約 2,635,130 件
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/10178.html
FINAL MISSION S.C.A.T. Special Cybernetic Attack Team 機種:FC,NES 作曲者:禎清宏(KYOHEI SADA) 開発元:ナツメ 発売元:ナツメ 発売年:1990(FC)、1991(NES) 概要 ナツメ販売のシューティングゲーム。人間の自機を操作し、発射角度を自在に変えられるオプションを駆使しながら全5ステージを進む。その見た目はカプコンの『ロストワールド』を彷彿とさせる。 BGMは元コナミの禎清宏氏が担当。BGMやSEなどコナミのそれを感じさせるものが揃っている。 北米では『S.C.A.T. Special Cybernetic Attack Team』のタイトルで発売。ストーリーが若干改変されているほか、ステージ3とステージ4が入れ替わっている、初期ライフの数が増えていたりライフ回復アイテムが出るなど、ステージ構成やゲームバランスに手が加えられている。またBGMも音が半音上がっていたりスネア音が変わっていたりと変更がなされている。 収録曲(サウンドトラック順) 『ファイナルミッション』収録曲 曲名 作・編曲者 補足 順位 オープニングデモ ステージ1 ステージ2 ステージ3、4 ステージ3前半ステージ4前半 ステージ3~アトランティス登場 ステージ3後半 ステージ4~高速の空中戦 ステージ4中盤 ステージ4~ガードファイアを撃墜せよ ステージ4後半「ステージ1」のイントロなしバージョン ステージ5 ボス戦 エンディング エンディング スタッフロール ステージクリア ゲームオーバー 『S.C.A.T. Special Cybernetic Attack Team』収録曲 オープニングデモ オープニングボイス ステージ1、ステージ3~ガードファイアを撃墜せよ ステージ1ステージ3後半 ステージ2 ステージ3、4 ステージ3前半ステージ4前半 ステージ3~高速の空中戦 ステージ3中盤 ステージ4~アトランティス登場 ステージ4後半 ステージ5 ボス戦 ステージクリア エンディング スタッフロール エンディング ゲームオーバー サウンドトラック Rom Cassette Disc In NATSUME VOL1 『ファイナルミッション』(国内版)を収録。 Rom Cassette Disc In NATSUME Vol.2 『S.C.A.T.』(北米版)を収録。
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/2910.html
【TOP】【←prev】【FAMILY COMPUTER】【next→】 FINAL MISSION タイトル FINAL MISSION ファイナルミッション 機種 ファミリーコンピュータ 型番 NAT-FV ジャンル シューティング 発売元 ナツメ 発売日 1990-6-22 価格 5800円(税別) 駿河屋で購入 ファミコン(箱説あり)
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/5046.html
今日 - 合計 - ファイナルミッションの攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時51分16秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/3204.html
ファイナルミッション ボスキャラ コメント ナツメから発売されたFC用シューテングゲーム。 ボスキャラ ハガネール:CROSS-SNAKER コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 プレイヤーキャラ ルカリオ:名称不明 2Pは色違い推奨 ボスキャラ ホエルオー:ATLANTIS フォレトス:SHI-VAI -- (ユリス) 2015-11-28 16 29 07
https://w.atwiki.jp/famicomall/pages/1257.html
前のゲーム | 次のゲーム クリア条件:EDを見る 開始時間:2008/05/19(月) 04 05 02.21 終了時間:2008/05/19(月) 06 12 30.66 2008/07/08(火) 01 54 46.99(2人プレイ補完) ナツメの自機人型STG これってカプコンのロストワールdうわなにをするやめろあせふじこ サウンドはコナミックなナツメクオリティ オプションが2つ付いており自機の動き合わせて動く Aボタンで可動/固定を切り替える パワーアップはL(レーザー)、W(ワイド)、B(ボム)、S(スピードアップ) 被弾すると解除される ライフ制、全5面、コンテは無限? 難易度は高いと思います 2人同時プレイ可能 ラスボス撃破 初見殺しの高速弾を撃ってきますが、見切りやすいのでライフを持ち込めば余裕 エンディング 全選手入場 道中が結構難しいです。 被弾して装備を失うと押されてしまう・・・ あと4面は色々見辛すぎwww 2人プレイ補完です。 一人のときに対して敵の耐久や難易度に変化は見られないため、殆どのボスが瞬殺できます。 チラツキはより激しくなりますが……。 ▲ラスボスは2人で撃ち込めば動かずして倒せてしまう ▲脱出する光が2つに ▲人影も2つ
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/637.html
変身─ファイナルミッション─(4) ◆gry038wOvE ──宇宙。 こちらでは、ウルトラマンゼロと蒼乃美希が、尚もウルトラマンノアの探索を続行していた。 これまでと決定的に違うのは、二人の間にわずかばかりの希望が芽生えており、ある手がかりを持って宇宙の旅を続けている点だろう。 無数の星を通り越し、ゼロは飛ぶ。 「おい美希……! 確かにこっちから声が聞こえたってのか?」 『ええ……!! 今、向こうから……!!』 美希の感覚を頼りに、ゼロがマッハ7のスピードで進行する。 そう──確かに美希の耳には、あの孤門一輝の声が届いたのである。 ──美希がダークザギとの戦いで憎しみに没した時、孤門がかけたあの一言が、確かに「自分の居場所」を教えていたのだ。 それこそが、二人の合図だ。 ──諦めるな!── 孤門の口癖であり、信念だった言葉。 どんな苦難に直面した時も、その言葉一つで全てを晴らしてくれるそんな意味が込められた──とても大事な言葉。 美希の脳裏に、それが直接届いたかのようだった。 いや……これは、おそらく──あの時の言葉が、「忘却の海レーテ」を介して、時空を超えて届いた一言なのではないだろうか。 そう、思った。 あの時、かけてくれた言葉が、再び……孤門を助け出そうとしている。 誰も真相を知る事はないが、かつて、孤門一輝という少年を助けた手と、その一言が──また、今度はそれより未来……そう、今の孤門を助けようとしている。 そんな連鎖が、奇しくも孤門一輝の運命を支えている。 ただのどこにでもいる優し気な男に見えて、実に奇妙な因果の集中している人間だ。 「──……わかった。美希、俺はお前を信じるぜ!」 そんなゼロは、自分の持つ残りのエネルギーを全て使いかねない勢いで邁進する。 どの道、手がかりなどないのだ。力を出し惜しみ、小出しにしながら探すよりも、美希の自信を信じるしかない。 彼女は、孤門の声が幻聴だとも思っていないし、美希の確固たる自信だけは感覚としてゼロの中にも伝わってくる。 これが、人間を信じるという事なのだ。 (ああ……親父……ほんとに、地球人って奴は……!!) ゼロの父は、かつて──何度となく、地球人を信じる事が出来なくなったらしい。 しかし、醜さを知る一方で、多くの地球人のやさしさや温かさも知っていた。誰よりも地球人を愛したウルトラマンと自称する事もあった。 ──アンヌ、アマギ、ソガ、フルハシ、キリヤマ……時として彼は、絆の芽生えた地球人の名をゼロに語った。 そして、忘れてはならない……モロボシ・ダンの姿の元になった、薩摩次郎という男の名さえも。 彼と同じ地球人への愛情は、あらゆるウルトラマンたちも持っているが、ウルトラセブンは特別だった。もし地球人たちが暴走し、宇宙の敵に回ったとして、彼はそれでも地球人の味方をするのではないかとさえ思う。 自分の父は、正義より、愛を選ぶだろう。 ……それは、ゼロも同じかもしれない。 父親から受け継いだ、地球人との絆。──それを今、実感している。 そして、ゼロは今から二人の地球人の名前を、己が信じる地球の名前として刻む。 蒼乃美希、それから、孤門一輝だ。 まだ直接会ったわけではないが、美希に声を届かせようとしているその男の名を──。 ゼロは、自分とベリアルを再び会わせてくれる男の名として──そして、いかなる時も諦めない男の名として刻んだ。 「──」 周囲の景色はめまぐるしく変化している。 幾光年はるか彼方までも、ゼロは飛び続ける。 美希が声を聞いた所まで……。 『──もうすぐ……』 ──諦めるな!── 『うん……!』 美希の中に聞こえる声は次第に大きくなっていく。 地上では、遂にユートピアドーパントに向けて一斉攻撃が放たれた頃だった。 その頃には既に美希の中で、孤門一輝の心の声が巨大に膨らんでいる。 『私は諦めない……!! ここに希望がある限り──』 諦めるな……。 美希がここに来て──仲間が死ぬかもしれない恐怖に挫けそうになった時、孤門がかけてくれた言葉だ。 結局、桃園ラブも、山吹祈里も、東せつなも……たくさんの友人は死んでしまった。 そして、そんな美希を常に支えるのは、孤門が放った言葉なのである。 単純ゆえに。 その言葉は、決して重圧にもならず、美希に追い風を吹かせている。 今も、どこかで──ラブの両親や、祈里の両親や、せつなの仲間や、学校の友達が……きっと悲しんでいるのだろう。 立ち直る事は出来ないかもしれない。 だが、後を追う事だけは絶対にしてほしくない。 ──希望は、必ず、どこでも失われないのだから! 『──来た!!』 ──瞬間。 「!?」 ──白い光が周囲を包んだ。 無限の暗闇の中にあるはずの宇宙に、星々の煌めきではない、何か神々しいとさえ思える白い光が広がっていく。 それは、ウルトラ戦士の中でも神と言われるような存在が放つ光であった。 「あれは……!!」 そこには、ただ……ウルトラマンゼロと、その中にある蒼乃美希と、視認するのが難しいほどの小さな人形だけがあるのだった。 しかし、それがウルトラマンノアの形をしたスパークドールズであるのが、すぐにわかった──。 「見つけたのか! 美希!!」 ゼロの歓喜の声が響いた。 しかし、今、この宇宙に声を轟かせるのは彼だけだった。 美希はゼロに向けて何も言わなかった。 ≪────美希ちゃん……!≫ スパークドールズの声が聞こえる。──この数日間、この宇宙の暗闇の中を彷徨い続けていた孤門一輝の声だ。 彼はずっと唱え続けたに違いない。「諦めるな」という言葉を自分に言い聞かせ、助けが来るのを待ちながら、この絶対の孤独を、挫けずに乗り切ったのだ。 「……ああ。ほんと、すげえよな……お前ら!!」 そして──。諦めるな、という言葉が二人を繋いだのだ。 ウルトラマンノアは、ここで、孤門と美希の絆が宇宙の距離を縮めるのを待っていたかのように見えた。 ゼロは、唖然とした表情ながら、全く敵わないといった様子であった。 しかし、直後には、熱い声で美希に呼びかける。 「────行けぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 美希!!」 ゼロが伸ばした掌の先から、蒼乃美希の腕が現れた。 腕だけを分離し、スパークドールズに合わせたサイズへと変わるのだ。そして、その腕に強く握られたギンガライトスパークがウルトラマンノアのスパークドールズに向けて届いていこうとしていた。 ギンガライトスパークがノアのライブサインと反応する時、遂にウルトラマンノアは復活する事が出来る……。 「孤門さん……!!」 ──届け。 そんな願いと共に、ギンガライトスパークがライブサインへと、届く。 そこから再び光が放たれる。 ────レーテの時と同じように、美希と孤門は、手を取り合った。 ──ULTRA LIVE!!── 「絆……ネクサス……!」 ──ULTRAMAN NOA!!── 【孤門一輝@ウルトラマンネクサス 再臨】 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(3)Next 変身─ファイナルミッション─(5) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(3)Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(5) Back 変身─ファイナルミッション─(3) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(5)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/639.html
変身─ファイナルミッション─(6) ◆gry038wOvE ──不可解な静寂。 ガイアセイバーズを見下ろすカイザーベリアルは、自ら口を開く事はなかった。 そして、ガイアセイバーズと呼ばれた男たちも、その姿をただ、見上げて、一概に「敵を睨んでいる」とも言い切れない瞳で見つめるだけだった。 これは、「緊張」と呼んでいいのか、わからない。 もはや、それは奇妙な時間のマジックだった。何時間となく、無言の睨み合いが続いていたような気さえした。 それは、余裕を心に内在しているベリアルの側も同じ事だった。 自分がこうして出向く事になる事など、殆ど無いと思いつつ、心のどこかではそれを期待していた……そんな感情もあったのだろう。 ベリアルにとっては、まるで現実味のない夢が叶ったようでもあり、厄介な邪魔者に夢を邪魔されているようでもあった。この強敵でさえ、そんな微妙な感慨に没していた。 だが──誰かが、その、何人も口を開く事ができなかった静寂を、ふと打ち破った。 「────みんな……奴を倒し、全てを終わらせるぞ……!!」 それは──シャンゼリオン、涼村暁だった。 誰もが一斉に、彼の方を見た。──彼がその言葉を告げた事を、誰もが心から意外に思ったようだった。 目の前の敵が倒されれば死ぬ──そんな宿命を背負っているのは、実のところ、この元一般人の青年に他ならない。 そして、何より彼には──涼村暁には、そんな宿命と戦うヒーローの自覚は全くない。 今日の今日に至るまで、ただ、なりゆきでそれらしい事をしているが、普通の人間だ。いや、むしろ……およそ、ヒーローの資質とは無縁な性格の男だと言える。 そんな彼が……真っ先に……。 真っ先に──この静寂を打ち破り、こうして誰かの心を熱くさせたのだ。 ぐっと、全員が顔を顰めた。 「──ガイアセイバーズ。 遂に加頭まで倒しやがったか……俺様の前に現れるとは、予想外だった」 まるで暁に釣られるように、ベリアルの方が言った。 静寂が打ち破られ、雲が次第に晴れるようにしてベリアルの目が光る。 誰もが、初めて、ベリアルの声を聞いた。それぞれが全く別の声に聞きとったのだが──いずれにせよ、それは巨悪らしい低い声だった。 こんなに近くで──全ての世界を崩壊させようとする元凶が自分たちに語りかけているのだ。この最大の怪物が……。 彼一人が、宇宙を支配し、そして崩壊させようとしている。 そして、彼がいれば、これから数日と宇宙を保たせる事はできない。 「まさかお前らとこうして会う事になるとは思わなかった……褒めてやるぜ!」 そして。 そんなベリアルの声色は、心なしか、どこか嬉しそうだった。 それが何故なのかは、すぐには誰にもわからなかった。 世界にただ一人いるのが、いかに退屈なのだろうか……。 きっと、内心ではそうなのだろう。 それを、表には出さずともどこかでわかっていたのかもしれない。 ……世界の支配者には、「敵」が必要だった。 世界の一番上に立った支配者にあったのは、満足感や充足感だけではなく、渇きだったのだ。元から持ち合わせていた隙間が、圧制によって埋められる事はない。 だが、今、こうして彼らが乗り越えて来た事で、ガイアセイバーズという絶対の敵が生まれたのだ──。 おそらく、ウルトラマンノアの再誕を妨害しながらもその姿が現れると歓喜にも似た感情を抱いたダークザギも、同じ心情だったに違いない。 ガイアセイバーズの中にも、ベリアルを前に、何か胸騒ぎがする者がいた。 それは、恐れではない。 むしろ、奇妙な共感とさえ言える。──生か、死かの戦いという気がしない。 何故か、むしろ、最大の敵を前に、安らかで、精神的には抜群のコンディションでさえあった。それは、ずっと追い求め、憎み続けた相手が目の前にいるのだと、その想いがあるからかもしれない。 これまでと相反する感情が内心に溢れたせいか、こうして目の前に強敵がいる事にも、不思議と現実感が消えていった。 しかし、そんな頭を切り替える。 「来い……! 俺は、小細工はしない……! お前らに勝つ自信があるからな……!!」 そんなベリアルの言葉に、ごくり、と唾を飲み込む。 だが、どう取りかかればいいのか、各々が少し悩みあぐねた。 相手の身体は50m近くもあり、簡単には倒す事ができない相手なのを実感させる。 あのフィリップですら、ベリアルの対策は検索しても浮かばないほどだ。 しかし。 そんな状況下でも、秘策を持つ男が、この場にただ一人だけ、いた──。 「……」 ──そして、その男は、ゆっくりと前に出て歩きだした。 「……──」 通用するかはわからない、と思いながら。 ただ、目の前の敵にぶつける為に、少しは修行したのだ。 その男の背中を、誰もが目で追った。 どこか誇らし気に、ベリアルの前に出て行く男──。 「──仕方ねえ……! あのサイズの敵を倒すにはあれっきゃねえな……!!」 それは、仮面ライダーエターナル──響良牙であった。 ばっ、とマントを靡かせる彼の姿は、何らかの秘策を持っている状態のようだ。期待を持っている者もいれば、期待の薄い者もいた。そう簡単に倒せる相手ではないのは誰もが理解している。 だが、どうやら、良牙には、巨大な敵と戦える術があるらしい。 エターナルに向けて、ブロッサムが声をかける。 「良牙さん……? 何か秘策が……!?」 「──ああ。実は、俺は、闘気を使えばあれくらい巨大になれるんだ」 そんな一言に、誰もが少しの間固まった。 体を巨大にして戦うという事が出来るならば、数日前のダークザギ戦において、何故彼はそれを使わなかったのか……と誰もが思ったのである。 それは、自然と口から出てしまう疑問だった。──ブロッサムが、誰しもが抱いた疑問を自らが代表して彼に突っ込んでしまう。 「──なんで今までやらなかったんですか!?」 「今ほど力が溢れてる時がなかったんだよ!!」 だが、エターナルにかなりの剣幕でそう返されて、ブロッサムは今度は少し小さくなった。 確かに──いくら良牙でも、それほどまでに強大な力があって、ダークザギ戦の時に使わぬわけがない。 そして、あの時は、今のように黄金の力が自分たちを助けてくれる事もなかった。力でいえば今よりずっと低く、資質もないのだ。加えて、良牙はこの数日で、闘気の使い方をかつて以上によく学んだ。 そう。彼は「今」だからこそ……彼の力が及ばぬ、歴戦の達人の技を使おうとしていたに違いない──。 「いくぜ!!」 エターナルが叫ぶ。 そして、同時に──八宝斎や早乙女玄馬がかつて行った、“闘気による巨大化”を始めたのである。 全員、半ば半信半疑であったが、そんな怪訝の色は、エターナルの頭が階段を上るように高くなっていくにつれて失われていく。 「──!!」 歴戦の勇士であった者でさえも、この妖術めいた格闘の曲技には目を凝らし、そして、自分の経験すらも疑っただろう。 だが、現実に起きている事であるのは言うまでもないので、自らの経験の浅さを一笑して区切りをつけた。 それと同時に、感嘆もしてしまった。──下手をすると、ベリアルでさえもそうした存在の一人であったかもしれない。 「おおっ……!」 かつて八宝斎及び早乙女玄馬の二名によって行われたその激闘の様子は、さながら妖怪大戦争のようだったが──今、この場においては、唯一の希望であり、無敵のヒーローとなる存在の誕生の瞬間だ。 直後──仮面ライダーエターナルは、確かにオーラを纏って、少しずつ大きくなった。 味方の誰もが、その姿に大口を開ける。まさか、この男──こんな異様な力までも持ち合わせていたとは。 「すげえ……!!」 そして、気づけばウルトラマンのように、ベリアルのサイズへと変身しているのだった。 これが仮面ライダーエターナルの「秘策」だったらしい。 確かに、これならば、カイザーベリアルも恐れるに足らない。エターナルの実力は誰もが知っているし、カイザーベリアルとの体格差が埋まった以上、分があるのは自らの方であった。 良牙の闘気が解放され──そして、高らかに宣言し、いつも以上に遥かに大きな声で名乗りをあげた。 「見ろ、ベリアル……これが、お前を倒す────超エターナルだッッッッ!!!」 両者は同じ高さの目で、少し睨み合う。ベリアルが、そんなエターナルを前にも、気圧される事はなかった。 エターナルの目と、カイザーベリアルの目が合う。──両者の間に、緊張が走る。 だが、ベリアルは、嫌に淡々としていた。 「──巨大化、か。人間のくせに……」 「ああ……! これでお前と同じ土俵で戦える!!」 そう言いつつ、これから、この敵と戦わなければならないのか……と、エターナルは内心で独り言ちていた。 こうして同じ目線で前を見ている者こそが、これがこれまでずっと追い求めていた強敵。 そう、誰よりも強い敵だ。 こうして、自分一人で戦って勝てる相手とは限らない。 だが──エターナルは、一息飲んでから、戦う覚悟を決めるように、左掌を右拳で叩いた。 風が吹く。 「……」 「……」 ──────そして、その直後、巨大な仮面ライダーエターナルの姿は消え、エターナルは再び等身大に戻った。 「……」 あまりの事に、誰もが言葉を忘れ、冷やかな瞳でエターナルを見た。その瞳は、興味のないものを見つめる猫の瞳にも近かった。 何故か元のサイズに戻ってしまったエターナルは膝をつき、がくっと肩を落としている。 そして、言った。 「……くそ。今の俺じゃ三秒が限界か」 ……良牙の力、及ばず。 良牙はまだ若く、ちょっとやそっとの修行を積んだ所で、巨大化したまま戦う事など出来ようはずもない。 これは、年長の達人である八宝斎や玄馬ですら、数秒しか保たなかった技なのだから。 それ故、良牙がこれだけしか巨大化できないのも仕方のない話であったが、実戦の上で全く意味のない時間が過ぎ去り、多くの期待が泡と消えた事は言うまでもない。 「──何の為に大きくなったんですか!!」 今度のキュアブロッサムのツッコミは、全く、その通りであった。 少し良牙に期待した者は、過去の自分を呪った事だろう。 頭を抱える者も出た。幸先が不安である。──よりにもよって、カイザーベリアルとの初戦がこれとは。 ベリアルも、一瞬唖然としたが、余裕を込めて笑った。 「クックックッ……おもしれえ。随分と余裕があるじゃねえか……!」 「余裕なんじゃないやい! 本当にこれしか出来なかったんだい!」 負け犬の遠吠えのように、ベリアルを見上げて叫ぶエターナル。 しかし、誰もがそんな彼を白けた目で見つめている。 当の良牙が、全く本気であるのが輪をかけて救いようがない話で、彼は背後の者たちの視線にさえ気づかなかった。 「──ボケてる場合じゃありません。……どうしましょう」 レイジングハートもまた、呆れかえっていたが、それを中断して仲間の方を見た。 彼女自身、ほとんど無意識の事だが、まさに言葉の通り、両手で頭を抱えている状態であった。決戦を前に、こうして頭を抱えたのは初めてである。 ダミーメモリの力をもってしても、巨大化は不可能に違いない。 どうして、ベリアルと同じ土俵に立つ事が出来ようか。 「フィリップ。巨大化する術は……?」 『残念ながら、ない』 「……って事は、やっぱりこのまま戦うしかねえって事か。仕方ねえな……」 と、ダブルがダークザギ戦のように等身大のままダークベリアルと戦う覚悟を決めようとした時である。 ──誰かの声が、また、響いた。 「──いや、違うぞ!!」 誰だろうか。 そんな、聞くだけでも希望が湧くような言葉を発したのは。 またくだらないボケか、と心が諦めるよりも前に、誰もが反射的にそんな希望の一声を頼ってしまう。 「──」 ダブルが振り向くと、それは佐倉杏子であった。 ──全員が、ほぼ同時に杏子の方に目をやっていた。 一体、フィリップにさえ何も浮かばないのに、どんな秘策があるのかと思った。 そして、ダブルは、彼女が今、手に持っている物体に視線を落としたのだった。 「杏子……それは……」 ──見れば、杏子の手では、「何か」が強い輝きを放っているのである。 今度の希望は、決して良牙のようなくだらないボケではなさそうだ。 彼女は、良牙と違う。場を白けさせるボケはしない。 真っ赤な光を輝かせるその物体から、誰しもの耳へと「音」が運ばれて来た。 「そうだ……まだ手がある……!!」 どっくん……。どっくん……。 普段から、どこに行っても鳴り響いているはずの音──。 そう──“鼓動”。 杏子の手にあったのは、まるで心臓のような血の鼓動だった。だが、心臓を持っているのではなく、鼓動を手に持っている。 それを見て、各々の頭に浮かぶのは、あの忘却の海レーテで見たウルトラマンのエナジーコアに酷似した物体である。 そして、杏子自身は、あの時──彼女自身がデュナミストであった時に感じたエボルトラスターの鼓動を重ねていた。 あの時に、自分がデュナミストをやっていたから──だから、それが自分の切り札だとわかったのだ。 杏子の手に握られているのは── 「あたしのソウルジェムだ……!! こいつが……光ってる!!」 ──そう、魔法少女のソウルジェムであった。 今は使えないはずのこれが、久しく、彼女に反応したのである。……そして、その理由が、彼女にはすぐわかった。 杏子は、かつて、ドブライという一人の男が教えてくれた事を思い出す。 彼もまた、ある世界で出会った、杏子の友達の一人である。──そして、彼が最期の時、杏子に、何を告げようと……何を託そうとしたのか。 その言葉が、再び杏子の胸に聞こえた。 ──……杏子よ。君のソウルジェムが……光が……きっとまた、輝く時が来る……その光で、ベリアルを、きっと倒してくれ……── それから、今度は、自分のソウルジェムが石堀によってレーテに放り投げられ、無限の絶望の海を彷徨った時の事を思い出した。 巴マミの尽力によって、絶望の海から再びこの世界へと還ったソウルジェムだが、その時には、強い光が彼女を包んでいたのだ──。 その光とは、一体何か──。 「そうか……杏子のソウルジェムは、レーテに入った時に、ウルトラマンの光を少しだけ受け継いでいたんだ……!」 翔太郎も気づいたようだ。 杏子のソウルジェムは、確かに闇の力に染まって、魔法少女へと変身させる機能を捨てた。だが、決して闇の力だけを吸収して動かなくなったわけではない。 もう一つの力──ウルトラマンの、光の力がそこに宿り、二つの力が葛藤したから機能を停止したのだ。 ウルトラマンノアの力は今、二つに分かたれている。 その内の片方が、あの時からずっと杏子のソウルジェムに宿っていたのだという事。 そして── 「ああ、それが今、呼び合ってるんだ……!!」 それは、キュアムーンライトのプリキュアの種と、ダークプリキュアが持つプリキュアの種が強く反応し合うように──元々一つだった者の欠片と欠片が呼び合う仕組みになっていた。 未来を予知できたノアが、スパークドールズとなった時の為に残した予防線に違いない。 ノアは、杏子と美希の絆を信じたのだ。 「……みんな」 何故──ノアが今になって呼び合おうとしているのか。 その理由も、彼女にはわかる。 「美希が……あいつが、ウルトラマンを見つけてくれたんだよ……!!」 杏子は、ソウルジェムを高く掲げ、叫んだ。 ガイアセイバーズの視線は、そのソウルジェムに視線を注いだ。 「──来てくれ、ウルトラマン!! あたしたちはここにいる!!」 ◆ ────祈りとともに、空が光った。 銀色の翼の戦士、ウルトラマンノア──。 彼は、自らの力を注ぎ込んだ杏子のソウルジェムに反応し、彼らの居場所を即座に探知したのである。自らが復活した時、彼女たちの居場所を探る為に残した力だ。 「シャァッ──!」 感応している。 そして、自分を呼んでいる──。 ノアは、すぐにそれに気が付いた。 「ついて来いってのかよ……! 速すぎるぜ……!!」 ゼロも、ノアから授かったノアイージスを使って、銀色の流星の軌跡を追った。 しかし、測定不能レベルの速度で飛行するウルトラマンノアは、ゼロが容易に追いつける相手ではなかった。 彼の後に残った光の後だけを、彼らは辿っている。 ノアとは、実体がない存在なのではないか、とさえ思う。ウルトラマンノアは、本当に生物なのだろうか。 それでも──彼が味方で、自分たちが、敵の場所に近づいているのがよくわかった。 ────その時、ノアと同化する孤門一輝の意思が、彼らの耳に届いた。 『美希ちゃん、ゼロ……君たちは、向こうへ……!』 それは、声だけだったが、どうやらリアルタイムで届いているテレパシーのような意思だと気づいた。 確かに、温和な孤門の声だ。 だが、何故、この時になって別の場所に向かわせようとするのか、美希にはすぐに理解する事ができなかった。 確かに、リーダーである彼の指示に従うのが道理だが。 『え……!? 何故ですか……!?』 『君には、もう一人、救うべき相手が残っているはずだ……!』 と──孤門にそう言われた時、美希は、思わず自分が忘れかけていた大事な事に気づく。 自分が助けなければならない仲間は、ベリアルと共にはいないのだ。 『シフォン……!』 ベリアルが貯蓄したFUKOの力と共にあるはずだ──。 ラブと、祈里と、せつなと……みんなで育てた、あの子。 円らな瞳の赤ん坊、シフォン。 インフィニティのメモリと呼ばれている、美希のもう一人の仲間。 彼女を、支配の力ではなく、再び、ただの一人の子供として、自由を与えたい。 それが、プリキュアとしての彼女の使命だ──。 美希は、ゆっくりと頷く。 『わかりました!』 「──よし、さっさと助けて、加勢してやるぜ!」 ……目の前には、地球を模した青い星があった。 その星こそが、ノアが辿り着いた場所。 銀色の流星が、消えていった場所。 そして、ついこの間まで、自分たちが戦っていた場所。 やっとたどり着いた……。 この星に──。 ◆ ────震!!!!!! 「シャアッ……!!」 杏子たちのもとに、ウルトラマンノアが土埃をあげて舞い降りたのは、その直後の事であった。 ──大地が打ち震え、一瞬だけ、強風が吹いた。 しかし、誰もがそれを浴びて、ただノアの姿を見上げていた。 その姿を見上げながら、どこか安心してそれぞれが頷き、杏子が言った。 「来た……──ウルトラマン!!」 銀色の羽を持つ、光の戦士。 カイザーベリアルでさえも恐れた、伝説のウルトラマンが、今、杏子たちの前に再び現れている。 そして、そのウルトラマンの正体は、彼らの仲間であり、リーダーである孤門一輝に違いなかった。 『────みんな……遅くなって、ごめん!』 孤門の声が、それを見上げる者たちの脳裏に響いた。 それは、ウルトラマンノアというよりも、孤門一輝という一人の男にも見えた。 カイザーベリアルも、目の前に再び現れたウルトラマンノアの姿に、僅かながら息を飲んだようだ。 彼の力でさえも及ぶかわからない強敵──それが、ノア。 しかし、やはり……こんな敵を、ベリアルは待っていたような気がする。 「まったく……遅いぜ、本当に! ヒヤヒヤさせんな!」 絶狼が茶化すように言う。 しかし、カイザーベリアルを眼前にした彼が、とにかくこの男の到着を待っていたのもまた事実だ。 それに──今のところ、死傷者は出ていない。 孤門が遅れたせいで死んだ仲間は一人としておらず、むしろ、彼が来たのは丁度良いタイミングであったと言えよう。 「……ここにいる私たちは、みんな無事です!! 孤門さん!!」 そこにヴィヴィオの姿があった事に、孤門は少し目を丸くした。 レイジングハートが既にいるので、ダミーメモリによって体だけ形作っているのでない事はすぐにわかった。 悪戯としては少々悪質であるから──おそらく、そこにいるのはヴィヴィオ本人だ。 『生きていたんだ……ヴィヴィオちゃん……!』 ノアは、そんなヴィヴィオに向けて頷いた。 それから、すぐに、カイザーベリアルの方を向いた。 「……──」 彼は、確かに待っていた。 自分と同じ土俵で戦う、別の敵を──。 しかし──ノアは、些かカイザーベリアルよりも実力が上回る存在でもある。 どちらが勝つのか──それは、カイザーベリアルにもわからない。 スパークドールズ化ではなく、もう一つの秘策も持ち合わせていたが、それよりも……まずは、自分だけの力で小手調べをしようとした。 『────ああ……!! みんな、一緒に戦おう!!』 ウルトラマンノアが──孤門が、地上の仲間たちに呼びかける。 見上げる彼らは、きょとんとした顔だった。 「俺たちが……」 「一緒に……?」 一緒に戦う……と。 しかし、今の自分たちには、カイザーベリアルと戦えるだけの力があるだろうか。この大きさでいる限り──。 そんな彼らの内心の疑問に答えるように、意識を飛ばす。 『共に肩を並べて困難に打ち勝てる絆……それを持つ者みんなが、「光」なんだ。 僕達の間に絆がある限り……みんな、最後まで一緒に戦える──!!』 地上にいた者たちは、皆、呆然とした。 全員でウルトラマンと同化するという事なのだろうか。 それが可能だというのか──。 「──そうだ……! あたしたちなら出来る!! みんな……あたしのソウルジェムに手を──!!」 しかし、杏子が、いち早く孤門の言葉を理解し、そこにいる全員に呼びかけた。 それと同時に、戸惑っていた誰しもが彼女の言っている事を、納得したようだ。 このソウルジェムには、ウルトラマンの光が注ぎ込まれている──このソウルジェムに向けて力を発すれば、全員がウルトラマンになれる。 人間はみな、自分自身の力で光になれる──。 かつて、世界中の人々の力を借りて、邪神ガタノゾーアと決戦したウルトラマンがいた。 それと同じに……決して、ウルトラマンは一人だけが変身する物ではないのだ。 「……ああ! わかった!」 仮面ライダーダブルが。 高町ヴィヴィオが。 レイジングハート・エクセリオンが。 超光戦士シャンゼリオンが。 キュアブロッサムが。 仮面ライダーエターナルが。 銀牙騎士絶狼が。 「────いくぞ、みんな!!」 杏子のソウルジェムに、手を重ねた。 八人が、それを強く握りしめると、八人の体は、次の瞬間、一つの光となり、ソウルジェムの光の中に吸い込まれていく──。 本当に……本当に、彼らの間に芽生えた絆は、今、光となったのだ。 「絆……」 ここにいる者たち……それぞれの出自は違う。 しかし、こうして出会い、互いが絆を結び、育んできた。 ウルトラマンネクサスや、ウルトラマンノアと共に戦う時も、誰か一人だけの力で戦うわけではない……。 「──ネクサス!!」 そして、ソウルジェムは、空へと飛来し、ウルトラマンノアの胸のエナジーコアへと帰っていった。 ノアの全身に、ソウルジェムに注いだ力が再び灯る。 それは、更なるエネルギーの上昇を意味していた。 「────勝負だ!! カイザーベリアル!!」 「────勝負だ!! ウルトラマンノア!!」 ノアとベリアルは向き合った。 お互いに、同じ意識を飛ばし合う──。 戦いがあった島の上で、二つの巨体は、最後の戦いを始めようとしていた。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(5)Next 変身─ファイナルミッション─(7) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(5)Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(7)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/638.html
変身─ファイナルミッション─(5) ◆gry038wOvE 頭上の空で、照らしていた闇が晴れ、丁度今、白夜の時が始まったのを、深い爆煙の中に残る彼らが知る由もない。 これほどのエネルギーを浴びせなければ、ユートピアを打ち破る事はできなかったのである。 しかし──まだ、加頭順という男の生体反応はこの世から消えてはいなかった。 「はぁ……はぁ……」 ダブル、エターナル、シャンゼリオンの同時攻撃を受けながらも、尚、──加頭順という男は生きている。 ただし──それが、これまでのように悲観的で、戦士たちの劣勢を煽るような物ではなくなっていたのは確かである。 何せ、NEVERやベリアルウィルスの力も及ばぬほどの極大のダメージを受けた彼の全身は、既に消滅を始めており、身体は粒子に塗れている。辛うじて、ベリアルウィルスの残滓が彼の肉体崩壊を遅くさせ、生命維持だけが辛うじて可能になっている程度だ。 もはや、子猫の敵にすらならない。 「くっ……!」 既に、敵に食らいつく牙はなかった。 戦意も戦闘力も失ったよろよろの身体。焼けこげたタキシードと、乱れた頭髪。生身の人間ならば火傷を負った皮膚。 残りの寿命は、あと数分といったところだろう……。 彼自身は、まだそんな自覚を持っていないかもしれないが──。 「ば……馬鹿な……はぁ……はぁ……」 ベリアルによって力を受けたはずの自分が、成す術もなく敗北している事に加頭は納得がいかないままだった。 プライドが、それを現実として受け止めるのをしばし拒否した。 ……今の勝負は何だったのだ? 闇の力を大量に取り込んだはずの自分が──ベリアルに次ぐ力を持つはずの自分が、数日前までは拘束されて殺し合いを演じていた、数えるほどの駒に敗れている。 「この私が……」 無意識に加頭が向かっていたのは、マレブランデスの牙城である。巨大な黒い腕の中に眠る、己の恋人のもとへと、辿り着くかもわからない歩を進めているのだ。それはもはや本能的な魂の動きだった。 常人ならば、既に歩むのを辞めていたに違いない。彼なりに譲れない執念があったという事に違いなかった。 一歩を踏みしめるごとに、彼の身体からは彼を構成する物質が消失していく。 「この私が……負けるはずが……!」 うわごとのように、現実を否定する。今の彼には、それしかできなかった。 と、そんな彼の目の前に、「なにものか」が立ちすくんでいる姿が見えた。 濃霧のように視界を消し去る煙の中で、シルエットだけがこちらに見えている。 真っ黒なシルエットに警戒を示したが、加頭が立ち止まったままそれを少し眺めていると、自ずとシルエットはこちらに歩いてきた。 「あなたは……!」 そこにいるのは、一糸纏わぬ姿でこちらを見つめる一人の白い肌の女性だった。 全裸を恥じらう事もなく、アンドロイドであるかのような真顔で、加頭に視線を合わせている。──彼女の顔を、加頭が忘れる筈が無かった。 その姿を見るなり、加頭の頬が緩んだ。 「──」 園咲冴子。 あの培養液の中から、自力で脱して来たのだ。ようやく、冴子の蘇生が完了したという事である。 加頭は、その瞬間、思わず、笑顔を浮かべた。目的の一つが完了したのである。状況はどうにもならないが、この事が少し加頭に力をくれる。 彼女が放つ異様な雰囲気には、まるで気づかずに。 「冴子さん……良かった……蘇ったんですね!」 加頭は、消えそうな身体でまた一歩を踏みしめた。 冴子に、よろよろの身体で近づいて行く。急いでいるつもりだが、その歩測は普通の人間にも及ばないほどだ。 ……彼女がいる場所に、少しでも近づきたい。 「あなたさえ生きていれば……私は……」 そうだ。 全ては彼女の為に──彼女と共にある為に、やった事なのだ。 この場所を理想郷に出来る。何度でも立て直してやる。 「……私は……──」 加頭がようやく、冴子に近づき、両手を広げた時であった。 目の前の冴子は、目をぎょろりと見開いて、──ニヤリと笑った。 そして、そのまま──、自分の正体を明かした。 「ガァァァァァァァァァァァァ────!!!!!!」 冴子の殻を破り、「黒い化け物」が現れたのである。 ──それは、園咲冴子ではなかった。 ただのグロテスクな、腐敗した死骸のような怪物……人を喰らい、人の陰我と共に現れる人間たちの天敵だ。 そして、驚き目を見開いた加頭もまた、“それ”に見覚えがあった。 この戦いの中には、彼らを狩るべく使命を持った騎士が参加していたのだ。 「──!?」 そう──古の怪物・ホラーである。 魔戒騎士たちが追い続けてきた、人間の陰我に芽生える獣。それがホラーだった。 そこにいるのは、園咲冴子ではなく、魔弾を受けた時にホラーと化した人間の成れの果てであった。 彼女の身体の欠片をいくら集めようが、それは──既にホラーに喰われた人間の肉の欠片に過ぎなかった。全ては食い散らかされた死体で──そこに人の意思などなくなったのだ。 それを見た瞬間、遂に加頭の中においても、冴子への執着よりも恐怖が勝り、加頭は冴子だった物を信じられない風に見つめながら、尻を地面に突く事になった。 「な、何故……! なんだ……この化け物は……!!」 目の前から向かって来ようとする怪物。 そこから逃れようと必死にもがく加頭。 「くっ……!! どういう事だ……どういう事だァァァァァッ!!!!!」 それが、最後の希望が絶たれた哀れな人間の姿だった。 冴子がホラーに取り憑かれたまま、どんな技術を以ても、“治る事がない”存在なのは、もはや、不変の事実であった。 ホラーに喰われた人間は助からない。──加頭が最も甘く見ていた前提が、それなのかもしれない。 「くっ……!」 加頭が四つん這いで逃げるのを、ホラーが捉えようとする。 悠然と歩き、エモノを食らおうとする園咲冴子の皮を被っていた怪物──加頭の死は、既に目前である。 加頭はホラーの餌になる。 最も、あってはならない苦しい死に方だ。 と、恐るべき死を忌避しながらも、心のどこかで覚悟した──そうせざるを得ないと確信した時だ。 「──」 カシャ……カシャ……。 奇妙な、音がした。 「──……」 やはり、カシャ……カシャ……と、音が聞こえた。 加頭は、自分とホラーだけしか視界に映らないその場に、他の何者かが現れたという事を理解した。 そして、次に、誰か、男が呆れたような声を発した。 「おいおい……」 カシャ……。カシャ……。 その音は、加頭のもとに近づいてきていた。 冴子に憑依したホラーも、加頭を襲うのをやめて、その声が近づいて来る方に目をやった。 「まったく……とんでもない奴を甦らせてくれたもんだな」 そして──そんな彼の前に、煙を背負って現れる一人の男がいた……。 金色に光る彼の身体はとてもよく目立った。 金色でありながら──銀色の魂を持ち続けた男である。 ……そう、いつの時代も、ホラーの相手をするのは、彼らであった。 「お前ほどの男が……知らなかったのか? 加頭──」 涼邑零。──いや、銀牙騎士絶狼(ゼロ)。 その鎧が、カシャカシャと音を立てて、加頭の前に現れたのだ。 煙はだんだんと晴れていき、そこにいる男の姿だけを加頭の目に映した。 「……」 ホラーもまた、宿敵たる魔戒騎士の姿を敏感に察して、加頭を食らうよりも、まずは己の身を守る事を優先したがったのだろう。 黄金騎士──と、ホラーも誤解したに違いない。 「──ホラーに喰われた人間は、助からないんだ」 ゼロが口にするのは、残酷だが、加頭も知っているはずの事だった。 しかし……しかし。 ──冴子は……彼女だけは、例外ではないのか? ──加頭はそう思い続けていた。 だから蘇生させたのだ。 肉体ならば、ホラーも霧散しているはずであると。 しかし、それは、ある意味で、最も人間らしい現実逃避だったのかもしれない。 どうしようもない「論理」の穴を、ただ彼は「感情」だけで補完しようとしていたに過ぎないのである。 尤も、それは歪んだ感情であったかもしれないが。 「残念だけど、あんたのフィアンセは、もうホラーに喰われていたみたいだな」 「そんなはずはない……!! そんなはずが……!!」 必死に現実を否定する加頭の身体も、半分は消失している。 そんな姿を少しだけ哀れむように眺めたが、零は非情に徹する事にした。 彼が行った事の報いが始まったに過ぎないのだ。未だ償う気持ちを微塵も見せない加頭には、怒りも勿論湧いている。 「──だから」 だが。 今は──まるで、ホラーから守るべき人間がそこにいるような気持ちに切り替えた。 たとえ、加頭が敵でも……僅かな命であるとしても……彼のように、ホラーに襲われる人間の事を守らなければならない。ホラーの犠牲者は最小限に食い止める。 それこそが、彼の使命だった。 そして。 「──……ホラーを斬るのが、俺の仕事だ!!!」 ──そして、何度となく心の中で叫んできたその言葉を、確かに発した。 「おりゃああああああああああああああッッ!!」 金の二刀流が光る。 次の瞬間、冴子に憑依したホラーは、絶狼の刃によって胴を真っ二つに斬り裂かれる。 それは、飛沫だけを残して、いとも簡単に崩れ落ちた。 「ウグァァァァァァァァァァァ────!!!!」 ────霧散。 断末魔と共に、ホラーの姿は消えていく。ホラーは蠢くような声をあげ、「冴子の姿をしたもの」さえもそこからいなくなった。 ホラーの返り血が加頭の顔を穢すが、それも結局、今となってはもう意味のない事だった。──加頭ももう、助からない。 銀牙騎士絶狼が斬り裂いた彼の夢は、次の瞬間には完全に自然の中に溶けた。 まるで、園咲冴子など、白昼夢のようだったかのように……。 「あっ……! ああ……」 ホラーの死地に手を伸ばす加頭の前には、もう園咲冴子の片鱗さえも見当たらなかった。肉片の一つに至るまでが、ホラーの餌となった。それが冴子の躯だった。 それは、否定のしようがない事実である。 「……」 そして、これが絶狼にとっては、一つの仕事の終わりだ。 ここに来る前から与えられた物ではないが、魔戒騎士である彼には、それが本職であった。 『──零。お前の今日の仕事は、多分、これで終わりだな。……まあ、急に入った仕事だが』 「ああ。ただ……まだ、やる事は山積みだけどな……」 いつになく乾いた口調でそう言う、ザルバと絶狼。 ホラーの幻影に取り憑かれた一人の男の姿──それは、魔戒騎士が何度も見て来た人間の姿である。 なまじ、人間の姿を模しているばかりに、こんな人間が幾人もいる。 その記憶は、普段は消さなければならない。──だが。 その必要も、なかった。 「ああ……ああ……」 園咲冴子は死んだ。 もう戻らない。 加頭順は幸せにはなれない。 ──彼の理想郷は潰えたのだ。 加頭も、ようやくそれを理解したようだった……。 「……うう……くそっ……私は!」 生きる希望を全て失った加頭の身体は、心なしか、加速度的に消滅を始めたように見えた。 身体は薄くなり、周囲の何もかもが見えない状態に陥る。 絶望と後悔だけが身体の芯に残り続ける。 「私は……一体、何の為に……何の為に戦ってきたのだ……!!」 無力。 ──そう、これまでの加頭の己の身体さえも裂いた戦いは全て、無駄な徒労に過ぎなかったのだ。 「クソォォォォォォォォッッ!!! 何の為に……!! 何の為に……!!!」 誰への敵意もない絶叫だけが、虚しく響き渡る。 ユートピアなどない。理想郷は、崩れていくのみだった。 たとえ、上面だけ、理想郷を復元していたとしても。 結局、彼が求めた場所は──一人きりの理想郷にしかならない。 ──そして、それを悟った瞬間だった。 ◆ 「──!?」 ──ふと、世界は切り替わった。 まるで消失が止まったかのような錯覚に陥り、加頭の耳元で、何かが“囁いた”。 周囲を見回すと、何もかもが……時間が止まっていた。 暁美ほむらによる時間停止が原因ではないのは判然としている。 そして、直後に、何かが「何の為に戦ってきたのか」という加頭の問いに答えた。 『──地獄に堕ちる為さ』 ──白い腕が、加頭の脚を固く掴んだ。 驚いて見下ろすと、その腕はまるで地の底から生えているかのように、深い沼に加頭を引きずりこもうとしている。 見覚えのある腕だった。──いや、今も間近にいる戦士が同じ規格の物を持っているはずの腕である。 そう、それは。 「死……神……!!」 仮面ライダーエターナル。 その声は、大道克己そのものだ。──彼が地獄へと加頭を道連れにしようとしている。 「貴様ら……」 無数の腕が──ルナドーパントの腕が、メタルドーパントの腕が、ナスカドーパントの腕が、ウェザードーパントの腕が、そして……タブードーパントの腕が、加頭の身体をどこかへ引きずりこもうとしているのだ。 これまで、その死を見て来たはずの連中の腕──。 「この私を地獄の道連れにする気か……!?」 エターナルは笑った。ああ、ずっと待ってたんだ、と。お前を地獄に引きずりこむのを楽しみにしていたんだ、と。 これから加頭が向かう場所──それは、地獄に他ならなかった。 深く、永久の苦しみを味わう為の場所……。 加頭もそれを悟った時──ある感情が、脳裏に浮かんだ。 NEVERになって以来、忘れていた感情。 「嫌だ……」 そう、嫌だ。 こんな事の為に──あんな奴らの為に、地獄になど堕ちたくない。 これから、永久の苦しみが待っているのだと思うと……。 死にたくない。 また地獄に行くのか? こんな奴らと一緒に……。 『来いよ……地獄に連れて行ってやる……』 「嫌だ……!」 『ずっと待ってたんだぜ……お前が地獄に来るのを……』 ──そして、時間は、再び正しい流れに帰っていく。 ◆ キュアブロッサムがそこに駆け寄った。 加頭順とはいえ、彼がこのまま死んでしまう事には彼女も抵抗がある。──勿論、彼女とて加頭への同情は薄いが、それでも、もしこれからやり直そうとする意思があるならば、彼もまた……と思ったのだろう。 ……が、遅かった。 「ああっ……ああああっ……!!」 煙が晴れ、白夜の光が覗き始めた時、そこで、透明に消えかかり、地に伏して涙声をあげる加頭の姿があったのだ。 大道克己の時と同じだが──それにも増して、惨めだった。 「……痛い……死にたくない……誰か……」 「加頭さん!」 ブロッサムの脚を這うようにして掴みながら、しかし、何もできずに、その腕が粒子となって崩れ落ちる。 彼は、自分の腕が目の前で消滅した事に強い怯えを示した。 死ぬ。 このまま、死んでしまう……。 「誰か……助けてくれ……」 「加頭……」 『……僕らの憎んだ敵も、結局は、“変わり果てた人間”だったんだ……』 仮面ライダーダブル──彼らもまた、加頭順の終わりを、哀れむように見つめていた。 かつて、井坂深紅郎の死を、悪魔に相応しい最期と呼んだ事がある。 あの時とまるで同じ気分だ。同情の余地はないはずである。 しかし、彼や井坂もまた、同じ街の空気を吸った人間だ。──その最期を見届けてやる義務が、翔太郎とフィリップにはあるはずだった。 「……苦しい……お前たち……私を……たすけ……」 「加頭さん……」 ヴィヴィオがそれを眺めながら、救う術を考えた。 しかし、それはどこにもないのだとわかった。 自分で蒔いた種だと一蹴するのは簡単だが、それでも──和解の道を、ヴィヴィオは求めていたのだから。 ダークプリキュアが新しく仲間になった時のように……。 ゴハットが最後にヴィヴィオを助けてくれたように……。 その夢は、もう見る事が出来ないようだった。 「ああ……」 『……こいつも、これで少しはわかっただろう。死の恐怖も──』 「──愛する人を失う苦しみも、な……」 銀牙騎士絶狼とザルバは、消えゆく加頭の姿をそっと眺めていた。 彼らは同情こそしていなかったが、しかし、その惨めさを目の当りにした時、彼が少しでも他者の痛みを知る事が出来ていてほしいと願ったのだろう。 だから、こんな言葉を物憂げに呟いたのだ。 「加頭……!」 そして、そんな所に、あの仮面ライダーエターナルが──それは響良牙だったが──歩み寄った。 それを見た時、加頭は慌てて視線を逸らし、そこから逃げ去って誰かに縋ろうとしていた。 情けなくも、頬を涙が伝っていく。 もう地獄が目前にあるようだった。 腕を、足を、首を──死神たちが掴んで、持って行こうとする。 どこを見ても……。 どこを見ても……。 そこにいるのは、死神だった。 「い……やだ……死にたくない……誰か……たすけ……て………………」 【加頭順@仮面ライダーW 死亡】 【主催陣営、システム────完全崩壊】 ◆ 「……」 残った者たちは、どこか気まずそうに加頭が消え去った地を見つめていた。 そこには、もう何もない。これまでの戦いと全く同じだった。 敵を倒したは良いが、やはり、望みが打ち砕かれたまま斃れた加頭順という男の姿に、何処か同情を禁じ得ない者もいたのかもしれない。 「……」 勿論、たくさんの人間を殺した加頭にはそんな物をかけてやる余地はないのかもしれないが、しかし、人間は決して、人を殺す為に生まれてきたわけではない。 彼もまた、何かが狂気の切欠になっただろうし、彼なりの愛を持っていたには違いなかった。 「この人を──加頭さんを、救う事は出来なかったんでしょうか?」 キュアブロッサムが、後ろにいた仲間たちに、不安げに訊いた。 それから、誰もが少しだけ押し黙った。 加頭への割り切れない恨みと、それでもつぼみの一言に込められた想いを理解したい気持ちとが葛藤したのだろう。 加頭をよく知る者がそれに答えた。 ──それは、左翔太郎である。 「あいつも、誰かだけじゃなくて、多くの人が住んでいる街を愛する事が出来れば、別の結末もあったかもしれないけどな……」 『誰かを愛する心があるなら、それが出来たかもしれない……だが、彼はその道を自ら拒んでしまったんだ』 二人は、嫌にあっさりとそう言ったが、結局のところ、それが全てだった。 どうあれ、彼が選んだ道は、多くの人と相容れない道であり、真実の愛を掴む手段とは程遠かったのだ。 結局は、彼がその道を選んでしまった以上、他者が彼に救いを与えてやるのは、ほとんど不可能と言って良かったのだろう。 それが、彼が選んだ自由だったのだから、それを阻害する権利は誰にもない。つぼみやヴィヴィオの理想を押し付けるわけにはいかない相手だったのかもしれない。 ──それを思い、つぼみとヴィヴィオは、自分の持つ理想がいかに遠くにあるのかを確かに実感した。 しかし、それは彼女たちが子供だから持つ理想ではない。おそらく、彼女たちはどれだけ年を重ねてもその理想を叶える為に戦い、生きていくだろう。 仮面ライダーエターナルが、ふと呟いた。 「──あいつ……酷く怯えてやがったな……エターナルの姿を見て」 最後、加頭がエターナルから逃げ去ろうとしたのを、彼は確かに実感していた。 まるで、天敵に怯えた草食動物のように。 だからか、まるで、良牙自身が最も嫌っていた「弱い者いじめ」をしたような気持ちが拭いきれなかった。そんな後味の悪さも彼にあったのだろう。 フィリップが答えた。 『きっと、かつて、エターナルに一度殺されたからだろう』 「……そうか。それで、奴はNEVERに……。 エターナルにダブル──同じ相手に二度も倒されるとは、あいつも因果な男だぜ……」 エターナルがそう俯いて言った時、ただ一人、能天気に、エターナルの肩に手を賭けた男がいた。 超光戦士シャンゼリオンである。 「──おいおい、俺を忘れんなっての……三人で倒したんだぜ?」 エターナルも、つい忘れて、黙っていた。 全く、戦いは終わっていないのに呑気な男だ……。──と、思ったが、いや、彼がこうも呑気なのは、戦いが終わっていないからかもしれない。 彼は、戦いが終わったら消えてしまう。フィリップも同じ運命だ。 彼がここにいられるのは、この時が最後である。 こうして、三人で倒した事を強調するのも、もしかしたら、彼が自分の存在を誰しもに記憶させたいからかもしれない。 「ああ。そうだな……シャンゼリオン」 良牙は──いや、ここにいる全員は、ベリアルに永久に来てほしくないと、少し願っただろう。 ベリアルは倒さなければならない。しかし、それと同時に、ベリアルの力の影響下にある、暁その人が消えてしまう……。 その事実がある限り。 しかし──運命は、残酷であった。 『──クズクズしてる暇はないみたいだぜ。本当の敵のお出ましらしい!』 直後、そんな一言をあげたのは、魔導輪ザルバだった。 白夜の空を見上げる──零、翔太郎、フィリップ、良牙、ヴィヴィオ、レイジングハート、暁、つぼみ……。 ごくり、と誰もが唾を飲んだ。 「────あれは」 そう、それは空を見上げなければ、その姿がわからないほどの巨体だった。 その身体そのものが、身長百数十センチに過ぎない彼らにとっては、威圧であった。 かつて、ダークザギを前にした時も、同じだった。 ◆ どしん。 ──足音が、この島を揺らす。 「……!!」 どしん。 ────ゆっくりと、巨大なそれが歩み寄ってくる。 「来たか……!!」 どしん。 ──────彼らが、再びこの島に来る事になった理由が、やっと、目の前に現れた。 「ああ、奴だ……!!」 どしん。 ────────まるで、褒美のように、島に上陸した、巨体。 「やっと、本当の最後の敵と戦うんですね……!!」 ヴィヴィオが、僅かに怯えながら言った。 彼女のように、これほど巨大な敵と戦うのが初めての人間もいる。 しかし、その拳は、決して恐れだけではなく、固く握られていた。 これが本当の最後の敵──。 先ほどの加頭順は、彼の配下であり、前座に過ぎないのである。 「────カイザーベリアル!!!!!!!!」 誰が口火を切ったかはわからない。 カイザーベリアルの名を、誰かが告げた。 ◆ そして、全世界の人間は──この瞬間、ガイアセイバーズとカイザーベリアルの対面に、釘づけになった事であろう。 外の世界を街頭モニターの人だかりは、既に誰を応援するという段階ではなくなっていた。──誰もが、どちらに軍配が上がろうとも全て見届けて終える事を望んだのだ。 希望と絶望の入り混じる、不思議な感覚。 誰も、恐怖は覚えていなかった。胸の高鳴りの正体を、誰も知る事が出来なかった。 千樹憐。和倉英輔。平木詩織。真木舜一。真木継夢。斎田リコ。 相羽アキ。ノアル・ベルース。ユミ・フワンソカワ。ジュエル。テッカマンオメガ。 鳴海ソウキチ。鳴海亜樹子。刃野幹夫。園咲硫兵衛。園咲若菜。 花咲薫子。来海ももか。鶴崎。オリヴィエ。デューン。 桃園みゆき。一条和希。タルト。西隼人。南瞬。 南城二。アンドロー梅田。アリシア・テスタロッサ。八神はやて。クロノ・ハラオウン。 ムース。久遠寺右京。天道早雲。早乙女玄馬。雲竜あかり。 倉橋ゴンザ。御月カオル。山刀翼。道寺。静香。 歴戦のウルトラ戦士たち──。 血祭ドウコクと外道シンケンレッド。 あらゆる宇宙の人々が、それを見ていた。 あるいは、インキュベーターも……。 「さあ、君も──応援の準備は良いかい!? ミラクルライトを持っている君は、今すぐにミラクルライトを用意するんだ!! ミラクルライトを持っていない君は、心の中で応援するんだ!!」 そして──そこにいる、君も。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(4)Next 変身─ファイナルミッション─(6) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(4)Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(6) Back 変身─ファイナルミッション─(4) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(6)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/643.html
変身─ファイナルミッション─(10) ◆gry038wOvE ……ここは、所も変わって、シンケンジャーの世界。 はてさて、最終決戦に参加しなかった血祭ドウコクと、その友人の骨のシタリは、どうしているのだろうか。 ゆらゆらと浮かんでいる六門の船の上──この「余談」は、始まる。 「しかし……アンタの言う事も、今回ばっかりは外れると思ってたよ、アタシは」 六門船の上で、血祭ドウコクと骨のシタリはまたのんびりと語らっていた。 それはさながら、外道衆にとっても、一つの祭が終わったような寂しさと虚無感を思わせる静かな落ち着きだった。 先ほどまでの興奮は消え去り、静寂の中で二人はただ揺れる船に身を任せている。 「……結局、奪われた三途の川もさっきの戦闘で希望をまき散らされたせいで水かさが減って、結局プラスマイナスゼロだがね。商売あがったりなしだねこりゃ」 とはいえ、結局、外道衆にあるのは完全な厭世のムードであった。 何とも世知辛いもので、折角取り戻せそうだった三途の川の水は、ヒーローたちの尽力で根こそぎ消えてしまった。 先ほど、インキュベーターにも言われたが、希望が絶望に打ち勝ってしまった事と、ドウコクがミラクルライトを三途の川に落としたのは、この三途の川にとって最悪の事らしい。 希望の具現であるミラクルライトは、この外道衆のいる三途の川を滅ぼしかねないという。ドウコクもとんでもない事を仕出かしてくれた物で、人間がまた、希望を取り戻せば外道衆の命運にも相当な危機が起こりうるだろう。 「どうするよ、ドウコク。八方塞がりだよ」 こうなったらもう、あれだ。 生きる術はただ一つ──人間と、共存の手段を探すという事しかない。 「──シタリ」 そして、その先の外道衆の命運を決めるのは、ここにいるドウコクの一言だった。 これからの外道衆の方針をどうすべきかは、いつも総大将である彼の言葉にかかっているのだ。 仮に逆らったとしても、誰も彼に力では敵うまい。 まあ、シタリならば、友人のよしみで何とかしてくれるかもしれないが、どっちにしろ、右にも左にも希望のない今の外道衆でどうにかなるとも思えず、最後はドウコクの判断にゆだねるしかなかった。 「……」 ──それから、ドウコクが口にしたのは、勿論、共存などではなかったが、これまでと同じ方針でもなかった。 「俺はしばらく、人間を襲うのは辞めにする。……後の連中は好きにしろ」 「えッ、そりゃまたどうしてサ」 「おめえも命は惜しいだろう」 ──要するに、「戦わない」というのが彼の決めた方針だった。 しかし、「共存」もする気はない。 しばらくはまだ、この三途の川を消し去るほどの希望を人間が取り戻す事もないだろう。 それまでの余裕を、ドウコクは全て、眠って考えるという事にしたのだ。 外道衆にとって、暴れられないというのは少々、身体が窮屈になる状況かもしれない。 それは、これまで、人間界に出る事が出来ずに六門船の中で荒れていたドウコクの事を思い出せば痛い程にわかるだろう。 だが──こうなってしまった以上、案と言うものも浮かばない。 「……まあ、そうか。あんなもん見せられちゃね」 「ああ。……俺が再び目を覚ますのは、奴らがいなくなってから……あるいは、気が変わったらってとこだな」 ドウコクもこれから長い間眠る事にしたらしかった。 その時下す判断がいかなる物であるかはわからない。 ……と、そんな事を話していたが、シタリは一つだけ気になる事があった。 「……で、それはそうと奴らとの約束はどうすんだい?」 そう、あのガイアセイバーズなる連中とドウコクは、「ここで戦う」などと約束したではないか。 左翔太郎なり佐倉杏子なりには、因縁があったのではないか。 お互いに、何かしらすり減らして殺し合いでもする義務があるのではないか。 だが──そんな事をする気力が根こそぎ奪われた気分だった。 最後に殴り合うのも一向だろうが、ここまで、萎えてしまってはわざわざやる意味もないかもしれない。 「フン。……俺たちは、『外道』だ。今更そんなもん守る必要はないだろ」 ドウコクが彼らと再戦する事で知りたかったもの。 彼らがああまでして戦う理由。──それは、既に何となくわかっている。 確かに、約束、はしたかもしれない。 しかし、それを逐一守る良識がないのが、『外道』という連中だった。 「……そうかい、それがアンタの奴らへの、最後の『外道』ってワケかい」 外道衆も、『外道』として、選んだのである──『戦わない』という選択肢を。 戦うという約束をしたが故に、それを反故にする。 それはまさに、一時仲間として戦ったガイアセイバーズという連中への、最後の『外道』であった。 「……」 この先、ドウコクがあの生還者たちの前に姿を現す事は二度と無いだろう。 それこそ──人々があの戦いを忘れ去るまで、ドウコクは現れないかもしれない。 そして、もし彼が現れるならば、それは次代のシンケンジャーが現れる時……彼らの戦いが全て忘れ去られた時だろう。 「──おい、シンケンレッド」 ふと、ドウコクは、六門船の脇に居た自らの『家臣』を呼びかけた。 置物のようにそこに佇んでいた外道シンケンレッド、である。 シタリなどはすっかり、そいつの存在を忘れていたくらいに無口だが──しかし、一度気づくとやはりそこには存在感を見出してしまう。 鎧武者の甲冑が置いてあるような物である。 「……行って来い。てめえのいる場所はここじゃねえ」 はぁ、と、シタリはため息をつく。 やはり、ドウコクも気づいていない訳がなかったか。 ……あの外道シンケンレッドなる置物、ああ見えて実は──もう。 「さっきの戦いを見て、てめえからも外道の匂いが消えている」 ──外道、でなくなっている。 志葉丈瑠ではないが、それは既に、志葉丈瑠のような物に変わっていた。 外道としての魂を忘れ、はぐれ外道としての人間らしさを取り戻してしまっているのである。 ──そう、あの薄皮太夫のように。 「お前が奴らに教えて来い……てめえらの勝ちだ、ってな」 それだけを外道シンケンレッドに吐き捨てるように告げると、ドウコクはシタリを呼びかけた。 「行くぞ、シタリ」 シタリもそれに従うようにドウコクの背中を追って、どこかへと沈んでいく。 最後の一度だけ、外道シンケンレッドと成り果てた男の方を見返りながら。 「ドウコク……」 外道シンケンレッドは、その変身を解除し、一人の男──志葉丈瑠の姿を取り戻した。 そして、彼もまた、この六門船から消えた。 ──六門船は、無人のまま、ただがらんと、三途の川の上に浮かべられて揺れていた。 ◆ 【その後】 ……血祭ドウコク及び外道衆のその後の消息は殆ど知られていない。 だが、ベリアルの支配が終了すると共に、ドウコクに代わって地上に現れたのは、脂目マンプクだった。 そして、その結果は、散々なものであったと言われる。 今のところ、わかっているのは、マンプクはヒーローたちだけではなく、人間たちにさえ敗れたという事である。 互いを助け合う、人間の「絆」に……。 ◆ ────そして、殺し合いは、助け合いへと、変わっていく。 Fin. 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(9)Next 世界はそれでも変わりはしない(1) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(9)Next 世界はそれでも変わりはしない(1) Back 変身─ファイナルミッション─(9) 左翔太郎 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 花咲つぼみ Back 変身─ファイナルミッション─(9) 佐倉杏子 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 高町ヴィヴィオ Back 変身─ファイナルミッション─(9) レイジングハート Back 変身─ファイナルミッション─(9) 涼村暁 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 響良牙 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 涼邑零 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 蒼乃美希 Back 変身─ファイナルミッション─(9) ウルトラマンゼロ Back 変身─ファイナルミッション─(9) 孤門一輝 Back 変身─ファイナルミッション─(9) 血祭ドウコク Back 変身─ファイナルミッション─(9) 外道シンケンレッド Back 変身─ファイナルミッション─(9) 加頭順 Back 変身─ファイナルミッション─(9) カイザーベリアル
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/635.html
変身─ファイナルミッション─(2) ◆gry038wOvE 「──ここは、どこだ? いや……」 ……気づけば、仮面ライダーエターナルたちの周囲には、あの景色が再現されていた。 エターナルは、お決まりの台詞を告げて、周囲をきょろきょろと見回しながらも、自分たちがどんな場所にいるのかを頭の中ではよく把握しているようだ。 それもそのはずだ。自分の体がここになければ困る。ここまでの出来事が全て夢というわけでもない限り、今日、この時は自分の体がここになければならない──それが自分たちの宿命なのだ。 「──」 ──彼らを殺し合いに呼び寄せたあの世界。 何日か前までここにいて、何日か前まで戦っていた世界と、全く同じ風。 光の差さない真っ暗な森。──それは、まだここが黎明の世界。もし、彼らの身体が金色に光っていなければ、それぞれの姿を確認するのも覚束ない程だっただろう。 ただ、心なしか、以前よりも命の鼓動のような物が森の中に生まれ始めているようだった。 おそらくは、それは、必然的にこの世界に辿り着いてしまう微生物や小虫たちがここに住み着き始め、何の命もなかった世界に少しずつ命が植えつけられようとし始めているという事だ。 それに気づいたのは、キュアブロッサム──花咲つぼみだけだっただろうか。 エターナルは、続けた。 「……わかってる。俺たち、遂にここに来たんだな」 この台詞を告げた時、どうやら、この外の全ての世界では、彼らの最後の戦いの中継が自動的に始まったらしかった。 そして、この瞬間を以て、艦に最後まで残っていたインキュベーターは、次元の波の中に囚われ、おそらく消滅したのだろう。──勿論、その意識と情報を共有する別の存在が世界にいるので、それほど悲観的に考える事実ではないが、こうして彼らが無事この世界に侵入できた功労者として、インキュベーターの尊い犠牲もあった事は忘れられてはならない。 それは、アースラという戦艦をここまで運んだのは、決して彼らだけの力ではなかったという証明に違いない。元々の乗組員は勿論、死者さえも、別の世界の者たちさえもそれを動かし、彼らを届けた。 彼らに勝ってほしいと願う全ての心の結晶が、彼らをここまで乗せたあの巨大な船だったのだ。 敬礼する間が無いのは惜しむべき事実であった。 「……」 ただ少しだけ、周囲を見回してアースラを探した者もいたし、空を見上げた者もいた。 あの数日、共同生活を経たあのアースラは、もう無い。 その事実には、在りし過去に戻れぬノスタルジーも少し湧いただろう。 「……」 ……とはいえ、結局、アースラよりも彼らにとって郷愁の情が湧いてしまうのは、こちらの戦場だったのも事実だ。 あらゆる悲しみと、怒りと、そして楽しい時間さえもあった場所。 そうであるのは違いない。 ──しかし、大事な出会いの場所でもある。 ここにいる者たちは、お互いにここで出会い、ここで悲しみを共有したのだ。 たとえ、ベリアルの戦いがなければそれぞれがもっと別の──幸せな出会いをしていたのだとしても、今ここにいる自分たちが直面したのは、悲しみの中での細やかな幸せとしての出会いだ。 この感情を持って戦えるのは、自分たちがここで出会ったからに他ならない。 ……ふと、そこにかつてと違う物があるのを誰かが見つけた。 「……ん? なんだ、あの悪趣味な手は。あんなもんあったか?」 そんな事を言ったのは──その「誰か」とは、佐倉杏子の事だった。 ──彼ら八人は同じ場所に固まって転送されていたが、その付近には、腕の形をした奇妙で巨大な建造物が立っていたのだ。 これこそが悪の牙城なのだが、それを「城」と認識できた者は少ない。 杏子の言う通り、誰しもが「巨大な手」と思っただろう。しかし、それが巨大な人体の一部の手と認識した者もおらず、あくまで「手の形を模した巨大な何か」という風に全員が捉えたようだった。 薄気味悪いが、だからこそ、決戦の時であるのがよくわかった。 「気づいてないだけで、前からあったんじゃねえか?」 「あるわけねえだろ! あんなデカい城を見落とすのはこの世でお前だけだ!」 『勿論、あんな物は僕も知らない。この数日で出来たようだ』 仮面ライダーエターナルの言葉は、同じ仮面ライダーのダブル──左翔太郎とフィリップに突っ込まれる。 しかし、こうして軽口を叩いていられるのも今の内であった。 彼らも、決して緊張がないわけではないのだ。だからこそ、わざとこうして場を温めているのかもしれない。 だが、結果的に言えばそれも束の間の話だった。 「──ッ!」 次の瞬間。 一筋の風が吹いた時、まだ温かみを持て余していたはずのその場の空気が、ふと一転する。わけもなく背筋を凍らすほどに冷やかな風が、身体を撫ぜる。 誰もが、喉元に氷柱を飲み込んだような緊張感に苛まれた。 戦慄──。 「……誰だっ!?」 この直後に彼らの前に──一人の男が現れたからである。 闇にも映える真っ白なタキシードの服。 ──ゆっくりとこちらへ歩いて来る。 見覚えがあるようで、やはり、これまでに見た事のない雰囲気の男。 即座にその男の正体を答えられる者はいなかった。 「……遂に来てしまいましたか。……結局、あなたたちは自分の故郷ではなく、お仲間が死んだこの場所で死にたいと──そう願ったと、結論しましょう」 ダブルは、その男の瞳を見た事があった気がした。 いや、誰もが見た事があるのだが、その白いタキシードの男に対して、それが──あの、「加頭順」であるという認識を持てた者は少ない。表情こそ変わらないが、どこか柔和で、歩き方にも奇妙な余裕が感じられるからである。 「……」 元の世界の左翔太郎とフィリップさえも、その判断には少しだけ時間を要したくらいだ。だが、やはり、奇縁があるのか、真っ先に気づいたのは彼らであった。 到底、あのはじまりの広間で見た男と同一とは思えなかった。──人は数日ではここまで印象を変える物なのだろうか。 「まさか、お前。加頭、順か……?」 「ええ。……お久しぶりですね。てっきり、そちらの半分は亡くなったかと思いましたが」 加頭が笑顔で皮肉を言った。そちらの半分、というのはダブルの右側──フィリップの事だろう。 それから、勿論、ヴィヴィオの事も加頭は多少なりとも気にしたのだと思われるが、加頭も同様の死人であるが故、あまり追及するつもりはないようだ。 特に、フィリップに関してはその出自において、死者蘇生に近い事が行われているし、ガドルという見落としも過去にはある。一人や二人の増援は、今更気にならない様だ。 呼ばれた当人の仮面ライダーダブルは、加頭のかつてと違う様子に少し当惑していた。 「……なんか、調子狂うな」 「ふふふ」 「前は、そういう風に笑ったりはしなかったぜ。……まあ、今もあんまり良い笑顔じゃねえがな──」 「……ほう、なるほど。後の為に、その言葉も参考にしておきましょう」 ダブルの反応は予測済というわけだ。これだけの人数を前にしても震えず、余裕綽々と笑っている加頭の顔を見ていると、やはり不気味に思うだろう。ダブルへの勝算があると見ているに違いない。 だが、その場で加頭と敵対している者の──仮面ライダーやプリキュアの全てが、加頭に敗北する未来の予感を全く浮かばせなかった。 「……」 強いて言えば、そう……少し勝利までの過程が厄介になるだろうという不安が掠める程度だ。それもすぐにどこかへ払いのけられた。 少し心に余裕が出来た気がした。 「……加頭。もう一つだけ、すっげー参考になる『良い事』を教えてやるよ。 ──そいつは、フィリップが今ここにいる理由さ」 「ほう。興味深い……」 変わらず余裕な加頭を前に、仮面ライダーダブルが強い語調で啖呵を切った。 「──俺たちはなぁ、お前たちみたいな奴らを倒すまで死なねえんだ……永遠に!」 『そう、僕達はたとえこの身一つになっても……いや、この僕みたいに、“この身がなくなっても”戦い続けている』 「それこそが、お前たちが相手にしている存在だ……!」 『だから──いうなれば、絶望がお前のゴール……っていうところかな?』 ダブルは固く拳を握る。 そんなフィリップの言葉を聞くと、少しだけ加頭は眉を顰めた。 それは、かつて翔太郎が加頭の野望を阻止した時に発した言葉にもよく似ており、それが加頭に悪い記憶を呼び覚まさせたのだろう。 しかし、それでも──加頭は、大きく怒りを膨らませる事はなかった。 「なるほど……かつて聞いた時と同じ……か。──憎たらしい言葉ですね。 しかし──残念ながら、その台詞を聞く事が出来るのも、今日が最後のようです!」 ──UTOPIA!!── その言葉と同時に、加頭が握るユートピアメモリの音声が鳴り響いた。 ユートピアメモリが浮遊し、加頭の装着するガイアドライバーへと吸収される。 重力が無いと言うよりか、むしろメモリが自力でそう動いたかのようだった。 轟音。ブラックホールを前にしたような不安感。……それらが駆け巡る。 ──BELLIAL!!── ──DARK EXTREAM!!── 「!?」 そして、次の瞬間──暗黒の嵐が吹き荒れた! 強風が彼らを襲う。土に零れていた大量の葉を吹きあがらせ、地面の草木を全て揺らす。 暗闇のオーラが雲のように視界を覆う。天と地がひっくり返るような感覚がその場にいる者たちに降りかかる。 しばらくすると、空に飛び散った葉の数々は、次の瞬間に、まるで鉛の固まりのように一斉に落下する……。 「くっ……!」 それぞれが、自らの頭を覆うように顔の前で両腕を交差させた。微かに視界に残した光景には、確かに変身していくユートピアの姿がある。 そこから、ダークザギの発した闇にも似た黒いオーラが現れ、直後一斉に取り払われると、そこに佇んでいたのは、ダブルもかつてまで見た事のない相手──。 そう──この「ユートピアドーパント」の「ダークエクストリーム」だ。 「……っ!」 ゴールドエクストリームと化したダブルに対して、ダークエクストリームと化したユートピア。それはまるで、かつての戦いの再現でありながら、いずれもかつてのそれぞれとは大きくベクトルの異なる成長を遂げた結果生まれたカードだった。 そして、彼らが背負うものもまた、かつてとは変わっていた。 ダブルは、「崩れた理想郷」や「一人きりの理想郷」ではなく、無限の供給と再生を続ける「完全な理想郷」となったユートピアの姿を見て、固唾を飲む。 どうやら、加頭も秘策と、想いを背負った敵であるらしい。 しかし──倒す。何があっても、必ず。 「それでは、皆さん。……折角ですから、また、殺し合いを始めましょう。 ──そう、この私と……この場所で!」 加頭は仰々しくそう宣言した。 このバトルロワイアルの始まりを告げた言葉にも似たその一言に、誰もがぴくりと反応した事だろう。 そう、この男の呼び声であの悪夢は始まった。 そして、この男を倒してから始まる本当の最終決戦で──全ては終わる。 「──違います! これから始まるのは、殺し合いじゃなくて……命と命の、助け合いです!」 キュアブロッサムがユートピアに向けてそう告げた。 ガイアセイバーズ。 それが望む未来を提示され、ユートピアは微かに狼狽えた。 敵方にこちらを恐れている者はなしと見て、ユートピアの脳裏に掠められたのは、僅かな敗北のビジョンである。──とはいえ、それは勝負に際する者が誰も一度は掠める物。 ユートピアは、園咲冴子の生前の姿を、そして、ここにあるこの力で戦えば、彼らなど相手ではないという事を思い出して、そんな不安を一瞬で取り払う。 「……フン。──何を言おうと勝手だが、どうせ貴様らは、いなくなるッ!」 敬語を捨て、猥雑で乱暴な「殺し合い」を始めるユートピアは、その手に構えられた“理想郷の杖”で、閃光の一撃を放った。 「──!!」 光速のレーザービームが八つに分岐して、各参加者の身体を狙い加速する──。 瞬きする間もなく自らを狙ってくる数百度の熱を、各々は正確に捉え、八人八色の対応を果たした。 ビームを防ぐ者、避ける者、跳ね返す者、その体で難なく防ぐ者。 その全てが一瞬で行われる。 ユートピアとて威嚇のつもりであったが、全てが殆ど反射的に回避された事を見て、やはり予想以上の相手になった事を実感していた。 ◆ 「──せやぁッッ!」 ──直後に聞こえたのは、一人の雄叫びだった。 攻撃の瞬間に、圧倒的なスピードで姿を眩ました高町ヴィヴィオである。 聖王の姿となった彼女は、他の数名と同様、全身を金色に輝かせ、真っ直ぐなパンチをユートピアに叩きつけようと迫ってくる。 何度も、友と磨き上げた拳。 歪みから救われた少女の、正拳。 それがユートピアの全てを打ち砕くべく、アクセルを踏み込んだようなスピードで邁進していく。 彼女の一歩は、空間をも飲み込んだような一歩であった。 「──アクセルスマッシュ!!」 「フンッ!」 ユートピアは、叩きつけられたパンチをクロスした両手でガードした。 そのまま、ヴィヴィオの手を取り、力の流れを寄せ──彼女の身体の天地をひっくり返す。 何が起きたのか──。 「くっ……」 ヴィヴィオも、気づけば空を見る事になった。合気道のような技で投げられたのだと察知するまでにもそう時間はかからない。 加頭固有の能力を使えば、ヴィヴィオを触れもせずにひっくり返す事が可能であろう。 しかし、彼はベリアルウィルスの効果で元の素養を超える身体能力や、敵を見る術を得ていた。一切の能力を使わず、元の身体のポテンシャルだけでヴィヴィオに空を見せたのだ。 「……っ! 痛~っ!」 「この能力だけが私のやり方ではない──。 格闘による真っ向勝負も一つの戦法だ……! 得意の接近戦に持ち込む事など、愚かな!」 「……そういう事なら、むしろ逆に、受けて立ちます! ……はぁっ!!」 ヴィヴィオの拳は、何発もの攻撃を、凄まじい速さで、連続してユートピアに打ち込んだ。 その一つ一つが、強い魔術を込めた一撃だ。──いうなれば、それこそ、闇の欠片が供給している死者たちの魂である。 黄金の輝きを持つ限り、ヴィヴィオたちにはこれまで以上の、圧倒的な力が味方する事になるだろう。 ユートピアも同条件には違いないのだが、その想いの強さでは、ヴィヴィオが勝ると言える──。 「はぁぁッ──!!」 「ふんッ」 それを何度も、ユートピアの胸に、腹に、顔面に──叩きつけるつもりで打ち込んだ。だが、その全てがユートピアの掌の上で跳ねていく。 ヴィヴィオのパンチのスピードに追い付き、ほぼ全てを迅速に片手で防御しているのだ。 結果、ヴィヴィオのパンチは一度もユートピアの身体に当たる事がない。 「──無駄だ!」 ユートピアの掌から、ヴィヴィオに向けて闇の波動が放たれる。 それは、彼女の身体を拳から伝って全身吹き飛ばし、真後ろの地面に尻をつかせた。 ヴィヴィオにとってもそれは少しの痛手であったが、後退の意思が過るほどではない。 いや、それどころか、この程度の負傷は誰の日常でもよくあるレベルだ。アインハルトと戦った時だってそうだ。何度も行った模擬戦の中で、何度空を見て、何度膝をつき、何度腰を抜かした事か。 それがヴィヴィオの常だった。それがヴィヴィオの戦いだった。 「──」 わかっている。──それでも、今はいつもと違うのだと。 ヴィヴィオの背中には、今、自分を守ってくれている人たちの想いがある。──それを全身で感じていた。この重みは、決して只の荷物にはならない。 ヴィヴィオに必ず力を貸してくれる。 「くっ……!」 ヴィヴィオは、すぐに強く地面を蹴って、立ち上がると、再びファイティングポーズを取った。 ──こうなる限り試合続行だ。何度だってポーズを取る。 しかし、実のところ、彼女の顔色というのはあまり良くない。勿論、敗北を予感しているわけではない。 ──ただ、何か薄気味悪い予感がしたのである。 (まさか……この人……!) 先ほど、手ごたえのなさと同時に──ヴィヴィオはもう一つ、ある違和感をユートピアに対して覚えたのである。 その理由も薄々察する事になった。 「……!」 クリスも気づいているらしく、クリスの焦燥する感情がヴィヴィオの全身に伝わる。 いや、クリスはもっとはっきりと、今の闇の波動がヴィヴィオに放たれるまでに正体を明らかに察知したのだろう。 彼には、まるで悪魔が取り憑いているように見えた。 「──」 そんな中、ヴィヴィオとユートピアの間に一人の男が立つ。 「──ヴィヴィオちゃん、手を貸すぜ!」 超光戦士シャンゼリオン──涼村暁である。 彼もまた、超光剣シャイニングブレードを右手に構え、敵の身体をその刃の餌食にしようと走りだそうとしているかのようだった。 助っ人というには、少々頼りないが、ユートピア相手には二人以上でかかるのが妥当と見たのだろう。 「──待って!」 「えっ」 と、そんな彼が手を貸そうとするのを、ヴィヴィオは今までにない剣幕で叱りつけるように怒鳴った。完全に戦闘態勢に入っていたシャンゼリオンも、その言葉に流石に足を止めた。不安気にシャンゼリオンがヴィヴィオの方を向いた。 ヴィヴィオはすぐさま頭を冷やして、少し丁寧な口調に直して、シャンゼリオンに言った。 「待ってください……!」 「え? なんでよ」 「あの人……実力は今の私たち一人一人と同じレベルですけど……もしかすると、何か切り札を持っているかもしれません!」 その言葉は、シャンゼリオンとヴィヴィオの数歩後ろにいた他の者たちにも聞こえただろう。 並んだ者たちも一斉に足を止めた。──今、戦ったヴィヴィオにしかわからない「予感」。 ユートピアをちらりと見るが、どちらの側もまだ攻撃を仕掛ける様子はない。彼としては、早々に“気づかれた”事も面白いのだろう……。 ヴィヴィオが続けた。 「……ううん。もっと、わかりやすく言うと──」 ヴィヴィオが“気づいた”──という事を感じ取り、ユートピアもまた、異形のまま、ニヤリと微笑んだ。 そう。ユートピアがベリアルウィルスによって得た、新しい能力たち。 その一つが今、戦闘時を目途に、開眼しているのだ。 確かにその切り札はまだ使用していないはずだが、しかし、ヴィヴィオたち魔導師には充分に感じ取れるものになった。 どれだけ消そうとしても匂う、その切り札の香り──。 「──」 ヴィヴィオが、口を開いた。 「あの人は今、私たちの世界の住人が持つはずの、『魔術』を持っています……!」 シャンゼリオンたちは、一斉にぎょっとした。 とりわけ、その中でも強い驚きを示しているのは、仮面ライダーダブルこと左翔太郎とフィリップである。加頭の正体はクオークスであり、NEVERであり、ドーパントであり……また、過去には仮面ライダーに変身したかもしれない。 しかし、彼は、「魔術」などという物を使った過去はなかったし、その素養は決して簡単に得られるものではなかった。そもそもが、その力の存在しない翔太郎たちの世界の人間がそれを短期間で会得できる可能性は極めて低い。 「……気づいたか」 ユートピアは淡々と言う。 「──教えてやろう。私は、参加者や私の仲間の持っていた力の残粒子を『コア』として凝縮し、ベリアルウィルスと共に注ぎ込まれた……。 つまり、ここに居た者たちの全ての技を使う事が出来るのだ……!!」 彼のこれまでの自信には、明確な根拠が伴っていたのである。 ユートピアドーパントがエクストリームと化した時、同時に備わった新たなる力。 それは──この殺し合いで現れた怪物たちと同様の力であった。 魔術に限らず、あらゆる技を運用する事ができる。 「そう──」 かつて、クオークス、NEVER、ドーパント、仮面ライダーの四つの力を全て得ていたように、加頭の身体には幾つかの悪の勢力と同様の力を発動する「コア」が埋め込まれている。 JUDOの力のコア。アマダムの力のコア。ラダムの力のコア。花の力のコア。魔術の力のコア。魔界の力のコア。……そんな無数の核が、理想郷の一部として体中にちりばめられたのだ。 そして、今、気づかれたと知れた時、ユートピアは、狼狽える目の前の敵に向けて、「実演」を行った。 「──たとえば、こんな風に」 右手を翳すユートピア。 周囲の大気が渦を巻き、そんなユートピアの右手に収束していく。右手の中に巨大な黒い塊が具現化され、その中に、今込めたエネルギーが全て包み込まれた。 ぐっと握りしめ、ユートピアは顔を少し上げた。 それが次の瞬間の彼の一声と共に解き放たれる。 「──ブラスターボルテッカ!」 叫びと共に、ユートピアの右手から発されたのは、テッカマンたちが使用した必殺の技──ボルテッカの強化版であった。 一つのエリアを焼き尽くす程の膨大なエネルギーを持つ ブラスターボルテッカが、今、ヴィヴィオたちの前に放たれる。 「何っ──!?」 轟音と共に──。 「くっ……!」 しかし、直前にレイジングハートが間一髪バリアを貼り、彼らの周囲だけは守られる。 それでもやはり、ユートピアの一撃は相当な威力で、レイジングハートへの負担は膨大だったに違いない。こんな多段的な攻撃を受けるのは初の事である。 「──っ!?」 爆風。 周囲の草木が一瞬で灰になり、それを見たキュアブロッサムが眉を顰めた。 仮にバリアを張られなければ、自分たちも無事では済まなかったに違いない。 「くっ……何て力だ……!」 仮面ライダーエターナルも、自身の身体を守っていたローブを下ろして、憮然とした表情でそれを見ていた。 ユートピアは、手をゆっくりと下ろし、続ける。 「──今のような技も、何のフィードバックもなく放つ事が出来るわけだ」 フィリップがそれを見て、息を飲んで言った。 『……つまり、あらゆる地球の記憶を全身に埋め込んでいるという事なんだ! 奴が使っているのは、正真正銘の……エクストリーム……!!』 「その通り!」 と、ユートピアの口調はどこか誇らし気であった。 胸を張り、理想郷の杖を右手に持ち替えた。それを目の前に並ぶ者たちへと向ける。 彼の持つのは、理想郷を修復する力だ。崩れ去る運命さえも、それを一瞬で巻き戻してしまう。即ち、自らの負うダメージもまた、一瞬で回復してしまうのだ。 ただでさえ無尽蔵なエネルギーを持つNEVERが、「攻撃を浴びせながら体力を回復する」という絶対の矛と盾を同時に得たのである。 ブラスターボルテッカに匹敵するエネルギーを放ったとしても、肉体が崩壊する前に肉体が再生してしまう──。 それが、彼の理想郷の力であった。 「いかに束になってかかろうとも、私に勝つ確率は、ゼロだ……!」 目の当りにした者たちは、呆然とした。 敵の強大さに恐れおののいたわけではない。 言うならば、ただ意表を突かれた事と、加えて、それがここで出会った者の技であったが故の忌避の念かもしれない。──しかし、甘く見てはならない相手であるのは間違いなかった。 「だが今のはほんの序の口……。 今度は本気で行くぞ……────ライトニングノア!」 ユートピアの次の掛け声は、明確に、目の前の敵たちを全て葬る為に口にされた物であった。 そう、それは、「埋葬」の為の一言だった。 ライトニングノアは、ウルトラマンノアがダークザギを宇宙で葬る際に使用したあの技である──あれさえも記録されているというのだろうか。 あれは間違いなく、この場で使われた最も強力な技に違いない。 ──瞬間。 もはや、回避の術さえもなく、ガイアセイバーズと呼ばれた戦士たちの姿が、ユートピアドーパントの放った光に飲み込まれていく。 純粋なエネルギーの塊が、敵の数に分裂し、それぞれ彼らの身体に向けて放たれた。 ライトニングノアに等しい攻撃が、全員の身体に頭上から突き刺すように直撃する。 「うわあああああッッ!!!!」 「ぐあっ……!!!!」 「きゃあっ!!!!」 ヒーローたちは、遠く、炎の底に沈められた。 彼らに向けて、一斉放射された幾つものライトニングノアの光。 回避運動に近い行為を出来たのは、ローブを持つ仮面ライダーエターナルくらいである。彼は、ローブに包める一人分の面積を、近くにいたキュアブロッサムの身体を包んで回避させる。 「くっ……!」 それと同時に──エターナルは、頭の中で実感する事が出来た。 敵の脅威を。 あのウルトラマンノアと同じ灼熱の一撃を、掌ひとつで再現できるという強敵の、恐ろしさを……。 よもや、それだけのエネルギーを無尽蔵に持ち合わせているなど、先ほどまではほぼ予想していなかった事態だ。 「──隠れても無駄だ……『トライアル』!」 そして、それは、更に、トリッキーな技さえも使えるという事であった。 ただの力技の砲撃や光線だけではなく──そのエネルギーは時空や光速、人間の近くさえも超越していく。 ウルトラマンノアやダークザギの力と同じように、ここにいた全ての仮面ライダーやドーパントたちの力も使えるのである。 助かった仮面ライダーエターナルに距離を縮めたのは、あの仮面ライダーアクセルトライアルの力である。──いや、もっといえば、ダークアクセルと呼ばれたあの石堀光彦の力を融合しているかもしれない。 「何っ……!?」 エターナルにも、ローブの効果によってメモリを無効化する事で視認出来たが──それは一瞬であった。 即座に、ローブの効果と“ベリアリウィルス”の効果が打消し合い、トライアルのスピードがエターナルに視認できなくなった。 「くそッ……!!」 目の前で消えたユートピアの姿に驚愕するエターナル。 あの超銀河王の効果さえ打ち消したローブの力が、無効化された──。 「どこに──」 どこだ……? 敵はどこにいる……? 俺を狙っているのだろう……? 「──ッ!」 疾走の一秒。 「……っ!!!!!!!!!!!!」 つぼみの声にならない悲鳴が聞こえたのは、エターナルの腕の中だった。 真下を見ると、エターナルローブの中に、もう一人分の影がある。 ──まさか。 「まさかっ……!!」 ユートピアが一瞬で距離を縮め、潜んだのは、エターナルのローブの、“内側”だったのである。 狙いは、エターナルとブロッサムだった。──それに気づいたのは、ユートピアが攻撃を始めるよりも、些か遅かった。 「なっ──!!」 仮面ライダーエターナル自身と、キュアブロッサムが潜んでいたローブの“内側”に、目くるめく“理想郷の杖”の炎の鉄槌が下される。 最早、炎のエネルギーが充填された今、回避の術はない。 このエターナル最大の防御壁こそが、同時に、絶対的に逃げ場のない檻となったのである──。 「──死ね!」 ──爆発。 エターナルローブの内側で、膨大なエネルギーが貯蓄され、「トライアル」の効果の終わりとともに炸裂する──。 装甲さえも黒く焦がす一撃。一つの部屋に閉じ込められたまま、殆どゼロ距離で核弾頭が光る事に等しい一撃であった。 それを受ければ、いかに変身した彼らでさえ、容易く耐えうる事が出来まい。 「──ぐあああああああああああああああ……ッッッ!!!!!!」 「──きゃああああああああああああああ……ッッッ!!!!!!」 これまでの戦いで、二人ともまだ出した事のない、巨大なダメージの悲鳴。 エターナルローブが衝撃のあまり、弾け飛び、空へと泳いでいく。 そこから吹き飛ばされたのは、変身が解けかねないほどの負傷をし、それぞればらばらに地面と激突する事になったエターナルとブロッサムである。 それはさながら、抱え込んだ花火が炸裂したかのような攻撃だっただろう。 ──迂闊であった。 「良牙……!!」 「つぼみ……!!」 ライトニングノアの一撃に倒れていた仲間たちが、手を伸ばしながら、彼ら二人の名を呼ぶ。 辛うじて、良牙もつぼみも生きているようだが、一瞬、彼らの命を本気で心配した程であった。 それによって、「黄金」の力が思った以上であるのを実感する──勿論、この力がなければ死んでいただろう──が、それでも、二人が極大なダメージを受けもだえ苦しんでいるのは事実に違いない。 死者たちが齎した思念はそれだけ強いという事だった。 誰より実感しているのは──魔戒騎士たる涼邑零だっただろう。 「──」 そして──敵が今、エターナルローブの力さえも打ち消す、自らに等しい力を持っているという事も、彼らはすぐに理解できた。 安心できる暇などなかった。 「……見たか」 ──見れば、爆心地で、ユートピアは悠々と立ち構えていた。 理想郷の杖を後ろ手に構えて、背を曲げる事なく立っているユートピアには、ダメージを受けた様子もまるでない。 いや、それも、彼は──瞬時に回復する事が出来るのだ。 自爆技でさえ彼にとってはほとんど意味のない話である。 それ故に、ユートピアは確かに、最強の「魔王」としてその場に君臨していた。 「この体にコアがある限り、お前たちは私には勝てない……! 諦めるんだな……!」 絶対的な自信とともに、ユートピアが、宣言する。 まるで、自分だけにスポットライトが当たっているつもりのように、高らかに。 喝采が返ってくるはずもない。彼が望む喝采は、ただ一人からの物だ。有象無象の拍手など何の意味も成さない。 「……くっ!」 しかし、挑発的にそう言われた時に、先ほどまで地面に伏していた誰もが、立ち上がろうとした。 今しがた、攻撃を受けたばかりのエターナルとブロッサムもだ。 (諦めるわけがない……!) 諦めろ──と。 その一言を聞いた時、彼らの中で、目の前の敵への対処法が生まれたのだ。 そう、これまで自分たちがどうやって勝ち抜いてきたのか──その理由を反芻する。 『────諦めるな!』 ──どんな相手を前にしても、誰も諦観などしなかった事だ。 「……だったら……要するにコアをぶちのめせばいいんだろ……!?」 「攻略法としては、簡単だな……! さっさと倒しちまおう……!!」 ダブルとエターナルが、歯を食いしばりながら告げた。 それからは、彼らのみならず、誰もそれから、ユートピアの脅威を前にも唾一つ飲み込む様子がなかった。 全員が立ち上がっていた。 ユートピアの能力は、本来ならば絶対的に相手にしたくないような能力に違いない。力の強さもわかっている。彼に攻撃された時の痛みも、反射的にユートピアを避けたくなる程に染みているはずだ。 確かに、一人一人の力で勝てる相手ではないかもしれない……。 しかしながら、こう言われた時、彼らにはそれと同等の力を得たという確証があったのである。──それは、理屈の上にはない物だった。 彼らの力を受けたユートピアと違い、自分たちは彼らの想いを受け継いでいる。 ──そうだ。 彼らにとっての脅威はベリアルだ。 この虚栄に満ちた門番ではないのだ。 「──っ!!」 ……誰より先に、構えて前に出たのは、先ほどと同じく、高町ヴィヴィオという一人の格闘少女だった。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(1)Next 変身─ファイナルミッション─(3) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(1)Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(3)