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今日は12月24日、いわゆるクリスマスイヴだ。 今年は諸事情により、SOS団のパーティーは26日になるらしい。 そして、何故か俺の家にはハルヒが来ているわけだ。 「かわいい妹ちゃんのためにプレゼント持ってきたげたのよ。悪い?」 いや、悪くはない。むしろ助かる。……だが、それだけが目的じゃないんだろ? 「よくわかってるじゃない。明日、期待してるわよ?どうしても欲しい物があるの。それを当てて、あたしにくれたらお返しは期待していいわよ」 ハルヒの期待出来るお返しか……少し真面目に考えてプレゼントしてみるかな。 「……今日も明日も一人だから、暇潰しに来たのよ。ほんとは……ね」 唐突にうちに来た理由みたいなものを語り出した。 「なんで一人なんだ?」 俺は、なんとなく聞かないといけないような気がして尋ねてみた。 「……ママ達は二人とも仕事の関係のパーティーなの。ほんとは今だって家で留守番してなきゃいけないんだけど……少しくらい、ね?」 あぁ、だからパーティーも延期だったのか。こいつもかわいそうだな、親の都合でクリスマスが潰れるなんてな。 しょうがない、俺が思いつく最高のプレゼントをくれてやるしかないな。 「あ、もうこんな時間!ご飯作んなきゃ……あたし帰るわね」 帰ろうとしたハルヒの裾を掴む小さな手。 妹がハルヒを引き止めていた。 「ハルにゃんも一緒にご飯食べよ?わたしにプレゼントくれたお返しだよっ!いいよね、お母さん!」 妹に対してはうちの親は弱いんだ。つまりハルヒは俺達と共に食卓につくことになった。 「あ、あの……すみません。ごちそうになっちゃって……」 孤島以来のかしこまったハルヒ、こうして見るととても落ち着いた少女に見えるな。 「いいのよ、この娘にプレゼントまであげてくれちゃって……それにキョンもいつもお世話になっちゃってるしねぇ。しっかり食べてね、ハルヒちゃん」 いつも世話をしてるのは俺なんだがな。……なんてことを言うと後が恐いから言わないが。 かしこまったハルヒとそれに懐く妹、それを眺めて微笑む俺と母親と親父。 こんな食卓もたまにはいいな。新鮮で、楽しい時間だ。 食事を終え、玄関でハルヒと別れた。いまからこいつは一人の時間を過ごすんだな……。 「プ、プレゼント楽しみにしとけよっ!」 俺は可能な限りの大声で叫んだ。 表情は見えなかったが、たぶん微笑んだと思う。微笑みながら俺に手を振って別れを告げた。 時間は20時。まだ開いているデパートに向けて俺は自転車を走らせた。 何を買おうか。どうしても欲しいもの……か。 18金のネックレスとかダイヤの指輪とかか?……なわけないか。 店内をくまなく探索していると、ある小物が俺の目にとまった。 真四角なケースに入れてあるペンダント、なんかシンプルな形の。 一目でなんかピンときたので値段を尋ねてみると……なんてこった。五千円だとよ。 ここで脳内で会議が開かれる。ハルヒに喜んで欲しい俺と、財布の中身を気にする俺。 会議は3秒で終わった。ハルヒの笑顔が見れるかもしれないなら財布なんて知ったことか。 あいつは今、一人で寂しく留守番をしてるんだ。そう、これはそのご褒美に買ってやるのさ。 すっかり寂しくなった財布と、ペンダントを抱えて家に帰宅した。 部屋に入ると、妹がハルヒからもらった熊のぬいぐるみと遊んでいた。 「くま~、くま~。シャミのお父さん~」 なんて歌だよ。こいつの作詞作曲センスはダメだな、通知表の音楽も最低ランクだったしな。 「こら。俺の部屋で遊ぶな。自分の部屋に戻れ」 「あ、キョンくん。あのね、この子を置く場所を整理するまでここに置かせてね!おやすみっ!」 そう言ってぬいぐるみを置いて逃げて行きやがった。 ……やれやれ、なんにせよ今日は精神的に疲れた。 もう寝るとするか……。 次の日、俺が起きたのは昼過ぎだった。妹が起こしに来なかったことを親に聞くと、朝からミヨキチの家にクリスマスパーティーに行っているだとか。 まったく……調子狂うぜ。 俺はかなり遅めの食事を取り、特に何もない時間をゲームをして潰すことにした。 「あ……ハルヒに連絡して、会う時間を決めなきゃな」 俺は携帯を開き、メールを打った。 《今日何時に会える?プレゼント渡してやるぞ》 簡潔にメールを打ち、俺はゲームの続きを始めた。……俺はなんて暇なダメ人間だ。 そこから無駄にストーリームービーの長いRPGを中盤まで終えた所でセーブして、電源を落とした。 そういえばハルヒからの返事がない。 もう一度携帯を手に取り、まず時間を確認した。 いつの間にか夕方18時を回っていた。どおりで目が痛いはずだ、5時間近くもゲームやりっ放しかよ。 次にメールセンターに問い合わせてみる。 《新着メールはありません》 このコメントが出るとなんだか切なくなるよな……俺だけか。 しかし、ハルヒと連絡が取れないのは困るな。アドレス帳を開き、《涼宮ハルヒ》を選択。電話をかけてみた。 『この電話は電波の届かない所にあるか、電源が入っておりません。……』 ……おかしいな。電波が届かない所にいるはずがない、あいつは留守番中だ。 しょうがない、自宅にかけてみるか。 …………………… 出ない?まったく……今度はどこをほっつき歩いてんだよ。携帯の電源を切ってまで……か。 妙なモヤモヤが残ったのを冷蔵庫から水を取り出し、一気に飲んで振り払うと、自分の部屋へと戻った。 熊のぬいぐるみ……か。無造作に手にとって抱き上げてみた。 これっていくらくらいしたんだろうか……。なんかペンダントより高そうな気がしなくもないな。 くるくると回してみると、ぬいぐるみの下に紙……のような物が張り付けてあった。 《プレゼントは22時までにちょうだいよね。……一人はとっても寂しいよ、キョン。あたしはたぶん、どっかにいるから……一人で》 いつもの、文字からも溢れてくる明るさの影はなく、どこか消え入りそうな文字だった。 「……っ!あのバカ、場所書いとくか携帯の電源いれるかくらいしときやがれ!」 俺は急いで着替えて、ポケットにペンダントを入れると自転車に飛び乗った。 ……どこへ向かう? 知るか、可能性のある場所は全部回ってやる。 なぜだかわからないが、あいつは凍えながらどこかに座って俺を待っているという確信があった。 なら、俺はあいつが風邪をひかないように、可能な限り早く見つけてやるしかないじゃねぇか。 とりあえず駅前からだ! いつもの自転車置場に向かって俺は冬空の下を飛ばしていった。 駅前から、様々な場所へ走って行った。 学校、公園、喫茶店に東中まで行ったがハルヒはいなかった。携帯も繋がらないままだ。 時間は、21時の少し手前。いろいろな店が営業を終える頃でもある。 クリスマスだけあって人はまだまだ多い。カップルに次ぐ、カップルの群れ。 一人の俺だけが浮いていた。……今は関係ないだろ。 ふと、少し前のことを思いだした。 『これくらい大きなツリーが欲しいわね』 『飾るとこないだろ』 『む……でも、このサイズだと絶対にサンタクロースも気付くわ!』 『俺達はこどもじゃないからプレゼントはもらえん』 『会いたいだけなの!会えれば、満足なのよ……』 あの場所、行ってないな。 近場で一番大きな樅の木、クリスマスツリーのあるあの場所。 こないだ、探索でハルヒと一緒になった時に通ったあそこのツリーだ。 「もう少し頑張れよ、俺の足!」 いうことを聞かない自分の足に二、三度気合いを入れて、大きな樅の木の下へと走り出した。 ……あのコート、あの背格好。間違いなくハルヒだ。 一つだけ違うのは……ポニーテールだってことか。 ポニーテールにしているハルヒは、樅の木の下から、今にも雪の降りそうな空と、飾り付けからでる光をジッと見上げていた。 俺はゆっくりと歩を進めて、ハルヒの肩に手を乗せた。 「サンタクロース、登場……なんてな」 ハルヒは驚いた顔で俺の方を振り返った。 「え……?なんで、キョン……が?」 あんな手紙を書いといて、白々しいな。俺が気付かなかったらどうするつもりだったんだよ? 「あ、バレてた?キョンなら見てくれる気がしてたの……ありがと、来てくれて」 自分の着ていたコートを脱いで、ハルヒにかけた。 先に言っておくが、走りすぎて暑いからかけたんだぞ。 「それよりさ、プレゼントは?サンタさん!」 ハルヒなニヤニヤと俺の顔を見つめてきた。 ポケットに手を突っ込んで、ペンダントを…… 「え?」 無い……だと? まさか、走ってる時に落としたのか?……なんで俺はこんな肝心な時にミスが出るんだよ、畜生。 「す、すまん……落とした、みたいだ」 地面を見るしかなかった。自分のマヌケさ加減にあきれて、顔が上がらなかった。 そんな頭が、暖かく包まれた。 「いいのよ」 「は、ハルヒ……?」 「いいの。あたしは何よりもうれしいプレゼント、もらったわ。それよりうちに行きましょ?ケーキあるからさっ!」 そう言うと、俺の手を引っ張り、意気揚々と歩きだした。……俺はもう、元気ねぇよ。 ハルヒの家……っつーかハルヒの部屋で、二人でケーキを食べた。 棒になりかけていた俺の足もだいぶ回復してきたな。 ところで、気になるさっきの話の続きをさせてもらうとするか。 「ハルヒ。さっき言ってた……『何よりもうれしいプレゼント』って何のことだ?」 少し頬が赤くなったハルヒ。暖房のせいか?……なんてな。 「あ~……うん。ほら、ね?今……二人でいるじゃない。さっきまであたしは一人だったのに」 頷いて答える。 「だからね、《一人きりじゃないクリスマス》をキョンがくれたの。ほんとに……うれしかったよ?」 あぁ……そうだったのか。やっぱり、恐いもの知らずのハルヒでも、孤独ってのは恐いのかもな。 「《どうしても欲しいもの》だったか?」 これは俺にとって、重要な問題だ。何故ならハルヒからのプレゼントがもらえるかどうかの問題だからな。 「……うん。大正解。プレゼント、あげるね」 ハルヒは引きだしから何かを取り出し、両手で包んで俺の前に持ってきた。 「覗いてみて?」 言われるままに覗き込む。暗くてよく見えないな……。 その時、ハルヒの顔が寄ってきて、唇同士が触れ合った。 ハルヒは目を瞑っていたが、俺は驚きに目を見開いていた。 閉鎖空間でやったのは、こんな状態だったのかな……。 数秒後、ハルヒの方から唇を離した。 「……あたしからのプレゼントはおわり。こっからはあたしの気持ち。キョン、付き合って……ください」 このバカ……不意打ちかよ。追撃のおまけまでつけやがって。 ハルヒの顔は歌に出て来るトナカイの鼻のように真っ赤で、うつむいていた。 ハルヒの告白、それに答える俺の気持ちはどうだ?決まってる。OKだ。 だから、あれだけ必死こいてハルヒを探したんだろ?あわよくば、俺から告白してやろうとも思ってたんだ。 ハルヒを抱き寄せ、唇を合わせた。ほんの、一瞬。 「もちろんだ。……メリークリスマス」 言い終わった直後、もう一度キスをした。今度は、長いキスを。 サンタクロースになり損ねた俺からの、精一杯のプレゼントだ。 「……キョン。あたし、やっとサンタクロースに会えたみたい、大好き!」 飛びついて来たハルヒを抱きとめ、俺達は笑いあった。 あと、数分で終わるクリスマス。 もう、今年は用無しになるかもしれない言葉を、今日だけの特別な意味をもつ言葉を、俺達は見つめ合いながら同時に言った。 「メリークリスマス」 そのまま二人で、夜が明けて目が覚めるまで、抱き合って幸せに眠り続けた……。 おわり
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ストーリー参考:X-FILESシーズン6「クリスマス・イブの過ごし方」 早いもので今年ももうクリスマス・イブである。 ハルヒとX-FILE課を設置してから色々な事件があった・・・ それらの嫌なことをすべて雪が洗い流してくれると思いたい。 さて、俺のクリスマス・イブの予定だがあいにくハルヒとの 約束は無い。 なぜなら成長し朝比奈さんに似るようになった妹がクリスマス頃に 遊びに来る予定だからだ。 成長した妹との再開が楽しみであり、毎日のように顔をあわせている ハルヒから逃れるのもいいだろう・・・と、考えたのが甘かった。 クリスマス・イブの昼、ハルヒからメリーランド州のある屋敷の 前に夜来るように電話が来た。 もちろん『来なければスキナー副長官のカツラ用にあんたの髪の毛 刈るからね!』ときたもんだ。 しかし、あいかわらず上司のことを無礼に言うな、こいつ。 ~メリーランド州 古い洋館前 PM10時~ 私は今【立入禁止】と書かれた古い洋館の前で車の中でキョンがくるのを待っている。 まあ、昼に急に電話をかけたのは悪いと持ってるけど、今日は どうしてもここに来たかった。 色々と考えているうちにキョンの車がやってきた。 「遅かったわね!罰金!」 「すまんすまん、でも罰金はないだろ。この時期だ、車が込んでて しょうがなかったんだ。」 「もう来ないかと思ってたわ。」 「妹が遊びに来るんでちょっと用意があってね。それで出発が 遅かったんだ。」 「あら、妹ちゃんが来るの?随分会ってないし是非会いたいわね。」 「ところでここで何やってるんだ?」 「張り込みよ。」 「クリスマス・イブにか?」 「こっちの車に乗ってちょうだい、詳しいことを話すわ。」 やれやれ、俺は自分の車から降りハルヒの車に乗り込んだ。 「で、どういうことなんだ?」 「あんた興味ないんでしょ?」 「おいおい、わざわざ遠くまで呼んでおいてそれかよ。ところで あそこの家はなんだ?」 「空き家よ。」 「じゃあ誰の張り込みをしてるんだ?」 「元の住人よ。」 「戻ってくるのか?」 「と、いう話だけど。」 「なるほど・・・幽霊屋敷、いや呪われた館ってわけか。ハルヒ、 まさかクリスマス・イブに幽霊探しをしようってんじゃないだろうな?」 「【超自然的存在】って言ってちょうだい。」 「さっきも言った通り妹が遊びにくるんだ。あまり長居はできん。」 「それじゃ要点だけ急いで言うわ。...1917年人々は暗いクリスマスを 迎えた。多くの若者がヨーロッパで戦死し、国内ではインフルエンザで 多数の死者が出ていたわ。人々は深い悲しみと忍び寄る絶望感に打ち ひしがれていたの。」 「それで?」 「しかし、その当時この館に住んでいた相思相愛の2人の命を奪ったのは 悲惨な戦争でも疫病でもない、お互いの純粋な愛だったのよ。」 「続けてくれ。」 「男の名前はモーリス。理想に燃える若者だった。恋人のライダは 輝くばかりに美しい娘だったらしいの。まるで天使のような汚れを 知らない2人には世間の風は冷たすぎた・・・」 「んで、どうなったんだ?」 「この世に絶望し永遠の契りを交わしたわ。いつもクリスマスを一緒に 過ごせるように。」 「つまり・・・心中したってことか?」 「それ以来イブには2人の幽霊が・・・」 「まあ、面白い話だったが・・・俺は信じないな。」 「幽霊を信じないわけ?」 「まあ、不思議現象を追いかけるお前ならではだが・・・他の日なら 付き合っても良かったが、今日はダメだ。」 そういうと俺はハルヒの車を降りた。 と、同時にハルヒも車から降り、 「妹ちゃんによろしくね。」 「おいハルヒ、どこに行くつもりだ?お前は約束とかは無いのか?」 「ちょっと見てくるだけよ。」 俺も行くか・・・と思ったが年も改まることだしばかばかしいのでやめた。 早速車に乗ろうと思って服のポケットを探したが・・・無い。 車にも刺さってないし、ハルヒの車にも見当たらない。 くそっ、ハルヒのヤツ持って行ったな。 しょうがないので俺もハルヒを追いかけ館へと足を運ぶことにした。 あたしは館の正面玄関のドアを開けて、懐中電灯を取り出し周りを見渡した。 古く蜘蛛の巣が張ってなどしているがかなり豪華な家具などが置いてある。 さぞ裕福な家庭だったに違いない・・・そう思っていると突然雷が鳴った! 「きゃあああ!」 あたしは雷だけはダメ。音を聞いたとたんにしゃがみこんでしまった。 と、その時、 「おい、ハルヒ大丈夫か?」 「キョ、キョン?」 「ああ。」 あたしは立ち上がると冷静になり、 「なに?探索に付き合う気になったの?」 「いや、お前俺の車の鍵を持って行っただろ。」 「あんたの車の鍵なんて持ってきてないわよ。」 「冗談はよせ、早く返してくれ。」 「なんであたしが?」 「だからたまたま・・・うっかり持ってきてしまったとか。何かの間違いで。」 「幽霊の仕業よ・・・」 そうあたしが言った途端、上の階から物音がした。 それと同時に柱時計が大きく鳴り響いた。 「なんか寒いわ・・・」 「冷気が入って来てるな・・・どこかが開いてるのかもしれん。」 「天気予報の情報とかだと雪のクリスマスになるかもって言ってたわ。」 そういったと同時にまた雷が鳴り、それと同時に開いていた正面玄関の扉がひとりでに閉まった。 あたしは震えながら、 「ちょちょっと・・・どういことよ・・・」 キョンが玄関の扉に向かっていき、ドアノブを回してあけようとしていた。 「くそっ、いくら回しても開かない!」 「うそ・・・あたしたち閉じ込められちゃったわけ!?」 キョンは必死にドアを開けようとしている。 「やっぱり幽霊の仕業かしら・・・」 「ハルヒ、冗談はこれくらいにしてドアを開けてくれないか。」 「ちょっと待って。上から足音が聞こえない?」 「おいおい。」 「またよ・・・」 「俺、早く帰らないとならないんだが。」 「あら、キョンは男のくせに怖いわけ?こんなか弱い女性を残して 帰っちゃうんだ。」 「失礼だな。怖くなんて無いさ。しかしどこがか弱いんだか・・・」 「なんですってぇ~・・・まあいいわ。でも幽霊は悪さはしないでしょ ・・・普通はね・・・」 そういうとハルヒは玄関広場から奥の方へ向かっていった。 「おいおい、脅かしたつもりか。」 俺は時計を見る・・・結構遅いな。 「ハルヒ、俺本当に帰らないとならないんだが。」 と、言うと同時に雷がまた鳴った。 その稲光の中、横の部屋を見ると一瞬初老の女性が見えた・・・ 俺とハルヒは2階に向かって行くことにした。 「ハルヒ、幽霊なんてばかげてると思わないか?どの話を聞いても 同じようは服装、場所、結局信じる方に問題があるんじゃないか?」 「うるさいわね。」 2階にはいくつか部屋があったのでハルヒが端からドアノブを まわしてみたがどこも開かなかった。 俺とハルヒが色々とあーだこーだと言っている時、急にさっきは 開かなかったドアが”キイイイ”という音と共にひとりでに開いた。 「まだ・・・怖くない?」 「いや・・・怖いことは怖いが理性は失ってないな。」 外では頻繁に雷が鳴っている。 俺は意を決してその部屋に近づいてみることにした。 「あたしは後ろで待機してるわ。」 部屋に近づいてみると・・・明かりがついていた。 「なあハルヒ、本当にここには人は住んでいないのか?」 「そのはずよ。」 「でもおかしいぞ。さっき外から見た時は明かりはついてなかったが、 今この部屋には明かりがついてる。誰か人がいるんじゃないか?」 2人で部屋に入ってみると、ソファーにカバーがかかっているものの 蜘蛛の巣などはなく、誰かがいそうな雰囲気の部屋だった。 どうやら2階層からなる書庫の部屋のようだが・・・ 「ハルヒあれをみろ。」 おれは懐中電灯を1階部分の暖炉に向けた。 2人で降りて暖炉を見てみると、消えたばかりのようだった。 「どうやら消えたばかりのようだな・・・がっかりしたかハルヒ?」 「誰が呪いの館に住むっていうのよ。」 「幽霊の次は呪いかよ・・・」 「80年間に3組が心中しているのよ。それも皆クリスマス・イブの晩によ。」 と、ハルヒが話終わったと同時に部屋の電気が一斉に消えた。 ギシギシ・・・ギシギシ・・・ 「またあの音がするわ。」 2人で懐中電灯をいろいろなところに向けていると、あたしたちのすぐしたの床の 色だけが色あせてなく新品のようになっているのが分かった。 キョンは椅子やテーブルをどけると床を叩いて何か無いか確認していた。 あたしはすぐそばのドアを開けようとドアノブを回したが、やはり開かなかった。 ふとさっき下りた階段を見ると・・・階段が無い! 「キョン・・・これみて・・・」 といいつつキョンのほうを振り向くと・・・キョンがライトを顔の下から当てて あたしを驚かした。 「きゃあああ!驚かさないでよキョン!今度やったら射撃場の的にするわよ!!」 「それよりハルヒ、どうやら床下に何かありそうだ。」 「どうする気?」 「誰か監禁されているのかもしれない。そうだったら助けないと。」 キョンは暖炉の火かき棒で床の木を持ち上げて1枚床板を外した。 外した床板の下にはミイラ化した死体があった。 「やっぱり人はいたが・・・」 キョンは床板をそのまま数枚外した。 「おい、ハルヒ、見てみろよ。」 最初の死体の横に女性のミイラ化した死体が横たわっていた。 「女性のようね・・・お互い銃で撃ち合ってるわ。」 「ああ。」 「ちょっとまって!変だわ・・・この死体あたしと同じ服を着ている・・・」 「どういうことだ・・・」 「男の方はキョン、あなたと同じ服装よ・・・」 俺は死体の服装と今の自分の服装を見比べてみた、確かに同じ服装だ・・・ 「つまりこれって・・・」 「俺たちってことか・・・」 あたしたちは急いで部屋の隅にあるドアから他の部屋に移った。 が、しかし・・・ 「ハルヒこれって・・・」 「同じ部屋よ・・・」 元の部屋に戻り今度は違うドアから次の部屋に移動してみた。 「やっぱり同じか・・・」 移動した先もさっきと同じ死体のある部屋だった。 「キョンはここに立ってて。あのドアから出たらここに戻ってくるはず・・・」 「わかった。」 あたしは部屋の奥のドアから次の部屋に移っていった。 ハルヒが部屋を出た後、ハルヒは俺がいる位置に出てこない。 俺は最初のドアを戻ってハルヒがいないか確かめてみた・・・が、 ハルヒはいなかった。 ハルヒがいないことを確認するともう一度部屋を戻り、さっきハルヒが 出て行ったドアへ向かった。 「ハルヒー!」 「キョンー!」 別々の部屋で呼び合った後、俺のいる部屋のドアがひとりでに 閉まってしまった。 あたしはキョンを呼んだ後、ひとりでに閉まったドアへ向かった。 幸いこのドアは開くようだ・・・早速ドアに入り元の部屋に 戻った・・・が、キョンがいない! 「キョンー!」 まったく応答がなかった・・・ 他のドアを開けようとしても開かない。 「キョン、そこにいるの!」 返事は無い。 しょうがないので銃で鍵を撃ち壊してドアを開けた。すると・・・ ドアを開けた先はレンガの壁で覆われていた・・・ その時、 「おい」 あたしは振り向くと声の方向へライトを当てた。 声の主は帽子をかぶった初老の男性だった。 「誰?」 「私はここの住人だ。君こそ誰だね?」 そういうと男性は電気のスイッチを入れて部屋の電気をつけた。 「わかったぞ、空き巣狙いか?」 「ちがうわ。」 「じゃあ帰れ。ドアはそこだ。」 「冗談でしょ?」 「どういうことだ?」 「ドアの向こうはレンガで覆われた壁になってるわよ。」 「なるほど・・・」 「悪戯が過ぎやしない?」 「あいにくだが私はそんなマネはせん。」 「じゃあ何?あたしたちを脅そうっていうの?」 「君のほかにも連れがいるのか?」 「とぼけるのがうまいわね。」 そういうと男性は大声で笑い、 「なーんだそうか。銃に脅かされたが君も幽霊退治に来たんだな。 で、私を幽霊だと?」 確かに幽霊などには見えないけど・・・ 「ここに来る連中は皆、おかしな装置を抱えてくるが、銃持参は君が始めてだ。」 「ここにくる連中?たとえば床下にいた2人も・・・」 とさっき死体のあったところを指差すと・・・普通の床になっていた。 「どうやったの?」 「一体何をだね。」 「さっきはこの床下に死体が埋まっていたわ。」 「まあ、ちょっと椅子にかけたらどうだ。」 あたしは椅子に座りながら頭を抱えていた。 「アル中か?それともヤク中かな。」 「まさか。」 「君は人に関心をいつも自分に引きつけたいと思ってるのでは? 私は精神科医でね。躁病や様々な精神障害、とりわけ超常現象への 執着を専門にしている。」 「そんな病気あったかしら。」 「私自身は【魂の喪失】と呼んでいるがね。君のようにここを訪れる 訪問者との対話を元にその症状を分類し体系化したのだ。君たちのような 魂の喪失者にはある共通の特徴を持っている。」 「どんな特徴かしら?」 「極端なほど自信過剰で過大な自己ナルシスト。」 「凄いわね。」 「自分では下向きの性格かと思っているかもしれない。でも脅迫精神症と 紙一重だ。仕事中毒で反社会的、このままいけば最後は恐らく廃人同様に なるだろう。」 「ふふふ、あたしには当てはまらないわ。」 「そうかね。まともな人間が銃を振り回すかね?ドアの向こうに壁があるだと?」 あたしは椅子の後ろにあるさっき開けたドアを見た・・・やはりレンガの壁で出口がふさがれていた。 「ひょっとして、『宇宙人を見た』などと言うんだろ。なぜ君が そんなものを見るか分かるかね?」 「もちろんそこにいるからでしょ・・・多分(有希や喜緑さん・・・)」 「いや、孤独だからだ。孤独な人間と言うのは自分を慰めるために 幻想を追う。これを【擬似的自慰行為】と言う。人生に意味を見出すが 逆に言えば社会に適応できない君は幻想に逃げ込むしかない。」 「そんなことないわ!現に有希や喜緑さんは・・・」 「君は周囲の人間に誤解されていると思っている。違うかね?」 「【擬似的自慰行為】ですって?あたしはこの目で見たし、命も狙われたわ!」 「君は誰からもまともに相手にされんだろ。」 「ちょっとまってよ。少し言いすぎよ。」 「毎年クリスマスも独りか?」 「いいえ、独りじゃないわ。」 「今度は自己欺瞞だ。」 「本当よ。相棒がこの家のどこかにいるわ。」 「壁の後ろか?」 「車のキーを隠したんだろ。なぜそんなことを。彼の長演説を 聞くためではあるまい。それは君が孤独を恐れているからだ。図星だろ?」 あたしは反論できなくなってしまった・・・事実そうだったから・・・ 「相棒を探さないといけないわ。」 「いいとも。簡単さ。朝飯前さ。すぐ見つかる。」 そういうと男性は隣の部屋に向かっていった。 「壁は・・・頭の中だ。恐れるな、君も試してみろ。」 あたしは少し考えた後、意を決して男性のほうへ向かった。 が、ドアを通過しようとした直前レンガの壁にぶつかってしまった。 「なんなのよ!もう!」 そして部屋の明かりが消え稲光だけが部屋を照らすようになった・・・ 「ハルヒー!」 俺は取り残された部屋を懐中電灯で探りながらハルヒを呼び続けた。 その時、部屋のドアが開き初老の女性が入ってきた。それと同時に 部屋中の電気がついた。 「うおっ!」 「きゃああああ!」 俺は急いで腰に手を当て銃を取り出そうとした。 「落ち着いて。大丈夫、何もしないわ。」 「俺はFBIだ!手を上げろ!」 俺は女性に向かって銃を向けそう叫んだ。 しかし女性はそのまま臆せず俺のほうへ向かってきた。 「なんていったの?」 「FBIだ!」 「あなた一体誰なの?」 「FBIだ!銃が見えないのか!本当に撃つぞ!俺は捜査官の・・・ もし疑うようなら身分証を・・・」 「ふふふ、てっきり幽霊かと思ったわ。」 「冗談だろ、俺は生身の人間だ。相棒を探していて迷っているんだ。」 「もしかしてかわいらしい顔立ちの女性の方かしら。」 「見たのか?」 「さっき、玄関ホールでね。彼女も幽霊かと思ったわ。」 「あの時の人影は・・・あんただったのか。」 「私もあなたを見たわ。でも、寝ぼけていたから夢かと思ったわ。」 「申し訳ない。脅かすつもりはなかったんだ。ただ・・・死体を見て 気が動転してしまっんだ。」 「どこに死体が?」 「そこだ。」 俺はさっき死体のあった床付近を懐中電灯で照らした。 が、そこの床はきっちりはめられていて死体などなかった。 「ひょっとして幽霊の仕業かも。実はこの家には昔から住み着いているの。」 俺はマジかよ・・・といった顔つきで女性を見た。 そして恐る恐る銃を女性のほうへ向けた。 「あなたは・・・誰なんですか?」 「私はここの住人よ。」 「相棒はどこだ?」 「なぜ私に銃を向けるの?」 「そこに死体があったからだ。」 「あはははは、あれはきっと幽霊の悪戯よ。」 女性がそう言っている間に俺は手近なドアを開けようとした。 「幽霊なんか信じないぞ!」 ドアが開いた・・・しかし目の前の光景はレンガで埋め尽くされた壁だった・・・ 「どうかしたの?」 「相棒はどこだ?」 「彼女は幽霊を信じるわ。」 「まあな。」 「可哀相に。ついてなかったわねぇ・・・今日は年に一度のクリスマス・イブ なのに。彼女に付き合って信じてもいない幽霊探しに付き合わされるなんて。」 女性はどんどん俺のほうに近づいてきた。 「近寄るな!」 「図星みたいね。あなたは無意識に他人を通して充足を得ようとする。つまり 【共依存症】よ。」 「なんだって!?」 「ここへ来たのも相棒への忠誠心などではなく、本当は彼女の誤りを正すため。 それがあなたの生きがいよ。」 「いいかげんなこというな!初対面で何がわかるってんだ。 それに住人なんて嘘だろ?」 「なぜ、そう思うの?」 「家具にカバーがかかってるじゃねえか。」 「改装中なのよ。」 「じゃあ、クリスマスツリーが無いのはどうしてなんだ。」 「うちはユダヤ系なの。」 その時背後のドアが”キイイイ”と共に開き、帽子をかぶった初老の男性が 姿を現した。 「動くな!撃つぞ!」 「ははは、とんだ迷惑な客だな。」 「ハルヒは!?」 「彼女か?」 「今どこにいるんだ!?」 男性は何も答えなった。 「2人とも部屋の中央へ行け!早く!」 「こんな扱いは人権侵害だ。擁護団体に訴えるぞ。」 「両手を挙げろ!」 初老の男女は同時に両手を上げた。 その時、女性の腹部を見ると・・・穴が開いていた・・・ 俺は男性がかぶっている帽子を恐る恐る取った・・・すると頭にぽっかり 穴が開いていた。 それを見た瞬間、俺は気絶した・・・ 「こんな安っぽいトリックはどうも好かん。おもしろくない。我々も ヤキがまわったな。」 初老の男性が言う。 「そりゃあ昔は時間をかけられたからよ。でも、今は一晩だけ。」 初老の女性は言い返した。 「心理学では真の恐怖は与えられん。最後に大成功を収めたのは いつだったか?」 「あの心中のこと?・・・でも家が没収されてからはゼロよ。」 「こんな子供だましはたくさんだ。プライドが許さん。」 「ねえ、私達が頑張らないとこのままでは観光スポットから 外されるわ。」 「ああ、でもなぜクリスマスなんだ。ハロウィーンでは?」 「あははは、人々が一番孤独と絶望を感じるのはいつよ? 年に一度のクリスマスでしょ。」 「確かにそうだな。その点今年の2人は絶好のカモだ。クリスマスが どんなに孤独なものか教えてやろう。」 「ええ、そう来なくちゃ。」 その途端部屋の明かりは消え稲光の光だけが部屋を照らす。 その部屋では男女の笑い声が響いていた・・・ あたしは消えた書庫の階段のところを椅子を下敷きにして よじ登っていた。 登り終わった時、2階部分のドアが開いて初老の女性が現れた。 「あなたが、ハルヒさん?」 「あなたは誰?」 「私の椅子を踏み台にして何をしているのかしら。」 「ここから出たいのよ。」 「ここから出る?」 「ええ。」 「ここからは出られないわ。」 あたしは女性を人差し指で恐る恐る触ってみた。 女性は紛れも無い実体のようだった。 あたしは女性をどけると、 「化け物。」 と言ってドアを開けた・・・しかし、またもレンガの壁で 覆われていた・・・ 「今のはどういう意味?失礼だわ。手荒く扱った上に 侮辱的な言葉を言うなんて。」 女性はあたしがさっき登ってきたところに何故か現れた 階段を使って1階部分に下りて行った。 「あなた、幽霊でしょ?」 「なんですって?」 女性はさっきあたしが下敷きに使った椅子を元の位置に戻していた。 「なぜここで心中事件が発生したの?」 「若気の至りね。カーっと燃え上がってやっちゃったの。」 「じゃああなたは・・・ライダ?さっきの彼はモーリスね。しかし・・・ 老けたわね。」 「お互い顔の話しはやめにしましょう、ハルヒさん。」 女性は書棚の方へ向かっていき、 「さて、どこだったかしら。」 そう言って右手の人差し指で書棚を指すと、書棚の本がところどころ ひとりでに出たり入ったりし始めた。 「違う違う・・・違う違う・・・違う違う・・・あったわ。」 女性は1冊の本を手にした。 本のタイトルは『クリスマスを盗んだ幽霊』というものだった。 「私も昔はあなたみたいに美しかったのよ。」 そういうと女性は椅子に向かい腰掛けた。 女性は本を読みながら、 「昔はモーリスもハンサムだったわ。」 そういうとひとりでに暖炉の火が付きあたしは驚いた。 あたしが部屋の中を隅々まで見ていると、女性は本をあたしに向けて、 「スマートだったし。」 渡された本を見てみると1組のきれいな男女が写っていた。 「あまり期待しない方がいいわ。」 「どういうことかしら?」 「あなたたちは何しにここに来たの?」 「あなたを探しに来たのよ。」 「どうかしら。彼と2人が永遠に結ばれるためじゃないの?」 「まさか。」 「孤独な人生に絶望して。」 「あたしが?」 「じゃあ彼のほうかも。」 「何がなんなの。」 「だってここは幽霊屋敷よ。ここへ来る前によく話し合うべきだったわ。 私は経験から言ってるの。」 「どんな経験?」 「一旦心中しちゃったら終わりよ。後悔しても遅いわよ。」 「永遠の契りは?」 「あははは、なんと美しい響きだこと。でも現実は悲惨なものよ。」 そういうと女性はあたしに服をめくって腹の部分を見せた。 穴がぽっかり開いていてあたしは思わず目をそらした。 「あなたには特別に見せるわ。」 「何であたしだけ?」 「この世での最後のクリスマス。あの世へのはなむけよ。」 「キョンがこのあたしを撃ち殺すとでも?彼は絶対にそんなことは しないわ。」 「撃つのは、あなたの方かも。そしてその後自殺を。」 「そんなことはありえないわ。」 「彼が自分で・・・。」 「あたしが絶対にさせないわ!」 「床下の死体は、多分彼とあなたの潜在意識の現われだわ。」 「恋人として永遠に結ばれたいのよ。」 「はあ・・・恋人じゃないわよ。残念だけど。」 「そう決め付けるのは早いわ。あなたたちはとても魅力的だし、 心を通わせあう時間はたっぷりあるわ。さあ、この銃を取って。」 そういうと女性はあたしに銃を手渡たそうとした。 あたしは腰のホルダーを見てみたが、銃が抜き取られていた。 「さあ、孤独な人生に別れを。」 そういうと女性は姿を消し、あたしの手には銃が残った。 「う・・・」 俺は気絶から目を覚ますと、急いで床に落ちていた懐中電灯と銃を拾った。 近くの扉から隣の部屋に行こうとしてもまったく開かなかった。 奥の方の扉にも行ってみたがやはり開かなかった。 その時、 「鍵をかけた。」 後ろから初老の男性の声が聞こえた。 俺は咄嗟に銃をそっちの方へ向けた。 「君のためにな。」 「出口はどこだ?どこなのか教えないと引き金を引くぞ!」 「その意気だ。それなら相棒が来て襲ってきても心配ない。」 「襲うってどういう意味だ?」 「彼女は今、妄想に取り付かれている。だから君をこの家に 連れてきた。」 「これは全て悪い夢だ。現実じゃない。」 「ではなぜ銃を振り回す。相棒と同じだ。」 その時さっき開かなかった最初のドアから”ドンドンドン”と いう音と共に、 「キョンー!」 というハルヒ声が聞こえた。 「彼女は今、非常に危険な状態だ。孤独と憎悪で我を 見失っている。」 「キョンー!」 「君の車のキーだ。」 男性は俺に車のキーを見せている。 「どうしてあんたが・・・」 「彼女は孤独なクリスマスに耐えられなかった。それで君に 『永遠の契り』の話を。」 「そのキーを一体どこで手に入れたんだ?」 「孤独への無意識の恐怖が彼女を狂気へと駆り立てる。」 男性がそういうと再び”ドンドンドン”という音が聞こえ、 「キョン!どこにいるの!」 「ここだ、ハルヒ!」 「早くドアを開けて頂戴!」 俺は男性から車のキーを奪い返すと、 「早くドアを開けろ。」 と男性に銃を向けて命じた。 男性はだまってドアの方へ行き、 「私はこの家で何度も悲劇を見てきた。」 「信じないぞ。さあ、早くドアを開けろ。」 「だが・・・」 「早くドア開けろ!」 男性は観念しドアの鍵を開けた。 それと同時にハルヒが入ってきた。 「キョンはどこ?」 ハルヒは男性に問いかけた。 「ここだハルヒ。」 俺はハルヒに向かって言った。 その時、ハルヒは俺にめがけて銃を撃ってきた・・・ ハルヒが撃った弾は間一髪でそれて近くの椅子に当たった。 「なにするんだ!」 ハルヒは銃を向けながら無言で近づいてくる。 さらに1発銃を撃ち、後ろの花瓶に当たった。 「ハルヒ!」 俺はじりじりと後ろの方へ下がっていった。 「ここからはもう出られないわ。あきらめて。」 そういうとまた1発発射し、横の壁に当たった。 「やめろハルヒ!それ以上近づくな!銃を捨てろ!」 「あたしを撃つ気かしら?」 「何を言ってるんだ!なぜ俺がおまえを?」 「どうせ撃ちあうのよ。問題はどっちが先ってこと。」 「やめろ!なぜこんなマネを?」 「うるさい!」 「ここから出よう、ハルヒ!」 「いやよ。孤独はもうたくさんなのよ!クリスマスなんて クソくらえよ!」 「落ち着けハルヒ。どうかしてるぞ。」 その時ハルヒが俺に向かって銃を発射した。 その弾丸は・・・俺の胸に当たっていた・・・ 俺は放心状態になりそして・・・倒れた。 ハルヒは倒れた俺を見下して、 「メリークリスマス。」 そしてハルヒは自分の頭に銃を突きつけていた・・・ ハルヒに化けていた初老の女性が自分の頭に銃を 突きつけながら、下を見て、 「そしてハッピーニューイヤー。」 と言った。 俺はまだそれがハルヒだと思っていた。 ハルヒが引き金を引く直前、そばにいた初老の男性が ハルヒを押さえつけた。 「はなして!はなして、お願いだから!死なせてー!」 男性はハルヒを引きずって消えていった。 その光景を見て俺は気を失った・・・ 「キョンー!」 あたしはドアを開け部屋に入っていった。 そしてそこで見た光景は・・・キョンが撃たれて床で倒れて いるところだった! 「キョン!」 「ハルヒ・・・」 あたしはキョンの頭を持ち、 「どうしたの!?」 「まさか本当に撃つとはな・・・」 「どういうこと!?」 「撃つとは思わなかった・・・今度は俺が・・・」 そういうとキョンは、 「メリークリスマス」 といいながらあたしの胸を撃った。 あたしは呆然とし、そして倒れた。 「キョン・・・」 そしてあたしは気を失った・・・ キョンに化けていた初老の女性は横になりながら、 けたたましく大声で笑っていた。 その瞬間、レコードが自動的に動き出し、音楽を奏ではじめた。 俺は気を取り戻し、這いずり回りながら移動した。 そして玄関ホールまでたどり着いた。 あたしは気を取り戻し、ふらふらになりながら 1階への階段を下りて行った。 そして玄関ホールにたどり着きそして倒れた。 そこには必死に倒れながらも出口へ行こうとする キョンの姿見えた。 「キョン・・・」 聞こえてないのだろうか・・・ 「キョン・・・」 あたしが2度目に言った後、キョンはあたしのほうへ向き、 そして銃を構えた。 あたしもそれをみてキョンに照準を合わせて銃を構えた。 「もうダメだ・・・」 「ええ・・・」 あたしはキョンの方へ這いよった。 「あたしも一緒に行く・・・」 「俺たち死ぬんだな・・・俺、怖い・・・」 「あたしもよ・・・」 そういうとあたしは仰向けになった。 「あんたが悪いのよ。」 「おまえこそ。」 「あんたが先に撃った。」 「いいや、撃ったのはお前の方だ。」 2人が倒れる中、稲光が走る。 あたしは撃たれた場所を確認すると起き上がった。 「キョン。」 「なんだ。」 「起きて。」 「そんなの無理だ。」 「立ってみて。血は付いてるけど撃たれて無いわ。」 「なんだって。」 「全てトリックよ。」 そういうとあたしはキョンの腕を持ち起き上がらせた。 お互いに無事を確認した後、一目散に館の玄関から出た。 と、同時に体を見ると血などお互いについてなかった。 あたしたちはそれを確認すると逃げるように屋敷を後にした・・・ 屋敷の柱時計が0時を告げる。 部屋には暖炉の前で初老の男女が椅子に腰掛けていた。 「あら、クリスマスよ。」 「やれやれ・・・また失敗だ。」 「後もう少しだったけど。」 「へへへ、惜しかったな。」 「寂しそうなカップルなのに・・・」 「もう済んだことだ。」 「それにしてもあの2人何しに来たのかしら。」 「わからんな。最近はクリスマスの意味も薄れてしまった。」 「本当ね。」 「しかし・・・我々にとっては永遠に特別な日だ。」 そう男性が言うとお互いに手を取り合った。 そして初老の男女は消えた・・・ 俺は今自宅でテレビを見ている。 その時ドアを叩く音がした。 ドアを開けてみるとハルヒがいた。 「何だか寝付けないの。それで・・・入っていい?」 「ああ。」 「キョン、今日は妹ちゃんが来るんじゃないの。」 「いや、FBIの友人に迎えを頼んだんだがまだ到着してないんだ。」 「そう。」 「ハルヒ、今夜起きた事はすべて錯覚だよな。」 「だと思うわ。」 「自分の誤りに気が付いたわけだな。」 「あなたがそれを証明したと。」 「お前はそのために俺を呼んだんじゃないのか?」 「あなたのためよ・・・。ごめん、悪かったわ・・・いかにも自信過剰で 自己中心的な言い方だったわ。」 「いや違う。たぶん俺も確かに興味があった。」 しばらく2人で見つめあった後、 「そうそうキョン、面倒くさいからプレゼントの交換はしない 約束だったけど・・・受け取ってもらえる?」 そういってハルヒは俺にプレゼントを渡してくれた。 「実は・・・俺も」 俺は買っておいたプレゼントをハルヒに渡した。 ハルヒは満面の笑みをし、 「さあ、早くお互い開けてみましょ!」 といい、ソファーに座った。 「ああ。」 俺とハルヒがプレゼントの包みを開けていると、ドアの ノックの音が聞こえた。 「多分妹だな。」 そういってドアを開けると・・・成長し、朝比奈さんそっくりに なった妹が立っていた。 「メリークリスマス、キョン君!」 「さあ、中に入れよ。」 「おじゃましま・・・あ、ハルヒさんお久しぶりです。」 「えっ!みくるちゃん!?」 「ははは、違うよハルヒ。俺の妹だよ。」 「いつもキョン君にも『おまえホント朝比奈さんに似てきたな』って 言われてます。」 「ほんと、みくるちゃんそっくりね。」 「胸はまだまだだけどな。」 「キョン君ってホントえっちいんだから。」 「ほんとよねぇ・・・エロキョンは変わってないわね。」 「クリスマスに2人から攻撃かよ・・・勘弁してくれよ。」 「あー、キョン君とハルヒさんプレゼント交換してたんだ。いいなぁ」 「安心しろ、お前の分もちゃんとあるぞ。」 「わーい。キョン君大好き。そうそう、ここにくる途中にケーキ買って きたんです。3人で食べませんか。」 「ほんと!やっぱり妹ちゃんはキョンとは違って気がきくわぁ」 「悪かったな、気がきかなくて。」 「さ、早くケーキ切ってプレゼントの中身開けっこしようよ、キョン君。」 「そうだな。さ、始めるか。」 外ではロマンチックに雪がふわりふわりと降り続いていた。 世界中、全ての人にこのクリスマスがいい日でありますように・・・ ───メリークリスマス! 「ところでキョン君とハルヒさんは結婚しないの?」 「ぶっ!何言ってるんだお前。」 「そうよ妹ちゃん!」 「えー、仕事でもいつも2人で一緒なんでしょ。いっそのことくっつちゃえば いいのに。」 「仕事は仕事、プライベートはプライベート。妹ちゃん分かった?」 「はーい。でも残念。『ハルヒ姉さん』って呼びたいのになぁ。」 「おまえは親の刺客か。」 「あ、ばれた?でもさっき言ったことはホントだよん♪」 「もう、さっさとケーキ食べましょ!」 ハルヒは怒涛のごとく言い放った、でもハルヒ、おまえ顔真っ赤だぞ。 「それはキョン君もね!」 <クリスマス・イブ・終> 涼宮ハルヒのX-FILES おまけ4 ???「お久しぶり、キョン君。」 キョン「お、お前は・・・なぜここに!」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ「キョン・・・どこにるの・・・」 ???「涼宮捜査官、君にしかキョン捜査官は救えない。」 ハルヒ「どうすればいいの!」 ???「それは・・・」 ---------------------------------------------------------- キョン「思い出せ!SOS団で活動したことを!最初にお前と行った 図書館のことを!」 ???「SOS団...図書館...」 ---------------------------------------------------------- ???「キョン君、こっちです!早く!急いで!」 キョン「なんでここに!?」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ「う・・・嘘でしょ・・・なんで・・・」 キョン「なんで・・・なんでこんなことを・・・」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ・キョンのX-FILE課に絶体絶命の危機が!! 次回 涼宮ハルヒのX-FILES 最終話 <終章> キョン「いよいよ最終話か。」 ハルヒ「忙しいことになりそうね。」 古 泉「作者さん、いよいよ最終話なんで気合入れるように。 書けなかったら掘ります。」 作 者「( д )もう完成しているだなんてアナルが裂けても言えない・・・」 次へ
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今日は12月24日、いわゆるクリスマスイヴだ。 今年は諸事情により、SOS団のパーティーは26日になるらしい。 そして、何故か俺の家にはハルヒが来ているわけだ。 「かわいい妹ちゃんのためにプレゼント持ってきたげたのよ。悪い?」 いや、悪くはない。むしろ助かる。……だが、それだけが目的じゃないんだろ? 「よくわかってるじゃない。明日、期待してるわよ?どうしても欲しい物があるの。それを当てて、あたしにくれたらお返しは期待していいわよ」 ハルヒの期待出来るお返しか……少し真面目に考えてプレゼントしてみるかな。 「……今日も明日も一人だから、暇潰しに来たのよ。ほんとは……ね」 唐突にうちに来た理由みたいなものを語り出した。 「なんで一人なんだ?」 俺は、なんとなく聞かないといけないような気がして尋ねてみた。 「……ママ達は二人とも仕事の関係のパーティーなの。ほんとは今だって家で留守番してなきゃいけないんだけど……少しくらい、ね?」 あぁ、だからパーティーも延期だったのか。こいつもかわいそうだな、親の都合でクリスマスが潰れるなんてな。 しょうがない、俺が思いつく最高のプレゼントをくれてやるしかないな。 「あ、もうこんな時間!ご飯作んなきゃ……あたし帰るわね」 帰ろうとしたハルヒの裾を掴む小さな手。 妹がハルヒを引き止めていた。 「ハルにゃんも一緒にご飯食べよ?わたしにプレゼントくれたお返しだよっ!いいよね、お母さん!」 妹に対してはうちの親は弱いんだ。つまりハルヒは俺達と共に食卓につくことになった。 「あ、あの……すみません。ごちそうになっちゃって……」 孤島以来のかしこまったハルヒ、こうして見るととても落ち着いた少女に見えるな。 「いいのよ、この娘にプレゼントまであげてくれちゃって……それにキョンもいつもお世話になっちゃってるしねぇ。しっかり食べてね、ハルヒちゃん」 いつも世話をしてるのは俺なんだがな。……なんてことを言うと後が恐いから言わないが。 かしこまったハルヒとそれに懐く妹、それを眺めて微笑む俺と母親と親父。 こんな食卓もたまにはいいな。新鮮で、楽しい時間だ。 食事を終え、玄関でハルヒと別れた。いまからこいつは一人の時間を過ごすんだな……。 「プ、プレゼント楽しみにしとけよっ!」 俺は可能な限りの大声で叫んだ。 表情は見えなかったが、たぶん微笑んだと思う。微笑みながら俺に手を振って別れを告げた。 時間は20時。まだ開いているデパートに向けて俺は自転車を走らせた。 何を買おうか。どうしても欲しいもの……か。 18金のネックレスとかダイヤの指輪とかか?……なわけないか。 店内をくまなく探索していると、ある小物が俺の目にとまった。 真四角なケースに入れてあるペンダント、なんかシンプルな形の。 一目でなんかピンときたので値段を尋ねてみると……なんてこった。五千円だとよ。 ここで脳内で会議が開かれる。ハルヒに喜んで欲しい俺と、財布の中身を気にする俺。 会議は3秒で終わった。ハルヒの笑顔が見れるかもしれないなら財布なんて知ったことか。 あいつは今、一人で寂しく留守番をしてるんだ。そう、これはそのご褒美に買ってやるのさ。 すっかり寂しくなった財布と、ペンダントを抱えて家に帰宅した。 部屋に入ると、妹がハルヒからもらった熊のぬいぐるみと遊んでいた。 「くま~、くま~。シャミのお父さん~」 なんて歌だよ。こいつの作詞作曲センスはダメだな、通知表の音楽も最低ランクだったしな。 「こら。俺の部屋で遊ぶな。自分の部屋に戻れ」 「あ、キョンくん。あのね、この子を置く場所を整理するまでここに置かせてね!おやすみっ!」 そう言ってぬいぐるみを置いて逃げて行きやがった。 ……やれやれ、なんにせよ今日は精神的に疲れた。 もう寝るとするか……。 次の日、俺が起きたのは昼過ぎだった。妹が起こしに来なかったことを親に聞くと、朝からミヨキチの家にクリスマスパーティーに行っているだとか。 まったく……調子狂うぜ。 俺はかなり遅めの食事を取り、特に何もない時間をゲームをして潰すことにした。 「あ……ハルヒに連絡して、会う時間を決めなきゃな」 俺は携帯を開き、メールを打った。 《今日何時に会える?プレゼント渡してやるぞ》 簡潔にメールを打ち、俺はゲームの続きを始めた。……俺はなんて暇なダメ人間だ。 そこから無駄にストーリームービーの長いRPGを中盤まで終えた所でセーブして、電源を落とした。 そういえばハルヒからの返事がない。 もう一度携帯を手に取り、まず時間を確認した。 いつの間にか夕方18時を回っていた。どおりで目が痛いはずだ、5時間近くもゲームやりっ放しかよ。 次にメールセンターに問い合わせてみる。 《新着メールはありません》 このコメントが出るとなんだか切なくなるよな……俺だけか。 しかし、ハルヒと連絡が取れないのは困るな。アドレス帳を開き、《涼宮ハルヒ》を選択。電話をかけてみた。 『この電話は電波の届かない所にあるか、電源が入っておりません。……』 ……おかしいな。電波が届かない所にいるはずがない、あいつは留守番中だ。 しょうがない、自宅にかけてみるか。 …………………… 出ない?まったく……今度はどこをほっつき歩いてんだよ。携帯の電源を切ってまで……か。 妙なモヤモヤが残ったのを冷蔵庫から水を取り出し、一気に飲んで振り払うと、自分の部屋へと戻った。 熊のぬいぐるみ……か。無造作に手にとって抱き上げてみた。 これっていくらくらいしたんだろうか……。なんかペンダントより高そうな気がしなくもないな。 くるくると回してみると、ぬいぐるみの下に紙……のような物が張り付けてあった。 《プレゼントは22時までにちょうだいよね。……一人はとっても寂しいよ、キョン。あたしはたぶん、どっかにいるから……一人で》 いつもの、文字からも溢れてくる明るさの影はなく、どこか消え入りそうな文字だった。 「……っ!あのバカ、場所書いとくか携帯の電源いれるかくらいしときやがれ!」 俺は急いで着替えて、ポケットにペンダントを入れると自転車に飛び乗った。 ……どこへ向かう? 知るか、可能性のある場所は全部回ってやる。 なぜだかわからないが、あいつは凍えながらどこかに座って俺を待っているという確信があった。 なら、俺はあいつが風邪をひかないように、可能な限り早く見つけてやるしかないじゃねぇか。 とりあえず駅前からだ! いつもの自転車置場に向かって俺は冬空の下を飛ばしていった。 駅前から、様々な場所へ走って行った。 学校、公園、喫茶店に東中まで行ったがハルヒはいなかった。携帯も繋がらないままだ。 時間は、21時の少し手前。いろいろな店が営業を終える頃でもある。 クリスマスだけあって人はまだまだ多い。カップルに次ぐ、カップルの群れ。 一人の俺だけが浮いていた。……今は関係ないだろ。 ふと、少し前のことを思いだした。 『これくらい大きなツリーが欲しいわね』 『飾るとこないだろ』 『む……でも、このサイズだと絶対にサンタクロースも気付くわ!』 『俺達はこどもじゃないからプレゼントはもらえん』 『会いたいだけなの!会えれば、満足なのよ……』 あの場所、行ってないな。 近場で一番大きな樅の木、クリスマスツリーのあるあの場所。 こないだ、探索でハルヒと一緒になった時に通ったあそこのツリーだ。 「もう少し頑張れよ、俺の足!」 いうことを聞かない自分の足に二、三度気合いを入れて、大きな樅の木の下へと走り出した。 ……あのコート、あの背格好。間違いなくハルヒだ。 一つだけ違うのは……ポニーテールだってことか。 ポニーテールにしているハルヒは、樅の木の下から、今にも雪の降りそうな空と、飾り付けからでる光をジッと見上げていた。 俺はゆっくりと歩を進めて、ハルヒの肩に手を乗せた。 「サンタクロース、登場……なんてな」 ハルヒは驚いた顔で俺の方を振り返った。 「え……?なんで、キョン……が?」 あんな手紙を書いといて、白々しいな。俺が気付かなかったらどうするつもりだったんだよ? 「あ、バレてた?キョンなら見てくれる気がしてたの……ありがと、来てくれて」 自分の着ていたコートを脱いで、ハルヒにかけた。 先に言っておくが、走りすぎて暑いからかけたんだぞ。 「それよりさ、プレゼントは?サンタさん!」 ハルヒなニヤニヤと俺の顔を見つめてきた。 ポケットに手を突っ込んで、ペンダントを…… 「え?」 無い……だと? まさか、走ってる時に落としたのか?……なんで俺はこんな肝心な時にミスが出るんだよ、畜生。 「す、すまん……落とした、みたいだ」 地面を見るしかなかった。自分のマヌケさ加減にあきれて、顔が上がらなかった。 そんな頭が、暖かく包まれた。 「いいのよ」 「は、ハルヒ……?」 「いいの。あたしは何よりもうれしいプレゼント、もらったわ。それよりうちに行きましょ?ケーキあるからさっ!」 そう言うと、俺の手を引っ張り、意気揚々と歩きだした。……俺はもう、元気ねぇよ。 ハルヒの家……っつーかハルヒの部屋で、二人でケーキを食べた。 棒になりかけていた俺の足もだいぶ回復してきたな。 ところで、気になるさっきの話の続きをさせてもらうとするか。 「ハルヒ。さっき言ってた……『何よりもうれしいプレゼント』って何のことだ?」 少し頬が赤くなったハルヒ。暖房のせいか?……なんてな。 「あ~……うん。ほら、ね?今……二人でいるじゃない。さっきまであたしは一人だったのに」 頷いて答える。 「だからね、《一人きりじゃないクリスマス》をキョンがくれたの。ほんとに……うれしかったよ?」 あぁ……そうだったのか。やっぱり、恐いもの知らずのハルヒでも、孤独ってのは恐いのかもな。 「《どうしても欲しいもの》だったか?」 これは俺にとって、重要な問題だ。何故ならハルヒからのプレゼントがもらえるかどうかの問題だからな。 「……うん。大正解。プレゼント、あげるね」 ハルヒは引きだしから何かを取り出し、両手で包んで俺の前に持ってきた。 「覗いてみて?」 言われるままに覗き込む。暗くてよく見えないな……。 その時、ハルヒの顔が寄ってきて、唇同士が触れ合った。 ハルヒは目を瞑っていたが、俺は驚きに目を見開いていた。 閉鎖空間でやったのは、こんな状態だったのかな……。 数秒後、ハルヒの方から唇を離した。 「……あたしからのプレゼントはおわり。こっからはあたしの気持ち。キョン、付き合って……ください」 このバカ……不意打ちかよ。追撃のおまけまでつけやがって。 ハルヒの顔は歌に出て来るトナカイの鼻のように真っ赤で、うつむいていた。 ハルヒの告白、それに答える俺の気持ちはどうだ?決まってる。OKだ。 だから、あれだけ必死こいてハルヒを探したんだろ?あわよくば、俺から告白してやろうとも思ってたんだ。 ハルヒを抱き寄せ、唇を合わせた。ほんの、一瞬。 「もちろんだ。……メリークリスマス」 言い終わった直後、もう一度キスをした。今度は、長いキスを。 サンタクロースになり損ねた俺からの、精一杯のプレゼントだ。 「……キョン。あたし、やっとサンタクロースに会えたみたい、大好き!」 飛びついて来たハルヒを抱きとめ、俺達は笑いあった。 あと、数分で終わるクリスマス。 もう、今年は用無しになるかもしれない言葉を、今日だけの特別な意味をもつ言葉を、俺達は見つめ合いながら同時に言った。 「メリークリスマス」 そのまま二人で、夜が明けて目が覚めるまで、抱き合って幸せに眠り続けた……。 おわり
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唐突だが今年の12月24日は仕事、いや、バイトだ。 貧乏大学生の身の上ではバイトをしなければ生きていけないのは当たり前として、何故そんな日にバイトになってしまったかといえば、店長に泣きつかれたからに他ならない。 そもそもクリスマス前が忙しいのが当たり前のバイトを選んだ時点でどうかって気もするんだが、何せこのバイトを始めたのはもう何ヶ月も前のことなんで、そのときはクリスマスの時期の事なんてちっとも考えてなかったんだよな。 え、何のバイトかって? お菓子関係、というか、ケーキ屋だ。 笑うなよ。俺だって中学か高校の頃の自分から見たら笑えるんじゃないかって気がするけどさ……、まあ、とにかく俺はケーキ屋でバイトをしているわけだ。 今はクリスマス前なんで、サンタの格好でケーキを販売中だ。 サンタ姿ってのもどうかと思うが、高校時代にやらされたトナカイよりは何ぼかマシだな。 「こんにちは、良く似合っていますね」 慌しく販売作業に従事していたら、人が居なくなった合間に知り合いがやって来た。 「似合っているなんて言われても嬉しくねえよ。というかお前、何しに来たんだよ」 たまたま他の客が居ない時間だったので、自然と俺の口調も営業モードから通常モードに切り替わる。古泉相手に営業用スマイルを浮かべてやる必要なんぞ無い。 「ケーキを買いに来たんですよ。おかしいですか?」 「やっほー、キョンくんっ、お仕事疲れさんっ」 古泉が笑顔でさらりと言うのに少し遅れて、入り口からまた知り合いがやってきた。 そしてそのお知り合いは、当然のように俺の目の前で古泉にぴったりと抱きついていらっしゃる。俺に話し掛けるか恋人にくっつくのかどっちかにして欲しいと言いたいところだが、まあ、この人にそんなことを言っても仕方が無いだろう。 ああ、それにしても、真冬なのにお熱い事だな。 「こんにちは、鶴屋さん」 「クリスマスなのにバイトなんて偉いねー、ハルにゃんが寂しがってそうだけどさっ」 はい、全くもってその通りです。 しかしまあ、ハルヒも一応納得はしてくれて……、るんだよなあ。 ちょっと口喧嘩になりかけてそのままって状態だからな、あとで埋め合わせできれば良いんだが。 「で、どれを買うんだ?」 放っておくと何時までもどこまでも喋っていそうな組み合わせだったので、俺はとりあえずこの二人には早々にお帰りいただくため、さっさと選んでもらうことにした。 あんまり話していると営業に差し障りそうだからな。 「そうですねえ……」 「んー、どれも美味しそうだなあ」 俺の見ている前でイチャイチャモード全開でああでもないこうでもないと話し始めるお二人さん。 いっそ悩むくらいなら全部買っていってくれと言いたいね。古泉はともかく鶴屋さんの胃袋ならそのくらい楽勝だろうし、何よりお店としてもその方がありがたい。 「何時まで悩んでいるんだよ……」 他の客が途切れている時間だからいいものの、ものには限度が、 「ちょっとキョン、お客さん相手にその態度は問題ありよ!」 なんて思っていたら、後ろの方から聞きなれた声が聞こえた。 反射的に振り返ったら、そこには、ミニスカサンタ姿のハルヒが立っていた。 おいおい、何でお前がここに居るんだよ! 「ハルヒ……」 「ああ、涼宮さん、良く似合っていますね」 「ハルにゃんかっわいい~」 驚くやら呆れるやらという状態の俺を他所に、古泉も鶴屋さんもまるでそれが当たり前の事であるかのような感じだった。 二人とも、分かっていたんだろうか……、いや、分かっていなくてもこの反応だろうって気もするが、きっと分かっていたんだろうな。 「で、どれにするの? どれもお勧めだけど、迷うなら一番オーソドックスなやつか、それか、クリスマスにしか並ばない物が良いと思うわよ」 ハルヒは口調こそ何時も通りだったが、喋っている内容はちゃんと営業用のものだった。 それにしても、ミニスカサンタ姿がやけに似合っているな……。いや、見惚れている場合じゃないんだが。 「ああ、そうだねえ、普通のケーキは何時でも食べられるもんね。じゃ、このブッシュ・ド・ノエルが良いかな。一樹くんもそれで良いよね?」 「ええ、かまいませんよ」 というわけで、古泉&鶴屋さんという熱々カップルは、ブッシュ・ド・ノエルを買って去っていった。 幸せそうだよなあ。……ここで俺の隣にハルヒがいなかったら恨み言の一つでも言ってやりたい所だな。ハルヒが居るから言わないけどさ。 「なあ、ハルヒ、お前、」 「無駄話は後、ほらほら、次のお客さんよ」 どうしてお前が、という当たり前の質問を口にしかけた俺をハルヒが制した。 ちょうど、次の客が店に入って来る所だったからな。 それから俺達二人は、二人でケーキを売り続けた。 のんびりしていたのは古泉と鶴屋さんが来ていたあの時間帯くらいだったし休憩は交代だったので、俺達が個人的な話をするような時間なんて全然無かった。 そんな俺とハルヒがようやく解放されたのは、午後も10時を過ぎた頃だった。 「はい、お疲れさん」 去り際に店長が売れ残ったケーキを持たせてくれた。 二人で食べるには結構でかいケーキだが、ハルヒが居ればあっという間に食べ終わることだろう。 「なあ、ハルヒ、お前なんで、」 「一緒に居たかったの」 「……」 「クリスマスだから、一緒に居たかったのよ……。でも、キョンはバイトだって言うじゃない。ケーキ屋さんだもの、この時期忙しいのは仕方ないし……、だからね、あたしも臨時で雇ってもらえるように店長さんに頼んだの。幸い住所と電話番号は知っていたしね」 「……そっか」 何せ人手不足だったからな、店長も二つ返事でOKしたことだろう。 けどさ、それなら何で俺に知らせてくれなかったんだよ。 「驚かせたかったのよ。……悪い?」 ハルヒが、途端に悪戯っぽい表情になった。 こういうところは高校時代とあんまり変わってないよなあ。 「いや、こういうサプライズなら大歓迎さ」 ミニスカサンタ姿のハルヒは可愛かったし、バイトとはいえ、24日をハルヒと一緒に過ごせたんだからな。 「それなら良かったわ。……じゃ、これから二人でクリスマスパーティね! プレゼント、忘れてないでしょうね?」 「……ちゃんと用意してあるって」 「んじゃ、働いた分だけ楽しみましょう!」 ハルヒはそう言って、大きく手を振り上げた。 この元気な笑顔があれば、さっきまでの疲れも、冬の寒さも、なんでもないことのような気がしてくるから不思議だよな。 こういうクリスマスも、結構良いもんだな。 終わり
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ストーリー参考:X-FILESシーズン6「クリスマス・イブの過ごし方」 早いもので今年ももうクリスマス・イブである。 ハルヒとX-FILE課を設置してから色々な事件があった・・・ それらの嫌なことをすべて雪が洗い流してくれると思いたい。 さて、俺のクリスマス・イブの予定だがあいにくハルヒとの 約束は無い。 なぜなら成長し朝比奈さんに似るようになった妹がクリスマス頃に 遊びに来る予定だからだ。 成長した妹との再開が楽しみであり、毎日のように顔をあわせている ハルヒから逃れるのもいいだろう・・・と、考えたのが甘かった。 クリスマス・イブの昼、ハルヒからメリーランド州のある屋敷の 前に夜来るように電話が来た。 もちろん『来なければスキナー副長官のカツラ用にあんたの髪の毛 刈るからね!』ときたもんだ。 しかし、あいかわらず上司のことを無礼に言うな、こいつ。 ~メリーランド州 古い洋館前 PM10時~ 私は今【立入禁止】と書かれた古い洋館の前で車の中でキョンがくるのを待っている。 まあ、昼に急に電話をかけたのは悪いと持ってるけど、今日は どうしてもここに来たかった。 色々と考えているうちにキョンの車がやってきた。 「遅かったわね!罰金!」 「すまんすまん、でも罰金はないだろ。この時期だ、車が込んでて しょうがなかったんだ。」 「もう来ないかと思ってたわ。」 「妹が遊びに来るんでちょっと用意があってね。それで出発が 遅かったんだ。」 「あら、妹ちゃんが来るの?随分会ってないし是非会いたいわね。」 「ところでここで何やってるんだ?」 「張り込みよ。」 「クリスマス・イブにか?」 「こっちの車に乗ってちょうだい、詳しいことを話すわ。」 やれやれ、俺は自分の車から降りハルヒの車に乗り込んだ。 「で、どういうことなんだ?」 「あんた興味ないんでしょ?」 「おいおい、わざわざ遠くまで呼んでおいてそれかよ。ところで あそこの家はなんだ?」 「空き家よ。」 「じゃあ誰の張り込みをしてるんだ?」 「元の住人よ。」 「戻ってくるのか?」 「と、いう話だけど。」 「なるほど・・・幽霊屋敷、いや呪われた館ってわけか。ハルヒ、 まさかクリスマス・イブに幽霊探しをしようってんじゃないだろうな?」 「【超自然的存在】って言ってちょうだい。」 「さっきも言った通り妹が遊びにくるんだ。あまり長居はできん。」 「それじゃ要点だけ急いで言うわ。...1917年人々は暗いクリスマスを 迎えた。多くの若者がヨーロッパで戦死し、国内ではインフルエンザで 多数の死者が出ていたわ。人々は深い悲しみと忍び寄る絶望感に打ち ひしがれていたの。」 「それで?」 「しかし、その当時この館に住んでいた相思相愛の2人の命を奪ったのは 悲惨な戦争でも疫病でもない、お互いの純粋な愛だったのよ。」 「続けてくれ。」 「男の名前はモーリス。理想に燃える若者だった。恋人のライダは 輝くばかりに美しい娘だったらしいの。まるで天使のような汚れを 知らない2人には世間の風は冷たすぎた・・・」 「んで、どうなったんだ?」 「この世に絶望し永遠の契りを交わしたわ。いつもクリスマスを一緒に 過ごせるように。」 「つまり・・・心中したってことか?」 「それ以来イブには2人の幽霊が・・・」 「まあ、面白い話だったが・・・俺は信じないな。」 「幽霊を信じないわけ?」 「まあ、不思議現象を追いかけるお前ならではだが・・・他の日なら 付き合っても良かったが、今日はダメだ。」 そういうと俺はハルヒの車を降りた。 と、同時にハルヒも車から降り、 「妹ちゃんによろしくね。」 「おいハルヒ、どこに行くつもりだ?お前は約束とかは無いのか?」 「ちょっと見てくるだけよ。」 俺も行くか・・・と思ったが年も改まることだしばかばかしいのでやめた。 早速車に乗ろうと思って服のポケットを探したが・・・無い。 車にも刺さってないし、ハルヒの車にも見当たらない。 くそっ、ハルヒのヤツ持って行ったな。 しょうがないので俺もハルヒを追いかけ館へと足を運ぶことにした。 あたしは館の正面玄関のドアを開けて、懐中電灯を取り出し周りを見渡した。 古く蜘蛛の巣が張ってなどしているがかなり豪華な家具などが置いてある。 さぞ裕福な家庭だったに違いない・・・そう思っていると突然雷が鳴った! 「きゃあああ!」 あたしは雷だけはダメ。音を聞いたとたんにしゃがみこんでしまった。 と、その時、 「おい、ハルヒ大丈夫か?」 「キョ、キョン?」 「ああ。」 あたしは立ち上がると冷静になり、 「なに?探索に付き合う気になったの?」 「いや、お前俺の車の鍵を持って行っただろ。」 「あんたの車の鍵なんて持ってきてないわよ。」 「冗談はよせ、早く返してくれ。」 「なんであたしが?」 「だからたまたま・・・うっかり持ってきてしまったとか。何かの間違いで。」 「幽霊の仕業よ・・・」 そうあたしが言った途端、上の階から物音がした。 それと同時に柱時計が大きく鳴り響いた。 「なんか寒いわ・・・」 「冷気が入って来てるな・・・どこかが開いてるのかもしれん。」 「天気予報の情報とかだと雪のクリスマスになるかもって言ってたわ。」 そういったと同時にまた雷が鳴り、それと同時に開いていた正面玄関の扉がひとりでに閉まった。 あたしは震えながら、 「ちょちょっと・・・どういことよ・・・」 キョンが玄関の扉に向かっていき、ドアノブを回してあけようとしていた。 「くそっ、いくら回しても開かない!」 「うそ・・・あたしたち閉じ込められちゃったわけ!?」 キョンは必死にドアを開けようとしている。 「やっぱり幽霊の仕業かしら・・・」 「ハルヒ、冗談はこれくらいにしてドアを開けてくれないか。」 「ちょっと待って。上から足音が聞こえない?」 「おいおい。」 「またよ・・・」 「俺、早く帰らないとならないんだが。」 「あら、キョンは男のくせに怖いわけ?こんなか弱い女性を残して 帰っちゃうんだ。」 「失礼だな。怖くなんて無いさ。しかしどこがか弱いんだか・・・」 「なんですってぇ~・・・まあいいわ。でも幽霊は悪さはしないでしょ ・・・普通はね・・・」 そういうとハルヒは玄関広場から奥の方へ向かっていった。 「おいおい、脅かしたつもりか。」 俺は時計を見る・・・結構遅いな。 「ハルヒ、俺本当に帰らないとならないんだが。」 と、言うと同時に雷がまた鳴った。 その稲光の中、横の部屋を見ると一瞬初老の女性が見えた・・・ 俺とハルヒは2階に向かって行くことにした。 「ハルヒ、幽霊なんてばかげてると思わないか?どの話を聞いても 同じようは服装、場所、結局信じる方に問題があるんじゃないか?」 「うるさいわね。」 2階にはいくつか部屋があったのでハルヒが端からドアノブを まわしてみたがどこも開かなかった。 俺とハルヒが色々とあーだこーだと言っている時、急にさっきは 開かなかったドアが”キイイイ”という音と共にひとりでに開いた。 「まだ・・・怖くない?」 「いや・・・怖いことは怖いが理性は失ってないな。」 外では頻繁に雷が鳴っている。 俺は意を決してその部屋に近づいてみることにした。 「あたしは後ろで待機してるわ。」 部屋に近づいてみると・・・明かりがついていた。 「なあハルヒ、本当にここには人は住んでいないのか?」 「そのはずよ。」 「でもおかしいぞ。さっき外から見た時は明かりはついてなかったが、 今この部屋には明かりがついてる。誰か人がいるんじゃないか?」 2人で部屋に入ってみると、ソファーにカバーがかかっているものの 蜘蛛の巣などはなく、誰かがいそうな雰囲気の部屋だった。 どうやら2階層からなる書庫の部屋のようだが・・・ 「ハルヒあれをみろ。」 おれは懐中電灯を1階部分の暖炉に向けた。 2人で降りて暖炉を見てみると、消えたばかりのようだった。 「どうやら消えたばかりのようだな・・・がっかりしたかハルヒ?」 「誰が呪いの館に住むっていうのよ。」 「幽霊の次は呪いかよ・・・」 「80年間に3組が心中しているのよ。それも皆クリスマス・イブの晩によ。」 と、ハルヒが話終わったと同時に部屋の電気が一斉に消えた。 ギシギシ・・・ギシギシ・・・ 「またあの音がするわ。」 2人で懐中電灯をいろいろなところに向けていると、あたしたちのすぐしたの床の 色だけが色あせてなく新品のようになっているのが分かった。 キョンは椅子やテーブルをどけると床を叩いて何か無いか確認していた。 あたしはすぐそばのドアを開けようとドアノブを回したが、やはり開かなかった。 ふとさっき下りた階段を見ると・・・階段が無い! 「キョン・・・これみて・・・」 といいつつキョンのほうを振り向くと・・・キョンがライトを顔の下から当てて あたしを驚かした。 「きゃあああ!驚かさないでよキョン!今度やったら射撃場の的にするわよ!!」 「それよりハルヒ、どうやら床下に何かありそうだ。」 「どうする気?」 「誰か監禁されているのかもしれない。そうだったら助けないと。」 キョンは暖炉の火かき棒で床の木を持ち上げて1枚床板を外した。 外した床板の下にはミイラ化した死体があった。 「やっぱり人はいたが・・・」 キョンは床板をそのまま数枚外した。 「おい、ハルヒ、見てみろよ。」 最初の死体の横に女性のミイラ化した死体が横たわっていた。 「女性のようね・・・お互い銃で撃ち合ってるわ。」 「ああ。」 「ちょっとまって!変だわ・・・この死体あたしと同じ服を着ている・・・」 「どういうことだ・・・」 「男の方はキョン、あなたと同じ服装よ・・・」 俺は死体の服装と今の自分の服装を見比べてみた、確かに同じ服装だ・・・ 「つまりこれって・・・」 「俺たちってことか・・・」 あたしたちは急いで部屋の隅にあるドアから他の部屋に移った。 が、しかし・・・ 「ハルヒこれって・・・」 「同じ部屋よ・・・」 元の部屋に戻り今度は違うドアから次の部屋に移動してみた。 「やっぱり同じか・・・」 移動した先もさっきと同じ死体のある部屋だった。 「キョンはここに立ってて。あのドアから出たらここに戻ってくるはず・・・」 「わかった。」 あたしは部屋の奥のドアから次の部屋に移っていった。 ハルヒが部屋を出た後、ハルヒは俺がいる位置に出てこない。 俺は最初のドアを戻ってハルヒがいないか確かめてみた・・・が、 ハルヒはいなかった。 ハルヒがいないことを確認するともう一度部屋を戻り、さっきハルヒが 出て行ったドアへ向かった。 「ハルヒー!」 「キョンー!」 別々の部屋で呼び合った後、俺のいる部屋のドアがひとりでに 閉まってしまった。 あたしはキョンを呼んだ後、ひとりでに閉まったドアへ向かった。 幸いこのドアは開くようだ・・・早速ドアに入り元の部屋に 戻った・・・が、キョンがいない! 「キョンー!」 まったく応答がなかった・・・ 他のドアを開けようとしても開かない。 「キョン、そこにいるの!」 返事は無い。 しょうがないので銃で鍵を撃ち壊してドアを開けた。すると・・・ ドアを開けた先はレンガの壁で覆われていた・・・ その時、 「おい」 あたしは振り向くと声の方向へライトを当てた。 声の主は帽子をかぶった初老の男性だった。 「誰?」 「私はここの住人だ。君こそ誰だね?」 そういうと男性は電気のスイッチを入れて部屋の電気をつけた。 「わかったぞ、空き巣狙いか?」 「ちがうわ。」 「じゃあ帰れ。ドアはそこだ。」 「冗談でしょ?」 「どういうことだ?」 「ドアの向こうはレンガで覆われた壁になってるわよ。」 「なるほど・・・」 「悪戯が過ぎやしない?」 「あいにくだが私はそんなマネはせん。」 「じゃあ何?あたしたちを脅そうっていうの?」 「君のほかにも連れがいるのか?」 「とぼけるのがうまいわね。」 そういうと男性は大声で笑い、 「なーんだそうか。銃に脅かされたが君も幽霊退治に来たんだな。 で、私を幽霊だと?」 確かに幽霊などには見えないけど・・・ 「ここに来る連中は皆、おかしな装置を抱えてくるが、銃持参は君が始めてだ。」 「ここにくる連中?たとえば床下にいた2人も・・・」 とさっき死体のあったところを指差すと・・・普通の床になっていた。 「どうやったの?」 「一体何をだね。」 「さっきはこの床下に死体が埋まっていたわ。」 「まあ、ちょっと椅子にかけたらどうだ。」 あたしは椅子に座りながら頭を抱えていた。 「アル中か?それともヤク中かな。」 「まさか。」 「君は人に関心をいつも自分に引きつけたいと思ってるのでは? 私は精神科医でね。躁病や様々な精神障害、とりわけ超常現象への 執着を専門にしている。」 「そんな病気あったかしら。」 「私自身は【魂の喪失】と呼んでいるがね。君のようにここを訪れる 訪問者との対話を元にその症状を分類し体系化したのだ。君たちのような 魂の喪失者にはある共通の特徴を持っている。」 「どんな特徴かしら?」 「極端なほど自信過剰で過大な自己ナルシスト。」 「凄いわね。」 「自分では下向きの性格かと思っているかもしれない。でも脅迫精神症と 紙一重だ。仕事中毒で反社会的、このままいけば最後は恐らく廃人同様に なるだろう。」 「ふふふ、あたしには当てはまらないわ。」 「そうかね。まともな人間が銃を振り回すかね?ドアの向こうに壁があるだと?」 あたしは椅子の後ろにあるさっき開けたドアを見た・・・やはりレンガの壁で出口がふさがれていた。 「ひょっとして、『宇宙人を見た』などと言うんだろ。なぜ君が そんなものを見るか分かるかね?」 「もちろんそこにいるからでしょ・・・多分(有希や喜緑さん・・・)」 「いや、孤独だからだ。孤独な人間と言うのは自分を慰めるために 幻想を追う。これを【擬似的自慰行為】と言う。人生に意味を見出すが 逆に言えば社会に適応できない君は幻想に逃げ込むしかない。」 「そんなことないわ!現に有希や喜緑さんは・・・」 「君は周囲の人間に誤解されていると思っている。違うかね?」 「【擬似的自慰行為】ですって?あたしはこの目で見たし、命も狙われたわ!」 「君は誰からもまともに相手にされんだろ。」 「ちょっとまってよ。少し言いすぎよ。」 「毎年クリスマスも独りか?」 「いいえ、独りじゃないわ。」 「今度は自己欺瞞だ。」 「本当よ。相棒がこの家のどこかにいるわ。」 「壁の後ろか?」 「車のキーを隠したんだろ。なぜそんなことを。彼の長演説を 聞くためではあるまい。それは君が孤独を恐れているからだ。図星だろ?」 あたしは反論できなくなってしまった・・・事実そうだったから・・・ 「相棒を探さないといけないわ。」 「いいとも。簡単さ。朝飯前さ。すぐ見つかる。」 そういうと男性は隣の部屋に向かっていった。 「壁は・・・頭の中だ。恐れるな、君も試してみろ。」 あたしは少し考えた後、意を決して男性のほうへ向かった。 が、ドアを通過しようとした直前レンガの壁にぶつかってしまった。 「なんなのよ!もう!」 そして部屋の明かりが消え稲光だけが部屋を照らすようになった・・・ 「ハルヒー!」 俺は取り残された部屋を懐中電灯で探りながらハルヒを呼び続けた。 その時、部屋のドアが開き初老の女性が入ってきた。それと同時に 部屋中の電気がついた。 「うおっ!」 「きゃああああ!」 俺は急いで腰に手を当て銃を取り出そうとした。 「落ち着いて。大丈夫、何もしないわ。」 「俺はFBIだ!手を上げろ!」 俺は女性に向かって銃を向けそう叫んだ。 しかし女性はそのまま臆せず俺のほうへ向かってきた。 「なんていったの?」 「FBIだ!」 「あなた一体誰なの?」 「FBIだ!銃が見えないのか!本当に撃つぞ!俺は捜査官の・・・ もし疑うようなら身分証を・・・」 「ふふふ、てっきり幽霊かと思ったわ。」 「冗談だろ、俺は生身の人間だ。相棒を探していて迷っているんだ。」 「もしかしてかわいらしい顔立ちの女性の方かしら。」 「見たのか?」 「さっき、玄関ホールでね。彼女も幽霊かと思ったわ。」 「あの時の人影は・・・あんただったのか。」 「私もあなたを見たわ。でも、寝ぼけていたから夢かと思ったわ。」 「申し訳ない。脅かすつもりはなかったんだ。ただ・・・死体を見て 気が動転してしまっんだ。」 「どこに死体が?」 「そこだ。」 俺はさっき死体のあった床付近を懐中電灯で照らした。 が、そこの床はきっちりはめられていて死体などなかった。 「ひょっとして幽霊の仕業かも。実はこの家には昔から住み着いているの。」 俺はマジかよ・・・といった顔つきで女性を見た。 そして恐る恐る銃を女性のほうへ向けた。 「あなたは・・・誰なんですか?」 「私はここの住人よ。」 「相棒はどこだ?」 「なぜ私に銃を向けるの?」 「そこに死体があったからだ。」 「あはははは、あれはきっと幽霊の悪戯よ。」 女性がそう言っている間に俺は手近なドアを開けようとした。 「幽霊なんか信じないぞ!」 ドアが開いた・・・しかし目の前の光景はレンガで埋め尽くされた壁だった・・・ 「どうかしたの?」 「相棒はどこだ?」 「彼女は幽霊を信じるわ。」 「まあな。」 「可哀相に。ついてなかったわねぇ・・・今日は年に一度のクリスマス・イブ なのに。彼女に付き合って信じてもいない幽霊探しに付き合わされるなんて。」 女性はどんどん俺のほうに近づいてきた。 「近寄るな!」 「図星みたいね。あなたは無意識に他人を通して充足を得ようとする。つまり 【共依存症】よ。」 「なんだって!?」 「ここへ来たのも相棒への忠誠心などではなく、本当は彼女の誤りを正すため。 それがあなたの生きがいよ。」 「いいかげんなこというな!初対面で何がわかるってんだ。 それに住人なんて嘘だろ?」 「なぜ、そう思うの?」 「家具にカバーがかかってるじゃねえか。」 「改装中なのよ。」 「じゃあ、クリスマスツリーが無いのはどうしてなんだ。」 「うちはユダヤ系なの。」 その時背後のドアが”キイイイ”と共に開き、帽子をかぶった初老の男性が 姿を現した。 「動くな!撃つぞ!」 「ははは、とんだ迷惑な客だな。」 「ハルヒは!?」 「彼女か?」 「今どこにいるんだ!?」 男性は何も答えなった。 「2人とも部屋の中央へ行け!早く!」 「こんな扱いは人権侵害だ。擁護団体に訴えるぞ。」 「両手を挙げろ!」 初老の男女は同時に両手を上げた。 その時、女性の腹部を見ると・・・穴が開いていた・・・ 俺は男性がかぶっている帽子を恐る恐る取った・・・すると頭にぽっかり 穴が開いていた。 それを見た瞬間、俺は気絶した・・・ 「こんな安っぽいトリックはどうも好かん。おもしろくない。我々も ヤキがまわったな。」 初老の男性が言う。 「そりゃあ昔は時間をかけられたからよ。でも、今は一晩だけ。」 初老の女性は言い返した。 「心理学では真の恐怖は与えられん。最後に大成功を収めたのは いつだったか?」 「あの心中のこと?・・・でも家が没収されてからはゼロよ。」 「こんな子供だましはたくさんだ。プライドが許さん。」 「ねえ、私達が頑張らないとこのままでは観光スポットから 外されるわ。」 「ああ、でもなぜクリスマスなんだ。ハロウィーンでは?」 「あははは、人々が一番孤独と絶望を感じるのはいつよ? 年に一度のクリスマスでしょ。」 「確かにそうだな。その点今年の2人は絶好のカモだ。クリスマスが どんなに孤独なものか教えてやろう。」 「ええ、そう来なくちゃ。」 その途端部屋の明かりは消え稲光の光だけが部屋を照らす。 その部屋では男女の笑い声が響いていた・・・ あたしは消えた書庫の階段のところを椅子を下敷きにして よじ登っていた。 登り終わった時、2階部分のドアが開いて初老の女性が現れた。 「あなたが、ハルヒさん?」 「あなたは誰?」 「私の椅子を踏み台にして何をしているのかしら。」 「ここから出たいのよ。」 「ここから出る?」 「ええ。」 「ここからは出られないわ。」 あたしは女性を人差し指で恐る恐る触ってみた。 女性は紛れも無い実体のようだった。 あたしは女性をどけると、 「化け物。」 と言ってドアを開けた・・・しかし、またもレンガの壁で 覆われていた・・・ 「今のはどういう意味?失礼だわ。手荒く扱った上に 侮辱的な言葉を言うなんて。」 女性はあたしがさっき登ってきたところに何故か現れた 階段を使って1階部分に下りて行った。 「あなた、幽霊でしょ?」 「なんですって?」 女性はさっきあたしが下敷きに使った椅子を元の位置に戻していた。 「なぜここで心中事件が発生したの?」 「若気の至りね。カーっと燃え上がってやっちゃったの。」 「じゃああなたは・・・ライダ?さっきの彼はモーリスね。しかし・・・ 老けたわね。」 「お互い顔の話しはやめにしましょう、ハルヒさん。」 女性は書棚の方へ向かっていき、 「さて、どこだったかしら。」 そう言って右手の人差し指で書棚を指すと、書棚の本がところどころ ひとりでに出たり入ったりし始めた。 「違う違う・・・違う違う・・・違う違う・・・あったわ。」 女性は1冊の本を手にした。 本のタイトルは『クリスマスを盗んだ幽霊』というものだった。 「私も昔はあなたみたいに美しかったのよ。」 そういうと女性は椅子に向かい腰掛けた。 女性は本を読みながら、 「昔はモーリスもハンサムだったわ。」 そういうとひとりでに暖炉の火が付きあたしは驚いた。 あたしが部屋の中を隅々まで見ていると、女性は本をあたしに向けて、 「スマートだったし。」 渡された本を見てみると1組のきれいな男女が写っていた。 「あまり期待しない方がいいわ。」 「どういうことかしら?」 「あなたたちは何しにここに来たの?」 「あなたを探しに来たのよ。」 「どうかしら。彼と2人が永遠に結ばれるためじゃないの?」 「まさか。」 「孤独な人生に絶望して。」 「あたしが?」 「じゃあ彼のほうかも。」 「何がなんなの。」 「だってここは幽霊屋敷よ。ここへ来る前によく話し合うべきだったわ。 私は経験から言ってるの。」 「どんな経験?」 「一旦心中しちゃったら終わりよ。後悔しても遅いわよ。」 「永遠の契りは?」 「あははは、なんと美しい響きだこと。でも現実は悲惨なものよ。」 そういうと女性はあたしに服をめくって腹の部分を見せた。 穴がぽっかり開いていてあたしは思わず目をそらした。 「あなたには特別に見せるわ。」 「何であたしだけ?」 「この世での最後のクリスマス。あの世へのはなむけよ。」 「キョンがこのあたしを撃ち殺すとでも?彼は絶対にそんなことは しないわ。」 「撃つのは、あなたの方かも。そしてその後自殺を。」 「そんなことはありえないわ。」 「彼が自分で・・・。」 「あたしが絶対にさせないわ!」 「床下の死体は、多分彼とあなたの潜在意識の現われだわ。」 「恋人として永遠に結ばれたいのよ。」 「はあ・・・恋人じゃないわよ。残念だけど。」 「そう決め付けるのは早いわ。あなたたちはとても魅力的だし、 心を通わせあう時間はたっぷりあるわ。さあ、この銃を取って。」 そういうと女性はあたしに銃を手渡たそうとした。 あたしは腰のホルダーを見てみたが、銃が抜き取られていた。 「さあ、孤独な人生に別れを。」 そういうと女性は姿を消し、あたしの手には銃が残った。 「う・・・」 俺は気絶から目を覚ますと、急いで床に落ちていた懐中電灯と銃を拾った。 近くの扉から隣の部屋に行こうとしてもまったく開かなかった。 奥の方の扉にも行ってみたがやはり開かなかった。 その時、 「鍵をかけた。」 後ろから初老の男性の声が聞こえた。 俺は咄嗟に銃をそっちの方へ向けた。 「君のためにな。」 「出口はどこだ?どこなのか教えないと引き金を引くぞ!」 「その意気だ。それなら相棒が来て襲ってきても心配ない。」 「襲うってどういう意味だ?」 「彼女は今、妄想に取り付かれている。だから君をこの家に 連れてきた。」 「これは全て悪い夢だ。現実じゃない。」 「ではなぜ銃を振り回す。相棒と同じだ。」 その時さっき開かなかった最初のドアから”ドンドンドン”と いう音と共に、 「キョンー!」 というハルヒ声が聞こえた。 「彼女は今、非常に危険な状態だ。孤独と憎悪で我を 見失っている。」 「キョンー!」 「君の車のキーだ。」 男性は俺に車のキーを見せている。 「どうしてあんたが・・・」 「彼女は孤独なクリスマスに耐えられなかった。それで君に 『永遠の契り』の話を。」 「そのキーを一体どこで手に入れたんだ?」 「孤独への無意識の恐怖が彼女を狂気へと駆り立てる。」 男性がそういうと再び”ドンドンドン”という音が聞こえ、 「キョン!どこにいるの!」 「ここだ、ハルヒ!」 「早くドアを開けて頂戴!」 俺は男性から車のキーを奪い返すと、 「早くドアを開けろ。」 と男性に銃を向けて命じた。 男性はだまってドアの方へ行き、 「私はこの家で何度も悲劇を見てきた。」 「信じないぞ。さあ、早くドアを開けろ。」 「だが・・・」 「早くドア開けろ!」 男性は観念しドアの鍵を開けた。 それと同時にハルヒが入ってきた。 「キョンはどこ?」 ハルヒは男性に問いかけた。 「ここだハルヒ。」 俺はハルヒに向かって言った。 その時、ハルヒは俺にめがけて銃を撃ってきた・・・ ハルヒが撃った弾は間一髪でそれて近くの椅子に当たった。 「なにするんだ!」 ハルヒは銃を向けながら無言で近づいてくる。 さらに1発銃を撃ち、後ろの花瓶に当たった。 「ハルヒ!」 俺はじりじりと後ろの方へ下がっていった。 「ここからはもう出られないわ。あきらめて。」 そういうとまた1発発射し、横の壁に当たった。 「やめろハルヒ!それ以上近づくな!銃を捨てろ!」 「あたしを撃つ気かしら?」 「何を言ってるんだ!なぜ俺がおまえを?」 「どうせ撃ちあうのよ。問題はどっちが先ってこと。」 「やめろ!なぜこんなマネを?」 「うるさい!」 「ここから出よう、ハルヒ!」 「いやよ。孤独はもうたくさんなのよ!クリスマスなんて クソくらえよ!」 「落ち着けハルヒ。どうかしてるぞ。」 その時ハルヒが俺に向かって銃を発射した。 その弾丸は・・・俺の胸に当たっていた・・・ 俺は放心状態になりそして・・・倒れた。 ハルヒは倒れた俺を見下して、 「メリークリスマス。」 そしてハルヒは自分の頭に銃を突きつけていた・・・ ハルヒに化けていた初老の女性が自分の頭に銃を 突きつけながら、下を見て、 「そしてハッピーニューイヤー。」 と言った。 俺はまだそれがハルヒだと思っていた。 ハルヒが引き金を引く直前、そばにいた初老の男性が ハルヒを押さえつけた。 「はなして!はなして、お願いだから!死なせてー!」 男性はハルヒを引きずって消えていった。 その光景を見て俺は気を失った・・・ 「キョンー!」 あたしはドアを開け部屋に入っていった。 そしてそこで見た光景は・・・キョンが撃たれて床で倒れて いるところだった! 「キョン!」 「ハルヒ・・・」 あたしはキョンの頭を持ち、 「どうしたの!?」 「まさか本当に撃つとはな・・・」 「どういうこと!?」 「撃つとは思わなかった・・・今度は俺が・・・」 そういうとキョンは、 「メリークリスマス」 といいながらあたしの胸を撃った。 あたしは呆然とし、そして倒れた。 「キョン・・・」 そしてあたしは気を失った・・・ キョンに化けていた初老の女性は横になりながら、 けたたましく大声で笑っていた。 その瞬間、レコードが自動的に動き出し、音楽を奏ではじめた。 俺は気を取り戻し、這いずり回りながら移動した。 そして玄関ホールまでたどり着いた。 あたしは気を取り戻し、ふらふらになりながら 1階への階段を下りて行った。 そして玄関ホールにたどり着きそして倒れた。 そこには必死に倒れながらも出口へ行こうとする キョンの姿見えた。 「キョン・・・」 聞こえてないのだろうか・・・ 「キョン・・・」 あたしが2度目に言った後、キョンはあたしのほうへ向き、 そして銃を構えた。 あたしもそれをみてキョンに照準を合わせて銃を構えた。 「もうダメだ・・・」 「ええ・・・」 あたしはキョンの方へ這いよった。 「あたしも一緒に行く・・・」 「俺たち死ぬんだな・・・俺、怖い・・・」 「あたしもよ・・・」 そういうとあたしは仰向けになった。 「あんたが悪いのよ。」 「おまえこそ。」 「あんたが先に撃った。」 「いいや、撃ったのはお前の方だ。」 2人が倒れる中、稲光が走る。 あたしは撃たれた場所を確認すると起き上がった。 「キョン。」 「なんだ。」 「起きて。」 「そんなの無理だ。」 「立ってみて。血は付いてるけど撃たれて無いわ。」 「なんだって。」 「全てトリックよ。」 そういうとあたしはキョンの腕を持ち起き上がらせた。 お互いに無事を確認した後、一目散に館の玄関から出た。 と、同時に体を見ると血などお互いについてなかった。 あたしたちはそれを確認すると逃げるように屋敷を後にした・・・ 屋敷の柱時計が0時を告げる。 部屋には暖炉の前で初老の男女が椅子に腰掛けていた。 「あら、クリスマスよ。」 「やれやれ・・・また失敗だ。」 「後もう少しだったけど。」 「へへへ、惜しかったな。」 「寂しそうなカップルなのに・・・」 「もう済んだことだ。」 「それにしてもあの2人何しに来たのかしら。」 「わからんな。最近はクリスマスの意味も薄れてしまった。」 「本当ね。」 「しかし・・・我々にとっては永遠に特別な日だ。」 そう男性が言うとお互いに手を取り合った。 そして初老の男女は消えた・・・ 俺は今自宅でテレビを見ている。 その時ドアを叩く音がした。 ドアを開けてみるとハルヒがいた。 「何だか寝付けないの。それで・・・入っていい?」 「ああ。」 「キョン、今日は妹ちゃんが来るんじゃないの。」 「いや、FBIの友人に迎えを頼んだんだがまだ到着してないんだ。」 「そう。」 「ハルヒ、今夜起きた事はすべて錯覚だよな。」 「だと思うわ。」 「自分の誤りに気が付いたわけだな。」 「あなたがそれを証明したと。」 「お前はそのために俺を呼んだんじゃないのか?」 「あなたのためよ・・・。ごめん、悪かったわ・・・いかにも自信過剰で 自己中心的な言い方だったわ。」 「いや違う。たぶん俺も確かに興味があった。」 しばらく2人で見つめあった後、 「そうそうキョン、面倒くさいからプレゼントの交換はしない 約束だったけど・・・受け取ってもらえる?」 そういってハルヒは俺にプレゼントを渡してくれた。 「実は・・・俺も」 俺は買っておいたプレゼントをハルヒに渡した。 ハルヒは満面の笑みをし、 「さあ、早くお互い開けてみましょ!」 といい、ソファーに座った。 「ああ。」 俺とハルヒがプレゼントの包みを開けていると、ドアの ノックの音が聞こえた。 「多分妹だな。」 そういってドアを開けると・・・成長し、朝比奈さんそっくりに なった妹が立っていた。 「メリークリスマス、キョン君!」 「さあ、中に入れよ。」 「おじゃましま・・・あ、ハルヒさんお久しぶりです。」 「えっ!みくるちゃん!?」 「ははは、違うよハルヒ。俺の妹だよ。」 「いつもキョン君にも『おまえホント朝比奈さんに似てきたな』って 言われてます。」 「ほんと、みくるちゃんそっくりね。」 「胸はまだまだだけどな。」 「キョン君ってホントえっちいんだから。」 「ほんとよねぇ・・・エロキョンは変わってないわね。」 「クリスマスに2人から攻撃かよ・・・勘弁してくれよ。」 「あー、キョン君とハルヒさんプレゼント交換してたんだ。いいなぁ」 「安心しろ、お前の分もちゃんとあるぞ。」 「わーい。キョン君大好き。そうそう、ここにくる途中にケーキ買って きたんです。3人で食べませんか。」 「ほんと!やっぱり妹ちゃんはキョンとは違って気がきくわぁ」 「悪かったな、気がきかなくて。」 「さ、早くケーキ切ってプレゼントの中身開けっこしようよ、キョン君。」 「そうだな。さ、始めるか。」 外ではロマンチックに雪がふわりふわりと降り続いていた。 世界中、全ての人にこのクリスマスがいい日でありますように・・・ ───メリークリスマス! 「ところでキョン君とハルヒさんは結婚しないの?」 「ぶっ!何言ってるんだお前。」 「そうよ妹ちゃん!」 「えー、仕事でもいつも2人で一緒なんでしょ。いっそのことくっつちゃえば いいのに。」 「仕事は仕事、プライベートはプライベート。妹ちゃん分かった?」 「はーい。でも残念。『ハルヒ姉さん』って呼びたいのになぁ。」 「おまえは親の刺客か。」 「あ、ばれた?でもさっき言ったことはホントだよん♪」 「もう、さっさとケーキ食べましょ!」 ハルヒは怒涛のごとく言い放った、でもハルヒ、おまえ顔真っ赤だぞ。 「それはキョン君もね!」 <クリスマス・イブ・終> 涼宮ハルヒのX-FILES おまけ4 ???「お久しぶり、キョン君。」 キョン「お、お前は・・・なぜここに!」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ「キョン・・・どこにるの・・・」 ???「涼宮捜査官、君にしかキョン捜査官は救えない。」 ハルヒ「どうすればいいの!」 ???「それは・・・」 ---------------------------------------------------------- キョン「思い出せ!SOS団で活動したことを!最初にお前と行った 図書館のことを!」 ???「SOS団...図書館...」 ---------------------------------------------------------- ???「キョン君、こっちです!早く!急いで!」 キョン「なんでここに!?」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ「う・・・嘘でしょ・・・なんで・・・」 キョン「なんで・・・なんでこんなことを・・・」 ---------------------------------------------------------- ハルヒ・キョンのX-FILE課に絶体絶命の危機が!! 次回 涼宮ハルヒのX-FILES 最終話 <終章> キョン「いよいよ最終話か。」 ハルヒ「忙しいことになりそうね。」 古 泉「作者さん、いよいよ最終話なんで気合入れるように。 書けなかったら掘ります。」 作 者「( д )もう完成しているだなんてアナルが裂けても言えない・・・」 次へ
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『酔いどれクリスマス』 『未成年者はお酒を飲んではいけません』 ええ、あれは飲むもんじゃないわね。 飲んだ時は楽しい気分でいられるんだけど、酔いから醒めた時に襲ってくる頭痛と倦怠感はかなりキツイわ。 しかも酔った時の記憶が薄っすら残っていると、自己嫌悪まで付随してくる始末。 夏の合宿でそのことを充分思い知ったので、あたしはまたアルコールを摂取する機会を得た時に備え、それに対する傾向と対策を── 「ひゃあ!」 ──何すんのこのバカ!! あ、ああゴメンナサイ、ちょっと今……いや、なんでもないから……気にしないで。 コホン。 まあ、あたしはセーブすることを覚えた。飲み過ぎてバカなことしてしまう前にとっとと寝てしまおう、と心のどこかにスイッチを作っておいた。 前は加減を知らなかった。それが敗因だ。 だから今回は程々に飲んだ後、頭がグルグルしてきたらパタリと寝てしまった。 それ故にその後他のメンバーの間でどんなやりとりがあったかはほとんど分からない。 ちなみに起きたら酔いは殆ど醒めていた。頭痛もあまりしない。それはよかった。 よかったんだけど── 自分が節制できたからといって、他人もできるというわけにはやっぱりいかないのであって。 しかも自分の酔い方と他人の酔い方は似て非なるものがあるわけで。 そして自分が醒めた状態の時、相手が泥酔しているという状況は初めてで。 そんなときの対処法なんて全く知らないし。 つまり、もう頭が回らなくなってきたから結論を言わせてもらうと、 あたしは冒頭の標語を訂正したい。 『キョンにお酒を飲ませてはいけません』 と。 今日はクリスマス。楽しい楽しいクリスマス。 なんならもっと楽しくしちゃいましょ、と『SOS団と鶴屋さんで大いに騒ごう!in部室』が盛大に開催された。 普通に騒いで食べてを楽しんでいたら、鶴屋さんたら「家からいいもの持ってきたにょろ~」とか言って、二、三本シャンパンやらワインやら持ってきちゃって。 夏の失態を思い出したあたし達(主にあたしとキョン)は丁重に辞退しようとしたけれど、鶴屋さんのあのテンションとパワーに押されに押され終いに負けて、結局「少しだけなら」という条件で戴くことになった。 ところがこれがすっごく美味しかったのよね。さすが鶴屋さん。そこんじょそこらのコンビニで売ってる一本千円のシャンパンとは比べ物にならない一品で、とっても飲みやすかったのだ。 少しだけと言ってたくせにあれよあれよと言う間にニ杯、三杯とおかわり。ああちょっと気持ちがフワフワしてきたわ、とか思って。 そのうちあたしは冒頭通り飲むだけ飲んで、気持ちがいいうちにパタリと机に寝そべって夢の中。あれ、夢なんか見たかしら。覚えてないわ。 まあそれはさておき。 起きたら誰もいなかった。若干一名を除いて。 そしてその男は一見素面に見えるけど実はかなり酔っ払っていた。(事後確認) まあ、起きて顔見た時からなんかおかしいとは思ったけれど。 その酔っ払いキョンは寝ていたあたしの側にいて何をしていたかと言うと…… 「──!! キョン!?」 「あ、ようやく起きたか」 けろりとそんなことを吐いた。いや台詞自体は別に構いはしない。事実そのまんまだから。口調もいつものキョンと差して変わりはない。それもいい。 けれど伴っていた行動が、あたしの思考を凍結させた。 こともあろうかあたしの髪を撫でていた。しかも優しく。 あたしは状況を把握できないまま自身を解凍できずにいる。その間にも大きな手で撫でられてるあたしの頭。というか髪? なんとなく起きあがれずに、机の天板に寝そべったままずっとキョンの顔と対峙する。ちなみにキョンもなぜか隣りで同じように寝そべっていた。だから起きてからこの方、ずっとキョンの顔を見つめる形となっている。 で、今更気付く。 なにこの上機嫌な笑顔のキョンは。かなり貴重な笑顔なんだけど。 普段からあまり感情豊かじゃないヤツではあるけれど、キョンの笑顔を見たことない、ということは勿論ない。 みくるちゃんや有希に対して向けられる笑顔を、あたしが脇から盗み見るという形式なら何度も見てるし、あたしに向けてという珍しいものもちらりとくらいは見たことがある。でもコイツってばあたしの手前ではすぐに引っ込めてしまうのよ。──いつもはね。 今は、あたしがこうしてまじまじとキョンの顔を穴が開くほど見つめているのに笑顔を浮かべたまま。 やだ……ドキドキしてきた。 と、キョンは不意に口を開いた。 「顔赤いぞ、ハルヒ」 「──う、五月蝿いわねっ!!」 あたしは顔を反対側に向けて、ようやくキョンの笑顔から逃がれた。惜しい気もしたけどこのままじゃ心臓が破裂しちゃうわ。 ん? 何か机の上に置いてある。 目線を少し斜めに動かすと何かメモのようなものがあった。あたしは体を起こし、それを引き寄せる。 そのメモには古泉君の字でこの状況について説明がしてあった。 簡略すると早々にダウンしたみくるちゃんと、酒に飽きたような有希と、けろりとしている鶴屋さんを送り届けるためお先に失礼するとのこと。 で、キョンは眠り続けるあたしを送り届けるために残っていること。なんと珍しいことにキョン自ら申し出たそうだ。ホントかしら。──いや、この様子ならありうるわね。 『でも彼も結構酔っていると思うので、申し訳ありませんが涼宮さん、彼のことをよろしくお願いします』 と最後に締めくくってあった。 よろしくと言われても……あたしにも手に負えなさそうなんだけど。 あたしがメモを黙々と読んでる間、キョンはカチューシャのリボンをツンツン引っ張る攻撃に移っていた。 それを完全無視していたら、今度は「ハ・ル・ヒ」と一音一音わざとらしく区切って人の名前を呼んできた。おまけにリボンを引っ張るテンポもそれに合わせている。 ホントもう勘弁して。いつもと百八十度違う行動やら態度を取られると、さすがの涼宮ハルヒ様も調子狂うのよ。 あたしは穏やかではない内心を悟られまいと振り向かずに背中を向けたまま応えた。 「なによ?」 「こっち向け」 「あたしに命令なんていい度胸ね」 「じゃあ、こっち向いてクダサイ」 卑怯なり、酔っ払いキョン。今心臓の鼓動が二・五倍に増したわよ。甘えたキョンなんて核兵器並の破壊力だわ!! 多分今あたしの顔はトマトかリンゴくらい真っ赤だわね。見せられないわ、こんな顔。 あたしは「ダメよ」と言いながら腕組みまでして、頑なに振り向かなかった。 さて、そこでしばらく黙っていたかと思ったら、 「耳まで赤いぞ」 とか言って今まで弄んでいたリボンから外したその指で、あたしの耳たぶを軽く引っ張って来たのよ、このバカは!! 「──! あんたいい加減にしなさい!」 あたしは堪らずキョンを振り向き怒鳴りつけた。一瞬視線が絡まる。あたしは凄い形相をしていることだろう。 なのにキョンは怯む事はなかった。怯むどころか大マジメな顔をして一言。 「いやだ」 「いやだ、じゃなーい!!」 と叫んで、反射的に勢いよく立ち上がったら眩暈がした。あれ、まだアルコール残ってたのかしら? かくんと膝が崩れ、前に倒れこむ。前へ──キョンの方へ。 「ひゃあああああ!」 「うわ!」 ガシャーン!とドサッ!という擬音が部室に響き渡った。 「いててて……」 キョンはあたしの下で呻いた。色んな衝撃で一瞬真っ白になった頭が通常モードに即戻った。顔を上げる。 「キョン!? ちょっと、大丈夫?」 「ああ、なんとか……」 と言いながら、左手で後頭部を擦っている。あたしは慌ててキョンの頭に手を伸ばし、髪を弄って患部を確かめた。 血は出てない。ちょっと瘤になっている程度だ。ホッと溜息を吐く。 しかし、この一息が更なる事態の悪化を招いてしまった。 「心配してくれたのか?」 とあたしの右手を攫うように取って握るキョンの左手。あたしは一体何が始まったのかと「へ?」と我ながら間抜けた声を漏らした。 いや、そのね、なんでしょうねこの手は。 左手だけじゃないわよ。右手、というか右腕はあたしの背にまわされているけど、これはなんのマネ? 「──こら、キョン、離しなさい!」 恥ずかしいから! あたしはキョンの顔を睨め付ける。けれどキョンはまたあのご機嫌な笑顔だ。 やめなさい、その笑顔。戦意喪失するから…… でもここで白旗振って降参したら、それこそ貞操の危機なんじゃないの?酔った勢いなんてダメよ。許さないんだから。 あたしはなんとかキョンの腕から逃れようとじたばたもがく。 もがきながら『もうキョンにはお酒を飲ませちゃダメだわ』と一人心に誓った。 しばらくの間形振り構わずあたしは足掻いた。にも関わらず体格差のせいか、あたしの抵抗は無駄に終わるどころか、結果的にはさっきよりも密着して抱き竦められる形になってしまった。 うう~、二人分のアルコールの甘い息でクラクラする~。 それくらいキョンの顔が間近にあった。 「ハルヒ」 キョンが耳元で囁く。ヤバイ。これはヤバイわ。無条件降伏寸前だ。このままではいずれ陥落してしまう。 あたしは寸でのところでなんとか踏みとどまって、空いている左手でキョンの顔を押しのけた。 「もう! 変なコトしたら承知しないんだから!」 「『変なコト』ってどういうコトだ?」 「──今あんたがあたしにしようとしていることよ!」 「ほう」 と、キョンはしたり顔になった。なによ。なんか背筋がぞくりとしたわよ。 あたしが怪訝な顔つきでキョンの動向を見張っていると、キョンは自分の顔を押し遣るあたしの左の手に一瞬目線を向けて── その手のひらに顔を埋めた。 唇の感触。一瞬、いや一秒くらいだけれど、確かな。 え、ええ? えええええええええええ!? 硬直したままのあたしに構わず嬉しそうに聞いてくるキョン。 「これは『変なコト』か?」 「あああ当たり前じゃない! 十っ分『変なコト』よ!! この酔っ払い!!」 「何言ってるんだハルヒ。俺は酔ってないぞ?」 「……あんた、それ本気で言ってるの?」 天下無敵に成り上がってしまったキョンに脱力してしまう。全身の力を緩めたら、ここぞとばかりにまた抱き竦められてしまった。狡いわよ。 けれど今度は抵抗しなかった。抵抗する気も起きない。もう降参よ。 あたしを抱き締めながらキョンが呟く。 「ハルヒは暖かいな」 「冷たかったら死人じゃない」 「長門は冷たそうだが」 「──こういう状況でなんで有希の話を出すのよ」 会話が途切れた。大人しくはなったけど、我ながらどこまでも可愛げがないわね。 まあみくるちゃんみたいな愛らしさを今すぐここで身につけることはできないし、相手はキョンだ。しかも酔っ払い。猫被ることはない。 あれ? キョンの腕が少し緩んだわ。 あたしはそろそろと顔を上げる。見下ろすキョンと目が合った。 「? なによ?」 「いや、やきもち焼いてるのか?」 「は!?」 なんでそうなるのよ!? 「長門の話をしたら拗ねたから」 「あたしがいつ拗ねたのよ!」 「いっつも」 えーと、話がどんどん逸れてるわよ。 あたしが半分呆れてキョンの顔を見つめると、 「まあ、拗ねた顔も可愛いがな」 と、にっこり微笑んだ。 ──『可愛い』って。『可愛い』って! 『可愛い』っっってっ!! 嬉しすぎて死にそうだわ。って、なにこんなに喜んじゃってるのよ、あたし。 どこかに今すぐ逃げ出したい。このままじゃ心不全で死んじゃう。いえ、不整脈かしら。 でもあたしの体はキョンの腕の中。一歩も逃げることができないから代わりに顔だけ逃がす。キョンの胸に顔を埋めた。そのまま呟く。 「バカキョン……」 「なんだ?」 いつも鈍いくせにこんなときだけ耳聡い。 「なんでもないわよ」 「そうか」 沈黙が降りる。 キョンの心臓の音が頬を伝わって聞こえてきた。正直とても心地好い。 「そう言えば」 キョンがなんとはなしに切り出した。 「今日はクリスマスだったな」 「そうね……」 「何かお願い事したか? 赤服爺さんに」 「赤服爺さんって……サンタクロースと素直に言いなさいよ」 変なとこだけひねくれキョンが残っていた。意味もなくちょっと安心して思わず「ふふっ」と笑う。 「それにサンタの赤い服は某飲料会社の陰謀よ」 「そうなのか」 「そうよ」 また沈黙。 「願い事……」 無意識に呟いた。その呟きにも「うん?」とキョンが反応する。 「なんかしたのか?」 「七夕じゃあないからしてないわよ。それに……願い事はもう何個も叶ったし──」 キョンの笑顔を一人占めできたこと。髪を撫でられたこと。『かわいい』って言って貰えたこと。 今はこれで充分過ぎるわ。これ以上は望んだら幸せ過多で早死にしそうだ。 あたしは聞き返した。 「キョンは?」 「俺?」 「そう、なにか願い事あったの?」 「願い事か──望んだらキリがないな」 「欲張りね」 「ハルヒに言われたくないぞ?」 「何よそれ、失礼ね」 ぷくっと頬を膨らませると、キョンはあたしの顔を覗きこんだ。 「な、なによ」 「いや、拗ねてる」 だから何なのよ、と言いかけて思い出す。『拗ねてる顔』=『かわいい』 「もう! あんたは!」 反射的に左手を振り上げるとキョンの右手がそれを上手いことキャッチした。両手を拘束されてあたしの羞恥心は昇華できずに顔面に留まってしまった。あたしは熱を帯びて赤く染まった顔を見られたくなくて俯く。 キョンはそんなあたしの様子を見てか笑いながら、 「照れてるハルヒも──」 「それ以上言うな~!!」 あたしは必死に喚いて、それを遮った。キョンが珍しく声を上げて笑った。 もう、なんなのよこのキョンは。悔しいけれど手に余る。 「ハルヒ」 ひとしきり笑い終えたキョンは、やけにきっぱりとあたしの名前を呼んだ。 「なに?」 「願い事決めたんだが」 「なんであたしに言うのよ」 「サンタクロースじゃ叶えられないからだ」 どくん、と鼓動が高鳴った。 「──あたしだったら叶えられるの?」 「そうだ」 なんとなくキョンの『願い事』は推測できた。少し躊躇う。けれど── 「いいわよ、叶えてあげる」 「俺はまだ何も言っていないぞ」 「さっきあたしの手のひらにお願いしたでしょ?」 キョンは意表を突かれたらしく目を見開いた。 でもその表情はすぐに解けて、柔らかな微笑みになった。 「ああ、伝わっちまったか」 「バレバレよ」 一拍置いてどちらからともなく笑い声を漏らす。 そして。そのままあたしは目を閉じた── ◇◆◇ 『酔って狂乱、醒めて後悔』 これどこの国の諺だっけ? まあそんなことはどうでもいいな。今の状況からただ頭の最前列に思い浮かんだ言葉だからだ。 さて俺は酔って狂乱した覚えはない。というより半分記憶喪失に近い。だから今はまだ後悔することはなかったはず、なんだが…… この現状は『後ろ向き一人大反省会』を盛大に催したくなる。 まず俺は何で床で寝ているんだろうね。お陰で体の節々が痛い。しかも制服のままだ。コートがお情け程度に上半身にかけられているが、足元がちょっと寒い。まあ自業自得か。 そして何で俺はまだ学校に、というか部室にいるのだろう。上着のポケットから携帯を取り出し時間を確認して── 「げ」 思わず声を上げる。日付が変わって三十分経っているぞ。これは家に帰ったら説教だな。 そして── 無限大に反省したくなること。 なぜ俺の腕の中に団長様がいらっしゃったのだろうか。いやホント、夢であってほしいね。 その団長様は先程まですやすや寝息を立てていたが、俺の「げ」という声に反応してピクリと瞼が開いた。しまった、起こしてしまった。 ああ、これは目覚め一番ぶたれるな。しかもグーで。覚悟してもしなくても痛いのは痛いのだ けれど、俺は『覚悟した』。 しかしハルヒは寝惚け眼を俺に向けると、しぱしぱと瞬きしながら口を開いた。 「ああ……キョン、ようやく起きたわね……」 あれ? 鉄拳制裁は? 罵詈雑言でもいいぞ? いや良くはないが。 俺が訝しんだままハルヒを見つめていると、視線に気づいてハルヒも見つめ返してきた。 息も詰まりそうな沈黙。実際俺は息ができなかった。苦しい。 その窒息死をかけた命がけのにらめっこはハルヒの溜息で打ちきられた。 「あんた、酔ってたときのこと覚えてないでしょ?」 「ああ」 俺は頷くしかない。本当にさっぱり覚えていないのだ。特にこういう状況に陥った経緯の部分がすっぽり抜けている。 ハルヒはまた溜息を吐いた。さっきより大仰に。 「──ホント、信じられないわ、コイツ」 視線を落してぶつぶつと呟いている。 「えーと、ハルヒ? 俺は何をしでかし──」 「聞きたい?」 「いや、やっぱ遠慮しとく」 まったく何をやらかしたんだよ、酔ってる俺。墓場に入っても知りたくないがな。しかしそれをハルヒは知っているということが不本意にもおぞましい。 当のハルヒは俺が断ったことで捌け口を失い、むくれた顔でしばらくは黙っていたがやはり我慢できなかったのか「やっぱ教えてあげる」とか言いやがった。いらないと言うとるだろうが。やめれ。 ハルヒは詰るような目で俺を見上げて、 「突然寝ちゃったのよ、あんたは」 どんな醜態を告げられるかと戦々恐々としていた俺だったわけだが、ハルヒの言葉に完全に肩透かしをくらった。なんだそんなことか。 「そう言うお前も突然寝てしまったような気がするが……」 まだ俺の記憶が定かだった頃、こいつは笑い転げながら机に突っ伏して、そのまま起きあがらなかったのだ。 「タイミングの問題よ!!」 ハルヒはがばっと顔を上げ、俺を睨める。 「タイミング?」と俺が聞き直すと、ハルヒは「そうよ!」と大きく、かつ力強く頷いた。 「寝るならもっと早くに寝こけるか、でなかったら、そのまま朝まで起きてなさい!!」 なんか無茶苦茶だぞ、それ。しかもどの時点を基準に言ってるんだ? ハルヒは俺の疑問もお構いなしに、言うだけ言ってそのまま俺の胸に顔を埋めた──って、 「お、おい」 俺はうろたえた。そりゃそのハルヒがこの状態からさらに体を密着させてきたものだから。 何してるんだお前。目茶苦茶恥ずかしいぞ。少し離れなさい。色々マズイんだぞ色々。 「ダメよ。今夜はここで過ごすしかないんだし、少しでもあんたから体温奪わなきゃ」 「その論法だと俺が凍死するんだが」 「あんたはあたしから体温奪ってるじゃない」 もう矛盾だらけだな。いつものことだが。 ハルヒは小さく欠伸をすると「おやすみ」と言ってそのまま瞼を閉じてしまった。 よく寝られるなこの状態で。いや俺もついさっきまで寝ていたわけだが。 しばらく薄暗い部室の壁や天井、窓、本棚と順ににらめっこをしていたが、最終的にはハルヒに視線を戻した。 ハルヒはすこぶる寝付きがよく、もう小さな寝息を立てている。寝顔だけ見るとコイツも、かわ……いや、何も言うまい。 やれやれと溜息ひとつして。 俺は恐る恐る、起きた時点でハルヒの体から一時隔離していた己の両腕を、ゆっくりと元の位置に戻した。 軽い抱擁。これくらいなら殴られることもないだろう。 ──しかしこれはヤバイな。 腕の中の華奢なハルヒの体は温かいやら、柔らかいやら、いい匂いがするやらでしばらく──正直言うと一生手放したくなくなってしまった。 一体これは誰のプレゼントだ? というか俺が受けとっていいものなのか? まあ目の前に出されたものはありがたく貰っておくぞ。見当違いだと言われても知らないふりして戴いておく。取り上げられるなら奪うまでだ。 俺は心の底から欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。 そして俺はそのまま目を閉じる── ハルヒは温かかった。柔らかかった。いい匂いがした。 そして、 ハルヒは、とても甘かった。 ──終わり
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『酔いどれクリスマス』 『未成年者はお酒を飲んではいけません』 ええ、あれは飲むもんじゃないわね。 飲んだ時は楽しい気分でいられるんだけど、酔いから醒めた時に襲ってくる頭痛と倦怠感はかなりキツイわ。 しかも酔った時の記憶が薄っすら残っていると、自己嫌悪まで付随してくる始末。 夏の合宿でそのことを充分思い知ったので、あたしはまたアルコールを摂取する機会を得た時に備え、それに対する傾向と対策を── 「ひゃあ!」 ──何すんのこのバカ!! あ、ああゴメンナサイ、ちょっと今……いや、なんでもないから……気にしないで。 コホン。 まあ、あたしはセーブすることを覚えた。飲み過ぎてバカなことしてしまう前にとっとと寝てしまおう、と心のどこかにスイッチを作っておいた。 前は加減を知らなかった。それが敗因だ。 だから今回は程々に飲んだ後、頭がグルグルしてきたらパタリと寝てしまった。 それ故にその後他のメンバーの間でどんなやりとりがあったかはほとんど分からない。 ちなみに起きたら酔いは殆ど醒めていた。頭痛もあまりしない。それはよかった。 よかったんだけど── 自分が節制できたからといって、他人もできるというわけにはやっぱりいかないのであって。 しかも自分の酔い方と他人の酔い方は似て非なるものがあるわけで。 そして自分が醒めた状態の時、相手が泥酔しているという状況は初めてで。 そんなときの対処法なんて全く知らないし。 つまり、もう頭が回らなくなってきたから結論を言わせてもらうと、 あたしは冒頭の標語を訂正したい。 『キョンにお酒を飲ませてはいけません』 と。 今日はクリスマス。楽しい楽しいクリスマス。 なんならもっと楽しくしちゃいましょ、と『SOS団と鶴屋さんで大いに騒ごう!in部室』が盛大に開催された。 普通に騒いで食べてを楽しんでいたら、鶴屋さんたら「家からいいもの持ってきたにょろ~」とか言って、二、三本シャンパンやらワインやら持ってきちゃって。 夏の失態を思い出したあたし達(主にあたしとキョン)は丁重に辞退しようとしたけれど、鶴屋さんのあのテンションとパワーに押されに押され終いに負けて、結局「少しだけなら」という条件で戴くことになった。 ところがこれがすっごく美味しかったのよね。さすが鶴屋さん。そこんじょそこらのコンビニで売ってる一本千円のシャンパンとは比べ物にならない一品で、とっても飲みやすかったのだ。 少しだけと言ってたくせにあれよあれよと言う間にニ杯、三杯とおかわり。ああちょっと気持ちがフワフワしてきたわ、とか思って。 そのうちあたしは冒頭通り飲むだけ飲んで、気持ちがいいうちにパタリと机に寝そべって夢の中。あれ、夢なんか見たかしら。覚えてないわ。 まあそれはさておき。 起きたら誰もいなかった。若干一名を除いて。 そしてその男は一見素面に見えるけど実はかなり酔っ払っていた。(事後確認) まあ、起きて顔見た時からなんかおかしいとは思ったけれど。 その酔っ払いキョンは寝ていたあたしの側にいて何をしていたかと言うと…… 「──!! キョン!?」 「あ、ようやく起きたか」 けろりとそんなことを吐いた。いや台詞自体は別に構いはしない。事実そのまんまだから。口調もいつものキョンと差して変わりはない。それもいい。 けれど伴っていた行動が、あたしの思考を凍結させた。 こともあろうかあたしの髪を撫でていた。しかも優しく。 あたしは状況を把握できないまま自身を解凍できずにいる。その間にも大きな手で撫でられてるあたしの頭。というか髪? なんとなく起きあがれずに、机の天板に寝そべったままずっとキョンの顔と対峙する。ちなみにキョンもなぜか隣りで同じように寝そべっていた。だから起きてからこの方、ずっとキョンの顔を見つめる形となっている。 で、今更気付く。 なにこの上機嫌な笑顔のキョンは。かなり貴重な笑顔なんだけど。 普段からあまり感情豊かじゃないヤツではあるけれど、キョンの笑顔を見たことない、ということは勿論ない。 みくるちゃんや有希に対して向けられる笑顔を、あたしが脇から盗み見るという形式なら何度も見てるし、あたしに向けてという珍しいものもちらりとくらいは見たことがある。でもコイツってばあたしの手前ではすぐに引っ込めてしまうのよ。──いつもはね。 今は、あたしがこうしてまじまじとキョンの顔を穴が開くほど見つめているのに笑顔を浮かべたまま。 やだ……ドキドキしてきた。 と、キョンは不意に口を開いた。 「顔赤いぞ、ハルヒ」 「──う、五月蝿いわねっ!!」 あたしは顔を反対側に向けて、ようやくキョンの笑顔から逃がれた。惜しい気もしたけどこのままじゃ心臓が破裂しちゃうわ。 ん? 何か机の上に置いてある。 目線を少し斜めに動かすと何かメモのようなものがあった。あたしは体を起こし、それを引き寄せる。 そのメモには古泉君の字でこの状況について説明がしてあった。 簡略すると早々にダウンしたみくるちゃんと、酒に飽きたような有希と、けろりとしている鶴屋さんを送り届けるためお先に失礼するとのこと。 で、キョンは眠り続けるあたしを送り届けるために残っていること。なんと珍しいことにキョン自ら申し出たそうだ。ホントかしら。──いや、この様子ならありうるわね。 『でも彼も結構酔っていると思うので、申し訳ありませんが涼宮さん、彼のことをよろしくお願いします』 と最後に締めくくってあった。 よろしくと言われても……あたしにも手に負えなさそうなんだけど。 あたしがメモを黙々と読んでる間、キョンはカチューシャのリボンをツンツン引っ張る攻撃に移っていた。 それを完全無視していたら、今度は「ハ・ル・ヒ」と一音一音わざとらしく区切って人の名前を呼んできた。おまけにリボンを引っ張るテンポもそれに合わせている。 ホントもう勘弁して。いつもと百八十度違う行動やら態度を取られると、さすがの涼宮ハルヒ様も調子狂うのよ。 あたしは穏やかではない内心を悟られまいと振り向かずに背中を向けたまま応えた。 「なによ?」 「こっち向け」 「あたしに命令なんていい度胸ね」 「じゃあ、こっち向いてクダサイ」 卑怯なり、酔っ払いキョン。今心臓の鼓動が二・五倍に増したわよ。甘えたキョンなんて核兵器並の破壊力だわ!! 多分今あたしの顔はトマトかリンゴくらい真っ赤だわね。見せられないわ、こんな顔。 あたしは「ダメよ」と言いながら腕組みまでして、頑なに振り向かなかった。 さて、そこでしばらく黙っていたかと思ったら、 「耳まで赤いぞ」 とか言って今まで弄んでいたリボンから外したその指で、あたしの耳たぶを軽く引っ張って来たのよ、このバカは!! 「──! あんたいい加減にしなさい!」 あたしは堪らずキョンを振り向き怒鳴りつけた。一瞬視線が絡まる。あたしは凄い形相をしていることだろう。 なのにキョンは怯む事はなかった。怯むどころか大マジメな顔をして一言。 「いやだ」 「いやだ、じゃなーい!!」 と叫んで、反射的に勢いよく立ち上がったら眩暈がした。あれ、まだアルコール残ってたのかしら? かくんと膝が崩れ、前に倒れこむ。前へ──キョンの方へ。 「ひゃあああああ!」 「うわ!」 ガシャーン!とドサッ!という擬音が部室に響き渡った。 「いててて……」 キョンはあたしの下で呻いた。色んな衝撃で一瞬真っ白になった頭が通常モードに即戻った。顔を上げる。 「キョン!? ちょっと、大丈夫?」 「ああ、なんとか……」 と言いながら、左手で後頭部を擦っている。あたしは慌ててキョンの頭に手を伸ばし、髪を弄って患部を確かめた。 血は出てない。ちょっと瘤になっている程度だ。ホッと溜息を吐く。 しかし、この一息が更なる事態の悪化を招いてしまった。 「心配してくれたのか?」 とあたしの右手を攫うように取って握るキョンの左手。あたしは一体何が始まったのかと「へ?」と我ながら間抜けた声を漏らした。 いや、そのね、なんでしょうねこの手は。 左手だけじゃないわよ。右手、というか右腕はあたしの背にまわされているけど、これはなんのマネ? 「──こら、キョン、離しなさい!」 恥ずかしいから! あたしはキョンの顔を睨め付ける。けれどキョンはまたあのご機嫌な笑顔だ。 やめなさい、その笑顔。戦意喪失するから…… でもここで白旗振って降参したら、それこそ貞操の危機なんじゃないの?酔った勢いなんてダメよ。許さないんだから。 あたしはなんとかキョンの腕から逃れようとじたばたもがく。 もがきながら『もうキョンにはお酒を飲ませちゃダメだわ』と一人心に誓った。 しばらくの間形振り構わずあたしは足掻いた。にも関わらず体格差のせいか、あたしの抵抗は無駄に終わるどころか、結果的にはさっきよりも密着して抱き竦められる形になってしまった。 うう~、二人分のアルコールの甘い息でクラクラする~。 それくらいキョンの顔が間近にあった。 「ハルヒ」 キョンが耳元で囁く。ヤバイ。これはヤバイわ。無条件降伏寸前だ。このままではいずれ陥落してしまう。 あたしは寸でのところでなんとか踏みとどまって、空いている左手でキョンの顔を押しのけた。 「もう! 変なコトしたら承知しないんだから!」 「『変なコト』ってどういうコトだ?」 「──今あんたがあたしにしようとしていることよ!」 「ほう」 と、キョンはしたり顔になった。なによ。なんか背筋がぞくりとしたわよ。 あたしが怪訝な顔つきでキョンの動向を見張っていると、キョンは自分の顔を押し遣るあたしの左の手に一瞬目線を向けて── その手のひらに顔を埋めた。 唇の感触。一瞬、いや一秒くらいだけれど、確かな。 え、ええ? えええええええええええ!? 硬直したままのあたしに構わず嬉しそうに聞いてくるキョン。 「これは『変なコト』か?」 「あああ当たり前じゃない! 十っ分『変なコト』よ!! この酔っ払い!!」 「何言ってるんだハルヒ。俺は酔ってないぞ?」 「……あんた、それ本気で言ってるの?」 天下無敵に成り上がってしまったキョンに脱力してしまう。全身の力を緩めたら、ここぞとばかりにまた抱き竦められてしまった。狡いわよ。 けれど今度は抵抗しなかった。抵抗する気も起きない。もう降参よ。 あたしを抱き締めながらキョンが呟く。 「ハルヒは暖かいな」 「冷たかったら死人じゃない」 「長門は冷たそうだが」 「──こういう状況でなんで有希の話を出すのよ」 会話が途切れた。大人しくはなったけど、我ながらどこまでも可愛げがないわね。 まあみくるちゃんみたいな愛らしさを今すぐここで身につけることはできないし、相手はキョンだ。しかも酔っ払い。猫被ることはない。 あれ? キョンの腕が少し緩んだわ。 あたしはそろそろと顔を上げる。見下ろすキョンと目が合った。 「? なによ?」 「いや、やきもち焼いてるのか?」 「は!?」 なんでそうなるのよ!? 「長門の話をしたら拗ねたから」 「あたしがいつ拗ねたのよ!」 「いっつも」 えーと、話がどんどん逸れてるわよ。 あたしが半分呆れてキョンの顔を見つめると、 「まあ、拗ねた顔も可愛いがな」 と、にっこり微笑んだ。 ──『可愛い』って。『可愛い』って! 『可愛い』っっってっ!! 嬉しすぎて死にそうだわ。って、なにこんなに喜んじゃってるのよ、あたし。 どこかに今すぐ逃げ出したい。このままじゃ心不全で死んじゃう。いえ、不整脈かしら。 でもあたしの体はキョンの腕の中。一歩も逃げることができないから代わりに顔だけ逃がす。キョンの胸に顔を埋めた。そのまま呟く。 「バカキョン……」 「なんだ?」 いつも鈍いくせにこんなときだけ耳聡い。 「なんでもないわよ」 「そうか」 沈黙が降りる。 キョンの心臓の音が頬を伝わって聞こえてきた。正直とても心地好い。 「そう言えば」 キョンがなんとはなしに切り出した。 「今日はクリスマスだったな」 「そうね……」 「何かお願い事したか? 赤服爺さんに」 「赤服爺さんって……サンタクロースと素直に言いなさいよ」 変なとこだけひねくれキョンが残っていた。意味もなくちょっと安心して思わず「ふふっ」と笑う。 「それにサンタの赤い服は某飲料会社の陰謀よ」 「そうなのか」 「そうよ」 また沈黙。 「願い事……」 無意識に呟いた。その呟きにも「うん?」とキョンが反応する。 「なんかしたのか?」 「七夕じゃあないからしてないわよ。それに……願い事はもう何個も叶ったし──」 キョンの笑顔を一人占めできたこと。髪を撫でられたこと。『かわいい』って言って貰えたこと。 今はこれで充分過ぎるわ。これ以上は望んだら幸せ過多で早死にしそうだ。 あたしは聞き返した。 「キョンは?」 「俺?」 「そう、なにか願い事あったの?」 「願い事か──望んだらキリがないな」 「欲張りね」 「ハルヒに言われたくないぞ?」 「何よそれ、失礼ね」 ぷくっと頬を膨らませると、キョンはあたしの顔を覗きこんだ。 「な、なによ」 「いや、拗ねてる」 だから何なのよ、と言いかけて思い出す。『拗ねてる顔』=『かわいい』 「もう! あんたは!」 反射的に左手を振り上げるとキョンの右手がそれを上手いことキャッチした。両手を拘束されてあたしの羞恥心は昇華できずに顔面に留まってしまった。あたしは熱を帯びて赤く染まった顔を見られたくなくて俯く。 キョンはそんなあたしの様子を見てか笑いながら、 「照れてるハルヒも──」 「それ以上言うな~!!」 あたしは必死に喚いて、それを遮った。キョンが珍しく声を上げて笑った。 もう、なんなのよこのキョンは。悔しいけれど手に余る。 「ハルヒ」 ひとしきり笑い終えたキョンは、やけにきっぱりとあたしの名前を呼んだ。 「なに?」 「願い事決めたんだが」 「なんであたしに言うのよ」 「サンタクロースじゃ叶えられないからだ」 どくん、と鼓動が高鳴った。 「──あたしだったら叶えられるの?」 「そうだ」 なんとなくキョンの『願い事』は推測できた。少し躊躇う。けれど── 「いいわよ、叶えてあげる」 「俺はまだ何も言っていないぞ」 「さっきあたしの手のひらにお願いしたでしょ?」 キョンは意表を突かれたらしく目を見開いた。 でもその表情はすぐに解けて、柔らかな微笑みになった。 「ああ、伝わっちまったか」 「バレバレよ」 一拍置いてどちらからともなく笑い声を漏らす。 そして。そのままあたしは目を閉じた── ◇◆◇ 『酔って狂乱、醒めて後悔』 これどこの国の諺だっけ? まあそんなことはどうでもいいな。今の状況からただ頭の最前列に思い浮かんだ言葉だからだ。 さて俺は酔って狂乱した覚えはない。というより半分記憶喪失に近い。だから今はまだ後悔することはなかったはず、なんだが…… この現状は『後ろ向き一人大反省会』を盛大に催したくなる。 まず俺は何で床で寝ているんだろうね。お陰で体の節々が痛い。しかも制服のままだ。コートがお情け程度に上半身にかけられているが、足元がちょっと寒い。まあ自業自得か。 そして何で俺はまだ学校に、というか部室にいるのだろう。上着のポケットから携帯を取り出し時間を確認して── 「げ」 思わず声を上げる。日付が変わって三十分経っているぞ。これは家に帰ったら説教だな。 そして── 無限大に反省したくなること。 なぜ俺の腕の中に団長様がいらっしゃったのだろうか。いやホント、夢であってほしいね。 その団長様は先程まですやすや寝息を立てていたが、俺の「げ」という声に反応してピクリと瞼が開いた。しまった、起こしてしまった。 ああ、これは目覚め一番ぶたれるな。しかもグーで。覚悟してもしなくても痛いのは痛いのだ けれど、俺は『覚悟した』。 しかしハルヒは寝惚け眼を俺に向けると、しぱしぱと瞬きしながら口を開いた。 「ああ……キョン、ようやく起きたわね……」 あれ? 鉄拳制裁は? 罵詈雑言でもいいぞ? いや良くはないが。 俺が訝しんだままハルヒを見つめていると、視線に気づいてハルヒも見つめ返してきた。 息も詰まりそうな沈黙。実際俺は息ができなかった。苦しい。 その窒息死をかけた命がけのにらめっこはハルヒの溜息で打ちきられた。 「あんた、酔ってたときのこと覚えてないでしょ?」 「ああ」 俺は頷くしかない。本当にさっぱり覚えていないのだ。特にこういう状況に陥った経緯の部分がすっぽり抜けている。 ハルヒはまた溜息を吐いた。さっきより大仰に。 「──ホント、信じられないわ、コイツ」 視線を落してぶつぶつと呟いている。 「えーと、ハルヒ? 俺は何をしでかし──」 「聞きたい?」 「いや、やっぱ遠慮しとく」 まったく何をやらかしたんだよ、酔ってる俺。墓場に入っても知りたくないがな。しかしそれをハルヒは知っているということが不本意にもおぞましい。 当のハルヒは俺が断ったことで捌け口を失い、むくれた顔でしばらくは黙っていたがやはり我慢できなかったのか「やっぱ教えてあげる」とか言いやがった。いらないと言うとるだろうが。やめれ。 ハルヒは詰るような目で俺を見上げて、 「突然寝ちゃったのよ、あんたは」 どんな醜態を告げられるかと戦々恐々としていた俺だったわけだが、ハルヒの言葉に完全に肩透かしをくらった。なんだそんなことか。 「そう言うお前も突然寝てしまったような気がするが……」 まだ俺の記憶が定かだった頃、こいつは笑い転げながら机に突っ伏して、そのまま起きあがらなかったのだ。 「タイミングの問題よ!!」 ハルヒはがばっと顔を上げ、俺を睨める。 「タイミング?」と俺が聞き直すと、ハルヒは「そうよ!」と大きく、かつ力強く頷いた。 「寝るならもっと早くに寝こけるか、でなかったら、そのまま朝まで起きてなさい!!」 なんか無茶苦茶だぞ、それ。しかもどの時点を基準に言ってるんだ? ハルヒは俺の疑問もお構いなしに、言うだけ言ってそのまま俺の胸に顔を埋めた──って、 「お、おい」 俺はうろたえた。そりゃそのハルヒがこの状態からさらに体を密着させてきたものだから。 何してるんだお前。目茶苦茶恥ずかしいぞ。少し離れなさい。色々マズイんだぞ色々。 「ダメよ。今夜はここで過ごすしかないんだし、少しでもあんたから体温奪わなきゃ」 「その論法だと俺が凍死するんだが」 「あんたはあたしから体温奪ってるじゃない」 もう矛盾だらけだな。いつものことだが。 ハルヒは小さく欠伸をすると「おやすみ」と言ってそのまま瞼を閉じてしまった。 よく寝られるなこの状態で。いや俺もついさっきまで寝ていたわけだが。 しばらく薄暗い部室の壁や天井、窓、本棚と順ににらめっこをしていたが、最終的にはハルヒに視線を戻した。 ハルヒはすこぶる寝付きがよく、もう小さな寝息を立てている。寝顔だけ見るとコイツも、かわ……いや、何も言うまい。 やれやれと溜息ひとつして。 俺は恐る恐る、起きた時点でハルヒの体から一時隔離していた己の両腕を、ゆっくりと元の位置に戻した。 軽い抱擁。これくらいなら殴られることもないだろう。 ──しかしこれはヤバイな。 腕の中の華奢なハルヒの体は温かいやら、柔らかいやら、いい匂いがするやらでしばらく──正直言うと一生手放したくなくなってしまった。 一体これは誰のプレゼントだ? というか俺が受けとっていいものなのか? まあ目の前に出されたものはありがたく貰っておくぞ。見当違いだと言われても知らないふりして戴いておく。取り上げられるなら奪うまでだ。 俺は心の底から欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。 そして俺はそのまま目を閉じる── ハルヒは温かかった。柔らかかった。いい匂いがした。 そして、 ハルヒは、とても甘かった。 ──終わり
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・クリスマス・ツーリング@東京 「2ちゃんねるバイク掲示板」で、恒例行事となった「クリスマス・ツーリング」に関する まとめサイトです。 編集する時間があまりないので、少しずつ反映していきます。 ・クリスマスツーリングはじまり 1 名前: サタン・クロス 投稿日: 02/12/18 22 22 ID MNJswLY7 単刀直入に言う 俺には彼女がいない しかし、年に一度のクリスマスにはなにかしたい気もする そこで 12月24日の夜にサンタの格好して都内を走り回って プチツーリングなどをしようと思うんだが、一緒にどうかね? 参加条件はサンタのコスプレ バイクにトナカイのオメンやツノをつけると更に気分が出る 珍走行為はほどほどにしたいが、希望者が多ければ 都内キャノソボールなど開催もありかと思うが、どうよ? 627 名前: サタン・クロス 投稿日: 02/12/24 21 11 ID pPNMrB1Z 今から家を出ます その前に一言言わせてください ネタスレだったのに引っ込みがつかなくなっちまった(号泣) 逝くぞ~! ・参加資格 原付2種以上、自動二輪車運転免許、免許に適合する二輪車、があればOKです。(原付1種では、二段階右折などにより、大きい車種と走行することが難しいことより非推奨、参加しないほうが無難) サンタさん、トナカイさんコスチューム系着用。違法改造車、DQN車はお断り。また、非常識な行動や行為をする方もお断りです。道は覚えてきましょう。 ・注意事項 ほかは読まないにしても注意事項だけは読んで守ってください。これを守らない人は後日晒される可能性があります。 ☆ 休憩地点 └ 今年も休憩ポイントはありません。疲れたら各自でどうぞ。 ☆ ├事前試走を激しく推奨。あらかじめgoogleで走行すべき道・車線等を確認、当日はルートマップをタンクに貼り付けるなど対策を御願いします。 ├ 運行前点検は自宅を出発する際必ず行ってください。 ├ 電飾を装着する際は走行中は常時点灯で、保安灯火(ウィンカーとかブレーキランプとか)に影響を与えない色、形式で。 │ 車体、積載物、身体での点滅・明滅・色の変化は控えておきましょう │(道交法第55条道路運送車両の保安基準第42条、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第218条を参照) ├ 危険なハイタッチもしない。手を振る場合にも周囲に十分注意してください。 ├ 爆音マフラー装着車は参加不可。純正マフラーに戻してから参加してください。 └ 珍走団などの不意な外部集団が合流してきた際は、速やかに全車一旦停止。 ◇道路交通法と一般常識を元に走行すること(道路交通法:http //japan.road.jp/Law/S26_Unyu67-F.htm)。 ├空ぶかしをしない。 ├すり抜けはやめましょう。 ├信号機を通過する時は注意をしましょう。(停止(赤)で交差点に進入しないようにして下さい) ├ホーンを鳴らさない(自車で危険回避不可能と思われる場合はこの限りではありません)。 ├電装品、装飾品等は車両から落下しないように装着しましょう。また、法律に抵触する事のないように気をつけましょう。 ├蛇行運転は列を崩したり、接触事故や重傷事故、死亡事故になる恐れがありますのでやめましょう。 ├車両異常が無いように整備をしましょう(燃料給油は当然です)。 ├急ブレーキは避けましょう。2台前を見て余裕のある運転を。急ブレーキは連鎖的に最後尾まで続きます。 └長時間の信号待ちや渋滞ではアイドリングストップ推奨。(バッテリーあがりに気をつけて下さい) ◇非常識な行動をしている方がいられましたら注意をしましょう。 ◇一般常識と法律を遵守する。これを注意していれば警察官から声をかけられても問題ありません。 ├団体行動をしていることを意識しましょう。 ├喫煙をされる場合、条例に従って喫煙可能場所で携帯灰皿を使用する等し、マナー良く喫煙をしましょう。 ├ゴミを出さないように心掛けましょう。万一ゴミが出た場合は持ち帰りましょう。 ├お子様と目が合ったり手を振られたらなるべく振り返してあげましょう(走行に支障を与える可能性がある時はしない)。 ├18才未満の方は、「クリスマス・ツーリング」へ参加する事を保護者の同意を得て、参加をして下さい。 │※「東京都青少年の健全な育成に関する条例第3章 第15条の4」の条例があります。 ├交通事故は自己責任。「任意保険加入」をしていると安心です。 ├インターネット等の公共の場に写真等を公開する場合は情報保護をするようにして下さい。 │※むやみに個人情報や個人情報につながるものをインターネット上に公開すると法律で罰せられる可能性があります。 └カップルやお子様にプレゼントをあげる場合は投げずに手渡しで、食品以外の物をお願いを致します。 ◇ガソリン満タンで参加しましょう ◇クリスマスツーリングの趣旨に沿わない参加者(服装・走行マナー等)は後日ネットで画像を晒される可能性もあります 当然の事ですが、集合場所やゴール地点ではあまり騒いだり無意味にエンジンを掛けたりするのはやめましょう。 ・走行方法 走行方法は、千鳥走行。マスツーリングに多く用いられる走行方法です。 ------------(センターライン ●←→● ● ● ● ● ● ● ------------(路側帯、車道外0側線 ●:バイク 距離を保つ目安は自分の"斜め前"のバイクではなく、自分の"前"のバイク(←→で示したところ)を目安に走行しましょう。 これにより車列を短くする事が可能になります。 例年、車間距離が短い方がいらっしゃいますので車間距離には十分気をつけて頂くようお願いいたします。 2009年では、千鳥走行する気が無い人すらちらほら見えましたので守ってください。また走る斜線はなるべく一車線にしましょう。年末でイライラしながら運転してる一般の人がもっとイライラしてしまいます。 ・コスチュームとプレゼントについて 衣装、電装品、装飾品等は ・100円ショップ ・ドン・キホーテ ・東急ハンズ 等で販売されています。 プレゼントをする場合、食品以外の物でお願い致します。 ・プレゼントを用意しても渡せるのは限られたタイミング ・警官に「配っている物は食品じゃないよね?」と尋ねられた と書き込みがありました。 ----クリスマスツーリング 2010 東京 当日---- ・各地域出発組情報 湾岸道路組 カルフール幕張店駐輪場 18 30出発 甲州街道組 永福IC手前松原2丁目交差点付近 18 30出発 日光街道組 道の駅あんぎょう 18 00出発 川越街道組 サンクス川越小仙波店 17 15出発 さいたま組 マクドナルド浦和曲本店 18 30出発 R246組 マクドナルド246梶ヶ谷店(ユニクロ川崎梶ヶ谷店) 17 30出発 第一京浜組 旧ライコランド蒲田店 18 00出発 横浜MM組 スーパーオートバックス横浜MM店 16 30出発 ・集合場所、ゴール地点 集合場所:晴海ふ頭 東京都中央区晴海5-8 付近 http //www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E139.46.38.4N35.38.41.7 ZM=12 ゴール地点:明治公園 http //map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll lat=35.676270514228015 lon=139.71371213833004 z=19 mode=map pointer=on datum=wgs fa=ks home=on hlat=35.676270514228 hlon=139.71371213833 layout= ei=utf-8 p= ・当日の流れ、当日注意事項 ☆ 日時 ├ 開催日:2010年12月24日(金) ├ 集合時間:19 30 └ 出発時間:19 30 スタート(集合場所での混乱を避けるため、集合時間と出発時間は同時刻) ☆ 集合場所 └ 東京都中央区晴海埠頭 ☆ 休憩地点 └ 今年も休憩ポイントはありません。疲れたら各自でどうぞ。 ☆ ├事前試走を激しく推奨。あらかじめgoogleで走行すべき道・車線等を確認、当日はルートマップをタンクに貼り付けるなど対策を御願いします。 ├ 運行前点検は自宅を出発する際必ず行ってください。 ├ 電飾を装着する際は走行中は常時点灯で、保安灯火(ウィンカーとかブレーキランプとか)に影響を与えない色、形式で。 │ 車体、積載物、身体での点滅・明滅・色の変化は控えておきましょう │(道交法第55条道路運送車両の保安基準第42条、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第218条を参照) ├ 危険なハイタッチもしない。手を振る場合にも周囲に十分注意してください。 ├ 爆音マフラー装着車は参加不可。純正マフラーに戻してから参加してください。 └ 珍走団などの不意な外部集団が合流してきた際は、速やかに全車一旦停止。 ◇道路交通法と一般常識を元に走行すること(道路交通法:http //japan.road.jp/Law/S26_Unyu67-F.htm)。 ├空ぶかしをしない。 ├すり抜けはやめましょう。 ├信号機を通過する時は注意をしましょう。(停止(赤)で交差点に進入しないようにして下さい) ├ホーンを鳴らさない(自車で危険回避不可能と思われる場合はこの限りではありません)。 ├電装品、装飾品等は車両から落下しないように装着しましょう。また、法律に抵触する事のないように気をつけましょう。 ├蛇行運転は列を崩したり、接触事故や重傷事故、死亡事故になる恐れがありますのでやめましょう。 ├車両異常が無いように整備をしましょう(燃料給油は当然です)。 ├急ブレーキは避けましょう。2台前を見て余裕のある運転を。急ブレーキは連鎖的に最後尾まで続きます。 └長時間の信号待ちや渋滞ではアイドリングストップ推奨。(バッテリーあがりに気をつけて下さい) ◇非常識な行動をしている方がいられましたら注意をしましょう。 ◇一般常識と法律を遵守する。これを注意していれば警察官から声をかけられても問題ありません。 ├団体行動をしていることを意識しましょう。 ├喫煙をされる場合、条例に従って喫煙可能場所で携帯灰皿を使用する等し、マナー良く喫煙をしましょう。 ├ゴミを出さないように心掛けましょう。万一ゴミが出た場合は持ち帰りましょう。 ├お子様と目が合ったり手を振られたらなるべく振り返してあげましょう(走行に支障を与える可能性がある時はしない)。 ├18才未満の方は、「クリスマス・ツーリング」へ参加する事を保護者の同意を得て、参加をして下さい。 │※「東京都青少年の健全な育成に関する条例第3章 第15条の4」の条例があります。 ├交通事故は自己責任。「任意保険加入」をしていると安心です。 ├インターネット等の公共の場に写真等を公開する場合は情報保護をするようにして下さい。 │※むやみに個人情報や個人情報につながるものをインターネット上に公開すると法律で罰せられる可能性があります。 └カップルやお子様にプレゼントをあげる場合は投げずに手渡しで、食品以外の物をお願いを致します。 ◇クリスマスツーリングの趣旨に沿わない参加者(服装・走行マナー等)は後日ネットで画像を晒される可能性もあります ◇ガソリン満タンで参加しましょう 当然の事ですが、集合場所やゴール地点ではあまり騒いだり無意味にエンジンを掛けたりするのはやめましょう。 合計→ - 今日→ - 昨日→ - ------------------------------------------- ・まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理
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俺たちはいつもの喫茶店に集合していた。今日は祝日だがSOS団は営業中だ。 「今年もクリパやるわよ~!」 とハルヒが突然言い出した。やるだろうとは思っていたが、なにも前日に言わなくても 「今年は休みだから部室で出来ないじゃない、だから有希の家でやろうと思ったんだけど、いい?有希」 さすがのハルヒでも休みの日に学校に不法侵入はしない様だ。 「…今年はダメ。この後、わたしは親の所に行かなくてはならないから」 「えっそうなの?」 珍しい事もあるもんだな。というか親って、情報何とかだろ?何かあるのか。 「あの~涼宮さん。わたしも両親と、なんですけど~」 「みくるちゃんもなの?」 「実は僕もなんです。バイト先のクリパにいかないと行けなくなりまして」 みんなそろって用事があるってか?何だか心配になってきた。 「古泉くん!バイトとSOS団、どっちが大事か分かってる?」 「当然SOS団です。が、バイト先のガチムチな先輩に今年は来ないと掘るぞっと言われてまして…」 古泉が神妙な顔つきで言った。 「しかたがないわね。貞操の危機じゃ」 ハルヒは残念そうに顔を暗くしている。今年はクリパはなしか。ハルヒの手料理が食べられると思っていたのだが。 「チャンスですよ?涼宮さんの手料理と言わず涼宮さんをいただく」 古泉が吐息が掛かるくらい近付いて言った。ええい寄り過ぎだ。 しかし古泉の言う通りチャンスでもあるな。ん?もしかしてお前ら… 「お気付きになられましたか。まぁ頑張ってください」 そうかい。お前らみんなか、二回目の探索の時みたいに。 「仕方ないわね、でも冬の合宿はちゃんとでるのよ」 「…大丈夫」 「ちゃんとでますぅ」 「そちらの方はぬかりなく手配しておりますので」 冬合宿の事は後でだ。作者は夏合宿すら書き掛けだからな! 「では、今日は先に失礼しますね。色々準備があるので」 「わたしも」 「わたしもですぅ。涼宮さん、キョン君、じゃぁまた」 みんなさっさと帰ってしまった。残ったのは俺とハルヒだけである。 ハルヒがコーヒーを飲み終わるのを待ってから話し掛けた。 「ハルヒ、俺は明日開いているのだが」 「じゃあ明日、あんたん家いくわ。妹ちゃんにも会いたいし」 ハルヒと過せる事にはなったはいいが、家だと色々と邪魔が入りそうだ。 妹とか親とか妹とか妹とかあと妹とか妹に。 しかたがない。先程、古泉が席を立つ時に俺に渡した物がある。それを使うとしよう。 「実はこういったものがあるのだが」 チケットの様な紙をハルヒに見せた、とたんにハルヒがその紙を俺の手から奪い取る。 「へ~!ホテルのディナー招待券ね。なんでこんなん持ってんの?」 古泉に聞けとは言えないな。商店街の福引きで当たった事にしよう。 「五人まで無料招待なのね。出来ればみんなで行きたかったな~。みくるちゃんと有希にドレス着せたりして」 それも悪くはないが、それじゃこの券をもらった意味がない。みんなで行くなら古泉が自分で出していたはずだからな。 「みんなで行くのもいいが、俺は、ハルヒと二人で行きたい」 「えっ?いま…」 ビックリした様だな。まさか俺がこんな事言うとは思ってなかったみたいだ。 「だから、お前と二人だけで行きたいって言ったんだ」 さらに言って見る。 「分かってるわよ!そうじゃなくて…その、」 みるみるハルヒの顔が赤くなっていく。上目遣いで見ないでくれ。反則なくらい可愛いぞ! 二人だけでって言葉だけで分かった様だな。だが、ちゃんと言っておいた方がいいだろう。 「ああ、俺はお前が好きだ!だからハルヒと二人で行きたいんだ」 言い切った。冷静を装ってはいるが、実はものすごいスピードで心臓が動いている。 ハルヒはうつむいて沈黙したままだ。この沈黙にはあまり長く耐えられそうにないぞ。 いきなりハルヒが立ち上がり、招待券を突きだして来た。ダメなのか?受け取らないでいると、 「何やってんのよ、バカキョン!さっさと受け取りなさいよ。いい、明日四時にあたしん家にきなさい。いいわね!」 ああ、という事は… 「あんたが持ってなさいって事よ!…二人だけで行きましょ」 よかった。心臓が止まるかと思った。はぁーっと溜息をつくと、 「そんなんでちゃんとエスコートできるの?もっとしっかりして欲しいわね。いい遅れたらキッツイ罰を与えてあげるわ」 100Wの笑顔で言ったハルヒは風の様に店からでて行った。 今年のクリスマスはハルヒと二人で、か。 ――――――――――――― 12月24時19時40分長門有希宅 僕らは長門さんの部屋でささやかなパーティを開いてました。 「今頃、キョン君と涼宮さんは豪華ディナーかぁ~」 そうですね。実はあの招待券、ホテルの宿泊もなんですよ 「ええっ!そうなんですかぁ」 「聖なる夜が性なる夜になるのは時間の問題」 長門さん、女性がそんな事が言っては… 「気にしてはいけない」 と、彼らの性こ…じゃない成功を祈りつつ話をしていました。 ところで長門さん。部屋暑くないですか? 「この部屋の現在の気温は22℃、暑く感じるのはあなたの新陳代謝が活発になっているため」 なるほど、でもアルコールを摂取した訳でもないのに? 「実はあなたの飲んでいる物は赤マムシドリンク。見た目と味は普通のジュースに情報改変しておいた」 何しているんですか!どおりで情熱を持て余す感じになってきた訳ですか。あっ、鼻血が… 「はい、古泉くんティッシュ」 ありがとうございます。朝比奈さん、って密着し過ぎです!む、胸が… 「うふふっ、古泉くんいがいとかわいいね」 何だか朝比奈さん、キャラが違いますよ。なんと言うか大人の女性って感じが。…長門さん何かしましたね 「朝比奈みくるが潰れない程度に微量のアルコールを混入させておいた」 何しているんですか!まぁこういった感じの朝比奈さんも悪くないですけど。 「…ナニをするのはこれから」 えっ? 「ふふっ、古泉くんココは、りっぱね」 ちょ~!どこさわっているのですが。いやいやダメですって。朝比奈さんあまり弄らないでください。 「今年のクリスマスは性なる夜ですねぇ」 「頑張って」 いや、二人ともなにを…って、ちょ、まっ、脱がさ…あっ、うっ、このオチは…ア、アッー! おしまい。
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キョン「……朝倉、これ…」 朝倉「えっ…?」 キョン「メリークリスマス(ニコッ)」 朝倉「あ……」 キョン「開けてみろよ」 朝倉「……うん」(パカッ) キョン「サイズは多分合ってると思う」 朝倉「これは、指輪?」 キョン「あぁ、これを左手の薬指にはめてくれるか?」 朝倉「それって……プロポーズ?」 キョン「そういう意味で送ったんだがな、はは……………朝倉、結婚しよう」 朝倉「キョン君……」 ・ ・ ・ ・ ・ チュンチュン…… 朝倉「(ガバッ!!)……ゆ、め……?……キョンくん」 朝倉涼子のグサデレ ~クリスマス編~ 第1話 第2話 朝倉「ふぅ……」 キョン「朝から浮かない顔だな、どうした?」 朝倉「ちょっとね…(あなたが夢なんかに出てきたからよ……)」 キョン「そうか…あっ、そうだ朝倉」 朝倉「ん、なぁに?」 キョン「クリスマス」 朝倉「(ドキッ!?)」 キョン「ケーキってホールを一人で食えると思うか?あれを一人で食べるのには 憧れるよな」 朝倉「…そ、それはちょっと多いんじゃない?」 キョン「やっぱり多いか…それでクリスマス」 朝倉「(ドキッ!?)」 キョン「ツリーって松の木じゃ代用できないか?」 朝倉「………それはちょっと無理があるんじゃない?」 キョン「そうか……で、クリスマs」 朝倉「もうっ!!しつこいわね!!なんなのさっきからクリスマスクリスマスって!勝手に一人でパーティでもしてればいいじゃない!!」 キョン「な、なに怒ってるんだよ」 朝倉「うるさいわね、あたしは今日虫の居所が悪いの!だから…じゃ死んで♪」 キョン「ちょww怒ってるからって殺すなwww」 朝倉「あなたがあまりにしつこいからよ」 キョン「(やっぱり刺されないと始まらない…はぁはぁ)グフッ」 第3話 キョン「朝倉はクリスマスどうやって過ごすんだ?」 朝倉「そうねぇ、うちで一人寂しくすごしてみようかしら」 キョン「そんな悲しいこというなよ」 朝倉「ふふ、ちなみにキョン君は?」 キョン「俺は、そうだな…このままだと家族団欒のクリスマスが待っているな」 朝倉「あら、素敵じゃない」 キョン「しかし、高校生になってまで家族と過ごすのもなぁ」 朝倉「仲が良いのは素敵なことよ♪……でもまぁ、誰か他の人と過ごしたいなら…あたs」 ハルヒ「キョン!!今年のクリスマスは部室で鍋よ!!ちゃんと予定を空けておきなさいよ!?」 キョン「今年もか?」 ハルヒ「文句は言わせないわ!じゃああたしは部室に先に行ってるわ」 キョン「やれやれ」 朝倉「……よかったわね、予定ができて」 キョン「何一つうれしくないがな。朝倉、さっき何を言いかけたんだ?」 朝倉「え?……あぁ、なんでもないの……」 キョン「よかったら朝倉も参加するか?」 朝倉「あ、あたしは遠慮しておくわ。あたしなんか団員でもなんでもないんだもの……」 キョン「気にすることないと思うぞ。あいつらも喜ぶだろうしな」 朝倉「ほんと大丈夫だから。キョン君だけで楽しんできたらいいわよ。ね?」 キョン「そうか………あ、じゃあ俺はあと部室に行くよ。もたもたしてたらまた ハルヒにどやされちまう。じゃあな朝倉」 朝倉「うん……ばいばい」 朝倉「くすん……」 第4話 朝倉「くすん……ひっく…」 ?「あらあら、そんなに泣いてしまってはせっかくのかわいい顔も台無しですよ?」 朝倉「え…?」 喜緑「ね?これで涙をふいてください」 朝倉「う、うん…ひっく…ありがとう」 喜緑「何かあったんですか?」 朝倉「……」 喜緑「ふぅ…彼に何か言われたんですか?」 朝倉「別にそんなんじゃないわ…(ぷいっ)」 喜緑「強がっていては何も進展しませんよ?あなたはいつも強がってばかりなんだから…」 朝倉「…」 喜緑「…」 朝倉「ぅ……ひっく、だって、だってキョン君が…キョン君がぁっ……ひっぐ、ひぐ…」 喜緑「よしよし…」 朝倉「い、今までずっと…ひぐ、一緒にいたのに……春も、夏も…秋も…えっぐ……」 喜緑「うんうん……」 朝倉「だから、キョン君と…ぐすっ、一緒に…ク、クリスマス…過ごしたかったのにぃ……うっ…」 喜緑「……」 朝倉「っく、あたし、どうしたらいいのかな……?」 喜緑「今からでも遅くはありませんよ」 朝倉「ほんと?」 喜緑「彼の気持ちがまだあなたのほうに残っているなら、もしかしたら…」 朝倉「でも」 喜緑「『でも』なんて言ってたらあなたは絶対後悔しますよ」 朝倉「……うん、そうね。あたしがんばってみるわ」 喜緑「涙も止まったようですし、もう彼を追いかけられますね?」 朝倉「えぇ。ありがとう」ダッ 喜緑「ふふ……」 第5話 ガチャ 朝倉「キョン君はいる!?」 ハルヒ「な、なによ!あんたいきなり人の部室に入ってきて!!」 朝倉「キョン君は!?」 みくる「キョンくんは1人でおでかけしましゅたよ?」 朝倉「え!?」 ハルヒ「さっき、クリスマス用の買い物に行かせたのよ。買い物が済んだら帰宅しても良いって言ってあるから今日はもう部室に来ないと思うわよ」 朝倉「そんな……どこに買い物へ行ったの?」 ハルヒ「そんなの部員じゃないやつに言うはずないじゃない」 朝倉「ッ!……そ、そうよね…ごめんなさい。じゃ、あたし帰るわね、勝手に入ってきて本当ごめんなさい」 ハルヒ「わかればいーのよ。」 朝倉「…」ガチャ 朝倉「ふぅ、どうしよう…」 ガチャ みくる「(キョンくんなら商店街に行きましゅたよ)」 朝倉「え?」 みくる「(しぃー…ふふふ、しゅじゅみやしゃんには内緒でしゅよ?がんばってくだしゃいね)」 朝倉「ありがとう。え、えーっと……空気の人!!」ダッ みくる「ふふ、わざわざ教えてあげたのに空気の人でしゅか。ふふふ…」 第6話 商店街 朝倉「キョン君、どこにいるの?」 朝倉「キョン君…」 キョン「朝倉じゃないか、こんなところでなにやってるんだ?」 朝倉「ひっ!」 キョン「なんつう驚き方だ、らしくないな。どうしたんだ?」 朝倉「え、その…」 キョン「お前の家はこっちじゃないだろ?」 朝倉「えーっと、なんて言うか……そう!涼宮さんに言われたのよ。キョン君の手伝いをして、ってね♪」 キョン「手伝い?あのハルヒがお前に頼んだのか?」 朝倉「そ、そうよ?だから手伝ってあげるわね。まったく…どうしてあたしがこんなことしなくちゃならないのかしら」 キョン「それはうちの団長がすまないことをしたな。俺のほうは1人でも大丈夫だから朝倉は帰ってもいいぞ?」 朝倉「そんなことできるわけないじゃない!」 キョン「ッ!?」 朝倉「あっ!…だ、だから。ほら、頼まれたことを投げるなんてあたしにはできないってことよ♪」 キョン「あぁ、そういうことか。なら手伝ってもらわないといけないな」 朝倉「そういうこと♪」 キョン「だが、もう買い物は終わっちまったからな。あとはうちまで荷物を運ぶだけなんだが、それでも良いのか?」 朝倉「ふふ、あたしが手伝うって言ってるでしょ?」 キョン「そうか。じゃあお言葉に甘えて…お願いしますよ、っと」 朝倉「はいはい♪」 キョン宅 キョン「ふぅ!すまなかったなこんな遅くまで」 朝倉「そんなの気にしないで(結局話せなかったまま着いちゃった…)」 キョン「じゃあうちまで送るから待ってろよ、家の中に荷物を置いてくるから」 朝倉「あ…いいのよそんな、1人でも帰れるわよ」 キョン「何か話したいこともあるんだろ?」 朝倉「!?」 キョン「表情に出てたぞ。だからちょっと待ってろ」 朝倉「うん……」 ・ ・ ・ ・ ・ 朝倉「……」 キョン「……」 朝倉「何か話したら?」 キョン「話があるのはお前だろ?だから俺からは何も話さないよ」 朝倉「……あの、その、クリスマスの話なんだけど…」 キョン「ん?やっぱり俺らのパーティに参加することにしたのか?」 朝倉「そ、そうじゃなくて……クリスマスを…その、」 キョン「?」 朝倉「あたしt」 谷口「よぉっ!キョン!!何やってんだこんなところで?」 キョン「なんだ谷口か」 谷口「なんだとはなんだ、失礼な。あれ?なんで朝倉と歩いてるんだ? まさかお前らwww」 キョン「そ、そんなんじゃねぇよ!なぁ朝倉?」 朝倉「(ズキッ)……」 キョン「朝倉?」 朝倉「……」 キョン「どうしt」 朝倉「触らないで!!!!」 キョン「!?」 朝倉「キョン君の、バカ!!!!!あんたなんかあんたなんか死んじゃったらいいのよ!!」グサッ キョン「グフッ」 朝倉「あなたも変なとこに現れないで!!!!」グサッグサッ… 谷口「ぐぼぁ」 朝倉「うわぁぁぁん……」 キョン「はぁはぁ、朝倉…今日はいつもに増して鋭さが違うな……谷口大丈夫か?」 谷口だったもの「……」 朝倉「ひっぐ…うっぐ……キョン君の、バカ!!キョン君の……ばかぁ!!!!!」 第7話 朝倉宅 朝倉「えぐ、うっ……もう知らないッ!キョン君なんか…キョン君なんかぁ……ふぇぇぇん」 長門「……」 朝倉「うっ…うっ……」 長門「カレー食べる?」 朝倉「うわぁぁぁぁん!!!」 長門「……そう」 キョン宅 キョン「なんだって朝倉のやつあんなに怒ってたんだ…?」 キョン「あいつ、そういえば泣いてたな……」 キョン「腹でも痛かったのか?」 第8話 12月24日 SOS団部室 ハルヒ「さぁて鍋も煮えてきたことだし、早速始めるわよ!!!」 古泉「盛り上がってきましたね」 みくる「おいしそうでしゅねぇ」 長門「……(ウズウズ)」 キョン「……」 ハルヒ「どうしたのよキョン、有希みたいに黙っちゃって。あんたなんか変よ?」 キョン「ん、あぁ。なんでもないんだ、さぁ始めようぜ」 朝倉宅 朝倉「結局、一人でクリスマスを迎えることになっちゃったなぁ…あはは……」 朝倉「さみしくなんか、ないもの……」 部室 ハルヒ「キョン!なんかやりなさい!!」 キョン「無茶振りすぎるだろ!」 「「あははは……」」 朝倉宅 朝倉「……」 朝倉「もうこんな時間…買い物に行こうかしら……」 部室 みくる「うーん、もう食べられないでしゅ……」 長門「…(ガツガツ)」 ハルヒ「有希もやるわね(ガツガツ)」 古泉「二人でババ抜きもいいですね」 キョン「楽しさが見出せんがな」 朝倉宅 朝倉「……」ガチャ キィー……バタン―――― 第9話 朝倉「綺麗な空……クリスマスにはいい夜ね…ふふ、あたしには関係ないか……」 部室 「「zzz……」」 キョン「みんな寝ちまったのか」 古泉「それでは二人しかいないことですし…」 キョン「な、なんだよ?」 古泉「ふふふ…」 キョン「気持ち悪いぞ」 古泉「高校生らしく、いわゆるぶっちゃけトークをしましょうか」 キョン「はぁ?」 古泉「ずばりあなたは誰が好きなんですか?」 キョン「お前は中学生か?」 古泉「僕も男子高校生ですからね。そういうことには一応興味はありますよ。で、誰なんですか?もちろん僕と言う選択肢もありますよ?ふふ」 キョン「黙れ。しかし…あまり考えたこともなかったな」 古泉「おや、彼女ではなかったのですか?」 キョン「誰のことだ?」 古泉「あなたといつも一緒にいる人ですよ」 キョン「朝倉のことか?」 古泉「あなた方はいつだって一緒にいたではないですか、ちょっぴり嫉妬してしまうくらいにね、ふふ。そのような感情があるからだと思っていましたけどね」 キョン「それは……」 朝倉『キョン君♪』 キョン「朝倉は……」 朝倉『じゃ死んで♪』 キョン「あいつは…」 朝倉『キョン君の、バカ!!』 朝倉『ひっぐ…うっぐ……キョン君の……ばかぁ……』 キョン「朝倉っ!?……」 古泉「?」 キョン「すまん古泉、急用を思い出した。ちょっと出てくる」 古泉「ふふふ、そうですか。こっちのことは任せてください」 キョン「すまん!」ダッ 古泉「クリスマスには何があるかわかりませんね……」 第10話 キョン「畜生!俺はバカか!?あんなにも朝倉は俺の側にいてくれたのに…朝倉はあんなにも俺とのクリスマスを望んでくれたのに……朝倉、どこにいるんだ!?」 朝倉「……」 キョン「朝倉!いるか!?」ドンドンッ キョン「家にいない?……どこへ、行ったんだ?」 キョン「くそっ…考えても仕方がない……その辺を探すか」 朝倉「……」 キョン「朝倉…どこだ!!」 朝倉「……」 キョン「朝倉ぁぁッ!!」 朝倉「…?今、誰かの声が……」 キョン「朝倉ぁぁぁぁぁ!!!!」 朝倉「やっぱり聞こえる。誰かしら?」 キョン「朝倉どこにいるんだよ……」 朝倉「誰…?」 キョン「朝倉ぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!」 朝倉「え?キョン君!?」 キョン「朝倉ぁ…」 第11話 朝倉「キョン君!!」 キョン「ッ!?」 朝倉「……」 キョン「はは…公園にいたのか…はぁはぁ」 朝倉「……どうして?」 キョン「随分探したぞ?」 朝倉「ねぇ……どうして?」 キョン「どこに行っちまったかと思っt」 朝倉「どうして!!??今更何しに来たの!?」 キョン「朝倉…」 朝倉「涼宮さんたちと一緒にパーティしてればいいじゃない!こんなところに来る理由なんかないじゃない!!」 キョン「朝倉…」 朝倉「さっさと戻ればいいじゃない!!」 キョン「朝倉……」 朝倉「なによなによ!!あたしのことは放っておけばいいじゃない!!!!」 キョン「朝倉ッ………涙が、出てるぞ?」 朝倉「え……?こ、これは……」 キョン「随分待たせたな。すまなかった」 朝倉「別にあたしはここであなたを待ってたわけじゃないわよ……」 キョン「そうじゃないんだ………おまえの気持ちに気づくまでに随分と待たせてしまったな」 朝倉「……」 キョン「俺は極度の鈍感のようだな、はは…」 朝倉「…いわよ(ぼそっ)」 キョン「え?」 朝倉「遅いわよって……言ったのよ、ばかぁ……ふぇぇぇぇん……」 キョン「……」 朝倉「ばかばかばかばか……あたしを、ひっぐ、い、いつまで待たせる気なのよぉ……」 キョン「すまなかった…」 朝倉「ずっと、ずっと待ってたのに、っく、キョン君のこと…こんなにも好きなのに……キョン君のことが大好きなのに!!!」 キョン「俺もだよ…」 朝倉「……今、なんて……?」 キョン「俺も朝倉が好きだ…笑ってるおまえが、ナイフ振り回してるおまえが……いつも俺の横にいてくれるおまえが、俺は好きだよ」 朝倉「キョン君……うわぁぁぁぁぁあぁあぁぁん……ふわぁぁぁぁあん」 キョン「おいおい……泣き虫だな」 朝倉「えっぐ、うっぐ、本当に、本当にあたしのこと好き?」 キョン「あぁ大好きだ」 朝倉「よかった…あたしのこと、そんな風に考えてくれてるなんて思わなかったから」 キョン「そんなことないさ、その証拠にほら、これ」 朝倉「なぁにこれ?」 キョン「クリスマスプレゼントってやつだよ」 朝倉「え?」 キョン「ちゃんとおまえのために買っておいたんだ。受け取ってくれるか?」 朝倉「うん…」 キョン「じゃあ開けてみてくれ」 朝倉「……」パカッ キョン「サイズは多分合ってると思うんだが…」 朝倉「これって、指輪……」 キョン「はめてみないのか?」 朝倉「そうね。ふふ」 キョン「その指は…」 朝倉「この指にはめる意味がわかるでしょ?」 キョン「あぁ。どうやら俺は告白と同時にプロポーズまでしてしまったようだな」 朝倉「そうよ、あなたはこれからいつまでもあたしといることになったんだからね?ふふ」 キョン「一生俺はお前に刺され続けるって事か?」 朝倉「そのとおり♪」 キョン「やれやれ」 朝倉「キョン君、」 キョン「ん?」 朝倉「……メリークリスマス」チュ キョン「!?」 朝倉「あたしからのプレゼント♪」 キョン「もうくれないのか?」 朝倉「考えておいてあげる♪さぁうちに行きましょ、今日はクリスマスなんだからね♪」 キョン「ふふ、やれやれ」 朝倉「(サンタさん、最高のプレゼントありがとう♪)」 朝倉涼子のグサデレ ~クリスマス編~完