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チベット語速習帳 1≫ 可能な限り短期間で古典チベット語文献 、とくに仏教文献の素読と読解ができるようになることを目指す。 次の3段階での習得を目指す 1)字母と正書法、単語の構成法 素読ができるようになることは、文献読解に至る重要なステップと考えられることから、とにかく早い段階で、すらすらと音読できるようになることを目標とする。また、この段階で辞書の使い方も身につける。 2)統語法の基礎の習得 構文の基礎(動詞と名詞の区別、基本的な語順、格助詞)を見つける訓練をし、指導者のガイドで文の意味がとれるようになる。 3)文章の読解 基本構文を学び、辞書を使いながら独力で文章を読解できるようになる。 以上の三段階を経て、最終的には独力で文献を読むことができるようになることを目指す 。
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§.1 チベット文字の読み方 音素と字母 (第1回:字母とその読み方):・ この単元ではチベット文字の種類と形、その読み方・書き方、ローマ字による転写法等を、「字母表」に即して紹介する。 チベット文字に習熟し、自由に使いこなせるようになることがここでの目標となる。 修了の目安は、チベット文字の「字母表」を独力で再構成できるようになること、とする。 音素と字母 チベット語には「5つの母音」と、「30の子音」の音の区別(音素)がある。 この音の区別を30の字母と4つの母音記号との組み合わせによって表示する。 ※日本語の50音表は母音の区別に個別の字母を当て、清音/濁音/半濁音等の変音を記号により指定する方法をとるが、チベット語では有声/無声、有気/無気、鼻音の区別に字母を割り当てる。サンスクリット語の影響が強い。 ※2 30文字なので、たとえば「短歌」のリズム(5 7 5 7 7→31文字)に乗せてしまえば覚えやすいかもしれない。 アルファベットによる転写法 ローマ字アルファベットによる転写方法としては、今日、”Wylie(ワイリー)方式”と呼ばれる転写法が一般に用いられている。ワイリー方式はアクセント記号や特殊文字などを使わず、通常のアルファベット26文字の組み合わせだけでチベット文字のもつ音価をローマ字に転写するという特徴を持つため、テキスト・ファイル形式での保存ができ、PC上でデーターをやり取りする上では非常に便利な方式だといえる。一方で、文字数が多く見かけが煩雑になりがち、という欠点があるので、慣れるまでは読み取りに注意を要する。 字母表 字母(父字:bsal byed)は30種類。4声(無気・帯気・有声・鼻音)×8行(※ha行は2字のみ) ※前半の二声は明るく(高声)、後半の二声は沈んだ(低声)で発音する。 字母は子音の区別を表しており、発声時の口の形、発声部位を指定する。 母音の区別は字母に母音記号を付すことでなされる。この際、母音記号を付さない字母は「a(あ)音」で発音する。従って、母音記号は残りの四母音(dbyangs bzhi)に対応する四種類となる。 梵字転写文字(6種) 梵字転写の際に用いられる特殊な字母で、基本字母を左右反転させたものであるため「逆字」(log yig)と呼ばれる。典籍や人物などの固有名などを書き表す際に用いられる。 ※大蔵経目録などで練習できるか、あまり詳しくやる必要はない。 字母表の記憶と練習 (練習)30の字母と母音記号を使って、チベット文字で書かれた日本語の文章を読み取ってみる。また、
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第5回 主語と述語動詞 ・ チベット語の動詞の活用変化は規則性に乏しく、複雑で、このルールを覚えることのメリットはあまりない。 ・ 代わりに、チベット語では不定詞+代動詞という構文による表現が発達しており、その使い方をよく知っておく必要がある。 ・ 様々な修飾・被修飾関係の作り方、文節の区切りの目安となる語を発見することに慣れて、文の骨子をつかめるようになることが大事である。 ・ この単元では、前回に引き続き、単文を素材に、その分析を可能にする様々な文法ルールを学ぶが、今回は特に主語と述語動詞に関連する事柄を扱う。したがって、前回学んだ文節の区切り方を応用し、分を分析した後、主語+述語動詞をしっかり抜き出せるようになること、がここでの修了要件となる。 (動詞②(一般動詞)/代動詞表現/動詞接頭語/修飾語/切り出しの助詞/引用符) ・・・動詞変化の一般則 チベット語の動詞は、それぞれの語が最大、三つの時制と命令法に対応する四つの形に変化する。変化は必ずしも規則的ではなく、また全ての動詞に四つの形が用意されているわけでもないので、変化のルールは甚だ複雑である。 おそらくチベット人も動詞の変化の複雑さに辟易していたのだろう。以下に説明するように、チベット語では時制の違いや態の区別を、個々の動詞の変化によって表すよりも、「不定詞+(英語の”do”のような)代動詞」、あるいは各種の助動詞を用いて作る構文を好む。 そのため、実際上、動詞の形態変化についての細かな知識が必要になることは、それほど多くない。従って、動詞については変化のルールを覚えるよりも、個々の動詞が出てきたときに、意味ごとそれぞれの形を覚えてしまった方がよい。 ※ 時制についてはサンスクリット語の文法に対応させてオマケで導入されたようとなことがあり、あまり厳密に訳出しようとしなくてもよい。むしろ、未来形は受動的な意味を表すのに使われるので、時というよりも、態の見極めに関して意味をもつ。 ただし、辞書を引くために「不定形(原形)」に見当を付けることが必要になるときがあるので、原則的な「見分け方」は予め知っておくと便利である。 ※ 最も多くの動詞は不変化である、ということを知っておくことも有益であろう。以下に紹介する一般則は、変化する動詞についてのルールである。 ※ われわれが知っておきたい/知っておくべきなのは便宜的な見分け方である。語形変化の一般則を知って過去形や未来形を作れるようになる必要はないし、大抵の場合、作ってみたとしても正解に必ずしもたどり着けるわけではないので、あまりルールにはこだわらないことである。 ①チベット語の時制は第一に「添前辞」で見分けることができる。 現在→’a 過去→ba 未来→ga,da 命令→添前辞ナシ ②基字および母音の変化 過去形・未来形では母音がa音に変化する。命令形については、不定形の母音と変らず、あるいはo音に変化する。 チベット語において母音は母音記号で表され、なかでもa音は母音記号を持たなかった。従って、母音記号のついているものは大体の場合現在形(不定形)であると予想することができる。 また、過去形を作る際には基字が同じ行内の無声・無気音(I列)に交代する。未来形は不定形と同じまま。命令形は帯気音(III列)に交代する。 例) 現在形 過去形 未来形 命令形 結ぶ dogs btags gdags thogs 切る gcod bcad gcad chod 調伏する dul btul gdul thul 施す gtong* btang gtang thongs 念持する chang bcangs bcang* chongs ・・・「不定詞+代動詞」の構文 「行う・為す」を意味する動詞byedを変化させて(現在:byed、過去:byas、未来:bya) 動詞の不定詞につけ、時制や態の変化を表す構文がある。個々の動詞の変化形を覚えていなくても良いため、よく用いられる。不定詞は動詞の不定形にpa-rをつけて作る。 また、byedのほかにも、動詞の不定形に結びついて三時制を表す種々の動詞がある。 現在 過去 未来 byed byas bya mdzad, ‘grub zin, gyur, byung, song ’gyur, ’(/y)ong dogs pa-r byed dogs pa-r byas dogs pa-r bya 結ぶ 結んだ 結ぶだろう、結ばれる* ※ 未来形を表す“…pa-r bya”は受動態としても用いられる。また、現在形を表す“…pa-r byed”は特に能動態であることを表示するとき、また使役の用法で用いられる。 ・・・連用修飾法(副詞/句) ① 時や場所などを表す副詞句: 別紙に代表的なものをまとめる。 ② サンスリット語の接頭辞に由来する副詞句: 動詞の直前に別紙に掲げた副詞句(主としてla-don助詞で終わっている)があるとき、大抵の場合、それらはサンスクリット語の接頭辞を機械的に翻訳したもので、それほど強い意味を担っていない。むしろ、動詞とセットで、熟語として理解すべきである。(辞書にも熟語として収録されている) ・・・連体修飾法(形容詞/句) 形容詞は名詞語幹にpaをつけて作られる。チベット語の形容詞(連体修飾語)は被修飾語の後に置かれる。あるいは、属格の助詞を伴って被修飾語の前に置かれる※。また、被修飾語が1文字からなる語のときは特に、中間の語が省略されて、形容詞の語幹が前から名詞を修飾することがある。 mi (bzang ba) ←→ (bzang ba’i) mi ←→ (bzang) mi me tog (mdzes pa) ←→ (mdzes pa’i) me tog ←→ --- chos (dam pa) ←→ (dam pa’i) chos ←→ dam chos ri (mtho ba) ←→ (mtho ba’i) ri ←→ mtho ri ※ 従って、英語とはちょうど逆の位置関係ということになる。 ex.) kind man ←→ man of kind, my son ←→ son of mine) ・・・切り出しの助詞”ni” 、強調の助詞“nyid” 切り出しの助詞”ni”は、ちょうど日本語の「は」に相当する助詞で、それ自体にとくに意味はないが、主題となる語(とくに主語や目的語!)につけられることが多く、主語を見分ける上で便利である。偈頌のなかでは音節を埋めるスペース・フィラーとして使われることもある。強調の助動詞”nyid”は日本語の「~こそ」に相当する助詞。これも主語や目的語に付されることが多く、文の骨子を見極めるうえでの目安となる。 ・・・引用の助詞”zhes(ces,shes)“ 引用符「~という」を意味する助詞。セリフの終わりを明示する。接続は前回配布した「結合法一覧表」の「5.」に準じる
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第3回 単語の作り方② ・この単元では、前回学習した複合文字を複数組み合わせで作られる、意味の単位としての「単語」を紹介する。 ・Wylie方式によるローマ字転写法の紹介と、それにより書かれた文章の実例を紹介する。 ・辞書の引き方をまなぶ。 ・音節、句、文節の区切りに用いられる記号、ツェクとシェーを紹介する。 ・この単元の修了要件は「ローマ字転写された簡単な詩節を音読し、指定の単語の意味を検索できるようになること」とする。 (単語と転写法/辞書の使い方)   ローマ字アルファベットでの転写法(wylie方式) ローマ字アルファベットへの転写法は各文献、各辞書によってまちまちであるが、最近ではテキスト・ファイル化でき、PCとの相性がよいワイリー式(Wylie方式)が最も一般的となっている。 ワイリー方式は、発音の転写ではなく、字母表の並べ方にあわせてローマ字を当てていったもの。発音の表記としては正確ではないが、ローマ字からチベット文字に直す時に、元の文字を探しやすいという利点がある。   区切りの記号、ツェクとシェー、その他 ツェク:文字の右肩に打ち、音節を区分する。 (例外!) 基字となっている小a字(= ’a )の直前のツェクは省略される。 ※ 格助詞の ’i 、終詞の ’o としてよく見られる。 シェー:縦長の線 | は句や文の区切りを表す記号で「シェー」と呼ばれる。 ・句の区切りにはシェーを1本置く(チク・シエー) ・文末や意味上の区切れにはシェーを二本置く(ニ・シエー)。 ※ シェーを置く場合には、句末、文末の文字につくべきツェクは省略される。ただし、paやbaとの混同を避けるため、ngaが末尾に来る場合には、例外的にツェクを省略しない。 その他の記号: 「荘厳」は偈頌などの最初に、「日月点」は文章の頭(三つ)、写本の表(オモテ)面の頭(二つ)に置かれる。実例参照。   辞書の引き方 辞書の引き方を知る、ということは、チベット語の単語がどのような順番で辞書に収録されているか、ということを知るということである。辞書はそれぞれの言語を表記する文字の「アルファベット」順に並べられるのが通例だが、チベット語でもそれは基本的に同じ。ただし、以下に見るように、その順番はなかなか複雑である。 ※ 先後関係だけおぼろげにでもつかんでいれば、細かい順番を記憶していなかったとしても、実際に辞書を引くときにはそれほど気にならないことなので、あまり心配する必要はない。 チベット語のアルファベット順は、初回に学習した「字母表」を、左上から右下へと辿った順番(ka sdeのI→II→III→IV、ca sdeのI→II→・・・)になる。 単語の配列は、書かれる順番(左→右への並び順)ではなく、基字のアルファベット順を基本に並べられる。 単語は原則として構成要素が単純なものから複雑なもののへ、という順番で配列されている。 細かく見ていくと、基字を中心とする「前と上」、「下」、「母音」、「後ろ」という四つの方向に対応して、四つの段階にわけてグループ分けがなされていることが分かる。   基字の前・上に関して   基字の下に関して   基字の母音に関して   基字の後ろに関して 基字のみで成立する語のグループ   有足辞のついていない基字   それぞれ母音記号の順(なし→i→u→e→o)に並べられる。 長音記号の付いたものは、それぞれの母音の末尾に置かれる。   基字のみのもの 有頭辞の付いた基字のグループ   有足辞のついた基字 (※wa有足辞はそれが付かない文字の末尾に付けられる)       添後辞のついたもの、 添前辞のついた基字のグループ           再添後辞ついたもの 添前辞と有頭辞の付いた基字のグループ              
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§2. 語・詞・辞と統語法(単文の読解) ・ チベット語の名詞には曲用はなく、格関係は助詞を用いて表される。語順も日本語とほぼ同じ。 ・ 文の形を決めるのは「述語動詞」である。従って、動詞の位置を見定めるのが、文読解の第一歩。 ・ この単元では4種の格助詞と2種の文末助詞を文中に見つけ、文節の区切りを入れられるようになること、またその文節理解を元に、大まかな構文をつかめるようになることが修了の要件となる。 第4回 文節の区切り方 (基本的な語順/文末の助詞・格助詞 の種類と用法[1]/動詞①(yin/yod)) ・・・基本的な構文 チベット語はいわゆる「膠着語」と呼ばれる部類に分類される言語であり、各語間の関係(格関係)は、日本語の「てにをは」に相当する格助詞を用いて表示される。この場合、格関係は助詞によって明確に示されるので、個々の文節の並べ方(語順)については比較的自由が効く。ただし通例、主語は文頭、述語(動詞)は文末に置かれる。 ※ 格助詞を用いること、文の骨格以外の部分については比較的語順が自由なこと、そして通常主語が文頭にきて述語動詞が文末に置かれるという文の作り方は日本語のそれと非常に近いものであり、日本人は自然な流れで読むことが出来る。 助詞は1~2つの字母で作られており、変化しないので文中で見つけやすい。日本語と同様、関係づけられる名詞に後置されるため、助詞の後で文節の区切りを入れることが出来る。 ※ 主格と目的格には原則として格助詞が用意されていないため、格助詞のついた文節は副詞句であることがハッキリしているといえる。 ・・・文末におかれる助詞(接続助詞と完結助詞) 「接続助詞」、および「完結助詞」は、文末に置かれ、意味内容のまとまり(=主として「文」)の終わりを示す。文末には句読点の役割をする「シェー」が置かれていることが多いから、結果的にこれらの助詞とシェーとはセットになって見られることが多い。 両者とも、基本的な音(: 内のカタカナで表記された音)は維持しながら、直前に置かれている字母が何かに応じて、少しずつその形を変えて接続する。結合法については下の格助詞に関するものと一緒に別紙にまとめる。 ・接続助詞 ① 具余(順接・添加的): 「・・・であって」、「そして~」 → te, ste, de テー ② 飾収(逆接・譲歩的): 「・・・であるが」、「・・・にもかかわらず」 → kyang, yanag, ’ang アン ※ これらは後でみるように、語と語の接続にも用いられる。ひとまず英語のandやbutに相当すると見てよいが、後続分の文頭に置かれるのではなく、先行文の末尾に置かれる点で異なる。 ・完結助詞 「・・・なり」、「・・・のだ」、「・・・だよ」 → go, ngo, ’o ・・・など オー ・・・格助詞 格助詞については、サンスクリット語にあわせて8格の組織で説明されることも多いが、実質的には4種類の助詞で10の用法をカバーしている。用法を細かに記憶するよりも、基本的な意味を理解して、文脈に即して訳し分けるようにする方が実践的であろう。 ・属格助詞 関係・所有: 「~の」 → ‘i のグループ イ ・具格助詞 道具・原因: 「~によって」 → ‘is のグループ イー ・ラトン助詞 場所・様態: 「~で」、「~として」 → ① la, na ラ ② su,ru,tu,du,-r ル ・従格助詞 基点・比較: 「~から」、「~より」 → las, nas レー ・・・名詞句をまとめる踏詞 ① (名詞化の踏詞 パ ) チベット語にはサンスクリット語に倣い、活用の複雑な動詞を用いることを避けて、名詞構文を作ることを好む傾向がある。動詞を名詞化する(不定詞化)する際には、動詞の直後に踏詞のpaあるいはbaを付す。どちらを付すかは動詞の末尾の字母による。これについても別紙の結合法表にあわせて記載する。( >「結合法表」) ② (人を表す踏詞 パ ) 踏詞は動詞のみならず、名詞や形容詞にも付されて、その語を女性名詞化したり、行為者/所有者名詞化したりする。 例) 女性名詞化: bu(男の子)→bu mo(女の子)、 lha(天)→lha mo(女天)、 bran pho(下僕)→bran mo(女中) 例) 行為者/所有者名詞化: shes pa(知る)→shes pa po(知者)、 nag(黒)→nag po(黒人)、 phyi(外)→phyi pa(外人) 原則として、 pa,po → 男性 ba,bo → 中性/抽象名詞 ma,mo → 女性 とされるが、上記の例にも見られるように、これには例外も多い。 ③ (虚字の踏詞 カ ) kha,kha,gaはとくに結合した単語の意味を変えることなく、口調を整える為に付される。ただし数詞の2(gnyis,gnyi)に付いた場合(=gnyis ka, gnyi ga)には、「両方」の意味となる。 ④ (不定代名詞的な踏詞 チク ) cig,zhig,shigは「或る~」という意味を付け加える。 ⑤ (複数形の踏詞 ナム・ダク ) rnams,dagは名詞について複数形をつくる。dagは特にサンスクリット語の「両数」の訳語としてあてられる。「両数」というのは、ペアのものを指示すときの言い方。(ex. 両手、両目など) ⑥(慣用的な所有接尾語 ケン・チェン・デン ) mkhan,can,ldanの三語は「~を持つモノ、備えるモノ」という意味で、人にも物にも使われる。 ・・・判断の動詞yinと存在の動詞yod、およびその否定 英語のBe動詞、ドイツ語のseinなど、印欧語系の言葉(サンスクリット語も!)では、繋辞に用いる動詞に「~である(判断)」と「~がある(存在)」の二つの意味があるとされるが、チベット語では、「~である(判断)」の動詞をyin、「~がある(存在)」の動詞をyodとし、この二つを厳密に分けて用いる。yinは単純な繋辞として使われるとき、しばしば省略される。 動詞を否定するには否定の助詞maあるいはmi(強い否定:「あることなし」)を動詞の直前に置く。ただし、yin、yodに付する場合にはそれらと融合して、それぞれmin、medという形をつくることがある。 ・・・人称代名詞、指示代名詞 主な代名詞は以下のようなものである。(通常語/尊敬表現) 「私」 nga, bdag, rang, nga rang/ go bo, go mo 「あなた」 khyod, khyod rang/ khyed, khyed rang 「彼」 kho, kho pa/ khong, khong po 「これ/あれ」 ‘di/ de [1] チベット語に限らず、言語というものはすべて、何かしらの事象を言い表すのに≪主語+述語≫という組み合わせ、すなわち、「誰/何ガ+どうスル/デアル」ということをもってする。つまり、≪主語+述語≫こそが意味のまとまりの骨格であり根幹である、ということができ、 場所 や 時節 、 原因・理由 といった、いわゆる5W1Hに当たる情報は、その骨格に付された肉、幹から出た枝葉のようなもの、すなわち付加情報と考えることが出来る。文を解釈するということは結局、その骨格部分をしっかり捉えるということであるから、我々は何をおいてもまず、文中から「誰/何ガ+どうスル/デアル」ということを語っている部分を取り出さなければならない。 ところで、チベット語ではその骨格部分には助詞が付かない。よって、逆に助詞の付いた部分については、付加情報と見なして刈り込んで行くことで、根幹部分の姿を見やすくことができる。その意味で、チベット文の構文の解析をするにおいては、格助詞を手がかりに見ていくことが効果的なのである。 ところで、どんなに複雑な文においても、主となる骨格は一つの文に一組しかないはずである。だから、もし対象文の中に複数の≪主語+述語≫の組み合わせがあるならば、それらの間の主従の関係(:主節と従属節)を見極めなければならない。「一文には一つの骨格」ということを前提にしている以上、それをするためにはまず、どこからどこまでが一文であるのか、を括り出さなければならない。その意味で、述語動詞に後続して文末を示す完結助詞等に注目していくことが効果的なのである。
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第2回 単語の作り方①: (基字と添前・添後・再添後字) この単元では、複数の字母の組み合わせで作られる「複合文字」を紹介し、その作られ方と発音法について学ぶ。 複合文字は複数の部位からなるが、発音の中核となる文字はそのなかの1つである。その文字のことを「基字」という。 基字の上下前後に文字が付されることにより、基字の発音に変化 文字 前節で学んだ字母は漢字における偏(ヘン)や旁(ツクリ)といった部首に相当する。 一つの漢字が通例複数の偏(ヘン)や旁(ツクリ)からなるように、チベット語の文字(音節単位)も、多くは字母単体ではなく、いくつかの字母が組み合わされて構成されるのが普通である。 ※便宜上、字母→文字(akSara:音節)→単語=詞(pada:語)とする。 基字 音節=文字の区切りは「ツェク」(tsheg)という記号で表示される。 文字を読む際に、発音の中核となる音価を表す字母を「基字(ming gshi)」と言う。 ※漢字になぞろえていうと、音読みするときの音を表す部位である「旁」がこれに相当する。 基字が発音の中核となっているということは、ある文字をどう発音するか考える際には、なによりもまずこの基字を見つけなければならない、ということになる。 七つの部位 チベット語の一つの文字は、基字のみからなるものもあるが、多くは複数の部位が組み合わさって構成される。 1) 基字 2) 母音記号(4種) 3) 添前辞(5種) 4) 有頭辞(3種) 5) 添足辞(4種) 6) 添後辞(10種) 7) 再添後辞(2種) ※ 2)母音記号,4)有頭辞,5)添足辞の三種は基字の上下につくものだから、これらが付いている字母は必ず基字である。 ※ 7)再添後辞までついている文字であれば、前から二つ目が基字である。 発音の添加と変化 複数の部位からなる複合文字においても、上記の通り、発音の中核は「基字」にあるが、各種の小辞が添加されると、基字の母音が変化したり、新たな音素が添加されたりする。 基本的に、基字の前と上とに付された小辞、及び7)再添後辞は発音に影響を与えない(※1)。注意を要するのは基字の下につく5)添足辞と、基字の直後にくる6)添後辞である(※2)。4種の添足辞と10種の添後辞は全て、何らかの形で発音の変化に関係する。 ※1 唯一の例外は有頭辞laのついたha → “lha” : lha sa は「ハサ」ではなく「ラサ」 ※2 ローマ字転写したときに母音の直前・直後に来るもの、と考えるとわかりやすい。 声調の変化など、あまり細かなルールを覚える必要はなく、文字として出てきたときに意識できるようになっていればよい。ただし、以下の特殊ルールによる発音変化は形からは導出できないので、とりあえず記憶してしまうこと。 a)添足辞のna,la,sa,da (←「変なサラダ」と覚える!) → 直前の母音を変音する。 b) パ行(pa sde)+有足辞ya (←「パパイヤ茶」と覚える!) → チャ行(ca sde)の音になる。 c) ma 、sa、 ha+有足辞ra → 発音は変わらない。 d) za+有足辞la (「ズラだ!」と覚える!) → daと発音される。 e) 添前辞da+ba → waと発音される。 f) 母音で終わる語の直後の添前辞ma、’a → 軽く「ン」と発音される。
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第7回 接続表現と敬意表現 ・ 今回は、進行形と、並行・連続する動作を表す語・構文と、敬意表現について学習する。 ・ 統語法の概要は前回まででほぼ概観したので、残りの3回では応用的な表現法について学んでいくことになる。 ・ 本単元の修了要件は、新出語彙・表現を見分けつつ、意味をとれるようになること、とする。 (進行形/並行・連続する動作の表し方/敬意表現/主語明示の具格) ・・・進行形を表す構文“bzhin(kyin,gyin,gin,’in,yin/ 語末の-nを取った形)<イン/イ>+yod” 「~のようである」を表す単語①bzhinは、助動詞に転用されて「~している、~しつつある」(進行形)を表す語となる。②kyin,gyin,gin,’in,yinも同様の使われ方をする。②の5つについては語末の-nを外したkyi,gyi,gi,’i, yiという形でも使われる。この場合、属格助詞と同じ形になるので見やすいが、混同しやすいので注意が必要である。動詞に直接後続していることが、この用法であることの目印。 接続は助詞の場合と同様である。ただし、bzhinはどの字の後にも用いることができる。 本動詞の位置にはyod(~がある)を始め、同様の意味をもつ動詞’dug(~がある), red(~である), snang(~に見える)などがくる。 ex.) ston par byed bzhin ’dug|| (教えている) ‘gro ’in yod|| (行きつつある) ngos lta gi red|| (私は見ている) ・・・連続体を作るzhing,cing,shing 動詞の直後に置かれて「~しながら、~してから」(並行・連続)の意味を表す。主として文中で二つの動詞の間に入り、二つの動作が「同時並行している」ことや「連続している」ことを表す。 また、文末に置かれて、接続助詞のように使われたりもする。この場合te,steなどとほとんど同じ意味になるが、「・・・。しかも~」や「・・・。かつ~」といった並列・累加の意味を強めに出して訳した方が良い場合も多い。 ex.) bstan zhing bshad… (示しながら説く)<並行> sgom zhing ’grub… (瞑想して成就する)<連続> ・・・敬意表現 チベット語にも敬語表現(丁寧語、尊敬語、謙譲語)に相当する表現方法がある。日本語の「食べる:召し上がる:いただく」のように、一般的に使われる単語に置き換えて、敬意表現の単語を用いることによって表す。 別紙に代表的なものの一覧を示すが、これも実際にチベット語に触れるなかで、徐々に覚えてゆけばよいものである。 辞書では、敬意表現には「丁寧語=eleg.」、「尊敬語=resp.」というような標識がついていて、その語が何という語に対応する敬意表現であるか、ということが分かるようになっていることが多い。 ・・・行為主体を明示する具格助詞(-is) 具格の助詞は、動詞の能動態・受動態の区別と関わりなく、行為の主体(主語)を明示するために特に用いられることがある。
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第6回 疑問詞と関係詞節、さまざまな文末表現 ・ 今回は、疑問詞の用法と、様々な熟語的な表現を学ぶ。 ・ ここまで履修したことで、チベット語文法のおおまかな仕組みを概観しおえたことになるので、後は語彙を増やしていくことで大方のチベット文の構造を見て取り、意味をつかむことができるはずである。 ・ したがって、本単元の修了要件は、新出語彙の与えられた例文で、適切に文節を区切りつつ、意味をとれるようになることとする。 (疑問詞・関係詞/条件・可能・希求・使役/dang等を用いた熟語表現/数詞) ・・・不定称助詞ci, ji, su, gang, nam ciは「何」、jiは「どのくらい」「どのように」、suは「誰」というように使い分ける。 gangは「何」の意味でモノにも人にも一般に用いられ、頻度は最も高い。それぞれ単独で疑問代名詞として用いられるほか、不定冠詞(zhig)と結びついて「ある人」を表したり、格助詞、時や場所、その他の意味を表す語と組み合わされて「ある時に・・・」、「ある所で・・・」のようにも用いられる。 また、指示代名詞のde(アレ、ソレ)と呼応させて、関係詞説を導く(従属)接続詞としても用いられる。 ※gangから派生した疑問詞ga,khaも時折用いられる ・・・さまざまな文末表現① ★助詞を転用するもの 疑問・反語) 「~なのか?」 動詞+’am 転換・対比) 「~だけれど、・・・」 動詞+la/属格助詞 仮定・条件) 「もし~ならば・・・」 (gal te)・・・動詞+na 可能) 「~できる」 不定詞(-par)+nus(/thub/phod) pa 希求) 「~したい」 不定詞(-par)+’dod(/bzhad) pa 使役) 「~(すること)をさせる」 (動詞+la don/-par)+’jug/byed ・・・接続語のdangと’amおよびyangと、dangを含む熟語、その他よく用いられる熟語 dangは英語のandにあたる言葉で、語と語(「AとB」)、文と文(「~。そして・・・。」)というように、文中の同じ資格の言葉を結ぶ連言・順接の接続詞である。 ‘amはそれに対して「AかB」、「AもしくはB」を表す選言の接続詞である。 yangは英語のevenに当たる言葉で、「~もまた」、「~であっても」を意味する。 このうち、dangには単純な接続の用法から派生したよく使われる熟語表現がいくつかあるので、ここで覚えてしまおう。こうしたセット・フレーズでは、中に使われている動詞が時制によって多少形を変えたりすることもあるが、音にはあまり変化がないので、音読したときにピンとくるように、耳で覚えてしまうのがよい。また意味についても基本の意味を押さえておき、その場その場で文脈に合わせるようにするとよい。 (A) dang bcas pa タン・チェー・パ (A)を備えた (A) dang ldan pa タン・デン・パ (A)を備えた (A) dang ‘dral ba タン・デル・ワ (A)を離れた (A) dang ‘brel ba タン・デル・ワ (A)と結びついた その他、文中によく出てくる覚えておきたい熟語を読みと基本の意味と一緒に挙げる。(接続詞的な熟語表現については次回以降に紹介する) (A) la sogs pa ラ・ソク・パ (A)などの (A) [ki] dbang gis [キ]・ワン・ギー (A)によって、(A)の影響で (A) pa’i phyir ぺー・チル (A)なので、(A)のために (A) pas na ペー・ナ (A)なので ・・・数詞 別紙にて配布する。
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【チベットリンカについて】 そもそもチベットリンカが生まれたきっかけは mixiでのチベット旅行経験者の方のコメントからでした。 『当時、始めてチベットに行った時の記憶です。 チベット問題なんてなーんも知らなくて、ダライラマのお誕生日も もちろん知らなくて、たまたま着いた日がその日だった。 誘われるまま川原に行ったら、すごい人だった。ピクニックの輪がいっぱい! アメリカ人カップルと一緒だったから、いかにもツーリストぽくって目立ったのでしょう、 ニコニコ顔のラサ市民が寄ってけ、座れ、食べよ、飲めよで、誘われまくりの私ら大モテで、 「何人だー?」「日本人だー」「チベット人?」「そうだー」「いや、チャイニーズだー」っていう、 ニーハオ~タシデレ~会話であちこち回って、食べて飲んで、へべれけになって、 おまけにツァンパを頭からかけられ粉だらけになってホテルに帰った。 (チベットではお祝いにツァンパの粉をかけ合うみたい) あぁ、、私の人生の中で、一番モテた貴重な、美しい思い出です。 一緒に行ったアメリカ人の彼女の方が、チベットにはかなり詳しそうで、 チベット語もぺらぺらで、いろいろチベタンとも話してましたが、、 後で話を聞いたんだけど、ダライラマ法王のお誕生日に 中国人もたくさん一緒にピクニックしているっていうのが信じられなかったって、、、 私はその話を、何の先入観もなかったから、きょとん?として聞いて、 その時はよく意味がわかってなかったんですよね。 でも、本当にチベタンもチャイニーズもご近所さん同士って感じで、 同じ笑顔で何の違和感もなかった。溶けあってました。 本当にあんな日がもどることを心から願っています。』 チベット人も中国人も一緒に笑いあえる、そんな日がまた来るように 願いつつ、平和的で穏やかなチベット支援活動をしようということで チベットリンカが生まれました。 理塘ゴンパ正門前の芝生で、チベット人家族がリンカ中 この写真は、ツッチーさんからお借りして掲載しております。 http //4travel.jp/traveler/tsuchi/album/10174897/ カップルや家族やお友達同士4~5人の小グループなど、挨拶や交流はしても 集まらず、集団にならずに散らばったままでいることで、その公園に 「お花見」や「花火見物」みたいな楽しい雰囲気を醸し出すのが理想です。 行動をする方としては支援したいけど、ちょっと不安な人や 集団は苦手だけど個人も怖いと思う人 家族に遠慮して地味に支援したい人、小さい子供がいるとか 二の足を踏んでる方も参加しやすいと思います。 アピールする対象も街頭での通りすがりの人々とは違う、 公園でゆっくりすごす人たちにゆる~く楽しげな支援を知ってもらえると思います。
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目次 §1.チベット文字の読み方 第1講) 字母と母音記号/ツェク/単音節文字 第2講) 基字と添前・添後・再添後字 第3講) 構字法と単語/辞書の使い方 §2. 語・詞・辞と統語法(単文の読解) 第4講) 基本的な語順/格助詞の用法/動詞1(yin/yod) 第5講) 動詞2(一般動詞とその活用)/助動詞 第6講) 複文(関係詞節etc.)/様々な助辞 §3. 構文と解釈(文章の読解) 第7講) 接続詞/文節法 第8講) 引用・間接話法の表現/科段 第9講) 翻訳調の文章/チベット文のスタイル