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リンク 戦闘攻襲会 http //www.geocities.co.jp/Playtown-Yoyo/9929/koushu/kstop.html ボッツ、アシュラバの攻略など。 ボッツは基本システム+キャラ攻略がいくつか。キャラ攻略は数は少なめだが内容はなかなか。 Grave in Attic http //www8.plala.or.jp/cthuaza/bots/bots.htm 全キャラ技表+コンボ紹介あり。 システム紹介が詳しめ。 『あとむ』の散らかり部屋 http //atom2009.web.fc2.com/box_game/cyberbots/main.html 全キャラ技表(立ち絵付き)+キャラ雑感(攻略)+キャラ別最多段コンボ。 ざっくりと各キャラどんな感じの性能なのか把握するなら、ここを見るといい。 その他 ボスキャラ使用コマンド ※アーケード版限定。家庭用は各搭乗者のストーリーモードをクリアすることで、対戦モードで使用可能に。ワーロックは? パイロット選択、VAタイプを選択、VAを最終決定する、VAが勝利ポーズを取っている間に以下のコマンドを入力 (A1-アタック1 A2-アタック2 B-バースト W-ウェポン) スーパー8 ↑→↓←↑→A1↑←↓→A2 ゲイツ A1・A2・B・W・A1・B ヘリオン ↑↑↓↓←→B・W ワーロック ←A1↑A2→B↓W キャスト(家庭用) ジン・サオトメ:古谷徹 マリー・ミヤビ:高乃麗 ガウェイン・マードック:玄田哲章 サンタナ・ローレンス:梁田清之 アリエータ:かないみか バオ:山口勝平 マオ:荒木香恵 シェイド:飯塚昭三 神楽千代丸:堀川亮(現 堀川りょう) 鋼鉄山:銀河万丈 デビロット姫:小桜エツ子 地獄太使:八奈見乗児
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【作品名】ドラゴンクエスト6 幻の大地 【ジャンル】漫画 【名前】ボッツ 【大きさ】青年 【属性】レイドック王子・伝説の勇者 【攻撃力】伝説の剣ラミアスを主に使って戦う。通常攻撃でも3mぐらいの魔物を一刀両断する。 ライデイン:空から落雷を呼び寄せる呪文。ほぼタメ無しで呪文名を叫ぶだけで発動。 最大時の威力は城の塔に直撃させたら城が崩壊した。射程は数十mか ギガスラッシュ:オーラを纏った斬撃を飛ばす。ほぼタメ無しで発動。 イオラ(※)の直撃を受けても無傷の敵を城(次鋒のヘルクラウド)ごと吹っ飛ばす威力。 射程はよくわからないが城の中で撃ったら城が崩壊したのでそのくらいか 一撃撃ったら気絶した(ただしその時は満身創痍だった)ので連発は無理と思われる ギガデイン:10mほどのクレーターを作る電撃を幾つも落とす。 設定上ライデインより強いはず。射程2~30m。叫ぶと同時に発動 おそらく威力はギガスラ>ギガデイン>ライデインか (※)イオラ:数十匹の魔物を一掃したり、洞窟を吹っ飛ばす威力の爆発呪文。(テリーのテンプレ参照) 【防御力】イオラの直撃を喰らっても戦闘続行可能。 自分のライデインをはね返されて直撃し、地面をえぐる竜巻(多分先鋒のチャモロのバギクロスと同等)で上空に吹っ飛ばされ、 さらに十数mの高さから地面に叩きつけられたが戦闘続行可能だった。 アストロン:自らの体を鋼鉄(のようなもの)に変える防御呪文。発動中は行動不能になるが、 発動中は周辺100mぐらいを覆う大爆発(次鋒のメラゾーマ砲の直撃)でも無傷。発動は一瞬。 【素早さ】残像出せるやつ(テリー)の動きを目で追え、最終時点では攻撃を受け止めることができた。 味方に向けて同時に撃たれた矢(数十本以上)が2~3mに迫ってから、 割りこんで全て剣で切り払える反応速度。移動速度は達人並か 【特殊能力】兜の太陽の紋章で呪文効果を焼き払えるらしい。それで百人ぐらいにかけられた催眠呪文を解いた。 瀕死になったとき、離れたところにあった鎧・盾・兜が飛んできて傷を治してくれたことがある。 【長所】攻防のバランスが良い。 【短所】同じ技でも威力の描写にムラがある 【戦法】初手ギガデイン、遠いならライデイン。ダメならギガスラ 参考 ttp //mediatorweb.web.fc2.com/template/00140000/dq6.html vol.123 302格無しさん2018/10/23(火) 09 16 57.86ID qKZolkB8 (省略) エレ・ラグ 空牙の弾速が不明 神移の移動速度も不明 むろみさん(OP映像) 移動しながらどの距離から潜水艦や魚を避けたり攻撃したり自由に行動できるのか不明 スラきち 炎やギガディンの弾速不明 シェリスエルネス・ザーバッハ 弾速が書いてない ボッツ 参考テンプレが開けん レッドマン レッドビームの弾速が無い ロックマン 武器エネルギーの消費とかが書いてない カグヅチwith楯祐一・鴇羽舞衣 弾速が書いてない ラチェット 武装に弾速が書いてないのがある 5スレ目 423 :格無しさん:2007/08/26(日) 22 48 29 ボッツ考察 ○上田虎之助 ギガスラッシュ勝ち ○ゴジラ 同上 ○クロ 同上 ○レッドマン 同上 ×スラきち 速い 炎で削られ負け ×高町なのは 飛ばれて負け ○ヴェイグ ギガスラッシュ勝ち ○レイアース 同上 ×閣下 何度も体当たり食らって負け ×シレン 白紙:もんすた負け スラきち>ボッツ>レッドマン
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1980年7月26日生まれ アメリカ・カリフォルニア州出身 08年7月入団の巨漢スイッチヒッター。DH。 来日当初は巨大扇風機と揶揄されたが尻上がりに調子を上げ、10月はなんと打率10割。 貧打ハムの救世主として狂信者の期待を一身に背負うものの、09年は鎌ヶ谷の妖精と化しつつあったが6月に久々の一軍登録。 グランドスラムを残しふたたび鎌ヶ谷に帰還、シーズン終盤ふたたび一軍に戻り狂信者を喜ばせたが、シーズン終了後契約終了が発表された。 独身。…であったが、09年8月16日、出産に立ち会うため一時帰国したことで婚約者の存在が明らかになった。…って夫人とする報道も。独身じゃないのはわかった、籍は入れたのかまだなのか? すべては謎のまま、インフル禍に伴い急遽再来日。その男気に感じ入った住民も少なくない。 で、どっちなの? 好きな日本食はうどんとラーメンとシャケご飯。 ぴの、工藤ちゃんをいじるちびっこ好き。 母ちゃん美人。 左ボッツには夢があり、右ボッツには希望がある。 左ボッツには夢がある♪ エピソード 09年春季キャンプで梨田監督からバッティングのコツを蕎麦屋の出前に例えて説明されるが、アメリカ人のボッツに蕎麦屋と言われても…。まずは通訳がそばとうどんの違いを説明するところからスタート でつとなかよし。おんぶもする。 ぴのとハイタッチの時は手を高々と上げ、ぴののジャンプ力を堪能 ボッツ巨人伝説 お立ち台の屏風が低すぎる 腕を思い切り振ったらホームベースに届く 試合終了後のサインボールを直接外野のお客さんに手渡し 地球と太陽の間に割って入ると日蝕が起こる どんでんが端から端まで楽しんだはずの雪祭りつどーむ会場、実はボッツの手のひら からくりドームでバッターボックスを外す時に上げた手がシゲオのセコムの広告にぶつかる からくりドームで空振りすると回転扉がグルングルングルン バッティングのコツを教えてくれたひちょりに恩返しするため北海道新幹線用の第二青函トンネルを素手で手掘り 札ドの試合に登板する時はいったんドームのフタを空けて壁をまたいで入る 09リーグ優勝祝勝会場、実はボッツの手のひら
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【名前】 ゾータク 【読み方】 ぞーたく 【声】 川津泰彦 【登場作品】 特捜戦隊デカレンジャー 【登場話】 Episode.32「ディシプリン・マーチ」Episode.33「スワットモード・オン」 【分類】 アリエナイザー 【出身星】 ボッツ星 【罪状】 組織犯罪による大量殺人、及び宇宙警察官略取の罪 【ジャッジメント】 デリート許可 【出身星の由来】 壺もしくはウツボ 【名前の由来】 角野卓造もしくは川谷拓三 【詳細】 星に住む全ての民が穴があったら入りたくなる習性を持つというボッツ星出身のアリエナイザー。 ズンダーズファミリーのドン・サノーアの忠実な部下であり、その強力な腕力を買われてボディーガードとして取引に同行することが多い。 だが、おっちょこちょいで居眠りや遅刻を繰り返し、サノーアには毎度怒鳴られていた。 だがその戦闘能力は本物で、マッスルギアの光学迷彩を自在に使いこなし、ギアによって増幅された超怪力でデカレンジャーを退け、サノーアの奪還に成功。 そのままドギーとテツを人質にとって立てこもった。 スワットモードとなったデカレンジャーも以前と同じように透明化能力で倒そうと近づいたが、熱感知システムで居場所を探知され、集中攻撃を受ける。 その後、サノーアと共に屋上へと追い詰められたあと、デリート許可の裁定が下り、ディーリボルバーマックスパワーを受けサノーア共々デリートされた。 ボッツ星人は腕や首が太く、特に腕力が発達しているが、機敏な動きはあまり得意ではない。 そのため頭部にある4つの目を駆使して、危険がないかをいち早く察知する能力を得た。 一度に360度全てを見渡すことができるので、ボッツ星人には死角というものが存在しない。
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【名前】 ゾータク 【読み方】 ぞーたく 【声】 川津泰彦 【登場作品】 特捜戦隊デカレンジャー 【登場話】 Episode.32「ディシプリン・マーチ」Episode.33「スワットモード・オン」 【分類】 アリエナイザー 【出身星】 ボッツ星 【罪状】 組織犯罪による大量殺人、及び宇宙警察官略取の罪 【ジャッジメント】 デリート許可 【出身星の由来】 壺もしくはウツボ 【名前の由来】 角野卓造もしくは川谷拓三 【詳細】 星に住む全ての民が穴があったら入りたくなる習性を持つというボッツ星出身のアリエナイザー。 ズンダーズファミリーのドン・「カラカズ星人 サノーア」の忠実な部下。 強力な腕力を買われてボディーガードとして取引に同行する事が多い。 だが、おっちょこちょいで居眠りや遅刻を繰り返し、ボスのサノーアには毎度怒鳴られていえう。 戦闘能力は本物でマッスルギアの光学迷彩を自在に使いこなし、マッスルギアによって増幅された超怪力でデカレンジャーを退け、サノーアの奪還に成功。 そのまま「アヌビス星人 ドギー・クルーガー」とテツを人質にとって立てこもる。 宇宙での訓練で変身できるようになったスワットモードのデカレンジャーを以前と同じように透明化能力で倒そうと近づいたが、熱感知システムで居場所を探知され、集中攻撃を受ける。 その後、サノーアと共に屋上へと追い詰められた後、デリート許可の裁定が下り、「ディーリボルバーマックスパワー」を受けた事でサノーアと一緒にデリートされた。 ボッツ星人は腕や首が太く、特に腕力が発達しているが、機敏な動きはあまり得意ではない。頭部にある4つの目を駆使して、危険がないかをいち早く察知する能力を得た。 一度に360度全てを見渡す事ができ、ボッツ星人には死角というものが存在しない。
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ジェイク・ラ・ボッツをお気に入りに追加 ジェイク・ラ・ボッツのリンク #blogsearch2 ジェイク・ラ・ボッツとは ジェイク・ラ・ボッツの54%は利益で出来ています。ジェイク・ラ・ボッツの29%は睡眠薬で出来ています。ジェイク・ラ・ボッツの14%は夢で出来ています。ジェイク・ラ・ボッツの2%は勢いで出来ています。ジェイク・ラ・ボッツの1%はハッタリで出来ています。 ジェイク・ラ・ボッツ@ウィキペディア ジェイク・ラ・ボッツ ジェイク・ラ・ボッツの報道 gnewプラグインエラー「ジェイク・ラ・ボッツ」は見つからないか、接続エラーです。 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 ジェイク・ラ・ボッツのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ジェイク・ラ・ボッツの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ジェイク・ラ・ボッツ このページについて このページはジェイク・ラ・ボッツのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるジェイク・ラ・ボッツに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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#1『初年特待生ボッツ』 原案 蒼衣わっふる 著 五目のマサ 登場人物 ・ ボッツ・フォン・ラーバ 本作の主人公。リューリア地方の馬賊出身で、ラーバ家長女。親と似て運が悪い ・ マンリ・ソート ボッツの学友。ヨダ地区山岳地帯の山賊出身。小柄で短気 ・ ドミトリェヌ・ソヌベバリ・クレシュエンコ 通称ドミトリかドミー。ボッツの学友。帝都地下犯罪組織トーロック団出身。策謀家 ・ フレッド女史 ワフラビア女学園の教師で元軍人。ボッツたちに教鞭を執る ・ ルラーシ三姉妹 ボッツたちとよく連む姉妹、ネネツ地方の雪賊出身。常に三人でいる ・ 特待初年生たち 多かれ少なかれ、ボッツたち同様の賊出身者たち。身内意識がべらぼうに硬い 空一面を朝焼けが赤く染め抜き、その輝きに合わせるかのように朱色の機影がゆったりと雲の合間を飛んでいく。 その丸まった硝子天板と、帝国期には珍しい平たい両翼は遊覧飛行に相応しい速度で、漂うように帰路に就いていた。 機内では昨晩から飲み明かした飲んだくれたちが、機体の貨物室で眠りこけていて、その数は9人ほどになる。 皆、一様に帝国軍人めいた朱色の軍服を辛うじて着てはいるが、その着衣はひどく乱れており、あられもなく胸元を開き、半ば下着姿で機内に備え付けられた簡易ベッドで寝息を立てている者もいれば、未だに酒瓶を手にして手酌で飲んでいる者もいて、手狭な貨物室で紫煙を吹かしている者もいた。 この怠惰な様子から、飲み帰りの兵を満載している点について良くある風景なのではあるが、その兵たちは皆が皆してうら若い女性士官たちであることが少々、奇異であるかもしれなかった。 歳の頃はほとんど二十代も終わりかけで、彼女等の羽織っている程度に着こなしている軍服は、一般的な空軍の物よりも、装飾に富んでいる。 金糸や銀糸の刺繍で家紋めいた模様を袖や胸を彩り、中には背中一面に家紋を示している者までいるが、一様に彼女等は礼装に乱れた雰囲気を持っていることから、中流から下流の帝国貴族の令嬢であることがうかがえた。 しかし、そんな不良めいた連中の中でも、一際(ひときわ)異彩を放っているのが操縦席に収まって桿(かん)を握っている女であろう。 背は高いが痩せぎすで、その撫で肩に軍服を掛けているが、腰まで垂れる長い金髪は手入れもおざなりなのか、ひどく乱れている。 そして、その乱れた髪の中から覗く顔には、特徴的なまでのムカデ傷が小麦色の頬に走り、帝国人たる識別章にも似ている。 瞳は細長くて剣呑な色を帯びているが、口元には人を小馬鹿にするような薄ら笑いが常に張り付いていた。 朱色の長いスカートには所々に染みや汚れが浮かんでいるが、仮にも淑女であろうと野次を飛ばすような輩を黙らせる為か、腰の左右には反りが強く長い軍刀と、男の士官でもまず携行しないであろう大型拳銃がつり下げられており、こんな奴の肩に弾帯まで掛けられていれば、それは軍人というよりは武装した遊牧民か『馬賊』のソレを思わせた。 「──…ボッツ。そろそろ、着く?」 そんな風に馬賊な操舵手に背後から、貨物室から抜け出してきて声を掛けたのは、彼女よりはある程度、小柄ながらも茶色い髪を短く切り揃えた、活発そうなとまだ形容できそうな娘であった。 しかし、この娘もよくよく見れば頬や顔に刀傷と思わしき痕が点々とあり、その物騒な面持ちからは彼女と同様の色がある。 「あら、マンリ。早起きじゃない?酔いつぶれてると思ったのに。えぇ、あと少しよ」 頭だけをわずかに動かして、ボッツはそう薄ら笑いを浮かべて、マンリと呼んだ茶髪の娘を見た。 「まだ、頭が痛いわ。ドミトリがバセンの銘柄なんて、頼むからいけないのよ。あんな物、クルカの小…」 「───それ以上は言うんじゃないよ。汚い言葉は飲み込んだ方が良い」 マンリが小さい頭を抱えながら、愚痴のような事を喚こうとしたところで横槍が入った。 見れば、横の窓際に背を預けて立って口へ煙草を咥え、今から火を点けようとしている、ほとんど同じ服装の女がいた。 髪の長さはボッツと同様に長いが、ボサボサとただ伸ばしきっただけの彼女と比べれば、その黒髪はよくよく整って美しいとも言える髪の艶(つや)をしていた。 「なにさ、ドミトリ?元はと言えば、アンタが景気づけとかなんとかいって、頼んだんじゃないの。そのくせ支払いはこっちに付けさせてさ」 「それはバボリの負け分ということだ。安い物だろう?」 等と小柄なマンリが長身のドミトリに噛みつく様子を尻目に、ボッツは口元に陽気な薄ら笑いを浮かべる。 「いつまで、この前の負け分を引っ張るのさ!もう、あんなものとっくにチャラに決まってるでしょ?!次に店船に行ったら、全部、アンタに支払い押しつけてやるんだからね!」 マンリがドミトリの足下できぃきぃ喚いていると、押っ取り刀で他の連中も貨物室で起き始め、鈍く頭をもたげている。 剣呑な目をしていながらも、マンリとドミトリのやり取りが恒例のことであるので、皆ニヤニヤと眺めている。 「それなら、それでいい。どうせ、またバボリをすれば負けるのは君だけさ」 いくらマンリが喚いても、ドミトリは飄々(ひょうひょう)とした態度でそう返すものだから、皆ははしたない声で笑ったし、操縦桿を握るボッツも愉快そうにして 「まぁ、その辺にしなさいよ、ドミトリ。先生みたいな事を言うわけじゃないけど、皆そろそろ服をちゃんと着た方がいいわよ」 ボッツがそう言うと、ヘラヘラしながら彼女等は軍服を正し始める。 しかし、元から崩れているために、幾ら直そうと大して意味はなさそうだった。 「別にまだ休暇扱いなんだから、そんな気にしなくたっていいんじゃないの?」 いい加減に喚くことに飽きたマンリがそうボッツを見上げて聞いてきたが、彼女は返事の代わりに操縦席正面に見える窓から景色を指差した。 窓の向こうに見える景色には朝焼けに染まる朱色の雲たちの群れがあり、その合間に細長い雲たちと色を合わせたかのような朱色の空中艦隊が漂っている。 その艦隊の艦船たちは、どれ一つとっても見事なまでの威容を誇り、上流貴族たちの物と思わせるが、彼女たちが目指す艦はその中でも最も小さくみすぼらしい物であった。 「ただの休暇だと思われたならいいのだけどね。どうやら、夜伽(よとぎ)船に行ったのがバレたみたいよ」 そうボッツは平静にそう言ったが、口元は少し苦くなっていた。 この機体から目指す艦まで、相当な距離があり、その甲板の上にある物は豆粒よりも小さく見えたが、視力が出自からして鍛え上げられているボッツには何があるのかしっかり見えていた。 「上級生の連絡船が二隻も停まってる。きっと今頃、先生に告げ口しているところじゃない?」 「えー?!なんでよー!しっかり外出許可だって誤魔化したし、ルラーシの実家にだって口裏合わせた筈でしょ!」 マンリがまた足下で喚きだしたが、そこへドミトリが紫煙を吹かしながら歩み寄って窓を覗いてきた。 「あぁ、それは簡単だ。彼奴らもいたんだろう。あの船なら離着所で見た」 「だったら、同罪じゃないの!」 「そうもいかない。連中は上級生で上流貴族だからお咎め無しさ」 「不公平だわ!」 紫煙を吹かして腕を組むドミトリへ、マンリが怒り始めるがこれはどうにもならないと言うことは、皆わかっていた。 ワフラビア女学園は明確な縦社会であり、中流以下の貴族生徒はまず、上流貴族に対して学年が上だろうとなんであろうと文句が付けられず、それは学園の運営側も同様なのであった。 「──処分はどうなるかしらね?」 ボッツはマンリが怒りすぎて暴れだしそうになるのも無視して、ドミトリへ声を掛けると彼女は平静に答えた。 「まだ入学してから3ヶ月だし、上級生は下級生をいたぶるのが伝統だ。脅しに使うか、精々、気晴らしにビンタ程度だろう」 「あ、そう。やっぱり娑婆(しゃば)って温いわね」 ドミトリの言葉にボッツは安心した声音で返し、それを聞いて一同もなんだそんなことかと、元から気にも留めた訳でもないが、着こなしを正す手を止めて、暢気に酒瓶を傾けたり、煙草を吹かし始めていた。 入校したての初年生たちが3ヶ月ほどの艦隊演習で用い、寄宿舎としても使用する帝国空軍の時代遅れも甚(はなは)だしい戦艦の甲板は、連絡機の発着を優先して砲台などがほとんど取り払われていた。 そして、今か今かと不良生徒たちの帰還を待ちわびていた上級生たちは、いざ甲板にゲラァがゆっくりと着陸し、新入生たちが降りてきた時、肝を冷やしてすぐに自分らの艦へと逃げ帰りたくなった。 三ヶ月前の入校式は盛大に執り行われ、地上にある学園の大広間で行われたこともあって、上級生たちが間近でボッツたちを見たり関わったりすることは今回が初めてであった。 元々、今年の入校生たちはどうも妙な輩が多いと、噂話に聞いてはいたのだが、どうせ実家の方でしか威張れない、井の中の蛙か小山の大将ぐらいの連中だと見下していた。 その為に、位の違いという物を肌で味合わせてやろうと、彼女等は意気込んでいたぐらいだった。 だが、そう長くもない飛行甲板に上手に着陸した機体から出てきた連中は、上級生たちよりも随分と歳を食っていたし、校則など知ったことかとばかりに皆一様に軍刀どころか小銃まで肩に掛け、中には対空ランチャーまで軽く持っている者までいる。 「止まりなさいっ!」 と、厳しく声を掛けたところまでは良かったが、所詮、お嬢様育ちの上級生たちにとっては、この手の野蛮人と対峙するのは生まれて初めての経験であった。 「その格好は何事なの?」 上級生たちの中で最も年かさのある生徒が、震えるような足取りで一同に寄ってきて、詰問したが、その声音も震えきっていた。 詰問するというより、それは恐怖から来る質問だった。 「えぇ、休暇届けにはルラーシ家の保有領で自主軍事教練と提出致しましたが、…何か不都合でも?」 問いに答えたのはドミトリで、彼女は一同の中で最も身の丈があり、刃物の様に鋭い切れ目には何を喋っても相手を威圧する効果があった。 お嬢様学園と言っても、元々は貴族軍人を育成する旨も含まれているために、軍事教練を休暇届の内容欄に記載すること自体は珍しいことでも何でも無かった。 しかし、それは大半が適当な理由が見つからない際の言い訳であることは暗黙の了解であり、上流貴族であろうと、下級貴族であろうと、その手のことは下々の取り巻きにさせることであった。 「そんな言い訳を上級生の私にするつもりかしら?貴女たち、数日前から、いかがわしいお店にいたんではなくて?」 ドミトリの言い分を聞くと、上級生は勝ち誇ったかのように、震えていた声音に張りを取り戻した。 その様子は如何にも決定的な証拠を突きつけたぞといったものであったが、そんな自信ありげな彼女の顔をドミトリはなんてことはないといった調子で 「えぇ、それは仲間内の打ち上げに使ったまでのことであって、わざわざ記載する必要までもないことかと思いまして」 そう平然と返した。 実際にうら若い下級生連中が風紀の乱れが甚だしい店に行ったというなら、詰るお題目が付きもするのだが、ドミトリはとっくに二十代も後半に差し掛かり、少女というには随分と無理があり、他の者も同様であった。 下級生という縛りはあっても、彼女等は年齢的に特待生の扱いであることを、上級生たちは完全に失念していたのだ。 しかし、ここまで乗り込んできて、むざむざと引き下がるわけには上流貴族なりのプライドが許さなかった。 だが、それでも上級生の足がひどく震えているのは、明朝の甲板が冷えるからだけではないようだった。 「口を慎みなさいっ!上級生に向かって!」 そうやっとのことで口を開くと、ドミトリに対して間髪入れない制裁とばかりに上級生は平手打ちを見舞ってきた。 本来なら容易く躱せる様な勢いであったが、ドミトリは平然と右頬にそれを受けた。 それと同時に上級生が平手打ちをした手を押さえて唸った。 やんごとなき貴族が打ち据える物は柔らかい物と相場が決まっていたが、ドミトリの表情筋は岩のように硬い上に、鮫肌の様にざらついていた。 後者に至っては特異体質というわけではなく、頬に刻まれた偽造認識票を彫り込んだ未熟な彫り師の腕前による為だった。 「御姉様、如何なされました?」 片手を押さえて痛みに呻いた上級生を見下ろして、ドミトリは皮肉たっぷりに声を掛けた。 それを見てボッツたちも愉快な嘲笑を隠しもせずに顔に出してくるので、この上級生は恐怖と痛みと恥辱と怒りに苛まれながら、矛先をそちらへ回すことにした。 「貴女たちも何を見ているの?!そこに並びなさいっ!」 口から泡を吐くような勢いで、痛みを堪えながら上級生は立ち上がり、今度はボッツたちの方へとツカツカと歩み寄れば、無理に彼女等を横一列に並ばせて順繰りに平手打ちを意地でも行おうとする。 しかし、その光景は最早、上級生に対して哀れみを誘う形となり、平手を打つ度に逆に小さく彼女の方が呻きと悲鳴を漏らすのである。 3人目までは辛うじて彼女の手のひらは貴族の誇りによって耐えていたが、4人目に偶々並んでいたルラーシ三姉妹の三女で、完全に指が曲がってはいけないところまで曲がった。 それと同時に上級生は声にならない声を上げて、勝手にその場に崩れ落ちて失神した。 「…倒れちゃったよ?」 平手打ちを受けた三女は、一同の中で最も若かったが、全く動じた気配も無く、逆に同級生たちに処置をどうしたものかときょとんと困惑した様子だった。 これにはボッツたちも同様に困惑した。 ここまで貴族の手が脆(もろ)いものとは思っていなかったのだ。 「この場合は私たちが罰せられるのかしら?」 「わかるわけないだろ。私は校則書の字引じゃないんだから」 ボッツの問いにドミトリは肩を竦めて見せた。 ただ、ボッツたちの困惑と比べて、上級生たちの狼狽は散々な様子で殺されると口々に恐慌状態のように悲鳴をあげて、我先に甲板に乗ってきた連絡船に乗り込んでは、失神した上級生を放置して逃げ出していってしまった。 「…貴女たち、何を為ているのです…」 甲板の失神した上級生が起きないかと、小銃の銃尻でマンリがつっついているところで、消え入りそうな低い声が一同の背後から聞こえた。 上級生たちに対しては微塵も動揺した様子を見せなかった荒くれ者の一同だったが、その弱々しい声の主が厳しく此方を咎めるような目をしているのを見るとたじろいだ。 「フレッド先生…これは、その…」 応対したのはボッツであったが、先程とは打って変わって気の弱い態度に変わっていた。 彼女と一同の前に現れた人物は老齢の女性であったが、しっかりと背筋を伸ばし、此方が先生と呼んだだけに着ている軍服はソレらしい装飾の施された物だ。 軍隊の階級を示すかのように肩章には尉官に準じた飾りが、朝焼けに輝いている。 「…言わなくても、大体のことはわかります…。入学してからまだ間も無いというのに…困りますね…」 フレッドと呼ばれた教師は、純銀とも言えるような輝きをしている白髪を、頭の後ろで丸く束ねており、その顔には実年齢よりも遙かに多くの皺が刻まれている。 その顔はお伽噺の魔女とはこうではなかったかと思わせるような、不気味なほど影があり、そこには学業で身を立てた人物には決してあり得ない気配を感じさせる。 「でも、先生!無理矢理、殴ってきたのは向こうの方よ」 先生の足下でマンリが抗議をしたが、背の高い教師はこの小柄な生徒のことを完全に無視した。 「仮にそうだとしても、口実を与えたのは貴女たちです…。とにかく、後のことは先生に任せなさい…」 彼女はそう途切れ途切れに弱々しい声ながらも、しっかりと彼女等を威圧した。 この場において彼女に抗える者は誰一人としていなかった。 フレッドこそ、帝国軍叩き上げの退役軍人であり、この見てくれだけは女性生徒の荒くれ者共を取りまとめ、恫喝し指導できる数少ない存在であった。 「まぁ、仮にも反省しているような態度は見せた方が良いですね…。皆さん、甲板を20周してなさい。…終わったら報告を。それまで船室に戻らないように…。見ていますからね?」 そう一同に言いつけると、フレッド女史はその枯れ木の様な見かけからは想像も出来ない力で、軽々と失神した上級生を抱き起こし肩に担ぎながら、甲板から艦橋へと去って行く。 それを見送るまでもなく、ボッツたちはすでに慌てたように甲板上を有無を言わせず走り出していた。 船上ということもあり強風が吹き付けていて、歩くことすら難しくさせているが、それでもフレッド女史の命令は絶対とばかりに、ボッツたちは顔を青くして走り出していた。 そして、その暴風とも言える中、甲板を完全武装で整然と走っている連中の姿を、逃げ飛ぶ連絡船から見た上級生たちは更に顔を青くしていた。 「──ドミトリェヌ・ソヌベナリ・クレシュエンコ初年生班長。以下9名。甲板走20周、終了しました」 暫くしてから、汗をかいてはいるが、ごくごく平静な面持ちでドミトリが艦橋でフレッド女史の前で報告を行った。 彼女は報告を聞いて、特に感情を読み取らせないような表情で静かに頷き、艦長席と思わしい椅子に腰掛けていた。 そして、その横では先程の上級生が直立不動の姿勢を取らされていた。 先程に折れた指の方はと言えば、女史が手当を施したのか短く小さい当て木に包帯が巻かれている。 「宜しい。…どうですかね?懲罰としてはこれで大目に見て貰えないでしょうか…?」 彼女は静かにそう言うと、上級生のほうを意味ありげに眺めた。 フレッド女史の視線を向けられると、上級生は死にかけのクルカのように素っ頓狂な短い悲鳴を漏らしつつ、首を何度も縦に振ってくれた。 「ありがとうございます…。では、私の方から寄宿艦のほうへお送りしましょう…」 そういって先生は憑きものが落ちたような上級生を送ろうと席を立ち、一同には船室に戻って良いとの許可を退室間際に告げた。 「あれは先生に絞られたに違いないわ」 マンリは二人が退室すると愉快そうに言い、ある程度、怒りが収まった事にご満悦のようだった。 「若しくは『事故』が起こるとでも警告されたかもね」 ドミトリがそう返すと、一同は下品に笑いながら、酔い覚めの一運動に満足げに船室へと戻っていく。 しかし、その中でボッツは、艦長席の長机に並べられた写真立てを一瞥してから退室した。 その写真には恰幅の良い戦翼乗りと思わしい男が映っていて、ふてぶてしい笑みをこちらへ向けてきている。 ゆで卵を思わせるかのような禿げ上がった頭と笑みが滲む目元。 それはボッツが幼い頃から憧れた、今は亡き英雄のまだ若い時分の肖像であった。 艦橋から一階層下ると、そこは既に生徒たちの居住区である。 この艦を運航するためには80名弱ほどの人数が必要だが、その内の半数がボッツたちのような生徒であり、あとの半数が正規軍から雇い入れた物騒な用務員たちとなる。 その為、生徒とは言え艦の運航に必要なための作業を学び、働いているのが実態であった。 本来であれば、上級貴族や中流貴族生徒たちはその様な事を行うわけも無く、家事に雇い入れた者たちが担当するのだが、下級貴族たちはそんなことも出来ず、学業と訓練と実務が混然一体となっている。 しかし、ボッツたちのような生徒の大半は艦の運行作業について入校する前から、ある程度、実家の方で習熟していた。 それは適当な訓練を受けたというよりは実地で行ったものばかりで、戦闘行動については内地の現役よりも遙かに卓越していると言って良い。 元々、下級貴族と言うのはほとんど名ばかりで、その実態は空賊や山賊に馬賊といった犯罪勢力と武装勢力の相半ばの似非貴族の娘たちだったのだ。 そもそもワフラビア女学園は由緒ある帝国貴族の子女たちが入校するものであるが、ボッツは一応、中流貴族に位置する『ラーバ家』の出ではある。 しかし、それもほとんど名ばかりで、家の実態は帝国中央部に広がるリューリア草原地帯で暴れ回っている馬賊が帝国との繋がりを持とうとして、暴力と贈賄の数々でここ数十年の内に名ばかりではあるが、仮にも地方貴族に無理矢理成り上がった家であった。 だが、形なりにも貴族であるのだから、ボッツに関しては辛うじて入校が容易で、こうして兵器に過ごしているのだが、後の二人は更に得体の知れない実家を持っている。 マンリは帝国の誇る精強な造船区画であるヨダ地区の出身となっているが、彼女の実家はヨダ地区から東にある山岳地帯にあり、実態は付近の空域を通過する輸送船を対空砲などで撃墜しては物資を奪い尽くす山賊であるという見方が強い。 そして、一方のドミトリの実家は空賊稼業とも帝都地下で暗躍するマフィアであるトーロック団と深い繋がりがあるという話で、この二人は正確には貴族ですらない。 それでもこの二人が暢気にワフラビアで勉学に勤しめる理由は、実家からの無言の圧力と饒舌な多額の贈品によるものであった。 居住区に入ると、勤務帯から解放された同級生たちとボッツたちは出くわした。 彼女等もほとんどこちらと様子は変わらなかった。 こちらは汗だくで、むこうは生体器官の液塗れであった。 液塗れの方は薄汚れた作業着姿であったが、妙に匂う点ではお互い様だった。 「なんだい?アンタ等、休暇に行ってきたんじゃないの?」 作業着姿の同級生の一団でリーダーらしい生徒の一人がボッツに声を掛けてきた。 「途中まではね。帰ってきたら、上級生にケチつけられたのよ」 「あぁ、それでさっき悪趣味なドン亀が二隻も飛んできたのね」 リーダーは合点がいったように言ってから 「特に連絡も聞いてなかったし、何だったら撃ち落としておけばよかったわね」 と暢気に言ってのける。 「いいわよ、別に。どうせ、アンタ等の腕じゃデブなクルカだって撃ち落とせやしないわ」 「言ってくれるじゃない。そーいうアンタはスクムシだって捕まえられないわ」 肩を竦めながら、ボッツが軽口で返すと向こうもそう返してくるので、疲れた笑いを返して船室へと戻っていった。 各々が船室に戻ると同時に、すぐにシャワー室の争奪戦に打って変わったが、これを辛うじて制したボッツは三人共同生活の狭い船室に戻り、続いて戦争から帰ってきたドミトリを吐き出した紫煙で迎えた。 「やっぱり、ドンケツはマンリかしら?」 「いや、今日はルクレシオだ。マンリは下から五番目さ」 「それは善戦したわね」 湯上がり姿のドミトリに早速、煙が吹き掛かっているが、そんなことは二人とも気にしなかった。 三人共同で一部屋の船室は、本来は二段ベッドが二つ左右に備え付けられている四人部屋であったが、寝台の一つを荷物入れとして使える点が、唯一の女学園要素かもしれなかった。 「善戦と言えば、あの上級生は少し根性があったね」 ドミトリは思い出すかのように呟きながら、三人で共用机の上にある煙草缶から一本引き抜いては、ボッツの咥え煙草を無遠慮に指先で取って火を点けて吸い始めた。 「アンタを叩いたところで音を上げると思ったのだけど、ルラーシまで耐えるとは見上げたもんだったわね」 ボッツはその煙草をドミトリから返して貰いながら、二人で狭い部屋の中を紫煙で満たし始める。 共用机の上には煙草缶の他に手のひらほどの酒瓶が二つ並び、ゲラァの船内で話が出たようなバボリと呼ばれる絵札が散乱していた。 「中途半端に根性があると、きっとそれだけ執念深さもあるというものだ。ボッツ、今回の一件は尾を引くぞ、きっと」 「?なんで、私にそんなことを言うの?連帯責任でしょ?アンタも一緒よ」 意味ありげな顔をしてそんなことを言うドミトリに対し、ボッツは怪訝な顔をしてみせる。 確かに纏めて怨みを買うことは予期していても、自分だけにソレが来るとはあり得ないと思っていた。 「いや、あの上級生は確か、デシュタイヤ家の番犬という評判で、それも戦翼科だ。私たちの中で戦翼科を専攻してるのは君だけだろう?」 「よく知ってるわね」 「噂好きなんだよ、私は」 得意げな顔をするドミトリへ、ボッツはくたびれた顔を返し、小さく唸った。 「じゃぁ、なに?奴が私に仕掛けてくるって?機体に細工してくるとか、空の上で?」 「それは有り得るね。そうだな…」 ボッツの問いかけに、ドミトリは煙草を一頻(しき)り吸い終えてから、机の上の灰皿へ押しつけて消すと、腕を組んで少し思案に耽りだした。 その顔はどことなく楽しげな様子が、ボッツには彼女が策略好きの帝都を根城とするトーロック団が出自であることを再認識させた。 「まぁ、学園にはイシュタイヤ家が強く入れ込んでいるからね。この艦から出れば、何処でも消しに掛かれるんじゃないかな?」 ドミトリは空恐ろしいことを平然と言うが、特にボッツは気にも留めずにまるで他人事のような態度だった。 「それはアンタの実家のやり方じゃないの。もうちょっと貴族的に考えてよ」 「じゃぁ、君はどう思うんだい?」 「執念深い貴族って言うなら、多少はプライドがあるはずよ。闇討ちよりも、もっと公の場で始末したいはずじゃないかしら。そうなってくれば決闘しかないんじゃない?決闘なら幾らでも事故の言い訳は立つでしょ」 「なるほど。確かにボッツなら、誤射をして撃ち落としても言い訳は立ちやすいね」 ボッツの答にドミトリは皮肉な笑みを漏らして頷いた。 命が狙われるかもしれないというのに、全く危機感に欠けた調子で話しているが、それは事実に対しての認識が甘いからではなく、この手の事を心から楽しみを覚えてしまう生い立ちのせいであった。 そのせいか、可能性の話題を話し合いはじめ、二人は煙草がしっかり3本ぐらいは吸い終えるほどの時間を使った。 「私は面倒な事は考えずに、すぐにまとめて片付けようとするけどね。さっさと戦闘機でも引っ張り出して、ここを蜂の巣にでもしてしまうわ」 暫くすると、船室の入り口に立って、まだ体から湯気を立ち上らせているマンリが二人の談笑に待ったを掛けた。 それを聞いて、ドミトリは低い笑い声をもらした。 「それこそ、私たちの考え方じゃないか。それは下品過ぎる。もっと上品にするだろう?」 一笑に付そうとしたが、何か感じたのかドミトリの顔から急に血の気が引いた。 「待て、なんで、そう思う?」 ドミトリがそう聞いたのは、普段からマンリは提案をする側ではなく、実行する役割を果たしていただけに意外だったのであることと、先ほどまで、話に夢中になっていて気付かなかったが、窓の外から低い風を切る様な音が迫っている気配を感じたからだった。 「そりゃ、簡単よ。外にいるもの」 そう言うや否やマンリは床に身を伏せて、こちらもそれに倣(なら)って素早く床に身を押し付けた。 それと同時に船室の窓や壁が凄まじい爆音と共に、煙や破片を撒き散らし、三人の頭上を機関砲の射線が走った。 咄嗟にマンリが伏せなければ、三人そろってミンチになっていただろう。 伏せながら視線を破壊された窓の外へとやると、雲の中から機首を此方へ向けて、飛び出してきたグランビア戦闘機が見えた。 こうなってくると三人の対応は素早かった。 船室に戻っても腰から銃を外さない習慣を持っているボッツは、伏せた姿勢のまま器用に拳銃嚢から大型拳銃を引き抜くと、狙いも付けずに船外の戦闘機へと連射を見舞う。 大して効果はないだろうが、目標が抵抗してきたことに僅かの合間だけだが、刺客のグランビアには牽制になった。 ボッツが拳銃をやたらめったら撃ちまくっている間に、ドミトリとマンリは伏せたまま船室の床下を漁って、日ごろから備えてある『VM75 マジソンス軽機関銃』を引っ張り出しては、ドミトリが装着されたままの銃剣を残骸に斬り込んで据え、マンリが給弾ベルトを引き延ばす。 「すぐに殴り込みだなんていい度胸ね!」 ボッツが叫びながら拳銃の弾倉を交換する頃には、ドミトリ達は船外のグランビアに向かって対空射を行い始めていた。 この間まで十数秒だが、その間にボッツたちの隣部屋からも船室に空いた穴やら、窓を叩き割るなりして、銃を突き出しては各々に火を吹いては敵機を叩き墜とそうとする。 今度は刺客が泡を食らう番だった。 掃射を加えれば、事は済むはずだったが、この相手は正規軍並みの反撃速度を有し、居住区側面は一瞬にして対空銃座の群れと化したのだ。 すぐさま機体を反転させて、飛び去ろうとしている様子がボッツには見えたが、刺客を撃退しただけで万々歳するほど彼女は安くなかった。 「このままで済ますもんですか、ドミトリ!なんか、前に買った緑の筒、持ってついてきなさいっ!」 「ツェカドランチャーの事か?おい、やる気か?」 すぐさま、拳銃を腰に雑然と押し込むと、軽機に引っ付いているドミトリの肩を叩いて付いてくるように促す。 「当り前よ!刺客を逃がしたとあってはラーバ家の名が廃るわ!」 僅かに狼狽する様子を見せたドミトリにそう言い放って、船室から居住区に出ると別の部屋からも同じような様子の仲間たちが飛び出してくる。 各々に小銃から、拳銃まで多種多様な得物を持って飛び出してくる連中は暴れたりなくて仕方ないと言った様子で、誰もボッツたちの面倒事に巻き込まれたと正当な不平や文句を言うものは居なかったし、常に襲撃と報復の延々たる連鎖に慣れたこの雌狼どもには躊躇も恐怖もありはしなかった。 「絶対に叩き墜としてやるわ!ルクレシオ!フェンナー!鳥撃ちがしたかったらついてきなさいなっ」 そう呼び掛けると、飛び出してきた同級生はにやりと笑みを浮かべて答えた。 ボッツもこの時、彼女たちと同様に殺され掛けたというのに下卑(げび)た笑みを浮かべている。 そのまま、七、八人が束になって居住区から駆け上がり、甲板に飛び出せば待ってましたとばかりに彼女等の戦闘艇三機が船倉から引きずり出されていた。 整備を担当する雇い入れの整備兵連中もこの手の騒ぎが起これば、彼女等が真っ先に飛び出してくることはよく知っているし、それに応じて実家の方から特別報酬がでる仕組みが出来ているためにその動きは素早かった。 空には巨大な積乱雲の群れが漂い、身を隠してケリを付けるには最高の状況であるとボッツは思いながら、戦闘艇へ滑り込むように飛び乗った。 機体後方に備えた横開きの扉へ、続くようにドミトリが緑色の筒を担いで乗り込み、その後から軽機関銃を担いだマンリが続く。 仲間が乗り込むのを脇目に確認している合間に、ボッツは始動動作に入るが、機体側面にいた仲間の一機がこちらよりも素早く始動を終えて発進している。 「先にいかせてもらうぞっ!クソ野郎を見つけたら、教えてやる」 荒っぽい声が通信機から怒鳴り散らされ、それに急かされるかのように素早く発進した。 「頼むわ、ルクレシオ!お楽しみはとっときなさいよ!」 ボッツは飛びだった機に声を掛けながら、こちらも負けじと機体を浮かし始めたが、その際に艦橋から向けられる視線に彼女は気付いた。 馬賊の出自故によくよく鍛えられた視力で、それがフレッド女史であることを確認はしたが、今更引き下がるわけにはいかない。 「先生、きっと怒るわね」 同じく開け放った扉から不注意に顔を覗かせ、艦橋の方へ視線を送るマンリも彼女に気付いて少し肩を竦めて見せた。 「いや、褒めはしないが、咎めもしないだろう。あの人はそういう人さ」 「どういうことよ?」 ドミトリの言葉にマンリは小首を傾げ、その答えはボッツが知っていた。 「お袋の古馴染みなのよっあの人!同族じゃないけど、軍にいたときにムカつく上官を爆殺したことがあるとかなんとかで、お袋に助けられて恩があるとか・・・とにかく正当防衛ならケチはつけないように話は付いてるわ!」 「へぇ、先生にも若い頃があったのねー」 ボッツの説明にマンリはへらへらと笑いながら、軽機関銃を機体側面に据える。 その合間に機体はぐんぐんと機体は艦から遠退いて、やがて積乱雲の群れが形成する渓谷へと入り込んでいった。 刺客を追跡するために、空の猟犬と化した戦闘艇三機はそれぞれ別れて飛んでいた。 真っ直ぐに主の元へ逃げ帰るような愚はしないだろうと踏んだ為に、遠回りや反対方向へ飛んで此方の追跡を攪乱しようというぐらいの頭は回るだろうとボッツは考えていた。 「・・・いないわね。ルクレシオはなんか言ってる?」 開けた扉から、空へ落ちないように身体をしっかりと縛り付けながら、マンリが視線を空から逸らさずに聞いてくる。 「駄目ね。フェンナーも収穫無しよ。こんな厚い雲の中、生体器官が嫌がるから、簡単に突っ切ろうとはしないはずだわ。グランビアじゃ高度を無理に上げきれないし・・・」 「射撃の腕が悪かった割には、器官管理はマシみたいね」 獲物が見つからないことに、マンリは不服そうであったが、それはボッツも同様であった。 ただ、ドミトリの方は訝しげに空を見張りながら、平静に口を開く。 「もしかすると、罠かもしれないな。待ち伏せて一機ずつ片付けるつもりか」 これを聞くとボッツの表情が苦くなった。 その類いの罠は馬賊や空賊でよく使われる手で、強力な装甲艇や火力のある機体を用いる相手を仕留める際に使われる策であった。 言われてみるとすぐに合点がいったが、すぐにボッツは苛立ちを覚えた。 それは自身の迂闊さを呪う物ではなく、よりによって自分らが好んで使う策を、相手に使われているという子供じみた腹立たしさだった。 「・・・面白いじゃない。それなら、奴等の裏をかいてやろうじゃないの」 ボッツはそう漏らすと、急に機体を大きく左へ捻って急旋回を始めた。 これにはマンリが傾斜になった扉から落ちかけたが、ドミトリが寸前で足を掴んだので事なきを得た。 「ちょっと!何するのっ!」 「このまま、探したって埒(らち)が空かないわ。抜けるのよっ」 そう言うやいなや、機体は側面にそびえる雲の中へと、横滑りに入り込んだ。 すぐさま周囲は濃密な霧の様な景色となり、ドミトリとマンリはその風雨の凄まじさに耐えようと、機体の縁へとしがみつく。 環境の激変に生体器官は不満らしい唸りを上げているが、このような不平を宥(なだ)める術をボッツは教え込まれていた。 どんなに荒々しく操縦桿を捻ろうと、ある程度は生体器官を労らねばならない。 それは愛馬に跨がる騎手と似て、馬賊の彼女にはその素養が備えられていた。 「──見つけたっ!・・・畜生、一機増えてやがる。フェンナー、ボッツ、南方だっ」 雲の中を抜けようとしている際に、ボッツの耳元でルクレシオの通信が鳴った。 南方と言えばちょうど、雲の中をこのまま突っ切れば、その方角に真っ直ぐ出る。 獲物を真っ先に見つける運には恵まれなかったが、タイミングは良かったらしい。 「ルクレシオが見つけたわ。雲から出たら、すぐおっぱじまるわ!」 嬉々としてドミトリたちへ叫びながら、ボッツは鋭く機体を操り、濃霧の中から機体を何事も無かったかのように飛び出させた。 厚い雲から出た瞬間に周囲を素早く見回し、まずはルクレシオ機から見つけようとしたが、すぐに視界の左下で小さな飛行機雲の線が乱れに乱れている点を見つけた。 通信が入ってからすぐに、ルクレシオ機は交戦を開始したらしい。 辺りには小さな白煙が点々と漂っていることから、物騒な代物を随分と撃ち散らかしているようであった。 「お楽しみはとっておいてって言ったじゃないの!」 ボッツは通信機に怒鳴りながら、巴戦を展開しているその点へ真っ直ぐに突っ込んでいく。 敵は先程の刺客と思わしいグランビアと、もう一機、妙な紺色をした派手な塗装の施されたグランビア戦闘機が飛んでいる。 ある程度距離は離れているが、それでも目に付くような色つきであった。 「ボッツ!横っ腹を向けろ。軽機は使えない。ツェカドでやってみる」 彼女の好戦的な姿勢を見て、背後からドミトリが肩を叩いて、もっと巴戦の中へ近付くよう促してくるが、言われなくともボッツはそのつもりであった。 「それはいいけど、当たるの?それ、連邦製なのでしょ?」 「当たるさ。近付けば、ね」 ドミトリは自信ありげにそう答えながら、開き扉へ身を寄せ、肩に緑色の筒を担いだ。 元々はアーキル連邦軍の鹵獲兵器であったものだが、トーロック団の地下ルートで購入したものらしい。 正規軍の小火器は型落ち品などが出回りやすいが、対物兵器となると中々ボッツ達のような物でも入手は難しい為、皮肉なことに敵国にこの需要を助けられていた。 一方、ぐんぐんと空戦域に距離を詰めていくボッツ機に対し、敵機達はルクレシオ機を墜とすのに躍起になっている、と言うよりは、その全く逆の状況に落ち散っていた。 敵機達の練度がどの程度の物かボッツ達は知る由も無いが、見たところ二機で一機に対して躍りかかったはいいものの、ルクレシオ機は空戦演習でただ空中に漂っている標的やる気の無い標的目標機ともまるで違っていた。 縦横無尽に飛び回り、隙を突けば容赦なく相手が誰であろうと銃撃を見舞ってくる。 ボッツ機は演習や講習で使用するために、武装を普段は搭載しておらず、こうして得物を持った仲間を乗り込ませている。 しかし、ルクレシオ機は艦の護衛機であり、これには船首下部に二門の2.2fin連発銃が備えられている。 正規軍の物と比べれば貧相な代物であったが、素人達をいじめ抜くにはもってこいの武器であった。 「私らが出る幕ないんじゃない?ルクレシオだけで片付きそうよ?」 マンリが自ら握っている軽機関銃の出番がないことをしって、ひどく落胆したような事を言っているが、ボッツもドミトリもそれは無視した。 そのうちに飛行機雲が鳥籠のように合わさったところまで機体を寄せると、ドミトリが機体側面に躍り出て、狙いを付け始めた。 敵機達は相変わらずルクレシオ機にかかりっきりであったために、新たに湧いて出てきたボッツ機に気付かないようですらあった。 「よし、いいぞ。マンリ、伏せてろっ!」 そう言うやいなやドミトリはツェカドランチャーの引き金を引いた。 筒の後部から凄まじい白煙が放出され、弾頭が飛翔を始める。 マンリが伏せていなかったり、背後の扉が開け放たれていなければ、機内は散々なことになったであろうが、ドミトリは機内から撃つことの想定は出来ていたらしい。 しかし、弾頭の飛び方まではそれほど意識していなかったのか、これは間抜けな勢いで飛んでいった。 真っ直ぐに飛ぶまでは高価な代物でないから、期待はしていなかったものの、不格好な螺旋を描いて飛んでいく弾頭はなんとも頼りない。 「あんな物作った国と戦争しているなんて、アホらしくなるわね」 機内の床に伏せていたマンリも呆れるように弾道を眺めていたが、その弾頭がちょうどドミトリの狙い違わず、運悪く飛んできた紺色のグランビアの片翼にあたる生体器官に命中した。 相手はこちらに気付いてもいなかったし、弾頭の飛来にも勘付いた様子が無い。 「こんな物に当たる様な国が戦争しているなんてのも、バカらしいわね」 マンリはドミトリの腕を褒めるよりも、更に呆れきったような調子で言った。 その間に紺色のグランビアは安定を失って、期待の主軸が残った生体器官に移ってしまい、自滅気味に錐揉み状態となって下降し始めた。 「被弾時の制御も出来ないなんて、ありゃ落第だわ」 その様子を脇目にボッツは眺めて嘲りながら、その墜落してゆく紺色のグランビアを追うことにした。 一方、ドミトリが視線を上にやってすぐに爆音が響き渡り、ルクレシオ機が刺客のグランビアの片翼を爆散させた様が目に入ってきた。 「やってくれるね。炸裂弾でも仕込んでるぞ」 「正規軍のをちょろまかしたんだわ」 そんな様子をドミトリとマンリが、まるで花火でも見るかのような暢気さで眺めている。 二人の戦闘興奮はこれで落ち着いたが、まだ操縦席のボッツは昂り続けていた。 錐もみ状態のまま二機のグランビアは辛うじて地上に不時着したが、操縦手が機体から這い出してくる頃には、ちょうどボッツ機が悠々(ゆうゆう)と近くに着陸していた。 そして、彼女は軍刀を引き抜き、もう片手には裸の大型拳銃を握りしめ、紺色のグランビアから抜け出し、なんとか這這の体で逃げようとする優雅な飛行服姿の女を追った。 それは紛れもなく朝方にボッツたちを詰ろうとした上級生であり、飛行帽も脱ぎ捨てている為に綺麗な金髪が風と焦燥感に揺れている。 「お待ちになって、お姉様」 などと茶化した声を掛けるボッツであるが、その姿は鬼女さながらであった。 元々、不時着の際に足を痛めたのであろう上級生は、しばらくするとその場に屈み込み、顔に冷や汗と脂汗をいっぺんに噴き出しながら、迫るボッツの姿を睨んだ。 「──このままでは、済まさないわよ!デシュタイヤ家に手を出したら、どうなるか…」 そんな負け惜しみにも似た脅し文句を吐き捨てようとする彼女の眼前には、既にボッツが握りしめる大型拳銃の銃口が突きつけられていた。 ふん、と鼻を鳴らして、引き金を引こうとするボッツは口元に笑みを浮かべていたが、その際に横から腕が伸びて、銃口を下がらせた。 「おい、ボッツ。殺すな、ここはリューリアじゃないんだ」 そんな言葉に、ボッツは不機嫌そうに横から伸びた腕を見れば、ドミトリであった。 「関係ないわね。先に仕掛けてきたのは、向こうよ。正当防衛だわ」 「それは無理な話だ。私達の方で死人は出ていない。引き算が成り立たない」 ドミトリの顔は冷静にボッツを諭そうとするもので、一方のマンリは二人の背後で『撃っちゃえ!撃っちゃえ!』と囃し立てているが、これは敢えて無視した。 「すぐに暴れたがるのは悪い癖だが、それは私も同様だ。しかし、安易に殺すな。仮にも学園生徒なのだから、それらしくするべきだ」 「なによ。今、やらなきゃ後でどうなるかわかったものじゃないわ!」 「・・・そんなに強情を張ると、もう、夜伽船で男を紹介しないよ?」 「わかったわ。私だって、これ以上の争いは望まないわ」 ドミトリが耳元で囁くと、この言葉は予想以上に効いたようで、ボッツは大人しく銃を拳銃嚢へしまいこんだ。 元々、殺意は一過性のものであり、興奮の具合が最高潮に昂れば、冷めるのも異様に早かった。 「わかってくれれば嬉しいね。さて、後のことはフェンナーに任せて、私達は帰ろうか」 「フェンナーに?アイツ一人で大丈夫なの?」 「それは心配ない。彼女は常に中立を取りたがるからね。仲裁役は私だけでは荷が重いよ」 ドミトリはそう言いながら、屈した上級生の具合を診ながら、命に別状が無い程度の簡単な見積もりを立てると、ブラブラとボッツの機体へと足を向けて歩き出した。 「とんだ休暇になってしまったね。戻ったら、酒保で飲み直そう」 何気ないような調子で彼女は口元に煙草を持ってきて、ボッツも同様に溜息を一つ吐いてからそれに続くが 「あ。私、まだ課題済んでないわ」 マンリが一人思い出したように呟くのが、今日で最も学生らしい台詞だった。
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登場人物 ボッツ・フォン・ラーバ 本作の主人公。リューリア地方の馬賊出身で、ラーバ家長女。親と似て運が悪い マンリ・ソート ボッツの学友。ヨダ地区山岳地帯の山賊出身。小柄で短気 ドミトリェヌ・ソヌベバリ・クレシュエンコ 通称ドミトリかドミー。ボッツの学友。帝都地下犯罪組織トーロック団出身。策謀家 ルラーシ三姉妹 ボッツたちとよく連む姉妹、ネネツ地方の雪賊出身。常に三人でいる フェンナー・シバレッチ ボッツの同級、トーロック団出身。エリーナルの護衛役。 カンムーテ・リズ・ファーヘン・デシュタイヤ ワフラビア学園上級生、ボッツと同じ戦翼科。まだ若い 「しっかし、ドミーも変わってるわよね」 そう事も無げにマンリが呟きに、ボッツはわずかに小首を傾げた。 二人は寄宿している艦の格納庫で、他の生徒と銃器の整備をしていた。 それは仕事として任せられているものではなく、休日を利用した私的なことであり、極々、私物として所持している物を、まとめて整備するのにちょうど良い環境があったからだった。 「なにがよ?」 「なにがって、わざわざ近衛隊を目指してるってこと」 普段は休日となれば決まって三人で動き回っているボッツたちだが、今回ばかりはドミトリが休日を利用した特別講習に上級生の寄宿艦へと赴いていたのだった。 「別にいいじゃない。私達の中じゃまともな進路希望よ?下級中流貴族だって結構目指してる奴が多いって話じゃない」 ボッツは分解した銃身へ、整備油を塗布した布切れを掛けながら言葉を返した。 「ドミーはそんじょそこらの貴族とは訳が違うわ。何も偉そうな奴等に使われる仕事なんて選ばなくたっていいじゃない。将来は帝都暗黒街のドンってもんなのに」 マンリは納得いかない様子で、自身の手のひらにちょうどいい大きさをした小型の拳銃を磨きながら、同意を求めるように作業をしていたルラーシ三姉妹を見たが、彼女等は黙々と三人で固まりながら、軽機関銃を分担して整備している。 小さな拳銃に始まり、果ては軽機関銃までと、個人の物品とは思えないほどの数をまとめて整備するのには大変な労力で、これは半日仕事であった。 これほどの数の銃器を私物として所持しているのは如何な物かと思われるが、他の上級生や貴族性たちも1グループで所有している数を入れれば、ボッツたちの私物は少ない方であり、上級生等の場合は護衛している下女たちの装備が含まれているのである。 「そりゃ私らみたいな田舎の賊にすれば、そう思うけど、ドミーはそうじゃないの」 「変わってるわね」 「前にトーロックのやり方には、疲れたとかなんとか言っていたわ」 二人はこの場にいない同室人のことを、しばらくあれやこれやと喋っていたが、やがて、ドミトリの話にも飽きてきて、マンリが話題を変えた。 「それにしても、たまにはなにか美味いものが食べたいわよね」 潤滑油の臭いが鼻をつき、銃身に纏わり付いている硝煙の香が混ざると、とても食欲が湧くものではないが、彼女等の胃袋は常に飢えているので環境は関係がなかった。 「食堂のメニューにはちょっと飽きてきたわ。昨日もギトギトした揚げ物だったのに、今日も同じよ。きっと、コレと同じ様な油使ってるんだわ」 そう言ってマンリは、分解した拳銃の部品から滴る油を不快そうに眺めた。 「仮にもお嬢様学園の生徒が聞いて呆れるわね。たまには貴族の食事って物がしてみたいもんよ。アンタ等もそう思うでしょ?」 ボッツも手にしていた小銃を組み立て終わると、同じく格納庫にいたルラーシ三姉妹にも愚痴を掛けた。 すると今度は三人揃って、下にやっていた顔を同時に上げて、示し合わせたように小さく頷いた。 白い顔に青白い髪、身の丈や顔かたちまで三人揃っていることから、きっと三つ子であると生徒の間では言われて三姉妹と渾名されているが、実際には血のつながりが無いとボッツは聞いたことがある。 「でも、ボッツ。どうするの?食堂でも襲うの?」 「バカ言わないで、私達だって学園の生徒なんだから、学園の艦で食事をする権利ぐらいあるわ」 幼げなルラーシ三女の言葉にボッツは笑みを浮かべながら頭を振った。 整備を終えてから5人はシャワー室の争奪戦を乗り切り身支度を調え、昼時を狙って上流貴族の生徒達が寄宿している大型艦へ飛行艇で向かった。 元々、ボッツたちが寄宿している老朽艦から、そこまで離れてもいないのだが、直接、そちらへ飛んだのではすぐに目に付いてしまうので、あえて真逆の方角へ飛んでから反対から回って寄宿艦を目指す。 そして、寄宿艦に悠々と連絡船として近付いていくのだが、艦と形容するにはそれは空に浮かぶ港とも言えるほどに巨大で歪であった。 巨大なヒトデを平たく浮かべたような艦上には大小の産業塔が乱立し、都邑が空に浮かんでいるようにも見え、それは生徒の間では『浮遊塔』と呼ばれる。 元々は権勢を誇った地方貴族がこの巨大な艦を皇帝へと寄進したと伝わっているが、実際には近衛艦隊に押収されたというのが実態だとボッツはドミトリから聞いた覚えがあった。 「いつ見ても、デカいわね。ボッツ、乗艦許可は取ってあるの?」 「飯食べに行くのに許可もへったくれもないわよ。その為に着替えてきたんじゃない」 船窓から巨大な浮遊塔を眺めるマンリの問いに、ボッツは初年特待生特有の薄い色の制服ではなく、朱色の帝国空軍軍服の布地をこれ見よがしに摘まんでみせた。 「でもちょっと、そんなボロボロの軍服が通用するとは思えないわね。浮遊塔にいる警備の正規軍は一発で見抜くんじゃない?」 マンリにしては知的な指摘だったが、ボッツは得意げにしている。 「見抜かれて、結構。お袋の物だとわかれば、余計に鬱陶しいことは言わなくなるわ」 そう言っている内に飛行艇は着々と浮遊塔下部にある着艦設備の一角に近付いていく。 これは機体を甲板に着陸させる方式ではなく、機体の上部に付きだした鉤状のフックをワイヤーに通してぶら下げるというアーキル方式を真似た物であった。 本来であれば相当な訓練を積まねば、即座に空中大破という事態も起こりうる危険な着艦方法であるし、生体器官を用いた大半の帝国機体は着艦が容易であるから、ほとんど用がない。 そのため、帝国正規軍でさえも一応、設置はしてあるが誰も用いていない為に、フック式の着艦施設はほとんど無人と言ってよいほどの稼働状況で、ボッツたちの都合の良い抜け道と化している。 「それでは、乗客の皆様。多少、機体が揺れますので、しっかり席にお座り下さいませ」 ボッツがふざけて機内の仲間に呼び掛けながら、機体上部を器用な角度に傾けながら、馴れた調子に鉤をワイヤーへと引っかけて、機体の姿勢を安定させていく。 このフック着艦が出来るだけでも、空軍に一目置かれそうなものだが、ボッツはこの手の着艦方法を実家のリューリアにて、馬賊の空軍とも言えるような集団で鍛え抜いていたのだった。 「さぁて、着いたわよ。私が先に降りて様子を見るから、貴女たちは席で待ってなさいね」 そう言いながら、ボッツは搭乗扉を開き、慎重に着艦施設へと足を踏み入れていった。 他の着艦施設なら警備兵でうようよしているところだが、やはりフック式のここは無人状態であった。 これなら面倒な学生証の確認も求められないだろうと、彼女はしっかりと周囲を見回しながら機内のマンリたちを手招きした。 機体から素早く降りてくるマンリとルラーシ三姉妹はひどく小柄で、これが4人縦に並んで走ってくるとなんとも可笑しかった。 着艦施設から、生徒達の居住区へと踏み入れると、いままでは無骨な軍の前線基地内を思わせるような通路であったのに、一気に華やいだ宮殿風のものへと変わっていた。 朱色の埃一つもないような絨毯が敷き詰められ、壁は大理石の様な白く美しい壁が被い、帝国芸術を象徴するかのような絵画が画廊のように壁に飾られている。 「来る度に毎度思うけど、ここまでやるのは金の無駄だと思うわね」 マンリがボッツの足下でそう言いながら、早速、ルラーシ三姉妹と肩車をして絵画や装飾物を何個か頂戴しようとするので、ボッツは一同を元来た通路口へと慌てて下がらせた。 「止しなさいよ。こんな物盗ったって、すぐにアシがついてしまうわ。それよりも、まずは貴女たちの服が要るわね」 特に窃盗を咎める気が無いのは馬賊の娘らしい性分だが、ボッツは腕を組んでマンリとルラーシ三姉妹の服装を改めて眺めて唸った。 彼女はまだほとんど旧式とはいえ帝国正規空軍の軍服を着ているから、警備兵などを誤魔化すことが出来るが、マンリとルラーシ三姉妹は初年特待生の色の薄い制服を着ているために、これではすぐにバレて退去を迫られることが目に見えている。 機体に乗り込む前に考えつくようなことではあったが、少々空腹過ぎて頭が回っていなかったとボッツは少し己を悔いた。 しかし、ふと居住区通路の方から話し声が聞こえ、それが近付いてくることを感じとると、ボッツはマンリ達を待機させて一人だけでまた通路へ戻った。 通路の奥からやってきたのは、『クルカが芋を咥えてきた』というパルエの格言がピッタリと当てはまるような連中だった。 きっと、どこぞの上流貴族生徒の付き人であろうが、年端もいかないような少年達ばかりで、大方、貴族生徒の小姓(こしょう)たちと思わしかった。 彼等は胸元に白い厚手の手ぬぐいの束を抱え、雑事の途中であるらしいが何やら話事に夢中で、痩せぎすで背の高い柱のようなボッツにはまるで気がついていない様子で、そのまま通路の向こうから話ながら進んでくる。 「こんにちは、ちょっと悪いのだけど」 そう言いながら、ボッツは彼等の前に立ちはだかり、行く手を塞いだ。 彼等は彼女を見上げながら、幼くも端正な顔立ちを、雑談と雑事を邪魔されたことに、あからさまに不快そうに歪めた。 「なんでしょうか?軍人さん」 小姓たちの中で最も位が高そうな少年が、ボッツを見上げて、その朱色のよれた軍服に不審そうな目を向けてくる。 上流貴族の令嬢を守る正規軍の軍人というものは、身なりもそれ相応に整っている物だが、ボッツの崩れきった態度に彼は不安すら感じた。 この前に手足の負傷が完治したカンムーテは、あと数日で学科に復帰出来ることを私室の浴槽に浸かりながら嬉しく思っていた。 これで見舞いとは名ばかりの嘲笑に来るような同輩たちに腹を立てることもない。 そのささやかな祝い事をするかのように浴槽に艦船内とは思えぬほど湯水を贅沢に沸かせ、細くしなやかながらも、しっかりと戦翼科で鍛え上げられた肉体を湯船につけ、人工の医療液に漬け込まされた身体を清めようとしていた。 浴槽は大人三人が入っても狭くない程に広く、白い光沢が宝石のように美しいトォルムン白石の特注品だった。 これほどの高級な個人浴槽を使えるのは学園の上流貴族生たちの中でも希で、デシュタイヤの一族であることを誇りに思ったが、彼女の楽しみはそれだけではない。 「…ムデリ、戻ったの?早く、こっちにいらっしゃいな」 カンムーテは浴室の隣から扉が開く音を聞いて、普段は誰にも聞かせないような猫なで声を出した。 彼女はきっと、洗濯した浴衣を取りに行かせた小姓が戻ってきたと思った。 ムデリは入校前から彼女の世話をしている小姓であり、あどけない容姿もさることながら、昼も夜も献身的な態度が気に入っていた。 表向きは華やかであっても、裏では気が休まることがない政争の世界でもある学園生活において、小姓との触れ合いは心身の休息であった。 「どうしたの?浴衣はいつもので構わないわ」 しかし、カンムーテが二度も声を掛けたが、浴室に彼が姿を現さない。 私室の合い鍵を持たせてあるのは下女と小姓の彼だけであるし、他に誰か来るとも思えない。 「…おまたせしました!」 彼女が不安になりかけていると、浴室の扉を勢いよく開いて素っ頓狂な高い声を上げて、白い浴衣や厚手の手ぬぐいを抱えた何者かが入ってきた。 如何に浴室に湯気が立っていても、その者が彼とよく似て小柄で、彼の衣服をまとっていてもムデリの偽物であることは明白だった。 「貴様は…」 思わずカンムーテは狼狽した声と同時に身構えた。 お嬢様育ちとは言え、デシュタイヤの実戦役として修羅場はそこそこ潜っているカンムーテであるが、浴室においては備えがなかった。 しかし、それでは不十分と教えるかのように、闖入(ちんにゅう)者は手ぬぐいの隙間から銃口を覗かせていた。 「初年の…たしか、ソート家か…」 カンムーテは小姓との浴室での触れ合いの空想から一転して、ひどく危険な現実と向かい合わなければならず、苦々しい顔になっていた。 「そうよ、お邪魔するわね!」 侵入者であるマンリはそう図々しく告げると、相手が抵抗してこないかどうか見極めながら、格闘の間合いへ入らずに拳銃を向けてくる。 「一体、何の用?わざわざ、トドメでも刺しに来たの?」 カンムーテは苦い顔をしながらも、この前のように恐怖が広がる前にマンリに問い質した。 「別にそんなつもりはないわ。ルームサービスを頼みたくなっただけよ!お昼はまだでしょ?」 マンリは彼女をしげしげと眺めながらそう告げると、拳銃を仕舞い込んで、そそくさと浴室から引き返していった。 だが、そのまま私室から出て行くようでもなく、そもそも何故、あの娘がムデリの服を着ているのか彼女は気になって仕方がない。 浴衣と手ぬぐいをその場に放置してマンリが引っ込んだので、慌てて浴衣を羽織りながら、慎重に浴室から出てみると、そこでは奇妙な宴会が開かれていた。 元々、カンムーテの私室は広い造りで応接間の様に、円状のソファが二対と、円形台が部屋の中央に据えられているが、その台の上に帝国式のコース料理が並べられている。 本来なら順々に台に並ぶ品々であるはずだが、まとめて台の上に所狭しと並べられ、それを浴室から出て行ったマンリに加え、嫌な意味で見覚えのある女生徒たちが5人でコース料理を貪っていた。 考えなしに隙間無く並べられているために、本来なら見た目を重視する帝国貴族の宮廷料理もこれでは形無しだった。 「これはなんの肉かしらね。人工肉にしては歯ごたえがある」 「それはギチムッチョよ。前にバセンで狩りをしたときに食べたことがあるわ」 フォークで乱暴に突き刺した肉を高々と掲げながら、マンリがボッツに聞いたり、ルラーシ三姉妹が揃った手付きで食事をしている。 そんな光景を自らの部屋で繰り広げられながら、カンムーテは呆れて良いのか怒って良いのか、拳の振り下ろしどころを掴めないでいた。 5人とも重武装というわけではないが、これみよがしに拳銃嚢を腰にぶら下げ、軍刀までしっかりソファの傍らに立てかけてある。 下手に刺激すればこの前の二の舞になるとカンムーテは思ったが、それでも自分の宮殿ともいえる私室でこのような狼藉が許されるものかと苛立ちはした。 そして、その様子に気付いたボッツが酒瓶をラッパ呑みしながら、こちらへ顔を向けてきた。 「あぁ、悪いわね。勝手に上がり込んじゃって。一度、上級生の飯を食べてみたくてさ。知ってる顔とかいないし、一応、アンタには貸しがあるから、部屋を少しだけ借りても文句ないでしょ?」 いけしゃあしゃあとボッツは言ってのけたが、カンムーテが納得するわけもない。 「貸しですって?」 「そうよ。貸しよ。この前のアンタを痛めつけた件はまぁ喧嘩両成敗で私たちはいいけど、そのあとの手打ちでこっちを騙し討ちしようとしたんだから、それで貸しになるでしょ」 「…マリシァヌのことですか。あれは私とは関係ないです」 「同じデシュタイヤ関係なんだから、アンタも同罪よ。でも、いいわ。ラーバ家は寛大なのが売りなの」 苦い顔のままのカンムーテに対して、ボッツはどこまでも図々しく言いながら、高級な葡萄酒を下品に回し飲みしている。 「お代は気にしなくて良いわよ。こっちでもう既に払ってあるわ。この前、競ヴァで大勝ちしたの」 視線も合わせず酒を飲みながら、ボッツたちが今度はその賭け事の話で盛り上がり始めるが、その姿は大凡、貴族令嬢というよりは昼間から呑んでいる定食屋の中年共にしか見えなかった。 「…それより、ムデリをどうしたのですか?」 勿論、カンムーテはそんな与太者の与太話に付き合うつもりも無く、鋭い眼差しで小姓をどうしたのかと問い質そうとした。 よくよく見れば、ムデリの物と思わしい小姓の服を着ているのはマンリだけでなく、何故か他の3人組の女生徒達も背格好が合うためか、ムデリと似た様な服を着ている。 大方、他の小姓たちからも分捕った物であろう。 そう思いながらカンムーテは、相手の方が多くの銃を持っていようとも、彼女は返答次第で、一人か二人は道連れにしてやろうかと小机の引き出しから、中に忍ばせてある拳銃に手が伸びていた。 「あぁ、あの子?私達がアンタの友達で半日ほど用があるから、今日は半ドンにして、引き上げなさいって言ってやったのよ」 「…そんな話をムデリが信じたと?」 いい加減なボッツの話に、カンムーテは拳銃を握りしめ、その様子をボッツは尻目に鋭く見ていた。 途端に室内の空気が冷たく張り詰めたが、他の連中は一様に平静な態度で食事を続けていた。 「まぁ、信じないでしょうね。今頃、警備兵を呼んできてるんじゃないかしら」 自分でも何を言っているのか、特に気にも留めない調子に言いのけて、ボッツは戻ってきた葡萄酒の残りを一息に飲み干した。 ちょうど、その頃、ドミトリとフェンナーの二人は上級生寄宿艦の喫煙室で一服をつけていた。 朝早くから寄宿艦にて行われる講習に受講し、先程までみっちりと口述による応答試験を受けていた。 近衛隊士になる為には複数の過程を履修し、そこに求められるものは戦術から宮廷教養等、果ては正規軍兵よりも過酷な体力試験なども含まれており、並大抵の努力では果たし得ないものであった。 それでも、この二人はほとんどの講習を難なく受けきるほどの知識と体力と胆力を有していて、今回の講習も本人達にいたってはさほど苦になるものでもなかった。 「──思ったより、緩かったね」 紫煙を吐き出しながら、ドミトリは満足げにフェンナーを流し目に見た。 初年特待生の淡い色をした制服を着こんでいても、品性というものがこの二人には漂っている。 「しかし、私も変わり者とは言われているが、それに付き合っている君も随分と変わっているね」 「…私はただ、エリーナル様の役に立ちたいだけ」 煙草を指先に挟みながら、ドミトリはフェンナーの酷薄な顔を見た。 彼女も同様に近衛隊士への試験を受けている身だが、彼女の場合は試験よりも講習や訓練の方に興味があるらしく、近衛隊士に成ること自体には興味が無いらしかった。 全ては世話をしているエリーナルに対するものだと口を開けばそれだけだが、トーロックの上層部から世話を命じられているからと言って、彼女がそこまで尽くす必要はないはずであった。 かといって、今更、辞められても貴重な話し相手が減るので、ドミトリもトーロックの身内とはいえ詮索する気はない。 初年特待生の大半は何か重たい事情を背負っているために、下手にそれを突けば面倒事になる。 ただ、そう思うとドミトリは自分らと比べて、遙かにお気楽な同部屋の二人のことを思い返さずにはいられない。 今朝方も上級生の艦に行かねばならないという話を数日前からしたはずであったのに、そんなことなどすっかり忘れて賭場に行こうと誘ってくるのだから、どうしようもない。 もし、仮にこの場にいたとしたら、どんな事態になるだろうかと想像すると少しは楽しかったが、そう思った矢先に突然、喫煙室の扉が開いて、その同部屋人とよく似た背格好の者が入ってくるとドミトリは酷く狼狽した。 「シバレッチ様!ここにおいででしたか!」 しかし、その姿はマンリに似ていたが、あくまで彼女の制服を着ている少年のようだった。 何故、女装なんてしているのかとドミトリが怪訝な目を向ける前に、彼はフェンナーのほうへと泣きついていった。 「どうか、カンムーテ様をお助け下さいまし!」 裾を掴む様な勢いで女生徒姿の小姓がフェンナーに取り縋るが、彼女は冷たげな表情を崩すわけでもなく。 「落ち着いて話せ、ムデリ。いきなり、そう言われてもわからない」 冷静に身を屈め、小姓の背中を抱きながら落ち着かせ始める。 ドミトリはそんな様子を見て彼が、トーロックの方で斡旋した小姓であることを思い出した。 しかも、それが以前に同部屋人と揉めに揉めて、殺すか殺さないかにまで事が発展したことのある上級生の小姓であることがわかると、顔が苦々しくなった。 容姿が整っていて、それでいて尚且つ礼節のある小姓を用意するというのは並大抵の事で無く、孤児を拾って教育し、さまざまな貴族に紹介することもトーロックのビジネスの一つに含まれている。 それの関係を取り仕切っているのがフェンナーの親元であり、彼女も本来であればその仕事を継ぐのが筋ではあったが、今は没落貴族の世話人である。 しかし、その伝(つて)があるために彼女は、初年特待生と他の貴族生徒とのいざこざを丸く収める術をドミトリと共に持っている。 例えば、何か他の生徒と揉め事が起これば、和解するのが今後のことも考えて最適な答であるのだが、もし、脅迫や暴力的な手段を用いる必要が出た場合、その生徒の貴族が従えている小姓や、同業人の横の繋がりから、貴族の弱みを聞き出し利用することが出来る。 前者の場合ならば、生徒が欲している物を密かに調べ上げ、円満に和解する術を探ることが出来るのだ。 その為、フェンナーは相当な数の小姓たちと通じているし、上級生の中にはその事を知っている者もいるため、揉め事の仲裁に彼女とドミトリが出てくると大体の相手は兜を脱がざるをえないのである。 ムデリは丁寧に二人に事の顛末を説明し、指示を仰いできた。 ドミトリがそれを聞き終える頃には、煙草は全て燃え尽き灰となっていた。 「弱ったな。あの馬鹿ども…、今日は大人しく寄宿艦にいろと言っていたのだけどな」 「…リューリアの狼とヨダの山熊が、素直に言う事を聞くわけがない。ネネツの雪豹まで加われば尚の事だ」 頭を抱えるドミトリに、フェンナーは皮肉と言うよりは客観的な指摘をぶつけつつ、故障の方へと向き直った。 「わかった。とりあえず、大事にしないほうが良い。刺激すると、カンムーテの命はない。他の小姓たちも止めておいたのは賢明だったな」 そう言いながら、フェンナーは喫煙室の入り口の隙間からこちらを覗く三人の小姓たちの顔を見た。 運悪く、ボッツとマンリに同伴していたルラーシ三姉妹と背丈が似ていたがために、彼等も衣服を無理やり交換させられて、自分らと同じような淡い色の制服を着せられていた。 「これから、カンムーテの処へいって釈明しよう。今回の非はボッツたちにある。兎に角、帰路の無事だけは確保できるよう掛け合う」 「毎度、すまない」 「構わない。エリーナル様の世話をする次に楽しい」 フェンナーは冗談とも本気とも取れない調子に言い退けると、ドミトリと共に喫煙室を後にした。 カンムーテの私室に着き、ドアを叩いたが、応答はなかった。 しかし、鍵も掛かってもいなかったので、二人がそのまま中へ入ると、華奢な内装の室内は随分とただれた雰囲気になっていた。 中で大宴会でも開いたのか、そこら中に中身のあるなしに関わらず酒瓶が転がり、料理が盛られていたのであろう皿が、食べ残しと共に乱雑にテーブルと床に散らばっている。 そして、それらと同様にソファや椅子に泥酔し、満腹になって、いぎたなく眠っているボッツたちがいた。 驚くべきことは部屋の主であるカンムーテまで、中央のソファに腰掛けながら、傍らにルラーシ三姉妹を侍らせて、まだ多少は上品な寝方をしている。 手元には先ほどに引き出しから取り出そうとしていた拳銃を握っていたが、発砲はされていない様子だった。 「…驚いた。死人がいないぞ」 思ったより平穏な状況に、フェンナーは、さも意外そうな顔をした。 「ボッツにしては上出来だ」 ドミトリはポツリとそう呟くと、つかつかと椅子に座って酒瓶を抱えながら寝ている彼女の元まで歩いていき、そのだらしない赤ら顔に三発慣れた具合にビンタをかまして眠りから覚まそうとした。 しかし、神経が図太いのか鈍いのか、ボッツはいびきを一発返しただけであった。 「すぐには起きないわよ」 そんな声が今度は浴室から聞こえてきた。 二人がそちらへ振り向くと、ひと風呂浴びたばかりのマンリが立っていた。 湯気が立つ体を浴衣に包んであるが、その衣服はカンムーテのものであるためにサイズが全く合っておらず、裾を床に引きずっている。 「…マンリ、面倒なことをしてくれたじゃないか」 「そう、怒らないでよ。別に私達、喧嘩にしに来たわけじゃないし、さっきまで仲良く飯食って酒飲んでたのよ?やっぱり上級生の飯と酒はいいわね」 「仲良くだって?ハジキを握ってかい?」 悪びれもせず、マンリが風呂上がりの一杯を飲もうと、酒瓶に手を伸ばしているので、ドミトリはさっとそれを取り上げて、カンムーテの手の中にある耽美な彫金の施された拳銃を指さした。 「そりゃ、最初は私の部屋で勝手な事をするなとか、お気にいりの小姓に手を出したんじゃないかってブチ切れてたわよ。確かに、コイツの使用人を裸にしたのは事実だけど、あくまで物々交換しただけよ」 マンリは背伸びをしながら、ドミトリから酒瓶を引っ手繰ろうとしているが、彼女はもっと酒瓶を高く掲げて状況の説明を促した。 「説明はしたけど、気に入らなかったのか、コイツ、そこの机からハジキなんか出してきてね。でも、先にルラーシたちがぶっ放そうとしたんだけど、あいつ等、貴族のハジキに興味があるらしくてさ。…そこからは根掘り葉掘り、そこのブツの事を聞き始めてさ、気が合ったのか酒飲んでるうちに勝手に寝ちゃったのよ」 マンリが一通り言い終えると、さぁ酒を寄越せと飛びあがってくるが、ドミトリは代わりに水を一杯渡して、酔いを醒ませと口添えした。 「…まぁ、これ以上。面倒事は困る。宴は終わりにして、引き上げるんだね」 ドミトリは兎に角、ボッツを覚醒させようと、フェンナーと共に二人係で彼女を殴って蹴ってようやく叩き起こすことに成功した。 散々っぱら、殴打されたので怒り散らすかとも思ったが、相当酔いが回っているのか、多少頬が腫れあがっていても、ボッツは剣呑な態度で 「あら、御機嫌よう。講習会どうだった?」 なんて、酔った顔で澄まして言いのける。 「何が御機嫌ようだ。飲んだくれめ。さっさと寄宿艦のへ逃げないと危ないぞ」 「別にそこらの手筈は整えてあるわ。こっちは軍服だし、マンリ達には小姓の服を着せたんだから、怪しまれないわ」 呂律も少々怪しい調子にボッツは言いながら、今さっきのマンリと全く同様に寝起きの一杯とばかりに酒瓶に手を伸ばすので、ドミトリは瓶を蹴って遠ざけた。 「君にしては知恵を働かせたかもしれないが、生憎、それは通用しないと思うよ」 「あら、どうして?」 ボッツはドミトリが酒を寄越さない態度に舌打ちしながらも、煙草を酔った指先で探しながら口に当てつつ、真剣なまなざしの彼女に問うた。 「考えてもみろ。女装した小姓が哀れに船内通路をウロウロしてれば、何かあったかとすぐにバレル」 「べつに夜伽船ではよく見るけど…」 「君の目と此処の目は違うのさ」 紫煙を吐き出しながら、ようやく自分の計算の甘さに気付いた様なボッツの表情に、ドミトリは呆れ果てた。 「少なくとも生徒にけが人が出たわけでも、被害が出たわけでもないから、護衛の正規軍とは揉めないだろうが、カンムーテの小姓以外にも手を出したのは不味い。あの三人はそれぞれ別の上級生たちに可愛がられているお気に入りだ。裸にひん剥かれて、辱めを受けたと知ったら、私兵を繰り出してくる」 「知られる前に逃げればいいじゃない」 「いや、君等が呑気に寝てる間にバレた」 ドミトリはさっさとボッツ達を動かす為に、あえて嘘をついた。 しかし、今は嘘でも実際にムデリ以外の小姓が泣きつくか、関係者に出くわしてしまうかは時間の問題だった。 「あ、そう。じゃぁお開きね。仕方ないわ」 だが、問題の張本人であるボッツ自身は特に慌てた様子もなく、煙草を吸い終えると皿に押し付けて火を消し、ソファの四人を起し始めた。 彼女等はいぎたないボッツと違って、すぐに上品に目を覚まして、事の説明をドミトリから受けるとカンムーテ以外はすぐに納得して頷いた。 「それじゃぁ、カンムーテさん。お邪魔したわね」 半ば、何が起きたのか、一気に酒をルラーシ三姉妹に流し込まれたせいでハッキリとしないカンムーテに、そう言いながらボッツたちは部屋を後にする。 取り残されたカンムーテは酔いが残って呆けたような表情で、手元に収まっている拳銃に目をやった。 華麗な彫刻が施されたその拳銃はデシュタイヤ一族の中でも、特に武闘派を担うファーヘン家の誇りを示す代物であるが、それをああまで好奇心旺盛に観察し、美しいと誉めそやすルラーシ三姉妹の表情は感慨深かった。 三姉妹は無邪気に拳銃を眺めては、刻まれた彫刻を褒めそやして、少し手に取らせて欲しいと懇願してきた。 「ロッサの彫り師よ、きっと。曲線がとても滑らかで綺麗」 「スカイバードが刻まれてる、空軍の物は汚れが少ないね」 「幾らぐらいするのかな」 三人で代わる代わる拳銃を慎重に回して観察しながら、口々に感想を口にして、挙げ句の果てには私達の所持している銃器を全てやるから、これと交換して欲しいとまで言い出してきた。 しかし、これは家宝のような物だから無理だと返すと、ならば、その彫刻を彫った職人について教えて欲しいと言い出し、そこから酒が入ったことはなんとか記憶している。 久々にムデリ以外と世間話をしたとカンムーテは感慨深く思い返した。 高価な酒には違いなかったが、それを何本も混ぜて呑んでしまえば悪酔いをするものだ。 記憶は少し混濁しているが、しかし、三姉妹は別れ際に『今度は私達のコレクションを見せる、寄宿艦で食事にも招きたい』と言っていたことを覚えている。 カンムーテは気持ちが多少揺れはしたが、その招待は有耶無耶の内に無かったことにしておこうと酒気に淀んだ頭の中で考えていた。 しかし、そう思った矢先、私室の扉が開いて、例の三姉妹がまた戻ってきた。 一体何事かと、今度は手に収めていた拳銃を構えたりはしなかったが 「やっぱり、今晩の夕食を食べにきてもらうわ」 「そのあと、私達のコレクションを見せる」 「拒否権はないよ」 そう三姉妹が順繰りに言ったかと思うと、目にも止まらぬ早さでカンムーテの両手を二人で引っ張っては、さらに腰の辺りに長い筒のような物が押し当てられて、これがどういうことなのか彼女は酔った頭なりに察しが付いた。 そして、私室の扉前ではボッツとマンリの二人が待っていて、通路の先ではドミトリとフェンナーが安全を確保しているようだった。 「アンタ等、なんのつもりよ?」 ボッツは酔ったカンムーテを、引っ張りながら連れて来る三姉妹に呆れた目を向けた。 「夕食に招待するの」 「収集品を見て貰うの」 「それに保険も掛けたの」 三姉妹は悪びれもせずにそう言っては、カンムーテに一緒に来るわよねと視線を向け、それと同時に腰に強く銃が当たっている。 「わかりました、いきます、いきますよ」 流石のデシュタイヤ家もこれには従わざる他なかった。 一同は無事にフック式発着場へと辿り着くと、そこでドミトリとフェンナーと別れた。 二人は別れる際に何度もボッツとマンリに、二度とこんなことをするなと釘を刺したが、糠に釘とはこのことでボッツもマンリも、ふ抜けた顔で頷くだけだった。 「大丈夫よ。仮に追っ手が掛かったって、こっちには保険があるのよ」 そうボッツは流し目に、三姉妹に取り囲まれているカンムーテを見たが、ドミトリはその言葉に納得しなかった。 「あれは残念だが、保険にはならないよ」 「どうしてよ?」 「カンムーテの家はデシュタイヤにおいても末端だ。荒事をさせても、金に関係した仕事をそんな任されてはいない。面倒事になったら、早々に切り捨てるぞ」 「なんだ。連れてきて損しちゃったじゃない」 「だが、怪我をさせては絶対にいけない。何かあれば難癖つけられて、後々面倒だ」 ドミトリは苦々しく言ったが、ボッツはまだ酔っているせいもあってか、大して気にもしない様子で、それじゃあまた寄宿艦でとドミトリに暢気に手を振って機体に乗り込んでいった。 その仕草は千鳥足ほどではないが、少々おぼつかないもので、フック式発艦など出来るのかとドミトリは肝を冷やしたが、数分後には彼女等の機体は悠々と雲の向こうへ飛んでいった。 「ドミトリも同部屋とはいえ、よくあんな奴等の面倒を見る」 フェンナーは皮肉というよりは率直な感想を口にしたが、ドミトリは肩を竦めて 「私だって別に強い義理を感じているわけじゃない。だが、ラーバ家とソート家とは仲良くしておいて損はないぞ」 「恩を売って、なにか面倒な仕事を頼むつもりか?」 「そういうのではないよ。でも、仮に面倒なことがあれば、ボッツとマンリは好き好んで首を突っ込んで、荒くはあるが解決してくれる。前もそれで命を助けられたことが何度もあるんだ」 「…帝国を救った家の出だけはあるということだな」 フェンナーは冷たい表情ながらも、納得したように呟いて、二人は発着場を後にした。 一方、ボッツたちの機体は悠々と上級生の浮遊塔をあとにして、寄宿艦への帰路へとついていたが、機内は中々に騒々しかった。 マンリとルラーシ三姉妹は相当数の酒をカンムーテの私室で注文して運び込んでおり、それを機内に持ち込んではまた宴会を再開したのだ。 今度はそれにカンムーテも加わって、いまや機体は右に左と大きく揺れるほど騒がしかった。 「ねぇねぇ!デシュタイヤ家なら色んな事を片付けたんでしょ?面白かったのを教えてよ!」 白い顔を赤らめたルラーシ三女がカンムーテの袖を引いて、彼女へひっきりなしに色んな話をせがんでいる。 デシュタイヤ家と上品ぶっても、カンムーテ自身はその中の武闘派であったから、家同士での抗争は事欠かず、よってその手の話は豊富だった。 ただ、他者にそんなことを話すようでは、暗殺者としては失格である。 しかし、地方のルラーシとマンリも似たようなものであったから、これは同業者の内々の四方山話として片付けられると思えば、カンムーテは堰(せき)を切ったように、しかし、話の子細は上品に誤魔化しながら様々な案件の話を始めた。 それは都会や上流階級独特の回りくどくも、芸術的とも言える計算高い案件の解決法で、マンリとルラーシは目を見張って聞き惚れていた。 それをボッツは操縦席で聞きながら、これは勉強になると、半ば講習会のように聞いていたが、その内にカンムーテの話以外に不穏な音を耳が聞きつけた。 「…マンリ、ちょっと悪いけど、後部銃座に登って四時方向を見てくれないかしら?」 ボッツの言葉にマンリはカンムーテの話を傾聴するのを中断せざるをえず、不満げな顔をしたが素直に銃座に張り付いた。 銃座とボッツは言ったが、正確にはそれは椅子のついた天窓のようなもので、ボッツが戦翼科に入っているとはいえ、武装は付けられていなかった。 「あぁ、なんかいるわね。3つ」 「機種はわかる?」 マンリは事も無げに言い、ボッツも酔いはだいぶ冷めてきたが、その事実に対して、これまた事も無げに返す。 「グランビアが二機と、あれはゼイドラじゃない?」 「思ったより、豪勢な追っ手ね。…さて、乗客の皆様」 ボッツは溜息をひとつ吐いてから、仰々しい口調で機内の連中に声を掛けた。 「当機はこれより、乱気流により、少し揺さぶられますので、ご準備下さい」 そうボッツはわざとらしく皮肉を言った。 まだ、ボッツの機体からは相当、離れているが、常に空の動向を職業柄気にしているマンリの目から、追っ手の攻撃隊は逃れられなかった。 浮遊島で少々好き勝手をさせられて、自らの小姓を辱められたと思った上級生が配下を差し向けたのか、それともボッツたちの日頃の行いに寄るものか、多分、答えは両方であろう。 「…何か武器は無いのですか?」 操縦席の方まで歩いてきて、そう問いかけたのは意外にもカンムーテだった。 彼女の方としても、酔っていても現在自身が置かれた状況は判別できるほどの明敏さは持っていた。 ルラーシ三姉妹は彼女を人質に出来ると、賊なりの思考方法で連れてきたが、それがデシュタイヤ家のような非情な貴族ともなれば全く通用しないことを失念していた。 家という組織に対する不利益が生じる場合は、尻尾どころか手足すら切り落とすのであろう。 「ハジキと軍刀ぐらいしかありゃしないわ。アンタとゴタゴタしたときはリャツカランチャーも使ったけど、あれからフレッド先生に取り締まられちゃって、機内には持ち込めないのよ」 ボッツはそう言って、カンムーテを気落ちさせたが 「でも、大丈夫よ。武器なんかなくても、連中をあしらうくらい訳ないわ。アンタも同じ戦翼科ってことに免じて、良いもの見せてあげる」 得意げにそう言いながら、彼女に座席にしっかり掴まっていなさいと促した。 追っ手であるグランビアと重攻撃機であるゼイドラによる編隊は、真っ直ぐにボッツ機に接近し、挨拶もなければ警告もなしに、射程内に入った瞬間に機銃と機関砲を見舞ってきた。 しかし、ずっと天窓で後方を探っていたマンリが、相手の攻撃タイミングを告げると、ボッツはそれに瞬時に答えて大きく機体を左右に捻る。 それは乗客の事を一切考慮しない激しいもので、一般人であったら、座席からとっくに投げ出されていたであろう。 だが、そんなヤワな乗客は一人たりともおらず、皆座席にしがみついたり、持ち運んだ酒瓶を抱えながら、外の気配を伺っている。 機外ではこれでもかという程の火線が走り、被弾しないのが奇跡のようにも思えた。 「大した練度じゃないわね。良い玩具には乗っているけど、使いこなせていないわ」 ボッツは遊覧飛行をしているような気軽さでそう言いながら、左右に大きく回避軌道を取っていたが、不意に一気に機首を直角に真上へ向けて、急上昇を行った。 それが目指す先は太陽であり、正面から飛び込んでくる激しい日射が操縦手の目を潰すかに思われたが、ボッツは日光浴をするように気楽に目を閉じて、ぐんぐんと機体を上昇させ続ける。 敵機たちもそれを追って上昇を始めるが、相手には日光の直射を受けながら射撃を加えられるほどの技量は無かったし、下手に真上に銃弾を放てば此方へ落ちてくる場合も多々ある。 機内に掛かる重力は相当なもので、戦翼科のカンムーテにとっても、これほどの急上昇は生体器官にも操縦手にも危険であるためにしたことはない。 しかし、常に馬賊の空軍として一撃離脱の空戦を旨とするボッツにとっては、これはよくよく馴れた動きだった。 「ちょっと目が充血するかもしれないけど、我慢しなさいね」 などと同級生たちを気遣う余裕まである。 そんな暢気なボッツ機とは対照的に追っ手たちには激烈な負担が掛かっていた。 そもそも、こんな急上昇に対して生体器官がそれなりの調教をされていない限り、ついていけるものではなく、早々にゼイドラは追撃を諦め、下方で旋回をしている。 そんな太陽への逃避行が無限に続くかともカンムーテは身体に掛かる負荷に呻きを漏らしそうになったが、それは不意に止まった。 今までの急上昇によって雄叫びのような生体器官の音も無くなり、機体が空中に機首を真上に向けたまま制止したようであった。 しかし、重力に逆らうことなど出来るわけも無く、そのまま下降し始める。 だが、身を捩るような墜落の姿勢をボッツは取らせなかった。 依然として機首は上に向けたまま、軌道を真っ直ぐに下降していく。 これに対して面を喰らったのは、必至に食らい付こうとしたグランビア二機で、ボッツ機が二機の合間をすり抜けて落ちていくと、機体が落下してきたと感じ慌てて操縦桿を捻ったが、わずかに機体の翼が接触した。 しかし、ただぶつかるという具合では済まさず、刃のように鋭い翼は追っ手のグランビアの片翼を切り裂いていたのだった。 途端に空中に生体器官の血しぶきが飛び散って、操縦席の窓にもそれが掛かったが、返り血を浴びた殺人鬼のようにボッツの口元には笑みが浮かんでいた。 「…これが、叔父様から習った空戦術ってものよ」 得意げにそう言いながら、ボッツは一度停止させた生体器官を、苦も無く素早く再起動させた。 すぐさま生体器官は落ち着き払った低い唸りをあげて、姿勢を正常に保ちながら、混乱した敵編隊から悠々と飛び去っていく。 「さて、まぁあれぐらいなら墜落とはいかないでしょ。帰って、飲み直しよ」 彼女はそう楽しげに言って、後方の乗客席を振り向いたが、そこではちょっとした惨事が広がっていた。 マンリもルラーシ三姉妹も曲芸飛行じみたボッツの操縦に散々付き合わされているので、今更気分を悪くすることなど無かったが、ただ一人だけ、初めてそれを体験したカンムーテが機内にさっき呑んだアルコールを全て放出していた。 「あら…。ま、それだけ出せば、また沢山入るでしょ」 ボッツは愛機が汚れたことに、少し顔を苦くしたが、それを皮肉で包んで帰路につくのだった。
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※登場人物 ・ ボッツ・フォン・ラーバ 本作の主人公。リューリア地方の馬賊出身で、ラーバ家長女。親と似て運が悪い ・ マンリ・ソート ボッツの学友。ヨダ地区山岳地帯の山賊出身。小柄で短気 ・ ドミトリェヌ・ソヌベバリ・クレシュエンコ 通称ドミトリかドミー。ボッツの学友。帝都地下犯罪組織トーロック団出身。策謀家 ・ エリーナル・ルグレンツァ・ベッツォ・アルフィート 元帝都上流貴族令嬢だったが、現在はボッツたちと同級。物持ちが良い。 ・ ルクレシオ・ハマツ ボッツの同級、バセン隷区の監督地主出身。非情に大柄で豪快。 ・ フェンナー・シバレッチ ボッツの同級、トーロック団出身。エリーナルの護衛役。 ・ カンムーテ・リズ・ファーヘン・デシュタイヤ ワフラビア学園上級生、ボッツと同じ戦翼科。まだ若い ・マリシァヌ・クーロヌ・フォン・デシュタイヤ カンムーテの同級の上級生。毒使い ワフラビア女学園の『カンムーテ・リズ・ファーヘン・デシュタイヤ』上級生は寄宿艦の自室で寝台に臥せっていた。 先日の騒ぎで片足が骨折しているために、人工肉腫手当を受けながらも、二週間は戦翼科の実習に参加出来ないことを苦々しく思っていた。 今の今まで下級生に対して上級生が躾を施すことは学園の伝統であり、自身も下級生時分にはこっぴどく絞られたものであった。 自身だって当時は反抗的で上級生には噛みついたものであったが、進級すると役得の味を覚えるとそれも薄れて、上級生らしい態度を取るようになっていく。 しかし、今年に入校してきた下級生の一部は何から何まで前代未聞の連中であった。 まず、年齢からいって女学生というには無理があるようなのが混ざっているし、その目付きというのも礼儀作法どころか、文明人めいたものすら無いものまでいる。 軍人体の連中には似たような色があることを、カンムーテは経験しているが、それよりもあの連中は数段質が悪いのだ。 特に、数日前に自身に銃口を楽しげに向けてきた、あのボッツとか言う年増女の憎憎しい顔が脳裏を過ぎると、恐怖に身の毛がよだつほどだ。 あれほど、平然とした陽気な殺意というものを、カンムーテは20年という生涯の内で味わったことが無かった。 デシュタイヤという家柄においては、大なり小なりの経験はあるものの、あれほど平然とした殺意には出くわしたことがない。 「──カンムーテさん。居られます?」 ふと、船室のドアをノックする音と共に、そんな温和な声が聞こえてきた。 彼女は脳裏に浮かんだボッツの顔を振り払いながら、声の主を招くと、三人ほどメイドを引き連れながら同級の『マリシァヌ』が入ってきた。 彼女とは同じデシュタイヤの遠戚であるが、そこに身内らしい親和な色はない。 見舞いの品を並べ、寝台に臥せる彼女に寄り添いながら、口先ではこちらの心配をするようなことをマリシァヌは並べ立てたが、そこに気持ちがこもっていないことはよくわかる。 「この度は災難でしたわね。でも、ご心配なさらなくていいですわ。上の御姉様の方から、少し許可を頂きましてね。貴女の悩みの種はすぐに片付くことでしょう」 「…これは私の問題です。私が手を下すまでのこと」 カンムーテは顔を伏せながら苦々しくそう言ったが、マリシァヌは相手にしない様子だった。 「なにも貴女だけで抱え込んではいけません。今回のことは上級生の…いえ、学園の校風に関わることですから、早々に処理なさらないといけません」 「だからといって、私は貴女にそれを任せようとは思いません…。傷が治ったら、すぐに正式に決闘を申し込み…」 「あらあら?あんな無様を晒しておいて、まだそのようなことを仰いますの?残念ですが、御姉様は貴女に期待や権限などを与えておりませんわ。…では、ごめん遊ばせ」 カンムーテの抗議を一蹴しながら、マリシァヌは見舞いの言葉もこれ以上は掛けることも無く、そうそうに船室からメイドを連れて退室していった。 それを彼女は悔しく眺めていた。 自分以外の誰かが、あの年増女を始末しよう等とは許せなかった。 しかし、マリシァヌは同級の内でも気に入らない下級生を何人か裏で消しているという噂の絶えない女であることを、カンムーテは気分が悪くなりながら思い出していた。 寄宿している艦内での労働と学園らしい体裁が整った授業を終えた頃には、既に周囲の空は夕闇に包まれ始めていた。 学業の傍ら、生体液やら汗などで汚れきり疲れ切った身体を、壮絶なシャワー室の争奪戦によってさらに疲弊させ、船室に戻る際には常人ならば力尽きているであろうが、それでもボッツ達の様な体力バカと化している連中には、まだ自由時間を楽しむ余裕があった。 3人で使うには狭い船室の左右に備えられた二階寝台へ別れながら、ボッツは右の下寝台に座り、その上にドミトリが身軽に上寝台に寝そべる。 マンリは左の寝台だが、下を三人共用の荷物入れとしているので、上寝台に転がり二人の様子を眺めている。 船室には各生徒への郵送物が届けられており、外側からドアに設けられた穴へ突っ込まれる仕組みだった。 そこからボッツとドミトリがそれぞれに自身への手紙などの書類を確認して分け合いながら、それを開封して中身を改めている。 二人分の手紙というのに、その量は相当な物で、束ねると指導書の二冊分はあろうかという厚さになるのであった。 「ねぇ、そんなに読んで目が疲れないの?」 マンリは手紙を読み耽る二人を寝台から見下ろしながら声を掛けるが、二人とも生返事を小さく返す程度であった。 なにせドミトリに至っては重要な情報が記された手紙ばかりなのか、読んだと思った端から手近にあった手帳に自分だけがわかるような記号を用いて書き記すと、手紙自体はすぐに散り散りに破いて窓から捨ててしまう。 この点、空の上においての機密保持という物は容易いと言える。 そして、ボッツの方はといえば、一喜一憂しながら手紙を読み耽っているので、表情が出やすい分、マンリから見ていると、ただただウザッたらしい。 多くの親類からの手紙もあれば、帝都の賭け屋に金を預けて賭けオイルスモウなどをしているらしく、その勝ったか負けたかの結果報告も含まれている。 「…やっぱり、最近の覆面クルカは駄目ね。以前の調子がないわ」 口振りからして、如何にも負けている様子がわかる口調で落胆しているところで、ようやくマンリの視線にボッツは気を向けた。 「活字が見たいなら、何か雑誌でも買ってくればいいじゃないの」 「別にそういうわけじゃないわ。あんた等はいいわね、手紙がそんなに沢山きて」 「あんたと違って目を通すことが多すぎるのよ。実家の方で色々とあってね、所有してる鉱山の稼働状況やら、外部収入の見積もりとか」 そう言ってボッツは封も開けていない手紙の束をこれから読むのだ、とばかりに広げて見せたが、確か先週の分も大して中身を見ていなかったではないかとマンリは記憶している。 「…マンリ、待っていても手紙はこないよ。こっちから出してみないと…、実家には何か送っていないのかい?」 どうして彼女が不服で、つまらなそうにしているのかをすぐに看破したドミトリは、一旦、読み終えた手紙を千切る作業を止めて、煙草缶から一本取り出した。 「アタシの達筆な帝国語を読めて書ける奴がいないのよ。一人居るけど、そいつに内容を全部読ませてから皆に喋られるのは癪(しゃく)だわ」 ドミトリの提案をマンリは不服そうな調子に一蹴した。 「よく、そんな調子で入校出来たもんだわ…」 「なにさ、読み書き出来るからってエラそうに!ボッツなんて戦翼科の筆記、ドンケツだって言うじゃないのさ!」 「私は実践派なのよ」 ボッツが茶化すのでマンリはいつものように噛みつくが、その様子をドミトリは日頃から親しんだ調子に眺めて煙草を吸い始める。 「じゃぁ、そうだな…文通相手を探してみるのはどうだろう?学園機関誌でその手の広告を見たよ」 紫煙を吐き出しながら、ドミトリは思い出したように次の提案を持ちかけた。 これにはマンリも少し興味が湧いたらしく、彼女が寝台下におざなりに挟んであった機関誌を渡すと、マンリは短い腕をぐいっと伸ばして受取、これを捲(めく)り始めた。 「…これって、名を書かないといけないの?」 「いや、匿名でいいそうだ。学園生活の不安や困り事を相談したり、身の上相談も出来る相手が見つかるかもしれないよ」 「私は不安も不満も身の上相談もないわよ。でも、ナバンカ軽機の手っ取り早いバラし方は知りたいわね…」 「それはお嬢様学院の機関誌では無理だろう」 とにかくマンリはある程度、退屈を紛らわそうと機関誌を眺め始めたので、二人は安心して自身への手紙を読むことに専念することが出来た。 それから半時ほど過ぎ、灰皿代わりの皿が吸い殻でいっぱいになってくると、ふと思い出したかのようにドミトリが手紙から顔を上げて 「ねぇ、お二人さん。お茶会の誘いがきているよ」 と、煌(きら)びやかな印が押された封筒を二人に見せてきた。 「なによ?お茶会って」 最初に反応したのはマンリの方で、寝台の上から対のドミトリを見ながら、機関誌を雑に置いた。 「明日に上級生連中の寄宿艦で開かれるらしい」 「いや、だから『お茶会』ってなに?」 「…あぁ、そこからか」 小首を傾げるような顔をして、少し呆れたドミトリの顔を覗き込んでくるマンリにボッツが下寝台から言った。 「人と会ってシーバでもしばきながら、ベチャベチャ喋る集まりのことよ」 手紙を置いてボッツは煙草を咥えながら、そう解説したが、それが適当なものかドミトリは判断しかねた。 「あ、そう。そんな事…それって、酒は出るの?」 「あるだろうけど、君が思っているほどは出てこないと思うよ」 今度はドミトリがマンリの問いに答えると、いよいよ山賊出のマンリは不満そうに眉を吊り上げ 「じゃぁ、いかない。そんなら酒保に溜まって居た方がいいわ」 「そうね、私もやめるわ。貴族の集まりに着ていけるような物なんて持ってないもの」 ボッツとマンリの二人はお互いにそう言い合って、手紙と機関誌に目を戻そうとする。 「待ってくれよ。流石に一着も無いとはないだろう?入校式で着ていたのはどうした?」 「一ヶ月前に休暇で帝都に行ったときに、質屋に出しちゃった」 「あそこで勝っていたら、同じのを二着は買えたのにね。損したわ」 事も無げにボッツが言うと、マンリも平然と頷くので、ドミトリは生粋のロクデナシである同室者に呆れかえった。 「…まぁ、それは仕方がない。『エリーナル』お姉様に借りてくると良い。あの人は物持ちだからね」 ドミトリは呆れながらも、妙に二人をお茶会へ誘うような口ぶりで提案してくる。 「べつに行くとは私達、一言も言ってないわよ?」 「いや、行った方が無難だろう。お茶会というのは建前で、中身はこの前の騒ぎの手打ちをしたいと先方が書いてきているんだ」 不服気な二人にドミトリがそう言うと、二人はようやく視線を彼女が手にしている便箋(びんせん)へと向け、ボッツがそれを受け取って中身に目を凝らした。 やがて、ふんと鼻を鳴らしてマンリにも便箋を渡したが、マンリはそれを逆さに読んで唸っていた。 「この前の上級生ね。若い割には筋を通そうとは偉いわ」 ボッツは数日前の空戦騒ぎで散々苦しめた、自分よりも五つは年下であろう、デシュタイヤ家の番犬と異名を取る上級生の事を思い出し、満足げに煙草を口に咥えた。 手紙の内容はごくごく丁寧なもので、しかも、ボッツにも大変わかりやすいものだった。 ある程度、向こうも非を認め、今後の平穏な生活を誓いたいという意図がそこには記されてあった。 「あぁ、学園生活は長いからね。入校数か月で全面的に上級生たちとやり合う訳にはいかない。その上級生は他の生徒にも随分と慕われているそうだから、これ以上揉めると喧嘩の規模が余計に広がってしまう」 「わかった、行くわよ。これも貴族令嬢の勤めね」 ドミトリは勝ち誇った様子で満足そうに紫煙を吐き出しているボッツを諭し、上の寝台ではマンリがようやく内容を読み終えたらしく、口を開いてきた。 「ボッツが行くならついてくわ。でも、向こうの寄宿艦ってのは気に入らないわ。敵地に乗り込む様なもんじゃない」 「普段から、勝手に武装している私達と一緒にしてはいけないよ。上級生の艦の方がよっぽど風紀が表向きには厳しい。少なくともそんな恰好じゃ、艦の上には立てないだろう」 マンリのどこまでも戦場気分な口を黙らしながら、ドミトリは身軽に上寝台から身を躍らすと、荷物入れを開き始め、中を漁り始めた。 「とにかく、そうと決まればこれをもって、エリーナルお姉様の船室へ行きなよ。明日とはいえドレスの着付けと、少しの礼儀作法は教わってきたほうがいいだろう」 そう言いながら、ドミトリが荷物入れから取り出したのは帝都で買った蒸留酒二本とそれなりに高級な煙草の二カートン分であった。 彼女の言うエリーナルにはこういった『品』を常に持っていく必要があるのだが、それなりに値の張る蒸留酒の方には二人が抵抗した。 「ドミー…、その酒はやり過ぎよ。せめて一本にして」 「そうよ、お姉様はそんな飲みはしないわ」 二人は口々にドミトリの袖を掴んで、それらを上品な布に包もうとするのを止めようとしたが、彼女は頑なにそれらを素早く綺麗に梱包してしまった。 「うるさいね。なにもお姉様だけの分ではないよ。これにはフェンナーの分も含まれているんだ。奴が上級生を単身連れて、寄宿艦に乗り込んで話を付けてなかったら、あと二回はグランビアで襲撃されていたよ」 「望むところよ!」 「君が望もうが望まないが、この船が持ちやしないと言っているんだ」 膨れた態度の二人を落ち着かせつつ不承不承に品を持たせると、ドミトリは船室から、ぶつくさ言う二人を強引に追い出して、まだ大量にある手紙に目を通す作業へと戻る事にした。 しかし、その前に布へ包むように見せかけて、そっと懐に入れていた煙草の一カートンを個人用にと寝台の下の隙間へと押し込み始めた。 暗くカーテンを閉め切った船室の中で、卓上に置いたホタルの光を思わせるような、生体式燭台(しょくだい)の灯に、開いた引き出しの中身が照らされている。 この船室はボッツ達の共同部屋と同じ程度の広さだが、寝台は片側に一つだけで、その上に天井から張り出すようなクローゼットが設置されており、彼女らの部屋と比べるとよほど豪華な一人部屋であった。 空いている壁には華やかな模様が浮かんでいるが、その部屋の主である若い女生徒の顔つきは陰鬱(いんうつ)であり、どこか老け込んだような疲れ切った色がある。 そして、いよいよ、その精神的な疲労困憊の象徴でもあるかのように燭台の灯に照らされている小型拳銃を、ただ彼女は呆然と見下ろしていた。 ちょうど手のひらほどの大きさをして、銃把(じゅうは)には血管めいたものが浮かび上がり、それが時折、脈打っている様は帝国様式の生体銃であることを窺(うかが)わせる。 それを見つめる眼差しは情を感じさせず、そのまま拳銃を握り込んでは脈打つ血管に一瞥を送り、銃口をよどみなく自身の側頭部へと押し付けた。 悪ふざけでもなく、引き金に指が掛かったが、その行為は船室のドアが小さく丁寧に叩かれる音で中断された。 「──…どうしました?」 女生徒がごくごく落ち着いた声で問いかけた時には、既に拳銃は引き出しに戻されて、そっと閉じられていた。 「…ナル様。ラーバとソートが訪ねてきました。物入りの様ですが、どうされます?」 「そう…。構いませんわ、退屈…していたところですし、通してください」 ドアの向こうから聞こえてきた声に、女生徒は穏やかな顔をして、少しの合間考えてから、和らいだ声音でそう返事をして、カーテンを開けた。 『エリーナル・ルグレンツァ・ベッツォ・アルフィート』は初年特待生の中で最も貴族令嬢らしい人物であった。 綺麗に整った銀髪は高位の帝国人であることを示し、落ち着き払った仕草と態度は、やくざ者ばかりな初年特待生の中では異様な存在と言える。 その出自は帝都の一角で栄えたアルフィート家であり、去年までは上級生の一団に遜色(そんしょく)ない存在として肩を並べていた一人であった。 しかし、実家がデシュタイヤ家との権力闘争に敗れ、一家は彼女を残して消され、土地も資産も奪われる形となってしまい、残ったのはエリーナル一人と家名のみとなっている。 本来であれば、学園から早々に追放されそうなものであったが、捨てる神あれば拾う神ありと言ったところで、資金と裏工作や暴力活動には秀でていても、表向きには必要な教養や作法などを必要としているやくざ者たちの実家は、エリーナルを援助して学園に在籍できるほどの資金と名目ばかりではあるが、それなりの地位を用意し、学園を卒業後には過去の栄光には遠く及ばないが、それでも下級貴族としてのポストを地方に用意すると約束したのであった。 当初の内、彼女はとりあえず首がつながった事に安堵したが、時が経つにつれて、いいように利用されているに過ぎない自身の立場が嫌になってきた。 元々、世話人を無碍(むげ)に扱うような性格ではなかったが、今では世話人すらいない。 いや、正確には『フェンナー・シバレッチ』という初年特待生の一人が世話人と護衛を兼ねて、彼女の傍に常に付き添っているが、フェンナーの出自は貴族とは名ばかりのトーロック団出身で、組織からの命令であることは、考えなくても彼女は察していた。 少なくとも忠実で献身的なフェンナー自身に対して、不満は何もなかったが、トーロックからの監視役ともいえる彼女の存在は、エリーナルから貴族令嬢らしい優雅さと誇りをほとんど奪いかけていたが、そんな陰鬱な彼女の元へやってくる、やくざ者を応対する事はある程度、彼女のすり減った自尊心とやせ細った貴人らしさを満たす事へ寄与していた。 「あはは…どうも、お姉様。また、少しお世話になりたくて…」 フェンナーに通され、船室に入ってきたボッツは長い背を折って、慣れていないお辞儀をして、愛想笑いも浮かべている。 「これは、その…日頃のお礼と言っては難ですが…」 その隣に立っているマンリは折るほど背もないので、代わりに先程の酒と煙草を包んだ贈答の品を、精一杯、丁寧にドア脇の小机へ置いた。 「あら、そんな気を回して頂かなくても。今日はどういったご用かしら?」 ぎこちないやくざ者二人の仕草をみていると、エリーナルの口元は自然と笑みを浮かべ、足を揃え、そこへやんわりと手を置いた優雅な姿のまま彼女等を応対した。 誰に対しても無礼なこの二人も、エリーナルに対しては委縮していた。 それは権威や着飾った威勢には反抗的な者でも、精神的に穏やかに語り掛ける畏怖のような気をまだエリーナルが保っているからだった。 「えぇ…その…お姉様の持ってる…いえ、ご所蔵のドレスを二着貸し…、御貸りになりたくて…」 ボッツは目を泳がせながら、それらしい言葉を必死に頭の辞書から引いて選んでいる様だったが、それはどこまでもぎこちなかった。 「あぁ、いいのですよ。そんなに畏まらなくたって、此方もお世話になっているのですから、お気になさらないで」 逆にエリーナルの方が平易な口調で話してくる。 長い間、こんなやくざ者の中で過ごしていると言葉遣いまで乱暴というよりは、だらしのないものになってくるが、彼女の口調は常に温和であった。 「ドレスですわね?丁度いいのがございますわ。…フェンナーさん、ちょっとよろしいです?」 すでによくわからない言語を言いながら釈明しているボッツを放置しながら、エリーナルは外で常に待機しているフェンナーに声を掛けると、彼女はすぐに静かにドアを開けて入ってきた。 耳を隠す程度の長さをした金髪を切りそろえ、小麦色の肌をしたフェンナーはお嬢様というよりは平民出の雰囲気を崩せないが、本物の貴族令嬢であるエリーナルより、遥かに冷酷でとっつきにくい顔つきは彼女がトーロック団の出自であることを物語っている。 「ご用ですか?」 「えぇ、そうなの。悪いけど、衣裳部屋の方で、二人のドレスを見繕ってくれないかしら?多分、マンリさんにはタルシェのドレスがきっと似合う筈だと思うの」 冷めた表情のフェンナーとは対照的に、エリーナルは明るく彼女へ話しかけながら、ボッツたちに立つように促してくる。 「さぁ、一緒に見に行きましょう。私はどうしてもリューリア地方の文化には疎くて…あちらの方はどの様な色が流行っていますの?」 快活にボッツとマンリを隣の衣裳部屋へ誘う彼女に、数分前までの陰鬱さはどこにもなかった。 エリーナルには個室だけでなく衣装部屋も宛がわれており、待遇がボッツ達とは天と地ほども違う。 それでも上級生や中流貴族の生徒の部屋はこれと同等か、若しくはそれを遙かに上回るほど豪勢だとエリーナルが口にしたことがあるのをボッツは覚えている。 船室の隣にある衣装部屋に入っていけば、数々の衣装が部屋の左右に木の様に生い茂りながら並んでいる。 ボッツは昔に旅芸人の荷車に潜り込んだ時を思い出しながら、華やかな衣装の数々を眺めていたが、特にこの手の物ではしゃぐ様な生い立ちでも無いために、ただただエリーナルの勧めに従い適当な物を選んでもらった。 彼女はマンリへ小柄な物を見繕って、着付け方もその場で教授してくれたが、何分、覚えの悪い二人には骨の折れる作業であった。 エリーナルだけでは困難と見越して、フェンナーも手伝いつつ、時間を掛けようやく二人がある程度の記憶をしたことが確認できると一段落がついた。 「助かりました、御姉様。また、このお礼は後で…」 覚えが悪いことに恥じ入りながら、ボッツは着慣れぬドレスを着て、姿が気になるのか、ぐるぐると尻尾を追う犬のように回っているマンリを尻目に感謝の意を述べた。 「いいのですわ、そんな…。それよりも二人揃って、ドレスをお借りに来るなんて珍しいではないですか。なにか気取ったところにでもお出かけですの?」 そんな子犬みたいなマンリを気にするわけでもなく、微笑を浮かべながらエリーナルはそう聞いてきた。 まさか、お茶会と称した手打ち式に行くのだとも言えないので、ボッツはぎこちない愛想笑いを浮かべようとしたが、その際にフェンナーが背後から歩み寄り、エリーナルの耳元で何かを囁いた。 それを見てボッツは、手打ちの方はこのフェンナーが取り付けたのであって、彼女も茶会に同席するのが普通であろうから、エリーナルの方も二人がドレスを借りにきたのか知っている体だと思っていただけに彼女の問いは不思議に思えた。 しかし、よくよく考えれば、彼女に対して『デシュタイヤ家』という言葉は禁句であることをボッツは思い返した。 当人こそ口にも顔にも出さないが、名誉を貶められ、身内を片っ端から失う羽目となった元凶たる彼の一族には並々ならぬ怨みがあるのだ。 トーロックの方としては下手に彼女に暴れられては困るので、極力刺激しないよう抑えている傾向があり、今回のことも出来れば誰と何をするかの目的ははぐらかしたかった。 「…なるほど。お身内の方が訪(おとな)うのですね。それはキチンとなさいませんと。あまり、お遊びに熱を上げすぎてはいけませんわ」 すると、エリーナルはフェンナーの囁きで嘘の事情を説明されて納得したのか、少し小言めいたことを足しながら微笑んだ。 どうやら、身内が来るので普段よりもお嬢様らしい服装で会いたいという旨を彼女に吹き込んでくれたらしいが、後半の方は事実であり、上手な嘘であるといえた。 「えぇ、今後はその様な事がないように致します…ねっ、マンリ?」 相変わらず冷や汗をかきそうになるなか、まだクルクル回っているマンリへ同意を促して、ボッツはこの場を凌ごうとした。 「ん?あー、そうね、うん…。でも、御姉様。よく、こんなアタシ向けのサイズがあったわね。ピッタリバッチシよ」 「あら、気に入って頂けましたか?それは幸いですわ。それはタルシェの物だったのですが、少し時季外れで長いこと袖を通すことがありませんでしたので、少々、不憫でしたの」 マンリは相変わらずマイペースな調子であったが、エリーナルは微笑を崩さなかった。 しかし、彼女の背後に立っていたフェンナーはその顔をより一層冷たくして、二人を静かに睨み付けながら目で早く立ち去るように合図を送ってくる。 これをすぐに察したボッツは、まだ何か言いたそうなエリーナルにそれらしい感謝の意を次々に口から出るだけばらまいてから、マンリの手を引いて衣装部屋をドレス姿で飛び出ていった。 これを訳のわからず引っ張られたマンリは不服そうに 「どうしたのよ、そんなに慌ててドレスが裂けたらどうするのよ」 ボッツを見上げながら問うたが、ある程度、船室から離れてからボッツはマンリを見下ろしつつ、煙草を取りだしては気を落ち着かせようとばかりに燐寸(マッチ)を探している。 「そりゃ慌てもするわよ。タルシェってのはエリーナル御姉様の三番目あたりの妹よ。あの口振りじゃまだ生きていると思っているみたいね」 「なに、死んでるの?」 「えぇ、産業塔の最下層で、非道いことをされた死体が捨てられていたとかなんとかってドミーから聞いたわ。半年前ぐらいで、どうも、まだそこら辺は曖昧になっているみたい。下手に話を突くと混乱してしまうから、気をつけないといけないわ」 そう喋っている間に燐寸を見つけ、ボッツは煙草に火を点けようとしたが、いきなり借り物ドレスに臭いを付けるわけにはいかないと、仕方なく口寂しさに咥えているだけにした。 「帝都貴族ってのも、苦労が多いのねー」 マンリはわかっているのかいないのか、剣呑な感想を口にしながらも、とりあえず借りたドレスが気に入った様子だった。 「こりゃぁ、クルカにも衣装だな」 翌日の休日にドレス姿のボッツとマンリを、酒保で出迎えたルクレシオは、からかい半分驚き半分にそう言った。 船室の壁をくり抜いて作られた酒保には、狭いながらも一日の勤務を終えた整備員や艦の運航に必要な乗組員に加え、同じ様な作業をしてきた初年特待生達もチラホラと混じってひしめき合っている。 生徒ですら作業着姿や軍服紛いであるのに、そこにドレス姿で踏み込んだ二人は一時、不愉快な視線を当てられたが、ルクレシオがこっちへ来いと手招きすると、視線の群れは消え失せて、酒保らしい活気に戻っていった。 「何もこんなトコで待ってなくてもいいじゃない。変な臭いが付いちゃうわ」 「お上品ぶるない、甲板にドレス姿で待ってられっかよ。それにどうせ自分で付ける癖に」 不満げなマンリに対して、ルクレシオはへらへらと笑いながら、まぁ一献とばかりに、さぞ昔は手の込んだ彫金が施されていたのであろう、綺麗ではあるがくすんで古ぼけた杯を此方へ勧めてきた。 「迎えぐらい寄越さなくても、こっちから行けば早いのに、まどろっこしいわね」 不平を口にするのはボッツも同様であったが、こちらは勧められた杯を一息に飲み干し、満足げに唸りながら煙草を懐から取り出している。 それを見てルクレシオは小さく咎めるような声を出した。 「おい、その様はなんだ。エリーナルからバッグとか借りてないのか?ドレスだけ着ててもそれじゃ野人だ」 「前も世話になってるし、今回は話が急だったんだから、これが精一杯よ。アンタこそ立派な物は着ていても言葉遣いが悪すぎるわ」 「そりゃお互い様さ」 ボッツの反論にルクレシオは皮肉げな笑みを浮かべて、ヒラヒラとした胸襟の付いた白いシャツの前で手のひらを揺らした。 ルクレシオは褐色の顔つきに黒く縮れた長い髪を、質素ではあるが決して安っぽいとは断じられない程、凝った彫りの入った髪飾りで止めていた。 大柄でよく鍛え上げられた身体をした大凡(おおよそ)、令嬢という人種には当てはまらない様な体躯をしているが、初年特待生の八割はそんな感じであった。 バセン隷区の監督貴族の令嬢というだけあって、下手な成金貴族よりはよっぽど礼儀作法を知っているクチではあるが、質実剛健が過ぎるのと、実家の情勢下は最悪の一言で、反乱農民の武装鎮圧に明け暮れていることから、一般初年生の間に馴染める訳が無かった。 それに加え、ルクレシオ本人も礼儀と陰口のうるさい集まりよりは、自身と同様の荒っぽい連中と共にしている方が楽しいらしい。 しかし、ボッツ達はエリーナル嬢と違って、ルクレシオからは礼儀的な事を学んだ覚えは無かった。 そうこうしている合間に、ドミトリとフェンナーも酒保へとやってきた。 二人は一見して清楚な装いのドレスをまとい、それは大変様になっていた。 元よりこの二人は背丈も整い、顔立ちも良いので、彼女の素性について知らない物からすれば、まっとうな貴族の令嬢に見えた。 その姿に他の生徒や整備員らも下卑た視線を送ることはなかったが、当の二人は待っていたボッツたちに閉口した様子だった。 「…その姿はなんだい?茶会に行くつもりがあるのか?」 三人の席まで歩み寄ると、ドミトリは困惑した声音で彼女等を見たが、ボッツたちはドミトリの態度が理解できなかった。 「何か、文句でもあるの?しっかり、正装してきたわ。着付けだって、そこのエリーナル御姉様と、フェンナーに教えてもらったとおりにしたのよ?」 「いや、そんなことじゃない。私が言っているのは、君達が腰に付けたソレだ」 ボッツとマンリは我ながらちゃんと着る事が出来たと自慢気だったが、ドミトリの視線は二人の腰にいっていた。 そこには、さも当然とばかりにボッツのお気に入りの大型拳銃と、マンリの方は手頃な短銃とオマケに柄付きの手榴弾まで腰帯に差し込まれている。 「これが、私たちの正装よ」 「いつまで戦場気分でいるつもりだい。さっさとそんな物、外したまえ」 ドミトリは呆れて、二人の武装を解いたが、ルクレシオも低く笑って 「本当に可笑しな奴等だよ。そんな物騒な姿で茶を飲もうだなんて、どういうつもりだったんだ」 「ルクレシオの言うとおりだ…。しかし、何故、君まで私がくるまでにボッツとマンリの物を下ろさせなかったんだ」 ボッツたちを嘲笑うルクレシオにドミトリがもっともな疑問を投げつけると、彼女は何を思ったのか、急に襟付きのシャツの胸元を開いて見せた。 「得物を丸出しにしておくバカがどこにいるんだってことさ。喧嘩相手の縄張りに行くんだぞ、これぐらいはしないと命の保証がない」 そこには胸や腹に大量の爆薬が巻かれており、それを尻目に見た他の生徒や整備兵は何人か素っ頓狂な悲鳴をあげて、慌ただしく酒保から飛び出していったぐらいだった。 「今日一番の極めつけのバカは決まったね。フェンナー、手伝ってくれ」 ドミトリはもう呆れた溜息を吐くほどの肺活量も残っていないのか、フェンナーと二人で強引にルクレシオの身につけた爆薬を取っ払うことにした。 身体に触れられることに過敏であるのは、ならず者共通の意識だが、ルクレシオはただでさえ大柄で荒っぽいので、暴れられると大変厄介だった。 その際に酒保の物品や杯や灰皿が飛び交い、暴れる彼女を大人しくさせるために半ば乱闘の騒ぎにまで陥ったが、それでも5人の衣服がわずかでも千切れなかったのは奇跡と言って良かった。 暫くして、甲板に迎えにきた連絡船は如何にも鈍重そうな見た目をしたゲラァであった。 しかし、5人が乗るにはそれは手頃な広さをしており、対面椅子の座り心地も申し分なかった。 一同を案内し、連絡船を操縦するのは老いた男で、飛行服も随分とくたびれていることから、向こう側でさほど重宝されている操縦士でないことが伺える。 ゆったりと甲板から機体が浮かぶと、上級生達の寄宿している艦へと向かうと思っていたが、半時ほど飛ぶと寄宿艦が窓から見えたが、連絡船はそれを通り過ぎた。 「ねぇ、あの船で茶会するんじゃないの?」 マンリが対座の席に膝立ちをして窓を覗いて一同に聞いたが、なにか慌てる様子も彼女等にはなかった。 「手紙にはそう書いてあったけど、どうも、きな臭くなってきたわね」 「予定が変わることはよくある、気にしない方が良い。貴族というのは気まぐれな人種さ」 「その手打ちって主題も変わってるんじゃないの?」 ドミトリとボッツが言葉を交わしたが、フェンナーは静かに組んだ足の上に手を置いて沈黙し、ルクレシオにいたっては爆薬を没収されたことに、まだ苛立っている様子だった。 「まぁ、その時はその時だ。それに、仮にそんなことがあっても、得物なんてなくても切り抜けることぐらいは、バセンのお嬢様なら容易だと思うがね」 ドミトリは煙草を取り出しながら、意味ありげにルクレシオを見て言ってのけると、彼女は自慢げに腕を組んで苛立ちを治めることが出来た。 ゲラァが降りたった艦船はやはり上級生が多く寄宿している艦ではなかった。 雲の合間にそれが見えたとき、ボッツは馬賊らしい目ざとさで艦の側面にでかでかと『デシュタイヤ』家の紋章が、趣味の悪い金縁に彩られて光っているのを見取った。 「他の家を混ぜてこないとなると、いよいよ不穏ね」 「ボッツ、心配のしすぎだよ。警戒しすぎると、余計に場が不味くなる」 目元に不安な色を帯び始めたボッツをドミトリが諭すと、機体の扉が開き、老練の操縦士が手真似で降りるように促してくる。 一同がそれに従って甲板に降り立つと、艦内へ続くであろう入り口に、数名のメイドを脇に並ばせ、その中央でにこやかな笑みを浮かべた娘が待ち構えていた。 「ようこそおいで下さいました。ドミトリさん、待っておりましたわ」 青の濃いドレスをまとい、煌びやかな装飾品に身を固めた淑女の様に見えはするが、ボッツにはこれが大きく開いた蛇の口で手招きしているような気配を感じる。 「招待して頂き、恐悦至極です。しかし、マリシァヌ様…、カンムーテ様たちの姿が見えませんが…?」 ドミトリは大仰に頭を下げながらも、例のボッツが先日に撃ち殺しかけた上級生がその場にいないことを問うた。 「あの娘は少々、体調を崩しておりまして…、連絡が遅れてしまい、申し訳ありません。そのような事ですから、今回は次にお茶会を開きますときの打ち合わせも兼ねまして、此方でお呼びしましたの。他の人はお部屋でお待ちしておりますわ」 マリシァヌはそれらしい言い訳を述べたが、既にそれを信用する一同では無い。 しかし、この艦まできたからには疑っても仕方が無かった。 現に逃げ道の一つであるゲラァ連絡船は後方で既に何処かへ飛び去っていっている。 「わかりました…。では、そのように…この前は私の友人達が、カンムーテ様方に非道いご迷惑を…」 「いいのです、いいのです。以前からカンムーテはよく下級生にあんな態度をしておりましたから、良い薬になったというものですわ」 ドミトリの謝罪をマリシァヌは朗らかな笑みで包み込もうとしているが、謝っている彼女自身、この笑みが表向きのことであることは察せられた。 「それでは、ここにいても難ですし、どうぞ此方へ」 マリシァヌはそう言いながら、一同を艦内へ案内していった。 彼女はデシュタイヤ家の分家の一人であり、地位的には中流貴族に属しはするが、それでも羽振りの良い帝都貴族らしく、乗艦の内装はそれなりに品が良い装飾物で彩られている。 「…ちょっと、マンリ。そんなにキョロキョロしないの、はしたないわ」 装飾物の並ぶ、艦船の通路とは思えない豪華な連絡路を歩きながら、左右の壁に飾られた物に目が行って仕方が無いマンリをボッツが窘(たしな)める。 「だって、こんな船に乗るの初めてなんだもの」 「うちの実家に来たとき、アルバレステア級に乗ったじゃない」 「あれが?アタシはてっきり、バリステアにごちゃごちゃ櫓(ろ)をくっつけたもんかと思ってたわ。中も汚かったし」 こう言われて、ボッツは声を荒げそうになったが、背後からフェンナーが二人に黙るようにと鋭い目を向けてくるので、しぶしぶ黙り込んで通路を進んでいった。 そのままマリシァヌに通された部屋は、艦の底部にあたる部分で、本来なら見晴らしの良さそうな艦橋近くで催される物と思っていたが、艦の底部とは言え、窓が側面に綺麗に並んで下の景色を眺める様子はそこまで悪くはない。 「あら、皆さん、どこか行ってしまいましたのね」 部屋へ一同を通すと、マリシァヌはわざとらしい落胆の声を出し、他の生徒達を呼んでくると行って、そそくさと部屋を後にしてしまった。 この様子を見て、すぐにボッツはドミトリを睨んだ。 「やっぱり、罠じゃないの」 「罠にしては回りくどい手を使うね。一応、茶会らしい準備もしてあるよ」 噛みつこうとするボッツを相手にしない様子で、ドミトリは部屋中央のテーブルの上に並んだ食器類や、産業塔を模したかのような台が幾重にも縦にある、食器台を指差した。 「スイーツタワーってものだね、帝都式だ」 「アタシこれ知ってるわ!エリーナル御姉様に聞いた」 ドミトリが食台に乗っている、手の込んだ菓子類に目をやると、マンリが好奇心に目を光らせてテーブルの周りをぐるぐると回った。 「こっちを待たせてるんだし、勝手に食べたって文句言われないでしょ。ここまできたら罠でも毒でも飲むだけよ」 「それはどうだろうね。主催者は向こうなのだし…」 ぐるぐると回っているマンリを放置して、ボッツとドミトリは話し合いを始めようとしたが、少し目を離した隙にマンリがテーブルに飛び乗って、スイーツタワーに登頂しようとするのでルクレシオが慌ててそれを取り押さえていた。 「おい、いい加減にしな!ヨダの山賊娘が!高いもんみるとすぐコレだぜ」 ルクレシオに羽交い締めにされながら、マンリは手足をジタバタとさせ、意地汚くスイーツタワーの天辺を取ろうとしている。 「だって、一番高いとこにあるのが値も張って美味しいのだって、御姉様に教えられたのだもの!」 抗議するマンリを一旦、床に下ろしてルクレシオは呆れたように腰に手をやり、脇からドミトリとマンリがルクレシオに同部屋の粗相(そそう)を詫びた。 「マンリ、高い皿は茶会の主催者や高位の者が取るって決まっているんだ。私達は揉め事を起こした側だし、位だって低いのだから、せめて下から取るんだ」 ドミトリは冷静に母が子に叱るような口調で言ったが、マンリは口を尖らせた。 「嫌よ。そんなの、いくら身分が下だからって、変な臭いのするような物、食べさせられたら堪らないわ」 「変な臭い?」 マンリの不平に耳を傾けたのは、ルクレシオだった。 彼女はその下の菓子を一つ取ると、指先でわずかに表面を削り取って、鼻に慎重に近づけて臭いを確かめた。 普段から大雑把な彼女がそんな神妙な事をするので、他の者もそれを黙ってみていると、やがてルクレシオは菓子を床に捨てた。 「流石、野人だ、香に敏感だな。痺れ薬の一種だ」 彼女がそう言いのけると、ボッツ達も下の菓子を改めだした。 「…ほんと、ガリッシュ豆ね、これ」 「首から下が麻痺するって代物か」 「…前に帝都で使ったことが…。これには致死量寸前まで塗りたくってあるな」 ボッツとドミトリが顔を苦くし、フェンナーに至っては物騒なことまで口走った。 「手柄だな、山賊娘。ほれ、褒美に上のを取って食っていいぞ」 ルクレシオはそう言うと、マンリの腰を掴んで高く持ち上げて、スイーツタワーの天辺にある菓子を食べれるようにした。 これには毒味の意味合いも兼ねていることは、マンリ以外皆知っていたが、少なくとも死ぬことは無いだろうと誰も止めなかったし、当人はルクレシオが親切に持ち上げてくれたと勘違いしたので、ばくばくと天辺の菓子を手掴みでむさぼり食った。 そして、毒があるどころか、大変美味なことを下品にゲップで示してくれた。 それから間もなくして、マリシァヌは部屋に戻ってきたが、メイドが三人付いてきた以外は、やはり他の連れはいなかった。 戻ってきたこと自体がボッツたちには意外であったが、とくに追求するような真似はせず、彼女の方は何か釈明するわけでもなく、温和な笑みを浮かべたまま席に着いた。 そして、その視線は随分と量の減っているスイーツタワーの下段へ向けられていた。 「マリシァヌ様、申し訳ありませんが、勝手に先に始めておりました…」 ドミトリが彼女へ謝ろうとしたが、柔和にそれを手で制してから、随分と歪な形で茶会は再開された。 当初の内は、ドミトリが一同の顔役となってマリシァヌと世間話を繰り返していたが、その傍(かたわ)らではボッツ達が茶菓子と貪り、シーバを啜っていた。 マンリが無作法であることは常の事であるが、かといってボッツ等の作法が格式高いという訳ではなく、精々、田舎の賊と都会寄りの賊との違いでしかなかった。 それをとくに見咎める事もなく、マリシァヌはメイド達に高い段の菓子を取らせては優雅に小口に食していた。 そして、ドミトリとフェンナーが下の段の菓子を、一同の中では最も丁寧に食すのを見ると、満を持したようにマリシァヌは口を開いた。 「──ところで、皆々様?体のご加減はどうです?」 その顔には言葉とは裏腹に心配そうな色は欠片もなく、得意そうな気を帯びていた。 「そろそろ、菓子に塗りこめましたお薬が効いてきたと思いますが…。あぁ、心配なさらないで苦痛はありませんわ。ただ、しばらくの間、首から下の自由が利かなくなるだけですわ。…その間にこのお部屋は海上に投棄致しますが、ワフラビア女学園に不要な物は掃除するよう、御姉様に仰せつかっておりますので、ここで貴女達には海の藻屑となって貰います。どうぞ、あしからず」 マリシァヌはそう冷酷に勝ち誇った笑い声を上げた。 しかし、ボッツ達は一斉に、その場で何事も無かったかのように立ち上がった。 これに最も驚いたのは毒を盛った張本人であるマリシァヌだった。 「なぜ?!なぜ、動けますのっ!貴女達…ぁっ」 狼狽したマリシァヌも動こうとしたが、彼女の体は微動だにせず、先程、自らが言ったとおりの毒の効能が自身の身体に現れていた。 「毒を飲んだのはアンタだけよ」 そう得意げに言ったのはマンリだった。 彼女は優雅にシーバを啜りながら、手にあった菓子を口へ放り込んだ。 「上の菓子が一番、上等な物だってエリーナル御姉様に教えてもらったものだから、上だけ食べて下のと全部入れ替えてやったってわけ!」 マンリは相手の作為を見抜いていたわけではなかったが、結果的におのれの狡さが高貴で鼻持ちならない女を出し抜いたことに優越感を得た。 「おのれっ…」 マリシァヌは今までの温和な表情をかなぐり捨てて、すぐに助けを呼ぼうと声を張った。 その場にいたメイドたちは顔にわずかなら狼狽の色を浮かべはしたが、すぐさま長いドレスの裏に隠した得物へ手を伸ばそうとした。 しかし、その一手間は敵と相対している際には、隙だらけな所作であり、得物を取り出す前にその端正な顔面が、ルクレシオの鉄拳に殴り倒されていた。 その場でマリシァンヌを袋叩きにすることも出来なくはなかったが、一同はあえてそうしなかった。 代わりにボッツは彼女の身体を羽交い締めにして、人質を取るようにして部屋の奥に下がり、ドミトリとフェンナーは彼女の左右に素早く立って身構える。 マンリとルクレシオは扉の脇へと突進し、天井の梁へとルクレシオの肩を借りてマンリは飛び上がっては、そこで待ち伏せを仕掛けることにした。 この動きはものの数秒も経たずに完了し、この手の荒事において、各々がどう動けば良いか本能的に身体に染みついているが故のものだった。 やがて、扉が乱暴に開かれて、武装した衛兵が部屋へ数人飛び込んでこようとした。 しかし、突き出された小銃の先は扉の横で待ち構えていたルクレシオに掴まれ、容易く奪い取られ、続いて突入しようとした衛兵の頭へマンリが飛びかかってくる。 ルクレシオは小銃を棍棒のように握りしめると次々に衛兵や武装したメイドを殴りまくり、扉の入り口には昏倒した者達で山が出来た。 まだ冷静な者達は後ろに退いて、室内の様子を見ればそこにはマルシァヌを人質に取ったボッツたちが 「ちょっと、気分が悪いので帰らせて頂きますわ」 と、わざとらしく澄まして言いのけるので、これで事態の解決を見た。 マルシァヌの艦から飛び去るために、既にドミトリが乗艦を出る時に連絡船を、ルラーシ三姉妹に追跡させていたので、帰りの便はすぐにやってきた。 悠々と帰りの船に一同が搭乗するときには、慰謝料と称して、マンリが自分の体躯と同じぐらいの酒保物品を袋に詰め込んで引きずりながら乗り込んできた。 「こーいうのなら、お茶会も悪くなわいね!」 そういって、袋の中から、高級な菓子よりも好んでいる酒を取り出すと、乱暴に栓を抜いてグイグイと喉を鳴らして飲み干すのであった。 そんな様子を尻目に見ながら、ドミトリは甲板の上に乱暴に投げ捨てられ、未だに体が動かず、しかも、武装した連絡船からの攻撃を恐れ、誰も近づいて助ける事も出来ない哀れなマリシァヌへ目をやって、隣のボッツヘ話しかけた。 「折角、手打ちに出来ると思ったのに、馬鹿な事をしたものだね」 「別にいいわよ。今度はこっちからお茶会に呼んでやればいいわ」 ボッツは鼻を鳴らしながらそう返し、マンリの袋から酒を取り出して、一同に回し始める。 そして、それを受け取ったルクレシオが愉快そうに 「じゃぁ、スコップがいるな。泥団子でも食わせてやろう」 等と皮肉気に言うので、一同はクスクスと笑うのであった。
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(コスト4)(パワー6000) クリーチャー(アーマロイド/ビートジョッキー) ■このクリーチャーが出た時、自分の手札を好きな数捨てる。その後、自分の手札が3枚以下になるようにカードを引く。 ■各ターン、はじめて自分が手札を捨てた時、相手は自身のパワーが1番小さいアンタップしているクリーチャーを1体破壊する。 ■スピードアタッカー ■Wブレイカー 評価 選択肢 投票 壊れ (0) 即戦力 (0) 優秀 (0) 微妙 (0) コメント 名前 コメント