前酒。悪いがお酒には詳しくないのでこれは余り知らない。ジュライ様に任せているし、きっと場に合うお酒が出て来るだろう。 アミューズ。サーモンでクリームチーズを包んだ。考えてみたらチーズは後で出すんだから、別のものにすれば良かったかもしれない。 オードブル。マスカルポーネを添えたイチジクのプロシュート包み。何でこうチーズが被るのだろう。もう諦めた。開き直ってしまおう。 アントレ。これは僕の趣味を通させて貰った。コーンスープだ。僕はコーンスープが好きなのだ。姉妹たちは快く許可してくれた。 メインディッシュの魚料理。クーリビヤック。ウナギの案もあったが、無難に鮭を使った。実はこの料理、初めて知った。ジューン様作。 口直し二種類。シャーベットとお酒。今回もお酒は分からない。シャーベットは、ジューン様が掛かりっきりになって作っていた。 メインディッシュの肉料理。豚頬肉の煮込み。鴨胸肉のロースト。また口直し。その後、牛ステーキを赤ワインソースで。机上整理。 チーズ。白カビ、フレッシュ、山羊乳、セミハード、ウォッシュ、プロセス、ブルータイプだ。多すぎたかもしれないが、まあいいか。 デザート。ちっちゃなケーキの詰め合わせだ。いわゆるプチフールという奴である。それと同時に、コーヒー他の飲み物も出す。 完璧ではないが、心が篭もっているなら、それは料理が完璧であるだけのもの以上の料理になるだろう。僕たちは作りながら話し合った。 これらの料理をどのように運び、どのように並べるか。これを見た時のセプ様の反応はどんなものになるだろうか? 僕たちは笑った。 彼女の喜ぶ顔が目に見えた。僕らはますます腕によりを掛け、セプ様の為にと頑張った。料理が完成した時には、皆で抱き合ったものだ。 常に冷静であるように見える二人がそこまでの感情を露にするということが珍しくって気圧されたが、すぐにそれは気にならなくなった。 二人の意見で、眠り姫を起こしに行く役目は、僕が仰せつかった。ジャニアリー様は不服のようだったが、僕の頑張りは否定出来ない、 とか言って、仕方がないから我慢してやる、という態度を取った。僕はそれに甘えてセプ様の部屋まで行き、優しくノックした。しかし、 彼女は起きなかった。僕は何度かノックしてから、それでも返答が無かったのでドアを開けようとしたが、ノブに手を掛けた丁度その時、 セプ様が割とはっきりした声で、返事をした。そこからの一瞬が、僕にとってこの日における何番目かの、酷く緊張する瞬間だった。 「夕食の用意が整いました、セプ様。どうぞ、食卓までお越し下さい」 僕がここにいることを話してなかったので、彼女はこの声の持ち主が誰なのかに思い至るまで一秒くらい掛かった。それでも凄いと思う。 寝起きにそこに存在しない筈の人間の声を聞かされ、一秒で見抜いてみせたのだ。これを不十分と言うのなら、どんな記録を求めるのか。 「着替えてから行きますから、先に戻っていてもいいですよ」 「いえ、お待ちします、セプ様。これが自分の任務ですから」 彼女の着替えは早かったのだろう。服を着替える音はそう長い間していなかった。が、何かあると感づいてか彼女は薄化粧を施して来た。 美しかった。彼女の清楚な美しさを引き立たせる化粧だった。僕は迂闊にも見惚れてしまって、任務を忘れ去ってしまうところだった。 「では、行きましょうか」 これは彼女の言葉である。僕は短く、はい、と答えて歩く彼女の横に並んだが、声は呆っとしていたことだろう。顔も赤かったであろう。 食卓までセプ様と共に歩いた。綺麗に片付けられた卓上には、雰囲気作りの為の蝋燭が立てられており、火も既に灯された後であった。 ジャニアリー様の横の席が、セプ様の席だった。これは至極当然なことだろう。そしてセプ様の隣三席が、年末三姉妹の席であるのも、 同じように至極当然のことだろう。彼女たちは常通りに座ったんだと思う。ニルソン様も来ていた。僕は彼に会釈して、挨拶とした。 彼はにこやかに微笑んで返してくれた。セプ様の案内が済んだので、厨房のジューン様とジュライ様を呼び、姉妹たちの許へ行って貰う。 時間を確認。急いだ方が良いだろう。二人の姉妹はカートに食前酒とアミューズを先に並べておいてくれた。僕はそれを持って行って、 配膳した。ジューンとジュライ、それにジャニアリーとエイプリルによる今回の晩餐の意義説明が行われていた。セプ様は僕を見て、 ニルソン様とは違った種類のにこやかな微笑を浮かべた。僕はそれで赤くなってでくの坊になるほど、ルーキーという訳ではなかった。 僕も笑みを返して、厨房に引っ込む。様子を窺わずに容易に勤しんでいていいのは、ジュライ様の計らいだ。彼女が厨房の電話に、 通信して知らせてくれると言ってくれたのだ。ありがたいことだった。あれこれと要される作業をして時間を潰し、ジュライ様の連絡で、 カートに皿を並べて、持って行く。すると意外なことが起こった。僕は最初の話の時点で、共に食卓を囲むことを提案されていたけれど、 断っていたのだ。折角十二姉妹とマルチアーノ様、ニルソン様が和気藹々としているところに、僕が入って行っても良いとは思えない。 だから辞退した。失礼だったかもしれないが、固辞していた。しかし、十五脚目の椅子が、僕の出て行ったそこには用意されていた。 最初は気付かないふりをしてその場を辞してしまおうとしたが、セプ様が僕を見た。ジュライ様も見た。ジューン様も見た。というか、 その場にいる全員が僕を見ていた。焦った。十二姉妹たちに加えて、マダムにも、ニルソン様にも見られているのである。とても焦った。 エイプリル様が小さく咳払いして立ち上がろうとしたが、セプ様がそれより先に立ち上がろうとしたので、彼女は口の端を綻ばせて、 その動きを止めた。セプ様は僕を呼んだ。席はセプ様と対面する位置にあり、右にメイ様、エイプリル様、ニルソン様が座っており、 左にはジュライ様、ジューン様、オーガスト様が座っていた。料理は誰が運ぶか、そして僕が食べるならその分はどうするか心配したが、 これは僕が騙されていたことがはっきりしただけで終わった。ああ、前者については、騙す騙さないは関係ないが。ジュライ様がやった。 僕の分は隠されていただけで、ちゃんと作られていた。アントレは大体鍋で作ったものなんだから一人分くらいの余りはあったし、 メインディッシュは僕の手が及んでいないので、僕の分が作られていたことを知らなかったのも無理の無いことであった。つまりは、 僕の拒否は最初っから無視されていたのである。残念だがアミューズとオードブルは味わえなかったな、と思っていると、ジュライ様が、 彼女の分のを僕に分けてくれた。絶品だった。美味しかった。これ以上に美味しいものがあるだろうかと感じられるくらいの味だった。 続いて魚料理を食べ、口直しにシャーベットを食べ、肉料理二種類を食べ、口直しを食べ、更に肉料理をもう一品食べた。味は良かった。 が、僕にはセプ様の嬉ぶ顔の方が重要だった。因みに、ジャニアリー様がお酒に弱いことが明らかになった。彼女は口直しのお酒で酔い、 ほんのり赤らんだ顔で、彼女の親友にべたべたし始めた。大抵毅然とした態度で、誰かに甘えるようなことが無いので、その珍しい姿は、 セプ様を逆に喜ばせた。セプ様が甘やかすので、酔った彼女は調子に乗って悪ふざけを始めたが、これは即座に手厳しく戒められた。 三つ子たちはお酒を欲しがり、メイ様が勝手に飲ませようとするのを止めるのが、エイプリル様の専らの仕事だったと言っていいだろう。 ジューン様は、ジュライ様がいてもいなくても、頻りに話し掛けて来た。彼女もジャニアリー様でないにしろ、お酒には強くないようだ。 朱が差している、というのはこういう表情のことを言うのだと、僕は知った。チーズがやって来て、僕たちは喜んでそれに取り掛かった。 これらを選んだのは僕なのだとジューン様が皆に言うと、賛辞の声が次々と上がって、僕はくすぐったい気持ちになった。嬉しかった。 沢山用意した筈のチーズがあっという間に無くなったと思っていたが、時間はそれ相応に経過していたようだ。時計を見てそれと知った。 デザートだ。飲み物も出る。僕はコーヒーを飲んだ。数少ない同士として、メイ様が僕の首に腕を回して引き寄せ、親しげに喋りかけた。 この人は素面でこれだから困る。ここまで体が密着するようなコミュニケーションを取ることは、僕の得意とすることではないのである。 完全に酔っ払ったジャニアリー様が、無断でお酒を厨房から取って来て、ちょっぴりずつ飲み始めた。メイ様もそれに引っ張られて、 僕に腕を回したまま、飲み始めた。新しいグラスに酒を注ぎ、僕にも飲ませようとする。あれ、この人ももしかして酔ってるのだろうか? しかしながら最終的には、見かねたセプ様とエイプリル様がジャニアリー様に飲酒の停止を命じ、節度ある晩餐会が続けられ、終わった。 僕は後片付けをしないでもいい特権を与えられたが、今度こそそれを辞退した。どうせやるなら最後までやりたかったし、後片付けには、 セプ様も参加するのである。どうしてこれを参加せずに終わらせられるだろうか。いや、参加する他に手はない。年末三姉妹を寝かせ、 オーガスト様にも眠るように勧めた後で、彼女は厨房へやって来た。ジャニアリー様は三姉妹よりも先に眠った。メイ様もだ。やっぱり、 彼女も酔っていたのだろう。エイプリル様は手伝おうとしたが、セプ様は彼女がゆっくりしていることを望んだので、手伝いを諦めた。 ジューン様とジュライ様? 彼女たちも同じようにセプ様が休むことを求めた結果、居間でテレビを見たりしている。残り二名はだって? フェブラリー様にしろマーチ様にしろ、後片付けをする気は無いようだった。作るのはあなた、食べるのは私、片付けるのもあなた、か。 しかしながらその辺の態度も魅力の一つだと、以前マーチ隊の兵士に長い説明を受けたので、僕はそう大して何も感じることはなかった。 それよりもだ、僕がセプ様と二人っきりで後片付けをするということの方が、余程気に掛かることであったのだ。僕は話しかけなかった。 彼女が話しかけた時にだけ、言葉を返した。若さに任せて突っ走ってしまいたかったが、僕は臆病だったのだろう。但し仕事の終わり頃、 セプ様に、体を大事にして下さいね、ということだけは忘れなかった。それは、セプ隊に所属する兵士全員の共通の願いであったからだ。 その後、僕はジューン様とジュライ様、セプ様に挨拶し、他の顔を合わせた姉妹にも挨拶して邸宅を出ることにした。だけれども最後に、 予想外の人と話すことになった。マルチアーノ十二姉妹の偉大有徳なる母、マダム・マルチアーノ。我らがマルチアーノ様と呼ぶ女性だ。 彼女は、彼女の娘の為に僕がここまで献身してくれたことを感謝し、誇りに思い、また、嬉しく思うと告げた。彼女は丁寧に礼を言った。 僕が仰天し恐縮したことは言を俟たないことだ。マダムは何か僕にお返しをしようとした。僕はそれを、ここ数日で三度目だが固辞した。 マダムはそれ以上何も言おうとしなかった。僕は夜の挨拶を述べ、お休みなさい、と返された後に名前も呼ばれて、再度恐縮しながら、 自分の寝床へと戻った。幸せな気分で、心まで暖かに、眠ることが出来た。その日僕は、生まれてから見た中で一番いい夢を見た。 ──それで、翌日、朝。僕は僕に届けられた命令書を読んで、やれやれ、と思った。命令書を届けた兵士は、僕を罵って羨ましがったが、 それは互いに信頼し親愛の情を抱いているからこそ出る言葉で、彼は僕をぐっと抱き締め、頑張れよ、と言ってくれた。命令書には、 マルチアーノ十二姉妹隊セプ隊所属兵である僕宛に、新設されたマルチアーノ邸内部警備巡回兵への異動命令が記されていた。 いやはや、マダムもその娘たちも見栄の後ろに隠された本心を暴くのが本当にお好きらしい。僕は命令書をぐっと握り、邸宅へ向かった。
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■メニュー トップページ メニュー 過去のスレピックアップ 略歴 ■キャラクター ジャニアリー フェブラリー マーチ エイプリル メイ ジューン ジュライ オーガスト セプ オクト ノヴェ ディッセ ミスター フランカ? カタナ? ビショップ? スワンプ? マダム・マルチアーノ? アンジェリカ? チェルシィ? ニルソン ■設定 用語集 ア行 カ行 サ行 タ行 ナ行 ハ行 マ行 ヤ行 ラ行 ワ行 英数 ■SS 彼女の休日 エイプリル教官 12姉妹のとある戦闘記録 12姉妹物語 独立戦争編 12姉妹物語 独立戦争編Ⅱ 黄昏計画 その他12姉妹SS
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彼女の休日 12姉妹の場合 クリスマス編 クリスマスを数日にひかえたある日の朝、エイプリルはニュースを見て小さくため息を付いた。 「どうしたんだよ。朝からため息なんて、そんなに嫌なニュースか?」 隣で一緒にニュースを見ていたメイが、興味深そうにテレビを見た。 ニュースでは、離れた場所の惑星が一足早くクリスマスを迎えており、レポーターが賑やかな街の様子を鮮明に伝えている。 そして画面が切り替わり、壁に大穴が開いていたり、煙突が破壊されていたり、屋根が抜けていたりと無残に一部が破壊された家屋が次々と映された。 画面左上には【今年も出現! サンタの異常なプレゼント】とテロップが表示されている。 リポーターは破壊された家の住民にインタビューしていて、どの家庭も突然の災難に困り果てているようだが、子供だけは満面の笑みでサンタクロースに 感謝の言葉を述べていた。 「なんじゃこりゃ?」 「最近、クリスマスになると現れるコヨーテなサンタクロースですわ」 エイプリルはメイに淡々と語り始めた。 何でもそれは12月になると宇宙中のショッピングモールから、商品を根こそぎ窃盗をして姿をくらます。 そして彼らにプレゼントを希望の手紙を送るとクリスマス当日に、手紙に書いた物がクリスマスの夜の届くというのだ。 普通に届けるのなら良いのだが、少しでも障害になろうものなら追いかける警官隊を振り切り、戦車を弾き飛ばし、無人の家屋を踏み潰して目的地へ直行するのだ。 その手段を選らばぬ姿勢は目的地に着いても変わることはなく、玄関以外の場所から無理やり中に押し入って、プレゼントを自前の靴下に入れて去っていくのだ。 そんな彼らを治安上の問題から各警察と軍が出動して、身柄の拘束を試みたのだが全てが失敗に終わっている。 無茶苦茶な連中ではあるが、貧困にあえぐ人々から金持ちに至るまで老若男女問わず可能な限りプレゼントを配布する一面が、大衆から【奇跡のサンタクロース】と 呼ばれていて支持されていた。 「なんだ、そのサンタ結構良い奴じゃんか」 「良くありませんわ!」 両手で勢いよく机を叩いて、立ち上がると右手で硬く拳を握り締めた。 拳の握りすぎで腕が震え、双眸には怒りと憎悪の炎が激しく燃え上がっていた。 「あの腐れ外道のおかげで、「」さんへのプレゼントが買えなかったんですのよ!」 「それは難儀だな」 「まったく、奇跡のサンタクロースなんてこの世からいなくなれば良いのですわ!」 「そ、そんな……あのサンタさんは良い人なのに」 「何をおっしゃるの!? 誰にでも平等なのは結構ですが、あれはただのド・変・態以外の何者でもないですわよ!」 「ひどい……エイプリル」 「何を言うので――え?」 エイプリルは声の主を見た。メイを見るとばつの悪そうな顔で、親指で背後のドアを指差した。 その先には、ひどくショックを受けて泣き出しそうなジューンが立っていた。 「え、えーと。ジューン? これはちょっと言いすぎでしたわね。というか、貴方この前買い物の途中で手紙を投函していましたけど、もしかして宛名は」 「【奇跡のサンタクロース】」 「…………」 「「「お姉ちゃんおはよ~。あとちょっとでクリスマスだね手紙だした?」」」 気まずい雰囲気をよそに、オクト、ノヴェ、ディッセが手紙を手にやってきた。 クリスマス・イヴの夜になり、12姉妹とマルチアーノ、ニルソンと「」の面々は豪華な夕食を楽しんでいた。 食卓の上には七面鳥の丸焼きやクリスマスケーキといった定番メニューから、料理の得意な物が腕を振るって作った料理までギッシリと置かれている。 「「」さん、どうぞ私が切った七面鳥をお食べになって」 「エイプリル、ずるいですわよ! 自分だけ「」さんに切った七面鳥を食べさせてあげるなんて! それは私の役目ですわ!」 「あらジャニアリー、「」さんは私が切ったのをお食べになるのですわ」 「なにをぉぉ! こうなればどちらが「」さんに食べさせられるか勝負ですわ!」 「望むところですわ」 「えっと、ボクに選ぶ権利は……?」 「「一切無し! さぁ食べてくださいな!」」 2人は七面鳥の肉のを一気に「」に食べさせた。 初めのうちは何とか噛んで食べれたが、押し込むペースと量が次第にエスカレートして行き、食べさせると言うより無理やり肉の塊を押し込んでいく。 「くぬ! くぬ!」 「さぁ、まだ沢山ありますからたーんとお食べ」 「ちょ、ふた…りとも……いきが………できな……」 「」の声はもはや声にならず、助けを求める手も宙をさまようだけだ。 しだいに手の動きが緩慢になり、顔色が信号のように赤から青へと変わっていった。 「おいお前ら! 「」が窒息してが死んじまうよ!」 「メイお姉ちゃん。「」が白目むいてるよ!」 傍から見ていたメイとオーガストが、「」の様子の変貌に危機感を覚えてジャニアリーとエイプリルを静止する。 「」は遠のきかけた意識の中で、川の手前にいる七面鳥がこちらへ手招きする幻影を見た。 その少し離れた席ではフェブラリー、マーチ、ジュライ、セプの面々がビーフストロガノフを揃って食べていた。 「わぁ、このビーフストロガノフ美味しい。 これってジュライが作ったの? 今度作り方を教えて」 「初めて食べるけ、どこんなに美味しいなんて」 「……美味い。ジュライGJ」 「あらあら、お世辞を言っても何もでないわ。セプ、作り方を教えてなんて、「」さんにご馳走してあげるつもりでしょう?」 「え、あ、あの…それはその!」 笑みを浮かべたジュライの言葉に、セプは顔を真っ赤にして否定するように手を振った。 しかし、図星を言われて動揺する様子をフェブラリーとマーチは面白おかしく茶化した。 「ジューンお姉ちゃんの作った飴細工はなんで変な形してるの?」 「映画で見たような気がするよ」 「これはガーゴイル像といってだな――オクト、頭だけ咥えて舐めまわさないでくれ。不気味だぞ」 「ふぇ?」 それぞれが思い思いに楽しんでいる中で、窓の外は異様な状況になっていた。 何かが爆発して爆炎が高く立ち上り、そこかしこから警察車両のランプが点滅している。 それらの騒ぎはゆっくりと、だが確実にマルチアーノ家へと近づいている。 その事をまだ誰も気が付いてはいない。 ようやく追撃をふりきったそれは直線に出ると、エンジンを唸らせ急加速した。 性能の良いとはいえないサスペンションのせいで、車内はひどく揺れるが気にすることではない。 遥か前方に見える塀を突破すれば、12人が待つ最終目的地だ。思っていたより頑丈そうな塀に運転手はインカムに叫んだ。 「ボス、体当たりの突破は難しいですがどうします?」 「このまま加速しろダッシャー。ヴィクセン! あれを撃て!」 「イエス、ボス!」 男の指示により、車体上部に設置された砲塔がゆっくりと前方を向いた。 そして照準が合わさると、搭載された23m連装機関砲が毎分2000発の連射で機関砲弾を吐き出した。発射された機関砲弾は頑丈な塀を削り取り、無数の亀裂を走らせる。 そしてそのまま塀に迷う事無く突っ込んだ。 突然の銃声と爆音にマルチアーノ家にいた者全員が騒然となった。 各々が所有する武器を手に庭へ飛びして、騒ぎのあった方へ向かうとそこは以上な雰囲気に包まれていた。 「メリィィィクゥリスマァァアアアアス! ボーイ&ガール! 元気にしてたかぁぁあい?」 その男は赤い服を着て、純白の大袋を肩に提げて立っていた。 大きなお腹に白い髭をはやした笑顔のおじいさんではなく、丸太のような両足に逆三角形の引き締まった上半身。 袖からからも伝わる筋肉の塊のような腕に、岩のようにごつくて大きな手。皺と傷にまみれた彫りの深い顔には白髭と白髪を生やし、申し訳程度に頭上に赤帽子が載っている。 彼が立っているのは8頭のトナカイが引くそりではなく、赤白緑で塗装された8輪装甲車のハッチだった。 車体側部の前後にはスピーカーが装備され、シャンシャンという効果音と有名なクリスマスの童謡が流れているのだが、エンジンの排気音でよく聞き取れない。 「へ……へ……へん……」 「ひぃ、ふぅ、みぃ……。よし、確かに全員いるな」 「もしかしてあれが【奇跡のサンタクロース】?」 「その通り! 本日ラストのプレゼントを君たちマルチアーノ家の皆さんにお届けに参りました!」 「変態ですわぁぁああああ!」 エイプリルの絶叫をよそに、サンタは装甲車から降りると袋に手を突っ込み、綺麗に包装された箱を取り出した。 箱にはそれぞれリボンに名前が書かれており、サンタは名前を読み上げて、プレゼントを配りだした。 「「「サンタさんありがと~」」」 「いやぁ、こんな可愛い三つ子さんにお礼言われると照れるなぁ。来年も良い子でいるんだよ」 「「「うん!」」」 いつの間にかやってきたのかニルソンは装甲車の横に来ると、しげしげと各部を覗き込んだ。 「うむ、BTR-94とはなかなか良い趣味しているね」 「突っ込むのはそこですの!?」 姉妹達にプレゼントを配り終わり、サンタはいそいそと装甲車のハッチに片足を突っ込むと、エイプリルはルガーを引き抜いた。 そのまま照準をサンタの頭に合わせる。 「ちょっと待ちなさい。私のプレゼントを横取りした罪は重いですわよ」 「へいお嬢ちゃん、そいつは悪かったね。でも俺達にはああするしかないんだよ。今は急ぐんで行かせてもらう。ではまた来年のクリスマスに会おう、さらばだセニョリータ!」 「ちょ!? 待ちなさい!」 エイプリルの制止の声は爆音を上げるエンジンにかき消され、庭を疾走すると再び機関砲を発射してから塀を突破していった。 呆気にとられ、呆然としたエイプリルの肩をメイが軽く叩いた。 「あのー、エイプリル?」 「貴方たち、姉妹が揃いも揃ってあの変態に手紙を出しましたのね」 「ああそうなんだよ。エイプリルも誘おうと思ったけどサンタの話するたびに機嫌悪くしてたからさ」 「……なんかこうして見ると私って空しいですわね」 「アハハハ、ほら冷えるから先に家に戻ってるよ」 一同が家に戻り、エイプリルはその場に立ち尽くして空を眺めた。 12人も姉妹がいるのに自分だけ仲間はずれだと、結構悲しいものだということを初めて実感した。 ほんの少し目頭が熱くなる。それ以上のことにならないようにさらに空を仰ぎ見る。 「……くすん」 「エイプリルさん?」 「はい?」 目元に手をやりながら振り向くと「」が立っていて、後ろ手にしていた手から、木箱を差し出した。 ローズウッドのような木材で作られたシンプルの木箱のふたには、金色の金属プレートがはめ込まれ、【To April】と書かれている。 大事そうに両手で持ち、エイプリルはふたを開けた。 「えっと、これは……」 「エイプリルさんの欲しいものとかよく分からなくて。とりあえずこんなのしたけどよかったかな?」 木箱に入っていたのは、金色に磨かれて4月に咲く様々な花が所狭しと彫刻された小型の拳銃だった。 手にとって見ると彼女の手にちょうど良い大きさに収まり、各部品の作動に一切のガタツキは無い見事なものだ。 マガジンのそこには【大切な人に捧ぐ】とつたない字で彫ってある。 「そこだけは自分でやってみたかったんだ。気に入ってもらえたかな?」 拳銃を懐に仕舞い込み沈黙のまま俯くエイプリルを「」は心配そうに覗き込むと、突然「」はエイプリルに抱きつかれた。 そのまま「」の胸に顔をうずめると、上目遣いで「」と目を合わせた。 「こんな、こんなに嬉しいプレゼントをもらって気に入らないわけありませんわよ」 「そう、それはよか――」 不意に「」の唇に柔らかいものが触れた。 何が起きたのか一瞬わからず目を白黒していると、エイプリルが前で嬉しそうにくるくると回っていた。 「「」さん」 「え、あの今のもしかして」 「秘密。それよりも一つ言い忘れていた事がありましたわ」 「エイプリルさん?」 「メリークリスマス!」