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ゼロの番鳥-1 ゼロの番鳥-2 ゼロの番鳥-3 ゼロの番鳥-4 ゼロの番鳥-5 ゼロの番鳥-6 ゼロの番鳥-7 ゼロの番鳥-8 ゼロの番鳥-9 ゼロの番鳥-10 ゼロの番鳥-11 ゼロの番鳥-12 ゼロの番鳥-13 ゼロの番鳥-14 ゼロの番鳥-15 ゼロの番鳥外伝 「ルイズ最強伝説」
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物語を語る前に、まず彼の生い立ちから説明を始めよう。 彼は孤高の存在だった。彼には不思議な能力があり、彼は何時も時間を持て余していた どんな獲物も彼にとっては鈍間な餌にすぎず、物心つく頃には既に親をその能力で殺し食べた。 故に彼にとっては同属も餌でしかない ともかく、彼の棲んでいた世界は、彼にとってあまりにも狭く、陳腐で退屈な日常に辟易していた。 より広い外界に出ても、彼の目に映るのは愚鈍な餌ばかり、彼は幻滅した。 そんな折に、とある館を見付けた時。 奇妙な感覚が彼を襲った。何かが自分を招いてるような奇天烈極まりない感覚 興味本位で窓から侵入した時――――何時の間にか目の前に男が立っているのに気付いた その男から強烈に発せられる威圧感。 生まれて初めて感じる恐怖と言う名の感情。 時が止まったかのような中で彼は死を確信した。 男は、そんな彼を見ながらこう言った・・・優しく子供に言い聞かせるように 「何も恐れることは無いんだよ、友達になろうじゃないか」 生まれて初めて「自分以上」の存在を認めた彼は、男に仕える事となった。 彼に与えられた役は門番、務めは館を探る者や許可無く立ち入る者の完全殺害! 彼は主の為にひたすら侵入者を殺し続けた、何も知らぬ老人や子供であろうとも情け容赦無しにッ!。 殺戮と殺戮と殺戮を続けていたそんなある日、彼は侵入者に『殺された』。 畜生働きをし続けた外道に相応しい最後――― だが・・・・・・どんな運命によるものなのか、彼の物語は未だ終ってはいなかったッ! 舞台は絵に描いたような青空と野原! 小鳥の声と小川のせせらぎが織り成すハーモニー! 絶好の昼寝日和と言えるだろう!・・・・・・だが! ドッグォォォォォォォォォォン!! これまた絵に描いたようなドデカイ爆発が起こった! 「兄貴ィ、あれって悪の怪人が自爆する時の爆発と似てないかなぁ?」 と、誰かに何故か聞きたくなる程に!それはもう凄い爆発であったッ! 辺りに立ち込める煙、煙、煙 その爆発を起こしたルイズは、咳き込みながら爆発源を見つめていた 彼女が(またなの?・・・・・・また失敗なの!?)、と思ってるかどうかは定かではないが ルイズの周りを取り囲む面子はそんなルイズを冷めた目で見ている 「ほら、どうせ爆発するんだからやったって意味無いってのにさぁ」 「毎回毎回爆発で済ますのもイイカゲンにしてもらいたいよ」 彼等も最初の頃はルイズの失敗に笑っていた。 しかし、終わりの無いのが終わり、のように魔法を使う→爆発。が常識となってては笑えない 幾ら努力をしても進歩の無い駄メイジ『ゼロのルイズ』 彼女を見るクラスメイト達の爆笑が苦笑に変わり、苦笑が冷笑に変わるのにそれ程時間は掛からなかった ルイズは蔑みの目を全身に感じながら、それに対抗する様に――見ようによっては自分に言い聞かせるように声を張り上げる 「見てなさいアンタ達!この煙が晴れたら私のビックでグレートな使い魔が出てくるんだからね!」 流れそうになる涙を気合と根性とその他諸々で押し留めながら虚勢を張るのがルイズの生き方 ・・・・・・しかし、ルイズの心境はそれとは真逆「使い魔!出てくるのを祈らずにはいられないッ!」ってやつだ そして煙がおさまったあと、そこに見えてきたものは―――――― 煙が晴れた先に―――鳥が倒れている。 一瞬、其処ら辺を飛んでいる鳥が爆発で落っこちたのかと錯覚したがそんな事は無い 『ルイズがサモン・サーヴァントを成功させた』 その事実に周りのクラスメイトが騒然となる 「ルイズがサモン・サーヴァントを成功させたァ!?」 「あのゼロのルイズでもやる時はやるもんだな」 「何か悪い事が起きるんじゃないでしょうね・・・・・・」 「シュール」 普段のルイズなら怒りに震えるであろう。だが、今のルイズの耳には届かない (うふ、うふふふふふふふ) 最高にハイ!な笑顔でをしながら全速力でルイズは倒れている鳥に近づいた 鳥をよく見てみる、種類は隼だろうか。何故か変な兜とスカーフを付けているが、最高にハイ!なルイズの目にはクールでファンキーなアクセサリーとして映っている だが、ルイズが近寄ってもその隼は動かない。動こうとしない。 幸せの絶頂に浸っていたルイズはすわと不安になった・・・・・・もしかして自分は死体を召喚したのではないだろうか? 慌てて隼の体に触って生存を確かめて見る。 (暖かい。息もしてるし気絶してるだけのようね) ならば問題無い、善は急げと言うし、儀式を始めよう 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 ルイズは屈んで、人間の口に当たる部分である隼の嘴に己の口を重ねた 私の意識は闇に包まれていた。子守唄のような声が繰り返し頭に響く。 (命令を遂行しなければならない)(何の?) (守らなければならない)(何を?) (■さなければならない)(何を?) (やらなければ)(何を?) (遂行しろ)(何を?)(守れ)(何を?)(■せ)(何を?)(やれ)(何を?) 突然、左翼に焼き鏝を押されたような熱が生まれた 「キョオオ―――z______ン!!!」 頭と肉体がコンマ数秒で覚醒!翼を振るわせて上昇する! そこで気が付いた、敵に吹き飛ばされたはずの右翼が直って・・敵?吹き飛ばされた? (敵とは?)(何故吹き飛ばれたと思った?) 目の前には何故か尻餅を突いている私のマスターの・・・・・・マスター? (こいつは違う)(何が?)(私の主人は・・・・・・)(何が?) 意識の一部に靄が掛かって、大事な部分が別の何かに改竄されているような、形容できない奇妙な感覚 羽ばたきながら私は首を傾げた 「キョオオ―――z______ン!!!」 「ひゃっ!?」 ビックリして尻餅を突いてしまった。いきなり目の前で大声を出されたら誰だって驚くだろうからこれは当然の行動に違いないうん 「・・・・・・終わりました」 埃を払いながら立ちあがり、教師に儀式が終わった事を伝える。ちょっと恥ずかしい 「全員終わりましたね。では皆さん学院内に戻ってください。」 そう言ってコルベール先生は宙に浮く。他の面子も宙に浮いて戻って行った。 私もフライを使おうとしたが――― ドン! やっぱりと言うか何と言うか爆発が起こった。成功すると思ったのになぁ、ちょっと落ち込む 「来なさい」 呆けたような顔をしている使い魔に告げる そしたらドギュュゥゥゥン!なんて音を経てそうな勢いで私の肩に飛んで来・・・結構怖いわね そこで、使い魔のスカーフに文字が書いてあるのが分かった (ペットショップ、使い魔の名前かしら?) 読み終わってから気付いた。スカーフに書かれている文字はゲルマニア語とは全く違う。 (何で私この文字を読めたのかしら?まっ、どうでもいっか) 寮に帰っていくルイズと使い魔『ペットショップ』 ――――幸福と栄光の象徴を手に入れたルイズはどんな運命に導かれるのだろうか?
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ここは魔法学院にある教室の内の一つ。 ルイズ達は、ここで『土』系統の魔法の講義を受けることになっている。 後ろの壁に様々な使い魔が並んでいる。サラマンダー、ネズミ、モグラ、ヘビ、ドラゴン… 召喚が終わってから初めての授業、本来なら使い魔の見せ合いでかなり騒がしくなるはず。 だが、教室はとても静かだった、ある種の異様な雰囲気に包まれている。 その原因は何故かルイズの傍らに居る使い魔。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 ただ立っているだけなのに、周囲に奇妙な威圧感を撒き散らしている 教室の空気がやたらと重い。ルイズの周りの空気は更に重く、隣に居る生徒達は物凄く不幸だった。胃に穴が開くかもしれない 授業が早く終ることを殆どの生徒達が祈っていた それはルイズも例外では無い、が。 (お腹減った・・・・・・) 早く終わってくれ、と祈る理由は彼女だけ全く別。 寝坊した結果、朝食に間に合わなかった。故にルイズはお腹が空いていた 頭には昼食の事しか無く、ペットショップの威圧感など全く感じていない。ある意味大物である 生徒達が威圧感に苦しみ、ルイズが空きっ腹に苦しんでいる時 「ミス・ヴァリエール、あなたの使い魔ですが・・・・・・何と言うか・・・・・・外に出してもらえないでしょうか?」 空気を掻き乱す雑音が全く無い空間は、教師にとってある意味理想的である が、担当教師のミス・シュヴルーズは空気の重さに耐えられる程の神経を所有していなかった とうとう耐えかねて発言した途端、教室に妙な安心感が漂う。しかし。 ギロッ! ペットショップからガンを飛ばされた! シュヴルーズの細い神経は千切れる寸前になりかける 口から悲鳴が漏れかけるが、貴族としてのプライドを限界まで使用し何とか抑える。強い女性である。 言い知れぬ敗北感を感じながら、先程の言葉をスルーしてそのまま授業を続けようとする。 だが、彼女の不幸は更に続いた。 「え・・・は、はいミス・シュヴルーズ!な、何でしょうか!?」 テンパったルイズの声 昼食の事で頭がいっぱいいっぱいだった彼女は、シュヴルーズの声を全く聞いていなかったのである! そんなルイズの顔を苦虫を噛み潰したような目で見るシュヴルーズ。 彼女は『教室から使い魔と一緒に出て行ってください』と伝えたかった・・・・・・本当に伝えたかった! 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 強烈な威圧感に続いて殺気まで放ってくるペットショップがそれを許さない 「え。えーっとミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってもらいましょうか」 代わりに取り敢えず錬金をやらせようとしたが 彼女がそう口にした途端、教室の生徒の顔が恐怖に染まった。 生徒達はペットショップの威圧感を忘れてシュヴルーズに抗議する! 「先生、ルイズにやらせるのは止めてください!」 「爆発するんですよ、先生!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせるなんて『許可』しないで!」 だが、被害に遭ってない彼女は何で生徒達がそんなに怯えるか『理解不能ッ!』 それよりもペットショップが怖い彼女は、とっととルイズに錬金をやらせて授業を終わりにさせたかった。 「皆さん静かに!ミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってごらんなさい!」 教壇へ向かっていくルイズとペットショップ。 それを見る生徒達は、何故に使い魔がルイズに着いて行くのか?と疑問に思った しかし今重要な事は疑問を解くより先に、一刻も早く自分の身を守る事!急いで机の下に避難したり、教室から脱出する! それを尻目に見ながらルイズは杖を掲げて、石の錬金を始めようとする。 彼女は失敗して爆発する事など毛の先ほども考えていなかった。 腹が減って思考力が減退していたのもあったが、サモン・サーヴァントを成功させたのが自信になっていたからである ペットショップの召喚により間違った自信が付いてしまったルイズ 万全を期して、石に自分の限界を超える勢いで魔力を込めて詠唱を始める そして――――――――巨大な爆発が起こった。 凄い爆発が起こった、石が、先生が、その他諸々が吹っ飛んじゃった 「・・・・・・・・・ちょっと失敗しちゃったようね」 あはは、と笑って済ませようとしたが、顔の引き攣りを止める事が出来ない。サモン・サーヴァント成功の自信が崩れそうだわ。 と、そこで私は気付いた 「あれ?」 至近距離で爆発が起きたのに、私無事だ。埃一つ付いてない 机の下に避難していたクラスメイトも黒い煙を吐いていたりして無傷じゃないのに。これってどういうこと? 疑問に思った私は周囲を注意深く見てみる、粉々になった石の欠片、気絶した先生、粉々になった――― 「これって氷?」 床に氷が散乱している、誰かが『水』の魔法でも使ったのかしら? ――――思い出した。今朝、滅茶苦茶に粉砕された廊下にも氷が落ちてたわね それにキュルケが、―廊下の窓や床もアンタの使い魔が滅茶苦茶に―とか何とか言ってたような。ムカツクからあまり思い出したくは無いけど 隣のペットショップを見る・・・・・・こいつも無事ね。となると、こいつが何かやったから私も無事なのかしら? 「この氷出したのってあんた?」 床に落ちている氷を杖で指しながら質問してみる私。だけどペットショップは何か考えてるみたいで私の質問に答えない。ご主人様を無視するとは良い度胸してるわね ・・・・・・・・・まあそんな事は別にいいや、爆発させた罰として教室の後片付けを命じられそうだし、今の内に箒と塵取りをペットショップに持って来させよ。 あぁ、それにしてもお腹減ったなぁ 私は女の言っている事を聞いていた。すると様々な事が分かった 驚くべき事にこの世界には『魔法』があると言う事だ スタンドとは違い、一つだけでも色々なことができるようだ。 マスターの部屋に侵入した二人の女は新手のスタンド使いかと思ったが、どうやら違うらしい。あの時あの二人が使ったのが『魔法』と言う事か (何で驚く?)(この世界?) ・・・・・・・・・・・・疑問が浮かぶのはこれで何回目だ?さすがにウンザリする。 考えても分からない事なので、無理矢理疑問を忘却して前を向く。 「え。えーっとミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってもらいましょうか」 女が何かを言っている。『錬金』。あの石を金属に変えろと言う事か マスターが立ち上がって前に歩いていく、私もそれに続く。 「先生、ルイズにやらせるのは止めてください!」 「爆発するんですよ、先生!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせるなんて『許可』しないで!」 黙っていた奴等が何かを喚いている。『ゼロのルイズ』とは?何をそんなに慌ててるんだ? そして、マスターが杖を掲げて、何かを唱え始め――――私の本能が警鐘を鳴らした!『危険!』『危険!』『危険!』 理由を考えるより早く!本能が命ずるままにスタンドを使い、マスターと私を氷の盾で包む! ドグォォォォン! 一瞬後に爆発! 強烈な爆風が急造の氷の盾を粉々にするが、辛うじて私とマスターは無傷だ。 そして『理解』した。なるほど・・・・・・マスターが魔法を使うと爆発するから奴等はあんなに慌てていたのか。 奴等の言動から考えるに、マスターが爆発を起こすのは1度や2度の事では――――― (違う!)(マスターは!)(マスターの能力は!)(マスターの『スタンド』は!)(『世界』を―――) 「ペットショップ!!!あそこにある塵取りと箒持って来て!」 いきなりのマスターの声に意識が覚醒した。顔を上げるとマスターの怒ったような顔 もう少しで何かを思い出せそうな気がした、が。 自身の思考活動を優先するより先に、マスターの命令を優先させる事が重要だと判断 私は、マスターが杖で指し示す用具入れに向けて飛んで行った ・・・・・・この後、掃除の大部分をペットショップがやらされる事になったのは割と関係無い蛇足である
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絶対に起こらないはずの鳴き声が広場に響いた 「キョオオ―――z______ン!!!」 「何ぃ!?!」 慌てて振り向くとそこには不敵な顔でこちらを見るペットショップの姿が。 よく見ると何処にも傷らしい傷は無い、ワルキューレに痛く殴られ、ギーシュの魔法が直撃したはずなのに無傷である。 どうやって防いだのか?疑問だらけのギーシュの目にキラリと光る物が映った。 「それは氷か!?それでワルキューレと僕の攻撃を防いだのか!?」 疑問に対する解を見つけたギーシュ。だが、彼はそれでも信じられなかった。 (あの一瞬で!ワルキューレの拳や『石礫』が当たる寸前に!攻撃を防げるだけの氷を張ったと言うのか!?) 荒唐無稽すぎる事実に脳の処理が追い着かず。一時的に錯乱。 遠目からでもはっきり分かる程うろたえているギーシュに、ペットショップは何も言わない――――いや。 ギーシュは見た!そして更に狂気の渦に引き込まれる事となった。 (わ、笑ってる!?) ギーシュの目にはペットショップの嘴が歪んで、笑みの形を作ったように見えた 獲物をどれだけ残酷にいたぶる事だけを考えてるかのような禍禍しい笑み。 今のペットショップに比べれば、どんな魔獣を見ても可愛いと思えるだろう。 「ワルキューレェェェェ!!!!」 完全に余裕が無くなったギーシュは全てのワルキューレに槍や剣などの武器を持たせて突撃させる。 ギーシュ自身は杖を掲げて石礫を放つ準備を整える。 「来るなら来い!!!」 恐怖を静め勇気を鼓舞するために叫ぶギーシュ。痩せても枯れても武門で知られるグラモン家の一員だけはある。 ワルキューレの集団がペットショップに殺到する様を、ギーシュは血走った目で見つめていた。 私は青銅の騎士の行動を注意深く観察するべく地面に立ったまま動かなかった。まあ、腹が空いてたから動きたくないのもあったが そして理解した。あの男はマスターの盾となる下僕の基準を満たしている事を。 攻撃力・・・・・合格レベル。急造とは言えども、私の氷の盾を素手で砕くとは中々だ。 防御力・・・・・これも合格。間接部は脆いだろうが、手加減したと言えどもまともにぶち当たっても少々凹んだだけなのには驚いた。 問題は素早さ・・・・・あまりにも遅すぎる。しかし、これは数を増やせば解消できる問題だろう。 一番重要な所だが、命を持たぬ人形故に、術者の命令には絶対服従する点。 それに、あの男自身もある程度の戦闘能力を持っているのが良い。 「来るなら来い!!!」 下僕となるべき男が何かを言っている。 あの青銅の女騎士全てが私に向かって突撃してくる、どうやら本気になったようだな 私もマスターの事が心配だ、蹴りをつけて早く帰らないと。 ―――――終わらせるとしようか 「キョオオ―――z______!!!」 私は一鳴きすると、手近な一体の人形に向かって突進した。 「キョオオ―――z______!!!」 ゴガッ! ペットショップが動いたと同時に、一体のワルキューレが空中に飛んだ。 観客の生徒達の目には不可解な現象として映っただろう、が。 極限まで集中しているギーシュの目には真実が映った! (体当たりでワルキューレを跳ね上げた!?そんなバカな!) 子供にも劣るような図体をしながら!体当たりだけで!青銅で構成された人間大の人形を上空にカチ上げる!常識を超越した行動。 だが、それは圧倒的な暴虐への序章に過ぎない、ペットショップの周りに突如冷気が集まり―――――氷の弾丸が発射された! それは朝、ルイズの部屋の前でキュルケとタバサにやった事を彷彿させる。だが、量と速度と強度が桁違いすぎる! 氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱、氷柱!!!! マシンガンの掃射を超える勢いで発射されるそれは、もはや番鳥の猛攻と言うべき恐るべき行為!! ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッッッッ!!!!!!!! 空中に吹っ飛ばされて、回避も防御も間々ならないワルキューレは全弾をまともにくらう! 一瞬で青銅の女騎士が部品となり!破片となり!塵となる! 「!?」 絶句するギーシュ、あまりに非常識な出来事に頭が真っ白!一時的に心神喪失状態になる。 だがそれは致命的な隙! 「グガガガガガガ!!」 鳴き声を聞いて我を取り戻した時には遅かった。 目の前には何時の間にか至近距離まで接近していたペットショップの姿! 「うわぁっ!!!」 慌てて杖を振ろうとするギーシュ!だが!それよりも先にペットショップは! 足を!ギーシュの! 目の中に…………突っ込んだ! ----
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「もう!あんたも気合入れなさいよ」 一つでン十万はしそうなアンティークが並んだ部屋で、甲高い声が深夜の学生寮を振るわせる 声の主はルイズであり、少し殺気が入った視線の先には召喚した使い魔―――『ペットショップ』の姿 何故にルイズが叫んでいるのだろうか? 時間は多少遡る 「使い魔の目は主人の目、使い魔の耳は主人の耳ね。うふふふふ」 ちょっと逝っちゃった笑顔を浮かべながらベッドに座るルイズ 使い魔の視覚や聴覚で得た情報を、その主人であるマスターも得る事が出来ると教師から聞いた その説明にルイズはちょっと惹かれたが、サモン・サーヴァントでマトモな使い魔が出てくるとは期待していなかった だが、ルイズは召喚に成功した!故に彼女は試してみたかった。使い魔を手に入れたら誰だってそうするだろう、ルイズだってそうする。 「ちょっとやってみよ」 ルイズの軽い言葉、だが。これから長い長い時間が経つとは誰も予想してなかった。と言っても部屋にはルイズとペットショップしか居ないが 1時間――――――― 「ぐぬぬぬぬぬぬ」 2時間――――――― 「はぁぁぁぁぁぁ」 3時間――――――― 「・・・うぉりゃぁ」 4時間――――――― 「―――――ぅあ」 5時間――――――― 何回も何回も試したが、使い魔が何を見て何を聞いてるのか欠片も分からないルイズ。 ここで冒頭の「もう!あんたも気合入れなさいよ」である 駄メイジなルイズに根本的な原因があるのだが、連帯で責任を背負わされては使い魔も溜まった物ではない。 「先生はとても簡単って言ってたのに!」 レビテーション等の『とても簡単な魔法』すら失敗する自分の不名誉な二つ名『ゼロのルイズ』の称号を完璧に忘れているとしか思えないセリフを叫ぶ それから少しの間ペットショップに当り散らしたりしていたが、さすがに気力の限界が来たのか。ベッドに横になるルイズ 「ご主人様の睡眠を邪魔したら承知しないんだからね!・・・zzzz」 と、又しても理不尽なセリフを吐いてから明かりを消して、のび太並のスピードで夢の世界に直行した。 マスターが眠ったのを確認してから、ペットショップは器用に足でドアを開けて廊下に出た 鳥である彼には暗闇は天敵であり、一寸先も見渡せないはずだが。『もう一つの感覚』を持つ彼には暗闇など物の数ではない 彼の頭に浮かぶのはルイズの最後の言葉『睡眠を邪魔するな』 (マスターの命令を遂行しなければならない) (守らなければならない) (■さなければならない) (やらなければ) と、そこまで考えて突然雷鳴が走るように思考に別の異物が混じる (マスター?)(こいつは違う)(命令は違う)(ここは違う)(早く戻らなければ)(DI・様の元へ) 彼は思った。まただ、また頭に疑問が浮かんだ 何かが違う、だが、それが何なのか彼はわからない パズルが完成している、しかし、そのパズルのピースが本来の物とは全くの別物になっているような―――辻褄の合わない感覚 最後の思考が一番大事な物だと感じたが、深く考える前に命令を遂行する事が重要だと彼は結論付けた そして朝に事件は起きた 時間は朝 学生寮の廊下を二人の女が歩いている 「ルイズは寝坊かしらねぇ」 「・・・・・・・・・・・」 赤い髪をした大きい方はキュルケ。 青い髪をした小さい方はタバサ。 キュルケの後ろに居る火竜山脈のサラマンダーを見れば分かるが、どちらもメイジとしての腕もかなりの者。 タバサなんてシルフィードなる青いドラゴンを使い魔として使役している。 そんな彼女達が何故に歩いているのかというと、授業に出て来ないルイズを起こしに行くからである。 その行為は親切心からではなく、わざわざライバルから起こされるルイズの悔しそうな顔を見たいが為。 ルイズの顔を想像して笑みを浮かべるキュルケをタバサは呆れたような顔で見る、が、幸いな事にキュルケは気付いていない 目の前にはルイズの部屋のドア、ルイズの使い魔がその脇に見える 「使い魔より起きるのが遅いなんて、ルイズは本当に駄目ね」 そんな事をぶつくさ言いながらドアを開けようするキュルケ ―――次の瞬間キュルケは服をタバサに思いっきり引っ張られた! 「ちょ、何すんのよタバ「ドゴォ!」!?」 不可思議なタバサの行為に抗議しようとしたキュルケ。だが、顔の直ぐ傍にいきなり氷柱が生えては黙らざるをえない 長さは1メイル程で、壁を薄紙のように突き破っている。こんなのが顔に当たったら普通に死ぬ 慌てて発生源を見るキュルケ、するとそこには―――― 「グガガガガガッ!!!」 得体の知れぬ冷気を放ちながら翼を広げるルイズの使い魔の姿 実践経験が無いキュルケとタバサにも感じられる程の殺気を放っている 泣く子も黙るほどの殺気を放ちながら、ペットショップは主人の命令『睡眠を邪魔する者は即座に抹殺せよ』を遂行するッ! 羽ばたくペットショップの周りに氷柱が瞬時に生成!そして半秒の間も無く発射! 『それ』はタバサの得意とする『水』『風』『風』の攻撃呪文、『ウィンディ・アイシクル』に酷似していた しかし『ウィンディ・アイシクル』より弾の数は少ないが、大きさと速度は全くの別物! 勿論その氷柱が放たれるのを黙ってみているキュルケでは無い 「ファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤァァァァッ!」 自分に当たりそうな物だけを見極め『火』*1の呪文で叩き落すッ! 外した物はフレイムの火炎が補助! 外れた残りの氷柱は、ドゴゴゴゴゴッ!、と。 氷柱がぶつかったとはとても思えない音を立てながら窓を粉砕し床に穴を開ける (トライアングル・・・・・・いや!スクゥエアクラスのメイジ並じゃない、この鳥!) 冷や汗を流すキュルケ、だが一瞬の停滞も無しに次の動作に移る 「タバサッ!!」 「エアハンマー」 キュルケの言葉に阿吽の呼吸で放たれるタバサの魔法! 杖から放たれる空気の槌。通常は不可視の波動であるそれを『もう一つの感覚』で感知して回避行動を取ろうとするペットショップ しかし、タバサの狙いはルイズの使い魔では無かった! ドゴォン! 轟音と共にルイズの部屋の扉が粉々に砕けて吹っ飛ぶ キュルケとタバサの狙いに気付き、急いで氷柱を発射しようとするペットショップ! だが、回避行動を取ろうとした時間のロスが、タバサとキュルケをルイズの部屋に入り込ませる隙となってしまった 部屋に侵入者を入り込ませてしまった!その事実に激するペットショップ 「キョオオ―――z______ン!!!」 聞く者を振るわせる声を一発かました後、彼もルイズの部屋に飛びこんで行った 「ルイズゥゥ!!!!!」 部屋に入った瞬間、怒声を張り上げるキュルケ ルイズの使い魔に殺されかけたのだから、その行為も自然な物だ。 しかしルイズを見付けたと同時にキュルケは腰砕けになりかけた 何故か?それは 「zzzzzzzz」 何とも幸せそうな顔でルイズが寝ているのである! 部屋の直ぐ側であんな爆音が響き、ドアを物凄い勢いで吹っ飛ばされたのにまだ寝ている! (こいつはグレートね) と、キュルケは思考停止しかけたが 「キュルケ。鳥が来る」 タバサの少々焦ったような声で通常の思考を取り戻す キュルケが振り返ると、あの鳥が部屋に入ってくるのが見えた だが、無防備なマスターのすぐ近くに居るのだから、あの使い魔も無茶は出来ないだろうと予測するキュルケ その思惑通りに、使い魔はこっちを睨むだけで手出しをして来ない だけどまだ安心は出来ない 「あたしはルイズを起こすから、タバサ見張っててくれない?」 鳥の注意を相棒に任せると ポカッ! 使い魔に殺されかけた分のお礼も込めて、ルイズの頭を杖で強めに殴った 突然魔法の才能が覚醒した私は、ライバルのキュルケと決闘して完膚なきまでに叩きのめした 「うーん」 土下座するような体勢で気絶しているキュルケ、私はそんなキュルケの頭に足を乗せて高笑いをしていた 幸せの絶頂―――ボカッ! 「あ痛ッ!」 突然の痛みに意識が覚醒した。頭を押さえて悶える私 涙が出てきそうな目を開けると前方に笑っているキュルケが見えた 「あら?良い音がするじゃない、頭の中身も『ゼロ』じゃなくて良かったわね」 あまりにもあんまりな言い草に、怒りが許容量を突破する。『プッツン』と言うやつだ 「あ、あああああ、あんたッ!何で勝手に入ってきたのよ!それに人の頭を殴るなんて何考えてるの!?」 怒りで震える口を何とか動かしながら叫ぶ。 すると、キュルケはあからさまに呆れてるような溜息を突いた。激しくムカツクわね 「授業に出てこないアンタを起こすよう先生に頼まれたのよ」 あれ、私寝坊しちゃったのか・・・・・・だけど殴って起こすのは無いわよ!常識的に考えて! と抗議しようと思ったが、周囲を見回していた私は気付いた、ドアが粉々になってるッ!? 「いきなりアンタの使い魔に襲われちゃってね、正当防衛ってやつよ」 私の視線から気付いたのか、尊大に言い放つキュルケ。私は口をパクパクさせる事しか出来ない 「それから廊下の窓や床もアンタの使い魔が滅茶苦茶にしちゃったから、後でちゃんと弁償しときなさいよ?」 使い魔の責任は主人の責任よ~、等と言いながらタバサを連れて部屋から出て行った・・・・・・わぁ、私凄く腹立ってる! 怒りに突き動かされるまま、私は近付いて来たペットショップに叫んだ 「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」 マスターと何か話をしていた侵入者共は出て行った 追い駆けて『始末』するより先に。マスターの安全を確認するため私は近寄った すると、いきなり 「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」 マスターの怒声。マスターは怒っている。何故だ? 「いきなりキュルケとタバサを襲うなんて何考えてんの!?それに廊下やドアを滅茶苦茶にするなんて正気!?」 どうやら私はマスターの友人を攻撃してしまったようだ。なるほどマスターが怒―――――(違う)(マスターなら)(・IO様なら) 「・・・・・・・・・ョップ?ペットショップ聞いてんの?」 目の前にはマスターの顔――何処と無く不安そうな顔で私を見ている 「まあ、いいわ。罰としてご飯抜くんだから、ちゃんと反省しなさいよ」 先程の思考が何なのかはもう思い出せない、無理に思い出そうとしても思考の一部に靄が掛かったような感じがして判別できない ―――――とても、とても重要な事だったような気がする、私の存在する意義に関わる程 「ペットショップ」 私は考え込んでいたが、マスターの声で我を取り戻した 寝巻きから制服に着替えたマスターが手を振る。「着いて来い」と言っているのだろう。 私はマスターの元に飛んでいった 廊下の惨状を目にしたルイズが大きな溜息を突き 弁償として割と少なくない額の金を払う事となったのは関係無い蛇足である
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「決闘なんか申し込んでどうすんのかしらね?」 「・・・・・・・・・・・・」 ペットショップとギーシュ、後その他諸々が出て行って閑散とした食堂 だが、キュルケとタバサはまだ優雅に昼食を進めていた 「トライアングル級かそれ以上の『水』の魔法を使えて空を飛べるんだから、ゴーレムなんて良い的にしかすぎないってのにさ」 「・・・・・・・・・・・・」 冷静に双方の実力差を判断するキュルケ。タバサは何も言わずに黙々と食事している 「唯一の手駒がゴーレムだけじゃ、負けは決まったようなもんなのにねぇ、それも分からないのかしら?」 あの鳥がギーシュ相手に手加減するとはとても思えない、それを考えて痛みがする頭を押さえるキュルケ キュルケの頭の中では、何度も何度もギーシュとペットショップの戦いのシミュレーションが行われたが、結果は体に無数の氷柱が突き刺さって死亡するギーシュの姿が浮かぶだけ まあ、ペットショップはギーシュを殺す気は無かったが、そんな事を知らないキュルケの頭の中ではギーシュの死亡は100%確定している あんまりギーシュと仲良くは無い、しかし、知り合いが死なれると夢見が悪い。 そこで溜息を一つ突くと、最後に残ったワインを口に流し込んで立ち上がった。 視線の先には幸せそうな顔で眠っているルイズ。 朝の死闘や教室での惨事を思い出すキュルケ、あの傍若無人な鳥もルイズの言う事には素直に従っていたのを見た 決闘を納められるのはペットショップのマスターであるルイズしか居ないだろう 「ルイズ!起きなさいルイズ!!」 故にルイズを起こしてヴェストリ広場に向かわせようとした、が。 「うーん・・・・・・zzz」 キュルケの大声は届かなかった、夢の世界から帰還できないルイズ。 それを見たキュルケは先程の溜息より更に大きい溜息を突くと、持っている杖を思いっきり振り被った そして躊躇無く振り下ろす――――杖の先にはルイズの頭が ボカッ! 突然魔法の才能が覚醒した私は、ライバルのキュルケと決闘した! だが、卑怯にもキュルケの奴はタバサと組んで私をコテンパンに叩きのめそうとする しかし!グレートな才能に目覚めて歴史に残るほどの魔法使いになった私相手には力不足も良い所! 「何か分からないけどとにかく凄い魔法をくらえッ!」 ドカーン! 「うーん」「ルイズ凄い」 土下座するような体勢で気絶しているキュルケと私の実力を素直に賞賛するタバサ 私は仁王立ちで高笑いしていた 幸せの絶頂―――――ボカッ! 「あ痛ッ!」 突然の痛みに意識が覚醒した。頭を押さえて悶える私 涙が出てきそうな目を開けると前方に呆れた顔のキュルケが見えた 何をするだーッ!朝の事も思い出した相乗効果でプッツン!その時私の中で決定的な何かが切れた! 即座に杖を振り上げて呪文を唱え、憎きキュルケを吹き飛ばそうとする! 「・・・・・・・・・・・・・」 だけど、私が魔法を使うより先に、何時の間にか背後に回っていたタバサが羽交い締めしてきた。はなせぇ! 暴れる私の前に宥めるようなキュルケの声 「アナタの使い魔だけど、ギーシュと決闘しに行っちゃったわよ?止めなくて良いの?」 へっ?ペットショップが?ギーシュと?なんで?ご飯抜いたから? 私の疑問に、床を拭いていたメイドが何故か立ち上がってこっちに向かって来・・・・・・うん?何か臭い。 「あの・・・・・・ペットショップさんのマスター様でしょうか」 ペットショップ・・・さん?何でさん付けなの?あのアホ鳥がまた何かやらかしたの?また何か弁償しなければならないの? 混乱し続けてまともに働かない私の頭、目でキュルケに助けを求める。 キュルケの簡潔な説明では、ギーシュに苛められてたその子をペットショップが助けて、ヴェストリ広場に決闘しに行ったらしい。 ・・・・・・「何よその目」 私の胡散臭いモノを見るような目に気付いたのか、鼻を鳴らして威嚇してくるキュルケ。 助けた?あいつが?一緒に過ごしてまだ2日も経ってないけど、ペットショップがそんな心を持ってるとはとても思えないのよね。 まあ、いいや。今の私には何を持ってしても最優先でやるべき事がある。 「とにかく分かったわキュルケ」 「なら早く行きなさい、アナタの足の長さじゃ急がないと間に合わないわよ?」 私の言葉に憎まれ口で返すキュルケ。よし、油断してるわね!今がチャンス! 自然な動作で杖を握り、私のできる最速の動きで杖を振って呪文を唱える! ドカァァン! 爆発が起きた。キュルケは吹っ飛んだかしら? 「ななな何すんのルイズ!?」 チィ・・・・・・寸前で回避したようね。煤は多少付いてるけど殆ど無傷だ 「何すんのって?勿論あんたを吹き飛ばすためじゃない!」 大体、ペットショップがギーシュと決闘?嘘ね! どうせ何も無い広場にのこのこ行った私を嘲笑うつもりね!? 無関係な平民のメイドまで用意して周到に備えたようだけど、このルイズ様を騙すのは100年早いわよ! もう一度呪文を唱えようとする。狙いは完璧!・・・・・・あっ!?逃げた! 「待てぇ!」 食堂から飛び出したキュルケと、それを追撃するルイズ その場にはポカンとしたシエスタと我関せずなタバサだけが残った。 所変わって、ここはヴェストリ広場。普段は人気のない場所だが、今は生徒達であふれ返っている。 中央に向かい合って立つのは少年と鳥、ギーシュとペットショップである 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げて決め、それに歓声が答える。が、その中には低い笑いと生暖かい視線も少しあった。 「『ゼロ』の使い魔相手にマジになってどーすんだギーシュ」 「飛ばれたらどうすんのよ?」 冷めた目でそれを見つめる少数の生徒。だが 基本的に刺激に飢えている子供達は殆ど全員が面白がってこの『決闘』と言う名の『演劇』を見ていた 「では、行くぞ!」 薔薇の造花を振って一気に数体のゴーレム『ワルキューレ』を生み出す ギーシュの戦法はこうだ。 まず、ゴーレムを生み出す、そしたらあの使い魔はゴーレムの攻撃を恐れて、空に飛びあがり遠距離から氷柱を発射してくるはず。 そしてあの使い魔がギーシュの手駒をゴーレムだけだと判断した油断は隙となるだろう。 それにドンピシャのタイミングで、『つい先日』取得した『魔法』石礫をカウンター気味にぶつけるのがギーシュの狙いだった。 しかも石礫を霧吹きのように広範囲に飛ばす事で、あの鳥がどれだけ速かろうとも、時を止めない限りは絶対に回避不可能! (あの鳥がどれだけ頭が良いか分からないけど、所詮は獣だ、恐れるに足らないさ) 見えてきた見えてきた!勝利への感覚が見えてきた!なギーシュ それに対して、ペットショップは 「キョキョキョ」 何と地面に立ったまま動かない! しかも翼を「掛かって来い」と言わんばかりの態度で振っている。 これにはギーシュもカチンと来た、ルイズの使い魔に舐められていると自覚する。 「やれえッ!ワルキューレ!」 円陣用の数体を残して、残りのワルキューレを突撃させるギーシュ ワルキューレとの距離が10メイルを切り5メイルを切り―――遂には2メイル手前まで接近されても微動だにしないペットショップ いや。 「キョキョ!」 一鳴き後、氷柱を瞬時に形成。 そのまま前進を続けるワルキューレの頭部に射出。 しかし、それを見たギーシュの顔に笑みが浮かび、ババッ!と大袈裟なポーズを決めて気障に叫ぶ。 「その動きは読めている!」 氷柱が発射される寸前に、ワルキューレは頭部を自身の腕で覆っていた。 ガンッ! 氷柱は砕けて破片を撒き散らしただけで、防御したワルキューレはほぼ無傷。 そしてペットショップに最も接近した一体がそのままの勢いで足を大きく振り―――― ゴガッ! 思い切り蹴飛ばされたペットショップは、ボールのように地面を跳ねた! バウンドして空中に跳ね上がったペットショップの体をもう一体のワルキューレが補足―――硬く握り締めた拳を叩き付ける! ドゴッ! これまた凄い音を立ててペットショップの体が地面と水平に飛ぶ! そのまま10メイル以上吹き飛ばされたペットショップは、木に衝突した後漸く、重力を思い出したかのよう地面に落下する。 時が止まったかのような静寂から数瞬―――広場を歓声が埋め尽くした。
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机を拭いて、床を掃き、爆発の結果により起こった惨状の後始末をしたルイズとペットショップ まあ、足で箒を使ったり塵取りを運んだりとペットショップが掃除の大部分をやったのだが 主人の不始末は使い魔の不始末。それ故にルイズの頭にはペットショップの行動など勘定に入ってない、そんなこんなでアルヴィーズの食堂に到着した一人と一羽。 三列の食卓には絢爛な飾りつけがされており、その上には飾りに負けず劣らずに豪華な食事が並んでいる。 始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから、モグモグと食べ始めるルイズ。朝に食べられなかったからか、かなり幸せそうだ。 だが、ある程度食べ進めてから、隣をキッ!と見るルイズ。その先には使い魔ペットショップの姿 「ペットショップ! あんたはご飯抜きって言ってるでしょ!そんな物欲しそうな目で見たってあげないんだからね!」 ルイズとしては格好良く決めたつもりだろうが、使い魔は食堂の外で待機するのが普通だ。 (食堂の中に入ってる事に注意しろよ!)と、割と色々な生徒が思ったが、ペットショップの目を恐れて口に出せずに居た と言うか、近くに居ると飯が不味くなる所の話ではないので、ルイズとペットショップの周囲の席がガオン!されたみたいに開いている。 食事に集中するあまりに、この異常事態に気付かないルイズは本当に大物である。 ルイズが食事に集中している時。 彼―――ペットショップは食事が欲しい等とは欠片も思っていなかった。食事抜きはマスターから与えられた罰でありそれを理不尽とは感じてない 彼が今考えているのは『下僕を如何にかして調達する必要がある』それだけである キュルケとタバサの間で起きた朝の1件もそうだが。 『それよりずっと前から』彼は、自分は何かを守りながら戦うのは苦手であると分かっていた。 自分だけでマスターを守れるとは自惚れていない。だから早急に、マスターを守る盾となる奴隷が彼には必要であった。 それなりに力があってタフであり、そして一番重要な事だが命令には絶対服従する下僕。それをどうやって捜すか彼は悩む マスターを置いて旅に出る訳にはいかない、予期せぬ幸運が入り込むのを期待するほど神経は図太くは無い どうやって奴隷を獲得するかペットショップが悩んでいる時、食堂の端で何か騒ぎが起こってるのが彼の目に見えた 距離は結構離れているが、彼の目は数km先の虫も軽く見える、故にその騒ぎを至近距離から見ているがごとくに鮮明に視認できていた 騒ぎは、ギーシュと言う名の金髪の少年が香水の瓶を落とした事から始まった それを黒髪のメイド、シエスタと呼ばれる少女が拾い、純粋な親切心からギーシュに渡そうとした だが、ギーシュはそれをガン無視、疑問に思うシエスタだが、ギーシュの友人がその疑問を解消してくれた。ギーシュにとって最悪な形で その香水の瓶はモンモラシーと呼ばれる少女の物!だが、今ギーシュは下級生のケティと言う少女と付き合っているはず! つまりそれが意味する事はただ一つ、ギーシュが二股を掛けていると言う事実! それから話しはトントン拍子で進んだ 「・・・・・・・・・・・・」 「ち、違うんだよケティ!これは誤解だ!」 オラァッ!バチンッ! 「一体全体どういう事よギーシュ!?」 「モ、モンモランシー!」 ムダァッ!ビシャッ! ケティから強烈なビンタをくらい、モンモラシーから香水の瓶を頭にぶちまけられたギーシュ 踏んだり蹴ったりだが、元の原因は二股を掛けた彼にあるのだから同情は出来ない。 しかし、肝心のギーシュの怒りは止まらなかった。 「き、き、君ぃぃ!な、ななな何て事をしてくれたんだい!」 こめかみを引き攣らせながらシエスタに詰め寄るギーシュ。 シエスタは恐怖のあまり何も言えずに頭を下げる事しか出来ない。殆ど土下座である。 ギーシュもそこで止めておけばよかった、だがしかし、周りの生徒達の視線が彼の恥を刺激して怒りを更に上昇させた。 割と洒落にならないぐらい切れたギーシュが無言で薔薇の造花を振る すると、花びらが宙を舞い、甲冑を着た女戦士の人形が現れた。ギーシュのゴーレムである 貴族が平民に魔法を使う、その恐怖のためなのか、シエスタの歯がカチカチと音を立てる。 「ひぃ・・・・・・!」 腰が抜けたらしく、地面に尻餅を突いた形でそのまま後退りを始めたシエスタ 恥も外聞も無く、ただ貴族と人形の恐怖から逃れるために逃走する哀れなメイド そんなシエスタの背に何かが当たった。 怯えたように後ろをゆっくりと振り向く、するとそこには。 「・・・・・・・・・・・・」 ギーシュが生み出した二体目のゴーレムの姿 それを見たシエスタは完全に静止していたが、半秒後、メイド服を汚して床に生暖かい液体が流れた『失禁』ってやつである そして大声で泣き始めるシエスタ。かなり可哀想である だが、それに一番慌てたのは元凶のギーシュ。 ちょっとビビらせようと思ってゴーレムを出したのだが、失禁してマジ泣きを始めるとは血が昇った頭では考え付かなかった 一気に頭が冷え、落ち着いて周りをゆっくり見るギーシュ。 男子からは「おいおい、相手が平民だからってそれはやりすぎだろ」と生暖かい視線 女子からは「サイテー」と分かり易い侮蔑の視線。 彼は、拙い事をやったのに今更ながら気付いた この事が広まるとモンモラシーやケティに本気で絶縁されるかもしれない 慌ててシエスタに優しく話しかけるギーシュ。 「あ、あの大丈夫かい?僕はもう怒ってないから安心しなよ」 だが、シエスタの目は完全に恐怖に染まっており、ただ「ごめんなさい」と連呼するだけ 自業自得だが、どうすればいいんだとギーシュは頭を抱えかけた、その瞬間。 「キョキョッ!」 甲高い泣き声。 慌てて声の元を見ると、ルイズの使い魔がこっちに飛んで来るのが見えた 私はその騒ぎを注意深く見る。初めはただのくだらない痴話喧嘩と分かって幻滅しかけた、が。 男が出した騎士の存在が、私の興味を引いた。脳裏に浮かぶのは、先程考えていたマスターの盾となる下僕の調達 マスターを見る、昼食を食べ終わったのか、机に突っ伏して眠っている。 周りを見る、マスターに害をなす存在の気配は感じない。 今、この空間に危険は一切無い!ならば今がチャンスだ! 『あれ』がマスターの盾に相応しい物か試してみよう 私は一声鳴くと、あの男に向かって飛んで行った。 目の前にはルイズの使い魔が見える。確か名前はペットショップだと思い出す 「ペットショップ君かい?見世物じゃないんだよ、こっちは忙しいんだ。どっか行ってくれ!」 割とテンパっているので声に何時もの余裕が無いギーシュ その一瞬、ペットショップが自分目掛けて恐ろしい勢いで氷柱を飛ばしてきたのに彼は気付いた! 「え?うわぁぁぁぁぁ!?『ワルキューレ』!」 ギーシュの叫びに青銅の女騎士が動く。 ドガッ!バゴンッ! 氷柱とギーシュの間に入る事が精一杯だったのか、防御行動すら取れずに氷柱をまともにくらって吹っ飛ばされる。 そんなワルキューレを冷めた目で見るペットショップ。 ギーシュの背筋に冷や汗が流れる 「何するんだ君ぃ!」 対するペットショップは返答の代わりに再度氷柱を発射! ブン!ガキィィィン! しかし、これは攻撃を予測していたワルキューレが防御 ワルキューレの装甲は少々凹んだが、発射された氷柱は砕かれ周囲に破片を撒き散らす (何でルイズの使い魔が僕に攻撃してくるんだぁぁぁぁ!?) と、錯乱するギーシュ。だが、次の瞬間これはチャンスだと思い直す それは―――――メイドを嬲った事を有耶無耶にするチャンス! 「今の行為・・・・・・僕への挑戦だと判断した!決闘だ!『ゼロ』の使い魔如きに舐められてはグラモン家の名が廃る!」 さっきの醜態を忘れて、良く言えば気障に、悪く言えば優雅に決めるギーシュ 「ヴェストリ広場で待っているぞ!」 とペットショップに伝えるとワルキューレを伴い、急いでその場を抜け出す。 ペットショップもそれに続こうとするが。 「あ、あの、ありがとうございます!」 シエスタの感謝の言葉。涙で潤んだ彼女の目にはペットショップは救いの手を差し伸べた勇敢なる騎士として映ったようだ。 勿論、ペットショップにはそんな気など一切無かった。下僕となるべき者の性能をテストしてみようとしただけである。 何か勘違いしているシエスタを一瞥しただけで済まし、ペットショップはギーシュの後を追って飛んで行った。 そして 「zzz・・・・・・もう・・・・・・食べられない・・・zzz」 ルイズは幸せそうにまだ寝ていた
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食堂に着いた私は驚愕した。 (マスターが居ない!?) あの眠りの深さから見ても後一時間は起きないと予想していたが。 マスターの姿は何処にも無く、辺りには爆発の後だけがある。敵に襲われたのだろうか!? 下僕を調達するためとは言え、マスターから目を離した私の許されないミスだ。 自分で自分を殺したくなったが、すぐさまマスターの捜索を開始しようとする。 「あ!ペットショップさん!」 声が私を呼び止めた。 振り向くと、私に何故か感謝の言葉を述べたメイド服の女の姿が見える。 マスターの安否が気になる私はそれを無視して食堂から飛び去ろうとするが。 「ま、待ってください!」 慌てたように呼び止めて来た。何の用だ? ・・・・・・もしかしたらマスターの事で何か知っているのか! 私は期待を込めた視線をメイド服に向ける。 「ミス・ヴァリエールから食事抜きにされたと聞きまして、残り物ですがこれをどうぞ」 メイド服は盆に乗っている肉を差し出した。 そんな女に私は失望を止められなかった、確かに腹は空いている。 だが、そんなくだらない事で私の邪魔をするとはッ! 冷たい殺意を持って、メイド服を血祭りに上げようとしかけた寸前 「ルイズなら部屋に戻ってる」 本を読んでいる青髪眼鏡の女がそう告げる。 それが真実か考えるより先に、私は確かめるべく食堂を飛び出しマスターの部屋に飛んで行った。 何時の間にか直っているドアを足で開け、慌てて部屋に飛び込む。 居た!ベッドの上で横になっている。 「うーーーーん・・・・・・zzzz」 マスターの寝息が聞こえる、どうやら眠っているようだ。 私は安心してほっと一息つくと、部屋の外に出てドアの前に立つ。 「はぁはぁ・・・・・・ま、待ってくださいよ~ペットショップさん」 視線を向けると傍で息を切らせているメイド服が見える。 五月蝿い、マスターの睡眠を邪魔するな。やはり始末するべきか。 と、そこで疑問に思った。何故、あの女は私の名前を知っているのだ? 「私が教えた」 そのメイド服の横から、ひょっこり現れた青髪眼鏡が又してもそう告げ、何処かに歩いて行った。 ・・・・・・あの青髪眼鏡は私の考えが読めるのだろうか。気味が悪い。 メイド服の手には盆があった、私に食事を運ぶためだけにここまで来たのか?・・・・・・ありえない 盆の上に乗ってる肉を胡散臭く感じる、毒でも入ってるんじゃないだろうな。 (奴隷はまだ来ないのか?) 左右を見回すが影も形も見えない、全くどこで道草を食ってるんだ。 しょうがない、覚悟を決めるか。 「キョキョ」 盆の上に飛び乗り、足元にある肉を少しだけ啄ばむ。 胃に納めて、10秒、20秒、30秒、40秒――――特に何とも無い ・・・・・・私の思い過ごしだったようだ。 しかし、一口食べてしまった事により、空腹感が刺激されてしまった。 そのまま勢い良く齧り付いて、全てを綺麗に平らげる。 「ペットショップさんのお口にあってよかったです」 私が完食した事に対してメイド服は嬉しそうに微笑んだ。何処か笑える所でもあったのか? 「お腹が空いたらまた厨房に来てくださいね」 分かったからとっとと帰れ。マスターの睡眠の邪魔だ。 メイド服が去って数時間後―――― 「はははは。待たせてすまなかったねペットショップ」 脳天気に笑いながら下僕が現れた。遅いぞ。 ・・・・・・お前の後ろに付いて来ているモグラは一体なんだ? 「僕の使い魔ヴェルダンデさ。どうだい、美しいだろう?ルイズ様の使い魔である君にも引けを取らないさ」 美しい・・・・・・美的感覚が狂っているのか?まあ良い。 自慢そうに眼鏡を揺らしながら答え――――眼鏡?何故眼鏡を掛けているんだ? 「君にやられた傷がまだ完全に癒えて無くてね、目がまだぼんやりするんだ。 だから眼鏡を掛けているんだよ。」 なるほど良く分かった。それでだが・・・・・・お前に与えられた仕事は理解しているな? 「ルイズ様に害を成す敵の排除だね」 違う、それは私の仕事だ。 「ああ・・・外敵の攻撃からルイズ様を守る盾となる事だね?」 そうだ。その通りだ。 「はははは、青銅のギーシュの二つ名は伊達じゃないさ、君の期待にはきっちり応えて見せるよ・・・命に代えてもね」 等と言いながら、ルイズの部屋の前で立ち続ける、一人と一匹と一羽 どうでも良いがここは女子寮であるが、気にも留めてない所が素敵に無敵であった。
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自分の両足をギーシュの両目に突っ込んだペットショップ あまりの凄惨さに生徒達の大部分が目を逸らして俯く。 見方を変えれば、両目から鳥を生やしている少年と言う何かの戯画染みた姿となっている。 そう思えば笑えるかもしれない。多分。かもしれない。だったらいいなぁ 両目に突っ込んだ勢いのままに足を一気に引き抜くペットショップ! ドピュギィ! 「ギャアァァァァァァァ!!!」 引き抜かれた後、一拍遅れて。 激痛のあまりに絶叫しながら目を押さえて、地面をのた打ち回るギーシュ 『ギーシュは生まれて初めて心の底から震えあがった 真の恐怖と決定的な挫折に 恐ろしさと絶望に涙すら流した これも初めてのことだった ギーシュはすでに戦意を失っていた』 ペットショップの足にはギーシュの眼球は・・・・・・無かった 眼球の致命的な破壊はされておらず、秘薬を使えば普通に元通りにする事が可能だろう。 下僕の性能を落とすわけにはいかないペットショップの微妙な優しさだ。 この時点でギーシュは杖を落としており、決闘はペットショップの勝ちとなっていた。 が、そんなのは知ったこっちゃ無いペットショップはギーシュの肩に飛び付き、無理矢理地面に押さえ付ける。 鳥とは思えない力に、地面に叩き付けられた蛙のような体勢で歪むギーシュ。どれだけの力が加わってるのか、服が破れ、皮が裂け、肉が切れる。 私は足元の男を見る。 涙と鼻水を流しているのが見えて、何故か苛立たしさを感じた。 早く行動に移さなければ・・・・・・ 精神が折れるまで指の爪を一本一本剥がして刳り貫いて行くか? 神経を引きずり出して順番に千切って行くか? 全身の皮を剥いでその下の肉を啄ばん行くか? 手足の間接を指から順番に折って行くか? 鑢で削るように手足を削って挽肉にして行くか? 全身の骨を手足から少しずつ粉砕して行くか? どれもNO!NO!NO!NO!NO!NO!!時間が掛かりすぎる、それに下僕の価値も下がる。 私が欲しいのは怪我人では無い、五体満足で明日から動ける奴隷だ。 幾通りのパターンが頭に浮かび。次の瞬間、私の記憶に――― (DI・様から与えられた)(隷属させるための・・・)(肉の・・・・・・) 『少し思い出した』 私の体には下僕を傷を付ける事なく、完璧に服従させるための物がある! ここで使わないわけが無い、早速使おうとしよう! 私は背筋を伸ばすと、必要な物を口から『吐き出した』 ゲボゲボ・・・・・・ゲボッ! 「ゲボゲボ・・・・・・ゲボッ!」 体を振るわせて口から何かを出したペットショップ 『その何かは』は蜘蛛のような形をした肉片だった。 体外に出たその肉片は、何と驚くべき事に触手を出してギーシュの頭部に突き刺さった! 生徒達が見ていたら広場はパニックになっていただろう、だが。 ペットショップの体が影になっていて、角度も悪いせいもあってか、何が起こっているか分かっている生徒は居無かった。 ただペットショップが飛びついた瞬間から、ギーシュが悶え苦しみ始めたとしか理解できない。 白目を向いて痙攣するギーシュ、異常な激痛に失禁し、尿がズボンを汚して地面に流れる 「ガァァァァァァァ!!!」 悶え苦しむ哀れな少年、ペットショップに押さえ付けられた状態では這う事すら出来ない。 肉片・・・・・・『肉の芽』が脳に達した瞬間、ギーシュの震えが止まった。 それを確認したペットショップは満足そうに空に飛び上がると食堂へ戻って行った。 ペットショップが去った事により、周りで見ていた生徒達の時間がやっと動き出す。 「ギ、ギーシュ・・・・・・だ、大丈夫なの?」 「・・・・・・分からない」 ギーシュの悪友である風上のマリコルヌと、香水のモンモランシーが心配して近寄っていく。 マリコルヌはともかく、モンモランシーは食堂でギーシュを罵倒していたが、決闘をするギーシュの事が心配だったので一応見に来たらしい。こいつはとんだツンデレである。 地面に転がったまま反応しないギーシュ。割と半泣きになるモンモランシー レビテーションの魔法を使い、医務室まで運ぼうかと思い始めた時 ~私だ、私だよ。超ヤバイ、マジでヤバイんだよ~ ~どれぐらいヤバイかって言うと君が言葉を失う位ヤバイんだ~ ~君は何も言わず聞いてくれんるんだろ?わかっているさ心の友よ~ ~私には君の力が必要なんだ、返事はする必要はないさ・・・・友よ~ ~私達には言葉はいらない?そうだろう?なあ『ギーシュ』~ (●□!?×■!・・・・○▲!) 「ああ、大丈夫だよモンモランシー、マリコルヌ」 目と肩から血を流しているギーシュ。重傷である なのに、至って平静な声と調子で彼は立ち上がった。 「マリコルヌ。ちょっと目が開けられないから医務室まで案内してくれないかな?」 ちょっと擦り傷をしただけのような態度が、違和感を加速させる。 「ちょ、ちょっと、本当に大丈夫なのギーシュ?」 更に心配になったモンモランシーがギーシュに触ろうとする、が。 「いや、本当に大丈夫だってさ。」 照れたような微笑を浮かべるギーシュ、それは何処にも異常が見当たらない普通の笑み。 だが、ここではその笑みは異常であり。モンモランシーとマリコルヌの背筋に悪寒が走る。 「早く案内してくれないかな?」 焦れたようなギーシュ。 得体の知れない不安感に襲われながらも、マリコルヌとモンモラシーはギーシュの手を引いて医務室に歩いて行った。 やっと医務室に辿り着いた世界と思った時。 担当のメイジはキュルケと教師A・B・Cの治療にてんてこ舞いで、手当てされない世界のままギーシュが数時間放置されたのは関係無い話しである
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トリステイン魔法学院本塔最上階学院長室 そこにどこからどう見ても仙人としか言いようの無い老人が椅子に座っていた。 動きは全く無く、見ようによっては精巧な人形と言えなくも無い。 「が、学院長!緊急事態です!」 そこに飛び込んできたのは学院の教師の一人であるU字禿のコルベールだ。 「………………」 だが、肝心の学院長の返事が無い・・・・・・・・・ただの屍のようだ。 「学院長!学院長ォォォォォ!!」 まさか老衰!?と慌てて近寄り、学院長――オスマンの肩を高速で揺さぶるコルベール。 ギロッ 「五月蝿いわい、ちゃんと聞こえておるから早く用件を言わんか」 コルベールの手を払い、片目を開けて睨み付けるオスマン。 最初呼んだ時に返事ぐらいしろとコルベールは不満に思ったが。気を取り直して話し始める。 「ミス・ヴァリエールがミス・ツェルプストーと追いかけっこしています!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 学院長室に微妙な空気が流れる。 (そんなアホな事を伝えにわしの部屋に怒鳴り込みに来るとはええ度胸じゃのうワレ) と、オスマンが思ったかどうかは定かではないが。 その微妙な空気を敏感に感じ取ったコルベールは慌てて続ける。 「ミス・ヴァリエールの二つ名をお忘れですか!? 爆発を起こしながら追いかけっこをしているので、学院の部屋や廊下は滅茶苦茶になっています! 更に、宝物庫の壁にまで爆発で罅を入れてるんですぞ!」 宝物庫の壁に罅の部分で、ミス・ロングビルがピクッと反応したが それに気付くほど余裕のある人間はこの部屋に存在しない。 「何じゃとぉぉぉぉ!?」 それよりも慌てるオスマン、目を見開き裏返った声で叫ぶ。 幾人ものスクウェア・メイジたちが力を合わせて『固定化』の魔法をかけた、我がトリステイン魔術学院が誇る宝物庫が………。 「どおりでさっきからドカンバゴンと爆発音が聞こえたり爆発の震動を感じるんじゃな!?」 その時点で気付けよ・・・・・・とコルベールは頭を抱えかけるが、何とか耐える。 と言うか、今もドカンドカンと爆発音が聞こえる。このペースだと学園が全壊するのも時間の問題かもしれない。冗談では無く 「ですから、『眠りの鐘』の使用許可を!」 爆発音からすこし遅れて届く振動に震えながらも、コルベールの訴えに急いで頷くオスマン。 これ以上学院が滅茶苦茶にされては溜まった物ではない―――― そんなこんなで。 ルイズとキュルケの起こした騒ぎに隠れたような格好となって、ヴェストリ広場の決闘は殆どの教師から無視されていた。 所変わって、場所代わりヴェストリの広場。 「え?」 歓声に包まれる広場の中心で、拍子抜けするギーシュ。 まさかペットショップがワルキューレの攻撃をまともにくらうとは思っていなかった。 飛んで回避すると予測していたが、あっさりと殴れた事に間の抜けた声が出る だが、油断はしない。と言うか、何故か嫌な予感を止められないギーシュは油断をする余裕が無い。 「なにかわからんがくらえッ!」 呪文を唱えて杖を振るギーシュ、その杖から生み出されたのは恐るべき破壊の奔流。標的は木に寄りかかったような格好で地面に倒れているペットショップだ。 軌道上のワルキューレが慌てて飛び退くと、その破壊の奔流『石礫』は倒れているペットショップに直撃した。 ドン!バキベキバキ! あまりの破壊力のため、直撃したペットショップの背後の木も勢いで圧し折れて無残な姿になる。 完璧に再起不能。と常人なら判断する、しかしギーシュは残心を解かないまま、倒れたペットショップを睨み続ける 5秒―――動かない、10秒―――動かない、15秒―――動かない、20秒―――― 「ふぅ・・・・・・」 一向に動かないペットショップを見て、漸く倒したと確信するギーシュ 何時の間にかダラダラと流れていた汗を拭いながら安堵の表情を見せる。 死なない程度に攻撃したが、それでも数ヶ月はまともに動けないだろうと推測。 (心配しすぎたようだね) ペットショップより自分が強かっただけだと、脳内で自己完結してワルキューレを花びらに戻そうとした―――その時