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株式会社フライト・プランより PSゲーム「サモンナイト2」。 呼び出されるのは 敵方、大悪魔メルギトスの配下の悪魔ビーニャ。 ゼロと魔獣のような悪魔-00 ゼロと魔獣のような悪魔-01 ゼロと魔獣のような悪魔-02 ゼロと魔獣のような悪魔-03
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前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔 プロローグ 激しい激戦の前に見るも無残に破壊されたギエン砦。 虚言と姦計をつかさどる大悪魔メルギトス。 その配下として、気の向くままに暴れ、壊し、殺しを行っていた 悪魔ビーニャ。 彼女はそこで因果応報という形で、最後の時を迎えようとしていた。 呼び出した手駒の魔獣をことごとく失い 召喚のすべとなる魔力も尽きて そして体からとめどなく流れる血 「レイムさまぁ・・・っ アタシを・・・たすッけ・・・ ぎッ!?ヤあアァぁ~ッ!!」 自分達だけが最高なのだと 他は利用して 弄んで 壊して 捨ててしまえばいい それだけを考えて生きてきた なのに 「戻ってきただけだよビーニャ・・・ アナタが魔獣達に与えた苦しみが回りまわって、戻ってきたの・・・」 自分は散々見下してきた奴等に 負けるはずのない奴等に敗れて 消滅させられようとしていた。 「そんな・・・っ こんなの・・・こんなの・・・」 嫌 死にたくない 死にたくない 嫌 いや イヤ イヤ 今まさに消えようとする体を震わせ、腹の底から、 「・・・誰でもいいから助けてえぇぇぇぇ!!!」 渾身の力を込めて叫んだ。 だが、叫んだところでどうにかなるはずもない。 周りには敵しかいないのだから。 体から力が消えてゆく、形が保てなくなる、 視界が白くなっていく。 認めない。自分が死ぬなんて認めない。 そんなビーニャの前に、突如としてまばゆい光を放つ鏡が現れ 「ッ・・・・!?・・・・・」 悪魔にとっては眩しすぎる光。 たちまちに意識を失い、ビーニャはその鏡が放つ光に飲み込まれていった。 前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔
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前ページゼロと魔獣のような悪魔 ゼロと魔獣のような悪魔―3 使い魔生活の始まりー1 うっすらと夜が明け、カーテンの隙間から光が差し込んでくる。 「……」 眩しさを感じ顔をしかめてビーニャは寝返りをうつ。 光に背を向けてまた寝ようかとも考えたが、床の硬さが寝るに至るまでに意識を安らかにさせてくれない。 薄眼を開けてしばらくぼけっとしていたが、こうしていても仕方がないのでやむなく起きようと上半身を起こす。 ぴき…ごきぐき…… 「あいったたた…」 硬い床の上に寝ていた所為だろう。 身体の各所が変に固まっていて少し動かすだけで痛みが走る。 それでもそのままにはしておけないので我慢しながらゆっくりと体をほぐしていく。 手足をほぐし、首をまわして寝違いを正す。 そして背伸びを ビキッ 「!!!!!あいっつ!!」 しようと両手を上にあげて伸びをしようとした瞬間、するどい痛みがビーニャを突き抜けた。 「~~~~~~!!」 背中を擦りながらしばらく蹲り、ふと目を横にやれば天蓋付きのベッドがある。 立ち上がって見ればベッドでは自分がこうなっている元凶、桃色チビことルイズがすやすやと眠っていた。 (こっちは堅い床で寝て体中痛いってのに!) まだ背中をさする。目尻にはうっすらと痛みによる涙も浮かんでいる。 なのにこいつは柔らかで大きなベッドで夢心地。 それを見ているうちに意識もはっきりして昨日のいざこざも思い出してきた。 「…ムカツク」 テーブルの上に置いてあるランプをつかんでベッドに近づく。 ルイズはやはり起きる気配は無い。 「すぅ……う…ん…」 部屋にうっすらと差し込む光が眩しいのか、寝返りをうって背中を見せる。 「……」 全くの無防備だ。 これで頭めがけて何回か殴りつければ簡単にコイツは死ぬだろう。 そうすればこの左手の変な文字消えてアタシは自由、こんなとこさっさとおさらばできる。 すっ、とランプを顔に振りおろせる位置に上げる。 「……?」 だが、どうにもそれから動く気がしない。 なんだかこのまま振り下ろして、その後に起こることが、ルイズがどうなるかを考えていまいそれが全く楽しめそうにないのだ。 いや、むしろ非常に不快になりそうなのだ。 (?……あれ……) 普段の自分なら躊躇せずにやれた筈。 これは一体どうしたことだろう。 しかもいつの間にか振り上げたランプを下ろしている自分がいる。 「……」 「んー……」 そんな目の前でルイズがこちらに寝返りをして顔がこっちを向く。 (…アホくさ。 別に今じゃなくてもいいわね。 殺そうと思えばこんだけ隙だらけならいつでも殺せそうだし) ルイズの顔を見ているうちに昨日の契約を思い出した。 (……おぇっ) 何が悲しくてこんな奴とキスしなくてはならなかったのか、魔力が満ちてたら有無を言わさず消しとばしていた。 (でもあれは仕方なかったのよ。 あそこで騒ぎ立てるより大人しくしているように見せかけて、後から手のひら返してやれば。うん) 自分で納得するとビーニャはランプをテーブルに戻した。 「あーあ」 ぼりぼりと頭をかきながらイスにどっかりと腰かける。 そうしてどうしたもんかなと考えた矢先、ふと自分の恰好が気になった。 白い飾り気のない地味なパンティ、上はこれまた素っ気ないキャミソール。 (そういやアタシ昨日からこのまんまよね…) 下着姿で学園のあちこちを走り回っていたのだ。 レイム様にはとても見せられないけど、人間のガキなんかに見られても恥ずかしくもなんともないし。 「とは言っても、服なんて無いわよねぇ…」 気付いた時にはこの下着姿だった。 自分の来てきた服はどこへやら、多分服の各所に仕込んである道具や武器のナイフもろとも保管されているだろう。 もし手元に戻ってきても果たして着ることはできるかどうかも不安だ。 ズタボロで血でもついているような服はご免だし。 どうしたもんかと部屋を見渡すとイスに引っ掛けてある女子用の制服が目に入った。 (あ、これコイツが脱ぎっぱなしにしてたやつ) 手にとってしげしげと眺める。 (そういえば背丈も同じぐらいだし…着れるかな?) ごそごそとブラウスを着てボタンを留める。 悪くない。 胸が少しだけきついぐらいだ。 スカートも穿いてみるとこれも大丈夫、ウエストがきついだけ。 くるっと回ってみる。 今までこんな服は着たことがなかったのでなんだか新鮮な気分だ。 今日はこれでいこうとイスに腰掛けると扉の向こうからノックが聞こえた。 「おはようございます。お洋服をお持ちしました」 話し方から察するにおそらく小間使いの使用人だろう。 昨日走り回ってるときにそれらしいのを結構見たし。 しかしたかが服ごときでいちいち使用人参上とは良い御身分だ。さすが金に物を言わせる馬鹿な貴族のおガキ様が通う学園と言ったところか。 あ、そうだ。 受け取って良い感じの服だったらアタシが貰おう。 イスから立ち上がりドアに手をかける。 「はいはい。今開けるわよ」 ガチャリと錠を解除してドアを開けた。 「きゃあ!」 「あ?」 ドアを開ければ目の前には黒髪の女。 恰好からしてメイドというやつだろう。 だが、それがなぜか尻もちをついてこちらを見上げているのだ。 「?服もって来たんじゃないの?」 腰を抜かしているメイドに手を伸ばして掴まれという仕草をする。 「え、あ、すみません! …ちょっとびっくりしてしまいまして」 「は?びっくりってなによ」 「扉を開けた時に制服が目に入ったので、てっきりミス・ヴァリエールかと思ったのですが…」 「顔見たらアタシでしたーってわけね。 何も転ぶほど驚くことは無いんじゃない? …アンタの名前は?」 つかまれと手を伸ばし、シエスタが手を取って立ち上がる。 「すみません。私の名前はシエスタと申します」 「んーシエスタね…っと」 ビーニャがシエスタを起こした時、何やら抱えている物に目をやる。 「そういや何か持って来たって?服らしいけど」 「あ、そうでした。 こちらのお洋服の修繕と洗濯が終わったのでお届けに来たんです」 そう言ってシエスタが畳まれていた服を拡げて見せる。 「あっ!その服!」 てっきりルイズの物かと思いきや目の前に現れたソレはビーニャの物だった。 ぐわしと服を掴んでまじまじと見つめる。 シエスタがびくっと驚いたようだがそれどころではない。 半ば諦めかけていた服だったので喜びも格別だ。 「ん~!良かった~!」 シエスタから奪い取るようにして受け取った服を抱きしめて頬ずりするビーニャ。 驚いていたシエスタもそのビーニャの表情を見て笑顔になる。 「思い入れのあるお洋服なんですか?」 その言葉ににぱっと笑顔を向ける。 「その通りよ! これは一番最初にレイム様に貰った物なんだから!」 かなりご機嫌だ。 そんなビーニャにシエスタがふとした疑問を質問してみる。 「そのレイムさんとはどのような方なんでしょうか?」 様、と呼んでいることからここに来る前のビーニャの目上の人だと想像したのだが、 「決まってるじゃない!」 シエスタに向けて大きな声で返事する。 「アタシのご主人様! 悪魔たちを支配する存在! とっても強くて頭も良くて素敵な大魔王様よ!」 「…え?」 流石にこの答えにはシエスタも言葉を失いかけた。 よりにもよって「悪魔」と来たものだ。 どう反応すれば良いのか正直困ってしまう。 悪魔なんておとぎ話の中でしか聞かない存在なのに、それが彼女の元ご主人様だったと言われても。 (…!そうだ! きっと「悪魔みたい」な人なんだ!) と、それはそれで問題大有りなのだがシエスタはそう自分に納得させることにした。 「ところでこの服直してくれたのってアンタ?」 「あ、どこかまずいところでもあったでしょうか?」 気に入っていた服ならば個人のこだわりの部分などもあったかもしれない、 「全然問題無し!正直言って助かったわ。 アタシ細かい裁縫とか駄目なのよー。 やっても見たんだけどうまくいかなくてさー」 (何となく分かる気が…) 心の中で思っても言わない。 「感謝するわ。 あ、そうだ!アンタのこと気に入ったから何か願い事があるなら叶えられるもの だったら叶えてあげる!」 「いえ!そんなお礼だなんて」 両手を前にいいえ結構ですのポーズを取る。 自分にとってはお礼をされるようなことをしたつもりはないのだ。 それに何となく嫌な予感がするのだ。 「遠慮しないでいいわよー。 殺したいヤツとかいない?代わりにぶっ殺してア ゲ ル♪」 (ひぇぇ…!) 当たりである。 「ほ、本当に大丈夫ですから! 別にお礼なんてされるようなことはしていないので! お気持ちだけで十分ですから!」 「えー」 ビーニャは不満げだが、この申し出にはいと答えて本当の流血沙汰にでもなったりしそうでシエスタは気が気でない。 なんとかビーニャを説得してこの場を収めようとする。 「そういうことなら仕方ないわね」 「分かっていただけましたか…」 「じゃあ今からムカツクやつを探しに行けばいいわね」 ずるっとシエスタはその場にすっ転ぶ。 駄目駄目である。 「で、ですからーっ!……ひぃ!」 「?」 シエスタが何か言おうとしたようだがその続きがない。 かわりにぶるぶる震えながら口をぱくぱくさせている。 「何 を し て い る の か し ら ?」 「うヴ!?」 まるで地獄から響くような重低音が聞こえビーニャはびくりと震え、変な声をあげて立ったまま動けなくなる。 そのまま人形のような硬い動きでゆっくりと振り返ると、 鬼、いや、鬼神がいた。 真っ赤な怒りのオーラを立ち昇らせるネグリジェを着た鬼などリィンバウムでもお目には かかれないだろう。 人間には無い筈の角まで見える。 寝癖で髪の毛が角のように見えるのかもしれないが。 「昨日の夜に洗濯をするように言っておいたけど終わってるの? そしてそれは私の制服なんだけど、アンタが着てどうするのかしら」 だらだらと顔を流れる汗。 「ア…アッハッハ…ハッ…」 ひきつった笑顔を浮かべるしかない。 ふと背後でバタンと扉を閉める音が聞こえたので振り返ればシエスタがいない。 どうにも出来ないと判断して離脱したようだ、うん正しい。 「ビーニャ」 見ればルイズがにっこりとほほ笑んでいる。 さっきの鬼の面影はない。 しかし、 「何か言うことは?」 いつの間にか手に持っていた杖から火花のような物が見える。 見ただけ誰もがまずいと思う状況だ。 もはや逃げ場なし。 ビーニャはふっと笑うと精一杯の笑顔でルイズに言った。 「アンタの言うことなんて聞くわけないでしょ、バーカ」 ルイズの部屋から爆音が学園に響き渡った。 了 前ページゼロと魔獣のような悪魔
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前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔 「悪魔がきたりて牙をむく」 トリステイン魔法学園。 そこでは学園の恒例行事である使い魔召喚の儀が順調に進んでいた。 そう、一人を除いては・・・ チュド―――ン・・・ 爆発が起きる。 そこに爆発の産物である大きな穴が開く。 その横には同じぐらいの穴が開いているが、一つや二つではない。 大小に差はあれど、ざっと30はその穴が出来上がっているのである。 新しく空いた穴の前で、それを作った人物が肩を震わせていた。 桃色がかったブロンドの美しい少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ ヴァリエール。 彼女は肩・・・いや、全身を微妙に震わせながら、泣きそうになる自分を必死に抑えていた。 周りの生徒達は次々と召喚を成功させ、コントラクト・サーヴァントもすいすいと進めていく。 なのに自分はなにもない穴ぼこを大量生産している。 「ゼロのルイズ!穴を掘っても地面の下に使い魔はいないと思うぞー!」 「それとも穴掘り職人にでもなるのかー?」 「木を植えたりする穴を掘るんだったら便利そうね」 「なんならウチで雇ってやろうかー?あ、それなら魔法より庭師の勉強をしておいてくれないと」 「ははは!そりゃいいや、それならゼロじゃなくて「庭のルイズ」っていう素敵な名前 がつくぞ!」 周囲から飛んでくる野次。 それを背に受けてルイズの震えが大きくなった。 (・・・・なんで成功しないのよっ!) 顔を赤くさせ拳を握り締めながら、ルイズは穴を見つめていた。 この召喚の儀式の責任者であるコルベールはそんなルイズの様子をずっと見ていたが、 そろそろ止めるべきかと思っていた。 失敗とは言えあの爆発にも力を使う、一つ一つは小さくともそれが蓄積すれば大きな消耗となる。 このままでは彼女は倒れるまで続けるかもしれない。 いや、倒れるまでやるだろう。 コルベールはルイズの性格は承知していた。 「ミス・ヴァリエール。今日はここまでにして明日、また挑戦しましょう」 「いえ!このままでは終われません!」 自分の問いに対するルイズの返事も予想通りだった。 「・・・では、あと一回だけサモン・サーヴァントを許可します。 どちらにせよ、今日はここまでですよ?」 「はい!」 ルイズもその提案に納得したので、コルベールはその場から少し下がる。 「心を落ち着かせて、神経を集中させて呼んでみなさい」 アドバイスもつけて。 ルイズは目を閉じて、大きく、そして長めに深呼吸をする。 全神経を召喚に集中させ、今までのようにではなく大きな声で呼びかけた。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズが詠唱らしき宣言を終えると同時にそこに大爆発が起きた。 これには野次を飛ばしていた周りの生徒や見守っていたコルベールも仰天した。 爆風に生徒の何人かは吹っ飛ばされ、召喚された各使い魔達が騒ぎ始めた。 (そんな・・・・失敗なの!?) またもの爆発にルイズは落胆しかけたが、土煙が収まり始めると中央部に何かの影が あるのが見えた。 「やった!何かいる!」 思わず口に出してしまう程、ルイズは嬉しかった。 そしてその影の主が姿を現す。 (え・・・・人・・・?) そこにいたのは妙な服を着た自分と同じぐらいと思える少女。 ところどころにケガをしているのか血を流して荒い呼吸を繰り返してる。 顔色が悪く見えるのはそのせいか、とにかくケガをしているのならば治療が必要だ。 やっと成功した私の使い魔。 とにかく今は治療しようと呼びかけることにした。 「ねぇ、あなた。ケガしてるのなら」 その先は言葉にならなかった。 目が合ったと思った瞬間、少女は腰元から短剣を抜き放ってルイズに飛びかかったのだ。 召喚された少女、ビーニャは混乱していた。 自分は死んだものかと思っていたが、光が収まり目をそろりと開けてみると周りには召喚師とおぼしき連中が周りを取り囲んでいる。 そいつらの周囲には召喚獣と思われる物も見える。 自分は悪魔形態から仮の人間の状態にもどっている。 あの調律者の末裔のアイツはどうした? あのメトラルのアイツは? その仲間どもは? 周囲に気を配るがそれらしき奴は一人もいない。 周りは見慣れないが同じ恰好のガキ年齢の召喚師。 お育ちが良さそうだ、身なりの綺麗さが目立つ。 金の派閥の連中か。 数がやたら多いが、アレか、残党狩りか。 調律者御一行どもはアタシが死んだと思ってどこかに行った。 それで金の派閥の連中がアタシの死にざまを確認しに来て、魔獣の生き残りがいないかを見にきて、もしアタシが生きてたら消耗してるだろうから多人数なら勝てると踏んだ。 ろくに戦いの経験もないようなガキを出しても倒せる、と。 ナメた真似してくれんじゃない。 しかも目の前に一人いるし。 なんか笑ってる、しかも手をこっちに向けてくる。 あっそう、私一人で十分ってやつ? そうかもね、悪魔でもここまでボロボロならガキ、しかも女でも一人で倒せるかもしれないじゃない。 護衛獣もいらないってワケね。 あっそう、それじゃお望みどおり、 殺してあげる。 短剣を振りかぶりルイズを襲うビーニャ。 (しまった!なにをやっているんだ私は!!) コルベールは爆発に気を奪われ過ぎていた自分を叱咤した。 いやそれよりもルイズを! 杖を抜きビーニャに向け炎を放たんとする。 間に合え―!! 狙いは首、大きく横に振りかぶりそのまま薙ぐ、それでこの桃色娘は血をまき散らして 死ぬ。 そう確信したビーニャだった。 「キャハハハハ・・・ハ・・・あ・・・れ・・・・?」 だが、その凶行を止めたのはビーニャ自身。 正確にはビーニャの体だった。 悪魔の形の時に血を流し過ぎていたのだ。 疲労困憊、満身創痍、それに加え状況に対する頭の混乱。 そんな矢先に激しく動いたのがまずかった。 いろいろ限界だったビーニャはそれで意識を失い、そのまま二、三歩前にふらつき どさりと 「きゃあ!」 ルイズのもたれかかる様にして倒れた。 「ちょっ、ちょっとなんなのよ!あんたいきなり!」 はずみで一緒に倒れてしまったルイズだったが、意識がない人というのは存外重く うまく動けない。 「ミス・ヴァリエール!大丈夫ですか!?」 すぐさまコルベールが近寄り、抱えるようにルイズからビーニャをどかす。 同時にまだビーニャが握ったままだった短剣も取り上げた。 コルベールはルイズに怪我がないかを確認すると、懐から布を取り出してビーニャの 出血場所と両手を合わせて縛る。 両手のほうは万一目を覚まして再び暴れそうになったときのためだった。 そしてルイズの手を取り立たせると、 「今日はここまでです!私はミス・ヴァリエールとこの少女を連れて帰りますので、 皆さんは使い魔と先に戻っていて下さい」 周りでこの事態に唖然としていた生徒達だったが、コルベールの言葉にはっとして 吹っ飛ばされた友人や気絶している使い魔を起こして慌ただしく飛んで行った。 「なんでいきなり襲ってきたりしたんでしょうか」 「ミス・ヴァリエール。この少女は少々錯乱しているのかもしれません。 このケガでは正常な思考でいられなかったとも言えます。 まずは彼女を治療して落ち着いてから話をしましょう」 コルベールの話を承知したルイズはビーニャの顔を見て。 「何があったのかは分からないけど、あんたは私の使い魔になるんだからしっかりしなさいよね・・」 優しく頭を撫でるのだった。 前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔
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前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔 ゼロと魔獣のような悪魔-2 見知らぬ世界で大騒ぎ 「……?」 いつまで気を失っていたのだろう。 目を閉じていても光の眩しさを感じる。今は朝か昼か。 霊界サプレスの住人は魔力が満ちる夜に行動する。 光を忌み嫌う悪魔となればそれは尚更だ。 日中は眠れるはずなのに目が覚める、それはつまり寝過ぎたということか。 …… 目をうっすらと開ける、ぼやけた視界に入ってきたのは白い布。 ああ、これはシーツかと目を再び閉じようとする。 このまま布団に包まって目をつぶっていればまた睡魔が来てくれる… 「んぅ…………ッはぁあっ!?」 シーツを跳ね飛ばして飛び起き辺りを見回す。 清潔感が溢れる部屋、戸棚には薬?とおぼしき瓶が並び向かいにはもう一つベッド がある。 窓からは光が差し込み、少し開けられた窓からは爽やかな風が吹き込んでくる。 「どこよココ!?」 自分はギエン砦で調律者達と戦って負けて… 気がついたら金の派閥の連中に囲まれてて、目の前の女を殺そうと切りかかった ら気を失って…気がついたらベッドの上…。 「つまりここは金の派閥の医務室…?」 なんで自分は(恐らく)運び込まれて寝ていたのか。 はっとして自分の体を確認する。 下着姿の所々には包帯が巻かれて、丁寧に手当てされたのが分かる。 何故悪魔の自分が治療されていたのか、考えると頭が痛くなってきそうだ。 幸い誰もいないようだし、逃げられるならば逃げてしまおう。 そう考えたビーニャは足を出し地面に着け、 「~~~~~~~~~~~~~!!い!!!たっっ!!あぁ!!」 言葉にならない声を上げてうずくまってしまった。 体に力が入らない。 床の上で生まれたての鳥のヒナ状態のビーニャは痺れるような痛みに目じりにうっすらと 涙を浮かべながら自分の服を探す。 しかし周りにそれらしきものは無い。 サモナイト石や短剣といった危険物が入った服だ、取り上げられて当然だろう。 お気に入りの髪留めも無いし。 そうこうしているうちにだんだんと感覚もしっかりしてきて立ち上がれるようになり、 ベッドに腰かけているとしびれは消えてしまった。 少し傷は痛むが。 拳を握ったり開いたりして動くことを確認したビーニャは、止む無く下着姿で脱出することにした。 ドアノブに手をかけると鍵もかかっていなく開くことができる。 いくらなんでも悪魔相手にこれは無いだろう。 罠なのかと勘繰りながらゆっくりと戸をあけ外に視線を向けるが外には警備の者らしき 影も形もない。 ますますおかしいと思いつつも、こうしていてもらちが明かないので行動することにした。 裸足で抜き足さし足と廊下を進んでいく。 最初は窓からとも考えたが覗いた高さが結構な物なので止めた。 「にしても、どこがどこだかさっぱり分かんない」 独り言を言いながら歩いているのだが誰とも出くわすわけでもないのでお構いなし。 しかも召喚師の本陣、内部構造なども知るわけがない。 あてどなく歩きながら曲がり角を曲がろうとしたその時、 「きゃっ!」 「いたっ!」 不注意にも人と出くわしてしまった。 お互いぶつかった時に尻もちをついてしまい、なおかつ鼻もぶつけたようだ。 ビーニャが花を抑え涙目になりながら前を向くと目の前の桃色の髪の人間も鼻を押さえて いる。 (…桃色の髪…………この女っ!!!!) 意識を失う前に見た召喚師と思しき桃色の髪の女。 それとこんなところで出会ってしまったのだ。 「ど、どこ見て歩いてるのよ!傷が残ったらどうす…る…気…」 目が合った。即座に後ろに飛び退く。 こんなところで見つかってる場合じゃない。 「目が覚めたのね!一時はどうなること思ったけど、…無断で出歩けるくらい元気そう じゃない」 桃色の女こと、ルイズが立ち上がりビーニャに話しかける。 「でも、勝手に出歩くのは関心しないわよ?使い魔があちこち行くのなら主人の許可がいるんだから」 (使い魔?アタシが?誰の?) ビーニャが訝しげに見ているのを気づいていないのか、ルイズは主人として使い魔に対する主従の関係な態度で話続ける。 「それにあんたは今私とぶつかった訳だけど、普段ならこんなことは許しがたいことなのよ?平民ならどんな制裁を受けるかもしれないのを、あんたは私の使い魔ということで特別に許してあげるんだから」 時折鼻をさすりながらもルイズは言葉を続ける。 最初は黙って聞いていたが、上から目線の口調にだんだんと腹が立ってくる。 「分かった?それじゃ医務室に戻っ…あぐっ!?」 その瞬間ルイズは後方に吹き飛ばされた。 何事かと目線を上げると包帯だらけの少女がこっちに手をかざし睨みつけている姿が映った。 口元が微かに笑っている。 (な、何!?こいつがやったの!?) 「何言ってんだか知らないけどさぁ…アンタのその態度すっごくムカツクんだよねぇ」 転んだままついたまま動けないルイズを突き刺すような目線で睨む。 「一人でアタシの相手しようなんていい度胸じゃん。 じゃあ特別に…」 (な…何する気!?) 「思いっっっっきり壊してあげる!!ダークブリンガーッ!!」 腕を振り下ろしたビーニャを見てとっさに腕で身をかばう。 正面から来るであろうその攻撃から身を守るために―――――― だが、その防御は無駄に終わった。 ゴワ―――――ン それは真上、頭に降り注いだのだから。 「いっった!!何なのよもう!」 頭の衝撃の正体を見ようと横を見れば、鈍い銀色の大きな桶、 通称金ダライがごわわんと音をたてて転がっていた。 ルイズが金ダライを見ている一方、その金ダライを召喚したビーニャは目が点になっていた。 「……は?」 自分は闇の気を纏った剣を呼び出してコイツ…桃娘にぶつけたはず。 それで辺りに血しぶきが飛び散って終わっていたはず。 それが生きてるし、しかも隣のアレは何?剣を呼んだはずなんだけど。 なんで、 バカ―――――――ン 考え事をしているビーニャの顔面にその金ダライが命中した。 後ろに倒れこみ顔を押さえて何事かと顔を上げれば、桃娘がこちらを睨んでいる。 なぜか背後に炎のような物も見えるような気がして正直おっかない。 「…ケガしてるだろうからって…きっと混乱してるだろうからって… 最初に切りかかってきた時の事許してあげようと思ったけど…」 覚えてたんだ。 「…きっと医務室でまだ眠ったままなのかなと思って…見に来てあげたら…」 そんなこと頼んでないんだけど。 「いないから探して…傷が開いたりしないように言おうとしてあげたら… 因縁つけてきた挙句…人の頭に変な物ぶつけてきて…」 それはアタシも予想外、本当は殺す気だったんだけど。 いつの間にか桃娘が手に持っている杖がバチバチと音を立てている。 これは 「覚悟しなさいっっっっ!!!」 まずい そう思ったときには閃光が見えていた。 あ、桃娘の今の顔、キュラーが従えてた悪鬼が憑いた人間そっくり。 「彼女の様子はどうでしょうかね…」 階段をゆっくり上がりながら、昨日のサモン・サーヴァントの儀式監督者のコルベールは医務室に向かっていた。 ミス・ヴァリエールことルイズが呼び出した少女。 コルベールはビーニャの事が気になっていた。 血でところどころ染まった服、手慣れた手つきで短剣を抜き放ち切りかかる動作、まるで戦場から来たかのようだった。 そして何よりも気になったのは目、赤い輝きの中に見える深い闇、あの目がコルベールの心に波を立てていた。 (とにかく彼女の回復を待って、それから先のことを考え―――――――!?) 矢先、コルベールは爆発音で階段を踏み外しそうになった。 「何事ですかっ!?」 体勢を持ち直して最後の段を上り曲がり角の向こうに顔を出すと、 「ちょっとそこどいてぇぇぇぇぇぇ!!!」 件の少女が下着&包帯姿で真横を駆け抜けた。 「あ!待ちなさ「待ちなさい!よけるんじゃないわよっ!!!」」 振り返っていたコルベールの真横をルイズが鬼の如き形相で走り抜けていった。 そのまま階段を駆け下りて行った二人をぽかんと見ていたコルベールだったが、はっと 己を取り戻して爆音が聞こえた法を見れば見事なまでにぼろぼろになった石造りの廊下が見える。 壁には大砲の直撃を受けたかのような大穴が空き外の光景が覗いている。 「待ちなさぁぁあああああい!!」 大方の事情を察したコルベールは二人の後を追いかけて階段を駆け降りた。 所々で響く爆音で生徒達が騒ぎ始める。 「何!?戦争!」 「それとも盗賊か何かの襲撃か?」 「ゼロのルイズが一人戦争ごっこをやってるって!」 「ついに切れたか…」 「いや、呼びだした使い魔を襲ってるそうだ!」 「しかも傷だらけで下着だけの女の子らしいって」 「それを笑いながら追いかけまわしてるそうね」 「そんな性癖が……」 周りはあくまで傍観者なのだが、追いかけられる一人と追いかける一人、さらにそれを追 いかける一人は必死だった。 「あぁもう!何なのよアイツ!」 裸足であちこちかけ回りながらビーニャは何とか隠れ場所を探そうと必死だった。 そこで途中で見つけた食堂とおぼしき場所に侵入すると、厨房でコックを突き飛ばして包丁を奪い、それを掴みながら走り回り今は開けた広場に来ていた。 はぁはぁと息を切らして手近に隠れられそうな場所を探すがそれらしき場所は無い、見回しているうちに後ろから複数の声が聞こえてきた。 「やばっ!」 いよいよもって焦ってきたビーニャの目に壁に持たれるように座っている少女が目に入る。 本を読んでいるのかと思いきやこちらに目を向けている。 (どこにでもいるわよね。一人が好きなヤツ) 本来なら逃げるべきだが一人でいるということがビーニャにとっては有難かった。 コイツを人質にさせてもらおう。 「ちょっとそこのアンタ」 笑みを浮かべながら包丁を持って近づくビーニャを少女、タバサは無表情で見つめている。 (…余裕ってわけ?それとも頭いかれてんの?) 距離を詰めても動じないタバサにビーニャは腹が立ってきた。 さっきの桃娘にやられた分もこいつに当たらせてもらおうと掴みかかろうとした瞬間、 ビーニャの前に青い鱗のドラゴンが舞い降りた。 「っ!メイトルパのワイバーン!?っぐあう!!」 突如現れた飛竜に目を奪われたと同時にビーニャは横から見えない何かに吹き飛ばされる衝撃を受け地面に叩きつけられた。 (……) 青い髪の少女とワイバーン、それと大勢の人間が走ってくるのが見える。 しくじったなぁと思いながら、ビーニャは意識を失った。 (…) 意識を失い、また目覚めるのはこれで何度目だろう。 うっすらと目を開けて入ってきたのは白いシーツ、どかしてみれば見覚えのある天井。 (さっきは広場で倒れたはずだけど…) 「…夢か」 「夢じゃないわよ」 目を閉じようとすると頬に激痛が走った。 「い!いひゃいいひゃい!」 指の感覚、誰かが頬を引っ張っている。 「いひゃひゃひゃひゃ!ふしゃけんしゃないひゃよ!!」 相手を手を振りほどく。 驚いて目を向ければ昼間の桃娘ではないか、じっとこちらを睨んでいる。 「アンタはっ!」 掴みかかろうと腕を出すとジャラリと両手に錠と鎖がついているのに気がついた。 「な、なんなのよコレは!」 「暴れまわる獣には鎖が必要でしょ?」 鎖に驚いているビーニャを見てニッコリとほほ笑むルイズ。 「さっさとはずさないと――――」 怒鳴りかけた矢先部屋の中に誰かが入ってきた。 「どうやら目が覚めたようですね」 やってきたのは頭部のさびしい中年の男、追いかけられてる時にすれ違った気がする。 入ってきた男はベッド横に立って頭を下げて挨拶をする。 「初めまして。私の名前はコルベール。ここで教師をしている者です。 錠や鎖など手荒な処置かもしれませんが、どうかご容赦を。 貴女のお名前を伺ってもよいでしょうか?」 「……」 ビーニャは答えようとしない。 俯いたまま黙っている。 「何とか言いなさいよ!」 業を煮やしたルイズが口を開くとビーニャはきっと二人を睨みつけた。 「いい加減なお芝居はもう沢山なのよ! さっさと殺したらいいじゃない!それとも見せもの?研究のサンプル? したけりゃ好きにすれば! ご機嫌伺いなんか不要よ!金の派閥の召喚師ども!」 言うだけ言うとビーニャは俯いて黙ってしまった。 いきなりの剣幕に二人は驚いたが、すぐに平静を取り戻したコルベールがそれに答える。 「落ち着いてください。ここはトリステイン魔法学園であり貴女の言う金の派閥という組織ではありません。 そして私達はメイジで召喚師という者でもありません」 あくまで穏やかに回答するコルベール。 殺意をもって切りかかってくるような会田の場合は刺激しないことが重要だ、 その答えにビーニャは顔を上げる。 「…トリステイン?メイジ?…なにそれ?」 「あんたどこの田舎の出身なのよ。知らないの?」 「聞いたことないわよそんなところ!ここはファナンじゃないの!?」 「だから違うって言ってるじゃない。ファナン、なんてこっちが聞いたことないわよ」 ますます意味が分からない。 「…質問。中央エルバレスタ地方、王都ゼラム、…リィンバウムって 知ってる?」 二人とも首を横に振った。 (ここは完全に別の大陸か何かだ…) ふと、窓に目をやれば外は既に薄暗くなって空に二つの月が現れ始めている。 (訂正……異世界…) これならば自分のことを知らない、地名も知らない、召喚術も知らないというのもうなずける。 念のためここの場所や近隣のあらかたの地名を聞いたが、うん、さっぱりだわ。 頭痛がしてきた。 しかも場所のやり取りが終わったら今度は、契約の話が出てきたがそれがますます頭を痛くさせる。 「つまり、アタシは魔法を使う、いわゆるメイジのアンタに呼ばれて。さらに使い魔になれってのね」 「そうよ。ありがたく思いなさい。貴族に直に仕えられるなんてないんだから」 「キャハハハハハハっ!死んでも嫌!!」 「……どっっこまでも失礼な平民ね!まだやられたりないのかしら!」 杖を取り出したルイズをコルベールが落ち着かせるのにまたしばらく掛かった。 このまま拒否しようとしたが昼間の騒ぎの責任を問うことになると言われ、もし 使い魔になればそのことは不問とすると持ちかけてきた。 このハゲかけ親父、いい性格してる。 やむなく了解した。 が、 「何が悲しくてアンタなんかとキ、キスしなくちゃなんないのよ!」 「こっちだってサモン・サーヴァントがやり直せるならあんたなんか願い下げよ!」 「もう勘弁して下さい…」 再びケンカが始まりそうな二人のそばでコルベールは胃を痛めていた。 その後なんとか契約を完了しルイズの部屋へとやってきたビーニャは、暗い部屋で 自分の左手の文字をじっと見つめていた。 「まさかアタシが使役の立場にさせられるなんてね」 詳しい話はまた後日ということでそのまま解散してこいつの部屋に来てみれば、 「あんたは床!」 と言われてやむなく床に転がっている。 異世界ならば魔力の質もリィンバウムのそれとは異なる、召喚の失敗もおそらく原因はそれだ、ならこちらに慣れるまでは精々従ってやろう。 力が戻れば従う理由は無いし、こっちからおさらば。 それでレイム様のところに戻る方法を見つけてさっさと帰ろう。 そんなことを考えているビーニャの顔に白いパンティがぺそっと落ちてきた。 「明日からバリバリ働いてもらうから覚悟しなさい。とりあえずそれは明日洗濯しておい て」 言うだけ言ってルイズはまた寝てしまった。 (……やっぱりコイツは真っ先に殺そう。ついでにアタシをふっ飛ばしたあの青頭も) 顔のパンティを払うと昼間の疲れからか強烈な眠気とともに、ビーニャはすぐ目を閉じた。 了 前ページ次ページゼロと魔獣のような悪魔
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天使のような悪魔たち 第1話 天使のような悪魔たち 第2話 天使のような悪魔たち 第3話 天使のような悪魔たち 第4話 天使のような悪魔たち 第5話 天使のような悪魔たち 第6話 天使のような悪魔たち 第7話 天使のような悪魔たち 第8話 天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 天使のような悪魔たち 第9話 織原 結意 天使のような悪魔たち 第9話 天使のような悪魔たち 第10話 天使のような悪魔たち 第11話 天使のような悪魔たち 第12話 天使のような悪魔たち 第13話 天使のような悪魔たち 第14話 天使のような悪魔たち 第15話 天使のような悪魔たち 第16話 天使のような悪魔たち 第17話 天使のような悪魔たち 第18話 天使のような悪魔たち 第19話 天使のような悪魔たち 第20話 天使のような悪魔たち 第21話 天使のような悪魔たち 第22話 天使のような悪魔たち 第23話 天使のような悪魔たち 第24話 天使のような悪魔たち 第25話 天使のような悪魔たち 第26話 天使のような悪魔たち 第27話 天使のような悪魔たち 第28話
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246 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 12 10 ID K43y8ILg 飛鳥が監禁(?)されている時同じくして、別のところではある少女が追われていた。 「はぁ…はぁ…」 「いたぞ!森に逃げ込むつもりだぞ!」 「ばかめ!森には対侵入者用のトラップが山ほどある。袋の鼠だ!」 少女は必死に走っていた。捕まればまた実験道具にされる。そのことへの恐怖心だけが少女の足を動かしていた。 「もう……だめ…。」 一本の木に身を委ね、へたりと座り込む。が、追っ手はすぐそこまで来ていた。 「見つけたぞ!囲め!」 「なんとしても逃がすな!なんなら足の一本や二本、折っても構わん!」 少女の恐れは最高潮に達した。そのとき、森は光……いや、夜の闇より暗い、闇色の光に包まれた。 男たちの断末魔が森にこだまする。あとに残されたのはただ一本だけの木と、少女だけだった。 「…行かなきゃ。"アスカ"のもとへ…。」 少女は、再びゆっくりと歩みだした。 247 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 12 57 ID K43y8ILg ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ ところかわってここは結意の自宅。 結局俺は朝まで結意と致しまくってた。…むしろ結意に一方的に搾り取られたようなもんだが。 「…うーん、今何時だぁ?」 「えっと…9時47分だよ。」 「はぁ…遅刻か。おい結意、今からでも学校行くぞ。」 「あっ、ちょっ、待って!」 「なんだ。」 「…立てないの。おなかに力はいんないのぉ…。」 ベッドにちょこんと座り込んでそう答える結意…またか。まてよ、これは好都合かもしれない。今の結意は自力では家から出ることすらできないだろう。 そうなると必然的に今日は自主休講、つまりサボらざるを得ない。ならば、俺だけ学校に行くふりして自宅に帰れる! 「…とか考えてるんじゃないよね?」 「なっ!?」 「言ったよね?飛鳥くんのことならなんでも分かるんだよ?あの女のところに行ったら………からね。」 最後の方がよく聞き取れなかったが…はっきりしない分逆に怖い。 でも、結意はなにをそんなに明日香のことを邪険にするのだろうか? 明日香はあくまで妹。だけど結意はもう恋人も同然だ。…さすがに妊娠してもおかしくないくらいシたのはまずったけど。避妊もしなかったし…。 何が言いたいのかというと、今さら俺は結意から離れる気はない。それはあいつだって分かってるはずだ。 だから取り越し苦労だってことをなんとか教えてやりたいわけだが…さて、どうしたものか。とりあえず…… 「結意……」 「なに…んっ」 キスをしてみた。ちなみに深い方。軽く舌を動かしたのち、唇を離してさらに追い討ちのひと言をかける。 「…愛してるよ、結意。」 あ…落ちた。うん、安らかな寝顔だ。こうしてれば可愛いんだよなぁ。っと、見惚れてる場合じゃない。 俺はそのまま結意の手足を、昨日俺を捕縛していた縄で固定し、猿ぐつわを噛ませた。よし…これなら心配ないだろう。 248 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 14 00 ID K43y8ILg 「…ん?んん―――!ん―――!!」 「って、はやっ!」 間一髪。結意のやつ…もう目を覚ましやがった。なにやら必死にもがいて涙目で俺を必死ににらみつけてる。たしかこういうときは…… 「…結意。このままおとなしく待ってられたら、 ご ほ う び あげるからな?」 「……?――!―!」 うんうんと犬のように首を縦にふる結意。…変態め。 そんなこんなでようやく結意の家から脱出できた俺はその足で自宅に向かった。 携帯は粉々だし…結局昨日は帰れなかったからなぁ…。明日香のやつ、俺がいなくて寂しがってるかもな。 そんなことを考えてるうちに、あっという間にに自宅に着いた。徒歩5、6分てとこか…やっぱ近いな。 がちゃりと鍵をあけ、中に入る。 「ただいまー。明日香、いるか?」 …返事はない。寝てるのか。明日香も遅刻か………な!? ふと、リビングに目をやってみる。そこは、悲惨な状態になっていた。 床には料理と砕けた皿が散らばっていた。さらに、カーテンはぼろぼろに切り刻まれている。電話の子機も真っ二つにへし折れていた。 まず俺が真っ先に疑ったのは強盗の可能性。…だが、財布や通帳は無事だ。じゃあいったい…? 明日香のことが心配になった。俺は慌てて二階へと駆け上がり、明日香の部屋に向かう。 扉を開け放つ。明日香は部屋の中にいた。だが…様子がおかしい。俺はそっと近づいて、声をかけてみた 249 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 14 37 ID K43y8ILg 「明日香………?」 「あ…おにいちゃん?」 明日香は俺の姿を視認するや否や、はじけるように飛びかかってきた。自然と、俺たちの体は重力の法則にしたがって床に倒れこむ形になる。 そのまま明日香は俺の胸元に顔をうずめ、荒く呼吸をしている。 「はー、はー…おにいちゃん…さびしかったよぉ……昨日帰ってくるって言ったじゃない…。ねぇ…なんでよぉ…なんで私を独りにするの…?」 「…ごめんな、明日香。もう大丈夫だから、な?」 涙ながらにそう訴える明日香に対し俺は、ありきたりな慰めの言葉しかかけられなかった。 が、明日香は…… 「あは…おにいちゃんの匂いだぁ……いい匂い…」 まるで昨日の結意のようなことを口走った。思わず、肩をつかんで距離をとろうとしたが、がっちりと抱きついて離さない。 その息遣いも、言動も、上気した表情も、結意そのものだった。いや…これは、俺に対して向けられたある共通の生理的反応……すなわち欲情。 「すーはーすーはー……もうだめ、我慢できない…。」 「明日香、やめるんだ!」 が、明日香はとどまるどころか俺のズボンのファスナーに手をかけ始めた。…もう、明日香が何をしようとしているのかは容易に予測できた。 「やめろ!俺たちは兄妹だぞ!」 「もう遅いよ……お兄ちゃん。お兄ちゃんが寝てる間にもう何度も何度もこうしてたんだよ?気づかなかった?」 「え…?うそだろ……それじゃあお前は…っ!」 250 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 15 19 ID K43y8ILg とうとう俺のモノをほおばりだした。獣のように一心不乱にしゃぶりついている。明日香はそれこそ子供のような体つきだ。払おうと思えばそれは簡単だ。 だが今の明日香からは不思議とオーラが漂っているようだ。あくまで感覚的なものであり、実際に見えるわけでもないのだが…そのオーラが俺にそれをさせない。 今の俺にできることといえば明日香に言葉で訴えることだけだった。 「…頼む、やめてくれ!お前は俺の妹なんだ!汚したくないんだ!」 「いいんだよ?私、お兄ちゃんにならどんなに汚されたっていいの。むしろ、いっぱいお兄ちゃんに汚されて、お兄ちゃんだけのものになりたいの…。だから…」 「……っ!!」 俺はついに限界を迎えた。明日香の口内を迸りの受け皿のようにしてしまった。明日香は、口いっぱいに放出された精液を余すことなく飲み干した。 それだけにとどまらず、俺のモノを舌できれいにせんと精液をなめとりだした。 「ぴちゃ…ぺろ…おいしぃ……お兄ちゃんの味だぁ…。」 「あす…か…何でこんなことを?」 「だって、私お兄ちゃんが好きだもの。いつもずっとお兄ちゃんのそばにいて、ごはん作ってお洗濯して、せーよくしょりだってしてあげたいの。 なのに…どうして?お兄ちゃんがいなくて私、気が狂いそうだったんだよ?もうどうしたらいいかわかんなくて、死んじゃおうとすら思ったの。 それなのに、お兄ちゃんは他の女と一緒で…私、お兄ちゃんに捨てられちゃったの?ねぇ…答えてよ。」 だが、何も言えなかった。今まで明日香が俺をそういう目で見ていたことなんて露ほども知らなかった。 それに、俺たちは血のつながった兄妹だ。俺には明日香を受け入れることはできない。 「……ごめんな、明日香。俺はお前の気持ちには応えられない。」 「なんで?私が妹だから?子供みたいな体で満足できないから?」 「そうじゃない…俺はお前が何より大事だ。お前が好きだよ。 でも、俺にとっては今まで一緒に過ごしてきた大事な家族なんだ。だからこそ、こんな風に汚したくないんだ。」 「…いやぁ!そんなの聞きたくない!私にはお兄ちゃんがすべてなの!…そんなこといわないで…お願い……。」 最後のほうは消え入りそうなほどか細い声だった。それだけで俺が明日香にとってどんなに残酷なことを言ってるのかがよくわかる。 だから、せめて…… 251 :天使のような悪魔たち 第4話 ◆UDPETPayJA :2008/10/21(火) 18 16 15 ID K43y8ILg 「お兄ちゃん……んっ…」 ちゅぱ……ぴちゃ……ちゅ… 「……ぷは…ごめんな明日香。俺には、ここまでしかしてやれない。」 「……あっ…あぁぁぁん…ふぁぁぁん…ぐすっ…」 大粒の涙を流す明日香。俺は、今にも壊れてしまいそうなくらい細いその肩を抱いてやることしかできなかった。 それから数時間後、なんとか明日香をなだめた俺は部屋の片付けをしていた。 …正直、複雑な心境だ。このまま明日香と二人で今までどおりやっていける自信がない。 いっそ、俺がいなくなれば……だめだ。それこそ明日香が発狂するかもしれない。 自惚れか、はたまた考えすぎかもしれないが…そう思えて仕方がないんだ。 俺は明日香とはひとつになれない。でも、明日香を失いたくない。誰か…教えてくれよ。 「ほんと、どうすればいいんだよ……?」
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226 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 32 16 ID xRLJ+/CC 結意の家は、一言でいうととても簡素だった。どうやら独り暮らしをしているようで、あまり物がない。 部屋自体の規模もあまり大きくなく、どこにでもあるありふれたアパートの一室だった。 結意は帰宅して早速晩飯を作る準備をしている。変なものを入れないよう見張っていれは、そこは問題ないだろう。 …歩き方がぎこちない内股ぎみになっていることに対しては、つい責任を感じてしまった。 「まっててね飛鳥くん!今日は飛鳥くんの大好きな焼き魚にするから!」 「あ、ああ。」 ―――あれ?こいつにそのこと話したっけ? ……愚問か。87回も告白するようなやつが俺のことを調べててもおかしくはない。 「88回目だよ。」 「!?」 びっくりした…結意のやつ、実は読心術でも使えちゃうのか? それにしても、実に手際いいな…。やはり一人暮らししてるだけあって料理も上手いんだな。 あっというまに食卓に焼き魚と白飯とその他いろいろが並べられた。明日香も料理はできる方だが…これはもう、どこに嫁に出しても恥ずかしくないレベルだ。 「だからぁ、飛鳥くん以外のとこにお嫁になんか行かないからね!」 「…なあ、さっきから俺の独白への的確なツッコミが気になるんだけど…。」 「飛鳥くんのことならなんでもわかるよ?」 と、まるで「地球が回ってるのは常識だよ?」と言わんばかりに当然のようにそう答えた結意。 そこまで清々しく言われたらなんだか反論する気もおきなくなってしまう。 「ふう…ごちそうさま。」 結意の作った飯は旨かった。魚の焼き加減も完璧だし、付け合わせの品もかなりの出来だ。変なものも入っていないようだし…これなら大丈夫だ。 満腹になったところで俺はシャワーを借りようと切り出した。 「なあ結意、風呂借りていいか?」 「うん、いいよ?廊下でて右だよ。」 「助かるよ。」 227 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 33 06 ID xRLJ+/CC …結意の家の風呂は意外に広かった。俺はついユニットバス風な造りかと思ってたからこれには驚いた。 しかし、やっぱり風呂は最高だな。こう…なんていうか、一日の疲れが吹き飛ぶというか…そんな感じがする。 と考えていると、突然ドアが開けられた。冷えた外の空気が入り込み、背中がぞくりとしてしまったが、さらなる侵入者への驚きでそれはすぐかき消された。 「えへへ……背中流してあげる。」 「なっ――――結意!?」 そう、結意が風呂場に入ってきたのだ。全裸で。なんだか目がヤバいような気がしないでもない。むしろヤバい。 あ、鍵かけられた。本日二度目の監禁っすよ。 「ほらほらぁ遠慮しないで♪」 「っく……」 だめだ。こんなときでも俺の相棒は空気を読めない。いや…あえて空気を読まない、通称えーけーわい か? 俺が振ればカラカラと音がしそうな自らの頭でそんなことを考えている間に結意はなにやらごそごそと動いて――― むにっ むにむに… 突然のやわらかい感触に俺の思考はリアルに引き戻された。そしてそのまま異物はどうやら俺の背中を磨いている…? 「あのー、なにをしてらっしゃっるんでしょうか…?」 「なにって、背中洗ってるんだよ、おっぱいで。飛鳥くんこういうの好きでしょ?」 ―――――誰か、宇宙人とコミュニケーションをとる方法を教えてくれ。あまりのぶっとび具合についていけそうにない。 結局、結意に背中のみならずあちこち洗われそうになったがなんとかやり過ごすことに成功した。…もうここの風呂を借りるのはよそう。 そのとき、洗面台の上に置いておいた携帯がぶるぶると震えていることに気づいた。着信だ…自宅…!?なんだこれ! 自宅 21 57 自宅 21 57 自宅 21 56…………履歴は、自宅からの着信で埋め尽くされていた。なんなんだ…これじゃあまるで、いつもの結意みたいだ。 とりあえず、電話に出てみる。 228 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 34 25 ID xRLJ+/CC 「もしもし…?明日香か?」 『あ…やっとでたぁ…おにいちゃぁん…ひっく…』 電話越しの明日香の声は、震えているようだった。「お兄ちゃん」なんて言われたのは小学校以来だ。 俺が帰ってこなかったことがそんなにも不安だったのだろうか。 『お兄ちゃん…今どこにいるのよぉ…?』 「悪い悪い。今友達んちにいるんだ。晩飯ごちそうになったから、今日は俺の分はいいからな。」 まさか結意と一緒にいるなんてこと言えるわけがない。明日香の中ではおそらくたちの悪いストーカーと認識されてるだろうからな。 まあ、ついさっきまでは実際そうだったわけだが。 『そういうことを聞いてんじゃないのよ!!ばかぁ!』 ―――耳がイカれるかと思った。明日香め、いきなりでかい声出すなよ。 『私がどれだけ心配したと思ってるのよ…。まさかあの女に捕まって監禁されて××されたり×××されてんじゃないかって…心配だったんだからぁ! お兄ちゃん…早く帰ってきて…。私…お兄ちゃんがいないと…ねえ……お願い…うぁぁぁぁん……。』 訂正。どうやらうちの妹は極度のブラコンだったようだ。 「…わかった、すぐ帰るよ。だから、大人しく待ってるんだぞ?」 そう言ったとたん、ぴたりと泣き止んだ。よほどうれしいかったんだなぁ。 『うん…待ってるから!早く帰ってきてね!』 ――ふう。仕方ない、帰るか。 電話を終えた俺はそそくさと衣服を身につけ、かばんを持って玄関へと向かった。靴を履き、ドアノブへ手をかける。 刹那―――風を切る音がした。 「どこいくの、飛鳥くん?」 230 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 35 21 ID xRLJ+/CC 振り向くとそこには結意がいた。本来なら目も眩むような魅力的な笑顔の下からは、般若のような冷やかなオーラを感じる。 どこから引っ張り出したのかはわからないが、木刀を構えて氷のように冷たい声で俺にそう問いかけている。一言でいうと…怖い。 「いや…その…」 「ど こ い く の ?」 「ひっ―――!?」 「外に出ちゃだめって言ったよね?飛鳥くんの為なんだよ?外に出たらこわいお兄さんに襲われちゃうよ?」 「だから、いいかげんその発想から離れ――(ヒュンッ)――うわぁっ!?」 名人も真っ青なほどの神速で木刀を振りぬいてきた。あんなもの食らったら男の俺でもただでは済むまい――――っ!? 「飛鳥くん…ごめんね。」 ―――時が止まって見えた。結意は木刀をゆっくりと俺めがけて振り下ろそうとしている。俺は、それをただぼうっと見ていることしかできなかった。 それはまるでスローモーションで再生されたムービーのような光景だった。 ばきっ、と鈍い音が響いた。その瞬間、襲いかかった激痛に俺は意識を手放した。 次に目を覚ましたとき、俺は即座に自分が絶対的なピンチに陥っていることを悟った。 まず、両手を後ろにまわした状態でおそらく縛られている。 両足も同じく。足首と、膝元を縄できゅうきゅうに固められていた。そのような格好で俺はベッドに横たわっている。ちなみに服は着たままだ。 肩からは先程の打撃の痛みがずきずきとしみてくる。 「具合はどう?」と結意が尋ねてきた。 「いいわけないだろう。さっさとほどいてくれないか?」 「だめ。だってほどいたら飛鳥くん、出ていっちゃうでしょ?外は危険なんだよ?ここで朝までゆっくりしていきなよ、ね?」 と、あどけない笑顔でそう告げる。普通に考えたら外より今のこいつの方が数倍危険なんだけどな…。 「離してくれ。俺は帰らなくちゃいけないんだ。」 そうだ、家で明日香が待ってるんだ。余計な心配かけちまったからな。早く安心させてやりたいんだ。 「…さっきの電話の女のとこに行くの?そんなにその子がいいの?……私じゃ、足りないの?」 「あのなぁ、明日香は俺の妹だ。足りる足りないとか、そういうもんじゃないだろう。」 「知ってるよ。あの雌猫ったら、私の飛鳥くんになれなれしくして……そのうちひどい目にあわせてあげるわ。それより…」 そう切って、俺のもとに歩み寄る結意。思わず背筋がぞくりとしてしまった。 231 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 36 21 ID xRLJ+/CC 「飛鳥くんが他の女のことを考えてるのが許せないなぁ。そういうのって、すっごく失礼だよ?飛鳥くんは私のことだけ考えてればいいの。」 結意は俺のズボンのチャックに手をかけようとしていた。俺はとっさに身をよじってかわす。が、縛られているせいでうまく動けない。結果、俺はベッドからずりおちた。 そのまま、馬乗りの形で結意に押さえつけられてしまった。 「すぐ気持ちよくしてあげるからね?大丈夫、飛鳥くんのためにちゃんと勉強したから。」 なにをどう、とは言わなかった。結意の次の行動がそれを示したからだ。いつのまにかズボンは膝までおろされ、わが分身が情けなくあらわにされた。 結意は、それをうれしそうにほおばった。 「ん……ちゅっ…ちゅぱ…あひゅかくんの…おいひぃよ…んぐ……」 「っ、ああっ…やめろ……!」 初めて味わう生暖かい感触から注ぎ込まれる快楽の波に、俺は早くも限界を感じていた。 「ゆいっ…やめろ…もう、でるっ……!」 が、結意は離れなかった。むしろ今の言葉を合図により一層激しさを増した。獣のように俺にむしゃぶりつく結意の姿に、俺はさらに興奮した。 ――――我慢できなかった。俺は結意の口のなかに迸りを放った。 「えほっ…ごほごほっ……」 結意は苦しそうにせき込んだ。瞳からはうっすら涙が滲んでいる。が、口の中のものを軽く咀嚼し……飲み干した。 「ん…あんまりおいしくないね……。やっぱ、漫画ってあてにならないなぁ……」 「お前は普段どんな漫画を読んでるんだ!?」 「えっと、(検閲により削除)とか(検閲により削除)とか、あと(検閲により削除)かなぁ。」 「……もういい、訊いた俺がバカだった。で、用は済んだだろ?さっさとほどいて…」 ――――――♪♪♪♪♪♪ 日本語で"飲み下せ"という意味の曲名の、某スタイリッシュアクションゲームの主題歌の着うたが流れた。 なんていうタイミングだ。このすさまじい皮肉に俺は一気に脱力した。マナーモードを解くんじゃなかった。 なぜか結意のポケットから聞こえているが、このさい考えるのもあほらしい。 まてよ…この着信は確か……自宅だ。まさか、明日香!?ほんっと、なんつータイミング! 232 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 38 23 ID xRLJ+/CC ピッ――― 「もしもし?」 『お兄―――だれ?』 「あ、申し遅れました。私、飛鳥くんの彼女の織原 結意っていいます。よろしくね?」 『…どういうことよ。あんた、まさか例のストーカー女!?兄貴に何したのよ!』 「何って……ナニかな?」 『――――あんたねぇ!あたしの兄貴を汚したわね!?』 「汚したなんて……飛鳥くんのほうからシテきたのよ?」 『…うそ!そんなのうそよ!兄貴がそんなことするわけないわ!』 「本当よ。私がやめてって言っても聞いてくれなかったわ。おかげで私、腰が立たなくなっちゃって飛鳥くんにおんぶしてもらっておうちまで連れてってもらったのよ?」 俺は思った。女って、恐ろしい。まさかこの天然系変態美少女からこんな、相手を的確になじるようなせりふが出てくるなんて。 織原結意……恐ろしい子! バキン!! ふと、なにかが砕けるような音がした。床には青い破片がいくつか散らばっている。これは…なんだ俺の携帯じゃないか。 「ってオイ!!なに人の携帯をこんな見事に粉砕してくれちゃってんだよお前!」 「だって…あの女むかつくんだもん。飛鳥くんは私のものなんだよ?なのに自分のものみたく主張しちゃって……だから、ついやっちゃった。てへっ☆」 「てへっ☆じゃねえ!このバカ!」 「…飛鳥くん、もうあの娘と話しちゃ駄目だよ?飛鳥くんには私がいるんだから。」 「無茶言うな!あれは俺の妹だ!そんなこと―――」 「 わ か っ た ? 」 結意は俺に木刀を再び差し向け、そう言った。くそう……木刀なんて、だいっきらいだ! だけど…そんなこと言われて黙ってなんかいられない。 「…そんなことできない。明日香は、俺の大事な妹なんだ…。」 233 :天使のような悪魔たち 第3話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/20(月) 00 39 11 ID xRLJ+/CC ―――がしかし、次に結意の口からでた言葉はあまりに俺の予測を度外視していた。 「ねぇ…どっちだと思う?」 意味がわからない。なにが、「どっち」なんだ。俺は結意にそう尋ねた。すると結意の回答は…… 「私の…ううん、私たちの赤ちゃん!男の子かな?女の子かな?わくわくするね!」 世界が凍りついた。俺の頭の中は「絶望」の二文字で埋め尽くされた。予測してはいたが…実際こうして言われるとダメージがでかい。 もう俺は結意に完璧に囚われた。一生逃げられないのだろうか…? 「今日、いっぱい中に出してくれたよね?だから絶対、飛鳥くんに似て元気いっぱいの赤ちゃんが産まれるよ!」 「―――――くっ…」 もう俺には抵抗する気力もなかった。それを悟ったのか、ふいに結意は俺の手足の枷を解いた。が、最強(凶)の枷をはめられた今の俺には、ロープなんざおもちゃ以下だ。 もはや逃げる気も起きない。俺は死んだも同然だった。そんな俺に結意はさらなる追い討ちをかけてきた。 「でも、元気な赤ちゃんを産むためにはいっぱい栄養が必要だよね!だから…頑張ってね、お と う さ ん !」 そう言いながら服を脱ぎだす。脱ぎながら、結意の手が俺の相棒をさする。こんなときでも相棒は敏感に反応した。この空気の読めなさを俺も見習いたいよ。 …とりあえず、朝になるまで俺は解放されなかったとだけ言っておこう。
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681 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 32 39 ID ZLAFCsLQ 午後8時、結意と別れた俺は夕食の買い物をするために最寄りのスーパーを訪れていた。入り口付近から順当に歩き、目当ての品々をかごに入れてゆく。 さすがに時間が遅かったから、残っていた品揃えも微妙だが…。今日のメニューは…そうだな、明日香の好きなオムライスにでもしようか。 明日香は…まだふさぎこんでるだろうか?俺とて、明日香のことが嫌いなわけじゃない。むしろ、愛している。だが結局、あくまで家族としてのそれでしかない。 俺は…どうすればよかったんだろう。あのまま明日香の気持ちに応えればよかったか?それとも、もっと冷たく突き放せばよかったのか? 馬鹿な俺にだってわかる。このまま中途半端にずるずると引っ張ることがもっとも残酷であることぐらいは。 だから…いずれはっきりさせなければいけない。もう、答えは決まっているんだから。 ♪♪♪♪~♪♪~♪♪♪~ 焼き芋の機械に備えつけられたスピーカーから鳴る軽快な音楽によって俺の思考は現実に引き戻された。 そのまま、とりあえず会計を済ませることにした。今は早く家に帰ろう。その上ではっきりと言わなければならない。 俺は…家を出る。 夜の闇を薄暗い電灯が照らしている、人気の少ない道をひとり歩く。一歩踏みしめるたびに決意を反芻する。 今度こそ逃げちゃだめだ。明日香がどんなに悲しもうと、はっきり言う。それがきっとお互いのためだから。 明日香だってこれから先いくらでも出会いがあるだろう。俺よりもいいやつなんかごまんといる。 だから…きっといつか傷は癒えるはずだ。自分勝手な願望ではあるが、今の俺にはそうなってくれることを祈るしかできない。 そんなことを考えているうちに、とうとう家の前に着いた。一度深呼吸をし、ドアノブに手をかける。 「ただいま、明日香。」と、決まりの挨拶をする。が…当然返事はない。俺は靴を脱ぎ、中へと上がった。ふいに、あることに気付いた。 682 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 33 27 ID ZLAFCsLQ ―――明日香の靴がない。外出しているのか…こんな遅くに、一体どこへ? いろいろと思案してみる。まず昨日のこと…あんなことがあったからにはやはり家には居づらかったのだろうか? そこで、俺の思考はひとつの可能性にたどり着いた。…家出か? とにかく、明日香が心配だ。俺は再び靴をはき、外に出ようとした。 「待ちなさい、飛鳥。」 誰かに呼び止められた。俺は声がした方へ向き直る。そこにいたのは…明日香そっくりの少女だった。 もし髪がストレートではなくツインテールであれば、明日香にしか見えないだろう。けど、俺はこの少女を知っていた。 「亜朱架姉ちゃん…?なんでここに?」 俺が疑問に思ったのは当然だ。なぜなら姉ちゃんは父さんたちと一緒に海外へ行っていたはずだから。 「帰ってきたのよ…久しぶりね、飛鳥。」 亜朱架姉ちゃんは、神坂家の長女だ。今年でたしか20になる…が、どうみても幼女だ。最後に会ったのが四年前だけど、その時から全く変わってない。ただ、やはり言動は大人びいているが…。 「明日香を探すんでしょ?私わかるわよ、居場所。」 「どこにいるんだ!?姉ちゃん!」 「あんたの彼女のとこよ、間違いないわ。」 …おかしい。なんでついさっき再会したばっかなのに結意のことを知ってるんだ?それに、明日香の居場所も…だめだ、今はそれどころじゃない。 俺はすぐさま結意の家に向けて走り出した。 683 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 34 31 ID ZLAFCsLQ それから数分後、目的の場所へたどり着いた。ドアを引く。…鍵がかかっていた。俺は乱暴に呼び鈴を数回押し、怒鳴った。 「開けろ結意!俺だ、飛鳥だ!」 だが、いっこうに開かれる気配がない。 「どきなさい、飛鳥。」 あとを追ってきた姉ちゃんが俺を押し退け、ドアに正対する。すると、目を閉じて手をドアにかざした。 直後、閃光がまたたいた。いや、正確には光と言うより…闇。さしずめ黒い光、か?それからドアは、音もなく開いた。 「姉ちゃん…今のは?」 「鍵を破壊したのよ。緊急事態だし…。」 「そうじゃねえよ!今の光はなんなんだ!?」 「…後で話すわ。それより……」 そう言って姉ちゃんは部屋の中を指さす。俺は黙ってうなずき、部屋へと上がり込んだ。なにか声がする。…どうやら、明日香は本当に来ていたようだ。 「この泥棒猫!あんたなんかがいるから兄貴は…兄貴は私を見てくれないのよ!」 「あなたは飛鳥くんの妹なのよ?私がいなくても、飛鳥くんはあなたには振り向かないわ。」 「うるさい!あんたなんか…死んじゃえ!」 684 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 36 19 ID ZLAFCsLQ 明日香は激昂し、手にもったナイフを結意に差し向けた。俺はすかさず止めに入る。 「やめろ明日香!こんなことしてなんになる!」 「どいてよお兄ちゃん!そいつ殺してやるわ!」 結意に向けてナイフごと突貫せんとばかりの明日香。とりあえず、後ろから羽交い締めにした。 「離して!あの泥棒猫殺さなきゃいけないの!」 こんな小さな体のどこにそんな力があったのか、今にも振りほどかれそうだった。 ―――――そのとき、再び黒い光がまたたいた。その一瞬で、ナイフは失せていた。明日香も、気を失っていた。 「…間に合ったわね。」 肩で息をしながら姉ちゃんが近づいてきた。どうやらあの光を放つのは体力を消耗するみたいだ。そのまま明日香の額に手をかざし、三たび黒い光を放つ。 「飛鳥くん…この子は?」 いきなりの明日香に瓜二つな幼女(?)の登場に結意は戸惑っていたようだ。 「俺の姉ちゃんだよ。亜朱架ってんだ。」 「…また"あすか"?」 「ああ…親父たちもなんたってこんな紛らわしい名前つけたんだろな?」と、少しでも場をなごませようとおどけて見せる。 「飛鳥、もう行きましょう。あ…結意さんでしたっけ。鍵、壊しちゃったから。明日すぐ業者をうちから手配するから今夜はチェーンロックで代用してね。 …ごめんなさいね?」 姉ちゃんは丁寧に謝り、軽くお辞儀をした。俺は、明日香を担いで結意の家を後にした。 685 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 37 40 ID ZLAFCsLQ 「なあ…さっき明日香になにをしたんだ?」俺は姉ちゃんへそう問いかけた。至極当然な質問だ。 「記憶を奪ったわ。正確には、明日香があんたに拒絶された日の記憶をね。」と、姉ちゃんは答えた。 「じゃあ、あの光はなんなんだ?鍵を壊したり、ナイフを消し去ったり…普通じゃないだろ、あれは!」 すると姉ちゃんは一考したあと、語りだした。 「私…人間じゃないのよね。」 「…はぁ?だって姉ちゃんは…」 「普通に見れば人間と変わりないわ。でも、厳密には違うの。あんた、生物の授業で習わなかった。2n=46って。」 「それなら習った。人間の染色体の数だよな。」 「そうよ。でも私は…49本あるの。」 「…多くねえか?なんでそんなにあるんだよ。」 普通に考えて意味が分からなかった。人間の染色体が49本なんて、聞いたことない。 「たぶん…いえ、絶対お父さんのせい。あんた、お父さんがなんの研究してか知ってる?」 「いや…興味なかったからな。」 「…私の遺伝子の研究よ。普通なら、こういうのは染色体異常の類として扱われるんだけど…ダウン症とかがそのいい例ね。でも私はなんの欠陥も今現在は見当たらないわ。そのかわり……」 はぁ、とため息をつき、姉ちゃんは続けた。 「年とらないのよ、私。それに、さっきの光。見たでしょ?あれは…そうね、"消去の光"ってとこかしら。」 「消去の光?なんだそりゃ。」 「任意のものを消し去れるのよ。さっきのナイフみたいに……。記憶だって、この光で奪えるわ。………こんなのって、人間じゃないでしょ?」 少し哀しそうな表情で微笑みながら姉ちゃんはそう言った。 686 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 38 59 ID ZLAFCsLQ 「お父さんたちの研究テーマは…そうね、"新人類"とでもいったところかしら。今も、日本のとある極秘の施設で研究してるはずよ。海外なんてのはたんなるカモフラージュ。それとね……」 そこで切り、俺…いや、俺たちへと向き直る姉ちゃん。 「あんたたちもそうなのよ。49本。」 「……俺たちも?でも…」 「なんの変化も見られない、でしょ?それもそうよ。それこそが私だけが研究材料として適任だった理由なんだから。でもね…一つ問題があるのよ。」 「…? 言ってみろよ。」 「………飛鳥、もう結意さんとはセックスした?」 ―――――な、なんてことを訊いてくるんだ姉ちゃん!あまりに突然だったため、どう答えたらいいかわっかんなくなってしまった! まあ…それだけで見抜かれたみたいだけど。 「…やっぱり。」 ほら、"やっぱり"! 「飛鳥……言っとくけどあんた、結意さんとのあいだに子供つくれないわよ。」 ……今度は、姉ちゃんの言ってることの意味がわからなくて沈黙してしまった。子供ができない?俺と結意の? 687 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 40 00 ID ZLAFCsLQ 「まだ授業で教わってないのね…ほんと、ゆとり教育ってダメね。いい?たとえば、犬とネコが交尾したとしても子供はできない。これはわかるでしょう?」 「ああ。」 「それと同じ。"種"が違うの。わかりやすくいうと…おたがいの染色体の本数が一致しないと子供はできないの。つまり、ヒトと猿が交配しても子供はできない。 だから……私たちは普通の人間とのあいだには子供はつくれない。わかった?」 「……なんとか。」実際頭のなかごっちゃだけど…言いたいことはわかった。 「一応、方法はあるわ。」再び姉ちゃん。「それはいったい?」とりあえず尋ねてみる。 「近親相姦なら子孫を残せるわ。あんたと明日香がくっつけばいいのよ。」 「…………!?あ、明日香と!?」 「そ、明日香とよ。私、べつに子供ほしくないし…でも明日香はその気満々みたいだし。はやいとこくっついちゃいなさい。うん、それがいいわ。」 なんかとんでもないことを言ってる気がするが………いや、言ってる! 「でも、俺たち兄妹だぞ!そんなこと―――――」 「あんた、明日香が嫌いなの?私はどうしてもあんたと明日香がくっついてもらわなくちゃ困るのよ!」 …なんで困るんだ?とは言い返せなかった。姉ちゃんの鬼気迫る表情に怖気ついてしまったからだ。 「どうしてもっていうなら…しかたないわね。」俺に手をかざす姉ちゃん。 瞬間、黒い光がまたたいた。対象は…どうやら俺みたいだ。 688 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 41 06 ID ZLAFCsLQ * * * * * 「…あれ、姉ちゃん。俺何してたんだ?」 「なんか、ぼーっと考え事してたわよ。しゃきっとしなさいしゃきっと!」 なんだ…?このもやもやした感覚。まるで、 「ねえ奥さん、こないだのアレお買い得だったわよねぇ!」「アレって?」「だから、アレよアレ!えっと…なんていったかしら?」みたいな感じだ。 まあ、いいか。明日になればまた結意特製の怪しさマックスの弁当箱が下駄箱に入っていることだろう。そして繰り返される日々、か。 そう思うと足取りが重く感じられたが…まあめげずにがんばろう、俺! 「飛鳥…ごめんなさいね?」突然謝りだした姉さん。 「何がだ?」と思わず聞き返す。理由がわからなかった。何を謝ってるんだ? 「ううん…なんでもないわ。ただいま、飛鳥(明日香)!」
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401 :天使のような悪魔たち 第5話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/27(月) 13 20 52 ID m4u6lA7+ 翌朝、俺は拘束しっぱなしだった結意を迎えに行っていた。 明日香はまだ部屋から出てこない。俺に拒絶されたことでかなりのダメージを負っていたようだ。 …正直、とても心配だ。できるならそばについていてやりたい。だけど俺がそばにいたって傷は癒えないだろう。むしろ抉るようなものだ。 「ねぇ飛鳥くん、ごほうびは?」 「…今やるよ。」 こういうときでも結意は結意のままだ。逆に救われるよ。…事情を知らないから当然だけどな。 とりあえず、結意に"ごほうび"をあげた。といってもただのキスだけど。 「ん…飛鳥くん、もっとぉ…」 「悪いが今日はここまでだ。」 「えぇっ…そんなぁ…」 「俺の身にもなってくれよ。これ以上シたら使い物にならなくなる。」 昨日から立て続けに抜かれたからなあ…本気で辛いんだ。わかるだろう?なんつうか…そういうときに勃つと痛い。 「そう。飛鳥くん、そうなんだ。」 「わかってくれたか?」 「うん…昨日は使い物にならなくなるほど他の女としたんだ…。」 「っ!?」 「いったでしょ?飛鳥くんの事ならなんでもわかるって。相手は…あの生意気な妹ちゃん?」 「ち…ちが…」 「今日はもういいよ。使い物になんなくなったら困るから。だから、明日は…ね?」 相変わらずのエンジェルスマイルでなにやら恐ろしいことを言う結意。こいつと付き合うにはそれ相応の覚悟が必要そうだな…と、今になってそれを実感した。 402 :天使のような悪魔たち 第5話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/27(月) 13 21 57 ID m4u6lA7+ 朝のホームルームを終えた俺は、隼と屋上に来ていた。 一時間目は数学。聞いてて眠くなるようなこの授業をサボるのはもはや日課だった。同じ眠るならうるさい教師がいないほうがいい。 「で飛鳥ちゃん!昨日はあのあとどうしちゃったのかなー?」 「…なあ隼。遺書の書き方、知ってるか?」 「―――飛鳥ちゃん!?早まるなよ!?」 「いや、書くのはお前だ。」 「って俺かよ!勝手に死なすな!…で?」 「なんだ。手短に済ませ。ただし昨日のことは訊くな。」 「じゃあ単刀直入に…」 一拍置いて隼は切り出した。 「飛鳥ちゃん…結意ちゃんとデキたな?」 「…ああ。」 反論はしない。朝学校に一緒に来た時点で俺たちを知る大勢はそう思った筈だからな…今更無駄な抵抗、だ。 「そーかそーか。これで俺の努力も…」 ん?何か今、聞き捨てならない言葉を聞いたような…… それをいった本人はなにやらばつの悪そうな顔をして、こう続けた。 「…いや、何でもないよ?」 「隼。今度は俺が詳しく話を聞こうか…。」 「まてっ!俺が何をした!?」 「それを今から訊くんじゃないか…ふふ、はははははっ!」 「ひぃぃぃぃっ!?」 ―――なんてこった。隼の野郎…結意と裏でグルになってやがった。俺の趣味やら食べ物の好みやらその他色々全部結意にリークしていたんだ。 問題は……なぜこんな真似をしたか、だ。 「さあ隼…なんでこんなことしたか言ってもらおうか。」 「…わぁったよ。でも、結意ちゃんに言うなよ?」 「わかってる。」 俺の返事を聞いた隼はとうとう諦めたような顔をし、語り始めた。 403 :天使のような悪魔たち 第5話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/27(月) 13 22 42 ID m4u6lA7+ ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 今から2ヶ月…いや、もうちょい前かな。結意ちゃんを見かけたのは。 結意ちゃん、泣いてたんだよ。空の弁当箱を持って。それこそ、今にも死んでしまいそうなくらい絶望し ていた…そう見えた。気になったから、俺は次の日朝早く来て様子を見てたんだ。そうしたら… 「えへへ…今日は肉団子と卵焼きとね、うさちゃんりんごも入れてみたんだ。たくさん食べてね?」 そう言いながら、飛鳥ちゃんの下駄箱に弁当箱を入れてたんだ。 それだけでもうわかったよ、前日の涙のわけを。 それから一時間後くらいかな、飛鳥ちゃんはいつものように登校し、いつものように下駄箱を開け…もうわかるだろ? 「飛鳥くん、肉団子きらいだったの?ごめんね…気づかなくて……ごめん…ね…」 結意ちゃんはただ泣いていたよ。飛鳥ちゃんを恨むでもなく、ただひたすら自分を責めてた。 普通に考えたら、結意ちゃんの行動はあまりに的外れだよな。でも、俺は知ってたからさ。そうまでして好きな人に尽くしたいっていう気持ちを。たとえ何度踏みにじられよ うと、な。 だから俺は結意ちゃんに協力したんだ。飛鳥ちゃんの情報を教えたりしてな。…弁当はやめとけって言ったんだけど、 「飛鳥くんにどうしても食べてほしいの。」 と言って聞かなかったよ。そして毎日、あまりにきれいすぎる弁当箱を抱えて泣いてた。さすがに我慢できなくてな、明くる日ついに切り出したんだ。 「なあ…あいつの友人である俺がこんなこと言うのもなんなんだけどよ…もうやめたらどうだ?」 「…なにいってるの、隼くん?」 「もう見てらんないんだよ。そうやっていつまでも裏切られて、それでも尽くして尽くして…結意ちゃん、あんなやつのどこがいいんだよ?」 そうしたら結意ちゃん、なんて言ったと思う? 「飛鳥くんはね…私のすべてなの。飛鳥くんになら何度踏みにじられても、たとえ乱暴に犯されても、たとえ殺されたとしても…私はそれで幸せ。だからいっぱい尽くすの。 そしたらいつか、私の方を見てくれるよね?そして、ありったけの汚い言葉で罵ってくれるのを待ってるの。本当に、それだけでいいの…。」 そう、笑って言ったんだ。目にはたっぷり涙を溜めてな……。ほんと、見てらんなかった。だから言ったんだ。 俺がなんとかしてやるって。 それがついこないだ。飛鳥ちゃんのゲイ発言の少し前くらいかな。 404 :天使のような悪魔たち 第5話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/10/27(月) 13 24 17 ID m4u6lA7+ ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ そこまで話して隼は一息ついた。 …何も言い返せなかった。結意を諦めさせるために今まで俺がしてきたことがどれほど残酷だったかを思い知らされたからだ。 「察しの通り、昨日のアレは俺のアイデアだ。飛鳥ちゃんは昔から鬼ごっこのときも隠れるくせがあったからね。」 「隼…。」 「おっと…俺を殴りたきゃ好きにしろ。だけど…わかってるだろうな?飛鳥ちゃんが今までしてきたことを……それでもあの子は飛鳥ちゃんを慕ってるんだ。…もう結意ちゃんを傷つけるなよ?」 わかってる。俺は結意を選んだんだ。だったらそれは当然のことだ。 「…その時は、俺を殺せばいいさ。」 「…しっかり頼むぜ、俺のぶんまで。」 それだけ言い終えて隼は屋上を去った。……あいつはほんと、昔からいいやつだよ。 放課後、俺と結意は一緒に歩いていた。それだけでも結意は本当に幸せそうだった。俺と今こうしていられることがそんなに嬉しいのか…。 正直なところ、未だにわからないんだ。どうして結意はこんな俺を好きなんだ? でも、とりあえずひとつだけ決めたことがある。 「なあ…明日さ、弁当作ってくれないか?」 今度は、俺が結意に応える番だ。 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 夜の帳が落ち、星が見え始めたころ、少女はようやくこの街に降り立った。 「やっとみつけた。アスカ、待っててね?今すぐ行くから。」 再び歩みを進める。もう追っ手を恐れる必要はなかった。やつらはこの街では問題を起こしたがらない。それに、行く先もおそらくわかってるはず。 たぶん、隠密に先回りしてる。それでも行かなきゃいけない。虎穴に入らずんばなんとやら、だ。 「待っててね…お姉ちゃん、もうすぐ帰るから、ね?」 少女の名は、亜朱架といった。